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1960-04-19 第34回国会 衆議院 農林水産委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月十九日(火曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 吉川 久衛君    理事 秋山 利恭君 理事 田口長治郎君    理事 永田 亮一君 理事 丹羽 兵助君    理事 本名  武君 理事 角屋堅次郎君    理事 芳賀  貢君 理事 小平  忠君       今井  耕君    金子 岩三君       金丸  信君    倉成  正君       坂田 英一君    笹山茂太郎君       田邉 國男君    高石幸三郎君       中馬 辰猪君    野原 正勝君       松岡嘉兵衛君    松田 鐵藏君       三和 精一君    八木 徹雄君       保岡 武久君    赤路 友藏右      茜ケ久保重光君    足鹿  覺君       石田 宥全君    中澤 茂一君       西村 関一君    松浦 定義君       山田 長司君    神田 大作君       小松信太郎君    中村 時雄君  出席政府委員         農林政務次官  大野 市郎君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君  委員外出席者         農林漁業金融公         庫理事     中沢 忠作君         参  考  人         (全日本開拓者         連盟委員長)  近藤 安雄君         参  考  人         (全国開拓農業         協同組合連合会         会長)     井上 徹雄君         参  考  人         (岩手県開拓者         連盟委員長)  菅野 敬一君         参  考  人         (鳥取県大山開         拓農業協同組合         長)      三好 武男君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 四月十五日  委員石田宥全君辞任につき、その補欠として永  井勝次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員永井勝次郎辞任につき、その補欠として  石田宥全君議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  開拓営農振興臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第七三号)  開拓者資金融通法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一〇五号)  開拓者資金融通法による政府貸付金償還条  件の緩和等に関する特別措置法案内閣提出第  一〇六号)      ————◇—————
  2. 吉川久衛

    吉川委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人招致に関する件についてお諮りいたします。開拓営農振興臨時措置法の一部を改正する法律案開拓者資金融通法の一部を改正する法律案及び開拓者資金融通法による政府貸付金償還条件緩和等に関する特別措置法案について、本日参考人出頭を求め、その意見を聴取いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、参考人人選については委員長に御一任願いたいと存じます。      ————◇—————
  4. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、開拓営農振興臨時措置法の一部を改正する法律案開拓者資金融通法の一部を改正する法律案及び開拓者資金融通法による政府貸付金償還条件緩和等に関する特別措置法案を議題とし、質疑を行ないます。倉成正君。
  5. 倉成正

    倉成委員 私は、開拓法案関連して、現地から寄せられたなまなましい声を背景として、今後の開拓政策に関する政府の決意を伺いたいと思います。  私の考えるところによりますと、開拓問題の解決かぎは、現実の正しい認識、すなわち、ありのままの実態を正しく把握し、同時に、この現実に基づいて正しい開拓政策理念を確立することが何よりも大切なことと考えるのであります。そこで、開拓実態につきましては、これまで農林省でいろいろ御調査をされておることと思いますけれども、具体的なこれまでやられた開拓調査について、一つどういう調査をやられたか、お示しいただきたいと思います。
  6. 伊東正義

    伊東政府委員 開拓関係調査でございますが、御承知のように、農地局では開拓地営農実績調査、これは全農家についてやっております。それと、開拓経営経済調査、これは全部というのではございませんで、若干層としては上の方になっておりますが、第一類として約八十戸、あと水田地帯等六十戸というような類別をいたしまして、経営経済調査。この両方調査をやっておる次第であります。
  7. 倉成正

    倉成委員 開拓地家計調査をおやりになったことはございますか。
  8. 伊東正義

    伊東政府委員 家計調査につきましては、経営経済調査で、数は少のうございますが、その中で家計費調査等もやっているわけであります。
  9. 倉成正

    倉成委員 開拓地調査の問題につきましては後ほど詳しく触れたいと思いますけれども、私は、これまで農林省のやられた調査が決して間違っておるとは申しません。しかし、統計数字に現われて参ります調査は平均的な抽象的なものであって、ほんとうに血の通った内容調査資料農林省の机の上には上がってこないという事実を指摘いたしたいのでございます。従って、この問題は後におくといたしまして、終戦後の開拓政策は、食糧不足の解消、過剰人口対策背景として進められてきたことは御承知通りでございます。しかし、今日では、食糧事情も緩和され、人口問題は依然として重要性を失わないけれども、開拓におんぶするところが若干事情が変わってきたと考えるわけでありまして、今後の開拓政策指導理念をどのような考え方に基づいて進めるかということが一番大事となって参ります。この点につきましては、先般農林大臣に対して私も御質問をし、大臣からも一応のお答えをいただいたのでございますけれども、さらに、担当の局長から、どういう角度で今後の開拓を進めていくかということについてお伺いしたいと思います。
  10. 伊東正義

    伊東政府委員 今後の開拓政策をやっていきます場合に、今まで入られた人の問題と、それから、全然新しく入る人というふうに、分けて考える必要があろうかと存じます。全然新しくこれから入るという場合の問題でございますが、その場合の考え方といたしましては、まだ日本に残されておりますところの未開発といいますか未利用の土地資源を高度に利用していくということがやはり開拓一つの大きなねらいであろうと思います。もう一つは、既存農家を頭に置きまして、既存農家対策としての開拓ということを考えるべきではなかろうか。といいますことは、既存農家間引きというような考え、あるいは既存農家の二、三男対策というような考え方からいたしまして開拓ということを考えていく必要があるのじゃないか。これにつきましては、経営方面から言いますと、将来のいろいろな需要弾性所得弾性その他需要の趨勢から考えまして、開拓方向農業経営方向というものは、主穀中心でなくて、そういうものを一部入れました酪農でありますとか果樹とか、そういうものの経営ということを中心考えるべきではなかろうか。そうして、農業所得だけで営農ができていくというような、ある程度高い水準を置きましたところの営農というものを新しい人々については考えていく。すなわち、基本営農類型というようなことも臨時措置法あとに打ち出したのでありますが、こういう考え方中心に新しい開拓について考えるべきじゃなかろうかというふうに思っております。また、これは当然やっていくべき事柄であり、大いに推進をすべき事柄であるというふうに考えております。もう一つの、すでに入りました開拓者で、困って、まだ営農の安定しておらぬという人がだいぶございますので。こういう人々につきましては、新しいさら地に絵をかくというわけには参らないのでございますが、基本営農類型考えましたような将来の営農を頭に置きながら、この人たち営農がある程度安定するというところまで総体の水準として持っていくようにということをどうしてもやりませんと、過去に入りました人の営農不安定ということに足を引っぱられまして、いつまでも新規開拓があまり大規模にできないというような情勢になりますので、さしあたっては既人植者対策というものを最重点に取り上げて考えていくということにいたしたいと思うのでございますが、全然新規開拓につきましては、先ほど申し上げましたような、ある程度高い水準開拓者企業として農業所得だけで生活ができるというようなところをねらいましてやっていくというのが開拓の本来の方向でなかろうかというふうに考えております。
  11. 倉成正

    倉成委員 ただいまの御答弁で、新しく入る開拓者の問題についてお話がございましたが、必ずしも局長の御答弁は明確でありませんが、大体意図しておられるお気持は了解できるわけであります。ところが、既入植者の問題につきましては何か不明確であったような感じがいたします。何か新しく入る者と既入植者とには差があっても当然じゃないかというようなことが言外にうかがわれるのでございますけれども、これは非常に重要な問題でございますから、もう一度、既入植者に対してどういう考え方を持って進めていくか、指導的な理念はどういうものか、伺いたいと思います。
  12. 伊東正義

    伊東政府委員 既入植者関係の問題でございますが、これも数日来だいぶ議論になったところでございまして、新規に入ります場合の基本営農類型の方と過去に入りました既入植者関係はどうか、そこまで抜本的に今やるべきではないかというような御意見が実はいろいろございます。私ども考えておりますことは、今まで入られました人の営農安定対策としましては、まず、開拓営農振興臨時措置法に基づきますところの振興計画というものがございます。これを達成いたしまして、ある程度営農が安定しまして、黒字に転換して拡大再生産の転機をつかんでもらうというのが開拓営農臨時措置法のねらいでございます。この計画は実はものによりましてはかなりのところまで進んでおりますが、きょう資料を差し上げましたが、まだ実績が半分くらいのものもあり、またそれ以下のものもあるというようなことで、振興計画実績もそういったような現状でございます。それで、われわれとしましては、既入植者の方につきましては、振興計画というものが、これは、ある程度、従来の営農形態から見ますれば、特に酪農方面に向かいますとか、あるいはまた果樹地帯では果樹に向かうとか、従来の穀菽中心営農形態からだいぶ変りました、基本営農類型考えておりますような営農振興といいますか、そういうふうに振興計画というものもかなり私は新しい内容が盛られておるというふうに判断いたしております。それで、まずこの振興計画達成することが営農安定の手がかりをつかむ第一段階でなかろうかという判断をいたしておりまして、既入植者方々につきましては、まずこの振興計画達成をはかりたいというのが私どもの基本的な考え方でございます。これにつきましては、振興計画に盛られておりますたとえば間引きの問題でありますとか増地問題等要求がありますれば、いろいろな総合的な手を打ちまして、まず既入植者の人につきましては振興計画達成が第一段階である、その上またさらにどういう段階を踏んで開拓者全部の問題を持っていくかということにつきましても、これも審議会等で十分議論していただきたいというのがわれわれの基本的な考え方でございます。
  13. 倉成正

    倉成委員 今日の農業問題で一番大きな焦点となっておりますのは、農業と他産業との所得均衡ということであります。ですから、せっかく働いても、その労働力が正しく評価されないで、他産業と大きな格差が出てくるということは、経済の発展のためにも望ましくない。従って、農業政策を基本的に考え直さなければならない。これが今日の農政の大きな課題であります。従って、その農業の内部において、新しい入植される方々既入植者の方方とに大きな格差がつくということは、非常にこれは望ましくない姿であると私は考えます。また局長も同感であろうと思います。しかし、それまで持っていくためには一つ段階が要る、従って、その段階が来てから考えたらどうかというお考えのようでありますけれども、私はそのお考え方には賛成するわけには参りません。どうしてかといいますと、今後十年間ぐらいのうちに所得倍増ということが言われており、非常な大きな農業並びに他産業転換期に来ておるわけです。こういうふうにどんどん産業は進歩し、経済は発展し、農業全体もいろいろ成長していくさなかにおきまして、やはり非常に取り残された形で既入植方々が置かれるということは、何としても片手落ちではないか、まずいんじゃないか、こういうふうに考えるのでありますけれども、これは、予算的な問題が大きな制約となってこういうことになっているのか、あるいは、いろいろ営農的な問題、技術的な問題、そういったものが原因となっているか、そういった点、一つ率直にお答えをいただきたいと思います。
  14. 伊東正義

    伊東政府委員 営農的な面からの制約か、予算的な面からの制約かという御質問でございますが、先生承知のように、振興計画内容ごらんいただきますと大体おわかりと存じます が、ほとんど——ほとんどと言っては語弊がありますが、国の一般会計から来ます予算あるいは国の融資というものが非常に大きな部分を占めております。振興計画達成するということにまず力を入れるとすれば、今申し上げましたようなことにもう少し政府としましても力を尽くす必要があろうかと思っております。これが私はまず第一段階のことであろうと思います。それから、もう一つの面は、単に予算ということでなくて、先ほどから申し上げておりますように、たとえば経営規模の問題、そういうような問題にも当然これは将来の営農の問題に触れますとなってくるわけでございます。過去において緊急開拓時代にやりました土地配分の問題、その他の問題もございまして、それをある程度また規模拡大をはかっていくというようなことになりますれば、これはこれでまたかなり問題が出て参ります。一つの手段として、間引くというような、再配分というようなこともございますが、これをやりますには、もちろん予算的なこともございますが、ある程度調査も必要でございましょうし、また、それをやります場合に、どういう計画でやるか、基本労農類型というものは一応ございますが、これにぴったり当てはめていくのかどうか、相当の数の人を動かすということもありましょうし、言うべくしてなかなか問題は大きいのでございます。でございますので、一つ財政面からの制約がもちろんございますし、もう一つは、調査なりそういう現実の問題としますれば、非常に多くの人を動かすというようなことにつきましては、また問題がございまするし、いろいろな面から、すぐに三十五年度からそういう問題に取り組んでやるというには少し時期が早いんじゃなかろうか、やはり、三十五年度の態度としましては、これは振興計画達成ということがまず第一段階でなかろうかというような判断をいたしまして、今のような法律の御審議を願ったわけでございます。
  15. 倉成正

    倉成委員 ただいまの局長の御答弁の中で、非常に御苦心なさっていることはよくわかるわけです。それじゃ、その問題に関連してお伺いしたいと思いますけれども、この転換期に来ておる農業全体を取り扱うために、政府基本問題調査会が設けられて、すでに中間報告が発表されております。また、経済企画庁を中心所得倍増のプランがあるわけでありますけれども、これらの計画と現在の既入植者振興ということはどういう関連性を持つものか、一つお伺いしてみたいと思います。
  16. 伊東正義

    伊東政府委員 今内閣にできております基本問題調査会中間的な試案といいますか、そういうものは出ております。これは農政一般の問題でございますが、特に注目すべき点は、構造政策といいますか、今までにあまり取り上げられませんでした構造政策ということが非常に強く取り上げられておりますことは一つの大きな特徴でなかろうかと思っています。この場合に、先生の今おっしゃいました所得倍増といいますか、ほかの産業との所得均衡をはかる問題でございますが、あの中間試案等では、御承知のように、農業労働単位としまして、二人ないし三人ぐらいの人で、農業だけの所得で、ほかの産業所得と比較しまして均衡のとれた、妥当な文化的生活といいますか、そういう生活のできるぐらいの農業所得をあげ得るところを農政中心として構造問題としてはやっていくべきでなかろうかというようなことが、中間試案構造政策中心議論になっているというように、私は了解いたしております。これと既入植者の問題とどういう関連があるかというお話でございますが、既入植者の問題として考えます場合には、農業労働という面からいきますれば、大体今ねらっておりますようなところの家族構成に近いであろうと私は思っています。こういうところで、ただ、あげております所得は、一般既農家に比較しましてまだ低い層がだいぶ多い。それから、低い上に、既農家に比較しましても非常に借財が多い。これは非常な大きな特徴でございます。そういう両方の面からいたしまして、一般の今の既農家でさえもまだ小さい、所得が低いというようなことが言われておりますものに比較しましても、既入植者はまだその下になっております。でありますので、われわれとしましては、せっかく入りました入植者でありますので、これは、やはり、基本問題調査会がねらっておりますような線までは開拓者についてはぜひ引き上げてあげるように政策を集中してやるべきである。ただし、今入っておる人につきましても、これを全部が全部農業の中で救っていかなければならぬかどうかということになりますと、これは既農家についても同じ問題がございまして、ある程度面積の小さい人、あるいは兼業所得のあるような人については、なるべく脱農をはかったらどうか、そうして、あげます所得を割る分母を小さくしようじゃないかという意味のことを言っておるのでございますが、これは開拓者についても同様でございまして、ことし初めてテスト・ケースとしてやります間引きというようなことも、どうしてもやっていけぬという人の離農というようなものにもあるいはあの奨励金は出していくというような考え方をとりますれば、私は、今基本問題調査会がよく脱農ということを言っておりますが、こういう問題とも通ずる問題があろうかと思っております。今申し上げましたように、既入植者の人につきましても、基本問題調査会がねらっておりますように、やはり農業所得だけで生活ができるというところの線まで持っていきたいというのがわれわれの考え方でございます。
  17. 倉成正

    倉成委員 農業政策中心課題として今後の農業構造を変えていこうという試案が出ておることは、私も承知いたしておりますし、これを開拓にアプライいたした場合に、いわゆる間引きという形で現われてきておる、これは基本的な方向として間違っていないと思いますが、今日の既入植者状態というのがいろいろな条件の集積したものでありますから、これを一朝一夕に解決しようということはなかなかむずかしい問題であることもよく承知いたしております。しかし、少なくとも、一日も早く目標をきめまして、その目標に向かうだけの努力が私は大切なことじゃないかと思います。かりに目標を定めましても、これが目標通りに実現できるかどうかということは、非常にむずかしい問題であります。しかも、今日一番大きな日本経済課題は、所得均衡ということである。農業が他の産業所得をいかにして均衡せしめるかというのが大きな焦点であるときに、非常に低い営農水準目標として、しかもその営農生活の犠性においてなされておる状態を放置しておくということは、私は政治としてまことにまずいことではないかというふうに考えるわけであります。そのためには、どうしても、なぜ開拓を推進していくか、なぜこういう既入植者を救っていかなければならないかという基本的な理念、堂々と大蔵省にも予算要求し、また他の部門の方々にも納得させるだけの理論的な根拠が必要になってくる。そういう意味で、開拓政策理念を一日も早く確立することが必要だと申し上げておるのでございます。  以上は、いずれもむずかしい問題でありまして、今後新たに設けられます審議会において本格的に取り組んでいただきたいと思いますけれども、この審議会は、第一回はいつごろ、また年に何回ぐらい開く御予定であるか、伺いたいと思います。
  18. 伊東正義

    伊東政府委員 まだ法律の御審議を願っておる段階でございますので、いつということをきめておりませんが、法律が御審議願えますれば、なるべく早い機会人選をいたしました上で開催いたしたいと思います。年何回ということをきめておりませんが、実は三十六年度の予算等もございますし、私は、開きましたならば、来年の予算ということも頭に置きまして、回数をある程度詰めてやりまして、三十五年度に中間的な結論でも得られれば、それに基づきまして三十六年度のことも考えていきたいというようなことで、年に何回というようなことはまだ予定はしておりませんが、特に既人植者対策ということでやりましたし、これは財政とも非常に関係がありますので、早い機会中間的な結論が得られるように、何度も開催していただくというのが筋でなかろうかと私は考えております。
  19. 倉成正

    倉成委員 この審議会においていろいろ検討されるべき項目につきましては、先般来の同僚議員質問の中で大体明らかでございますけれども、特に開拓営農振興臨時措置法について、今次の政府案はごく一部の改正でございますが、これを全面的に改正する、基本的に検討する、こういう問題についてこの審議会で十分御検討なされる意思があるかどうか、伺いたいと思います。
  20. 伊東正義

    伊東政府委員 当然この審議会開拓営農振興臨時措置法につきまして基本的な検討をしていただくことが当然だろうと思います。
  21. 倉成正

    倉成委員 開拓審議議会を実質的にお進めになろうという御熱意があるようでありますから、特に御要望申し上げたいと思いますけれども、審議委員の各位はその方面のエキスパートでありましょうけれども、何といっても、審議会検討にゆだねるためには、詳細な資料、また農林省意欲というのが大きく反映してくると思いますので、審議会をお開きになります場合には、積極的な意欲をもってこの審議会にいろいろな諮問をしていただくように、特に御要望を申し上げたいと思います。  次に、問題解決かぎ現実の正しい認識の中にあると申しましたが、これは非常に恐縮ですが、農地局長さんは開拓地をどの程度ごらんになったことがありますか。たとえば九州について、もしごらんになったところがあるなら一つお伺いしたいと思います。
  22. 伊東正義

    伊東政府委員 どの程度見たかというお話でございますが、実は、私、農地局長になりましてからまだ九州に行っておりませんので、九州開拓地は実は見ておりません。おもに関東ないし東北の一部の開拓地を見ております。
  23. 倉成正

    倉成委員 これ以上申し上げませんが、開拓地実態というのはいろいろ場所々々によって違いますし、机の上でいろいろ書類ごらんになるのと、実際にその状況を見たのとでは非常に違うわけです。どういうふに違うかということはここで申し上げませんけれども、なかなかその書類に載ってこない面があるわけであります。従って、少なくとも開拓行政を真剣に推進していこうとしますならば、その現実の正しい認識ということをモットーとして今後お進めいただきたいと思うわけであります。これは、局長以下農地局の職員の方々全部に対して御要望申し上げてこの程度にとどめます。  次に、償還延期の問題に関しまして、条件緩和を受けることのできる開拓者の範囲が一類、二類、三類と大体分けられておるようでありますが、率直に申しまして、私は、これは一本にすべきだ、一本にするということは全部を五年据置で十五年償還にすべきだというふうに考えます。なぜかならば、すべての開拓者に同一の利益を与えていいのじゃないか、また、行政は単純明快でなければならない。いろいろな基準を作られるのはけっこうですけれども、その基準でどういうふうに当てはめていくかということは煩瑣であるばかりでなく、うっかりすると公平を欠く、妥当性を欠くという場合もあるわけでありますから、開拓政策を積極的に進めていこうということであれば、大きな財政的な負担があれば別でありますけれども、さほど大きな差違がない場合には、単純明快にする。この主張をすることは私は決しておかしいことではないと思うのです。ですから、これは、いろいろな基準を設けて、自立できるのはもう延ばさなくてもいいじゃないかとか、いろいろ言えば理屈はあるでしょう。しかし、そういうことでなくて、単純明快に一本化するという方向で強くこれを推し進めていただくことが適当であると思いますけれども、農地局長の御所見を一つお伺いしたい。
  24. 伊東正義

