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1960-04-26 第34回国会 衆議院 農林水産委員会 第25号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月二十六日(火曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 吉川 久衛君    理事 秋山 利恭君 理事 田口長治郎君    理事 永田 亮一君 理事 丹羽 兵助君    理事 本名  武君 理事 角屋堅次郎君    理事 芳賀  貢君 理事 小平  忠君       天野 光晴君    金子 岩三君       金丸  信君    笹山茂太郎君       高石幸三郎君    綱島 正興君       野原 正勝君    松岡嘉兵衛君       松田 鐵藏君    八木 徹雄君       保岡 武久君    赤路 友藏君      茜ケ久保重光君    足鹿  覺君       石田 宥全君    中澤 茂一君       西村 関一君    松浦 定義君       神田 大作君    小松信太郎君       中村 時雄君  出席政府委員         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         食糧庁長官   須賀 賢二君  委員外出席者         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    村田 豊三君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部食品課長) 黒河内 修君         食糧研究所長  桜井 芳人君         参  考  人         (日本精糖工業         会会長)    藤山 勝彦君         参  考  人         (日本ビート糖         業協会会長)  宮本 来治君         参  考  人         (ホクレン農業         協同組合連合会         会長)     小林 篤一君         参  考  人         (日本てん菜振         興会理事長)  永野 正二君         参  考  人         (日本ぶどう糖         工業会会長)  川村  保君         参  考  人         (全国澱粉協同         組合連合会会         長)      本坊 美義君         参  考  人         (全国水飴ぶど         う糖生産者協議         会連合会会長) 川本 福治君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 四月二十一日  開拓予算増額等に関する請願鈴木善幸君紹  介)(第二五四〇号)  福島県西会津町飯根国有林所属替えに関する  請願八田貞義紹介)(第二五四一号)  農業災害補償制度改正に関する請願天野光  晴君紹介)(第二六九二号)  老朽ため池補強促進に関する請願足鹿覺君  紹介)(第二七三四号)  農業災害補償制度改正に関する請願外二十件(  足鹿覺紹介)(第二七三五号)  同(石田宥全君紹介)(第二七三六号)  同(中垣國男紹介)(第二七三七号)  同(中垣國男紹介)(第二七六四号)  同外四件(久保三郎紹介)(第二八二一号)  農業施策に関する請願栗原俊夫紹介)(第  二八二二号)  同(黒田寿男紹介)(第二八二三号)  同(日野吉夫紹介)(第二八二四号)  同(三宅正一紹介)(第二八二五号)  同(八百板正紹介)(第二八二六号)  同(矢尾喜三郎紹介)(第二八二七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(甘味資源に関す  る問題)について参考人より意見聴取      ————◇—————
  2. 吉川委員長(吉川久衛)

    吉川委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  甘味資源に関して参考人の御出席をいただいておりますので、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中のところ本委員会調査のためわざわざおいでいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。甘味資源に関しましては、漸次国内自給度の引き上げをはかるため、国内テンサイ糖精製結晶ブドウ糖及びカンシャ糖保護施策と今後の国内需給に関する実際の見通し及び輸入糖などの問題とのかね合いにつきまして十分の調査検討を加え、甘味資源に関する総合対策を樹立する必要がございます。参考人各位におかせられましては、業界におけるそれぞれのお立場より、忌憚のない御意見をお願い申し上げます。  なお、参考人の御意見は、初め十分程度お述べいただき、あとは質疑によりお答えをお願いいたします。  それでは、参考人藤山勝彦君よりお願いいたします。藤山参考人
  3. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 私、日本精糖工業会会長藤山でございます。ただいまから輸入糖現状及び将来と関連しての甘味資源対策についての所見を述べさせていただきます。  一、日本砂糖消費現状と将来。昭和二十七年四月に砂糖配給統制を撤廃いたした当時の日本砂糖消費量は六十万トンでありました。現在は百三十五万トンに増加しているのであります。今後年間平均三%の消費増加一一人口増及び生活水準向上に伴う自然増加を考えると、向こう十カ年後には百七十五万トンないし百八十万トン見当消費量伸びていくのではないかと予想されるのであります。現在、砂糖のほかに、サッカリン、ズルチン、ズルファミン剤人工甘味料砂糖に換算いたしまして三、四十万トンに相当する量が消費されております。この人口甘味料は、栄養分は皆無であって、中には若干の毒性のあるものもあるのであります。世界中でこのような人工甘味料が横行しているのは日本だけであります。外国では大部分使用禁止されております。もし外国と同様に人体の保健上好ましくない人工甘味の使用が禁止されますなれば、現在でも百七十万トンないし百八十万トンの砂糖消費性が見込まれますし、十年後には二百万トン以上になると思うのであります。  二、現在の輸入糖の量と将来。本年度の粗糖の輸入外貨予算は百五万トンに先般政府で決定されましたが、予算単価の関係から若干の買い増しが出て参りますから、実際の輸入量は百七万トンないし百八万トン見当になると考えます。このほかに台湾赤糖一万五千トンが別ワクで輸入されますので、結局本年度の総輸入量は百十万トン見当になると予想されます。この輸入量精糖換算百五万トンで、歩どまりを九五%と見ております。従いまして、消費量の百三十五万トンに対して二十万トンは国内産で充足するわけであります。この国内産の内訳は、ビート糖北海道及び内地を合わせまして十五万トン、国内産カンシャ分みつ糖及び黒糖五万トン、沖縄分みつ糖及び黒糖五万トン、結晶及び酵素ブドウ糖五万ドン、計三十万トンということになろうと私どもは推算しております。十年後に国内消費量が百七十五万トンに伸びると仮定いたしますと、国内生産現状のままでありますなれば百四十五万トンの輸入をしなければならぬわけであります。世界自由市場から百万トンという大量を輸入しているのは日本だけでありまして、日本国際砂糖協定加盟国三十五カ国のうちで最大砂糖輸入国でありまして、世界砂糖輸出国にとりましては最大のお得意先になっているわけであります。  三、甘味資源対策に関する所見農林省が昨年国内甘味資源対策基本方針を決定して、北海道寒冷地ビート内地暖地ビート開発増産西南諸島カンシャ糖増産並びに内地イモ澱粉原料とするブドウ糖生産育成助長する政策を打ち出されたことは、私どもといたしましては妥当な処置だと考えているのであります。日本農政上未解決で軌道に乗っていないのが畑作の問題であると思うのであります。日本農業の多角的な安定経営という問題は、利用効率の低い畑作をどういうような線で軌道に乗せていくかという点にあると推察いたすのであります。このような観点から、北海道における寒地ビート内地畑作地帯における暖地ビート、さらに、サトウキビしか適作物のない西南諸島カンシャ糖業、それから、消費面から申して全く壁に突き当たっておりまするイモ作並びにイモ澱粉処理としてのブドウ糖工業、これら一連の育成ということは当然取り上げられなければならぬ農政上の問題と思うのであります。私どもはすでにこれらの増産に踏み切って巨額の資本を投下し、投下せんとしつつあるのでありまして、政府腰砕けにならないで一貫して本腰を入れていただくならば、見通しといたしましては、十年後において、北海道ビートが二十五万ないし三十万トン、内地暖地ビートも十万ドン西南諸島及び沖縄カンシャ糖二十万トン、ブドウ糖十五万トン、計七十万ないし七十五万ドン生産目標達成十分可能性のあるものと考えるのであります。暖地ビートにつきましては、イタリアですでに成功しておりますし、研究努力次第で十分開発の対象になるのであります。現在内地の各県におきまして畑作農家がこの暖地ビートに対しまして異常な関心と熱意を抱き始めて参りましたことは注目する必要があります。私どもは、政府政策腰砕けにならない限り、本腰を入れて暖地ビートに乗り出す計画を進めつつあるのでありまして、ビートの育種、病虫害対策等につきましても積極的に正研究費を投入する用意を持っておるのであります。  四、輸入自由化問題と甘味対策国内で高い砂糖生産しないで外国から安い砂糖輸入すればよいという議論が出ないでもありませんが、これは全く素朴な議論だと思うのであります。そういうことになれば、ヨーロッパ各国はなぜ半世紀にわたってビート糖保護政策をとったのでありましょう。第一次欧州大戦当時のヨーロッパ地域ビート糖生産鳥は五百万トンであったのであります。それが、第二次大戦前に九百万トン、戦後の現在では一千八百万トンになっているのであります。このヨーロッパビート生産の著しい伸びは、各国が競って保護政策のもとに自給目標として増産政策を採用してからであります。また、インドにおきましても、三十年前には百六十万トンの砂糖外国から輸入しておりましたが、現在は自給自足して一トンも輸入しておらないのであります。国内農業生産を開発しないで、農業失業人口をかかえ込んでおって、外国のものが安いからといって外国から物を輸入買付していたのでは、その国の産業経済は自立できないはずであります。ヨーロッパにおいても、英米あるいはインドにおいても、過去においては砂糖輸入国であったものが、熱帯地域の安い外国砂糖に依存しないで、多少生産費が割高であっても国内生産保護助長に踏み切って、現在大部分の国が自給体制に入ったということは、結局、それぞれの国内農業人口の雇用と農地の効率利用という問題と結びついているのであります。大かた先進国が、現在の日本が着手しつつあるような甘味対策を半世紀にもわたって採用しておりまして、現在ほぼ自給体制を完成してしまったのであります。台湾を失った日本がおくればせながら先進国と同様の施策を採用することは、日本農業構造改善必要性と密着していると言えると思います。人間が地球上に生存いたします場合、立地条件のよい悪いの相違が宿命的にあるのでありまして、国境を策定し人間の自由な移動を制限しております限りにおいて、その立地条件の差を考えないで、野放しの自由政策はあり得ないと思うのであります。それでは立地条件のよい国だけが栄え、不利なところは滅びる以外はありません。そこにおのおの立地条件に適応した産業政策が生まれてくるのは当然のことでありまして、砂糖につきましても、ヨーロッパ英米インド等もまたその例外に出るものではないのであります。私どもは、かような観点から、甘味行政現状を変更される必要はないと考えますし、十年後において七十万トンの国内生産目標達成された暁においても、日本はなおかつ百万トンの砂糖外国から買い入れる世界最大輸入国でありまして、世界各国からとやかく言われる筋合いはないと考えるのであります。従って、私どもは、ビート糖ブドウ糖を含めた総合施策の推進には極力協力いたしておりますし、今後も協力を惜しまない所存であります。  その他、貿易自由化の問題につきましては、詳細は日本精糖工業会貿易自由化に対する意見言をごらん願いたいと思います。  以上でございます。
  4. 吉川委員長(吉川久衛)

  5. 宮本参考人(宮本来治)

    宮本参考人 私は日本ビート糖業協会会長宮本来治であります。御指名によりまして、テンサイ糖業振興必要性について申し上げます。  一、わが国テンサイ増産に伴うテンサイ糖業振興は、国内甘味資源自給力強化及び畑作振興に寄与するにとどまらず、耕土改良、酪農との連係、営農改善農村繁栄等高度農政上より見まして、また、国際収支改善見地から見まして、きわめて重大な使命を有するものであります。特に、寒冷地北海道における畑作農業経営においてテンサイはすでに重要な地位を占めており、また、将来各府県畑作または早期水稲あと作の有利な作物として合理的に導入する必要があると思います。  二、砂糖貿易自由化は、保護育成の途上にあるわが国テンサイ糖業を衰退せしむるものであります。テンサイ糖業は、欧米等先進外国の例に徹しても、種々の保護助成によって発展しておるものであります。特にわが国のように零細農業経営の基礎に立っているテンサイ糖業は、今後なお一そうの保護を要することはもちろんであります。現在、テンサイ糖業振興に関しましては、てん菜生産振興臨時措置法並び輸入糖に対する外貨割当制度運用等によりまして、国内糖価を安定維持することによって、テンサイ耕作農家に対する原料代価格その他耕作条件等を保持し、テンサイ農業の健全なる発展を期待している現状であります。もしテンサイ糖業に対する国内保護制度が整備されない前に貿易自由化砂糖にまで及びました場合には、昨年二月政府の決定されました国内甘味資源自給力強化総合対策に基づくテンサイ糖四十万トンの確保は至難であることは明らかでありますのみならず、農家経済向上見地より見ましても重大問題であると思います。  三、北海道におけるテンサイ長期生産計画策定実施について申し上げますと、北海道におけるテンサイ耕作面積並びに収量は近年相当増加傾向にありますが、自給力強化策に基づく北海道テンサイ糖三十万トン生産目標達成するには、国において土地改良あるいは優良適品種育成配付等生産性向上を主軸とする長期的な予算措置を講ずるとともに、テンサイ耕作地作物より優位に置かれるよう措置し、耕作者増産意欲を増大せしめる必要があると思います。テンサイ長期にわたる生産計画の樹立にあたっては、現状並びに将来の見通しを十分に把握し、その際農業団体及びテンサイ製糖企業者意見をも十分聴取し、万全を期すべきであると存じます。なお、テンサイ製糖企業者としても、テンサイ増産に積極的な努力を続けることはもちろんでございます。  四、北海道における既設テンサイ製糖工場に対する取り扱いについて申し上げますと、既設工場原料テンサイ集荷については、現在までのところ、農林省におかれては、原料処理能力一日当たり千二百トン、原料截断日数百二十日という基準原料集荷地域調整が行なわれておりますが、わが国テンサイ糖業が真に安定の上自力を持つためには、一工場当たり操業度を高め、能率化することが必要であります。  そこで、操業度算定基準適正化について申し上げますれば、最近新設されました四工場については、現実に処理能力が一日当たり千四百トンないし千六百トンに上昇していますので、この実情を考慮採用すべきことはもちろんでありますが、旧三工場についても、三年以内におのおの設備を更新してその処理能力を同様に強化することが決定していますので、この点を遠慮すべきであり、なお、企業採算観点から、原料截断日数新旧工場とも少なくとも百二十日を確保せしめることが必要と思われます。  なお、原料テンサイ集荷地域設定適正化をはかることが肝要でありまして、テンサイ長期生産計画に対応しまして、テンサイ製糖工場経営健全化をはかるため、既設工場操業度をただいま申し上げました線にまで拡充強化することを認め、さらに、テンサイ栽培が安定的に発展するためこの集荷が円滑に行なわれるようにその地域を策定する必要があります。工場経済的立地条件をも勘案して、長期間公正なる企業努力のもとにテンサイ振興に寄与することのできるよう、この際既設及び新設工場を含む適正な原料テンサイ集荷区域を設定すべきであると思います。  五、北海道におけるテンサイ製糖工場新設に対する取り扱いについて申し上げますと、既設工場がそれぞれ適正なる条件のもとに能力を増加し、他面テンサイ増産傾向もにぶっておる現在、条件付長期生産計画数字を前提として工場早期新設の決定を急ぐことは、既設工場側との間に集荷区域についての協議調整が何ら行なわれていない現状から見ますと、いたずらに過当競争を誘発して、既設工場操業を小安定ならしめるおそれがあるばかりでなく、新設工場経営もまた不安定ならしめるおそれがあります。従いまして、工場新設の時期については、既設工場処理能力の実績並びに拡充強化とその操業安定化並びに増産実情をも勘案して、年次別新設計画を決定することが適当と思います。次に、工場新設の認可については、既設テンサイ製糖企業者の積極的な貢献努力をも十分考慮されると同時に、新企業者の実上をもあわせ勘案して決定するのが適当であると思います。  六、最後に、新しいテンサイ振興制度法制化について一言意見を申し上げさせていただきます。テンサイ糖は昨年二月政府の打ち出された国内甘味資源自給力強化総合対策において重要な地位を占めているので、北海道長期テンサイ生産計画達成は必要であると同時に、各府県テンサイ製糖企業に対してもその保護育成制度をこの際確立すべきであると思います。現行のてん菜生産振興臨時措置法は、昭和三十七年三月三十一日までの時限法でありますので、新しいテンサイ農業振興制度を次の国会において法制化されることが緊要かと思う次第であります。この新制度には、北海道はもちろん、東北並び暖地におけるテンサイ振興並びにテンサイ糖業の安定をも含むように、目的の範囲を拡大するとともに、テンサイ生産振興地域指定制度、その指定地域内におけるテンサイ製糖工場の設置についての行政官庁承認制度並びにテンサイ製糖工場別テンサイ集荷区域調整制度等を新たに規定すると同時に、テンサイ最低生産者価格支持制度及びテンサイ糖政府買い入れ制度をも継続し、なお、でき得れば本制度運用に必要な財源の確保方法について法制化していただきたいと存ずる次第であります。  以上、私の意見を終わりたいと思います。
  6. 吉川委員長(吉川久衛)

  7. 小林参考人(小林篤一)

    小林参考人 御期待に沿うようなことが申し上げられるかどうかわかりませんが、第一に申し上げたいと思いますことは、北海道におけるビート栽培重要性についてちょっと申し上げます。  御承知の通り、北海道気温が低いところでありますのでしばしば凶作に見舞われるのであります。気温が低くとも間違いなくとれる安全な作物といいますと根菜類であります。北海道根菜類といたしますと、ビートとバレイショがあるのであります。三十一年は穀寂類は大へん凶作でございまして、三分作くらいよりとれなかったのでありますが、ビートは最も気温の低い北見地方でも普通作以上の収量があったのであります。政府北海道ビート糖三十万トンの生産計画を立てられ、それに相当するビート栽培を御奨励になるということは、大へんけっこうなことだと思っておるわけであります。北海道の畑地は六十三万町歩であります。そのうちビートの作れないところ——自家用作物というようなものがありますから、ビートの作れるところは大体四十万町歩と推定いたしておるのであります。これを五カ年輪作としますと、毎年ビートを八万町歩作れることになるのであります。三十四年のビート作付は約四万町歩であります。砂糖生産は十四万トンでありますから、まあ幾らかの反収伸びを見ますれば、八万町歩作れば砂糖の三十万トンは生産されることになると思います。ところが、ビートは根が深く入りますし、有機質をたくさん必要とする作物でありますから、土地を改良して表土を深くし、家畜を奨励飼育しまして堆肥増産しなければならぬのであります。なお、ビートは大へん酸性をきらいますから、酸性土壌矯正をする必要があるのであります。農家はこういうことをやるには力が足りませんから、土地改良堆肥増産酸性土壌矯正などにつきましては政府施策に待つところ非常に大きいと思っております。なお、ビートは御承知のように葉がたくさんとれますし、砂糖を製造するときにビート・パルプができますから、畜産振興をやりますのには非常に好都合でありまして、一挙両得と言うてもいいかと思うものであります。  次に、第二番目に申し上げたいことは、ホクレンビート糖工場協同組合システム経営いたそうと思って斜里に設置させていただいたのであります。当初は協同組合ではうまくいかぬのではないかというふうに大へん心配された向きもあったのでありますが、実際やってみましたところうまくいっておりますので、その状況を御報告申し上げたいと思っておるのであります。  そのうまくいっております一としましては、現在の工場集荷区域ビート増産成績でありますが、農林省でおきめいただきました三十一年と三十四年と比較してみますと、全道の作付面積は、三十一年は約二万町歩でありますが、三十四年度は三万九千町歩余でありまして一九七%であります。ホクレン区域作付面積は、三十一年が二千六百町歩、三十四年は五千八百町歩で二二五%になりました。反収については、全道平均が、三十一年は三千九百斤、三十四年度は四千五百斤でありまして一一六%でありますが、ホクレン区域は、三十一年は三千七百斤、三十四年は四千七百斤で一二六%になりました。四年間に反収が約千斤増収をいたしたことになるのであります。従って、ビート生産量について見ましても、全道では、三十一年は四十六万六千トン、三十四年は百五万五千トンで二二六%でありますが、ホクレン区域は、三十一年が五万八千トンでありましたが、二十四年は十六万四千トンで二八一%、三倍近くになりました。近き将来においては何とかして反収六千斤に増収したいと思っておるわけであります。  うまくいっておりますその二は、工場製糖成績でありますが、ホクレン工場はいずれの工場よりも最もコストが安いそうであります。そういう意味合いで食糧庁ホクレン砂糖は一番安くお買い上げになりまして、買い上げ価格百斤につきまして、操業第一年度、芝糖は六千十円、台糖は五千九百十五円に対して、ホクレンは五千七百三十円であります。操業第二年度は、芝糖五千四百三十円に対して、ホクレンは五千三百八十円であります。また、製糖歩どまりにおいては、三十四年、この春操業を終わった成績でありますが、台糖は一二・二%、日甜は四工場平均一三・三七%、芝糖は一四・二二%、ホクレンは一四・三六%で、ホクレンは一番よいのであります。品質においても最も優秀であるとの評判であります。これひとえに各位の御声援、御鞭撻のたまものでありまして、この機会に厚く御礼を申し上げるとともに、御報告を申し上げる次第であります。  以上申し上げましたように、ホクレン成績のよいことによって、おのずから他を刺激いたしまして、その影響によってはげまし合う結果が、栽培上にあるいは製造の上に、ますます全道的に向上発展することを期待しておるものであります。そういう意味から、ホクレンは、もう一工場を作りまして模範的な経営を行なってビートの発展向上に資したいというつもりで、今御当局にお願いをいたしておる次第であります。  次は三番目でありますが、ホクレンビート工場をやっておりますことについての使命の一端を申し上げたいと思うのであります。ホクレンは資本に対する利益配当を目的とするのではございません。もっぱら、寒地農業をどうして安定せしむるか、言いかえれば農家経営安定が目的であります。工場経営はむしろ手段であります。でありますから、土地改良であるとか作物の輪作の奨励、家畜の組み合わせ、栽培技術の指導などを行なって、単にビート生産さえ上がればいいというわけでないのであります。もし利益がありますればみな農協を経て農家に還元をいたすのであります。ビート糖工場の利益もほかの部門の利益も一括いたしまして、昨年は三億七千万円、本年は五億一千万円をホクレンを利用した分量に応じて割り戻しを行なっております。ビートに対しては、価格は政府御決定の千斤について三千百五十円でありますが、昨年は百円、本年は百五十八円四十銭の割り戻しをいたしました。  最後に申し上げたいことは、貿易が自由化された場合でありますが、農林大臣が言明しておられますから、砂糖については貿易の自由化は行なわれないと思いますが、もし貿易の自由化が行なわれた結果ビート糖工場が成り立たないようになりますれば、工場原料を安く買わざるを得ないこととになって、その影響がもし著しくなったということがあれば、ひいては北海道農業の破綻を来たすことは、これは火を見るより明らかなことであります。そんなことにならないように政府の方でもお考えを願いたいと思っておるのであります。かりに一歩を譲って砂糖輸入関税はそのままにしていただきますならば、貿易の自由化が行なわれた場合といえども、一工場一日二千トン、百二十日操業として、一操業期の原料二十四万トンあれば工場は心配ないと考えております。それには反収を五千斤に上げ、作付面積八千町歩にすればよいのでありますから、増収をはかって貿易の自由化に耐えられるよう努力すべきであろうと思っております。この点についても政府の方においては十分お考えを願いたいと思っておるわけであります。  私の申し上げることはこの辺で終わりたいと思いますが、お開き取りを願いましてありがとうございました。
  8. 吉川委員長(吉川久衛)

