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1960-04-07 第34回国会 衆議院 法務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月七日(木曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君    理事 小林かなえ君 理事 田中伊三次君    理事 福井 盛太君 理事 大野 幸一君       綾部健太郎君    薄田 美朝君       高橋 禎一君    中村 梅吉君       南條 徳男君    大原  亨君       田中幾三郎君    志賀 義雄君  出席政府委員         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  實君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      船後 正道君  委員外出席者         検     事         (刑事局参事         官)      高橋 勝好君         最高裁判所事務         総局事務次長  内藤 頼博君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局総         務課長)    長井  澄君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      守田  直君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 四月六日  委員井伊誠一辞任につき、その補欠として淺  沼稻次郎君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員淺沼稻次郎辞任につき、その補欠として  大原亨君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月六日  下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第一一二号)  (参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所法の一部を改正する法律案内閣提出第  一〇七号)      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  裁判所法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原委員 裁判所法の第六十条の改正につきまして御質問いたしたいと思いますが、最初に、今度の改正によりまして、裁判所書記官判事補助機関、こういうことになるのですか、行政上の職務といたしましての、つまり補助機関というふうに規定するのか、こういう点を伺いたい。
  4. 津田實

    津田政府委員 今回の、ただいま御指摘裁判所法六十条第三項の改正案につきましては、裁判所書記官をして判事の行なう調査についての補助をするという権限を与えるわけでありまして、その部分に関しては補助機関と申して差しつかえないと思います。
  5. 大原亨

    大原委員 今までの裁判所書記官職務と、今回改正になりました書記官職務の違う点を、念のために御説明いただきたいと思います。
  6. 津田實

    津田政府委員 従来の書記官職務権限は、現行裁判所法第六十条第二項でありまして、「裁判所書記官は、裁判所事件に関する記録その他の書類作成及び保管その他他の法律において定める事務」これが裁判所書記官事務中心をなしておるのであります。今回これに与えます事務は「前項の事務を掌る外、裁判所事件に関し、裁判官の命を受けて、裁判官の行なう法令及び判例調査その他必要な事項調査補助する。」すなわち、裁判官の行なう調査部分的に補助をする、こういう職務権限を今回の改正案で認めるということになる次第であります。
  7. 大原亨

    大原委員 今までの書記官というのは、裁判官補助をしていなかったのですか。先般もいつか問題になりまして、裁判書き問題等が論議されましたけれども、そういう「裁判官の命を受けて、裁判官の行なう法令及び判例調査その他必要な事項調査補助する。」こういうふうに新たに加えたのですが、今までは補助はしていなかったのですか。
  8. 津田實

    津田政府委員 元来書記官事務は、もちろん現行法裁判所法六十条の二項によりまして、独立して事件に関する記録その他書類作成をするということでありまして、その意味におきましては裁判所書記官独立機関であります。しかしながら、裁判所書記官につきましても、裁判官補助すると申しますか、要するに補助するというような事務も全然なかったわけではございません。しかしながら今度の事務は、裁判官の行なう調査裁判官の行なう仕事内容についての補助をするということは、今回の改正によって大体新たに認められた補助の方法であると思うのであります。従来におきましても、たとえば上司の命によりまして、裁判官補助しているという職務はあったわけでございます。
  9. 大原亨

    大原委員 私が問題とするのは、こういう点なんです。裁判所書記官職務について必要な規制を加えるということは必要なんですが、その仕事が無制限に加わっていく、裁判官権限事項まで、あるいは裁判官が命じたことであったならば、何でもしなければならぬ、こういうふうに非常に自主性のない形で職務がずっと加わっていきますと、単に人権の尊重ということでなしに、裁判所の秩序と、いう面から考えてみて大きな問題であると思うのです。だから、職務内容については、具体的に規制をするということについてはいいと思うのですけれども、主体性がない格好裁判官の命に従わなければならぬ、こういう格好でどんどん仕事の量がふえていったのでは困る。こういうことを私ども心配するのですが、その点については、自主性を持った補助機関というふうに考えてよろしいですか。
  10. 津田實

    津田政府委員 自主性を持ったといいますか、現行法六十条に規定してある裁判所書記官中心事務は、全く自主性を持った事務でありまりして、そのことにつきましては、現行法の六十条四項などにも、その趣旨が現われておるわけであります。ただ現行法の六十条の三項におきましても、「裁判所書記官は、その職務を行うについては、裁判官命令に従う。」とありまして、職務権限範囲内に入っておるものについては、裁判官命令に従うということは、書記官の本質的な職務と申しますか、地位と申しますか、そういうものになっておるわけであります。しかしながら何が書記官職務範囲に入るかということにつきましては、これは裁判官が自由にきめるわけではなくて、法律範囲内において、しかも裁判官にそれを命ずる権限を認められている範囲内において裁判官が命ずるということでありまして、裁判官の命を受けてということのない書記官事務につきましては、書記官独自性にその事務をつかさどるということになるわけであると思います。
  11. 大原亨

    大原委員 そういう調査と深い関係があると思うのですが、今まで資料室というのが各級裁判所にあったそうですが、あれは最高裁から高裁地裁簡裁まで、そういう資料室があるのですか。そしてそういうのは、大体どういう仕事をしているのですか。
  12. 津田實

    津田政府委員 資料室があるということは、私どもも聞いておりますが、私の方は法務省でございますので、具体的な仕事の運営につきましては、必ずしもつまびらかになっておりません。資料室というものは、法律制度上の問題ではないわけでございますので、法務省としては内容についてはわかりかねる次第であります。
  13. 大原亨

    大原委員 裁判所の人はおられますか。
  14. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 大原委員に申し上げますが、間もなく裁判所側が見えます。
  15. 大原亨

    大原委員 それでは裁判所の方が見えたらそのときにお尋ねするとしまして、私はこれから法務省の方に書記官職務内容、それから仕事をしていく上においての適正な待遇、こういう面について御質問したいと思います。  大蔵省の方もよく聞いておいてもらいたいと思いますが、裁判官待遇については、法務省はどういう責任権限を持っておるのですか。
  16. 津田實

    津田政府委員 裁判官待遇法律制度の面から申しますと、もちろんこれは政府部内におきまして、司法制度に関する法令案作成する権限を持っておりますところの、つまり作成する事項をつかさどっております法務省所管であります。しかしながら裁判官待遇自体の中におきまして給与その他予算を要する面につきましては、むろんその予算内容については大蔵省所管事項でもありますので、大蔵省裁判所と折衝しまして、定められた予算範囲内において大蔵省裁判所から連絡を受けて法務省裁判官待遇に関する制度、すなわち現在におきましては裁判官報酬等に関する法律改正等をつかさどるわけであります。
  17. 大原亨

    大原委員 そうしますと、実質上予算折衝をしましたり、あるいは級別の定員をきめたりするのは、裁判所大蔵省と折衝してやって、あなたの方はその連絡を受けて必要な手続をとる、かように考えてよろしいわけですね。
  18. 津田實

    津田政府委員 大体その通りでございますが、もちろん全体の法制上の面から申しまして、法務省として考える。つまり待遇に対する法律上の意見というものはもちろんあるわけでございますが、予算の面に関する意見は、もっぱら大蔵省裁判所とが折衝してきめるということになるわけであります。
  19. 大原亨

    大原委員 裁判所書記官というのは、他の官庁で言いましたら、大体大蔵省予算査定をいたしたり、いろいろなことをする際にランクするのだと思いますが、大体今度の新しい六十条の改正によりましてどういう位置づけになるのですか。そういう総合調整法務省がやるのでしょう。
  20. 津田實

    津田政府委員 書記官俸給に関しましては、裁判所職員臨時措置法によります一般職給与に関する法律が準用されることになるわけであります。従いまして、その内容につきましては、もっぱら裁判所大蔵省との関係において定められるわけでありまして、その書記官待遇運用面につきましては、もっぱら裁判所にまかせるということであります。
  21. 大原亨

    大原委員 法務省にちょっとお尋ねします。他の省庁との均衡総合調整をするのが法務省の方の仕事でしょう。直接そういう予算折衝については裁判所がやるけれども、やはり法律は公平に行なうものですから、そういうことについてはあなたの方も考えるのだ、私はこういう趣旨の方がいいと思うのです。そういうところから考えてみて、書記官というのは、他の省、他の機構においてはどういう位置づけをされておるのですか。これは管理職としての書記官じゃありませんね。だから課長とか課長補佐というものに職務的にはつながっておるわけではないんですね。
  22. 津田實

    津田政府委員 御承知通り裁判所職員臨時措置法という法律がございまして、裁判官及び裁判所書記官以外の裁判所職員の任命、給与等につきましては、原則としていろいろの一般国家公務員に関する法律が準用されるわけであります。その準用される法律の中に一般職職員給与に関する法律というのがある。従いまして、ただいま仰せの裁判所書記官につきましても、一般職職員給与に関する法律が準用されるわけであります。その場合に、その一般職職員給与に関する法律上、人事院あるいは人事院規則というようなものによって定められる事項は、最高裁判所あるいは最高裁判所規則によって定められる。従いまして、これらの一般職職員給与に関する法律によりまして、裁判所書記官のいろいろな内容事項をきめることは、もっぱら最高裁判所の職権に属する。しかしながら、事給与に関しまして予算を要する場合におきましては、もちろん大蔵省と話し合いをした上で、その予算の裏づけをもってこの法律最高裁判所が施行していくわけであります。従いまして、この法律最高裁判所が施行する上におきましては、最高裁判所司法行政責任上独自の立場で行なうわけでございますので、法務省におきまして、その運用内容につきまして、意見を言うことは現在としてはないわけであります。
  23. 大原亨

    大原委員 最高裁にお尋ねいたしますが、裁判所書記官というのは、新しく改正になりましたけれども、そのことを加えて考えてみましても、これはいわゆる管理職じゃありませんね。
  24. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 裁判所書記官といたしまして、その内部に管理職はありますけれども、全般的に書記官としては管理職じゃありません。
  25. 大原亨

    大原委員 私は関係者全部に集まってもらってこれからずっと質問を進めていきたい真意は、あげ足をとるというのではなしに、真意はどういうことかといいましたら、書記官についての法改正がなされておるわけですが、全体の裁判所職員の人々の待遇の適正を期するということが、裁判官がやはり任務を公平にあるいは法の趣旨に従ってやることと深い関係があると思うから、私が逐次質問をしていくわけです。  大蔵省にお聞きしたいのですが、裁判所職員平均給与は他の官庁に比較いたしまして低いというふうに私ども聞くのです。これは今までの答弁資料その他によりまして低いということを聞くのですが、そういう実態はどうなんですか。平均給与について一般職員幾ら裁判所職員幾ら、こういう数字が出ればその数字をもってお答えいただきたい。
  26. 船後正道

