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1960-05-16 第34回国会 衆議院 内閣委員会 第41号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十六日(月曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 岡崎 英城君 理事 高橋 禎一君    理事 高橋  等君 理事 石山 權作君    理事 田万 廣文君       池田 清志君    生田 宏一君       今松 治郎君    加藤 高藏君       始関 伊平君    谷川 和穗君       津島 文治君    富田 健治君       橋本 正之君    八田 貞義君       濱野 清吾君    山口 好一君       足鹿  覺君    石川 次夫君       柏  正男君    兒玉 末男君       久保田 豊君    山中日露史君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         国 務 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         防衛政務次官  小幡 治和君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         防衛庁参事官         (教育局長)  小幡 久男君         防衛庁参事官         (人事局長)  山本 幸雄君         防衛庁参事官         (経理局長)  山下 武利君         防衛庁参事官         (装備局長)  塚本 敏夫君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 五月十六日  委員生田宏一君、小金義照君、始関伊平君、保  科善四郎君、飛鳥田一雄君、北山愛郎君及び中  原健次辞任につき、その補欠として加藤高藏  君、池田清志君、濱野清吾君、津島文治君、兒  玉末男君、足鹿覺君及び山中日露史君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員池田清志君、加藤高藏君、津島文治君、濱  野清吾君、足鹿覺君、兒玉末男君及び山中日露  史君辞任につき、その補欠として小金義照君、  生田宏一君、保科善四郎君、始関伊平君、石川  次夫君、飛鳥田一雄君及び中原健次君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員石川次夫辞任につき、その補欠として柳  田秀一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十四日  連合国占領軍等の行為による被害者等に対する  給付金の支給に関する法律案石橋政嗣君外八  名提出衆法第三九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三二号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  三三号)      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、前会に引き続き質疑を許します。柏正男君。
  3. 柏正男

    柏委員 安保条約改正につきまして、今までいろいろと自衛隊憲法第九条の問題についても論議をされて参りましたが、なお私はこれらの論議を通じてまだまだ考えねばならない点が幾多あるように考えます。そういう点から本日、上程されております防衛二法案と関連をして、第九条と防衛の問題についての質問を二、三させていただきたいと思います。  まず第一に、この防衛についての基本問題として、私は自衛隊存立憲法上の根拠というようなものにつきまして、現在確定されておる政府見解というようなものをお聞きいたしたいのでございます。私ども考えます場合に、憲法解釈につきましては、憲法制定当時の国会における論議解釈の第一の手がかりになるものだと思います。そういう論議が順々に政治的な情勢変化とともに非常に拡大解釈されてきておる。しかもその拡大解釈の限界が、私ども考えますよりはるかに越えてしまって、男を女であると言うところまでは行っていないかもしれませんが、少なくとも自衛権はある。しかしその自衛権行使しないことが憲法建前であるというような答弁も、憲法制定議会の当時にはあったのでございますが、それが現在においては非常に違った形になっております。この際、現在の時点における政府自衛隊存立根拠としての憲法上の解釈を承りたい。
  4. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 国が独立しております立場から見ますならば、個人に正当防衛権がありますように、国に自衛権利があるということは必然的なことだと考えております。そこで、憲法制定されましたが、国に自衛権があるということは憲法以前の問題だと言うと少し言い過ぎかもしれませんが、かりに憲法があってもなくても自衛権というものは独立国として存在しておるのだ、こういうふうな立場に立っておるわけであります。そこで憲法との関係でありますが、御承知のように憲法第九条に、日本においては陸海空軍というものは持たない、しかしそれは国際紛争を解決する手段としてであるという第二項の規定もあります。この点から見まして、第九条は自衛権を積極的に否定しているものではないという解釈に立っています。しからばこの自衛権自衛権があるということだけにとどめるべきものであるかというと、国家一つ生命体であると私は思います。その生命体である国家が、自衛権はあるのだけれども自衛権を具現するものを持たないでいいとは、これまた憲法第九条で規定して——持ってはいけないということではない。従って自衛権を持つならば、その自衛権行使するものを持つということ、これを具現するものを持つということは当然である。しかし憲法第九条等にもありますように、これは自衛範囲でなければならない。自衛範囲というものはどういうことかということでございますが、戦前、あるいはしばしば論議されているように、自衛の名において他国まで出ていって守らなければ自衛の目的を達し得ないという自衛権範囲というものではなくて、やはりみずからを守るための必要最小限度実力は持って差しつかえない、こういうふうに政府としても解釈しておるわけであります。しからば必要最小限度実力というものは何かといえば、これは外国等の、あるいは戦前のような戦力ではない、必要最小限度の国を守るときの実力、これは戦力と言っても差しつかえない、こういうふうに私は考えております。しかしその戦力は、先ほど申し上げましたように、そこの国まで行って自衛の名において日本を守るということでなくて、相手方の進撃に対して日本本土及び周辺において日本自衛権が侵害されることを防ぐ、こういう必要最小限度実力、これを戦力と言うならば戦力と言っても差しつかえない、こういうふうに解釈しているわけです。
  5. 柏正男

    柏委員 確かに今までの政府答弁赤城さんは要領よくおまとめになってお話しになったのでございますが、しかし私ども考えておりますこの自衛権というものは、こういう憲法以前の、国家そのものが持つ自衛権とは違って、やはり法的根拠を持つものでなければならないと考えます。そういうような意味合いにおきまして、正面から憲法第九条を解釈いたしました場合に、私は憲法第九条の中には必ずしも自衛権があるとは書いてないのだと思います。ただこの憲法第九条を読みますときの心持からいきますと、今の自衛権を否定するものではないという解釈はできるのだと思います。しかしながら今までとられて参りました解釈の中で、たとえば憲法第九条第一項において自衛権は認められるとしても、第二項における戦力を保持することができないという条項によって、その自衛権にはおのずからの制約があるのだということを言われておるのでございます。その点につきましては赤城長官も、侵害に対しこれを排除するに足る程度の実力自衛権がある以上は持ってよろしい、そういうように言っておられますが、しかしそこも、申せば憲法に対する忠実なる解釈ではなくして、事態の政治的な解釈であると私は考えるものでございます。ポツダム宣言を受諾いたしました日本国が、占領軍占領下にあってマッカーサー元帥をもって日本の主権を取り行なわれておったという状態のもとにでき上った憲法ではございますが、憲法条項の中の解釈につきましては、やはり憲法制定当時の解釈が一番有権的な解釈であろうと私は思います。しかしながら憲法はやはり国の情勢に応じてある程度の解釈がなされるのがどこの国でも通例でございます。その意味におきましては、私は日本憲法に対してもいろいろの解釈がなされてきたということも当然だと思います。ことにポツダム宣言においては、ポツダム宣言を受諾した日本が、九月二日の降伏文書に調印をしたことによって、日本に対して課せられたものは全くの無武装国家を作り上げていくというのがポツダム宣言趣旨であったと思いますから、その限度においてやはりその当時の解釈としては、自衛権はあっても交戦権もないし、それを行使する実力としての戦力を持つことができないという解釈が正当であった。しかしながら一九五一年、サンフランシスコ平和会議において、日本があの平和条約において日本があの平和条約を受諾しなければならなかった。ああいう平和条約を受諾せなければならなかったような情勢、この情勢はやはり占領に引き続いての日本国民の自由なる意思の表現という、その一つ前の状態において平和条約締結されなければならなかった。そういう状態においてサンフランシスコ条約締結された。それに従って日米間に安全保障条約を結んだというこの事実は、私どもは動かせなかったのだろうと思います。そうすると私どもサンフランシスコ条約そのものが、一体日本憲法との関係においてどんなものであっただろうか、その点はいろいろと考えさせられます。たとえばサンフランシスコ条約の第五条C項でございますが、ここに日本は個別的、集団的な固有の自衛権を持つことができるということが規定されてございます。そういうことがこの条約締結いたしましたことによって、一つのその条約を尊重しなければならない、憲法第九十八条第二項の規定に従って、このサンフランシスコ条約を尊重する義務を負う。またそれと同じく締結されました日米安全保障条約を尊重しなければならない義務を負ったというところに、私はそうした一つの機会に日本憲法解釈に対して変化が起こってきた。この変化は、その条約締結したことによって憲法第九条がある意味において事実的な規制を受けておる、そういう解釈がそこに成立するのではないだろうか。そうしますとこのサンフランシスコ条約安保条約に関しましては、第九条がその条約の面においては眠らされてしまったのだという解釈が成立するのではないだろうか。そうするとここに自衛隊存立憲法根拠というものが、サンフランシスコ条約日米安全保障条約憲法にかわるとは申せませんけれども憲法と同じくらいの力をもって日本自衛隊存立根拠となったのではないか、そういうような考え方ができるのでございますが、政府においてはサンフランシスコ条約締結日米安全保障条約締結、これによってこれと憲法第九条との関連についてはいかなる考えを持って処せられたのでございますか、現在においてはどういう考えを持っておるのでございますか、その点伺いたいと思います。
  6. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 憲法制定当時の解釈根拠として、憲法に従って行動するといいますか、やっていくのが至当ではないかということでございますが、私もその点はそう考えます。また憲法制定当時におきましても、自衛権の問題あるいは自衛戦力問題等につきまして意見を持っておった人々もあったわけであります。それと第二点におきましては、今もお話のように、事情が相当変わってきておるときには、必ずしもそのときの制定当時のことだけでは、解釈をし、それを行なっていくのに不十分ではないかというふうに私も今拝聴したのでありますが、私もその点はそういうふうに考えております。そこで憲法制定当時におきましても、事実の問題といたしましては武装を解除されまして、武装を解除されましたから、自衛権はあるといたしましても、それを行使する手段というものは持たない、当分持てないのだ、こういうような政治的な実際的な見方といいますか、考え方もあったと思います。ただ憲法前文にもありますように、その当時の事実は事実といたしまして、これは国際信義に依頼して日本人を守っていくのだ、こういう趣旨前文の方にもあると思います。そういうような憲法全体の考え方からいたしまして、また制定当時における日本の実情からいたしまして、憲法第九条の解釈等につきましても議論が相当あったと思います。そうして多くの人々はすべてもう自衛力も持たぬのだという議論が相当あったということも私は承知しておりますので、柏さんもこれをお認めのようでありますが、しからばそれが平和条約によってあるいは安全保障条約によってこの状態がだいぶ変わって、これが基礎となって自衛隊存立意義が再出発したのではないか、こういうような御質問だと思います。  私は憲法第九条が制定された当時の解釈というものは、相当これは重きを置かなければならぬと思いますと同時に、この憲法制定当時におきましても事実は事実といたしまして、やはり国際信義とか国際平和機構といいますか、そういうものによって日本の安全を守るというふうな考え方は当然その中にあったと思います。そういう考え方の現われが日本平和条約締結によりまして——今お話のように、マッカーサー司令官のもとあるいはニミッツ司令官のもとにあった占領状況を脱して、ともかくも日本独立を回復したというような立場に立ったのが平和条約であるといたしますならば、そのもとにおきまして日本が自主的に考えなければならぬ事態が出てきておる。国際信義のみに依頼して日本の平和と安全が果して守られるかどうか。かりに守られるといたしましても、日本みずからが自衛権利を持っておるのに、その自衛権利を具現するものを持って日本みずからを守るという意思の表明、意思の具現というものが、独立国といたしまして必要ではないか、こういうような考え方平和条約の前後を通じて出てきたと思います。そこで国際信義によって日本の平和と安全を守るという建前であると同時に、日本みずからが自衛権利を持っておるのを具現する必要がある。そのために自衛隊といたしましても、警察予備隊とか保安隊とかいうような形からは進んできましたけれども一つ自衛権を表現するものとして、それを具現するものとしての自衛隊というものに発展的に持っていくという必要を感じた。しからばそのことが日本憲法に違反するかしないか、これが事実の問題と憲法の問題との接触点といいますか、そこで考えなくてはならぬ問題だと思います。  そこで平和条約におきましても、個別的あるいは集団的自衛権日本にもあるのだ、あるいは安保条約におきましてもそういうふうに書かれております。これは終戦当時の国際的な関係からいいまするならば、もうほんとうに世界というものが平和に生きていけるのだということからやったでしょうが、その後それを具現するために国際連合というようなものによって世界の平和を確保する機関として働こう、こういう新しい国際的な制度が出てきたと思います。その制度の根本的なのは私が申し上げるのもどうかと思いますが、国連基本精神というものは侵略戦争放棄武力の不行使が貫いた精神だと思います。ただ国際的にそれが必ずしも行なわれるか行なわれないかという疑問がありますので、また国際連合の力というものがそれだけの力を国際的に持っておりませんので、国連憲章の五十一条かになお個別的自衛権とかあるいは集団的自衛権によって地域的な取りきめをして、そうしてその行使をすることは妨げない。妨げないが、しかし安保理事会等に、そういう事態がありますならば、直ちに諮って、そして本来の武力の不行使侵略戦争放棄という線にいち早く戻したい、こういうのが私は国際連合考え方だと思います。そういうような国際的な事情も生じ、あるいは日本といたしましても独立の回復をしたということでありますので、個別的自衛権があるのは当然であります。でありますから、それを具現する独立国としての方法をとろうということであります。しからば集団的自衛権ということはどうかということでありますが、私はやはり国際的に日本といえども集団的自衛権を持つ。集団的自衛権定義等につきましてもこれはいろいろあります。その定義によりまして見解もある程度違うかもしれませんが、ともかくも国際的に集団的自衛権を持つ。しかし日本集団的自衛権を持つといっても、集団的自衛権の本来の行使というものはできないのが、憲法第九条の規定だと思います。集団的自衛権からいたしまするならば、これは相手方が侵害された、たとえばアメリカが侵害されたというときに、安保条約によって日本集団的自衛権行使をしてアメリカ本土へ行って、そうしてこれを守るというような集団的自衛権、かりに考えますならば、日本はそういうものは持っておらないわけであります。でありますので、国際的に集団的自衛権というものは持っておるが、その集団的自衛権というものは、日本憲法の第九条において非常に制限されておる、こういうような形によって日本集団的自衛権を持っておる、こういうふうに考えておるわけであります。でありますので、自衛隊ができ、自衛権行使を具現するものとして再発足したということは、すなわち日本独立を回復した、そして独立国としてその権利を具現するものをここに持つということであり、同時にこれは平和条約あるいは安保条約等によりまして個別的、集団的自衛権を持つということでありましても、その点は憲法第九条によって制限された集団的自衛権である、こういうふうに憲法との関連において見るのが至当であろう、こういうふうに私は考えております。
  7. 柏正男

    柏委員 ただいまの赤城長官の御説明の最後の方の、集団的自衛権は、日本憲法においては制限を受けておるのだというお話は、私は大へんいい御解釈だと思って同感でございます。現在の安保条約の姿におきましては、私どもは今赤城長官の言われました通り集団的自衛権規定されていない、そういうふうに解釈いたしておりますが、その点は間違いございませんでしょうか。
  8. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 集団的自衛権というものは、国際的に日本も持っておるという事実は全くその通りだと思うのです。ただ集団的自衛権ということで、国際的に認めておりまする集団的自衛権をそのまま行使できるか、こういうことでありますると、私は日本憲法上の制限国内法制限がありますから、それは全部において行使するということは憲法上間違っておる、こういうふうに考えております。
  9. 柏正男

    柏委員 ただいまお話のありました中で私の御答弁を願いたかった点は、現行安保条約の中で集団的自衛権日本行使しなくてもいいことになっておるように解釈いたしますが、その点はいかがでございましょうか。
  10. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現在の安保条約上におきまして、集団的自衛権ということが前文等に書かれておりますが、そういう点におきまして国際的に私は持っておると思います。しかし先ほどからも申し上げましたように、これを行使するということであれば、海外派兵とかあるいは相手国、そのほかの国まで出ていくということでありまするから、これは現在の安保条約におきまして、集団的自衛権で全面的に行使ができるということはないと思います。しかしこれを制限的といいますか、今の日本国内における場合、今度の安保条約の問題からいいまするならば、国内においてこれは集団的自衛権を、憲法範囲内において制限された範囲内の行使というものは、その面からできないということはないと思います。ただ政府解釈といたしましては、そういうまぎらわしい集団的自衛権というものを持ち出して、しかもその集団的自衛権というものが国内法によって制限されておって、憲法九条等によって制限されておるから、そういう集団的自衛権という観念をもって解釈するというようなことはまぎらわしいことで、政府といたしましては個別的自衛権の発動だ、こういうふうに解釈して御説明を申し上げておるわけでありますが、私は制限されておることがはっきりしていることでありまするならば、これは集団的自衛権解釈もできると思いますが、しかし政府といたしましては、御承知のように集団的自衛権を援用してこれを解する必要はない、こういうのが政府見解であります。
  11. 柏正男

