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1960-04-01 第34回国会 衆議院 法務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月一日(金曜日)     午前十時五十四分閣議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君    理事 小林かなえ君 理事 田中伊三次君    理事 福井 盛太君 理事 田中幾三郎君       大坪 保雄君    高橋 禎一君       中村 梅吉君    南條 徳男君       馬場 元治君    井伊 誠一君       八木  昇君    大野 幸一君       志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 井野 碩哉君         国 務 大 臣 石原幹市郎君  出席政府委員         警  視  監         (警備局長)  江口 俊男君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  實君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君  委員外出席者         検     事         (刑事局参事         官)      高橋 勝好君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局総         務課長)    長井  澄君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 三月三十日  委員井伊誠一辞任につき、その補欠として岡  良一君が議長指名委員に選任された。 四月一日  委員濱田正信君、岡良一君、上林與市郎君及び  中崎敏辞任につき、その補欠として大坪保雄  君、井伊誠一君、八木昇君及び大野幸一君が議  長の指名委員員に選任された。 同日  委員大坪保雄君及び八木昇辞任につき、その  補欠として濱田正信君及び上林與市郎君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 三月三十日  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第一一二号)  (予) 同月三十一日  裁判官の災害補償に関する法律案内閣提出第  一一四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出第一一二号)  (予)  法務行政及び検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
  3. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 まず国務大臣から提案理由の説明を聴取することといたします。井野法務大臣
  4. 井野碩哉

    井野国務大臣 下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を説明いたします。  この法律案は、土地状況市町村廃置分合等により、簡易裁判所名称所在地及び管轄区域変更する等下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律に所要の改正を行なおうとするものであります。以下簡単に今回の改正の要点を申し上げます。  第一は、簡易裁判所名称及び所在地変更であります。すなわち、大阪地方裁判所管内古市簡易裁判所所在地である大阪府南河内郡南大阪町について、同町を南大阪市とする処分及び南大阪市の名称羽曳野市に変更する処分が行なわれたのに伴い、同簡易裁判所名称羽曳野簡易裁判所に改め、また、土地状況等にかんがみ、広島地方裁判所管内上下簡易裁判所所在地広島県甲奴郡上下町から同県府中市に変更するとともに、その名称府中簡易裁判所に改めようとするものであります。  第二は、簡易裁判所管轄区域変更であります。すなわち、土地状況、交通の利便等にかんがみ、京都簡易裁判所管轄に属する京都市南区久世川原町ほか八ヵ町の区域を向日町簡易裁判所管轄区域とするほか、五簡易裁判所管轄区域変更しようとするものであります。  第三は、市町村廃置分合名称変更等に伴い、別表第四表及び第五表について当然必要とされる整理を行なおうとするものであります。  以上が、下級裁判所設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。
  5. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 本案に対する質疑は、次会に譲ります。      ————◇—————
  6. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  御参考までに申し上げておきますが、この件について法務省側から井野法務大臣竹内刑事局長、それから警察庁江口警備局長が出席されておりますが、石原国家公安委員長は間もなく出席される予定であります。  質疑の通告がありますので、これを許します。大坪保雄君。
  7. 大坪保雄

    大坪委員 私は、去る三月二十八日の早朝に、三井鉱山三池炭鉱の各炭鉱、特に三川炭鉱において、先般三井炭鉱労働組合を脱退して新たなる組合をこしらえました新組合と旧組合、この両組合組合員の衝突を中心として起こりました乱闘事件暴行傷害事件及びこれに引き続いて、その翌日起こりました殺人事件等に関連し、また一般争議行為正当性というような事柄に関連して、法務当局及び警察担当大臣以下の御当局にお尋ねしてみたいと思うのであります。  それは、二十八日、九日の不祥事の後に、労働大臣勧告等もございまして、三十日にはいわゆる休戦状態がとられた。昨日の三十一日も、第二組合生産再開のための就労ということは一時取りやめになったのでありますから、現地はいささか平静に帰したのではないかと思いますけれども、しかしながら、新聞ラジオ等の伝えるところによりますと、なお相変わらず両組合組合員対立がある。しかもその対峙の状況は、あるいは青竹こん棒を持ってなされておる。また組合員同士、あるいは組合員家族同士の間にもいろいろいざこざがあり、人権じゅうりん等事柄もまだ絶えていないということが伝えられている。しかるに一方第二組合及び会社側の意図は、きょう四月一日からいよいよ生産再開をやるということを言っておるのでありまするし、これに対しては相変らず実力をもって阻止するということを第一組合の方では申しておるようなことでございますから、なお現場における不安、社会不安というものは、去っていないということがおそれられるのであります。従いまして、今回の問題の内容についてもそうでございますが、これを取り巻いての社会不安、特に検察警察に関する事柄について、両大臣の御所見を承りたいし、両御当局の御措置の友情も承ってみたい、かように考えるわけでございます。  そこで、大牟田は無法の町、法律のない町だということを前々からいわれて、人権擁護調査会あたりからも調査がなされたということを伺っておるのでありますが、今申し上げましたように、なお市民の中には非常に不安がある。特に第二組合組合員並びに家族の中には生活上の不安がきわめて多い。第一組合あるいはこれの応援に来たオルグ団というものの暴行脅迫は、時と所を問わずして行なわれておる状況であるというようなことが新聞紙等に伝えられておる。のみならず、いよいよ第二組合員就労するということになれば、あとに残した家族が非常に不安であるから、家族緊急避難をやる、あるいは移転をやるというようなこともずいぶん行なわれておるということが伝えられておるのであります。その現状について大牟田市内は新旧両組合員対立によって非常に不安があるということが現場から伝えられておるし、私どももそれを想像するのであるが、警察の御当局からごらんになった現状はどうであるか。そして、こういう不安な状態を残すということは、これは法治国家、特に今日の程度に進んできたわれわれはわが国の文明を誇る者として非常に恥ずべきことだと思うのでありますが、これが平静に帰して、もう今後はこの数日続けられ、特に二十八日、二十九日に行なわれたような不安な事態は起こらない、それは十分に防止できる、かように、確信と申しましょうか、自信をお持ちになられる方策があるのであるか。この点をまずもって石原大臣にお伺いしてみたいと思います。
  8. 石原幹市郎

    石原国務大臣 まず私から大体のことを申し上げまして、足らざるところは警備局長からいろいろ補足してもらいたいと思います。御案内のように、先月二十七日の夜くらいかと思います。三川鉱あるいは四山鉱中心にいろいろの問題が起きたわけであります。さらにそれ以前から、引き続いて第一組合、第二組合対立等から、大牟田あるいは荒尾、あの付近にかけまして非常な社会不安を生じておりますことは御指摘の通りでございます。そこで、警察当局といたしましても、まずあの地帯の暴力的要素排除一掃をしなければならない、いわゆる暴力団排除というようなことにつきまして、九州全管区を通じて警戒をし、そういう動きのないように措置をとっておるわけであります。さらに、いずれを問わず、こん棒のようなものを持って、ピケを張るにしましても何をするにしても、そういうものを持っていろいろ行動しているということは、これはやはりいろいろな不安を生ずるもととなります。こん棒等の携行をしないようにということを昨日警察庁の方から現地警察を通じまして警告をずっとしているような状態であります。なおさらに、いわゆる第一組合に対しまして仮処分が出ておるのであります。ピケといえども暴力を伴うようなことは絶対してはならないというような警告も発していきたいと思います。警察動員については、現在大牟田中心にさらに少しは増強したと思いますが、大体二千二百名の警察官を動員しております。荒尾には八百名くらいの動員をしておるのであります。さらにあと九州各県から、事態に応じては直ちに応援を得られるように、約二千名くらいの応援態勢は確立できるようにいたしております。それから四山鉱で問題を起こしましたいわゆる山代組一派につきましては、四十八名に対しまして逮捕令状の発行を求めまして、それに基づいて逮捕なり捜索をやっておるわけでございます。  こういう状態で、将来こういう暴力のようなことはなきことを保せるかどうかという御質問でありますが、それはここでちょっとどういうふうに動いていくか、今後の見通しははっきりいたしませんので、そこを責任を持って保せるかどうかということは、これは言い切れないのでございます。いろいろ警告を発したり暴力一掃に努めまして、いかなる場合にもこういう大騒動の起きないように万全の措置をとり得るだけのものはとっていく。こういう建前でやっております。
  9. 大坪保雄

    大坪委員 ただいま大臣から暴力団排除に努めておるということ、それからこん棒等凶器になるおそれのあるものを携行しないように警告を発しておるということ、しかしながらそれで完全に治安が保てるかどうかについては自信がない、こういうお話のように承りました。そこでちょっとお伺いしておきたいと思いますが、今大臣お話しになりました暴力団というのは何をさしておるのかということでございます。これは労働争議が起こりますと、よく組合は、特にいわゆる上部団体のある全国的組織を持っておる組合は、上部団体オルグというものを派遣する。これは労働争議でありますから、争議戦術争議進め方あるいは団体交渉進め方等についていろいろ方法その他、教えたり、指導したりすることのためにオルグが行くということ、あるいは指導員が行くということ、これはあり得ることであるし、あっていいし、当然のことであると思います。ところが、今日総評あたりがやっております、最近は全労も出すということを新聞が伝えておりますが、争議が起こりますと、多数のオルグ団と称するものを出す、これが争議現場を非常に刺激しておる。これが暴行事件のもとをなしておるのではないか。そのオルグ団は、たとえば今回の三池の場合でありますと、炭労の系統の各社の山から数十人、数百人がよりすぐって出される、あるいは総評日教組とか、場合によれば全学連はどうでございますか、日教組とか国鉄労組というようなものからも精鋭をすぐっておる。これが何百人、何千人といるのです。これは今日警察当局でお調べになっているかどうかわかりませんが、私どもの聞いたところでは、七千人くらい今応援団が行っておるであろうと伝えられております。これは一体何のためのものであるか、私は、これはもう職業化したオルグの名による暴力団だと言って差しつかえがないと思う。これが現実に、三池の場合もそうでありますけれども、王子製紙、苫小牧の争議の場合もそうであったし、昨年各地で行なわれた中小企業争議暴力化した事件についてもみなそうである。このオルグ団と称するものはオルグという名の暴力団にすぎない。これが争議を激発し、暴行事件等を起こしておると思います。もちろん争議関係のない、いわゆる町の暴力団というようなものが争議に介入してくるということも、私は、けしからぬ、これはもう当然排除さるべきだと思うのであります。しかし、今申し上げましたように、ちょっと重要と認められるような争議については、必ず上部団体等から多数の、数百、数十のオルグ団と称するものを現地に差し向ける、これがピケ先頭に立つ、あるいはデモの先頭に立つ、これが結局は暴行事件を起こしている、その誘発の原因はここにある、ないしは当事者はこれでないかというように私は思うのでありますが、先刻石原国務大臣の言われました暴力団とは一体何をさしているのか、これをまず伺いたいと思います。
  10. 石原幹市郎

    石原国務大臣 私が先ほどいわゆる暴力団と申し上げましたのは、暴力行為を行なうようなものが多数おる、俗に言う何々組とか何々一家というような意味——私が先ほど申し上げた暴力団というのは、そういう意味で言うたのであります。しかし、今大坪委員が言われましたいわゆるオルグというか、応援団というか、こういうものの派遣がさらに事態を一そういろいろ紛糾せしめているということは、今までの各種の争議行為等から見まして当然そういうことが考えられるのであります。今回につきましても、応援団なりいわゆるオルグというものを、排除といいますか、差し控えるべきであるということは、警察当局からも、労使といいますか、使の方にはあまり関係ないかもしれませんが、それぞれの向きにそういう注意はもちろんいたしております。
  11. 大坪保雄

