運営者
Bitlet
姉妹サービス
kokalog - 国会
yonalog - 47都道府県議会
nisalog - 東京23区議会
serelog - 政令指定都市議会
hokkaidolog - 北海道内市区町村議会
aomorilog - 青森県内市区町村議会
iwatelog - 岩手県内市区町村議会
miyagilog - 宮城県内市区町村議会
akitalog - 秋田県内市区町村議会
yamagatalog - 山形県内市区町村議会
fukushimalog - 福島県内市区町村議会
ibarakilog - 茨城県内市区町村議会
tochigilog - 栃木県内市区町村議会
gunmalog - 群馬県内市区町村議会
saitamalog - 埼玉県内市区町村議会
chibalog - 千葉県内市区町村議会
tokyolog - 東京都内市区町村議会
kanagawalog - 神奈川県内市区町村議会
nigatalog - 新潟県内市区町村議会
toyamalog - 富山県内市区町村議会
ishikawalog - 石川県内市区町村議会
fukuilog - 福井県内市区町村議会
yamanashilog - 山梨県内市区町村議会
naganolog - 長野県内市区町村議会
gifulog - 岐阜県内市区町村議会
sizuokalog - 静岡県内市区町村議会
aichilog - 愛知県内市区町村議会
mielog - 三重県内市区町村議会
shigalog - 滋賀県内市区町村議会
kyotolog - 京都府内市区町村議会
osakalog - 大阪府内市区町村議会
hyogolog - 兵庫県内市区町村議会
naralog - 奈良県内市区町村議会
wakayamalog - 和歌山県内市区町村議会
tottorilog - 鳥取県内市区町村議会
shimanelog - 島根県内市区町村議会
okayamalog - 岡山県内市区町村議会
hiroshimalog - 広島県内市区町村議会
yamaguchilog - 山口県内市区町村議会
tokushimalog - 徳島県内市区町村議会
kagawalog - 香川県内市区町村議会
ehimelog - 愛媛県内市区町村議会
kochilog - 高知県内市区町村議会
fukuokalog - 福岡県内市区町村議会
sagalog - 佐賀県内市区町村議会
nagasakilog - 長崎県内市区町村議会
kumamotolog - 熊本県内市区町村議会
oitalog - 大分県内市区町村議会
miyazakilog - 宮崎県内市区町村議会
kagoshimalog - 鹿児島県内市区町村議会
okinawalog - 沖縄県内市区町村議会
使い方
FAQ
このサイトについて
|
login
×
kokalog - 国会議事録検索
1960-03-01 第34回国会 衆議院 農林水産委員会 第6号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十五年三月一日(火曜日) 午前十一時七分
開議
出席委員
委員長
吉川
久衛君
理事
秋山
利恭
君
理事
田口長治郎
君
理事
永田
亮一君
理事
本名 武君
理事
芳賀 貢君
理事
小平 忠君 今井 耕君 金子 岩三君 倉成 正君
笹山茂太郎
君 田邉 國男君
高石幸三郎
君 綱島 正興君
赤路
友藏
君
茜ケ久保重光
君
足鹿
覺君 石田 宥全君 中澤 茂一君 日野 吉夫君 松浦 定義君 山田
長司
君
小松信太郎
君
中村
時雄
君
出席政府委員
防衛庁参事官
(
防衛局長
) 加藤 陽三君
外務事務官
(
アジア局長
)
伊關佑二郎
君
農林政務次官
小枝 一雄君
農林政務次官
大野
市郎君
農林事務官
(
畜産局長
)
安田善一郎
君
水産庁長官
西村健次郎
君
水産庁次長
高橋 泰彦君
海上保安庁長官
林 坦君
委員外
の
出席者
外務事務官
(
アジア局北東
アジア課長
) 中川 豊吉君
海上保安官
(
海上保安庁警
備救難監
) 松野 清秀君
海上保安官
(
海上保安庁警
備救難部長
) 樋野
忠樹
君 参 考 人 (
永田水産所属
第五
八幡丸甲板
長)
永田利一郎
君 専 門 員 岩隈 博君
—————————————
二月二十七日
委員茜ケ久保重光
君及び
足鹿覺
君
辞任
につき、 その
補欠
として
木原津與志
君及び
永井勝次郎
君 が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同 日
委員木原津與志
君及び
永井勝次郎
君
辞任
につき、 その
補欠
として
茜ケ久保重光
君及び
足鹿覺
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同月二十九日
委員中村時雄
君
辞任
につき、その
補欠
として受
田新吉
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 三月一日
委員受田新吉
君
辞任
につき、その
補欠
として中
村時雄
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。
—————————————
二月二十四日
開拓営農振興臨時措置法
の一部を
改正
する
法律
案(
内閣提出
第七三号) 本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の
会議
に付した案件
参考人出頭要求
に関する件
養鶏振興法案
(
内閣提出
、第三十一回
国会閣法
第一八五号)
漁船損害補償法
の一部を
改正
する
法律案
、
内閣
提出
第四三号)
農林漁業金融公庫法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第四四号)
果樹農業振興特別措置法案
(
内閣提出
第四五 号)
漁業協同組合整備促進法案
(
内閣提出
第六一 号)
中小漁業融資保証法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
第六二号)
農林水産業
の
振興
に関する件(第五
八幡丸事
件) ————◇—————
吉川久衛
1
○
吉川委員長
これより
会議
を開きます。 この際、
参考人出頭要求
に関する件につきましてお諮りいたします。すなわち、第五・
八幡丸事件
について、本日当
委員会
に、第五・
八幡丸甲板長
で第五・
八幡丸
の
船長代理
をいたしております
永田利一郎
君を
参考人
として
出頭
を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
吉川久衛
2
○
吉川委員長
御
異議
なしと認め、さよう決定いたします。 ————◇—————
吉川久衛
3
○
吉川委員長
次に、本日までに付託になりました
内閣提出
の
漁船損害補償法
の一部を
改正
する
法律案
、
農林漁業金融公庫法
の一部を
改正
する
法律案
、
果樹農業振興特別措置法案
、
漁業協同組合整備促進法案
、
中小漁業融資保証法
の一部を
改正
する
法律案
を
議題
とし、まず
政府
に
提案理由
の説明を求めます。
大野政務次官
。
—————————————
大野市郎
4
○大野政府委員 ただいま議題となりました
漁船損害補償法
の一部を改正する
法律案
の
提案理由
を御説明申し上げます。 昭和二十七年現行の
漁船損害補償法
が
漁船保険法
にかわって
制定施行
を見て以来、
保険加入隻数
は
義務付保制度
が
漁業経営
の安定をはかる上に果たす役割はますます
重要性
を加えて参っておるのであります。しかしながら、翻って
制度運営
の現状をしさいに検討いたしますと、なお
小型船
の
加入率
が低いため、
沿岸漁業者
の経営の安定が十分には実現されていないほか、
小型船関係
と
大型船関係
との間に
保険料率
が不均等を示している等、
漁船保険事業
の健全な発展を阻害している点が見受けられるのであります。従いまして、政府は昨年五月、
農林省
に臨時に
漁船損害補償制度調査会
を設け、制度の改善策を諮問いたしましたところ、その
調査審議
の結果、九月に至り、同
調査会
から制度の改善に関する答申が提出されたのであります。政府におきましては、この答申を基本として、この
法律案
を立案し、今回提出した次第であります。次にこの
法律案
の内容について概略御説明申し上げます。 第一点は、
料率体系
の
合理化
をはかるため、
普通損害保険
及び
満期保険
の
普通損害保険
について
保険料率
及び再
保険料率
の
算定基準
を法定したことであります。現行の元
受純保険料率
によれば、
保険収支
は、
大型船関係
では黒字、
小型船関係
では赤字となっておりますため、
小型船
の
引き受け意欲
が低調であり、また、
小型船
を主体とする
保険組合
においては、経営の困難、
執行体制
の
脆弱化等
の事態を招いている状況であります。従いまして、純
保険料率
は
危険率
を基礎とし、
保険収支
の
長期均衡
を目的として定めるべき旨の規定を設け、この点の更生をはかり、
小型船
の
積極的引き受け
に対する
保険組合
の体制の整備を期することとした次第であります。また、
現行制度
におきましては、再
保険料率
は純
保険料率
と同率とすると規定しているのでありますが、本来、再保険と元受保険とは
危険分散
の範囲を異にしている点にかんがみ、両者を切り離して定めることとし、再
保険料率
の
算定基準
を純
保険料率
とは別個に法定することにいたしました。すなわち、再
保険料率
は、台風その他の異常な
天然現象
にかかる
危険率
を基礎として各
保険組合ごと
に算定される以上
危険部分
の率と、再保険本来の
全国分散
の建前にに立って
全国平均
の通常の
危険率
を基準として算定される
通常危険部分
の率とを合計した率といたしたのであります。 第二点は
保険料
の
国庫負担
の方式を改善したことであります。
現行制度
においては、義務によって保険に付された
漁船等
について、そのトン数の大小を問わず一律に一定の
保険金額
に見合う純
保険料
の二分の一を国庫が負担することとしているのでありますが、
経営規模
による
負担能力
の較差を考慮すれば、このことは必ずしも合理的ではないと存ずるのであります。従いまして、今回
漁業経営
の規模に応じて
国庫負担
の階層差を設けることといたしたのであります。すなわち、異常な台風その他の
天然現象
による
危険率
は
負担能力
の劣弱な
小型船階層
に特に高く、また、それが不可効力的な危険であることを考慮して、当
核異常危険率
に対応する部分の純
保険料
は
全額国庫
が負担することとするとともに、
通常危険率
に対応する部分の純
保険料
については一定の
保険金額
に見合う部分に対し漁船の規模の大小に応じ最高百分の六十から最低百分の四十までの割合を乗じた額を国庫が負担することとし、この部面においても
小型船階層
に対する
国庫負担
を増額する措置を講じたのであります。この点の改善によりまして、
義務付保等
の場合について右の
料率体系
の
合理化
に伴う
小型船階層
の
保険加入
の促進に資することとした次第であります。 なお、以上のほか、
義務付保
が成立しがたい場合において純
保険料率
の引き上げにより
小型船階層
の
任意加入
が阻害されることとなることを防止するため、
義務付保
以外の場合について一定数の
小型船
の加入が実現した場合には、これに対し
義務付保
の場合の二分の一に相当する
国庫負担
を行う措置を新たに講ずることとし、
小型船
の
保険加入
の促進について万全を期することといたしております。 第三点は、
義務付保
の単位となる地区の範囲の
明確化
及び
合理化
をはかったことであります。
現行法
におきましては、
義務付保
の対象となる地区を
漁業協同組合
の地区の変更當により
対象地区
の範囲が不確定となるほか、
漁業協同組合
の地区が重複し、または広域である等のため、
付保義務
の発生が不円滑となる場合もなしとしないのであります。従いまして、
義務付保
の単位となる地区は、
都道府県知事
が原則として
漁業協同組合
の地区と一致するように指定するものとして、
対象地区
の範囲の決定をはかるとともに、
漁業協同組合
の地区が重複し、または広域である等の場合には、
都道府県知事
は
漁業協同組合
の地区の一部を
対象地区
として指定することができることとし、
付保義務
の発生に円滑に行われるよう配慮した次第であります。 なお以上の三点のほか、
保険組合
の役員に関する規定、
保険関係
の承継に関する規定等についても、あわせて所要の改正を加えることといたしております。 以上がこの
法律案
の提案の理由及びその内容の概略であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。 次に、
農林漁業金融公庫法
の一部を改正する
法律案
の
提案理由
を御説明申し上げます。
農林漁業金融公庫
は、その設立以来七年、その前身である
農林漁業資金融通特別会計時代
をも通算いたしますとすでに九年間にわたり、
農林漁業
の
生産力
を維持増進するために必要な長期かつ低利の資金を融通して参りましたことは、各位のよく御承知のところであります。この間公庫の貸し付けて参りました資金の総額は昭和三十四年度末において約二千七百億円、その
融資残高
は約千八百億円に達する見込みでありますが、昭和三十五年度におきましては、前年度に引き続き
重要農林漁業施策
に即応して
農林漁業
の
生産基盤
の強化と経営の安定のに必要な資金の融通を行うこととし、
資本金
の増額、
業務運営
の
円滑化
、
融資条件
の
変更等
の措置を講ずるため、本
法律案
を提案した次第であります。 以下
農林漁業金融公庫法
の改正の内容について御説明申し上げます。 第一点は
資本金
の増額であります。昭和三十五年度における公庫の
貸付予定計画額
は五百十七億円でありまして前年度に比較して八十五億円の貸付を行うための原資は、年度内の
資金交付所要額等
を勘案いたしまして、
一般会計
からの
出資金
七億円、
産業投資特別会計
からの
出資金
七十億円、借入金といたしまして
資金運用部
から百二十八億円と
簡易生命保険
及び
郵便年金特別会計
から百三十億円、合計四百八十九億円となっております。以上の通り、政府が
一般会計
及び
産業投資特別会計
から七十七億円を出資することとなっておりますので、現行の
資本金
に関する規定を改正することといたしたのであります。 第二点は
貸付金
の
回収業務
の円滑な運営をはかりますため、公庫が、その業務にかかる現金を
郵便振替貯金
とし、まて
ゃ農林中央金庫
もしくは銀行に預け入れることができることとすることであります。公庫の業務の拡大とともに、公庫の直接貸しの事業量は年々増大してきているのでありますが、このような資金の借り入れを受けたものが返済いたします場合、
現行公庫法
によりますと
国庫代理店
である日銀またはその代理店を通じて返済するほかなく著しく不便でありますことから、借入金の返済にあたりましては、
郵便振替貯金
による送金の道を開くとともに、同様の趣旨から
農林中央金庫
または銀行に預金できることとし、これにより公庫の
貸付金回収事務
の簡素化をはかることとし、現行第二十六条の規定を改正することといたしたのであります。 第三点は、
土地改良
に必要な資金の貸付にかかる
貸付条件
の変更であります。御承知の通り、
土地改良
に必要な資金の
据置期間
は、
現行公庫法
上最長五年と定められておりますが、
都道府県営野土地改良事業
に対し貸し付けられる資金につきましては、
据置期間
は現行の五年ではなお短期に過ぎることから、この期間を七年に延長し、もってこれら
土地改良事業
の一そうの
円滑化
を期することとし、
土地改良
に必要な資金の
貸付条件
中
据置期間
に関する規定を改めるものであります。 以上がこの
法律案
を提案いたす理由であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。 次に
果樹農林振興特別措置法案
の提案の理由を御説明申し上げます。 今後の
日本農業
の発展に大きな役割を果たすことが期待される部門の一つとして
果樹農業
があげられていることは御承知の通りでありますが、最近における
果樹農業
の急速な成長は、この期待を十分に裏づけているものと思われるのであります。 今その成長率について見ますと、昭和二十五年度を一〇〇とした場合、昭和三十三年度には二四八・四とおよそ二倍半の伸びを示しており、またその粗
生産額
は昭和三十三年度において六七九億円に達し、その農業総
生産額
中に占める割合を見ますと四上二%という大きな比重を持っているのであります。 しかしながら、今後の
国民経済
の発展と
食糧消費構造
の高度化に即応した
農業構造
の確立と
農業経営
の近代化に資するためには、このような趨勢にある
果樹農業
をさらに安定した発展の軌道に乗せることが必要であり、このため国及び
都道府県
による積極的かつ総合的な対策を講じなければならないと考えるのであります。従いまして、政府といたしましては、別途
農林省設置法等関係法令
の一部を改正いたし、果樹に関する行政を総合的に
振興局
の所掌とするとともに、
振興局内
に新たに園芸課を設置することにより、
果樹行政
の
強化拡充
をはかるほか、生産、流通、消費及び輸出の各分野にわたり一段と総合的な施策を推し進めて参りたい所存であります。特に、将来の
果樹農業
の振興をはかるためには、流通、消費の改善と並んで、果実の長期的な需給の動向に即応しつつ果樹の適地において合理的な経営の確立をはかることが必要と考えられるのでありますが、今後の
果樹園経営合理化
の
基本的方向
は、適正な
経営規模
を維持しつつ生産から販売に至るまでの諸過程においてできるだけ
共同化
を促進することにあることにかんがみ、その
基礎条件
である
樹園地
の
集団化
と効率的な機械及び
共同施設
の導入を計画的かつ積極的に推進することが緊要と考えられるのであります。 この
法律案
は、右に申し述べました
樹園地
の
集団化
及び
農作業等
の
共同化
を推進することを目標として、果樹の計画的かつ集団的な栽培を促進するための
資金融通
の措置、その他
果樹園経営
の基盤の確立をはかるための措置を
法律制度
として確立し、
果樹農業
の健全な発展に資そうとするものであります。 以上がこの
法律案
を提出する趣旨の大要でありますが、次にその主要な内容を御説明申し上げます。 まず第一に、果樹の計画的かつ集団的な栽培を行なうことによって合理的な
果樹園経営
の確立をはかろうとする
農業者
の集団またはその組織する法人であって、その樹立にかかる
果樹園経営計画
につき
都道府県知事
の認定を受けたものに対して果樹の植栽その他に要する資金を
農林漁業金融公庫
から長期かつ低利の条件で融通することとするとともに、その場合の
貸付条件等
を規定しております。 第二に、資金の貸付を受けようとする者は、
果樹園経営計画
を作成して
都道府県知事
の認定を受けることとし、その
経営計画
の内容及び
都道府県知事
の
認定基準
並びに
認定申請
の期間を規定しております。 第三に、国及び
都道府県
による
果樹園経営計画
の作成またはその達成のために必要な助言及び指導その他
果樹農業
の振興のために必要な援助についての規定を設けております。 第四に、
農林省
に
果樹農業振興審議会
を設置して、
果樹農業
の振興に関する
重要事項
について
調査審議
させることといたしております。 第五に、以上と関連して、附則で
農林省設置法
および
農林漁業金融公庫法
に所要の改正を施しております。 以上がこの
法律案
のおもな内容でございます。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願いする次第であります。 次に、
漁業協同組合整備促進法案
の
提案理由
を御説明申し上げます。 昭和二十四年二月現行の
水産業協同組合法
が施行されまして以来、
漁業協同組合
の
組織化
は着実に進み、沿海の
地区出資組合
の数は三千百
余組合
に達しており、これらの組合が
沿岸漁民
の唯一の
協同組織
としてその経済的・
社会的地位
の向上と
生産力
の発展をはかる上に果たしている役割は、ますます
重要性
を加えて参っておるのであります。 しかしながら、これらの
漁業協同組合
の中にはなお多くの経営の不振な組合が存在しているのでありまして、これら
不振組合
の整備を早急にはかり、もって
漁業協同組合
の本来の使命の遂行に遺憾なからしむる必要があるのであります。このことにつきましては、第二十四国会における
衆参両院
の
農林水産委員会
及び第三十一国会における
衆議院農林水産委員会
におきまして、
漁業協同組合
の整備を促進するようにとの御決議があり、また、昨年十月の
漁業制度調査会
の
農林大臣
に対する
中間報告
におきましても、
沿岸漁業振興
のにない手としての
漁業協同組合
の
整備強化
をはかる必要性が強調されておりまして、政府といたしましても、これらの御決議等の趣旨を体しまして、鋭意その対策を検討いたした結果、今般この
法律案
を立案し、提出いたしました次第であります。 次にこの
法律案
の内容について概略御説明申し上げます。 まず、第一点といたしましては、事業の継続に著しい支障を来たすことなしにはその債務を弁済することができないいわゆる
