○内藤
最高裁判所長官代理者 ただいま御
指摘の
勤務時間の延長と号俸調整の問題につきましては、私
どもいろいろ検討いたしました結果でございます。これにつきましては、実は
裁判所といたしまして
書記官制度ということを従来から検討しているわけでございます。御
承知のように、憲法が改まりましてから、
裁判所の
制度も新しい
裁判所法によりまして、基本的に改められたわけであります。その後、従来の
裁判所書記の
制度について十分に検討を加えまして、新しい
司法制度に即応したところの
裁判所書記官制度というものを作りたいというのが私
どもの従来の念願であったわけでございます。もちろん
裁判所の
司法制度の要請は、何と申しましても裁判の適正と迅速ということが基本的な要請でございます。従いまして、
裁判所書記官制度の
改正も、またその線に即応いたしまして検討しなければならない問題でございます。
最高裁判所におきましては、
昭和二十四年に
裁判所書記官制度調査委員会というのを設けまして、この
委員として
裁判官、検察官、弁護士それから
書記官等によりましてこの
委員会を
構成いたしまして、
裁判所書記官制度について検討して参ったわけであります。今日なおその
委員会は存在いたしまして、今後も検討を続けていくということになっておりますが、この
委員会の検討の結果によりまして、
書記官につきまして、特に
最高裁判所に研修所を設けまして
書記官の研修を行ない、また任用資格も定めまして、今日
書記官の任用資格は非常に高くなっておりますし、その上に研修も行なっておるわけでございます。そういった
書記官の新しい素質、能力というものが今日相当の成果を上げて参りまして、
書記官の
法律的な知識あるいは能力というものは、申せば一新されたように私
どもは考えているわけでございます。この
段階におきまして、かねがね
書記官自身も念願しておりますところの
職務を改めるという問題も取り上げらるべき
段階にあると存ずるわけでございまして、これにつきましては諸外国の
制度等も研究いたしまして、まあいろいろの方法があるわけでございますが、私
どもといたしましてこの
委員会において取り上げましたのは、まず最初のステップとしての
権限、
職務でございます。それが今回ここに御審議を願っております
裁判所法の
改正として現われているわけでございます。
書記官の新しい
職務、この
職務を行ないます上におきまして、今度さらに
勤務時間の延長という問題が起きているわけでございますが、これは現在の
裁判所の執務
状況、その
実態に合わせてそうせざるを得ないというのが
実情でございます。
御
承知のように、終戦後
司法制度が改まりまして、いろいろその間に
裁判所の執務の上でも必ずしも進捗しない面もあったのでございますけれ
ども、十年を経てようやくそれが軌道に乗って参ったわけでございますが、御
承知のように
事件は年々増加いたします。また
事件の内客も複雑になって参りますし、
法律の数も非常に多くなっているわけでございます。その間におきまして
事件を処理いたします
裁判所の
実情というものをごらんいただきますと、どなたにもおかわりいただけると存じますが、なかなかその
仕事の負担が容易ならざるものがございます。
裁判官を
中心といたしまして
職員が非常に精励をして今日やっているわけでございますけれ
ども、とかく
事件の渋滞や、しばしば世間から批判されるところの訴訟の遅延ということが今日なお避け得ない
実情でございます。そこで、
裁判官の
仕事といたしましては、先ほど人事
局長が申し上げましたように、実際はほとんど日夜その
仕事に取り組んでいるような
実情でございます。これは、ほんとうにそういう者は外国の例にはないような負担を負っているわけでございまして、外国の例など私
ども聞きますとまことにうらやましいような感じがいたすわけでございます。そういったような
状況で今日本の裁判が行なわれているわけでございます。
今回の
書記官の先ほど申し上げました新しい
職務でございますが、まず最初のステップとしての
書記官の新しい
職務が今回の
改正に現われているわけでございますが、
裁判官の行なう
調査の
補助ということでございます。この
仕事の実際の
状況を考えますと、
裁判官の今のような執務
状況、これに即応いたしまする
調査の
補助ということになりますと、どうしてもやはり
勤務時間の延長ということを考えざるを得ないのでございます。これは私
ども決してそれを好むわけではありませんけれ
ども、
実情まことにやむを得ないものがあるのでございます。そこで
勤務時間の延長やむを得ない、さらに、じゃそれに即応する
給与をどうしていくかということになるわけでございます。実は、私
どもといたしましては、
書記官であるとか
調査官であるとか、そういった特殊の
職務を持っております
職員につきましては、特殊の
給与体系が本来はあるべきじゃないかという考えでいるわけでございます。これにつきましても諸外国の
制度等もおいおい研究もいたしているわけでございますけれ
ども、現実の問題といたしまして、今日の手当としてどうしたらいいかということになるわけでございます。そこで、先ほど来御説明申し上げますように、一六%の号俸調整ということになったわけでございます。これは確かに
大原委員御
指摘のように、新しい
職務権限と
勤務時間の延長に即応する
給与としては十分でないじゃないかということは、まことにごもっともと存じます。私
どもできればほんとうに
給与を改めて、新しい
給与体系というものをきめたいわけでありますけれ
ども、今日、実際に応じた手当といたしましては、やはり一六%の号俸調整という結論に落ちつかざるを得なかったわけでございます。これは先ほど来申し上げておりますように、
一般公務員とのつり合い、前例等によりまして、五十二時間の
勤務時間延長ということに即応いたしますると、やはり一六%の号俸調整にとどまらざるを得なかったのでございます。これがただいま御
質疑のございました今日
勤務時間の延長と一六%号俸調整の結論を私
どもがとらざるを得なかった
実情でございます。