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1960-04-14 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月十四日(木曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    天野 光晴君       池田正之輔君    石坂  繁君       鍛冶 良作君    加藤 精三君       鴨田 宗一君    小林かなえ君       田中 榮一君    田中 龍夫君       田中 正巳君    床次 徳二君       福家 俊一君    古井 喜實君       保科善四郎君    毛利 松平君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       黒田 寿男君    田中 稔男君       中井徳次郎君    成田 知巳君       穗積 七郎君    森島 守人君       横路 節雄君    大貫 大八君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         運 輸 大 臣 楢橋  渡君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         運輸事務官         (航空局長)  辻  章男君         気象庁長官   和達 清夫君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 四月十三日  日米安全保障条約改定反対に関する請願外五百  二十四件(井手以誠君外一名紹介)(第二二八  三号)  同外四百七十件(大原亨紹介)(第二二八四  号)  同(太田一夫紹介)(第二二八五号)  同(加藤勘十君紹介)(第二二八六号)  同(黒田寿男紹介)(第二二八七号)  同外二十四件(佐藤觀次郎紹介)(第二二八  八号)  同(下平正一紹介)(第二二八九号)  同外三十件(辻原弘市君紹介)(第二二九〇  号)  同(穗積七郎紹介)(第二二九一号)  同外四百二十七件(伊藤よし子紹介)(第二  二九二号)  同外三百七十一件(横山利秋紹介)(第二二  九三号)  同外一件(山花秀雄紹介)(第二二九四号)  同外十四件(西村力弥紹介)(第二三三四  号)  同(佐藤觀次郎紹介)(第二三六〇号)  同外二件(佐藤觀次郎紹介)(第二三八一  号)  同外三件(櫻井奎夫君紹介)(第二四五九号)  同(伊藤よし子紹介)(第二四六〇号)  同外二件(佐藤觀次郎紹介)(第二四六一  号)  同外十九件(横山利秋紹介)(第二四六二  号)  同外二十八件(太田一夫紹介)(第二五〇六  号)  同外一件(佐藤觀次郎紹介)(第二五〇七  号)  同(穗積七郎紹介)(第二五〇八号)  同外三件(山中吾郎紹介)(第二五〇九号)  同外五件(横山利秋紹介)(第二五一〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたし、前会に引き続き質疑を行ないます。飛鳥田一雄君。
  3. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 防衛庁長官出席要求をしておきましたから、お見えになりましたら始めます。——きょう私が質問を始めますに際して、総理外相防衛庁長官らに一つ二つあらかじめお願いをしておきたいと思います。  それはほかでもありません。先般、アメリカ上院外交委員会議事録を読んでおります間に、次のような言葉にぶつかったからであります。すなわち、そこでは、日本に対するMSA援助実態を知りたい、こういう質問に対し、ナッシュ国防次官補が、日本に対しては、表現、つまり言葉の使い方が大切だ、こう答え、次いで、ターミノロジーは私には興味がない、その実態を知りたいのだという再質問に対しても、ザット・イズ・ベリー・インポータントとだけ答えている議事録であります。確かにこれは日本に対する痛烈な皮肉であろう。事実の重大さについて、たとい立場を異にしようとも、真剣に討議をしようとするのではなく、言葉のすりかえや論理の輪のはずしっこに終わりがちな質疑応答、そういうものの多いきのう、きょうに対し、海のかなたから皮肉られておるような感じがいたします。私もできるだけ注意をいたします。しかし、あなた方も十分御協力を願いたいと思います。同時にまた、海のかなたどころではない、今、国内にも、こうしたやり方に対する怒りは満ち満ちているのではないだろうか。学習院大学の飯坂良明教授は、傍聴の記にこう書いております。「それは実質的な意味での討議ではなくて、審議という体裁をかりてお互いに根本的な不一致を再確認しているだけにすぎない。だから、ここでは話し合いや説得を可能にするような合理的、論理的精神はあり得ようはずはなく、輸理的に追及しようとする社会党の質問者さえ、論理性を無視した政府答弁に業を煮やして、激情化せざるを得ない。そしてこの異状な雰囲気は敏感に高進していって、罵倒的なヤジの応酬と、委員が席を立って委員長席に詰め寄るといった光景が連鎖反応的に出現する。しかし最も不愉快なのは、ヤジることを唯一の仕事とし、しかもそれを楽しんでいる様が、その自己満足的な顔にありありと見える与党議員の喧騒である。しかしこれを委員長は制止しようともしない。それを制止するならば、与党は一歩論理性に近づかなければならないからである。そして彼らはそれをおそれる。質問に対して政府側答弁者に要求されるものは、論理性ではなくて、論理を無視し、これを聞き流す図太さである。これが国民の運命を左右する問題の審議というものであろうか。こうした審議以前の審議が続けられていって、やがては審議の打ち切りか、単独審議の形で多数の専制にものを言わせて通過させるのであろうか。もしもそれがねらいであれば、ここには議事常はあっても議会はなく、委員会や本会議はあっても議会主義はない。休憩のとき私の前にすわった画家の某氏は、日本総理大臣ぐらい楽な職業はないでしょうなとわれわれに漏らした。われわれは笑ったが、それは言い知れない憤りを表わしていた。」こう言っておられます、私は別にあなた方だけを責めようとは思いません。私たち注意して、できるだけ事実に即した質問をするようにいたします。しかし、どうぞあなた方も、言葉の魔術を弄したり、論理をすりかえたりして、客観的な事実を鈍らせることがないように、これが質問を始めるに際しての私の第一のお願いであります。  さらに、他の一つは、条約という、客観的に、かつ、厳格に検討していかなければならないもの、すなわち、日本国が今後十年間もこれによって拘束されていくこの新安保条約審議に際して、不確定的な要素や希望的主観を導入してはならないと考えることであります。総理外相は、ともすると、信頼協力に基づいた日米関係という言葉をお出しになり、説明の具に供されるのでありますが、信頼協力は確かに望ましいものであります。そして今後も米国との関係においてかくありたいと願われることは、あなた方の御自由であります。しかし、そのことをもって条約不備を補う材料にされるようなことはあやまちだと私たち考えます。これらの点についてお願いをいたしますと同時に、総理の御見解を伺っておきたい、このように考える次第です。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 私は、審議を通じて常に申しておることであり、また、私自身がそういう信念に基づいて実は審議に当たっておるわけでございます。言うまでもなく、この国会を通じて、重要なこの安保条約に対する各種の疑問なり、あるいは意見の相違というようなものに対しまして、政府の所信を明らかにして、国民理解と支持によって、このわれわれが提出しておる条約の御承認を得たい、それについては、全力をあげて従来通り努力するつもりでございます。もちろん、こうした条約、特に日本にとっては、日本安全保障の問題でございますし、また、アメリカ側から申しましても、今度の条約において、アメリカ日本を防衛するところの義務を明確にいたしておる問題でございますから、すべての国際条約がそうでありますけれども、特にこの条約について日米間の真の理解と、そうして信頼というものの上にわれわれが協力していくことが、この条約締結した理由もそこにありますし、また、将来の運営基礎もそこに置かなければならないことは、言うを待ちません。これは、私は、この条約性質からいっても、まさにそうなければならぬと思います。それを初めから疑ってかかるということは、われわれのこの条約に対する態度として考えるべきものではないと思います。しかしながら、同時に、いたずらにわれわれが希望的な考えだけでもって、客観的な事実やあるいはいろいろな具体的の問題に関して、それでもってすべてをおおい尽くすというような考えは、私どもも持っておりません。従って、十分一つ、御質問に対しましては、今言ったような心組みでもって私ども答弁いたして審議を尽くして参りたい、かように考えております。
  5. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 いつもの通りのお答えでありますが、そういうお答えを伺っておりますと、つい聞かでものことを伺わないわけには参りません。と申しますのは、信頼協力などという美しい花言葉で飾って、実質的な問題をカバーしていこうとする態度は、いろいろな点に現われております。その著しい一つの例を申し上げてみますと、事前協議に関するアイク大統領総理との共同コミュニケであります。この共同コミュニケについて、これは条約ではない、こういうことは先般御答弁になりました。しかし、もし条約ではないといたしますならば、信頼協力という花言葉を除いてしまって、このコミュニケはどれだけの法的拘束力を持っているのか、こういう疑問が出てくるわけであります。この共同コミュニケの中には、日本意思に反しては、事前協議アメリカだけの考え方を押しつけませんというようなことが書いてあるはずであります。そしてこれは非常に重要なポイントであります。この重要なポイントが、共同コミュニケというものの中に盛られている。一体、この共同コミュニケというのは、どれだけの法的拘束力を持っているものでしょうか。これから一つ教えていただきたいと思います。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、この共同コミュニケというものは、私は、政治的な意義が重大であって、法律的な、条約的な効力というものを持っておるものだとは考えておりません。ただ、この事前協議の問題は、実は交換公文において、事前協議の主題とするということの法律的の解釈として、当然、日本が、事前協議の場合において、イエスと言う場合、ノーと言う場合があって、ノーと言った場合において、アメリカ側においてその意思に反して行動しないという両国の了解のもとに交渉が進められておるのでありまして、法的には、私は、交換公文解釈が当然両国を拘束するものだと思います。コミュニケ自身は、その交換公文によるところの法的の効力を、政治的にさらに確認したということにおいて意義がある、かように考えております。
  7. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういう解釈が、一体アイク大統領の次の大統領、さらにはその次の大統領、さらにはその次の大統領まで拘束していくものでしょうか。やはり私は、こういう非常に重要な問題、しかも、あなた方がこの新安保条約国民の前に提示されるに際して、この点を最も大きな問題としてアピールせられたこの問題を、そうした法的な拘束力のない共同コミュニケのようなものに持ち込んで、そして信頼協力、こうした言葉で飾られようとする、ここに、私は出発点から問題がありはしないだろうか、こう思うわけです。ことに、大統領のこうした声明というものがどの程度の拘束力を持つかという点について、最近アイク大統領自身が、自分でその限界を明確にせられました。核実験のモラトリアムについて宣言を出しましたが、この宣言に関して、記者会見アイク大統領は、この宣言期間、その期間が私の大統領任期終了後にわたるような場合には、その効力をその後も持続させるためには、私の後継者が停止に関する再確認を行なうべきだ、こういうふうにはっきりおっしゃって、自分宣言あるいは共同コミュニケ等について述べたことは、自分任期中だけしか拘束力がないということを明確にせられました。あなたは、そのことをある程度先に勘ぐられながら、交換公文解釈という問題の中に逃げ込もうとしておる。しかし、その解釈というものは確定したものではありません。交換公文解釈は、この共同コミュニケで確定をするのでしょう。もしそうだとすれば、その重要な共同コミュニケが法的な拘束力もない、アイク大統領任期期間だけしか、最大限譲っても拘束力のないものに持ち込んでしまう。こういう点に相当問題がありはしないだろうか。国民は何べんもそのことを考えて、この国会でもわれわれの同僚がみんな、なぜこの問題を本文の中に差し込まないのだという御質問を申し上げております。従って、私は、この点についてそうくどく伺うつもりはありません。ただ、信頼協力関係というような花言葉で問題をずらしていこうとする態度について御注意を申し上げる、こういうつもりで申し上げたわけです。いかがでしょうか。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 申し上げるまでもなく、国際間の条約というものは、国内法律みたいに、それを実現するために刑罰をもってどうするという問題ではございませんで、私は、国際間の条約というものの基礎には、この条約締結した国々の間におけるところの信頼、そうしてそれを忠実に守るという国際的な通念がなければ、条約というものは、ある意味からいったら、意味をなさないものだ、こういう意味におきまして、これが国際条約におけるところの解釈や、あるいは運営において重大な問題であることは、繰り返して申し上げました。ただ、今おあげになりましたように、大統領が単に自分行政方針として宣言をするとか、あるいはそういう意味における共同声明においていろいろなことを言っておるということは、これはもちろん、私は、その時代によってそれが次の大統領を当然拘束するというようなものでないことは、これは言うを待たないと思います。ただ、事前協議の問題に関しましては、私はアイクと私の共同声明においてこの解釈を決定したというようには考えておらないのであります。この解釈そのものは、すでに両国交渉の過程において、両国の間において十分に理解され、そういう解釈ということのもとに交渉がされておりました。ただ、それがいろいろな論議を示しておりますし、また、いろいろな政治的な点に疑問等が起こっておりますことに対して、私とアイゼンハワー大統領がこの問題について話し合って、大統領がそのことを確認したということでございまして、従って、問題は、この共同声明そのものが次の大統領を拘束するかどうかというような問題ではなくして、条約付属文書であり、条約の一部である交換公文法律的拘束力として、われわれが申し上げていることが、両国の間において意思が一致しており、さらにそれが大統領と私との会談の際にそのことに論及されて、それを再確認したという性質を持っておるものであります。
  9. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 まあ私のお願いに始まった質問でありますから、そう長くを申し上げませんが、ここで私たちの仲間でよく使うことわざを一つ岸さんに申し上げておこうと思います。それは、ヨーロッパあるいはアメリカ等においては、契約に始まって友情に終わるといわれます。日本では、友情に始まってけんかに終わるといいます。どんなに仲のいい信頼協力関係にある者でも、一つの約束をいたしますときには、きちっとした契約をする。条約ども不備のないような、きちっとしたものを作る。こうしておけば、信頼協力はますますそれによって高まっていくわけです。あとでけんかが出ません。すなわち、契約に始まって友情に終わるというのであります。ところが、日本人の間では、ともすれば、なに、お前とおれの間柄で水くさいじゃないか、こういうようなことで、借金の証文一つも取らずに友情出発をいたします。しかし、最後はいろいろなトラブルが起こって、契約書も何もきちっとしておりませんために、けんかに終わる。そして特にそれは激しい憎悪を持ったけんかに終わる。友情に始まってけんかに終わる、こういわれます。すなわち、ヨーロッパの人々と私たちの気質の違いではありましょうけれども、この安保条約の問題についても、ともすればこの国会でそういう傾きなしとしない。信頼協力という美しい花言葉の中で問題が処理されていって、将来問題が出てきたときにどうしますか。信頼協力というものは、必ずしも永遠のものではないはずです。国際情勢が変わり、お互いに政治の担当者も変わり、幾変転いたします。そういう幾変転の中で、ときに信頼協力が失われることもあるかもしれない。その場合に、きちっとしておかなかったら一体どうします。共同コミュニケなどという、総理自身もお認めになる、あまり法理的な拘束力のないものの中で、一番重要な問題をきめてしまう、こういうことでいいか悪いか、これはお互い与党と野党などという問題を離れて、一つ十分御反省をいただきたいと思います。これは寄り道の質問でありますから、私はもうそれ以上申し上げません。  そこで、私の本日の質問でありますが、私の本日の質問は、二つに限定をしたいと思います。一つは、事前協議の問題、他の一つは、自衛隊の性格と行動という点であります。しかし、その前に、この両者にまたがり、同時にまた、それらをシンボライズするような一つの問題から伺っていきたいと考えます。  ずいぶん失礼な伺い方をいたしますが、先日総理は、極東範囲には共産圏は属さない、こうお答えになりました。この点についてあやまちがないかどうか、もう一度伺いたいと思います。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 この極東という観念自身が、私がしばしば申し上げておるように、不明確な抽象的な概念であることは、飛鳥田委員も御了承のことと思います。われわれが問題とする本条約において、いわゆる日米両国関心を持っている極東の平和と安全というこの考え方につきましては、いわゆる共産圏国々が、その力によって平和と安全を確保しておる地域というものは、両国関心のある極東の平和と安全という場合の極東というものには入らない、こういうのが私ども考えでございます。
  11. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 けっこうです。  それでは、続いて外務大臣にお伺いをいたしますが、先般来外務大臣は、日米両軍は——両軍はと言ってはお気にさわるかもしれませんが、アメリカ軍日本自衛隊は対等なものとして交渉をする、こういうことを再々お答えになっておりますが、この点もその通り伺っておいてよろしいでしょうか。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日米両方アメリカ軍日本自衛隊とが話し合いをする場合に、決して卑屈になる必要はないのでありまして、われわれはお互いにそれぞれの立場を守って、そして対等の立場話し合いをすることが必要であり、また適当であろうと考えております。
  13. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 わかりました。  それでは、続いて防衛庁長官に伺いますが、自衛隊海外派兵をしないということを再々お答えになっておりますが、これもそのままに受け取っておいてよろしいでしょうか。
  14. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そのままに受け取って下さってけっこうでございます。
  15. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは、防衛庁長官にお伺いいたしますが、長官はいつからアジア侵略決意をお固めになりましたか。
  16. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いつからもアジア侵略決意を固めたことはありません。
  17. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 先日横路さんから最後にお聞きをした点でありますが、防衛庁は、アジア各地にわたる精密な航空図をお持ちになっていらっしゃる、こういうことを長官はお認めになりました。一体アジア侵略意図なくして、何のためにアジア全域にわたると言ってもよろしいほどの航空図をお持ちになっていらっしゃるのか、これから伺いたいと思います。
  18. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 アジア全域ではありません。日本近辺アジア等を含めて航空図を作っております。これは侵略意図ではございません。日本近辺航空情勢を知っておく必要がありますので、調査をしております。
  19. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 伺いますが、シベリアカムチャッカ半島やニコライエフスクは、日本近辺でございましょうか。
  20. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 近辺といっても、どこからどこまでというわけにいきませんから、近辺を少し出ておるところもありましょうけれども目的が、決して侵略というような目的ではございません。それは念のため申し上げておきます。
  21. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 近辺といっても、なかなか区別がつかない、こうおっしゃるようですが、少し出っぱっているところもあるかもしれない。それじゃ、今一番問題になっております金門馬祖——この国会でも非常に問題になりました金門馬祖の、奥地奥地奥地、すなわち、雲南省に抜けていく桂林の付近は、日本近辺でしょうか。
  22. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 どうも近辺近辺でないかということを議論しても、なかなか結論的には出ませんが、要するに、この間から申し上げておりますように、航空図日本としてとれるものならば、できるだけ広い範囲においてとっておいた方がいい、こういう立場でありますので、近辺のものをとり始まっておるうちに、その近辺からもう少し先の方までとれるようなことがありますれば、これも調査しておく、こういうことで調査の中に入っております。こういうことであります。
  23. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 近辺という言葉をお使いになったのはあなたです。私が出したわけではありません。むしろ私は、ずばりそのもの中国の大部分、シベリア満州を含む航空図をあなたは作っていらっしゃるじゃないか、こういうことを申し上げたのです。とりたいからとった、あるいは、調べているうちにわかった、これは日本の国の中ならば、調べておるうちにわかったという話もわかりますよ。しかし、中国満州シベリアというものは、日本国ではありません。ここへどうやって入って、どうやってお調べになったのですか。そういう無責任なことをおっしゃると、少なくとも、私たちはこの国会でごまかされても、国民はごまかせませんよ。  そこで伺いますが、自衛隊は、中国の地名だけ象徴的に申し上げますが、大連、北京、天津、石家荘、太原、開封、漢口、南京、上海、桂林、そうして重慶の付近まで航空図をお作りになっている。満州は、ハルピン、ハバロフスク、チャムス、長春、コムソモリスク、ニコライエフスク、こういうところまで航空図をお作りになっておる。何のためにお作りになっておるのですか。ただ持ちたいから持った、こういうことでは済まされないでしょう。あなたのうちのお隣の庭を測量するのとは違いますよ。
  24. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 侵略目的でないということは、先ほどから申し上げておる通りであります。そういう地図をとって悪いということはないと思います。やはり日本の防衛のために、日本の周辺の航空図等をとることは、これは日本の平和と安全のために当然のことだと思っております。
  25. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それじゃ、防衛庁お願いをしますが、今私の申し上げておるような地図を一つこの委員会に出していただけないものでしょうか。
  26. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 まだ作成中で、正確なものでありません。提出するのは差し控えたいと思います。
  27. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 作成中で正確でなくても、私たちは戦争をするわけではありませんから、大体のあなたの方の意図さえ了解できればけっこうです。出していただきましょう。
  28. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 提出は差し控えさせていただきます。
  29. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それじゃ、私の方で大体知っておるところを総理外相防衛庁長官に逆にお見せしましょう。(「出してもらえ」と呼び、その他発言する者多し)あなたの方でなぜそういうものを作らなければならないのか、こういうことを伺っていきたいと思いますから、出していただきたい、こう私は思いますが、なぜ出せないのか。もし不備で出せないとおっしゃるのなら、いつごろ完成するのか、出していただきたいと思います。
  30. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いつごろ完成するかということも、今申し上げる段階ではございません。それから、先ほどお話がありましたが、向こうに入っていってとったような疑いもありましたようですが、いろいろな資料からとっておるのでありまして、まだそれがまとまりませんから、提出を差し控えたい、こう思います。     〔「前にできておると言ったはずだ」と呼ぶ者あり〕
  31. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今、黒田先生が言われるように、この前は横路さんに、できておる、こう言われたはずですが、できておるものをなぜ出せないのですか。(「完成していないのだ」と呼ぶ者あり)完成している、していないを私は問いませんと申し上げております。
  32. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いろいろまだまとまらぬ点がありまするから、差し控えておきます。     〔「委員長に要求しなければだめだ」と呼ぶ者あり〕
  33. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 この問題は、日本自衛隊海外派兵の問題とからみますので、どうしてもここで出していただきたい、こう思いますが、委員長の方で一つお取り計らいをいただきたいと思います。
  34. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 政府の方で出すことが困難だと一応言っておりますから、後日理事会で相談した上で決定します。
  35. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 委員長のお話では、出すことが困難だというお話ですが、しかし、なぜ困難なのか、その点についての理由を説明していただきたいと思います。
  36. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 そういう問題について理事会でよく政府の意見を聞きまして、できるだけ飛鳥田一雄君の要求に応ずるようにしたいと思っております。     〔「理事会をすぐ開け」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
  37. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 飛鳥田一雄君。
  38. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今私の申し上げた自衛隊航空図について、先般横路委員に対しても、あるとお答えになりました。それから私の今の質問に対しても、これを肯定的にお答えになりました。当然、ある以上は、自衛隊に秘密はないはずです。従って、これを国会委員会で要求するということは、決して行き過ぎではない、こう私は考えますので、これをぜひ提出していただきたい。冒頭に私が申し上げましたように、いろいろな美しい花言葉だけで問題の解決をすべきでなくして、われわれは現実に即して事実の上に立って事を論ずべきでしょう。従って、自衛隊がこのような大それた航空図をお持ちになっているという以上は、これをお出しになっていただくということが、委員会全般としても、私は望ましいと思います。従って、委員長に、委員会として、これを提出するように御命じをいただきたい、こう私は考えますので、お願いを申し上げます。
  39. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 ただいまの飛鳥田君の発言につきましては、後刻理事会を開きまして、そうして善処することにいたします。
  40. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは、その御決定がありますまで、待たしていただきます。(「それはどういうことだ」と呼び、その他発言する者多し)——なかなかいろいろな儀式があるらしゅうございますから、一応防衛庁長官に伺います。  くどいようでありますが、なぜこの問題は出せないのか。ただ単に、未完成であるというだけでは、私たちは納得できません。未完成とおっしゃる。未完成とおっしゃる場合には、一枚の地図が未完成である、こういう意味だろうと思いますが、防衛庁はこの問題についてもう何十枚も地図を現に持っていらっしゃるはずです。他のそれらの地図以外の部分について、まだまだシベリア奥地とか、中国奥地、ゴビの砂漠あたりが未完成だとおっしゃるのだろう、こう思いますので、未完成という御説明だけでは私たちは納得できません。なぜ出せないのか、もう一度伺わしていただきましょう。
  41. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 くどいようですが、まだ作成中であります。でき上がっておりません。そういうことでありますので、提出を差し控えたい。  なお、お言葉を返すようでありますが、自衛隊が大それた考えでというふうにお考えのようでありますが、そういうことは絶対にございません。海外派兵というようなことは全然考えておりませんし、大それたというようなお言葉で御質問を受けるのは、私どももふに落ちない点がございますので、申し上げます。
  42. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 問題を出したあとに議論すべきもの、こういうものに導いて行かれようとすることは、私たちは賛成できません。当然、お出しになった上で、それが大それたものであるか、心外であるか、そういうことをお述べになるがよろしい。ともかく、私たちはここでお出しをいただきたい。未完成である、こうおっしゃるのですが、完成したもののあることを私たちは知っておるわけです。完成せられた部分だけでけっこうです。あるいは、未完成とおっしゃるのならば、未完成のままでけっこうです。お出しをいただきたい。そのお出しになれないという理由をもう一度伺わしていただきましょう。少なくとも国民は、自衛隊がどんな行動をやっているかを知る権利を持つはずです。
  43. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 完成しているという御見解のようでありますが、私の方ではまだでき上がってはおりません。でき上がっておらぬものを出すということは、私どもは責任上できかねると思いますので、提出を差し控えさしていただきます。
  44. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、横路節雄君より関連質疑の申し出がありますから、これを許します。横路節雄君。
  45. 横路節雄

