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1960-04-20 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月二十日(水曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    天野 光晴君       綾部健太郎君    池田正之輔君       石坂  繁君    鍛冶 良作君       加藤 精三君    金丸  信君       鴨田 宗一君    賀屋 興宣君       小林かなえ君    田中 榮一君       田中 龍夫君    田中 正巳君       徳安 實藏君    床次 徳二君       野田 武夫君    服部 安司君       濱野 清吾君    福家 俊一君       古井 喜實君    保科善四郎君       松岡嘉兵衛君    毛利 松平君       山下 春江君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    井手 以誠君       岡田 春夫君    黒田 寿男君       滝井 義高君    戸叶 里子君       中井徳次郎君    穗積 七郎君       森島 守人君    横路 節雄君       池田 禎治君    受田 新吉君       大貫 大八君    堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         防衛政務次官  小幡 治和君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         アメリカ局長) 森  治樹君         外務参事官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 四月二十日  委員池田正之輔君田中龍夫君、野田武夫君、  福家俊一君、古井喜實君及び竹谷源太郎辞任  につき、その補欠として金丸信君、松岡嘉兵衛  君、徳安實藏君、綾部健太郎君、濱野清吾君及  び池田禎治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員綾部健太郎君、金丸信君、徳安實藏君、濱  野清吾君及び松岡嘉兵衛辞任につき、その補  欠として福家俊一君、池田正之輔君野田武夫  君、古井喜實君及び田中龍夫君が議長指名で  委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、及び日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたし、前会に引き続き質疑を行ないます。岡田春夫君。
  3. 岡田春夫

    岡田委員 きょうの新聞報道によりますと、京城情勢が非常に重大化しているということが出ております。その後の模様について、政府の方でいろいろお調べになっていると思いますが、一つ御報告を願いたいと思います。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれの方で極力情報を集めておりますけれども、まだ確たる、さらに新しいような状況につきましては、特別に入手いたしておりませんので、今後とも努力して入手いたすつもりであります。何と申しましても、こちらの公館もございませんことですから、十分な資料を急速に入手するということは困難でございますが、できるだけ入手して備えて参りたいと思っております。
  5. 岡田春夫

    岡田委員 新しい情報はないそうでありますが、われわれも新聞報道を通じてだけしか、実はまだよくわからないので、政府の方で入手をされました今までの情報、そういう点についても概略一つお話いただければけっこうだと思います。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日まで入手しております情報と出しますのは、新聞紙上に出ておりますのと大同小異でございまして、われわれ今日入手するにいたしましても、新聞、通信、その他の関係等を動員して入手するか、あるいは各国に対して問い合わせを出すというようなことでございまして、大して新聞報道以上に変わった点はございません。
  7. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、新聞報道程度情勢しか政府の方としてもわからない。そこで、こういう事態が起こりましたことについて、原因は一体どこにあるか、この点について、外務省として非公式ないろいろな見解が出ているようでありますが、これについて一つ正式に、ここで原因について御発言を願えるならばけっこうだと思います。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、先般の選挙に際しまして、相当無理な選挙が行なわれたようでございます。従って、それに対する弾圧と申しますか、それに対する反発的な傾向が、今回の直接原因であろうかと存じております。むろん、今日まで韓国情勢というものは十分把握いたしかねておりますけれども、全体として、やはり相当李承晩大統領施政に対していろいろな不満が平素からあったのではないか、それがたまたま選挙を通じて、弾圧というものを通じて表面に現われてきた、こういうことではないかと存じております。
  9. 岡田春夫

    岡田委員 けさの新聞発表によりますと、外務省の非公式な見解では、ここで読んでみますが、京城にまで波及した反政府運動が単に大統領選挙をめぐる韓国政府施策に対する一時的、突発的な不満によるものとはいえない。その真因は長い間の政府国内施策に対する不満のうっ積など、もっと深い理由があるものとみている。」とのように外務省非公式見解が出ているわけであります。単に大統領選挙に対するものだけではなくて、長い間の李承晩政権のいわゆる施策国民に対して不満をうっせきさした、こういうことがやはり根校本原因ではないかというように外務省は見ているわけであります。私は、この点に関する限り、外務省見解は妥当なものであると思うのですが、こういう点について、藤山さんからもう一度見解を御披瀝していただければけっこうだと思います。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまも申し上げましたように、今回の混乱というものは、単に大統領選挙だけでなしに、やはりこうした行動が起きますことは、何か李承晩政権に対する従来のふんまんと申しますか、施政に対する批判というものがあったことだろうと思います。それでなければ、突発的に起こりますについてはあまりに大きな騒動になっておるというふうに考えられるわけであって、われわれもそういうふうに考えておりますけれども、こまかい点については、今何とも申し上げかねるわけであります。
  11. 岡田春夫

    岡田委員 今のような御見解披瀝藤山外務大臣からあったわけでありますが、これは岸総理大臣にも伺っておきたいと思います。昨日、総理公邸で、やはりこの京城の問題に対して記者団に見っ解をお話しになっておるようでありますが、山岸総理大臣としては、この点については、単に大統領選挙に対する不満という程度のものではないかというように、比較的軽い調子で見解を御披瀝になっておられるようなんで、そういう点からいいますと、外務大臣の先ほど御答弁になりましたような、長い間の国内施策に対する不満という根本的な原因と幾らか違うような感じがいたすわけであります。こういう点からいいましても、一つ総理大臣として率直な見解をこの際お述べいただきまして、日本立場として、これについてはどのようにお考えになるか、こういう点につきましても、あわせて御見解披瀝していただければけっこうだと思います。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 私は、別に昨日特に記者会見をして私の見解を述べたわけではないのでありまして、昨夜はネパール皇帝の宮中における招宴がありましておそく帰ったわけでありますが、それに対して新聞社諸君が、こういう報道があるといって、今朝の新聞に出ておるような事実を述べて、総理正はどう考えますかという話であったわけであります。私は、事情がわからないし、最近大統領選挙に関連して、相当韓国内において不安な状態があるような情報は聞いている、それがどういうふうに進行してきたか、また、それがどういうふうに勃発したかということは、もう少し事情を十分確かめないと自分はわからない、従って、これに対する見解を述べることは適当でないと思う、ということをゆうべ申したわけであります。もちろん、本日の新聞報道されておるところを見ますると、相当に大規模に各地において反政府デモ行動が行なわれて、これに対して韓国政府弾圧的な、強い態度に出ておるという報道をしておるわけであります。事態推移につきましては、日本政府としても重大な関心を持って十分に情報を集め、その成り行きを見ていく必要がある、かように思っております。  その原因がどこにあるかというお尋ねでありましたが、これだけ大規模なものができるということにつきましては、もちろん、従来いわれているように、大統領選挙が最後の導火線になったことと思いますが、ただその一事実だけではなくして、相当に、韓国民の間に政府施政に対する不満が、各方面において積み重なってきておるという事実も、十分見なければならないと思います。なお、事態推移と同時に、その原因等につきましても詳細に政府としては検討していきたい、かように思っております。
  13. 岡田春夫

    岡田委員 この事件評価については、まだ十分検討する必要がある、今はっきり言えない、こういう御意見でありますが、新聞によりますと、アメリカマコノギー大使評価は、非常にはっきりしているわけです。今度のデモは正当と認められる苦情である、従って、今度の事件の中心になっているデモというものは正、当なんであって、李承晩政権の方か間違いなんだということを、アメリカ大使は非常にはっきり言い切っておられますが、このデモ行動について、アメリカ大使のこの評価総理大臣はどのようにお考えになりますか。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 今も申し上げております通り事態推移原因についての十分な資料なり、調査がいっておりませんから、直ちにこれに対してこうだという、政府としての断定的な意見を申し上げる段階ではない、かように思います。
  15. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、先ほど総理大臣としては、李承晩政権における国内施策において不十分な点があった、それに対して国民不満が出てきたのじゃないか、こういうように自分は思うのだということであるならば、マコノギー大使の言っているように、今度のデモは正当なるものであるという点について、これは非常に重要な意味があると思う。特に、岸さんもよく一一一三合われておるように、自由諸国の一国としての大統領である李承晩が、その自由諸国の一国であるアメリカからこのように怒られたということは、注目すべきことだと思うのであります。私としては、ここでデモ参加者の表明する正当な不満の解決という点が、今度のアメリカ大使発表という点では非常に重要な点だと思うのですが、問題は日本政府がこれに対していかなる見解を持つかということについては、李承晩大統領立場に立って問題を見るか、あるいはアメリカ大使が支持しているような、デモが正当なものであるという観点に立ってこの問題を評価していくか、この二つによって、見解は非常に変わってくるわけであります。ですから、この点について、一つ基本点を明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 今も申し上げましたように、われわれとしては、十分に実情を把握しておりませんから、十分に検討して、そうして先ほど申し上げましたように、日本政府としても非常な強い関心を持っておりますから、十分各方面からの資料を集めっ、事態を正確に把握していくように努力いたしたいと思います。
  17. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、今日お話しになる点では少なくとも京城のこの事件は、先ほどお話しのように、李承晩政権のとってきた施策国民不満を持っておった、そういうことが原因であるということであるだけに、この点については遺憾であるとか、何かの見解表明がなければ、アメリカでさえすでに明確な態度をとっているのに、これに対して日本政府としては、見解はまだお出しになれない、こういうことなんでございますか。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど申し上げておりますように、アメリカは、現地大使を持っておりまして、現地大使がそういう見解を申したのでありますけれども日本政府としては、まだ政府としての見解発表するだけ正確な資料を持たないわけでございますが、強い関心を持っておりますので、正確な資料を持ち、これに対する政府としての意見発表する必要があるならば、発表する時期があると思います。
  19. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、この李承晩大統領施策に関連したマコノギー大使見解等を見ましても、これはあくまでも国内事項である。この点については、昨日の某新聞にも出ております。が、岸総理大臣としても、この暴動は共産主義の扇動ではなく、この前の大統領選挙における国内的な不満であると思うという意味で、国内問題であるという点の見解だけは一つ明らかにしておいていただきませんと、これはもうマコノギー大使も非常にはっきり言っているわけですから、この点だけは明らかにしていただきたい。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど申し上げておりますように、正確な資料も十分にわれわれは持っておりませんから、政府としての責任ある見解発表すつる時期ではないと思います。ただ、応われわれが感じたことは、先ほど来外務大臣お答えを申し上げているように、また私が申し上げているように、最近行なわれた大統領選挙発火点になったと思うが、その前から、いろいろな内政上、施政上の不満がうっせきしたものであろう、こういうふうに考えておりますから、従って、これは韓国内における内政上の問題であるというふうに、私どもは、今日までのいろいろな情報からは、一応そう考えることが常識的であろうと思います。しかし、今後といえども十分に情報を集めて、正確に事態を把握していくように政府としては努めていきたい、かように思っております。
  21. 岡田春夫

    岡田委員 これは外務省担当局長の御答弁でもけっこうでありますが、米韓相互防衛条約によりますと、今日のような韓国事態というものは、米韓条約適用を受けられないと思いますが、この点はいかがでございますか。
  22. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 直接米韓条約適用を受ける条項はないようでございます。
  23. 岡田春夫

    岡田委員 適用を受ける条項はないというそのことは、先ほど総理大臣が、これは国内事項である、その意味において米韓相互防衛条約適用は受けないという意味で、適用は受けないんだ、こういうように高橋さんはお答えになったのでございましょうか。
  24. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 この第二条、三条にございます外部からの武力攻撃に該当するかどうかという問題でございまして、これは今のところ該当しないと考えますので、その条項はないと考えております。
  25. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、今日の事態において、もし米軍出動するということになれば、これは国内事項に干渉した、明らかに内政干渉であると思うが、どう思いますか。
  26. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは米国と韓国との関係でございまして、双方の一方からの、韓国からの要請があり、そして双方合意のもとで行なわれるとすれば、それは相互協力でありますから、それがない限りはもちろんできないと考えております。
  27. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、高橋さん、先ほど、今日の事態のこの状態に対しては、米韓相互条約というものが適用できない、こういう御答弁になっておりますから、少なくともこの米韓相互防衛条約適用によるところの協議ではない、こういうことになるのでございませんか、どうですか。
  28. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その通りでございます。この条約上の問題ではございません。しかし、それだからといいまして、双方のそういう協議が禁止されているとか、しないとか、そういう問題はまた別の問題で、両国の関係上の問題だと考えております。
  29. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、伺いますが、それでは、相互防衛条約以外に、そういう協議すべき該当の国際法上の規定はございますか。
  30. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは一般国際法関係におきまして、一国が他国にそのような要請をする場合でございます。そして要請された他国がそれを受諾する場合には、そこに協力関係ができ上がりますから、そういう場面もあるかと考えております。
  31. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、要請をして出動するということになれば、少なくとも武力の行使というか、その前提になるべき出動、いわゆる軍隊出動でありますが、これは国連憲章で、相互防衛条約以外の規定に基づいてどういう憲章規定がございますか。
  32. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それは要請を受けた国に対して、そこに直ちに武力を行使する——武力攻撃がありますので、その武力攻撃に対処するために、武力を行使して行動するというような場合の規定はございます。しかし、要請によって派兵する場合、必ずしも、直ちに特定の武力攻撃に対して、それを排除するために武力を行使するという意味合いのものでない場合も、いろいろ国際関係上あるかと考えます。従いまして、そのような場合は、決して国連憲章でそれを禁止しているというわけにはいかないと思います。
  33. 岡田春夫

    岡田委員 これは非常につらい答弁をしておられるので、藤山さんに、むしろ政治論として伺っておいた方がいいのではないかと思うのですが、憲章上そういう規定はない。憲章を守らなくてもいいというならば、そういう答弁でもけっこうです。憲章を守らないで、李承晩なり、あるいは日本政府が守らないという解釈をする、こういうことでおっしゃるならば、それでけっこうでございます。しかしながら、出動について、そのようなことが行なわれる場合において一方がデモをやった、そのデモ行動は、アメリカ大使は正当である、このように認めながら、これに対して、アメリカ李承晩との間に——李承晩政府要請をしてアメリカ軍隊出動する、しかも、この場合においては国連憲章適用を受けないということで出動するならば、明らかにこれは内政干渉といわざるを得ないのだが、これは藤山さんどう思いますか。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今、岡田委員お話のように、今回の場合におきまして、アメリカ大使がどういう見解を表明されたかということにつきましては、われわれも十分な資料を持ってこれに対して参りたい、こう存じております。しかし、お話のように、そういう範囲内において韓国政府要請しないということであれば、むろんアメリカ行動するわけはございません。要請する場合にも、アメリカとしては、一応アメリカ見解に立って行動いたしましょうし、そういう意味におきまして、現在まだ不確定な事実の上に立って断定をいたすわけには参りません。ただ、独立国主権者が話し合いをすることによって何らかの処置をとるという方法は、別段国連憲章に違法だとは考えておりません。
  35. 岡田春夫

    岡田委員 憲章上のことは、藤山さんよく条約局長と打ち合わせしてお話しになった方がいいと思いますが、それでは、はっきり藤山さんに伺っておきます。われわれは、こういう点を心配するから、ややしつこく伺うのでありますが、李承晩は、この事態が今度ひどくなれば必ず言ってくることはわかっている。何を言ってくるかといえば、これは共産主義間接侵略だという形を必ず言ってくるにきまっている。その場合において、今日のこの事態については米韓相互防衛条約適用できないのだ、従って、この相互防衛条約に基づいてはアメリカ軍隊出動できないのだという点は、先ほど高橋条約局長がはっきり答えておりますが、この点は間違いございませんね、念を押しておきます。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今、条約局長答弁いたしましたように、米韓条約において、直接現在の事態に対して出動するということは考えられないことでございます。
  37. 岡田春夫

    岡田委員 私は、このあとでもっと伺っておきたい点もあるわけですが、あまりこの点ばかり言っても仕方がありませんので、一つ、これは自民党の諸君は怒るかもしらぬけれども岸総理に伺っておきたいのです。少なくとも、李承晩政権のもとにおける事態はこのような状態である。ところが一方、隣の朝鮮民主主義人民共和国の状態はどうか。これは岩本委員がこの間行って、平壌ではっきり見てきているように、北鮮における状態というものはこのような状態にはなっておらない。二つ政権のもとにおける国民信頼程度というものは、これによって明らかにわかると思うのだが、これについて総理大臣はいかにお考えになりますか。その二つ政権のあり方についての国民信頼程度について、御意見を伺っておきたいと思います。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 ただいま御質問がありましたけれども……。     〔発言する者多し〕
  39. 岡田春夫

    岡田委員 ちょっと静かにして下さい。総理大臣答弁が聞こえないです。
  40. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  41. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来お答え申し上げておりますように、今回の事件に対する真の原因なり、あるいは事態がどういうふうに推移するか、一般治安状態がどうなっているかというようなことは、今後の推移と、正確なあらゆる点からの検討によってわれわれこれを判断していかなければならぬと思います。ただ単に、この事例をもって直ちに韓国国民李承晩政権に対して全面的な不信を持っておるといふうに論断することは、まだ現在の状態においては私ども早計だと思います。十分事情を検討した上において判断すべきものであろうと思います。  北朝鮮に関する事態につきましても、先般一部の事情は、われわれもこれを視察した人から聞いておるわけであります。いろいろな方面からわれわれも情報を十分入手していって、そうして近隣のことでございますから、これらとの間の友好親善を進めていく上において必要な判断を下していかなければならぬと思います。今日の状態だけでもって、われわれの持っている資料だけでどうだということを判断することは、まだ適当でない、かように思います。
  42. 岡田春夫

    岡田委員 関連の質問もあるようですから、もう一点だけ伺います。これは藤山さんの関係外務省関係ですけれどもアジア局長はきょう来ていますか。来ておられなければ、国連協力局長でもけっこうです。  一九五〇年の七月に、当時のマッカーサー大将は、李承晩から韓国軍司令官に任命されて受諾をいたしております。そうすると、マッカーサーという人は、アメリカ人でありながら、これは韓国軍隊司令官であります。その状態が今日も続いているはずなんでありますが、この点はどうですか。
  43. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は、続いてないと思っておりますけれども、よく調査の上で御返答申し上げます。
  44. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、続いてないとおっしゃるならば、その当時は、事実はその通りなんですね。いつまでそういう状態になっておったのですか。今続いてないというのは、どうなんですか。条約局長もしなんでしたら……。
  45. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、これは国連軍司令官としてのマッカーサー、そのもとに韓国軍が、両方の交換公文によりまして、指揮命令下に入った、こういう関係になるかと思います。それから、ただいまの件では、この問題に関しましては、そのような関係が特に現在はずされたという次第でございます。
  46. 岡田春夫

    岡田委員 ちょっと条約局長、御答弁が明確じゃありません。第一点は、国連軍の中に編入されたというのではなくて、法律の手続としては、マッカーサー大将という人が韓国軍の総司令官に任命された、そうしてこれを受諾した、実際の行動としては、国連軍と一緒に行動するということになりましょうが、その資格、身分というものは、明らかにマッカーサーそれ自身が韓国軍の総司令官であるという関係になるわけであります。今日それがないのだ、こういうようにお話しになっておりますが、それではその点はいつからなくなって、どうなっておるのか、もう少し具体的に御答弁になりませんと、われわれは納得できないのであります。
  47. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの情報でございますが、朝鮮の鎮圧する部隊でございますが、これは、今のそのような関係からはずされたということになっております。  それから、ただいま御指摘の点は、やはりマッカーサー司令官は統一司令部として、そのもとにある司令官、それに韓国軍が編入された、先ほど申し上げましたように。編入されたと申しますか、その指揮下、すなわち、国連の指揮下に入ったというふうに私は解釈しております。
  48. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、はずされたというのは、今度の京城の暴動をはずした、こういうお話でございますか。それなら、いつそういうようなはずしたという事実があったのですか。そこら辺を一つはっきり伺っておきたいと思うのです。それは全然新しい一つ事態でありますから。
  49. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまのはずされたというのは、けさの新聞情報でございます。けさの新聞情報によって、その関係ははずされたというふうに私どもは承知いたしました。
  50. 岡田春夫

    岡田委員 それでは非常に不明確ですね。はずされたとおっしゃるのは、アメリカ行動は今度の暴動には適用しない、こういう意味でございますか。はずされたということは、きわめて文学的な修辞であって、今度の暴動にはアメリカ軍隊適用しない、出動しない、そういう意味ではずされた、こうおっしゃるのでございますか。そこはどうなんですか。
  51. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 この鎮圧部隊は、韓国の部隊として行動するという意味でございまして、国連その他の指揮命令を受けない、こういうふうな意味だと解釈しております。
  52. 岡田春夫

    岡田委員 それでは国連軍の中に編入されたということは、はっきり御答弁になったわけでありますが、それは今日も続いておるわけでございますね。間違いございませんね。
  53. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 全体としてそうでございます。
  54. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺っておきますが、韓国軍の総司令官に現在もアメリカの総司令官がなっておる、具体的に言えば、第八軍の総司令官がなっておる、こういうことになるわけでございますか。
  55. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 先ほど申し上げました通り、国連軍の司令官韓国軍司令官になったというのではなくて、韓国軍が、全体として国連の指揮下に入った、こういうことだと思います。
  56. 岡田春夫

    岡田委員 これは重要ですが、それでは国連軍の行動関係するような事態のときには、韓国軍隊も国連軍の一員として行動するということになるわけですか。
  57. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 お説の通りでございます。朝鮮事変のあの継続、続行というような場合に子のように行動する。
  58. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、関連質問がありますので、ちょっとお待ちします。
  59. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、西村力弥君より関連質問の申し出があります。これを許します。西村力弥君。
  60. 西村力弥

    ○西村(力)委員 一点だけお尋ねしますが、マコノギー米大使李承晩に意思表示をやったこと、これはデモ隊が正当だという意思表示です。時によっては反対の意思表示もあるわけですが、こういう内政の問題に対して、大使が直接に大統領に意思表示をするというようなことは、これは何に基づいてこういうことが許容されるかということが、私はちょっとわからない。この点について見解一つお知らせ願いたい。
  61. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカ韓国との友好関係の上に立ちまして、韓国に駐在しております大使が、それぞれ意見を申し述べることはあると思っております。
  62. 西村力弥

    ○西村(力)委員 こういう事態を認めるとするならば、日本アメリカ関係においてもこういうことは認められていく、こういうことになりますか。
  63. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれとして、東京に駐在しております外国大公使が、内政問題に対していろいろな意見を言ったことは、今日までございません。
  64. 西村力弥

    ○西村(力)委員 こちらに言わないにしても、在日のアメリカ大使が、日本にもしこういう内政問題の重大な場合においては——米韓の場合において友好的な立場からこれを認めるというならば、日本の場合においても、こういうことが将来あり得る。そういう場合には、日本でも、今の見解通り日本においてそういう事態が発生した場合において、米大使意見を言うた場合において、それはやはり当然のことであると認める、こういうことになりますかどうか、その点だけ……。
  65. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 認めるとか認めないとかいうような問題ではございません。友好国の間に、友人として話し合いをいろいろする場合がございましょう。しかし、認めるとか認めないとか、そういうような公式のものではございません。
  66. 岡田春夫

    岡田委員 少し、ただいまの西村委員の問題に関連しても触れて参りたいと思いますが、先ほどの御答弁を伺っておりますと、韓国軍というものは、国連軍の中に編入されて行動している。しかし、今度の京城の暴動に対しては、国連軍に編入された韓国軍としての資格ではなくて、韓国軍としての資格において出動をしたのである。アメリカは、今日の状態としては出動しておらないし、米韓相互条約においては適用ができない。しかし、別途の面において協議をすることができるのである。これは国連憲章規定ではない。こういうような答弁が今まであったわけでありますが、国連憲章規定でない出動権というものは、アメリカにどこからこれは与えられておるのでございますか。アメリカは、国連憲章を守らなくてもいい軍隊であるという前提に立っての御答弁でございますか、どうなんですか。
  67. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 先ほど編入されたという言葉は、ちょっと私は正確でないかと思います。指揮命令下に立つということでございます。ちょっと訂正させていただきます。  それから、国連憲章は御承知の通りでございます。そういうことは全然規定いたしておりません。しかし、国連憲章が、そういう全部を規定しているわけではございません。国連憲章で積極的に規定しておりますのは、武力行使の禁止でございます。従いまして、その他の点は、一般国際法上に考えまして、決してこれは禁止されたものではない、かように考えております。
  68. 岡田春夫

    岡田委員 まあ高橋さんの今の御答弁、実は私はまだまだ追及したいのでありますが、これはここではやりません。あとでやります。あとでやりますが、今の御答弁を聞いていると、単に武力行使というものは認めない。これは国連憲章規定しているから認めない。しかし、米軍出動程度ならば、別に国連憲章規定をしておらないから、これは憲章に違反するものとは言えないというような、幾らか、先ほどの答弁から見ると変わった答弁をしておられます。こういう点は、一つ明確にしておきませんと、威嚇のための軍隊出動ということはあり得るわけでありますから、外国の軍隊が、ある一国において、国内の内政事項に関することに対して出動をする、それが認められる、しかも、それは憲章規定に従わないで、武力行使を行なわなければよろしいんだというようなことは、これはきわめて重大な発言です。それは国内事項に関する、いわゆるデモをやった方の——京城の場合には、具体的に言うと、デモをやった方の側からいえば、これは威嚇のための軍隊である、武力の行使をやらないけれども、威嚇のための軍隊であると評価せざるを得ないし、国内事項に対して出動したというのは、明らかに内政干渉だと思うのだが、それはどうなんですか。
  69. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。武力行使並びに武力の威嚇でございまして、これは御承知の通り憲章第二条でございます。  それから、ただいまの御指摘の点は、一方の国の要請というのが最も主体でございます。要請があって、要請された国がそれを受諾する、こういう関係は、いわゆる国際間のそういう国々の間の協力関係でございますから、これは国際法上も完全に合法化されている、このように考えます。
  70. 岡田春夫

    岡田委員 この点については、私は質問を留保しておきます。この点を、実はあとでやる問題の一つになっておりますので、留保しておきますが、しかしここで、総理大臣にもう一点伺っておきますけれども、今日の事態においては、米軍出動しない。しかし、今後の事態においては、おそらく李承晩のことですから、御承知のように、ああいう人であるだけに事態を非常に問題化して、そうして米軍出動要請する。それは、日本政府の解釈によると、米韓相互条約適用を受けないのだと言っている米韓相互条約適用を受けて、外部攻撃のおそれのあるもの、第二条の規定——おそらくこれは、李承晩の言っていることを聞けば、米韓相互防衛条約の第二条の規定によって要請してくると思うのです。その場合に、これはもう日本政府としては、この適用を受けないのだとはっきり答弁しているからよろしいのですが、そういう事態の変化によって悪化した場合に、在日米軍出動をする場合があり得る、あるいはまた、在日米軍という名称と、もう一つの名称をかぶっている国連軍であるアメリカ軍、これが出動をする場合があり得る。こういう場合に対して、事、国内事項でございますので、日本政府としては、在日米軍あるいは国連軍としての米軍、この二つ出動に対しては、出動すべきではないということを、正式に政府として要請する権限がある。これについて、そういう要請をする御決意がございますか、どうですか。
  71. 岸信介

    岸国務大臣 御承知の通り、現行の条約のもとにおいては、日本は何ら言う権利を持っておりません。
  72. 岡田春夫

    岡田委員 現行の条約に権限がないから、それでは黙っておられるわけですか。
  73. 岸信介

    岸国務大臣 私が申しておるのは、この条約上の権限がないということでございまして、それはもちろん、われわれとしては、事態がこういう近所に起こって、また、日本自体が、そういう事柄にややともすると巻き込まれるおそれがあるということに対しては、日米の関係においてわれわれの意見を言うのは当然でございますが、条約上の根拠として、そういうことの言える根拠はない、こういうことを申しております。
  74. 岡田春夫

    岡田委員 まあそういう見解であるにしても、在日米軍出動するというのは、日本状態においても容易ならざる事態であります。これは政治的な見解を今度は伺っておきたいと思いますが、在日米軍出動すべきでないということを、やはり正式に今から要請しておきませんと、相手の李承晩李承晩でありますから、その危険性があり得るわけであります。こういう点についての政府見解を伺っておきたいと思います。
  75. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来の質疑応答でも明らかなように、私ども、現在の事態、現在までわれわれが入手しておる事態から見ますと、今岡田委員の御質問のような事態が発生する段階にきているとは思っておりません。しかし、今後の推移等につきましては、そういう意味において、日本政府としても非常に重大な関心を持って、こういう事態推移に対して正確な情報を集め、事態を正確に把握していくということを、私は先ほどから申し上げております。私は、内政問題である限りにおいて、米軍出動するというようなこともあり得ないし、また、在日米軍がそれに出かけていくということは、全然あり得ないと思います。従って、そういう現在までのような状態でもって、そういうようなことがもしも何か要請されるとかいうようなことがあるならば、日本政府としては、十分そういう事態になっておらないということに対して、アメリカ側にわれわれの意見を強く言うことは、これは当然だと思います。
  76. 岡田春夫

    岡田委員 よくわかりました。京城事件についてばかりあまりやっておりますと、安保条約の問題に入れませんので、次の問題に入ります。ただ一言あえて申し上げますが、岸総理としても、もって他山の石とすべしである。この点は日本の国内情勢からよく考えて——岸さんは李承晩、蒋介石とともにどうであるというようなことがよく説に上っておりますから、あなたが政権に恋々として、党内の諸君に対しても批判を受けるようなことについては、十分お考えをいただいて、岸永久政権というような形になりますと、李承晩と同じような結果になるから、これは他山の石として、あなたはよくお考えをいただきたいと思います。そういう点で私の申し上げることを、きょうは意見として、これ以上のことは留保いたしておきます。  新安保条約の問題に入らしていただきますけれども、最初の問題は、今日の国際情勢と新安保条約との関係、この点について、いささか簡単に御質問をいたしたいと思います。第二の点は、新安保条約が持っている侵略性と従属性の点について、これは具体的にお伺いをいたしたいと思います。第三点は、敵視政策の現われとしての新安保条約という点について、具体的に伺って参りたいと思います。先に質問の項目を申し上げておきます。  まず、第一の点の、国際情勢と新安保条約との関連について、二、三簡単に御質問いたしたいと思いますが、この新安保条約調印のために岸さんは訪米されました。アイゼンハワー大統領と共同コミュニケを作られまして、調印されたわけでございます。この共同コミュニケの劈頭に、「総理大臣及び大統領は、まず国際情勢を検討した。」こういうようになっております。ところが、検討したその結果については、全然書かれてございません。検討の結果、今日の世界情勢というものが著しく緊張緩和されたというような認識に立たれたものでございますか、あるいはまた、三年前に訪米されたときの状態と比べて、あまり変化がなかった、あるいはまた、緊張は激化されたというような認識をお持ちになったのですか。この点について、共同コミュニケで具体的に国際情勢の検討をしたその結果を、一つ披瀝願いたいのでございます。
  77. 岸信介

    岸国務大臣 国際情勢の検討にあたりましては、キャンプ・デービッドにおけるところのソ連首相とアイゼンハワー大統領との会談の内容や、あるいはさらに、本年行なわるべき巨頭会談等の、ことの態勢についてのいろいろな話がアメリカ側からもありました。また、これに対する私の見解も述べたわけであります。われわれが東西両陣営の対立の中にあって、この緊張を緩和する方向に努力をしていくべきである、しかし、現在直ちにこの緊張が緩和したという結論を出すのには、まだ早い。これを緩和せしめるのには、やはり自由主義の国々は、自由主義の国々として協力関係を強めて、そうして東西の間における話し合いにおいて、われわれの主張を十分に通していくというようにすることが、世界の平和をもたらすゆえんであるというふうな見解において、両方の考え方か一致したわけでありしまして、三年前より特に緊張が激化したというふうな結論でもございませんし、また、全然変わらないというふうなことでもございませんが、われわれの、今後緊張を緩和する方向への努力をすべき時代であって、また、その道を、どんな困難があっても閉ざさないように努力をしていくべきである。しかし、現在直ちにすべての問題がその話し合いで解決される、そういうふうにいわゆる緊張が緩和しておると見ることは、現在の状況から言うとまだ早い、こういうふうな見解において両方が一致したのであります。
  78. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、今日は三年前と変わりがない、緊張は緩和されておらない、こういう情勢認識である。その点は、いわゆる緊張緩和がされておらないという御答弁のように私は受け取ったのですが、キャンプ・デービッドのアメリカとソビエトの共同コミュニケその他によりますと、緊張の緩和ということがうたわれているのでありますが、その事態とは違うのでございますか。
  79. 岸信介

    岸国務大臣 私が申し上げたのは、緊張は激化しておるというふうには、三年前から見て、そういう見解じゃありません、それから三年前と全然同じ状態であるという見方でもございませんと、はっきり出しておる。ただ、現在の状態を、直ちに緊張が緩和したと見ることはまだ早い。緊張緩和へのわれわれが努力をしていくべき下地が今の状態である、こういうふうな見方でございます、
  80. 岡田春夫

    岡田委員 しかし総理、しつこいようですが、日本アメリカが、緊張緩和のために努力をしようということは誓い合った。これはよく御答弁でわかりますよ。しかし、今日の状態というものが三年前とはあまり変わらない、緊張緩和と規定できないんだ、こういうことが前提に立っているんだということは、そういうことなんですね、そこの点なんです。努力をする、しなければならないんだということを誓い合ったという事実、これは御答弁によってはっりきりわかりました。しかし、私の伺っているのは、国際情勢が緊張緩和になっているのかどうかということを伺っているのです。ですから、それは変わっておらないというのか、緩和されたとおっしゃるのか、激化されたとおっしゃるのか。もちろん、激化されたとはお考えにならないと思いますが、緩和されたという規定には立たれないということであるならば、キャンプ・デービッドの共同コミュニケの意見とはだいぶ違いがあるわけなんですが、その点はどうなんでございますか。こういう点を伺っているのです。
  81. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げましたように、われわれは、全然三年前と国際情勢が同一である、緊張の点においても同一であるというような見解ではございません。しかしながら、いわゆる緊張緩和の事態だ、緊張は緩和したんだ、こういう認識でもないということを、先ほどから申し上げておるのであります、
  82. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、キャンプ・デービッドの共同コミュニケ、米ソの情勢認識とは違うわけですね。そうでございますね。
  83. 岸信介