    柏委員 そこで問題になると思いますのは、では現行安保条約の中には集団的自衛権というものはない、新安保条約の中には国内的という一つ制限を持った集団的自衛権行使というものができるというのが解釈なのでございますか。そこら辺のところ、実ははっきり私どもは知りたい点でございます。
  12. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現在の安保条約におきましても個別的自衛権集団的自衛権とは認められておるわけであります。しかしそれを援用する必要はないわけであります。今の安保条約建前からいいますならば、日本アメリカが守ってやる、こういう一方的な考え方で、相互的に今度の改正案のように日本を守る義務があるのだ、またそこに武力行使が行なわれた場合には共同措置をとる、こういう五条のような規定は今の安保条約にありません。ありませんから、今の安保条約にも集団的自衛権はありますけれども、これを行使するような必要も、あるいはこれが動くような場合はないというふうに考えております。しからば今度の新しい改定案においてはどうか、こういうことのお尋ねだと思います。これにつきましては今申し上げましたように、新しい改定案におきましては、第五条におきまして共同措置をとるということで、日本の領域内に武力行動が起こされた場合には、これに対して共同措置をとるということから、アメリカ日本をそういう場合には守る義務が生じてきておるわけであります。それから共同措置をとりますから、第六条によって日本国内に駐留しているところのアメリカ部隊等攻撃があった場合には、これは共同措置を第五条でとることになりますから、日本自衛隊としてその措置に参加といいますか、措置をとらなくてはならぬわけであります。その場合に、これは個別的自衛権発現であるか、あるいは集団的自衛権発現であるか、こういうことがしばしば今まで論議されておったところであります。私はその場合に日本国内法制限のもとに、外まで出ていくとかなんとかいうことでないということがはっきりするならば、またはっきり納得してもらえるならば、私は集団的自衛権説明してもよかろうと思います。しかし非常にまぎらわしいということで、政府といたしましては、再々総理あるいは外務大臣から答弁しておりますように、アメリカの基地その他に攻撃があった場合には、これは日本領土内におけるのでありますから、日本領土、領海、領空の侵犯なくしては行なわれないし、そういう点から見て、個別的自衛権の発露といいますか、その行使ということで、その点は十分説明ができる、こういうような立場から、政府としてそういう説明をいたしておるわけでございます。
  13. 柏正男

    柏委員 なかなか巧妙に赤城長官説明をなさいますので、その範囲においては、私は説明がもっとものように聞こえるのでございますが、しかしながら現行安保条約の第一条の中に、アメリカの軍隊を日本国及びその付近に駐留をさせるというのがございます。この日本国及びその付近というその付近は、一体どういうように政府は今まで解釈をされてきたのでございますか、その範囲を明らかにしていただきたい。
  14. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは現行安保条約そのもの建前が、先ほど申し上げましたように、日本には自衛権はあるのだけれども自衛力行使する方法手段を持っていない、だからおれの方で守ってやるのだ、帰ろうが帰るまいが、おれの方で守ってやるのだ、こういう一方的な、押しつけという人もありますが、一方的な、何といいますか、保護というような形もあって、私はそれがいわゆる不平等の一つだと思うのであります。そういう点から規定されておりますので、日本及び日本の近くに配置する権利日本は許す、こういうふうに書いてあると思います。その近辺というのは、やはり日本領土及び日本の公海の近くという解釈であろうと思います。その辺が非常にあいまいな表現でありますが、そういうような現行安保条約建前から見まして、そう解釈をするよりほかないのではないかと思います。
  15. 柏正男

    柏委員 ただいまの長官の御答弁は、私はもう少し御用意をなさって答弁を願えばよかったと思う。この現在の安保条約の起案といいますか、折衝にあたって最もその中心になった方だと考えられる前の条約局長、西村条約局長の書かれました安全保障条約論ですか、それを見ますと、日本及びその付近という付近という中には、西南諸島並びに東南諸島、要するに沖繩と小笠原を意味しておるのだということがはっきりと書いてございます。それが立案の当時の、交渉の当時の、日本が了承した当時の日本及びその付近という考えであると私は思いますが、その点については、何か政府はその後そういうお考えというものを変えられたのでございましょうか。私はそういうのを実は速記録では見ておりませんものですから、何とも言えませんが、書かれたものを見ますと、西村条約局長はそういうものであるということを書いておりますが、いかがでございますか。
  16. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私も西村前の条約局長のものを読みましたが、今正確には覚えてはいませんが、私はそれは少しおかしいのではないかと思います。とにかく沖繩につきましては、これはポツダム宣言受諾その他その前の条約等によりまして、あそこは信託統治にするということで、今の何といいますか、アメリカを主としたものによって信託統治をするということから、日本において施政権を今潜在的に失っておるわけであります。そういう形でありますから、私はこの点から考えまして、この防衛のための「日本国内及びその附近」というのに沖繩を入れるという意味ではない、私はこういうふうに解釈します。艦隊等が他国の近くの公海を遊よくしているといいますか、そういうことは非常に刺激して、国際礼儀にも反することでありますので、私はこの「日本国内及びその付近」というのは、やはり公海の付近というふうに解釈するのが至当である、こういうふうに考えております。
  17. 柏正男

    柏委員 長官がそういうふうにお考えになっておるということは、政府解釈考えて間違いございませんでしょうか。しかし政府解釈というものは、一体どこでそれを成立されたものか、閣議で決定されたか、どこで決定されたか。あるいは国会でそういうことに対して同意を与えられたか、そういうことについても実はお聞きをしたいと思います。なお現在の行政協定の第二十四条、これには「日本区域において」ということが書いてございまして、この日本区域というのは日本国及びその付近を含んだものではないかと考えます。その点について政府はどういう考えでおられたのでございますか。
  18. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日本国内及びその周辺というものの解釈政府の統一解釈としたのか、あるいはいつそういうことを協議か何かしたか、あるいは発表したかということでありますが、これはこの前の現在の安保条約の質疑応答、論議の過程におきまして、私が今申し上げたように終局的には政府として解釈しておる、こういうふうに私は承知しておるわけであります。それから行政協定第二十四条における「日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り、」云々、これはやはり今の安保条約日本国及びその周辺、こういうことをさしておる、こういうふうに私は解釈しておるのであります。
  19. 柏正男

    柏委員 そうなりますと、なおさら日本国及びその付近ですか、周辺ですか、これの解釈について私は政府の正しい見解を求めなければならないと考えるのでございます。今までのお話による日本国及びその周辺といいますと非常にばく然としたものであって、アメリカがなぜ日本国及びその周辺、その付近ということを書かねばならなかったかということに対する確たる根拠が、私はあまりにもなさ過ぎると思います。その点についての政府答弁に対して、私どもははっきりしたものをもっと確立さしていただきたいということを赤城長官に通じて申し上げると同時に、かりに——かりにという言葉は変でございますが、周辺という言葉は、日本区域というのは日本国とそれの付近、進駐軍のおる付近でございますよ。その付近というのはアメリカの軍隊がおるということが条件でございますよ。安全保障条約の第一条によると、アメリカ軍は日本国内及びその周辺におるので、アメリカ軍がおらない周辺というものは考えられないわけです。そうでございますが、その点はいかが御解釈でございますか。
  20. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これはアメリカ軍のおる付近ということではなくて、やはりアメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を日本国内及びその付近に配備する権利、その空軍を配備しますね。配備する場合に付近というのは日本の国の付近ということで、向こうが駐留している場所の付近、こういうことの解釈では私はないと思います。
  21. 柏正男

    柏委員 今の答弁はちょっとおかしいと思います。私の聞いているのは、第一条にアメリカ国の陸軍、空軍、海軍を日本国内に駐留させる、それと及びその付近に配備する。結局これは及びとなっておって日本国内、いま一つそれに単なる空なるものではなくして、アメリカ軍の進駐することのできる付近というものは、付近という言葉の中にはアメリカ軍が駐留できるという条件を含んだものであると思いますが、その点は今の御答弁では私満足できないと思います。
  22. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御承知のように日本が主権を持ってない領空、領海等を離れて配備する権利を許与するということはでき得ないことだと思います。でありますのでこれは日本国及びその付近、その付近というものは近くの公海等を、たとえば第七艦隊等が例になりましょうが、遊よくすることは国際礼儀に反するので、その付近、こういうふうにつけ加えたので、私は法律的にいっても、日本領土、領海外に配備する権利を許与するということはできないことであるので、私は先ほど申し上げましたように解するのが正しい、こう思っております。
  23. 柏正男

    柏委員 これは赤城長官もずいぶん意識的にそういう御答弁をなさっておると思いますが、ともかくもし長官の言われる通りでございますならば、この安保条約の中に二カ所出ておる。日本国内及びその付近に維持するという言葉が今の前文と第一条との二カ所に出ておりますが、そういうことを使う必要がなかっただろうと思います。長官の言われる通りであれば日本国にそれを置く、そういうことで、日本国内というだけで十分に間に合ったはずでございます。それになお及びその付近と書いておりますことは、この条約締結するにあたり最も中心になった西村条約局長の書きました安全保障条約論の中にあります西南諸島及び東南諸島というものを意味しておるのであるという、そのことに対して相当な根拠を私は感ずるのでございます。しかしもうこの問題につきましては一つもっと政府において十分なる検討をされて、次の機会にでもこれに対する統一解釈といいますか、正確な解釈をお願いしたいと思います。それに関連する第二十四条でございますが、日本区域、今の日本国内及びその付近において敵対行為または敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本区域の防衛のために両国政府が必要な共同措置をとる。そうして安保条約第一条の目的を遂行するために協議しなければならない。この必要な措置の内容でございますが、この必要な措置というのは、緊急に対して日本自衛軍と在日米軍とが何らかの共同措置をするということを意味しておるのではないかと思いますが、その点はいかがでございますか。
  24. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 この点は現在御審議を願っておりまする安保条約の五条とは違うと思います。今の五条では共同措置をとる、こうはっきりしておって、共同措置をとるのにアメリカ義務もあるわけでございます。この行政協定二十四条の急迫した脅威が生じたとか、敵対行為が生じたとかいう場合には直ちに協議をしなければならない。これは協議によってどういうことをするかというところまではきめてないと思います。でありまするから、これは今の安保条約に当てはめれば第四条のようなものだろうと思います。しかし今度の改正案におきましては四条の協議もありますが、このほかに五条に共同措置をとる、こうはっきりしたものがありますが、この行政協定二十四条では協議をするという段階だけでとまっておるわけでありますから、それだけだと思います。
  25. 柏正男

    柏委員 現在政府がそういうようにお考えになっていることは、多分私もそうだろうと思います。政府の、今の赤城長官の御答弁は、現在の段階における現行安保条約に対する日本政府解釈のその通りだと考えます。しかしながら現在の安保条約締結するに際し、日本政府の意向としては個別的、集団的自衛権を持ちたいのだ。日本自衛隊は、その当時はまだ警察予備隊ですか、予備隊しかなかった。十月から保安隊になったのですから、この条約を結んだ当時には、サンフランシスコ条約を結び、安全保障条約を結んだ当時には、日本には七万五千の警察予備隊しかなかった当時だと思いますが、しかしそれでもなお時の総理大臣の吉田茂氏は、日本アメリカと個別的、集団的自衛権を結びたいのだ、自衛権を持つような安保条約を結びたいということを非常に強調して、アメリカに再三この問題について折衝したということが、西村条約局長の書かれたものの中に何カ所かそういうことが書かれてあるのでございますが、それを見まして私ども日本としては集団自衛権というものを持ちたかった。しかしアメリカはバンデンバーグ決議に縛られておって、日本のような自分がみずからを守る力を持たない、警察予備隊ではこれは軍隊ではないという解釈でございましょう。そういう点からしてこの条約を結びます際には、日本の要求をけりまして、お前のところは集団安全保障条約を結ぶ力がないのだから、その点についてはその要求を聞くことができないということを強く向こうで主張をして、とうとうそのために安全保障条約の中には入れることができなかった。しかしながら西村条約局長のその当時の苦心談を見ますと、行政協定の第二十四条において辛うじて集団安全保障条約に似た一つの形式のものを、少なくともここにおいては日本区域において武力の脅威を生じたときには、アメリカ日本政府と一緒になってこれを守らなければならないという義務を負わせた、これが行政協定の第二十四条であるということを書かれております。私はそういうところに何らかの、今赤城さんの言われたような解釈をするのは、日本として今の段階においてはそうであろうと思いますが、この条約を作るときには、この二十四条というのが、ただ一つアメリカ側をして日本を守らしめる義務を負わせた、非常に意味のある条項であると思います。またこの条項を通じて、共同措置を協議するということ、その中には実際に脅威が生じた場合には、日本政府としては、日米共同作戦を予定したのではなかっただろうかということを私ども考えざるを得ないのでございます。そうしますと、現在の防衛庁設置法あるいは自衛隊法の中には、この二十四条によって生ずるであろうというような事態に対しては何一つ用意がされていない。また国防会議できめられました日本の国防の基本的方策の中にも、日米安全保障条約による共同体制というような言葉によって日本の国防をやろうというようなことは書いてございましても、その事態の中には日米共同作戦というようなことは予想されていないのだ。今赤城長官の言われましたことが、一体として日本の今の法制の中に貫かれておる。日本の現段階においてはアメリカとの共同作戦ということは考えていないのだというように私どもは了承いたしたいのでございますが、赤城長官いかがでございますか。
  26. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 この安保条約制定当時のいきさつはお話通りだと思います。御承知のように安保条約前文にも、平和条約の効力発生のときにおいて日本国は固有の自衛権行使する有効な手段を持たない、こういう前提であります。こういう前提でありますから、この集団的自衛権行使ということが基礎になっておる、バンデンバーグ決議、そのほかにもバンデンバーグ決議の趣旨がありますが、そういうものを基礎としての対等といいますか、そういう条約日本とは結ぶことができないような事情にあったことはお話通りだと思います。そこで日本に対して、こういう有効な手段を持っておらぬが、国際的に見ても日本が紛乱のちまたになるといいますか、そういうことは忍びがたいというので、自分の方で駐留して、平和と安全を守るために働こう、こういうのが今の建前だと思います。しかし日本に駐留いたしまして、勝手にそういう場合に対処するということは、アメリカとしても主権を侵するような点もありますので、そこで行政協定は、国会の審議を経ませんが、二十四条において、そういう事態が生じたときには協議する。協議するということは協議の以上に出ない、協議の上においてどういうことをするかということは、その後の段階だ、上に出ないというよりもその後の段階でこの二十四条は協議の線にとまっておる、こういうふうに先ほど申し上げた通りであります。そこでそれならば、こう点から共同作戦とか、そういうことも考えられなければならないのに、そういうことについてどういうふうに措置するのか、しておったのか、こういうことかと思います。二十四条の協議の上からどういうふうにその後の発展をするか、これはやはり日本国内法のことであると思います。憲法及び国内法に従って自衛隊としては行動するというので、アメリカとの共同作戦ということに制約されて行動するというようなことではないと私は思います。そういう点におきまして、たとえば自衛隊法におきましても、国防会議規定を設けて、出動の場合には国防会議に諮らなければならぬとか、あるいは自衛隊法の七十六条によって出動する場合には、総理大臣が国会の承認を求めなければならぬし、緊急の場合には事後に求めるというような国内法規定をもって、そういう場合の制約といいますか、方法規定した、こういうふうに私は見ております。
  27. 柏正男

    柏委員 今の二十四条については、ただ協議をしなければならないという段階までしか考えていないということでございますが、この協議というものは安全保障条約第一条の目的を遂行するために必要な共同措置ということを規定しておるわけです。そうしますと、協議それ自体の持つ意味合い、その協議によってどういうことをしなければならないかということもここには規定されておるわけです。そうすると、この二十四条に対処するだけの一応の体制が日本自衛隊——この場合は自衛隊ではございません。日本政府とございますから、日本政府において、それだけの心がまえといいますか、日米共同作戦をしなければならない事態というものに対する一つの準備がなければならないと思います。もし日米共同作戦をすることが現在の憲法第九条に違反する行為であるならば、その協議によって日米共同作戦はできないならできない、あるいはどの範囲までは憲法に許されておるのだから、どの範囲共同作戦をすることはできるというようなことを、あらかじめ政府において準備をされておるべきでなければならないと私は思いますが、今のお話では、政府において準備がないのじゃないかという感じがしますが、一体それはどういうようになっておるのでございますか。
  28. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 共同措置をとるということにつきましては、そういう事態が生じた場合に、いろいろ国内法規定があるわけであります。たとえば海外派兵等をしないとか、そういう大きな制約があるわけであります。そういう憲法上あるいは国内法規定された範囲内におきまして、共同措置をするにつきましては、現在におきましても、常時アメリカ軍当局との間に連絡はとっています。何か常時連絡といいますか、そういうことはとっておることはその通りでございます。
  29. 柏正男

