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1960-04-06 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月六日(水曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君    理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    天野 光晴君       池田正之輔君    石坂  繁君       鍛冶 良作君    鴨田 宗一君       賀屋 興宣君    小林かなえ君       田中 榮一君    田中 龍夫君       田中 正巳君    床次 徳二君       服部 安司君    福家 俊一君       古井 喜實君    保科善四郎君       毛利 松平君    山下 春江君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       岡田 春夫君    黒田 寿男君       田中 稔男君    穗積 七郎君       森島 守人君    横路 節雄君       受田 新吉君    大貫 大八君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      中川 董治君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局長)森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君         大蔵事務官         (主税局税関部         長)      木村 秀弘君         運輸事務官         (航空局長)  辻  章男君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 四月六日  委員渡海元三郎君辞任につき、その補欠として  田中榮一君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたします。  前日に引き続き、質疑を行ないます。大貫大八君。
  3. 大貫大八

    大貫委員 昨日もお尋ねしたことでありますが、第四条の、この条約実施に関して随時協議するという事項で、もう一度藤山外務大臣に確かめておきたいのであります。昨日再々答弁がありましたように、要するに、第三条は第四条の条約実施に関しての協議事項じゃない、こういうふうにお答えになっている。ところが第三条というのは、バンデンバーグ決議に基づいてできておることは、藤山外務大臣も今までの御答弁でお認めになっているはずです。そうしますと、バンデンバーグ決議というのは、どう読んでみたって、平たくいえば、こういうことなんでしょう、アメリカ相互援助に基づいて相手国援助するけれども、その場合には、相手方みずからが相当な軍備を持って自己防衛に当たらなければならない、それが前提になるのでしょう。その上で相互援助をやろうというのが、要するにバンデンバーグ決議であり、この決議アメリカ外交方針基本線になっておるはずなんです。これに基づいて相互防衛条約なり相互条約というものがすべて結ばれておる。相互条約を結ぶ場合には、まず相手国がみずからを守り得るだけの能力を維持する、これが前提となっている。そういたしますと、どうも昨日お答えになっているように、日本アメリカには何ら指示されることなく、自由に、自主的に自衛力を増強すればよろしいのだ、憲法の範囲でそうやればよろしいのだ、こうお答えになっておりますけれども、このバンデンバーグ決議精神からすれば、日本自衛力がどの程度になるかということは、非常に重大な関心事なはずなんです。これが前提となる。そういたしますと、どうしたって第四条によって条約実施に関する重要な協議事項になると私は思うのですが、どうですか。この点、もう一度明確にお答え願いたい。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知の通り、バンデンバーグ決議趣旨というものは、こういうような相互援助条約を結ぶ相手国が、自分の国は自分で守るという意欲を持ち、そうして、それに対する努力をしていくということが重大な問題でありまして、その努力をいたすにいたしましても、その国の経済力あるいは社会的な諸般の事情からいたしまして、おのずから限度もございます。そういうものは、自分自身がきめることであります。そういう意思を全然持っておらないというところとは結ぶわけにいきませんけれども意思を持っていて、それがどの程度にいくかということはその国自身がきめること、これは当然のことだと思います。
  5. 大貫大八

    大貫委員 ところが、あなたは、この条約締結交渉にあたって、つまり、バンデンバーグ決議精神を体して、要するに、武力攻撃に抵抗する能力を、憲法上の規定に従うことを条件として維持し、発展させる、そういうことを誓約したというのじゃないですか。誓約したということを新聞にも報道されております。アメリカ側に対してですね。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん、この条文にありますように、お互いに維持し、発展させていくということは、自分たち自分の国を守る意欲を持ちまして、意欲を持っているだけに、そういうことをやっていくわけでありますが、しかし、それではどの程度の兵力を持ち、あるいはどの程度の飛行機を持つかというような具体的な問題については、何も約束もいたしておりませんし、また、これはその国自身がそれぞれの事情によってきめる問題でございまして、決して約束をいたしておるものではございません。
  7. 大貫大八

    大貫委員 しかし、そうしますと、第三条は意味がないのじゃないでしょうか。日本は米国におかまいなしに、自主的に、日本の思うままに自衛力を増強して、よろしい、こういうのならば、三条の意味はないんじゃないですか。そんなことはアメリカ約束しないといって、ばらばらにやればいいのですから……。それを第三条からいえば、これは日本は自衛するだけの力を維持し、発展させる、こういうことを約束している。約束した以上は、これはアメリカの重大な関心事なんです。アメリカ条約を結ぶ前提になるはずなんだ。だから、内容は自主的であろうがどうであろうが、こういうことをいたしますということを、条約実施に関する協議事項として、当然協議議題に上ってこなくちゃならぬはずなんです。それが協議事項にならぬなどといったら、これは第三条は意味がないのですよ。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今、申し上げておりますように、バンデンバーグ決議というものは、要するに、基本的にお互い援助し合っていこうという国は、それぞれお互いの国が、自分の国は自分で守る、そのためには、その国の経済的ないろいろな条件のもとに制約はされますけれども、そういう意欲を持っているという国とでなければやらぬというわけであります。従って、経済上のいろいろな理由がございますから、それについては、自分自身の国がきめていくということなんでありまして、そういう意欲があるということをお互いに宣言し参ったのがバンデンバーグ条項精神でもあり、この条約に入れた趣旨でもございます。
  9. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、日本は勝手に、野放しに自衛力を増強してよろしいということなんですか。これはアメリカと何の話し合いもせずに、日本は勝手に、思うままに自衛力を増強してさしつかえない、こういうふうに解してよろしいのですか。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本は、日本事情によりまして、本年はどうする、来年はどうする、今後の計画はどうするということを、日本自身決定をいたすわけでございます。むろん、そうした決定がありますれば、日本はこういうふうにやっていくのだという情報交換をいたすことは当然でございます。しかしながら、それを決定するのに、アメリカから何か押しつけられて、こうしなければならぬ、ああしなければならぬという義務を負ったわけではございません。
  11. 大貫大八

    大貫委員 何か押しつけられるとかなんとか、非常にこだわっておるようですけれども決定する前に、第四条に基づいて、当然これは条約実施に関する重要な事項として協議をなさるはずなんです。単なる連絡なんということでは、アメリカが承知するはずがないでしょう。アメリカとしてはそんなあいまいなことであれば、バンデンバーグ決議精神に反しますよ。こんなことで上院を通りませんよ。そうするとどうしてもあなた方は交渉に当たって、やはりこの条約実施に関する重要な協議事項として軍備をどうするか、どの程度自衛力を増強するかということを、これはアメリカと前もって相談する、こういうことが第三条の趣旨になるじゃないですか。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 重ねて申し上げますけれどもアメリカ承認を得て、そうして日本軍備計画をいたすというようなことではございません。日本は、自分自身経済的なあるいは社会的ないろいろな事情を勘案して自衛力決定をいたすわけであります。むろん友好国として決定いたしたものについて、日本は本年こういう計画があるのだという程度情報交換はいたすと思いますけれども決定にあたりましてアメリカ承認を得るということではございません。
  13. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、この条約の効果というのは、ほとんどお互いばらばら計画を立てる、こんなのはもう意味がないじゃないですか。だからこういう弁解をなさらずに、ほんとうのところを言うたらどうですか。実際は今までの経過からしましても、アメリカからいろいろな注文を受けておるでしょう。実際はそうでしょう。自衛隊を増強するのだって、あるいは自衛隊装備をどうするのだって、今までの実際の過程からしますと、一々アメリカからいろいろな注文を受けておるじゃないですか。それに基づいてやっているじゃありませんか。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いろいろお話がございますけれども、もし日本がどうしてもアメリカ承認を得なければ軍備ができないというなら、対等の立場でやる場合に、アメリカ軍備日本承認しなければできないということですが、そういうことではございません。それぞれの国が自分経済的能力によってやって参るわけであります。むろん情報交換等はいたすこと当然でございます。新しい兵器等事情等についても聞くことはございますが、しかしながらそれはいわゆる協議によって承認を得てやるという問題ではございません。
  15. 大貫大八

    大貫委員 それではどうもいつまでいってもしようがありません。     〔発言する者あり〕
  16. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  17. 大貫大八

    大貫委員 それでは協議事項として、第六条による駐留米軍配置計画あるいは移動とか装備、こういう問題はどうなんですか。条約実施に関する協議事項ですか、どうでしょうか。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そういう問題については、たとえば配置については事前協議の場合もございます。一般的に協議をして話し合いをする。情報交換程度もございますし、こうしてもらいたいということもあろうかと存じております。
  19. 大貫大八

    大貫委員 そうすると米軍配置やあるいは移動装備などが協議事項になるとすれば、当然日本自衛隊配置、そういうものも協議事項にならないのですか。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今お話のように、どうして日本自衛力を増強するかということについては、私はアメリカ承認を得てやるのじゃないということを申し上げておるのでありまして、一般的に情報交換をいたしたり、あるいは大部隊が入ってくるような場合には当然事前協議に今度はかかることになっております。従いまして、そういうようないろいろの場合その他につきましては協議をいたす必要があることむろんでございまして、今のような第三条による約束をいたしたそれが、協議でもって承認を得なければならぬという問題とは違うのでございます。
  21. 大貫大八

    大貫委員 ここに「極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたとき」というのは、具体的にはどういうような状態をさすのですか。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 「脅威」がどういう形で起こってくるかということを、現在において一々想定をするわけには私ども参らぬと思います。むろんそのときそのときに判断をいたして参らなければならぬ。でありますから、そういうような場合には協議をしていくことも必要であるわけであります。今ここでこういう形でこういう脅威が右から左へくるのだということは申し上げかねると思います。
  23. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、この「脅威」というのは、現実侵略が行なわれた場合とか、武力攻撃が行なわれた場合をさすのじゃないですね。それ以外のことも含むのですか。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん今回の条約全般については、申し上げておりますようにいろいろな協議がございます。協議内容にいたしましても、情報交換程度協議もございます。あるいは異議を差しはさまなければならぬような協議もあると思います。また国際情勢その他についても情報交換もし、あるいは意見開陳もしていかななければならぬのでありまして、そうした広範なものを内容といたしておるわけでございます。従いまして、武力攻撃があったからというようなことだけを前提にするというものではございません。
  25. 大貫大八

    大貫委員 そうすると大へん問題ですね。現実武力攻撃侵略が行なわれた場合ばかりではなく、それ以外のことも広範にということになると、「脅威」というのは、一体どういうことなんでしょうか。私にはわからぬから、もう少し具体的に言うてもらいたい。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 「脅威」というのは、やはり脅威なんでありまして、いろいろな事変が起こるというようなこともむろん考えられると思います。世界にいろいろな状況が絶えず変化して起こっておるのであります。それがはたして極東の平和と安全に影響するかしないかということは、やはりおのずから協議して参らなければならぬ、意見交換もしていかなければならぬと思います。こういうことが「脅威」だという非常にはっきりした限界がございますれば、それは楽でございますけれども、「脅威」というものはいろいろな形で出てくると思いますから、常時いろいろな意味において情報交換もし、あるいは意見開陳お互いにして協議をしていかなければならぬということもあると思います。
  27. 大貫大八

    大貫委員 そうすると「脅威」というのは一体だれが判断するのですか。これは重大な問題だと思う。「脅威」ということが、いわゆるススキを見てお化けと思うそういう受け取り方もあるはずです。だから客観的に見れば何ら脅威も何もないのに、「脅威」を名としてそれをまた協議するということも起こり得ると思う。そこでだれが「脅威」を生じたという判断をなさるのですか。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 それぞれこういうことは、極東に対する脅威じゃないだろうかということは、お互い判断すると思います。またそういうふうにお互い判断したものを持ち寄って、意見の合う場合もありましょうし、合わない場合もありましょうが、意見の合った場合にはそういうような判断が成り立っていく、こういうことでございます。
  29. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、日本国の安全に対する脅威、これは何をさすのですか。今は極東の安全ということを聞いたのですが、日本国の安全に対する脅威ということは何をさすのですか。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本国の安全ということは、むろん広範な意味においてわれわれ考えられると思います。外から脅威を受けるということも考えられると思います。あるいは外部からの何らかの援助によりまして日本脅威にさらされるというようなことも起ころうかと思います。従いまして、いずれか一方の締約国の要請でこれを協議をしていく、こういうことになろうと思います。
  31. 大貫大八

    大貫委員 ところがフィリピンアメリカとの相互防衛条約では、こんなあいまいな言葉は使っていないのです。これは米比相互防衛条約の第三条をごらんいただければわかるのだが、「外部からの武力攻撃によって脅かされたと認めたときはいつでも協議する」要するにフィリピンとの場合においては、外部からの武力攻撃があった場合、そのときだけ協議する、こうなっておる。ところがこの第四条によると、「脅威」というような非常にあいまいな字句を使っておる。これは日本憲法の建前から自衛権の行使でなければ、これは立ち上がることはできないはずです。きのうからもあなた方の答弁ではそうなっておる。なぜこれはフィリピンの場合はこういうふうに武力攻撃と明確にしておるのか。日本の場合どうしてこういうあいまいな言葉を使っておるのですか。
  32. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御指摘のようにフィリピンの場合には、外部からの武力攻撃ということはございますが、フィリピンも入っておりますSEATOの条約には、武力攻撃以外の攻撃方法で脅かされるということもありまして、フィリピンもその加盟国としてその条約に縛られておるわけでございます。われわれとしてむろん第四条の協議というのは、すぐに何か措置をとるとかとらぬとかいう場合ばかりではございません。いろいろな事情によって、脅威をされやしないかという問題を協議するわけでございますから、幅が広い形において協議が行なわれますことが日本の平和と安全に貢献するとわれわれは考えております。
  33. 大貫大八

    大貫委員 これは日本立場からすれば、フィリピンでさえ外部からの武力攻撃と明確にしておるのですから、協議事項としての脅威というのは、やはり日本現実外部から武力攻撃を受けた場合に限るというふうに限定すべきものではないのですか。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 外部から現実日本国が攻撃されましたときには、第五条が発動するわけでございます。そうでないような状況のもとにおいて、われわれははたしてこれが安全に影響するのかしないのかということを協議いたすわけでございます。
  35. 大貫大八

    大貫委員 それでは協議をするというのは、そういう場合何をするのですか。脅威があった、そこで協議をする、何をしよう、これに対する対策をやろうというのでしょう。要するに、そうするとそういうことがかえって脅威を名として戦争を誘発し、挑発するような結果になりませんか。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 非常に何か脅威があったときに、それについて協議する、それに対する対策がどうだ、それは外交上の問題で、平和的に話をする場合もございましょうし、一々すぐに武力行動に移るかどうかというようなことは、われわれ侵略がすぐにくるかこないかも判断しなければならぬわけでありまして、そういう点で、もしそれがあればあるいは外交機関を通じ、あるいは国際的に訴えるということもございましょうし、決して戦争にすぐに巻き込まれるというふうに日本が行動するわけではございません。
  37. 大貫大八

    大貫委員 それではどうですか、具体的にお尋ねしますが、この「脅威」の中には、いわゆる間接侵略は含むのですか、含まないのですか。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん間接侵略というものは日本の平和と安全に影響を及ぼすわけでありますから、含むとわれわれは解しております。
  39. 大貫大八

    大貫委員 そうするとこれは問題は大きくなると思うのですが、政府はしばしば本条約は、日本独立国として自主性を獲得したのがこの条約だとおっしゃっている。その自主性を獲得したという理由一つとして、従来の現行条約内乱条項を削除したということをさもさも非常に自主性を獲得した証拠の一つとしてあげておられる。ところが間接侵略も含むとすれば、内乱のような状況が起きた場合に、協議するということになりますと、これはやはり同じじゃないですか。要するに内乱条項を削ったと言いながら、非常に巧みに姿を変えてこの条約の中に隠れておるのじゃありませんか。
  40. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 全然違うのでありまして、純粋内乱というものに対しては、むろん日本日本みずからこれを処置していくわけでございます。お話のように間接侵略があったという御質問でございますが、間接侵略というものはやはり他国から武器が供与されるとか、あるいはいろいろな問題が起こっておるわけでありまして、そういうような場合には当然協議をするのは、私どもはあたりまえだと思います。純粋内乱というものは、これは削除するのがあたりまえでありまして、われわれは当然それを独立国として削除したわけでございます。
  41. 大貫大八