    吉川委員長 次に、日本てん菜糖振興理事業の永野参考人
  9. 永野参考人(永野正二)

    ○永野参考人 昨国会におきまして政府のお作りになりました甘味資源自給力強化対策要綱に基づきまして関係の法案が提出をいたされました際に、当委員会におきましても十分御審議のことでございまして、私ども日本てん菜振興会におきましては、当面の農業上の非常に大きな政策でございますところのテン菜作を改良いたしますための試験研究を中心にして仕事をして参ったわけでございます。昨年度一千万円の政府出資をいただきまして、本年度は三億四千万円の出資が予定されておるわけでございます。当面私ども北海道並びに西日本におきましてビートの試験研究をいたしますための研究所の設置を急いでおるわけでございます。北海道におきましてはすでに用地も大体内定をいたしまして、月寒にあります北海道地域試験場の畜産部の用地の一部を拝借をして、本年及び来年にわたって建設を完了したいと思うのでございます。また、暖地ビートの試験研究のために西日本研究所を設けたいと考えております。各県からもいろいろ御要望がございますので、ただいま、研究所として最も適格な土地はどこであるかということを現地調査をするということで、東大の戸苅教授を団長にいたしました現地調査団を派遣し、耕地決定の上、できるだけすみやかに研究所を作って参りたい、こう考えております。  これらの仕事をやって参りまして私考えております点を二点だけ申し上げてみたいと思うのでございます。  第一は、ビートに関する試験研究の強化をやっていただきたいということでございます。私ども振興会は、当初農林省の方のお考え方では、本所を北海道に置いて暖地ビートの関係は支所でやっていくということに相なっております。また、研究所の設置も一年おくらしてやろうというようなお考え方もあったのでございますが、現存暖地ビートは非常に西日本農業の上に大きな問題になっておりますので、これの建設を繰り上げまして、北海道と同時に本年度から着手をすることにいたしたのでございます。ところが、この振興会の財源関係をずっと見て参りますと、昭和三十五年から五年間にわたりまして三億三千五百万円程度のものを毎年政府出資をいただきまして、五年後におきましてはその中からできました基金の運用益でもって毎年の経費をまかなうようにするということに相なっておるのであります。そういたしますと、五年後におきます大体の予算のワクといたしましては、おおむね八千万円をこえない程度のものに相なるのでございます。そういう財源の制約からいたしまして、現在私ども計画では、北海道におきます研究所の技術者の人員が二十名、西の方の研究所におきましては十名ということに相なっております。この二十名、十名という数字は、いずれも学校を出たばかりの人から研究所の所長までを含めた数でございます。これでは、私は、実は今後非常に問題が複雑多岐になって参ります暖地ビートの試験研究機関としてちょっと手薄な感じを免れないと思うのでございます。もっとも、元金に手をつけることに相なりますと相当な財源があるわけでございますが、元金に手をつけるということは、長く仕事をしなければならないこの試験研究機関としては適当でないと思いますので、どうしてもこの西日本畑作の安定あるいは早期水稲の作付体系の確立、畜産の振興という大きな農業政策と結びつきますところの暖地ビートの試験研究を満足にやって参りまするためには、もう少し財源の点についてお考えいただきたいと思うのでございます。先ほど、製糖企業を代表いたしまして藤山会長からも、ビートの試験研究その他について十分努力をする用意があるという御発言もございました。政府の方もいろいろお考えであると思いますが、当面私ども研究所の建設に全力を注ぎますけれども、その間におきまして、将来にわたる試験研究の基礎の確立ということについてぜひお考えをいただきたいと思っておるわけでございます。  第二の点は、先ほどほかの方からもちょっと触れられましたが、現在ビート振興の基本法になっておりますてん菜振興臨時措置法の現行法の期限が近く切れるわけでございます。従いまして、これが改正ということが当然問題に想なるわけでございますが、現在、暖地ビートを考えてみますと、なかなか当初から経済的にペイをするだけの大きな工場を建てるということは困難でございます。従いまして、中間的にいろいろな形の工場ができる。それがビート作付面積がふえるに従って新しく規模の大きなものに作り変えられなければならない。こういうのが必然の過程として考えられるのでございます。従いまして、これらの企業の確立と申しますか、その企業の確立は同時に農民が安心してビートを作れるということに結びついておるわけでございますが、そういう企業の確立をはかりますためには、従来のようにできましたテンサイ糖政府買い上げるという方法だけでいいかどうか、そういう方法がとり得るかどうか、非常に困難な問題があるように存じます。私は、こういう点を解決するためには、今後、政府政策にのっとって中間的なあるいは試験的な段階で工場を建設される、そういう工場に対しての課税上のいろいろな措置を考える、同時に、それと結びつけまして、生産者からテンサイを受け取ります場合の価格、あるいは受け渡しの方法、あるいは、先ほどお触れになりました集荷地域の問題、工場ごとの集荷地域をどういうふうに分けるかというような問題、こういう問題もあわせて、しっかりと政府の方で規制をなさいまして、企業も、農家も、ともに安定しながら、片っ方はテンサイを作り、片っ方はそれを原料として製品を作っていくという、両方ながら安定して行なわれるような根本的な制度をお考えいただきたいと思うのでございます。振興法の期限は三十七年の二月まででございますので、すでに各方面で御検討を始めておられることと思うのでございますが、私といたしましては、こういうふうな制度を一本入れていただきまして、従来の北海道のできました砂糖買い上げ制度というものにかわるべき十分な法制的な措置をお考えいただきたい、こう考えておるわけでございます。  重複を避けましたので、以上の点にとどめておきます。
  10. 吉川委員長(吉川久衛)

    吉川委員長 次に、日本ぶどう糖工業会会長の川村参考人にお願いいたします。
  11. 川村参考人(川村保)

    ○川村参考人 私、ぶどう糖工業会の会長を最近引き受けました川村でございます。前会長の意図するところを十分含みまして、将来われわれ業者の協力によりまして何かと皆様の御期待に沿うように努力いたしたいと思います。三十三年四月以来、結晶ブドウ糖育成要領が発表されましてまだ日も浅いのでございますが、その間生産的にも微々たるもので、まことに恥ずかしいような次第でございますが、しかし、総合甘味対策の中にはブドウ糖の十五万トンというものが十カ年計画で組まれておりますが、これはもちろんイモ作農家の関連的関係から砂糖輸入量の一部として考えられたことは申すまでもございません。かような次第でございますが、ちょうど、昭和三十三年四月、前会長の箕原氏が「結晶ぶどう糖の生産振興についての要望事項」というものを発表されました。私はこの趣旨を再度確認して、将来ブドウ糖工業振興に寄与したい、かように考えております。  結晶ぶどう糖の生産振興についての要望事項  結晶ぶどう糖の生産振興のため、法律の制定或いは行政措置を以って左記によりこれが育成を図られたい。     記 一、結晶ぶどう糖の生産目標の決定について。   結晶ぶどう糖工業の育成振興については原料及び消費の両面から先ず生産目標が決定されなければならないが、その決定については、甘しょでん粉及び馬鈴しょでん粉の生産見込数量、砂糖の需給事情及び結晶ぶどう糖の需要見込数量、更に、国内における結晶ぶどう糖の出産能力をも勘案して定められたい。 二、結晶ぶどう糖の製造設備の規制について。   結晶ぶどう糖の製造工場を規制し過剰となることを抑制することは次の点から極めて必要なことであり、それによってのみ斯業の円滑な発展が期待でき、又政府の所期する目的が達成されるものと思料される。よって結晶ぶどう糖工業は国の認可制若しくは登録制としてこれを規制されたい。(認可制若しくは登録制の必要性) イ、計画的に設備を拡大してでん粉と結晶ぶどう糖の需給の不均衡を防止するため。    結晶ぶどう糖の製造設備はでん粉等の原料事情と結晶ぶどう糖の消費の両面からこれにマッチせしめて設置さるべきであって、これを規制せず自由に放任しておくと、設備は濫立過剰となり往年の人造米の二の舞になる事は必至であって、その結果は原料と製品の流通及び需給に波乱を招くことが予想される。従ってそのようなことにならないように予め規制措置を講ずべきである。 ロ、でん粉の既存の用途を尊重しつつ新規の用途の開拓を図るため。   現在国内でん粉生産量の内約八〇%は水飴ぶどう糖に消費されている。過剰でん粉の処理対策等から新規用途である納品ぶどう糖の生産振興を図ることは極めて必要なことであるが、新規の用途の開拓に急なる余り既存の用途を省みないことになってはいも作及びでん粉関連産業の真の安定にはならない。従って、既存の用途を尊重しその調整を図る上からも、設備は規制する要がある。(認可制若しくは登録制の基準とその決定方法) イ、認可若しくは登録制の基準については、年次計画による生産目標を定めて全国的に所要工場数及び製造能力を決定すること。尚、一工場当りの日産能力については企業採算面から日産五〇屯以上すること。 口、認可の決定に当っては、別に「結晶ぶどう糖生産振興協議会」を設け、政府はこれに諮問することとし、協議会は設備、技術、経験、立地条件その他の事情(製飴設備よりの転換)を審議して答申する。三、(略)四、(略)五、原料でん粉の価格の低下と恒久的な安定供給対策について。   でん粉の既存の用途を尊重し、結晶ぶどう糖工業の正常な発展を期することが、いも作及びでん粉工業の恒久的な安定を図ることになるので、でん粉の価格の低下と供給の安定について政府は次の施策を講ずべきこととせられたい。 1 原料いもの品種の改良とでん粉工業の合理化。    いも作農家の収益を確保し、しかもその二次或いはそれ以下の加工品の製品価格を引下げることは、他の競合商品との関係、或いは国際価格との関係かう最も必要なことである。それがためには、原料いもと食用いもに分け、多収穫品種とでん粉歩留りのよい品種等について研究することが必要であり、更にでん粉工業を合理化する必要がある。原料用のいもについては、喰べてうまくなくともでん粉の含有量が多ければそれでよいのである。 2 (略) 3 農産物価格安定法の改正。    現行農安法は昭和二十八年に成立したものであるが、例えば下値は支えるが上値は野放しであるため、でん粉の消沈関係等について甚だしい支障があり、本法成立当時とは環境が変っているので現実に即して改正の要がある。特に、政府が農安法により買上したでん粉を払下する   場合において、当局は特別会計等との関係により国有財産として如何にこれを高く売るかに終始し、適正な価格に安定せしめ関連産業の発展と国民経済の安定に考慮が払われていないのは遺憾であって、生糸価格安定制度に準じ、低価買入、高価売渡のいわゆる安定価格制度とせられたい。六、(略)七、結晶ぶどう糖の輸入の規制或いは禁止若しくは輸入関税の大幅引上について。   政府は、一方農安法によりでん粉の価格を支持し、その二次或いはそれ以下の加工品の価格の低下を防いでいる反面、輸入結晶ぶどう糖が安いからと云ってその輸入を認めていたのでは、国内結晶ぶどう糖工業は永久に発展しない。従って、政府結晶ぶどう糖工業を育成するため、結晶ぶどう糖及び結晶ぶどう糖を主原料とする製品の輸入を全面的に禁止するか、若しくはこれ等の輸入関税を禁止的大幅に引上げる措置を講ぜられたい。八、結晶ぶどう糖の消費の促進の為の普及宣伝について。   結晶ぶどう糖が如何に栄養的に優れているとは云え、一般に普及徹底しなければ消費は増大しないし、これを個々の製造業者の宣伝にのみ任せたのでは、生産量等から宣伝費には自ら限度があるので、急速な発展は期待出来ない。そこで、政府自ら消費の促進のため普及宣伝を行うこととし、そのため次のような措置を講ぜられたい。  1、必要に応じ結晶ぶどう糖の用途指定を行う。  2、結晶ぶどう糖を含んでいる食品に品質表示をすることを規定する。  3、更に民間に結晶ぶどう糖普及促進対策本部を設置せしめて、これに補助金を交付し、次の事業を実施せしめられたい。   イ、消費利用の講習会の開催。   ロ、新聞、ラジオ、テレビ等を通じての普及宣伝。   ハ、主要なクッキングスクール、大学及び高等学校等の料理家庭科用として、一定の数量を無償配付して利用の徹底を図る。   二、厚生省及び日本赤十字社、愛育会等の栄養保健関係の中央団体並びに全国の保健所に一定の数量を無償配付し、栄養補給を通じて利用普及を図る。   ホ、国立の研究機関である食糧研究所及び国立栄養研究所に研究費を交付して、更に新規用途面を研究せしめる。九、(略)十、結晶ぶどう糖生産振興協議会(仮称)の設立について。   政府は、結晶ぶどう糖の生産振興を図るため、政府の諮問機関として、関係官庁の関係職員、学識経験者及び関連団体の代表者を以って構成する結晶ぶどう糖生産振興協議会を設け、生産目標の決定、製造設備の規制のための認可   若しくは登録制の認可の決定、その他政府施策の決定及び遂行について諮問せられたい。十一、(略)  かような要望書が前会長から昭和三十三年四月に政府または関係方面に提出されたと思いますが、この際再確認の意味でこれを申し上げ、ブドウ糖育成にいろいろ御努力を願いたいということを切にお願いします。
  12. 吉川委員長(吉川久衛)

    吉川委員長 次に、全澱連会長の本坊参考人にお願いします。
  13. 本坊参考人(本坊美義)

    ○本坊参考人 全澱連会長の本坊美義でございます。全澱連業者の立場から甘味資源に関する御意見を申し上げます。  まず生産の面から申し上げますと、原料の入荷関係につきましては、すでに農林省から御発表に相なっておるのでございますが、三十二年度の生産から申し上げますと、三十二年度は作付が三十六万七千五百八十七町歩、三十三年度は三十六万二千五百町歩、三十四年度は三十六万九千三百町歩。これらの反収を申し上げますと、三十二年度が四百五十二貫、三十三年度が四百六十九賃、三十四年度が四百八十五貫。かように、毎年作付面積、反当収量が増加いたしております。  なお、これらの原料の消費につきまして簡単に申し上げますと、自家保有が約二五%、澱粉用が約三〇%、酒類アルコール関係が一〇%ないし一二%、その他が三〇%ないし三二%、かような状態に原料が消化されておるようでございます。  従いまして、澱粉の生産を申し上げますと、三十二年度は九千七百六十万貫、三十三年度は一億四百五十二万貫、三十四年度は一億三千八百三十四万九千貫、かような生産実情にあるのであります。  この生産に伴う消費の問題でございますが、消費流通は、先ほどブドウ糖の関係からもお話があったように思うのでありますが、水あめブドウ糖が七三%程度、その他が二七%、大略を申し上げますとかような状態で澱粉は消化しているのですが、先ほど申し上げました通り、毎年作付並びに反収等が増加いたしまして、本年の実情から申し上げますと、おそらく三千万貫の余剰澱粉が政府買い上げ対象になるのではないかということで非常に心配いたしている実情でございます。  需給の問題について申し上げますと、政府手持ちの関係はもうすでに御承知の通りでございますが、三十三年度の持ち越しがおそらくカン澱関係にいたしまして三千九百九十万貫ではなかったかと思うのであります。本年の出産が一億三千八百三十四万九千貫ということになるわけで、その消費量から見た実情からいきますと、先ほど申し上げました三千万貫程度が残るのではないかということで憂慮いたしております。  しからば、この消費の問題について申し上げますと、先ほどぶどう糖工業会の方からもいろいろと御検討された今後の方針の説明があったようでございますが、この澱粉の消化につきまして私ども澱粉生産者から特に申し上げたいことは、何といっても消費ではないか、かように存じております。しかうば、この消費の育成の関係につきましては、すでに政府は三十四年一月甘味資源国内自給対策といたしまして総合対策を立て、すでに発足されまして、われわれ段階における澱粉の十カ年の対象になる結晶ブドウ糖十五万トンの関係につきまして御配慮いただいたことにつきましては感謝いたしておるのでございますが、この十カ年といわずに、すでに澱粉については現在いかんともしがたいという実情にありますので、この際、これは五年とかあるいは三年とかいう段階に引き上げていただく、引き寄せていただくということを特にお願いいたす次第でございます。この方法につきましては、いろいろと加工関係の計画等もあると思うのですが、私なんかの関係から申し上げますと、もちろん甘味源であります関係L砂糖という対象が出てくるのであります。つきましては、私どもよく実情は知らないのでございますけれども砂糖輸入の問題とか、あるいは原料カンショの品質の改良による問題とか、あるいは反収におけるコストの引き下げ、従ってイモ価格の正常化ということにおいて消費段階ができるのではないか、かように存じております。先ほどビートの問題等が出たのでございまするが、ビート問題につきましてもまことにけっこうでございますが、今政府といたしましても毎年澱粉の買い上げの問題で非常に心配され、予算措置についても御苦労なさっておるので、私どもといたしましてもそのつど毎年御配慮をお願いをいたしておるのでございますが、この問題につきましてはどうか特別の御配慮を願いたいと存じます。  なお、この澱粉のコストの引き下げの問題につきまして、最近企業の合理化についてはいろいろと近代設備が目ざましいほど伸展しておりますが、私ども澱粉工場においては、若干の工場以外は合理化がおくれているというのが実情でありまして、これにはいろいろ事情もありますが、一番考えられることは中小企業体の悩みでありまして、どうかこの点につきましては今後の各面からの御配慮を願いたいと存じます。合理化については、あるいは金融措置の問題という大きな問題等もございますので、その点につきまして特に御配慮願いたいと存じます。  以上、大略を申し上げた次第でございますが、なお、今後起こるであろういわゆる自由貿易の関係につきまして申し上げますと、カンショ澱粉の場合は、貿易自由化についてまず概念を申し上げますと、貿易の自由化は経済力の回復とともに実施せられることは望ましいことであって、あえてこれに反対する理由はないと思うのでありますが、カンショはわが国畑作営農の根本であって、農家経済には不可欠の収入の源であり、このカンショの消費、すなわち処理加工としては、現在澱粉製造以外にその用途は見当たらないと思うのであります。従って、このカンショから必然的に生産される澱粉の現状から見ますと、今直ちにAA制に踏み切ることは、わが国農政上、農家経済上、さらに澱粉製造企業上、大なる支障と弊害があると考えるのであります。その理由としては、先ほど政府に対しましても意見書を提出してありますので、御検討願いたいと存じます。  以上申し上げまして、簡単でございますが意見といたします、
  14. 吉川委員長(吉川久衛)

    吉川委員長 最後に、全国水飴ぶどう糖生産者協議会連合会会長の川本参考人
  15. 川本参考人(川本福治)

    ○川本参考人 全飴連の川本でございます。私ども水あめ業者が国会にお招きを受けまして私どもの声をお聞き取り願うという機会を得ましたことは、全国あめ業者のこの上ないしあわせでございます。私からは、水あめ普通ブドウ糖の過去、現在、将来の見通し等につきまして御報告をさしていただきます。  私ども全国水あめ業者は、戦後甘味不足の時代に、全国で約千数百社設立せられました。ところが、二十四年秋イモ澱粉の統制が解除せられますや、たちまちその数が整理倒産されまして、加えて砂糖輸入量が増大されるのに逆比例しまして、三十年にはその数が約四百五十軒に整理倒産されました。ただいまでは北海道から九州までに私ども連合会のメンバーは百五十三社に激減しております。この業者はすべて中小企業でございまして、設備能力は澱粉一億万貫や一億五千万貫消化する能力は十分持っております。これが私ども水あめ業界の分布であり、企業体の実態でございます。  次に、生産量でございますが、戦前は年間水あめ普通ブトウ糖は約十三万トンの生産でございました。ところが、戦後砂糖不足の時代に、水あめブドウ糖が新たな分野に入りますとともに、そのよさがだんだん消費者に認識せられまして、ただいまでは約三十三万トンにまで増大いたしております。しかしながら、過去五年間の生産・消費の状況を見ますと、砂糖が高いか澱粉が安いときは、その数量は二〇%くらいふえております。逆に、砂糖が安いか澱粉が高いときはそれだけへこんでおります。大体三十万トンないし三十三万トンというのが最近五カ年間の生産・消費の数字でございます。ところが、昨年秋全国的にイモが豊作になりました関係上、澱粉も安くなりまして、昨年十月からこの九月までは私ども水あめ普通ブドウ糖だけで三十五万トンくらいの製品を生産するのではないかという見通しを立てております。それに加えまして、一昨年政府国内甘味の自給度の向上ということで国内甘味総合十カ年計画を立てられまして、私ども同業の結晶ブドウ糖育成を取り上げられました。これは私ども水あめ普通ブドウ糖業者としましては双手を上げて賛成しておるところでございます。と申しますのは、私ども水あめ業者は整理倒産しまして数は減りましたが、その設備と技術が合理化されたために、生産能力は相当な数字を持っております。しかしながら、お互い過当競争で、今もってまだ整理倒産という状況をたどっておりますので、この水あめ業者がいわゆる結晶ブドウ糖、最近の酵素ブドウ糖ということに転換をされますことによりまして、私ども水あめ業者は何とかバランスを得てこの企業が続けられるという状況であるからでございます。  それから、私どもお願い申し上げたいことは、砂糖の価格を安定さしていただきたいということです。最近キロ百二十一、二円で安定しておりますが、澱粉も同様にことしくらいの相場で今後とも安定さしていただきたい。それが安定しないために、せっかく伸びた有効需要があめが高くなるために逆に減るという状況を毎年繰り返しております。で、砂糖、澱粉の板ばさみにならないように、この三つが並行的にお互い生きて伸びていかれますように、澱粉と砂糖の価格の政策を十分に御検討願いたい。と申しますことは、私ども水あめ業者からしますと、イモ、澱粉、水あめ、そしてそれにつながる菓子あるいは食品に一貫した施策を打ち出していただきたいというのがお願いでございます。  それから、もう一つ、最近貿易・為替の自由化ということが取り上げられております。これは私ども業界から食糧庁の方へ書類を提出さしていただいておりますので省かしていただきますが、私ども、現在国内にあり余っている澱粉、そして政府手持ち澱粉の消化ということにつきましては、非情な責任と義務を感じております。ぜひともわれわれの力でこれを消化するということが私ども企業に携わる者の責任であるというふうに考えております。今後、納品あるいは酵素ブドウ糖と私ども水あめ、粉あめという一連の業界が干を取り合いまして、この澱粉の消化は、少くも四、五年くらいの間はこれを有効に片づけたいというふうに考えております。それがために、私ども水あめ業者はお互い手を取り合いまして、技術の改新、体質の改善経営生産の合理化ということを一生懸命やっております。また、従来やっておりません水あめのPRということにつきましても、ぜひ今後やりたい、さように考えておりますので、外国資本等の導入というようなことにつきましては、ぜひ慎重の上にも慎重に御配慮をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
  16. 吉川委員長(吉川久衛)

