運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-03-16 第34回国会 衆議院 日米安全保障条約等特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十六日(水曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 大久保武雄君    理事 櫻内 義雄君 理事 椎熊 三郎君    理事 西村 力弥君 理事 松本 七郎君    理事 竹谷源太郎君       安倍晋太郎君    愛知 揆一君       秋田 大助君    天野 光晴君       池田正之輔君    石坂  繁君       鍛冶 良作君    鴨田 宗一君       賀屋 興宣君    小林かなえ君       田中 龍夫君    田中 正巳君       塚田十一郎君    渡海元三郎君       床次 徳二君    野田 武夫君       服部 安司君    福家 俊一君       古井 喜實君    保科善四郎君       毛利 松平君    山下 春江君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       岡田 春夫君    黒田 寿男君       田中 稔男君    戸叶 里子君       中井徳次郎君    穗積 七郎君       森島 守人君    横路 節雄君       受田 新吉君    大貫 大八君       堤 ツルヨ君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         総理府事務官         (総理府特別地         域連絡局長)  石井 通則君         防衛政務次官  小幡 治和君         防衛庁参次官         (防衛局長)  加藤 陽三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務政務次官  小林 絹治君         外務大臣官房審         議官      下田 武三君         外務事務官         (アメリカ局長)森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 三月十六日  委員田中幾三郎君辞任につき、その補欠として受  田新吉君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約締結について承認を求めるの件  (条約第一号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び  に日本国における合衆国軍隊地位に関する協  定の締結について承認を求めるの件(条約第二  号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び  安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に  関する法律案内閣提出第六五号)      ————◇—————
  2. 小澤佐重喜

    小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び日本国における合衆国軍隊地位に関する協定締結について承認を求めるの件、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等締結に伴う関係法令整理に関する法律案、以上の各案件を一括して議題といたします。  前会に引き続き質疑を行ないます。竹谷源太郎君。
  3. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私は、最初岸内閣総理大臣に対しまして、岸首相が、今回日米安全保障に関する条約改定するにつきまして、どのような御決意、そして政治的信念を持っておられるか、まず最初にお尋ねしたいと存じます。  われわれ人類は、この二十世紀において、二度の世界をおおうところの大戦争を体験したのでございまするが、あるいは三たび第三次の大戦を迎えるようになるのではないかと、世界じゅうの人々が心配をいたしております。この第三次大戦は、おそらく自殺戦争になるのではないか、こういうことを予想せられるのでありまして、このような恐怖すべき戦争を、どうしてもわれわれは防止しなければならない、これが世界人類最大の願望であろうかと思うのであります。特に日本国民は、平和という崇高な人類の理想を、他国に率先して達成することを誓っております。そしてまた、憲法前文言葉をそのままかりて申しますならば、政府行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意して、日本国憲法を確定したのでございます。われわれの政府をあずかるところの、日本政治最高指導者といたされまして、岸内閣総理大臣は、世界平和達成のために、また、日本が再び戦争に陥ることのないようにするために、いかなる信念決意を有せられるか、まずこの点をお尋ねいたしたいと存じます。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 御意見のありましたように、世界人類がおそれておる世界的な戦争を、いかなることがあっても抑止して、そうして世界の平和を作り上げなければならないということは、これは私は、現在の政治家の最も大きな課題であり、また、それに向かって献身的努力をするのが政治家の務めであると考えております。問題は、どうしてその平和を達成し、そうした戦争を未然に防止することができるかという、このことについて、いろいろとその国が置かれておる客観的な情勢や国際的な全般の態勢、国際情勢というものを考えて、そうして自国の安全をはかると同時に、世界の平和を達成することに全幅の努力をすべきものである、こう考えております。
  5. 竹谷源太郎

    竹谷委員 総理大臣は、ただいま世界平和達成並びに日本の安全のためのお考えを、そして決意をお述べになりました。これが単なる口頭禅であってはならないと思うのであります。日本政治にとりまして最大の重要な問題である安全保障に関する新条約審議にあたりましては、今述べられた信念決意に従って、反省すべきものはこれを反省する、悪い点があれば虚心たんかいに改めまして、世界の平和に貢献をし、また、わが国の平和と安全のために、最善の道を進むべきことを誓っていただきたい。これの誓いを聞いてみました上で、私は次の質問に進みたいと考えます。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど私の信念を申し上げましたが、お話し通り、私は、あらゆる面で日本の安全と保障を確保して、世界の平和の達成全力をあげるという覚悟を持っておることを重ねて申し上げておきます。
  7. 竹谷源太郎

    竹谷委員 もう一言総理大臣信念、お考えをお伺いしたいのでありまするが、イギリスの有名な政治家でありましたグラッドストンの先生が、次のようなことをグラッドストンに教えたということを、私はある本で見ました。それは、政治というものは満足のいくことのないビジネスである、結果が不完全でもがまんすることを学ぶべきである、こういうことを教えたそうであります。政治の中でも、国家、国民の安危にかかわる、しかも、きわめてむずかしい外交という政治にありましては、これはなおさらのことでございます。安保改定が、現行条約よりも少しもよくない、世界の、平和と日本の安全のためにはならない、こういうことでありますならば、この際、改定一つ取りやめるように考えを直してもらいたい。かりに百歩も干歩も譲りまして、改定をするといたしましても、その改定にあたりましては、百分の一でも、いな万分の一でもわが国の有利になるように、これを改むべきものは修正をする、世界平和のためになる、また日本利益になることを少しでも多くかちとるために、全力をあげて、あくまで最善努力をするお考えがあるかどうか、この点をお尋ねいたしたいのであります。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 安保条約改定にあたっては、少しでも日本のためになるように、また、先ほど申し上げました世界平和の方向に進んでいくように安保改定をしなければならないというお考えにつきましては、私も抽象的には異存ないのであります。ただ、日本の安全と世界平和増進に最も適当であると私ども考えているものそのものが、実は具体的に、今回の安全保障条約改定の内容をなしている、かように考えておるわけでございまして、さらに御審議を尽くされまして、もし私ども考えが間違っておるということが明らかになれば、決して私は、既定の観念にとらわれるという考えを持っておりません。しかし私どもは、この案に調印し、そして国会に提案したというのにつきましては、十分に、今お話しになったような心がまえで日米両国交渉に当った結果でございますので、これはさらに具体的に御審議を願って、その上で明らかになることだと思います。
  9. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今岸総理大臣は、珍しくおまじめな御答弁をなすった。自分らは、日本外交として、世界平和のために、日本の安全を守るためにこれが最良である、このように考え条約締結する、これについて国会承認を求めたい、こういうお考えで出された、しかしながら、この安保条約審議の過程において、お互いに話し合いをして、もし悪い点がある、またこう改めた方がいいではないかという、よりよい考えがあれば、十分にこれを取り入れてそれに協力をする、あるいは改めることにやぶさかではない、こういう御答弁がございました。当然といえば当然でありまするが、これは口先だけではなくて、真剣に、そのようなお考えで、今後野党からの質問あるいは野党意見というようなものを、先ほど申し上げましたように虚心たんかいに取り入れる、また考えてみて、日本のために、世界のために一番よい条約締結する、日本のために、日本国民が、安心して岸さんに政治を、外交をまかせることができるように、そういうふうに国民の信頼をかちとるようなやり方で、一つこの安保審議に当たっていただきたいことを最初希望して、次の質問に移りたいと思います。  さて、次は、新条約改定交渉に関する経過いきさつについて、いささかお尋ねをいたしたいと思います。  昭和三十二年六月に岸・アイク会談が行なわれまして、このときに安保改定問題が取り上げられたと聞いております。しこうして、三十三年の春、総選挙がございましたが、その後に、六月から八月にかけて藤山外務大臣マッカーサー大使等といろいろと予備会談をやった、こういうことは、昨日のこの委員会において述べられたのでありまするが、そのような経過で、それからまた、昭和三十三年九月に藤山さんは国連総会出席のためアメリカに行き、そうして下旬に日本に帰ってこられた。このころから安保改定交渉が本格的に進められたと思うのでありまするが、一体、この安保改定交渉というものはどちらから言い出したのであるか。昭和三十年でしたか、当時の重光外務大臣が渡米した際に、この問題をダレス国務長官に持ち出して、一言のもとに、ハワイ湾まで守ってくれるかということでおじゃんになった、こういう経緯があったようでありまするが、それが岸内閣になりまして、昭和三十二年以来だんだんと取り上げられてきた。これは、昭和三十年にはむろん日本から改定意向を強く述べたわけでありましょうが、岸内閣になってからのこの改定交渉は、一体どちらがイニシアチブをとったのであるか。われわれの聞いているところでは、日本側からである、むしろアメリカの方はきわめて消極的である、日本が欲するならば受けて立ってもよかろうという程度であった、こういう状況だと聞いておるのでありまするが、どちらが能動的であるかということをお尋ねいたしたいのであります。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 現行安保条約改定の問題は、実は現行安保条約そのものが批准されるときから、現行安保条約に対する批判、また国民的感情に沿わない点が論議され、その後においても、ずっと国内においては論議されてきたわけであります。そこで、私の知っております限り、正式にアメリカ側にこれを提案したのは、今おあげになりました重光外相ワシントンに参りまして、私も実はその席に幹事長として立ち会ったわけでありますが、そのときにその話が日本側から持ち出された。アメリカ側ダレス長官意向として、まだその時期ではないという考えを述べられまして、日本側のそういう考えは一応そのままになったのであります。私の内閣になりましてから、三十二年六月に、ワシントンを私が訪問してアイゼンハワー大統領と会見をして、その際、各種の問題を会談いたしたのでありますが、その一つの大きな項目として、現行日米安全保障条約日本にとっていかにも不平等であって、日本の立場からは、国民感情、気持からいっても、これが改定を非常に強く望んでおる。従って、この問題についての日本側改定希望を、アイゼンハワー大統領にその当時申し述べたのであります。これに対して、あのときの会談のコミュニケにも明らかになっておるように、とにかくまだ、日本側にそういう希望があるとしても、改定の時期ではない。むしろこの日本国民感情に合うようにこの条約を運営していこう、従って、安保条約から生ずるところのすべての問題を、日米の間で設けられるところの安保委員会において審議して、そして両国利益国民感情に合うように一つこれを運営していく、さらに、その委員会においても検討をして、適当な時期がくれば、また改定という問題も取り上げようということになったのであります。そうしてその後、依然として日本側としては、改定意向のもとにアメリカ側日本意向を伝え、その結果が、三十三年の九月、藤山外務大臣ワシントンにおいて、ダレス国務長官等と会いました際に、そういう日本側希望をいれて、それでは改定交渉をしようということになったものでありまして、終始一貫日本の側の希望に従って、アメリカ側がだんだんと改定の方に踏み切って、そうして改定が行なわれるようになったわけであります。いわゆるイニシアチブがあちらにあるかという御質問でありますが、そういう経過でありますから、日本側イニシアチブによってこれが改定されたもの、こういうふうに御理解いただいて適当であろうかと思います。
  11. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今お答えになりました通り昭和三十二年に、岸・アイゼンハワー共同声明において、いろいろとそのときの会談結論が出ております。その中に日米安全保障委員会を作ろう、そして今後の推移を見よう、こういうようなことになっておるのでありますが、そのときに——これは、少し横道にそれますが、この岸・アイゼンハワー共同声明の中に、在日米軍撤退、これは、合衆国日本防衛力整備計画を歓迎し、よって安全保障条約の文言及び精神に従って、明年中に日本国内合衆国軍隊の兵力を、すべての合衆国戦闘部隊のすみやかな撤退を含み、大幅に削減をする、こういうようなこと、それからなお、岸総理大臣は、琉球及び小笠原諸島に対する施政権日本への返還についての日本国民の強い希望を強調した、こうあって、沖繩小笠原返還等もこのときに要望をいたしておるようでありますが、数日前か十数日前の新聞で、沖繩人戸籍日本政府が管掌することになるであろうというような記事を見たのであります。きのうの新聞によると、参議院の予算委員会において、わが党の島清君から、福田総務長官かに対して質問をいたしておったようでございます。その新聞記事によりますると、これはアメリカの方からも言ってきたので、東京で相談をし合って、その点実現をしようというようなことであって、法務、外務その他の関係省で協議し合っている、こういうような答弁総務長官がしたようでございます。これは福田総務長官出席を要求しておったのでありますが、おいでにならないから、これは一体だれの所管であるか、おわかりの方でいいが、大体その様子をお答え願いたいのであります。
  12. 小澤佐重喜

    小澤委員長 福田君は午後という話で、私の方で午後にしたのですが……。
  13. 竹谷源太郎

    竹谷委員 それは何もむずかしいことじゃないのです。どんなふうななにか。新聞で私はただ見ているだけですから、総理大臣なり、外務大臣、御承知かと思うので、簡単ないきさつでいいのであります。  それで外務大臣、ただいまの沖繩の問題で御答弁いただくのでありますが、ついでにお尋ねしたいのは小笠原のことでございます。小笠原島民が、千七、八百名かもっと多いか、全部こちらに来ている。百数十名のアリアン系の、あるいは混血の人たちが向こうに残っている程度で、こちらに来た人たちは非常に生活にも困窮しておる、こういう状況でございますが、これに対して、アメリカ合衆国においては、何か昭和三十五年度予算ですか、それで何がしかのお金を予算に計上して、そして小笠原島民日本内地に来ている人たちに向かって何らかの補償をするということがありましたら、これまた適当に御答弁願いたい。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 沖繩戸籍の問題につきましては、総務長官が詳しく御存じでありますけれども、若干私、知っておりますことだけを申し上げます。  御承知通り沖繩日本人方々に対して、日本人である以上できるだけお世話をしていきたい、また、できるだけ相互の便宜になりますようにやりますことが、沖繩島民の方、または日本国におりますわれわれにとりましても便利であるばかりでなく、かえってアメリカ施設に対しても協力するゆえんだと思います。そういう意味からいいまして、逐次、教育の問題でありますとか、戸籍の問題でありますとか、そうした問題については日米間で話し合いをしていこうということになりまして、そういう意味で、総務長官のところで今話し合いをしておられるのでありまして、まだ完全な結論が出ておると聞いておりませんけれども、しかし、アメリカ側としても、そういう点についてはできるだけ好意を持って、そうしてこれを扱っていこうという態度でありますことは申すまでもございません。  また、小笠原の帰島の問題については、お話しのように、アリアン系の方方が帰っておられます。小笠原帰連盟とわれわれもお話をしまして、たびたびその点についてアメリカ側に話をいたしておりますけれども、今日まで、その時期でないということで、帰島については、アメリカ側において画然たる承認を与えません。そこで、帰島連盟方々とも御相談いたしました上で、長い間自分の郷里に帰れないというようなことからこうむる損害等について、補償を何らかの形で、それでは要求すべきじゃないかというお話がありました。われわれも、まことにもっともだと思いますので、そういう点について、アメリカ側と一昨年の暮れ以来、交渉をいたしたわけであります。アメリカ側も、その点につきまして、すぐ帰島ができない以上は、なるほど困難な方々もおるのだろうから、それに対してある程度補償をしようじゃないかということになりまして、現在、アメリカ議会におきまして、昨年の夏以来この案が政府提出として出ております。ただいま、このアメリカ議会では、御承知通り、形式的な、何と申しますか、法案と、それからそれに伴います財政支出法案と、二つございます。形式的な、そういうようなものを支出してよろしいという法案は上院を通って、ただいま下院に回っております。同時に、また財政支出の方面の、政府に対してその権限を与える法律がかかっておりますので、おそらく私は、この会期の期末までに、それらのものが片づき得るのではないかと思っております。大体六百万ドルという金額になっておるのでございます。
  15. 竹谷源太郎

    竹谷委員 小笠原人たちに対しては、たしか千七、八百名いると思うのですが、六百万ドルというと一人当たり三十万円くらいでしょうか。それをどのように配分するかということはこれはおそらく日本政府にまかせるのではないかと思うのです。これは、あるいは土地建物、いわゆる財産に対する補償というものと、各個人の生活に対する補償というようなもの、いろいろに分けられると思うが、これはぜひ一つ適正な配分を、もし必要なことがあればしてもらいたい、こう思うのでありますが、それはさておいて、沖繩の方は、総務長官がいなくてはっきりわかりませんが、これは戸籍あるいは教育に関する事務、今交渉中だと聞いておりまするが、一体いつごろから、日本戸籍事務あるいは教育の一部を管掌するようなことになるのであるか、大体のお見込みはいかがでございましょう。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 教育の方は、御承知通り、教員の、日本に来ての何と申しますか、研修と申しますか、そういう問題については、すでに始まっておるわけでございます。今申し上げたように、今後そういう問題をどういうふうにさらに発展さしていくかという問題については、まだはっきりしておらないのでございます。  なお、戸籍事務等につきましても、どの程度部分的に、漸進的にいくかという問題については、現に総務長官の方でいろいろお考えの上で折衝されておりますので、私から、いつと申し上げるわけにいかぬかと思います。
  17. 竹谷源太郎

    竹谷委員 小笠原戸籍あるいは教育に関する事務の移管といいますか、これはまだはっきり期限はわからないということでありますが、これはあと福田総務長官が見えたらお尋ねいたします。  さて、そこで、この沖繩というものは、どんな手続一体日本返還してもらえるのか。時期等を聞くのではありません。手続はどんなふうにしたら返してもらえるのか。これは平和条約第三条によって、アメリカを唯一の施政権者とする国際連合信託統治制度に付する、こういう原則になっており、その信託統治に付するまでは、アメリカが立法、行政、司法の全面的な統治権施政を行なうというように定められておるようでありますが、これを一体日本に返してもらうということになると、国連総会の議決も経なければならぬのか、それともサンフランシスコ平和条約に加盟をした各国全部の承認を得て返してもらうのか、その法律上の手続はどんなふうになるのであるか、これは事務当局でいいからお答えを願いたい。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 法律上の手続につきましては、政府委員から答弁いたさせます。
  19. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、もちろん平和条約規定でございます。従いまして、その規定によりまして日本返還ということが行なわれるわけでございますが、先例といたしましては、奄美群島に関する協定がございます。奄美群島返還協定は、日本国アメリカ合衆国との二国間の協定で行なわれております。この先例に従えば、これは日本アメリカの二国間の協定でできるものである、このように考えております。
  20. 竹谷源太郎

    竹谷委員 これはサンフランシスコ平和条約で、これらの各国が参加をしてきめられたはずである。そうして国連の方へ委任したという形に考えるのですが、そうしますと、一体面美大島返還手続で、あと文句が出ませんか、いかがなものですか。
  21. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 奄美大島のときも何ら異論がなかった、このように考えております。
  22. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうしますと、奄美大島のような先例にならうということになれば、これはアメリカ一国の考えでいつでも日本返還ができる、こういうことになりますか。
  23. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 これは結局署名国——連合国の間のいろいろな内部的な相談はあるかとも考えておりますが、結局表面に現われるところにおきましては、日本アメリカ間の協定によるのじゃないか、これは先例がございますから、これによって処理できるのじゃないか、このように考えております。
  24. 竹谷源太郎

    竹谷委員 この場合、アメリカ日本協定という言葉条約局長は用いましたが、贈与みたいなかっこうでしょうか。贈与には、契約と遺贈のような、一方的な行為による財産の給付がある。そうすると、これはアメリカ一存でもいい、日本意向は買わないでもやれる、こういうことになりますか。
  25. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 厳密に平和条約の問題として考えていきますと、アメリカ一存、独断で済む問題ではございません。これはやはりいろいろ相談とか、そのようなことがあるかもしれませんし、また、ほかの連合国が黙認しておるということを前提として行なわれる場合もあるかと思います。
  26. 竹谷源太郎

    竹谷委員 もう一つ、その場合、日本の意思はどうか。
  27. 小澤佐重喜

    小澤委員長 単独行為か契約かというのです。
  28. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 もちろん協定でございますから、双方の行為でございます。
  29. 竹谷源太郎

    竹谷委員 それでは、戸籍事務あるいは教育事務——戸籍などは、日本人たるの身分を明確にする、およそ基本的な憲法上の規定であります。戸籍はそういう事務でありますが、この戸籍事務日本返還をする、あるいは教育行政の一部を返還をするということになれば、日本沖繩に対して施政権の一部を行なうということになると思いますが、これは総理大臣、いかがでございましょう
  30. 岸信介

    岸国務大臣 観念としては、私は施政権の一部の返還ということになるだろうと思います。ただその場合の扱いのいろいろな形式とか、やり方というものによって、多少の法律構成というものが違うかもしれませんが、観念としては、やはり全部を持っておるのに対して、そのうちの施政権の一部が日本に返されるという形になるわけでありますから、実質的にはそういうふうに考えていいと思います。
  31. 竹谷源太郎

    竹谷委員 戸籍法によれば、戸籍事務は市町村長が行なう。終局は法務大臣であるが、地方法務局長がこれを監督して、そして適正な、間違いのない戸籍事務を行なっていく、こういうことになるのであるが、そうなると、これは沖繩日本の市町村長を置かなければならぬ、あるいはこれにかわるところの公務員が必要となる、いろいろ手続があると思います。従って、これは非常に重要な国家事務であり、総理大臣の言われるように、重要な施政権の一部である、こう考えるのでありますが、これが実現をいたしまして、戸籍事務なり教育事務日本が行なう、こういうことになると、沖繩に対してはアメリカ日本がともに施政権を行なう、こういうことになると考えるのでありますが、そうなった場合に、新条約の第五条、日本施政権を行なう領域ということになりまして、新条約第五条の適用を受ける、こういうことになるのではないかと思うが、いかがでございますか。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 戸籍の問題につきましては、今申したように、その性質はきわめて重要な意義を持っておるものだと思います。しかしながら、今五条にいう日本施政下にある領土という意味から申しますと、そういう施政権のごく一部がどういうふうに帰属しているというようなことから、直ちに施政下にある領域、こういうふうに解釈することは、私は適当でなかろう、こう思います。
  33. 竹谷源太郎

    竹谷委員 一体何が施政権であるかということになると、非常に広範多岐で、非常に大きなものであります。むろん事務的に見れば、戸籍事務は、量としては大したことではないかもしれません。しかし、日本憲法には、日本人たる資格は法律によって定めるという、これは憲法付属の重大法律でございまするし、しかも、この戸籍というものは、国家というものが領土と人民とからなっているとすれば、その人民そのものを構成するという、およそ国家の半分の支配をする——土地に比べて人間の方がはるかに重大でありまして、この人間の身分関係を規律する重大法律日本が施行する。憲法の内容である戸籍、国籍等を日本が管掌するということになると、これは量や事務そのものとしてはごく一部かもしれませんが、その重大性においては、これは大きな施政権といわなければならぬと思うこれが日本になってきて、日本じゃない、日本施政下ではない、こういうことになりますと、一体施政下であるかないかということは、非常に不明確になってくる。一体日本施政下であるか施政下でないかということは、だれが認定するのでございましょう。これは、そういうものが平和条約規定があるかどうか、あるいは日米話し合いがあるのかどうか。これは新条約の第五条の適用いかんという問題でありますから、尊きわめて重大であります。政府の統一解釈をお尋ねしておきたい。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知のように、施政下にあるかないかという問題は、いわゆる立法、司法、行政の三権を持っているか持っていないかということになろうと思います。今の戸籍の問題にいたしましても、その範囲内において日本事務を委託するという形でありますれば、いわゆる施政権の一部返還というところまで言えない場合もあるわけでございまして、今後の状況を見てみなければ、何とも申し上げかねるわけであります。
  35. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今外務大臣の御答弁によると、この施政権の一部をアメリカ日本に請負をさせる、日本人は、この国家的に重要な事務アメリカから請負をする、こういう形になるのですか。一体戸籍を管掌するということになれば、今申したように、市町村長あるいはその上に法務大臣があって、これは適正で、いささかも誤謬があってはならない。あらゆる身分関係、あらゆる法律関係、あらゆる裁判関係の基礎になるのはこの戸籍なんです。これが間違っておったら、あらゆる人間関係が破壊される、社会制度がめちゃくちゃになる。家庭の問題、これは内容は非常に重大なんですよ。この戸籍は、法務大臣が身命を賭して、その適正を期していかなければならない大事な事項なんです。こういう事務であり、しかも、これをもととして裁判に非常な影響がある。また戸籍に関する立法——これは司法、立法事項であります。立法事項も含んでおる。戸籍法を制定したり、戸籍に関係するあらゆる日本法律に関係があるのであります。全面的に関係がある。ただ戸籍と言いますけれども、これは外交上にも、日本戸籍の問題から、国際公法であれ、国際私法であれ、関係がある。まして、あらゆる日本法律に影響してくる。そういう立法事項。それから行政としては、市町村長しかり、法務大臣が精魂を尽くしてりっぱな戸籍を作る。そうしてそれに基づいて裁判所が裁判をする。だから沖繩に関しては、立法もすれば、また行政もやる、そうして裁判をやる。だから立法、司法、行政、三権があるのですよ。つまらぬと言っては語弊があるが、ほかの行政法規とは違うのです。戸籍の問題は、およそあらゆる立法、司法、行政全般にわたる大事件でございまして、これが日本の重要な施政でない、従って、戸籍を扱うその土地が日本施設下ではない、従って、新条約第五条の日本施政下の領域ではない、こういうふうに簡単には片づけられない問題です。これはひとり外務大臣ばかりの問題ではなく、全般的な問題であります。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 今お話し戸籍の問題について、戸籍のことが及ぶ影響は、竹谷委員お話しのように、きわめて重要なものであることは、私どももそう思うのであります。しかし、今沖繩の話をしておりますが、私の承知しております限りでは、今お話しのような日本の立法権が及ぶ、日本戸籍法が直ちに及ぶとか、あるいは日本の裁判、司法権がそこに及ぶというところまで話をしておるわけではございませんで、問題は、沖繩戸籍が、日本に来ておる者、また向こうにおる者の間の関係というものが非常に二重的になっておって、そのために身分関係その他が非常にまずくいっておる、これに対して日本が管掌して、円滑な方法によって、日本人でありますから、日本人としての戸籍事務を単一化し、そうして、今までの複雑なことから生ずるところのいろいろな混乱を防ぐ意味において、戸籍の問題を取り上げて、日米間で話をしておるわけであります。今お話しのように、戸籍に関して、立法、司法、行政が、すべて日本の司法権あるいは立法権が及ぶというようなことではないと思います。従って、この五条の解釈の、いわゆる施政下にある云々というのは、施政権というものが全体の包括的なものであって、それが及んでおらない地域には適用しないという意味において、かりにどういうふうに今戸籍の問題が、日米の間で話がつくか知りませんが、私ども考えておるように、この問題から生ずるところの幾多の重大な、複雑な、また不明確な事態を戸籍に関して生じないような取り扱いの方法がきめられたからといって、直ちに日本施政下にある領域、こういうふうに見ることは適当でない、こういう考えでおります。
  37. 竹谷源太郎

