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1960-04-13 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月十三日(水曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    天野 光晴君       池田正之輔君    石坂  繁君       加藤 精三君    鍛冶 良作君       鴨田 宗一君    小林かなえ君       田中 榮一君    田中 龍夫君       田中 正巳君    床次 徳二君       野田 武夫君    福家 俊一君       古井 喜實君    保科善四郎君       毛利 松平君    山下 春江君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       黒田 寿男君    戸叶 里子君       中井徳次郎君    穗積 七郎君       森島 守人君    横路 節雄君       受田 新吉君    大貫 大八君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外務大臣    藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 四月十三日  委員塚田十一郎君、松浦定義君及び田中幾三郎  君辞任につき、その補欠として加藤精三君、中  井徳次郎君及び大貫大八君が議長の指名で委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたし、前会に引き続き質疑を行ないます。堤ツルヨ君。
  3. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、きょう、今議題になりました問題について、質問を展開いたしたいと思いますが、私の本格的な質問に入ります前に、まず、今までの審議経過から見まして、総理大臣お尋ねをいたして、御所存のほどを両方で確認をいたしておきたいと思います。  それはどういうことかと申しますると、自由民主党が御勘定になりましたところでは、もうすでに野党安保審議の時間を三十数時間重ねておって、前の国会におけるベトナム賠償のときよりもすでに上回る時間を審議に要しておる、まあ、こういうような計算をしておられるようでございます。そこで、私は、このベトナム審議を上回る時間を要しました今までの安保審議経過を振り返ってみまして、非常に痛感いたしますことは、政府態度が、あらゆる質問に対して釈然としないということでございます。これはイデオロギーの対立であるとか、見解相違の問題であるとかいう問題でなしに、もっと掘り下げて考えなければならないのは、国民国会審議を聞いておって、なるほど安保は重大な問題だ、そして質疑を通じて、自分が不可思議に思っておる点を、あの質疑において、あの国会議員委員会における発言において、総理答弁において、また外務大臣答弁において、なるほどこれはわかったということが、十分積み重ねられて、納得した上で、安保審議というものが国会を通過して、批准に向かう、こういう建前でなければならないと思いますけれども、どうも今日までの政府審議途上におけるところ答弁は、極端に申しますれば、どれ一つと言っていいほど釈然といたしておりません。これは自民党政府与党にはわかっておるけれども野党にはわからないんだろう、まあ、こういうような態度でおられるやに私は察知しますけれども、問題は、批准を成功させなければならない政府の面子の問題だとか、それから野党がどうしたの、こうしたのという問題でなくして、あくまでも国民立場中心としたところ安全保障が、確立されるということでなければならないと私は思います。この国民立場から見て、安全保障を真の目的とするところのこの審議途上において、私は、政府がもっと、これは私たちはお預かりしておるけれども非常に困っておるのだとか、それから率直に認めて、まああなたのおっしゃる通りだとか——ほとんどの人はそう見るでしょう。従って、もしよいお知恵があるなら拝借さしていただきたい、こういうようなことが、問題によって当然言われなければならないような場合が、今日まであったように思いますけれども、依然として高姿勢であり、ごまかしであり、国会を通過させるための詭弁が積み重ねられておる、こういった感じでございまして、従って、国会審議を通じて、国会議員にわかりません。総理に直接質問をいたしております国会議員釈然として理解できないで、納得できないことが、新聞や、ラジオや、報道を通じて、また速記録を通じて、これが国民に紹介されたときに、国民がさらに国会議員よりも理解できるかといえば、私は、国会議員理解できないものが国民釈然とするはずがないと思うのであります。今日までの審議経過を見てみますると、非常に大切な問題であるところ極東範囲を例にとってみましても、おそらく国民の中には、疑心暗鬼、一体どうなるのかというところの不安を持っておるのが九九%だと思います。それから事前協議の問題にいたしましても、これは少しもはっきりいたしておりません。また、竹谷委員や、大貫委員や、戸叶委員に三日、四日かかって答えられた政府答弁を通して、国際条約憲法国内法との関係をいろいろと検討してみますると、これももう一つわかりません。私は、こういう問題が釈然としないで、一体国民批准納得するのかどうか、大いに疑問を持っております。総理にこの極東範囲について申し上げてみましても、たとえば金門馬祖の問題でございます。私は、またこれを私のあとの質問で、極東範囲に触れていたすことになっておりますから、今詳しくは申し上げませんけれども、あの金門馬祖にいたしましても、初めは入っておった。中途で入らなくなる。それじゃ政府意思を変更したのかといえば、変更しないという。全くもってろれつが合わないのでございます。金門馬祖が入るといえば、党内からつるし上げられる。反対派がある。そして金門馬祖を入れてしまうと、どうも工合の悪いところがたくさんある。しかし、金門馬祖が入ったと言わないと筋の通らないような食言を、すでに冒してしまっておる。このジレンマに立って非常に苦悶をしていらっしゃいますが、これは必ず私たち国会でこの法案を通過させる前までには、だれかが明確にしなければ、国民釈然としないということは、私はおわかりになると思います。それから事前協議の問題にいたしましても、拒否権のないところ事前協議、はたして事前協議というものが絵にかいたもちでないかどうかということは、非常に疑問を持っておりますが、これもまだはっきりいたしません。また、林法制局長官が、一昨日は、あらゆる国内法というものは、憲法が包含しておるのであるからということで、憲法と、他の下にあるべきはずの国内法とは、同一序列にあるかのごとく見せてこれと国際条約とが、相ともに並んで、同じように競合するんだというようなことを言っておられるのでございます。私たち常識から申しますれば、憲法の下に国内法があるのでございまして、もし、国内法憲法と同序列に置かれて、国際条約に対決するのでありますならば、憲法は不要になって参ります。こういうことに対するところ答弁も、林さんは笑っていらっしゃいますけれども国民にはわからないのでございます。この辺は明快でないということ、数えあげれば枚挙にいとまがないほど、釈然としないところの脆弁が積み重ねられておるということを、反省しなければならないと私は思いますが、私のこの指摘に対しまして、岸さんはどうお考えになりますか。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 私は、しばしば申し上げておるように、この安保条約国会における承認の問題に関しましては、十分審議を通じて政府所信を明らかにし、国民納得理解の上に立つところの支持によって、これが通過を期しておるということを申し上げております。私の考えは、終始その通りでございます。そうして、今おあげになりました点に関しましては、極東範囲については、われわれは統一見解を述べております。統一見解においてわれわれが申し上げておることが、われわれの考えであります。また、事前協議の問題に関しましては、しばしばわれわれは、事前協議の対象になる問題については、日本がこれを拒否することのできる問題と、拒否した場合において、アメリカがその日本拒否に反した行動はとらないのだということを、繰り返し、明瞭に申し上げておるのでありまして、何らこの点において私どもは疑問もなければ、不明確な点があるとは実は考えておりません。また、国際法憲法国内法との関係についての政府の法律的の解釈につきましては、私は、今堤委員のお話しになったことは、われわれの法律解釈として申し上げておることを、正しく御理解いただいておらないのではないかと実は思うのでございます。こういう点に関しまして、御疑問があるならば、われわれはあくまでもこれを明瞭にいたし、そうして国民理解を深めていくべきことは当然でございます。ただ、せっかくの堤委員の御意見でございますが、私どもは、いかなる場合におきましても、政府所信を明瞭率直に申し上げてお答えをいたしますが、あるいは御質問委員のお方の御納得なり、御理解をいただき得ない——立場が違っており、御意見が違っておる点があることは、もちろんでございます。しかしながら、政府詭弁を重ね、あるいは事実を隠蔽しておるというふうな御意見でございますけれども、私は、先ほど最初に申し上げましたような心組みで、この審議に臨んでおりますから、一切そういう考え政府としては持っておらないことを明瞭に申し上げておきます。
  5. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私が申し上げるところ意図も、御答弁になりました首相意図も、一対一でございまするから、尊重をいたします。従って、まじめに考えておられるということを前提として、私は発言をさせていただきます。  実は、念のために申し上げておきたいと思いますけれども、決して私が所属いたしまする民主社会党の思想を一方的にこじつけようとか、また、私たち安保に対するところの主張を固執して譲らないというような考えで、ものを申しておるのではございません。しかも、考えなければならないことは、国際問題でございまするから、いかなる人が政権を担当いたしておりましても、国際場裏に出て、日本国政府が、あるいは日本国が、国際場裏の中で信用を得なければならないことは、論を待たない。従って、できるだけ協力をして、政府信用をかちとれるような、国際場裏における活躍をしていただきたいと思うのでございます。私は、単に自民党内閣が長きにわたり政権を担当していらっしゃって、野党から見ればずいぶん腹が立つから、自民党内閣を攻撃するのだとか、また、私たちイデオロギーにこだわって、あるいはどちらかに属してものを言うというような態度を、私たちはとりたくないと思っておる。またとるべきではない。要は、私が当初に申し上げましたように、安全保障目的とするところ国民立場から、私たち国民があげて善処をしなければならない問題である、こういうことにかかっておると思います。政府は、今岸さんがおっしやいましたようなお言葉通りのお心持でございますならば、どうぞ困ったことはごまかさないで、困ったとおっしゃっていただきたい。そうしてできるだけPR考えていただきたい。国民にもっともっと理解してもらって、理解の上に立って、国民世論を背景として批准をするのだというところ態度をとってもらいたいと思います。これはもう一度確認をいたしますが、よろしゅうございますか。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 この審議にあたっての根本の考え方は、今堤委員の御意見のように私はさっきもお答えを申し上げておりますし、そういう考えでおります。
  7. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 総理は、今そういうふうにお答えになりました。国民に対するPR理解をしてもらうということの方法については、一番効果的なものは何かといえば、やはり国会審議だと思います。これにしくものはないと思います。たとえば、羽田へお帰りになった総理が、このように安保に調印してきたのだというので、サクラの出迎えを集めて御宣伝になりましても、また、日比谷や中之島の公会堂で八百長演説をおやりになりましても、これは一向効果がないのでございます。国会審議を通じて、時間をかけて国民PRをするという態度に出られるのが、最もいいことだと私たちは思うのでございます。ところが、こういう見地に立って考えまするときに、自由民主党並びに政府は、統一見解として、四月の二十三日には国会を通過させたい、どうしても野党審議に応じてくれないときには、よしや単独審議であってもこの審議を終わってしまいたい、こういうふうに言っておられるのでございますが、今おっしゃっておる、できるだけ審議をするという問題と、二十二日にはどうしても通すんだという言葉とを考え合わせますときに、そこに筋の合わないものがあると思います。一体二十二日に期限を置かれたのは、国民理解をしてもらうのに十分である期間だと思われたのかどうか、お答えいただきたい。
  8. 小澤佐重喜