    吉川委員長 これにて参考人の御意見の開陳は終わりました。  これより参考人各位に対して質疑に入るのでありますが、食糧庁食糧研究所の桜井所長も出席しておりますので、念のためお伝えいたしておきます。  それでは質疑に入ります。松田鐵藏君。
  17. 松田(鐵)委員(松田鐵藏)

    ○松田(鐵)委員 宮本さんにちょっとお伺いしたいのです。先ほどは参考人として日本ビート糖業協会会長としてのお立場によって御説明をされたのでありますが、ホクレン会長の御意見とだいぶ異なる点があるのです。ビート糖業協会の会長として個人の立場でお話になったのか、ちょっと食い違いがあるのです。小林参考人の御意見は、現在は五千町歩だ、それに対して自分の工場はこういうように成績をあげておる、この五千町歩土地をもっともっと改良して八千町歩に該当するように努力をしていくならば糖業の成績も非常に上がることであろう、こういうようなお話でありまして、土地改良を目的としたお話を承ったのでありますが、宮本さんの御意見だというと、土地改良政府でやれ、そうして、農林省で大体の基準としてきめております百二十日操業ということに対して、これでは手ぬるいから、工場実情に合わしてもっと土地を与えろ、ビート工場の許可なんか、極端に言うとあまりすべきでないというような御意見のように私は闘いたのであります。北海道の寒地農業の確立ということから言って、今ビート振興ということが非常に叫ばれておるし、道民としても、農民としても、非常に力を入れてそれを推進していかなければならないという行き方を持っている。そういうときに、自分の工場だけはうんとやるべし、これから方々にやっていく工場に対してはある程度まで制限したらいいじゃないかというような御意見のように受け取れたのであります。まさか会長はそういうようなお考えはないと思うのでありますが、昨年の国会で、臨時てん菜糖製造業者納付金法というので、あなたの日計とすれば十六億出さなければならぬことになっておる。ところが、私の選挙区は北見、根室、釧路、十勝ということになっておりますが、お宅の工場は寒い方ばかりにある。根室の実態を見ても、釧路の実態を見ても、宗谷の実態を見ても、土地改良が行き届いていないのです。これは、十六億も国に納付しなければならないようなことになっているので、会社の利益というものからは当然そうあるべきであろうと思うけれども、いま少し土地改良に力を入れてやったならば、農民も喜ぶだろうし、あなたの方の区域にもホクレンのように増産されるようなところもあるだろうと思うのですが、そういうことをビート糖業協会としておやりになる御意思がないでしょうか、この点を承りたいと思います。
  18. 宮本参考人(宮本来治)

    宮本参考人 私の説明が足りなかったので誤解を招いたような点がございましたら訂正いたしますが、さっき申し上げましたのは、日本ビート糖業協会の会長としての意見でございます。それから、また、会員は四社ございますが、四社とも、今御指摘になりましたような耕土の改良とか増産とかいうようなことにつきましては、従来も非常な努力を続けて参りましたが、今後とも一そう努力をして増産をいたすという考えには毛頭変わりはございません。また、国策の線に沿いまして、従来より一そう増産していこうという決意でおりますから、御安心を願いたいと思います。
  19. 松田(鐵)委員(松田鐵藏)

    ○松田(鐵)委員 非常にりっぱな御意見を承りまして、私ども意を強うするものでありますが、大体、根室や釧路や宗谷というものは、全然ビート振興が行き届いていない。土地改良というものに対し政府も十分力を入れてやっておるが、それらに対してほとんど行き届いていない。これは一つ政府の責任もあるけれども北海道に根処を置くビート製糖業界、すなわち日本ビート糖業協会というものがもっともっと力を入れなければならぬものじゃないだろうかと私は思うのですが、多くの金を農林省、国に納付するということよりも、まだその金をもっと土地改良に力を入れるという考え方は出なかったものでしょうか。こういう点を私は非常に遺憾に思っておるのですが、その点が一つ。  それから、ホクレンの現在のやっておるあり方というものから言ったならば、小林会長の言う五千町歩でもって八千町歩やると同じような増産をしようという考え方、これは私はあそこにおいては可能だと見ております。それだけ力を入れておる。たとえば、火山灰地帯であるからというので、泥炭を掘ってそこに入れてやるということは、ホクレンが出しておる。こういう点から言ったら、土地改良というものについて、国ばかりにたようぬで、工場を安全にまた利益を上げるように持っていくためには、もう少し力を入れてやる方法があるんじゃないかと思うのですが、こういう点は、今度はあなた個人の会社としてどうお考えになっておるのか、この点も一つ聞かしておいていただきたいと思います。
  20. 宮本参考人(宮本来治)

    宮本参考人 ただいまの御質問は、根釧原野の問題が主でございますので、今個人としての意見を申し上げます。  従来とも長年根釧原野の耕土の改良その他につきまして努力を続けて参っておるのでございますが、一企業会社といたしましてはなかなか力が及びません。幸い、数年前から、御承知のように、パイロット・ファームができまして、私ども非常に力強く感じておりますと同時に、今お話しのように、政府にばかりたよりませんで、会社自体としても非常な決意と努力を続けて参っておるのでございますが、何分にも微力でございまして、なかなか思うように進展いたしませんので、今後とも努力を続ける所存でございます。  それから、また、納付金のお話でございましたが、納付金は、御承知のように、これは法律としてきめられました、私どもに課せられました義務でございますので、私ども非常に当時は遺憾と思いましていろいろ意見も述べたのでございますが、私ども意見がいれられませんで、ああいう法律ができました。法律となりましたならば、私どもは死力を尽くして毛法律に従って納付金を納められるように事業を運営していきたい、かように存じております。私どもといたしますれば、今お話しのように、国に納めるのは、会社に利益が出れば税金をとられるのだからそれでよさそうだ、もうかったものはそれだけ増産に使ったらいいじゃないかというふうな御意見に伺いますが、私どももその御意見には賛成でございます。ですからして、私どもは、一日も早く、諸先生方にお願いをして、今の納付金法がなくなりまして、そして会社の思うように制益が使えるということになったらば大へんしあわせと存じますが、これは私個人の話でございます。しかし、せっかく両院を通過しました法律でございますから、そう簡単にはこれは廃止できないと存ぜられるのでございますから、法律があります限りは、私どもはその法律に従って国民としての義務を果たすように最善の努力を続ける覚悟でございますから、どうぞよろしく御了承を願います。
  21. 松田(鐵)委員(松田鐵藏)

    ○松田(鐵)委員 今の納付金の問題は、私どもが国会で審議をしてあの法律が通過したのでございまして、あなたの言われるようによく承知しております。ところが、あれはあなたの会社の利益のこれっぴしなんです。それまで何にもしていなかったということなんです。今ホクレンが昨年は三億七千万、本年は五億一千万を割戻しして、そうして土地改良に協力してやっていっているから、この五千町歩のものが八千町歩に該当するように増産をしていくということを話されておる。あなたのところは、もうちょっと力を入れてやれば、それはもう大へんな増産がされるのですよ。ですから、政府の方も一也懸命にやっておりますから、あなたの方も、ただいま国会で述べられた意見をよく考えて、ホクレンのように土地改良に協力していけば、もっともっと増産されると思う。また、先ほどの意見だと、四万町歩で十四万トンできる、八万町歩でもって三十万トンできるのだ、こういう御意見です。そうしますと、ビート工場は二十カ所作ってもいい。そういうように一つ会長から御指導を願えるように、自分だけで利益をとるということでなく、方方に対して要望にこたえるように御指導を願いたいということを希望して、私は質問を終わります。
  22. 吉川委員長(吉川久衛)

  23. 田口委員(田口長治郎)

    ○田口委員 日本ぶどう糖工業会の川村さんにちょっとお伺いしたいと思うのでございますが、先ほどあなたが読まれました陳情書の趣旨は、新会長として旧会長がきめられた方針を踏襲されるということで、これはまあ一通り道義上必要であるかと思うのでございますが、今のブドウ糖業界の状態から言いますと、どうも過去のことをお考えになっておって、新しい事態になった今日の実情によってブドウ糖工業をどう持っていくかということには、さらに触れておられないような感じがするのでございます。御承知の通りに、酸糖化の結晶ブドウ糖は、これはソルビットだとか薬品だとか、その方面の需要を満たすために作るものはやむを得ないといたしましても、甘味資源として考えます場合におきましては、どうしても砂糖と対抗する方法を考えなければいかぬ。その砂糖と対抗していくためには、今日、酵素糖化法による方が一番近道である、これは常識になっております。従って、あなたの工場にいたしましても、あるいは京浜糖業にいたしましても、あるいは参松さんの福岡工場にいたしましても、長崎農産にいたしましても、すでに酸糖化から酵素糖化に切りかえつつある。言いかえますと、ソルビットだとかあるいは薬用の結晶ブドウ糖だけが必要で、あとのものは結局精製ブドウ糖の方に切りかえて進んだ方が早く甘味対策としては目的を達することができるのだ、こういうような実情になっておるところに、前会長がきめられた方針であるということだけで、ここ二、三年前の情勢は昨年の九月からすっかり変わってきた、変わってきたが、この前のことで工業会が指導をし、そして業界を進めていこう、こういうようなお考えであれば大へんな間違ったことである。言いかえますと、今日結晶ブドウ糖は酵素糖化による精製ブドウ糖の方に切りかえなければ道がない、こういう時代に、結晶ブドウ糖育成にこうしてくれああしてくれというようなことでは、非常に時代錯誤もはなはだしいし、もし工業会がそういうことを考えておるとすれば、とんでもないことであると思うのでございますが、その点についてどうお考えでございますか。
  24. 川村参考人(川村保)

    ○川村参考人 ただいま田口議員からおっしゃった通り、表面から見ますと、さようなふうに御判断願うのはもっともだと思います。実は、私、工業会に加入いたしましてから日も浅いものでございますので、業界内部の事情もまだ十分にわかりませんし、その考え方もいろいろ収集しております。先ほどおっしゃいました酵素糖化法によって精製ブドウ糖砂糖に対抗する、かようなお考えでございますが、私の考えは、酵素糖化法の製造方法は、いわゆる率の問題になりますが、分解率DEが大体九七、八まで上がります。かような面から申しまして、酸糖化で申しますと、DEは九四が最高だ、それ以上に糖化を進めますとブドウ糟が過分解し、なおかつ、分みつしてハイドロールを排出しなければできなかったような状態で、酵素糖化法の精製ブドウ糖のトータル・シュガーが最も理想的だということはかねがね承知しております。しかし、私の考えは、これはほかの例になりますけれども、グルタミン酸ソーダのいわゆる蛋白質の加水分解法が澱粉を糖化したブドウ糖の発酵法に食われたということとほぼ同様な考え方から出発いたしまして、根本的に酸糖化法と酵素糖化法の採算面が違うということはブドウ糖にも言えるのじゃないか、かように解釈できますが、実際問題といたしまして、酸であろうと酵素であろうと、糖化方法はいかようにも変わりはない、なおかつ、砂糖に準ずるようなものを作るという考え方からいけば、あくまで分離いたしまして商品価値の高いものを作るというのがわれわれ企業家の生きる道じゃないか、かように考えております。さような次第でございまして、国会の皆さん方には酵素糖化そのものは精製ブドウ糖以外にない、かようにお考えでございますが、私は、酵素糖化法によっていわゆる輸入ブドウ糖以上の品質のものもでき、なおかつ無水もでき、一般の含水結晶と申しましょうか、今までの結晶ブドウ糖もできますし、なおかつ、そのハイドロールを固めて精製ブドウ糖ができる、かような合理化方法を考えておる次第でありますので、前会長のいわゆる趣旨を尊重するという意味じゃございませんが、甘味資源砂糖の趣旨から申しますと、いかに技術を向上させて品質のよいものを作っても、長年なれている砂糖の嗜好というものにはどうしても及ばない、長持ちしないというような関係から、いわゆる商売上から申しますと、ただいま非常に苦しんでおるような状態でございます。  かような次第でございますので、われわれも決して古い考え方から前会長の趣旨を尊重した、かような意味でございません。われわれとしては、時勢の進歩に即応したあらゆる総合的な考え方から将来いろいろ進みたい、かような意味におきまして、たとえば「ぶどう糖振興協議会」というものを設けて、さような機関でいろいろ御諮問願えれば、かように考えておる次第であります。
  25. 田口委員(田口長治郎)

    ○田口委員 簡単にやりますが、砂糖等の問題は別におきまして、結晶ブドウ糖として薬用あるいはソルビットに使用する部分だけ、言いかえますと外国から輸入するものを抑圧してしまう、こういう観点から結晶ブドウ糖の分野はうんと努力してもらわなければならぬと思うのでございますが、しかしながら、この分野は数量として大した数量でない。言いかえますと、外国から輸入するものを抑えるという点は非常によろしゅうございますけれども国内の澱粉を消費する分量という点から言えば大して問題にならないと思うのでございます。どうしても、砂糖と競合するもので砂糖よりも経済的に喜んで国民が消費するものに持っていかなければいかない。それが国内の澱粉を多量に消費するゆえんでありましょうし、またブドウ糖を製造する人の生きる道である。その理由は、従来酸糖化を皆さん方がやっておられましたけれども、実際にあまり予定通り発展をしない。その発展をしない理由は、出産費が高くつく。その生産費が高くつくということは、設備にうんと金がかかって、償却金利が高くつく。もう一つの問題は、甘みが足らない。この甘みの足らないものを補充するのには、酵素糖化によるものは結晶内に人口甘味を入れることができるけれども、酸糖化の分は結晶の中に入れることができないから、粉末になって混合しても均一にまざらない。この関係からいたしまして、甘みが足らないために価格がどうしても高くつく、設備が高くつく、こういうような点から、いわゆる食用としては、結局、人口甘味を平均にまぜられる、そして設備のそうかからない酵素糖化による方が砂糖との問題は近道である。また、現実において、そうでありますから、今酸糖化でやっておる工場の人が毎日々々酵素糖化の方に切りかえていっておられる。これはその点をお考えになっての行き方であろうと思うのです。私らかう言いますと、もち酸糖化の結晶ブドウ糖は薬用とソルビット程度で、あとの多量に使う酸糖化というやつは、奨励でなしに、もうここらで切ってしまって、輸入でも何でもここらでとめてしまうような方法を講じなければ、澱粉からとる甘味は澱粉を多量に消費する事業としては伸びない、こういうことを考えておるので、そういうような考えを持っておるところに、今参考人として述べられたような、結晶ブドウ糖育成するようなことばかり言っておられたら、非常に情勢の変わった今日、工業会は何を考えておられるのだろうか、こういうような疑問も浮かぶわけなんですが、これはここで議論してもしようがないですから、私の言いましたことを工業会内で一つ皆さん方ようく研究していただきまして、そうして今の新事態に即応した結晶ブドウ糖あるいは精製ブドウ糖の行き方、業界の伸び方、そうして国家的にはできるだけ自給甘味を多くする、また滞貨澱粉その他国内の澱粉資源をできるだけ多量に一つあなた方の業界で使用する、この根本策について工業会であらためてよく皆さん方と一つ御研究を願いたい。今ここでなたと私と議論してみたところで、これは次官を空費するだけになりますから、その点だけお願いしておきます。
  26. 川村参考人(川村保)

    ○川村参考人 ただいま、精製ブドウ糖人工甘味を入れて甘くし、なおかつ値段を安くして、甘味用としては精製ブドウ糖でたくさんだ、こういう意見でございます。しかし、私の考えは、現在酵素ブドウ糖がいわゆる市場澱粉で十貫目千四百五十円と仮定いたしまして、それに九をかけまして、全部で四万円かかるんじゃないか、同時に、加工賃が約三万七、八千円かかります。そうしますと約七万七、八千円。それが現在林原氏は八十円前後でございます。現在かような状態でございますが、私は酵素糖化による結晶ブドウ糖によって八十五円まで下げ得る確信を持っております。そういたしますと、結晶ブドウ糖こそ人工甘味をまぜられますし、なおかつ要するに砂糖の一助とすれば結晶ブドウ糖以外には断然これは侵食できないんじゃないか、こういうふうに私は考えております。かような次第でございまして、将来私はあくまで結晶を主体に考えまして、輸入品は言うに及ばず、砂糖の代替といたしましても、値段はあくまで合理化さして安くして、皆さんの御要望にこたえる、かような考えで進みたい、かような決心であります。
  27. 田口委員(田口長治郎)

    ○田口委員 ちょっと、そこまで言われると……。八十五円で売り出したということは、これはそんな高く売る必要はないんだけれども、一方結晶ブドウ糖の価格が高いから、それで、実際の生産費から計算した価格販売をするとこの方をつぶしてしまうから、むしろ農林省からこの程度にして売れというような趣旨で八十五円という数字が出たものであるのです。それから、もう一つ、酸糖化でこの酵素糖化の生産費と競争するといってみたところで、これは、御承知の通りに、アメリカなんかのグルタミン酸ソーダなんかでも、初め酸糖化でやっておったのが、酸糖化でやりますと設備が消耗品になってしまう。腐ってしまう。そういうことで、今アルコールないしアルカリにかえて製造しなければならぬほど、酸を使うということは設備が消耗してしまうことになるので、この点から言って、すぐ腐ってしまうから、いろいろなステンレスその他を使うようなところもありましょうし、あるいは圧力をかけなければならぬような設備もありましょうし、あるいは分みつ機の高いものを設備しなければならぬ、そういうようなことがあって、酸糖化の設備というものは酵素糖化の設備に比べますとどうしても設備費がうんとかかる。そのうんとかかる設備で、そうして一方設備のかからない酵素糖化と価格において競争するということは、これは不可能なんですね。不可能であるから、今まで酸糖化でやっておった工場が漸次酵素糖化の方に切りかえつつある。このことはその点をいっておるだろうと思うのです。そういう点もあるのでございますから、川村さんの意見もありましょうが、よく一つその点を御研究になって、そうして業界が間違わないような方向をとってもらいたいわけなんですが、もしあなた方が酸糖化でどうしてもいくんだ、こういうことであれば、これはこの業界は必ずつぶれてしまうと思うわけなんです。いろいろな保護政策も、そういう不経済な工業に対して国としても与えるわけにいかないのですから、その点もお含みにならなければいけないと思います。
  28. 川村参考人(川村保)

    ○川村参考人 ただいま御質問のございましたことですが、どうも酸糖化と酵素糖化と、酵素糖化は精製ブドー糖以外にないのだ、かようなお話でございます。私は、酸糖化はもう時代おくれの長物だということはかねてよく承知しております。かような次第でございまして、糖化方法は酵素でやりまして、そうして、いわゆる無水ブドウ糖、純度の高いもの、その次は含水ブドウ糖、精製ブドウ糖、こう三種類が一貫して出てきます。糖化方法はあくまで酵素ということを考えて下さい。こういう意味から言って、いわゆる精製ブドウ糖とおっしゃるのは、今までの酸の粉末ブドウ糖のことと同様だというお考えだったら間違いないと思います。その点の考え方が、これは専門的な技術になりますから、いろいろ意見が統一してないのでまことに恐縮なのですが、あくまで糖化は酵素です。精製ブドウ糖というのは、酵素で糖化いたしまして、それを一定量に煮詰めましてバットに流して固めたものを削るのだということでございます。私は、あくまで、要するに分解率を九九・八まで上げまして、一番の無水結晶をとり、二番の結晶をとり、三番の結晶をとり、四番の結晶で現在の精製ブドウ糖が十分できます。さように確信を持っております。
  29. 田口委員(田口長治郎)

    ○田口委員 その結晶ブドウ糖の問題ですが、純度から言いますと、酸糖化による現在の結晶ブドウ糖が九八・五程度の純度と思うのですが、もし酵素糖化でやられた場合、結晶ブドウ糖をこの方法からのものでやられると完全に一〇〇%の純度のやつがとれるのですね。そういうものは食用にはいいことはいいけれども、そこまでやって生産費が高くなって、それで砂糖よりも値が高くなるということでは、食用にはそこまで見る必要がない。ソルビットだとか薬用だとか、それはあなた方が作っておられる含水の結晶ブドウ糖をさらに無水にされてアメリカから輸入するものを防遏する、こういう薬用とかではそれがいいでしょう。しかし、食用には非常にけっこうなものだけれども、価格の関係、国民に早く普及させるという点から言って、そういう高度のものまでは要らないだろう。言いかえますと、農林省が規格できめた九六純度以上程度のものであれば、砂糖の代用というものに対してはそれでけっこうである。そのものは生産費が安くてできるのだから、安くて売れるから早く国民に普及ができる、こういう意味なのです。高級なものができることはできましても、それはやはり高く生産費がつくから安く売ることができない。そういうものが澱粉の消費を多量にということは、その点においては貢献しにくい、こういう意味において私は申し上げておるのでございますから、よく一つあなたの方でも研究していただきたい。あなた方の方で、もし結晶ブドウ糖だけでずっといくのだ、こういうような方針であれば、それもまたけっこうでございますけれども、その点については、国の助成ということについては、はたしてそれで目的を達するのかどうかということについで再検討をしなければならぬ、こういうことを私申し上げておる。
  30. 吉川委員長(吉川久衛)

    吉川委員長 保岡君。
  31. 保岡委員(保岡武久)

    ○保岡委員 全澱連の本坊さんに一つ承りたい。結晶ブドウ糖原料として澱粉が非常に割安で政府から提供されている、それが非常に今後の澱粉の価格に悪影響を与えるという御心配のようなことを承っておりますが、これは、政府の大きな手持ちを少しでも減らしていくということも一つの理由でありましょうし、同時にまた、今後日本のこの澱粉というものを有効に適切に消費するというために結晶ブドウ糖の問題が大きく今取り上げられておるわけでございますので、その点についてあまりこの問題を御心配されることはないのじゃないかと思うのでございますが、それよりも、むしろ、今後できますところの、やっていきますところの酵素糖化等の大きな工場がそれぞれできました際に、その際における澱粉の価格というものがはたして農民の経営上ペイするかどうかということが重大な問題である、かように私どもは実は思うわけでございまして、その点については、原料の値段がどれだけするかということはまだ見当はつかぬのかもしれませんけれども、将来は、こそくなことでなしに、堂々と澱粉を原料として買い上げて、そしてそれを結晶ブドウ糖化していくということでございますので、その面について澱粉業者としては相当大きな関心を持っていくべきじゃないかと私は思うのでございますが、それについての御意見を一つ承っておきます。
  32. 本坊参考人(本坊美義)

