○
穗積委員 いろいろと
説明をなさいますけれ
ども、この問題は、ここで多くの時間をとろうと思いませんから、先ほど申しましたように、あらためて聞きたい。
ところが、こういうわれわれの危惧は、実は平和を愛する
日本における
国民の危惧だけではなくて、特にわれわれが位しております
アジア・
アフリカ諸
地域、これは今後重要なる
日本の外交の対象になる
地域でございますけれ
ども、これらの
地域の諸国、ほとんど大多数の国が、岸さんのおっしゃったような
意味で新
安保条約を礼賛しておりません。そしてまた、
日本独占資本の経済的進出の危険についても、決して今藤山外務大臣が
説明されたような甘い
言葉を迎えてはおらないのであります。
そこで、
政府がわれわれにお配りになりました情報、
国際情勢資料に、新
安保に対する各国の反響として、報告をされておられる。これは
政府の発行したものについては、
政府の皆さんもごらんになっておられるでしょうが、この
国際資料なるものは、資料ですから、すべての国の評論なり
意見なりを載せるべきであるにかかわらず、相変わらず一方的であって、
アジア・
アフリカ地域における重要なる
中立諸国の反響すら載せていない。こういうことですから、おそらくは、岸さんも藤山さんも赤城さんも、さっきの御
説明で、
アジア・
アフリカ諸
地域の諸国並びに諸人民が満足して、おそれ入っておると思ったら、大間違いです。ですから、その一例として申し上げてみます。
ソビエトから参りましたグロムイコ覚書その他は、外務省を通じて
政府への覚書でありますから、これは申すまでもない、私は申しません。それから中国の外交部が発表しました声明ですね、これも
政府にやった覚書ではございませんが、
政府の発表ですから、ごらんになったと思うのです。ところが、そうではなくて、中国における人民大衆が放った批判、これは北京における
日米軍事同盟反対集会の決議になっておりまして、民主的なものでございます。これにはこういうふうに指摘しております。(「中共に大衆の声なんかないよ」と呼ぶ者あり)「
アメリカ帝国主義は新しい侵略と
戦争を企てるため、
日本軍国主義の復活と侵略の再起の防止に関する一連の
国際協力を踏みにじり、公然と
日本軍国主義を復活させ、
日本を米国の侵略的軍事
ブロックと核
戦争の体制に組み入れている。一方、」ここからは特に藤山さんに聞いていただきたい。「岸信介氏を代表とする
日本の軍国主義勢力も、米
帝国主義に追随し、再度
アジアで拡張を行ない、」エクスパンションの
意味です。「大東亜共栄圏」を再現させようとするはかない夢を見ている。
日米軍事同盟の設立は、中国、ソ連及び
アジア各国の安全に重大な脅威をもたらしており、同時に、
日本民族を再び
戦争の災難に引き込もうとしている。」今、自民党の席からはからずもヤジが飛びましたが、中国の、すなわち、
共産主義諸国の人民の声であるから、初めから色めがねを持ち、敵視
政策、または
仮想敵国視して、そういうことをヤジられるわけでごさいましょうが、これは後に申しますように、
国連憲章の精神によって新
安保が組み立てられるといたしますならば、
自由主義諸国、社会主義諸国の区別はないわけですね。そういう精神は
国連憲章のどこにもない。従って、この声は、この六億の民衆を代表する声として聞かなければならない。そういう
意味で、私はほんの注意を促しておきます。
そのほか、中国におきましては、郭沫若であるとか、廖承志、あるいは謝南光、張奚若、これらの人々が放送をし、あるいはこれら最も中国の今日知日派といいますか、それらの人々が言っておる。
さらに北朝鮮、北ベトナム、それからモンゴル共和国、それから束ヨーロッパ諸国の社会主義諸国にも、同様の趣旨のものがありますけれ
ども、これは趣旨が大体同じですから、省略いたします。
次に問題になりますのは、今ヤジっておられますが、問題になるのは、
中立諸国の声でございます。インドですね。インドは、これはあなたとネール
首相とは、
アジアの平和と
繁栄について話し合われているはずである。敵対国でもなければ友好国でもない。あなたの考えですら、敵対国ではない。そうしてまた、インドについては、経済的問題について、先般も積極的な
