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1960-03-22 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二十二日(火曜日)     午前十一時四十七分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 大久保武雄君    理事 櫻内 義雄君 理事 椎熊 三郎君    理事 西村 力弥君 理事 松本 七郎君    理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一着       秋田 大助君    天野 光晴君       池田正之輔君    石坂  繁君       鍛冶 良作君    鴨田 宗一君       賀屋 興宣君    小林かなえ君       田中 龍夫君    田中 正巳君       塚田十一郎君    渡海元三郎君       床次 徳二君    野田 武夫君       服部 安司君    福家 俊一君       古井 喜實君    保科善四郎君       毛利 松平君    山下 春江君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       岡田 春夫君    黒田 寿男君       田中 稔男君    戸叶 里子君       穗積 七郎君    森島 守人君       横路 節雄君    大貫 大八君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         防衛政務次官  小幡 治和君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務事務官         (大臣官房審議         官)      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月十九日  日米安全保障条約改定反対に関する請願(黒田  寿男君紹介)(第一三七四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十八日  日米安全保障条約改定反対に関する陳情書  (第三九  六号)  同  (第五  四一号)  日米安全保障条約批准促進に関する陳情書  (第三九七号)  日米安全保障条約改定に関する陳情書  (第四八〇号)  同  (第四九九号)  日米安全保障条約改定反対等に関する陳情書  (第四九  八号)  同  (第五一四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ――――◇―――――
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、以上の各案件を一括して議題といたします。  前会に引き続き質疑を行ないます。黒田寿男君。     〔議事進行と呼び、その他発言する者、離席する者多し〕
  3. 小澤佐重喜