    ○本坊参考人 ごもっともなことでございまして、一方には、澱粉が余るから、一つ政府に対しましてはイモ作安定のために買い上げしていただきたい、なおまた、一方には、消費の面からいきまして、消費末端から計算いたしますと、どうも育成ができない、採算がとれないということにおいて、政府は澱粉の払い下げを適正価格でいたしておる、こういうふうなことで、非常に矛盾をいたしておるわけです。でき得れば、この矛盾をいかにすべきかというようなことに相なるかと思うのですが、実は、私ども生産の段階からいきますと、先ほど申し上げましたように、毎年澱粉が相当量残る、こういうふうな関係からいきまして、政府に対しましては安定のために買い上げを毎年余る場合においては御配慮を願っておるわけでございますが、余る関係におきまして、一部の価格が足を引っぱられるというふうな姿が現在の実情でありますので、一方には消費の拡大を御相談申し上げるし、なお、一方には、余ったやつはどうも政府におすがりせねばならぬというようなことで、実は非常に苦慮いたしております。そこで、先般来政府に対しましても陳情申し上げておるのでありますが、澱粉の払い下げ価格の問題については相当検討をしていただきたいというのがわれわれの熱望であります。先ほど申しました通り、一部の価格がどうも引っぱられるということでは、市場が混乱する。せっかく自主調整しつつ販売努力をいたしておるけれども、何かそれがリードしておるという実情でありまして、余る関係においてはどうにもならぬということは実に悩みであります。  そこで、先ほどいろいろブドウ糖の問題が出ましたが、これの育成の方法は、何といっても砂糖との対照でありまして、この対照において、いわゆる消費から逆に答えを出すということになりますと、イモの価格にはね返ることは当然でありまするが、これも、何といってもイモの生産にも限度があることでありましょうけれども、今後、育成の問題に関連いたしまして、イモの価格も、あるいは反収あるいは品質の向上もお願いいたしたい。われわれ澱粉業者といたしましても設備の合理化を推進いたしましてコストの引き下げというふうなことはもちろん努力せなければならぬということになるわけでございますが、実際、現在の基準価格そのものにつきましても、実は私どもといたしましても実情に沿うたいわゆる基準価格がほしい。先ほど買う段階からもいろいろと正常化ということが出たようでございますが、イモの正常化、なお澱粉の正常化ということは、この基準価格が実情に沿うておるかどうかということを非常に心配いたしております。実情ということについては、いろいろと見解もありましょうけれども、いわゆる消費にマッチした実情ということを申し上げておるのであります。これについては、生産イモ作農家あるいはわれわれ澱粉業者、なおまた政府としてブドウ糖育成する、その関係から逆算した一つの線がはっきり打ち出されることを希望いたすわけでございます。  以上申し述べさせていただきました。
  33. 保岡委員(保岡武久)

    ○保岡委員 もうすでに、酵素糖化が非常によろしいというので、そういう方向に向かって全国に有力な工場計画されつつあるわけでございます。すでに来年度、再来年度の原料をどんどん消費するという状態にならぬとも限らない。そういう際でありますから、澱粉業者としては、その際の原料価格というものが一体どうなるかということは、今からいろいろと検討されて、業者はもちろんでございますが、その背後にある農民の利益を十分に確保してもらわなければならぬということをやっぱりお考え願いたいというわけなんです。  それから、その次に、藤山さんに承りたいと思いますが、先ほど糖業界全体についてのいろいろなお話を承りまして参考になったわけでございますが、西南諸島のサトウキビという日本としては大事な甘味資源があるわけなんです。もちろん、ビートテンサイあるいは澱粉、それと相並んで大きな資源だと私どもは考えております。ところが、従来は関税定率法の問題とかあるいは砂糖消費税等の問題に制約されまして、せっかくのサトウキビから分みつ糖ができなかったのでございますが、昨年の両法の改正によりまして、やっとそれができるということになって、それぞれ企業が進出をいたしておるわけでございます。ところが、やはり一つの限界というものがあると見えまして、西南諸島におけるサトウキビが全部分みつ化するわけではない。やはり黒糖として残る面が相当あるわけです。私ども、従来黒糖だけを作っておった際は、もう黒糖自体時代おくれのものであって、だんだん市場の消費から見放されておるという状況で、価格が非常に弱っている。分みつ糖にいたしますと、これはもう輸入原料が非常に多い建前から、貿易管理等の関係で、去年までは価格が七十円が、ことしは七十二円ないし三円に安定しているわけです。ところが黒糖は去年までは全く不安定だった。上がったり下がったり、農民はほんとうに青息吐息というような状況だったのであります。昨年の制度改正によりまして、大部分とまでは申し上げられませんが、一部のものが分みつ化していきますので、黒糖生産というのはだいぶ減って参っているわけです。そして、価格も、ことしあたりは、そのせいかどうか知りませんけれども、ある程度維持されている状況なんで、西南諸島黒糖を作っている農民は非常に助かっておるということになるのでございますが、今後の黒糖の需給などということについて一体どういうふうに考えておられるかということをちょっと承りたいと思います。
  34. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 お答えいたします。今おっしゃるように、沖縄を含めての西南諸島は、この砂糖生産地としては北海道暖地ビート同様最も重要なものでありまして、これは、甘味資源対策の上から言っても、沖縄西南諸島の経済を維持する上から言っても、砂糖とパイナップルくらいが沖縄のほんとうの経済産業でありますから、何としても砂糖はやっていかなければならない。しかし、今おっしゃったように、従来は黒糖生産が主でありましたが、私の承っているところによりますと、やはり内地黒糖の消費は年々減っていく。従来大きな黒糖の消費者であった農村においてもだんだん白い砂糖を消費していく。これは自然にまかしておけば自然の趨勢として黒糖は消費の面から需要がなくなるから減ってくるのではないかと思います。それで、これの対策といたしましても、やはり沖縄では分みつ糖工場を作っていくのが本筋ではないか。それで、沖縄政府もその線に沿って、それから、私の承ったところによると、黒糖業者も合同してだんだん分みつ工場の建設が進められているようであります。それに内地砂糖会社も投資して、今だいぶ黒糖業者が集まり、それに内地砂糖業者が投資して、新式の分みつ糖工場生産が開始せられているようで、沖縄糖業全体としては当然分みつ化していくことと思います。しかし、その間に、黒糖も、全部消費がなくなったわけではありませんから、ある程度のものは国内で消費されると思います。また、出産が減れば、季節的に黒糖の需要があるので、値段が高くなるということもあるので、御承知のように黒糖は取引所に上場されている対象物件で、そういう意味で相当の値段の波乱もあるようでありますが、しかし、黒糖の長い将来を見れば自然減っていくのではないかと思いますが、現在ある程度の生産は当然維持していけますし、また維持していくようにすることがいいのじゃないかと思います。
  35. 保岡委員(保岡武久)

    ○保岡委員 沖縄を含めておりますので、黒糖の問題は沖縄を度外視するわけにいかぬのですが、私は奄美群島の者でございますが、奄美群島の県糖という問題につきまして、今後の保護ということはやっぱりやっておかぬと、どうしても、今の税制の状況からいたしますと、まだ不安定で、そうして、島のすみずみまでサトウキビを集荷をするということになりますと例の採算という問題が出てくるので、どうしてもやっぱり集荷できないで、黒糖を作らなければならぬ面が残る。おそらく沖縄にもそういう問題があると思います。そういう面からいたしまして、今後黒糖を作らなければならない運命にある農民の保護ということから、黒糖保護ということもよほど考えていかなくちゃならないのじゃないか、かように思うのであります。  もう一つ続けて伺っておきたいことは、これは非常に愚問かもしれませんが、奄美群島を含めた南西諸島のサトウキビから作るところの分みつ糖と、それから輸入原料を利用いたしまして精製いたしますところの分みつ糖というものと、分みつ糖にもいろいろ種類があるということも承知いたしておりまするが、大体におきまして、でき上がった砂糖の性質と申しますか、価値と申しますか、そういうものに差異があるかどうかということをちょっと承りたい。
  36. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 分みつ糖は別に差異がないと思います。沖縄並びに西南諸島でも、りっぱな工場が建って、技術を持ってやれば、キューバで作った砂糖でも西南諸島で作った砂糖でも、サトウキビからしぼったジュースを砂糖にするのですから、別に——コストの差はありますけれども砂糖の品質そのものは、りっぱないい設備をしてりっぱな技術を持っていけば、どこで作っても世界砂糖は同じものができます。それが砂糖の国際商品であるゆえんですから、技術と設備さえあれば、どこのサトウキビで作っても同じものができるわけであります。
  37. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 議事進行。  委員長に申し上げますが、本日暖地ビート研究会の会長の石井英之助君が参考人としてまだ出席されていないようです。本日は、大ぜいの参考人の中には、あるいは鹿児島、北海道等からもわざわざ出席されておるにもかかわらず、全販連の会長である石井君が出席しておらぬ。その理由についても委員長から発言がなかったわけなんですが、こういうことはやはり国会軽視になると思うのです。中央の農業団体が、しかもどうも旧農林官僚はときどきそういう通弊があるようです。ですから、この点については、委員長から即刻通知されて、午後の再開劈頭でもいいですから、出席を求めて、特に当委員会としては暖地ビートの問題については重大な関心を寄せて期待しているわけですから、しかるべく取り計らってもらいたい。
  38. 吉川委員長(吉川久衛)

    吉川委員長 芳賀委員の御発言、ごもっともでございますが、委員長から再三出席要求をいたしておりますが、健康を理由に伺っておりましたので、私はそれ以上要請をいたしませんでしたが、その後の様子を伺いまして、午後出席できるものならば出席を求めたいと思いますから、御了解を願います。  午後一時十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時四十分休憩      ————◇—————     午後一時二十八分開議
  39. 吉川委員長(吉川久衛)

    吉川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  甘味資源に関して参考人各位に対する質疑を続行いたします。中澤茂一君。
  40. 中澤委員(中澤茂一)

    ○中澤委員 藤山さんに少しお伺いしたいと思います。  実は、昨年北海道で非常にビート工場問題が混乱いたしまして、われわれ農林委員会としては、吉川委員長を団長に、一週間現地をつぶさに調査に行ったのであります。その過程においておそるべきことが至るところに展開されたのであります。それは、いたいけない学童まで使って、そして日の丸の旗を全部町をあげて持たせまして、そして凱旋門のような門まで作りまして、われわれ一行の歓迎だと……。この歓迎はまことにありがたいのでございますが、一体これはどういう現象かというので、われわれは実は驚いたのであります。ところが、各申請してある工場の方がそういう運動をやれという呼びかけをだいぶ強くしたので、ああいういたいけない子供まで使ってやった。われわれ、憤激して、二カ所ぐらいはもう寄りませんでした。あまりにもでたらめなやり方です。実は、昨年そういうようないきさつがあって、当委員会といたしましては、帰って国会に対する正式な報告には、三十七年度までは現有設備で十分間に合う、三十七年度までは設置の必要なし、こういう正式な報告書を出したのであります。特に、藤山さんの会社が申請をしておられる本別町ですか、ここは一番猛烈な歓迎をやったわけであります。われわれは寄らないで、自動車でそのまま突っ走りました。そのとき、その町のはずれに、非常に大きな、四、五メートルある看板に、大日本製糖工場敷地というようなことを書いて、二本立てられて、写真までとって参りました。聞くところによると、その地はまだ農地転換の申請も出ていない、こういう現実があったのですね。それに対して、会長として、並びに社長として、一体そういうことでよろしいのかどうか、あなたの見解を承っておきたい。
  41. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 お答えいたします。精糖業界といたしましては、昨年農林省甘味資源増産国内施策を打ち出されまして、それに対してわれわれは非常に賛成しまして、先ほど申し上げたように、精糖業界としては、甘味資源対策に沿って国内増産をやっていこう、北海道ビート暖地ビート西南諸島カンシャ糖というふうにやっていこうということで、増産体制に協力することになったわけであります。そこで、個々の会社も、なるべく一つこの国策の線に沿って早く増産体制をしこうということで、各社がそれぞれ北海道に申請をいたしまして、北海道における増産体制に協力する意味において申請をいたしました。また、暖地ビートも今各社がいろいろ計画をしております。北海道は、御承知のように、一ぺんに急に各社が中請いたしましたので、その調整には当局も苦心をなすっていらっしゃると思うわけであります。私たちは北海道ビート増産が主眼であります。北海道全体の今後の増産ということを目途としておりますので、各社おのおのここがいいという場所は申請しておりますが、おそらく各社とも当局の御指導に従うと思います。北海道庁並びに農林省御当局が案を作成せられて、こういう場所にこういうふうに作れという裁定を下して下されば、各社は当然その農林省の御指導に従っていくと思っております。その過程におきまして、各社がおのおのここがいいというところを申請してあるわけでありますから、そういう点で、まあ熱意の現われと言いましょうか、みな、一つ早く工場を建てて、政府の目途としている三十万トンの生産北海道であげよう、それには、各社おのおの研究いたしました結果、この場所がいいのだ、あそこがいいのだということで申請をしていると思うのであります。それを全体から総合的に見まして、まあ既設工場新設工場同士に摩擦が生じている点もあると思いますが、それは、御当局が大所高所から御判断下すって、北海道の将来のビート産業の開発にはこういうあり方がいいのだということをお示し下されば、業界はそれに協力して、農林当局に御協力して、いろいろと案を練って、そうしていくような態勢になっておりますので、決して、業界が、個々の会社が、ここでなければいかぬという工合に固執しているわけではないので、一応各社が研究した上においてはその地に工場を建てたいという申請はいたしておりますが、しかし、これは、大きな見地から、北海道総合開発の上から、また北海道ビート産業を将来伸ばしていく上から、植付面積はこうだ、工場立地条件はこことこことがいいのだというふうにお示し下されば、業界も御相談を申し上げて、できるだけ早く三十万トンなり二十五万トンなりの砂糖工場でできるようにしたい。それには早く工場を建てなければならないのですから、そういう線で御当局が高い見地から総合開発の線を出していただければ、それに喜んで御相談していくと思います。今御質問の個々の会社が多少行き過ぎた運動があったんじゃないかというようなお話もございましたが、個々の会社としては、ぜひ地元の方の御協力を得て工場を実現したい、こういう熱意をもって相当やったので、地元の方もその熱意にこたえていろいろ運動もして下さったと思いますし、率直に申し上げて、われわれもできるだけ早く許可をしていただきたいと思っておるので、農地転換の手続その他も、場所をきめると同時に、農地転換の手続は、私の方の会社も出しておりますし、各社の方も出しておられると思います。それで、われわれの意図するところは、何としても早く工場を建てさしていただきたい、そして北海道増産に協力したいと思っておる次第でございます。
  42. 中澤委員(中澤茂一)

    ○中澤委員 いや、少なくとも精糖工業会長のあなたのところが、農地転用もできないところへ、大日本製糖工場敷地というような、これは少し常識をはずれていると思うのですね。それは、あなたの会社ばかりがやっていたんじゃない。各社それぞれ町をあげて歓迎態勢を整えておりました。しかし、少し度が過ぎると思うのです。とにかく、昔から、甘いものにアリが集まる、甘い汁を吸うということを言いますが、いかに甘いものにアリが集まるといっても、少なくとも精糖工業会の会長として、あなたが指導者としてああいうアリどもをそのままほうっておくという手は私はないと思うのです。事案、三十万トンのそれに協力することはけっこうであります。しからば精糖工業会全体としてどうするのだという自主規制が反面あっていいと思うのです。それを、行くところ行くところ全部気違いのような騒ぎです。もうわれわれはあぜんとしてものも言えないくらいの気違い騒ぎなんですね。それは、農民とすれば非常に農業が行き詰まった、その反面工場誘致もしたい、それから、中央集権制になっている、財政が苦しいから工場を建てて固定資産税をほしい、工場誘致、この地元の気持はわかるのです。しかし、それにしてはあまりにも派手で、あまりにも大げさ過ぎるのですね。そういう点において、私は、少なくとも糖業界を自主規制するなり自主調整をして国の国策に協力していこうという責任者のあなたが、農地転用もしてないところへ工場敷地という看板を立てるということは、私はあなたの人格を疑うのです。ほかにはありませんでした。あなたのところだけが工場敷地とあるから、調査員に、これは写真にとっておけ、将来、こういうでたらめなことをやらしていいのか、農地転用の許可もない畑の中へ堂々と工場敷地なんと立てる、とんでもないことだと思うのですよ。その点について、あなたは今でもそれをよかったと思うのかどうか、御見解をもう一度承っておきたい。
  43. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 別によかったとか悪かったとかは考えておりませんが、まあ、おそらく、地元に立てたのでありまするから、ここが大日本製糖工場の予定地であるという意味の標識で立てたのだと思いますが、しかし、それが行き過ぎならば、まことに遺憾だと思います。その敷地にそういうものを立てたことは、私が社長でありますから全部の責任を負います。そういうことで、われわれは別に他意あったわけではなくて、ここが大日本製糖が申請している敷地予定地だ、そういう意味で立てたつもりでありますが、それが非常に行き過ぎであったならば、まことに遺憾であると思います。
  44. 中澤委員(中澤茂一)

    ○中澤委員 それが行き過ぎであったらなんというものではないのです。少なくとも農地というものはいかなる手続を経ていかなる方法をやって転用されるかということはあなた御承知のはずです。農地法という法律がある以上、めちゃくちゃに、勝手に、ここは自分の会社の予定地だから必ず転用になるだろうというような判断でそういうことをされることは、行き過ぎも行き過ぎ、はなはだしい行き過ぎなんです。われわれが少なくとも農林委員として正式な派遣調査をした以上は、そういう行き過ぎをあなたみずからがやっていていいのかどうか、責任をお感じにならぬのかどうか。転用許可になったところへあなたが何という看板を立ってもわれわれは文句言いません。さっそくそれを調べてみたところが、農地転用の申請もまだ出ていないようです。申請も出ていないところへ、三、四メートルある、——ちゃんと写真を証拠にとっております。そういうものを、申請も出ていないところへ工場敷地だというようなことで立てるということは、行き過ぎなんというものじゃないです。われわれから見れば非常識きわまる話です。そういうことを糖業界全体を指導し調整していくあなたが、それは全く悪いことだということをもっときびしく反省する必要があると思うのです。
  45. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 農地申請の手続は確かに出してあると思うのです。農地申請の手続は、私たちは北海道で御相談して、敷地をきめると同時に北海道庁を通して出してあって、農林当局の御検討をいただいておると思うのです。そういう点は、農地申請の手続はいたしましたにしても、何しろそういうサインを立てたことはまことに遺憾でありますから、今後深く注意して、おわび申し上げます。その立てた責任は私にありますから、その点御了承願いたいと思います。
  46. 中澤委員(中澤茂一)

    ○中澤委員 実は、昨年からこの問題に当農林委員会が取り組みまして、これは皆さんを責めるのじゃない、日本の現在の政府の責任であると思うのですが、実にそれは乱脈をきわめて工場合戦をやっておるのです。こういうことは、——われわれ委員会として、調査結果においては、現有設備をこまかに計算し、各工場も一通り拝見しました。現在の土地改良その他の増産計画体制が政府でできないならば、少なくとも三十七年までは現有設備でよろしい、こういう結論が出て、当委員会として国会に報告してあるわけです。そういう面から考えてみた場合、一体今のような乱脈な形で各会社々々が勝手な運動、しかも承るところによると相当な政治献金が動いて工場合戦が行なわれている、こういう現状が一体いいと思われるのでしょうか。精糖工業会自体として、あなたは会長としてどう思われるのですか。あなたは、御協力する御協力すると、協力はまことにけっこうであります。しかし、少なくとも会長としてのあなたは、もっと自主規制、自主統制、自主調整をやって、さあこういう形でわれわれは協力するのだ、こういう体制を作る責任があるのじゃないか。各社何でも勝手に行ってやれ、そういうところに問題の発端があると思うのだ。もちろん、政府が全然計画もない、しかも相当裏に政治的な問題のものを含んでいるという政府自身のでたらめさにもあるが、しかし、会長としてのあなたが、これを一体どう調整し、どうやってこれをおさめる御意思があるのか。現在、承っているところによると、八社とか九社の申請が出ている、それがまた国会に対して猛烈に運動や工作をしているということです。だから、そういうことをさせずに、国の三十万トンなら三十万トン計画に精糖工業会としてどういう形で自主調整して協力するのだ、そういう御所見くらいは会長としてあなたがお持ちになっていなければならぬと思うのですが、いかがでしょう。
  47. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 精糖工業会としては、従来とも砂糖の問題に対しては精製糖業者としてできるだけ糖価安定あるいは輸入量適正化をはかるとかいろいろ協力して参りましたが、最近このビートの問題が甘味資源対策から起こってきたわけです。各社とも自主的に考えてあちこちに申請を出したわけであります。各社が申請をお出しになったのは、各社も相当の調査研究をなさったのでありましょう。皆さんがそれぞれの調査研究機関を持って、この場所ならば土地改良をしてやっていけばこのくらいの原料はこのくらいの期間に集まる、このくらいの工場は建つ、これは各社とも二十四、五億の資本を投下しなければ一工場もできないわけでありますから、みな各社とも相当慎重に御研究になってそれぞれの立地条件を見て御申請になったのだと思います。しかし、率直に申して、遺憾なことは、そのとき各社の間に北海道に関する限り連絡がございませんでした。今まで精糖工業会の使命は、輸入原糖を中心とした国内の糖価安定、それから需給の調整、そういう相当効果の上がった協力をしてきているわけですが、この国内増産の問題は去年の四月に打ち出された問題であり、そして、率直に申し上げて、各社が連絡なしに、おのおの、何とかここを一つという、各社としてはこういう場所ならば工場が成し立つというところを調査申請してやったわけです。そういうことで、区域が重なりあったり、多少既設工場との摩擦のあるところもございましょうし、各社の申請が重なり合ったところのあるのも事実であります。しかし、こういう段階においては必ずそういうことがあるのでありますが、だんだん当局もいろいろ御検討をなさって、こういう場所なら今年度には建つ、ああいう場所なら建つということである程度の時間をかして下されば、各社の間の譲り合いもでき、話し合いもできてくる。製糖会社同士は決して敵同士ではない。毎日われわれ業界の者は会って顔を突き合わせてやっておりますから、もしお互いに意地を張って多額の資本を投下して成り立たないような工場ができ上がっても、これは国家的損失はもちろんのこと、各社の致命的の問題でありますし、われわれ商売人でありますから、ある程度の話し合いは最後の段階になってついてくると思います。しかし、今の段階においては、申し上げたように、北海道の進出に対しては、従来からのいきさつからいって、お互いに相談し合って申請しようというような話もありませんし、みな個々ばらばらに北海道調査して申請を出したわけであります。そういう成り行きに来ているわけであります。それでありますから、ここで北海道庁並びに農林当局が大きな見地からいろいろお考えいただいて、何年度には何工場が建つ、どのくらいの工場ができるのだというある程度の線をお示し下さって、お役所が中心となって業界を招集していただいて検討の段階に入れば、各社の話し合いも不可能ではないと思います。しかし、業界というものは、最後のどたんばにいかなければなかなか話し合いができるものでもございませんし、また、簡単にこういう話し合いがまとまるとも思っておりません。しかし、要は、原料が集まらないところに工場を建てたところで、建てた工場も困るのでありますから、やはり、だんだんこの調整はできてくると思っております。私どもの希望するところは、できるだけ多くの会社に進出させていただきたい。初年度は多少原料が集まらなくても見のがしていただきたい。われわれはわれわれの資金をみずからつぎ込んで土地改良なり何なりをやって、その工場が成り立つようにやっていきたいということで、お願いするのはできるだけよけい、できるだけ数多くの工場の進出を認めていただきたい、そうして、その会社ができるだけ自己の責任において原料を集めるように一つ土地改良なり何なりやるという線でやらしていただきたい、そういう線で当局に御指導をお願いしている次第でございます。
  48. 吉川委員長(吉川久衛)