    柏委員 ただいまのお話で、アメリカ軍と日本自衛隊との間には常時連絡をとっておられる。そうしますと、そういう連絡をとっておるところは、日本政府のどの機関で、法的にどういう形で、そういう連絡をとっておりますか、それをちょっと承っておきたいと思います。
  30. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 事実上の連絡機関でございまして、それぞれの相対応する機関と日米相互間でやっておるわけであります。たとえば府中に在日米軍司令部というのがございますが、そことはわれわれの方の統合幕僚会議の事務局、それから在日米陸軍司令部とは陸上幕僚監部、在日米海軍司令部とは海上幕僚監部、在日米空軍司令部とは航空幕僚監部がそれぞれ対応して連絡をとっておるわけであります。
  31. 柏正男

    柏委員 現実にそうやって連絡をとっておられるということはわかりますが、そういう連絡をとって業務をなさいますのには、何らかの法的根拠を持っておられると思いますが、どこにそういう法的根拠を持っておられるのでございますか。
  32. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 先ほどお述べになりました行政協定の第二十四条でございますが、これは日本周辺に何か事件が起こりました場合に協議をするということになっておるわけでありまして、平生はこの規定は発動いたしません。しかしそういった事態になりますと、二十四条で協議をしなければならないわけでございますから、その意味におきまして平時から事実上の連絡をしておる、こういうことでございます。
  33. 柏正男

    柏委員 その点はもうほんとうに、日本自衛隊と在日アメリカ軍との間の連絡をとる法的根拠は、この二十四条以外にないということは、私も見ましてこれ以外にないと思います。しかし今ございました通りこの二十四条には、「脅威が生じた場合」ということがございますために、今かりに常時やっておられるといたしましても、そのことは実際には法的根拠にはならないのだとやはり考えなければならぬ。この点については日本の国防会議において、国の防衛の基本的方針を作る際に、二十四条に対応しての何らかの措置をお考えになるべきだった。そういう法的根拠のないことを、自衛隊の個個の部門の人々に法外の行為をさせるということは、私はやはり日本憲法を尊重するという立場からいっても、よろしくないことだと思います。まあその点については、今度は新しい安保条約ができるのでありますが、この安保条約において、二十四条に基づいて今日米間で常時やっておられます行為というものが、第四条によって法制化されて、それに基づいた行為となるわけでございましょう。そういう意味においては今度の方が、自衛隊の皆さんにとっては仕事がやりやすくなるわけでございますが、しかしながら私どもが今一応問題にしなければならないのは、現在の安保条約でございます。これに従っての日米共同の行為というものは、実は表面的には法的にはないというのが実態であろうと思います。そういう点を考えますと、この現行日米安全保障条約は、日本自衛隊と在日アメリカ軍との間には、何らの関係がないということが、規定せられておるものと私は解すべきだと思いますが、その点いかがでございますか。
  34. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 加藤防衛局長から御説明いたしましたように、行政協定第二十四条の前提としての協議ということは事実やっておりますし、私はそれで法的根拠はもうほかにはないのだということには相ならぬと思います。安全保障条約全体の趣旨あるいは行政協定の二十四条の趣旨から、これは協議をしていくことが、日本が基地を供与し、アメリカ日本を守ってくれるために、一方的でありますが駐とんするというか、駐留するというような趣旨から見ましても、そうしてまた問題は日本の平和と安全のためであります。そういう趣旨から発しまして、これは協議をするということは、法的根拠がないからいけないということでなくて、これは協議をするのがこの趣旨からいって当然である。これに今度の第四条のようなはっきりした根拠はないけれども、これは趣旨から見て当然そういうことはすべきであり、して悪いということはないというふうに考えております。
  35. 柏正男

    柏委員 今の赤城長官の言われます通り、して悪いことではないので、これはその意味において、しておられるということではございますが、しかし現在の安保条約建前からしますと、日本自衛隊と在日米軍との間には、何らの関連を持っていないというのが実態であろうと思います。ということは、日本国自衛というものが、この安全保障条約にきちんと確定せられておる点は、日本国は自分を守る自衛の能力を持っていないのだ、それだからアメリカ軍が駐留して日本の安全と平和を維持するのだというようになっておる。ということは、たとい現在日本自衛隊が陸上十八万、全部で二十五、六万になりましょうとも、条約の面におきましては、いまだ日本自衛隊というものは日本を守る力のないものであるというのが、日本自衛隊の置かれておる、条約上に現わされている立場だと思います。その意味において日本の固有の自衛権はだれがやっておるかといいますと、それはアメリカ軍がやっておるのだというのが、この条約に現われた姿であると思います。ということをまた裏に返しますと、この条約が変更になっていくときは、無力であった日本自衛隊が、自衛組織が充実されて、日本が完全なる自衛戦力を持ったとき、このときに切りかえられていくのだ。まさに第四条でございますか、いろいろ規定はございますが、その中の「平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じた」と日本が認めたとき、その安全保障の措置が効力を生じたときというその場合に、日本自衛隊が完全な自衛戦力を持ったときということになるのではないかと私は思います。そうしますと、現在の段階においては、日本自衛隊は完全な自衛戦力を持っていない。それなるがゆえに、アメリカ軍が日本自衛を担当する。日本の固有の自衛権をかわって行使するのだということになりますと、たといこれがアメリカ軍の戦力でございましても、条約面においては日本戦力ということと同じであるということになると思います。もしそうでないとするなら、かりに外国のものであれば、これは日本戦力以外ということになると、日本がどこかよその第三国から軍隊を借りてきて、日本の国に置いておく。それは日本戦力ではないと言って抗弁ができるかといえば、必ずしもそういうことは言えないだろうと思います。そうしてみると日本自衛の実態は、現在においては駐日米軍によって自衛権行使されているのだという立場に立ってアメリカ軍を考えていく。またそれの裏を返しての、今の日本自衛隊が、アメリカ軍との集団自衛権を、アメリカ軍とともに行使できるようになるときには、日本も完全なる自衛戦力を持ったもの、少なくとも最小限度自衛戦力を持ったものになったのだ、そう解釈しなければならないと思いますが、その点いかがでございますか。
  36. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 それは少し私は今のお話が違うと思うのですが、それは安保条約制定当時は今のようなお話だと思います。その制定当時の前文にありますように、「日本国は、武装を解除されているので、平和条約の効力発生の時において固有の自衛権行使する有効な手段をもたない。」そのときは確かに自衛隊というものがなくて、そういう日本を守る自衛権行使する手段を持っていなかったわけです。またその安保条約前文にありますように、「日本国が、攻撃的な脅威となり又は国際連合憲章の目的及び原則に従って平和と安全を増進すること以外に用いられうべき軍備をもつことを常に避けつつ、直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」こういう期待が安全保障条約前文にあるわけであります。安全保障条約を結んだときには、自衛権行使する手段を持つ、しかしこの漸増するところのものを期待する、その期待からではありませんが、そういうことが書いてありますが、日本自体といたしましても安全保障条約を結び、あるいは日本の本来の自衛権行使する手段といたしましても、自衛隊というものは発足してそういう手段を持つようになったわけであります。でありますので、日本といたしまして日本の平和と安全を守るのは、これはもちろんアメリカの駐留軍でなくして、日本自衛隊日本の平和と安全、自衛隊法規定してありますように直接及び間接の侵略に対してこれに対応していく、こういう責任を持って生まれてきたのでありまするし、また国の成り立ちといいますか、そういうことから見ましても、日本の国の平和と安全を守るのは、日本の国がみずからなすべきことだ。それに対しましてアメリカといたしましては、集団的自衛権行使といたしまして、日本自衛隊が平和と安全を守ることに対して協力する、こういう建前が現在の安保条約におきましても考えられることだ、こういうふうに思っております。
  37. 柏正男

    柏委員 ほかの委員の方の質問の時間にだんだん食い込んで参りますので、あと一点だけお尋ねして、次の機会にまた重ねて質問を続けたいと思います。  それにつきましてもただいまお話のありました現在の安保条約前文の中における漸増の義務、それからアメリカのバンデンバーグ決議における自助、自衛という条件、そういうものをにらみ合わせてみまして、今ここに新しい安保条約を結ぼうとするこの現段階における日本自衛隊は、現在の安保条約における漸増の期待に沿い、なおまたバンデンバーグ決議による自助並びにそういう条件を満たしたという段階に達して、自衛戦力としてはこれでよろしいと考えておられるものかどうか。この点につきましても、実は新安保条約におきましては、さらに武力抗争に対する能力という第三条の規定がございまして、私ども今まで政府説明を聞いておりました限りにおきましては、日本自衛隊が持てる戦力というものは、自衛に関する最小限度の能力という段階において、日本自衛隊実力というものは考えられるのだというように聞いておりますだけに、現段階において、旧安保から新安保に移ろうとするこの段階におけるこの状態は、条約解釈いたして参りますれば、私は少なくともアメリカ側が日本に対して、日本自衛隊日本の国を守り得るだけの最小限度防衛力は持つようになったのだという認定がもしなかったならば、バンデンバーグ決議とも違反いたしますので、現在の安保条約を続ける以外にない。現在の安保条約を廃止して、新段階に移るようになった以上は、アメリカ側は最小限度のものと認めているのだということを言う論理になると思うのでございます。それだけに私は新安保における第三条の、なおこれからも増加をしていかなければならない義務というものが日本に付加せられますならば、それは憲法第九条第二項における違反になるのじゃないかと思いますが、そういう点に対していかなる見解を持っておられますか、伺いたいと思います。
  38. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 バンデンバーグ決議の自助及び相互協力という言葉、はっきり今持っておりませんからあれですが、そういう趣旨があります。これは日本必要最小限度日本自体が守るものを持ったということではなくて、やはり日本みずからが日本を守るという意思発現が相当程度に達しておる、こういうふうに解釈すべきものだと思います。アメリカ日本に対して、これが必要最小限度だという判定を下すべきものではなくて、必要最小限度の線に沿うて漸増していくというのは、これは日本がきめるべきことだと思います。事実問題としては、アメリカとしてもバンデンバーグの決議の趣旨に沿う程度に日本自衛力というものが漸増してきた、こういうのが前提と思います。しかしそれが必要最小限度のものだという判定をアメリカ側がすべきものではないと思います。そこで日本の国防会議におきまして、日本自衛力の維持発展についてどういう決定をいたしておるかといいますならば、今申しておりますように、日本の国力、国情に応じた必要最小限度自衛力というものを漸増する、こういう方針をきめておるわけであります。この方針と今の新安保条約の第三条に日本自衛力——日本ばかりではありません、お互いに、これはアメリカも含んでおるわけでありますが、日本アメリカ自衛力を維持発展する、こういうことが書かれております。これは条約でありまするから、維持発展しようという約束だと思います。しかし具体的に、しからば三十五年度にどれくらいのものにするか、三十六年度にどうするか、あるいは四十年度までの第二次防衛計画にはどれまでにするかという問題は、これによって拘束しているものではないと私は考えます。でありまするから具体的に、たとえば三十五年度が去年と同じだ、三十六年度が同じだ、あるいは年においては予算面において減るという場合があっても、その維持発展するところの意思を——ちょっと長い目でも、あるいは長くなくても、ある期間において持っているということでなければならないということだと思います。あるいは年によって防衛力が予算面から非常に減ったとしても、それは条約違反だと直ちにそういうことを追及される性質のものではない。自助及び相互協力によって維持発展していく、こういう意思を持っている。持っているからバンデンバーグの決議にも違反しないからアメリカもこれを結ぼうではないか。日本といたしましても、日本自体の国防会議の決定等によりましても、漸増する、維持発展する意思を持っている、こういうところで合致していると思います。そこでしからば事実問題としてこれをどういうふうにやっていくのか、今が最小必要限度であるか、あるいはそれが最小必要限度でなくて、まだどのくらいまで大きくするのか、こういうようなお尋ね、御懸念もあろうかと思います。必要最小限度自衛力というものにつきましては、これは非常にむずかしいです。それは実際問題が起きたときの、いろいろな侵害というか、進撃等の態様にもよりましょうし、非常にむずかしいと思います。でありまするから、必要最小限度というごまかしのもとに、いつでも必要最小限度で伸ばすのではないかという御懸念もあろうと思います。どういうところでその判定をするかというのは非常にむずかしいことでありますが、大体は日本の置かれている地勢、地位、あるいはいろいろな面から考えて、やはり日本の平和と安全というものは、日本の国民生活と切り離しができない問題であります。そういう点から見て、国民所得に対しまして、たとえば予算面で見まするならば、どの程度まではたえ得るのかというようなことも一つのバロメーターというか、標準になろうかと思います。でありますので、世界各国といたしましても、たとえば中立国のようなスイス等にいたしましても、その面で国防力というものを充実しておるわけであります。スイスの例は国民所得に対して三・三%近くでありましょうが、そういうことになっておりますけれども、しかし必ずしもそういうほかの例が三%だから、あるいは一〇%だから、日本でもやらなければならぬという問題ではありません。これは日本自体がきめなければならぬ問題でありますが、こういう問題をきめていくのにあたりまして、やはりそこが私は戦前と違いまして、自衛隊の内容等につきましてもほとんどガラス張りというような格好でありますし、特に制度からいいますならば、それを予算化する場合には国会の審議、国会の審議の前にはいろいろの折衝その他を経て行なわれるわけでございます。そういう点から見て、私は国民所得に対してという考え方、及び国会の代表者の前の審議の過程を経て、そして無理なことでなくて、意思放棄しませんが、そういうことで維持発展していこうというのが私ども考えておる立場でございます。     〔委員長退席、岡崎委員長代理着席〕
  39. 柏正男

    柏委員 最後に一言、今のお話は、今までの安保条約の中で実は何べんもお聞かせを願いまして、もう私ども答弁の内容が、こっちが申し上げてもいいくらい型にはまっておられるのであります。しかしながら実はほんとうの問題の分かれ道がここいら辺にあるのだと思います。それだけに私は自衛隊の実体、またそれに関連して国防会議のあり方というようなものについてまたの機会に質問をさしていただいて、一つ政府の方針その他自衛隊の実体などもよくわからしでいただきたいと思います。これをもって一応私の質問を終わります。
  40. 岡崎英城

    ○岡崎委員長代理 山中日露史君。
  41. 山中日露史

    ○山中(日)委員 私はこの機会に東京都下新島本村におけるミサイル試射場の設置をめぐっていろいろな紛争が起きておりまして、この紛争に関連して防衛庁のとっておりまする処置、並びに土地買収に関しましていろいろ問題が起きておりますので、それらの点につきましてこれからお尋ねをいたしたいと思います。  まず第一に、今度のミサイル試射場を新島本村に設置するにあたりまして、村民の間が二派に分かれまして、この試射場受け入れに賛成する側と反対する側とが血みどろの紛争を続けておるわけでありますが、この紛争の実体、争点というものが一体どこにある  のか、防衛庁は十分御承知だと思うので、この機会に反対派、賛成派が争っておる争点といいますか、そういう点がどういう点にあるのか、まず伺っておきたいと思います。
  42. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 事務当局からなお詳しくは申し上げたいと思いますが、争点を大きく見ますとこういうことではないかと思います。私ども防衛庁の技術研究所で研究いたしておりますミサイルTAAM—2とかTLRM—2、こういう誘導弾の試射場として新島にそれを設けたいというのが私の方の考え方で、話を進めてきたわけであります。地元の反対側からいいますと、これは単に試射場という名前でいわゆるミサイル基地をここに恒久的に置くのではないか、そういうことになりますとこの新島が攻撃されるおそれがある、こういうことが根本的に私ども説明を納得しなかった点、あるいは不安の一つだと思います。こういう点で非常に不安の者が、絶対にそういうものは置かしたくない、こういうことであろうと思います。もう一つは、私どもがそういう趣旨で試射場を建設し、あるいはまたそういう回数も非常に少ないのだ、こういうように説明いたしましても、ともかくも相当の土地等を必要とするし、この新島の開発に阻害を来たすのではないか、こういうのが反対側の考え方だと思います。そういうことでありますので、私どもといたしましても、新島の開発ということにつきましては十分の寄与といいますか、協力をするということで、いろいろ新島の開発の便宜になることに協力しておるわけであります。そういう協力が口先だけではないかというような心配もあるようであります。そういう点が争点となっておるというふうに、大きく見て私は考えておりますけれども、なお具体的に事務当局から御説明申し上げるものがあれば御説明申し上げたいと思います。
  43. 山中日露史