    大貫委員 それはどうもおかしい答弁ですね。間接侵略だって内乱だって同じじゃありませんか。結局は、内乱だって、外国から武器が入ったのも間接侵略だ、こうおっしゃっているのでしょう。そうすれば内乱の場合には多かれ少なかれ——竹やりでやる内乱なんていうのは今ありませんよ。やはり外国から武器を入れて、そこに内乱騒擾というものが起こってくる。そういたしますと、そういう場合にはいわゆる脅威が、日本国の安全の脅威だと称して、第四条で協議アメリカとするとすれば、内乱条項を削ったって意味をなさないじゃありませんか。現行条約一つも違わないじゃありませんか。そういうごまかしはいかぬと思うのです。
  42. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私どもごまかしを申し上げておるわけではございませんので、内乱というものは、すべて大貫委員間接侵略による内乱だと言っておられるのでありますけれども、そうじゃない純粋内乱というものも決して考えられないわけではございません。でありますから、そういう外部から何らかの働きかけによって起こったというものと、純粋の内部的な内乱というものもあるわけでございまして、そこを区別することは当然なことだと思います。内乱がすべて大貫委員が言われるように、現状においては間接侵略だということは、われわれは考えておりません。
  43. 大貫大八

    大貫委員 私は内乱がすべて間接侵略だと言うているわけではない。しかし少なくとも内乱の中には間接侵略といわれるものがあるはずなんです。それはそうでしょう。内乱というのはどの程度のことを言うか別として、つまり竹やりでは今内乱はできない。内乱というからには、少なくとも大なり小なり武器外国から援助を仰ぐとかしなければ、これは内乱という状態には立ち至らぬと思う。そうするとやはり間接侵略の範疇に入るじゃありませんか。このことについてアメリカ協議をするということになりますと、一つ内政干渉にもなるということになるのじゃありませんか。
  44. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私ども外国関係のないような内乱というものもあり得ると考えておりますけれどもピストル五丁を持った、それが外国製ピストルだから、それはやはり外国援助だ、そういうふうに単純にわれわれは考えないでいいのじゃないかと思います。むろん武器を国外から援助をするということの限度というものは、非常に大きな場合を想定するということであります。しかしながらわれわれとしてそういう場合に協議をいたしますことは、決して内政干渉とは思っておりません。
  45. 大貫大八

    大貫委員 しかしそうすると結局こういうことになりますね。これは総理大臣にお尋ねしましょう。  結局この条約は、現行条約内乱条項を削ったと言うておりますけれども、実質的にはこの第四条によって、内乱にも要するにアメリカが関与できるという一つの道をあけているのじゃないですか。
  46. 岸信介

    ○岸国務大臣 現行の安保条約は御承知の通り内乱の場合に日本国が要請すれば、駐留軍が出動してこれの鎖圧に当たるということになっております。そういうふうに駐留軍が現実に武力を行使するという場合は、五条に今回はっきり書いておるわけでございます。他国から、外国から武力攻撃を受けた場合にだけするわけであります。四条は協議でございます。四条の協議において単純な内乱は、先ほど来外務大臣が言っているように、これはもうわれわれは協議する考えはございませんが、今日の国際情勢から申しますと、いろいろな各地における事態は、直接侵略、直接に武力攻撃を加えることによって他国を侵略する場合と、いわゆる間接侵略として他の外国がそのある国の内部に干渉して、あるいは武器であるとかあるいは人間を送るとか、いろいろな方法によって間接的に侵略する、そうして擾乱を起こさしめるという事態があるのであります。従ってそういう場合においては、やはり外国の影響でもって日本の安全が脅かされるということになるわけでありますから、そういう場合においてはこの四条で協議をして、それに対してそういう事態をなくするように尽くしていく。しかし駐留軍が武力を用いる、武力的な行動をするということは、五条だけでございます。
  47. 大貫大八

    大貫委員 そうすると今のような場合、米軍協議をして、そういう事態をなくすようにする、ただし武力の行使はしないんだ、こうおっしゃるんですけれども、なくするようにするというのは、物心両面にわたって、米軍が協力をして、援助をすることになるんじゃないですか。そうすれば、結局この条項によって有力な内政干渉の種がここにあると思うのですが、どうでしょう。
  48. 岸信介

    ○岸国務大臣 この条約によって日米両国が日本の安全を守り、それからさらに極東の平和、安全を守って、世界の平和のなにを確保する。これについて日米両国が協力するということは、この条約を貫いておる一つ精神であって、そういう場合において日米の間における協力関係ができたからといって、それでもって内政干渉という性質のものじゃない、私はかように思っております。
  49. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際堤ツルヨ君より関連質疑の申し出がありますから、これを許します。堤ツルヨ君。
  50. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ただいまの内乱の場合、大貫委員の御質問に対しまして、総理の答弁ははっきりしていないと思うのです。私はお伺いいたしますが、この日米安保条約の中には、日本の安全並びに脅威という場合に、外部からのみの脅威ということが明記してないんです。書いてないということは、外からの場合と内からの場合と両方を肯定しておるものだ、私はこういうふうに解せざるを得ないと思うのですが、総理はどうお考えになりますか。
  51. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほど来お話を申し上げておるように、間接侵略の場合はこれを含んでおる、こういうことでございます。従ってそれを見方によって内部とみるか、私ども間接侵略というものは、やはり外部一つの力があり国があって、それがいろいろ形を変えて直接みずから国として侵略するという直接侵略のかわりに、他の方法によってその国の平和と安全を脅かすような行動に出る、そういうような意味において間接侵略というものが現実にあり、それに対してはこの条項は働く、かように考えております。
  52. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 わざと総理大臣は少し答弁をずらしておられるので、間接侵略、直接侵略という言葉を今使っておらないのです。内乱条項です。内乱という場合は、間接侵略意味のない場合にも、国内に内乱が起こる場合がある。現行条約では内乱条項に対して米軍が勝手に出動ができるようになっている、これをなくしたのだと、こうおっしゃるのですけれども、今度の日本国の安全という点でも、これは決して今度の改正で内乱を除くということになった意味にはならないのです。これは念のために私が申し上げますると、米比条約というのがございますが、米比条約というのは、フィリピン内乱に対してどういうふうに明記しておるか、総理大臣御研究になりましたか。答えていただきます。
  53. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほど大貫委員の御質問があり、外務大臣がお答えした通りに私は了解いたしております。
  54. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 米比条約について、総理は御研究になっておらないようですけれども、米比条約の中には、はっきりと「外部からの武力攻撃によって」と、外部だけを指定しておるわけなんです。ところが今度の日米安保条約の中には「外部からの」という米比条約に相当する文句がないわけでございまして、ここに内乱条項に介入しないという米軍の保証がないということを、先ほどから大貫委員が突いておられるわけなんです。そのところをはっきりしていただかないと、内乱が起こった場合に対するところの日本国アメリカ立場というものがはっきりしないから質問をしておるのでございまして、ここのところは明記されておらないということ、しかも外国アメリカとが結んでおるところの条約に基づけば、はっきりと内乱条項を削って、外部からの侵入という意味にだけはっきりと明記しておる、ここに違いがあるのでございます。もし総理が言われるような筋合いのものであるならば、米比条約並みに日米条約もやはり外部からの侵入という言葉で表わして、内乱には在日米軍はタッチしないのだということが明記されなければ、筋が通らないわけなんです。そこを大貫委員が尋ねておられるので、もう少しはっきりしていただきたい。
  55. 岸信介

    ○岸国務大臣 従来の、現行条約においては先ほどお答え申し上げたように、内乱という広い文句が使ってあります。先ほど来外務大臣及び私がお答えを申し上げているように、この内乱という現在の用いている字句の内容としては、純粋内乱とそれから間接侵略によるものと両方を含んでおると思います。そうして今回のわれわれの条約における日本の安全に対する脅威ということは、外部からの力によってそういう脅威が加えられる、米比条約のように、外部からの武力攻撃というだけの限定ではなくして、広くその原因は外部、いろいろなやり方があると思います。間接侵略の方法としては。そういう外部からの間接侵略によって日本の安全が脅かされる、この内乱のものは、これは条約において日本の安全を脅かされる内議というようなことは私どもは考えておりません。
  56. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は総理は非常にうまく逃げておられると思いますけれども、きょうは関連ですから私のときあらためてやりますが、米比条約並みに外部からのものということをはっきり明記しておらない以上、あるいはアメリカ日本に対してごまかしておるか、承知の上で岸総理が国民をごまかそうとしておるのか、いずれかであるということを指摘しておきまして、この質問は私の時間に譲ります。
  57. 大貫大八

    大貫委員 これは外務大臣にお尋ねしますけれども、「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威」とこう書いてある。そうしますと、極東における国際の平和及び安全に対する脅威というのは、日本に全然関係のない場合を言うんじゃないんですか、これは。
  58. 岸信介

    ○岸国務大臣 日本に全然関係のないかあるかというような問題も協議をいたすわけでございます。
  59. 大貫大八

    大貫委員 これは第四条と第六条はだいぶ違いますね。第四条の場合は、日本の安全というのと、極東における国際の平和及び安全というのをオアでつないでいますね。ところが第六条は、「日本国の安全に寄与し、並びに」と、アンドでつないでおる。日本国の安全と、それから極東における国際の平和及び安全というのは、六条の場合はアンドで、四条の場合はオアでつないである。そうしますと、四条の場合は日本国の安全に無関係なことでも、いわゆる極東の安全、国際の平和と安全という事柄で協議をさせられるんじゃないですか。
  60. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 オアとアンドの問題につきましては条約局長から御説明を申させますけれども極東の平和が脅かされるということは、日本の平和や安全に影響がない場合もございましょうけれども、ある場合もあろうと思います。そういうふうな事態についてお互い情報交換をし、また協議をいたすということは当然必要なことだとわれわれは考えております。
  61. 大貫大八

    大貫委員 そういう必要かどうかということよりも、この解釈としてどうなんですか。極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じた場合には、日本の安全なんかには無関係でも協議するということになるんじゃないですか、この条文からいって。
  62. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまオアとアンドの言葉でございますので私から御説明申し上げたいと思いますが、第四条はオアということを使っておりますが、それは日本の安全が脅かされたときも協議し、極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときも協議する、こういう場合も協議し、こういう場合も協議するというようなことをいっておるわけであります。第六条は、二つの目的を二つながら、こういう目的とこういう目的ということを二つ掲げておる次第であります。ただアンドという言葉を出したからといって、またオアという言葉を出したからといって、日本の安全と極東における平和と安全との関係が全然別であるとか、または重なって同じでなければならないとか、そういうふうな言葉をオアとかアンドだけの言葉によって判断することはできない。これはオアとかアンドとかいう言葉がそれほどの内容を持っているとは考えない次第でございます。それはどういう関係かというのは、そのおのおのの事柄によって判断すべきである、こういうふうに考えます。
  63. 大貫大八

    大貫委員 それは大へんなごまかしですよ。それだけの意味がないといったところで、それだけの言葉意味があるでしょう。それならアンドでつなげばいいでしょう。何もオアとする必要はない。オアとしておるのは、日本国の安全ということと、極東における国際の平和と安全ということは別個だから、オアでこの文章はできておる。同じならアンドでつなぐはずです。要するに日本国の安全と極東における国際の平和と安全、この二つの条件脅威が生じた場合には協議をするということ、それならばアンドでつないであるはずです。第六条はそう読めると思う。ところが第四条の場合はオアなんですから、日本国の安全に脅威が生じたとき、これはもちろん協議する。ところが日本国の安全とは直接に関係がなくても、いわゆる極東における国際の平和と安全が脅かされた、こう認めた場合には協議ができるようになるんじゃないですか。これはどうしたって条文の解釈上そうなりますよ。
  64. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 オアでつなぎましたことは、今おっしゃった通りの解釈で決して差しつかえはないと思うのであります。われわれは今日の実情から申しまして、地球が大へん狭くなっておりまして、いろいろな世界に起こった条件が、いろいろなところに反映していくということは、これは大貫委員もお認めになると思うのです。ましてや日本がおります極東というような範囲内におきまして何か問題が起こりましたときに、それについてわれわれは協議をしてみる。協議をしたからといって何もすぐに行動をするとかなんとかいうことはございません。協議をすることは私ども当然なことだと思っております。
  65. 大貫大八

    大貫委員 当然とか当然でないとかいうことを伺っておるのじゃなくして、そうするとこれは確かめてみますが、この第四条では直接には日本の安全は脅かされてないけれども極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じた場合には協議をする、こう解釈してよろしいのですね。
  66. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 そう解釈していただいていいわけでありまして、それがその時点においてそうであろうと、その後にどうなるかもわかりませんし、われわれとしてはやはりそういう場合には協議をして参らなければならぬと思います。
  67. 大貫大八

    大貫委員 そうするとこれは日本の自衛に何ら関係のないことで協議をするということになるのじゃないですか。これは総理大臣にお伺いしますが、これは大へんなことだと思う。自衛権の範囲じゃないと思うのですがどうですか。
  68. 岸信介

    ○岸国務大臣 協議するということと何らかの行動をとるということを不可分のようにお考えになるのですが、協議はすべきものである、また今大貫君の解釈のように私ども考えております。しかし行動をするという場合においてはそれぞれ条件があり、ことに武力行動をするという場合におきましては、日本自衛隊のなににつきましてははっきりと五条に規定がございます。従って協議したから自衛権に反するとか、あるいは何かそこに違反が出るという性質のものじゃないと思います。
  69. 大貫大八

    大貫委員 ところが日本の直接の自衛に関せずして、みだりに外国脅威が生じたからというて協議をするというようなことは、それ自体が、昨日から伺っておるあなた方の憲法解釈からしても矛盾するじゃありませんか。何ら日本の防衛に関係しないはずです。それにもかかわらず外国協議をするというようなことは、自衛に関せざることについて、しかもなるほど行動は伴わないかもしれませんが、場合によっては戦争に巻き込まれるかもしれないような事態が起こるかもしれない。そういうときに協議するというのはちょっとおかしいと思うのですがどうですか。
  70. 岸信介

    ○岸国務大臣 われわれは平和を要求しており、また国の安全を願っておるわけであります。従って日本の安全に脅威を与える場合に、協議してこれに対する措置を講ずることは当然であります。同時に極東、これは全体的にいいますと、日本に非常に近接しておる地域でございますから、一般的に私は日本の平和と安全には関係があると考えることが正しいと思いますが、しかしそれはいわゆる間接的な関係でありますから、直接日本の平和と安全に関係しない場合も協議の対象になることは、先ほども大貫委員お話の通りであります。どういう行動をするかということにつきましては、われわれは平和的な解決を願っておるし、その脅威を除いて武力攻撃というような侵略が起こることを未然に防がなければならぬ。その場合にはいろいろ声明を出すこともありましょうし、あるいは外交交渉によってその脅威を取り除くこともありましょうし、あるいは国際連合に提訴してそれを防ぐ、そういうようなことをするためには、やはり協議をして事情を明らかにし、実態を正確に把握して考えを統一していくということは望ましいことである。決して協議したから戦争が直ちにくるとか、あるいは戦争に巻き込まれるとか、自衛権の発動が憲法に違反して行なわれるというようなこととは、全然関係ないのであります。
  71. 大貫大八

    大貫委員 ところが、全然関係ないとは言えないと思うのです。少なくとも、極東における国際の平和と安全が脅威を受ける、こういうことが前提になる。脅かされておるのだ、あぶないんだ、戦争の危機があるかもしれぬ、そういうことについて協議をするというのであります。しかも、この協議は、大体においてアメリカ側がそういう判断をするのだ。この条約からいっても、日本国の安全に直接関係ないことでありますから、これはアメリカがおもに判断すると思うのです。そういう場合に日本協議の中に入る、そうすると、アメリカアメリカとして、こういう極東において平和が脅かされるおそれがあるのだ、だから、自衛隊の方もどういうふうな配置をしておけとかなんとかいうようなことが具体的に協議内容にならざるを得ないと思うのです。そうすると、これは昨日から言うておった憲法九条に大へん違反してくることになると思うのですが、どうでしょうか。
  72. 岸信介

    ○岸国務大臣 前提が私どもと非常に違っておるように思うのですが、私どもは、先ほど申し上げたように、脅威が生じた場合においては、その脅威を取り除いて、そして平和を回復する必要がある、それには事態を正確に把握し、日米の間のこれに対する意見を一致させておくことが必要である。私どもは、この条約全体が国連憲章というものを大前提として、日米ともにその安全機構というものができ上がること、また、世界平和の確保についての国連の活動というものをわれわれは支持していくという建前から申しまして、そういう事態が生じた場合において、それに関心の深い日米両国において協議をして、そして、これに対する脅威を取り除く措置を講じていくということが問題なのであります。アメリカからだけこういうことを提議するというようなことでもなければ、また、極東の平和と安全に関係している脅威を受けた場合に、日本の平和と安全に全然関係のない場合だけだというふうには、私どもは考えておらないわけであります。むしろ、極東の平和と安全が脅かされるということがあれば、日本の平和と安全にも非常に重大な関係があることであります。従って、日本から協議を求めることもありましょうし、それはどっちから求めるということは、一方的に考えるべきものじゃない、かように思っております。
  73. 大貫大八

