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1960-04-07 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月七日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    天野 光晴君       池田正之輔君    石坂  繁君       鍛冶 良作君    鴨田 宗一君       小林かなえ君    田中 榮一君       田中 正巳君    塚田十一郎君       床次 徳二君    野田 武夫君       服部 安司君    福家 俊一君       古井 喜實君    保科善四郎君       毛利 松平君    山下 春江君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       黒田 寿男君    田中 稔男君       中井徳次郎君    森島 守人君       横路 節雄君    堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務政務次官  小林 絹治君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長) 高橋 通敏君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君  委員外出席者         検     事         (刑事局総務課         長)      神谷 尚男君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ――――◇―――――
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。床次徳二君。
  3. 床次徳二

    床次委員 本日は、まず調達に関して伺いたいと思います。  従来、需品調達に関しましては、直接契約原則としておったのに対しまして、今回、間接調達を行ない得ることに改正せられたのでありまするが、今回の改正の結果、いかようなる改善が期待せられるか、政府答弁を聞きたいと思います。
  4. 森治樹

    森政府委員 従来は、御承知通りに、行政協定十二条によりまして、アメリカ側契約の自由の建前をとりまして、間接調達あるいは直接調達、そのいずれの方式をも取り得たわけでございますが、今回は特に、そのうち、従来アメリカ側としましては原則として直接調達をとっておりましたので、間接調達も、両国政府合意する場合はできるということを、念のために明らかにいたしたわけでございます。ただいまのところ、間接調達へ移行します場合には、国内的な措置をとる必要もございますし、こういう国内的措置も整いまして、そうしてアメリカ側との協議が整い、また、そういう必要が生ずるというような場合には、間接調達に移るということになるわけでございますが、ただいまのところ、直ちに間接調達に移るということは考えておりません。
  5. 床次徳二

    床次委員 ただいまの御答弁はきわめて抽象的でありまして、いかなる事業がどの程度に移管せられるかということがわからないのでありまするが、この点少し現実に即した答弁をしていただきたいと思うのです。すなわち、直接調達として残るものは、結局、どういうような仕事が直接調達事業として残るか。なお、今日、直接調達から移管してくるようなものが、どういうような仕事がかわってくるかということの説明をお願いしたいと思います。
  6. 丸山佶

    丸山政府委員 平和条約発効以来今日まで、御承知通り、直接調達、いわゆる特需契約が行なわれておるわけでございまして、この特需契約契約条項あるいは商慣習、これらのものに関しましては、日米の間にいろいろの相違がございます。従って、米軍の需要の注文に応ずる日本側業者といたしましては、条項あるいは商慣習相違に基づくところの不利不便があるわけでございます。従いまして、これらの点に関しまして、もしも日本政府機関を通じて、日本政府が間に立って日本業者契約を結ぶならば、それらの点の不利不便が除かれるわけでございます。これが一般的な問題でございますが、また、具体的にも、ある需品、また特に工事のような場合に、この工事の施行が、施設及び区域の中のみならず、外部にもいろいろな影響を及ぼす、それらの点に関しては、十分周辺実情を考慮して工事を施行する必要がある場合、これらの場合には、日本政府機関が、米軍要求を引き受けて、これを日本業者に行なわせる、いわゆる間接調達をするならば、それらの不便、また周辺に及ぼす影響等も少なくし得る、かように考えております。そのような必要に応ずるために、今回特にこの条項が新たにつけ加わったものであります。しかしながら、これをやるためには、国内的にこれを処理する機構整備の問題もございますし、また、それに要する経費についてアメリカとの間にいかに償還方法をきめるかというような問題もございます。従いまして、今後におきましては、この条項に基づきまして、特に必要のある以上のような種類のものに関しましては、国内整備状況、また、アメリカとの間の経費負担関係等も調整しまして、両国政府合意をしてこれを実施に移していきたい、このように考えております。
  7. 床次徳二

    床次委員 次に、労務調達について承りたいのですが、従来の行政協定におきましては、労務におきまして最も大きな摩擦現実においては現われておったのであります。今回の改正においていかに処理せられたか聞きたいと思うのですが、まず、現在、駐留軍関係労務者というものが、直接、間接を合わせまして、どれくらいの人数が関係しておるか、説明されたいと思います。
  8. 丸山佶

    丸山政府委員 労務関係条項は、お説の通り、今回の協定において非常に改正点が多い問題であります。そのうちの一つといたしまして、お話の直接、間接の問題がございます。間接調達と申しまして、日本政府担当といたしまして、調達庁雇用して軍自体要求に供しておるもの、この労務者の数が、ただいま約六万二千名でございます。それから、直接と申しております、軍自体ではあらずして、軍の中にあるPXとか、食堂とか、クラブ、それらの諸機関、その内容は行政協定の十五条に書いてございますが、このものが、日本政府の介在なくして直接に労務者雇用しておるもの、この数が、約一万五千名と推定しております。
  9. 床次徳二

    床次委員 まず、問題点一つでありまするところのPXの直接雇用者間接雇用に切りかえられますと、この間において労務保護に対していろいろ変化が出て参ると思うのでありますが、この労務者に対する保護制度についてその利害得失、また、その労働条件等がいかに変更せられるか、この点について説明されたいと思います。
  10. 丸山佶

    丸山政府委員 従来からPX等のいわゆる直接雇用者の問題の一番の難点あるいは改善を要する点と指摘され、論議されておりましたのは、何分にも米軍のそれらの機関労務者との直接の雇用関係でありまして、日本政府として法律的の介入事態がないのでございますので、それらの労働条件、あるいは労務者法令上の権利あるいは利益の擁護に関するいろいろな苦情処理等にも問題があります。格別にそれらのことに関連しまして裁判という問題になりますと、それらの諸機関に関する日本裁判所管轄権という関連におきまして十分なる擁護措置がとれない、このような事情から、これを間接に切りかえるという措置話し合いができたわけでございます。従いまして、これらの切りかえにあたりましては、労働条件、それからそれに基づくいろいろな苦情の受付、処理、あるいは裁判になりました場合には、その訴訟当事者というものには、切りかえが実現いたしますならば、日本政府が当たることになるわけでございます。
  11. 床次徳二

    床次委員 今後なお直接雇用に残る者があるかと思うのでありまするが、これらの残された直用者に対する保護関係はいかにして万全を期するか、伺いたいと思います。
  12. 丸山佶

    丸山政府委員 先ほど申し上げましたような事情に基づきまして切りかえをするのでありますから、これらの関係の者は全部切りかえるという考え準備を進めております。残る者がないように、しかも、その実施時期といたしましては、この協定が発効いたしましたならば、できるだけすみやかな時期に切りかえを実現するように準備を進めております。
  13. 床次徳二

    床次委員 しかし、PXの十五条関係者以外にも直用者が残るのじゃないかと思うのですが、そういうものはありませんか。
  14. 丸山佶

    丸山政府委員 軍関係労務者は全体を通じて見ますと、ただいま調達庁がいわゆる間接調達ということで軍自体に提供しております労務者と、それから、ただいまお話の第十五条の、歳出外の諸機関雇用しておられます直用労務者、それ以外は、個人の家庭においてメイドその他の関係、こういうものの三種別に分かれると思います。従いまして、第二番目の諸機関直用者間接に切りかえますならば、軍関係労務関係者といたしましては、あとに個人的なメイドその他の使用人だけが残るものと考えます。これらに関しましては、格別に各家庭におけるおのおのの事情等がございまして、一がいに、政府において統制規律して労務提供ということができませんので、この家事使用人個々の者だけが、今回の切りかえによりましても間接にはならない、それだけでございまして、ほかにはないと私は考えております。
  15. 床次徳二

    床次委員 今回の改正に伴いまして、従来から、調達庁米軍との間におきまして、労務供給に関する基本契約を結んでおったと思うのですが、この基本契約につきましては、引き続き従来の形をそのまま踏襲するのか、この際何らかの改正というものがこの基本契約の中において加えられるのか、聞きたいのです
  16. 丸山佶

    丸山政府委員 軍自体に現在まで提供しておりますいわゆる間接労務者に関しましては、労務基本契約というものが、もとありましたものを、三十二年の十月に新たに改正いたしまして、この新しいものによりまして、従来とかく、占領時代に作られたという事情から、日本側の不利、あるいは労務者の不利というような条項、あるいは対等を欠くような個所を、三十二年の十月の新しい契約によりまして直しましたので、それらの基本的な大綱事項については格別変更を必要とするとは考えておりません。しかしながら、今回、十二条によりまして、あとに六項等におきまして、裁判判決関係等において解雇の手続あるいは費用の償還等変更を加えられております。従って、それらに関する部分はこの基本契約をやはり変更する必要がある、このように考えております。しかしながら、第十五条のいわゆる歳出外機関直用労務者間接に切りかえる、これに関する契約といたしましては、これはそれぞれその諸機関において、仕事の態様なり、あるいは経費関係なりにおいて、軍自体とは異なったものがございますので、これらについては別の基本労務契約を作ります。現在ありますものは、従来からの軍自体使用に供するものでございまして、これは、申し上げました通り、大綱的には変更がないが、今回の行政協定改定に基づく必要の部分改定いたしたい、このような考えでございます。
  17. 床次徳二

    床次委員 今回実施せんとするところの、直用者から間接雇用への切りかえにあたりまして、現行法におきましては、これらの労務者に対する特別給付金の支払いの道が開かれていないと思います。この点かねて問題になっておりますが、今回特別にこれに対する措置を講じなかった理由につきまして、政府説明を聞きたい。
  18. 丸山佶