    岸国務大臣 現に共同コミュニケの全体をごらんになりましても、緊張は緩和していくということは、ただ単に、いわば言論であるとか口先だけの問題じゃなしに、実行でもってこれを裏づけなければならないというのが、われわれの日米両国の見解でありまして、その現実の事実でもって裏づけるというような事実をこれから作り上げていくというのが、今日のわれわれが直面している国際情勢である、こういうことがわれわれの見解でございます。
  84. 岡田春夫

    岡田委員 三年前と緊張緩和が行なわれておらないという認識に立っている、こういう意味でありまして、幾らかそのきざしはあるんだというような程度なんで、これはキャンプ・デービッドにおける米ソ両巨頭会談の結果とは著しく違うと私は思うのです。そういうように違っているということは、両会談において、両コミュニケにおいて、アメリカは両方入っているのですから、ソビエトとアメリカとが話し合ったときには緊張緩和をした、アメリカ日本が話し合ったときには緊張緩和はあまりなかった、こういう答弁をしたということになれば、日本政府が作用したために緊張緩和ではない、こういうことになったということになるわけです。そういう点は岸さんにはだいぶ責任があると思うのですが、この点はどうなんでございますか。
  85. 岸信介

    岸国務大臣 その点はアメリカ政府に聞いていただかないと、アメリカ政府がどういう意味で——私の責任でそういうふうに変わったというふうになるかどうかは、これはアメリカ政府見解を聞かなければわからぬことでありますが、私とアイゼンハワー大統領との国際情勢の分析及びその到達した考え方は、先ほど申し上げた通りであります。
  86. 岡田春夫

    岡田委員 それではもう一つ伺いますが、あまり緊張緩和が行なわれておらないという御答弁でありますが、それでは現行安保条約締結された時代における国際情勢と、今日の国際情勢とを対比して、今日は緊張緩和が行なわれていると私は考えるが、その点はどうですか。
  87. 岸信介

    岸国務大臣 国際情勢のことでございますから、いろいろな変遷があることは当然であり、また、現行の安保条約が作られましたときと、相当に年代もたっておりますから、もちろん、国際情勢が非常に変わっておる。従って、現われておる事態というものは非常に違ってきておる。特に今申し上げるように、今後話し合いでもって両陣営の間の問題を解決しようという機運が動いてきておるということは、これは非常に大きな違いである、私はかように思っております。しかし、それが直ちに、緊張が緩和したので、両陣営とも従来のやり方を全然変えておるということは、これは私は基本的にはそうは言えない、こう思っております。
  88. 岡田春夫

    岡田委員 総理大臣答弁というのには、一つの論理がある。初めの方に私たちの意見を受け入れておいて、そうしてそのあとに、しかしながらとひっくり返す、それでうしろの点でごまかすわけですね。こういう形になるわけです。これが一つのそつのない答弁の方式なんです。その方式通りに言うと、今の答弁は、わかったようでわからない。どっちに重点を置いたらいいのか、緊張緩和がされたのか、されなかったのか。私は、現行安保条約締結されたときは、朝鮮戦争のさ中である、それと今日の状態と比べて、まさか岸さんだって、緊張が今日も現行安保条約締結のときと同じであるなどというようなことは、お話しにならないと思うのだが、明らかに緊張は緩和しているのだが、その点はどうなんでございますか。
  89. 岸信介

    岸国務大臣 私が申し上げているのは、そういう個々に現われている事態そのものは、もちろん、現行安保条約が作られたときとは、情勢は変わっておるということを申し上げておるわけであります。ただ大きな国際情勢として、東西間における両陣営が対立しておるという基本的な考え方、そうしてそれをそういう武力の行使ではなくして、話し合いによって解決しようという機運が動いてきておる。これが今日の情勢であって、しかしながら、東西両陣営が対立しておるという事態そのものは、私は、これは社会党の方だって、いやしくも国際情勢をごらんになって、対立がなくなったなんということはないと思います。その情勢は、少しも変わっておらないということを申し上げておるのであります。
  90. 岡田春夫

    岡田委員 いわゆる基本的には、二大陣営が対立しておる、この情勢は変わっておらない、しかしながら、国際関係におけるいろいろな緊張上の問題については、変化があって、そういう部分的な問題については、明らかに緊張の緩和が見られる、こういう御答弁でございますね。これはそれでよろしいのですか。
  91. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど私が申し上げた通りでありまして、今お話しのように、大きな国際の基本的の情勢というものは変わっておらない。しかしながら、具体的に、この七、八年ないし十年前にいろんな事態が世界にありましたが、その事態と今日の状態とは違っておる。しかし、その後においていろいろな事態が起こったということは、御承知の通りであります。今日、将来に向かってそういう事態が全然ないのだ、もうないのだ、こう論断するような情勢にはなっていない、こういうことであります。
  92. 岡田春夫

    岡田委員 あなたの御答弁を伺っておると、私は非常に不思議な気がするのですが、世界において資本主義の国というものがある。同時に、ソビエト、中国という社会主義の国がある。この二つの国々があって、二つの国々をあなたの表現をもってするならば、二つの陣営とする。そうしてそれによって対立があるということは、これは何ももう今すぐの問題ではなくて、今後相当長い間続く問題なんですが、じゃ、その間においては、常に緊張は緩和しないという認識に立たなければならないということ、こういうことなんですか。
  93. 岸信介

    岸国務大臣 この緊張を緩和するために、あるいは軍縮の問題であるとか、その他面陣営の間の非常に世界的な不安をもたらしておるところの問題、ヨーロッパや極東におけるところの問題が、御承知の通りございます。これらの問題を話し合いで解決するという努力がこれから行なわれていかなければならない、しかし、それが現実に、軍縮の問題につきましても、あるいはヨーロッパのドイツの問題についても、極東の問題についても、話し合いでこれが解決したという具体的の事実は、まだ出ておらないのであります。従って、そういうわれわれの努力の目標は、もちろんはっきりしておるのであるけれども、われわれは、そういう事実でもってこれが証明されていくようなことを積み重ねていかなければ、ほんとうの緊張緩和ということは実現できない、こういう考えでございます。
  94. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、現行安保条約締結されたころの事態は、朝鮮戦争が激しく戦われておる。それからベトナムの地域において、インドシナ戦争も続けられておった。その他の地域においても楽観を許さない状態であった。しかし、今日においては、極東の情勢においては、そういう激しい戦火が交えられているような状態ではないじゃありませんか。これは明らかに緊張緩和を意味しているじゃないですか。(「インドはどうした」と呼ぶ者あり)しかも、インドと中国というような、こういう雑言がありますが、こういう雑言についても、今周総理がインドに行って、話し合いで解決しようとしておるじゃありませか。戦火を交えてやるというような情勢は、ここにもう全然なくなっている。その事態においては、これを緊張緩和であるということが言えるじゃありませんか。その証拠に、どうですか、現行安保条約には明らかにうたってあるじゃありませんか。(「無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されていない」と呼ぶ者あり)これは明らかに緊張が激化しているということを書いているのじゃありませんか。新安保条約をごらんなさい。無責任な軍国主義が駆逐されて云々ということは、全然書いてないじゃありませんか。これだけでも、緊張が緩和されているということは明らかに出ているじゃないか。条約の上ではっきり出ているじゃありませんか。
  95. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来私がたびたびお答え申し上げているように、事態は十年前と今日違っておるということは、私もはっきり認めておるのであります。いわゆるそういう意味をとらえて、それだけの事情でもって緊張緩和と、こうおっしゃるなら、それはその意味において、緊張緩和したということを否認している、そういう事実が続いておるということを、私は申し上げているわけじゃありません。しかし、国際情勢の全体を見ると、この両陣営の間におけるところの懸案の問題というものは、今一時休戦というような状態になっておりますけれども、朝鮮問題にしても、ベトナムの問題にしてもあるいはドイツ問題にいたしましても、これがもう根本的に解決したという状況でないことは、これまた御承知の通りであります。これを従来のごとく武力を用いて解決するということは、われわれはどんなことがあってもやめていかなければならぬ、話し合いでやっていこう、しかし、話し合いによって解決したという事実は、まだ出ておらない、これが現在の情勢である、こういうことです。
  96. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、緊張緩和の情勢であるというのは、だれも、岸さんだって否定はできない。全世界が平和の方向に、緊張緩和の情勢に進んでいるということは、全世界の人々が認めておることなんで、岸さんが、今その点は何も否定していないのだというお話ですから、私も、岸さんが緊張の緩和をお認めになったと理解せざるを得ないわけです。ところが、国民の率直な印象からいうと、このように世界の情勢は緊張が緩和されておる、それなのに、岸首相が新安保条約を調印して、日米間にあらためて団結を固めていくということは、世界情勢に逆行するものだ、こういうことを国民は率直に感じております。特に、岸さんには失礼ではございますけれども、岸さんは前の戦争の関係者だ、だから、あぶないものだなという感じを、国民は率直に持っていますよ。そういう感じを持っているだけに、今日の平和に進む国際情勢に安保条約が逆行しつつある、そういう逆行しつつある安保条約を調印するということは、国民は非常にちぐはぐな印象を感じておりますが、この点はいかがでございますか。
  97. 岸信介

    岸国務大臣 これは、私は全然違うと思うのです。先ほど来申し上げておるように、われわれは、武力の行使、これは、また一方からいうと、御承知の通り、軍事科学の発達によりまして、米ソをその首班としておる核兵器の非常な発達が人類に及ぼすところの惨害を考えて、どうしても戦争というものをなくして、話し合いで解決しなければならない、こういう情勢が出ておることは事実でありまして、また、われわれはそれに努力していかなければならない。ところが、問題は、現在の状況におきまして、自由主義の国々と共産主義の国々との立場考えてみますと、両方の陣営ともに、何ら団結なり協力関係というものを弱化するとか、あるいはまた、現実に軍縮を行なっていくとか、あるいはおそるべき核兵器に対するコントロール、管理というような問題も、話し合いがされておるけれども、まだお現実に出ておらない。こういうときに、話し合いをしていく上から申しますと、自由主義の立場をとっておる国々は、自由主義の立場をとっておる国々として十分団結し、協力関係を作って、そうして鉄のごとき団結のもとにある共産主義の国国と話をしていく、このために、いかに西欧諸国の首脳部がたびたび会見して、東西巨頭会談に臨むという態勢を作っておるか、その上においては、あくまでも自由主義の国々は自由主義の国々として団結をし、協力関係を深めていく、そうして話し合いできめていく、これが国際の現実の情勢であり、この情勢のもとにおいて、日本として、従来の友好関係にある——また、われわれとしては、あくまでも自由主義の立場を堅持していく、これが日本の国の繁栄のためにとるべき道だ、こういう意味において、自由主義の国々との間の提携を中心として、日米がより一そう理解と信頼を深めて協力関係を作っていくということは、私は、世界の大勢に少しも反していない、それこそ、日本が真に平和を望み、日本の繁栄を望み、また、これを通じて世界の平和と繁栄に寄与するというわれわれの理想からいって当然のことである、かように信じております。
  98. 岡田春夫

    岡田委員 三年前の共同コミュニケを拝見しますと、今の団結の問題が取り上げられております。今度の共同コミュニケにも、同じく団結の問題が取り上げられておりますが、三年前の共同コミュニケでは、非常に重大なことをいっておられます。これは今日ではどうなっているかという点を伺いたいのであります。「自由世界の侵略阻止力がこの数年間に極東及び世界を通じて公然たる侵略を防止するため有効な働きをしてきたことが相互に承認された。」いわゆる自由世界の侵略阻止力が侵略を押えてきたのだ、これを押えるための自由諸国の団結というものが必要なんだということが、三年前の共同コミュニケの骨子でありますが、この点は、今日でも基本的な思想としては変わっておらないのでございますか、どうなんですか。
  99. 岸信介

    岸国務大臣 私は、基本的には変わっておらぬと思います。
  100. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、基本的にお変わりになっておらないなら、自由諸国の団結のために日米安保条約が作られた、この日米安保条約というものは、公然たる侵略に対応するものである、従って、明らかに仮想敵国というものを予定している、こう言わざるを得ないのですが、この点はどうなんですか。
  101. 岸信介

    岸国務大臣 しばしばわれわれがお答え申し上げているように、いわゆる仮想敵国というものを設けておらないのであります。われわれは、いかなる場合においても侵略をされないということを考えることが、安保条約の第一義であります。さらに、先ほど来申しておるような世界の情勢から申しまして、戦争を阻止するためには、われわれと信念を同じくする国々と手をつないで、そうして戦争を防止するところの力を持つことが必要である、かように考えておるのでありまして、いわゆる仮想敵国というようなものをわれわれが想定しておるわけではございません。
  102. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、侵略阻止力というものが新安保条約である、しかも、世界の情勢認識は、二大陣営の対立である、二大陣営の対立であって、公然たる侵略を阻止するために有効な働きをしてきたという、三つのあなたの御答弁を総合した場合において、公然たる侵略というのはどこから出ますか。
  103. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来お話がありましたように、この数年前の状況のように各地における武力の闘争、戦闘というようなものがなくなってきたということは、私は、この戦争の抑制力と申しますか、阻止する力が働いて、そういう情勢が作られたものである、かように思います。
  104. 岡田春夫

    岡田委員 公然たる侵略ということについてはどういうようにお考えになりますか。  それでは具体的に伺いましょう。この間、堤委員の御質問に対してあなたがお答えになっておりますが、国際共産主義の脅威ということは現実にあるのだ、こういうことを御答弁になっておられます。この国際共産主義の脅威ということが、公然たる侵略に該当するのですか、どうなんですか。
  105. 岸信介

    岸国務大臣 たとえば朝鮮事変が起こったときに、国連がどういう決議をしたか。これは国連においてあの事態を見て、世界のこの国連に加盟しておる国々の多数が認めた一つの結論が出ておるわけでありますが、あるいはそれは見方が違っておるのだというふうな見解もあると思います。しかし、そういう事態についてはとにかく一応国連でそういう事態を判断しておるのだから、こう認めるべきであると思います。ただ、われわれ自由主義の立場をとり、自由主義の立場こそ、真に人類に対して幸福と福祉をもたらすゆえんであると考えておるものから申しますと、私は、国際共産主義のいろいろな活動というものは、やはりわれわれの立場からいえば、一つの脅威であるということは、依然として存しておる、かように思っております。それを特定の国がどうだとか、いわゆる仮想敵国というような観念と混同して考えるべきものじゃない、かように考えます。
  106. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、仮想敵国ではないけれども、対立する陣営の一つの側の問題である。そうすると、新安保条約というものは、世界のある一定の国々に対立するもののために作られた安保条約である、それを防衛するための条約である、このように理解してよろしいですか。
  107. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっと私、今の岡田君の御質問の趣旨を理解しかねるのでありますが、言うまでもなく、この安保条約というものは、日本の平和と安全を守るためにわれわれが防衛的に作るものでございます。そのために、先ほどから言っているように、われわれが自由主義の立場を堅持しておって、自由主義の立場の国の、理想を同じくし、考え方を同じくし、友好関係にあるところの米国が、日本の足らない力を補完して、そして日本の安全と平和を守るということであります。それは同時に、今お話しのように世界が対立しておる現状において、自由主義の国国の間の連携協力を強めるという上からいっても、決して国際情勢に違反しておる、あるいは逆行しておるというものではない、かように考えております。
  108. 岡田春夫

    岡田委員 これは非常に重大ですから、具体的に伺っておきましょう。国際共産主義の脅威というものは現在もある、ところが、これについては具体的に言えないということらしいのでありますが、これらのことは、ほんとうの岸さんの腹というのは、中ソを中心にする社会主義陣営というものをさしているのだ、これらの国々をさしているのだ、ところが、そう言ってしまうと、外交上問題があるから、国際共産主義の脅威という程度で、適当な表現であいまいにしているのだ、これがほんとうの岸さんの腹なんだと理解してもよろしゅうございますか。
  109. 岸信介

    岸国務大臣 それは非常に違うのでありまして、われわれは、共産主義の国々との間にも友好関係を作っていく、そしてお互いがお互いの立場を理解し、尊重し、そうして共産主義の国国——われわれは共産主義はとらない、自由主義の立場を堅持するものでありますけれども、しかし、決してその国であるところのソ連や中共を敵視するとか、あるいはそれが侵略してくるのだというような頭で考えているわけではございません。お互いがお互いの国柄というものに対しては、それぞれ国民がどういう立場をとるかということを決定するわけであります。それを尊重し、互いに相侵さずいくということがわれわれの真情であって、それである限りにおいて、私は、中共にしましても、ソ連にしても、国としてわれわれのなにに対してお互いがお互いの立場を尊重し、それを相侵さないという政策をとっておられることは当然だと思います。この立場である限りにおいて、国と国との関係における友好関係というものは十分成り立っていく。しかし、国際共産主義考え方はそうではない。これは私から岡田君になにするのはいささか釈迦に説法でありますが、これは逆な考えである。私は、これはやはり国際的に共産主義というものを世界に実現しようとする一つの運動である、かように理解しておりますから、そういうことは自由主義の立場をとっている国々からいえば脅威である、こう申しておるわけであります。
  110. 岡田春夫

    岡田委員 具体的に伺います。それじゃ中ソ両国を初め社会主義の諸国は、国際共産主義の脅威というものに該当しない、公然たる侵略というものに対してもこれらの国々は該当しない、そうですね、そうすると、ソビエトは、公然たる侵略を防止するためのその対象にはなっていない、その点は明言できますか。
  111. 岸信介

    岸国務大臣 これは私は、どこの国を相手にしているということでもなし、日本立場からいえば、どこの国であろうとも、日本を侵略するものがもしも出てくる場合においては、日本の平和と安全を守るためにわれわれが防衛することは当然であります。しかし、この条約が、ソ連であるとか、中共であるとか、そういう特定の国をいわゆる仮想敵国としてこういうものを結んでおるというような考えではございません。
  112. 岡田春夫

    岡田委員 新条約の第一条に、国連強化について「平和愛好国」というのがありますね。この中にはソビエトは当然入っているわけでございますね。
  113. 岸信介

    岸国務大臣 これは国際連合におきましても、それから国際的に見ましても、私は、ソ連は平和を愛好している国だと信じております。
  114. 岡田春夫

    岡田委員 中華人民共和国は平和愛好国の中に入っておりますか、どうでございますかあなたの御意見は……。
  115. 岸信介

    岸国務大臣 これは私ども、まだ実は国として、われわれの立場から申しますと、承認をいたしておらないのでございます。私は、今世界のどの国だって、いやしくも世界に国を興して、自分は平和を愛好しないんだ、戦争でもって侵略するんだというふうなことを考えている国が、こういう時代にあろうとは思いません。
  116. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃもう一つ伺いますが、李承晩韓国はどうですか。平和愛好国ですか。
  117. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げた通りでございます。すべての国が私はそういうことを考えていないと思います。
  118. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、全世界の国々が平和愛好国なら、安保条約を作る必要がないじゃないですか。
  119. 岸信介

    岸国務大臣 みんなが平和を愛好しておりますけれども、しかし、いろいろな国際紛争というものはあり得るわけでありまして、その紛争を平和的手段において解決するというのが、われわれの念願であり、また、われわれが努力していかなければならぬことであります。その間においてそういう事態を抑制していくためには、今日においては、どこの国におきましても、平和愛好国におきましても、平和愛好国であるだけに、むしろ大きな武力をみな持っておる。武力を持っておるから、平和愛好国でないなんということはこれは私は見方が違っておると思う。そしてまた、安全保障の体制をとるということは、平和を愛好すればこそとるのであって、決してそれに反するとは私は考えておりません。
  120. 岡田春夫

    岡田委員 平和愛好国はすべて武力を持っている、こういうお話でございますが、新安保条約において、日本の自衛隊については——これは平和愛好国である日本の国が、やはり武力を持っている。しかし、武力を持っているんだが、憲法では、第九条で武力を持つことを禁止しているから、仕方がないから、武力とは言わないで、自衛力と言っている、こういう意味になりますね。そういうことの裏づけはまた事実あるわけです。現行条約を見ると、日本は武装解除されているので、固有の自衛権を行使する有効な手段を持たない。固有の有効な手段ということは——これは武装が解除されて、ディスアーマメント、こう書いていますが、武力を持っておらない。ところが、新安保条約においては、自衛力を持っているという前提に立って締結された。とするならば、これは当然ディスアーマメントと違った状態になっている。すなわち、武力を持っている。この点はこのように理解しなければならないし、それからMSA協定においても、第八条において、自国政府が安保条約に基づいて負っている軍事的義務を履行する決意を再確認する、しかも、この再確認するという場合において、新条約がそのまま読みかえて適用されるわけですから、自衛力というものは、当然これは軍事的な力である。言葉をかえて言うならば、あなたが今言われたように、武力である。言葉をかえて言うならば、戦力である。戦力であるという意味で憲法違反になるから、ごまかして自衛力と言っているのだ、こういう意味に理解してもよろしゅうございますか。
  121. 岸信介

    岸国務大臣 これはしばしば憲法第九条の解釈問題で国会においても論争があった問題であります。われわれの解釈によりますれば、これは、政府の解釈だけじゃなしに、私は今日の通説であると思いますが、九条の第一項というものは決して自衛権を否定しているものじゃない。そうすると、自衛権というのは、単に言葉だけの自衛権というような、空なるものじゃなしに、やはり自衛権を裏づけるに必要な最小限度の実力を伴うということは、自衛権の内容からいって当然でありまして、いわゆる二項で禁止しておる「戦力」にはならない、かように私どもは解釈をいたしております。
  122. 岡田春夫

    岡田委員 これはあなたの政府発表した正式の印刷物、公刊物でありますが、「国際情勢資料」二月十二日発行「日本の再軍備」という、内閣調査室で発表した印刷物です。この中には、アメリカ人が書いていることがはっきり出ております。日本の再軍備ということが書かれております。ここでアメリカ人はこのように評価しております。「安保条約はバンデンバーグ決議を織りこむことになっているが、同決議は米国と相互援助関係を結ぶ国にたいして、近代戦を遂行するのに十分な軍事的能力を保有することを要求するものである。つまり、日本も核兵器保有国にならなければならない、ということを意味するものと考えられる。」と、はっきり書いてある。また、「岸政府は日米安全保障条約の改定を急いでいるが、これは事実上、軍事同盟の締結意味しており、明らかに日本の憲法に違反することである。」と、はっきり書いてあります。あなたの最も信頼するアメリカの人がこう言っている。(笑声)ところが、この安保条約締結した相手はそのように言っているのだが、あなたの方では、日本政府としては、国民の目の前では、憲法違反にはならないという意味で、こういう事実を否定されますか、どうですか。
  123. 岸信介

    岸国務大臣 一アメリカ人の無責任な言葉に対して、私は政府を代表してお答えする必要はないと思います。われわれは、アメリカ政府と——責任を持っておる、アメリカを代表する人との間の話し合いにおいて、安保条約の調印をいたしたわけでございます。
  124. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、こういう無責任なものを政府が出したわけですね。無責任なものを政府は公然と出しているわけですか。
  125. 岸信介

    岸国務大臣 調査室においていろいろな情報なり何なりを紹介するということは、中には無責任なものもありましょうし、いろいろなものもあると思います。それに対して政府が一々責任を持つべき性質のものではない、かように思います。
  126. 岡田春夫

    岡田委員 無責任なものもあるそうでありますから、政府発表物はあまり信用できないということになるのだが、それでは、あなたは、アメリカ政府の言っていることならば、はっきり言うわけですか。それじゃ、私読んでみましょう。ここにロバートソンの言っていることが、同じように書いてある。ロバートソンは、極東担当国務次官補当時、このように発言しております。「中国ならびに台湾にたいして現在米国がとっている政策の核心は……中共と相対して常に軍事行動に出ることのできる態勢をもっておどしつけ、そのうちに中共に内部崩壊が起こるのを待つ、ということである。……われわれは、中国を取り巻く諸民族が、われわれの支援の下に、中国の共産地区にたいして、いつかは軍事行動をとりうるようになるまで、無期限に援助を与えつづけるであろう……」なお、この政府の刊行物は、これを解説して、これについて、アメリカの国務省のロバートソン前国務次官補の言葉が引用されている。すなわち、中国を取り遅く国の一つである日本の自衛隊をたくましく育て上げ、われわれの支援のもとに、軍事行動をとり得るようにすることが必要である、このように言っているのだ。ロバートソンがこう言っているのを、あなたはそれじゃ政府見解ならば真剣に答弁するけれども、そうでなかったら言わないというなら、このロバートソンの見解はどうなんですか。明らかにそう言っているじゃないか。
  127. 岸信介

    岸国務大臣 私どもは、アメリカとの間において、正式な外交ルートを通じて常に交渉をいたしております。また、日米の間を規定している各種の条約があります。それを両国とも忠実に履行するなにでありまして、決してアメリカ日本内政に干渉すべき筋のものでもなければ、また、アメリカ政府が責任を持ってわれわれに対して内政干渉をいたしておるわけでもございません。もちろん、われわれが自衛力を漸増する上においては、あるいはMSAの協定によって援助を受けて、その援助によって作り上げていくというような分もございます。しかし、あくまでも自衛力をわれわれが国力と国情に応じて漸増するという基本方針に基づいてやっているわけでありまして、これらについて、アメリカ政府としてわれわれに対して何ら干渉する筋のものでもなければ、また、アメリカのそれ以上の指示を受けてどうするという性格のものでもないことは、当然であります。
  128. 岡田春夫

    岡田委員 今の御見解からすると、ロバートソンの今の発言は適当でない、こういうふうに私たちは受け取ってよろしゅうございますか。
  129. 岸信介

    岸国務大臣 ロバートソンが、全体に、どういう場合にどういうふうに言っているかは別としまして、今引用されただけのことでありますると、私は非常に誤解を招くおそれがあると思います。われわれはそうは考えておりません。
  130. 岡田春夫

    岡田委員 これは何も非公式や適当にやっているんじゃないですよ。これはあなたの方の政府の発行物で、しかもロバートソンが言っているということが書いてあるので、これか適当かどうかということは、私はこれを忠実に読んだだけであって、あなた自身は、これを当然不適当なものであるとお考えになっているだろうと思うから、私はこれ以上進めません。次に進みます。  今度の共同コミュニケの中で、二ページ目に、「両者は、世界は重要な機会をもたらしうる時期に入っており、これらの機会を単なる約束のみでなく、実証された行為をもととして真剣に探究すべきであるとの結論に達した。」という、この実証された行為というのは、具体的に何ですか。
  131. 岸信介

    岸国務大臣 いろいろな問題があると思います。たとえば軍縮の問題にしても、実際の軍縮について具体的に一致した結論を作り上げるというようなことは、その一つの事例でございます。
  132. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、実証された行為というものは、たとえば、ソビエトは、今年の一月に百二十万のソビエトの軍隊の削減を行ないました。これは実証された行為の一つに入りませんか。
  133. 岸信介

    岸国務大臣 これは私は当時、新聞で見たのでありまして、その百二十万の削減ということが現実に行なわれておったかどうか、これは別として、現実にそれが行なわれたとすれば、それは一つの実証されたことであると思います。ただ、しかし、その場合において、これが直ちにソ連の——誤解があってはいけませんから、明瞭に申し上げますが、ソ連が軍縮をしたという事実があるかどうか、これは現在のなにから申しまして、言えるか言えないかは、これは別だと思います。
  134. 岡田春夫

    岡田委員 ちょっと失礼ですが、総理は不見識だと思う。新聞を通じて知ったなんて言うのは、おかしいじゃないですか。ソビエトは日本大使館があるじゃないですか。なぜ聞かないのです。外務省から聞いたら、わかるじゃないですか。言ってこないからわからないというなら、外務省、ソビエトの大使館は明らかに怠慢です。藤山外務大臣にそういうことを知らしてきていないならば、おそらく怠慢だろうと思うが、知らしてきていないのですか。
  135. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 フルシチョフがそういう演説をいたしたことは、われわれも十分存じております。また、同時に、陸上兵力を減らすというそのあとで、しかし、われわれの戦闘力というものは決して減ってはいないのだということをはっきり言っております。そういうことから見まして、はたしてそれだけの兵力を必ず減らしているかどうかということは、われわれは確認はできません。
  136. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、アメリカは実証された行為をやっていますか。やっていないじゃないですか。
  137. 岸信介

    岸国務大臣 これはアメリカがやっているとか、ソ連がやっていないとかいうことを言ったのではございませんで、これからわれわれは世界にほんとうに平和をもたらしてくるためには、そういうふうに、ただ一片の約束をするとか、あるいは演説をするとかいうことではなくして、現実にそういうものを実証するような——先ほども申し上げましたように、事実を積み重ねていくということによって世界の緊張は緩和してくるのだ、アメリカが実証されているとか、ソ連が実証してないとかいうようなことを具体的に申し上げる——世界の大勢というものは、そういうことを実証するような事実を作り上げることにおいてまだ欠けておるというのが、私とアイゼンハワー大統領との考え方でございます。
  138. 岡田春夫

    岡田委員 これは私の見解をもってすれば、日本の軍備を増強する新安保条約は、実証された行為に反することだと思うのですが、この点はどうなんですか。日本は逆じゃありませんか。
  139. 岸信介

    岸国務大臣 これは先ほど来申し上げておる通り、われわれが防衛的な条約を結ぶということは、いわゆる何か実証された行為に反するのじゃないかという御質問でありますけれども、私は、当然のことだ、かように思います。
  140. 岡田春夫

    岡田委員 去年の末に——末といっても十月なんですが、国連で八十二ヵ国の軍縮の共同提案が行なわれた。これに対しては日本ももちろん賛成をいたしました。この共同決議案の条項第一において、各国政府に対して軍縮問題の建設的解決に当たるために全力をあげるように要請するということが、共同決議において義務づけられています。日本政府にも義務づけられております。この点と、新安保条約の第三条によって自衛力を増強するという点とは、明らかにこれは反すると思う。少なくとも、あなたがどういう答弁をされても、世界的に見るならば、これに明らかに反した行為であります。こういう点についてあなたはいかなる責任をおとりになるのか。
  141. 岸信介

    岸国務大臣 日本の持っております自衛力というものは、私は、今国際的に問題になっておる軍縮というものの対象のような力にはなっておらないと思います。われわれは、あくまでも日本の国力と国情に応じて、日本を他から侵略させない、それの防衛のために必要最小限度の力を自衛力として作る、こういうことでございますから、私どもは決して軍備拡張をやっておるというような考え方の範疇に入る考え方ではないと思います。
  142. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、日本の国としては、国連において、一度だって軍縮問題について具体的な提案をしたことはないじゃありませんか。軍縮問題について具体的な提案をしたことがありますか。何ら努力をしたことはないじゃありませんか。ありますか。
  143. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれは軍縮を熱望しておりますことは、これは当然でございます。御承知のように、現在、一番軍縮の対象になっているのは、軍備を持っておりますソ連、アメリカ、あるいはイギリス、あるいはフランスというようなものでありまして、かりにソ連の提案にいたしましても、自分の方はこれこれ兵力を減らす、アメリカはそれに対応してこれこれ減らす、そしてその話し合いの上でイギリスはどの程度にしようかというのが一番大きな問題であることは、岡田委員御承知の通りでございます。従いまして、軍縮会議等が国連におきまして行なわれまして、われわれは国連を中心にして軍縮委員会が十分円滑に進んでいくことを希望しておったわけでございますけれども、御承知の通り、そういかないで、パリティ方式によって十カ国委員六会ができて、ジュネーブでやっておるわけであります。そういう際におきましても、われわれとしては、ソ連とか、アメリカとか、あるいはイギリスとかいうようなものの兵力量をどういうふうに減らすかという問題に直接発言はいたしておりませんけれども、国連を通じてやはり平和に軍縮が達成されるように、しかもパリティ方式によってできました十カ国委員会が何らかの形で国連に反映し、国連の意見をいれていくという意味においては、われわれは発言をいたしておるのでございます。
  144. 岡田春夫