    小澤委員長 堤委員に申し上げますが、審議方法の問題は、委員会が自主的に決定する問題でありますから、政府意見を聞く必要はないと思います。よくあなたの方と御相談して今後進めます。
  9. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それは表はそうでございますけれども、裏ではちゃんと相談ができておるということは、常識でございます。(発言する者あり)  そこで、私は、ここで騒いでいらっしゃる自民党方々にも聞いていただきたいと思うのでございますが、私は国民に知らさなければならないという建前に立って考えまするときに、釈然としないところの諸問題は、まだ二十二百にはなかなかはっきりするようには考えられません。そこで、私が考えますのには、どうも二十三日に政府並びに与党が通してしまいたいというような意向があるということは、あまり国民に知られると困ることがたくさんあり過ぎるので、知らぬ間に通したいと考えておるのじゃないだろうか、こういうような考えを持つのでございますが、そういう量見は、先ほど御確認になりました通り、岸さんにはないものと私が拝承してよろしゅうございますか。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、私が先ほど申しましたことは、真剣に申しておるのでありまして、国民に知らして悪いようなことが、この中に包蔵されておるというようなことは一切ございません。十分な審議を尽くしていただきたい、これが念願でございます。
  11. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 質疑を重ねれば重ねるほど、疑問がわいてくる。国民が不安になる。こういう問題は、今自民党の方はヤジっていらっしゃいますけれども、前国会ベトナム賠償の……。(「ヤジじゃないよ」と呼ぶ者あり)やかましい。
  12. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  13. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ベトナム賠償のときの例を反省してみますと、非常によくわかることでございます。国民の関心の高まりかけたときに、自民党が強引にベトナム賠償を通過させましたあの経過を見ましても、私は、この安保の問題もあの二の舞をなさるのではないか、こういうふうに考えます。社会党が十一月の二十七日に実に下手なあのデモをやりましたので、ベトナム賠償に対する政府の罪は、世論の批判から免れたようでございますけれども、しかし、もしあれがなかったら、強引にベトナム賠償を通過させた政府は、もっともっと手痛い世論の反撃にあったはずでございます。従って、ベトナム賠償のときにやったような強引な自民党のやり方に対して私たちはここに強い反省を求めておかなければならない、かように思うわけでございます。私がこういうふうに申しておりますけれども、どうか自民党方々におかれましても、一人々々が御勉強になりまして、まじめに条文を前に置かれて一つ勉強の結果、ヤジっていただくようにお願いしたい。私は、ふまじめな態度でもって、委員会ヤジ専門というような委員があるようなことでは、国民信用しないということを申し上げておきたい、かように思うわけでございます。  さて、それでは、私は本格的な質問に入りたいと思います。  政府お尋ねをいたしたいのは、政府安全保障に対するところ基本理念お尋ねいたしたいと思います。すなわち、もう少しかみ砕いて言いますれば、日本の私たちの領土の安全を保障するのには、何が最も必要な条件と考えられるか、政府の御見解を承りたいと思います。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 これは政治全体の問題でございまして、われわれが国防会議において国防基本方針をきめる場合におきましても、その点に関して十分な審議をいたしております。私は、国民独立国国民として、祖国を他の方から不当な侵略を受けさせないという決意を持つような、この国を作りあげるということが、安全保障基本でなければならないと思います。そのためには、政治各般外交各般、あらゆる面が、それぞれの面において、その目的のために総合的な施策をしなければならぬのであります。ただ単に、いわゆる狭い意味におけるところ防衛力を作り上げるということだけで、国の安全が保障されるものではないということは、言うを待ちません。しかし同時に、今日の国際情勢におきまして、独立国として防衛力をみずから持ち、足らざるところのものを友好国との間において助け合っていくというようなことも必要でありますけれども基本的に申しますと、今私が申し上げた通りでございます。
  15. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 総理大臣基本的理念をそういうふうにお考えになっておるということは、非常にけっこうだと思います。私も同感でございます。単にロッキードだとか、兵力を増すとか、自衛隊を増強することとか、大国にすがりつくような安全保障条約を結ぶとか、こういうような問題でなしに、まず、国内で結束しようという国民意思を統一できるような国内体制を作ることが、何よりも私たち安全保障基本理念でなければならぬと思います。しかも、今総理がおっしゃいましたように、私たちが結束して、日本の楽しい国を守っていくのだというとこるの基本理念意思の生まれて参りますところの国というものは、政治によって、政治の力によって実現しなければならないということも、岸総理はお認めになったと思います。その政治は、国内内政全般にわたって、さらに外に向かっては外交政策を通して、あらゆる角度から、私たちの守ろうとする、国民意欲のわく国柄を作っていく、国家体制を整えていく、こういうところに置かれなければならないと私も思います。  そこで、そうお答えいただいたのはけっこうでございますけれども、しからば、内政問題において、国民納得をして、みんなで結束をして守ろうというような国内政治が、岸内閣の手によって行なわれておるかどうか。それからもう一つ外交政策につきまして、外に対して日本外交手段を用いて、話し合いの上で日本の安全が保障されるような体制に持っていくように、外交政策がとれておるかどうかということを検討いたしまするときに、私は幾多の疑問があると思います。これは政党が違うのだから、政策も違うし、従ってあるいは見解相違だとお答えになるかもしれませんけれども、しかし、日本の今日の政治を見ておりますると、あまりにも国民福祉には薄く、軍備増強予算に食われてしまって、なかなか私は国民を中産階級化することさえもできない情勢の中にあると思います。何と申しましても、まあまあこの辺のところで、今の日本立場ならばしんぼうしなければならないだろうというところの、納得のいく国民の大多数が国の中におるということでなければ、どうしても私は守ろうという意欲は生まれてこないと思います。しかし、ことしの一兆五千億になんなんといたしまする国家予算を見ましても、ジェット機二、三台を節約して回わせば、子供のおやつ代や婦人の予算回わせるような、こうした福祉面での予算は、実に零細で、スズメの涙ほどのものであります。各先進国がすでに制定いたしまして、発足いたしておりまするところの、福祉国家の柱であるところ国民年金医療保険制度、こういうものを見ましても、まことに情けない国家予算でございまして、国民釈然としておらないと私は思います。また、うちにだけでなしに、外に向かってこれを私たちが検討してみますると、どうも岸内閣外交政策は、敵視国家を作り、仮想敵国を作り、どうしてもこの一辺倒の外交政策というものは、今日改まっておらないように思います。これはイデオロギーが違うから仕方がないのだ、こう言われることは、あるいは予想できるかもしれませんけれども、しかし、私は、外交の問題は、イデオロギーでなしに、世界の平和に貢献をしていくのだ、全人類と手をつないでいくのだという考えに立てば、もう少しイデオロギーというものに立脚しない外交政策のあり方というものが、岸内閣の手によっても打ち立てられなければならないと思いますが、どうもイデオロギー過剰で、岸首相は、共産圏に対して外交政策の面においては、安全保障をさえ侵害しかねないところ外交政策をとっていらっしゃるように私は思うのでございます。どうしてこのようにソ連、中共を中心とした共産主義陣営敵視政策をおとりになるのか。この辺で一つ方向転換をなさるときが来ておるのではないかと思うのでございまするが、これに対しまするところ岸総理大臣の御見解を承りたいと思います。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 国内内政の問題について、私は、社会保障福祉国家の建設に対しまして、現在の日本の状況が十分だとはもちろん考えておりません。しかし、これにわれわれが力を入れておることは、年々の予算をごらん下されば、私はきわめて明瞭であると思います。特に、そういう社会保障ができないことが、防衛費負担が非常に重いから、そういう結果になっておるというふうな御議論でありますけれども、これを国際的に見まして、どこの国に比べても、われわれは防衛費としての負担は少ないのであります。これに反して、国力の増進に伴って、社会保障制度や、あるいは文教の施設等に対して、福祉国家の目標に向かってわれわれが予算をとにかく——もちろん、これでもって完全だとは私も申しませんが、努力しておるということは、私は、国民も十分に理解していただけることだと思います。  外交政策につきまして、いわゆる共産圏を敵視しておるということでございますが、われわれは決して敵視政策はとっておるのではありません。むしろ、共産国の方からそういう宣伝が非常に行なわれていることは、私承知いたしておりますけれども、われわれが共産国に対して決して敵視政策はとっておりません。ただ、私は、イデオロギーの過剰云々というお話がありましたが、ほんとうにわれわれが、この日本国民のほとんど圧倒的多数というものは、やはり自由の上に基礎を持つところの民主政治を完成することが、自分たち政治の理想であり、人間生活、国民生活の目標はやはりそこにある、いわゆる共産主義という理念に立っての国家組織においては、われわれが願っておるところの、自由を基礎としての民主政治の完成ということとは相入れないものであるという実際の現実に立って考えて、そうしてわれわれが、やはり日本のほんとうの住みいい、幸福な社会を作り上げるためには、自由主義の立場をとり、そうして繁栄と平和をはかっていくというのが、私の基礎の考えでございます。そうかといって、共産主義に対してはわれわれはそういう考えを持っておりますけれども、共産主義の上に立っての国家を作っておられる国々に対しまして、われわれは、その立場、その考え方というものに対して、決してそれに内政干渉しようとか、あるいはそれを敵視しようとかいう考えは持っておりません。従って、共産主義の国々との間におきましても、従来幾多の国交を回復しておらなかった国々との間にも国交を回復し、そうしてこれとの間にも友好親善を進めていくという方針は、私の内閣になりましてからも、世界の各地におけるところの共産主義国とわれわれがどういう立場をとっているかを御検討下さるならば、わかるのであります。世間では、むしろ、私の政策、こういう外交政策を両岸外交という非難すら与えておりますが、私は、立場としては、今言っているように、自由主義の立場を堅持しておりますが、共産主義の国に対しても、決してこれを敵視するとか、これとは一切交際しないとか、友好親善を進めないとかいうふうなことは考えておりません。ただ、お互いがお互いの立場理解し、尊重し、互いに相侵さないということによって平和共存を求めていくということが、現在の世界においての外交基本でなければならぬ、こう私は考えております。
  17. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 総理が自由主義陣営の中に立って平和を求めていくんだというお考えを持っていらっしゃるということを了解いたします。また、国民の多数も、数の上でいえば、どちらかといえば、私は、総理の言われるような現状であることも認めます。また同時に、共産主義陣営において、岸内閣に対するところのある程度の行き過ぎの発言や、また、どうかと思われるようないやがらせや、また、内政干渉にもひとしいような発言があったことも、私は、岸総理の言われるように否定はいたしません。認めますけれども、しかし、日本立場といたしまして考えなければならないことは、かつての戦争当時、日本はやはり世界の——残念ではございまするけれども、前科者としての扱いを受けておるということを忘れてはならないと思います。よしやそうした態度共産主義陣営にあったといたしましても、できるならば、日本の方から辞を低くいたしまして、日本安全保障を守るために、平和を守るために、国民の幸福を願うために、政府立場におられる人々は、売り言葉に買い言葉でないところの、強圧的な態度でないところの、話し合いの中にもう少し外交政策共産主義陣営との間に推し進めていかれるところの、積極施策があって、私は、人間としてもおかしくはないのじゃないか、かように考えるのでございまするが、こういう努力は払われておらないように私は思いますので、一つ、今岸総理お答えになりました精神でありますならば、一体、政府みずから、私の申し上げたようなことに対して、どういう積極的な政策をとられて、日本としての有利な立場を開こうとしてこられたか。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 共産主義の国のうちにおきまして、日本に最も近く、最も日本国民の関心の深い中共というものが、国際的に見まして、特別な関係にありますので、われわれの共産主義国に対する考え方が、この特殊な事情のために、私は、誤解されておるところが非常に多いと思う。しかし、そうでない東欧の共産主義諸国との間にも、従来国交が回復されておらなかったところに、国交を回復し、諸国との間に互いに大公使を交換しまして、いろいろな通商の問題であるとか、文化の交流の問題であるとか、その他のことを進めております。また、ソ連との間におきましても、日ソ共同宣言の趣旨に基づきまして、あるいは貿易の関係、あるいは文化の関係、あるいは最近におきましては見本市を開催するとか、あるいは漁業交渉の問題にいたしましても、すべてわれわれとしては、この精神に基づく友好的な関係を進めていくように努力をいたしております。ただ、中共の問題につきましては、私特殊の関係にあるということを申し上げましたが、これは堤委員も御理解いただけると思いますが、国連の関係といい、また国民政府日本との関係といい、中共と国民政府との関係、そういういろいろな複雑な関係がございまして、今日のところにおいて、政治的な意味における国交回復ということがむずかしい状態にあります。しかし、両国の理解と、そうしてお互いが将来において平和的な関係を作り上げるために、経済の問題や、あるいはお互いが行き来するところ関係というようなものを、積み重ねていくという従来の方針を、私どもとしては一貫して持っておるのでありますが、これが不幸な事態のために、今日途絶しておるという状況でございます。また、われわれが積極的に、いかなる場合におきましても——そういう関係にありますけれども、中共に対しましてすら、決して敵視的な言動や、そういう態度をとっておらないのでありまして、あくまでも私が最初に申し上げましたような関係でもって、共産主義国との間におけるところの友好関係も進めるように努力をいたしております。
  19. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 一応そういうふうにお答えになりますけれども、大体国民の見る目は、アメリカ寄りで、共産主義陣営仮想敵国視したところ岸内閣政策というものに対しては、国民が満足をいたしておりません。国内から侵略される余地のない国を整えていくということと、国の外から侵略の口実を与えないような外交政策の伸展を行なっていくということが、政府のとるべき態度でございますが、私がなぜこういうことを質問するかと申しますると、岸内閣共産主義陣営に対し敵視しておるということは単なる誤解だ、必要以上に誤解されておるのだ、こういうような答弁が事ごとになされますが、私はそういうように思わない。たとえば、一昨日の社会党戸叶委員の、中共の声明に対する総理見解に対しましても、やはり反発的なあの政府の、岸さんの御答弁というものは、多分に国民は批判的であると思います。なお、もう一つ、念のために、なぜ私がこういうことをしつこく申し上げるかと申しますと、一九五七年六月二十一日に発表された岸さんとアイゼンハワーとの共同声明、これを第一回の共同声明と申しておりますが、その中に、こういうことが、朝鮮動乱の問題に触れておりますけれども、うたわれておりまして、ここに根本があるように思いますので、ちょっとお尋ねをいたしておきたいと思います。「大統領及び総理大臣は、全面戦争の危険はいくらか遠のいたが、国際共産主義は依然として大きな脅威であることについて意見が一致した。よって、両者は、自由諸国が引き続きその力と団結を維持すべきであることに意見が一致した。自由世界の侵略阻止力がこの数年間に極東及び世界を通じて公然たる侵略を防止するため有効な働きをしてきたことが相互に承認された。」こういうふうに書かれておりまして、この朝鮮動乱の際に発表されました共同コミュニケの中には、はっきりと、共産主義陣営というものが侵略勢力であるから、従って、これに対してあぐまでも対抗しなければならないというところの相互の承認が書かれております。これは今度の第二回の岸・アイゼンハワーの共同声明の中にも私は尾を引いておると思いますので、お聞きしたいのでございますが、この共同声明を出されたときの共産主義陣営に対する岸さんのお考えと、現在、安保条約を結ぶ段階に至っての岸総理の中共、共産主義陣営に対するところ見解と、どれだけの開きができたか、また、どういうふうにお考えが変わってきたか、これをお伺いいたしたいと思います。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 私、第一回のアイゼンハワー大統領との共同コミュニケに申し上げておることは、いわゆる国際共産主義の脅威が依然として存しておるということを申しております。これは、私は、今日もなおその点はあると思います。これは自由主義の立場からの考えでありますが、先ほど申したように、われわれ人類のほんとうの理想は、自由を基礎とする民主主義の完成にあるという考え方から見ますると、国際的な面においてこれを全世界に押し広めていこうという国際共産主義の考え方というものは、自由主義の立場をとる考え方からいうと、それが一つの脅威であることは、私はいなめないと思います。今日もなお、その点については同様に考えております。ただ、いわゆる東西両陣営の対立という、東は言うまでもなく共産主義の陣営でありますし、西は自由主義の陣営でありますが、この対立関係というものにつきましては、最近におきまして、この間のいわゆる対立の緊張を緩和しなければならないということが、両陣営ともに考えられている。そうして、話し合いによってこの間におけるところの懸案を解決していく、力で解決するということを避けて、そうして、話し合いで解決しようという機運が動いていることは御承知の通りであります。私どもも、その機運を非常に歓迎するものであり、また、成功させなければならない、いかなる困難があっても、させなければならない、こういうふうに考えております。しかし、同時に、その話し合いということが、共産主義の国々においては、共産主義の国々が団結し、そうして、経済や、いわゆる広い意味における防衛力その他の力を背景として話し合いに臨んでおる。また、自由主義の陣営も、これに対して、話し合いによっていろいろな懸案を解決する上から申しますと、やはり自由主義の国々がしっかりした団結と、そうして、その団結を裏づけるところの力を持ってそうして話し合いを進めていく、これが国際の現実であり、また、それによって初めて両陣営の平和的な共存といいますか、あるいは競争的な共存といいますか、とにかく、共存の道を見出すということが可能になるものだ、かように考えます。
  21. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 念のために、ついでにお聞きいたしますが、共産主義陣営の中で、自由主義陣営に対して脅威を与えておる国というのは、一体どういうものを頭の中で考えておられますか。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 アイゼンハワー大統領と私の話におきましても、国というものを、一国をさして、それが脅威を与えているというふうには実は私ども考えておりません。国際共産主義というものの一つの脅威を指摘しておるわけでございまして、どの国が脅威を与えているというようなことは私ども考えておりませんし、また、そういうことを口にすべきものじゃないと思います。
  23. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 なかなかひっかからないように、上手に答えます。(笑声)共産主義というイデオロギーは、総理も今お答えになりましたように、権力だとか武力で、また警察力でどうにかなるというような簡単なものではありません。私は、共産主義というイデオロギーが国家的な致命傷になるということはあり得ないと考えます。むしろ、それよりも、政治がよかったならば、共産主義などそこのけにして、国民はついてくるものなんです。ところが、共産主義陣営の思想が脅威を与えておるのだというような、おびえた態度日本国がおるということは、政府のやっておるところ政治自身に自信がないところからきておるのではないか。イデオロギーであるところの共産主義恐怖症におなりにならないで、一つ、それよりも優先するところのよい政治を、内政、外交においてやっていただくということが、安全保障の、侵略の口実を与えない最もよい道だ、私はこう考えるのでございますが、岸総理はどうお考えになりますか。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、さっきも申し上げましたように、われわれは内政、外交を通じて平和、福祉を念願して、それに向かって努力することは当然であります。ただ、堤委員も御承知の通り、国際共産主義の理論というものは、従来理解されておるところによりますと、ただ単なるイデオロギーだけではなくして、その考えを実現するためには武力革命、一つの革命を前提としておるのでありまして、また、世界各国におきましても、多くの共産主義の国々が作り上げられた実例というものはそういうことになっておるわけでございますから、ただ単に思想の問題としてだけこれを見ることのできない半面が、自由主義国に与えておる一つの脅威の基礎である。決して私は内政、外交上のことをおろそかにするものではございませんし、ただ取り締まりだけでこれができるという考えでもございませんが、同時に、いたずらにおびえて脅威を感じておるというわけではございません。
  25. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは一つ、良識のある総理大臣でございますから、私が今申し上げましたような趣旨に沿って、内政、外交を、内外ともに整えていただきますならば、私は、いたずらに自衛隊を増強したり、大国にすがったりするような哀れな姿を露呈しなくても済むと思いますから、どうぞ一つ、今御主張になりましたような線において、今後進めていただきたいということを、国民の一人として要望しておきたいと思います。  次の質問に入ります。交換公文の段階に入っていきますので、一つ藤山外務大臣に交換公文についてお尋ねいたします。  二月十九日の委員会で、森島委員外はたの委員——森島委員中心になって大体御質問になっておりますが、三つの交換公文は、アメリカでは上院の承認の対象にならぬ、たしかこういうふうにお答えになったように思いますし、速記録にもさよう書かれておりますが、再確認してよろしゅうございますか。
  26. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その通りでございます。
  27. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 いわゆる今度の地位に関する協定は、これは日本では承認の対象になっておりますけれどもアメリカではならない。しかし、これはアメリカの前例がございまして憲法慣行で、行政協定ということで、条約の効力を一応持つことになっております。しかるに、その他の交換公文は、上院の承認の対象にもならず、また、今申し上げたような行政協定でもございません。とするならば、アメリカにおいては、どうして国際法上の効力を持つことになるか、国会承認を経ないところのこの三つの交換公文はアメリカでどういう国際法上の効力を発するのか。
  28. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 詳しくは条約局長から御説明させます。
  29. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 国家間の約束でございますが、それを、どういうものを国会承認を得べきであるか、また、どういうものを承認なくして行政権だけで締結できるものであるかということは、その国の国内憲法上の問題でないかと考えます。そこで、アメリカ憲法ヒの規定または慣習に従いますと、ただいま申し上げましたように、地位協定その他の三交換公文は、アメリカの上院の承認を得ないでいいということになっている次第でございます。ただし、その承認あるなしということは、その国の国内問題でございますので、双方が正当な全権委員を出しまして締結した以上、承認を得た条約と全く同じ法的効果を持っていると思うわけであります。
  30. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 日本では、承認の対象であると同時に、批准の対象として不可分なものになっております。アメリカでは、上院の承認の対象になっておらないのは、アメリカ憲法の慣行である。今、条約局長がたしかお答えになりましたところでは、承認の対象になっておらなくても、これは効力を発する、こうお答えになりました。今までの例を見てみますると、なるほど、交換公文というものは、国会承認を得ておらなくてもアメリカでは効力を発しておるということは、私も認めます。しかし、今度の問題は、条約と不可分のものなんです。これは単独の交換公文ではないはずです。条約と切っても切れないとこるの、条約のからだの一部でございまして、今までの交換公文とは違うはずでございますから、私は、どうしてもこれは条約一つにして、アメリカ国会承認を得なければ、どうも筋が通らないのじゃないか、こういう見解を持っておるのでございます。なぜ、こういうことを申し上げるかと申しますと、事前協議の交換公文では義務化されております。審議の対象ですから、義務化されておりますが、アメリカでは、明確な国際法上の効力の関係が明らかでなかったときには、運用上のそごを、いざというときに来たすわけです。それを私は心配するわけです。たとえば、アメリカが何かの事情によって事前協議の、要請をしなかった場合、勝手に動いてしまった場合、また、こちらが事前協議を求めるのに対して、言うことを聞いてくれなかった場合、日本としてはどんな根拠でアメリカ条約違反を追及していくのかという心配な問題が生まれて参ります。私は、この点につきまして今度の交換公文は条約と不可分のものであるから、アメリカ日本と同じように国会承認を得なければ、はたの交換公文とは違うんじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。これについて、私は、もう一度条約局長に、不可分であるところの交換公文は単独の交換公文と違うという見地から、疑問を持っております、こういう質問でございます。
  31. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、アメリカといたしましては、アメリカ憲法上の慣習または憲法上の解釈の問題といたしまして、こういう種類のものは国会承認の対象とする必要はない、これはしなければならない、こういうふうな——どこの国におきましても、どういう範囲国会承認を得べきか、どういう範囲のものは必要でないかということは、それぞれその国の憲法上の慣習によっていろいろ違うわけでございます。従いまして、御承知の通り、われわれも外国と条約、交換公文等、いろいるなことをいたしますが、ある条約においては、われわれは承認の対象とする場合に、先方はしない、また、ある協定におきまして、われわれは承認の対象としない場合に、先方はしているというふうに、先方とわれわれとの取り扱いが違うということは、多々ある次第でございます。ただ、いかなる場合におきましても、この交換公文は、正当な委任を受けた全権委員同士で正当に交換しているわけでございますから、内部的な取り扱いのいかんにかかわらず、これは国際的に、すなわち、日米関係において当然条約と全く同じ拘束力を持つものである、こういうふうに考えております。
  32. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、この英文の条約を見ましても、政治的な翻訳がしてあるところがちょいちょいあるわけなんです。これはどうも安保条約締結にあたって、いろいるな問題で、アメリカアメリカだけの解釈をしておる、日本日本だけの解釈をしておるというような場所があって、非常に危険なことがあるのじゃないか、こういう問題が非常にたくさんございます。くどいようでございますけれども伺っておきたいのは、この交換公文の取り扱いを、日本ではかくかくしかじかにするが、アメリカはどうなさるか、たとえば、上院の審議にかけるとかかけないとか、かけなくても国際法上の効力に間違いはないなというところの合意を、統一解釈を、そのときお取りつけになったかどうか、もし、お取りつけになっておりましたならば、取りつけてある、こういうふうに答えていただいたらいい。
  33. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そういうことは、それぞれの国におきます憲法の慣習なり、あるいは規約によることでありまして、取りつける必要は毛頭ないと考えております。
  34. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、やはりこの不可分の交換公文というものは、アメリカにおいても国会承認の対象にしてもらうように要請すべきでなかったかと思う。それならば、今日本がちょうど持っておりますような交換公文が——アメリカが他国と条約を結んだときに不可分の交換公文があって、そうして、それが何ら支障なしに国際法上の効力を発揮しておるという前例がアメリカにすでにあるか。そんなこと伺うまでもないので、日本はこれに触れなかった、こういうことになると思いますが、アメリカに前例はございますね。
  35. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 どういう前例か、具体的にちょっと今思いつきませんでございますが、前例は多々あると考えております。
  36. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 これは大事なことでございます。日本だけが一生懸命になって国会でこの承認をして、この交換公文にすがっておるのに、アメリカでは、批准の対象でない、まあ、アメリカは、日本条約に対する見解相違だというふうなことで逃げられてしまって、私たちは、気休めにこの交換公文を一生懸命に審議した、こういうような結果が生まれてこないとは保証できないと思うのでございまして、一つ前例をお調べになって、二・三日のうちにこの委員会にお出しを願いたい、こういうふうにお願いいたしまして、私は次の質問に移りたいと思います。  そこでお尋ねいたしたいのは、私は、国連軍——これは日本におります国連軍でございます。国連軍と在日米軍——これは安保条約でいうところの在日米軍でございます。この在日米軍との地位と、おのおのの法的根拠について、吉田・アチソン交換公文を中心として、岸総理お尋ねをしてみいと思います。  それはどういうことかと申しますると、この吉田・アチソン交換公文によりますると、この交換公文によるところの国連軍の援助の問題がございます。朝鮮事変に際しまして安保理事会において採択された、一九五〇年の六月二十七日、それから同じく一九五〇年の七月七日の決議に基づくところの国連軍に対する決議がございますが、この吉田・アチソン交換公文の中に書かれておりまするところの援助というものは、国連軍の包括的な援助であるか、またはあらゆる場合に援助を供与することを約束したものか。つまり、朝鮮動乱のときだけ援助するんだとうたつたのか、または朝鮮動乱以外の紛争が極東に起こったときにもこれを援助するんだというような、包括的な意味を持っておるのか、これを一つ明確にしていただきたいと思います。
  37. 岸信介

    岸国務大臣 これは吉田・アチソン交換公文によれば、いわゆる朝鮮動乱のために設けられた国連軍に対するものでありまして、それ以上のものではないと解釈しております。なお、詳しいことは、条約局長から申し上げます。
  38. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点は、一九五〇年の六月及び七月の国連における決議がございます。その決議が一番基本になっているわけでございますが、さらに、日本に関しましては、この決議に基づきまして吉田・アチソン交換公文がございまして、これは朝鮮の動乱に際しまして国連軍をサポートすることを日本が容認し、これを容易にするということを約束した交換公文であります。
  39. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、朝鮮動乱だけに限るものですね。そういたしますると、少しおかしい文章がある。ごらんになっていただきたいのですが、ずっといきまして、「国際連合の行動に重要な援助を従来与えてきましたし、また、現に与えています。将来は定まっておらず、不幸にして、国際連合の行動を支持するための日本国における施設及び役務の必要が継続し、又は再び生ずるかもしれませんので、本長官は、平和条約の効力発生の後に一又は二以上の国際連合加盟国の軍隊が極東における国際連合の行動に従事する場合には、当該一又は二以上の加盟国が」ということが書いてある。これは、もしあなたがおっしゃるように、朝鮮動乱だけに限るというのならば、「一又は二以上の国際連合加盟国」というような、まぎらわしい言葉を書かないで、朝鮮と書くべきじゃないか、こう思うのですが、この「一又は二」という言葉はどういうことですか。
  40. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 この「一又は二」というのは、アメリカまたはその他の国々のこと言っているわけでございます。すなわち、国連の決議に賛成いたしまして、その決議に従って行動する国々、すなわち、アメリカのみでありません。そういうふうな国々が云々する場合ということを言っているわけでございます。
  41. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 今お答えになりましたように、この吉田・アチソン交換公文というのは、目的は朝鮮のみに限らなければならないと私は思います。なぜならば、一九五〇年の七月七日、国連安保理事会の決議にはこう書いてある。「兵力その他の援助を提供するすべての加盟国が、これらの兵力その他の援助を合衆国のもとにある統一司令部に提供されることを勧告し」とある通り、これらの援助は、合衆国のもとに置かれる統一司令部に提供されるのですから、この限りにおいては、日米両代表者の交換公文は、形式上には一応首肯されるのです。しかし、将来において朝鮮以外の極東の地域において紛争があって、安保理事会の決議によって国連のために行動する軍隊が編成されたときには、この朝鮮動乱の場合にはアメリカ合衆国が統率するところの連合軍であったけれども、今度編成されるときには、必ずしもアメリカに統率されるところの国連軍隊とは恨らないわけなんです。また、アメリカが参加しないことがあり得る場合もある。この軍隊に参加しないこともあるのですから、従ってこのときわが国がこれに協力し、援助を与える際には、吉田・アチソン交換公文は全くこれと無関係のものでなければならぬ。新たにわが国が、当該する機関と、今度できた国連編成軍に対する援助供与についての意思表示を、この吉田・アチソン交換公文とは別にしなければならぬ。  次に、吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文の1、——これは今度の中にありますが、この中にこういうことが書いてある。「前記の交換公文は、日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定が効力を有する間、引き続き効力を有する。」とうたつてあります。ところが、この国連軍協定第二十四条にはどういうことがうたってあるかといいますると、こう書いてある。「すべての国際連合の軍隊が朝鮮から撤退していなければならない日の後九十口以内に日本国から撤退しなければならない。」と書いてあります。その次の二十五条にはどういうふうに書いてあるかと申しますると、「すべての国際連合の軍隊が第二十四条の規定に従って日本国から撤退しなければならない期日に終了する。」この国連軍協定は効力を喪失するということが書いてございます。朝鮮において国連軍が撤退しなければならない日の後の九十日以内に国連軍は日本から撤退し、これと同時に、国連軍協定も効力を失うことになる。さらに、国連軍協定の前文には「日本国は、朝鮮における国際連合の行動に参加している軍隊に対し施設及び役務の形で重要な援助を従来与えてきており、且つ、現に与えているので、よって、これらの軍隊が日本国の領域から撤退するまでの間日本国におけるこれらの軍隊の地位及び日本国においてこれらの軍隊に与えられるべき待遇を定めるため、この協定の当事者は、次のとおり協定した。」と、こう書いてある。従って、このような場合には、当然吉田・アチソン交換公文の効力というものも失うことになるのでありますから、この交換公文の趣旨は、朝鮮問題のみに限定されなければならぬ、こういうふうになってくると思います。それでよろしゅうございますね、それは確認なさいますか。そこで吉田・アチソン交換公文におけるところの「極東における国際連合の行動」とある「極東」の概念ですね、これの範囲はどうか。これは一つ総理から答えてもらいたい。吉田・アチソン交換公文に書いてあるところ極東、この概念ですね、この範囲をちょっと承りたい。
  42. 岸信介

    岸国務大臣 これはきわめてばく然として用いられておると私は解釈いたしておるわけであります。
  43. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、総理大臣、日米安保条約第六条における極東の概念と一致するのですか、一致しないのですか、どちらですか。
  44. 岸信介

    岸国務大臣 これは、私は一致しないと思います。安保条約の条文は、安保条約の趣旨によって解釈すべきものであり、朝鮮動乱の場合における問題は、朝鮮動乱というものを基礎において考うべきものである、かように思います。
  45. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 吉田・アチソン交換公文に書かれたところ極東における国際連合の行動範囲極東は、今度の安全保障条約の第六条に書かれたところ極東の概念とは一致しない、こういうふうに確認をいたします。その国連の行動する極東範囲と日米安保条約によるところ極東範囲とが事実問題として相違するならば、極東の概念、また極東範囲というのは、そのときの状況によって違うのだ、こういうふうに確認してよろしゅうございますか。
  46. 岸信介

    岸国務大臣 そもそも、しばしば申し上げておるように、極東という観念はきわめて抽象的で、範囲を具体的に明瞭にすることのできないものであると思います。従来も、あるいは日ソ共同宣言にも使われておりますし、古くは、日英同盟条約の中にも使われております。従ってその使われておる条約なり、あるいはその文書の全体の趣旨からそれぞれ解釈していかなければならぬ、かように思います。
  47. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、ただいまの岸総理答弁では、一ぺん一ぺん極東という言葉は違うのだ、法律によって、条約によって、極東という言葉はそのつど、そのつど違うのだという解釈をしてよろしゅうございますか。
  48. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げました通り、それが用いられておる条約であるとか法律であるとか、そういうようなものの趣旨から、それに適応するように解釈すべきものでありまして、一つの観念があって、すべての条約に共通するというようなものではないと思います。
  49. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、総理のお答、えからいたしますと、極東という文字が地球の上に出てくるたびに、極東とはというところ解釈一つ一つつけないと判然としないと思いますが、御了承になりますか。
  50. 岸信介

    岸国務大臣 地理学的にきまっておる言葉であればきわめて明瞭でありますけれども、そうでないものでありますから、従って、その条約なり、その使われておる場合において、ここにおける極東というのはどういう意味であるということを、その全体から解釈していかなければならぬ、かように思います。
  51. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、吉田・アチソン交換公文におけるところ極東範囲と、それから日米安保条約極東範囲というものは、在来から岸内閣が答えておるところ極東範囲というものと合致させると工合が悪いので、今はどうもその点をずらさなければならぬというので答えていらっしゃるのじゃないかと思う。そうでなかったら、おかしなことでございまして、私が言うように、国際法が生まれるたびに極東という言葉条約言葉の上で出てくる限り、この極東についてはそのつど、そのつど解釈というものが解明されなければならないという問題が生まれてくるのでございまして、非常におかしいと私は思います。私がなぜこういうことを申し上げるかと申しますと、今までの日米安保条約におけるところ岸総理並びに岸内閣解釈というものは、元来、日米安保条約に基づく極東の概念及びその範囲は、この条約に関する限りにおいて通用する特殊な概念だ、こういうような説明をしていらしたように私は思うのです。ところで、この極東というのは、二月の二十六日に、岸さんが、「他から不当な侵略行為があれば、やむを得ず実力を行使してこれを排除するというような点におきまして、両国が共通の関心を持つという地域は、今お話しになりましたように、自由主義の立場をとっておる国々の支配しておる領域というものがその主眼になるわけでございまして、共産圏において実力をもってこれが平和と安全を維持しておられる地域というものは、われわれの共通の関心を持っておる地域には入らないというのが適当であろうと思います。」私が今指摘しましたように、愛知委員に対してお答えになりました安保条約におけるところ極東範囲というものは、私は、岸さんは非常に特殊な概念でもって政治的な解釈をつけていらっしゃるように思いますので、これと合致させると非常にまずい問題が生まれてくるので、吉田・アチソン交換公文の場合は違うのだ、こういうふうに言うて、その場を糊塗しようとしていらっしゃるのじゃないかと思うのですけれども、どうでございますか。そのつど、そのつど解釈をつけねばならぬということになってくると、私は少しおかしいと思うのですよ。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 そのつど、そのつどとおっしゃることが誤解を招くおそれがあります。さっきから申し上げているように、条約であるとか、交換公文その他の文書、法律等に用いられておる場合におきまして、これは極東だけじゃなしに、あるいは東南アジアとか、あるいは中近東とかいうような言葉がいろいろなところに用いられることがありますが、その範囲につきましても、私は、必ずしも明確な、地理的にきっちりと緯度で示すことができるような地域をさしているとは思いません。そういう意味におきまして、極東ということも、本来抽象的な一つの観念でありますから、従って、その条約なり、あるいはその法律、交換公文に用いられておるその趣旨を、そのときのその全体から考えるべきことは当然でありまして、われわれがこの安保条約に用いておる極東というものの統一解釈を示しましたが、それから引いて吉田・アチソン交換公文の極東というものを云々するというような考えではございませんで、交換公文自体が作られたときに、極東というのをどういうふうに用いたかといえば、決して安保条約でわれわれの考えているような観念には用いていない、こうお答えしているわけであります。
  53. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは私は問題をしぼりまして、そんなにたくさん極東の場合を指摘しても首相は非常に御迷惑でございましょうから、吉田・アチソン交換公文において使ってある極東については、ある程度私は具体的な地域と範囲が示されなければ、政府の責任は果たせないと思いますが、一つ、ここで吉田・アチソン交換公文におけるところ極東範囲を一々あげていただきたい。
  54. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知の通り極東というのは、地理的概念を抽象的に表わしたものでありまして、私も、ここに手元に持っておりますけれども、辞典等を見ましても、非常にたくさんな解釈がございまして、一定はいたしておりません。それで、極東というものにつきまして、こういう条約上において使います場合には、この条約の趣旨から見て解釈すべきだと思います。今の国連の場合におきましては、朝鮮事変における問題を取り上げておるのでございまして、従って、韓国というものが極東にあることは、もうまぎれもない事実だと思います。従って、極東において事態が起こるということは、抽象的に、そういう意味で言えるわけでありまして、そういうふうに解釈して差しつかえないと思います。
  55. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私が聞いたことにまっすぐにお答えいただけば、非常に時間もかからないし、早いわけですし、みんな聞いているお方もわかるわけでございます。私の聞いておるのは、たくさんの場合の極東というのに触れると大へんだから、今は吉田・アチソン交換公文——もうこれは過去に済んだ、日本が援助を与えた、問題を起こしたところなんですから、それについては、どういう極東範囲という概念で、どういうところを地図に入れて援助したのか、こういう具体的な答えができなかったら、あなた責任者としてどうなるんですか。これは岸さんにお尋ねいたします。
  56. 岸信介

