運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-04-01 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月一日(金曜日)     午前十一時二十四分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 櫻内 義雄君    理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君    理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    天野 光晴君       石坂  繁君    鍛冶 良作君       鴨田 宗一君    賀屋 興宣君       小林かなえ君    田中 龍夫君       田中 正巳君    塚田十一郎君       渡海元三郎君    床次 徳二君       野田 武夫君    服部 安司君       福家 俊一君    古井 喜實君       保科善四郎君    毛利 松平君       山下 春江君    飛鳥田一雄君       石橋 政嗣君    岡田 春夫君       黒田 寿男君    戸叶 里子君       中井徳次郎君    穗積 七郎君       森島 守人君    横路 節雄君       受田 新吉君    大貫 大八君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 三月二十六日  日米安全保障条約改定反対に関する請願(下平  正一君紹介)(第一五五八号)  同(多賀谷真稔紹介)(第一五五九号)  同(井伊誠一紹介)(第一七二九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたします。  松本七郎君より議事進行に関して発言を求められております。この際これを許します。松本七郎君。
  3. 松本七郎

    松本(七)委員 前回の二十五日における委員会事態にかんがみまして、この際、私ども野党は、特に委員長に要求並びに要望いたしたいことがあるのであります。  それは、第一は、先般の委員会における岸総理大臣答弁の中に、聞き捨てることのできない重要な答弁がなされておる。それは、速記録に基づいて申し上げてみますと、「そういうこと」——そういうことというのは、つまり、委員長もよく御存じのように、極東範囲、特に金門馬祖がこれに入るか入らないかという、わが党の横路委員の何回にもわたった質問に対して、「そういうことをここで論議することは、私は適当でないと思うわけであります……。」こういう答弁をされておるのです。これは全く国会審議権を無視する暴言といわなければならない。おそらく、私は、これが岸総理の本心だろうと思うのですが、これは、ただこういうときの答弁に現われるばかりではなしに、たとえば、条約審議権の問題一つとってみましても、締結権の名において、国会修正権を一方的に排除するような態度を依然として固執されておる。これは総理答弁ばかりではなしに、最近は、外務大臣答弁にも国会軽視傾向が露骨に現われておるのです。外務大臣ばかりではない。これは、各省の局長答弁にも、例を引いてくれば、幾らでもある。そういう意味からも、私どもは、二十五日におけるこの総理答弁は、きわめて重視しなければならない。問題はむしろ、委員会だけの問題ではなしに、衆議院全体としてこれは取り上げるべきものであろうかと思うのでございますけれども、この際、もう一度、安保特別委員会委員長である小滝委員長から、前回の二十五日におけるこの重大な岸総理発言を取り消されるように、また、何か特に釈明があるならば、十分われわれの納得いくような釈明を、委員長から総理に要求していただきたい。  なお、これと関連いたしまして、政府答弁についても委員長から重大な警告を発していただかなければならないと思う。というのは、この前の、金門馬祖の問題の質問に対する答弁を聞いておりますると、あのような抽象的な、わけのわからない答弁を何回も繰り返されたのでは、われわれ審議を進めようにも進めることができない。このことは、あの質疑応答の過程で何回となく私から委員長にその点を警告したわけです。早く、こういう答弁を繰り返さず、もう少し誠意ある答弁をなすように、委員長から警告を発してもらいたいと、再三要望したにかかわらず、これがなされなかった。その結果ついにああいう事態になったのですから、この際、委員長からその点についても特に警告を発していただきたいと思うわけです。  また、今後の委員会運営についても、委員長から十分釈明をしていただかなければならぬと思うのですが、この安保特別委員会が成立した冒頭に、私から委員長にこの運営については特に要望してあるはずです。これは、今後かかる事態が起こることを予想したばかりではなしに、過去の委員長運営の実績にかんがみて、私はわざわざああいう警告を発しておるわけです。それが、まだ十分な審議も尽くされておらない今日において、冒頭からあのような運営をされたということは、はなはだ私どもは遺憾に思うのでございます。従って、あのような単独審議は今後やらない、前例としないということを委員長からはっきり言明していただき、遺憾の意を表明していただくことを、特にこの際委員長に要求して、私の発言を終わります。
  4. 小澤佐重喜

    小澤委員長 ただいま松本君よりの発言について申し上げます。  まず、政府側に申し上げます。政府国会における発言は、国会審議権を尊重するとともに、審議の円滑をはかるために十分誠意を尽くされたい。なお、二十五日の委員会における岸総理発言中、あるいは不適当なる言辞があろうかと思われますので、この際釈明を願いたいと思うのであります。  なお、前回委員会における取り扱いは、前例といたしません。  岸内閣総理大臣
  5. 岸信介

    岸国務大臣 前会、横路委員の、金門馬祖が新条約極東範囲に入るか入らないかという御質問に対し、私が「そういうことをここで論議することは、適当でないと思うわけであります……。」とお答えをしたことが、国会を軽視する発言であるかのようにとられましたが、私は、国会がこの問題を論議するのを不適当と認めるというような意味で申し上げたのでは毛頭ないのでありまして、政府の見解として、特定の島嶼が極東に含まれるか、含まれないかということを端的に表明することは適当ではないと考える旨を申し上げたつもりであったのであります。あるいは私の言葉が足りなかったためか、誤解を生じたといたしますれば、残念に存じますが、私の真意は今申し述べた通りでございますから、御了承を得たいと思います。
  6. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時三十三分休憩      ————◇—————     午後一時二十六分開議
  7. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。前回留保いたました黒田寿男君に発言を許します。黒田寿男君。
  8. 黒田寿男

    黒田委員 発言の前に御了解を得ておきたいと思います。実は、委員長がただいまおっしゃいましたように、私の前々会からの質問を一日も早く終えたいというように考えておりますけれども前々会藤山外務大臣の御都合で、途中で参議院予算委員会に御出席のために当委員会を御退席になりましたし、それからまた、前会はあのような状況で、私は、わずかに質問の一部をいたしましたのみでそのままになっておるという状態でございます。それで、今日は横路君から前会の続きの御質問がございますので、私の前々会及び前会より引き続きます質問はそのあとにさしていただきたいと思います。ただいま特に発言を求めましたのは極東範囲の問題ではなくて、安保審議関連があるという見地から、昨日国会で行なわれましたアデナウアー西独首相演説関連いたしまして、若干政府に御質問申し上げたいと思うのであります。そのように御了解を願いたいと思います。
  9. 小澤佐重喜

    小澤委員長 黒田さん、その点は了承いたしますが、議案に関係のある部分だけをどうぞ……。
  10. 黒田寿男

    黒田委員 そうです。もとより関係があるのです。  私は、昨日の衆議院会議における歓迎会におきまして、アデナウアー首相演説を聞いた者の一人であります。アデナウアー首相の来訪中の言動につきましては、われわれも無関心ではあり得ませず、新聞紙等報道せられておりました記事を注意して読んでおったのであります。しかし、直接にその人の口から話される言葉を耳にいたしましたのは、昨日が私どもといたしましては初めてのことであったのであります。その演説を聞いて、われわれといたしまして、岸首相に一応若干の問題につきまして確かめておかねばならぬ必要があることを感じましたので、この機会に特に発言を求めました次第でございます。この委員会は申すまでもなく、日米安全保障条約特別委員会でありますから、私の質問は、当然この委員会審議事項関連のある問題の範囲にとどめるということはもちろんであります。  そこで、まず、事実の点からお尋ね申し上げたいと思いますが、去る二十六日に、午後三時四十分から首相官邸岸首相アデナウアー首相との正式会談が約一時間半にわたりまして行なわれた。おもな議題は、第一は、国際情勢分析、第二は、低開発地域開発問題、それから第三は、ヨーロッパ共同市場及び西独との貿易問題、この三点であったというように新聞は報じております。このうちの低開発地域開発とか、貿易問題というようなものにつきましては、これは安保と直接に関連がないと思いますので、この点にきょうは触れようと思いませんが、ただ、新聞が、おもな議題といたしまして、国際情勢分析とともにこの二つをあげておりますから、私もこれをあげてみたのであります。とにかく、こういう会合があり、おもな議題としてこういう問題が取り上げられたかどうかということにつきまして、とりあえず、総理大臣にお聞きしてみたいと思います。
  11. 岸信介

    岸国務大臣 大体、今おあげになりましたようなことにつきまして話し合いをいたしました。
  12. 黒田寿男

    黒田委員 そこで、その次にお尋ねいたしますが、ただいま申し上げましたように、低開発地域開発とかヨーロッパ共同市場西独との貿易問題、こういうものは、直接に安保条約審議関係はございませんので、これについて今日特にお聞きしようとは思いません。しかし、国際情勢ということにつきましては、これは安保条約審議と非常に密接な関係のある問題であります。そこで、国際情勢について岸首相アデナウアー首相との間に話し合いがあったというように新聞は報じておるのでございますが、どういう話し合いがありましたか、意見交換がありましたか。この点につきましては、われわれ国民といたしまして非常に深い関心を持っておるのであります。その内容を聞かしていただきたいと思う。特に私がこのことを申し上げますのは、とにかく、岸総理大臣と話をされました相手相手であるからであります。私どもの記憶から消し去ることのできない暗黒な歴史的事実であります日独防共協定、その発展といたしましての日独伊国同盟条約締結国の一当事国でありましたそのドイツの現在の総理大臣が、岸総理話相手であるからであります。また、当方——こういうことを私は繰り返し申し上げたくございませんけれども、事実だから申し上げますが、当方は、日独伊国同盟条約政策の線に沿うて大東亜戦争の無謀な挙をあえてした責任者の一人である岸総理大臣が、また話相手の一人であるからであります。そして、双方ともが現在再軍備政策をとっております。軍備拡張政策推進者であります。こういう人が話し合ったというのであります。そこで、私ども、その話し合ったと伝えられる国際情勢分析について、一応安保条約審議と重要な関係があると思いますので、お話を聞かしていただきたいと思います。国際情勢分析については、これも新聞の伝えておるところでございますが、第一に、五月に行なわれる東西首脳会談をめぐる国際政局の動向、第二は軍縮問題、第三は国際共産主義、こういう問題について意見交換が行なわれた、こういうことでありますから、これは安保条約審議とも関係がある事柄でありまして、私ども、特にこれを聞きたいと思うのであります。とにかく、岸総理大臣安保条約を推進しておいでになりますし、それからまた、アデナウアー首相は、先般も新聞の報ずるところによりますと、スペインにドイツ軍事基地を作る、こういうことを言い出しまして、国際的な問題を起こした、こういう当の人物である。こういう人が国際情勢についての分析をやったというのでありますから、私だけでなく、国民全般がその内容を今聞きたいと思っておることであろうと思います。私は、国民にかわってと申しましても、あえて過言ではないと思います。国民はそれを知りたいと思っておりますので、この際、特に国際情勢分析に関する意見交換内容について国民に知らせるという意味におきまして、御発表を願いたいと思うのであります。
  13. 岸信介