    大坪委員 先刻大臣暴力団排除に努めておると仰せられた。そしてその暴力団とはいわゆる町の暴力団である、こう仰せられた。しかしながら、私が今申し上げましたようなオルグ団のごときものも、暴力行為をなすおそれがあるであろうということは察せられておるような御答弁のように私は承りました。しからば今申し上げたように、数百、数千、千人も二千人も一つ組合上部団体から出しているというようなオルグ団というものが、現実にいわゆる暴力行為になる争議行為指導をしておるのですから、これも暴力団に類するものと認むべきだと思うのであるが、その方の排除については何らの御措置をおとりになっておらぬようにうかがわれる。そうしますと、警告ぐらいなされたかもしれませんが、これは片手落ちではないかという感じがする。問題は、今後少し引き続いてお尋ねしたいと思うのでありますけれども現実労働争議当事者であるその従業員組合以外の応援団が非常に多数であり、そうしてそれらの指導によって、あるいはピケが張られ、そのピケ——これはあと一つ見解を伺いたいと思うのでありますが、ピケと名のつく、あるいはピケと名をつけた暴力行為であると思われるものが多いと私ども思うのでありますが、そういうものの指導をしているというのですから、これは町を平静にし、争議を正常化するということのためには、やはり公平な措置をおとりいただかぬといかぬのではないかと私は思う。そのためには、いわゆる暴力団に限らず、暴力団と認めらるべきものが他にもあるならば、これに対しても、これを排除するという御措置をやはりおとり願うべきであると思うのでありますが、その辺についてのお考えを一つ伺いたい。
  12. 石原幹市郎

    石原国務大臣 暴力一掃すべきであるということは、今回の争議の発生しましたときから警察当局としてはその建前をとっておるのであります。労使の問題には介入すべきでないのはもちろんでありまするが、いわゆる暴力行為等が起きました事犯については、徹底的にこれを追及し取り締まっていくという建前をとっていることは申すまでもないことであります。ただいまもちょっと触れたのでございまするが、応援団等派遣によりましてそういういわゆるピケ暴力化する、こういうことについては、今回は特に仮処分等も出ておりますし、そういうことの排除といいますか、差し控えるようにということは、警察当局もしばしば、警告といいますか、連絡をとっているような次第であります。
  13. 大坪保雄

    大坪委員 あまりここで追及しても仕方がないと思いますが、私が今申し上げたように、今後政府においても十分御検討願わにゃならぬと思いますことは、争議の場合に必ず直ちに相当多数の、数百人、数千人のいわゆるオルグ団と称する専門争議屋を送って、そうして争議を激化さしておる、やむを得ず自衛措置として、特に中小企業のごとき力のない企業者は、町の暴力団を雇って対抗せざるを得ない、こういう事態になる。そういう実例がまた少なくない。中小企業者といえども、そういう人もございましょう。親分子分関係で、親方子方気持でやっている職員が組合を作っておやじに手向う、けしからぬ、暴力団でも雇って一つ痛い目を見せてやろう、きわめて古い考え方の場合かもしれませんが、そういう違法なことが絶無だとは私は申しませんけれども、昨年東京の各地で起こった中小企業実情を見ますると、争議団の中に来ている多数のオルグ総評応援団暴行脅迫その他のことをやって、身を守るためにやむを得ず他の暴力団を雇ってくるという実情が多かったと私は思うのであります。でありますから、今後の、これは労働行政の面にもなると思うのでありますけれども、多数の応援団争議ごとに送り込んで争議を激化させるという事態に対しては、やはり特別の措置方策政府においても御検討願わなければならぬと思うのでありますが、今日ここではその点についてはそう多く触れないことにいたしたいと思います。ただ、今長官もお話しになりましたように、警察争議に介入をしない、これはもう当然です。争議の中に警察が立ち入って、問題の解決とかあるいは争議行為やり方等についてあれこれ介入するということは、これはもう厳に慎むべきことである。ところが最近の労働争議、特に暴力化した事件についての警察措置というものを見ておりますと、何かしらん労働争議というものに対して警察は手を触れない、こういう非常に消極的な気持があるのじゃないか、何かそういう方針でもとっておいでになるのではないかと思われるほど、きわめて消極的な態度が見受けられるのであります。日本の今の労働組合法は、労働者労働組合に対して非常に手厚い法の規定を設けておりますけれども、しかしながら暴力行使は絶対にいかぬということを明らかに書いているのです。争議行為の中に介入するということ警察は当然厳に慎むべきであるが、争議行為に関連して、あるいは争議行為に名をかっていわゆる町の暴力ざたが行なわれておる。そういうものに対しては、警察本来の立場に立って厳に処置するということがなければならぬと私は思う。今日労働争議が、非常に類例のないほど、珍しいほど変態に日本労働争議がなってきたということの一つ原因としては、私はやはり警察当局も今までのやり方において責任を分担してもらわなければならぬ面があるのではないかとさえ思うのであります。たとえばピケについてであります。これは本来の意味は、私どもの了解するところでは私は実は先ほどエンサイクロペディアを引いてみた、それにもちゃんと書いてある。これはスキャップを防止するための労働争議に伴う一つ争議行為方法でございましょうが、これは原則として一人ないし少数の者が、ストライキが行なわれているということを組合員あるいは組合員以外の者に知らしめるためのものであるということである。これを今日日本労働争議、特に三池の今度の場合もそうでありますが、使われたピケと称せられるところのものは、これはいわゆるピケではない。これは鉄さくであったり、バリケードであったり、あるいはへいであったりするような壁をなしているのではないか。従ってたとえば鉄さくであったりバリケードであればよけて通るということがきわめて楽にできるのでありますけれども、このピケと称する人間の壁、人間のへいというものは、移動もするし、ときどきは積極的に効力を持ってくるというようなことであるわけであります。そういうことのために、今度の三池三川鉱山で二十八日の朝起こった暴行事件というものは、これは明らかにピケ範囲を越えた暴力ざたであるのであります。  そこで私は、まず警察当局として、こういういわゆるピケ・ラインというものに対してどういう御見解をお持ちになっているのであるか、ピケと称する組合員集団であれば、警察はこれには手を触れない、こういう御見解であるのであるか、その点をちょっとお伺いしたいと思います。
  14. 江口俊男

    江口政府委員 ピケ限界につきましては、私たちのみならず、法務省おいでになりますが、労働省自体見解におきましても、説得の範囲を越えてピケと称してただいまお話しのような趣旨に出ることは、いわゆる正当なピケじゃない、こういう解釈をとっております。ただピケと申しましても、暴力にわたることはもちろん論外でございますけれども暴力にわたらない範囲であっても、相手によって合法性限界に多少のニュアンスがあるというのは、従来の判例にもあるやに聞いております。
  15. 大坪保雄

    大坪委員 今の最後の点を私十分了解しかねますが、判例にあるのはどういう点でございますか。
  16. 江口俊男

    江口政府委員 刑事局長から詳しく御説明申し上げます。
  17. 竹内壽平

    竹内政府委員 ただいま警備局長からお話しの点でございますが、昭和三十三年五月二十八日羽幌炭鉱事件につきまして最高裁から判例が出ております。その判例によりますと、「暴行脅迫はもちろんその他使用者側の意思を不法に抑圧し、その財産に対する支配を阻止するような行為をすることは許されない。されば、労働争議に際し、使用者側の遂行しようとする業務行為を阻止するためとられた労働者側威力行使の手段が諸般の事情から見て正当な範囲を逸脱したものと認められる場合には刑法上の威力業務妨害罪が成立する。」というように判示をいたしておるのでございます。
  18. 大坪保雄

    大坪委員 ただいまの判例を伺って、私はまことにさもありなんと、最高裁の良識に敬意を表する気持がいたします。そういたしますと、それが三十三年五月の判例としてすでに出ておるということであれば、今度の三池炭鉱の、各炭鉱そうでありますけれども事件を起こした三川炭鉱に第二組合員生産再開をするために、会社団体交渉の結果就労に向かう。ただ状況は、第一組合員がこれを阻止するということを言明しておるし、また事実阻止するためにいわゆるピケと称する集団をなして、かつこれには、これは新聞等もはっきり伝えておりますけれども青竹こん棒を用意しておるというようなことを聞いており、集団行進をしておる。しかもそのやり方も何か戦略戦術を使って、第一班、第二班、第三班というようなものをこしらえて、第一組合員の目をごまかしながら、そのすきをねらって入構するというようなやり方までしてやっておったようであります。しかしながら、はしなくも構内に入った第二組合員と待ちかまえておったあるいは追尾してきた第一組合員との間に乱闘が起こったのであります。こん棒青竹を持って、あるいはその他の凶器になるものを持って多数の者が。ピケと称してすわり込んで、会社の行なう生産作業を阻止するということを明らかに目的としてすわり込んでおるというような状態のものであれば、これは明らかに集団による業務妨害になるわけでありまして、その状況は、そういう判例があればなおのこと警察としても事態を察知して予防対策が講ぜられるべきであった。またそういう準備さえなされておれば、そのときあれほど大きな問題にならないうちに検挙というようなことも行なわれ得た。それがすなわち両当事者の威勢をくじいて事態の混乱をとどめ得ることになったのではないかと思うのでありますが、その辺について、二十八日朝の三川鉱山の入構と入構阻止の乱闘について、警察は、これは業務妨害であるのだ、そのおそれがあるのだという気持をもって対処されたのであるかどうか、これが一点。  時間を節約する意味において続けて申しますが、それから今申しましたように第一組合員青竹こん棒を持っている。それを聞いて、第二組合員もこれを用意しかかったというようなことが伝えられておる。そういう事態であったとすれば、そうして三池炭鉱は前々からこの争議発生以来たびたび繰り返されておる「灯をともす会」というような市民の会との間の乱闘事件もありますが、少なくも三月十七日に第二組合ができた後の第二組合と第一組合との間のいざこざというものは、連日のごとく続いておるわけでありますから、ああいう事態労働組合が衝突すれば、相当大きな暴行傷害事件も発生するであろうということは、十分察知されたと思うのであるが、その場合にはそれらの青竹こん棒というようなものは、何と申しますか、廃棄せしめる、あるいはしばらく預かるとか、そういう処置はできなかったものかどうか。今後の問題にもなりますから、そういう二つの勢力が対立をしたというような場合には、凶器となるおそれのある青竹こん棒のようなものは、昔のいわゆる領置、これを廃棄させるとか、取り上げて預かるとかいうようなことはできないものであるかどうか。今後はそういう事態に対して警察当局としては、要するに予防警察措置としてやる御意思がおありになるのかどうか、その辺のことを一つ伺いたいと思います。
  19. 江口俊男

