○戸
叶委員 それでは、私は、少しMSA
協定と
安保条約の
関係をここで述べてみたいと思うのです。一九五一年に
現行の
安保条約が
締結されております。それから一九五四年の三月に
日米相互防衛援助
協定、すなわちMSA
協定が
締結されております。その当時、このMSA
協定を結ぶか結ばないかで、ずいぶん
国会においては
議論されました。私も一年半くらいこの
条約と取っ組んだことを覚えております。その当時、なぜMSA
協定を受けるか受けないかということを討議したかというと、これが軍事的な
義務を負うのじゃないか、こういうことをたびたび問題にしたわけです。つまり、
相互安全保障法五百十一条の援助を受ける資格という中で、a項にこういうことが書いてあります。一、国際間の理解と親善の増進及び世界平和の維持に協同すること、二、国際間の緊迫の原因を除去するために
相互に合意せらるべき行動をとること、三、合衆国が締約国である多数国間または二国間の
協定または
条約に基づいて自国が受諾した軍事的
義務を履行すること。この「自国が受諾した軍事的
義務を履行すること」ということが非常に問題になりました。そこで
日本は、
日本と
アメリカとの間で結んだMSA
協定の八条におきまして、「
日本国と
アメリカ合衆国との間の
安全保障条約に基いて負っている軍事的
義務を履行することの決意を再確認する」ということになって、つまり、
日本と
アメリカ合衆国とが
安保条約において負っている軍事的
義務以上のものは負わなくてもいいのだというふうなことをこの八条でうたったわけです。このMSA
協定が結ばれます一年ほど前に、
アメリカの大使館あてに
日本の外務省が、MSA
協定を受け入れるためにはどういうふうな態度であったらいいかという注意を問い合わせて、そしてその答えがきました。その手紙の中で、問題は二つあるわけでございます。その手紙の一に、こういうことを
日本で
質問しております。「MSA計画による
アメリカの対外援助の基本的目的は、自由世界の安全を維持し、かつ増進することにあると思うが、
日本政府としては、この援助によって国内の治安と
防衛とを確保することができれば、右の基本目的は十分達成されたものと了解してよいかどうか。」という
質問をしたんです。それに対する一の答えとして、「
日本が受けることになる援助は、
日本が国内の治安を維持し、また平和
条約第五条(C)項で保証されている自発的な個別的または集団的自衛の固有の権利を一層有効に行使するようにするもので、これによってMSA計画の主要目的を達成しようとするものである。」こういうふうに答えをしてきまして、そして、ここですでに
日本の集団的自衛の観念をMSAで一応思い出させているわけです。そこで、その次の問題といたしまして、第三番目に「MSA第五一一条(A)が適用される場合、そこに規定している「軍事的
義務」は、
日本の場合は
日米安全保障条約によって
日本がすでに引き受けている
義務を履行すれば十分だと了解するがどうか。また同条(a)の(4)の「自国の
防衛力を増進し、かつ、維持すること」という要件は、
日本の場合は、国内の一般的経済条件が許す限度内で、また政治的および経済的安全を害することなく、これを実現すれば十分であるとみてよいか。」こういうふうに
質問をいたしました。そうしたところが、この
質問に対しての
答弁というものが、「軍事的
義務の履行の要件は、
日本の場合においては、
日米安全保障条約の下にすでに引きうけている
義務を履行すれば十分である。」つまり、この
義務というのは、
日本が
アメリカに
基地を貸与する
——ほかの国に貸してはいけないということですが、それで十分である。「またMSA計画も、
日米間のいかなる
条約も、自衛のため以外に
日本の治安維持の部隊を使用することを要求していない。自国の
防衛力を増進し、」云々とあるわけで、わざわざここに「自衛のため以外に
日本の治安維持の部隊を使用することを要求していない。」という
答弁がきているわけです。このことは、すなわち、自衛のためならば、治安を維持する部隊を使用することを要求するということになるわけで、新しくここでもって
日本に対して
義務を与えられたのだということで、大へん当時の
国会においては問題になりました。自衛のために治安維持の部隊を使うのだ、こういうことをはっきり言ってきておるわけです。それまでも、
日本の解釈として、
日本には
自衛力があるのだということを言っておるわけです。ですから、よけいなことを言わなくてもいいにもかかわらず、聞きもしないのに、
アメリカがわざわざ、自衛のため以外には、治安維持の部隊を使用することを要求するものではない、自衛のためなら要求するのだということを、はっきりここで
義務づけてきているわけです。このときに、もうすでに今日の五条の問題を
アメリカが要求しているということが私は言えると思うのです。問題はそこにあるわけでございまして、この
現行安保条約の
審議までは、こういう問題は起こってこなかったわけです。ところがMSA
協定になって、
日本がこの援助を受ける条件として問い合わせた、そうしたところが、こういう返事でした。これはMSA
協定の中で、
日本にはっきりと、自衛のために治安維持部隊を用いよということを
義務づけてきているのであって、
アメリカの
日本にいる
軍隊との間で、一緒に
自衛権の行使を要求してきているという、その観念をここに規定づけているものでございます。こういうふうなことを、このときに言ってきておるのでございまして、この五条においては、集団的自衛によって
日本が
武力攻撃に対処するものではないと言っているけれ
ども、もうすでにこのときからそういうことを
アメリカが要求してきているわけで、今そうおっしゃるのは少し間違いではないか、こういうふうに私は
考えますが、この点はいかがお
考えになりますか。