    岸国務大臣 朝鮮動乱という事態、それに対して、国連がそれをおさめるために必要な行動をすべき範囲、こういう意味で用いておると思うのでございます。従って、具体的にそれに線を入れろということは御無理であろうと思います。ただ、そういう意味において、非常に限定されておるということは申し上げて差しつかえないと思います。
  57. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私が吉田・アチソン交換公文の中にある極東の問題になぜ触れたかと申しますと、吉田・アチソン交換公文というのは、安保条約を結んでから後も、さらに「に関する交換公文」で生きるわけでありますから、従って、在日国連軍が行動いたしまするときに、国連軍が行動いたしまするときと、安保条約によるところの在日米軍が行動いたしまするときと、問題が二つあるので、それに触れたいからこの質問をしているわけです。非常に大事な問題なんです。ですから、一つこの際は、いいかげんなところに線が引けぬとか、どの国、どこどこというようなことをはっきり言えないということでは、過去において、国連軍の一員として参加して、国費をもってこれに援助を与え、そうして、国連の理事会の決定に従って行動した政府が、一つ一つ国の名前や地域や範囲が地図の上に入れられないというなら、これは私は、次の国連軍の性格と在日米軍の性格がはっきりしませんから、前へ進めませんので、一つ統一して、しっかり教えていただいて、国の名前、地図がはっきりいたしましたら前へ進めさせてもらいます。
  58. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来言っておるように、国の名前だとか、地図にこれを書き入れろということは、これは極東という観念からいうと、私は、そういうものじゃないと思う。しかしながら、この交換公文に用いられておる極東というのは、朝鮮動乱に関して、その事態についていわれていることでありまして、その場合に、国連がこの朝鮮動乱を静めるために行動する必要な範囲ということを意味しておるわけであります。従って、その範囲は、私はこの安保条約考えておる、日米両方が日本の安全にきわめて密接な関係を持っておる極東の地域というのとは性質も違っておりますし、範囲も違っておる、こういうことが申し上げられる。これを線を引けと言われることは、また国をあげて言えということは、私は、極東の観念というものがそういう性質のものではないということを申し上げておきます。
  59. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それはあなた、地図がはっきりしない、線が引けない、国の名前がその中に入れられないというのだったら、ではこれも極東だ、これも極東範囲だ、朝鮮動乱に関する極東範囲に入っているのだ、あなた、ミサイルの近代兵器をもって動く国連軍が、次から次へと動いていったら、しまいには、スエズの国境まで行ったって文句は言えないことになるのじゃないか。それは一体どういうことになるのか。やはり過去において援助を与え、ともに国連軍として行動をしたのならば——予想される行動範囲について地図や国々を示せ、限界点を示せというのなら、これは無理かもしれぬけれども、しかし、大体の概念として持っておらなければならない国だとか、地図だとか、範囲だとかいうものは、ことに過去のことでありますから、私は、責任を持って答えていただきたい。なおあとにも続いていくのでありますから、はっきりしてもらわないことには工合が悪いと思う。
  60. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、吉田・アチソン交換公文には、「極東における国際連合の行動」ということが書いてございます。この行動というものは、事態の発展に応じて国連自身がきめることでありまして、われわれが解釈して、一方的に決定すべき問題ではございません。
  61. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは、義勇軍を出したところの中国は入るのか入らないのか、どういうことですか。
  62. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 申すまでもなく、国連の決議によってきまるわけでございます。
  63. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 過去において、入ったのか入らないのかということです。これはしつこいようですけれども、六条の極東の紛争、脅威、これが日本安全保障に影響するということで、「極東」という言葉で巻き込まれるのですよ。その極東と国連軍の極東とがごっちゃになってしまって、従って、これは国連軍というにしきの御旗を振りかざして、アメリカ軍が、将来、在日米軍であるのに二重の性格でごまかして、動く範囲がごまかされる心配があるから、私は聞いておるのである。これは吉田・アチソン交換公文が生きる限り、私は、この吉田・アチソン交換公文の範囲というものは、概念として明確に示してもらわないと困る。
  64. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 何かアメリカ軍が日本をごまかすというお話でございますけれどもアメリカ軍が、国連軍として行動する場合に、国連をごまかすわけには参りません。
  65. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは、そこまでお答えになりましたのでしたら、私は、今の吉田・アチソン交換公文の中の極東という問題を残しまして、ちょっと横へ行って、また戻りますが、よろしゅうございますか、——今おっしゃいましたが、それでは私はお聞きいたしますが、こういうことが起こったらどうするのです。私はそれではお聞きいたしますが、国連の在日米軍というのは、まだ残っておりますね。ちょっと確認いたします。
  66. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 まだ残っております。
  67. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 たしか座間に残っておりますね。そこで、こういうことをお尋ねしておかなければならぬと思いますが、たとえば、国連軍の行動についてこういうことが起こったといたします。在日国連軍司令部の一部がまだ残っておりますが、ここに朝鮮問題と関係のない理由で武力紛争が発生したと仮定いたします。このため、第六条を発動して、日米両国の軍隊が行動したと想定いたします。この場合に、もし相手国が、故意によらないで国連軍の在日司令部を砲撃または爆撃した場合に、国連軍はいかなる立場をとるのか。安保条約の第六条によって日米両国が行動したときに、故意にあらずして国連軍の在日司令部が爆撃または襲撃を受けたときに、国連軍はどうしますか。
  68. 岸信介

    岸国務大臣 その場合は、いわゆる日本の施政下にある領土に対して武力攻撃があったわけでありますから、日本が、第五条によって行動することは当然であります。国連軍がどういう行動をするかということは、これは国連の決議によってきまることだと思います。
  69. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、日本アメリカが行動しておって、偶然に国連車の在日司令部が襲撃を受けたときには、どうしても国連軍は立ち上がらざるを得ないだろうと思う。これに立ち上がって、行動を起こさなければならないのですが、この場合に、この行動を国連の行動と言えるかどうか。この場合に、この軍隊は、国連の決定を待たずしてとにかく動かなければならないわけですから、国連の名のもとに行動する法的根拠はないわけだ、こう思うのですが、一体どうですか。
  70. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それは国連軍に対する攻撃でありますから、国連軍が直ちにこれに対処すると考えます。また、その前の段階におきまして、極東と申しますか、日本国外において、ことに朝鮮とは関係なく紛争が起きたその段階においては、すでに国連が、これに対処して、国際の平和と安全のための処置をとりつつあると私は考えます。また、日本にそのような事態が起きたときでも、国連は必ずそこで措置をとり、国連自体として対処する、平和維持の方策をとるべきであるし、必ずとるものと考えます。
  71. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 その場合に、国連が行動を起こすときの法的根拠を一つ説明して下さい。
  72. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 これは国連軍自体に対する攻撃でございますから、国連軍の自衛権と申してもよいし、また、国連軍というのは、そういうふうな平和維持のための当然の権限を持っておる軍隊でありますから、これに対して当然国連軍は反撃できるものと私は思います。
  73. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 国連軍に自衛権があるかないかということは、むずかしい問題だと思います。国連軍に自衛権があるという解釈はどこから出てくるのですか。なぜこういうことを申し上げるかというと、国連軍が行動を起こすときには、行動を許可する決議がなければ動けないわけです。すぐに立ち上がらなければならないときには、実際は法的根拠がなくて立ち上がってしまうんですよ。そうして、どうかといえば、私の解釈では、国連軍には自衛権はないと思う。今、高橋条約局長はあるとおっしゃいましたが、それでは、国連軍に自衛権があるというならば、国連軍に自衛権のあるところの説明を一つしていただきたい。
  74. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 国連軍の自衛権の問題でありますが、これは、その軍隊に対してそのような攻撃がございますれば、それを反撃するということは、当然本質上できることだと思います。また、同じような事例は、イスラエルの休戦協定違反の場合に、休戦監視軍と申しますか、あそこに国連軍が派遣された場合がございます。その場合に、あれは休戦を監視するのみならず、これに対して加えられた双方の軍隊が、停戦をして引き下がるわけでありますが、それに従わずに、反抗した場合は、一体どうなるかという問題が起きましたときに、その軍隊は、そのような場合には当然自衛権として反撃できるのだ、そういうふうな先例もございます。
  75. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 国連軍に自衛権があるかないかということは、これは私は統一されておらないと思います。自衛権を持っておるというのは、国家を単位として考えられておるのが常識でございまして、国連軍に自衛権が存するということはあり得ない。従って、国連軍が自衛権で動いたというにあらずして、いわゆる理事会の決定の法的根拠を待って動いたということになると思います。そういうことになりますと、今は中心とするのは在日米軍ですが、国連の在日司令部が、日本の本土以外のところから襲撃を受けて、在日米軍が動きますときに——これに対して今高橋条約局長がおっしゃるように、国連の自衛権、これは、私まだもう少し聞いてみなければならぬと思いますけれども、国連の自衛権か、あるいは法的根拠を持つところの、安保理事会の決定に従ってこれに応戦して行動をとりますが、その場合に、これが日本国内から受けた襲撃ではなくして、いわゆるアチソン交換公文に書いてあるような、極東範囲とおぼしきところから受けたらしい、従って、これはもうやられっぱなしではいかぬから、自衛するために、国連の決定に従って——どちらでもよろしい、動かなければならぬときに、国連軍がまだおりますが、出かけていくときに、一体どこまで出かけていくのか、これが概念として持っておらない極東範囲を出て、はるか向こうのウラジオストックだとか、あるいはタイ国だとか、またはスエズの向こうの方からとか、またアメリカ本土だとか(笑声)——アメリカ本土は入りませんけれども、違うところの地域からきた、そういう場合にはどこまでも出かけていかなければならぬ、根拠地をやっつけなければならない、そうすると、それも吉田・アチソン交換公文の極東の中に入っておる、その極東の中にその襲撃をしてきた根拠地も入っておるから、これに行動してもよいということになってくるのですか。これは一つ総理に聞きたい。
  76. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国連が国連軍を出します決議をいたしますときには、当然国連軍を出すのでありますから、その決議の内容においては、その国連軍が不時に襲撃を受けたときには、それに抵抗するということは、前提として、国連の決議に入っておることは当然でございます。また、朝鮮事変におきまして、国連軍が編成されておるのでございますから、その範囲内において、国連の決議で国連軍は動くわけでございます。従って、朝鮮の事態が再び起こって、そして何か起こりましたときには、その朝鮮の事態を平和的に解決する限りにおいて、国連軍が行動するのは、国連の決議だと思います。従って、その国連の決議に従って行動するのでありまして日本が一方的にそれを解釈すべき問題ではございません。
  77. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、総理並びに藤山外務大臣などの解釈から言いますれば、こういうふうに解釈していいと思うのです。朝鮮動乱の場合の極東という、吉田・アチソン交換公文に書かれたところ極東という文句は、安保理事会の決定に従うのであるから、単に極東でなしに、それがあらゆる地球の上の地域に及んでも、これは極東と言うんだ、こういう解釈——そうなってくるでしょう、極東と書いてあるのですから。従って、これが、たとえば、地図でいう概念の極東範囲を越えて、向こうの方に行っちゃっても、これは便宜上極東の中に入れるんだという事態が生まれてくると思いますが、どうですか。
  78. 岸信介

    岸国務大臣 今堤委員のおあげになっているような事例、これは朝鮮動乱から、そういうことは、私どもは予想されないと思います。また、国連も、朝鮮動乱について国連軍をなにした場合において、それがヨーロッパやあるいはアメリカ大陸に及ぶというようなことを、考えておると私は思いません。従って、もしもそういうふうに朝鮮動乱が発展して、そういうふうな事態が起こってくるならば、私は、国連としては当然別の決議をして、その行動範囲をきめるべきものであって、朝鮮動乱のために作られた国連軍が、そういう行動をするということは、本来の国連の決議には入っておらない、こう思います。
  79. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、最大限の極東というものを常識の中で考えておいて、その極東で及ばぬときには、別途の決定に従って、また範囲をつけ足していくようなことが起こって参るだろう、こういう解釈、しかしそれは、一応私は次の問題に移りたいですから残しておきまして、また聞きますが、今お答えになった藤山外務大臣お答えと、岸さんのお答えとは違うということを、一つ指摘いたしておきます。  そこで、私は、この日米安保条約の中に今まで取り上げられて参りまして、たびたび問題になりましたところの、岸総理が言われる安保条約極東というものの解釈について、一つお尋ねをしてみたいと思うのでございますが、この速記録にもございます通り、愛知委員質問に対しまして、私にさいぜん答えたようなことをおっしゃる。自由主義陣営であるところアメリカ日本が共通の関心を持つ区域であって、共産主義圏が支配しておって、平和と安全を別途に支配しておられる地域というものは、われわれの共通の関心の的ではないから、これは極東範囲に入らない、こう答えております。これを分析いたしますと、きわめて政治的な、一般の通念に反した地域を極東としておられるように私は思う。けれども、国連のいうところ極東における関心というものは、ちょっと岸総理日本政府見解とは違うと思うのです。国連のいうところの一般的な極東というものは、極東の全域に及ぶべきものだと私は信じます。同じ極東であっても、イデオロギー的に違うところ共産主義陣営極東の中に入れないのだ、こういうことを、私は国連はいわないと思う。しかもこれは、考えて参りましたら、この国連が、自由主義とか、社会主義とか、共産主義とかを区別して、極東というものを区切ってしまうということになりますと、国連の精神に反するわけでございます。共産主義陣営、社会主義陣営の、その極東の平和と安全は国連は守るけれども、それ以外はどうでもいいのだというようなことを、岸さん式に国連がいいましたら、これは大へんなことでございまして、私は、もはや国連の使命は果たせないと思うのでございますが、やはり岸さんが御主張になりますように、国連は、あなたのような政治的な解釈を、あなたと同じように、極東についてしておるとお考えになりますか。国連の解釈についての岸総理の答えをお聞きいたしたいと思います。
  80. 岸信介

    岸国務大臣 国連が今の朝鮮動乱について、国連軍の行動範囲としての極東ということがいわれておりますが、その場合の極東ということと、安保条約のわれわれの考えておる極東というものは、一致しておらないことは、先ほど来申し上げておる通りであります。国連が、一般的に極東とは何ぞやというようなことをきめるわけもございませんし、そのときの決議なり、そのときに国連が取り上げた問題について、極東というものを観念していくわけであります。もちろん、堤委員のおっしゃるように、国連が極東の安全と平和といった場合に、自由主義国だけをさしておって、共産主義国はこれを除く、そこはどうなってもいいというようなことを国連が考えるとは、私は考えておりません。しかしながら、この安保条約においてわれわれが極東という字を用いておる、極東の安全と平和ということを用いておるということは、かねて統一解釈で私が申し述べた通り考えておるわけであります。
  81. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 安保条約におけるところ極東範囲で、岸さんが言われるところの、共産主義陣営を除くところ極東というものを岸さんはお考えになっておる、それの安全と平和を考えておる。それから国連は、イデオロギーだとか、人種だとか、地域のいかん、国のいかんを問わず、公平に、世界平和を中心とした極東の安全と平和とを考えておる。こういうことになって参りますと、岸さんは、国連の安全保障に対するところの精神と相反するような精神を、イデオロギーから割り出して、持っておられるような危険を感じます。私はそう思います。というのは、私は、もし岸さんが言われるような解釈を国連がしておりましたら、これは大へんなことですから、国連の見解を聞きにいかなくちゃならぬですよ。違うとおっしゃる。違うとおっしゃったのならば、岸内閣はいかなるイデオロギーの陣営であろうとも、極東というものに対しては、公平な考えを持たなければ——日本の安全の保障は、私は、極東全域にわたって考えなければならないと思いますけれども、この問題に対しまして、私は、岸さんがどうもおかしいと思う。  そこで、日米安保条約に基づくところの米軍と、国連の行動と、この二つの問題が起こってくるわけです。いわゆる国連軍というのは、公的には全く異なった性質のものである。日米安保条約のこの在日米軍とは、法的に非常に根拠の違ったものである。これはお認めになると思う。よもや在日米軍イコール国連軍、こういう考え方はなさらないと思います。そこのところ確認をしていただきたい。
  82. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、国連軍につきましては、先ほど来質疑応答のありましたように、その法的根拠が、この安保条約に基づいておる在日米軍というものとは違っておりますから、これを同一に考えるわけには参りません。
  83. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、いかにこれを識別し、区別するかという問題が起こってくるわけです。たとい同じ米軍であっても、法的地位が異なるのでございますから、二重性格を帯びることはできないと思います。二重性格を同時に兼ね備えることはできない。個個のものである。その点はどうでございますか。常に二重的性格を帯びて見るということは、許されないと思いますが、同感でございますか。
  84. 岸信介

    岸国務大臣 むしろ私は、二重性格を——ある場合において国連軍たる性格と、在日米軍たる性格と、二重に持っておる、かように思います。
  85. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、この点は、私は、この安保条約によるところの在日米軍と、国連に基づくところの国連軍と、こういうものとをはっきり区別しておかないと、日本には二種類あるのですから、日米安保条約に基づく米軍の行動が、すなわち国連軍の行動というような混乱を招く場合も生まれてくるのじゃないか、こう思いますが、総理大臣、どうお考えですか。
  86. 岸信介

    岸国務大臣 これは吉田・アチソン交換公文において、はっきりいたしておると思います。
  87. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 日米安保条約第六条の、極東における国際の平和と安全の維持に寄与するためのアメリカの行動は、国連憲章第五十一条による自衛権を行使するところの行動であるか、あるいは第四十二条によるところの国連の制裁行動であるか、そのいずれであるかということをやはり非常にはっきりさせないと、国民は、どうも一体どっちの方を根拠として動いておるのかわからない。むしろ逆に、これは政府が悪用しようとするのじゃないか、こういうような疑いさえ持つのじゃないか、こう私は思うのでございますが、この点について、四十二条によるところの国連の制裁行動で動く場合と、安保条約六条によってこの在日米軍が動く場合と、この二つの場合についてどっちともつかずに動く場合があるという解釈もなさるわけでございますか。
  88. 岸信介

    岸国務大臣 六条で行動するということは、私はないと思います。五条です。この場合は、日本の施政下にある領域が、現実に武力攻撃を受けた場合でございますから、これに対して日米がそれぞれ自衛権を発動してやるという問題、これは純粋に国連憲章五十一条の場合をさしておる、これきわめて明瞭であります。国連が、さらに、ある事態に対して制裁を加える意味において行動するという場合におきましては、その場合に国連のそれぞれの手続によって決議がされて、そしてこれが行なわれる、こういうふうに考えます。
  89. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、在日米軍が、純粋に自衛権で行動するという場合も、これはあるということですね。お認めになりますね。そうすると、自衛権の行動でアメリカが動くということになりますると、この安保条約の中に極東の平和という文句をなぜ入れるか。ということは、どういうことかと申しますると、日本にありまするところの在日米軍というものは、自分の自衛権を行使するためには、日本憲法と違って、アメリカ国の憲法は、アメリカの軍隊がどこへでも行けるわけなんです。日本の島の中だけでしか動いてはいけないとか、太平洋の中だけじゃいけないとかいうような憲法はないわけですから、どこへでも行けるわけです。従ってアメリカの軍隊に対しまして、「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」というような言葉で、アメリカ軍というものを日本の軍隊のように縛らなくてもいいわけです。  もう一つあげますと、今度は、国連の制裁行動あるいは国連の決定で動きますときには、これは極東の平和だからといって、どこを動いてはいけないという制約はもちろんない。ところが、日本におる在日米軍が自衛のために動くときには、何もこの「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」という言葉を入れなくても私はよかったと思うのですが、これをなぜ入れたか。わざわざ縛らなくても、アメリカの自衛権はどこにでも行使できるはずですから、極東の平和ということをうたわなくてもいいわけです。なぜうたったか。まぎらわしくなる。
  90. 岸信介

    岸国務大臣 堤委員の御意見のように、米軍は、その行動範囲というものは憲法上制約を受けておりません。しかし、日本に駐留しておる米軍の行動は、本来、米国から言えば、無制限であるところのものを、制限する必要があると私ども考えて、その行動を制限し、事前協議において、さらに制限するということをとっておるわけでありまして、日本に駐留しておる米軍の駐留目的というものを、ここにおいて限定するということは、私どもは必要である、こう考えます。
  91. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 勝手に自衛権が発動できるのに、わざわざ「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」とうたつたのは、日本国内だけというようなアメリカ軍の行動に縛ってしまうと、アメリカ軍が動けなくなるので、逆に「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」という言葉を入れて米軍の行動を楽にせしめて、しかも、これによって日本の自衛隊が巻き込まれる危険をはらみながら、なおかつ、かてて加えて、国連の行動と類似のものにするようなごまかしが、この六条の中の文句にからくりがあるのではないか、かように私は考え、しかも、そういう見方をしておるところ日本人が非常に多いと思うのであります。いかがですか。
  92. 岸信介

    岸国務大臣 これは、御意見でありますが、堤委員の御質問考え方が、少し混乱しているのではないかと思うのであります。と申しますのは、先ほど申しましたように、また先ほど御指摘のありましたように、米軍の行動というものは、本来これは自由であります。従って、その自由な行動を持っておるところのものを、無制限に行動さすようなものを日本に駐留せしめておくということは、これは適当でないということで、その在日駐留目的を制約しております。さらに、この行動につきましては、事前協議によってさらにこれを制約しようということをとっております。私は、アメリカ軍が、本来持っておるような無制限な行動をするならば、あるいはいろいろな、われわれが不測な危害を受けるおそれもありますから、そういう制約をつけて、行動自身に対して限界を設けておるわけであります。また、自衛隊は、いかなる意味におきましても、日本憲法範囲内においてだけ行動するわけでありますから、施政下の領土をわれわれが防衛するということに限定されておるわけであります。また、極東の平和と安全というものは、これは言うまでもなく、日本の平和と安全ということに非常に緊密な関係を持っております。一般的に申して、極東の平和と安全が確保されなければ、日本の平和と安全を守るわけにいかない、こういう立場にあるわけでありますから、そういう範囲内において行動する。しかしながら、具体的の行動につきましては、さらに、先ほど申し上げましたように、事前協議によって、その具体的の事態が、たとい極東範囲内でありましても、もしも日本の平和と安全というものに直接緊密な関係もないような事態ならば、行動を制約する。これはむしろこの条約基本としてわれわれ考えておることでありまして、これによって、米軍がいろいろな自由な行動を持っておるということから生ずる不安を制約しておるわけでございます。
  93. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 逆に言えば、そう言えますかもしれませんけれども国民の目から見れば、二重性格を持っておるところの在日米軍というもの、二種類あるところの在日米軍というものは、非常に識別困難であるということは、おわかりになると思います。この識別困難なというところをうまく利用いたしまして、悪く言えば、国連軍というところの、にしきの御旗を利用して、どうにでも行動できるように、この国連軍に有利な、極東の平和と安全に寄与するという言葉を入れたように解釈されても仕方がない、私はこう思うのです。  そこで、今事前協議の問題に触れられましたけれども事前協議はあとから触れるといたしまして、もう一つ最後に——なぜこういうことを私が申したかと申しますると、問題は、要するに、まだ朝鮮問題が終結しておらないというところの名目のもとに、朝鮮に出ましたところの国連軍が、日本に駐留いたしております。そこで、一つ朝鮮問題の現状について政府にただしておきたいのでございますが、朝鮮問題は、休戦協定ができましたのが、たしか一九五四年でございます。すでに久しく、六年たっております。すでに久しいこの朝鮮問題をいろいろと考えてみますると、実態はどうかということに結びつけて考えますると、李承晩の危険な北進攻撃を押えたら、再び戦争は朝鮮ではないものと想定してもいいのではないか、私はこういうふうに考えるのでありますが、これに対するところ総理大臣お答えを聞きたいと思います。
  94. 岸信介