    竹谷委員 ただいまの戸籍の問題を管掌する政府委員ですか、だれか見えたようですから、簡単に今までのいきさつを御答弁願いたい。
  38. 石井通則

    ○石井政府委員 総理府の特別地域連絡局長でございますが、沖繩に関する問題について関係各省の相互調整をやっております。具体的には法務省の問題でございますけれども、私どもといたしまして、沖繩戸籍と本土における戸籍との連絡調整、さらにそれができる限り一体化していくような方法を考えていかなければならぬじゃないかということで検討いたしておるのでございまして、現在、外務省並びに法務省と鋭意研究中でありまして、その具体案をなるべくすみやかに上司に提出いたしたい、こういうように考えております。
  39. 竹谷源太郎

    竹谷委員 それについてお尋ねしますが、日本政府意見がまとまり、アメリカ合衆国交渉して、実施に移されるのは大体いつごろの見込みであるか、また、その場合、それは戸籍の公の事務日本に移管してしまうのであるか、それとも、そうではない、便宜、アメリカ施政権である戸籍事務日本政府に背け負わす、委任をする、こういう形であるのかどうか、どういう考え事務当局は進んでおるのか、これを承りたい。
  40. 石井通則

    ○石井政府委員 お答えいたします。戸籍問題を沖繩と本土と一体化していくという上におきましては、いろいろなことが考えられます。行政権を一部復帰させるという案、先ほどお話のありましたように、行政権は別といたしまして、アメリカ側の委託によりまして日本側が十分な指導をやっていくというような案、いろいろありますが、現在まだどの案でアメリカ側と話し合っていくかということを申し上げる段に至っておりません。
  41. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうしますと、委託を受けるということは、請負ですね。そこでお聞きしたいのは、この請負料は一年に何ぼあるか。一体どういうことになるのか。公権を日本返還したのではなくて、公の事務日本に請け負わせる、だから、日本政府でなくとも、ほかのもの、日本の一会社が請け負ってやってもいいことになりますか。
  42. 石井通則

    ○石井政府委員 そういう問題は、いろいろ目下窒息鋭意研究いたしておりまして、委託といいましても、戸籍の問題に関しましては、何といっても、法務省が専門的な知識と指導力を持っておりますので、ほかに委託するような案は考えられないと思います。ともかくも、現在は至急その案をきめたいと思って、鋭意検討中でございます。
  43. 竹谷源太郎

    竹谷委員 外務大臣にお伺いしますが、一体世界じゅうに、このような——公の事務といいましても、あるいは国営の鉄道とか、あるいは地方自治体がやっております水道事業とか、そういうものも公共企業でございまするが、そういうようなものについては委託した例があるかもしれぬが、戸籍事務のような、およそ国政のうちでも根本的な、重大な公務、公の程度が百%という仕事を、ほかの国の政府に何ぼかの請負料を払って請け負わしたという例が今まであったのかどうか、それをお知らせ願いたい。
  44. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 別段、そういう例があったか、ないかというようなことは、私どもまだ存じておりません。しかしながら、日本アメリカの関係におきまして、ある程度そういう問題について沖繩人たちの気持も考え日本人の気持も考えて、お互いに話し合っていきますことは、私は、当然のことであり、また非常にいいことであると考えております。
  45. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうすると、これは全く日本が属国みたいに、向こうの言いなりに向こうの公権をやる。ところが、沖繩は潜在的には日本に主権がある、こういうようなことを片方では言っておる。まことに矛盾撞着もはなはだしい。この点についてはあとでまた質問をいたしますが、一つ政府の明確な解釈をきめてもらいたい。全然見当がついておらない。事務当局さえ何の考えもない、あれやこれやと惑っておる。一体こんなやり方では、政府の行政全般に関する基本的な考え方を疑わざるを得ないのであるが、もう一つ聞いておきたいことは、アメリカとしてはどういう意向日本にこれを申し入れてきたのか。公権を返すという意思を持ってこの交渉日本と始めてきたのか、それとも、特別契約で日本政府に請け負わせる、おれの方はめんどうだし、よくわからぬから——日本戸籍なんて、われわれが読んでもなかなかわからない。まして外国にはわかろうはずがない。こういうめんどくさい仕事は日本人に請け負わそう、こういう考えできたのであるか。その点はっきり政府の方から御答弁を願いたい。
  46. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知通り沖繩人たち日本人としての立場をできるだけわれわれ日本国民として尊重して、できるだけ円滑にいきますようにやりますことは、当然なことだと思うのでありまして、たとえば、教科書も日本の教科書をできるだけ使うようにしていくというようなことは、当然だと思います。従いまして、戸籍事務等につきましても、沖繩島民方々の便宜にもなり、日本人としても便宜である方法をできるだけ開いて参りますことは、日本側希望でありまして、アメリカ側からそういうことを申したわけではございません。日本側としては、そういうことについてできるだけ円滑にいきますように、アメリカ側に話をいたしておる実情でございまして、しかもその話は、先ほど申し上げましたように、まだ日本側としても、どういう案によって話をするかということは、事務的に検討をしておる段階でございます。実質的な外交折衝にまだ移っておるわけではございません。従いまして、今申し上げたように、アメリカ側から何か請け負えといってきたというような意味のものではございません。
  47. 竹谷源太郎

    竹谷委員 日本の方からイニシアをとって申し込んだ、こういう外務大臣意見である。そうだとすれば、政府の方に見解がはっきりしていなければならぬ。戸籍事務を請け負って日本でやってやろう、あるいは、公権の一部を返還してもらう意思を持って日本でやろうというのか、それは申し込みのときに日本政府としてははっきりきまっておらなけばならぬはずです。それを伺いたい。
  48. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申し上げましたように、そういう意味において事務的な連絡をいたして、そうして検討をいたしているのが現在の段階でございまして、そういうような意見がまとまって参りますれば、協定によってこれを実行いたすことは、むろんのことでございます。ただ、今の段階では、まだそういうような段階ではないという意味でございます。
  49. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今外務大臣答弁では「そういう」というその「そういう」という代名詞は何をさしておるのか、日本語ではわからない。その「そういう」というのはどういうものであるか。それから事務当局は、さて委任を受けるのであるか。あるいは公権の返還を受けるのであるか。その点研究中だという答弁である。事務当局は研究中であり、外務大臣は「そういう」、これでは全くわからない。沖繩人希望であれ、何であれ、日本政府アメリカ政府へ申し込んだ。そのときには、どうか戸籍事務日本政府に請け負わしてもらいたい、請負料金は一カ年一億円だとか、こういうのであるか、それとも、公権を返還してもらいたい、日本政府としては、それによってなしくずしにできるだけたくさんの施政権返還してもらって、行く行くは全部返還してもらう、こういうふうにやる戦術としてそういうことがとられたのであるか、それをはっきりさせないで日本政府から申し込んでいるはずはない。事務当局はどっちだか研究している、そうなると、これはアメリカの方から言ってきたのではないですか。どっちなんだか疑わしい。とにかく、今外務大臣は、日本政府希望によったのであると言うが、それならば、公権を返還してもらうという意思を持って申し込んだのであるか、それとも、委任を受けて請け負わしてやろう、こういう考えでもって申し込んだのか。「そういう」じゃだめ。はっきり答弁していただかないと……。
  50. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 沖繩の問題につきましては、日本が関心を持っておりますこと、これはむろんでございます。でありますから、教育の問題につきましても、先生方を日本で講習を受けるようにさせるとか、あるいは教科書もなるべく日本の教科書を使うように進めていくとか、あるいは経済関係の問題についても、日本の資本を入れて開発をする、あるいは、今申し上げましたように、戸籍等寺の事務についても、そういう問題を取り上げて話し合ってみようじゃないかというような問題としてこれは一応提起しておるのであります。従って、それに伴いましてそういうような話を進めていってみようということでありますから、われわれとしてはその内容等について検討をいたしまして、今後こういうふうな案ができますれば、アメリカ側に対して、こういう案でやってもらいたいということを言っていくわけでありまして、たとえば、その他の経済問題であろうと、教育問題であろうと、同じことでございます。     〔「それじゃ答弁にならない」と呼ぶ者あり〕
  51. 竹谷源太郎

    竹谷委員 ヤジにあるように、全く答弁にならない。私の聞いていることに一つも答えていない。要するに、政府は請負なのであるか、あるいは返還を受けるのか、全くその意思がはっきりせずにその交渉をおっ始めた、こういうのであるか。もう一ぺん、これは総理大臣から確かめておきたい。
  52. 岸信介

    岸国務大臣 沖繩戸籍の問題について、現在いろいろ不便があるのであります。また、沖繩の住民の諸君の気持からいっても、満足できない実態があるわけであります。アメリカ側にも、そのことは従来こういう不便があり、こういううらみがあるということをわれわれの方から申して、これに対してアメリカ側も漸次認識を深めてきている。そこで、私どもの真意から言うと、施政権を全体的に返せといっても、これは今のところ現実にはなかなかむずかしいと思うだから、一部でも返してもらうということから、だんだん積み重ねていくことが望ましい。しかし、幸いにアメリカ側においても、戸籍の問題を統一して、いろんな混乱を実質的に防ぐということについては、実際の住民の希望なり、あるいは現実の扱い上からくるところの不便からそのことを認識しておりますから、これを実質的に統一していく、それにはどうしても日本の方が進んでイニシアチブをとって、戸籍の問題を統一していくということが望ましいと思います。まだその形を施政権の一部返還というような形に露骨に現わして交渉しているという段階ではないのでありまして、従って、できれば一部でも返還してもらうことは、私どものかねての念願であります。しかし、一番の問題は、現実に戸籍の問題においていろんな不便が生じており、住民が迷惑をしておる、また、いろんな法律関係の不明確なことが生じておるというような現実から、これを解決するという点から話を進めておるわけでありまして、その結果としてどういう最後の協定の形式になるか、まだその点は、今言っているような交渉の段階でございますから、はっきりした結論的なことを申し上げる段階ではない、こういうように御了承願いたい。
  53. 竹谷源太郎

    竹谷委員 外務大臣の御答弁では、これは請負なのか、公権の返還なのか、はっきりしませんでしたが、総理大臣答弁は、大体公権の返還ということの形に持っていきたい、こういう考えで進める、こういうように私は拝聴をした。公権の返還だということになれば、ただいま申しますように、施政権の一部の返還である、こういうことになれば、新条約第五条の、日本施政のもとにある地域であることには間違いはない。一部であろうと、全部であろうと、半分であろうと。だから第五条の適用を受ける。そうなると、沖繩はほとんど全面的にアメリカ軍の軍事基地でありますが、従って、極東における紛争あるいは戦争等がおっ始まった場合には、一番先に攻撃を受けることを覚悟している場合である。そうなると、日本は直ちに、日本の領域内に攻撃を受けたということで、第五条の、日本の自衛隊の出動がおっ始まる、こういうことになると考えるのであるが、総理大臣、この点御見解はいかがでございますか。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 私は、私の希望しているように、戸籍の問題の法律的の権限が日本に返されるということになりましても、五条に、日本施政下にある領土といっているのは、そうしたごく一部の施政権をかりに日本が持っておるから、施行しているからといってこの範囲に入るものではなくして、この施政下にある領域というのは、広く施政権の全般的なものが行なわれている地域、こういう解釈でございまして、そういう一部のものをさしていっているわけではございません。
  55. 竹谷源太郎

    竹谷委員 新条約の第五条には、別に、一部とか、全部とか書いてない。これは間違いなく一部でも施政下です。一部でも施政下、全部でも施政下、半分でも施政下。そのような解釈をとるということは、条文の曲解である。この条文をごらんなさい。「日本国施政の下にある領域」なんです。これは一部だとか、全部だとか、半分とかではない。一部でもあればこれは施政下なんだ。これは間違いない。これは施政下にあらぬという解釈は絶対にだれも許さない。議論ではない。施政の全部とも書いてない、半分とも書いてない。そこで、この点はなお時間をとりますから、なにしますが、それでは、先ほど来申すように、これは全部日本国施政のもとにある、日本国の全面的な施政のもとにある、こういうことですか。この「日本国施政の下にある」というのは、全部である、全部でなければならない。一部でもそうでなければこれは施政下ではない。だから「日本国施政の下にある」という言葉は、もし沖繩の一部が軍事基地として、あるいは組借地としてアメリカがやっておれば、これは日本施政下でないということになる。もし全部の施政という意味ならば。この点いかがでございますか。
  56. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、この施政下にあるということは、施政権というものの本質から出しまして、全面的施政権を持っている、こう解釈すべきものと思います。
  57. 竹谷源太郎

    竹谷委員 全画的施政なんということは全然ないのです。全面的施政でない場合も、今申すようにある。そこに外国が租借地のようなものを持って、そこで一部施政を行なう場合には、全面ではない。これは一部よそに行っているから、日本の領域下ではないという、そういう解釈は許されません。これはあとでなにしますが……。しからば、先ほど条約局長から、サンフランシスコ条約加盟国もしくは国連の黙認のようなことのもとに、アメリカの一方的な考え日本に返せる、こういうことになりますると、もしアメリカ沖繩を基地として、日本と関係のない第三国と戦争なり紛争をやっておる、こういうときに、向こうからごく簡単に返してくれば、すぐ日本戦争に引き込まれる。日本戦争に引き入れようと、こう思う場合は、すぐいつでもアメリカ施政権を返してくる、こういうことになりますが、いかがですか。だからその場合の施政権返還ということは、一部であるか、全部であるか、半分であるか、きめておかないと、この第五条の解釈は出てこない。
  58. 岸信介

    岸国務大臣 全面的の施政権を返してもらうことは、われわれの念願であり、常に機会あるごとにこれをアメリカ側に要望しておるのでありますから、いかなる時期におきましても、アメリカがこれを全面的に返すということならば、日本がこれを受け入れることは当然で、われわれが要望して返せ返せと言っているのですから、これはちっとも御心配は要らない、かように考えております。
  59. 竹谷源太郎

    竹谷委員 その施政権という解釈については、私は全然承認はできません。あと質問の、アメリカはいつでも返してくれる、国連総会あるいはサンフランシスコ条約加盟国に相談せずに返せるということであれば、私が今申し上げるように、すぐ日本沖繩を基地として——沖繩を基地としなくても、アメリカが第三国と戦争をおっ始めるというような場合には、その戦争中に日本に返せば、日本はいつでもすぐその戦争に強制的に参加させられる。だから日本の領域下にあるところについて攻撃を受けた場合でなくても、問題が起こってくる。そうなると、もうはっきり軍事同盟条約だ。これによって、そういう結果になるわけなんです。軍事同盟条約と同じ結果になる。どうですか。
  60. 岸信介

    岸国務大臣 私、竹谷君の御質問の御趣旨がよくのみ込めないのでありますが、この沖繩は、われわれから申しますと、平和条約によって、非常に不満な気持でありますけれども、あの当時の状況から見て、日本が潜在主権を持つにとどまっておって、一切の施政権アメリカに渡されておる。これを一日も早く解消して、この施政権を回復して、名実ともに日本の領土として、日本政府が全責任を持ってその住民の平和と福祉に努めなければならぬというのは、私は、沖繩の住民だけじゃなしに、日本全体の国民の要望であると思います。この意味において、私はしばしばアメリカ側にもその返還を強く要望して参っておるのでありまして、また、それができない現状において、何らかここでその方向に向かっての努力を積み重ねていきたいということで、いろいろな協力関係を作り上げており、それから今、戸籍の問題も取り上げて、これが解決に当たっておるわけであります。これは要するに、全面的の施政権を返してもらって、そうして日本政府が全責任を持ってこの住民の平和と安全に寄与したいという念願でありまして、これはただ単に岸内閣のわれわれの希望だということではなしに、全国民の一致した要望であると思います。従って、それが実現するということがあるならば、いかなる時期においても、これを実現させるということは適当なことであって、それがあるいは戦時中であるとか、あるいは何らかの戦乱が起こっているというようなことのために、われわれがそこの住民の安寧と平和を守るというところの責任をのがれるために、われわれがそういう場合に拒否するというようなことは、私は、国民全体の気持からいっても、また理論上からいっても、正しくない、かように考えております。(拍手)
  61. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今、自民党席は拍手をしたけれども、これはとんでもない話だ。いいですか。日本の全面的な施政下にあって、そうして完全にわが国の領土としてこれを支配する状況にありますならば、それはけっこうだ。しかし、今、日本は何の権利、権限もない。沖繩をいかように使おうが、全沖繩がミサイルの地下基地になろうが何しようが、発言権は全くない。全島を要塞にされておる。そういうことができるのです。もしわれわれの施政下にあるならば、そんなことは絶対許されない。だから、日本の四つの島の国内沖繩とは、現状が違うのだ。それを突如として返すことによって、全面的な軍事基地というものを返還してもらったらいい、返してもらったらいいという日本の気持に乗じて、日本が入りたくない戦争に無理やりに引きずり込もうとするときには、いつでもやれる、こういうことになるがゆえに、問題がある。私は、岸さんよりも、沖繩を返してもらうことについて熱意がないというわけではない。全国民だれでもが返してもらいたい。返してもらうについては、時期、方法がある。返してもらうなら早く返してもらえばいい。それもいつ返すかわからぬ状態において、向こうの一方的意思によって返される、こういうことになっておるとすれば、非常に危険でございます。(発言する者あり)今椎熊君が盛んにヤジを飛ばしますけれども、これを返してもらうという意思、信念は、だれでも変わりがない。     〔発言する者多し〕
  62. 小澤佐重喜

    小澤委員長 静粛に願います。
  63. 竹谷源太郎

    竹谷委員 返してもらうには、方法や時期がある。それを日本戦争に引っ込めるために、軍事同盟条約と同じような効果をおさめるために、今のような方法でいくと、こういうことになるのであるから、施政権沖繩については特に除外しているという理由が全くない。そんなら、この条約締結する前に、沖繩を返してもらえばよろしい。そうすれば、日本沖繩についてはどのようにアメリカに軍事基地を許すか、許さないか、これは日本の意思によってこの基地化を制御することができる。こういうことはだれでもわかることなんだ。問題はそれなんです。返してもらうのがいやだ、拒否するという問題ではない。これを利用して、日本を完全なる軍事同盟と同じ結果に陥れる、こういうことになる。日本の現在の領土と沖繩の現状とは、全然アメリカの心証が違う。向こうは自分のものとして、勝手ほうだいに使っておる。日本の意思は加わらない。日本の領域下の状態とは違う。そういう状態にあって、紛争が起こっているときに、突如として日本を引っ込める、こういう状態になることは危険であるから、今返してもらって、そうして日本との契約によって、どこは使ってはならぬ、どこだけ貸してやろう、こういうことで最小限度にすることによって、日本の平和と安全を守ることができる。この点どう考えるか。
  64. 岸信介

    岸国務大臣 今お話のように、沖繩をどういうふうにアメリカが使うかということについて、施政権を持っておらぬから、われわれとしては、日本国民の意思を体して政府がこれを制約することもできないのであります。私は、返してもらうならば、返してもらった瞬間において、日本は完全なる主権を持つのでありますから、日本のためにならないアメリカの使用や、あるいはその他の事柄に対しましては、返してもらうということと同時に、断固として日本の主権を主張して、今お話になったようなことができるのであります。主権がないので、実際上の施政権を持たないから、いろいろな、今不満を持っておられるような御意見のあるようなことに、沖繩が使われているわけです。主権を回復することによって日本が主権国としていかようにも——この制限をすることが国民のためであるということならば、その必要なことは制限をできることは当然である。主権国としてできるのであります。それは主権を返してもらってこそできるわけでありまして、現在のところにおいて、われわれの、また国民的に不満な状態は、竹谷委員の言われるような点に関しましては、十分に、施政権を返してもらうその瞬間に、完全な主権国としてわれわれは処置できる、こう思っております。
  65. 竹谷源太郎

    竹谷委員 返還を受けたその瞬間に、われわれが思うままに、アメリカが軍事基地としてこれを使うことを制御できる、これは口だけのことで、実際はそのようなことはできない。アメリカが第三国と戦争をおっ始めて、紛争を起こしておる。沖繩の軍事基地を盛んに使っておる。そのおりに返還を受ける。そこで日本の言う通りにさせる、そんなことは実際問題としてできません。だから、これは事前にやるようにするか、あるいはもうこれは戸籍が返されたら、これは日本施政下だから、これについでは施政下としての日本のその他のいろいろな権限を十分に発動して、そうして沖繩の軍事基地化をできるだけ縮減していく、こういうふうにできるのでございます。このままでいったのでは非常に危険がある。これは総理大臣としても御心配になられるだろうと思う。なお、堤委員が関連で一言言いたいそうですから……。
  66. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、堤ツルヨ君から関連質疑の申し出があります。これを許します。堤ツルヨ君。
  67. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 関連して、総理六年に、時間がありませんから簡単にお伺いいたしますが、自民党から沖繩の問題に対してヤジがあり、それから岸さんはにやにや笑っていられますけれども、あなた一番痛いところは沖繩のはずなんです。これは安保改定の中心なんです。この沖繩の問題がからんで参りますと、今竹谷委員の指摘いたしました軍事同盟になるわけです。従って、先ほどからあなたは潜在主権という言葉を使っておいでになりましたが、この際、潜在主権に対するあなたの説明、並びに外務大臣の説明、それから法制局長官の見解、三人の潜在主権に対するところの分析した説明をいただきたいと思います。
  68. 林修三

    ○林(修)政府委員 この潜在主権というものにつきましては、結局、現在の平和条約第三条による沖繩の状態を表わしている言葉だと思うわけでございます。潜在主権という言葉から直ちに具体的な内容がどう出てくるかという問題ではなくて、平和条約第三条に基づく沖繩地位ということから出てくるわけであります。これは御承知通りに、沖繩については、現在、アメリカが全面的な施政権を行使しておるわけであります。また、アメリカを唯一の施政権者とする信託統治地域にすることについても、日本は異議は言わない、こういうことになっております。しかし、現在においては、日本は領土権を放棄したわけではございません。従って、もしもアメリカが現状における施政権を放棄すれば、当然にこれは帰属するのは日本である。日本が領土権を持っておる。こういう状態が潜在的にある。こういうのが潜在主権の状態だと思います。アメリカ施政権を全面的に持っておりますが、この平和条約に基づきまして、これを信託統治の問題に提案することは、これはできるわけでございますが、この地域を日本以外の国に譲渡する、こういう権限は、アメリカは領土権を持ってそおりませんから、これはない。そういう意味において、現在の日本地位は、いわゆる施政権は何もない。しかし、最終的な領土権は持っておる。領土権についてだけは、これは確実な発言権を持っておる。こういう状態が今の状態だ、かように考えます。
  69. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 岸総理、潜在主権に対するあなたの見解……。
  70. 岸信介