    伊東政府委員 先生の御意見も私はわからぬわけではないのでございますが、実は、今の法律の構成は、御指摘になりましたように、条件緩和の対象になる人、それからならぬ人、——なる人の中で、五年据置・十五年、据置なしの十五年というふうに区分いたしております。区別をいたしました基本的な考え方でございますが、実は、先生のおっしゃるように、五年据置・十五年一本というのも確かに一つ考え方でございますが、私どもとしましては、なるべく多くの人にこの条件緩和の適用になるようにというようなことを考えまして、五年据置・十五年という条件だけでなくて、もう少し広く、据え置かなくても十五年償還できる範囲の人にも広げていいのじゃないかというような考えをもちまして、基本的には振興農家の中でなるべく多くの人に条件緩和の対象になるようにしたいという見地から、実はもう一段階設けたような次第であります。先生のおっしゃいますように、なるべく簡素化しようというお話もわかるのでございますが、私どもとしましては、振興農家の中でなるべく多くの人にというような意味でもう一段階設けまして、五年・十五年に当たらぬ場合でももう一つ条件緩和があるのじゃないかということで、若干複雑にはなりましたが、緩和する人につきまして段階を設けたというような、経過から申しますとそういうようなことであります。
  25. 倉成正

    倉成委員 これはいろいろ法律を作られた経過もございますから、これ以上申し上げませんけれども、少なくとも行政はやはり単純でわかりやすくやるということが大切なことでありますし、また、開拓を積極的に進めていくということを考えます場合には、すべての利益を開拓者に与えていいのじゃないか。たとえば、計画を立てまして、建設工事、附帯工事、そういうのが非常におくれた、それによっていろいろ得べかりし利益を得なかった開拓者に対して政府がいろいろな責任を負うかということになりますと、それは切り捨てごめんであります。しかし、開拓者が一日でも資金の償還がおくれたら、これには利子がつく、また延滞金がつくということになりますと、これは、私は、法律と言えばそれまででありますけれども、非常に片手落ちじゃないかというふうに考えるわけであります。現に、今日開拓者の不振の大きな原因は、建設工事がおくれ、附帯工事がおくれておるということが、すべてではありませんけれども、みな理由の一つであります。そういったことから考えますと、私は、開拓政策理念がほんとうに確立されておるなら、これはもっと積極的に財務当局を説得することができたというふうに考えるわけでありますけれども、一応いろいろ経過がありますから、これ以上申し上げません。  この問題と関連して、こういう処置をしたら、これは理屈から言えば確かに据置期間の利子をも払うのがいいじゃないかという見方もあろうかと思います。しかし、これは、いろいろ政府のこれまでの建設工事、その他附帯工事の例をあげましたけれども、これが完全に行なわれておるという前提であれば据置期間の利子をとることもあえて反対ではございませんけれども、しかし、そうでない場合には、やはり延滞金にさらに利子がつくといういき方は望ましくない姿だというふうに考えまして、これは責任あるお答えでなくてもけっこうですけれども、局長の御感想があれば、また政務次官もどういうふうにお考えになりますか、一つお答えいただきたいと思います。
  26. 伊東正義

    伊東政府委員 利子の問題につきましては責任のある答弁でなくてもいいというお話でございますので、経過を申し上げますと、実は、私ども、金利の問題につきましては、これは、開拓者の連年の償還額傾向その他を見まして、予算をやります最初の段階におきましては、金利の問題は、これは全面ではございませんでしたが、今までの半分くらいということで毎年の償還の絶対額に見合うのじゃないかという主張をいたしたことはその通りでございます。ただ、いろいろ交渉の経緯はございましたが、最終的にはこの問題は一般会計からの繰り入れの問題もございますし、そういう問題とも関連して参りまして、一応かなりの条件緩和になったのでございまして、据置期間といえどもやはり一応利子をもらった方がいいじゃないかというような結論になりまして、このような法律になった次第でございます。この前の御質問もあり、先生も御承知通りでございます。現在はかなりの条件緩和でありますので、一応利子をとってもらうというような建前をとっております。
  27. 倉成正

    倉成委員 こういった条件緩和をした場合の初年度の償還金と、それから、条件緩和をしなかった場合の償還金との比較はどういうことになりますか。と申しますのは、条件緩和をしたことは確かにけっこうだけれども、条件緩和したために初年度の償還金が大きくなるということになりますと、実際できないことをしいるという結果になるから、念のためにお伺いしたいと思います。
  28. 伊東正義

    伊東政府委員 三十四年度と三十五年度の調定額等を頭に置いて考えてみますと、大体、昨年の予算をやります場合には、元金の調定額は約十七億くらい予想いたしまして、これに対して入ります徴収額は、元金の分だけでございますが五億七千二百万くらいであろうというような予定を三十四年度はいたしました。三十五年度は、元金につきましてこういう償還条件の緩和ということをやりますれば、元金の調定額はおそらく五億三千万くらいになるだろう、それに対しまして入ってきます元金が一時償還も含めまして三億六千、去年はこれに対しまして五億七千というふうに見ておりましたので、昨年よりはだいぶ調定自体も減ってくるということが元金について言えば言えるのじゃなかろうかと思っております。
  29. 倉成正

    倉成委員 利子の場合はどうなりますか。
  30. 伊東正義

    伊東政府委員 金利につきましては、昨年は調定額は約九億五千万ぐらいを見込みまして、徴収は四億九千七百万というような予定を組んだわけでございます。ことしは、調定額が約六億七千くらいになりまして、これに対しまして徴収は四億四千というようなことで一応組んだわけでございます。このほかに、三十四年度におきましては前年度からの調定済みで未収になっておる金が十六億くらいございます。これが、今度は、全部ではございませんが、大部分の人についてはうしろの方に元加されて、あとで十五年払い、二十年払いというようなことになるわけであります。
  31. 倉成正

    倉成委員 全体の数字について御答弁がありましたけれども、これをしさいに内部的に検討してみますと、実際に形の上では非常に緩和されたように見えるけれども、払えないという状況が出てくる場合が非常にあると思う。そういうことになりますと、せっかく条件緩和をしましても、恩典にあずからないという場合が出てくることになる。そしてまた将来に禍根を残すということになって参りますから、この取り扱いにつきましては十分実情に即して調定等をなさるように御要望申し上げたいと思います。  次に、いわゆる二十九年から三十二年度の入植者の谷間農家の問題、これは同僚委員からもいろいろお話がございましたけれども、この谷間農家に対する具体策はどういうふうにお考えになっておるか。特に、この谷間農家の中で開拓営業の不振にあえいでおる農家がどのくらいあるか、これに対する対策、これをお伺いしたいと思います。
  32. 伊東正義

    伊東政府委員 いわゆる谷間ということにつきましてどういう具体的対策を今度は立てたかという御質問でございますが、これにつきましては、実は、今度の法律改正その他におきましては、まだ財政当局とはっきりした話し合いはついてはおりませんが、三十一年以降に入りました人で、災害をこうむりましたためにどうしてもこの条件緩和の対象にしなければならぬというような人が出ました場合には、これは一つ対象に考えていきたいということを今大蔵当局と話し合っております。また、災害資金につきましても、一応振興計画達成のためということで振興農家だけに限定しておりますが、これも、三十四年度の災害には、現に振興農家以外にも貸し出しをやっておりますし、こういう人々についても貸し出しはしたいというふうに実は大蔵当局と今話し合いをいたしております。これは災害を原因としたものでございまして、一般的な不振の問題につきましては、私の方としましては、緊急開拓当時に入られた人とだいぶ様相はいろいろな国の施策も違うのではなかろうかというような観点に立ちまして、三十二年度の臨時措置法をやりました場合にもこれらの人々は対象外としたのでございまして、その考え方については今も変わっておらないわけでございますが、災害以外の理由で営農不振というような人々に対する対策につきましては、振興措置法を基本的に考え直すというようなことをいたしますか、あるいは全然新しい立法をいたしますか、そういう基本的な問題といたしまして、開拓審議会等でこういう人々に対してどうしたらいいかということを基本的に相談をしていただきたいというふうに思っております。これらの人々の数でございますが、まだはっきりはいたしておりませんが、災害等の場合に対象になるのは千戸内外ではなかろうかというふうに予想はいたしておりますが、まだはっきりした数字にはなっておりません。そのほかに、一般営農不振といわれておりますのは数千戸といわれておるわけでございます。
  33. 倉成正

    倉成委員 いわゆる谷間農家の問題について、問題を単純にするためにこういう御質問を申し上げてみたいと思いますけれども、この谷間農家に対する政府財政投融資の財政資金、それから融資額平均、それから新営農類型に基づく開拓農家に対する政府財政資金と融資、この額を一つお示しいただきたいと思います。平均でけっこうです。
  34. 伊東正義

    伊東政府委員 従来の人々に対しましては、国からの特別会計からの融資は約十八万足らずでございます。基本営農類型でやっておりますのは四十五万とか五十五万というような融資をいたしております。
  35. 倉成正

    倉成委員 今局長お答えになってお気づきになったと思いますけれども、非常に大きなアンバランスがあるわけです。ですから、これをいわゆる谷間農家というふうに呼んでおるわけです。行政は公平無差別であるということを一つの大きな建前にするわけでありますから、いろいろ客観情勢その他が変わったにいたしましても、こういうふうな大きな差があるということ自体は大きな政治的な問題である、また行政上の問題であるというわけでありますから、これまでいろいろ施策をやられ、また事務当局との折衝において御苦心のあるところは認められるわけですけれども、こういった現実が残されておる。これは一日も待つことができないというふうに私は考えるわけでありまして、これらの点については勇気を持って御推進いただくように、特にお願いを申し上げたいと思います。  次に、不振開拓地の分布で、北海道と内地はどういう比率になっているか、全体の戸数の中でのパーセンテージでもけっこうですが、大まかでけっこうですから、お伺いしたいと思います。
  36. 伊東正義

    伊東政府委員 振興計画を立てまして承認申請をいたし、承認となりました戸数でございますが、それを比較いたしますと、大体九万四千の中で北海道が二万一千でございます。でありますので、二割強というのが北海道でございます。
  37. 倉成正

    倉成委員 開拓者資金融通法で北海道に関する条件を五年据置・二十年ですか、これはマル寒資金その他との関係があるということを先般来同僚議員質問に対してお答えになったことも承知しておりますけれども、これは、先ほど申し上げましたように、谷間農家の問題と同じく、内地の不振開拓地にとって耐えることのできないことです。ですから、これは一日も早くこれを改めていかなければならないと思いますから、この点も特に注意を喚起したいと思います。  次に、振興局長が見えてないので、政務次官にお尋ねしたいと思いますけれども、現在の国並びに府県の試験場といわゆる開拓地営農との関係、これはどういうふうに御指導なさっておるか、一つ伺いたいと思います。農地局長でもけっこうです。
  38. 伊東正義

    伊東政府委員 試験場と開拓営農関係でございますが、御承知のように、既存の農家につきましては、県の試験場、それから県の改良普及員というふうに、比較的有機的に結びつきがございます。ございますが、実は、開拓地につきましては、御承知のように、改良普及員がほとんど手を出しませんで、営農指導員という形でやっております。そういう関係上、国の試験場、県の試験場、それから県の営農指導員という形は、既存の農家に比較いたしますと、私ども、どうも、やっておりましてこういうことを申し上げるのは恐縮でございますが、若干その力が薄いのじゃないかというふうに実は痛感いたしております。特に、開拓につきましては、これは農地局だけでやるということ自体が実はおかしい、と言っては何でございますが、農林省全体としてやはり開拓地のことを考えるべきではないか。それで、たとえば、振興局でトラクターをとりましても、開拓地に回すということをやっております。実は、今度も労農指導員を中央に集めまして、試験場等で十分営農の勉強をする講習会を開きたい。実はことし実現するつもりでおりますが、先生質問になりましたが、一般の既存の農家に比較しますと力が少し弱いのじゃないか、もう少しこの線は試験場と結びつけて線を強くしたいというふうなことで、今年度は営農指導員の強化というようなことも考えようと思っています。
  39. 倉成正

    倉成委員 ただいま率直にお話がございましたが、緑が薄いという表現ではなくして、ほとんど関連性がないというのが現実の姿ではないかと思います。特別な場合に試験場に調査を依頼するとかいうようなことはあるかもしれません。しかし、現実状態は、私の知っておる限りでは、ほとんど関係がない。ですから、相当大きな金を——試験場の今日の予算は十分ではありません。しかし、相当巨額の金額が試験研究機関に出されておる。しかもこの利益を開拓地人々は享受することができない、特殊部落に扱われているということは、これはやはり行政としていろいろ再検討すべき問題ではないかと思います。いろいろ、開拓行政について、大蔵省その他の議論の中に、一般農家と比較してという議論がよくされます。何も開拓地だけを一般農家よりよくする必要はないのじゃないか、特に災害等でよく言われる議論です。しかし、現実には一般農家よりも差別を受けておる。こういうことがこの試験場一つをとってもあるわけでありまして、社会的な条件その他を列挙すれば枚挙にいとまはございません。こういった点はやはり今後十分御検討をいただきたいことの一つでございます。  次に、私は、開拓地の婦人並びに子供たちの問題についてお伺いしたいと思いますが、開拓地の婦人たちは、一般農家の場合と同様、営農のにない手としての役割、一家の家計の責任者としての役割、また、子供を育てる母親としての役割、この三つの大きな責任を有しております。しかも、恵まれざる開拓地のごとく特に条件の悪いところでは、これらの主婦の役割が非常に大きく、生活に夢がなく、非常に気の毒な状態にあることは御承知通りであります。男の場合には苦しい中にも会合その他多少の慰めがあるとしましても、婦人の場合は、苛烈な自然条件の中で家に閉じ込められまして、男と同様営農の責任を負い、同時に、家計と育児の全責任を負う。そこで、こういう開拓地の婦人に対して特別な行政的な配慮を必要とすると考えるわけであります。岡山県の開拓地の婦人たちが、かりに営農がうまくいっても生活が犠牲になってしまうから、生活を維持して人間並みの生活をした上で償還をしたい、こういう旗じるしを掲げまして、生活費を記帳しようという運動を進められておることを私は聞いおります。幾ら書類の上でりっぱな営農計画ができましても、疲れ果てて希望のない主婦と、また、その主婦に育てられた子供たちが存在する限りにおいては、その開拓政策は失敗と断ぜざるを得ません。  従って、こういう見地に立って二、三の点を指摘してみたいと思いますけれども、先般同僚西村委員より無灯火部落のお話がございましたが、私は、主婦の労働と大きな関係のある飲料水の施設について申し上げてみたいと思います。遠路を飲料水を運搬する婦女子の苦労は並み大ていのものではなく、また、営農が発展し酪農等が進んで参りますと、水の施設が非常に重要な役割を示して参ります。この点に関して、どういった実情にあるか、また、これから先どうしようとするか、お答えをいただきたいと思います。
  40. 伊東正義

    伊東政府委員 先生おっしゃいました通り、婦人の問題に関係いたしますと、生活環境の改善といいますか、その中でも水の問題等は特に重要な問題でございます。今までは、大体、建設工事それから入植施設等の関係で飲料水にやれるものはなるべく見ていこうということでやったのでございますが、その後建設工事が終わりましたあとでも、開拓地改良等でやはり飲料水の不足なところにこれをやっていくというような進め方をいたしております。それで、今入植施設その他でやっておりますのは、深井戸を掘りますとか、そういうことをやっておりますが、三十五年度には、たしか内地におきましては飲料水関係予算は昨年の三倍くらい、北海道が一・五倍くらいの予算をとったのでございます。個所数にいたしまして、三十五年を入れまして現在までに約二千五百カ所ぐらいをやったのでございますが、まだ三十六年以降で四千五百カ所ぐらいの井戸を掘ったりその他の施設をするところが残っておるわけでございます。それで、今、予算でいきますれば、大体、私の方としますれば、あと三カ年間くらいで水の問題は何とか片づけたいということで、電気よりもまず水の問題の方を少し早めに片づけたいということで、今後も予算要求をし、これが解決をはかっていきたいというふうに考えております。
  41. 倉成正

    倉成委員 ただいまお答えがありました通り、相当努力をしておられますけれども、現在四千五百カ所以上の飲料水の施設のないところがあるという点は、私は非常に重要な問題だと思まいす。ですから、一日も早くこの飲料水の施設の設置されることを希望いたします。  次に、開拓地に関する特別医療機関でありますけれども、開拓地が現在僻地にあるところが多くて、急病またはけが等をいたしました場合に間に合わぬこともある。また、国民健康保険税の滞納等も相当あるために、地元の医者また診療所にいろいろかかることも非常に遠慮がちになっております。そこで、みすみす、工合が悪いと思いながら健康を害しつつあるというのが実情であります。そこで、たとえば月  に一回ないし二回の巡回無料健康診断、こういったことをやって開拓地の健康管理をやることは非常に大事なことではないかと思いますけれども、これに対する当局の御所信を伺いたいと思います。
  42. 伊東正義

    伊東政府委員 今御指摘の点でございますが、御承知のように、開拓地の医療問題につきましては、北海道で嘱託医約五十名という予算をとっております。そのほかには、予防といいますか、あるいはまた病気になった場合の対策といたしまして、保健婦を二百七十名ばかり全国に置いております。そのほかに、今年度から、これも試験的でございますが、六個所ばかり婦人ホームというものを作ってみまして、そこも一つ診料をするときの場所に提供しようというようなことでやってきたのでございますが、先生のおっしゃいますように、巡回診断といいますか、そこまで実は手が及んでおりません。また、何と言いますか、開拓地営農方面に力が注がれまして、環境改善、それから先生のおっしゃいました医療の問題と若干濃淡の差があること、私ども率直に認めます。今現在はまだそういうことをいたしておりませんが、これは私の方でも真剣に取り組んでいきます。
  43. 倉成正

    倉成委員 ただいまお答えがありましたように、嘱託医の構想も、あるいはその他の考え方も非常にけっこうだと思うのです。しかし、これが現実に適用された場合に、末端の開拓地には十分行き届いていないというのが実情であります。ですから、営農が大事であるからこういう点が若干ネグレクトされているという点は、私はこれは納得するわけには参りません。今日の政治の中心というのは厚生国家を作っていくということでありますから、開拓地にあるがゆえにこういう非常にめぐまれざる状況にあるということは、一日もこれをゆるがせにすることはできないわけでありまして、農林省当局は、声を大にして、鼓をたたいて、こういった問題について予算要求をさるべきじゃないかと思います。こういった点についてはさらに慎重な御検討をお願いしたいと思います。政務次官、どういうお考えでしょうか。
  44. 大野市郎

    ○大野政府委員 開拓地の問題につきましては、私などもまことに不勉強でございまして、実態把握その他におきましても、御教示に大へん示唆を受けるものであります。ただ、ただいま申し上げましたような、十八万円に対して四十五万円というように、あとで入ったものが有利なような状況に残されておるとか、御指摘のことが幾つかございましたが、それらの問題の解決とか、それから、あとでお述べになりました医療の問題などにつきましても、ほんとうにお気の毒な点が多いと思うのであります。なお、そのほかに、実は、全国厚生連の方の仕事としまして、一般医療機関並みの安い公共機関としての金利の借りかえを業界も運動しておりますが、農林省もバック・アップしまして、これが折衝中で、見通しもほぼついて参っております。従って、いわゆる農村の健康カードというようなものを、それによって生み出した余裕金でこれを全農村に適用したいという構想を持っておりまして、これも大へんけっこうなことでありますので、そういう意味でも業界とともになって進みたいと考えております。これも実行は可能のただいまの姿でございますから、そんなことで、財政面の方の折衝においても、局長がるる述べましたように相当強力に、といっても、まだ説得力が足りないと申しましょうか、そのつど頭打ちをさせられることがありますが、しかし、今回の法律にお願いしましたような形で、できることから手をつけてやっていくという、こういう考え方でございますので、至らぬ点が多いのでありますが、方向はお説のような環境の整備ということを旗じるしに立てて進んで参るのでございますから、御鞭撻によりまして一そうの努力をお誓いいたす次第でありま す。
  45. 倉成正