    岸国務大臣 朝鮮動乱の問題は、今もお話しのように、休戦協定ができておりまして、休戦状態になっております。私どもは、将来とも再び戦闘が行なわれるようなことのないことを念願しております。しかし、いろいろな仮定の議論をするならば、もちろん、動乱というものは、二つの相手方が対立して生ずるわけでありますから、南から北を武力攻撃する場合もありましょうし、北から南を武力攻撃する場合におきましても、同様に動乱がまた起こるわけでありまして、そういうことのないことを念願しております。
  95. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 大体常識におきまして、私は、あまりいざこざは起こらないのじゃないか、このような状態の中で、国連軍そのものは、もう大体使命をこの辺で終わってもいい、いわゆる国連軍というものは、撤退すべきではないかというときがきておるのではないかと思いますが、この撤退すべきではないかということに対して、どうお考えになります。
  96. 岸信介

    岸国務大臣 このことは、国連が決定しておる問題でございまして、事実上休戦の状態が相当長く続いておりますから、今お話しのような御意見も、一方において出ると思います。われわれは、いずれにしましても、国連の決議に従って行動せねばならぬ、かように考えております。
  97. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 国連に加盟して、みずからがこの中に入っておるのでございまするから、日本政府といたしましても、目と鼻の先の朝鮮動乱の問題につきましては、自主的な、確固たる発言があって、その軍隊の撤退に対しては、一番強い発言力があるはずでございますのに、国連軍という隠れみのを着て、そして国連軍として動いた方が有利だ、利用した方が便利だというかのごとく見えるところの、米軍の国連軍の行動が目に余るものさえありますのに、これに対して自主的な意見が言えないということは、一人前の独立国総理大臣として、私はいかがかと思うわけです。逆に私は、もし将来も韓国に米軍が駐留しておりたいというならば、それは米韓条約がございますから、これに基づいて米軍が駐留をしたらよいことで、国連軍の性格は、ここで一応終止符を打たなければならない。しかも朝鮮問題は、本来的に検討してみますと、これは三十八度線をはさむところ国内問題でございまして、すでに一九五〇年六月二十七日、七月七日の決議の目的は、大体達せられたと日本政府は見るべきではないか。いつまでも無期限に国連軍を存置しますことは、すでに武力紛争は終結しておるのでございますから、考慮の余地があるのではないか。これに対しては、もっと政府考えて、まぎらわしいところの在日国連軍と、安保条約によるところの在日米軍と、この二つで、日本国民が非常に不安の種になるような、アメリカ軍の日本における駐留というものに対して、私は、はっきりと国連軍の撤退を迫るべきではないか、かように考えるのでございます。  また、将来こういうことは考えられると思います。もし朝鮮で紛争が起こったと仮定いたしましても、この場合、必ずしも北からの挑発または侵略が絶対であって、南からはないのだというようなことも言えないと思うのです。そういう事態に応じて、国連の行動は、北からの場合と南からの場合と変わって参りますから、ここにまた、国連軍の行動というものも、本質的に変わって参ります。国連での、侵略者は常に共産主義者だというようなドグマを持って考えるということは、非常に危険なことでございます。現在のような状態では、固定化して弾力性を失っておるところの国連の機構というものを、円満に動いてもらうためにも、私は、もはや朝鮮におりますところの、朝鮮動乱を中心とした国連軍の解散、撤退ということを、積極的に推し進める安保理事会での発言が、日本政府からなされなければならないと思う。しかも、これによって一番迷惑をこうむるのは日本国であり、日本国の領土であるということをつけ加えておかなければならないと思います。吉田・アチソン交換公文に関しまして、この中に行なわれておるところ極東範囲に基づく米軍の行動、しかも、これによって日本に駐留いたしておるのでございまして、これが生きた効力を持っておるのでございますから、問題は安保とからんでなかなか複雑奇妙で、国民の不安はここから出ておるということを考えますときに、私が先ほど申しましたところの、吉田・アチソン交換公文における極東範囲またはそれの見解につきましては、もう少ししっかりとした政府見解を表明していただくようにお願いをしないと、どうも工合が悪いのじゃないか、私はかように考えますので、どうぞそこのところ見解を統一されまして、はっきりと示していただきたいということをお願いいたします。  私はなお質問を持っておりますけれども、皆さんおなかが減ったようでございますから、ここで中断をいたしまして、午後に私の質問を続行することにいたします。
  98. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっとお答えを申し上げておきます。  極東の観念につきましては、先ほど私がお答えをした通り、その用いられておる条約なり交換公文の趣旨によって、解釈していくことが適当であるという考え方は、終始一貫違っておりません。  それから、国連軍が日本におる、これは二つあると思います。在日米軍が、一面において国連軍たる資格を持っているものと、それから、在日米軍以外の他の国の国連軍がおるという問題があります。これはごく少数でございまして、他の国の者は、何か百人前後だということでございまして、これは非常に少ないのであります。米軍が、一面において国連軍たる資格を持っておるということでありますが、吉田・アチソン交換公文を、さらに今度の交換公文でこれを認めておりますが、その中に、今後国連軍として在日米軍が作戦行動に出る場合におきましては、やはり事前協議の対象となるのでありまして、この点は、この安保条約による在日米軍の行動と同様に、全部がかぶさるわけであります。従って、それから混乱なり不安が生ずるというふうな事態は、私はないと考えます。
  99. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十分休憩      ————◇—————     午後一時五十四分開議
  100. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。堤ツルヨ君。
  101. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、午前中に引き続いて午後の質問に入りたいと思いますけれども、ただ一つ触れておきたいことは、少し時間がございませんでしたので略しましたけれども、吉田・アチソン交換公文によるところの朝鮮国連軍の使命というものが大体終わりました今日、国連の理事国として発言力を持ちます日本が、あくまでも自主的な見解において国連の中で私たちの主張を通して、そしてこの国連軍の撤退を実現させなければならないということを一つ政府に強く要望をいたしまして、その次の質問に入りたいと思いますが、その前にもう一つ触れておきたいのは、この日本におるところの国連軍の行動については、事前協議の対象になるという首相お答えもございました。なるほど、吉田・アチソン交換公文等に関する交換公文の中では、アメリカが統一いたしておりまする国連軍の司令部のもとにあるアメリカ軍隊にだけは規制をされますけれども、しからば、それ以外の、たとえばトルコとか、アメリカ以外の軍隊が国連軍の中にもあるはずであり、また、将来そうした問題が、この場合に限らず、起こるわけでございますが、そうしたときには、アメリカ軍と違ってどのようにしていくのか、アメリカ軍以外の国連軍の行動を規制するその方法はどうするか、それを一つはっきりしておいていただきたいと思います。
  102. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、国連軍中のアメリカ軍につきましては、交換公文にございますように、安保条約及びそれに従う取りきめの適用を受ける、これは御指摘の通りでございますし、われわれもそのように取りきめをいたしたわけでございます。それから、アメリカ軍以外の国連軍、これにつきましては、その行動は、たとえば戦闘作戦行動とか、その他の行動をするということは、全然考えられておりません。これはわが方としましては、日本にいることを支持かつ容易にする。その内容はどうであるかと申しますと、国連軍協定によって規定されている。すなわち、その地位その他はすべて国連軍協定で規定されるところであります。従いまして、それ以上に出て作戦行動のために日本から飛び立って云々するというような、そういうふうな点は全然考えられていないわけでございます。
  103. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そこで、私は、その次に、たびたび問題になっております事前協議の問題に入りまして、総理並びに防衛庁長官お尋ねをいたしたいと思いますが、日本の安全と平和を守るためには、日本は米国との間に相互協力をし、極東の国際的平和と安全のために共通の関心を持って常に事に当たらなければならないと、新安保条約には表現されております。そうして、日米共通の危険に対処するため、日米両国は、おのおのの憲法上の規定と能力に従って、防衛力を維持し発展させる約束をするわけになっておりますが、日本が、条約によるところの実質的な、防衛力らしい完全な防衛力を具備することができるのは、一体いつごろのことか、何年ぐらいかかるのか。政府は、国家経済、軍事科学の進歩、防衛予算関係国際情勢、いろいろな角度から種々の要素を考慮に入れて、大要の見通しと計画を立てておられるであろう、また、持っておらなければならないと私は思いますが、その計画がございましたならば、ここで大体発表をしていただきたいと思います。
  104. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 国際情勢や諸外国の様子によって違うと思いますが、原則として、今、世界で、自分の国だけで完全に防衛ができるという国は、アメリカ、ソ連くらいしかないと思います。ほかの国は、完全に自分の国だけで、どういう事態に処しても防衛できるというようなことは、困難だろうと思います。しかし、そういう点におきまして、日本日本なりに防衛体制を整えていくのに、どのような計画を持ち、どれくらいの年限を必要とするか、非常にむずかしい問題でございます。情勢等によりまして、なかなか的確には申し上げられませんが、現在第  一次防衛計画を立てまして、三十五年度が終期になっております。三十六年度から四十年度にかけての五カ年の第二次防衛計画を立てていきたいと、今検討中でございます。そういう点で、今でも、ある程度はできると言えまするし、また、できないとも言えます。そういう点におきまして、今度の条約等によりまして、万が一の場合には、日本で防衛できない面をアメリカ協力を仰ぐという形になっていることも、申し上げておる通りでございます。でありまするから、今、完全にとか、どの程度ということをはっきり申し上げられませんが、第二次計画等の進行につれまして相当の防衛能力を具備する、こういうふうな予想を持っております。
  105. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 自衛のための防衛力というものについて、最低どれぐらいなものを、年次計画を立てて国内で推し進めていくかというところの計画は、全く五里霧中である、今でも、ある程度持っておるといえば持っておるし、持っておらないといえば持っておらない、それは単に日本の問題だけでなくして、一国の単独の力で防衛し得る国というのは、もう地球の上にあまりないんだ、従って、日本もその例に漏れないのであって、なかなか見通しが立たない、と同時に、確とした計画はない、ただ、第二次五カ年計画として、三十六年度から四十年度までの五カ年計画というものをもって推し進めていって、ある程度防衛力を充実することに対処したい、まあこういう考えでおいでになる、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。——そうすると、三十六年度から四十年度までの第二次計画というものについての数字をお示しいただきたい。
  106. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 数字的に申し上げるにいたしましても、いろいろな数字がありますが、大体の大まかな数字を申し上げますると、陸におきまして、三十五年度末においては十七万一千五百人という人員になりますけれども、四十年度末までに充実する人の点で申し上げますならば、十八万をあまり多くこえない程度のものというふうに、陸の方の人員は見ています。海の方は、トン数にいたしまして大体十六万トン、飛行機等につきましては、空の方で千三日と第一次計画に見ていますが、千百ちょっとと、大よそ予定しております。あとはミサイル等に移行していきたい、こういうふうに、大きな数字で言えば、予定をしております。
  107. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ただいまの長官答弁は、今日までに二、三回答えられておると思うのです。これは私も存じておるわけでございまして、単なる兵隊の数だとか、それからトン数で私に知らしていただいたのでは承知できないから、きょうはあらためて聞いているのでございます。なぜそういうことを申すかと言えば、今日の装備、配置、いろいろな点から勘案いたしまして、数よりも質に重点を置いてこの防衛力というものは考えなければならない。近代兵器を中心とした防衛力になると思う。ですから、むしろ、そういう今まで再三聞かされた数の問題よりも、防衛庁長官として、三十六年度から四十年度にかけて持っていらっしゃるところの質と、それにかかるところの金がどれくらいかということについての御計画が私はほしいわけでございます。それがもしここでお答えになれましたら、一つ発表していただきたい。お答えになれなければ、次の委員会に、こういう人員のばくとしたものでなしに、私の今申し上げたような趣旨の計画を、参考資料としていただきたいと思います。いかがでございますか。
  108. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 数の点でのお尋ねがありましたので、先ほど申し上げたわけでございますが、それじゃどういう構想で第二次計画を作っていくかということでありまするならば、なお申し上げたいと思います。私どもは、自衛隊を充実していく上におきまして、今御指摘のように、量だけでいくというよりも、質をよくしていく、近代化するといいますか、それからまた、装備その他について近代化したものを効率的に運用するという考えを持っております。でありますので、陸といたしまするならば、人のみにたよらず、人は、先ほど申し上げましたように、あまりふやす必要はない。そのかわり、装備を近代化していく。一つの例を申し上げますならば、機甲化部隊といいますか、機甲化していく、こういう方向に陸の自衛隊を持っていきたい、こう考えております。それから海の方につきましても、これも前に申し上げておるわけでありますけれども、潜水艦に対する対潜方面に力を入れて、たとえばP2Vというような対潜哨戒機等もありますが、こういうものを充実していく、あるいはまた、港湾等の封鎖を避けるために、それに対処する方法考えていく、あるいは掃海、こういう方面に考えていきたい。それから、空及び一般的の方から考えまするならば、やはり有人機といいますか、人の乗る戦闘機がだんだんミサイルの方にかわってきておりますので、地対空のミサイル、こういう方面で空の方の防備をしていきたい。海の方でも、それに従って、三十五年度の予算でもお願いしておりまするように、ターターというようなもので、海から空に対する防衛体制を整えていく、こういうふうに考えて、一口に言いまするならば、装備を近代化し、効率化していく、そうして日本の防衛に対して、おくれをとらぬような方向に進めていく、こういう構想で今検討している次第であります。
  109. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 おくれをとらぬような構想で追っかけていくとしても、大体後手々々に回るのが、今までの日本の防衛庁の実態でございまして、ばく然とおっしゃいましても、私たちが、なるほど、まあこれくらいならと思うような計画というものは、そううまく立てられておらないんじゃないか、こういう懸念を持つわけです。ですから、今長官お答えになりましたようなばくとしたものでなしに、五カ年の計画がありましたら、一年ごとの数字、内容を、国会でございますから、一つ御発表いただきたい、こういうことを申し上げておきます。  それで、なぜ私がこういうことを要求するかと申しますれば、ただいま防衛庁長官が防衛計画についてお答えになりましたように、はなはだ自信がない。それから、追っかけていってもなかなか追っつかないという心配が政府自体にある。大体、この近代戦に対処できる自衛力らしい自衛力というものを備えるのには、何年かかっても追っつかぬのじゃないか、こういうような心配を政府自体も持っておられるように思いますし、科学の進歩、そのスピードなどを勘案いたしましたときに、私たちも、これはだれが政権を担当してもなかなかむずかしい問題だと思う。ですから、このよってきたるところは、当然、それまでに至る途上の問題を現実に考えていかなければならない。自信のない途上においてどうするか。そういたしますると、新条約第五条による共通の危険に対処するためには、その不足した防衛力の補足について考えなければならないのでございまして、政府はこれをどう考えておいでになるか。
  110. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 第二次計画は目下検討中でございます。検討いたしました結果を国防会議にかけてきめることになっていますが、まだできておりませんので、年次別に今申し上げるまでの段階にいっておりません。  それから、防衛力が十分というわけには参らぬじゃないか、それについてどういう対処方法考えておるかということでございます。日本の防衛計画につきましても、国防基本方針に従って、国力、国情に応じて漸増する、こういうふうになっていますから、無理に国力、国情を突破するようなことはできません。しかし、一方においては、お話のように、防衛力を充実していきたい、こういう要望を私どもは持っているわけであります。そこで、御承知のように、MSA協定等を結びまして、日本で近代化しあるいは必要とするもので援助を得られるものにつきましては、援助を受けながら充実してきたのが、現在までの情勢でありまするし、また、今からでも、必要なものにつきましてはMSAの援助を受ける、こういう方針であります。  それから、われわれは戦争を目的としているのじゃありませんが、今度の条約にありまするように、戦争が起きないような対処を考えるわけでありますけれども、万が一にもそういう侵略されるというような事態がありましたときに、御指摘のように、日本防衛力では足りません。日本の力では足りません。そこにおきましてそういう事態が万が一生ずる場合には、安保条約の第五条にありまするように、共同の危険に日米で対処する、こういうことにたよらざるを得ないと思います。
  111. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 一昨日の戸叶委員質問にも答えておられますように、MSA協定の必要を強調しておられました。今も御答弁になりましたように、いわゆる不足分につきましては、MSA協定によってこれを補っていかなければならない、こういうことでございまして、言いかえれば、日米安保条約によるところの力と、それからMSA協定によるところの援助と、この二つを合わせて実施していかなければならぬような状態にある、こういうふうに答弁になったと思いますが、大体よろしゅうございますか。
  112. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本が主体性を持ちつつやるわけでありますけれども、しかし、充実をしていく上におきまして足らぬ分は、堤さんが今御指摘のような方法によって充実していきたい、こう考えております。
  113. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 安全保障条約とMSA協定を併合実施することという観点に立って、新安保条約とMSA協定のおのおのの基本を私はここで考察してみたいと思うのです。協定と条約に少し大きな時代的なズレがあるのじゃないかと思う。それはどういうことかと申しますると、新安保条約の中には、その考え方の基本をこういうふうに書いてある。日米両国が、武力攻撃に対処する能力を、ともにおのおのの国情と能力に応じて、自発的に発展的に備えることを約束することにしております。ところが、MSA協定ではこれがどういうことになるかと申しますと、MSA協定では、日本が、直接、間接の侵略に対する自国の防衛のため、漸増的にみずから責任を負うことを、アメリカが一方的にただ単に期待しているにすぎない、こういうふうに書いてございます。新安保の三条で約束して義務を負っておりますが、MSAの前文には、一方的な期待に終わっておる。このズレは一体どういうふうにお考えになりますか。
  114. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように、相互防衛援助協定は、現在の安保条約に基礎を置いての援助協定であります。現在の安全保障条約におきましては、防衛力が漸増することを期待する、こういうふうに書かれておるわけであります。現在の安全保障条約ができた当時は、日本には自衛隊というようなものがまだなかったわけであります。そこで、自衛隊が漸増することを期待する、こういうふうに書かれており、そうしてまた、相互防衛援助協定におきましても、現在の安保条約の前文を引用しまして、今御指摘のように「平和及び安全保障を増進すること以外に用いられるべき軍備をもつことを常に避けつつ、直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを、アメリカ合衆国が期待して、」こういうふうになっておるわけであります。今度の安全保障条約におきましては、そういうふうにアメリカ日本を守ってやるのだというような形の安全保障条約でなくて、両者お互いに対等の形において安全保障条約を改定していく、こういう立場になっておりますので、表現も、お互いがそれぞれの能力に応じて防衛力を維持発展させる、こういうふうになっておるわけでございます。
  115. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 現行の条約とこのMSA条約とは、言い分が通じていると思うのです。ところが、MSA協定と、それから今度の新しい条約との言い分は、どうもズレがある。従って、厳密に言いますれば、規行の安保条約と調子を合わせたところのMSA協定の前文は、この際、今度の安保条約にうまく調子が合うように直さなければならぬじゃないか、前文に触れることを忘れたのではないか、こう思うのですが、いかがでございますか。
  116. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点は、相互防衛援助協定、MSA協定に関する交換公文で、それが新安保条約がこれらにかわるものである、すなわち、新安保条約地位協定に該当する規定があれば、これに言及しているものとみなすことが、両政府の了解でございます。従いまして、現在のMSA協定におきまして安保条約を引用しております点で、新安保条約に該当する規定があれば、それに言及しているものだ。従いまして、この前文も、新安保条約第三条にかわったものである、このように考えて読むものであるというふうに、この交換公文で了解しているわけでございます。
  117. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 あまり大したことはありませんけれども、ついでに触れておかないと、やはりこちらで義務を約束してしまったものと、片一方では、向こうが希望的な観測を持って期待しているのとは、少しそごを来たすのではないか、こう思うわけです。  それから次に移りたいと思いますけれども、この条約締結したと仮定いたします。その後、日本が完全な自衛力を備えるまでに至る途中の時点において、不幸にして武力攻撃を受けた場合、自衛力の不足分を、MSA協定による武器等の援助を受けた場合、同協定の第一条二項の規定が適用されると思いますが、いかがでございますか。
  118. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 MSA第一条の二項の規定が適用されます。
  119. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 適用されるとなると、米国は日本の自衛隊の実質的な干渉ができることになりませんか。どうですか。第一条の第二項を適用しますと、日本の自衛隊に私は干渉できると思うのです。それはどうです。
  120. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 援助は、こちらが要求して、話し合いになって、成立することになります。成立した援助につきまして「いずれの一方の政府も、他方の政府の事前の同意を得ないでその援助を他の目的のため転用してはならない。」と、使用目的を第一条の第二項できめてあるわけでございます。そういう点におきまして、援助を受けたものをほかの目的に使うことは、これは避けなくちゃなりませんけれども、しかし、これは援助を受けるがゆえに自衛隊そのものが干渉を受けるということはございません。
  121. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それはおかしいのでして、アメリカから援助されたところの武器を、確かに間違いなく約束通りの個所に使っておるか、はたに流用しておらないかということをアメリカとして監督いたしますには、最後まで、それが落ちつくまで見分けなければ、日本にごまかされたか、その通り使ったか、わからないわけでして、これは必ず自衛隊の中に入ってきて、間違いなく使われておるなというところの監督をやはりするのでございますから、自衛隊の編成に対するところの干渉だ、こういうふうに思うのですが、防衛庁長官、どうですか。
  122. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 編成等について干渉を受けたり、あるいは指示等を受けたことは、今までもありませんし、これからもありません。今のものは、援助を受けた物資についての使用目的を変更してはならないというだけでございます。
  123. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それが、私が朝から岸総理大臣に、あまり背伸びをなさらないで、苦しいところは苦しいとおっしゃいと、こう言っていた一つの例なんですけれどもアメリカの今持っておるところのいわゆる近代兵器装備、金をかけたところの、世界に誇る軍隊というものの力は、日本のささやかな自衛隊と比較にならぬことはわかっておる。そうならばこそ、これにMSA協定を結んで援助を受けなければ、自衛さえもできないという日本の現状にあるのですから、いかに干渉を受けないと言ったところで、局部的に日本の自衛隊の中で援助したものがどういうふうに使われるかということは、当然これは力関係において違うところアメリカが指揮命令、監督し、同時に使用方法についても指導しなければ、これが実際生きない。ここまで見届けなければ、MSA協定のこのアメリカの監督というものは、アメリカ国民に対しても申しわけないのですから、私はなさると思う。従って、力関係において違うところの、しかも援助を受けるところ日本が、背伸びをして、断じて指揮命令、監督は受けませんなどと言ったって、実際だれの常識考えてみても、これは受けることは百パーセント間違いなしだ、私はこう思うのですが、そこは正直におっしゃっていただいたらどうでしょう。
  124. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 どうも堤さんみたいに私は卑屈になれないのですが、指揮命令、監督等は絶対に受ける必要もないし、また受けてもおりません。そういうことにはなっておらないのです。ですから、自衛隊の内部に入って指揮監督、命令、こういうことはありません。もらったものについての使用目的を変更するということにつきましては、向こうでも、そういうことをされちゃ困るというようなことについて注意しておりますが、内部に入って指揮、監督等はされておりません。
  125. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 事前の同意をしてそうしてそれを目的以外に使わないという義務が日本に課せられておるのでございます。この閲の速記録を見ていただきますとわかりますが、藤山外務大臣が穂積さんの質問に答えて、こういうことを言っていらっしゃる。これは私は少し今の答弁と比べておかしいのじゃないかと思うのですが、穂積さんの質問に対しまして、藤山国務大臣が答えられた速記録を引用しますと、「私は、今穗積委員の言われました御意見とは、実は逆な考え方を持っております。」これは低開発国の援助の問題です。「アメリカが、何か非常に金利の高い、あるいは非常に厳格な条件のもとに低開発国に金を貸すということが、アメリカ帝国主義の搾取の道であり、あるいは低開発国を隷属化する道であるというふうに言われるのでありますけれども、これは個人の貸借でもおわかりいただけますように、ただでもらうくらい、もらった人がその人に隷属することはございません。ましてや、コストを割りますような利率でもって金を貸して、その恩恵を与えますことは、その与えられた人は、与えた人に対して隷属的にならざるを得ません。そういう意味において、経済開発というものは、やはり適当な利率、そして適当な条件をもって援助していくことが必要だと私は思います。」と、こういうふうに答えておられます。私は、MSA協定は、いかに日本が力んでみても、ただでもらうものもあれば、借るものもありますし、貸してもらうものもある。いろいろあるけれども、経済人の藤山さんが答えられたように、ただほど高いものはないという言葉がございますけれども、逆に、ただでもらえば隷属しなければならない個人関係のように、日本の自衛隊と、アメリカの指揮いたしまする軍隊との関係におきましては、私は、弱い関係にあるところ日本の自衛隊が監督を受けるということは当然だと思うのでございますが、この間の藤山外務大臣の答えからして、いかにお考えになりますか。常識的にこういう関係は生まれてきませんか。
  126. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私どもは、経済協力の点についてそう考えておりますが、MSA協定の実施にあたりまして、日本としては、むろん、そうした卑屈なものの考え方でこれを受けていくということを考えておるわけではございません。対等の立場でもって協力を得る、従って、MSA協定で協議いたしまして、日本がそういうような何か押しつけられたような条件になりますならば、むろん、そういう協議による援助というものについて考慮していくことは当然でございます。従って、武器をもらうという援助を受けましても、そのこと自体が、日本の今回のこの場合におきましては、何か軍に対して指揮命令権が持たれるという状態にないことは、今防衛庁長官が言われた通りだと私は考えております。
  127. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 まあ一国と一国との問題でございますから、国会の席上で外務大臣総理大臣がそういうことをおっしやれないかもしれませんけれども国民常識としては、この問題は、三月十五日に自民党が、政府与党統一見解をお出しになりまして、日本防衛軍の指揮権は日本が持つ、米国軍隊の指揮権は米国が持つ、両国の合体による総司令部は持たない、こういうふうに言っておりますけれども、私は、MSA協定の中から生まれてくるところの協議によって、政府の言っておいでになるところ統一見解は非常に矛盾があるということを申し上げ、同時に、これに対しては多分に疑問を持つところ国民があるということを、一つ念のために申し上げておきたいと思います。アメリカからMSA協定による武器の貸与を受けた日本軍が、新安保条約の規定による行動をします場合に、MSA協定の第一条二項の監督を受けてそして日本が行動するのでございますけれども、そのときに、多分に監督権的な、監督権を持った立場にありがちな発言アメリカがするであろうと私たちは思いますが、その際の事前協議によって生ずる日本アメリカに対する拒否権というのは、まことに微妙なものになってくると思う。MSA協定の援助を受けてために、恩恵があり、監督されておるので、日米安保条約に基づくところ事前協議のノーは、どうも言いたくても言えないという事態に、日本が追い込まれるのじゃないか、私はかように考えるのでございますけれども岸総理大臣はその点いかがお考えになりますか。
  128. 岸信介

