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1960-03-09 第34回国会 衆議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月九日(水曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 吉川 久衛君    理事 秋山 利恭君 理事 田口長治郎君    理事 永田 亮一君 理事 丹羽 兵助君    理事 角屋堅次郎君 理事 小平  忠君       安倍晋太郎君    天野 光晴君       今井  耕君    倉成  正君       笹山茂太郎君    中馬 辰猪君       野原 正勝君    松田 鐵藏君       保岡 武久君    赤路 友藏君      茜ケ久保重光君    石田 宥全君       中澤 茂一君    西村 関一君       日野 吉夫君    山田 長司君       小松信太郎君    中村 時雄君  出席政府委員         農林政務次官  小枝 一雄君         水産庁次長   高橋 泰彦君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      林田悠紀夫君         農 林 技 官         (水産庁漁政部         漁船保険課長) 杉田 隆治君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  漁船損害補償法の一部を改正する法律案(内閣  提出第四三号)      ————◇—————
  2. 吉川久衛

    吉川委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。ただいま建設委員会で審査いたしております治山治水緊急措置法案について連合審査の申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 吉川久衛

    吉川委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。  なお、開会日時等に関しては委員長に御一任願いたいと存じます。      ————◇—————
  4. 吉川久衛

    吉川委員長 次に、漁船損害補償法の一部を改正する法律案議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。赤路友藏君。
  5. 赤路友藏

    赤路委員 ただいま議題になりました漁船損害補償法の一部改正について当局に賛同をいたしたいと思います。まだ十分勉強しておりませんので、一つ親切に御答弁をお願いいたしたいと思います。  まず第一点は、今さら私がこういうことを言うということはちょっとおかしいと思うのですが、保険本質論を少しお尋ねしてみたいと思うのであります。保険は共済とは違いますので、保険本質というものは、収支相等原則給付反対給付均等原則二つ原則の上に成り立つものだと私は考える。同時に、政府のやっておる再保険というものは危険分散のためにあるのだ、こういうふうに解釈をいたしております。この保険原則論の上に立ちますと、事故率、すなわち危険率が支柱となって純保険料算定されなければならない、これが私は保険原則だと思います。この漁船保険の場合におきましては対象の漁船を便宜上五段階に区分しているのでありますが、この外防層別危険率を基礎として純保険料が算出さるべきであると思う。従って、A階層B階層の純保険料が調整されるということは、保険本質を逸脱したやり方であると思います。今度の提案されてきておるものを見てみますと、各階層別危険率中心にして一応算定をして、それを今度は階層別のもので調整をとっておる、こういうことであって、これは保険本質論から言うと私は間違いだと思いますが、その点について一つ所見を承りたい。
  6. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 ただいま赤路先生から漁船保険本質の問題についての質問を受けたわけでございますが、まず最初に御指摘になりました保険本質としての二つの問題、収支均等の問題、給付反対給付均等の問題、この二つの点について御指摘を受けたわけでございますが、私どもも、保険という以上はその原則に基づくものであるということについては、そのように考えております。従いまして、そのような意味での保険事業を行なう場合におきまして、御指摘のように保険料率危険率に見合うということが原則だろうというふうに考えている次第でございます。ところが、現行漁船保険制度におきましては必ずしもただいま御指摘の点が十分理論的に構成されておりませんためにいろいろな障害がございましたので、このたび各漁船階層に応じた危険率に相応するような保険料率を定めるという原則に立ったわけでございます。  ただ、一点申し上げたい点は、理論はまさしくそうでございますが、しかしながら、現在私どもの実施しております漁船保険制度は、やはり底に流れるものは相互扶助的な理論があると私どもは思っております。従いまして、その点が、営利会社である保険会社がやる場合の保険と、各漁村を主体にいたしまして各県単位漁船保険組合を作ってやるわれわれの保険とでは若干違う。従ってあとでまた御質問によって御説明申し上げますが、以上のような保険理論には立っておるけれども各階層間の若干の相互扶助的な考え方はやはり現在の漁村から言って取り入れるべきであろうというような考え方で今般改定いたしたような次第でございます。
  7. 赤路友藏