    大貫委員 ところが、それは先ほども申し上げましたように、また、御答弁もあったように、第六条と第四条とは違うはずなんです。日本の安全には直接関係のない、日本の安全が直接脅威されないが、しかし、極東における国際の平和と安全が脅威された、こういう場合に協議をするというのが第四条なんです。そうすると、これは今、岸総理がおっしゃったように、日本アメリカが共同して脅威を取り除くというようなことは、日本の安全に直接関係のないようなことでアメリカ協議をして、その脅威を取り除くというようなことは、もはや、いかなる意味からしても、政府の言うように憲法第九条を拡張解釈しても、これは自衛権の範囲を出ているものだと思うのです。自衛権というものは、やはり日本が直接脅威を受けたときでなければ、自衛権を発動できないと思うのです。やはり脅威を取り除くということが自衛権の発動でしょう。
  74. 岸信介

    ○岸国務大臣 自衛権に関する限りは、第五条にはっきりとあるように、日本の施政下にある領土が武力攻撃を受けた場合でなければ発動できないのであります。また、憲法自衛権の解釈から申しまして、自衛権内容である実力行使というものはそういう厳格なものであって、それを一歩も出てはならないことはお説の通りであります。私ども、その点何らの異論も持っておりません。しかし、四条のこの「協議」というものは、これは日本を目当てとして、直接間接の侵略の危険がある、また、間接侵略が行なわれておるというような場合に、日本の安全が直接に脅威を受ける、それから極東の平和と安全が脅威を受けるという場合におきましては、日本が直接に受けているわけではございませんけれども、しかし、極東の平和と安全が他から脅かされておるというような場合におきましては、日本に近接している地域でございますし、日本極東の中核をなしておるわけでございますから、日本の平和と安全に無関係である、こう考えるわけにはいかぬと思います。従って、そういう事態が一日も早く取り除かれるということは、私は、日本として当然考えることであり、それについて日米が協議していくということは、何ら自衛権の発動ということとは関係ないことであります。憲法や、あるいは自衛権の問題には何ら触れるものではないのであります。
  75. 大貫大八

    大貫委員 自衛権の発動に関係ないということは、どうもおかしな議論だと思うのです。要するに、極東における平和と安全が脅威される、それを取り除くということは、やはり日本自衛権の発動になりませんか。そのことは自衛権の発動範囲になるでしょう。
  76. 岸信介

    ○岸国務大臣 自衛権の発動ということは、自衛権としての内容である実力行使によってその侵略の事実をなくする、排除するというのが、私は自衛権の行使の内容だと思います。われわれが平和を望み、平和を望むためのいろいろな手段を講ずることまで、これをすべて自衛権の発動だということは、私は適当でない、こう思います。
  77. 大貫大八

    大貫委員 私は、それでは今度は、この条約の性質についてお尋ねをいたします。藤山外務大臣は、当委員会において、愛知委員の質問に答えて、つまり、第五条の問題について、こういうことを答弁いたしております。「この第五条は、非常に特色のある条項だと思います。今回の安保条約一つの重要な点でございます。日本国の施政のもとにある領域ということに限定をしておりますので、いわゆる相互防衛条約ではございません。」この条約相互防衛条約でなければ何だとおっしゃるのですか。これは条約の本質論、性質をお尋ねします。
  78. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私が申し上げましたように、いわゆる相互防衛条約というのは、アメリカの領土がやられたときに、日本自衛隊が出てそれを助けるというような仕組みのものだと思います。日本の今回の条約というものは、日本の領土、施政下にあるところだけに条約地域が限定されておるのであります。これは非常に特色のある条約だとわれわれは思っております。この条約を何と呼ぶかということは、新しいこういう特殊の形の条約でありますから、何と申してよろしいのか、学説的には申し上げかねます。
  79. 大貫大八

    大貫委員 特殊な条約というのは、こういうことでしょう。日本アメリカと対等なだけの実力を持っておらない、そういうところから、こういう特殊な条約になっておると思う。ところが、日本は、なるほどアメリカの本国を防衛する義務は負っておりません。負っておらぬことは、あなたのおっしゃる通り特殊かもしらぬが、これは国力の相違だ。ところが、日本におけるアメリカの基地を攻撃された場合には、これは日本に何ら関係ない。関係ない場合もありましょう。たとえば、日本の基地の中に撃ち込まれたという場合、日本の人民や日本の国民に何ら関係ない。そういう場合でも、これは発動しなくてはならぬのでありますから、やはり防衛条約じゃないですか。
  80. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本にある米軍の基地がやられるということは、かねがね申しておりますように、領土、領空、領海を侵さなければやれぬ、それは日本に対する攻撃でございます。従って、当然日本としては自衛力を発動していくということに相なるわけでございます。
  81. 大貫大八

    大貫委員 ところが、日本にある米軍基地内には日本の行政権は及ばぬでしょう。施政権、要するに司法権が及ばぬでしょう。特別な地帯なんだ。アメリカが支配している領域なんだ。領土であっても、ほとんどアメリカに貸している土地なんだ。そういうところに攻撃を加えられる——もちろん、周辺の日本の国民に関係がある場合には、これは日本が攻撃されたということになるかもしらぬけれども、この基地内部だけが攻撃された、日本には何ら影響がなかった、日本の国民には影響は直接なかった、そういう場合にもアメリカと共同行動をとることになるのだから、これは相互防衛条約でしよう。
  82. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 貸与しております基地は、決して、いわゆる租借地ではございません。日本の司法、立法、行政の権限がございます。ただ、その一部を駐留軍がおります便宜上、法的に特殊な条件のもとに貸与しておるということはございます。しかしながら、いわゆる租借地とは全然違います。
  83. 大貫大八

    大貫委員 租借地とは違うかもしれませんが、実質は同じじゃないですか。実質は、一体日本のその基地内をわれわれは自由に通行できますか。基地内に入って、自由にわれわれが、たとえば、基地の内部をわが国土だからというて自由にすることはできないでしょう。自由にできないでしょう。そうすると、その基地内は、現に完全なアメリカの施政下にあるのですよ。施政下にあるでしょう。その施政下にある基地が攻撃を受けた場合に、日本はともに共同して立たなくちゃならぬのですから、その意味においては相互防衛じゃありませんか。
  84. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申し上げましたように、基地は決して租借地ではございません。従って、大貫委員の御意見とは、全然われわれは違った立場をとっております。なお、法律的に、法制局長官からはっきり御説明をいたさせます。
  85. 大貫大八

    大貫委員 私の質問の趣旨をあなたは了解されてない。何も抽象的に租借地だというようなことを私は言っておるのではない。ただ、現実の問題として、日本の権力が及ばぬじゃないですか。日本国民が、日本の国土でありながら自由に使用できないじゃないですか。基地内部に関しては、完全にアメリカの施政権が及んでおるじゃないですか。そうすれば、租借地とかなんとか、そういう観念じゃないのです。現実がそうじゃないか。そうすると、アメリカの支配下にある土地が攻撃をされるそれを日本に対する攻撃だとみなしてともに戦うというのは、相互防衛条約じゃないか、こういうのです。
  86. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の米軍に使用を許しております施設区域といいますものは、これは完全な日本の領土でございます。また、この施設区域の使用を米軍に許しておる関係で、これは米軍という外国軍隊がおります関係で、米軍に対する日本の法令の適用関係は、これは特殊な関係がございます。あるいは地位協定にいろいろ規定はございます。また、そのほか、軍隊というものの特殊性質から申しまして、軍隊に日本の法令がそのまま適用にならないことは、これは当然でございます。しかし、施設区域というものは、決して日本の行政権の範囲外にあるものではございません。これは、そこに入ることが日本人が普通できないと申しましても、これはもちろん多少事情は違いますが、日本人の所有地でありましても、他人は簡単にそこに入れない。所有地には入れないわけでございます。そういう意味で、米軍に使用を許しておりますから、米軍の都合上、そこの立ち入りがある程度制限されることは、これは当然のことでございます。しかし、それは米軍に対して、そこに行政権、施政権を許した、そういうものとは全然性質が違うわけでありまして、そこにあります土地は日本の土地でございます。日本の国有財産でございます。あるいは日本の私有財産でございます。そこに日本人も働いております。すべて租借地というような関係ではないわけでございまして、全く日本の施政権が及んでおる。ただ、軍隊というものの特殊性から、日本の法令の適用が軍隊に対してはある範囲において制限される、こういうものでございます。
  87. 大貫大八

    大貫委員 そんなこと言ったら、沖繩だって同じじゃありませんか。沖繩だって日本の領土でしょう。日本の領土で、潜在主権があるといっておる。しかしながら、今は、沖繩における施政権というものは、これは完全にアメリカに握られておる。ところが、日本におけるこの基地内部の施政権というか、基地内部の権利義務の関係というものは、沖繩ほどではないかもしらぬけれども、少なくとも、日本人が、日本の領土でありながら自由に使用のできないところなんです。しかも、単なる使用権だけではないですよ。ある一定の限度において、向こうの軍事裁判権も持っておるじゃないですか。その基地内におけるところの裁判権まで彼らは持っておる。治外法権がある。治外法権があるじゃないですか。笑いごとじゃないです。治外法権があるでしょう。そうすれば、日本の完全なる施政権が及ぶところじゃないでしょう。
  88. 林修三

    ○林(修)政府委員 沖繩は、御承知の通りに、立法、司法、行政の三権は米国が持っております。そういう意味において、今の日本施設区域とは全然違うわけでございます。日本施設区域につきまして裁判権が及ばないということはございません。これは米国軍隊あるいは米国の軍人、軍属に対する特殊性から、日本の刑事裁判権あるいは民事裁判権が及ばない点はございますが、それ自身の属地的な裁判権が及ばないということは全然ございません。
  89. 大貫大八

    大貫委員 ところが、日本の国土であれば、どこだって裁判権の完全なものが及ばなくちゃならぬ。とにかく、日本の施政権が制限されているでしょう。それは、要するに、アメリカの駐留軍隊によって、日本の行政権なり、あるいは司法権なりが制限されていることなんです。そうすれば、日本の支配権の及ばぬところに攻撃を受けた、そうすると、これは日本に対する攻撃とみなして、ともに軍事行動をとるということは、結局、相互防衛条約ということになるじゃないですか。
  90. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私が先ほど来申し上げておりますように、この条約というものは、いわゆる相互防衛条約ではございません。基地に関しましても、今、法制局長官が言われましたようにわれわれは解釈いたしておるのでございまして、そういう意味において、決して日本以外の土地というような意味に解すべきではございません。
  91. 大貫大八

    大貫委員 どうも岸総理も、軍事同盟じゃないのだ、こういうことを再々言っている。しかし、私は、今言うたような、日本の施政下にある領域といいながら、米軍基地のような全く日本の支配権の及ばぬところ、そういうところに攻撃を受けた場合に、共同して軍事行動をとらなければならぬ、こういうのでありますから——なるほど、これはいわゆる攻守同盟ではないでしょう。いわゆる従来の軍事同盟の内容をなす攻守同盟でないことは確かです。しかしながら、自衛の条約だと言うてみたところで、これはたての一面を言うているだけのことです。裏をひっくり返せば、軍事同盟という範疇に私は入ると思う。入るということは、今のように、これは幾ら言っても並行線でありますけれども、要するに、アメリカの支配権の及んでおる軍事基地が攻撃されたときに一緒に軍事行動をとるというのでありますから、これは軍事同盟だと私は思う。そうすると、これはやはりどうしても憲法に違反するということになりますが、これは岸総理、一つお答え願いたい。
  92. 岸信介

    ○岸国務大臣 先ほど来、基地の問題についての法律的な点について御質問があったようでありますが、これは政府側が答弁いたしておりますように、日本の領土でありまして、日本の統治権は一般的にここに及んでおるのであります。従って、日本の領土が現実武力攻撃をされた場合において、日本自衛隊が実力行使をするということは、何ら憲法違反ではないので、もしも、日本を出て何かやるとか、行動するとか、あるいは日本の領土外、領土でないところが武力攻撃をされたときに日本自衛隊が出るということであるならば、自衛というものの範囲を逸脱しておるということでありましょうが、日本の施政下にある領土が攻撃された場合におきまして自衛隊が実力行動をするということは、何ら憲法に違反するものではございません。
  93. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、暫時休憩をいたします。     午前十一時三十分休憩      ————◇—————     午後三時十八分開議
  94. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大貫大八君。
  95. 大貫大八

    大貫委員 第五条に「日本国の施政の下にある領域」という、この施政下というのは、一体どういうことをいうのでしょうか。これは米韓相互防衛条約によりますと、「行政的管理の下」と、こうあります。行政管理下という言葉を使っておる。この条約では施政下という。これは法律的な用語としてはどうも非常にあいまいなんですが、これは統治権というものと同じなんですか、違うのですか。統治下ということになるのですか。
  96. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 法律的な説明につきましては、条約局長からお願いします。
  97. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 「施政の下にある領域」というのは、事実上、施政のもとにあるかどうかという問題でございませんので、法律的に施政のもとにある領域、こういうふうに解しております。統治権のもとにあるかどうかということになりますと、まあ、統治権という概念の問題になります。従いまして、そのような概念の問題になりますので、施政のもとにある、すなわち、立法、司法、行政の施政のもとにあるという法律的観念として「施政の下にある領域」、こういうふうに考えております。
  98. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、米韓相互防衛条約の「行政的管理」、これとは違うのですか、同じなのですか。
  99. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 これは、やはりこの条約の「行政的管理」という言葉の概念の問題になるかと思います。すなわち、領土権とか領土、そういう観念を離れまして、一つの行政的な管理にある場合、たとえば、委任統治地域とかそういう場合は、やはり「行政的管理」という表現でそういうことを含ましめたものだ、こういうふうに考えております。
  100. 大貫大八

    大貫委員 そうしますと、施政下にある領域ということについて、行政権の一部が行なわれるような地域は一体どうなるのですか。かりにそういうものがあったとすれば、施政下にあると言えるのですか。
  101. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 施政という観念が、一部とか全部とか半分とかいう観念で考えられるかどうかということは非常に問題だと思います。ここでは一部というようなことは考えに入れておりません。
  102. 大貫大八

    大貫委員 現に施政権の一部が行なわれるような場合——条約上そういうのがあるでしょう。今ちょっとここにあれですが、たしか何か条約にあるはずです。そういうことは観念上あり得るはずですね。施政権の一部というか、行政権の一部が行なわれるような場合があるのです。そういう場合に、一体本条の施政下に入るかどうか、こういうことです。
  103. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 そのような場合をここでは予想いたしておりません。
  104. 大貫大八

    大貫委員 総理大臣にお尋ねしますが、岸総理は、この前の本委員会におきまして、わが党の竹谷源太郎君の質問に答えて、「施政下にあるということは、施政権というものの本質から申しまして、全面的施政権を持っている、こう解釈すべきものと思います。」こう述べております。つまり、施政下にあるというのは、全面的な施政権が行なわれるところだ、こういうふうに解釈しておられるようですが、そういたしますと、たとえば治外法権を有する地域、これは日本の領土内においても、全面的な施政権はもちろん行なわれませんね。治外法権を持っているようなところ、たとえば米国大使館内はどうなるのでしょうか。
  105. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 治外法権という法律的な用語になりますものでございますので、私からお答え申し上げます。  たとえば外国の大使、公使館でございますが、これは一般に治外法権というふうに呼ばれております。これはエクストラテリトリアリティ、領土の外ということでございます。しかし、これは昔の古い観念から引き続きまして、そのように治外法権というふうに呼ばれてきたわけでございまして、その地域でありましても、決して日本の領土外ではない、日本の施政のもとにある地域であるということは、現在すべてそのように了解されている次第でございます。
  106. 大貫大八

    大貫委員 施政下にあるというのは、領土の問題じゃないでしょう。領土は領土権でしょう。施政権というのはそうじゃないはずです。従って、治外法権を有する地域には施政権が及んでないんじゃないですか。岸総理が答弁されておるように、完全なる施政権というものは及んでないはずです。どうでしょう。
  107. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 大使館の領域というような場合に、治外法権と呼ばれます場合もございますし、不可侵権というふうな、いろいろな表現で呼ばれております。しかし、これはやはり日本の領土内にある地域でございますし、日本のいわゆる領土権と申しますか、統治権と申しますか、施政権と申しますか、いろいろな概念で呼ばれておりますが、そのもとにある地域であるということは、これは問題ないところだと考えております。
  108. 大貫大八