    岸国務大臣 MSA協定によって武器の援助を受けた場合において、他の目的にこれを援用することはできないという制限を受けておりますことは、事実であります。しかしながら、それがゆえに自衛隊がアメリカによって干渉され、あるいは指揮命令を受けるというようなことは、絶対にないのでありまして、その点は先ほど来防衛庁長官お答えをしておる通りであります。現に顧問団がおりますけれども、顧問団が自衛隊を指揮するとか、命令するとか、監督するというような形の権限を行使しておるものではございませんで、実際にアメリカが供与しておるところのものが、どういうふうに使用されておるかということは見ておると思いますけれども、このために、指揮命令、監督をするという性格のものではないのであります。従いまして、この点は、先ほど来堤委員の御意見もありましたけれども、防衛庁長官が申したことで十分に御理解をいただきたいと思います。  それから事前協議の点でありますが、今言っているように、MSA協定で武器の援助を受けておる。それに対しては、MSA協定上の義務というものは、先ほど申し上げましたようにございます。これは協定上の問題でございまして、それをわれわれが忠実に実行すべきことは当然でございます。しかしながら、それ以上の何ものもわれわれは負うておるわけではございません。従って、本安保条約によって事前協議を受ける場合において、アメリカからそういうMSAの援助を受けておるから、われわれが当然この安保条約の問題として考えなければならぬ問題を、それに引っからませて、そうしてノーと一言わなければならぬときにもノーと言わないというような卑屈な考えは、私ども毛頭持っておらないのであります。
  129. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、卑屈な考えを持っておってもおらなくても、実際現実の問題として、日本の自衛隊の立場はそうした弱いものであるということは、だれが常識的に考えてみても、はっきりすると思います。従って、MSA協定と安保条約とを自衛力が不十分な日本が併合いたします途上においては、事前協議の中におけるところ拒否権日本がノーと言える立場は、非常に少なくなってくる。従って、事前協議というところの問題は、MSA協定とからみ合わせたときに、日本拒否権がないという見地からいたしまして、どうも空文ではないか、こういう気がいたします。  そこで、もう一つ、違った角度から、事前協議についてお尋ねをいたしてみたいと思います。条約第六条の実施に関する交換公文の中に、アメリカ軍隊の日本国べの配置における重要な変更及び同軍隊の装備における重要な変更が行なわれる場合は、事前協議をするものとすると明記してございます。この交換公文の中にそう書かれております。そこで、この場合の配置という問題を一つ取り上げて考えてみますと、いろいろな場合が生まれてくると思うのです。重要な変更の中の変更というのは、一体どういうようなのか。具体的に考えてみますと、たとえば、在日米空軍が〇〇部隊を〇〇から〇〇へ移動する場合等の、国内の移動の問題があると思います。これはどうでございますか。重要な変更の中の変更というのにそういったのが入りますか。国内だけにおけるところの移動……。
  130. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国内の中の移動は入りません。
  131. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 次に、新たに米国が米国及び日本以外の基地から日本へ増兵する場合はどうなりますか。
  132. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本国外から日本国内に移動して参ります場合、大部隊の場合には事前協議に入ります。
  133. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それじゃ、もう一つの場合、在日米軍の日本から日本以外への移動、これは事前協議の対象に入りますか。
  134. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本国内から日本以外に出ますときには入りません。
  135. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 その次、在日米軍が日本から撤退する場合は、事前協議の対象になりますか。
  136. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 撤退でありましょうと、日本から移動して参ります場合は入りません。
  137. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私が今言いましたように、種々の場合が想定されると思います。政府の、在日米軍の配置の変更についての見解で、いろいろと伺ったわけでございますが、重要な変更とみなされるための認定基準を、ここで明らかにしてもらいたいと思うのです。
  138. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 大体、兵力の配置につきましては、一個師団程度のものは事前協議にかかるのであります。それよりも小部隊はかからないで参ります。
  139. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それは三月十五日の、政府与党統一見解を御発表になりました中に、今お答えになったことは、大体入っておるようでございます。  それじゃ一つ伺いたいのは、今私が問題にしました中で、事前協議の対象にならないという場合に、非常に問題になる場合が一つある。それは在日米軍が日本から撤退する場合、これが対象にならないとすると、どうもこの条約を結んだ締結目的に問題があるように私は思う。在日米軍が引き揚げる場合は、いろいろな場合が想定されると思いますけれども、米国が国際情勢の分析をしてみまして、撤退した方がいいとか、または日本に軍隊を駐留させる必要度とか、また、軍事上の問題で、日本より日本以外の基地へ移動させた方が、実質上合理的な作戦であると考えたときには、部分的に撤退させるか、全体を撤退させるかというような場合が起こってくると思います。いずれにしても、在日米軍が撤退するときには事前協議の対象とならないとすれば、米軍は引き揚げるときには、一方的に、計画通り、自由に、日本から日本以外の基地に軍隊を移動、すなわち、出動させることもできることになりかねない、私はかように思います。日本国は米軍隊のたまり場となるような可能性も、こういう面から申し進めますと、出てくるんじゃないか。日本に相談なしに、事前協議の対象でなしに、勝手に部分的な撤退をするというのでありますから、これは事前協議の対象としないで、たとえば戦闘作戦的な行動をする場合に、日本をたまり場として利用するのに便利であるというような問題が生まれてきて、ここにざる法といわれるところの問題がひそんでおるのではないか。もし撤退をする場合、部分的な撤退であろうとも、全面的な撤退であろうとも、事前協議の対象として、これをはっきり協議するんだということが一応いわれるならば、まだしもわかるのでございますけれどもアメリカの軍事基地として使われておる日本立場といたしましては、この引き揚げ、撤退の名目のもとに、いかなる行動をも日本中心として行なわれるというような危険が生まれてくるのではないか、かように思うわけでございまして、どたんばにきたとき、間に合わぬとき、アメリカの一方的な利益のために、撤退したり、移動したり、戦闘作戦行動を行なったりするときに、ここを利用されはしないか、こういう問題を考えないわけにはいかないのでございまして、撤退か部分的にもせよ、全面的にもせよ、協議の対象になっておらないということは、非常に大きな問題があるのではないか、こう考えますので、重ねてお聞きするわけでございます。
  140. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 条約の全般の運営につきまして、むろん協議をいたしますことは当然でございます。ただ、交換公文におきます事前協議というものは、特殊な重要な問題を取り出したわけでございまして、ただいまお話のように、たまり場になるということでありますれば、たまるためには入ってこなければならぬ。その入ってくるときには、事前協議になるわけでございます。日本の防衛に必要以上のたまり場になるというような大部隊が入ってくるときには、事前協議の対象になっておるわけでございます。
  141. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 これはまた、私は戦闘作戦行動という言葉に触れてみたいと思いますので、そのときに、からみ合わせてお尋ねをいたしたいと思いますが、撤退の場合を、アメリカ事前協議としてくくりつけておらないということは、非常に大きな問題がございます。  それから、もう一つ問題になりますのは、装備並びに配置の重要な変更は、事前協議の対象になる。その場合の重要な装備の変更というのは、核武装への発展的変更を意味し、また、配置の場合は、一個師団以上は配置転換を適用すると政府は言っておられますが、それ以下の場合は事前協議の対象にはならないのでございますね。もう一度確認をいたします。
  142. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今まで申し上げました通りでありまして配置につきましては、一個師団程度以上のものについて事前協議をいたすわけでございます。
  143. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは外務大臣お尋ねいたしますが、一個師団以下のものは事前協議の対象にならないといたしますと、アメリカ日本と協議をしないで、自分の思うままに、計画通り在日米軍の配置の転換ができると私は思う。それはどういうことかといいますと、たとえば、協議の対象にならない程度に配置を変更して、その回数を何回か重ねる。つまり、一個師団の数ならば問題になるけれども、三回か四回に分けて、アリのように持ち運べば——一ぺんに持ってきてしまったら事前協議の対象になるけれども、三回、四回、五回と重ねて持ってきたら、事前協議の対象にならないから、わからないように、自国の計画通りに集めるということができるわけであります。こういう点からいいますと、回数はどういうことになります。
  144. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 そういうことが、両国間に脱法的な行為として行なわれるということを、前提にはいたしておりません。しかしながら、一個師団以上のものが数回に分けて入ってきましても、とにかく日本に一個師団以上の大部隊が入るということになれば、事前協議の対象になることは当然でございます。
  145. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 できるだけ事前協議の対象にならないようにして目的を達するという抜け道が、この配置の重要な変更という以外の場合にあるということも、私は指摘しておかなければならないと思います。  そこで、次に、事前協議の中で、戦闘作戦行動というものが、条約第六条の実施に関する交換公文の中で確認をされております。これを見てみますと、その中に、外務省発表の解釈には、「「装備における重要な変更」とは核爆発物そのもの、または核爆発物を装備した兵器を意味する。ただし核爆発物と普通の火薬の両方を装備できる兵器でも、核爆発物をつけない場合は事前協議の対象とならない。しかし核爆発物をつけなければ意味のないIRBM(中距離弾道弾)やICBM(大陸闇弾道弾)は、たとえ核爆発物をはずしたものでも事前協議の対象になる。」その次に戦闘作戦行動という言葉が出て参ります。それで、私は政府お尋ねいたしたいのは、戦闘作戦行動と、次の行に出てくるところの作戦行動、この二つの言葉の違いについて、も上この二つの定義がはっきりしておりましたら、おのおの答えていただきたいと思います。
  146. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 作戦行動といいますと、相当広い意味にとっております。防衛作戦というようなこともありますし、補給作戦というようなこともあるし、広い作戦ということにとられております。戦闘作戦行動というのは、直接戦闘を目的とした作戦行動、こういうふうに定義されておるようであります。
  147. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 この戦闘作戦行動というものを、外務省の見解で見ていきますと、こう書いてある。「「戦闘作戦行動しとは軍事上の専門用語であり、「作戦行動」という言葉と同義語である。厳密にいえば、補給や軍事的移動も「戦闘作戦行動」に含まれるが、在日基地を中継した補給や移動は「配備の重要や変更」を意味しない限り、事前協議の対象とはならない。その点「戦闘作戦行動」の厳密な定義は、日米両国間でまだ決まっておらず、ケース・バイ・ケースで事前協議の対象になるかどうかを政治的に決める。つまり「戦闘作戦行動」の具体的意味や内容は、区域外出動を必要とする事態に応じて米側から説明があり、措置がとられることになる。」こういうふうに書いてございます。私は、この戦闘作戦行動がとられるときというのは、非常に問題があると思います。ところが、この戦闘作戦行動については、ケース・バイ・ケースで、事前協議の対象になるかどうかきめるのであって、まだそのきまったものはなくて、政治的に、アメリカからの申し入れ、説明を聞いてきめる、こう書いてあるわけです。私は、事前協議の重要問題だから、これは一つ判然としてほしいと思うのでございます。英文では、ここにミリタリー・コンバット・オペレーションズ、こういう言葉が使ってあります。そこで、この戦闘作戦行動というところの問題に関して、いいかげんな言葉でごまかされますと、これは非常に問題が起こってくる。しかも、私たちが非常に不思議に思いますのは、具体的に言いますと、日本から直接米軍が移動するのは、日本の領土以外に出かけていくのには、さいぜんの答弁では、事前協議の対象にならない、こう言われておる。その事前協議の対象にならないところの軍隊の移動が、戦闘作戦行動を伴ったものであって、非常にきわどい行動である場合に、事前協議の対象とならないで、この軍隊が動いたときに、これは日本では何ら知らない間に、アメリカが勝手に、日本の基地を利用して戦闘作戦行動を行なっている、しかし、日本政府は、戦闘作戦行動の中からこれを除外してしまって、勝手な行動を許している、こういう場合が生まれてくると私は思うのでございまして、これは非常に問題点でございますから、もし戦闘作戦行動を事前協議の対象とするというようなことがはっきりしておりますのならば、一々例をあげてこれは明記しておかないと、まだきまっておらないで、ケース・バイ・ケースで今後政治的にきめる、こういうようなことでは、国民納得をしないと思うのでございますが、この点について総理大臣、防衛庁長官、いかがでございます。
  148. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 戦闘作戦行動はケース・バイ・ケースできめるというわけではありません。戦闘作戦行動として出てくる場合には、事前協議の対象にするわけでございます。それは、そのときによって判断するということは必要でありましょう。でありますけれども、何もそれがきまっておらないというわけではございません。戦闘作戦の任務を与えられて出る、これを戦闘作戦行動に出る、こういうふうに解釈いたしております。
  149. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私が懸念いたしますのは、実際は戦闘作戦行動であるけれども、戦闘作戦行動でない、普通の作戦行動だという名目をつけて、米軍が日本の基地をほしいままにするという懸念が生まれてくる、こういうふうに私が言っておるわけでございまして、その点いかがでございましょう。
  150. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そういうことであっては信義に反しますし、条約に反すると思います。
  151. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それじゃお尋ねいたしますが、日本の中にいたアメリカの軍隊が日本を出ていくときは、事前協議の対象にならないのでしょう。そうお答えになりましたね。ならないのならば、その出ていった部隊が、どこへ行ったか、日本は知る必要もないし、また知らされる必要もない、同時に、それが戦闘作戦行動であったか、普通の作戦行動であったかということも、関知しないという場合が生まれてきませんか。
  152. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本の基地を利用して出る場合に、それが戦闘作戦行動として出るかどうかということが判定されるわけであります。でありますから、直接戦闘をしていないところへ行く場合であっても、日本の基地を離れるときに、戦闘の目的をもって離れるということでありますならば、これは戦闘作戦行動のために出た、こういうことであります。それからまた、作戦の中のどういうことで出るかということにつきましては、日本の基地を使用する際に、これは判定してきめるべきであろうと思います。
  153. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それじゃ、私は具体的にこういう例をお聞きしたいと思うのです。アメリカがこちらにございます。それから日本がまん中にある。それから沖縄が南にある。それから台湾が向こうにあるというときに、アメリカから日本へ来た軍隊が、日本の基地に一度おりて、そしていざこざが沖縄に起こったといたします。そういたしますと、その沖縄に出発するところの、日本から出るアメリカ軍隊は、これはいざこざの最中でございますから、戦闘行動、こう言えるのでございますね。
  154. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 沖縄に問題が起きて、それをおさめるために、日本の基地を出て沖縄に向かう、これは戦闘作戦行動、こういうふうに見ます。
  155. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それじゃ、戦闘作戦行動というところのめんどうな事前協議を避けるために、アメリカの軍隊が一度日本から出まして、台湾に回って、台湾から、いざこざの起こっておるところの沖縄に行ったときには、日本から出たアメリカ軍隊は、戦闘作戦行動を起こしたと言えますか、言えませんか、どちらですか。
  156. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そのときの事態にもよりましょうけれども、今の設例でありますならば、これは台湾へ行ったということでありますから、戦闘作戦行動の中に入りません。
  157. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、実際は戦闘作戦行動のために立ち上がっておるのだけれども事前協議の対象としない一つの口実として、トンネルとして日本の基地が使われる、たまり場として使われるというような場合も、実際には生まれてくるというふうになりますが、どうでございますか。
  158. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 わざわざ日本をたまり場にする必要もなかろうと思うのですが、かりにたまり場とする場合であっても、先ほど外務大臣が御答弁申し上げましたように、たまり場とするのには、こちらへ入ってくることが必要であります。まず入ってくるときに、一個師団程度のものでありますならば、これは事前協議の対象になります。でありますので、たまり場として日本を使うというような事態はそうあり得ないと思いますが、そういうことがかりにあったとしても、入るときに、事前協議の対象になる場合もあると思います。
  159. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 これはやはりどう考えてみましても、戦闘作戦行動というものは、一々例示をあげて、そして国民にはっきりと明快にしておく必要がある。なぜこういうことを私が固執するかと申し上げますと、こういうことが起こって参ります。戦時国際法上から見ますと、戦時に軍事基地として使用される地域、つまり、日本が、アメリカの軍事基地として日本の地域を、日本の国土を提供したといたします。そういたしますと、戦時の国際法上から見ますと、日本は基地を提供したことによって戦闘区域になるわけでございます。軍事基地として使用される日本は、当然相手国から見れば、戦闘区域に入るのでございますから、敵の勢力ということになって、攻撃の対象になります。たとえば、事前協議の対象となるところの戦闘作戦行動でなくても、軍事基地、補給基地としてわが国が利用されるならば、戦時国際法上、わが国もその戦争区域に当然なってくるのでございますから、これは事前協議の対象としなければ非常に困るのでございます。対象として、政府がこれをいやだというような場合が起こっても、すでにもう事が始まっておりましたならば、これは実際にノーと言えないのでございますし、どうしても基地として使われるという場合がノー、イエスにかかわらず、日本の場合は、軍事基地として使用される場合がある。それが自動的に国際法上の戦闘区域に入ってしまう。そういたしましたときには、単に補給をしていった、単に移動していっただけだ、こういうようなことを言ってみましても、敵方から見れば、戦闘区域に入るのでございますから、これは大へんなことでございまして、やはり戦闘作戦行動を日本で起こしたのと同じ結果になる、こういうふうに考えるのでございますが、いかがでございますか。
  160. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 戦時国際法との関係につきましては、条約局長から御答弁いたさせます。
  161. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、基地を貸与している場合に、そこが交戦区域になるかどうかということは、相手方がそこを適法に攻撃することができるかどうか、すなわち、攻撃することも適法になるのではないか、こういう問題点であろうと考えます。ただ、それは戦争する権利と申しますか、戦争が、違法と適法な戦争、すなわち、侵略と被侵略というふうに分かれていなかった時代、昔の、戦争は自由であった時代、従いまして、いかなる国も戦争することが適法にできた時代の考え方であったと考えます。ところが、現在におきましては、国連憲章の体制のもとでは、侵略者と、これを制圧しますところの強制措置、すなわち、違法な戦争、違法な武力の行使と、これを制圧するための適法な武力の行使ということが考えられている次第でございます。従いまして、日本の基地貸与云々の場合も、それ以前に、日本の基地に攻撃に来る前に、すでに侵略が行なわれているということが前提になるわけでございます。従いまして、その前に侵略行為が行なわれ、それに対する自衛権に基づいて、または国連の措置に基づいての措置が行なわれている。従いまして、それが行なわれた以上、もし日本に、日本の基地を貸与したから云々という理由によって攻撃してきても、それはあくまで初めに行なわれました侵略の拡大続行でございまして、決して基地を貸与したことによって行為が適法になるというわけではない、こういうふうに考えております。
  162. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、条約局長は、基地を提供した地域、国というものは、戦闘作戦行動の一翼をになって、戦闘区域に入ったというところ見解は持たないという考えですか。
  163. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 交戦区域に入るとか戦闘区域に入るということは、どういう意味合いかと申しますと、そこでいわゆる武力行使が適法に行なわれるという意味ではないかと考えております。しかし、そういう意味におきましては、決して交戦区域ではございません。すなわち、そこに武力行為が行なわれました場合は、あくまで日本に対する侵略であり、武力攻撃である。それは、その前に行なわれた武力攻撃または侵略の拡大、続行である、このように考えております。
  164. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ちょっと条約局長お答えもわからないのですが、私は、国際法上からいえば、基地を提供した、たとえば、アメリカ日本に、どこどこの基地を、これから出かけていくが、貸せ、提供しろ、そこから補給をする、そこから移動をするという場合に、イエスという返事を日本政府がしたときには、逆に裏返していえば、参戦したのと同じように、国際法上みなされる、私はこういうふうに思うのですが、いかがでございますか。
  165. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 協議でイエスを言ったからといって、その行為で日本が直ちに参戦したということにはならないと思います。
  166. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 敵方から見れば、基地を提供し、補給地としていろいろな便宜を与えておるということになれば、この地球の短縮した時代に、その便宜を与えておる基地をやっつけなければ意味のないことであって、これはイコール敵性に入るということになりませんか、常識上。
  167. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま敵方とおっしゃいましたが、その敵方というのは、いわゆる侵略国のことでないかと考えます。そこで問題は、その侵略国が、日本のそういう行動によって、日本を適法に攻撃していいかどうかという法律上の問題であろうかと考えますが、これはただいま申し上げましたように、決してそれによって敵の攻撃がその面において適法になるということはない。やはり侵略の拡大、続行でやっているにすぎない。すなわち、われわれとしては、あくまでもそれを武力攻撃、侵略と見るわけであります。
  168. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 いざこざの起こった場合、ことに間髪を入れないでボタンを押し合うというような場合には、あちらが侵略で、こちらが侵略でない、いや、あちらが悪くて、こちらがよかったんだという問題は、常に繰り返されることであって、両方ながら正しいとして主張して、両方が間髪を入れずに行動する今日においては、私は、やはり戦闘作戦行動の中に加担した敵性として、日本の軍事基地はみなされる危険があるということは、一つ考えておいてもらわなければならぬと思うわけです。  私の質問に関連して、大貫さんが質問があるようですから……。
  169. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、大貫大八君より関連質疑の申し出があります。これを許します。大貫大八君。
  170. 大貫大八