    ○船後政府委員 裁判所裁判官及び裁判官の秘書官以外の職員につきましては、裁判所職員臨時措置法で、給与上、一般職職員給与法を準用いたしております。従いまして、これらの職員給与の体系またその運用一切が一般職に準じておりますので、給与のそういった制度面から出る格差とかいうものは生じない、かように考えております。  なお、平均給与額の問題でございますが、ただいま手元資料がございません。各省庁ごと平均給与額がどう違うか、やはりその省庁人員構成あるいはその官庁職務構成、これらによって若干の差が出てくる問題でございます。御要求がございますれば、そういった一人当たりの平均給与額というものは差し上げたいと思います。
  27. 大原亨

    大原委員 私は、全体といたしまして、こういう不満とか実態はわかるのですが、法務省にいたしましても、今のお話の通り裁判所職員については、やはり閣議やその他あらゆる面において十分待遇については責任を持っていないと思う。法務省において十分責任を持っていない。いわば盲点です。それから裁判所の方も、大蔵省との予算折衝なんかは非常に不得手ではないかと思う。そういうことで法律をいろいろ解釈いたしまして、給与個人個人に給付いたします際に、私はやはり裁判所職員待遇というものが劣っておるのではないかと思う。そういう一つの問題を私は想像するわけです。その点で私は今大蔵省にお尋ねしたのです。こういう面で全部を律することはできないけれども平均給与はやはり一つ考え方の基礎になるのです。たとえば学歴とか勤続年数によってそれぞれ違うという場合もある。あるのですけれども国家公務員法に準じてやる場合に、公共企業体その他におきましても、学歴その他についてもうんと違う官庁があるわけです。しかし平均給与ということになると、大体仕事の量と質によっていろいろかみ合わせて決定するようになっておるけれども、必ずしもそう開きはないのです。私は、大体一割から二割の間ぐらい裁判所職員平均給与が低いというように聞くのですが、裁判所事務局の方ではどういうふうに把握しておられますか。
  28. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 各省職員基本給平均単価というものは、裁判所にございません。ただ昭和三十四年一月一日現在の各省俸給単価というものがございます。これによって当時の裁判所職員との関係を考えますと、裁判所職員として掲げられておる基本給は二万七千七十七円で、各省の中では一番低い。しかし各省におきましては、次官から局長課長いわゆる昔の行政官試験通りました人たちを全部含んだのでありますが、裁判所におきましては、裁判官給与をこの中に含んでおりません。裁判官給与報酬を入れて全部込みにしてやりますと、平均単価は二万一千六百八十四円ということになりまして、これは各省に比較すれば第五番目くらいの高さにあります。  一般職員俸給単価がなぜ低いかと申しますと、御承知のように、裁判所は、いわゆる大東亜戦争当時、職員が各軍需会社その他に出ていきました関係上、新憲法施行によって裁判所が発足しました際におきましては、非常に古参の人と非常に若い人とあって、中堅層が非常に少ない。その関係で若い人が非常に多いということが裁判所職員構成の中で特殊の現象として現われておるわけでございます。それを多少資料に基づいて御説明いたしますと、たとえば年令で申し上げますと、年令は、八等級におきましては、裁判所一般職員は二十三・五才であります。しかし、一般行政官庁職員全部を比較しますと、それは二十三・九才でありまして、約〇・四才若い、それから七等級におきましても、裁判所職員は三十・八才で、一般行政官庁職員は三十一・二才で、これも〇・四才ほど若い。六等級におきますと、裁判所職員は三十一・七才でありますが、一般行政職員は三十八・九才となりまして、裁判所職員が七・二才ほど若い。それから五等級になりますと、これは課長クラスになりますが、裁判所職員は三十六・一才であります。ところが一般行政官庁職員平均年令は四十二・九才で、六・八才ほど若い。四等級になりますと、裁判所職員は四十五・二才であります。ところが一般行政官庁職員は四十六・七才で一・五才若い。三等級になりますと、裁判所職員は五十一・二才でありますが、一般職職員は四十七・八才、すなわち三・四才だけ裁判所職員の方が年令が上ということになっております。こういうふうな状況でございます。すなわち、古参の者も相当ありますが、中間がなくて若い人が多いというのが大体職員構成で現われているわけでございます。その結果、これは俸給単価が、やはり若い層に職員構成の大部分がありますために、単価が低くなっているということになるわけでございます。全般といたしましては決して低くなっているというふうにはわれわれは考えておりません。
  29. 大原亨

    大原委員 これも、きょうは大蔵省主計局長がいないのですが、給与について大蔵省質問いたします。超過勤務予算、それは裁判所関係書記官その他全部の職員を含んで、他の官庁に比較いたしましてどうなっていますか。
  30. 船後正道

    ○船後政府委員 超勤予算は、各省庁ごとにそれぞれ職務実情によりまして計上いたしておるわけでございます。私、今手元資料がございませんが、記憶では、大体裁判所関係地方裁判所あたりではたしか月十一、二時間程度であったと記憶しております。これに対しまして、大体一般地方官庁も八時間前後でございますので、裁判所の方はどちらかと申しますれば、超過勤務予算一般官庁よりも平均どころでは多いのじゃないか、かように考えます。ただし一般官庁の場合でも、たとえば税務署でありますとか職安でありますとかいう特殊な官庁もございます。
  31. 大原亨

    大原委員 今あなたが言われた地方官庁というのは、たとえば通産省だったら通産局、こういう意味ですか。あなたは地方裁判所の例を引かれたが、地方裁判所だったら対比する地方官庁はどういうところですか。
  32. 船後正道

    ○船後政府委員 大体地方裁判所では、その府県単位機関あるいはブロック官庁あたりと考えております。
  33. 大原亨

    大原委員 あなたが一カ月のうちに八時間と言われたのは、通産局とかあるいは基準局とか、そういう官庁が大体そのくらいで、地方裁判所が十一時間くらいとっている、こういうことなんですか。
  34. 船後正道

    ○船後政府委員 ブロック官庁におきましては、少し平均超過勤務時間は多いと思います。しかし府県単位機関から、さらに末端の方になりますと、大体郡単位くらいになりますが、その辺まで入れまして、私資料がございませんので、感じとして大体八時間見当じゃなかったか、かように考えております。もちろんものによりましては十時間をこえる超過勤務予算ブロック官庁で入っておるところがあると思います。
  35. 大原亨

    大原委員 あなたの方は、私今聞いていて大体考え方がわかってくるのだが、たとえば最高裁とか高裁とか地裁とかあるいはその下は簡易裁判所ですか、そういういろいろな段階によって差をつけておるのですか。
  36. 船後正道

    ○船後政府委員 段階によって差をつけると申しますよりは、超過勤務予算は、それぞれ職務実情によりまして、通常の勤務時間内に処理し得ないような仕事が季節的に発生するというような場合に、その必要に応じてつけておりますので、必ずしも中央官庁ならば幾ら地方ならば幾らということを頭からきめてかかっておるわけではございません。
  37. 大原亨

    大原委員 それでは事務局にお尋ねいたしますが、大体超過勤務の時間数はどういうふうになっておるのですか、各それぞれの段階に従って。
  38. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 最高裁判所は一カ月十六・八時間であります。高等裁判所が十二・二時間であります。簡易裁判所地方裁判所に含まっておりますので、地方裁判所と合わせて計算いたしますと九・五時間、家庭裁判所が十・五時間というふうになっております。
  39. 大原亨

    大原委員 実際に仕事の量というものは、犯罪も多いし、最近ふえておると思うのですが、これで足りておるのですか。
  40. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 地方によって多少アンバランスはあるかもわかりませんが、全体としては今のところこれでどうにかまかなっておるという状況でございます。たとえば、大事件なんかがたくさん出たような場合には、これは非常に困る場合がありますけれども、普通の状況におきましては、これで大体まかなえるという考え方でございます。
  41. 大原亨

    大原委員 最高裁高裁地裁簡裁、こういうふうに三つの段階で言われたが、家庭裁判所もあるが、そういうふうに差をつけるということはどういうことなんですか。これは逆じゃないのですか。第一線の方が忙しいのじゃないですか。地方裁判所なんかは忙しそうですよ、われわれいろいろ見ていると。裁判所の性質から言えばそういうものではないのですか。
  42. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 ただいまの御指摘通りでございまして、私どもといたしましては、一審強化関係から、地方裁判所超過勤務手当予算というものを非常に増額いたしたいわけでございます。しかし現実面におきましては、地方裁判所簡易裁判所職員は非常に膨大な数に上りますのと、それから各地方行政官庁、各府県単位出先機関職員とのバランスなどもとられておると思うわけでありますが、その増額をいまだに実現し得ない状況にございます。
  43. 大原亨

    大原委員 今私は十分研究していませんけれども常識から考えたって、裁判所職員待遇が合理的で均衡がとれておって、そうしてよくなければ、全体としての職務能率が上がらない、こういう考え方から第一はお尋ねしておるわけですよ。今回の裁判所法の六十条の改正に伴うて、その点が一つ問題だと思ってお尋ねしておるのですが、地方官庁あるいは中央官庁各省について、常識だけで大蔵省が機械的に給与の、超過勤務なんかの査定をするのはけしからぬと思うのです。私どもが簡単な常識から考えてみたって、地方裁判所なんかの第一線官庁というものはずいぶん無理な仕事をしているように、私どもは実際に見ているし、聞いている。だから、そういう不合理なことを残しておくと、また不合理の方へ不合理が重なっていくことになる。それだったら職務能率は上がりませんよ。第一線が大切だということは、これは常識になっておる。だったら、必要な仕事の量だけ超過勤務を出すということになれば、これはまた別だけれども法律上は義務的な支出じゃないと思うのです。予算のワク内で操作しなければならぬ、こう思うのです。そういう点は大蔵省はどういう見解なんですか。
  44. 船後正道

    ○船後政府委員 超過勤務予算につきましては、これはやはり各省庁ごとにそれぞれ職務特殊性がございますので、従いまして、各省庁事業計画その他一般との関連におきまして、各予算係で計上いたしておる次第でございまして、これにつきまして、たとえば私給与課長でございますが、給与課といたしまして、これでなければならない、この額で抑えるというようなことはございません。従いまして、あくまでもその省庁の事情に即しまして、超過勤務が通常の勤務時間をこえて必要ならば、予算額は計上されておると考える次第でございます。
  45. 大原亨

    大原委員 それだったら、実際上仕事が多くて足りなければ、予算はちゃんと、追加予算かその他でその義務的な支出として追加する、国の仕事をやっていて、そうしてしかも法規に従って超過勤務手当を要求をしてもらう、そういうことについては保証されているのだから、それについては出していく。そういうふうに考えてよろしいですね。あなたの答弁は。
  46. 船後正道