    岡田委員 藤山さんに伺いますが、今の答弁を伺っていると、軍縮の問題の中心点は、アメリカ、ソビエトあるいはイギリス、そういうような大きな国々の軍縮の問題が中心点だ、これはその通りですね。しかし、それと同時に、そういう大国でない、小さな国である日本の国も、それに準じた形をとらなければ、全世界の軍縮というものは具体的な効果を持たないじゃありませんか。大きな国の方を抑えておいて、その間に日本の国がぬけぬけと新安保条約適用で軍事力を強化して、またいつの間にか五大強国の軍事的な夢を見るというようなことでやろうというような形で軍縮問題を考えている。そういう点を押えたのが、共同決議案の第一なんであります。各国の政府がこれに対して協力をするという点がポイントなんです。これについて何ら具体的な努力をやっておらないじゃありませんか。その証拠に、国連で軍縮提案について具体的な提案を松平代表がしたことがありますか。一度もないじゃありませんか。具体的な提案なんかやっておりませんよ。
  145. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 軍縮問題は、ジュネーブにおきましても非常にデリケートな問題であることは、岡田委員も御承知の通りだと思います。従いまして、この問題について特別な提案をいたしておりますのは、ソ連、アメリカ及びイギリスだけでございまして、他の国が——他の小国と申しますか、それらの国が特別な提案をいたしておることはございません。また、やはりこのデリケートな段階において、できるだけ雑音を少なくして、ジュネーブの十カ国軍縮委員会を円満に妥結に導くことをみんな念願しておることは事実でございます。また同時に、その成り行きを見てそれぞれの国が考えていく問題だと思います。
  146. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、私は今申し上げたような国際情勢の中で、先ほどから岸総理藤山外務大臣お答えになっているのは、新安保条約というものは全く防衛的なものだ、だから、先ほどの、国際情勢の中においても相反するものではないのだ、こういうようなことを盛んに答弁されておられますが、そうでないという事実を、安保条約の中に持っている侵略性、従属性を、午後から具体的に明らかにして参りたいと思います。そういう点は私は休憩後にいたしまして、堤委員から関連質問がありますので、私はこの程度にいたします。
  147. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、堤ツルヨ君より関連質疑の申し出があります。これを許します。堤ツルヨ君。
  148. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ただいまの岡田委員政府との問答につきまして、私が質問に立ちましたときに触れました問題が出まして、釈然といたしておりませんので、一つここで確認をし、もう一度お答えを求めておいて、きょうは関連でございますから、次の私の質問の機会に触れたいと思います。  どういうことかと申しますと、私がこの間質問に立ちましたときに、岸・アイゼンハワーの第一回の共同声明の中に、はっきりと、共産主義陣営というものは侵略勢力であるから、従って、これに対してあくまでも対抗しなければならないというところの相互の承認が書かれておる。これは今に至るも変わらないという御確認がありました。そこで私が、脅威を与えるところの共産主義陣営というものは、一体個々にどういうものをさすかということをお尋ねいたしましたら、一々の国をあげることは適当ではないと、極力、単独の国に触れることをお避けになったのでございます。そこで、私はもう少し伺いますが、それでは、共産主義陣営というものは、いかなるものが集まって構成しておるのか、ちょっとその説明をしていただきたいと思います。
  149. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、共産国におきましても、ユーゴの立場もございます。あるいはソ連その他共産圏の立場もございます。従いまして、それぞれの国がどういう立場をとるかということは、その国の問題でございます。総理が言われております国際共産主義の脅威というのは、いわゆる国際インタナショナルの問題でございまして、思想的な立場によって必ずしも——でありますから、それをどの国が支持し、どの国が支持しない、そういうような問題につきましては、そのときの情勢により変化もございます。また、移動もございます。
  150. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は総理大臣にお伺いをしたのでございますが、外務大臣かお立ちになりましたけれども、今度は総理大臣にお尋ねをいたしたいと思います。先ほどの岡田委員との質問を聞いておりますると、個々の国一つ一つを取り上げて指摘していくと、どれ一つとして脅威を与える関はない、しかし、共産主義陣営は脅威を与えるのだ、こういうふうにおっしゃったように思いますが、いかがでございますか。共産主義陣営の中の一つ一つの国を拾っていくと、その一つ一つは平和愛好国の例に漏れないのであって、共産主義陣営の中にあるところの国々の一つ一つは脅威を与える勢力でない、こういうふうにお答えになったように思いますが、もう一度岸総理お答えいただきたいと思います。
  151. 岸信介

    岸国務大臣 この前の御質問でございますが、私がお答えを申し上げましたのは、どの一国が——具体的の国が日本に脅威を与えておる、それを目標に安保条約考えるというようなことは、われわれ考えたことはないということと、それから今日、世界の情勢を見て、いわゆる第一回のアイゼンハワー大統領と私との会談においてコミュニケを出しました際に言っておる国際共産主義の脅威というものは、今日もなお存続しておると見るのか、こういう御質問に対して、これはやはり今日も存しておると私は考えるということを申し上げたのでございまして、一国一国を取り上げて、この国が日本に対して現実に脅威を与えているのだというふうなことは、私ども考えておらない、こういうことを申し上げた次第でございます。
  152. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私のお答えをいただいこと、私の質問したことはわかっておるのでございまして、今尋ねたことに簡単にお答えいただいたらいいわけなんです。先ほどの岡田委員質問を通じて聞いておりますると、共産主義陣営といえども、一国々々を踏んで検討してみると、これは平和愛好国の中にみな入るとおっしゃいましたが、確認してよろしゅうございますか。
  153. 岸信介

    岸国務大臣 私は、すべての世界の国々、ことに国連に加盟しておる国々は、はっきりと国連憲章の精神を順奉しておる国でございまして、私はその意味においてどの国も平和愛好国である、かように考えております。
  154. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 なぜ私がこういうことを申すかと申しますと、一つ一つは平和愛好国であるのに、それが固まってしまうと、脅威を与えるのだ、こういう解釈になってくると思う。私たちの常識で考えますと、今日の共産主義陣営の中で、今までの岸内閣がとって参りましたところの脅威を与える国々というものは、ソ連、中共を除くと、ほかの国々というものは大した問題ではないのじゃないかと思う。そのソ連、中共というものに触れることは政治的に危険であるから、わざとこれを避けて、そうしてごまかしていらっしゃる答弁を続けていらっしゃるわけでございます。私が一つはっきりと答えていただきたいのは、一つ一つ共産主義国が寄って共産主義陣営というものを作っておる、こう思うのでございますが、総理はいかがでございますか。
  155. 岸信介

    岸国務大臣 共産主義陣営とか、あるいは自由主義陣営という言葉を用いておりますが、それは要するに、政治的の理想を同じくする国々が、いろいろな条約機構等を設けて協力関係にあるわけであります。共産主義の国々の間にもいろいろな条約機構がございまして、これらが協力関係にあることも御承知の通りであります。これをそうした国際情勢から申しますと、共産主義の国々の間を結んでおるところのいいろいろな機構その他のものによって、共産陣営という言葉でこれを表示し、また、自由主義陣営という言葉は、自由主義の立場をとっておる国々がいろいろな機構によって結びついておる、そうして共同の目標に向かって協力するというような立場をいわゆる自由主義陣営、こういうことを申しておる。私の申し上げなければならぬことは、先ほど申し上げたように、国々がどういう共産主義立場をとるか、あるいは自由主義の立場をとるかということは、その国民がみな自主的にきめるべき問題であって、他国がこれに干渉すべき性質のものじゃない、そうして今日の東西両陣営、あるいは共産主義陣営と自由主義陣営の世界の対立の状況においては、この関係において両方の陣営の政治機構その他が違っておる、考えが違っておるけれども、それを理解し、尊重し合って、相侵さず、そうして共存していくという道を見出すということが、われわれの努力していかなければならぬことである。この間において、国際共産主義というものは、国際的に世界を共産化そうという一つの運動であり、これは国として、国際共産主義を政治理念としてとるということをはっきり表向きに言うておる国はございません。しかしながら、国際共産主義という考え方は、やはり自由主義の立場から見ると、それが一つの脅威をなしておる。それは具体的な国ではない、私はそういう考え方を持っておるのであります。
  156. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は何も各国のイデオロギー、人種のイデオロギーの自由を侵害すると申し上げておるのではない。私がとやかく言うということを決して言うておらないのですから、今そういうお説教的な御答弁を聞く必要はない。これはいつでもそうなんですが、ちようど安物のてんぷらのように、大事な中心に触れた、ポイントに触れたところの答弁はちょっとしかできないものだから、あとはメリケン粉を塗って、衣でごまかす、こういうような答弁をいつもなさる。私はまことにけしからぬと思うのですけれども一つ一つの国はみんな平和愛好国である、こうお上手を言っておいて、ソ連、中共も含めて、一つ一つの国は平和愛好国である、しかし、共産主義を信奉するところの国々が集まった共産主義陣営というものは、みんなプラスして総合的にみると、これは自由主義陣営に与えるところの脅威を持っておる、こうおっしゃるのでございますから、その共産主義を信奉する国々の中には、先ほど藤山さんがお答えになったような国々もあるということを認めておるのであって、——よろしいですか、聞いて下さい。——そこで、私はどうもふに落ちないのは、一つ一つの国々が脅威を与えるような共産主義陣営であるならば、全体的に脅威を与えるということは納得がいくけれども一つ一つを分析して見たら、平和愛好国で、脅威を与えるような国は少しもないのに、みんなが固まってみると、これが脅威を与える、これはわざと政治的に避けることをなさって、詭弁を弄していらっしゃる答弁だから、私らのようなものには、頭が悪い関係かどうか知らぬけれども、わからないわけなんです。そこのところをごまかさないで、はっきりおっしゃっていただきたい。
  157. 岸信介

    岸国務大臣 今の堤委員の御質問に対する私の答えを非常に誤解していらっしゃる。私は、一つ一つの国々はみんな平和愛好国だということを申しました、その通りであります。それが一緒になって共産主義の陣営になると、それが一変して今度は脅威を与えるというようなことは、私は申しておりません。私は、国際共産主義というものが脅威を与えておるということを申しておりますが、そういう一つ一つが一緒になったら脅威になるというようなことは、私は申しておりませんから、その点はよく私の答弁一つ御吟味願いたいと思います。
  158. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は今答弁をいただきましたけれども、総理がごまかしていらっしゃるということをはっきり申し上げまして、きょうは関連でございますから、私の時間にまた触れたいと思います。ありがとうございました。
  159. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  160. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、午前中の岡田君の質問に関連いたしまして、横路節雄君から関連質疑の申し出があります。これを許します。横路節雄君。
  161. 横路節雄

    ○横路委員 藤山外務大臣にお尋ねをしますが、三月八日の本委員会における愛知委員質問に答えて、こういうようにおっしゃっておるわけです。第一条の後段ですね。第一条の後段とは、午前中に問題になりました「平和愛好国」の件です。「なお、後段にございます「締約国は、他の平和愛好国と協同して、」云々というのは、他のこの種の条約にはないことでございまして、われわれといたしましては、国連によって平和を維持していくということを念願といたしております。」こういうように答弁されているわけです。「この種の条約」というのは、安全保障条約あるいは相互防衛条約をさしておると思うのですが、この「平和愛好国と協同して、」云々ということを、世界じゅうの他の条約にはないが、この新安保条約にのみ入れたというのはどういう趣旨でございますか。
  162. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん、われわれは平和を念願しておるものであります。従いまして、平和を愛する国と一緒になっていく、アメリカとも、あるいは自由主義陣営の人たちとも平和をともにしていきたい、こういう意味でございます。
  163. 横路節雄

    ○横路委員 なお外務大臣にお尋ねをいたしますが、相互防衛援助協定に関する交換公文で、日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定は、この新安保条約が批准されれば当然引き続いて効力があるわけですね。その点……。
  164. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 MSA協定は、むろんそうでございます。
  165. 横路節雄

    ○横路委員 このMSA協定の附属書Dに「日本国政府は、共通の安全保障のため、世界平和の維持を脅かす国との貿易を統制する措置を執ることについて、アメリカ合衆国その他の平和愛好国の政府と協力するものとする。」こうなっておるわけです。そこで、この附属書Dの「世界平和の維持を脅かす国」というのは、ここではどの国をさしているわけですか。
  166. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この場合にはココムでありますとかチンコムの問題を言ったことだと考えております。
  167. 横路節雄

    ○横路委員 この問題につきましては、昭和二十九年の三月十二日に岡崎外務大臣の提案説明がありまして、当時の外務委員会の記録によりますと、こうなっています。「平和を脅威する国との貿易の統制につきましては、米国と他の国との協定の先例にかんがみまして、かつわが国の国連協力の方針にも照し、これを約束することはさしつかえないと認めましたが、さきの本院の決議の次第も十分に尊重いたしまして、附属書において、わが国は米国その他の平和愛好国と、この目的のため協力する趣旨を掲げるにとどめた次第でありまして、これは附属書Dに記載してあります。」と、こう述べまして、そのあと、与党の福田委員に対して、岡崎外務大臣はこう言っています。この貿易制限緩和につきましては、イギリス側でアメリカ側と協議をいたすように準備している。それはソ連に対してであって、中共に対しては、まだ形式的には国連の決議が生きているのであります。そうして、同じく三月二十五日、戸叶里子委員の、世界の平和の維持を脅かす国とあるが、それはどこか、という質問に対して、岡崎外務大臣から、「現在侵略国として国連総会で決議されておるのは中共であります。」こう言っているのですよ。そこで私は、先ほどお尋ねしましたように、この新安保条約による交換公文でMSA協定は引き続き効力を有する、そうすれば、附属書Dにあります「世界平和の維持を脅かす国との貿易」、その「世界平和の維持を脅かす国」とは、それは国連の決議もありますから中共です。今日なお中共との貿易は統制されている。外務大臣にお尋ねしたいのはそこなんです。そうすると、あなたの方では、中共というのは国連の決議もあって、岡崎外務大臣は、侵略国だ、世界の平和を脅かす国だ、こう言っている。そうして今、この附属書Dはそのまま生きているとあなたはおっしゃる。引き続いて効力を発生するが、この点については、昭和二十を年三月にMSA協定について国会に提案されたときの岡崎外務大臣の提案説明の趣旨並びに福田委員戸叶黒子委員に対する答弁、すなわち、中共は国連の決議によって世界平和の維持を脅かす国である、これは今でもそう思っていらっしゃるのか。そうでなければない、平和愛好国なら平和愛好国、こうおっしゃっていただいてけっこうだし、あるいは、そうじゃないのだ、附属書Dによって、やはり世界の平和の維持を脅かす国なら脅かす国、こう答えられても、どちらでもけっこうなんですよ。はっきりしていただきたいのです。外務大臣にお願いいたします。
  168. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように国連の決議もございまして、当時の事情から申せばそうであったかと思います。しかし、その後、御承知の通り共産圏に対する貿易というものは大幅に緩和されまして、三年前にチンコムがすでに解消、現在ココムの線におきましても品目等につきまして大幅な解除が行なわれつつあるわけでありまして、事情はそういう意味において変わっておりますことは御承知の通りだと存じます。
  169. 横路節雄

    ○横路委員 それでは外務大臣にお尋ねしますが、事情が変わったということは、MSA協定は引き続き効力を有するが、附属書Dの「日本国政府は、共通の安全保障のため、世界平和の維持を脅かす国との貿易を統制する措置を執ることについて、アメリカ合衆国その他の平和愛好国の政府と協力するものとする。」というここの「世界平和の維持を脅かす国、」それは二十九年三月のMSA協定提案のときは、中共は国連の決議もあるから、それは世界の平和を脅かす国だ、しかし、今は事情が違って、中共は平和愛好国だと言うのですか、その点はどうなんですか。貿易のことはわかりましたが、どうなんですか。
  170. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この点は、御承知の通り、MSA協定の附属書Dは抽象的な問題を取り扱っておるわけでありまして、従って、その協定自体は、どこの国をさしているわけでもございません。むろん、先ほど申し上げましたように、チンコムの解消あるいはココムの大幅な解除というような問題が行なわれつつありますので、世界の認識というものは、そういう方向に動いておりますことは事実であります。
  171. 横路節雄

    ○横路委員 それでは藤山外務大臣、二十九年の三月二十五日に、外務委員会で、ここにおられる戸叶委員は、質問でこう言っているのですよ。「この世界の平和を脅かす国というのは、どこと考えて調印されたのでしょうか」、岡崎外務大臣「現在侵略国として国連総会で決議されておるのは中共であります。」こう言っている。ですから、藤山外務大臣にお尋ねしたいのは、国連総会では、中共は侵略国であると規定されたが、しかし、今の事態においては、今の世界情勢のもとにおいては、中共はさきの国連総会では侵略国として決議されたが、今はそうでなくて、平和愛好国です、こういうようにおっしゃるならば、それでもけっこうなんです。そうすると、国連総会で中共は侵略国だと決議がされたが、その後、世界の情勢が変わったから、今や中共は平和愛好国である、こういうようにおっしゃるのですか、その点の御答弁をいただきたい。
  172. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、国連が当時そういう決議をいたしたことは周知の事実だと思います。そういう範囲内におきまして、当時の岡崎外務大臣答弁としては、当然そうあったと思います。むろん、世界の情勢というものはいろいろ変転をいたしておりますし、従って、今申し上げたように、逐次中共に対しても世論がそういうふうに動きつつある。従って、チンコムなりの問題が上って、そうした状態に進んできたということを申し上げておるわけであります。国連自身の決議がまだ存在していることは存在しておりますけれども、内容自体というものは、世界の認識が変わりつつある、こういうことを言うので、われわれは、先ほど総理も言われましたように、世界のどの国の人でも、平和を愛好するということについてはみんなが考えておると思います。従って、そういう意味において、いずれの国も平和を愛したい。ただ、平和というものに対して、われわれと共産側との平和という考え方が若干違っておるような点があるんじゃないかということを私ども考えておるわけでありまして、そういう意味からいいましても、「平和愛好国」という意味の内容においては若干違う点があろうかとも思います。
  173. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣にお尋ねしますが、私がこのことを聞いているのは、ただ単に「平和愛好国」というのがぽっと出ていれば別です。しかし外務大臣が愛知委員質問答弁されたように、この第一条後段の——重ねて読みますが、「締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。」これは安全保障条約あるいは相互防衛条約の、世界のあらゆるこういう条約にはないことです、こういうようにあなたは言っているわけです。ですから、ここの点は、そういう意味政府の方も特段強調しているわけです。だから私の方も、一体、日本並びにアメリカが他の平和愛好国と協同してということは、どういうことなんだ、今あなたは、国連を強化するということだ。そうすれば、さきの国連総会で、中共は侵略国である、そうしてMSA協定は今も効力を有しておるし、この新安保条約が批准後も引き続き効力を有する、このMSA協定の附属書Dも生きている。このDにおける「世界平和の維持を脅かす国」というのは、岡崎外務大臣答弁のごとくに、中共は国連総会で侵略国であると規定してあるから、そういうことだ。それを受ければ、国連総会台の決議が生きておる。しかも、国連を強化するという建前からいけば、この第一条後段の「他の平和愛好国と協同して、」というこの「他の平和愛好国」という中には、国連を強化していこうという——ところが一方国連総会の決議では、中共は侵略国であると規定をされておる。それであるならば、第一条後段のこの点は、外務大臣、この平和愛好国の中には、少なくとも、現在国連総会の決議が生きておる間は、中共は平和愛好国ということではなくて、このMSA協定附属書Dの「世界平和の維持を脅かす国」であるという、こういう規定から一歩も出ていないではありませんか。それではあなたに一つここで御答弁いただきたいのは、私は、中共は、ここで平和愛好国であると御答弁いただけば、それでけっこうなのですよ。それだけでけっこうなのです。何も私は、中共は侵略国である。世界の平和を脅かす国であるということを、あなたからここで御答弁いただこうと思って言っておるのではないのです。ですから、外務大臣からこの場所で、中共は、さきの国連総会ではなるほど侵略国であると規定されたが、その後世界の情勢が緩和し、そうして、第一条後段にいう、日米両国は、他の平和愛好国と協同して、国際連合を強化するという、この第一条後段の、他の安全保障条約にはない、この平和愛好周の中に中共は入っておるのです、こうおっしゃっていただければ、私はこれで質問をやめる。そのことを聞いておるのですよ。
  174. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知の通り日本が国連に加盟いたしますときには、日本は平和愛好国としての資格があるということでもって、加盟をいたしておるわけでございます。そういう意味におきまして、やはりわれわれとして、国連加盟の各国と平和愛好の関係において協力して、国連を盛り立てていこうということは、これは当然のことでありまして、そういう意味をうたいますことは、私は差しつかえないことだと思っております。中共につきましては、今お話しのような事実が国連においてあったことは、われわれも承知しておりますし、皆さんが御承知の通りでございます。その後の中共の状況から見まして、漸次、先ほど申し上げましたように、経済問題等につきましては、いろいろの世界の事情が変わりつつあるしという事態を、われわれは見守っていくということであろうかと存じております。
  175. 横路節雄

    ○横路委員 私は総理大臣にお尋ねをしたい。これは私は、決して中共は侵略国であるとか、世界の平和を脅かす国であるとかいう御答弁をいただこうと思って、聞いておるのではない。しかし、この新安保条約の交換公文で、MSA協定は、この新安保条約が批准された後も引き続き効力を有するわけです。そのMSA協定の附属書Dに、今私からお話ししましたように、世界の平和を脅かす国、これとの貿易統制は、他の平和愛好国と協力をしてやるのだ。なお、二十九年三月の岡崎外務大臣の提案説明で、先ほど私から言いましたように、この場所にもおります当時の外務委員戸叶里子委員から、一体世界の平和を脅かす国はどこか、どこと考えて調印したのですか。しかも岡崎外務大臣は、このときの国会の答弁は、私はMSA協定については八カ月アメリカ側と交渉をしたのです、こう言っています。八カ月も長期にわたって交渉をしたその結果、この附属書Dの「世界平和の維持を脅かす国との貿易を統制する」という、世界の平和を脅かす国とはどこと考えて調印をしたのかというのに、岡崎外務大臣は「現在侵略国として国連総会で決議されておるのは中共であります。」こう言っている。ですから、私がここでお尋ねをしたいことは、われわれは、中共、中華人民共和国との間に日本政府がこれと友好関係を結び、国交回復をし、そして貿易が再開されることが望ましい、私たちはそういう観点でお聞きしているわけです。ですから、総理大臣から、この第一条後段の、他の安全保障条約にないこの項について、「他の区平和愛好国」というこの中に中共が入っている、こう御答弁いただけば、それでけっこうなんです。そのことを聞いているんです。ほかのことを聞いているのではない、中共は平和愛好国かどうかと聞いておる。
  176. 岸信介

    岸国務大臣 この安保条約一条の後段の問題は、言うまでもなく、抽象的に書いてあるのでありまして、どこの国が入るとか、入らないとかいうことを一々きめるということじゃなしに、いやしくも、私が先ほど申し上げたように、国連に加盟している国は、いずれも国連憲章に従って平和を愛好している国である、それが共産主義国であろうが、自由主義国であろうが、私は同様に考えるべきものである、こう出し上げておるのであります。問題が中共という問題になりますと、このMSA協定を結びましたときに、今の附属書のD項でありますか、当時の岡崎外相が答弁をしたことは、その当時の事情からいうと、私はそういうふうに考えざるを得ない状態であったと思います。従って、中共に対しての輸出の制限というものも、非常に厳格に協定ができておったようでありますが、その後ずっと緩和されております。国際の情勢も変わってきております。形式的には、なお国連のその決議は残っておりますから、直ちにその決議は無効であるとかいうことを、国連加盟国として、決議が取り消されない以上は言うわけにはいかぬと思いますが、ただその決議だけをたてに、中共の性格を——その当時は現実に朝鮮問題等がございましたから、そういう答弁をいたしたと思いますが、今日の状態において、ただその決議が残っているというだけの理由をもって、中共は平和を愛好する国でないというふうに規定することは、私は適当でなかろう、かように思います。
  177. 横路節雄

    ○横路委員 総理大臣は、今国連に加盟している国と協力をして、国際連合の強化に努めて、国際の平和、安全に努力するのだと言っているが、そうすると、総理大臣のお考えでは、国連に加盟している国は平和愛好国である、こういうことになりますか。この点はどうなんですか。平和愛好国というのは、一体どういうお考えでおやりになったのか。国連に加入している国は平和愛好国である。だから、国連に加入している国と協力してやるというならば、それでも話がわかります。一体ここに載せた平和愛好国というのは、どういうことなんです。総理大臣にお尋ねします。これは世界に類例のない第一条後段だと言う。世界に類例のないというのは、よほど確信を持ってここに挿入されたものだと思う。どういう意味なんです。
  178. 岸信介

    岸国務大臣 国連憲章の四条の一ですか、これを見ましても、国連にいやしくも加盟を認めるという場合においては、その国が、この第四条の一に書いてあるような性格を持っておる国だと認めて、加盟を認めるということになると思います。従って、ここにも、すべての平和愛好国に対して開放されているという意味からいって、これに加盟している国は、私はそう考えていい、こう思います。
  179. 横路節雄

    ○横路委員 今総理大臣が指摘されたのは、国連憲章の第四条、その第一項に、「国際連合における加盟国の地位は、この憲章に掲げる義務を受諾し、且つ、この機構によってこの義務を履行する能力及び意思があると認められる他のすべての平和愛好国に開放されている。」ですから、今総理大臣から、平和愛好国とは国連加盟の国である、そうすると、総理大臣、国連に加盟していない国はどうなんですか。中共は国連に加盟してないわけです。これはどうなんでしょう。
  180. 岸信介

    岸国務大臣 加盟してない国か、すべて平和愛好国でないと私は考えておりません。加盟しておらない国でありましても、平和を愛好しておる国というものも私はある、かように考えております。
  181. 横路節雄

    ○横路委員 そこで重ねてお尋ねしますが、第一条後段の「締約国は、他の平和愛好国と協同して、」ということ、国連憲章とは違うわけです。この条約の第一条後段に盛っているこの平和愛好国の中には、中共は入っていないのですね。
  182. 岸信介

    岸国務大臣 この安保条約の方は、一条のなには、国連の機能を強化するということをうたっているわけでありまして、国連に加盟してない国であるというと、これは平和愛好国であってもこの条文には当たらぬ、こう思います。
  183. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、総理大臣、私は一歩前進して話がわかったわけです。それはどういうように私は了解できたかというと、第一条後段にいう「締約国は、他の平和愛好国と協同して、」という平和愛好国の中には、中共は入らない、こういうことですね。その点だけ確認しておきたいのです。
  184. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この末段にありますのは、御承知の通り、「国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。」ということでありまして、他面、今総理も言われましたように、国連憲章第四条には、「平和愛好国に開放されている。」ということが規定されておるのでありまして、その意味におきまして、国連を強化するという場合において、国連の憲章の文字と、そうしてその趣旨とを取り入れたものでございます。
  185. 横路節雄

    ○横路委員 総理大臣、重ねて私お尋ねしたいのです。実は私がお尋ねしているのは、わざわざ藤山外務大臣が愛知委員質問に答えて、この第一条後段の他の平和愛好国と協同して、国際連合を強化するんだということは、世界じゅうのあらゆる安全保障条約相互防衛条約にはないんだ、これがこの条約の特質なんだ、こう言っていらっしゃるから、そこで私は聞いているのです。「他の平和愛好国と協同して、」というのは、重ねて私はお尋ねをしたいのですが、ここの平和愛好国——中共が平和愛好国かどうかということの議論は別にして、第一条後段にいうこの平和愛好国の中には、中共は入らないのですねと聞いている。その通りなら、その通りと答えていただけばけっこうなんですよ。何も私はほかのことを聞いているのでもない。どちらですか。入るのか入らないのか、聞いているのです。入るか入らないか、どっちかしかないのですから。
  186. 岸信介

    岸国務大臣 中共と国連との関係は、ちょっとほかの入るとか入らぬとかいう問題じゃなしに、中国を代表する資格の問題として論議されておることは、横路君がよく御承知の通りだと思います。そういう意味において、中国というものが中共によって代表権を持つか、あるいは国民政府によって代表権を持つかということが、国連の問題としては論議されておるわけであります。個々の締約国は、向こうのなには、要するに国連の機能を強化することに協同してやる、こう言っているのですから、加盟国でなければこれに該当しない、こう解釈すべきと思います。それで中共の問題は、中国としては、いわゆる代表権を国府に持たしておくことが適当であるかどうかは大いに議論のあることでありましょうが、中共という政府か国連において代表権を持っておりませんから、そういう意味においては、ここにおいてのいわゆる平和愛好国という観念には入らない、こういうふうに考えております。
  187. 横路節雄

    ○横路委員 やっとこれで総理から明確に、第一条後段の「締約国は、他の平和愛好国と協同して、」という、この平和愛好国の中には、中華人民共和国は入らない、こういうことが明瞭になった。  そこで、もう一つお尋ねしたいことは、中共は平和愛好国かどうかということについては、お答えいただけますか。中共については、平和愛好国であるということについてお答えをいただけるかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  188. 岸信介

    岸国務大臣 これは先ほどもお答え申し上げましたように、私は、さっき援用されました昭和二十九年のMSA協定を結んだ時代の中共の国際的立場と、今日は変わっておると思います。中共自身を平和愛好国でないというふうに見ることは、今日の状態においては適当でなかろう、こういうふうに考えます。
  189. 横路節雄

    ○横路委員 私たち国会議員の手元に、在日米国大使館文化交換局というのから、毎日のように実は情報が出されているわけです。一九六〇年二月二十三日に、アメリカのパーソンズ国務次官補の演説全文が、私たちの手元に出ているわけです。二月十九日、ウィスコンシン州においてこれが弁護士会で演説された。これは極東問題担当、米国の国務次官補であります。これはアメリカ大使館の文化交換局から出されているものですから、私も貴重なものとしていただいて、よくこれを見ているわけですが、この中にこういうようになっているわけです。まず第一に、われわれは、共産主義を阻止するために、同地域内に基地と海軍力を保持して、あらゆる事態に応じて直ちに出動できるようにしている。これが第一。第二番目に、安全を強化するため、地域諸国の兵力に対し、米軍事援助計画を通じて援助を提供し、これらの国が、国内の破壊活動と国外からの干渉に抵抗できるように支援している。さらにまた、われわれは、日本韓国、フィリピン、中華民国など、これらの国の一部と双務的相互防衛条約を結んでいる。そして、その全文には、東アジア、東南アジアの自由諸国は、すべて大陸部の中共の周辺に散在する島々が半島なので、しかも中共は、これらの諸国を支配し、共産化しようとねらっているのである。そうして、アメリカ政府はなぜ集団体制を整えるようになったかと言えば、いわれなき中共の韓国侵略を持ってからのことである。また、国民政府相互防衛条約を結んだのも、一九五四年に中共が金門島を攻撃してからのことである。さらに、SEATOについては、これもインドシナの問題が起きてから、共産軍が全東南アジアを席巻する危険が生じたので、初めて作られたのであるというように、このパーソンズという極東問題担当のアメリカの国務次官補の演説全文は、中共は侵略国である、こういう規定をしている。実に激しい言葉で言っているわけです。先ほど総理大臣外務大臣も、国連総会において中共は侵略国と規定したときから見れば、世界情勢も緩和しているから、今総理からのお言葉では、平和愛好国でないというのは間違いである、こういうようにお話しになったか、このパーソンズというアメリカの国務次官補の演説全文は、これはもうアメリカ側の解釈だ、中共は侵略国だ、だから軍事同盟を結んでいるのだ、だからMSA協定その他によって、いわゆる援助計画をやっているのだ、こういうふうになっているのですが、これは、アメリカの中共に対する見方は誤りですね。岸総理は、アイゼンハワー大統領との間に中共問題について十分討議をされて、共同声明の中に言われているのですから、私はお尋ねしているのです。だから私が総理にお尋ねしたいのは、先ほどから言われているように、国連総会の決議もあり、それも生きているが、世界情勢は変化している。だから、平和愛好国でないと中共をきめつけるのは、おかしいというか、間違いである。それであるならば、今極東問題担当のパーソンズという国務次官補関が、全文をあげて中共に対する侵略を非難している。それならばこそ、相互防衛条約が必要なんだと力説している、これは間違いなんですね。アメリカ考えは間違いなんでしょう。その点をお尋ねしているのです。
  190. 岸信介

    岸国務大臣 中共に対する見解につきましては、アメリカ内にもいろいろな意見があるようであります。私ども考えていることとアメリカ政府考えていることとは、完全に認識を一にしているとは、私は申し上げかねます。しかしながら、アメリカのパーソンズがどう言ったからといって、これをもって直ちにわれわれが、それが間違っているとか、適当であるとか言うべき筋ではないと私は考えます。われわれは、われわれとして、先ほど申し上げたように、中共はことに長い歴史的関係もあり、また、地理的にも近い国でありまして、これがかつて朝鮮事変のときに、国連において侵略国として規定された。しかし、その後朝鮮問題は一応休戦状態に入っておりまして、当時の事情とは変わっている。中共が、再び国連からそういうふうな非難を受けるような事態を繰り返すとも、私は考えておりません。また、そういうことのないことを願っておりまして、そういう意味において、朝鮮事変が起こった当時の中共に対する国連の決議というものは、形式的には生きている。これをただたてにとって、中共が侵略国であり、平和を愛好しない国である、こう規定することは、今日の国際情勢の全般から見ても適当でない、かように考えます。
  191. 横路節雄

    ○横路委員 総理にお尋ねしたいのですが、中共が平和愛好国ではない。言いかえたら、世界の平和を脅かす国ではない、しかし、平和愛好国だとは言えない。もう一度申し上げますよ。総理のお言葉は、中共は平和愛好国だとは言えない、しかし、平和愛好国でないとは言えない、こういうことですね。そういうことでしょう。総理、いいですか。ここは非常に重要なんです。平和愛好国の中には入らないが、平和愛好国でないとは言えない。それでは、これは何なんですかね。その点総理にお尋ねします。
  192. 岸信介

    岸国務大臣 私は、国連のメンバーは、いわゆる国連憲章による平和愛好国であり、また、この安保条約の一条によって、平和愛好国と協力して、国連の機能を強化することに努力する、こういっておる平和愛好国という意味からいうと、国連に今日加盟もいたしておりませんし、また、国連の機能を強化することに直接代表権を持っておらない中共政府として、協力するというわけにはいかないという意味において、そこに入らない、こういっているわけでございます。しかし、中共をもってそれじゃ侵略国と、こういうかというと、それはかつてそういう決議をされ、また、その決議は生きておるけれども、その当時の事情と今日とは変わっておるから、その決議を形式的に取り上げて、同じように規定するということは適当でなかろう、こういうことを申しております。
  193. 横路節雄

    ○横路委員 それでは総理にお尋ねします。そうすると、国連に加盟すれば、中共は文字通り平和愛好国ですね。この点はどうですか。
  194. 岸信介

    岸国務大臣 国連がこれを認めるのには、今さっきあげましたような国連憲章規定になっておりまして、中共が国連憲章に従って行動するという権利、義務を持つわけでありますから、これは当然あらゆる面においてわれわれが言うところの平和愛好国と考えてよろしい、こう思います。
  195. 横路節雄

