○永田
委員 第三班の
調査状況を簡単に御
報告申し上げます。
派遣委員は、永田、高石、丹羽の三
委員でありまして、三府県、和歌山県、徳島県及び高知県の四県につき、五月二十九日から六月五日に至る八日間、
農林水産業の受けた
被害を
中心として
調査を行なったのであります。
最初に
調査の日程に従って各県の
被害状況を御
報告申し上げ、次に
対策に関する
要望等を一括して申し上げることにいたします。
まず、三重県であります。
本県においては、伊勢湾南部、志摩半島及び熊野灘に面する
地域、すなわち、的矢湾、英虞湾、五ケ所湾及び贄湾の湾内及び沿岸
地域並びに海山町、尾鷲市一帯が被災したのでありますが、われわれは主として県
漁業取締船伊勢丸を利用してこれらの
地域をくまなく
調査いたしました。
チリ地震津波は、二十四日午前四時ごろから十数回にわたり、潮位三メートルないし四メートルをもってリアス式
海岸に集中的に来襲しておりますが、津の気象台が警報を発したのは午前七時ごろであったようでありまして、県は直ちに一市四町に対して
災害救助法を発動し、救助活動に入っております。
しかして、本県における床上浸水家屋は三千戸以上に上りましたにもかかわらず、人畜の死傷は皆無に近く、交通路、公共
施設等には大きな
被害を見なかったことは不幸中の幸いでありましたが、総
被害額の六二%は
水産関係において、しかもその九〇%以上が真珠
養殖等において発生し、容易ならぬ打撃を与えているというのか今次
災害の大きな特徴であるのであります。
三重県下における
被害の
総額は、五月二十七日現在での推算によりますると百八億円といわれておりますが、そのうち、農林
関係において四億五千万円、
水産関係において実に六十三億円に達し、そのうち、真珠
関係の
被害額は、三重県水産課、全国真珠
養殖漁業協同組合及び三重県真珠貝
養殖漁業協同組合の共同
調査によると、総計五十七億円に上っております。
真珠
養殖業は、これを大きく分けて真珠の
養殖関係と真珠貝の
養殖関係になるわけでありますが、前者において、いわゆるくろ貝と称する作業済みの貝の
被害が四十二億六千万円、作業前の手持母貝の
被害が五億六千万円、いかだ
施設の
被害が四億五千万円、後者において、真珠具の
被害が三億円、いかだ
施設の
被害が一億円と推計せられておるのであります。また、いかだの台数から申しますならば、三重県下のそれは、真珠の
養殖において六万台、真珠貝の
養殖において二万台でありまするが、前者の
被害率は五八・九%、後者の
被害率は四一・二%と推定せられておりますので、いかだ
施設のおよそ五〇%前後が壊滅に帰したわけであります。また、地区別に見まするならば、真珠の
養殖におきましては、鳥羽地区が二四%、的矢湾地区が四九%、英虞湾地区が六五・七%、五カ所湾地区が六七%、南島地区が三八%、紀州地区が四一%、真珠貝の
養殖におきましては、鳥羽地区が六〇%、英虞湾地区が四六・五%、五カ所湾地区が六四%、南島地区が二六%、紀州地区が二五%の
被害と相なっておるのであります。
昨年の
伊勢湾台風による県下の
被害額は五十二億円と推計せられておりますが、今次の
津波被害はさらにこれを大きく上回っており、打ち続く大
災害は特に漁協を初め中小の真珠
養殖業者に対して致命的な打撃を与えていることは全く明らかであります。
伊勢湾台風におきましては、多くの
施設及び母貝が
海岸に打ち上げられ、回収できた
部分も少なくなかったようでありますが、今回は、海底から巻き上げ、
施設の多くが沖合いに
流失するかまたは重なり合いもつれ合って各湾内の数カ所にかたまり、ワイヤが切れてかごは海底に落下し、貝の多くは泥中に没して窒息し腐敗するという、見るかげもない惨状を呈しているのであります。その混乱
状態は、お手元に回覧しております現場写真により御承知を願いたいと存じます。
〔
秋山委員長代理退席、
委員長着席〕
次に、三重県内の農林
被害について御
報告いたします。農林
関係においても、
農地、
農業用施設及び農作物等が鳥羽から尾鷲に至る