    赤路委員 もっともらしい答弁なんですが、保険相互扶助といいますか、それはそれでいいと思う。ただ、今の答弁を開いてみますと、いささか当局としては逃げを打った答弁だ。各階層別過重部分が出てくる。この階層別危険率中心にして保険料を出して過重部分が出てきた場合は、国庫が当然負担してやるべきではないか。国庫負担を軽減するために、他にその過重部分負担せしめるということとは、保険本来のあり方としては間違っておるのじゃないか。これが階層別に何もしないで一木ぐるみのものならば、一応保険理論の上からはそういうことも言えると思いますが、少なくともこういうふうに附属別に区分する限りにおいては、私は、その階層別過重部分については国の方で負担を見てやるのが当然じゃないか、こういうふうに思います。
  8. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 御折摘保険に対する考え方はその通りだというふうに思いますが、ただ、国で負担する問題になって参りました場合に、あとで個々の問題についても御指摘があろうかと思いますが、たとえばこの負担率の問題にいたしましても、これは財政上の問題もありまして、あるいは漁業者側から見ますれば不十分ではないかという御指摘もあろうかとも思っておりますが、やはり、ただいまの赤路先生の御指摘部分は国が負うような方向に持っていきたいとは心がけますけれども、全部国が負担すべきものであるかどうかという点については、やはり財政上の問題もあわせて考えてやる万が現実的ではないかというふうに考えて構成したわけでございます。
  9. 赤路友藏

    赤路委員 今次長から御答弁がありましたが、財政上の問題というのはやはり一番大きな問題点だと思う。その上に立ってかような御措置をおとりになったと思います。そこで、その点は一応たな上げしておきまして、通常保険の場合、この表を見てみますと、従来の国庫負担率が五〇%、これが今度の改正案では六〇から四〇まで五段階になっている。こういうふうに改正されている。この五段階改正されたものを平均してみますと五一%。従来現行五〇%であったものが、階層別に六〇、六〇、それから五〇、四五、四〇、こういうふうになっているわけですが、平均して五一%。そうすると、改正案では通常保険の場合における国庫負担率というものは平均して一%上がっている。ところが、現行制度でもって三十五年度加入計画に基づくところの国庫負担額は提出された資料によりますと四億三千七百四十二万三千円、それが一%通常部分が上がりまして国庫負担率が四億一千四百五十九万円と約二千万円減になっているわけです。だから、結局財政上の問題でかような御処置をおとりになったとすると、これは保険本来のあり方というものを財政上の建前からくずしてきた、こういうことになろうかと思うのですが、この点に対する御所見を、承りたいと思います。
  10. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 問題はかなり数字の問題になりますので、まず漁政部長からの御説明を御聴取いただきまして、その次に私から申し上げたいと思います。
  11. 林田悠紀夫

    林田説明員 今回の三十五年度におきます国庫負担と従来の国庫負担と違います点は、仰せのように、従来は五〇%平均というので国庫負担をいたしておったのでございますが、今回は、無動力あるいは五トン未満を六〇%にいたしまして、二十トン未満を五〇%、五十トン未満が四五%、百トン未満が四〇%というふうに段階的にいたしました点と、その他に、異常危険率につきましては全額国庫負担をいたす、     〔委員長退席田口委員長代理着席〕 それから、新たに集団加入制度を設けまして、二十トン未満の船が五〇%以上加入しているというふうなところにつきましては義務加入国庫負担の半額の国庫首相をするということにいたしまして、国庫負担の額をふやしたということでございます。  それで、国庫負担は、やはり社会保障的な保険であるということと、加入を促進していきたい、特に小型船加入を促進していきたいというふうな見地から、この小型船の方の国庫負担をふやすというふうなことにしたわけでございます。  それで、数字的に申しますと、三十四十度の普通損守保険国庫負担額は三億七千八百五十六万八千円でございましたが、三十五年度は四億二千三百二万五千円の国庫負担をするということにいたしておりまして、五千万円ほどふえておるということに相なっております。
  12. 赤路友藏