    横路委員 防衛庁長官にお尋ねしますが、去る四月一日に、私は、自衛隊で地理調査所に命じて航空図というのをお作りになっておりますね、これは御存じですかと言うと、あなたは、承知しておりますということであった。そこで、ただいま飛鳥田委員からお話がありましたように、私は重ねて防衛庁長官にお尋ねしますが、この自衛隊航空図で、北はカムチャッカ半島の中部、千島全島をひっくるめ、樺太全島をひっくるめ、沿海州からシベリアの一部もひっくるめ、南はフィリピンを全部ひっくるめて、中国沿岸から朝鮮半島全部、東北地区まで、自衛隊航空図としてお作りになっておるのはどういうわけですか、こうお尋ねをしたら、あなたは、できれば世界の航空図も作りたいのですが、近くのところだけをやっています、こういうようにお話しになっておる。この航空図はどうやって作っておるのですか。航空図というのは、明らかに飛行機を飛ばして、飛行機の上から垂直撮影法によって写真にとって、それをきちっと乾板に焼きつけをして地図を作っているのじゃありませんか。あなたの方は、航空図は明らかにそうやってお作りになっているのでしょう。あなたの方では、カムチャッカ半島の中部から、千島列島全部を入れ、樺太全島を入れ、沿海州から、シベリア沿岸から、朝鮮半島から、旧満州の東北地区から、全部入れてあなたの方ではお作りになっているのでしょう。そうではございませんか。それでは、何でお作りになっているのです。何でお作りになっているのですかと私は聞いているのです。
  46. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 世界地図を作る場合において、各国から買ってきたものを集めて作ることもありますし、いろいろ地図を作るのには方法があります。そればかりが方法ではないと思います。そういうことでありますので、なかなかむずかしいので、まだでき上がっておりません。
  47. 横路節雄

    横路委員 今の長官の御答弁の中で、どこかの国から買ってきたのもありますということです。しかし、それは買ってきたのもありますから、買ってこないのもあって、あなたの方でお作りになったのもある。あなたの方でお作りになったということになれば、航空機を飛ばして、上空から撮影をして、その航空写真によって作っているのが、今世界のどこでものいわゆる航空隊の航空図なんです。それは、今さら防衛庁長官はそうでないと御否定にはならないと思う。この点はどうなんですか。世界のどこかから買った、どこかの国から譲り受けたものもあるという話です。それから自衛隊みずから航空機を飛ばして、上空から垂直撮影法によってとったものもある、そうでございましょう。私は、あなたの方でどうやってお作りになったかということを聞いているのです。今御答弁はそうだったでしょう。どこかの国から買ったものもある。お答えをいただきたいと思います。
  48. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今申し上げたのは、たとえば世界地図を作る場合において、各国で市販している地図なども手に入れてそうして世界地図を日本で作ることもありますから、航空図につきましても、そういうような手もあります。こういうことを申し上げたのであります。それから今お尋ねの、日本の飛行機を飛ばしてとったのだろうということでありますが、もしも日本の飛行機を飛ばしたならば、領空侵犯でやられます。そういうことはありません。どういうところからということでありますならば、いろいろな方法があります。━━━━━━━━━━━━━━━━━やはりそのいろいろな方法について一々申し上げることは差し控えたいと思います。     〔「冗談じゃない」と呼び、その他発言する者あり〕
  49. 横路節雄

    横路委員 私は二段に分けてお聞きしているのです。この間私は、あなたに、カムチャッカ半島の中部から千島列島全島、樺太全島から沿海州、シベリア奥地、朝鮮半島から旧満州の東北地区、台湾から、中国沿岸から中国奥地、それをお作りになっておるかと言ったら、あなたは作っていると言ったじゃありませんか。そしてさらに、あなたは私に対してみえを切って、できるならば世界の航空図を作りたいのだ、こう言ったのです。世界の航空図の話じゃないのです。あなたが現に今地理調査所に命じてあなたの方でお作りになっているところの、いわゆる航空自衛隊航空図は、どうやってお作りになっているのかと聞いたのです。あなたは、そういうことは答弁できないと今言った。答弁できないわけはないでしょう。あなたがここで言ったじゃありませんか。世界のどこかの国から買ってきたということもある。買ってきたか、提供されたか、それから航空自衛隊航空機を飛ばして、上から航空写真でやっているのが、今の航空図ですよ。それ以外の航空図はないのです。私が聞いているのは、これからあなたが航空自衛隊でお作りになる全世界の航空図ではないのです。あなたがすでに地理調査所に対して命じた、四月一日に私から指摘した、先ほど飛鳥田君から聞いた日本近辺——近辺といっても、範囲は広範だ。アジアのほとんどの地域にわたっているこの航空図は、一体どういうようにしてお作りになったのですかと聞いているのです。重ねて御答弁いただきます。
  50. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 赤城官房長官に申し上げますが、答弁に際しましては、あまりユーモアをたくさん入れないで……。少しくらいはけっこうですが……。(笑声)
  51. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ━━━━━━━━━━と比較したのは適当でなかったと思いますので、取り消します。  どういう方法で航空図を作っておるかということでありますが、先ほどから申し上げておりますように、航空図ができ上がっておるわけじゃありません。今作りつつあるのですが、それにつきましては、いろいろな資料を集めてそれを作りつつあるわけであります。
  52. 横路節雄

    横路委員 四月一日のときは、防衛庁長官は、われわれがびっくりするくらい、ここで非常にみえを切られたのです。あなたは、全世界の航空図を作りたいのだとおっしゃった。この航空図というのは、あなたは長官として御存じのように、これは明らかに偵察機を飛ばして作ったものです。航空写真によってきちっと焼きつけをして作っているのが航空図で、それ以外の航空図はないのですよ。  そこで長官にお尋ねしますが、あなたの方では、今度、F86Fについては、だんだん性能が落ちてくる、だから、この第一線のF86Fのジェット戦闘機の一部を偵察機に改装するということで、さしあたり一個中隊十八機を昭和三十五年度に新三菱重工で改装させることになって、今度の予算にも、航空機修理費の名目で三億六千万を計上している。この改装は、F86Fの頭部の下に、自動連続航空写真機二台をとりつけるものでしょう。これを予算に計上してあなたの方はおやりになっているじゃありませんか。この点御否定なさらないでしょう。長官が答えられなければ、防衛局長からでもいいですよ。長官、これはどうです、今度の予算でおやりになっているでしょう。
  53. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 確かにF86Fを偵察機にかえるということを予算にもお願いしております。
  54. 横路節雄