    吉川委員長 参考人各位に申し上げますが、なるべく簡潔でよろしゅうございますから、そのようにお答えを願いたいと思います。
  49. 中澤委員(中澤茂一)

    ○中澤委員 それは、あなた方とすれば、各社にたんと許可しろと言う。それはわれわれは反対です。それは、国民消費者の立場から考えて、新設した工場の償却が全部国民の砂糖代の中へ入っていく、そういう形です。そうすると、たくさん許可すればするほど砂糖はいつまでも下がらない。その犠牲は出産農民と国民消費者が負担して、そうして、今の砂糖工業というものは、これはばかでもちょんでも気違いでもめくらでももうかるのです。何でももうかる。建てさえすればもうかるのです。そういうシステムになっているのです。そういう中で、国民に一日も早く安い砂糖を食わしてやろう、農民の方も今の生産者価格では合わないからビート価格を上げてやろう、こういうことになれば、新しい工場新設をすればするほど、そういうわれわれの望んでいる事態というものは遠ざかっていく、われわれは、できるならば既設工場なりそういうものの償却を一日も早く済まして、安い砂糖を国民に食わせることが必要だと思う。同時にまた、自由化という問題が具体的に砂糖の場合も必ず上がってくるでしょう。そういう段階において、われわれ農林委員会が、三十七年までは不要である、現有設備で間に合うという報告書を出している以上、われわれはその原則を現在くずすわけにはいきません。もしそれをくずすとすれば、どういう増産体制ができて、これに対して国が国家資金を投入して土地改良をやる、こういう具体的な計画が出てきて、三十七年において一工場なら一工場必要であるという具体的な計数が出てこない限りは、われわれはあなたの意見には反対であります。そういうことは、これは会社自身としてはもうかるでありましょう。しかし、国民と生産者をどこまでも犠牲にしたもうけ方であって、われわれはそういうものには絶対反対の立場をとっておるのであります。  そこで、あなたにそれ以上言ってもあれですが、今後、ことしの夏も、しかも昨年の三カ村紛糾問題もありますから、場合によれば調査班を派遣しようかという意見も実は農林委員会の中でもぽつぽつ出ておるのでありますが、今後ああいう気違いみたいなことはやめていただきたい。工場の申請そのものはあなたが規制ができないというのなら、われわれが行ったときにああいういたいけな学童にまで動員して旗を持たしてやるということはやめてもらいたい。まさにありがた迷惑であると思うのです。気違いがやっていることだと思うのです。そういうことは今後一切自粛するように各社に話をしていただきたい。あなた方がそういうことをやらぬでも、政府当局が案を出せば業界はまとまるだろう。業界のまとまることは私は第二次でいいと思う。われわれがほんとうに政府の需給計画というものをどう達成するかということで当委員会議論して、そうして農林当局が最後の決裁を下したときに、あなた方が運動というか、それではうちでもあそこをお願いしたいということをやればいいのであって、それを、あなた方が今農林当局を全く引きずり回すようなことをやっておるのが現実の私は姿だと思うのです。そういう姿は、いかにもうかるからといっても、あまりにもきたない姿じゃないですか。だから、そういう点は今後大いに自粛してもらいたいということを会長のあなたに、大日本製糖の社長でなくして糖業界全体の指導者としての会長のあなたに一応警告いたしておきます。  それから、次に質問いたしたいのは、ホクレン小林会長に質問いたしたいのですが、実は、昨年あの三カ村の争奪問題で、農民側の委員並びに会社側の手先になった農民、こういう者が国会へ猛烈な陳情合戦を展開いたしました。最後は吉川委員長と私が中立的な立場で実は夕飯も食わずに夜中の一時ごろまでかかってあの三カ村問題の調整をやったのです。あなたのところの副会長の河口陽一さんに、これではもういつまでたってもこの問題は会社争奪戦とからんで紛糾するのだから、農民の立場から一元集荷を断行しろ、北海道ビートは一応全部農協が農民から買い取るのだ、そうして、その買い取ったのを北海道農協が工場の希望あるいは農民の意見を入れて配分してやるようになれば、この問題はおのずから解決するではないか。そこで、河口副会長に、農協の大会なり何なりを通じて一元集荷運動を強力に推し進めろ、そうすれば一切の問題は解決する、農民はもはや作ったビートホクレン以外は出しません、こういう形を一日も早く作り上げろということを、あの紛糾の過程で私は河口副会長に強く要望しておいたのでありますが、その後ホクレンとして全道のビートの一元集荷体制というものがどういうふうに進んでおるか、一つ会長から御説明願いたいと思うのでございます。
  50. 小林参考人(小林篤一)

    小林参考人 昨年北見の一角でもっていろいろ集荷の問題で紛争があったわけでありますが、ああいうことは、われわれの立場から言いますと、そういうことのないようにしなければならぬはずでありますが、力足らずしてああいうことになったことは、私らとしては大へん申しわけがないと実は考えておるわけであります。今後もそういうことのないようにやりたいと思っておりますから、どうぞお力添えをお願いいたしたいわけであります。  一元集荷の問題につきましては、道内でもぼつぼつそういう声が起こっておるわけであります。でありますから、お話のように、一元集荷をするということは大へんけっこうなことでありまして、われわれの方でもできればそういうことをやりたいと考えておりますが、どうもまだ機が熟しておりません。農家さえみなが一致すればそういうこともできぬわけではないのかもしれませんが、だからといって、業界の方をあまり刺激するようなことになっても困るわけでありますし、そういうことには今後大いに努力をいたしていきたいとは思っておりまするが、今早急にそれが行なわれるかどうかということは疑問に思っております。もう少し時日をかしていただきたいと思っておる次第でございます。
  51. 中澤委員(中澤茂一)

    ○中澤委員 それは、会長、私も農民運動の片足をかついで戦っていて、なかなか農民というものはそう簡単に結集するものじゃないということは私も百も承知いたしております。しかしながら、北海道ビート問題に関する限りは、これは、もはやきめ手としては、やっぱり農協の一元集荷・多元販売というものを全農民に徹底さして、そしてその一元集荷体制をやはり農協が作り上げる、そうするならば、いかに工場がさか立ちをして騒いでも、ホクレンが一手に農民のビート集荷するのだという体制ができるならば、工場問題なんかおのずからそこに解決してくると信じておるのであります。そういう意味において、それは簡単ではないでありましょうが、それを私は三カ村の争奪合戦のときにほんとうに強く河口副会長に要望したのでありますが、若干はその後一元集荷体制の目鼻はついてきておるのでしょうかどうかという点が一点と、いま一点は、会長は業界を刺激すると言われるが、私はそういうことは農民団体の会長としてはお考えになる必要はないと思うのです。それは業界を刺激することでなくて、少なくとも農協は農民の利益を守る団体である。ここに敢然と業界とでも戦う決心を会長に持ってもらいたい。一元集荷はどこまでも全道で遂行する、こういうやはり基本方針をどこまでも一つ遂行してもらいたい。そうすると、北海道ビート問題というものは、これはおのずからここで問題は解決してくると思うのであります。
  52. 小林参考人(小林篤一)

    小林参考人 どういうふうにその問題について進んでおるかということに対しましては、今北海道の農協が農家との間に契約栽培を行なうようにだんだんなりまして、本年あたりはほとんどがそういうふうな形になってくるであろうと実は考えております。われわれとしても、大へんそういうことが望ましいことだと考えておるわけであります。  業界を刺激するというようなことを遠慮しないで大いに戦ったらよかろう、それも大へんけっこうであります。私は決してそれを否定いたしません。けれども、やはり、円満にいくものならば、しいて刺激をして闘争をしなくても、一年や二年おくれてでも円満にいくものならば円満にいった方がいいのじゃないか。私の考え方はあるいは先生方などから見たら間ぬるいかもしれません。けれども、今のところはそういうような考え方を持っておる次第でございます。あしからず御了承願います。
  53. 中澤委員(中澤茂一)

    ○中澤委員 それは、なるほど、工場などというものをホクレンが持っていなければ、くそ食らえ、よしと、一戦やるのでしょうが、どうも工場というものを持つと、やはり業界のおつき合いも若干出てくる。そういうところに私は会長のなかなか含みのある発言があると思うのであります。それは会長みずからがやらなくても、少なくともオール農協組織を動員するならば、これは不可能ではない、私はこう確信しておるのであります。  そこで、今会長が契約栽培ということをおっしゃられましたが、これは藤山精糖工業会会長にも一言お伺いして、将来のこととして考えてもらいたいことは、実は、このごろ茨城県のビール麦問題が当委員会で大問題になって取り上げられたわけであります。これは契約栽培だということで、われわれは茨城県への現地調査も行なって、農民、麦耕連、経済連、全部集めて意見聴取も現地でやってきましたが、農民は契約栽培だと簡単に思い込んでいる。ところが、ビール麦にしろ、将来のビートにしろ、契約栽培の本質というものは何であるか。これは非常に将来禍根の残る問題になってくるのじゃないか。茨城県のビール麦の場合を見ますと、農民は契約栽培だと言う。麦耕連もこれは契約栽培だと言う。経済連も契約栽培だと言う。そこで、契約書といもものをビール会社対村の単協が契約をしておるのでありますが、契約書なるものを具体的に見ると、これは契約栽培ではないのであります。それはどういう栽培方式かというと、買い上げ契約なのであります。別に契約栽培ではないのであります。ほんとうの契約栽培なら、ここで問題の出てくるのは、タバコと同じ形ですね、災害があったとき補償するという責任が契約栽培には出てくるのであります。ところが、買い上げ契約であるから、何々村は二千俵を何々ビール会社と契約する、その上下一割の増減は認める、これは一つの買い上げ契約であって、契約栽培ではないのであります。その点は、今ホクレン会長が契約栽培だとおっしゃったが、はたして契約栽培の形になっているのかどうか。特殊作物の直接会社とつながって栽培しているものには、契約栽培買い上げ契約かは将来相当大きな問題になってくるのでありますが、その契約栽培という具体的な形になっておるのかどうかをお伺いしておきたい。
  54. 小林参考人(小林篤一)

    小林参考人 ただいま申し上げました契約栽培というのは、農業協同組合農家との契約栽培が行なわれて、そうして、農業協同組合がしかるべき会社に売る、こういうことになっております。その契約栽培は、会社と農家との面接でなく、農業協同組合との契約栽培が行なわれているということを申し上げたわけであります。
  55. 中澤委員(中澤茂一)

    ○中澤委員 ともあれ、私は、昨年の調査の結果思ったことは、これは乱脈だということです。これは国の施策が動揺混乱しておるところにこういう乱脈な形が出てくると思う。だから、どこまでもこれを軌道に乗せるためには、政府当局も鞭撻して、正しい姿にこれを引き戻していかなければならぬ、こういうふうにつくづく痛感したわけであります。  そこで、最後に一つホクレン小林会長にお願いしておくことは、農民は農協が立ち土がってやるならば一元集荷に必ずついてくるという確信を私は持っておるのであります。どうか、そういう点について、北海道農協としては、ホクレンをあげて、いま一段の御努力をもって一元集荷体制を完成するということを目標にして、この問題にピリオドを打っていただきたいということを最後につけ加えまして、私の質問を終わりたいと思います。
  56. 吉川委員長(吉川久衛)

    吉川委員長 芳賀貢君。
  57. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 藤山参考人にお尋ねしますが、昨年の春以来の国内における糖価の安定度合いというものはどのように考えておられるか。それは、昨年国会においても、待に国内におけるビート糖振興対策を立てるために、当然の措置として、ビート糖と、あなたの方でやっておるいわゆる輸入糖との糖価の総合的な安定対策というものを立てて、いわゆる関税の引き上げを行なって消費税の引き下げを行なうということで一応の調整はとったわけです。ですから、糖価については大体一斤の御売価格七十三円というのが糖価の基準をなしておる。それから、ビート糖については、これは工場基準生産価格が五十三円十四銭ということになっておるわけです。従って、このような関連性のもとにおいて、精製糖工業とテンサイ糖工業が大体均衡のとれた企業として糖価の面においても安定を示しておるのかどうか、どのようにお考えになっておりますか。
  58. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 私たちは、農林当局が大体おきめになった国内糖価のべース、ただいまのキロ当たり百二十一円七十銭、斤当たり七十三円に安定するように、季節的には多少高いときもありますし、安いときもありますが、できるだけこの糖価の線に安定するように努力しております。(芳賀委員「安定しておるかどうか」と呼ぶ)去年の暮れなどは季節的にある程度高くなっておりますが、まだ需要期でない二月、三月は百十九円というふうな相場になっております。大体季節的な原因が相当大きな影響を与えて、糖価の多少のフラクチュエーションは見られますが、われわれ業界としては、できるだけ斤当たり七十三円で糖価が維持できるように、これは独禁法その他がございますから業界で相談し合うことはできませんが、各社できるだけおのおのの販売価格、出荷数量を調整しまして、大体糖価もあまり高くならないように、またあまり極端に安くならないように、当局のお示し下さった斤当たり七十三円で安定するような需給策を各社考えてやっております。
  59. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 先ほどの陳述にありましたが、現在の粗糖の輸入数量が大体百万トンですね。国が甘味資源総合対策を進めた場合においては、これは十カ年後に国民の消費の要求が百七十五万トン程度になる。その七十五万トン分については、これはビート糖あるいはカンシャ糖結晶ブドウ糖等によってこれは国内生産するわけでありますが、これを引くとやはり十年後においても依然として輸入数量というものは百万トンを維持しなければならぬということになるわけです。  そこで、お尋ねしたい点は、中澤委員も指摘したわけでありますが、最近いわゆる精糖工業会の会員である糖業会社がビート企業に盛んに熱意を示しておることは、これはある意味においては非常にけっこうなことでありますが、そこで、お尋ねしたい点は、今の七十三円というものを一つの基準にした場合、ビート糖の企業と精製糖の企業は、一体企業としての利潤はどちらがよけいあがるものであるか、それはあなたは十分わきまえておられると思いますが、参考までに述べていただきたい。
  60. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 精製糖だけをやっておる会社もございますし、また、精製糖ビートを兼業している会社もございます。また、ビートに主力を置いていらっしゃる会社もあるわけでございます。精製糖ビートをまぜて各社みな計算していらっしゃいますから、各社の利益があがったうちのどれだけの部分がビートであるか、どれだけの部分が精製糖であるかというのはなかなかむずかしいと思いますが、しかし、一応精製糖は精製糖で原糖価格から換算されて七十三円のべースが出ているわけであります。率直に申し上げまして、この七十三円べースが出たときは、国際原糖の三セント四十五を基準として七十三円ベースが組み立てられたわけであります。ここ約半年ほどは国際原糖のベースが多少下がっておりますので、まあそれだけは含みになっているわけです。しかし、一方、百十五万トンほど輸入されていたのが百万トンになりましたので、一割の操短になっておりまするから、そのコスト・アップも考えますし、また、現在は、今後キロ当たり八円程度のものはブドウ糖のために出していこうという考えをしておりますので、五万トンのブドウ糖にキロ八円見当を補償さしていただくといたしますると、約四億円くらいのものはブドウ糖育成のために出していきますので、輸入原糖が減ったことによる出産費の上がったこと、それから、今のブドウ糖育成のための支出その他を考えますると、原糖はある程度値下がりはしておりますが、そう大した差はないのじゃないかと思っております。  ビート糖の方の採算は精糖工業会ではやっておりませんので、どういうことになっておりますか、宮本会長の方がお詳しいのじゃないかと思いますが、われわれの方はビート糖のコストの面とか計算の面はあまり詳しくなく、間違ったお話を申し上げるといけないので、ビート糖の方は宮本会長からお答え願いたいと思います。
  61. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 私は、あなたが精糖工業会の会長ですから、精製糖の方はわかるがビート糖の方はわからぬというほど見解が狭いとは考えていなかったので質問をしたわけです。ビート糖の方は、われわれは昭和二十七年に法律を作って以来どういう推移を示しているかということをわきまえておるので、これはお伺いする必要はないのでありますが、われわれが考えた場合には、ビート糖の工業よりも精製糖の方が利潤が非常に高いのじゃないかということを判断しておるわけです。かつて国会においても精製糖に対する超過利潤を吸収するということを国の制度でしなければならぬという動きもあったのですが、現在まだそれは実現に至っていないが、たとえば、昨年の法案審議の場合においても、七十三円を基準価格にする場合において、これは政府が非常に精製糖業者に有利な基準を設定したのじゃないかということをわれわれは指摘しておるわけです。ですから、今述べられた通り、ニューヨークのCIF価格が三セント四十五である場合に十分の採算が七十三円の中に含まれておる。従って、ニューヨークの三セント四十五、これがあるいは三セント十とかそういうふうに低落した場合においては、その格差だけ当然精製糖関係の超過利潤ということになることは明らかなのです。そういうものが現在までは全然国民生活には寄与されていないわけです。原糖の価格が下がっても、依然としてあなた方は国民に対しては安い砂糖を提供しようとしてはいないのです。ですから、今後国内甘味資源増産対策に対して精糖工業会としても大いに協力するつもりであるから政府はぐらぐらしないでがんばれというようなことをあなたは言われたが、まず精糖工業会自身がやはり利潤追求の度合いというものを自粛して、そうして企業努力の中において国民に対しては安い砂糖を提供し、あるいはその余力をもって国内甘味資源増産対策等に対しても進んで協力する、そういう具体性というものが今までないのです。ですから、ここでただばく然としたことを述べられても、われわれはなかなか信用することができないのです。従って、今後たとえば北海道におけるビート糖の三十万トン計画、あるいは暖地ビートの十万トン計画、あるいはまた結晶ブドウ糖の十五万トン計画とか、カンシャ糖の二十万トン増産計画等に対して、それぞれどういうような具体的な現われをもって精糖工業会としては御協力なさるのか、もう少し具体的な説明を願いたいわけです。
  62. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 今具体的に農林御当局とも相談しておりますのは、今年はブドウ糖育成のために五万トンの粗糖に対しキロ当たり八円の補償をしようというような話でお話合いをしております。これが四億円くらいのものが出るわけでありますが、その他、精糖会社は、利潤がありましても、現在各社とも各県の御当局と一緒になって暖地ビート育成には相当大きな費用を使っております。会社自体も研究所を設けたりして、相当大きな費用を暖地ビートのためには使っております。また、各県の御当局と一緒になって、その他施策を各社とも各県でやっております。現実には相当の犠牲を払って暖地ビート工場を建設なさっていらっしゃるところもございますし、また、新設北海道ビート工場も相当の犠牲を払っていらっしゃると思います。新設された北海道工場はある程度相当の犠牲を払っておる。そういうふうに、各社とも、精製糖で多少の利益があれば、それは、みずからの企業を発展させる意味においても、単にそれを社内で保留しておいてもしようがないので、みんなそういったようなものに使っております。
  63. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 その犠牲は、今日資本投下を行なって、将来それを利潤の形で回収される意味の犠牲であるか、あくまでも将来国内甘味資源増産に対しては一貫して犠牲、奉仕という考えで進まれるか、その点はどうなんですか。
  64. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 もちろん、われわれは、砂糖をできるだけ安くして、国民にたくさん使ってもらいたい、それが営業の面から言ってもいいわけですから、できるだけ砂糖は安くして、国民にたくさん使ってもらいたい。それには、そういった研究費用その他に大いに支出して、増産体制をこしらえて、安い砂糖を供給したいと思っております。
  65. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 次に、北海道に対する進出の心がまえですが、先ほど各関係の参考人が述べられましたが、将来の展望としては、やはり国際競争力をいかに高めるかということが糖業の中においても重要な比布を占めると思うのです。そういうことになれば、糖業といっても、ビート糖以外のいわゆる精製糖というのは、これは純粋の意味の糖業ではないと思うのです。ただ外国から粗糖を買ってきて、それを溶糖して精製するだけですから、これは糖業だなんと言うのはおこがましいと思うのです。ですから、正しい意味の日本の糖業を発展させるということになれば、やはり、テンサイ糖であるとか、そういうものを中心とした糖業の発展ということを考えなければいかぬと思うのです。ですから、そのビート糖の今後の増産と、将来国際的な競争力を増大させるということになれば、最初から北海道におけるビート工業の体質というものを強靱なものにしていかなければいけないと思うのです。それを全然考えないで、とにかく競争して北海道に乗り込んで工場さえ建てれば百姓は幾らでもビートを作るだろうというような安易な考えでは、今後の北海道ビート工業とかあるいは暖地ビートについても論ずる資格はないと思うのです。ですから、将来十分な国際競争力を備えたビート工業というものはどのような条件が具備されていなければいかぬか、工場建設の資本投下の問題にしても、それから原料確保の問題にしても、操業度の問題にしても、企業者としてのあなた方はもう十分そろばんの上に立ってそういう計算は出しておると思うのです。ですから、あるべき姿というものはどなたが考えても大体帰一すると思うのです。そういう点を、利害にこだわらないで、糖業界の会長という大乗的な立場から、北海道ビート企業というものはこういう体質で発足していかなければいかぬというような御見解を聞かしてもらいたい。
  66. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 北海道ビート産業が成り立つのは、やはり何といっても相当の関税の保護を受けなければならぬことは事実でありましょう。世界各国の例から見ても、北海道の糖業がキューバとかインドネシアとかフィリピンとか台湾とかより割高につくことは明らかでありますので、適切な関税の保護が必要でありましょう。その後は、やはり、北海道総合開発の意味から、適地にできるだけよけい工場を進出さして、そして公正なる自由競争のもとにコストを引き下げ、そして優秀な砂糖を作るように各社の技術の競争によってやっていくことが一番いいのじゃないかと思っております。
  67. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 先ほど、従来は百十五万トンの輸入が行なわれて、それを精製糖の各会社に配分をしておったが、現在は百万トンになった、従って、十五万トン分はいわゆる操短という形で操業度が下がった、従って、それはコスト高になっているということを言われたわけですが、これはやはり北海道ビート工業にも当てはまると思うのです。今まで、新工場を建設する場合は、その基準として、一日の処理能力が千二百トン、操業品数が百二十日、従って、所要原料は十四万四千トンということになっている。それが今までの許可基準でもあり、五十三円十四銭の基準にもなっていた。ところが、われわれの調査の結果によると、新しい工場は一日に千五百トンあるいは千六百トンの処理能力を持っているということが明確になっている。ですから、その場合、一日千二百トン、百二十日操業の場合のコストと、千五百トンで百二十日操業する場合のコスト差というものが計算の結果当然出てくると思うのです。ですから、そういう場合においては、操業度をできるだけ圧縮して工場が乱立する方が競争力を高めるためにとるべき方法であるか、操業度をできるだけ高めて企業内における努力によってコストの引き下げをやって国際的な競争力を高めるべきであるかという方向はおのずからきまると思うのです。ですから、どちらの方向をとるべきかということについて賢明なる御判断があってしかるべきと思う。それはどうですか。
  68. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 ごもっともな御意見だと思います。いかにたくさん工場が進出してよいといっても、その工場にマッチする十分な原料が得られないで、たとえば千二百トンの能力工場に八百トンしか原料が集まらなかったらコストが高くつくわけでありますから、やはり、それは、立地条件を勘案して、将来十分原料の集まるところでなければ建ててもいかぬと思います。しかし、初年度、二年度くらいは集まらなくとも、やっていくうちに土地改良なんかして集まっていくものでありますから、ある程度見込みのある土地にはできるだけ年度中に許可をしていただく方針を立ててもらえば、それに達するまではできるだけ増産体制をしいて、工場の建つところには原料が集まる。われわれ申請している工場全部一ぺんに許可してくれとは申しておりません。順次許可していただけばよいと思っております。
  69. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 農業生産の部面については私の方がくろうとですから、その点は述べていただかなくてもよいのです。ただ、あなたは業者として、業界の一人あるいは業界の代表として、この、ビート糖の企業というものはどういう姿でなければならぬかということを率直に述べてもらえばよい。  そこで、私から申し上げますが、昭和三十五年度のビート原料の総数量は約百五万トンということになっている。これを既存の七つの工場に分けると平均院十五万トンの原料ということになる。従って、たとえば、今後一日処理能力千五百トン、百二十日操業ということになれば、工場について平均十八万トンの、原料を要することになるわけです。そうなると、現在の百万トン程度では各工場操業度を現在より高めることは原料面から不可能なわけです。昨年農林委員会北海道調査を行なった結果、現在の北海道ビート栽培実情等にかんがみた場合、最近は反別の伸びが鈍化して、大体年間三千町歩程度しか伸びていない。ですから、そういうことを十分勘案した場合において、新工場の建設について三十七年度まで一応ストップして、既存の工場の内容の充実をはかり、一方においては政府が中心となって北海道における、ビート増産体制が十分講ぜられ、農民が進んでビート栽培するようになって、そうして原料が豊富になった暁に、それに見合って工場の建設をすべきであるという調査の報告を当委員会においては行なっておるわけです。従って、現在のように無計画に七社も八社も北海道に乗り込んで、工場さえ許可してくれればビートは自然にふえますというようなことになると、実は重大な問題だと思うのであります。この点は中澤委員も指摘しましたが、あなたのその精糖工業会の会員の諸君が今進出しておるのでありますから、精糖工業会としてもこの際基本的な態度というものを御決定になって、ビート工業の育成発展のために自粛的な態度で協力されることが一番適切だと思いますが、そういうお考えはないですか。
  70. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 御意見よくわかりましたから、いろいろ検討さしていただきます。
  71. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 次に、ビート協会の宮本さんにお尋ねしますが、実は、日本ビート糖業協会から、三月の初旬にわれわれ農林委員会にも、北海道テンサイ糖業振興に対する意見書なるものが出されておるわけです。十分われわれも検討したのですが、この意見書の中における問題点がいろいろあるわけであります。  そこで、第一点は、私が今藤山参考人にお尋ねした今後の工場建設と北海道におけるビート振興の十カ年計画との見合いのもとにおいてどういうことを一番眼目にしてこの糖業会は進もうとしておられるか、要点だけを簡単にお話し願いたいと思います。
  72. 宮本参考人(宮本来治)