    大貫委員 今の問題に関連して、確かめておきたいのですが、この交換公文の戦闘作戦行動というのがちょっとわからない。一体戦闘作戦行動というのは、具体的にどの程度のことをいうのですか。これを一つ……。
  171. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 戦闘作戦行動の基地としての使用の典型的なものを申し上げますならば、戦闘任務を与えられた、たとえば航空部隊、あるいは空挺部隊、あるいは上陸作戦部隊、こういうものが発進基地としてこの日本における施設区域を使用する場合、こういう場合をさしていると思います。
  172. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、戦闘作戦行動というのは、もう戦闘状態に入ったことが前提になるのですね。準備行動というのは入らないのですね。
  173. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 準備行動は入りません。戦闘任務を帯びて発進する、こういうことであります。
  174. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、なお確かめておきますが、それでは、一九五八年、一昨年、例の金町、馬祖をめぐって非常に緊張状態に入った。あのときに、在日米軍がたくさん移動しましたね。これは戦闘には入らないが、アメリカはあの危険に対処するというか、相当戦闘の準備をしたことは事実だろうと思う。ああいう場合には、この戦闘作戦行動という中には、大部隊がかりに移動しても、入らないのですね。
  175. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今のような例の場合には入りません。
  176. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、この事前協議というのは、私は全く空文になると思うのです。たとえば、ああいうふうにアメリカがある程度の腹をきめて、戦争の準備のために、日本の大部隊を、たとえば沖縄なり台湾なりに移動する場合でも、事前協議で縛ることはできないのですね。
  177. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 この目的というものをもう少しお考え願えれば、わかると思うのでありますが、日本が戦争に巻き込まれたくないということも一つであります。同時に、極東等におきまして紛争がおさまる、紛争が拡大しないということも、これは目的とするというか、われわれの希望するところであります。でありますから、その両面から考えまして、単なる移動——これは移動によってあるいは事態をおさめようということかもしれません。単なる移動等につきましては、戦闘作戦行動としては認めない方が適当である、こういうふうに私ども考えます。
  178. 大貫大八

    大貫委員 私たちの心配するのは、これは私が心配するばかりじゃなく、国民の多くの人が心配しておるのは、そこなんですね。事前協議というたところで、今私が申し上げたように、たとえば、アメリカが重大な決意をして、日本におる兵隊を一定の、たとえば台湾なり沖縄なりに集結する、移動させる、その場合には、事前協議の対象に入らないでしょう。それを一つ明確にしていただきたい。
  179. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本自体が戦争に巻き込まれないということが目的で、事前協議というものがあるわけであります。米軍の行動が、台湾あるいはその他へ単に移動するというようなことについて、これを制約するという必要はないと思います。そういう点から考えまして、戦闘任務を帯びて出るものについてのみ事前協議の対象とする、こういうことが適当であると考えます。
  180. 大貫大八

    大貫委員 どうも私の質問にピントがまだ合わない。私の言うのは、それじゃ具体的に例を申し上げましょう。つまり、一昨年、一九五八年にあの金門馬祖を通じて、非常な緊張状態に入った。アメリカはある程度の決意をしたはずだ。ああいう場合に、一般的に見て、のんきな顔をしておったのは日本くらいですよ。少なくとも国際的には、米軍の行動というものは注目の的になっておった。ああいう事態において、たとえば、在日米軍が台湾なら台湾に集結するということは、これはもう戦争を前提とするものです。しかし、こういう場合でも、この交換公文によって、事前協議の対象にはならぬのでしょう。縛れないでしょう。そこを確かめておきたい。
  181. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 その通りであります。日本から集結したということでありません。日本からも移動はしましたが、何も日本からだけ集結したわけじゃありません。また、その目的は、極東における事態を収拾しようということであって、そういうことは望ましいことだと思います。
  182. 大貫大八

    大貫委員 おかしなことだと思います。これは大へんなおそるべき条約だと思います。それを国民が憂えています。関連質問ですから、あとでまた……。
  183. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 戦闘作戦行動でないという逃げ道を作って、戦闘作戦行動というものは、ケース・バイ・ケースで、事前協議の対象になるかどうかを政治的にきめる、そして区域外出動を必要とする事態においては、米側から説明があるんだ、こういうような外務省の非常におめでたい見解が書かれております。これは何としても国民納得しないところだと私は思います。この承認をするかしないかの重要ポイントの一つになると思いますので、戦闘作戦行動については一体どうするのか、どういうようなのがケースかというようなことについて、一々の類似例を明記しなければならないということを、私はここで要求いたしまして、二、三日のうちに委員会一つはっきりしていただきたい。日本側の自主的な見解一つ明確にしていただきたい。こういうふうにいたしまして、この戦闘作戦行動の問題はあとにまた譲りたいと思いますが、同時に、考えなければならないのは、いかに事前協議々々々々と申しましても、事前協議というものは、とっさの場合にはノーと言えないものであって、しかも、事前協議というところの美しい、このみえのよい、言葉は飾られておるけれども、実際は事前協議の対象になるものは、できるだけざるのようにこの中から落としていくのだという精神がうかがえるのでございまして、こうした見地から見ましても、事前協議は空文であるということが、私は言えると思います。  そこでもう一つ私はお尋ねいたしたいのは……。(二、三日待つ必要はないよ、答弁々々」と呼ぶ者あり)
  184. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今、何か外務省の発表でもって、作戦行動の点について触れたような発表があるということでありますが、そういう発表を外務省ではいたしておりません。
  185. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 外務省発表の解釈というものが、一九六〇年の一月の二十日になされておりますので、一つ御検討になりまして、お答えをいただきたいと思います。(「内容を言わなければだめだ」「そういうものはないよ」と呼ぶ者あり)さいぜんから言ったじゃないの。あるじゃないの。ないならばないというところ見解を、それではもう一度……。
  186. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申し上げましたように、そういう発表をいたしておりません。
  187. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 見解がないのならば、それではあらためて見解を承りたい。
  188. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 われわれの見解は、先ほど来、防衛庁長官が申し上げている通りでございます。
  189. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 戦闘作戦行動についての見解を、もう一度はっきり答えていただきたい。
  190. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 戦闘作戦行動の基地としての使用の典型的なものとしては、先ほど申し上げましたように、戦闘任務を与えられた航空部隊、あるいは空挺部隊、あるいは上陸作戦部隊等の発進基地として、日本施設及び区域を使用する場合、こういうことを先ほど申し上げたのであります。その通りであります。
  191. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、それは事前協議の対象になるというのでございますから、今おっしゃいましたことは、一つ防衛庁長官、はっきりと文書にして、防衛庁の見解というものを発表して下さい。よろしいね。(「文書にする必要はない」と呼ぶ者あり)文書にして下さい。  それで、私は、もう一つ事前協議について、違った角度からお尋ねをしたいと思うのでございます。まあ軍事的な背景というものも、いろいろ考えてみなければならないと思いますが、専門家の言うところによりますと、広島に落とされた初期の原爆でさえ、その物理的条件は、高度五百メートルでの爆発後、三十秒以内に火の玉は五十メートル前後にふくれ上がり、その温度は、太陽の表面温度に近い六千度になり、しかも、衝撃波いわゆる爆風は、五ないし七マッハの速度で、これは一平方メートル当たり約五トンぐらいの圧力になる、こういわれております。これはわかりやすく言いますと、この原爆条件を実験的に経験しようと思ったら、専門家はこういうふうに言っております。砂利トラックにものすごいスピードでぶっつけられ、ガーンとなったところをアセチレン灯でパッと焼かれたと思えば、まず間違いはないと思います。こういう表現がされておる。岸首相は、憲法解釈上は自衛のためなら核武装も考えられると言って、核武装は政策としてはしない、こう答えておられる。憲法上の解釈はできるかもしれぬけれども、今の内閣は、政策としてはやらないんだ、こういうふうに答えておられますけれども、なかなかこの辺は微妙でございまして、持論をぼつぼつ変える心づもりがあるのではないか、こう考えるわけでございますが、ケース・バイ・ケースで言葉の遊戯のような答弁をしないように、十分注意をしてもらわなければならぬと思います。そして自衛隊は、日本本土における小型核兵器の問題を出しておりますけれども、水爆の標準タイプともなれば、爆発時の温度は十億度にもなる。それが三十秒以内に一万メートルくらいの火の玉に広がって、その温度は原爆の十倍くらいで、約五万から十万度くらいになって、想像もつかないくらいのものだ、こういわれております。このときの爆風は一平方メートル当たり五千トンにも上り、その下にいる人間なんかは、紙よりも薄く、ぺちゃんこになってしまう。そこべ五万から十万度の高熱がかかって、パーツと蒸発して消えてなくなってしまうのだ、こういわれております。このような条件の近代戦では、日本のような国土では、軍事的に言えば、本土で防衛戦争をやったら絶対的に持たないことは明白だと思いますが、岸総理、いかがでございますか。
  192. 岸信介

    岸国務大臣 私は、軍事科学のそうした非常な発達、そうして人類に対して惨害をもたらすような原水爆や核兵器の発達が、今日世界でそれを使うところの戦争をしてはならぬ、何とかしてこれを防止しなければならないということで、今日、国際間の緊張緩和に向かって、話し合いで解決しようという機運を動かしておる大きな原因の一つであると思います。私どもは、すべての場合において、そういう戦争はこの地上から絶対になくしなければならないという観念に立っております。また、われわれが本土の安全と他から侵略を受けないという安全保障をする場合におきまして、いわゆる近代戦と称せられるそういうことが、今後におけるところの侵略の唯一の形式であるというふうに論理を飛躍することは、私は適当でないと思います。われわれとしては、いかなる場合におきましても、この原水爆戦というものは人類のこの地上からはなくさなければいけない、またそのためにわれわれはあらゆる努力をしており、また、そういうものに対抗するような自衛隊を作っておるとか、あるいは安全保障体制を作ろうというわけではございません。従って、そういうことを唯一の侵略の形式として考えるということは、決して国の安全の万全を期するゆえんではない、かように考えます。
  193. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 唯一のとは私は言いませんけれども、こういう場合があったときに、日本本土で防衛したときには、これはもう成り立たぬということを私は言っておるのです。  そこで、また例をかえて、日本本土ヘミサイル攻撃をかけられた場合、これも考えてみる必要があると思う。これは軍事専門家の話、また、いろ、ろな著書などによりますと、北海道、東京、大阪、北九州あたりに一発ずつ落とせば、大体日本の総人口の六〇%以上は全滅する、あとは全部灰にやられるという計算になっておりますが、このような核武装をした中距離または弾道弾兵器が、たとえば仮装敵国としている陣営の方から、日本に最も近いとされておる辺からもし発射されたとしたら、日本へ到着するのにどれくらいの時間がかかるか。防衛庁では大体仮装して御研究になっておると思いますけれども、ミサイルはどのくらいな時間で日本にくるのか、常識として持っておられると思いますが、一応答えていただきたい。
  194. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 発進基地のいかんによって時間は違います。とにかく二、三十分とか、三、四十分の時間でありますが、そういうことが日本に行なわれるというときには、もう世界大戦に私はなっていると思います。これは日本だけの問題じゃありません。でありますので、そういうことに対して対抗しようといたしましても、それは無理であります。世界的にも無理でございます。そういうことがないようにということを、先ほど総理から申されましたように、これは世界の全部の国々が考えておることであろうと思います。そういうものに対して、私どもは、対処するということにつきましては、実際問題として非常にむずかしい問題であると考えます。
  195. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 まあおっしゃいました通りでございまして、ミサイル基地から発射されて、たとえば、ウラジオストックあたりからでございますと十二分四十八秒、それからソビエト本土からアメリカ本土までというようなことになりますと大体二十八分、こういうようなことがいわれております。こういうふうに、日本の早期警報網、すなわち、レーダー網というのは二十四カ所ぐらいあるように聞いておりますけれども、これらが全機能を発揮して、発射されて飛んでくるミサイルを、いざというときにはキャッチすることになると思いますが、そのときには、防衛庁では一体どれくらいのときにこれがキャッチできるのか、お考えを示していただきたい。
  196. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 レーダー・サイトで弾道弾をキャッチするということは、今のところできません。侵入してくる爆撃機等については十分キャッチできます。
  197. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 お答えになりませんけれども、大体着く三十秒前くらいのところまできたときには、レーダー網でつかめるのではないか、こういうようなことがいわれております。こういうように、軍事技術の急速に進歩した今日の近代科学戦においては、ボタンが押されてからでは防衛することは不可能であるということは、先ほどからおっしゃった通りでありますし、もう滅亡であります。こういう問題のときには、考えてみますると、もはややられてしまってから、また、レーダー網に入ってくるころに、武力攻撃を受けたというようなことで、新条約第五条でいうように、武力攻撃を受けてから第六条の規定で、実施に関する交換公文で事前協議をする、こういうようなことをやっておりましては、もう意味がないのでございまして、先制自衛とでもいいますか、侵略と紙一重になるような自衛も、あるいはしなければならぬときがあるのじゃないかという、きわどいようなことが想像されます今日においては、私は、事前協議というような問題はしておる時間がないのじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。近代兵器の前には、もはやこの日本安保条約の中に書かれておりますところ事前協議などというものは、書いてあるだけであって、事前協議をしておる時間もなければ、方法もないというのが実際ではないか、かように思いますが、いかがでございますか。
  198. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本に大陸間弾道弾とか中距離弾道弾、原水爆を撃ち込むということは、私はまずあり得ないと思います。もしそういうものを撃ち込むということになれば、撃ち込んだ国がそういう報復爆撃を受けます。そういうことになりますればこれは世界大戦で、そういうむちゃなこと、日本に対して撃ち込むようなことは、私は予想されないと思います。  そこで、そういう問題に対しましては、それは事前協議のひまがないじゃないかということがありますが、第四条によって、常に日米間におきまして、日本の平和と安全あるいは極東の平和と安全のために協議をしておることになります。日本に武力進撃があるというような様子があるならば、実際に武力攻撃がある前に、そういう様相というものはわかるはずであります。でありますから、事前協議というものも、そういう様相を土台として決定しますから、事前協議というものは、十分にこれは活用されるといいますか、用は足りる、こういうふうに考えております。
  199. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 もはや生じてからの事前協議というのは不可能だ。そうすると、事前協議をする微妙な時点というものはあるわけなんです。従って、この安保条約に関するところ事前協議というものは、実施の場合に、いざという場合には、実はこれは様相が発生してからでないと相談できないことになっておるのでありますから、問題にならないところ事前協議であって、これもまた、近代兵器の前には、事前協議などということをうたっておいても空文ではないか、こういう結論が生まれてきはしないかというところの懸念を持ちますので、私は御忠告を兼ねて、質問をいたしておるわけでございます。
  200. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、受田新吉君より関連質疑の申し出があります。これを許します。受田新吉君。
  201. 受田新吉

    ○受田委員 堤委員質問に対して、防衛庁長官は、極端な究極兵器等の使用の戦争は、全面戦争の場合であって、ちょっと想定できないということを仰せられておるのでございますが、しからば、一体防衛庁長官は、日本の自衛隊というものは、どの程度の外部の武力攻撃に耐え得る能力を持っていると御判断になるのでありますか、御答弁を願いたい。
  202. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは直接侵略あるいは武力攻撃の様相のいかんによってきまることで、あらかじめ、どれだけの大きさならばどれだけにやれると言うことは無理だと思います。そういうことがわかっていれば、第二次大戦などというものはできない。ちゃんともうきまっちゃっておる。そういうことでありますから、どれくらいの大きさに対してどれだけということは、申し上げられないことであります。
  203. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは、自衛隊の最高指揮官として、外部の武力攻撃に対処し得る自衛隊の能力ということも御存じのはずなんだ。そして、今申されたような極度に急迫した事態の武力攻撃、極度に高度の究極兵器を用いるような場合にはお手上げだ、こういう日本の自衛隊であることは、今あなたは、はっきり国民の前に訴えられたわけだ。しかしながら、外部の武力攻撃というものがどういう形で行なわれ、それに対して自衛隊は、どう対処するかというぐらいのことがわからぬ防衛庁長官とするならば、これは全国民納得する防衛庁長官と言えないわけなんだ。自民党の諸君としても、はなはだ不安な長官であることを、みずから露骨に表したことになる。その点、もう一度重ねて御答弁を願わなければならぬと思います。
  204. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 非常な近代兵器、たとえば、原水爆あるいは中距離弾道弾等につきまして、日本がやられる可能性は少ない。やられた場合にはお手上げだということを、私は申し上げているわけではありません。そういうことがないと見ておる。また、そういうことがあるとするならば、これはやはりそれに対する報復力を持っております。日本ではなくて、報復力を持っておりますから、お互いにそういうものを撃ち出す方がやられるから、そういうことはないだろうということを申し上げたのであります。何も、やられたらすぐお手上げだということを申し上げておるわけではありません。  しからば、通常兵器といいますか、そういうものに対してどれだけの能力を持っているかということでありますが、これは、御承知のように、向こうからの侵略といいますか、規模によって、やれる場合もあるし、なかなかむずかしい場合もあるので、それを一がいに、どれだけの様相できたならばやれるかということを、申し上げるのは非常にむずかしい。ただ、様相からいいますならば、空から爆撃機が入ってくる、こういうことが最初でありましょうし、それに対しましては日本の航空部隊が、爆撃機に対しまして日本の空に入れないというだけの備えをしておりますし、海の方につきましては、潜水艦等における交通の遮断あるいは港湾の封鎖、こういうことがされると思います。これにつきましては、掃海あるいは対潜哨戒機によってこれを日本の近海に近づけない、こういう用意、準備を十分にしておりまするし、また、上陸されたという場合には、陸におきまして、これを上陸の間ぎわにおいてささえる力を持っている、こういうことを申し上げる以外に、どれだけの兵力に対してどうこうということは、具体的に申し上げるのは差し控えるといいますか、ちょっとできかねます。
  205. 受田新吉

    ○受田委員 この問題は、私あらためて詳細に、外部の武力攻撃の様相と自衛隊の実力というものについてお伺い申し上げたいと思いますが、もう一つ、今堤さんの質問に対する答弁で問題になることは、非常に緊迫した事態で日米の間の協議体制をどうするか、急迫不正の侵害に対する協議方式としては、正当な委員会を設けて協議するのか、電話一本で総理大臣と向こうの司令官とが協議するのか、そういう協議方式は一体どう考えておられるのか。これもはなはだ、われわれとしては、不明のままでこの条約案が出されておりますので、御答弁を願いたいと思います。
  206. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 協議そのものは、御承知のように、普通の場合においては、委員会等において協議をする場合がございます。むろんそれは、政府を代表して出ているもの、また、その協議の結果は、内閣によって承認を受けなければならぬこと、これまた当然でございます。しかし、今お話しのように、原爆が東京に落っこったというようなときには、それに対処する方法というものは、直接総理等が責任をとって、連絡されることもあるわけであります。そのときの様相に従って、内閣総理大臣が、責任を持ってそれに処されるわけでございます。
  207. 受田新吉

    ○受田委員 その協議方式というものが、ゆうゆうと協議をする余裕がない、非常に緊迫しているというときに、総理大臣はどういう処置をとられるか。たとえば、電話一本で向こうの司令官と、やりましょう、やりましょうとやるのか、どういうことなのか、総理大臣から御答弁願いたい。
  208. 岸信介

    岸国務大臣 本条約四条によって、一般の脅威を与えるようなことに対しましては、常時協議していくことは当然でございます。この六条の場合においての協議につきましては、これは形式というものは別に規定されておりません。その事態に応じてやるわけでありますが、私は、向こうから協議を受けた場合におきましては、閣議に諮ってこれを決定をするということを申し上げておりますが、そういう考えでおります。
  209. 受田新吉

    ○受田委員 閣議に諮るいとまのない場合、閣僚がそろわない場合、そういう事態にはどういう措置をおとりになるのか。
  210. 岸信介

    岸国務大臣 閣議は、これはいつでも、いかなるときにおいても、緊急に開けるというのが内閣の建前でございます。
  211. 受田新吉

    ○受田委員 私がここで一つあなたに御確認願わなくちゃならないことは、閣議を開いてきめるほどであるならば、国会が召集中であるならば国会承認を得てやるという、この原則一本で——総理大臣の命令一つで自衛隊が出動されることのないように自衛隊法第七十六条を改正して、国会承認を得る一本でこの条約に対抗するという態度で、国民の代表機関の国会承認一本でやる、そういう建前をとることはどうかとお尋ねしたいのでございますが、いかがですか。
  212. 岸信介

    岸国務大臣 自衛隊法の出動の場合につきましては、いわゆる日本が武力攻撃を受けた場合でございまして、この場合は協議の問題じゃございません。武力攻撃を受けた場合は、当然五条によって出動するというのは、日米間の協議の問題じゃございません。ただ問題は、日本を基地として使用して、米軍が戦闘作戦行動に出るという場合の協議でございます。この場合におきましては、私が先ほど来申し上げているように、時の政府が、政府の責任において協議に応じ、協議に対する回答をするというのが建前であります。また、それでたくさんである、かように考えております。
  213. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは、今、事前協議の四条に関係する問題、交換公文に関係する問題だけと思っておられるのでありますが、私は、今、外部の武力攻撃に関する五条の共同軍事行動に関する事態に触れて、自衛隊の出動に関するあなたの権限を、国会承認一本にしぼれということを訴えているわけです。その方でお答え願いたい。
  214. 岸信介

    岸国務大臣 今のお話は、自衛隊の出動については、今の自衛隊法では総理大臣が出動を命じたという場合において、その事前に承認を受けるというのと、事後に承認を受けるということになっておるが、常に事前の承認を受けるということに改正しろという御意見だと思います。これは現行の自衛隊法が作られたときにずいぶん論議されたことでございますが、現行法の方が適当である、かように思います。
  215. 受田新吉

    ○受田委員 これは閣議に諮って、自衛隊の出動を命ずるという方式をおとりになるとあなたは今言われた。閣議に諮るというゆとりを持っておられるほどならば、国会開会中であるならば、当然国会の召集が即時できるわけです。閉会中であれば、召集手続法を改正して、在京の国会議員だけでも召集して処置ができる、そういう手続法を改正すればいい。少なくともアメリカでは、大統領は、宣戦をする場合に議会の承認を得るという規定があるのです。日本には、総理の権限で出動をさせるという規定がある。これを、私この際、この安保条約改定にあたって、国会承認を原則とし、例外を認めないという措置をおとりになるということが、国民をして納得させることになると思うのですが、そこを一つ、もう一度御答弁願いたい。     〔発言する者多し〕
  216. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  217. 岸信介

    岸国務大臣 これは、受田君も御承知のように、安保条約の今回の改正ということと、日本が武力攻撃を受けた場合に、自衛隊に対して防衛出動を命ずるという場合とは、現行法と、安保条約が改正されるということにおいて、何ら変化を受ける問題ではございません。ただ、日本自体として自衛隊を持つ、これについては議論があることでございましょうが、われわれは、合憲であるという立場に立って、自衛隊を設けておる。その自衛隊というものは、その主たる目的として、直接または間接の侵略に対して祖国を守る、防衛するという任務を持っておるわけであります。しかるに、日本に対して直接侵略である武力攻撃が行なわれたという場合において事態いかんによって、私は、やはり時の政府に全責任を持たせて、出動の命令を遅滞なく出してその武力攻撃を排除する、同時に、それについての最高の決定は国会承認を求めなければならぬという手続が適当であるし、その場合において、国会がそれを不適当だと認めた場合にはその出動をやめなければならぬ、こういうことで、現行法の方が、事態に即応して処置をとる上からいったら適当である、かような考え方であります。
  218. 受田新吉

    ○受田委員 自衛隊が出動してしまって後に、これを撤退させるということが、現実の問題として困難であるから——この前も、あなたは、政府国会は一本でやれるのだと言っておられた。そういうこともあるから、一ぺん出動してしまったら大へんなことなんだ。だから、国会承認一本でしぼって、総理大臣が、あとから国会の不承認でこれを撤退させるというような、だらしないことをやらないように、国会一本でしぼってやるという、そういう決意をもっておやりになるべきじゃないですか。問題は重大ですよ。
  219. 岸信介