    倉成委員 ただいまるる御答弁がございましたが、観念的に頭の中で考えるか、はだで感ずるかによって、この問題は非常に差が出てくるわけでありますから、この点はさらに一つ御勉強をお願い申し上げたいと思います。  次に、開拓地の主婦たちが最後の夢として託すのは子供の成長ということであります。すでに終戦直後開拓地に入りまして生まれました子供たちも相当大きくなって参りました。これらの子供たちを将来どうやって順調に成長させていくか、教育させていくかということは、主婦たちの夢であるばかりでなく、開拓地の将来をトするために非常に大きな要素になってくると考えるわけでありますが、こういった子供の教育の問題、これについてどういうふうにお考えになっておるか、施策を講じておられるか、一つ承りたいと思います。
  46. 伊東正義

    伊東政府委員 教育の問題につきましては、これは単に農林省だけの問題ではなくて、国全体として考えるべき問題だろうと思いますが、私の方で今やっておりますのは、北海道につきましては、実は、開拓地の中学までに補助金を出しまして、なるべく通学の便をはかるというようなことを実はやっております。これは北海道の特殊性で中学までやっておりますが、内地につきましては、中学までには実は手が及ばぬといいますか、内地においては中学までやらぬでも中学生の通学は可能ではなかろうかということで、その前の段階でとめておるというようなことが、今農林省農地局でやっております教育施設に対するところの施設でございます。
  47. 倉成正

    倉成委員 開拓地の子供の教育の問題については、現地の幾多の実例を申し上げますと御納得がいくと思いますけれども、一応省略させていただきますが、二里、三里の山道を子供たちが歩いて通学しておるという実情を一度でもごらんになれば、これはこうしなければいけないのではないかというような感じがいろいろわいてくると思います。こういった点についてはさらに十分御研究をお願い申し上げたいと思います。  なお、開拓地の問題について今度の三法が出されていろいろ検討されておるわけでありますけれども、開拓地の組合の内部に入って参りますと、組合の債務を個人の単位に切りかえたということは非常にいいことでありますけれども、ある組合によりましては、従来債務の内容をほとんど個人である本人が知らない場合に背負ったものがある。これはいろいろな事情の場合にそうであるし、国よりの補助金が、あるいは融資金が実際に個々人に渡ってないというような場合もあると聞いております。これらの実情につきましては、単に府県にまかせることなく、国の事務能力の都合もありましょうけれども、やはり、直接に実情を正しく認識して調査をしていく、そして、それに基づいて施策を講ずるということが私は必要と思いますので、これらの点についてどういうお考えを持っておられるか、実情を認識しておられるか、一つ伺ってみたいと思います。
  48. 伊東正義

    伊東政府委員 先生のおっしゃいましたような事例、私も東北の開拓地を歩きましたときに現実の問題として話も聞いてきております。東北だけでございません。ほかにもおそらくそういう点が例外としてあるだろうと思います。先生おっしゃいましたように、特にそういう問題になりますところは、私の方も、事務局から直接出かけまして、県と一緒になりまして、そういう債務は一体だれに帰属すべきものかということにつきましては、やはり十分現場で当時の理事者あるいは組合員と一緒に話し合うということが、今度個人債務に切りかえるという際には私は必要だろうと思います。でありますので、私の方としましては、単に府県だけというのではなくて、特に問題のありますところでは必ず事務局から出かけまして、一緒に措置をするということをやりたいと思います。
  49. 倉成正

    倉成委員 私は、冒頭にも述べましたごとく、開拓政策解決かぎは、現実をありのままに正しく認識することであると申し上げましたが、この正しい現実の上に立って、単純明快、だれでも恩恵を受けることのできるような施策が今日一番大切だと考えます。このたびの政府の案は、ある意味において関係者の方々が非常な努力をされました。この御努力に対しては深い敬意を表するものでありますけれども、  現実にこれを適用して参ります場合には、いろいろと実情に合わない不十分な点があることを認めないわけには参りません。これらの正しい現実の上に立って、ヒューマニティと科学的精神に基づいた開拓政策理念を一日も早く確立されることを望んでやみません。そのためには、開拓審議会を最高度に活用されて、抜本的な対策を立てられるために御努力あらんことを切望いたしまして、質問を終わります。
  50. 吉川久衛

    吉川委員長 午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午前十一時五十三分休憩      ————◇—————     午後一時三十三分開議
  51. 吉川久衛

    吉川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  開拓営農振興臨時措置法の一部を改正する法律案開拓者資金融通法の一部を改正する法律案及び開拓者資金融通法による政府貸付金償還条件緩和等に関する特別措置法案を議題といたします。  これより三案について参考人方々より参考意見を承るのでありますが、その氏名はお手元の名簿の通りであります。  参考人方々に御出席をいただいておりますので、一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ当委員会の法案審査のため御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  本日は開拓関係法案についてそれぞれのお立場より忌憚のない御意見を承りたいと思います。なお、参考人の御意見は、初め十五分程度お述べいただき、あとは質疑によりお答えをお願いいたします。  それでは、まず参考人近藤安雄君よりお願いいたします。
  52. 近藤安雄

    ○近藤参考人 先日来開拓三法の御審議をいただきまして、非常にあたたかい思いやりのある御審議をいただいておることを開拓者が聞きましたら非常に喜ぶだろう、漏れなく伝えまして喜んでいただきたいと思っております。  前もって申し上げたいと思いますことは、今日の開拓者考え方は、償還金につきましては、償還はぜひしたい、子供にまで借金を残したくない、しかしながら現状では払えないという考え方でございます。決して、払わないでいいのだ、払わないで済ましたいというような考え方はだれ一人として持っておりません。それから、いま一つ申し上げたいと思いますことは、この開拓事業が始まりました当座には、役所の方も、既農村ではできないこと、たとえば、むだを省き、また、協同の体制をとり、技術の交換をし合い、新しい土地に新しい村を作るのだから、理想的なことをやってはどうかということで御指導もいただき、開拓者もそういうつもりでやって参ったのでございますけれども、今日では、何だか政府の方のお取り扱いがまるで貧農対策というふうに思われるわけでございます。困っておるから仕方がないというような程度にとどまっておるのではないかという感じが免れないわけでございます。今度政府から御提案になっております開拓三法の改正内容中心償還問題になっておるようでございます。この償還問題が現在開拓にとりまして非常に重大な問題である、開拓者が日夜この問題に頭を痛めておるということはその通りでございますけれども、あくまで、これは、一時待っていただいて、その間にどうして経営を確立しようかということでございまして、御提案になっておりますのは、私どもから申しますと、うしろ向きの対策だ。私どもが振興法制定以来念願しておりますことは、どうして積極的に早く償還のできるような経営内容に到達をしようか、早く経営振興をはかりたいというような積極的な振興対策を望んでおったわけでございます。  今まで入植いたしまして相当長年月たっておるのでございますが、今までに開拓者が悩んでおりましたことを申し上げますと、お手元に営農類型の変遷ということできわめて簡単に資料が差し上げてあるのでございますが、一番最初にできました昭和二十三年類型の場合には、五戸に一頭の大家畜である、大体二町歩経営をいたします場合に、豚は一戸に一頭、難は十羽だという考え方で進んで参りました。入植後三カ年間に経営資金が六万四千円出まして、それが打ち切りになっておりまして、どうにもそれでは解決いたしませず、作物もとれない。で、私ども、五年ばかりたちまして、こういう穀菽経営ではいけないということで研究会もいたしましたが、当時農林省の方もお入り願いました結論は、現在開拓予算というものは食糧増産対策費で計上されておるのだから、穀物の増産ということで経済効果が判定をされておるのだ、君方が言われるように酪農であるとか果樹であるとかいうような経営形態では予算がつかないから、しばらくそれを伏せておいた方がよかろうということを言われまして、経営の転換ということを非常に心ならずも表面に打ち出し得なかったのでございます。二十七年に営農類型が改定をされまして、従来五戸に一頭の役牛が二戸に一頭、豚が一頭でありましたものが二頭、鶏十羽は同様でございますが、ヤギ一頭は認めようということで、営農資金も十七万七千円というふうに増加をいたしたのでございますが、私どもが現地でやりまして、やはりこれではどうにもならなかった。しかしながら、酪農への転換ということが言えませんために、当時お願いをいたしましたことは、せめて一戸一頭の大家畜を入れていただきたいということが開拓者の念願でございました。そのときに初めて、政府の施策として、中期資金二年据置く・三年償還・五分五厘をもって追加資金を融通してやろうというような制度が生まれたのでございます。ところが、やはり、営農類型といたしますと、関東から西の方は穀物生産でいけるのだということで酪農が認められませんで、この二戸に一頭というような家畜は役牛だ、乳牛の場合には六万円くらいの融資があったのでございますが、役牛の場合には二万八千円だということで、どうにも経営が確立をしない。そのうちに、二十八年以来、穀物の生産にとっては年々連続冷害の被害を、ひどいところは三回、四回というふうに受けまして、経営が非常に困難であり、借金が非常にかさんで参ったということでございました。今日の開拓者の負債が、新規入植者の方に比べまして非常に不生産的であった。ある意味で申しますと不有効な負債が非常にたくさんある。ちょっと考えますと、既入植者はすでに相当年月がたっておるのだから、新規入植者よりは条件が悪い資金でもいいんじゃないか、追加資金だからこの程度でできるのじゃないかというふうに判断をされがちでございますけれども、実態は、既入植者の打っております負債というものはなくもがなの負債であった。生産性の足りない、極端に申しますと、施策よろしきを得ないでむだに費されて、ただ借銭だけがおおいかぶさってきた。そして今の状態で再出発しなければならないという状況になっておりまして、新規入植者の方よりは、負債があるだけにかえって苦しい。立地条件も必ずしもよくないというのが実情であろうというふうに考えております。新規入植者の場合にはこうだが、既入植者だからこの程度の内輪の償還条件の緩和であってもいいんじゃないかというふうにお考えになるかもしれませんが、実情はその逆であろうかというふうに判断をいたしております。  そういうふうな状態で、一般の対策の充実を求めておったのでございますけれども、年限がたっておりますので、一律に対策をするといってもそれはだめだ、画一対策はだめだぞと言われるものでございますから、振興法を出していただいて、各戸に経営を分析して、そうして必要なところに必要な限度で経営対策を講じていただきたい、また、従来の穀菽中心営農形態ではとうてい畑作は成り立たないので、この形態を改めていただきたいということをお願いしたのでございまして、振興法の成立を見、類型の改定を見たのでございますけれども、類型を改定されますときに、私どもに対して役所から、類型は改定するけれども直ちにその差額を大ぜいの既入植者要求をするということでは困るから、その差額を要求しないというような前提があれば類型は改定してやろうということでございました。穀菽中心経営ではどうにもならなかったものでございますから、それの条件に甘んじて類型を改定していただいたわけでございます。それから、振興法につきましても、新規入植については新類型でいきますが、既入植者については、新類型の到達目標である所得三十五万という線は、そこまでは振興対策では実施しない、それでけっこうでございます、最小限度の要求、また、一番具体的にこの線よりは下がらないというようなことであればやっていただけるであろうというような考えで、少なくも黒字転換の時期まで、現状程度生活を維持しながら、償還金の払えるという限度で、しかも各戸に経営を分析いたしまして、必要な範囲内までということで、国会御審議のときには、新類型に準じながら、あるいは新類型を横目でにらみながらというような表現があったのでございますけれども、営農形態においては、私どもは、同じような場所同じような面積で同じような経営をするためには、経営形態は同じように認めていただけるのだ、ただ、各個人の相違であるとか、あるいは年限の相違であるとかいうふうなことによって差があるけれども、考え方は同じような原則で、そこで個別的に適切に実施をされるものである、しかも限度は黒字に転換する時期まで、これであれば、どなたも、大蔵省も苦情がなく、確実に実行ができるだろうというふうに考えたわけでございまして、十万四千戸の者が計画を立てまして振興農家というものが決定をしたわけでございますけれども、現在までに立てました振興計画の到達目標は、モデル組合の平均の到達目標が粗収入三十四万円ということでございます。また、岩手の全県下の振興農家の平均の到達目標は粗収入三十九万六千円ということでございます。一方、新規入植者営農類型の到達目標は、二町歩経営の場合には五十八万六千円という状況でありまして、所得三十五万というものを目標にしておられますが、黒字転換になる時期の粗収入でも大体五十万程度でございますが、振興計画で認められました最終目標はおおむね粗収入で三十六、七万というような限度でありまして、所得にいたしますと、新類型の半分ということが現状であります。これでも、ほんとうに現状程度生活償還が確実にできるのであれば何をか言わんや、それでけっこうなのでございますけれども、実際は、振興計画を立てます場合には、現行制度の範囲内で立てなさいというような行政指導が行なわれましたために、たとえば、新類型では小なくとも酪農経営の場合には乳牛三頭までを認めよう、役牛であれば四頭までを認めよう、豚であれば四十頭、鶏であれば五十羽認めようということでございますけれども、振興計画の場合には、無畜農家を先へ解消するのだということで、たかだか二頭、おおむね一頭程度の融資が原則でございまして、経営形態においてこれで最小限度の目的が到達できるということになっておらぬのであります。これが今日の私どもの最大の悩みでございまして、履行延期していただいて時をかせいでいる間にこの目標に到達をしたいということでございますが、必ずしも黒字に転換ができるという見通しがはっきり立っておらぬのであります。  それを何とかして一つ合理的に修正変更を認めていただきたいということでございますけれども、現在の状況では、資金がふえるというような計画の修正変更は認められない、現在出ておる計画の到達すら財政的に容易でないのだから、その計画の修正変更というものは認められないと言われておるのでございますけれども、この履行延期をしていただいた年限の間に確実に償還のできるような体制に到達いたしませんと、当初の振興法で災害資金の履行延期を見ていただいたのでございますけれども、その期限がすでに到来をしておりますけれども、一方では営農振興いたしておりません。利子補給も五年でいい、その町に経営振興するんだから五年でよかろうということになっておったのでございますが、現状はほとんど動いておらぬのであります。また、こういう原則的な問題については将来審議会で御検討いただくということであろうかと存ずるのでございますけれども、少なくも現在では、法律的にすでに昨年の三月に計画の提出期限が切れておるんだから、今さら修正変更は認められないのだと言っておりますと、明年法改正になりましても実施は再来年からということになって、不合理な計画のままで推移をしなければならないということなので、最小限度の目標ということが正しければ、それを科学的に技術的に検討しまして、そして、これなら確かにできるというようなしっかりした自信としっかりした見通しのもとにやって参りたいというのが開拓者の偽らない念願でございます。  また、今回法改正の中心になっております政府資金の条件緩和にいたしましても、今度の法律によりますと、振興農家で災害を受けた者だけということになっておりますが、御承知のように、振興法では、組合員の中で二十戸以上、あるいま過半数の人が政府の定めた条例に該当しなければ形式的な振興農家にはならないということに定められておりまして、別途法律政府資金の条件緩和が行なわれるのであれば、形式的な振興農家に限らない、実際上償還をしたくてもできないという者に対しては均霑をさせていただきたいというお願いをしたいわけでございます。  時間が過ぎましたので、機会を得て他の参考人意見に補足しましてまた他のことを申し上げてみたいと存じます。
  53. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、井上参考人
  54. 井上徹雄

    ○井上参考人 今回参考人として出席できましたことを衷心から感謝する次第でございます。開拓が始まりましてもう十五年に相なっておるのでございますが、私どものほんとのう声を国会に聞いていただくというのが今回が初めてでございますので、つつしんで申し上げたいと思います。  それで、第一番の開拓営農振興臨時措置法に関することにつきましては、近藤参考人から言われた通りでございます。開拓者資金融通法の一部を改正する法律案につきましては、一心北海道並みの五年据え置きの十五年ということを要望しているわけでざいます。最後の開拓者資金融通法による政府貸付金償還条件緩和等に関する特別措置法案につきまして、私の忌憚のない意見一つ申し上げたいと存ずる次第でございます。このことは、私が連合会の会長としまして、名開拓単協の実態というものとこの資金融通法の条件緩和、この問題とは非常に関連性がございますので、率直に申し上げたいと存ずる次第でございます。  現在、開拓者が、政府資金、それから公庫資金、農林中金資金、自創資金、それから短期の保証協会の資金、それから中金のプロパーで借りておる資金、それから一般農協または商人等からの借金を総合いたしますと、相当莫大な数字に上るのでございます。端的に申し上げますと、政府資金が二百二十億現在まで貸し出されたのでございますけれども、一部償還をいたしまして、現在、残高は、——多少推定が入っておりますので正確な数字は申し上げることができませんけれど、正確には農林省の方で判明していると思います。大体政府資金におきましては百六十七億六千二百万円という数字でございます。公庫資金が三十三億一千万円、これは現在の残高でございます。農林中金から借りております災害資金あるいは災害資金の一部を改善資金に借りかえたものが六十八億四千八百万円、自創資金が三十一億五千六百万 円、保証協会の方が、現在の残高が十二億四千八百万円に相なっておるわけでございます。しかし、このほかに、延滞をしておる分が、政府資金におきまして約三十億くらいが延滞をしております。公庫資金におきましては、一億七百万円くらいのものでございまして、あまり大きくございません。そのほかに、的確の数字がつかめないので  ございますけれども、白創資金の方は、まだ償還期限に入っておりませんので、あまりございません。中金資金等においても相当な延滞額があるわけでございます。それから、また、すでに代位弁済をしました残りの金が約一億三千万円ばかりございますので、こういうのを総合しますと、全体で三百三十三億五千五百万円という数字でございます。ところが、これだけの資金がほんとうに開拓者に——この点私から申し上げるのはちょっとつらいのでございますけれども、各先生方、農林省の方もおいでになりますので、率直に申し上げますけれども、実際に開拓者にこれだけの金がそれでは投資をされておるのか、こういう問題に相なってくるわけでございます。こういうところが現在の弱い開拓農協というものの経済にも非常に関係をしておるのでございますが、かりに政府資金の二百二十億という貸し出しを今までされておりまして、延滞が三十億三千九百万円、貸付残高が百六十七億六千二百万円に、このほかむろん金利も支払っておるわけでございますから、均等償還関係上、元金より金利の方が多く償還になっておるわけでございますが、現在高にしますとこういうことになるわけでございます。二百二十億の政府金の貸付金額のうち、実際に開拓者の生産に役立った金額が一体どれだけあるかという資金の動態をはっきりと把握されたことがあるかないかということを、私どもは非常に残念に考えておるわけでございまして、私どもの推定でいきますと実際の開拓者の生産に役立った金はこのうちのおそらく七割か八割ではないかということを申し上げるわけでございまして、このことは自分ども団体といたしましても十分反省をしてみなければならないことだと思いますけれども、開拓農協が非常な弱体なために、開拓農協の運営費の出道がないというような面も大きく災いをしておるのでございます。  かりに数字的にちょっと申し上げますと、二百二十億の金のうち、大体純資金が三分の一、家畜資金が三分の一、農機具諸施設資金が三分の一、大あらましで申し上げますとそういう工合に貸し出されておるのでございますけれども、このうちのいわゆる農機具資金、家畜資金等においては、当然取り扱い業者としてのマージン、手数料というものがとられておるわけでございます。そういう面で全国団体でもってとっておりますのは農機具と土壌改良の肥料資金ぐらいでございますけれども、県段階、それから単協段階でいきますと、純資金、家畜、農機具、全部手数料が幾らかずっとられておるわけでございます。こういうものを勘定しますと、大体、純資金においては、開拓農協の運営が非常につらい関係上、開拓者に直接融資されるものから五%ないし一〇%の事務費、取り扱い手数料をとっておるわけでございます。それから、農機具資金等においては、全団、それから県段階、単協段階において大体一五%ないし二〇%という金は開拓者個々の貸付金のうちからさっ引かれておるわけでございます。それから、家畜資金におきましては、県段階、単協段階において、これも純一〇%くらいはやはり引かれておるわけでございます。こういうような比率のものが結局開拓者の組合運営の負担金というような工合で引かれておるのでございます。  こういうもののほかに、開拓単協の経済が非常に弱い、収入源がないために開拓単協の赤字が出るというような場合には、どうしても、開拓農協をやはり再建してこれを維持していくためには、結局政府のこういうような資金の転貸から手数料をとっていかねばならないということから、特別賦課金等をまたかけてさっ引かれる、あるいは、開拓単協がどうしても運営に困ったときには、一部この資金を流用している、こういうような面もございますので、おそらく二百二十億の金のうち四十億ないし五十億というものは実際に開拓者が借りていないというのがあるのでございます。このことはこの資金の動態をはっきり把握されればおわかりになることと思います。  こういう資金が、今回これを整理されることによっていわゆる延滞金がついて元加されていく、こういうことに相なりますので、そういう面から考えましても非常に過重であるということを私どもは考えるわけでございまして、実際に生産に役立った金であればそれだけ生産が伸びているのだけれども、これだけの金が組合の運営費またはその他の面で浪費されておるということが言えると思います。そういうような関係から見ましても、この際、これら資金の動態を、今回すぐでなくても、よく把握して下さったならば、なるほど開拓者もかわいそうだということがおわかりになると思います。ことに、昭和二十年から二十六年までの間に一般会計から約百億近い金が繰り入れられておりますが、一般会計から繰り入れられた当時は、非常に離農者も多く、また終戦直後でございましたので、このことを申し上げましても決して農林省を追及するわけでも何でもございませんが、当然、当時の世相からして、開拓のみでないと思いますけれども、そういう面からして、この間の資金が的確に生産に結びつかなかったという面が非常に多いと思います。ことに、当初六万四千円、次に昭和二十六年から十七万七千円ということになっておりますけれども、当初のものは三カ年の間にこの資金を少しずつ分割して貸し出されたというような関係上、ほとんどが生活費、食費になってしまっておるということ、それから、昭和二十四年から二十五年までの物資の非常に不足な当時に借りまして、現物融資で借りた農機具等におきましては、非常に品質が悪いために、一カ年くらいでもって結局そのものが使えなくなっておるというような品物が非常に多かったわけでございます。そういう面のロス等を十分に考えて下さったならば、私ども、今回の条件緩和において、いま一投とこの条件緩和をしていただくことが、将来開拓者が支払いできるような実際の金額になるのではないか、こういうふうに考えるわけでございまして、これは組織としましても十分に関心を寄せることであって、お前どもが作っておる組合が使ったものであるということをおっしゃられればそれまででございますけれども、実際において開拓者としては非常に苦しい立場に追い込まれておるわけでございます。そういう点を十分に御勘案下さって、今度の償還条件の緩和という面で考えていただきたい、かように考えるわけでございます。  その他、災害資金、いわゆる中金資金にしましても、公庫資金にしましても、結局開拓農協そのものの経済というものが非常に弱い関係上、金融機関から大災法の資金を借り入れするに際しても相当長い時日がかかる、ある年においては一カ年もかかってやっとひっぱり出しておる、こういう状態でございますので、その間、いろいろな資金でつなぎ資金を借りたり、短期のいろいろな資金を借りたりしまして、非常な高い金利を払っておる。だから、せっかく国が三分五厘とか五分五厘とか安い金利ということで、表面は非常に開拓者自体は恵まれておるように御存じだと思いますけれども、実際に、開拓者のときには、手数料を五%とられるとか、あるいはその貸し出されるまでの間高金利の金を借りていておるとかいうようなことから、実際開拓者の払っている金利は小さいものでない、かように考えるわけでございます。そういう面も一つ十分お考えを願いたいと思います。  自創資金におきましても、これは最高の条件の金融でございますけれども、悲しいかな、北海道等におきましては、借金が多いために、この資金の二十万の額だけでは半端である、片づかないというような問題があるのでございますが、まあ、この資金につきましては、まだ償還期限にも入っておりませんし、この資金を出していただきましたことによって大きな恩典を受けておるのでございまして、こういう点では衷心から感謝している次第でございます。  大体金融の面はそういうような状態でございますので、十分お考えを願いたい、かように考えるわけでございます。ただ、組合の運営費がない。現在でも、やはり、このままにしておきますと、購買、販売によって開拓農協の運営費をあげるということが非常に困難な状態にありますので、その点を一つ十分考えて下さらなければ、将来におきましてもやはり資金が完全に効率的に流れていかないという面が生ずるのではないかというような心配をするものでございます。ただし、今すぐこの開拓農協をどうするというような問題になって参りますと、いろいろ困難な問題がございまして、こういう面では、一つとくと三十五年度において十分御勘案の上、一時も早くこの問題の解決に当たっていただきたい、かように考えるわけでございます。
  55. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、菅野参考人
  56. 菅野敬一