赤字不振組合
についての整備の目標、その手続、
都道府県知事
の援助及び
弱小組合
の合併についての勧告等につき法定したことであります。すなわち、これらの組合がこの
法律案
の規定によって整備を行なおうとする場合には、
都道府県知事
が指定する日現在により組合の資産の適正な評価を行なって
貸借対照表
を作成し、これに基づいて
整備計画
を立て、これにつき、
都道府県知事
の認定を受けなければならないこと、
整備計画
の内容には、
組合員
及び
関係連合会
との利用及び協力を強化するための措置、
執行体制
の改善、増資等、組合の整備を進めるために必要な事項を定めねばならないこと、整備の目標としては、五年間に
固定化債務
の整理と
欠損金
の補てんを行なうべきこと等につき法定いたしまして、
組合整備
の実効を期することとした次第であります。また、これらの組合がその整備を進めますにあたりまして、
都道府県知事
が必要な助言またはあっせんができることとし、さらに、組合が有する過去の
欠損金
の補てんを容易にするため
法人税法
上の特例を設けることといたしております。さらに、
漁業協同組合
の整備の一環といたしまして、いわゆる
弱小組合
の合併につき
都道府県知事
が勧告をすることができるようにするとともに、合併を内部的に促進するため、
漁業協同組合
の
漁業権行使
に関する定款の設定及び変更についての特例を設ける等の措置を講ずることにいたしました。なお、
信用事業
を営む
漁業協同組合連合会
が整備を行なう組合の
組合員
に対して直接貸しを行ない得ることととし、組合の整備を側面から援助するための規定も設けることといたしております。 次に、第二点といたしましては、
漁業協同組合
の整備を助成するための組織として
漁業協同組合整備基金
につき定めたことであります。 組合の整備を促進するためには、前述の諸措置のほか、
信用漁業協同組合連合会
及び
農林中央金庫
がこれらの組合に対して有する債権の利息の減免を行ない得るようにすることが必要であるわけであります。従いまして、
漁業協同組合
の整備につき密接な関係を有しております
漁業協同組合連合会
、
漁業信用基金協会
及び
農林中央金庫
をもって組織する
漁業協同組合整備基金
という団体を設け、
整備基金
は、これらの者が出資する
出資金
及び国から無利息で貸し付けられる資金の運用益をもって、整備を行なう組合に対し利息の減免をした
信用漁業協同組合連合会
または
農林中央金庫
に対しまして、その
減免利息
の一部を助成する業務を行なうこととし、もって、これら
金融機関
の
整備組合
の整備に対する
協力体制
を強化しようとするものであります。また、
整備基金
は、この
利子補給
の業務のほか、
合併奨励金
の交付及び
漁業協同組合
の整備に関する
指導業務
も行ない得ることとなっております。 次に、
整備基金
の内容についてでありますが、前述のように、
整備基金
に出資し得る者は
漁業協同組合連合会
、
漁業信用基金協会
及び
農林中央金庫
でありまして、これらの
出資者
は、
出資者総会
において役員の選任及び定款の変更、
業務方法書
の設定、
変更等
についての議決をすることができることとなっております。また、国は、
整備基金
に対して、その業務の運営に必要な経費の財源の一部をその運用によって得るための資金を無利息で貸し付ける旨を定め、
整備基金
の業務の
財政的基礎
を強固にするための措置を行なうことにいたしております。その他、
整備基金
の財務に関しまして
出資者配当
の禁止等の規定を設けましたほか、所要の監督及び
罰則規定
を設けまして、
整備基金
の運営が健全かつ円滑に行ない得るよう配慮いたしました次第であります。 以上がこの
法律案
の提案の理由及びその内容の概略であります。何とぞ、慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。 次に、
中小漁業融資保証法
の一部を改正する
法律案
の
提案理由
を御説明申し上げます。 昭和二十七年十二月
中小漁業融資保証法
が公布施行されて以来、現在三十九の
漁業信用基金協会
が設立されて、
中小漁業者
のためにその債務の
保証事業
を行なっており、その
保証累計額
は昭和三十四年十二月末現在で三百六十億円を上回り、
漁業金融
の
円滑化
のために大きな役割を果たしております。しかしながら、ひるがえって、本制度の運営の現状をしさいに検討いたしますと、債務の
保証額
が増加するにつれて
債務者
に対する
求償権
も次第に累増するに至り、これが回収の
円滑化
をはかることは
中小漁業融資保証事業
の健全な発展のためにきわめて必要なことになっているのであります。ここにおきまして、政府といたしまして、この
法律案
を立案し、提出した次第であります。 次にこの
法律案
について概略御説明申し上げます。
現行制度
によりますと、政府は、
漁業信用基金協会
とその保証につき保険する契約を締結し、この契約に基づき
保険金
を支払った場合には、協会が有する被
保証人
に対する
求償権
について、支払った
保険金
の限度で協会に代位して
求償権
の一部を取得し、さらにこの権利の管理及び行使を協会に委託することにいたしております。今回は、これを改めまして、政府が
保険金
を支払った場合においても、協会の被
保証人
に対する
求償権
に代位しないこととし、協会は、
求償権
の管理及びその行使にあたり、これにより回収した金額があるときは、その金額のうち支払いを受けた
保険金
とそれに対する利息との合計額に相当する金額を政府に納付しなければならないものとしたことが第一点であります。 第二点は、
漁業信用基金協会
は、
保証債務
を被
保証人
にかわって弁済をした後、三月を経過しなければ、政府に対して
保険金
の支払の請求ができないのが
現行制度
でありますが、これを一月に短縮した点であります。 第三点は、さきに申し上げました第一点の改正に伴う
経過的措置
であります。すなわち、政府は現在すでに代位により取得した約四億円の
求償権
を所有しておりますが、この権利は、その管理及び行使を協会に委託しております結果、改正後生ずる
求償権
と異なった取り扱いを受けることになりますので、これを避けるため、政府の所有している
求償権
を協会に譲り渡しまして、
求償権
の管理及びその行使の一元化をはかることにしたのであります。 なお、以上の三点のほか、第一点及び第三点の改正に伴い中小漁業融資保証保険特別会計法に所要の改正を加えることといたしております。 以上がこの
法律案
の提案の理由及びその内容の概略であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことを御願いする次第であります。
吉川久衛
5
○
吉川委員長
ただいま
提案理由
の説明を聴取いたしました五法案についての質疑は後日に譲ります。 ————◇—————
吉川久衛
6
○
吉川委員長
第三十一
国会
内閣提出
、
養鶏振興法案
を
議題
といたします。
—————————————
吉川久衛
7
○
吉川委員長
本案についての
提案理由
の説明聴取は、継続審査でもあり、すでに聴取いたしておりますので、これは省略いたしたいと存じますが、御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
吉川久衛
8
○
吉川委員長
御
異議
もないようでありますので、さように決します。
—————————————
吉川久衛
9
○
吉川委員長
次に本案についての質疑に入るのでありますが、別に質疑の通告もありませんので、質疑はこれにて終局をいたすることとするに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
吉川久衛
10
○
吉川委員長
御
異議
ないようでありますので、そように決します。
—————————————
吉川久衛
11
○
吉川委員長
この際本案に対し事由民主党、日本社会党及び民主社会党共同
提案
による修正案が
提出
されております。修正案はお手元に配布いたしてある
通り
であります。
—————————————
吉川久衛
12
○
吉川委員長
修正案の
趣旨
について
提出
者の説明を求めます。石田宥全君。
石田宥全
13
○石田(宥)
委員
私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党を代表して修正案を
提出
いたしたいと存じます。 修正案は、お手元に配付いたさせております
通り
、三十三
国会
同様の
趣旨
でありますので、その詳細の説明は省略させていただきます。 何とぞ前
国会
同様に御賛成を賜わらんことをお願いする次第でございます。
吉川久衛
14
○
吉川委員長
以上をもちまして修正案の
趣旨
説明は終わりました。 本修正案につきまして
国会
法第五十七条の三により
内閣
に対し意見を述べる機会を与えます。
大野
農林政務次官
。
大野市郎
15
○
大野
政府
委員
本案につきましては、慎重検討をいたしたい点もあるやにも思われますが、養鶏
振興
法そのものには異存はありませんので、本修正案が
国会
通過の暁は、これに
規定
する個々の
事項
については適切に
運営
をいたしたいと存ずる次第であります。
—————————————
吉川久衛
16
○
吉川委員長
これより修正案の質疑に入るのでありますが、別に質疑の通告がないようでありますから、原案及び修正案を一括して討論に入ります。 討論の通告がありませんので、直ちに採決に入ります。 まず、修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
吉川久衛
17
○
吉川委員長
起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。 次に、修正
部分
を除く原案について採決いたします。修正
部分
を除く原案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
吉川久衛
18
○
吉川委員長
起立総員。よって、本案は石田宥全君外三十九名
提出
の自民、社会及び民社共同
提案
による修正案の
通り
修正議決いたしました。 次に、お諮りいたします。ただいま議決いたしました
法律案
に関する
委員会
報告書の作成等につきましては
委員長
に御一任願いたいと存じますが、これに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
吉川久衛
19
○
吉川委員長
御
異議
なしと認めます。よって、さように決しました。 午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。 午前十一時四十分休憩 ————◇————— 午後一時四十一分
開議
吉川久衛
20
○
吉川委員長
休憩前に引き続き
会議
を開きます。
農林水産業
の
振興
に関する件について調査を進めます。 第五・
八幡丸事件
について
永田
参考人
に御出席をいただいておりますので、この際
参考人
に一言ごあいさつ申し上げます。 本日は御多用中のところ本
委員会
の調査のため遠路わざわざ御出席をいただきまして、まことにありがとう存じました。厚く御礼を申し上げる次第であります。第五・
八幡丸事件
に関しましては、本
委員会
といたしまして、わが国漁業の将来、また人道上の問題等より考えまして、きわめて深い関心を持っておる次第であります。従いまして、
参考人
の方には十分この点をお含みの上、あなたのお立場から忌憚のない御意見を承り、もって本
委員会
の調査に資したい所存であります。何とぞよろしくお願いいたします。 なお、
参考人
の御意見は初め十五分程度お述べいただき、あとは質疑によりお答えをお願いいたします。それでは、第五・
八幡丸事件
について、まず海上保安庁より本件の経緯等に関し説明を求めます。林
海上保安庁長官
。
林坦
21
○林(坦)
政府
委員
第五・
八幡丸
拿捕事件の経過につきまして御説明申し上げます。 海上保安庁第七管区本部からの報告によりますと、長崎県五島の
永田水産所属
の第五・
八幡丸
、これは五七・九一六トン、乗組員は十三名でございますが、第五・
八幡丸
は僚船第六・
八幡丸
とともに、二月十日の午前一時、五島の奈摩港を出港いたしました。十二日の朝四時ころ、農林二四五区の一——といいますと、二四五区の北東の
部分
でありますが、その付近で韓国警備艇八六七号艇——これは後にわかったのでありますが、韓国警備艇の追跡を受けまして、救助を頼む旨の通信を五島の奈良尾漁業無線局あてに連絡しつつ退避を開始したのであります。同時に、第六・
八幡丸
の方は別に逃走退避に成功したのでありますが、四時五十七分、韓国の警備艇に強行接舷されまして、警備兵一名が移乗して参りまして機関停止を命ぜられたのでありますが、これを押えましてなおも逃走を続けておりましたところ、五時三十八分、農林第二四五区の一で機関停止、ついに拿捕されるに至った。その後韓国の警備艇はこの船を連行いたしまして、済州島方面に向かう途中、八時十三分、第五・
八幡丸
は船体が傾斜いたしまして水船となり沈没に瀕しましたので、乗組員を韓国警備艇に強制移乗をさせられたというのであります。同船は、八時二十七分、ついに農林二四四区の九——北緯三三度七分、東経一二七度三四・三分の場所で完全に沈没した。韓国警備艇はその後第五・
八幡丸
の乗組員全員を収容したまま済州島向けに連行を続けた。というのがその概要であります。 海上保安庁といたしましては、当時、李ラインの特別の哨戒のために巡視船を六隻派遣いたしておりまして、警戒中でございました。事件
発生
の水域につきましては、二月十一日の午後五時三十分から警報を発令いたしております。なお、十二日の午前一時三十分、重ねて警報を発令いたしておりますが、朝の四時十四分から四時二十分にかけまして、そのうちの一隻——巡視船の「やはぎ」から、「あまくさ」という巡視船、これはその日の指揮船でありますが、「あまくさ」あてに、長崎県五島の
永田
水産の第五・
八幡丸
が韓国警備艇に追跡されている旨奈良尾の漁業無線局あて連絡しているという通報が入ったのであります。四時二十五分、「あまくさ」は巡視船の「つがる」、「あわじ」というのに対しまして、現場向けの方向を急行するように指示いたしますとともに、みずからも現場に急行したのであります。 その後第五・
八幡丸
は午前の四時五十八分から五時三十八分までの間に機関停止いたしまして拿捕されたのでありますが、拿捕されるまでその模様を通報して参っておりましたが、五時三十八分以後通信は途絶いたしまして、五時四十五分、「あまくさ」が第五・
八幡丸
を喚呼したのでありますが、応答がなかったので、拿捕されたものと判断いたしまして、さらに現場への急行を続けたのであります。 それから約一時間ほどたちまして午前六時四十五分、「あまくさ」は農林第二四五区の七という付近で、付近を済州島向けに第五・
八幡丸
を連行している警備艇を発見いたしましたので、これに接近しまして釈放方の交渉に当たらんとしたのであります。七時二十分、第五・
八幡丸
を先行させてそのあとを航行しておりました韓国警備艇の右横約三十メートルを「あまくさ」が追尾航行しておるのであります。七時二十五分、「あまくさ」が第五・
八幡丸
の至近距離に近づきましたところ、この警備艇は、本船の進路を妨害するなという信号を掲げまして、機銃のカバーをはずしまして巡視船に向けこれを擬した、こういう状況に立ち至ったのであります。「あまくさ」はその際一応距離を約五百メートルほどに離脱いたしまして、機を見て警備艇の右舷後方または真横の五十メートルから百メートルというところに接近しまして、釈放交渉に当たったのでありますが、相手は応答しない、こういう状況であります。この際視認いたしましたところでは、第五・
八幡丸
のブリッジに二、五名、後部に二名韓国側の警備員を認めましたが、第五・
八幡丸
の乗組員はその際認められなかったというのであります。八時十分に第五・
八幡丸
の船体が傾きました。八時十二分にはほとんど横倒しとなってしまったのであります。乗組員が上甲板に出ているのを見かけましたが、八時十三分、第五・
八幡丸
は沈没しかかりましたので、「あまくさ」はこの船に接舷を試みまして、乗組員の救助に当たるべく、第五・
八幡丸
の左舷一メートルのところまで接近し、あわや、これと接舷せんとしましたときに、一瞬警備艇の方がその向こう側で乗組員及び韓国警備員を強制収容いたしまして、「あまくさ」の釈放要求に応じなかった、こういう状況であったのであります。 八時二十七分から八時三十四分の間、第五・
八幡丸
は完全に沈没いたしました。付近海面には重油が一面に流れ、トロ箱その他が散乱しておったのであります。その沈みました場所は、北緯三十三度七分、東経百二十七度三十四分でございます。「あまくさ」は、沈没を確認いたしました後、韓国警備艇をさらに追尾をいたしまして、再三
漁船
の乗組員の釈放交渉に当たったのでありますが、韓国警備艇はこの要求に応じないで済州島方面に航行を続けました。 一方、八時四十五分ごろから「あまくさ」と韓国警備艇を見つけておりました巡視船の「つがる」は、九時四十分に警備艇との距離三十メートルまで接近いたしました。さらに、第五・
八幡丸
乗組員の釈放交渉を旗流信号によって行なったのでありますが、相手はこれに応答しない、こういう状況でございます。 その後、「あまくさ」と「つがる」は韓国警備艇の城山浦入港まで追尾を続けたのであります。午後一時に警備艇は済州島の城山浦に入港いたしまして、午後二時三十五分になりまして、再び出て参りまして、済州島の山地に向けて航行を再開した。「あまくさ」はさらにこれを追尾いたしますとともに、再度接近して連行漁夫の引き渡しを交渉したのでありますが、何ら応答なく、午後五時三十分に警備艇が山地の港口に達しましたので、やむなく交渉を断念して引き返したというのが当時の経過でございます。
吉川久衛
22
○
吉川委員長
次に、
永田
参考人
から当時の経緯等についての参考意見を承ります。
永田
参考人
。
永田利一郎
23
○
永田
参考人
わしらは二月九日の午後二十三時四十五分に奈摩港を出港しました。それから約四・五ノットぐらいでウエス・バイ・サウスへ航走しました。西風が十メートルぐらい出ておりました。そして十日午前九時に投網しました。その日は七メートルか八メートルの風で、四回操業しました。それから二四五区の三に行きまして、方向探知機で測定したところ、いつも来ているところに来ましたので、魚群探知機の測定などを見まして操業しました。十一日の晩十時ごろに、片船の春日船長が寒冒のために第六・
八幡丸
船長の木戸博美さんと僕が交替しまして、僕が六号を指揮してやっていたのです。そして十二日の午前二時五十五分に韓国の警備艇を発見しました。そのときは韓国の警備艇とはわからずに、三時ごろ確認したのです。それで第六・
八幡丸
に五十メートルぐらいに接近しました。そのときにはもう第五・
八幡丸
と第六・
八幡丸
は三十メートルぐらいにくっついておりまして、それで、ワイヤーを渡して、すぐ僕は第五・
八幡丸
の船首を回って船尾の方へ回りました。そうしたら、韓国の警備艇が右舷の方に回りまして第六・
八幡丸
を追跡しました。追跡してから五分か十分——無灯でしたものですから時計は見られずに、多分五分ぐらいだと思いますが、追跡されましてウエスの方に逃げました。それから、わきにおった第五・
八幡丸
の方に警備艇が転進した。そして進路をサー・ウエスの方に向けて走ってから、また進路を変えまして、サー・イースの方向からイース・ノー・イースへ転進して福江の北に入りました。それで、三時五分か十分ごろ第五・
八幡丸
と別れてから、その後はわからなくなったのです七 それまでの状況を図で説明しますと、発見したのは二四五区の三です。警備艇がここに来たときは、すでにワイヤーを六号から五号に渡して、エンジンをかけて、第六・
八幡丸
は回って、警備艇はここに来た。警備艇が回ったから、六号は逃げ出したら、ここまでついてきた。それで、六号はウエスの方に逃げて、警備艇はこう回って五号の方に来た。ここまで来たときは五号はすでに見えなかった。 これが九時に操業を開始した位置です。それから南の方へ三時間来まして、ここで揚網しまして、それからサー・ウエスの方に回りまして、サー・ウエスの方へ行きました。ここで操業しているのです。それで、その日は第五・
八幡丸
の船長が寒冒のために、第六・
八幡丸
の木戸博美が第五・
八幡丸
に乗船しまして、私が第五・
八幡丸
から第六・
八幡丸
に移動して第六・
八幡丸
の指揮をとりました。そして、ここで操業した後、午前二時五十五分に南の方へ走って、こんな状態になってきたのです。それで、来たから、韓国警備艇を六号はウエスの方に逃げて、それからサー・ウエスに転進しまして、サー・イースで二時間ぐらい、それからイース・ノー・イースと福江へ来た。 操業位置は魚群探知機で確認したのです。それで、女島の灯台と大瀬崎の灯台から出ている電波をキャッチしながら、この辺で操業しておったわけです。(綱島
委員
「その地図で言えば、壱岐はどの辺になりますか」と呼ぶ)壱岐はこの辺です。(綱島
委員
「対馬は」と呼ぶ)対馬はこの辺です。
吉川久衛
24
○
吉川委員長
本件について質疑の通告があります。これを許します。中
村時雄
君。
中村時雄
25
○
中村
(時)
委員
まず第一にお尋ねしたいのは、
八幡丸
の方の問題なんですが、
八幡丸
の方の第五、第六、どちらでもけっこうなんですが、海上保安庁の巡視船から無電連絡を受けましたか受けませんか。