  4. 黒田寿男

    黒田委員 実は、本日は、社会党といたしましては、安保特別委員会の他の委員によりまして条約に関する質問をする予定であったのでありますけれども、この前の委員会のありましたあと、私どもの目から見ますと、自由党にいろいろな内部の動きが起こって参りまして、それと関連いたしまして、安保条約に関する重要な事項について、総理ないし政府の御見解変化が生じたのではないかと思えるような事態になったように観測いたします。修正が行なわれようとしておるというように伝えられておるのであります。そこで、もし伝えられるごときものであるといたしますならば、国家の安危に関する重大な新安保条約審議に対処する態度といたしましては、私ども岸総理態度に理解しがたいものがあるように感ぜられるのでありまして、はたして伝えられるごときものであるかどうかということは、どうしても一応確かめておかなければならない、そういう必要を感じましたので、きょうは、この点に関しまして、いわば緊急質問というような性質を持った質問といたしまして、私ほか何人かの委員質問することにしたのであります。私自身について、御了解を得ておきたいと思いますけれども、この新安保条約に関連しましては幾多の問題点があると考えておりますし、これは後日何回にでもわたりまして私自身徹底的に質問をしてみたいと思っております。しかし、きょうは先ほど申しましたような問題点にのみ質問範囲を限定いたしまして、他の諸問題につきましては後日に質問を留保することにいたします。  私どもがこの際特に総理に、及び外務大臣に対しても同様でありますが、お伺いしておきたいと思いますことは、次の事実についてであります。去る十八日の都下の各新聞に、一斉に次のような記事が掲載せられております。それは、自由民主党の三木武夫氏は十七日の午後三時過ぎに首相官邸岸首相を訪問されまして、帰国のあいさつを述べられるとともに、新安保条約に関し、重要な事項について進言をされた。その一つは、新聞の伝えるところによりますと、極東という地域の範囲に、問題の金門島及び馬祖島、この両島を含めるという、従来の政府統一見解を早急に訂正すべきこと、これが一つであります。どういう理由でそういう進言をされたかというと、これも新聞で読んだのでありますが、新聞の伝えるところによりますと、金門馬祖日本の安全と直結しないから、極東範囲から除外すべきである、こういう御意見であったように思います。これはあとから外務大臣にも質問いたしますが、外務大臣が昨日参議院予算委員会において述べられた見解と違うのです。藤山外務大臣は、金門馬祖日米共同関心の的になるのだ、こういうような御答弁を昨日参議院における予算委員会でなさっておられます。とにかく三木さんはこう言われる。金門馬祖日本の安全と直結しないから、極東範囲から除外すべきである。そして、その次も相当重要な御意見だと思いますが、こう言われている。もともと極東の定義は抽象的にすべきである、一つ一つの島をあげたことは——こういう説明の仕方を政府がしたことは適当ではない、こういう理由極東範囲金門馬祖両島を含めた従来の政府統一見解を早急に訂正すべきである、こういうように進言された。これが一つであります。  それから、いま一つは、日本の安全に直結しない在日米軍軍事行動には、事前協議の際、絶対に同意すべきではない、事前協議については厳格な解釈と確固たる態度をもって臨むべきである、こういう方針で臨みさえするならば、極東範囲というようなものは抽象的表現でよいというのが、三木氏の進言内容のようであります。これは私ども新聞で読んだのでありますから、必ずしもその通り表現になっているかどうかということは、私自身三木自身について確かめたわけではございませんが、少なくとも、新聞において報ぜられております内容を総合いたしますと、これは都下の全新聞が発表いたしましたもので、私も全新聞に目を通して見ましたが、大体新聞の報ずるところは、今私が申し上げましたことで要領を尽くしておるのではなかろうかと思うのです。この各新聞紙報道するところを総合いたしますと、今申しました通り三木氏の進言は大体以上で尽きると思うのでございます。三木氏がどのような進言総理に対してなされようとも、それは三木氏御自身の御自由でありまして、私どもこれをとやかく言うべき限りのものではありません。むろん、批評すべきものがあれば批評し、反対すべきものがあれば反対するというだけのことでありまして、わざわざ国会安保委員会におきまして、三木氏の言動としてこれを問題にするというような性質のものではないと思います。しかしながら、問題は、この三木氏の進言に対しまして岸首相のとられました態度に私はあると思う。三木氏の進言に対する対処の仕方に、私は問題があったと思うのです。何ゆえに岸総理態度を私ども安保条約審議関係しておる者といたしまして問題にしなければならないかと申しますと、それは新聞紙が次のように報道しておるからであります。  今まで私が申し上げましたのは、三木氏の進言内容だけであって、これから申しますのは、三木氏の進言に対し岸総理がいかなる態度をもって対処せられたかについてであります。これは新聞に書いてあることを申し上げるのであります。それによりますと、三木氏の進言に対し、岸首相賛意を表明された。そして適当な機会に、国会において与党質問に対する答弁という形で補充説明を行なおうという意向を明らかにされた。その補足説明文案ができ次第、三木氏に事前にこれを内示することをお約束された。