    岸国務大臣 本日、私ども会談を取り上げまして、両国首脳の間に共同コミュニケが発表されております。すなわち「両国首相は、両国政策が、自由と正義の基礎の上に恒久的平和を実現することを共通の目的としていることを再確認し、また、国際間の諸問題は話し合いによってのみ解決されるべきことを強調し、真の緊張緩和を招来するための東西間のあらゆる努力を歓迎するとともに、管理された核並びに通常兵器の軍縮が来たるべき国際会議における最も重要な課題であることを確認した。」私どもが話し合った内容として、この共同コミュニケにかく声明をいたしております。これで御了承を願いたいと思います。
  14. 黒田寿男

    黒田委員 共同声明は私も拝承しております。これはしかし、いわばきれいごとを一応公式的に対外的に発表するというだけのものでありまして、もし、それだけのものであるならば、また、昨日の国会におけるアデナウアー首相演説もその線に沿うただけのものであったならば、別に問題はないであろうと考えますけれども、昨日の演説を聞いておりますと、きれいごととして発表せられた共同声明のようなものにとどまらず、また、両首相のお話し合いになったものも、それにとどまるものであるというように私どもは簡単に信ずることができないのであります。国民には知る権利がある。そこで、多少しつこいように思いますけれども、私はこの質問をしておるのであります。単に私どもだけのために質問しているのではなくて、国民のために質問しておる、そのつもりでお聞き願いたいと思います。私の質問は、新聞に出たところ、それから、アデナウアー首相が、私どもの目の前で、しかも、国会議事堂の中で演説せられたこと、そういう事実に基づいて質問をするのでありまして、決していたずらに荒唐無稽の事実をとらえて質問するというようなものではございませんから、その点は十分に御了承願っておきたいと思います。  そこで、アデナウアー首相訪日に関する報道の中に、こういうことがいわれている。それは、今回のアデナウアー首相訪日によって、そして日本政府との話し合いによって、低開発地域援助等の問題に関しては格別大した成果はなかった、日本が期待したほどのものではなかったようである。これは報道であります。しかしながら、具体的成果ということが一つある、こういうようにいっております。その一つは何かと申しますと、大きく動きつつある国際情勢流れに対する両国のかまえが整った点であろう、とこう報道しておるのであります。これは私は、相当大きな問題であろうと思うのでありまして、昨日の演説を聞いてみましても、アデナウアー首相演説の中には、相当反共の思想が現われておったと思います。私は、同じ反共をかりに説くといたしましても、文字通り自由主義者の人が反共を言うのでありますならば、それほどこれを問題にする必要はないと思います。しかしながら、現在の西ドイツ政治情勢はどういうことであるか。(「アデナウアーに言え」「ドイツに行ってやれ」と呼び、その他発言する者多し)これは日本関係があるから言うのであります。少し静かにして聞いていただきたい。西ドイツはこういう状態である。西ドイツの閣僚十七名——全員で十七名だそうでございますけれども、そのうちの八名は旧ナチス党員である。その他、NATOの中部ヨーロッパ司令長官シュパイデル将軍は、旧ドイツ対ソ作戦参謀長であった人であります。それから現在西独国防軍最高司令官——これは西独軍事会議最高議長でもありますが、このホイジンゲル氏はナチス軍司令官であった。現在の西ドイツ国防軍は、このようにほとんどが旧ナチス軍指揮者によって指揮されておるのであります。こういうふうに、現在ナチスへの復活の情勢西独に現われており、あのかちかちの反共主義者日本に来て反共ということを言うから、そこで私どもはこれを問題にせざるを得ない。岸首相も、自他ともに任じておられる反共主義者であります。その岸首相が……。     〔発言する者多し〕
  15. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  16. 黒田寿男

    黒田委員 その岸首相が、常識的意味において自由主義的政治家であったのでありますならば、これを私は問題にしないのです。しかしながら、何と申しましても、岸首相は、私は決して過去のことをどうこう言いたくはございませんけれども、あのドイツとともに反共軍事同盟を結成して、それが太平洋戦争に発展して、日本を今日のような状態に突き落としたその責任者の一人であって、今日もまたかちかちの反共主義者であります。私は、個人として反共主義であるということを問題にしようと思いません。けれども西独のこの反共主義者日本のそのような過去の閲歴を持っておる岸首相とが、反共問題について語り合うというようなことがあったと私は想像しなければならぬと思いますけれども、(「何でもない」と呼び、その他発言する者あり)何でもないのではない。そこから非常におそろしいものが出てくるのではないかという憂慮を私どもは抱かざるを得ない。戦争中に岸総理政策によって徹底的に苦しめられた私どもとしては、このことを問題にしないわけにはいかないのであります。そこで、アデナウアー首相との会談で、がんこ反共主義的な考え方の率直な訴えを、おそらく訴えられたに違いない。そうすると、今自民党の中でさえ対共産圏外交の転換を来たさなければならぬという声が持ち上がっておりますときに、アデナウアー首相岸総理に対するいろいろな話し合いが、かえって日本の対共産圏外交に何らかの悪影響を与えるようなことになるかもわからないという憂慮を私どもは事実抱いておる。(「その通り」「勝手な話だ」と呼び、その他発言する者あり)幾らどう言われても、私どもは抱いておるのであるから仕方がない。岸総理は、この極東範囲についても、三木氏が進言をすれば、その場で、慎重を欠いた軽率な答えをすぐにするという人でありますから、そこで私は心配する。そういうアデナウアーとの会談の中から、何か対共産圏外交に関する悪影響でも生ずるような話し合いがあったかどうか。なければそれでけっこうです。しかし、一応こういう疑いを抱かざるを得ないという私ども気持——自民党の諸君がいかに申されましても、そういう気持を抱く国民は多数あるのであります。(発言する者あり)私は、多数の人の気持を代表して、今ここで質問しておる。だから、そうでなければないと、はっきり言っていただけばいい。しかし、一応このことを問題にせざるを得ないというのが私どもの心境であります。そこでこの質問をするのであります。
  17. 岸信介

    岸国務大臣 今の御質問で、私の過去の経歴はいろいろおあげになっておりますが、アデナウアー首相の過去のことについては触れておられません。けれどもナチスから非常な迫害を受けて、ボン首相として、自由主義者として立たれた過去のアデナウアー首相のことも頭に置いて過去を論ずるならば、当然考えなければならぬ問題であると思います。私は、アデナウアー首相と昨年ボンでお会いしましてから、そのときの印象もそうでありますが、常に正義と自由を確保するという、自由主義者として強い信念に立っておられるのであります。従って、共産主義的なイデオロギーに対しては、昨日の演説にもありましたように、強い反対立場をとっておられます。これは人々によって、あるいはコミュニズムを信ずる人もありますから、信ずる人から言うと、そのイデオロギー反対するということははなはだ快くないことでありましょうけれども、これは、私は、自由主義者立場からいえば当然であろうと思います。ただ、何か私とアデナウアー首相との会談においていろいろな想像を黒田委員もされておりますが、私は、従来考えておる日本外交方針を今度の会談でもって変えるようなことは一切考えておりません。
  18. 黒田寿男

    黒田委員 総理は、アデナウアーとの会談から、何ら私どもが一応危惧しておるような問題が起こり得ることはない、こういうようにはっきり御確言をなさいました。それで、私もこの問題に関する質問はこれ以上は進めません。ただ、しつこいようでありますけれども、もう少し御質問をしてみます。  この東西雪解け政策ということについて、これは新聞も報じておりますけれどもアデナウアー首相岸総理大臣の言うのとよく似たような意見を発表しております。ただいまの共同声明では、非常なきれいなことが言われておりますけれども、私どもが、現在の世界情勢は大きく雪解けに向かって進んでおるのではないかという質問をいたしますと、いや、そうはいっても、そう簡単に問題が解決するものではない、こういう答弁総理はされておる。そのことは、私どももそうだと思います。雪解け情勢であるからといって、今すぐすべての問題が解決するとは思わない。けれども、大きな流れとして、長期的な、そして世界的な規模においてながめましたときに、雪解け傾向が本質的なものであるということを理解するのと、そうでないのとでは、その情勢判断から出てくる外交政策、あるいは軍事政策に関する政策に非常に大きな相違が出てくるのであります。岸総理大臣は全体として雪解けの方向に進んでいることを否定されているとは申しません。そんなことを言ったら非常識になります。けれども、われわれの質問に対して、「だがしかし、なかなか」という言葉で、結論においては大きな流れに逆行する政策をとっておる。これが問題です。私どもはそう思う。アデナウアー首相とそういう逆行的な政策について話し合いがあって、うまく一致したと申しますか、うまが合ったというようなことじゃなかったかと思うのですが、それを心配する。それはアデナウアー首相の言った言葉として新聞に報ぜられるところに、そういう傾向があらわれておるわけですから、そういう話があって、そういう問題について何か特に両者の間に一致した見解がみられたというようなことがあったのではないか、これもしつこいようでございますけれども、お尋ねを申し上げておきたい。
  19. 岸信介

    岸国務大臣 この共同声明にもございますように、国際間の諸問題はすべて話し合いによって解決されるべきものであるという考えを強調することと、また、緊張緩和を実現するための東西間の努力が行なわれておることをわれわれは歓迎するということは、それが成功していくように、とにかく協力なり、これの機運を作っていかなければならぬということについて意見が一致しておる、こういうことがはっきりと共同声明に明らかにされておりまして、私どもの考え方は、そういうところにおいて両者の意見が一致しておるのであります。
  20. 黒田寿男

    黒田委員 もう二、三御質問いたします。  昨日の国会でのアデナウアー首相演説を私も注意して聞いておりましたが、これは新聞も批評しておりますように、相当露骨な反共精神で、しかも、単に反共精神であるというだけでなくて、その精神の押しつけのような感じを私ども抱かざるを得なかった。これは私だけの感じじゃなくて、ドイツ新聞記者がそう感じたと新聞は書いておる。それをそう感じないのは、今ここに来ておる自民党の諸君だけだ、私はそう思う。(「失礼なことを言うな」と呼ぶ者あり)失礼じゃない、事実を言っておるのだ。(「委員長注意しろ」「取り消せ」と呼び、その他発言する者多し)失礼じゃありません。私は、もう少し言うてみましょう。  アデナウアー首相演説の中で、共産主義とはむろん武装をもって対決するけれども、武装をもって対決するだけでなくて、精神的な対決として取り組まなければならない。これだけなら何でもない。更にこう演説している、「この分野においても、過去の他の分野で行なわれたように、両国の科学者や政治家が互いに助け合って、実り豊かな仕事を行なうべきである。」そして、日本のことについて触れております。アデナウアー首相が、自分だけの態度を示したものではない。日本ともこうやろう、こう言うておるから、私は問題にしておる。このくらいのことに気がつかないような感覚では、心細いと私は思う。     〔「それだけじゃない」「それに反対するのは社会党だけだ」と呼び、その他発言する者多し〕
  21. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  22. 黒田寿男

    黒田委員 そこで、これは私だけの感じではなくて、ある新聞の報じているところによりますと、ドイツ新聞記者がそういうふうに感じておると書いてある、こう言うております。アデナウアーが、共産主義に対し、政治的、理論的に闘争をいどむということはいいとして、日独間の文化協定までも反共のワクで縛りつけるということは行き過ぎである、こういって、ドイツの一ジャーナリストははらはらしておった、こう伝えておるのです。ドイツ人自身がそういうふうにはらはらした感じで彼の演説を聞いておった。アデナウアーはこの演説の中でこう言っておる。これは問題だ、これについて政府意見を聞いてみたいと思います。(「それを岸さんに言ったってしょうがないじゃないか」と呼ぶ者あり)政府に言うておるのだ。     〔「委員長注意しろ」と呼び、その他発言する者多し〕
  23. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  24. 黒田寿男