    ○船後政府委員 超過勤務はどこまでも、その省庁の管理者が超過勤務を命ずるという場合に支出されるものでございます。もちろん官庁事務につきましては、これは最も能率的に遂行するのがきわめて望ましいのは申すまでもないことでございまして、かつまた職員の面からいたしましても、ただ単に勤務時間が長いということは、これまたどうかと思われますので、やはり合理的なところでその超過勤務を命ずる時間はきめらるべきであって、ただ何とはなしに超過勤務を多くして、またその予算を計上しなければならないという性質のものではないと思うのでございます。
  47. 大原亨

    大原委員 今の予算査定を見てみると、十六・八時間が最高裁で、高裁が十二・一時間で、地裁簡裁が九・五時間と、こういうふうになっておる。事件がどんどん出てきて、それを引き受ける数も多くなるわけですから、そういう仕事を、管理者であるからと言って、逆に——逆にと言って、あなたの方から予算査定したその金額に応じて超過勤務を命ずる、こういうふうなことになると、結局はそういうことが仕事をやっている職員にしわ寄せになってくる。そういう考え方というものが末端まで支配してしまう。あなたの答弁は、それは一応は言い抜けにはなる。ちゃんとそれぞれの管理者が超過勤務を命ずるのだ、超過勤務をやる方がいいんじゃないのだ、こういうことを言っているわけだけれども、それは一応言えるけれども、そういうことでなしに、こんなランクをつけることは不合理じゃないですか。地方裁判所は忙しいですよ。最高裁にいたしましても、高裁にいたしましても忙しいですよ。これはもう事件を引き受ける、そういうことについては、のっぴきならぬ問題がたくさんある。そういう処理しなければならぬ問題がたくさんある。そういうことについて、機械的に他の地方官庁のことを頭に置いて査定をするというふうな考え方は、おかしいじゃないですか。そういうことは不合理を押しつけることになるのじゃないですか。あなたは課長だけれども、私は局長や大臣にもこの点については、機会があったらぜひ追及したいと思いますが、おかしいじゃないですか。
  48. 船後正道

    ○船後政府委員 先ほどから繰り返して申しておりますが、超過勤務予算は、その省庁職務実情に即して計上いたしておりまして、私給与課長の所掌といたしましては、これはそういう性質のものであると考えております。ここに具体的に裁判所のことをとらえまして、それの最高裁から家庭裁判所に至る各ランクにつきまして、どのように超過勤務を計上するか。これはやはり裁判所の方の職務実情というものを勘案して、具体的に決定されたものであると考えております。
  49. 大原亨

    大原委員 人事局長のお話を聞きましても、地裁については最近忙しい、こういうふうに言っている。しかし他の官庁予算査定の例もあって、十分その実情に即さない、こういうふうに婉曲に言っているわけです。つまり、あなたの方が機械的に査定をするから、こういう矛盾が出てきておるのですよ。それは人事局長の方はきわめて婉曲に言っているけれども、しかし大蔵省は、ぴしゃっとそういうふうにワクをはめて予算査定をしているのが実情でしょうが。あなたは、それだったら、そういう必要を認められておるならば、当然情勢もだんだん変わってくるのだから、これは必要な経費、超過勤務手当は出すのだ、こういう建前で査定をしたらいいですよ。そうじゃないでしょう。その数字を動かすのですか。
  50. 船後正道

    ○船後政府委員 超過勤務の必要性につきましては、これはまあ議論の分かれるところでございまして……。
  51. 大原亨

    大原委員 実際超過勤務を認めているじゃないか。
  52. 船後正道

    ○船後政府委員 仕事をどのように段取りいたしましてか、これをできる限り正常の勤務時間内にさばく。それで、なお、季節的その他の状況によりまして繁忙がくるという場合に、超過勤務するという建前になっておるわけでございます。従いましてこの問題は、私給与課長の立場といたしましては、法の制度の建前によって統一するというだけで、具体的な予算の計上の仕方は、それぞれその省庁の業務というものをにらみ合わせて、各主計官のところで査定いたしまして、計上いたしておるということでございます。
  53. 大原亨

    大原委員 だから、そういう実情に即さぬ機械的な査定をするから問題が出てくるということを言っている。その点について、そういう実情がわかったら是正しますかと、そういう質問をしているのですよ。
  54. 船後正道

    ○船後政府委員 超過勤務予算の計上が実情に沿わないというような点につきましては、その実情という点につきましての十分な検討もまた要するであろうかと思うのでございます。やはり正常の勤務時間内に幾ら仕事を詰めましても、これはオーバーするというような場合もございましょうし、仕事の段取りその他を考えますれば、正常な勤務時間内に処理できるのではないかというようなことも他方考えられるわけでございまして、それらの点をもあわせまして、超過勤務予算の計上につきましては、毎年予算査定の際に検討いたしまして、計上いたしておる次第でございます。
  55. 大原亨

    大原委員 それでは、この問題についてあとで私は別の機会に申し上げるとしまして、質問を進めますが、今回、書記官職務内容を列挙しまして、具体的に明らかにしたのだ、そうしていわば裁判官補助機関としての地位を与えたのだというような法務省の御説明が最初にありました。この問題と関連をして、書記官調査官に対する調整号俸の問題が起きているのですが、八%の調整をされました根拠、これはこの法改正とどういう関連を持っているのですか、これは事務局の方から……。
  56. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 御承知のように、裁判所一般職員につきましては、裁判所職員臨時措置法というのがございます。その臨時措置法に基づきまして、一般職職員給与に関する法律が準用されております。その一般職職員給与に関する法律の十四条の三項に基づきまして、延長するということになるわけであります。
  57. 大原亨

    大原委員 今延長と言いましたね。
  58. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 ええ、時間を。
  59. 大原亨

    大原委員 ああ時間を延長することですか。時間は、従来は四十四時間、一般公務員並みですね。この四十四時間だったのが、参議院でもいろいろ論議になっておるようだけれども、五十二時間になるわけですね。五十二時間になりまして、調整号俸が幾らになるのですか。八%でありますと、金額にいたしますれば平均幾らになりますか。
  60. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 等級によりまして、職員に実支給される増加額というか、その調整額というものは違って参ります。まあ大ざっぱに計算いたしますれば、月額として、下の方は千五百円ぐらい、上で四千円くらいは毎月増加されるということになると思います。なお、裁判所書記官には従前から八%の調整が行なわれておりましたので、この八%を新たに追加いたしますと一六%になる。予算の方は、また必要があれば御説明をします。
  61. 大原亨

    大原委員 この調整号俸というのは、勤務時間延長に伴う調整号俸なんですか、それともこの法律改正によりまして補助機関としてのそういう立場が明確になったので、その労働の質に対する調整号俸なんですか、どっちなんですか。
  62. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 御承知のように、調整号俸は、一般職職員給与に関する法律第十条に基づく勤務条件によって行なうものでありまして、今回の八%の調整は、裁判所書記官に対しまして権限が一部ふえるということと、勤務時間が延長するという、この二つのことで調整される、そういう勤務条件のもとで八%の調整が行なわれるということでございます。
  63. 大原亨

    大原委員 一週間四十四時間の勤務を五十二時間にいたしますと、月に計算いたしまして超過勤務手当は幾らになりますか。これは平均給与を基礎にしていると思うのですが、それだけ勤務を延長したとしてみて、超過勤務手当を平均給与に従って払いますと、全額にいたしまして大体幾らになりますか。
  64. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 超過勤務手当に計算いたしますと大体十一時間くらいに相当するものと思います。
  65. 大原亨

    大原委員 いや、一週五十二時間から四十四時間を引いたら八時間でしょう。それを一カ月四週間としましても三十二時間じゃないですか。そんな算数を裁判所はやっているのですか。
  66. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 八%増しの金額は超過勤務手当に引き直しますと十一時間分に相当する、だから、三十二時間増加いたしますが、それに見合うような超過勤務手当でそれを計算しますと、それに見合うほどにはなっていないということは明らかであります。
  67. 大原亨

    大原委員 しかし、そんなことはけしからぬじゃないですか。労働基準法というのはちゃんと超過勤務手当についてはきめてあって、そのことについては個人々々に保障しているのです。これは労働関係とか労働運動とかいうことでなしに、国が当然個人々々に最低の基準を保障しているのです。いわばそこなんですよ。だから、公務員についても、その趣旨に従って、そういう制度がなされておることは確実なんです。これは憲法の趣旨からそうです。公務員もそういう点については労働基本権を生存権として認めているのですから、それに従って基準法ができているのですから、そういう基準法の超過勤務手当の基準を割るような調整号俸の算出の仕方というものがあるのですか。法律を守る裁判所がそういうことを無視してよろしいのですか。
  68. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 勤務時間がだんだん短くなっていくというようなこと、あるいは短くすべしという要請、こういったようなことは一般の労働運動の趨勢でありまして、これ自体についてわれわれは賛意を表するものでございまして、決してこれに異議を申しておるわけではございません。しかしながら、裁判所の現実の問題といたしまして、山積した事件を遅滞なく解決して国民の負託に応ずるといったような要請にのっとって、しかも、基本的人権の一翼をになっております書記官という特殊の職員につきまして、例外的にそういった若干の勤務時間の延長ということもまた許されるじゃないかというふうにわれわれは考えております。
  69. 大原亨