    ○横路委員 それでは総理大臣にお尋ねをします。さきの朝鮮事変における国連総会で、中共は侵略国であると規定されたが、形式的にはその決議は生きているけれども、しかし、今国際情勢の変化で、そうでない。ですから、いわゆる侵略国であると規定するのは違う。従って、国連に加盟すれば、これは当然第四条にいう、すべての平和愛好国に開放される。ですから、国連に加入されれば、名実ともにこれは平和愛好国であり、しかもこの第一条後段の「他の平和愛好国と協同して、」という、この中に入ってくる。そうですね。今私たちが非常にこの問題を議論して心配しているのはこの条約で「他の平和愛好国と協同して、」という中に、中共は入っていないのだ。中共が入っていないということは、中共は平和愛好国の外にほっぽり出されている。しかし、国連に加入すれば、第四条で明らかに平和愛好国になり、しかも、この条約にいう平和愛好国に入るわけです。  そこで、私は総理にお尋ねをしたい。日本は、国際情勢の変化で、侵略国だとの規定は形式的にはあるが、違うという。しかし、アメリカの方は——総理はどうお考えになるか。これは何も他の情報ではない。アメリカ大使館から国会議員に毎日配付されているものです。この中でパーソンズ極東問題担当の国務次官補は、激しい言葉で、中共に対する侵略の非難抗議をしている。そこで、先ほど総理から、アメリカ考え日本考えとは幾分違うというお話もあったが、それであるならば、私は、この際、この条約に対しては、大部分の国民に——この第一条後段にいう平和愛好国の中には、中共は入っていないということが明らかになった。そうすれば、いろいろ疑惑を生むから、来たるべき国連総会において、日本から積極的に——中共は事情が変わって、形式的に侵略国であるというけれども、現実は違うのだから、それであるならば、当然国連に加盟することに日本が積極的になって、名実ともに中共が平和愛好国としての立場を得、そうしてこの第一条後段にいう平和愛好国の中にきちっと位置を占めて、相ともに提携して国連の強化をするということが、総理がたびたび言うように、話し合いによって平和的に解決する一番根本だと思う。ところが、私が申し上げたいのは、総理とアイゼンハワー大統領との共同声明を読むと、中共問題については、アメリカが中共に対する方針を変えたときには、事前に通告をする、こういうようにわれわれは受け取るのです。アメリカが中共に対して方針を変えたときに、事前に通告するということであって、中共の国連加盟その他について日本が自主的に判断できるというようなことにはなっていないように私たちは印象を受けている。ですから、来たるべき国連総会において、総理は積極的に中共に対する国連加盟を主張することが——この条約で、国際連合の憲章に基づいて話し合いで平和的に解決をするというならば、そのことが、岸内閣のとるべき態度だと私は思うのです。いかがですか。
  196. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中共の加盟問題とおっしゃいますけれども、今日問題になっておりますのは、中国の代表権の問題でございまして、この問題は非常に複雑な問題でございます。単純に中共を加盟させるということは、二つの中国を認めるということにもなるわけであります。従いまして、現在の段階において、国連では代表権の問題としてこれが扱われておるわけであります。ですから、その問題は、非常に困難な国際社会の中における一つの問題でございます。従って、ただ単純に加盟を推進するというわけには参らないと思います。
  197. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣お答えになったから、外務大臣にお尋ねしたい。それじゃ、外務大臣は、中共の国連加盟については将来ともに座して待つというのですか。現に世界の国は動いているじゃありませんか。岸内閣は座して待つというのか。いや、そうではない、具体的にこういう手はずを整えて、こういう順序に従って、自分たちとしては、中共に国連加盟という立場が与えられるようにするという、何か積極的な方式がなければならないと私は思うが、いや、そういうものはないのだ、ただ座して世界の情勢の変化に待つのだ、こういうことになるのですか。その点は、どうなんです。
  198. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は、何も座して待つということを申し上げているのではない。岸内閣がいろいろな問題において静観主義をとるといっておりましても、静観ということが、必ずしもじっとして何もしないという意味ではございません。総理は、何か静中動ありという比喩を言われましたけれども、おのずから国際情勢の中でわれわれが考えていく問題を考えて、そうして国際社会の中において、必ずしも全部が一致した意見というわけには参りません。従って、お互いにそれらの問題について討議する。あるいはこういうような分裂国家と申しますか、あるいは二つ政権のあります国に対しては、それぞれの政権等の立場もございます。それらのものも見ながら、われわれは考えていくというのでありまして、ただ座して待つということではございません。
  199. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣に重ねてお尋ねしますが、国連総会において中共の国連加盟が他の国から提案されたときは、アメリカ側と共同歩調をとるのか、それともいろいろ考えて棄権をするのか。今のところは賛成ということはないようですから、アメリカと共同歩調をとるという基本方針なのか、それとも世界情勢がなかなか複雑多岐だから、自分たちは棄権をするということなのか、その点はどうなんですか。
  200. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本が国連に加盟いたしまして、日本が国連のメンバーとなっております以上、むろん、日本自身が判断をして、その場合において、どこの国の提案に賛成するか、どこの国の提案に反対するか、それは日本自身がきめていく問題でございます。
  201. 横路節雄

    ○横路委員 総理にお尋ねをしたいのです。私先ほど申し上げましたように、総理の中共に対するお考えは私もよくわかりました。しかし、アメリカ側は、非常に激しい言葉で中共の侵略行為を非難しているわけです。この条約は、日本アメリカと両方になっているわけです。日米両方の「締約国は、他の平和愛好国と協同して、」となっている。その場合に、なるほど岸総理は中共は侵略国ではない、しかしアメリカは中共は侵略国である、こういうことになったら、この条約についての基本的な考え方が違うことになりませんか。その点はどうなんですか。なるほど、この平和愛好国との協同ということの中に、中共が入ってないことは明らかになったが、先ほど総理からいろいろお話があったが、アメリカは中共を侵略国であると見て、なお国連軍を駐屯させている。だからそういう意味で、アメリカとの間に——アメリカは中共は侵略国だ、日本は侵略国でないと規定されても、最後にこの条約が発効される場合における中共に対する基本的な考えが、違ってくると大へんですから、その点は一体、岸総理考えはわかったが、アメリカとの間にどういう御相談をなさったのか、一つお聞かせ願いたい。
  202. 岸信介

    岸国務大臣 この条約の問題として今お話しになりましたが、中共に対する見解が日米必ずしも一致してないという点において、別に支障を来たすようなことはない。先ほども申しておりますように、韓国に国連軍が駐在している、これは事実でございます。また、国連の決議が取り消されない以上は、そういうなんであることは事実であります。しかし、現実に国連軍がおるからといって、そこで武力行動が直ちになされておるわけでもございませんし、その点においてはなにはありません。また、将来どこの国からでも——かりに私どもが従来平和愛好国だと考えておる国が、もしも日本に対して武力攻撃を加えるようなことがあれば、それは日本を防衛する意味からいって、日米が共同してその武力侵略を排撃するということにつきましては、ちっとも差しつかえないことでありまして、そういう具体的な問題、条約そのものについては、この問題が、御心配になるような非常に重大な問題を生ずるようなことはないと考えております。
  203. 横路節雄

    ○横路委員 しかし、総理、それは重大でないでしょうか。中華人民共和国に対して、日本は、これは侵略国ではない、こういうように規定をしている。しかしアメリカが、中共は侵略国なんだ、それなればこそ、アジアの諸国に対して脅威を与えているんだ、こういうように考えておる。私は、意見が合わないということは重大だと思うのは、第六条でも、第四条でも、前文でもそうですが、極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するために、アメリカ合衆国軍隊がいるのじゃありませんか。アメリカ合衆国軍隊は、中共が侵略の国なんだ、中共は侵略をもって東南アジアその他を脅かしているんだ、こういう基本的な考え方に立って、日本に駐屯をしている。しかし、日本は、中共は侵略国でないのだ、こういう考え方で、アメリカ軍隊を駐屯さしている。これは大へんな問題だと思う。そうじゃありませんか。その点の意見の不一致のまま、日本は、中共は侵略国でないと規定しても、アメリカは、中共は侵略国だし、侵略の軍隊を持って東南アジアその他を脅かさんとしているのだ、そういう意図を持って軍隊が駐屯している。日本はそうでないというても、そういう基本的な違いでアメリカ軍隊を駐屯さして、何でこの安保条約にいう、世界の平和、極東の平和と安全のために寄与できますか。
  204. 岸信介

    岸国務大臣 この安保条約は、御承知のように、全体が防衛的なものでありまして、ここに侵略が起こって初めて発動するのであります。従って、今侵略国だとわれわれが考えていない国が、現実に侵略してくれば、これに対して対抗する措置をとることは当然であります。また、侵略国だと考えておる国が、平和愛好国であって、何ら事実上侵略をしてこなければ、何らこれが発動する余地はないのでございますから、そのことはちっとも御心配になることは要りません。
  205. 横路節雄

    ○横路委員 いや、総理、それは違いませんか。たとえば、ここに仲のいい友だちが二人いるわけです。こっちは力が強いわけですね。これが第三者に対して、あいつは乱暴者なんだ、あれは侵略者なんだ、あれをやっつけようじゃないかと思っている。向こうはそうじゃないのだと言っても、こちらの方が力が強いのですから、そういう別別な意図を持った強大なアメリカ軍隊日本に駐屯させてやるということは、基本的に違うじゃありませんか。
  206. 岸信介

    岸国務大臣 今のお言葉にもありましたように、これは例でありますが、あいつをやっつけるという意味であるならば、違うことは御承知の通りでありますが、この安保条約は、そういうものじゃなしに、侵略がなければ動かない、侵略が起こったときに、初めてこれに対する防衛的な行動が出るのです。従って、その侵略がどこからきても、それは当然この条約考えなければならぬし、侵略がない限りにおいては、かりにある国を好かないとか、ある国に対して疑惑を持っておるとかいったって、この安保条約は何らの効果を持たないのでありますから、現実の問題として、防衛的なものであって、攻撃的なものじゃありませんので、その点はちっとも御心配要りません。
  207. 横路節雄

    ○横路委員 いや、総理、アメリカ軍隊は、中共は侵略の国であり、中共の軍隊は侵略の軍隊であるという規定で駐屯している。そういうことになれば、二月二十六日に総理が愛知委員にここで答弁をされて、私たち委員全部に書面で配付した中に、何とあるのです。アメリカ軍の行動については、一つは、今総理が言ったような、武力攻撃が発生した場合は、アメリカ軍は行動する、もう一つは、この極東の地域の周辺に起こった事態が脅威を与えるような場合においても、アメリカ軍は武力行動をやるのですよ。いいですか。武力行動というのは、総理はすぐ戦闘作戦行動のように言うけれども、そうじゃない。アメリカ軍隊が、中共は侵略の国だとか侵略の軍隊だとか規定してなければ別です。しかし、初めから侵略の国だと規定をしていれば、その極東の地域の周辺に起きた事態が脅威を与えるような場合には、行動を起こすじゃありませんか。行動とは、総理、いろいろ言われているけれども武力行動なんですよ。ですから、私は、そういう意味で非常に重大だと思うわけです。  私は岡田君の質問に関連したのですから、外務大臣一つお尋ねしたい。先ほどから言われていることで、私たちは岸内閣の中共に対する考えはわかったが、そうすれば、当然MSA協定の附属書Dは全然効力を発生しない。これは当然私は取り消しをさるべきだと思う。そうじゃありませんか。もう中共は世界の平和を脅かす国ではない。しかも、貿易の統制についても、事実上ないのだと言っている。そうなれば、MSA協定の附属書Dはこれを全面的に取り消されて、中国との間に全面的な貿易をおやりになったらどうですか。なぜこれは残しておくのです。
  208. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知の通り、この附属書は抽象的なことを規定しているのでございまして、当時の事情からすれば、岡崎外務大臣が当時中共であると言われた。しかし、この条文があったからといって、どこの国を始終相手にするというわけではない、そういう事態が起これば、この抽象的な規定が発動するということでありまして、何も取り消す必要はございません。
  209. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣にお尋ねしますが、日本政府としては、中共と全面的に貿易をやる、こういう意味ですね。今までは民間団体ですよ。あなたは、先ほどからの話で、チンコムについても制限は緩和されておる、中共は侵略国でない、こういうようにお話しなさるのだから、これは抽象的なものなんだというのであるならば、当然日本政府として、中共との間に全面的に貿易をやるべきだ。その点についてお答えになって下さい。私の聞いておるのは、日本政府としてはですよ。
  210. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日でも、日本政府が中共との貿易について関心を持っていることは、御承知の通りでございます。ただ、日本は今日中共をまた承認いたしておりません。そういう政治的な状況下におきまして、お話のような、いわゆる全面的ということは、困難であろうかとも思いますけれども、われわれとしては、貿易を再開するということについては、必ずしも反対いたしておりません。ただ、それが政治問題とからみ、残念ながら国旗問題等もございまして、今日そういう状況にないということは、過去の事実から見てもおわかりいただけると思います。
  211. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣にもう一度お尋ねしたい。私聞いているのは、日本国政府との間に中共と貿易をおやりになりますか、どうですか。私が聞いているのは、あなたの方の考えからいけば、私は、日本国政府としては、中共との間には貿易はできると思うのですが、その点はどうなんです。日本国政府としてはできないんだ、しかし、民間が勝手にやることはいいでしょう、こういうのでしょうか。私は日本国政府としてやるべきだと思う。このことを聞いている。
  212. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現実の問題として、こうした問題を解決いたしますのには、おのずから順序もございますし、いわゆる積み上げ方式というものもございます。従いまして、MSA協定の附属書が抽象的だからどうのこうのということではなく、現実に両国間の経済関係というものを開いて参りますためには、おのずから順序、方法もございますし、また、そのときの国際間の問題をも考えて参らなければならぬのでありまして、われわれとして、逐次貿易が育っていくという方向に今まで岸内閣としてやってきたことは、御承知の通りでございます。それがたまたま政治的な諸般の問題のために、ストップしたことは残念であるということは、総理もたびたび言われている通りでございます。
  213. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣、私が一つ聞いているのは、日本国政府としてやるのかどうかということです。それが今できないならできない——私はやるべきだと思うが、その点を聞いている。
  214. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 直ちに日本国政府がやるということは、困難だと思います。しかしながら、われわれは問題によりましては、昨年の国会でも申し上げましたように、大使級会談等もやっても差しつかえないということを、考えておるわけでございまして、今直ちに全面的に両国の貿易を国同士で、政府同士でもって再開することは、困難たと思います。
  215. 横路節雄

    ○横路委員 総理大臣に、最後に、私関連ですからこれで終わりますが、日本アメリカとが、中共に対するそれぞれの考え方が、私は根本的に違うと思う。中共は侵略国でないという岸内閣の考え方、中共は侵略国であるというアメリカ考え方、その中共は侵略国であるという考え方に立ってアメリカ軍隊日本に駐屯をする。そのアメリカが、極東の平和と安全のためには行動するわけです。その行動する場合の事前協議については、きのう飛鳥田委員、石橋委員、それから私たちを通じて、第五空軍、第七艦隊等については、事前協議はほとんど抜け穴になっている。ですから、そういう意味で、根本的に中共に対する考え方が違う。中共は侵略国であるという規定に立っているアメリカ軍隊日本に駐屯することは——しかも、事前協議は抜け穴になっている。この点を考えるならば、決してアメリカ軍隊の駐屯は、極東における国際の平和と安全には寄与しないと私は思うのです。だから、岸内閣の考え方が、中共は侵略国でないというならば、当然積極的にアメリカを説いて、来たるべき国連総会で中共の国連加盟をして、名実ともに平和愛好国としての立場が与えられてこなければ、全然異質的なものか、侵略国であるという規定に立っているアメリカ軍隊が、日本に駐屯して、事前協議の抜け穴で出動することは、いたずらに日本が戦争に巻き込まれる以外にないと私は思います。何かありますか。
  216. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来繰り返して申しておるように、この安保条約は、各国が腹の底でどういうことを考えているかは別として、現実に日本に対して武力攻撃を加えるとか、あるいは極東に対して、その国際的平和と安全に対して脅威を与えたり、あるいは現実にこれに対して侵略が行なわれたという場合に、この条約は発動するのでありまして、それ以外にはこれが発動し、行動されるということはないのでございます。私は、中共の性格につきましては、先ほど来申した通り考えておりますが、そうだからといって、中共のやる行為は、どんな行為でもこれは平和愛好の行為だというわけには参らない。どんなに平和愛好国として国際連合に入っておる国でも、現実に極東の平和を害したり、あるいは日本に対して武力攻撃を加えるものがあるとするならば、これに対してこの安保条約は発動することは当然であります。そのことは、決して今中共に対してアメリカがどう思っているとか、日本がどう思っているとかいうことによって、この安保条約適用上差異を生ずるものではございませんで、現実にそういう武力攻撃なり侵略なり、あるいは現実に脅威が与えられたときにおいて、初めて問題になるわけでございますから、そういうことについては、先ほど来の横路委員の御心配は、私は全然ない、かように考えます。
  217. 横路節雄

    ○横路委員 総理大臣、私はきょうは関連で、時間が少し長くなりましたから、これ以上議論しませんが、しかし、そういうことになれば、現行安保条約だって、何も国連憲章に基づいていませんじゃないですか。三十二年の九月に、初めて共同声明以降に、あの安保条約国連憲章に基づくことになったので、現行安保条約そのものは、何ら国連憲章に基づいていない。国連憲章に基づかないということは、現行の安保条約においては、武力攻撃が発生しなくてもアメリカ軍隊出動できるようになっておったじゃありませんか。だからイーデンの顧回録においても——私が言っているのは、アメリカ自体においても必ずしも国連憲章に基づかないで行動する場合もあるのだから、それは中共だってそういう場合があり得るかもしれないが、そういう意味では、アメリカだって同じですよ。だから私が聞いているのは、そういうことは、中共を国連に加入さして、そして第四条にいう、お互いに平和愛好国に開放して、そして本条約第一条後段にいう、「締約国は、他の平和愛好国と協同して、」という中に中共が入るように努力することが、私は岸内閣の責務だ、そのことが戦争を避けるもとだと思って申し上げたのですが、これはまた重ねて私の番のときに質問いたしましょう。
  218. 岡田春夫

    岡田委員 新安保条約の持っている侵略性について、具体的に私は話を進めたいと思うのですが、従いまして、私はこのあとしばらく質問を展開いたして参ります場合において、政治論条約論、いわゆる法律解釈の問題、この点をはっきり区別をして論議を進めて参りたいと思います。従いまして、法律論については、皆さんから一つ法律論としての御答弁を願いたい。そうでないと、政治論だけで御答弁になりますと、非常に問題があいまいになって参りますので、この点は一つその前提にお立ちいただくようにお願いいたします。  そこで、今の横路質問に関連して、非常に重要な点があるわけであります。アメリカ国連憲章規定に従わないで軍事行動か何かやり得るかのような御答弁があったように思うのでありますが、そういう点はありますのですか、ないのですか。
  219. 岸信介

    岸国務大臣 そんなことはございませんし、また、そんな意味答弁したことは私ないと思います。
  220. 岡田春夫

    岡田委員 そうだろうと思うのでありますが、軍事行動をおよそとる場合に、国連加盟国の一国であるアメリカとしては、憲章規定する行動以外の軍事行動は絶対にとり得ない、もしとった場合においては、これは憲章違反である、この点ははっきりしておきたいと思いますが、いかがでございますか。
  221. 岸信介

    岸国務大臣 その通りであります。
  222. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、先ほど高橋さんがお話しになた点にちょっと関連をいたしておきますが、国連憲章規定する軍事行動、加盟国が許されている軍事行動というものは、どのような行動がございますか。これは憲章の上での条章を具体的に明らかにして御説明を願いたいと思います。
  223. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの点は、憲章の第二条四項でございますが、これが、いかなる国に対しても武力の行使と武力の威嚇を禁止いたしております。そこで、この禁止を解除する、違法性の阻却と申しますか、これをこの場合に適法に武力を行使していいという場合は、五十一条の武力攻撃が起きました場合の個別的または集団的自衛権の場合でございます。それから五十二条の地域的取りきめの場合、これが軍事行動と申しますか、武力攻撃に対抗しまして、そしてこの武力を行使するということが、適法に行なわれることが規定されておるのでございます。
  224. 岡田春夫

    岡田委員 今二つお述べになりましたが、まだあると思うのであります。第四十三条の特別協定に基づく軍事行動の場合、それから五十三条における旧敵国に対する軍事行動、大体大まかに言いますならば、この四つがあるわけなんで、これは私の方から補足をいたしておきます。  そこで、はっきりいたしておきたいのは、先ほどお話しのように、総理大臣としては、加盟国であるアメリカは、憲章に反する軍事行動はとり得ない、この点は非常に明快にお答えになったのでありますが、それにも関連をいたしますし、先ほどの韓国京城出動の問題にも関係するわけでありますが、これはあとの部分で実は伺って参ります。それよりも、概論的な点で、この新安保条約憲章の精神に完全に合致しているということは、再三答弁で言われておられますが、この点については、総理はもちろん完全に合致しているという確信をお持ちなんでございましょうか。その点をあらためて念を押しておきたいと思うのであります。
  225. 岸信介

    岸国務大臣 その通りに信じております。
  226. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、この新安保条約では、国連憲章の条章の中で、具体的に憲章の何条と何条が適用されることになっていますか。憲章規定は新安保条約の中に大体九カ所出ておりますが、お気づきになりました点だけでもけっこうでありますが、高橋さんに、憲章の何条と何条の適用があるか、その点をお答え願いたいわけであります。
  227. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 何条と何条という具体的な点でございますが、もちろん、双方とも国連の加盟国でございますし、前文でも「国際連合憲章の目的及び原則に対する信念」云々とあります。また、第七条に「国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。」こういう規定がございますので、原則的には、もちろん当然のこととして、全部の国連憲章規定適用になる。その基礎の上に、それでは個々の条文につきまして、どれがどれだということになりますれば、第一条、これは国連憲章の第二条の三項、四項でございます。それから第五条、これは国連憲章の第五十一条でございます。それがおもな規定だと思います。
  228. 岡田春夫

    岡田委員 それから七条の場合は、優先の原則ですね。
  229. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 七条の場合は、国連憲章百三条でありますか、優先の規定がございます。
  230. 岡田春夫

    岡田委員 これは非常に重要ですから、あらためて念を押しているわけなんですが、この条約の条文の中で、明文上明らかに憲章条項規定している点はもちろんのことですね。規定していない国連憲章の部分について、これはことさら何も明文上規定はないのですが、憲章条項はこの条約には適用されないということになりますか。今おあげになりました条項以外の憲章条項ですね。これは本条約の中に明文上明らかになっておらないけれども国連憲章条項は当然適用を受けるし、それを尊重しなければならない。これは加盟国として当然のことであると思うのですが、この点はどうでございますか。条約局長にお伺いいたします。
  231. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それは当然加盟国として順守しなければならないと思いますし、その意味適用がある、こういうように思います。
  232. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、憲章規定に反している条項がある、あるいは運用上反するという結果になるという場合においては、この条約条項の効力はどうなりますか。
  233. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 そのような規定はないと考えておりますが、もしそういう規定がございますれば、国連憲章規定の方が優先することは当然でございます。
  234. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、その点につきましては、日本のみならず、アメリカも拘束されると思いますが、この点はいかがでございますか。
  235. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 そうでございます。
  236. 岡田春夫

    岡田委員 具体的な点で伺って参りますが、私は侵略性の第一として取り上げたい問題は、今度の安保条約の中心的な条項というのは、大体一般に、第四条から第五条、第六条、この三つが最も中心的な条項であるといわれております。ところが、この三つの条項の中で特にわれわれが注目しなければならない点は、第五条の規定並びに第六条の交換公文に関する事項を除いて、それ以外のすべてについては、行動規定が全然規定されておらない。締約国、特にアメリカ行動が野放しになっている。いわばこの条約によって、アメリカ軍隊の軍事行動の自由が保障されているという点に、問題点がある。新安保条約が非常に危険な抜け穴があるといわれているのは、実はこの点なんです。この点に一つの大きな原因がある。アメリカとの共同責任をこの条約に基づいて日本が負わされて、そうしてアメリカの野放しになっている軍事行動に基づいて、日本の国が戦争の中に巻き込まれていくという心配を国民が持っているというのは、この規定に明文の規定がないというところに問題がある。こういう点において、この第四条、第五条、第六条に非常に重大な問題があると私は考えております。たとえば、具体的に申し上げてみましょう。これは藤山さんに特に伺っておきたいのでありますが、第四条においては、「締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。」随時協議をいたします。条約の実施の問題は除いて、後段の部分、「日本国の安全」、それから別に——「又は」というのですから、別にという意味です。「極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときは」、そのときは両国は協議しなければならない。ところが、協議しなければならないことになっているが、その協議の結果として起こり得べき行動について、なぜ条文上明文の規定を設けなかったか、ここに抜け穴があると私は考えるのだが、なぜここに明文上の行動規定をしなかったか、この理由をまず藤山さんに伺いたいと思います。
  237. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この点は、第一段に、随時に運営のために協議をする。第二段において、今お話のように、日本の安全もしくは極東の平和と安全が脅威を受けたような場合には協議をするということは、これは私ども当然だと思っております。協議をした結果というものは、国連憲章の精神によって判断していくわけでありまして、その問題が起こっております場合に、いろいろな場合がございましょう。従って、その国連憲章の精神に従って、われわれはどうしていくかということは、これは相談をしていくべきものだと思います。
  238. 岡田春夫

    岡田委員 今お話の点の御意見を伺っておると、加盟国が国連憲章の精神に従って行動することが規定されてある。従って、この第四条に関する限りにおいては、この条約に基づいて行動することの何らの拘束がないわけです。協議するということだけが両国間の義務であって、そのあとでアメリカがどのような行動をとろうと、先ほど横路君の御質問になったように、中国を侵略国と見て、この侵略国に対するいかなる行動をとろうと、この行動については完全に野放しになっている。条約上拘束を与えておらない、このように解してよろしゅうございますか。
  239. 林修三

    ○林(修)政府委員 ちょっとこの条文の御解釈がいかがかと思うわけでございます。この第四条は、御承知のように、いわゆる協議条項でございまして、お互いが協議をするということでございます。協議の結果両国がいかなる措置をとるかということは、これはそれぞれ国内法の問題もございますし、あるいは国連憲章その他の国際法に従ってやる。もちろん、二国間の条約は、二国がそれぞれいかなる権利を有し、義務を負うかということのみを規定するわけでございまして、それ以上に出まして、よその国のことに関して、たとえば日本アメリカに対して、アメリカ国連憲章上持ち得ない権利を与えるようなことは、日本にできるはずもございません。また、そういう規定をするはずもございません。第四条は、文字通り協議するということでございまして、あとの措置は、国内法または国際法にまかされておるわけであります。
  240. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、林さん、それはおかしいじゃありませんか。第五条には行動規定まで加えてありますね。日本に対する武力攻撃があった場合においては、これに対応してどのように行動するということが、条約上の義務として明らかに明文上の規定がある。ところが、第四条において、日本の平和に対する脅威、それから極東における国際の平和並びに安全の脅威の場合においては、協議をすることはできるけれども、それに対する行動規定というものが何らない。行動規定がないということは、野放しであるということを意味しているんじゃありませんか。どうなんですか。
  241. 林修三

    ○林(修)政府委員 第五条は、御承知の通り、この条約の中心的な問題でございまして、日本武力攻撃を受けた場合において、アメリカに集団的自衛権あるいは個別的自衛権の発動によって日本を守ってもらう、そういういわゆる条約上の義務を課するものでございます。これはこういう規定がなければ、アメリカにおいて日本を守る責任はないわけでございます。これが中心的な問題でございます。これはもちろん、国連憲章五十一条の範囲内においてこの規定がなされておるわけでございます。しかし、四条につきましては、協議の結果いかなる行動をとるかということを、お互いに権利義務として確認し合う必要がない。そこまでの必要を認めないので、お互いがそれぞれの国内法あるいは国際法規定によって、適当な措置をとる、こういうことでございまして、これを野放しにしたというお考えは、多少私は承服できません。要するに、法理的に申しまして、四条は、協議をすることがお互いの必要と認めて、権利義務として書いてある。それ以外のことについてお互いの国を約束するようなことをきめる必要がない、これはお互いの国内法あるいは国際法によって処置する、こういうことでございます。
  242. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、第四条に関する限りは、協議だけであって、その協議の結果行なわれるべき行動というものは、この条文の中に何ら規定はない。従って、国連憲章規定に従って行動する以外にはない。そこで、具体的に言うと、日本の国は、アメリカからこの協議に基づいて、何かこのようにしてくれという要請があっても、アメリカに対してこの条約上の義務を負わないでよろしい、そういうことになりますね。従って、第六条との関係も、第四条との関係においては出てこない、そういうことですね。それならそれではっきりして下さい。
  243. 林修三

    ○林(修)政府委員 ちょっと今の御質問の趣旨がよく理解できませんので、もう少し詳しく伺わないと、的確な御答弁ができないと思いますが、第四条は、今おっしゃいました通り、私が申しました通りに、要するに協議規定でございまして、協議の結果いかなる措置をとるかということは、それぞれの国内法あるいは国際法の問題でございます。それだけの問題でございまして、それ以上の、国内法上許されない行為、あるいは国際法上許されない行為を、積極的にここで何でもできるというふうに野放しにしたという意味では、もちろんないわけであります。第六条に関する点は、ちょっと私御質問の趣旨が理解できませんので、またあとで……。
  244. 岡田春夫

    岡田委員 これは総理にはっきりしておいていただいた方がいいと思うのです、重要な点ですから。行動の野放しになっておると私は解釈している。ということは、安全に脅威が起こったというときですね。日本の国の安全に脅威、あるいは極東に対する安全に脅威が起こったという場合に、四条では協議をするわけですね。協議をした結果、たとえば、具体的に言うと、何か脅威があった、岸さんと私が相談するということだけであって、そこで当然行なわれてくるのは、日本にあるアメリカの基地に対して装備を強化しなければいかぬとか、あるいは自衛隊の方では、国連憲章の精神に基づいてどんどん自衛隊の防衛体制を強化して下さいというようなことが、第六条の規定としてあるわけでしょう。協議の結果起こり得べき行動が出てくるわけでしょう。これが第六条の規定なんでしょう。そうじゃないんですか。
  245. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の条約の解釈の問題でありますが、第四条に基づく協議によりまして、お互いにこうしよう、ああしようということがかりに約束されましても、それがそれぞれの国内法あるいは国際法の範囲でできることは、これはもちろん、お互いにその約束に従ってやることは当然でございます。  それから第六条でございますが、第六条は、文字通り、お読み下さればわかる通りに、日本の安全に寄与し、あるいは極東における国際の平和と安全に寄与するために、日本に米国の軍隊を置くために日本施設区域を利用することを認める、こういうことだけでございまして、第四条の協議と第六条の規定そのものが、何らか関係があるようなお話でございますが、直接の関連は私はないように思いますが、御質問の趣旨がちょっと理解できないと先ほど申したのであります。
  246. 岡田春夫

    岡田委員 林さん、もう一度具体的に伺いましょう。第六条においては、日本が使用を許可した。簡単に言うと、日本にある米軍基地の供与が書かれておるわけですね。しかも、この供与については、御承知のように——簡単に新行政協定という言い方を使いましょう。新行政協定に基づいて、第六条で与えられた在日米軍基地が整備され、あるいは運用されるということが認められておるわけですね。そうでしょう。そうすると、これは条約解釈としても、第四条において、脅威が生じた、こういうことが現実にあった場合においては、この脅威の問題について協議をするということは当然起こりますね。これは第四条の規定であります。協議をしてこれに対する何らかの対応策を設けるということが必要になった場合には、第六条の規定を使わなければならなくなってきましょう。たとえば、基地内の整備をする、あるいはその他をやるというような場合には、当然第六条の条項適用されることになりませんか。適用されないのですか。この点はどうです。
  247. 林修三

    ○林(修)政府委員 だんたんわかって参りましたが、それは第四条の事態にもよります。あるいは第四条の協議の結果にもよると思います。あるいはその結果、在日米軍を増強する必要がある、そのために今の施設では足りない、多少施設を追加提供しなければいけないという問題が、一方に起こるかもしれません。あるいは在日米軍が逆に減るという場合もあるかもしれません。そのために、施設があいてくるという問題もございましょう。そのときに、第六条の——地位協定と呼びたいと思いますが、これに、今おっしゃるような意味で、場合によっては、たとえば施設区域の提供の仕方が変わるとか、そういうことにおいて多少の影響がくることは、考えられないことではありません。
  248. 岡田春夫

    岡田委員 その点が私は重要な点だと思う。要するに、第六条の施設協定が、協議の結果使われるということは明らかになる。当然そういうことはあり得るわけですね。そうでない場合もあるわけですよ。そうでない場合というものは、何によって規定されておるかというと、国連憲章によって、その制限内において行なわれるのだ、こういうわけですね。そういうことになりましょう。二つの国が協議して、協議の結果について起こり得べき行動というものは、何ら規定されておらないのであるから、第六条を運用する場合がある。それが一つ。その次は、加盟国がこの条約上の義務を負ったものではないが、国連加盟国の一員として、当然国連憲章規定以内において行動することが、自主的に許される、従って、この条約上拘束されたものではないのだ、こういうことで間違いないと思いますが、もう一度この点は総理大臣から伺っておきたいと思います。
  249. 岸信介

    岸国務大臣 私は、そういうふうに解釈していいと思います。
  250. 岡田春夫

    岡田委員 ここの点は非常に重要なんですから、あらためて念を押しておくんですが、というのは、行動規定が全然ないからです。そこに実は野放しになる危険性がある。そこで、第四条の協議の具体的な内容はどういうことを意味しますか。どういうことを協議するのですか。条約解釈の上において、随時協議ではなくて、後段における協議の場合には、具体的な内容はどういう意味を持っておりますか。この点、伺いたいと思います。
  251. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その起こりました事態によっていろいろな内容があると存じます。
  252. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、具体的な内容というものは明確ではないわけですね。しかし、問題は、協議が、日本の脅威か極東の脅威かに対する何か具体的な行動でなければならないわけでしょう。従って、そこに出てくるのは、先ほどから総理大臣からも御答弁があったように、第六条を適用して、施設区域内を整備するというようなことが起こるかもしれない、それ以外は野放し。私は野放しと言うのだが、国連憲章規定内において野放しの行動というものが起こり得る。これが協議の内容の具体的中心の問題になるわけではございませんか、どうですか。
  253. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連憲章のワク内においてやりますことは、野放しという意味じゃないのです。はっきり国連憲章の精神に沿って、その規定においてやるわけでございますから、野放しじゃないのであります。
  254. 岡田春夫

    岡田委員 私の言っているのは、この条約から見て野放しだということなんですよ。国連憲章の上では野放しでないかもしれないが、この条約の上では、明らかに野放しになっているじゃありませんか。そうでしょう。だから問題は、協議の……。     〔発言する者あり〕
  255. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  256. 岡田春夫