    黒田委員 注意して下さい。聞いてからにして下さい。アデナウアーは、こう演説しておるのです。日本関係のある……。     〔「それを岸さんに聞いたってしょうがないじゃないか」と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
  25. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  26. 黒田寿男

    黒田委員 質問をいたします、続けます。  アデナウアー首相は昨日国会での演説でこう言っておる。それは、「私は、この問題で近々ボン駐在の日本大使と詳細に話し合いたいと考えておる。」(「けっこうだな」と呼ぶ者あり)こう言っております。岸首相は、かりにそういう申し出がありましたときに——そういう協定とは反共文化協定のことでありますが、そういうものを推進される意思があるか。アデナウアー首相から武内大使を通じてこの問題について詳細な話し合いがあったときに、これに応じて反共文化協定締結する、こういう考えがあるかどうか。こういう協定を結びたいということをアデナウアー首相が言っておるのでありますから、日本政府はそれに対してどういう態度をとるかということは、私どもとして聞かざるを得ない。これについて総理大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  27. 岸信介

    岸国務大臣 まだ具体的な話し合いはあるわけではございませんで、ボンで武内君にアデナウアー首相がいろいろと詳しく話をするということを言われておるのでありますから、その話を聞いた上において、われわれは適当に処置するべきものである、かように考えております。
  28. 黒田寿男

    黒田委員 次に、これは日本の軍事問題と関係があります。そうして、それは西独との関係にもなりますので、ついでにお聞きしておきたいと思います。これは事実の問題でありますから、そのつもりでお答え願いたいと思います。  それは少し前の西ドイツのある新聞でございましたが、その新聞報道によりますと、日本の防衛庁の西独駐在武官が、原子戦争の演習が西独で行なわれたとき、観戦武官として立ち会った、そういうことを報じておるわけです。これが事実であるかどうかということは、私どもにもわかりません、わからないから質問するのであります。防衛庁が西独に駐在武官を送っておるかどうか、そうして、今申しましたようなことがあったかどうか、そういう報告があったかどうか。これは安保条約とも関係がありますので、この際ついでにお聞きしておきたいと思います。これは総理大臣でも防衛庁長官でもけっこうです。
  29. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 駐在官は送っております。しかし、その演習に立ち会ったか立ち会わないか、その報告は受けておりません。
  30. 黒田寿男

    黒田委員 もう一点で最後にします。これもやはり軍事問題と関係がありますから、ついでにお尋ねしたいと思います。  日本西独との間に原子力協定が一昨年結ばれた、これは周知の事実でございます。むろん、その中には平和利用ということもいわれておりますけれども、そのほか、情報の交換というようなこともいわれておる。このことを私ども、問題にせざるを得ないのであります。すでに原子力協定締結されましてから相当の期間がたっておりますが、いわゆる情報の交換というようなものがなされたことがあるかどうか、あったとすれば、それはどういうことであったかということを、西独の状況が状況でございますから、この際ついでに承りたいと思います。これで私の質問は終えたいと思います。
  31. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 平和利用に関する情報の交換というような点については、われわれも将来の問題として考えて参りたいと思っておりますけれども、現在、特別にそういう協定締結いたしておりません。
  32. 黒田寿男

    黒田委員 何もまだ情報の交換らしいものはない、こうおっしゃるわけですか、——ないとおっしゃるのですか。ただ事実の問題をお聞きするだけですから、そのままをお答え願えばけっこうであります。
  33. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今申した通りでございます。
  34. 黒田寿男

    黒田委員 ないとおっしゃるのですね。
  35. 小澤佐重喜

    小澤委員長 聞こえなかったでしょうが、ないとはっきり言っております。
  36. 黒田寿男

    黒田委員 実は、こういうことを質問しますのも、日本ドイツとが原子力協定を結びましたときのドイツの原子力大臣のシュトラウスが、現在では国防大臣になっておる。そういう事実がございますから、何かそこに私ども懸念を抱かざるを得ないものがあるように思われるのでありますから聞いてみたのでありますが、ないとおっしゃれば、これ以上質問はいたしません。  これをもって私のアデナウアー首相岸首相との会談に関する私の質問は終わりといたします。(拍手)
  37. 小澤佐重喜

    小澤委員長 横路節雄君。
  38. 横路節雄

    横路委員 総理にお尋ねをしますが、先ほど総理から、去る三月二十五日の私の質問について政府の見解を表明されたわけです。これは総理が私の質問に対して、二十五日に「そういうことをここで論議することは、適当でないと思うわけであります……。」というお答えに対しての釈明でありまして、私が三十五日に総理答弁を要求しましたのは、去る三月八日、二月の十日予算委員会において、政府の統一見解として、金門馬祖極東の地域に入るとお答えになったことについて、その後変更されたのか、あるいは従来の統一見解を変えないで、そのまま持続されるのかということについて私がお尋ねをし、その点についてのお答えではないと思うのです。ただ総理は、先ほどの釈明の中で、「政府の見解として、特定の島嶼が極東に含まれるか、含まれないかということを端的に表明することは適当ではないと考える旨を申し上げたつもりであった」と答弁されたのは、「そういうことをここで論議することは、適当でないと思うわけであります……。」ということについて釈明でございまして、私が長時間にわたりまして、統一見解としての金門馬祖極東の地域に含まれているのかどうか、従来の統一見解は変更されないのかどうかということについてのお答えは、先ほどの釈明からは何ら明確でないわけです。ですから、重ねてこの際、総理からこの点について明確にお答えをいただきたいと思うわけです。
  39. 岸信介

    岸国務大臣 その点に関しましては、せんだってもお答え申し上げましたように、統一見解としては、二月二十六日に愛知委員に対してお答えを申し上げた通りでございます。しからば、従来、具体的にどの島が入るとか、入らないとかというような点が論議されて、政府として答えたことを変えるのか、変更するのかという御質問に対しましては、具体的にそういうことを、入るとか、入らないということを端的に申し上げることは適当でないと思います。ただ、前に申し上げました趣旨を変更する意味で統一解釈をいたしておるわけではございません。趣旨においては同じでありますけれども、具体的に、端的にこの島が入ると言えとか、入らないと言えというふうな、それにお答えすることは適当でない、かように申し上げたわけでございます。
  40. 横路節雄

    横路委員 総理が二月の二十六日に本委員会で愛知委員質問にお答えになりました点は、記録にも載っておりますし、そのとき政府側から配付になりました「新安全保障条約にいう極東の観念」という中で明確になっているわけです。しかし、今どうも総理は、金門馬祖について、個々の島々について入るとか、入らないとかということは、そういうことを答えることは適当でないというお話ですが、三月の一日、予算委員会総理は、社会党の田中委員質問に答えて——田中委員金門馬祖は含まるべきではない、これは中華人民共和国を刺激する最大の問題であるから、これは除外すべきだ、こういう点につきまして、総理はどういうようにお答えになっておるかというと、この金門馬祖については、これを極東の「地域には含める、こういう解釈であります。」、さらに、田中委員から重ねて、総理から御答弁がございましたので、将来問題の種になる地域だから、ぜひこれは除外すべきだ。岸総理は、このときこう言っています。「金門馬祖は御承知の通り中華民国の領有しておるところでございます。従ってこの状況のもとにおいて、台湾の平和と安全の場合に非常に密接な関係を持っておる地域でございますから、この極東という範囲に入れるという解釈を変えることは、これは私どもは考えておりません。」と言っておる。これは二月二十六日前の、私がこの前指摘しました二月十日の淡谷委員、二月十二日の辻原委員質問に答えて、この点は、藤山外務大臣は明確に入るとお答えになっておる。しかし、二月二十六日に統一見解として変更になったのかもしれないと私どもは思うから、この間聞いたわけです。私もその点、三月一日の田中委員の予算委員会における速記録をここに持ってきているわけです。今私が読んで、総理にお聞きいただきましたように、総理は、この金門馬祖については、中華民国の領有しておるところであるから、「この極東という範囲に入れるという解釈を変えることは、これは私どもは考えておりません。」と言っておる。これが二月二十六日の統一見解以前なら別です。しかし、三月一日の予算委員会答弁されているわけですから、この点まで否定なさるのですか。この点について、総理はさらにこれについての見解を変えられるのですか。この点はこの通りでありますというなら、この通りであるでけっこうなんです。
  41. 岸信介

    岸国務大臣 私は今、先ほどお答え申し上げましたように、具体的にどの島が入るとか、入らないとかいうことをあらためて言うことは適当でないと思いますが、以前答えておるところのものを、われわれは総合して、二月二十六日の統一見解といたしたのでありまして、それは前に述べたことを取り消したとか、前のを変更したという趣旨ではないのであります。
  42. 横路節雄

    横路委員 それでは重ねてこの点について総理にお尋ねしますが、三月二十九日参議院の予算委員会におきまして、この問題について秋山長造委員から総理にこうお尋ねをしているわけです。「私は端的にお伺いしますから端的に答えていただきたいんですが、まず第一に総理大臣は従来金門、馬相が極東範囲に入ると答えてきたというこの事実をお認めになるかどうか。」、総理大臣は「そういうことをお答えした事実はございます。速記録に明らかに残っているだろうと思います。」こういうように第一点についてお述べになった。それから秋山長造委員は、さらに言葉を継いで、「それから第二は、その従来の答弁をこの際特に変更したり、取り消したりする意思はないのか、」こういうようにお尋ねしたところ、総理は、「私は従来にお答えを申し上げておることと趣旨の違った、この趣旨を変更する考えはございません。」これはもう実に具体的に聞き、具体的に総理答弁されている。これは三月一日とかいうものではなしに、三月二十九日——三月二十五日に本委員会で問題になりました点を参議院で取り上げて、三月二十九日総理から御答弁になっている。この点は、三月二十九日の総理答弁にはいささかも変更ございませんね。
  43. 岸信介

    岸国務大臣 変更はございません。
  44. 横路節雄

    横路委員 それでは、私もこの前、約一時間にわたってこの点についてお尋ねしたのですが、総理は最後までどうもお答えにならなかったのを、今度は明確にお答えになって、金門馬祖は含まれるという二月八日、十日、十二日の統一見解を確認をされたわけです。  そこで、私が総理にお尋ねをいたしたい点は、二月二十六日の愛知委員質問に答えて、私たちに配付いたしました「新安全保障条約にいう極東の観念」、ここでこういうようにいっておられるわけです。「両国共通の関心の的となる極東区域は、この条約に関する限り、在日米軍が日本施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域である。」、中段にいろいろ言葉はありますが、「この区域に対して武力攻撃が行なわれ、」「米国がこれに対処するため執ることのある行動の範囲は、」「必ずしも前記の区域に局限されるわけではない。」、こういうふうに答弁されておる。そこで、私がこの金門馬祖のお答えと関連をいたしましてお尋ねいたしたいと思いますのは、政府側の統一見解は、「武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域である。」ですから、金門馬祖に対して、他の国から武力攻撃が加えられた場合における在日米軍の行動する範囲は、当然これは金門馬祖に武力攻撃を加えている相手方の攻撃の根拠に対して、米軍が出動することを私は意味していると思うのです。この防衛の地域、金門馬祖に対する武力攻撃が行なわれた、そのために米国がこれに対処するためとることのある行動の範囲は、必ずしも前記の区域に局限されないのですから、武力攻撃が金門馬祖に加えられた、相手の国です。どこかわかりませんが、相手の国から攻撃をされた。どこか攻撃の地点もございましょう。そういう場合における米軍の——米軍というのは、ここでいうのは在日米軍のことです。行動の範囲は、金門馬祖よりもはるかに地域を越えて、金門馬祖に武力攻撃を加えているその地域に対して、在日米軍は当然行動をすることになろうと私は思うのです。私はこの解釈をお聞きしているのです。事前協議についてはあとでお尋ねしますが、その点について総理に、これは文書で渡されているものですから、それでお尋ねしているわけです。
  45. 岸信介