    岸国務大臣 ただいま法制局長官法律的に説明した通りであります。
  71. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 外務大臣は、外交政治的な問題について仕事をしておりますけれども、その法律的な基礎というものは、内閣法制局長官意見によってやるのであります。
  72. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私が、岸総理と外務大臣と林法制局長官に尋ねたら、順序として、岸さんが答えなければならないのが順番じゃありませんか。自分が答えられないから、林法制局長官を立たせておき——なぜならば、潜在主権というような言葉が、世界に通用する言葉かどうか。平和条約日本はごまかされているのですよ。潜在主権という言葉世界に通用するかどうか。世界の常識にあるかどうか。こういう侮辱的な言葉を使われておる国があるかどうか。例があったら、岸さんお答え下さい。
  73. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお答えを申し上げましたような法律的状態をさして、潜在主権という言葉を使っておるわけでありますが、そり言葉は、たしかサンフランシスコ条約のときに、ダレス国務炎官なりあるいは英国の代表等が、用いておる言葉のように承知いたしております。
  74. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私ははっきり申し上げておきますが、潜在主権という言葉でもってごまかされておるところの国はありません。それから、国際的に潜在主権というようなものの対象になっておる例は、沖繩だけであります。そこで、これは時間がありませんから、私の質問のときに触れますが、もう一つ伺っておきたいのは、先ほどから竹谷委員が指摘をいたしておりましたのは、この安保条約は何を中心にして考えられておるかといったら、沖繩を中心にして考えられておる。沖繩の軍事基地というものを中心にして、安保をアメリカ考えておるということを私たちは知っておりますから、沖繩の問題を、施政権があるかどうかということを追及いたしておるのでございまして、もし安保を改定しようとするならば、沖繩の問題を片づけておかないことには、非常に困った問題が将来出てくるわけなんです。従って、この問題につきまして、改定にあたってその段階に、岸総理は沖繩の問題をどういうふうに交渉なさったか、ここで一言触れておいていただきたい。
  75. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保条約交渉にあたりまして、沖繩施政権返還の問題は、かねて申し上げておりますように、安保条約とからめて話はいたしておりません。沖繩施政権返還の問題は、常に外交交渉をもってやっておるわけでありまして、安保条約の問題としては、安保条約の問題として交渉をいたしたことは当然でございます。
  76. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 安保条約改定沖繩の問題をからめなかったということは、日本アメリカのペースに乗せられて起ることなんです。私は、関連質問でありますから、今はこれで退却いたしますが、あらためてこの潜在主権と沖繩の問題は、私の質問時間にあてたいと思います。政府答弁でははっきりいたしておりません。それから林法制局長管の潜在主権の問題も、答えになっておりませんから、もし少し御勉強いただきたいと思います。
  77. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今堤委員からの質問に対する法制局長官答弁で、なおはっきりしたのであるが、日本は潜在主権を持っておる。従って、アメリカ施政権を放棄すれば、立ちどころに日本は全面的な施政権を持つ、こういうことになる。こういうことが一そうはっきりしたのでありまするが、そうすれば、私がきっき非常に危惧するように、どうしても日本アメリカの第三国との戦争に引き入れなければならない、こう考えるときに、施政権を放棄してくる。日本が受け入れる。日本の頭上だ。そうして軍事基地は従来通り、軍事基地に関する、このアメリカ軍の地位に関する行政協定によって、相談なんぞしても、向こうは言うことを聞かないで勝手に使う。こういうふうになれば、これは軍事同盟と同じ結果になる。これをわれわれは国民の一人として非常におそれるのでございまして、政府をいじめるために言っているのではない。こういう事態も考えながら、りっぱな条約を結ぶなら作ってもらいたい、こういう意味でございます。  さて、この点はあとで十分討議を重ねて、政府の反省を求めなければならぬのでありまするが、次に移りたい。これはずいぶん横道にそれてしまいましたが、私は条約締結交渉経過を聞いておったわけです。そこで、昭和三十三年の八月から九月にかけての各新聞記事を見ますると、これは昭和三十三年八月三十日の毎日新聞の朝刊でございまするが、藤山外務大臣は、昭和三十三年八月二十九日午後四時、外務省にマッカーサー大使を招き、訪米前の最終的打ち合わせの予備会談を行なった、そして話し合ったのはこれこれ、こういうふうにある。そしてマッカーサー大使も、大体九月五日ごろアメリカへ打ち合わせのために帰ったようでございまするが、この前後のことをお尋ねしたい。と申しますのは、藤山外務大臣が、九月十一日、十二日の両日、ワシントンでダレス米国国務長官会談をした。そしていろいろとこの安保問題を取り上げ合うということになったという記事があるのでございますが、その前後に、新条約方式でいこうということがだんだん現われてきておる。そして九月の二十六、七日の日本新聞に、アメリカからの電報として、新条約の草案のようなものが出ておる。これは条文の配列は、今ここに提案になった新条約とは違いますが、その規定の内容はほとんど同じ、こういうような状況になっておる。そこで、藤山さんが八月中に新聞記者に答えているところでは、この条約改定の仕方には三つの方式がある。一つは、現行条約を廃止して新条約締結、すなわち新条約方式、第二は、現行条約に部分的な改正、修正を加えるやり方、第三には、交換公文その他の外部からの方法によって、現行条約に実質上の修正を加える、こういうような三つの方法があるということを述べておる。確かにその通りだと思うのです。そのころまでは、外務大臣は何ら方向がきまっておらなかったように思う。ところが、アメリカへ出発する前には何かきまったようだ。そこで、きのう松本委員がお尋ねしたのに、はっきりお答えがなかったので、お尋ねしたいのであるが、マッカーサー大使と岸総理大臣並びに藤山外務大臣、三人で会談した、こういうこと正であるが、マッカーサー大使は、外務大臣とはその前に予備会談でたびたび会っておって、外務大臣意向は大体わかっておる。しかしながら、日本政府の首班である岸総理大臣の御意見を聞きたい、こういうことで三人会談が行なわれたということであるが、それは八月三十日か三十一日だろうと思う。新聞を調べてみると、全然その記事がない。しかし、三人でお会いになったことは間違いない。それは八月三十日か三十一日ごろではないかと思うが、その点いつであったか、お尋ねをしたい。そしてもう一つ、そのときに、岸総理大臣から、新条約の方式でいきたい、こういうことを述べられたということであるが、そういう事実があったかどうか、また、それはいつの日であったか、お尋ねをいたしたい。
  78. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 きのうも御答弁申し上げましたように、私とマッカーサー大使との間で、予備的な話し合いを数回いたしました。これは単に安保条約ばかりでなく、日米間の経済問題、その他ワシントンで話します問題について話したわけであります。むろん、安保条約改定問題というものも、私が持ち出しますから、話すのは当然でございます。当時、御指摘のように、この条約改定するのには、三つの方法があったと思います。われわれは問題点を研究いたしておりますので、問題点全部がアメリカ側の了承を得て改正することができるならば、当然新条約の方式の形でいくべきが適当であると思います。しかしながら、全面的にそういう問題点が取り上げられない場合には、あるいは現条約の部分的な改正なり、あるいはごく小さな部分、たとえばその前の年でありましたか、安保委員会が行なわれまして、そして国連憲章に準拠する交換公文をいたしたわけであります。ああいうふうな問題として一つ二つを取り上げるなら、あるいは交換公文の形で訂正していくということが考えられるわけであります。でありますから、そういう意味において、三つの問題があったことは事実でございます。われわれはアメリカとの折衝の過程において、われわれの要望しておりますような全面的な改定をやるならば、当然旧条約の修正というようなことは技術的にもなかなか困難なので、新しい条約の形をとるのが適当だと思うわけであります。そういう意味において、われわれは話し合いをいたしておったのであります。むろんマッカーサー大使は、ただわれわれがワシントンに参りまして話す点についての内容を了承し、あるいは希望を了承して、それをワシントンに伝えて、そしてあらかじめダレス国務長官が準備しておく、それに対してイエス、ノー、あるいはどういう点をどうということをダレス国務長官が準備をするために、取り次いでおるのでありまして、決してマッカーサー大使自身が、その際に何ら特別の意見を言ったわけではございません。でありますから、最終的には総理としても今申し上げたような考え方でありますから、望むらくは全面的に日本の改正の要望点をいれて、そして新条約にできれば、それが一番好ましいことであるということを総理が考えられ、また言われたのは、当然であると思います。
  79. 竹谷源太郎

    竹谷委員 外務大臣お話によると、いろいろ方式があるが、総理大臣としては、新条約方式が望ましい、こういうことを言われたということであった。私が聞きたいのは、それはいつですか、八月三十日ですか、三十一日ですか。
  80. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 はっきりした日は記憶いたしておりませんけれども、私が国連の緊急総会から帰って参りまして、そして出発までの時間でありますから、そういう時期だと思います。
  81. 竹谷源太郎

    竹谷委員 藤山さんは八月二十七、八日ごろ、日本が台風に襲われておって、青森県の飛行場にたしか帰ってきたように記憶しております。出かけたのは九月三日だった。その間だから、八月の末だったと考えられる。日にちははっきりしないが、そういう会談があり、岸総理大臣から新条約の提案があったということがわかりました。そこで、そのとき藤中さんは、沖繩小笠原は第五条の条約区域から省きたいと言ったというようにいわれておりますが、この点はいかがでありますか。
  82. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その当時は、まだ内容について特に深く掘り下げて言ったわけじゃございません。と申しますのは、はたしてこの改定ということについて、アメリカ側が応じるのか応じないのかということは、疑問でございました。従って、われわれとしては、たとえば期限をつける、内乱条項を削除する、あるいはアメリカが義務を負う、そういうようないろいろなお話をしている問題点、こういう点が非常に不平等になっているのだ、従って、こういう点について何か改正なり補強をしなければならぬ、また、核兵器の持ち込み等については、かねて各方面からの要望もあって、これを協議するというような問題点をあげただけであります。内容等については、後の交渉に入ってからでございます。
  83. 竹谷源太郎

    竹谷委員 総理大臣にお伺いしたいのでありますが、昭和三十二年にアメリカへ行かれまして、アイゼンハワー大統領会談された。そのときに、この安保条約の存続期限に関して、無期限を五年くらいに改めたい、こういうような意見を申されたということでありますが、当時はそのようなお考えを持っておられたかどうか。また、そのようなことをおっしゃったかどうか。
  84. 岸信介

    岸国務大臣 そういうごとき申した事実はございません。
  85. 竹谷源太郎

    竹谷委員 五ヵ年という提言をしたということをわれわれは聞いておるのですが、御本人は言わないというのであるから、これはどうも反証がないので、やむを得ません。  さて岸総理大臣は何とか一つ全面的に改正をしたい、よって新条約方式をとりたい、こういうお考えのようであったが、これが私は非常な問題じゃないかと思う。アメリカは一九四〇年代に、いろいろの相互条約、集団防衛条約等を結んでおりますが、一九五〇年代に入りまして、これまたあるいはANZUS条約、あるいは東南アジアの集団防衛条約、あるいは米比、米華、米韓というような相互防衛条約を次々に結んでおりまして、しかも、一方において、その背景にバンデンバーグ決議がある。そこで、この保障条約、防衛条約一つのパターンがはっきりアメリカにはできておった。このパターン条約日本が押しつけられることは間違いない。そのために、今この安保審議にあたっていろいろと問題になっておりまする世界の平和を害しやしないか、日本の安全に危険ではないかというような、いろんな条項が入ってきたと思う。このことは、東南アジア集団防衛条約や、あるいは米比、米華、米韓の相互条約と、今度提案になっておりまする新安保条約とを比較対照してみますると、順序もほとんど同じくらい、内容に至っては、寸分違わないというわけにはいかないが、実質的には同じである。ことに、第五条の、それぞれの国の憲法に従って危険に対処しよう、共同行動をとる、それを宣言する、こういう方式は全く同じなんです。そういうものを押しつけられる。だから、国民の要望しないものにこの新条約方式が進んでいってしまった。これはどうも非常に危険千万でございます。だから、東南アジア集団防衛機構にいたしましても、あるいは米比、米華、米韓の相互防衛条約にいたしましても、これらは、明らかな軍事同盟的相互防衛条約でございます。しかも、新条約の第五条は、憲法の規定に従って共通の危険に対処をする、共同行動をとることを宣言すると、言葉までそっくりなんでございますね。こういうものを作らなければならなくなったその原因は、新安全保障条約方式を採用したからではないか、こう私は思うのです。もし第二、第三の方式、すなわち、部分修正なり、あるいは外部からの方法による実質的な修正、補正を加えるという方式を採用していたならば、日本アメリカを防衛する義務を負うというようなことはないようにできたのではないか。岸さんは、昭和三十二年には、条約期限を五年くらいにしたいということを申されたとわれわれは聞いておるのだが、御本人は、言わない、こう言っておるのであります。現行条約に対して、そのような期限を付するとか、あるいは在日米軍日本外に出動をする場合には日本の同意を要する、こういうような規定に実質的に改めるなり、あるいは進んで、在日米軍の海外出動を全面的に禁止をするというような方向に持っていくとか、そういう改善の方向が、内容としては日本の安全のために非常に望ましい、また期限もつけられる、こういうようなことにできたのではないか。それを新しい条約方式に切りかえるということになりますと、アメリカとしてはバンデンバーグ決議もある、従来のアメリカ外交方針もある、従って、韓国や台湾や、あるいはフィリピンに対すると同じような、あるいは東南アジア防衛機構、あるいはニュージーランド、オーストラリア、アメリカのANZUS条約というような方向の形式をどうしてもとらなければならぬことになった、こう思うのです。また、期限についても、暫定期限を十年に縮めたのだ、こうおっしゃるけれども、これなどは、今までは暫定期限であったものを、もう確定的な十年という、この変転きわまりなき現在の世界情勢ではどうなるかわからぬ長い十年というような、そういう期限も付さなければならなくなったのではないか、われわれはそれを疑っております。総理大臣は、新条約方式をとったのは非常な誤りだったとは思いませんか。吉田さんはサンフランシスコ平和条約を結んだ、鳩山一郎さんは日ソ平和回復をやった、おれも総理大臣中に一つ新しい条約でも作らなければ、総理大臣になってもどうにも死に切れない、こういうようなことでやっておきたい、こういうことでは、あなたの名誉心、あるいは気持のために日本を危険に陥れる、それがひいては世界の平和安全に障害を来たすということになるのではないか。この点、あなたはいかようにお考えであるか。新条約方式でもって条約一つ作ったという名誉をかちとるよりも、日本人が一そう安全に、世界は平和に進むようにやることがあなたの大きな頌徳碑が建つゆえんではないかと思うのです。御意見を承りたい。
  86. 岸信介

    岸国務大臣 どういう形で条約を改正するかというようなことが、私の名誉心と何か関係があるようなことを言われましたが、全然私は考えたことはございません。先ほど来申し上げておるように、私は、現行安保条約のできた当時の状況と、今日の日本の国力及び国際情勢の違いから考えまして、また、当時の状況ではやむを得なかったのでありますが、現行安保条約の建前自身が根本的に不平等な建前になっております。私の考えたことは、言うまでもなく、日本の自主性を回復して、しかも、現在の日本の国際的立場にふさわしい、つまり、国連憲章の大原則、そうして、日本憲法という特殊な憲法を持っておる、その憲法の範囲内においてわれわれが自主性を回復し、日米ができるだけ対等な形において日本の安全と平和と繁栄を期するにはどうすることが一番望ましいか、こういう見地に立っていろいろ現行条約を検討してみますと、その一部を改正するということでは、とうてい私どもの願望は達せられない。従って、われわれが、この改正の必要であるという、従来から論議されておるところの点を取り上げて、これをすべて盛り込んだ条約を作るとするならば、新しい条約の形式がふさわしい。私どもは、アメリカが最近五〇年代に至って結んでおりますところの各種の同種の安全保障条約等のパターンも十分承知しております。しかしながら、それらの問題に関して、日本の憲法の特別の制約というものを大前提として考えておるのであります。さっき五条の点についてお話がありまして、最後の点が同様であるということを言われておりますが、五条の非常に重要な点は、その前段にあるところの、日本日本施政下にある領土が武力攻撃を受けた場合にだけ発動するということであって、ほかの条約のごとく、日米がどこで攻撃を受けても、それが直ちに両方が共同の防衛行動をとるというような条約とは全然違っております。いかなる場合においても、日本の領土が侵害されない限り、武力行動は発動しないのであります。そのことは、よその条約とは形は似ておりますけれども、精神が全然違っておる。また、バンデンバーグ決議の趣旨をある程度取り入れておりますが、その条約の書き方におきましても違っておるように、あくまでも、日本憲法の範囲内においてこれをやろうということでありますから、ただ条文の配列がどうであるとか、あるいは条文の一部の字句がどうであるかとかいうような、枝葉末節な問題ではなくして、今言った大前提のもとにおいて、日本はいかに自主的な立場において自主性を持ち、そして日本の平和、また、日本の平和と不可分な関係にあるところの極東の平和に対してだけ出動を認めるというような制約のもとに、あくまでも日本の平和を守っていく、日本が他から侵略されないという体制を作るために作り上げたものでありまして、条約の形式が新しい形式であるから、これがはなはだ間違って、おる、一部の改正、現行の改正ならいいというふうな考えは持っておりませんし、いわんや、新しい条約を作るということが何らか私の政治家としての名誉心と結びついているというような御意見でありましたが、それは全然私の考え方とは違っておるのであって、私は、先ほど来申し上げましたような趣旨において全面改正の方式が適当である、こういう考え方を持っておる次第であります。
  87. 竹谷源太郎

    竹谷委員 条約改定の方式について、いずれをとるべきやという問題については、私は、総理大臣と全然見解を異にいたします。この点は、追って条約の内容等について触れるに従って明らかにしたいと思いますが、次の質問に移りたい。  次は、世界情勢についてお尋ねをしたいのでありますが、第二次世界大戦におきましてはB29が一番花形でございまして、ことに、終戦近くには日本土の上をB29が勝手ほうだいに飛び回って、焼夷猟を投下したり、爆弾を落としたり、惨たんたることでございました。今日は、御案内のようにロケット、ミサイル兵器がこれにかわって、B29などは問題ではない。過去の記念品、天然記念物のような形になりました。また、B29は最高一トンくらいの爆弾を持ってきたと思いますが、今日は、五メガトンといたしましても、原子兵器では一発で火薬の五百万倍くらいの威力を持つ、こういうような時代になりました。そのほかに、ことにミサイル兵器はソ連が非常な進歩をしておる。先だっても太平洋に一万二千四百キロですか——八千キロあれば大陸間弾道弾と申せるのでありますが、それを五割も超過する弾道弾ができて、兵器としては千分の一くらいの精度があれば使えるということでありますが、これは、そのまた万分の一・六ですか、非常な精度を持ったものができた。これを輸送するところのすばらしい原水爆ができておる。こういう時代でございますばかりでなく、今度は中距離弾道弾、三千キロくらい飛ぶものを、世界じゅうに東四両陣営で張りめぐらしておる。この間の新聞によると、アルゼンチンのヌエボという湾ヘソ連の潜水艦とおぼしきものが数そう入り込んでおる。これは地図をごらんになれば相当人り込んだ湾ですが、これが原子兵器を持って歩き回っておる。こういう時代で、この恐怖の破壊兵器によるところの戦争にありましては、攻撃兵器は非常に強くなっているが、これを守る力が足らない、こういうことでございます。従って、米国なりソ連なり、一方から一体予防戦争ができるか。早く向こうをやっつけてしまったらいいじゃないかという戦略論もあるようでありますが、これとても、現在としては、たとえばソ連がアメリカを爆撃する、そして軍事基地をたたく、それでも、なお攻撃兵器が残るそうでございますが、その攻撃兵器で、今度はアメリカがソ連を襲撃するということになると、ソ連がまた撃滅させられるということになって、とても戦争はできない、この恐怖の原子戦争はできない、こういう情勢になっておる。こういうことでございまするから、われわれは、全面戦争というようなものを米ソ両方とも始めるようなことはまずなかろう、全面戦争はなかろう、こう考えるのでありますが、この間に立って、谷間にあるような日本政治をあずかる総理大臣は、この全面戦争があり得るだろうか、ないだろうか、これに関してどのようなお見通しを持っておられるか、お伺いをいたしたいのであります。
  88. 岸信介

    岸国務大臣 今、竹谷委員の御意見にございましたように、最近における軍事科学の非常な発達、そうして兵器の破壊力が非常に増大し、また、これを運搬するミサイルの発達というようなことから考えまして、全面戦争が起こった場合における戦争当事国、また、当事国以外の人類に与える惨害は、ほとんど人類の全滅的な結果をもたらすような惨害を与えるだろうということは、各国の軍事専門家はもちろんのこと、また、政治家も、あるいは民衆も、そういうことに対して非常に認識が深まってきておる。従って、これはどうしても防がなければいかぬ、また、これを用いるようなことをしてはならないということが、これらの兵器を持っておる国々においても痛切に考えられてきておる状況であると私は思います。従って、そういう意味において、全面戦争の危険は、一時考えられておったような、非常に差し迫っておるものである、あるいは、これがある時期において起こるというような危険は、非常に遠のいた、私は、こういう認識に立っております。
  89. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私は、人類を破滅させるところの全面的な戦争は、米ソ両方ともおっ始めるようなことはなかろう、こう考えるのであります。しかしながらお互い相手方を信用しない、そして不安を持っておりますこの情勢下にあって、戦争を押えて戦争が起こらないようにするために、あるいは地域的安全保障体制の整備をするなり、相互防衛条約締結するなり、あるいは今度は心理作戦をやるとか、あらゆる手段を講ずる、そうしてやりながらも、お互いに相手に負けるといかぬというので、ますます軍備拡張が猛烈をきわめる、そうしてお互い焦燥感にかられ、どんどん今後も軍備拡張が急速度で進んでいく、こういうふうな情勢は、どうもとどめようがないと考えます。  そこで米国、ソ連を初め、各国とも軍備縮小をして、あるいは軍備を全廃して、戦争をなくすという以外に手はなくなった、こういうふうに考えてきたのではないか。戦争を抑制するためには、相手に負けない軍備を持って臨んでいくということが、一応今までとられてきた方針でございましたが、もはや、これを続けていったら大へんだ、だから軍縮によって平和を確保し、戦争を抑制する、これ以外に手はない、こういう結論になりつつあるのではないかと思いますが、総理大臣はいかがお考えでありますか。
  90. 岸信介

    岸国務大臣 さっき申したような情勢、しかも、それをお互いに相対立する両陣営において無制限に行なっていくということは、一方において不安を与えることであり、一方においては、その財政的な面における負担も非常に膨大なものに上りつつある現状から見まして、どうしてもこの軍備競争という傾向に対して、これを何とか制約しなければいかぬという考え方は国連の多数の国々の意見であり、また、大国の間におきましても、そのことが認められてきております。その傾向を如実に示すものとして、現在行なわれておるジュネーブの十カ国軍縮会議というものはその一つの現われである、かように考えております。
  91. 竹谷源太郎

    竹谷委員 総理大臣のおっしゃるように、非常な財政的な電圧にもなっておるということは、これは昭和三十三年の統計によりましても、アメリカ国民所得の約一〇%を軍備にさいているようであります。それからまた、ソビエトに至りましては二五%、国民所得の四分の一を軍事費に投じておる。これは表面の軍事費あるいは安全保障費でありまして、そのほかに、これにつながる費用の支出もばく大である。ところが、ソ連の国民総研得はアメリカ国民総所得に対して四〇%台、しかるに二五%も出しておるので、絶対額においても、一応数字に現われたところでは、ソ連の軍事費がアメリカの軍事費を上回っておる、こういう状態でございます。従って、国民所得を国民個人消費に充てる部分というのは非常に縮減される、だからソ連国民生活程度が低い、これは何とか一つ高めてもらいたい、それから、もう少し国民に自由を与えてもらいたい、そういう傾向がなかなか強い。この間にあってフルシチョフ首相が、民生を安定する、国民の気持に軍でも沿うようにして、そして政権を安定していくという立場からいいますれば、何ほどでも軍事費をさいて個人消費の方に振り向けるなり、あるいは国民生活程度を高めるために生産を増大しなければなりません、それには、絶対的に開発投資が必要である、その方にたくさんの金を回さなければならぬ、こういうような、せっぱ詰まった情勢から、ソ連としては、何とか一つ軍備縮小をしてこの要求にこたえないと、自分の政権もあぶない、こういうことになるのではないか。そういう切実な、軍縮以外に戦争抑制、平和維持の方法がない、こういう結論から出たのではないかと思う。この点は、アメリカのような大きな経済を持っておる国としても非常に大きな負担となり、ひとり自分が使うばかりでない、海外諸国にも軍事面、政治面、経済面で非常な協力をしなければならない、そのために、非常に裕福なアメリカの経済においても貿易じりが、海外収支が赤字になっておる、こういう情勢からも、アメリカとしても何とかしなければならぬ、こういうことになってきた。だから、今の世界の雪解けの傾向、キャンプ・デービッドの話し合いによって一つやっていこう、こういう精神というものは、決して人類の理想である恒久平和に対する道義的な発言、政治的な意見発表というのではなくて、心底から両国もそうしなければならない情勢になってきたのじゃないか、こう私は思います。アメリカ人といえども、ソビエトの原子兵器の発達、ことに、これを運ぶミサイル、ロケットにおいては、ソビエトの方がアメリカを数年抜いておると思う。こういう情勢下でございまするから、アメリカ人もやはりソ連人に劣らない、何とかしなければならぬという気持に国民全部がなっておるように思います。  実は、先週の金曜日に、この衆議院の別館の五階にりっぱな会議場があって、そこに設備のよい天然色発声映画の機械があります、あそこで、世界芸術協会の主催で、フルシチョフが去年の夏アメリカを訪問したときの天然色の記録映画が上映になりました。私もいたのでありますが、それを見ますると、アイゼンハワー夫妻はフルシチョフ夫妻を——夫婦でフルシチョフはアメリカを訪問したのでありまするが、アイゼンハワー夫妻は、手を取るようにして案内をして歩いて、まことになごやかであり、あたたかに迎えておるのでございます。そしてフルシチョフ首相は、ワシントンもニューヨークも、あるいはシカゴやロスアンゼルスや、方々を訪問いたしまして非常な歓迎を受けた。あるいは飛行機で、あるいは鉄道で行く場合もたくさんある。そうすると、飛行場にも、停車場にも、あるいは自動車で行く道筋にも、実に何万、何十万というアメリカの群衆が集まって、その集まってきたのは、まあ、もの珍しいという点もありましょう、しかし、その表情から見て、非常な歓迎ぶりである。共産党の全世界の大将がやってきた、珍しいから見ようというだけではない。その表情から見取れるところは、何とか彼と仲よくして、世界を平和に持っていきたい、戦争の惨禍が再びないようにしたい、こういう熱望がほうはいとして人々の目や顔に現われている。これは天然色発声映画でありますから、よくわかる。この雲霞のごときアメリカ国民の群衆のある様子をごらんになれば、これは心底から——アイゼンハワーはどうあろうとも、一億六千万のアメリカ国民あげて、何とかこの軍備競争をやめたい、世界を平和に持っていきたい、この熱意に燃えておる。アメリカ人は、国内戦争以後、百年以上も戦争の経験がない。従って、現代のアメリカ人は、戦争の惨禍というものを自分国内では経験をいたしません。外国へ行って、優秀な兵器で外国をたたくような経験を持つ兵隊はたくさんおりますけれども国内におって、実に惨たんたる目にあった経験はない。そのようなアメリカ人でさえも、何とか一つソ連の国民と平和に、仲よく暮らしていきたい、こういう願望を持っていることを、このフルシチョフ訪米映画で見取ることができたのでございます。  そこで、相当長い間のアメリカ訪問の日程を終えて、フルシチョフ首相はモスクワの飛行場へ帰って行った。そこにはソ連の国民が多数出迎えていた。これはまた深刻である。よくフルシチョフさん行ってきてくれた、それは、われわれの戦争のない、また、国民生活の豊かになるような、そういう生活がかちとれるのではないか、これはまた、心底から戦争の惨たんたる残虐を身をもって国内で味わったソ連国民としては真剣である。そして、フルシチョフ首相が全く対立する敵国に乗り込んで、アメリカ人から大歓迎を受けた、そのフルシチョフの訪米の成果を、ほんとうにソ連国民としては心から感謝する気持、それはまた、その映画によく現われておったのでございます。この両国の指導者の会談、それは何を相談したかということは第二である。  アメリカ国民とソ連国民がこの二人に期待をする、その米ソ両国民だけではない、世界の全人類が期待する。それが成功裏にいったということに対して、だれも異存はない。これを見ましたときに、これは政治家よりも米ソ両国民が、いな、全世界人類が、このデービッド会談の結果が世界じゅうに広がって、世界じゅうが平和になるようにこいねがっているということを、私は、この一時間ばかりの映画で見取ることができた。副議長以下代議士諸公もたくさん行かれましたが、こういう点は、単なる雪解けの話し合い、口先、八百長が出たんだというふうに片づけてはならない。六月には、アイゼンハワーが日本を訪れるとともに、ソビエトを訪問されるようでございますが、これは、まあ、国民全体の、また、全人類の願望である。この雪解けの傾向というものを、どうも岸総理大臣は軽視する傾向がある。そういう認識の上に立って新安保条約考えるというところに、非常な誤謬が出てくるのではないか。世論調査でもわかるように、国民の大多数が新安保条約には反対というようなことが出ている。これはひとり日本国民ばかりではない。世界じゅうの人も、今この時期に日本アメリカと軍事関係を強化する、このような動きをするということは、危険きわまりない、こういうふうに考えておるのではないかと思う。これは真剣に一つ総理大臣はお考えを願いたい。この点、どうお考えであるか。どうもその認識がわれわれと非常な食い違いがあるのではないか、こういうことをおそれるのでございます。
  92. 岸信介