    岡田委員 当然そうでしょう、そうなりませんか。しかも、具体的に伺いますが、もう一歩掘り下げて伺いましょう。たとえば、第六条の規定が、行動の問題として適用されるとする場合においては、これは当然六条の問題が協議の内容になるでしょう、そうじゃないのですか。
  257. 林修三

    ○林(修)政府委員 この条約では野放しだとおっしゃいますが、そういうことはないわけでございまして、つまり、いろいろな国際法なり国内法が背後に重なり会っているわけでございます。従いまして、この条約としては、この条約上必要なことを規定すれば、それで必要にして十分である。それ以外に、たとえば、国連憲章上どういうことができる、できないということを、重ねてこの条約において規定する必要はないわけであります。この点は、第一条に国連憲章の精神をうたっておりますし、第七条において国連憲章を変更するものではないということをはっきりさしております。そういうことからも、これははっきりしておると思うのでございます。  それから第六条のことでございますが、施設協定自身をいじるという問題は、これは直接には起こらないと思いますが、先ほどおっしゃいましたように、たとえば、施設区域をふやす必要があるというような場合には、これは地位協定の方で、いわゆる合同委員会の制度がございます。合同委員会で協議してきめることでございます。
  258. 岡田春夫

    岡田委員 ですから、それは不可分にそういう形が起こってくるわけでしょう。場合によっては、そういうことが起こり得ないとあなたは断定できますか。それが一つ。  それから、私が野放しであると言っているのは、この条約の中で、どこに行動規定がありますか。第五条以外に、どこに行動規定がありますか。行動規定がなければ、野放しだと言われても仕方がないじゃありませんか。どこにありますか。
  259. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいま行動規定云々という問題がございますが、この条約におきまして、行動規定をわれわれとして定めなければならないという一番重大な必要性を感じているのは、第五条でございます。従いまして、その意味におきまして、第五条ではそのような規定をしているわけでございます。それから、ほかの方は野放しというわけではありません。これはただいまの国連憲章云々もございましたし、それから、いかなる行動をとるにせよ、第一条において、最も重大なところは規定しているわけであります。国際紛争を平和的手段によってやらなければならない、武力の威嚇、武力の行使はいかなる場合においても行なうことができない、これは最も重大な問題でございますから、これをここで規定しておる。再確認と申しますか、規定しているわけでございまして、決してそれは野放しであるというふうなことにはならないと考えております。
  260. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ伺いますが、林さんが再三私が聞いていくと不思議な顔をされるのは、第四条と六条の関係です。協議の結果、アメリカが何らか行動をとるという場合においては、アメリカ国連憲章の方針に従ってとるのじゃないんですよ。日本の国内において基地の増強をする、基地の減少をするという場合には、第六条の規定を使わないでアメリカ行動するわけにいきませんよ。そうでしょう。第六条は、基地を提供するということの条項規定でしょう。しかも、この規定に基づくところの増強、整備の問題は、施設協定の中にはっきり書いてあるでしょう。そうすれば、アメリカ国連憲章に基づいて、第四条の協議に基づいて、国連憲章の精神だけでやるのではなくて、第六条のいわゆる基地貸与の規定に基づいて、アメリカの基地、いわゆる在日米軍の基地を使う、こういうことになるじゃないですか。これは全然六条に関係がないなどという解釈は、どうしても出てこないでしょう。いわゆる協議の結果起こり得べき行動については、第六条をとるという場合もあり得る、こういうことははっきりしておいていただかなければならない。これは先ほど岸総理答弁されて、その通りだとお話になった。私もそうだと思うけれども、どうですか。
  261. 林修三

    ○林(修)政府委員 第四条の、協議の結果とる行動につきましては、野放しでないということは、先ほど来、私なり条約局長お答えで御理解いただいたと思います。  それから第六条との関連でございますが、第六条は、直接に行動規定ではございません。つまり、施設区域の使用を許可する、そして第二項におきまして、一つの地域協定を作るということを書いてある。その地域協定の具体的な条項に、協議の結果が絶対に影響がないかとおっしゃれば、先ほど申しました通りに、施設をふやさなければならないような場合が起これば、これは施設をふやすという意味において、協定二条の運用上、合同委員会にかけるというような問題が起こりましょう。しかし、また、現在の施設のみにおいて米軍は何も新しい施設等を必要としないということであれば、何も関係はないわけであります。第六条に基づく地位協定は、実は行動の問題については規定いたしておらないのでございます。よけいなことかもわかりませんが、現在の行政協定は、御承知の通り、二十四条で、いわゆる協議条項を書いておりますが、これは、今度大体において条約の方にあげておるわけであります。第四条にきておるわけであります。従いまして、新しい地位協定の方では、いわゆる施設区域の使用問題、あるいは米国の軍人、軍属、家族等の権利義務、こういうことが主体として規定されているわけであります。行動それ自身についての直接の規定はないと私は考えております。
  262. 岡田春夫

    岡田委員 行動それ自身の規定がないという解釈をされるのも、一つの解釈の仕方でしょう。従って、基地を提供したが、それでは基地におけるアメリカ軍隊行動というものは、交換公文の条項以外には、六条においても何ら規定していない。あなたの答弁から言えば、そういうことでしょう。そうしたら、アメリカ軍隊は、やはり国連憲章規定に基づく範囲内において、この規定で基地の中で活動できるという、いわゆる私の言う野放しということになるわけじゃありませんか。そうでしょう。  それじゃ逆に伺いましょう。第四条の規定に基づいて協議を行なう、その結果、第六条に基づく施設の増強その他を行なうという結果がもたらされることがあり得るわけですね。これは先ほど総理大臣お答えになった通りだ。そういう結果がもたらされた場合に、協議の場合において日本がイエスと言ったとするならば、その行動として施設を増強するという、この事実ですね、これについて当然共同の責任を負うわけでしょう。そうじゃありませんか、協議の結果行なわれるのですから……。いいですか。  総理大臣に伺いましょう。日本の国に脅威がある、その結果、日本の国がアメリカ協議をしますね、協議をして、具体的に言うと、何かの行動をとらなければならない、そうすると、第六条の規定を運用して、アメリカの基地を増強するとか、日本の自衛隊をどうするとかいう行動が行なわれてくるわけですね、そういうことになりませんか。そういう場合があり得るわけですね。そうでない場合も、それはあるかもしれませんよ。あり得るわけですね。これは当然そうでしょう。そこで、そういう行動がもし起こったとしたならば、これに対して、協議においてはイエスと言った、その協議の責任は、日本政府としては当然負わなければならないでしょう、そうでしょう。協議の責任はそういうことになりましょう。総理大臣どうですか。
  263. 岸信介

    岸国務大臣 私、岡田委員の御質問に対して、私の理解が合っているかどうかわかりませんから、一応そうですというような簡単なことではなしに、お答えします。  四条において、日本の安全、あるいは極東の平和に対する脅威があったという場合において協議する、そうして、どういう措置をとるべきかという場合において、これは何も四条に規定はいたしておりません。従って、これによってとる行動は、さっき法制局長官から言っているように、国内法やあるいは国連憲章の範囲内においておのおのとる。おのおのとる上において、今お話しのように、自衛隊を増強する必要があるというような結論が出るかもしれません。また、米軍の基地を増強するというような必要が出るかもしれません。必ずあるとは言えませんが、そういう場合もあり得る。そういう場合において、協議して、こうしようというようなことになれば、日米でもってその協議の結果に基づいて、国内法や国連憲章に反しない限りにおいて行動をとるということは、あり得ると思います。これは言うまでもなく、六条の規定によって基地を貸す場合に、いわゆる地位協定に基づいてのいろいろな権利義務が規定されております。それで、その場合に、その地位協定に従って、アメリカが必要があれば増強するとが、あるいは現在ある基地を、ただ自分だけでやる場合もある。新しく基地をふやすとか、あるいは拡張するというような場合においては、日本の了解を得なければならぬことは当然であります。これはそれぞれの規定に従って話をする。話がまとまったものは、両国においてこれを忠実に行なっていくということは、これは当然なことであります。
  264. 岡田春夫

    岡田委員 特にここで私が伺っている重要な点は、脅威が生じたとき、いずれか一方の締約国の要請により協議するのですから、在日米軍の中の施設について増強をするということを協議した限りにおいて、そのことについてもイエスと日本が言った場合においては、当然その点についての責任を負わなければならない、そういうことになりますね。そうでしょう。だって、そうでないということにはならぬ、当然そうでしょう。大体ここの点でまず伺いたいのは、「脅威が生じたとき」というのはだれが判断するのですか。日本アメリカか、いずれか一方が要請するというのですから、ここの点を、まずはっきり伺っておきます。
  265. 岸信介

    岸国務大臣 これは、どちらでも、そう考えたものが相手方に対して協議要請する。
  266. 岡田春夫

    岡田委員 そこで、日米両国が脅威についての判断が違った場合、どうなりますが。
  267. 岸信介

    岸国務大臣 それはあり得ると思います。一方は脅威があると考え要請したけれども、いろいろ事態を正確に分析してみると、一方はそう言っているけれども、他の国はそう認めないという、協議の結果、意見がまとまらないこともあると思います。
  268. 岡田春夫

    岡田委員 この条約の趣旨によると、脅威の生じたときの判断は、今の御答弁通りに、日米両国が判断をする、こういうことでしたね。ところが、ここに問題が実はあるのです。国連憲章を守るということを先ほど来再三お話しになっているが、脅威という言葉の判定というのは、実はきわめて重要なのです。過去の歴史において、脅威という言葉で地方的な紛争が拡大した例がたくさんあるために、脅威の判定については憲章規定しておる。国連憲章の三十九条によって、脅威でないか、あるかの決定をするのは、国連の安保理事会の決定以外にはないということになっている。日本の国が勝手に脅威であるとか、アメリカが脅威であるとかいうようなことを勝手にきめるとするならば、これは明らかに憲章に違反している。明らかじゃありませんか。そうではないとあなたがおっしゃるなら、憲章の何条の規定においてやれるか、具体的に総理大臣答えて下さい。
  269. 岸信介

    岸国務大臣 条約局長から答弁いたさせます。
  270. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの点でございますが、御指摘のように、第三十九条には、国連の安保理事会が、「平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、」云々とございます。しかし、この場合の「決定し、」云云というのが、国連、すなわち、安保理事会がそれを決定するのではないかということは、まことに御指摘の通りでございますが、これはその場合、これを決定して、国連が、すなわち、安保理事会として、国際の平和、安全を維持する責任がある国際機関として行動をする場合に、このようにみずから決定をいたし、そしてそのような行動をする、すなわち、国連として行動する場合のことを言ったものだと考えます。しかし、それ以外に、われわれが両国間で事態を彼此考量いたしまして、これが平和に対する脅威ではなかろうか、そういうことを協議するということは、私はちっともかまわないことだと思います。
  271. 岡田春夫

    岡田委員 脅威でないだろうかと御相談することは、これはかまわないじゃないかというのだが、しかし、憲章上に認められた脅威じゃないでしょう。そういうことになりませんか。高橋さんに伺いますが、だからこそ、第一条に書いてあるのではないのですか。一番最初には「国際の平和及び安全」、これは国連憲章第一条の第一項だ、それからその次は「平和に対する脅威」、それから「平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態」、三つに分けてあるじゃありませんか。安保理事会が正式に脅威という存在を決定するまでは、両国間において、脅威ではないかということに対して安保理事会に提訴する権限は与えられておる。しかしながら、この提訴する権限に基づいて、日米両国がみずからこれは脅威である、憲章第一条の第一項にある「平和に対する脅威」に該当するということではない、これは安保理事会が決定したときに初めて脅威になるので、その場合の脅威、あなたの言われる第四条の「脅威」というのは、「平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態」、これに該当すると私は思うのです。その点はどうです。
  272. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、三十九条の平和の破壊、平和に対する脅威、これを国連、すなわち安保理事会が決定をいたします。これに基づきましていろいろな暫定措置をとり、非軍事的措置をとり、最後には軍事的措置をとるわけでございます。このようないわゆる暫定措置、すなわち、国連のとるような暫定措置は、いかなる措置であっても、それが国連がとる暫定措置として、とるようなことはできない、また、非軍事的措置も、国連がとる非軍事的措置としてこれをとるわけにいかないということになるわけでございます。すなわち、安保理事会の決議、その他安保理事会に問題を提案しまして、その決議または決定に従って国連または安保理事会が措置をとる以前に、そのような行動を安保理事会として、または国連としてとるというふうなことを僣称または詐称してはいけないわけであります。ただ、それに至らない間におきましてとることができる措置、これは、武力攻撃がありました場合、個別的または集団的自衛権、これをとることができます。また、それに至らない範囲でも、国連憲章で禁止しない範囲においては、いろいろ措置をとることができる、こういうふうに考えております。
  273. 岡田春夫

    岡田委員 ですから、それに基づく行動というのは、例外措置として五十一条がありますよ。私の伺っておるのは、安保理事会が正式に平和の脅威の存在を決定するまでは、加盟国の日本なりアメリカというものは、それまでは脅威ということを正式に存在するものとして規定したものとして考えるべきではない、そうではなく、その場合における法律的な性格というものは、明らかに、「平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態」、これに該当すると思うのだが、そうでないとおっしゃるなら、今の「平和を破壊するに至る虞のある」云々という、このような事態は、どういう事態意味しますか、じゃ、伺いましょう。
  274. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、この平和に対する脅威または平和の破壊——平和に対する脅威と申しますのは、一歩誤れば、平和の破壊または侵略の行為が行なわれるような、せっぱ詰まった事態であろうかとも考えます。そのような事態に対しまして、国連がどうように措置をするかというのが、この条文の問題でございまして、それをわれわれの間におきまして——われわれと申しますか、個々の加盟国の間で、これは平和の脅威である、これは平和の脅威と考えるというふうなことを話し合う、そして、そういうふうに両方か考えるということは、われわれは何ら差しつかえないことだと考えます。ただ、それを国際社会全体の問題として取り上げて、国際社会がそれを平和の破壊だと断定して、そして、それに対して措置をとるというならば、それは安保理事会の問題でございます。しかし、われわれが、国際間におきましてそういう問題の存在を相互間において判定する、そして国連または国連憲章で何ら禁止されていない、各国の独自にできること、その範囲のことを行なうということは、これは決して禁止したものでもないと考えております。
  275. 岡田春夫

    岡田委員 そういう条約解釈をするとまずいです。これは総理大臣に伺っておきますが、平和に対する何らかの危険、侵害その他について、第一条——一条というのは、言うまでもなく、国連憲章の目的ですね。しかも、第一項にはっきり書いてある。それは、「国際の平和及び安全を維持すること。」が国連憲章の目的である、これははっきり書いてありますね。この平和と安全についての具体的な解釈規定がある。いいですか。そのためにどういうことをやるか。そこで、後段に書いてある。「そのために、平和に対する脅威の防止及び除去」これが一つですね。それから「侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること」これが第二ですね。第三、「並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。」ですから、はっきりここに出ていることは、三種類あるわけですね。ですから、「平和に対する脅威」と、後段における「虞のある国際的の紛争」というものとは、憲章の精神からいえば、本来違うものなんです。違うものとして規定されているから、このように書いてある。それじゃ、同じものだという立証はできますか。違うから、このように書いてある。この三つの点がそのように害いてあるんだということは、お認めになるのですか、どうなんですか。この点、総理大臣、どうなんです。この点ははっきりしていただきたい。最も重要な点なんです。
  276. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの点は、「平和の破壊」、これが第一点でございますね。平和の破壊ということは侵略行為、これは同じような問題だと考えます。すなわち、ここに「平和に対する……その他の平和の破壊」とございますので、侵略行為その他の平和の破壊、これが第一点。それから「平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争」、この点が第二点でございます。この二つの点でございます。
  277. 岡田春夫

    岡田委員 それから平和の脅威は……。
  278. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それから平和の脅威、これは両方——両方と申しますか、平和の脅威は第三十九条に規定してございます。従いまして、集団的措置を行なう場合においては、平和に対する脅威の場合にも行なわれる、こういうことでございます。
  279. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、第四条のこの「脅威」というのは、憲章上からいって、三十九条の脅威の場合だけを意味しているのですか、あるいは「破壊するに至る虞のある国際的の紛争」と、二つを含んでいるのですか、どうなんですか。
  280. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これはもっと広い意味でございます。極東における国際の平和及び安全に対してそういうふうな脅威が生じたと考える場合においては、協議するということでございます。ただ、これは先ほども申し上げました通り、ここに書いてあるからといって、これは本来、国連がやるべきことを、それによって、かわってここでやるのだというような意味合いを含んでいるものでは絶対ございませんから、そのことをちょっと申し上げておきます。
  281. 岡田春夫

    岡田委員 それが問題ですよ。国連の加盟国である日本の国、国連の加盟国であるアメリカが、憲章に書いてあって、国連できめるから、こちらの方では、脅威という問題は、それぞれの国が自主的に判断してやれるんだというような拘束性を憲章は持たない、そういう意味に解釈してよろしいですか。そうではないでしょう。憲章の拘束に従わなければならないでしょう。憲章の拘束に従うならば、脅威というものは、三十九条の脅威以外にはないじゃありませんか。それ以外にあり得ようがないじゃありませんか。どういう脅威がある。
  282. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 憲章の拘束に従うかどうかという問題でございますが、これは、単にその判断のための判断ということはあり得えないと思います。すなわち、平和及び安全に対する脅威だという判断のための判断というわけではございませんので、そこで、その判断に基づきましてどういう行為をするかという問題じゃなかろうかと思います。従いまして、ただいま御指摘の通り、平和及び安全に対する脅威と国連が判断するということは、その判断に基づきまして、国連が国連として国連の措置をとるということだと考えます。従いまして、その措置を離れてその判断はあり得ない。そう考えます場合に、その措置は、本来、国連がみずからとるし、国連でなければとり得ないというような措置をとるわけにはいかない。しかし、国連の拘束——その点において国連の拘束を受けます。受けるからこそ、国連が禁止している措置はとれない。国連の許容した措置しかとれないということになるわけでございます。
  283. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、もう少し話を進めましょう。  それでは、平和の脅威というものを、たとえば、あなたのように解釈しましょう。その場合において、国連が加盟国に許している行動というものは、先ほど御答弁のように、五十一条、五十二条並びに四十三条の特別協定ですね。こういうような軍事行動、これは脅威の場合にはとり得るのですか。これは加盟国の一員として、国連の承認なしにとり得ますか。
  284. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 武力行使でございますが、武力行動……。
  285. 岡田春夫

    岡田委員 脅威です。
  286. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 脅威の場合はとれません。武力行為が発生しなければいけません。発生しない以上は武力行動——武力行動武力行為が発生した場合にとれる。それ以外は禁止になっていると思います。
  287. 岡田春夫

    岡田委員 これは重要な点です。脅威というものに関する限りは、武力行動というものはとり得ない、これは非常に明快にしておかなければならない。そこで脅威に基づいて、加盟国である日米両国が許されている行動というものは、これは明らかに憲章第三十三条並びに三十七条に規定してある。これ以外の行動はとり得ない。これはもう非常に明快な点であります。脅威を感じた日米両国が協議する内容は、三十三条に規定する事項並びに三十七条に規定する事項以外にはとり得ないと解釈するのだが、どうですか。
  288. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 一国が主権国として、独立国として当然とり得ることは、これは当然とり得るわけでございます。
  289. 岡田春夫

    岡田委員 何ですか、それは。
  290. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは国内措置と申しますか、そのようなことが——軍備の増強と申しますか、いろいろな措置がございます。一国が主権国としてとる措置も、ここに書いてある以外は何もとれないという規定ではないと考えております。
  291. 岡田春夫

    岡田委員 一国の国内措置としてとり得る行動というものの中には、五十一条の自衛権の行使の準備というものも含みますか、どうですか。
  292. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 御承知のごとく、国連が禁止していますのは、武力の行使及び武力の脅威でございます。それが、国連がはっきりと禁止している行為でございます。その他の行為は、これはとることができるわけでございます。
  293. 岡田春夫

    岡田委員 高橋さんに伺いますが、国内事項で、武力的な行使に準ずるものの行動国連憲章では許しておりますか。——それでは、たとえば、国内事項であるならば、自衛隊の増強というものも、これは憲章の中で許しておるのですか。一つの軍事行動なんだが、それさえも許しているということなんですか、どうなんですか。
  294. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 国内問題、国内政策は別でございますが、憲章上それは許しております。決して禁止している問題ではございません。だから、各国も、おのおの国力の増強をするわけでございます。
  295. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺っておきますが、三十三条の規定、三十七条の規定というものは、国内事項の軍事行動、これ以外に、これは協議の結果行なわれる国内条項規定です。ところが、協議の内容というものは、三十三条、三十七条しか、国連憲章を守る限りにおいて、加盟国には許されておらない。とするならば、その協議の内容の中で、国内事項協議するということはあり得ない、こういうことになりますね。
  296. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ちょっと御質問の趣旨が私はっきり了解いたしましたかどうかわかりませんが、三十三条は、いかなる紛争でもその継続が国際の平和及び安全の維持を危くする虞のあるものについては、平和的手段で解決を求めなければならない、それから三十七条は、このような紛争で、解決することができなかったならば、安保理事会に付託しなければならない、これは国家間の紛争の問題だと考えます。それから、ただいまの問題は、国内で一国が主権の範囲内で自衛隊の増強云々をやるわけでございますから、これは紛争という問題とは別問題じゃなかろうかと思います。
  297. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、紛争という以前に、平和の脅威が該当するというんでしょう、三十九条が……。脅威の問題で協議するわけでしょう。協議する場合において、協議の内容は、三十三条、三十七条において、「虞のあるもの」というものに対して規定しておりますね。国内事項についての相談というものは、協議の内容の中に含まれないわけでしょう、そうじゃありませんか。含んだとするならば、憲章の精神に反するじゃありませんか。憲章の精神は、協議の内容は、国内事項についていろいろ相談をするということになるんですか。そういう規定がどこに協議の中に入っていますか。憲章の精神を守る限りにおいては、そういう軍事行動に準ずるようなものは許されておらないというのが、憲章の二条における大原則じゃありませんか。それから前文においても、ちゃんとはっきり書いてある。
  298. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 どうもはっきり御質問の趣旨がわからないのでございますが、国内問題と申しますか、国内事項、これは国連の問題ではないと考えております。国連云々を持ち出す問題ではないと考えております。ただ、先ほど、一国の紛争でございますから、国家間の関係の問題だと思うので、その国の問題、一国がその主権の当然の権限の範囲内として行なう問題、この問題は、これは紛争が起こった場合の問題とちょっと別じゃないかと思います。
  299. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、伺いましょう。それじゃ脅威という中には紛争を含まない、こういうことですね。含まれるんですか。憲章上どうなんですか。この場合の紛争というのは、何か行動を起こしているという点を含むよりも、ここにある紛争という点は、国連憲章第一条第一号の、先ほど申し上げたおそれあるもの、これに該当する。ここにこう書いているでしょう。「平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態」——「事態」と言っているのですね。紛争ではなくて事態なんです。事態もある。この事態について、三十三条で、当事国がこれについて平和的な手段で解決をしなければならない、こうなっているわけです。この限りにおいて、軍事的な手段あるいは武力行使はもちろんのこと、軍事的手段というものは国内事項に関しても許されない、こう解釈せざるを得ない、こういうことになるじゃありませんか、どうです。それ以外に、国内事項ならば何をやってもいいということにはならないと思うのですよ。
  300. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの軍事的手段、そこで、その軍事的手段が許されないということは、その紛争を解決するために軍事的手段を使うことでございますね。それが許されないということでございます。それからもう一つは、武力の脅威も許されませんから、軍事的手段によってその紛争を——たとえば、ある一国の港の前面に軍艦や大砲を並べまして、その威嚇によって紛争を解決しようというようなこと、それがいけないということでございまして、おそらく、ただいま御指摘の点は、これは決して禁止されている点ではないと考えます。
  301. 岡田春夫

    岡田委員 じゃ、具体的に伺いましょう。それでは、第六条に基づいて在日米軍が基地内において増強をするということは、これは当然許されないじゃありませんか。どうして条約上許されるのですか、国連憲章国内事項じゃないじゃないですか。どうです。在日米軍の基地を協議の結果増強をするということは、日本国内事項じゃないですよ。条約の六条に認められたものですよ。条約上に認められた在日米軍の基地を増強するということは、三十三条を協議事項の内容とする限りにおいて、これは認められない。この点は、平和的な手段によらざるを得ないと書いているじゃないですか。協議の結果として起こり得べき行動については、第四条には含まない。従って、第四条では、行動の点については、先ほど申し上げたように、行動に何ら明文上の規定はないが、この場合において、三十三条並びに三十七条の国連憲章で認めた規定以外には、加盟国としては行動することを許されない、このように解釈すべきである。在日米軍基地の増強というものは、これは許されない、そうでしょう。条約上の規定がはっきりあるじゃないですか。はっきりしているじゃないですか。
  302. 林修三

    ○林(修)政府委員 初めの、いわゆる紛争と脅威の範囲でございますが、いわゆる脅威は、必ずしも紛争があることを前提としないということは、これは、まず第一に申し上げておく必要がございます。紛争がなくて、脅威がある事態と申しますか、脅威の事態が起こり得ることは、これは当然あります。  それから三十三条あるいは三十七条は、つまり、その紛争を自国に有利に解決するために、相手国を脅威するような形で行動してはいけない、平和的解決の手段をとらなければいけない、こういうことでございます。しかし、それと同時に、それぞれの国が自国の防衛力と申しますか、防衛手段をその事態に応じてふやす、減らす、あるいはどういうことをやる、あるいはそれが集団安全保障条約を結んでいる場合は、お互い同士が協議をしてそれについて対処する、これは国連憲章は何ら禁止していない。いわゆる集団安全保障というものを国連憲章が認めている以上、当然にこれは認められていることでございまして、世界じゅうどこでも、これはやっていることでございます。
  303. 岡田春夫

    岡田委員 それではこういう点は、あなたの点を一つ認めたとしましょう。たとえば、脅威が起こった、その場合に、国内事項である自衛隊の増強、これは国内事項としてやったとする。これについても私は疑義があるのだが、しかし、この条項に基づいて、第六条で、在日米軍の基地提供の問題がある。この基地の中の増強その他というものは、日本国内事項ではないわけですね、そうでしょう。そうすると、在日米中の基地の増強その他は、日本の国内法の規定する問題ですか。そうではないでしょう。どうなんです。
  304. 林修三

    ○林(修)政府委員 国内事項という言葉のとり方だと思います。国内事項という言葉をこの場合使うのは、必ずしも正確でないかもわかりません。しかし、いわゆる日米間の集団安全保障という体制のもとにおいて、日本の防衛の力を増す、その場合に、事態に応じて増すということは、何ら国連憲章上も禁止されていない、こういうことでございます。
  305. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、どうして禁じられていないのですか。武力行動を許しちゃいけない、平和的手段によらなければならないという、この三十三条の憲章の精神に反するじゃないですか。
  306. 林修三

    ○林(修)政府委員 こういうことは憲章は何ら禁止しておりません。紛争を平和的に解決する手段をとるということと、それぞれの自国が自国の防衛上必要と認める措置をとる、紛争を武力の威嚇あるいは行使によって解決するということ、これはいけないわけでございます。しかし、そういう意味を持たない場合において、自国がやられそうだという場合に、自国がそれぞれの準備をとる、あるいはその場合に合同して、日米両国が共同して、集団安全保障の建前においてお互いに相談して、それぞれその準備をする、それ自身は何ら国連憲章上禁止されていない。
  307. 岡田春夫

    岡田委員 ですから、さっきから申し上げているように、三十三条によって憲章上に認められているのは、平和的な——武力行使、あるいは軍事的な措置というものは許されておらない。すなわち、ここでは平和的手段による解決ということ以外には認められない。ところが、条約上では、施設協定に基づいて在日米軍の基地の増強というものがあり得る。この増強というものが相手の国を脅威するということも当然あり得る。そうでしょう。それは、この間まで飛鳥田君の質問その他を通じてはっきりしている実例があるじゃないですか。こういう脅威まで行なわれるようなことが、この六条においては認められているということになるわけですか。
  308. 林修三

    ○林(修)政府委員 今おっしゃいましたように、相手方を武力によって脅威する、そういうような客観的な事態に至るまでの間に何らかの手段をとる、そういうことになれば、これは国連憲章の精神に反するということになります。しかし、施設区域を、かりにその事態に応じて増強する必要がある場合に増強する、日本を防衛するために必要な範囲においてやる、こういうことは、私は何ら国連憲章の趣旨に反しない、かように考えます。
  309. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、もう少し話を進めて、そこの話はあとでもう一度戻って参りますが、第五条の「行動」という場合には、第五十一条の自衛権の行使というものを当然含むものであると思うが、これはどうなんですか。
  310. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その通りでございます。
  311. 岡田春夫

    岡田委員 それから自衛権の行使という場合には、当然五十一条以外には自衛権の行使というものはあり得ない、それ以外の自衛権の行使というものはないわけですね。それは言うまでもないことですね。
  312. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 必ずしも、そのようには言えないかと思います。というのは、五十一条は、特に武力攻撃という最も重大な場合を限った場合の個別的な、集団的な自衛権でございます。従いまして、武力攻撃に至らない範囲の自衛権の行使の場合、権利侵害の場合がありますから、それにつり合った武力の行使ということはあります。
  313. 岡田春夫

    岡田委員 それでは具体的に伺いますが、自衛権の概念を先に伺いましょう。概念とはどういうものですか。今のように、武力行使を伴わない自衛権の行使というものがあり得る、五十一条を伴わないような自衛権の行使というものがあるならば、自衛権の概念というものはどういうものですか。
  314. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 自国に対るる急迫かつ不正な権利侵害に対しまして、それが急迫かつ緊急な状態であって、他にこれを排除する方法がないという場合に、実力行使を主体といたしましてこれを排除するというのが(「必要最小限度が要る」と呼ぶ者あり)必要最小限度の……。ただ、その場合に、一般に急迫不正なる権利侵害とございますが、憲章五十一条には、それが武力攻撃ということに限定してある、こういうことでございまして、限定してあるということは、その他のことを排除する意味ではないと私は考えます。
  315. 岡田春夫

    岡田委員 従って、武力行使に関する限りは、五十一条の適用に基づく自衛権の行使、これ以外にはない、こういうことになりますね。武力行使を伴わないものに関する自衛権の行使があるという解釈をされるのですが、これは私は非常に疑義がある。しかし、その点は一歩あれして、武力行使に関しては五十一条の適用以外にはないのだ。これ以外にあるのですか。
  316. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 しかし、非常に軽微な権利侵害に対しまして、それにつり合った武力行使をするという場合も、これは考えられます。
  317. 岡田春夫

    岡田委員 それは五十一条じゃないですか。
  318. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 五十一条は武力攻撃でございます。ところが、そうでない軽微な、いわゆる権利侵害や武力行使がある場合に、必要最小限度の範囲内で、それにつり合った武力の行使が行なわれる。これは非常に軽微な場合だと考えますが、そういう場合もあるかと考えます。
  319. 岡田春夫

    岡田委員 軽微な場合とお話しになりますが、そういう国際法上の先例がありますか。私は、そういう例はあまり知らないのですがね。五十一条の適用でない自衛権の行使、国際法上認められたそういうものがあり得る、それは具体的にどういうことですか。
  320. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 たとえば、単なる国境紛争というものがございます。国境における歩哨の撃ち合いという場合に、これにとりあえず対抗するというような場合があるかと思います。こういうのは武力攻撃ではございませんが、やはりその場合における一つの自衛権の発動または行使ということが、私は考えられると思います。
  321. 岡田春夫

    岡田委員 これは非常に拡大した解釈で、私は初めて聞きましたが、国境において紛争があった、その場合に、軍事的な行動あるいは武力行使というものを伴わないような行動で、どういうことを具体的にやるのですか。その場合、守備隊が、たとえばげんこつでなぐったということも一つのあれですよ。その場合に適用するのは五十一条以外にないと思うのですが、それ以外にどういうことがあるのですか。悪口を言ったという場合ですか、どういう場合です。どういう概念があるのですか。
  322. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それはこちらが武力を行使しないとは言わない。やはり武力を行使するのです。しかし、先方は、これは武力攻撃であるとは考えられない。しかし、単なる国境における歩哨の撃ち合いというような問題が起こります。その場合において、こちらからそれを排除するというような場合、それは武力をもって排除するということがあります。そういう場合には、やはり自衛権、これは今まで考えられておりました通常の一般自衛権の問題でございます。そのうちの、特に武力攻撃という問題については、特に重大であるから五十一条で取り上げて規定した、こういうふうに考えております。
  323. 岡田春夫

    岡田委員 それは非常に重大なんです。第五条に規定する「行動」の中で、自衛権の行使というものの中には、今あなたの言われたようなものも含む、こういうことでございますか。こういう点は、ちょっとはっきりしておいていただかなければ……。
  324. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ですから、第五十一条の問題の場合は、こういうことを含まないということであります。
  325. 岡田春夫

    岡田委員 私の言っているのは、第五条の「行動」に基づく自衛権の行使です。この中には……。
  326. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは武力攻撃でございます。五十一条と同じであります。
  327. 岡田春夫

    岡田委員 先ほどからの答弁を伺っておりますと、自衛権の行使というものについては実際に、通常観念として五十一条に規定するような自衛権の行使でない自衛権の行使もあり得るのだ、しかし、安保条約第五条の「行動」の中に入っている自衛権の行使というものは、それは認められない、それは認めないで、五十一条の自衛権の行使以外には認めないのだ、こういうことになりますね。それはいいのですね。
  328. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その通りでございます。第五条のは、第、五十一条と同じでございます。
  329. 岡田春夫

    岡田委員 第五条に基づく固有の自衛権の行使、これについて今までの答弁を聞いていると、日本の場合では、日本に対する攻撃というものに対しては、当然個別自衛権の行使をやる、ところが、在日米軍に対する攻撃の場合においては、領土、領海、領空自体に対する攻撃なしには行ない得ないから、この場合も個別自衛権の行使をする、こういう答弁をしておりますね。それから、アメリカにとっては、在日米軍に対する攻撃の場合は、アメリカアメリカの個別自衛権の行使をする、それ以外の日本の領域に対する攻撃の場合には、集団自衛権の行使をする、こういうように今まで答弁されてきたと思うのですか、これでよろしゅうございますか。
  330. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 その通りでございます。
  331. 岡田春夫

