運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-04-11 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月十一日(月曜日)     午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    池田正之輔君       鍛冶 良作君    鴨田 宗一君       賀屋 興宣君    田中 榮一君       田中 正巳君    床次 徳二君       野田 武夫君    服部 安司君       福家 俊一君    古井 喜實君       保科善四郎君    毛利 松平君       山下 春江君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    岡田 春夫君       黒田 寿男君    戸叶 里子君       成田 知巳君    穗積 七郎君       松浦 定義君    森島 守人君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法 制 局 長 林  修三君         防衛政務次官  小幡 治和君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者        専  門  員  佐藤 敏人君     ――――――――――――― 四月十一日  委員中井徳次郎君辞任につき、その補欠として  松浦定義君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 四月八日  日米安全保障条約改定反対に関する陳情書  (第五六九号)  同  (第五  七〇号)  同(第六二六号)  同  (第六三八号)  同  (第六八〇号)  同(第六八一号)  日米安全保障条約改定促進に関する陳情書  (第五八二  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ――――◇―――――
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたし、前会に引き続き質疑を行ないます。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 安保条約というのは、日本の将来にとりまして非常に重大な影響を与えるものであります。この国会に議席を持つ議員は、与党であると野党であるとを問わず、ほんとうに真剣にこの条約と取っ組んで、私たちの子孫に悔いを残すことがあってはならないと思います。私たち社会党議員は、精魂を傾けてこの審議に当たっております。従って、政府も、答弁はもうなれたんだ、何とかその場をつくろって切り抜けようというような在来の態度はなくして、悩みは率直に訴え、問題点はおおい隠すことなく、何が日本にとってほんとうに大切であるかという考えのもとに答弁をしていただきたいと思いますが、まず、首相の御決意のほどを承りたいと存じます。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 十分審議を尽くすということを従来申し上げておりますし、御質問に対しましては真剣にお答え申し上げます。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 第一に伺いたいことはアメリカ国会における日米安全保障条約審議状態は、一体どうなっているのでしょうか。アメリカ国会審議に並行して日本審議も行なうべきではないでしょうか。両方の間の解釈を統一する意味におきましても、一応アメリカ側審議状態を見守る必要があると私は思うのでございます。日本の国だけが独走して審議して承認する必要はないと私は思うのでございます。この点はいかがでございましょうか。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先般アメリカ国会に対する批准を要請しておるようでございますけれどもアメリカ国会審議状況というものは、われわれ了承いたすわけには参らないのでございまして、われわれはわれわれとして、独自の立場審議を続けていくのが適当だと考えております。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、日本国会審議をやめろというのじゃないのです。日本国会だけ急いでしてみたところで、アメリカ国会審議状態も見ないならば、たとえば、先ごろから問題になっておりますところの極東の問題にいたしましても、あるいは事前協議の問題にいたしましても、バンデンバーグ決議の問題にいたしましても、一体アメリカがどういうふうな考えを持っているかというようなことが、並行してやっていけば、初めて条約内容というものもはっきりしてくる、こう考えるのでございまして、期限も、いつまでにしなければならないと限られているものではないのにもかかわらず、日本だけが独走する必要はない、こう思うのでございますが、この点はいかがでございましょうか。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 アメリカにはアメリカ事情がございまして、本年度はおそらく大統領の選挙もございますから、相当審議を急いでおるものとわれわれは考えております。しかし、アメリカの上院におきますこの審議がどういうふうに進行するかということについて、われわれつまびらかにはいたしておりません。日本としては、十分政府誠心誠意答弁を申し上こげておるので、審議を進めていただくことが適当だと思います。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私がこう申しますのは、たとえば、極東の問題一つ取り上げてみつましても、アメリカ考え方と大体一致するものである、おおむね同じである、こういうふうな言葉をもって言っているわけでございまして、どの程度まで一体同じ考えを持っているのかというようなことがつまびらかにされておらないわけでございます。従って、日本だけがこういうふうに解釈するんだとしてみましても、アメリカの方でそれをどう考えるかわからない、こういう点を考えましたときに、日本だけが独走する必要はないじゃないか、こういうことをいうわけでございます。  そこで、先ごろの四月五日の毎日新聞の、再び新安保についての全国世論調査で、次の諸点が明らかにされております。新安保条約国会にかかっているのは、国民の大多数、七八・二%が知っている。前は七一・二%でした。しかし、新安保条約調印に伴う在日米軍地位基地などに関する新協定ができたことについては、その半数近く、四四・六%が知っていない。よく知っているのは、わずかに一一・七%にすぎない。新条約のかなめともいうべき在日米軍の出動に関する事前協議の問題については、四割以上もが、四一%ですが、日本側拒否権の明記を主張している。拒否権を明記しなくても、日米相互信頼に期待してよいという人は、たった一五・一%にすぎない。安保審議が難航した場合は、解散して民意に問うべきでないかという意見が強く、それが四〇・三%。自民党の単独審議でもよいとする意見は、七・二%にすぎないので、一割にも満ちておりません。さらに他に、会期を延ばしてでも与野党で審議すべきだという意見が、二四%あるわけです。全体として、新条約国会承認については、無条件の賛成が一五・八%、反対が二七・九%、しぶしぶながら承認はやむを得ないというのが一八・八%、わからないというのが、依然として三・四%の多きを数えているわけです。このようなアンケートの結果が出ているわけで、最初の間は、安保条約国会にかかる少し前くらいの間は、政府のPRが非常に行き届いておりましたけれども、そしてあまり関心のなかった人たちもおりましたけれども、最近では、国会答弁などであいまいな点がだいぶ指摘されてきまして、国民もようやく自分たちの問題として考えるようになって参りました。これは将来に非常に多くの問題を残すものだといって研究をする人たちも非常に多くなり、そういうふうな機運が非常に盛り上がってきております。こういうふうなわからない人たちに、もっとはっきりとわからせて、自分たちの力で判断をさせる、そういう意味からも、無理やりに急いでこの国会を通さなければならないというような意図が私はわからないのでございます。私は、先ごろ新安保条約中間報告が行なわれましたときにも、十一月の十日に、なぜそういう緊急性があるのかということを質問いたしましたけれども、それに対しての具体的な答弁というものはいただいておりません。一体、ここでどうしても急いでこれを通さなければならないというような何かの緊迫感なり、あるいは、国民を何かから守らなければならないとか、日本独立を脅かすのじゃないかというような不安感とか、こういうものが、今新安保批准しなければならないということと関連して、今日あるのかどうか、この点を岸首相にお伺いしたいと思います。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 現在も御承知の通り安保条約というものはありまして、これによって、日米協力のもとに日本の安全が保障されておるわけであります。従って、いわゆる安全保障条約体制を初めて作るか作らないかという問題でありますと、緊急性とか、あるいは、何か一つ国際情勢からそういう安保体制を作る必要があるかどうかということが論ぜられなければならぬことは、言うを待たないのでありますが、今回の安保条約は、この現在あります安保条約が成立の最初から、国民の間に論議され、国会におきましても議論されておるところの不合理性を改める、これを数年にわたって日米の間において交渉し、日本の要求を通してこれを合理的な基礎の上に改定しよう、こういうことでございますから、何か国際的の非常な変化があってこれを改定しなければならぬという意味ではなしに、むしろ、われわれが現在持っておる——日米協力して日本の安全と平和を守る、そして過去十年近くそれによって日本の平和と安全が守られてきた、しかしながら、それも非常な不合理な点があり、国民として、自主的な独立国とし、また、日本の国運がこういうふうに開けてき、国際的な地位が高まってきた以上は、ぜひ対等な地位において考えなければならない、日米協力関係というものを合理的な基礎の上に置こう、こういうことでございますから、今お話のように、何か緊迫した外部的の状況がある、こういうふうに考えるべきものではない、こう思います。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 合理的な基礎の上に日米関係を置こうというふうなことをおっしゃいましたけれども、今度の新安保条約内容を見れば、バンデンバーグ決議によるところの、自衛力増強していくということを約束し、また、アメリカ共同防衛をするという形でこの話を進めているわけでございまして、こういう点から見ましたならば、日米関係を合理的に置くという以上に、さらに日米関係を軍事的な面で非常に強化する、こういうふうにしか、だれが見ても、考えられないわけでございます。それを岸首相がまげて合理的な面に置こうとすると言われる意図が、私にはどうしてもわからないわけでございますけれども、今私が申し上げましたように、合理的な関係に置くということは、日本アメリカとの軍事的な面をさらに強化して、共同防衛体制を強くするのだ、こういうふうに了解してもよろしゅうございましょうか。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 共同防衛体制を強めるというよりも、従来、安保条約のもとにおいて、基地日本側に提供しております。今度の安保条約におきましても、やはり基地を提供するわけでありますが、これに対して、現行安保条約では、アメリカの駐留する軍隊が、日本に対して武力攻撃が他から加えられた場合において、必ず日本の領土、日本の国を防衛しなければならないという義務は明らかになっておりません。今回の五条においてその点が明瞭にされたということは、そういう意味において、日本の安全が、他から武力攻撃を受け、侵略をされるという場合における、そういうことのないようにする一つの大きな力が加わったということは言えましょう。しかしながら、同時に、半面において、それでは、何か日本のそういう防衛義務が従来よりも加わったかというと、この五条に、はっきりと、施政下にある領域武力攻撃された場合において、日本がこれに対して行動をとるということでありますから、本来の自衛権の本質から申しまして、ちっとも現在と変わっておらないのでありまして、こういう意味において、何か軍事的な日米協力によって加わったというふうなお考えでありますが、加わったとするならば、日本が他から武力攻撃を受けた場合において、従来は、米軍は必ず日本防衛するという義務が明らかになっておりませんでしたけれども日本基地を与える以上は、アメリカがそういう場合においては日本自衛隊とともに、日本に対する侵略を排除する、こういうことがはっきりとなったということは、これは明瞭であります。  それから、バンデンバーグ決議を取り入れました三条によるところのこの条約日本自衛力増強義務につきましては、私どもが従来申しております、国力、国情において自主的にこれを漸増するという基本方針に対して、自衛隊増強についての義務を実質的に付加するというものは何らないのでありまして、この点は、今回の条約によって日本が将来において非常に大きな防衛費を分担しなければならない、国民がそういう苦しみに立つのだという事実は絶対にないのであります。この点をあわせて申し上げておきます。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 日本が実際において義務を持つものではないというようなことは、あとから私はその条項を指摘しながら質問して参りたいと思います。ただ、今岸首相がおっしゃいましたが、今までは、日本にいるアメリカ軍隊というものは、日本を守る義務がなかったのだ、現行条約では、なるほどその通りでございます。私どもは、その根本的な考え方はもちろん違っておりますけれども、この問題に関する限り、今までの保守党内閣考え方は、ともかくアメリカとはどこまでも強いかたいきずなをつないでいきたい、こういうふうな考え方に立っているわけでございまして、アメリカほんとう日本のことをよく考えてくれる友好国だ、こういうふうな立場に立っておられるわけでございますが、そのアメリカ軍隊日本にいる間に、現行安保条約のもとで、もしも万一どこかからの攻撃があったときに、それではアメリカはさっさと手を上げて逃げていってしまう、そういうような国だから、まあここではっきりと、防衛してもらおうということをうたったのだ、こういうおつもりでございますか。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 現行条約におきましても、こういう安保条約というものは、日米の真の理解と信頼の上に立った協力の上にしか成り立たないものでございます。今お話のように、そういう場合において、さっさと手を上げて帰っていく、防衛はしないということを申して——私は、現行条約がそういうことを意味しておるとは思いません。また、すべての安保条約から生ずるところの諸問題について、日米の間には、従来といえども話を十分にしておったわけであります。ただ、問題は、そういうことが条約なり条約付属文書において明らかになっているかいないかということで、国民として安心感を持ち、また外部的に持って日本防衛体制というものの意義がきまるわけでありまして、実質的に、そういう場合に千を上げて帰る、今度は必ずなにだということではございませんで、条約にそういうことが明瞭にされること自体が、こういう、いわゆる日米が対等で、そうして白米の相互信頼相互協力関係というものが条約上明瞭にされることが、合理的基礎においてわれわれが改正しようという趣旨にほかならないのであります。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の問題でもいろいろまだございますけれども、この問題は、おそらく、あとからこまかい問題を取り上げて岸首相の御意見を伺った方がいいと思いますので、私は先に進みますが、駐英大使をしておられた西さんでさえも、こういう意見でございます。「やりかけた交渉を中止するのは国際信義に反する、と説く人が多いが、国の安全はそれ以上に重大であり、また日本立場を率直に披瀝して米国の了解を得ることも、その気になりさえすれば決して困難ではあるまい」こういうこと言っておられるわけでございます。  そこで、防衛庁長官に伺いたいのは、今岸首相がおっしゃいましたように、日本の国を、はっきりと、アメリカ軍隊に守ってもらうんだ、こういうことを書く——日本義務のことはいずれまたあとから私が質疑いたしますけれども、そういうふうに書かなければならないような客観的情勢日本の周囲にあると、防衛関係の担当をされておられる大臣から見て、一体お考えになるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  16. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほど総理から御答弁申し上げましたように、緊急性があるから安保条約改正するといいますか、新安保でいくということよりも、前にあった安保条約に対しまして、不合理な点をこの際是正していく、こういう方針で今審議をお願いしているわけであります。従って、防衛関係から見ましても、今日本自衛力で足らない分を、アメリカによって守ってもらわなければならないという緊急性は感じておりません。条約目的から見まして、とにかく日本の平和と安全を守っていく、再々申し上げておりまするように、抑制力としての考え方を私ども強く持っているわけでございます。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今お二人の御意見を伺っておりましても、何が何でもこの国会批准しなければならないというような緊急性を含んでいる内容を持った条約ではないということを、私初めて、聞いておられる方々は皆さんお感じになったと思うのでございます。(「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)そうだと思うのです。  私は先に進みますけれども、だいぶ前だったと思いますが、たしか日本国連に加盟したときに、この委員会で、岸首相からも、藤山外相からも、日本の今後の外交方針というものを伺ったことを今思い出しております。それは、たしか、アジア一員として、国連中心外交、さらに、東西両陣営のかけ橋となるのだ、これを日本外交の基調とするのだ、こういうことを言っておられましたが、今もってこの方針に変わりがないか、この点を伺いたいと思います。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私、国連に加盟したときに外務大臣をしておりませんでしたから、その当時そう申し上げたわけではございませんが、しかし、私は、就任以来、日本アジア一員として、アジア人の気持なり、あるいはアジア人の経済的な諸般の事情なりというものを西欧側人たちよりもよく知っておる、そういう意味において、われわれは、やはりアジア人の気持なり経済状態なり、そういうものをよく説明するという役割は持っている、それを、かけ橋というような言葉で表現すれば表現し得るのでありましょうけれども、そういう意味において、われわれとしては十分貢献し得る立場を持っているということは、再々申し上げておるところでございます。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今私が指摘いたしましたような外交方針というものは、ずっと今後においても持ち続ける、こういうふうなことを今おっしゃったわけでございます。そうであるとするならば、政府が大へんに急いでおられるところのこの新安保条約批准したあと外交方針というものも、これで変わりがないのだ、こういうふうにお考えになるのでしょうか、この点を伺いたいと思います。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 総理防衛庁長官から御説明申し上げておりますように、現行安保条約は、われわれは、合理的に、あるいは日本自主的立場から、長年にわたって改正を要望して、そうしてこの改正条約ができたわけであります。従いまして、これが何か変化した事態に対応し、あるいは新しい事態を生んでいくというものではございませんので、従って、この条約批准、実行されましても、同じような従来の外交考え方というものは変わっておらないのでございます。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 実際問題といたしまして最も大事な点であるところの、東西かけ橋になるということが、今後、安保条約を、しかも十年もの長い期間を持った安保条約国会批准するということによって、そういうことができるかどうか、これを私は非常に心配するものでございます。おそらく、東西かけ橋となるというからには、日本が率先して、アメリカだけでなしに、中ソともお互いに手を取り合ってそして平和を進めていくのだ、こういう御希望だと思いますけれども、そういう考えのもとの外交方針が一体今後においても続けられるとお考えになるかどうか、これを念のために伺いたいと思います。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本外交方針が、平和を追求し、いずれの国ともお互いに内政の干渉をし合わない、そうして共存していくという道に進んでいく方針でありますことは、これは当然のことでございまして、それに対して何らの変化もございません。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 先ごろ二月の二十六日の、与党愛知氏の質問に答えて、岸首相は、両国、すなわちここでは日米ですけれども、その両国関心を持つ地域は、自由主義立場をとっている国々の支配している領域が主眼になるわけで、共産周において実力をもって平和と安全を維持しておられる地域は、共通の関心を持つ地域には入らない、こういうことを言っておられるのでございますけれども、これでもなおかつ東西かけ橋としての努力が払われるということが言えるでしょうか、この点を岸首相にお伺いしたいと思います。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 今日の国際情勢から見まして、いわゆる東西の対立、その場合に一国がどういう立場をとるか、私がしばしば申し上げておるように、日本はあくまでも自由主義立場を堅持する、この点に関しまして、あるいは共産主義立場をとれという議論もありましょう。あるいは、どちらの立場もとらずに、中立の立場をとれという御議論もあるのであります。私は、はっきりと、自由主義立場を堅持するということを申しておる。こうして自由主義立場を堅持しておる以上は、自由主義国々と手をつなぎ、また、特に、そのうちにおきましても、日米というものの協力関係基礎に、日本の繁栄と日本の平和を守っていくというのが、私どもの基本的な考えであります。しかし、そのことは決して共産主義の国を敵視し、共産主義の国を相手にしないという意味ではないのでありまして、その間に、共産主義国々との間においても話し合いによって世界の平和を進めていこう、いわゆるそれが平和共存という言葉で呼ばれたり、あるいは競争的共存というような言棄で呼ばれておりますが、要するに、その間において、われわれはそういう立場をはっきりとるけれども、しかしながら、それと違う立場をとる国国との間には、やはり話し合いによって貿易その他の経済交流もしようし、文化の交流もしようし、友好親善も進めていこうというのが私ども考え方でございます。その場合において、日本が従来とってきている立場というものを、やはり相手国も、われわれが相手国の政治情勢なりあるいは立場を尊重すると同様に理解し、尊重して、いわゆる内政に対してはお互いに干渉しない、あるいは侵さずに、そうして話し合いで解決していく、平和友好を進めていく、これが私は外交基本方針であり、また、それが今後の日本の進んでいくべき道である、従来もそれで進んできておるけれども、将来もその方向で進んでいくべきものである、こう思っております。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 話し合いをするということは大へんけっこうなんですけれども、その話し合いをするには、話し合いをするような基盤というものが必要だと思います。きょう新聞を見ますと、中国の周首相が大会で演説をしておりますが、その内容に、中国政府と人民は、岸内閣総理大臣の中国敵視政策と日本軍国主義政策に断固反対をする、新安保日米国民の利益に反する、長い目で見れば日本に災害を与える条約である、中ソの安全保障に脅威のみでなく、東南アジア国民の安全保障に直接の脅威を与える、こういうふうなことを言われているわけでございまして、どんなに岸首相自身が、何とかして話し合いをしようとしておりましても、中国に対する敵視政策というものをやめない限り、とても自分たち話し合いに応じられないというようなことを言われているのであり、その直接の一つの原因といたしましても、今度の新安保条約批准にあるということを考えましたときに、もしも岸首相が、東西かけ橋となるという、大きな見識ある外交を推し進めようとするならば、この新安保条約というものに対しては、もう一度考え画していかなければ、そうした外交は進められないのではないか、こう私は懸念するものでございますが、この点いかがでございましょうか。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 中共政府の周首相から、従来もいろいろ言われておりますし、本日の新聞に出ておる周総理意見というものも、従来、日本に対していろいろな機会に、いろいろな人が言ったこととちっとも変わっておらないのであります。しかしながら、終始われわれが中共に対して敵視政策をとっておる——少なくとも岸内閣が、そういう考えを従来持っておったこともございませんし、また、従来、そういうものを持っていないということを明瞭にしております。また、われわれが現在持っておるこの安保体制そのものを、日本の自主的な立場から、日本が合理的にこれを改善しようと努力しておるということが、決して敵視政策の一部でもなければ、それが日本に対してどういう効果を持つかということは、日本国民みずからが判断すべきことでありまして、中共側からかれこれ言わるべき性質のものではない。また、東南アジア地域に対してこれが脅威を与えておるということでありますが、私どもが東南アジアの実情から見て、中共が東南アジアに与えておるがごとき脅威を、日本みずからが与えておるということは絶対にない、これが東南アジアの実情であります。こういうことでありまして、中共の政府がそう言っておるから、われわれが、この問題を別の立場から考えなければならないというものの考え方自身、日本人としてとるべきものではない。われわれはわれわれの立場から、自主的にこれを判断し、また、検討していくべきものである、かように考えております。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、中共がこう言っているから、こうしろということを言っているのではございません。岸首相自身、岸内閣の外交政策として国民に話しているところは、あくまでも東西かけ橋となって、世界の平和に貢献するのだ、こう言っているのですから、そういうことに対する努力をしていかなければいけない。そうだとするならば、その努力をする上においての障害というものをなくしていかなければならない。その一つの障害であるところの、たとえば、日本アメリカとが、必要以上の軍事的な結びつきというようなことになってきますと、他の陣営をどうしても刺激するわけでございますから、そういうことがないようにしなければいけないということを申し上げたまででございます。この周総理の演説等につきましては、また日本にも関係のあることでございますので、これはあとの問題として取り上げていこうと思います。  現行安保条約がこの新安保条約になりましたいきさつにつきましては、すでにここでも明らかにされております。そしてまた、日本側から、すでに昭和三十年に重光さんが持ち出して、重光・ダレス共同声明が八月の三十一日に発表されているわけで、三十二年には岸さんとアイクの共同声明が出され、それからまた、合同委員会が作られたのは、もうすでに指摘されたところでございます。それから今度は、三十三年になりまして、レバノンの派兵とかいうことによって国連で非難され、台湾海峡の紛争というようなことで、中東、極東の失敗で、アメリカは、どうしても極東の軍事体制への立て直しが必要になって参りました。そこで、三十三年八月に、台湾海峡の紛争のころ、ブラッカー陸軍長官あるいはフェルト太平洋最高司令官が日本に来まして、藤山さんとマッカーサー大使と協議して、その後藤山さんの渡米となりました。そしてニューヨーク・タイムスは、その当時、台湾海峡の危機とともに、日米相互防衛体制が急速に促進されるようになったということを報道いたしております。こういうふうなことを考えてみましても、新安保条約というものは、なるほど重光さんによって日本が言い出したことではございましょうけれどもアメリカにとってみても、こうした極東の諸情勢の変化によって、軍事体制を新しく練り直さなければならないというときに、日本から言い出したのだから、これはもっけの幸いだということで、むしろ積極的にアメリカもこれに乗ってきたのではないかと思うのですけれども、この点に対して、アメリカの新安保条約に対する考え方というものはどういうふうだということをお考えになって、交渉されておられたのでしょうか。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 若干、今御指摘の事実の経過等につきましては、誤解があるようでございます。私は、かねて申し上げております通り、第二次岸内閣が六月にできましたときに、日本外交基本方針として、アメリカとの協力態勢を基底とする、それには、日本国民が現在持っておる、現行安保条約に対するいろいろな不安等もあるので、やはりこれを日本立場から改正しなければならぬ、これをまず重ねてアメリカに話してみよう、それで、御承知の通り、七月の上旬九、十前後にワシントンへ行ってダレス長官に会いたいということを申したのでございます。ところが、当時ダレス長官の御都合が悪いので、実際に会見は九月になったのは、御承知の通りだと思います。そしてこの安保条約改正に着手いたしますときに、これは私はたびたび申しておるのでございますけれども、私がダレス長官に対してこの問題について話をいたしましたときに、ダレス長官は、なるほど、現在の安保条約というものは、日本側に対して相当不平等で、従属的だ、しかし、藤山さんの今言われるようなことは、逆に今度はアメリカ側に相当な責任を負わせ、アメリカ側に対してむしろ不公平のようなものではないかということを言われたということは、私は当時から申しておるところでございます。そういうふうでありますから、何かアメリカ側がこの交渉を利用して自分に都合のいいように改正するという気持ではなかったことは、当然でございます。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 藤山さんが、今、アメリカ側にとってはあまりいいものではないというようなことを言われたくらいで、日本にとってだけが、大へんに内容のいいものであるということを言われたのですけれども、これはあとから、私が各条項にわたって指摘して参りますことによって、いかに日本にとっても不利なものであるかということが、おわかりになっていただけると思うわけでございます。  そこで、私はこの内容に入って参りたいと思いますが、極東における平和と安全を守るという言葉が、大へんにいろいろここで問題にされましたけれども、まだ根本的な点が論議をされておりません。そこで私は、この問題は午後の問題として残しまして、最初に、一二条、四条、五条の関係質問をして参りたいと思います。これらはこの委員会で多少出た問題でありますけれども、結論としてわかるまでの答弁にはなっておりません。そこで私は、答弁の食い違いなどを指摘しながら、お尋ねしていきたいと思います。  まず、三条によりまして、日本自衛隊増強する場合に、当然、状況によっては四条の協議を必要にするのではないかというような質問に対しまして、岸総理は答えられておりますのが、「相手国がみずから自分の国を守るという決意をして、守り、またそれの努力をするという決意なり、あるいは行動で示しておらない国、一切をあげてアメリカにおんぶするようなところとはやらないというのが趣旨で、防衛計画を押しつけてやらせるものではない」、さらに、「日本みずからが自助的にやるものは、これは日本が自主的にやるのは当然であります。しかし、相互援助によって、アメリカの援助によって日本がふやすというような場合におきましては、これは協議することは当然であろうと思います。」藤山外相も、「四条では協議をしない。日本日本で自主的に諸般の情勢を考えて、自衛力を増すのです。アメリカアメリカでやるのです」ということを、ついこの間のこの委員会においては答弁されております。ところが、三月十一日の参議院の予算委員会では、藤山外務大臣が、「しかしながら、防衛力を漸次減らすか減らさないかということは、これは先ほど来申し上げておりますように、国際間の情勢を見、また日本立場考えていくべき問題で、防衛の意思があって、そしてそれが完全にできるだけ一国で守られることが一番必要なことであることは申すまでもないことであります。しかし、それが一国だけではなかなか今日の防衛というものはできないから、友好国と一緒になって、そして守っていくという形を考えるわけなんであります。そういう意味において漸減ということが、何とも日本の経済力が非常に弱まって、もうとうてい持てないのだというようなときがありますれば、そういうことについて……」と、ここまで言われたときに、社会党の鈴木委員が、「第四条で協議をするのですか。」と言いますと、藤山外務大臣が、「それは当然協議をしていくことはあたりまえだと思います。しかし、それはそういう事態にならぬように、われわれは日本の経済力も発展さしていかなければなりませんし、それは当然のことだと思うのでありまして、」こういうふうに、はっきりしたことは、この委員会においては、三条の防衛増強の問題は四条では協議をしないと、はっきり言われておりますけれども、この前の予算委員会においては、協議はする。漸増は協議はしないけれども、漸減は必ず協議をするという意味なのか、どういう意味でこれをおっしゃったのか、伺いたいと思います。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知の通り、第四条の協議は、安保条約の運営にあたっての協議でありますことは、全般にかかっておりますことは、申すまでもないことであります。われわれとして、今申し上げておりますように、日本自衛力を決定するのは日本自身でありまして、アメリカと協議をし、あるいはアメリカに押しつけられる必要はございません。しかしながら、日本日本自衛力を自分で決定していきます場合に、今申し上げたような何か非常に重要な状況がございまして、漸減と申しますか、そういうような状況になりますれば、日本の経済的な事情がこういうことだということは、相談をするのはあたりまえでございまして、それは今まで申し上げておることと少しも変わっておらないのであります。しかし、その範囲内においてわれわれがどういう自衛力を決定していくかということは、日本自身が決定していくことでございまして、アメリカと協議をしたり、押しつけられることはございません。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、今の藤山さんの答弁だけをとってみると漸増するのは自主的にやるけれども、漸減をしなければならないときには、一応協議はする、しかし、それで押しつけられるのじゃないのだ、こういうことでございましょうか。そうだとすると、やはり一応、こういう状態になっているからこうするのだということのお伺いを立てることになるわけじゃないでしょうか。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 少しも伺いを立てることじゃないのでありまして、お互いにこの条約を運営して参りますときには、自分の国の経済的事情なり何なりは、絶えず協議をして参ることはあたりまえのことであります。日本の経済事情が今日ではこういうふうに悪いのだ、あるいは今日はこういうふうにいいのだというようなことを、お互いに話し合っていきますことは、当然のことだと思います。そういう範囲内において、われわれは自主的な自衛力増強の意思を持っているけれども、現在こういうわけでいかないのだからというようなことを、お互いに話すのは当然でありますが、その内容を決定するのは自分自身であることは、これまた当然でございます。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、一応協議はする、三条の問題は、四条で受けて、協議することだけは事実でございますね。その内容をどうするということで動かされはしないけれども、協議はするというふうに了解してよろしゅうございますか。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 必ず協議するというわけではありません。必要があればお互い意見の交換をし、協議するということであります。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、この間のこの安保委員会においての答弁とは違ってくるわけでございまして、この前においては、協議をしないのだというふうに言っておられるわけです。ですから、それではお取り消しになったわけですね。協議をしないかもしれないが、一応協議をする場合もあるのだ、こういうことでございますね。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この間の答弁は、自衛力内容そのものは自分で決定するのだ、協議をしないのだと申し上げたのでありまして、今申し上げておることも、同じことを申し上げておるわけでございます。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ですけれども、たとえば、日本はもう経済的にこれ以上のことはふやせませんというような場合には、「四条で協議するのはあたりまえのことです」と、参議院で述べておるわけです。この漸減とか、漸増とかいうことは、内容にわたることじゃないのですか。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知の通り、この三条は、バンデンバーグの精神をうたって、お互いに自分の国は自分で防衛をしようという意欲を持っておるわけであります。従って、日本としては、その経済的な事情その他を勘案して、自分自身の考え方で自衛をいたしていくわけでございます。しかしながら、自分が自衛をしていこうという意思を持っているということが、やはり常にはっきりしていることは、これは当然でございます。参議院等で、御質問がありましたときには、それじゃ自衛力はゼロでいいのかという御質問がありましたから、自衛力をゼロにするなんということでは、それはこの条約の精神には反しているんだということを申し上げているのであります。しかし、その年の予算の関係や何かで、若干ずつふえたり、減ったりすることもございましょう。それがほんとう自衛力を持たないという意思で減ったのか、あるいはそうでなくて、持っているけれども、経済的ないろいろな状況によって減ったのかというようなことは、お互い意見の交換をして、一向に差しつかえないわけで、また、そうすべきがあたりまえだと思います。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、そういうふうな意見の交換というか、協議というのは、やはりこの四条を受けて協議をする、こう了承してよろしゅうございますね。
  40. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知の通り日本アメリカとがこの条約を結びますのは、友好国として結ぶのでありますから、条約全体の運営については、常に協議をしていくということは当然でございます。従いまして、四条も引いて協議する場会合もございましょうし、そういうものを特に引かなくても、全般の運営について、絶えず協議することは当然でございます。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員 岸総理大臣に伺いたいと思いますが、岸さんは、自助的にやるものは、日本が自主的にやるのは当然である。相互援助によって、アメリカの援助によって日本がふやすというような場合においては、協議することは当然です、こういうふうに答えていらっしゃるのですが、これは結局、MSAによって武器を貸与される、その場合においては四条で協議をする、こういうことでございますか。
  42. 岸信介