    江口政府委員 三月二十八日の三川鉱乱闘事件について、警察はそういうことが必至であるというふうに見ておったかどうか、諸般の事情から当然そう見るべきじゃないかという御趣旨の第一点の御質問でございまするが、そういうことは十分あり得るという考えのもとに警戒をしておったことは事実でございまするけれども会社側並びに第二組合側のそれまでの取りきめた態度及び第一組合側の戦術方針等を察知した正規な取りきめの情報からすれば、両者の接触を見ました場合には、乱闘寸前において手を引く、両方離れるということが、公式的な結論なるものと考えておった。すなわち言葉を言いかえますと、いろいろ得ました情報からは、ああした事件にはなるまいというのが原則論、しかしながら感情その他の関係もあって、まかり間違えばああいうこともある、こういうふうに考えたというのが現場における実情でございます。従いまして、警察としては、こういうことは会社側なり、第二組合側なり、第一組合側なりが、乱暴はしない、乱暴されるというような場合には引き返すんだというようなことだけから結論をすれば、特別の措置は要らぬと思いまするけれども、やはりそうはいってもあぶないということで、その日は大牟田警察に福岡県警としては千五百人、荒尾警察、熊本県警としては五百数人の、とにかく普通にない部隊を前進せしめて警戒に当たる、こういうことにしておったのであります。しかしながら、遺憾ながらああいう乱闘が起こったということの原因がどこにあったかという点を現在いろいろ分析をいたしておりまするが、一つは、私たちが知り得ていた第二組合の行動が約一時間ほど時間的に早かったという事情もございます。それからもう一つは、これはだんだん調査の過程において結論を出さねばならぬことでありますが、第一組合側の言い分からすれば、前夜の二十七日に、三角港から船でやってきました第二組合員が第二人工島から縦坑に入る場合に、そのときに第一組合員会社側の者に相当やられた、乱暴されたというようなことを言っております。これはもちろん調査中でありまするが、そういうことから自分たちも武器に類するものを多少持っておったということであります。また四山鉱に向かった第二組合員の人々は、逆に第一組合員ピケが、ただいまおっしゃられましたように、青竹なり、こん棒なりを用意しておったのだから、それでわれわれの方も幾らか持っておったというようなことで、これはどっちが先にどうやったかということは、お互いにフランクに——調査をする経過の中に明らかになってくると私は考えまするけれども、そういう事件の起こらない場合におきまする青竹なりあるいはこん棒なりに対して警察がとり得る処置は、せいぜい任意にこれを説得をして領置するか、そして犯罪と直結する段階においては、御承知のように警職法によって制止の態様としてこれを取り上げるというようなことももちろんできましょうけれども、普通はやはり任意に徹底させる以外はないというわれわれの結論でございます。しかしながら、ただいまのお話のように、二十八日にはああいう事件三川鉱のみならずほかでも起こっておりまするし、また二十九日には山代組一派の殺害事件もございまして、とにかくいろいろ理屈を言ってもしょうがない。民心の不安定の一つの要素になっておる、各自が凶器に類するものを持っておるということが非常に不安の一つ原因になっておるということから、現在におきましては、主として説得をして両者のこん棒等を取り上げているという実情でございます。しかしながら、法律的にはこれは強制できない。いやだと言う場合におきましては、その者を徹底的に追尾する、そしてこのこん棒を使う余地のないようなことにしておくというような方法をとっておるのであります。しかし、この点についてはさらにそういうやり方を強化するよう昨日も福岡県警並びに熊本県警に警察庁としても勧告をいたしたような次第でございます。
  20. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 発言中恐縮ですけれども、ちょっと私から承っておきたいことがあるのです。というのは、この委員会でも今日までこういう事件についてしばしばいろいろ審議をされております。今度の事件も、これは残念ながら何も珍しい事件でないのであって、組合争議等においてしばしばこういう事件が起こって、そうして殺傷事件等が起こった後に国会でこういう議論が行なわれている。事件が起こって後にこういうことを議論するということは私、がずっと見ておると、実にこっけいのような気がするのです。これは初めての問題であれば大いに探求してその方法を講ずるという——今からでもおそくはありませんが、承りたいのは、こういう事件は今日始まったことではない。そこで警察庁としては、一体これは警察の能力に限界があるのか、警察力に不足があるということか、あるいはどこに原因があるのか、こういう事態は防止はできないものか、やむを得ないものだとお考えなさっておるのか。それではもう国民生活というものはきわめて不安になる状態なんですが、そういうことでは、少なくとも国会としては職分が勤まらないと思うのですけれども、直接衝に当たっておられる国家公安委員長から、一体どうしてこんなことがしばしば起こるのか、起こった後にこういう議論がしばしば行なわれておって、警察が幾らどういたしました、こういたしましたと聞くのですけれども、毎度のことでありますから、私は特にこの問題を承っておきたいと思うのです。
  21. 石原幹市郎

    石原国務大臣 能力に不備があるのか、限界があるのかという第一点のお話でございまするが、警察官全体につきましては、昨年から三カ年間で一万名の増員をやると言っておるわけでございます。ごく抽象的に、警察官の数というものは多いとは言えません。世界の例から見ても足りないのでありまして、これは増強をはかっていかなければならぬと思います。  今回の事案につきましては、大牟田署なり荒尾署なりに相当の警備力を配置しておったのでありますが、ただいま警備局長から申し上げましたように、数次の警告の結果、流血の惨を出してまでのことはやらないということを言っておったのでありますが、それにしましても、さらにいつどんなことが起こるかわかりませんので、ごく近接したところに待機さしておったのでありますが、若干の時間のずれ等がありまして、こういう事態になったことはまことに遺憾に思っております。  それから第二点の法制上の問題でありますが、これは前にもやはり、警察官の職務執行をするにつきましては、法制上さらに整備したいということで、警察官職務執行法の改正案を提案されたこともあるくらいであります。法制の整備がされるに越したことはないのであります。しかし、現在の法制の中ででき得る限りの行動をしておるわけでございますが、法制の整備については、かつて職務執行法の改正案が提案されたことがあるくらいであります。その点については十二分であるとは言えないと思っております。
  22. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 それでは重ねてお尋ねしておきますが、国家公安委員長としては、現在の警察に関する諸法規では、こういうことがちょいちょい起こるが、これはやむを得ないのだというお考えですか。そうであるならば、それのよしあしは別として、事人命に関することでありますから、それを防ぐだけの諸制度を確立するというお考えがあるかどうか、それを承っておきたいと思います。
  23. 石原幹市郎

    石原国務大臣 これはなかなかむずかしい問題でありまして、やむを得ないとは言えません。現在の警察力なりあるいは法制の範囲内におきましても、できるだけの行動をとりまして、治安の確立を保っていかなければならぬのであります。しかし、先ほど来いろいろ申し上げましたように、警察力も十全とは言えません。現に整備をしておるような次第であります。法制につきましても、かつて警察官職務執行法の改正の必要を感じて改正案を出したこともあるのでありますから、こういうものも十分とは私は言えないと思います。いつかの機会には、さらに法制の整備等もはからねばならぬのではないかと思っております。しかし、こういう事態が起こるのはやむを得ないのか、仕方がないのかというお問いに対しましては、現在の警察力なり法制の範囲内であらゆる努力をいたしまして、治安の確保に当たっていかなければならない、こういう決意でおる次第であります。
  24. 大坪保雄

    大坪委員 委員長からもお尋ねがあって大臣のお答えがあったわけでありますけれども、私は今の委員長との問答の中で感ずるのですが、警察力が足らぬから幾らっかこれをふやせばいい、警察に武器が少ないなら武器を持たせればいいというようなことでは、こういう社会不安というものは防ぐことはできないと思います。問題はその責任の衝にある警察官の心がまえにあると私は思うのです。それは私が先刻からお尋ねしたいと思ってお伺いしておることは、警察は、労働争議と名のつくものに対しては、なぜか知らぬが非常に消極的ではないか。たとえば暴力団の区取り扱いにしても、いわゆる町の暴力団に対してはこれを排除をいたしておりますというお話であります。しかしながら、いわゆるオルグ団という名をかぶせてきた労働組合応援暴力団に対しては措置をとろうとなさらない。こういうところが労働争議について違法行為があったというような場合について、何か警察が積極的に関係すると、すぐ警察の介入とか官憲の横暴とかいうようなことで反対の議論が起こってくるから、そういうことにおびえてでもおられるのではないかと思うほどに、われわれ一般国民には労働争議に関する事柄については警察はあまりにも消極的であるという印象であります。それは何も私だけではない。すでに新聞紙がはっきり書いておる。雑誌等にも書いておる。「地元で警察不信の声、不介入があだ」というような表題のもとに、町に多くの人権じゅうりんあるいは犯罪行為、犯罪の予謀、そういうことが行われておるのに対して、警察はいかに手をこまぬいておるかということを具体的な例をあげて新聞紙が取り上げて書いております。こういう点が私どもはやはり問題だと思うのであります。もう今日では警察にものを言っても仕方がない。たとえば炭住で第二組合家族がつるし上げを食っていますという訴えを第二組合争議団本部が受けた。今警察へ言ってもだめだ、すぐ青年行動隊を出せ、こういったようなことまでも、大臣もごらんになったかもしれませんが、新聞紙が報じておるような状態であります。そうしてこの二十八首早朝のあの事件以後、ずいぶんだくさんの非行が繰り返されております。私の手元にある資料によって一、二申し上げてみましょう。たとえばこういうのがある。そうしてそれは争議団当事者だけではなしに、一般市民にまで非常に影響されている問題であります。二十七日三番方における応援の経営者——これは関係のない民間人ですが、この三人が宮浦鉱の裏門において自動車をおりたところ、待ち伏せておった数人の旧労働組合ピケ隊員が、いきなりこん棒で袋だたきにし、重傷を負わせ、一名は水の中にたたき込まれ、いずれも全身打撲、二名は頭の裂傷によって五針ないし六針縫う状態である。こういう例が一つある。二十八日、三川鉱の出勤にあたっては、旧労働組合生産再開に備え、竹やり、鉄棒などを用意しておる状況を見て、新労働組合員もこん棒等の準備を始めたので、大牟田署の小林部長が心配をして、新労働組合員に対して、旧労働組合員には絶対にこれらの器具を捨てさせるか、または取り上げるようにするから、新労働組合員も持たないよう宮地副長に指導方を要請したので、宮地副長は新労働組合の代表に強くこれを求め、従って新労代表の指導により構内に入った者は完全に素手であった。ところが衝突による被害は相当多くなった。結局、警察の要請を新労働組合は忠実に守り、旧労働組合からは無視され、そのままの状態で衝突したところに問題がある。あるいは二十八日朝六時二十五分、万田縦坑正門を百五十人の旧労働組合員が開いてさく内に侵入し、久保係長、上野首席を外に連れ出し、洗たくデモでもみ、打撲傷を負わしめた。二人は病院で手当を受けたが、その後も数回デモをかけられたため、生命の危険が感じられたので、家族から保護願いが出され、警察のパトカーで救出されたというような事柄がずいぶんたくさんあるのです。そうしてこの二十八日の朝の衝突の場合には、新労働組合の中に重傷十三名、軽傷百四十二名というものが出ておる。これは三川鉱における例の事件です。一方労働組合側は、傷害の程度はよくわからぬが五十名と称しておる。そのほかに会社の職員が、重傷五名、軽傷三十二名、計三十七名というように出ておるのであります。これは当日起こった最初の事件であります。その後も、先刻申し上げましたように、こん棒青竹を携行して町を横行する、あるいは集団ピケラインを張っておる、こういうような状態である。問題は、先刻委員長お話しになったのでありますけれども労働争議というと警察はきわめて消極的でないかという印象が国民一般にあるということであります。そこで労働争議の場合には、何ゆえに、当事者はもちつろんのこと、世人の安心のいくような、国民の信頼する実力のある警察行動がとられないか。これが先刻委員長のお尋ねになりましたように、何か法律に欠陥があるということになれば、これはどっちの味方をする、どっちの肩を持つということではないのでありますから、立法措置を講ずるということも私は勇敢におやりにならなければいかぬと思う。それが御職責だろうと思うのであります。警職法改正のごときも、必要であればやはりなさるべきである。特に近来の日本は、どんないいことにも必ず反対が出るような状況でありますから、反対が出ることは覚悟しなければならぬ。警職法改正も必要であればお出しになって、国民一般が安心して警察を信頼するような事態に早く持っていかれるようにされなければいかぬと思うのです。いつかの機会にそれも考えましょうというような御答弁では、私どもはどうしても納得がいたしかねる。国民に対しても、日本警察を信頼せよということを言いかねるのであります。先刻江口局長が、凶器に類するようなものは、今日の法制上では任意に提出せしめるよりほかないということを言われた。今日の法制上どうしてもその程度以上に出られないものであるならば、事態の危険を感じた場合には、強制的にそれを提出せしめるような措置も、これはもう当然講ぜられるべきである。いつかの機会でなしに、即刻になさるべきことであると思うのであります。警察は予防のものです。どうも今度の場合のように、事件が起こってたくさんの死傷者ができた、それを担架に乗せて運ぶという役は警察の役ではございません。また犯罪が起こって犯人を追っかけ回すというようなことは、これは警察ではございません。これは検察です。そこのところを私どもは国民の一人として強く要望いたしたいのであります。どうもしっこく繰り返すようで恐縮でありますが、労働争議と名がつくと非常に消極的のように思われる。そういうことはないと思うのでありますが、これらの措置についてもう度大臣からはっきりと今後——ども今後のことを言っておる。轍鮒を枯魚の市に問うということわざがあります。わだちでまさに涸死しようとしている魚を、その場で水を与えて生き返らせることをしないで、すでに死んだ魚を売っている店でお見舞するという、いわゆる六菖十菊になるようなことは、これは警察ではないのでございます。予防こそが国民の期待しているところである。力強い警察というものを国民一般は望んでおる。これがたよりにならなければ、町に暴力団が横行するわけです。みずから自衛しようという気持になってくる。そこを私は非常に憂うるのでございますから、もう一度大臣のこの点についてのはっきりした御見解を承りたいと思います。
  25. 石原幹市郎