    岸国務大臣 世界人類が平和を望み、また、これに対して政治家が、その意向を受けて、さらに努力をしておるということは、御承知通りであります。先ほども申し上げましたように、また、御意見のありましたように、その根底をなすものにはいろいろな理由があると私は思います。現実の問題として、とにかく、科学兵器の非常な発達と、また、それに対する恐怖や、あるいは財政に与える重圧、国民生活自身に対する圧迫というようなものも、これはいろいろな点において原因をしておる。しかし、いずれにしても、われわれは世界の平和を望み、また、東西両陣営の間でものの考え方は違っておるけれども、お互いがお互いの立場を理解し、尊重して、そして平和的な共存の道を見出そう、しかも、あくまでも話し合いの方法によって、この両陣営の間の考え方の通うことから生じておるいろいろな懸案の問題を調整していこうという傾向にあることは、非常に望ましいことであり、その前途がいかに困難であっても、そのためにわれわれが話し合いの道を閉ざすようなことがあっては絶対にならぬという考えでございます。同時に、この世界の、現実に今問題になっておる軍縮の問題にしても、これを達成しようという願望は、ひとしく考えておりますけれども、その方法なり、その具体的な結論を得るためには、従来の経緯に見ましても、また、ジュネーブの会議の始まっておる最初のこの主張から見ましても、私は、前途に幾多の困難があると思います。これに対して、われわれが今後努力していくことが必要であり、その間において、それではどうするか、安全保障の問題は一切それに希望をつないで、自分たちがこれをなおざりにしていいかといえば、現実の問題として、九千万国民の安全と平和ということを考えると、やはり希望を持ってそれに向かって努力はするけれども、現実にそれに一切のことを託して、われわれは安全保障の問題をなおざりにしていいとは、私は絶対に考えないのであります。そうして、安全保障の体制として、現在あるところの体制、これが持っておる不合理な点、あるいは日本の意思が少しも働き得ない、それから生ずるところのいろいろな疑念や、あるいは不安というものを除くような改正をしていくことが、われわれの務めであるという考えのもとに、この安全保障条約の改正に当たっておるわけでありまして、決して国際情勢の雪解けに対して、私がそれを何か非常に軽視しておる、あるいはそれを無視しておるというようなことではございません。しかし、おそらく竹谷委員もそういうことを願うという希望であり、また、それに向かっての努力ということと、現実のわれわれが直面している幾多の問題というものが、すぐわれわれの希望通りにいっておると即断はされておらないことを確信しておりますが、そういう面にわれわれが思いをいたすときにおきまして、この安保条約改定というものは、一部の人々が非難しているように、これによって、何か国際情勢の大勢に反しているものだというような見解は、私は絶対に間違っておる、かように考えます。
  93. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、食事のため、四十分間休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後一時五十四分開議
  94. 小澤佐重喜

    小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。竹谷源太郎君。
  95. 竹谷源太郎

    竹谷委員 午前中に世界じゅうの国際情勢をお尋ねしたのですが、続きまして極東における国際情勢をいささかお尋ねをいたしたい。  午前中の御答弁によると、世界は雪解けの傾向には向かっておる、全面戦争はもう戦えないのではないか、こういう御意見でございました。しかしながら局地戦争はまだ所々方々に起こるのじゃないか。極東ではあるいは南北朝鮮、南北ベトナムあるいはインド中国の国境紛争、ビルマ中国の国境紛争あるいはラオス事件あるいはまた台湾、金門、馬祖等、問題は多々極東にもあるわけでありますが、ずっと通覧いたしてみますると、朝鮮はむろん今おさまっております。インド及びビルマと中国との国境事件、これもまあだんだん解決がつくのじゃないか、こういう状況のように思います。また南北ベトナム、あるいはこれも朝鮮と同様に一応安定しておるような形じゃないか、台湾、金門、馬祖の問題はときどき金門、馬祖へ砲撃が行なわれたり、いつも風雲をはらんでおるというような形ではあるが、これで今急にどうと、局地戦争になる、紛争が拡大していく、こういう心配もないと私は思うのですが、この点は総理大臣はどのよりにお考えになっておられるか。特に極東において何か危険な状態がある、それでこの際地域的な安全保障を、特に日本として極東の情勢にかんがみて、この際何でもかんでも安全保障体制を特に強化をしなければならぬ、こういう極東の情勢があるかどうか、まず承りたいのであります。
  96. 岸信介

    岸国務大臣 極東におきましても、この民族が二つに割れておるような状態がございまして、不安定な状況であることはいなむことはできないと思います。私は今日急に極東において、われわれが平和を望んでおるそのわれわれの願望に反したような武力攻撃が起こるというようなことを予想しなければならないような事態が、今日現に緊迫してあるとは考えておりません。
  97. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そういう情勢ではありますけれども、むろんこれは不安がないとはいえませんが、私は、今時に激化しておるという情勢でもない、従って特にこの際安全保障体制を日本としてはとる理由をどうもあまり発見できない。フルシチョフの訪米があり、近くアイゼンハワーがソ連を訪れる、こういうことになっておるので、それらとにらみ合わせて、私は政府としては考えてもらいたいと思うのですが、さてそこで、極東における日本を中心として、一体局地戦争やなんかが起こる可能性があるかどうか、日本に関して極東における局地戦争が起こる可能性があるかどうか、こういう問題についてお尋ねをいたしたいのであります。今世界は力のバランスによって平和が維持せられておる、この現実は私もこれを認めるのであります。東西勢力が相接しておりまするところに、もし西側の方に弱いところがあると、東側から張り出していく、東側の方に脆弱点があるとそこへ西側からふくれていく、こういうようなことが局地紛争の種になって現われる、こういうことが過去において大部分であったということをわれわれは認めるのであります。しかしながら、そのような世界じゅう方々における局地的国際紛争のようなものが、一体日本を中心としてあり得るか、こういうことでございます。この極東にもたくさん紛争の種になるようなところがありまするが、これらのところと日本とは全く別格であると私は考えるのであります。日本はむろん国土は非常に狭い。世界の陸地面積のわずかに三百五十六分の一しかないのであります。しかしながら、わが国はその狭い地域ながら、極東においてきわめて重要な地点を南北に長く占めておる。しこうして人間という問題になりますると、約一億に近い、世界人口の三十分の一を占めております。これは比重が非常に高くなる。しかもこの一億の日本人は、きわめて優秀な民族である。技術水準は高い、卓越した優秀な産業設備を豊島に持っておる、生産能力も十分。こういうような日本が東西どちらの陣営に傾くか、これは世界のバランスに大きい影響を与える点は、東西両ドイツを合わせたものに匹敵するどころか、それ以上の重要な軍事的、防衛的あるいは政治的、経済的、社会的の影響がある。そして東西両独よりもむしろ日本の方が大きい、こう考えるのであります。従いまして、日本を中心とした、日本に関する東西両陣営の紛争というものは、局地紛争にはとどまっておらない。必ずや世界的規模に発展する、大紛争となることは、もう必然である、こういうふうに考えるのでありまするが、総理大臣はどのようにお考えであるか。日本が東西両陣営の紛争の、局地的紛争の地点になり得るかどうか。すなわち南北ベトナムとかあるいは南北朝鮮とか、こういうようなものと同じであるか、これとは全然違うか、非常に重大な世界じゅうの大問題になる、これで紛争が起きたならば、大戦争にも世界戦争にも発展する可能性がある、こうお考えであるか、あるいは極東のもろもろの紛争地点のような程度にとどまり得るのであるか、この点御意見を承りたいのであります。
  98. 岸信介

    岸国務大臣 今、日本が現実に他国から武力攻撃を加えられる危険が緊迫に迫っておるとは私は考えておりません。しかし日本が独立国として、先ほど来おあげになりましたような実力を持って世界の平和に貢献していくという、この自主独立の立場を堅持しておいて、全然他からいかなる場合においても侵略がないとか、あるいはまた日本に対する何らかの武力攻撃は、直ちに全面的の世界戦争意味するものであって、局地的な紛争なりあるいは侵略というものが全然皆無である、こういうふうにわれわれは見ることはできまいと思う。今現実にどういう問題があるということを私は申しているわけではございませんけれども、いやしくも独立国として、日本が、平和と繁栄を持続していくためには、今自決して南北朝鮮であるとか南北ベトナムというふうに民族が分かれておって、その間の紛争が生ずるということはございませんけれども、どういう事態が起こってきても、日本が他から侵略されないという体制はとっていく必要は常にある、かように考えております。
  99. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私のお尋ねしたいのは、そういうことじゃなくて、日本にもし侵略があった場合に、その侵略を——局地的な侵略でもいいのです。それがあった場合に、その局地的な紛争、戦争等で済ませるか、世界戦争になるのが必然である、日本に対する侵略は局地戦争だけではとどまらない、こう考えるのですが、その点どうですか。
  100. 岸信介

    岸国務大臣 それはわれわれが侵略が行なわれたときの侵略の意図なり、あるいはそのときの客観的情勢から判断しなければならないのでありまして、必ず日本に対するどこかの侵略が、直ちに世界戦争意味するというふうには私は考えておりません。
  101. 竹谷源太郎

    竹谷委員 その点私は総理大臣と見解を異にします。日本に対してどこからかもし侵略でもあるというふうな場合には、これは世界にとって非常に危険な状態になる、こういうふうに私は考えます。そこで、われわれは共産党や社会党さんのように、現行安保条約を即時廃棄しろというようなことは、きわめて痛快な言い方かもしれません。しかし世界の平和と日本の安全のため、今直ちに日本がそういう行動をとる、安保体制関係を破棄してしまう、直ちに廃棄するというような動きをすることは、日本にとって危険がある、こう考えますが、この点は総理大臣はどのようにお考えであるか。
  102. 岸信介

    岸国務大臣 私どもは、日本の安全をはかるためには、日米安全保障体制というものを存続することが適当である、かように考えております。
  103. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私は政府のなさんとする安保改定には反対である。しかしながら現在あるものを直ちに廃棄してしまうというようなことは十分考えなければならぬ、こう思いまするが、日本の安全と世界平和のために世界の雪解けの進行に調子を合わせ、また国際連合安全保障体制の整備の方向とにらみ合わせながら、順次に安保の解消をしていく、こういうのが一番現実に即し、日本の安全を守りつつ、しかも理想に向かって進んでいく、こういう方向ではないかと思います。しかしそれとは逆に西側陣営の大将であるアメリカとこの際特に雪解けの方向にある今日、軍事的な結びつきを現状よりもさらに強化をすることはこれまた即時廃棄と同様にきわめて危険な行動である、このように私は考えます。この点いかがでございますか。即時廃棄も危険がある、しかしながら西側陣営とこの際強い軍事的結びつきをなおさら強くしていくというようなこともまた危険である、こういうふうに考えますが、いかがでありますか。
  104. 岸信介

    岸国務大臣 安保改定の各項目における事項が、竹谷君は、おそらく現状の安保条約を何か根本的に改めて軍事同盟化するものであるというふうな前提に立っての御質問であると思いますが、私どもは、しばしば申し上げておる通り、これは各項目を御検討願うならば明瞭になるように、現在あるところの安保体制の不合理な点、日本自身が自主性を持ち得ないこの点に関して、自主性を持つように不合理な点を改めるということでありまして、前提として、軍事同盟的な方向にわれわれが強化していくというような考えは持っておらないのであります。従って抽象的にこの軍事的なつながりを強くすることかどうかというふうな御議論に対しましては、私ども安保条約改定というものは、今言ったような現在ある安保体制を合理的にする、しこうして日本はこれによって従来持っておる義務を加重するものでもなければ、またアメリカが一方的に勝手にできたことを、日本の意思を無視してはできないというふうな条項を設けることによって、従来の、現行あるところの安保条約というものの不合理性を改めるということでございますから、そういうことは、何ら世界の大勢に反したあるいは危険をもたらすことではない、こう考えております。
  105. 竹谷源太郎

    竹谷委員 新条約アメリカとの軍事的結びつきを強化するかいなか、こういう問題については、あとで、安保条約そのものについて論議をする場合に申し上げます。これは私は意見が違うのであるが、しかしながら、何も今急いでこれを改定に持っていく必要は、内外の情勢、極東の情勢からいってもない。そればかりか世界じゅうは、これは岸さんが何と言おうと、日本としては、やはりどうも軍事的な結びつきをアメリカと一そう強くするというふうに見る人が大部分であろうと思うのです。これでは、日本が平和憲法を制定して、日本が率先して世界の恒久平和の選手として世界平和を推し進めよう、こういう日本国憲法に表わした日本国民の願望というものに完全に逆行しておると思う。かりに安保改定をするにいたしましても、アイゼンハワーがソ連を訪れ、また国連における束四の軍縮の話し合い、そういうのをもっと見きわめた上でやってもいいのではないか、そうあわててこの際これを何でもかんでもやりとげてしまう、こういう必要はないのではないか、こんなことをしてはいけないのではないか、こう考える。いましばらく改定は見合わして、もう少し世界の推移を見た上でなさってはいかがでございますか。この点も伺っておきたいのであります。
  106. 岸信介

    岸国務大臣 安保条約改定の問題につきましては、午前中の御質問にもお答え申し上げましたように、日米間において相当長い間の懸案であり、またわれわれの要望であった事項を取り入れてようやく成案を得るに至ったのでありまして、もちろんこれは唐突にあるいはわれわれがあせってこれをやるということではございませんで、十分にその間において各般の意見も聞き、また慎重な態度で両国の間に交渉した結果でありまして、その結論を得たところのものを、これを調印し、さらに国会に御承認を求める手続をいたしておるわけでありまして、私どもはこの経緯にかんがみましても、また内容から申しましても、これを一日も早く批准することが最も望ましい、かように考えております。
  107. 竹谷源太郎

    竹谷委員 次に自衛隊の日本の防衛能力についてお尋ねをいたしたいと思います。自衛隊法第三条によると、「自衛隊は、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」このように書いてございます。そこでお尋ねしたいのは、この自衛隊の直接侵略に対する防衛の能力をいかように定めるか、こういうことが必要であり、そのためには防衛庁設置法によって国防会議というものが設置されることになっており、その防衛庁設置法の四十二条には国防会議において国防の基本方針とか防衛計画の大綱、これに関連する経済の計画、あるいは防衛出動、こういうようなものについては内閣総理大臣は国防会議に諮る、こういうことになっておるのであって、従いましてこれによりまして日本の防衛能力というものは定められておることと思いますが、この防衛能力を計画し、設定いたすためには防衛すべき侵略、そのうちの直接侵略を行なうところの相手方がだれであるか、その相手方の侵略能力はどのようなものであるかということを調査し、算定し、それに基づいてそれに対する防御の力をわが国としては養わなければならないのである。そこで外部からの直接侵略には、全面的に世界戦争の場合、それから局地的に日本だけを中心あるいは日本付近を中心として局地的な侵略がある場合、こう二つあろうと思うのでありますが、この全面戦争において日本の果たすべき防衛力はどのようにしようとする計画であるか、また局地的な戦争の場合、侵略の場合、日本の防衛力をどのようにしてこれに対処するか、こういう点を防衛庁長官にお尋ねをいたしたい。
  108. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどからお話がありましたように、全面戦争の起きる可能性というのは非常に少ない、こういうふうに私ども見ております。しかしながら再々お話がありましたように、世界の国防というものは、好まないところでありますが力の均衡というような形で、相手方をたたきつけるということよりも、戦争の抑制力として働いておる、こういうのが現状であると思います。そういう点から見まして、日本世界戦争は起きないというふうに見てはおりますが、これを起こさないということに対する抑制力の一半をになっていくべきだ、こういうふうに考えております。でありますから、世界戦争は起きないという見方をしておりますが、もしもそういう場合に日本ではどう対処するかといえば、抑制力に協力していきますと同時に、大きな防衛力、国防力を持っておる自由国家群のアメリカの力と一緒になって、この全面戦争の抑止に努める、こういうことにいたすことであります。  第二に局地的な紛争や戦争に対してどういうふうに考えるか、すなわちその相手方を予想して、その力に応じてやっていかなくてはならないのであるか、すなわち仮想敵国というものを考えなくてはならないのではないか、こういうことが第二のお尋ねの前提に相なるかと思います。しかしこの点につきましても、私どもは、第二次大戦までは仮想敵という構想を持って、たとえば陸軍は日本でいえばソ連を仮想敵国とし、あるいはまた海軍はアメリカを仮想敵国とする、こういうことで、日本もそうでありましたが、世界的に、どこかの国と戦争をする場合に、相手の国まで侵略といいますか、侵攻して、そして相手方をたたきつけるための仮想敵を予想しておったのでありますが、先ほど申し上げますように、個々的に仮想敵というものを設けておらぬと私は思います。世界的にやはり戦争の抑制力、こういうふうになっています。もっとも共産国家群の地域的集団安全保障体制においては、仮想敵ということはあるようであります。たとえば中ソ同盟条約等においては、日本及び日本協力する国を仮想敵国というふうに見ていますが、自由国家群の集団地域的安全保障体制においては個々的に仮想敵というものを設けておらぬ、これが実情であろうと思います。そういう点におきまして、日本におきましても具体的に仮想敵国を想定して整備しているものではありません。いるなか国の侵略に対し、具体的にどのように対抗していくかということを申し上げるのは非常に困難であります。また一般的に自衛隊の防衛力がどんな程度のものかということは、今御指摘の第三条の直接侵略、その方法あるいは時期、侵略者の装備、数量等いろいろの事情によって違いますので、一がいに申し上げることは困難でありますが、しからばどの程度のものを今装備しているかということであります。それにつきましては今御指摘の国防会議の議を経て、第一次防衛計画というものが、三十五年度を終期といたしまして終わるわけになっております。その点から申し上げますならば、陸上自衛隊、これは日本の国が今お話しのように縦に長くて幅が狭い地形で山岳地帯が多く、道路状況もよくない事情等を考えまして、陸上自衛隊を十八万をこえないということで計画しておるのでありますが、ことしの予算を含めまして十七万一千五百人であります。それによって六管区隊、四混成団、これを基幹とする部隊を編成いたしまして、所要の地域に配置して直接侵略及び間接侵略に対処する態勢を確立する、こういうことであります。もしも相手国の上着陸が行なわれている場合には相当期間の持久が可能であり、また非常時において国内治安維持に関し警察と治安機関に協力し得るもの、こういう目標をもって陸上自衛隊の整備をしておるわけであります。海上自衛隊につきましては、警備艦艇としまして約八万四千トン、掃海艇といたしまして約一万六千トン、海峡、港湾防備艦艇といたしまして約一万三千トン、その他雑船を含めて、合計で約十二万四千トンの艦艇、及びP2V大型対潜哨戒機、その他所要の航空機をもって周辺海域における警備に当たって、主要港湾、海峡の防備、こういうものに任ずるとともに対潜哨戒、外航の護衛、内航の護衛、掃海等の相当部分を担任する、こういう目標で進めております。  第三に、航空自衛隊でありますが、約千三百機をもちまして要撃戦闘機の隊が二十七、輸送機隊が三、偵察機隊が三、その他を編成するとともにレーダー・サイト等、所要の警戒及び誘導組織をなし遂げまして侵入機の早期発見に努め、もって航空機のわが本土に対する容易な跳梁を制し、本土の防空に当たる、こういうふうなことに進めておるわけであります。  以上申し上げましたように第三条による侵略の方法、時期、侵略者の装備、数量等、こういう事情によって一がいに申し上げることはできませんが、現にやっておることは先ほど申し上げた通りであります。
  109. 竹谷源太郎

    竹谷委員 日本の防衛力が全面戦争の場合、西側ことにアメリカの防衛力と一体となって、世界戦争はまずない見通しであるが、万が一起こった場合には防衛に当たる。直接の目標としては戦争を抑制するための西側の全体の防衛力の一部としての役割を果たす、こういうお答えでありますが、その西陣営側の戦争抑制力、そして万が一に全面戦争でもあった場合の戦闘力として、一体どれだけ日本はその防衛力を持たなければならぬか、その限度、程度はどの程度でございますか。
  110. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 西側と一体になってやる防衛力というものを予想するといいますか、予期して日本の防衛力を作っていくということは困難だと思います。日本といたしましては、日本の国力、国情に応じた必要最小限度の防衛力、これが今申し上げた第一次計画としましてはその程度でありますが、この日本の国力、国情に応じた日本の防衛力をもって、世界戦争、全面戦争というような場合がありまするならば、これに巻き込まれたくありませんが、やむを得ずそれに入った場合にはその防衛力をもって戦争の抑制に、あるいは拡大を阻止することに協力する、こういう考えてございます。
  111. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そこで、その次に、先ほどの答弁あとの方でおっしゃったのですが、局地的な日本に対する侵略がある場合、現在の防衛力をもって、初期においては十二分の防衛能力がある、こういうことをおっしゃった。ところで初期における侵略、これは何を想定しておるのですか。先ほどからそういうものはなかなか算定できぬ、そういう仮想敵国を想定しないのがこのごろの状況であるということをおっしゃいますが、しかしこれはどんな敵が来るかということがわからないで、敵を知らないで防衛力の計画もできなければ、まして戦えない。敵を知らざる者は負けてしまいます。だから敵がなければならぬし、その戦力も知っておかなければならない。そうなると、その敵は、一応仮想敵国ではないが、日本に脅威を与える力はどんなものであるか、それはだれが持っておるか、これを考えておく必要があり、また現に考えておるに違いない。その点をもっと明瞭にしていただきたいのであります。
  112. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本の周辺等においての国々を考えておりますが、具体的にどこの国、どこの国というふうには考えておりません。
  113. 竹谷源太郎