    岸国務大臣 問題は……。     [発言する者多し]
  220. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  221. 岸信介

    岸国務大臣 お答えいたします。問題は、現実に日本の領土が侵略されて武力攻撃を受けているという事態があるのであります。これは私は、寸秒を争うところの問題でありますから、その武力攻撃をとにかく排除するために、自衛隊が出動するということは、現実に必要である。これは必ず国会承認を得るまでの手続をしなければ、その間、向こうの侵略なり武力攻撃を、そのまま、きまるまでは手をあげておらなければならないということこそ、私は自衛隊の本質に反するものだ、かように思います。
  222. 受田新吉

    ○受田委員 これで私はあらためての質問に譲ることにするが、総理、最後に、今あなたが閣議決定ということを言われたけれども、あちらさんとの相談方式は、あなたの最後の腹は、電話ででも向こうの責任者と協議するという——非常に緊迫した事態の際における協議方式は、そういう方式も考えられるのですか、もう一度一つ……。
  223. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、六条のそういう緊迫した問題ということは、日本の基地を使って、駐留米軍が戦闘作戦行動に出動する場合の事前協議であろうと思います。その他の場合におけるいわゆる配備の変更や、重大な事項や、それから装備の問題については、そんな寸秒を争うということは、私はほとんど考えられないと思います。従って今お話しのことは、戦闘作戦行動に出る場合であろうと思います。この場合に、どういう形で向こうから協議をしなければならないという、文書でしなければならぬとか、それから、どういう形でなければならないということのきめはございません。事態に応じて日本政府に対してこれを協議すべく、そうしてそれの協議を受ける、また、それの最後の決定をしなければならないものは、時の政府の首班である総理大臣だと私は思います。そうして総理大臣は、こういう重大な問題を決する場合においては、閣議に諮るということは私は当然である、こう考えておりますから、先ほど答えました通りであります。
  224. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、まだいろいろと質問者が次におられますから、釈然としない問題にはお触れになると思いますが、岸総理以下に、特にこの際御忠告を申し上げて、できたら、これからでもおそくないからやっていただきたいことは、つまりアメリカ側の解釈日本側の解釈と統一をしておかれないと、実際の運用にあたって、間髪を入れないで動かなければならないときやら、行動を起こさなければならないときやら、判断に苦しむときやら、一ぱいあるわけでございますから、お互いの解釈がまちまちでございますると、どうにもこうにもならなくなる場合がある。従って、私は、こういう重要な安保条約の取りきめに関しましては、交換公文に関するところの字句だとか、いろいろなものの解釈だとかにつきましては、日本アメリカとは、かくのごとく統一解釈することに合意したというところの合意議事録というものが、極東範囲につきましても、事前協議につきましても、当然なければ、国会審議でこれだけ混乱しておるのでございますから、国民の頭の中では混乱をいたします。ましてや、アメリカにおけるところ解釈日本におけるところ解釈とがまちまちでございますると、これまた混乱するのでございまして、どうしても私は、大事な問題につきましては、日米の統一解釈に関するところの合意議事録が、条約文に関しましても、または交換公文に関しましても、なければならないと思う。たとえば、例をとって申し上げますると、こういう条約がございます。原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定、これは昭和三十三年六月十六日、ワシントンで署名をしておりますが、それの十二条を見ますと、はっきりと合意議事録というものがついております。第十二条、「この協定の適用上、(a)「合衆国委員会」とは、合衆国原子力委員会をいう。(b)設備及び装置」及び「設備又は装置」とは、器具、機械又は施設をいい、特殊核物質を使用し、又は生産することができる施設(原子兵器を除く。)及びその構成部分を含む。(c)「者」とは、個人、社団、組合、会社、協会、信託、財団、公私の組織団体、政府機関又は公社をいい、この協定の両当事国政府を含まない。」こういうふうにいたしまして、十二条にはずっと合意議事録が載っておるわけでございます。こういうふうに、この協定のようにやはり合意議事録を載せられなければ、あらゆる場合に、とんでもない問題が起こってくると同時に、あらゆる場合に、日本意思を無視されて、力関係においてどうにもならないというような問題が生まれてくると思いますので、これを締結するのならば、私は、事前協議そのものについても合意議事録がなければ成り立たないということを指摘いたしまして、政府はこれにつきましてどうお考えになるか、善処されようとするか、一つお伺いしておきたいと思います。
  225. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど来御質問がありましたいわゆる事前協議の事項について、防衛庁長官外務大臣等よりお答えを申し上げましたことにつきましては、日米間において話をし、解釈上一致しておるところでございます。また、極東の統一解釈につきましても、米国側は十分これを了承いたしておるところでございます。ただ、すべての事項、解釈を、すべて一々条約解釈について合意議事録を作るかどうかという問題につきましては、これはいろいろの従前の外交上の慣例もございますし、また、その必要に応じていくことであることは、当然であると思います。ただ、堤委員のお話しのように、もしもこの条約の運営、適用上について、日米の間において、重要な点について解釈意見が違っておるというようなことが起こっては、それは運用上困るという御議論、これはごもっともであります。従って、そういう点に関しましては、日米の交渉に際しまして十分外務当局は意を用いて交渉をいたしており、両方の見解を一致せしめることに努力しておることは、当然でございます。しかし、なおまた、いろいろな国会の論議等を通じまして、従来解釈上の意見の一致していないような、まだ未定のような問題がございますれば、これを十分アメリカ側と話をして、解釈を一致させることは、これは当然われわれとしてやっていかなければならぬことである。しかし、それが必ず合意議事録というものを作成するかどうかということは、これは外交上のテクニックとして、外務当局におまかせを願いたい、かように思います。
  226. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 御存じの通りアメリカ国会におけるところのこの条約審議は、まだなされておりません。日本が先にこれをやっておるわけでございまして、私は、日本側から、国会承認審議にかけたらこういう問題が出てきた、こういう問題が出てきた、これについてはもう一度アメリカと話し合わなければならない問題があるというような問題が出てきた、また、時が少しずれて、アメリカ国会でこれを審議したら、アメリカの側においても、かくかくしかじかの問題点が出てきた、もう一度照らし合わして話し合おうじゃないかという問題は、当然なされなければならないのでございまして、日本だけが急いで、アメリカ審議の状況も見ないで、今ただひた走りに走っておるという状態の中にも問題がございますので、アメリカ国会審議とにらみ合わせて、そういう問題を一つ勘案していただく。口では、無形のものでは約束はできるけれども、統一解釈の、見解の統一はできるけれども、文書にはできない、こういうことになって参りますると、少しおかしいのでございまして、私は、あくまでも形の上で一つ表わしていただきたいということを、要望いたしておきたいと思います。  それから最後に、沖縄の問題に入りたいと思いますが、この沖縄の問題に関しまして、入ります前にちょっと岸総理大臣にお聞きしたいのは、今度の日米安保条約は軍事同盟ではないということを、たびたび答えておられる、軍事同盟ではないけれども、軍事的な要素を含んだものでなければ、安全保障条約というものは意味がないということも、認めておられるように思いますが、その辺いかがでございましょう。
  227. 岸信介

    岸国務大臣 御意見通りだと思います。
  228. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 安保条約を結ぶにあたって、軍事的な背景というものを無視して、安保条約が結べるということがあり得ないことは、これは常識だと思います。非常に深い関連がございます。そこで私は、アメリカ極東作戦と沖縄というものを、結びつけて考えなければならない問題が起こってくるのではないか。そこで、アメリカ極東作戦の問題につきましては、時間がございませんからあと回しにするといたしまして、行政権返還について沖縄の問題について、政府はやはり、何と申しましても沖縄島民のしあわせのためには、日本に返還されるということが唯一の道だと考えておりますが、将来行政権の返還について、政府はこれを積極的に、どういうふうにして返還を実現させようとお考えになっておるか。もし、今の段階において具体的な、積極的なお考えがございましたならば、一つお知らせをいただきたい。
  229. 岸信介

    岸国務大臣 過去におきましても、たびたび行政権の返還、施政権の返還の問題につきましては、われわれはアメリカ側に国民の要望を訴えて、アメリカ側の考慮を求めております。私が最初にアイゼンハワー大統領と会ったときにおきましても、この点について論じたのでありますが、不幸にして意見が一致することがまだできなかった。アメリカ側の言っていることの一番のなには、要するに、極東の状態が今のような不安な状態である限り、安定するまでは、この状態は変更するわけにいかない、極東の平和と安全を守ることが世界の平和と安全を守るゆえんであり、こういう不安がある限りは、日本にまだ返すわけにいかないというのが、その当時の見解の基礎であります。従って、問題の解決につきましては、やはり、今東西の緊張緩和について、話し合いによるところのいわゆる雪解けの問題がございます。われわれは、大きく国際的に世界の平和を作り上げる上において、こうした緊張をなくしていくことが、これを返させるところの基礎の問題だと思います。しかし、それは相当の時日を要する問題でありますから、私どもは、これに対して、現実にいろいろな問題において、日本政府が実際に沖縄に出て、アメリカ政府協力して沖縄の住民の福祉をはかり、その繁栄をはかるような努力を積み重ねていく、そういう現実を作っていくことが、将来現実に沖縄住民の国民感情にも合致し、その福祉を増進する道でもあるし、また、この返還を受けるべき基礎が、そういうふうなことでだんだん積み上げられていくことが必要である、こういう考えでもって、アメリカの施政権のもとにおいて日本政府の現実に協力していく部面を、だんだんとできるだけ話し合いで拡張していくというふうに努力を積み重ねていきたい、かように思っております。
  230. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 積極的に、早く返還が実現するように努力をしていくということについて、抽象的なお答えがございました。過去においてもたびたびやったということをおっしゃいますけれども日本人並びに島民の今までのばく然とした考えでは、岸内閣並びに歴代の内閣が、そんなに積極的に返還に対して動いてくれたとは解釈しておらないように思う。現に、私が、それではどういうふうに具体的に積極的に動かれたかということを聞かれてみましても、具体的に例のあげようがございません。今、岸総理お答えになりました、今日以後も努力する、しかし、過去においてもやってきたとおっしゃるのならば、今日までの交渉で、何月の何日に、どういうところで、どういう方法において要求したというデータがございましたならば一つこれをお示しいただいて、国民納得のいくように、過去においてどういう努力をなさったか、こういう努力をしたけれども返らなんだのだ、これだけやってもらって、なおかつ返還できなんだのだからという国民納得がいけば、なおさら幸いでございます。けれども、私が今まで承知いたします程度におきましては、納得のいく政府の積極的な具体施策というものは過去において知りませんので、過去においてやったと言われますならば、具体的に何月何日、そして何回ぐらい、どういう方法でやったかということを一つお示しいただきたい。
  231. 岸信介

    岸国務大臣 これは、私の承知しておる限りにおきましても、日本から重光外相が当時参りました場合にも、その問題に触れての日本側の意見を言ってアメリカの考慮を求めております。さっき私があげましたアイゼンハワー大統領と私との共同声明において、はっきりと沖縄の問題についての両者の見解を述べておりますから、私が強くそのことを要望したことはわかっております。また別に、教育の問題に関して日にちは私今明確にいたしておりませんけれども日本側からアメリカ側に、教育の問題について、日本政府の、いわば教育権の一部的な返還というような意味において話をしたこともございます。それからまた直接に、この返還の問題は、全面的にも、一部的にも、まだその時期ではないというアメリカの一貫した主張で、これをさっき言ったような理由で動かすことができないから、現実の問題として、沖縄の住民の福祉と沖縄住民の希望というものを日本政府が支持してアメリカ側にこれを強く主張し、その住民の希望を実現するために、あるいは土地の問題について、沖縄住民の交渉を日本政府としても支持して、アメリカ側にその考慮を求めたこともございます。また、最近においても、西表の開発について日本側から参加しておることも御承知の通りであります。また、沖縄の医療その他の面につきまして、日本政府アメリカ政府協力してアメリカ政府の要請によって日本の医師を派遣するとか、いろいろな点において、われわれが沖縄住民のために協力しておることもその一つの現われであります。ただ、私どもは、今日、理論的に、窮極の目的は、全部返してもらうことにあることは言うを待たないのであります。しかし、それを達するまでの問題におきましても、ただそれを抽象的に繰り返しておるだけでは意味をなさないのでありますから、先ほど申したように、事実を積み重ねて、また、日本政府自体が沖縄の福祉と沖縄住民の希望に沿うような活動を加えていき、そうして、アメリカ政府協力してそういうものを実現していくということが、現実の事態においては沖縄の住民の希望にも即し、また、将来返還を実現する上の近道だ、かような考えのもとに、具体的にこういうことをやっておる次第であります。
  232. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 安保条約を改定するというこの機会に、沖縄を日本に返してもらうことが一番日本にとって有利で、島民のしあわせであるということをお考えにならなかったかどうか。
  233. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 安保条約の交渉は、当然われわれは現行の安保条約を改定する線に沿って交渉を進めたわけであります。沖縄の施政権返還の問題は、日本国民の熱望するところでございます。従って、平素の外交ルートをもってこれを処理すべきは当然のことでございまして、安保条約の交渉の上においてこの問題を取り扱うことはむろんございません。平常の外交ルートによってこれを取り扱うことは当然のことでございます。
  234. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 あまりはっきりしないのでありますが、この際、ともに並行して論じなかったかということを聞いておるわけです。私がなぜこういうことを申し上げるかといいますと、岸総理は、いろいろやったとおっしゃいます。やったとおっしゃいますけれども、どうも半永久的に返らないのじゃないかというようなあきらめが政府にあるのではないかと思います。それはどういうことかと申しますと、今共同声明に総理自身がお触れになりましたが、一九五七年の岸・アイゼンハワー共同声明をずっと読んでいきますと、こういうことが書いてある。「総理大臣は、琉球及び小笠原諸島に対する施政権日本への返還についての日本国民の強い希望を強調した。大統領は、日本がこれらの諸島に対する潜在的主権を有するという合衆国の立場を再確認した。しかしながら、大統領は、脅威と緊張の状態が極東に存在する限り、合衆国はその現在の状態を維持する必要を認めるであろうことを指摘した。大統領は、合衆国がこれらの諸島の住民の福祉を増進し、かつ、その経済的及び文化的向上を促進する政策を継続する旨を述べた。」こう書いてあります。そのあとには、ずっと何もないわけです。(笑声)それで、それはどういうことかといいますと、私が総理大臣なら、今の極東の状態からいって、なるほどそれはわかるけれども、しかし、小笠原、沖縄あたりはこちらに返してもらうのを島民が一番望んでおるのだから、やはりもっと返すということを第一に考えてくれないかといって、もう一ぺんこのあとの文章の中で、共同声明の中で、さらに押したということでもあればいいのですけれども、しまいまで言われっぱなしですよ。そして、言われっばなしにしておいて、今度はどうかというと、御存じの通り小笠原、沖縄に関するところの合意議事録というものがあるわけです。その沖縄に対する合意議事録の中では、これは検討することあったときには協議を行なうということがうたってあるだけで、今度の合意議事録にも何ら討議されなかったと、かつて答えられたと思います。しゃあしゃあと、こういうことがよく答えられると思って私は感心するのですが、例を見ても、私は、あきらめて、具体的な、積極的な努力をする意思が今までなかったと思う。今までなかったものが、今日以後やりますと言っても、国も島民も信用しないということは、やはりここで考えていただかなければならぬと思うのです。どうですか。
  235. 岸信介

    岸国務大臣 共同声明にその最後の結論が載っておるのでございまして、決して、私がただ言いっぱなしにし、向こうが、ただ言いっぱなしにして、聞きっぱなしだという意味ではもちろんございません。大統領とのこの共同声明において、それだけの、具体的に琉球、小笠原の施政権の問題を取り上げてこれを論じ、そして、そのことについて特に共同声明としては相当な程度においてこれを取り上げて、そのことに対する両国の意見の違いを述べておるのでありまして決して、私は、向こうが言うたから、すぐ、そうですがといって引き下がったわけではもちろんないのでございます。  それはそれとして、さっきから私が繰り返して申し上げているように、私は、ただ抽象的にこのなにを返せ、返せというだけの——いかにわれわれが施政権の返還を強く希望しているかということは、アメリカ側においても十分知っております。それを、耳にタコができるほど繰り返しただけで、われわれはこれほど努力しておるのだということでは、実は私は沖縄の住民に対して済まぬと思っているのです。従って、その形はまだ返らなくても、実質的に、日本政府が沖縄の住民の福祉のために実際働いてお世話するというこの現実を示すことが、私は今日の状態においては必要であると思う。先ほど、西表の開発の問題は一つの例として申しました。また、現在、戸籍の手続の問題について両方が話し合っていることも、かつてここで申し上げた通りでございますが、われわれは、とにかく、沖縄の住民の最も困っておる問題、最も強く希望しておる問題、沖縄の住民の繁栄のために、また、福祉のために最も役立つようなことについては、日本政府かやはり発言権を持って、米国政府の施政権のもとにおいても、われわれの力でもってできるだけのことをするということを重ねていくことが——ただ抽象的に返せ、返せといっても、向こうは返さないといってがんばっている、それを意見相違だということで分かれたのでは、私は、住民に対して、日本政府として努めが足りない、こう考えて、今言っているような具体的な措置を講じているわけであります。
  236. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 沖縄島民に対して非常に誠意を持っておるという総理大臣のお言葉はけっこうだと思うのです。けっこうであり、当然そうなければならないと思いますけれども、返還されない限り、いかに言ってもらっても、沖縄島民はしあわせではない。たとえば、例にとって申しますと、去年の伊勢湾台風のときにどうであったか。あれだけの余剰農産物を持った富める国アメリカが、沖縄の人たちを一握りの米もなくて生酒に困らせる、六十八万島民に対して台風の災害対策さえもアメリカは施さなかったという現実を忘れてはならないと思います。私たち国内国民がたまりかねて国会で決議をしたり、一握りの米集め運動をやって、そして食いつなぎをしてきて、やっと二、三日前の報道で、もう主食には困らなくなったという程度まで島民が苦しんでおるということを考えますときに、アメリカの施政権下に置いておくということは、決して沖縄島民のしあわせでないということがよくわかるわけでございます。万難を排して、美辞麗句を並べるよりも、どうすれば沖縄が返ってくるかということの研究がなされなければならない。これは、総理はそう言っておられましたけれども、しかし、何と申しましても、外交政策を進めることによって、話し合いで、私は外交政策の中に、この私たちの施政権の返還を成功させなければならないと思いますが、どうしたら一番早く、一番近道で返還されると思うか、どういう状態の中で一番早く返ってくると思われるか、もう一度総理の御所見を承りたい。
  237. 岸信介

    岸国務大臣 アメリカ側の主張は、アイゼンハワー大統領の御意見に集約されておるように、要するに、極東における緊張と不安が現在のような状態である限りにおいては、アメリカが施政権を持っておることが、この極東の平和を維持する上に必要であり、それが同時に、世界平和の維持に貢献するものだという考えを一貫して強く持っておるわけであります。従って、その根拠をなくするためには、極東における不安と緊張がなくなればいいのでありまして、それは、われわれが国連において平和外交を進めており、この緊張を緩和するような努力を重ねていくことによって、そういう事態を作らなければなりませんけれども、そのためには、今の国際情勢を見てみますると、簡単にそうわれわれの希望するような早い時期に、われわれがいかに努力しましてもすぐ到達するとはなかなか考えられない情勢でございます。従って、ただ単に返せ返せということを交渉するだけでは十分でないのでありまして、私は、実質的に、先ほど来申し上げておるような事態を——形式的には施政権が返っておりませんから、ほんとうの住民のしあわせと、ほんとうの住民の希望には合いませんけれども、しかし実質的に積み重ねていくことによって、沖縄の住民を幸福にさせ、また、将来返ってくる場合においてスムーズにこれが返ってくるような方策を進める上からいって、今言っておるようなやり方、具体的な問題を一つ一つ解決していくということが、私は最も有効な方法である、かように思っております。
  238. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 今、総理大臣もお認めになりましたように、何と申しましても、日本がこの平和外交、それから東西の緊張を和解に持っていくというような積極的な努力をしてその中から沖縄が一返ってくるようにするということが、私は最もとられなければならない政府態度であろうと思います。総理もこれをお認めになりました。しかしながら、この安保条約を改定して、こういう状態になるということは、東、西の緊張を和解、緩和するに役立つかどうか、私は、沖縄返還の問題から考えましても、ソ連、中共に対して異常な刺激を与えている安保改定というものは、沖繩の返還をこい願う国民や島民の意思に反して、緊張をさらに激化させるような外交政策一つではないか、こういうふうに考えるのでございますが、総理、いかがでございますか。
  239. 岸信介

    岸国務大臣 そういう御意見は、この安保条約改定の問題につきまして、根本的に私ども考え方と違っておるわけでございます。今のような議論は、私ども敵視政策をとっておらないにかかわらず、岸内閣敵視政策をとっておるとして、その一つの例として、安保条約の改定問題まで取り上げて私を非難しております。中共やソ連の言い方は、そういう言い方でございます。しかし、私はしばしば申し上げておる通り、私どもは、日本の平和と安全、日本国民の真の福祉というものは、自由を基礎としておる民主政治の完成にあるという立場をとっております。この意味からいって、私どもは、この日本の平和と安全をはかるためにある、現在持っておるところ安保体制というものは必要であり、また、それが日本の繁栄と平和に過去においても貢献してきたということを信じております。これを合理的に改正しようとする今度の改定が、そういうことを激化するというふうには、私はいかなる点から考えても考え得ないのでありまして、むしろ、現在のような規定のある条約の方が、もし中共や、あるいはソ連の立場から見ますると、より危険なものではないか。アメリカ日本に駐留しておる軍隊は、無制限にいかなる活動もできるという状態でございます。それが今度の条約で見ますると、いろいろな点において制約を受けておることであるし、また、われわれから言うたならば、われわれが武力侵略を受けない限り、武力の攻撃を受けない限りにおいては、何らこの条項が実際上動くということはないのでございます。そういう防衛的な性格は、現在ちっとも変わっておらないのであります。むしろ、米軍の行動が制約されるという意味において、ソ連や中共の側から見ると、今よりも弱化されておる、こういう性質のものを、何か非常に敵視政策の現われのごとく攻撃するということは、私は、条約の誤解であるか、曲解であるか、あるいは別に意図があるか知りませんけれども、この条約の真意を正しく理解しているものではない、こう思っております。
  240. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 総理のただいまの御説明は、一応立場としてわかります。そして今の御答弁に対する自信がおありでありますならば、そうした真意のほどを誤解なく了解してもらえるように、この安保条約改定にあたって、中ソに、誤解ならば、誤解でございますから、一つよく話し合って了解してくれ、これ以上私どもはあなた方と仲が悪くなりたくないんだ、従って、どうぞそんなに誤解をしないでくれという、積極的な政府としての手が打たれてもいいのじゃないか、今まできたところ経過を見まして、私は、そういうことをなさる必要がある段階にきておると思う。従って、イデオロギーが違うがゆえににらみ合っておるんだという量見はちっとも持っておらないというのならば、私は、積極的に了解を求めるところの努力を低姿勢でなさっても決して損にはならないと思いますが、そういう努力をなさったことがあるか、また、しょうとなさらないか。沖縄返還の問題に関連して私は言っておるのでありますが、沖縄六十八万の島民のためにも、これは岸さんが頭を下げて、辞を低くなさったってちっとも損にならないと思うのでございまして、おやりになっても、私は、当然外交一つとして、常識的に考えて穏健なあり方としてよいと思うのですが、いかがでございますか。
  241. 岸信介