早ければ来週末、今から申しますれば、これは今週末ということになるのでございますが、今週末の衆議院安保特別委員会説明が行なわれる模様である、こう報じておるのであります。私の質問をより正確に、かつ、無責任にならないようにいたしますために、他の新聞記事をも引用してみますと、新聞の名前は一々申し上げませんが、他の一つ新聞はこういっております。「岸首相三木氏の発言に同意し、近く国会与党質問に対し三木氏の所信に沿った答弁を行なうことを約束した」このように伝えております。それからまた、他の一新聞も、「三木氏の進言した二つの点に対し、岸首相衆議院安保特別委員会で新しい統一見解を述べることを約した」、「新しい統一見解」という言葉を用いております。こういう言葉を用いまして、そういう新しい統一見解を述べることを約束した、こういうように報道しております。その他の諸新聞は略しますが、しかし、大体同様のことを報じております。私どものように日本新聞紙報道を信ずる者といたしましては、以上の報道は信用すべきものと考えておるのであります。  そこで、首相及び外務大臣質問いたしたいと思いますが、第一は、新聞紙の報ずるような事実があったかどうか、その真相をそのままお伝え願えればけっこうだと思います。  ぞれから第二は、もし新聞紙報道するがごときものでありとしますれば、私ども少し合点のいきませんことは、岸首相三木氏に対し、新聞報道として伝えられておること、それを私は御紹介申し上げましたが、そのように答えられたにつきまして、時間の関係から見まして、外務大臣話し合いをされた上でなされたという時間的余裕はなかったと私どもは見るわけであります。外務大臣ないし外務省幹部諸君意見を徴せられる時間的余裕は、物理的になかったと私ども考えるわけです。私は、別に外務大臣外務省幹部諸君の肩を持つとか、擁護するとかいうことではございませんけれども外務行政やり方といたしましては、一応こういう態度は問題になる態度ではないかと私は思うのであります。外務大臣外務省幹部諸君に、極東範囲という問題について、新聞の伝えるところによりますと、今までの統一解釈を改める、修正するということになる、そのような問題について、外務関係の人々に意見を徴せられることなくして、岸首相ただ一人でその場で判断されて、会見の席上で直ちに、私がただいま申し上げましたような回答を三木氏に対してなされたのではないかと思いますが、だれにも相談しないで、三木氏にそういう意思表示をされたのであるかどうか、日本外交を推進する当路者態度といたしまして、私どももこれをぜひ聞いておきたいと思うのであります。昨日、参議院予算委員会で、島清議員は、藤山外務大臣に対し、次のような質問をしたのであります。すなわち、極東範囲について「三木武夫氏が岸首相金門馬祖を含めないように進言し、首相もこれを了承したと伝えられるが、政府統一見解を変えるのであるか」こう質問いたしましたのに対して、藤山外務大臣は「変更する考えはない」こう答えておられました。さらに、具体的に「金門馬祖極東の平和と安全を守る目的の範囲に入るのか」という島議員質問に対しましては、藤山外務大臣は「金門馬相で紛争が起これば、極東の平和と安全を守る上で、日米共同関心を持たざるを得ない」、これは先ほど申しました三木氏の金門馬祖に対する考え方と私は違うように思うのですが、そういうようにお答えになりまして、金門馬祖極東範囲に入る、そういうお答えをしておられるのであります。これを見ますと、第一に、首相には、極東範囲について統一見解修正されようとする御意思があるように察せられます。これは今までのこの問題に対する政府態度にかんがみまして、万一この際、そういうことがあるといたしますれば、変更した内容のよしあしは別といたしまして、政治的責任を持って国会で一々答弁に当たらなければならない地位に立っておいでになります総理大臣といたしましては、私ども見解からすれば、重大なる食言になるのではないかというように考えられるのであります。このことをお尋ねします。  それから第二に、一方において、岸首相には統一見解修正しようとする御意思があるようであり、他方、藤山外務大臣は、統一見解を維持しようとしておられるように考えられます。このことは、昨日の参議院予算委員会答弁によって明らかであります。そういたしますと、そこに首相外務大臣との間に極東範囲についての見解に食い違いが生じつつあるのではなかろうか。一応新聞を通じて事態を見せられております私どもは、常識をもって見る者であれば、こういうように疑わざるを得ないのでありまして、これを問題にしておるのであります。このこともぜひ確かめておかなければならぬと考えておるのであります。  そこで質問をいたしますが、私は、順序といたしまして、総理大臣お答えを願う前に、先に藤山外務大臣にお伺いをいたしますから、御答弁を願いたい。藤山外務大臣は去る十七日ごろに、岸総理から三木氏に答えられたと新聞に伝えられておるような事項につきまして、総理三木氏に意思表示をされる前に、何か外務大臣として意見を求められましたかどうか、このことを、まず外務大臣にお尋ねをしてみたいと思います。
  5. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知の通り、私は数日病気でもって東京におりませんで、一昨晩帰って参りましたので、その話の内容については存じておりません。
  6. 黒田寿男

