○近藤
参考人 先日来
開拓三法の御
審議をいただきまして、非常にあたたかい思いやりのある御
審議をいただいておることを
開拓者が聞きましたら非常に喜ぶだろう、漏れなく伝えまして喜んでいただきたいと思っております。
前もって申し上げたいと思いますことは、今日の
開拓者の
考え方は、
償還金につきましては、
償還はぜひしたい、子供にまで借金を残したくない、しかしながら現状では払えないという
考え方でございます。決して、払わないでいいのだ、払わないで済ましたいというような
考え方はだれ一人として持っておりません。それから、いま
一つ申し上げたいと思いますことは、この
開拓事業が始まりました当座には、役所の方も、既農村ではできないこと、たとえば、むだを省き、また、協同の体制をとり、技術の交換をし合い、新しい
土地に新しい村を作るのだから、理想的なことをやってはどうかということで御指導もいただき、
開拓者もそういうつもりでやって参ったのでございますけれども、今日では、何だか
政府の方のお取り扱いがまるで貧農対策というふうに思われるわけでございます。困っておるから仕方がないというような
程度にとどまっておるのではないかという感じが免れないわけでございます。今度
政府から御提案になっております
開拓三法の改正
内容の
中心は
償還問題になっておるようでございます。この
償還問題が現在
開拓にとりまして非常に重大な問題である、
開拓者が日夜この問題に頭を痛めておるということはその
通りでございますけれども、あくまで、これは、一時待っていただいて、その間にどうして
経営を確立しようかということでございまして、御提案になっておりますのは、私どもから申しますと、うしろ向きの対策だ。私どもが
振興法制定以来念願しておりますことは、どうして積極的に早く
償還のできるような
経営内容に到達をしようか、早く
経営振興をはかりたいというような積極的な
振興対策を望んでおったわけでございます。
今まで入植いたしまして相当長年月たっておるのでございますが、今までに
開拓者が悩んでおりましたことを申し上げますと、お手元に
営農類型の変遷ということできわめて簡単に
資料が差し上げてあるのでございますが、一番最初にできました昭和二十三年類型の場合には、五戸に一頭の大家畜である、大体二町歩
経営をいたします場合に、豚は一戸に一頭、難は十羽だという
考え方で進んで参りました。入植後三カ年間に
経営資金が六万四千円出まして、それが打ち切りになっておりまして、どうにもそれでは
解決いたしませず、作物もとれない。で、私ども、五年ばかりたちまして、こういう穀菽
経営ではいけないということで研究会もいたしましたが、当時
農林省の方もお入り願いました
結論は、現在
開拓予算というものは食糧増産対策費で計上されておるのだから、穀物の増産ということで
経済効果が判定をされておるのだ、君方が言われるように
酪農であるとか
果樹であるとかいうような
経営形態では
予算がつかないから、しばらくそれを伏せておいた方がよかろうということを言われまして、
経営の転換ということを非常に心ならずも表面に打ち出し得なかったのでございます。二十七年に
営農類型が改定をされまして、従来五戸に一頭の役牛が二戸に一頭、豚が一頭でありましたものが二頭、鶏十羽は同様でございますが、ヤギ一頭は認めようということで、
営農資金も十七万七千円というふうに増加をいたしたのでございますが、私どもが現地でやりまして、やはりこれではどうにもならなかった。しかしながら、
酪農への転換ということが言えませんために、当時お願いをいたしましたことは、せめて一戸一頭の大家畜を入れていただきたいということが
開拓者の念願でございました。そのときに初めて、
政府の施策として、中期資金二年据置く・三年
償還・五分五厘をもって追加資金を融通してやろうというような制度が生まれたのでございます。ところが、やはり、
営農類型といたしますと、関東から西の方は穀物生産でいけるのだということで
酪農が認められませんで、この二戸に一頭というような家畜は役牛だ、乳牛の場合には六万円くらいの融資があったのでございますが、役牛の場合には二万八千円だということで、どうにも
経営が確立をしない。そのうちに、二十八年以来、穀物の生産にとっては年々連続冷害の被害を、ひどいところは三回、四回というふうに受けまして、
経営が非常に困難であり、借金が非常にかさんで参ったということでございました。今日の
開拓者の負債が、
新規入植者の方に比べまして非常に不生産的であった。ある
意味で申しますと不有効な負債が非常にたくさんある。ちょっと
考えますと、
既入植者はすでに相当年月がたっておるのだから、
新規入植者よりは
条件が悪い資金でもいいんじゃないか、追加資金だからこの
程度でできるのじゃないかというふうに
判断をされがちでございますけれども、
実態は、
既入植者の打っております負債というものはなくもがなの負債であった。生産性の足りない、極端に申しますと、施策よろしきを得ないでむだに費されて、ただ借銭だけがおおいかぶさってきた。そして今の
状態で再出発しなければならないという状況になっておりまして、
新規入植者の方よりは、負債があるだけにかえって苦しい。立地
条件も必ずしもよくないというのが実情であろうというふうに
考えております。
新規入植者の場合にはこうだが、
既入植者だからこの
程度の内輪の
償還条件の緩和であってもいいんじゃないかというふうにお
考えになるかもしれませんが、実情はその逆であろうかというふうに
判断をいたしております。
そういうふうな
状態で、
一般の対策の充実を求めておったのでございますけれども、年限がたっておりますので、一律に対策をするといってもそれはだめだ、画一対策はだめだぞと言われるものでございますから、
振興法を出していただいて、各戸に
経営を分析して、そうして必要なところに必要な限度で
経営対策を講じていただきたい、また、従来の