    岸国務大臣 ソ連に対しましては、御承知のように、ソ連から数回の覚書がきております。これに対して、日本側の真意を伝えた文書を渡しております。その手交する際には、それぞれそこに駐在しているところの大使が直接外務大臣やその他の責任者と会っております。そして、日本側の意思も十分話をしておるのでございます。ただ、中共に対しましては、われわれ政治的な関係を今日持っておりませんので、そういうソ連の場合のような機会を持たないのでありますが、しかし、国会を通じ、その他の場合におきまして、日本安保条約に対して持っているところの真意というものは、私ども、機会あるごとに中外にこれを明らかにいたしております。従って、私は、中共側においても、日本政府の意向というものを、日本政府意思としてこういうふうに表明されておる事柄については、もちろんこれを知っておるし、また、それに対していろいろな強いことを言っておりますけれども、われわれとしては、そういう考えを持たないということを繰り返して言うておる次第でございます。外交関係を持っておるところについては、今言ったように、それに対しても、そのつど、そういうことについては十分に外務当局あるいは外交関係においてこれが説明に当たっておるということは当然でございます。また、その他の国々に対しましても、安保条約の真意につきましては、自由主義国だけではなしに、共産主義国に対しましても、日本のそこに駐在しておるところの大公使を通じて、その政府にそれぞれ話をしていることも当然でございます。
  242. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それじゃ、私はもう一つお聞きしておきますが、日本の施政権下におきまして、沖縄を米国が核武装しておる事実を総理はお認めになりますか。
  243. 岸信介

    岸国務大臣 私は、沖縄が核武装されておるという事実につきましては、何らの報告を受けておりません。
  244. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そういうことをおっしゃっても、言いのがれでございまして、正式な通告を受けておらないかどうか知らないけれどもアメリカが沖縄を極東の軍事作戦の中心として、このアチソン・ラインを守り、そしていろいろな極東に対するところの態勢を整えておることは常識でございます。正式な通告を受けておらぬから私は知りません、そういうことで総理大臣が言いのがれをなさろうと思っても、これは常識として、非常に近いところの、しかも、潜在主権を持つところ日本としては、そういういいかげんなことでは許されないと思うのでございますが、防衛庁長官、どうですか、核武装されておることを御存じですか。
  245. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 沖縄にはミサイル関係としてはナイキ・ハーキュリーズが備えてあります。近くホークを装備することになっております。しかし、核武装しておるかどうかということ、これは正式に通知は受けておりません。
  246. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 まぎれもなく核武装がされておるということは常識でございます。それでは、はっきりとお教えいたしておきます。沖縄について日本は潜在主権を主張しておる。この潜在主権という言葉がこの間も問題になっておりましたが、この潜在主権を主張しておる日本が、岸政府が、政策考える以上、近代兵器から見れば、この四つの島と距離的に何ら変わりのない沖繩にアメリカが核武装やミサイル装備をするというようなことについては、日本は核武装をしないということを建前としておるんだから、日本国内にもひとしいような場所であるところの沖縄に核武装することは、できるだけ遠慮してもらいたいというような主張がなされてもいいと思うのでありますが、このことについては申し入れをなさったことはございませんか。
  247. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 特に申し入れたことはありません。
  248. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 今沖縄は完全に核武装をされておりまして、アメリカが核兵器庫を沖縄に持ったことは、軍事的に見ますと、極東におけるアメリカの軍事的立場は、たとえば、九州に核兵器を持ち込んだのと同じでございます。(「冗談言っちゃいけない」と呼ぶ者あり)冗談言っちゃいけないという言葉がございますけれども、近代兵器の威力というものは、沖縄にあろうと、九州にあろうと、その効力においては同じだということは常識でございます。このような核兵器を仮想敵国の中国の目の先の沖縄に置いて、中国に核武装の口実を与え、危険な状態に置きながら、みずから極東範囲にして、一たん事あらば米国と共同行動をとるというような考えがあるのではないか、こういうふうに考えられるわけでございますが、いかがでございますか。
  249. 岸信介

    岸国務大臣 どういう意味か、私ちょっと理解に苦しむのでありますが、御承知の通り、沖縄にはわれわれはいわゆる潜在主権を持っておりますけれども、現実の施政権は、残念ながら一切アメリカの手にあるわけであります。従って、アメリカの沖縄における行動というものは、アメリカがこれを自由にするわけでありまして、われわれとしては遺憾の点も少なくないのでありますが、究極においては、施政権を返してもらう以外には方法はないと思います。しかし、それに至るまでにおきましても、いろいろな点において沖縄住民の希望に沿うように、そういうふうな努力をすべきことは、先ほど来申し上げておる通りでございます。従来のようにわれわれは進んでいきたい、かように思っております。
  250. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 軍事評論家あたりの分析によりますと、むしろ、岸内閣は、核武装のできない日本の施政権内に沖縄を返してもらうよりは、その圏外に置いておいて、アメリカの力でもって核武装してもらって、いざというときには、アメリカと手を握ってこれを共同で使うことに持っていった方が便利だから、あまり沖縄の返還を言わないのだ、こう言っておる。これはかんぐっておるとおっしゃる方があるかもしれませんけれども、これは当然のことだ。積極的に返してくれとは言わない。返してくれと言わないのには、そういうわけがある。  それで、一つ考えてもらわなければならないのは、核武装をしないと言うならば、沖縄に核武装、ミサイル基地を作って、そうして、非常にあぶないところ極東作戦の心臓部を——沖縄は施政権外ではありますけれども日本が受け持ったのと同じような使命を果たすような立場日本アメリカが追いやっておる、こういうことを考えなければならないのでございます。私は、こういうことを考えますときに、核武装化されておるところの今の沖縄の島民というものは、ひょっとすれば、全島民がみんな「ひめゆりの塔」にならなければならぬような運命を負わされているのじゃないか。早い話が、作戦軍事評論家の書物を見ましても、たとえば、アメリカがボタンを沖縄で押す前には、アメリカ人とアメリカ施設に従事するところアメリカのあらゆる人たちは退避させるのだ、しかし、六十八万の島民は、残念ながらこれを輸送するところの船も何もないから、あきらめてもらわなければならぬというような、極端なところまでいっておるということが書物に書かれておるわけです。私は、こういうことを考えますときに、沖縄島民に対しましては、私たちは、確たる信念を持って返還させなければならないという観念のもとに、しかも、アメリカの核武装をも禁止するというところの確たる態度をもって政府が臨むのでなければ、ほんとうに沖縄島民を守る意味にはならないのじゃないか、こう考えます。この間、竹谷委員でございましたか、大貫委員でしたかの質問に答えて、沖縄がいざこざのさなかに入ってきたら、何をおいても守るのだ、それがあたりまえだ、こうおつしゃいました。当然です。しかし、核武装をしたところの沖縄が、そうしたいざこざの渦中に入りましたときには、もうすでに沖縄島民の運命はきまっておるのでございます。そういう事態になってしまってから、物資を送ってやるとか救援してやるとかいったって、これは、もはやできないことであることは常識が物語っておると思う。ですから、そういう浪花節調的な上手を沖縄島民に言わないで、心から日本の核武装を禁止し、沖縄島民が返還をこいねがっておるなれば、沖縄が返還してもらえるような政策を進めていかなければならぬ。口で言うことと実際やることとは、返還をこいねがう沖縄島民の意思に反しておる、日本国民の意思に反しておるというようなことでは、いかにここで答弁をなさいましても、国民納得しないわけであります。国会を通過させんがために、いろいろな言葉でもってあなたがいかに言いのがれをなさいましても、言葉の上で言いのがれただけであって、実際問題としては、国民は承知しないことは非常にはっきりいたしておりますので、言葉の上で上手をいえば、それで政府の誠意が国民に通ずるのだなどというようなごまかしをなさらないで、私は、実際におやりになることと口でおっしゃることとが統一できるような政策をとっていただきたい。沖縄施政権の返還を実現しようと思うならば、さらに緊張緩和を妨げるような方向をとり、世界の雪解けに反したような日本の行き方をして、共産主義陣営を敵視する政策をなおかつ安保条約によって進めていきますならば、沖縄の返還もさらに困難な問題になってくるのではないかと私は思います。従って、どうかこういう問題に関しましては、岸内閣一つ沖縄島民の立場になられまして、口の先だけでなしに、ほんとうにやっておるという事実が今後も積極的に見られますならば、一つこういうものをやっておるのだ、政府だけでなしに、国会も応援しろ、国民世論を盛り上げろというふうにして推し進めていただきたい。これは、私は沖縄島民の切なる願いであり、日本国民の願いであると思いますので、こういうふうに筋の通らないことをなさったり、言うておることと、していることが矛盾しておるようなあり方はなさらないようにしていただきたいと思うわけでございます。  最後に、私たちの党といたしましては、この安保の問題に対しましていろいろと考えさせられる条項が多うございます。たとえば、常時駐留をいたします米軍を、常時駐留させないような方法であるとか、防衛を、施政権のある日本国土に限るとか、事前協議の場合の拒否権を明記するとか、それから合意議事録を作っておくとか、あるいは期限の問題について、日本意思によって、予告期間を設けて条約の効力を終了させることができるとか、いろいろな問題につきまして私たちもいろいろな考えを持っておるわけでございまして、政府は面子のために、これを通さんがために固執なさることなく、国民世論を聞かれて、できるだけ話し合いによって妥協なさいまして、今非常に不信を買っておりまする安保審議途上において反省されますならば、私は非常にけっこうだと思いますので、できるだけそういう態度をとっていただきたい。  なおかつ申し上げておきたいのは、先ほど申し上げましたように、アメリカ審議は、上院でまだなされておりません。そんなにあわてなくとも、アメリカ審議日本審議が並行しながらいくということでも決しておそくはない。もっと政治的に考えますれば、この六月に行なわれまするところの頂上会談の結果を待って、日本がこの安保の改定に臨むというような方向をとられても、決しておそくはないと考えますので、そういう点を十分考慮に入れていただきたい。  なお、まだ私は他の問題につきまして幾多の質問を持っておりますけれども、きょうはだいぶ時間がたちましたから、これで中途でやめまして、質問時間をあとにいただくことを速記録に残しておきまして、私の質問を本日はこれで終わりたいと思います。
  251. 岸信介

    岸国務大臣 沖縄の問題につきましていろいろ御意見があったのでございますが、私は、先ほど来申し上げておるように、決して口の先でのがれるためにいいかげんなことを言っておるとか、あるいは浪花節調で島民を喜ばしておるというようなことではございません。私は真剣に——従来もそうでありますが、沖縄の問題に関しましてはできるだけの努力を払ってきておるつもりでおります。また、最近の沖縄の住民も、岸政府がこの点について具体的にアメリカ側に対して島民の要望を実現することに努力しておることは、私はある程度島民もよく理解してもらっておるということを確信いたしております。将来、私どもは、先ほど申しましたように、これの全面的な施政権の返還を受けるということは一日も早く実現しなければなりませんが、それには、お話の通り極東の不安と緊張を緩和するような平和外交政策を推進すべきことは当然であります。ただ、この安保条約の改定がそれに反しているような議論が行なわれておるということは、また、もしもそういうふうに堤委員がお考えであるとするならば、これは安保条約改定の論争を正当に御理解いただいておらないのではないかと、非常に遺憾に存じます。われわれは、今の国際情勢から申しまして、お互いが自由主義の立場をとり、あるいは共産主義の立場をとるということはその国がきめておることであって、共産主義をとっているのはけしからぬとかいうことを自由主義の国が言うべきではありません。また逆に、共産主義の方から、自由主義をとっているのはけしからぬ、共産主義になれというようなことは適当でない。お互いがお互いの立場を認識し合って、尊重して、そうして平和共存をするということでなければ、世界の緊張は緩和しないと思います。私は、その意味において、われわれはどういう態度をとるのだ、日本の行く道として自由主義の立場を堅持して、その意味からいって、アメリカと真の協調をとって日本の平和と安全と繁栄をはかる、これは、中共がソ連と同盟条約を結んで、自分の国の平和と安全と繁栄をはかることを考えるのと、立場をかえていえば同じであって、その立場を両方が尊重し合って、しかも、懸案を話上合いによって友好的に解決するのにはどうした道をとるかということをお互いが寛容な気持で考え合わなければ、真に緊張は緩和しない、国家の体制までみな変えなければ、ほんとうの緊張は緩和しないのだ、こう考えるならば、私は、ほとんど永久にこの緊張というものは緩和しないだろうと思う。そういう意味において、われわれが安保条約を改定するということが、国際の情勢に反しているとか、あるいは緊張をこれで強化するというような考え方では全然ないのでございまして、どうかその点については十分御理解をいただきまして、なお、先ほど有事駐留の問題だとか、期限の問題だとか、いろいろな点についての御意見をまとめてお話しになりましたが、そういうことにつきましても、御質問に応じてわれわれの所信を個々具体的に申し述べるつもりであります。私は、真剣にこういう問題についてお互いが国民のためにその信ずるところを明らかにして、そして国民理解を進めていくことが必要である、こう思っておりますから、そういうつもりで審議を進めるつもりでありますし、また、皆様の御質問にもお答えするつもりでおります。
  252. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、竹谷源太郎君より関連質疑の申し出がありますから、これを許します。竹谷源太郎君。
  253. 竹谷源太郎

    竹谷委員 堤委員の小笠原返還問題に関連をして、時間もございませんから、きわめて簡潔にお尋ねいたしまするが、日本国の領土、この日本の国土の中には、小笠原、沖縄等は含まれるやいなや、外務大臣お尋ねをいたします。
  254. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 どういう意味で日本国の国土と言うか、日本が昔から持っていたという意味においての国土というものに入るか入らないかというのですか。どういう点でお話しでありますか、もう一ぺん……。
  255. 竹谷源太郎

    竹谷委員 日本の国土、いわゆる日本国という国の領土、それはどの区域であるかということをお尋ねしているのです。すなわち、小笠原や沖縄、あるいは政府のいう南千島、歯舞、色丹、こういうものが四つの本島以外に入るかどうか、それをまずお尋ねしたいのです。
  256. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 昔から日本の固有のいわゆる国土、領土と申しますか、その中には、沖縄は当然入っておるとわれわれは思っております。
  257. 竹谷源太郎

    竹谷委員 昔からの国土といって、今はそれじゃ沖縄、小笠原は入っておらないのですか、今も入っておるのですか。
  258. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 昔のと言ったのじゃないのです。昔から引き続いてわれわれが持っているという意味で申したのであります。
  259. 竹谷源太郎

    竹谷委員 しからば、この新安保条約の第十条に「この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の」云々とある。この「日本区域における」という「日本区域」、それから第六条の第一項、この政府の提出の文書では第二行目の「アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを詐される。」その次の行に、「前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊地位」云々、これらの「日本国」「日本国における」「日本国において」あるいは「日本区域における」というような言葉方々で使われております。これはいわゆる日本の国土をさすように、普通なら考えられるのであるが、そういうふうにこの新条約解釈理解してよろしいかどうか、それをお尋ねします。
  260. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 六条につきましては、施政下にある地域というふうに解釈されるわけであります。なお、詳細につきましては条約局長から申し上げます。
  261. 竹谷源太郎

    竹谷委員 第十条は……。
  262. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。第十条は「日本区域」という言葉を使いましたわけでございますが、これは日本を含む区域でございます。と申しますのは、「日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする」という場合は、これは日本国だけに限るということは、ちょっとおかしいじゃないかというふうに考えまして、日本を含むこういう区域について一般的に国連が十分な定めをするという場合には云々、こういうふうな考え方から「日本区域」という言葉を使ったわけであります。
  263. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうすると、「日本区域」というのは、日本の周辺区域というのじゃないですか。そうすると、むろん沖縄、小笠原等が入るかどうか。それから第六条の第一項、第一項に「日本国において」「日本国における」という二つの言葉がありますが、これは条約局長外務大臣と同じ見解であるかどうか。
  264. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 この第十条の「日本区域」と申しますのは、日本を含む、日本中心としました周辺地域ももちろん入っておるわけでございます。
  265. 竹谷源太郎

    竹谷委員 沖縄は入りますね。
  266. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 入ります。沖縄とか個々のあれは、どれが入るかと申す問題よりは、むしろ、日本中心にして沖縄その他を含めた地域、一般的にそういう地域において安全が保たれ、安全の措置がなされるということが、第十条の主眼でございます。それから第六条は、これは日本国においての区域を使用許可する——使用許可するということは、そこに行政権、施政権を持たなければならないということは当然でございますので、これはただいま外務大臣から申し上げました通りのことでございます。
  267. 竹谷源太郎

    竹谷委員 日本とか、日本国とか、日本の国土、領土、これは沖縄や小笠原も入った意味の日本国土、領土をさすものであることは、普通の観念上当然であろうと思います。しかるに、第五条には、日本国の施政のもとにおける領域、同じこの条約の中に、はっきりこのように第五条にはうたってある。とこるが、第六条、第十条には、簡単に日本の国土をさすような言葉を用いておるのであって、この文句からすれば、必ずしも日本国の施政下にある領域のみならず、日本の領土は含む、日本の領土権のある沖縄や小笠原もまたこれを含む、こう解釈するのが、文理上これは当然ではないかと思う。沖縄を特にこの第六条の「日本国において」あるいは第十条の「日本区域における」の中から除く理由は、この文章の上からは出てこない。普通の条文であれば、第五条の、日本国の施政のもとにおける領域、カッコして、以下これを日本国というとか、こういうふうに書くのが普通であるのに、そういう明示をしないで、それと違った言葉で第六条以下に規定してあるということは、これは、第六条のアメリカの陸海空軍の区域並び施設の使用については、すべて日本から許されなければならない、すなわち、施政下にあるといなとにかかわらず、日本の領土における基地及び施設の使用は、すべて日本国の許可が必要だ、このように考えるべきだと思う。それを、第六条の「日本国」は、日本国の施政下にある領域と同じだという理由は、こうも存在しない。その第五条において、「日本国の施政の下にある領域」と、特にこのような制限をされた言葉を使い、第六条及び第十条には制限をしておらない。これは普通の解釈からいえば、沖縄においてアメリカ軍が軍事基地を持つ、あるいは施設をする、これには、一々日本政府の許可が要る、そのことは、本州、北海道、四国、九州と同様でなければならない、そう考えられるのであるが、これは違うんだという解釈がどうして出てきますか、もう一ぺんお尋ねをしたい。
  268. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの点でございますが、この条約のみならず、いろいろな条約におきまして、日本国、米国、何々国、いろいろな「国」という名前を使っております。その「国」という場合には、地理的、地域的な範囲考えて「国」という場合もございますし、法人格的に考えまして、日本とかアメリカというふうに、全然地域を考慮に入れずにいう場合もある。おのおの条文々々によって、文脈上よりこれは当然了解できることであろうと私は考えております。  そこで第六条の問題でございますが、これは日本国において施設及び区域を使用することを許す、許すということは、施政権があるからこそ、施政権を持っているからこそ、許すということが行なわれるのでありまして、沖縄にはそのような施政権をわれわれは行使していない。従いまして、その使用の許可云々ということは全然起こり得ませんから、これはそのような限定をしなくとも、当然文脈しからそのように解釈されると私は考えておる次第でございます。  それから第五条の場合でございますが、これは武力攻撃がなされた場合でございます。従いまして、どこに武力攻撃が行なわれるかという、その武力攻撃の行なわれる、区域をはっきりさせておく必要がありますので、「日本国の施政の下にある領域における」というふうに、はっきりここで特に明定したのであります。
  269. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私が申し上げるのは、法人格のある日本国というような意味ではなくて、すべてある区域をさした場合の言葉だけをここで今例出したのです。ある問題の主体となっておる国という法人のことを問題にしておるのではなくて、すべて区域に関することについて今私は例を上げたのである。ところで、施政が行なわれていないから、そういうところには特に軍事基地の問題等については許可権もない、こうおっしゃる。施政権は立法、司法、行政の広範なる統治権だ、こういうお話でございましたが、軍事基地の設定、あるいは施設というものは、一般の施政権とはまた取り立てて別個に国際政治上扱わるべき問題であって、必ずしも施政権があるからといって、その点まで許されたときめつけてしまう必要はないと思う。  そこで、私は、今これは文理上の議論をしておるわけでございますが、なぜこの第六条、第十条等が第五条と違った言葉を用いて、しかも、同じ意味を表わすのか、第十条は違うかもしれぬが、第六条に、「日本国において」とある。片方は「日本国の施政の下にある領域における、」このようにはっきり違った言葉をわざわざ用いたのは意味がわからない。解釈上当然そうなるというようなことでははなはだ不明確で、どうも、こういう点でアメリカからただ文章を押しつけられてのんでしまった、そういう感じが非常に深い。日本国日本国内において軍事基地や施設を認めるかいなかということは非常に重大な問題で、武力攻撃を受ける地域ほどではないにいたしましても、国家としては非常に重大な問題なんです。今、沖縄が問題になっておるのは、早期に返還をせられ、日本の施政下に入り、日本の許可がなければアメリカは勝手に軍事基地も設けられない、施設もできない、海外出動もできない、このようになれば沖縄島民がいかに幸福になるか、今一億の全国民が憂えておる沖縄の人たちのすべての悩みが解決される、そのように、なぜこれを解釈できないのですか。これは特に何も公的解釈や議事録はないと思う。そういう解釈をとり得るならば、ここで今の沖縄の問題は立ちどころに解決する。日本の許可がなければ、軍事培地は設けられない。全島軍事基地化などはこれを防ぐことができる。そうしてまた、先般の質問で私が憂えたような、アメリカが沖縄を基地にして戦争をおっ始めて、日本を無理やりに引き入れよう、こういうときに、突然領土主権が日本にあるのだといって施政権を返還してきて、そして日本を戦争に巻き込んでしまうというような問題が起きないで、今から妥当に解決できる、そう解釈できるのではないか、もう一ぺんお尋ねしたい。これは総理大臣お尋ねしたい。
  270. 岸信介

    岸国務大臣 基地を許可するということは、言うまでもなく、施政権を持っておる地域でなければできないのであります。沖縄は残念ながら施政権を持っておらないのでございますから、沖縄における基地を、日本国と書いたというだけでもって許可が要るのだという解釈は、これは私は成り立たないと思います。われわれの考えておりますことは、日本日本の国としてアメリカに基地を許可する、それは日本の施政下にある地域に限ってできることでございますから、そういう解釈をすべきものである。先ほど来外務大臣及び条約局長お答えを申し上げました通り解釈すべきものだと思っております。
  271. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私は、そのような解釈には承服できないのでありますが、時間も過ぎましたので、きょうはこれで……。     —————————————
  272. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、戸叶里子君より資料の要求について発言を求められておりますから、これを許します。戸叶里子君。
  273. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、資料を要求したいと思います。  その一つは、米韓、米台条約に基づく行政協定、これは、たしか松本委員からも言われていると思うのですが、これがまだきておりませんから、これをぜひお願いしたいと思います。もしかしたならば、そういうものはないとおっしゃるかもしれませんけれども、駐留米軍の地位に関して何か取りきめたものがあるはずだと思います。そういうようなものをいただきたい。  それから第一は、スエズ問題に関係しまして国連軍を出したはずでございますが、国連軍と、それからエジプトとの間のこれに関しての協定。  さらに、国連におきまして今日までに拒否権が行使されました回数、拒否権を行使した国、それから事件の内容、拒否の理由。  それから第四番目は、安保理事会において、拒否権によらず否決された回数、賛否、棄権、欠席した国、事件の内容。これは非常に関係があることでございますので、ぜひ資料として出していただきたいと思います。
  274. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの米韓、米台でございますが、これは地位をきめた協定その他全然まだございません。まだ交渉中だという話でございます。それから、最後の点の安保理事会の否決の回数でございますが、これは拒否権に関連した否決の回数と考えてよろしゅうございますか。
  275. 戸叶里子

    戸叶委員 それから、今の最初の米韓、米台条約に基づく行政協定といいますか、駐留米軍の地位関係するようなものは何もきめてないとおっしゃいますけれども、これはすでに一九五四年、一九五三年に締結された条約でございますので、何らか取りきめが私はあると思うのですけれども、その点ももう一度お調べになっていただきたいと思います。ないはずはないと思います。
  276. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 私も、何かそういうものがあるはずだと思いまして、非常に調査いたしておるわけでございますけれども、ただいまのところ、そういう公表されたものは全然ございません。いろいろ気をつけてみますと、まだそういう点については非常に前から交渉中であるという話でございます。
  277. 戸叶里子

    戸叶委員 それをよく調べていただきたいと思います。
  278. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次会は明十四日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十八分散会