    竹谷委員 しからば、その日本周辺の国々の今持っておる武力の状況を、ごく簡単でいいからお答え願いたい。それはフィリピンはどんなものを持っておるか、台湾はどのようなものであるか、韓国はどのようなものであるか、あとインドネシアやオーストラリアやニュージーランドもあるがこれはよろしゅうございます。フィリピン、台湾、韓国、そして次は北鮮、これらの極東の日本の回りの国々はどういうような武力を持っているか、その概要を御説明願いたいのであります。
  114. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 御承知のように、どこの国でも正式に自分の国の兵力を発表はいたしておりません。しかし私どもがいろいろな国防白書とかその他の情報等によって承知しているところを申し上げます。フィリピンでありますが、陸軍が二十九個大隊、人数にいたしまして五万七千人であります。海軍の兵力が四十六隻二万八千トン、空軍が約百五十機ございます。それから国府の陸軍は二十四個師団で四十二万五千人、海軍が百八十一隻で十二万トン、空軍が約五百機。それから韓国でありますが、韓国は陸軍が十九個師団六十万人、海軍が七十隻三万八千トン、空軍が約二百機であります。北鮮は陸軍が十八個師団五個旅団、約五十四万人でございます。海軍が約百隻一万七千トン、空軍が約八百五十機であります。中共は陸軍が約百六十個師団で、兵員にいたしましては約二百五十万人であります。海軍は約二百五十隻、トン数にいたしまして約十五万トンでございます。空軍は約三千機、こういうふうに相なっております。
  115. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今日本周辺のもろもろの国の兵力の概況をお示し願ったのでありまするが、最後のやつは中共の兵力ですか。
  116. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 中共と言われておる中国であります。
  117. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そこで今お述べになりましたフィリピン、台湾、韓国、北鮮——中共は別にいたしまして、これらの国々が日本を局地的に侵略をする危険が現実にありますか。
  118. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほど総理からも、今現実に日本を侵略しようというような態勢はなかろう、こういうふうに申し上げましたが、私もそう見ています。ただ私はこれは日本がやはり一つの自衛力を持っておる、あるいは安保体制に入っておる、こういう現状でありますので、これが戦争の抑制力といいますか侵略の抑制力に相なっておると私は思います。こういう現状のもとであるので、私は侵略をきれるというような現状ではなかろう、こういうふうに見ています。
  119. 竹谷源太郎

    竹谷委員 もちろん現在の安保条約を即時撤廃をする、現在ある自衛隊を全部撤廃するという前提で私はお尋ねしているのではない。現状の自衛隊、そして現行安保条約下においてこれらの諸国から日本を侵略するおそれがないかどうかをお聞きしたのであるが、それに対しては結論として、侵略のおそれはない、こういう御回答であった、こう思うのでありまするが、その通りであるかどうか。
  120. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 侵略のおそれはないと思います。しかし侵略が全然ないという保証もまたないと思います。今列挙した国ということでなくて一般的に申し上げて、そういうことは申し上げられると思います。
  121. 竹谷源太郎

    竹谷委員 少しあいまいでありまするが、結論は、韓国、台湾、フィリピン、そういうような国々からは心配はない、そうなると心配のあるものは日本周辺としては中国とソ連だ、こういうことになるのであるか。そうしますと一応日本の当面想定すべき相手方は中国あるいはソ連の極東兵力、こういうふうになるのであるかどうか。ソ連の極東兵力についてはどのような規模のものであるか、その点をお伺いしたい。
  122. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 極東ソ連軍でありますが、陸軍は三十五個師団以下と見ておりますが、兵員にいたしまして約四十五万であります。海軍は約六百隻、トン数にいたしまして約五十万トン、そのうち潜水艦を約百十隻含んでおると見ています。空軍といたしましては極東に約四千二百機と見ております。
  123. 竹谷源太郎

    竹谷委員 どうも韓国あるいは台湾、フィリピン、そういうような国からは危険がない、そしてそれらの兵力は貧弱である。中国並びに極東ソ連軍、これはなかなか相当強大な兵力である。そうしますと日本の防衛力というのは、これらの国々の兵力というものを対象として、この侵略があった場合にこれを排撃するために持っておる、こういうことになるのであるかどうか。
  124. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日本の防衛力は、先ほど申し上げておりますように相手方まで攻めていくとか海外派兵とかは考えておりません。でありますので侵略があるというときにはこれをはねのける。一応これをはねのけるだけの体制を整えなくちゃならぬ、このように考えております。でありますので、どこの国ということは申し上げられませんが、今の国々もその中には含んで、もし侵略するということでありますならば、これをはねのけるだけの体制を整えなくちゃならぬ、またそういうふうに考えてやっております。
  125. 竹谷源太郎

    竹谷委員 はねのける、これは言うことは簡単でありますが、なかなかそう簡単にいかないのじゃないでしょうか。ソ連は核兵器を持っておる。極東にはむろんその配備があるだろうと想像せられる。日本に対してはICBM大陸間弾道弾の必要はない、これは中距離弾道弾もしくはそれ以下でけっこうである。ところで中国の方には核武装はまだないかもしれないが、最近の報道によると、今月の二十八日には蒙古かあるいはゴビ砂漠で核実験をやるという新聞報道がございます。ゴビ砂漠あるいは蒙古で核実験が行なわれますれば、日本の空へ放射能を含んだ黄色い砂が飛んでくる。そういう危険もございます。そこで日本は新安保条約によってアメリカと軍事的な結びつきを強化をした。これに対抗するためにどうしても東側においても極東における力を増強しなければならない。ところが東西両陣営において、西側の方はアメリカを初めイギリス、フランスが核武装をしておる。東側においてはソ連一国。三対一ではどうも均衡がとれない、大国中国に核武装させてもよろしいではないか。日本は新安保条約を作るのである。だから東側の中国にも核武装の口実が十分できてくる、こういうことになるのではないか。そうなると、日本がこれら諸国の直接侵略を考えまする場合、これを守るためには日本もまた核武装をしなければ守り切れない。私は決して侵略的な、攻撃的な日本の防衛力を申しておるのではございません。真に防衛を全からしめるためには、そして戦略的防衛、それはむろん守勢的な戦略防衛ではあるが、たとえ守るといっても核兵器、ミサイルによる攻撃の場合には、竹やりではありませんけれども、戦車や高射砲あるいはプロペラを使う——このごろはジェット機が少し入ってくるようでありますが、それらをもってしてはミサイル、ロケットの飛び道具にはとうてい抵抗できない。またその爆発力としても、とても火薬では原子爆弾には対抗ができない。どうしても守るためには日本もまた核武装、そしてミサイルも持たなければならない。これが日本を守るための防御的な防衛能力だ、こういうことになって日本も核武装をしなければならない、こういうことになるのじゃないか。そこで私お尋ねしたいのは、そのようにしてソ連は核兵器を持っておる。中国も持つようになる。もしそのようなことになった場合、日本はそれでは核武装を、そしてミサイル兵器を持つ、それが防衛防御の範囲、自衛の範囲であるから、そのような軍の装備をすることは憲法違反にはならない、こういうふうに御解釈になるのであるかどうか、お尋ねをいたしたい。
  126. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 今のお話は、ソ連あるいは中共が核武装をして、日本を侵略するであろうという御前提がいささかあるような気がいたします。しかし私はそういうふうに考えておりません。先ほども申し上げましたように、世界の国防、防衛というものが原水爆あるいはこれを運ぶ大陸間弾道弾とか中距離弾道弾とか、こういうミサイルというものの進歩によりまして、相手方を侵略して戦争をするという形から、お互いに世界戦争をしてはならぬ、こういうような形で世界戦争の抑制力に変化しておること、こういうのが世界の国防の最近における変化、変質だ、こういうふうに私ども考えておるのであります。でありまするから、日本安保条約を改正するから中共が核武装をするのだ、こういうことではなくて、中共は中共としての考え方から、私は核武装をするのならばするということだと思います。日本を侵略せんがための核武装だ、こういうふうには私は考えておりません。しかし世界におきまして、世界戦争はやめるべきだ、やるべきでない、こういう戦争の抑制力として働いている国防でありまするから、それから世界的な核兵器をやめようというような軍縮の問題が起きているというふうに理解いたしております。  しかし今のいろいろな設例でございまして、もしも核をもって日本に対抗されて、あるいは日本を侵略するというおそれがあることを予想した場合には、日本は核武装をするという方向へ持っていくのではないか、こういうお尋ねでありますが、再々申し上げますように、一国と一国とがどうこうということではなくて、世界的な東西両陣営というこの形において、国防もまた戦争の抑制力となっている現状からいたしまするならば、中共が核武装をしたから、日本の防衛力といたしまして、日本も核武装しなくてはならぬということには相ならぬ。そういうことになりません。核武装するというような考え方を持っておりませんことは、岸内閣として再々声明しておる通りでございます。そして、また、そういうものに対抗する世界戦争というものは、私はないと思いますけれども、かりに起きるとするならば、これはやはり核を持っている両陸営の報復力によって対抗するよりほかいたし方ないと思いますが、そういう報復力を持っているからしてただいま世界戦争にはならぬ、こういう見方をいたしておるということは、再々申し上げておる通りでございます。
  127. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私も、先ほど申し上げたように、今や戦争抑制力としても、軍備拡張を各国は盛んにやっておる、こういうことを申し上げました。何も中ソがわが国を侵略してくるとか、日本から行くとかいう問題ではありません。日本アメリカとの軍事的結びつきを多くした。これが世界のバランスをいささかでも東側に不利にする。これに対抗する処置として、グロムイコ宣言、あるいはプーシキンの書簡ですか、宣言ですか、そういうようなものが出された。それからいろんなPR、宣伝作戦が行なわれておる。すなわち心理作戦をやっておる。しかしながらそれだけでは足らない。ある程度西側に対する、日米に対する実力措置も必要である。これが現実であろうと思う。日本がどちらに多く傾くかということは、世界の力のバランスに非常に大きな影響がある。従って西側の方が日米の新安保によってその力が強くなるとすれば、東側もそれに対抗するような強さにして、お互いに報復力を持ちながら戦争を抑制していかなければならない。そうすると、中国も核武装せざるを得なくなるのではないか。そこでそうなった場合に、かりに日本が核武装をしないとしても、アメリカが持っている。従ってアメリカの核武装配備を日本が許さざるを得ない、こういうことにもなると思う。その報復力のために、それからまた戦争を抑制するために、日本国が持たないとしても、日本国におけるアメリカの基地にこれを置くか、基地に装備しないまでも、これを発射し得る潜水艦なり、飛行機なり、あるいは地上を運べるところの発射装備によって中ソ大陸方面に対抗する、こういう措置を日本アメリカに対して許す。これはしかしながら攻撃的ではない。全く守るための、戦争を抑制するための手段である、こういうようなことになって、日本政府がやるかアメリカがやるかは別として、日本において核武装、ミサイル兵器による防御ということをやらなければならぬようになるのじゃないか。それは政府のお考えでは守るための装備であるから、それは憲法の自衛のために必要なる武力、実力の範囲内である、こういうふうにお考えになるであろうと思う。そういう理論に到達すると思う。この点、総理大臣いかがお考えでございますか、お尋ねをいたしたい。
  128. 岸信介

    岸国務大臣 日本が核武装をしないこと、また核兵器の持ち込みを認めないということは、一貫して私が強く声明しておる通りでありまして、今回の安保条約改定にあたりましても、従来米軍の装備については、米軍が安保条約条約上は一方的にできるんじゃないかということが言われており、この点が不安であるということが国民の間にも強く言われたことでありますが、今回の改定によりまして、そういうことは事前協議の主題とする、従って日本はその場合に、かねて声明しておる通り拒否する、こういうことを一貫して私は唱えてきておりますし、今後においても明瞭にその方針で進んでいくつもりであります。
  129. 竹谷源太郎

    竹谷委員 日本が核武装をしない、アメリカの核装備持ち込みを拒否する、それはそれでいいのです。ところが相手方がそれをやってきて、それに対する報復力、そして戦争抑制力の万全を期するためには、そのようになるのではないか。それはなぜか。それは日本が西側に強く傾くことによって、西側の力が強くなって、極東において東側とのアンバランスを生ずる。これを是正しなければならぬ。これは現実であろうと思う。またそういう口実にもなる、このこと自体が問題であります。今のようなことを繰り返しても長く時間をとるばかりでありますから、この点は政府としては厳重な反省をしてもらいたい。いろいろ問題がありますが、この問題を私は提起しておきたい。  今自衛隊のことを聞きました。ついででありますから、自衛隊出動の場合に対する国会承認の件についてお尋ねをいたしたい。わが国施政下の領域において、日本または米軍に対して武力攻撃があった場合は、第五条によってわが国は直ちに行動を開始しなければならない、このように第五条にとりきめられてある、その場合、内閣総理大臣は自衛隊に出動をお命じになる、こう思うのでありますがいかがでございますか。
  130. 岸信介

    岸国務大臣 自衛隊の出動を命ずる場合におきましては、自衛隊の規定するところに従ってやります。
  131. 竹谷源太郎

    竹谷委員 それは自衛隊法の定めでありまするが、この第五条の条約には何もそれは書いておらない。先般来の衆参両院の予算委員会等における質疑応答によりますと、第五条の日米両軍の出動は、武力攻撃というものがあった場合には立ち上がるのだ、武力攻撃というものは政府が定義したように、侵略の意図をもって組織的に計画的に行なうところの攻撃である、こういうふうになっておる、そういうものは判断の必要はない、判断の必要はなくて立ち上がるのだ、こういうのでありますが、その場合、今岸総理の御答弁では、自衛隊法によって国会手続をとってからやるのだ、こうおっしゃいますけれども、自衛隊法によるとも何ともない。自国の憲法上の規定及び手続に従ってやる。わが国の憲法には、むろん戦力や軍隊を予想しておりませんから、出動等に関する規定は全然ないし、内閣総理大臣にもその権限は規定されておらない。これは日本国憲法では、準拠するところは第九条だけなのです。第九条は、これはもう交戦権は認めないとある。しかしながら、政府の解釈によれば、自衛のためにはいいのだ、こういうことになる。この問題については第九条しかないわけです。だから、「自国の憲法上の規定及び手続に従って」ということは、第九条の解釈に基づく手続さえあればいいのであって、自衛隊法の規定を守らなければならぬということを、この第五条にはうたっておりませんから、もしおっしゃるごとくんば、わが国もしくは米軍に対して武力攻撃があった、そこで自衛隊に出動を命ずる、これが総理大臣のなすべき行為でありますが、その場合に自衛隊法を適用してきて、そして国会承認を求める。国会はこれを否決をした、承認をしないというときには、これは出動はできない。そうすると、この第五条第一項の規定に違反をする、こういう結果になると思いますが、この点はどうですか。
  132. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、この第五条の規定は、国内法の手続なり規定に従うことを排除する意味ではございませんで、従って、総理大臣が自衛隊の出動を命ずるという場合におきましては、自衛隊法の手続に従うことは当然であると考えております。
  133. 竹谷源太郎

    竹谷委員 それは岸さんだけが考えられることであって、アメリカ側としては、こういう事態が起きたのに、なぜ日本は立ち上がらないか、条約違反ではないか、こういってくる。これはもう明瞭であろうと思うのです。それならば、おっしゃるごとくんば、これは第五条の中にはっきりと、国会承認が必要だ、それがあって初めて行動ができるということを条約に明記すべきであると思いますが、この点はいかがでありますか。
  134. 岸信介

    岸国務大臣 これは、この種の条約におきましては、憲法の規定ということは書いてありませんで、憲法上の手続に従い云々というのが、従来の条約の例のようであります。特に憲法の規定ということを入れましたのは、憲法上に、何ら手続日本の憲法は規定いたしておりませんので、その点を明瞭にしたことでありまして、その他、国内法に従うということは、国内法を排除する意味でないことは、これは、この種の条約の当然の規定の仕方でありまして、特にその点を入れないからといって、国内法を排除するという意味では絶対にないのであります。
  135. 竹谷源太郎

    竹谷委員 それは日本側の解釈であって、世界的には私は通用しないと思う。私は、国内法上、むろん日本においては、自衛隊が出動するためには国会承認が必要であり、自衛隊法の規定によらなければならぬ、これは国内法上当然でございます。ところが、その点を明らかにしないこのような規定は、この第五条に関する限り、それは国内法に優先する。これは条約法律でどちらが効力があるかという問題はありますが、同じ効力だとすれば、あとにできましたこの条約の方が自衛隊法に優先をする、こういうことになるのが、これは法律家の当然の解釈だろうと思う。力が同じだとすれば、条約が優先すればなおさらのこと、条約法律も同じ効果だ、国内法的に同じ国会承認を得ている、こういうことになるならば、前の法律あと法律により変更せられる、第五条は、自衛隊法の自衛隊出動に関する規定の例外をなす、この限りにおいて排除したのだ、変更したのだ、こう私は解釈をされるべきものではないかと思うのです。自国の憲法上の手続と書かずに、規定と書いたのは、それは手続規定だけでなくて、自衛隊法の実体も憲法の中身をなすものだ、こういう法理論からおっしゃっていることだろうと思うが、アメリカは、日本国内法にどんなものがあるのか、外国は知りません。条約に書く、あるいはその条約締結にあたって、共同声明を出すとか、交換公文をやるとかして、解釈が明確になっておれば別でありますが、そうでないならば、憲法の規定ということは、憲法そのものであって、これは外国でも知っておる。日本国内法にどんなものがあるか、汗牛充棟もただならないところのあの法令全集を見てもわかる通り、外国ではわかりっこない。そんなことで一々条約が変更を受けることになったら、条約というものは全く権威を失う。そういう意味から、憲法の規定ということは、憲法にもない、また今後どのような法律日本が作るかわからない、もし自衛隊法がこの憲法の規定に該当するのであれば、この第五条なり、新安保条約全部を無効にするような法律を作っても、それは憲法の範囲内、憲法の規定だといって、条約の内容を全部変更をすることができる、こういう結論になるのであります。私はそう思う。だから、憲法の規定ということは、これはもしあなたのおっしゃるような意味があるならば、条約の中に明記すべきである。かりに条約に明記しないといたしましても、附属文書なり、あるいは交換公文なり、あるいは議事録なり、何らかの方法で、明らかに条約の一部と見なされるその規定によって、憲法の規定とは自衛隊法も含むのだ、こういうことをするのでなければ、日本が、憲法の規定だ、この実施内容だといってどんどん法律を変えていったら、この条約全部を空文にできる。そのようなことは条約締結上許されるはずはない。法律に優先するというのが、大体のこの条約の解釈なんです。これは国によって違いますけれども、多くの国において、条約が優先する国が多い。少なくとも同等の効力を持っておる。法律以下ということはないわけなんです。それが法律によって自由自在に将来も変わってくるであろう憲法の内容、憲法の規定というものを、憲法附属法令というふうに解釈するのか、あるいは憲法のもとにおいて制定された日本のあらゆる法令というのであるか、ここにも疑問がありますけれども条約締結当事国の憲法に規定のないいろいろな法令というものも憲法の内容をなすものだという解釈は、これは間違いじゃないか。だから、私は、何らかの方法で、できれば条約に明記をする、あるいは条約中の「憲法上の規定」の内容を明確にはっきりさせた、しかも法律上の拘束力のある定めをなすべきではなかったか、これをお尋ねしたい。
  136. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは先ほど総理からお答えがございました通りに、自衛隊法の規定は、むろん憲法そのもの規定ではございません。ございませんけれども、この条約の第五条の趣旨は、お互いにこの条約締結当時にあります国内法の手続を排除するという趣旨ではないわけでございます。当然にそれを含めて、それに従ってやることが、条約の趣旨に従って行なわれるということを考えて作られているものでございます。将来の問題についてまでいろいろ御言及になりましたが、これはもちろん国会の御権限の問題でございまして、条約を御承認になりますのも国会の御権限である。それに従って国内法をいかがなされることも、これももちろん国会の御権限でございまして、条約の趣旨に従って、将来の問題は国会においても措置されるもの、かように考えております。
  137. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうすると、法制局長官はこう言うんですね。「自国の憲法上の規定」という意味は、日本の憲法下における——むろん立憲国家でありますから憲法を持っておる。現在のあらゆる法律がそのまま憲法上の規定として、この第五条を全部制約できる、こういうお考えですか。それとも、自衛隊法のみは憲法の直接法令である。たとえば、よくいわれることは、公職選挙法は憲法の内容の規定だ、国会法もそうだ、そうじゃない法律は、憲法附属法令じゃないとか、よく俗に言いますけれども、これは何の区別もないはずなんです。日本憲法下におけるあらゆる法令は、大きくいえば、憲法の内容をなすものです。それを、全部憲法上の規定だという御解釈はいかがですか。これは、専門家としてそんなことを言うのは私は納得できない。今、総理大臣のおっしゃったことにばつを合わせて、牽強付会の言をなさることはやめてもらいたい。信念のある御答弁を願いたい。私の聞きたいのは、この第五条の「自国の憲法上の規定」というのは、あらゆる日本憲法下の法令を全部含むのかどうか、それとも、もし憲法附属法令だけを含むとすれば、その憲法附属法令とは何であるか。何であるかということは、どのような法律あるいは国家意思をもって決定してやるか、それをお伺いしたい。
  138. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど申し上げましたように、ここで言う、いわゆる憲法上の規定あるいは憲法上の手続というのは、直接に、いわゆる日米両国ともこれは成文憲法を持っておりますから、成文憲法の規定意味しておるものと私ども考えております。しかしながら、同時に、この規定は、それぞれの国が国内法の手続に従って、この条約の趣旨に従って最善を尽くすことを排除するものではございません。現在ございます国内法の規定に従って自衛隊法——この第五条に直接関連して参ります国内法といえば、日本の場合には自衛隊法の規定だと思いますけれども、この規定を排除する趣旨ではない、こういうことを前から何回か申し上げておるわけでございます。
  139. 竹谷源太郎

    竹谷委員 新安保条約に関係のある附属文書等にはないとしても、それでは、日米の間でそのことが話し合いになり、それが何らかの記録に残り、はっきりお互いの間できまっておることであるかどうか、一体どのような取りきめなり話し合いなりがあったのか、それを明らかにしてもらいたい。何の話もなくて、そんなことになっているんだということでは、承服できません。
  140. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは私が直接アメリカとの交渉に当たったわけではございませんけれども日米間においてそれぞれの国内法の手続に従って行なわれることは、お互いに了解されていると私は聞いております。
  141. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 交渉の過程におきまして、むろん、日本が自衛隊法を持っているということは、アメリカも十分了承をいたしております。従って、今、法制局長官の言われましたように、これに関連する日本国内法の手続を排除するものではないということも、承知いたしております。
  142. 竹谷源太郎

    竹谷委員 日本に自衛隊法というものがあることはアメリカにもわかっているから、そんなことは自衛隊法の手続を経るのだということはきまり切っているというようなことは、日本側だけの勝手な言い方です。向こうは、そんなことはあるかないか知らないし、その点について完全な話し合いでもあれば格別、ないならば、そんな日本の勝手な解釈は許されない。やはり、この条約及び条約に基づくところの公式の、それぞれ法律上拘束力のある取りきめによってこれが解釈せらるべきものである。そうなれば、憲法ではないところのいろいろな法律が、知らぬ間に、アメリカの知らない間に——自衛隊法は知っておるかもしれません。しかし、これに関係のある法律が探せばあるかもしれません。そういうものによってこの条約が変更を受ける、こういうことになる。それから法律論としても、条約法律日本国内法において同じ効力だと仮定すれば、これによって自衛隊法は改正されたんだ、こういう結論になり、その他のあらゆる日本にある法令が、この新安保条約に違反する点、抵触する点、矛盾する点は、新安保条約の趣旨に従って改正を受けたんだ、こういうことになるはずなんだ。だから、そういう一方的なことでは、私はこの問題は解決されないし、条約違反の問題を起こすということについては、どうも起こさないのだという政府の明快な御答弁とは受け取れません。何かほかに理由があるのか、あればお聞かせを願いたい。
  143. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申し上げましたように、アメリカと話をいたしておりまして、アメリカ側として、日本が自衛隊法を持っておるし、そうして自衛隊を動かすためには、自衛隊法が必要であるということは十分了承いたしております。従いまして、われわれとしては、その基礎の上に立って、自衛隊を排除するものではないという立場において、この交渉をいたしておるのでありまして、向こう側も了承いたしておることは、先ほど申し上げた通りでございます。
  144. 竹谷源太郎

    竹谷委員 アメリカ側も、当然、この憲法上の規定という中には、自衛隊法が入っておる、これは了承しておるのだ、こういうのでありますが、何で了承しておるのですか、そこが全くない。その了承しているというのは、何によって、どのように了承しているのか承りたい。しかし、了承程度では法律上効果ありませんよ。その点、もう一度御答弁願いたい。
  145. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今申し上げましたように、条約交渉の過程において承知いたしております。
  146. 小澤佐重喜

    小澤委員長 この際、堤ツルヨ君から関連質問の申し出があります。これを許します。堤ツルヨ君。
  147. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは、ただいまの竹谷委員質問に関連しまして、具体的にお伺いをいたしますから、一つ答えていただきたいと思います。  自衛隊法の第六章、「自衛隊の行動」というところには、第七十六条に「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃(外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合には、国会承認(衆議院が解散されているときは、日本国憲法第五十四条に規定する緊急集会による参議院の承認。以下本項及び次項において同じ。)を得て、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。但し、特に緊急の必要がある場合には、国会承認を得ないで出動を命ずることができる。」同じく第七十六条の二項に「前項但書の規定により国会承認を得ないで出動を命じた場合には、内閣総理大臣は、直ちに、これにつき国会承認を求めなければならない。」同じく三項に「内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、又は出動の必要がなくなったときは、直ちに、自衛隊の撤収を命じなければならない。」こういうふうになっております。従って、自衛隊の行動を、アメリカの要請によって、あるいは日本みずからの自主的な見解によって出動をいたしますときには、その行動を始める前に、日本国国会承認を得るということが第七十六条にはっきりと書いてあるわけなのです。そういたしますると、日本国会がこれを否決して承認を与えなかったときには、国内では許されない。ただし、アメリカの方の条約との関連においては出動しなければならない義務がある。こういう場合が起こったときに、政府はどうこれを処置するのか、具体的に承りたいと思います。
  148. 岸信介