    横路委員 その偵察機にかえることについて予算ですでに通っているということは、今私が申し上げましたように、F86Fに自動連続航空写真機を二台つける、一機の改装費は千九百万円、これは今申し上げましたように一個中隊十八機、この予算ですねと聞いているのです。どうです、そうでしょう。
  55. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 さようでございます。
  56. 横路節雄

    横路委員 今私から指摘したように、現に自衛隊では、F86Fジェット戦闘機については、一個中隊十八機を偵察機に改装するために、いわゆる自動連続の航空写真がとれるようにするために、これを予算に計上しているじゃありませんか。これはことしの予算だが、しかし、これとの関連において、四月一日の私の質問から、今の飛鳥田君の質問に対して私もここで今関連しているのだが、あなたの方でおとりになっている航空自衛隊航空図については、いろいろな方法があるというのだが、これはここでは絶対言えないのですか、言えるのですか、ここで一つ答弁してもらいたいと思う。あなたは先ほどここで、どこかよその国からそれを提供された——あなたは、買ったというような話だが、提供された。それからその他の方法というのは、どういう方法です。どうしてもここで言えないのなら言えない。しかし、この問題については、これが日本国内の問題ならば、私たちも別にあえて問題にしない。少なくとも、国会で、極東範囲としてここで非常に問題になった、総理大臣が統一見解としてお述べになった範囲どころではない。カムチャッカ半島から北千島全島、樺太、沿海州、シベリア中国奥地から全部入っているじゃありませんか。だから、それについてはどういうようにしてこの航空写真をおとりになったのか、それについてお答えしていただきたいのです。答えられないならば、答えられないでやむを得ないが、どうなんです、それは。
  57. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほどから申し上げましたように、今の予算などでお願いしているようなことで、日本の飛行機がそういうところに行って撮影するというようなことは、領空侵犯になりますから、そういう方法ではとっておりません。航空図というものの複製等もあります。そういうようなことからいろいろ総合して作っておる、こういうことであります。
  58. 横路節雄

    横路委員 そうすると、長官の御答弁はだいぶはっきりしてきたわけです。先ほどの、お答えできないというのとは違って、だいぶ答えてきたわけです。それは、航空自衛隊の偵察機によるところの航空写真ではないが、どこか他の国から提供されたものについてこれを複製しているのだ、そういう意味ですね。重ねて聞いておきたい。
  59. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 提供されたというのではなく、逆に言えば——逆ではありませんが、入手の方法はいろいろあります。入手したものによって複製するということも、一つの手でございます。
  60. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、暫時休憩をいたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時四十分開議
  61. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御報告申し上げます。飛鳥田一雄君の資料要求の件につきましては、理事会において協議をいたしましたが、遺憾ながら意見の一致を見るに至りませんでしたので、委員会としては要求いたすことができない状態であります。  この際、政府側において、先ほどの説明のうち、未完成であるという点について、さらに釈明を願います。赤城防衛庁長官
  62. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 まだ航空図ができ上がっておらないということを申し上げたのでありますが、その意味はどういうことかということであります。それにつきまして、こういうふうに考えます。私ども責任を持って出せるまでに至っていない。すなわち、なるほど自衛隊で作ったものだから、間違いのない、りっぱな航空図だというまでに、私どもが自信を持って外へ出せるまでにはいっておりません。そういう過程でありますので、まだ未完成だ、こういうふうに申し上げたいのであります。
  63. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 飛鳥田一雄君。
  64. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 なお、実態に入っていろいろなことを伺いたいと思いますが、しかし、今の未完成というお言葉について、納得することができません。と申しますのは、あの航空図は、きょう私が持っております写真によりますと、「一九五九年八月調製」となっております。すなわち、昨年の八月にでき、それはすでに航空自衛隊に配付をせられ、しかも、その航空図にのっとって、これを利用して現実に飛行しておる、こういうことであります。一体防衛庁長官は、御自分の部下が、未完成のあぶなっかしい航空図で飛ぶことをお許しになっているのですか。もしそうだとすれば、これは人権じゅうりんですぞ。すでに昨年の八月にできている、こういう部分があるわけです。そのできておる部分を出していただきたい、こう私は申し上げておるわけで、何もないものを出せと言っているわけじゃないのです。未完成というようなへ理屈をつけて提出を何とか防ごう、こういうような考え方をお持ちになっておることがよくわかりますが、事態は、今申し上げた通りです。一九五九年八月にできておる。ごく具体的に申し上げれば、地図のシート・ナンバーの二八一の中のCの部分をすでに使っていらっしゃるはずです。いかがでしょうか。
  65. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お話でありますが、日本国内の航空図ならば、それは国内を飛んでおるのですから、始終その航空図によって飛行しています。ですから、これは出しても差しつかえないと思います。先ほどからのお話は、国内のでないのがどうかという問題でありますので、この方は、なかなか手が行き届きませんで、まだ十分に自信を持って外へ出せるほどのものになっておりません。でありますので、提出を差し控えさせてもらいたい、こういうことを申し上げておるわけであります。
  66. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 国内の地図の裏面に、すでに自衛隊が完成をしておる航空図の一覧表が載っているわけです。その一覧表を見ますと、非常に広範な部分ができ上がっていることになっている。たとえば、この中のシート・ナンバーの四九七、これは先ほど申し上げた桂林を含むわけですが、この部分などは、できてすでに配付になっているはずであります。これも調製はたしか五九年の八月のはずですが、外国の部分だってできているじゃありませんか。
  67. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そういうものはまだ配付になっておりません。
  68. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 このままで押し問答をしておりましても、おそらくコンキャク問答でしょう。私も、ただこんな点を議論をしておってもつまりませんから、私の持っておる図面を一応防衛庁長官にごらんに入れます。そうして、これが現実のものであるかどうかを御鑑定いただきましょう。     〔航空図を示す〕  御説明をします。表に「自衛隊航空図(J—JPC)」そして「一九五九年八月調製」「(二八一C)紋別—網走」となっております。もう一枚のものは、その裏面に印刷をせられております自衛隊所有の航空図の一覧表です。この一覧表を見ますと、何枚かの図が出ております。ここに書かれているナンバーはシート・ナンバーです。地図のナンバーです。一九四から始まって、一九五が抜け、一九六、一九七、そして二〇六、二〇五、二〇四、二〇三というふうになっているはずです。その中で、二八一の中の四分の一、Cという斜線で囲んであります部分が、表の網走、紋別の地図であります。すなわち、それらの一覧図のところには、表面の図の、全体における関連が示されている、こういうことになります。この問題について、防衛庁長官に、これが事実のものを写したものかどうか、一つ御鑑定をいただきましょう。
  69. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これだけでは、事実写したかどうか、私も、現物とまだ照らし合わせてみませんからわかりませんが、大体同じものではないかと思います。
  70. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それはそうでしょう。防衛庁長官は、おそらくこれをごらんになっていないはずです。あとでも申し上げますように、自衛隊は、制服の方々がどんどん独走をして、防衛長官は浮いている。そして、こういう重大な作業が行なわれているのに、御存じないわけです。よく比べてみないからなどとおっしゃいますが、はなはだ失礼ですが、裏面の一覧図をごらんなさい。日本列島のところに幾つかの点線があります。これは集成図というものです。しかも、下の方を見ますと、注に「訓練用集成図上と書いてあります。訓練用集成図を作るなどということは、軍隊以外にはないのです。これをごらんになれば、軍隊だということはすぐわかる。しかも、日本の島のまん中に、薄く小さく「TC—小牧」と書いてあります。これは小牧を中心にした飛行図です。これは小牧にジェット機の学校があり、この学校に入った人たちが、練習をするためには、持たなければならぬ特殊図です。こういう図は民間にはないのです。これをごらんいただけば、多分同じだろうという、ばかばかしい答弁をなさる必要はない。少なくとも、それだけ長官が、軍事的な知識をお持ちにならないという一つの証拠です。しかし、そんなことを幾ら言っても切りがありません。そこで、なぜこんな地図が必要なのか、最初の振り出しに戻って、伺いたいと思います。
  71. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今御指摘の小牧を中心としての航空図、これは日本航空自衛隊として、日本の上空を飛行する上において必要でございます。そのほかについては、いろいろ参考のために作ってみたい、こういうことでありまして、先ほどからお話がありますように、侵略とか海外派兵とか、そういう意図は全然持っておりません。それは少しお考え違いではないかと思います。
  72. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そんな子供だましの答弁では、私は黙っておっても、国民は黙っていません。一体長官は地図が軍隊の中で占める地位というものを御存じでしょうか。
  73. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 軍隊における地図は、重大なものだと承知しております。
  74. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 御説の通りです。軍隊における地図は、一種の兵器として取り扱われている。非常にこれは重大な問題です。ここにも保科先生その他の方々がおられますが、お聞きになってごらんになればすぐわかりますように、こういう重大なものを、ただ参考にするために持っているなどということで、一本通るでしょうか、もう一度伺います。軍隊にとって欠くべからざる、しかも重要なもの、この地図、しかも、その地図はアジアほとんど全域にわたっている地図、こういうものを、ただ参考に持っていたいなどといって、世界に通りますか。
  75. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日本国内における航空図等は、これは日本航空自衛隊として、飛行する上において欠くべからざるものであります。しかし、それ以外のものにつきましては、何もそこまで領空侵犯したり、あるいはそこを偵察したり、あるいはそこまで飛んでいこうというような意図を持っていませんから、これはもちろん参考のために調査をいたしております。
  76. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういう意図を持つ持たぬなどということを、私は伺っているのではないのです。何のためにお持ちになっているか、こういうことです。現に、この地図についていろいろな協定がありますが、たとえば、ボン協定などを見ますと、地形図あるいは測量学の資料、こういうものを交換するなどというふうに、非常に重要に取り扱っております。およそ一国は、みずからの国について領有権を持っている以上、このみずからの領土について、やたらと他人に、参考のためになどという形で、航空図などを持たるべき筋合いはありません。こうしたものをお持ちになっているということそれ自体で、中国や、ソビエトや、あるいはその他の国々に対して、非常に大きな影響を与えることは明らかです。にもかかわらず、ただ参考に持っておる、そんなばかな話はありません。一体何のためにお持ちになっているのですか。
  77. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日本の本土防衛のために、参考になるかと思っております。持って悪いということはないと思います。
  78. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これは重大なお言葉を聞きました。日本の本土防衛のために必要なものだという意味を、もう少し詳しく話して下さい。
  79. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日本の周辺の航空の状態がどうなっているかということは、一つの参考になると思います。国内においては正確なものを持ち、国外においては、そう何も正確ではなくても、参考のためにいろいろ調査を進めている、こういう段階でございます。
  80. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 お答えになりません。日本本土の防衛のためにと、今おっしゃったじゃないですか。近所のやつを持っているのは便利だ、こういうことと、防衛のためにというお言葉とは、全然違いますよ。もっと言葉に責任を持っていただきたい。たとえば、あなた方の自民党の中で、金門馬祖極東範囲に含めるのがいいか悪いかというような御議論も、あったかに伺います。そして、これもまた聞きでありますが、金門馬祖などという、特定の地名をあげては答えない、こういうことをおきめになったそうであります。ところが、金門馬祖どころか、それから何百キロも奥地に入った桂林あるいは太原、石家荘などというようなところまで地図を持っていらっしゃるなどということが、一体どういうことを意味するのですか。こういう重要な問題について、ただ参考になるからというだけで済むものではありません。持って悪いということはないはずだ、こうおっしゃったのですが、持って悪いということはないはずだという言い方それ自身の中に、他国を侵す意思が現われているといわざるを得ないじゃないですか。あなた方自身だって、お隣のお庭の様子をすっきり知って悪いはずはない、こういうようなことを言うならば、日本における所有権とか、あるいは占有権とかいうようなものは、全然意味がなくなっちゃうじゃないですか。そういう点で、まず第一に、こういう地図を持って悪いはずはないというお言葉と、さらには、日本の本土防衛上必要だという言葉と、この二つについて、もっと詳しくお話し下さい。
  81. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 持って悪いことはないと思います。今お話しのように、持っていれば侵す意思があるということは、これはおかしいと思います。アメリカ日本航空図を持っていれば、侵す意思があるというふうに見られないと思います。あるいは周辺の国々で、日本航空図を持っているかと思います。持っているから日本を侵す意思があるとは、私は考えておりません。でありますので、私は、周辺の航空図を作成しようとして今しておること、そのことが侵す意思を持っているということでもないし、決して悪いという意味にはならぬと思います。それから、日本の防衛上必要だということは、やはり日本自衛隊といたしましては、日本の防衛を担当しておるのでありますから、日本の周辺の地図等は、これは必要であります。どこの国でも、世界地図を備えたり、近くの地図を持っているということは、これは当然のことだと思っております。
  82. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 他国の地図を持つことが——しかも、これは精密な百万分の一の航空図ですよ、一枚々々が。そういう他国の地図を持つことが当然であるという御説明ですが、一体それは世界に向かって、防衛庁長官は、日本ではない、他国の精密な航空図を持つのが当然であると断言せられますか。言えるならもう一ぺん言って下さい。
  83. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は、他国の地図等を持つことは、これは当然だと申し上げたわけであります。航空図も、別に違法な形ででなければ、世界の航空図も備えておくことは、これは別に悪いことではないと思います。
  84. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そこで、だんだん核心に触れてきました。違法なものでなければというお話ですが、今はその手段を説明せられておりません。従って、違法であるかないかは、わからないのです。当然長官は、この入手が、この調製が違法でないということの御証明をここでなさらない限り、諸外国から、日本は勝手に他人の国の航空図を持っている、こう言われる理由が出てきます。そこで、適法な手段によるということを、明確に一つお示しをいただきたい。
  85. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 航空図と申し上げても、何も普通の地図とそう違うわけではありません。普通の地図の上へ、どこからどこへ飛ぶというふうな航空関係を記入されておるのでありますから、普通の地図の上へそういう航空路というものを入れることも、一つのこれは航空図でありますが、そういうようなことで、いろいろな資料によって航空図を作っておる。国内においては、もちろん、先ほどからお話しがありましたように、それは上空から撮影もしまして正確を期するということもありますが、そのほかの国につきましては、そういうこともできかねる面もありますから、そういうことはやっておりません。
  86. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今防衛庁長官は、またとんでもないことをおっしゃり始めた。航空路を通ぜしめるために、開設するために必要かもしれない、必要だ、こうおっしゃった。それでは林長官にお伺いいたしますが、他国の上に勝手に飛行機の飛ぶことを、国際法は許しているのでしょうか、それとも勝手に航空路を引いてしまうというふうなことができるのでしょうか。こういう点を一つお答えいただきたいと思います。
  87. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私の申し上げたことを誤解されているようであります。私は、他国に航空路を開設するということを申し上げたのではございません。航空図を作る上において、世界地図があって、どこからどこへ飛ぶというような路線というものを、地図の上に書き込むことがある、こういうことで申し上げたので、他国へ航空路を開設するというようなことは、申し上げたのではございませんので、その点、御了承願います。
  88. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは、もう一度くどく伺いますが、シート・ナンバーの四九七は、こういう航空路を開設するために、あるいはそういうことのために必要なんですか。(「開設じゃない」と呼ぶ者あり)開設と言わなければ、訂正いたしましょう。航空路を作らぬ、通ぜしめるとおっしゃったが、そのために、なぜ中国から雲南省へ抜ける要衝に当たる桂林を含むこの四九七号、これが必要なんですか。
  89. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そういう航空図が必要であるか必要でないかということを、申し上げたのじゃありません。世界地図はどこでも手に入りますから、どこからどこへ飛んでおるというようなことがわかりますならば、その世界地図の図面の上に線を引くこともあり得る、こういうことを申し上げたのであります。
  90. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう一度くどく伺いますが、四九七のあなた方の航空図によりますと、高登山という名前がついております。カオテンシャンと言うのでしょうか、東経百七度から百十三度、北緯二十四度から二十八度、湖南省、広西省、貴州省を含む百万分の一の地図、しかも、昭和三十三年八月に航空幕僚監部で作られておる。こういうものがなぜ必要なんですか。
  91. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 参考のために必要です。
  92. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 どうしてもおっしゃらないようです。それじゃ、私たちとしては、この航空図がどうしてできたのか、こういう点について伺いたいと思っておりますが、その前に、あなたは飛ぶ意思がない、こうおっしゃいました。飛ぶ意思がないものを、何で持っている必要があるか、もう一度、くどいようですが、伺いましょう。
  93. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 たとえば、私がほかへ旅行する必要がなくても、世界地図を持っているのと同じように、やはり飛ぶ意思がなくても、地図を持っているということは参考になります。
  94. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 観光地図と違いますよ。少なくとも自衛隊という軍隊が持っているんですよ。観光地図ならば、それはだれでもお持ちになってけっこうです。ですが、軍隊が持っている。しかも、航空図ですよ。それを、ただ飛ぶ意思がないなどとおっしゃってみたところで、ナンセンスじゃないでしょうか。しかも、この地図を拝見しますと、こういうことが書いてあります。「本図の訂正及び追加に気がついた自衛隊員は、本図にその旨を記入して防衛庁航空幕僚監部に送付されたい」、こう書いてあるのです。飛ぶことを前提にしなければ、本図の訂正及び追加に気づいた自衛隊員は、その旨を記入して防衛庁航空幕僚監部に送付されたいなんて、この地図の備考に書いておく必要はないじゃないですか。飛ぶことを前提にするからそういう言葉があるので、すなわち、現に飛んでいる、こういわなければならない。まさか、自衛隊員が観光飛行に行かれるわけではありますまい。
  95. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現に飛んでおるから、そういうことがあるのです。ただし、飛んでいるのは日本国内であります。
  96. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 だから私たちは、その一例として、四九七の地図をお出しいただきたい、こう言っているわけです。中国奥地の地図にも、そのような文句がちゃんと記入されているのです。あなた方が、そうでないとおっしゃるなら、出してごらんなさい。
  97. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私も見ていませんが、飛ばないところにまでそういう国内と同じようなことが書いてあるということが、まだ未完成の証拠でございます。まだできておりませんから、書いてあるのでございます。
  98. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういうふざけた御答弁をなさって、この場をごまかしていけるなどとお思いになったら、大へんですよ。この新安全保障条約の基盤になっている自衛隊が、どのような意図を持って、どのような行動をしようとしているのか、こういうことははっきりしなければ、この新安保条約審議に入れないじゃないですか。今まであなた方は御否定になりましたが、私たちは、日米の軍事同盟だと申し上げているわけです。軍事同盟だという一つの証拠として、私たちは、ここにこの問題を取り上げているのであって、そんなばかばかしい、寄席へでも行ったような答弁のやりとりをするために、ここにいるのではない。もっとまじめに答えていただきたい。はっきりとおっしゃるべきじゃないですか。私たちは、この点について何べんでも伺いますよ。あなたがはっきりした御答弁をなさるまで、あしたでも、あさってでも伺いますよ。
  99. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 まじめに答えているのであります。ただ私は、こういう地図を作っていることが、何か自衛隊海外派兵でもするか、こういうところまで飛行機を飛ばして爆撃でもするかのような御質問でありますから、そういうことは全くない、そういう前提のもとに申し上げているのであります。出すにつきましては、まだ出すだけの自信を持つまでの調査になっていませんから、差し控えたい、こう申し上げているのです。
  100. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 未完成と書いて、お出しになったらいいじゃないですか。現に、先ほど私が申し上げたように、昭和三十三年八月にすでにできているのですよ。ことしは何年でしょう。昭和三十五年のはずです。今から二年も前にできている。ちょうどこの新安保条約の発足の時期と、時を同じゅうしてでき上がっている。これが現実です。二年間も、未完成だ、未完成だなどというばかばかしいことを、おっしゃる必要がどこにありますか。やはりこれを出していただいて——そういう意図があるかないかなどということを、あなたがここでおっしゃらずに、現実で示していただきたい。地図には、ちゃんとあなた方の意図が、飛んでみて違っている部分に気がついたら、その部分を書き込んで幕僚監部に出しなさいと書いてあるのです。中国でもソビエトでも、どんどん変わっていきます。あそこに新しいビルディングができた、ここに何とかいうものができたという形に気がついたら、書き込んで出しなさい、こういっているのです。そういうことが公然と地図に現われている以上、私たちが、これに対して疑問をはさむのは当然でしょう。これで疑問をはさまないのは、与党の方々だけです。そういう意味で、四九七、カオテンシャンと名づけられている高登山というのですか、この地図を一つ示していただきたい。二年も前にできているのですよ。未完成などと、どこを押したら出てくるのです。
  101. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は見ていませんが、四九七に、飛んでみて間違っていたら直せというふうに書いてある、こういうことからこの地図を出してみろ、こういうことでございますけれども、飛んでみて間違っているかといったって、そこに飛んで行ったこともないのです。飛んで行くという事実もない。でありますから、そういう根拠において、出せと言われましても、まだ、こういう問題につきまして、私どもは、出すだけの段階にいっているほどに、よくできているようなものではありませんし、自信を持って出せるようなものではありませんから、出すことは差し控えさせていただきたいと思います。
  102. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私はあなたに四九七の地図を拝借して、飛んでみようというのではありません。従って、そう未完成だとおっしゃるように精密でなくとも、私たちがこの国会審議をするには、別に差しつかえがないじゃないか。総理も、極東という概念は、その問題々々によって広狭がある、こうおっしゃっているわけです。国連軍のきめた極東、この新安保条約のきめた極東、地理学的な極東、それはみな目的に照らして広狭がある、こうおっしゃっているわけです。この地図を使います場合にでも、これで飛ぶ場合と、この国会で私たち審議をするために必要な場合と、これは目的が違うでしょう。もしそうだとすれば、未完成であろうとも——あなたはくどいほどここで未完成々々々とおっしゃったのですから、速記録にも残っています。従って、その釈明は十分でありますから、お出しになっても差しつかえないし、この委員会としては、それで十分役に立つのです。
  103. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 外へ出してみるほど、自信を持てるようなものでありませんので、提出は差し控えさせていただきます。
  104. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そこでもとへ戻りますが、どうしても私、釈然としないのは、日本本土の防衛のためにこの地図が必要だとおっしゃった一言です。日本本土の防衛のためにこの地図が必要だという意味一体どういう意味でしょう。ただ参考に持っているなどということで、通るはずはありません。今までも、いろいろな論議がこの国会で行なわれたのを、御記憶だろうと思います。海外派兵をするかしないか、いやまた、よその国から攻撃を受けた場合に、座して自滅するわけにいかないから、最小限度自衛権の範囲として相手の基地をたたく、こういうようなことも言われました。これはたしか鳩山さんと船田さんが言われたはずです。そして、その見解は、そのままあなた方もお引き継ぎになっていらっしゃる。こういういろいろな質疑応答の行なわれました経緯を考えて、あなたのお言葉考えますと、日本本土防衛のためにということを、そう軽々には聞きのがせないわけです。この問題について、もう一度はっきりとしたお答えをいただきたい。
  105. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日本の憲法の建前、あるいは内閣がずっと御答弁申し上げておりますように、海外派兵、そういうようなことは、絶対にやることもできませんし、やる意思はない、こういうことであります。でありますので、そういう航空図の作成をしてみたいということも、決して、そういうようなところへ出て爆撃しようとか、あるいは交戦をしようとか、そういうような考え方でないということは、再々申し上げておるところであります。日本防衛のためにということを申し上げましたが、日本防衛のために近くのいろいろな情勢調査するとかいうことは、これは当然必要なことであります。
  106. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 近くのいろいろなことを調査するために必要だなどといって、他国の航空図を持つことが、どんなに国際関係において大きな影響を及ぼすものか、これは御自覚になっていらっしゃるはずです。そういう点で、四九九——地図のナンバーを申し上げますと四九九でありますが、この地図を見ますと、演習場あるいはデインジャー・エリアなどというものが、全部書き込んであります。ただ単に持ってみたい、趣味、こういうことであるならば、なぜそんな精密な、デインジャー・エリアとか演習場とか、こういうものの書き込んである地図を持つ必要があるのですか。ついでに申し上げますが、四九九というのは、金門馬祖を含んでいる地図です。これも、お出しいただけるのならば拝見したい。
  107. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 まだでき上がっておりませんから、これは差し控えさせていただきます。
  108. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 長官ができ上がっていないという幽霊を私は見ました。現にもう配付されて、使っています。このことを、もうこれ以上押し問答はいたしません。申し上げておきましょう。国民がどういう感情でこれを受け取るか、やがて歴史の判断にゆだねる、こういうことになるでしょう。  そこで、この地図はどうして作っているのですか。さっき横路さんから御質問があって、いろいろな方法、こういう長官一流の、お得意の答弁がありました。いろいろな方法というのは、何と何と何でしょう。
  109. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 言葉通り、いろいろな方法であります。
  110. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 現に他国の領土の上の航空図を持っていらっしゃって、なぜそういうものが手に入ったのだ、どうして作ったのだと聞かれて、いろいろという答えで済むでしょうか。これは明らかに、海外派兵、あるいは海外派兵と言わないまでも、偵察機を飛ばしてとったものとしか思えないじゃありませんか。この点について、その国の了解を得ていますか。
  111. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほどから申し上げておりまするように、偵察機を飛ばしてとるなどということは、これはできないことであります。また、やるべきことじゃありません。でありまするから、それでないということだけを申し上げておきます。(「何だと言っているのだ、いろいろの説明をしなければだめだ」と呼び、その他発言する者あり)
  112. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私、何べんも同じことを繰り返すのはいやです。こういういろいろなどという言葉で、この問題が済んでいいものかどうか。少なくとも、他国の領土の航空図をお持ちになっているのです。まず第一番には、違法な方法で行なわれたのではないかという想定を受けるのは、これは常識でしょう。そこで私が、中国のあるいはソビエトの、朝鮮の了解を得た上ですかと言って伺ってみても、この点についてはお答えがない。そしていろいろ、これでは、私はもう何べんも何べんも同じことを繰り返して伺う勇気を失います。委員長から一つ、そういういろいろなどという答弁では済まない問題であるということを、御警告いただきたいと思います。
  113. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 朝鮮や中国の了解を得たかどうかということにつきましては、先ほどお答え申し上げましたように、航空機を飛ばして、偵察機を飛ばしてとったものではない、こういうことを申し上げたことで御了解願いたいと思います。(「その他の方法は」と呼ぶ者あり)その他の方法につきましては、市場に出ておるものがあります。普通の地図であります。その地図の上に航空路というものを調査した上で、こういうふうに航空路ができておるということもあります。そういうふうに、いろいろ資料を集めまして、それを総合的に作った、こういうことでありますので……。
  114. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 まあ赤城さんも法科でしょうし、私などもそういう系統ですから、科学的なことはわかりませんが、今お渡ししたこれを見て下さい。そんな、いろいろ市場で販売している地図を寄せ集めて作るなんてばかなことを言ったら、あなた、日本の大臣の知能程度を疑われますよ。この地図を一つ見ていただいたって、いろいろな市販の地図を寄せ集めて作ったなんて、だれが言えるのです。これを一つ加藤局長に伺いましょう。一般の市販の観光図だの何だのを寄せ集めて、こんな精確なものができますか。
  115. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 航空に関する地図もいろいろありますることは、御承知の通りであります。たとえば、ICAOで出しておるようなものもございまして、これは相当詳細な航空地図であるように私は承知いたしております。
  116. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ICAOで出している図を防衛庁ではお持ちですか。
  117. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ICAOの航空図も持っております。
  118. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それじゃそれを一つ参考にお出しをいただきたい。これは完成して売っているものでしょうから、あるいは簡単にとれるものでしょうから、これはお出しになれないということはないはずです。それとこれと比べてみましょう。いかがでしょうか。加藤さん、どうですか。
  119. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ICAOの地図は提出できると思います。
  120. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 この際、横路節雄君より関連質疑の申し出があります。これを許します。横路節雄君。
  121. 横路節雄