協力をしようとしておられる。そのインドでございます。このデイリー・ヒンドスタン、これは御承知のように、インド国内におきましても、中立国の中で、最も右寄りの新聞、機関紙ですね。決して社会党寄りのものではございません。中立のインドのその中で、またまん中よりは右寄りの機関紙、それが、長くなりますから、結論だけ申しますと、「ソ連と中国は
日本の隣国であり、彼らの隣国に米軍基地が設けられるのはかれらにとって当然危険なことである。」すなわち、
戦争への危険を指摘しておるわけでございます。さらに、このインドのアムリタ・バザール・パトリカ、これも今申しましたように、決して左翼的なものではございません。これは
最後にこういうふうに言っております。「この
条約の唯一の具体的結果といえば、モスクワと北京の論評が十分に指摘しているとおり、極東の冷戦を激化させるということである。」すなわち、冷戦激化の
政策であるということを危惧して、そして中立と平和を尊重するインドの世論を代表して、
日本並びに
日本国民に警告を発しておるわけです。あなたは、社会主義諸国以外はほとんどこれを礼賛しておるような錯覚を持っておられるようでありますけれ
ども、そうではないのでございます。
さらにインドネシア、これまた賠償
協力その他が行なわれて、非常に大事な友好国でなければならない。このインドネシアの黎明日報は「米国の育成の下、
日本はさらにぼう大な武力をもち、対外拡張」——これはエクスパンション、膨張のことでしょう。この中に
帝国主義的な進出という心配が含まれておるわけです。「対外拡張を行なってその「大東亜共栄圏の野心」を実現しようとたくらんでいる。」これはインドネシアですよ。であるから、東南
アジア全人民、特にインドネシア人民は不安を感じておると率直に訴えております。さらに、これは
一つだけではあなた方は信用しないかもしらぬから、申し上げますが、同じくインドネシアのビンタン・チムール、これはこういうふうに言っております。
最後で、「
日本が軍国主義の古い構想——国内問題解決と市場と原料供給地を求めるため軍事的拡張を利用する——」ここですね、藤山さんよくお聞き下さい。これはあなたが賠償をやられましたインドネシアの世論でございます。この軍国主義の構想、すなわち、
帝国主義的な市場拡張の構想「——を使おうとしていることを示す。この軍事
条約は
日本を他の諸国、まず初めに
アジア諸国から孤立させるだろう。」これがインドネシアの代表的な論評でございます。
それからアラブ連合、これも
中立諸国です。
アジア・アラブ諸国で、
中立諸国で、高碕さんその他がアッサム開発その他の経済開発に非常に
協力しており、親日的であり、
日本との間における経済
協力を最も願っておる国でございます。決してあなたがきらっておる
共産主義国または社会主義国ではございません。これが何と言っておるかというと、これはアラブ共和国の代表的なアル・グムフリヤ紙で、これはその論説でございますが、「この
条約は
日本を完全に米国の同盟国にしたが、新同盟は
日本に一層の危険をもたらすだろう、自国内に外国の基地を設ければ、
戦争に導くだけだ」これまた冷戦激化の
政策であるということを指摘して、
反省を求めておるのでございます。さらに、AA諸
国民連帯
会議、これは実は
日本国民に向かってメッセージを送ってよこしまして、このように訴えております。「バンドン諸
原則とカイロ諸決議は、」——これは高碕さんも出席されたバンドン決議のことです。カイロ諸決議には北村徳太郎さんも参加されております。「諸決議は、平和共存と完全
独立の実現を断乎として擁護し、
帝国主義者との
軍事同盟を非難している。いかなる形式であるとを問わず、
帝国主義者と
軍事同盟を結ぶ国家は、確実に
帝国主義の走狗たる役割を荷負わされるであろう。」そうして続いて、こういうことを言っておる。「「相互防衛」という口実のもとに、
日本が、
アメリカ帝国主義の追随者たる
地位から、その
協力者たる