    丸山政府委員 駐留軍離職者臨時措置法によりまして、特別給付金というものが設けられたわけでございますが、この特別給付金趣旨は、普通の退職金とは違います。普通の退職金は、基本労務契約におきまして、勤続年数に応じたしかるべき退職金制度を定めておるものですが、格別にこの法律によりまして特別給付金というものを日本政府が出すことにいたしましたのは、三十二年の六月に岸総理が渡米され、いわゆる岸・アイク声明が出されまして、これに基づきまして、陸軍を中心とする大幅な撤退がございました。これの関連において、労務者に対する関係では、政府として何らかそこに慰謝すべき理由がある。普通の退職の場合は、米軍自体米軍都合によって縮小していく、それの関連人員整理が行なわれ、退職していく、従って、この退職金は、その制度に基づきまして、一般契約に関する経費と同じように、全部米国政府負担建前でございますけれども、三十二年の六月以降大幅な整理が行なわれたのは、日本政府が特にアメリカに要請し、アメリカとの協議の上で人員整理が行なわれてきた、これらの事情に基づきますので、これに対しては、日本政府自体として、このために整理を余儀なくされた人には格別慰謝金を出す必要がある、こういう事情でございます。従いまして、法律にも書いてありますように、三十二年六月に政府雇用者として在籍しておる者に限ってこの支出をする、このようになっておりますので、今回直用者の切りかえられました者に関しましては、政府自体雇用しておる者ではございません。その時期にもそうではありませんでしたので、今の法律建前からは退職金はできないと考えております。
  19. 床次徳二

    床次委員 次に、現在までよく紛議を発生しておりましたものは、直接労務者をよくいわゆるPD事業に切りかえまして、そのために失業のうき目を見る者が少なくなかったのであります。今回の協定改正にあたりましては、かかるPD事業への切りかえに関しまして、どういうふうな措置をとって労務者保護をせんとするものか、政府意見をお聞きしたい。
  20. 丸山佶

    丸山政府委員 お話通り、一昨年、昨年にかけまして、いわゆるPD切りかえと申しまして、従来調達庁雇用して軍の仕事をさせておった、その仕事のある部面を、軍側では日本業者に請け負わせます、そのために、調達庁の提供する労務者が要らない、こういうことで解雇になった者、これがいわゆるPD切りかえに基づく解雇という問題でございます。せっかく政府が、基本労務契約に基づき、軍側の必要に応じて供給しておるものを、また軍側が、自分の経費都合が大部分の原因でございますが、そういうことのみによって、今までやらしておった仕事をそのほかの業者に移してしまって、今までそこに働いておった、日本政府が提供しておった労務者解雇する、これは日本政府側としてははなはだ困る問題でありますので、これらの処置はとらないようにという折衝を繰り返しておりました。現実的には、これに関しまして、一昨年から約二千名ほどの該当者があったと思います。これらに関しまして、今回の行政協定改定にあたりましても、かかる不都合日本政府に生じないようにということを、格別協定上の話し合いの中にも出していただいたわけでございます。それによりまして、米側もその事情をよく了解して、今後これらの措置はとらない、もし万一どうしてもとらなければならないという事情がある場合には、格別に、軍自体ではなく、大使から日本外務大臣にその事情説明し、了解を求めた上でもって実施をする、このような趣旨のことが文書によって外務省に参っております。協定文言上はこのことはありませんが、交渉過程において、そのような事情のもとに了解ができましたので、今後、原則的には、PD切りかえによる人員整理はないものと私は考えております。
  21. 床次徳二

    床次委員 次に、労務関係の問題であります。基地内の組合活動の問題あるいは保安解雇について聞きたいと思うのですが、まずその前提として、大体、日本内地法令というものが労務関係において原則として適用せられるということが、第五項に定められておるわけであります。「賃金及び諸手当に関する条件その他の雇用及び労働条件労働者保護のための条件並びに労働関係に関する労働者権利は、日本国法令で定めるところによらなければならない。」という原則がきめられておるのでありますが、とかくこの原則が行なわれていなかったというところに、過去において問題があったと思うのです。基本的な問題といたしまして、その建前というものが今後の新しい協定におきましては十分厳守されるものであるかどうか、その建前をまず伺っておきたいと思います。
  22. 丸山佶

    丸山政府委員 労務に関する日本法令適用に関しましては、今お読みの通り、十二条に明瞭に規定されております。従いまして、その通り実行されることが特に明瞭にされておるわけでございます。問題のありますのは、お話にもありましたように、いわゆる米軍施設及び区域内において労働組合等組合活動がどの程度に許されるか、それと日本関係法令実施状況がどうなるかという問題、また、それらの法令に関しますところの裁判になった場合の判決、その判決の履行、この二つのことが、米軍関係労務者の、特に基地内におけるところの行動等について従来から問題になっておった点であり、双方意見にも相当相違もあり、議論のあったところであります。今回の行政協定においては、それらの点が格別に明瞭にされて、現実的に妥当に改定されたものと私は考えております。
  23. 床次徳二

    床次委員 しからば伺いたいと思うのですが、この基地内の労働組合活動であります。ただいまのように、原則としてわが国の法令を尊重するということになっておるわけでありまするが、実際の軍の特殊性という建前から、相当制約を受けておる。一例をあげますると、組合の集会の問題あるいは組合費徴収等につきましては、とかく摩擦があったかのように聞いておるのでありまするが、今後政府は、基地内におけるところの労働組合の円満なる発展に関しましていかなる所見をもってこれに対処せんとするのか、意見を伺いたいと思います。
  24. 丸山佶

    丸山政府委員 労働組合のいわゆる組合活動に対しましては、関係法令のもとに許されておるわけでございます。しかしながら、一般的に、労働組合が、その使用者の有する施設あるいは区域内においてそれらの活動を行なう場合には、当然その施設あるいは区域使用者あるいは管理者というものの承認、承諾の範囲内においてさるべきものと考えております。特に、軍関係におきましては、特殊の組織であり、特殊の規律、秩序を重んじられる場所あるいは施設でございますので、その制約の度合いも、一般の工場その他の職域とは違うと考えます。従って、それらの制約のもとに組合活動も行なわれるわけでございます。しかしながら、いかに軍隊といえども、格別組合活動を阻止する程度までそれを規制しあるいは禁止するということは、私は許されないものと考えております。それが場所関係あるいは時間の関係等において、許されるべき場所あるいは許されるべき時間においては、これを許すのが当然と考えております。お話し通り、実は過去においては一、二それらのことで問題も起こった例もございます。これらに関しましては、それぞれその実情に応じまして、調達庁日本政府といたしましては、法律上の雇用主の立場もありますので、軍側と折衝してその解決をはかっていきたい、このように考えております。
  25. 床次徳二

    床次委員 次に、保安解雇について伺いたいのですが、保安解雇につきましては、特に今回の改定におきましては特別なる処置を認められたということは、実情に合わしたという政府説明でありまするが、今回改正された六項あるいは合意議事録によりますると、保安解雇を行ないまする場合は、施設内の軍紀維持撹乱を含む安全上の理由による解雇の場合のみ適用するということになっておりまするが、この了解範囲というものにつきましては、あるいは乱用されるということによってさらにその適用の場合における紛議を生ずることがあるかどうか、そういう問題は生じないで運用され得るものかということについて、政府見解を聞きたいのであります。
  26. 丸山佶

    丸山政府委員 お話し通り、今回の協定改正によりまして、従来から非常に難問題として双方解決のままに過ぎておりました事態、すなわち、裁判所判決に関する履行問題、格別にも、原職復帰判決が出たような場合、あるいはそれに関連して必要な賃金償還の問題というような難問題解決のために今回の改正が行なわれたのでありまして、米軍に対して、一定の場合には原職復帰を拒否することを認める。しかしながら、その労務者自体関係では雇用を継続する、その建前のもとに償還問題も規定されておるわけでございます。しかし、一定の場合に原職復帰を拒否し得る場合も、日本の場合、今回の協定におきまして、保安解雇の場合のみに限ったわけでございます。この保安解雇議事録説明に、軍紀撹乱を含む保安上の問題ということがございます。この文言につきましても、いわゆる制裁事案と申しますか、一般的に、軍の紀律維持をはかるために制裁規定というものがある。その制裁事案というようなものは、一般的にはこれらのものに含まない、あるいは、その他、労働組合運動等、別の理由に基づくものは、もちろんこれに含まないのである。これらのことが了解のもとにこの文言合意議事録に入れられてありますので、乱用されるということは考えておりませんが、なお、この事項実施にあたりましては、個々のケースにつきまして具体的に意見調整を行ないまして、乱用のないように処置していく考えでございます。
  27. 床次徳二

    床次委員 ただいまの十二条の第六項の新規定でありますが、かかる規定ができたということは、確かに一つ解決方法でありまするが、この規定を設けたということは、日本労働法令に関して違反するところがないかどうかということについての政府見解を聞きたい。
  28. 亀井光

    亀井政府委員 御質問趣旨は、裁判判決、あるいは労働委員会の決定が出た結果、解雇が無効ということに決定されました場合に、本来でございますれば、本人が原職に復帰して参るというのが法律建前でございまするが、この新行政協定におきましては、米側との合意に達しない場合におきましては、米側はこれを使用しないことができるという形におきまして、従来の懸案が解決されたわけでございます。そこで、その場合の、米側原職復帰を拒否することが法律的に正しいかどうかという御質問の御趣旨だと思いますが、元来、日本労働法におきまして、労働者が、そういう場合におきまして、裁判所命令あるいは労働委員会復職命令に従いまして復職をするかしないかりということにつきましては、使用者側の判断ということが主体になっておる。これは最近の判例におきましてもそういう趣旨が認められておる。すなわち、労働者賃金請求権は認められるが、現実に就労を請求する権利というものは認められないという趣旨の判例が、最近におきまして重なって出ております。従来におきましては、若干その点に、判例の傾向といたしましても、就労請求権は認めるべきであるという判例もございますが、最近の傾向としましては、そういう傾向でございます。従いまして、使用者側が、その場合におきまして、労働者に支払うべき賃金を支払って参りますれば、法律上は違法ではないというふうな解釈をとっております。
  29. 床次徳二