    横路委員 防衛庁長官にお尋ねしますが、この間、三月三十一日の参議院の予算委員会におきまして、政府側から、自衛隊の行動範囲についていろいろ見解が述べられておりますが、そのときに、わが国の領土、領海、領空ばかりではなしに、公海、公空、航空自衛隊ですから、当然公空までその行動範囲の中には含まれている、こういうように御答弁ありましたが、それで差しつかえございませんか。
  122. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そこまで行動いたします。
  123. 横路節雄

    横路委員 そうしますと、長官にお尋ねしますが、先ほど、飛鳥田委員質問に答えて赤城さんは、わが国の本土防衛の参考のために必要である、こう言っている。そうしますと、今飛鳥田委員から長官のお手元に差し上げましたこの自衛隊航空図の一覧図をごらんいただけば、その中には、たとえばナンバー一九五というのにつきましては、別に一九五がそこにあるわけですが、それらはいわゆる公海になっているわけです。あるいはナンバー一九六、二〇五、二〇六についても、領海以外は全部公海です。そうすると、航空自衛隊としては、本土防衛の都合上、あるいは航空自衛隊の行動範囲としては、そこにございます一九四、抜けている一九五、あるいは一九六の、その領海にあらざる公空、その他二〇五、二〇六等のいわゆる領海にあらざる公空につきましては、これは当然航空自衛隊としては行動の範囲になる、こういうように確認してよろしゅうございますね。
  124. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 法律的にはそうと思います。しかし、自衛のために必要な範囲が、やはり公空、公海等においての行動の基準だと思います。
  125. 横路節雄

    横路委員 今の長官のお話で、何ですか、形式上はというのですか、法律上上はというのですか。それはその通りだが、しかし実質上はそれと違うというのですか、同じというのですか。私が聞いているのは、公海、公空は航空自衛隊の行動の範囲でございましょう。だから、たとえば、今あなたのお手元に差し上げた航空自衛隊航空図の一覧図によるナンバー一九五、ないですけれども、あるいは一九四、一九六、二〇五、二〇六、一八〇等における公海、公空は、当然航空自衛隊の行動の範囲でございますね、こう聞いているのです。だから、その点はそうならそう、違うなら違う、こう答えて下さい。
  126. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今のこれで見ますると、一九四というのは、カムチャッカの方でございます。自衛のために必要な限度においての行動を考えていますが、法律的といいますか、この公海、公空で行動しても、それは差しつかえないと思いますが、事実の問題としては、自衛上必要な範囲ではないと思います。
  127. 横路節雄

    横路委員 今の長官の御答弁ですと、一九四というのは、カムチャッカ半島だ、しかし、領海以外の公海、それの上空の公空については、自衛隊の行動の範囲だ、一九六は、これは樺太半島の北部よりもっと先だ、しかし、これはいわゆる公海、公空ですから、当然これは航空自衛隊の行動の範囲、私は、範囲であるということについては間違いございませんでしょう、こう聞いているのです。その点はどうなんですか。
  128. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 公海及び公空ですか——でありまするならば、範囲というふうに考えられます。
  129. 横路節雄

