○
石橋(政)
委員 午前中に、
藤山外務大臣が提案
理由の
説明の際におあげになりました第一の
国連憲章との
関係の問題、それから、第二の防衛義務の問題について御
質問いたしましたので、午後は、第三番目におあげになっております
事前協議制の問題についてお尋ねをしてみたいと
思います。
提案
理由の
説明によりますと、重要な
改正点の第三として、この
事前協議制の採用をあげているわけです。すなわち、「
条約の
実施全般を
日米両国間の協議の基礎の上に置き、特に、」重要な事項、すなわち
米軍の「配置及びその装備における重要な変更、並びに、」戦闘作戦行動のための
施設・
区域の
使用については「別に
交換公文をもって事前の協議にかからしめることとした」と、こう申しておるのでありますが、私
どもは、この
説明にもちょっと納得がいかないわけなんです。なぜかと申しますと、これまた、今度の新しい
安保条約の
締結によって初めて出てきた制度とは思えないわけです。過去において、
吉田内閣あるいは岸内閣が
国会において再三
説明をし、
答弁いたしましたものを今振り返って読んでみますと、今の
条約のもとにおいても十分に事務協議制は採用されておることになっておるわけです。だから、新しい
条約によって初めてこういうものが出てきたということになりますと、これまた、過去の
答弁がちょっとうそだということにならざるを得ない。それを
一つ立証しながら、お尋ねしてみたいと思うわけです。
最初に、先ほ
どもいろいろと引用いたしましたと同様、
現行安保条約の提案
理由の
説明の際の
吉田内閣の
答弁を、ちょっとここで御紹介申し上げておきます。
昭和二十六年の十月二十四日、衆議院の
特別委員会において、この
事前協議について笹森
委員が尋ねております。「
日本に駐屯しておりまする
米軍が
日本以外のところ、たとえばこの
条約の中に、極東の安全保障のため、あるいはまた
国際の平和のためにもこの軍を
使用せしめるということが
規定されてあります。すなわち直接
日本が攻撃されておる場合の防衛ではなくて、その他のこの
条約の
規定による極東の安定のために出動するという場合を
意味しておるのであります。その場合でも、
日本の
政府の完全なる同意を必要とすると私
どもは
考える。それは
日本防衛のための
軍隊であるがゆえに、それは必要だと思うがどうかという
質問です。」笹森
委員の
質問の要点は、結局、
米軍は
日本防衛のために
日本に駐留しているのだから、その本来の目的以外の極東条項によって出動する場合には、当然
日本政府の同意が必要だと思うがどうでございましょうかと、こういう
質問をしているのです。これに対しまして
吉田総理は、「当然
両国の話合いできまることと
思います。」こう答えております。まだほかにもございます。
昭和二十六年十月二十五日、翌日でございますが、同じく本院の
特別委員会において、三木武夫君が同様の
質問をしておる。「今の御
答弁は、少くとも
安全保障条約の国外に対する発動は、
日本の完全なる同意のもとに行なわれる、こういう御
答弁と解釈いたしてよろしいですか。」これに対して
吉田総理は、「同意というか、協議の結果、結論に到達するということと
考えております。」このように述べておられます。ほかにも、まだ
西村条約局長あたりの
答弁もたくさんございますが、そうたくさん引用する必要はないと
思います。ここでも、
現行安保条約のもとにおいても、いわゆる領域外出動の場合には当然
日本国政府と協議しなければならぬ、その協議の結果、
意見の一致を見て、初めて出動がなされるのであるという
説明が、当初、
現行安保条約が
国会に出されたときにはなされておる。これも先ほどから申し上げておる問題と似て参りまして、おそらく、
総理の
答弁としても、
条約上そうなっておらないんで、実際はそうやるでしょう、こうお答えになるだろうと思う。ところが、これがもう少し進んで参りまして、
昭和三十二年、岸
総理が
アメリカに参りました。そうして、いろいろとこの
安保条約を中心に
話し合いをされました。当時共同コミュニケを発表いたしております、そうして、この共同コミュニケに基づきまして、いわゆる
日米安保
委員会というものが発足いたしました。その際の共同声明あるいは安保
委員会設置に関する
日米共同発表等によりまして、この
事前協議制が採用されたと、当時
説明されておるわけです。
吉田内閣が言っておることよりも、もっと強く
アメリカを拘束するという
説明が当時なされております。私、ここで読むまでもないと
思いますが、この共同コミュニケ、それを受けてできました安保
委員会設置に関する
日米共同発表ではどういうふうに書いてあるかといいますと、米国によるその
軍隊の
日本における配備及び
使用について実行可能なときはいつでも協議することを含めて
安全保障条約に関して生ずる問題を検討すること、これが最大の問題点として当時盛んに論議されたことは記憶に新たなところであります。私も、
総理あるいは当時の石井副
総理、あるいは
藤山外務大臣と何度もこの問題について論議をいたしております。ところが、そのときのお
言葉は、全部この安保
委員会における協議で拘束できるという
答弁だった。完全に拘束できる、こういう
答弁だったのでございますが、そうしますと、
吉田内閣の当初の
説明、それに相待って岸内閣の三十二年以降における
説明というものをあわせ
考えて参りますと、
条約上どうあろうと、実質的には、
現行安保条約のもとにおいても、完全に今度やろうとしている程度の
事前協議制は採用されるもの、こう解釈して差しつかえございませんか。