    床次委員 なお、今回の改正の機会において、従来ありましたところのいわゆる就業規則というものは、いかように処置されるか、この際、何らか就業規則に関しまして改善を加えられる意向があるかどうか、意思があるかどうかを聞きたい。
  30. 丸山佶

    丸山政府委員 先ほど、基本労務契約について御説明申し上げました通り基本労務契約の大綱的な点は変更がございません。この基本労務契約の中に、就業規則に当たる部分も全部含まれておるわけでございます。従いまして、その関係も従来と変わりがないと考えます。
  31. 床次徳二

    床次委員 今回の保安解雇の場合の、一年間の賃金の負担の程度でありまするが、この事例は、海外の事例等に比しまして、労務者に対する保護がはたして十分であるかどうか、海外の例を聞きたい。
  32. 森治樹

    森政府委員 まず西独の例でございますが、西独は、今回の日本制度と同じく、費用の米側による償還は、一年を最高限度といたしております。英国におきましては、英国政府が補償があっても、米国は負担しない。フランスにおきましては、一カ月以内は無条件で解職できて、そうして補償をフランス政府労務者にいたしましても、その分についてはアメリカ側償還をしないということになっております。
  33. 床次徳二

    床次委員 次は、第十四条のいわゆる特殊契約者について若干質疑をいたしたいと思うのであります。従来の特殊契約者は特別なる権利を持っておったのであります。この点、新協定におきましては若干の条件が付せられたことになっておるのでありまするが、今日行なわれております新しく規定せられました条件は、各国の事例に比して、はたしていかなる相違点があるか、政府意見を聞きたい。
  34. 森治樹

    森政府委員 これは現在の行政協定十四条の問題でございます。十四条につきましては、これらのアメリカ軍のために特定の業務を行なう米国の業者に対して、国内で特定の特権を与えるのは妥当ではないじゃないかという御意見が、各方面からあったわけでございます。従いまして、今回は、この米国の業者アメリカ側が指定いたします際に、第一に、日本側協議を要する建前にいたした次第でございます。第二に、これらの米国の業者を指定し得る一定の基準を設けまして、この基準に合致した場合においてのみ、これらの米国の業者が指定される。第三に、これらの米国の業者が特定の違反行為を行なった場合には、日本側の要請によってこれを解約するという建前にいたしたわけでございます。これらの、特殊契約者と申しますか、これらの業者は、御承知通りに、NATOの協定にはその規定がないわけでございます。しかしながら、NATOは一般的な協定でございまして、NATO諸国におきましては、この一般協定のもとに、個別的な二国間の協定が結ばれておるわけでございまして、この二国間の協定を見ますと、たとえば、現行の西独の協定をとってみますれば、ドイツ企業で充足し得ない技術業務を提供する非ドイツ商業、企業は、駐留軍がドイツ当局に一方的な通告をすることによってこれを指定し、この指定された業者と申しますか、会社と申しますか、それは駐留の軍隊と同一の取り扱いを受け、そしてこの業者のもとに働く人は、軍構成員と同様の取り扱いを受ける建前になっております。これに該当する企業としましては、かつては西独で四十九社あったそうでございますが、現在は五社のみがこれによって指定されておるようでございます。なお、このほかに、西独では、技術業務以外の業務を提供する非ドイツ企業としまして、これはドイツ政府協議の後に一定の特権を与えられることになっております。そこで、技術業務と非技術業務との間に、手続等において差があるようでございますが、いずれにせよ、これらの規定があるわけでございます。なお、その他、米・デンマーク間の協定、米・アイスランド間の協定、米・トルコ間の協定及び米・オランダ間の協定、この間に多少の出入りはあるようでございます。たとえば、アメリカ・オランダ間の協定によりますと、これらの業者は軍属として扱うということになっております。多少その間に特権の種類等において出入りはありますが、これらの業者を駐留軍の要請に基づいて使い得るという趣旨が設けられておる次第でございます。
  35. 床次徳二

    床次委員 これらの特殊契約者は、大体その従事する事業というものは、いわゆる機密業務、技術の問題でございますが、特に軍事の機密のものが多いと思うのであります。わが国におきましては、軍事機密に対する保護措置がないのでありまするが、もしも軍事機密保護規定をすれば、もっともっと特殊契約者というものの範囲を狭くすることができるのじゃないかと思うのでありまするが、この点に対する見解を聞きたいのであります。
  36. 森治樹

    森政府委員 十四条契約者と申しますのは、一つには、アメリカの安全上の理由というのが、確かに指名される一つ理由でございまするが、これは一つ理由でございまして、その他は、いかにアメリカ軍としまして現地の需要は現地の供給によってこれを充足するということを原則といたしておりましても、技術士の必要性等からして、アメリカ業者を使わざるを得ないというような場合がありますし、また、アメリカ法令上、アメリカ業者でなければ使えない、特許法の関係等でそういう事例があるそうでございますが、そういうことでございますので、十四条契約者をアメリカ側が指定いたしまする範囲は、わが国の秘密保護措置と必ずしも直接の関連はないというふうに承知いたしております。
  37. 床次徳二

    床次委員 この特殊契約者が違反がありましたときにおきましては、これは資格を奪うことができることになっておりますが、日本国において、合衆国軍隊関係事業以外の事業活動をした、あるいは、日本で違法とされる活動をしたときというような事例があがっているのでありますが、かかる認定は日本側がするのか、アメリカ側がするのか、いかがでありますか。
  38. 森治樹

    森政府委員 これは日本側で認定をいたしまして、アメリカ側と折衝するわけでございます。
  39. 床次徳二

    床次委員 なお、現在、この該当の契約者というものは、どの程度数があり、どういう種類の事業に属しているか、説明していただきたい。
  40. 森治樹

    森政府委員 かつてはこの種の業者は二十七に上っておったのでありますが、現在は十一でございます。業種別に見ますれば、航空輸送が五、建設三、技術関係三、合計十一でございます。
  41. 床次徳二

    床次委員 次に、今回改正を加えられました十八条関係を質疑したいと思うのでありますが、民事の請求権に関しましては、今回、日米双方とも相手方に対する損害の相互放棄にあたりましては、ある程度までいわゆる合理的な範囲に狭められまして、米国軍隊と自衛隊の間に限定せられたということは、非常にけっこうだと思うのでありますが、これによりまして、過去における事例と比しまして、いかなる程度においてわが国が利益を受けるようになったのか、また、過去においてこの間の紛争がどういう状態であったか、伺いたいのであります。
  42. 丸山佶

    丸山政府委員 現行の十八条の規定では、相互放棄の範囲に関しまして、お話し通り日本側政府全体の機関、また、その国の国有財産全体、これが被害対象となった場合に、放棄の範囲に入っております。従来の実情を見ますと、政府の各機関あるいは国有財産というものに関して格別著しい損害、被害があり、これに関しまして放棄をさせられるというものは、多くはございませんが、著しい例といたしましては、国鉄、電電公社等、いわゆる三公社関係におきまして相当の被害がございます。これらのものに関しましては、これはやはり政府機関である、少なくもその財産は国有財産と同一であって、それらの組織は、いずれも、予算面においても、人事においても、政府の各省庁と同様な取り扱いを受けておる、これらの事情から、これは放棄の範囲に入るのであるという主張のもとに、ペンディングになって解決を見ない事案、これらが、今までの数字を見ますと、百六十余件ありまして、金額においては九千万円に上っております。これらの関係は、今度の新しい協定においては明瞭になりまして、かかる事例がなくなるものと考えております。
  43. 床次徳二

    床次委員 二項の(a)に関し、その他の財産に関する損害の責任の認定の問題でありますが、今回、わが国民のうちから仲裁人を選定せられるということによって、仲裁人の処置にまかせられることは、従来の日米合同委員会のいわゆる協議機関であります性質でありますから、その決定に比しまして、著しく時間も短縮するし、敏速になると思うのでありますが、しかし、この仲裁人が事件の責任を認定するにあたりまして、必要なるいろいろの証拠収集等の問題が残されておると思います。米軍の協力というものによりまして、案外、せっかく設けられました仲裁人というものの職務ができない場合もあるのであります。米軍のいわゆる仲裁人に対する協力の状態、これは過去の米軍の状況につきましても関連があると思うのですが、十分な職責を尽くし得るかどうか、伺いたいのであります。
  44. 森治樹

    森政府委員 仲裁人は、ただいま御指摘の通りに、今回、十八条、民事請求権に関する規定をNATO諸国並みにするために設けました制度でございまして、これが運用につきましては、今後アメリカ側とも協議いたしまして、万全を期していかなくてはならないわけでございますが、証拠の収集等につきましては、現在まで、刑事の面におきましては、第十七条第六項に証拠の収集に関する協力の規定がございまして、私どもの承知いたしております範囲におきましては、何らその間に支障がなかったというふうに承知いたしております。なお、民事につきましては、今回の十八条第九項(c)というのをごらん願えば、「日本国及び合衆国の当局は、この条の規定に基づく請求の公平な審理及び処理のための証拠の入手について協力するものとする。」という規定もございますし、この間、何らアメリカ側の協力を得ることに不安はないと承知いたしております。
  45. 床次徳二