    大原委員 あなたは今おかしなことを言っておられる。書記官の人権を無視しておいて、そうして裁判所の行なう国民の人権を守るというふうなことはおかしいのですよ。そういうことは憲法の趣旨でも何でもない。全く昔の無定量の忠誠の義務を公務員に対して命じたと同じです。近代法はそういう労使関係ではないわけです。基本人権、生存権に対する考え方が逆です。今言われたように、書記官の基本人権を守らないで、そうして国民の基本的人権を守られる、こういう考え方であなたは御答弁になったんですか。  もう一つの点は、これに関連して大蔵省の方にも質問申し上げたいけれども、実際にはこんなに仕事があるのだ、あるのだけれども、しんぼうしてもらうんだ、今の御答弁の中にはこういう一面もあるわけです。つまり、勤務実態に即して大蔵省予算査定したと言うのだけれども勤務実態はこんなにさばききれぬくらいあるということを人事局長は言っておる。それを機械的に、他の官庁との均衡じゃ、やれないんじゃということで、予算でワクをきめるということは、今私が前段で指摘をいたしました点から考えていけないと思うのだけれども大蔵省はどういう見解でこの書記官の調整号俸の算出と金額の決定をしたのか。これは一々答弁して下さい。
  70. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 裁判所書記官の現在の職務を遂行する上におきましては、これは時間を延長するというようなことは考える必要はないと私は思っております。しかし、現在裁判所には事件が多くありますし、しかも、その質も非常に困難になっておりまして、裁判官がこれを処理するために日夜やっておりますけれども、遅延するのを免れない状況にある。そういった関係にありますので、しかも、裁判官を大増員するということは、俸給の額、あるいは弁護士事務所の現在のあり方などからの制約でどうしてもここ当分可能ではありませんので、そこで、一方におきましては書記官の質が非常に向上して参りましたので、書記官のかねての希望のように、書記官権限を一部拡充をして、裁判官の行なうべき事務の一部を補助し得るというような裁判所法の一部改正法律案を御審議願っておる次第でございますが、そうなって参りまして、しかも、刻下の急務である裁判所の渋滞する事件を片づけるというような状況のもとにおきましては、やはり裁判官の執務の態勢と即応いたしまして、書記官のある程度の勤務時間の延長ということもここ当分の間はしてもらうほかはないじゃないかというふうに考えるわけでございます。もちろん労働基準法というものはございます。その精神というものは、われわれ十分わかっておりますが、そういった中におきましても、裁判官は週にほとんど六十何時間というふうにやっておるわけでございますが、そういう特殊な職務というものは、やはり一般の労働運動の傾向のある反面に、特殊の職務というものはあって差しつかえないのじゃないか、やむを得ないのじゃないかというふうに考えますので、こういう一週間五十二時間に延長というようなことを考えているわけでございます。
  71. 船後正道

    ○船後政府委員 裁判所書記官の今回の俸給の調整額の増額につきましては、先ほど来最高裁御当局から御説明がありましたように、現在の訴訟事件のすみやかな解消その他の目的のために、裁判所書記官につきまして、その職務の拡充と超過勤務時間の延長ということの必要性がある、かように判断されまして、それに基づきまして給与の方におきましては一六%の調整額の支給という御要求があったわけでございます。大蔵省といたしましては、現在裁判所書記官等につきましては、一般職職員給与法が準用されておりまして、その第十条に、「勤労の強度、勤務時間、勤労環境その他の勤労条件」が異なる場合には、調整額を支給するという規定がございますので、この条文の運用といたしまして、その御要求通り一六%の調整額支給に予算を計上いたしたわけでございます。
  72. 大原亨

    大原委員 その調整号俸の考えというのは、船乗りとかあるいは看護婦さんとか、勤務時間についてやむを得ない不規則勤務がある場合、あるいは長時間勤務がある場合には、勤務時間に従って調整号俸を出すのですよ。こういう毎日々々勤務をしておって、仕事がふえれば超過勤務手当を出すとか、そういうことで処理できる問題について、こういうような解釈はないのです。裁判所自体がたくさんの職員について一つ給与待遇の基準をきめるときに、最低三十二時間ほど超過勤務しておいて、十一時間分しか調整号俸を出さない、そういうようなことでのほほんとして予算査定をしておるというようなことは、私はおかしいと思うのですよ。この本質的な問題についてまだ問題はあるけれども、筋を通したら、私はやはり書記官についてはそういう問題については一般的に低いんだから、一般を引き上げるという意味において、書記官についても待遇改善をされるということはいいと思うのです。賛成なんです。しかし筋の通らぬことで、むちゃくちゃに予算範囲とかで勤労の実態を無視しておいて、あるいは他の法律との関係を無視しておいて、そういう調整号俸だけについてきびしい条件をつけてやるということはけしからぬと言っている。あなたが言っているのは、調整号俸に対する考えをあなたは誤っていますよ。私が最初に言っているように、船員とか看護婦さんとか、そういういろいろな職務があるでしょう。そういう職務特殊性から勤務時間が長くなったり、不定期になったり、そういう人に対して調整号俸、勤務時間、そういうことを勘案しながら出すのですよ。これはそういう書記官に対して、勤務時間を延長することを条件としてこれを出すということは逆だし、一般の原則に反しています。あなたの答弁はなっておらぬです。筋が通っていないのですよ。いかがですか。
  73. 船後正道

    ○船後政府委員 一般職給与法の第十条の規定につきましては、もちろんこの「勤労の強度、勤労時間、勤労環境その他の勤労条件」の解決につきましては、人事院の主管でございまして、人事院がそれぞれ人事院規則でもって定めておられる次第でございます。大蔵省といたしましては、今般、先ほど申しましたような最高裁側の御要求がございまして、裁判所職務遂行上、書記官等につきましては五十二時間に勤務時間を延長する。つきましてはこの第十条による俸給の調整額を一六%にいたしたい、かような御要求があった次第でございます。一般職の場合には、そのような勤務時間の延長問題と調整額の支給割合は人事院が判定されるわけでありますが、裁判所の場合は最高裁の規則でおきめになっております。私どもとしましては、一般職の方の先例という点も一つの考慮の基礎判断資料になるわけでございます。たとえば検察事務官等でございますが、これは昭和二十九年の問題でございますけれども、やはり同様の場合に、人事院におかれましては俸給の調整額を支給されました例もございます。また看護婦さんにつきましても、これは勤務時間と申しますよりは、これは結核とか、らいの療養所その他の特殊な勤務内容でございますが、そういったものもございます。種々勘案いたしまして、裁判所側の御要求をそのまま予算に計上いたしたという次第でございます。
  74. 大原亨

    大原委員 今までの経過や慣例から言いますと、検察庁関係裁判所均衡を考えてこれをやったのだ、こういうことは、私は説明としては一つあると思うのです。あるけれども、検察事務官というものは制度も違うし、職務も違います。実際にそれは夜だって出ていかなければならないのですよね。しかし書記官というのはちゃんと仕事をするのです。検察事務官の問題についてはここでは触れないが、書記官の問題について、一カ月三十二時間ほど超過勤務をするということを条件にしながら、十一時間相当しか調整号俸をしない、こういうようなことは、三十二時間一カ月の仕事の量がふえておることを認めながら十一時間しか超過勤務を出さぬ、こういうことになっておるのです。人事院その他がちゃんとその点について客観的に人権を守る立場から基準を守ってやっておるのはよいが、裁判所自体が法定の第三者機関の機能を持つという矛盾の中から予算査定だけでぎゅっと締めておくということになる、矛盾が全部職員にしわ寄せられてくるではありませんか。それはおかしいじゃないですか。
  75. 船後正道

    ○船後政府委員 勤務時間の延長と調整額の問題、これは大蔵省といたしまして特に締めたというふうなお話でございますけれども裁判所の方が自主的に勤務時間の延長を判断されまして、それに伴う給与上の措置といたしまして一六%の増額を御要求になった次第であります。大蔵省といたしましては、それを妥当と考えまして予算に計上いたした次第であります。なお実質的な比較の問題でございますが、これは確かに週に八時間勤務時間が延長されますと、月には三十二時間ということになります。これに対しまして、八%の本俸の増額は超過勤務時間に直しましては十一、二時間程度でありますが、しかしこの場合には、本俸になりますのと超過勤務のままでございますのとでは給与上の取り扱いが異なっておりまして、本俸でございますと、それがまた超過勤務、期末勤勉手当、このような他の付加給にはね返ります。そういうようなことを考慮する必要がございますし、さらに退職手当の支給の際、退職年金の支給の際、いずれも本俸になりますと、その支給額の基準として計算されますので、三十二時間対十一時間という点ではお話のほどには待遇の面で開くということにはならぬと思います。
  76. 大原亨

    大原委員 しかし常識的に考えてみまして、十一時間しか給与を出さないのに三十二時間の責任を負わせるというのはおかしいでしょう、本俸でやるべきでしょう、本俸を繰り上げるべきじゃないか。そうすればあなたの言うように、退職金やあるいは年金に影響があるのですよ。それでなしに勤務時間をこういうふうに五十二時間にするということを条件に調整号俸をするということは許せませんよ。大蔵省がそういうふうな一方的な、独断的な予算査定をしておる立場はね。あなたは自主的にこっちが言うてきたと言われるけれども、言うていく方も言うていく方だけれども、そういうことはおかしいではありませんか。そういうこと自体が一般のそういう労働基準法なり、それから憲法の趣旨なり、そういうものを侵害することになる。そういう事実がずっと重なっていくのは、裁判所職員はどこから解釈しても憲法二十七条の勤労者の中に入っておる。それをちゃんと保障することになっておる、労働基本権を保障することになっておる、そういう趣旨からいってもおかしいのだけれども、その問題はまたあらためて論議することとして、こういう筋が通らぬことで法秩序を乱すようなことをやって、調整号俸をつけるということはおかしいと思う。この点についてではあとでもう少し追及いたします。  大蔵省に聞きたいのだが、五十二時間ということが調整号俸の条件ですか。書記官権限を増大することがいい悪いという問題については、時間の関係で途中だったけれども、これはまたあとで論議するといたしまして、その労働の量と質に従って給与をきめるということは、原則としていいのです。それは認めるのだが、あなたの方は自主的に言うてこようがこまいが、五十二時間ということが八%プラスした調整号俸の条件になっているのですか、前提になっているのですか。その点を一つ伺いたい。
  77. 船後正道

    ○船後政府委員 先ほど来申しておりますように、裁判所の方で予算要求の際に、五十二時間に勤務時間を延長する必要がある、かように判断されて、それに伴う給与上の調整措置といたしまして従来の八%の調整額を一六%に引き上げる旨の要求があった次第でございます。これにつきましては、やはり現在人事院の主管に属しております一般職の中で、公安職俸給表の適用を受けております検察官、公安調査官、検察事務官、これらはいずれも現在は特別の俸給表を受けておりまして、これは普通の行政職一の俸給表に対しまして一六%の水準差がある俸給表でございますが、これらのものの勤務時間とのバランスその他を考慮いたしました場合には、裁判所の方の御要求は妥当である、かように考えた次第でございまして、先ほども出しておりますように、勤務時間の延長が条件かということにつきましては、もちろん裁判所の方ではこれと大いに関連した問題として提起された次第であります。
  78. 大原亨

    大原委員 それでは質問をこっちから進めて、あとでもう一回大蔵省の力に返りますが、勤務時間をそういうふうに延長することについて、同意書を書記官から取っておられるというのですが、これは事実ですか。
  79. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 書記官から同意書を取るという指示をしたことはございません。その経過に何か誤解があるようでございますので、御説明申し上げます。  一方におきまして、書記官権限を一部拡充していくということ、それから刻下の裁判所状況からすれば、それによって事件の渋滞を解決するように進めていく、しかし、その関係で五十二時間くらいの延長は考えざるを得なくなるが、それに対しては新たに八%の調整しかできないといったような事情があるわけでございます。そこでそういった事情を、予算の一応内示を受けましたので、そういった一連のことを書記官自身がはたして好むかどうか、それに満足してやってくれるかどうかといったような意向は、当然これは問うべき性質のものだと私どもは判断したわけであります。それゆえに、高等裁判所の一番上に当たります次席書記官に集まっていただきまして、その内容をつぶさに説明した上で書記官意見を聞いてもらうように話したという実情でございます。
  80. 大原亨