    岸国務大臣 MSAの場合も含めて、一般的に申したわけであります。
  43. 戸叶里子

    ○戸叶委員 このMSA協定日本で結ぶときのいろいろなことをここで考えたのですけれども、それは、こういうふうな武器を貸与するから、あるいは、こういう航空機を、こういう艦船をやるから、これだけのものを増強せよ、こういうふうなことに相談してなると思うのですけれども、これじゃ、依然として、やはり自主性がないわけじゃございませんか。
  44. 岸信介

    岸国務大臣 本来、自主的に、自助によって作るということが、一番なにからいえば当然のことでございます。しかし、それができない場合において、MSAの協定なり、あるいはその他の方法によって、日米相互協力するという意味において、アメリカ側に対して日本側から、こういうものの供与を要望することもありましょうし、また、向こう側から、こういうものを供与するから増強しないかということを申し出る場合もありましょうし、そういう場合に協議して、日本に適当だと思うものについて、これを受け入れて増強することを考えることは、私は、別にそれによって何か日本の自主性があるとかないとかいう問題じゃない、むしろ、そういうことが対等の協議においてきめられるということが自主的な意味を持つゆえんだ、かように思います。
  45. 戸叶里子

    ○戸叶委員 自主的に自衛力というものは漸増もできるんだというふうなことを強調したいために、そう言っておられるのですけれども、今伺っておりますと、たとえば、MSA協定によって武器を貸与してもらう場合に、こういうふうなものを日本がほしいといっても、アメリカの方の都合が悪ければ、それを断わって、違うものをよこす場合がある。そうした場合には、装備の関係でも違ってきますし、あるいはまた、自衛隊の、あるいは自衛力内容というものも、当然私はその協議によって違ってくると思う。従って、それは自主性があるといってみましても、協議をしていく上においては、当然日本の思うようにはならないわけです。  その一つのいい例は、民社党の今澄委員が、たしか予算委員会質問したように、ターターの問題の例を見ましても、日本は三十四年度に二十二億の予算を組んで「むらさめ」、「ゆうだち」、「ゆきかぜ」、「はるかぜ」という四艦の装備を、古くなったから近代的なものにしようとしました。ところが、アメリカからこなくなったので、ターターに肩がわりをしたことは、ここで今澄委員が指摘したところでございます。古くて役に立たないから装備をし直そうとしても、アメリカはそれは聞いてくれないじゃありませんか。三条で、自衛力を維持し、発展させるのには、アメリカの援助を受けなくては当然能率が上がらない、そうなってくると受けなければならない。     〔委員長退席、椎熊委員長代理着席〕 そうすると、今度は協議をする、協議をした場合に、日本の思うような装備が得られない。そこで自衛力をどういうふうにしていくかということに影響してくるわけでございまして、これでは、どうも自主的であるということは言えないと私は考えるのでございますが、この点はいかがでございますか。
  46. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 防衛当局が防衛計画をされて武器等を買いますときに、ある程度アメリカに話をして、アメリカが、それを今出すわけにいかぬということがありますれば、それをやめることは当然でございます。そのこと自体が、アメリカから強制されるわけではないのでありまして、防衛庁は、現在でもスイスからも兵器を買っております。スイスに注文した兵器が、どうも売れないと言われたら、それではスイスから何か言本の防衛力の増強に圧迫を受けたというふうに解釈する必要はないのであります。同じことだと私どもは思っております。
  47. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 今のターターの問題ですが、その問題はちょっと誤解があるのではないかと思います。三十四年度予算で、レーダーとか、あるいは火器を、いいものにかえようという予算が通っておったわけであります。それはアメリカからくれるとかくれないとかいうこととは別でございます。日本でそういう予算をとっておったわけであります。ところが、船が三十五年度の予算でできるといいますか、要求できる見通しがつきましたので、それをタ一夕ーにかえよう、こういうことでございます。決して向こうから補助とか援助がないからどうこうというわけではなくて、日本でそういうことをしたいという、日本の主体性のもとに、向こうからのターターに対する援助を要請した、こういうことになっておりまして、向こうから何をせよ、かにをせよという指図で動いておる、こういう形ではございません。
  48. 戸叶里子

    ○戸叶委員 赤城防衛庁長官は、向こうからどういうことをしなさい、こういうことをしなさいという指図を受けてしたんじゃないとおっしゃいますけれども、少なくとも、日本が申し入れたことが聞き入れられなかったということは、私は言えると思うのです。日本の希望通りにいかなかったということは言えることは事実だ、こういうふうに考えるわけでございます。  赤城さんがお立ちになりましたので、ついでに、関連して伺っておきたいのは、日本が十年間で大体どのくらいの援助を受けてきているか、有償で、また無償でどの程度のものを受けているか、ついでに伺いたいと思います。
  49. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 四十四百億くらいの援助を受けているはずでございますが、なお詳細につきましては、事務当局から今御答弁申し上げます。
  50. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 今までに米国より供与品等を受領いたしましたのは四千四百二十三億一千五百万円でございます。そのうち、陸上関係が二千九十二億九千五百万円、海上関係が千二百二十二億二百万円、航空関係が千八億一千八百万円、こういうことになっています。
  51. 戸叶里子

    ○戸叶委員 これはみんな有償ですか。
  52. 加藤陽三

    ○加藤(陽)政府委員 これは無償が大部分でございまして、船舶等につきましては、貸与を受けたものも入っております。
  53. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、この内訳をいろいろ伺いまして、それに従っての安保条約関係のある点を質問したいと思いましたけれども、きょう、今その資料をいただきましても調べるひまがございませんので、次の機会なり、あるいは同僚の議員に譲ることにいたしまして、この内訳をなるべく早く資料にして出していただきたい、これを要望いたしておきます。  さっきの問題に返りますけれども、MSAの協定によって日本が援助を受けて自衛力をふやす場合には、アメリカと協議をするというこの問題が、私は、依然として自主的でないというふうに申し上げたいのは、たとえば、MSA協定による援助を受ける場合には、条件があるわけでございます。一九五一年十月の相互安全保障法の目的というものを見ますと、自由世界の相互安全保障と個別的及び集団的防衛を強化すること、それから二番目に、友好国の安全保障と独立のために、かつアメリカの国家利益のために友好国の資源を開発すること、三は、友好国の国連集団安全組織への友好的な参加を容易にすること、こういうふうに、はっきりその制限があるわけでございまして、アメリカの国家利益のために友好国の資源を開発するということが書いてあるわけです。こういう思想をはっきりと打ち出して、そういうものに応じないような場合には、MSAの援助を打ち切るのだ、こうなってくると、日本自衛力内容というものも私は変わってくると思うのです。従って、自衛力内容を変えないためにも、このMSA協定に盛られている条件に沿うようなものにしていかなければならない。こうなってくると、相互関連であって、決して、これは自主的に日本自衛力増強をはかるのだというようなことは、どう答弁してみましても、これに関する限りにおいてはあり得ない、こう考えるわけですけれども岸首相の御意見を伺いたいと思います。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 MSAの援助を受ける場合に、MSAの条件に従わなければならぬことは、MSA協定でそういうことになっております。しかし、日本がMSAの援助だけで日本防衛の全体ができて、あるいは防衛力の全体ができておるわけではございませんから、日本としては、日本防衛力をどういうふうに具体的に目標を立て、そしてそれを充実していくか、そのうちにおいて、日本自身が自助によってやる場合もありましょうし、あるいはMSA協定の援助によってやる場合もありましょうし、あるいはそれ以外のアメリカとの話し合いによって、アメリカの援助によってやるというような場合もあると私は考えます。そして、それらのうちにおいて、MSAの協定で具体的の援助を受けるものについては、MSA協定の条件に従わなければならぬということは、協定が定めている通りであります。
  55. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ですから私は言っているわけなんです。日本政府で、自主的に何でもかんでも日本自衛力増強ということを考えるんだ、こういうことを言われておりましても、MSA協定によるところの援助を受けている限りにおいては、これに関する自衛力増強ということは、やはり協議の対象になるのですから、その面からいえば、決して自主的に日本が何でも自衛力をきめることができるということは言えないじゃないか、こういうふうに考えるわけです。たとえば、今、岸さんが言われましたように、日本自衛力はこうこうこれだけ、何年間のうちにおいてこれだけふやすのだ、こういうことを日本独自の形できめたといたします。そういうふうにいたしましても、一方においては、MSA協定でこの自衛力の漸増をはかるためには援助を受けなければならない。その援助を受けるときには相談をするんだと、はっきり言っていらっしゃる。四条で協議するんだと言っていらっしゃる。協議をすれば、どうしてもそこで日本の思うようにばかりならない場合がある。そうなってくれば、そこに日本の自主性がないではないか、こういうふうに言っているわけでございます。
  56. 岸信介

    岸国務大臣 今も私がお答え申し上げました通り日本自衛力の、防衛の全体の計画というものは、日本自体が自主的にきめるわけでございます。しかし、MSA協定によってわれわれが向こうから武器の援助をもらうというものについて、その条件がつくことは確かにそうであります。     〔椎熊委員長代理退席、委員長着席〕 従って、それによって協議をしなければならぬということは——これはMSAの協定によって向こうからただでもらおうとか、そういう一方的なわれわれの要求が、一片の通知で、その通りできるわけではございません。アメリカ側の都合もありましょうし、また、アメリカ側がよこそうという考えを持っておっても、日本自衛力の全体の計画からいって、それにはまらないものは、われわれの方でもらうわけにいきません。こういうことを協議することは当然のことだと思います。これを協議したから、日本防衛力全体に自主性がないということは、私は議論が成り立たない。全体としては、日本が自主的に考え、その中で、MSAの協定によるところの援助を受ける部分については、今言ったように相談をする、相談した結果として日本がどういうふうにもらって、それをもらった場合においては、MSAの条件がつくことは当然であります。それだからといって、日本防衛力全体に対する日本の自主性というものが、それでなくなるのだということは考えないでいい、こう思います。
  57. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、どうもその意見がわからないのです。たとえば、自衛力というものがこれだけあって、それをふやしていく、その中の一部分にはMSA協定締結によって、武器の援助なり、貸与なりを受ける、あるいは買う。そういう場合に、そのMSA協定日本との関係日本が好むと好まざるとにかかわらず、MSA協定の中にきびしいおきてがあって、この援助を受ける限りにおいては、それを守らなければならない、それを守るのが日本の意思に反しているかもしれない、反しているにもかかわらず、これを守らなければならない、そうなってくると、日本の自主的な自衛力増強というようなことは、どうしてもそこから出てこないわけでございまして、この点が自主性があって、自衛力日本の国で適当に勝手にできるのだということは当たらない。MSA協定を受けている限りにおいては、その問題だけに限っては、自主性がないのだ、こういうことを先ほど総理も言われましたので、私は先に進んでいきたいと思いますが、(発言する者あり)今、ここのうしろの方で言われますのは、MSA協定があっても、何も日本が好きでないことをしなくてもいいのだと言われるわけですけれども、それはMSA協定の方を少しも勉強しておらないのであって、もう少し勉強してヤジっていただきたいと思います。
  58. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ちょっと今の点でお答えをいたします。武器の援助等のためにMSA協定ができておりますことは、今御指摘の通りであります。MSA協定ができているから、向こうで援助を強制するとか、こういうものを日本で使わなくてはならないという強制力は全然ありません。日本において必要とする場合には、こういうものをほしい、それについての援助があるかどうかという相談はいたします。でありますから、基本は、どうしても日本に基本がありまして、向こうから、MSAの援助をやるからこれを使えというような強制をされるということはない、こういう点において、私は、自主性は日本が持っている、こう考えております。
  59. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私、先へ進もうと思いましたが、赤城大臣が今そういうことをおっしゃったので、つい反駁せざるを得なくなりました。なぜならば、MSAの援助を受ける場合には、その受けなければならない条件がある、その条件というものは、アメリカの国家利益を守るんだというような条件が一つになっている。従って、これを受ける場合には、好むと好まざるとにかかわらず、このアメリカの条件に従わなければならないということが一つ。もう一つは、アメリカは別に強制するものじゃない、日本がほしければもらうのだ、こういうことを言っておりますけれども、MSA協定締結した当時のことを、私は、赤城大臣が御存じないから、そういうことを言われるのだと思うわけでございます。しかも、日本はそれをもらわなければ防衛力の漸増はとてもできない、MSA協定によって大へんにおかげをこうむっているのだ、こう言ってたびたび答弁していらっしゃるじゃありませんか。この点はいかがでございますか。それでは今、MSA協定をすぐにやめてしまっても、日本自衛力をふやすことは幾らでもできるのだから、すぐにでも協定を破棄してもいい、こういうようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  60. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 援助に対しては、アメリカの国内法として援助する法律と、日本条約を結んでいるMSA協定という二つあることは、御承知の通りです。それから、アメリカの対外援助の法律から見れば、アメリカの国家利益に反することに対しては援助をしない、これはアメリカ自体の考え方であります。どこの国でもそうだと思いますが、自分の国のためにならぬような援助をするのは、好ましくないと思います。ですから、アメリカの国家利益にならぬものに対して援助をしないということは、アメリカの国内法であります。われわれが援助を受けていますのは、MSA協定によりまして、必要な場合には援助を受けます。そういう場合の制限といたしましては、たとえば援助を受けたものを、ほかの用途に使わないというような制限はあります。しかし、アメリカの国家目的にこれが沿うべきであるというようなことは、何もMSAの協定上からは出てきません。アメリカの国家目的に奉仕するというようなことは、アメリカ自体の国内法であります。
  61. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうふうな答弁をされますと、今度は、MSA協定についていろいろ議論をしなければならなくなって参ります。私は、このMSA協定を一年半にわたって審議した経験を持っておりますけれども、MSAの国内法としての精神が基になって、各国とのMSA協定になっているわけなんです。それを、MSAの国内法の精神はこうなんだ、日本の場合は、そんなものは受けなくてもいいんだ、こういうような言い方というものは詭弁であって、その場のごまかしだということを言わざるを得ないのでございます。
  62. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 相互防衛援助協定の第一条にありますが、「各政府は、この協定に従って受ける援助を両政府が満足するような方法で平和及び安全保障を促進するため効果的に使用するものとし、いずれの一方の政府も、他方の政府の事前の同意を得ないでその援助を他の目的のため転用してはならない。」こういうことであります。でありまするから、日本日本の満足するような方法でやればいいのですが、アメリカの国家目的にということは、この協定自体からは出てきません。ほかに使用することはいけない、こういうことは当然であります。
  63. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私が伺っているのは、MSA協定の中で、アメリカが援助を与える場合には、お互いにそれを利用して有利になるように、そしてまた、MSAの援助を打ち切る場合には、今赤城長官の言われたように、よそにこれを使ってはいけない、これは打ち切るときの条件なんです。私の言っているのは、そうじゃないのです。MSA援助を受けるからには、やはりアメリカでMSA協定を結んだ精神が、日本のMSA協定の中に生きてきている。それに従って援助を受けるのだから、どうしても縛られるということを言ったわけです。しかも、赤城大臣は、アメリカが無理やりに、MSA協定によって武器を日本にやろうとか、貸そうとかいうのじゃない、日本がほしくなければそれは要らないのだ、こう言っておられますけれども、現実の問題として、日本自衛力増強していかなければならないという現実の段階において、一体MSA協定を、今打ち切ってしまうだけのお考えをお持ちになっていらっしゃいますか。打ち切っても大丈夫だというようなお気持でいらっしゃるわけですか、それともやはり、受けていった方がいいのだというお考えでしょうか、この点を念のために伺っておきたいと思います。
  64. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 MSA協定を打ち切る必要はないと思います。あった方がいいと思います。しかし、それによって援助を受けるか受けないかという主導性を持つのは、これは日本政府であり、日本自衛隊であります。
  65. 戸叶里子

    ○戸叶委員 なければお困りになるのですが、さっきああいう答弁をなされましたので、私は、つい発展せざるを得なくなって発展したわけですが、MSAの問題は、あとから防衛関係のときに、おそらく他の委員から、いろいろ突っ込んでいただけると思っております。  次に移りますが、間接侵略ということにつきまして、この間の委員会の速記を読んでみましたところが、岸首相がこう言っておられます。「いろいろな方法によって間接的に侵略する、そして擾乱を起こさしめるという事態があるのであります。従ってそういう場合においては、やはり外国の影響でもって日本の安全が脅かされるということになるわけでありますから、そういう場合においてはこの四条で協議をして、それに対してそういう事態をなくするように尽くしていく。」さらに、「しかし駐留軍が武力を用いる。武力的な行動をするということは、五条だけでございます。」さらに、「日本の安全に脅威を与える場合に、協議してこれに対する措置を講ずることは当然であります。」こう言っておられます。そこではっきりさせたいのですが、そういう事態をなくすような措置をとるとか、あるいは対処する措置を講じるというのは、決して行動に入るものではないと思いますけれども、協議をして何かの行動に入るという意味でございますか。どういう意味でございましょうか。
  66. 岸信介