    床次委員 今回、民事に関しまして、かかる仲裁人制度を設けられたのでありますが、刑事につきましては、公務中の犯罪かいなかについての認定は、依然として従来の通りであります。刑事事件に対しましてかかる制度を設けなかった理由、民事のみに対して認めたという理由につきまして伺いたいのであります。
  46. 神谷尚男

    ○神谷説明員 刑事につきましては、民事と異なりまして、公務執行中の行為であるかどうかということの認定は、刑事の第一次裁判権が日米いずれにあるかということに関連をすることでございまして、これを裁判所以外の者に判定させるということは不適当でありますので、刑事につきましては、裁判所がそれを判断するということにする意味におきまして、民事のような仲裁人の規定は設けなかったのでございます。
  47. 床次徳二

    床次委員 次に伺いたいのは、米国のみが責任を有する場合におきまして、請求に対する裁定、合意の決定につきまして、わが国が二五%を負担する、この根拠について伺いたいのであります。なお、NATO等の例と比較いたしまして、いかなる取り扱いになっているか、この点についても伺いたいのであります。
  48. 森治樹

    森政府委員 この点は、NATO諸国におきましても、派遣国が七五%を持ちまして、受け入れ国が二五%を持つ、日本の場合と同じような規定になっておる次第でございます。その思想的な根拠と申しますか、どうしてそういう規定が設けられるに至ったかと申しますと、やはり一つの、共同して防衛に当たろうという軍隊の――公務外の行為につきましては、これは別でございますけれども、公務上の行為につきましては、一部は受け入れ国において負担することが適当であるという思想に基づいておるのでございまして、NATOも、先ほど申し上げましたように、この規定と同様の規定を設けております。
  49. 床次徳二

    床次委員 次に、海事に関する損害請求権について伺いたいと思います。今回、五項の(g)というものを設けられたのでありますが、これによりますると「船舶の航行若しくは運用又は貨物の船積み、運送若しくは陸揚げから生じ、又はそれらに関連して生ずる請求権には適用しない。」ということになりまして、これはNATO並みに除外したということを言っておられるのでありまするが、その除外したことにつきまして、わが国に対して新しい不利を生ずることがないか、この点、政府見解を聞きたいと思います。
  50. 森治樹

    森政府委員 この点は、現在の協定によりますと、刑事裁判に関する十七条の規定は、すでにNATO諸国並みになっておったわけでございます。しかしながら、民事請求権の分野におきましては、先ほど来問題になりました、政府間の相互に損害を生じた場合の、政府間相互の請求権の相互放棄の範囲、及び、民事請求権に関する公務、非公務の決定に仲裁人の制度を設けるか、あるいは、第一次的には派遣国軍がこれを認定して、これを合同委員会の決定にまかせるかという、この二つの点におきまして、NATO諸国に比しまして、日本の民事請求権の分野においては非常に劣っておったわけでございます。従いまして、今回NATO諸国並みに民事請求権に関する規定をいたしたのでございますが、そこにいわゆる海事請求権と申しますか、船舶の航行等によって損害を生じた場合には、普通の陸上の損害等と違った一つの手続によるということにNATOの規定もなっております関係上、そのまま日本の場合にこれを引き継いだわけでございます。そこで、この船舶の航行等から生じまする被害を、普通の陸上損害等と違った処理方法をとるのは、これは御承知通りに、海事に関する請求権と申しますと、額も巨大に上りますし、また、これが解決のためには非常な専門的な知識を要するわけでございます。こういうことから、海事に関する請求権につきましては、普通の陸上の損害と別個の処理方法をNATOでもとっておるわけでございます。しかしながら、これはあくまで、ただいま申し上げましたような趣旨に基づく規定でございますので、日本のように、いわゆる浅海でいろいろな、ノリとか、あるいはその他の動植物を増養殖いたします施設のあります場合、あるいは漁網等の損害がひんぱんに生ずるというようなことを前提とした規定ではないのであります。従いまして、これらの損害につきましては、普通の陸上の損害の場合と同様の処理手続によるということに、アメリカ側とも話がついておるわけでございます。なお、小さい漁船につきましても、普通の陸上の損害と同様の手続による。そうして、この陸上の手続によります場合におきましては、調達庁で、これが日本国内法令に基づいて処理をされるわけでございますが、これからはずれました、船舶の航行等から生じました損害につきましては調達庁が仲に立ちまして、被害者と米軍との間のあっせんを引き受けまして、アメリカ側との折衝に万全を期するという体制をとることによりまして、万全を期していきたいと考えておる次第でございます。
  51. 床次徳二

    床次委員 ただいま説明がありましたが、従来のいわゆる沿岸漁業者に対する漁具の被害、その他、いわゆる海事事項に属しないところの事項につきまして、米軍と話し合って、これがやはり従来通りの手続によって円満な解決ができるのだと言われるのでありますが、この関係は、いかようなる手続によって明確にされているか。この点が、漁民関係におきましては非常に疑問に考えておるのでありまして、この点、従来通り行なわれるということが、どういう措置によってどういうふうに明らかにされているか、説明せられたいのであります。
  52. 森治樹

    森政府委員 ただいま申し上げましたように、アメリカ側とは、浅海増殖用の動植物、漁網等に対する損害及び小船舶に対する損害は、普通の十八条手続によるという了解になっておる次第でございます。
  53. 床次徳二

    床次委員 かかる取り扱いにつきましては、従来もそうであったのでありますが、海上における証拠固めはなかなか困難であります。また、漁民というものは交渉能力、訴訟能力に欠けるものでありますので、一つ十二分な措置を講じて、引き続き保護に遺憾なきを期していただきたいのであります。  なお、いわゆる海事訴訟の問題、海事損害の問題であります。この点に関連いたしまして、今回、さらに新しい取り扱いとして政府は万全を期すると言っておられるのでありますが、万全の措置をとるということは、政府は、具体的にどういう措置によって、かかる措置をとることを明らかにされるのか。この点は、やはり国民に対して明瞭にされんことを要望します。どういう措置をとられますか。
  54. 丸山佶

    丸山政府委員 海事事案について、普通の十八条の補償手続からはずれます範囲につきましては、ただいまアメリカ局長から御説明がありましたが、これの処置に万全を期する方法といたしましては、政府が、その解決のあっせん及び紛議処理に当たることといたしまして、その業務を、調達庁設置法の任務の中に改正点を入れました。なお、その具体的な方法といたしまして、あっせんの場合の申請手続、どこにあてるべきかの取り扱い方法、また、これが行政解決以外に司法的の解決を要する場合には、これに対する国の援助方法、これらに関しましては、特別に法令を整備いたしまして処置したいと考え、目下その整備を急いでおる次第でございます。
  55. 床次徳二

    床次委員 次に、防衛分担金の処置に対して伺いたいのであります。  今回、防衛分担金の条項が削除せられたのであります。わが国の本年度予算におきましても、この防衛分担金は計上せられておらないのでありますが、新条約が発効するまでは、旧協定条項によりまして、わが国におきましてはやはり防衛分担金を負担する義務があるかのごとく見えるのでありまして、この関係の責任はどういうふうに処理せられるのか、政府見解を伺いたいのであります。
  56. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 交渉の過程におきまして、御承知通り、新条約が発効いたすまでと、わが国の会計年度との関係がございますので、アメリカ側と折衝いたしまして、本年度の予算にはこれを計上しなくてよろしい、発効の際におきましてこの問理の処理協議するということになっておるのでございまして、会計年度の初めの、四月一日以降発効までの月割りと申しますか、そういうものがあるわけでございます。それらについては、その際善処するということに話し合いをいたしております。
  57. 床次徳二

    床次委員 その際善処するということは、結局、本年度は払わないということでありまするか、あるいは月割りでもって負担するということになりますか。
  58. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 はっきり申し上げることは非常に困難でございますけれども、御趣旨のようなふうに解決されるのではないかというふうに考えております。
  59. 床次徳二

    床次委員 次に、第二十六条でありますが、本協定の効力発生の際におきましては、これが条約との関係においていかように効力発生――別々に効力を発生するのかどうかという点であります。第一項によりますと、新協定は、条約とは独立して承認の対象となっておりますが、第二項によりまして、条約と同時に発効せしむるごとく処理するようにもあるのでありますが、この間の効力発生の手続について伺いたいのであります。
  60. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの点でございますが、御承知通り、現在の安保条約行政協定でございますが、現在の安保条約のもとに行政協定ができております。従いまして、現在の行政協定が、新安保条約に切りかわりますと、すなわち、現在の安保条約というものが無効になりますれば、当然の効果といたしまして、その委任のもとに作られました行政協定も当然無効となる、こういう仕組みになっておることは御承知通りでございます。そこで、今回は行政協定地位協定でございますが、地位協定も国会の御承認の対象といたしまして、地位協定及び新安保条約、それぞれ形式上独立しまして承認の対象といたしている次第でございます。しかし、この場合に、たとえば、これは双方とも同時に発効させるという必要がございます。従いまして、その点を、地位協定の第二十六条におきまして規定したわけでございます。その第一項は、まず地位協定につきましては、この協定日本国及び合衆国によりましてそれぞれ国内法上の手続に従って承認されなければならない、その承認を通知する公文が交換されるものとする、すなわち、お互いに国内法上の手続に従って、わが方では、もちろん国会の御承認でございますが、その承認を得なければならない。承認がありますと、その承認を通知する公文が交換されるわけでございます。それによりまして、これは国内法上の手続によって承認がなされたということを双方承知するわけでございます。しかしながら、それによって直ちに効力が生ずるということはいたしませんで、第二項におきまして、この協定は、1に定める手続が完了した後に、相互協力及び安保条約の効力の発生の日に効力を生じさせる、そして同時に、この前の行政協定でございますが、一九五二年二月二十八日に東京で署名されました日本国アメリカ合衆国との間の安保条約第三条に基づく行政協定は、そのときに終了するというふうにいたしまして、両方とも発効の時期――時期と申しますか、批准書の交換を同時にいたす、すなわち、新安保条約も新地位協定も、批准書の交換を同時にいたすということによりまして、同時に発効させる、こういうふうな手続をとることになっております。
  61. 床次徳二