永田利一郎
26
○
永田
参考人
無電を海上保安庁から受けたか受けないか、それはわかりません。無線上が受けて——翌十一日には奈良尾の無線局からは何か出たのですね。そういう無線士が受けたやつを船長に報告するわけです。
中村時雄
27
○
中村
(時)
委員
第五・
八幡丸
の方には無電を受ける装置があるのかどうか。
永田利一郎
28
○
永田
参考人
してあります。
中村時雄
29
○
中村
(時)
委員
そうすると、その韓国船があなた方を発見をし、追跡する、こういうことになってきたわけですが、その場合に、たとえば海上保安庁の方から、今こういう状態にあるからというような無電やそういうものは受けていないですか。
永田利一郎
30
○
永田
参考人
そういうことは私はわかりませんね。
中村時雄
31
○
中村
(時)
委員
海上保安庁にお尋ねしますが、その事前に無電を旧して警戒の警告をしておるかどうか。
林坦
32
○林(坦)
政府
委員
いたしております。先ほど御説明申し上げました
通り
、二回にわたりまして警報を出しておるのであります。
中村時雄
33
○
中村
(時)
委員
そういたしますと、この無電を受けておるということを本船に乗っておったあなたは全然知らなかったわけですか。
永田利一郎
34
○
永田
参考人
私は知りません。
中村時雄
35
○
中村
(時)
委員
そうすると、海上保安庁の方はその無電を出して、その後、これはおそらく第五・
八幡丸
との応答連絡があったと思うのです。そうすると、第六の方は、今言った
通り
参考人
が
船長代理
をしていらっしゃったが、それの御確認がないようでありますが、あなた方が打電をいたしました反応はどういうふうに現われてきましたか。
林坦
36
○林(坦)
政府
委員
警報は放送によってやっておりますので、各船はそれぞれそれを聞いておる、こういう状況でございます。
中村時雄
37
○
中村
(時)
委員
そのときに、第五・
八幡丸
からは、それに伴っての応答は何にも連絡はなかったわけですか。
林坦
38
○林(坦)
政府
委員
ございません。
中村時雄
39
○
中村
(時)
委員
受電後韓国の警備艇を発見したのは一体いつごろだったのですか。
林坦
40
○林(坦)
政府
委員
海上保安庁の船が第五・
八幡丸
を発見いたしましたのは、第五・
八幡丸
が韓国警備艇に連行されていく途中でございまして、朝の六時四十五分でございます。
中村時雄
41
○
中村
(時)
委員
第六・
八幡丸
の代理船長にお尋ねしたいのですが、韓国の警備艇は、先ほど地図で見ましたが、拿捕されたときの地図の中において、どういう方向から来て、こちらの船はどういう方向に逃げていくか。たとえば、この地図からいきますと、これはあとから御質問したいと思いますが、李ライン外——李ラインというものがあるなしは別として、一応仮定いたしますが、その李ラインの外から、ということは東になりますね。そして西の方に追い込まれていくような状態になったのかどうか。それを一つお尋ねしたい。
永田利一郎
42
○
永田
参考人
韓国の警備艇は東から来ています。それで、船をライン内に入れよう入れようとしていました。
中村時雄
43
○
中村
(時)
委員
保安庁の方でもその点は大体御確認されますか。
林坦
44
○林(坦)
政府
委員
それは私どもの方では確認いたし得ません。
中村時雄
45
○
中村
(時)
委員
もう一つ、今度は、
船長代理
にお尋ねしたいのですが、韓国警備艇は、そのときに点灯をしておったか。点灯に気がついたのは何分くらい前ですか。
永田利一郎
46
○
永田
参考人
点灯に気がついたのは五分くらい前であります。
中村時雄
47
○
中村
(時)
委員
保安庁にお尋ねしたいのですが、その韓国警備艇の速力は何ノットくらいか、あるいは、トン数はどのくらいになりますか。
林坦
48
○林(坦)
政府
委員
二百五十トンくらいで、十二ノットの速力を持っておりました。
中村時雄
49
○
中村
(時)
委員
点灯というものは甲種と乙種に分かれていると思うのです。警備艇の点灯しておったのは甲種の方に入っていますか乙種の方に入っていますか。
林坦
50
○林(坦)
政府
委員
甲でございます。
中村時雄
51
○
中村
(時)
委員
そういたしますと、甲種の光といったらかなり明るい光になるわけですが、大体どのくらいな距離からその灯というものが肉眼で見えるか、
船長代理
にお尋ねしておきます。
永田利一郎
52
○
永田
参考人
大体甲種は二海里以上くらい見えます。乙種では一海里以上であります。
中村時雄
53
○
中村
(時)
委員
そういたしますと、私はここで一つの疑義を持つわけだ。それはどういうことかといいますと、十一ノットとして五分間くらいなところで灯が見えた、こう言う。そうすると、肉眼で見ても大体三千六百メートルくらいなところは見えるわけだ。ところが、五分間に十一ノットで走らせてみたらどのくらいの距離になるかというと、千五百メートルくらいにしかならない。そうすると、実際は近距離に来るまでは点灯していなかったのではないかと推察されるのですが、それに対して
参考人
の方はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
永田利一郎
54
○
永田
参考人
それは、第五・
八幡丸
、第六・
八幡丸
をライン内に追い込もう追い込もうとして東から来るために点灯してきたのではないかと思います。
中村時雄
55
○
中村
(時)
委員
保安庁にお尋ねしたいのですが、今の速度の問題と、それから肉眼でそれを確認をしていったときの状態と、こういうことを考えまして、少なくともその以前には点灯せずして航行しておったのではないかと思いますが、これに対してどういうお考え方を持っていらっしゃいますか。
林坦
56
○林(坦)
政府
委員
こちらはその現場におりませんので、その事情はわかりません。
中村時雄
57
○
中村
(時)
委員
しかし、今申しますように、現場におらなかったからといって責任をのがれるのではなくて、合理的な、科学的な、そういう計算の上に立った場合には、そういう結論は当然あなた方は出すべき筋合いのものでもあるし、また、責任者としては当然その
内容
に立ち入るべき筋合いのものであろうと私は思う。そういうような立場から言って、あなた方はどういうふうなお考えを持っていらっしゃいますか。
林坦
58
○林(坦)
政府
委員
警
備救難監
にちょっと説明をさせていただきたいと思います。
松野清秀
59
○松野説明員 ただいまの点につきましては、おそらく
漁船
の力で普通の見張りをやっておれば当然見えたはずだと思います。また、当時の状況がよくわかりませんが、当時操業でもしておりますと、あるいは近寄っておるのを気がつかなかったというようなこともあり得ると思いますので、私どもとしては、ちょうど現場にいなかったので、その辺のところがはっきりはいたさたい、こういうことでございます。
中村時雄
60
○
中村
(時)
委員
あなた方は、警備をするために、護衛をするために、あるいはそういうようなことをしなければならぬのに、その事件が起こった結果について私たちはそういうことを見ていなかったから知りませんと、そういうようなことで一体ほんとうの責任が果たせるのですか。こういうふうに拿捕されている、船が沈んでいる、そういうようなことの確認の上に立って調査をし、そうして資料を整え、十分な一つの方向を外交として持ち出さなければならない。その場合に、私は現場におりませんでしたから知りません、こうおっしゃる。そういうようなことであなたの責任が務まるのですか。もう少し慎重に答弁をしなければ、また、それだけの資料を十分整えなくては、一体、対外的に相手と折衝するのに、はっきりしたことができないのじゃないか。それは良識の問題ですが、あなた自身は知りませんでそのことが済むと思っていらっしゃるのかどうか、あなたの良識に訴えてお聞きしておきたい。
林坦
61
○林(坦)
政府
委員
お尋ねの件でございますが、現場の状況をよくわからないでお答えするわけに参りませんので、私どもの方は、今お尋ねの件については、こちらはわからないと申し上げたわけでございます。
中村時雄
62
○
中村
(時)
委員
だから、そういうことは、実際にここに
参考人
もいらっしゃる、そうでしょう。そういうことはなぜあなた方寸身が責任を持って十分に調査をされるということをやらなかったかということを聞いておるのです。やっているはずでしょうが。
林坦
63
○林(坦)
政府
委員
漁船
の方に尋ねた調査によりますと、南の方に網を引いておるときに、千五百メートルから二千メートル付近で突然航海灯をつけ第六・
八幡丸
に向かってくる船影を発見したという報告がございます。
中村時雄
64
○
中村
(時)
委員
それがはっきりしておれば、今言ったように科学的に計算をしてごらんな
さい
よ。そうすると、突然という言葉を今あなたは吐かれた。突然ということは、その以前には点灯していなかったのじゃないかという推察ができると思う。どうお考えなんですか。あなたのような明敏な長官になれば当然のことですよ。
林坦
65
○林(坦)
政府
委員
発見したのは突然でございますけれども、それまで消しておったのか、それまで気がつかなかったのか、そういう点につきましては、ちょっとわからないのであります。
中村時雄
66
○
中村
(時)
委員
船長代理
にお尋ねするのですが、あなた方はその付近でやっているわけなんだから、常に韓国艇というものに対して警戒もし恐怖もしているのだろうと思うのですが、ふだんはどうなんですか。
永田利一郎
67
○
永田
参考人
わしらとしては安全操業区域と確認して操業をやっています。それで、警戒はしています。でも、ライン外で操業しているから絶対に安心だと思ってやっていると、突然、航海灯が見えずに、五分ぐらいになって見えたから、警備艇か何か確認——わきに来てから警備艇とわかったのです。
中村時雄
68
○
中村
(時)
委員
先ほど
参考人
もおっしゃったように、ほんとうに突然であったと思うのです。五分くらいなところということになれば、距離にしましても半分くらいなところです。 そこで一つ保安庁にお尋ねしたいのですが、国内法で海上衝突予防法というものがありまして、点灯することに国内法ではなっておりますが、国際法の方ではどういうふうになっておりますか。
林坦
69
○林(坦)
政府
委員
国際法上は航海安全に関する条約がありまして、それによって点灯するはずでございます。
中村時雄
70
○
中村
(時)
委員
どういう条約になっていますか。
林坦
71
○林(坦)
政府
委員
ちょっと調べさせていただきます。
中村時雄
72
○
中村
(時)
委員
もう一つ、これは
参考人
にお尋ねをしたいのでありますが、きょうの朝日新聞を見ますと、自沈をしたようなことが書いてあるんです。その自沈をしたという意味において、あなたが推察されて、自分の立場から言って、かりに第六・
八幡丸
が連行されたような場合に、あなた方はその第六・
八幡丸
に乗っていたわけでありますが、その場合に自沈をするような
理由
があるかどうかということをお尋ねしておきたい。
永田利一郎
73
○
永田
参考人
僕はそういう自沈させるとかなんとかは絶対認めません。自分が乗っている船を自分で沈めるとか、そういうことはだれが考えてもできないと思うのです。
中村時雄
74
○
中村
(時)
委員
きょうの朝日新聞を見ると、キングストンバルブを開いて自沈さすというような問題もちょっと出ているわけですが、バルブというものはエンジン・ルームの下にあるはずです。それを実際に開いてやっていくというのは時間的に見て食い違っている。とてもあの状況から判断してそういうことはできない。かりに自沈すると仮定しても、私はできないと思う。かりに強制的にそう言われた場合にはそういうことが行なえるかもしれないという推察を受けるわけですが、もう一度、今の
内容
から言って、あるいは乗組員の平素の行動から言って、自沈するような行動は全然ない、そうあなた自身ではお考えができますか。
永田利一郎
75
○
永田
参考人
それはできます。
中村時雄
76
○
中村
(時)
委員
もう一つお尋ねしたいのは、李ラインということは、私はどうも変に思っているし、日本でもそれを認めているわけではない。それはあとでお尋ねしますが、
参考人
にお尋ねしたいのは、あなたが的確に、一般に言われる李ラインの外において操業をしておったという確証はどこから出されるか、それを一つ。
永田利一郎
77
○
永田
参考人
それは、女島の方探局と大瀬崎の方探局で電波を発してもらって、それで船の方向探知機ではかって位置を出しましてまた、船には魚群探知機がありまして、瀬をはかってます。それから漁場を南西に移して操業しております。それで確実に二四五区の三であるということは認めます。
中村時雄
78
○
中村
(時)
委員
海上保安庁の方でもそういう御確認があるようでありますが、保安庁の方としては確かにこれはいわゆる李ライン外において操業をしておったものと確認されておるかどうか。
林坦
79
○林(坦)
政府
委員
位置につきまして今
参考人
の言ったのと違った説明を先ほどちょっといたしました。私は二四五の一付近ということを申し上げたわけであります。二四五の一も実はラインの外でございます。従って、われわれは無線で第五・
八幡丸
が奈良尾の無線局に打っておりましたのを傍受いたしまして、それを二四五の一付近ということでそこを捜索いたしたのであります。その船からみずからの危険を知らせる場合に、李ラインの内におるのに外におるという行動をするはずはないと思いますので、操業は李ラインの外におった、かりに多少の差異はあったにしても、さように考えております。また、現実の拿捕地点につきましては、一応「あまくさ」が韓国警備艇と第五・
八幡丸
を初思いたしました六時四十五分の地点、これの韓国警備艇の位置は李ライン内約一マイル半ほどの場所であります。この地点から逆算いたしますと、第五・
八幡丸
が五時三十八分韓国警備艇に拿捕された地点は李ラインの外であるとわれわれは認めておるわけでございます。
中村時雄
80
○
中村
(時)
委員
それで、
参考人
も保安庁も、一応拿捕された位置は李ラインの外であるということが科学的にはっきりしてきている。これは非常に重要な問題でありますので、第一点の御確認をしていただきたい。それはもうはっきりと確認をしていいですね。
林坦
81
○林(坦)
政府
委員
私どもはそういうふうに推定いたしております。
中村時雄
82
○
中村
(時)
委員
それで、韓国の警備艇が接近をしてくるときに銃撃をしたかどうかということを
参考人
にお尋ねしたい。
永田利一郎
83
○
永田
参考人
接近してくるときには銃撃なんかしませんでした。
中村時雄
84
○
中村
(時)
委員
銃撃ということは終始全然なかったわけですか。
永田利一郎
85
○
永田
参考人
それは、一時間ぐらい逃げるときに、照明弾は打ち上げられたのです。ほかの銃弾なんかを撃ったのは聞いてないのです。
中村時雄
86
○
中村
(時)
委員
そうすると、もう一つ
参考人
にお尋ねしておきたいのは、沈没をした
理由
、この
理由
というものは一体どこにあるかをお尋ねしておきたい。
永田利一郎
87
○
永田
参考人
私は、警備艇が第五・
八幡丸
の方に接触をしてきた際に、ブルワークのサイドの下の木材に当たって裂けたのではないかと思います。
中村時雄
88
○
中村
(時)
委員
ということは、どういうことなのですか。その目は風速が十メートルくらいあった、波の高低もきついのだというような立場から、接舷をしていった、こういうふうに御推定なさるわけなのですか。
永田利一郎
89
○
永田
参考人
そう考えます。
中村時雄
90
○
中村
(時)
委員
そうすると、海上保安庁の方では、どういうふうな御見解を持っていらっしゃいますか。
林坦
91
○林(坦)
政府
委員
接舷の際に衝撃破損を与えたということは事実であると思います。これは韓国側の口上書でも認めておることであります。「あまくさ」が接近しました際、船が傾斜し、そうした状況から見まして、これは衝撃によって沈んだものではないかと推定したわけでございます。
中村時雄
92
○
中村
(時)
委員
いま一つ、私、保安庁にお尋ねしたいのですが、保安庁の巡視船、現在の「あまくさ」、それが大体何トンでどのくらいな速力を持っているか。
林坦
93
○林(坦)
政府
委員
「あまくさ」は四百五十トン型の巡視船でございまして、スピードは十三ぐらい出るかと思います。
中村時雄
94
○
中村
(時)
委員
そうすると、ノット数にしてみたら、韓国の警備艇よりも日本の巡視船の方が速力は早いというわけですね。 そうすると、一つお尋ねしたいのは、その巡視船の中に備えておるところのレーダーによって、いち早く、警備艇が来るということのキャッチの仕方、そういうことができなかったかどうか。そのときの状況を、あの地図を見てもっとみんなに詳しくわかりやすいように説明していただけませんか。
松野清秀
95
○松野説明員 この地図に載っておりますが、午前四時当時の位置が黒いまるで示してありますが、そこに「つがる」の位置が載っておりますし、それから左の方の済州島の方にやや近い黒いまる、これが午前四時の「あまくさ」の位置であります。こういうような状況にありましたので、もし向こうの警備艇がこの中間を通って北の方から下がってきたとしますと、距離から申しまして二十海里くらい離れることになるかと思いますが、現在の巡視船が持っておりますレーダーのレンジは二十海里でございますけれども、実際はせいぜい十二、三海里という程度でございますので、そういう巡視船のレーダーのレンジの中をずっと通ってきますれば、もっと早く行動はつかめたと思いますけれども、おそらく当時はそういう巡視船のレーダーのレンジの外を通って南へ下がってきた、こういうことではないかと私どもは推察いたししております。
中村時雄
96
○
中村
(時)
委員
そこで、一つお尋ねしておきたい。今長官は、完全に李ライン外から操業しておって、それから拿捕されて李ラインの中に連れ込まれた、こういうような御見解をはっきり出していらっしゃる。おそらく巡視船に乗っていらっしゃる方々もそれは同様なことをそのときは考えておったと思います。そういう場合に、結果において李ラインに入っておったという問題よりも、原因においても李ライン外であったものであるという立場を考えた場合に、当然これを保護する立場においてそれに対処する処理ができなかったか。あるいは直接停船を命じて飛び込んでいくとか、いろいろな方法があったと思います。そういう点に対しては一体どういうようなお考えを持っていらっしゃるか。
林坦
97
○林(坦)
政府
委員
もちろん、李ラインの外であったということは、その巡視船も推定しておったでありましょう。ただ、問題の起こった場所は李ライン内でありますが、李ラインの内外ということは、実は、問題といたしましては、不法である点においてはわれわれは同じだと思っております。もちろん、この場合に、すでに拿捕されております
関係
上、何人かの人がすでにもう韓国警備艇に乗せられておるのであります。わずかに数人の者だけが第五・
八幡丸
に残って、そして連行されておる、こういう状況であります。巡視船といたしましては、極力これに接近して何とかこれを助け出すという方法をとるべく懸命の努力をいたしたのであります。もちろん、力及ばずしてついにこういう状態になったことはわれわれ遺憾でございますけれども、向こうから銃を擬せられても、なおかつ数回にわたって近づいて釈放の交渉をしておるという状況でございますので、決して手ぬるいやり方をしておるとは考えてはおりません。
中村時雄
98
○
中村
(時)
委員
ところが、今までにあなたのおっしゃるようなことは再三再四やっておるのです。相手を見きわめてあなた方もそこに出ておるわけであります。そうでしょう。その一つの例が、昔三十三年ですか、星丸事件を思い出してごらんな
さい
。五島のすぐ目の先です。日本の領域内であります。そのときに、引っぱられていって飛び込んでおるのを、しっかりがんばれといってほったらかしておる。それと同じですよ。ただ口で言う、あるいは手旗信号をやって、それによって相手が聞くものとあなた思っているのですか。あなたは懸命な努力をしたとおっしゃっておるけれども、懸命な努力をして話をつけて、手旗信号をやってそういうことで解決ができるとあなた方思っていらっしゃるのですか。その点はっきり聞きたい。
林坦
99
○林(坦)
政府
委員
もちろん、私どもも、これを救い出すために、あるいはさらにもう一段何か必要とするものがあるようなことは当然考えられるのでありますが、現在は韓国と交渉中でもございますし、われわれとしましては、韓国との用に武力をもってこれに対処するということにつきましては、国の方針としましてまだそういう段階でないと考えております
関係
上、現在のところにおいてなし得る最大の努力をいたしておるというのが
現状
でございます。
中村時雄
100
○
中村
(時)
委員
そのことはよくわかります。私も、何もわけのわからぬことを言っているんじゃない。そうすると、あなたは、もう一段段階が何かあるだろう、こういうお考え方を今出したわけなんですが、その何かあるというのは何を意味しますか。
林坦
101
○林(坦)
政府
委員
私の申し上げましたのは、国の方針が変わった場合のことを申し上げております。
中村時雄
102
○
中村
(時)
委員
それでは、あなたは、今のままの
現状