    岸国務大臣 武力行動に入るという意味ではございません。武力行動の場合は、五条に限定されておるだけであります。その他の方法によって、そういう事態をなくすように努力していくことは、当然のことであります。
  67. 戸叶里子

    ○戸叶委員 武力行動には入らない。これは条約に書いてある通りです。けれども、その他の方法によってそれを排除する、これは具体的に言うと、どういうことでございましょうか。
  68. 岸信介

    岸国務大臣 いろいろあると思います。一つの方法としては、国連にその事情を訴えて、防止してもらうという方法もございましょうし、あるいは日本が、直接に外交交渉による場合もございましょうし、アメリカが、それに対して外交交渉を助けるような方法によって事態をなくする、いろいろそのときにおける事態から考えていかなければならない。しかし、少なくとも武力行動を、それによって直ちにとるということではないのでありまして、武力行動は、五条によってはっきりと、日本の領土に対して武力行為があった場合というだけに限るわけであります。
  69. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、武力行動は入らない、しかし、何らかの方法でそういう事態をなくしていく、そのことは、具体的に言って、外交交渉をさらに進めていくとか、あるいは国連に訴えるとかいうことを言われたわけですけれども、こういうことはどうですか。まさかアメリカに要請して、レバノンのような事件を起こす、こういうようなところまではなさらないでしょうね、兵隊を出してもらうとか……。
  70. 岸信介

    岸国務大臣 レバノンのような事態について、アメリカの駐留している部隊を増強するというような意味でございましょうか。どういう意味でございましょうか。
  71. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうじゃないのです。大へん言葉をあれしましたけれども、たとえば、外交交渉によってそういうような点をなくしてもらうというような場合に、在日米軍に向かって何らかの行動をしていただきたい、行動とまではいかなくても、何かこれを解決するような方法をとっていただきたいというようなことで、アメリカが何か威嚇するような形をとるかもしれませんが、そういうふうなところまではいかない、あくまでも協議をして、そしてこういう問題は困った、困ったというようなところまでしかいかない、こういうふうに解釈するわけですか。
  72. 岸信介

    岸国務大臣 別に因った、困ったということに——何か困らないように措置をとりたいというのが、われわれのねらいであります。しかしながら、武力行動を伴わないのでありますから、主たるものは、私は、国連に提訴するとか、国連の活動によってそれを防止するということが、主体になるだろうと思います。
  73. 戸叶里子

    ○戸叶委員 四条で協議をして、国連にこの問題を持ち込むというところまでいくというふうに解釈されるのでしょうか。私は、そこまで広くいけないんじゃないかと、思うのですけれども……。ではもう一度、念のために伺いたいのですが、たとえば、そういうような事態が起きたときには、日米で協議をして、その事態をなくすようにしたい、しかし、なくすようになかなかできないときには、国連にまでこれを訴えるんだ、こういうふうに了承していいわけですか。
  74. 岸信介

    岸国務大臣 具体的の場合に応じて、いろいろなとるべき具体的な措置が考えられるのでありますが、私は、先ほど来申し上げているように、武力行動をこれでもって直ちにとるということは、条約考えておらないわけであります。その他の方法によって、有効な、適切な方法をとって、その脅威を除くということに努力するのが、この四条の協議の結果の措置として考えられることであります。その最も有力なものは、私は、国連機構を動かすということである、かように考えております。
  75. 戸叶里子

    ○戸叶委員 有効な方法を考えるとか、あるいは外交交渉をするということの中には、日本に対してこうしろというような、何か命令的な圧力をかけるというようなことは入っておりませんか。
  76. 岸信介

    岸国務大臣 圧力をかけるということは、私ちょっと……。これはもちろん、安保条約におきまして、日米協力してその脅威をのけるのでありますから、取り除くことに努力するわけでありまして、それについて協議をする。その協議をする場合に、アメリカの方から、日本としてはこうしたらいいというような意見が出るということは、当然あろうと思います。どちらかが他方に対して何か強圧するという性質のものじゃないと思います。
  77. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この条項でございますが、現行安保条約の中には、一条で「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によって引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる。」こういうふうに書いてあるわけです。ここにある日本国の大規模の内乱及び騒擾というのは、ここに一または二以上の外部の国による教唆または干渉によって起こされたものということが、はっきりきめられているわけでございます。そうすると、今まで政府は、内乱条項というものが現行条約にはあったけれども、今度の場合にはそういうものはなくて、間接に起こされた騒擾に対しては、この四条が適用されるんだ、こういうことを言っていられるわけでございますけれども現行条約におきましても、別に内乱とか純粋の内乱というようなものはあったわけじゃなくて、一または二以上の外部の国による教唆または干渉によって起きたというふうなことを定義づけている以上、やはりどちらもこれは間接侵略意味するのではないか、こう考えるわけでございまして、今度の条約によって、これは内乱条項がなくなったんだとか、あるいは間接侵略だけにはこの四条が適用されるんだというような考え方は、間違っているんじゃないかと思いますが、いかがでございましょう。
  78. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 条文の解釈につきまして、条約局長から申し上げます。
  79. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、それは内乱であるとか間接侵略、その間接侵略というものが、どいううふうな内容を持っておるかということによって、概念の問題として、それによっていろいろ変わるのではないかと思います。まだ、間接侵略というような言葉が、国際法上も、国際関係でも、どういうものをさすということが、はっきり成熟した観念ということにはなっていないようでございます。従いまして、ここの「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によって引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じよう」、一般に、このような場合には一つの間接侵略の場合であるというふうに考えられておりますが、いかなる場合におきましても、どのような事態が生ずるということは、この四条におきまする日本国の安全に対する脅威が生じたときであるというふうに考えております。
  80. 戸叶里子

    ○戸叶委員 現行安保条約から今度の条約改正された場合に、現行安保条約において、内乱等の場合にも適用されたけれども、今度の場合には、日本の安全に対する脅威が生じたときというので、この場合には、今高橋条約局長が言われたような、よそからの関係日本に騒擾が起きたような場合に適用するんだ、従って、これは非常に変わったんだということを、おりおり私どもは説明されてきたわけなんです。しかし、よく読んでみますと、前に言われた内容と今日のものとは全然違っていない、こういうふうに考えるわけでございますが、どういうふうに違っておるわけでございますか。
  81. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 条文の点でございますが、第四条の、日本の安全に対する脅威が生じたとき、こういうふうに一般的な文言を用いまして、日本の安全が脅威されたというような場合には、お互いに協議しようじゃないか、これは一般的なこの種条約においても、いかなる条約においても、こういうふうな協議条項は存在するというふうに考えております。すなわち、日本の安全、純粋な内部的な問題でありませんで、条約関係一つの国の安全と申します場合には、これは対外安全を当然考えておる場合でございますが、そのような脅威が生じたときには協議をする、現行安保条約におきましては、はっきりとそういう場合を掲げまして、特にピック・アップしましては、一または二以上土の外部の国による教唆または干渉によって大規模な内乱が引き起こされた場合、そういう特殊な場合を、特にここに明記しているわけでございます。このような場合に、日本国の安全に寄与するために、アメリカ軍隊を使用することができる、このようにはっきり書いてございますから、この条文と第四条と比べますと、これは非常な変化であろう、こういうふうに考えます。
  82. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、私は藤山外務大臣答弁をここに引いて、もう少し明快にしていただきたいと思うのです。藤山外務大臣が「純粋の内乱というものに対しては、むろん日本日本みずからこれを処置していくわけでござでいます。お話のように間接侵略があったという御質問でございますが、間接侵略というものはやはり他国から武器が供与されるとか、あるいはいろいろな問題が起こっておるわけでありまして、そういうような場合には当然協議をするのは、私どもはあたりまえだと思います。純粋の内乱というものは、これは削除するのがあたりまえでありまして、われわれは当然それを独立国として削除したわけでございます。」そうすると、現行安保条約の中から、純粋の内乱というものは、私はどこからも決して出てこないと思うのですけれども、一体どこからそういうものが出てぐるかどうか。「一又は二以上」の外部の国による教唆又は干渉によって引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じよう」ということがあるのであって、純粋の内乱ではないと思います。藤山外務大臣答弁されていることと違うと思うのですが、この点はいかがでしょう。
  83. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 若干あるいは私の言葉づかいが足りなかったかもしれませんが、いわゆる純粋の内乱というような場合には、四条の協議の対象にすらならぬことは当然でありまして、日本自身が当然処置していくことでございます。ただ、外部からの援助によります内乱が起こってくるというようなことを考えました場合には、それは四条の協議の対象になります。しかし、現行安保条約では、そうしたものは、政府の明示の要請に応じて与えられた援助を含めて、外部からの武力攻撃と同じように、日本の安全に寄与するために、そういうような武力を使用することができる、こういうことは全然なくなっておるのでありまして、従って、ここに出ておりますような「内乱及び騒じよう」というような場合にあたって、そういう処置が違ってくるのでありますから、ここに出ております「内、乱及び騒じよう」というような内乱条項はなくなったということを言ったって、一向に差しつかえないと考えております。
  84. 戸叶里子

    ○戸叶委員 現行安保条約の中から純粋の内乱というものが出てくるわけですか。そういうものは私は読めないと思うのですけれども、どこにありますか、そういうことが。
  85. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私が今申し上げましたように、必ずしも純粋の内乱というものは出てこない。従って、私は先ほど申し上げたように、若干私の言葉づかいが足りなかったかもしれませんということを申し上げておるのであります。ここにちゃんと「大規模の内乱及び騒じよう」という——従って、そういう意味において、この内乱条項を削除したということを言っても差しつかえないと思っております。
  86. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はちょっとわからないのです。純粋の内乱というものはない。現行条約からも純粋の内乱というものは読めないのです。現行条約の一条を見ていただきたいのですけれども、そういうものはないのです。ところが、藤山外務大臣答弁では、「純粋の内乱というものは、これは削除するのがあたりまえでありまして、」ここまではいいのです。「われわれは当然それを独立国として削除したわけでございます。」そうすると、純粋の内乱に対しても出動できたんだけれども、そういうものは「削除したわけでございます。」というのだから、何かその純粋の内乱条項があったと思うのですけれども、それは現行安保条約の一条から読めないわけです。どこからそういう純粋の内乱というものが出てくるのでしょう。
  87. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それですから、二回目の答弁のときに申し上げましたように、私の言葉づかいが足りなかったかもしれないということを申しておるわけです。
  88. 戸叶里子

    ○戸叶委員 言葉が足りなかったとおっしゃるのですが、それじゃ大へん恐縮ですが、足りるように、ちょっとわかるようにおっしゃっていただけないでしょうか。
  89. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほどの第二番目の答弁で、足りるように御答弁申し上げたと思っておるのでございますが、第一条において「大規模の内乱及び騒じようを鎮圧する」、こういう言葉がございます。従って、こうした内乱に対してアメリカ軍が関与してもらうことは困るのだ、だからそういうことはやらないようにしようということが、われわれのいわゆる通俗的に言ってきた言葉でございます。従って、こういう内乱条項は削除するという言葉を使ったのでございます。しかし、今お話しのように、それでは純粋の内乱というものが対象になるかといえば、これはいわゆるほんとうの国内だけのわずかな内乱でありますれば、それは第一条でも対象になっておりませんし、今度のも当然対象になっていない。従って、言葉づかいが若干違っておったということを申し上げておるわけでございます。
  90. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は何だかますますわからなくなってきたのです。結局、ほかのこういうふうな条約から見ても、純粋の内乱というようなものには出動すべきではない、こういうふうに思うから、それは断わったのだ、そうして独立国として純粋の内乱というものは削除したわけでございますということは、この一条からは純粋の内乱は読めないけれども、純粋の内乱の場合を削除したのだ、こういうふうに了承していいわけですね。一条からは決して純粋の内乱というものは出てこないわけですね。
  91. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今度の場合でも、純粋の内乱というものは削除しておるということを申し上げております。
  92. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今度の場合もそうでしょうけれども、今度の場合ははっきりおっしゃっていらっしゃるのですよ。間接的な侵略といいますか、間接的にいろいろな騒擾を起こすような問題が起きて、騒擾が起こされたときには、ここで協議をするのだということを、はっきりおっしゃっていらっしゃる。ところが、今おっしゃったのは、さっき読み上げました速記によりますと、大へんに今度の場合は変わったのだ、前の——前のというのは、つまり、現行安保条約においては、純粋の内乱というものに対しても適用されていたけれども、こういうものには今度は適用しなくなったのだというふうなことを言われて、大へんに日本は自主独立の国として進歩したのだというようなことをおっしゃっているから、そこに問題があるわけです。そこで私が伺っているのは、現行の一条からは純粋の内乱というものは読めない、どこからそういう言葉が出てくるのですか。純粋の内乱というものは、一体どういうものをさすのですか。まずそこから伺っておきます。
  93. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今言ったことと少しも変わっておらないのです。現行安保条約でも、純粋の内乱はむろん読めないわけでございます。今度の場合にも、当然純粋の内乱というものは対象にはならない。しかし、変わっておるというのは、ここに書いてあるような内乱及び騒擾を鎮圧するために、日本国が要請すれば、外部から来た武力攻撃と同じように、日本の安全に寄与するために、アメリカ軍を使用することができるのだという、そこが大へんな変わり方だろうと思うのであります。でありますから、そういう意味で申し上げておるのでございまして、おわかりいただけると思います。
  94. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今藤山外務大臣がおっしゃっておられることと、先ほど私が読み上げましたところの、この前答えられた藤山外務大臣答弁とは、はっきりとそこが違っているわけでございます。しかし、この問題につきましては、あとでもう少し同僚の委員から質問をしていただくことにいたしまして、先に進んでいきたいと思います。  第五条におきまして問題になったことは、日本に対する急迫不正の攻撃を、自衛隊が守る、これは日本の個別的自衛権である、アメリカの方は、個別的自衛権と集団的自衛権と両方の権利があるんだというようなことを、政府答弁をしているわけでございます。そうして結論として、共同防衛をやるんだ、こういうふうに説明をしております。それで、ここにおいての軍隊の出動に対しては、自衛隊法の七十六条によるんだ、こういうことを言っておられます。さらに、岸総理大臣は、三月十六自に竹谷氏に答えまして、「自衛隊の出動を命ずる場合におきましては、自衛隊法の規定するところに従ってやります。」こう答えています。竹谷氏が、国会がこれを否決して、そして承認しないときは、出動できない、そうすると、五条一項の規定に違反をいたします、そういう結果になると思いますが、どうですかという質問をしました。そうすると岸総理が、「もちろん、この第五条の規定は、国内法の手続なり規定に従うことを排除する意味ではございませんで、従って、総理大臣自衛隊の出動を命ずるという場合におきましては、自衛隊法の手続に従うことは当然であると考えております。」このあといろいろ議論をされました。そしてはっきりしましたことは、林政府委員答弁いたしまして、五条に直接関連してくる国内法といえば、自衛隊法の規定である、これを排除するものではない。それに対して藤山さんが、憲法上の規定の中に自衛隊法が入っていることをアメリカ承認している、こういうところまで質疑応答が繰り返されたわけでございます。そうすると、私はここで大へんに疑問を持たざるを得ないのは、この条約の表面上にもないし、交換公文にも、共同声明にも何にもなくて、しかも「自国の憲法上の規定」ということの中に、自衛隊法が含まれていて、これによって自衛隊が出動するということを、あとからの人がこの条文を読んだときに、どうやってそういうことを了解するのかということが、まことに私たちは不思議に思われるわけでございまして、この条文の中から、自衛隊法によるのだということがどこから出てくるか、その根拠を教えていただきたいと思います。
  95. 林修三

    ○林(修)政府委員 これはそのときにもたしか申し上げたつもりでございますが、自衛隊法の規定は、文字通り意味におきまして、憲法上の規定でもなければ、憲法上の手続でもないと思います。国内法の手続でございます。しかし、この第五条の規定は、日米それぞれが国内法の規定に従って、それぞれその行動をとることを、決して排除しているものではないわけであります。国内法の規定に従って行動できないからという場合に、それが条約違反になるという問題じゃない、こういうことを申し上げたわけでございます。その点は、この規定から当然出てくるわけで、国内法を排除するという趣旨はここにはない、そういう意味から明らかだというふうに思っているわけでございます。
  96. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は長い間外務委員をしておりますけれども、こういうふうな、条約の中から国内法が出てくるんだというような読み方は、今まで一度も御教授願ったことはないわけなんです。従って、私は、政府がかわったりあるいは人がかわって、あとからこれを読んだときに、この中から自衛隊法が出てくるんだということは、どんなことをしても読めないと思うのですけれども、こういうふうな、条文に何ら規定がされていなくても、しかも、国内法をその中から読みとるというような条約が、一体ほかにもあるものかどうか、一ぺん例を示していただきたいと思う。
  97. 林修三

    ○林(修)政府委員 今直ちに、ちょっと私例を思い出せないわけでございますが、この規定は、要するに、各国がそれぞれの行動をとるということでございます。自衛権の発動要件に従った場合に、自衛権としての武力行動をやるということであります。従って、それについては、それぞれの国に国内法があれば、それによるべきことは当然のことでございます。広く国際的には、憲法上の規定、手続という表現を使っておりますが、それのみに従って、それ以外のものはすべて排除するという趣旨は、この条約の規定のどこからも出てきていないわけでございます。そういう意味で、この武力行動をとる条件としては、日本の国内法としては自衛隊法があるわけです。これをこの条文が排除しているという趣旨は、どこからも出てこない、かように考えるわけでございます。
  98. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、この条約はもっとすなおに読むべきじゃないかと思うのですよ。日本の国の憲法上の手続はないけれども、「憲法上の規定上、すなわち、九条でもって、日本は用兵とか作戦行為とか、そういうようなことはできない、これが憲法の九条だ、しかし、アメリカの場合にはいろいろな手続がある、その手続によるのだ、こういうふうにすなおに読むべきであって、この自衛隊法によってこうだなんということは、私はどうしても読めないと思うのですけれども、少しそういう読み方は無理じゃないでしょうか。それじゃ、協議事項とか了解事項とか合意された議事録とか、どこかに、この五条における「自国の憲法上の規定」は、日本の場合においては自衛隊法を含むものであるとか、自衛隊法を排除するものではないとかなんとか、そこに規定してなければ、これを自衛隊法も含むのだというふうにお読ませになることは、少し無理だと思うのですけれども、いかがでございますか。
  99. 林修三

    ○林(修)政府委員 「憲法上の規定」という言葉は、直接には、日本の場合においては憲法第九条をさしていると私は思います。憲法第九条の認める、あるいは否認しておらない範囲内において、日本が行動をとるということだと思います。この場合において、わが国の自衛隊が行動をとるについては、憲法の趣旨に合うように規定された自衛隊法の規定、これを特にこの条約によって排除するという趣旨は、どこにも出ておらないわけでございます。すなわち、自衛隊法の規定にかかわらず、つまり、国会承認を得ないでも、日本自衛隊は出るのだという趣旨は、この条約の規定のどこからも出ておりません。日本自衛隊は、憲法の規定の範囲内、及びその憲法の規定によって制定された自衛隊法の規定によってやるということは、この条約の趣旨から当然に出てくる、かように私は考えております。
  100. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の林さんの初めの方はよかったのです。憲法上の規定というのは九条だということはよかったのですが、あとでおっしゃったこと、憲法の精神によって作られた自衛隊法を排除するものじゃない、それはさまっていると思う。どんな法律だって排除するものじゃないと思います。たまたま軍隊関係があるから、自衛隊法を排除するものじゃないというふうに持ち出したのであって、ほかにも軍隊関係がある法律があるかもしれない。日本にはないですけれども、そういうものだって何だって、憲法の中で作られた法律は排除するものじゃないのですよ。けれども、そういうことをこの条文のどこから読めるのですかということを聞いている。よそにもそういう例があるのですか。私は、よそにあるのだったら、示していただいて、納得した上でなければ、どうもそれ以上の審議ができないのです。
  101. 林修三

    ○林(修)政府委員 これはほかの条約でもそうでございますが、条約上はっきりと国内法を排除する趣旨が出ておれば、もちろん条約の規定は国内法に優先いたします。しかし、この条約のどこをごらんになりましても、日本自衛隊が行動をとるについて、憲法の規定の範囲内及びその憲法の規定の趣旨に合うように制定された自衛隊法の規定等を排除する趣旨は、どこにも出ておりません。また、自衛隊がすぐ行動するについて予算が必要であれば、国会の議決なくして予算ができるというようなことも書いてございません。これはアメリカの場合も当然でございますが、そういうことから申しまして、そういうものを排除してまでおのおのの行動をとらなくちゃならないという趣旨は、この条約の文言のどこからも出ておらないわけでございます。そういうものについて、この条約の規定が自衛隊法を排除するというふうに解釈するのは間違いである、私はかように考えます。
  102. 戸叶里子

    ○戸叶委員 条約自衛隊法の規定を排除するものではないということは、ここで読めない。それはそちらのおつけになった理屈です。なるほど、そういうことは自衛隊法の規定を排除するものではない、それは常識論です。常識によってわかることです。けれども、もしも自衛隊をお使いになるのでしたら、自国の軍隊関係のある——軍隊とはいえないでしょうね、今の日本だったら。はっきりとした、自衛隊法の規定というふうにお入れになったらいいじゃありませんか。もっとはっきりするじゃありませんか。どうしてここで憲法の規定——私は、もっとすなおに解釈して、先ほど林長官が言われたように、これは日本の憲法の九条の問題をいうのだ、そして日本には手続がないのだから、アメリカの場合に憲法の手続だ、こういうふうにおっしゃった方がいいと思うのです。岸総理大臣、いかがでございますか。
  103. 岸信介

    岸国務大臣 こういう条約につきまして、普通の条約の例を見ますると、各国が憲法の手続に従いというようなことを申しておるのが、普通のようであります。日本の場合においては憲法に手続がございませんので、憲法の規定及び憲法上の手続に従いと、こういう条文のなににしたわけであります。そうした場合において、憲法以外の国内法というものを、それでは排除しているのかどうかという問題につきましては、排除しているものではない。従って、日本として、憲法上、九条のあの条件が満たされておるときでなければ、自衛隊の出動はできません。さらに、自衛隊の出動を認めるについては、憲法の九条を受けて自衛隊法というものがございますから、自衛隊法の手続に従わなければならないということは当然である、こういうふうに解釈をいたしております。
  104. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、私は角度を変えて伺いますけれども、国際法と憲法というのは、どちらが優先するのでしょうか。
  105. 林修三

    ○林(修)政府委員 これはいろいろの学説もございます。日本の憲法の解釈としても、御承知の通りに、ざっと考えましても、国際法優位説と憲法優位説、両方の説があるわけでございます。しかし、政府考え方は、従来申し上げておったと思いますが、憲法第九十八条第二項、これに、いわゆる確立された国際法規は、これを誠実に順守しなければならないという規定があるわけでございます。従いまして、いわゆる国際法と申しましても、内容としては、私はいろいろあると思います。国際法的な中にも、いわゆる確立された国際法、別な言葉で言えば、国際自然法とでも申しますか、そういうようなものは、私は、これは憲法が当然受け入れているもの、憲法はその範囲内においてできておるもの、かように考えるべきだと思います。一例をあげれば、外交官の治外法権あるいは外交官のいわゆる不可侵権というようなものは、憲法にはどこにも規定はございません。国民すべての者は裁判を受ける権利があるということは書いてございますが、しかし、この外交官の不可侵権等の確立された国際法規、これは憲法が当然準用しているものと考えるわけであります。しかし、国際法と申しますのは少し言い過ぎかもわかりませんが、たとえば二国間あるいは数国間の政治的、経済的の条約、こういうものが直ちに憲法に優位するというふうには考えるべきではない、かように考えております。そういうものは、当然に憲法の範囲内においてそれぞれ締結されるべきもの、かように考えておるわけでございます。
  106. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは伺いますけれども日本の国内法と、それから国際法、つまり条約とは、どっちが優先しますか。
  107. 林修三