    床次委員 新協定の二十七条は、従来の地位協定と同じように、協定の各条について、何どきでも改正できるように規定が設けられておるのでありまするが、今回の改正に漏れていると申しますか、あるいは将来に解決が残されておって、いずれかの時期におきまして、二十七条によって改正したいというような事項が今日残されておるかどうか、あるいは将来、どういうものをこの二十七条によって改定を提案したいかというような、何か予定があるかどうか、政府見解を伺いたい。
  62. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知通り地位協定は技術的な面の問題が多いわけであります。従いまして、運営をして参ります過程におきまして、改正を要するものが出てくる場合があろうかと思います。従いまして、そういう場合には、これらの点について改正を加えるのは当然でありますから、今日、二十七条を残しまして、将来の運営の面からくる諸般の問題について、改定を要すべき場合があれば改定をする。ただ、今回交渉にあたりまして、地位協定につきましては、われわれは十分な改善を加えて交渉いたしました。従いまして、現在の段階において、すぐに改定の必要があろうとは思っておりません。将来運営の場合には、そういうことが必要である場合が起こり得ると考えて残したわけでございます。
  63. 床次徳二

    床次委員 次に、整理法案の内容について簡単に伺っておきたいと思います。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案というのが別途出ておりまするが、大体その内容を見てみますると、主として題名の変更等の技術的改正であると考えられるのであります。協定の内容の変更に伴う実体的改正というものが加えられておるものがありといたしまするならば、その点について、整理案につきまして説明をせられたいのであります。
  64. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 御指摘の通り、新協定改正と申しますか、新しい地位協定に従いまして、これにならいまして従来の法令を実体的に改めたという点でございます。内容的には、御指摘の通り、非常に技術的な点がこの内容の主体をなしているわけでございます。  第一点は、新協定の第十一条におきまして、関税検査を除外する範囲が従来よりも狭くなった、この点につきまして、関税法等特例法の一部を改正したわけでございます。すなわち、整理法第二十条におきまして、「部隊又は合衆国軍隊の構成員の携帯品」とありましたのを、合衆国軍隊の構成員これは税関検査を受けることになりましたものでございますから、これを削りまして「部隊の携行品」ということに改め、また単に、従来の協定及び法令では「郵便物」とございましたのを、これを新協定にならいまして、「公用郵便物」というふうに改める次第でございます。  それから第二点は、新協定第十二条第四項の規定によりまして、PX等、米国の歳出外機関労務が、原則としていわゆる間接雇用方式をとることになりました。これに従いましてそれぞれ関係の点を改めたわけでありまして、整理法の第一条におきましては、調達庁設置法の一部を改正いたします。第四条におきましては、国家公務員法等一部改正法を一部改正いたします。それから第十六条におきましては、駐留軍労務者等への給与の支払いに関する特例法を、それから第十七条におきまして特別調達資金設置令を、それぞれ一部改正しているわけでございます。  次に、第三点でございますが、それは新協定第十四条にいいます米軍のための特殊契約者につきまして、新たに、合衆国政府の指定を受けた者ということを加えたわけでございます。これに伴いまして、整理法第十九条におきまして、所得税法等の臨時特例法について所要の改正を加えた次第でございます。  第四点は、新協定第十八条の民事上の請求権の処理に関する規定が、ただいま御指摘のように改正になりました。従いまして、整理法におきましてもそれにならいまして、その第一条におきまして調達庁設置法を改正、第十二条におきまして民事特別法を一部改正した、こういうのが改正の実際でございます。
  65. 床次徳二

    床次委員 最後に伺いたいのでございますが、条約とそれから協定、その合意議事録、また、ただいま説明がありました関係法令等、一通り改正せられるといたしますると、これに伴いまして、当然日米合同委員会の合意議事録等も同時に改正を要するものと考えるのでありますが、その措置はどういうふうにせられるか、伺いたいのであります。特に重要なる、意義のある改正は、その中においてどういう点があるかという点、また、実際問題におきまして、この合意議事録というものが、実は非常にものを言うのであります。この点、その改正のいかんによりましては、条約あるいは協定法律等の改正趣旨というものを、曲げてと申しますか、その真意を実現できない場合もあるのではないかということをおそれるのであります。この点、政府におきましても、十分慎重な配意をもって合意議事録改定に当たってもらいたいと思うのでありまするが、この際、そのおもな点につきまして、準備があれば説明せられたいのであります。
  66. 森治樹

    森政府委員 合同委員会の合意議事録と申しますのは、あくまで協定の具体的細目を定めたものか、あるいは協定の解釈に関するものでございます。従いまして、協定が変わりましたところは、必然的にこれを変えていかなくちゃいけないわけでございます。また、今度の協定で新たに加えられました事項につきましては、今後新たにこれを実施するための合意議事録合意書を作っていかなくちゃならないことになるかと存じております。たとえば、仲裁人の職務の遂行に関しましては、一つの手続的な合意書というものが必要じゃないかというふうに存じております。なお、十四条の特殊契約者を、新たに一つの基準に基づいて、協議に基づいて指定することになりましたので、その手続等は、今後作っていくことが必要かと存じております。また、たとえば、防衛分担金の削除に伴いまして、アメリカ側の財政に関するいろんな報告書がございますが、この報告書の内容等も改正をしていく必要があるかと存じております。また、これらのことではなくて、合意書自体が、相当のものは昭和二十七年のころに作られておりますので、これらの時日の経過に伴いまして、相当現在の事情に即しないものがありますれば、これはまた改正を施していかなくちゃいけないかと存じておりますけれども、冒頭に申し上げました通りに、合意書というのはあくまで協定実施細目あるいは解釈に関するものでございますから、協定変更に伴ってこれを修正していかなくちゃいけないだけでございまして、その他の重要な変更というものは、現在までのところ考えておりません。
  67. 床次徳二

    床次委員 ただいま答弁がありましたが、新しい合意議事録改正を要するものもあるわけでありまするが、この合意議事録のいわゆる効力の発生に対しまして、どういう措置をとられるか。新条約効力発生のときに同時に発効させなければならぬかと思うのですが、合同委員会等の措置について、最後に伺っておきたいと思います。
  68. 森治樹

    森政府委員 この合意議事録の手続につきましては、今回の協定に基づく合同委員会でこれを処理することになると存じておりますが、先ほど申し上げましたように、合意議事録の性格から見まして、必要な協定の修正に伴いまして、修正すべきところは修正し、時日の経過に伴って現状に即しないものは修正して、そうして新しい合同委員会で引き継いでいく、こういうことに手続としてなるかと思っております。
  69. 床次徳二