    岡田委員 そこで伺いますが、そうすると、在日米軍に対する攻撃の場合も、日本にとっては個別自衛権の行使となる、こういう解釈は、私は非常にこじつけだと思う。どうしてかといえば、それならば、この解釈によれば、日本の自衛隊が在日米軍の基地に入って行動することが許されないことになる、そうでしょう。なぜならば、在日米軍の基地内というものは、アメリカの個別自衛権の範囲内に入る、そうでしょう。とするならば、逆にいって、日本の自衛隊が在日米軍基地に入って行動することは、個別自衛権としては許されないので、集団自衛権でなければ行使できないでしょう、そうなるじゃありませんか。総理大臣、違いますか。
  332. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは違うと思います。いわゆる米軍に対しての攻撃は、アメリカにとってみれば、これは自国に対する攻撃でございますから、それは個別的自衛権の発動を十分主張し得るわけでございます。しかし、それはいわゆる施設区域というものを基準にしてではないわけでございまして、米国という国に対する攻撃という意味において、米国は個別的自衛権というものを発動するわけでございます。施設区域内に日本の自衛隊が入れないとか、入れるとかいう問題とは別問題であると思います。
  333. 岡田春夫

    岡田委員 それはどういうわけですか。在日米軍それ自体に対する攻撃というものは、具体的にどういうものですか。アメリカが個別自衛権を行使することのできる在日米軍に対する攻撃とは、それでは施設区域に対する攻撃ではない、こういうことですか。
  334. 林修三

    ○林(修)政府委員 この第五条でいっておりますのが今の場合でございます。日本におります米軍に対する攻撃、いわゆる施設区域と申しますより、米軍に対する攻撃が何だということでございます。これに対して、日本におります以上、日本の領土、領海、領空に対する攻撃をせずにこれを攻撃することはできませんから、日本においては、これを個別的自衛権の発動として排除できる、しかし、米国の立場に立ってみた場合は、いわゆる日本におりましょうと、どこにおりましょうと、自国の軍隊に対する攻撃でございますから、自国に対する攻撃と見て、その場合には個別的自衛権、しかし、同時に、日本を守るという意味においては集団的自衛権、この両方の自衛権の発動、こういうことになると考えるわけでございます。
  335. 岡田春夫

    岡田委員 それでは林さんの点をもう少し進めて伺いましょう。在日米軍に対する攻撃というものがあった場合には、アメリカにとっては、在日米軍それ自体は個別自衛権の行使だ、しかし、その行使というものは、施設区域日本施設区域であるから、これは当然集団的自衛権を行使する、この二つのものを一緒にアメリカは行なうんだ、こういう意味ですか。
  336. 林修三

    ○林(修)政府委員 在日米軍というものは、日本にいるわけでございますから、在日米軍に対する攻撃ということは、米軍立場からいえば、自国の軍隊に対する攻撃だ、こういうことになるわけでございます。しかし、同時に日本において日本を防衛するという立場においては、これは集団的自衛権、しかし、在日米軍行動をすれば、当然日本の国土を使ってやることになります。従いまして、在日米軍にとっては、先般来申し上げておると思いますが、個別的自衛権及び集団的自衛権の発動として米軍としてはやるのだ。こういうことを分解して言うことは、なかなかむずかしいと思いますが、在日米軍それ自体としては、自国に対する攻撃という意味で、個別的自衛権ということで説明できる、かように考えます。
  337. 岡田春夫

    岡田委員 そのさかさまの場合はどうですか。在日米軍に対する攻撃は、それでは日本にとってはどうなりますか。日本施設区域に対する攻撃である限りは個別自衛権、しかし、そこの上にいる在日米軍に対しての攻撃である限りにおいて、日本としては集団的自衛権の行使じゃありませんか、どうなんですか。
  338. 林修三

    ○林(修)政府委員 この在日米軍に対する攻撃は、日本の領土、領海、領空を侵さずしてやれるものではないわけでございます。日本の領土、領海、領空を侵すものに対して、それを排除するという意味においては、日本は個別的自衛権を発動する、こういうことでございます。
  339. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、それでは在日米軍に対する攻撃に対しては防衛の措置をとらない、こういうわけですか。もちろん、領土、領海、領空の侵害がありますから、そこには個別自衛権の行使があることは、当然あなたのおっしゃる通りであります。ところが、観念としては、在日米軍というものが現実に日本におって、これに対する外国の攻撃があったんだ、これに対して日本の自衛隊が行動するという場合には、領土、領海を侵害されるから、この場合においては個別自衛権の行使だ、それと同時に、在日米軍に対する攻撃に対しては何らの防衛措置はとらない、こういう意味ですか。
  340. 林修三

    ○林(修)政府委員 この場合には、日本の自衛隊としては、当然日本の国土を守るわけでございます。そして、結果的に米軍もそれによって助かる面がたくさんあると思います。しかし、これはあくまで日本としては日本の国土を守る、従って、日本の個別的自衛権という言葉でこれは説明できる範囲だ、これをかねて、そう申しておるわけでございます。そういう言葉を、学者は、あるいは集団的自衛権という言葉で言っている人もございますけれども、これは個別的自衛権の範囲として説明できる、かように考えております。
  341. 岡田春夫

    岡田委員 だから、私は具体的に言ったのです。在日米軍施設、基地に対しては、日本の自衛隊というものは防衛することができない、個別自衛権の行使だけなら、できないじゃありませんか。どうやってできるのですか。在日米軍それ自体に対して自衛権を行使するというのは、集団自衛権以外にどうやって行使するのですか。
  342. 林修三

    ○林(修)政府委員 自衛権の行使というものは、一国対一国の問題でございます。個々の施設とか、個々のどこにいる軍隊に対する行動という問題じゃございません。一国の主権に対する攻撃でございます。一国の主権に対する攻撃をいかにして排除するかということでございます。その必要として施設区域を守り、あるいは米軍と一緒になって相手を排除する、これは当然起こり得ることでございます。日本の主権に対する攻撃があれば、日本は個別的自衛権を発動する、こういうことでございます。
  343. 岡田春夫

    岡田委員 総理大臣、それでよろしいのですか、林さんの答弁でよろしいんですか。いいとおっしゃるなら、それでもけっこうですが。
  344. 岸信介

    岸国務大臣 法制局長官が答えている通りでいいと思います。
  345. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、三月三十一日の予算委員会で、あなたははっきり違う答弁をしているじゃないですか。そこを読んでみましょう。「集団的自衛権という内容が最も典型的なものは、他国に行ってこれを守るということでございますけれども、それに尽きるものではないとわれわれは考えておるのであります。そういう意味において一切の集団的自衛権を持たない、こう憲法上持たないということは私は言い過ぎだと、かように考えております。しかしながら、その」——「しかしながら」からが問題なんです。「その問題になる他国に行って日本が防衛するということは、これは持てない。しかし、他国に基地を貸して、そして自国のそれと協同して自国を守るというようなことは、当然従来集団的自衛権として解釈されている点でございまして、そういうものはもちろん日本として持っている、こう思っております。」はっきり言っておるじゃないですか。集団自衛権の行使だと言っている。そうじゃないですか、どういうように違うのですか。しかも、林氏は、これはまた、こう言っていますよ。あなたがさっき答弁しているように言っています。こういうように言っておる。「集団的自衛権という言葉の内容としては……たとえば自国を守るために基地を貸与する、あるいは他国が、密接な関係のある他国がやられた場合にこれに対して経済的な援助を与える。そういうような、その他の、経済的その他の協力を与える、そういうものもございましょうし、……こういうものは実は日本の憲法上どれも私は認められていることだと思うわけであります。しかし、それ以外にいわゆる他国が、……武力攻撃を受けた場合に、それを自国が武力攻撃を受けたと同様に考えて、その他国に出かけて他国を守る、……こういうのは日本の憲法のいわゆる自衛権が認められているという範囲には実は入らないのじゃないか、」それ以外の基地を貸すということですね。それから経済的な援助、これは集団自衛権として日本の憲法においても認めている、こういうように岸総理大臣も林法制局長官答弁しております。ですから、その限りにおいて、日本にも憲法上集団自衛権の行使というものは認められているという、この範囲内において、あなた方は認めた、そういうことになりますね。その点はいいですね。
  346. 岸信介

    岸国務大臣 いわゆる集団的自衛権という観念につきましては、いろいろの見解があるようであります。しかし一番典型的なものは、そこにいっておるように、自分の締約国であるとか友好国であるという国が侵害された場合に、そこに出かけっていって、そこを防衛するという場合でありますけれども、そういうことは、われわれの憲法のもとにおいては、認められておらないという解釈を私は持っております。ただ、集団的自衛権というようなことが、そういうことだけに限るのか、あるいは今言っておるように、基地を貸すとか、あるいは経済的の援助をするとかいうことを、やはり内容とするような議論もございますので、そういう意味からいえば、そういうことはもちろん日本の憲法の上からいってできることである。それを集団的自衛権という言葉で説明するならば説明してもよろしい、こういう意味でございます。
  347. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ総理大臣にはっきり伺いますが、集団自衛権の場合において、海外派兵というものは認めない、しかし、基地の提供、あるいは具体的な例では経済援助というのが出ておりますが、この二つは集団自衛権の行使として認める、こういうことですね。これは非常に重要な点ですから、もう一度伺っておきたい。
  348. 岸信介

    岸国務大臣 海外派兵はいたしません。できない。それから今おあげになりました、基地を貸すとか、あるいは経済援助をするということを、集団自衛権という観念に含ませていう考え方をとれば、そう言って差しつかえない、そういうことはできる、こういうことであります。
  349. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、集団自衛権の行使は、当然日本の憲法でその場合は認められるわけですね。林さん、そういうことになるのでしょうね。
  350. 林修三

    ○林(修)政府委員 今総理がお答えになりました通りでございまして、集団的自衛権という言葉の内容に、どの範囲が含まれるかという問題になります。いわゆる海外派兵というようなものは、集団的自衛権の行使ができるという意味においてできない、できるということにはならない。しかし、それ以外のものにおいて、たとえば基地を貸すとか、あるいは経済的援助を与えるというようなものも、集団的自衛権の行使というカテゴリーに入ると考えれば、そういう意味の集団的自衛権の行使はある、こういうことでございます。
  351. 岡田春夫

    岡田委員 いや、政府の確定解釈を聞きたいのです。そういう場合ならというのではなくて、基地の供与とか提供とか、経済援助というものは、集団自衛権の概念の中に、日本の憲法上入るという解釈をとっているのかどうか、この点を伺っているのです。
  352. 林修三

    ○林(修)政府委員 日本の憲法の解釈といたしまして、集団的自衛権というものは、一概にあるとかないとかいう問題ではないと私は思います。いわゆる事柄の内容によって、先ほど申しましたように、海外に出ていってよその国を守るという意味の自衛権まではない。しかし、日本の国を守り、あるいは日本と密接な関係のある極東の平和に寄与する意味において、基地を外国軍隊に貸すとか、あるいは経済的援助を与えるとか、こういうことは、日本の憲法上許されておる。それを集団的自衛権という言葉で呼ぶ呼ばないは、第二次的な問題でございまして、内容から申しまして、許される範囲と許されない範囲は、ただいままでお答えした通りでございます。
  353. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、それを呼ぶか呼ばないかということは、非常に重大なことですよ。憲章の五十一条の中に、集団自衛権の行使を認めるということ、個別的自衛権を認めるということ、二つを認めているということは、憲章の加盟国である日本の国として、五十一条の規定をどう解釈するかなどという、そういう不確定なことでは、話にならないと思う。はっきりと、基地の提供というもの、あるいは経済援助というものは、それでは憲章の五十一条の集団的自衛権に該当するのかどうか。これは日本憲法上の規定として、政府がそういう点を解釈できないで、不確定にしているというのは、無責任だと思います。はっきりして下さい。
  354. 林修三

    ○林(修)政府委員 ちょっと今の御質問の趣旨がよくわからないのでございますが、国連憲章の第五十一条において、個別的自衛権あるいは集団的自衛権の行使が許されている。これはいわゆる武力行使が、国連憲章上違法性阻却の事由としてあげておる点でございます。つまり、武力行使を中心として、この五十一条は書いておるのでございます。先ほど来申し上げました、基地提供とか、あるいは経済援助という問題は、五十一条の直接の問題ではございません。従って、五十一条の問題としてどの範囲のものがあるかということにつきましては、国際法的には、あるいは個別的自衛権、あるいは集団的自衛権の武力の行使ということは相当広いわけでございますが、日本の憲法の解釈としては、先ほど申し上げました通りに、武力行使としては、海外派兵というものは認められない。これは日本憲法の解釈、こういうことでございます。
  355. 岡田春夫

    岡田委員 海外派兵は認められないということはよくわかっております。それで、先ほどから私が取り上げておるのは、あなたの言った、それから総理大臣の言った基地の提供というもの、それから経済援助、この二つは——日本国憲法の規定しておる自衛権、この自衛権の中に二つあるわけです。個別自衛権と集団自衛権があるわけです。この集団自衛権のある証拠に、海外派兵は集団自衛権になるから認めない、こう言っておるのです。この集団自衛権の概念の中で、海外派兵は認めないけれども、基地提供並びに経済援助という集団自衛権の行使というものは、日本の憲法の裏で規定しておる自衛権の概念の中に入る。そこの点ははっきりしてもらわないと、ならばなどというような、集団自衛権をどう解釈するか、学者によってこう解釈するならばこうだ、こう解釈するならばこうだ、あいまいな言葉で、ここで答弁されるなら迷惑ですよ。そうでなくて、はっきり日本の憲法で自衛権が認められておる。自衛権の中で、集団自衛権と個別自衛権というものが認められておる。この集団自衛権の中で、海外派兵というものは認められない、これが政府答弁です。しかし、集団自衛権の中で、基地の提供、経済援助というような集団自衛権は認めるんだ、こういう解釈になるんだ、こういう意味ですか。これは総理大臣がはっきりこの前統一見解としてお出しになっておるのですから、これをはっきり総理大臣からお答えいただきたい。
  356. 林修三

    ○林(修)政府委員 問題は、日本の憲法の解釈として、どの範囲のことができるか、どの範囲のことは認められないかということでございます。事柄別に先ほど来申し上げておるわけでございます。いわゆる他国に行って他国を防衛するということは、国連憲章上は、集団的自衛権としてそれは違法性阻却の事由として認められておりますけれども日本の憲法上はそこまでは認められておらない。かりに集団的自衛というものが国連憲章で認めておりましても、そこまでは日本の憲法上はない、こういうことでございます。  それから第二点の、しからば基地の提供あるいは経済援助というものは、日本の憲法上禁止されておるところではない。かりにこれを人が集団的自衛権と呼ぼうとも、そういうものは禁止されておらない。集団的自衛権という言葉によって憲法違反だとか、憲法違反でないとかいう問題ではない。内容によって私どもは先ほどから説明しておるのであります。
  357. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃもう一度伺いますが、基地の提供、経済援助という場合には、それは個別自衛権になるわけですか。
  358. 林修三

    ○林(修)政府委員 そういうものは、普通は、自衛権の行使という観念とは多少違うと思います。しかし、それを集団的自衛権という内容に含めて考えれば、集団的自衛権ともいえないことはない。それは個別的自衛権などということを申し上げておるのではありません。つまり、日本の憲法上そういうことは許されておる、禁止されているものではない、こういうことを申し上げておるわけであります。それを人が集団的自衛権と呼ぶかどうかということは、これは別問題である、こういうことを言っておるわけでございます。
  359. 岡田春夫

    岡田委員 攻撃のあるなしの問題ではないのです。今、自衛権の概念を聞いているのです。自衛権の概念の中に、それではあなたの解釈から言うと、個別自衛権ではない、集団自衛権と解釈すればできるけれども、それじゃ本来は集団自衛権とも解釈できないものだ、基地の提供というものはそういう解釈もできるのだ、そういう意味でございますか。
  360. 林修三

    ○林(修)政府委員 いわゆる国連憲章第五十一条で集団的自衛権という言葉を使っておりますのは、つまり武力行使の違法性阻却の理由として集団的自衛権の行使が認められる、こういうふうに言っておるわけでございます。何といっても、自衛権という観念は、相手からたたかれた場合にたたき返すということが、中心的な概念でございますから、そういう点を中心として考えるべき問題だ。集団的自衛権ということも、中心はそういう考え方だと思います。しかし、その範囲を学者はいろいろ言うわけでございまして、その範囲を出て、たとえば、基地の提供というものも、集団的自衛権があるのだからできるのだという説明をとる人もあると思います。しかし、そういうことは、集団的自衛権があるといい、ないといっても、日本の憲法上は認められている、こういう意味でございます。
  361. 岡田春夫

    岡田委員 政府見解はどちらをとっているのですか。そういう解釈もあるというならば、どういう見解を、政府としては、はっきりとっているのです。どちらかはっきりして下さい。そういう解釈があればそうだという程度では困る。政府としてはどういう解釈をとっておりますということを、はっきりしてもらいたい。総理にはっきり伺いたいのですが、政府としては、こういう見解をとっているのですか。これを集団自衛権に含むという学説もあるのだ、そういう学説をとるならば、集団自衛権と言えましょう、こういうことを言っていますね。ところが、政府としては、その学説をとっているのですか、どうなんですか。すなわち、基地の提供は集団自衛権の行使であるという学説をとっているのですか。そうでないという学説をとっているのか、どうなんだということを伺っている。それを私は伺いたいのです。その点をさっきから言っている。
  362. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、いわゆる海外に派兵することができるかどうかという点は、これは明らかにできないということであります。それから、国内において基地を提供するとか、あるいは経済援助をするということは、憲法に許されておるのでありまして、学説上これを集団的自衛権と解釈するかしないかという、政府のこういうことの学説上の見解を、私はきめなければならぬ問題じゃないし、実質的に、どういうことができて、どういうことができないのだということをきめることが必要である、かように思っております。
  363. 岡田春夫

    岡田委員 これは総理大臣はそういうことではないと言われるけれども、自衛権の行使以外のものは、日本の憲法では認められていないでしょう。そうなれば、基地の提供が自衛権の行使以外のものであるとするならば、これは憲法違反じゃないですか。基地の提供というものを自衛権の行使の一部として、集団自衛権として解釈をとるならば、政府の自衛権の行使は認められているという、その中のものとして、当然それは、政府の解釈として筋が通ったことになる。そうでしょう。集団自衛権として、基地の提供というものを認めるという学説もあるのだ。その学説をとらなければ、基地の提供というものは、憲法上どういう意味を持っておりますか。
  364. 林修三

    ○林(修)政府委員 憲法九条一項は、御承知の通り、国際紛争を解決する手段として戦争を放棄し、あるいは武力の行使、武力による脅威を永久に放棄するということでございます。また、逆から言えば、それだけのことでございます。つまり武力行動をとる、あるいは武力を行使し、武力によって国際紛争を解決するということは、しないということでございます。それ以外に、たとえば、日本の防衛のために基地を提供する、提供しないという問題は、九条一項が直接禁止しているところではないわけであります。そういう意味で、かねてから申し上げているわけでございます。
  365. 岡田春夫

    岡田委員 これは非常にわからないのですが、憲法の九条の中において、基地の提供というものが、自衛権の行使の概念の中に入らない、こういう考え方が政府見解だ。いやそうでないというならば、どういう見解なのです。自衛権との関連において、基地の提供を御説明願いたいのです。そうして、自衛権というものに基地の提供は全然関係ないのですか。
  366. 林修三

    ○林(修)政府委員 自衛権という、ことに集団的自衛権という観念については、いろいろ学説があるということを、先ほどから申し上げているわけでございます。しかし、いわゆる自衛権というものの中心的な概念は、武力の行使に対して武力をもって防衛するということでございます。また、それが日本の憲法の九条との関係において、どの範囲まで認められるかという中心的な問題でございます。九条は、要するに戦争を放棄する、あるいは武力の行使、武力の脅威は、国際紛争を解決する手段としてはとらないということでございます。従いまして、自衛権があるということは、そういう自衛行動として武力の行使をする、相手からなぐられた場合に、自己を防衛するに必要な限度において武力を行使する、これは認められるというのが憲法九条の政府の従来の解釈でございます。従いまして、いわゆる九条との関係におきまして、どの範囲のものが認められるか認められないかという問題は、もっぱら武力行動あるいは武力の行使を中心としたものでございます。今の基地の提供、あるいは他国が侵略を受けている場合に、それを経済的に援助するという問題は、九条一項が直接に否定している問題でも何でもないわけです。九条一項の問題とは全然別問題です。従いまして、憲法九条一項によって禁止されている問題じゃないわけです。それを自衛権の範囲として説明するかしないかという問題は、これは学説にまかしていいことだ、かように考えております。
  367. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃこの点は、もう一点だけ伺っておきましょう。その学説は政府としてはとるのですか、とらないのですか、その点はどうなんですかということを、さっきからこれは何度も何度も伺っているのですが、集団自衛権の中に基地提供を含むというその学説を、政府はとるのですか、とらないのですか、どちらなのです。
  368. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、集団的自衛権という観念は、実は国連憲章ができまして初めて国際法的に、あるいは国際条約に出てきた観念でございます。しかも、違法性阻却の理由として、特に憲章の上では取り上げられております。そういうところから、主として国民の集団的自衛権という観念は、武力行使ということを中心にして考えるべき問題であることは、間違いないと思います。しかし、今申しましたように、学説としては相当広く見る人もあります。従って、日本として、そういうものを集団的自衛権の行使として説明してもいいではないかという説があるわけです。しかし、そういう学説をとれば、それは集団的自衛権がないと言う必要はない、こういうことでございまして、政府として、集団的自衛権の範囲はこれこれだということを、実は確定する必要を認めておりません。
  369. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、こういうように解釈してもいいのですか。集団自衛権に云々という先ほどの解釈は、必要と認めないからとらないという意味ですね。そうでしょう。とらないならとらないとおっしゃればいいし、とるのならとるとおっしゃったらいい。これは総理大臣に伺いたいのですが、問題は非常に明確だと思う。明確なのだが、その学説をとるのかとらないのかということを、再三さっきから伺っている。どちらなのですか、はっきり総理大臣に答えていただきたい。
  370. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどから申し上げているように、私は、これはやはり学説上議論のあることでありますから、政府としてどっちの学説をとるということをきめる必要はない。事実上こういう行動がわれわれはできる、これは違憲じゃない、こういうことは違憲だという範囲がきわめて明瞭でありますから、その場合に、あるいはその学説をとればこういう説明になるし、とらなければこういう説明になるということで、その事実自体が変わるのならこれは別ですけれども、説明の方法ですから、私どもは、今学説をとるとかとらないとかというような事柄をきめる必要はない、こう思っております。
  371. 岡田春夫

    岡田委員 ですから、総理大臣、そうおっしゃるが、これはあなたの答弁としては、はっきり食い違っているわけです。参議院の予算委員会においては、集団自衛権というものの中に基地の提供というものを含むならば、集団自衛権というものが行使されるということになる。ところが、今までの一貫した答弁では、在日米軍に対する攻撃というものに対して、日本のとるべき行動というのは個別自衛権なんだ、こう二つ答弁がはっきり食い違っているわけですね。二つはっきり食い違っているわけです。この食い違っているものに対して、政府国民に対して、どちらが正しいとあなたの方はお答えになるのですか。建前としては、個別自衛権という建前であくまでもいくというのか。基地というものを提供しているのは——現実に提供しているわけですから、これを集団自衛権として認めるという学説をとるのだとおっしゃるなら、とるとおっしゃったらいいし、とらないで、こっちでいくんだというなら、こっちでいくとおっしゃったらいいし、それはどちらかはっきりしておかなければ——二つ意見の食い違いのままで、それでいいのだ、こういう御意見なんですか、どうなんですか。この点をはっきりしてもらいたいというのが、さっきから言っているところです。
  372. 岸信介

    岸国務大臣 説明は、私ども終始一貫して、ちっとも実質的に変わってはおらないのであります。それを集団自衛権で説明することもできるし、あるいはそうでなしに説明もできるということであって、もしもわれわれが答弁をしておる事実が違うということであるならば、たとえば、一方でわれわれが海外派兵はできると言い、一方ではできないという実質が違っている、あるいは基地を提供することが違憲である、あるいは合憲であるというような食い違いがあるのなら、岡田君の言われるように問題であると思う。ただこういう事実は、われわれが一貫して申し上げている通り、海外派兵はできない、経済援助はできる、それをどう説明するかということについては、学説上、もしも集団自衛権という説はこういうものまで含むという学説もあるから、それをとれば、集団自衛権で説明してもよろしゅうございます。そうでなくて、集団自衛権ということを狭く、武力攻撃があったときに、武力でもってそこへ出かけていってやるということだけに狭く解釈するならば、そういう場合においては、集団自衛権の観念をとってこなくとも、憲法上違憲でないというわれわれの考え方でございますということを申しておりますから、実質的には、あなたのおっしゃるように、何か非常に食い違いがあるというように御説明になっておりますけれども、私は違っておらない、こういうことを申し上げておきます。
  373. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ総理、もう一度伺いますが、自衛権という場合には、日本の自衛隊か、武力攻撃があった場合には自衛権を行使する、これは国連憲章五十一条に基づく自衛権であると先ほど御答弁になりました。従って、日本の自衛隊が自衛権を行使するという場合には、これは憲章で認められ、憲法でも認められるというのが政府の解釈である。ところが、基地の提供というもの、アメリカの軍事力ですね、そこに具体的に形象化されるもの、これは、それじゃ憲法上自衛権の概念に入らないものということになりますか。そういうことになるのですね。今の総理の御答弁から言うと、自衛権の概念に入らないという、そういう解釈をとらざるを得ないじゃありませんか。どうなんですか。自衛権ではないのですか。——総理大臣答弁を基礎にして聞いているんだから、長官ではだめです。
  374. 林修三

    ○林(修)政府委員 先刻来の質疑応答でありますが、あるいは参議院の予算委員会の御質問の点でありますが、つまり事柄は、集団的自衛権という言葉だけを、何と申しますか、抽象化して、これがあるからたとえば基地の提供は認められるとか、あるいは海外派兵が認められるとか、これがないから基地の提供は認められないとか、海外派兵は認められないという問題ではないということを、先ほど来申し上げておるわけでございます。つまり、基地の提供あるいは被侵略国に対して経済的援助を与えること、これは日本の憲法上、私はどこにもこれを禁止する規定はないと思います。九条の規定から申しましても、これは全然禁止されておらないと思います。そういうものを集団的自衛権という言葉で呼ぶことを、決して私は排除するものじゃない、そういうものを目して集団的自衛権があるという説明はもちろんできる、そういうことを参議院の予算委員会で申したつもりでございます。しかし、それはいろいろの説でございまして、必ずしも集団的自衛権を援用しなくても、そういうことは説明できないことではない、かように申し上げておるわけでございます。基地の提供それ自身が、自衛権があるからできるのか、自衛権がないからできるのか、こういう問題は直接的な問題ではないのであります。自衛権の観念は、直接には、つまり自分がやられた場合にそれを排除するということでございます。その前提として、たとえば基地を提供する。これも広い意味においては、私は、自衛権の範囲として、それも説明して説明できないことはないと思います。いわゆる自衛権の中心的な問題ではない、かように考えるわけであります。
  375. 岡田春夫

    岡田委員 今の解釈では私は納得できない。自衛権の概念の中に入らない、しいて言えば、広範な、広い意味での自衛権の中に入るかもしれない、しかし本来は、日本国憲法の中で現われてくる自衛権ですね、そういう自衛権の範囲の中には入らない、そういう解釈であるという点については、私はまだこれは納得いたしません。しかし、今関連質問がございますので、石橋君から一つ関連質問を願いたいと思います。
  376. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、関連質問として石橋政嗣君より申し出があります。これを許します。石橋政嗣君
  377. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 新しい安保条約の中で一番重要な点だと思いますので、私も関連で質問さしていただきたいと思います。  今度の安保条約が、アメリカの上院においてなされておりますバンデンバーグ決議の線に沿わんとしておることは、これはまごうかたなき事実であります。すなわち、自助といわれておる面が第三条に規定されており、相互援助といわれる面がこの第五条に規定定されているとわれわれは考えるわけであります。にもかかわらず、政府は、国会を通じて国民に対して言いのがれをやっておる。五条の場合、日本国施政のもとにある領域において攻撃を受けるんだから、これはたとい米軍の基地であろうと、日本の国自体が攻撃されるのだから、集団的自衛権の発動ではなくして、個別的自衛権の発動だ、こういう言いのがれをやっておる。しかし、おそらくアメリカの方では、そういう説明はしないだろうと思う。すなわち、日本の国に対する攻撃、これがあった場合には、日本の個別的自衛権とアメリカの集団的自衛権の発動がある、米軍の基地に対して攻撃があった場合には、アメリカの個別的自衛権と日本の集団的自衛権の発動がある、そうすることによってここに相互援助というものが確保される、双務的な条約になるのだ、こういう説明をおそらくしておると思う。そうしなければ、バンデンバーグ決議の精神に沿いませんですよ。それをごまかそうとするから、こういう無理な答弁が出てくるわけです。一番顕著に現われているのは、この集団的自衛権というものが日本にあるのかないのかという、この規定の仕方の中に現われております。現行安保条約ではこういうふうに書いてあります。「平和条約は、日本国が主権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有することを承認し、さらに、国際連合憲章は、すべての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を着することを承認している。」こういうふうに規定しております。私個人の見解としては、集団的自衛権というものを固有の権利とは考えておりません。これは法定の権利にすぎない。自然法的な権利ではないと私は考えておるが、それはさておきます。  今度の新しい条約では何と書いてあるか。これと対応するところでございますが、同じく前文に、「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、」と書いてあります。ここに重大な違いがあるのです。前の条約では、国連の憲章がそういうものを認めているのだとばく然と書いてある。だから日本自体は、あるのかないのかということは、ぼかしてあります。おそらく、あるというふうに考えておったとは思わない。国連憲章そのものには、あると書いてある。しかし、日本は当時国連にも入ってない。また、憲法九条の規定もある。だから、持っているか持っていないかは、ばく然たる内容にしてあるわけです。ところが、今度の新しい条約はそうじゃございません。明らかに、米国も日本も、この国連憲章に定めておる集団的自衛権を持っておると書いてある。片一方で持っておると書いて、そして五条では、その集団自衛権の発動ではないとなぜ逃げるのですか。ここに問題があると思う。ここにごまかしがある。この五条の米軍基地に対する攻撃は、これは明らかに集団的自衛権の発動、こういうふうに解釈しなければつじつまが合いません。その点、もう一度、間違いないか御確認を願いたいと思う。
  378. 岸信介

    岸国務大臣 この同じような文句は、御承知のように、サンフフンシスコの平和条約にも、あるいは日ソ共同宣言にも使われております。日本が主権国として、独立国として、国際法上、国連憲章五十一条による個別的並びに集団的自衛権を持っておるということは、これは私は疑いない事実であろうと思います。これが日本の国内法である憲法によってどういうふうに規定されているかというところに、特殊の問題が、日本に限ってあるわけであります。われわれは、日本の憲法九条というものの規定から考えまして、国連憲章五十一条の集団的自衛権が国際法上ありと認められておりましても、海外へ出て締約国もしくは友好国の領土を守るということは、日本ではできない。こういう意味において、われわれは、いわゆる集団的自衛権の最も典型的なものを観念上は持っておるけれども、事実上これは行使できない。その行使できない権利は、持たないという説明をするわけであります。しかし、条約五条の場合において、われわれが武力行動をする場合は、いかなる場合においても日本施政下にある領域が、領土が武力攻撃を受けた場合でありまして、その領土というものは——あるいはその領土の中に米国の基地を許しておりますから、基地である場合もありましょうし、大部分はそうでないことはもちろんのことでありますが、そういうものが武力攻撃を受けた場合において、日本が、固有の個別的自衛権でこれを防衛するために必要な武力行動をするということは、私ども、憲法の九条で認められておるところの個別的自衛権の発動として十分説明できることであり、また、そういう考えでこの条約を結んでおるわけでございます。
  379. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 ちょっと横道にそれますが、この新しい安保条約は、双務的な条約になっておりますか。かねがね、現行安保条約は自主性が著しく欠けている、片務的である、だからこれを改定して、自主性を確保し、双務的な条約にすると再三おっしゃっておられましたが、その双務性は確保できておりますか。
  380. 岸信介

    岸国務大臣 要するに、私どもが言っておる双務性という問題は、従来、現在の安保条約のもとにおいても、日本の大事な領土を基地として使用を認めるという、日本としては義務を負うておるが、その反面において、アメリカ日本を防衛する義務を明確にしておらない。この点を明確にすることにおいて、日本は基地を提供しておるけれどもアメリカとしては、日本武力攻撃を受けた場合には日本を防衛する義務を負うということにおいて、われわれは双務的ということを申しております。決して他の条約のように、私どもは、すべての義務というものが同じような内容を持っておるものと考える必要はない、こう思います。
  381. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 いずれ私の質問のときにその点は反駁しますが、それじゃ、総理の考え方は、日本の方は米軍に基地を提供する、こういう義務を持っておる、アメリカの方は日本を守る義務を持っておる、これでバランスがとれておる、そういう意味で双務的だ、こうおっしゃるのですね。それではお伺いします。基地を提供するという。米軍が基地を使用する権利を持っておる。ところが、日本としてそれを義務と感ずるためには、アメリカ立場から言えば、日本防衛のために基地を使用する面は考える必要はありませんね。すなわち、極東の安全と平和のために日本の基地を使用できるということと、アメリカ日本を守ってやるということとバランスがとれるのであって、日本を守ってやるということ、そのために日本の基地を日本が提供するということと、どうして、バランスがとれますか。その点いかがです。
  382. 岸信介