    岸国務大臣 米軍の行動は、日本に駐留しておる米軍におきましても、その他の米軍におきましても、国連憲章等の制約を受けることはこれは当然である。第一段に、受けることは当然でありますが、別に憲法上その他において制約を受けておりませんから、その行動の範囲というものをあらかじめ限局することはできぬ。ただ問題は、国連憲章の五十一条によって、必要な限度を越えた行動のできないことは当然だ。また、事前協議の対象となって、日本かどこまでこれを認めるかということは別に制約がありますけれども、今お読みになりました範囲内だけのなにとしては、制約を受けない。
  46. 横路節雄

    横路委員 私も、今総理がお答えになりましたように、私が読みましたこの範囲で、すなわち、「武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域」、一例をあげれば金門馬祖、これに対して武力攻撃が行なわれた場合における在日米軍の行動範囲というものは、いわゆる制約をされないのだ。これは私も、原則としてそうだと思う。この点は今総理から明確にお答えをいただいたわけです。そうすると、総理、結局金門馬祖に攻撃を加えられたという場合には、当然それに対する米軍の行動というのは、金門馬祖に攻撃を加えてくるその拠点に対して行動できるわけですね。その点、間違いございませんね。
  47. 岸信介

    岸国務大臣 事態を見なければいかぬと私は思います。従って、何か攻撃があったから直ちに非常な他の広い地域にまで行動するとか、その武力攻撃を加えた基礎と思われるようなところまでいけるかどうかということは、そのときの事態から国連憲章の精神によってきめるべき問題である、かように思います。
  48. 横路節雄

    横路委員 あとで国連憲章についても実はお尋ねしたいと思いましたが、今総理から国連憲章のお話がございましたので伺います。国連憲章の定めに従ってということになると、国連憲章五十一条では、武力攻撃が発生した場合においては、直ちにいわゆる自衛権の発動ができるわけです。そうして、そのとった措置については、安保理事会にかけて自後の行動について待つわけですから、武力攻撃があったならば、直ちに憲章五十一条に基づいて行動できるじゃありませんか。その点について、わざわざこれを協議するのですか。憲章五十一条については、武力攻撃が発生したら、直ちにいわゆる個別的な自衛権その他に基づいてやれるじゃありませんか。だから、私の聞いておるのは、この金門馬祖についてそういう攻撃が行なわれれば、在日米軍としては、国連憲章に基づいて、直ちに攻撃されたその拠点に対して武力行動ができるということは当然でございませんか。
  49. 岸信介

    岸国務大臣 在日米軍については、御承知のような事前協議の対象になりますから、国連憲章だけで出動するわけにはいかぬと思います。
  50. 横路節雄

    横路委員 全門、馬祖について武力攻撃が行なわれた場合には、総理、在日米軍の出動はどうなさるのでしょうか。
  51. 岸信介

    岸国務大臣 これはただ武力攻撃があったという事実だけで判断はできないと思います。もちろん、四条によって、極東に対する協議がどういうふうにあるかどうかという——今いろいな国際情勢というものが背後をなしておるわけでありますから、ただ武力攻撃があったという事実だけでこれをきめるわけにはいかない。しかし、少なくとも過去において、金門馬祖の戦闘というものが行なわれたわけでありますが、そのときには、日本に駐留しておる米軍は出動しておらないのであります。また、ああいう事態であるならば、日本の平和と安全に直接密接な関係のある事態とは私は考えません。従って、そういう場合においては、われわれは、事前協議の場合においてこれを拒否していく考えであります。
  52. 横路節雄

    横路委員 総理に、この問題と関連して、私は非常に疑問に思っていることがあるのでお尋ねをしたいのです。  重ねてですが、極東の地域、これは「この条約に関する限り、在日米軍が日本施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域である。」、そうしてこの区域に対して武力攻撃が行なわれた場合に米国がとる行動の範囲は、前記の区域に局限されない、こういうわけですが、そこで、総理が前に、二月八日私にお答えになりました歯舞、色丹、国後、択捉は、これは極東の地域である。この極東の地域とは、私が何べんもここで申し上げている武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域だ。そうすると、私はここで一つ総理にお尋ねをしたいのは、この歯舞、色丹、国後、択捉に対して、これは在日米軍が日本施設及び区域を使用して、武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域である、これが政府の統一見解だということになると、歯舞、色丹、国後、択捉に武力攻撃が行なわれた場合というのは、一体どんな場合なんだろうか。私もこれはずいぶん考えてみたのですが、どういう場合なのか、これはなかなかはっきりしない。そこで私は総理にその点について——これがただ道に極東の地域に入るというなら別ですが、これが防衛に寄与し得る区域である。これに武力攻撃が加えられた場合に、在日米軍が出動する区域なんだ。もちろんそれ以上に広がる場合もありますが、そういうように、二月八日の総理答弁では必ずしも私はそういう疑問を抱きませんでしたが、二月二十六日にさらに統一見解として出されたこの答弁、この文書を見まして、私はその点に非常に疑問を持ちますので、歯舞、色丹、国後、択捉に対して、防衛に寄与し得る区域だ、そうして在日米軍は、これに武力攻撃があった場合には行動できる、もっと広がりますが、とにかくその防衛区域だ、こうきめた場合におけるこの歯舞、色丹、国後、択捉に武力攻撃が加えられた場合というのは、どういう場合なんでしょう。この点を一つお尋ねしたい。
  53. 岸信介

    岸国務大臣 現在の状態においては、私はそういう事態が起こるとは考えておりません。
  54. 横路節雄

    横路委員 そうすると、今総理は、現在においてはそういう事態が起こり得るとは思わない。そうだから、将来日本の領土に明確になったという意味なんでしょうか。その点はどうなんですか。どうもはっきりしない。今はそういうことは起こらないと思う。今なら起こらない、将来なら起こるということは、将来日本の領土に明確に復帰した場合はと、こういう意味なんですか、その点お尋ねしているんです。
  55. 岸信介

    岸国務大臣 私ども、これは、今日いろいろな領土と考えておりながら、あるいは条約により、あるいは宣言により、あるいは事実上、実際の日本の施政権の及んでおらない地域がございます。しかし、これらについては、日本国民としては、いわゆる施政下にある領土ではございませんけれども日本固有のものとしての関心を持っておるわけでございますから、そういう地域を初めから除いてかかるということは、私は適当でなかろう、こう思っております。
  56. 横路節雄

    横路委員 総理にお尋ねをしますが、それでは歯舞、色丹、国後、択捉というのは、現在はどういうような状態にあると政府は解釈をなすっているのですか。
  57. 岸信介

    岸国務大臣 これは、御承知のように、ソ連が実際に領有しております。そうしてこの問題の解決は、日ソ共同宣言によっての条件によってきめられるという、そういう形において懸案になっておる地域でございます。
  58. 横路節雄

    横路委員 総理にお尋ねしますが、今の歯舞、色丹、国後、択捉の現在の状態、これは二月の二十六日に総理が愛知委員質問に答えて、「この条約全体を通じて、われわれがこれを維持し、守っていく、他から不当な侵略行為があれば、やむを得ず実力を行使してこれを排除するという点において、両国が共通の関心を持っているという地域」これが極東の地域、これは「今お話しになりましたように、自由主義の立場をとっている国々の支配しておる領域というものがその主眼になるわけでありまして、共産圏において実力をもってこれが平和と安全を維持しておられる地域というものは、われわれの共通の関心を持っておる地域には入らないというのが適当であろうと思います。」。現に国後、択捉、歯舞、色丹は、これは参議院で自民党の西田信一委員質問に答えて、今日はソ連が施政を行なっていると言われている。現にソ連が、実力をもって平和と安全を維持している、そういうように総理が二月の二十六日に愛知委員質問にお答えになっている。この点からいけば、矛盾なさいませんか。国後、択捉、歯舞、色丹、これを極東の地域に入れるということとこのお答えとは、矛盾しておりませんか。
  59. 岸信介

    岸国務大臣 先ほども申し上げておるように、これらの地域については、北方の日本の固有領土として、われわれは一貫して主張してきておるところであります。しこうして、その解決がつくまで現実にソ連がこれを領有し、これを支配しておるということでありまして、私どもの主張は、一貫して日本の固有領土としての主張をしておるわけでございますから、従って、これを除くということは、私は適当でない、こう考えたわけであります。ただ、先ほども申し上げましたように、実際上今それでは問題になるような事態が起こっておる、どういう場合だということは、今の状態において、私は起こるとは考えておりません、こう答えたわけであります。
  60. 横路節雄

    横路委員 総理にさらにお尋ねしますが、先ほど来たびたび読んでおります「新安全保障条約にいう極東の観念」、その中で、「この区域に対して武力攻撃が行なわれ、あるいは、この区域の安全が周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するため執ることのある行動の範囲は、前記の区域に局限されるわけではない。」、こういうようにお答えになっておる。「この区域の安全」、たびたび私がここでお尋ねをし、確認をしておる極東の地域の安全が、「周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合」という、その周辺の地域とはどこをさしておるのでしょうか。
  61. 岸信介

    岸国務大臣 どこといって具体的にさしておるわけではございませんで、極東という観念をきめたならば、その極東の地域には属せないけれども、いわゆるその周辺の地域というものが当然考えられるわけでありますから、そのことを言っておるわけであります。
  62. 横路節雄

    横路委員 総理、実は今私がこのことをお尋ねしておるのは、この言葉は、ここで私が初めてお聞きしておるのではないのです。総理もまたこれについて何らお答えをしていなければ、ここでお尋ねをしようとは思わないのです。しかし、二月二十六日、総理は愛知委員質問に答えて、こう言っているではありませんか。「この極東の周辺で、たとえばベトナム——地理的には南ということになりましょうが、ベトナムというようなところは、この条約で言う極東という概念に入らないといたしましても、そういったところは極東の周辺地区でありますから、そういうところにおける事態極東における国際の平和及び安全を脅かす場合は、この第四条におきましては、いわゆる協議の対象になる」、ここで総理はこれを承認されたのです。愛知委員が、極東の周辺地区とは何か、たとえば、ベトナムである、地理的に言うならば南ベトナムである、こういうように愛知委員総理に御質問なすったことについて、総理はこれを承認されたわけです。総理が一度もこのことについてお答えがなくて、総理の見解について表明がなければ私はお尋ねをしない。しかし、総理はそういうようにここでお答えをしておるから、そこで私が、この地区の安全が周辺地区に起こった事態のために脅威されるような場合という周辺地区は、現に一つの例として南ベトナムをあげたわけです。南ベトナムが、極東地区における周辺の地域であるとおあげになった以上は、この点については、一つあがったわけですから、どこをさしていらっしゃるのですかとお尋ねをしておる。愛知委員質問に答えてなければいいですよ。お答えになっておるのですから。
  63. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、愛知委員が、一例をあげてこれを質問されたわけでございます。その地域は、われわれの考えておるフィリピン以北、日本を含めての日本の周辺という極東の地域の、さらにその周辺である地域であることは、これは常識上当然であると私は思います。しかし、どことどことどこを言うのだというようには、われわれお答えすることはできない、こう思います。
  64. 横路節雄