    赤路委員 今の御説明によりますと、小型船が非常に危険率が多いし、現在加入が非常に少ないので、できるだけ加入をふやしていく、そのために小型船に対する国庫負担を増加しておる、こういう御説明であったと思います。それでけっこうなんです。それが本来の行き方だと思う。国の方で、そういうふうに、小型の無動力船であるとか、こういう危険率の非常に多いもの、しかも加入が非常に少ない、これを加入をより多くして、それで、できるなれば、先ほど申しましたような保険本質に基づいた、要するに危険団体の自足の原理といいますか、そういう形に成り立っていくようにバック・アップしていくということが正しいと私は思う。それを、国が財政上の建前から一部を大型船に負掛さすというのが今度のねらいになっている、これは間違っていはしませんか、こう私は申し上げるわけです。だから、これらの費用は国の方で負担をするというのがやはり正しいあり方ではないか。もちろんこれは財政を伴うことでありますから、水産庁だけの考え方ではいけない、大蔵省が納得しなければいけないでしょうが、私は、保険としての本質論からいきますれば、そうしたことをされるのが正しい行き方だ、こういうふうに思います。だから、今の部長の御説明のようにすでに小型においては国はそれだけの負担をしておる、しかしながら、その足らざる部分大型に転嫁しておるというところに問題がある、このことを申し上げておるわけであります。私の考え方保険理論から言って間違いない。今度おやりになっておるのは、財政上の観点から、現段階においてはそうせざるを得なかった、こういうことかと思うが、その点は一体どうか。
  13. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 純粋の保険理論に立ちますれば、赤路先生の御指摘通りだと私も思います。ただ、前段で申し上げましたように、現在のこの漁船中心に行なわれておる漁船保険制度は、やはり、保険理論の上に立ちながらも相互扶助的な考え方というものはあくまでも取り入れてしかるべきものというふうに考えるわけでございます。従いまして、赤路先生の御指摘になりました、大型船についての保険料率危険率と全く見合ったものにやればそれでいいではないかというような御指摘でございますが、そのような相互扶助的な点を考えますと、やはり事実上負担能力のある方にしょっていただいて、負担能力のない方々を少し軽減するというような相互扶助的な考え方は、現在の漁船保険の体系では許されてしかるべきものではなかろうか、このように考える次第でございます。  なお、現実の問題として、大型漁船の今後の保険料軒現行より高くなるということであれば、まさしく御指摘のような点を処置しなければならないわけでございますが、これは、今度の改正で、危険率に見合ったふうに保険料率改正いたすために、大型船に対する保険料は事実上下がりますので、従いまして、その点から考えましても、若干下がりますから、もっと下げるべきかもしれませんが、下がる部分の幾分を上よっていただくということは、この限度であるならば、相互扶助的な考え方から申せば許されるし、また、そうするのが現在の漁村実情から言いまして、至当ではあるまいかというふうに考えたものでございます。
  14. 赤路友藏

    赤路委員 高橋さんの言うことは一応理屈があるようです。この相互扶助の精神にのっとって、余裕のある者が余裕のない者を見てやれ、まずしんぼうしてくれ、しかも、全体としては、改正後におけるところの自己負担分は、大型の船といえども、こういうふうに改正してもなおかつ自己質組分が少なくなるのである、こういうことだと思う。しかし、それはへ理屈というもので、保険本質論からいけば、それは通りません。そういうようなことをお考えになっておやりになるから、この分割払いであるとか、延滞利息の問題が出てくるわけです。だから、それだけ大型船負担をかけるから、どこかで大型船の抜け道を作ってやらなければならぬ。それが分創払いになり、延滞利子の問題になってきておる、こういうふうに私は解釈をしておる。この分割払いにいたしましても、この延滞利息の問題にしましても、これは業者の方からもいろいろ陳情があります。しかし保険本質論からいけば、保険料金をかけないでそうして保険給付を受けるなんて、こういうばかな理論はありません。それは理屈上はない。ただ、現在の漁業実態はそう四角四面に切ってはいけないような実態にあるから、この程度のことは現段階において認めざるを得ないだろうということなんです。これは保険本質論からいくと間違っております。しかし、現在の実情からはやむを得ない、こういうことだと私は思う。しかしながら、政府としては、そういうことに逃げを打つという態度であってはいけないと思う。やはり、保険というものの本質をくずさないようにこれを堅持していく、なおかつその中で現状に合ったように適切なる措置をとってやるというのが、私は保険の本来のあり方だと思う。そういう面において、今度のこの法律は、やはり保険本質論からいくといささかおかしい点がある。これは財政上の問題がまず頭に来て、それのためにかかる措置をとらざるを得なかったのだ、こういうふうに、率直にこの法律を見せていただいて数字を見ました結果の結論はそこへ来ておる。これはやはり今後十分考えてもらわなければならない点である、こういうふうに私は考えますが、これはその程度においておきましょう。  それから、今度は、この異常危険部分については全部国庫の方で負担をする、こういうふうに踏み切っておられる。この異常危険部分国庫負担は大体どの程度になるとお考えになっておりますか。
  15. 林田悠紀夫