    ○菅野参考人 私は岩手県の事情中心に申し上げてみたいと思うのでございます。  九千五百戸ほどの新入植者がございますが、そのうちの九〇%、ほとんどが不振の状態でございます。いろいろ問題があるのでございますけれども、これを大ざっぱに考えてみますと、その第一番目は、やはり生産基盤の未整備が大きな問題でございます。第二番目には、投融資、資本の投下が非常に少ないのでございまして、高冷地畑作の営農を確立するには基礎が固まっておらないのでございます。それから、三番目には、不合理な負債を背負っておりますので、今日延滞金がかさんで参っております。従いまして、必要な資金の金融がきわめて不円滑な状態になっておるのでございます。その他、開拓農協の弱体というような問題もございますが、これらの生産基盤あるいは投融資の問題をもう少し評しく申し上げてみたいと思います。  生産基盤の問題では、建設工事の面につきましてはまだ進み方が二九%でございます。開拓道路をとってみますと、これは一番進んでおるのでございますけれども、四三%でございます。附帯工事、農道あるいは水路、飲用水といったような附帯工事の面はわずかに三%という進み方でございます。道路補修は四%、振興法でまた第二期やっていただくという開拓地改定工事は七%というような状態でございまして、この開拓地改良工事に寄せておりますところの関心は非常に強いのでございますが、今日三年を経過をいたしまして、まだ七%というような状態で、いつこれらが解決がつくのかという非常に待ち遠しい形でおるわけであります。なお、生産基盤ということとは直接的な関係はございませんけれども、電気の例をとってみましても、九千五百戸のうち無点灯戸数が今日まだ六千二百戸残っております。以上のような状態でございます。  二番目の投融資の不足の面でございますが、これは、政府資金その他を入れまして総体で約二十二億ほどが投資をされてございますが、このうち政府資金は、今日の振興対策以前を見ますと、大体九億八千万、約十億足らずでございまして、一戸当たりにいたしますと十万四千円というような数字になっております。その後振興対策資金が導入されておりますけれども、そのほかの資金が政府資金を上回る金が入っております。これが次の不合理な負債という表現になるのでございますが、資金がわずかしか入らないというのに返せないという事態、これは矛盾するようでございますが、従いまして、不合理な負債というような表現をもって申し上げたのでございます。  なぜこのようなものができたか。このことにつきましては、災害が大きな原因でございます。従いまして、この中で災害資金の占める率は大きいのでございますが、そのほかの資金も災害によって実は苦しまぎれの自まかないをしてきた資金があるという事情がございます。と申しますのは、二十八年に冷害を受けまして年々それから連続的にほとんど災害をこうむっておるわけでございます。二十八年の冷害の場合に、災害の対策に対しまして長期の低利な政府の資金で一つこの災害の対策を立てていただきたい、これは、一つ経営を維持していく資金と、もう一つ、こういう災害の打撃からのがれるために積極的な経営を転換する資金を供給していただきたいということをお願いを申し上げたのでございますが、天災法による経営資金を供給していただいたのにとどまりまして、経営転換の方までは手が回りかねたのでございました。実は、二十九年に県にお願いをしまして酪農振興基金制度というのを作っていただきまして、県が一千万、開拓者が一千万、団体が、いわゆる農協、市町村といったようなところから一千万というような資金を集めまして、これの三倍まで中金から融資をしていただく、それによって牛を入れて酪農に切りかえて災害の対策をやっていこう、こういうようなことを試みたのでございます。また、その後乳業会社の保証によって資金を作り、牛を入れ、また公庫等にお願いをしまして施設の分をお借りするというような形で、災害に耐え得るような営農を何とかしてやろうということでこういうような資金の導入を行なったのでございますが、これは、今日になりますといろいろ問題がございまして、どうしてそのような——実はこれらの金利がほとんど利子補給がなく、なまの資金でございまして、大体一割から一割一分程度の資金でございます。公庫の資金はもちろん公庫法の定めるところによるのでございますけれども、岩手では多頭飼育を目標にしまして酪農をしていこうといたしたのでございますので、北海道並みの施設を公庫の方にお願いをしたのでございます。従いまして、この場合に、畜舎で例を申し上げてみますと、五頭の審舎を建てますのに二十坪をわれわれは要します。これは四十万ほどかかるのでございますが、そのうち、私ども借りました例を申し上げてみますと、六割が公庫の本資金でございまして、これが二十四万円。それから、あと二割が協調融資でございまして八万円、これは利子補給のないそのままの資金でございまして、しかも期間は三年でございます。その残りの二割が八万円、これが自己負担ということに相なりますので、労力その他を提供するわけでありますけれども、この自己資金というような調達にもかなり苦労をいたしたのでございます。  以上のような形で酪農を進めて参りましたので、短期であり、高利でございますので、これらの資金が延滞となって、今日その他の一切の金融を不円滑にする原因になっておるようでございます。  以上のような状況でございますので、私どもといたしましては、何といたしましてもここから乗り切るに際しましては生産基盤の整備の問題は第一に取り上げていただかなければならないのでございますが、投融資の拡大の面につきましては、これは私どもの経験から問題なのでございますが、今日振興法でいろいろ資金が供給される道ができまして、振興法の計画樹立の場合にもいろいろ問題があったのでございますが、これはどこから出たことであるか明確でないのでございますけれども、振興法の計画を立てます場合に、現行制度によって計画を立てろ、それから、計画の収支のつじつまがが合わなければならない、あるいは災害資金は改善資金に乗りかえるのであるが、それの利子補給は五カ年間であるから、おおむね五カ年間に返せるような借りかえの措置をするのだというようないろいろなことがあったのでございますが、これらのことについて、実は何回も私どもも会合をいたしたりいたしまして、できるだけわれわれが樹立できるような計画にしたいということでやって参りましたが、その樹立の過程においていろいろな制約もあったのでございます。しかし、岩手では大体戸当たり二十万程度の資金を政府にお願いするという形で計画が樹立をされておりますが、これの方の今日の進み工合は大体一六%程度投資されてございます。今日ここで投資されますこれらの資金は実は現物の融資が中心でございますので、ここで一つ考えを願わなければならないのは、経営転換に必要な、できれば現金部門の面もお考えが願えないだろうかという点を私どもは思っておるわけであります。と申しますのは、牧草を作ります場合にも反当四千円かかりますし、これはまき尽くしたから直ちに資金の回収ができるというようなのではないのでございまして、これらは保証法の保証による飼料の導入等では間に合わないのでございます。どうしてももう少し長い期間を必要といたします。また、牛の育成にいたしましても、十カ月のものを入れまして、その後八カ月、なお娠妊期間十カ月ということになりますと、一年半というものは飼育費だけがかかって収入がないというような格好になります。あるいは施設をいたします場合の自己負担の分、こういうふうな金融の道が今日全くございませんので、ぜひ経営の転換に必要な現金の供給部門というものを何らかの形でお考え願わなければならぬ。  次に、こういうような苦しみをして参りましたそもそもの大きな問題は災害でございますので、この災害の今後の問題につきましては、何としても私ども声を大にしてお願いをしなければならないのは、長期低利の、しかも政府資金で経営資金を供給していただきたい。これはなぜそういうことを申し上げるかといいますと、振興計画の樹立の途中におきまして、いわゆる昭和三十三年でございますが、五億一千万ほどの被害報告の集計を見た農業災害があったわけでございますが、この場合、天災法によって一億三千五百万という政府の方から融資のワクをいただいたわけでございます。これの原資の供給は中金さんでございますので、お願いをしたのでございますが、総合償還計画の樹立、あるいは今までの資金さえも延滞になっておるのであるから、災害等を受けたのであるからこれの償還が確実に実行される見通しが立たないのではないかというようなことで、どうしても天災法によるところの資金の供給がなされなかったのでございます。実績は千四百万ほどやっとお願いしたのでございますが、それまでの間には、肥料資金だけでも供給をしてもらいたいというような開拓者の方から折れ方をいたしまして、秋には収穫物を出しますという誓約書を入れるというようなふうに積み上げたのでございますけれども、その他の資金とのからみ合い等から、どうしても天災法による融資を受けることができなかった。こういう莫大な被害を受けながらそういう点で次期の経営に困難を来たすというような状況に相なりまして、私ども非常に残念でございますので、何としましてもこれは政府資金で経営資金を長期低利で御融資いただくような措置をぜひともお願いしなければならぬ。これらの延滞の問題がいかに影響しておるかというようなことを本年度の肥料資金で申し上げてみますと、昭和三十年までは大体三千六百八十戸で五千二百万ほどの春肥が保証協会の保証によって導入されておりました。三十五年の春肥は、保証されます戸数が千五百五戸でございまして、資金で大体二千九百万、前の半分というような形になっております。これは二億以上の資金を必要とするのでありますが、しかも農協、商人その他に依存する分野があるといたしましても、制度的にはこういう後退をいたしておりますので、生産の伸び悩みというような問題も、金融の面からも非常に困難な状態にあるわけでございます。  なお、もう一つ、この延滞の解消につきましては、政府資金の身がわりとしましては非常に不合理な資金をやむにやまれず入れましたので、これが延滞の非常に大きな額になっておるわけでございますが、こういうような資金につきましては、何とか政府資金と同じような形で条件の緩和の措置が講ぜられるような方法がないだろうか。幸い個人負債の分につきましては自創資金という方途がございますけれども、私どものような信連あるいは中金といったような資金で経営転換をはかりました分につきましては、実は今日持て余している状態でございます。   このようなことで、非常に不振にあえいでおりまして、何か全く手がつかないではないかというようにお考えになられるかも存じませんけれども、陸奥と言われ、あるいは日本のチベットと言われておりますが、岩手の畑作の地帯に、今日、延滞は持っておりますけれども、ブロックの畜舎が立ち並び、サイロが建築されて、そして山野が変貌しつつあるわけであります。ヒエを常食にしておりましたこの畑作地帯で、私ども、終戦後、手探りではありましたけれども、これでなければいけないということで、いわゆる酪農に取り組み、近代化をはかっていこうということで努力をいたしております。これらの私どもの希望のともしびが消されないように、私どもの今日の苦しみがぜひこの三法案の改正等の中でお救いいただけるような形にお願いを申し上げたい、かように考える次第でございます。
  57. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、三好参考人にお願いします。
  58. 三好武男

    ○三好参考人 私、鳥取県の大山という山の中で開拓をやっておる者であります。実は、満州で七年ほど開拓をやり、また引き続いて十五年ほど開拓をやっております。現地の開拓地の実情を申し上げます。  なお、先週から本日まで二回ほどこの委員会を傍聴いたしたのでありますが、政府の今回出されている開拓法案につきましては、私たちは非常な不平を持っております。具体的には実は委員会の諸先生が個々につかれておるようでありまして、私たちの実情を非常によく御承知の話がたくさん出ておるのでありますが、それで、この議案が私たちの希望にかなえられぬようなことがもしあれば、非常な不思議を感ずるのであります。  私の現地のことは、実は、吉川委員長もおいでになり、ごらんになって御承知かと思いますが、開拓者開拓を十五年もやりましても、なかなか思うように現地は動いていないのであります。むろんそのためにこういう問題が起こるのでありますが、今の開拓農協といいますのは、法的には経済団体でありますけれども、事実は開拓団と言う方が開拓地の実情を示すものである、開拓地の建設は決して農協法による経済行為だけでないのであります。特に私のように久しく開拓をやっておる者から見ますと、日本開拓は非常に不思議なんでありまして、ただ山を開いて作物を植えて、そこで農家が牛を飼ったり鶏を飼ったりして生活するんだ、こういうふうに簡単に考えたような政治が行なわれておると私は思うのであります。開拓農協の実情と申しますと、いろいろ開拓の種類があるのでありますが、私のところは、九十二戸の計画で、今六十戸くらい。私の付近に約五百戸ほど開拓者がおるのでありますが、私の方の現地は、実は、既設農村にちょっと食いついたような開拓地でないのでありまして、約五千町歩という土地に全く新しい社会を作る仕事なんであります。そうしますと、農協のようにただ金を借りていろいろな営農をやるのだというだけではないのであります。私のように開拓農協の世話をする者は、全くその雑用係でありまして、たとえば町村も一つではありません、数町村にまたがり、あるいは何郡にもわたる場合もあるのでありますが、それが一つ開拓農協を組織しますと、非常に行政的な問題も起こるわけです。学校を作るとか、道路を作るとか、電話を引くとか、郵便局を作るという、全く村長と同じような仕事をしなければならぬ。また、道路工市をやるのに、どうしても請負人がない、現場でやれというので、私たちが道路工専を請け負って建設工事をやったという事実もあります。また、どうしても電灯がつかぬものですから、自分で金を借りて発電所を作る。電気会社もやられなければいかぬ。それから、さっき申し上げました郵便局も、自分で簡易郵便局を設けてやらなけれ  ばいかぬ。あるいは購買、販売はもとよりであります。実は、開拓団にはまだひどい社会問題がたくさんありまして、法的な根拠があるのではありませんが、検事もやったり裁判長もやるというような格好であります。そういうことで、非常な雑用があり、しかも、その雑用に毎日追われて、私自身はなかなか農業ができない。けれども、やはりそれは開拓者でなければいかぬという矛盾もあるのであります。また、自作農措置法によりまして、開拓地には農業者以外は入れません。新しい社会建設には、農家だけでなくて、学校の先生も医者も、職人も、いろいろな者が要るのでありますけれども、現在、自作農措置法によって開拓地に入れる人は農家に限られるという矛盾もありまして、なかなかたくさんの問題があるのであります。   特に、最近開拓者の苦しんでおるのは資金面であります。御承知のよう  に、一般方々並びに政府の要路の方方も、たくさんに開拓者に金をつぎ込んでと申されるのでありますけれども、私たちの借りておる金は一戸当たり二十五万程度、主任級、係長の次の者の一カ年のサラリーくらいの金を借りて、十五年もこれでやってきたわけであります。そしてたくさんの子供を育ててきたのであります。建設工事にいたしましても、私のうちでは四十万近いのもありますが、全国的には三十四、五万と聞いております。政府の方では、建設工事にたくさんの金を入れたと言われますけれども、しかし、これは私たち一代の仕事ではありません。現在の開拓者に直ちに経済効果云云ということを盛んに言われますが、私はそういう性格のものではないと考えます。道路を作り、ため池を作るというような仕事は、百年、二百年、あるいはもっと長い、千年、時には何万年にも及ぶ遠い仕事をやっておるわけでありまして、これは直ちに現在の開拓者のために金をかけたとは言い得ないのじゃないかという気持がするのであります。また貸しておる金につきましても、私たちは始終言うのでありますが、日本農業全体においても、先ほど諸先生がおっしゃいましたように、他の産業に比べて所得が非常に低いのであります。その上に、開拓者一般的な金を貸しては、これはとうてい払えぬというのが事実であります。私たちはしばしば政府に向かって、どうも開拓は気短に考えてくれては困る、五年据置・十年ないし十五年でもなかなか金の払えるものじゃない、この資金は五十年も百年も一つ長期にしてもらわなければお返しできぬという主張をしておるのであります。振興法でそういう金が多少今度たな上げになりましたけれども、現実にはなかなか簡単にはお払いできぬのじゃないか、どんなに払う気持がありましてもなかなか払えぬというのが実情じゃないかと私は思います。  そのほか、資金については、銀行、中金及び公庫の金をお借りしておりますが、これは金融制度の金でありまして、非常に厳重であります。期間を過ぎますと、当日から日歩四銭であります。大へんないいお客さんになってしまって、その金が払えないというのがたくさんの開拓地にあるのであります。私も実は小水力で五百万ほど見返り資金を公庫資金から借りておりますが、どうしても払えぬ。その上に今度は日歩四銭の利息がつくものですから、すぐ百万なり二百万なりの延滞になってしまう。それを払わなければ公庫や金融機関は条件緩和に応じないと言ってがんばるわけであります。そうすると、ますます借金はふえる、金は払えない。しかもそれが原因でまた他の金も借りられない。返済しなければ、営農振興資金も借りられなければ、その他の資金も借りられないというのが実情であります。  資金関係についてはそういう実情でありまして、そのためにますます開拓者は資金面で困窮する。私の方も、実は、開拓者がどうしても金を払えぬで、貸さぬというなら借りずに、一つまたお払いをちょっと待ってもらってやろうじゃないかという意見もしばしば出るのでありますが、これでは全くカワズやヘビの冬眠状態になりまして、少しも前進する形にはならないのであります。それで、またやむを得ずいろいろ才覚して借金のやりくりをする。実は、昭和二十九年まで私のうちは政府償還を完全にしておるのでありますが、その内容は、お払いできないものですから、農林省が、それじゃ金を払えば貸してやる、また払う金を貸してやるということで、政府資金をお借りしたものをまた政府に持っていって払うという形で、身には一銭もついていないのであります。そういうものがだんだんしわ寄せになってきて、現在どうにもならぬという状態になっておる次第であります。具体的にはたくさん問題があるのでありますが、そういうように資金面では大へん苦労しておりますので、今回の法案改正については、一つ根本的に十分考えていただかなければ、開拓地としては伸びないのじゃないかという気持がいたします。また、前の方が先ほど申されましたように、たくさんの問題をかかえてここにいろいろな法の改正が行なわれましても、また事務的に非常に複雑になってきまして、大へん事務が増加すると思います。そして、いろいろのりっぱな法律ができても、事務的に追いつかない。振興法がなかなかうまくまとまらなかったように、また今度のいろいろな整理も事務的に運ばぬでうまくいかぬのじゃないかと心配をしておるのであります。今度はできるだけ簡単に、しかも根本的に解決できるように、一つ関係の方にお骨折りを願いたいと思います。今回の法律もいろいろ抜本的な改正だと申しておりますが、私たちにはそれはあたかもシナの白髪三千丈の形容のごとく感ぜられまして、こういうものでは抜本的になるように思いません。  まだ申し上げればたくさんあるのでございますが、償還にからみまして資金の一本化の問題について一、二申し上げたいと思います。金利をさらに元金に戻して、さらに今度証書を書きかえて償還に入れるという政府の案でありますが、それは今の開拓者としては非常に困りますので、この点は、金利は何かの方法でお考えを願って、元金に繰り入れずに、さらにその金利に金利を加えるような形でないものにしていただかなければ、その一本化は私たちの望む線ではないのであります。それから、その償還の延期も、実はこういう実情があるのであります。開拓者開拓組合に償還金を持ってくるのであります。ところが、たくさんの開拓者がありますと、一般の商人みたいになかなか金が月末にさっと集まるというふうにはいきません。一月ごろからだらだらその開拓者が組合に持ってくるわけであります。組合はまたその一つ一つを銀行に振り込みに行ったり郵便局に振り込みに行くというようなことは事実できません。一件々々手間がかかりますので、まとめていきますと、今度は、開拓者の方は何日に払う、組合はそれをまとめておって政府へ払うということになりますと、それがしばしばずれまして金利を生んだのもたくさんあるわけです。そういうものを今度は一本化されても、払うときに問題になると思います。そういう実情もあります。それから、さっき一、二の方が申されましたが、入植当時の、おそらく全国では何億かと思いますが、開拓者がちっとも好んでいないような現物融資のたくさんの資材を送ってきて、今なお全国にはたくさん開拓者の倉庫には眠っておりますが、その資金も今度は一緒に何とか整理していただかなければ困る。開拓者は、これはよう払わぬと申しております。特に組合の共同施設などにたくさんのものが流れておるのでありますが、これも非常に困る、こういうことを言っております。  それから、もう一つ、私たちが考えるのは、この振興法改正と同時に、すでに国がやって経験がありますように、東北の上北、北海道根釧原野をおやりになってわかっておりますように、相当な資金をつぎ込んで、開拓者はただ一生懸命やれば開拓はものになる見通しがつくんだということなれば非常にわかるのでありますが、今までの既入植者はそういう格好でありませんのでこういう問題が起こっておるのでありますから、さらにたくさんの、とにかくやっていける資金を流さなければ開拓者は立っていかぬということです。ただちびちびと、困ったからちょっと借せ、子供に小づかいをやるような格好でやったのでは、どうしても根本的な開拓はできないと思います。三法案改正と同時に、資金の面も今後議会なんかで相当もんでいただいて、政府の方で相当資金を出すことを考えていただかなければ開拓は立っていかない、こういうことであります。  いずれにせよ、ここに三法案を上げまして改正を願うのでありますが、議員の諸先生は非常によく御研究されておりますが、開拓者としてはぜひその線を通したいと思います。私たちの代表の皆さんがこれほど主張してくれて、この議案が私たちの希望に沿わぬということになれば、私たちは非常な不思議を感ずるのであります。何とぞ十分な御検討を願って、一つ開拓もものになるように思い切った政策を行なっていただきたい、こういうことを切望いたす次第でございます。
  59. 吉川久衛