    横路委員 それであれば、当然、先ほど飛鳥田委員から指摘をしました一九四、一九六、二〇六、二〇五、二八〇、二八一のその領海以外の公海を含む公空、そこは全部航空自衛隊の行動範囲だから、言いかえたら——なるほど海に臨まない大陸の地域は、今の長官のお言葉によって、あるいは航空自衛隊の行動の範囲でないかもしれない。しかし、一九四、一九五、一九六、三〇六、二〇五、二〇四、二八〇、二八一、二八二、二九二は日本の周辺ですが、二九一、三七九、三八七、四九一、四九三、四九九、こういうところは、明らかにこれは公海、その上空の公空については、航空自衛隊の行動の範囲であるという御答弁を今あなたはしたのだから、そうすると、この地図の今私が指摘したところは、全部これは本土防空、本土を護るための航空自衛隊としては、当然必要欠くべからざる行動範囲ということになりませんか。そうすれば、あるいは飛鳥田委員の指摘した四九七、四九八、四九三、四九四、三八五、三八二、あるいは二八九、二八三、二〇三、それだけが、あるいはなるほどそこは相手国の、第三国の領土であるから、その領空を侵犯することはない、ないけれども、あとの地域については、今あなたから、公海の上空の公空については、航空自衛隊の行動範囲であるという。だとしたならば、当然これは本土防衛のために必要な地図だということになりませんか。そうでしょう。これは参考図ではなくて、本土防衛のために必要欠くべからざる自衛隊航空図だということに、今私が指摘した番号は、そうなりませんか。長官、どうです、そうなりましょう。
  130. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 公海、公空は、国際法あるいは法理的に、自衛隊の行動範囲として見ても差しつかえないわけであります。でありますから、今御指摘のところばかりでなく、ずいぶん遠くのところまで、あるいはアメリカの近くまでも行ってもいいわけでありますが、しかし、自衛隊の行動としては、防衛のため必要な、自衛のため必要な範囲に限定されるという制約を、みずから持つべきだと思います。今御指摘のカムチャッカ及び千島方面あるいは樺太方面、こういう方面も、自衛のため必要であるかどうかということから、こういう図を作るか作らないかということも、考えられるべき問題だと思いますが、大体自衛のために必要な区域とは思います。
  131. 横路節雄

    横路委員 長官、いよいよあなたは、私は、それはあなたの本音だと思いますよ。私は、長官としては当然そういう答弁があるべきだと思う。あなたは、今まで飛鳥田委員から——なるほど四九七、四九四、三八五、三八二、これは全部中国奥地、二八三は旧満州の東北地区、二〇三はシベリア地区、だからこの地区は、あるいは参考の航空図であるかもしれない。しかし、その他の、カムチャッカ半島から沿海州を含んで、北樺太の北部を含んで、千島列島全部含んで、台湾からその沿岸を含んで、領海外の公海の上空の公空は、今あなたが御指摘した通り、これは自衛隊の行動の範囲なんだ。行動の範囲であるということになれば、これは必要欠くべからざる地図になる。必要欠くべからざる地図なれば、これは本土防衛のための参考じゃないですよ。必要欠くべからざる地図。  そこで、この点は明らかになりましたから、次に私はお尋ねしたい。先ほどから長官が、いろいろな……。
  132. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 防衛のために、こういう御指摘のような公海、あるいは公空等も入るには入りますが、しかし、それが必要であるかどうか、これはまた別個の立場から考えなければならないと思います。そういう意味におきましては、これは必ずそこが防衛の範囲に必要不可欠のものだというわけには参らぬと思います。
  133. 横路節雄

    横路委員 防衛庁長官は、これは自衛隊の行動の範囲である、こういうように言われているのです。行動の範囲なんですから、防衛庁長官としては、ふだんから用意されるということが当然なわけです。行動の範囲でなければ必要ないですよ。しかし、行動の範囲なんです。その点は、長官から、先ほど行動の範囲である、こういうように言われているのですから、その点はその程度にとどめます。  次に、長官、先ほど私の答弁には、初めあなたは、いろいろな、いろいろな、こう言ったけれども最後にはそうではなしに、ある国から提供されたのでしょうと私が言ったら、あなたは入手したのだと言う。提供した、入手したというのでは、向こうが積極的にお使いなさいと言った、それが提供でしょう。入手というのは、積極的にほしい、こう言ったでしょうから、大体うらはらだと思うのですが、あなたはそのときに、ある国から入手したのです——長官航空図というのは、いわゆるどこにでもある地図ではないのです。これは全部、先ほど私が指摘したように、あなたの方で現に、F86Fジェット戦闘機は、一個中隊十八機を偵察機に切りかえて、それに全部航空写真がとれるように切りかえて、一機何ぼですか、一千九百万ですか、その十八機分三億六千万近くを今度の予算で通したじゃありませんか。いわゆる航空図というのは、全部航空写真によってできたものが航空図なんです。それ以外に航空図はないですよ。それはなるほど、垂直から写して、それを六〇%重ねていくという垂直撮影法もありましょう。あるいは、しかし相手国の第三国に対して写す場合に、まさかその上空を飛べば領海侵犯になるから、その領海上空の領空ぎりぎりのところによって、斜めで三十度の角度でとっていくというのもありましょう。しかし、それ以外にありますか。それ以外に、一般の、いわゆる地形図その他をただ持ってきて、航空写真によらざるものを持ってきて、それをただ線を引っぱり、どこからどこなんというものは、今の航空隊の航空図にはないですよ。私のお聞きしたいのは、ある国からとあなたは言ったが、どこの国からですか。
  134. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ある国から入手したということは、申し上げておりません。ある国ということは、申し上げておりません。それは誤解です。いろいろな方法で入手しておる。それから航空図というものは、偵察機や何かで上空から写真をとったものが航空図、これは間違いだと思います。決してそういうものばかりではございません。そういうことをすれば正確でありますけれども、何も航空機から地上をとったものが航空図ではありません。普通の図面の中に航空の路線を書き入れて、この辺は危険地帯だとか、ここからここは飛ぶなとかいう図面があります。それは、私どもも、始終自衛隊航空機を使う場合に見せてもらっておりますし、それが航空図であります。何も上空から写真をとったものだけが航空図ではございません。
  135. 横路節雄

    横路委員 それでは長官に聞きますが、日本本土の航空図航空写真でおやりになったんでしょう。どうなんです。今度あなたの方で、一個中隊十八機のF86Fジェット機を偵察機に切りかえて、それに全部連続式の航空写真がとれるように装置をするのも、どうしてもこの際航空写真でなければだめだからやっているのじゃないですか。それは昔は、今から二十年くらい前には、そういう航空図があったかもしれない。しかし今は、少なくとも飛鳥田委員からあなたのところに指摘して、あなたがごらんいただいている、この自衛隊航空図並びに一覧図というものは、そうではない。そうでしょう。だから、あなた、三十五年度で、今までのそんな古いやり方ではだめだから、F86Fジェット戦闘機を——これは今まであなたの方では戦闘機として作っていたものですよ。それを全部、一個中隊十八機を偵察機に切りかえているじゃありませんか。それは、どうしても自衛隊航空図として安心して航空できる、しかも、本土防衛に絶対必要なためには、その航空写真をもって作ったものでなければならぬから、やっているのじゃないですか。なるほど、今から十年か二十年前のものはそうだったでしょう。しかし、現在作っているもの、これからのものは、この偵察機による航空写真以外にないじゃありませんか。そうでなければ何しにやるのです。
  136. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 航空機からとった写真の方が正確でありますから、それにたよった方がいいわけでありますが、そればかりではございませんということを申し上げている次第であります。
  137. 横路節雄

    横路委員 長官、少なくとも長官がお考えになっている、航空自衛隊をして本土の上空を防衛させる、本土防空をさせる、そういう任務であるならば、不正確な航空図で何が役に立ちますか。より一そう正確な航空図、今あなたが指摘したように、航空からとったものが、航空写真によるところの航空図が正確だというなら、当然、あなたのおっしゃる本土防空のためには、正確な航空写真による航空図——当然、ここに指摘されている一覧図も、自衛隊が作ったのじゃないでしょう。あなたがさっき言ったように、複製した、前のどこからか入手したものをただ焼き増しているんでしょう。複製とおっしゃいましたね。先ほどあなたは複製と言いましたよ。いろいろではないですよ。あなたは最初はいろいろと言ったが、最後の私への答弁は、複製したと言っている。しかも、それはどこかの国から提供されたもの、入手したものを複製したという。言いましたよ。複製といったら、あなた、あっちこっちのものを集めたのじゃないでしょう。どこかから入手したものを複製、そのまま写したんだ、そうでしょう。その点どうなんです。最後にはいろいろでないですよ。複製ということになっている。
  138. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 それは、国内のやつは上からとったものでできますが、外のものは入手したもの等の複製もありますし、そうでないものも、いろいろな資料によって、間違いでもあるといけませんから、直していく、そういう方法もあります。
  139. 横路節雄

    横路委員 これは本土の上空については航空写真がある。その他についてはどこからか入手したものの複製だ。どこからかというのは、どこかの国ですよ。  そこで、長官にお尋ねをしますが、実はこの地図ですが、二十九年の三月十五日に、林さんの前の佐藤さんが、法制局長官の時代に、こう言っておりますね。向こうの——向こうのというのは、相手国のです。向こうの長距離砲で、向こうの沿岸から、あるいは向こうの領土から、こちらに攻撃された場合に、どうしてもこれをとめなければ日本の自衛が全うできないという場合には、その攻撃の拠点について、その根元について実力作用をする、いわゆる反撃をするということも、これは自衛権の範囲内に入るものだ、こういうように考えてよろしいということを言っておりますが、その点はどうですか。その後考えが変わりましたか、どうでしょう。何も人の乗っている爆撃機ばかりでないですからね。
  140. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 政府答弁として、前に答弁申し上げたことは、その後変わりありません。
  141. 横路節雄

    横路委員 今私が申し上げたのは、ちょうどMSA協定が国会承認を求めるとき、昭和二十九年三月十五日の外務委員会において、佐藤法制局長官が、しかも、これは与党の佐々木盛雄委員質問に答えて、時の法制局長官が、今私が言うたように、「向うの長距離砲で向うの沿岸からこちらを攻撃して来るという場合に、どうしてもそれをとめなければ日本の自衛が全うできないという場合には、……その攻撃をとめるのにどうしても必要やむを得ない手段としてその根元をとめるという実力作用は、厳格な自衛権の範囲の中に入るものと考えます。」こういうことを、今あなたはこれを承認なすったわけだ。そうしますと、航空自衛隊航空図の一覧表の二八二あるいは二九一、この沿岸から北海道に対して長距離砲で攻撃をされてきた、その場合には、当然これに対して、その攻撃の拠点に対して、これを攻撃できないようにとどめさせることは、今の自衛隊としては当然自衛権の発動の範囲の中に入る、こういうことになれば、この二八一あるいは二九一、この沿岸からくる長距離砲に対しては、その攻撃の拠点に対して、航空自衛隊は当然これに対してその攻撃の拠点にとどめをささなければならぬ、そういうことになりますね、そうすると、先ほどあなたが、航空自衛隊は相手国の領海の上空の領空にまでしか行けないと言うのだけれども、実際には厳格な自衛権の行動の範囲からいって、相手国の攻撃する拠点である相手国領土の上空の領空にまで航空自衛隊は出動して、攻撃の拠点をとどめることができるということになる、そういうことになりますね。それで差しつかえませんね。
  142. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 前に、法制局長官、あるいは前の防衛庁長官、あるいは鳩山前総理等がお答えしておったことについては、変更ありません。これは法理的、抽象的に御答弁申し上げたわけであります。ただいまのように、どの場所から日本へ攻撃を加えてというふうに、具体的に場所を示して、それがどうかということにつきましては、私はこれは答弁は差し控えます。
  143. 横路節雄

    横路委員 今の長官の、法律的にはといいますか、法理論的にはといいますか、それは今私が言いましたように、相手国の領土から、あるいは相手国の領海から、相手国の沿岸から、長距離砲等による攻撃について、その根元をとどめるようにこちらからやることについては、法律的には、法理論的には、それは自衛権の範囲に入る、こういうことを今あなたは御指摘になった。そこで、私はあなたに一つお尋ねしたいのは、そうすれば、二八二、二九一、二九〇——一番北海道に近いのは二八二です。これらの拠点から、北海道に対する攻撃に対して、その攻撃の根元にとどめをさすということは、それは当然今の法理論的、法律的な立場からいって、生まれてくる。そうすれば、この二八二、二九一、二九〇、二八三、その他ひっくるめて、こういう航空図に対しても、決して参考ではなしに、これは日本防衛のために、自衛隊としては当然必要な航空図だということになりませんか。今あなたからそういう答弁がなければ、私はあなたに対してそう聞かないのであります。今法律的に、法理論的には、相手国の沿岸、領土から長距離砲等によって攻撃をされた場合に、その根元をとどめる、そういう実力的な作用に対しても、自衛権の範囲だというから、そうすれば、二八二、二九一、その他の地図については、これは参考図ではなしに、日本の本土防衛に、自衛隊のいう自衛権発動のためには、必要欠くべからざる地図だということに私はなると思うが、その点はいかがですか。
  144. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 抽象的、法理的には、御指摘の通りだということを再々申し上げております。しかし、今の地図によって指摘しているところは、これは具体的な場所であります。その具体的な場所から攻撃を受けた場合、これをどうするかというような問題は、私は答弁をする必要もないし、これは差し控えたいと思うわけであります。
  145. 横路節雄

    横路委員 長官、今あなたから、具体的なことについてはお答えできないという話だが、しかし、前の私が抽象的に聞いたことについて、長官は、それは法理論的に、法律的には、そのことは正しい、こう言われた。このことは、自衛隊の海外出兵でありませんか。相手の国の領土に対して、相手の国の領空に対して航空自衛隊が出動することは、これは自衛隊海外派兵ではございませんか。自衛隊の海外出兵ではありませんか。われわれは、自衛隊の出兵とは、今までのあらゆる国会における委員会質疑応答の中で明らかになっていたことは、わが国の領土、領空はもちろん、公海、公空のところまでである、こういう答弁で、これが、今までここまでがいわゆる海外へ出兵の限度である。それが、今あなたは、法理論的には、法律的には、相手国の領土から日本に対して長距離砲等で攻撃される場合に、その攻撃する根元についてこれをとどめる、そういう実力作用、実力行動、それは自衛権の範囲である、こう言われたことは、それは自衛隊の海外出兵とどこが違うのです。自衛隊海外派兵と同じでありませんか。だから、法理論的には、法律的には、あなたは、今自衛隊海外派兵についてはお認めになったということと、何ら変わりはないのですよ。その点はどう違いますか。
  146. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 前の答弁にもありますように、独立国として自衛権を持つ以上、座して自滅を待つというのが憲法の趣旨ではあるまい、そういうような場合には、そのような攻撃を防ぐのに、万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば、誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に全然方法がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくということは、法理的には自衛隊範囲に含まれており、また可能であると申し上げた、こういうふうになっていますが、しかし、このような事態は、今日においては現実の問題として起こりがたいのでありまして、こういう仮定の事態を想定して、その危険があるからといって、平生から他国を攻撃するような、他国に脅威を与えるようなことは、憲法の趣旨とするところではない、こういうふうに前の防衛庁長官ども答弁しております。それからまた、憲法の趣旨からいいましても、海外派兵ということは許されておりません。あるいは参議院の、自衛隊の創設されたときの決議等によりましても、「自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。」という決議もここにあります。こういうことでありますので、法理的に、日本が絶対に滅亡するという場合には、そういうこともあり得るということだけを申し上げたので、現実の問題として、また、日本の憲法の建前からして、海外派兵ということはしません。これははっきり申し上げておきます。
  147. 横路節雄