    林田説明員 普通損害保険につきまして、異常危険部分国軍負担は大体玉千万円近くになっております。
  16. 赤路友藏

    赤路委員 それから、この審議会答申の中に、付加保険料と純保険料経理を区分し財務の基準を明らかにする等の措置を講ずる必要があるという答申が出ておりますが、これに対する当局の方の所見対策等がありましたらお聞かせ願いたい。
  17. 林田悠紀夫

    林田説明員 漁船掛害補償制度調査会答申によりまして、経理区分を明らかにしていくということを方針といたしておる次第でございます。それで、今回の改正法案におきましては、百五条の二というのを新たに挿入いたしまして、組合は省令の定めるところによって特殊保険にかかる収入及び支出をその他の収入及び支出と区分して特別の会計を設けて経理しなければならないということにいたしまして、普通損害保険特殊保険を別会計経理するということにいたしたのでございます。ただ、もっと組合経理を厳格にいたしますために、たとえば普通損害保険会計の中におきましても保険勘定と業務の執行の勘定を別にするとか、いろいろそういうふうな方法もあるわけでありまするが、現在の保険組合実情ともにらみ合わせまして、あまり厳格な制度をとることもどうかというふうに考えまして、一応今回の改正案程度におさめたような次第でございます。
  18. 赤路友藏

    赤路委員 今の御答弁は少しどうかと思う。付加保険料の方は、これは事務費でしょう。だから、審議会考え方というものは、この事務費と、要するに保険料分と純保険料分を明確に区分せよ、それの方が望ましいということを言っておるのですね。だから、その方法は現在の段階においては組合実態からいった場合はまだその段階ではない、こういうことで理解していいわけですか。
  19. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 その点は、この間の調査会の方の御意見そのままその通り法律改正にはしておらないわけでございまして、その点で赤路先生の方でやはり理論的にもそうすべきではないかというふうな御趣旨の御指摘だと思いまするが、その点は、その後いろいろ保険組合実態から考えまして、この答申の線に沿うた方向で指導することには決してやぶさかではないのでありますが、まだ実態はそこまでいっておりませんので、漸次そういう方向に持っていくことにしまして、このたびの法律として規制するのはただいま漁政部長答弁のような線でやろうというふうな考え方をとったわけでございます。
  20. 赤路友藏

    赤路委員 それはその点で……。  次に、漁船保険特別会計なんですが、三十四年末の黒字が大体十億から十二億程度と予想される、この答申ではこうなっております。「昭和三四年度末には一〇億円を越す利益金が予想されるので」云々。そこで、保険振興基金を創設してはどうか、こういうことを答申しておるようでありますが、これに対する当局の方の考え方はどうですか。
  21. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 まず、御説明いたします前に、国の再保険収支、それからこのたびの制度改正後の再保険収支見通しについて若干御説明いたした方がよかろうと思いますので、そうさせていただきます。  普通保険勘定の単年度収支バランスは、各年度いろいろ変化があるわけでございますが、二十六、二十八、二十九の三カ年を除いては大体黒字となっておりまして、特に三十年以降は比較的保険事故が少なかったためと思われますが、三十三年度末の利益累計は約九億五千万円程度に達しております。また、三十四年度決算見込みではさらに二億五千万円ほどの利益が追加されるのではないかというふうに考えておりますので、今次の改正後の三十王年度には、順調に推移すれば約九千万円ほどの利益をさらに生ずる見込みでございます。従いまして、三十五年度以降は提案のようにいろいろと保険制度改正を行ないますために、従来のあれから申しますと、再保険料といたしましては約八千万円ほどの収入減になるわけでございますが、その他の積立金運用収入の一部の支出ということも別途考えておるわけでございまして、従来のようなテンポ黒字がどんどん累積していくというようなことはまずあるまい、従って、制度改正後は、単年度収支バランスでは、ときにはやはり赤字になることもあり黒字になることがあっても、長期的には従来のようなテンポ利益が累積されていくことはまずあるまいというような大体の見込みでございます。  しかしながら、一方、ただいま御指摘のように、特別会計利益剰余金をどのように運用するかということも一つ問題点でございますが、昭和三十五年度予算ではその点も考慮いたしまして約千七百五十万円ほどをそれと見合いに普通通常予算の方に計上いたしまして、その金は、小型漁船が特に危険率が高いというような現状にかんがみまして、小型漁船事故防止対策事業費補助金という格好でその累積された利益金に見合うような支出をやることといたしましたので、三十五年度予算につきましては、特に基金ということは考慮しなかったわけでございます。
  22. 赤路友藏