    横路委員 今、総理の御答弁でだいぶはっきりしたわけです。極東地域の周辺の地域とは、フィリピン以北、日本の周辺、これが極東の地域で、その周辺の地域である。一つの例としては南ベトナムも入る。しかし、具体的に言うわけにはいかぬということになれば、当然フィリピン以北、日本の周辺、金門馬祖も入る、国後、択捉、歯舞、色丹も入る。そうして愛知委員質問に答えて、南ベトナムは極東地域の周辺になると言われた。そうして、国会で論議した極東地域の周辺の地域は、極東地区の周辺の地域で具体的には言えないということになっても、そこから中国沿岸はおろか、中国の奥地についても、樺太全島についても、千島列島についても、沿海州についても、シベリアについても、当然概念としては極東地区の周辺の地域というものに入ることになるわけです。これは総理、否定なさいますか。否定なされないでしょう。
  65. 岸信介

    岸国務大臣 問題は、極東の平和と安全にその周辺に起こった事態が非常な脅威を与えるかどうかという問題でございますから、この地理的の概念だけからいうならば、常識的に極東という観念を、抽象的でありましても一応きめる以上は——それにその周辺の地域ということでありますけれども、問題は、具体的には、そのところに起こった事態極東の平和と安全に脅威を与えておるかどうかということで判断しなければならぬと思います。
  66. 横路節雄

    横路委員 私は今の総理答弁で、私の考えと同じだと思ったのです。そこでお尋ねをしたいのです。今総理は、極東の地域というのは、何べんもここで論議しました条約にいう極東の地域、しかもその周辺の地域というのは、総理が常識的にいってそのまわりも地域だということになれば、だれが考えても、一例として南ベトナムがあがったのだから、中国沿岸はおろか、奥地、朝鮮半島から東北地区、北樺太から、北千島から、沿海州が入ってくることは当然だ。  そこで私がお尋ねしたいのは、なぜこれを聞いているかといえば、この地域に、今の「周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するために執ることのある行動の範囲」、これは局限されないと言われたから聞いた。そこで総理にお尋ねしたいのは、この地区の安全が周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合——脅威される場合というのは、武力攻撃が行なわれるという意味でもない。国連憲章五十一条でいう武力攻撃が発生したという場合でもない。この脅威されるような場合というのは、どういう場合なんでしょうか。これは国連憲章五十一条にも、新安全保障条約の五条にも、どこにもこの善業はないのです。あるのは「武力攻撃が発生した場合」あるいは「武力攻撃が行なわれる」というのを、ここでは「脅威されるような場合」となっておる。この「脅威されるような場合」とは、一体何をさしているのですか。
  67. 岸信介

    岸国務大臣 米軍が武力行動をやる場合においては、これは武力行動がなければそういうことはできないのであります。これは国連憲章の五十一条をお読みになってもそうなっておる。「武力攻撃が発生した場合」というふうに明瞭に書いてある。従って、脅威を与えたから、直ちに武力行動をするということではないと私は思います。
  68. 横路節雄

    横路委員 それならば、総理、こういう答弁をなさらない方がいいんじゃありませんか。だから総理が、そのときそのときのわれわれの質問に答えて、ここでこういう原稿をお持ちにならないで、政府の統一見解としてでなしに、総理がここでお答えになったのであるならば、言葉が足りないとか、あるいはそのあとにいって、言葉が足りないから補足するとかいうことはございましょう。しかし、これは二月二十六日に、わざわざ事前に政府総理大臣外務大臣以下全部お集まりの上で統一見解として発表になり、私たちにこれを配付して、総理がお読みになって、これが政府の統一見解であると言われた。それならば、今憲章の五十一条にある米軍が行動するその基準というものは、憲章五十一条にいう「武力攻撃が発生した場合」と明確になっておる。新安保条約の第五条においても、武力攻撃が行なわれた場合というようになっておる。それであるのに、ここにわざわざ米国がこれに対処する——周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合には、米軍はこれに対して行動できるのだ、こうなっておる。行動できるのだ、こう書いてあるじゃありませんか。これは非常に大事なんです。ですから、総理が、そうではないのだ、脅威されるような場合というのは、武力攻撃が発生した場合なんだ、こうはっきり言うならば、こういうあいまいな、問題を起こすような言葉は削られた方がいいと思う。総理、これはどうなんですか。
  69. 岸信介

    岸国務大臣 こちらから武力行動、作戦行動をやる場合は、武力攻撃があった場合に限ることは、国連憲章に明瞭にされております。しかしながら、安保条約の四条の、極東における国際的平和と安全が脅威を受けるということは、単にこの地域に対して武力攻撃があった場合だけを言うのではなしに、そこに対する脅威、それは周辺に起こった事態が脅威を与える場合もございましょう。こういう場合においては、日米両国においては一方の国と協議するということになっております。協議をして、その場合に米国がとる行動についての範囲その他のことは、これは武力攻撃がなければ、武力でもってこれに対抗するという行動のできないことは、これは当然であります。
  70. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、こういうものをここにお書きになっておるでしょう。「新条約の基本的な考え方は、右のとおりであるが、この区域に対して武力攻撃が行なわれ、」、この場合に武力攻撃が行なわれるということが一つ。もう一つ、「あるいは、この区域の安全が周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合、」、この二つですよ。そうして「これに対処するため執ることのある行動の範囲は、その攻撃又は脅威の性質いかんにかかるのであって、必ずしも前記の区域の局限されるわけではない。」だから、米軍が行動するためには、二つのそれぞれ違った要件が要る。一つは武力攻撃が行なわれたということ、一つは、その周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合、この二つが書いてあるじゃありませんか。「あるいは」と書いてあります。そうしてその「あるいは」の二つを受けて、米国がこれに対処するためとることがある行動の範囲は、前記の地域に局限されないと書いてある。それならば、ここで新条約の基本的な考え方は右の通りであるが、この地域に対して武力攻撃が行なわれ、米国がこれに対処するためとることのある行動の範囲とか、あるいは周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合とか、こういう言葉は除かなければ、このこと自体だって、これは国連憲章違反ですよ。「武力攻撃が発生した場合」と憲章五十一条にはなっておる。総理、このことを入れるということは重大問題ですよ。これは総理がお答えになったのだが、外務省はあまりよく知っていないようです。これは重大ですよ。「あるいは」をここで明確に削除されたらどうですか。このことは国連憲章五十一条の違反になるのだ。「武力攻撃が発生した場合」でなしに、「脅威されるような場合、」というのは、明らかに異なる。だれが書いたか知らぬが、これは総理、率直に削除されて、「武力攻撃が行なわれ、」、そういうことのみにとどめることが正しいですよ。
  71. 岸信介

    岸国務大臣 これはお読みになってもわかりますように、「米国がこれに対処するため執ることのある行動の範囲」、「行動」と書いてありまして、武力行動する、こう限定をいたしてはおりませんので、もちろん、米国の行動というものは、国連憲章の範囲内において行なわれなければならぬ。これは条約の全体を通じての大前提として、われわれ両国が認めておるところであります。
  72. 横路節雄

    横路委員 そういうようにお答えになられても、それならば、総理条約の第五条にどう書いてあるのですか。「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」と書いてある。ここでも「行動」でありませんか。この「行動」とは何かということを、参議院の予算委員会で、小林孝平委員から指摘されているではありませんか。ここでも「行動」といっている。今総理の方から、私たちに配付されている「新安全保障条約にいう極東の観念」の中で、「米国がこれに対処するため執ることのある行動の範囲」という場合の「行動」と、条約にいう「行動」とは、違うのだなどとおっしゃっても、あなたの方では言葉を統一してやっていらっしゃるではありませんか。それを、この場合においては武力行動だ、この場合には違うのだ、こういうことはないでしょう。総理にそういう配慮があるならば、「この区域の安全が周辺地域に起こった事態のため脅威されるような場合、米国がこれに対処するため執ることのある行動の範囲は、」というのは、削除されることが正しいでしょう。
  73. 岸信介

    岸国務大臣 もう一枚あけてごらん下さいますと、「またかかる米国の行動が戦闘行為を伴うときは、そのための日本施設」云々と書いてありまして、「行動」が戦闘行動だけを意味しておるものでないことは、ここで明らかになっていると思います。
  74. 横路節雄

    横路委員 それでは総理にお尋ねしますが、この場合における戦闘行動でない米軍の行動というのは、何を意味しているのですか。
  75. 岸信介

    岸国務大臣 私は、これは具体的になってみなければ、あまり想像して言うことも適当でないかと思いますが、たとえば、そのために部隊が移動するとか、あるいは補給をするとかいうような、作戦行動以外のものもあろうと思います。
  76. 横路節雄

    横路委員 総理、ここにおける「行動の範囲」という意味は、極東の地域の安全に対してその周辺で脅威を与えるような場合には、その脅威を与える地域に対して米軍が行動するということですよ。その戦闘作戦行動でない米軍の行動とはどんなことですかと聞いている。軍隊の行動ですからね。他の行動ではない、軍隊の行動なんだ。しかも、それが極東の地域という、防衛に寄与し得る地域ではなしに、この地域以外の周辺の地区——これは総理がたびたびお答えになっているように、共産主義の国が実力をもって平和と安全を維持している国々ですよ。この国に対して米軍が行動するというのは、戦闘作戦行動でなければどんな行動がありますか。
  77. 岸信介

    岸国務大臣 必ずしも、今お話しのように、その極東以外の周辺の地域に対して行動すると限局すべきものではないと思います。あるいは今申しているように、その地域に対して補給をするというような場合には、作戦行動でないものがあり得るということも考えられるわけであります。(「偵察、哨戒、情報の収集」と呼ぶ者あり)
  78. 横路節雄

    横路委員 そうすると総理大臣、これは今うしろの方で適切な言葉で指示をしてくれましたから……。哨戒、情報、そういうことを意味しているわけですか。(「おれは総理大臣じゃないよ」と呼ぶ者あり)いやいや、なかなか適切なことをうしろで示唆してくれましたから……。総理に聞いているのですよ。総理、どうなんですか。
  79. 岸信介

    岸国務大臣 事態によっていろいろな行動がありましょうが、少なくとも私は、作戦行動というものに限らないということだけは、明確に申し上げておくことができると思います。
  80. 横路節雄