    岸国務大臣 この条約は、言うまでもなく、これに署名して批准をした場合において効果を生じましたら、締約国の両方が、この条約に書いてある内容について最善を尽くすことを前提としておるのであります。国会政府との考え方が違うというような、相対立するというようなことを前提として考えてはおらないのであります。しかしながら、あるいはアメリカの方の側にしましても、宣戦の布告をするというような場合において、国会承認を求めることに最善を尽くしても、それができないという場合であるとか、あるいは日本側におきましても、政府が誠意を持ってそれを尽くしても、これができなかったというような場合において、条約違反とかなんとかという問題は、私は起こらない問題であると考えます。
  149. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 国内法に忠ならんと欲すれば条約に孝ならず、条約に忠ならんと欲すれば国内法に孝ならずという場合が現に生まれてくるじゃありませんか。もう自民党の方は三百名連続当選ですから、それにあぐらをかいて与党ぼけしていらっしゃるけれども、これから二回、三回と衆議院の選挙をしたときに、承認しない場合が十年の間に生まれてくる。岸内閣のときだけを勘定に入れて自民党の絶対多数のときだけを勘定に入れて、条約に十年間の期限をつけてもらっちゃ困りますよ。国内で認めないのに自衛隊を出動させるわけにいかないですから、そうすると、あえて自衛隊を出動さすということになれば、条約優先で、国内法は排除するということになって、今の藤山外務大臣答弁に相反するわけなのです。これはまだ……(発言する者あり)黙っていらっしゃいよ。あなた方が発言権を持ったときにおっしゃって下さい。  ですから、これは重要な問題じゃありませんか。この出動の問題、行動を始めるについてのこの一つの問題をついてみても、あなたが結んでいらっしゃった条約と、そして憲法下にあるあらゆる国内法規を排除しないというところの今の答弁とは、もはや、出動をする初めに狂いが生じてくる場合が幾らもあるわけなのです。たとえば、はっきり申し上げますと、自民党が百五十名に転落して、民社と社会党とが二百八十くらいとることは近くあり得るのです。そうした場合に、これは絶対に議決しないという結果が生まれてきたときに、藤山さんどうなさいます。岸内閣だけが永遠に続くものとして、一党独裁の世の中が続くものとしてこれをお作りになって、十年という期限をおつけになっているわけですが、これはどうしますか。
  150. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどから申し上げております通り、自衛隊法の規定に従って、今、竹谷君が言われましたように、そういう不承認の場合におきましては出動することはできないのです。また、もしも緊急と認めて出動さした、ところが、そのあと国会承認を求めたら、国会がこれに承認を与えないという場合においては、これを終結しなければならないという、その規定に従って行動をするのであります。従って、この前提としての問題は、これは国会がその場合において議決されることでございますから、かれこれ申すわけじゃございませんが、もちろん、前提としては、日本施政下にある領土に対して武力攻撃——武力攻撃というものは、先日来申し上げておるように、日本が他の国から侵略する考えでもって継続的に、組織的な侵害が与えられておるという現実の事実に基づいて、日本の平和と安全を守り、他から侵略をされないということを考え意味において、当然の個別的自衛権を持っておるというのがこの五条の解釈であり、それに基づいて、今申し上げたような憲法または憲法に基づいて作られておるところの法律でありまして、これの手続を経ることができなかったという場合において当然そうなるということは、私どもがさっきから言うておる通りであります。
  151. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私の時間でありませんから、私はこれでやめますが、今、岸首相がおっしゃいましたところの、日本国内法にかくかくしかじかきまっておりまして、国内で許可が出ませんから、アメリカさんお断わりいたしますと言うたときに、それなら認めましょうと、日本のノーをすべて認めるとは書いてない。安保条約の中には日本の拒否権を認めるということは書いてないから、これは岸さんが共同声明の中でおっしゃったような、法的根拠のないような放言では、アメリカ日本の立場を認めてくれるわけはない。これは、私の質問をまたあらためていたしますから、そのときにいたしますけれども、拒否権のない限り、あなたのおっしゃることはうそであります。
  152. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私が申し上げたいのは、岸総理がお考えになるように、日本の安危にかかわる自衛隊の出動について、一億国民の代表である国家意思決定の最高機関たる国会に諮る、これは当然のことで、非常によいことだ、ぜひそれが守られるようになぜ条約に明定しなかったか、これを私は尋ねたい。ただ、こう解釈ができる、こういう了解があるというような、あやふやのことでは国民は安心できません。だから、なぜそれを条約に明定をしなかったか。もし、条約に明定をしないとしても、交換公文その他によって、この憲法の規定という中には自衛隊法が入るのであるということを明らかにしておいていただきたい。私は、この第五条第一項の規定によって、国会承認を経る必要なしと申し上げるのではない。これはぜひ必要である、ぜひともやってもらわなければならぬ、それを明らかにやれるように条約上明瞭にしてもらいたい、こういうのでありまして、林法制局長官の言うように、この「憲法上の規定」という中にはあらゆる日本法律が入るんだ、憲法附属法令はすべて入るんだというような考えは、これは全く法律論としても、条約、憲法の解釈からいっても、なっていない。これを明確にしてもらいたい。その明確にするような手続をとる御意向があるかどうか、それをお聞きしておきたい。
  153. 岸信介

    岸国務大臣 このなにをお読み下さればわかるように、もしも、国内法はこれを除くとかなんとか言っておけば問題になると思いますが、岡内法に従うということは当然のことでありますから、私は、この必要はない、こう思います。
  154. 竹谷源太郎

    竹谷委員 条約に書いてないこと、また、それに関連する附属文書にもないものを、当然、すべて国内法は入っているんだというようなことは、これは強弁です。この点は、私の言うことは決してふためにならない。ぜひ日本として必要なことだ。自衛隊の出動については必ず国会相談できるように、国会の権限というものを条約上においても明らかにしてもらいたい。国際間の規定においても、それを明らかにしてもらいたい。それでなければ、絶対に政府答弁だけではわれわれは安心ができません。これは、後にまた審議にあたりましてお尋ねをすることにいたしまして、次に移ります。  さて、日本が新安保条約を結ぶことによって近隣諸国その他に与える影響について述べましたが、ことに中ソ関係は重大である。これは、今後も長く日本に対する悪影響その他日本の平和、安全を脅かす事態が発生する、まことに危険な状態でありますが、これは、どうも中ソ両国だけではないと私は思う。昭和三十二年に、岸首相一行が東南アジアを訪問された直後に、私は同僚数名とともに東南アジアの諸国を歴訪いたしました。インドへ行って、インドの下院議長に会いましたところその下院議長は、日本にはアメリカの大軍がいるという話ではないか、これは明らかに日本アメリカの属国であるという証拠である、われわれインドには、インドはかつてイギリスの植民地であって、たくさんイギリスの兵隊がおったが、独立後、今は一人もいない。こういうことを明らかに言っておりました。また、ビルマやインドネシアの大臣や高官連中は、岸首相のいわゆる東南アジア経済協力、こういう問題をどう見ておるかというと、これは、日本アメリカを背景として、大東亜共栄圏の経済版をやろうとしておるのだ、われわれはこれを歓迎しないということを明らかに言っておった。このことは、ひとりその人たちだけでなく、現地におりますあなたの部下である外務省の連中さえも、そういう状況であるということを明らかにわれわれに話しておったのである。こんな大東亜共栄圏の経済版は歓迎をしないということをはっきり申しておりました。今度、日本が新安保条約を結んでアメリカと経済協力をする、一方、アジアに対して日本は大いに経済協力、提携を求めておる、こういうことでございまして、ことに多額の賠償を払って、そして何とか東南アジア諸国をわれわれの仲のよい国にしたい、こういう考えでやっておるのであるが、それに対しまして、この新安保条約は、日本はまた侵略的な意図に出られるのではないか、経済的にしても、これは一種の侵略行為ではないかという危惧の念を抱かせることは、まことにこれは残念である。日本は今力がないかもしれぬ。しかし、あるいはアジア、あるいはアラビア、アフリカの諸国、数十カ国が新たに続々として独立をしておりますが、これらの国々も、国連総会においては同じく大国とともに一票を持っておる。日本は戦いに敗れて、世界的勢力はかりにないといたしましても、これら日本と同じ後進的な、しかも、日本をその先達、指導者と仰いでおる、非常に尊敬をするようになっておる、これらの国々の指導者として、われわれは仲よくし、信頼し合い、そうして、日本に対して大いに協力しようという世界的な機運になれば、たとい国力は貧弱でありましても、国連総会において三十票、四十票という同志を獲得すれば、日本の発言というものは、大国にもまさる大きな力を持つ。これこそが、ほんとうに平和的な日本の今後開拓すべき外交の方向ではないかと私は思う。これに対し、非常に水をさすのがこの新安保条約でございまして、むろん、これらの諸国は、あからさまにはこれを言っておりません。しかし、どうも私が昭和三十二年に東南アジア十ヵ国を回ったときの印象では——それはむろん、まだ賠償もきまっておらない国が多かった。その情勢においてそうでありました。その後、賠償はやったんだから、大いによくなったはずであるが、しかし、あの気持では、この新安保が、また昔の日本の軍国主義を彼らに想像させるような方向に持っていって、これらの大事な後進諸国をわれわれの味方から離してしまう、こういうことになれば、まことにこれは残念だ。この点いかがでございましょう。日本はいろいろ政治的、経済的の手を用いて、東南アジア諸国や、あるいは遠くアラビア、アフリカにまでわれわれの同志を求めようとしておる。これこそが、日本の将来行なうべき外交の大方針でなければならないと思う。われわれは、武力や、あるいは経済力等では、とうてい英米やソビエトには対抗できないかもしれぬ。しかし、同じアジア民族として、アジア諸国はもちろんのこと、アラビア、アフリカ、こういう諸国をわれわれの味方に引き入れて、数十ヵ国をわれわれの同志としていけば、日本の主張というものはまことに強い。そういうふうにして、世界じゅうみんな恒久の平和、しかも、人種や国によって差別されない世界的な民主主義、国際的な民主主義が行なわれるように持っていかなければならないと思う。それに対して新安保は、非常な水をさす結果になるのじゃないか。これはどうも非常に残念であります。岸首相は、せっかく東南アジアその他の諸国と日本の関係をよくしようとお考えになって努力しておられるようであるが、この百の努力が、一つの新安保によって全部めちゃくちゃにされる。これは実に岸さんのためばかりではない、日本のために損害甚大であると思いますが、いかがでございましょうか。
  155. 岸信介

    岸国務大臣 東南アジア、あるいは新たに独立するところの、いわゆる後進的な立場にある新しい国々との間に十分友好親善の関係を持ち、信頼関係を保ちつつ、国連においても共同の行動をとるように努力していかなければならぬことは当然であります。ただ、東南アジアの情勢として、今、竹谷委員は二、三の事例をあげての御質問でありますが、私は、最近の東南アジアの情勢につきましても、私自身はその後参りませんが、現地の報告も、あるいはまた、いろいろ最近視察してきた人々の意見等も開いておりますが、幸いに、これらの国々に対する日本の気持というものは漸次正当に理解されつつあり、また、その意味において日本との関係が従来以上に緊密になりつつあるという事実は、これはおおうべくもない事実でございます。しこうして、それには、やはり日本が自由主義の立場を堅持して、これらの国々と提携をして、そうして、平和と真の人類の幸福を求める道を強くとって歩んでおるということが、これらの国々の信頼の基礎の一つになっておるということを、私は確信をいたしております。その意味において、安保条約改定が、今これらについて何か非常な疑惑を持たせるのじゃないかという竹谷委員の御心配は、私は単なる杞憂である、かように考えます。
  156. 竹谷源太郎

    竹谷委員 諸外国に対する新安保条約の影響ついて、もう一言、中国関係についてお尋ねをしておきたい。アメリカにおいては、今年から来年の初めにかけて大統領の選挙が行なわれるはずであります。この選挙に立つ候補者は、共和党は大体ニクソンにきまったようなものであるが、民主党は七、八月に党内の選挙できまるだろう、こう思うのであります。それがスチーブンソンになるか、あるいはケネディになるか、だれになるか、四人ぐらい候補者があるということで、今から民主党が勝つか、共和党が勝つか。もちろん予断は許さないところでございますが、一九五八年に、二年前に中間選挙が行なわれました。そのときには、圧倒的に民主党が勝っておるのです。すなわち、上院においては改選者三十四名につき、民主党が二十六名をとった。これに対し共和党は、わずかに八名にすぎない。新勢力、新しく当選した人と従来の人とを合わせた分野は、上院が定員九十六名のうち、民主党が六十二名、共和党はその約半分の三十四名なんです。下院の方はどうか。これは総改選でありますが、民主党が二百八十一名の絶対多数を獲得したのに対し、共和党は百五十四名、これも半分に近い数にすぎない。上下両院とも、民主党は共和党の約二倍の議員数を持っておる。これが現状であります。またこの一九五八年の、二年前の中間選挙において州知事はどうであったかというと、当選者は、民主党が二十四名あった。共和党はただの八名、三分の一でございます。そこで、非改選の知事と合算すると、民主党は、現在三十三名の知事を持っておる。共和党は、半分以下の十四名。このように、民主党と共和党の政党としての勢力分野は、格段の差があるのでございます。そこで個人的人気のすばらしかったアイゼンハワーが引退したあと、おそらく政党間のほんとうの争い、選挙というふうになることは必定でございまして、そうした観点から見た場合に、今度は、民主党の候補者の当選はほとんど確実ではないかと私は思うのです。そして民主党の大統領ができ、議会でも多数ということになったならば、アメリカの中国承認ということの可能性も出てくるのではないかと思うのです。アメリカという国は、今台湾と仲よくして、中共と相反目をしておる。しかし、アメリカという国は、そのときによって突然いろいろ政策を変更する国である。さきには、自分の国の大統領が、第一次世界大戦あとで、国際連盟を立役者となって作った。それを上院においては批准しなかった。また、スペインのフランコ政権、これはファッショの政権でありますが、これまた、絶対反対であると言いながら、突如としてスペインのフランコ政権を承認しております。こういう前例があるのでありますから、アメリカの政策については、日本としては十分考えておかなければならぬ。ダレスの時代と同じようにアメリカが相変わらずの外交を今後も長く続けていく、来年は大統領がかわってしまう、それでも同じだというふうに考えることは、実に危険であって、もしアメリカが中国を承認したという事態が起きた場合には、日本は極東においてまことに困った状態になる、こういうふうに私は考える。ある本で私は、アメリカのホルムズという判事がこういうことを言っているのを見ました。それは、一つの公式に安住するということは、それが長くなれば、死を意味する一種のうたた寝となるということを喝破しております。いつまでもダレス時代の公式論にもし政府が安住しておるならば、われわれの親愛なる日本国民というものを殺してしまうような結果になるのじゃないかということを私はおそれるのです。これはアメリカの中国承認という問題ばかりではありません。同様のことはほかにもあるわけでありますが、こういうことに対してどういうふうに一体政府はお考えになっておられるのか。世界情勢の変化とよくにらみ合わせて外交政策をぜひ立てていただきたい。アメリカが民主党大統領になって中国を承認したというような事態になったら、一体どうするか、政府のお考えをただしておきたいのであります。
  157. 岸信介

    岸国務大臣 アメリカの大統領選挙の結果を今から予断することは、これは何人もできないだろうと思うのです。また、アメリカの従来の外交政策を見ますと、共和党であるからどうである、民主党になったら非常に変わるというようなことを避けるために、超党派的な方向にアメリカにおいては従来外交政策としては進んでおるという事実も、頭におかなければならないのであります。しかしながら、そういうこととは別に、今お話の中国に対する態度という問題に関しましては、私がしばしば申し上げておるように、日本は最もこれに対して深い関心と、長い歴史的な緊密な関係を持っておるのでありますから、また認識も、日本としてはどこの国にも劣らないような非常に深いものがあると思うのです。そして、現状にわれわれは満足しておらない、これを満足しておらない、これを改善しなければならぬということを考えております。同時に、それには、一面、国際的な面におけるところの情勢というものをわれわれが調整していく必要がある、こういうことを申しております。従って、国際情勢が、中共を承認するというふうな機運が動いてくるような場合におきましては、日本としましても、私どもはこれを絶対に承認しないなんということを申しておるわけではございませんし、日本日本の立場から、国際情勢の今後の推移につきましても、自動的にいろいろ調整をすることについては十分努力していく考えでございます。アメリカ承認したから困るとか困らないとかいうことでなしに、日本の立場からこの問題については常に細心の注意と検討を加えて、そうして友好関係を進めていくように、改善していくようにわれわれとしては考えていきたい、かように考えております。
  158. 竹谷源太郎

    竹谷委員 人口六億五千万の中国という国は、まことに世界的にも大きなウエートを持っておりますが、日本にとりましてはなおさら、何千年も昔から特別な関係にあった大事な国であります。この国に対する外交政策については、これは別の機会にお尋ねをいたしまするが、どうか他国の方向のみに依存をしないで、日本独自に中国問題をどのように解決をいたすべきか、これはりっぱな外交政策を推進して、われわれの幸福と利益をぜひはかるように考えていただきたい。  次に、時間も進みますので次の問題に移りますが、新しい条約の内容そのものについて二、三お尋ねをしてみたいと思います。  去る二月十九日に、この委員会外務大臣条約締結について承認を求めるの件を提案する理由を御説明になられました。その説明の中で、改正の要点を五つあげておられます。第一は、国際連合との関係の明確化をはかった。第二は、新条約第五条の、米国のわが国防衛義務を明定した、こう申されておる。第三には、第四条に協議条項というものを設けた。それは核装備持ち込みのような重要な配備その他について適用される、そして日本の協議と承諾が要る。それから第六条の、在日米軍が海外出動する場合には、事前協議をしなければならない、こういうことになった。第四の問題は、政治経済上の日米協力関係に関して第二条というものを設定した。第五点といたしまして、第十条において条約期限を十カ年とした、こういう五つの点を要点として述べられております。さて、この五つの点を調べてみますると、このうち、第一条の問題は、日米両国とも国連加盟国であるから、当然であります。それから第二条の経済協力、これは精神的な宣言のようなものであって、けっこうであるが、特別な法律上の拘束力や、条約として特別なものではございません。第四条に至りましては、条約文としては新しいけれども昭和三十二年の岸・アイク共同声明によりまして日米安全保障委員会ができて、大体こうしたことはすでに協議をしつつあるところである。そこで、ずっとこの条約を見まして、問題として新しくなって特に取り上げる、こういうことになりますると、外務大臣がおっしゃった五つの要点のうち、ここで取り上げて大いに論議する、また新しい規定だと考えられるものは、第五条の日米共同防衛の問題、第六条の基地貸与の問題、そしてこれは従来もあったが、行政協定で変わる、それでも、第一項の海外出動の問題、これに関する重要な規定がある。それと第十条の期限の問題。この五条、六条、十条、これが、改善されたか、改悪されたか、とにかく変わっている。こういう五点をあげられておりますが、要点はこの三つであった、こういうふうに聞いたのでありますが、これは改善されたと申される点である。そこで、この新条約を結んだために日本は得ばかりしたのであって、損になった事柄はないかどうか、これをお尋ねしたいのです。外務大臣はこの提案理由の説明で、みんな日本に得で、いいことずくめで、悪いことは一つもない、こういう説明でございましたが、これは私たちは納得がいかない。この相手のある条約締結という外交上の取引にあたって、日本で得をした点もあったら、横の点もなければならぬ。これは必ず反面にあるわけであります。外交というものは、ギブ・アンド・テークなんです。こっちだけ損をして、そして向こうだけ得をさせるということもない。こっちが非常な得をして、全部向こうがその分の犠牲、負担ばかり負うのだ、そういうことはあり得ないのでありまして、日本に損な点、改悪な点、これが必ずやあるに違いない。藤山さんがおっしゃるように非常にこれは日本のために改善になったという点があるが、一方、日本はこのような損をした、このような責任と義務が新たに加わった、しかし、これはギブ・アンド・テークの外交上、やむを得ない。少しでも日本に得ならいいんじゃないか、こういうことならば、考えようもある。しかし、損の方が多くて得が少ないならば、やめた方がよろしい、こういうことになるのでありますが、損になった、あるいは日本が義務を新たに負った、責任が重加された、そういうような点はどうであるか、それを明瞭にしていただきたいのであります。
  159. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 得とか損という言葉は、はなはだ適当な言葉でないと思いますけれども現行安保条約から比較いたしまして、今回の条約というものは、われわれの希望するような自主的な立場で改定ができたとわれわれは考えております。そうして従来われわれが望んでおりましたような点につきまして、たとえば、アメリカ日本を防衛する義務を負うというような点については、われわれの要求が入れられたと思っております。しかし、それでは日本が、損という言葉は別として、何か新しく非常に大きな負担を現行安保条約以上に受けたかといえば、われわれは今回の改正においてそういう点はないということをはっきり申し上げられると思います。
  160. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今回の新条約は、日本にとって改善のもののみであって、改悪はない——改悪と言っては語弊があれば、責任が重加し、義務を多く負担するようになった、そういう点はないとおっしゃるが、これはある。私は、そういう答弁はどうかと思う。そんな外交というものはあり得ないのです。これは常識に反する。日本アメリカから守ってもらうということが条約上明確になったとすれば、今度はそれに対応して日本は何か与えなければならぬ。これが常識であり、何かまた与えているのじゃないかと思う。向こうが日本を守ってくれる。日本が向こうを守るということがないのかどうか。それからまた、バンデンバーク決議というものがこの条約に織り込まれていることは認めるであろうと思う。これによって日本はどういう義務を新たに負わなければならなくなったのか。これは義務は全然ないのか、現行条約とその点は同じであるか。この二点をまずお尋ねしたい。
  161. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、特に現行安保条約から見て日本が何か新たな負担を背負ったということは、われわれは考えておりません。たとえば、バンデンバーグの決議にいたしましても、その精神を取り入れたのでありますが、これは日本が独立国家として当然自分の国を防衛するだけの決意は常日ごろから持っておるところでございまして、そうしてその防衛能力を、自分自身の国内におきます経済的、社会的諸般の情勢に従ってそれを維持、発展させるということは、日本国民考えておるところでありまして、防衛を日本がするという以上は、当然なさなければならぬことであります。その当然なさなければならぬことをわれわれはここに宣言いたしておるのでありまして、特に、字句上の問題においても注意をいたしてそういう点を書き込んでおるわけでありますから、新たな何か義務を背負ったというものではなくて、従来行なわれていることをそのままに書き加えたということと同じだと私ども考えております。
  162. 竹谷源太郎

    竹谷委員 第三条に、日本が「継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。」こういうふうに書いてあります。これに対応する文章が、現行安保条約の前文の一番おしまいにある。これは長くなりますから省略しますけれども、要は、アメリカとしては、日本が直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため武力を漸増する責任を負うことを期待しておる、こういうのだったから、向こうは期待をするだけだ、日本は自由勝手なんだ、やろうがやるまいが、期待をしているという道義的なものにすぎなかった。ところが、今度は、新条約第三条において特に一項を設け、個別的に及び相互協力をして、それぞれの能力を、継続的かつ効果的な自助及び相互援助によって維持し発展させるということを約束したのです。これは義務なのです。だから、道議的な、ただ、日本が武力増強をやることをアメリカとしては期待をしている、望んでおるというのを、今度は、必ず維持し発展させるということを確約したのであって、これは義務であります。従いまして、これが今までと同じだというようなことは絶対に言えたものではない。もし、かりにこれが今までと同じだとすれば、第五条第一項によってアメリカ日本を守ってくれるということも、これまた別に新しくできたのじゃない。同じことなのです。何も第五条第一項によっては、アメリカ日本を新たに防衛してくれるという、そういう義務をアメリカが負い、日本は権利を獲得したというようなことにはならない。現行安保条約前文の最後の項と対応する第三条が、新たに義務を負うものではない。やはり、増強しようがしまいが、維持し発展しようがしまいが、武力に関しては日本の自由勝手に何ら条約士の拘束を受けない、こういうのであるならば、第五条にいうアメリカ日本防衛義務もまた、これに対応することが現行安保条約の第一条に書いてある。向こうは日本を守ることができると書いてあった。これは前には権利と書いてある。今度は義務みたいに書いてある。これが同じだということになるのです。武力増強の義務というものは新たなものではないとあなたがおっしゃるならば、この第五条もまた同じことなのです。事実同じです。アメリカの軍隊は、極東全体の安全と平和のために日本に駐留しているという大目的がある。その極東のうちで最も重要な地点であり、人口稠密な、すばらしい工業能力を持った日本が、外国の不正な侵略を受けてきた、そういうときに、アメリカは黙っているはずはない。これは必ず立ち上がる。それと同じことなのです。法律的に、もし第三条というものが新たな日本の武力増強の義務を負担するものでないとするならば、第五条においてアメリカが新たな防衛の義務を負担したものではない。これは従来通りということになると、第五条の、アメリカとしての日本防衛義務は、何ら今までと変わりはないのだ、こういうことをおっしゃるならば、私は第三条について納得ができる。しかし、第三条が何ら新たなることではないのだ、従来通りだとおっしゃるならば、第五条もまた従来通りだと申し上げざるを得ない。この点いかがです。
  163. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 第三条におきまして私が申し上げましたのは、実質的な新たな義務を負担したものではないということを申し上げておるわけであります。一国が独立国として自分の防衛力を持っていくということは、当然のことでありまして、自分自身を守る力を維持育成していくということは、そのときの自分の国のそれぞれの経済的あるいは社会的諸般の事情によってこれを増強していくわけであります。その通りにこれは書いております。従って、新たな義務が付加されたものではないのであります。ただ、そういう約束をしたということ自身を義務といえば、それは義務といえないことはございませんけれども、新たな義務を何も付加して約束したわけではございません
  164. 竹谷源太郎