    ○山中(日)委員 その争点は、ただ単にそういった政府の施策に対する政治的な意見の相違だけでなしに、村民のいわゆる財産、つまり今度防衛庁が買収いたしました土地、その土地そのものの権利関係についても、いろいろ法廷で闘争が行なわれておると聞いておりますが、その買収される土地の権利関係についての争点というものは、一体どういうことが争いになっておるのか、その点も承っておきたいと思います。
  44. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 事務当局から御答弁申し上げます。
  45. 山下武利

    ○山下政府委員 新島の争点につきましては、基本的には今長官が御説明になりましたようなことでございます。防衛庁といたしましては、決して新島をミサイルの基地とするのではなくて、単なる試射場であって、決して新島の産業開発その他に悪影響を及ぼすものではないということを十分に御説明を申し上げました。その結果、次第に私どもの意図を了として下さる方もございまして、本年の三月半ばに至りまして、村の当局といたしまして、正式に防衛庁の試射場としての受け入れの決議をされたわけでございます。試射場に予定されておりまする端端と申します地区につきましては、これは村有地になっておりまして、それを村から買い取るということで村と交渉いたしました結果、三月の下旬になりまして大体金額は三千百万円ということでございましたが、村との間に妥結をいたしたわけでございます。ただこの土地につきましては、村の反対の方々から目下訴訟の提起がございまして、この端端地区におきまするところの入会権の確認並びにその地区に対する立ち入りの禁止ということにつきまして、目下国と村とを相手にして訴訟を起こされておるということを聞いております。ただわれわれ防衛庁側並びに村当局の見解といたしましては、村の古文書等によりますると、非常に古い昔におきましてはそういう入り会い慣行のようなものがあったということも察せられますが、近年におきましては全くそういう事実はないということで見解を統一しておる次第でございます。なお本件訴訟は新島の簡易裁判所に提起されまして、現在は東京地裁の方に移送されておるというふうに聞いておるわけでございます。まだ国に対しましては裁判所から示達されておらないというような現状でございます。
  46. 山中日露史

    ○山中(日)委員 ミサイルの試射場が危険なものであるかどうか、そういったことについて、それが自衛隊戦力保持に該当するかしないかというような問題につきましては、いろいろこれはまた重大な問題でありまして、私どももこのミサイルの試射場の設置、そういった近代兵器をそこに持つということは、憲法の、いわゆる自衛隊戦力保持を禁じておるその戦力に違反するのではないかという考えを私どもは持っておりますけれども、しかしその点はきょう質問するのが趣旨でございません。主として今お話のありましたその村の土地であるか、あるいは入会権があるか、あるいは村民の共有地かという、その争点についてお尋ねしたいと思うのであります。  今の御説明によりますと、防衛庁はその土地は村有地であるというふうに認めてそれを買収したのだというのですが、私どもいろいろ調査をいたしてみますと、今争っておりまするように、直ちにこれが村有地であると認められるかどうか、またかりに村有地と認めても、入会権があるかないかという問題については、相当やはり検討していかなければならぬ問題があると私どもは思います。私どもの調査によりますと、今防衛庁が試射場を作ろうとする端端地区、それから今防衛庁が兵舎を作ろうとしておる瀬戸山地区、こういう地区以外に、まだ十一カ所ばかり地区がありますが、これらの地区は、明治十九年の九月二十四日に村民三百五十名が総代を立てまして、その総代が当時の東京府知事の高崎五六という者に対して払い下げを願い出しまして、そうしてこの三百五十名の共有地として官から払い下げを受けたという指令があるわけであります。そうしてこの三百五十名の人は、その払い下げを受けました共有地に対して地租を払ってきておる、こういう事実がずっと続いてきておるわけです。従ってこの土地というものは、結局昔三百五十名の村民が官から共有地として払い下げを受けて、しかも税金まで払ってきた土地なんで、村有財産ではないのだ、村民の共有地である、こういう建前で訴訟を起こしておるわけです。かりに百歩譲って村有地としても、明治十九年ごろからずっと今日まで——その土地はツバキの林もありまするし、薪炭林もありまして、部落の人が全部入り会って、そうしてツバキの実をつんで油をとる、薪炭林を伐採して生活に充てておったという、そういう一つの入会権を持っておったのだ。従ってこの入会権を奪われるということは遺憾であるということで訴訟を起こしておるわけなんですが、こういった訴訟の過程において、防衛庁はどうして一方的にそれを村有地と認めてそれを買収するに至ったのか、その辺、防衛庁が村有地として認めた根拠をもう少しはっきり知らしていただきたい。
  47. 山下武利

    ○山下政府委員 先ほども申し上げましたように、本件は相当慎重に村の当局と調査いたしました結果、村有地と認めて買収をいたしたわけでございます。新島には相当古い備えつけの古文書というものが、幸いにして役場に散逸せずに残っておるのでございます。そういうものを十分に調査いたしました結果、買収に支障はなかろうという結論を下したのでございます。なおしかし本件は最終的には訴訟の結果を待たなければ何とも申し上げられないわけでございますが、政府といたしましては、そういう行為によりまして、不当に国損を生じないという自信を持って買収をいたした次第でございます。
  48. 山中日露史

    ○山中(日)委員 入会権があるか、あるいは村有地か、あるいは共有地かということは、裁判の結果に待たなければならぬことは当然でありますけれども、しかしこのように村人が、村有地であるかあるいは自分たちの土地であるかということについて法廷で争っておる現段階において、まだその黒白がきまらない中で、防衛庁が強制的に土地に立ち入って測量をするというようなことは、やり方としてははたして適当な処置かどうか、私非常に疑問に思うのであります。ですから、そのために村民は現在山に入ってその測量を阻止するようなことを実力でやっておるわけなんですが、こういうふうにまだ裁判でどちらともきまらない、しかもその争っておる村民側の主張にも今私が申し上げたような古い指令書がずっとありまして、税金まで払ってきておるという事実があるのでありまして、そういうことからいけば、はたしてこれが村有地になるか、あるいは共有地になるか、あるいはまた入会権というものがあるか、それは将来確認されるかもわからないが、こういうふうな不明な段階で、しかもその反対する側の主張にも耳を傾けるものがある、そういう段階で強制的にその土地に入って測量をするというような処置はとるべきではないのじゃないか、こういうふうに私は考えるのでありますけれども、その点についてはどういうお考えを持っておりますか。
  49. 山下武利

    ○山下政府委員 おっしゃるような事態につきましては、私どもとしても十分慎重に検討いたしたところでございます。防衛庁の調査いたしました限りにおきましては、問題になっておりますこの端端地区の山林と申しますのは、明治十九年の九月二十二日、東京府知事から新島の役所に対しまして官有地の下付がなされまして、自来村有地として取り扱われてきたということになっております。さらに大正十二年の八月以降は村有地のツバキ林の貸付規則というものに基づきまして、村が一定の料金を取って一定の資格の村民の人々に一定の面積ずつ、期間二十年をもって貸し付けてきたものでございまして、昭和十七年の四月以降は新島本村部分林貸付規則というものに基づきまして、これまた一定の料金を徴して貸し付けて参っておるのでございます。従ってこの山林は村と村民との間の合意による貸付契約というものに基づいて律せられて参ったのでありまして、入会権というものを認めたものではないという結論に到達しておるわけでございます。
  50. 山中日露史

    ○山中(日)委員 その点のことは裁判所で明らかになりますので、ここで私、防衛庁と議論してもしようがありませんので、その点はやめます。  そこで、その売買代金はすでにお払いになったと思うのですが、同時にその部分林、つまりそれらのツバキ林を占有しておる人々に対する補償金も支払われたと思うのですが、その売買代金を防衛庁が村当局に払う場合の条件、いろいろ契約書にあると思うのですが、それはどういうときにその売買代金を支払うことになるのか、登記が済めばすぐ払っていいのか、その売買代金を支払う条件は一体どういうことになっておりますか。
  51. 山下武利

    ○山下政府委員 ただいまお尋ねの条件があるかないかという問題でございますが、これは条件というものはついておりません。防衛庁といたしましては村当局から、村の財産でありますところの村有地を、合計約二十七万坪でございますが、これを三千百二十五万七千円というもので買収いたしております。
  52. 山中日露史

    ○山中(日)委員 この防衛庁と村との売買契約によりますと、防衛庁が村に売買代金を支払う場合には、その土地を占有しておる者が完全にその土地を明け渡して、しかもそれを双方立ち会って確認した上でなければ、防衛庁は売買代金を払わないことになっておる、またその補償金も同じように現実に占有しておる者がその占有を解除して、完全に防衛庁が使用し得る条件が整ったときにおいて、初めて補償金というものも払うことになっておるはずなんですが、その点はどうでしょうか。
  53. 山下武利

    ○山下政府委員 先ほど申し上げましたように、特に条件というほどのものではございませんが、防衛庁側といたしましては、あくまでこれは村有地として村に対して代金を払うわけでございますから、十分にそれが防衛庁が使えるということでないと、防衛庁としてはこれは買収するわけにいかないのでございます。従いまして、これを買収するにつきましては、村として十分に防衛庁が利用し得る状態にするということについて約束をいたしておるわけでございます。
  54. 山中日露史

    ○山中(日)委員 そういたしますと、結局現在はその端端地区には十数名というものがいまだ占有を解かないでおるわけです。そういたしますと、この売買契約の第二条によりましても、防衛庁はそういう状態の中で売買代金を払ってはいけないわけです。同時にまた補償の方も実際に占有してがんばっておる者の今まで金を村に渡してはいけないことになっておるのに、それを渡したということになりますと、結局この売買契約あるいは補償契約の違反になると私ども考えるが、この点はどうでしょう。
  55. 山下武利

    ○山下政府委員 村と防衛庁との間の契約では、金を渡してはいけないということにはなっておらないのでございまして、これは売買をいたします以上は、十分に防衛庁の使用に適するような状態にするという一種の道義的な責任を村が負っておるというふうに私たちは解釈しておるわけでございます。     〔岡崎委員長代理退席、委員長着席〕
  56. 山中日露史

    ○山中(日)委員 それではこの条文をはっきり読んであげましょう。売買契約書の方に、第二条にはいろいろ規定がありまして、「乙は」乙というのは村であります。「乙は甲に対して甲が指定する日までに本物件を引渡し又本物件たる土地に付質権、抵当権、賃借権その他物上負担のある場合は、これを負担すべき一切の手続を完了して完全なる所有権並びに占有権の移転譲渡をなすものとする。前項の所有権移転手続のため、乙は不動産登記法三十一条の承諾書を甲に提出し、甲は所有権移転に関する登記の手続をなすものとする。占有権の譲渡は当事者双方立合のうえ現実に目的物件の引渡しによってこれをなすものとする。」こういうふうに売買契約には書いてある。それから補償契約の方も大体同じような趣旨でありまして、第三条には「乙が」つまり村です。「乙が占有耕作しているこの土地の離作については乙は耕作権及びこれに伴う用益権並びに賃借権の一切を消滅せしめ該土地の完全円満なる甲の使用収益可能なるようその占有を移転し甲のこれが確認を経たる後補償金支払請求書を提出し得るものとする。」結局現実にその土地を明け渡して、直ちに防衛庁が使用し得る状態であるかどうかということを確認した上で、村当局は初めてその金の請求ができるし、また防衛庁はそういう事実を確認してからでなければ金を払ってはいけないことになっている。これは明らかです。そうしますと、こういうふうな条件が整ってないのに、明け渡しておらない人の分まで金を払って、しかもその金を今度のミサイル反対派と賛成派の紛争の中にちらつかせて、つまり反対する者は、今補助金がきているから、この金をお前たちが受け取ればいいし、受け取らなければどうこうというので、その金をちらつかせて、いろいろ紛争の中に利用しておるという事実がある。ですから私どもは、こういうような紛争の中に、しかも契約にこうなっているにかかわらず、明け渡しも何もしてない人の分まで金を払う、占有も移転してないのに売買代金を支払うということは、会計法から言っても違反じゃないかと思うのですが、その点はどうでしょう。
  57. 山下武利

    ○山下政府委員 ただいまおあげになりました売買契約書は、これはいわば一般の形式でございまして、もちろんそういうふうに完全な状態にした上で支払いをするというのが理想ではございます。しかし本件の場合につきましては、村といたしましても十分にその点について責任を感じて、防衛庁の使用にたえる状態にして明け渡すということを約束しておることでもございますので、この代金の支払いにつきましては違法というふうには考えておらないのでございます。
  58. 山中日露史

    ○山中(日)委員 国が大事な国費を支出する場合においては、必ずはっきりした条件が整わなければ支出してはいけないことになっている。ただ将来約束通り履行してくれるだろうというような推測のもとに出してはいけないことに会計法でなっている。そうすると、結局あなた方の見解でいけば、これは前払いしたということになるのでしょうか。
  59. 山下武利

    ○山下政府委員 いわゆる会計法におきます前払いということではないと思います。それはすでに、二十七万坪に対する三千百万円というのは確定払いとして支払われておるということであると思います。ただもしこれを支払ったにかかわらず、村が防衛庁の使用にたえ得る状態にしてこれを引き渡さないというような状態がありました場合には、当然村としては道義的な責任があるわけでございますから、防衛庁と村との間においてまたさらに交渉しなければならないと考えております。
  60. 山中日露史

    ○山中(日)委員 会計法では、国が物件の買い入れをしたような場合においては、その買い入れ物件の完全な引き渡しがなければ、国は払ってはいけないというのが原則ですよ。つまり売り主、買い主の立場において、売り主の方で完全にこれを引き渡さなければ、代金を払ってはいけないというのが会計法の原則ですよ。にもかかわらず、そういうふうに完全なる履行がなされておらないにかかわらず、補償金を出してしまったというようなことは、明らかに会計法違反だと思いますが、その点はどうなんです。ちゃんと会計法に書いてあります。物件の買い入れについては、すべて履行が終わってからでなければいけない、こういうことがあるにかかわらず、何も履行されてない分について払うということは会計法上許されないのですよ。
  61. 山下武利

    ○山下政府委員 この問題の土地につきましては、先ほど御説明しましたように、部分林の貸付契約が以前は存在しておったのであります。村は防衛庁にこれを譲り渡しますに際しまして、村の議会に諮りまして、この貸付契約を解除いたしまして、完全に村有地としての登記を完了しておるわけであります。村と防衛庁との間におきまして、本件が村有地であるという解釈については何らの見解の相違はないわけであります。ただ事実問題といたしまして、若干そこに占有者が残っておるということにつきましては、はなはだ遺憾でございます。しかし現在の見通しといたしまして、村は十分なる自己の責任において、これを完全なる状態にして防衛庁に引き渡すということを約束しておるのでありますから……。
  62. 山中日露史

    ○山中(日)委員 それは何回も聞いておりますけれども、先ほど申し上げたように、売買代金を払うについても実際にその占有を解いて、完全に使用し得る状態でなければ、村がただ登記しただけで金を払っていいということにはなっておらないのです。だから国が支出する場合においては、これは特件の買収ですから、売る方が完全に履行しなければ、国が払ってはいけないことに会計法ではなっておる。ただあなた方の方で村有地だというふうに信じて、おそらく村の方でそれを明け渡してくれるだろうというような、単なる期待で金を払ってはいけないのです。これがいつまでも明け渡さなかったらどうします。金は払ってしまった、裁判になった、明け渡しをしないということになったら、どうします。その前に金を払うということが会計法で許されておるか。会計法上、こういうように完全に履行されないものを払っていいのかどうか。またしかも契約の内容には、立ち会って、占有しておる者が明け渡しをして、完全にそれが使用し得る状態になったときに、初めて補償金なり売買代金を払う、こういうことになっておるのですから、契約の内容からいってもそれは払ってはいけないことでありまするし、また会計法からいっても完全な履行がされないのに払うということは許されないことなんだ。それを将来明けてくれるだろうというようなただ期待だけで、明け渡さない人の分まで補償金を全部払ってしまうということは、許されないのだと私どもはかたく信じております。しかもそれが結局ミサイルの基地の紛争に油を注いでおるような結果になっておるから、われわれはこれを追及しなければならない。会計法上こういうふうに、ただ将来明け渡してくれるだろうというような期待だけで、完全な履行がなされないのに払っていいものかどうか。私は前払いというならまたそれで考えは違いますけれども、前払いでもないという。そうすれば、結局契約の内容に違反した、会計法に反した不当な支出というふうに解釈せざるを得ないと思う。その点はどうでしょう。今の御説明によりますと、村有地だというふうにあなた方は信じておる、しかも将来明け渡してくれるだろうというような期待があって金を払ったということになりますが、そんなことでは国費は払えませんよ。
  63. 山下武利