    大貫委員 あなたは、領土権というものと施政権というものをまるでごっちゃにしている。この施政権というのは、領土権の問題と違うでしょう。ここの第五条でいう施政権というのは、領土の問題ではなくして、要するに、わが国の施政下にあるというのは、何も領土の観念とは違うでしょう。たとえば、わが国の領土内にあっても、大使館の地域の中は、完全なる施政権が行なわれないじゃないですか。これはアメリカの大使館はアメリカの統治権が——その領事館、大使館内に限っては、アメリカの統治権が行なわれているはずなんです。この点どうなんです。
  109. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 たとえば、ただいま領土権云々を申し上げましたけれども、それは治外法権という言葉の由来でございます。由来は、エキストラテリトリアリティ、すなわち、領土の外にあるというふうに考える。すなわち、ああいう地域があたかも日本の領土外であるように観念されてきたのが、これは昔の観念でございます。しかし、現在に至りましては、そのような観念はもう全然払拭されまして、日本の施政のもとにある地域であるというように考えられております。ただ、外交官として大公使が、特定の特権、免除を持っておる。また、その地域内も、特定の、国際法で認められた特権、免除を持っているわけでございますが、しかし、一般原則としては、日本の施政のもとにある、こういうふうに一般的に考えられておる次第でございます。
  110. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、大使館内に日本の警察——たとえば犯罪の捜査をやる場合に、日本の警察権が自由に大使館の中へ入って捜査ができますか。できないでしょう。できないから、要するに、完全なる施政権が行なわれないでしょう。
  111. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それは大使館の不可侵権ということで、そういうふうな面におきまして保護されております。しかし、日本の犯罪が行なわれましたときは、当然われわれは大使の許諾を得て中に入って、許諾を得て、わが警察権と申しますか、権限を行使することができるわけでございます。もし、大使がその場合に拒否するとかいうことになりますと、これは外交上の問題になりますけれども、原則として、そういう場合には、大使がみずから逮捕するか、それとも、日本の警察官と申しますか、それを同意を得て中に入れまして、そして、それを逮捕することを許すか何かしなければならない、こういうことになります。
  112. 大貫大八

    大貫委員 どうもあなたの法律論はごまかしている。不可侵権の観念じゃないでしょう。それは要するに、この大使館なり大使館のその地域だけは、特別にその国の——たとえばアメリカ大使館であれば、アメリカの施政権というか、統治権が、その区域内に限って、人と物に対して及ぶのですね。そうでしょう。土地に対してはない。土地は日本の領土権があるのだから、土地に対しては別として、人や物に対してアメリカの統治権が及んでいるのは、これは特別な姿でしょう。どうです、施政下にあるとは言えないんじゃないですか。
  113. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それは、国際法上いろいろな特権、免除を持っておりますが、アメリカの、または外国の大使館が、その所属国の統治権がそこに及ぶというような考え方は、これはもう一般的には全然されておりません。これは国際的な考え方としては、現在においては行なわれてないところだと考えます。
  114. 大貫大八

    大貫委員 それじゃ、例をかえて、別な例を申し上げましょう。それじゃ、日本の領海内に来たアメリカの軍艦はどうする。アメリカの軍艦内はどうですか。これは日本の施政権は完全に及ばないでしょう。アメリカの統治権が軍艦の上には行なわれるでしょう。その場合はどうなんです。
  115. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その場合も、軍艦は軍艦の国際法上認められた特権、免除がありますから、その限度で、そのように除外されているわけでございます。しかし、日本の領海に入れば、やはり日本の施政のもとにあるというのが原則でありまして、それが軍艦や軍隊という関係上、国際法上ある程度の特権、免除が認められている、こういうことになりますので、その認められていることが、原則として先方の統治権がそこに施行されるのだというふうな考え方ではない、それは逆だと思います。原則は日本であり、例外的に免除が行なわれている。先方の統治権が原則であって、われわれがそこで例外的ななにができるという考え方は、まるで逆になるのだ、こういうふうに考えております。
  116. 大貫大八

    大貫委員 それはもちろん例外ですよ。日本の国土のうちですから、領土内におけるものですから、少なくとも、領土の範囲内においては、その国の統治権というものは全部に及ぶのが当然なんです。原則なんです。ところが例外として、たとえば外国の大使館、公使館の内部とか、あるいは領海内における軍艦の内部、これは普通の汽船とは違います。軍艦ですよ。軍艦の中に、日本の施政下にあるといったって、日本の施政権は現実に行なわれないじゃないですか。その点どうですか。
  117. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それは軍艦が入った場合、または大公使館の領域が外国の領域だということではないと私は考えております。すなわち、やはり日本内部の問題で、日本の施政のもとにある。そこがあたかも外国の領土と考えられて、そのまま外国のほかの領土と同じように、そこに外国の統治権が及ぶということでは決してない、こういうように考えております。
  118. 大貫大八

    大貫委員 それでは外国の統治権がそこに——言葉のあやのようですけれども、それでは外国の統治権がかりに及ばぬと、あなたの言う通りにしたとしても、岸総理が、この前竹谷委員に答えて、施政下というのは全面的な施政権を持っておる、そういうところである、こう解釈する、こう言っているのです。その意味においては、たとえば、わが国の領海内における米軍の軍艦には、岸総理の言う完全なる施政権は行なわれると思いますか。実際に行なわれないでしょう。日本の施政権が現実に行なわれないじゃないですか。
  119. 林修三

    ○林(修)政府委員 今、大貫委員の仰せでございますが、領海それ自身が、軍艦がいるために領海でなくなるというような問題ではないのでありまして、領海に対しては、もちろん、日本の施政権が全面的に及んでおります。そこに軍艦が今おれば、その軍艦の上は、軍艦の特権、免除から、そこにいろいろの不可侵権とか、特権というものがございまして、日本の施政権が全面的には及び得ない点がございますけれども現実にその特権、免除の結果として、反射的には及ばない、こういうことになるわけであります。しかし、そのために軍艦のいる領海が領海でなくなる、日本の施政権下の領域でなくなる、こういう問題ではないと思います。
  120. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、施政権が全面的に及ばないということは、今明確になったと思う。それはその通りなんです。  そこで総理大臣、どう思いますか。この前、竹谷委員には、施政下というのは全面的に施政権が及ぶところをいうのだ、こういうことをおっしゃっている。ところが、軍艦の上は全面的な施政権が及ばぬというのが、今の法制局長官の見解です。そうすると、領海内に入ったアメリカの軍艦が攻撃されたという場合に第五条が発動するのですか。施政下にある領域が攻撃されたということになるのですか、ならぬのですか、総理大臣にお尋ねします。
  121. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは先ほどから申しましたように、軍艦がそこにいようといまいと、その海のところが日本の領海であり、日本の領域下であることは間違いないわけであります。そういうところに対して攻撃があれば、まさに、これは日本の施政下にある領域に対する攻撃だ。その軍艦自身がいろいろな特権、免除を持っている結果として、日本の施政権の行使が、たとえば、向こうの許可を得なければ警察権が及び得ないとかいうことはございますけれども、それは軍艦の持つ特権からくることでございまして、その軍艦のいる海の下が日本の施政下の領域でなくなる、こういう問題ではございません。
  122. 大貫大八

    大貫委員 そんな三百的な言いのがれは、あなたはよされたらいい。つまり、軍艦の中には、全面的施政権が及ばないのだ、及ばないということをあなたは言っている。そうすると、その全面的な施政権の及ばない軍艦が、かりに攻撃されたという場合に、第五条による施政下にある領域が武力攻撃を受けたということにならぬじゃないか、こういうのです。
  123. 林修三

    ○林(修)政府委員 軍艦自身が日本の施政下の外にあるとは言えないわけであります。日本の領海にある限り、日本の施政下にある領海の中にあるわけであります。ただ、軍艦はいろいろ特権が国際法的に認められておる。そういう特権、免除の結果として、たとえば、警察官が直ちにそこに入って捜査ができないとか、そういうような問題はあるわけです。そういう意味において、普通の日本の私人に対するものと同じように日本の権力が及び得ない、それはもうおっしゃる通りであります。そのために、その軍艦のいるところが日本の施政下からはずれるという問題ではないと私は思います。
  124. 大貫大八

    大貫委員 ところが岸総理は、施政下というのは、全面的な施政権が及ぶところだ、こら答弁しておる。同様なことは、米国大使館内も同様だと思う。米国大使館内も、あなたは、やはり完全なる施政権が行なわれないところだと思うでしょう。これは制限されておるでしょう。
  125. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほどから条約局長お答えいたしましたように、軍艦といえども、あるいは大使館の区域といえども日本の施政下にある地域でございます。ただ、大使館の不可侵権あるいは大使その他の外交官の不可侵権、そういう問題から、あるいは軍艦の特権というところから、たとえば、先ほど仰せられたように、日本の法令がそのままに普通の日本人に対するように行なわれ得ないというような点はございます。しかし、それは、そういう不可侵権とか、特権からくる問題であります。その領域が日本の施政下でなくなるという問題ではない。日本の全面的な施政下にあることは間違いないことであります。
  126. 大貫大八

    大貫委員 そうすると、施政権というものは何ですか。もう一度明確にしてもらいたい。施政権というのはわからぬじゃないですか。特権からくる除外とか何とかおっしゃられるのですけれども、完全なる日本の行政権なり司法権なりが制限されるじゃないですか。第一、入れないでしょう。施政下にあるということは、何を言うのですか。施政権の行なわれるところでしょう。完全なる施政権の行なわれるところが施政下にある領域でしょう。そうじゃないのですか。
  127. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 先ほどから申し上げておるところかと思いますが、完全な施政が法律上行なわれているわけであります。それが、国際法上または国際関係約束によりまして制限されておる。特定の問題については、たとえば、税金の免除でありますとか、不可侵権であるとか、これは国際慣行によって免除されているわけであります。そういうように免除されておるからといって、その地域が、先ほど申し上げましたように外国であるというふうには、だれも観念していないわけでありまして、やはり日本の施政のもとにある区域である、こういうように考えております。
  128. 大貫大八

    大貫委員 私は、何も外国だなんて言っておるわけじゃない。日本の領土内にあるのですから、そんなことは明白なことだ。ただ、いろいろ外交上の、たとえば慣例とか、特権とか、いろいろあるでしょうが、いずれにせよ、現実日本の施政権というものは制限されておることは事実でしょう。完全な施政権が行なわれないでしょう。制限されておるでしょう。そうすると、岸総理大臣がこの前答弁された、完全なる施政権が行なわれておる地域じゃないじゃないですか。どうです。
  129. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、どうも何回もお言葉を返すようになりますけれども、先ほどから申し上げましたように、大使館の区域あるいは軍艦の区域といえども日本の施政権の及ぶ区域であります。ただ、特権を持ち、不可侵権を持つ関係で、たとえば、普通の日本の私人に対するような捜査ができない、あるいはそれを逮捕するについてはいろいろな許可が要るという問題があります。そういう点は不可侵権、特権等からくるわけであります。それがあるから、その領域に日本の施政権が全面的に行なわれてないということにはならないと私は思います。
  130. 大貫大八

    大貫委員 じゃ、一体施政権というのは何を言うのですか。これは一つ総理大臣から御答弁を……。
  131. 林修三

    ○林(修)政府委員 この点は、先ほど条約局長お答えいたしましたように、立法、司法、行政の権限が行なわれる地域、かように考えます。
  132. 大貫大八

    大貫委員 施政権は立法、司法、行政権だというのですが、そうしますと、どうですか、米国大使館内に日本の立法権は及ばないでしょう。行政権は及ばないでしょう、及びますか。司法権は及ばぬでしょう。裁判はできないじゃないですか。軍艦の上にあるアメリカの兵隊を裁判することはできないでしょう。施政権は及ばぬじゃないですか。
  133. 林修三

    ○林(修)政府委員 従って、先ほどから申し上げております通りに、軍艦の特権、あるいは外交官、あるいは在外公館の特権、不可侵権、こういう問題からくるわけでございまして、そういう特権のある軍艦を、許可をして入港を認めている、あるいはそういう外国と大使、公使の交換をしている、こういうのは、まさに、日本の施政権に基づいてやっておるわけでございます。そういうことに基づいて入ってきたものに対して、国際法上にいろいろの特権がある。その特権がある結果、普通の私人に対すと同じような日本の行政権が及び得ない、あるいは司法権が及び得ない点があります。ありますけれども、これは、それなるがゆえに、その領域が日本の施政権からはずれる、こういう問題ではないと私は思います。
  134. 大貫大八

    大貫委員 だから、外交上の特権なり不可侵権なり、そういうことによって日本の完全なる施政権が制限されるのでしょう。行政権も制限される。特権だ特権だという裏を返せば、これは日本の行政権の制限になるわけだ。そうでしょう。司法権に対しても制限なんだ。制限されるから司法権が及ばない、行政権が及ばない。それが当然じゃないですか。そうすると、これは完全なる施政権が行なわれている領域にはならぬじゃないですか。
  135. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは先ほどから申し上げているところで私は尽きると思いますが、総理が仰せられた、いわゆる施政権が全面的に及ぶ区域、そういう意味も、そういう大使館の区域とか、あるいは軍艦のものを除く趣旨でおっしゃったわけではないと私は思います。そういう日本の施政権が及ぶべき区域、こういうことについて、特権がある結果、実際の権限については、これの行使は普通の日本人に対すると同じにはできない。こういうことがあるにしても、そういうところは、いわゆる施政権の全面的に及び得る区域、こう考えておっしゃったものと私は心得ております。
  136. 大貫大八

    大貫委員 幾ら繰り返しても、どうもあなたは私の言うことがわからぬようだ。故意にわからぬ答弁をしている。それでは、日本の国内にある米軍の基地はどうですか。米軍基地は、完全なる施政権が、これも行なわれていないでしょう。
  137. 林修三

    ○林(修)政府委員 これについても、もちろん行なわれております。施設区域として、向こうに、日本日本の権限に基づいて、あるいは条約に基づいて与えてあるわけです。使用を認めたわけであります。これに対しても、もちろん日本の施政権は及んでいるわけであります。ただ、そこにいる外国軍隊あるいは外国の軍人、そういうものの特殊性から、いろいろの特権があるわけでございます。これは従来の行政協定あるいは地位協定に必ずしも明文がなくても、いわゆる軍隊の特権、こういうものがあるわけでございまして、日本の法令が、そういう意味において軍隊とか軍人とかにそのまま及び得ない点はございます。しかし、施設区域日本の施政権からはずれる、こういう問題ではないと私は思います。
  138. 大貫大八

    大貫委員 何べん言っても、あなたは本筋に触れないのだけれども、いずれにしろ、日本の施政権、あなたの言う立法権も司法権も行政権も、たとえば、米軍基地内にはそのまますぐ適用されないでしょう。及ばないでしょう。及ばないということは、日本の施政権を与えたにしろ、何にしろ、とにかく制限されておるのでしょう。完全なる施政権が及ばぬ地域でしょう。それは及ばないでしょう。どうなんです。その場合においては、第五条の施政下にある領域とは言えないじゃないですか。
  139. 林修三

    ○林(修)政府委員 その施設区域に対して、地域的に日本の行政権、司法権、立法権が制限されているわけではございません。これは軍隊とか軍人とか、そういうものに着眼してのいろいろの特権はございます。それからまた、そういう意味において、施設区域について、軍隊がおりますから、たとえば行政協定十七条で、米国の警察権もそこに行なわれますけれども、しかし、そういうことだからといいまして、施設区域に対して日本の立法権が及ばない、司法権が及ばない、あるいは行政権が及ばないという問題ではないわけであります。そこにいる日本人等に対して完全に日本の司法権は及んでおるわけでありまして、これはその軍隊なり軍人、軍属の、いわゆる国際法的な、あるいは行政協定に基づきます特権からいろいろ制約はあるわけでありますが、これはそういう特権からくるものであります。人的な特権でございまして、地域的に、それが日本の施政権の範囲外にある地域、こういうことではないと私は思います。
  140. 大貫大八