海岸地域において点々と
被害を受け、その
被害額は約四億五千万円
程度と推定せられておりますが、そのおもなるものは、早期栽培の
水田、苗しろの
流失・埋没、土砂流入、海水による冠浸水並びに
海岸堤防の破壊であります。特に、
海岸堤防については、
伊勢湾台風による
災害復旧または高潮
対策事業がいまだに完了していないために再度被災した個所が少なくないようであります。
次に和歌山県の状況について御
報告申し上げます。
われわれは、本県に関しては、新宮市、勝浦町浦神及び田辺湾周辺
地域の各
市町村について
調査をいたしましたが、
被害総額十四億円のうち、
水産関係が七億円余、農林
関係が二億円弱でありまして、ここでも、
水産関係、なかんずく真珠
関係の
被害が圧倒的であります。特に、田辺湾周辺は、本県内の真珠生産のおおむね三分の二を占め、真珠いかだでは県のワク三千五百中二千五百、母貝いかだでは県のワク三千二百中千六百七十がここに集まり、十三組合七千人が真珠生産に従事しているのでありますが、いかだ、作業貝、母貝等を含め全体の九〇%が大なり小なりの被官を受け、その損害額は約六億円に達するものと推定せられております。本県に特有の事情としては、区画
漁業権が個人に免許せられている場合においても、その権利は多くの場合組合に転貸せられており、真珠、母貝とも
養殖事業のほとんどが組合自営の形をとっていることと、真珠の生産がほとんど大玉に向けられていたために、三年目を迎えた高価品がやられたということであります。従いまして、地元漁協の受けました損害は他県に比してより直接的かつ深刻であるというべきでありましょう。田辺湾周辺
地域においても、特に白浜町の堅田漁協及び田辺市の日本真珠株式会社の受けた損害は特に深刻きわまるものであって、前者で一億六千万円、後者で一億四千万円といわれ、それぞれの代表者の
陳情は悲痛なものでありました。
農林
被害は幸いにして軽少に済んだようでありますが、それでも、
海岸堤塘の破壊は二千メートルに及び、水稲早植
地域の
農地が三十六町歩にわたって土砂流入、埋没または冠浸水を受けており、耕地面積の狭い本県としては一日も早い
復旧が望まれております。また、田辺市を初め数カ所の製材所の貯木が
流失し、その損害は五千万円と推定せられております。
われわれは次いで徳島県に向かいました。
本県の総
被害額は十億円余と算出されておりますが、ここにおきましても、その八〇%余は
農林水産関係であり、なかんずく
カキ、
真珠等の
養殖施設に六億五千万円の大きな
被害を与えているのであります。
しこうして、
被害の
中心は、いち早く
災害救助法が発動された阿南市を
中心とする橘湾一帯でありまして、われわれは、県の
漁業取締船阿波丸に便乗して、つぶさに湾内の
調査に当たりました。橘湾の
カキ及び真珠のいかだ数は二千四百台
程度といわれ、これらは全部が竹いかだでありましたが、県内業者六、県外業者十七により
養殖業が営まれており、しこうして、本県の場合には、区画
漁業権は組合に与えられているが、経営はほとんどが業者によって行なわれているのが実態のようでありまして、従って、組合または組合員の受けた損害は五千万円
程度にすぎず、他の大
部分の損害は、業者、なかんずく三重県側の業者が受けたことになるのであります。その金額は五億ないし六億円に上るものと推定されるのであります。
また、阿南市においては、
農地、農作物の
被害も少なくなく、堤防の破壊に伴う
農地の
流失・埋没もしくは海水の冠浸水した面積は二百二十町歩に達し、総
被害額は一億三千万円に達しております。その
概況は回覧に付しました写真によりごらん願います。われわれの視察個所においては自衛隊一個大隊が黙々と
復旧作業にいそしんでおりましたが、われわれはその本部を訪れて、
現地側とともに深甚の謝意と激励の辞を述べて参ったのであります。
次いで、われわれは、室戸岬を経由して徳島、高知両県の
太平洋岸地域の
災害を
調査しつつ高知市に至ったのであります。
高知県の
津波による総
被害額は約九億円と推計されておりますが、そのうち、農林