    吉川委員長 なお、農村漁業金融公庫から中澤理事も御出席をいただいております。それから、農林中央金庫から畑次長を参考人にお願いするということで連絡をとっておりましたが、担当理事とともに目下出張中でございまして、出席を得られません。しかし、融資第二部担当の山本部長が見えておりますが、山本君は新任でございまして、まだ事情がつまびらかでないということでございますので、今後の審議の状況を一つ見ていただくことにいたしまして、御意見を承ったり質疑にお答えすることはいたしていただきません。なお、産経の論説委員の森参考人は、ただいま本日午後の農業共済の協議会委員で出席中でございますので、残念ながら御意見を聞くことができませんことを御了解願います。  これにて参考人各位の意見の開陳は終わりました。これより参考人各位に対する質疑を行なうことといたします。石田宥全君
  60. 石田宥全

    石田(宥)委員 先ほど井上参考人から、政府融資二百二十億程度の中で、四十億ないし五十億程度は実際には農家の手には届いていないであろう、あまり正確な数字ではないが、ほぼその程度の推定であるというお話がございました。この点、実は私、前からちょっと不審を抱いておった点でございますが、きょうこの点を明らかにしていただいて大へん参考になったわけでありますが、近藤参考人についてこの点をお伺いしたいと思います。  私ども多年にわたって開拓問題の法案審議並びにその政府の指導や運営や予算関係について審議をいたして参ったのでありますが、今日まで、ただいま井上参考人によって述べられたような点について、関係の皆さんから実は要望も陳情も承っておらなかったわけです。私は実は政府当局にこの点を質疑をしたいと思っておったのでありますが、こういう点については 政治の上における特別のことでございますから、ほかのたとえば土地改良団体などについても、やはり、その運営費の一部というようなものは、何らかの形で中央、地方に対してそれぞれ最近では予算措置が行なわれておるのであります。農業団体などについても再建整備法等によってそれぞれかなり政府が手厚い保護をいたしておるのでありますが、開拓農民のような非常にはなはだしい窮迫の状態に追いやられておるそういう農民に対する融資の一部で事務・人件費をまかなわなければならないというようなことは、これは私どもも実は想像も及ばなかったところであります。多少のことは何かあるのではないかということを考えておって、政府にただしたいと思っておったやさきでございましたが、近藤参考人らが今日までわれわれのこういう問題の審議にあたってこの問題を積極的にお出しになっておらないということには、何か事情があったのではないかということを実は考えるのでありますが、何か言いにくいような、出しにくいような事情でもあったのか、あるいは、まあ何とかなろうというようなことからであったのか、それらの事情をざっくばらんに、われわれの法案審議の参考にお聞かせ願いたいと思います。
  61. 近藤安雄

    ○近藤参考人 言いにくい点でありますとか、あるいはことさらお隠ししたというふうなことは全然ございませんが、実態がわからなかったということでございます。ただ、私ども従来気のついておりましたことは、政府資金の償還は実によかったのでございます。最近になりましてからようやく、三十年度は六八%とか、三十一年度は五七%とか、三十二年度は三七%とか、三十三年度は二一%というふうに下がって参りましたが、その前はこれはきわめてよかったのでございます。なぜよかったかと申しますと、次へこれだけ融資があるんだから前の融資も返しなさいというふうなことで、たらい回しをしたという内情がございます。実力償還ではなかったということで、ほんとうに生産的に使えなかった面があるということは十分承知をしておったのでございます。それと、一部政府の融資の中で現物融資がございまして、茜ヶ久保先生からも先日ございましたが、当時使用にたえないような農機具が入ったこともございました。取りかえのきいた部分は当時取りかえてもらって免れた点もあるのでございますが、時期がおくれて取りかえられなくてそのまま借銭として残っておるというふうなものもございます。  それから、組合の事務費といたしましては、これは、今三好参考人から申し上げましたように、満州開拓なんかの場合には開拓団として指導員の給与もあったということでありますが、内地の場合には全部組合費の負担でありまして、開拓者が大体年間少なくも三千円、四千円の組合費を負担をして開農協を維持しておりますが、それだけではまかなえないいろいろな実務がございまして、組合の経費がまかなえない、現在組合として赤字を持っておるというような現状は、各組合、大きな組合であればあるほど、ことに建設工事あたりを組合で引き受けてやったところは、大ていともかくそういうふうな赤字を出しておるのが現状でございます。  なお、数字的な根拠その他につきましては、井上参考人から内容をちょっと話していただきたいと思います。
  62. 井上徹雄

    ○井上参考人 私ども、先ほど申し上げまして、問題になろうとは思っておったわけでございますが、具体的に申し上げますと、開拓農協というものを組織しましたときに、一般農協法で組織されたわけでございます。しかしながら、一般農協でございますと、いわゆる信用事業、それから購買、販売事業を行なってその運営費を出していくのでございますけれども、開拓農協の場合には、全く、当初におきましては、購買・販売事業はむろんございませんし、また信用事業をやるだけの力もございませんし、結局、三好参考人から言われたような、いろいろな政府の出先機関としての政府委託の仕事、あるいは町村の仕事、開拓者個々のいろいろな問題を処理していかなければならない、こういうことで、組合はその運営費の捻出に非常に苦しんだわけでございます。そういうような面から、総会にこれをかけて、開拓農協の財源といたしましては、大体これらも調べられればはっきりすることでございますが、政府の融資金からは幾らもらう、純資金からは幾らもらう、あるいは農機具資金からは五%をもらう、あるいは家畜の購入資金からは三%ないし五%をもらうとか、あるいは建設工事等においては一〇%をもらうとか、また、土壌改良事業等におきましても、その末端の指導その他をやっていくための実費をもらう、こういうようなのがいわゆる開拓農協の財源となって開拓農協を運営しておるわけでございます。そういうのがだんだん少なくなって参りまして、建設事業等が進むに従って非常に少なくなって、建設事業等から受けるそういう負担金というようなものもなくなってくるというようなことで、開拓農協の運営が非常に苦しくなってきた。やはり手数料だけでは足らない。もう償還金の一部を流用するとか、あるいは転貸するべき資金を無転貸するというようなことで開拓農協を運営しなければならないというような羽目にまで陥っておる開拓農協もあるわけでございます。そういうのは実際にお調べになればよくわかることであって、現在の開拓農協というもの、県関連あるいは全開連等には、そういう面の政府委託事業の手数料以外には一銭の補助金もないわけでございます。そういう関係から、組織を運営していくためにこれはやむなくそういう方面に財源を求めた、こういうことに相なっておるのであります。それで、金額につきましては、農機具等は、三段階における手数料が、これはその組合の総会の議決によって違いますから全国平均とは申されませんけれども、少なくとも五%から一〇%くらいまでも運営の苦しい組合はとっておる、また、県開連におきましても県開連運営のためにやはり三%とかあるいは四%をもらっておる、全開連も同様であるというようなことで、そういうのを三段階加えていきますと二〇%くらいにはなるのではないか、こういう推定からいきますと、二百二十億の金が出ておっても、大体四十億くらいの金というものは実際開拓者に貸し付けする金の中から開拓者の承諾の上でもって吸い上げておる形だということを申し上げたわけでございます。開拓者の承諾の上でもって吸い上げておるから、開拓者は借りておるということを当然知っておるのだから、それは問題ではないんだけれども、実際に生産にはつざ込まれてはいないので、開拓者が今延滞金利を全部元加されてしまって、そして払っていくということには非常に困難な問題があるということを申し上げたわけでございます。
  63. 石田宥全

    石田(宥)委員 井上参考人に伺いますが、そういたしますと、やはり、実際は使っていないけれども、借用証書にもちゃんと署名をしてある、従って、先ほど近藤参考人の言われたように、つい最近までは相当償還の成績も良好であったということでありますが、結局は、自分は事実上使っておらないけれども、その借入金に対する償還は個々の農家が責任を負って償還をしておった、こういうことに理解してよろしいのでありますか。
  64. 井上徹雄

    ○井上参考人 そういうことでよろしいのでございます。また、償還金につきましては、償還を完全にしないと次の資金の貸し出しということがなかなか困難で、現在貸し出しをされておる資金だけでは営農の貫徹ができない、そういう苦しみの関係上、全部を支払っておった、こういうことでございます。
  65. 石田宥全

    石田(宥)委員 なお、井上参考人に伺いたいのであります。これは最近のことではありませんけれども、終戦直後に一部入植されたようなときに、開拓関係人たちの中には、もと満州開拓地からの引揚者などで元気のいい人たちがおりまして、衆議院議員の選挙や参議院議員の選挙などに立候補をされて、かなり無理な資金をお使いになったようなこともあったのでありますが、これは全国的には相当あったんじゃないかと思う。私の県などでもやはりそういう事例があったようでありますが、そういうところで無理な資金作りなどをされた問題の跡始末というものは、どこかで何か適当に線を引いて、処理するような金があって処理されましたか、あるいは何らかの形でずっと今日まで及んでおりますか、どうでしょうか。
  66. 井上徹雄

    ○井上参考人 そういう問題に関しては開拓連盟の方の経理を調査して下さればよくわかるのでございますが、開拓者は、非常に開拓政策が貧困であるから、政治的に解決しなければならない問題がたくさんある関係上、どうしても自分らの代表を出したいということで一致いたしましたので、選挙費用その他は各個々から特別負担金としてカンパをやっておりますので、一般政府資金、そういうものとは一切関連はしていないということだけははっきり申し上げます。
  67. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、近藤参考人に伺います。開拓一般的には非常に不振な状態でありますが、しかし、中にはかなり成績をおさめておるところもある。たとえば茨城県の新生農協のような、あるいは新利根農協のような、これはちょっと変わったケースの運営はいたしておりますけれども、やはり優秀なものもあるわけであります。これは、要するに、現地を見ますると、特異な指導というか、優秀な指導者を得たところはかなりな成績をあげておるということは皆さん御承知通りでございますが、この開拓についての営農指導と申しますか、開拓地でありながら一般既農家と同じような方向をたどるというようなことになれば、これはとうてい立っていけないはずなのでありますが、ややもすると、やはり既農家のようなまねをしていこうとするような傾向のところが多かったんじゃないかと思う。この営農指導については、実は政府の措置も私は大きな責任があったと思うのでありますが、やはり、開拓者自身にもそこに相当研究的な態度あるいはまたそれに対する方針を定めるにあたっての検討があるかないかということによってかなり影響したと思うのであります。営農の指導というものは、従来は実際にはどういうことで指導が行なわれて参りましたでしょうか。
  68. 近藤安雄

    ○近藤参考人 ざっくばらんに申しまして、開拓地には営農指導員という人人が六百何名配置になっておるのでございますが、初期の間には、何しろ試験場でも畑作営農に関する経験が日本ではございませんで、私どもも、入植後、当時、やれヘチマを作れとかヒマをやれとかトウガラシがいいとか、いろいろなことを言われまして、肥料でもだまされましたし、それから、作物でも、だれもこの経営はこういうふうな形でやったらいいじゃないかというふうなことを的確に教えて下さる人はなかったのでございます。それで、営農指導員の方もほとんど畑作経営に対する経験はお持ちにならなかったということで、私ども当初は営農指導員にもかなり不信を抱いておりました。私たちが何とかしたいと思いましたことは、開拓者の中にも、比較的に早く進んで成績のいいものと、やはり悪いものとありまして、一つ、われわれの内部で、既農村のように改良普及員は普及員、篤農家は篤農家、とにかく、役所は役所、民間は民間というふうにばらばらにやらないで、私たちは一つ官民一体になって、指導員にも入ってもらって、それから篤農家もみんな自分の技術は全部開放するというような形で、もう運託生で一つやってみようということで営農促進運動というものを行ないまして、民主的に篤農家中心になり、組合の中に営農部会を設け、やって参って、若干計画生産をし、そして畑作営農の技術を交換し合うというような点では若干得るところがあったと存じますけれども、まだまだその点は不十分でありまして、私は、最近は、農地局長さんにも、一つこれは牧民官だから、一般農林省のお役所の方は物を扱っておられるけれども、開拓だけは人を扱うところであるから、営農促進運動の先頭に立って、そういうような不熱心な県を指導していただいたり、あるいは指導員の師表になるようにして、わらじをはいて現地行脚していただけないだろうかということをお願いしておるような状況でございます。
  69. 三好武男

    ○三好参考人 ただいまのことに関連しまして、石田先生のおっしゃったように、開拓者の要するに営農のやり方がどうかということもこれは大いにあるのであります。これは開拓者自身がやることなんであります。しかし、今おっしゃったように、関東の出島地区、あの辺のように成功しておるという一つの原因は、指導とともに資金——一戸当たりこれは百万以上流れておると思いますが、特殊な事情と同時に、資金をうんと流しておる。これは、私たちの現状では、資金が少ない上に——そのほかに理由はたくさんあるのですが、資金が少ない上に、政府の方は、昭和二十九年ぐらいまでは食糧増産という面で、私たちのように非常に穀物生産に不利なところに、しいて西日本ということで穀物を作らす、たとえば大豆を作れとか、陸稲を作れとか、トウモロコシを作れというような指導をやるわけです。それに従わなければ県も指導しないし、営農指導員もそういう指導をもっぱらやったわけです。政府は、家畜を入れないと言って、乳牛一頭も入れなかったのです。そのために、政府の指導によってまじめに開拓農業をやった者は、災害のために、年によりますと四万ぐらいの肥料代と労力をつぎ込んで、そうして一生懸命に百姓をやった者は、そういう債務が今残っておる。そのときずるけて出かせぎばかりやった者は、うまくいって、実際は借金が少ない。なぜならば、金を借りなかったからです。そういう実例も私の地方にはたくさんあるのです。
  70. 石田宥全

    石田(宥)委員 次に、近藤参考人に伺いますが、今度政府は、間引き政策をやる、こういうことを言っておられるわけです。この間引き政策では他に転職をするような者に対して十五万ないし二十万の涙金というものを出すということでありますが、そういうようなことで、数を少なくして、要するに耕地を拡大するということになると思うのであります。今の三好参考人の御意見のように、やはり、資金が伴わないと、ただ反別がふえただけではあまり潤うところがないということはわれわれ常識的に考えられるわけでありますが、こういう間引き政策というものが実際はどの程度開拓農家経営振興させることができるか、私はいささか疑問に思うのであります。ことに、問題なのは、離農する人たちの債務をどう処理するかというところに大きな問題があろうと思うのです。この資金によりましては、一部の災害の資金や営農改善資金等で県や市町村が損失補償をやっておるようなところは、県と市町村が二分の一の損失補償をやり、国が二分の一の損失補償をやるということであればこれは処理されるようなことになると思うのでありますけれども、やはり、大部分の資金というものはそういうわけには参らないと思うのでありまして、それらの問題をもっと積極的に処理をされなければ、先ほどからお話のありましたように、実際には使っていないものまでその負担をしなければならないというような状況になっておる。従って、組合員全体が共同責任を負わなければならないような債務も中にあると思うのです。そうしますと、私は、十五万や二十万の涙金をくれて、ただ離農をさせて間引きをした、それでどれだけ振興できるかというところに大きな疑問を持たざるを得ないのでありますが、そういう問題について、どうしたならばほんとうに開拓地振興ができるかという点についても、ざっくばらんに伺いたいと思います。
  71. 近藤安雄

    ○近藤参考人 ほんとうを申しますと、私どもは、前に融資金の減免措置が講ぜられておりましたら、非常にたくさんチャンスがあったと思っております。ところが、前には組合員全員の連帯責任でございまして、脱落者があっても、債務承継で、だれかを入れなければならなかった。耕地としては過剰入植だということはわかっておりましても、それを引き受けるということは償還に追われましてできないために、みすみすだれかを見つけてきて、債務承継入植者というふうな形で入植させていった。今になりますといささか時期がおそいと思うのでございますけれども、今からでもおそくはないので、その人の跡始末のつく範囲内で政府資金の減免措置というものをやって、そしてどういうふうにあとを適正化できるかということでやっていくべきではないだろうか。すでに、ちょいちょい、海外へ参りたいとか、新規入植をしたいというふうな人が出ておりまして、一般農家の方よりは開拓者の方が構造論でありますとかあるいは適正化というふうな方向ではやりやすいかと思っておりますけれども、今の内地十五万円でございますか、ということで一切ともかく債務は整理していけと言われましても、組合としてはなかなか引き受けかねるし、出る人に対しましてもやはり幾らか金を持たして出さなければならないものでございますから、あとへ財産の残っておって引き受け得るものはあとの者が引き受けをいたしますけれども、ほんとうにその人方の生活費として消えてしまっておる、あとへ何も残っていないというふうなものについては、債務の減免をしていただいて、そして組合の適正化というものをはかって参りたい。私は、今度の履行延期につきましては、これはむしろ振興計画の再検討というふうな形で取り上げていただいて、海外移民と結びつけて一つ考え直していただけないだろうかというふうに考えております。
  72. 石田宥全