    大貫委員 私は、何も施政権の範囲外にあるなんて言っていやしないでしょう。完全なる施政権が及ばないのじゃないかということを繰り返しているのですよ。完全なる施政権が及ばないでしょう。施政権の中で及ぶものもあるでしょう、しかし、完全には及ばぬじゃないですか。それなら、たとえば日本人があの基地内を自由に歩けますか。日本の警察が自由にあの中で犯罪捜査ができますか。税金をかけることができますか。一たびあの基地内に入れば、アメリカの支配に服さなくてはならぬのが現状でしょう。そうしますと、少なくとも、基地の内部における完全なる日本の施政権というものは行なわれないというのが現状ではないですか。これは岸総理大臣、あなたはこの見解を、この前竹谷委員に対して、そう答えておるのだから、一応お答え願います。
  141. 岸信介

    ○岸国務大臣 この前の竹谷委員の御質問に対して私がお答えを申し上げましたことは、施政権の一部が——たしか、あれは戸籍の問題について、沖繩の、もしも戸籍に関する権利がこっちに渡されたらどうなんだ、そうすると、沖繩は全部施政下にある領土、領域として何がいくのか、こういう御質問に私は答えたつもりでございます。そうではなしに、やはり施政下にある領土、領域ということは、全面的な施政権ということを考えておる。もちろん、先ほどから御議論がありますように、ある地域に対して、あるいは外交官であるとか、あるいは軍隊であるとかいうようなことで特権を与えておる。全面的な施政権は及んでいるけれども、その一部について特権を与えておるというような場合におきましても、私は、やはり観念としては、全面的な施政下にあって、そうして、特殊のものであるから、こっちからそういう特権が与えられておる。そういう結果、実際の施政権の行使について制約を受けることがありますけれども、それによって日本の一般的な施政権下にある領域ということと矛盾するものでもなければ、それを排除するものでもないというのが私の考え方でございます。
  142. 大貫大八

    大貫委員 それは非常におかしい話だと思う。これは、いずれにしろ、日本の施政権というものは制限されている。だから、完全なる施政権が行なわれる領域だと、もし総理のように御解釈になるならば、米軍基地は施政下にあるとは言えないのじゃないかと私は思う。しかし、どうも、どこまでいっても同じことですから、進めます。  そこで、藤山外務大臣は、午前中に、米軍基地は租借地じゃない、こういうことをおっしゃっておる。一体、租借地というのは、観念としてどういうことを藤山外務大臣はお考えになっておるのですか。
  143. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 租借地の法律的解釈につきましては、条約局長から申し上げます。
  144. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 昔ございましたように、関東州の租借地であるとか、ああいう地域であります。五十年だとか、九十九年だとか、長期間外国に貸し付けまして、そしてその地域は、いわばほとんど擬装された割譲地域というふうにもいわれておるわけでございますが、そこの施政権その他は、現実には借りた国が行ない、貸した国は停止になっておる。こういう状況でございます。
  145. 大貫大八

    大貫委員 あなたの解釈は、法律を勉強なさったらいいですぞ。租借地という観念の中には、期間の問題は条件として入っておりませんよ。租借地というのは、要するに、領土権は持っておるけれども、いわゆる貸した国の統治権というか、施政権が及ぶ地域、これが租借地でしょう。期間が五十年とか六十年、百年、そんなのは観念の中には入らぬはずなんです。租借地というのは、要するに、租貸国が租貸国の領土権は保有しておるけれども、その租借地内には、その国の統治権が及ばないというのが租借地じゃないでしょうか、どうですか。
  146. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 その場合、期間が五年とか数年ということは、そのような構成でございますからないのでありまして、九十何年だとか、百年だとか、ほとんど半ば無期限、永久にそういうふうな状態が現出されるのが通常でございます。
  147. 大貫大八

    大貫委員 通常だといっても、法律解釈としては、まるでなっちゃいません。すべてあなたの言う租借地というのは、通常、法律的には政治的租借地といわれておるのが、今お答えになったものです。ところが、政治的じゃなく、非政治的租借地、かりに法律学者はそう言っております。そう言っておるのもあるし、戦略的租借地と言っておるのもあります。要するに、軍事目的のために基地を設定するという場合には、租借地の観念で法律学者は少なくともこれを解釈しておるのですが、どうですか。
  148. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 やはり租借地になりますと、ただいま申し上げましたように、非常な長期間の問題でありますとか、それから領土権は御指摘の通りでございまして、貸した国が持っておりますが、借りた国が、全面的な統治権と申しますか、施政権と申しますか、それをそういう期間内に行なっている、こういうのが、一般の租借地の特徴と申しますか、原則的な点であろうと考えます。
  149. 大貫大八

    大貫委員 ところが、法律学者が普通定義しているのは、——あなたの言うのは政治的租借地なんです。そうでない租借地があるはずです。つまり、領土権、統治権——もちろん領土権はある、租貸国が領土権を持っておる、しかし、統治権も租借国に委譲しない、当然租貸国が統治権まで持っておる、ただ一時使用を許しておるような、いわゆる基地ですね、こういう軍事基地のようなのは、その観念に入るというのが、今日法律学者の通説です。つまり、非政治的租借地、こう呼んでいる学者もあります、あるいは戦略的租借地と言っておる人もあります。いずれにしろ、軍隊なら軍隊の目的で一時使用を許すという場合には、租貸国の統治権は及ぶけれども、制限される、つまり、租借国に使用を許すその限度において、租貸国の統治権が制限される、そういうのを非政治的租借地、戦略的租借地と言っておる。どうですか、そういう観念があるでしょう。
  150. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 それは、そういうふうな学者のいろいろな観念の分類といたしまして、そういうことはあるいは言われることがあるかと考えます。ただ、今御指摘のように、一時使用を許すという場合に、貸した方の統治権が施行されるけれども、特定の場合に制限されているということでございます。そういうことは、ただいま申し上げましたように、一時使用を許す使用の必要上、協定により、あるいは国際慣習、国際法によって特定の特権とか免除が与えられている。しかし、貸した方の統治権と申しますか、それが原則的には及ぶのである、こういう場合は、租借地とは違う、こういうふうに考えます。
  151. 大貫大八

    大貫委員 いずれにしても、日本の国土内にある米軍基地というのは、これは日本の完全なる施政権は行なわれない地域のはずなんです。これはどうなんですか。私はそう思う。政府はやっぱり完全なる施政権が行なわれる、こう解釈なさるのですか。
  152. 岸信介

    ○岸国務大臣 言葉の問題のように思います。いわゆる完全なる施政権が行なわれておるかどうか、一切の施政権の内容が、何ら制限を受けずに、特権も与えずに完全に行なわれておるというような意味において施政下にある領域ということを言っているわけではございませんで、一般的に施政権が全面的に及ぶ地域、こういうことを言っている。施政権と考えられるところの、ごく一部のものがかりに沖繩において回復されましても、この施政下にある領域ということには決してならないわけであります。今おあげになっているようないろんな事例の地域におきまして、今、大貫委員お話のように、完全な、一切他の地域と同じように、日本の施政権が少しも制限をされずに行なわれているかというと、あるいは大使館の館内であるとか、あるいは先ほどからあがっております基地の中であるとか、あるいはまた、領海内にある軍艦の中に、他の、完全にわれわれの施政権が行なわれておる地域と同じようにすべての施政権が施行できるかといえば、それはできないことは御指摘の通りであります。しかし、それだからといって、それでは日本の施政権を一般的に持っておらない地域である、その地域においては、この外国がこれにかわって施政権を持っている地域なり、あるいは区域であるというふうに解釈すべきものではない。いろんな慣例や国際法の取り扱いその他のことから、そういうふうな特権を与えられておる。その特権を与えられておる結果として、事実上、一般的に持っている施政権の行使が制限を受けているのだ、こういうふうに私どもは解釈いたしております。
  153. 大貫大八

    大貫委員 それじゃ、質問をかえて、竹島は一体どうでしょうか。竹島は日本の施政下にある領域でしょうか、外務大臣。
  154. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 竹島は日本の施政下にある領域でございます。
  155. 大貫大八

    大貫委員 ところが、現実には、今韓国が支配しているのじゃないですか。
  156. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現実には、不法に占拠をされておるのが竹島の現状でございます。
  157. 大貫大八

    大貫委員 私もそう思う。不法に占拠していると思うが、しかし、韓国政府はおそらくどうでしょうか。韓国政府は、不法に占有しているとは決して彼らは言うてない。というのは、要するに、竹島問題というのは、占領当時においてマッカーサーの地図の中に竹島が載っていなかったのでしょう。そこで韓国は、これは韓国の領土だという難くせをつけるに至ったのじゃないですか。沿革的に、歴史的に見ればそうなんじゃないですか。韓国の主張はそういうところにあるのでしょう。
  158. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本が歴史的に竹島を領有いたしておりますことは、これはもう当然のことでございまして、日本の歴史、過去の事実から見まして、疑う余地はないわけでございます。従って、われわれ日本人としては、当然これは日本の施政下にある、こう存じておるわけでございます。
  159. 大貫大八

    大貫委員 われわれは、その通りでよろしい。われわれは、日本人として当然竹島はわが国の領土だと思っている。ところが、現に、韓国政府は、不法占有かどうか知らぬが、占有している。そうして韓国自身は、決して不法占有だと言うてないでしょう。正当なる領土だと彼らは主張しているんじゃないですか、どうですか。
  160. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 韓国がいかようにいいましょうとも、われわれとしては、今申し上げたところが正しいと思っております。
  161. 大貫大八

    大貫委員 米韓相互防衛条約の第三条の「それぞれの行政的管理の下にある領域」という中に、竹島は入っているんじゃないですか、どうです。
  162. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれの立場からいたしまして、そういう竹島のようなものが入っているとは考えられないわけでございます。またアメリカも、今回の場合において、竹島が米韓条約の発動の対象地域になるとは了承いたしておりません。
  163. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、受田新吉君より関連質疑の申し出がありますので、これを許します。受田新吉君。
  164. 受田新吉

    ○受田委員 外務大臣のただいまの御答弁に関連して、お尋ねをしたいのでありますが、竹島が、米韓条約における大韓民国の施政下でないということが、アメリカで保証されている何らかの文書があれば、お示しを願いたいのです。
  165. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 特段に文書はございません。しかしながら、われわれはアメリカに対して、竹島の問題につきましては、過去においても不法に占拠された事実を述べております。今日まで、たとえば国際司法裁判所に提訴するような場合におきましても、これらの事実をアメリカに十分話をいたしておるのであります。その過去におきますずっと歴史的な話し合いの上に立ちまして、われわれは今日アメリカに対して、そういう日本の施政下にある領域ということを主張しておるわけでございます。同時に、しかしこれは現に国際紛争になっておりますから、従って、米韓条約の適用地域にはならないのでございます。
  166. 受田新吉

    ○受田委員 国際紛争の対象になっている地域であるという意味においては、そういう理論からいうならば、日本の場合にも、これを施政下に入れることは間違いではないですか。
  167. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 歴史的に見まして、竹島は日本の固有の領土でございますし、日本がそうしたことを主張いたしますことは一向差しつかえないことでありまして、当然われわれは入れるべきだと考えております。
  168. 受田新吉

    ○受田委員 大韓民国と米国との相互援助条約に、韓国の施政下にあると韓国自身が提唱して、これを容認して、米韓条約が形の上で結ばれておるとあなたは御判断ではありませんか。
  169. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 米韓条約において、行政管理下という言葉が使われておるわけでございますが、この点につきましては、ただいま申し上げましたように、竹島についてはわれわれは歴史的な主張をいたしておるのでありまして、この問題は、現在韓国と日本との間の国際紛争の形をとっております。それで、米韓条約におきます行政管理下というのは、御承知の通り、韓国が二つの政府を持っておる、そういう意味におきまして、韓国の持っております行政管理の地域という意味で、これが表現されておるのでありまして、特に竹島を対象にいたしたものではございません。
  170. 受田新吉

    ○受田委員 韓国は竹島を除くという形で米韓相互援助条約が結ばれておるとはわれわれは想定しておりません。従って、韓国は竹島を領有する地域だとはっきり言明をし、日本はまた竹島を固有の領土だと主張して、すなわち、両国ともこの地域を自国の領土だと主張した形で、紛争地域として、米国が双方との間で条約締結しようとしておるのではないですか。そういう形の解釈ではないですか。
  171. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん紛争地域でございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、竹島が日本の固有の領土であるということにつきましては、歴史的な事実からいって、われわれは証明することができます。また、過去におきます紛争の際の取り扱いにおきましても、アメリカ側とも十分歴史的に話し合いをいたしておるのでございますから、その点についていささかも間違いはないと私は存じております。
  172. 受田新吉

    ○受田委員 その話し合いは、韓国政府と米国政府との間において了解事項になっておりますか、いかがですか。
  173. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 韓国政府と米国政府の間の了解事項になっているかいないかは存じておりません。しかしながら、少なくも米韓条約の発動の地域とは考えられておりません。
  174. 受田新吉

    ○受田委員 あなたのお説によれば、米韓条約の掲げる韓国の施政下に竹島は入っていない、かように了解してよろしゅうございますか、確認をしておきます。
  175. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 国際紛争になっておりますから、アメリカは、この問題について米韓条約の対象とはいたしておらぬということだけは申し上げられます。
  176. 受田新吉

    ○受田委員 これに関係してあなたに、先般本委員会でも、また参議院の委員会でも、あなた御自身及び岸さんから御答弁になった中に、竹島を不法占拠しているような事態が再び繰り返される場合は、日本及びアメリカの共同防衛義務の発動の対象となると言われたことは、再確認さしていただいてよろしゅうございますか。
  177. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 将来、竹島以外の日本の施政下にある島にああいう事態が起こりましたときには、不法なる侵略でございます。従って、ただいま申し上げておる通りでございます。
  178. 受田新吉

    ○受田委員 竹島以外ですか。竹島のことをお尋ねしたときに、竹島に再びこういう事態が起こったらという意味の御発言であったと私は了解しております。
  179. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 竹島は、すでに現在八年間にわたる国際紛争になっておりまして、日本もこれを司法裁判所等に提訴いたすような申し出をしたこともございます。従って、国際紛争というものでありますから、できるだけ平和的に解釈するのが望ましいことであり、またしなければならぬことでございます。それを第三者の判断に待つか、あるいは国連等の機関によって判断するかは別といたしまして、そういう紛争の平和的解決——先般申し上げましたのは、竹島に起こったと同じようなことが他の場合に起こった場合には、やはり第五条の適用が起こり得る事件であるということを申し上げたのでございます。
  180. 受田新吉

    ○受田委員 私は、そのお答えは少しわれわれの質問からそれていると思うのです。竹島を現在不法占拠している人々が、一応韓国へ引き返した、その後において再びこれを不法侵略するというような場合を、あなたが示しておられるものかと思ったのでございますが、これはいかがですか。
  181. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん、今竹島を占拠している韓国が一ぺんすっかり引き下がってしまいまして、新しくまた竹島にやってくるということでありますれば、引き下がったこと自体は、国際紛争が解決したことでございます。そうして今度新しい事態として同じことが起これば、当然われわれは不当な侵略として、そのときに考えざるを得ないのでございます。
  182. 受田新吉

    ○受田委員 そうすれば、竹島の場合も含むわけですね。そうしてその場合と、竹島にもう一つ考えられる場合は、現在の不法占拠している人々から、こちらから漁船とかあるいは調査などに行ったときに、不法の攻撃を受けるという場合、これはいかなることになりますか。
  183. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その場合に、正当防衛をやりますことは、その人たちの当然なすべきことであろうと思うのでありまして、そういう意味における行動でございます。われわれは、あくまでも八年間の経緯でもって、この紛争を平和的に解決するということをいたしておるのでございますから、そういう意味においてわれわれは今考えておるということを先ほど来申し上げておるわけでございます。
  184. 受田新吉

    ○受田委員 この問題は、あらためてまたお尋ねすることにして、御検討を願っておく課題に残しておきます。
  185. 大貫大八

    大貫委員 沖繩の問題でお尋ねいたします。前回、わが党の竹谷委員から、沖繩の問題については、岸総理にいろいろお尋ねをいたしました。沖繩については、領土権は日本は放棄してない、潜在主権がある、こういうことは間違いない事実だと思うのです。そこで、アメリカの施政下に現在ある、こういうのが沖繩の現状だと思うのですが、かりにアメリカが施政権を一方的に日本に返還するというような事態の起こった場合には、これはアメリカの一方的意思表示で、日本の施政権は完全に回復することになるのでしょうね。これを総理大臣にお尋ねいたします。
  186. 岸信介

    ○岸国務大臣 観念としては、私は、アメリカが施政権を放棄すれば、当然日本に復帰するものだと考えます。ただ、奄美大島等の実例を見ましても、いろいろな処理の問題がありますから、おそらく協定か何かによってこれが返還されるという形をとるだろうと思いますが、観念としては、アメリカが放棄すれば、当然日本に復帰するものと私は考えます。
  187. 大貫大八