    岸国務大臣 バランスとかなんとかおっしゃいますけれども、私どもが、従来、現行の安保条約が片務的であって、これを双務性を持ったものに改めたい、われわれの自主的立場から申して、そういう国民の願望を分析してみますと、従来基地を提供しておる日本としては、そういう義務を負担しておるにかかわらず、アメリカとしては、防衛するかしないかということについて、明確に防衛する義務を負う——防衛することができるというようになっておりますけれども、はっきり義務というふうに明定されておらないということでありまして、何もこれはどちらが多いとか、どこにバランスがあるとかいうような、はかりにかけるような性質のものではなくして、問題は、われわれはこういう義務を持っているにかかわらず、いざという場合に、アメリカが明確に日本を防衛するという義務が明定されてないというところに、国民の非常な不満があったわけでありますから、それを今度の条約において明らかに明定する、こういうことであります。
  383. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 新しい条約で初めて双務性が確保できると総理はおっしゃる。どういう形で双務性が確保できるかとお伺いしたら、日本は基地提供の義務を持っておる、アメリカ日本防衛の義務を持っておる、だから、今度の新しい条約で初めて双務的になったのだ、こうおっしゃるわけです。そうなんでしょう。それでは、日本の義務、日本が基地を提供しておるという、これを義務として感ずる、アメリカはこれを権利として感ずる、これは間違いないですね。日本が義務として感ずる、アメリカは、基地を日本から提供してもらうという権利ですよ。これを権利というためには、日本を守ってやるために基地を使うというのが、アメリカの権利ですか。そんなばかなことはないじゃないですか。極東の安全と平和のために、これを維持するために日本の基地を使う、その権利を持つこと、これで初めて権利と言えるのでしょう。日本を守るために日本日本の基地を提供して、アメリカでそれを権利だ、日本にとっては義務だ、そんなばかな考え方は世界じゅうどこで通りますか。私の言っておることは、総理はおわかりだと思いますが、どうですか。
  384. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、日本の領土内に外国の軍隊を駐留せしめる基地を提供する、基地の目的は、日本の安全を守るということと、極東の国際的平和と安全に寄与するという、二つあるわけでありますけれども、そういう目的を持った基地を提供するということは、日本としては、本来を言えば、日本の主権の範囲内であって、これはもちろん、その基地においても日本の主権は行なわれておるわけでありますけれども、いろんな意味において制限を受けておる。そういう状態を作り上げるということは、これは日本の負担であり、また、そういうことができるということは、アメリカとしては権利として、反面的に考えるだろうと思います。これは当然だと思う。日本としてはそれを提供する義務を負うておるのに対して、アメリカ側がそれではどういう義務を負うかと言えば、今度の五条において、明確に日本を防衛する義務を負うということを明定して、いわゆるわれわれが不満としておった片務性ということを双務性にした、こういうことでございます。
  385. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 アメリカの側から私は見たわけですよ。アメリカの方が権利と感ずるためには、日本を守るために日本の基地を提供してもらったって、アメリカは、自分は権利を確保したとは思わない。これは極東の安全と平和の維持のために日本の基地が使用できると思えばこそ、権利として考えているわけなんです。ここのところがどうも歯車が合わぬようです。私は、その点で結論的に申し上げますと、日本アメリカに防衛の義務を負わした。これは一〇〇%負わした。ところが、基地提供の方は事前協議でチェックできるんだ。アメリカの方の権利だけチェックできて、日本の方の権利は一〇〇%アメリカに実行させる。そんな双務性というものはないということです。これは後日、私のときにゆっくりやります。  そこで、本論に入りますが、大体集団自衛権の発動ということが憲法に違反する……。(「関連質問に本論があるか」「自分の持ち時間にやりなさい」と呼ぶ者あり)横道にそれますがと言うてあるじゃないか。当初この新しい安保条約を、米比、米華、米韓相互防衛条約、こういう形のものにしようという動きがあったときに、法制局は、それはできぬ、集団的自衛権というものは日本の憲法上これを許されぬ、こういう見解を述べたことがございます。昭和三十三年十月十六日です。これは産経新聞を引用いたしましょう。このときにそういう見解を述べておられます。憲法上、集団的自衛権を持つことはどうも困難がある、これを持つというふうな見解をとることには困難がある、こういう意見があるということを当時報道されました。ところが、後日外務当局と事務当局といろいろ話をする中で、持てないということでは非常に改定交渉に難があるということから、非常に無理な解釈がとられてきたと私は思うのですが、それもさておきます。私が具体的に聞きたいのは、まず第一に、しからば、この集団的自衛権というものの定義をまずお聞きしたい。法律上明確な定義を一つお聞かせ願いたい。
  386. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 憲章第五十一条の規定でございますが、ある国が武力攻撃を受けました場合に、第三国と申しますか、武力攻撃を自身受けていない国が、武力攻撃を受けた国に対して武力をもって援助することである、このように考えております。
  387. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 日本は特殊な憲法を持っております。憲法第九条。この第九条がいつも問題になるわけです。しからば、今条約局長が述べましたそういう集団的自衛権というものを、どこをどう押したら日本の憲法が認めているのでしょうか。他国に対する攻撃をみずからに対する攻撃とりみなすという思想が、一体憲法九条のどこを押したら出てくるのですか。憲法の九条、自衛権は固有の権利としてあると常々言われておる。しからば、その自衛権の裏づけとなる実力というものは、認められるのか認められないのか。われわれは認められないと言っている。しかし、皆さん方、政府・与党は、認められると言っている。しかし、認められるといったって、それには限度があるだろうと言ったら、限度がある。どういう限度があるかと言えば、先ほどもどなたかおっしゃっておったが、急迫不正の侵害が行なわれたという場合、他に適当な手段がないという場合、必要最小限度の措置をとるという、この三つの限度があると歴代内閣は異句同音に唱えて参りました。この三つの限度のどこに、他国に対する攻撃まで自国に対する攻撃とみなすなどとという思想が入ってくる余地があるのですか。急迫不正の侵害というのは、自国に対する急迫不正の侵害ですよ。他国に対する急迫不正の侵害を、なぜ自国に対する武力攻撃、侵害とみなすことができるのか、明確にお答えを願いたいと思う。
  388. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点は、かねて申し上げております通りに、憲章五十一条にいうような意味の集団的自衛権の行使、これは具体的に言えば、結局いわゆる海外派兵と申しますか、今石橋委員のおっしゃったような問題になってくると思います。こういうものは、日本の憲法上は認められないということは、かねて申し上げておるつもりでございます。ただ、蛇足かもわかりませんが、集団的自衛権という言葉の意味につきましては、いろいろ広狭——広い意味に使う人もあり、非常に狭く使う人もあるわけであります。従って、国際法的な集団的自衛権というものが日本に絶対にないというのは——これは国際法的には私はあると思います。それから集団的自衛権マイナス五十一条の集団的自衛権イコール・ゼロかというと、必ずしもそう言い切る必要もないのではないか、こういうことを先ほどからお答え申し上げておるわけであります。
  389. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そういうことを言えば、集団的自衛権というものは、固有の権利じゃないということになるじゃありませんか。国と国との契約によって初めてできる権利であって、そういうものを固有の権利などと言えないじゃありませんか。固有の権利というからには、固有の権利、そのワクの中から説明して下さいよ。
  390. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの固有の権利でございますが、これも学説上の問題でございます。御指摘のように、集団的自衛権というのは、憲章第五十一条で初めて創設された権利ではないか、従いまして、ここの固有のという、インヘアレントという言葉でございますが、これは従来の個別的自衛権に関して使われる言葉であって、この集団的自衛権の問題ではないではないか、ここには使われるべきではない、こういう学説が考えられております。従いまして、先ほど御指摘になりましたように、この固有のというのは、当然国家として昔から持っているというのではなくて、非常に重要な権利である、そういうふうな意味合いで固有というのを解釈すべきである、そういうふうに一般に解されていると考えております。
  391. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうおっしゃったって、新しい安保条約には、「個別的又は集団的自衛の固有の権利」と書いてある。この「固有の権利」は、両方にひっかかっておりますよ。どうひが目で見たところで、これが個別的自衛権にだけひっかかっているという解釈が、どこから成り立ちますか。それは条約局長、おかしいですよ。
  392. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ですから、この固有という解釈の問題といたしまして、それをいわゆる本来通りインヘアレントと申しますか、固有というふうでなくて、そういうふうな問題が起きますから、憲章第五十一条の固有という言葉は重要な権利だ、そういうふうに解すべきである、これが一般の学説上も解されているところである、このように考えるわけであります。そして、そのままそれを新安保条約の前文にとった次第でございます。
  393. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうすると、集団的自衛権というものは観念としてある、あるけれども、これの裏づけとなる行動は非常に制約を受けている——私は、制約を受けているなどというものじゃないと思うのです。ないのです。観念としてはあるけれども、実際には裏づけがないのです。何があるのですか、何かさっき妙なことを言っておられましたが、集団的自衛権というものはあるが、その裏づけは非常に制約される、海外派兵はできない——よその国を援助するといっておって、海外派兵もできない、そんな権利がありますか。一体何がありますか、はっきりもう一ぺん言って下さい。
  394. 林修三

    ○林(修)政府委員 つまり憲章五十一条にいう集団的自衛権の行使、これは中心としての概念は、他国——自国と歴史的、あるいは民族的、あるいは地理的、あるいは条約上、そういういろいろな関係かございましょうけれども、そういう関係にある他国武力攻撃を受けた場合に、それを自国が受けたと同様に見て、その他国を防衛する、武力をもって防衛するということが、国連憲章上違法な戦闘、戦争とは認められないというのが、国連憲章五十一条の意味だと思います。集団的自衛権、ここで言っておる集団的固有の自衛権というのは、そういう意味においては、武力行動を中心とする概念であることは間違いございません。しかし、そういう意味武力行動は、日本の憲法上は認められないということを先ほどから申し上げておるわけでございます。しかし、先ほど来申し上げておる通りに、学者によっては、あるいは一般の説によっては、集団的自衛という観念を、もう少し広く広げて解釈している人もあるわけであります。そういう意味にいろいろのものが含まれてくる。たとえば、基地提供とか、あるいは他国が侵略された場合に、それを経済的に援助するとか、こういうことも含まれてくるという説もあるわけでございまして、そういうものも集団的自衛権と呼べば、日本の憲法上それをどこも排除しているものはない。こういうことを先ほどから申し上げておるわけでございます。
  395. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 本来、この集団的自衛権というものを厳密に解釈していけば、まず、地理的な条件も入るのですよ。非常に地理的に近接している。だからよその国ではあっても、そこが攻撃された、そういうことが、やがて自分の国にも影響を及ぼす。そういうふうな可能性も考えられる場合に、初めて集団的自衛権というものが考えられる。だから、そういう点から言ったって、非常に無理がある。今の法制局長官答弁によると、たとえば、基地を貸すということもこの自衛権の中に入るのだ、そういう学説があるとおっしゃるが、おそらくあなたの林学説でしょう。そんな学説、聞いたことありませんよ。それじゃ林さん、私お聞きしますが、あなたはこういうことを言っておられます。すなわち、個別的自衛権の場合、まあわれわれも含めてあなたにやゆされているわけですが、進歩派の学者や野党の人たちは、自衛権は否定しないが、警察力以上の自衛力を持つことは一切否認されるという考え方をしているね。これでいけば、自衛権はあっても、自衛権を行使する手段は何にもないということになる。この人々は、こういう考え方に矛盾を感じていないのだろうか、こういうひやかしをやっておられます。いいですか。今あなたがおっしゃるような程度のものまで自衛権に入るならば、何も自衛権というのは、実力を持つことのみではないじゃありませんか。いろいろあるじゃありませんか。私たちの見解も支持されていいはずじゃありませんか。集団的自衛権になると、本来の海外派兵というような裏づけは持てません。非常に、あるかないかわからないような程度のものがあると、こうおっしゃる。個別的自衛権の方になると、いたけだかになって、自衛権がある以上実力があるのが当然だ、こういうことを言っておられる。その点、つじつまが合わないじゃないですか。
  396. 林修三

    ○林(修)政府委員 自衛権という観念は、これは個別的自衛権ということが中心の——歴史的に申しましても、実は中心と申しますか、本来の発生的なものだ、かように考えます。その意味の自衛権は、他人から自分がたたかれたら、あるいは自分が権利を侵害されたら、それを防衛するのに他に手段がない場合には、相手方に対して必要最小限度の実力を行使する、これが中心的な概念でございます。そういうものがあるかないかということが、憲法第九条の解釈として、一番中心の一つの問題でございます。そういう意味の自衛権がある。あるという以上は、そのために必要の最小限度の実力を持つことも憲法が禁止するところではない、かように従来考えておるわけでございまして、今私の書きましたことについてお読み上げになりましたが、その前後の関係をよくごらんになれば、決して、今石橋委員が仰せられたような趣旨で書いていることでないことは、御了解がいくと思います。
  397. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 前後も何も熟読翫味した結果言っているのですが、そういうことを言っておれば時間がかかりますから、しからば、この新しい安保条約で、前文において、日本の国も、国連憲章に定める集団的自衛権の固有の権利を持っておることを確認しておられます。さて、それじゃこの各条文の中で、この集団的自衛権の裏づけとなるものが何かありますか。
  398. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 この前文は、日本が国連加盟国といたしまして、国際法上、固有の権利として——固有と申しますか、集団的自衛権権利主体である、すなわち、国連加盟国としてこの権利を享有するものであるということを、はっきりうたっておるわけでございます。ただ、それではこの権利によって、この権利を援用して正当化さなければならないという行動が、個々の条文のどこにあるかと言えば、それはございません。
  399. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それじゃ、この基地提供なども、これも決して集団的自衛権に基づくものじゃない、こういうことですね。
  400. 林修三

    ○林(修)政府委員 五十一条の集団的自衛権という言葉を援用しなければ、正当化されないようなものではない、そういう意味でございます。
  401. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 次々と答弁されるのはいいけれども、一貫して下さいよ、お二人違うのだから。条約局長は、基地提供やら経済援助やら、いろいろありますと、こう先ほどおっしゃっておるから、しからば、そういう集団的自衛権という、あなた方の言う海外援助ではない、ほかの裏打ちです、そういうものがこの条文のどこかに入っておりますかと言ったら、条約局長はないと言ったのですが、ほんとうにないのですかと、私は局長に確かめておるのです。
  402. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 そうなりますと、またさっきの問題の概念の繰り返しになるのではないかと思います。集団的自衛権という概念は何であって、それに何を含ませるかという問題になりますので、そこで、その集団的自衛権の先ほどの解釈で、ある国が武力攻撃を受けた場合に、自国が武力援助におもむくのが集団的自衛権である、こういうふうな、それのみがそうであるという見解に立てば、先ほど私が申し上げた通りでございますが、それ以外の場合においては、また先ほどの御議論の繰り返しになると考えるわけでございます。
  403. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それでは、繰り返しにならぬように、総理と私は質疑応答をやりましょう。集団的自衛権というものを日本は持っておる。憲法上も認められておる。ただし制約がある。どういう制約かと言えば、海外派兵ができぬという制約がある。私たちは、海外派兵もできぬような集団自衛権というようなものは認めておりませんが、しかし、一歩譲って、そういうものがあると仮定しましょう。あなた方がおっしゃるように、海外派兵に及ばざる集団自衛権というものがある。たとえば基地提供とか、あるいは経済援助とか、補給とか、あるいはその補給の護衛とか、いろいろあるのでしょう。そういう海外派兵に及ばざる、その他のいわゆる集団自衛権の裏づけとなる面が、この各条文の中にどこかに入っておるかどうか、こういう質問でございます。
  404. 岸信介

    岸国務大臣 さっきから御答弁申し上げておる通り日本国際法上、個別的自衛権並びに集団的自衛権を持っておる、国連加盟の独立国として、主権国として国際法上持っておると観念することは、私は当然であると思います。しかしながら、それが日本の持っておる特殊の憲法から見て、いわゆる集団的自衛権の典型的な場合であるところの国連憲章五十一条の、それでは権利の集団自衛権の裏づけがあるかと言えば、私はないと思います。従って、そういう意味において、集団自衛権の裏づけがあるかないかは別として、国際法日本が、それじゃ集団自衛権は他の国が持っておるけれども日本は持たないのだ、こう観念することは、私は適当でない。やはり観念としては、国際法上は持っておる。しかし、日本の憲法上、そういう他国に出て行く海外派兵はできない、こう私は考えております。それから基地の提供であるとか、あるいは経済援助というものを、集団自衛権の範囲に属せしめて説明をしている学説もあるように聞いておりますが、私どもは、そういう学説をとるとかとらないとかいうことについて、先ほどからいろいろ御質問がありましたが、そういうことではなくして、学説についてはまた学説として、ただ考えておけばいいのであって、実質の問題として、それでは基地の提供やあるいは経済援助というものが、日本の憲法上できるかできないかということについては、われわれはできる。従って、それを、もしも集団自衛権を広く解釈する学説をとるならば、集団自衛権で説明もできましょう。狭く、さっき申したように、五十一条だけに限定して考える説をとるならば、それは集団自衛権にはなりませんけれども、われわれは日本の憲法上できる、かように解釈いたしております。
  405. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私がお伺いしているのは、そこまでは十分わかった。わかったけれども、そのあなた方が広く解釈するやつ——私たちは認めませんが、しかし、今総理のおっしゃった広く解釈する集団自衛権というものがあるとする。それは憲法上も認められておる。その認められておる分でいいですよ。その広く解釈された集団的自衛権の裏づけとなるもの、それがこの条約の権利なり義務なりとして、この条文の中に織り込まれておりますか。基地提供であるとか、あるいは経済援助とか、そういうふうなものが、日本の義務としてあるいは権利として、集団自衛権の広く解釈された裏づけとして含まれておりますかと、こう聞いておるわけです。
  406. 岸信介

    岸国務大臣 法律的な解釈でございますから、法制局長官答弁させます。
  407. 林修三

    ○林(修)政府委員 ……
  408. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私は法制局長官に聞いていません。
  409. 小澤佐重喜

    小澤委員長 総理が答弁いたしました。法律問題であるから、法制局長官にさせます、と言っております。
  410. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それじゃ私が発言します。引き続いて質問します。法制局長官には何回聞いても同じなんだから……。私と総理との間には全然争いはない、一致しているのです。だから質問を続けますよ。
  411. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ただいま林法制局長官に発言を許しております。
  412. 林修三

    ○林(修)政府委員 集団的自衛権の観念に広い意味と、あるいは狭い意味という見解があるわけでございますが、まあ広い意味見解をとりました場合においては、たとえば、この条約第六条において施設区域を提供しております、その施設区域は、いわゆる事前協議条項の活用によって、第五条の場合以外の目的の戦闘作戦行動、こういう場合に使われる、こういう広い意味見解をとるものから言えば、集団的自衛権という観念の中に入るのじゃないか、かように考えております。
  413. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それじゃ総理に、今法制局長官がおっしゃったことを確認していただきたい。広い意味の集団的自衛権、その中に基地提供とか、経済援助とか、いうものが含まれる、そういう解釈をとるならば……。     〔発言する者あり〕
  414. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  415. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そういう解釈をとるならば、この六条などは一つの例である、ここにありますと、こういう法制局長官答弁でございますが、総理、御確認になりますか。
  416. 岸信介

    岸国務大臣 さっきからしばしば申し上げている通り、そういう解釈をとるかとらないかということは、私ども、前提としてはっきり申し上げてはおりません。しかし、今、一つの前提として、石橋君の言われるように、集団自衛権というものを広く解釈する学説をとるとするならば、今の基地提供というものを含む。従って、六条の規定がそれに含まれるというような解釈もでき得るわけであります。
  417. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 非常に重大な問題です。それじゃお伺いしますが、集団的自衛権の発動の一つの裏づけとして、非常に拡大解釈して、基地提供というものが含まれるという解釈をとるならば、一つの例が六条でございます、こうおっしゃっている。しからば、日本アメリカ条約で、集団的自衛権というのも日本アメリカ関係です。アメリカに対する攻撃、これがあって初めて集団的自衛権を発動するのです。どこに対する攻撃で六条が発動するのですか、この点をお伺いします。
  418. 林修三

    ○林(修)政府委員 六条の発動という意味がよくわかりませんけれども、先ほど私が申し上げました——一般的な問題を申し上げたわけではございませんで、先ほど申し上げましたように、つまり事前協議の交換公文がございますが、あの条項の運用によりまして、第五条の場合以外において米軍がいわゆる戦闘作戦行動をとる、施設区域を使って。そういう場合は、広い見解においては、その施設区域の使用はあるいは集団的自衛権という見解に入るかもわからない、こういうことを申し上げただけであります。そういう場合においては、それを集団自衛権の範囲と解釈する説もありますが、しかし、必ずしもそう、集団的自衛権の行使だから、これがいわゆる五十一条によって日本施設区域の提供が正当視される、そういう問題ではございません、これは毎々申し上げている通りでございます。
  419. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 まともにお答えになっていただきたいと思います。あなた方が説明されてきたことを、私は全部受け入れて、その上に立って質問しているのですよ。集団的自衛権というものは、国連憲章でも認められておるし、日本国憲法においても認められておる、しかしながら、この日本の憲法九条によって、集団自衛権というものが、残念ながら全面的に発動されない、裏づけとしてあるものは、海外派兵なんというものではない、基地の提供とか、経済援助とか、そういう程度のものしかできない、こういうお答えだった、広く解釈すると。しからば、その広く解釈する集団的自衛権の裏づけとなる条文がどこにあるか、私が聞いたら、六条にあります、六条の基地提供というのがその裏づけの一つでございます、集団的自衛権を広く解釈したときの一つの裏づけでございますと法制局長官答弁し、それを岸総理が確認した。そこで私が、集団的自衛権の発動の裏づけとして六条があるというならば、当然アメリカに対する攻撃の裏づけとしてある、こう解釈しなければ、この日米の安保条約の中で集団的自衛権というものは言えないじゃないか、アメリカに対する攻撃というのは、それじゃ一体どこにあるのですか、こう聞いたら、総理は答えない。アメリカに対する攻撃というものがあって、初めて日本は集団的自衛権が発動するんじゃないか。だからアメリカに対する攻撃というのは一体どこにあるのですか。ないじゃありませんか。
  420. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、この広い見解をとるかとらないかということを前提としての今の仮説の御議論でございます。そうしてわれわれは広い解釈をとる場合におきましても、その裏づけとして云々というような言葉を使って、これに該当する場合があるのではないかという意味のことを申し上げております。大体われわれの解釈としては、最初に条約局長お答えを申し上げましたように、この安保条約において、集団的自衛権で説明しなければならぬような条項はございませんと申し上げているのが、政府の従来とっておるなにであります。ただ、石橋委員からの質問は、一つの仮定を置いて、こういう場合においてはそういうものが入るかという点が、先ほど来問題になっておるわけでございまして、その点については、従来われわれが申しておるような基地提供というような場合において、そういう、法制局長官が説明いたしましたような限定した場合においては、そういう広い意味に解釈する学説に立つならば、そういうことに当たる場合もあるだろう、これが政府見解でございます。
  421. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 条約局長にお伺いして、条約局長答弁したのは、狭く考えた場合ですよ。海外派兵というものが集団的自衛権の裏づけと考えた場合には、ございません、こう答えた。それで、今度は広く解釈した場合、すなわち、集団的自衛権の裏づけとして、単に海外派兵だけではなしに、いわゆる経済援助とか基地提供というものが全部含まれる、こういう広い解釈をとったらどうかと聞いたら、今度は林長官は、それはある。それはどこにあるかと聞いたら、六条にある。六条にあるとおっしゃったから、総理、御確認になりますかと言ったら、確認するという。だから、狭く解釈したら、高橋条約局長の言うように、ない。これは私は認めます。狭く解釈したら、海外派兵ができるということは、どこにもない、これは認めます。だから、集団的自衛権が前文にあると書いてあるが、これは観念論であって、観念としてあるだけで、裏づけは全く白紙、空文というか、こういうのが高橋条約局長の解釈、しかし、広く解釈した場合には、ある、こういう解釈なんです。その広く解釈した場合に、あるというのが、六条。六条にある以上は、広かろうが狭かろうが、六条に裏づけが出てきたのであるから、そうすると、アメリカに対する攻撃というものがなければ、集団的自衛権というものの発動はないわけです。     〔発言する者多し〕
  422. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  423. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 アメリカに対する攻撃というものがなければ、集団的自衛権というものの発動がないわけです。だから、この新しい安保条約に基づいて、どこにアメリカに対する攻撃というものが規定されておるのですか。あなた方の答弁に応じて再度の質問をしているのです。総理、お答え願いたい。あなたには何回聞いたって、一緒だ。
  424. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほども申し上げております通り、私は一つの仮定を置いて御答弁しているわけでございます。仮定を置いての問題についても、第六条をそのまますべて言っておるわけではございません。つまり、事前協議条項によって云々ということを申し上げた。この点をよく御理解願えば、私の申し上げておることはわかるはずでございます。事前協議の対象となりますのは、つまり、アメリカが、第五条の規定による以外においていわゆる戦闘作戦行動をとる場合には、事前協議の対象とするとなっております。つまり、それは米国が国連憲章の範囲内において、自国の、あるいは極東における沖縄とか、そういうところが攻撃を受けた、そういう場合に、アメリカが五十一条の行動をとる、あるいは国連の安保理事会では、総会の決議に従っていわゆる警察的な行動をとる、こういう場合の基地に施設区域を使うというのが、事前協議の対象でございます。そういう場合に、日本施設区域を貸している状況が、いわゆる広い意味で解釈すれば、集団的自衛権の発動と見られるかもしれない、こういうことを申し上げただけでございます。そのことを御理解願えば、私どもの申し上げた趣旨はおわかりかと思います。
  425. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 事前協議なんて、あなたはいつおっしゃいましたか。事前協議と書いてあるのは、六条ではございませんよ。法律家なら法律家らしく、もう少し厳密に言って下さい。六条のどこに事前協議が書いてありますか。
  426. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは速記録をごらん願えば、はっきりしております。私は、二回にわたって、事前協議ということを申し上げております。
  427. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 どうも今になって言いのがれをしておられますから、これは一つ委員長の方で速記録を調べていただきたいと思います。何度申し上げても、逃げ口上をおっしゃる。それは集団的自衛権というものを狭く解釈すれば、この新しい安保条約には全然裏づけとなるものは一切ない。観念として前文に書いてあるだけで——これならこれでわかるんですよ。海外派兵ができない。海外派兵ができない以上は、集団的自衛権というものはあるけれども、それは絵にかいたもち、前文には、あると書いてあるが、中身は一つもない、裏づけは一つもない、その点は、高橋条約局長が確認した通り、これは間違いないですね。これはアメリカでも問題になると思いますよ。集団的自衛権が、前文には、あると書いてあるが、その裏づけとなるものは、この条約の中には何もないですよ。狭く解釈すれば、何もない。この点では争いがないようです。それで、狭く解釈すれば、何もなさ過ぎる。一つ広く解釈しようということになったらしい。それで、その広く解釈すると、一体どういうものが入るのですかと私は尋ねておる。海外派兵のほかにどういうものがあるのですかと尋ねておる。それに対して、基地提供とか、経済援助とか、そういうものが入るとおっしゃった。それでわかりました。広く解釈すれば、そういうものまで集団的自衛権のワクの中に入るのでございますね。しからば、その広く解釈した集団的自衛権が、一体条約のどこに裏づけとして織り込まれておるのですかと聞いたら、林長官、今度は、六条に入っております、こう答えた。それで岸総理に、御確認になりますかと言ったら、確認すると言った。そこで、広く解釈をとった場合に、六条にあるという。六条で、アメリカに対する攻撃が行なわれた場合に、日本が基地提供という義務を持つことになる。こういうことになる。そうすれば、アメリカに対する攻撃という、こういう観念は、この条約のどこから出てくるのですか、こういうところにずっといくのは、あたりまえじゃありませんか。何回言ったって、これ以上のことは言えません。だから私は、それに対してのお答えを願えばいいわけです。答えられないというのならば、そんなことを言っていないというのならば、速記録を直ちに調べてもらうことを要求いたします。
  428. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどから何回も私は御答弁しておるつもりでございます。つまり、事前協議適用によって、日本区域外において米軍米軍自身に対して攻撃があった、あるいは国連憲章の趣旨に従って行動する、そういう場合に、第六条の、日本施設区域を使用する状況を、広い意味において言えば、あるいは集団的自衛権の行使というふうに見る学説もございましょう、こういうことを何回も申し上げております。
  429. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それでは、私は関連ですから、速記録を拝見さしていただいて、続けることにいたします。
  430. 岡田春夫

    岡田委員 先ほどからの自衛権の問題については、いまだに政府答弁が明確でありません。たとえば、今までの問題を一、二整理いたしましても、最初に、自衛権の概念について、高橋条約局長は、国連憲章五十一条で規定している自衛権の行使以外の自衛権の行使というものがあり得る、こういう御答弁をされました。これは私にとってきわめて重大な答弁であると思います。この点についてもあとで私はまた質問を継続いたしますが、この点は留保いたしておきます。  それから第二の点は、先ほどから大へんに問題になっております、日本にいる米軍、略して在日米軍と簡単に言いましょう。この在日米軍に対して他の国が攻撃を加えた場合、この攻撃に対して日本がとる行動というものは、在日米軍日本の国内にいるものであるから、従って、攻撃のあった場合には、日本の国としては領土、領海、領空を侵害されたものとして、個別自衛権の行使をすると解釈すべきである、このように総理大臣答弁をされた。これは解釈の問題です。しかしながら、ここで法理論という限りにおいて、やはり観念上の問題としていろいろ論議を進めていかなければなりません。そこで、観念の問題としては、在日米軍という別な観念があるわけです。これは日本の主権の及ばない概念であります。日本の主権の及ばない在日米軍に対して攻撃があったときに、確かに日本の領土、領空、領海を侵害した、これはその通り。しかしながら、在日米軍という、日本の主権の及ばない別な国の主権、これに対する攻撃、それ自体に対する攻撃というものに対しては、あなたの方が個別自衛権の解釈しか適用しないのだ、こうおっしゃるならば、在日米軍に対してこれを守る、第五条において、在日米重に対する攻撃というものは、「自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め」、すなわち、レコグナイズという意味は、本来主権の及ばない別のもの——自国の、日本の国の平和、安全を危うくすることをレコグナイズして、そうしてこれに対して共同の危険に対処する行動をとる、このように条約上、明文で明らかになっている。この米軍に対する——主権の及ばない概念ですね、これに対する攻撃に対しては、個別自衛権をもって防衛するということは、いかにあなたの方が解釈をされても、言い得ない。あなたの方の解釈としては、これは出てこないと思う。領土、領空、領海というものを侵害する、その過程に対する個別自衛権の行使というものはあり得ます。これは解釈論として言うならば、あなたのお説の通りです。しかし、主権の及ばない別なものに対して、共同の危険に対処して行動をするという、しかもこのことは、自国の安全を危うくするものであるということを認めて対処するという限りにおいては、集団自衛権が行使されない限りにおいては、その概念というものは出てこない。これはどのように解釈しても出てこない。そこで一方において、あなたの方では、矛盾したというか、制限された面があるわけですね。日本の憲法というものがある。日本の憲法というものは、先ほどの御答弁からすると、この条約においては、集団自衛権というものを、概念としては、日本の国は持っているとしても、それを行使する場合においては、日本の憲法の制限の規定があるから、先ほど岸総理大臣の言われた言葉をそのままとるならば、集団自衛権の行使の典型的な例である海外派兵というものは認めないのであるから、従って、その典型的な例である集団自衛権というものは認められない。しかし、概念として私が先ほどから質問しているのは、参議院の予算委員会において、典型的な形は海外派兵であるけれども、基地の提供、経済援助、これを集団自衛権、このように解釈をしていくならば、これに対する集団自衛権の行使というものは認められる、こういう答弁を実はされたわけなんです。そこで私が伺っていることは、それではあなたはこの学説をとるんですか、こう聞いた。そうしたら、そのとるか、とらないかということは、要するに重要ではないから、言えない、こういう御答弁ですね。そこで問題になるのは、先ほどから申し上げたように、五条に規定をしている外国の主権に対する攻撃に対して、日本行動をとり得ない、ただ、日本の領海、領土、領空のみにおいての個別自衛権の行使しかとり得ないのだ、こういう答弁と、先ほどからお話になったこの答弁との間に食い違いが出てきているわけです。なぜならば、こちらで言えば、集団自衛権というものはあり得ないのだ。     〔「そんなことはない、海外派兵だけができぬというのだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  431. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  432. 岡田春夫

    岡田委員 今雑音で言う通りに、海外派兵以外はできるのだという解釈を、政府がとるならとるとおっしゃいということを、さっから聞いている。その点、とるか、とらないかは言えないというから、われわれは、石橋君も私も何度も何度もこれを聞いている。今、鍛冶君の言ったように、それはあるのだというならばある、行動できるのだ、こうおっしゃるなら、それはできるのだ、それを答弁なさいというのが、さっきからわれわれが何度も聞いている点なんです。それをなぜ岸総理大臣ははっきり答弁なさらないのですか。鍛冶君の言う通りなんですよ。その点をはっきり言いなさいと言っているのです。
  433. 岸信介

    岸国務大臣 さっきから繰り返して申し上げておるように、私どもは、政府として、どういう学説をとるということをこの際申し上げる必要はない。私どもの言っていることは、こういうことは憲法上できないし、また、この条約においてもできないということを明確にし、こういうことができるということを明確にすることで、必要にして十分なわれわれの考え方であって、今国際法上いろいろな議論のあるこの学説に対して、どういう学説をとるというようなことを政府として言う必要はない、私はかように思っております。
  434. 岡田春夫