    床次委員 終わります。
  70. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次に、鍛冶良作君。――この際、暫時休憩いたします。一時より再開する予定であります。     午前十一時五十二分休憩      ――――◇―――――     午後四時四十分開議
  71. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鍛冶良作君。
  72. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は、これから相互協力及び安全保障条約についての逐条質問をいたしたいと思うのでありまするが、まず、その前提として、このたび締結せられました条約は、前の安保条約改正したものであろうか、それとも、根本的に変更いたしまして、新しい特別の観念の条約ができたものと解釈してよろしいか、この点を承りたいと思うのであります。
  73. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今回の条約は、新しく条約として成文を作ったわけでございますけれども、前の条約と特に変わった考え方のもとに作っておりません。
  74. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 変わっておらぬという御説明ですね。
  75. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 われわれの考え方からいえば、前の条約改定するのがほんとうでございますけれども、しかし、改定の個所が非常に多うございますし、従って、新しい条約文として新しく作成したということでございますから、趣旨において変わっておりません。
  76. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこで、私もいろいろ変わった観念が入っておるとは思うのでありまするが、それについて最も重要だと思うことを、私の考え一つ確かめてみたいと思うのであります。  私は、まず、前文を読みまして、この前文をつまびらかに検討いたしますると、新しく両国の間に積極的の効力を及ぼそうというものと、それから現状を維持していこうという消極のものと、この大きな変わり方が入っておるのでないかと考えるのであります。  まず第一番に、前文の最初に「両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、」と第一にこれを掲げまして、その次は「また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、」これは第一にあります。第三には「国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、」と、こういうことがある。この三つは、私は、いずれもこの条約において積極的に実現しようとするものでないかと、こう考えるわけです。従いまして、今までの安保条約には、こういう精神は――まあ、精神はあったかもしれませんが、こういうものが現実に現われておらなかったのでありまするから、この点から考えると、新条約というものは、根本的に、積極的の希望を乗せたものでないかと考えまするが、いかがでございましょう。
  77. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私の申し上げましたことは、安全保障の考え方につきまして変わっておることはないということでございます。しかし、安全保障をやりますに際しての両国の立場、態度というものを積極的に深め、あるいは推進し、あるいは持っております立場を強化するという面におきましては、十分な注意をいたしたつもりでございまして、今、御指摘のような点がわれわれ日本の理想でもあるという意味におきましても、それを強く表現することに前文でいたしたわけでございます。あるいは逐条に入りましても、この問題が出てくることになると思います。
  78. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 次は、まあ、第四、第五とありますが、さっきまで三と言いましたから、第四といたしましては「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、」次に「両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約締結することを決意し、」と、こうなっておる。この二つは、いわゆる第四と申しましたのは、「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、」と、こういうのですから、これは、現在あるものをあると認めるだけでありまして、前のと異なって、私は、いわゆる消極的のものと解釈する。次は「両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、」これも同様でございまして、別にこれから新しい効力を発生せしめようというものではなくて、現在の地位においてお互いに守らなければならぬものを、もしくは維持しなければならぬものを維持しよう、こういう考えから出ておるものでないかと思いまするが、この点はいかがでございますか。
  79. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その通りでございまして、今日まで両国の持っております願望と申しますか、極東の平和というものに対する関心というものを端的にうたったものでございまして、今まで持っておりましたものを合わしたという意味におきましては、消極的に今日までの態度を表明したものだ、こういうことでございます。
  80. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこで、私が先ほど申したことに入ってくるのですが、現在の安保条約というものは、消極と申しますか、国の防衛に関することを主としてやっておったものでありまするが、このたびの条約は、先ほど言ったように、先に並べました三つの積極的のものが入ってきたわけでありますから、その点において、前のものは前のものとしてありまするけれども、この積極的面の入ったものに対しては全く別個の観念を入れ、しかして、別個に、お互いに積極的に相進めていこう、こういう新しい観念の入った条約だと、こう解釈してよろしいかと思うのですが、いかがですか。
  81. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お話しのように、安全保障の問題につきましては、前からの考え方を取り入れておりまするけれども、今回、新しく両国の立場、しかも、協力していく立場というものを、国連を通じ、あるいは両国の経済関係を通じて積極的に表明しておるのでございます。従って、表題におきましても、安全保障ばかりでなく、相互協力という言葉を入れましたゆえんも、そこにあるわけでございます。
  82. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこで承りたいのは、私は、今、第三と言いました「国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、」とある。これは、いかなる国といえども、どこの国民といえども、平和のうちに生きようとする願望を持っておるかと言えば、必ず持っておると言うに違いないと思うのでありまして、私は、書いて悪いことはございませんが、ここに書いてある意味だけならば、それほどの意味をなさないのじゃないか、平和のうちに生きようとする願望を再確認しました以上は、両国は相携えて世界平和のために協力してやろう、これはどういう仕事が出てくるかは知りませんが、今後この条約締結した以上は、お互い相協力して平和を打ち立てるように、一つ積極的に働こうじゃないか、単に願望するというだけじゃない、働こうじゃないかという意味も含まれておらなければ、意味をなさぬものじゃないかと思いまするが、この点はいかがでございますか。
  83. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国際連合を中心にして平和を維持するということは、日本国民の願望でございます。同時に、アメリカ国民の願望であると思います。従って、国際連合におきます平和解決機構というものに協力をして、しかも、その協力の場合に、日米両国ができるだけ協力態勢のもとに、その場において積極的に協力をしていくということは当然のことでございまして、そういう決意をお互いに表明し合っておる今日、われわれとしては、その意味におきましても、今後とも両国の密接な関係において、国際連合の活動あるいはその運営なりにつきまして、協力して参らなければならぬと存じております。
  84. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それに対していろいろわれわれも希望することもありまするが、これはまたあとで各条で申し上げることにいたします。  その次は、「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、」となっておりますが、これも今申し上げましたように、いやしくも独立国である以上は、自衛の固有の権利を持っておることは当然でございます。今さらこの条約によって確認してもらわなくても、固有の権利なんですから、われわれに生命のある限りは備わっておる権利だと思われる。それゆえに、ここにただ「確認し」と書いてありまするが、お互いに国連憲章に定めた精神に基づいて、自衛の固有の権利を確保していき、いかなる侵害があっても相助け合って、これに侵されないようにやろう、こういう意味を含んでおるものじゃない。単に確認というと、持っておることはわかっておる。それだけではいかぬ。確認いたしましたる以上は、お互い協力によってこれを維持していこう、確保していこう、こういう精神が入っておるものでなかろうかと思われますが、この点はいかがです。
  85. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その通りに御了解いただいてけっこうだと思っております。
  86. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ただ、ここで問題になりまするのは、自衛の固有の権利ということは、お互いが、各個人が持っておる固有の権利でございます。ところが、ここに「国際連合憲章に定める」とは書いてありまするが、「個別的又は集団的自衛の固有の権利」、こういうことがあります。固有の権利というものは、各国が持っておる固有の権利だから、集団的固有の権利というものはあり得ないのじゃないか、私はこういう疑問を持ったのであります。そこで、突き進んで私の考えを申しますると、国際連合において、集団的におのおのの固有の権利を保持しようということをきめておるから、それを名づけて集団的自衛の固有の権利といったのかとも思いまするが、これは重大なことでありまするから、あらためて聞いておきたいのです。もう一ぺん申しまするが、固有の権利というものは、独立国である以上はどの国でも持っておるに相違ない。今さら申し上げるまでもございません。その持っておるということは、各国がおのおの持っておる。そういうことを考えると、固有の権利というものは、個別的のものだといわなければならぬのであります。ところが、ここに「又は集団的自衛の固有の権利」といっておりますが、この集団的とはどういうことか。これは国際連合憲章によって認められておることをさすのでありましょうけれども、観念上われわれは区別して考えなければいかぬから、この点に対する政府の御見解を承りたい。
  87. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 国連におきます個別的自衛権並びに集団的自衛権を尊重して参る、そうしてそれによりまして安全を保障していくという、自分の固有の権利を持っているという意味を表わしているものでございます。ここにいう個別の権利というのは、重要なという意味にわれわれはとっておるわけでございますが、こまかい点につきましては、条約局長から申し上げます。
  88. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 補足さしていただきます。ここの「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、」この言葉は、御承知通り、憲章第五十一条からとった言葉でございます。すなわち憲章五十一条におきましては「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。」上これをこのままここにとりまして、これを再確認したわけでございます。この固有の権利と申しますのは、固有という意味は、一般に非常に重要なという意味合いに考えられている次第でございます。個別的または集団的権利と申しますのは、やはり個別的自衛権を、各加盟国が加盟国として当然個々に持っておる権利であることは、御承知通りでございます。また、この集団的の自衛の権利と申しますのも、各加盟国が、それぞれ集団的の自衛の権利というのを、また個別的と申しますか、個々に享有しているということを、ここで明らかにしている次第であります。
  89. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 今、国際連合できまったことをここで議論してみてもしようがないかしれませんが、私の申しますのは、固有の権利というのは、各国が持っておる権利を固有の権利というものだ、こう思うのです。従って、集団的固有の権利とはあり得ないのじゃないかという疑問から、出ておるのであります。けれども、今言われるように、国際連合というものを作った以上は、各国の固有の権利はあるが、国際連合として集団的に一つお互いの固有の権利を保持しよう、こういうことをきめた以上は、国際連合としての集団的の固有の権利である、こう認めて、この条文を作った、こういうことに解釈してよろしいのでありましょうか。
  90. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 この五十一条にうたっております集団的という意味は、国連加盟国全部が、全体として集団というふうな意味合いでございませんので、ただいま御指摘の集団的固有の自衛の権利を、各加盟国がそれぞれ本来加盟国として享有する、こういうふうに解釈しておる次第であります。
  91. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これはまたあらためて一つ質問することにしましょう。これはお互いの、何というか、観念の食い違いですから、いずれもう一ぺん承りたいと思います。  次は、「両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、」こういうことがあります。これは両国でございますから、日米でございましょう。「日米両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、」こういう意味は、先ほど来申しますように、ただ「考慮し」というだけでは意味をなさぬと思うのであります。われわれは、極東の範囲についてはあとで聞きますが、その極東における国際の平和ということは、両国の共通の関心事である、こういうことを、考慮というか、わかったと言ってもいいでしょう。こういうことがわかったから、これを一つお互いに維持していこう、こういう精神が入っておる、また、そうでなかったら意味をなさぬように思います。ただ、両国の関心事であることを考慮した、わかった、こういうことだけではなかろうと思うのですが、いかがです。
  92. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 前文におきましてこう書きましたのは、考慮し、従って、今お話しのような点は、「よって、次のとおり協定する。」ということで、その精神を維持し、現実化すると申しますか、それによって次の通り決定するわけでありますから、条約文の中にそれが現実化される方法が出てくる、こういうことであります。
  93. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ここから第四条が出てきたのだろうと思いますが、ここで第一番に聞いておきたいのは、「共通の関心を有する」、こう申しまするが、日本にとっては、極東の平和を維持することが、第一番に日本の平和を維持するに必要である、こういうことが第一である。さらにまた、アメリカにおいても、平和というか、自衛の固有の権利を保持する上において必要である、こういう両面の関係が入っておるのではないかと思う。それとも、どの国でも、一方の自衛の固有の権利を保持するに必要であればいいのか、両方の国ともに自衛の固有の権利を保持するのに共通の関心を有する、こういう意味か、これは四条の解釈において大へん関係が深いと思いますので、明白にしておきたい、こう思うのです。おわかりにならなければ、私もう一ぺん申し上げますが、極東における国際の平和及び安全の維持、これはおわかりです。これは両国共通の関心を有するものだ、こういっております。まず、われわれ日本人といたしましては、日本の固有の権利維持する上において必要なのだ、こういうことを考える、これが第一。その次は、両国、こういうのですから、アメリカの固有の権利維持する上においても、極東の平和を維持することが必要なのだ、こういうことが考えられますが、この両者が入っておらなければここへ入ってこないのか、いずれか一方だけに必要であれば入るのか、これを一つ確かめておきたい、こう思うのです。
  94. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 極東における国際の平和及び安全が維持されると申すことは、むろん、日本の安全に影響を及ぼすべき問題であることは申すまでもございません。従いまして、日本として非常な関心があるということも、これは当然でございます。同時にまた、極東の平和と安全が害されることは、いわゆる世界の平和にもつながる問題だとわれわれは思うのであります。従って、日本の平和が維持されるということは、アメリカの関心事でもありますし、また、国際の平和及び安全が極東において維持されるということは、アメリカの関心事であることは、これは当然だと思うのでありまして、そういう意味において両方が共通に関心を持っている、こういう意味におとりいただきたいと思います。
  95. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それでは、もっとこまかく聞きます。共通の関心とは、どういう意味をいうのでしょうか。
  96. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本アメリカも、ともに関心を持っているということだと思います。
  97. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 その点は、われわれの重大関心事であるとよく申しますが、そういうことはわかりますけれども、私がもっと具体的に聞きたいのは、ここでいう関心ということは、前にうたっておる自衛の固有の権利を保持する上において必要なんだ、こういう意味ではないかという私の質問なんです。そこまで深く入っておるかどうか知りませんが、私はそういう意味を有しておるものであろう、こう思いますので、まず前提としてその点をお聞きしたい。
  98. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 特に自衛というよりは、やはり日本の安全あるいは極東の安全という意味であって、自衛の権利がこれによって確認されるというような意味ではないと思っております。なお、こまかい点は条約局長から……。
  99. 林修三