    赤路委員 今の御答弁によりますと、三十五年度以降は法の改正等によって約八千万円程度収入減になるということであり、その他、余裕金の中から一般会計の方へ千七百五十万円ほど入れて小型船事故防止をやる、こういう措置をとっているということなんです。そういたしますと、大体これで約一億、なお余裕金は相当ある、こういうことになろうかと思う。もちろん、二十八年、二十九年は普通保険の方が赤字になっておりますが、その後三十年以降今日までは大体漸減ながらもずっと黒字が上がってきている。私の考え方でいきますと、なるほど、小型漁船、特に無動力船事故率は、従来とも大きいし、今後もある程度出るだろうと思う。しかしだんだん船が改装され、それから近代化してくると申しまするか、従って船の事故本というものは全体としてはやはり逓減してくるということが本来の姿だと私は思う。従って今の状態でいって、たとえば説明がありましたように今度の改正で八千万程度の減だとしても、今のままで進みますとやはり将来にわたっては黒字が累積してくる、大きくなってくる、そういうふうに考えます。従って、その余裕金の使途というものは相当問題になると私は思う。特別会計にそれだけの黒字が出てきたとするなれば、保険料本を下げていくということをやはり基本的には考えるべきじゃないか。よく末端へ行って言われることは何かというと、やはり保険料率が高いということ。もう一つ問題になるのは、船価を見る保険金というのですか、これが五〇%ですね。ここでくぎづけになっているということ。ここにも問題がある。これは従来とも問題になっておった点だと思うが、今度の改正でやはりこの点はそのままおかれていると思う。だから、余裕が出てくれば、被保険者といいますか、保険にかかる漁家の立場というものを考慮に入れて、この余裕金というものを適正に配分していくことを配慮する、これがやはり考えられていかなければならぬのだが、今度はその点にはほとんど触れていないように思うのだが、それについて伺いたい。
  23. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 ただいまの保険料率と申しますか、危険率の今後の見通しの問題、従ってそれに対する余裕金見通しの問題、それからそれにからんでのいろいろな将来の問題が出てきたわけでございますが、私といたしましては、ただいま御指摘の大体の方向については異論がないわけでございます。全く御指摘通りだと思いますが、しかし、若干、数字にわたる問題が根本だと思いまするので、漁政部長説明を御聴取願いたいと思います。
  24. 林田悠紀夫

    林田説明員 赤路先世の御説の通りでございますが、再保険料収入は、三十四年度におきましては伊勢湾台風の大被害によりまして非常に減ってきておりまして、現在は二千万円くらいの黒字にとどまるじゃないかということを考えております。非常に減ってきている次第でございます。それで、現在三十四年度末で九億ないし十億くらいの黒字になると存じております。それで、今回の再保険料算定にあたりましては、従来の再保険料におきましては安全率をニシグマ見ておったのでありますが、今度は一シグマに減じました。そういうふうなことから、再保険特別会計黒字は従来よりは大いに減って参りまして、今後は先ほど申し上げましたように大体八千万円くらいの黒字にとどまるのではないだろうかということを考えております。  御説のように、漁船が技術がだんだん進歩してくるにつれまして危険も少なくなってくるということでございまするので、今後の推移を十分勘案いたしまして、御説のような方向に進みたいというふうに存じております。
  25. 赤路友藏