    石原国務大臣 警察官の心がまえがまず大切ではないかという御指摘でございます。私も公安委員長に就任以来、機会あるごとに大坪委員の言われたと同じような気持警察当局に伝えておるのでございますが、警察官は法を守り、法を執行する立場のものでありまするから、法の解釈その他につきましては非常に厳格に解釈するといいますか、そういう意味で、見方によっては非常に歯がゆいような場合もあるのではないか。現に私自身もそう感ずる場合があるのでございますが、しかし、その実際執行の任に当たる警察官の立場といたしましては、これもまた考えていかなければならぬ面もあるのではないかと思います。そういう意味で先ほども申し上げましたように、かつて警察官職務執行法の改正案も出されたのでありますが、非常な論議の結果ああいう形になっておりますので、私どもといたしましても研究はいたしております。諸般の情勢を総合判断してこれは進めていかなければならぬと思っております。  労働問題については、特にこの点消極的ではないかというお尋ねでありますが、これは労使の問題については普通の正常な場合には介入すべきものではないということがしみ込んでおるのであります。しかし不法行為が行なわれる場合には、これは厳に臨まなければならないことは申すまでもありませんが、そこの限界の判断がなかなかつきにくいというような場合にちゅうちょ逡巡するような場合が相当あるのではないかと思います。しかし、不法な行為、違法な行為が行なわれる場合には、厳に対処しなければならぬことはもちろんであろうと思います。今後ともよく督励いたしまして、国民から信頼を得る警察というものに一つ仕上げていかなければならぬ、かように思います。
  26. 大坪保雄

    大坪委員 そこで私は石原大臣にあわせて井野法務大臣にもお伺いしたいと思います。  先刻も申しましたように、三池炭鉱のある大牟田市では、今日なお両組合の対峙、両組合に対する多数の応援団の存在というようなことから、不安が去っておりません。特に私どもの耳に入るところでは、これらの暴行、傷害事件あるいは脅迫、恐喝というようなことが組合員家族にまでも及んでおる。特に第二組合員家族に対しては、いわゆる敵の家族だとか裏切り者の家族だ、つるし上げようというような意見がひんぴんとして続いておるようであります。これらの人の人権というものは全く無視されているという事態が多いようであります。この三池炭鉱労働組合いわゆる三鉱組は、いわゆる向坂教室による特殊のマルクシズムの薫陶を受けた組合である、いわゆる暴力闘争第一主義の革命思想に基づく組合であるということをいわれておるのであります。従って組合員に対する統制というものはきわめてきびしい。炭鉱自体がユニオン・ショップというような一種の締めつけ工場になっておるというようないきさつもあってでありますが、統制がきわめてきつい。それがやがて組合員及び家族の生活にまで大きな規則、制限を課しているようであります。いわゆる炭住の主婦たちが買い物に行くのにも、一人では行かせない。連れ立たなければ行かせない。魚釣に行くにも映画に行くにも、届けをしなければならない。行き先と帰りの時間までも黒板に書かなければならない。こういう個人の生活の自由までも犠牲にされておるようであります。その自由の制限の苦しさに、ついに第二組合が起こった。革命主義を奉じておる組合の中に新しい革命が起こったというのが、今日の三池労組の第二組合の発生のいきさつだと私は思うのであります。そういうこともあって、今まで同じ職場、特に地下数百尺の職場でともに助け合いながら働いた人たちが、今日ではお互いに敵視して非常なる憎しみを持って反目をする。ついには血で血を洗うようなことになるのであります。そういう空気の際であるがために、つるし上げあるいは洗たくデモ、——洗たくデモは私は明らかに集団暴行だと思うのでありますが、そういうものが日々やはり繰り返して行なわれているようであります。そこで私は、これは争議の発生の当時からずいぶん繰り返し行なわれておることでありますが、最近特に激発している次第でありますが、法務省としては、人権擁護の立場から、この人権じゅうりんの問題を御調査になったことがあるか、その結果の一端をお話し願いたいと思います。また今のようにつるし上げとか、洗たくデモのごときは明らかに集団暴行でありますが、そういう人権じゅうりんのような事柄に対して、あるいは第二組合生産再開のために職場につこうとする。何人も勤労の自由、勤労の権利というものはあるわけでありますから、働く喜びを味わいたいというので職場につこうとする者を集団の力によって阻止する。これも明らかに人権の侵害であると私は思うのであります。そういう事柄に対して、今後措置をする必要がないというお考えであるか。あるとすれば、いかような措置をなさるつもりであるか。特に先刻来石原国務大臣との間にお話し合いをいたしました集団ピケとかいうような事柄についていかようにお考えになるか、いかようにそういうものに対して対処しようとするか、そのことを一応お聞かせ願いたい。
  27. 井野碩哉

    井野国務大臣 大牟田荒尾の町におきまする争議状態につきましては、私どもまことに憂慮いたしております。三池炭鉱をめぐっての労働争議につきましては、法務省としましても、絶えず人権の方面また犯罪の方面から注視しておりまして、事いやしくも犯罪に触れる問題でございますれば、冷静なる態度をもって検挙もいたし、また起訴もいたしておるのであります。むしろ労働組合の方から警察陣の行き方がきびし過ぎるという非難まで受けているようなわけで、相当に徹底的にやっております。三池炭鉱事件について、すでに昨年の七月以降三十五年の三月二十七日までに十六件、四十四名の事件の受理を受けておりまして、公判請求が十七名、起訴が十九名、捜査中が八名というような処置もいたしております。従って人権問題に関しましても、御承知のように今回の事件は第一組合と第二組合に分かれての感情的な衝突もございますので、そういう点も必ずしも人権問題だけで片づけるのではなくて、むしろそういう問題につきましては、犯罪行為にまで及んだ場合において、そういうものを適切に処理していくという方針と、もう一つ警察の方の力を借りまして、そうしてそういうことのないように事前に防止していくことが適切である。それをいきなり人権問題だけで扱いますと、なかなかむずかしい問題がそこに起こって参りますので、そういう方針で絶えず注視しながらも、法務省関係としましては十分に処置をいたしたいと思う次第でございます。
  28. 大坪保雄

    大坪委員 これで終わりたいと思いますが、ただいまの井野大臣のお言葉の中に警察が強過ぎるという非難を受けることもたびたびあるというようなお話でございます。それは、非難は、いかなる場合にもものは両面から見られますから、あるであろうと思うのでございますけれども警察が間違った措置をしたり、あるいは行き過ぎをしたりした場合には当然非難をさるべきである。しかしながら、当然なすべきことをなさないというようなことではその責任を尽くさないと思うし、そういう事態が少なくなかったのではないかと思うから、いろいろ御注文申し上げておるのであります。日本における労働争議の最近の傾向は、もう世界に類例のないような、どんな小さな労働争議でも、どこかの国の革命騒ぎのような騒ぎをしておる。これは正常の状態ではございません。こういうことでは、労使関係がうまくいき、従ってまた労働者の生活向上もできるわけのものではないのでありますが、必ず騒擾、暴行脅迫を伴わなければ争議にならないようになっておる。これはもう今日すでに病深いところに入ったといってもいいくらいだと思うのであります。今日の時期において改める方向に強く持っていくのでなければ、私は日本労使関係はよくならない。生産も正常に行なわれないでありましょうし、従って、労働者の経済的条件の向上もとうてい期待ができない。それが警察において処置をしていただかなければならぬ事態が少なくないのでありますから、労働問題は本来労使の問題であるから労使当事者にまかしておけばいいようなものの、日本現状ではそうはいかないから、警察においても、予防警察なり人権保護とという立場から深い御検討を願いたい、こう考えて本日御質問申し上げたような次第であります。どうか警察も、親切な同時に勇気のある力強い警察として国民の信頼が得られますような、また法務当局においても、人権は明らかに法律と国の権力によって保護されるんだということに国民の信頼がつなげますように、この上ともの御尽力を願いたい、これを御希望申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  29. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 志賀義雄君。
  30. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 一昨日私は警察庁長官に会いましたが、地方行政委員会に出られて何かかぜをひいて声が出なくなったということで来られないそうで、はなはだ残念でありますが、江口警備局長が来ておられることでありますから伺います。  去る三月二十八日の夜、警察三池炭鉱労働組合、普通第一組合といわれておるものに対して、申し入れをして、棒とか青竹に類するもの全部任意供出という形でやらせた、こういう事実があります。従って、二十九日の当日には、第一組合側は何ら正当防衛の手段を持たずに暴力団のために殺人傷害の被害者になったわけでありますが、こういう事案がありますかどうか。先日私が警察庁長官に会ったときは、あれほど警察電話なんかでも完備したものを持っておるのに、私の調べたものに対しては、まだ調査ができておりません、報告を受けておりません、この次の法務委員会までに準備をしてくれ、こういうように申し入れておきましたが、その点はどうですか。
  31. 江口俊男

    江口政府委員 二十八日の例の三川鉱の紛争のございましたあとで、ただいまのお話では、第一組合だけにこん棒青竹などを警告を発して取り上げ、ほかにはそれをやらないへんぱな措置をとった事実があるがどうかというお尋ねでありますが……。
  32. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 何もそんなことを聞いてやしない。先回りしちゃだめだ。取り上げたとも言わない。任意供出という形で出させたと言っている。第一労組だけのことを聞いている。ほかの方をやらないとも何とも言わない。先回りして話を曲げちゃだめだ。聞いたことだけ答えて下さい。そういう事実があるかどうかということだけ簡単に言って下さればいいのです。
  33. 江口俊男

    江口政府委員 第一組合に対してそういう警告を発した事実はあります。
  34. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 警告を発したのではない。棒とか青竹とかを任意供出という形で警察が持っていったかどうか、そういうことがあるかどうかということを伺っているのです。警告ではありません。組合側はそういう事実があると言っておりますが、その点はどうです。
  35. 江口俊男

    江口政府委員 私が警告と申し上げたのは、ただいまおっしゃるような意味合いのことであって、そういうことを申し上げて提出を求めたことがあります。
  36. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 じゃ、第二労働組合に対しては同様の処置をとられましたか。そして現物を持っていかれましたかどうか。
  37. 江口俊男

    江口政府委員 第三組合に対しましても、同様の措置をとっております。
  38. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 先ほど大坪委員からも質問がございましたけれども、いろいろピケその他については、これは争議行為の中に含まれるものです。それが行き過ぎたかあるいは行き足りなかったということがある場合には、法律上の問題になることもありましょうが、労働争議に対して明らかに第三者である山代組、寺内組というものが出かけていって、殺人、傷害、暴行、こういうことをやっているのでありますが、凶器とかこういうものに対しては前もってどういう処置をとられましたか。組合だけに対してそういうことをやったか。その点についてはどうでしょうか。
  39. 江口俊男

    江口政府委員 ただいまお述べになったような団体に対して、それが凶器を持っておったということを前において現認していないものですから、取り上げるというような措置はやっていないと聞いております。
  40. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 寺内組は三十二年五月短銃乱射事件を起こしたことがあります。これが介入してきたら必ずそういうことは考えらるべきはずでありましたが、その間に何らかの事前の処置はとられましたか。また三十二年五月にこういうことがあったということは、あなた方確認しておられますか。
  41. 江口俊男

    江口政府委員 お答えいたします。山代組なり寺内組なり、あるいはその他四、五の団体が関係いたしておりまするが、そのいずれのものが何年何月にどういう事件を起こしたかということは、私はもちろん関知しておりませんけれども、地元の警察におきましては当然それは知っておったのであります。従いまして、事件を起こしました一団が、事件を起こしまする前に情報宣伝活動と称して回っている間にも、たびたび乱暴な行為に及ばないようにという警告警察としてもやっております。しかし、かつて暴力をふるった人間がその中におるからといって、ふところに何か持っておりやせぬかというような調べ方ができないことは、先ほど国家公安委員長からもお答えになった通りでございます。
  42. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 こういう前科のあるような者が労働争議に介入してくれば、こういうことが起こることはわかりきったことでありますが、さらに奇怪なのは、毎日新聞の三月三十日の記事によりますと、「暴力団の情報にも消極的」という大見出しで書いてあります。そういう方面は全然警察はやられなかったのでしょうか。
  43. 江口俊男

    江口政府委員 私はその「暴力団の情報にも消極的」という見出しの内容を読んでおりませんけれども暴力団については係こそ違え、警察側としては非常に大きな関心を持って、かねがね暴力団の撲滅というか、追放というか、そういうことには努力いたしておるのであります。
  44. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 では伺いますが、五十一名ほどその場で山代組並びに寺内組の者を逮捕しましたね。それは引き続き警察に留置しておいたのですか。その晩一応釈放したというようなことがありますかどうか。
  45. 江口俊男