    石田(宥)委員 近藤さんにもう一つ伺いますが、今までだいぶ離農者が多いのでありますが、中には行方不明者などもあって、行方不明者の債務が一億五千三百万円もあるということを、これは当局から発表されておるわけでありますが、離農者の債務の承継者のない場合は、繰り上げ償還を命ずる、一時償還ができない場合には和解の手続によって処理しておる、こういうことですね。実際問題としても相当出ておると思うのでありますが、その和解というものの結論はどういうふうに行なわれておるのですか、一つおわかりでしたら……。
  73. 近藤安雄

    ○近藤参考人 大ていの場合には年賦で償還をさせる、中には減免をいたしまして元金だけ、あるいは年々五百円なら五百円ずっとかいうふうな調子に、これなら実行できるというようなことでやっておりますが、事実行方不明になってどうにも仕方がないのは、それっきりになっておるように承知をいたしております。
  74. 石田宥全

    石田(宥)委員 もう一点近藤さんに伺いますが、今度条件緩和をいたしますと、組合として借り入れをしておったものを個人名義に変える、そうすると、組合の全体の責任でなくなって、責任が個人になるから、組合として非常に姿になるように当局は説明しておる。ところが、それはそれっきりならばいいけれども、結局組合が保証するということになる。これも局長に実は伺いたいと思っておったのでありますが、民法上の保証の責任というものは、これはその保証責任として債務者の責任と同一の責任を追及されることになるのではないかと思うのです。そういたしますと、組合名義が個人名義になっても、その個人が今お話に出たように行方不明になったりあるいは離農したり、とうてい償還能力がない、そういうものはやはり組合がその責任を負わなければならないということになれば、個人名義に書きかえたから云々ということは条件緩和ということには適当でないのではないか、ただ気持の上でちょっと軽くなったような気持がするだけであって、終局の責任はやはり追及されるのではないかと思うのでありますが、近藤さんいかがですか。
  75. 近藤安雄

    ○近藤参考人 私もその点は疑問に思っておりまして、従来は組合全員が連帯保証でだれからとってもかまわない、最近はその年に借り入れする同士の相保証ということになっておりましたのが、今度は、連帯保証人は組合員の中の一名ということになりまして、あとは組合は保証をするというふうなことで、その保証というものはどこまでとにかく追及されるのであろうか。相なるべくならば、ほんとうに個人責任に落としてやろうということであれば、実質的にも形式的にも個人責任に落としいただけないだろうか。従来が法人貸しであったから、ある程度国の利益を害するから形式的に組合の責任を残すのだ、実質的には追及しないのだということであろうかと思うのでありますけれども、あとで多少やはり問題が残るような気がいたしますので、はっきりしていただきたい。ただ、ここで私どもちょっと気になりますことは、私どもは、高冷地開拓というふうな農業はある程度共同してやらなければ将来大きく結実しないというふうに考えておりますので、将来の農業施策というものは、やはり一つ農家集団というものを対象として、共同育雛にしましても、共同畜舎にしても、共同農機具にしても、そういうふうなものの育成をしていただきたい。それには生産農民として共同の運用責任を帯びて参りたいというふうな考え方がございまして、今回政府に個人責任に落としていただきたいということと、その考え方が矛盾するのではないかというふうに誤解を招いてはいけないと思うのでございますが、従来は私どもが背負い切れないような連帯の債務というものを持っておりまして、これをかぶっていったのではとうてい自立できないというようなひしひしと危険を感じましたので、何しろ二十三万戸の中の八万戸が脱落をしておるのでありますから、それは一たん個人責任に落としていただきたい。しかしながら、これからほんとうに生産資材を導入するというような場合には、協同組合あるいは一つの部落集団というふうなものを単位として、協同的に育成していただくような御方針が願わしいというふうに考えております。
  76. 石田宥全

    石田(宥)委員 時間がないそうでありますから簡単に菅野参考人に伺いますが、さっき菅野参考人からは、不合理な負債がかさんでいるということが強調されて、その中には災害関係の負債というものが非常に多いということも言われましたが、そのほかにまだそういうものがあるかどうか、あったら一つお示しを願いたい。  それから、次に家畜の導入の件でありますが、寒冷地農業に対する家畜導入が数年前から行なわれておりまして、これはかなり集団的に北海道を初、め、東北地方などは導入されておるようでありますが、岩手県内における寒冷地帯の農家に対する家畜導入の状況はどういうふうになっておりますか。
  77. 菅野敬一

    ○菅野参考人 不合理な融資金の問題でございますが、これは、前にも御説明申し上げましたように、公庫の協調資金でございますとか災害資金の数字は四億五千万ほど借りております。それから、いわゆる経営を転換しようといたしまして信連ないしは中金等から借りました家畜の導入の資金は約一億程度でございます。それから、公庫の資金は二億八千万ほど借りております。なお、先ほど御説明申し上げました自己負担の問題ないしは系統から保証等で入らなかった肥料資金等のしわ寄せが、明確な数字でございませんが、地元農協等にしわ寄せをされまして三億五、六千万になっておるというような推定をいたしておるわけでございます。それから、寒冷地の特融貸付等に  つきましては毎年お世話になっておるわけでございますが、乳牛を主体にしていわゆる酪農に切りかえるという問題を二十八年の災害以後に考えてみますと、二十八年は岩手の開拓者の保有  いたしました乳牛は二千三百頭でございましたが、現在は七千二百頭と約三倍に伸びております。ただ、ここで、私ども先のことがあとになったというように考えておりますことは、中小家畜というのが、実はこれを導入します資金やその他の関係から非常に従来少なかったのでございます。従いまして、牛を育成していく期間中の収入というものに非常に困難をいたしたので、今日振興対策等で豚あるいは鶏等も逐次入って参りました。これは二十八年から約倍の形に伸びておるような状況でございます。
  78. 吉川久衛

    吉川委員長 質問者の諸君にお願いします。四時から本会議でございますので、それまでに終わりたいと思いますから、御協力を願います。     〔委員長退席、芳賀委員長代理着    席〕
  79. 石田宥全

    石田(宥)委員 時間がないそうでございますので、実はお尋ねしたいこともございますけれども、この程度にいたしまして、法案審議のため、政府の当局に対して、皆さんの本日御陳述になりました要旨を体して、政府当局にいろいろ追及すべきは追及し、できるならば法案の一部を修正するという努力をいたしたいと思います。いろいろ大へん参考になりました。ありがとうございました。  私はこれをもって質疑を終わります。
  80. 芳賀貢

    ○芳賀委員長代理 角屋堅次郎君。
  81. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 先週から開拓法案に対する審議がなされて参りまして、本日は参考人の各位に来ていただいていろいろお話を承ったわけでございますが、ただ、本日の参考人はいずれも直接開拓関係の方ばかりで、実は、ほかに森さんにも来ていただいて、第三者から見た従来の開拓政策あるいは今後の開拓政策の展望、こういう点でいろいろ御意見を承り、またお伺もしたい、こう思っておったわけでございます。この点は残念でございましたが、四人の参考人方々の希望というのは、率直に申して、私たちもそれ相当に十分承知もし、また委員会の審議の中でもそれは相当に反映されてきておるわけでありますけれども、この際数点についてお伺いしたいと思うのであります。  これは法案審議の際の冒頭にも私は質問で申し上げたのでございますが、当面の段階では既入植者対策を速急に解決しなければならぬ、これが農林省としての当面の重大課題であろうと思いますが、やはり、十分なるおぜん立ての上に立って、再び、——終戦後の状況とは環境・条件は違いまするけれども、日本のこれからの農業の展望として、国土の総合開発の観点から積極的に開拓政策というものを考えていかなければならぬ、こういうことであろうと思うのであります。この際、過去十数年苦労されて参りました観点から、頭の中は既人植者の安定対策で一ぱいでしょうけれども、これからの開拓政策の推進にあたっての教訓あるいは希望、こういうものを要約して一つ近藤さんからお伺いしたいと思います。
  82. 近藤安雄

    ○近藤参考人 過去の欠点を振り返りまして、政府の方のお考えは別にあろうかと思いますが、私どもとしましては、何と言っても入植前の準備が足りなかった。土地に対しても、買いやすいところが買われまして、買ったから入れたというふうな格好であり、それからまた、入りますときにも、そこの土地に対して、われわれはどういう方針で、たとえば与えられた資金で共同でどういうふうにして作って、施設もどういうふうにしてやって、将来どうやっていこうかというような方針を持たないで、ただがむしゃらに夜を日に継いでやってしまった。これが計画性がなかったということが今日の開拓の非常に大きなロスであったと存じます。現在は選定基準もございますけれども、何と言っても、私は、人の募集から、練成から組合の編成から、将来の建設計画から、資金計画から、償還計画から、すべてをじっくりと計画を立てましてやっていけは、今のようなこういうむだなことはなくて済んだと思う。それから、内地の開拓は、むしろ将来生き残るのではないか。そうしてまた、将来、日本の場合にはだんだん嗜好も変わって参りまするし、開拓に対する魅力、開拓農産物である高冷地蔬菜あるいは畜産物、果樹というふうなものを土台といたしまして、かなり農業中心が北の方へ変わっていくのではないだろうか。そういう意味では、これはわれわれも単なるつまらぬことをしたということではなくて、やはり、自分たちを足がかりとして、その奥をまたやっていただけるんじゃないだろうかというふうな希望を抱いておるような次第でございます。
  83. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、きょう御参集の参考人方々は、当面の既入植者安定対策ということで従来も非常に努力をしてこられたと思うのですけれども、今後の開拓政策という問題に対する政府に対する献策という面でもやはり大きな役割を果たしてもらわなければならぬと思う。その点では、やはり、それぞれの地域によっていろいろ条件も違い、いろいろまた教訓も引き出して参りますと違う点もあろうかと思いますけれども、先般の農地局長答弁では百数十万町歩というふうに言われましたが、当面、そういうものを進めるにあたっての予算、資金、あるいは適地条件、あるいは入植者の適格条件営農指導、いろいろな問題を総合的な立場から積極的に一つ今後献策する意欲を私は希望しておきたいと思いま す。  そこで、時間が大へん少ないようでございますので、たくさんお聞きしたい点もありまするけれども、若干の問題について一つお伺いしたいと思います。  先ほど石田委員からも触れられたわけですけれども、開拓地における営農形態という問題、これは営農類型あるいは従来の振興計画によるところの営農基準というふうなものに非常な差があるということもいろいろありまするけれども、御承知の、通常国会で近く問題になろうとする農業法人に関連した問題、こういうことと関連をして、開拓地におけるこの問題に対するいわば受け入れ態勢といいますか、あるいは意欲といいますか、今後の開拓地における新しい先進的な営農という意味から言って、この辺のところをどういうふうに推進していかれようとする考えを持っておられるか、少しこの点をお伺いしたいと思います。
  84. 近藤安雄

    ○近藤参考人 開拓組合は、先ほど参考人からも意見がございましたように、農協法による開拓農協ということになっておりますけれども、実際上は生産組合と私どもは理解をいたしておりまして、名前も開拓生産農業協同組合というふうな名前でやって参りました。本来は、農協法で与えられた任務の一つ、生産のともかくも協同体であるというような考え方で進めてきたわけでございますが、事志と違って、非常に経営が困難であったり、あるいは人の借銭を背負いたくないというような関係で、近ごろは入植当座に比べましてかなりばらばらになりかけておるのでございますけれども、何と言っても、共同でやらなければいけないような条件が多々ございまして、まあ、むしろ、開拓の初期に建設を共同にいたしましたりあるいは資金を共同的に移入したりしたというふうな関係から、やや分散傾向をとっておりますけれども、少なくも、今後やはり生産を伸ばしていこう、労力をかなりはぶいて高度の生産に伸ばしていきたいというふうなところからは、どうしても共同しなければいけない面が多々出て参っております。たとえて申しますと、耕地を耕すにいたしましても、俗に一寸一斗というふうなことを申しまして、深く耕せばたくさんとれる。ところが、小型耕耘機ではどうにもならない。やはり畑の場合にはある程度大きな耕耘機で深く耕していかなければ地方が維持できないというふうな条件がございますし、あるいは畜産管理にいたしましても、めいめいが完全な多頭飼育になってしまえばいいのでございますが、それまではやはりある程度の共通の管理というふうなものが、必要になるのでございます。共同しなければならないというふうな必要性がたくさんございますから、できるだけの範囲内で、一つの生産の共同化というものを進めていかざるを得ないような状況に置かれておりますので、単に農地を共同で使うとかあるいは税金をのがれるとかいうことでなく、どうすればともかく限られた労力で生産を高めることができるかというふうな方向で、一つ法制的にも、あるいは指導、金融的にも、あるいは政府の施策の上にもそれに伴ったような農業法人の育成対策というものを講じていただけないだろうかということを考えております。
  85. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 既入植者開拓地における階層分化の問題ですけれども御承知のように、従来の農業の姿が、専業の比率がだんだんと後退しておる。今日では第一極兼業ないし第二種兼業が大きく比率が増大をしてきておる。少なくとも兼業農家が六割から六割五分まで増大をしてきておるのが各農村における状況でございますが、開拓地の場合、戦後十数年の間に階層分化というふうなものがどう深化してきておるか、これはそういうデータが十分あるかどうかわかりませんけれども、この辺の推移について少しお伺いしたいと思います。
  86. 近藤安雄

    ○近藤参考人 今のところでは、粗収入の分布の状態から見ますと、そうですね、まだ富農というものは出ておらぬのでございます。開拓地は面積が大体平等になっております関係もございまして、まだ統計では、粗収入七十万以上というものは一%ぐらい、粗収入三十万以上というものでまだ二〇%足らずということで、一般から見ますとそれほど差がないのでございますが、やはり、十五年のあかが積もりまして、組合内に階層分化が生じております。     〔芳賀委員長代理退席、委員長着席〕  これはどうして起こって参ったかと申しますと、やはり、当時は、何といっても、消費圧の低い家族労力が豊富であった世帯が早く進んだ。何しろ、腕一本、すね一本で開墾したものでありますから、労力をたくさんかかえておった家族は比較的早く経営が進んだ。それで、たとえば五戸に一頭の家畜を入れましても、そういう人がその家畜を預かって、比較的堆肥もたくさんとれて、収量もふえてきた。それから、いま一つは、ともかく資金を持って入ったという人は、早く酪農に取っつきましたり、あるいは経営の改善に取っついた。この二つの条件のあった人が早く進みまして、今まで普通に政府の対策だけでやって参った人でありましたら、やはり今では粗収入三十万以下ですね。やっと牛一頭くらいは自分のものにするという段階にしか来ていなかったというふうに思います。
  87. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 過去の開拓地の状況を見て、入植者のいわば素質といいますか、これは近藤さんその他の関係の方方、実際に全国的な視野から見て、満州からの引揚者、あるいは内地から入った者、あるいは開拓地に県外から入植した者、県内で入植する者、あるいは地元から入植する者、他村から入植する者、いろいろそういう点を総括してみて、入植者の資格条件として、過去の開拓地の成績から判断をして、どういうのが望ましいというふうに一般的に言い得るか、少しお伺いしたいと思います。
  88. 近藤安雄

    ○近藤参考人 一般的になかなか、——ともかく私ども視野が狭いものでございますから、はっきりしたことは申し上げにくいと思うのでございますが、今までの内地の開拓では、一般には、畑作になれていた、それから、集団生活の経験があった、それから、ほんとうに背水の陣をしいておったという関係で、満州開拓の引揚者が比較的に成績をあげておると申せますが、意気込みの問題がかなり大きなウエートでなかろうかと思います。それから、比較的に地元の農家の二、三男の方がかなりの個人主義で、組合としては団結するのに悪いというふうな感じもするのでありますが、個人の営農技術ということからいいますと、必ずしも既存農家の方が劣っておるということはございませんで、これは、ある程度やはり、その時分既存農家としては一般にやみで物が売れた、だからそんなに苦労しないでも親元で食える、援助も得られるというふうな安心感が多少あったのではないだろうか。決してその人の素質として一がいに断定できないような感じを持っております。
  89. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 法案内容については、もう開拓の皆さん方から要望等も出ておりまして、ずっと審議が続けられておるわけです。開拓農協の強化という一つの問題が強く要望のテーマとして出ております。この点で、先ほど井上さんの陳述の中にあったと思うのでありますけれども、現実政府資金の何%かのものが開拓団ないしは開拓農協の運営のために利用せられておる、こういうことから、個人の自主的な生産に役立つ資金というのが何%かという場合には、おそらく七、八割であろう、こういうようなことが話の中に出ておったわけです。開拓農協の強化という問題については、過般も私質問の中で申し上げたわけですけれども、当面の開拓農協の強化として特に要望されておるのは何であるか。同時に、私は、既設農村あるいは開拓地、これは地域によって違うと思いますけれども、行く行くはやはりその地域の総合農協の中に統合されて、全体の農村の伸展という視野に立って将来は進むべきであろう、こういうふうに思うわけです。そういう前提に立つ場合に、一体今後の開拓団の幹部の方々が総合農協の伸展というものについてどういう考え方を持っておられるか。この辺のところを一つお伺いしたい。
  90. 井上徹雄

    ○井上参考人 開拓農協の現況につきましては、先ほどちょっと財源について申し上げたような状態でございますけれども、何分、開拓農協は、戦後の混乱時に、政府資金の取り扱い、また海外から帰ってきた人間の一つのかたまりとして作ったというような関係もございますし、分布の状態からいきましても、数が少ないのが多い。そういうことから、事務もやはり完全に形態が整っていない、組合長一人で自分の家が事務所になっておるというような組合も非常に多い。北海道等に至って初めて百戸以上の開拓者が集まって多いところは六百戸くらいまでのところがありまして、半分くらいが大体そういうような形態をなしておるというような状態ですけれども、大かたの開協がそういうような実態である。そういうことから、今私どもが当面に考える問題は、もちろん、角屋先生のおっしゃる通り、これはいつまでも開拓農協ではございませんので、もちろん、村作りというような関係から、やはり地方自治体の中に溶け込んでいって一本になるのが当然でございますけれども、十三年間経営をしてきましたその赤というものが非常にいろいろな問題となってたまっておるわけでございます。そういう問題をいっときも早く大胆率直に一つ解決していただいて、その上に立って、既存の農協でも、そういうふうにはっきりしているなら一つ引き受けましょう、こう言われるような体制に早く開拓農協を持っていかなければ、現在のような状態でやっておったならば、ますます赤が積もる一方じゃないか、こういうように考えるわけでございます。そういう面から、農林省におかれましても、本年度は財務整理というようなことで開拓農協の財政を洗いざらい洗ってみよう、こういうことで、資金の借りかえと一緒に二カ年間でやろう、こういうことになりましたことは、私どもとしましても一歩前進したことであるということで非常に喜んでおるのでございますけれども、これに要する予算というものが一銭もついていない。開拓農協を洗った際においては、必ず相当莫大な金額の負債というものや固定化債権というようなものが出てくるわけでございます。そういう場合に、どういうふうにそれを処理していくかというような面を十分考えてもらわなければ、解散をしてしまって、これまでの借金を一切ここで棒引きしてしまうならばとにかくも、そういうことはできませんので、この状態をいっときも早くはっきりすると同時に、やはり、その場所場所の立地条件に適合した政策をとっていかなければならないのじゃないか。そういう中において個々の開拓農家が農協として運営をしていく、こういう面では、自主的に農業協同組合を作っていくのであるから、これはどうすることもできないと思いますけれども、政府の一応の指導方針としては、開拓農協の財務を明確にしていただいて、そして今後の開拓農協の行くべき道をやはり政府機関においても指示してもらわなければ、開拓者個々が作っておるものであるから開拓者個々の責任において解決をせいということを言われても、なかなか解決ができないというのが現況でございます。十三年もたっておるのでございますから、そういう面から今までの赤を一つここできれいに明確にしていただいて、その上で、一般農協に統合すべき条件下にあるものは一般農協に統合する、あるいは合同事務所等によって処理をしていくものは合同事務所等によって処理をしていくというように、明確な指導方針というものを立ててやっていくのでなければ、現在の状態ではますます混乱に陥るのじゃないか、こういうように考えるわけでございます。ことに、北海道等におきましては、購買、販売事業をやらなければ政府償還金や系統の償還金の回収がなかなかできない。購買、販売を積極的にやるということになると、既存の農協の事業との競合が起きてくる。そういうことで、村自体の平和というものが保っていかれない、こういうような政治的な問題も出て参るわけでございまして、そういう面からも考えまして、やはり明確な指導方針というものをぜひ一つ作っていただきたい、こういうふうに考えております。
  91. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 開拓の皆さん方の方からはこの三法案にはずいぶん大きな期待を持っておられたわけですけれども、現実にむずかしい問題は開拓営農振興審議会というもので検討するのだということで逃げられた面があるわけですが、皆さん方の立場として、この法案の中にうたわれておる開拓営農振興審議会というものに一体どういう意見を持っておられるか、あるいは、もしこれに期待するものありとすれば、どういう希望を持っておられるか、この際、時間がありませんから、簡単に一つお聞かせ願いたい。
  92. 近藤安雄