で、これれ歴然たる李ライン外でありますが、その外において引っ張られていっても依然として手旗信号式の方式をとられる、こういうことなんですか。
林坦
103
○林(坦)
政府
委員
現在におきましては、国と国とのこういう紛争問題でございますので、武力によって片づけるということは、まだ段階としてきまっていないという状況でございますので、現在におきましては従来の方法を続けていくよりほか仕方がないというのが
現状
でございます。
中村時雄
104
○
中村
(時)
委員
長官、これは今に始まったことじゃないんですよ。それを依然としてあなたが今のような方法でやっていくよりほかにないということになれば、相手が既成事実を作ってどんどん出てきたらどうしますか。どうぞ連れていって下
さい
、お義理的に手旗信号を出すしか方法がないとおっしゃるなら、いつまでたっても同じじゃないですか。もう少し何とか保安という上から考え方があろうと思うんです。
林坦
105
○林(坦)
政府
委員
どうも、先生の御質問は多少私どもの立場を誤解なすっていらっしゃるのじゃないかと思います。海上保安庁は大体国内の治安を維持することを使命といたしております。もちろん、海上における人命・財産の保護の立場からやっておりますが、私どもの方は平時における処置を担当いたしております。その辺をお考え願いたいと思います。
中村時雄
106
○
中村
(時)
委員
それでは長官にお尋ねしたいんですが、巡視船に対して今度は砲備をつけているということを聞いているんですが、現在砲備をつけていますか。
林坦
107
○林(坦)
政府
委員
海上保安庁の船は、国内の治安維持の
関係
から言いましても、砲ないし機銃等を積む必要もある場合を考えまして、すでに積んでおります。
中村時雄
108
○
中村
(時)
委員
砲を積んでおりますと言われるが、何も今の手旗信号方式でやっていくんなら、砲なんか必要ないんじゃないですか。それはどういう
理由
なんです。
林坦
109
○林(坦)
政府
委員
海上保安庁の船は国内のいろいろな治安を維持する上において必要とする装備をつけておるわけでございまして、これはまたさらに必要な場合に使うつもりでつけておることは事実でございますが、現在のところこの国際紛争の武力
行使
ということはやらない建前にしておりますので、積んではおりますけれども、李ライン方面では現在のところ使用していない、こういう状況でございます。
中村時雄
110
○
中村
(時)
委員
そうすると、保安庁の方では、国内的に問題が起こった場合は砲をぶっぱなして国民を傷つけるか、対外的な問題としては何もやっていない、こういうことなんですか。どうも私にはそういうふうに理解できる。
林坦
111
○林(坦)
政府
委員
国内的に申しましても、最近だんだん暴力化してきたので、いろいろな海上の治安を維持する上に必要とするものについてはやります。また、海上保安庁といえども、もちろん海上治安を維持する上において砲を使うということは、当然将来において考えなければならぬ問題だと思います。
中村時雄
112
○
中村
(時)
委員
どうもあなたのおっしゃることがつじつまがちっとも合わない。対外的には、手旗信号式に、あやまります。お返し下
さい
、そして、いけないと言えば、そうでございますかと、こう言う。それで実際中には砲も積んでおるという。その砲は何にするのかといったら、国内においても暴力化していくような傾向があるという。一体国内の暴力化というのは何を意味しているのですか。
林坦
113
○林(坦)
政府
委員
誤解があるかと思いますが、実は、砲の場合は、一面において海上において停船の信号等にももちろん使う場合がございますし、また、先般も実例がございましたけれども、九州の西方で非常に暴力的な密漁等が行なわれた場合がございます。そういった場合に現在の拳銃だけではとうてい及ばないという場合がございますので、そういう場合のことももちろん考えておりますし、また、その他機銃等につきましては、機雷を哨戒したりなどして、浮遊機雷等を撃つというような
関係
でもこれを使うために積んでおるというようなこともあるのでございます。
中村時雄
114
○
中村
(時)
委員
密漁やそんなものに対して、保安庁の四百五十トンからあるものに砲を積んで、そういうものにぶっぱなすということは実例がありますか。密漁をやっているのはしょっちゅうやっているのですよ。どうなんです。
林坦
115
○林(坦)
政府
委員
現在のところ、まだ使っておりません。
中村時雄
116
○
中村
(時)
委員
ただいまあなたのおっしゃっている内海における密漁に対してその砲を使うような実例が出てくると思いますか。どうです、はっきりしな
さい
。
林坦
117
○林(坦)
政府
委員
将来の問題でございますので、その点につきましてはまだわかりませんが、先般の九州方面におけるあの暴力的な密漁に対しては、何かそういう
措置
を講じてもらいたいということは、現地の方からも言うて参っております。
中村時雄
118
○
中村
(時)
委員
私の言っているのは、暴力的なことがあろうと、——そういうようなことは、今の漁民が非常に苦しい立場をとっているからいろいろな問題を起こしているのですよ。そういうような場合に自分の生活権を擁護するためにやむなくやっているのです。このことの事実は認めなければならない。そのことをどうするかということは、これは政治の問題、政策の問題ですよ。その場合に、現在日本の漁区で起こっているいろいろな紛争の問題において、あなたのおっしゃっているような大砲を使用するというような事柄が、推察でもなんでもいいから、起こるかどうか、考えてごらんな
さい
。それでもまだわからないですか。はっきりした答弁をしてごらんな
さい
。間違いなら間違いだったでよろしいから、はっきりしてごらんな
さい
。
林坦
119
○林(坦)
政府
委員
砲を積みました
関係
は、今申し上げましたような
趣旨
において積んだのでございます。ただ、国際的な事件の解決というものに武力を使うという場合には、国全体の問題でございます。私どもの海上保安庁だけで使える問題ではございません。
中村時雄
120
○
中村
(時)
委員
そうすると、李ライン内外を走り回っているときに砲は絶対に使いませんという、その砲だったらおろした方がいいでしょうが。もっとはっきりしてごらんな
さい
よ。ただ、今言ったような密漁程度のものに対してそんな大砲をぶっ放すとか、国内的のこっちに向けて土手っ腹に持ってくるとか、そういうことではなくて、もっとはっきりしてごらんな
さい
よ。必要があるのですか。一体、李ラインの周辺を走り回っているときに砲を積んでいく必要があるのかどうか、それをはっきりしてごらんな
さい
。
林坦
121
○林(坦)
政府
委員
問題は国の政策の問題であると思いますので、私どもはそういう事態があった場合に使い得るように積んでおるわけでございます。
中村時雄
122
○
中村
(時)
委員
国の政策だといって、あなた方はそういうものは必要があるのかないのか、あなたは長官の立場においてはっきりすることが第一点。第二点は、国の政策とおっしゃったなれば、国の方からそういう指示があって、大砲を積めとおっしゃられたのかどうか。その二つを……。
林坦
123
○林(坦)
政府
委員
海上保安庁の船に砲を積んでおりますのは、もうすでに数年前から積んでおることでございます。ただ、李ライン方面に行く場合に、トラブルが起こることを避けて今まで砲をおろして行っておったのであります。ところが、昨年の七月でございましたか、李ライン方面の問題が非常にやかましくなりまして、従来のあの方面に哨戒しております船だけではとうてい足りないというので、ほかの
地区
からも応援を相当出さなければならなくなりました。その際、ほかの
地区
の船の砲をおろして、そうしてまた李ラインへ出し、帰ってくればまた従来の装備に返るということが、非常に繁雑でもございますので、今後は李ライン方面といえども一応おろすことを今度はやめようじゃないかということで、そのままにして出るようにしたのでございます。
中村時雄
124
○
中村
(時)
委員
私は、あなたの御答弁にはどうしても納得ができない。どうしてかといったら、あなたは、人命にすら
関係
するような、人間が勝手に向こうに連れていかれるときに、指をくわえてぼやっと見ておる。そうでしょう。ところが、国際的にそんな重要なときに、実際には砲を積んで、向こうと問題が起こったらいけません、しかし繁雑であるから砲はそのまま置いておくんです、そんなばかな理屈が一体
通り
ますか。私は、ここにいる
委員
だって、おそらくわからないと思うんですよ。あなただけにはそういう解釈の仕方ができるかもしれないけれども、私には解釈のそのあなたの仕方というものは理解ができない。できないという
理由
は、今言ったように、砲を積んでおくということが、おろしたり上げたりすることが非常に繁雑であるからという
理由
によって砲をそのままにしておく、しかし、一方においては、国際間における非常に大へんな場合があるので実際にはその砲を——国際間の中で大へんな問題があるから、それゆえに人が引っぱられていくときはただ指をくわえて見ているだけにすぎない、こう言っている。それだったら、複雑な問題のあるなしにかかわらず、ほかに砲を積む必要はないのだから、砲をおろしましょうということがなぜできないのか。それくらいなことはわずかなものですよ。そうすると、あなたの意見は、私はそうしたくないと思うのだけれども、国の政策だからそれをつけな
さい
、こう言われているのかどうかということをお聞きしたい。
林坦
125
○林(坦)
政府
委員
砲を今度積むことにいたしましたのは、海上保安庁として考えて積むことにいたしたのでございます。今までおろしておりましたのも、海上保安庁としておるしておりましたが、これをおろさないことにしたわけでございます。
中村時雄
126
○
中村
(時)
委員
そうすると、あなたは、国際間におけるところの非常に緊張している度合いから、あるいはそういうようなものを持って、もしも万一のことがあったらいけないと、先ほど言っていらっしゃるわけですね。そうでしょう。そういうふうな状態の中に、はたして砲が要るんですかどうなんですか。
林坦
127
○林(坦)
政府
委員
海上保安庁は、また、まさかの場合にももちろん国の治安維持に当たらなければなりません。従って、砲を積んでおるということは、やはり砲の訓練なり何なりをする必要がある。そうすると、常時積んでおる船と、それからおろしておる船とあるのでは、その間に非常に不便でございます。従って、そういった不便をなくすること、また、そういった砲を用時保守その他において完全に保守をしていくという必要もありますので、砲をおろさないままでいくことにしたわけでございます。
中村時雄
128
○
中村
(時)
委員
ちょっとお尋ねしますが、砲の積み上げあるいはおろすこと、これはどのくらい時間がかかります。
松野清秀
129
○松野説明員 むろん一日でできます。経費も五、六万円でございますが、ただいま長官から申し上げましたように、この李承晩ライン方面に出ないという巡視船は、常時いろいろな射撃訓練とかやっております。保守も十分やります。ところが、出るたびにおろし、あるいは訓練するときにまた積むというようなことになりますと、手数ばかりでなしに、やはり保守の点で非常に不工合であるというような、いろいろな支障がございますので、そのまま出す、こういうことになったわけでございまして、積んで出ましても、従来からの拿捕防止のためには実力は
行使
しない、そういう一つの国の方針には変わりがない、こういうような状態 で積んで出しておるというのが現実でございます。
中村時雄
130
○
中村
(時)
委員
それでは、もう一つお尋ねしますが、一体李ラインの付近を巡航しているところの船というのは何隻あります。
林坦
131
○林(坦)
政府
委員
時によるのでありますが、——今御質問がはっきりしませんでしたが、海上保安庁の船でござ いますか。
中村時雄
132
○
中村
(時)
委員
海上保安庁の船が、今言ったように常に何隻ぐらい遊航をし、それから隻数としては何隻くらい持っていらっしゃるかということです。
林坦
133
○林(坦)
政府
委員
常時六隻が大体遊航しておりまして、そのために約二十隻近い船を充てておるわけでございます。
中村時雄
134
○
中村
(時)
委員
そういたしますと、おかしいですよ。六隻で二十隻、そうすると十四隻、それだけの船は別にあるわけです。もちろん、休ますときもあるでしょう。あるいは国内的な問題で遊航しているときもあるでしょう。そういうことになってくる。そうでしょう。そうすると、向こうに出ていくものの六隻に対して、今の砲の上げおろしはわずか一日でできる。十分の準備
期間
はとれるわけです。にもかかわらず積んでいく
理由
をもっとはっきり明確に申していただきたい。
林坦
135
○林(坦)
政府
委員
先ほどもちょっと御説明申し上げましたように、常時四隻程度でありますならば、船を固定しましても、十数隻でございまして、第七管区に所属する船だけで大体間に合う状態でございます。しかしながら、昨年からこれを
強化
いたしました
関係
で、ほかの管区から非常に入れかわりこれに応援を出す、こういう形で、現在延べにしますと二十隻くらいの船が行ったりきたりしている、こういう状況でございます。
中村時雄
136
○
中村
(時)
委員
とにかく、私は、これは納得のいかないことおびただしいと考えるわけです。 そこで、ただ一つはっきりしてきたことは、海上保安庁としては、今言った李ラインの中においても、相手方が不法に日本の漁民を引き連れていって拿捕する、その場合においては指をくわえて見ておるということがはっきりした。それは手旗信号やいろいろなことがあったでしょう。しかし、それにいたしましても、ただ指をくわえて見ているだけのことにしかすぎない。それによって保安庁としての意義があり、またそれによって自分の責任を果たしているものだ、さような長官の御答弁と解釈してよろしいかどうか、この一点をお聞きしておきます。
林坦
137
○林(坦)
政府
委員
私どもは決して指をくわえて見ておるわけではもちろんございません。(「結果はそうじゃないか」と呼ぶ者あり)それでは、けさの実例を申し上げますと、けさも李ライン内におきまして韓国の警備艇に日本の
漁船
がまさにつかまるところまでいったのでございますが、巡視船はその間に割って入ることができまして、幸いにこの船はのがれることができました。そういうふうに、幾たびか間に割って入りあるいは洋上交渉によって今まで救助に成功した例も幾つかあるのでございます。もちろんわれわれの方が現場に居合わせなかった場合につかまってしまった、その場合に、それを取り返すということになりますと、実力をもって取り返すことはなかなかできない実情でございますけれども、つかまる前でありますれば、急遽それに間に合う場合は、相当の
割合
においてこれを助けるということは今までにいたしております。また、海上保安庁の船は、あの方面に回りまして、常に韓国の船の動静をキャッチいたしまして、これを
漁船
に警戒警報として情報を流しておるのであります。この情報を確実に守ってもらっております船はつかまっておらないのであります。結局、この情報を十分に守らずにおった場合につかまったのが従来の例でございます。今度の場合のごときは、二隻ございまして、実際に聞いたか聞かないかよくわからない状況でございますけれども、われわれの方としては、李ラインの外にある程度距離を保って、警戒警報の出ておるときには十分に注意をしてくれるようにということは、非常にやかましく現地の漁業の方々に申し上げて御
協力
を願っておるようなわけであります。これに
協力
していただきました船は従来ほとんどつかまっておらぬというのが実情でございます。
中村時雄
138
○
中村
(時)
委員
それではお尋ねしますが、これは資料として
提出
していただきたい。一体、そういうような助けられたところの件数、そのことでまず第一にお尋ねしたいのは、李ライン内なのか外なのか、その件数、それから、その船名、期日、トン数、そうして、今言ったような李ライン内、李ライン外の
理由
、そういうことをはっきりと打ち出していただきたい。私は、あなたのおっしゃっていることは、まるで何といいますか非常に高姿勢になってそういうことを言っていらっしゃるが、しかし、その問題が解決できるのは李ライン外の問題だろうと思うのです。李ラインの外におるというような場合においてそういうふうに拿捕されなかったものだと私は思うのです。一般にいわゆる李ラインの中においてそういうような実例があるかどうか、そういうことも一つお尋ねしておきたい。
林坦
139
○林(坦)
政府
委員
いずれ資料を
提出
いたしますが、もちろん李ラインを越して韓国側の方でそういう事件が起こっておるのでございます。
田口長治郎
140
○田口
委員
関連。 海上保安庁の活動に対しましては、この近海で仕事をしておる漁業者が常に感謝をしておる状態でございます。その第一は、海上保安庁の船が、このラインあるいは内外を四そうないし六そう航海をいたしまして、そうして無電あるいは方向探知機で韓国の巡視船の位置を知る、そういうことで、第一回に出します一般警報、それから警戒警報、特殊警報、この三
通り
を出しておるのでございますが、ほんとうにまじめに各
漁船
が無電を聞いておりますと、その最後の警報は、少なくとも向こうの船で全速力で走りましても五時間しなければこちらの
漁船
に達しない、その距離において最後の警報を出すのでございますから、当然退避もできる状態になるのでございますが、これによって非常に安心して全
漁船
が仕事をしている、これは事実でございます。底びき船あるいはまき網、こういう船が非常に安心してやっておりますことは、これは海上保安庁の大きな働きであると思うのでございます。第二に、長官が砲を積む問題について非常に遠慮した答弁をやっておられると思うのでございますけれども、先ほどから同僚の
中村
委員
が話されましたように、ただ手旗信号あるいは無電で、人を返せ、こういうことでは何にもならぬじゃないかということ、これはごもっともな御意見でございましてこの場合に最も有効な方法は、
漁船
と韓国の警備船の間にこちらの船が割り込む、こういうことが一番有効適切な方法でございまして、非常に危険なことでございますけれども、そういうことをやってたびたび逃げさせるしあるいは助ける、こういうようなことをやっておるのでございますが、この場合に、
漁船
と韓国の船との中間に突っ込んでいくのでございますから、どうかいたしますと向こうの船が機関銃なんかを発射するような場合も、かつて一回私はあったと思うのでございまして、そういうようなこともありますから、決してこっちから撃つとか何だとかということではありませんけれども、自衛上ほんとうにやむを得ない、こういうようなことが想像されるのでございまして、向こうから散々撃たれる、そのままこちらは手も出せない、こういうようなことでは困るから、私どもといたしましては、少なくとも海上保安庁の船には、防弾的の設備もございますし、そうして向こうから撃ちまくられるときはこちらも撃つ、いわゆる自衛上やむを得ない、こういうような装置だけはしておいて
漁船
と向こうの船との間に割り込むことによってこの危機を打破する、こういうことが必要と思うのでございます。常にそこまで一つ思い切ってやってもらいたい。そうして、向こうからどんどん撃つ場合は仕方がないから自衛上こちらも撃てるような準備だけはしなければならぬじゃないか。こちらが撃つとか何だとかいうことについては、これは国の方針がきまらなければそういうことはできないけれども、今の場合において、中に割り込むためには、向こうから撃たれるときはこちらも防ぐ、これだけの設備をしなければならぬ。そういうことを主張しておる一人でございますが、この点をどうも長官は遠慮して答弁をしておられるようでございますから、申し上げる次第でございます。
吉川久衛
141
○
吉川委員長
長官、田口
委員
の発言に対して何か……。
林坦
142
○林(坦)
政府
委員
ただいま田口先生から海上保安庁の立場について御理解のあるお言葉がありました。私ども深く感謝申し上げております。私どもは、ただいまもお話のございましたように、現場における海上保安庁の保安官は、非常に危険に身をさらしながら、ともかく、自分の使命を全うするために、本百も、先ほども実例を申し上げましたような行為をやって
漁船
の保護をいたしております。また、それだけでなく、事前にこういう警戒警報を出しましてそれによって問題を事前に起こさないようにするということに極力全力を尽くしておるというのが
現状
でございます。なお、李ライン方面においては、とにかく数百隻以上の船があそこに就業しておるのでございまして、一旦この方面が非常に混乱状態になりました場合に操業ができなくなるというような場合を考えますと、軽率な行為はできないということから、われわれとしても非常に心を使いながらこの警備をいたしておる状況であることを申し添えさしていただきたいと思います。
中村時雄
143
○
中村
(時)
委員
あなたの答弁はわかったようなわからぬようなことを言っておるのですが、もっとはっきりさせていただきたい。 その意味において
防衛局長
にお尋ねするのだが、自衛上ということをよく言われるのですが、そこで、一つお尋ねしたいのは、私はこう考えているのです。要するに、領域内において相手方から発砲された場合には、自衛上発砲することができるかどうか、自衛権を
行使
することができるかどうか、その問題について一点お尋ねしたい。
加藤陽三
144
○加藤(陽)
政府
委員