    ○林(修)政府委員 条約は、当然に同時に公布されることによって国内法の効力を持つ、日本の法制はさようになっておるわけでございます。公布されることによって国内法的な効力を持つということ、日本の法制では大体そういう建前をとっております。これは明治以来そういう建前をとっております。外国におきましては、いわゆる条約を国内法化するために、別の手続をとって、たとえば国内法を制定して、その条約を国内法化するというような手続をとる国もございます。しかし、日本の場合は、そういう手続を要しないで、現行憲法下においては、条約は当然国会の御承認を得て、それによって条約が発効する、その発効した条約を国内的に公布すれば、それによって国内法的な効力を持つ、かように考えておるわけでございます。国内法としての効力を持ったものにつきましては、当然に、その前にある法律と条約関係では、それは公法たる条約が勝つ、かように私は考えるわけでございます。それから条約は、法律よりも、九十八条二項の関係もございまして、大体において優位な地位にあるというのが通説だと思います。
  108. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それではっきりいたしました。憲法と国際法との関係は、先ほど御説明になった通りです。それから、国内法と国際法、条約との関係は、その条約を国内法的なものに変える国もあるし、日本の場合は国内法的な効力を持つのだ、そして、条約締結した場合には、後者の条約の方が優位だ、こういうふうにおっしゃったわけでございます。  そこで、私は伺いたいのですが、そのことは、憲法の九十八条に規定されているところでございます。たびたびこの委員会におきまして、岸総理大臣もはっきり言われましたが、たとえばこの五条を自衛隊法と読むから、私は、次のような問題が起きてくると思うのですけれども自衛隊法によって自衛隊が出動する場合には、国会承認を必要とするのだ、そして、事前に承認ができなかったときには、事後に承認するのだ、それに対して、さらに突っ込んで、それではもしも国会承認しなかったときにはどうするのだ、そのときにはそういう事態をとりやめさせるのだ、こういうことを言っているわけです。ところが、この五条においてはそうじゃないのです。共通の危険に対処するように行動することを宣言しているわけです。だとするならば、そして条約の方が優先するとするならば、国内法によってそれをとやかくいじることはできないじゃありませんか。そういうふうな自衛隊法などと読むから、こういう問題が起きてくるわけです。そうでしょう。いかがですか。
  109. 岸信介

    岸国務大臣 総理としては、いつもずっと一貫してお答えしておる通りであります。
  110. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは速記を読みましょうか。(「その通りと答えているのだから、その通りだよ」と呼ぶ者あり)どういうその通りですか。その通りだけではわからない。(「速記の通りだよ」と呼ぶ者あり)速記の通りだったら問題があるのですよ。(「幾ら言っても蒸し直しだよ」と呼ぶ者あり)蒸し直しではないのです。蒸し直しから一歩前進しておるのです。  今、速記録がここにあるのですけれども、民主党の竹谷委員質問もあり、これに関連をいたしまして、堤さんがこういうことを言っております。今の内閣がいつまでも続くものではないのだ、たまには社会党と民社党が一緒になって天下をとるときもある、そういうような場合に、自衛隊は出すべきではないというようなことを国会でもってきめたり、あるいは自衛隊が出せないというように否決された場合にはどうしますかと言ったら、それは国会の言う通り尊重して適当な措置をとるということを、はっきり言っておられるわけです。これは岸さんがおっしゃったわけなんです。私は、そのときにおやと思ったのは、今まで条約の方が国内法より優先するはずだというふうに、今の林さんのお答えになったと同じことが頭に浮かんだのですけれども、まあ黙っていたわけです。そこで、今聞いてみれば、林さんはもう一度はっきりと、条約の方が優先すると言っていらっしゃる。そうすると、岸さんがいくら国内法を重んじようとしても、これは条約違反になるじゃありませんか。どういうことになるのです。
  111. 岸信介

    岸国務大臣 その点は、先ほどから申し上げておるように、この五条は、国内法である自衛隊法というものを排除しているものではなくして、それを含めて、その手続に従ってやるということを申しているわけでございますから、その点自衛隊法でもって、自衛隊の出動というものに対して国会承認しない、あるいは事前に承認をしないとか、あるいは事後にこのものを承認しないというような場合においては、自衛隊法においてその出動をやめなければならない。こういう自衛隊法の規定を、憲法九条というものは排除しておらないのですから、それを含めて、そういうものに従ってやるということでございます。
  112. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、条約の五条の義務というものは、日本は尽くせなくなるわけです。それでいいのですか。国内法よりも条約の方が優先するわけですよ。そうなれば、この国内法でもって、自衛隊法に従って日本が行動するならば、条約のきめられている点というものは履行できないという結果になるのですよ。この点はいかがですか。
  113. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げているように、この条約の五条という規定は、今戸叶委員は、憲法だけに従えばいいのだ、憲法以外の国内法には従わなくていいという前提をとっておいでになりますけれども、私どもが一貫して申し上げているように、この五条は国内法を排除するものではない。従って、国内法であるところの自衛隊法の手続に従うということは、当然のことであるというふうに私ども考えておるのであります。従って、この自衛隊法の手続において、国会がこれを承認しないという場合において、自衛隊法によってこの出動をやめなければならぬということは、これは当然出てくるわけであります。実際問題として考えるならば——法律論でなしに、実際論から言うならば、いかなる場合におきましても、政府が無謀なことをするわけはございませんし、現実に武力攻撃があった場合で、その武力攻撃というものがごく小規模であって、その場合に直ちに自衛隊を出動さして、そうして事態を大きくするというようなことは、どの政府の場合におきましても考えるわけはないと思います。しかし、法律論として考えるならば、今言ったようになるわけでありまして、実際論としては、政府考え国会考えが違うような事態が起こってくるとは私は実は考えておりません。しかし、法律論としては、今言った通りに、この自衛隊法を含んでおるのでありまして、自衛隊法の手続を得ることができなかったという場合においては、当然出動をやめなければならぬ。それをやめたからといって、五条の日本義務に違反するという問題は起こってこない、かように考えております、
  114. 林修三

    ○林(修)政府委員 今のところをちょっと私補足さしていただきたいと思います。条約の第五条は、各締約国がそれぞれの行動をとるわけでございまして、締約国でございまして、単に政府のみの——現実に行動をとるのは政府でございますが、行政権のみによって云々するということは、ここには書いてないわけでございます。当然に、日本の場合、アメリカの場合、国権の最高機関たる国会の意思が加わって、それぞれの締約国が行動をとるわけでございます。そういう趣旨から申しまして、これが、自衛隊法の規定によって国会承認を得る規定を排除するという趣旨は、どこにも出ておらないわけでございます。もちろん、現実の武力行動は政府でなければとれません。政府がとるものでございますが、日本国の意思は、政府の意思と国会の御意向と、両方が相合致してきまるものである、そういう趣旨をこれはどこにも排除しておるものではございません。政府のみでやれというようなことは、どこにも書いてございません。
  115. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、今岸さんの説明されたことも、林さんの説明されたことも、よくわかっているのです。わかっているのですけれども、私が疑問に思っている質問にはちっとも答えてないのです。自衛隊法ということをこの中から何とかして読もうとするから、問題が起きてくるわけです。自衛隊法として読んだ場合に、ほかの面からいうならば、また問題が出てくるのですよ。たとえば自衛隊法では、日本に対する武力攻撃が行なわれたときには出動するのです。ただし、日本に対する直接の武力攻撃じゃなくて、いいですか、日本にいるアメリカに対する直接の武力攻撃でも、これでは日本が受けて立たなきゃならなくなっているわけなんです。これが新しい条約の特質なんですよ。それを自衛隊法も変えもしないで、そしてこの条約によって読ませようとするから、そこに問題が起きてくるわけなんです。それをどんなにこじつけようたって、これはこじつけられるものではない。それでは、私が質問したいことに対して、単刀直入にお答え願いたい。つまり、今のような御答弁ですと——私は答弁を繰り返しませんよ。今のような御答弁ですと、条約の方が国内法よりも優先するということの、その趣旨に反するではありませんかということなんですが、いかがですか。
  116. 林修三

    ○林(修)政府委員 私が先ほどからお答えいたしております通り、国内法が条約の趣旨に反するというようなことは、全然出て参りません。
  117. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど法制局長官が申し上げたように、国内法と条約との関係は、長官が申した通りだと思います。この条約が、はっきり自衛隊法の規定を排除するということをかりに明示して、憲法のみの規定に従い、その他の国内法に従わないということを、もしもきめておるとするならば、あるいは国際法と国内法の自衛隊法があるにかかわらず、それがどうなるかという効力の問題があると思います。しかしながら、この条約自身は、私どもが先ほどから申し上げておるように、それは、戸叶委員がその点を了承されないのじゃないかと思いますが、これが国内法の自衛隊法を排除しておるのだ、憲法だけをいっておって、国内法たる自衛隊法を排除しておるのだ、こう解釈されておるようでありますけれども、われわれはそう解釈していないのです。これを含んで、それを排除していない。従って、自衛隊法に従うということをこの条約内容としておるのだと解釈しておりますから、ちっとも国際法と法律との関係は出てこない、こう思います。
  118. 戸叶里子

    ○戸叶委員 排除しているとかしていないとかいうことの問題よりも、以前の問題として、この条約そのものからは、自衛隊法によって行動をするのだということは、出てきておらないし、私が長い間この条約を読んでいても、こういうような例は見たことがないということをはっきり言っているわけなんです。そこで、自衛隊法は排除するものではない、よろしゅうございます、それでけっこうです。その仮定の上に立ちましょう。憲法の九条も関係している。それから自衛隊法も排除するものじゃない。しかし、自衛隊法を排除するものじゃないということは、ここには書いてない。書いてないけれどもアメリカはそれはわかっておる。日本もそうだと思っているのだ、そこまで譲歩します。ところが、さっきから私が伺っておりますのは、たとえばこの武力行動があった場合に、日本がその出動をする場合に、自衛隊法で国会承認を得なければならないのですね。ところが出動をしなければならないときに、国会で、これは出動はやめるべきだといわれるような場合がなきにしもあらずなんです。そういうようなことが起きた場合に、しかも、この条約においては、すでにアメリカでは憲法の手続に従って出動するということをやっちゃっているわけですよ。日本だけが自衛隊法でもって、そうして国会承認を得られないで出られないということになれば、条約に反する場合が出てくるではないかということを言っているわけです。これを言っているわけです。     〔発言する者多し〕
  119. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。——静粛に願います。岸総理大臣——静粛に願います。
  120. 岸信介

    岸国務大臣 これは両締結国が、日本施政下にある領土が武力攻撃をされた場合において出動するということ、行動するということを、両方で宣言し合っているわけです。従って、この規定が、われわれの言っているように、自衛隊法を含んでおるとするならば、あるいはその結果として、自衛隊法によって承認を得ない、従って日本国としては出動しない、アメリカアメリカの憲法の規定に従って出動するという場合が、理論的には起こってくると思います。また、逆に、日本としてはするが、アメリカが憲法の手続に従ってできないという場合があり得ると思います。しかし、それは初めからそういう制約のもとに両締結国がやるということをしておるわけでありまして、実際問題としては、現実に武力攻撃が相当組織的に、計画的に行なわれているのですから、私は結論としては、実際問題としては、そんな差異が出てくるとは思いません。しかしながら、法律の解釈論としては、そういうことがあり得る、こう解釈しなければならぬと思います。
  121. 戸叶里子

    ○戸叶委員 実際問題としては、そういうふうなことが起こり得ない。しかし法律論としては、そういうことがあり得る。日本の場合——アメリカの憲法の手続というものは、アメリカの憲法によってきめられてあるのです。あとアメリカの憲法のことは私は触れますけれどもアメリカで宣戦布告なり出動命令を出しちゃうわけですよ。しかも、その武力攻撃に対しては、日本施政下においては、共同の危険に対処するように行動をするわけです。アメリカの方では、その憲法の手続でもって出動命令を出してしまう。日本の場合には、自衛隊法で国会審議をする。ところが、国会において出すべきではないということがきめられる。一方、条約においては、共同の危険に対処するように行動するんだと条約できまっちゃっているのです。きまっちゃっているのに、国内法でもってこれを国会が認めないからやらないのだ、こういうことになれば、ばらばらになるということが一つ、そういうことがあり得るということを岸さんはお認めになりました。しかし、そうなってくると、条約の方が優先するという、その趣旨に反するじゃありませんか。条約優先がなくなるじゃありませんか。
  122. 岸信介

    岸国務大臣 私はそんなことはないと思います。両締約国とも、そういう場合においては無条件に出るということじゃございませんで、憲法の規定及び憲法の手続、その国内法を含んでの手続、規定というものを前提として条約ができているわけでありますから、その憲法なり、あるいは憲法上の手続なり、あるいは国内法の手続というものに従って、これでやれない——もちろん、実際の問題としては、私はきわめて明瞭な場合であると思いますけれども、理論としては、そういう場合にちぐはぐの事態ができましても、それがいわゆる条約に違反という問題ではない。従って、いわゆる条約と国内法との効力の問題には出てこない、こういうふうに考えております。
  123. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、岡田春夫君から関連質疑の申し出があります。これを許します。岡田春夫君。
  124. 岡田春夫

    ○岡田委員 私、関連ですから、簡単に伺いますけれども、今の条約、法律——岸さん、聞いて下さい。法律解釈を、あなたの解釈の通りにこれを読み直して読んでみましょうか。憲法の規定によって、いわゆる自衛隊法の規定に基づいて国会自衛隊の出動を禁止したというような場合は、憲法の規定に基づいて行なわれたんだと、こういう解釈になるわけです。そうすると、第五条を読みかえして言うならば、各締約国は、日本国の施政のもとにある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであるということは認める。認めるが、しかしながら、今言ったように、憲法の規定において、このような危うくする事態に対しても、日本自衛隊は出動しないということになる、こういう解釈になりますね。
  125. 林修三

    ○林(修)政府委員 ……
  126. 岡田春夫

    ○岡田委員 いや、あなたに聞いているのじゃない。あなたは、これから私が何を言うのか、わかっているのですか。あわててはいけない。もう少し落ちつきなさい。——そういうことになりますね。あなたの解釈でいくと、そういうことになりましょう。そうじゃないですか。——もう一度言いましょうか。岸さんの解釈通りにすると、自国の憲法上の規定に従ってということは、自衛隊の法的な規定に基づいて、日本国会自衛隊の出動を禁止した、認めないというような場合においては、認めないということが、自国の憲法の規定になる、こういうことになるわけですね。そうすると、この第五条を読み直してみると——まあ簡単に言いましょう。日本の国の領域に対するいずれか一方の武力攻撃が、日本の国の平和及び安全を危うくするものであるということは認める、ここまでは認める、しかし、日本の憲法の規定に従って行動しないことを宣言する、こういうことになるでしょう。そうでしょう。
  127. 岸信介

    岸国務大臣 これは、もちろん、私は、実際問題と法律解釈を混同してはいかぬと思います。今われわれが申しておることは、純粋の法律解釈の問題であります。それで、法律解釈としては、これは日本国が認めるということであって、日本国が認めるについては、ただ時の政府がそう認めたというだけではなしに、国会と両方の意思が合致して認めたことでありまして、これは国会も、現実に武力攻撃があって、そうして武力攻撃に対して、これは日本の安全を害するものだと、日本国がそう認めた場合に、結論として、その場合に出動を認めないということは、これは自衛隊の本質からは私はあり得ないと思います。だから、現実に武力攻撃があって——日本の安全を脅威しているかどうかという認識が違うから、そこで出てくるのだと思いますが、現実に武力攻撃があって、そうしてこれが日本の平和を害するという認識、日本国が、すなわち国会政府もそう認めたということになれば、これは自衛隊法によって、自衛隊が出ていってそれを防衛するということは、これは当然の結論として出る、こう思います。
  128. 岡田春夫

    ○岡田委員 岸さん、あなたの今言われたのは実際論ですね。実際論は大体そうなるだろうと思うのです。法律論を私は伺っておる。法律論においては、実はこの解釈については私はまだ別に意見があるのですが、しかし、あなたの今の御答弁に基づく解釈をそのままとったら、今言ったような表現になるのだが、それでよろしいのかと伺ったのです。そこで、法律解釈の問題として、あなたは、私があなたの答弁をそのまま取り入れてそういう法律解釈になるということの事実をお認めになるかどうか。すなわち、憲法の規定と手続に従ってという場合においては、自衛隊法の規定に基づいて自衛隊の出動が禁止された場合においては、共通の危険に対しては行動しないということを含んでいるんだということを、ここで法律解釈としてはそういう解釈ができますかというのです。実際論の問題ではないのですよ。法律解釈、この第五条の解釈から、そういう解釈以外には出てこないのではないか、この点を伺っておる。どうなんです。
  129. 岸信介

    岸国務大臣 前提として、武力攻撃があって、それが日本の安全を脅威し、日本の安全を危うくするということを、国会も、それから政府もともに認めたということであるならば、その結論として、今度は、自衛隊を出さないということが出てくるということは、私は、法律解釈としても認められないと思う。ただ、前提として、ある武力攻撃があった場合において、それがその国の平和を根本的に危うくするという認識について、あるいは政府の認識と国会の認識とが違うという場合はあり得ると思うのです。その場合においては、政府はそう認めておるから自衛隊を出そう、あるいは現に出した、しかしながら、国会はそう認めない、従ってそれをやめろという結論になることはありますけれども、前提として、武力攻撃があって日本の国を危うくするというときに、国会政府意見が一致して、そうして自衛隊は出さないのだという結論が出るということは、法律論としてもあり得ない、こう思います。
  130. 岡田春夫

    ○岡田委員 武力攻撃の問題について国会がそれをどう解釈するかというのは、これは実際論です。これについて、憲法の規定と手続の問題についての法律解釈をあなたは先ほどから言われておる。武力攻撃と憲法の問題とをすりかえちゃいけませんよ。法律解釈としては、憲法の規定と手続というものについては、自衛隊法の適用を行なうのだ。これにおいて、自衛隊法の規定に基づいて自衛隊の出動を禁止した場合においては、これは行動することができないということを宣言するということになるのでしょう。武力攻撃の問題というものと一緒にして、実際論で、まるで何かあんこをひっかき回すようなごまかしをしたって、私はだまされませんよ。そんな話ではありませんよ。
  131. 林修三

    ○林(修)政府委員 法律論としてもお答えいたしますが、第五条は、御承知の通りに、「各締約国は、」でございまして、これを日本の場合にとってみて、日本政府のみが宣言しておるわけではございません。日本の国権の最高機関たる国会を含めて、日本国が、この条約が成立した上はこういう行動をとることを宣言しておるのでございまして、日本政府のみの宣言ではもちろんないわけであります。日本国——国会を含めてでございます。従いまして、国会を含めての宣言でございますから、先ほど総理の仰せられたことが、法律論としても妥当する、こういうことになるわけでございます。
  132. 岡田春夫

    ○岡田委員 だから、私も戸叶さんもさっきから聞いておるのです。あなたもさっきそう言ったじゃないですか。条約というものは、二つの国の権利義務を拘束するものでしょう。だから、このような条約において、行動するという宣言をした。これと、自衛隊法の手続において、国内法の規定によって、自衛隊の出動を禁止したという、憲法上の手続があった場合、条約上の、この行動するという権利義務が拘束されることになるのではないか、国内法の手続と条約上の権利義務が相反する結果になるではないかということを聞いているんじゃないか。だから、言っているのじゃありませんか。
  133. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは何にも反するわけではないと思います。自衛隊法の七十六条は、御承知の通りに、自衛隊の出動の手続をきめております。この手続は、何らこの条約は排除しているものではございません。この手続は、あくまでこの手続に従って自衛隊の行動が行なわれるわけでございます。ただ、日本国として、この第五条に基づいた宣言、これはもちろん、この条約が成立すれば、日本国政府のみならず、国会あるいは裁判所も含めて、日本国がこういう条約を認めたわけでございます。そういう意味における日本国として最善の努力をする、こういうことの宣言の効力は、これは日本国の各機関に私はみな及んでおると思います。しかし、その自衛隊法の手続をとる、国会承認を得て手続をとる、あるいは国会が、第五条の精神に照らしてもなおかつ武力行動をすべきでないという御趣旨でそれを排除された場合に、それをしないことがこの条約に違反するというような問題ではない。このことは、先ほどから私が申し上げておる通り総理のお答えもそれと同じ趣旨でございます。日本国政府のみが認めても、日本国として、国会も、そういう第五条の趣旨に反せずという趣旨で、武力行動をすべきでないということを議決なさった場合に、日本政府がその行動をとらないということは、何らこの条約に違反するものではないと私は思います。
  134. 岡田春夫

    ○岡田委員 これは関連ですから、私はこれでやめますけれども、林さん、あなたの解釈の通り私は言ったのです。自衛隊法の手続によって、自衛隊が出動してはいけないということを決定した場合には、行動しないということを宣言すると読みかえてもいいのだろう、こういうことを言っている。そうでしょう。そうじゃないのですか。それ以外にどういうのです。あなたは、法律解釈としてどういうように解釈する。出なくてもいい、憲法の規定に従って、行動しなくてもいいということを宣言したことになるだろう。——あなたは首を振るなら、私の言ったのが違うなら、それじゃ伺いましょう。出動してはいけないという憲法上の規定があっても、行動すると宣言するのですか。そういうふうに解釈するのですか。法律解釈をはっきり言いなさい。行動するか、しないか、二つしかないのだから、するのか、しないのか、どっちなんです。するのか、しないか。
  135. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどからお答えいたしておりまする通りに、日本自衛隊の行動は、日本自衛隊法の七十六条の規定によって行なわれます。従いまして、国会が御承認にならなければやらない、国会の御承認を受ければやる、こういうことでございます。
  136. 岡田春夫

    ○岡田委員 それでは、第五条における、行動するという宣言というものは、自衛隊法の規定によって行動しない場合もはっきりあるのだ、それを宣言するのだ、そういう意味ですね。
  137. 林修三

    ○林(修)政府委員 それは違うわけでございます。先ほどから申し上げておる通りに、岡田委員の仰せでございますが、私の解釈はそれとは違うわけでございまして、第五条は、あくまでこの文字通りに読むべきでございます。日本国武力攻撃を受けて、それに対してそれを共通の危険であると認めて行動することを宣言しておるのでありまして、日本国においてはいろいろの機関があるわけでございます。行政府のみならず、国会もあるわけでございまして、その意見の一致したところに従ってこれは行動する、こういうことでございます。あるいは、武力攻撃というものは明らかな観念で、実際問題としても、法律的にも、そう認定に狂いが生ずるものではないと私は思いますけれども、しかし、その場合に国会が、武力行動をすべきじゃないという御判断があれば、この条約からはすでにはずれているわけでございます。共通の危険と認められないからこそ、国会はそういうことを御決議になったと思います。そういう場合に、共通の危険でない、あるいは武力攻撃でないという場合に日本が行動しないことは、何らこの条約に違反するものではない、かように考えます。
  138. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今、条約からはずれるとおっしゃるのですけれども自衛隊法を適用する場合には、その武力攻撃があって共通の敵であるというふうに見なしたから、自衛隊法で国会承認を得るために国会を開くわけなんですよ。ところが、その国会で否決したということが起きてくるわけです。それを、条約からはずれているなんという言い方は、おかしいじゃないですか。どうしてもおかしい。
  139. 林修三

    ○林(修)政府委員 今、戸叶委員の仰せでございますが。手続としまして自衛隊法の手続によるということは、先ほどから……。     〔発言する者多し〕
  140. 小澤佐重喜

    小澤委員長 御静粛に願います。御静粛に願います。
  141. 林修三

    ○林(修)政府委員 自衛隊法の手続によるということは、先ほどから申し上げております。これは全然何も私そこに問題はないと思います。自衛隊法の手続によるということは、排除するものではない。しかし、この条約が成立した暁におきましては、つまり、第五条の規定は日本国全体についての効力があるわけでございまして、日本政府のみがこれに拘束されるわけではございません。日本国会も裁判所も、すべてこの条約が拘束する範囲においては拘束されるわけでございます。拘束というのは非常に厳格なものではなく、その規定は、先ほど申しましたように、つまり武力攻撃を受けた場合に、これに対処して最善の努力をする、つまり共通の危険と認めて必要な行動をとるということを宣言しているわけでございまして、行動は、もちろん行政府の行動として現われますけれども、この第五条の意味は、これは日本国全体に対して及んでいるわけでございまして、当然に国会自衛隊法に基づく御決議も、この第五条の精神を受けてなされること、これは当然のことだと私思うわけでございます。
  142. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、飛鳥田一雄君より、関連質疑の申し出がありますから、これを許します。飛鳥田一雄君。
  143. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それでは、一つ伺いますが……。     〔発言する者多し〕
  144. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  145. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 この五条の「自国の憲法上の規定及び手続に従って」という言葉の中には、当然、自衛隊法も、排除するものではなく、含まれているのだ、こういう御説明だったと思うのです。そう解釈すべきものだとおっしゃったのですが、これはあなた方日本政府だけの了解ですか、それとも、アメリカも了解しておる解釈ですか。
  146. 林修三

