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黒田委員 いろいろと質疑が継り返されて、堂々めぐりをしておるようですから、このあたりで結論を出さなければならないと思うのですが、今まで
岡田君が言われたこと、それから
松本君が
質問されたことに私も多少補足をいたしまして、この問題をどう扱うか、一応結論を出してみたいと思う。第七条がなければ、ただいまのような問題は起こらないで済んだわけです。そうしてまた、第七条も、「この
条約は、国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ばすものではなく、また、及ぼすものと
解釈してはならない。」ということだけであれば、問題が起こらなかったと思います。ところがこの第七条の中に、「この
条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利……に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと
解釈してはならない。」という、この
言葉が入っておるから、これを社会党として重大な問題にしておるのであります。単に一
岡田委員の疑問としておるのではないのでありますから、もう少し補足して、私からも党としての
質問といたし、この点を明らかにしていただきたいと思います。
ただいま問題になっておりますことを多少具体的に申してみれば、こうなると思います。「この
条約は、」すなわち、新
日米安全保障条約は、「国際連合憲章に基づく締約国」すなわち、
アメリカ合衆国「の権利」すなわち、憲章第五十一条に基づく個別的自衛権及び集団的自衛権に「どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと
解釈してはならない。」こういうように具体的には読めるのであります。そういたしますと、国連憲章第五十一条に基づく
アメリカ合衆国の権利にはどのような影響も及ぼすものではない、また、及ぼすものと
解釈してはならないというのでありますから、
アメリカの自衛権または集団自衛権の行使にあたって制限を与えるものでもなく、また、制限を与えるように
解釈してもならない、こういうようにこの第七条は理解しなければなりません。ところが、
交換公文によると、
事前協議という問題が出てくるわけです。それによって、
日本が
ノーと言った場合には、
アメリカが
日本を基地として利用して、たとえば台湾あるいは
韓国等に対して、一面、米台
条約あるいは米韓
条約による
アメリカの義務として、なお一面は、
アメリカの集団的自衛権の行使として、その権利を行使しようとする場合に、
日本に
ノーと言われれば、それだけ制限を受けるわけであります。
アメリカとしての自衛権の行使に制限を受ける。すなわち、この第七条によれば、影響を及ぼされることになる。イーと言えば、自衛権の行使ができないということになれば、影響を及ぼすものと
解釈することになるので、第七条に「及ぼすものと
解釈してはならない。」こう書いてあることと矛盾しはしないかというのが、われわれの持っておる疑問でありまして、こういう疑問が起こることは、この第七条がある以上は当然だと思う。だから
政府は、いたずらに言いのがれをしたり、強弁するということでなくて、懇切にこの疑問に対して答えなければならぬ義務があると思う。
一言、与党の諸君にも、これは私は余分なことだとも思いますけれども申し上げます。ただいま
椎熊君は退席されましたけれども、ああいう
態度で、この条文の
解釈問題に対して、臨まれては困ると思う。これは、おそらく
日本国民全部が、この条文があるために、
事前協議というものに対する非常に大きな疑問と不安を持っておる問題でありまして、私どもはそういう見方で
質問しておるのでありますから、
政府もそういう
意味で、ただ一時の言いのがれということでなく、真剣に、なぜ第七条に、国際連合憲章に基づく締約国の権利にどのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと
解釈してはならないというような文句を入れたのであるか、これを入れれば、
事前協議という問題を帳消しにしてしまうじゃないか、こういう疑問が当然に出てくるのであります。
そこで、私は、なお、その点について、私どもが疑問とする根拠を申し上げておきましょう。
交換公文に書いてあります
事前協議の問題が、この
条約の正文の中に書いてあれば、またこれは別に
解釈することもできるかもわかりません。
政府が
ノーと言える
事前協議という問題は、
条約本文には書いてなくて、
交換公文の中に書いてあるわけです。その
交換公文は、
アメリカ上院の
承認を経る必要がないのです。
条約本文に
事前協議のことが書いてあれば、この
条約は
アメリカ上院の
承認を経なければならぬということが、第八条に書いてある。
交換公文は
アメリカ上院の
承認を求める必要がないのだ。
事前協議に関する
交換公文は、
アメリカ上院の
承認を経る必要はないものだということは、これは
外務大臣が、ただたびこの
委員会の席上で、あるいは予算
委員会の席上で
説明しておられるわけです。そうしますと、同じ
日本と
アメリカとの国際的約束であっても、上院の
承認を経る約束と、
政府だけがとりきめる約束との間に、効果の優劣があるというように、われわれとしては考える。これは決して神経過敏じゃない。
アメリカは
日本の基地を利用するのですから、権利を得るだけのことでございまして、そこには何ら義務を負担するものがないから、上院の
承認を経ないでもいいとしておるのでありますが、
日本は基地を使わせるという義務を負担するのでありますから、これは重要な問題である。だから、もし
政府が
説明せられるような制限が、
アメリカの集団自衛権の行使にあたってなされるものであるという
解釈をされるのなら、なぜそのことを
条約の中に書いておかないか。それを
交換公文なんかに入れておくから、問題が起こるのです。
アメリカの集団自衛権もこれは権利でありますから、権利は、これを行使する主体、すなわち、
アメリカが制限しても、それは自由でありましょう。制限どころではありません、権利でありますから、放棄してもいい、そうも言えるわけです。集団自衛権という権利を
アメリカは持っておるから、百パーセントいかなる場合にも
アメリカが権利を行使するものとは限りません。だから、制限すると約束してもいいわけですね。けれども、制限してもいい約束をするのならば、なぜ
条約でしないかということです。それからいま一つは、その
条約でそういう制限を
アメリカがしないで、
交換公文というようなものに回わしておいて、しかも、
条約の中に、「国際連合憲章に基づく締約国の権利に影響を及ぼすものではなく、また、及ぼすものと
解釈してはならない。」という文章が、逆に入っておる。だから、
交換公文で
事前協議事項を設けて、
日本が
ノーと言えるようにしておけば、何か
アメリカの極東出動に関して
国民に安心を与えることができると
政府が百万べん言われても、
条約形式の上からいっても、私どもは安心することができぬのです。それを今
岡田君を通じて、社会党がここで問題にしておる。私は、今まで
政府が答えられた
答弁では、私どもの疑問に対する答えにはならぬと思います。私はこれだけのことを言うておきます。もう昼の時間になっておりますから、大体私はこれだけのことを申し上げておきます。これで
岡田君及び
松本君の御
質問に対して、私も多少補足もし、また、
説明も加えたと思いますから、社会党の見方は、よりよく
政府としても御理解下さったことと思います。なお機会をあらためて御
答弁を願いたいと思います。この問題に対して質疑が済んだものとは私どもも思いませんよ。まだ別の機会にやらなければなりません。(「
答弁々々」と呼ぶ者あり)一応それでは
答弁を聞いてもよろしい。そうしましょう。