    横路委員 なお、この「脅威されるような場合、」というのは、武力攻撃のおそれのある場合というのとは同じですか、違いますか。
  81. 岸信介

    岸国務大臣 武力攻撃自体が現実に行なわれた場合は、いわゆる「武力攻撃が行なわれ、」という武力攻撃が現実にある場合、武力攻撃が直接に加えられるのでなくして、周辺に起こった、周辺における武力的な争い、戦闘というようなものが、こちらの方へ波及してくるようなおそれのある場合も、ある場合においては、いわゆる周辺に起こった事件が極東に対して脅威を与えるという場合になりましょうし、あるいは現実にはまだ武力攻撃が行なわれておらないけれども、まさに周辺からこの極東の地域に対して武力攻撃が加えられるような危険性がきわめて濃厚になってきておるという場合にも、やはり脅威を与えておる、こういうことであろうと思います。
  82. 横路節雄

    横路委員 そうすると、今の総理のお答えで、「脅威されるような場合、」というのは、武力攻撃のおそれのある場合を含んで、それよりもより以上広いというふうにお答えになったわけですね。一つは、武力攻撃のおそれがある、しかしもう一つはその地帯で——どういうことになるのですか、時間があればゆっくりお尋ねをしたいと思いますが、そうもいきませんから、武力攻撃のおそれのある場合というのを一つ含んでいる、しかし、そのほかも含んでいる、この「脅威されるような場合、」というのは、武力攻撃のおそれのある場合より以上に広範なものであるということですね。そうですね。違いますか。
  83. 岸信介

    岸国務大臣 いや、私の申し上げたのは、ある周辺の地域において戦争、動乱等の事態があって、それがこちらへ波及する——ということは、私は、要するに武力攻撃が、そういう事態から極東の地域に対して及んでくるおそれのある場合だろうと思う。そういう戦争状態であるとか動乱状態ということはないけれども、ある地域において相当な組織的、計画的な武力が集められて、そうして極東に対して武力攻撃を加えようとする状態が非常に濃厚になっておるというような場合が、この極東に対して周辺の事態が脅威を与える、こういうことであります。両方を合わせて、いわゆる武力攻撃を加えられるような危険のおそれの事態を私は分析して言ったわけでありまして、武力攻撃のおそれがあるということよりも観念的に広げて、武力攻撃のおそれはないのだが、そのほかに何があるのかというような意味で申し上げたわけではございません。
  84. 横路節雄

    横路委員 これはいずれあらためて、私は総理にお尋ねをしたいと思うのです。なぜ私がこれを取り上げたかといいますと、「脅威されるような場合」というのをわざわざここにおあげになったことは、前々から問題になっている、新安保条約第五条の「武力攻撃が」、というのが、武力攻撃のおそれのある場合を含んで、極東の地域の周辺での内乱状態といいますか、戦争状態といいますか、そういうものをもひっくるめて、新安保条約第五条をより以上拡大解釈をするおそれはないかと思って、実は聞いておるのですが、時間がありませんから、適当な機会にまたお尋ねしたいと思います。  最後に、私は藤山外務大臣にお尋ねをしたい。それは、この第六条の実施に関する交換公文で、ここでわざわざ戦闘作戦行動について事前協議をするようになった。よく藤山外務大臣がここでお使いになる言葉は、極東の安全と日本の安全とはうらはらだ——うらはらだというのは、表裏一体ということです。極東の安全が日本の安全であるならば、この第六条に基づいて、いよいよ在日米軍がこれからとる戦闘作戦行動は、極東の平和の維持のために非常に大事なんだ、そのことは、即日本の平和になるから、これから出ますよ、こう言ったときに、藤山外務大臣のおっしゃるように、極東の平和と安全と日本の平和と安全がうらはらであるならば、何も事前協議をなさる必要はないじゃありませんか。もしも事前協議をするというならば、米軍がこれからとる戦闘作戦行動、それは極東の平和と安全に必要で、それが日本の平和と安全になると思って行動しようとするが、日本政府は、そうではない、アメリカ軍がとる今回の戦闘作戦行動は、極東の平和の維持にはなるかもしれないが、そのことは日本の平和と安全ではない、こういうときにノーと言うのでしょう。そうじゃありませんか。どういうときにノーと言うのです。もしも、あなたがここでたびたび言うように、極東の平和と安全と日本の平和と安全がうらはらであり、表裏一体だというならば、ノーと言う必要はないではありませんか。ノーと言う必要があるということは、米軍がとる戦闘作戦行動は、極東の平和と安全になるのだ、そのことは日本の平和と安全だと思っても、日本政府は違うのだ、こういう場合にノーと言うのでしょう。これはどうですか、藤山外務大臣
  85. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この前も、うらはら論が出たのでありますけれども、私は、こまかい言葉の使い方は、言語学者でもございませんし、あるいは文学者でもございませんから、うらはらというのが、あるいはほんとうに一体なものだという意味で使われておるならばと、この前も申し上げたわけですが、そういう意味でわれわれは必ずしも使ったわけではございません。極東の平和と安全は、当然に私は日本の平和と安全にも影響するものだと思っております。また、日本の平和と安全が維持されることが、極東の平和と安全を維持するゆえんでもあると思っております。従いまして、極東の平和と安全が何か害されましたときに、先ほど来総理も言っておられるように、それが日本に波及してくるような場合には、われわれは十分警戒をしなければならぬこと、これまた当然でございます。でありますから、われわれは、極東の平和と安全が害されるような事態が起こって、日本の平和と安全に害があるような状態のときには、これは事前協議で当然ノーと言って参らなければなりませんし、そういうことを考えておるのでありまして、うらはらというようなことで何か言われますけれども、私のそういう言葉じりをおとらえになることは、やや軽率だと思います。
  86. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、私は、あなたが文学者だとかあるいは言語学者だとか、何もそんな意味で聞いているのではないのですよ。私は、重大なこの条約についてあなたがお使いになっている言葉を使っている。だから、あなたの方でお使いにならなければ、私の方でも別に聞きはしない。そこで、藤山外務大臣、私はこう聞いているのですよ。極東の平和と安全と日本の平和と安全は表裏一体である、これは随所に出ていますね。もしもそうであるならば、わざわざ第六条に基づく事前協議については、それが表裏一体であるならば、日本の平和と安全のために、米軍が極東の平和と安全に出動するということについて、常にイエスということのみしかないではありませんか。それをノーと言う場合は、米軍が極東の平和と安全に寄与できると思って行動しようとしても、それは日本政府立場からいけば、日本の平和と安全の維持ではない、こういう場合にノーと言うのでしょう。それはどういう場合にノーと言うのですか。そのことを一つ外務大臣お答えになって下さい。     〔発言する者多し〕
  87. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  88. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、極東に何か紛乱が起こる、あるいは極東が侵略されるというようなことに対して、そのときの事情によりまして、日本に対して直接もしくは間接に影響してくるというような状態が起こり得る場合が多いと思います。私どもは、そういうような状態日本の平和と安全に影響があると思います。しかし、必ずしも、極東の地域の中で起こった状態が、すぐに日本の平和と安全に直接影響してくるかどうかということに、疑問のある場合も当然あるわけでありまして、そういう場合にはノーと言うことも当然あり得るわけであります。それらの事態というものをたった一つの事態しかないというふうに考えられることは、私は適当でないと思います。
  89. 横路節雄

    横路委員 外務大臣にお尋ねしますが、そうすると、米軍がとる極東の平和と安全、そのことは、日本の平和と安全になると思って行動しようという場合においても、日本政府が、そのことについては、米軍のそういう考え方と必ずしも意見の一致しない場合がある、その場合のことを考えて、この第六条からくる事前協議において、こういうように交換公文できめたのだ、意見の不一致の場合がある、そのことを予想してきめたのだ、こういうわけですね。
  90. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 協議をいたす場合に、全部初めから意見が一致しているということはないわけであります。意見の一致していない場合もあるから、協議をするわけでございます。でありますから、そういう意味におきまして、事前協議をいたすわけでございます。
  91. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、それは今まであなたの方は、常に極東の平和と安全と日本の平和と安全はうらはらだ、表裏一体だ——ということは、極東の平和と安全即日本の平和と安全、日本の平和と安全即極東の平和と安全ということで、今外務大臣から意見の不一致の場合もあるということを御答弁されたから、それはその程度にしておきます。  最後に、私は総理に一つだけお聞きして、あとは戸叶委員がさらにその点についてお尋ねをすることになりますが、米軍のとる行動の範囲、先ほどから言っておるように、極東の地域に対する武力攻撃、その周辺地区に起こった事態のため協議されるような場合における米軍の範囲というものは、極東の地域に局限されない。私は、この局限されないということと、総理がここでお使いになっておるおおむねという言葉は、ずいぶん違うと思う。おおむねとは、ちょうど輪でいうならば、一つの輪にちょうど入る、中にすっぽりじゃなしに、かつかつに入るといいますか、おおむね一致しておる、大体です。しかしここに使われている、局限されるわけではないということは、非常に範囲が広くなっていると私は思うのです。この点はどうなんですか、総理にお尋ねします。
  92. 岸信介

    岸国務大臣 私が申し上げておる、米軍が現実の日本を基地として作戦行動する地域はおおむねここにあるということは、観念上から言いますと、先ほどもお答え申し上げましたように、米軍の行動というものは、国連憲章以外には何も制限はありません。国連憲章にも、はっきりどこまでということは書いてありません。しかし、この事前協議によってわれわれがノーと言った場合は、アメリカはそれに反した行動をとらないということになっておるのでありますから、事前協議というものを考えてみると、この全体のお答えにあるように、米軍に日本が基地を与えて、そうしてある武力攻撃が出てきた場合に、武力行動によってこれを排除し得る、いわゆる安全を保障し得る地域、それに寄与し得る地域ということが、両国関心の的であるということから考えましても、また、われわれが、現実に日本の平和と安全に密接な関係がある地域にだけしか何の行動も認めないということから申しましても、おおむね一致するであろうということは、私は当然出てくる結論であると思います。
  93. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、私がお尋ねをしたいのは、米軍のとる行動の範囲というのは、ここで何べんも言われているように、防衛に寄与し得る区域であるフィリピン以北日本の周辺、金門馬祖、国後、択捉、歯舞、色丹をひっくるめて。しかし、そこに武力攻撃が加えられた場合においては、当然その根源に対して——米軍については、日本の憲法のように海外派兵とかなんとかという禁止規定はないのですから、金門馬祖、その他極東の地域に武力攻撃が加えられた場合においては、その加えてきた一番の根拠に対して、米軍が出動して、武力攻撃を加えてくるその根源に対して、それを排除するということについては、それは米軍としては当然の行動ではありませんか。その点をお尋ねしておきたい。当然の行動ではありませんか。
  94. 岸信介

    岸国務大臣 どういうふうに行動するかということは、そのとき起こってきたところの事態を前提としなければ、私は抽象的には論ぜられないと思います。
  95. 横路節雄

    横路委員 いま一つ、防衛庁長官、自衛隊で、地理調査所に命じて航空図というのをお作りになっておりますね。これは御存じですね。
  96. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 承知しています。
  97. 横路節雄