    江口政府委員 五十一名の逮捕とおっしゃるからそういう問題になりますが、同行を求めて五十一名連れていったことは事実であります。しかし、これは法律的には、犯人だということがわからないものですから、任意同行の形で連れていったわけであります。従いまして、その晩九時ころまで調べたそうでありますけれども、その晩は犯人を特定するに至らない。ということは、もちろんその現認者がいなかったという点もありますが、被害者側においてもいろいろ事情がございましたろうけれども、その日は協力を得られなかった。あしたになればだれだれが入っておったとかだれだれがやったという、ことを協力する、そういう協力を得られる見込みが翌日にはあるけれども、その日にはないということで、これは純粋に法律的に、釈放というか、そこを放さざるを得ない解釈になるものですから、その晩の九時ごろでありましたか十時ごろでありましたか、夜おそく一たん帰宅をさしております。
  46. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうすると、たとえば管生事件のように、警察が駐在所の中にダイナマイトをしかけておいてわざわざ犯人を仕立てるようなことをやって、これを長年にわたって、警察だけでなく、さらには未決監に拘置しておった事実があります。そういう場合には直ちにやる。しかしながら、こういう場合には、明らかに殺人が行なわれ、それも徒党を組んでやっているのです。殺人だけではない、暴行をやり、傷害をやっておるのです。みんなそこの現場にいてやった人間じゃありませんか。それを釈放する。その結果はどうです。山代組、寺内組の頭株の連中はみな逃げておるじゃありませんか。新聞にはこれを大見出しで書いておる。翌日出させる。肝心の犯人、この暴行、殺人事件を組織した者、またこれを教唆した者、これに金品を提供した者、こういう者は一切隠させる余裕と時日とを警察がわざわざ与えたということになるでしょう。そんなことがわからない警察ではなかろうと思う。どうしてそういうばかなことをしたのです。共産党なんかがやる場合、また労働組合がやる場合に、こんな者を釈放しますか。犯罪がないものまでもでっち上げて、多年引っぱり込んでおくようなことをする警察が、この場合に限ってなぜこういうことをしたのです。
  47. 江口俊男

    江口政府委員 先ほどお答えした通り、純粋に法律的な問題であります。被疑者を特定することができなければ、その中にだれかそれがおるはずだということで全員を逮捕する、とめるとかいうことは当然できぬわけであります。これは志賀委員のおっしゃるように、ほかのだれが同じ状態でありましても、警察はもとより同じような措置をとらざるを得ない、こう考えます。
  48. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それでは三月三十一日の毎日新聞を見ましょう。この通り「主謀者ら、もぬけの殻」と書いてある。「三十一日午前一時半五班に分かれ逮捕に向った。」おまけにその前に逮捕状を請求しているということを警察側からも発表して、早く逃げてくれということを言うにひとしいじゃありませんか。早く証拠を隠滅してくれ、早く打ち合わせを済ましてくれ、事実上はそうなるでしょう。これでは警察暴力団がぐると言われてもしようがないじゃないですか。この場合に限ってなぜこういう手ぬるいことをやられるのですか。法律に基づいてそれ以外にする必要はないというのなら、法律に基づいて警察がわざわざ交番にダイナマイトをしかけて犯人をでっち上げるということは、どの法律に書いてあるか、一つ言ってごらんなさい。
  49. 江口俊男

    江口政府委員 志賀委員から、先ほどから何か警察がダイナマイトをしかけてどうこうというようなお話が何べんも出ますが、そういう事実は私全く初耳で、何のことを言っておられるか、それと比べることは私は適当でないと思いまするが、荒尾事件についてその場で犯人を、逮捕留置することができなかったというのは警察としても残念であります。そのためにただいまおっしゃったような余裕というものができたことにつきましてもさらに残念でありまするが、ただいま出かける前に確かめましたところでは、もちろん人数は多うございませんけれども、現在までに十八人の逮捕を見ておりまするから、その中にはもちろん幹部もおります。
  50. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 幹部と言ったって、首謀者はみな逃げているじゃありませんか。まして菅生事件というのは天下周知の事実だ。警備局長ともあろう者が何を言われるのかわかりませんなんて、そんなことじゃ通りませんよ。そんなことだからぬけぬけして戸高君をまた警察に入れるようなことをしているわけです。そんなことで世間がごまかせると思ったら大きな間違いです。  さらにこの山代組、寺内組というのは何でしょう、一方では三井建設、山本組などの三升下請業者に常時使われている者です、他方では市民義勇団、大牟田再建運動本部などにも参加しています。大牟田再建運動本部には、日経連及び三井から三千万円の資金が出ておるということが言われております。会長は三井鉱山の坑木業者である円仏という人物であります。こうなっております。あの人工島から入るときにこの三井建設の者が協力しておったということです。さらにもう一つは、殺人事件の起こった現場で、会社側四山鉱の職員で、と長浜という採炭首席係員と白谷係員とが、つるはし、鉄棒、こういうものを暴力団に構内の屋根の上から供給しております。こういうことは御存じでしょうか。
  51. 江口俊男

    江口政府委員 ただいまお話のありましたうちで、金銭がどこからどう動いているということについては存じておりませんが、最後の山代組一派四山鉱正門前の第一組合ピケに突入したというか、そこで乱闘を起こしました際に、ただいまおっしゃるような者が武器を提供したといううわさは聞いておりますので、そのうわさの真偽については、目下荒尾署において捜査中であります。
  52. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 うわさの真偽ではないのです。すでに三池炭鉱労働組合からこの二人に対して告発が出ております。あなたが今言ったように真偽を確かめるとかなんとかいう段階じゃないのです。それよりずっと進んでいる。こういうところまで来ております。このように見てきますと、大牟田再建運動本部あるいはもう一つ「灯をともす会」というのもあります。市民義勇団というものもある。こういうものが動いておる。日経連という名前や三井本社という名前が出ているが、これは暴力行為等処罰二関スル法律を見ても、人に金品を与える、あるいは利益を供与する、こういうことをやる場合には、明らかに刑事上の犯罪になるということを、この三条で言っております。どうです、ここで三井の本社と三池鉱業所と、それから市民義勇団、「灯をともす会」並びに大牟田再建運動本部、こういうものに対して出かけていって帳簿を押収するだけの勇気がありますかどうか、それを伺いたい。
  53. 江口俊男

    江口政府委員 それは現在において勇気の有無の段階じゃございません。捜査を進行させていく上において、そういう今おっしゃったような事実があって、そういう調査をする必要があるということになれば、勇気がなくたってあったって警察は取り上げます。
  54. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そんなことを言ったって、五十一人をみな釈放しちゃって、首謀者に逃亡する時間を与えて、そんな者がつかまりませんからそこまで手が及びません。いつになったらできることです。こうなってくるとどういうことが言われるか。最近こういうやくざの連中、暴力団の連中が、あと警察にまかせるということを言っている。その警察は第一労働組合から棒だの青竹に至るまで取り上げて無防備の者をあいくちで刺す、こういう事態までも引き起こさせたとするならば、ここから出てくる結論はどういうことになります。あなた方が主観的に何と弁明されようと、三井という資本家、その背後にある日経連、それからまた業者、こういう暴力団警察、みんな何だか一致した行動をしているように、常識のある日本人なら受け取りますがね。その常識についてあなた方は何か抗弁されますか。
  55. 江口俊男

    江口政府委員 だんだん調べていくうちに、ただいま志賀委員のおっしゃったような事実が、全部かあるいはその一部か出てくれば、当然警察としては手を入れるのでありまして、そう警察は絶対やらないのだというように早まって判断してもらわないようにお願いしたいと思います。少なくとも、会社側あるいは暴力団と称されるものが警察とぐるになっているというのが常識だとおっしゃるならば、その常識はまことに遺憾であり、かつ警察が少なくともタッチしている、いないという意味合いにおいては、これが常識であるならば、その常識は門違いでございます。
  56. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ずいぶん勇敢なことを言うものですな。というのは、三十一日でしたか朝日新聞の社説に、背後関係を突けということまでも書いてある。背後関係というのは今言ったようなことを意味しているわけです。そうすると朝日新聞の社説というものは、警察当局から見ると、世にも非常識なことを言っておる、こういうように言われるわけですか。
  57. 江口俊男

    江口政府委員 犯罪が起これば、ことにこの種の今度のような犯罪が起これば、背後関係まで追及していくというのは捜査の常識でありまして、このことに関する限り社説は正しいのでありまするが、ただ背後関係警察がおるからそれを突けというふうに書いてあるとは、私読みませんけれども、そういう意味でございますか。
  58. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 何といっても第一組合から取り上げておいて、無防備にしておいて、暴力団があいくちでやれるようにしたということは、客観的に見て、そうなっておるじゃありませんか。そこで、警備局長よりもっと責任のある公安委員長に伺いますが、久保清君という一人の労働者——新聞を通じて見ても、現地に行ってみても、非常におとなしい人なんです。こういう人が殺されたということに対して、石原公安委員長はやむを得なかったとおっしゃるか、哀悼の意を表せられ、こういう殺人が起こったということについて徹底的にその背後関係まで洗う御決心があるかどうか、それを伺いたいと思います。
  59. 石原幹市郎

    石原国務大臣 久保清君が死亡したような事件が起こりましたのは、まことに遺憾であります。先ほど来警備局長が申しておりまするように、この山代組その他の、当日乱入いたしました者に対しましては、逮捕令状を求めて、ただいま逮捕、捜査中でございます。  暴力行為に対しましては、私は右であろうが左であろうが、いわゆる暴力排除ということについては徹底的にやらなければならないという考えを持っておるものでございまして、厳重なる取り調べをしたい、かように思っております。
  60. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ところで先ほど大坪委員がしきりに催促し、公安委員長もそのために前の国会に警職法も出した、こういうふうに言われて、そうして警察力の整備ということを言われたのでありますが、こういうことが起こりますと、肝心の暴力団なんかに対する処置、またこれを教唆した者、こういう殺人罪を組織した者、金品を提供した者、こういうことを取り締まるのが第一であるにもかかわらず、警察力の整備とかなんとかということで、石原長官、あなたは警職法をお出しになるつもりですか。そこを一つ伺いたい。油断もすきもないからね。
  61. 石原幹市郎

    石原国務大臣 先ほども申し上げりましたように、現在の警察官職務執行法にはまだ足らざるところが相当ある。従いまして、去る国会において提案をされたような次第であります。ああいう経過をとっておりまするので、ただいまも研究は続けておりまするが、これは議会という相手のあることであります。諸般の事情を総合して、そういうことは今後の問題を判断していかなければならぬと思います。
  62. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 最高検からは井本検事が行かれた、それからまた法務省刑事局からは河井刑事課長が行かれた。その報告は来ておりますか、まだでありますか。
  63. 竹内壽平

    竹内政府委員 本日三時ごろまでには帰る予定であります。
  64. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 井本検事は、今江口警備局長が白ばくれたあの菅生事件についてはいろいろとここで弁解されておったが、とうとう弁解し切れなくなった何がありますが、一つ法務大臣に伺いたいのですが、そういう報告は、これは法務行政にも関係があることでございますから、その報告の結果は法務委員会にお出しになるのが当然であると思いますが、そのお心組みでございましょうかどうか、それを伺っておきたいと思います。  なお、今日の状態では、今度はまず第二組合労働者が出てきた。私はこれはちっとも憎みません。こういう者を扇動した者をけしからぬと思っている。それから暴力団が出てきた。次は、今度は警察の出る番だ。これは警察の出番らしいのですが、ここでまた不測の事態が起こると困る。そういう点について法務大臣として、この報告について、ここに出していただきたいことと、こういうふうなべらぼうな事件が起こることについて、御見解を伺っておきたいのです。
  65. 井野碩哉