    赤路委員 次に、これはやはり答申の中にもあるわけなんですが、保険料分割払いです。分割保険料未収が多く云々というのがあるわけなんですが、現在この未収というのはどの程度ありますか。
  26. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 まず保険料分割払いの現況について御説明いたします。  一部の大型船などにつきましては、ただいま御指摘のように、保険料が高額に上るために、定款で三回以内の分割払いを実施している組合が多いようでございまして、相当額の未収が推定されておるようなわけでございます。  なお、この未収保険料の発生の原因は、先ほど御指摘のように、分割払いにありますので、その点の問題に触れて制度の方の調査会の方から御指摘があったわけで、やはりこの調査会の方の御指摘は正しいことでございまするので、その方向で指導いたしたいというふうに考えております。ただ、それを法制の問題としてどうするかということについては、現状においては少なくともなお慎重に検討する必要があろうということで、その点は見送った形になっておりますが、なお御要望の数字につきましては漁政部長より答弁いたさせます。
  27. 林田悠紀夫

    林田説明員 普通損害保険の再保険特別会計におきまして、再保険料収入未済は、三十一年度におきましては、過年度の未済額が四千三百六十四万七千円ございます。そうして、そういう過年度を入れまして三十一年度全体としての未済額は一億八千七百八十万円でございます。三十二年度になりまして、過年度の未済額が六千六百四十万円でございまして、三十二年度のそういう過年度を入れました全体としての未済額は一億五千十二万八千円になっております。三十三年度になりまして次第にこの未済額を少なくするということに努力をいたして参りまして、過年度の未済額が二千三百五十七万工千円になりまして、三十三年度全体としての未済額は一億一千六百十五万四千円ということになっております。三十四年度は十一月末の調べよりないのでございますが、過年度の未済額は四千三百六十三万六千円になっております。
  28. 赤路友藏

    赤路委員 今の御説明によります。と、三十一年度から三十三年度までは漸次それぞれ年末の未収金というものは少しずつではあるが減ってきているということだと思います。これはいい傾向だと思うのです。なお金額としては相当大きいものです。三十四年度のは十一月末ですからまだわかりませんが、これは少しふえてきておる。やはりこれで三十四年度末のものは一億前後のものになるかと思いますが、これは落とすのでなしに完全に納付せしめる見込みがありますか。
  29. 林田悠紀夫

    林田説明員 これは落とすことはできませんので、完全に納付さしたいと思っております。
  30. 赤路友藏

    赤路委員 納付せしめたいと思うということだけではいかぬので、これは完全にとれますね。
  31. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 これはとるように努めたいと思います。
  32. 赤路友藏

    赤路委員 ほとんどこれは大型船だと思いますが、この保険料分割払い答申の項目の中にも、やはり、本来の姿としては分割払いを認めない、こういうことをうたっておる。これは当然のことだと思います。と同時に、この答申では、例外的に現在の情勢においては分割払いということもやむを得ないだろう、そういうようなものを漸次保険本来の精神にのっとって軌道へ乗せていくようにしなければならぬということを答申しておるのだと思うのです。それでいいと思うのですが、そうすると、こういうような条件にあって、今度の改正案等でもこれは分割払いというものそれ自体を認めておるというのではないんだが、延滞利息の点を書かれておるということは、ある程度分割払いということはやむを得ないという前提の上に立っておる。そこで、問題はこの延滞利息になるわけです。本来の保険本質論からいきますと、これは延滞することがけしからぬのであって、だから、かりに何かの事情があって延滞したということになれば、相当な利息の高い延滞利子をとってしかるべきだと私は思うのです。ただ、現在の情勢においては、この審議会自体も言っておるように、また政府当局でも考え改正案にうたっておるように、そうとだけ四角四面に切れない点がある、こういうことで延滞利息の面では相当配慮をされておるということを認めざるを得ないが、今までと違ってやはり現行よりも延滞利息の面が上がってきておる。これは何か政令できまったのですか。三十五年度の日歩が一銭七厘、三十六年度二銭五毛、三十七年度二銭四厘、こういうふうに区分がされておるのだが、なぜこういうふうに区分したのですか。
  33. 林田悠紀夫