私どもは日本の防衛という立場から考えておりますが、その立場におきまして考えました場合におきましては、急迫不正の侵害に対しまして、他にこれを防衛すべき手段がないという場合に自衛権が発動される、こういうふうに考えております。
中村時雄
145
○
中村
(時)
委員
私は、そういう意味において保安庁の中において今の巡視船に砲を備えつけたものである、こういうことならばはっきりしておることです。撃つ撃たぬは別として、おそらくその限界点がなかったら、砲をそこへ備えつけるという意味をなさない、私はそう考えております。これに対して保安庁の長官はどう考えておりますか。
林坦
146
○林(坦)
政府
委員
海上保安庁としましても、今
防衛局長
の言われたような場合における、急迫不正で他に方法がない場合には、自分の持っておるあらゆるものを使って防衛することはできる、正当防衛をすることはできると考えております。
中村時雄
147
○
中村
(時)
委員
そういたしますと、その巡視船の船長ならば、はっきりそういう認識を持っておりますかどうか。首をひねらなくても、あなた方が常にそういうことを教えておるわけでしょう。
林坦
148
○林(坦)
政府
委員
問題はその具体的の場合における状況によるのであります。従って、今の正当防衛の
権利
の問題になりますれば、あらゆる場合にできることは当然知っております。ただ、現在は、そういうふうにして紛争を起こすことを避ける意味で——ほかにあらゆる方法がない場合にはそういうことを申し上げましたけれども、現在のところは、とにかく折衝によって片づけるというふうに方針がきまっておりますので、それに従ってやっておるという状況でございます。
中村時雄
149
○
中村
(時)
委員
今の防衛
規模
の漸増からいって、あなたを
内閣
総理大臣にしたいくらいの立場ですが、それもなかなかできないことでしょうが、しかし、そういうことになれば、一点お尋ねしておきたいのは、今後においてこういう不祥事件——私はこれは不祥事件だと思っている。非常に議論が長くなりますし、あなたの解明では私は納得できませんが、不祥事件がこういうふうに
発生
した場合に、一体具体的処置はどうされますか。たとえば、田口
委員
が先ほど言ったように、その船に相手が飛び込んできて、あなた方保安庁の連中が連れていかれるということになれば、国論としては大きな世論となっれ現われてくるので、そのくらいの土性骨を持っていなければこの問題の解決はできないと思っている。にもかかわらず、手旗信号式の考え方をあなたは持っていらっしゃる。そういう立場を考えた場合に、今後こういうことが起こった場合に具体的にどう処理されるかということを一言お聞きしておきたい。
林坦
150
○林(坦)
政府
委員
こういうふうにつかまった場合は、外交交渉によって折衝するというのが従来までのやり方でございます。
中村時雄
151
○
中村
(時)
委員
依然として外交交渉でいくということになれば、今度のように拿捕されていったように状態で理屈がはっきりしておっても、やはり依然として手旗信号式で返してくれという訴えのみにしかすぎないんだ、結果においてそれがうまくいく場合もあり、いかない場合もあるでしょうが、いかない場合は万やむを得ないんだ、こういうことなんですか。
林坦
152
○林(坦)
政府
委員
現在までのところではそうでございます。
中村時雄
153
○
中村
(時)
委員
保安庁に対してもったいない国費を出してこういうようなことをやりながら、連れられていく人たちの身の上を考えた場合に、私たちはそれでは納得いたしません。そういう立場から言って、この問題は政治的にかなり大きくなりますので、第一点としては、防衛庁の長官をこの次には呼んでいただきたい。 それから、第二点は、外務省にちょっとお尋ねしたい。外務省の方にお尋ねしたいのは、この拿捕事件に対して、今般の——一応今般に区切りましょう。今般の拿捕事件に関して、あなたは参議院の
農林水産委員会
においてもかなり強い態度を見せて、私どもも非常に頼もしく思っている。そういう立場から考えましても、どういう抗議を今後やっていこうというお考え方があるなれば、はっきりと明示しておいていただきたい。
中川豊吉
154
○中川説明員 本件につきましては、御
承知
のように、事件の起こりました翌日、
アジア局長
が柳大使に直ちにとりあえずの抗議をしておいたのでありますが、その後海上保安庁その他
関係
の機関よりいただきました資料に基づいて、とりあえずのところとして正式の抗議をその後三日くらいあとでしたわけでございますが、それに対して韓国側の方から、事実
関係
が異なっているという逆抗議が来ておるわけでございまして、現在、その逆抗議がはたして正しいかどうかという点につきまして、海上保安庁、水産庁その他
関係
機関にお願いいたしまして資料を蒐集中でございまして、私たちは、韓国の主張しておりますように、たとえば本件が李ライン内で行なわれたとか、あるいは水没したのは船員がバルブをひねって沈めてしまったとか、そういう事情に基づいておるというようなことは、大体あり得ないことだというふうに信じておるのでありますけれども、何分にも、十分な証拠を集めましてその証拠に基づいて抗議すべきであるというふうに考えておりますので、その資料が集まり次第、数日中に厳重な抗議を続けるつもりでおります。
中村時雄
155
○
中村
(時)
委員
非常に適切に言われたのですが、それは現実につかまった日から換算いたしますと時期としてはかなりおくれた時期になっておると思います。そこで、数日中にとおっしゃいましたが、それでも結論ははっきりしたと思います。
参考人
にしても、今お聞きになるようなたよりない保安庁でありますけれども、そのたよりない保安庁の意見にいたしましても、一応李ライン外であるという限定ははっきりしたと思います。そういうような立場が明確になったならば、大体どういう抗議をされる予定でおりますか。
中川豊吉
156
○中川説明員 普通の場合にはいろいろ方法があるのでございますけれども、韓国の場合には、御
承知
のように、わが方の出先の機関が京城にないわけでございます。従いまして、普通の場合では、柳大使に通知するとともに、出先機関としてありますわが方の大使にも連絡して、十分わが方の意のあるところを確認するのでございますけれども、韓国の場合は、柳大使が日本におるだけでございますので、結局柳大使を呼んで厳重に抗議をするというやり方しかなかろうかと考えます。
中村時雄
157
○
中村
(時)
委員
今の日本の外交というものは、そういうことは非常に軟弱です。そういうことの一つの実例を見ましても、御存じのように、
昭和
三十三年に韓国から抑留されている者九百二十二名が送還されました。そのあとで第二星丸事件があった。九百二十二名を帰すとき、向こうは、刑期が終えたと、こう言っているが、こっちは何もそういう罪を犯したとは思っていはしない。しかし、向こうでは刑期が終えたと言っておる。かりに百歩譲って、それでは刑期が終えたならば一人々々帰ってくるかというと、ほとんど帰っていないと私は思うのですが、いかがですか。
中川豊吉
158
○中川説明員 刑期の終えた者を、まだ帰しておりません。
中村時雄
159
○
中村
(時)
委員
そういうような相手を
対象
にしておるのです。そこで、御存じのように、この前大韓民国
政府
に引き渡した韓国出土文化財についての資料を出された覚えがあるでしょう。そして、実際には、その文化財を向こうの方に送り返すというようなことで、やみ取引をやって、九百二十二名の者が帰ってきました。今度もそういうようなことが言えると思う。韓国米を三万トン入れてくれ、そうしたら帰しましょう、入れましょう、これは一体何のことですか。それは、日本が今米が足らないとか足りるとかいう問題ではなくして、そういう外交路線にあなた方はそれを使おうとしていらっしゃるのか、使わないようにしていらっしゃるのか、その点をお聞きしたい。
中川豊吉
160
○中川説明員 米の問題は前からもあったのでありまして、たまたま時期が一つになった次第でありますが、釜山における漁夫の釈放と大村におきます韓国の収容者の送還、この二つをまず実施いたしまして、そのあとで、空気のよくなったところで、韓国米の取引もするし、それから、在日韓国人の地位その他の日韓間の懸案がありますが、そういう問題も話し合おうかという話し合いをしておるわけです。
中村時雄
161
○
中村
(時)
委員
そうすると、やはり韓国米云々が出たことは確かなんですね。これを一つはっきりお尋ねしておきたい。
中川豊吉
162
○中川説明員 出ておるわけでありますが、直接には
関係
せずに、直接にはいわゆる漁夫の相互送還をまず実施する。そうして、空気がよくなれば、それにつれまして、貿易の再開とか、それからその他の懸案の解決ということに進むわけでございますけれども、その貿易の再開の中には、かねてからの非常なアンバランスの問題もあるので、ぜひ米を買ってもらいたいという話があるわけであります。
中村時雄
163
○
中村
(時)
委員
非常に言いにくいような帯しそうな御答弁なんですが、一点だけはっきりしておきたいのは、そういうことがもしあるなれば、私はこの
漁船
に対する拿捕は完全なる李承晩の人質政策だと思う。こんなことを言うと外務畑の人はおしかりになるかもしれませんが、しかし、完全なる人質政策と見ていいのではないか、私はこう見ておるわけです。それと同時に、あなたのような見解からいけば、現在の日本の
生産
量か。来る
農業
政策として、入れるか入れぬかその点をはっきりさしてよろしいということになるのか、そうでなくして、やはり外交政策と相関連してこの問題を解決したい、このようにお考えなのですか。その点明確な御答弁によって私の質問もいろいろ変えていきたいと思っています。
中川豊吉
164
○中川説明員 幸いに
農林大臣
の方も非常に困難な事情はあるにもかかわらず米の買付を承諾していただきましたのでございます。そうすれば、かねてから話し合いのありましたことも解決する次第でありますし、漁夫の問題もその前に先行して解決していくものだ、こういうふうに考えております。
中村時雄
165
○
中村
(時)
委員
あなたの苦しい答弁はわかるのです。私もわからぬことはないのです。だから、外交上とそれとを密接に結びつけて云々されることもよろしい。しかし、その半面日本の国内の
農業
の政策が問題になってくるので、その問題は
農林大臣
との問題ですからここでは申しません。このように、一つの問題が、人質を取られておいて、その人質を返すときには、文化財をよこせ、また、米が余っているから今度は米を買いな
さい
、こういうようなことを歴然としておくと、それが既成事実となっていつまでも、この人質戦術といいますか、こういうことが常に繰り返されるという危険性を持つわけなんです。そういう点に関してあなた方は今後どういうふうな考え方を持っていらっしゃるのか。
中川豊吉
166
○中川説明員 韓国もいわゆる人質政策のようなことはいつまでも続けることはないと考えております。
中村時雄
167
○
中村
(時)
委員
あなたはないと断言できますか。あなたのは希望的観測じゃないですか。その点はっきりさしておいていただきたい。私はそれほど外務省をたよりにはしてない。返答して下
さい
。わからぬならわからぬでよろしい。
中川豊吉
168
○中川説明員 いつまでも人質外交のようなことは韓国はしないはずでございます。
中村時雄
169
○
中村
(時)
委員
しないはずでございますということは、自分で自信のない答弁でございますと言うことと同じことなんです。だから、そのことをあなたに追及してもしようがない。ここまで来たから、これも政治情勢になりますから、この次には外務大臣の出席を要求しておきます。私は外務省の今の外交路線というものをそれほど高くは評価いたしておりませんので、そういうような立場から言って、はなはだ失礼なんですけれども、個々の人はりっぱな人がいらっしゃるけれども、
政府
の問題の追及になりますからここでは申しませんが、もう一点、李ラインをあなた方は外交上から認めておるかどうか。
中川豊吉
170
○中川説明員 認めておりません。
中村時雄
171
○
中村
(時)
委員
そこで、今のように気持よくはっきりとおっしゃっておるにもかかわらず、現実の行為としては、保安庁のように、李ラインを認めた行為をとりながらうろうろしておる。一体このつじつまの合わないのはどういうふうに合わせますか、保安庁長官。
林坦
172
○林(坦)
政府
委員
李ラインを認めておると決して私は申し上げたつもりはないのでございます。季ラインの中でありましても、もちろん巡視船は十分入っております。入って警備に当たっておるわけであります。決して季ラインを認めるというような方針のもとに行なっているわけではございません。
中村時雄
173
○
中村
(時)
委員
そうすると、いともはっきりしてきた。かりにこういうふうに李ラインなら李ラインで騒がしながら拿捕さしていけば、だんだんこれが既成事実になって、最後には李ラインを認めていいじゃないかという方向になりはしませんか。どうなんですか。そうでないというなれば、なぜその海上においてもっと接触をし、たとえば船と船と、ぶっつけたっていいじゃないですか。もっとはっきりした手段で、大砲によらないでも、もっとできる方法がある。そう考えた場合に、あなた方のような、ただ手旗信号のような方式でやっていれば、いつの間にか李ラインは形成されてしまいますよ。それに対してあなた方は今後どういうふうな処置、どういうふうな手段をとりますか。先ほどは手旗信号をやっておるということでありましたが、あなたは非常に鋭敏なのか、私が鋭敏でないのか、あるいは屈辱的なのか、そういうことを承認しようとしておるのか、さっぱりわからないのですが、そういう点を明確に自分として打ち出しておいていただきたい。
林坦
174
○林(坦)
政府
委員
李ラインの問題につきましては、外交交渉でこの問題を解決するというのが根本的なやり方でございます。私どもの方は、現実にあの地域において漁業ができるように、
漁船
に対して事前にいろいろと警告を発する、あるいは現場におり合わせるときに、
漁船
の拿捕が行なわれるような場合には間に削って入ってでもこの拿捕を阻止するということはいたしております。ただ、先ほど言いましたように、相手がこちらの漁民なりを拿捕して中に入れてしまったような場合に、これは、私どもとしては、交渉はそばにつきながら交渉していくというほかに、さらに武力を用いるとかなんとかいうことがない以上は、そういうやり方よりほかないのが
現状
でございます。
中村時雄
175
○
中村
(時)
委員
あなたの話を聞いておると、どうもぴんとこない。片一方は、李ラインを認めませんとはっきり言っておる。そうでしょう。そうすれば、李ラインの中であろうと外であろうと、そんなものがあるはずがない。だから、あなた方は概念的に向こうの言っておる中に入っておる。そんなものは中に割って入っていく土性骨をすえてもらって解決しなければどうにもならない。あなたの今のお話は、一応李ラインというものをかりに認めたような格好だから、警告を発するとか、そういうことを言っておる。警告を発するということは、季ラインをある程度承認しておるからこそ、李ラインの中に入ってはいけぬ、向こうの言っているところには入ってはいけませんよということを言っておる。そういうことでなくて、もっとはっきりした態度で、外務省と打ち合わせてやってもらいたい。その点を私は希望
条件
にしておきましょう。 あなたは手旗信号方式によるというのは一応はっきりしたのでありますが、そこで、外務省の方にお尋ねしておきたい。この李ラインというものを認めないとおっしゃっておる。ところが、今度御存じのように日韓交渉の中で五つの
委員会
を設けられた。その中の四つは曲がりなりにも解消してきた。たった一つ残っておるのは、李ラインとは申しませんで平和ラインと言っておる。その平和ラインの今後の交渉のあり方、
内容
、そういうものについて一言御説明を願いたい。
中川豊吉
176
○中川説明員 再開されました日韓会談におきましては、平和ライン
委員会
はたった一回開かれただけでございまして、今後どういうような話し合いになりますか、今のところまだ会談の
内容
のみから言いますと見当がつかぬ状況でございます。もう少し話し合ってみないとわからないのであります。
中村時雄
177
○
中村
(時)
委員
それではこういうことになりますよ。——せっかく
アジア局長
がいらっしゃったからそれを整理して二、三点お話をお伺いしたい。 一つは、先ほどから議論になっておったのでありますが、星丸事件の当初において、要するに文化財を韓国の方に返していくという
条件
に基づいて九百二十二名の者が日本に帰ってきた、しかも、そのとき、向こうは刑期を終えたとこう言っている。われわれとしては、刑期をつけられるような悪いことをした覚えはない、こういう原則に立っておる。しかも、百歩譲って、刑期と考えた場合には、その刑期が終ったごとに人々が帰ってきたかといったら、ほとんど帰っていない。ある意味で人身御供と言いますか、そういうような状態で今までやられておる。これは御存じの
通り
であり、先ほどからの答弁の中にもはっきり出てきたわけなんです。そこで、再び今度も外米というよりも韓国米の問題が現われてきたわけなんです。その韓国米の問題につきましても、三万トンが白米で来るか玄米で来るかという問題が生じてきますけれどもやはり依然として人身御供に対するところの裏づけになっておる。こういうことを何回も繰り返しておりますと、このことが既成事実になって、李ラインを
承知
する者はないとしますが、海上において常に
漁船
が拿捕されていく、その拿捕されている者に対する裏づけが常にこういうような状態で現われてくるということは、私たちはいかぬと思う。しかし、外交折衝の
期間
ですから、今のところそれは追及いたしませんが、今後においてはそういうことのないようにしてもらいたいと私たちは希望する。同時に、それに対して外務省としての見解がどうなっているか、これが第一点。 それから、第二点は、韓国の口上書に対して
政府
はこれからどういうふうにするか。その
理由
は、先般局長が参議院の
農林水産委員会
におきまして、今度の第五・
八幡丸事件
に対して旬日中に方向を
確立
していきたいというようなお話があった。今課長もそうおっしゃった。そこで、その解決の方法、
内容
、そういうことを第二点としてお伺いしておきたい。 それから、この第五・
八幡丸
の拿捕に関するところの実態調査を今はっきりとここで打ち出して確認をされるなれば、これに対して強硬な態度をとって相下側と交渉する、こういう御回答があったわけなんですが、そういう回答に対して、将来への見通しというものをお伺いしておきたい。 それから、第四点といたしましては、李ラインを認めるかと言いましたら、認めないと言う。にもかかわらず、現在日韓交渉の中で五つの
委員会
がある。四つは大体話し合いがついておりますが、あと一つの平和ライン
委員会
といいますか、この李ラインをめぐっての問題があるが、本質的な問題で、やはりこれは、こっちは認めぬ、向こうはあるんだという、並行線になると思う。だから、この本質的な問題で、何らかの手段をもってこの問題の解決がはっきりできるものかどうか。こういうことに関してお尋ねをしておきたいと思います。
伊關佑二郎
178
○伊關
政府
委員
第一点につきまして、刑期と申しておりますが、刑期と言うべきかどうかということは問題でございましょうが、刑期を終えた漁夫ということを言っているわけでございますが、この釈放につきまして、前には文化財というような問題があった、今度は米三万トンというふうなただいまの御質問でございましたが、この点につきましては、日韓会談を開くにあたって、——今再開いたしておるのでありますが、これを実質的に進める前に、日韓会談以外と申しますか、日韓会談以前と申しますか、相互送還の問題とかあるいは貿易再開というふうな問題を片づけて、そして空気をよくして実質的な日韓会談に入ろうという考えでおるわけであります。その日韓会談以外というか以前というか、この二つの問題につきまして、まず大村と釜山の相互送還をやり、そしてその上で今度は貿易の再開をやる。貿易につきましては、御
承知
のように相当のアンバランスがある。そこで、米を買ってほしいというふうな話になっておるのであります。直接にこれが漁夫の釈放とからんでおるわけではないのでありまして、そういうふうに、相互交換をやる、やった上で貿易も再開したい、そして空気をよくして日韓会談の再開をやりたい。貿易をする際には、前々から米の問題があって、昨年の秋からこういうことを言っておるのでありますが、ぜひこれをやってもらいたいんだが、その点を今約束してもらえるかどうかというふうな話になっておりまして、筋としては直接からんでおるというものではございません。 それから、第五・
八幡丸
につきましては、こちらの抗議に対しまして二、三日前に先方の返事が参りまして、これは非常にわれわれの言っていますことと向こうの言い分は違っておるわけであります。われわれとしましては、もう一度、向こうの返事を見ました上で、これに対しましてわれわれの方の材料を集めて、これをまた反駁し、強く抗議をするという段階になるわけであります。それでもわが方に応じぬ場合にどうなるかという御質問に対しましては、どうしても応じぬという場合にどういう手をとるかということになりますと、なかなかここではっきりどうするということは申し上げかねる点があるんじゃないかと思いますが、できるだけ話し合いによって解決をしていきたい、今のところはそういうふうに申し上げるしがなかろう、こう思っております。 李ラインの問題につきましては、これは、日韓会談が開かれますれば、その