    宮本参考人 お答えいたします。  これは、けさほど来、また先刻からも続いていろいろ諸先生から御質問がございましたし、それぞれの回答がございましたが、ビート糖業協会といたしまして、協会のメンバーは四社でございますが、その四社が慎重検討いたしました結果が出まして、それを三月一日付で当委員会にも意見書として差し出しまして、御検討願い、また御善処をお願いしておる次第でございます。先ほど来新工場の問題がいろいろございましたが、三十七年度までは新工場の建設の必要はないというお話でございました。その点につきましては、私ども調査もほぼ一致しておるのでございます。三十八年と三十九年に及びまして辛うじて一工場の建設ができるだろうという見通しでございます。私どもといたしましては、北海道テンサイ糖を十カ年に三十万トンにするという国の御方針に沿いまして、極力一日も早くこの実現が可能になりますように四社一段の協力をいたします。今後も一そうの努力を続ける覚悟でおりますが、さればと申しまして、新工場の進出をはばむのではございません。原料増産に従いまして順次、可能な地区、可能な年度から許可をしていただくというふうに御指導を願ったらば大へんけっこうだと思います。また、それでございませんと、既設工場原料不足で採算がとれなくて悩みますし、進出されまする工場はもちろんのこと相当膨大な資金を投下されますので、一そうその感が深くなりますので、その辺は申し上げるまでもないのでございますが、十分御検討願いまして、御善処を下さるように重ねてこの機会にお願いを申し上げます。
  73. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、これは宮本参考人小林参考人のそれぞれの立場から見た見解を伺いたいのですが、今政府が考えておる長期十カ年計画の中において北海道ビートを三十万トンにするということなんですが、これは実に容易ならぬことだと思う。小林さんは非常に気楽な気持でお話がありましたが、われわれが考えると、この三十万トン達成というのは容易でないと思うのですね。現在が大体十五万トンですから、これを倍にするということになれば、耕作反別の面においても、現在四万町歩でありますが、これが反収がある程度伸びたとしても、やはり七万町歩以上の面積を確保して、そうしてヘクタール当たり三十トン程度の原料生産されなければ、なかなか三十万トンということにはならぬ。そうすると、今後、ことしを出発点にして、十年かかるとして、一年間に三千町歩程度の反別が毎年々々ふえていって、しかも反収もまた総体においてふえるということにならなければいかないと思うのですね。これを現在の農民の農業経営上の意欲だけで期待できるかどうかという点なんです。もちろん現在原料は千斤当たり三千百五十円で政府が安く押えておるわけですが、このような安い原料価格のもとにおいて、政府は何かやるとは言っておるけれども、われわれの判断では、この十カ年計画に対してはそう具体的な熱意を持っては財政面を通じては行なわないと思うのです。そうなると、結局生産者の努力工場側の熱意というものがどの程度この十カ年計画を伸ばすかということになるわけです。ですから、その点について両参考人からそれぞれ見解を述べてもらいたい。
  74. 小林参考人(小林篤一)

    小林参考人 私が申し上げましたように、六十三万町歩の畑のうち四十万町歩くらいはビートの耕作ができるであろう、そうすると、五年輪作にすると、一年八万町歩であるから、現在四万町歩で十四、五万トンできておるから、少し反収伸びがあれば三十万トンはできるということに理論上なるのであります。しかし、それをやるにはいろいろ条件かありまして、その条件を満たさなければならぬ。それは農家の力だけではやれないのであります。だからして、政府の方でどこまで力を入れてやっていただけるか、あるいは予算をどこまでつぎ込んでやっていただけるかということによって問題は解決すると思っておるのであります。だからして、政府の力の入れ方いかんによっては農家も大いに努力をするであろうからして、何年かかってやれるかというようなことまでは、政府の方の予算の関係があるから、私はわかりません。しかしながら、早くやろうと思えばたくさん金をつぎ込んでやってもらえばいいわけでありますから、それは私はやれるというふうに考えておるのであります。
  75. 宮本参考人(宮本来治)

    宮本参考人 ただいまお尋ねの点で一番問題になりますのは、原料の価格の問題だと思います。これは、私ども長年の経験によりまして、他の農作物の価格が騰貴いたしますとビートの耕作は減ります。この一両年急速にテンサイ増産の速度が鈍化いたしましたのは、豆類、それから雑穀、バレイショ等の価格の影響によることが大きいのでございまして、結局、農家といたしましては、戦時中は国に尽くすということで値段が安くても栽培面積は割当になりましたから作ってもらえましたが、自由になりましたならば、どうしても農家自体の経済問題が先に立ちますので、農家の経済面から申しますと、他の農作物よりもテンサイを作ることの方が幾らかでも有利だという政策をとっていただかない限りは増産はむずかしいのでございます。これは輸入糖の糖価との関連がございまして、一企業会社だけではとうてい負担し得ない問題でございます。それでございますので、どうしてもこれは国策によりまして国が強力に、農家の収入もある程度他の農作物に比して劣らぬという程度にきめていただきますし、同時にまた、企業者が自分の力で農家に幾らかでもできるだけの助成をし、同時に自分の生産費も極度に切り詰めまして、それで増産ができるような体制に持っていかなければならぬと思うのでございますが、これは非常にむずかしい問題でございます。ことに、農地の新しい開拓、たとえて申しますれば、ただいま根釧原野にございます、けさほど申しましたパイロット・ファームのごときは、一企業会社あるいは数企業会社が団結いたしましてもこういうことはとうてい力が及ばないのであります。どうしても国の力を借りなければできませんわけでございますので、今後この増産に要しまする国としての予算を十分に計上して下さいまして、そうして、一面今申しましたような企業者の協力と相待って増産をしていかなければ、非常なむずかしい問題でございます。何を申しましても一番先に農家原料問題を考えなければなりませんので、私ども経営者といたしましてははなはだ矛盾した立場をとって参りました。毎年、原料代の値上げにつきましては、一番先に立ちまして、道庁初め、農林御当局、食糧庁の皆様方にお願いをして、その値上げを陳情してきたわけでございますが、その値上げが、農産物価格安定法からいきますと、パリティ計算によりますとビート原料代は下げなければならない情勢にありますにもかかわりませず、御当局のお計らいによりましてここ四年間据え置きになっております。また、一面、考えますと、三千百五十円の据え置きは四年も据え置いた、ほかの物価は上がっているではないかということになりますが、これは、他の農作物との関連がございまして、今申し上げますように急速には上げられないという関係御当局の御意向でございます。これもごもっともでございますので、私ども企業者といたしましては非常な悩みを持っておりますが、とにかく、今日ここまで参りましたし、また、同時に、今後増産によりまする国策に沿うためには全力をあげて増産したいと考えておりますのでございますが、その困難な事情をよくおくみ取り下さることをこの機会にお願い申し上げます。
  76. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 今お尋ねしたのは、一つは、今のような原料価格ではわれわれは安いと思っておるのです。だから、これが妥当かどうかということを工場側から一つ述べていただきたかったのです。  それで、さらにお尋ねしたい点は、原料価格が上がったらまたビート糖を上げてくれということでは、これではイタチごっこでだめなんです。私の言うのは、たとえば五十三円というのが基準価格ですから、その基準価格の範囲内において工場企業努力によって利益をふやしてもらってその利益の中から相当程度を生産者の原料価格の方に還元するというようなことが行なわれなければ、原料がこれだけ上がったから砂糖も上げて下さいということでは、これは本物じゃない。これは私は可能性があると思います。農林委員会で、去年の三十四年産の糖価の内容の検討をした場合においても、一つの問題は、歩どまりというのは、これは企業上には相当コストに影響のある点です。政府の現在の糖価の算定方式は、実績歩どまりを採用しないで、想定歩どまりを採用する、そういう方式をとっておるわけです。ですから、先ほど参考人から述べられた通り、最高の工場歩どまりが一四・四%くらいあるが、しかし、政府の決定した最高の歩どまりというものは一三・四%くらいです。だから、結局そのほんとうの歩どまりと想定歩どまりの間においては一%ないし〇・八%くらいの差額というものがあるわけです。この差額というものはやはりイコール完全な利益なんです。利潤です。ですから、それらのものはやはり良心的に生産者にも配分されるようにならないと、一部は会社の利益の留保とかそういう設備改善とかに用いる必要があっても、これを会社だけでひとり占めしてしまうということになると、結局政府は会社と結託してその不当利潤というものを是認するような政策をとっておるということになるわけです。ですから、この点については、ホクレンの方では、第一年目は千斤当たり百円、第二年目は千斤当たり百五十八円の原料に対する割り戻しの形をとったというお話でありましたが、この点がやはり一つの問題点であると思うのです。政府政策的に保護をしておるビート工業の中において、一応五十三円なら五十三円という価格がこの輸入糖と見合った形で設定されておる。来年度からは全部の工場がもう買い上げ対象にならないわけです。従って、そういう場合においては、政府が直接的に生産者に対してどうするということよりも、その工場工場の熱意と企業努力によって、生産者に対して原料代を引き上げるような措置をとるとか、あるいはまた、その地域内の土地改良等に協力して、そうして反収の増加をはかるというような、この企業者の立場からの努力とか協力というものが全然行なわれないで、政府が予算を出さぬければ反別はふやしませんとか、そういうばかなことを言わないで、もう少し企業者の立場に立ってこの十カ年計画にどういうふうに協力できるかということを、率直にこれは述べていただきたいと思います。
  77. 小林参考人(小林篤一)

    小林参考人 ビートの価格の問題でありますが、農家は、いかに安全作物といいましても、値段が安ければ増産意欲というものはわかないものなのであります。私、農林省のある局長と課長と二人のお話を聞いたことがあります。課長は、土地改良をしなければビートはふやせない、ところが、局長のおっしゃるには、いや、そんなことないよ、君、ビートの値段さえ高く買ってやれば増産意欲というものはわいて多くなるよ、こういう事務的と政治的発言を聞いたことがありますが、それはやはり両方からいくべきもので、一方的に考えるべきものでないと実は私は考えております。いかに土地改良であるとかその他のことについて政府が資金を投ぜられても、単価が安ければ農家生産意欲というものはわかないものであります。農家生産意欲さえわいてくるならば、自分でもできるだけ土地改良もやるでしょうし、堆肥増産もやるだろうと思っております。  そこで、現在のビートの価格というものが高いか安いかということについては、大体、今の北海道畑作の農産物というものは、価格が安いから借金ができてどうにもならないというのが現状であります。だからして、ほかのものが安ければビートも安くてもいいのだというようなお考えならば、これはますます農家は窮迫する一方であります。であるからして、政府でもっておきめになる以上は、ほかの作物にかかわらずこれだけのことをしてやらなければビートというものは増産がならないというような考え方を一つ持っていただく必要があるのであります。そういう点から見ますと、ビートというものは、現在のままではなかなか増産意欲というものはわかぬと私は見ておるのであります。この点について一つ御配慮を願いたい次第でございます。  それから、工場の方でも土地改良であるとか増産をするようなことについて協力すべきだということについては、その通りであります。しかしながら、工場の方が成り立たないようになりますと、これはやろうと思ってもやれない結果になるわけであります。であるからして、あくまで引き締めて、そうして工場が成り立たぬようないき方になると、これはできません。そこで、工場の方にもやはり利潤を認めると同時に、政府の方でも、工場にも力を入れさして生産を増強するようにやらせるような御指導も、これは必要であろうかと思います。ホクレンとしましては、もうかったものは、出資の配当としてはこれまでもしたことはありませんし、出資の配当をすることが目的ではございません。場合によっては法律にきめられた五分以内くらいのものはやることがあるかもしれませんけれども、出資というものは、農業協同組合にとっては、農家で言えば一つの農具みたいなものであり、手段であります。それでもって利益配当を求めることが目的ではないのでありますから、私は、ホクレンを利用した事業分量に応じて割り戻しをするといういき方をいたしておるわけであります。今後も、その利潤というものについては、もしありますれば、土地の改良をやって増産をいたそうと思っております。また、耕作の励みになるように、割り戻し等によってもビートの価格の安い点を補っていきたい、こう両方に考えておるわけでございます。
  78. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 あと二点をお尋ねしますが、一つは、原料集荷区域工場との関連の問題なんですが、その工場側にも十分なことをしてやるとすれば、たとえば十八万なら十八万トンの実績区域をやるということもできるかもしれぬが、それでは、工場が安心して、努力をしないということになります。それからまた、現在の北海道原料状態ではそういうことはなかなか行なえないわけです。ですから、たとえば一工場に対して十五万トンなら十五万トンという一つの限度というものを設定して、そしてそれを一工場の支配区域にする、そういうことにして、その予定された地域内において工場側においても抽象的協力じゃなくて具体的な生産者に対する協力を行なって、その地域内において二年ないし三年の後には十分の、原料確保できるというような、そういう体制というものは現実の問題としては必要ではないかと私は考えておるのですが、この点については宮本さんはどのようなお考えでございますか。
  79. 宮本参考人(宮本来治)

    宮本参考人 今お尋ねのことにつきましては、最も必要なことでございまして、工場が優先いたしましても、原料増産されなければ工場は運転ができませんわけでございます。ただ、今まで既存の工場のないところならば、区域をすぐ限定して今お話しのように、何年かすればここの地域には工場ができる、何年目にはこっちの地域にはできるということになりますが、すでに七工場というものが現に稼働しておるのでございますからして、これらを十分勘案されまして、原料増産施策に応じて、またその増産の実現します年度に応じて適当な地域工場を何年目には建設するというような具体的な御検討なり御計画をお願いしたいと存じます。また、それでございませんというと、既存の工場も新しく進出の工場もいずれも中途半端になりまして、自然、生産が少なければ、申し上げるまでもなく生産費がかさみますので、原料代を引き下げなければ工場は採算がとれないという、自然しわ寄せは農家に参ります懸念がありますので、そういうことのないように初めから十分な御検討を願いまして区域制を実施していただくのが、これが一番妥当であり、また、混乱を避けることにもなり、また国家的経済から見ても必要だと思います。
  80. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、現在いわゆる工場の企業形態に二色あるわけですね。一つは、ホクレンによるところのいわゆる協同組合方式の工場と、それ以外は、何と言いますか、利潤追求と言っては端的表現になりますが、そういう形態の工場と、一つあるわけですね。それで、これはどっちか一方にするということはできないわけなんですが、この際藤山参考人あるいは宮本参考人も考えてもらいたい点は、とにかく、ビートは農民が生産しているわけです。ビート栽培は農民が行なって、その耕作しておる農民が協同組合を作ってその協同組合が連合会というものを形成しておるわけですから、農民の気持としては、自分たちが原料を作っているのだからして、できれば自分たちの力で工場を建設して、そうして低廉な砂糖を出産して国民の仲間に安い砂糖を提供する、また、自分たちもそのことによって所得の増大をはかりたいという欲求が起きるということは、これは自由主義の社会においても否定することはできないと思います。これは力がないからやろうと思ってもなかなかできないのですよ。幸いにして、ささやかにホクレンが一つ作りまして、成績が他社に劣らぬからもう一つやりたいというところで骨を折っておるようでありますが、こういう点を精糖工業会あるいはビート糖業協会の仲間の会社から見た場合に、これは将来大きなじゃまになるから、この際いろいろな方法を講じてつぶした方がいいというお考えをお持ちか、あるいは、こういう質的に異なったやり方というものも将来両立して、お互いに善意な競争をすれば、これは日本の糖業発展のためになるから、この方もできれば協力して伸ばしてやりたい、そういうようなお気持を持っておられるかどうか、いかがですか。
  81. 宮本参考人(宮本来治)

    宮本参考人 私どもの方は別段に利潤追求というようなふうな考えは毛頭持っておりません。普通の企業でございますというと、資本と労力がありますれば企業が成り立つのでございますが、テンサイ糖に関する限りは、資本と、原料を供給する農家、つまりビート耕作者がなければ成り立たない事業でございます。それを運営しますのがわれわれ従業員でございますので、この三者が一体とならなければ成り立たないわけでありまして、どちらに偏しましても成り立たない事業でございますので、特殊の考えを持っておりますので、私どもは、ホクレンさんが特殊の組織のもとに工場を一つお作りになったということにつきましては、最初のいわゆるテスト・ケースとして非常に歓迎をし、また、御協力を申しております次第でございます。工場の建設につきましては、だんだんと原料がふえましてから順次適正な立場で御検討を願って混乱の起きないように御配慮を願うということは、けさほど来たびたび申しあげておりますわけでございますので、別段に、今後の工場新設ホクレンの方でおやりになるのをはばむとか、いやそれは大いにやってもらいたいとかいうことは、ただいまここで申し上げることは差し控えます。
  82. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 私も、両方の形態があってちっとも差しつかえないと思います。ホクレンのやり方と同じくわれわれのやり方も決して利潤追求じゃありません。株主に適当な配当をしさえすれば、あとは農民にできるだけ還えしたいと思っております。
  83. 芳賀委員(芳賀貢)