    林田説明員 再保険料の延滞金につきましては第百十八条の二で規定しておる次第でございます。これは、お説のように、やはり延滞金ということになりましたならば相当の金額をとるべきであるということになると存ずるのでありますが、現在の保険組合実情といたしまして、一挙にそういうふうなことにいたしますと、保険加入上種々の弊害を生じて参りますので、今のところそういうふうな商い金額をとろうということはいたさないことに政府部内では干し合いをつけておりまして、現在のところでは、この政令に書く延滞金といたしましては、三十五年度におきましては日歩一銭七厘二毛ぐらいを掲げております。それから、三十六年度におきまして二銭六下、三十七年度におきまして二銭四厘くらいにしまして、それ以後におきましても二銭四厘を最高限としてそれより上げないというふうな考え方を持っております。
  34. 赤路友藏

    赤路委員 三十五年度が一銭七垣二毛ですか、それから三十六年度が二銭六毛、三十七年以降は二銭四厘でずっといこう、そういうふうに刻んだ理由は一体何ですか。
  35. 林田悠紀夫

    林田説明員 これはやはり「再保険料未収の状況」にもありますように、特に保険組合におきましてその収支バランスにおきまして相当困難なところもございますので、一挙に二銭四厘に持っていくということにつきましてはいろいろ問題がございますので、順次上げていきたいというふうな考え方から、これを三段階に区分をいたしまして、三年目に二銭四厘にしようということにいたした次第でございます。
  36. 赤路友藏

    赤路委員 ここでまた私は振り出しへ戻ることになるのですが、この点へ来るとやはり当局の方の考え方に少し混乱があるように思うのです。ということは、当初申しましたように、保険本質論から言った場合のあり方からは、やはり財政上の見地からすれば今度のものはそれておる。これは認めざるを得ないと思う。そうすると、そのことのために危険率の分担というものを大型船に一部負担をかけておる、こういうことになるわけです。一部負担をかけたからそれの反対給付と言うと変になりますが、これは何か負担をかけたものにかわるべき代替として、分割払いを表面からは認めないが、延滞利息という面で分割払いを認めていく、こういう形をとる。分割払いを認めても、一年度はこれで一応一銭七厘という線で抑える。しかし、漸次これを高めていくんだということになると、私は、やはり、危険率の分担を大型船にさせておる代償というものの考えカからはそれてくると思うのです。だから、やはり、ここらの点は、これはやつちゃったのかどうかわからぬが、考えてみるべきではないか。理屈としてやはり混乱があると思う。本業の保険理論を正しくやっていくと、こんなものは三銭だって三銭五厘だってかまわぬ。保険料を納めないとか延滞するというのが間違いなんだから、それはかまわぬ。しかし、少なくとも現存の段階においてそうしたことはやり得ないということです。しかも無動力船危険率のある程度のものを大型船が分担をしておるという建前の上に立つなれば、ここまで当局が踏み切るのであるなれば、こういう段階的な措置をとるというのでなしに、一銭七厘なら一銭七厘、一銭八厘なら一銭八厘というところでさっと一本にして切るということがむしろ理論的には混乱がないやり方じゃないか、こういうふうに思う。これは今度の改正案でいう二銭五厘というところへどうして近づけようかとする苦心の現われだと思うのだが、そのやり方が私はどうも当局としてはとるべきじゃないのじゃないかと思う。
  37. 高橋泰彦