    大貫委員 そこに、私は、この第五条というのは、おそるべき内容を持っておると思う。現在日本の施政下にある領域に対して武力攻撃を受けた場合に、第五条が発動されるわけですが、かりにアメリカ日本を沖繩の紛争にまで介入させようとすれば、沖繩に危機が到来した場合に、沖繩における施政権を放棄するという通告だけで、自動的に沖繩が日本の施政下に入るじゃありませんか。どうなります。そうすると、沖繩に対して武力攻撃を受けた場合には、当然この五条によって米軍と行動をともにしなければならなくなると思いますが、その点間違いないでしょうね。
  188. 岸信介

    ○岸国務大臣 今お話しのように、私どもは、沖繩における施政権を一日も早く日本に返してもらいたいということをアメリカに要求もしておりますし、それがわれわれ日本国民の念願であると思います。従って、放棄して、これが日本に復帰するということであるならば、これはわれわれの完全なる日本として、また日本人の一切のことに責任を持つのが、日本国の当然のことであると私は思います。
  189. 大貫大八

    大貫委員 むろん当然のことです。当然のことですが、非常にあぶない事態になって、沖繩を中心として、極東の問題について非常にあぶなくなる。要するに、日本の安全には関係なく、たとえば沖繩を中心として非常に危険な状態が出てきた。その場合に、日本をして戦争に参加させようとすれば、そういう危険な状態になってから、アメリカが世界に向かって沖繩の施政権を放棄したということになると、自動的にそれが日本の施政下に入ることになって、そこで沖繩を中心としてやはり戦争に巻き込まれるという結果になると思うのです。これは大へんなことになると思うのですが、どうですか。
  190. 岸信介

    ○岸国務大臣 さっきもお答え申し上げました通り、沖繩における施政権を放棄すれば、完全な日本のものになるわけであります。そうでなくても、われわれは、あそこにいる人々は日本人だという同胞の意識でおるわけであります。ただ、施政権を持たないから、かりに沖繩が武力攻撃を受けても、これは米軍によってその安全とそこの秩序、治安を守ってもらう以外はないのであります。しかし、これを米軍が放棄したからといって、それではわれわれも戦争に引きずられる危険があるから、そこを何もしない、そうして米軍も、それに対して施政権を放棄した以上はしない、われわれもそれを見殺しにするなんていうことは、これは私は民族としてとうていできないことだと思います。(拍手)
  191. 大貫大八

    大貫委員 自民党の諸君は手ばたきをされたが、私は、平和のうちに沖繩の施政権を日本に返還するというのは、問題ないのです。ところが、たとえば米華条約を考えましょう。これは日本の安全には何の関係もないという米華条約、その米華条約の発動に基づいて、たとえば金門、馬祖に非常な紛糾が起き、沖繩の基地からアメリカ軍が中国本土を攻撃した場合、そうすると、中国から必ず沖繩は報復攻撃を受けるでしょう。その場合に、アメリカ日本をして守らせようとすれば、日本の安全には関係ないけれども、施政権を放棄したと言うて日本戦争に引ずり込めるという、そういうことをおそれておるのです。そういうことはあるでしょう。どうです。この点からいけば、そうなるでしょう。
  192. 岸信介

    ○岸国務大臣 私は、実際問題として、そういうことがあり得るとは実は思いません。観念の問題であって、そんなことがあり得るとは実は思いません。むしろわれわれとしては、もしもそういうことがあった場合において、日本国政府として、沖繩の平和と安全のためには、国をあげてこれを防衛するということを言うことが、私ども民族の確信であると思います。
  193. 大貫大八

    大貫委員 それだから、私は問題だと思う。そこで、そういうことはあり得ないと言うが、現にあったじゃないですか。一九五八年、あの金門、馬祖向島をめぐって、非常な戦争の危機が到来しておったわけです。幸いにして戦争にならなかったからよろしいけれども、あのようなことが再び起こらないとは、何の保証もないでしょう。そうしますと、結局今申し上げましたように、この米華条約の発動として、アメリカ日本の安全に何の関係もなく、中国と戦争を開いた、中国から攻撃を受ける、苦しまぎれに、そういう事態になってから日本に防衛させる。そんなことはそれこそ玉砕ですよ。ちょうどあの大東亜戦争の玉砕と同じだ。そういう役割を再び日本国民にさせるという、そういう危険を、この第五条は含んでおると私は思う。つまり、そういう苦しくなった場合に、施政権をいきなり放棄する、日本が自動的に施政権を回復する、そして日本が出動してそれを守らなくてはならぬ、そういう結果になるでしょう、どうです。
  194. 岸信介

    ○岸国務大臣 米華あるいは米韓条約等の条約から見ますと、施政権を日本に返しますれば、これらの条約地域からは除かれるわけであります。アメリカが何らの権限を持たぬ地域でありますから、完全に日本の国として、従って、いわゆる米韓、米華等の条約からこの沖繩を中心に連鎖作用が起こってくるということは、向こうの条約から除かれるわけですから、これはあり得ないことであります。今お話しのような事態が起きた場合に——これは質問者と答弁する人が逆なことを言ってもいけないでしょうが、しかし、大貫委員は、そういうときにどうすればいいというお考えで御質問になったのか。私どもがさっきから明瞭に申し上げておることは、そういう場合においては、日本政府が、日本国が、沖繩の安全と平和を守るために全力を尽くす、これはわれわれの当然の義務であるということを申し上げておるのでありまして、それが大へんだから、それはやっちゃいかぬというような御議論のようでございますが、それは私どもが沖繩をそういう場合に見捨てるというような結果になるのであって、われわれとしては、とうていそういう考えになり得ない。もちろん、沖繩の施政権を返してもらうのは、なるべく平和的な状態において返してもらうことがわれわれは望ましい。しかしながら、そういう場合に、危険であるから、なにの方はわれわれは施政権を引き受けない、われわれは知らないのだ、そんな不人情なことはとうていできるものじゃないと私は思います。
  195. 大貫大八

    大貫委員 それは岸総理は大へんなことを言っておるのですが、引き受けないとかなんとかいうのじゃないのですよ。日本の当然の領土ですから、一日も早く沖繩の施政権を回復するという熱意において、われわれも変わるものじゃない。ないけれども、いよいよあぶなくなって、アメリカ自身もほんとうにどうにもならなくなった場合に、日本を引き合いに出して玉砕をさせられるような事態になるのじゃないか。そういう場合に一体どう考えるか。それは沖繩を守るために、日本が焦土になってしまうかもしれない。日本の一億近い国民が、これによって戦争に巻き込まれて、焦土になってしまうかもしれない。全滅してしまうかもしれない。そういう事態を憂えるから、私はお尋ねしておるのです。
  196. 岸信介

    ○岸国務大臣 どういう事態でありましょうとも、かりに平和なうちに沖繩を返されて、そうして沖繩が攻撃された場合と同じように、私どもは、沖繩の運命については強い民族的な関心を持っておりまして、いかなる場合においても、われわれは、沖繩が完全に復帰する——それが平和な時代に返してもらうことが一番望ましいことは、言うを待ちません。しかし、そういう危険な場合におきましても、われわれは施政権を返してもらって、完全な日本国として、日本自身がこれを防衛するということは、私は当然だと思います。
  197. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、堤ツルヨ君から関連質問の申し出がありますから、これを許します。堤ツルヨ君。
  198. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、総理にもう一つよく聞かしていただきたいと思いますし、それから聞いていらっしゃる自民党の議員の中には誤解があるようでありますから、わが党の思想も織り込みながら、お伺いしたいと思います。(「よけいなことを言うな」と呼び、その他発言する者あり)それならば、黙って聞いていらっしゃって、今度質問のときに、自民党の沖繩問題に対する見解を聞かせていただいたらいいわけでございますから、そういうふうに御了承いただきます。  そこで、私たちは、今大貫先生が言われたように、いざこざの最中にアメリカが施政権を放棄することは、絶対にあり得ないとは言えないことであって、あった場合を考えておかなければならぬ。そのあった場合に、自動的に日本の施政下になったものと領土であるということになりますと、これは何も沖繩の人を見捨てて、日本の領土を捨てておいて、これの防衛に当ってはいけないとは私たちは言っておらない。これは当然やらなければならぬ。自民党の天下であろうと何党の天下であろうと、やらなければならぬことには、総理の御答弁と少しも変わらない。よろしゅうございますか。少しも変わらない。ところが、これはやらなければならぬのだけれども、米華の問題でなしに、日本の本土の安全のために、沖繩をむしろ助けるというよりも、私たちが防衛しなければならぬ場合が起こってくる。こういうことに自動的になると思うのです。そうしたときに、私たちはアメリカとの安全保障条約に従って、事前協議の対象になるか何か知りませんけれども、共同防衛を沖繩に対してやらなければならぬという現実が生まれてきますが、それをどうお考えになりますか。
  199. 岸信介

    ○岸国務大臣 それは施政権を放棄しましても、アメリカはこの日米安保条約によりまして、今度は日本の施政下にある領土になる、それが武力攻撃されるわけでありますから、その施政権を放棄したことによって、アメリカが防衛の第五条の義務を免れるという問題じゃございません。これはアメリカがやはり義務を負わなければならないことは当然でございます。
  200. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 よくわかるのです。どちらの場合の施政下にあったとしても、アメリカ日本が共同防衛をしなければならぬ問題です。しかし、これは今の条約の場合には、日本の施政下に入らないという見解のもとに、たとえば内乱の場合とか、日本のあらゆる範囲を考えるときに、沖繩というものを除外して考えていらっしゃるでしょう。ところが、今度政治的に沖繩の置かれる場所が変わってくるわけです。そうでしょう。そういう変更のあったときには、これは今結ぶ安保条約の現状における沖繩と、アメリカが施政権を放棄して、日本に自動的に施政権を返したときの沖繩の処置の問題とは、日本側からいえば、変わってくるわけですが、それをお認めになりますか。
  201. 岸信介

    ○岸国務大臣 それは日本側から見まして、日本が現在は施政権を持たない領域であるが、施政権を持つ、完全に施政下にある領域、こういうふうに変わってくると思います。
  202. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 そうすると、今は沖繩の問題を除外するといっている。そして今度は日本の施政下に入ってきましたら、これは変わってくるわけですから、沖繩を中心としての日本の安保条約に臨む態度というものが変わってくるはずなんです。ですから、そこに、きわどいいざこざの最中に、この安保条約一つの盲点になっておる沖繩というところに、局部的に問題が起こったときに、どうするかということを私たちが心配して、尋ねておるわけです。しかも、この沖繩というのは、日本に返さないという観念のもとに、アメリカアメリカ極東軍事作戦のうちの最も心臓部として、これを握って放さないわけです。この握って放さない沖繩というものを、日本の場合これを除外して条約を結ぶということは、大へんな片手落ちじゃないですか。そこをどうお考えですか。
  203. 岸信介

    ○岸国務大臣 合意議事録にも、沖繩に関するものをきめておりますが、要するに、日本はここに潜在主権を持っており、従って、一日も早く施政権を返してもらうというかねての考え方を、われわれはずっと持続して持っておるわけであります。しかし、ここにおいてはアメリカが完全に施政権を持っておる地域でありますから、ここにおいてもしも危険が生じた場合に、直接にわれわれがその防衛に当たるというわけにはいかないと思います。しかしながら、ここの安全と住民の福祉のためには、日本政府としてはできるだけのことをする。また、これに対してアメリカは、その防衛についてはアメリカが責任を持ってやるが、また、日本政府と協力して、そういう住民の福祉のことを考えるというような意味の合意議事録を作っておりますが、この施政下にある領域と、こう書いてありますから、今は施政下にないわけでありますが、他日この沖繩が施政下に入れば、当然条約の解釈として、五条の施政下にある領域、こういうことになることをわれわれは実は予想しておるわけであります。そうしてそれが一日も早く平和的に返されることを望んでおる。しかし、それができないが、今お話のような場合に放棄されるならば、これは当然潜在主権を持っておる日本に一切の施政権が返ってくる。そうすれば、施政下にある領域として、われわれが日本の他の本州、九州と同じように自衛すべき地域である。ただ、ここに武力攻撃があれば、日本自衛権の発動としてこれを防衛すると同時に、アメリカはこの条約上の義務として、共同防衛すべき義務がある、こういうふうに解釈しております。
  204. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 日本の国からいえば、沖繩は施政権の届かないところであるから、日本自衛隊が、アメリカ軍と行動をともにして沖繩まで出かけていくことができない。従って、これを合法化するために、アメリカがいざこざの最中に沖繩を捨てて、日本自衛隊の海外派兵が実質的に沖繩に行なわれるように持っていく手が、アメリカ側にあるわけです。これはどうですか。
  205. 岸信介

    ○岸国務大臣 沖繩の施政権をそういう場合に放棄されまして、おそらくそうなると、これは一つの例でありますが、沖繩県というものができると思います。そうすれば、鹿児島県が武力攻撃を受けたと同じように、自衛隊が当然これを自衛権の発動として守らなければならぬということは、私ども考えております。
  206. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 おのおのの憲法に基づいてということがうたってありますから、日本憲法では行けないところの沖繩に、日本憲法で行けるように、自衛隊を、日本の兵隊をうまく使わんがために、いざこざの最中に施政権を日本に返すということは、絶対にあり得る。これは今までの戦争の始まりというものを見てみたらわかる。どこかの国境でいざこざが起こった場合に、自分の方は正しくて、向こうの方が悪いのだということばかりではありませんか。たとえば朝鮮動乱にしましても、北からいえば南が悪い、南からいえば北が悪いといって、原因がうやむやになってしまう。それと同じような手が使われないという保証は絶対にないのでありまして、もしもそういうことを頭に置いていないならば、まことにおめでたいか、頭の中に置いておられるならば、ごまかしておるということでございまして、私は受田委員に関連質問を譲りますが、また私の質問のときに残しておきます。
  207. 岸信介

    ○岸国務大臣 せっかくの御質問ですから、お答えいたします。先ほど堤委員の御議論のうちには、沖繩というものが、これはそうであるかどうか疑問でございますけれどもアメリカ極東戦略の中心の地域であって、これをしっかり握っていることが、極東戦略の上から重要な地域のようにお話しになっております。そういえば、それをそうやすやすと放さないというのが実質上の問題。それからなお、これをかりに施政権を放しましても、アメリカが沖繩を防衛する義務は安保条約には厳としてあるわけでありまして、自分たちが逃げて自衛隊だけにまかすというようなことはできないのであります。それからまた、はなはだ残念でありますが、今の日本自衛隊の力からいって、アメリカが非常に高くこれを評価しておって、これが来て助けてくれなければ困るというような事態に実はないのです。従って、今のお話は、私は、理論の問題であって、実際問題としてはあり得ないと思います。私どもは、理論の問題としては、完全に日本国に復帰するということは、いかなる状態においても歓迎するものであるという考えを貫きたいと思います。
  208. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 もう一つ、それはいかなる場合においても日本政府が責任を持って守らなければならぬことは、異議なしであります。ただし、私が申し上げるのは、日本国憲法というものをアメリカから見たときに、日本国憲法内におけるところの、制約された自衛隊の行動範囲というものがございまするから、従って、日本国憲法違反でないというところの、日本に筋を通させてやらなければならない場合が生まれたときには、アメリカは沖繩をいざこざの最中に返して、日本自衛隊が施政、支配下にある沖繩に出ることは憲法違反でないという理屈を、日本政府をしてつけさしめるところの理由をこしらえてやる。それからもう一つは、原子戦争などという大きな戦争はあり得ないのでございますから、いずれ局部的なものでございます。この局部的なものをおさめるのには、日本自衛隊を使って、日本人の血を流させた方が、便利であり、得であるということが、アメリカの観念であるということは、忘れてはいけないと思うのでございまして、この辺に沖繩の問題があるということを申し上げておきたいと思います。
  209. 小澤佐重喜