    ○芳賀委員 これで私の質問は終わりますが、今述べられた通り、ホクレンの場合は、これは農協方式ですからして、企業によって利益が生じた場合においては、これはその組織に参加しておる全部の耕作農民に利益が配分されるわけです。皆さんの方の方式は、これは不当利潤を追求しておるとは言っていないのですけれども、しかし、今、その利潤なるものは、藤山参考人が言われた通り、会社の蓄積と、もう一つは株主に対する利益配当ということで終わっているというところに質的に相違があるというふうに、私はそこを指摘しておるわけです。ですから、やはり、日本の農民が非常に経済的にも困窮しておる、そういう場合においては、このような大きな近代的な農村工業が国の施策に即応して農民の力で発展するということは、これはやはり皆さんとしてもそれを認めて協力的体制をとっていただきたいということを私は期待するわけであります。  最後に一点申したい点は、今の工場建設の運動を見ると、どうも政治的な動きというものがだんだん強まっておるわけです。たとえば、あなたの日本製糖は、外務大臣の藤山さんがあなたの兄さんで、これは元の社長をやっておる。あるいは、名古屋精糖の場合には、そのバックは通産大臣の池田勇人君がやっておると思います。芝浦の場合には河野一郎君が実力者としてそのバックをなしておる。こういうことは国民がみんなわきまえておるわけだ。だから正常な決定が行なわれないのではないかと思う。そういう今の政府に連なりあるいは政治的な力を持っておる者のいわゆる政治力によって今度の新工場の設立はきまるのではないかというような、そういう不信感が一日一日高まっているというのは事実であります。ですから、藤山さんもそういうことはしないということを中澤委員にも言明されたが、ぜひ、恣意的というか、そういう特権的な政治的な活動というものはなるたけ差し控えて、今まであなたが言った通り、日本の糖業の正常なる発展のために、最も力のある会社というものはできるだけ自粛して、全体が伸びるためには私はあとになっても差しつかえありませんぐらいの気持で協力してもらえば、北海道におけるこの工場建設の泥合戦というものはある程度整理されると私は思いますが、そういうお考えはお持ちですかどうか、お尋ねします。
  84. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 御意見、よくわかりました。世間でいろいろ政界の上層部と砂糖会社とつながりがあるようにうわさがありますが、私は断言いたします。決してそういうつながりはございません。
  85. 吉川委員長(吉川久衛)

    吉川委員長 中村時雄君。
  86. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 まず、参考人に対しまして、お忙しいところをさいておいでいただいたことを深く感謝いたします。同時に、調べてみますと、東洋精糖から、あるいは明治製糖から、いろいろな方々の傍聴人が四十人から来ていらっしゃる。ふだん来ておられない方々がわざわざお足を運んでいただいたことは、まことに御苦労さんだと思います。  まず第一に、藤山さんに一点お尋ねいたします。ということは、先ほど藤山さんのお話によりますと、ヨーロッパ諸国を中心にとりまして、消費量の漸増傾向を非常に強調されていらしたわけでございます。そこで、日本砂糖消費量世界各国と比較をしました場合に、人口一人当たりについて見ますと、大体日本の場合におきましては十四キログラム前後になっておると思っております。これに対しまして、あなたはこれが非常に多いと思われるか少ないと思われるか。
  87. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 非常に少ないと思っております。アメリカ、イギリスに比べて一人当たり五分の一くらいですから、非常に少ないじゃないかと思います。
  88. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 時間の関係で、私は自分で調べましたものを一応お話してみますと、先進国の場合は、これは事務当局からあとで資料もいただきたいと思っておりますけれども、西独が大体三十一キログラム、フランスが三十キロ、英国が五十二キロ、米国が四十二キロ、イタリアが十八キロ、こういうふうになっております。ところが、日本の需給ということを考えてみますと、日本の方は、農業基本問題調査会においても十七、八キロという線を打ち出しておるようでありますが、それにいたしましても、昭和九年から十一年が大体一三・九五キログラム、それから、三十年が一二・三四、三十一年が一二・九〇、三十二年が一二・九〇、三十三年が一三・七四、三十四年が一二・九一、こういうことで、昭和九年から十一年の数量までには及びませんけれども、まあある意味で言えば最近若干増加はしている、こういうふうに考えられるわけです。そこで、日本の産業が、あなたの会社を含めて私は言っておるわけですが、非常に目ざましい発展をしております。その割合にいたしますと消費の方はそうは伸びていないという結果が、私はこの数字の上からはっきりと打出されてくるであろうと思う。それに対しまして、砂糖そのものをもっと安く国民の口に入れるようにするならば、少なくともこういうような統計的なものではなくして、もっともっと消費量伸びておった、このように考えられるのです。そこであなたは、どういうふうにすれば消費量伸びていくか、工業会の会長としてあなた自身の御意見を伺っておきたいと思います。
  89. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 第一は、砂糖の価格をある程度安くすることだと思います。しかし、重要なことは、先ほども申し上げたように、ズルチンとかサッカリンとかチクロとか、そういう人工甘味に対する対策をしていただきたい。それから、やはり、粉食を普及して食生活改善をやっていただきたい。その二つによって砂糖消費量は相当伸びるのじゃないかと思っております。
  90. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 人工甘味の問題であるとか、そういうような小さい事柄は、あなた自身の会社側から言えば当然そういうことも出てくるし、私たちも事実はそれはいけないと思っております。しかし、そのことが私は重点にあるとは思わない。だから、あなたの考え方では非常に甘いじゃないか。その原因はどこにあるかといえば、いろいろあるでしょうけれども、大きく分けましたら国内産糖並びに澱粉などのためにとっておるところの一つの保護政策、その問題が一点となって大きな立場で現われてくると思う。同時に、もう一つの問題は、外貨の不足という問題があったと思う。その二つが、今言ったような消費が伸び得なかったという根本原因だと私は考えておる。それに対して、あなたの考え方は、一業者の目先の利潤の問題から来る場合には、価格の問題であるとか、今言ったズルチン、サッカリンの問題であるとか、そういうようなお答えになると思いますけれども、一つの糖業政策としての考え方の基本からいけば、私はその二つが主柱になってくるのではないかと思うのですが、御意見はいかがですか。
  91. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 根本的には確かにそうだと思います。多年の外貨不足で砂糖輸入が制限されていたということは、当然消費を伸ばすのをはばんだ一つの原因だ、これは確かにそう思っております。
  92. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 だから、根本原因から言えば確かにそうだ、そのことが一番大事なことなんだから、そのことだけは会長として頭にしっかりおさめておっていただきたい。その上に立っていろんな諸施策を考えてもらわなくては、日常の一つ一つの現象だけに追われて根本的な問題ができなくなり、そうしてついには世間から非難を受けるという結果が必ず生まれてくると思う。そのことは現実にあなたの頭の中にはっきりとおさめていただきたいと思う。  そこで、今言った外貨不足という問題に対して、最近貿易の自由化という問題が大きく取り上げられております。輸入を制限して国民に高い砂糖をなめさせなければならないという理由は、貿易の自由化に伴って反面から見た場合にはだんだんなくなってくる。今後三年は自由化をいたしませんとかなんとか言っておりますけれども、現実の問題では、外貨だけを取り上げた場合には、自由化という方向をとってくると高い砂糖をなめなくても済むのではないかという声が消費者側から出てくる、そういうふうに考えられるが、その点あなたはどういうふうにお考えになっているか。
  93. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 世界の大勢は貿易の自由化に向かっております。日本の国策としても貿易の自由化という線に向かっていくことは当然でありますけれども、諸先生も御承知のように、砂糖国内農業対策との関連がございますから、貿易自由化問題は、単に業界がどうということでなく、国会の皆さんが農業との関係を勘案されて砂糖についてどういう施策をおとりになるかをお考えになるのではないか。われわれとしてはわれわれの意見がございますが、それは先般来からもいろいろ文書なんかで差し上げております。それもよく御検討下さいまして、貿易の自由化国内農産物の関連とをよく御勘案いただいて、大所高所から国会としてもお考えいただきたいと思っております。
  94. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 貿易の自由化ということになると、業者の方としてはもう手をあげて喜ぶ。これは私が言わなくてもあなた自身がよく知っている。必要があればいつでもその問題を取り上げます。ということは、私の言うのは、そういう外貨の政策、価格政策等と、農業の基本的な経営政策というものとをごちゃまぜにしてしまっておる。保護政策もそういう問題もごちゃまぜにしてしまって、わけのわからぬような格好にしてしまっているから、あなた方の吸い上げが非常に多くなっている。だから、この際、政府に対しても、——これは政府との問題ですからあとの問題として取り上げますが、そういう保護政策と今言った砂糖に対する糖業政策とは別個のものとして考えていく基本的な問題を取り上げなければならぬ。そうでない限り、いつまでたってもこの疑義は保たれると思う。  そういう意味で、その問題は別にしまして、次に一つお尋ねしておきたいことは、先ほど言ったように、国民に安い砂糖をなめていただきたいということになれば、現在の精製糖工業の能力が一体どの程度になっているかということをお聞きしておきたい。
  95. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 現在の工場能力は、作る砂糖の種類にもよりますし、いろいろの条件にもよりますが、各社全部合計すると大体百七、八十万トンまでは処理できるじゃないかと思っております。
  96. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 そうすると、一日にしますと概算八千五百トンくらい。月に大体二十日稼働として、今の数量からいきますと年間大体百七、八十万トンから二百万トン、このくらいのものになろうと私も思っております。経営者の立場から見て、これらの設備をフルに稼働することによって、コストを引き下げ、国民に安い砂糖を供給するとともに、自分も利益をあげるという方法をお考えになったことはありませんか。
  97. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 私たちは、精製糖工場の設備が今申したように百七十万トンから百八十万トンこなす設備を持っておりまするから、基本的に言えば、できるだけよけに砂糖を入れて、工場の稼働率を上げまして、コストを安くして、安い砂糖を販売したいと思っております。
  98. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 今申しましたように、稼働能力としては二百万トンくらいの設置を持っておるわけですね。ところが実際に入ってくるものは百五万トンくらいです。そうすると九十五万トンくらいの設備が遊んでいるということなんです。そして、今言ったように、原糖を入れてきてこれをフルに動かして安い砂糖を供給することをお考えになったことがあるかどうかをお聞きしたのですが、このことに関しては、時間もかかりますし、また、それに伴ういろいろな障害ということもありましょうから、一応省きますが、この点はよく考えておいていただきたい。あなた方は設備を遊ばしておるということなんですから、割当の結果それだけの設備を遊ばしておることに対する責任があるということなんです。大体実際には半分しか稼働していない。半分のものは遊ばしておるわけです。そこに農林行政としての大きな欠点がある。それはだれが作ったかというと、あなた方も作った。農林当局も作った。そういうことで砂糖行政が円満にいくかどうかという基本的な問題が残っている。しかし、その問題に対するいろいろな問題は後日に譲ることにいたしましょう。  次に、精糖工業自体の高利潤、高収益を継続するということが根本原因だと考えられますが、これに対してあなたはどういうお考えをお持ちですか。
  99. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 御承知のように、精糖業は国際原糖をベースとしてやっておりますから、たまたま国際原糖価格が下がったときは当然利潤が出てきます。また、スエズ問題のように非常に国際緊張で原糖価格が高くなったときは、高い原糖を買って損をしたこともございます。国際原糖の価格に左右されることが多いわけであります。現在は国際原糖価格がある程度低迷しておりますから、率直に申し上げて今の原糖価格ならば採算的には相当ゆるやかな採算になりますが、また今後原糖が上昇すればその採算は変わってくるわけであります。御承知のように、中村先生はもう砂糖のことはエキスパートでいらっしゃいますので、国内糖価も、百十九円、百十八円になることもあれば、百二十三円にも上がる、国内糖価のフラクチュエーションも相当激しいわけでありますから、半期に非常に利益が上がったこともございますし、現実に相当赤字になったこともございます。そういう状態でございます。
  100. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 きょうはあなた方に参考意見を聞くのであって、その問題から政府に対するところの問題を取り上げていきたい。だから、私は、あなたに対して、個人としての追及であるとか、そういういろいろな問題は決していたそうとも思っていません。だから、質問に対して的確にお答えをいただきたいと思います。そのこと自身が非常に参考になっていくのですから。あなたのような御答弁をされておれば、たとえば、CIFにおいて今まで三セント四十五で原糖を輸入しておったが、昨年来実際三セント十あるいはそれを少し上回った程度で輸入しておる、それならば利潤が幾らかというところまで入らなければなりませんが、きょうは参考人として来ていただいているのですから、そういうところまでは私は追及いたしませんし、そのことは農林当局と私たちとの対決の問題だろうと思うから、とっておきます。  それでは、もう一点お聞きしたいのは、日本が今度キューバとの間に通商協定を結ぶことになりました。これは御存じでいらっしゃいましょう。これはすでに政府からも先週発表されましたが、その協定では、日本はキューバから年間四十五万トンを向こう三カ年間にわたって買うように努力するという一項が入っているはずであります。もちろんこの数字は秘密にされておるようでありまして公表されていないのですが、しかし、私は、まず間違いないと言って差しつかえないと思っております。ところが、その一方、目下台湾と貿易協定の交渉をやっているはずであります。それによりますと、新年度砂糖は大体四十万トン輸入することになりそうだ、こういうことが一般に言われておる。そうしますと、キューバと台湾だけですでに八十五万トンになっておる。そのほかに、例年、豪州から十万トン、ペルーから十万トン、ドミニカから五万トン——あるいはこの前は八万トンくらいだったですか、そのくらい入っておる。また、フィリピンからは二万トン、ブラジルからは五ないし六万トンくらいが入ってきておるわけなんです。そういたしますと、合計少なくても三十万トンを買っている。前の台湾とキューバを合わせますと年間百十五万トンになってくる、私はこう思うわけです。あなたは百五万トンとおっしゃいましたけれども、本年度の状況から判断をいたしまして、大体百十五万トンくらいが一つの可能性のある線の上に現われてくるのではないかと思いますが、これに対してあなた方はどういうふうなお考え方を持っておるか、お答えを願いたい。
  101. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 率直に申し上げまして、キューバとの交渉は外務省とキューバの代表団とが交渉しておりまして、われわれ何の相談も受けませんし、また、情報もございません。私らの聞くところによると、今中村先生のおっしゃるように、政府は四十五万トンを努力目標とするという、新聞発表といいますか、それを聞いておるだけであります。政府は三年間できるだけ四十五万トンを買うようにすると言っておりますが、業界としては、はたして四十五万トン買えるかどうか、全然コミットもしておりませんし、何の意思表示もしておりません。ただ、政府が一方的にキューバに四十五万トンの努力目標を設けたということを、単に新聞発表で聞いておるだけであります。  台湾の方は台北で交渉があるようですが、これも政府政府の交渉でありまして、もし政府政府の交渉で数量がまとまれば、その品物の受け渡しは業界でいたしますが、これも聞くところによると四十万トンという線で政府台湾との交渉が行なわれておるそうでありますが、これも、はっきりした数字がどこにきまるか、私も存じません。そういう状況でございます。
  102. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 そうすると、その点、業界は全然タッチしなくて、政府だけがそういうふうな考えを持って進めておる、こういうふうにはっきり明確に出てきたわけなんです。それはそれだけでけっこうなんです。  今言ったように、貿易の自由化という要望が非常に強くなって、世界砂糖輸出国はもっともっと砂糖輸入せよとわが国に言うてくるに違いない。私はそう思っておる。ところが、今は外貨の面でお話をしておるのですから、外貨の手持ちが非常に少ないときなら、それは、外貨がないからちょっと待って下さい、こういうことは言い得ると思う。ところが、現在の外貨は、政府も言っておるように、買えないというほどそんなに窮屈な状態ではなくなってきておる。しかも、キューバなどはこれからどしどしと日本の商品を買いましょうと言っておる。キューバが商品を買いましょうと言う裏づけは、ギブ・アンド・テイクです。今度はそのかわり砂糖を買って下さい、こういう状態が現実にはどんどん出てくると思う。そのどんどん出てくる一つの橋頭堡に、今言ったようなキューバから幾らということがぴしゃっと一項入ってくる、こういう結果が生まれてくると私は思う。そういうようなことを考えた場合に、日本国内の糖価の現状は七十三円にいたしており、実にでたらめな計算の仕方だ、私はそう思っておりますが、その七十三円という線をあなた方はこのままの状態で維持ができるかどうか。
  103. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 私たちは、政府甘味資源国策の線に沿うて、北海道暖地ビートに資本を投下してやっていきたいと思っておるので、無制限な輸入をされて糖価が非常に下がるようなことは困るわけで、やはり、政府のきめた、何と申しますか、甘味国策の線に沿って輸入量も当然調整されなければならぬと思っております。世界各国とも砂糖の貿易を自由化しているところはないわけでありますから、日本国内で相当増産してもやはり百万トンくらいのものは買わなければならぬとすれば、その程度のものを買えば、外国からそうしいて強く日本砂糖をもっと買えということは、ある程度防げるのではないかと思っております。
  104. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 あわ食って答えないようにして下さい。だから、最初に聞いたのと全部関連しておるのですが、大体日本の一年一人当たり消費量というものは十五、六キロだと言っておる。そうして、片一方においては制限稼働は百五万トンくらいだと言っておる。そうすると、自由貿易をするという状態がだんだん押し寄せてきたときは、少なくとも消費量を二十キロ前後に持っていくとなれば、もっと入れなければならぬという結果が出てくる。もっと入れなければならぬという結果です。片一方は十年計画、片一方は三年後くらいまでは自由貿易をやらないのだと言っておるだけの話です。その経過においては、どんどん輸入をせざるを得ないという条件が生まれてくるわけです。しかも、七十三円というのは、あなたも先ほど言ったように、たしかに今の保護政策の上からくる農民主体という名目にかくれて非常に高利潤をとっておる。そういうようなことから考えても、七十三円というものは正当な価格ではないという結論がはっきり出てきたわけです。その七十三円というものをあなた方は維持したいという考え方になるでしょう。しかし、消費者側から言えば七十三円は維持したくない。もっと安くいくはずだ。実際に原価計算すれば出てくる。そうすると、今言ったように、自由貿易の方向をとっていく状態になり、しかも数量が少ないのですからふやさなければならぬ。ふやさなければならぬというような段階においても、この七十三円という線を維持するだけの心がまえと維持できるという考え方をあなた方は持っていらっしゃるかということをお聞きしているのです。
  105. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 輸入量がふえまして、どういう形にしろ、百万トン輸入していたものが百二十万トンなり百三十万トンになり、工場操業度が上がれば、当然コストは安くなるわけですから、それが市価に反映して安くなると思います。
  106. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 そうすると、七十三円が大体維持できないような場合に、保護政策をとっている観点から、日本ビート工業は一体どうなるかという問題が私は生まれてくると思う。そうした場合に、日甜はキロ当たり大体六円の納付金を納めておる。また、その納めるということはそれでよいのですが、しかし、新しい会社は必ず赤字を出すことになるのではないか、私はこう考えるのです。日甜といたしましては、六円という納付金の中からそれだけのものをはずしていけばいいんです。ところが、新設会社はどっこいそうは参りません。それはすべて影響が出てくる。そうすると、必ず赤字になるという結果が生まれてくる。そういうふうな、会社の経営の現段階までのお答えだけを願いたい。
  107. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 われわれも、新設ビート工場ができれば、七十三円のベースが下ってくれば当然ある程度の赤字は出てくると思いますが、それは会社で負担するよりやむを得ないと思っております。
  108. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 そうすると、負担するということは、赤字になってきたらつぶれてしまう。つぶれるようなものを北海道へ出す会社がどこにあるかという、そういう結果が生まれてくると思う。そのことは別といたしまして、現在実際に製糖会社が雨後のタケノコみたいにおれもおれもといって工場申請をしているが、その原因は利益にあるわけですが、ともかく新設工場を七つやっておる。先般は東洋精糖までが申請を出しておるというような状態になっている。しかも、暖地ビート工場に至りましては、これも御存じの通り約二十工場が申請をしようというような状態になってきている。そういうような中で、一方においては実際にどんどん自由貿易の方向をとろうというときに、あなた方業界としては、砂糖輸入量が増加したときにおいてもその対策を当然ここで考えなければならぬ、自由な立場において考えなければならぬ、私はこう思っている。今のところは保護政策で何とかごまかしておりますけれども、必然的にそういうふうな状態に陥らざるを得ない。それに伴うところの対策を今からあなた方は考えていらっしゃるかどうか。
  109. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 おっしゃるように、貿易の自由化の線に沿ってくれば、砂糖輸入量はふえてくると思いますし、また、国内増産もやっていけば、新工場は相当の赤字の負担になると思います。それですから、われわれとしては決して甘い考えは持っておりません。よほど企業努力をして、国内コストを安くし、場合によれば配当も減らしていかなければならぬかと思っております。
  110. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 そうすると、まだ具体的には——今のしろうとの常識的な問題だけをお話しているだけなんですが、北海道ビートの申請に対しましてもはっきりとした見通しもなしに出発しておるような状態になっていると思うのです。そうすると、国内糖価がかりにそういう状態になってきたら、——私は下落していくと思うのです。下落して参りますと、そのしわ寄せがどこに行くか。先ほど芳賀委員やほかの委員諸氏が心配している農民のしわ寄せというのは、ここから出てくると思う。ことに、そういうことになると、会社の経営が赤字になってくる。赤字になってくれば、それを買いたたかなければならぬという結果がビートの上においても出てくると私は思う。すなわち、それを農民にしわ寄せするような格好になりはしないかという危険性が生まれてくる。そういう中から、中澤委員が言っているようなホクレンの一元集荷の問題であるとか、あるいは今言ったようなビート工場の設立の問題に関する疑義の問題であるとか、そういう問題が生まれてくるものであると思う。私はそういうような結果が生まれることをおそれるのですが、それに対してあなた方はどういうふうにお考えになっていますか。
  111. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 私たちも、そういう結果が生まれては大へんですから、そういうことにならぬようにできるだけ努力して今の、ビート工場新設——おそらく新設を申請されておる各社もいろいろな採算をとって申請されていると思います。糖価がこの場合はこう、この場合はこうということを相当真剣に考えて申請をされておると思っております。また、いろいろ社内の処置もとって、絶対に農民にしわ寄せすることのないように措置しなければならぬ。会社が赤字になって農民にしわ寄せするような企業ならば成り立たないわけでありますから、われわれとしては、あくまでも採算的に成り立つという線に沿って以外、計画はしないつもりであります。
  112. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 そうする、非常に問題が出てくるのです。たとえば、あなた方の考え方は——大体において、お砂糖屋さんというのは、正直に申しますと、先ほど中澤茂一氏も言っておったが、非常に政府与党との関連が強い。そこで、何かとなれば自分たちの施策方針を投げ捨ててすぐに保護政策の立場をとっておる。これが今までのしきたりでしょう。それはあなたもおそらく認めていると思う。そうすると、また依然として、農民に転換させるのは困るので、私たちだけを何とかしてもらいたいというような結果が必ず生まれてくるんじゃないかということをおそれる。そのこと自身は、農民の経営という名目に隠れて、自分たちの経営の依存を全国民に負わしておるという結果が生まれてくると思う。だから、そういうことのないようにというためには、あなたは具体的にどういうお考えを持っておるか。ただし、時間の関係があるので、そのことの具体性は持っておるなら持っておる、持ってないなら持ってない、これから検討するなら検討する、その三つしか答弁がないのです。だから、この三つの中の——どうもこっちが答弁を教えたような格好になったけれども、その三つのうちのどういうお考えを持っていらっしゃるのですか。なかったらそれでいい。これから考えるならそれでもいい。何かそのことに対してどうとか言うのではないけれども、そのことに対する御意見をお聞かせ願いたい。
  113. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 他の会社はどうか知りませんが、おそらく全社そうだと思いますが、計画は持っておると思います。それも、具体的に、こういう場合はこう、こういう場合はこうということを、書面で数字的に出せると思います。これだけの資本を投下して、糖価がこの値段の場合はこうだ、この場合はこうだというある程度の具体計画がなければ、とうていこういう企業には乗り出せないわけですから、各社ともおのおの、これだけの資本を北海道へ投下してこれだけの利益があがるんだ、七十三円の場合はどうだ、七十二円の場合はどうだ、七十円の場合はどうだという一応の計算は、各社とも皆さんしていらっしゃると思います。私の方もしておりますから、その計算はいつでも中村先生に書面でお出しいたします。
  114. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 各社ともしておりますとおっしゃっても、あれだけ膨大なものを、一社がそんなことができる道理はないのです。何ぼあなたが大日本製糖の社長さんであられても、——それだけの高利潤を政府からもらっており、あなた方の企業努力でもらったとは私は思いませんが、とにかくむだめし食ったような格好で金をもうけたといたしましても、あなたの会社で糖価の安定策ができるだけの負担力は持っておりません。各社とも持っていない。そうでなくて、業界全体、各社のものをそろえてどうしていくかということが、大事なことだ。それをあなたに追及してもしようがないでしょうけれども、おそらく私は何もないと思う。ないだけに、今後は、各社にあればその各社のものを総合さして一体どういう施策方針を立てるかということを会長の責任において十分やっていただきたい。それが第一点。これは私の方から追及でなくしてそういうことをお考え願いたいというだけの要求をいたしておきます。  それから、最後に、今言った貿易の自由化のしわ寄せを農民に寄せずして、しかも国内砂糖生産確保していくためにはどのような施策が必要かということが最後の一番の問題になってくるわけですけれども、それに対してあなたは、今度は業界人の立場として——今言ったように、工業会の会長としてはそこまでできていないということがはっきりしている。個々の会社のことは何も知らない。しているだろうと思いますと言っているだけだ。だから、今度は業界人として、あなたのところはしっかりしたものを持っていますと言いますから、業界人の立場としてはどういう考え方を持っていらっしゃるかということを最後にお聞きしたい。
  115. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 われわれは国内資源の開発に努力するわけでありますから、貿易の自由化の線に沿って無統制で許されることは困ると思います。これは、精糖工業会で話し合って、どういう形にしろ、ある程度の計画輸入が必要なんじゃないかというふうに考えておりまして、精糖工業会としても、国内増産とかみ合わせて——しかし、しいて輸入を制限する必要もないと思います。できるだけよけいな砂糖を入れた方がいい。しかし、国内増産に支障になるような入れ方をしては困ると思うので、国内増産と勘案してある程度の計画輸入は必要になってくるんじゃないかと思う。どういう計画輸入をしていくか、精糖工業会で常に寄り合って、どういう地域からどういう砂糖をどういう数量を買っていったらいいかということは考えております。
  116. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 そういうような計画に基づいてあなた方が北海道へ出ていくいろいろな実情やいろいろな問題もお尋ねをしたいのですが、きょうは御存じの通りに全体のワクからくる問題の取り上げ方をしておるので、個々の会社の問題の内容であるとか、個々の人たちの動き方であるとか、そういうようなことはここでは申しませんけれども、今言ったように、十分なる高利潤を持っておるということだけははっきりしてきたわけです。だから、その点に関して、あなた方が北海道に進出をされる、ビート工場の設立にあたっていろいろな問題が私は出てくるであろうと思う。そういうような事柄と相関連して、十分納得のいく事柄をすべての人に、といことは農民にも国民にも納得のいくような方針の打ち出し方をしていただきたい。   それから、次にブドウ糖工業会の川村さんにお尋ねをしていきたいと思うのです。  現段階におけるところのブドウ糖工業現状を、酸糖化の方法と酵素の方法と米国のコーン・プロダクトの方法と三つの観点から私は問題になってきていると思うのですが、その問題に関して御説明を願いたい。
  117. 川村参考人(川村保)