    黒田委員 御病気でお休みになっておったということでございますけれども、これは重要な問題でございますから、出てこられなければ、電話で意見を聞いてみるという方法も、首相にその意思があれば私はなし得たと思いますが、そういうこともありませんでしたか、外務大臣にお尋ねします。
  7. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 病気静養中でございますから、秘書官に一切連絡をしないようにということを申しておいたのであります。
  8. 黒田寿男

    黒田委員 これは重要な問題でございますから、外務大臣の御感想を承っておきたいと思いますけれども、こういう問題について、今まで総理大臣外務大臣——野党議員の執拗なと思えるまでの質問に対して、もうこれで政府の最後の統一見解だ、こう言っておられるその見解に、これは岸総理大臣が、あとからどういう弁解をされるかわかりませんが、少なくとも、新聞の報ずるところによりますと、相当に重要な変化が起ころうとしておる。政府方針としてそういうことが行なわれます場合に、外務大臣意見を聞かないで総理がそういう意見を述べられるというようなことをされて、一体外務大臣責任がとれるのでしょうか。あなたはこういう事態に直面して平気でおられるのですか。多少自尊心があれば、こういうやり方については一言なかるべからずというところだと思うのでありますが、これはどうですか。(「総理大臣質問しろ」と呼ぶ者あり)だれに質問するかということは、私の勝手です。私の方は、私の方針があって、順序をこうやっておるのです。どうですか。
  9. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 平素、総理と私とは、このような問題について意見の交換を率直にいたしておりますし、話し合いをいたしております。従いまして、むろん、先ほどお話のありましたように、党内の党人の方が総理に会われていろいろな進言をされることは当然のことだと思います。それに対して一々気を使っておりましたら、からだが持ちません。(笑声)
  10. 黒田寿男

    黒田委員 私は、外務大臣がただいまのような御答弁をなさるのは、みずからを軽べつするものだと思います。(「その通り」と呼び、その他発言する者多し)あなたは、それで一通り答弁したとお考えになるかわかりませんが、私どもから見れば、何という無視された外務大臣だろう、こう思う。むろん、岸総理大臣に対していろいろな政治家がいろいろと進言をするということは、それまで一々外務大臣が気を配っておっては、これはやり切れないでしょう。けれども、その進言に基づいて外務大臣の管掌されておる政務と重大なる関係のある事項について、しかも、国会においてたびたび約束しておるそのことが変更されるというようなことについて、今のような御答弁でよろしいとお思いになっております外務大臣に対しては、そんなことをおっしゃると、みずからを軽べつするものであると申し上げたい。決して私は外務大臣悪口を言うのではありません。日本外務行政を行なうにあたりまして、こういうふうに外務省が無視された外交が行なわれていいものかどうかということを、客観的に考えて申し上げたのであります。     〔発言する者多し〕
  11. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  12. 黒田寿男

    黒田委員 委員長、私は、ちょっと御注意をお願いしたい。ヤジられるのはけっこうだと思いますけれども理事は黙っておっていただきたいと思います。一つ御注意願いたい。今後、ことに理事発言台に距離的に一番近くにいるので、その声が一番やかましく聞こえるわけですから、遠くへ行っていただくか、そうでなければ、沈黙するか、それを一つ御注意願いたいと思う。こういう態度では困る。
  13. 小澤佐重喜

    小澤委員長 理事委員も、どうぞ静粛に願います。
  14. 黒田寿男

    黒田委員 私は、外務大臣にもうそれ以上聞きません。率直に言えば、そういう意気地のない外務大臣でははなはだ心細いわけです。私は悪口を言うために言うのではなくて、むしろ、外務省のためにこれを言っているのですけれども、その誠意が通じないのですから、やむを得ません。  それでは、外務大臣に対する質問は、この問題に対してはこれで打ち切りまして、総理大臣お答えを願いたいと思うのであります。  その前に、ちょっと外務大臣にもう一つですが(「それでは黙っていられなくなる」と呼ぶ者あり)これは事柄が違うから……。     〔発言する者多し〕
  15. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  16. 黒田寿男