    ○林(修)政府委員 私が先ほどから申し上げております通りに、文字通り意味においての憲法上の規定あるいは手続というものではないということを先ほどから申し上げておりますが、しかし、自衛隊法の規定を排除するものではないということも申し上げているわけでございます。その点、今飛鳥田委員のお説は、ちょっと私の申しましたことと違いますから、その点ははっきりさせておきます。  それから、同時に、この規定が、日本国のみの了解かということでございますが、そうではございません。日米両国ともはっきり了解しております。
  147. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今の長官の説明は、総理も別に異存はないわけですか。
  148. 岸信介

    岸国務大臣 異存はございません。
  149. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それでは伺いますが、もし、自衛隊法の規定を排除するものではない、こういうことがアメリカの同時に了解である、こう仰せられるならば、いつ、あなた方は、自衛隊法を十年間改正しないというお約束をなすったのですか。
  150. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、そんな約束をしたことはございません。
  151. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それではもう一度伺いますが、自衛隊法を国会改正して、そうして自衛隊の出動の条件をもっともっと困難にしていく、こういうような事態が発生をする。十年間ですから、国民の感情あるいは世論というものは動きます。この十年間の間に、自衛隊法が改正をせられて、出動が非常に困難になっていく、こういうような事態が発生をいたしました場合も、先ほど、アメリカは了解しているということですから、アメリカから条約違反などと言われることはございませんな。
  152. 林修三

    ○林(修)政府委員 仮定の問題でございますが、この第五条の趣旨に全然反するような自衛隊法の改正があれば、これは私は条約と矛盾すると思います。しかし、この第五条の規定と矛盾しない範囲における改正は、もちろん可能だと思います。
  153. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 あらためて総理に伺い直しませんが、そういたしますと、第五条の趣旨に反するがごとき自衛隊法の改正はしないというお約束をなすってしまったわけですな。
  154. 林修三

    ○林(修)政府委員 第五条の趣旨に反するというのは、つまり、いかなる武力攻撃を受けても、たとえば全然日本は武力行動をしない、そういうものは私はこの条約の趣旨に違反すると思います。従って、この条約国会の御承認を得て効力を発生すれば、これは日本国に対してそういう効力が及んでおるわけでございますから、そういう条約の趣旨に反するようなものは、これはできない、私はかように考えております。
  155. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、結局、戸叶委員の御質問になりましたように、条約が法律に対して優先をするという結果をはっきりとお認めになる、こういうことに帰着しますな。
  156. 林修三

    ○林(修)政府委員 条約と法律の関係において、条約というものは、国際法的に、また憲法上も、誠実に順守すべきものでございますから、その条約に反するような国内法の制定というものは——政府国会も、もちろんこの条約の範囲内において考えらるべきものだ、かように考えるわけでございます。
  157. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、総理は、この条約の第五条の中に、今後十年間にわたって、日本国民の世論によっては変更のあるべき不確定要素を含められる考え方、こう考えてよろしいわけですか。将来国民の世論が変わって参りました場合にも、その変わってきたものを十分第五条の中に生かしていけるというお立場ですか。関連質問ですから、あまり詳しく質問いたしませんが、このことについてはっきり……
  158. 岸信介

    岸国務大臣 どういう御趣旨か、私、具体的にちょっと想像ができないのですが、日本が他から武力攻撃を加えられた、そうしてそれが大規模に加えられておるということに対して、自衛隊が出動して祖国を守るという基礎考え方が、十年間に変わるとは私は考えません。しかし、従来こういうふうな手続であったのだが、この手続をもう少し合理的にこう直した方がいいというようなことは、必要があれば改正することになりますけれども、今の根本についてそれが変わってくるということは、私は予想いたしておりません。
  159. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  160. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。戸叶里子君。
  161. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、午前中に五条の問題で政府に明快な答弁を求めたのでございますけれども、私ばかりでなくして、同僚の議員の方々もわからないような不明快な答弁しか得られなかったわけでございまして、もっといろいろ質問したいのですけれども、ここにとどまっておりますと、先へ進みませんので、先へ進みますが、一つお願いしたいのは、私自身としても、どうしてもこの条約そのものから、「自国の憲法上の規定及び手続」というところから、国内法を排除するものではないというようなことがわからないので、他にそういうような例があるかどうか、具体的な例を、あとでけっこうですから、お調べになって例を示していただきたいということを条件にして、そして、あとこの問題については同僚の議員に譲って、先に進みたいと思います。  この憲法上の手続というのは、アメリカ側においての憲法上の手続というのであろうと思います。このアメリカ側の憲法上の手続というのは、一条の八節にある議会が軍隊に対して持つ権限という項の中で、「戦争を宣言し、拿捕免許状を授与し、陸上及び海上における拿捕に関する規則を規定すること」とか、あるいはまた「海軍を募集し維持すること。ただし、このため歳出予算は二年以上の期間にわたることはできない。海軍を建設し、維持すること。陸海兵の統帥及び規律に関する規則を制定すること。」こういうことがあるわけでございますが、これをさすのかどうかを伺いたいと思います。
  162. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 アメリカの憲法上の手続でございますが、ただいま御指摘の通り、特に第五条に関係いたします部分といたしましては、アメリカ憲法の第一条第八節第十一項でございますか、アメリカの連邦議会が宣戦布告を行なう権限を有する、これが第一点でございます。それから兵を動かす場合の規定でございますが、これはアメリカ憲法の第二条第二節第一項にございます大統領は軍のコマンダー・イン・チーフ、総指揮官たる資格を持っている、この規定でございます。
  163. 戸叶里子

    ○戸叶委員 憲法の二条によって兵を動かす、それはたしか「大統領は、合衆国陸海軍及び合衆国の現役に召集される各州の市民兵の総帥である。」この項によるわけてございますか。
  164. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その通りでございます。
  165. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この条項から出てくる文句は、「大統領は、合衆国陸海軍及び合衆国の現役に召集される各州の市民兵の総帥である。」というので、指揮権が大統領に与えられている、こういうふうにしか読めないと思いますが、それでよろしいでしょうか。
  166. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 そのように指揮権が与えられているわけでございますが、外国からの不意打ちの攻撃とか、外国からの侵略を排除するためにその兵を動かすということも、この権限のうちに含まれているものである、こういうふうに解釈しております。
  167. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の条項からは、軍隊を出動させる権限というものが出てくるように思えないのですけれども、この条項だけで足りるというふうに了承していらっしゃるわけでしょうか。
  168. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 アメリカの憲法上の解釈といたしましては、そのように解釈されているようでございます。
  169. 戸叶里子

    ○戸叶委員 アメリカの国内法によりますと、大統領に対する授権の決議というものがあるはずでございます。さきごろの中近東においての例をとりますならば、中近東において情勢がどうも少しおかしいというようなことで、大統領に対して、出動するのに一々コングレスを開かなくてもいいように、大統領に授権の決議というものを行なって、すぐ出動させるような権利を与えているわけでございますけれども日本の場合には、この授権の決議というような手続をとる必要がないとお思いになるかどうか、そしてまた、それをとらなくても、また非常時の場合にコングレスを開かなくても、承認を得なくても出動させることができるかどうか、この辺のことをお話し合いになったかどうかを承りたい。
  170. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの御質問の趣旨は、日本の場合でございますれば、先ほどから御質疑ございました自衛隊法に従ってやるということになるのでございます。
  171. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうじゃないのです。在日米軍に対して出動させる場合に、一々コングレスの許可を得なければならないということになりますと、非常事態においてその手続をとれないような場合があると思うのです。議員がちらばっているとかなんとか、そういうような場合に、たしか国内法によって授権の手続というものがあって、そういうふうな権利を与えられた場合において、大統領がこの出兵をさせられるというふうに私は考えているのですけれども、この点は間違っているでしょうか。
  172. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 これはアメリカの憲法上の解釈の問題でございますが、一般にそのような必要がありました場合に、大統領は自分の最高指揮官の権限に基づきまして兵を動かす、そういうふうな侵略攻撃に対して対処することができるというふうに考えられております。ただ、それだからといいまして、それではそういうふうな、ただいま御指摘のような決議が必要であるとか、決議をしなくてもいいとかいう問題でございませんで、原則としてはそうでございますが、そのような決議が行なわれることもあるわけでございます。しかし、それは必ず決議が行なわれなければだめなのだという趣旨にはとられていないようでございます。
  173. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、武力攻撃が行なわれた場合に、アメリカでは、別にコングレスを開いて、そしてその出動をさせる場合に、議会での承認を求むるというようなことをするひまのない場合には、大統領は勝手に出動ができる、こういうふうに了解していいわけですね。そうしますと、国内にいう授権の決議というようなものは、どういうような場合にアメリカにおいて使われるのでございましょうか。
  174. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 これは、たとえば中近東の場合におきますように、そのような条約関係も何もないというような場合でございます。そういう場合に、そのような決議で行なわれておるのが実際だということでございます。
  175. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは日本アメリカとに関する限りにおいては、アメリカ憲法の二条において、大統領が統帥の権利があるということによって出動の権利もあるのである、こういうふうに政府は了解していられるようでございますが、その点は、日本アメリカとの間でもお話し合いになっていることと思いますけれども、何しろ急なそういう事件が起きた場合に、こういう条項があるにもかかわらず、そのこと自体が運営されないというような場合も出てくるのではないかということを私は考えたわけです。もちろん、この条約自体については、私ども考え方は違うわけでございますけれども、今この授権の手続というようなものが日本の場合に対してあるかどうかということを確かめてみたわけでございますから、条約局長の言われた言葉で了承したいと思います。  そこで、これもこの委員会質問されたことでございますけれども、五条でいうところの「いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め」、こういうことは、つまり、認めるということは、すなわち、共同防衛の前提だと思います。そうして今度は、共通の危険に対処するように行動をするということが、幾ら私は素朴に考えてみても、これはお互いに一緒になって共同防衛をするんだ、従って、この条項では、共同防衛に対する義務日本でも負っているんだ、こういうふうにしか読めないのですけれども、この点はいかがでございましょうか。
  176. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 条約の解釈の問題になりますが、ここで、いずれか一方に対する武力攻撃が自国の平和及び安全を危うくするものであるということを、事実、お互いにそういうものであることを認めるわけでございます。そうして、この共通の危険に対処するために、対処する行動を宣言する、このようになっております。これが共同防衛云々という問題になりますと、この字句は、そういうふうな事実を認めて共通の危険に対処しようということでございまして、これからいわゆる共同防衛云々という問題が直ちに出てくるというふうな筋合いの問題ではないと思います。
  177. 戸叶里子

    ○戸叶委員 総理にお伺いしたいのですけれども、この委員会におきまして、たびたび総理大臣は、武力攻撃日本施政下にある領域において行なわれた場合には、日本の場合は個別的自衛権である、アメリカの場合には集団的自衛権と個別的自衛権だ、こういうふうな答弁をされているわけでございます。けれども国連憲章の中には、自衛権は、個別的自衛権と集団的自衛権と二つあるわけです。そこで集団的自衛権の点でございますけれども、二国の間で、目的も同じだ、それから行動も同じだ、ところが、この場合、一方だけが集団的自衛権で、片方の方はそうでない、こういうふうな理論が一体成り立つかどうかということを私は思うのですけれども、そういう例をお示し願いたいと思います。ほかにそういうことがございますか。
  178. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、あるいは私誤解しているかもしれませんが、第五十一条で述べています点は、集団的自衛権並びに個別的自衛権でございます。従いまして、集団的自衛権と申しますのは、ある国が武力攻撃を受けました場合に、こちらから武力をもってこれを援助におもむく権利でございます。従いまして、武力攻撃が起きた国、ここには個別的自衛権が発生しておる。しかも、これを今度は応援に行く方の側では、集団的自衛権でございますから、常にここに個別的及び集団的自衛権の発動が行なわれるわけでございます。
  179. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ところが日本アメリカとが、日本施政下において武力攻撃を受けた場合に、日本に受けた武力攻撃に対しては、アメリカが集団自衛権の行使をするわけですね。そして今度は、アメリカ武力攻撃を受けた場合には、日本がこれを個別的自衛権でやるというその理屈は、どういうところから出てくるか、岸首相にお願いいたします。
  180. 岸信介

    岸国務大臣 この条約五条の規定するところは、日本施政下にある領土に対して武力攻撃の加えられた場合であります。それが日本の領土内で、基地である場合もありましょうし、基地でない場合もありましょう。もちろん、いずれの場合たるとを問わず、日本施政下にある領土が武力攻撃された場合でありますから、日本としては、これに対して固有の自衛権でもって個別的の自衛権が発生するわけですから、これによって防衛をする、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  181. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その武力攻撃の性質というものが、日本に対する武力攻撃じゃないのですね。日本米軍がいるために、米軍に対する武力攻撃、そういうものに対して——米軍がいなければ武力攻撃を受けないで済むのですけれども日本基地のある米軍に対する武力攻撃を自衛する場合、これが集団自衛権じゃないのですか。
  182. 岸信介

    岸国務大臣 いかなる場合においても、日本の領土に対する武力攻撃が行なわれる場合であります。今、目的がどこにあるというようにお話がありましたが、問題は、武力攻撃という、目的のいかんにかかわらず、日本の領土が武力攻撃を受けるわけでありますから、これを防衛するということは個別的自衛権で十分に説明できる問題であります。
  183. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、私は、少しMSA協定安保条約関係をここで述べてみたいと思うのです。一九五一年に現行安保条約締結されております。それから一九五四年の三月に日米相互防衛援助協定、すなわちMSA協定締結されております。その当時、このMSA協定を結ぶか結ばないかで、ずいぶん国会においては議論されました。私も一年半くらいこの条約と取っ組んだことを覚えております。その当時、なぜMSA協定を受けるか受けないかということを討議したかというと、これが軍事的な義務を負うのじゃないか、こういうことをたびたび問題にしたわけです。つまり、相互安全保障法五百十一条の援助を受ける資格という中で、a項にこういうことが書いてあります。一、国際間の理解と親善の増進及び世界平和の維持に協同すること、二、国際間の緊迫の原因を除去するために相互に合意せらるべき行動をとること、三、合衆国が締約国である多数国間または二国間の協定または条約に基づいて自国が受諾した軍事的義務を履行すること。この「自国が受諾した軍事的義務を履行すること」ということが非常に問題になりました。そこで日本は、日本アメリカとの間で結んだMSA協定の八条におきまして、「日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いて負っている軍事的義務を履行することの決意を再確認する」ということになって、つまり、日本アメリカ合衆国とが安保条約において負っている軍事的義務以上のものは負わなくてもいいのだというふうなことをこの八条でうたったわけです。このMSA協定が結ばれます一年ほど前に、アメリカの大使館あてに日本の外務省が、MSA協定を受け入れるためにはどういうふうな態度であったらいいかという注意を問い合わせて、そしてその答えがきました。その手紙の中で、問題は二つあるわけでございます。その手紙の一に、こういうことを日本質問しております。「MSA計画によるアメリカの対外援助の基本的目的は、自由世界の安全を維持し、かつ増進することにあると思うが、日本政府としては、この援助によって国内の治安と防衛とを確保することができれば、右の基本目的は十分達成されたものと了解してよいかどうか。」という質問をしたんです。それに対する一の答えとして、「日本が受けることになる援助は、日本が国内の治安を維持し、また平和条約第五条(C)項で保証されている自発的な個別的または集団的自衛の固有の権利を一層有効に行使するようにするもので、これによってMSA計画の主要目的を達成しようとするものである。」こういうふうに答えをしてきまして、そして、ここですでに日本の集団的自衛の観念をMSAで一応思い出させているわけです。そこで、その次の問題といたしまして、第三番目に「MSA第五一一条(A)が適用される場合、そこに規定している「軍事的義務」は、日本の場合は日米安全保障条約によって日本がすでに引き受けている義務を履行すれば十分だと了解するがどうか。また同条(a)の(4)の「自国の防衛力を増進し、かつ、維持すること」という要件は、日本の場合は、国内の一般的経済条件が許す限度内で、また政治的および経済的安全を害することなく、これを実現すれば十分であるとみてよいか。」こういうふうに質問をいたしました。そうしたところが、この質問に対しての答弁というものが、「軍事的義務の履行の要件は、日本の場合においては、日米安全保障条約の下にすでに引きうけている義務を履行すれば十分である。」つまり、この義務というのは、日本アメリカ基地を貸与する——ほかの国に貸してはいけないということですが、それで十分である。「またMSA計画も、日米間のいかなる条約も、自衛のため以外に日本の治安維持の部隊を使用することを要求していない。自国の防衛力を増進し、」云々とあるわけで、わざわざここに「自衛のため以外に日本の治安維持の部隊を使用することを要求していない。」という答弁がきているわけです。このことは、すなわち、自衛のためならば、治安を維持する部隊を使用することを要求するということになるわけで、新しくここでもって日本に対して義務を与えられたのだということで、大へん当時の国会においては問題になりました。自衛のために治安維持の部隊を使うのだ、こういうことをはっきり言ってきておるわけです。それまでも、日本の解釈として、日本には自衛力があるのだということを言っておるわけです。ですから、よけいなことを言わなくてもいいにもかかわらず、聞きもしないのに、アメリカがわざわざ、自衛のため以外には、治安維持の部隊を使用することを要求するものではない、自衛のためなら要求するのだということを、はっきりここで義務づけてきているわけです。このときに、もうすでに今日の五条の問題をアメリカが要求しているということが私は言えると思うのです。問題はそこにあるわけでございまして、この現行安保条約審議までは、こういう問題は起こってこなかったわけです。ところがMSA協定になって、日本がこの援助を受ける条件として問い合わせた、そうしたところが、こういう返事でした。これはMSA協定の中で、日本にはっきりと、自衛のために治安維持部隊を用いよということを義務づけてきているのであって、アメリカ日本にいる軍隊との間で、一緒に自衛権の行使を要求してきているという、その観念をここに規定づけているものでございます。こういうふうなことを、このときに言ってきておるのでございまして、この五条においては、集団的自衛によって日本武力攻撃に対処するものではないと言っているけれども、もうすでにこのときからそういうことをアメリカが要求してきているわけで、今そうおっしゃるのは少し間違いではないか、こういうふうに私は考えますが、この点はいかがお考えになりますか。
  184. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、特に今御指摘の、間違いであるかどうかという点は、そういう問題は起こらないものであろうと考えております。と申しますのは、相互防衛援助協定に関する交換公文がございますが、この交換公文におきごましては、いわゆるMSA協定が、現行安保条約と行政協定に言及しているときは、安保条約及びその地位協定に該当する規定があれば、それに言及しているものと考えて読みかえをなすべきである、このような交換公文をとった次第でございます。従いまして、MSA協定第八条の軍事義務を再確認する云々と申しますのは、MSA協定のときに、現在の安保条約におきましては、第三国に対して駐兵その他通過、基地の使用を禁止するという条項、これは第二条でございます。それから第三条に、アメリカの駐兵を認めるという規定がございますが、この二つが、当時私ども考えられましたところのMSA協定におきます軍事的義務である、このように考えております。従いまして、この二つの義務に該当するもの、すなわち、新安保条約におきましては、基地の貸与というのが新しい義務として、これに該当するものとして残る、このように考えておる次第であります。
  185. 林修三

    ○林(修)政府委員 ちょっと補足させていただきます。今の御質問の中で、当時は昭和二十八年だったと思いますが、いわゆるMSA協定を結ぶ前に、外務省からアメリカに問い合わせて、それに対してアメリカの回答があった、これについて御言及になったわけでありますが、その中で、いわゆる自衛のために治安を維持する部隊を使うことを、自衛のため以外に要求しないという趣旨は、これは御承知だと思いますが、当時はまだ今の自衛隊ではなかったわけでありまして、いわゆる保安隊時代でございます。従って、そういう治安を維持する部隊云々という言葉が使われたのだと思っております。当時のアメリカ側の回答も、もちろん、いわゆる向こうのMSA法あるいはそれの基礎をなすバンデンバーグ決議、そういう趣旨に出たものと私ども考えておるのでありまして、つまり、自助の意思を持たないものに対して、いわゆる援助をしない、そういう立場から、ああいう回答が出たものと考えるのであります。その点、決してあの当時においても——あの当時は、日本は保安隊でございましたが、他国を防衛するために保安隊を使うということは要求しないという趣旨だったと思います。また、今度の第五条におきましても、先ほど来説明がありました通りに、日本として、日本領域を守るというために日本が武力行動する、それ以上の趣旨は何もないわけでございます。そういう意味におきまして、何も当時と今と、アメリカの言っておることが変わっていることはない、かように考えるわけでございます。また、集団的自衛権の発動云々が、当時からアメリカが要求していたということはないと私は考えます。
  186. 戸叶里子

    ○戸叶委員 当時のアメリカ考えと今の考えとは違っていないということの証拠だ。というのは、つまり、日本が聞いてやらなかったのに、はっきりとアメリカでは、この集団的自衛の観念を打ち出してきているわけなんですね。なぜならば、日本で聞かなかったのにもかかわらず、自衛のためには日本の治安を維持する部隊を使用することを要求してきているのです。そうでなくても、治安のための部隊だったならば、自分の国を守るのはあたりまえなんです。ところが、それに対して要求するということをはっきり言ってきているのは、ここで、すでに集団的自衛というものを日本に要求してきているわけなんです。これが新しい義務だというので、大へん当時は問題になったと思うのです。これはあとから発展させていきます。  それでは総理大臣に伺いますけれども自衛権というのは、外部からの武力攻撃に対してその国自身が排除する権利ですね。そして、今度は、武力攻撃日本を直接の対象として行なっていないけれども日本と密接な利害関係にある国が武力攻撃の対象になったときに、それを援助する、そしてその武力攻撃を排除する、これが集団自衛の中心観念ではございませんか。
  187. 岸信介

    岸国務大臣 国連憲章でいっている集団的自衛権というのは、今おっしゃるような趣旨だと私も理解しております。
  188. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、今言われたそのものが日本に適用された場合に、どうして日本は集団自衛権じゃないということが言えるのですか。そっくりそのまま日本に適用された場合……。
  189. 岸信介

    岸国務大臣 日本の場合は、日本自身がやられている場合でございまして、今お話のように、日本と特殊の関係にある国がやられた場合に、そこへ出かけていってこれを援助するという場合ではございませんから、われわれは個別的の自衛権を発動するのだということを申しておるわけであります。
  190. 戸叶里子

    ○戸叶委員 集団的自衛の行使であるにもかかわらず、集団的自衛の行使でないというように答弁をされようとするから、そこで私はいろいろな問題が起きてくるのだということを指摘せざるを得ないのです。結局、日本に憲法があるから、集団的自衛権を行使することができない。もし、この平和憲法がなかったら、ほかの米韓、米比と同じように、集団防衛、集団自衛だということが言えるのじゃないですか、これと同じ文章でも。日本に憲法があるからできないのであって、そういうふうに言えるのじゃないですか。
  191. 岸信介