    ○山下政府委員 かりに問題の土地にその所有権を主張する人が建物を建てて、実際に占有を続けておるというような状態におきまして、これを買収するということは非常に問題であろうかと思います。しかし何分にも本件山林は、いわゆる物理上の占有状態が現実にあるわけではないのでございます。村が村有地と言っておるある部分につきまして、村の人が、いやあれは自分の土地である、あるいは自分の入会権を持っておる土地であると言っておるわけであります。そしてそこへ調査に行こうという調査員を、道路上におきまして事実上妨害をしておる。こういう状態でございまして、決して買収した土地そのものが何らかの形で占有をされておるという実態ではないと私は考えます。従いまして今お話のような、いわゆる会計法上の違法というような問題は本件については起こらないわけでございます。ただそういうようなことで買収しました土地の、たとえば測量とかあるいは実際の工事というものが妨害されるという事態が現実に起こるということになりますれば、これは村としても防衛庁に売ったことでもありますから、道義上の責任を感じてもらわなければ困るとわれわれは申し上げておるわけでございます。
  64. 山中日露史

    ○山中(日)委員 これは非常に重大なことでございまして、言葉じりをとらえるわけではありませんけれども、何も建造物がなければ占有していないのだということではないと思う。現に炭焼き小屋もありますし、薪炭林もあるし、ツバキの木もある。季節になりますとみんなそこへ行く。なるほど山の中ですから、毎日朝から晩までそこに住んでいるわけではありませんけれども、やはり木も切らなければならぬ。そういう状態で、建造物はその中になくても占有というのは、そういう形で占有しているわけです。建物がないから、物理的にそこに人が住んでいないから、占有がないというわけじゃない。自分で木を植えているのです。そして季節がくればそこへ行って木も切るし、ツバキの実もつむ。そういう状態が続いておる。これを占有という。そういうことを全部やめるということで引き渡してしまえば占有はなくなるのですけれども、現在そういう形で占有しているのであって、そういう占有の状態を解いて初めて補償金を払うということになるのでしょう。それは占有を解いてちゃんと金をもらった人もいるけれども、また所有権を主張して金を受け取らない人たちもおる。そういう形はやはり占有だ。そこへ無理に防衛庁が入ってくるから、それをとめておるのだ。まだ占有を解除していないことは明らかな事実だ。そこに建物もなければ、しょっちゅうそこにおらないから、占有ではないというあなた方の考え方は間違っておる。そういう状態は続いておる。それだからそこにすぐ試射場を作るわけにいかない。土地収用でもして全部実力でもって明け渡させるなら別ですけれども、そうじゃなくして単なる任意売買でやっている。ですからそういう状態で金が払えないのに払ったということは、どう考えても不当支出だと思う。これは前払い金ではないと私も思います。前払い金ならば、移転料というものがあります。建物が建ってそれをのける場合にあらかじめ金が要るのですから、明け渡す前に移転料ならば前払いで金を払ってもいいけれども、この事件の場合は相手方が履行しない先に金を払うことはできないことに会計法上なっている。今の場合は占有を解いて完全に履行していないのに、その人の分の金まで全部村に払ってしまって、村はその金をちらつかせて何とかそこを明け渡さそうとその金でつっているということで、村民は非常に憤慨している。ですからそういう金の支払い方は、一そう紛争を強めておるばかりでなしに、会計法上許されない。そういうことをあなた方が一向差しつかえないと思っておられることは、非常に重大な問題だと思う。その点どうですか。
  65. 山下武利

    ○山下政府委員 何べんも同じようなことを申し上げるようではなはだ恐縮ですが、本件の占有と申されますことが、われわれの考えておるところと若干事態が違っておるわけでございます。本来占有すべからざるものに対しまして、所有権あるいは入会権を主張している一部の人があるという状態でございまして、現実に占有が現在なされておるという状態とは非常に違っておると思います。本件は、これは見解の相違でございますから、相手方から見ますれば、これは自分の土地であり、あるいは自分の入会権地であるというような主張をされるかもしれませんが、われわれあるいは村の当局といろいろ調査をいたしました結果は、ここは完全な村有地であり、入会慣行も存せず、また貸付契約も現在は解除されておるという状態でありますので、これに対して売買行為を行なうということにつきましては、会計法上決して違法ではない、かように考えておるわけであります。
  66. 山中日露史

    ○山中(日)委員 いろいろ問題があると思いますが、今の答弁では私は納得いたしておりません。いずれにいたしましても、結局こういうような状態でお互いに権利の主張がなされる。司法裁判所に訴えてその黒白を決しようとしている。こういう段階においてあえて実力をもって防衛庁が測量を始めるということになりますと、第二の砂川事件が起きるのではないか、流血の惨事が起きるのではないか。ですから一方において裁判所で、こういう根拠があって戦っているという段階で、防衛庁は血の雨を降らしてまでも測量を強行するというような処置はとるべきでない、こう私ども考えておる。特に式根島の漁民のごときは、ほとんど全島をあげて反対をしておるのですが、これは部分林の問題ではありませんで、漁業の問題で、結局ミサイルが発射されて、一定の期間漁業を制限されるということは、補償金の問題ではないのだ、われわれの生活の問題だということで戦っておるわけですが、一方新島の端端地区の所有権あるいは入会権というように、これは一定の根拠をもって法廷で争っているわけですから、そういう場合に防衛庁があくまでも実力をもってやろうとすれば、血の雨を降らすと思う。今の状態を見ますと、すでに反対派は山に閉じこもって小屋を作って、防衛庁の測量を拒否している。そういうことがいいかどうか別として、現実にそうなっているのです。防衛庁が何十名か何百名の自衛隊をあげて測量をやろうとすれば、そこに必ず血の雨を降らすと私は見てきている。そういういうことを私はさせたくないと思うし、防衛庁もこういった金の支出の面についても相当問題がありまするし、訴訟の段階で、しかも反対派の主張も相当根拠を持ってやっておるわけですから、こういう段階で強制的に測量を実行するというようなことをして流血の惨事を見るということは、これはなすべきではない、こう私は考えております。そこで伺うのですが、それでもあくまでも防衛庁で訴訟は訴訟だ、金の支払いは支払いだ、反対派があろうが、あくまでも自衛隊実力をもってこの測量をやるというお考えを持っておられるのか、その点を最後に聞いておきたいと思います。防衛庁長官、どうですか。
  67. 山下武利

    ○山下政府委員 これは自衛隊の基地の全部に通ずる問題であります。結局基地を設けます場合に、その土地の方々の十分な御協力を得られなければ、基地としての機能を発揮し得ないということは当然でございます。新島に試射場を設けますにつきましても、十分に地元の方の御納得を得た上でやりたい、かように考えておるわけでございます。本件は御承知のようにすでに三年越しの問題でございます。防衛庁といたしましては、その間できるだけ地元との円満な折衝に努めまして、防衛庁の意のあるところも十分に島の方に御了解を願うように努力して参ってきたことでございます。最近幸いにいたしまして、村の当局の御了解を得てここを試射場にするということにつきましての原則的な御承認を得たという次第でございます。なおまだ島の方々の中に御納得をいただかない向きも相当あるということを聞いておるわけでございますが、決して防衛庁といたしましては無理に、ことに流血の惨事を起こすというようなしことがありましては、これでは基地を設ける意味がなくなってしまうということも、十分に私たちは痛感をいたしておるところで、最後まで御納得を得た上で円満な事態の解決をはかっていきたい、かように考えております。
  68. 山中日露史

    ○山中(日)委員 最後に、ぜひ一つ流血の惨事が起きるようなことのないように、また防衛庁は一方的な強権というものを発動して測量を強行することのないように、十分御注意を願いたい。やらぬということをはっきり言ってもらいたいと思います。
  69. 山下武利

    ○山下政府委員 ただいまお答えを申し上げました通り、十分に御納得を得た上で、事態の円満解決をはかりたい、かように考えております。
  70. 福田一

    福田委員長 次に石川次夫君。
  71. 石川次夫

    石川委員 ただいま山中委員の方からいろいろ、入会権の問題、契約金の収受の問題について質問があったのですが、そのときの防衛庁からの御回答によりますと、     〔委員長退席、岡崎委員長代理着席〕 最後まで円満な了解を得た上で施行したいというお話があったわけなんです。ところで現地の方からの情報によりますと、自衛隊がすでに十四日から端端の防風林の伐採を始めたという話が伝わっておりますけれども、その点は御存じですか。
  72. 山下武利

    ○山下政府委員 今お尋ねの点でございますが、端端地区につきましては伐採を始めたといったような事実はございません。おそらく御指摘の点は、水尻という地区に居住区を開設したいということを考えておるのでございますが、これの一部の伐採にかかったということをおさしになっておるのではなかろうかと思います。
  73. 石川次夫

    石川委員 いずれにいたしましても今山中委員の方から質問があり、それに対して入会権の問題と村有地の問題との争点があったわけでございますけれども、しかしとにもかくにも今の経理局長の御説明では、村有地であるという確たる根拠は全然示されておらないように思うわけです。あと一つは、不動産の売買契約によりますと、占有権の譲渡は当事者双方立ち会いの上で現実に物的物権の引き渡しによってこれをなすというような点から考えて、これは裁判所で係争中だということでありますから、先ほど御回答がありましたように、最後まで村民の円満な了解を得てやるということが当然の結論だと考えるわけです。しかし現実に——地区ははっきりいたしませんけれども自衛隊が居住地区の防風林の伐採をすでに始めたということになると、これは大へんな問題になる危険が多い。これはどうしても私たちはやめてもらわなければならぬというふうに考えるわけなんですが、さらに重ねて二十日ごろまでの間には自衛隊を現実に上陸させるというような話も聞いておるわけであります。その点についてはどうなっておりましょうか。
  74. 山下武利

    ○山下政府委員 防衛庁といたしましては、すでに村御当局の了承を得まして、試射場を設置するという方針も確定しておるわけでございますし、かつまた土地の買収も終わったことでございますから、できるだけ早くここに施設を作りたいということを考えるのは当然でございます。十分に地元の方の御了解を得たいと思いますし、また得られたところから逐次そういう施設に着工していきたい、かように考えておるわけでございます。なお自衛隊が大挙向こうに出かけるといったような話があるかどうかというお話でございますが、私は現在のところまだそれは聞いておりません。
  75. 石川次夫

    石川委員 現地の方では非常に物情騒然たる様子が見えて参りました。われわれの反対を無視して、現実に十二人の、村有地と皆さん方が、ごらんになっている、われわれの方から見れば入会権が主張される根拠があると思われる土地の占有権者が、まだ代金の支払いも受けておらぬわけであります。それに関連して、今村の中に不安な空気が醸成されておる中で、防風林を現実に切り始めた。あるいは自衛隊の上陸の見込みが最近のうちにあるのじゃないかというような、非常に不穏な空気に村全体が包まれておるということを聞いておるわけでありますけれども、現地の空気を無視して強引にやるということに対しては、われわれはあくまでも反対であります。しかしながらこれは今のお話では、まだ上陸するような予定は聞いておらぬというような話でありますけれども、こういう具体的な指令を現に下しておられるかどうかということを、防衛庁の長官に  一つ伺いたいと思います。
  76. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 大へん言葉が上陸とかなんとか——そういうことはまだ私のところまできておりませんので、承知しておりません。
  77. 山下武利

    ○山下政府委員 今の長官のお言葉に追加して申し上げますが、実は試射場を地元の反対を押して、強制的にと申しますか、自衛隊を派遣してこれを建設するといったようなことは、私たちとしては考えておらないのでございます。ただあの地区につきましては、いろいろ地元の御要望もありまして、道路の拡幅その他に自衛隊の協力を得たいといったようなお申し出もあるわけでございます。そういうことにつきましては、私の方の準備が整い次第、できるだけの御援助をいたしたい、かように考えていろいろ部隊の方とも連絡をして、目下準備をしているという動きはございます。
  78. 石川次夫

    石川委員 今局長の方からお話しになった件に関連してでありますけれども、実は時間が大へん制約をされておりますので残念でありますけれども、その道路の件についてもいろいろと私どもの方では異議があるわけであります。都の方からはたしてこれが具体的に申請があったかどうかという点についても伺いたいわけでありますけれども防衛庁の方で一方的に都道をなすということはできぬはずになっておりますので、都の方の申請書があれば、あとで申請書の写しを一つ私の方に送っていただきたいということをまずお願いをいたしておきます。  それから突堤の問題でありますけれども、この問題はいろいろ申し上げる時間の余裕がありませんけれども、九千八百万円の予算で三十七年までに十八メートル延長するという予定でございますけれども、これは離島振興法でもってやっておるわけであります。従ってこれは企画庁の所管という形で進めておるわけでありますけれども、この十八メートルの突堤の延長のまだ済まないうちに、防衛庁では自発的に五十メートルほどその十八メートルに続いたところにこれを延長して、突堤を作りたいというふうなことをおっしゃっておるそうでございますけれども、それは事実かどうかということを一応伺います。簡単でけっこうでございます。
  79. 山下武利

    ○山下政府委員 防衛庁といたしましては、離島振興法に基づきまして計画されておりますところの十八メートルのほかに、約五十メートルの突堤を作りたいと考えまして、目下その計画をいたしております。しかしこの両方の工事をどういうふうにかみ合わせてやるかということにつきましては、いろいろ技術上並びに会計法上むずかしい問題もございますので、目下都の方と十分に連絡調整いたしておる、かような段階でございます。
  80. 石川次夫

    石川委員 そうしますと、三十七年までに延ばす十八メートルの港湾完成後の管理者、それから防衛庁で五十メートルほどそれに続いて突堤を作りたいといった関係の港湾の管理者というものは、どういうふうになりますか。
  81. 山下武利

    ○山下政府委員 突堤が完成しました暁の管理者をどうするかということにつきましては、まだ今都と打ち合わせ中でございます。おそらく私の考えといたしましては、一括して都が管理の責任に当たられるということになるのではなかろうか。しかしこれはまだ都の方とお打ち合わせしたわけではございませんので、この場所ではまだはっきりしたことは申し上げかねる段階でございます。
  82. 石川次夫

    石川委員 私も最終管理者は都に所属するのじゃないかというふうに考えているわけですが、そういたしますと防衛庁の方から、港湾法に従いまして工作物の設置ということについては都の方にその工事の申請書というものを出して、正式の了解を得るという手続が必要だと思うのです。その申請はまだやっておらないということになりますか。
  83. 山下武利

    ○山下政府委員 港湾法によりますと、国の場合は都に対して設置の協議を要するということになっておるようでございます。まだ協議を正式にいたす段階に至っておりません。
  84. 石川次夫

    石川委員 これは都の方の工事担当者の意見でありますが、工法上いろいろ難点があるように聞いております。と申しますのは、十八メートルの突堤が終わらないうちに五十メートルの突堤をやってしまうと、非常に潮流のひどいところですから、その狭まったところは工事が非常に不可能ではないか。一つの表現をかりますと、昔の世界を制覇するような帝国海軍の時代ならいざ知らずという表現が使われております。しかしながら現実にはそういうものがないわけでありますから、ほとんど不可能に近いのを強引に五十メートルを防衛庁の積極的な意思によって作りたいというようなことは、私は非常に危険が多いという感じがするわけでございます。従ってそういう技術的な点については問題が多いので、これを直ちにやるということは不可能じゃないか。それと今言ったように、最終的な港湾管理者というものが決定を見ない段階でこれを進めていくというふうなことは、非常にむずかしいというふうに考えますが、しからばこの予算関係は、これをやるとして一体ことしの予算に組んであるかどうか、どういう予算からこの五十メートルの作業というものをする意図を持っておられるかということをお伺いいたします。
  85. 山下武利