    大原委員 同意書を取るというのは、これは非常に問題だと思うのです。というのは、労働基準法や国の法秩序の体系の中からいえば、ここに働いている人々について最低の基準を国が保障しているのです。国家の機関が個人々々に対してそういう同意書を取るというようなことは、これは基準法や憲法二十五条の基本権にも抵触することになるわけです。しかもそういうことについて、組合との間において、いろいろと条件について、たといやった場合においても、個人々々がその違法性を追及していったら、基準法の権限は保障されるのです。裁判をやったら裁判所はこれを保障しなければいけないわけです。そういう二重、三重のあやまちを犯していることになる。それではいけないと思いませんか。
  81. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 私どもは、一般職員につきまして、すなわち現公務員の中で特別の官職にある者につきましては、これは例外的な措置も許されるのだというふうに考えております。従いまして、それにつきましてそれが一般職職員給与に関する法律の十四条において掲げられておることでありますし、それに従った措置を講ずることにつきまして、それほど矛盾を感じてはいない次第であります。
  82. 大原亨

    大原委員 大蔵省もちょっと言っていたのだけれども、特別の号俸体系を作るとか、職務に即した号俸体系を作るとか、あるいは職務において調整していくということは、労働の質に従って若干あるかもしれない。これを形式論だけでいけば、この法律にも関係してそういうことを主張できるかもしれない。しかし、いやしくも基本的な勤務条件である勤務時間について、こういう五十二時間というものを同意書という形で一方的に取っておいて、そうしてそれを前提として、定員増加その他でこの問題を解消するということでなしに、こういう措置をとることはいけない。だから、筋を通して、私どもはこの号俸を調整していったり賃金を引き上げていくというのはよろしいと思う。しかし筋の通らぬことで、しかも最高裁判所ともあろうものが、人事院関係がないからということで、自分がやったことについて批判をしたり、判定をしたり、あるいは審判をする人がないからという理由だけで、相手の人権を無視したり、国の法秩序体系を無視するようなことをやるのはいけない、こういうことを言っておるのです。次長、いかがですか。
  83. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘勤務時間の延長と号俸調整の問題につきましては、私どもいろいろ検討いたしました結果でございます。これにつきましては、実は裁判所といたしまして書記官制度ということを従来から検討しているわけでございます。御承知のように、憲法が改まりましてから、裁判所制度も新しい裁判所法によりまして、基本的に改められたわけであります。その後、従来の裁判所書記の制度について十分に検討を加えまして、新しい司法制度に即応したところの裁判所書記官制度というものを作りたいというのが私どもの従来の念願であったわけでございます。もちろん裁判所司法制度の要請は、何と申しましても裁判の適正と迅速ということが基本的な要請でございます。従いまして、裁判所書記官制度改正も、またその線に即応いたしまして検討しなければならない問題でございます。最高裁判所におきましては、昭和二十四年に裁判所書記官制度調査委員会というのを設けまして、この委員として裁判官、検察官、弁護士それから書記官等によりましてこの委員会構成いたしまして、裁判所書記官制度について検討して参ったわけであります。今日なおその委員会は存在いたしまして、今後も検討を続けていくということになっておりますが、この委員会の検討の結果によりまして、書記官につきまして、特に最高裁判所に研修所を設けまして書記官の研修を行ない、また任用資格も定めまして、今日書記官の任用資格は非常に高くなっておりますし、その上に研修も行なっておるわけでございます。そういった書記官の新しい素質、能力というものが今日相当の成果を上げて参りまして、書記官法律的な知識あるいは能力というものは、申せば一新されたように私どもは考えているわけでございます。この段階におきまして、かねがね書記官自身も念願しておりますところの職務を改めるという問題も取り上げらるべき段階にあると存ずるわけでございまして、これにつきましては諸外国の制度等も研究いたしまして、まあいろいろの方法があるわけでございますが、私どもといたしましてこの委員会において取り上げましたのは、まず最初のステップとしての権限職務でございます。それが今回ここに御審議を願っております裁判所法改正として現われているわけでございます。書記官の新しい職務、この職務を行ないます上におきまして、今度さらに勤務時間の延長という問題が起きているわけでございますが、これは現在の裁判所の執務状況、その実態に合わせてそうせざるを得ないというのが実情でございます。  御承知のように、終戦後司法制度が改まりまして、いろいろその間に裁判所の執務の上でも必ずしも進捗しない面もあったのでございますけれども、十年を経てようやくそれが軌道に乗って参ったわけでございますが、御承知のように事件は年々増加いたします。また事件の内客も複雑になって参りますし、法律の数も非常に多くなっているわけでございます。その間におきまして事件を処理いたします裁判所実情というものをごらんいただきますと、どなたにもおかわりいただけると存じますが、なかなかその仕事の負担が容易ならざるものがございます。裁判官中心といたしまして職員が非常に精励をして今日やっているわけでございますけれども、とかく事件の渋滞や、しばしば世間から批判されるところの訴訟の遅延ということが今日なお避け得ない実情でございます。そこで、裁判官仕事といたしましては、先ほど人事局長が申し上げましたように、実際はほとんど日夜その仕事に取り組んでいるような実情でございます。これは、ほんとうにそういう者は外国の例にはないような負担を負っているわけでございまして、外国の例など私ども聞きますとまことにうらやましいような感じがいたすわけでございます。そういったような状況で今日本の裁判が行なわれているわけでございます。  今回の書記官の先ほど申し上げました新しい職務でございますが、まず最初のステップとしての書記官の新しい職務が今回の改正に現われているわけでございますが、裁判官の行なう調査補助ということでございます。この仕事の実際の状況を考えますと、裁判官の今のような執務状況、これに即応いたしまする調査補助ということになりますと、どうしてもやはり勤務時間の延長ということを考えざるを得ないのでございます。これは私ども決してそれを好むわけではありませんけれども実情まことにやむを得ないものがあるのでございます。そこで勤務時間の延長やむを得ない、さらに、じゃそれに即応する給与をどうしていくかということになるわけでございます。実は、私どもといたしましては、書記官であるとか調査官であるとか、そういった特殊の職務を持っております職員につきましては、特殊の給与体系が本来はあるべきじゃないかという考えでいるわけでございます。これにつきましても諸外国の制度等もおいおい研究もいたしているわけでございますけれども、現実の問題といたしまして、今日の手当としてどうしたらいいかということになるわけでございます。そこで、先ほど来御説明申し上げますように、一六%の号俸調整ということになったわけでございます。これは確かに大原委員指摘のように、新しい職務権限勤務時間の延長に即応する給与としては十分でないじゃないかということは、まことにごもっともと存じます。私どもできればほんとうに給与を改めて、新しい給与体系というものをきめたいわけでありますけれども、今日、実際に応じた手当といたしましては、やはり一六%の号俸調整という結論に落ちつかざるを得なかったわけでございます。これは先ほど来申し上げておりますように、一般公務員とのつり合い、前例等によりまして、五十二時間の勤務時間延長ということに即応いたしますると、やはり一六%の号俸調整にとどまらざるを得なかったのでございます。これがただいま御質疑のございました今日勤務時間の延長と一六%号俸調整の結論を私どもがとらざるを得なかった実情でございます。
  84. 大原亨

    大原委員 あなたが言われている裁判所仕事が最近ふえたことや、そういう仕事実態事件がふえて複雑になる実態、そういうものについては、私どももよくわかる。しかしながら、それに対応する手段として公務員の人権を無視してもいいということはないのです。最低の基準である基準法を無視してもいいということはないのです。裁判所自体がそういうことをするということは、裁判所自体が、憲法二十五条なり基準法、そういう労働基本権は生存権の最低の権利です、そういうものについて、ざるにするようなことをすることはいけないのですよ。このことはあなたがどんなに説明されても納得できない。ことに、この問題については、給与課長だけではだめなんです。主計局長に来てもらって、大臣にも来てもらって、説明を聞かなければいけないけれども、私は予算の都合や予算査定のことや、あるいは職員に対する第三者機関、その他人事院ならいいというわけではないけれども、こうあるべきだということから考えて、それを保護するという制度上の欠陥、そういう問題とも関係しておると思うのです。従って、給与課長の方へ私は質問なり意見を申し上げておくけれども、あなたの説明では、依然として職務の量と質によってやった、その量の中で五十二時間というのが、自主的に出した形ではあるけれども、この調整号俸を出した条件になっているようだけれども、そういうことは、逆にいえば、大蔵省が、予算査定の過程において最高裁判所をそういう制度上の欠陥の盲点に乗じて追い込んだ形になります。だから、あなたの答弁についても、私は絶対に了解できない。あなたは部内においてもう一回検討して、そしてもう一回出席の上で答弁願いたいと思うけれども、あなたは大蔵省の主計局代表で来ているのだが、それに対するあなたの見解を一つここで記録にとどめてもらいたい。
  85. 船後正道

    ○船後政府委員 繰り返し申しておりますように、今回の予算要求におきましては、裁判所の方で現在の事務進捗の関係上、書記官等の勤務時間を五十二時間に延長する必要がある、かように判断されまして、その前提のもとにそれに伴う給与上の措置としての一六%の要求があった次第でございます。従いまして私どもは、やはりこの問題はどこまでも五十二時間という前提と一六%の調整というものは関連する問題だと思います。
  86. 大原亨

    大原委員 あなたはそれでは今の労働基準法なり——あるいはその経過は当事者の内部の問題としても、そういう経過の問題としても、今の法体系からいうと不合理を認めませんか。そういう五十二時間を条件にして予算査定をすることは、けしからぬじゃないか。その点について説明してみなさい。
  87. 船後正道

    ○船後政府委員 五十二時間は大蔵省がつけました条件ではございませんで、裁判所の方で現在の事務処理の都合上五十二時間に延長いたしたい、かように判断されまして、それに伴う措置として一六%の調整という予算要求が出た次第でございます。これは先ほど来申しております通り、現在人事院所管にございます他の一般職の、特に公安俸給表、いわゆる一六%の水準差を持っております公安俸給表を適用する勤務時間その他との均衡を考えましても、これは当然と判断した次第でございます。
  88. 大原亨

