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竹谷委員 総理大臣のおっしゃるように、非常な財政的な電圧にもなっておるということは、これは
昭和三十三年の統計によりましても、
アメリカは
国民所得の約一〇%を軍備にさいているようであります。それからまた、ソビエトに至りましては二五%、
国民所得の四分の一を軍事費に投じておる。これは表面の軍事費あるいは
安全保障費でありまして、そのほかに、これにつながる費用の支出もばく大である。ところが、ソ連の
国民総研得は
アメリカの
国民総所得に対して四〇%台、しかるに二五%も出しておるので、絶対額においても、一応数字に現われたところでは、ソ連の軍事費が
アメリカの軍事費を上回っておる、こういう状態でございます。従って、
国民所得を
国民個人消費に充てる部分というのは非常に縮減される、だからソ連
国民の
生活程度が低い、これは何とか
一つ高めてもらいたい、それから、もう少し
国民に自由を与えてもらいたい、そういう傾向がなかなか強い。この間にあってフルシチョフ首相が、民生を安定する、
国民の気持に軍でも沿うようにして、そして政権を安定していくという立場からいいますれば、何ほどでも軍事費をさいて個人消費の方に振り向けるなり、あるいは
国民の
生活程度を高めるために生産を増大しなければなりません、それには、絶対的に開発投資が必要である、その方にたくさんの金を回さなければならぬ、こういうような、せっぱ詰まった
情勢から、ソ連としては、何とか
一つ軍備縮小をしてこの要求にこたえないと、
自分の政権もあぶない、こういうことになるのではないか。そういう切実な、軍縮以外に
戦争抑制、平和維持の方法がない、こういう
結論から出たのではないかと思う。この点は、
アメリカのような大きな経済を持っておる国としても非常に大きな負担となり、ひとり
自分が使うばかりでない、海外諸国にも軍事面、
政治面、経済面で非常な
協力をしなければならない、そのために、非常に裕福な
アメリカの経済においても貿易じりが、海外収支が赤字になっておる、こういう
情勢からも、
アメリカとしても何とかしなければならぬ、こういうことになってきた。だから、今の
世界の雪解けの傾向、キャンプ・デービッドの
話し合いによって
一つやっていこう、こういう精神というものは、決して
人類の理想である恒久平和に対する道義的な発言、
政治的な
意見発表というのではなくて、心底から
両国もそうしなければならない
情勢になってきたのじゃないか、こう私は思います。
アメリカ人といえ
ども、ソビエトの原子兵器の発達、ことに、これを運ぶミサイル、ロケットにおいては、ソビエトの方が
アメリカを数年抜いておると思う。こういう
情勢下でございまするから、
アメリカ人もやはりソ連人に劣らない、何とかしなければならぬという気持に
国民全部がなっておるように思います。
実は、先週の金曜日に、この衆議院の別館の五階にりっぱな
会議場があって、そこに設備のよい天然色発声映画の機械があります、あそこで、
世界芸術協会の主催で、フルシチョフが去年の夏
アメリカを訪問したときの天然色の記録映画が上映になりました。私もいたのでありますが、それを見ますると、アイゼンハワー夫妻はフルシチョフ夫妻を
——夫婦でフルシチョフは
アメリカを訪問したのでありまするが、アイゼンハワー夫妻は、手を取るようにして案内をして歩いて、まことになごやかであり、あたたかに迎えておるのでございます。そしてフルシチョフ首相は、
ワシントンもニューヨークも、あるいはシカゴやロスアンゼルスや、
方々を訪問いたしまして非常な歓迎を受けた。あるいは飛行機で、あるいは鉄道で行く場合もたくさんある。そうすると、飛行場にも、停車場にも、あるいは自動車で行く道筋にも、実に何万、何十万という
アメリカの群衆が集まって、その集まってきたのは、まあ、もの珍しいという点もありましょう、しかし、その表情から見て、非常な歓迎ぶりである。共産党の全
世界の大将がやってきた、珍しいから見ようというだけではない。その表情から見取れるところは、何とか彼と仲よくして、
世界を平和に持っていきたい、
戦争の惨禍が再びないようにしたい、こういう熱望がほうはいとして人々の目や顔に現われている。これは天然色発声映画でありますから、よくわかる。この雲霞のごとき
アメリカ国民の群衆のある様子をごらんになれば、これは心底から
——アイゼンハワーはどうあろうとも、一億六千万の
アメリカ国民あげて、何とかこの軍備競争をやめたい、
世界を平和に持っていきたい、この熱意に燃えておる。
アメリカ人は、
国内戦争以後、百年以上も
戦争の経験がない。従って、現代の
アメリカ人は、
戦争の惨禍というものを
自分の
国内では経験をいたしません。外国へ行って、優秀な兵器で外国をたたくような経験を持つ兵隊はたくさんおりますけれ
ども、
国内におって、実に惨たんたる目にあった経験はない。そのような
アメリカ人でさえも、何とか
一つソ連の
国民と平和に、仲よく暮らしていきたい、こういう願望を持っていることを、このフルシチョフ訪米映画で見取ることができたのでございます。
そこで、相当長い間の
アメリカ訪問の日程を終えて、フルシチョフ首相はモスクワの飛行場へ帰って行った。そこにはソ連の
国民が多数出迎えていた。これはまた深刻である。よくフルシチョフさん行ってきてくれた、それは、われわれの
戦争のない、また、
国民生活の豊かになるような、そういう
生活がかちとれるのではないか、これはまた、心底から
戦争の惨たんたる残虐を身をもって
国内で味わったソ連
国民としては真剣である。そして、フルシチョフ首相が全く対立する敵国に乗り込んで、
アメリカ人から大歓迎を受けた、そのフルシチョフの訪米の成果を、ほんとうにソ連
国民としては心から感謝する気持、それはまた、その映画によく現われておったのでございます。この
両国の指導者の
会談、それは何を
相談したかということは第二である。
アメリカ国民とソ連
国民がこの二人に期待をする、その米ソ両
国民だけではない、
世界の全
人類が期待する。それが成功裏にいったということに対して、だれも異存はない。これを見ましたときに、これは
政治家よりも米ソ両
国民が、いな、全
世界の
人類が、このデービッド
会談の結果が
世界じゅうに広がって、
世界じゅうが平和になるようにこいねがっているということを、私は、この一時間ばかりの映画で見取ることができた。副議長以下代議士諸公もたくさん行かれましたが、こういう点は、単なる雪解けの
話し合い、口先、八百長が出たんだというふうに片づけてはならない。六月には、アイゼンハワーが
日本を訪れるとともに、ソビエトを訪問されるようでございますが、これは、まあ、
国民全体の、また、全
人類の願望である。この雪解けの傾向というものを、どうも
岸総理大臣は軽視する傾向がある。そういう認識の上に立って新
安保条約を
考えるというところに、非常な誤謬が出てくるのではないか。世論調査でもわかるように、
国民の大多数が新
安保条約には反対というようなことが出ている。これはひとり
日本国民ばかりではない。
世界じゅうの人も、今この時期に
日本が
アメリカと軍事関係を強化する、このような動きをするということは、危険きわまりない、こういうふうに
考えておるのではないかと思う。これは真剣に
一つ総理大臣はお
考えを願いたい。この点、どうお
考えであるか。どうもその認識がわれわれと非常な食い違いがあるのではないか、こういうことをおそれるのでございます。