    竹谷委員 しからば、第五条もまた——現行安保条約においてアメリカ日本を守るということは、実質現実なんです。それをただ条文の文字にあげただけで、何にも変わりはない、同じことだ、こういうことになりますか。
  165. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 第五条の点は私は違うと思います。アメリカは個別的及び集団的自衛権を持っております。そうして日本がやられましたときには、これを発動するということを宣言いたしておるのでありまして、この点は違っておると思います。
  166. 竹谷源太郎

    竹谷委員 藤山さんのおっしゃることは首尾一貫しませんね。これは論争をしてもばかばかしいのですが、第三条については、形式的には義務かもしれないが、実質は同じだとおっしゃっておる。私の聞きますのは、この第五条もまた、形式は違ってきたが、実質は同じじゃないか。実質のことを聞いておる。それが実質も違うかどうか。形式が違ったということは、第三条についてお認めになった。私は、第三条も第五条も、法律上として違ってきていると思う。実質は今言いません。その点は藤山外務大臣も認める。しかし、実質的には同じだとすれば、第五条もまた実質的には従来と変わりない、こういうお考えであるかどうか。
  167. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現行安保条約では、アメリカ日本の防衛をすることができるというふうに書いてあるわけであります。ただし、できるのであって、必ずするという意味ではございません。今度の第五条の場合におきましては、アメリカは必ずそれを行使しなければならぬということを宣言いたしておるのでありまして、その点において違っておるとわれわれは思っております。
  168. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私が今お尋ねしているのは、第五条におけることが、現条約と新条約と実質は同じではないかというお尋ねをしている。それに明らかに答えないで、形式的の、お互いに意見の合ったところだけをおっしゃっておられますが、実質は同じであるという点は、アメリカとフィリピンとは、従来ともあるいは属国であり、あるいは同盟関係であるのだが、フィリピンを日本が侵したときに、アメリカ軍は逃げて帰った。明らかに相互防衛条約がありながら、必要な場合には守らないでしまった。だから、条文に形式的に義務を明定したからといって、必ず守ってもらえるという保証はここにない。法律上の義務はあるが、現実にフィリピンを守らなかった。問題は、ほんとうに守るかどうかという問題なんです。そういう意味からいえば、この第五条にアメリカが防衛の義務をかりに明定したといっても、何ら現行条約の実質的価値にプラスするものはない、私はそう言う。  ところで、第五条についてはこれだけではない。日本が今度は在日米軍を守ってやらなければならぬ、こういう義務が新たに生じてきたと思う。ところが、あなたが二月十九日にこの委員会において提案理由の説明をなさった。その提案理由の説明の中には、今の、実質的には同じであるアメリカ日本防衛義務のことだけをいって、わが国アメリカを守るその問題については全然触れておらない。これは非常に不親切です。われわれをごまかそうというのだ。これだけ読んだのでは、なるほど、いいことばかりで、悪いことは一つもないので、賛成せざるを得ない、こういうことになるのでございます。これが一つ。もう一つは、第三条の武力増強の義務、この点については、よくなったとも、悪くなったとも、全然触れておらない。この二つの重要な——今度の新安保で最も問題になっておる点は、第三条であり、第五条であり、第六条です。そのうちでも、第三条というのは、日本の武力増強の義務であって、国民生活、国家財政に直接影響を与える非常に重大な条項なんだ。この大事なことを、この委員会における提案理由の説明の中で全然触れておらない。また、日本アメリカ軍を守ってやるところの、第五条に基づく日本の出動の義務、これは守ってやるのじゃないのだ、日本の領空が侵された、領土が侵されたのだから、自衛権の発動だ、こういうことをおっしゃいます。これはあとで議論をしますが、この重大な日本出動の第五条の義務、これを全然省いてある。これは一体どういうお考えであるか、お尋ねをしたい。
  169. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、第五条におきましても、日本の領土、領空、領海を侵さないで攻撃するわけにはいきません。日本の領土、領空、領海が侵されたときには、日本はその軍事行動に対しまして自衛権を発動するという、当然のことなんでありまして、従って、新たな義務がそれに付加されたものでも何でもございません。かりにこれがアメリカの領土を守るということであれば、これは新たな義務が付加されることになりましょうけれども、今日の第五条においてはそういうことはないのでありますから、新たな義務を付加されたとはわれわれ考えておりません。
  170. 竹谷源太郎

    竹谷委員 新たな日本アメリカ防衛の義務が付加されたものではないとするならば、アメリカもまた日本防衛の新たな義務が付加されたのでないという結論になる。同じことだ。並べて書いてある。だから、第五条は従来通りアメリカ日本防衛義務を明定したなんということは、一つも誇るに足りない。第三条は、これまた従来通り、何も新しいものはない。それならば、第三条も第五条もなくていいはずだ。だから、われわれは、このような安保改定はやめた方がよろしい、従来通りならば、やめた方がよろしいという結論がここに出てくる。第三条も第五条も同じことなんだ、だから改定はなさらない方がよろしい、こういう結論が、藤山さんの答弁から出てくる。これはやはり新しいものが付加されたのであるという御説明にならないと、新安保を作るという立論の根拠が失われますよ。第五条においてアメリカ日本を防衛する義務を明定した、それを誇ろうとするならば、第三条も、それから第五条の第一項の裏である日本の出動、共同行動ということもまた新たに付加された規定であるというふうに出さないと、首尾一貫しない。第三条も第五条も従来通りということであるならば、新たに規定を設ける必要はごうも存在をしないということになる。第三条、第五条は、われわれも、社会党も、国民も非常に重視している問題でございまして、第三条、第五条のアメリカ日本を防衛する義務の裏である日本の出動というものは全然新しいものでない、従来通り変わってはいないというのであれば、その点もう一度明確に御答弁を願いたい。第三条は何ら新しい日本の義務を負担させるものではない、それから、第五条の第一項は、日本アメリカ軍を守る義務であるとわれわれは言うのだが、あなたは、米軍に攻撃が加えられた場合、日本が個別的自衛権を発動するという義務は何ら新しいものでない、従前通りだ、こうお考えならば、もう一ぺんその通りであるということをお答え願いたい。そういう外務大臣の御声明を願いたい。また、岸総理大臣は、これに関して外務大臣の言う通りであるとお考えであるかどうか、岸内閣総理大臣の御意見も承っておきたい。
  171. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、第三条は、日本が独立国として当然自衛をいたすことでなければ相ならぬわけでありまして、その自衛の程度その他は、日本の経済力なり社会的事情によってきめて参るわけで、そのことは当然のことを当然にいったまででございますから、何か新しい義務をしょったということではございません。また、第五条の場合におきまして、日本が攻撃を受けないでアメリカ軍が攻撃を受けるというようなことはございません。日本の領土、領空、領海を侵されて、日本が攻撃されていくわけでありますから、日本が自衛権を行使することは当然でございます。現在の安保条約におきまして、アメリカは、日本に対する武力攻撃に対して、軍隊を使用して寄与することができるというふうに書いてございますが、従来その点について、国民の心配というのは、いざというときに逃げていきはしないかという心配をみないたしておったわけであります。今回の場合におきまして、アメリカは集団自衛権及び個別的自衛権を——もし日本におりますアメリカ軍がやりましたら、当然個別的自衛権は発揮いたしましょうが、はたして集団的自衛権を発揮するかどうかはわかりません。今回の場合には、新たにそれを宣言いたしておるのでありまして、アメリカにおいては、前よりも強くそういう任務を背負ったということでございます。
  172. 岸信介

    岸国務大臣 外務大臣お答えをした通りでございます。
  173. 竹谷源太郎

    竹谷委員 この問題は条約の内容でございまして、これから審議の進行につれて各委員からもどしどし発言があろうと思いますが、要は、政府としては、第三条は新たな何らの義務を負うものではない、実質は同じだ、形式的にも法律上も義務は負担しないかのごとき——これはあいまいです。しかし、負担しないかのごとき説明である。第五条もまた、われわれ日本が米軍を防衛するということは、何ら新しい義務ではないのだ、これは法律的にも、実質的にも従来と変わりがない、こういう御答弁であると承っておきます。  そこで第六条のことをちょっとお聞きしたいのですが、この第六条の第一項に、「日本国の安全五に寄与し、」これが一つ、「並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」寄与ということが、日本の安全に寄与する、並びに極東の安全に寄与すると、日本文では二度使っております。そのために「アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」こういうふうに日本文には書いてあります。しかしこれは、二つの正文の一つである。ところで、英文の方はどうかというと、これを直訳すると、日本国の安全と極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、こういうふうにあって、日本語とは違う。日本語では、日本の安全に寄与するため、そして極東の平和を維持するため、そのためにアメリカ軍は日本の軍事基地を利用する、こういうふうに書いてあるが、英文によれば、日本の安全とそして極東の安全と、二つに寄与するために軍事基地を使用する、こういうふうに書いてある。これは一体どういう違いがあるのか、同じであるのか。私はこれを両方すらっと読んでみて、これは日本の国の安全、そして極東の安全と平和、この二つの目的を同時に持つ場合、それに寄与するために初めて在日米軍は海外出動ができる。極東の安全だけで日本の安全には関係がない、そういう場合にはこれは適用にならない。日本の安全と極東の平和、安全と、双方に関係ある、それに寄与するためにのみ海外出動ができる、こういうふうに解釈する。なぜならば、日本国の安全のためには、第五条によって当然できるのだ。そして、かりに日本の軍事基地を使わなくとも、日本の安全を守るために、ハワイから、グァムから、フィリピンから、台湾あるいは韓国から飛んできてやってもよろしい。日本の安全を保つためには、日本の基地を必ずしも使う必要はない。だから、日本の安全のためにのみ海外出動するというようなことは、第六条に規定する必要はない。日本にいるアメリカ軍は、日本が侵された場合は当然日本の軍事基地も使うし、韓国の基地も使うし、沖繩の基地も使う。そして日本の防衛に当たる。これは第五条によってある。従って、第六条は海外出動の規定でなければならない。日本の安全のためにのみ出動ができる、こういうふうに解釈すべきではない。従って、この条約の英文の趣旨から見まして、日本の安全及び極東の平和、安全、この同時に二つの目的を有するときにのみ海外出動ができるのだ。一方だけの目的ではできないのだ。このように私は解釈をするが、政府はどのようにこれを解釈されておるか、お尋ねをしておきたい。
  174. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この六条は、施設及び区域を使用することを許す目的でございます。従いまして、日本国の安全に寄与する、日本が攻撃された場合にもその施設区域を使わなければならぬのであります。そういう意味において、施設区域を使うことを許しておるということなんでございます。
  175. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 英文と日本文の点でございますが、これは全く同じでございまして、私は、その間に相違がないと考えております。「日本国の安全に寄与し、」それから「安全の維持に寄与するため、」と、寄与が二つ使ってありますが、日本国の安全と極東における云々云々に寄与するため、こういうふうに書いてもよろしゅうございますが、ただ、そうしますと、この「安全の維持」という字が、日本の安全の方の維持にもかかるということにもなりますので、はっきりさせるために、「日本の安全に寄与し、」それから「極東における」云々の「安全の維持に寄与する」と、こう二つに分けたのであります。
  176. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私のお尋ねしたい要点は、今の外務大臣答弁ではわからないのです。日本の安全と極東の安全と双方の場合——日本の安全に関係がない場合には、海外出動ができないのかどうかということを聞いておる。たとえば、極東の出動範囲というものについては、何ら局限を受けないということを、もう政府の統一解釈として発表しておる。条約区域としては、自由国家圏の方にと言っておられます。しかし、出動範囲は極東には限らないというのだから、私の考えによれば、極東というものは、大体ビルマ辺から沿海州までいくはずなんです。少なくとも、そういうところはどんどん飛び回れる。そういう、およそ日本の安全とは直接関係がない区域に問題が起きた場合に、日本を使って、この基地から飛び出せるかということを聞いておる。それが日本の平和と安全に直接関係のあるときだけしか出られないという意味か、それとも、日本の安全には関係がないが、極東の平和と安全の維持に寄与するときには、これを許されるのかどうか、それをお尋ねしておるのです。
  177. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 その六条は、今申し上げましたように、施設及び区域を使用することを許す、その目的が書いてあるわけでありまして、ここからどういうふうに出撃するかとか、その範囲をどうするとか、そういうものは事前協議の問題でありまして、この六条の問題ではございません。
  178. 竹谷源太郎

    竹谷委員 どうも私の質問する目標がわからないようですが、それはわかっておるのです。その基地を使用することが許される、その寄与する目的であるものが、日本の安全と関係のない極東の区域の紛争なり、その他平和と安全を守るためにそれを維持する目的か、あるいは日本の平和に関係する場合か、それを聞いておるのです。わかりませんか。
  179. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本の平和と安全を維持するということは、日本施設区域を提供する一つの理由でありますが、同時に、日本の平和と安全というものは、極東の平和と安全と分けることの、できない場合があるわけであります。そういう場合に、第六条は、施設区域を提供する一つの理由になっておるということであるわけであります。
  180. 竹谷源太郎

    竹谷委員 まだ私のお尋ねすることがわからないようだ。日本の安全に寄与するためということは、同時に、極東の安全に寄与することは当然だ。極東における最も重要な日本という地点、この日本の安全に影響がある場合は、当然極東の平和と安全に影響があるのであって、この場合には問題ありません。問題は、日本の安全と関係のない極東の地域における安全、たとえば、フィリピンにおって何かあった。そのときに日本の軍事基地が使用できるか。その事態が日本の安全にも影響してくる、そういう日本の安全に寄与する必要があるなら別だが、それが日本に寄与するというような場合でなくても、フィリピンだけの問題でも出動ができるか、こういうことを聞いておる。これは総理大臣から一つお答えを願いたい。
  181. 岸信介

    岸国務大臣 六条は、日本において基地を与えることを認める、その基地を与えるという目的は、日本の平和と安全に寄与し、同時にまた、極東の平和と安全の維持に寄与する、こういうことであります。今竹谷委員の御質問は、この基地を使用して米軍が出動する場合に、事前協議の対象になるわけでありますが、事前協議された場合に、日本の平和と安全ということに直接密接な関係のないような事態に対しても、米軍が出動することを日本は当然認めなければならぬのかどうかという御質問であろうかと思いますが、われわれは、そういうものに対しては、それは拒否するつもりでございます。あくまでも日本の平和と安全に密接な関係があり、不可分な関係のあるようなところへ米軍が出動して、そして平和と安全を守るということ、即日本の平和と安全を守ることに寄与するわけであり、欠くべからざることでありますから、その他の条件もありますけれども、こういう場合には承諾を与えるし、全然関係のない、また関係の非常に薄いところであって、そういうところに出動することによって、日本がむしろ国際的紛争に巻き込まれるというようなおそれのある場合には、拒否する考えであります。
  182. 竹谷源太郎

    竹谷委員 日本の安全に関係のない極東の紛争の場合、アメリカ軍が海外出動をするということを拒否する、これは当然であり、また、ぜひそうしてもらいたい。しかしながら、その事前協議において日本が同意するかいなかという問題を私が聞いているのではなくて、一体この条文というものは、そういうことをアメリカが協議に持ち込めるのかどうか、そういう場合に、この条文によって、日本の安全に関係のない海外出動ができるのかできないのか。できるとすれば、岸さんが言うように、事前協議において拒否をしなければなりません。できないというならば、初めから心配はない。その点は、事前協議には持ち込まれない。でありますから、この条文は日本文も英文も同じだ——英文の方が正確です。日本文は、その「維持」のところのかかり工合によって誤解を生むから、「寄与」という言葉を二度使ったと条約局長答弁された。そうならばそれでよろしい。そうすると、英文をすらっと読んだところでは、日本の安全とそして極東の平和、安全維持と、これが一体となった場合に初めてあるんだ。従って、日本の平和、安全に関係のない極東だけの他の区域の問題であるとします場合には、初めから海外出動はできない。従って、事前協議の議題ともならないし、日本は同意も不同意もその必要は起こってこない、こういうことになるのであります。そこで今、この条約第六条は、日本の平和、安全に関係ないものは禁止されているんだ、関係のない海外出動は、この条約上拒否するまでもなくいけないんだ、そういうふうなものであるかどうか、この点をお尋ねしておるわけです。
  183. 岸信介

    岸国務大臣 米軍がどういうふうに出動していくかということについては、条約上の直接の制限を設けた条文は、私はないと思います。そこで、いやしくも米軍が日本から日本の領域外に出動する、作戦行動をやるという場合におきましては、すべて事前協議の対象として、そして今竹谷委員の言われる、日本の平和と安全に直接もしくは非常に密接な関係があるかどうかということは、日本自身が判断してこれを制約する、その事前協議の対象とするという考えでございます。
  184. 竹谷源太郎

    竹谷委員 この点は、私と政府の解釈が違うのははなはだ残念だ。私のように解釈すれば、まことに日本として安全性が高くなるのであるが、これは寄与するためという目的に使われているものですからね。その点、どうも条文を形式的に読むとそういうことになります。しかし、実質は海外出動の規定であって、ただ基地が許されるということは、別の面から海外出動のことを書いてある。そこで基地使用の目的のように時いてはあるが、これは事重大であり、その点から米軍の海外出動をチェックしたいものだ、このように私は考えておる次第でございます。  さて、第五条の問題でありまするが、私は昨年の十一月十日に本会議において、藤山外務大臣の新安保改定交渉経過報告に対する質問の際に、この第五条の問題をお尋ねいたしました。そのときに、私は、もし政府が言うがごとく、第五条第一項の日本の行動というものは、これは個別自衛権である。日本アメリカと関係なしに領空、領海あるいは領土を侵されたのだから、個別自衛権を発動して当然やるのをただここに書いただけで、これは何ら新しいものではない。日本に新しい義務を付加するものではない、こういうことをおっしゃっており、集団自衛権を否定されておる。そういうことならば、今までと同じことなんだ。当然日本は個別自衛権が発動できるのだから、何もここに書かなければならない理由はない。特に書いたことは、これは在日米軍を守ってやる、相互援助、相互防衛の義務を第五条に表わしたものだ、こう考えるが、そうでない、個別自衛権だけだとすれば、これはもう第五条において、日本もまた共通の危険に対処する、そういうことを宣言するということは、しなくてもいいのではないか。アメリカだけが日本を防衛する義務さえ書けばいいので、日本が立ち上がるというようなことは必要ないのではないか、こう申し上げましたところ、それに対しては明快な御答弁がありませんでした。この点、この機会にもう一度外務大臣に明らかにしてもらいたい。日本は当然個別自衛権でやるのであれば、何もここに条文に明定する必要はないのではないか。われわれは、明定をしたということは、日本アメリカ軍防衛の新たな義務の意味で書いたのだ、相互防衛の意味だ、そう解釈するのだが、どこまでも政府は、これは相互防衛の義務ではなくて、個別防衛権であり、当然日本がやるということだけなんだとあくまでおっしゃるのかどうか、お尋ねしたい。
  185. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本が攻撃され、あるいは日本におきます米軍が攻撃されたときは、先ほど来申し上げておりまするように、日本を攻撃することなしには攻撃できないのでありますから、当然日本が個別的な自衛権を発動いたすわけであります。当然のことを当然に宣言したのでありまして、それが特に新たな義務を付加されたということではございません。アメリカといたしましては、自分がやられましたときに個別的自衛権は発動いたしますけれども、集団的自衛権というものを発動するか、しないかということは問題がございます。そこでここにはっきり集団的自衛権も宣言して、そして発動することにアメリカはなったわけであります。その意味において、われわれははっきりいたしておると思うのであります。
  186. 竹谷源太郎

    竹谷委員 それでは、アメリカがどこかほかの第三国と戦争をした。そうすると、その第三国が、日本アメリカ軍の基地がある、これがどうも目のかたきであぶない、自分を守るために日本におけるアメリカ軍の基地をたたかなければならない、こういうことで、これは交戦的になってくるわけだ。それが、なお議論をはっきりさせるために、かりにその第三国が、自衛行動として、アメリカ軍が直接そこから出撃してはこないか、今にしてくる危険もある、それはアメリカ軍の重要な武力である、だからたたかなければならないというので、在日米軍をたたきに自分の自衛権に基づいてやってきたとする。こういうような場合には、日本といたしましては、これは中立国でありますが、その相手方の正当なる交戦権は、急迫不正の侵害と認めて発動すべき自衛権の対象にはならない、こういうことになって、アメリカ軍がたたかれても日本はじっとしていなければならぬ、こういうことになると思うのであるが、この点いかがでございましょうか。
  187. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 非常に仮定の御質問でありますけれどもアメリカ国連憲章に従って行動します限り、よそにおいて侵略の行動をするとはわれわれ考えません。そして、それに対して、そうでなくして第三国が出て参るということは、それ自身侵略行動だと思います。しかも、日本におきます米軍をたたきに来るという事態は、やはり日本を攻撃して参らなければできない、そういうことは侵略行動ではないかとわれわれは考えております。
  188. 竹谷源太郎

    竹谷委員 その第三国がいつでも侵略であって、アメリカはいつでも受け身だけだ、そんな勝手な規定はいけません。それはどっちの場合も起こり得るし、どんな戦争も、どっちも防衛のためにやる、侵略的にやるなんという国はないし、その判断はむずかしい。やはり同じように、防衛のために両方立ち上がると見なければならぬ。だから、これは当然その国の自衛権なのです。それに基づいて正当な攻撃をしてきたものを——自衛権というものは、むろん国内法と同じように、不正急迫なる侵害を排除するための行動なのです。ところが、向こうは不正じゃないのです。正当な交戦権の行使である。だから自衛権の発動はできない。それを発動するということになると、これは個別自衛権ではいかぬ。やはり集団自衛権でないと、それは説明がつかなくなる。そういう場合に、あくまで個別自衛権だなんていうことを言ったのでは説明がつきません。その点はいかがですか。
  189. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今お話しのような場合に、日本が、そういうような侵略と申しますか、何かをやっておらぬ、戦争行為に入っておらぬ、それに対してやって出て参りますことは、不正な侵略であるということを申さざるを得ないと思います。
  190. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは御承知だと思いますが、現在の国連憲章のもとにおきましては、武力行動あるいは軍事行動を正当化される場合は、五十一条の自衛権の行使か、あるいは五十二条以下の、いわゆる安保理事会あるいは総会による強制行動、こういうこと以外にはないはずでございます。従いまして、現在におきましては、昔のいわゆる戦争の観念と違いまして、常にそういう軍事行動はどちらかが侵略し、どちらかが自衛をしている建前でございます。それで国連憲章に従った行動をアメリカがする限り、常に自衛行動か、あるいは安保理事会あるいは総会に基づく国連軍としての行動以外にあり得ない。そういう国連憲章上正当と認められる行動に対して、相手国が自分の自衛権を主張することは、これはできないはずでございます。当然に現在の武力行動は、どちらかが正しいか、どちらかが不正かという問題でございます。不正の方が、自分がやられた、侵略を阻止されたからといって、今度は相手を自衛権でたたくということはあり得ない。そういう意味におきまして、その場合に、よそで起こったこういう問題について、日本に米軍の基地があるから——今の設例で申せば、要するに侵略をしたという方が、自分が攻撃されたから、自衛行動されたから、それに対して自分の自衛権を発動して、日本にある米軍の基地をたたくということは、これは国連憲章上正当と認められない行動だと思います。そういう意味におきまして、これは日本においては、これに対して自衛権を発動するのは当然だと思うわけでございます。先ほど、個別的自衛権では説明できない、集団的自衛権では説明できるとおっしゃいましたが、個別的自衛権を発動し得ないようなものについて集団的自衛権——これは日本の場合です、日本自身がやられた場合です。個別的自衛権が発動できない場合には集団的自衛権が発動できるということは、これはないのじゃないかと思います。
  191. 竹谷源太郎