    大原委員 あなたと質疑応答してもしようがないのだけれども、あなたは二通りの答弁をしている。五十二時間というのは一六%の号俸調整の条件なんだ、そういうように査定したんだと言いながら、今はどういうことを言っているかというと、そっちから申し出があったから他の方も考えてやったんだ、こういうことを言っている。しかし調整号俸というのは、最初私が指摘したように、非常に問題なんだ。問題であるだけでなしに、明らかに基準法にも違反している。憲法に違反しているのですよ。そういうことで予算査定の条件にしているということはけしからぬ。あなたは二通り答弁をしているのだけれども、そういうことは絶対に承服しませんよ。局長や大蔵大臣みんなで協議して、そういう予算査定の仕方をして法をひん曲げるのだったら承知できないから、十分討議して、あらためてここへ御出席いただきたいと思う。これは委員長一つお願いしておきます。この点について私が言っているのは、職務の質と量に従って給与を与えるということはいいんだ、しかしこれがあらゆる法律を無視したり人権を無視して行なわれていいという理由はない。そういうことは、大蔵省予算を持っているから、万能であるからといったって許せない。そういう点について明確にすることが、書記官のこれからの仕事内容を明確にすることになる。そういう重大な問題であると思うからお聞きしておる。特に法を守る最高裁判所がこういうことをやることは大問題だ。だからこのことを言っているのであって、あなたは急いでおられるらしいけれども、この問題についてはあらためて追及したい。——あなただけよろしいから……。  この同意書は今大体どれくらい集まっているのですか。
  89. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 同意書と申しましても、全部来ているわけではございません。同意書を取らないで、ただ意見だけをまとめてきているのもありますし、一人々々出しているのもありますし、あるいは一つの文書にたくさんの人が名前を書いているのもありますし……。
  90. 大原亨

    大原委員 大体の数字を言って下さい。
  91. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 何通か、ちょっと私の方ではわからないのでございます。
  92. 大原亨

    大原委員 取っていてわからないのですか。わかっているなら発表しなさい。
  93. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 そういうものから、書記官の中で賛成している者と賛成していない者を計算いたしますと、書記官は八五%ぐらいは賛成しております。
  94. 大原亨

    大原委員 同意書というのは幾らですか。
  95. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 同意書の数は、今ちょっと何名かということはわかりません。その同意書というのは、そういう同意書のような形式で計画したわけではないのでございますから……(「取っているよ」と呼ぶ者あり)それは、そういうことをやったところもございますし、あるところでは署名しているものもございますし、あるいは書記官が全部の考えを……。
  96. 大原亨

    大原委員 本人が署名しているのは幾らですか。
  97. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 その数をただいま持ち合わせておりません。
  98. 大原亨

    大原委員 あるのですね。
  99. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 それはあります。
  100. 大原亨

    大原委員 それはあとで私の方へ出して下さい。  同意書というのは、近代法からいえば非常に封建的なやり方なんだな。結果的には権利を放棄することを個人個人に強要することになるでしょう、あなたの方の職制を通じてやったら。そういうことがあり得るのですか。あなたの意図がどうあろうと、客観的にいえば、五十二時間働いて、そして三十二時間ほど超過労働をやって十一時間分でよろしいです、こういうことになるのですよ。労働の質が高まっているからこの点について十分考えたというけれども、こういう形で勤務時間等について法律を犯すことになる。そして結局は人権を否定することになる。同意書なんか、あなたの方がこういうことで大蔵省に対する説明をつけたり、あるいは将来職員の権利を否定するようなことはいけませんよ。そういうことは基準法の建前からいっても憲法の建前からいってもできませんよ。不当なことをやっているのですよ。同意書については、意図はともかくとして、不当であると思わぬですか。
  101. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 同意書——これはあるいは新聞に報道されたことをおっしゃっておられるのかもわかりませんが、こちらで何か形式を定めて送って、それに同意するかどうかを尋ねたというふうなことじゃないかと思いますけれども、そういうことは全然ないのでございまして、それは各所で意見を聞いてその結果を報告したところもありますし、一人々々が同意書を出したのもありますし、あるいはたくさんの名前で賛成だと言ってきた書面もあります。ですから、同意書を取った、同意書を命じて作らせたといった趣旨のお問いでありますならば、そういうことはございません。  もう一つは、こういう法的な措置を講ずるにあたりまして、あらかじめ職員意見を聞くということそれ自体も、それは当然そうすべきものではないかと私は考えておるわけでございます。
  102. 大原亨

    大原委員 あなた方の職員待遇ということについての意図はわかるのです。しかし、やり方がむちゃくちゃじゃないかと言っているのです。その一つとして同意書の問題を取り上げたら、あなたの言うのは、同意書は何でもない、これは問題ないのだ、こういうことなんです。そうすると、あなたの方は、同意書はやらせたものでもないし、やらそうと思ったものでもないし、将来にわたってこれを集めようとするものでもない、勤務を拘束するものでもない、こういうふうに、何でもないのだ、こういうことなんですか。
  103. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 私の方といたしましては、こういう法的措置をとる前に、勤務時間も長くなりますし、もっともっと待遇を改善してやりたいけれども、それに相応するだけの給与は八%にとどまる。一六%の調整と申しますと、デスク・ワークの職員では最高の調整でございまして、われわれといたしましてはその一六%の調整以上には上り得ないと考えたわけでございますが、それにいたしましても、もっと待遇を改善してやりたいけれども、どうしてもそこまでできなかった、それでもいいかどうかということを聞いた上で初めて法的な措置を講じようと思ったわけでございます。ですから、意向がわかればいいわけでありまして、それが必ず同意書という形で出なければならぬという趣旨のものではございません。そういった意味で申したわけでございます。しかも本来ならば、高裁長官あるいは地家裁所長を通じてやるのが普通のやり方でございましょうが、事書記官調査官のことに関しますので、調査官の一番上の人たちを呼んで、調査官、書記官に話したわけでございます。よくいわゆる職制とかいいますけれども、そういう職制を通じてやったことは全然ないわけでございます。あくまでも、書記官が考え、調査官が考えるという立場でやったわけでございます。
  104. 大原亨

    大原委員 それでは、あなたは全然根拠のないものだということなんですけれども、基準法や憲法の精神に違反をしたような同意書を一人々々から取って、そして勤務の条件、時間について拘束をするということは不当であると私は思うのです。その同意書について、これは自主的にあちらこちらで書記官がやったものだとあなたは御説明になったわけですけれども、この同意書の問題について、最高裁事務当局は、こういう同意書という文書を取る意図もなければ、そういうことを強制したこともなければ、あるいは形はどうであろうが、そういう疑惑を持たれるようなことをする意思はないのだということについて、何らかの方法で事態を明朗ならしめるために措置をおとりになる御意思はおありですか。いかがですか。
  105. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 結局おっしゃる意味は、何か同意書とかそういったようなものが、何らかの強制を伴ってできているというようなことをお考えになって、そうおっしゃっているのじゃないかと思います。
  106. 大原亨

    大原委員 そういう圧迫を与えるような印象を与えているじゃないか。そういう誤解を解いたらどうかということです。
  107. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 そういうことは私はないと思いますけれども、そういう誤解があれば、もちろんそれは解くべきものと思います。  それからなお労働基準法の精神を無視するという御説でございましたけれども、労働基準法自体がやはり「公衆の不便を避けるために必要なものその他特殊の必要のあるもの」につきましては、これは勤務時間の延長ができるということを四十条でいっておるようなことでありますから、法全体から見ますれば、それほど御非難されるやり方とは考えておらないわけでございます。
  108. 大原亨

    大原委員 あなたがそういう議論をするのだったら、それは公共の福祉とかいろいろな抽象的な、原則的な論議でこの問題を解消するというのは間違いです。基準法はそういう趣旨じゃない。憲法が基準法に移譲しておるのはそういう趣旨じゃない。あなたがそういう議論をされるのだったら、また大問題です。そのこと自体が問題ですよ。あなたは勤務時間延長を命じておいても、超過勤務手当を正当に払わないということは、基準法の精神に違反していない、こういうことを言われるのですね。
  109. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 もちろん労働基準法は国家公務員には適用がございません。ただ一般職職員給与に関する法律によって勤務時間が定められているわけでございますが、労働基準法にもそういう特例があるということを今申し上げている次第であります。すなわち職務によってはやはりそういう例外もあり得るということを申し上げておるわけでございます。
  110. 大原亨

    大原委員 たとえば大学の教授が一週間のうちに四時間とか五時間しか講座を持たない、そして勤務時間についての拘束もないし、超過勤務制度もない、そして号俸は独自の号俸をつけている、こういうことならまだこの問題はわかるのです。勉強や研究については制限がないから、それぞれの条件において一生懸命やらなければならぬ。そういう仕事の質に従って給与の体系ができるということもあり得るのです。しかしこれはちゃんと勤務時間について一般職に従うというふうに、四十四時間の拘束がありながら、しかもいわゆる超過勤務命令、拘束時間というのは今度は五十二時間という、基準法の精神に違反をして、そういうことをやってもいいかということなんです。そんなことだったら、何をやってもいいことになる。そうすると裁判所職員の人権を保護すること自体の制度的な問題に入ってくるのだが、その問題については別に論議をすることにしますけれども、そういうことからいけば、何をやってもいいことになる。そうすると背の天皇制と同じになる。公務員々々々といって、無定量の忠誠の義務を負わされるということになる。それだったら、人権の問題についてはしり抜けになって、何をやってもいいことになるじゃないですか。その特殊性だけを主張するということになる。現行の制度のもとにおいては、これはいけないでしょう。次長いかがですか。
  111. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘勤務時間の延長の問題でございますけれども裁判所職員について何をやってもいいじゃないかということは、私ども考えているわけではございません。ただ先ほど来申し上げますように、書記官及び調査官についてこれを考えているわけでございます。と申しますのは、書記官調査官は、御承知のように、裁判官と同じように事件を直接扱う仕事でございます。従いまして先ほど来申し上げますように、事件処理の実情に応じて、こういう手段をとらざるを得ないということを申し上げるわけでございます。先ほど来人事局長が特殊な職務と申しますのは、そのことを申すのでございます。従って、裁判所に同じ勤務いたします事務官にせよ、その他の職種のものについて、こういったことは考えているわけではございません。特殊な職務と申しますのは、裁判所に日々参ります事件そのものを扱う職務を申すのでございます。
  112. 大原亨