    黒田委員 外務大臣に絶対に質問しないと言ったのじゃない。あのときは病気であったと言われるのですけれども、十七日から今日の間に若干の日にちは経過しておりますが、その間に何か右の事項について総理から意見を求められたようなことがあったのでありましょうか。ありとすれば、昨日の参議院予算委員会における外務大臣の御答弁と、新聞に報ぜられておる総理それから自民党の政調会その他の幹部諸君動きとの間に開きがあるように思います。これは新しい事実でありますから、外務大臣、十七日から今日に至るまでの間に何か右の事項について総理などから意見を求められたようなことがあったのですか、どうですか。今日に至るまでもないのですか、それをちょっとお伺いしておきたい。
  17. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど申し上げましたように、私は、一昨日の夜帰って参りました。昨日は、午前十時から夜の七時半くらいまで参議院予算総会におりましたので、総理に面会をいたす機会がございませんでした。今朝総理に会いまして聞きましたところによっては、私と総理との間に意見の違いがございません。
  18. 黒田寿男

    黒田委員 それでは、次に、岸総理大臣にお伺いいたします。  先ほど申し述べました点はいかがでありましょうか。念のために、もう一度要点だけ繰り返して申し上げておきます。  第一は、事実は、新聞紙の報ずるようなものであったかどうか、あまり荒唐無稽な事実なら、むろん、私どもそれを前提として藤山外務大臣にお尋ねするようなことはしないのですが、われわれから見れば、相当信憑すべき根拠があると思いましたから、藤山外務大臣に先にお尋ねしてみたのであります。第一に、事実は、新聞紙の報ずるようなものであったかどうか。第二は、事実がもし新聞紙の報ずるがごとくであるといたしますならば、外務大臣ないし外務省幹部諸君には——今度は岸総理大臣の側からの態度として承りますが、何ら御相談なしに、直ちに首相一人の御判断で修正応諾意思を表明されたように観測されるのでございますが、これはいかがなものでありましょう。これは総理大臣の権限が法律的にはどうだというような問題について聞くのではありません。政治問題として、外交問題の処理の仕方として、総理大臣にこの質問を私ども発せざるを得ない。この気持は総理にもよくわかっていただけると思いますが、一つお伺いしてみたいと思います。
  19. 岸信介

    岸国務大臣 三木君が私に進言をしましたことは、大体新聞紙が報じておるところと同様な進言をしたことは事実であります。これに対して私が直ちに賛意を表して云々という点は、事実が違っておるのであります。三木君のそういうことを言っておる趣旨として、極東観念がそもそもばく然とした観念であるということは、これはわれわれが従来の政府答弁におきましても、時々申しておるのであります。たとえば、東経何度から北緯何度までと言うようなことはできぬとか、あるいは地図にそれを書き込めと言われた場合に、そういうものじゃないのだということを申し上げたなににおきましても、そういう点であります。従って、それが抽象的な観念であるということは、大体そういうふうに私ども考えておる。ただ、政府としては、すでに十分研究して、統一見解を述べておるのであるから、これを変更することはできない。ただ、その間において意を尽くさない点がありとするならば、これをさらに補完して御答弁するということは、私どもは十分考えます。もちろん、われわれとして、質疑に応じて、明らかでない点をさらに補追するということは、これはいい。しかしながら、われわれ自身統一見解として述べておることは、変えることはできない。さらに、どういう点について明確にする必要があるかというような点は、十分一つ関係の方面で研究してみようじゃないかということを申したのが真相でございます。従って、今、外務大臣答弁したように、私自身がその場において従来の見解を変えるというような発言をしておりませんし、また、そういう考えは持っておりませんから、外務省及び外務大臣と打ち合わす必要はもちろんなかったわけでございまして、そういう点において、決して外交を行なうのについて、総理大臣が一存でもって、外務省を無視してあらゆるものをきめるというような考えは毛頭持っておらないのであります。以上がその真相でございます。
  20. 黒田寿男

