○川村
参考人 私、ぶどう糖工業会の
会長を最近引き受けました川村でございます。前
会長の意図するところを十分含みまして、将来われわれ業者の協力によりまして何かと皆様の御期待に沿うように
努力いたしたいと思います。三十三年四月以来、
結晶ブドウ糖の
育成要領が発表されましてまだ日も浅いのでございますが、その間
生産的にも微々たるもので、まことに恥ずかしいような次第でございますが、しかし、総合
甘味対策の中には
ブドウ糖の十五万トンというものが十カ年
計画で組まれておりますが、これはもちろん
イモ作農家の関連的関係から
砂糖の
輸入量の一部として考えられたことは申すまでもございません。かような次第でございますが、ちょうど、
昭和三十三年四月、前
会長の箕原氏が「
結晶ぶどう糖の
生産振興についての要望事項」というものを発表されました。私はこの趣旨を再度確認して、将来
ブドウ糖工業の
振興に寄与したい、かように考えております。
結晶ぶどう糖の
生産振興についての要望事項
結晶ぶどう糖の
生産振興のため、法律の制定或いは行政措置を以って左記によりこれが
育成を図られたい。
記
一、
結晶ぶどう糖の
生産目標の決定について。
結晶ぶどう糖工業の
育成振興については
原料及び消費の両面から先ず
生産の
目標が決定されなければならないが、その決定については、甘しょでん粉及び馬鈴しょでん粉の
生産見込数量、
砂糖の需給事情及び
結晶ぶどう糖の需要見込数量、更に、
国内における
結晶ぶどう糖の出産
能力をも勘案して定められたい。
二、
結晶ぶどう糖の製造設備の規制について。
結晶ぶどう糖の製造
工場を規制し過剰となることを抑制することは次の点から極めて必要なことであり、それによってのみ斯業の円滑な発展が期待でき、又
政府の所期する目的が
達成されるものと思料される。よって
結晶ぶどう糖工業は国の認可制若しくは登録制としてこれを規制されたい。(認可制若しくは登録制の
必要性)
イ、
計画的に設備を拡大してでん粉と
結晶ぶどう糖の需給の不均衡を防止するため。
結晶ぶどう糖の製造設備はでん粉等の
原料事情と
結晶ぶどう糖の消費の両面からこれにマッチせしめて設置さるべきであって、これを規制せず自由に放任しておくと、設備は濫立過剰となり往年の人造米の二の舞になる事は必至であって、その結果は
原料と製品の流通及び需給に波乱を招くことが予想される。従ってそのようなことにならないように予め規制措置を講ずべきである。
ロ、でん粉の既存の用途を尊重しつつ新規の用途の開拓を図るため。
現在
国内でん粉
生産量の内約八〇%は水飴ぶどう糖に消費されている。過剰でん粉の
処理対策等から新規用途である納品ぶどう糖の
生産の
振興を図ることは極めて必要なことであるが、新規の用途の開拓に急なる余り既存の用途を省みないことになってはいも作及びでん粉関連産業の真の安定にはならない。従って、既存の用途を尊重しその
調整を図る上からも、設備は規制する要がある。(認可制若しくは登録制の
基準とその決定方法)
イ、認可若しくは登録制の
基準については、年次
計画による
生産目標を定めて全国的に所要
工場数及び製造
能力を決定すること。尚、一
工場当りの日産
能力については
企業採算面から日産五〇屯以上すること。
口、認可の決定に当っては、別に「
結晶ぶどう糖
生産振興協議会」を設け、
政府はこれに諮問することとし、協議会は設備、技術、経験、
立地条件その他の事情(製飴設備よりの転換)を審議して答申する。三、(略)四、(略)五、
原料でん粉の価格の低下と恒久的な安定供給対策について。
でん粉の既存の用途を尊重し、
結晶ぶどう糖工業の正常な発展を期することが、いも作及びでん粉工業の恒久的な安定を図ることになるので、でん粉の価格の低下と供給の安定について