    井野国務大臣 井本部長、河井刑事課長の報告は、私どもむろん受けて、十分この実態を把握したいと考えておりますが、まだ捜査過程にございますから、その報告を全部出すというようなことはできないかもしれません。差しつかえないものはもちろん御質問に応じてお答えもいたしますし、また資料の御要求がございますれば、差しつかえないものは出したいと思います。  この事件の、実態につきましては、先ほど来も申し上げておるように、私どもまことに遺憾に思っており、一日も早く解決を要望しております。従って、労働大臣、公安委員長、その他と絶えず協力してこの問題の解決に努力しております。法務大臣といたしましては、事態が犯罪行為に触れます場合においては、厳然たる態度を持って、右翼であろうと、あるいは労働組合であろうと、そういうことは少しも差別なく、厳正に処置して参りたい、こう考えます。
  66. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ところが、法務大臣一つ伺っておきたいのは、例の証拠閲覧の問題でもわかりますように、検察庁でやった場合に、これが労働組合なり、あるいは社会党とか共産党とか、民主団体に有利になるようなものはとかくお隠しになる。諏訪メモの場合もそうですが、第一、松川事件にしたって、機関車及びその動力輪、こんなものは地検の倉庫にもしまえないものですよ。隠滅しようにも隠滅しがたいものですよ。これがどこに行ったかわからない。そういう離れわざをやる検察庁ですから、できるだけここではっきり出して下さいよ。捜査の過程だからと言われるけれども、正当な捜査ならばいいですけれども、今までのところ、井野さんが法務大臣になられるまでのやり方は、どうも信用できないんだ。だから、一つここであなたは、法務省健在なり、法務大臣健在なりという意味で、今度は相当徹底したところをやっていただきたいのです。今度のことは、暴力団が殺人事件を起こしたこと、これが主眼点ですね。それだのに、公平という意味か、右翼であろうと労働組合であろうと——よけいなことですよ。今の事件は、暴力団が殺人行為をやったのが問題でしょう。ことに労働組合法の第五条第二項第三号には、明らかに、連合団体である労働組合の下部団体の単位労働組合員は、その組合のすべての問題に参与する権利及び均等の取り扱いを受ける権利を有するものと規定されております。大坪委員によりますと、外部団体の他の労働組合員が来ること、現地にかけつけること、これが一番悪いというようなことを一合っているが、これは労働組合でも当然正当な問題です。問題は、今度は外部団体である暴力団体が介入して殺人事件を起こした、これが問題なんです。だから、右翼であろうと左翼であろうと、こんな公平ぶったよけいな形容詞は抜きにして、一番肝心なここのところを徹底的にやるんだということを言っていただきたい。どうも聞いておると、石原公安委員長井野法務大臣も、右翼と左翼とを問わずと言われるが、左翼で今までやったということは、みんなでっち上げじゃありませんか。そんなことをやったって、必ず失敗するんだから。その点一つ伺いたいです。
  67. 井野碩哉

    井野国務大臣 志賀委員は共産党に属しておられますから、そういう御議論が出ると思いまするが、法務省としては、犯罪が起これば、右翼であると左翼であるとを問わず公平に扱うということで、犯罪が起こらないものをどう扱うということを申し上げておるのではないのであります。今度の場合でも、いわゆる山代組が殺人事件を起こした、これは思想関係ではございませんが、もしこれが右翼に属する暴力団であっても、それは法務当局としては厳正なる態度をもって臨むということを申しまげておるのでありまして、事件が起こらなければ、右翼、左翼のことは何も申し上げる必要がないと思う。事件が起こりましたから、その取り扱いについては別に右翼であると左翼であるとを区別して取り扱わないということを申し上げたのであります。
  68. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 最後に一つ公安委員長に伺いますが、今度の事件は、今言ったように暴力団が起こしたわけです。それに持ってきて、右翼であろうと左翼であろうと労働組合であろうと、こういうよけいなことは、もう今井野法務大臣が言われたように、公安委員正長もやめていただきたいのでありますが、柏村警察庁長官に会いましたときに、暴力団といわれている者でも、現に犯罪行為が明らかに起こる直前、あるいは起こしたときでないと捜査できないと言うのだけれども、三十二年五月にこういうピストル乱射事件も起こしているようなわけであります。ところが共産党だの民主団体の場合には、警察法第二条の犯罪の予防ということで、何ら犯罪がないことについて、いろいろと警察が介入してきている例が多々あるのでありますが、そういうことの報告は公安委員長に参っておりませんか。公安警備の費用というものは非常に膨大なものが出されておりますね。そういうことの報告は公安委員長のところに参りますか。大坪委員へのお答えを伺っておりますと、どうも公安委員長はつんぼさじきに置かれているのじゃないかと、私はあなたのためにいささか心配になるのですが、そういう点はどうでしょうか。
  69. 石原幹市郎

    石原国務大臣 公安委員長というのは公安委員会委員長でありまして、公安委員会警察を管理しておるわけであります。公安委員会に対しましては、警察の長官以下各局長より週間のいろいろの情勢は報告がずっとあるわけであります。さらにまた、ことに問題等のありまする際には、具体的問題について直接公安委員長への報告等も受けておりまするが、各般の問題にわたりまして警察のことが一切私の耳に入るというところまでには、率直に申し上げて公安委員会委員長というものはなっておりません。
  70. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 非常に膨大な公安警備費というものが年々予算に計上されて、それが増加しております。井野さん、公安調査庁についてもそうです。そこで石原公安委員長、こういうことをお考え下さい。年々公安警備費が多くなるので、警察の中でもそれ以外の者が非常に嫉妬心を起こすから、少しはそっちへ金を分けてやって、警察全体を公安警察のためにいわばまるがかえにするような方策を講ずることも必要だということを警察庁の側から各県警察へ訓示をしたようなことがあるかないか、これを御存じでしょうか。
  71. 石原幹市郎

    石原国務大臣 御質問の趣旨がよく私のみ込めなかったものですから私語をしておったわけでありますが、ないそうであります。  私は、警察は、刑事警察なり警備警察も、これはもう一切同様に警察の機能を発揮する意味において必要なんであって、ことにいわゆる警備の第一線で働いておるような人は少し優遇しなければいかぬじゃないかということで、特に三十五年度の予算にはそういうことも若干配慮しておるような次第であります。公安警察、警備警察だけを特に偏重してどうという気持は私には毛頭ございません。
  72. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 今警備局長がうしろから、ないないなんて盛んに知恵をつけておった。そうは言わせませんよ。私が法務委員会で発言したときに、証拠のないことはこれまで一つも出しておりませんね。あなた方の隠されることをちゃんと証拠を突きつけて問題を究明しております。そういうわけでありますが、石原公安委員長はどうも御存じないようだ。イモの煮えたも御存じないというたぐいらしいのでありますが、ではこの次に私証拠を出しますから、そのときには公安委員長もぜひ御出席になって、これでいいのかどうか、こういうことを御答弁願いたい。と申しますのは、そういう犯罪団体でない、憲法に認められた堂々たる存在の共産党なんかに対してこういうことをやる。私は、前の社会党の鈴木委員長とある列車の食堂の中で話をしたときに、ちょうど菅生事件あとでした、共産党はああいうことまでやられて大へんだなと言うから、鈴木委員長、あなたのところのどこそこの都委員会の書記長をやっている人はスパイですよと私から言ったことがある。社会党にも行っているのかね、それは大へんだ、こういう話でありました。至るところでこういうことをやっておる。共産党だけじゃないのです。今度は証拠を持って、御答弁を願います、そうしないと、公安警備費をそういう  とんでもない方面にばかりたくさん使うから、今度の三池のようなことも起こってくるのです。暴力団に対して手薄なのと、霊犀一点相通ずるというように、つかまえた者をわざわざ釈放して、親分と相談して、早く親分を逃がせ、そうしてだれが自首するか、だれが男になるか、そういうこともよく打ち合わせて来いと言わぬばかりのことをやっているじゃないですか。費用の使い方でも、こういうことをやっているから、こういう結果になるのです。そういう点で、この次には証拠を出してやります。そうしますと、今度の三池事件が起こるということもこれは当然だということがはっきりして来ます。公安委員長、少しは警備局長なんかのやり方を監督しなければだめですよ。これだけ申し上げて、八木委員が待っておられますから、今日は終わります。
  73. 瀬戸山三男

  74. 八木昇

    八木(昇)委員 すでに自民党、共産党の方から質問がありまして、時間も相当たっておりますので、私はできるだけ簡潔に何点かお伺いをいたしたいと思います。社会党といたしましても、法務委員会においても、数点はどうしても明らかにしておかなければならぬ責任がございます。実は私は一昨日の朝三池炭鉱現地へ参りまして、けさほどこちらへ帰ってきた。従いまして、実際に現場もつぶさに見て参りましたし、いろいろな方面から話もこまかく聞いて参りました。その上に立って数点質問をいたしたいと思うわけであります。  先ほど志賀委員から質問がありましたが、最初に二十八日の三川鉱で起こりました第一、第二両組合のいわゆる衝突、あの事態のときの状態でございます。大体御存じだと思いますが、笹林公園に集まって、隊を幾つかに区分けをしておるわけです。どういうふうに区分けをしたかといいますと、簡単に申し上げますが、先頭の隊が二、三百名で、これは全部赤はち巻をしておる。二番目の隊は全員黄色のヘルメット帽をかぶっている。これが大体百名くらいです。  それから三番目の隊は全員白はち巻をしておる、これがやはり二、三百、最後尾の隊が水色のはち巻をしておる、これが約四百人、どの隊も全部五列縦隊で、笹林公園から行進を始めている。そしてその先頭の赤はち巻のデモ隊は目つぶし、それから一部こん棒を持って行進をしておる。第二の黄色のヘルメット隊、これが戦闘部隊です。これが中核部隊です。これは全部手に手に一メートルぐらいの麻縄の先に、直径一寸ぐらいの鉄のま新しい先のとがったかぎ型になっておるかぎをくくりつけたものを持っておる。そして第三隊の白はち巻隊が、前衛の二つの隊が戦うた間隙を縫って、へいをおどり越えて中へ入っていく、こういう計画であって、そうして一番最後の青はち巻隊というのは予備隊、どこかから第一組合応援隊がかけつけてくるだろう、そういう場合の衝突部隊、こういうことで非常に計画的に予定をして笹林公園からずっと行進を始めてきておるわけです。そうして大体の状況は御報告があっておろうと思いますが、大体そういう形でずっと行進をやって参りまして、何とか橋という橋ですが、その橋を渡りましてから最後に喊声をあげて突撃した、こういう経過なんですよ。その間先ほど志賀委員から御質問があったが、第一組合に対しても第二組合に対しても、いろいろと話し合いをして、木刀類その他の凶器の取り上げというようなことをやった、こういう御説明でございましたが、警備局長さんにお伺いをいたしますが、この二十八日のこういう事態のときには警察はいかなる措置をとられたか、これを承っておきたいと思います。
  75. 江口俊男

    江口政府委員 こん棒その他の取り上げ、任意提出を求めたのはこの事件があったその後でございますが、ただいまお話のありました三川鉱事件の概要は、正直なところを申し上げまして、今お述べになった方がむしろ詳しいくらいであります。私の方も詳細の点について知りたいものですから、現在調査員を派遣しておるのでございますが、まだ戻って参りませんので、今御説明になった点がわれわれの調査と一致するかどうかということをちょっとここで申し上げかねるのであります。  私の方の得ております連絡では、大体今おっしゃったようなことに見ておりますけれども、大体、第一隊、第二隊、第三隊に分けてその中の二つが陽動作戦といいますか、ピケ隊をその方に要撃させておいて、第二隊、第三隊のうちの一隊が妨害の少ないところから中に入るというような方針を立てて五百名ほど入った、こういうふうに聞いております。一番問題になりますのは、ただいま私が多少のこん棒を持っておった者があったやに——それも調査中だということでありますが、写真報道を見まして、両方やっておりますから、持っておったに違いないと思いますけれども、そういうふうにかぎのついた麻なわを持っていた云々ということや、それから一斉に突撃して入っていったというふうには今のところ私は聞いておりません。  それからそのときに警察はどうしておったかというお話でありますが、警察の立場としては、先ほども申し上げました通り、両方が従来自分たちの内部で取りきめておいた通りに運べば、そういうわあといった衝突はないはずになっている。しかしながら、ああいう先鋭化したといいますか、感情のたかぶっている部隊同上の接触でありますから、不測のことも起こるかもしれぬというので、前の日から大牟田に千五百の福岡県警察官、荒尾に五百の熊本県警察官を集結させておったという状態であります。しかもただいまおっしゃったような門の中に突入といいますか、あるいは私の得ている報告通り二隊が陽動して一隊が大した妨害なくて入ったといいますか、いずれにしてもそのことがあったのが七時前後じゃないかと私は思いますが、そのときには大牟田署を出てさらにその現場に近い諏訪橋及び三川巡査派出所というところに八百名近くの者が行っておった。それがどうしてその乱闘に間に合わなかったかということについては、  一番問題になる点でありますから調べておりますけれども乱闘になったら、警察官といえども、スムーズに平地をかけるがごとく行けなかったという事実、従いまして、警察官自身もへいを乗り越えて中に入っているというういうことも考えなければならない。しかしながら一番根本になりましたのは、私どもの情報の取り違えであったかもしれませんが、第二組合の行動が、私たちが得ておった情報からすると、一時間ほど早かったということで、時間的に警察官の現場出動が非常におくれたというか、事件に接着してしかできなかったので、現場に到達したときにはほぼ乱闘が終わっておったといつうことになろうかと現在ではそう考えております。
  76. 八木昇