地位を占めることを、われわれは黙視することはできない。」続いてまた、これは……。(「中ソ同盟はどうなんだ」と呼ぶ者あり)ちょっと待って下さい。中ソ同盟については、ヤジがありますが、後に私は明確に触れます。「また、
日本がその工業力を互恵平等の
原則に基いて相互の
繁栄とを、すべての
アジア・
アフリカ人民が希望しているにもかかわらず、
アメリカ帝国三義の利益のために極東の兵器庫たらしめようとしていることは、最も恐るべき事実である。」すなわち、
日本の軍事化をおそれているわけですね。「全
アジア・
アフリカ人民は、
日本における
アメリカ帝国主義の
協力者によって企図されている
日本軍国主義の復活を、許すことはできない。」これが
日本国民に対する呼びかけでございます。
さらに、エジプトとイラクが、これまた中立国として、同様の趣旨のものをよこしておりますが、時間がだんだんなくなってきましたから、省略いたしましょう。
最後に
岸総理に申し上げたいのは、あなたが
自由主義諸国の陣営だと言っておる韓国、フィリピン、
アメリカ国内等における論評、これは亭主の好きな赤烏帽子で、亭主の好きなものしか登録しない外務省の方々の情報の中には載っていないと思いますから、重大な参考として申し上げておきます。
自由主義諸国は全部これを礼賛し、歓迎しておるなどとお考えになったら、大きな誤りでございますから……。
フィリピン。これは「マニラ・ミラー」ございます。「マニラ・ミラー」がいかなる新聞であり、その論説がフィリピンにおいていかなる比重を占めておるかということは、外務省の方は御承知でございましょうから申し上げませんが、こういうふうに言っております。「新
条約中の
日米両国間の経済提携を定めた条項は、特に悪質なものである。東南
アジア諸国は、その結果として、あの悪名高い〃大東亜共栄圏〃が今度は
日米協力の名のもとに復活することをおそれている」と、率直にその結論で訴えております。これはフィリピンでございます。
次に韓国。韓国は「韓国日報」。ここでは、「新
条約は、
日本を極東において従来より以上に高い
地位に引き上げるであろう」、これはいい
意味も含まれておるとともに、昔、韓国の
支配をしておった当時の
日本をもう一ぺん思い起こしながら言っておる。続いて「東亜日報」。この論説は、こういうふうに言っております。「新
条約は、極東全域における
日本の指導的
立場を
承認する。
岸首相の訪米が、十五年前に」——ここからが大事です。「十五年前に力では失敗した大東亜共栄圏を、平和的に達成することを目的としていることは十分想像できることである」これが結論でございます。決してあなたの言うように、
自由主義諸国がすべてこれを礼賛しているものではございません。(「その雑誌は「前衛」だろう」と呼ぶ者あり)これは「
世界」。勉強のために読んでごらんになったらいいでしょう。どこであろうと、「
世界」の
意見ではない。「
世界」の
意見ではなくて「東亜日報」の
意見。これも「韓国日報」です。一月十九日ですから、調印の日です。あなたのことを非常に皮肉って、こう言っておる。「戦犯であった岸氏が、平和賞の受賞者となるまでに百八十度の転換をするだけの偉大な貢献があったとするならばともかく」——ともかくですから、ないということです。「これは過去五十年間
日本帝国主義の最大の被害を受けておる韓国人民を初めとして、岸氏
自身までをもあぜんたらしめた一部の
アメリカ人の没常識的な措置であるといわなければならない」、あなたのやっておられる新
安保条約は、決して平和のための
政策ではないということを指摘しておるわけでございます。そのほか、
アメリカにおける論評が数稿、痛烈なるものがありますが、これは時間がありませんから省略いたしておきます。
このような、
安保条約がよって立っておりますところの
アメリカの
国際情勢の変化に伴う
アジアの太平洋軍の配置転換の実態と、それから経済的な、
アメリカの
アジア・
アフリカ地域に対する現在の対外援助の実態、その
性格、さらに、
日本の東南
アジア諸
地域に対する経済的
関係、以上が、私が
最初に申しましたように、新
安保条約を
理解するための政治的
背景であり、その
背景のもとに、またはその
一つの表情として新