    ○近藤参考人 私どもといたしましては、委員の数は十名というふうに予想しておられるようでございますけれども、十四名にしていただきたい。それから、その内容は、単に定まった予算を使うための連絡協議会ということではなくて、将来の振興対策、将来の開拓問題に対する重点をここで審議をして、そして方向を定めて来年度実施をするというふうにしていただきたいと考えております。
  93. 吉川久衛

    吉川委員長 芳賀貢君。
  94. 芳賀貢

    ○芳賀委員 参考人の皆さん方には非常に御苦労さんですが、きょうは特に、ただいま審議中の開拓法案に対して皆さん方の十分な意見を聞かしてもらいたいのが趣旨です。先ほど来四名の皆さん方からいろいろな角度から述べられましたが、具体的にもう少し強調してもらいたい点もありますのでお尋ねしますが、第一の点は、開拓営農振興法の改正の問題については、振興計画の認定の問題は、現行法によりますと、これは都道府県の知事が認定するというところでとどまっておる。しかし、この振興法の目的から、少なくとも不振開拓者が専業農家として、しかも人間として最低限の生活は確保できるという類型を国が示して、それに対してこの計画で一体農業経営がやれるか、それで人間として生きられるかということを国として認める必要があると思うのです。それが都道府県の段階で終わっているということは、これはわれわれとしてはいけないと思っている。従って、今回の改正については、やはり、振興計画については国の責任でこれを認定して、また、計画を出す皆さんの側においても、やはり国に認定さして、これでやれるとかやれぬとか判断をつけて実施に入るべきだとわれわれは考えておるのですが、この認定の問題についてはどのようなお考えなんですか。
  95. 近藤安雄

    ○近藤参考人 振興法制定当時から、私どもはもうそれを唯一の念願としてきたわけでございます。ところが、何となく国の責任を免れるために都道府県知事の認定におやりになったのですが、実質的にはもうすでに国が認定せざるを得ない。建設工事については建設部が出ていって審査をして内容を決定しているのでございますから、もう実がそうなっているのですから、形式的にもぜひ一つ大臣の認可にしていただきたい。組合数にいたしましてもそうたくさんございませんのですから、これはやってできると思うのです。
  96. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次は、今回の改正措置によって、振興計画のすでに提出されたものについても当然一部修正等が行なわれることになるわけです。ですから、この機会営農振興計画の修正変更ということは伴うことでありますが、すでに昭和三十三年度一ぱいで提出期限は切れております。その後も一部修正はごく限られた条件の中で行なわれてきましたが、今回のこの制度の大幅改正等によってこれは必然的に計画の修正変更というものは伴うわけでありますし、さらにまた、もう期限経過のやつをやみ取引のような形で修正するということもこれはやはりいけませんので、提出期限というものをもう一度定めて、そうして振興計画内容の充実ということをやる必要があるとわれわれは思うわけですが、これを修正変更する場合に、もう一度修正して提出するということになれば、事務的にも時間を要しますので、これはどのくらいの期間があればやれるか。たとえば、今三十四年度末として、これから一年の余裕があればやれるのか、あるいは二年間くらいかかるのか、そういう点も大事な点であると思いますので、期限の延長をするとすればどのくらいの期間が必要であるかという点をお尋ねしておきます。
  97. 近藤安雄

    ○近藤参考人 私どもは、役所の方からは、この計画の修正変更は認めないというふうには法律に書いてないから認めるのだというふうに聞いておるのでございますが、局長通達でもって、資金がふえるような修正変更は相ならぬと言われておりますので、実質的に修正変更を認めていただきたい。  それから、法改正で二条を改正していただいて、あと一年も延ばしていただきましたら、これは、谷間の人であるとかあるいは罹災者であるとか、実質的に要振興というのは限られた数でございまして、指導も十分できると思いますので、期限としては十分だと存じます。  なお、旧振興法で工合が悪かったところは、災害資金を十年に借りかえていただいたのでございますが、利子補給が五年というふうに限定されておりまして、あとの五年は、中金さんに対しては、政府から利子補給がなかった場合は私どもが支払いをいたしますというような条項の契約になっておりますので、この際にその政令を改めていただいて、利子補給期間というものはやはり災害資金の借りかえ期間十年というようなものと合わせていただきたいという希望を持っております。
  98. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それと、修正の内容ですが、考えられる点は、一つは、今度政府が過剰入植対策の要綱を出された、つまり間引き対策要綱ですね、ですから、今度は振興組合の中ではその政府の方針に基づく間引き対策というものが組合全体の了解のもとに行なわれるわけですね。そうなると、これは当然計画の変更が伴う。その次は、たとえば条件緩和法とか、今度の措置に基づいて、やはりそれを計画の中に盛り込む必要な修正措置というものは当然やる必要があろう。それから、もう一つは、今までも問題になっておる、三カ年間に計画を出す場合に、初年度に出したのと三年目に出したのとでは非常に内容がアンバランスになっておるという問題ですね。このアンバランス是正のための修正。もう一つは、振興組合の認定が行なわれた後にその地域に入植した開拓者、非常に谷間に置かれておるとか、あるいはいわゆる対象には今なっておらぬが、不振開拓者であるというような人たちの処置、処遇というものは行なわれていないのですが、これは、やはり、今回の修正の場合においては、現実が全く不振開拓者であり、これは振興計画の対象にしなければならぬということが認められた場合は、やはりその計画の中にこれを取り入れてやっていく必要があるとわれわれは考えておるわけです。こういう点が予想されるのですが、それ以外に、この修正変更をやる場合にはこういう点もやらなければならぬという事項があれば示してもらいたい。
  99. 近藤安雄

    ○近藤参考人 まあ、案を立てましたときに、範囲はそれでいいと思うのでありますが、従来は、どう言うか、ただ抽象的に、現状程度生活を維持しながら各種資金の償還ができる限度までということで、実際は経営比率なんかを二〇%くらいしか認められないで、粗収入二十五万円くらいでもけっこう償還できるのだというような建前から、何か条件がありまして、大へん不合理なものになっておりましたので、修正変更いたします場合に、今度政府資金の履行延期の場合に、経営比率を、大体酪農経営の場合には五五%、水田経営の場合には三五%くらいまで認めていただいたのでございますから、ああした原則のもとに一つ合理的に修正変更を認めていただきたい。やはり、類型に準じて、その地域の実情に合わせて一つ修正変更を認めていただきたいと考えております。
  100. 菅野敬一

    ○菅野参考人 修正変更と直接関係があるかどうか存じませんが、提出期限との関連性がございますが、開拓農協の統合、ないしは、二ヵ町村以上にわたっておりまして振興計画を市町村自治体の負担等によってまかなっていくというために、大きな市町村と異なっているところは別な組合を作りたい、こういうような場合に、新しく組合を作った場合、いわゆる統合した場合でも分離する場合でも、新しく組合ができた場合は、組合はすでに県報に登載されて認定された組合に限定されるので、組合の統廃合、つまり、統合によって強化する組合あるいはその他の新設組合は、振興法の該当からはずされてしまうような格好になるので、非常に不便でございますが、これは提出期限の延長が認められますればこれらの組合も入るかと思いますけれども、単なる修正変更ではこれらのものは救えない点がございますので、御参考までに申し上げます。
  101. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次にお尋ねしたい点は、現在の振興法が実施されたとき、天災融資法だけをこの法律に取り入れるということではうまくないから、別途措置を講ずべきであるということで、その後自創資金が振興組合に対しては出されておるわけですが、われわれの考えとしては、制度金融以外の、特に個人間の非常に利子の高い債務等についてはとりあえず自創資金でこれを処理した方がいいじゃないかというような考え方がおもなる点でありましたが、その後毎年のように自創資金が出されて、現在三十一億くらいになっておりますが、これは、当時の趣旨の線に沿って特に高率な個人的な債務等がこの自創資金によって解消されていっているのか、あるいは、そこまで手が伸びぬで、やむを得ず農業経営維持のために生活資金等にそれが用いられておるのか、その実情というものはどういうふうになっておりますか。
  102. 井上徹雄

    ○井上参考人 自創資金の御質問でございますが、当初開拓者が改善計画を立てる当時は、自創資金というものは開拓者は借り入れられないというような感覚でおりましたし、また、そういう指導もなされていなかったために、自創資金を借り入れて借金を処理するというような考えがなかったのでございますが、三十二年になりましてから、衆議院の皆さん方の御努力によりまして、五億くらいずつ、大体二十五億くらいを開拓者に貸してやろう、こういうようなお話が出ましたので、その金額の範囲内で、実は自創資金によって負債を処理するというような改善計画を一応立てたのでございますが、実態においては、自創資金のような、現在の制度金融からいけば有利なこういう資金で処理しなければならない個人負債等が、まだ相当な額ありますので、農林省に強く要望申し上げましたところ、現在までに約三十二億以上出していただいておる、こういうような実態でございます。この自創資金によって、系統外の責務それから系統の債務というもののある一部は解消はいたしましたけれども、実際においてはまだまだ多くの自創資金を貸していただくことが必要なのでありまして、本年度約十五億借りますと、大体五十億になるのでございます。  ところが、ここで一つ非常に大きな問題になって参りましたのは、自創資金を貸す条件として、最高二十万円で押えられていることが一つと、それから、事務的な面においては、保証人を必ずつけなければならない。これは金を借りるのですから当然でございますけれども、相対保証はだめだということになっていきますと、なかなか保証人のいい人がない。あっても、非常に営農状態のいい開拓農家は、営農状態の悪い農家の保証をすることはいやだ、こういうような関係になりまして、ワクを北海道なら北海道中に広げていただいたのだけれども、やはり保証人に対して一つの問題が出てきているということと、それから、二十万円の最高額のうち、十万円を一回先に貸してあるという人間には、実際的にはもう一回十万円を貸してもらえないというような問題が一つの隘路になっております。それから、土地の担保というような場合には、開拓地は実際においてそんなに価値もないというようなところから、また、担保の設定をする税金の関係とか、そういう問題がいろいろありまして、非常に困難であります。  こういうような面をある程度緩和していただかなければ、なかなか消化ができないというような問題に相なっているわけでありますが、北海道においては、ことさら、開拓者個々の負債が非常に大きいわけでございまして、大体二十万のワク内ではどうにもなりませんので、もう少し最高額を上げていただきたいということと、最高額に達するまではやはり何回でも貸して下さるような制度に改めてもらいたいということと、保証人の場合には、一つ相対保証を認めて、甲のものを乙がやり、乙のものを甲がやるというようなことを認めていただきたい。こういうことをやっていただくと、現在のワクを消化できるのじゃないか。現在の制度だったら、現在のワクだけでもちょっとむずかしいのじゃないかというように考えるわけでございます。また、それでは現在のワクでいいのかということになると、大体今年度の十五億一千万円を出すと、農林省調査では、開拓者の系統外の負債は済むのだということになっておりますけれども、実際においてはまだまだ多くを持っているというような実態でございます。
  103. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、今度の振興法改正によって、災害資金が開拓者資金融通法の方から出せることになるわけですが、これは天災融資法で貸し出している資金の内容のすべてをこの制度から出すというわけではないのです。主として設備的な資金を出そうということになるので、必ずしもこの災害融資がこれによって一本化するということではないのです。われわれとしては、振興組合等の組合員が災害を受けて災害融資を受けるという場合においては、やはりどの法律の根拠まですべてまかなえるということでなければいけないと思うのです。従って、この点も非常に問題点であると思いますが、災害融資の出し方についてどうやれば一番いいか、御意見を伺いたい。
  104. 近藤安雄

    ○近藤参考人 それに関連いたしまして、私どもむしろ中金さんからお聞きしたいと思いますが、従来天災融資が出なかったのでございます。なぜ出ないか。中金さんの方では、民間資金の方を出さして、政府は取り立てを考えてみたり何かするから、将来の天災資金は政府でもめんどうを見るというようなはっきりした約束ができれば、災害資金は出してあげましょうというので、最初は三十三年度限りということだったのでございますが、それが一年延びまして、三十五年度からは制度化するから、三十四年度までは一つ普通の条件で貸した天災資金を営農振興法によって十年以内に借りかえを認めましょう。ところが、三十五年度は、私どもは、振興農家に関する災害資金は政府資金で貸していただけるものだ、その制度を開いていただいたものだというふうに理解しておったのでございますが、ふたをあけてみましたところが、それは施設資金だ、経営資金はやはり天災融資で借りるのだというふうなお話であるように思うのでございます。そういたしますと、中金さんの方では、三十五年度以降もわれわれに天災融資で貸した金は振興法によって長期化していただけるものかどうか。また、中金は長期でなければ償還のできないようなものに短期で貸すというようなことはできない。従来は先ほど管野参考人が申しましたようにワクの一割くらいしか借り得なかったというふうなことで今回の措置をお願いしたのでございますから、むしろ先生の方から、中金としては将来の災害資金も振興法によって長期に借りかえをしてやるのかどうかということを一つお確かめ願いたいと思います。
  105. 芳賀貢

    ○芳賀委員 きょうは中金の方は質問をしないことということになっておるので、これはいすれ次の機会検討したいと思います。ただ、問題は、この法律の改正によって——天災融資法は中金の資金に損失補償と利子補給がつくのですが、今度は政府資金で災害融資を行なうという思想が出てきた。だから、系統の方から天災融資法で借り入れを一部行なうということより、むしろ政府の責任で災害については融資を行なうというふうに体系を一本化した方がいいのではないかとわれわれは考えておるのです。その点を近藤さん並びに井上さんから述べていただきたいと思います。
  106. 近藤安雄

    ○近藤参考人 私どもとしましては、従来そういうふうに中金から融資が受けられるのだというお話ではございますが、実際上、さんざん理事長さんにも頼んでいただいたり何かしたのでございますけれども、実際はその半分も天災融資が借りられなかったわけでありますから、今の中金のベースには乗っからない。従って、そのベースに乗っからない振興農家については一つ政府資金で天災融資のめんとうを見ていただきたいというお願いをしたいのであります。ところが原案はそうでないので、三十四年度の伊勢湾台風と同じような一億の金を貸されるのであれば法律は要らぬのじゃないか。新しい法律を作られるということは、伊勢湾台風で貸されたのと違って、いわゆる振興法でやられるのですから、振興農家に対して災害資金を貸すという趣旨ではなかったかと思うのでございますが、どうもそこのところは私どもはよくのみ込めないのでございます。
  107. 井上徹雄

    ○井上参考人 災害資金、天災資金につきましては、実は毎年ワクをちょうだいして参ったのでございますけれども、そのワクがなかなか消化をされない、完全に借り入れするまでの間には相当な時日を要する、しかも、相当な時日を要しても全額を貸していただければいいけれども、半分も貸していただけない、こういうのが従来からのしきたりであったのであります。このことは、実際中金さんに折衝してみますと、開拓者実態から言って、災害資金のような金を中金さんから借りるということは、私ども金融機関に折衝するような立場の人間から考えましても非常に無理なことでございまして、生産につぎ込む金ならばとにかく、災害にかかった開拓者が金を天災法で借りましても、どうしても償還計画が立たないというのが現況でございまして、二年や三年の資金ではとうてい償還ができないというのが実情でございます。そういう面から、ぜひ一つ政府の長期資金でもってこれをまかなっていただきたい、こういうことを実は農林省にも申し上げたわけでございまして、農林省におかれても、このことにつきましては、中金と従来何回にもわたって折衝されておるので、その理由は十分わかっておるはずでございまして、農林省ももちろんそれはそうしたいということで大蔵省に要求されたと思いますが、残念ながら一億ということになり、しかも施設を重点と考えたということになっておるのでございますけれども、当然、この中に、気象条件のいわゆる冷災害、あるいは長雨だとか旱天だとかいう面も天災法同様な貸付条件をぜひ入れていただきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  108. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、開拓者資金融通法による条件緩和法の問題点についてこの際お尋ねしておきたい。振興計画達成に即応して、国の債権管理法による不振組合に対する条件緩和というものが行なわれることになっておったのでありますが、われわれが聞くところでは、あまりこれが積極的に行なわれていなかったということでありまして、国の債権管理法に基づく開拓融資等の条件緩和がどのような状態で行なわれたか、その実績等について参考までに述べてもらいたい。
  109. 近藤安雄

    ○近藤参考人 債権管理法によりますなにはきわめてわずかであったと思います。それはなぜかと申しますと、非常に手続が厄介でございましてその煩にたえないということと、内容的に見まして、たとえば優先弁済額の中に公庫資金が入っていないとか、あるいは生活費の算定が実質的に検討してみますと低いとか、あるいは履行延期をされた結果が普通の場合には二年据置く三年償還になるということでもって、やはり、債権管理法というのが、振興させようという目的よりは、取り立てる、ともかく確実に債権を回収するのだという色合いが強くて、農林省にまかされるというものではありますけれども、実際上は、ともかく今の振興農家実態には合わない。やはり、長期にわたってこの際政府資金については一つ抜本的な対策を講じていただきたいというふうなお願いであったわけでございます。
  110. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今回の条件緩和法によっても、あまり——開拓者の皆さんから見ればどのようにお考えになっているかわかりませんが、やはりこの際徹底した固定化の負債に対する政府資金の緩和条件というものを明らかにしないと、また次の機会条件緩和をしなければならぬということになるし、それが開拓の今後の進展にも障害になるわけでありますから、たとえば、われわれとしては、今度はまた今までの資金を一本化して証書の書きかえを行なうというような場合においても、政府の今考えておるのも一つの方法であると思いますが、利子とか延滞金を元本に直して証書を作るということについてもこれは問題があると思うわけです。ですから、これは、皆さん方の方においても、十分希望通りとはいかぬとしても、このような条件であれば返せるという、——返さないという気持はないということは近藤さんが言われた通りだとすれば、やってもらえれば返せるんだというような最低の条件というものはやはりできるだけ反映させるようにしたらいいではないかとわれわれは考えているのです。たとえば、金  利とか延滞金を、それを免除するというような方法もありましょうし、あるいは、利息等については、これを元本に加算しないで、これを別に扱って、利子の分についても長期的に返済するというような方法もあると思うのですね。ですから、皆さん方として、こういうような条件緩和法について、これでいけば大体自分たちも実行可能なんだというようなお考えがあれば、この機会に述べてもらいたい。
  111. 近藤安雄