    ○山下政府委員 予算関係でございますが、新島の予算は三十三年度に初めて計上いたしまして、歳出が三千六百万円、債務六千八百万円ということを認められたのでありますが、三十三年度中には不動産の買付交渉が成立いたしませんでしたために、歳出は繰り越しをいたしまして、国債は未使用のままに終わっております。三十四年度は歳出五千三百万円、債務一億九千四百万円というものが認められまして、このうちで国庫債務は未使用に終わりましたが、歳出五千三百万円のうちで、先ほど申し上げましたような土地の買収は完了いたしたわけでございます。三十五年度といたしましては、現在認められております予算は、歳出が一億一百万円、国庫債務が九千三百万円、合計いたしまして約二億円でございます。この中には港湾の工事を含めまして土木建築その他の試射場の設置に必要な経費が入っておるわけでございます。
  86. 石川次夫

    石川委員 私は、先ほどの御回答によりますと、まだ最終的な港湾管理者もきまっておらないから協議の段階に至っておらないというのにかかわらず、もうすでに予算が組まれておるというふうな一方的なやり方というものに対しては、非常に疑問を感ずるわけですが、時間がないのが非常に残念でありますけれども、次いで式根の若郷、小浜、渡浮根の浚渫、護岸を防衛庁でやりたいというような、村人にとってはある意味で非常に好意のある申し出をされておるということを聞いておりますけれども、この関係もおそらく漁港の関係で最終的な港湾管理者は農林省になるのじゃないか。それを防衛庁の方でやるということについては、一方的に防衛庁だけでなすことはできない、一定の手続が必要だというふうに私は考えておりますけれども、これは実際に防衛庁で申し入れて、ことしの予算で現実にこれをやるということにしてあるかどうかという点だけちょっと伺いたいと思います。
  87. 山下武利

    ○山下政府委員 お尋ねの式根島の小浜港でございますが、ここの浚渫につきましては、防衛庁の協力を得たいということの村の正式な意思表示がございましたので、目下御協力をするように準備をいたしておるという段階でございます。
  88. 石川次夫

    石川委員 しかしこれは結局最後の管理者というものは農林省になるかあるいは都になるか、まだ私はそこまで調べておりませんけれども、村でないことは確かだろうというふうに感ずるわけです。そういう点で、最終的な港湾管理者の了解を得ないでやっておるということについて私は非常に疑問を感ずるのですが、時間がありませんので結論を申し上げますと、こういうふうに反対者が現実にたくさんあり、入会権あるいは村有地ということについての係争が最終的に解決しておらないという段階であるにかかわらず、強引に村人の反対の意見を刺激するような態度で防風林の伐採を始めるというような点について、非常に私たちは疑惑を持つと同時に、今お話し申し上げたように、突堤の問題にいたしましても、防衛庁が非常に積極的にこれをやっているという意図がどこにあるかは別といたしまして、会計法上にも非常に私は問題があるように考えます。これはいずれあらためて御質問をする機会を得たいというふうに考えておりますけれども、これをずっと通観をいたしてみますと、どうも防衛庁のやり方というものは、関係者の方の了解を得ないで、単に村とだけ話をつける。都の方ではたとえば突堤の問題についても全然正式には話は聞いておらないということを言っております。それから式根の小浜の浚渫の問題についても、都自体の全然関知しておらない。うわさぐらいは聞いておるかもしらぬが、正式の交渉は全然ないというような段階で強引にやっておるこの態度は、私は昔の帝国陸海軍をほうふつとさせるような非常に横暴なやり方じゃないかというふうに考えざるを得ないわけです。われわれとしてはこういう態度に対しては絶対に許しがたいという気持を持っておるという点だけを、時間がありませんので簡単に申し上げておきます。  それから五十メートルの突堤は三十七年度に完成できるかどうかという点を、ちょっと簡単に御回答願いたいと思います。
  89. 山下武利

    ○山下政府委員 お答えいたします前に先ほどの御答弁にちょっと追加をいたしますが、小浜港は第一種漁港で、管理者は村ということになっておりますので、港湾管理者のお申し出があれば適法に御協力申し上げて差しつかえない、かような解釈をとっております。新島の黒根港につきましては、都の方に御協議を申し上げるということで今手続中でございます。  なお三十七年度末に五十メートルの突堤が完成するかどうかというお尋ねでございますが、これはまだ正式の港湾の調査ということが完了いたしておりませんので、今のところ何とも申し上げかねます。防衛庁の希望といたしましては、あるいはまた現在持っております計画といたしましては、三十七年度末に完成をしたいということを考えておるわけでございます。
  90. 石川次夫

    石川委員 今の問題についてはいろいろ問題点が多過ぎると思いますので、時間を許していただいて、あらためて質問をする機会を持ちたいというふうに考えておりますが、きょうはあと一つ、これは防衛庁長官に伺いたいのです。実は東海村の上空を飛行機が飛んだという点について、地元としては非常な不安にかられておるということは御存じだろうと思うのです。これは外務省の関係かとも思うのでございますけれども防衛庁長官は茨城県の地元の出身でもございます。そういう関係で、防衛庁とも関係の深いことでもあろうかと思いますので、ぜひ一つこの点について御配慮をいただきたいというふうに考えます。もちろん東海村の地元では原研とかコールダーホールとかいうものが次々にできて参っておりますけれども、これはどこの県でも実験炉一つ作るについても非常な反対があるわけですが、茨城県では全面的にこれに協力するという形でどんどんと工事が進んでおるという結果になっておるわけであります。しかしながら現実に現地に行ってみますと、最近これだけ集中をして一体いいのかどうかというふうな不安にかられておるという点は否定はできません。私はしばらくぶりで一昨日の土曜日に帰りましたところが、地元の方から、飛行機が飛んできたという話に関連をいたしまして、こういう状態では非常に不安だ。新聞によりますと、これは少しノイローゼぎみではないかというふうな批判も一部あるようでございますけれども、とにもかくにも実験炉が七つもある。それからコールダーホールの発電炉も現実にできる。一カ所にこれほど集中するという実績と申しますか、それは世界じゅうどこを探してもないということがいわれておるわけであるし、それから集中の限度というものも学説としては定説がないのだというふうなことで、非常な不安を感じておるということは、これは無理のないことじゃないか。われわれとしてはもちろん将来の産業、そしてエネルギー構造源としての原子力工業というものの発展に期待をするところは非常に大きいという点で、その限りにおいてはもちろん協力を惜しまない、そういうつもりでおりますけれども、しかし現実に政治家が非常に善意でやったにいたしましても、万一の結果が出れば政治家としてはその結果責任というものは負わなければならないわけであります。と同時に、民主主義下の新しい政治といたしましては、住民によしんば何らいわれのないような不安があったといたしましても、その不安というものを解消してやらなければならぬ、そういう責任が新しい政治家に課せられた一つの任務ではないかというふうに考えるわけでございますけれども、この飛行機は現実に原研の従業員も、あるいは現地にいる新聞社の方も実態を見ているわけであります。昨年の十二月の二日に日本の外務省のアメリカ局長とアメリカ側の代表とがいろいろ条件を取りかわしまして、この原研の言うには、現実に射爆演習はさせないという約束を取りつけたわけでありますけれども、今度は現実に飛んでしまった。しかもこの射爆場の飛行機ではないのだというふうなことをアメリカの方からは回答があって、しからばどこの飛行機かというと、これは黒いジェット機ではありませんが、全然所属不明の飛行機というふうな現実になっておるわけです。現地の住民といたしましては、万が一この飛行機が墜落をするということによって実験炉の一つでも破壊をされれば、水戸あるいは日立というふうな工業地帯や住宅地域というものはもう汚染されてしまう。さらにまたコールダーホールというふうなものが爆発をすればこれは言わずもがな、神奈川県あたりまで汚染されてしまうという非常な危険度を持っておるということは、今さら私たちが申し上げるまでもないのでありますけれども、それだからこそ最近の誤投下という問題も出ておりますし、この飛行機が現実に原研上空を飛ぶということになりますと、非常に焦燥感、不安を感ずるということも無理はないと思うのです。これは決して軍事基地に対して反対をするとかいうような意味で私は申し上げているわけではないので、たとえば原子力を中心とする周辺都市整備法案というものを出そうと思っても、現実に射爆場というものが障害になって、なかなか行き悩みになっておるという事実も否定することはできないと思います。  それで時間がありませんから、私は簡単に結論だけ希望条件的に申し上げたいと思うのでございますけれども、さしあたりアメリカの射爆場の演習用の飛行機ではないということをアメリカの補助飛行場の隊長は言っているわけです。電波の波長も違うし、連絡がとれなかったから、そういう点から見てもアメリカの飛行機ではないらしいと言うけれども、さてどこの飛行機かわからぬ。今F100、B57というのが現実に演習用に使われておる機種のようでありますが、F100は最近は来ておらない。かといってB57でもないらしいというようなことで、航空機がどこから飛んできたやらわからぬ。その点防衛庁の方でおわかりになっておれば一つ教えてもらいたいということがまず第一点であります。  それから今申し上げましたような事情アメリカの方との射爆訓練の協定をかわして、原研の上空は飛ばないという約束を取りかわしたわけでありますけれども、しからばアメリカの射爆訓練以外の飛行機、こういうものが飛んでくる不安が新たに出てきたわけであります。従って御承知のように定期航空路のもとにおいては、原子炉の設置はどこにも作っておらないというように、非常に慎重に考えておるのでありますけれども日本の飛行機もここは飛ばさないのだ、あるいは自衛隊関係の航空機もここは飛ばさないのだという約束もあわせて取りつけないと片手落ちであり、また非常に不十分であるということになるわけであります。従ってこの点について防衛庁長官はどういうふうにお考えになっておるかということを第二点として伺いたい。  それからさらに先ほど申し上げたように、原子力周辺都市整備法案というものとも関連をいたしまして、あの地方の産業開発とも関連をいたしまして、将来はどうしても射爆場があっては不安でかなわぬ。正直言いまして非常に反対があるものを、消極的にそれをなだめるということもやっておったつもりでありますけれども、とにもかくにも現在はどんどん集中してくることに対する非常な不安が出てきたということは無視できないと思う。その不安を解消する意味においても、産業開発という意味においても、将来はどうしても射爆場はどこかに移転するか、あるいは返還をするということにならないと、現実に原子力都市の周辺の発展を阻害されるということだけでなくて、地元に対しては非常な不安を与えるというような点で、ぜひとも御配慮をいただきたい。この三点について御回答をいただきたい。
  91. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お話の点もっともでございます。それから経過等につきましても、今お話がありましたので詳しく申し上げませんが、東海村の原子力施設の近くに三つの対地訓練場が、米軍のものがあるわけであります。そうして今問題になっておりますのは、昨年中にも心配されましたので、今お話通り昨年十二月に日米合同委員会におきまして、日米双方で取りきめをいたしたわけであります。その取りきめの中に原子力関係の施設の上空及び近接地域は飛行しない、こういう取りきめになっております。でありますので、現在に行なわれたというふうなことがありまするならば、この合同委員会の取りきめ違反であります。私どもも実態を調査し、今米軍にそういう事実の有無、これを正式に照会といいますか、調査をいたしておるのが現段階であります。調査の結果、そういうことでありますならば、この合同委員会違反でありますから、厳重にこれを抗議するような内容のものにいたしたいと思います。目下調査中であります。  第二に、米空軍の演習はよいけれども日本の飛行機等を飛ばさないようにしたらどうか。これはあの地域は飛行機の飛ぶ危険区域といいますか、飛ばさない区域になっておるはずです。でありまするから、日本の飛行機はそこを飛ぶことはない、こういうふうに思います。  第三の問題は、もしも日本でもアメリカでもない飛行機がそこを飛ぶということであれば、これは領空侵犯でありますから、そういう点は領空侵犯の措置をとるつもりであります。  次に、こういうところに射爆場を置くことは危険ではないか、移転をしたらどうかということでございます。私の方といたしましても、あるいは調達庁といたしましても、そういう点でしばしば交渉を続けてきておるわけでございます。現状ではなかなか移転の見通しといいますか、非常に困難であります。     〔岡崎委員長代理退席、委員長着席〕 でき得るならば、かりに他に適地でもありますならば、そこにかわってもらうというような考え方で話をいたしております。率直に申しましてなかなか困難でありますし、今の御意見のような趣旨に沿うて進めていきたい、話し合いもなお継続していきたい、こういうふうに考えます。
  92. 石川次夫

    石川委員 今の御回答で大体わかりました。しかし現実に飛行機が飛んできたという事実は否定するわけにいかないし、目撃をしておる方もあるわけであります。しかもアメリカの方ではおれの方ではない。日本は、飛行機を飛ばさないということになると、なおさら不安も高まってくるのではないかということもありますので、長官は茨城県の地元の出身でありますので、特にこの点については御配慮いただけると思いますから、その御回答に信頼をして、私の質問は打ち切ることにいたしますけれども、ぜひこの件については地元民がよく納得できるような解決を一つはかっていただきたいということを最後につけ加えて、私の質問を終わります。
  93. 福田一

    福田委員長 次に石山權作君。
  94. 石山權作

    ○石山委員 きょうは岸総理大臣という職名よりも、むしろ国防会議議長としての岸さんをば、われわれ考えているわけですが、しかしせっかくおいでになったのでございますから、万般のこともお聞きしたい、こう思っております。  毎日新しい安保条約の問題で、政府も、国会議員の方々も、それぞれの立場においてほんとうにまじめにずっとやっているわけですが、まことにそういう点は御苦労様だと言わざるを得ません。しかし政府が一生懸命御答弁になっている割合に、岸さんがアメリカにおいでになってこの条約を調印された直後に発表された、いわゆる日米の新時代が来た、こういうふうなことをおっしゃっていたわけですが、説明を聞いていても、なかなか日米の新時代——たとえばアメリカと新安保条約を結んだことによって、日本は金持になれるというふうな明るさ、あるいは非常に平和になれるというふうな明るさ、あるいは善隣友好、アジアの祝福と、すぐさまとは言わないにしても、この安保条約を結べば握手ができるというふうな明るさ、こういうようなものがあまり受け取れないわけなんです。政府の言われる日米の新時代ということを、かいつまんで一つ説明をいただきたいと思います。
  95. 岸信介

    ○岸国務大臣 日米の間の新時代という表現は、今から三年前に、私がアメリカをたずねてアイゼンハワー大統領と会談をして、そうして両者の共同声明を出しましたが、そのときにそういう表現をいたしたのであります。というのは、日本アメリカが自由主義の国としていろいろな面において協力していくということは、これは終戦後の日本一つの国策としてとってきたところであります。しかしながら同時に、日本が終戦後長い間アメリカ占領下にあったという事実も払拭できないと思います。従ってアメリカとの関係においては、協力するというけれども、いろいろな面においてアメリカが優越の地立に立って、そうして日本と双方が対等の話し合いとか、対等の立場において、真に両方が理解し、信頼し、そうして協力関係を作っていくという態勢になっておらない占領下のいろいろな事柄が、やはり尾を引いている点が少なくない。条約の上においても、取りきめの上においても、また心がまえの上においても、そういう……。今度アメリカに行って、真に世界の平和を作りあげるために、また日米両国の繁栄のために——国力において、あるいは国土の上において双方の間に差はあるかもしれない。しかしながら両方がほんとうに対等の立場で話し合いをし、そうして理解し、信頼して協力関係を作り上げてこそ、その関係を永続するものであり、また望ましい、効果をもたらすものだ、従って占領下におけるいろいろなこと、あるいは占領直後においての関係において、国民的にそういう意味において不満を持っているものは改めて、ほんとうに理解し、信頼し合って協力しようではありませんか、こういう話し合いをしたのであります。それを私は日米の新しい時代がきたというふうに認識して表現したのであります。そのときに、それでは具体的に何がきまったかというと、一番の問題は、現在の安保体制というものが非常に不平等になっている。これはその前に、重光外相のときにもそういうことを提案しておりますし、日本としても現安保条約が批准される国会以来、国会において議論されておることであります。そういう点に触れたのでありますけれども、まず共同安保委員会を作って、その条約は、あるいは一方的であり、日本にとって片務的であるというような形だろうが、国民の利益と国民の感情に合うようにできるだけ運営してみようではないか、しかし運営だけではいかぬという場合においては、改正の問題も考えるべきであるというようなことが、一つの具体的な案として出たわけでございます。その後におけるこの問題についての両国間の交渉も、安保条約改正の問題も、今申した心がまえとそういう基本原則の上に立って交渉して結論を出しておる、こういうことであります。
  96. 石山權作