    横路委員 長官、あなたは法理論的にも、あるいは法律的にも、形式的にも——今あなたが御答弁になった前段ですね。私はこれで三べん繰り返しますが、向こうの長距離砲で、向こうの沿岸から、領土から、こちらを攻撃してくるという場合に、どうしてもそれをとめなければ日本の自衛が全うできない場合には、その攻撃をとどめるのに、どうしても必要やむを得ざる手段として、その根源をとどめるという実力行動は、厳格な自衛権の範囲の中に入るものと考えなければならない、こういうように、今あなたもあらためて法理論的にこれをお認めになったわけです。しかも、これは同じく二十九年の三月十五日に、MSA協定に関して当時の下田条約局長も、いわゆる自衛権の発動として、急迫不正な侵害、他に必要な手段がない、第二番目には必要な限度において、こういう意味において、この自衛隊の自衛権の武力行使というものは、今佐藤法制局長官が言ったことについて、あらためて確認をしているわけです。だから、あなたたちが法理論的に、法律的にそういうことをお認めにならなければ、いわゆる実体的な問題からいって、なるほど海外派兵は絶対にあり得ないということを私は考えるけれども、しかし、あなたは、日本が滅亡するかどうかわからぬ、そういう場合には、相手の国の攻撃の大きさいかんによっては、当然その実体的な力からいって、いわゆる相手の領土についても、どうしても出兵をしてその根源をたたかなければならぬということを、今あなたはお認めになった。日本が滅亡するような、そういう相手の武力の大きさかどうかということは、そのときそのときによって、相対的な力で違うのだ。だから、あなたが、相手国の領土に対して、領空に対して、領海に対して自衛隊が出動するということを、法理論的にお認めになっておきながら、これが何で自衛隊の海外出兵でないと言えますか。私は、いずれこの問題については、私に与えられたそのときに徹底的に追及しますが、きょうは航空自衛隊航空図の関連ですから、私はこれで質問を保留しておきます。
  148. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいまの自衛権の本質論、これは今御引用になりましたが、二十九年の三月でございましたか、私の前任者の佐藤さんも、本質的な問題をお答えいたしております。その後、三十年だったか、三十一年でございましたか、鳩山前内閣総理大臣あるいは当時の船田防衛庁長官お答えしているところでございまして、その要件として、つまり、自衛権の本質上、自分が死んでしまう場合にも何もできないというものではなかろう、相手のそのもとを必ずたたかなければ自分が死んでしまうという場合に、その相手のもとをたたくことそれ自身は、自衛権の本質である、これはそういう意味で、理論的な点を申し上げたわけでございます。その方法として、いわゆる海外の領土に出兵するということを直接申しているわけではございません。その方法はいろいろ考えられる。これは日本は現実には持っておりませんけれども、あるいは米軍の協力に待つとか、あるいは日本自身その場合に公海上からのいろいろなやり方もあると思います。それは必ずしもすぐにいわゆる敵国の領土、領海に対する進攻ということにつながるものではないということも、そのときにたしかお答えしているはずでございます。これはつまり、自衛権の本質論、自分が死んでしまっても相手はたたけない、ある限度を越えてはたたけない、そういうものではない、そういう本質論を申し上げたわけでございます。そういう点は、実ははっきりしている、自衛権の本質がそこにある、そういうことでございます。
  149. 横路節雄

    横路委員 だから長官、あなたの話は、だんだん今答弁していくと、自衛権の本質からいけば、座して死ぬよりは相手をたたくんだ、これが自衛権の本質だと、今あなたは答弁しておるではありませんか。これからの戦争については、そんな局地的、部分的に終わるようなものでなしに、その民族が破滅するかどうかというのが、これからの戦争ですよ。だから、自衛権の本質からいけば、当然それは自衛隊の海外出兵、あなたはきらうけれども自衛隊の本質からいけば、自衛隊の海外出兵ということが、当然自衛権の本質からあり得るということは、今あなたが言ったばかりです。  私はこれで終りますが、そこで、長官に私は先ほどから問題を三つに分けて聞きました。一つは、日本本土については、航空図については航空写真がある。それから、ずっとここにたくさんございます、あらためて番号を上げませんが、この公海の上空の公空については、自衛隊の行動の範囲だ。ですから自衛隊の行動の範囲だから、当然これは必要だ。そして今あなた、さらに林法制局長官にお尋ねして、自衛権の本質からいって、相手国から攻撃されてくる、その攻撃の拠点について当然その根源をたたく、これも自衛権の本質からいって当然だということになれば、今ここで長いことかけて議論しておる自衛隊航空一覧図というものは、これはあなたたち考え方からいって、当然いわゆる自衛権発動のために、日本の自衛のためには、絶対欠くべからざるものなんです。そんないいかげんなものではない。参考のものではない。そういう意味で、決してこれは参考という意味ではなしに、航空自衛隊としては絶対欠くべからざるものとしてお作りになっているもの、こういうように私は考えるわけです。この点については、きょうは飛鳥田委員質問に関連してですから、あまり長くなるといけませんから、この次あらためていたします。
  150. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 横路さんの今の質疑応答の結論は、日本自衛隊海外派兵するという前提のもとにおきめになっておることでありますが、私ども海外派兵をしないという前提のもとからいいますならば、この地図は参考のために必要なる地図でございます。
  151. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 参考のためにという長官答弁でありますが、しかし、参考のためにといいましても、必要な部分の参考と、不必要な部分とがあるはずです。現にこの地図を見ていただいても、できていないところはまだ必要がないのでしょう。そうなってくると、一番重点を置いた部分が先にでき上がっておる、こう考えざるを得ないのですが、そういたしますと、重点を置いた部分とは、すなわち、中国本土、東北地方、シベリア、こういうことになるわけです。今まで内閣委員会その他において、何べんも仮想敵はない、仮想敵はない、こうおっしゃってこられたのですが、参考のためにというお言葉一つをとってみても、必要な相手はこれこれ、これこれだということが歴然といたします。すなわち、あなた方が地図をお作りになっておるところは、仮想敵とまで断言し得ないとしても、少なくとも日本の本土防衛のために必要なものだということを御断定になった。本土防衛のために必要なもの、こういう議論は、当然ここを仮想敵、少なくも何らかの対象としてお考えになっておるということは明らかだと思うのですが、今までのいろいろの答弁をお取り消しになって、ここに仮想敵の本体を明白になすったのでありますが、いかがでしょうか。
  152. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 世界が東西両陣営に分かれているときに、一国が、たとえば日本なら日本が、どこの国を仮想敵国として戦争しようというようなことを考えるのは、ナンセンスでございます。でありますので、私どもはそういう仮想敵国というものは持っておりません。しかし、日本侵略を防ぐというためには、体制を整えるというのであります。今の地図から申し上げますならば、これは共産国家群も自由国家群もみんな含まれております。でありますから、仮想敵国としての図をとっているという御認識はちょっと違っておるのじゃないかと思います。
  153. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 なるほど、この中には台湾が含まれています。それから南鮮が含まれています。だがしかし、今南鮮や台湾を自衛隊が対象にしてものを考えているなどとは、私たちには考えられない。当然、この一覧図を見ていただいても明らかなように、主力は中国、東北地方、ソビエト、これに置かれておることは明らかです。こういう点で、自衛隊は今や口先、すなわち、国会においては仮想敵を持たないけれども、実質的な仮想敵というものをお持ちになっている。現に、私は、先般海上自衛隊の船の進水式に私の秘書をやりました。秘書が、案内をして下すった防衛大学卒業生の、昔の言葉でいえば少尉に当たる方でしょう、その方に、仮想敵というのはあるのですかといって聞いたら、はっ、教官殿はソビエトだといって教えて下さいました、こう言ったそうであります。現に、あなたの軍隊はそういう教育をし、そして、同時にまた、こういう地図を持つ、これでは仮想敵というものをお持ちになっているのが当然だと私は思います。だれがどう言おうと、これは事実であります。(「秘書が言ったんでは話にならぬよ」と呼ぶ者あり)少尉とか、あるいは秘書とかおっしゃるのですが、これは日本国民の一人であります。そして日本の国の安全、こういうものについてお互いに私たちは対等なはずです。不規則発言の中に、秘書とは、あるいは少尉とは、などというお言葉は慎まれることをお願いします。ともかく、こういう国民一人々々が十分考えていかなければならないものについて、現に仮想敵の現実の行動をしていらっしゃるじゃないですか。この点について、どんなにきれいにお答えになろうと、だめです。もう一ぺん伺いましょう。
  154. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 再々申し上げておりますように、仮想敵という観念は、第二次大戦前あるいは第一次大戦前だと思います。第二次大戦後におきましては、国際連合もできまして、そうして侵略的な戦争はしない、戦争の放棄と侵略的なことをしないということ、これが建前であります。でありまするから、仮想敵というものがありまするならば、それを敵として、そこへ侵略して、それと戦って勝つ体制を整えるために仮想敵というものが必要なのでありますが、侵略するという意思を持ちません。そういう場合において、仮想敵というものを想定する必要はないわけでございます。でありまするから、別に仮想敵としてこれと戦争をしようという国を設けているわけではございません。
  155. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 頭隠してしり隠さずということを、私たちは、昔、父親や母親に言われました。同じ言葉を、今あなたに申し上げておきましょう。  そこで総理にお伺いいたします。この一覧図をちょっと長官から見せていただいてほしいと思いますが、この一覧図に出ておりまする航空図範囲、これは、この間横路さんやあるいは堤さんにお答えになりましたところでは、中ソは、統一見解で、いわゆる極東の周辺に当たるというお話でしたが、この自衛隊の行動範囲、すなわち、航空図範囲は、統一見解のいわゆる極東の周辺に当たるのですか、極東そのものでありましょうか。
  156. 岸信介

    岸国務大臣 さっきから、私は、防衛庁長官飛鳥田委員並びに横路委員質疑応答を聞いておったのでありますが、この地図についていろいろな御質問もございましたけれども政府としては、これがすべて自衛隊の行動範囲であるとか、あるいは自衛隊が将来航空することを目的としてこれを持っておるというような意思を持っておらないことは、先ほど来防衛庁長官が申し上げておる通りであります。また、安保条約で「極東における国際の平和及び安全」と言っておるその「極東」というものとこの地図とは、何らの関係がないのでありまして、これは、いわゆる自衛隊が参考として、いろいろな点から検討を加え、作成中のものであるということでありまして、この安保条約のあげております「極東における国際の平和及び安全」という場合の「極東」とは、何らの関係がございません。
  157. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 振り出しに戻って伺いますが、総理は、こういう航空図自衛隊が現に作成中であったことを今まで御存じだったでしょうか。
  158. 岸信介

    岸国務大臣 これは承知いたしておりませんでした。
  159. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 しかし、少なくとも、日本自衛隊に対して、純粋に自衛のものである、こう御説明になり、そして、海外派兵はいたしませんと御説明になり、今までやってこられたわけでありますが、しかし、結果として、現実にはこういう図がどんどん自衛隊の中で作られていく。それは主観的には、総理は、今、関係がない、そして、その意思がないとおっしゃったのでありますが、しかし、客観的にこれを見ていけば、何らかの疑いを差しはさまざるを得ないわけです。こういう自衛隊が先走ってどんどん進んでいくことを御存じにならないで新安保条約締結される、こういうことをなすったとすれば、非常にうかつじゃないか、私はこう考えるわけです。
  160. 岸信介

    岸国務大臣 自衛隊の本質は、こういう地図を作成することを検討しておるとかどうとか、私は、自衛隊の本質というものがそれによって動くというものではないと思います。おそらく、海上自衛隊も、これは世界の海図を持っておるのじゃないかと思います。また、いろいろな意味において地図を持つということも、これは私は、いろいろな検討をする意味において持っておることも当然である、別にこれによって自衛隊が本質を変えて、憲法の規定を逸脱して海外へ出ていくというようなことを考えておるとは毛頭考えておりませんし、また、先ほど来防衛庁長官が申し上げておる通りでありまして、何ら自衛隊の本質をこれによって変更するものではございません。
  161. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 先ほど私が申し上げましたように、地図は兵器です。従って、どんな兵器を持つかということは、その軍隊の性格を規定する、こういっても差しつかえがないわけです。原爆を持っている軍隊は、原爆を持っている軍隊としての性格を持つはずです。あるいは小銃しか持っていない軍隊は、小銃だけしか持っていない軍隊としての性格を持つはずです。竹やりしか持っていない軍隊は、竹やり軍隊としての性格を持つはずです。当然地図は一個の兵器であります。兵器として、このアジア全域にわたる航空図をお持ちになっているということが自衛隊の性格に何ら関係がないなどということは、一つの牽強付会の弁にしかすぎないのじゃないだろうか、こう私は思うのでありまして、こういう形を現実には進めながら、新安保条約を結ばれる以上、この新安保条約に対する懐疑、疑問が起こってくるのは当然であります。また同時に、あなたは、隣の国の中国及びソビエトに対して、必ずしも刺激するつもりはないし、ともかく、仲よくやれるならやっていきたいというようなことをおっしゃっておるわけです。そういう国際関係を、こんな行動を自衛隊がやっていくことによって阻害するものだとはお思いにならないでしょうか。向こうは向こうで、どんな考え方を持つかわからないのじゃないでしょうか。自衛隊は、かりに百歩を譲って、あなたのお考えになっていることを私たちが是認したとしても、少なくとも、あなたの意図を裏切りつつある鬼っ子だ、こういわないわけにはいかないと思うのですが、いかがでしょう。
  162. 岸信介