    大原委員 それなら、超過勤務なら超過勤務制度とか、その他総合的に考えてみなさい。一般職に準ずる、こういうことを言いながら、一般職の方は四十四時間ですよ。それを上回って五十二時間の一週間の勤務を命じてあきながら、それに対する見返りの給付をしないということは、人権を無視することになる、そういう理屈をつけるんだったら。私は、教授とか裁判官等について、勤務時間を拘束しないで、勤務のそれぞれの実態に応じた職務の仕方があるということは認めておる。もしそういうことをしようと思えば、やはり組合と話をしなければいけない。基準法が最低であって、基準法を上回る条件を作る場合は——基準法の下をつけたらだめです、上についてはできるのです。そういう労働条件については組合と話をすることになっておる。組合と話をしましたか。
  113. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 御承知のように、裁判所には全司法という単一組織の組合がございます。ございますが、現在少し変則の状況になっております。表向きの正式の話をしたことはございませんが、私個人としてはずいぶん話をしておるわけでございます。しかし、この問題については、全司法の意見とは一致していないということだけ申し上げられます。
  114. 大原亨

    大原委員 今度八十七号条約を批准しましたら、団結権を認めるということは当然のことなんだが、しかし全司法の意見とは一致していないというのですね。そうすると下に下げるということは全司法と話をしてもいけないんだが、その基準を底を割って下に下げておるんだからいけないのですよ。  私は、この問題は大蔵省との関係があるから、次に保留しておきたい。あなたの方がしゃんとした態度をとっておいて、そしてこういう裁判所の書記の職務について、こういうように改正したいということだったならば、ちゃんと組合との間において話し合いをすべきです。そういう問題について、組合は団結権に基づいておるんだから、個人々々の人権についての利益を代表しておるんだから、そういう話し合いをしたようなせぬような話だが、それではいけない。そういうことが一つ。もう一つは、何といっても大蔵省との関係において、あなたの方は理由を無理やりにつけるために、誤ったことをする。そうすると救済機関がないでしょう。ないから制度上問題になる。結局職員にしわが寄ってくるということになる。定員を増加するなりあるいは成規の勤務条件にして、超過勤務その他をやるなり、そういう方法があるのにそういうことをやらない。これはいかぬと思う。こういうことについては筋を通して出しなさい。私は仕事のきびしい実態についてはよくわかっておる。しかし、同じ職場にもたくさん他の人もおるわけです。だから筋を通して出しなさい。これが裁判所の最低のやるべきことじゃないですか。大蔵省との関係において、あなたの方は無理な答弁をしておられる。そういうことはよくわかる、それは支離滅裂だから。だからあなたの方のせっかくの意図というものが逆の結果になってはいけない。これはあとで他の面からもう一回機会を設けていただいて、そして大蔵省からも責任者に出てもらって質問をしたいと思いますので、委員長にお願いしておきます。きょうの御答弁では納得できないので、質問を保留しておきます。
  115. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 関連して、——ただいま人事局長は、労働基準法にも超過勤務のことはきめてあるではないかと言われましたが、一体あんたは労働基準法をお読みになってそういう発言をされておるのですか。三十二条には「就業規則その他により、四週間を平均し一週間の労働時間が四十八時間を超えない定をした場合においては、その定により前項の規定にかかわらず、特定の日において八時間又は特定の週において四十八時間を超えて、労働させることができる。」こういうふうになっておる。五十二時間と言われるとそうでなくなる。さらに三十三条の時間外及び休日労働、これは災害等の場合のことです。何ですか、書記官の場合に、災害が起こったから五十二時間やるというのですか。災害等の場合の規定をあなたは今度の法的根拠にしようとしているのでしょう。とんでもないことじゃありませんか。おまけに三十三条の第二項においては、そういうことをやった場合においては、「その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを、命ずることができる。」、これは労働基準監督署長の発する代休命令です。この場合は最高裁にその権限があるのでしょう。そういうこともあなた方は考えないで言っているのでしょう。さらに第三項においては「公務のために臨時の必要がある場合においては、第一項の規定にかかわらず、第八条第十六号の事業に従事する官吏、公吏その他の公務員についてには、前条若しくは第四十条の労働時間を延長し、又は第三十五条の休日に労働させることができる。」、これはいずれも臨時の規定であります。ところが今伺うと、仕事が多い、やむなく時間を延長する、これは臨時じゃないでしょう。法律を一番守らなければならない官庁に勤める人が、法務委員会に来て、委員質問に対してそんな見当違いなことを言われるようじゃ困ります。その点どうです。
  116. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 私が申し上げましたのは、同法の四十条でございます。
  117. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それでは三十二条、三十三条一、二、三項の私の今言った点については、どうお考えですか。
  118. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 だから、一般的には御指摘通りだと私は考えております。ただこれはそういう「公衆の不便を避けるために必要なものその他特殊の必要あるものについては、その必要避くべからざる限度で」そういう勤務時間の延長ということもあり得るんだということが、労働基準法自体にもあるということをただ申し上げたものでありまして、裁判所書記官につきましては、もちろんこの条文は適用がございません。ただそういう意味で申し上げただけでございます。
  119. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 第一、四十条に関する法令を見ても、警察署、消防署職員で、臨時突発的事故がある場合について官庁職員について言っている。あなたの援用されるような意味はないのですよ。どう考えてみたって、あなたは無理を言っている。  そこでもう一つ聞きますけれども、同意書というものが出ておるそうでありますが、あなたは命令したものじゃないと言われるけれども官庁から、あなたの方から派遣された人が言っているのです。たとえば訟廷部長の斎藤判事、服部課長、今中大法廷首席書記官らが全国に行っていますね。この連中は勝手なことをしたのですか。あなた方の何らの指示なく、勝手なことを言って勝手に同意書を取ってきたのですか、どうです。
  120. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の訟廷部長、今中首席書記官、服部課長、こういった人たち、これは何も関係がございません。実に意外な感じを受けるのです。
  121. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 書記官の上席、首席を集めてやられまして、この前私が最高裁に行ったとき、あなたからも伺った通り、ただ何とか行ってこいということで、あなたの方はその人に何らの指示もされなかったのですか。どういうことを言われて、この人たちはどういう仕事を持って行ったのですか。
  122. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 ただいま説明しましたように、その高裁の首席書記官、全国に八高等裁判所がありますから、八人の方に来てもらいまして、それでこういう改正措置をとることについて、書記官の意向はどうか確かめてくれということを申し上げたわけであります。
  123. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 同意書と言うからには——上申書とか、希望とか、あるいは意見という場合もありますが、同意書と言うからには、行った人がこれこれのことを指示し、それに対して同意をするという文書でしょう。何か指示なり、明示しなければ、向こうが同意をする同意書というものはないでしょう。そうでしょう。何か指示をさせたのでしょう。意見を聞いただけ、同意書というものはそういうものじゃないでしよう。
  124. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 首席書記官意見を聞いたという意味ではございません。実は予算の内示がございまして、書記官につきましては、現在書記官制度調査委員会におきまして書記官の従前の希望などをしんしゃくして、書記官権限の一部を拡充しようというような意図がある、そういう場合に、その書記官権限の拡充されるのと、それから勤務時間が五十二時間になるというような点から本年度予算におきまして……。
  125. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そういうことを聞いてはいないのだ、私の言ったことに答えて下さい。
  126. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 そういうことを説明して、そこでそういうふうな法的措置をとることについて書記官意見を聞いてくれということを言ったわけでございます。だからその首席書記官は、書記官でございますので、その書記官が帰ってきまして、そして伝えて意見を聞いたということでございます。その聞き方の方法として、その同意書なるものができたということはありますけれども、これはあくまでもその気持の、問い方の問題でありまして、同意書を取れとかいうことを言ったのではございません。
  127. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 大原委員の言われた通りに、こういうことを事実上同意をさせるということを提示しておるのですから、これはもう明らかに不当労働行為になるじゃありませんか。おまけにいろいろなことを言っておるのだ。四国なんかの例の場合は、出さなければ前歴をばらすなんということを言う人もいる。いろいろめちゃくちゃなことを言っておるのですよ。一つその同意書というものをわれわれに見せて下さるか、どうですか。
  128. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 ただいま志賀委員から仰せられたのですが、同意をせよというようなことを指示したことはないのです。
  129. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうじゃないのだ。同意書というものを見せて下さるかと聞いたのです。
  130. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 これは全く内部的のものでございまして、数を言うことは問題ないと思いますが、いろいろな形式がありますので、そういう形式がいろいろ雑多な形式になっておるかの範例としてお見せすることも差しつかえありません。
  131. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私の方から言っておるのは、希望書というものもあり、上申書というものもあり、アンケートみたいにまるをつけさせる意見というものもある、その中で同意書というものを見せて下さいと言っておるのだから、見せるか見せないか。見せなければどういう理由があるか、そこをはっきり言って下さればいいんだ。どうも逃げよう逃げようとするから、つかまるんですよ。
  132. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 先ほど人事局長がお答え申し上げましたように、首席書記官を通じまして、書記官の意向を徴した事実があるわけでありますが、その意向の徴し方、あるいは意向の出し方にもいろいろあるわけであります。同意書々々々ということを非常に申されますけれども、必ずしも同意書という形ばかりではありませんで、いろいろな形で出ているわけでございます。同意書をここで提出いたしますことは、これは全く裁判所の内部の文書でもございますし、その性質上いかがかと存じているわけでございます。
  133. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そういうふうに隠されるからいかぬ。出せないような書類を、——これは条約上の秘密文書とかなんとかいうのだって暴露されることもあるのだが、そんな性質のものじゃないじゃないか。われわれが今何をしているか、裁判所職員、ことに書記官に対して不当なことのないようにという、いわば協力をしているんでしょう。善意をもってやっているんです。あなたは御存じでしょう、事務次長。裁判官俸給のときに、たとえば私が何をしました。裁判官の意向の通りに主張してやったじゃありませんか。あなたよく御存じでしょう。それだのに書記官だけにしわ寄せをするようなことをしてはいかぬと言うのだ。裁判官の中にも遺憾しごくな人があります。それでも全体のために私どもは主張することは主張してきたのです。例をあげますが、下飯坂という最高裁判事なんか、松川事件で極端な判決の意見を出しておりますけれども、松川事件のときにずっと居眠りをしているのだ。こういう判事だって中にはいるけれども、全体のためにこれはどうしても必要だという場合には、われわれはやるのですよ。それなのに、この場合に書記官だけにしわ寄せをするようなことは、明らかに関係法規全体を総合して、国家公務員法にだって一般の賃金を参照してやれということになっているし、俸給表を作るに当たっては、生計費、一般の賃金、こういうものも参照して俸給表を作れと言っているのに全然そむくようなことをやられる。われわれはそこを問題にしているのであります。秘密文書でも何でもない。同意書を出してごらんなさい。どこでどういうものを出しているか。山口地方裁判所の例も、広島その他東京高裁管内でどういう文書を出しているかということを私たちはつかんでいますよ。前に白紙逮捕状が問題になったとき、そんなことは横田事務総長は絶対にございませんと言うから、私はある裁判所の判を押した書類をここに持ってきて、横田事務総長にお見せしたこともある。われわれはそういうことまでもはっきり知った上で質問しているのですから、そういうことを別段隠しだてなさらなくたっていいでしょう。超過勤務の場合には、労働基準法にもはっきり規定がある。事実上書記官の地位を下げる、その生活を下げるようなことをして、それでもって法律を一番守らなければならない官庁の役目が勤まりますか。もし仕事が山積するなら、もっと堂々と要求されれば、われわれもそれを応援しますよ。それを書記官の場合にだけしわ寄せすると、どうなります。書記官超過勤務になります。あなた方は書記官俸給のことだけを問題にしておるが、タイピストはどうなりますか、交換手はどうなりますか、またその他のいろいろな下の仕事に従事する人はどうなりますか。書記官なんかが仕事をしていれば、どうしたってそういう人たち仕事が増すでしょう、残っていなければならない、これらに対する俸給の調整はどうします。そういうことは一つも出ていないじゃないですか。波及するところは大きいのです。法律の精神に従って、働く人の権利、これはどうしてもあなた方が率先して守らなければならないのに、逆にあのようなことをされてはいけないじゃないですか。大原委員もそう言われますから、もう少しそういう点で、同意書なんか堂々と出して下さい。今の点だけ答えて下さい。
  134. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたように、書記官の意向を徴しました、その徴した結果につきましては、内容を御報告申し上げたいと存じます。同意書のことは、私先ほど申し上げましたように、全く内部的な書面である以上、出しますことはいかがかと存じます。
  135. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 交換手、タイピストはどうします。
  136. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 交換手、タイピストの方は、特に書記官があとに残りますし、勤務時間が延びますために、そのために残るというふうには考えておりません。しかし、場合によりましては、それはそのために残る必要が生じ得る場合もあるわけでございます。その場合には、超過勤務の手当をいたすつもりであります。
  137. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  138. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 速記を始めて。——大野幸一君。
  139. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 私は前に法務委員会に出ておったのですが、その後他の委員会に移ったので、本日は久しぶりに本委員会に出席したのですが、何か最高裁判所あるいはまた法務省は、他の委員会におけるのと非常に空気が違うように思うのです。それで、こういう点については、何か逆戻りしたような感がするのは、非常に遺憾に存じます。志賀委員質問に対しても、出せない文書がある、こういうことは私はおかしいと思う。いかなる場合においても、外交文書とか、国家の秘密に関するとか、公安に関するとかというものは別だけれども、そういう文書を職員に対して出させる。公表できない文書、書類なんというものがあるものかないものか、もう一度私は確かめておきたい。
  140. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 先ほど来申しますように、書記官意見を徴しました際に、いろいろな形でその意見が出ておりますが、その中には書面で参っておるものもあるわけでございます。
  141. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 当委員会に出せるものと理解していいのですね。
  142. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 先ほど来申し上げますように、書面の性質上いかがかということを申し上げておるわけでございます。
  143. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 いかがかというのはどういう意味ですか。裁判所はそういう特権があるんですか。そこの限界だな。これは裁判とは違って一つ行政でしょう。最高裁判所には、国会の提出命令にも応じないという権利があるというのか。
  144. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 そうは申しておりません。ただ、書面の性質上と申しますのは、公の文書ではございませんので、そういう意味で書面の性質上提出することはいかがかということを私の意見として申し上げておるわけであります。
  145. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 そうすると、とにかく職員から印鑑をとるとか署名させたというような文書はあるんですね。
  146. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 別に署名させたとか印鑑を押したという意味で申しているのではありません。ただ、意見を徴した際に、書面で意見の出ているものもあるということを申しているのであります。
  147. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 サインというのは、調査した人のサインなのか、調査された職員のサインなのか。
  148. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 それは両方あると存じます。
  149. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 それでは、そういうものについての国会の提出命令裁判所は従わなくてもいいという根拠があるなら、この次までに説明して下さい。
  150. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 先ほど来申し上げましたように、拒否する権利があるとは申しておりません。
  151. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 ちょっと資料をいただきまして気がついたことですが、現在書記官がだいぶん欠員になっているようですね。その補充がどうしてまだできないのか。補充ができないために職務が過重になるということをおそれるのですが。どうでしょうか。
  152. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 御承知のように、裁判所書記官は、書記官補を書記官研修所養成部に入れて一年ないし二年養成いたしまして、書記官に任用するというような方法をとっておりますのと、それに見合うような昇任試験といった方法で順次充員して参ったわけでございます。そういう関係から、二月一日現在でその程度の欠員がまだあるのでございますが、しかしこれは三十五年度におきまして順次充員される見込みでございます。
  153. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 順次にこういう教育をしなければならぬというのですが、最高裁書記官というものはそれほど実務に必要なものですか。特に今度の改正法によると、何か最高裁判所調査員にならって、法令調査とかあるいは判例調査を命ずる、こういうことになっているんですね。それは必ずしも裁判所の実務から積み上げてこなければならぬというわけのものでもない、補充しようとすればそうむずかしいことじゃないと思う。しかも資料を見ても、最高裁において十二人、高裁において四十九人、地裁に至っては三百八十一人、家裁が百五十三人、合計五百九十五人、こういう欠員を生じているんですね。それじゃ今まで訓練を怠っていたということになると思うが、どうですか。とにかく最高裁判所及び法務省は国家の重要なる仕事をし、われわれは尊敬しなければ、また大切にしなければならないにもかかわらず、何といっても伴食大臣で大蔵大臣に常に強く当たれないということをかねがね私は遺憾に思っている。国家の司法権をつかさどる者が、予算に対しては実に弱い。最高裁判所は、今はどうか知らぬが、もとは国会に対して発言権がないということもあったので、内藤さんよく御存じですが、われわれが国会に対して、最高裁判所予算編成権を請求できるようにした。こういう欠員があるにもかかわらず、どうしてそれを今まで実行しなかったのか、この点について……。
  154. 内藤頼博