委員会
において話し合いをいたすわけでありまして、どういう解決案を持っておるかということになりますと、この前の
委員会
等におきましても、昨年の初めとか一昨年の暮れから始まりまして、昨年の一月に中断をしまして、また昨年の秋にも二、三回やっておりますが、そうしたときに日本側の一応の案というものは出しておるのであります。それが最終案というわけではもちろんございません。お互いに歩み寄らなければならぬと思いますが、日本側の案というものは一応あるわけであります。そういう案の線に沿って話し合いでもって解決していきたい、こう考えておるわけであります。
中村時雄
179
○
中村
(時)
委員
そうすると、向こうから二、三日前にその書類が来た、それによると、日本と韓国との主張には
現状
においてかなりの食い違いがある、こういうような結果が出てきたわけであります。そこで、材料を集めて向こうの方に云々するとおっしゃるのですが、その材料を集めてということは、
参考人
もいらっしゃいますし、保安庁の方からの話も出たし、そういうようなことは課長がよくお聞きになっておるから、そういうことも
内容
の一つの参考になろうと思う。そこで、材料を集めるということは、既成的な材料は集まっておると思う。そういうような立場から、いつごろその問題について話し合いをするか、その点を一つ、これは家族としては大へんな問題でありますから……。
伊關佑二郎
180
○伊關
政府
委員
今急いでおりますので、これは二、三日中にできると思います。
中村時雄
181
○
中村
(時)
委員
そうすると、二、三日たってからの結果でないとその問題はわからないと思いますが、そういうふうに明言されて二、三日うちということになれば、一つの見通しというものもついてくる。その結果によって私たちも再度考えていきたいと思っております。 同時に、もう一つお尋ねしたいのは、先ほど言った米の問題は、外交の路線とは別だと言いながら、実際の話し合いの中には出てきておる。向こうにいる方をこっちに帰していただくことについてもまだ十分の話し合いの
内容
ができていないにかかわらず、その問題がはや貿易の問題として取り上げられる。私はこの問題と送還の問題とがやはりある程度加味されておるものと思って黙認しておった、しかし、それが全然ないということになれば、当
委員会
においても同様のことが言えると思いますが、それは、日本の貿易、
農業
政策、そういう上から入れるか入れぬかという議論を蒸し返されてよいか、その点をはっきりさせていただきたい。
伊關佑二郎
182
○伊關
政府
委員
建前といたしましては、これは直接の
関係
はない。しかし、日韓の空気をよくする、気分をよくする、雰囲気をよくして日韓会談を開くというふうな意味においては関連があると申してもいいかもしれませんが、直接の関連はないという建前でやっております。
中村時雄
183
○
中村
(時)
委員
それですっきりとしたわけでありますが、しかし、問題は、先ほど言ったように、こういう事柄が緩和をされるからといって、一方においてこのことが、私は今の白米にするか玄米にするかにつきましても国内的には大きな問題があると思う。そういうような観点もあるから、要するに、外交交渉の路線の中においてそういうような受け付け方、そういう
内容
、そういうようなことは今後一切やらないように御注意願いたいと思いますが、それに対してどうお考えになりますか。
伊關佑二郎
184
○伊關
政府
委員
この問題はこういうふうな関連もございませんし、また、われわれが今話しておりますラインでは、今後は、いわゆる認める認めぬは別にいたしまして刑期が終わった者は刑を終わり次第そのつど直ちに釈放するということをはっきりした文書による確約をとってやるつもりであります。
中村時雄
185
○
中村
(時)
委員
それから、今の李ラインの問題は、李ラインというよりも、平和ラインといいますか、その問題は、
内容
のいろんな問題があると思いますから、これ以上お聞きはいたしません。しかし、外務大臣に、この問題は政治的な問題があるので、あわせて一つお願いしておきます。 それから、次に
農林省
に伺いますが、同僚
委員
もおりますから、一つ簡単に簡明に、話をよく聞いておって御答弁願いたいと思います。ということは、このような事件が起こりました場合、第五・
八幡丸
の乗組員、こういう方々は、現在のところ特殊
保険
にも入っていないと思うのです。それに関して、入っているか入ってないか、まずお尋ねしたい。
西村健次郎
186
○西村(健)
政府
委員
乗組員が入っているかいないかは給与
保険
だろうと思います。
八幡丸
は給与
保険
に入っておらないというふうに
承知
しております。
中村時雄
187
○
中村
(時)
委員
そういたしますと、こういうような事件は往々にして再三再四起こってきているのです。これは御
承知
の
通り
だと思う。そうすると、これは、つかまった、向こうへ連れ込まれた、その後におけるところの問題はちっともない、こういうことになると、その家族なりその本人たちも非常な不遇な立場になるわけなんです。そこで、たとえば特殊
保険加入
ができるものかどうか、あるいはそういうような
指導
なり考慮をすることができるかということを一点お聞きしておきたい。
西村健次郎
188
○西村(健)
政府
委員
私どもは、この方面の、ことに以西の底引き等につきましては、特殊
保険
あるいは給与
保険
にできるだけ入るように勧めております。これは強制力はありませんので、船主の判断で入らない方もおありのようです。ただ、こういった非常に不祥な事件が起こった場合に、乗組員が向こうに抑留されるというような事実が起きた場合には、留守家族に対しましては月額一万円、それから、抑留乗組員の見舞品、これをこっちから送りまして、月当たり八千円という補助を国の方からやっております。これは大体一年の四月、八月、十二月の三期に分けて国から出しておる、県は毎月々々これを
交付
しておる、こういうことになっております。
中村時雄
189
○
中村
(時)
委員
そうすると、月に見舞金が八千円、それからもう一つは給与額が一万円、こういうことになっておるのですね。一万八千円というものを送っているわけですね。ちょっとその点はっきりしておいていただきたい。
西村健次郎
190
○西村(健)
政府
委員
一万円は留守家族に対する見舞金であります。八千円は、こちらからいわゆる差し入れと申しますか——私たちは差し入れという言葉ははなはだ適当でないと思いますが、釜山の方の抑留所の生活は必ずしもよくないので、そこに対する慰問品と申しますか、その代金として、すなわち八千円相当を送っております。
中村時雄
191
○
中村
(時)
委員
家族には一万円、これははっきりしています。そこで、一つお尋ねしたいのは、李ライン内——李ライン内と言ったら語弊があるかもしれないが、入った場合には、特殊
保険加入
ができておるわけですね。特殊
保険加入
の中にこういうような問題が入るか入らないか、そういう御検討はどうなんですか。
西村健次郎
192
○西村(健)
政府
委員
特殊
保険
と給与
保険
、特殊
保険
は船体の方で、いずれもその李ラインの内外は
関係
ございません。
中村時雄
193
○
中村
(時)
委員
私の言うのはこういうケースの場合に、そういうことが適用できるような
法律
改正
とか、そういうことができるような可能性がないかあるかということです。
西村健次郎
194
○西村(健)
政府
委員
ちょっと御質問の
趣旨
が私よくわからなかったのですが、今たまたま給与
保険
には入っていなくてこういう事件が起こったという場合、入っていなくても入ったものと同様に取り扱うことができるかということでございましょうか。——そういたしますと、
保険
を強制
保険
として強制
加入
するような
制度
、これは立法論としては多分議論はございますが、そういうことをしない限り、
任意加入
であるにかかわらず
保険
に
加入
しない者が
加入
した者と同額にものがもらえるということは、
保険
として成り立たないだろうと思っております。
中村時雄
195
○
中村
(時)
委員
私の言うのは、
保険
立法の
現行法
の中ではできないということを言っておるのです。そこで、たとえば農村であれば共済
組合
の問題、これは米の場合は強制
加入
です。特にこういうような危険な時期があるので、そういうような立法
措置
を考えるか、あるいは立法
措置
ができなかった場合にはそれに相類似するような別な何かの方法を政策的に打ち出していただきたい。たとえば一万円というのもそうなんですが、しかし、一万円ではおそらく十分なことではないと思っておる。そういうような立場から、何らかこれに加算されるような形をとるとか、何らかの方法が検討されるかどうかということです。
西村健次郎
196
○西村(健)
政府
委員
私の申し上げておる意味は、立法論としては、
保険
に
加入
していない者を
加入
者と同様に取り扱うことはおそらくできないだろう、これははなはだ不均衡を生ずる、こう思っております。現在のところ、私どもとしましては、特殊
保険
ないし給与
保険
につきましてできるだけ入っていただく。この以西底びきの業者というのは、今その
加入率
は、ここへ持っておりませんが、非常に高い率
加入
しておる状態でございます。
中村時雄
197
○
中村
(時)
委員
私がなぜそういうことを言うかというと、自然災害やそういうものと違って、不意の事故なんです。しかも、自分が期待をし、自分が喜んで云々しておるわけではないのです。そういうような立場に立っておる人たちを考えた場合に、ただ単なる普通の
保険
の姿でなしに、もっとより価値のある、よりいい意味におけるところの問題の取り上げ方を
政府
の方としてはできないものか。 この問題は課長に云々言ってもしょうがないし、まだあとに同僚議員もおりますから、一応打ち切るといたしまして、最後に、外務大臣、それから防衛庁長官、それから
農林大臣
には非常に関連性を持ってきております。でき得れば最後には総理大臣にも出てもらってこの問題の一つの考え方の
基本
的な状態をいろいろ話し合ってみたい、こう思っておりますので、その点
委員長
に、——賢明な
委員長
ですから当然こういうことは手抜かりなくやられると思いますが、そういう立場から、一つしっかりとこの問題を討議させていただきたい、このように希望しておいて、一応私の質問はこれで終わらせていただきたいと思います。
吉川久衛
198
○
吉川委員長
芳賀貢君。
芳賀貢
199
○芳賀
委員
永田
参考人
にお尋ねしますが、先ほどの供述によって大体の経過はわかったのですが、お尋ねしたい点は、名簿によりますと、あなたは第五・
八幡丸
に所属しておるわけですね。たまたま拿捕当時に第六に移乗しておったというふうに考えられますが、これは平常そういうことをやっておったのですか。あなたは船員としての船籍の方では第五・
八幡丸
におることになっておるけれども、操業する場合においては、第六の方に常に乗って、そうして船長の代理をやっておったのかどうか、その点はいかがですか。
永田利一郎
200
○
永田
参考人
それは、十一日の晩に木戸博美船長は第六・
八幡丸
から第五・
八幡丸
に移りまして、それから僕が第六・
八幡丸
に移って漁業の指揮をとった。それが十一日の午後二十時ごろです。普通は僕は五号にいたのです。春日船長が感冒でちょっと工合が悪いから木戸船長と交代して操業してくれというので交代したわけです。
芳賀貢
201
○芳賀
委員
俗に言う李ラインの周辺で操業する場合は、一応危険な海域と見なければならぬわけですね。ですから、そういう地域に操業に出かけて、船の場合には船長とか艦長というのは重大な責任と
指導
権を持っておるわけですから、そういう場合に、
漁船
であっても、みだりに船長が他の船に移っておってこういう非常に急迫した事態に当面した場合においても正しい指揮をすることができないというような状態は、これはやはり慎しむ必要があると思うのです。病気等によってそういう事態があったかもしれませんが、これらの点については、たとえば水産庁や海上保安庁においては適切な
指導
を今日まで怠っておったのではないか。こう思いますが、その点はどうなんです。
永田利一郎
202
○
永田
参考人
私といたしましては、船長は病気で一日か二日くらいしたらなおるし、そう危険な区域じゃないということで乗り移ったわけです。
芳賀貢
203
○芳賀
委員
水産庁や海上保安庁では常時そういうような
指導
をやっておりますか。こういう危険海域とみなされを地帯で日本の
漁船
が操業する場合の態度というものは、おのずから緊張を要すると思うのです。そういう場合に、たとえば
漁船
法や船員法の
規定
に基づいて適切な
指導
を今までやっておったかどうかという点を、水産庁並びに海上保安庁にお尋ねしたいと思います。
西村健次郎
204
○西村(健)
政府
委員
今の問題は、船舶の航行と申しますか、漁撈そのものじゃなしに、航行の問題でございますので、一般的な問題として運輸省あるいはその外局である海上保安庁という方で、随時、いろいろな法令もございますし、それに基づいて
指導
いたしておるわけでございますので、その点は
関係
者の方からお答えいたします。
林坦
205
○林(坦)
政府
委員
そのような場合は、もちろん船員法の適用を受けるわけでございます。従って、船長が事故がある場合には、その事情によりまして代理者を選定してやらせることはもちろんできるわけでありますけれども、船を去るというようなことはあまり適当な処置ではないと思っております。
芳賀貢
206
○芳賀
委員
ただいま
水産庁長官
が言われましたが、この
八幡丸
が操業地域に到着して投網したのは前日なんですね。ですから、航行中とは言えないと思うのです。投網して、底びきですから、その網を曳航する仕事というものはいわゆる操業ですから、操業中である場合においては、やはり水産庁においても、航行中だからといって運輸省の所管ということにはならぬと思う。操業中というのは一番危険であり、不安じゃないですか。航行中であれば、何も漁業に従事しておらぬし、漁業をやっておるのじゃないからしてこれに対しては韓国側においてもそれほどの追及はしないと思うのですが、その点はどうなんですか。
西村健次郎
207
○西村(健)
政府
委員
私の申し上げた
趣旨
は、なるほどそのときは投網して漁撈作業中でありましたが、漁撈作業中であれ航行中であれ、船舶の安全というものについては
一定
の法令上の要件がございます。私どもは、もちろん、船長はいなくてもいいというようなことは言っておりませんが、ただ漁撈中であれ航行中であれ、これは法令上当然船長、責任者がちゃんと乗っておるべきものだ、こういうふうに了解しておりますので、私の方でその点について特別な
指導
をする必要は、むしろ今まで当然のことと思って、そういうことはしておらないわけであります。そういう点を申し上げたわけであります。
芳賀貢
208
○芳賀
委員
永田
さんにお尋ねしますが、あなたの
八幡丸
は、大体、——これは一月、二月等でもいいのですが、操業する地域は、今回不幸にも拿捕された農林海区の二四五、二三五、その地帯で操業されておるのですか。
永田利一郎
209
○
永田
参考人
大体この二三五区から二四五区くらいで操業しております。常時やっておったのです。
芳賀貢
210
○芳賀
委員
それなら、常時そこで操業されておるのですから、その海区が一番魚群が生息しておる地域ということになるのですか。
永田利一郎
211
○
永田
参考人
魚群といっても、魚なんか時期でやるので、あの二三五区の五をやったり、それから二四五区の下をやったりして、ずっとあっちこっちやっております。
芳賀貢
212
○芳賀
委員
私の聞いておるのは、結局、——李ラインがありますね。ですから、李ラインの外で操業するか内で操業するかというような判断も起きるわけなんですよ。その場合に、漁業ですから、李ラインの外側に魚群の生息地帯があるのだということになれば、何も危険を冒して先方へ行ってライン内に入ってそこで操業する必要はないということになる。この地図にもありますが、二四五区に瀬がありますね。その瀬の周辺が漁獲上から言うと一番操業するには有利な地点なんですか。
永田利一郎
213
○
永田
参考人
大体この瀬の付近を魚群探知機で探してやっております。
芳賀貢
214
○芳賀
委員
それで、お尋ねしたいのは、一月、二月も大体その地域で操業されておったという場合、その付近にたとえば韓国の警備艦等が常に出動しておったのか、あるいはわが方の海上保安庁の巡視艇等が常にあなた方の操業の安全を守るために、監視や開成に当たっておったのか、そういうような状態はどうなんです。
永田利一郎
215
○
永田
参考人
これは、海上保安庁の巡視船等は、月に一回か、多くて二回くらい会います。会うというのは、やはり操業しているわきを通ったり何かして、普通通っても、わきに来ても何とも話はしません。
芳賀貢
216
○芳賀
委員
そこで、その海上保安庁の船の任務というものは、私が言うまでもないのですが、たとえば、特に李ラインを中心にした付近が一番不安な地点になるわけですから、皆さんがかりそめにもライン内に入るような状態であった場合には、常に海上保安庁の巡視船等が適切な連絡とか注意を今まで与えておるものかどうか、その状態はどうなんです。
永田利一郎
217
○
永田
参考人
それは、一月ごろは、奈良尾無電局から連絡がありまして、その方は無線士が船長とだけ打ち合わせてやっておりました。
芳賀貢
218
○芳賀
委員
保安庁長官にお尋ねしますが、
参考人
の意見では、あまり操業中の
漁船
の行動等に対しては連絡や注意をしてないようですが、これはどういうことなんですか。
林坦
219
○林(坦)
政府
委員
第五・
八幡丸
の方に無線を持っております。従って、第五・
八幡丸
の方がその当時傍受していなければ別でございますけれども、私の力で出しておる警報は聞いておるはずであります。私どもの方といたしましては、李ラインの周辺をずっとあちこちと
体制
を整えて回っておりました。そうして、いろいろ、韓国警備艇の動静等につきましても、無線を聞いておる船はよしとして、聞いていない船あたりに対しても、ときには回って参りましていろいろ注意をするということは実際にやっております。この船はあるいはたまたまその警報を聞いていなかったかもしれませんが、第五・
八幡丸
の方のことはちょっとわかりませんですけれども、この船は無線を持っていないというのでございますから、第六・八幡は聞いていなかったのかもしれません。第五・八幡が聞けば、僚船に対しては注意をするはずでございます。
芳賀貢
220
○芳賀
委員
そこで、保安庁の巡視船の場合、たとえば李ライン周辺を哨戒している場合には、このラインの付近のどの地点でどのような船名の
漁船
が現在たとえば底びきなら底びきの漁業に従事中であるという、そういう状態は時々刻々わかるようなことになっておると思いますが、いかがですか。
林坦
221
○林(坦)
政府
委員
当日の状況は、済州島の東方海域、それから南方海域、西方海域等の出
漁船
の状況につきましては、資料によってお配りしてありますが、わかっております。
芳賀貢
222
○芳賀
委員
そうすると、巡視船の場合には、海図を持ってそれに正しく
漁船
の操業地点というものを記録しておるわけなんですね。
林坦
223
○林(坦)
政府
委員
毎日、何区に何隻、何区に何隻という意味においてまとめてはおりますけれども、時々刻々どれがどこに行っているというところまで詳しくは常時抑えているというわけではありません。
芳賀貢
224
○芳賀
委員
こういう点は、保安庁の方でも、船も足らないし、なかなか激務に携わっておるということはわかりますが、こういう危険水域で操業する
漁船
の操業の安全を保つということに最大の任務があると思うのです。従って、やはり、哨戒とか警備という場合においては、できるだけ綿密に
漁船
の操業状態というものを把握して、いささかも不祥な状態が起きないようにやっていくということに一段と熱意を傾ける必要があると思います。お配りになったこの資料によっても、現在の位置で見るとほとんどラインの中の韓国側の方へ寄った済州島の付近に四隻の巡視船が固まっておるように見られるわけなんです。ですから、ラインの外に、特に斜線の内側に
漁船
が操業中であるという場合においては、巡視の隊形ももう少しそれに当てはまるような状態の警備とか巡視をやるべきじゃないですか。これはどうなんです。
林坦
225
○林(坦)
政府
委員
私どもの海上保安庁の船は、できるだけ韓国の基地ないし韓国の警備艇の近くに近づきまして、その動静を知って、それを連絡してこういう事故の起こらぬようにするということをもって処置といたしております。従って、操業の多い場所とかあるいは警備艇のおる近くの場所というところに比較的海上保安庁の巡視船も行くということが多いのであります。何せ、あの方面に出ております船は数百に上っております
関係
上、あらゆるところに全部手を配るというわけには参りませんけれども、重点的に考えまして最も適当だという場所に巡視船を配置して警戒に当たっておるという状況であります。
芳賀貢
226
○芳賀
委員
次に、伊關局長にお尋ねしますが、外務省の方では問題が起きた直後の十五日に韓国の代表部の柳大使に抗議の口上書を渡しておるわけであります。この
内容
は当然のことが述べられておりますが、これに対して二月の二十七日に韓国代表部から日本側の抗議の口上書に対する反論の意味の口上書がこちらの方に渡されたことはわれわれも知っておりますが、この