    岸国務大臣 米韓、米華等の条約におきましては、御承知の通り、おのおのの——アメリカの側から申しますと、アメリカ領域またはアメリカが行政権を持っておる地域攻撃された場合に、台湾や韓国がこれを援助するということになると思います。日本の場合は、この五条は、いかなる場合においても、日本の領土が武力攻撃を受けるのでありまして、領土外に出るという場合は絶対にないのであります。従って、いわゆる集団的自衛権日本領域——相手国の領域がやられておるという場合に、これを自衛の義務において援助するという場合は含まないのでありますから、われわれが終始個別的自衛権を発動すると言うていることは、これはほかの米韓や米華等の条約と比較して考えますると、はっきり出ておると思います。
  192. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今のお話を伺ってみましても、集団的自衛ということをお認めになると、ほかの場合と同じように、日本自衛隊が領土外に出なければならないような場合が起こるから、そういうふうにおっしゃるのですけれども、そういうことはさておきまして、この条約から見るならば、やはりこれは集団的自衛である。しかし、日本に憲法があるから、だから、この集団的自衛は認められないで、ああいう苦しい答弁をされているのだ、こういうふうに私は解釈するわけですけれども、その問題の発展はあとで続けます。  それに先だちまして、穗積委員から、この集団的自衛に関しての関連質問があるということですから、先にお聞きになっていただきたいと思います。
  193. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、穗積七郎君から関連質問の申し出があります。これを許します。穗積七郎君。
  194. 穗積七郎

    穗積委員 先週の金曜日に、私は、本新条約が、ややともすると侵略的な軍事同盟の危険があるということを申し上げて、そして条約審議に入るとば口で、自民党の御都合で中止になっていたわけです。その留保いたしました大事な質問については、次の機会に私の質問として別にさしていただきますが、その中に関連いたしまして、今の戸叶委員質問の集団的自衛権の有無に関する点は、今までの本条約審議においてもいろいろ議論がありましたが、非常に重要な点に触れておりますので、関連をして、ただその点だけに限って、この際お尋ねいたしておきたいと思います。  今の戸叶委員の御質問を繰り返すことになりますが、この前の私の質問でも、本条約五条を初めとする日本自衛権なるものの法律的な根源は、国連憲章五十一条によるものであるということは確認されたわけです。その中におきましては、個別的自衛権並びに集団的自衛権は差別されることなしに、個有の権利、インヘアレントな権利として確認されて、本条約の前文の中にも、そのことがそのままうたい込まれておるわけです。ところが第五条の自衛権を行使する場合においては、日本に限って個別的自衛権のみの行使によるのだ、こういう御説明が今の御説明であって、そうして戸叶委員はその理由は一体どこにあるのだ、アメリカと同様に、日本もまた個別的並びに集団的自衛権の両方を説明しなければ、もうこの条約は説明できないのではないかという点を指摘されて、そうして、アメリカには個別的自衛権と集団的自衛権と、ともに個有の権利としてどちらも使える、ところが日本は、個別的自衛権しか発動しないのだという、その法律上の理由は一体どこにあるのか。すなわち、憲法上の理由であると思いますが、その点を一緒に一つ最初お答えしていただいて、その上で関連質問に入りたいと思いますから、岸総理大臣の解釈を承っておきたいと思います。
  195. 岸信介

    岸国務大臣 第五条において規定しておりますことは、たびたび申し上げるように、また、明文上はっきりいたしておりますように、日本施政下にある領域武力攻撃を受けた場合であります。その領域アメリカ基地である場合もありましょう。また、そうでないところも——大部分はそうでないのでありますが、いずれにしても、日本施政下にある領域武力攻撃を受けたことであって、それに対して日本自衛隊が武力を行使してこれを排除するという行動をすることは、まさに個別的自衛権の典型的な場合でございます。従って、それをわれわれは行使するのでありまして、それ以上の説明をする必要はさらにないのでありまして、説明ができない問題でもあり、当然の本質的なことを私どもは申し上げておるわけでございます。
  196. 穗積七郎

    穗積委員 非常に大事な点に触れております。それで、一体五十一条を受けて、この前文で「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の個有の権利を有していることを確認し、」となっておる。そうして第五条においては、日本国攻撃を受けたということは書いてありませんよ。「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」となっている。日本のみの攻撃に限っておりません。アメリカ軍隊に対する攻撃もこの中に入っておるわけですね。その場合はどういうことですか。そんなことどこにも書いてありませんよ。
  197. 岸信介

    岸国務大臣 そういう場合におきましても、日本施政下にある領土が武力攻撃を受ける場合でございます。それ以上を出て、アメリカ攻撃を受けておる場合には、本条は適用ないのであります。
  198. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、アメリカが集団的自衛権を持っていて、日本が集団的自衛権を持っていないのは、憲法上海外派兵ができないからであるというのが今までの御答弁として示されたのですが、この御答弁は、今日もなお確認されておりますかどうか、伺っておきたいと思います。
  199. 岸信介

    岸国務大臣 日本の憲法としては、海外派兵をすることはできぬ、私はかように考えております。
  200. 穗積七郎

    穗積委員 日本国憲法で個別的自衛権はあるけれども、集団的自衛権がない、また、海外派兵の権利はないということは、一体どこの規定によっておられますか。
  201. 岸信介

    岸国務大臣 これは観念の問題になりますが、日本国も、独立国として、国連憲章五十一条による個別的及び集団的自衛権というものは、他の国と同様に私は持っておるものだと思います。ただ、日本は独自の憲法を持っておりまして、憲法の規定として海外に派兵することはできない、日本の自衛という、この九条というものが非常に限定された趣旨を持っておりますので、従って、いわゆる他の国が、一般の国が持っておりますところの権利は持っておるけれども、それを他の国と同様に行使することはできないんだ、こういうふうに考えるべきものだと思います。
  202. 穗積七郎

    穗積委員 私は、関連でございますから、実は、今の憲法解釈と国連憲章五十一条との関係と、それから新条約五条の発動の場合の解釈については、本質的に非常に疑義を持っておる。今の総理の解釈は誤っておると思うのです。その点については、私は先ほど言いましたように、きょうは関連ですから留保いたしておきまして、一点だけ伺いたいと思うのは、しからば、第五条の日本の行動の発動が個別的自衛権によるものであるというならば、当然、この前の御説明でも明瞭であるごとく、国連憲章五十一条による急迫不正の武力攻撃が発生した場合のみに限られておるのですね。ところが、他の第三国からの日本領域内におけるアメリカ軍隊に対する攻撃が必ずしも不正でない、国際法上の正当性を持った攻撃が行なわれた場合には、これは不正の攻撃ではありませんから、その攻撃に対して日本は個別的自衛権を発動してこれに応戦をすることはできない。そういうことが生じて参りまして、そうなりますと、第五条の、アメリカ軍隊に対する攻撃に対して日本防衛義務を負うということはできない、個別的自衛権の発動では、これは行使することができないという結果になりますが、いかがでございましょうか。非常な矛盾を生じてくるわけですね。
  203. 岸信介

    岸国務大臣 この国連憲章の規定をすべて前提とするわけでありますが、日本に対する武力攻撃というものが、いわゆる国連憲章の趣旨によって不正な武力攻撃だと考えると同様に、日本にいるアメリカ軍隊に対しての攻撃が、正当なる理由による攻撃だということは私はあり得るとは思っておりません。すべて不正な攻撃が行なわれるという場合に——これは国連憲章をそのままにお読みになれば、いかなる場合においてもそうである、私はこう思います。
  204. 穗積七郎

    穗積委員 非常に大事な点ですね。ちょっとお尋ねいたしますが、日本並びにアメリカの行動が常に正当性を持っていて、日本並びにアメリカに対する攻撃が常に不正なものであるという独断は、一体どこから生まれて参りますか。これはかつての聖戦思想と同じですよ。どこに一体そういう独断的な解釈を下す根拠がございましょうか。
  205. 岸信介

    岸国務大臣 いかなる場合においても、国連憲章の趣旨からいいますと、武力攻撃というものは、こちらからしかけるべき問題ではないのでありまして、自衛権を発動する場合におきましても、武力攻撃が発生した場合にあり得るのであります。従って、この五条におきましても、日本武力攻撃を受けた場合でございまして、われわれからやっていくわけではございません。そうして、武力行動というものは、そういう他から武力攻撃を受けた場合にこれを排除する場合においてのみ正当化されておる。それ以外の武力行動というものは、国連憲章においてはこれを正当化しておらないのでございます。私が今説明しておる通りだと思います。
  206. 穗積七郎

    穗積委員 だから伺っておるのですよ。日本並びにアメリカの軍事行動は常に正当なものであって、相手国のこれに対する攻撃は常に不正なものであるという独断は、一体どこから生まれて参りますか。たとえば、仮想敵国としておられるソビエト、これも国連に入って、あらゆる国と結んでおりますが、五十三条を法源とし、たとえば中ソ友好同盟条約でもそうです。さらにその行動を起こします場合にも、国連加盟国として、ソビエトは当然五十一条の範囲内においてのみの行動にするという建前になっておるわけです。そうであるならば、お互い攻撃というものはあり得べからざるものである。にもかかわらず、その場合において、彼またはわれの方においてそれを逸脱した侵略的な攻撃が事実上起こる可能性がある。そういう場合があり得るわけです。だから、そういう不正な攻撃というものは全然この世の中にないんだ、この世の中にある一切の攻撃は、どんな行為であっても、その攻撃国連憲章にお互いによるものであるという形式論でやるならば、日本に対する攻撃も、また不正な行撃はないはずなんだ。日本またはアメリカ攻撃が正当な攻撃であるというならば、他の国連加盟国から日本またはアメリカ軍に対する攻撃もまた、必ず正当性を持っておると解釈せざるを得ないわけですね。
  207. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、武力攻撃を受けた場合、本条約の五条におきましても、また国連憲章の五十一条の場合におきましても、いかなる場合においても武力行動をすることが合理化されるのは、他から理由のない不正な武力攻撃を受けて、これを排除するために武力行動することだけが正当祝せられておるのであります。それは何も共産国だけが不正な侵略をするとか、武力攻撃をするとは私は考えておりません。いかなる場合も、あるいはいかなる国であっても、いわゆる先制攻撃武力攻撃をつまずやることが不正だ、こうされておるのであります。従って、この国連憲章の精神がほんとうに現実に守られるならば、世界に戦争というものはなくなるわけです。それが望ましいことなんです。しかるに、(「ところがある」と呼ぶ者あり)あるとすれば——われわれの方からは、いかなる場合におきましても他を武力攻撃するということはないのであります。他から武力攻撃を受けた場合だけにこれを排除することがあり得るのです。そういう不正な武力攻撃日本に対して加えてくるものがなければ、条約の五条が発動する場合は絶対にないのでありますから、そういう意味において、われわれの行動は常に国連憲章に基づいて、国連憲章が認めておる武力行動しか日米はいたさないのであります。
  208. 穗積七郎

    穗積委員 それでは、日本またはアメリカ側、またはアメリカの同盟国である韓国、台湾、フィリピン等が不正の攻撃を加えた場合、すなわち、国連憲章五十一条の規定に反する行動を起こしたことを原因として戦闘行為が行なわれて、そして、向こう側から在日アメリカ軍またはその基地攻撃された場合はいかがでございますか。その不正の確認がされた場合は、そのときは集団自衛でやる以外にはないじゃないですか。
  209. 岸信介

    岸国務大臣 いかなる場合におきましても、日本にある基地を離れて米軍がそういう攻撃をするということは考えられないのでありまして、その基地攻撃するということは、いかなる理由があっても、私は、これを正当化する理由はないと思うのであります。われわれの国土が、いかなる理由であろうとも武力攻撃を受けたならば、われわれが実力をもってこれを排除して、これに対して日米協力するということは、われわれみずからが自分の国を守るという固有の個別的自衛権で、日本施政下にある領土が攻撃されるのですから、ちっとも差しつかえがないと思います。
  210. 穗積七郎

    穗積委員 関連質問でございますから、簡単にするために、今の誤った独断を反証するために、私は次の四つの例をあげて、一々に対して明快なお答えをいただきたいと思います。  まず第一番には、一九五八年の七月に行なわれましたアメリカのレバノンに対する出兵、これは当時の精密なる報告書が、われわれの手元にもあり、皆さんも、外務省もよく御存じだと思う。これによりますと、アイゼンハワーは、五十一条の援用をもって出兵を主張いたしました。そのときには、アメリカとレバノンとの間における相互援助条約というものはない。ところが、レバノン政府が、アラブ国から武力的な侵略をと受けたから、われわれを援助してもらいたい、こういう要請があったから、五十一条による集団自衛権によって出動するんだということであったわけです。このことは、レバノン政府からも国連安全保障理事会に直ちに報告が行なわれて、安全保障理事会は、それに対しまして、調査と監査の意味をもって国連の監査団を派遣いたしまして、調査いたしました。そして調査した結果、アラブ連合からは、レバノンに対して何ら侵略的な行為はないという事実が明快になり、そして五十一条を援用して出動いたしましたアメリカのレバノン出兵というものは、国連憲章違反であるという判定が行なわれた、こういう事実がございます。この事実はレバノンでありますけれども、そうでなくて、もしアジアの他の地域において、今、この新条約の中の極東地域の他の地域、または極東地域の安全に影響を与えると皆さんが説明しておられる極東近接地域においてこういう事実が行なわれました場合に、アメリカの行動は、後の判定になりますけれども、主観的には五十一条の集団的自衛権発動による、日本もまたそれを認めて、同時に相互防衛行為に入る、そのときの行為は個別的自衛権と称するわけです。ところが、客観的に、かつ後に判定されるものは、そのアメリカの判断は誤りであった、アメリカの武力行為は、自衛権発動の限界を割ったものであるという判定が下されたそのときに、向こうから米軍に対して攻撃が行なわれ、日本米軍基地攻撃が行なわれる。それに対して日本が個別的自衛権を発動したとき、急迫かつ不正の攻撃として、個別的自衛権をもってこれに対応することはできない。この具体的な事実に対して一体どういう解釈をされるか、これが第一点。一括して伺いますから、よくメモをしておいて、あとでよくお答えをいただきたいのです。  それから第二は、米韓、米タイ・米比の各条約によって、韓国が北鮮に対して侵略的行為または原因不明の——具体的な戦争の場合には、原因はあとになって調べてみなければわからない、こういう原因不明の場合が多いのです。さらに、わかっていても、たとえばかつてこの柳条溝であるとか、盧溝橋事件のように、こちらからやって、向こうから発砲したのだという、でっち上げをする場合もあり得るわけですね。そういう場合に、アメリカが、集団的自衛権によって韓国または台湾の援助行為に出たり、それに対して中国またはソビエトから攻撃が行なわれた、あるいは北鮮から攻撃が行なわれた。そのときも、不正ではございません。この具体的な場合にはいかがでございますか。  それから第三点は、竹島に対しまして、この前、民主社会党の委員の方の質問に対する回答であったと記憶いたしますが、他党のことでございますから、関連質問はいたしませんでしたが、新条約発効後ああいう事態が起きたならば、日本は、第五条の発動によって行動を起こす、こういう説明を総理はされたわけですね。そのときに、一体そういう行動が行なわれた場合に、アメリカ軍は日本に、第五条によって共同防衛義務を負うわけです。そこで日韓の間で戦闘行為に入る。そうすると、アメリカは、米韓相互援助条約によりまして、韓国軍に対してもまた共同防衛義務を負うわけです。そうすると、同じ一つである、私がこの前申しました太平洋軍に属する韓国側の米軍日本側米軍が、一体そのときにどういう措置をとるのか、両方に加担をして、一緒に戦争をするのか。  それから第四の場合、これは先ほど言いましたように、およそ戦闘行為というものは、現地においてトラブルから発生するわけですから、原因不明による戦闘状態に入る場合が非常に多い、そのときに直ちに判断するわけにいかない、両方とも、正当なる個別的自衛権または集団的自衛権の発動だと言って、不正を相手に転嫁して、その説明に立って、両方ともが、急迫かつ不正な攻撃が行なわれたから自衛行為を行なうのだという声明を出すでしょう、そうして戦う。そういう場合に、そういう建前で米軍が巻き込まれた場合、そのときに一体その攻撃は不正であるか不正でないか、原因がまだ不明であるから、調査まで日本は、第五条の発動は差し控えるのだ、こういう態度をおとりになるのか。われわれの解釈では、その場合といえども、第五条の相互防衛義務を免れるものではなかろうというふうに私どもは解釈せざるを得ない、そこに非常に危険と無理が生ずるので、その場合におきましては、あらゆる場合を——四つの場合をあげてみて、これはすべて不正の攻撃ではございませんから、その場合におきましては、日本の行動というものは、集団的自衛権の発動という説明をしなければ、とうていこの行為を正当化すというわけにはいくまい、こういう非常に無理のある第五条であるというふうに、私は五十一条との関連において解釈するわけです。それに対して、一々はっきりお示しをいただきたいと思います。
  211. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 第一の場合は、若干事実が違っておると思います。レバノンの国内に内乱がございまして、その場合に、外部からの教唆がある、武器の輸入がある、非常に危険な状態にあるということで、レバノンは、国際法上に認められております主権者の要請が、アメリカに対して行なわれました。そうしてアメリカは、これに対して出兵をいたしたわけであります。同時に、国連にもその事実を訴えたのでありまして、国連が国境監視団を出したことは、御承知の通りであります。そうしてアメリカはレバノンに出兵をいたしまして、はたして外部からほんとう攻撃があるならば、おそらくレバノンとアメリカとは、集団自衛権を行使したでございましょうけれども、そういう事実がなかったら大きな事実がないという国連の監視団の報告があったことは事実であります。そういう状況でございますから、お話しのような事態は起こらなかったわけであります。そういう事態において、あまりアメリカが長く駐兵することは、好ましいことでないというのが国際世論でございましたから、アメリカが引き上げるような事態に持っていったわけであります。今お話しのような事態とは、事態が違っておりますし、また、事実そういうことはございません。  また、第二、第三の場合は、韓国が、何か不正な北鮮に対して、侵略を行なうということが前提のようであります。私は、そういう前提はあろうとは思いませんけれども、しかし、集団安全機構というものは、今まで総理も説明しておられますように、必ず攻撃——国連憲章五十一条における場合には、不正な攻撃があった場合であります。従って、アメリカが、集団安全のための集団的な自衛権を行使する場合は、そういうような場合だけ行使することは当然でございます。従いまして、そういう事態が起こって参りましたときに、何か日本が巻き込まれるというような関係は起こらないと思います。でありますから、われわれは、そういうことの例証はあり得ないのだと思っております。また、韓国と日本との間に何か事が起こったときという御想定でございます。これは、先ほど申しましたように、どちらかの国が不正な行動をしたというような場合で、その攻撃をした国は集団安全で助けない、攻撃された国を助けるのが、集団安全保障の建前から当然のことでございまして、そういうことで問題は解決すると思います。日本の場合におきましては、むろん日本攻撃されるということなのでありまして、そのことによって日本自衛権を行使するということであって、アメリカが、今申し上げましたように、他の場合に集団安全保障の条項にぴったり合った集団安全自衛権を行使しておりましても、そのこと自体が日本攻撃する理由には相ならぬのでありまして、そういう意味で明確だと思います。
  212. 穗積七郎

    穗積委員 関連でございますから、次に留保して、戸叶委員質問を続けていただきますけれども、今のお話は、レバノンの出兵は、これは明確に五十一条の乱用したケースであると判定が下されたわけですね。ただその場合に、アラブ国との間に戦闘行為が行なわれなかったからよろしゅうございますけれども、戦闘行為があり得るわけなんです。戦闘行為が、あの場合になかったからといって、極東地域において、アメリカの今の誤った同様の行動が行なわれて、戦闘行為が起きないとは限らない。その場合に、総理は、アメリカの行動は常に神のごとく聖戦である、こういうふうに一体何を理由にして弁護されるのか知りませんが、そうでないという事実が、終戦後のこの事実においても行なわれておる。また、一九五〇年の、マッカーサーが北鮮に攻撃を加える、東北地区、昔の満州地区まで攻撃を加えるというのを、イギリス外相のモリソンの努力によって、これを食いとめることができた。また、イーデンの回顧録を見ても、五四年に、同じく南ベトナムのディエンビエンフーが北ベトナム軍によって落とされるときに、この出動を計画してイギリスに働きかけておる。終戦後でありますけれども、こういう過去におけるあやまちを犯しておるアメリカでございます。その事実がありながら、しかも、一九五八年のレバノンの出兵のときには、明らかに国連の正式機関によって、これが権利の乱用であると判定が下されておるのです。にもかかわらず、その行為はすべて聖戦である、それに敵対行為を持つものは全部不正である、こういう説明は、一体どういうわけでできるのか。それからさらに、先ほど私が一々例をあげまして申し上げました二カ国間の条約、あるいはまた、原因不明のトラブルによる戦闘行為の場合、これらはすべて相手国のみ不正である、急迫かつ不正な行為であるといって、個別的自衛権をもってこれを説明することは、とうてい困難だと思うのです。私はこれだけ指摘いたしまして、答弁を求めて、その答弁の模様によりましては、あと質問を留保いたしまして、ただいまの関連質問は終わることにいたしますから、どうぞもう一度、その点、違法性についてお答えをいただきたい。
  213. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 レバノンの問題のときには、アメリカのアイゼンハワー大統領の議会に対する声明が明らかにいたしておるのでありまして、「レバノン政府よりのこの要請に答え、」——この要請というのは、「レバノンの保全と独立に対する合衆国の関心を示してほしいとの緊急要請を受領した。この大統領の要請は、レバノン全閣僚の同意によって行われたものである。」そして、その前提のもとに、「合衆国軍部隊をレバノンに派遣し米国人の生命の保護に当らしめるとともに、レバノンの主権及び安全の維持に関しレバノン政府を援助させることにした。これら部隊は戦闘行為を行うために派遣されたものではない。」と、はっきりうたっております。同時に、これらのっとった措置は、国連安保理事会の緊急会議に報告する。国連憲章が認めておるように、集団的自衛は固有の権利である。その精神に沿っておるのであって、戦闘行為をしない。将来もしそういうような、レバノン政府が国境外から侵された場合には、それは、今のような集団安全保障の話し合いのもとに、発動されるときがあったと思うのであります。そういう状況でないときに派遣されておるのでありまして、この声明で明らかであると思うのであります。
  214. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今の穗積委員との質疑応答を聞いておりましても、結局この五条は、日本にも集団自衛の権利はもちろんあり、そうしてまた、義務も負っておるのだけれども日本は、憲法の規制によってそういうことが言えないのだとか、あるいはそういうことが、実際問題としてワクをはめられていて、できないのだというような悩みを、そのままそっくりおっしゃれば問題はないのに、そういうことを内蔵しながら、ああでもない、こうでもないと言っておられるところに私は問題があると思うのです。  そこでこの具体的なMSAの協定審議していた当時のことを思い出しますと、昭和二十八年六月三十日、参議院で元の岡崎外務大臣はこう言っております。「私は日米安全保障条約は、形は普通の集団的安全保障条約ではないけれども、併し一種の変態的ではあるけれども集団安全保障の一つの形式だと思っております。従って日米安全保障条約にいうような、つまり直接の侵略に対してはアメリカ軍が当る、国内の防衛については日本の保安隊等が当る、この集団安全の形は当然日本としても引受けておることであり、又これをもっとよく運用するように努力することは当り前だと思います。」もっと完全な集団防衛の形にしたいということの希望を持っておられたのでありまして、このときに、MSA協定を受けたときに、MSAの協定が、軍事援助か経済援助かということで大へんもめた。ところが、その場合に、経済援助だということを強く押し出したいために、今ある安保条約というものは、これは集団自衛の形でいくのだというふうなことをにおわせておるわけであります。もっと完全つなものにしたいのだということを、はっきり言っておるわけです。そういうのを今ごまかそうとされるから、いろんな問題があるのだと私は思うのです。
  215. 岸信介