    ○内藤最高裁判所長官代理者 書記官の欠員補充の問題でございますが、これは先ほど来申し上げますように、書記官の任用資格、それからさらに研修制度等ができまして、従来の書記制度とは根本的に変わったわけでございます。その間に研修あるいは昇任試験等によります昇任が行なわれてきておりますが、今日まだその欠員を十分に埋めるに至っておりません。これは研修、昇任試験相互におきまして、私ども十分書記官の学識なり能力なりを向上させつつ補充をはかっているわけでございます。これは私どもといたしましても、十分に研修の機会を作りまして昇任の機会を作り、その欠員を補充して参りたいと存じております。いつまでということをはっきり申し上げるわけではございませんけれども、本年度においても相当の欠員の補充ができると思います。  それからただいま仰せの予算でございますが、裁判所予算につきましていろいろ御配慮をいただいておることを、私ども毎度かたじけなく存じておる次第でございます。私どもできるだけのことをいたしまして、大蔵省と毎年折衝いたしているわけでございます。職員待遇その他につきましても、なお今日十分なことができませんのは、私ども大へん申しわけないと存じておりますが、今後も一そうの努力を続けて参りたいと存じます。ことに書記官待遇につきましては、先ほど来申し上げておりますように、裁判所書記官制度調査委員会におきましてもさらにこれを取り上げまして、根本的な検討をいたしまして、そうして案を得たいというふうに考えておる次第でございます。
  155. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 それからもう一つ、その次のページを見ますと、裁判所書記官学歴構成となっておりますが、大学卒が二五・三%、四分の一なんですね。これからこの法律がもしできて、法令または判例調査なんというと、やはり何といっても中学卒業では足りない、高校卒業では足りない、これはやはり大学卒業の者をとらなければならないと思うのです。こういう関係においては、少なくとも大学卒と高校卒業と半分くらいに比例がなってくるのが普通の官庁なんです、こういう知識労働の職務においては。それが四分の一になっている。大学卒業をどうして今までとれなかったのか。これも予算関係するからということになればそうでしょうが、この点については今後大学卒が大いに必要だと思うがどうですか。
  156. 守田直

    守田最高裁判所長官代理者 御説のように、先ほども御説明申し上げましたが、昔は裁判所書記と申しておったわけでございますが、戦時中多くの裁判所書記が軍需会社その他に転出いたしまして、新憲法施行後には非常に若い人が入ってきたわけでございます。そういった関係で、裁判所の書記の事務はいろいろな意味において停滞を生じてきたわけでございますが、新憲法のもとにおける裁判所の書記事務にふさわしいような態勢をどういうふうにして作り上げていくかということにつきましていろいろ考えましたあげく、昭和二十四年に書記官制度調査委員会という委員会を設けまして、裁判官、検察官、弁護士、書記官、こういったものによって約二十名の委員構成いたしまして、そしていろいろ審議をいたしました結果、このままではいけないということで、まず裁判所書記の任用資格といたしましては、まず書記官補から考えなければいけない。当時学制改革の時代でございまして、各府県単位に大体新制大学が設立される見込みでございましたので、そういった点も考えられたと思いますが、新制大学を卒業した者をもって原則的には書記官補を採用していく。そうしてそれを書記官制度調査委員会の答申に基づいて設立されました書記官研修所におきまして養成いたしまして、書記官に任命していく、これが本筋の任用方法でございました。なお従来の職員につきましては、これはそれぞれ一定の年限の者を順次書記官研修所に入れまして、二年間ほど研修いたしまして、同じ程度の力をつけて書記官に任用していく。それから入れない人もございますので、それはそれで昇任試験を実施して昇任さしていくといったような方法で順次書記官の素質と能力を向上さして、書記官の定員を充員して参ったわけでございます。現在まだ六百名ほどの欠員がある。しかしその欠員はいわゆる書記官補といたしまして、大体それに見合うだけの課員がありまして、全然実員のないという性質の欠員ではございませんが、実情は今申し上げましたような次第でございます。
  157. 大野幸一

    ○大野(幸)委員 これは実際は、何といっても裁判所の大学卒の志望が少ないのは待遇が悪いからです。この点は私たち裁判所に対して同情すると同時に、裁判所ももっと権威を持って、一つ予算の編成にはがんばるべきだと思います。われわれがもし政権をとれば、裁判所をこんなふうにはしておかないという自信を持っているわけだが、しかし遠慮することはないから、あなた方その職責にある者は、給与については最大の努力をする。どうも裁判所は昔から封建的なところがまだ多いのです。よっぽどわかっている人でも、裁判所に入ると封建的になってしまう。特にそういうようなきらいを持っているわけですから、この点については一つ注意しておきます。  本日は一時を過ぎましたので、私はこれで終わります。
  158. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 本日は、この程度で散会をいたします。     午後一時十三分散会