    黒田委員 ただいま総理の御答弁を承りまして、私はそうあるべきだと思う。そうでなければならぬ。ところが新聞は、そうは伝えていない。新聞がそう伝えていないだけでなくて、当の三木氏が、今総理お答えになったようには談話を発表しておられないのですから、ここにやはり私どもは一まつの疑念を払拭することのできないものがある。これもいいかげんなことを申しましてはいかがかと思いますので、新聞で私はその点よく注意して読んでみたのです。三木武夫氏はこう言っておられる。新聞の名前まではここで申しません。必要があれば、新聞の名前も日付も申しますけれども、ここでは必要はないと思います。東京の有力な新聞でございますが、それには、三木武夫氏談ということで、談話が載っております。それは総理大臣に面会されたその直後、新聞に発表せられておる三木氏の談話でございますが、それによりますと「安保に関する私の考えに対し、首相は処置しようと約束してくれた」こういうことを言っておられます。三木氏の進言内容は、私が総理にお伺いをいたしましたが、大体その通りだというお答えであったのです。それに対して三木氏は、安保に関する私の考えに対し、首相は処置しようと約束してくれた、そのあとは必要はありませんが、まだ、そのほかに多少の談話が続いております。そう言っておられるのです。これはある新聞記事です。もう一つ新聞は、これは単なる三木氏の談話ではない、その談話の真実性を証明いたしまする他の方法をもってお話し申し上げてみた方がよろしいかと思いますので、他の記事を引用します。それには——これも東京の有力なる新聞一つが、こういう記事を載せておる。見出しは「新安保の補足説明了承」、わき見出しに「松村・三木派と」こうしてありまして、「自民党の松村・三木派は十七日夜東京赤坂の料亭で会合、岸・三木会談で一致した事前協議極東範囲について、与党質問に答える形で政府統一見解を補足する」——方法論は、これは三木氏が伝えられた内容でありますが、「そういうやり方は、松村謙三、古井喜實両氏を含めて全員が了承した」こういうように書いてあります。そうすると、三木氏が自分で談話を発表しただけでなくて、いわゆる松村・三木派と称せられておる人々の間にも、この話を報告としてされている。そして、それらの人々、松村謙三氏初め全員が了承した、こういうように報ぜられておるのであります。これもちょっと総理大臣が今お答えになったのと違うわけですね。そこに私ども問題があると思います。先ほど総理大臣がおっしゃったようなことであれば、私は、それは当然の態度であると思いますけれども、どうもそうでなかったように思う。そこに何か政局に関するある気持が動いているのではないかということをも、私ども推測するわけでありますが、これはあとから申し上げた方がよいと思います。そういうわけで、ただいま総理大臣の仰せられましたことを、どうもそのままに受け取ることのできないような報道が伝えられておるのであります。そのほかにも、最近の新聞記事を見ますと、相当三木氏の発言の線に沿うたような動きが自民党の内部で出ており、幹部の間でもいろいろと対処策が講ぜられておるようであります。だから私は、三木氏が談話として発表せられましたその内容が、その後いろいろと展開される事実から見て、どうも真相ではないかというように思えるわけです。だから、総理がおっしゃったことが正しければ、三木武夫氏がうそを言うておる、こういうことになる。三木氏が言うのが正しければ、総理大臣のただいまの御説明に真実を尽くさないものがあると私ども考えざるを得ない。もう一度、しつこいようでございますけれども、お聞きしてみたい。
  21. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお答え申し上げた通りでありまして、今おあげになりました新聞記事というものと、私がお答え申し上げたことと、ちっとも違っておらないと私は思います。というのは、三木君の進言に対して、私自身は、従来の統一見解を変えるなにはないけれども、これが不十分であり、あるいは意を尽くさないというような点において、さらに補完的な、これを補充する意味において質疑応答することは、私は十分考えてよろしい、ことに事前協議に対しては、この日本の防衛ということと極東の安全と平和ということは、非常に関係のあることであり、従って、日米両国がこれに関心を持つわけであるけれども、しかしながら、現実に日本の基地を使っての米軍の作戦行動に対しては、いわゆる事前協議の対象として、事前協議の場合において、たとい極東の地域に入っておっても、日本の安全と平和に直接、密接な関係のないようなところへ米軍が作戦行動しようというような場合においては、事前協議の際、われわれはノーと言う考えであって、いわゆるアメリカの何か極東戦略なるものに日本が巻き込まれるというようなことは、絶対にしないつもりであるという点におきましては、私は、従来もそういうつもりで答弁をいたしておりますけれども、明瞭ならざる点があるし、また、極東範囲というものは、先ほど申し上げましたように、本来ばく然たるものであって、従って、線を引くとか、あるいはどの島が入るとか、入らないとかいうことが、本来のなにから見るならば、そういうことを一々取り上げて具体的に説明すべき筋のものじゃないという考え方についても、私は同感を表しておるわけであります。しかしながら、従来の統一見解を変える意思は私ども持っていないということも、三木君に私ははっきり言うておることでありますし、ただ、それを補充するという意味において、明瞭ならしめるという意味において、さらにこの統一見解について適当な機会に適当な質問に対して答えるということは、私も当然了承していることでありますし、また、そうすべきものであるということであって、両方の意見の間におきましては相違はない、こう考えております。
  22. 黒田寿男