    岸国務大臣 戸叶委員の御質問でありますが、集団安全保障の体制とか、集団安全保障ということと、集団的自衛権ということとは違います。それを混同しないようにお願いしたいと思います。
  216. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それはその通りなんです。それはよく知っております。ただ、この場合に、この前の例を私が言わなかったからですが、このときの岡崎さんの言われるその内容というのは、この集団安全保障の形の中で、特に五十一条的な内容を持っておるところの武力攻撃に対して行動に入る、その集団自衛権的な考え方を述べたので、私はここを援用しておるわけです。しかし、直接その言葉がうまく当てはまっておりませんから、私はもっと先へ進んで、そのことを追及して参りますけれども、一体日本では、今岸さんがおっしゃいますように、これは決して集団的な自衛権の行使ではない、こういうことを言っておられますけれども、一体アメリカでは、日本のこういう考え方に対してどういうふうに思っておるのでしょうか、日本以外の外国では、一体どういうふうにこれを考えておるのか、この点を伺いたいと思います。
  217. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国際的に、国連憲章の集団安全保障、集団自衛権を持っておるということが認められていることは、当然であります。しかし、この条約第五条に、「施政下にある領域」となっおります以上、集団自衛権を援用しなくても、日本の個別的自衛権だけで説明できるということは、アメリカも十分了承いたしております。
  218. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私さっきのことで、少し言葉が足りなかったと思うのですけれども、集団安全保障体制には、五十一条と五十三条と両方あるわけです。その五十一条の方を援用して岡崎さんが言われたものですから、私はそれをここに引いたわけです。このことは、あとからもう少しはっきりさせますけれども、さらに、今の安保条約を交渉するときにさえも、日本防衛義務を何とかしてアメリカに負わせたい、こういうふうな努力が払われたというようないきさつを御存じでございますか。
  219. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今の安全保障条約ができましたときに、どういうふうな状況であったかということは、私よく存じておりません。
  220. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣現行安保条約を今新安保条約に変えようとするわけですね。だとするならば、今の政府の責任者は、現行安保条約がどういう交渉のもとにできたか、そしてまた、どういう形で改正されようとするのか、そのくらいのことを御存じなかったら、とても私ども審議できないじゃありませんか。
  221. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん、われわれは、現行安保条約の大局的立場における検討はいたしております。しかしながら、こまかい一々の点について、私の能力にも限りがございますから、そう全部を知っておるというわけではありません。しかし、その精神から見まして、われわれとしては、あの占領軍が撤退するというような、平和条約ができるというような時期でありましたので、そういう状況下における事情等については、われわれも承知いたしております。
  222. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、私申し上げますけれども現行安保条約を作るときに、非常に日本の外務省としてがんばったのは、前文にでもいいから、何とかして、日本国に対する武力攻撃は、太平洋及び合衆国の平和と安全に影響するものだということを認めさせようとしたのだけれども、どうしてもそれに対してはアメリカが応じなかった。なぜならば、自衛力がまだ少なかったからです。それからまた、もう一つの点からは、沖繩に対する武力攻撃が発生したときは、日本にあるアメリカ軍隊は軍事行動をとることになるのだ、そういうような場合に、日本は当然アメリカ軍隊の作戦基地となるのだから、日本アメリカ軍の行動に協力せざるを得ないことになる。そうした場合に、日本協力は、これは非常に少ないものであるかもしれないけれどもアメリカとの相互援助関係になるわけだ、こういう関係基礎を与える手がかりとする、そういう条項を設けておくべきじゃないかという趣旨を述べられたのでございます。ところが、当時の交渉者の人たちは、日本憲法のあるそのもとで、また当時の日本が持っていた貧弱な自衛力でも、日本区域の安全維持のためには、合衆国と集団自衛関係を設定することは可能である、合法であると考えていて、それを何とか先方に認めさせるように努力をした。今とは全く対照的な考え方であるといって、当時交渉をした一人の西村条約局長が、その著書の中で述べているのでございます。当時でさえも集団自衛の考えがあったのに、今になってこれを否定されるというのは一体どういうことなんですか。はっきりと、やはり集団自衛の義務というものをここにうたったんじゃないかと私は考えるのですが、念のために伺いたい。
  223. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今、私どもは新条約第五条の正確な解釈を申し上げておるのでありまして、施政下にある領域と限定しました以上、日本の個別的な自衛権でもって十分説明できるので、しいて集団的自衛権を援用する必要はないと思っております。
  224. 戸叶里子

    ○戸叶委員 当時の西村条約局長がそういうことを言ったときに、アメリカは、それに対しては、まだ日本には、集団自衛の考え方をさせるには、自衛力が十分ないんだということで、そうしてそのままだったわけです。今度アメリカがそういうことを言ってきたのは、そのときのが根拠になって、今度ははっきり条約の中で義務を持たせてきた、こういうふうに解釈できないのでしょうか。日本で、政府の方から言うならば、集団的自衛の立場をとるのだけれども、憲法があるからそういうことはできないのだ、しかし、これは集団的自衛なんだということをおっしゃってもいいじゃないでしょうか、いかがでしょうか。この間、高橋条約局長は、ちょっとそれに似合うようなことで、何とおっしゃったのですか、この間の答弁のときに、特殊な条約でございますというようなことを言っておられるのでございますが、特殊な条約というのは、結局はそれをおっしゃるのじゃないですか。この点を岸首相にお尋ねしたいと思います。
  225. 岸信介

    岸国務大臣 私が先ほど来申し上げておる通り政府としては、この解釈はその点において少しも食い違いないのでありますが、繰り返して申しますと、要するに、日本施政下にある領土が武力攻撃を受けた場合に、それが米軍日本基地でありましょうとも、そうでなかろうとも、当然日本の個別的な自衛権の発動として、その武力攻撃を排撃するために自衛隊が行動するということは、いわゆる集団自衛権という観念を持ってこなくて十分に説明つくことであり、日本としてはそれでたくさんだというのが、私どもの解釈でございます。これに反して、アメリカの方から言えば、アメリカ本来の領土でもございませんし、日本へ来て、日本攻撃された場合において行動するのでありますから、集団自衛権の観念を持ってこなければ説明できませんけれども日本は、日本の領土が、いかなる場合におきましても武力攻撃を受ける場合、個別的の自衛権の発動として考えてちっとも差しつかえないことであり、それ以上考える必要はない、こう思っております。
  226. 戸叶里子

    ○戸叶委員 アメリカは、日本との交渉で、それで了解しているわけなんですか。おそらく、日本アメリカとの交渉においては、集団的自衛の権利も義務もこの五条であるのだ、しかし、それを日本の憲法というものが規制していて、そして行使するだけの手段というものはないのだけれども、しかし、集団的自衛の権利義務はこれであるのだということのように了解して、この交渉をなされたんじゃないでしょうか、もう一度私は伺いたい。  さらに、高橋条約局長にお伺いしたいのですが、たしか高橋条約局長は、その当時、条約局の課長か何かをして、いらしたと思うのですが、そういうような交渉のいきさつから見て、今日のこの国会における無理な答弁から解釈しても、やはり日本は、ほかの国とは変わっているけれども、集団自衛の観念であるというふうにお考えにならないかどうか、この点を伺いたいと思います。
  227. 林修三

    ○林(修)政府委員 ちょっと先に、私からお答えさせていただきます。  この条約第五条についての日米間の了解は、お互いに、いかなることを第五条においてやるかということの内容でございまして、それが個別的自衛権ではいけないのだ、集団的自衛権でなくちゃいけないのだとか、あるいは集団的自衛権でなくて、個別的自衛権だということ自身、別に日米間でそれを云々すべき問題ではないと私は思います。日本はいかなることを宣言し、アメリカはいかなることをするということを、約束したということ自身が問題でございます。そのこと自身を、いかなる法律的な観念によって説明するかという問題で、その説明は、先ほどから総理が仰せられたように、日本に関しては個別的自衛権をもって説明できることである、その範囲内のことしかこれは書いてない、こういうことでございます。こういう問題について、こういう問題を、学者は、あるいは集団的自衛権というような言葉を使う学者もございますけれども、少なくとも、私どもは、集団的自衛権ということを援用しなければ説明できない問題ではない、個別的自衛権をもって十分説明できる範囲のものである、かように考えておるわけであります。条約内容自身が、集団的自衛権をもって説明しなければできないということになっていれば、これは別問題でありますが、私どもは、当然に個別的自衛権をもって説明できる範囲のものである、その範囲のことについては、日米間に十分に了解がついているわけでありますから、別に問題はない、かように考えます。
  228. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 先ほどの御指摘の点でございますが、いわゆるこの条約が特殊とか、特別の条約であると申します意味は、通常考えられております相互防衛条約と申しますか、相互援助条約というものではない。すなわち、アメリカ日本の領土を守るし、日本はまたアメリカの領土を守る、そういう意味合いにおいて、相互つり合いのとれた、通常の意味における相互援助条約とか、相互防衛条約ではないという意味でございます。しかし、その反面、それでは本来はそうしたいんだが、そうすべきであるが、しかしながら、憲法の範囲内でできないんだということになりますと、ちょっと問題は別だと思っております。すなわち、われわれといたしましては、アメリカとの交渉の間、終始日本の憲法という範囲内でこれをやるんであるというふうな了解のもとにこの交渉が進められて参ったわけでございますから、初めから、当然、日本領域のもとにおけるこの種の条約を結ぶのであるという了解のもとにこれが進んできて、その通りになった、こういうわけでございます。(「明快」と呼ぶ者あり)
  229. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、この問題は少しも明快じゃございません。私にとっては非常に不明快です。わからないのです。で、その問題をもう少し追及したいのですけれども、時間がありませんから、その先へ進みたいと思います。  さらに、この協定が軍事協定であるか、軍事条約であるかどうかということに対して、この間、穗積委員が、いろんな定義をあげまして質問をされました。ところが、それに対して岸首相も、これは軍事条約ではないと、はっきり言っておられるわけでございますけれども、軍事条約であるということは、すでにMSA協定を結ぶときに、はっきり言われているわけでございます。ところが、答弁の方では、その当時におきましても、非常に気をつけて答弁をされております。たとえば、日本がMSA協定を受けるについていかなる義務を負わなければならないかというような質問に対して、アメリカの方では、ツー・フルフィル・ザ・ミリタリー・オブリゲーションズというふうに、はっきり軍事的な義務という言葉を使っておりますけれども日本政府がそれに対して答弁をするときには、日本が負わなければならない義務というものは、というので、翻訳の方では、軍事的なという意味を削っているというような答弁をされております。そのことを詳しく私は申し上げるはずでございましたが、きょうは時間がないので割愛いたします。ともかく、そういうふうに日本政府は非常に注意をしておりますけれどもアメリカの方は、軍事的な義務を負うというふうに、軍事的という言葉をはっきり使っているわけでございます。そこで、昭和二十八年の六月三十日の外務委員会では、当時の条約局長であった下田さんがそこにいらっしゃいますけれども、「日本締結しております広義の軍事条約といたしましては、御指摘のように安保条約があるだけでございます。この安保条約は、いかに解釈しましても、それからは日本が出兵の義務を負うものでないことは御承知の通りでございます。」これはその通りですね。それは二条とか、五条がまだ入っておらないところの安保条約をさして言っておられるわけですよ。さらに、おっしゃったことは、「安保条約よりも一歩進めたような軍事条約締結は必要でないというのが、私ども事務当局の研究の結果になっております。」こういうふうに言われているわけです。これでも安保条約は軍事条約ではないとおっしゃるのでしょうか。安保条約が、一番軍事的な内容があって、これ以上の軍事条約締結する必要がない、こういうことを答えていられるわけなんです。これはどうなんですか。
  230. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっと、あるいは私はそういう意味で申し上げてもおりませんし、おそらく速記録にもそうなっていないと思いますが、これが軍事的内容を持っておる条約というような意味において、軍事条約であるかどうかというようなことが議論されたわけではありませんで、軍事同盟という言葉が、たしか穗積委員から質問があり、それに対する定義をあげられて、それに当たるものじゃないかという意味に対して、私は、そういうような意味における軍事同盟というものではないということを申し上げたので、この内容が、軍事に関する問題、防衛に関する問題がございますから、いわゆるそういう意味において一つの軍事条約、軍事的な内容を持った条約ということまで否定したわけでは——私はつもりではなかったのでありますしおそらく速記録にもそうなっておると思います。そういう意味で申し上げたことを御了承願いたいと思います。
  231. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、はっきりしたことは、この安保条約は軍事同盟ではない、しかし、軍事条約ではある、こういうことでございますね。
  232. 岸信介

    岸国務大臣 防衛に関する条項を含んでおりますから、そういう意味における軍事的内容を含んでおる条約であるということは、これは否定いたしません。
  233. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは次に、極東における国際の平和と安全の問題に移りたいと思いますけれども、この委員会で、日米安保条約がほかの条約と違っていることの一つは、この防衛区域というか、条約区域といいますか、防衛区域というものがあって、それと別に、米軍の行動範囲がきめられている、こういうふうに条約区域と、それから使用区域といいますか、防衛区域、広い範囲がきめられている、こういうふうな二つの地域に分けてある条約は、ほかにないというふうに念を押しましたところ、そうだということを答えられたわけでございますけれども、どうしてこういうふうな形をおとりになったか、これを伺いたいと思います。
  234. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 条約区域は、御承知の通り、はっきり施政下にある区域ということをきめておるわけでありまして、その以外に、特定の区域をわれわれはきめておるということはございません。ただ、極東の平和と安全及び日本の平和と安全が、両国関心の的であるということについては、両国が共通に考えておるところでございます。その極東の平和と安全を維持するために、必要な限度において基地を提供しているということでございます。
  235. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ですから、結局防衛区域というものがあって、あと極東における国際の平和と安全を維持するために米軍が出ていくところの範囲、こういうふうに二つ分かれている。それはほかのこの種の条約にはない条約なんだ、こういうふうに、この前はっきり言われているわけでございます。その通りでございましょう、高橋条約局長、はっきりこの前おっしゃったですね。
  236. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ちょっと補充さしていただきますが、この種の条約は、確かに安保条約、新条約におきましては、日本の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するためという施設区域の使用の許可の目的が、ここに掲げられているわけでございます。しかし、ほかの条約において類がないと申しますのは、ほかでは、こういう制限と申しますか、こういうのは全然つけられていないわけでございます。そういう意味合いにおきまして、この安保条約においてはこの制限と申しますか、目的が明瞭に掲げられているわけであります。
  237. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この条約で、こういうふうな文句が現行条約にも、今度の改正条約にも設けられているわけですね。それがどういうふうにして入れられたかというようないきさつを調べてみますと、現行安保条約最初話に出たときには、日本国は、平和条約及びこの規定の実施と同時に、合衆国の陸軍、空軍及び海軍を、日本国内またはその付近に駐屯させる権利を許与し、合衆国は受諾する、この措置はもっぱら外部からの武力攻撃に対する日本国防衛を目的とする。初めは、日本国防衛を目的とするというふうに規定してあったのが、その後、たとえば沖繩などの武力出動ができるようにしておかなければいけないのだということから、日本の安全に寄与するために置くのだというふうに改正されて、さらにそれに加えられて、たとえば朝鮮戦争のようなときに困るから、極東における国際の平和と安全のためにも使用することができるのだということを入れて、ここで初めて、アメリカ軍の行動範囲というものをきめたというようないきさつがあるわけでございます。従って、最初日本防衛するための米軍の使用ということから、今度は、日本基地を使って、米軍極東の平和と安全のために行動するというふうに変わってきたのであって、今もその通り、変わりないわけですね。こういうふうないきさつから見ても、この際、この極東の平和と安全というような言葉を除くためのお考えはないか、あるいはまた、そういうふうなことを取り除きたいというような交渉をなさらなかったかどうか、伺いたいと思います。
  238. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今のお考えとは、われわれは別なんでございまして、他の条約にこういうようなことがないという——そういうことの関心がなければ、世界じゅうどこへでも行けるというようなことになるわけでございます。それを今戸叶委員は、こっちから順繰りに広げていったのだと言われるのですが、われわれは逆なんでして、こういうものがなければ、極東の平和と安全ばかりでなく、いわゆる世界の平和と安全に寄与することになるわけであります。それをわれわれとしては、日本に駐留する米軍というのは、できるだけ狭い範囲の中でもって行動をしてもらいたいというような意味、つまり極東の平和と安全が大事だ、両国関心を持っているところだという意味で解しているということに相なっておるわけでございます。
  239. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は、こっちから広げていったと言うのじゃない、アメリカの方が、そういうふうにしたいので、それで極東の平和と安全を入れたのだということを言っているわけです。最初安保条約を制定する場合ですね、現行安保条約を制定する場合、それを言っているわけです。しかも、極東における国際の平和と安全を維持するためには、極東以外にも出られるということは、はっきりと先ごろの統一解釈でも言っておられるじゃありませんか。そうだとすれば、当然、これはそれを幾ら制限してみたところで、広い範囲に適用されるということになるわけじゃありませんか。  そこで、私はこの問題を少し伺ってみたいと思うのですが、米軍が、極東における国際の平和と安全に寄与するために、日本の国の基地を利用して出動することができるということに、ここでなったわけですけれども、そういう行動が、はたして正当であるかどうかを認定するのは一体だれであるかということが、問題になってくると思うのです。国際の平和と安全に寄与するための行動は、米国の直接自衛権発動による行動ではなくて、国連憲章による強制行動または制裁行動であると私は考えます。従って、この行動は、憲章の四十二条——憲章の四十二条といいますと、四十二条には軍事的措置として、「安全保障理事会は、第四十一条に定める措置では不充分であろうと認め、又は不充分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。」というので、軍事的措置がここに書いてあるわけです。あるいはまた、五十三条を見ますと、強制行動が書いてある。「安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的取極又は地域的機関を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならない。」というふうなことがずっと書いてあるわけでございます。四十二条と五十三条に基づくものでなければなりませんけれども、こういう場合には、当然に安全保障理事会の決定によらなくてはならないのでございます。日米安保条約の六条にいうところの、極東における国際の平和と安全に寄与するための行動というものは、以上のような国連憲章の手続に従うことを絶対的に要件としなければならないと考えますけれども、どうですか。極東地域における米軍の自衛行動というものと、極東における国際の平和と安全に寄与する行動というものは、法的に全く性質を異にするものといわなくてはならないと思いますが、これはいかがでございましょうか。
  240. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 憲章の説明につきましては、条約局長からいたします。
  241. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 お答え申し上げます。  第六条でございますが、第六条は、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、……区域を使用することを許される。」という、施設及び区域の使用、この許可の目的をここで掲げているわけでございます。従いまして、この行動それ自体が、すなわち、寄与するためであるということを直接ここでいっているわけではない、これが第一点だと思っております。  それから、もちろん、お互い条約当事国といたしまして、国連憲章のこういう考え方は、御指摘の点でございますが、やはり一般的に広い意味におきまして、国際の平和及び安全の維持に寄与するということは、当然できることであろうと思います。
  242. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今条約局長は、その目的をいうのであって、行動が寄与するとかなんとかいうのではないということを言われたわけです。そこで、戦争中のことを思い出すのですけれども、東洋の平和のためというような、そういう旧軍閥の行動が実は非常に侵略的であったということは、すでに皆さん御承知の通りでございます。こういうような勝手気ままな判断による行動を封じるために、国連憲章は厳格な規制を設けたと思うのでございます。こういうふうな武力紛争によらない、紛争の平和的解決のためには、憲章の第六章にいうところの「紛争の平和的解決」、第七章の「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」ということで規定をしているわけです。従って、極東における国際の平和と安全に寄与するという国連憲章に基づく行動は、必ず国連安保理事会の決定によってのみ許されるのであって、アメリカだとか、あるいは日本政府が独断でこの事態を決定して、行動することは許されないというふうに考えるのですが、この点はいかがでございましょうか。  さらに、それに次いで申し上げたいのは、先ごろの政府の統一見解を見ておりますと、「この区域に対して武力攻撃が行なわれ、あるいは、この区域の安全が周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するため執ることのある行動の範囲は、その攻撃又は脅威の性質いかんにかかるのであって、必ずしも前記の区域に局限されるわけではない。」こういうことをいっているわけです。ここで常識的に考えられることは、極東に隣接する地域というものは中近東だと思うのです。あるいはまた、東南アジアとか、そういうわけですね。そうすると、政府の統一見解によりますと、東南アジアを含むところの中近東地域において、極東の平和を脅威するという事態が発生した場合には、米軍はその地域へ出動する、さらにその紛争というもの、あるいは平和の脅威が欧州に波及するような場合には、米軍の行動は欧州にまで及んでいくということが、理論的に可能になってくると思うのです。このことは、米タイ、米比条約とSEATOと結びつくし、さらにまた、これはアメリカ・パキスタン、アメリカ・イラン、アメリカ・トルコ条約にも関連して、終局的には今度はずっとNATOにまで結びつくというふうなことになっていくわけでございまして、こういうふうに日米安保条約の第六条によって……。     〔発言する者多し〕
  243. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  244. 戸叶里子

    ○戸叶委員 これからが大事ですから、聞いていただきたいと思います。このように、日米安保条約第六条によって、米軍の行動というものは、非常に世界的規模に拡大されることが考えられるわけです。こういうふうに、おそるべき規定が第六条と政府統一の見解です。さらに、より身近な危険なことは、中共とかあるいは北ベトナムと、これに隣接した極東地域の諸国で、米国と軍事的に関連した諸国との間に、紛争が起きた場合に、あるいはこのために極東の平和が脅威されるような場合に、第六条によるところの米軍の軍事行動の対象というものは、当然に中共になる。それからまた北ベトナムになってくる。しかも、この場合、極東における国際の平和と安全に寄与するためというような、国連憲章まがいの理由をつけて、日本はこれを断わることができないで、これを受けなきゃならないというようなことが、非常に問題になってくるのです。ですから、私が言いたいことは、日本区域外に出動する場合には、必ず国連のはっきり示してある意思を明確にしたあとでなければならないという規制条件を、ここに明らかにすべきではないかということを考えるのでございます。そこで、私が前に指摘した統一見解並びに六条の極東の平和と安全に寄与するためというこの事項は、事実上事前協議というものを無効にして、米軍の行動を無制限に拡大させるところの巧妙な抜け穴といわざるを得ないと考えるわけで、この条約がいわゆるざる法といわれるような根源が、まさにここに存するのではないかという点を私は非常に心配するわけでございますが、この点はいかがでございましょうか。
  245. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今戸叶委員は、非常に重大な解釈をされておるようでございまするが、しかし、国連憲章を順守するということは、いわゆる軍事攻撃あるいは武力攻撃が行なわれた場合でなければ、それに対応して武力を行使しないということが前提でございます。それからまた、総理がたびたび言われておりますように、日本基地を利用して戦闘作戦行動に出る場合には、むろん事前協議にかかるわけでありまして、そういう点からおのずから限定されてくるのであります。そういう意味におきまして、今言ったような非常な御心配があるようにお考えになっておるところは、われわれはそう考えておらぬのでございます。
  246. 戸叶里子

    ○戸叶委員 限定されている区域に限られてあるということをおっしゃるのですけれども、限定されていないという統一解釈じゃありませんか。極東に対する平和と安全に脅威がある場合には、極東外にも出られるということを言っているのです。そうなってくれば、どこまででもその行動の範囲というものは制限されないということじゃありませんか。極東というものがあっても、それ以外の地域にも出られるということを、はっきりこの統一解釈で言っていらっしゃるじゃありませんか。それを今のような言葉でごまかそうとされることは、私は非常に間違いだと思います。現在、この極東地域において紛争の可能性のある地域というものは、中国なり、朝鮮なり、ベトナムだと思うのです。これらはすべて本質的には、国内事情にいろいろな問題があると思う。そして憲章の第一条の二項、第二条の七項の規定によりますならば、読んでみますけれども、「人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。」さらに第二条の七項の規定で、「この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。」こう書いてあるのですが、この規定によるならば、当該国民の自主的に解決すべき問題だと思うのです。従って、これは国内の問題だと思う。もしアメリカがこれに介入すれば、内輪の紛争というものが、解決されるものも解決されないような状態になってきてしまう。国連憲章で確立された、今読み上げたような民族自主主義とか、あるいは内政不干渉の原則というものは、これはイデオロギーのいかんにかかわらず、順守されるべきものだと思うのです。特定国の嗜好に合わないからとかいうようなことで、国連憲章の大原則というものを破ってはいけないというふうに考えるのです。また、イデオロギーの問題を国際の平和と安全にかかわらしめるようなことをしてはいけないと思うのですけれども、このような地域における紛争にアメリカが介入すること自体が、国連憲章上きわめて疑義のある点だと思います。たとえば中国問題に米国が介入することについては、多くの国がこれを疑問視していることは、これはおおうべくもない事実であって、このことは、国連における中国代表権にかかる投票の数が、如実にそれを実証しているわけでございます。こういうことはすでに国際世論になろうとしているわけで、こういう事態において、米国の中国問題介入というものが、たとえば金門、馬祖に対して米軍が出動することが、無条件に侵略に抵抗する行動だというようなことを断定することができるかどうか。あるいはまた、李承晩の言動からして、再び三十八度線の近くで武力の衝突が発生したときには、無条件に李承晩の行動が正当であって、これを援助する米国の行動も国連憲章に適合したものだ、こういうふうに簡単に断定できるかどうか、これは非常に疑問であると思うのです。こういう点からも、政府の統一見解の、すなわち、米軍の行動は、常に国際連合憲章の認める個別的または集団的自衛権の行使として、侵略に抵抗するためにのみとられることになっているというふうに、米軍の行動に対しては何かそういうふうに神がかり的に信じ込んでいるような態度というものは、現在の国際情勢の上から見ましても、また、国際政治の見地から見ましても、きわめて無定見な、戒めるべきことだと思うのですけれども、今日の政府与党の対米態度というものは、あたかも戦争中のドイツに対する狂信というようなものを再びほうふつさせるような気が私はするわけです。南北戦争とか、南北ベトナム、金門、馬祖、あるいは台湾をめぐる紛争が生じた場合に、韓国とか、南ベトナム、台湾の側がいつでも正しくて、これにつく米国の行動はいつも正しくて、かつ、国連憲章に基づいた行動であると判断されることができるかどうか、また、そう断定することが、日本として正しいかどうか、こういう点も念のために伺っておきたいと思います。
  247. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今国連憲章をお読みになりましたように、七項において、国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではない、こういうふうに書いてございます。国内紛争というようなもの、国内権限内に起こったものが、国際的な紛争に拡大しないとは言えません。今おあげになりました三十八度線の例のごときは、明らかに国際紛争に関連したわけであります。それでありますからこそ、国連決議をいたしまして、そうして国連軍を派遣いたしておるわけでございます。
  248. 戸叶里子