    高橋(泰)政府委員 ただいまの御議論については若干問題があろうかと思いますが、まず最初に、問題は、分割払いというのは一体どうして起こるかという点の問題があろうかと思われます。御指摘のように、保険料を払うというのは大型船にとりましては相当の金額でございますので、その際にいろいろ金融上の問題もありまして、漁期前に一括してその保険料を払うことができませんので、やむを得ず分割に依存していく傾向のあることは否定できない事実だろうと思います。従いまして、この問題は漁船保険だけの問題で解決しようとしてもなかなか困難でございまして、漁業全体についての金融の問題の改善をはかることがやはりこの分割払いの問題に対する一つの大きな解決の方向ではないかというふうに考えるわけであります。従いまして、この点は、まずその、原因から考えますと、なかなか保険理論だけで割り切るのは困難であろうというふうに考えます。しかしながら、赤路先生の御指摘のように、公判払いはやるべきでないという筋については、全く同じように考えられます。そのような事態でやむを得ない格好で分割払いが出てくるのでございます。これが保険を完全にやります場合にいろいろな障害になることは御指摘通りだと思います。ただ、大型船保険料率の一部を小型船に転嫁したから分割払いをすることになるのだという先生の御指摘でございますが、確かにそういったような原因もありましょう。しかし、その点、かりに危険率に見合う保険料率大型船舶についてとりましても、現在のような金融の情勢ではやはり分割の問題が残るというふうに思うわけでございます。従いまして、その点は、決して先生の御指摘のことを反駁する意味ではありませんが、この問題を解決するためには、漁船保険の問題だけではなく、もっと根本的な問題として別途にこれをバック・アップしなければ、この問題の解決はむずかしいというふうに考えておるわけでございます。  そこで、ただいまの具体的な若干の問題に入ります前に、まず分割払い組合のいろいろ数字的な問題については漁政部長より説明を御聴取願いたいと思います。
  38. 林田悠紀夫

    林田説明員 漁船保険組合は五十三ありまして、業態組合がそのうち七組合を占めております。この中で三十五組合は現存分割払いをいたしております。
  39. 赤路友藏

    赤路委員 今高橋さんから話があった、金融なり経営の改善が先行すべきだという点は、よくわかる。現在の段階においてはなお現実の問題としては分割払いを認めざるを得ない、それはそれでいい。ただ、問題は、延滞利子の問題です。延滞利子を三段階にかまえて、改正案でうたっておるような二銭五厘という最高限があるでしょう、ここへ持っていってどうして大蔵省の顔を立てるかという苦心の策が、三段階だと、こう言っているわけです。これは、三段階にして二銭五厘のところまで持っていくという考え方は、先ほど来言うところの大型船に対する危険率の一部負担という線からいくなれば違っておるのではないか。そういう方法をとらないで、これを一木にしてそっとしぼってしまう。そのしぼる場合でも二銭五厘にこだわる必要はないと思うのですよ。これにこだわるから問題がややこしくなるわけだ。これにこだわらないでそっと一木にしていくということが正しいのじゃないか、それの方がむしろ考え方に混乱がこないのではないか、こういうことを私は言っておるわけなんです。私の理論から言うなれば、当初言ったように、危険率を主体にして考えて純保険料率を出してくるという保険本来の立場からいくと、国の貧打というものがふえてくるのですよ。今までのあなたの方からお出しになった資料によって計算してみると、今度の改正では、今まで五〇であったものが、無動力船が六〇、五トン未満のものが六〇、五トンから二十トンが五〇、二十トンから五十トン、この間が四五、それから五十トン以上百トンまでが四〇というふうに五段階になっておる。これを資料に基づく危険率というものを中心にして国家負担率を見てくると、無動力漁船においては七五、五トンでは六八、それから五トンから二十トンでは六六、二十トンから五十トンでは三九、五十トンから百トンでは三四、こういうふうに当然国の方の負担分がふえてくる。これを抑えておる。この過重部分をむしろ転嫁しておるのですからね。そういう点を十分考慮の中に入れるなれば、二銭五厘という延滞利息にこだわる必要はないのじゃないか、私はこう育っている。それよりも、すきっと一本化した方が、受ける印象から言ってもいいし、協力態勢をとらす場合においてもその方がよりいいんじゃないか、こういうことを申し上げておるわけです。それはどうですか。これはまだここで承認をしていないのだからきまったとは言えないと思うのだが、もうこれ以上私は追及はやめますが、少なくとも考え方としてはそういう考え方を持ってもらいたい。だから、もう一応繰り返して申し上げますと、この場合はこういうような形である面においては一歩前進しておる。しかしながら、保険本質論からいくと歪曲された形になっておる。これは現在の漁業実態から見た場合やむを得ざるものと思う。しかし、それだけに、ある面にのみ負担を過重にするようなことをなくするように、やはり調整ということは十分考慮の中へ入れて対処しなければならない。これがやはり当局としての親心ある行政のやり方だと私は考えるので、さように希望を申し上げておいて、質問は終わることにします。
  40. 田口長治郎

    ○田口委員長代理 午前中はこの程度とし、暫心休憩いたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