内容
を見ると、全く日本側の抗議を全面的に駁論しておるということにしかなっておらぬわけです。これは非常に食い違いがある。これらの
内容
について現在外務省当局としてはどのような理解のしに立って今後これを処理するために外交交渉を進めていくか、その態度なるものを説明願いたい。
伊關佑二郎
227
○伊關
政府
委員
先方は、李ラインの中であるとか、あるいはみずから船を沈めたものであるというこの二点を主にして反駁してきております。それに対しまして、そういう点につきまして今こちらの集め得る材料を鋭意集めておるという段階でございまして、先ほど申し上げましたように、材料がまとまり次第二、三日うちにまた抗議をするつもりでおります。
芳賀貢
228
○芳賀
委員
この韓国側の反論の中の二に、第五・
八幡丸
は韓国警備艇の接舷によって損害を受け、警備艇に引かれていく途中浸水を増したことは事実だが、この間同船の乗組員は排水ポンプの口をあけて自沈をさせたものであると言っておる。この自沈については非常に問題があると思うのです。これにも、さらに
内容
を詳しく分けて、この自沈であるという点については拿捕した日本の
漁船
の乗組員に対する取り調べの結果、これは自供したものである、それによると、韓国側に保護されるよりはみずからの手で処分した方がましだ、船を沈めて海上に避難すれば追跡中の日本の巡視船から救助されるかもしれないという希望をも持ってこれを自沈したものであるということをこの拿捕された船員が述べておるということも加えてあるのですね。この点についても両国においての主張点の相違でありますが、この点について
永田
参考人
にお尋ねするのですが、あなたはほんとうは第五・
八幡丸
の乗組員であり、また責任のある甲板長ですから、操業に出る場合、万一李ラインの周辺で韓国の船が来てこれを拿捕するような場合においては、その心がまえとして、覚悟としては、むしろ自分らの手で船を沈めて日本人の意気を示した方がいいとか、そういう心がまえというものを常にどのようにか持たれておったかしれませんが、その点はどういうことなんです。 〔
委員長
退席、田口
委員長
代理着席〕
永田利一郎
229
○
永田
参考人
僕としてはそういうことは全然考えません。普通の乗組員にもそういうことを与える人は全然いない。機関長にせよだれにせよ、そういうひまがあったとは僕も考えません。結局、自分が乗った船を自分が沈めるということは、だれも考えるということはないと思います。
芳賀貢
230
○芳賀
委員
その点、お尋ねしてはっきりしたからいいわけですが、これが自沈であるか、韓国側がこれに激突を加えて結局沈没させたのかということは、今後の交渉上の争点になると思いますが、この点についての立証を今後外務省としてはどうやるつもりなのですか。たとえば、先方に拿捕されて抑留中の自供をしたと称する乗組員を全く抑圧されない公平な状態の中へ置いて、そこで本人の自由なる意思でどうであったかということを述べさせる、そういう状態が作れれば自供というものがどういう
内容
であったかということがわかるが、今のような日韓間の状態の中でそういうことははたして望めるかどうか、これは局長どう思っていますか。
伊關佑二郎
231
○伊關
政府
委員
現在のような状況で、こちらの弁護十をつけるといっても向こうが応諾しないような状況でありますから、自供したと申しておりますが、それがはたして自由なものであるとかどうかという点については、かなり疑問があると私も思います。
芳賀貢
232
○芳賀
委員
この反駁書の中に、李ラインは国際法上認められておるということを向こうは断定しておるわけです。わが方においては、李ラインというものは、当然、公海であるからして、韓国側のこのような不当な主張は今まで容認していないわけですが、たとえば、韓国側の言う国際公法上認められておるという根拠、これを外務省が先方の立場に立って考えた場合において、彼らは何を根拠に国際法上認められておるということを今日までも主張してきておるのか、その点はおわかりと思いますので、ここで明らかにしておいてもらいたい。
伊關佑二郎
233
○伊關
政府
委員
われわれ国際法上認められたものであるとは全然考えておりませんが、先方はそういうふうに言っておるわけであります。ただ、実際の会談において漁業
委員会
等が始まりますれば、必ずしもそういう主張をするかどうかという点はまだ今後の問題だと思いますけれども、一応そう言っておりましてそれはきわめて少数の説であろう、国際法上認められるとかどうかということになりましたら、一般に認められた説でないことは間違いないことでございます。きわめて少数な、自分に都合のいい説である、こういうふうにわれわれは考えております、
芳賀貢
234
○芳賀
委員
その点は、国際法上から見ても論拠が薄弱であるとかあるいは全く先方の言い分は根拠がないとかいうことであれば、もう少し勇気と自信を持って日本側においてこれを指摘して、こういう不当な向こうの主張を撤回させる必要があると思う。それが今まで行なわれていないのですね。全然やらぬわけではないが、われわれから見ると、非常にこれはなまぬるい態度で今日まで外務当局——現在の
政府
ですね。これは岸
政府
が当たってきているのですが、たとえば、この韓国とアメリカとは外交的にも経済的にもあるいは軍事的にも非常にこれは緊密な交際を持っているが、一体アメリカはこの李ライン問題に対してどういう見解を承っているか、これはいかがですか。
伊關佑二郎
235
○伊關
政府
委員
アメリカは韓国と友好
関係
にありますけれども、公式にアメリカがどういう発言をしているかという点は、ちょっとはっきりいたしませんし、また、おそらくそういうことは言わぬと思いますが、いろいろ話をしておりまして、アメリカ側もそうした韓国の主張を国際法上正しいものと認めているということはないと私は思っております。 それから、わが方としてはそれに対しては常に強く反駁しておるのでありまして、わが方の考えは、極端に申しますれば日本の
漁船
が出てとるとなれば韓国側は非常に技術が幼稚であって一匹もとれぬというのが実情でありまして、そういう実情に照らしまして、韓国側の漁業もある程度成り立つように考えていこうというのがこういう問題に対する考え方でありまして、そういう点は考えておりますが、先方の主張というものを認めぬ点は、はっきりしております。
芳賀貢
236
○芳賀
委員
とにかく、韓国の李承晩と台湾の蒋介石と日本の岸氏はアメリカ陣営に最も忠実な極東の三人男と言われておるのですが、こういうような韓国と日本の間におけるラインの問題等については、韓国に対しては、軍事的にも経済的にも主導権を持っているアメリカ等がもう少し積極的に不法なる韓国の主張を是正させるような努力をするように、日本の
政府
としても努力する必要もあると思うのです。そういう努力は今まで試みたことがあるのですか。
伊關佑二郎
237
○伊關
政府
委員
この点につきましては、アメリカ側と非常に密接な連絡をとっております。日韓会談とか、今の一般的な日韓の交渉等については、しょっちゅう向こうからも聞きに来ております。また、わが方は京城にも何もございませんので、向こうの京城の大使館等も、いろいろと韓国の事情を伝えてくれます。アメリカ側といたしましてはもうできる限りの努力をしてくれているというのが実情だと思います。
芳賀貢
238
○芳賀
委員
これに関連して、小枝政務次官が来ておりますが、一体
農林省
の態度はどういうことなんですか。すべてを外務省に、これは外交問題であるからまかせるということでいるのか、あるいは、
農林省
として独自な態度に出て、そうしてそれを外務省を通じての外交交渉等にも打ち出しておるのか、
内容
はどうなっておるのですか。
小枝一雄
239
○小枝
政府
委員
御
承知
のように、漁業につきましては、これは
農林省
の所管でありまして、
農林省
側といたしましては、わが国の漁民が漁業をいたします上に支障のないようにしたいという考え方をもって努力をしております。こういう問題につきましては、
農林省
側も常に外務省側と連絡をとりまして強力にこれを進めるという方針をもって今日まで参っているような次第であります。
芳賀貢
240
○芳賀
委員
それでは、今回の問題はどうやってやるのですか。強硬々々といっても、何も見通しはないじゃないですか。今度はどういうような具体的な方策を外務省と
協力
してやるというのですか。
小枝一雄
241
○小枝
政府
委員
今回の問題につきましては、御
承知
のように、はなはだ遺憾な問題でありまして、私ども、これは明らかに韓国側の不法な問題のように考える。従いましてこの問題は、拿捕された者につきましてはすみやかにこれを送還してもらいたい、並びに、今後かような問題を繰り返さないように、
農林省
としては極力これを主張いたしまして善処したいという考えであります。
芳賀貢
242
○芳賀
委員
稲田
農林大臣
は、この問題が起きた直後に、
政府
として韓国米を三万トン日本が買い付ける、しかも、この三万トン買付は、先ほどは、外務省の方では、これはこの問題と
関係
はないのだという説明がありましたが、福田
農林大臣
の当
委員会
における答弁は、これは人命にはかえがたいのだ、不法に拿捕された日本のこの乗組員諸君をすみやかに釈放させるためには、この買付を行なうことによってそのことが
促進
され、実現されるのであれば、これは当然人道上の問題からも買付をしなければいけないのだということを、この
国会
において明らかにしておる。それならば、この問題は明確に今回のこの拿捕事件あるいは今日までの抑留者の早期送還の問題等に大きな具体的なつながりがあると思うのです。われわれとしては、その方法の一つだと思うのです。そういう点はやはり
政府
においても明らかにされていったらいいと思いますが、どうなんですか。
小枝一雄
243
○小枝
政府
委員
ただいま芳賀
委員
からお尋ねの点は、私も、事務当局から、大臣が答弁いたしましたように一応
承知
いたしております。私も、人命にはこれはかえがたい問題でありまするし、これによって将来李ラインの問題、日韓
関係
の問題が好転するということなら、
政府
のその輸入米については食管会計内における操作に待つといたしまして、これはやむを得ぬ
措置
ではないかと今日まで考えておるところであります。
芳賀貢
244
○芳賀
委員
この点については、私としても、これは人道あるいは国民的な立場から見ても、この日韓の漁業
関係
の問題初めこれが糸口になって根本的な解決が行なわれるのだということであれば、これは非常に効果的かもしれぬと思う。ただ、これが前例になって、拿捕して、今度は米を買えと言えば日本側は幾らでも米を買うだろうとか、あるいは、向こうで売りたい物資を買えと言えば、また日本は人道上の見地という立場から応諾するだろうというような悪例を残したり、自木の外交の弱腰を見抜かれるようなことになっては困ると思うのです。ですから、この韓国米の買付の問題等についても、解決のためにこれが有効であると確信が持てるということであれば、その方針というものを明らかにして、
関係
がないとかなんとかいうことを言わぬで、これでやりますならやりますということを明確にして、積極的な態度で進んだらいかがと思うのですが、これは外務大臣が来ておりませんから、局長としてはどう考えておりますか。
伊關佑二郎
245
○伊關
政府
委員
われわれは、あくまでもすべての問題に先行して漁夫の釈放が行なわれなければならない、こういうふうに考えております。漁夫の釈放が行なわれ、貿易が再開されました場合に、そこで米の問題を実施する、こういうふうに順序としましては考えております。
芳賀貢
246
○芳賀
委員
それでは、問題の解決に
関係
があるということが明らかになったので、次に移ります。 二月十八日の新聞によると、いよいよ海上保安庁も李ラインに出動する特哨巡視船等については今度は装備をする、大砲や機銃をそれに装備するようにきまったということが、これは二月の十七日に海上保安庁の本庁から第七管区海上保安本部に通達があったということが出ておりますが、この点はいかなる
内容
になっておりますか。
林坦
247
○林(坦)
政府
委員
海上保安庁の巡視船に砲を積む問題は、実はもう数年前からやっておることでございますが、李ライン
関係
の巡視船につきましては、韓国との間に武力的なトラブルが起こることを避けるという意味におきまして、一応おろして巡視警戒に当たるという態度をとって参りました。これは、もちろん片一方において外交交渉等によってこの李ライン問題が平和的に解決することを期待し、また、韓国側に対してもことさらによけいな摩擦を起こさないで、別途その方面に操業する船舶あたりに対しては警戒をいたしまして、警告を発しまして、それによって保護していくという全体的な
体制
のもとに行なっておったわけであります。ところが、昨年の夏非常に李ライン問題もやかましくなりまして、従来あの方面に配置しております船だけではとうてい足りないということになりました
関係
上、ほかの管区の船を入れるということになったわけであります。ほかの管区の船が入れかわり立ちかわり実は李ラインに就航して警戒に当たらなければならなくなりましたので、ほかの管区の船につきましては、いろいろ訓練の
関係
もありますし、その他そういう武器の保守
関係
から申しましても、積んだりおろしたりすることは経費の面からも時間の面からも非常にロスでございますので、これは積んだまま入れたわけでございます。そういう状態がすでにもう昨年の秋くらいからずっと続いて参っております。従って、海上保安庁といたしましては、この行き方は、もうすでに、初めにおろしてやるというやり方によって従来とっておりましたやり方は今において必ずしも絶対に必要であるように感じなくなりましたので、一応今言いました
趣旨
で七管区の船も積んでもよろしいということにいたしました。大体もうほとんどの船に定められた武器を積み終えたような状態でございます。
芳賀貢
248
○芳賀
委員
この方針の決定は、海上保安庁として決定したのか、あるいは
政府
の方針としてたとえば閣議等においてこのような処置をすることにしたのか、その点はどうですか。
林坦
249
○林(坦)
政府
委員
このおろしておりますのが、これはだいぶ前の話でございますけれども、
政府
の国際的な紛争解決に武器は使わないという方針にのっとりまして海上保安庁においておろしたものでありますので、今度積ませましたのも海上保安庁においていたしました。
芳賀貢
250
○芳賀
委員
私の記憶では、これは、
昭和
二十七年に、特に李ライン周辺に就航する保安庁の巡視船等については、そういう装備を持って就航する場合には韓国側を刺激する、そういうおそれがあるから、この海域に就航する場合においては装備をはずすということを閣議決定として行なっておるというふうに記憶しておるわけです。ですから、そうなると、今回の
措置
も、これは当然
政府
の方針として海上保安庁に対してこれを行なわせるようにしたのではないかとわれわれは判断しておるのですが、それは事実と違いますか。
林坦
251
○林(坦)
政府
委員
それは事実と違います。閣議によって積まないということになったわけではございません。
芳賀貢
252
○芳賀
委員
これは非常に重大な点だと思うのです。海上保安庁だけの一存でこの海域においては装備をはずしたりまたつけたりする。それでは、一体、北洋の海域に出動している保安庁の巡視船は装備を持って行動しているのかどうか、その点はどうですか。
林坦
253
○林(坦)
政府
委員
他の海域の巡視船は、みな積んだままでやっております。
芳賀貢
254
○芳賀
委員
委員長
に申し上げますが、この点は保安庁長官だけの答弁ではわれわれは納得できませんから、総理大臣等に出席を求めて、この李ライン海域だけに装備をしないという問題が、はたしてこれは海上保安庁の一存だけで行なったものかどうかということは、さらに保留して
政府
の明確な所信を尋ねたいと思います。 次にお尋ねしたい点は、それでは、今度装備することになった装備の
内容
はどういうことになっておりますか。たとえば、四百五十トン級とか、三百トン級とか、二百トン級とか、いろいろ巡視船にも級がありますが、その船の力に応じた装備をすることになると思いますが、その装備の
内容
について、差しつかえなければここで御説明願います。
林坦
255
○林(坦)
政府
委員
装備の
内容
等につきましては、資料等がもしなにでございましたら、後ほど整えた上御説明いたすことにいたします。
芳賀貢
256
○芳賀
委員
これは大体新聞等に出ておりますが、責任のある資料をお出しになるとすれば後刻でもいいです。 この際
防衛局長
にお尋ねしますが、海上保安庁に所属する巡視船等が装備をする場合には、これは防衛庁と全然所管が違うわけですが、大砲あるいは機銃を装備するということになると武装ともみなされるわけですね。そういう場合には、防衛庁との間において協議か何かが行なわれて、このような装備をすべきであるとかどうとかいうことになっておるかどうか、その点はいかがですか。
加藤陽三
257
○加藤(陽)
政府
委員
これは御
承知
と思いますが、海上保安庁は平常時における海上の治安維持に当たる機関でございます。ただ、自衛隊法によりますると、防衛出動とか治安出動というようなものが発動されますと、一部
内閣
総理大臣の統制下に入りまして、海上自衛隊と一緒に行動する任務を与えられるわけでございます。そういう点から申しまして、将来は海上保安庁の船の装備につきましてもいろいろ協議をしたいと思うことがございますが、ただいままでのところはいたしておりません。
芳賀貢
258
○芳賀
委員
現在までは何らの関連もないわけですね。——海上保安庁でどのような装備をするかというような場合にも。
加藤陽三
259
○加藤(陽)
政府
委員
現在までは相談をしたことはございません。
芳賀貢
260
○芳賀
委員
そこで、お尋ねしたいのは、この急迫不正の事態には、海上保安庁の任務として、国民の生命・財産あるいは当然の
権利
を守るために出動するわけなんですが、李ラインは彼らの一方的な主張ではあるが、明らかに李ラインの外において急迫不正な行為が絶えず繰り返されるということになると、これは黙過することができないと思うのです。ただ、わが方の
漁船
を拿捕してそれを曳航して韓国側へ帰るあとだけを追尾して返してくれ返してくれという程度では、これは急迫不正の事態を防ぐことにはならぬと思うのです。ですから、今後の事態については、先ほども消極的な答弁がありましたが、一体どのような態度でこの国民の生命・財産や公海における当然の
権利
を守る具体的な行動をやろうとするか、その点をお尋ねしておきます。
林坦
261
○林(坦)
政府
委員
先ほどから御説明申し上げております
通り
、現在の状態におきましては、
漁船
の李ライン
関係
における保護については武力を
行使
しないで極力折衝によってこの問題を解決するというのが国の方針になっております。従って、その方針にのっとってこの問題に対処いたしております。私どもとしましては、問題が起こる前にいち早く韓国の警備艇の動静その他も知りまして、それに基づいて、出ておる
漁船
を
指導
して問題を起こさないようにする、また、たまたまそういう場合に出っくわした場合には、あるいはけさほども起こりましたことのように、でき得れば敢然と間に割って入ってでも阻止をすることはする、しかしながら、もうすでに拿捕されてしまい、乗組員も韓国の警備艇に乗せられてしまったというような場合におきましては、極力洋上において折衝をし、あわせて外交交渉によって折衝をするというのが現在の取り扱いの方法でございます。それによって成功した場合もあり、また、聞かれない場合もあったわけでございます。
芳賀貢
262
○芳賀
委員
それでは、今後このような危険水域における完全な任務を果たすためには、現在の保安庁の巡視船の保持トン数や装備程度ではたしてやれる自信はあるのですか。あるいは、全くこれは不足しておって、いかに保安庁の責任だと言われてもやれない程度のものであるか。その点はいかがです。
林坦
263
○林(坦)
政府
委員
もちろん、現在の状態におきましては、海上保安庁は現在の足りない装備をもって全力を尽くしてやっております。しかしながら、だんだんいろいろと状況も複雑になってむずかしくなって参ります。私どもの方といたしましても、さらに通信なりあるいはその他の方面におきまして装備を充実いたしましてわれわれに与えられているものでできるだけのことはいたしたいという覚悟で当たっておる次第でございます。
芳賀貢
264
○芳賀
委員
関連してですが、それでは、
昭和
三十五年度の予算等で海上保安庁の船の建造とかあるいは
組織
上の拡大が一体期待されるように行なわれておるかどうか。保安庁の
組織
というものは自衛隊とは違いますからね。これは明らかに海上における秩序維持の警察力であることは言うまでもないわけです。その警察力というものは、国土の中においても、あるいはわれわれの領海内においても、あるいは漁業の操業中の公海においても、完全に秩序が保たれるという状態に置かれていなければならないと思うのです。一方においては防衛
関係
の予算だけはどんどんふえるが肝心な海上における秩序維持の設備は少しも伸びていかないということになりますと、これはずいぶん問題があると思う。こういう点は所管大臣等の意見を聞くのが当然ですが、今日は都合で来ておりませんので、参考までに意見だけを聞いておきたいと思います。
林坦
265
○林(坦)
政府
委員