    八木(昇)委員 済んだことといえば済んだことでございますけれども現地においては、将来も不測の事態が予側されるという状態でありますので、やはり伺っておきたいと思って聞いておるのですが、今のお答えのように、これは大へんな警察官の手落ちだと思います。御承知のように、炭鉱では一番方は六時に繰り込みを始めるわけですから、そういうことがわからぬということはあり得ないのですよ。ですからそういう点からいきましても、大牟田に千五百名の警察官を配置したといっても、これがかりに二千名であろうが三千名であろうが、肝心なときに間に合わないようなことでは話にならない。笹林公園から諏訪橋を渡りまして三川鉱港クラブを過ぎるころから気勢を上げてデモ態勢に入っていった、この間の距離は相当ある、二キロ近くあるわけです。ですからこの時期に警察隊が来ておれば、たとえば第一、第二組合の中に割って入るとか、説得するとかいろいろな行動ができたであろう。それをやった上でなおかつそれが防ぎ得なくてああいった惨事になったというならまだしも、何千名警察官を動員しておろうと、一番方の繰り込み時間をほんとうに知らなかったとすれば、これほどの失態はない。  そこで、凶器の問題ですけれども、たくさん押収されておりますからこれは門違いはありませんけれども、かぎのついている麻なわや鉄棒などがたくさん押収されておる。それは炭鉱でトラフ受けというのに使う鉄棒だそうです。下にこんな鉄棒があって、ここの下に板のようなものがあって、それが全部押収された。こういうような点から考えまして、これはそのときにおける警察の不手ぎわという点はお認めになっておるのでありましょうか。
  77. 江口俊男

    江口政府委員 一番方が六時ということは、平常の場合においてはあるいはそうかもしれないと思いまするが、ああいう事態というか、生産再開という場合に、いつもきめた時間から始まるかどうかということは必ずしもそうではないので、福岡の警察として前の日まで入れておった情報は、七時に笹林公園に集まって、大体八時ごろ門のところに行く予定であるということは、警察としてはこれは第二組合と話し合ったり会社と話し合ったりして約束をするというような形じゃございませんけれども、得ておる情報によってそういう確認をしておったわけです。だから六時と考えなければならかった、一時間ぐらい違ったってできるようにしておくべきであったという点は、それは認めますけれども、やはり七時に行動を開始して、八時ごろに両者の接触があるとすればあるんだという見込みで部隊を動かしておったということは事実です。
  78. 八木昇

    八木(昇)委員 これはそう言われましても、どうしても理解できませんよ。それは何名かの警察官は当然パトロールをしておるはずですから、笹林公園に六時に集まるといいましても、六時にぴたっと千何日名のデモ隊員が集まって、そうして直ちに行動を起こしたなんということはあり得ないのですからね。ずっと集結をしてきて、隊伍を組んで、そうしていよいよスタートを始めるまでに相当時間がありますし、スタートして現場到着までに相当の時間がかかります。その間にパトロールさえもしていなかったと思われてもいたし方ないでしょう。ともかく続々笹林公園に集まりつつあるということくらいはすぐ伝えられ得るはずなんです。そういった点をいろいろ聞きましても私どもふに落ちない。  これは公安委員長に伺っておきたいのですけれども、今のようなことなんですが、これは警察としてもそういった点について不手ぎわがあった、あるいは行き違いがあった、ミステークがあった、そういった点を感じておられるのでしょうかどうでしょうか。今後またぞろそういうことがありますと、非常に工合が悪いです。
  79. 石原幹市郎

    石原国務大臣 警備局長からもいろいろ説明いたしておるのでありまするが、私が聞いておりますることの中にも、両組合にもたびたび警告をいたしまして、問題を起こさぬように、暴力乱闘等のないようにということを言うておった。その際両方とも流血の惨まで起こしてはやらないというようなことを言うておったのでありまして、まあしかしどんなことが起きぬとも限らぬというわけで、ごく近くまでは行っておったのでありまするが、その間、入ろうとして、やはり阻止を受けたり、それからへいも乗り越えていかにやならなかったというようないろいろなことで、若干入構がおくれて、入ったときにはすでに乱闘が起こっていた、こういうことが筋なのではないかと思いまするが、警察からもなお現地にも今調査に行っておりますので、それらの報告書等とも十分あわせて考えてみたいと思います。
  80. 八木昇

    八木(昇)委員 時間を節約いたしまするので、先の質問に移りたいと思いますが、あとは二十九日の四山鉱の南門のところの例の刺殺事件に関連しての問題です。これも私ども非常に遺憾に思うのですが、ふに落ちない点は、山代組の組長、それから寺内組の組長が先頭に立って指揮をいたしまして、トラック一台、乗用車十二台を連ねまして、三池の第一組合事務所へ参りましたのが一時半ごろなんです。そこで組合の幹部、組合の副長と面会をして、そうしてすご文句を言って、このときには三、四分で引き揚げておるわけです。そのときには福岡県警のパトロール等がおりまして、警察もそれに立ち会っておるようです。そのときに、おれの方の若い君たちは非常に憤慨しておる、従って今後どういうようなことが起こるかわからぬぞというような意味のことを言って引き揚げておるわけです。そして以後、その十三台の車両に分乗した人々は、あっちこっちデモをして回って、その間暴に報いるには暴をもってせよというような演説をして回っておるわけです。そしていよいよ今の四山鉱の南門に至りまして、そしてその南門に至った時間はもう五時近くなっておる。その間ずっとそういう行動をしておるわけですね。これは本会議の質問あたりで赤松代議士等が実際に写真を示しますので、きょうは遠慮しておきますが、その車に、乗っておる暴力団の連中なんか、こん棒などを全部立てかけて中に乗っておるのが写真でもぴったりわかっておる。それから南門のところでもいろいろなことを言ってやったのですが、そのときには南門は第一組合の数百名のピケ隊がおったそうでございますが、そのときにもピストルなどをポケットの中に隠し持って、こう突きつけ、一部の者は短刀を引き抜くまねをしまして、引き抜こうとしておる写真もあります。ヒケ隊に対しまして、出てこい、やってやる、はち巻きを締めたやつはみな殺しにするというようなことを口々に言っておるわけです。そのときに南門の方では山代組長が、ここでやったら負けるぞということでそれを押えた。そして南町から正門の方へ、これは百数十メートルくらいですが、さらに前進をいたしまして、そこで事件を起こしておるわけです。その閥少なくとも福岡県警察のパトロールは南門の場面、それから表門の方に移動した場面に全都おったわけです。そういった状態なのに、どうしてあらかじめ何らかの形の予防措置をとらなかったのであるか。こういうふうに集合して凶器を持って集まっておる集団に対して、いろいろやり方はありましょうが、何らかの措置がとれないのであるかどうか。もしとれないならば、一体どういうわけで措置がとれないか。私は法律の専門家でございませんから、一般国民がよくわかるように説明をして下さい。
  81. 江口俊男

    江口政府委員 四山鉱正門前におきまする山代組のなぐり込み状態につきましては、私の受けている報告も、事案そのものは大体それに似ておるのでありますが、その間警察のとりました措置については、あるいは現地における説明も不十分であったと見つえまして、何もそれまでやらなかったというふうに御解釈になっておるようでございますが、私の受けております報告によりますと、それまでにやはり署の弊一中備課長等が山向岸向いて、法律に許された警告をして、絶対乱暴なことをしないということを約束さしておる事実もございます。また熊本県の四山鉱南門の検問所におきましては、これはまことに残念ですが、警察は制止の措置に出たわけですけれども、それが実力によって突破されたということはまことに遺憾ですが、これは警察官の手薄といいますか、六名の検問員がおりました。それにパトカーが一台、パトの要員が二名、計八名おったところに、ただいまおっしゃったような自動車の隊列が来て、うしろの方の何台かは止まろうとしたのですが、前の方はずっと行ったというふうに聞いておるのであります。それでただいまお話しのように、それらの暴力団といいますか、乱暴な一味がもともと言動車を乗り回しているのだから、その途中で何らかの措置ができるのではないかという疑問でございますが、これは先ほど申し上げたように明らかに凶器——短刀、ピストル等を持っておるということが確認されますれば、本人の意思いかんにかかわらず、それは三取り上げるということもできますけれども、いかに前科者でありましても、それを持っているであろうというような意味合いにおいてそれを提出させるということは許されないことでありまして、警戒をする以外はないわけであります。  それからもう一つは、その連中がピケ破りに行って、そこでこらしめてやるというような目的のもとに行動するということがわかっておりますれば、それはもちろん犯罪がまさに行なわれようとしているという解釈をとるべきでありまするから、そこで警告及びそれに続いて制止というところに出ていくべきでありまするけれども、やはりあの事件を起こしました前までは、それは言葉は乱暴であったかもしれませんけれども、主として炭住街で第一組合が第二組合家族を村八分にすることはけしからぬ、こういうことをやめなければ承知せぬぞというような意味の宣伝をしつつ市内を練り歩いたということは事実でございますので、それについては衝突しないようにとか、乱暴ざたに及ばないようにという警告はできましても、そういうことをやめろ、回ることをやめろということは、その時期においては言えなかったものと私は考えております。また言うべきものでもなかった、こういうふうに思うのであります。  それから、警察官は、今私が疑問に思って、さらに詳しく調べさしておりまするのは、検問所を突破された警察官が八名現におるわけであります。これが突破されてからどうしておったかという問題があります。これは直ちにパトカーの無電を通じて本署に連絡をしております。それと同時に正門の方に追いかけていったかどうかの問題は、これは追いかけていってない。それはなぜ行かなかったかとなると、ピケ隊の一部に取り巻かれて、何であんな乱暴な車を、検問ができずに通してしまったんだというような詰問をその場で受けておったような状態であります。これは見ておった人から聞いたのですが、もっともその次で乱暴が起こるということを予知すれば別でありますが、そうでなければ——そこを突破されたということに対して非常に面詰を受けておったというような状態であったようでございます。従いまして正門前で事件が起きましたときには、すぐそれを開きつけまして、一番近いのが、私も現場は知りませんけれども、四山巡査駐在所というのがすぐ近くにあるようであります。そこに六名、やはり要所々々に熊本県警の警察官を配置をいたしまして、六名駐在所におった。そのうちの四名が直ちにかけつけて、これは中に割って入っております。この四人がすべてけがをしまして、一人は重傷を負ったのでございますけれども、これも残念ながらそういう形において警察官の制止を聞かずに乱暴をするということになりますと、やはり実力の問題でございまして、その事故を未然にといいますか、手ぎわよく処置できなかったことは認めなければならぬと思います。それから出もなくただいまおっしゃった福岡県警のパトロール、これは西鉄バスを借り上げたパトロール隊であったそうであります。これがかけつけております。それに続いて熊本の三百名近くの部隊がかけつけて、そして現場から五十一人の人間荒尾署に連れていった、こういう状況になっております。
  82. 八木昇