安保条約がここに登場してくるわけですね。そこで私は、
最初に申し上げましたように、ここで、第一に、
条約の
内容について討議に入りながら、御
質問をいたしたいと思いますも
率直に申しますと、先ほど申しましたように、新たなる
条約は、これに
国連憲章の精神並びにその
規定を順守すること、
日本国憲法の
規定内ということでカムフラージュし、オブラートで包んでありますけれ
ども、決してそうではなくて、
国連憲章の精神に反し、五十一条を乱用し、
憲法に違反する、社会主義諸国を
仮想敵国とする
軍事同盟である。それは、われわれが主観的に
理解するのではなくて、客観的に
条約の構造並びに
規定の中に明確であると思います。そこで、この
条約が軍事的同盟ではないか、
憲法に違反するものではないかという
質問が、もうこの二、三年来、
国会のあらゆる
委員会でなされましたが、それに対して
政府は、ただ一片の防衛的なものである、諸君の誤解であるということで、何ら
内容についての
所信を明らかにされておりませんので、私は、これから、何ゆえにわれわれがそういうことを言うかということを、単に観念的な、独善的な解釈をしておるのではなくて、具体的な
条約の構造、それから
条文の
規定の中にその事実があることを明らかにしながら、
所信をお尋ねしたいのです。
最初に、先ほど
帝国主義について申しましたが、
帝国主義論は先ほど程度でいいとして、
軍事同盟であるかないかということをここで
規定するためには、
軍事同盟ということに対する
お互いの
概念、
理解が一致していなければ、幾ら
議論してもだめでございますから、まず、
軍事同盟の
性格を
規定して、
政府の
統一解釈として、
軍事同盟とはこういう
性格のものを言うのであるが、そうではなくて、
国連憲章にいう集団的取りきめはこういう
内容のものであるという点の区別を明らかにしてから
質問をいたしますから、このことについては、率直にしていただきたい。
第一、私
どもは、
軍事同盟をこういうふうに
理解いたします。戦時におきましては、つまり、新
条約の第五条がうたっている非常な事態が生じましたときには、相互に防衛同盟の義務を負い合っている。そして、
お互いに他の安全のために、国策としてこの防衛行動を行なう。これが第一。
第二の要件は、平時でございますが、平時におきましても、一定の
政策遂行が行なわれておる。この同盟機構、つまり、この
条約機構が、平素の
政策遂行に利用されている。その国の内政のすべてを含んでおりません。たとえば、今度の
条約で言うならば、第三条による兵力増強の打ち合わせをする、あるいはまた、第四条における脅威が生じたときに対処するための第五条の戦闘行為になる前の
政策遂行に利用する、あるいはまた、平時の兵力増強だけではなくて、指揮、訓練等に対しても今度の
安保委員会を通ずるわけですね。さらには、その国の
国際情勢の
判断にこれを利用する。このことは、今まで行なわれました合同
委員会の
審議の中ですでに行なわれてきたことをわれわれは明らかにいたしますけれ
ども、今度の新
安保条約におきましては、先ほど私が指摘いたしました
日米安保協議
委員会を通じて、第五条の戦時だけではなくて、平時における
政策遂行のために
お互いに利用されるわけですね。これが第二の特徴、要件である。
第三点は、
仮想敵国を持つこと。これは
国連憲章五十二条にいう
地域的取りきめとの
性格の重大なる区別の特徴、メルクマールになるわけでありますが、
仮想敵国を持っておるということも
以上、三点をもって私
どもは
軍事同盟条約としての
規定をしたい、そういうふうに
理解をしております。そして、まず
最初に、新
条約と
国連憲章の
地域取りきめ、あるいはまた個別的、集団的自衛権との問題に入って参りたいと思いますが、
最初に、この
軍事同盟が途中でひっくり返り、ひっくり返り、ときによって違う、人によって違うようなことでは困りますから、きょうは
首相、外務大臣、赤城防衛庁
長官、林
法制局長官並びに高橋
条約局長全部おられますので、どなたからでもけっこうですから、
統一解釈なるものをこの際明らかにしていただきたいと思います。