    竹谷委員 林法制局長官答弁答弁になりません。それはどちらが正当で、どちらが不正であるということだが、どっちも正当であると主張してやるのであって、これは判定がほとんど困難であります。たとえば、朝鮮戦争がどうして起きたか。どっちからしかけたかということは、水かけ論に終わる。どっちも正当としてやっておる。だから、われわれ第三者として、それの内容を批判する余地はありません。向こうが防衛として攻撃してきた場合に、お前は不正だなどというようなことを言ったら、これは大問題です。そんなことは、多くの場合、どっちかわからないのです。どっちも防御だとして自衛のためにやる。おれは侵略戦争をやるのだというものは、どこの国にもない。みんな自衛のためにやる。自衛の名においてやる。軍隊を保有するのは、お互い自衛のためなのです。それがやってくるのだから、それに対して、これが不正だ、これが正当だ、これは自衛権が発動できる、これは正当な攻撃であるから自衛権の発動ができない、そのようなことは、言う余地が日本としてはありません。とにかく攻撃されるのを受けざるを得ない。それに対して日本はどうするか、これが問題なのです。そうなると、個別自衛権の観念だけでは説明ができないのではないか、こういう問題です。これは、アメリカは絶対に悪いことはしない、アメリカの相手方のみ悪いことをするのだ、こういうようなきめつけ方は実にこっけいだ。そんなことは通用いたしません。いろいろな場合があり得る。戦争は、おおよそお互いに防衛のためにやるという名目であり、実質も、どちらがどうなるかわからぬような状態において、いつも起こるのがあたりまえなのです。今後は特にそうなのだ。そうなれば、自衛でやってきた正当な在日米軍に対する攻撃、これに対して、日本は緊急不正の侵害として自衛権の発動ができない、こういうことになれば、これは個別自衛権だけでは説明ができない。この条約は、従って、集団的な自衛のその精神に基づいてできたものである。これは隠れもない事実といわなければならぬ。国連憲章第五十一条に、明らかに、自衛権というものは、集団的自衛権、個別的自衛権と両方持っておる。日本の翻訳文によると、国連憲章第五十一条に、個別的及び集団的な固有の自衛の権利があると書いてある。だから、自衛権というものは、今日の観念においては、個別的なものと集団的なものと両方含んでおる。そういう観念で、あらゆる条約が戦後できておる。集団的自衛という観念は、今度の第二次大戦後に初めてできたものではなくて、第一次大戦中も集団的な戦いが行なわれ、およそ今世紀になって、兵器の発達に伴って、一国だけ自分を守るということは不可能である。欧州なら欧州の何カ国かが集まって、一緒にやらなければならぬ。例を日本にとっては、はなはだそぐわないのであるが、たとえば、ぴったりくるようにお話しすると、四つの日本の島がそれぞれ別の国だと仮定する。それらが別々に守っておったのでは、とても防衛の目的は達せられぬ。従って、本州がやられたとき、北海道の方も一緒に守らないと北海道が守れぬ。そこで集団防衛の形において集団自衛をやる。それで初めて自衛ができる。自分の境まで来ておるが、自分のところまで来ないから安全だということは言えない。一括して、一まとめにして、ある区域の地域、ある地方の国を集団的に守るのでなければ、自衛の目的は達せられない。そういう観念から、今度第二次大戦後の国際連合において、この国際連合憲章の中に明らかに二つを並べて、自衛権というものの内容としては、個別的、集団的、二つの種類があるが、これが一つの固有の国家の自衛権として国際法上は認められておる。それをまた日本がその国際連合に加入しており、また、今度作ろうというこの新安保条約は、国連憲章に沿う精神でこの条約締結し、また実施をするという建前であるのでありまして、この国連憲章というものが、この条約の底に流れている土台なのです。これをとっぱずしてしまっては、この条約は解釈ができない。そういう意味から、皆さんは集団安全保障の集団自衛権も含めた自衛権のつもりでこれは書いた。ところが、日本の憲法では、集団的な他国への海外出動は認められない。そこで苦しまぎれに、個別自衛権だけでやるのだ、集団ではないのだ、こういう言いのがれをやっておるのであるが、実態は、この条約の底である国連憲章の建前からいって、政府の第五条というものを正当化する解釈をなすためには、どうしても国連憲章第五十一条の個別的及び集団的な固有の自衛権を認めた、その上に立ってこの規定を作っているとわれわれは判断せざるを得ないし、だれもがそう見ておる。政府の見解は、そういうなまはんかではなくて、国連憲章の固有自衛権を認めるのだという憲法解釈に立ってのことだと思うが、それならそれで割り切れる。それが憲法に違反するかいなか、いいか悪いかは別といたしまして……。そうしないと、政府の解釈ではとうていこの第五条の解決ができない、こう思うのでありますが、総理大臣はいかがお考えであるか、お尋ねをいたしたい。
  192. 岸信介

    岸国務大臣 国連憲章の五十一条に言っている集団的自衛権というものの解釈につきましては、いろいろな解釈もあるようでありますが、普通の解釈は、今竹谷委員お話しになりましたように、密接な関係を持っている二国もしくは数カ国において、共同で、どこかその一国が侵略されたという場合において、他の締約国もそこへ兵を出して、そうしてこれを防衛する、お互いに国家が侵略された場合において、締約国の他の国が出兵してこれを防ぐというような意味において、集団的自衛権といわれていることが普通でございます。これに対して個別的の自衛権というのは、その国が侵された場合に、その国の力でもってその国を守り、侵略を排撃する、こういうことであります。日本の五条の規定は、言うまでもなく、しばしば説明したように、日本の領土、領空、領海が侵された場合だけを対象としておるのであります。そういう場合において日本が自衛権を発動するということは、いわゆる個別的自衛権の発動と解釈して何ら差しつかえないことでありまして、それ以上に集団的な自衛権という観念が、いわゆる国外に出て、他の締約国の領土なり領海、領空が侵犯された場合に、共同してこれを排除するという義務も権利も、規定しておるものではございませんで、アメリカ側は、アメリカの領土、領空、領海でなしに、日本の領土が侵された場合に発動しなければならないということになるわけでありますから、集団的な自衛権で説明しなければなりませんけれども日本の方は個別的の自衛権で説明することで十分だと思います。
  193. 竹谷源太郎

    竹谷委員 要するに、第五条は、国連憲章を土台として、バンデンバーグ決議を調味料にしてできた料理なんです。だから、これをのけて今のようなへんちくりんな結論は、国民をごまかすだけなんです。そうわれわれは考えておる。だから、日本憲法に抵触するこのような新安保の行き方は考え直す、これを私たちは言っているわけでありますが、きょうは時間がないから、それぞれの状態について一々検討はできませんが、要するに、こうして検討して見て参りますと、第五条によって、今までにない防衛の義務を負担する結果になっておるとわれわれは解釈する、これは政府と違います。  第二には、米国の海外出動について、わが方はその協議にあずかるわけです。協議にあずかってこれを拒否する、こう言いますけれども、たとい協議を受けなくとも、また協議を受けて同意をしない、そういうようなことがありましても、そのことは、必ずしも国民にあるいは国際間に明瞭でない。従って、米軍の海外出動に対する共同謀議を日本がやって、そうしてアメリカ軍が出ていった、こういうことになると、日本は海外出動の共同謀議の共犯者みたいな形になる。これはそういうふうになる、まことに危険な条約である。また、第三条においては、武力増強の義務を法律上負うことになる。そうしてまた、この変転きわまりない世界情勢の中にあって、十カ年という、それに一年の予告期間がありまするから、十一カ年という確定期限を付した。こういう大きな義務のみを負担して、責任のみを負うて、得たるものは何かというと、当然在日米軍日本を守る、それを条約上明定したという、中身のない形式的な理由だけで、大きな義務、責任を負担するということは、何といっても、新安保条約は改善はない、大改悪である、こう私は思うのです。これは水かけ論になるかもしれませんが、どうしても納得できない。これはそれぞれ各条文の内容について、今後各委員から検討があると思いますので、これ以上論議をしても、水かけ論、平行線ということでありますから、他の質問に移りたい、こう思います。  そこで、海外出動について事前協議をする。この協議をするのは、米軍の海外出動に対する協議に当たる日本側の人はだれなのであるか、それをお尋ねしたい。
  194. 岸信介

    岸国務大臣 日本政府でございます。
  195. 竹谷源太郎

    竹谷委員 日本政府、そうしますと、総理大臣の命を受けた大臣なりが当たることになりますか。
  196. 岸信介

    岸国務大臣 さようでございます。
  197. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そこで、この事前協議にあたって、アメリカ軍の海外出動を認めるかどうか、同意するか拒否するか、こういう意思決定にあたって、総理大臣は独断で——少なくとも閣議はあるいは開くかもしれないが、何らかの国民の意思を問うような手段方法をとるのかどうか。政府の機関において、結局政府の独断ということになるが、それだけでやるのであるか、やれるのであるか、この点をお伺いいたします。
  198. 岸信介

    岸国務大臣 政府の責任においてやります。
  199. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうしますと、かりに同意をする、そうしてアメリカが出ていく、当然日本戦争に巻き込まれる、こういうことになりまして、第五条の場合と同じように、やはり政府の言うがごとく、憲法の規定で、自衛隊法によって国会承認を求めると同じような結果になるのです。同じに日本が戦禍に巻き込まれる結果になる。これは非常に重大なことなんです。これについては、政府の独断ではどうか。そこで、私は提言したいのだが、もはや条約はできたからこれは改めるわけには参りませんけれども、その場合、国会の意思を聞くことが一番いい。第五条では、国会承認を自衛隊法によって求める、こういうことでありますが、この場合、それに準ずるような手続が必要ではないか、どうお考えであるか、お尋ねしたい。
  200. 岸信介

    岸国務大臣 私は、この出動を認めたから直ちに戦争に巻き込まれるとは実は考えておりません。現に現行安保条約のもとにおいて、朝鮮に出動する日本のなにに対して、吉田・アチソン交換公文において、これを認めておりますけれども、これでもって日本が朝鮮動乱に引き込まれたというものでは現実にはないのであります。従って、これは政府が責任を持ってやるべきことであると、かように私は考えております。
  201. 竹谷源太郎

    竹谷委員 政府が責件を持つべきことは、これは当然の職務でございますが、その責任を持って決定をする、それについて、あるいは党首会談をやるなり、そのようにして、国民の代表である各政党の意見も聴取して、相談の上、その意見を聞き、そして判断をして、日本の安全、平和、幸福のために一番いい道をとるということが、政府の首班として最も大切なことではないかと私は思う。これは法律上の問題ではありませんが、この場合、そのようにして同意すべきやいなや、事前協議に対してはいかなる方針で対処すべきやいなや、少くとも三党首会談をやるというようなことをなすべきものではないかと思うが、いかがでありますか。
  202. 岸信介

    岸国務大臣 私は、こういう問題に関して、政府の責任のきわめて重大であることは十分に認めますが、その責任を果たすのには、内閣一体となって責任を負うようになっております。閣議においてこれを決定し、政府の首班である総理大臣もしくはこれにかわるべき人が、内閣を代表してこれに対する処置をきめれば、それで適当である、かように考えております。
  203. 竹谷源太郎

    竹谷委員 もとより、これは法律上の問題ではなくて、責任を持って政府の行なう、最も重要な国家行為である。この決定には、むろん全責任を政府が負うべきが当然ではありますが、これはしかし第五条と同じように、日本戦争に巻き込まれる危険性のある、非常に大きな問題であるので、この点については、国民の世論というものを聞く意味合いにおいて、私のような意見は十分尊重してもらいたい、こう思います。  時間も進みましたので、他へ移りたいと思いますが、昨年の十一月十日に、私が極東の地域の問題を聞いてから、がぜん混乱をいたしましたが、結局政府は、フィリピン、台湾、澎湖島、沖繩、韓国、日本、歯舞、色丹、南千島、これが条約の目的である極東である、こういう解釈であり、海外出動についてはこれに局限せられるものではないという統一解釈を、われわれにこの委員会で示されました。それでは、馬和島の北にガオトゥンタオ、高登島という島がある。これは一体金門、馬祖のように条約区域に入るのか入らないのか、お尋ねをいたします。
  204. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 何かお話にちょっと錯覚があるようですが、条約区域というものは、日本施政下にある地域だということでありまして、そういうことであります。
  205. 竹谷源太郎

    竹谷委員 失礼いたしました。極東です。
  206. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれは、一々の島を入るとか入らないとか言っておるのではございません。大体、先般統一解釈で申し上げたような範囲内において考えておるのでありまして、一々の島が入るとか入らないとかいうことは申し上げかねます。
  207. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そこで、金門、馬祖は、新条約にいう極東の中に入るのですか入らないのですか。これは小さい島なんですか。
  208. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 一々の島が入るとか入らないとかいうことは、問題でないのでありまして、そういうことを私は申し上げかねます。
  209. 竹谷源太郎

    竹谷委員 これはどういうことなんですか。金門、馬祖は入るということは明らかに、たびたび言っておる。今度は、そんな金門、馬祖なんかは入るか入らぬかわからぬと、また変わってきたのですか。それから、そういう小さい島などはどうだかわからぬ。歯舞、色丹などは、これはまた非常に小さい。これなどはどうだかわからぬというのですか。
  210. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 統一解釈で申し上げた通りでありまして、極東における何千という島をどうするというわけには参りません。
  211. 竹谷源太郎

    竹谷委員 しからば、重ねて質問しますが、二月六日の朝日新聞の報道によると、これは台北六日発UPI共同として、『国府国防部は六日「大陸沿岸の中国軍は同日午前国府軍支配下にある馬和島北方の高登島に対し四十分間にわたり砲撃を加え、砲弾百六十五発を撃ち込んだ」と発表した。中国軍の同島に対する砲撃は昨年九月いらい初めてである。』なおまた、朝日新聞昭和三十三年八月三十一日付によると、三十日午後八時十五分、中共軍金門島に対する砲撃開始、三十日夕刻高登島に十六発の砲弾を浴びせかけた、こういうのですね。だからこれは金門、馬祖と同じような状況にある。一体、これは極東に入るのか入らぬのか。外務大臣の今の話によると、金門、馬祖など入るか入らぬか、そんなことはどうでもいいということだが、入るとすでにたびたび明言されておる。しからば高登島はどうであるか、はっきりおっしゃっていただきたい。
  212. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 われわれは、すでに統一解釈ではっきり申し上げておるのでありまして、それ以上一々どこの島が入るとか入らないとかいうことを問題にするわけには参りません。
  213. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今度は君子豹変して答弁拒否。これは無言の行になっちゃって困るのですが、しかし、これははっきりさしておいてもいいんじゃないでしょうか。台湾なり、澎湖島なり、金門、馬祖が入るということになれば——これは入れないということになったらおかしいのです。今新聞の報道でも申し上げる通り、このように盛んに中国軍が砲撃を加える。これを……(発言する者あり)いや、この問題の発端はおれだから、明らかにしておいてもらいたい。私に中国、沿海州は入ると、外務大臣は去年の十一月十日にはっきり答えておる。それが入らないと言い、またほかについても、ゴム風船のように大きくなったり小さくなったり、極東が変転きわまりない。そこで、国後、択捉、これは入らないのか。これも島だからどっちでもかまわないのですか。
  214. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 これは総理が答弁されておる通りでございます。
  215. 竹谷源太郎

    竹谷委員 今ここに書面がないのですが、入るのですか、入らないのですか。国後、択捉は入るのか入らないのか、北千島は入るのか入らないのか。
  216. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 本条約におきます極東の地域というのは、先般確定解釈で申し上げた通りでございまして、そしてそれ以上われわれは申し添える必要はないと思っております。
  217. 竹谷源太郎

    竹谷委員 その確定解釈で答弁してもらいたい。どうも黙秘権を行使して、これは困る。政府答弁する義務があるんですよ。刑事被告人のように黙秘権を行使されちゃ困る。
  218. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 黙秘権を行使いたしません。政府委員をして読ませます。
  219. 高橋通敏

    高橋(通)政府委員 新条約条約区域は『日本国施政の下にある領域』と明確に定められている。他方同条約は、『極東における国際の平和及び安全』ということもいっている。一般的な用語としてつかわれる『極東』は、別に地理学上正確に画定されたものではない。しかし、日米両国が、条約にいうとおり、共通の関心をもっているのは、極東における国際の平和及び安全の維持ということである。この意味で実際問題として両国共通の関心の的となる極東の区域は、この条約に関する限り、在日米軍日本施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与しうる区域である。かかる区域は、大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれている。」大体こういうことでございます。
  220. 竹谷源太郎

    竹谷委員 そうすると、今の条約局長の読んだところでは、中華民国の支配下にあるところは入ると書いてある。従って、今の高登島は入るか入らないか。中華民国の支配下にあるなら、金門、馬祖が当然入ることになっておるわけですね。それが入るのか入らないのか、それを聞いている。
  221. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私ども、一々の島がどっちの支配下にあるかということを明定して参るわけにはいかないことは当然でございます。
  222. 竹谷源太郎

    竹谷委員 答えてもいいことまで拒否権を行使して困ります。黙秘権じゃない、これは拒否権だ。実質的黙秘権を行使して、まことに困る。時間を空費されて、私はこういう押し問答では困るので、そういう態度ではなしに、われわれの審議を拒否するようなそういう政府のあり方は、私は断固非難をしなければならぬ。明らかに今、中華民国の支配下にある土地は入る。だから今の高登島は入るのかどうか、それを聞いているのに、——入るとか入らぬとか、一口言えばいい。それをしも答弁を拒否するということは、これは委員長において政府を監督してもらいたい。強い警告を発してもらいたい。それでは次回にこれは答弁してもらいたい。  次に、有事駐留をわれわれは従来主張しておりますが、これについてお尋ねをいたしたい。現行条約、新条約、ともにアメリカ軍は常時駐留をいたしておる。これが日本人の対米感情を悪くする原因となっておる。砂川、ジラード事件、あるいは黒いジェット機問題等、幾多の忌まわしい事件を惹起して、これは日本国民の権利利益に大きい制約を加え、かてて加えて、これは反米思想をかもし出している。日米親善のためにも非常なマイナスになっておる。今日の戦術兵器の様相を見ますると、ミサイルや核兵器の発達によって、戦争の技術、様相は激変をいたしました。従って、これに伴いまして、戦略戦術も変わり、アメリカにとって重要な防衛基地でありました日本も、軍事的価値は激減をしてしまっておる。この間、コンロン報告の中では、常時日本駐留の再考をした方がよろしいという報告書を提出しております。それから、全米相互防衛条約、あるいはノルウエー、デンマーク等も、おのおのそれぞれ条約加盟国でありまするが、これは有事駐留制度をとっておる。相互防衛の機構を世界じゅうに見ますると、大体有事駐留が原則となっております。であるから、日本もこの有事駐留がいいのではないか。ふだん米軍は日本にいないということになりますならば、中国やソ連その他の国に対して、日本というものが脅威を与えない。従って非常に安全感を増す。極東のわが国に対する情勢は、非常に改善を見ることになることは明瞭であろうと思います。この意味で、日本の平和、安全に非常に寄与する。これは結局は日米両国の非常な利益になるのじゃないか、こうわれわれはかねてから主張し、また今後もその実現に努力したいと思うのでありまするが、アメリカ側といたしましては、極東に韓国があり、あるいは沖繩もあり、台湾あり、フィリピンあり、それぞれの基地がある。そして飛び道具の発達した今日、そんな近いところへ一一基地を持っている必要がなくなってきた。この現状にかんがみて、コンロン報告もあり、アメリカは戦略的にも考え直してもいい時期にきている。こういう状態でありますので、一体、今度のこの条約改定交渉にあたって、日本側から、有事駐留にしたらどうか、こういうようなことを提案してみたことがなかったかどうか、こういうことを第一点としてお伺いしたい。  こういう有事駐留にしますと、もう一つの非常ないい点は、アメリカ軍が日本にいない、こういうことになれば、他から米軍が攻撃を受けるということはなくなりますから、新条約の第五条によって、日本は、アメリカ在日米軍が攻撃を受けた場合でも、防衛に立ち上がる義務はなくなってしまう。第五条によって、日本アメリカの軍事基地がやられたときに必ずこっちが出動するという義務も、また消滅する。これはまことに一挙両得じゃないかと思うのです。日本の対外関係を非常に好転させる。日米国民感情の悪化を防ぐ。そうして日本はよそから憎まれない。そしてアメリカ軍がいないから、第五条によって日本が自衛隊を発動するような場合が起こってこない。いろいろと利益が多くて、大へんよろしいことだと思うが、そういうことについてどうお考えか。また、アメリカに対して、そういうふうにやってもらいたいという交渉をやったことがあるかどうか、お尋ねをいたしたい。
  223. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 世界の大勢が有事駐留だというお話がございましたけれども、NATOは常時駐留でございますし、また、共産圏の中でも、ワルソー条約は常時駐留でございます。そういうふうに常時駐留もございます。それぞれその国の置かれている立場、その他また、日本といたしましても、戦争の抑止力としてのこの条約でございますので、常時駐留が、われわれとしては適当だと思っておるわけでありまして、有事駐留というような交渉をいたしたことはございません。
  224. 竹谷源太郎

    竹谷委員 政府としては、有事駐留について大きな関心を払わないことは、はなはだ遺憾、残念であります。もうその時期がきたと私は考えている。そういう意味からも、この新安保条約を作ることは、しばらく待った方がいいんじゃないかと私は思う。  時間も進みましたので、もう一点私はお伺いをいたしまして、この質問を打ち切りたいと思いますが、その前に政府の方に申し上げておきたいことは、今、金門、馬祖等が中華民国の支配下にあって、これは極東という区域に入る。ところが、今私の聞いた高登島については、答えを拒みました。これはきょうは質問を保留して、なおお尋ねをいたしますから、準備をしておいていただきたいと思う。  それで、次の質問に入りますが、重要なことは、国民考えであります。安全保障条約改定に対しまして、国民はどんな考えを持っているか。民主国家の政治家として、われわれは最もこれを重視しなければならないと考えます。総理大臣は、この国民の世論というものを重視をいたしまして、国民意見を謙虚にこれを聞く御意思があるかどうか、まずお尋ねしたい。
  225. 岸信介

    岸国務大臣 民主政治の本質から申しまして、国民の民意というものは、十分これを尊重し、また、これに対して謙虚に耳を傾けることは当然でございます。
  226. 竹谷源太郎

    竹谷委員 一月に朝日新聞、二月に東京新聞が行なった世論調査の結果を見ますると、この一月の朝日新聞においては、安保改定賛成が二九%、それに対しまして反対するものが二五%というふうに、安保賛成の方が四%だけ多かったようでございます。このときには、賛成が反対を少し上回ったのでありますが、二月に行なわれた東京新聞の世論調査では、今度は逆に安保反対が賛成よりも多くなってきた、こういうふうな世論調査が出ております。また、京都市の末永世論調査所で、今月の上旬に調べたところによると、京都市民百二十万のうち、七十五力の有権者がありますが、この七十五万の有権者の千分の一である七百五十人について調査した結果によりますと、これはどうも知らないものが非常に多くて、安保条約がわかるというものが六〇%、わからないというものが四〇%、これはわからない人がどう考えるか、これから大いに勉強していただかなければなりませんが、このわかっておるというものの六〇%の賛否の内容を申し上げますと、そのうち、六%だけは賛否あまり明瞭でない回答であった。残りの九六%がどのように分かれているかというと、男女別に数字が出ていますが、それは省略して、賛成がわずかに二六%、反対が六八%というふうに、非常に大きく反対が出ております。むろん京都市ですから、都市であるので、農村も加えると、これと多少違った結果が出るかもしれませんが、このように、世論は、だんだんと時をふるに従って反対者が多くなっていっておる。このような状況でありますので、一方世界の雪解けが進行しておる傾向にあるときに、しばらくこの安保改定というものを中止しておいたらいいと考えるのであります。なお、この重要な国家の大事件の処理の衝に当たっておられる政府与党の中にも、どうも結束が十分でない。政府として政治上の御意見を強く進めますためには、まず党内の結束が大事である。自民党の中の大幹部のうちに、いろいろとこの新安保条約について疑念を抱き、あるいはその一部修正を考えるというような状況にあるときに、政府は何でもかんでも、このような新条約をしゃにむにやらなければならない、こういう理由はないと思うそこで、冒頭にお尋ねしましたところ、この安保改定交渉経過について御答弁になったところでは、日本側イニシアチブをとって、アメリカはむしろ受け身であった、こういう状況でございますので、政府一つアメリカ交渉して、しばらく見合わしてもらう、こういうふうになすったらいかがなものであるか、総理大臣の御意見を承りたい。
  227. 岸信介

    岸国務大臣 私は、国会の御審議を通じて、政府の所信を十分国民の前に明らかにし、また、この審議を通じて、いろいろ疑問とされている点を解明することによって、国民に正しく安保条約改定を理解してもらって、その支持によってこれを通過せしめることが最も望ましいということを、しばしば申し上げております。私の考えはそれで一貫しておるわけでありまして、十分な御審議を尽くして、政府も明瞭に所信を明らかにし、そして国民の理解を深めて、その支持のもとにこの承認を得るように、全力をあげて努力するつもりでございます。
  228. 竹谷源太郎

    竹谷委員 政府は何でもかんでもこの安保を通したい、こういう御一念であるようでありますが、ぜひやりたいと言われるのであれば——さっき申し上げるように、国民に反対の意見の方が強い、こういう状況であります。しかしこれは新聞の世論調査だから、必ずしも信頼できない、こう思われるならば、そして、どうしてもとりやめるというわけにいかないというならば、一つ国民の意思がどこにあるか、国会を解散して国民意見を聞くというのが、民主政治家として当然のことではないかと思う。二月の東京新聞の世論調査でも、安保条約審議は重大であるから、国会を解散して、新たに民意を問えという意見に賛成か反対かという質問を出したのに対しまして、解散をやるべきであるという意見が四九・一%、約五〇%でございます。解散の必要がないというものが、わずかにその半分以下の二四%、その他の四分の一ばかりはわからない、こういうのでございまして、国民の五〇%が解散を要求しておる、二五%が解散しなくてもいい、こういうのであります。そこで岸総理大臣は、国家の安危にかかわる安保問題につきまして、誠心誠意、国家国民のために対処する、そういう信念であることを、最初に私に約束されたのであります。総理大臣が奉仕しておる、一生懸命やるのは、国民のためである。御主人公は国民であります。この民意に問えということを世論調査の大多数が言っておる。こういうのでございますから、民主政治家としては、ぜひ解散をして、安保がいいか悪いか、国民の民意を問うのが、当然立憲政治下における政治家の行くべき方向ではないかと思うのであります豆、解散に関する御意見をお伺いしたいのであります。
  229. 岸信介

    岸国務大臣 解散につきましては、しばしばこの問題について解散をして民意を問うたらどうかという御意見が、御質問の形において、各所において私に対してなされております。私はこれに対しては常に一貫して、この問題について私は解散をする意思は持っておりませんと明瞭に申し上げておりますが、今日でもなおそういう考えでおります。
  230. 小澤佐重喜

    小澤委員長 次会は、来たる二十二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時九分散会