政府は次の
施策を講ずべきこととせられたい。
1
原料いもの品種の改良とでん粉工業の合理化。
いも作
農家の収益を
確保し、しかもその二次或いはそれ以下の加工品の製品価格を引下げることは、他の競合商品との関係、或いは国際価格との関係かう最も必要なことである。それがためには、
原料いもと食用いもに分け、多収穫品種とでん粉歩留りのよい品種等について
研究することが必要であり、更にでん粉工業を合理化する必要がある。
原料用のいもについては、喰べてうまくなくともでん粉の含有量が多ければそれでよいのである。
2 (略)
3 農産物価格安定法の
改正。
現行農安法は
昭和二十八年に成立したものであるが、例えば下値は支えるが上値は野放しであるため、でん粉の消沈関係等について甚だしい支障があり、本法成立当時とは環境が変っているので現実に即して
改正の要がある。特に、
政府が農安法により買上したでん粉を払下する
場合において、当局は特別会計等との関係により国有財産として如何にこれを高く売るかに終始し、適正な価格に安定せしめ関連産業の発展と国民経済の安定に考慮が払われていないのは遺憾であって、生糸価格安定
制度に準じ、低価買入、高価売渡のいわゆる安定価格
制度とせられたい。六、(略)七、
結晶ぶどう糖の
輸入の規制或いは禁止若しくは
輸入関税の大幅引上について。
政府は、一方農安法によりでん粉の価格を支持し、その二次或いはそれ以下の加工品の価格の低下を防いでいる反面、
輸入の
結晶ぶどう糖が安いからと云ってその
輸入を認めていたのでは、
国内の
結晶ぶどう糖工業は永久に発展しない。従って、
政府は
結晶ぶどう糖工業を
育成するため、
結晶ぶどう糖及び
結晶ぶどう糖を主
原料とする製品の
輸入を全面的に禁止するか、若しくはこれ等の
輸入関税を禁止的大幅に引上げる措置を講ぜられたい。八、
結晶ぶどう糖の消費の促進の為の普及宣伝について。
結晶ぶどう糖が如何に栄養的に優れているとは云え、一般に普及徹底しなければ消費は増大しないし、これを個々の製造業者の宣伝にのみ任せたのでは、
生産量等から宣伝費には自ら限度があるので、急速な発展は期待出来ない。そこで、
政府自ら消費の促進のため普及宣伝を行うこととし、そのため次のような措置を講ぜられたい。
1、必要に応じ
結晶ぶどう糖の用途指定を行う。
2、
結晶ぶどう糖を含んでいる食品に品質表示をすることを規定する。
3、更に民間に
結晶ぶどう糖普及促進対策本部を設置せしめて、これに補助金を交付し、次の事業を実施せしめられたい。
イ、消費利用の講習会の開催。
ロ、新聞、ラジオ、テレビ等を通じての普及宣伝。
ハ、主要なクッキングスクール、大学及び高等学校等の料理家庭科用として、一定の数量を無償配付して利用の徹底を図る。
二、厚生省及び
日本赤十字社、愛育会等の栄養保健関係の中央団体並びに全国の保健所に一定の数量を無償配付し、栄養補給を通じて利用普及を図る。
ホ、国立の
研究機関である食糧
研究所及び国立栄養
研究所に
研究費を交付して、更に新規用途面を
研究せしめる。九、(略)十、
結晶ぶどう糖
生産振興協議会(仮称)の設立について。
政府は、
結晶ぶどう糖の
生産の
振興を図るため、
政府の諮問機関として、関係官庁の関係職員、学識経験者及び関連団体の代表者を以って構成する
結晶ぶどう糖
生産振興協議会を設け、
生産目標の決定、製造設備の規制のための認可
若しくは登録制の認可の決定、その他
政府施策の決定及び遂行について諮問せられたい。十一、(略)
かような要望書が前
会長から
昭和三十三年四月に
政府または関係方面に提出されたと思いますが、この際再確認の意味でこれを申し上げ、
ブドウ糖の
育成にいろいろ御
努力を願いたいということを切にお願いします。