    横路委員 防衛庁の長官にお尋ねしますが、この自衛隊の航空図で、北はカムチャッカ半島の中部、千島全島ひっくるめて、樺太全島ひっくるめて、沿海州からシベリアの一部をひっくるめて、南はフィリピンを全部ひっくるめて、中国沿岸から朝鮮半島全部ひっくるめて、東北地区まで自衛隊の航空図としてお作りになっているのは、どういうわけですか。
  98. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 できれば世界の航空図も作りたいのですが、近くのところだけやっております。
  99. 横路節雄

    横路委員 きょうは、あとは戸叶委員が今の行動の範囲についてお尋ねしますが、しかし、今の長官のお答えは重大ですよ。私が言っていること、カムチャッカ半島の中部から北千島をひっくるめて、樺太全島をひっくるめて、沿海州からシベリア、朝鮮半島、東北地区、台湾をひっくるめて、中国沿岸から中国の奥地へかけて、自衛隊が自衛隊の航空図を作っていらっしゃる。それに対して世界全部の航空図を作りたいというお話だが、これは明らかに、今回の航空図というのは、米軍との共同作戦の上に必要だということを、防衛庁長官みずから言うことになります。     〔発言する者多し〕
  100. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  101. 横路節雄

    横路委員 私は、今のその問題は、長官の言うように、全世界の航空図を作るというのは、穏当自を欠くと思いますが、きょうは、委員長、私はあとで、私の与えられた質問の時間に、今の点をさらにあらためて質問することを留保いたしたいと思います。
  102. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほど黒田委員から、原子力の協定ドイツとあるというふうなお話がございましたが、これはございません。ただ、黒田委員が言われたのは、多分このことだと思いますが、ドイツ人のと医者が日本を訪問しまして、原子力平和利用の分野において研究をいたしました。また、日本の学者が、放射能障害の治療の研究のためにドイツに参りました。そうしてお互いに視察をいたしました。そのあとで、ブレンターノ外務大臣から武内大使に書簡が来ております。そのことだと思いますので、誤解のないように申し上げておきます。
  103. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次に戸叶里子君。
  104. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、きょうは極東の問題だけの関連質問でございますので、他の点についてはあとでよく聞きたいとと思いますけれども、実はきょうはあと三十分しか時間がないわけですね。従って、極東範囲あるいは在日米軍の行動の範囲というものについての質問も、三十分以内でできなかった場合には、留保するということを前もって申し上げておきたいと思います。  そこで、今までの質問を伺っておりますと、結局、在日米軍の行動の範囲というものの地域を分けてみますと、いわゆる日本の施政権の及ぶ範囲の防衛地域というものと、在日米軍を使い得る使用地域というものと、二つに分けられると思うのであります。そうなってきますと、一体、日本とアメリカとの安全保障条約以外に、条約の適用地域と地域外に軍隊の使用を規定するような方式をとっている条約というものは、ほかにはないと思うのですけれども、何かそういう例がおありになるのでしょうか、これをまず伺っておきたいと思います。
  105. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この条約には、条約地域はございます。何か使用地域というようなものがあるようにお話でございますけれども、そういう使用地域というようなきまった観念のものはございません。
  106. 戸叶里子

    戸叶委員 使用地域というふうにきまっていないにいたしましても、今までの質疑応答を聞いておりますと、たとえば日本の施政権の及ぶ範囲というのは、防衛区域だということをたびたび言っていらっしゃいます。また、これをある意味においては条約区域と言っていらっしゃる。そのほか、在日米軍を使用できるのは、極東の平和と安全を脅かす場合にこれを使用できるということになってくると、当然これは二つの区域に分けて考えられるわけではございませんか。
  107. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知の通り、この条約におきましては、条約地域ははっきり限定されておるわけでございます。しかしながら、そのほかに使用地域とか適用地域というようなものはないのであります。われわれは、条約において、両国が共同関心を持っておる地域というものを想定いたしておるわけでありまして、それは決して何か一定の地域という観念ではございません。
  108. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、防衛地域とたびたび言っていらっしゃるところが日本の施政権の及ぶ範囲、それから極東の平和と安全のために米軍が行動する範囲、これはどういうことになるのでしょうか。当然在日米軍を使用するわけではないのでしょうか。
  109. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知の通り日本の四つの島は、われわれは条約地域と呼んでおりますが、この条約地域ははっきりいたしております。それ以外に何か適用地域とか使用地域とかいうものはございません。この条約の精神は、日本の平和と安全、極東の平和と安全ということを念願にして作っておるわけであります。従って、それに対してわれわれは関心を持っておるということなのでございます。従って、極東という範囲を線で引いて、どこからどこまでということに参らないことは当然でございます。
  110. 戸叶里子

    戸叶委員 私が伺っておることに藤山外務大臣はお答えになっていらっしゃらない。日本の施政権の及ぶ範囲内に在日米軍は出動いたしますね。そのほかに、極東地域の平和と安全という場合にも、在日米軍は出動するわけですね。政府に言わせれば、当然そのときにいろいろな制限があるでしょうが、そういうものはないとお認めになるわけですか。はっきりあるわけですね。
  111. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今まで申し上げておりますように、在日米軍は、国連憲章の精神に沿いまして行動いたすわけでありますが、集団的自衛もしくは個別的自衛で動くわけであります。そうしてその範囲というものは、むろん、今日施設区域を提供しておる、それが主として極東の平和と安全、日本の平和と安全でありますから、おおむねその範囲内で行動するということでございます。それが極端な、何か米軍行動の限定された地域というわけではございません。
  112. 戸叶里子

    戸叶委員 それで、先ほどからの質問答弁もわかったわけですが、そうなって参りますと、適当にきめられた範囲において、極東の平和と安全のためには、どこへ出ていってもこれはかまわない、こういうふうに了解していいわけですね。
  113. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 アメリカ軍が日本の基地を使って出ていきます場合には、事前協議にかかるわけであります。
  114. 戸叶里子

    戸叶委員 ですから、私は申し上げておるわけです。事前協議とか国連憲章によって縛られるけれども、しかし、在日米軍というものは、日本施設区域を使って行動できる範囲というものを、日本の施政権下以外にも持っておるのですねといことを伺っている。それをもしも私が使用区域と言うなうば、使用区域と言えるでしょう。もしそれがいけないというならば、ほかの言葉でもけっこうだと思いますけれども、結局、こういうふうに二つに分けられるのですねということを伺っておるわけです。
  115. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 それはアメリカの軍隊だから、日本から出ていくことは、どこにでも出て参れるわけであります。しかし米軍といえども、国連憲章の制約もございますし、また、日本におります米軍としては、施設区域を提供しておるという意味からいいましても、事前協議にかかるわけであります。
  116. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣、時間がないんですよ。ですから、質問に対しての答えをはっきりしていただきたい。それでは私はっきりいたしますけれども、米軍の行動する場合には、日本の施政権の及ぶ範囲、それから事前協議なり国連憲章なりの制約があるけれども日本を基地として外に出られる範囲と、二つあるんだということはお認めになるわけでしょう。だとすれば、そういうふうな内容を持った条約——SEATOには幾らかそういう内容があるかもしれませんけれども、ほかの二国間の条約でそういうふうな内容を持ったものがあるかどうかということを、まず伺っておきたい。
  117. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私の答弁ではおわかりにならぬようでありますから、条約局長から答弁いたさせます。
  118. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、日本施設区域を使って外に出て行動する地域、それと、ほかの条約との比較でございます。ほかのNATO、ワルソーその他いろいろの条約がございますが、ただいま御指摘の点の地域とお考えになっている地域が、いわゆる条約区域になっているわけでございます。非常な広範な地域がそういうふうになっておりますから、それ以外に出て云々するという必要性は全然ないわけでございます。  ちょっと訂正させていただきますが、そういう点と、それから、そのほかにもまた自由に出れるわけでございます。
  119. 戸叶里子

    戸叶委員 ですから私が言っているわけなんです。ただ、そのことを、私の質問は非常に簡潔に、結論だけを申し上げているわけなんです。それを回りくどく説明しただけであって、ほかの条約の場合には非常に広範囲に及んでいるんだ、しかし、日本の場合には、憲法の制約とかなんとかでその地域を広範囲に及ぼすことができないんだ、だから、しょうがないから防衛地域というものをここに置いて、そうして、もう一つ在日米軍が行動し得る範囲というものが別にあるんだ、こういうふうに私は了解しているのであって、そのようにはっきり分けている条約はほかにはないでしょうということを伺っているわけなんです。
  120. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 そういう条約はございません。
  121. 戸叶里子

    戸叶委員 まず、それを伺っておきまして、それから今後これをきっかけに問題にいたしますが、きょうはそれについて……。(「それをきっかけにされちゃ困る」と呼び、その他発言する者あり)
  122. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  123. 戸叶里子

    戸叶委員 それだけを伺いまして、次の問題に入りますけれども、さらに「極東」の統一解釈というものの結論として考えられましたことは、極東の平和と安全のための在日米軍の行動がきめられているのを見ますと、結局、使用する目的が極東の平和と安全ということであって、それはすなわち、目的に対する地域的な限界はあっても、使用に対する地域的な限界はない、こういうふうに了解していいわけですね。  そこで、先ほどからの横路委員質問を聞いておりますと、その使用に対する地域的な限界がないということを、さらにはっきりと裏づけられたわけでございます。横路委員は、極東の平和と安全を脅かすものであるならば、あるいはそこに脅威を与えるようなものであるならば、極東外の地域にも出られる、そして防衛庁長官に、防衛庁で出している航空図のことを聞きましたら、世界の一般まで行けるような航空図を作るんだというようなことで大へん大みえを切っていらして、非常に大きな問題を投げているわけでございますが、今の問題の内容を伺いますのに、この前の二月十一日の衆議院の予算委員会藤山外務大臣が、アメリカ自身の行動範囲というものは、それは極東とかいうところには関係ない、しかし、駐留米軍の行動範囲というものは、おおむねその目的からいって極東範囲である、と言われているのであります。「おおむねその目的からいって」とおっしゃいまして、今私が申し上げましたように規定づけているわけです。ところが、今度の統一解釈になりますと、「その攻撃又は脅威の性質いかんにかかるのであって、必ずしも前記の区域に局限されるわけではない。」と言って、この「おおむね」という解釈が「必ずしも」に変わってきているわけなんです。これはどういうふうに違うか伺いたいと思います。
  124. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 「おおむね」と「必ずしも」とどういうふうに違うか、先ほど来いろいろ言葉の問題が出ますので、私も閉口いたしておりますけれども、大体一致しておると思います。
  125. 戸叶里子

    戸叶委員 大体一致しておると解釈いたしまして、何かここで極東の地域外の出動の場合に、このように「必ずしも」とか「おおむね」という言葉を使っていられるのは、地域的な制限を考えてこういう言葉をお使いになっていらっしゃるかどうか、この点を伺いたい。
  126. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 この点は、今まで申し上げておるのを繰り返すことになりますけれども、われわれは、極東の平和と安全ということが第一なんであります。また、日本の平和と安全が第一であることはむろんでございます。従って、何も地域的に極東というものをはっきり限定しているというわけでないことは、先ほど来申し上げておる通りなんでございます。従って、「おおむね」という言葉も、「必ずしも」という言葉も、そういう意味から使われておるものだとわれわれは考えておるのでございます。
  127. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、地域的制限は全然考えておらないというふうに……。もう一度念のために伺っておきます。
  128. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 全然考えておらないわけではございません。「おおむね」あるいは「必ずしも」……。
  129. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで私は、「おおむね」というのは大体どの程度のことをおっしゃるのか、伺いたいのです。
  130. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 武力攻撃の態様によって違うわけでございますし、また、愛知氏の質問に対する総理答弁ではっきりしておると思うのであります。
  131. 戸叶里子

