○
西村(力)
委員 そう
考えられないでしょうけれ
ども、二十億数千万の金をつぎ込んでそうやっておきながら、産業はだんだんと衰微していく。
日本治下における水準よりも、六〇%程度以下に低下している。朝鮮の人民の困窮つがますますはなはだしくなるということであるとするならば、
アメリカの善意というものは生かされない。生かされないことは、
一つは李承晩政権のやり方が悪いということもあるかもしれないが、
アメリカ自体が
考えている経済援助の形というものが、援助じゃなくて、支配だということを
前提としている、こういう
工合に、私
たちはやはり言わざるを得ないと思うわけであります。もちろん、李承晩のやり方が、ただいたずらに反共北進武力統一、こういうことで人民を無理に掌握してやっておるというような点、あるいは恐怖政治、あるいは腐敗政治
——今回の五月何日かの週刊新潮には、柳大使が、八十億ですかの貯金をしたというようなことが出ておりますが、あれはそのまますべて事実だなんて私は言うわけじゃないけれ
ども、端的にああいう
工合に現われている朝鮮内部の政治の腐敗というものは、極端なものであろうと思う。しかし、韓国に
米国がそれだけの金をつぎ込んでいくならば、大目標は、韓国の産業を発展させる、民生を向上させる、そのことによって
ほんとうに韓国というものの力を高めて、そうして
アメリカの欲する反共軍事拠点として不動のものにする、こういう方向をとるのは当然だろうと思うのです。ところが、事は全く反対だから、これは一がいに、李承晩の腐敗だとだけ断ずるようなことはいけない。やはり私が申しましたように、韓国に対しては、余剰物資のはけ口、その金でひもつきの軍事支出、そういうところにつぎ込んでいくのだという
アメリカの基本政策というものは、やはり一応これを
指摘しなければならないじゃないか、こう思うのです。
ところで、それはそれにしまして、今度の
日米安全保障条約の第二条には
日米の経済協力の
条項がうたわれておりますが、この経済協力の
条項においても、韓国に対する
アメリカの経済政策と同じような形は現われないにしても、
基礎に流れる
考え方というものは、あの
条約の
条項からくる対日経済政策においても、これはやはり同
性質の方向をたどるのではなかろうか、私はそれを非常に心配している。いかにも、その富裕なる国
アメリカと提携していけば、それよりも
国力の弱い
日本が、経済的に非常に利するがごとく幻想を与えようとしておるけれ
ども、この韓国に対する
アメリカの経済政策を、見る場合において、
日本に対しても同じ
性質の対日経済政策というものがこれから強行される。現にされつつあるのだということ、そういうことを私
たちははっきり見なければならないわけなんです。その理由としましては、この間、昨年の十一月にビジネス・インターナショナルという会社のあっせんで来ました投資団の円卓
会議の記録を見ましても、何と言っておるか。
日本は、
アメリカにとっては最も有望なる市場だと言っておる。しかも、
日本の各産業における株の取得というか、投資というか、その
制限というものの一切を除去してもらわなければならぬ。また、非居住者円の本国送還というか、そういう
利益の本国送還というものの
制限の一切を払ってもらわなければならぬ。これからまた
アメリカがかりに投資をした場合において、その資金が効率的に運用されるためには、徹底的な合理化をしなければいかぬ。そのためには、太田薫なんというのは一番けしからぬなんということを、名前を出して書いておるじゃないか。労働組合を弾圧して、徹底的な合理化をして、
アメリカの投資をした金が、効率的に運用されるようにしなければならぬというようなことを書いてある。あそこに、はっきり現われてきているじゃないですか。こういうことが、私は、あの第二条において最も警戒しなければならぬ点であるということを
考えておるのでございますが、この第二条の件に関しましては、私はしろうとでありますので、今後適任者が、
政府の所見に対する質疑を行なうことになっておりますから、この程度にとどめます。
ただ、そこで私は、この
条約の第十条の期限十年という問題について、経済的観点から
一つ問題にせざるを得ないじゃないか、こういう
工合に
考えるのです。そのわけはなぜかといいますと、私がかつて香港に参りましたときに、あそこの某物産の支店長といろいろ話をいたしました。香港は、あのイギリスの手から租借の期限が切れると同時に本国に帰るであろう、こういうことです。そのとき言うには、香港における投資というものは、やはり最低十年ということを見越していかないと、それ以上の投資というものはほとんど
意味がない。これから香港が、十年後には必ず帰るであろうから、まずここ二、三年の間は、十年をめどとして香港において事業を始めているのだ。それは最初の五年間において完全なる償却をやり、あとの五年間においてもうける、こういう見込みを立てて投資をするのだ。その投資の最低限はやはり十年だ、こういうようなことを
考えておるのだということを聞きました。それから言いますると、この期限十年というものは、やはり今
アメリカが
日本に対して行なおうとする経済投資や何かに対して、十年間のこの
軍事同盟の金縛りのもとにおいて、不安なくそういう経済進出をはかろうとする、こういう
意味を第十条は持っておるのだ、こういう
解釈をはっきり私
たちはやはり一応
考えるということが必要である、こういう
工合に私は思うのです。この件に関しましては、あなた方は何か笑われておりまするが、十年という期限を
アメリカが最後の線として確保した、その理由というのは、軍事的
意味以上に、そういう経済的な含みを持っておるのだ、これを
考えるのですが、藤山さん、私の申したことに対する御
見解はどうですか。