    ○石山委員 アメリカとの協力関係、信頼関係、こういうものはある点まで成就したかもしれません。今度の新安保条約は、日米の間は確かに緊密になったかもしれません。しかしこの安保条約は、日本が他国との友好を結ぶことについてもし阻害されているという面が出ているとすれば、日本アメリカのみを考えて平和という問題を論じているのではないか、相互信頼ということを論じているのではないか、こういうふうな不安があるわけなんです。特に日本の国の制度やその他にいつでも例に出されるイギリスなどの批評を聞いていますと、これは安保条約の調印された直後の批評でありますが、新安保条約は前の安保条約を詳しく書いたのだ、それと期限を十年つけた、あまり変わっていないじゃないか、もし割り切るとするならば、日本アメリカと軍事同盟を結ぶということだけを割り切った、それにしては日本人はかなりの犠牲をこのことによって負うのではないか、こういうふうな批判が出ているわけです。私は今度の安保条約は、日米の協力関係、信頼関係は深めたかもしらぬが、そのことによって、善隣友好という言葉からすれば、日本がはなはだ縁遠いようなところに立たされているというのが現実なのではないか、こういう危惧を持つのですが、その点はいかがでございますか。
  97. 岸信介

    ○岸国務大臣 問題は、今申しましたような基礎に立って改定するわけでありますが、改定の条項を一々よく検討し、冷静に検討するならば——あなたのおあげになるいわける善隣友好ということでありますけれども、中ソ両国からいろいろな覚書を出されるとか声明でもって非難されておるという事態、またそれとの関係が非常に険悪になるのではないかという御議論だろうと思うのです。しかし安保体制というものは現在あるわけであります。新しく作るわけではございません。そしてこの安保体制において、現在の条約においては、アメリカが一方的に思うままにふるまうことができる、日本を基地として使うことができるという規定になっておる。日本はそれに対して自主的に何にも発言権は認められない。そこで、おそらく中ソ両国において防衛力の点において非常に問題にするのは、日本の限られた自衛隊自衛力のいかんということではなしに、日米が一緒になって、むしろアメリカの持っている武力なり防衛力というものが非常に偉大であるから、これが脅威を与えるという考え方であろうと思う。ところが今度の条約におきましては、従来アメリカが一方的に思うままに使い得るという形になっているのを——それはいろいろな議論がありましょう。まだ十分でないということはありましょうが、少なくとも現在のものより相当大幅に日本の自主権を認め、日本意思でもってこれを押えるという道を開いたわけでありますから、むしろ中ソ両国の立場に立って考えると、従来の危険性よりも危険性が少なくなっている、こう言わざるを得ない。そういう内容を静かに検討してみると、そのことは各項目についてはっきり言えると思うのですが、そういう条項をもってこれらの国々が、何か国交を害し、あるいはこれとの友好親善の上に非常な悪影響を持っておるというふうに考えることは、この条約改正の意義、また内容を正当に理解しておらない点からきている。従ってそれを理解せしむる点について政府のとっている態度なり、今までやった措置が、それで十分であるかどうかということはまた別の問題でありまして、少なくとも正しく理解してもらうならば、決してこれが近隣の国々に脅威を与えるというふうな性格は全然ない。むしろ現在の無制限なものを制限することによって、従来そういうふうに考えられておる危険が減少しておる、こういうふうに私は考えております。
  98. 石山權作

    ○石山委員 総理の言われる脅威というふうなものに対してある種の制限を加えるというのは、おそらく事前協議をあなたは想定されているだろうと思う。その点ははやりにはやるアメリカ軍隊というものがもしあるとすれば、事前協議によって押え得るというめどがあることは確かであります。しかしあなたの強調される何ぼかの欠点のうち、ちょっと出た一つのよさにすぎない。事前協議そのものも安保委員会でたくさんやっているのでございますから、私たちは今この場・所において蒸し返しはやりたくないのでございますが、ただ当委員会として非常に重大に考えている点は、つまりアメリカ日本が軍事同盟を結んだような格好でいわゆるアジア諸国をへいげいする、あるいはアジア諸国に対してやはり一つの発言をなす、そういうような場合に多くの誤解を招くのではないか。それからもう一つ私たちが考えたいのは、日本の今の自衛力というもの、これは赤城長官の言うことによりますと、最小の必要限度というような言葉をしょちゅう使っておりますね。僕らは最小の必要限度ではなくして、もう満腹だ、腹一ぱいだという気持なんです。それはいろいろと論議の分かれるところだと思うのですが、日本が単独で、自分の立場でアジア諸国を見回してみる。そうした場合に、日本の持つ陸海空の戦力というものは弱体ではないということでございます。日本の今の自衛隊であれば最小限度だ、しかもどんどんもっとやらなければならぬ、昭和四十年までには二千九百五十億くらいのいわゆる純軍事費を出さなければならぬ、こういうようなことは私たちはどうも日本人の目でないという意見なんです。いわゆる他国の目でものを見る、異人さんのささやきによって物事を考える、そういうふうなことが軍備の増強をなす一つ考え方の基本になっているのではないか。この条約を結ぶことによって、三条でございましたか、いわゆる自衛力の維持、発展、これにひっかかってくるために、もっと言葉を強く言えば、どうも中国あるいはソ連のみをば見るという、いわゆる仮想敵国の問題でございます。非常に言いにくい問題でございますが、仮想敵国の問題として取り上げているのではないか、日本自体の考え方ではなくして、中国、ソ連をば仮想敵国として問題を見るためにどうしても、われわれがもう十分だ、これ以上は必要はないじゃないかということも、赤城長官に言わせれば最小の必要限度だという表現になるのではないか、これに対して総理はどういうふうなお考えを持っておられるか。
  99. 岸信介

    ○岸国務大臣 言うまでもなく日本憲法は、これは諸外国の憲法とは違った憲法規定をいたしております。従って日本が持ち得る自衛力といいますか、防衛力というものに限度があることは、私どもも明らかに認めております。ただこの点に関しては、議論は一部にあるようでありますが、大多数の人々憲法九条の規定にかかわらず自衛権は持っておる、従って他国から不当に侵略された場合において、これを実力をもって排除するということは、当然自衛権の内容として考えられることである。独立国である以上はそういう場合に手をこまぬいて滅亡を待つということは、これは考えられない。従って自衛権を持つ。自衛権ということはただ観念上のことではございませんで、やはりそれを裏づける最小必要限度のものは持たねばならぬが、しかし諸外国のそういう制限のないような、無制限のなには持つべきではないということは、従来もわれわれが説明をしてきた通りでございます。また今度の条約におきましてもその原則が少しでも実質的に変更されるものではございません。それはあくまでも……。従ってその場合において、その自衛力をどういうふうに増強していくか、どういう限度であるかということにつきましては、すでに第一回の国防会議でその基本方針としてきめられておる、いわゆる国力、国情に応じてわれわれは最小限度防衛力というものを漸増していく、こういう方針をとっております。これは日本にとって動かすべからざる一つの鉄則になっているわけであります。従ってこれは私は、事情が違うのですから、そのまま比較しようとは考えませんけれども、諸外国における防衛費の予算の上に占むる割合なり、あるいは国民所得の上に占むる重要度というものと日本のものと比べると、これは比べものにならない程度である、これも事実でございます。従ってそういう際において、そのくらいは持つのはいいだろうが、それだけでもって日本を守っていればいいのだ、そして政策としては中立政策でもとってやればいいではないかというような議論が一部にあります。しかしこれは国際情勢の判断の問題がこれについて私は出てくると思うのです。見方がある。そういうことが可能であるかどうか、これは私は従来言うているように、そんなことは一つの空論であって、実際上はできない。そうするとただそれだけでもって、われわれの力だけでR本を守るだけの自衛力を持とうということは、これはとうていわれわれの国力、国情が許さない。その場合において自分たちと十分理解、信頼するところの国と協力して日本の安全を守ろうというのが、日米安全保障体制正の基礎だと思います。そこに米軍に対して日本を守ってもらうために基地を提供するとか、いろいろな問題が起こってくる。そこでその内容は、その考え方は私どもちっとも変わってない。そういう安保体制というものは今の世界の大勢からいうと、そういう条約機構というものは各地にあって、いろいろ共産圏にもあるし、また自由圏にもあって、そうしてそれが一つのバランスをとって世界の平和が現実に守られている。私は決してこれが理想的の平和の状況だとは思いませんが、しかし大国の間の核兵器の問題につきましても大国の間に議論があり、われわれはこれを廃止しろと主張しておるけれども、大国の間に議論がある。やはりそれが実際上バランスをとってお互いの戦争抑止力になっている。平和がそういう形においてできている。それはしかしながら決して恒久的な平和ではありませんし、一種の不安があることは事実ですけれども、そういう国際情勢のもとにおいて日本の安全もを守っていくのには、やはり安保体制というものが必要だ。今これを軍事同盟というような言葉で流されておりますが、私は軍事同盟という内容がどういうことを意味するか知りませんが、これを読んでごらんになると、国連憲章の原則なり、あるいはあくまでも他からわれわれが武力攻撃を受けたときに発動ずるのでありまして、われわれが一緒になって他に対して武力攻撃を加えるということを考えておるわけではございません。こういうものをもって私は軍事同盟だとは考えておりませんし、また今言った趣旨において考えるのでありまして、新条約の三条というものでわれわれが憲法規定する以上の何か義務を負うとかいうようなことは絶対にございませんから、その点は御安心願いたい。
  100. 石山權作

    ○石山委員 この敵基地の問題と黒いジェット機が出たとき、先ごろの安保のとき藤山さんはこういうことを言っておりました。たとえばソ連の外相が黒いジェット機が飛び立つ基地に対しては報復する、こういうふうに言いましたね。それの設例に藤山さんは答えたのですが、このときは、ソ連から日本の基地を攻撃されれば日本は戦う、こう端的に言っておるわけなんですよ。この条約をその通り解釈すると、そうなるわけでしょう。そうすればすぐ戦争が始まるということを意味している。特に条約締結者である本人が、そういうふうな簡単な条約解釈を国会で言っていいかどうかということなんですよ。条約はその通りなんだ。だから黒いジェット機が一機飛んで、それが報復される。そうしたらわれわれは戦争をする、こういう危険性をこの条約解釈について、締結した御本人が示しているということは非常に危険だと思うのですが、その点に関しましては総理はどういうふうに考えておりますか。
  101. 岸信介

    ○岸国務大臣 実は私、その質疑応答の席におりました。おってよく承知しておるのでありますが、今石山君の御質問でございますが、外務大臣の答えは、一体その黒いジェット機が他国の領空を侵犯したというこの事実は、これは違法であって適当でないことは言うを待ちません。しかしそれに対して直ちに報復として基地を武力攻撃するということは、国連の憲章のなにから言っても認められておらない。従ってソ連も国連の忠実な会員の一人であるからして、そういうことは述べておるけれども、事実上そういうことが起こることは絶対にない、あり得ないことなのだ、こういうことをまず前段において答弁をいたしております。しかしそんなことを言ったってフルシチョフはそうチェコのパーティでもって話しておるのだから、それは責任者がそう言っているのだからそういうことはあり得る。その場合に一体日本はどうするのだ、こういう話が出ております。その場合にも今のことは繰り返して述べておりますが、しかし当然報復手段として、そういう領空侵犯があったときに直ちに基地に対して武力攻撃をかけるということは、これは許されることではない。これは正当化せられない。そうすれば、もしそういう不当な武力攻撃日本領土内に加えられるということになれば、第五条の規定によって自衛権の発動ということになるだろう、こういう答弁をいたしたのでございまして、言うまでもなく前提としてそういうことはありませんということを非常に強調し、しかしながら五条のなにからいうと、報復として当然許されていることであるならば、それは正当なる攻撃であるから許されるが、五条はいわゆる違法なる不当な他からの武力攻撃という侵略があった場合には、自衛権の発動をするという規定である、従って許されてない行動をして、そうして武力攻撃と認めるような事実が発生すれば五条が適用される、こういうことを申し上げたことでありまして、私は解釈からいって、またそのときの質疑応答の取りやりからいって、何か不当なことを申したわけではないと思います。
  102. 石山權作

    ○石山委員 総理の説明を聞いていても、やはりどうも非常にあぶない橋といいますか、あぶない綱を渡るような感じがしてしょうがございません。領空侵犯をやるのは軽犯罪で、それは黙認してもいいというようなことは、何か自分のことは軽く見て、人のことは重く見てすぐ条約を発動しなければならぬ、特にそれが戦争に通ずる条約の発動でございますから、これはやはりそういうふうな表現というものは、私は非常に危険性があるのではないかと思います。特に私たちが考えられる点は、この条約によって防衛力が充実される、そういうことが約束はされているのではない。たとえば第二条に日米経済協力という言葉があるわけですね。この中にはMSAの援助、これなんかを唯一のうたい文句としてこういうことを言っているのか、あるいは貿易の自由化というふうな問題がはさまれて経済協力という言葉を使っておるのか。私はMSA協定の一つを底に秘めた経済協力のうたい方ではないか、美文ではないか、こういうふうに思うのですが……。
  103. 岸信介

    ○岸国務大臣 MSA条約上の協力は、MSA条約によってきめてあるところの権利義務なり、相互援助ということであります。これを別に今度の条約の二条でさしているわけではございません。言うまでもなくこれはいろいろな場合がございますが、日米の間においては、これは貿易関係においても、向こうからの日本への輸入、日本からも輸出もともにオーケーなんであります。ところが従来これについてはいろいろなフリクションがありまして、時にマグロのカン詰とか、合板とか、あるいは金属性の食器の問題や、あるいは小さいものでは寒暖計やこうもりがさの骨とか、あるいは綿製品とか、いろいろな問題について問題が起こっている。そのつどわれわれとしては、日米の協力関係からいって、そういう問題について一面において日本商品を差別待遇することはいかぬ。同時にまた日本の方も秩序ある貿易をして輸出をして、そうして不当にアメリカの産業に悪影響を及ぱすようなことはしないというような話し合いをしております。こういう問題だとか、あるいは従来も日本のいろいろ借款の問題や外資導入の問題等がございます。こういうことを一そう円滑にやっていくことが両国のためであり、また最近問題になっておる未開発地域の開発にいて協力をするとか、世界の大勢である貿易自由化という日本に対して、あるいは貿易ブロック化、一つのブロックを作って、そうして他を差別待遇するというような傾向もややもするとあり得るわけです。こういうフリクションをなくしていって、そうして両国の繁栄に資していこうというのが、この条文の基礎になっている考え方でございます。MSAの問題はMSA協定ででき上がっているところの関係でございまして、この条約では考えておるわけではございません。
  104. 石山權作

    ○石山委員 政府のおっしゃる自衛力の充実ということ、これは私先ほど申し上げましたように、自分の目で見た自衛力の強化ではない。他国の目と他国の心が入っている。このままでいけば自衛力の充実が即、強国のどうかつの軍国主義だというふうに見られる危険性が起こるということでございます。それから高性度の防衛力をだんだんやってきますと、飛行機でも、去年の年末大問題を起こした例のロッキードのように一機何億円というものになる。これが今度はミサイル開発の方向へ転ずるのが新しい軍備の充実だというふうになれば、これはまた大へんなお金だろうと思うのです。そういうふうな場合の国民の一つの生活程度というものは、必然的に犠牲を受けざるを得ないのである。特に日本の場合は経済上の二重構造で、中小企業あるいは農業等で悩んでいるわけです。これは  アメリカでも例があるのですが、兵器が高度になればなるほど中小企業に調達される額が小さくなってきている。これはアメリカから出た資料ではっきりしているわけなんです。兵器が高度になればなるほど、中小企業にいわゆる軍需というものの恩恵が及ばない傾向が起きるということでございます。この点あなたの場合は、前に通産大臣等おやりになったのでございますから十分に考えていられるだろうと思うが、そういう一つの危険性があるということ、それから僕らまだ考えたいことは、今防衛二法としまして統幕の強化が法案として出ております。この統幕の強化は、結局安保問題の共同作戦と申しますか、有事の際の共同作戦をば能率的に機動的にする、これがねらいだろうと思うのです。そうでないと言っても私たちは承知できないのでございますが、私の与えられた時間がもうなくなっているので、非常に残念でございますが、そういうふうな解釈をしている。今度の新安保条約によって、われわれの委員会が担当している自衛隊は、統幕の強化によって有事の際には完全に今の内局から離れまして、そうして統幕の指令だけで問題がきまっていく可能性がある。これを一体どこでチェックするかということが、今度のわれわれの一つのテーマではないか。われわれが過去経験したところの、いわゆる軍人の優位からくる横暴、防衛力の充実に伴う統幕の強化によって、ともすればそういう点が出るのではないか。答えは短くてもいいですが、総理が今考えているいわゆるシビリアン・コントロールの基本がくずれていくというわれわれの心配を、あなたは一体どこでチェックされるか。軍人の人は年々上に上がっていくわけです。内局の人たちは残念でございますけれども、いわゆる各省からの出張員みたいな格好で、知識からいっても及びもつかない差ができてくるということが見られそうでございます。そうしますとチェックするであろうところの大臣が、すっかり統合幕僚会議の方々に牛耳られてしまう。軍人なんというものは、自分に与えられたポストは有効に守りたいということです。それから軍人が非常にまじめだということは、ある意味では危険性を含んでいるわけです。日本ではまじめなだけ、そういう危険性をばかなり強く私は感じるのですが、そのチェックの仕方が考えられているのかどうか。
  105. 岸信介