    ○林(修)政府委員 ただいま外務大臣のお答えで尽きると思いますが、若干補足させていただけば、共通の関心、これは日本アメリカも、極東の平和と安全に関心を持つ。それは自衛という観念から、もちろんはずれるものではないと思いますけれども、もう少し広い観念で、要するに、日本にとっては日本の安全、米国にとっては米国の安全からいって、極東の平和と安全が保たれることは、ともに非常な関心事である、こういう意味じゃなかろうかと私は思います。
  100. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは四条と大へん関係があると思いますから、くどく聞きますが、日本及びアメリカの自衛のためには必要ではないかもしれないが、日本及びアメリカ以外の極東、それの平和を維持しておくことが必要であるという観念が入れられるのか、その極東の平和を維持することが、日本の平和及び固有の自衛の権利を保持するために必要だから、こういう意味なのか。日本の自衛に関係がなくても、極東の平和が大事だからそれをやっておきたい、こう考えているのか、それとも日本の平和及び自衛に必要だから、こう考えているのか、こういうことです。
  101. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは広い意味では、もちろん日米両方の自衛という観念と離れるものではないと思います。ただ、自衛という言葉を使いますと、いわゆる自衛権の発動の要件に直ちに該当するようなことだからというようなことでは、必ずしもないと思うのでありまして、自衛権の発動要件に該当するのは、おのおのまた別の条件があるのであります。しかし、極東の平和と安全の保たれることは、日本及びアメリカそれぞれの国が、自分の国を守っていく、あるいは自分の国の安全を保持する上に必要であるからお互いに関心を持つ、こういうことじゃなかろうかと思います。広い意味において、自衛という観念ともちろんつながる観念だと思いますが、いわゆる自衛権の発動要件ということになってくると、必ずしも極東の平和と安全が乱されたから、すぐ自衛権の発動要件が出てくる、必ずしもそれが不可分一体につながるものではない、かように考えます。
  102. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 日本のことはその程度にしておきましょう。それでは、アメリカも同様でございますか。
  103. 林修三