    ○川村参考人 先ほど、酸糖化の問題、酵素糖化の問題で説明いたしましたのですが、昭和三十三年四月結晶ブドウ糖育成要領を出されました当初は、われわれは酸糖化法というものに全面的努力をして参ったわけであります。その間、連続糖化方法あるいはバッチ・システィムの方法と二通りございまして、あらゆる努力をいたしたのでございますが、いかんせん、技術的な問題になりますけれどもブドウ糖の分解率が非常に低い。同時に、酸の場合は強度の酸と圧力を必要といたしますので、製造過程において過分解を生じるということと、耐酸器物がそれに耐えかねるというような問題がございまして、早くいたんでしまうということが一つと、それから、同時に、製品面においても、過分解が生じまして結晶の収得率が非常に少ないというようなことと、なお、ハイドロールに苦みを生じまして商品価値として非常にたえられなかったということ、かような経過を過ごして参りました。ところが、幸いに昨年の八月酵素法による糖化方法というものが初めて発表されまして、それ以降に、われわれ業者一丸となって、各方面での酵素の入手も願い、なおかつ自家培養というような方法もとってきまして現在に至っておりますが、糖化方法は、いろいろ糖化の過程においてこれもバッチ・システィムと連続糖化システィムと二通りございます。これもまた初めてのことでございまして、各社とも各自研究室においてただいま鋭意努力中でございます。われわれの中にはかような面を酵素糖化方法に全面切りかえるというような方針も出ておりまして、ただいま非常に波乱期のような状態でございます。しかし、酵素糖化法によりますと、精製ブドウ糖そのものは品位が九六まで上がりまして、糖化したものを精製、脱色、煮詰めましてバットに流して、バットに流したものを削って歩どまりを向上さしておるような状態でございます。しかし、われわれ酸糖化で苦労してきましたメーカーは分みつ機械も持っておりますし、なおかつ助晶濃も多額の金を使いまして現在に至ったような状態で、かような施設を遊休にしてしまうということはわれわれ企業家としてたえられない状態でございますので、私は、あくまで酵素糖化法でも分みつをするのだ、分みつをして品位の商いものを作り、輸入品は言うに及ばず、あるいは砂糖に代替するような品物を作りたい、かように考えておる次第でございます。
  118. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 実は時間の関係もありますから、はなはだ失礼なのですが、端的にお伺いいたします。今のお話を聞きましてもそうですし、先ほどからのお話を聞いてもそうなのですが、要するに、酸糖化法から大体において今のすベてのものが酵素糖化法の方に移行していく。酸糖化法というのはステンレスなんかを使っているから非常に高価につくという立場から、そういうような方向に移行していく。それはそれでいいですから、その問題に関して最終段階に転換が終わったときに、今度そのコストが今の砂糖価格とフリーな立場において競争ができるかどうかということをお聞きしておきたい。
  119. 川村参考人(川村保)

    ○川村参考人 これは、現在の農安法の澱粉の価格というものが基準になっておりまして、なおかつ安定帯価格というものがいろいろ政府買い上げ値段の価格にも準じて市場相場が現われてくるような状態でございまして、現状の価格というものが基準を幾らに置いて原価計算を立ててみたらいいかどうかということが一つと、同時に、酵素糖化によりますと、分みつを四回やりまして、なおかつ残ったハイドロールはいわゆる精製ブドウ糖ができるような好条件でございますので、——まだこれとても設備の償却その他はただいま過程でございますのではっきり出ませんが、ある程度合理化されてできるのではないか、かように考えております。
  120. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 それでは、一応結論だけでいいですから、あなたのお考えでは、自由な立場で砂糖価格と競争ができる、そういうふうに解釈していいですね。
  121. 川村参考人(川村保)

    ○川村参考人 そこまでおっしゃいますと、価格的にはいろいろ考え方があると思うのでございますが、砂糖そのものは国民の長年の嗜好になれておりまして、ブドウ糖は新しい商品であり、なおかつわれわれのPRの不足の点もございますので、販売面、いわゆる流通機構の確立ということに一番われわれは悩んでおる次第でございます。さような次第でございまして、昨年四月から今年三月末の生産が約一万トンございましたのですが、そういう意味から言って、御当局のいろいろ御理解によりまして、報奨用粗糖のリンク制度を採用していただきまして、上期の分に対しては十二円五十銭をちょうだいいたしまして、下期に対しては八円五十銭ちょうだいいたしました。かような状態でございますが、いずれにいたしましても、将来酵素糖化の制度確立によりまして相当増産ができるのではないか、かような見通しでありますので、何かと粗糖の方は特別に御配慮願いたいとお願いする次第でございます。
  122. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 結局、ブドウ糖は当然精糖との競争率は今のところの状態ではまだそこまでは達してないという結論だと私は思うのです。そういう意味で、あなた方のお考え方は、何とかして保護政策をとってくれ、こういう意味だと思うのです、その内容の価格の構成であるとかいろいろな原価計算の問題であるとか、それはいつでも私たちの方で政府当局との問題で話を出すといたしまして、結論だけを言っていただかなければなりません。ですから、今のところでいきますと、ブドウ糖にそれだけの保護政策をするということは、国民に負担を与えている、こういうことになってくるので、あなた方の技術の向上なりいろいろな観点はもっともっと御研究を願いたい、このように思っております。  それから、もう一つお尋ねしておきたいのは、精糖、ブドウ糖の消費分野の点です。大体政府の十カ年計画では十五万トンの生産目標としておるのですが、はたしてそのような市場性があるかどうか、あなた方はどう考えていらっしゃるか。
  123. 川村参考人(川村保)

    ○川村参考人 問題は、われわれとしては、設備の観点なりあるいは企業に対する経済能力という面からかんがみまして、ある程度大量生産をしないとコスト高というものは免れない。同時に、かような点で現在は十分留意をして相当増産意欲を持っております。さような次第で、工業会といたしましては、ことしの上期、下期のいわゆる生産数量を早急に明示せよ、かようなお達しでございましたが、いずれにいたしましても、作ったものが売れなくてはできない、と同時に、採算が合うような線まで持っていくのにはわれわれは数字的に表わせない、かような意見でございます。しかし、流通面におきまして酵素糖化というものによって解決いたしましたから、三十五年度以降は年間十万トン前後は生産できるのではないか、かような見通しを持っております。
  124. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 これは結論はおのずからわかるのです。ということは、今7のところあなた方のところは競争もできない。しかも消費の面というものをあわせて見た場合に、実際に十五万トンというものを作り上げたと仮定しても、今のままの状態ではそれだけの消費の分野というものはなかなかすぐには私は開けないと思っている。そういう観点に立ってあなた方は鋭意努力しなければならぬ。努力をする観点としてブドウ糖は非常に多くのものを含んでいるということをまずお考えになって、これから善処していただきたい。  それから、最後に、あなたが今ちょっとおっしゃったのですが、政府ブドウ糖育成見地から、三十四年度の上半期には千六百トン、三十四年度の下期には六千トンの粗糖をあなたの方との関連で割り当てられている。これに対して上期キロ当たり十二円五十銭、下期では八円五十銭をブドウ糖工業会は製糖工業会からもらっている、私はそう思っておりますが、それが事実であるかどうかということをお尋ねしておきたい。
  125. 川村参考人(川村保)

    ○川村参考人 それは確かにちょうだいいたしました。
  126. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 そうすると、それは証紙の制度で行なわれるといわれているのだが、ブドウ糖業界として、現在行なわれている証紙制度のやり方というものははたしていいか悪いか。たとえば、あなた方はブドウ糖を持っていく。そうすると、それに伴って粗糖の割当をもらうわけです。ところが、ブドウ糖を持っていかずに、証紙だけを渡して、今言った十二円五十銭もらってくる。農林省も検査に立ち会っているかというと立ち会っていない。三輪車で運ばれて山のように積まれているかどうかも知らない。あなた方、そういう実情がいいかどうか考えたことがあるかどうかということをお聞きしておる。
  127. 川村参考人(川村保)

    ○川村参考人 その点は、私はかねがね間接的に国会の方からも聞きましたし食糧庁の方からも聞きました。しかし、私自身といたしましては、現在一級品と普通品の生産ができると同時に穀検に運び出しまして確実に事は実行しておりますから、現在の制度で間違いないと思います。
  128. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 現在の制度で間違いないと言われるが、私は大きな間違いだと思っております。こういうような不自然な、ブドウ糖を出しもしないものを証紙をもって金にかえていくようなブローカー的なやり方に対しては、私は断固反対すべきものだと思っております。その意見あとでいずれ統一していきたいと思っております。  最後にお尋ねしておきたいのは、これは文書ででも何ででもいいのですが、政府は新年度五万トンの粗糖輸入ワクを決定していると聞いております。これに対してのブドウ糖業界の御意見を伺っておきたい。
  129. 川村参考人(川村保)

    ○川村参考人 私このたび新しく前会長施策の通りを受け継いで業務の責任を持たしていただくことになったのでございますが、われわれといたしましては、証紙制度がはたして合理的か不合理かということにちゅうちょしておったような次第でございます。しかし、将来の方法としては、いろいろ業者の意見もあり、政策の面は協議して結論を出したい、かように考えている次第でございます。
  130. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 次に日甜宮本社長にお尋ねしておきたい。  あなたのところはテンサイ糖と精製糖と両面にまたがって経営しているのですが、精製糖の方は今後も継続してやっていくお考えなのか、また、その理由はどこにあるのか。
  131. 宮本参考人(宮本来治)

    宮本参考人 精製糖に進出しましたのは、当時、精製糖は割合に利益がございますし、北海道テンサイ糖は存続の危機に遭遇して非常に困りましたのと、それから、幸い、戦時中に私どもの方の十勝清水の工場砂糖工場でございましたのをブタノールに直しまして機械がございましたので、それを利用いたしまして幾らかでも利益が出る精製糖をやらしてもらいたい、同時に、その利益は北海道テンサイ糖の方を補うということで、両方やりました次第でございます。
  132. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 次に、納付金法によってキロ当たりあなたのところは六円を現在政府に納めている。しかし、法律改正の結果生ずる反射的利益ということであなたのところも納付金を了承している、私はそういうふうに理解しているわけです。そこで、このような反射的利益が精製糖部門にもあるからこそあなた方は精製糖部門にも移行させてもらいたいということで、利益があるから納付金制度をやっている、両方でもうけている、私はこういう結論を持っているのですが、あなたはどう考えておりますか。
  133. 宮本参考人(宮本来治)

    宮本参考人 私の方は精製糖工場は精糖工業会で最下位の能力しかございません。非常に微々たるものでございます。同時に、テンサイ糖の方は、御承知のように、現在北海道で四工場経営いたしておりまして、その負担が非常に多いのでございます。それで、精製糖でうんともうかるからどうだとか、あるいはテンサイ糖でもうかるから納付金をどうだとかいうことでございますが、御承知のように、納付金法につきましては、先ほども申し上げたのでございますが、本来ならばこういう制度は私どもとしては非常に反対したのでございますが、お前の方は長年かかって機械の償却をしているから、他の新しい工場の会社よりも利益があるはずだ、あるはずだからこういう法律を作るのだ、こういうふうに伺っておりまして、簡単に申しますとこれは無理往生させられたような法律でございます。
  134. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 無理往生にしろ立ち往生にしろ、あなたのところはもうけているから出している。私は、あなたの人柄から言って損をしてまでやるとは思わない。  ついでですからもう一つ伺いたいことは、四、五年前にあなたのところの工場にお伺いしたときに、あなたはこういう御発言をしている。あなたのところはもうかっておりますかと聞いたら、とんでもない話だ、もうかっていない、もうかっていないからこそ、下関におけるところの利潤をこちらの方に回してやっとこさっとつないでおるのだ、こういう返事だった。そこで、私は、それはおかしいじゃないか、政府保護政策をとっている以上そういうことはないはずだと追及したら、いや実は二割以上もうかっているということだった。そこで、そのことの原因が問題になりまして、これはあなた方も反省してもらわなければならぬ、あなた方も向上してもらわなければならぬと実際私は思っておるのですが、ということは、実際調べてみると、採算のとれぬところからは輸送もやらないということから、農民の一つの不安不平が新設工場のところに運動を始めていくという結果が出てきた。その結果の反省だけはあなたはしておかなければならぬと私は思っておる。その反省の上に立ってあなた方の既設工場をどうするかということになれば、私たちは大いによろしいと思う。同時にまた、自分のところだけが六円とられているからほかの工場からもとったらいいじゃないかというのでなしに、私のところはこれだけもうかっておるから六円出しましょう、精糖工場の方ももうかっているから出しましょうということになれば、あなたは非常にりっぱな宮本さんになって現われてくるであろう、こういうふうに私は思います。そういうようなことを一つ御配慮願いたいと思います。  それから、全澱連の方に、時間がないから、続けてお尋ねいたしますが、現在澱粉消化の一般対策としてブドウ糖育成が行なわれているのでありますが、ブドウ糖業者は、現在のところ、市中のものを買って、政府の手持ちになっているものは払い下げ価格が高いからといって買っていない。ところが、現在ブドウ糖に安く払い下げるような動きもあるといいますが、そのようなことをいたしますと、逆に今度は市中の方のものが非常に売れなくなってくるわけですね。そのようなところのバランスがどうなっていくかということを一つお尋ねいたしたい。  それから、時間がありませんから、私の結論だけをちょっと申し上げますと、こういう結論になりはしないかと思う。政府が高く買って安く払い下げれば、澱粉の市価の維持もできるしブドウ糖業者も助かるが、それでは政府は赤字になるからといって政府の方が反対してくるのじゃないか。しかし、結論から言えば、今言ったように、農業政策の面と市場価格の面と砂糖行政の面というものを歴然と分けていくならば、その結果出てくる問題は何かといえば、ブドウ糖業者も同様のことが言えると思うのですが、政府買い上げたものを安く払い下げて澱粉の市価も維持ができるようにしていくというところに私は結論が来るのじゃないかと思うのですが、これに対してどういうお考え方を持っているか、この点だけをお尋ねしておいて、終わりたいと思います。
  135. 本坊参考人(本坊美義)

    ○本坊参考人 要点だけを申し上げますと、非常に矛盾した結果に相なるわけであります。一方には、政府に農安法で澱粉を買い上げてくれ、一方には、消費面からいきまして、払い下げすることはそれに足を引っぱられるものだということは、澱粉が非常に過剰になっているというふうなことに相なるわけでありますが、先ほど来から、砂糖の問題、ビートの問題、いわゆる甘味源としての砂糖という性格からいきまして、もうわれわれの方からいきますと非常にサンドイッチになっちゃって、どうも、これは、食べられるサンドイッチならいいけれども、ほとんどはね返りはイモにいくというふうに考えられるわけでありますが、イモの問題につきましても、これも限度があることであろうし、われわれといたしましては、この際政府が十五万トンの十年というような甘味対策をやっておられる関係上、すでに先ほど来からいろいろとブドウ糖の問題も出ましたが、これはやれるということもおっしゃったようでありますが、要は原料の問題だということも出たように記憶いたします。かような状態で、われわれといたしましては、この余った澱粉、これを政府に売る、これは非常に残念なことで、企業をする以上、政府のお世話になってめしが食えるということじゃなくして、自分の力において企業が成り立つということを考えます関係上、先ほど申し上げました、いわゆる実情に沿うた価格ということが非常に意味深長になるわけであります。消費面ということをよく考えていただきたいということは、澱粉は、ブドウ糖あるいは水あめ関係、あるいは最近グルタミン酸ソーダの問題が出ておるようでありますが、かような用途以外には現在ないので、どうかその点につきましては特段の御配慮をお願いしたい。澱粉の場合は、政府の御方針とか、あるいはなおまた農家のいわゆる原料のコストの引き下げとか、なおまたもちろんわれわれの合理化したコスト引き下げという関係もあるわけですが、今の段階におきましてはもう何とも前進し得ない姿であります。
  136. 中村(時)委員(中村時雄)

    ○中村(時)委員 それでは、最後に、それぞれの、たとえば工業会の会長藤山さんには、これは一つ御意見としてはっきりしておいていただきたい。あるいはテンサイ糖会長宮本さんもそうでありますが、自分がその立場の地位を利用して、自分だけのことを考えず、全体の業界のことを考えて、そうして、糖業界の問題がその個人的な問題に終わらないように、一つ十分これから御配慮を願っていただきたい。でないと、非常に疑義が生まれて参りますから、その疑義の解明をせねばならぬということのないように。  それからまた、委員長にお願いしておきたいのは、次には十分な質疑ができるように時間を与えていただきたい。  以上をもちまして、十分な参考意見が得られなかったことは残念でありますが、自分の質疑はこれで終わらしていただきたいと思います。
  137. 吉川委員長(吉川久衛)

    吉川委員長 保岡君。
  138. 保岡委員(保岡武久)

    ○保岡委員 先ほどお尋ねにちょっと落としたので、重ねてお尋ねしておきたいと思いますが、藤山さんにお答えを願いたいと思います。  先ほどお話しの、黒糖の消費はだんだん減ってくるというお見通しのようでありましたが、生産に対して需要が減るということになりますと、価格はおのずから低落して参るのはあたりまえであります。そこで、先ほどのお話の中に、本年度台湾から赤糖が一万五千トン入るというようなことで、これは日台貿易協定でやむを得ぬことだと思うのでありますが、そういうことが黒糖市場に対して圧迫にならぬかどうかということをちょっとお聞きしたい。
  139. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 それはある程度圧迫になると思います。しかし、政府台湾貿易との関係上その程度のものは輸入しなければならぬのじゃないかと思っておりますが、それは輸入がない方が実は黒糖の市場にはいいんじゃないかと思います。
  140. 保岡委員(保岡武久)

    ○保岡委員 わかりました。  もう一つ、先ほど日本ビート糖業協会会長さんの宮木さんのお話に今後の暖地ビート育成のためにも相当保護的な法律を制定する必要があるというお話があって、たとえば集荷地域の問題とかあるいはまた農民に対する価格支持の問題とかいうこと等をやはりきめていく必要があるんじゃないか、こういうお話で、私はごもっともなことと思うのでございますが、西南語島の製糖業については、そういうような問題は何も従来やられてない、そのためにいろいろと業界に不利益なことが多かったわけでありますが、この機会に一つ西南諸島カンシャ糖の問題についても同じような考え方を持つ必要があると思うのですけれども、その関係の人がおらぬようでありますが、藤山さんからちょっとその御意見を伺っておきたい。
  141. 藤山参考人(藤山勝彦)

    藤山参考人 私もそう思っております。やはり、西南諸島黒糖生産は非常に重要なものですから、分みつ糖黒糖も、北海道と同様、やはり保護育成政策をとらなければならぬと思っております。
  142. 吉川委員長(吉川久衛)

    吉川委員長 参考人各位には長時間にわたり本委員会調査に御協力いただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼申し上げる次第でございます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時散会