    岡田委員 あなたがそれについては言えないということは、その学説を採用しないという御答弁ならばそれでけっこうなわけです。採用するのか、しないのかということをこれほどわれわれが質問しているのに、それについては言えないというのは、何かくさいから言えないのでしょう。ここではっきり言ってしまったら、アメリカに対して困るから、言えないのでしょう。なぜ、はっきりそれをおっしゃれないのです。採用しないとおっしゃるなら、採用しないとはっきりおっしゃったらいいでしょう。ことさらこの点が不審であるから私は聞いているので、これは採用しますというなら、採用するとおっしゃったらいいし、採用しないなら、採用しないとおっしゃったらいい。これについて言えないというのは、何か事情があるからに違いない。集団自衛権というものについて、鍛冶君が言ったように、海外派兵以外の概念があるのだ、このように言われる学説をとるんだというのなら、それでいいんじゃないですか。それはそうじゃないんだというのなら、そうじゃないとおっしゃったらいい。われわれ国民は、そうして私たちは、一体どっちを信用したらいいのですか。個別自衛隊しかないのだとあなたがおっしゃるなら、それは基地提供、経済援助を含めた集団自衛権というものを認めないのだ、こういうことになるわけでしょう。集団自衛権の一部も——先ほどから言っているように、海外派兵以外の集団自衛権はあるのだというならば、それは集団自衛権が残された部分においてもあるのだということになるでしょう。なぜ、その重要な問題について政府見解を明らかにできないのです。そういうことについて伺っているのに、その学説をとるか、とらないか言えないというのは、あなた、卑法ですよ。これはとるか、とらないかといったら、とらないなら、とらないでもいい、とるのなら、とるでもいい、どっちかはっきりおっしゃい。それはどっちなんです。
  435. 岸信介

    岸国務大臣 この学説をどちらかとらなければ、この場合において説明のできないことであるならば、政府としては、学説上議論がありましても、責任を持ってとらなければならないと思います。しかし、私どもは、今問題になっておるところのこのいわゆる五条の場合におきましては、個別的自衛権で十分に説明のつくことであって、これをあえて議論のある集団的自衛権というものについて、学説上広いとか狭いとかいうもののいずれかをとらなければ説明のできないというものであるならば、われわれとして研究してその結論を出さなければなりませんけれども、そういうものじゃないと思います。われわれはこの場合どういうことをするかということが明瞭になり、われわれのこの行動について、あくまでもこの五条の場合は、今お話しのように一面においては、在日米軍に対する攻撃でありましょうけれども、一面において、必ず日本施政下にある領土が武力攻撃をされるのですから、われわれはこれを守るという意味において、個別的自衛権でもって十分説明のつくことであり、従って、学説上議論のあるところの集団自衛権の観念をかりてきて説明しなければならぬ事態ではない、かように思いますから、今言っている学説上どっちをとるということを私どもは決定的に申し上げないというのが、私の考えであります。別に、何かそうすることが困ることがあってこう言うという意味ではありません。はっきり個別的自衛権でもって——これは岡田委員も十分お認めになると思いますが、在日米軍の攻撃というものは、必ず日本の領土、領空、領海に対する武力攻撃でありますから、日本としては、あくまでも日本施政下にある領土に対する武力攻撃があった場合として、個別的自衛権の発動によってこれに対処する、これでもって、必要にして十分な説明のつくものである、かように思います。
  436. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、総理大臣に——これは林法制局長官ではありません、今の総理大臣答弁について伺いますが、私は、先ほど伺ったように、法律概念として、日本の主権の及ばない在日米軍という、アメリカの主権の及んでいる概念がありますね。この概念に対しては、これに対する攻撃に対しては、日本の領土、領海、領空を侵害して攻撃してこなければならないのであるから、領土、領空、領海を侵害した限りにおいて戦うのだが、日本の主権概念の及ばない在日米軍に対しては何らの措置をとらない、こういう意味ですね。こういうように解釈してよろしいですね。
  437. 岸信介

    岸国務大臣 私は、概念としても、この在日米軍に対する武力攻撃というものが、日本の主権に対する武力攻撃を伴わずして行なわれるという事態考えられないと思います。従って、常に私どもはそれを——今、岡田委員は別な概念を観念的に持ってきて、これはどうだという御説明でありますが、これは必ず日本の主権に対する攻撃というものと不可分の形で現われるわけでありますから、われわれとしては、この日本の主権に対する武力攻撃に対して固有の自衛権を発動する、こういう立場にあるわけであります。
  438. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、もう一度総理大臣に伺いますが、今の御答弁政治論であります。なぜならば、当然これを通らなければならないから、その通っている限りにおいては、日本はその攻撃を受けているというので、個別自衛権の行使をするわけです。これはその通りです。しかし、在日米軍という、日本の主権の及ばないそのものに対する攻撃が当然行なわれるわけですね。在日米軍に対する攻撃なんですから、そうでしょう。たとえば、これが在日米軍として、ここからが領域だとすれば、これを通って外国が在日米軍を攻撃する、この限りにおいては、これは確かに日本の主権を侵害している。しかし、この在日米軍それ自体に対する攻撃に対しては、日本の自衛隊というものは何らこれに対する防衛の措置をとらない。具体的にそれでは伺いましょう。そういうことにならなければ、第五条の説明にはならないじゃありませんか。「自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、」ということは、この在日米軍それ自体が攻撃されたことが、すなわち日本に対する攻撃であるということをレコグナイズする——ここを通っていること自体は、日本に対する領土、領海の侵害です。その限りにおいては、あらためてこれを認める必要はないのです。これは当然日本に対する攻撃として、これを侵害といわなければならない。在日米軍それ自体に対する攻撃である云々を認める、こういうことになるのだから、この第五条において「自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、」というのは、アメリカだけに適用する、日本には適用できない、こういうことなら別だが、これが書いてあって、両国の義務としてこれがある限りにおいて、これに対する侵害というものが問題になるから、この条項があるのじゃありませんか。法律解釈として——あなたのは政治論だと私が言ったのは、これに対する攻撃に対して、これを越えてくるから、それだから当然防衛をする、それは当然の話です。当然の話だが、これに対する侵害と、これに対する侵害とは違うではないか。なぜならば、この領域というものは、日本の主権の侵害を意味しておる。ところが、在日米軍は、これは日本の主権の侵害を意味しておるのではないのです。そうでしょう。在日米軍それ自体に対する攻撃が日本の主権の侵害だという解釈をとられるのですか。その点はどうですか。
  439. 岸信介

    岸国務大臣 両方観念的に分けておりますが、私は、常に両方のこの観念は重なるものだと思います。これを一方だけを抽象的に観念を抜き出して考えるということは、これは事実に反しておりまして……(「事実問題としてもそうだ」と呼び、その他発言する者多し)だけれども、法律の解釈から申しましても、事実を無視しての法律解釈というものはあり得ないのでありまして、やはり事実に基づいてこれを法律的にどう解釈するかという法律論が成り立つのだと思います。
  440. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、重ねて伺いましょう。総理大臣は、今の点について話を別々にして考えられないものである、このように答弁されましたね。それならばそれでけっこうです。不可分の問題として別な主権が二つある。(「そんなばかなことがあるか」と呼ぶ者あり)そうでしょう。領土、領域というような日本の主権、在日米軍というアメリカの主権の及ぶところ、二つあるわけでしょう。これを離して考えられないとするならば、これに対する攻撃は、当然五条のこの規定において守らなければならない。あなたが不可分であると言うなら、集団自衛というものを認めたということになるじゃありませんか。どうですか。
  441. 岸信介

    岸国務大臣 私はおかしいと思います。今お話のように、この攻撃を受ける在日米軍というものは、日本に基地を持って日本に駐留しておるものであります。日本施政下にある領土の一部でございます。これが武力攻撃を受けることでありまして、それをアメリカの側から見て、あるいは別の観念として、在日アメリカ軍に対する攻撃だ、こう言いますけれども、それは同時に日本の主権に対する、日本施政下にある領土に対する武力攻撃でありますから、これを離れてあり得ないということを申しておる。われわれはあくまでも、日本施政下にある領土が他国から武力攻撃を受けた場合においては、国有の自衛権の発動、個別的自衛権の発動によって、これに対して実力を行使してこれを排除するということは、当然のわれわれの自衛権の行動である、かように思います。
  442. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、もう一点だけ……。
  443. 小澤佐重喜

    小澤委員長 岡田君に相談しますが、この問題は当委員会で何回も質問があって、政府がそれに同じようなことを答弁しておるんです……。     〔発言する者多く、議場騒然〕
  444. 岡田春夫

    岡田委員 委員長は発言を制限されるのですか。——もう一点、岸総理大臣にやらせて下さい。  それでは具体的に総理に伺いましょう。二つの主権概念、主権の及ぶ範囲があるという、これを具体的に総理に伺いましょう。いいですか。日本の地域に対する侵害である、これは私は認めているのですよ。この点に異議があるのではない。そうすると、日本の国内に、具体的に言えば、板付なり、立川、横田、ジョンソン、ここに基地がある。基地という、土地は日本の土地だと一応しましょう。建物、米軍の飛行機はどうなる。これはだれのものです。日本のものですか。
  445. 岸信介

    岸国務大臣 私は、個々のそういう物体の所有権がどこに属しておるかという問題ではなくて、現実に武力攻撃が加えられた場合においては、常に日本の主権に対する武力侵略がある、かように考えております。
  446. 岡田春夫

    岡田委員 その点は、私はさっきから、わかっていますと言っているじゃないですか。あなたに聞いているのは、所有権と言われたが、その飛行機に対する攻撃なんですよ。在日米軍に対する攻撃というものは、あなた方の答弁を基準にして言うならば、その飛行機なり、そういうものに対する攻撃じゃないですか。アメリカに対する攻撃でそれ以外の攻撃というものがありますか。その建物、その飛行機、その兵隊、これに対する攻撃に対して、日本は第五条の規定において行動するということになっているんだが、あなたはそれを認めない。それは条約解釈の上においては、あなたは、そのものに対する危険、そのものに対する損害を与えるという、このことのためには、当然日本の領域を侵害するから、これで解釈するんだ、この解釈はわかっていますよ。しかし、この主権については——あなたは、この主権について日本が自衛権を発動できるのだとするならば、集団自衛権以外の自衛権を発動するんだとするならば、これは本来、このアメリカ施設も含めて日本のものである、日本の主権のものである、その飛行機が日本の主権のものであるというならば、これは個別自衛権の行使になる。ところが、これは本来アメリカの主権の及んでいるもの。これに対して、あなたは、個別自衛権でやるんだ、それはその通りだ。しかし、これをこういうようにする、それはないんだとおっしゃるなら、この第五条の「自国の平和及び安全を危うくするものである」云々ということは、アメリカにだけ適用されるので、日本には適用されない、こういう解釈をせざるを得ない。
  447. 岸信介

    岸国務大臣 さっきからしばしばお答えを申し上げている通り、私どもは、これは岡田委員もすでに御承認になっているように、在日米軍という観念を持ってきて、その観念に対しての攻撃というものが、日本のいわゆる施政下にある領土に対する武力攻撃と離れてあり得るということであるならば——これはもう事実は不可分でございます。不可分であって、それだから、個別的な自衛権、いわゆる日本の主権、日本施政下にある領土に対して武力攻撃が加えられた場合でありまして、それが在日米軍の基地内にあろうとも、そうでなかろうとも、これはひとしく日本に対する武力攻撃として、われわれは個別的自衛権の発動によってこれを排除するために行動する、こういうことで一貫をいたしております。
  448. 岡田春夫

    岡田委員 この点は私はきょうは留保しておきます。ただ、林さんあたりは適当に笑うておられるけれども、どうなんですか。これははっきり申し上げますが、林さんは初め集団自衛権を認めたのでしょう。私、知っていますよ。それをあとになって怒られて、個別自衛権にしたんでしょう。どうなんです。私は知っていますよ。それについて、外務省の側の——ここでは、きょうは名前は言わない。ある人は集団自衛権というものを認めるべきであるという解釈をとって、あなたと意見が食い違っているじゃありませんか。私は知っているんだよ。あなたがせせら笑っていいかげんなことを言うから、私ははっきり言っている。あなたは初めは、集団自衛権を認めなければ新安保条約意味をなさないと言って主張した一人じゃありませんか。いいかげんなことをおっしゃるな。私が黙っているから知らないなどと言わないで下さいよ。全部知っているのですよ。
  449. 林修三

    ○林(修)政府委員 今岡田委員のおっしゃったことは、事実に反しております。
  450. 岡田春夫

    岡田委員 事実に反しているという程度しか説明ができないでしょう。それは事実なんだから……。  それから、総理に伺いましょう。あなたは、あの学説は取り入れるか取り入れないかは言えない、こう言われましたね。それならば、これはどうなんです。参議院の予算委員会で、「しかし、他国に基地を貸して、そして自国のそれと協同して自国を守るというようなことは、当然」——「当然」ですよ。「当然従来集団的自衛権として解釈されている点でございまして、そういうものはもちろん日本として持っている、こう思っております。」こう言っている。あなたはこれを取り消しなさい。これはどちらかの解釈をしたということを意味しているのだから。どちらかの学説をとらなければ、これは言えないじゃないですか。岸さん、この答弁はあなた自身が言ったのだから、はっきり取り消したらいい。
  451. 岸信介

    岸国務大臣 私は、その場合に日本が基地を提供するというようなことは当然できる、こういうことに主眼を置いて申したわけでございます。学説としては、広く解釈するのも、狭く解釈するのも、二つあるのでありまして、もしも広い解釈をとればこういうことになるということを申し上げたわけでございます。
  452. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、これはあなた自身が、基地を貸して云々、当然集団的自衛権として日本はそういうものを持っているとまではっきり言っているじゃないですか。「当然」ですよ。集団自衛権の中に、海外派兵を除いて、基地の提供、経済援助を含むという学説を取り入れているから、「こう思っております。」と言っている。その学説を取り入れないか、取り入れるかということは言えないと、あなたはさっきから言っておりますね。それならば、この点について触れられるはずがないわけじゃありませんか。取り入れているから、こういうように、私はこう思っておりますと、はっきり言っているじゃありませんか。あなた自身が、取り入れない、あるいは取り入れる、それについては発言をしないとおっしゃるなら、この発言を取り消されるのがあたりまえじゃないですか。
  453. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げる通り、さっきからいろいろ質疑応答がありましたように、集団自衛権に関する学説としては、広い説と狭い説とがあります。広い説によるならばこういうふうなものも入る、しかし、その説を別にとらなくとも、日本の憲法上は、当然、基地を貸すとか、あるいは経済援助をするとかいうようなことは許されていることでありますから、どちらの学説をとるということをはっきりきめなくても、われわれは……(岡田委員「それを集団自衛権と言っているじゃありまんか」と呼ぶ)広い意味の集団自衛権を……(岡田委員「広い意味なんて解釈していませんよ」と呼ぶ)そういう意味です。(岡田委員「そういう意味なんて言っておりませんよ」と呼ぶ)全体のことを……(岡田委員「全部読んだのです」と呼ぶ)
  454. 小澤佐重喜

    小澤委員長 岡田君、発言を許しておりません。
  455. 岸信介

    岸国務大臣 私の趣旨は、そういう意味で申し上げておるのでありまして、学説上どちらをとるということを政府としてははっきりきめているわけではありません。
  456. 岡田春夫

    岡田委員 この点については、総理は非常につらいですね。どこにも、学説を取り入れるとか、集団自衛権云々なんということを言ってありません。この点は、基地の提供というのは、当然集団自衛権として解釈されている点であります、そういうものはもちろん日本として持っております、そう私は思っておりますと、はっきり言っているのだから。私はきょうはこの程度でやめておきますが、あなたはよくこの速記録を読んで、訂正なさるならなさったらよろしい。私は次の点に進めてもいい。
  457. 岸信介

    岸国務大臣 私の記憶から申しましても、前後の経過をずっと、お読み下されば、あるいは言葉の足りないところはあるかもしれませんけれども、そういう集団自衛権については、学説上広い考え方もあるし、狭い考え方もある、しかし、日本の憲法で海外派兵はできない、しかし、基地の提供とか、あるいは経済援助とかいうようなことは当然できるのだ、これを、自衛権というものを広く解釈するところの学説をとれば、そういうものは集団的自衛権で解釈できるだろうし、それをしなくても、日本がそういうことはできる権利を持っていることは当然だ、こういう意味で申し上げたわけであります。
  458. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ一点だけ伺っておきます。総理大臣、どうなんですか、集団自衛権であるとも、ないとも言えないという解釈を、一応私は百歩譲ってとったとしても、それでは、米軍に対して基地を提供するとか、経済援助をやるとかいうのは、当然武力攻撃が外からあったときですね。そうですね。武力攻撃があったときに、基地の提供をするというようなことが、先ほどお話のあった事前協議、ないし、そういう条項に基づいて、日本がイエスと言った場合にそういうことが行なわれるのですが、集団自衛権でないにしても、何か軍事的な協力というか、サポートなんでしょう。違うのですか。まさかこれはアメリカの工場を作るために提供したという意味じゃないんだから、それは当然、軍事的なサポートといいますか、そういうようなものであるということぐらいは答えていただかなければ、はっきりしないと思うんですよ。
  459. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、問題になっているのは、経済援助といいましても、基地の提供にしましても——、基地の提供というのは、いろいろな場合がありますから、正確に言えば、さっきから林法制局長官お答えしたようなものになると思います。そういう場合であるとか、あるいは、経済援助と申しましても、もちろん、平和的な経済開発の場合の援助とかいうことを意味しているのとは違うと思います。やはり軍事的な、防衛的な意味で申したわけであります。
  460. 岡田春夫

    岡田委員 サポートですね。
  461. 岸信介

    岸国務大臣 サポートです。
  462. 岡田春夫

    岡田委員 そこから以上は、私はきょうは質問を留保しておきます。これはあなたの方も速記録を調べて下さい。あなたの速記録がはっきりしておりますから……。  そこで、先ほどから次に行けと言われますから、私は次へ進みますが第五条において「自国の憲法上の規定及び手続に従って」云々とあるわけです。これに基づいてアメリカの今日の憲法には、アメリカの国が交戦権をはっきり認められておりますね。そうでしょう。この点はどうです。
  463. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 アメリカの交戦権と申しますか、武力攻撃がありました場合に、大統領が、コマンダー・イン・チーフ、最高司令官として、それを排除するために直ちに行動する、そういう権利であります。
  464. 岡田春夫

    岡田委員 私の質問が不十分な言葉であったとするならば、憲法の手続に基づき、具体的にはいわゆる開戦宣言、こういうものをアメリカが行ない得るのですかどうですか。この点を憲法上に認められていると思いますが、これは言うまでもないことですが、念を押して伺っておきたいと思います。
  465. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 もちろん、必要がありますれば、アメリカの憲法上、そういう手続がとられるわけであります。
  466. 岡田春夫

    岡田委員 日本の国の場合には、交戦権を認めない。憲法に、日本の国では「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」すなわち、国権の発動たる戦争は、これを永久に放棄する、国の交戦権はこれを認めない、この点も間違いない事実だと思います。この点はアメリカの憲法と違う点だと思いますが、この点はいかがでございますか。
  467. 林修三

    ○林(修)政府委員 日本の憲法のことでございますから、日本の憲法について申し上げますが、これはアメリカの憲法と違うことは当然でございます。     〔「林さんには聞いていない、総理大臣お答え下さい」と呼び、その他発言する者多し〕
  468. 岸信介

    岸国務大臣 アメリカ憲法の解釈の問題でございますから、条約局長からお答えいたさせます。
  469. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの点はわが憲法の規定でございまして、それに該当するようなアメリカ憲法上の規定は見当たりません。
  470. 岡田春夫

    岡田委員 私、ここで断わっておきますが、林さんに御答弁していただくのはけっこうです。しかし、林さんの御答弁を私自身としては信用できない面がありますから、あらためて、林さんが答弁されたあとは、必ず総理大臣に確認を求めますから、その点は御了解願います。  それで私は進めますが、アメリカ憲法によれば、いわゆる開戦の手続があって、交戦することができる。そこで、新安保条約適用外の地域、たとえば具体的に言うとヨーロッパ、ヨーロッパでアメリカが何らかの形である国と交戦状態に入った、その場合には、宣戦布告の手続というものは、国際法の通念として、相手国の方で宣戦布告をしても事実上戦争状態に入る、こういうことでありますから、これは交戦状態に入った、そして両国が宣戦布告をすることによって、当然これは戦時国際法適用を受けるわけです。そして、戦時国際法適用を受けて、このある国が、戦時国際法適用に基づいて、日本にあるアメリカの基地を攻撃した、この攻撃をした場合においては、法律上の観念においては、これは国際法上違法な武力攻撃とは言えない。これは戦時国際法の適法な部分になる。従って、これは侵略とは言えない。ところで、反面において、先ほどから答弁をいただいておりますように、日本の国は交戦権を持たない、戦争についてもこれは放棄する規定になっておりますので、日本の国は戦時国際法適用を受けない。日本の地域の中にあるアメリカの基地は、戦時国際法適用を受けて交戦地域となるにしても、日本の地域というものは戦時国際法適用はできない。なぜならば、主権の中には宣戦布告の権限がないのであります。そして戦争状態に対する具体的な規定がないのであるから、しかも、その場合において相手方から武力攻撃があった、その武力攻撃は、戦時国際法において違法な武力攻撃ではないという場合には、憲章五十一条の適用はできない。これは急迫であり、不正であるという国際法上の概念から言うと、この点はこれには該当しない、そういう場合において、日本の中にある基地ですね、在日米軍の基地、これへ来るためには、日本の領域というものは当然侵害されるけれども、戦時国際法適用されないということになるのだが、そういう点で、岸総理としては、この場合にはどういう形で適法、合法な措置をとられるのですかどうなんですか、総理大臣に伺います。
  471. 岸信介

    岸国務大臣 私は、その場合において、日本の主権のもとにあるこの領土を攻撃するということを相手方に合法化するものだとは思いませんが、なお条約局長より条約的な解釈を申し上げます。
  472. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、それは国連憲章の規制のもとにあるということを全然度外視したお考えではないかと考えます。すなわち、旧来の国際法と申しますか、戦争する権利、また戦争が違法とされていなかった時代の問題ではないか、このように考えております。すなわち、国連憲章のもとでは、すべての戦争そのものの観念自体は現在使用されていないわけでございますし、すべて、武力の行使ということで規制されているわけでございます。そこで、先ほどの御指摘の点でございますが、どこかの地域で米国とある国とが武力抗争が起きまして、そこで宣戦布告をして戦争状態が起きるといいますか、その瞬間におきまして、すでに違法と適法の武力行使というものがあるわけでございます。そしてその問題が、直ちに国連憲章に従いまして国際連合の処理する問題となるわけでございまして、従いまして、決してそこが通常の戦争状態が発生するとか、そこに基地があるからそこを攻撃するのが適法になるというようなことはあり得ない、このように考えております。
  473. 岡田春夫

    岡田委員 ここで高橋さんの答弁二つの問題が出てきている。一つの問題は、あなたは今の説明、答弁をされる場合には、国連憲章をきわめて厳密に適用されようとしている。ところが、自衛権の行使の場合においては、五十一条以外の自衛権もあるのだというような答弁をしている。私はこの点もあとで追及しようと思っているのですが、そこに憲章適用の解釈、この点について非常にあなたは説明で食い違いが出てきている。この点が一点です。それからもう一つ国連憲章に従う交戦あるいは戦争状態、こういうもの以外はここでは認められないのだとお話になるならば、アメリカの憲法の手続によって交戦、宣戦布告の規定を設けているということ自体は意味をなさない。そうでしょう。あるのですか。憲章以外に宣戦の布告をする必要はないじゃないか。戦後の国際法においては、国連憲章の精神に従っているから、国連憲章規定以外の武力行動はありません、こういう御答弁ですが、それならば、アメリカの憲法の手続は要らないじゃないですか。どうですか。そういうことになるじゃないですか。法理解釈からいったら、そういう解釈以外にはできないじゃありませんか。これは一つ藤山さんだいぶおひまのようですから、高橋さんと打ち合わせの上で御答弁になってもけっこうです。
  474. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、アメリカの憲法は、御承知の通り国連憲章が成立した以前の憲法でございます。従いまして、その当時は、ただいま申し上げました戦争をする自由な権利がありましたし、バーグの諸条約もございました。従って、それにのっとりまして、宣戦布告の権利とか、そういう問題が扱われているわけでございます。しかし、新しい憲章のもとにおきましては、いわゆる法律的には、そのような戦争状態——実態的には武力闘争というものはございますが、それを戦争状態であるというふうには把握しなくなったわけでございます。これは国際連盟からも大体そういうふうになったわけでございます。これは私が申すまでもないことでございますが、国連憲章におきましては、戦争という観念は全然どこにも見当たらないわけでございます。すなわち、違法な武力行使と、これに対して自衛権を行使するか、または国連としてこれに対して強制措置をするか、こういう事態が新しい事態である、このように考えているわけでございます。ただ、今のアメリカの憲法云々、改正云々という点は、アメリカの憲法は国連憲章前の問題でございますから、そのような規定があると考えております。
  475. 岡田春夫

    岡田委員 私は、法律解釈で、アメリカの場合についての質問をしたのですが、法律解釈でもう一つ伺いますけれども、およそ国と国との交戦状態、戦時状態というものは、一方が宣戦布告の宣言をすれば、これは効力を発生する。とするならば、むろん、アメリカの場合には、そういう制限が、たとえば高橋さんの言うようにあったとしても、国連に加盟していない国が宣戦布告をした、そしてアメリカとの間に戦闘状態が起こった、それによって戦時状態、戦時国際法適用かあるということになった場合に、どうなんですか、国連憲章適用というものは受けないんじゃありませんか。その場合において、これに対して日本の国が適法な自衛権の行使というものは行ない得ないんじゃありませんか。(「新たに不正急迫の侵害があったんじゃないか」と呼ぶ者あり)ちょっと、こういうわからない質問をヤジらないで……。
  476. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  477. 岡田春夫

    岡田委員 戦時国際法適用を受けた場合には、急迫不正ではなくなるのです。よく覚えておいて下さい。そういう形なんです。     〔発言する者多し〕
  478. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  479. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの点は、非常な一つの例外的な場合と申しますか、御承知の通り、国連加盟国は八十ヵ国以上ございます。すなわち、世界の大多数の国が国連加盟国でございます。しかも国連憲章の第二条の六項にございますが、「この機構は、国際連合加盟国でない国が、国際の平和及び安全の維持に必要な限り、これらの原則に従って行動することを確保しなければならない。」このようにあるわけでございます。従いまして、たといそこで戦争を宣言し、戦争状態——そういう旧来の国際法だけを考えれば、このような事態が現出されるかもしれませんが、国連側といたしましては、すなわち、世界の八十カ国以上の国といたしましては、決してそのような場合に、そのような旧来の観念でこれを律することはしない。すなわち、国連憲章に従って、個々の事態が侵略であるかどうかということを判定し、そしてそれに従った行動をとらなければならない、また、とるものであると考えております。
  480. 岡田春夫

    岡田委員 今第二条の第六項を引用されましたが、第六項を引用するなら、第三項、第四項を引用して、自衛権の問題について私は新たに御意見を伺わなければならないと思うのですが、この点はあとにします。しかし、ともかくも、あなたは、非常に珍しいケースである、こうお話しになっていますが、極東においては必ずしも珍しいケースということは言えない場合があり得るわけですね。これは法律問題ですよ。法律の解釈問題として私は言っている。たとえば、その場合において、戦時国際法適用に基づいて、日本にあるアメリカの基地に対する攻撃というものは、これは戦時国際法上、本来、違法な武力攻撃とは言えない、これはどうですか。この点について高橋さんに伺いたいと思います。
  481. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 同じようなことを繰り返して恐縮でございますが、初めの武力攻撃でございますが、そこにおいて、その段階において、もう違法性があるわけでございます。従いまして、それが日本の基地を攻撃するということにいたしましても、それは侵略の拡大続行という以外には私は考えられない、このように考えております。
  482. 椎熊三郎

    椎熊委員 議事進行に関して……     〔「だめだ、質問中だ」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
  483. 小澤佐重喜

    小澤委員長 岡田君に発言を許します。
  484. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺いますが、そういう武力攻撃それ自体が違法性を持っているという御答弁ならば、戦時国際法それ自体がもはや違法性を持っているということになりますね。
  485. 椎熊三郎

    椎熊委員 委員長委員長……     〔「だめだ」「答弁答弁」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
  486. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 戦時国際法とおっしゃいますが、戦時国際法の中にもいろいろな規定があるわけでございます。そこで、無効だと申しますのは、無効云々というものは、その一般的な基礎でございますが、これはすなわち戦争をする完全な権利があった、しかし、戦争の場合には、必ず違法性と適法性がなければならない、それを区別するんだ、そして違法な侵略者に対しては、国際社会が全体としてこれを制圧しなければならない、こういう基礎の問題、これは昔と変わってきたわけでございます。そうしてその基礎のもとに個々の国際戦時法規というものは判断しなければならない、このように考えます。
  487. 椎熊三郎

    椎熊委員 議事進行……     〔「委員長委員長」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
  488. 小澤佐重喜

    小澤委員長 議事進行の発言を要求した点は認めます。岡田君の発言を要求した点も認めますが、まだどちらも許しません。     〔「理事会をやれ」と呼び、その他発言する者多し〕
  489. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ただいま椎熊君から、運営の円満のために、議事進行の発言は撤回せられました。——岡田春夫君。
  490. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、私はきょうまだ発言すべきことはたくさんありますが、今の問題のケリだけをつけておきたいと思います。先ほどから高橋さんは、憲章の第二条の六項を引用されましたが、第二条の七項を引用して一つ考え下さい。アメリカの憲法において、開戦の手続をとり得る、これは、本来、第七項に書かれている国内管轄権に関する事項である。従って、このアメリカの交戦権の問題というものは、国連憲章にいかなる規定があっても、アメリカとしてはとり得る。ですから、ここに第五条に書いてある。アメリカとしては、当然国連憲章の精神に反する交戦もなし得るという余地を、この手続という言葉で表わしておる。これは明らかじゃないですか。これは憲章第二条の第七項においてもはっきり言えるのじゃありませんか。あなたはこの点はどう御解釈になりますか。憲法は明らかに交戦権を認め、しかもこの条約にも、その手続という適用がある明文上の規定がある。それならば、アメリカだってやれるんだということじゃないんですか。どうなんですか。法律解釈でお答え下さい。
  491. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 それは先ほど申し上げましたように、アメリカの憲法上はそういう規定があるわけであります。しかし、アメリカ日本も、世界の国連憲章が有効に適用になっておるわけであります。そして国連憲章では、このような戦争宣言をしてはいけないとか、そういう問題ではなくて、戦争宣言をするというような紛争の処理の仕方と申しますか、世界のそのような武力闘争をそういうふうに見ないというわけでございます。すなわち、国連憲章に従ってかような処理をするというわけでございますから、たといそういう憲法上のものがありましても、国連憲章でそういうふうな処置がとられておる場合は、その開戦宣言をするとか、そういう余地はあり得ないと思います。これはアメリカの憲法のことでありますから、とにかく国際間の紛争及びその処理は、そのような戦争とか戦争宣言という形でなくて、国連憲章に従った解決の方法をとっていくのではないか、このように考えます。
  492. 岡田春夫

    岡田委員 高橋さん、それは非常に不明確です。それじゃ、憲章の何条の規定でそれをやるのですか。そんなことを言ったら、ソビエトだって、どこだって、そういうことは、国連に加盟している限りあり得ない。そうしたら、国内事項、一切の憲法事項にまで、この点については国連憲章というものが一切規定をしていく、そういう点は憲章上のどこに規定がありますか。具体的に伺いましょう。
  493. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの問題は、戦争宣言をするとかしないとか、そういう問題でなくて、もっと実態的な問題じゃないかと思うのです。それを戦争宣言とか戦争とかいうことを申し上げました場合は、われわれは、そういう紛争が起きた場合に、それを旧来の戦争という概念で考えないのじゃないか、すなわち、国連憲章のもとで考えようじゃないかというのが、現在の行き方ではないか、こういうふうなつもりでございます。
  494. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃもうこれであれしますが、私は、高橋さんには、個人的に学問的な意味で敬意を払っているのです。いわゆる学者的な良心としては、それ以上私は言えないだろうと思う。それが博士論文に該当しているかどうかよくわからないけれども、そこら辺は一つの学説的な意見としてあるのであって、実際問題としてはそういうことはあり得る。あり得るからこそ、第五条に手続ということが書いてある。しかも、これについては、藤山外務大臣答弁によると、自国の憲法上の規定及び手続——この規定という言葉を入れたのは、日本の憲法の特殊性を明らかにするために、これを入れたんだ、しかし、手続というのは、両国間の手続をいうのだ、しかも、両国間の手続の中で、主としてアメリカの手続を重点にしていうんだということを、再三あなたは答弁されているでしょう。この手続というものは、ほかでもない、開戦宣言の手続以外にはないじゃないか。開戦宣言それ自体というものを否定されるのだ、国連憲章があるために、否定されるのだというならば、この手続という言葉は要らぬじゃないですか。藤山さんの今までの答弁と、趣旨としてすっかり反することを、高橋さんが答弁している、こういわざるを得ないわけです。藤山さん、いかがです。
  495. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そんなことはないと思います。     〔発言する者あり〕
  496. 岡田春夫

    岡田委員 私は、藤山さんに注意を喚起したい。あなたは、質問に対して、そんなことはないという答弁で十分だと思いますか。答弁というものは、これこれこういう理由でありますから、そんなことはない、こう言わなければ一—あなたは、野党の質問に対しては、ただおうむ返しに、さかさまに、そんなことはありませんという答弁で、十分な答弁だと思われますか。そういう態度でわれわれは慎重審議ができますか。理由をはっきりおっしゃい。なぜそうでないかということを、高橋さんと打ち合わせて、はっきり言いなさい。
  497. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今の御質問に対しては、私は今の答弁で適当だったと思います。
  498. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃもう一度伺いましょう……。
  499. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後六時二十四分休憩      ————◇—————    午後十時三十三分
  500. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ……     〔発言する者、離席する者多く、議場騒然、聴取不能〕
  501. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ……椎熊三郎君……     〔発言する者、離席する者多く、議場騒然、聴取不能〕
  502. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ……(聴取不能)賛成の諸君の起立を求めます……。     〔発言する者、離席する者多く、議場騒然、聴取不能〕
  503. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ……静粛に願います。     〔発言する者、離席する者多く議場騒然、聴取不能〕
  504. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ……起立多数……(聴取不能)これにて……。     〔発言する者、離席する者多く、議場騒然、聴取不能〕
  505. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ……(聴取不能)終了いたしました。  暫時休憩いたします。     午後十時三十六分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