    ○林(修)政府委員 アメリカについても、私は同様だと思うわけであります。アメリカ自身の広い意味の自衛と申しますか、安全の保持ということで、やはり極東の平和と安全が保たれることが、アメリカにとって非常に関心事である、こういうことだと思います。
  104. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 少し先走りますが、四条とも関係があるから、少しくどく四条のことを聞いていきますが、四条を見ますと、「締約国は、この条約実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。」こうなっております。ここで第一番に協議が始まりますのは、日本の平和及び安全に脅威が生じたとき、これはもう当然のことでございます。その次は、極東における国際の平和及び安全に脅威が生じた、こういっても、日本の安全に関係がないと見たら、協議の対象にならぬのじゃないか。それとも、日本の安全に全然関係ないことはなかろうが、それほどなくても、極東の平和、安全が害されるおそれがある、脅威が生じた、こういえば協議に入る、こういうことになってくるわけでありますか。私は、「日本国の安全又は」となっておりますが、日本の安全に関係があるから、極東の平和及び安全に脅威を生じたときに黙っておれぬ、こういうものじゃなかろうかと思いますが、これはいかがですか。
  105. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お説のように、日本国の安全に脅威が生じたときは、当然協議をいたします。日本国の安全に脅威があるかないかというのは、やはり両国で協議をしてみてわかる場合もあり、あるいは協議をしなくても、日本国の安全にその脅威が影響あるかないかということが判断できる場合もあろうかと思います。しかしながら、両者いろいろ協議してみなければわからぬ場合もあり得るのではないかと思うのでありまして、そういう意味において、協議をすることは非常に必要であり、適切だと思っておるわけでございます。
  106. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 この第四条は、日本からも協議を持ち込むこともできれば、アメリカからも協議を持ち込むことができるものだと思います。そこで今の場合、「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威」こうなっております。日本国の安全にそれほど影響はないが、極東における国際の平和及び安全に脅威があると思うからと、こういうことで協議の対象になるのですか。「又は」というから、なるかもしれませんが、私は、どうも日本にとりましては、極東の平和及び安全に脅威を生じた場合は、ひいては日本の安全に脅威を生ずるんだ、だから黙っておれないんだ、こういう意味に解釈すべきものではないかと思うが、もっと広く解釈していいかどうか、こういうことです。
  107. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今回の条約におきまして、第一に、まず、日本国の安全というものが非常に重要であるということは、これはその通りなんでございます。従いまして、日本国の安全ということが、極東の平和と安全にも貢献いたしますし、また、極東の平和と安全が日本国の平和と安全に影響しないと言い切るわけには参りません。日本は極東の中におりますから、そういう場合が非常に多いと思います。従って、そういうような状況下におきまして、これは日本にも影響するんだろうか、しないんだろうかというような問題については、協議をする必要があると思うのであります。日本はむろんその立場で協議いたしますが、アメリカにいたしましても、この安全保障条約日本と結ぶのでございますから、日本の安全というものをやはり第一に考えていることは、これは申すまでもないことであります。しかし、日本の安全に影響するような事態が何か極東に起こるというようなことも考えられますので、そういう場合に、アメリカの見た見解からいいまして、こういう状態では、あるいは日本影響があるのじゃないかというような協議を、今申し上げましたように、いずれか一方の締約国でありますから、アメリカとしても協議をしてみようじゃないかということが当然あり得るわけでございます。
  108. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 今、私が言ったのは、日本から持ち出した場合を言ったのですが、今度、アメリカから持ち出す場合を考えますと、極東の平和及び安全に脅威が生じた、これは黙っておれない、こういって持ちかけたといたします。そうすると、なるほど、極東の安全に脅威が生じたかしらぬが、日本に脅威はないんだから、そういうことは黙っておろうじゃないか、こういうことは言えますか、いかがですか。日本に脅威がないとあなた方がお認めになった、しかし、いや、それは極東にあるじゃないか、ここに「又は」と書いてあるから、それはどうか、こう言われたら――これは仮定の議論ですけれども、それはどう答えるのか。
  109. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん、極東の平和と安全が日本の平和と安全というものに非常に影響もあるということでありますから、日本の立場から考えましても、それに対して協議はいたしますけれども、しかし、協議をいたした場合に、日本アメリカとの見解が必ずしも一致しない場合があろうかと思います。日本としては、そのときの協議の場合におきましては、今日の事態は、必ずしも日本の平和と安全にそう大きな影響があるものではないという見方を述べることは、これはその場合においては当然あり得るわけでございます。
  110. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私の言うのは、理屈にすぎませんが、なるほど、極東の平和には脅威が生じておるかもしれぬが、日本本土には関係ないんだ、または日本の平和には関係はないんだ、こういうことが理論上あり得ると思うのです。そのときに、それはなるほど、極東に脅威はありますけれども、日本の安全に脅威はありません、こう言うて断わられる、理論的の問題ですが、そういう問題を私が出してみておるわけです。いかがですか。
  111. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今の協議は、全般的に情勢の交換をいたし、判断をいたすことは当然でございますが、しかし、たとえば、何か極東のある場所に対して実際的な武力攻撃があった、アメリカ軍が個別的な自衛権を発動すると思いますが、その場合に、日本基地を使うか、使わないかということは、事前協議によって許すか許さぬかということになるわけでありまして、そういう意味からいいましても、極東に脅威があった、これに対して情報の交換をし、それがはたして日本にも影響する脅威であるかどうかというようなことについては、十分協議するわけでありまして、日本の立場として、日本に脅威が直接にこない場合もあり得るわけであります。そういうときには、日本としてそういう意見を申すことは、これは当然なことだと考えます。
  112. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 もう一つ、極端なことを言うかもしらぬが、極東の平和、安全に脅威が生じた、しかし、それはアメリカに何も関係ないじゃないか、だからやらぬでもいい、こういうことは言えますか。それは両国の関心だ、さっきはそれでいったのです。なるほど、極東だけを考えてみれば、それは脅威であるかもしらんが、アメリカには何も関係のないことじゃないか、もっと言うてみれば、大した関心がないじゃないか、こういうことは言えますか。アメリカ自身が、極東そのものにあるいはおれの方は関心があるのだ、こう言ったら、それはごもっともでございますと言わねばならぬか、この点はどうですか。
  113. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アメリカ自身が攻撃を受けるというような意味でなしに、極東に何か混乱が起こったというような場合におきましても、これはやはり極東に何か混乱が起こって、日本影響があるということであれば、アメリカとしては、やはり関心を持つわけでございまして、その程度日本影響するかしないかということは、当然アメリカとしても関心を持たざるを得ないと思います。そして極東における平和と安全が害されることは、やはり世界の平和と安全も害されることになる端緒にもなろうかと思います。その意味において関心は持つだろうと思っております。
  114. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは今理論的のことを言うものですから、そのときにあたってみなければもちろんわかりませんが、私はやはり、何といっても日本の安全ということが頭にあって、そこで極東の平和を脅かされて、さらに進んで日本の安全にも影響があるだろうと思うておるし、これは黙っておれぬ、こういうものである、アメリカがそう言っても、日本の安全にそれほど関係がないといえば、それはよろしゅうございましょう、こういう性質のものだろう、こう思うのですが、あまりむずかしく考えると――やはり平たく言って、そういうものじゃないのですか、いかがでしょうか。
  115. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お説の通り、極東にいろいろな事件が起こる場合がございましょうけれども、その事件の大小等によって、極東に脅威があるという言葉では言える場合がございましても、必ずしもその大小、規模等によって、いろいろ問題がございます。従って、今平たく申し上げれば、今の鍛冶委員の言われた通りだと思います。
  116. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 第一条を見まするに、第一番には、締約国はそれぞれ、国際紛争が起こっても、国連憲章の原則に従って平和的に解決すること、これはあとへいって約束するというのが出ておりますが、まず第一番に、両国が力を合わせて、国際紛争が起こった場合は、国連憲章の原則に従って平和的に解決することを約束する、こういうふうに解釈すべきものじゃないかと思いますが、これはいかがです。
  117. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この第一条は、国連から主としてその表現をとっておるわけでございまして、今お話しのように、両国としてはできるだけ国際紛争というものを平和的に解決していく、そうして、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる国の領土保全または政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によることもやらないということをお互いに確認し合ったわけでございまして、約束するという意味は、そういうふうに解すべきものだと思います。
  118. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 その次は、武力による威嚇または武力の行使、並びに国連の目的と両立せないいかなる方法によることも慎むこと、こうありますが、これもこういうことを慎む、しかしながら、こういうことでなくて、国際紛争を解決することを約束した、こう解釈すべきものじゃないかと思いますが、いかがですか。
  119. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 慎むということは、やらないということでございます。やらないということを約束する、こういうことであります。
  120. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこで問題は、そこまできますると問題が考えられるのですが、いかなることがあっても、武力をもって解決せないことを約束した、また、国連憲章の原則に従って平和的に解決することを約束した、これはまことにけっこうなことであります。われわれは両国で約束したが、相手がどうも国連憲章に従わない、何をやっても聞かない、やりでも鉄砲でも持ってこい、こう言っておるとすれば、これはどうして解決するのですか。そのときには、どういう方法で解決しようという精神がこれに載っておるものであるか、この点を一つ研究しておいていただきたい。
  121. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日米両国は、国連憲章に従って、この条文にもありますように、武力行使をしないという約束をいたしておる。相手国側が、いわゆるやりでも鉄砲でも持ってこい。いかに言いましても、われわれとしては、国際連合の場においてそうした問題を解決するという手段、方法を選んで参りますことは、当然のことでございます。
  122. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 その精神はまことにけっこうでございますが、相手が聞かなんだら、それはやむを得ぬとして、たたかれ損でございましょう。何か方法がありそうなものだと思う。これは私は重大なことだと思う。私は、この条文を読んでみて痛感したのです。ひとり日本だけではない。国連憲章における、これをきめるときの精神も、そこらによほど考えがあったろうと思うのですが、これはどうも、この条文を読んでみて、そのまま受け取れないのです。国連憲章では、そのときの何か解決方法があったと思うのですが、いかがですか。
  123. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今お話しのように、たたかれ損という言葉がどういう内容を持っておりますか、たたかれるということが武力攻撃でありますれば、それは当然、国際連合によって認めております自衛の固有の権利が、それを排除するために使われる。しかし、そのこと自体は安保理事会にすぐ報告しまして、あるいは総会もしくは安保理事会の決議によって、その点についての国際世論が喚起されて、そうして解決の道にいくと思います。また、今のようなたたかれ損ということが、武力攻撃によらないで、何らかの形で出てくるというような場合には、これはむろん、平和的解決の方法として、国際世論に訴えるということは、つまり国連においてその実情を十分に説明し、国連が何らかの処置をとる。国連がどういう処置をとりますか、平和的な処置をとりますか、あるいは国連が監視的な、いわゆる警察軍みたいなものを作って、そういうような危険を排除しようとしますか、それは国連の決定に待つことになろうと思うのであります。そういうことがありましたときに、自国だけ、あるいは日米両国だけでそれに対して何らかの平和でない方法をとるということは、われわれ考えておらぬのでございます。
  124. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 大てい概念的にはわかっておりますけれども、国連憲章で、決して国際紛争の解決のために武力を使わない、こう言った以上は、武力は使わぬけれども、そのかわり、解決する方法はできるだけのことをする、この精神がなくては、人にはそういうことは言えぬと思う。これはあると思いますが、ある程度のことはそういう方法はある。そこでこういうものを使って両国でやる、こう言ったんだから、それは両国でやればいいのだ、国連憲章は、武力を使ってそういうことをやらぬことだけをきめておるが、お前らだけでやれ、こういうものは、両国でそうやっても、なお国連憲章の上において、国際連合としてはやるべき手段をとる、こういう精神が残っておるか、この点はどうですか。
  125. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん、両国に関して、両国が一致した上で、そうした脅威というものに対して何らかの解決方法を、相手国方と外交折衝と申しますか、そういうもので、とる努力をすることは必要だと思います。しかし、そうした努力によって十分な効果が上がりませんときには、当然国際連合の処置によって、そうした問題を国際世論の上で解決していくという処置をとるべきだ、こういうことに考えております。
  126. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 その次に、アメリカ日本とにおいて、こういうふうにお互いに武力で解決するようなことをせない、これはまことにけっこうです。ところが、こんなことを言わぬでも、日本には武力はないのですから、日本ではやれっこないのですから、どうも人が聞かなんだらどうしようもありません。私は、そこで、いやしくもアメリカとこういう契約をやりました以上は、武力は使わぬが、日本だけの力で足らなんだら、アメリカも入って紛争を解決してやるという協力をすべき義務――義務と言っちゃいかぬかしらぬが、約束することだから、そこまで立ち入ってアメリカがやることをきめたものでないか、こう思います。また、そうでないと、どうも今の世界の現状から言うて、日本の立場から言うて、なかなか日本の主張が通らぬのが現状なんですから、この意味において、アメリカは、そういう場合があったら協力して、一つ日本と他国との紛争をも解決するように努力いたします、こういう精神が入っておるものだろう、こう思いますが、いかがですか。
  127. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お説の通り日本は当然武力を用いることができない立場にありますことは、むろんでございます。また、同時に、アメリカにおきましても、武力によって紛争を解決するということを、国際連合の憲章に準拠いたします以上、いたさないわけでございます。従って、これを平和的に解決するということを考えますと、両国が協力いたしまして、解決するということになるわけでございます。従って、何か日本と他国との関係におきまして問題があります場合にも、それが武力的紛争にならないように、アメリカが協力してくるということは、これは当然のことでございます。
  128. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 実例から申しますと、朝鮮というか、韓国が竹島を占領している。これはあなた、不都合なことでございますが、あのときの安保条約ではこういう規定がなかったから、これはやむを得なかったかもしれませんが、今日あるとすれば、韓国は日本の言うことを聞かない、アメリカさん、あなたの力で一つ聞かしてもらいたい、こういうことを言うていいものだろうと思うのですが、これはどうですか。
  129. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん、日本と韓国ばかりではございませんが、他国との間に何か紛争が起こりました場合に、日本が正当な理由を掲げて、そうして不正な行為を排除しようというような問題について、アメリカは、当然協力してくれる立場にあることはむろんでございますし、また、この条約の精神から見ましても、そうであるわけでございます。
  130. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは、占領したときに条約がなかったからと私は今申しましたが、ところが、今日まで続いております。続いておるし、日本としては、相変わらず紛争があるわけなんです。あのときはやらなんだが、どうです、今日はこの通りだから、日本も一生懸命今やっておりますが、あなたの方でも一つやってもらいたい、こう言うてもいいんじゃないか。それでも聞かなんだら、国際連合で、これはどうもこんなことで聞かなかったら、武力を用いるほかないが、用いるとしたら、あなた方の力で解決してもらわなければ困る、これは言うてしかるべきものだと思います。今からでも言うておそくないと思いますが、またあるいは、私が言わぬでも言うておられるかもしれませんから、言うておられるなら、言うておられるかどうか、言うていないなら、これから言うて悪いのかどうか、この点を一つ
  131. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 いろいろな紛争に対しまして、日本の正しい主張というものは、十分国際的にこれを主張して参り、各国の理解を求めて参るわけでありますが、特にアメリカに対しましては、お話のように、われわれとしては、今日その実情説明いたしまして、そうしてアメリカとしても、その状況を十分に了承いたしております。今回の抑留漁船員の帰還問題等につきましてのアメリカの配意というものも、われわれは、そうした精神から出てきておる問題だと考えております。
  132. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次会は、明八日午前十時より開会することといたしまして、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十七分散会