    八木(昇)委員 今お話しのように、この十三台の暴力団の連中が四山南門に到着をします数十秒前にまず警察のパトロールが先に来ているんです。そして数十秒おくれて今の十三台がだっと来た。そのパトロールは手をあげたんだそうです。手はあげたんだけれども、それを無視して南関にそのまま来た。そうして今のようにばり雑言をあびせて、直ちにピケ隊に襲いかかろうとする、それを山代組長が抑えるというような事態の間中、そのパトロール・カーの警察官は車からおりもしないで、そのまま見ていた。それは無線か何かで荒尾署に連絡をしておったかどうかは知りませんが、そういった状態だった。  そこでもう一点お伺いしたいのは、それから数分後にはもうすぐ表門に移動して事件が起こったのですけれども荒尾署の警察官が来るのに約二十五分かかっております。荒尾警察署は今の四山南門からほんの三分くらいの位置にあるのです。一体どういうわけで、こんなに事態が急迫しておるのにそんなに手間取るものでしょうか、その間の事情を伺いたい。
  83. 江口俊男

    江口政府委員 この距離とか、時間が長くかかり過ぎたかどうだったかという事柄については、先ほどの三川鉱の朝の事件とあわせてその点はっきり申し上げるのに、われわれ腹の中に入らないものがありますから、現在調査中であります。
  84. 八木昇

    八木(昇)委員 まあ、いずれにいたしましても、ともかく今の久保氏が刺殺をされ、相当のけが人が出た。それに対し部落解放同盟の人たちの応援隊が来て、そうして事態がおさまった。その状態のときに、熊本県の警察隊数百がかけつけておるのです。私どもはそのように事情を聞いておりまして、これは非常に遺憾に思うわけです。そこで私は昨日福岡県の県警察本部にも参りまして、本部長ともいろいろお話をしてきたのですが、それは確かに不手ぎわがあったように自分らにも見える。あそこがちょうど福岡県警の管轄区域と熊本県警の管轄区域の接点になっておるために、その辺の事情があったということの釈明もあったのですが、今度のように両警察管轄が交錯しておるような、こういう地域における問題として、これは公安委員長にも伺っておきたいと思うのですが、熊本、福岡両県警察の統合的な本部といいますか、何といいますか、そういったようなものを設置せられるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  85. 石原幹市郎

    石原国務大臣 現在のところまだそういうなにがなかったのでありますが、私は九州管区局長に連絡をとりまして、ちょうど両県警察にまたがってああいう炭鉱地帯があるのでありますが、そういう点については十分気をつけるようにということを言っておったのであります。局長も大牟田に出かけまして、いろいろ事情を聞いたり指揮もしたようでございますが、あとの祭りになったようでありまして、やはり何らかのそういう連絡、応援体制というものは常に考えておかなければならぬのじゃないか、かように考えます。
  86. 八木昇

    八木(昇)委員 あと二つ、三つで終わります。そこでもう一ぺん伺っておきます。今度のこの暴力団のいろいろやったことのあとを振り返ってみますと、今熊本県の警察で四十名くらいの人に逮捕状を出してやっておられるようでございますけれども、これは単なる個々人の実行行為といいますか、そういったあるさし殺した本人を殺人容疑にする、暴行を働いた、実際の行動をした、被害を与えた個々の人間、そういう実行行為をやった者を犯罪者としてとらえるとかというようなことではなくて、これは明らかに騒擾ではないか、こういうふうに私ども思うのです。白昼公然と大牟田では代表的な、名うてのこういう山代組、寺内組が親分を先頭に立ててこういったふるまいに及び、そして写真があとで示されまするが、特に正門の方の。ヒケ隊は数十人しかいないのですけれども、それが整然と腕を組んで、あらかじめ警察の方から凶器は持つなと言われたので凶器は捨てて、四山鉱の表門のピケ隊は一切こん棒も持たないのですよ。それに向かって襲いかかっていく。しかも何千名の警察官が動員をされておる大牟田炭鉱の周辺で、白昼公々然とこういうようなことが行なわれるということは、私どもにはどうしても理解できない。これは刑法上どうなるのか詳しくは存じませんが、騒擾罪と申しますか、そういった適用がなさるべきではないか。結局事をやった張本人であるところの山代組、寺内組の組長を、そういった騒擾的な意味逮捕して厳重処罰すべきものではないか。そういった考え方に立てば、殺しをやった本人の罪も単なる殺人罪ではなくて、非常に重い刑法上の罪が課せられ得ると思うのですが、そういった点についてのお考えを、これは担当はどちらでございますか、どなたか適当な方からお答えをいただきたいと思います。
  87. 井野碩哉

    井野国務大臣 今回の事件の罪の問題につきましては、これは捜査してみなければわかりませんが、少なくとも現地におきましては、刑法二百八条の二の持凶器集合罪でございますか、これに当たるんじゃないかということで令状を請求したのでありますが、裁判所は単に傷害暴行罪ということで令状を発行しておりますから、裁判所は騒擾罪というふうには見ていないんじゃないかと思っておりますが、これらはまだ現地にも人を出しておりますので、帰ってきていろいろな情報を聞かないと私どもには判断ができません。現在ではそういうふうに考えております。
  88. 八木昇

    八木(昇)委員 もうちょっと専門的にその解釈を……。
  89. 竹内壽平

    竹内政府委員 騒擾という罪は、一般に一地方の静ひつを害する程度に多衆集合して暴行脅迫がなされるということが条件に解釈されておりまして、ただいまお話しのような事実関係から直ちに騒擾罪の適用を見るべき場合であるかどうかということにつきましては、これはなかなかむずかしいのでございます。御承知と思いますが先般大分県の別府で、やはり暴力団同士が双方相対峙して、それぞれ凶器を持って集まった、物情騒然とした事態があったわけでございますが、この程度の事実につきましては、いまだ騒擾罪を適用すべき場合でないというふうに判断された実例もあります。と同時に、御承知のように昭和二十七年のメーデーにおける皇居前広場のできことは、これは今騒擾をもって問疑されておるわけでございます。なお平における事件も騒擾をもって問疑されており、その他騒擾をもって問疑された事案は各地にございますが、平につきましては、高等裁判所の判決は騒擾をもって処罰をいたしております。しかし最高裁に係属しておりまして、まだ最終的な判断は出ておりません。過去の事例その他法律解釈の点から申しますと、大牟田市が、いろいろ新聞報道等によりますと、かなり不安な状態になっておることは私どももわかるわけでございますが、今の段階におきましては、騒擾罪を適用して処断するという取り締まり方面の考えもまだ固まっておりませんようでございますし、裁判所の方も先ほど大臣から申し上げました通りに、一応傷害暴行といったような線で取り扱っておるような次第であります。
  90. 八木昇

    八木(昇)委員 これは私どものひが目かもしれませんけれども、かりに、たとえば労働団体があいくちとか日本刀とかピストルとかを持って、そうして何かそういったことをやったとします。そういう場合には、おそらく騒擾罪でやられていると思いますよ。これは逮捕状の請求をされた場合に、持凶器集合罪ということで請求をされたということは、騒擾罪的な考え方が前提をなすというか、やはりそういった考え方も多少は入っておったのではないかというふうにも考えるわけなんです。そこで、逮捕状の請求に対して裁判所が先ほど御答弁のような判定をしたというわけですけれども、今後ずっと区取り調べを進めていかれた中で、いよいよ起訴をするというふうな段階におきましては、十分やはり検討をしていただきたい。今度のこのできごとに対する検察当局やり方が手ぬるいと、これが関連をもって将来すべてのできごとに非常な悪影響を及ぼしてくるので、厳罰をもって臨んでもらいたいという私どもの希望を申し上げておくわけであります。  それからもう一点は、この暴力団会社側との関係です。志賀委員からも質問がありましたけれども、興行師だ、それが本職だ、こういう興行師なんというのは、どこの土地でもそうでしょうかが、興行を打つときには大会社その他に花をもらいにいくわけですね。九州あたりでは花といいますが、金一封をもらいにいく、こういうことが常習的になっておりますし、それから興行師というものは、やはり警察との接触はふだんから相当緊密でございます。お互いに顔見知り、こういう事情にあるわけであります。そこで何のもうけにもならないのに人殺しなどをやるわけはないのですから、そうして単なる殺人罪としてやったとしても、そのやった本人は少なくとも数年間は刑務所の飯を食わなければいかぬのですから、これは何の利益もなしにこんなことをやるわけはない。これはだれしも当然そういうことを考えます。暴力団会社との関係、特に会社職員が今のように武器を提供したり何かしたという事実も明白になっておるというおりから、会社側暴力団との関係について今後どういうふうに調べをやられる御方針であるか、この点もどなたか適当な方から御答弁を願いたいと思います。
  91. 江口俊男

    江口政府委員 先ほど志賀委員にもお答えした通り、志賀委員関係があると、こう断言されるものですから、それは調べの進行の経過に従わなければ申し上げられない、こう申したのでありまして、ことに武器を提供したなどということを名前をあげて言われるし、しかも告発も出ているそうでありますから、それははっきりした線でその通りであるかどうかということを調べていけばわかるし、その調べていく過程で会社と今おっしゃったような関係——常時における花の授受というようなものが事件とどう結びつくかということは、非常にデリケートな問題でありますけれども、とにかくうやむやにするのではなかろうかという御懸念は要らないということだけははっきり申し上げられると思います。
  92. 八木昇

    八木(昇)委員 最後に一点申し上げまして、質問を終ります。今の現地状態はまだ非常に緊迫をしております。そして実に陰うつな空気が充満をしておるわけでございます。そこでいよいよ第二組合の方は会社とも話し合いをして、そうしてきょうまでのところは強行就労というものを三日間ばかり見送ったようでありまするが、明日以降はいつ再び強行就労をやるかわからないという実は事態にあるわけであります。そこでこういう際に警察としてどういう動きをされるかということは、やり方によっては非常に大へんな事態を再度現出するということになりかねないわけでございます。そこで現場組合の幹部の人たちはできるだけ理性的に、再びああいう惨事を招かないように、今後は事態を処置したいと真剣に考えておるようでありますけれども、下部の組合員の中の相当数は、もう非常に感情が高ぶっております。特に首を切られる対象になっておる労働者の中には、非常な興奮状態の者がおります。でありますから、こういう状態の中におきましては、再び大へんな不測の事態が起こりかねまじき状態に実はあるわけであります。特に警察に対する感情も非常に悪化しております。われわれがこういうふうに無抵抗状態でおるのに、暴力団から殺されたり、十数名の大けが人を出されたりするのに、警察はどういう不手ぎわがあったかどうか知らないけれども、そのときには役に立たなかった。結局自分たちは自分たちの手で守るというような形でいきり立っておるという相当多数の第一組合員がおるという現状でございまして、ここで強行就労というものをやろうとされる場合に、もし警察あたりが先頭に立って、そして第一組合ピケ隊を破って、そして第二組合員を構内に入れさせるというふうな措置が万一軽々に行なわれるようなことがあると、私はこれは非常に重大な事態を起こすのではないか、このように考えるわけなのです。今後警察は、第二組合の強行就労というような事態が起こる場合に、いかなる対処の仕方をしようとしておられるか、これは一つ責任者であります公安委員長から御答弁をいただきたいと思います。私どもとしましては最も慎重に対処してほしい、こういう希望を持っております。
  93. 石原幹市郎

    石原国務大臣 先刻も申し上げたかと思いまするが、暴力団排除といいまするか、そういう面の暴力一掃には、今徹底的に留意してやっておるわけであります。それから一方労働組合といいますか、両者に対しましても、こん棒その他の、場合によっては凶器になり得るようなものの所持等を規制しまして、一切暴力というようなもののないように注意、警告、いろいろやっておるわけであります。しかし、申し上げるまでもなく、生産再開という会社建前もあり、一方就労したいということもあり、それから一方に対しては妨害排除なり立ち入り禁止の仮処分のことまで出ておるのであります。就労したいという者が就労しようとするのをとめようとする場合には、警察として法益を守っていく立場上、当然これはやはり守っていかなければならぬと思います。まあ全体の治安の状況あるいは労働大臣なり労政の動き方等とよく緊密な連絡をとりつつ、今現地警察当局も対処しておると思うのであります。正当な法のもとに行動をしようとする者に対しては、これはあくまで援助する、それを妨害しようとする者に対してはこれを排除していかなければならぬ、こういう考えに立っております。
  94. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 本日はこの程度で散会いたします。     午後一時三十五分散会