    小澤委員長 受田新吉君より関連質疑の申し出がありますから、これを許します。受田新吉君。
  210. 受田新吉

    ○受田委員 岸さん、私、今大貫君、堤さんの質問で総理がお答えになられたことの中に、はなはだ危険な観念がひそんでいることを心配しているのです。それは沖繩から米軍が撤退をしても、なお焦土作戦で、施政権が返った日本自衛隊がこれを守るというこの考え方には、非常に問題がある。米軍が沖繩から撤退をする場合は、おそらく日本の基地におる米軍も撤退をして、日本自衛隊だけがこの国土で防衛の任務に当たるという事実上の問題が、私は起こってくると思う。こういう場合に、私がきのうお尋ねした問題が関連してくるわけです。米軍とあくまでも共同作戦をとって、武力攻撃がとどまらない限りは、日本自衛隊の防御的な共同防衛作戦は停止しないのだという御発言があったわけです。従って、たといいかなる不正な攻撃であっても、日本の国土が焦土と化する事態が起こるというときには、米軍は後方へ退いて、ただ単に優秀な兵器をもって攻撃をするだけで、戦争をやめない。日本は国内を焦土と化して、九千万総死滅するというような段階にまで戦わされておるときに、日本が単独講和をして、たとい不正な攻撃であろうとも、日本の尊い生命を守るために、このあたりで適当に講和をしたい、戦いをやめたいという事態を、私は考えていかなければならないと思うのです。この点においては、米軍とあくまでも共同作戦をとるという観念は——米軍が沖繩を捨て、日本本土を捨てて後退をしたときには、日本自衛隊は第一戦で苦労するというような、そういう形の観念は、はなはだ危険であって、戦争の開戦の責任者になられたけれども戦争を終わる責任者になられなかった岸さんとしては、十分ここを考えて、そういう場合に日本だけが単独講和をするという、そういう方式も考えて、そして一億総死滅などと大東亜戦争をやって、とことんまでいくおそれがあったのを、天皇陛下の命令一本でこれを停止した日本の歴史も考えられて、日本の単独講和という事態も十分検討すべきだと思いますが、いかがですか。
  211. 岸信介

    ○岸国務大臣 第一の前段として、アメリカが、今回の安保条約におきまして、日本武力攻撃を受けた場合に、日本の国土を防衛する義務を明らかに規定したということ、この条約を守るということから申しますと、今御議論の前段のようなことは、私はあり得ないと思います。しかし、もちろん、日本がいかなる場合においても、日本の施政下にある領土が武力攻撃をされておる、アメリカと最後まで共同作戦をしなければならないということは、何も規定してありません。アメリカアメリカとして、日本に対する武力攻撃を排除するために、必要な行動をとるということを宣言しておりますし、また、日本は、当然日本自衛権として、国土を守るということを考えているわけであります。もちろん、この前の戦争の時代とは違いまして、国連の問題もございますし、また、われわれはあくまでも戦争を避けようという念で、これは国民の考え方もそれに徹しているわけでございまして、一日も早くその兵火がおさまることを望むことは、もちろんのことであります。私は、そういう意味において、たとい武力攻撃をし、実力行使をしてこれを排除するけれども、ただお互いに撃ち合っているばかりを続けていくというのが、われわれの政治的の行動じゃありません。ただ、法律の解釈として、自衛権というものはどういうものであるかというような議論から申しますれば、そういう武力攻撃がある限りは、武力を持ってこれに対抗して、これを排除するというのが、自衛権の本質であり、また、第五条で約束しているアメリカの責任であります。しかしながら、その場合において、外交上どういうなにをとるか、あるいはわれわれが国の運命を考え、民族の運命を考えて、どういう処置をとるかということは、もちろん、われわれとして自主的に考えていかなければならぬ問題でありますから、決してアメリカと運命を共同にして、最後まで日本が滅亡するまで武力を行使しなければならぬというようなことは、絶対に考えておりません。
  212. 受田新吉

    ○受田委員 岸さん、私は、今あなたの最後のお言葉で、やや納得せざるを得ない点があるのですが、しかし、あなたの言われるように、日本が単独に講和をし、戦争をやめることができるという規定は、新条約に書いてないわけです。これはどういう方法で——今申し上げたような事態に日本が遭遇して、日本が九千万総死滅というような段階になった場合に、たとい不正な攻撃でも、日本の残された人命を守るために、講和をしたい、停戦をしたいという気持を表わす方法は、この新条約のどこでどういう措置をとればいいのでしょう。
  213. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 どうも受田委員お話を伺っておりますと、第二次世界大戦後に国際連合ができまして、そうしてこの戦争に対する処置をするということを、全然念頭に置かないでの御議論ではないかと思うのでありまして、武力攻撃がありましたときに、それを排除する行動をとりましたときには、直ちに国連の安保理事会に、きのうも申し上げましたように、通知をいたすわけであります。安保理事会は即刻に、これはスタンディング・コミティでありますから、何時間の余裕を持たずして開くのであります。また、それが決をとれないときは、総会は二十四時間以内に開くことに慣例でなっております。従って、それがいろいろな処置をとって平和を維持するような方法をとるわけでございます。その場合には、あるいは国連軍を出す場合もございましょうし、あるいは国連総会、あるいは安保理事会が決議をいたしましてやる場合もございます。でありますから、無制限にそういう状態が続いていく、しかも、全然国連も何も放置されて、そうして何か侵略してきた国と、日本なりアメリカとがそこで無制限に戦争をしていくという状態は、今日の国際連合のできました場合におきましては想定されないのでありまして、以前のようなことを想定されるから、今お話しのようなことが起きてくる。従って、われわれは、条約国際連合憲章を順守して参るということをうたっておるわけでありまして、そういう点から見まして、私は今のような御心配は全然ないと思っております。
  214. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは非常に安易な気持で御答弁されておるのですが、第五条の後段の規定は、お説の通り、国際連合の機関でこれを処理する規定が書いてあるのです。しかしながら、二十四時間にしても、六時間にしても、その時間的な余裕も許されないような段階でこれからの戦いが展開される、攻撃が加えられるという情勢であることも、あなたはよく御存じのはずなんです。そういう場合のことを考えて、国連の措置を待つ前に、そういう事態が起こり得る可能性があるじゃありませんか。そういう場合のことを考えて、今岸総理にお尋ねしているわけです。従って、総理御自身で今御答弁になったように、そういう措置をとるいとまがないような最近の近代戦における様相から見て、そういう場合には、日本は総死滅をする、そういう手を打つべきでなくして、事前に適当な単独講和でもやりたいと今総理はお答えになった、そういうことに私は了解をしておったわけです。  もう一つ自衛隊法七十六条の規定に、一たび出動した自衛隊に対して国会の不承認という場合には、当然この自衛隊の出動を停止し、撤退しなければならないという規定がある。国内法を憲法上の手続と規定ということで、あなたは条約約束して帰られておるのでございますから、そういう意味の場合も起こり得るわけですね。その総理御自身の命令で停止させる場合と、国会で出動不承認でこれをやめさせる場合と、二通りある。その場合に、総理は、国会の不承認の場合は、これをやむを得ないと御確認されると思いますが、もう一つ、総理御自身で防衛出動を停止させ、共同作戦行動から日本が離脱する場合をどうされるかということを、もう一度総理御自身にお答えを願いたい。
  215. 岸信介

    ○岸国務大臣 私は、日本武力攻撃を受けている限りは、自衛権の発動として、実力を行使してこれを排除するという手段をとり得ると思う。もちろん、事態はいろいろな事態がありますから、ただその自衛権の法律解釈だけでもって問題を処理するということは、政治的にそれだけが能でないことはよく承知いたしております。しかし、事態を、どういう場合にどういうふうにするのかというようなことを想定してすることは、私は当然だと思います。ただ、何か武力攻撃があったならば——そういう意味じゃなかろうと思いますけれども、何かそういう、将来が非常にこわいから、まだひどい攻撃が起こらぬうちに、すぐ手をあげてしまえ、降伏してしまえというようなことは、私どもはその観念には承服できないと思います。
  216. 受田新吉

    ○受田委員 私は、戦争を始めることはだれでもできるが、戦いを終結することは非常に困難であることを、あなた方御自身も大東亜戦争でよく体験しておられると思うのです。そういうことでありますがゆえに、米軍と共同作戦行動をとる限りにおいて、米軍は強大なる兵力を持っておるのであるし、また、日本の領土の基地から適当に撤退する道もある。そのときに、残された日本自衛隊日本国民というものが、あくまでも焦土作戦でやらなければならないという事態が、たとい安保とか、国連の機関がいろいろあるといっても、そういうものの処置を待つ機会がない、時間がないというような場合の危惧があるわけです。そういうことも考えて、適当に停戦をする措置が、この条約で何らかの形で認められることになっているのかどうか。全米相互援助条約でも、国内的に、アメリカの内部的に、適当に、国連の措置を待つ前に措置ができるようになっている。そういうような方法で何らかの措置ができるのではないか。自衛隊法の発動による防衛出動を、国会の不承認でこれを撤退する。それはもうあなたにはおわかりいただけると思う。その方はいいですね。それともう一つ判断は、今あなたの言われるように、条約で規定はしていないが、適当な措置がとれるのだという形で了解していいのですか。
  217. 岸信介

    ○岸国務大臣 国会が不承認の場合において、出動を命じておりましても、これを終結して、出動をやめなければならぬことは、これは当然であります。それからまた、武力攻撃があった場合におきまして、先ほど来申し上げているように、事態いかんによりましてこちらの武力行使をやめるということも、これは何にも現実はありませんけれども、これをやってはいかぬということも、また逆にそういう規定もないのでありまして、それは一国の運命に関するような、民族の運命に関するようなものを、その国が自主的に判断して適当の措置をとることは、これは当然のことでありまして、いかなる場合においても、一たび始まったら国土を焦土とし、九千万全部が全滅しなければならぬということは、私どもは絶対に考えておりません。
  218. 受田新吉

    ○受田委員 関連が長くなったから、これで終わりますが、総理にもう一つ、関連する問題でお尋ねしておきたい問題があります。  それは、午前中にも出た内乱の規定にも関連するのですが、日本自衛隊そのものが暴動化し、反乱するという、これはすでにイラクにおいても、キューバにおいても、そういう自衛隊の人々が、指導者によって政府を転覆している事例もあるわけです。そういう自衛隊そのものの暴動というものに対しては、一体どういうお考えを持っておられますか。
  219. 岸信介

    ○岸国務大臣 私は、絶対に日本自衛隊に関する限り、そういうことはないと思います。そういうことのないように、現に防衛庁長官が、自衛隊の訓練やその他の規律というものを厳格に保っておりますから、そういうことは、私は事実上日本においてはあり得ないと考えております。
  220. 受田新吉

    ○受田委員 すでに中近東その他の国々において事例が幾つも出ておるし、また、日本にも二・二六事件が起こっておる。天皇のお名前を使われたから、これが鎮圧されておる。しかしながら、文官優位がだんだんくずされて、自衛隊の増強で再軍備が強化されている段階では、時の政府の命令を逸脱し、あるいはいろいろな条件で、そういう事態を絶対に防ぐと、たといおっしゃっておられても、そういう事態が起こった場合に日米の関係はどうなるのか、これは一つお答えを願いたい。(「神経衰弱だよ」と呼ぶ者あり)神経衰弱じゃない、大事なことだ。
  221. 岸信介

    ○岸国務大臣 日米の関係においては、そういうことには何も触れておりません。
  222. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、そういう問題については、ただ単に国内の内乱として、内政干渉はしないという立場に立つわけですね。それを一つお答えを願いたいと思います。
  223. 岸信介

    ○岸国務大臣 純然たる内乱である限りにおいては、アメリカはこれにタッチいたしません。
  224. 受田新吉

    ○受田委員 それではこれで終わります。
  225. 大貫大八

    大貫委員 時間の関係もありますので、私の質問は、一応あと一、二問でやめようと思います。ただいま、沖繩問題をめぐって、岸総理は大へん悲壮感に打たれた御議論をなすっておりますが、これは大へんなことです。そういうことを国民が心配しておるわけなんです。安保条約に対して心配しているのは、そこなんです。ほんとうに戦争の糸口によって——沖繩を救うのは、当然それはそうです、理論上そうです。そうですが、国を焦土と化しても何でもやるような、そういう口吻が、国民に非常な疑惑を与えていることなんですが、これは関連質問でだいぶ尽くされたから、私は方向を変えて、最後にただ一つだけお尋ねをいたして、確かめておくつもりです。  これはこの前、たしか岸総理が答弁されておると思うのですが、第五条によって自衛隊が出動するような場合には自衛隊法第七十六条の手続を経るんだ、これはもちろんのことでしょう。そこで、このことはアメリカ承認しておるかのごとき御答弁をなすったのですが、これはほんとうに承認されておるのですか。自衛隊法によって日本自衛隊が出動する場合には、国会の承認を得なければならないということが明白になっておるのですが、このことは、アメリカは承知しておるのですか。
  226. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 承知いたしております。
  227. 大貫大八

    大貫委員 承知しているといって、何か文書の上での明確な確約をされておるのですか。
  228. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 文書に書く必要のないほど当然なことでございます。
  229. 大貫大八

    大貫委員 文書に書く必要がないという。当然なことはないでしょう。自衛隊法があるかどうか——これはなんでしょう、憲法上の規定、手続ということで、憲法にあるならよろしいのです。ところが、日本憲法には自衛隊が出動するとか——これは昨日も申し上げましたように、統帥に関しても、編成に関しても、あるいは出動に関しても、講和をするについても憲法上何の規定もないのです。自衛隊法というものがぽつんとある。これは憲法付属法規ではありませんよ。少なくとも形の上では付属法規になりません。ならぬというと、これはアメリカ承認したということは、あなたがおっしゃるだけでは何ら——内閣が変わったらどうなるのです。これは文書の上でそういう裏づけがなければ、当然に、七十六条のこの手続を承認しているとは言えないじゃないですか。どうです。
  230. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 当然のことでありまして、十分承知いたしております。
  231. 大貫大八

    大貫委員 どうも外務大臣、最近ぞうきんになろうと努力しているようですが、破れぞうきんのそういうことでは役に立ちませんよ。ハンカチはハンカチで、やはり絹ハンカチの方がよろしいと思う。私はこれ以上申し上げませんが、最後に一つ岸総理にお尋ねします。  これはきのうも問題にしたところですが、統帥の問題です。第五条によって日本米軍とともに共同の軍事行動をとる場合に、この自衛隊の統帥はだれがやるのですか。
  232. 岸信介

    ○岸国務大臣 自衛隊法によって日本がやります。
  233. 大貫大八

    大貫委員 これは自衛隊法によっては、そうでしょう。しかし、第五条からいいますと、米軍と共同してやるのですね。そうすると、ばらばらにそんなことはできないでしょう。やはり統一した一つの指導というか、つまり軍事行動というのは、高度の作戦があるわけです。その作戦が、日本自衛隊日本自衛隊法によって、アメリカアメリカで、勝手にばらばらにやれるものではないでしょう。それはどうです。
  234. 岸信介

    ○岸国務大臣 十分にその間の連絡の必要なことは連絡してやります。
  235. 大貫大八

    大貫委員 共通の危険に対処するように行動するというのですから、かりに連絡しても、そんななまやさしいものではないでしょう、戦闘ということになれば。これは必ず統一された参謀本部なり、何かがなくちゃならぬわけです。そうすると、どうですか、それは米軍の統制のもとに、日本自衛隊が自由自在に動くということになるじゃないですか。
  236. 岸信介

    ○岸国務大臣 そうはならぬのでありまして、日本自衛隊に関する限り、その統帥といいますか、これの指揮命令、作戦用兵の問題は日本がやるのであります。責任を持ってやるわけであります。ただ、日米が共同して対処しなければならぬような事態が、そういう場合においては起こると思います。従って、両者の間の緊密な連絡をとることは、これは当然のことであります。しかし、そのために単一の統帥部を置いて、そのもとにすべてのものが服すというようなことは考えておりません。
  237. 大貫大八

    大貫委員 私の質問は、これで本日は終わりといたします。いずれまた別の機会に、まだ尽くさない部分をお尋ねするつもりでおります。
  238. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次に床次徳二君。
  239. 床次徳二

    ○床次委員 私は前回、いわゆる米軍施設及び区域におけるところの米軍の権利、権能等に関しまして質疑をいたしておったのであります。なお本日は、若干、引き続いてこれに関連して質疑をいたしたいと思うのであります。  前回の質疑におきまして、いわゆる基地内におきましては、原則としてわが国の法令が適用されるということが明らかになっておるのでありますが、本日お尋ねいたしたいのは、基地内におけるところの警察権に関しまして、わが国はいかようなる立場をとっておるか。わが国の警察権行使の権能に関して、政府の見解を伺いたいのであります。
  240. 林修三