    戸叶委員 ちっともはっきりしていないのです。「おおむね」とか「必ずしも」とかいうような言葉は、私は条約において使うべき言葉じゃないと思うのです。説明にいたしましても、非常に不明瞭だと思うのです。私が先ごろあるところを歩いていましたら、「私は保守党の人間だけれども極東範囲ということが国会を通してさっぱりわけがわからない、どうかあなた徹底的に追及してくれ」と激励された。これは自民党の方です。ですから政府は、もう少し親切に説明する義務がある、こういうふうに考えるわけでございますけれども、「おおむね」という範囲が全然わからない。先ほどの横路委員質問に対する答弁を聞いておりましても、これは幾らでも広がって、極東の平和と安全を脅かすものであるという断定を下すならば、どこへでも出て行けるものだ、こういうふうに解釈をしていいというふうに私にはとれるわけでございます。  それで、ここで伺いたいことは、だれが一体極東の平和と安全を脅かすということを判定するのでありますか。これを伺いたいと思うのであります。
  132. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日米両国政府において判定いたします。
  133. 戸叶里子

    戸叶委員 日米両国政府といいますけれども、これは、だれかほかの人が見なければわからないような場合があると思うのです。そういうふうな勝手な解釈というものは非常に危険だと思いますが、それはあとにいたしまして、私は、次に、もう少し詳しく内容を申し上げて質問したいと思います。  それは、在日米軍の極東での行動というものは、一体アメリカの自衛権として出動するのですか、それとも、国連憲章にいうところの、国際の平和と安全のためというふうな条項から行くのでしょうか、どっちなんですか。
  134. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 両方とも、アメリカ自身の自衛権の場合もございます。国連憲章による自衛権の場合もございます。
  135. 戸叶里子

    戸叶委員 それは両方同時に使うのですか、別々なんですか。ときによって違うというのですか。
  136. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん、そのときの状況によりまして違っておると思います。
  137. 戸叶里子

    戸叶委員 それじゃ、具体的に例を引いてみましょう。台湾に紛争が起きたといたします。そうすると、台湾におりますアメリカ軍は当然出ます。自衛権の発動です。フィリピンからも出るかもしれない。もしも米比の間の協定がそれを許すならば、自衛権で出られるでしょう。今度は日本からの出動ということになりましたときに、それはアメリカの自衛権ですか、それとも、国連憲章にいうところの国際の平和と安全ということのためですか、どちらですか。
  138. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 紛争が起ってアメリカに対する武力攻撃が起これば、それはアメリカの自衛権が発動すると思います。
  139. 戸叶里子

    戸叶委員 日米安全保障条約で、アメリカの自衛権の使い得るのは五条だと思うのです。そうですね。なぜそういうことができるのでしょうか、これを伺いたい。
  140. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 五条は、日本の施政のもとにある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃の場合でございます。
  141. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと違いました。そういうふうな場合に、もしもアメリカに自衛権があるとして、アメリカの自衛権で出動するということになりましたら、なぜ、こういうふうな四条と五条と両方を適用して協議をして、そして自衛権を行使しないのですか。
  142. 林修三

    ○林(修)政府委員 ちょっと今のところでございますが、御承知の通り、五条は、日本の施政下にある地域に武力攻撃があった場合に、アメリカは日本を守るということを約束した問題でございまして、アメリカ自身、米国が主権国として米国軍隊を動かすということについては、もちろん、これに限らないわけであります。米国は、先ほど総理のお話がございました通りに、アメリカの国内法あるいは国連憲章に従っての行動権を持っておるわけでございます。従いまして、それが極東の地域であろうと、あるいはどこの地域であろうと、米国が集団的自衛権あるいは個別的自衛権を発動し得る範囲においては、当然に発動できるわけであります。しかし、その場合に日本にある軍隊を使うということになりますと、これはいわゆる事前協議にひっかかってくる、こういう問題だと思います。根本的には、個別的自衛権あるいは集団的自衛権、あるいは国連憲章に基づく警察行動、こういうそれぞれの根拠がある限り、いかなる範囲においても米国は自国の軍隊を使い得る権利を持っておる。これをこの条約で、事前協議を除きましては、どこにも制限はしていないわけであります。
  143. 戸叶里子

    戸叶委員 アメリカの自衛権を台湾に使うという場合には、アメリカに対する直接の武力攻撃がなければ使えないはずだと思うのですが、いかがですか。
  144. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、いわゆる米華条約に基づきまして、米国は個別的または集団的自衛権——米華条約に基づきますアメリカの台湾援助の約束は、集団的自衛権発動の根拠になるものだと思います。その集団的自衛権をアメリカが発動した場合に、どこにいる軍隊を使うかということは、これは実は基本的にはアメリカの自由でございます。ただ、日本にいるものを使う場合には、日本との事前協議という問題がある、こういうことでございます。
  145. 戸叶里子

    戸叶委員 集団的自衛権だとするならば、アメリカは勝手に出られるじゃありませんか。自衛権というものは一番優先するものじゃないですか。日本の場合だけに事前協議をすると言われてみたところで、アメリカが自衛権で出るんだということを主張されたならば、事前協議なんかどこかに飛んでいっちゃうんじゃないですか。
  146. 林修三

    ○林(修)政府委員 その点を、この安保条約の附属交換公文で、事前協議でお互いが約束しているわけであります。この約束でやっているわけですから、当然アメリカはこれに従うわけでございます。その意味において、在日米軍に関する限り、アメリカはそういう意味の自衛権の発動が制約されているわけであります。これはアメリカ自身がみずからの意思によって約束して制限しているわけであります。
  147. 戸叶里子

    戸叶委員 それじゃ、先ほどのもう一つの例として、もしも国際の平和と安全の維持に寄与するために在日米軍が出動するという場合には、当然、これは、国連憲章によりましても、安全保障理事会の許可がなければならないものと思いますが、いかがでございますか。
  148. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの件は、許可を要する場合、許可に従って出る場合もありますし、緊急の場合は、憲章五十一条の自衛権に基づいて出るという場合もあります。
  149. 戸叶里子

    戸叶委員 ところが、在日米軍が直接の武力攻撃を受けていない場合の出動のことをいっておるわけですよ、今の台湾なりの例を引いて。たとえば、台湾に武力攻撃があった場合に、台湾にいる米軍は出ます。それからフィリピンも助けるかもしれません。けれども日本から米軍が出動する場合には、どういうことになるのですかということを聞いておるわけです。
  150. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 わかりました。ただいまの武力攻撃を受けた場合にアメリカが出るということは、アメリカの自衛権でございます。これはアメリカが国として持っておるところの自衛権を行使するわけでございます。そうしてその場合、その自衛権の行使として、その武力攻撃に対処するために、どこの軍隊をもって直接対処するかということは、これはアメリカの自由だと思うのであります。従いまして、そういうような武力攻撃が起きました場合とっさに対処することは、アメリカの自衛権の行使でございますから、国連憲章に従うところの安保理事会の許可は要らずにできるわけであります。国としてそういうことはできる。ただ、その場合にどこの軍隊を使うかという場合に、日本の基地を使用していく場合には事前協議にかかる、こういうことでございます。
  151. 戸叶里子

    戸叶委員 わかりました。その場合に、アメリカが自衛権を使うという場合には、一体五条の制約を受けないでもいいかどうか、つまり、どちらかの国が武力攻撃を受けない場合にアメリカが自衛権を使えるかどうかということを伺っておるわけです。
  152. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 五条の場合は、日本を守るという——日本の施政のもとにある領域において武力攻撃が起こった場合に、その危険に対処するように行動しようという、日本の施政のもとだけの約束でございます。
  153. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、日本にいる在日米軍に対して武力攻撃が起こった場合は、当然自衛権をアメリカも使いますし、日本も使いますね。その場合に、アメリカは集団自衛の権利があるのだ、日本にはないと言っていらっしゃるわけですが、この問題はあとで質問をいたしますけれども、台湾においての紛争に在日米軍がいくのにもかかわらず、それが自衛権だと解釈していいかどうかということなんです。(「それは向こうのことだ」と呼ぶ者あり)もしも向こうが自衛権というふうに解釈するならば、自衛権というものは、私は、一番その国にとっての権威を持つものである、とするならば、事前協議などというものを決定してみても、それはだめだということを言っておるわけです。
  154. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 今お話しのような場合に、アメリカは、集団的自衛権か、あるいは個別的自衛権か、いずれかを発動する権利を持っております。ただ、在日米軍が日本の基地を利用してそれに参加するというような場合には事前協議をするということで、アメリカは、日本の基地にあります米軍の行動についてアメリカ自身がそれだけの制約を受諾いたしておるわけでありますから、これは当然事前協議にかかってくるわけであります。
  155. 戸叶里子

    戸叶委員 それからもう一点伺いたいのですけれども、よく、在日米軍を極東以外の地域あるいは極東の地域に出動させる場合に、国連憲章あるいは事前協議ということをおっしゃいまするけれども、国連憲章の大体何条によって縛られるわけですか。
  156. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 直接的には、国連憲章第五十一条でございます。それから、安保理事会の審議にかかりまして、それの許可をとってやるという場合は、五十三条でございます。
  157. 戸叶里子

    戸叶委員 五十一条と五十三条だと思うのですけれども、五十三条の場合は、当然、安保理事会の事前の許可がなければならないわけです。ところが、この前のレバノンのような事件があるわけでございまして、安保理事会の許可なしに出られたというような場合があるわけです。さらにまた、五十一条の問題も、先ほどの横路委員質問に対する答えを伺っておりましても、直接の武力攻撃がなくても出られるというふうな答弁をしていられるのを見ましても、この国連憲章というものは何か無視されたような形をとられているということを私は非常に危ぶむものでございまして、ことに日米安保条約の場合に関しては、米軍が駐留する目的というものが、極東の平和と安全ということにしぼられて、かえって国連憲章を無視するというような結果が現われるという場面を私は多く心配するものでございます。これらの具体的な例につきましては、私はあとで例を引いて申し上げますけれども、この点についてはいかがでございますか、念のために伺って、私の質問を保留しておきたいと思います。
  158. 岸信介

    岸国務大臣 横路委員に対して私がお答えをしましたなにが、武力攻撃がなかった場合においても武力行動ができるような、今戸叶委員のお話でありますが、私はさっきそうは申し上げておるのではないのでありまして、武力攻撃があった場合にだけ武力行動をもってなにができる。しかしながら、その他の行動ということのなにについては、武力行動だけを意味しておるのではなしに、そのほかのものも含んでおるのであって、脅威を受けておるというような事態において直ちに武力行動をとるという意味ではありませんということを申し上げたのでありますから、その点は釈明しておきます。
  159. 戸叶里子

    戸叶委員 あと、いろいろ具体的な問題がありますけれども、三時半になりましたから、質問を留保しておきたいと思います。
  160. 小澤佐重喜

    小澤委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十一分散会