関係は二億四千万円、
水産関係は二億二千万円といわれ、
水産関係の
被害では本県においても真珠
関係が一億八千万円を占めているのであります。
被害地点としましては、須崎市及び宿毛市とその周辺でありますが、特に激甚な
災害を受けましたのは須崎市でありまして、
災害救助法の発動を見ております。われわれは市当局の撮影した記録映画を見つつ
説明を受けましたが、元来この
地域は南海
地震によって地盤が沈下していたので、高さ三メートル八十の堤防に四メートル十の
津波が来襲したため、一たまりもなく堤防は破壊され、住居、商店、工場、
農地等に冠浸水するとともに、須崎湾内の真珠
養殖施設はことごとく
流失または沈没したものと思われるのであります。須崎港は高知市の外港として将来の発展を約束されているところでありますが、ここでは個人
施設の
災害と同町に公共
施設の被災も軽視できない
程度に達しており、すみやかな
復旧が望まれるのであります。また、須崎市においては
農業共済組合が本年度以降事業を休止しているのでありますが、一億数千万円に達する農作物の
被害に対しては特殊の考慮を必要とすると考えられるのであります。
県内における真珠いかだの台数は約一万台と推定され、その大
部分は浦ノ内湾にありましたが、その七〇%が被災し、真珠
養殖物において一億五千万円、
施設において三千七百万円の損害を生じたものと推定されております。高知県における区画
漁業権の免許数は九つでありますが、経営形態としては、会社経営、個人経営または組合経営に分かれ、その実態は容易に把握しがたいように観察いたしました。
木県内では高島真珠及び北村真珠株式会社の経営するものが
最大でありますが、従って、これらの二つの会社が受けた損害が全体の三分の一といわれるのであります。また、須崎市は
木材の集産地でありますが、約一万二千石が
流失したといわれておるのであります。
以上、四県の
災害の実況についてその
概要をお伝えいたしましたが、以下
現地側より寄せられました
災害対策に関する要望について一括御
報告いたします。
まず、
被災地側の官民一致の要望は、今回の
津波災害に対しては、国会、
政府一体となって、過般の
伊勢湾台風対策と同様の、あるいはそれ以上の
対策を講じてもらいたいということであります。
伊勢湾台風対策、特に高潮
対策の未完成または遅延により惹起された被災も相当の分量に上っているので、本年度の台風季節を迎え、
伊勢湾台風対策との一体的な、もしくはそれに上乗せした緊急
対策が特に望まれているのであります。
第二に、農林
水産業施設の
災害復旧事業費等に対する
国庫補助については、
伊勢湾台風に対すると同様に、
特別措置法を制定し、
農地、
農業用施設、
漁港施設、
共同利用施設、なかんずく直珠
養殖施設の
災害復旧事業費に対する
国庫補助率を十分の九とせられたいということであります。この場合、
農地の
災害復旧事業は、
伊勢湾台風対策においては、
補助対象事業費を十万円以上のものに限定し、三万円以上十万円以下のいわゆる小
災害については
市町村の起債
特例措置を講じたのでありますが、今回の場合は三万円以上を
補助対象事業に取り上げてほしいという要望があったのであります。また、真珠
養殖施設等に対する
国庫補助について、暫定
措置法に準じた
措置を講ずる場合には漁協の所有する
施設に限定を受けるわけでありますが、今回の
災害においては中小
企業の所有する
施設あるいは任意組合の所有するいわゆる村張りの定置網等の
施設であって全く烏有に帰したものも少なくないので、これらに対しても漁協に対すると同様の
補助を行なわれたいということ、及び、
伊勢湾台風に際しては
補助限度を十台までに限定したが、これを、
対象経営体五百台以下、
補助限度を五十台に引き上げられたいとの要望が各地において熱心に述べられたのであります。
第三に、
地方公共団体が維持管理する
漁港施設の
災害復旧事業費についても、
伊勢湾台風対策と同様の
高率補助を行なわれたいということであります。
第四に、