    ○林(修)政府委員 一般的の問題について私からお答えいたします。  原則として、いわゆる施設区域内にも日本の法令が適用されるということを前提として申し上げたわけであります。この点は、警察法令につきましても同様でありまして、原則として施設区域に対しても適用はあるわけであります。ただ、そこにおります軍隊あるいは軍人、軍属等については、軍隊の特殊性から、この地位協定上のいろいろな規定もそのまま適用されない部分があるわけでございます。これは警察法令につきまして、そういう問題はいろいろあるはずでございます。  もう一つは、法令の適用関係とは別に、やはり法令の適用ではございますが、強制的な、いわゆる司法警察権あるいは行政警察権の問題があると思いますけれども、これにつきましても、観念的には、日本の法令がもちろん適用があるわけでございますが、日本の警察官が、その施設区域内においていわゆる即時強制、行政警察あるいは司法警察の面における権能を行使する場合におきましては、御承知の通り、この地位協定において先方側の同意を得て入ってやる、こういう建前になっておりまして、軍隊がそこを使っておるという特殊性から、同意を得てやるという建前になっております。それから、同時に、この地位協定をごらんになりますと、十七条第十項でございますが、この施設区域内においては、米軍側は米軍側に関する限り警察権を持っておる、こういうことになっておるわけでございます。軍人、軍属等に対しては、米軍が警察権を行使する、こういうことになるわけでございます。
  241. 床次徳二

    ○床次委員 次に、基地に隣接しておる地域におけるところの米軍の権利について検討いたしたいと思うのであります。今回の改正によりまして、第三条におきましては、前回の規定に比しまして著しく表現が変えられておるのでありますが、今回の改正の結果、この区域外におけるところの取り扱いはいかようになっているか、明らかにされたいのであります。
  242. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの点は第三条の点だと考えておりますが、第三条におきましては、現行の行政協定におきましては、その施設区域内におきまして米側が一切の措置をとるところの権利、権能、権限を有するということになっておりますほか、施設外におきましても、これらの施設及び区域の支持、防衛、管理のため、前記の施設及び区域に出入の便をはかるに必要な権利、権力及び権能を有するのみならず、本条で許されたる権利、権力、権能を施設及び区域外で行使するにあたっては、必要に応じ合同委員会を通じ両政府間で協議しなければならない、こういうふうになっております。ところが、新しい協定におきましては、原則として日本側がこのために必要な措置をとるということをまず正面から書きまして、そのほか「合衆国も、また、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で前記の目的のため必要な措置を執ることができる。」こういうふうに書きかえたわけでございます。
  243. 床次徳二

    ○床次委員 ただいまの改正の結果、これに関連いたしまして、「関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする。」、また、合同委員会を通じて必要な措置をとるということになっております。この関係法令の範囲内で必要な措置をとるということが合意議事録にも定められておるのでありまするが、この点、どの程度の改正が行なわれておりますか。
  244. 林修三

    ○林(修)政府委員 直接に関係法令を今度改正した点はございませんが、御承知のように、土地等の使用等に関する特別措置法、ああいう法律に基づきまして、米軍側の要望に基づきまして必要な、たとえば路線権等を設定するという、あの法律に基づいて補償しつつやる、こういうことであります。あるいは電波法に基づきまして電波障害を除去する、こういうことが行なわれております。
  245. 床次徳二

    ○床次委員 次に伺いたいのは、この基地外におけるところの権利、権能につきまして先ほど答弁がありましたが、しからば、基地外におけるところの警察権に対しまして、米軍はいかなる程度において警察権を行使しておるか、伺いたいのであります。よく基地周辺におきましては、往々にしてMPその他の者が過当な権利を行使して、住民に迷惑をかけるというようなことも、あるいはあるやに聞いておるのでありまするが、今回こういう取り扱いはいかようになるのか、明らかにされたい。
  246. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 お答え申し上げます。  この点に関しましては、旧行政協定と何ら変更はないわけでございますが、いわゆる基地外の米軍等に対する警察権の問題は、外におきましては、わが国が米軍の構成員に対しても警察権を行使し得るのが原則でございます。ただ例外的に、合衆国の軍隊の財産についての捜索、押収及び検証等は行なわないようにいたしておるのでございます。なお、施設区域外におきましても、米軍当局は、一定の条件のもとに、米軍の構成員等に対しまして警察権を行使し得る場合があります。この場合は、必ずあらかじめ日本国との間に取りきめをいたしておきまして、その取りきめに従うことを条件として、日本国の当局との連絡のもとに、合衆国軍隊構成員などの間の規律と秩序維持のために必要な範囲に限って行使することができるというふうになっておりまして、無制限に行使することは認められていない次第でございます。
  247. 床次徳二

    ○床次委員 ただいまの場合において、しからば米軍が、施設外におきまして、日本人に対して警察権を行使するような特例がありますか。どういうケースがあるか、提示されたい。
  248. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 ただいまの点につきましては、日本人に対して権限を行使すると申しましても、これは警察権の考え方に二つの種類がありまして、司法警察、要するに刑事訴訟法の犯罪捜査としての正式の司法警察の権限を行使する場合と、行政警察の権限と申しますか、そういう二つの種類に分けて考えることができるわけでございますが、施設区域外におきましては司法警察としての権限というものはない、行使することはできないというふうに私どもは解しておるのでございます。それでは、行政警察としてはどういうことができるのかと申しますと、これは行政警察は、一つの危害を未然に防止する、あるいは急迫している侵害を制止するといったような性質のものでございますが、この施設区域外にあります重要な軍用財産に対してその近くから害を加える、あるいは加えようとしておるような場合におきましては、日本の法令によりましても犯罪となります場合は、これは現行犯に限りまして逮捕し、またはその加害を制止することができるのでございますが、この逮捕ということも、今の害を一応とめるという意味のものでありまして、司法警察権の行使としてするわけではないのでございます。また、施設区域または重要軍用財産の安全を守るための正当防衛的な自衛行為というふうにも解釈し得るのでございまして、そういう意味においても、行政警察権を行使することができる。それ以外におきましては、今申しましたように、司法警察としての職務権限は行使することはできない、かように解しております。
  249. 床次徳二

    ○床次委員 関連してもう一つ伺いたいのですが、基地内外におけるところの米軍の警察権の行使にあたりまして、もしもその乱用等がありました場合においては、その救済措置はいかようにせられるのであるか、伺いたい。
  250. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 米軍側の行為が犯罪となります場合には、一般の犯罪の場合と同様に、行政協定第十七条によりまして処罰されることになるのはもちろんでございます。また、損害が発生しました場合には、協定第十八条第五項、第六項等によりまして損害賠償が行なわれるわけでございます。犯罪となります場合には、第一次裁判権の問題がございますが、そのようにいたしまして、米軍の警察権の乱用に対しましては、救済措置は十分用意されておるわけでございます。
  251. 床次徳二

    ○床次委員 次に、関連しておりまするから、この基地周辺の問題について一言お尋ねしたいのであります。  基地周辺におけるところの爆音、あるいは施設提供に伴うところのいろいろの補償問題について、相当従来紛議が起きておったと思うのでありまするが、現在かかる解決につきましてはどのような処置がとられておるか、大体それが円満に解決しているかどうかということを伺いたいのであります。  なお、演習場外につきましても、しばしばあるいは破片が落ちてきたり、あるいは爆弾が落ちるというようなことも聞くのでありまするが、これらの紛争事件の補償等の処理について、概況を御説明願いたいのであります。
  252. 丸山佶

    ○丸山政府委員 お答えいたします。飛行場やあるいは爆撃場における飛行機の爆音、あるいはたまの音、こういうものに対する処置といたしましては、学校の防音の工事、あるいは病院等の医療施設に対する防音工事を実施いたしております。なお、演習場におきまして、その演習の結果、土地の形質を変更し、あるいは森林を荒廃させる、そのために付近の農地等に被害を与えておる場合、この被害を補償いたしますとともに、その荒廃したるもの、災害を防ぐための防災工事等をいたしております。これらはいずれも、米軍の駐留に伴う特別損失の補償に関する法律、この法律に基づきまして実施いたしております。  なお、演習場外に飛行機から落下物等が落ちる、落とす、それに対する被害対策、これは実はお説の通り、かつて水戸の演習場その他におきましてございましたので、これに対しましては、そのつど厳重に軍にその是正措置を申し入れるとともに、合同委員会で取り上げまして、その是正措置を協議し、決定いたしております。そのために、最近におきましては、それらの事態は著しく改善いたしております。なおそれでも間違って区域外に落ちた、これに対する補償措置は、行政協定の十八条第三項に基づきまして補償措置をいたしておりまして、これは円滑に処理されておると考えております。
  253. 床次徳二

    ○床次委員 次に、航空機、船舶の出入について一点お尋ねしたいのであります。昨年の夏、いわゆる黒いジェット機の不時着事件があったのでありますが、これは第五条との関係において、どういうふうになっているか、伺いたいのであります。これはいかなる処置、法規によりまして入国しておったのか、また、その取り扱い等につきましては、いろいろと日本国民を圧迫するというようなMPの処置があったかのようにも聞くのでありますが、かかる取り扱いに対して、いかようなる方針を持って当たっておるのか、説明せられたいのであります。
  254. 辻章男

    ○辻政府委員 お答えいたします。航空関係の問題でございますが、これは昨年度、不時着の問題で問題になったのでございます。この問題の飛行機は、大統領の直轄の航空宇宙局に所属しておりまする飛行機でありまして、在日米軍の管理下に運航しておるものでございます。従って、この飛行機は、行政協定の第五条にございまする、合衆国によって、合衆国のために、または合衆国の管理のもとに運航されておるという飛行機に該当いたします。これらの該当いたしまする航空機につきましては、国籍、登録記号等を表示しなければ航空の用に供してはならないという旨を規定いたしておりまする航空法の第五十七条の適用は除外いたしております。従って、この航空機につきましては、国籍、登録番号等のことは、私どもは存じていなかったわけであります。ただ、これらの飛行機も、すべて航空交通管制に関しましては、昨年の七月一日以降わが方に返って参りました航空交通管制本部の管制下にございますが、これも有視界飛行状態の場合におきましては、特にそういう管制局の連絡なしにも飛び立ち得るのでございまして、今までいわゆる計器飛行状態には飛んでおりませんでしたので、特に航空交通管制の面におきましても、問題なしに飛んでおった次第でございます。
  255. 床次徳二

    ○床次委員 航空関係についてもう一つ伺いたいのです。今お話がございましたごとく、航空交通管制につきましては、わが国に全面的に移管せられておるということになっておるのでございまするが、わが国に移管後、日米間の管理の調整状況日本における運航状況ははたして円満にいっておるかどうか、伺いたいのであります。  なお、あわせまして、過般小牧飛行場におきまして非常な惨事が起きたのでございますが、これなどはやはり航空管制の、要するに不備によったものだと思うのでありますが、わが国に移管後において、この管制状況について十分な措置がとられておるかどうか、あわせて答弁せられたいのであります。
  256. 辻章男

    ○辻政府委員 お答え申し上げます。  日本の周辺の航空交通管制につきましては、昭和三十四年の七月一日から入間川の管制本部を日本側で運営することになりまして、これ以後は、実質的には日本政府の責任のもとに航空交通管制を実施いたしております。ただ、在日米軍に提供いたしております飛行場の管制、それから進入管制等につきましては、現在も米軍が行なっておる次第でございます。日本政府及び在日米軍の行なう管制業務につきましては、すべて共通の方式をとりまして、これはICAOの方式を採用いたしております。国際的な基準の方式でございますが、これを採用いたしておりまして、入間川のセンターを通じまして一元的に運営しておる次第でございます。日本政府の航空交通管制の実施にあたりましては、在日米軍が、わが国の防空責任を分担しておることを考慮いたしまして、平素から、管制本部と在日米軍との間には、航空気象情報交換するとか、民間機の位置を通報する等のことにつきましては、在日米軍と取りきめをいたしております。なお、先ごろ小牧の飛行場におきまして非常に不幸な事件を巻き起こしまして、私ども、非常に責任を痛感しておる次第でございます。あの事件は、管制官の、魔がさしたと申しますか、一つの誤認が大きな原因をなしておりまして、あれ以外に、在日米軍との関係におきまして、航空交通管制上まずいような事件は、今までのところ一件も起こっておりません。
  257. 床次徳二

    ○床次委員 次に、在日米軍のいわゆる特権の制限の問題について伺いたいのであります。軍人に対しまして、今回は、身分証明書の携帯、その他、場合によりましたならば退去を命ずるというような処置ができて参ったのでありまして、これはある程度までの特権の制限であるかと思いますが、現在までの米軍人等の、いわゆる不良軍人とでもいうべき実情、これがどの程度のものであったか、今回の改正によりまして相当これが是正せられるかとも思うのですが、どのようなものであるか、実情について説明せられたい。
  258. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 在日米軍の構成員、軍属等で、わが国の法令に違反するような犯罪に触れる行為をなす者もないではないのでございます。その違反の状況は、その数におきまして必ずしも多いものではございません。しかも、その犯罪の実態を見ますと、いわゆる犯情が軽微であり、かつ偶発的な犯行と見られるものが多いのでありまして、これらの事件はすべてわが方において処理すべきものは処理いたしておりますが、おおむね、日本の犯罪と比較してみますと、今申したような実情でございます。従いまして、刑罰法令の適用の面から見ますと、米軍の軍紀の保持、規律は厳正に守られておるように私どもは観察いたしております。
  259. 床次徳二

    ○床次委員 米軍の犯罪と関連して考慮せられることは、いわゆる道路交通におけるところの自動車運転の事故なんでありまして、米軍関係者に対しましては、十条によりまして特別な取り扱いができております。わが国におきましては、最近、道路交通法の改正等を実施せんとしておるわけでありますが、大体米軍関係者のいわゆる事故発生率というもの、これはわが国の状況とある程度までの差異があるかどうか、これは取り締まり関係から見ましても考慮すべきことと思うのでありますが、実情について報告せられたいのであります。
  260. 中川董治

    ○中川政府委員 米軍関係者の交通事故もあるのでありますが、わが日本人の交通関係違反に比べまして、決して悪いとはいえない。むしろ、向こうの米軍関係者の方が少ない、こういう実情であります。数字について申し上げます。自動車の数について比較したのでございますが、自動車の数は、米軍関係者の自動車は、日本関係を含めて全体の一・一%あるわけでありますが、交通事故の被害は、死者につきましては〇・四%、負傷者につきましても〇・四%、物的な被害につきましては一・二%、こういう状況でございますので、決して向こうが多いという結論は出ません。逆に向こうがいい、こういうことであります。
  261. 床次徳二

    ○床次委員 次は、第十一条でありまして、輸出入に関する取り扱いが若干改正されておるのですが、従来の米軍関係者の持っております特権に対する乱用防止の手段、どのような手段を講じたか、あわせて説明せられたいのであります。  なお、この条文の中におきまして、合理的な限度において輸入する物資については、これはやはり税関の検査を免除する形になっておりますが、合理的な限度というものにつきましては、ある程度までの標準について打ち合わせ等があるかどうか、あわせて御説明せられたいのであります。
  262. 木村秀弘

    ○木村(秀)政府委員 お答え申し上げます。現在の行政協定を改正しましたおもな点は、第一に、税関検査の免除範囲を縮小したということでございまして、従来は、合衆国軍隊の部隊及び合衆国軍隊の構成員ともに税関の検査を免除いたしておりましたのを、今回改めまして、部隊行動による場合のみ免除をいたし、合衆国軍隊の軍人あるいは軍属等、個人の行動する範囲におきましては、輸出入ともに税関の検査を実行いたすということにいたした次第でございます。  第二点といたしましては、やはり税関検査の問題でございますが、従来は、合衆国軍事郵便路線上にある郵便物につきましては、それが公用の郵便物であろうと、私用の郵便物であろうと、検査を免除いたしておりましたのを、今回改めまして、公用の郵便物のみ検査を免除いたす、従って、私用の郵便物につきましては税関の検査を実施するということにいたした次第でございます。  次にお尋ねの、PX等が合衆国軍隊の構成員等のために輸入する物品の数量を合理的な範囲に限りました点でございますが、これは協定の本文ではなくて、合意議事録の中に取りきめてございます。もちろん、個々の物品の種類に応じまして、このものはどれくらいという取りきめを現在まだいたしておりませんが、大体、軍人等の日本におる人数、それから月間、年間の消費量等から勘案いたしまして、不相応に大量の物品が輸入されておるというようなことがございました場合には、米軍に対して問題を提起して、そうして協議をして、これを合理的な数量まで圧縮するということになろうかと思います。なお、関税法規違反の防止につきまして、やはり合意議事録の中で、米軍側において関税法規違反の事件が発見された場合においては、日本側の税関に通知をする、また、日本側においてそういう事件を発見した場合には、相手方に対して問題を提起して協議をする、また処分すべきものは処分するというふうに取りきめた次第でございます。
  263. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次会は、明七日午前十時より開会することといたしまして、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十九分散会