李ライン方面の問題につきましては、私どもも現在の装備等につきましては決して十分であると思っておりません。来年度につきましてもいろいろ巡視船の増強という問題について
政府
部内において討議し折衝もいたしたのでありますが、なかなか財政面等の
関係
から思うにまかせない状況でございます。しかしながら、大体従来毎年一隻程度作っておりました二百五十トンの船を来年度は二隻作ることにいたしました。その地平六百万円ばかりの金を李ラインの通信
関係
の装備その他に使い得るように予算に計上することができた次第であります。
芳賀貢
266
○芳賀
委員
次にお尋ねしますが、先ほども
水産庁長官
から抑留漁民や留守家族に対するたとえば給与
保険
等の話がありました。たとえば留守家族に対して毎月一万円、あるいは抑留者に対しての生活費八千円程度では、とうてい生活維持はできないと思います。しかもそれは
保険
に
加入
していなければその給付を受けることができないというような状態は、このままでは満足でないと思うのですね。しかも、李ラインの外で操業を行なっておったものが不当に拿捕されあるいは撃沈されるということになりますと、これは漁業に従事する国民の何らの過失ではないと思う。従って、この点に対してはもう少し
政府
としても熱意のある処理方針をきめる必要があると思いますが、どのように考えておるか。これは
農林省
の政務次官から伺いたい。
高橋泰彦
267
○高橋(泰)
政府
委員
私からお答えいたします。 先ほど長官からも御説明があったわけでございますが、現在、拿捕された船員に対するいろいろな援護
措置
につきましては、乗組員の給与
保険
の未
加入
者に対しましても一人一カ月当たり一万円ということになっておりまして、給与
保険
の
加入
者であって低額な
加入
者、これは一万五千円以内と思いますが、この場合は、差額についても、その差額の三分の二になっておりますが、三分の二を見るということになっております。従いまして、この場合は、必ずしも乗組員給与
保険加入
者だけではなくて、未
加入
者に対してもそれぞれ適切と思われる援護
措置
を講じているということでございます。それから、もう一点は、差し入れ品の購入費に対する補助金でございまするが、これは、先ほどの御説明のように、一人年額九万六千円ということになっております。これらにつきましても、大体年三同程度に分けるわけですが、
合計
これを支出しているというような状況でございます。 なお、この額についてどう思うかという御質問でございますが、もちろん、私どもは、これで十分であるというふうには必ずしも考えておりませんが、しかしながら、財政当局との打ち合わせの問題もあり、他の援護
措置
とのつり合いの問題もあり、一応この程度で不満足ながらめんどうを見るということになっておるというふうに御了承いただきたいと思います。
芳賀貢
268
○芳賀
委員
今の次長の答弁は
水産庁長官
の答弁と少し違うのですが、それでは、未
加入
者の留守家族に対しては一万円の支給を行なって、
加入
者については見舞金のほかにさらにまた正規の
保険
給付が行なわれる、そういう意味なんですか。そこをはっきりして下
さい
。
高橋泰彦
269
○高橋(泰)
政府
委員
これは、乗組員給与
保険
の
加入
者のうち低額な
加入
者、すなわち月一万五千円以下の非常に低額な場合は、
保険金額
と一万五千円との差額の三分の二を補給するというような
措置
をとらしていただいております。
芳賀貢
270
○芳賀
委員
もう少しはっきり説明して下
さい
。給与
保険
に
加入
している者に対する給付は正当に行なわれると思いますが、そのほか、国としての配慮、見舞金といいますか、その
金額
というものは、これは
加入
者であっても未
加入
者であっても均霑さるべきものであると思うのです。そのことがそのように行なわれておるかどうか、その点ですね。
高橋泰彦
271
○高橋(泰)
政府
委員
これは、
通常
の場合ですと、乗組員給与
保険
に入っていただくことをお勧めしておるわけでございますから、
通常
の場合は給与
保険
制度
でもってカバーできるわけでございますが、しかしながら、強制的な
加入
の方法はとっておりませんので、どうしてもその中には乗組員給与
保険
に未
加入
の方がおるわけでございます。従いまして、その場合、給与
保険
に入っていないから仕方がないというわけには参りませんので、その場合には、一人一カ月当たり一万円の
範囲
内において
政府
の方から支出する、こういうような考え方に立っております。 〔田口
委員長
代理退席、
委員長
着席〕
芳賀貢
272
○芳賀
委員
それでは、この抑留者に対する月八千円の生活費を送金するのですが、この八千円の程度で大体安心できるような健康が維持されておるかどうか、その点の確認はどういう方法でやっておられるのですか。
高橋泰彦
273
○高橋(泰)
政府
委員
これは、ただいま問題になりましたように、乗組員の給与
保険
制度
と、もう一つは、差し入れ品の購入費の補助金という、主としてこの二つの方法で援護しているわけでございますが、この漁民側の状況につきましては、県を通しあるいは団体を通してその状況についてお聞きしておるような情勢でございます。 なお、韓国の抑留者でありまして、帰還後に抑留に原因いたしまして病気したような場合でありまして社会保障によります医療給付を受けられない者に対しましても、
一定
の年限相当の額の
援助
をいたしておるような次第でございます。
芳賀貢
274
○芳賀
委員
この韓国に抑留中の日本人の船員の生活状態とか健康状態を適切に判断したり認めるという場合は、これはやはり国際赤十字の機構を通じて人道上の見地からも韓国側が十分責任を持って抑留者の健康保持等についても当たっておるかということを確かめたことは今までないわけですか。
伊關佑二郎
275
○伊關
政府
委員
国際赤十字に対しましては随時実情の調査を依頼しております。昨年も二月、と九月にそういう依頼をいたしまして、一応の返事をもらっております。
芳賀貢
276
○芳賀
委員
その
内容
はどういう報告になっておりますか。
伊關佑二郎
277
○伊關
政府
委員
昨年の二月の場合は、国際
委員会
が韓国赤十字にまた調査を依頼したというふうなことになりまして、その出た報告によれば、抑留漁夫は満足な待遇を受けているという回答が来ておりますが、これはじかに自分で行って見ておらずに韓国赤十字からの報告でありますので、それがはたして真相に近いものかどうかという点は問題があるかと存ぜられます。昨年の九月にもそうしたことを依頼しておりますが、その際は、慰問品を送って、これが無事に着いたということを言ってきております。それから、昨年の七月でありましたか、漁夫が
集団
的に収容所を出てデモをやったという事件がございました。そのときは、待遇が悪いのが原因じゃないかということで、非常に急を要しましたので、釜山にありますアメリカの総領事館に頼みまして実情を調査した。このときの報告は、それほど悪いものではない、非常にひどい待遇とは言えない、まあ普通の待遇をしている、——これは、日本国内におきます場合と、韓国におきます場合、一般の韓国人の生活状態との比較もございましょうから、日本の場合に比較してどうということにならずに、向こうで見てそれほどひどいというものではないというふうな報告が参っております。
芳賀貢
278
○芳賀
委員
次に関連してお尋ねしますが、三日の下旬にジュネーブで国際海洋
会議
が開かれることは御
承知
の
通り
です。この海洋
会議
においては、毎年の論争になっているところの、たとえば領海の問題、あるいは領海に接近した漁業の浅海
地区
の問題等が当然の
議題
になるわけですが、これに対して日本の
政府
としてはどのような態度でこの海洋
会議
に臨もうとしておるか。世界的に、たとえばソ連等においては領海は距岸十二海里、あるいは日本においては三海里ですが、たとえば南米等においては、ペルー、チリー、アルゼンチン等においては、距岸二十海里が領海というような主張がされておる。非常にこれは不統一なわけです。ですから、これは国際上の重大な問題ではあるが、やはりこれらの領海に対する国際法上の定説等も早く統一する必要があるし、また、漁業
関係
の問題についても、領海をも含めた自国だけの専管の漁業地域というものもやはり検討すべき時期でないかというふうに考えるわけです。そういう点が漸次整理されていけば、やはり漁業の場合には魚群の生息する地域以外のところで操業する必要は当然ないわけですから、この点は相当今年の
会議
は
重要性
を持つものと考えられるが、一方においてはすでに現在北洋の日ソ漁業交渉も開始されておりますし、また、一方においてはこのような国際海洋
会議
が開かれることになっておるので、当然
政府
としては出席に対する態度等はきめておると思うのですが、この機会に
内容
を明らかにしてもらいたいと思います。
伊關佑二郎
279
○伊關
政府
委員
この問題は、外務省の中でも条約局が主管しておりますので、私も非常に詳しい点については存じませんが、まだ最終的な訓令は出しておりません。今、いかなる訓令を出すかということについて、もうきわめて近い将来に出さなければなりませんので、協議をいたしております。日本は三海里ということを従来言っておるのでありますが、アメリカは、六海軍の領海、その外に漁業専管権を認めている。これは五年以上の実績を持つ他国の
権利
に考慮を払わなければならぬというのがついております。カナダは、六海里に対してまた六海里の漁業管轄権があるというような案でございまして、まあこれは最終的に外務省の意見あるいは
政府
の意見はきまっておりませんが、そういうふうなアメリカ案のようなものでまとまりますならば三分の二の多数がとれるならば、それもいいんじゃないかというふうな考えもいたしておりますが、私は専門でございませんので、まだ最終的にきまっておらぬということだけは存じております。この程度であります。
芳賀貢
280
○芳賀
委員
この問題はまたいずれ別の機会にただしたいと思いますが、きょうは
永田
参考人
に御足労を願って
永田
さんを中心にしての質疑でありますから、この程度にして、残余の保留した問題はまた適当の機会に質問したいと思います。
吉川久衛
281
○
吉川委員長
金子岩三君。
金子岩三
282
○金子
委員
私は水産庁の高橋次長にお尋ねしますが、現在水産庁の監視船がこのシナ東海から李承晩海域にどういう配置で何隻の船を配船しているか、お尋ねします。
高橋泰彦
283
○高橋(泰)
政府
委員
ただいま配置しているのは四隻でございます。
金子岩三
284
○金子
委員
どういう配置をしておりますか。
高橋泰彦
285
○高橋(泰)
政府
委員
大体月二回くらいの航海を予定しておりますが、季ライン及び華東ライン周辺の調査、
指導
、取り締まりに当たっております。
金子岩三
286
○金子
委員
昨年来李承晩ラインが非常に険しくなりまして、そのころも論議されたのでございますが、水産庁には相当の船もチャーターされて持っておる。しかし、この李承晩海域で操業する
漁船
に言わせますと、かつて水産庁の船を目にしたことはないということをよく言われておる。主として、水産庁としては、華東ラインのいわゆる安全操業、あるいは中共との紛争防止のために、以西底びきの安全操業のために、ここに配船をしておると当時言われておったのでございますが、この華東ラインというものは、四六時中さような国際紛争を起こすような危険を伴った操業は以西底びきはやっていないということははっきりしている。私に言わせるならば、あまり必要もないところに配船して、かように海上保安庁の船が手不足である、こういった事態であるこの季ライン付近に水産庁の船が配船されないということは、私は、主管官庁としてまことに遺憾である、かように存じますが、このことについて意見をお聞きします。
高橋泰彦
287
○高橋(泰)
政府
委員
お答えいたします。私どもは李ライン並びに以西底びきトロール漁業の調査と取り締まりの任に当たるわけでございますが、現在のところ、この種の事件の起こりますのは、御指摘のように李ライン周辺が多いわけでございます。それで、私どもといたしましては、紛争の起こる区域を意識的に回避するようなことはいたしておらないわけでありますが、なおそれらの誤解もあろうかと思いますので、その点につきましては、御
趣旨
に沿うように検討させていただきたいと思っております。
金子岩三
288
○金子
委員
私の知るところでは、海上保安庁の、いわゆる海上における安全操業の使命と申しますか、これは、
農林省
、いわゆる水産庁の要請あるいは水産庁の計画に基づいて海上保安庁はその船の行動を指揮することに相なっておると私は
承知
いたしておるのでございます。その水産庁が、自分の手持ちの船を、シナ東海から李承晩ラインに、この国際漁場における最も危険地域である地域に回すように、昨年来強く業界から申し入れておるのに、今日も依然としてその船を有効に配置しないということは、私はどうかと思いますが、この点、今まで配船をしていない
理由
、根拠を一つはっきりお知らせ願います。
高橋泰彦
289
○高橋(泰)
政府
委員
御
承知
のように、この季ライン周辺におきます、水産庁で行なっておる取り締まりが用船によるものでございまして、その性能も必ずしも十分ではございません。この船にはもちろん私どもの取り締まりの任に当たる水産庁の乗員が乗船しておるわけでありますが、船は用船のために思うような活躍が必ずしも十分にできるとは言えない状況でございます。この点につきましては、この水産庁の調査船をその方に回すということも考えられますが、
基本
的には、用船を、本来の調査・
指導
船の方に切りかえていくことが望ましいのでありますが、やはり、この問題は水産庁だけでは十分ではありませんで、どうしても主体を海上保安庁の取り締まりの方にお願いいたしまして、それと十分緊密な連絡をとることが一番いいのではないかというふうに考えておるわけでございます。その点、用船でございますので非常に不満足だとは思いますが、なお、その点につきましては、財政当局とも相談いたしまして、漸次充実して参りたいというふうに考えておる状況でございます。
金子岩三
290
○金子
委員
海上保安庁の松野警救監にお尋ねいたしますが、このたびの第五・
八幡丸
の事件について、
永田
参考人
のお話を聞いておりますと、これは、確かに、李承晩ラインを認める認めないは別といたしまして、ラインから約二十マイル程度五島の西岸に寄った漁場で操業しておったことにこれは相違はないと思うのでございます。この
永田
参考人
が申されております第五・
八幡丸
は、話によりますと、当然安全地帯で操業するからということで、特殊
保険
にも入ってないということを先ほども申されておる。その安全地帯で操業をしているということで、かりに巡視船から今の警報が出ましたといたしましても、比較的その警報をキャッチするのにルーズだったのではないか。ラインを入って操業する船はよくその指揮に従ってやっておることと想像もつくのでございますが、比較的五島列島寄りのライン外と称するところを常時操業を続けるという船は、
割合
私は警報を聞いていないと思う。この事件が起こりました当時、警報はどういう警報を出しておったのか。先ほど来同僚がいろいろ御質問しておりますが、警報について、いかなる警報が出ておったかということはどなたもお聞きになりませんので、その点を一つまず明らかにしていただきたいと思います。
松野清秀
291
○松野説明員 先ほどの
参考人
の方のお話もございまして、私どもも、先ほど長官からお答えいたしましたように、当時、第五・
八幡丸
にしましても、ラインの外少なくとも私どもの推定では数海里くらいじゃないかと思っておりますが、いずれにしましても、ラインの外にあったことは間違いないのじゃないか、かように推定いたしております。従って、お説のように、ラインの外で操業をしております場合には、どうしても私どもの巡視船から出す警報に対しましても若干注意をしないで過ごしてしまうというようなこともあろうかと存じますが、御
承知
のように、従来からも実は李承晩ラインの確かに外と思われるような個所で拿捕されたケースが非常に多いのでありますので、やはり、もし私どもの推定のような位置だといたしますると、私どもの警報をやはり十分聞いていただくということでないと、今後も事件は起こるであろう、かように考えております。なお、当時におきましては、十一日の十四時に、ちょうど
八幡丸
が操業をしておりました海域に対しましては、いわゆる厳戒警報というのを出しております。さらに、十二日の午前一時三十分に、重ねて、やはりあの方面に対しまして若干区域を広めまして厳戒警報を出しております。ですから、もし通信士が当直しておられるならば、おそらく第五・八幡の方は聞かれたのではないか、かように考えておる次第でございます。
金子岩三
292
○金子
委員
厳戒警報中であったとすれば、特に、この第五、第六の
八幡丸
が非常に不注意であったということもまあ認めなければならないと私は思うのでありますが、とにかく、
八幡丸
にすると、ラインの外で操業するという一つの安心感を持って、比較的そういう警報を聞き漏らすのじゃないか、こう考えます。まあ、
永田
参考人
が申します
通り
、韓国のいわゆる警備艇は、東より西へ西へと追い込んでいった、日本の巡視船はみな済州島寄りの西におったというので、当時の実情をよく
承知
いたしますと、まことに気の毒な、まあ自分のいわゆる五島列島——これは五島の船籍でございますから、自分のいわゆる沿岸を操業しておった船を韓国の警備艇が中に追い込んでいった、それを、日本の巡視船はずっと内側で警戒態勢をとっていたので、これを早く接舷前に発見ができなかったといったような事態を考えますと、まことにこの事件は不祥事件で、船主の
永田
さん初め乗組員の一同に対しましても、国家としてほんとうに気の毒だということを考えなければならない、かように私は存ずる次第でございます。先ほど田口先生が申されておりました
通り
、特に第七管の渡辺本部長は非常に熱心で、献身的努力を続けられまして、この海域の安全操業に全力を尽くされておるということは、業界ひとしくこれは感謝をいたしております。ただ、この事件をつぶさに検討いたしますと、やはり、上手の手から水が漏れた、私はかように考えまして、いささか海上保安庁のいわゆる巡視船におきましても手ぬかりがあった、かように一つ海上保安庁でも率直に御認識をいただきたい。従って、今後の処置について一つ大いに検討すべきである、かように私は存ずる次第でございます。 それで、かようなまことに気の毒な、いわゆるラインから中には越境しないということで安全地帯で操業しておった船で、特殊
保険
もついていない、こういうことでございますので、今度外務省におきまして賠償をこれは一つ強く要求していただきたい。相手が相手ですから、もしそういったことが実現できなかった場合は、やはりこれは日本国
政府
において——こういういわゆる特殊ケースと申しますか、少なくともライン外の日本領海と思われるところでかような不祥事を起こして犠牲になった場合は、船主に対しても国は適当なめんどうを見るべきだと、かように私は考える次第でございます。これは水産庁が主管でございますので、一つ水産庁で大いにはっきり御検討になっていただきたい、かように存じます。 次に、この海域は、来たる七月ごろからまたまき網の盛漁期になりますので、隻数が現在東西で約三百数十隻という資料をいただいておりますが、おそらく千隻以上になりましょう。そういった場合、常時六隻の海上保安庁の警備
体制
で、はたしてそのような韓国の態度を続ける間完全なる警戒に当たっていけるかどうか。外交交渉の見通しでございますが、私らは非常に悲観的でございまして、やはりことしの夏から秋にかけてもこういう事態がこのまま続くのではないか、かように考えられますので、今後一つ
国会
の先生方も、警備が手不足であるならば、他の管区にチャーター船を回し、優秀船をあの海域に回すというような、昨年とったような
措置
もとれるのでございますから、一つ
国会
の先生方によく御認識をいただきまして、予算かれこれの面も適当な御
協力
をお願いいたしまして、万全の
対策
をとっていただきたい、かようにお願いする次第でございます。 先ほど来、大砲を積んだ意味はどうなのか、撃てるのか撃てぬのかというようなことをしきりに言われておりますが、この
八幡丸
の場合は、かような船が沈没するまでいろんな特殊ないきさつがあったのでございますが、このときでも、けさの事件のように中へ割って入るというようなことは、臨機の
措置
がとればとれたのではないか。いささか現地のことで思うようにいかないこともございますので、その是非はここで私は論ずる考えは持ちません。ただ、大砲を積んだ、あるいはたまを撃つとか撃たないとかいったようなことよりも、今海上保安庁がとっておられます常時六隻というこの海域の警備
体制
は、今後シーズンに向かうわけですし、役所の仕事は二、三カ月かかりますから、今から一つ
関係
各省でよく御相談いただきまして、万全の
体制
をとっていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問をこれで終わります。
吉川久衛
293
○
吉川委員長
本件に関する調査は、本日はこの程度にとどめます。
参考人
には長時間にわたり本
委員会
の調査に御
協力
いただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げる次第でございます。 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後五時三分散会