穀菽中心の
営農形態ではとうてい畑作は成り立たないので、この
形態を改めていただきたいということをお願いしたのでございまして、
振興法の成立を見、類型の改定を見たのでございますけれども、類型を改定されますときに、私どもに対して役所から、類型は改定するけれども直ちにその差額を大ぜいの
既入植者が
要求をするということでは困るから、その差額を
要求しないというような前提があれば類型は改定してやろうということでございました。
穀菽中心の
経営ではどうにもならなかったものでございますから、それの
条件に甘んじて類型を改定していただいたわけでございます。それから、
振興法につきましても、
新規入植については新類型でいきますが、
既入植者については、新類型の到達
目標である
所得三十五万という線は、そこまでは
振興対策では実施しない、それでけっこうでございます、最小限度の
要求、また、一番具体的にこの線よりは下がらないというようなことであればやっていただけるであろうというような
考えで、少なくも黒字転換の時期まで、現状
程度の
生活を維持しながら、
償還金の払えるという限度で、しかも各戸に
経営を分析いたしまして、必要な範囲内までということで、国会御
審議のときには、新類型に準じながら、あるいは新類型を横目でにらみながらというような表現があったのでございますけれども、
営農の
形態においては、私どもは、同じような場所同じような面積で同じような
経営をするためには、
経営形態は同じように認めていただけるのだ、ただ、各個人の相違であるとか、あるいは年限の相違であるとかいうふうなことによって差があるけれども、
考え方は同じような原則で、そこで個別的に適切に実施をされるものである、しかも限度は黒字に転換する時期まで、これであれば、どなたも、大蔵省も苦情がなく、確実に実行ができるだろうというふうに
考えたわけでございまして、十万四千戸の者が
計画を立てまして
振興農家というものが決定をしたわけでございますけれども、現在までに立てました
振興計画の到達
目標は、モデル組合の平均の到達
目標が粗収入三十四万円ということでございます。また、岩手の全県下の
振興農家の平均の到達
目標は粗収入三十九万六千円ということでございます。一方、
新規入植者の
営農類型の到達
目標は、二町歩
経営の場合には五十八万六千円という状況でありまして、
所得三十五万というものを
目標にしておられますが、黒字転換になる時期の粗収入でも大体五十万
程度でございますが、
振興計画で認められました最終
目標はおおむね粗収入で三十六、七万というような限度でありまして、
所得にいたしますと、新類型の半分ということが現状であります。これでも、ほんとうに現状
程度の
生活、
償還が確実にできるのであれば何をか言わんや、それでけっこうなのでございますけれども、実際は、
振興計画を立てます場合には、現行制度の範囲内で立てなさいというような行政指導が行なわれましたために、たとえば、新類型では小なくとも
酪農経営の場合には乳牛三頭までを認めよう、役牛であれば四頭までを認めよう、豚であれば四十頭、鶏であれば五十羽認めようということでございますけれども、
振興計画の場合には、無畜
農家を先へ解消するのだということで、たかだか二頭、おおむね一頭
程度の融資が原則でございまして、
経営形態においてこれで最小限度の目的が到達できるということになっておらぬのであります。これが今日の私どもの最大の悩みでございまして、履行延期していただいて時をかせいでいる間にこの
目標に到達をしたいということでございますが、必ずしも黒字に転換ができるという見通しがはっきり立っておらぬのであります。
それを何とかして
一つ合理的に修正変更を認めていただきたいということでございますけれども、現在の状況では、資金がふえるというような
計画の修正変更は認められない、現在出ておる
計画の到達すら
財政的に容易でないのだから、その
計画の修正変更というものは認められないと言われておるのでございますけれども、この履行延期をしていただいた年限の間に確実に
償還のできるような体制に到達いたしませんと、当初の
振興法で災害資金の履行延期を見ていただいたのでございますけれども、その期限がすでに到来をしておりますけれども、一方では
営農が
振興いたしておりません。利子補給も五年でいい、その町に
経営を
振興するんだから五年でよかろうということになっておったのでございますが、現状はほとんど動いておらぬのであります。また、こういう原則的な問題については将来
審議会で御
検討いただくということであろうかと存ずるのでございますけれども、少なくも現在では、
法律的にすでに昨年の三月に
計画の提出期限が切れておるんだから、今さら修正変更は認められないのだと言っておりますと、明年法改正になりましても実施は再来年からということになって、不合理な
計画のままで推移をしなければならないということなので、最小限度の
目標ということが正しければ、それを科学的に技術的に
検討しまして、そして、これなら確かにできるというようなしっかりした自信としっかりした見通しのもとにやって参りたいというのが
開拓者の偽らない念願でございます。
また、今回法改正の
中心になっております
政府資金の
条件緩和にいたしましても、今度の
法律によりますと、
振興農家で災害を受けた者だけということになっておりますが、御
承知のように、
振興法では、組合員の中で二十戸以上、あるいま過半数の人が
政府の定めた条例に該当しなければ形式的な
振興農家にはならないということに定められておりまして、別途
法律で
政府資金の
条件緩和が行なわれるのであれば、形式的な
振興農家に限らない、実際上
償還をしたくてもできないという者に対しては均霑をさせていただきたいというお願いをしたいわけでございます。
時間が過ぎましたので、
機会を得て他の
参考人の
意見に補足しましてまた他のことを申し上げてみたいと存じます。