    岸国務大臣 前提の、地図は一つの兵器だということは、私は、比喩として、自衛隊にとって地図というものは非常に重要な意義を持っておるということは認めますが、地図をもって原爆の一種であるとか、あるいは小銃や大砲の一種のごとく考えられるということは、私はそういうものではなかろうと思います。従って、地図を持ったからといって、自衛隊の本質がそれによって変わるとは私は考えておりません。いわんや、この地図の作成、検討をいたしておることは、先ほど来防衛庁長官からも申し上げておるように、日本の防衛を全うしていくための参考の資料として持っておるということでございますから、決して、飛鳥田委員のお話のように、これをこういうふうに作成しておるから自衛隊というものの本質が変わって、憲法を逸脱するような行動をする自衛隊になりつつあるというふうな疑問を持たれること自体が、非常に実態と相いれないものだ。自衛隊はあくまで自衛隊として、憲法及び自衛隊法に明定しておる目的を逸脱した行動は絶対にいたしません。このことを明瞭に申し上げておきます。
  163. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 別にあなたと議論するつもりはありませんが、昔の兵学校なり、あるいは陸軍大学なり、海軍大学で教えておりました教科としては、地図は兵器であるという定義で教えておったはずです。今の自衛隊としても、さようお取り扱いになっているはずです。ここに保科先生もおられますから、委員会が終わりましたらお聞き下さい。  そこで、もっとこの地図について実は伺いたいのですが、先ほど加藤局長からかなり重大な御発言がございました。ICAOの地図なら出してもいい、そういうものを修正して出したものだというお話でしたから、これを出していただいて、ほんとうにそうであるかを確かめた上で、なおこの地図の問題について伺うことにさしていただきます。従って、地図の点について、私は、自衛隊が現実にこのようなことをもくろみつつあるということを皆様方にお知らせしたことをもって、きょうは一応終わりといたします。  委員長、それでは一つ加藤さんに再度確かめさしていただきます。
  164. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 今、その話をさしております。
  165. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 一体いつ出していただけるか。
  166. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ただいまのお言葉でございますが、私、ICAOを修正して出したということは申しておりません。ICAOの地図は出せるということを申しておるのであります。
  167. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 なお、三百代言みたいなことをおっしゃらない方がよいのです。ともかく、この地図を作った方法は何かと伺うと、いろいろある、こういうことでした。さらに進んで長官は、日本の飛行機を飛ばして作ったんでないことだけは確かだ、こうおっしゃったのです。さらに進んで、作る方法はいろいろある、いろいろな地図を集めて修正して作るのだ、こうおっしゃる。そこで、いろいろな地図とは何ですかといって伺ったら、加藤さんはICAOの地図もございます、こうおっしゃったわけです。そこで、ICAOの地図をそれではお出し下さい、こう言った。これは速記録を調べてみれば明らかです。ですから、このICAOの地図をすぐお出しをいただくなり、もし、きょうだめなら、あしたでもけっこうです、ごく近い時間に出していただいて、照らし合わして見た上で、加藤さんがおっしゃったことや長官がおっしゃったことが真実であるかどうかを調査した上でさらに伺う、こう申し上げているので、いつ出していただけますかということを聞いているのです。別にそんな三百代言的な弁明を私は伺おうと思っていません。いつ出していただけるのですか。
  168. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ICAOの地図でございますが、私の方で帰りまして、どの程度までありますか、御希望のところがありますかどうか調べた上で、提出するようにいたします。
  169. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 加藤さんはさっき、ICAOの地図なら出せますと軽く言ったのですよ。ところが、二度目になると、どの程度までいっておりますかなどというばかばかしいことをおっしゃる。そうして、御希望の地域がありましたら出しましょう、こういうことですが、これに相当する部分を全部出して下さい。
  170. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 御希望の地域全般につきましては、調査をいたしまして、後刻提出をいたしたいと思います。
  171. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 後刻というのは、いつごろでしょうか。
  172. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 帰りましてよく調査をして、手配いたしたいと思います。
  173. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 いつでも調査ということで延びてしまうわけです。その反面、政府は、非常に早くこの条約審議を切り上げたがっている。こういう状況ですから、私たちも早く見たいのです。従って、いつの何時ごろまでに出せるかという程度のことは、おっしゃっていただいてよいのではないでしょうか。それでないと、この委員会審議というものは進まない。進まないことについての責任を加藤さんがとって下さるならけっこうです。
  174. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 御希望の点、よく調査ついたしまして、後刻提出するようにいたします。
  175. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 普通日本語では、後刻と申しますと、その日のうちのことを言いますが、一体どうでしょうか。(笑声)
  176. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ただいまのことでございますが、後ほどという意味でございますが、後刻とは、本日というふうには限定していないように御了解願いたいと思います。
  177. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 委員長、日にちを切っていただきたいと思いますが……。
  178. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 飛鳥田君に申し上げますが、あなたの資料の要求は本日なされましたから、今までの前例から見ると、できる限り急いでやるという趣旨ですから、この程度で御了解を願います。
  179. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それじゃ、まあ椎熊さんのごあっせんで、少なくとも、できるだけ早く、そんな三日も四日もかからないだろう、こういうお話ですから、これを信頼いたします。出していただきたいと思います。  そこで、それでは地図の問題はそのときに譲りまして、本題であります——今まで序論でかかってしまったわけですが、本題であります事前協議の問題について伺いたいと思います。  事前協議の対象になりますものは、軍の配置における重要な変更、装備における重要な変更、そうしてまた、戦闘作戦行動に日本の基地を使う場合、こういうことになっております。そういたしますと、このアメリカ軍の配置における重要な変更というものは、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法、これの第六条に当然該当をしてくるものだろうと考えますが、一体そうした事前協議の対象となるべきものは、刑事特別法の秘密保護の規定に当たるものでしょうか、当たらないものでしょうか。これは総理に伺いたいと思います。
  180. 岸信介

    岸国務大臣 法制局長官よりお答えをいたさせます。
  181. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいまの御質問の御趣旨は、第六条、いわゆる合衆国軍隊の機密を侵す罪、その機密として、別表に一定の事項及びこれにかかわる「文書、図画若しくは物件で、公になっていないもの」、こういうものが書いてございます。いわゆる日本に新しい部隊を配置すること自身が、いわゆる合衆国軍隊の機密に当然当たるかどうかという御質問かとも思いますが、これは結局、そのときの事柄によると思います。刑特法第六条の犯罪になりますのは、公になっていないものがなるわけでありまして、いわゆる機密として公になっていないもの、もし、あるとすれば、あるいはそういう問題があろうかと思います。しかし、公にされておれば、そういう問題はございません。
  182. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 わかったようなわからないような御答弁は、なかなか林さん名人ですが、一体事前協議の対象になるような配備における重要な変更というのは、もうあらかじめ公表されているものをやるんですか。僕は初めて伺った珍説ですが……。
  183. 林修三

    ○林(修)政府委員 いわゆる配置における重要な変更でございますが、これは当然に合衆国側との——もちろん、こちらに話もございます。いわゆる公にされるもの、されないもの、これは両方あり得ると思います。
  184. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 装備に関する重要な変更はどうでしょうか。装備に関する重要な変更も、また刑事特別法の六条による機密に属するんじゃないですか。
  185. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは必ずしもそうはならないと私は思います。いわゆるここで装備における重要な変更というものは何を意味するかということにつきましては、この席においても外務大臣からしばしば御答弁があったはずでございまして、いわゆる核兵器、あるいはIRBM、ICBM等だということになっております。これについては、これは総理大臣からの御方針で、日本としてはそういう核兵器の持ち込みは認めないという方針でございますから、従いまして、具体的にこういうものが日本——事前協議日本がオーケーと言って入ってくることは考えられないわけでございますが、純粋な理論問題として、これがかりに入ってくるという場合におきまして、それが直ちにここにいう機密になるとは私は思いません。つまり問題は、どういう内容の兵器だということが、むしろここで考えている機密だと思います。IRBM、ICBMそれ自身があるかないかということが直ちに機密になるかどうかということは、そのときの問題でございます。しかし、繰り返して申し上げますが、この装備の問題は、総理大臣の御方針から申しまして、この問題で日本がオーケーと言うことは普通考えられない、かように考えるわけでございます。
  186. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 僕が伺わないことに御答弁をいただいて、ありがとうございました。ともかく、この刑事特別法六条、そうして別表を見ますと、「防衛に関する事項、防衛の方針若しくは計画の内容又はその実施の状況、部隊の隷属系統、部隊数、部隊の兵員数又は部隊の装備」と、ちゃんとなっておりまして、重要であるかないかを問わないのです。それから「部隊の任務、配備又は行動」こうなっておりまして、配備も行動も限定せられておりません。お説のような限定をすべき理由がこの法律のどこから出てくるのか、私は非常に疑問に思いますが、その他非常に数多くのものを並べ立ててあります。たとえば「艦船、航空機、兵器、弾薬その他の軍需品の構造又は性能、編制又は装備の現況」こういういろいろなものを含んでおります。従って、事前協議の対象となるべきものは、きのう堤さんの御質問に対するお答えによってもわかりますように、かなり大きなもの、たとえば一個師団以上の兵員の移動、こういうことになるのでありまして、これは当然アメリカにとっても重要な機密に属するでしょうし、また、あなた方もその機密を守らなければならないような状況になるはずです。全部が全部、日本政府がぽんぽん発表してしまって、アメリカはそれでよろしいというかどうか、こういう問題を考えて参りますと、当然事前協議については、刑事特別法、さらにはMSA秘密保護法が適用になる可能性が多い。いや、九九%までそれにカバーされるということを考えていかなければならないと思うのですが、どうでしょうか。
  187. 林修三

    ○林(修)政府委員 抽象的に申せば、この別表にございます通りに、防衛の方針あるいは計画の内容、あるいは部隊の装備、兵員数、そういうものがみな入っております。しかし、第六条をごらんになりますと、要するに、公にされないもの、つまり、合衆国が機密として公にしておらないもの、これを、許されない方法によってその機密を盗むというのが、ここのいわゆる機密を侵す罪として犯罪になるわけでございます。具体的な事前協議の問題において、配置の重要な変更あるいは装備の重要な変更、これについても、あらかじめ公になっておるものでございましょうし、あるいは協議のときに公にすることについて両政府間で合意ができれば、もちろん公になります。これはもちろん、第六条の問題にならない。あるいは、問題として部分的に公にする場合もございましょうし、公になっておるということは、いわゆる周知されておる、一般に秘密とされていない、そういう問題であれば、もちろん第六条の適用には入ってこないわけでございます。別表は非常に広く書いてございますが、第六条の犯罪構成要件は、これも飛鳥田委員御承知の通り、いろいろしぼったのであります。そういう観点から、事前協議事項は九九%が秘密事項であろう、こういうことは、私は考えられないんじゃないかと思います。
  188. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 林さんのお話でよくわかってきました。結局、これを公表していいか悪いかということは、アメリカがきめるんだ、こういうことが一つ。それから、もう一つは、両国政府が合意して発表したもの以外は秘密だ、こういうことがわかってきました。そう伺っておいてよろしいですか。
  189. 林修三

    ○林(修)政府委員 合意して発表しなければ秘密だということではございません。当然に合衆国側であらかじめ公にしているものもございます。そういうものについては、もちろん問題はないわけであります。公にするというのは、積極的に発表しなくても、消極的に、公になっていることをとめておらなければ、これはもちろん公にされている事項で、一般の知っている事項、知り得べき事項であれば、この犯罪の問題になって参りません。従いまして、両政府が合意して、初めて秘密が解除される、そういうものに限ったものではございません。
  190. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 なぜ、こういうことを私が伺うかと申しますと、事前協議という問題は、政府にとっても非常に重要な問題でしょうが、国民にとっても、また非常に重要な問題です。従って、国民の世論は、これについていろいろな意見を自由に吐き得る状態にあるべきだろうと私は思っておるのです。しかし、現実には、いろいろな機密事項、そういうものから、政府の発表したもの以外は、国民の議論の対象にできない、こういう結果が出てくるのではないだろうか。たとえば、新聞等で、いろいろの事情をお調べになって発表をする、どっこい待った、刑事特別法でひっかけるぞ、こういう形になり、何かの事実を新聞に載せる、どっこい待った、MSA秘密保護法に触れるぞ、こういう形になりやすいのであります。もし、そうだとすれば、国民事前協議が行なわれたかどうかを知らない。知らないうちに米軍は出動してしまうという形になるでしょうし、また、国民の全然意見を吐き得ない状況で、政府だけがその適否をおきめになるという形が出てくるのじゃないだろうか、こういうふうに私は考えるからであります。民主国家である以上、この国の運命をあるいは左右してしまうかもしれない重要な決定に際して、国民は参与をすることを許さるべきだろう、こう考えます。この点について、総理大臣いかがでしょうか。
  191. 岸信介

    岸国務大臣 私は、事前協議の事項については、飛鳥田委員のお話のように、国民も重大な関心を持っておるものだと思います。従って、この前どなたかの質疑に対しまして、日本政府としては、なるべく協議の際にこれを公表するようにいたすように強調するというようなことを申し上げたと思うのでありますが、特別の事由がない限り、公表することが適当である、また、これに対して国民の批判を受けることが適当である、かように思います。
  192. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 しかし、現実には、戦闘作戦行動というものは、秘密にしなければならないものです。公然で、オープンで、ガラス張りの中で、戦闘作戦行動なんというものがあるなどとは、私たちは想像できません。ましてや、現在のような段階になりますと、奇襲攻撃、先制攻撃というものが非常に重要になってきます。そういう段階でアメリカ事前協議をした、その事前協議の結果を国民に公表する、こういうことを許すのは、すでに事を終わったときに許すだけじゃないだろうか。岸総理は、そういうアメリカ軍の作戦の機密の行動に触れてまで、あえてその事実を公表されるお気持でしょうか。
  193. 岸信介

    岸国務大臣 私は、一切の米軍の作戦行動が協議事項になるとは思いません。戦闘作戦行動のために、日本の基地や施設を使用するという場合に、事前協議の対象となるわけであります。出ていってどういう作戦行動をするとか、そういうことの内容まで一切を公表するということは、これは今御指摘になりましたように、本質的に公表すべき問題でない、かように思います。
  194. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 日本は島国ですが、しかし、日本だけが孤立しているわけではありません。御存じのように、アメリカ極東における作戦というものは、ペンタゴンからハワイへ——ハワイで立てられるものです。そして、どうせ事が行なわれる場合には、全アジア的な形で、お互いに関連しながら事が起こるのです。そしてその場合に、日本施設及び区域を使用して、どう戦闘作戦行動をやるかという問題になるわけでしょう。そうだといたしますならば、事前協議の対象としてこれを論議する場合に、そうした全戦略的な構想を知らずして、ほんとうの論議はできないわけです。象のしっぽだけにさわって、ああ、象とはこんなに細いものだというような、そんな知識しか国民に与えないでおいて、事前協議について十分なる討論をせよなどといってみたところで、ナンセンスでしょう。こういうことから考えて参りますと、事前協議における秘密性、こういう問題は、どんなに総理が善意を持って努力をせられても、結果としては、現実としては、事が終わってでなければ国民の前に明らかにし得ない。歴史的な事実として公表をするということしかできないのじゃないだろうか、こういう感じがいたしますが、どうでしょうか。
  195. 岸信介

    岸国務大臣 ただいまお答えを申し上げましたように、一切のことをわれわれは知らなければならぬというようにも考えておりませんし、また、一切のことを公表するということも適当でないと思います。ただ、実際に日本の基地を使用して在日米軍が戦闘作戦行動をするという場合におきましては、極東における国際の安全と平和に対する脅威が存在し、それがついにそういう事態まで発展するわけでございまして、第四条において、われわれは、そういう場合において随時十分な協議をして、そうして情勢の判断、これに対処すべき方法等をわれわれが協議するわけでございます。従って、今お話しのように、われわれとしては、もちろん協議の対象とし、日本政府としては、できるだけ情勢を正確に把握すべきことは当然でありますが、それを、すべて国民の前に明らかにするという性質のものではなかろうと思います。
  196. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 この問題について私が神経質になりますのは、刑事特別法の適用をせられた今までの幾つかの事例を知っているからです。たとえば、横須賀のあるクリーニング屋さんは、横須賀の基地に艦隊が入って参りますと、急に忙しくなります。また、出ていってしまうと、すっかりひまになってしまいます。そこで、あるときに、小僧さんが一日二日休みたいというので、休ましていいかどうかをはっきり知りたいために、ある水兵に、いつごろ艦隊は入ってきますか、ということを聞きました。すると、米軍の行動を探ったということで処罰をされているのです。こんなにも米軍は、そして日本の検察当局は敏感で、厳格です。また、朝日新聞の一九五六年の九月、たしか十一日だったと思いますが、記事を見ますと、かなり行政協定や米軍の配置についてお書きになりながら、これ以上書くと刑事特別法に触れるから書けないと、断わり書きをしておられます。これはすなわち、国民に対して事実を知らせられない、少なくとも、新聞社としては、かなりぎりぎりまでお書きになったのでしょうが、しかし、そういう断わり書きをあえてせざるを得ない。すなわち、それは刑事特別法を意識しておられるからであります。こういう点から考えてみて、国民世論というものが、実はこの事前協議の中に反映しない、こういうことがあり得るのではないだろうか、こう考えまして、事前協議は隠密に行なわれ、われわれ一般国民が知らないうちに現実に行動は起こってしまう、こういうことをおそれるわけであります。今、林さんは、何か非常に刑特法をゆるく解釈をせられたようでありますが、しかし、専門家の林さんは、現実には、おなかの中でいろいろな判例を御存じなはずです。そこで私は、こういう国民に対してはほとんど秘密に近い、かりに知らされても象のしっぽだけしか知らされないようなこの事前協議について、何らかのチェックをする方法を考えていっていいんじゃないか、こう考えているわけです。今まで総理は、事前協議は一応国防会議には相談をする、こういうような御返答があったように思いますが、必ず国防会議には御相談になる御予定ですかどうですか、もう一度確かめておきたいと思います。
  197. 岸信介