    黒田委員 どうも総理の御答弁に私納得することができない。総理がただいま御答弁になりましたことは、矛盾したことを同時に言われたと思う。従来は島々の名をあげておったのでしょう。今まであげておったのです。国後、択捉までもあげた。むろん金門馬祖もあげた。島々をあげたのですね。そして、これが統一見解だ、こう言っておられる。三木氏の方は、そういうことは言うな、ばく然と、抽象的に極東という観念はそのままにしておく方がいいのだ、半前協議のときに何か対処の方法を研究すればいいのだ、要するに島々の名をあげない方がいい、金門馬祖もやはりあげない方がいい。これは三木さんの属しておられるといわれております松村さんなどの同志の方々が、みなそう言っておられるわけです。しかし、政府は従来島々をあげておるのです。だから、その島々の名をあげておることに——島々と言っては抽象的になりますから、端的に言うた方がよろしいのです。金門馬祖というような名をあげることに対し、そうするな、端的に三木氏はそういうように進言しておるのです。三木氏は総理大臣に会って帰ってきて、安保に関する私の考えに対し、首相は処置しようと約束してくれたと談話を発表した。だから、新聞には金門馬祖ということはこれから言わぬようにするのではないかというようなことがもっぱら伝えられておるわけであります。今、島々をあげない方がよろしいと自分は思っておると総理もおっしゃる。今までは島々をあげられたのである。違うことを、同じ人が言ってもらっちゃ困ります。その二つの間には矛盾が、合致しないものがある。三木氏の進言が問題となっておるのです。私は、今の総理の御答弁は全く何を言っておられるのかわからない、論理に合わぬ。あっちに向いてはいいこと、こっちに向いてはいいことを言うというようなお言葉にしか聞こえない。私どもには通用しない。だから、それを私どもは納得することができません。端的に申しますが、三木氏は、金門馬祖、こういうものをあげない方がいいというような話をされたのではないでしょうか。三木氏は、金門馬祖というような名前を具体的にあげて、総理に会って話されたということを新聞が伝えている。金門馬祖を含めるということには三木さんは反対だということを言ってきたということが、どの新聞にも一斉に伝えられておるわけです。それに対して、政府が、総理が直ちにそれに応ずるかのごとき答弁をされておる、そういう意向を表明されたということも、また新聞に伝わっておるのですから、それならそれで、一つ方針です。方針を変更したと言われるなら、それはそれで一つの行き方である。理屈が通らぬことを言われては困る。方針を変えながら、方針を変えないような言い方をする、これを聞かされたのでは納得できない。ただいまの総理大臣の御答弁は納得できません。  委員長理事の方から、休憩の時間だという御注意がありましたので、午前中はこれで終了いたしまして、午後からまた進行さしていただきたいと思います。
  23. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、四十分間休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