    ○戸叶委員 今申し上げましたようないろいろな観点から考えまして、そうしてこの国連憲章の三十九条によって考えてみましても、三十九条にいう「安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第四十一条及び第四十二条に従っていかなる措置をとるかを決定する。こういうふうな条項がありますように、平和に対する脅威とか、あるいは平和の破壊とか、侵略行為の存在というものを決定し、並びに国際の平和及び安全を維持し、または回復するための勧告をし、または四十一条及び四十二条に従ってどういう措置をとるかを決定するのは、安保理事会の決定であり、安保理事会の権限であって、米国の一方的な認定のもとに、ここに置かれるような国際の平和及び安全の維持に寄与するために行動するというようなことは、国連憲章無視ということをいわざるを得ないし、また、そういうふうなことに対して、その行動を日本事前協議なら事前協議で同意をするならば、これは一緒に国連憲章に対する違反共犯者になるのじゃないか、こういう点をおそれるものですけれども、その点はどうでございますか。
  249. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国連のメンバー・ステートは、それぞれ世界の平和の維持というものに関心を持ち、それに協力して参りますことは、国連のメンバー・ステートとして当然のことでございます。国連憲章の命ずるところでございます。そうしてその限りにおいて、集団的な安全機構というものも認められております。あるいは五十二条によって、地域的取りきめというものも認められておるわけでありますから、平素そういう機構を持ちましても、そのこと自体が、国連憲章に違反はしておらないのでございます。それが発動するような状況になったというときでには、武力攻撃がございますから——しかし今お話のように、武力攻撃に対する判断というものは、われわれとして、武力攻撃があったときにそれを排除する、その攻撃を排除しておいて、直ちに安保理事会に通報して、安保理事会の決定を待つのでございます。その措置によって、それをどういうふうに収拾していくかということをきめるわけでございますから、決して国連憲章に違反しているものではございません。
  250. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私が先ほど来由しましたように、極東における国際の平和及び安全というようなものの判定というものは、アメリカとか日本とか、そういうところができさるものじゃないと思うのです。やはりこれは国連によって判定されなければならないと思うのですけれども、それをアメリカなり日本がする、こういうふうにお考えになるのでしょうか。
  251. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 別に極東のと平和と安全を判定しているというのではございません。今申し上げましたように、国連加盟国としては、世界の平和というものをみんな念願して、あるいはどの部分においても紛争が起こらない、平和があるということを、国連の加盟国としてはみんな持っている責任がございます。そうしてその責任を遂行する意味におきまして、五十二条の地域的取りきめなり、あるいは集団の安全機構というものが、平素からあり得ることに認められておるのでございます。それによってメンバー・ステートとしてのできるだけの責任を尽くしていくわけでございます。でありますから、現在、どういう判定をするのだという問題ではないとわれわれは考えております。
  252. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、この前文にいうところの「極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、」という言葉と、それから第四条にいうところの「極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときは」というこの二つと、それから六条にいうところの「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」というのと、これは全く同じものでございますか。同じ意味で使っているのでしょうか。
  253. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 同じ考え方で使っております。
  254. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はそう考えないのです。というのは、前文におけるところの「極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有すること」というのは、これは極東の国際の平和とか安全のために共通の関心を持つのだという、一般情勢に対しての判断をしていくわけで、それはどういうふうな判断をしようと勝手だと思うのです。そうしてまた、この第四条にいうのは、「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときは一というふうに、そのときは協議をするのですから、脅威が生じたか生じないかという協議である。ところが六条になって参りますと、この「国際の平和及び安全の維持に対して寄与するため」に、実際において行動に移っていく実体を伴うものだと思うのです。そうなってくると、やはりこの六条の場合と、前文、四条の場合とは、その内容が違ってくるのじゃないかと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  255. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 違っておりませんし、六条の解釈は、先ほど条約局長が申し上げたところで明らかな通りでございまして、同じ観念で終始いたしております。
  256. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 この第六条の点でございますが、国際の平和及び安全の維持に寄与するために、区域を使用するということを許しておるのである、そのような目的をここで掲げておるわけでございます。  それから、しばしば御指摘の点でございますが、たとえば第七章における安保理事会の行動でございますが、これは平和に対する脅威、破壊、侵略行為が現実に起きまして、それを侵略行為である、または平和の破壊であるとしまして、平和の破壊者に対して強制行動をする、そういうような個々の具体的な行動をする場合に、このような強制行動をするのは、安保理事会がもっぱらやる点であるということを、これは第七章がはっきりうたっておるところでございます。また、それに対する例外としましては、今第五十一条の自衛権の行使でございますが、これも自衛権の行使は必ず安保理事会に報告して云々という制限がついた上で、このような自衛権を行使するわけでございます。すなわち、個々の行動のための規定をここでおのおのあげて考えておるわけでございまして、第六条は、このような一般的ないわゆる国際の平和及び安全の維持ということをわれわれは頭に描いて、この条文ができ上がっておるわけでございます。従いまして、この個々の行動をどうするかという問題は、これはまた別の問題、と申しますのは、だからといって安全の維持に寄与しない云々という問題じゃございませんが、第六条で掲げているのは、第七竜の関連で、御指摘のような意味合いではないというふうに考えております。
  257. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この点は、私と今の政府との考え方が違うわけで、もう少し私の方もよく研究してみたいと思いますし、政府の方でもその点を考えていただきたいと思います。  私は、次に、沖繩問題に少し入っていきたいと思うのです。沖繩につきましては、ここに日本国との間の合意議事録があるようでございます。そこで、この合意議事録に入る前にお伺いしたいことは、沖繩がどんどん軍事基地化して参りまして、沖繩の島民も、新しいナイキの基地を作ることには反対をするというようなことも、先ごろ新聞に出ておりましたし、それからまた小笠原につきましても、昭和二十九年の二月十日に、この外務委員会におきまして、いろいろと当時の小笠原の事情を述べております。その当時の参考人の意見を聞きましても、昭和十九年の四月に、日本の軍事上の理由によって、全島民の七千七百余名が本土へ強制の引き揚げを命じられて、そしてたった三個の荷物だけを渡された。東京から千六百海里も離れて静かに暮らしていたけれども、生活がとても苦しくなって、そのうち死んだ人が非常に多いし、終戦後自分たちも、沖繩、奄美大島の島民と同じように、郷土に帰還することを当然許されると思っていたけれども、昭和二十一年に、欧米系に血のつながるわずか百三十五名の人だけが帰還されたばかりで、一般の島民は一名も郷里に帰されることが許されなかった。平和条約によって、小笠原島は沖繩、奄美大島と同じように、主権が日本に残されて、三者は同じ状態に置かれたにもかかわらず、どうして小笠原に限って島民の帰島も許されておらないのでしょうかというようなことで、切々たる苦衷のほどを訴えられたわけです。そしてさらに昭和二十八年の八月八日には、ダレス声明によって、奄美大島が日本に復帰したことは、同一運命に置かれた仲間の人が蘇生したことで、大へんに喜びにたえないにもかかわらず、沖繩、小笠原の人たちは無期限にそのままアメリカ施政下にあるのは残念だというようなことを述べられたわけで、今日でもなお小笠原民の帰島ということが許されておらないわけです。最近になって、ようやくその補償問題がアメリカ国会で問題になっているようでございますけれども、この補償といっても、小笠原民にしてみれば、帰りたいのが帰れないというような状態で、ここでわずかばかりのあめをしゃぶらせられる程度ではいやだというような考えを持っているのですけれども、このように小笠原をあけておく、住民をみんな疎開させてしまって、わずかに混血の人たちだけを受け入れているというような状態にしているには、何かそこに特殊な、たとえばIRBMの基地なり何なりを作るのではないかというようなことさえも考えられる。そうでなければ、そんなに人を疎開させたままにしておかないのじゃないかというようなことが考えられますが、もしもそういうようなことがわかった場合に、日本はそれをやめてもらうようなことを陳情なさいますか、それとも、そのままにしておおきになりますか、この点を岸首相にお伺いしたいと思います。
  258. 岸信介

    岸国務大臣 小笠原住民の帰島問題というものは、御指摘のように、いろいろ日米の間に交渉もございましたし、今日においては、補償問題を一応解決するという方法がとられてきておるのであります。この点については、小笠原の住民の団体等とも十分話し合いをして、交渉が続けられているということであります。小笠原が将来どうなるかという問題に関しましては、今何も具体的に話は別段聞いてはおりません。沖繩と同じように、潜在主権を持っておる地域として、将来日本に復帰することをわれわれとしては念願しているわけであります。  ここに軍事基地を作る場合において、これに対してどうするかというふうな御質問でありますけれども、私ども具体的に何も今聞いておりませんし、あるいは、IRBMをどうするとかいうふうな御質問でありますけれども、そういう事実もわれわれは何も聞いておりませんので、そういう問題が起こったときに、また、そういう起こるような情勢であれば、これを十分に検討して、これに対して日本がどうするかということを考えていきたいというふうに考えております。
  259. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういうような情勢が起こった場合に考えるのじゃなくて、そういうような情勢が起こったら、これに対してやめてもらうようにアメリカ話し合いをおつけになりますか、それとも、起きないかもしれないからというので、そのままにしておおきになりますか。その根本的な考え方を伺いたいわけです。
  260. 岸信介

    岸国務大臣 私がお答え申し上げましたように、ただ、そういう仮定の問題についてどうする、こうするということを申し上げること、私、適当でないと思います。各種の事情につきましては、われわれとしても十分関心を持って検討した上において善処したい、かように思います。
  261. 戸叶里子

    ○戸叶委員 非常にそういうような可能性があるわけでございまして、今からそういう点に対しては十分考えておいて、日本の近くにそういうふうなものを設けないようにしていただきたいと思うわけでございます。しかし、岸首相は、それに対して、やめてもらうようにするとも、しないともおっしゃらないわけでございますが、ぜひ、そういうふうなことに対しては、日本国民のためにやめてもらうようにしてもらいたいと思うのです。  そこで、この沖繩の問題についてはいろいろありますけれども、この議事録にしぼっていたします。この議事録のしまいの方を読んで参りますと、「もしこれらの諸島に対し武力攻撃が発生し、又は武力攻撃の脅威がある場合には、両国は、もちろん相互協力及び安全保障条約第四条の規定に基づいて緊密に協議を行なう。武力攻撃が発生した場合には、日本国政府は、同政府が島民の福祉のために執ることのできる措置を合衆国とともに検討する意図を有する。」こういうふうなことが書いてあるのですけれども武力攻撃が起きたときに、日本の国が島民の福祉のためにとることができるという、この福祉というのは、具体的に何をさすのですか。
  262. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 武力攻撃が起こりました際に、日本人である島民の生活全般に対してわれわれが心配をいたしますことは、これは当然のことだと思います。その場合に、福祉の内容についてはいろいろあると思います。あるいは病気になった人を内地に連れてくるというのも一つでございましょう。あるいは食糧事情等の問題もあるかと思います。いろいろそういう面において島民自身の福祉に貢献し得る問題が起こった場合に、いろいろな形で出て参ると思いますから、そういう問題については協議をして、そうして島民の福祉に関しては、できるだけ日本政府として十分な処置をとっていきたい、こういうことでございます。
  263. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは、本土に引き揚げさせるとか、あるいは救援物資を送ってやるとか、そういうようなことを意味するわけでございますか。
  264. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 福祉でありますから、そういう問題、むろん入るわけであります。一々例証するわけにもいきませんが、万般のことが含まれております。
  265. 戸叶里子

    ○戸叶委員 たとえば品物を送ってやるような場合に、もう日本アメリカとが提携しているわけでございまして、日本からの戦闘作戦行動というものをアメリカに許した場合に、国際法上の局外中立ということではなくなってくるわけです。そういうふうな場合に、幾ら沖繩民の福祉を考えて船で品物を送るといっても、その船が途中で爆撃されてしまうというようなことで、その福祉を考えても、実際の行動に入った場合に、福祉なんかが実際に考えてやれないというような場合が出てくるんじゃないかと思うのですが、こういう点はいかがでございましょうか。
  266. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そういうようないろいろな場合に、福祉に対して協力ができないからといって、われわれが、今日、そういう場合に協力しないということを言うのはおかしいと思うのであります。われわれは、あくまでも、できるだけ沖繩島民の福祉に平素から協力していく、しかし、どうしてもそれができなければ、事情やむを得ないでございましょうけれども日本国民としては、できるだけ協力したいという意思を表明するのは当然でございます。
  267. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それは当然だと思うのです。しかし、実際問題として、その福祉をやってやろうと思っても、それができないじゃないかということを私は指摘しているわけなんです。  さらに、この議事録の一番最初に「日本国との平和条約第三条の規定に基づいて合衆国が施政を行なっている諸島の地位の問題は、」というので、この条約を交渉するにあたっては、この沖繩の返還問題については何も話をしなかったというようなこと、その地位の問題については話をしなかったということをはっきり言っているわけなんですけれども、たびたび日本は、沖繩の返還問題ということは話をしなければならない、施政権の返還ということは願っていたにもかかわらず、わざわざここで、そういうことを問題にしなかったということを書いた理由はどこにあるのでしょう。
  268. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん、後段の、福祉に対する協議をすることをわれわれは主眼としております。従って、前段において、そういう過程において返還問題その他については話をしなかった。これはかねてから申し上げておりますように、平常の外交ルートで話し合いをすべきものでありまして、安保条約を作るからどうという問題とか、いろいろな引きかえ条件というようなことではなく、当然、平常の外交ルートをもって平素から交渉するのでありますから、その意味でございます。
  269. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もしも施政権の返還なり何なり、そういった地位の問題をお話しになる意思があるならば、ここでわざわざ地位の問題は出さなかったんだということを言われなくてもいいと思うのです。それをわざわざここで断わっているのは、私はおかしいと思うのです。
  270. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 後段に、福祉のために適当な協議をし、措置をとりたいということを強調する意味においては、過程においてなくとも、そういうことはやらなければならぬのだという意味でございます。
  271. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その答弁は少しおかしいと思うのです。あらゆる機会において施政権の返還を要求していかなければならない立場にあるにかかわらず、わざわざそういう問題はここで出なかったということは、少し変じゃないかと思うのです。しかも、そういうことをなぜここの議事録の中に書かなければならないのですか。むしろ、そんなことを書かなくてもいいんじゃないでしょうか。何かそこにあるのじゃないでしょうか。何もないんですか。
  272. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 沖繩の返還問題については、通常外交ルートでやるべき問題だということは、かねて申し上げております。また、そういうことでやっていくのが当然でございます。われわれも常にそういう問題を取り上げておるわけでございます。ただ、しかし、ここでは、後段の、福祉をいたします場合の考え方といたしましても、この交渉の過程でやらなくても、そういう話し合いはしないけれども、しかし、沖繩の島民の福祉というものは日本の人にとって非常に重大だからということを、あらためて言う必要があろうと思います。
  273. 戸叶里子

    ○戸叶委員 どうもそれじゃ答弁になっていないと思うのですけれども、私は次の質問をしたいと思います。  沖繩を信託統治にするとかしないとか、だいぶ問題になっていたのですけれども日本国連に加盟してしまった以上は、七十八条にはっきりと「国際連合加盟国の間の関係は、主権平等の原則の尊重を基礎とするから、信託統治制度は、加盟国となった地域には適用しない。」こういうふうに書いてあるわけでございますが、その後、日本からアメリカに対して、信託統治にする意思があるかどうか、お聞きになったことがございますか。また、おそらくそういうことはあり得ないと思うのですが、いかがでございましょう。
  274. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 特にわれわれは、沖繩の返還ということを要請はいたしておりますけれども、他の問題については触れておりません。
  275. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私が今聞いたことに対してお答えがないですね。七十八条を読み上げたでしょう。今のような、日本国連加盟国になっておりますけれども、今後アメリカは、信託統治にすることはできないでしょうということを聞いているのです。それで、信託統治にするかどうかということをお話しになったことがあるかどうかということを伺っているわけです。
  276. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私が今申し上げました通り、われわれは返還ということを主題にして話をいたしておるので、他のことについては触れておりません。また、七十八条の解釈につきましては、条約局長から御説明いたします。
  277. 戸叶里子

    ○戸叶委員 時間がないから、条約局区長の御答弁は要りません。私はわかっていますから……。  それでは、次にもう一点沖繩について伺いたいのです。ここに提出された資料によります米比行政協定の二十七条によりますと、米軍は、フィリピンの義勇軍を募集することができるとなっているわけです。アメリカは、沖繩において義勇軍の募集というようなことも考えられるんじゃないかと思うのですけれども、あるいはまた、強制的に軍隊的組織を作っても、施政権がアメリカにある以上は、何とも言えないんじゃないかと思うのですけれども、こういう点はいかがでございましょうか。
  278. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 アメリカは沖繩に今立法、司法、行政の全権を持っておりますから、その権限においてはできることであろうと考えます。
  279. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もし、アメリカが沖繩において義勇軍を作るというようなことになりますと、これは非常にいろんな大きな問題になってくるわけですけれども、これを法的に阻止することを日本政府としては何にもお持ちにならないわけでございますね。総理大臣に伺いたいのですが……。
  280. 岸信介

    岸国務大臣 残念ながら、法的には一切の施政権を米国が持っております。ただ、外交交渉において、望ましくないことに対しましては、われわれは、米国との交渉においてそういうわれわれの考えを述べることはもちろんでございますが、しかし、それに法的根拠があるかということになれば、法的根拠としては、今言うように、施政権を持たない以上は、法的根拠は持ち得ない。ただ、日米関係から申しまして、われわれが強く要望している事柄に対しては、なるべく米国側がそれを従来も認めておりますから、今後においても、そういう問題についてはわれわれの要望は強く主張するつもりであります。
  281. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうすると、そういうふうな問題が起きてきたときに、法的根拠はないけれども日本側としてははっきり断わるのだというふうに了承します。私はここら辺があぶないと思うのです。なぜならば、米比協定によって、義勇軍を募集することができる、これと同じようなことが必ず沖繩にやってくると思うのです。そうなってきたときに、はたして日本がどれだけ断わり得るかどうかということが問題になってくる。しかも、それが、こういうふうな、島民の福祉のためにというふうな言葉を言っておりますけれども、こういうふうな中に非常に考えられるにおいがするわけです。こういうふうな点につきましては、私はもう少しこの義勇軍の問題から発展させて質問をしていきたいと思うのです。  ほかにたくさんありますけれども、きょうはこの程度でやめますが、最後にもう一点、事前協議の問題にいたしましても、事前協議に対しては、ここで共同戸前で出されているわけでございます。ところが、この共同声明の性格といいますか、法的拘束力というものはほとんどないわけです。ですから、事前協議そのものの法的拘束力がないということで、非常に無効ではございますけれども、さらに、それがお互い信頼のある国民として言ったことだから大丈夫であるという政府言葉をかりて考えただけでも、そういうふうな根拠の上に立ってみましても、私は非常に不安な点がある。というのは、この英文の方を見ますと、英文の方で、ザ・プレジデント・アッシュアド・ヒム・ザット・ザ・ユナイテッド・ステーツ・ガヴァメント・ハズ・ノー・インテンション、ハズ・ノー・インテンションとしか書いてない。しかもそのをあとに、ウィッシェズ・オブ・ザ・ジャパニーズ・ガヴァメントとあって、ウィッシェズということで、これをもっと強くするならば、私はウイルという言葉を使うべきだと思う。それから、ハズ・ノー。インテンションと書いてあるのですが、今はそういう意思はないということは読めます。しかし、将来においてそういう意思がないという確約がないわけです。たとえば国連憲章なり、ほかの条約の形を私は調べてみますと、もしも将来においてもないというときには、そのあとで、ハズ・ノー・インテンション、あるいは、オア・ウイル・ハブ・ノーとかいうふうに、ちゃんと現在形と未来形と両方書いてあるわけです。ところが、この場合には現在形しか書いてない。そうすると、ここでお互いに政策上の、私どもはそういう意思はありませんということの発表にはなるかもしれないけれども、将来にわたってまでそれが有効であるかどうかということは、非常に問題になってくると思うのです。この点はいかがでございましょう。
  282. 岸信介

    岸国務大臣 英文については、私、英語が得意でありませんから、得意な者からお答えをいたします。ただ、問題は、このアイゼンハワー大統領と私の共同声明で初めて明らかになったということではなくして、この事前協議の対象とするという、事前協議の主題にするということの法律的の解釈につきましては、この交換公文を作り上げる上におきまして、日米の間における解釈が一致しておるのでございます。それが文書になっておらないということが、いろいろ論議を従来されてきております。そういう問題であり、交渉の過程において、事前協議というものが日本の同意を要するのだという意義を持っておるということは、外務大臣が数回にわたりたびたび説明をしておる通りであります。私が今回アメリカを訪問いたしまして、日本国民の間にそういう議論があることに論及して、そのことに対して大統領がさらにこの法律解釈の点をアッシュアしたというところに、私はこの共同声明の意義がある、かように考える。共同声明自体でもって解釈がきまったとか、将来に拘束力を持つとか、持たないとかいうことでなしに、本来事前協議の対象とするということの法律的の解釈は、外務大臣の申した通りでありまして、それを、私とアイゼンハワー大統領との間におきまして、大統領がさらに確言したというのが、その意義であります。  英語につきましては、条約局長からお答えいたさせます。
  283. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の、ハズ・ノー・インテンション・オブ・アクティング云々という言葉でございますが、これは英文から見ましても、単にこの共同声明をなしたそのとき現在の問題のみならず、将来のことも含んでいる書き方であろうと考えております。  それから、このウィッシェズの問題でございますが、これはウイル云々という言葉づかいもありますが、こういう協議をして、適当でない、そういうことをしてもらっては困る、希望しないというような場合でございますので、私は、ウィッシェズという言葉が、この場合最もぴったりきている言葉ではないか、このように考えております。
  284. 戸叶里子

    ○戸叶委員 言葉の問題じゃないのです。結局内容の問題です。これにどれだけの拘束力があるか、それからまた、どれだけの効果があるかということを言いたかったわけでございまして、その一つの例としてこの言葉の問題をあげたわけです。今の条約局長の御答弁でございますけれども、ほかの条約なんかを見ますと、将来までのときには、やはり現在形を使って、そのあとにまた将来形を使っているわけです。そういうふうな点から見ると、これは現在しかないというふうなことを指摘したわけです。岸首相が、大へんに自信を持って、この事前協議の問題は大丈夫なんだということを言ってはおられますけれども、世論はだれもそういうことを信じていないわけでありまして、非常にいろんな問題がここに残っているわけでございます。私はそういう点も追及していきたいと思いますけれども、きょうは時間がありませんので、この次に質問を留保して、一応これでやめたいと思います。
  285. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次会は明後十三日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十四分散会