農地の除塩事業についても、漑排
施設の設置費、揚排水機の必要経費、客土、石灰等の施用費に対して十分の九の
補助を行なわれたいということでありますが、この場合において、
伊勢湾台風対策においては二十町歩以上の団地に限定しているので、この限度を十町歩以下に引き下げることが望まれております。
第五に、
農地、
農業用施設、漁場、
漁港内に堆積する土砂の排除もしくは枕木、かご、いかり、母貝等の除去または引き揚げに必要な経費につき、
特別措置法を制定して、全額
補助を行なうようにせられたいということであります、
第六に、苗しろの再仕立て費用及び代作、裏作の種子代等について
補助せられたいということであります。
第七に、破壊した
漁船の代船
建造費について、
伊勢湾台風の場合のような共同利用
漁船の制限を設けず、
補助の特例を実施せられたいということであります。
第八に、融資
対策についてでありますが、まず、天災融資に関しては、
天災融資法に基づく天災
指定をすみやかに実施するとともに、
貸付限度を五十万円に、
被害真珠
養殖業者の経営
資金については特に百万円に引き上げ、償還期限を八年、据置期間を三年に延長するように
特例措置を講ずることとし、また、農林
漁業公庫融資に関しては、
被害真珠
養殖業者等のいかだ、母貝、稚貝、その他
養殖に必要な器具等の購入
資金について、
共同利用施設または主務大臣
指定施設の
資金ワクを拡大して貸し付け、手続の簡素化、既貸付金の償還延期、金利の引き下げ、
貸付限度額の拡大をはかるようにせられたいということであります。
この際融資
対策について特に一言しておきたいことは、
伊勢湾台風対策としてとられた融資
対策のあり方に対して強い非難の声が上がっているということであります。中金融資にしろ公庫融資にしろ、融資手続がきわめて複雑難解であって、次々に各種の書類の提出を要求されるのみならず、真珠の貸付審査は特別に本店扱いとされ、審査基準が厳格に過ぎること、いかだ、母貝等の購入
資金がセット的に貸し付けられ、一部についての貸付が認められないこと、担保物件が
家屋等に限定され、事業用資産を認めないこと等の条件が設けられていて、一体、農林
漁業関係の金融機関は、真珠
養殖事業に対して
資金を貸し付けるために査定するのか、貸し付けないために無理難題を言うのかわからないというのであります。これに反して、市中銀行、商工中央金庫はすこぶるものわかりがよいというのであります。われわれの
調査によれば、真珠
養殖事業にあっては、
漁業権と経営主体の
関係、経営内容、原価計算等について
現地側の
説明には往々不明確な点が多く、
漁業統計も未整備であるし、融資
対象としては多くの欠陥を持っておるとの印象を受けましたが、
政府としては、沿岸振興
対策、輸出産業としての重要地位にかんがみ、真珠
養殖事業の産業体制の
確立をはかり、真珠共済を実施する等、金融べースに乗せるための一段の努力と工夫をこらし、円滑な金融を実施するのでなければ、農林中金、
農林漁業金融公庫はやがて農漁民の怨嗟の的となるであろうと判断した次第であります。
最後に、
カキ、
真珠等のための共済保険制度の
確立に関する要望であります。現に民間の保険会社で実施したものもあるようでありますが、掛金が高いために発展を見ていないのが
現状であります。
養殖物の損害の評価については特別の困難が伴うことは明らかでありますが、少なくとも、
養殖施設に対する共済保険は、国で特別の施策を講じ、料率を低減する等の努力を払うことにより、急速に全国的に拡大する可能性があると痛感した次第であります。
以上をもって
報告を終わることといたしますが、最後に、
被災地の農漁民は地球の裏側から突然襲いかかった不測の大
災害に対し、
伊勢湾台風の場合と同様に挙国一致の援護を念願しており、国会の
現状について深甚なる憂慮の念を抱いておるのでありますが、
政府といたされましては、各般の行政
措置の実施に当たっては、迅速果敢、万遺漏なきを期され、もって国民の負託にこたえられんことを心よりお願いいたすものであります。(拍手)