    ○近藤参考人 私ども、ともかくそれで一番基本となりますことは、先ほど申しましたように、新規入植の方は、機械開墾した土地政府資金をもって、それが直ちに生産財になっておるのでございますか、私どもが今まで持っております負債のかなりな部分が不生産資本、悪く申しますと不有効な資金投下になっておったので、新規入植の方よりは条件が悪いということを政府当局も実態分析をしていただけないだろうか、そして、その前提に立ってお考えをいただくとよくわかるんだがと思ってきたわけでございます。それで、何と申しましても、一番大事なことは、私は、少なくも、償還できない人については、形式的に振興農家に限るとかあるいは三十一年以後の罹災者に限るとかいうふうなほんとにつじつまの合わないようなことでなく、ああいう方式が示されておるのでございますから、返せない人はこういう方式で算定して、この方式に合う人は一つ履行延期をするんだというふうにしていただきたい。これが何といっても最大の願いであります。  それから、従来償還のできなかった人は元利とも償還できなかったわけであります。実績は大体五億から六億の間でございますが、今度は履行延期はしてやるけれども据置期間中は利息を徴収するんだ、それでまたその利息に対して納められなければ延利を取るということになろうかと思うのでございますが、それであれば従来の方がいいのでございます。調停にでもかかればその方がいいので、実力ということをお考えを願って、そして、据置期間中は一つその間に営農振興させるんだという、そして将来確実に取るようにしようというのがみんなの考え方なのでございますから、おそかれ早かれ取れるのでございますから、待っていただきたい。せっかく据置期間を置いていただくのであれば、一つ、従来よりも楽になるというふうに、据置期間中の利子は、できればともかく免除していただきたい。どうしても免除できないなら、そいつはたな上げしてもらいたいということが重大なお願いであります。  それから、元本に延利と利息とを加えて書きかえるということは、開拓者  の感じから申し上げますと、債権管理法で一方的に出ていく、そして従来よりは単純に二銭四厘の延利がつくということになっておって、その延利をつけておいて今度はまたそれを元本に入れて証書を書きかえて、またこれに延利をつけるというふうなことは、どうも反感を生むと思うのであります。それで、これも別に延利を取らなくたって国としては損をしないと思うのでございますから、ことに従来の不有効な元本が相当あるのでございますから、元本を切り捨てるということは社会的に見ていけないということでございますれば、許す範囲内で一つ第一に延利は免除していただきたい。そうして、相なるべくならば、ともかく計算さえ合えば、それで特別会計が成り立つということであれば、私は、利息も当初の政府案でお考えになりましたように考えていただけないだろうかという希望を持っております。  何よりも一つ営農振興させるのだ、その間にこうすれば確実に償還できるのだということでいかないと、前の振興法で災害資金を借りかえて、これならいけると政府も約束し、金融機関も約束し、われわれも約束したものが、もうすでに実行されていないで大へんな問題になりかけておるのでございますから、今度の政府資金の履行延期は、他の金融機関の金は優先しましても政府資金でもってクッションになってやるのだ、政府が親心でもって数次の災害とかその他のクッションの役目は政府資金でやってやるのだというふうな考え方で御承認願えないものだろうかというふうに思っております。今度の法改正のたった一つ内容であり、振興法といいながら前の振興法は災害資金の借りかえ、今度は政府資金の借りかえということでございまして、これにやはりほんとうの内容を与えていただきたい。
  112. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、今までは法人借りであったのを、今度は個人別に内訳をつけて直貸し制度に改めるわけなのですが、先ほど三好参考人からもお話のあった通り、個人別に今度は債務の分担をきめる場合、個人々々にやると、いやおれは金はこれだけ払っておるはずだというような問題も出てくるのだと思うのです。それを今度は組合としてはそれを取りまとめて政府償還した場合、それが元本でなくて金利の方に取られてしまったという場合もあるわけです。それと、組合としては善良なる管理をやったとしても、個人としては、おれは借金をこれだけ払ったはずだということになると、個人に内訳をつけるという場合にやはりいろいろな問題が出てくる場合もあると思うのです。ですから、こういう点、組合としてうまくみんなが納得がいくような個人間の債務の責任額の確認ということができるかどうかという点は、井上さん、事務的にどうですか。
  113. 井上徹雄

    ○井上参考人 今度政府資金の確認を完全にやることになってやるのでございますけれども、今先生の言われたような問題が大きくやはり出てくると思います。ことに、政府の方では延利、金利、元金、こう入っておりますし、組合の方では元金で帳簿を作ってしまっておるというような差額、それから、やはり、組合の運営が非常に苦しいために償還金を流用しているというような問題も出てくるでしょうし、また、移転貸しておった昭和二十三年から五年ごろですと、入植して二カ月か三カ月で出ていってしまう、こういうような者がおったために、政府資金が出てきたときにはもうすでにその人間が離農しておる、こういう場合に返せばいいのだれども、やはり当時は混乱状態だったから、組合において使ってしまったというようなものも今度出てくると思います。そういうのはやはり相当の額になるのじゃないかというふうに考えております。そういうものについては、今ここで農林省にお願い申し上げたところで解決がつかないと思います。一応財務整理の場合は別口としてたな上げにしておいて、実際の金額をつかんでから当局に対してお願い申し上げ、また先生方にお願い申し上げたい、こういう考え方を持っております。
  114. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、今度の法律開拓者資金融通法関係の特別会計からの融資だけの条件緩和ですね。従って、政府資金ということになると、やはり公庫融資もこれと同列ということになります。公庫融資関係条件緩和というのはうたわれていないのです。それで、この際、われわれとしては、やるとすれば、同じ制度金融の中の特別会  計の方も公庫の方もあるいは系統融資等についても、すべてこの際負債整理関係はやるということでなければこれはいかぬと思うのです。それで、皆さんは公庫融資の条件緩和等の問題についてどういうようなお考えを持っておるかという点です。われわれとしては、昨年寒地農業振興法ができたときに、やはり資金は公庫から出るわけですが、年五分五厘、五年据置、二十年償還という一つの道を開いたわけですから、その当時も、次の機会開拓関係の公庫融資あるいはその災害関係の公庫融資等については少なくともこの条件より条件が悪くてはいけない、そういう基本的な態度で進みまして、当時附帯決議や修正案を出したときも、本名委員からもそういう意見が実は述べられておるわけです。ですから、われわれとしては、開拓者資金融通法の改正の問題とあわせて、この公庫融資の金利とか年限等の条件の変更等も業務方法書の改定でやれるわけですから、やる必要があると思っておりますが、また、同町に、この条件緩和の問題についてもやはりこの際とり上げる必要があるというふうに考えておりますので、この点についての御意見を伺っておきたいと思います。
  115. 近藤安雄

    ○近藤参考人 振興法ができましたときに御決議をいただいて、公庫資金については償還可能なように実情に合わせて償還条件の緩和をはかってやれというような御決議をいただきまして、その後公庫に対してお願いをしたこともあるのでございますが、ケース・バイ・ケースで考えよう、今の公庫法から言えば履行延期はできるのだから、一つ現地で申し出なさいということになっておるのでございますけれども、実際問題としてはにっちもさっちもいかないという現状でございまして、延滞の状況はまだ公布の本庫でもはっきりわかっていないのでございますが、かりに岩手県の例で申しますと、貸付残高の九千九百万に対して延滞金が四千二百万、延滞率が四二%これは他県に比べるとかなり高率だと存じます。しかしながら、先ほど三好参考人も申しましたように、たとえば小水力で融資を受けているから一億七千九百万円ばかりありますが、延滞が五千余万円出ておりまして、ほんとうにこれは将来見込みがございません。施設が流れましたり、送電に切りかえなければとても維持できないというふうな条件もございまして、ほんとうに困っているのでございますが、一番困っておりますのは、公庫としては、その延滞を合理的に契約変更その他をしなければ組合として延滞のあるところに対しては融資はしないということになっておりまして、振興対策上政府資金で来ないところは公庫資金を待つのだということで、三十一年度は公庫のワクを八億いただいて実際は一〇〇%貸していただきましたが、三十二年度になりますと十億のワクをいただいて七六%、三十三年度は十二億のワクをいただいて六九%、三十四年度は十五億のワクをいただいて、現在が六億幾らでございまして、八億になったと仮定いたしましても大体五三%、ワクを当初予算で設定していただいて、半分というふうなことであります。なぜこれがいけないかと申しますと、過去の公庫資金のいわゆる合理的な組合としての処理がついていない、従って、その組合は延滞組合だから延滞のない人についても振興対策に定めた融資が受けられないという、この実情に一番困っているのであります。法律の上ではできることになっているのでございますから努力をすればいいじゃないかと言われるのでございますけれども、実際にお願いに行っても、現在のところでは、今の貸付条件の範囲内において、たとえば主務大臣指定でありますと、三年、十年というふうな範囲内なら公庫としては取り扱えるけれども、それ以上の条件緩和はできないのだということで突っぱなされておって、どんどん延利がつき、またそれがため振興計画に基づく融資が完全に梗塞状態になっているということで、ほとほと振興対策の実施上困っているような現状でありまして、法律的にできるのであれば、行政的に役所の方でもお手伝いを願って、何とか合理的に振興計画とにらみ合わせて解消できるような条件一つ借りかえさしていただきたいと思っております。
  116. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この際公庫にお尋ねしますが、ただいま参考人から意見があったような点ですが、実際の公庫の業務の責任の範囲内で、今回の開拓者資金融通法における資金の条件緩和に似たような内容程度の公庫融資の条件緩和等が振興計画の線に沿って行なわれるものであるかどうか、また、やるつもりでおるか、そういう点はいかがですか。
  117. 中沢忠作

    ○中沢説明員 お答えいたします。  今政府の方針がこの委員会に出されている段階でございます。私どもといたしまして十分これらの審議の模様を聞かしていただかないと、まだ私どもの決心、態度はここで申し上げるまでに熟しておらないのでございます。ただ、私ども、御承知通り、全額政府出資でやっていることでございますので、その組合が解体して空中分解するような状態承知の上でなおかつ借金を期限通り返せというような酷な取り扱いをいたすつもりは毛頭ないのでございます。ただ、ここで数字等にわたってどういう工合にするというようなことは、もうしばらく研究させていただきたいと思います。
  118. 芳賀貢

    ○芳賀委員 公庫に申し上げますが、この点は、政府としては、公庫の業務の責任の範囲内で条件緩和をやれる、また今までもやっているということを言っているのですよ。ところが、われわれが調査した結果は、それは言うだけであまり、やっていない。率直に答えていただきたい点は、そういうことは公庫だけの意思でやれないならやれない、やはり法律改正とか何らかのそういう制度的の根拠がなければ積極的な条件緩和はできないのであれば、できませんということを明確にしてもらえれば、非常に法案審議の上からも好都合なんです。率直にその点は述べてもらいたい。
  119. 中沢忠作

    ○中沢説明員 端的にこれを一言に表現することは大へんむずかしいのでございますが、私どもの方法書の認可等は、お役所が許してくれなければできないことで、行政上の拘束を受けております。それから、もう一つ償還期限寺につきましては、法律で何年以内——たとえば、小水力なら二十五年、あるいは土地改良は措置五年・十五年という工合に、法律上の規定を持っております。その最終期限が来ているという事態はどれもまだないのでございますので、また、償還期間が十年以上もあるような場合に、それを見越しましてここでさらに法律に超過してするというようなことは、公庫の一存ではできかねるものがたくさんあるのでございます。それから、もう一つ、実情としまして、その細部につきまして、延期が実際上行なわれがたい理由の一つと申しますのは、私どもの方は一〇〇%公庫の責任で処理しておるという、責任はそうでございますが、実態上、これが焦げついた場合に、受託金融機関に二割の債務を保証させております。従いまして、万一リスクになりますと、その二割を、取り扱った受託金融機関が公庫に対して補償する、こういうことになっておりますので、先ほど連合会の方々お話しになりましたようにその危険を冒して取り扱いたくない、こういう意思がかなり出て参るのでございます。これは、保証を引き受けております受託金融機関の気持としては、当然の気持と申しますか、金融機関としての当然の気持であろうかと思いますので、それをひっかぶってしまえ、いいじゃいなかというようなことは、なかなかできかねておるわけでございます。そこらのところが組織の上において今後なお十分な検討をしていかなければならない次第でございますが、実際上最近の取り扱いとしましては、公庫が直接にそいつをお貸しするというような事例もぼつぼつ出て参りましたが、これまた、何をいたしましても、公庫は本店を東京に置きまして、ブロックに今ぼつぼつと支店を出しております段階におきまして、たとえば開拓の僻阪の地において十何年にわたって貸付を実行してそれをトレースしていくという責任を持つのは、なかなか実行上むずかしいので、なるべくならば、そういう現地に近い代理機関等に委託していくというような方法が、私どもとしては望ましいという工合に考えておるわけでございます。これらの点が、今御質問のありましたように快刀乱麻を断つごとく、これさえできればいいのだということが、なかなかむずかしいのでございます。そこで、まあ検討をさせていただきたい、こういう工合に申し上げているわけでございます。
  120. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今説明のあった、受託金融機関に対して公庫が二割の損失補償をやらしておる、本来はこれは公庫が直貸しするのを、受託金融機関に代行さしておるのですから、その損失補償の場合にはむしろ公庫自身が責任を持つという態度で臨むのが当然だとわれわれは考えておるのですが、この点についても、政府の指導方針によってこういう受託金融機関に二割の損失補償をさせるという規定を設けたのですか、これは公庫としての金融業者的な感覚でこういうことを案出したものであるか、政府の方からそれでやらなければいかぬということになっておるか、その点はどうなんです。
  121. 中沢忠作

    ○中沢説明員 お答えいたします。  農林漁業金融公庫の特別なルールではございませんので、よその公庫はもっと大きく保証をさせておるようでございます。具体的に申しますと、七割の債務保証をさせておるという事例がございます。それから、農林公庫につきましては、公庫としての新設したルールではなくて、特別会計の時代から引き受けました同じ条件でございます。で、このやり方につきましては、委託をいたしますときに何らかの保証を持たすということが、今申しました通り大体通説的に行なわれておるようでございます。公庫が直接に扱えば、当然、お話通りに、リスクを全部背負うことになるわけでございますが、ただいま申しました通りに、全国各地にある、特に個人——個人というのはあまりないのですが、きょうの議題になりますと個人貸付もかなり議題になっているわけであります。そういう特定の個人貸付にまで、いわゆる長年月にわたるところの債務をトレースしていくということは、なかなか言うべくして実際上むずかしいことだと思いまして私どもとしては、零細なものにつけばつくほど、委託ということで、多少そういう点の実務上の取り扱いを緩和していくということが望ましいという工合に考えておるわけでございますが、しかし、最近直接に取り扱ったものもだんだん増加しつつございます。そういう状況でございます。
  122. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に、開拓者資金融通法の改正の問題ですが、これは、内容等についてはそう複雑ではありませんが、特に、貸し出しの条件については、北海道分と内地分というふうに条件が分かれておるわけですね、先ほど参考人の御意見の中にも、北海道と同じような条件にしてもらいたいというお話もございましたが、これは実際の資金運用上の問題としてはどういうことになりますか。全部これは同じでいくということにするか、原則は一本にして、それ以外とかなんとかいうこと、たとえば、資金の貸し出しの目的等によって内地府県と北海道における施設の規模であるとか経営の大小とかいろいろな資金需要についても相違点はあると思いますが、できれば開拓者資金融通法等についても一本の原則をきめて、それを地域の条件とか特殊性を勘案して運用することも必要だと思いますが、この点に対して井上さん並びに近藤さんの御意見を聞きたいと思います。
  123. 井上徹雄

    ○井上参考人 開拓者資金融通法の改正の問題でございますが、今度貸し出す振興対策資金、いわゆる中期の資金、今度長期資金になるのでございますが、従来三年・九年で十二年であったのを、北海道に限り、いわゆるマル寒資金とのつり合い上、五年据置の十五年にする、こういうことに相なっておるのでございますが、もちろん、内地と申しましても、東北や高冷地等においても北海道と同様な条件下にあるところもありますので、こういう点ではやはり全国一律に五年の十五年にやっていただきたい。もっとも、資金を貸し出すその金額におきましては、北海道の方が農林省の方で査定をしております額からいきましても多くなっておりますので、その点の差は従来通りつくわけでございますから、金利、それから年限等においては、北海道、内地とも、やはり同様にするのが妥当じゃないか、こういうふうに考えております。
  124. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それから、これに関連する問題ですが、間引き対策というものは、一体、参考人の皆さん方の立場から見て、政府考えておるように安易に行なわれるものであるかどうかという点なんです。政府の方針としては、国が十万円、都道府県が五万円で、間引き対策の費用を十五万円出すということにきまっておりますが、その程度の国の配慮で、離農する開拓者が、再入植する場合もあるでしょうし、転業する場合もあるでしょうし、また海外に進出する人もあるでしょうが、安心して間引き対策に協力して、そしてこれが今後の振興計画達成のためにも非常に貢献するという事態がはたして期待できるかどうか。どうですか、この点は。
  125. 近藤安雄

    ○近藤参考人 政府が、間引かなければならぬ戸数は三千戸だ、それをこういう対策で今後毎年六百戸ずつ五カ年間に間引くのだというふうに予算化しておられるのでございますが、これは非常にむずかしい問題でございまして、ただ簡単に机上でもってやりましてもなかなかできないので、実際に私どもが前からお願いをしておりましたことは、一つは、いわゆる間引きの対策調査と申しますか、実際に今振興計画を立てておるけれども、単なる今の構成員や配分面積をもってしてはどうにもならないというふうなものがどのくらいあるか、そしてそれを間引くことによって更生し得るかどうかということを一つ調査していただきたい。しかも、その調査をするにいたしましても、こういう対策を講ずる、こういう従来の融資については責任を負うとか負わぬとか、あるいは将来の転業についてはめんどうを見るとかいうような条件をともかく示して、そしてその可能性を判定してみたらどうであろうかと考えておったのでございます。きっちりしたような線が出ておるのでございますが、実際は、個々のケースに当たってみて、ことしはどうすればどうなるか、また、組合側としても、ともかく将来の安定した農業経営をやる上にはうちの組合はどうしなければならないかということを十分に検討さした上であげてこなければ、単純には扱えない。ともかく一生をかけて入植した者でございますし、出ていくと申しましても、開拓は、よく、ぬるま湯だ、おっても寒い、出ても寒いと言われておりますように、言うべくしてなかなか容易にできませんが、手をつける、手をつけてことし一つ研究をしてみる、そして、ある程度条件を伸縮することによって実行できるという人については、一つ伸縮性を持って、少戸数でも扱っていただけないだろうかと思っております。
  126. 芳賀貢

    ○芳賀委員 先ほど 同僚の角屋委員から、開拓農協の実情や再建整備の将来についての質問があったが、ここでお尋ねしておきたいのは、昭和二十六年の農林漁業組合の再建整備法それから昭和三十一年の農業協同組合の整備特別措置法等が実施されたのですが、開拓協同組合の場合も、もちろんこれは農協法の規定に基づいてできておるのですが、すべての開拓協同組合が総合事業をやっておるわけではありませんが、しかし、この二つの法律の対象になるものというのは相当数あったと思うのです。従来この法律の規定等に基づいて開拓協同組合の再建整備等がはたして指定を受けて行なわれたかどうか、その内容等についてはどうなっておるかという点。  それから、もう一点は、都道府県によっては、都道府県にあるところの農業協同組合の府県の中央会の会員に開拓農協がなっておらないところが相当あるわけです。中央会の組織は、全国中央会にしても府県の農協中央会にしても、当然、協同組合の健全化をはかって、財務の十分なる充実をはかって、事業面についても強力な前進ができるようなことを主たる事業としてやっておりまして、特に、その経営面等については、この中央会が一つの事業目的でこれをやっておるわけでありますが、入っておらない開拓農協が多いということを私は聞いておるわけです。これは、開拓農協自身が理由があって中央会に加入しないものであるか、中央会の側において敬遠して入れないものであるか、そういうような事情もこの際つまびらかにしておいてもらいたいと思う。
  127. 井上徹雄

    ○井上参考人 御答弁申し上げます。第一点の件につきましては、再建整備法が制定されましたけれども、開拓単協におきましては、一単協も取り扱っていただいた単協はないのであります。県連におきましても、北海道連と全国開拓連とが乗っただけで、そのほかはほとんど再建整備には乗っていないというような状態でございまして、再建整備法の恩典は、開拓辰協に限り一つも受けていないということを申し上げてよろしいと思います。  第二点の、中央会加入の件でございますが、全開連は全中に加入しております。県関連のうち約半分くらいは加入していると思いますけれどども、ほかは加入してないわけでございます。どういうわけで加入しないかということを申し上げますと、中央会自体としましても、開拓の組合の指導とか経理の検査とかいうものに対して、特殊な政府資金のようなものとかあるいは政府の補助金の会計だとか経理だとかいうような関係上、これらの面に精通した職員の方が中央会におられない、こういう面から、開拓開拓連で一つやってくれということで、実際に中央会に加入しましても、開拓農協は何ら恩典を受けることができない、こういうような状態でございますために、開拓農協が中央会にほとんど加入していないというのが現状でございます。もっとも、これは、各県とも、北海道でもそうでございますが、農務部と農地開拓部のうちの開拓経営課というのが別個になっておりまして、その方で開拓農協の経理指導とかあるいは検査指導とかいいうことを大体行なっておる、こういうような関係も災いしているように思います。
  128. 吉川久衛

    吉川委員長 参考人各位には長時間にわたり本委員会の審査に御協力いただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げる次第でございます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十九分散会