    岸国務大臣 私は、その事前協議最後の決定については、事態によっては、国防会議にかける場合もありましょうが、とにかく、決定する場合においては、閣議に諮って最後の決定をするということを申し上げております。
  198. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 国防会議の中の国防に関する重要な事項ではないでしょうか。当然、これは国防会議にお諮りになるべきではないか。まあ、総理のおなかの中では、国防会議の議員も、閣議の閣僚もダブっているからというお考えがあるかもしれませんが、しかし、当然国防に関する重要な項目として、これをおかけになる責任がありはしないだろうか、こう考えますが……。
  199. 岸信介

    岸国務大臣 米軍の装備であるとか、あるいは米軍の配置というような事項、これが直ちに国防会議にかけなければならぬ、いわゆる国防上の重要な事項と認むべきかどうかということは、私は、その事態によってきめるべきであって、ただ抽象的にそうだ、こういうふうに考えることは、適当でなかろう、かように考えます。
  200. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 国防会議のところを見ますと、「国防の基本方針、防衛計画の大綱、前号の計画に関連する産業等の調整計画の大綱、防衛出動の可否、その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」、こういうふうになっております。少なくとも、あなた方は、アメリカ軍日本を守ってもらう義務を負わせた、こう強くおっしゃっているわけです。もし、アメリカ軍日本を守ってもらう義務を負わせたとおっしゃるのならば、やはり、これも国防の中の重要な要素になるのではないでしょうか。従って、これが変動し、これが減少する、こういう現象を現出して参ります場合には、当然国防に関する重要な問題とお考えをいただいて差しつかえがないと思いますが、なぜ、それが一方において日本を防衛する力として高らかにお唱えになりながら、片一方において国防の重要事項でないとおっしゃるのか。
  201. 岸信介

    岸国務大臣 言うまでもなく、防衛庁設置法第四十二条の一号から四号まで、これは具体的に必ずかけなければならぬ事項であります。そして第五号は「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」こういうことでございまして、これは各種の問題について、具体的に内閣総理大臣が重要と認めた事項はかけなければならない、重要と認めるかどうかということは、各種の具体的な場合において、具体的に検討してきめるべき問題である、かように思います。
  202. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 さらに、この事前協議の問題を、事前にか事後にか、国会におかけになる意思がありますかどうか。
  203. 岸信介

    岸国務大臣 事前協議の事項を、事前に国会承認を求めなければならぬとは考えておりません。事後におきまして報告するとか、あるいはその他質問に対して答えるとかいうような方法によりまして、差しつかえのない範囲内におきまして国会に明らかにするということは考えていくべきであろうと思います。
  204. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、国会はこの事前協議には関与できない、こうお考えになるわけですか。
  205. 岸信介

    岸国務大臣 これは政府の責任においてなすべきことだと思います。
  206. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 日本の防衛ということについて日本自衛隊も非常に大きな力を持つ、また、アメリカも非常に大きな力を持つ、こうおっしゃるわけです。ところが、自衛隊が出動いたします場合には、国会にその承認を求めなければならない、ごく例外の場合に事後に報告をして承認を求める、こうなっておりますのに、日本に駐留いたします米軍、あるいは日本に駐留いたしませんでも、日本施設及び区域を使う米軍、これらの行動、あるいはそれらの変動、こういう問題について全然国会ノー・タッチというようなことが一体許さるべきだろうか、こう私たち考えて参りますと、先ほど申しましたように、世論形成の何らの資料も提供されない、国会も無関係である、そして、ただ単に岸さんを中心とした、現段階においては閣僚の方々だけが参与する、そうして、日本の非常に大きな運命の転換期をもたらすかもしれない、こういうようなことでは、何か国民は非常に不安にたえないわけです。拒否できるかできないかという議論が非常に強く、この国会でも、また、国会の外でも行なわれておるということは、すなわち、事前協議というものをいかに国民が重大視しているか、そうして事前協議をやる場合にも国民がいかに参与したいと願っているか、こういうことの強さを物語るものだろうと思いますが、国民も知らされない、国会も知らされない。たかだかあとから事後報告を受ける程度だ。こういうことで国の運命を決定すべき大きな問題がきめられていくことについて非常な不安を感ずるのですが、総理はどうお考えでしょう。
  207. 岸信介

    岸国務大臣 この問題は、重要な問題であるけれども、事前に国会承認を得べき事項でもございません、また政府が全責任を持って行なうべき問題である、かように私は考えております。もちろん、国会は、国政の調査権に基づいて政府の報告を求めるとか、いろいろ調査されて事実を明らかにするということは、これは当然のなんでありますけれども、事前に承認を得べきものではない、かように思っております。
  208. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、事後に国会に報告をなさる。そうした場合に、国会はこれに対してほとんど意思表示の余地がありません。もうすでに事はどんどん、どんどん進行して、もう取り戻しのつかないところまでいっているわけです。もし、そうだとすれば、国会でこれに対して反対だという決議をしてみたところで、あとから及ばないでしょう。米軍が戦闘行動の途中でも、もし、国会が御報告を受けて反対であるという決議などをするようなことがあらば、事前協議を取り消すのですか。
  209. 岸信介

    岸国務大臣 それは、私、関係ないと思います。政府自身が政治的責任をとるべき事項である、かように思います。
  210. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、国会が反対の決議をしたにもかかわらず、政府がみずからの責任においてこれを許してしまったのだから、もう取り戻しはつかない、こういうことになりますと、当然政府は総辞職でもなさる以外には方法がありません。しかし、かりに総辞職をなすったところで、一ぺん与えてしまった承諾というものを取り戻せない以上、この国がそれによって非常に影響を受けていくことはあやまちがないわけです。そういう、この国の運命を完全に左右してしまうような問題を、ただ内閣の閣僚だけにあずけていくというやり方、これについて、何か工夫をお持ちにならないでしょうか。かつて、旧憲法の当時においては、宣戦布告などという問題については、国会だけではなしに、他のチェックする機関があったはずです。重要な問題になればなるほど、できるだけ大ぜいの人の目を通す、あるいは手を通す、こういうことが民主国家としては当然なはずなのですが、こういう問題について、総理は制度的に何か一つの構想をお持ちにならないでしょうか。ただ、おれを信じていればよろしい、こういうことであれば何の心配も要らないのですが、しかし、私たちは救世軍ではありませんから、ただ信ぜよと言われただけでは、信じていくわけにはいきません。当然あなたが、民主政治家であるということを自任なさる以上、それほど大きな権限を自分の一手に掌握して、政府の責任である、こう言い切られるところに私たちはちょっと矛盾を感ずるわけですが、いかがでしょうか。
  211. 岸信介

    岸国務大臣 私は、今日の日本の内閣制度というものは、いわゆる政党内閣であり、議院内閣でございまして、国民の選挙によって選ばれ、また、国会の多数によって内閣が信任されて、その内閣ができておる。従って、もちろんこういう重大なものを、どの内閣でありましても——私の内閣であるといなとを問わず、どんな内閣におきましても、全政治的の責任を持ってやるべき重要事項でございますから、従って、国民の意向であるとか、あるいは日本全体の利益、福祉というものは、頭に十分置いて、これに対する協議に応ずるわけでございます。今お話しのように、私は、今の民主政治の機構からいうと、内閣の政治的全責任のもとに、これが行なわれるということが適当である、かように思っております。
  212. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 結局内閣の全責任においてとおっしゃる、そして国民の意向は、選挙で当選してきたのだから十分に参酌する、こうおっしゃる。だがしかし、一つの実例をこの安保条約に求めてみたところで、安保条約反対という国民の声の方が、現実には、世論調査において明らかに多いわけです。東京新聞も、毎日新聞も、読売新聞も、朝日新聞も、みんなおやりになりました。そして、その方々の調査が相当科学的なものであることも、私たちは否定し得ません。しかも、日にち順に並べて参りますと、だんだん反対の声の方が多いのです。しかも、先般黒田先生もおっしゃったように、内閣調査室でも第二回目の調査をなすったはずです。にもかかわらず、発表なさらないというのは、安保反対の声の方が多いから、閣議でもってこれを発表するのをよそう、こういってとりやめられた事実さえある。こういう大ぜいの国民の声、こういうものを、現にあなたはお聞きになっていないじゃないですか。にもかかわらず、国民の声をお聞きになっていないで、それでいて今この問題に入ると、選挙された政治家だから、国民の声を参酌して事を行なう、こうおっしゃるのですが、それじゃ支離滅裂ですよ。何とかあなたの方でも、これは条約とは無関係なんですから、国内法を作ればいいのです。事前協議を行なう場合の特別法を作ればよろしいわけです。そういうようなことをお考えになる余地はないのかと、私は伺っておるのです。
  213. 岸信介

    岸国務大臣 私は、先ほど来お答え申し上げておるように、この問題については、政府が全責任を持って決定することが適当である、こういう考えでございます。
  214. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう一度申し上げます。事前協議というものは、単に、米軍の出動をするかどうかということに対する諾否にとどまりません。この諾否を行なった後には、必ずその影響が日本国家全体に現われてくるはずです。報復爆撃を受けるというようなこともあるでしょうし、また、日本が完全にアメリカの側に、一方的に縛りつけられてしまったという、国際的な地位を獲得するという結果も出るでしょうし、また、考えてみれば、いろいろな結果が出てきます。そういう影響を考えみてますと、これは単に出動に対する諾否にとどまらず、日本の政治の方向を決定するかもしれない。これをチャンスに、右翼的なファシズムが台頭してこないとも限らない。こう考えますと、事前協議日本の政治を左右する非常に重要な問題だ、こう言ってもいいかもしれません。もしそうだとすれば、その問題について、ただおれを信ぜよとおっしゃるだけでは、ここに、民主国家の中に独裁へ通ずる道が開かれていくのではないか。独裁制に向かって道が開かれていくのじゃないか。岸さん、いろいろ今までもおっしゃっておられることを伺いますと、なかなかりっぱな、民主的な政治家らしゅうございますから、その危険はないでしょうけれども、あなたの次の次の、どなたが出てこられるかわかりません、そういう政治家が、この道を利用して、独裁への道を驀進していくという可能性があるじゃありませんか。たとえば、米軍の配備の重大な変更という問題についても、あるいは装備についての重要な変更という問題についても、これは秘密であるというので刑事特別法をさらに強化し、あるいはMSA秘密保護法をさらに強化するなどという形で、言論弾圧の方向をとられるかもしれない。いろいろな諸点を考えて参りますと、独裁への道が開かれていく、こういう抜け道が、ここにぽっかり口があいているのだ、こういうことは、岸さんが、ただおれを信ぜよというだけでは済まない制度的な問題だ。人間の問題じゃない。あの人はいい人、この人は悪い人という人間の問題ではなしに、民主国家としての政治の構造の問題だと私は考えないわけにいかないわけです。そういう点で、私は、この事前協議が非常に秘密に包まれていくものだ、その可能性の強いものであるだけに、そのことをあなたに再度要望せざるを得ないわけです。その点についてのお考え方はどうでしょう。
  215. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、先ほどもお答え申し上げましたように、私がどうだとか、私の内閣がどうだという意味ではございませんで、今日の民主政治、日本の議院内閣の制度から申しまして、政党内閣の本質からいっても、今お話がありますけれども、私は独裁への道が開かれるとは考えておりません。あくまでも主権者たる国民が、選挙権の行使によって、少なくとも、四年に一度は選挙して、そして国民意思を体して、その代表者として選ばれたところの議員が、それぞれの政党に属しておることは当然でございますが、さらに、その国会において選任されるところの内閣の首班、それが作っておるところの内閣が、全政治的責任を負うというこの制度は、今の民主政治あるいは議会政治の形式として、制度として、そういうものであるから、独裁の道が開けるとお考えになることは間違いであり、また、私個人を信じて下さいということを申し上げるわけではございませんで、この制度が、そういう建前であることから考えてみて、時の政府が、全政治的責任をかけてこれを決定すべきものである、かように申しておる次第でございます。
  216. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは、もう時間も迫りましたし、仲間の皆さん方にお気の毒ですから、そう長く続けませんが、ともかく、今制度として独裁への道は開かれてない、こうおっしゃたのですが、その一例をあげてみましょう。たとえば、日米の両軍が一緒に行動する場合があるはずです。そういう場合は、否定はなさるまい。もし日米の両軍が共同行動をとります場合に、米軍の行動は、おそらく刑事特別法によって極端な秘密に閉ざされるでしょう。ところが、片一方においては、自衛隊法によって、自衛隊の出動、すなわち、防衛出動は国会にかけなければなりません。国会にかける。ところが、なぜ自衛隊の出動をしなければならぬのか、あるいは自衛隊の行動は今後どうなるのか、こういうような論議を国会でやろうといたしますと、日米共同しておりますから、どうしても米軍の行動に触れざるを得ないわけです。そうなって参りますと、おそらく時の総理大臣は、あるいは防衛庁長官は、秘密に関しますからお答えはできません、こうおっしゃるに違いありません。もしそうなりますと、米軍の行動の秘密によって、自衛隊の出動の可否を決定することについてさえ制限が出てくる。こうなりますと、自衛隊法第七十六条の法意は完全に制約をされてしまうという結果にならざるを得ないだろう、こう私は考えます。ここにも、現に法律によらずして法律を制約していく独裁への道が開かれていくじゃありませんか。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)そんなことはないと椎熊さんはおっしゃるのですが、現実に、戦争の現実を考えてごらんなさい。私の申し上げることがうそでないことがおわかりでしょう。
  217. 岸信介

    岸国務大臣 自衛隊の出動する場合は、言うまでもなく、これは安保条約五条の場合で、日本の施政下にある領土が他国から武力攻撃を受けた場合であります。この場合に、祖国を防衛するために出動を命ずる、これについては国会承認——事前または事後の承認を得なければならないことは、自衛隊法に規定されておる通りであります。私どもは、要は武力攻撃があった、いわゆる侵略があった場合に自衛隊の防衛出動を命ずるわけでありますが、そういう事実自体に対して、国会政府とが認識を異にするようなことは、実際問題としては私はあり得ないと思います。あり得ないと思いますが、理論上、もしもそこに認識が違っておるということがあれば、この自衛隊の出動ということについて意見が違うという場合が起こるわけであります。実際問題としては、現実にわれわれが武力攻撃を受けておるという明確なる事実に基づいておることでありますから、私は、そんなことはないと思います。しかし、そういう場合に、国会自衛隊法によって御審議になり、その自衛隊の出動を認めるか認めないかということでありまして、今お話のように、米軍の行動についての秘密がその場合にどうなるかというようなことは、関連のない問題である、国会の御審議がそのために妨げられるということは絶対にない、私はかように思います。
  218. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 時間がもうきましたから、私はあした続けさせていただきますが、あしたICAOの地図を出していただいて、もう一度地図の問題と、さらに、もっともっと——日本自衛隊侵略性を、私は事実を突きつけて伺うつもりでありますから、どうぞ一つ次会に留保させていただきます。
  219. 小澤佐重喜

    ○小澤委員長 次会は明十五日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三分散会