    ○岸国務大臣 今回の改正によって幕僚会議の方を統合的かつ能率的に運営できるようにするという意味において整備されておりますが、その場合においても、あくまでも幕僚会議というものは防衛庁長官の補助機関でありまして、防衛庁設置法の二十条はそのままに存続するものでありますから、これによって今石山委員の御指摘のありましたように、文官優位の原則がくずれるのだというふうな御懸念は私は当たらないものだと思います。あくまでもその直接の統制に当たるものは、文官であるところの防衛庁長官がそのなにを持つ、こういう建前を今回の改正において少しもくずすものではございません。従ってそういう懸念も私はないものだと思います。
  106. 石山權作

    ○石山委員 総理は、先日十三、十四日に公聴会が開かれたとき御席がございませんでした。私は非常に残念なことだと思います。国を憂えれば憂えるほど、学者先生あるいは軍事評論家あるいは一般の婦人を代表している方たちの声を聞くのが、私は一つの任務だと思います。お疲れになっているでしょうから休みたいということを考えることもありますけれども国家有事の際はやはりおいでになって聞いていただけば、総理の考え方にかなりに影響を与えたのではないか、私はこういうふうに思わざるを得ません。五月の十四日には十万の人が雨にたたかれながらも請願の運動を起こしておる、そして署名が約一千五百万といわれておる、こういう事実。それから私は特に申し上げたい点は、長い間外交官をしまして経験の豊かな方の意見などは、総理に対してはかなりに役に立った話ではなかったかというふうに私は考えているわけなんです。こういうふうないわゆる日米の友好関係一つの基礎として問題を見詰めている方々からも、今度の新安保条約というものは危険性があるということを指摘されておる。婦人団体の代表の方も、これは直情的にその点を申し上げておる。こういうふうな新安保条約に対して非常に不安を持ついる分子、あるいは反対の意向を明らかにしている分子というものは、国民全体の中でかなりの数を占めているわけです。この取り扱い方は、やはり政治家として私は当然善処しなければならぬ問題だと思うのですが、総理はこういうふうな問題に対してどういうふうな態度でお答えをなさるのかということを私はお聞き申し上げたいのです。
  107. 岸信介

    ○岸国務大臣 公聴会に私が出なかったことについての御意見でございますが、私は従来もそういう例になっておると思いますが、公聴会というものは、委員諸君が真剣にその問題を検討する上において政府の意をただすと同時に、いろいろな有識者の意見を聞いて、そして審議の参考にされるというのが私は本質であるように思います。従ってそういう場合に総理を初め主管大臣等も出席しないのが従来の例だと私は思います。ただ公述人の意見なり、あるいは請願者の国民の声というものに対して謙虚な意味でそれに耳を傾け、それと同時に、自分の最後の判断をする場合には、これを参考にすべきだというお考えに対しましては、その席におるおらないにかかわらずそうしなければならない。公述人の意見というものは、公述人の意見だから問題にしないなんということを申し上げておるわけではございません。制度の問題としてそういう建前になっておるということは、私の考えの基礎をなしておるわけでございますが、これらのお考えに対してはもちろん耳を傾けるべきであり、自分の最後の判断をきめる場合において十分に参考にしなければならぬ。それから請願の問題については、今の制度では委員会においてその請願をどういうふうに扱っていくか、旧憲法のときには、たしか請願委員会という特別の委員会があって、その請願の問題を取り扱っておりましたが、やはり委員会において委員長理事、各委員でもって、その取り扱いの方法についてはきめらるべきものだ。しかし内容的の問題については、先ほど申し上げたような心がまえで私としては政治の衝に当たっており、またそれの将来の措置の最後の決定をする場合において、十分に謙虚な気持で耳を傾けていくつもりであります。
  108. 石山權作

    ○石山委員 おそらく総理は国会で十分審議をするからというふうな内意だと思います。しかしこの問題に関しては——われわれの選挙というのは二年前にやっておるわけで、ものの考え方はかなりずれておるのではないかと思います。先ほど私が言いましたように反対の意見というものがかなりに強い。日米協力という基本に立ちながらも、今度の安保条約に対しては不安と反対を示している方が相当に多い。これらの民意をいかなる形であなたは迎えるかということを私はお尋ねしておるわけです。私に簡単に言わしめれば、民意を問う最良の方法としては解散が一番よろしいのではないかということを問うておるわけですが、あなたは回りくどく御答弁をなされないのですが、一つ答弁をいただきたいと思います。
  109. 岸信介

    ○岸国務大臣 この問題について解散をしろ、解散すべきものだという御議論は、従来安保委員会におきましても、あるいは予算委員会におきましても野党の人からいろいろとその議論が出ておりますが、私は終始解散する意思がないということをお答えしてきております。これは解散という問題については、政治の全体から考えるべき問題でありまして、ただ一部的な議論、理論から判断をすべきものではないと私は考えております。従っていろいろな御議論がございますし、また何でもかんでも解散に追い込もうという立論から申しますと……(「それはうそだ」と呼ぶ者あり)いや、そういう議論もあります。そういう議論のあることも事実です。何でも解散に追い込むのだということを言われておる議論からいうと、またそういう立論の基礎があろうと思いますが、私はやはり全局から判断をいたしまして、この問題に関して現在の状況のもとにおいて解散をするという考えを持っておらないということを、もう一度重ねて申し上げておきます。
  110. 石山權作

    ○石山委員 委員長に一言要望がございます。委員長がお聞きのように、岸総理と私の話ではかなりの食い違いがあるし、未解決の問題もあるのでございますから、当委員会に、私はこの前も当初から申し上げたように、国防を論ずるに国防会議議長が来られないなんという変な話はない。ただ総理大臣はお忙しいだろうと思うから、あまり来ていただきたくないのですが、国防会議議長が、この国防を論ずる限りには必ず出席する義務がある、そういう意味一つ委員長から特に御配慮を願っておいて、私の質問を終わります。
  111. 福田一

    福田委員長 ただいまの御発言については、理事会において御相談をすることといたします。次に田万廣文君。
  112. 田万廣文

    ○田万委員 私は静かな気持で一つ総理と、わずかな時間でございますけれども懇談をしたい、こういうふうに思っております。  まず最初にお尋ねいたしたいことは、特別委員会でもすでにたびたび質疑応答がかわされております事前協議の点について、もっと掘り下げて聞いてみたいと思います。まず第一に、この安保新条約の事前協議と、自衛隊法の七十六条によるところの、いわゆる防衛出動の際においては国会の事前承認を要する、この規定との関係についてお話をしてもらいたいと思います。もっと具体的に申しましょうか。おわかりであればその程度で一応御答弁を願いたいと思います。
  113. 岸信介

    ○岸国務大臣 自衛隊法と事前協議の問題の関連についての御質問でございますから、おそらく、事前協議に三つ項目がございますが、そのうちの日本の施設区域を使って米軍が日本以外に戦闘作戦行動に出る場合の問題であろうと思います。この場合においては、御承知のように新安保条約におきましては、いわゆる条約区域と申しますか、本来の防衛区域というものは、日本の施政下にある領土でございます。これが武力攻撃をされた場合においては、日米がそれぞれ自衛権の発動によってこれを守る、これが本来の形でございます。ただ極東における国際的平和と安全を守るために、これが脅かされ侵された場合に、日本に基地を持っておる米軍が出動する、こういう場合、言うまでもなく日本の平和と安全を守ることが今度の安保条約の主眼でございますが、それと同時に日本周辺の安全と平和が守られるということが、日本の平和と安全を守る上からいってもきわめて大事であるから、極東における平和と安全という項目が入っていると私は考えます。     〔委員長退席、高橋(等)委員長代   理着席〕 しかしながらそうだからといって、すべてのそこに起こった事件が、ことごとく日本の平和と安全に直接深い関係のある事件ばかりだということは言えないと思います。原則としては、日本の平和と安全というものと、極東の平和と安全ということが、全体としては非常に密接な関係があるということは一応言えるけれども、具体的の場合には、そうでない場合もあると思います。それほど関係の深くない場合もあると思います。そういう日本の平和と安全に直接深い関係のないような事態において米軍が出動する場合には、これは事前協議において拒否するというのが、委員会におきましても、方針として明らかにしておるところでございます。ところがそう出たならば、必然的に今度は、米軍が出動して戦闘作戦行動をした相手国が、日本の米軍の基地に対して武力攻撃を加えてくることがあるだろう、そうなれば自衛隊の出動ということが起こってくる事態になる。その場合において、自衛隊の出動については、あくまでも七十六条の規定通りわれわれは条件を一貫しなければならない。ところが私はそういうことは必然的に起こるとは思いません。現に過去におきましても、たとえば朝鮮問題について、日本の基地を使って出てきた米軍が国連軍の一部として行動しましたけれども、直ちにそれで日本に対する武力攻撃があったわけではございませんから、必ずいかなる場合においてもあるとは私は思いませんけれども、そういう事態自衛隊が出動する場合には、あの条件でいかなければならぬけれども、事前協議における判断は、正当に作られておるところの政府の責任においてやる。しかしながらそのことは国会に事後に報告する、そうして国会においてもその内容を明らかにし、これに対して論議の起こることは当然であり、また政府としてそれをやった以上は、国会の方に十分に説明をしてその了承を求めるように努める、こういうことを申しておるわけでございます。
  114. 田万廣文

    ○田万委員 今のお話は要約すれば、かりに新安保条約が今度締結された際における効力は、国内法と同一の効力だというふうに理解していいわけですか。
  115. 林修三

    ○林(修)政府委員 今の御質問の御趣旨でありますが、従来私ども安保特別委員会において御答弁いたしておりますが、新条約の第五条は、いわゆる日本の施政下にある区域に対して武力攻撃が加えられた場合に、日本はこれに対して自衛権行使する、米軍もこれに対して守る。こういうことを規定したものでありまして、この規定自身は、日本自衛隊を出動させるについて自衛隊法規定を排除するものではない。いわゆる条約国内法との効力の問題は別にございますが、この第五条の規定自衛隊法の第七十六条の規定、手続といいますか、これを排除するものではない。従って日本自衛隊の出動は、当然七十六条の手続に従って行なう、かように考えております。
  116. 田万廣文

    ○田万委員 そうすると、一応そういう非常事態が起きたときには国会の事前承認を必要とするということでございますが、現実の問題としてそういうものをとられる時間的な余裕がありますか。私思いますのには、おそらく緊急な場合においては事後承認という規定があるわけですが、その事後承認によるところの国会の承認をとられるという可能性の方が、事前承認よりも多いのじゃないかと思うわけですが、どういうふうにお考えになりますか。
  117. 岸信介

    ○岸国務大臣 それは事実問題でございますが、今田万委員お話のように、緊急で事前の承認を求めることができないというような場合においては、七十六条の事後承認でよいということになっておると思います。事実問題ですから、どっちが多いかというようなことを軽々しく申し上げることはちょっとむずかしいと思いますが、こういうような問題は相当緊急を要することが多いということだけは覚悟しなければならぬ、かように思います。
  118. 田万廣文

    ○田万委員 実際問題としては、緊急の場合ということで事前承認を得ずして事後承認の形で、この新安保条約の事前協議という形で前進していくと思います。その場合に、すでに戦争状態がここで起きておるということに相なるのですが、事後承認を得るために国会の承認を求める際には、すでに戦争状態というものが日本国内に惹起せられておるという立場ではないのですか。
  119. 岸信介

    ○岸国務大臣 自衛隊の出動について事後承認を求めるということは、言うまでもなく自衛隊が出動するということは、他から日本に対して武力攻撃が加えられるか、あるいは——おそれのある場合には別として、加えられたときには、現実に武力攻撃が加えられておるのですから、それを排除するために出動を命じておるのですから、いわゆる戦争状態といいますか、戦闘行為が行なわれておるということでございます。
  120. 田万廣文

    ○田万委員 ところが戦争状態が確定しておって、事後承認を国会で与えなかったという場合はどうなりますか。だれがその責任をとるか、またどういう責任をとられることに法律は規定しておるのですか。
  121. 岸信介

    ○岸国務大臣 自衛隊法にはたしかその規定が、自衛隊の出動についてはあると思います。
  122. 田万廣文

    ○田万委員 七十八条にあるのです。
  123. 岸信介

    ○岸国務大臣 あると思います。
  124. 田万廣文

    ○田万委員 それは撤退すべしというだけの規定です。
  125. 岸信介

    ○岸国務大臣 今の田万委員の御質問、私取り違えているかもしれませんが、事前協議についての話は別の話でありまして、今議論していることは、自衛隊防衛出動についての事後の国会の承認の問題で、承認されなかった場合にはどうなるかということはこの自衛隊法規定がある、こういうことを申し上げたわけであります。
  126. 田万廣文

    ○田万委員 ところが実際に戦争状態になって、戦争をやっておるのは自衛隊なんです。だから自衛隊法というものを尊重して、事前協議して、実際においてはその時間的余裕がないから、事後承認という形で国会の承認を求める。つまり、すでに他から攻撃を受けて、戦争状態日本に起きておる、その起きておるもの自身を国会において事後承認を求めるという段階があるのじゃないか。なければうそなんです。その段階があるが、その段階において、緊急を要するということで一応出動を命じたが、それは許すべからざることであるという決定が国会においてなされた時分には、だれがその責任をおとりになるか。すでに戦争になって、現在の実情からいったら、原子爆弾とか水素爆弾とか、いろいろおそろしい兵器ができておる。日本に大きな被害が起きた時分に、初めて国会の事後承認を求めるということになるのじゃないか。そういう場合が可能であると考えられる。それを国会が承認しないという場合に、だれがその大きな被害に対して責任を持ち、どういう制裁がそこにあるか、だれが責任者になるかということをお尋ねしているわけです。
  127. 岸信介

    ○岸国務大臣 政治的な責任は政府が負わなければならないことは言うを待たないのでございますが、今の設例の場合において、現実に日本に対して武力攻撃が加えられたときに出動を命ずるわけでありますから、日本領土がある他国から武力攻撃を受けて——その事実がなければ出動すべきものではないのです。あるいはそれがすでにおさまったから、あとは出動をやめろというようなことであって、私はこれは事実問題としてはきわめて明瞭なことだと思いますが、日本が他から武力攻撃を受けた場合に出動を命ずるのだ、こういう意味において実際の問題からいうと——ただ時期的に、もうこれはやめるべきものだとかいうことはありますけれども、それで何か事実そのものの認定を誤るようなことは、どの政府だってあり得ないのではないか、こう思います。
  128. 田万廣文

    ○田万委員 ところが、あり得ないというのは、岸総理なり自民党の諸君があり得ないと考えておるのであって、現実にあり得るということもわれわれは考えられる。それはなぜかならば、私率直に申し上げますが、今日いろいろ問題になっている新安保条約に対して、自民党並びに閣僚、またこれを支持せられる人々は、新安保条約改定賛成という意見があろうと思うのです。ところが反対の意見も相当ある。だから、少なくとも外交とかあるいは国防というものに関しては、国民があげて一つの線にまとまってこそ、ほんとうの国防ができ、ほんとうの外交というものがここに生まれてくると思う。すでに発足においてこういうふうに大きな世論を喚起して、右と左に分かれておるような状態の中で強行されたこの新安保条約というものが、国民からはきわめて納得のいかない存在になっておるという立場において、今あなたは、事後承認は、日本攻撃を受けておる現実においてこれを否定する者はなかろうと言うけれども、初めから戦争をやってはいかぬという連中がおる。それは否定する一つの勢力なんですからね。あなたがおっしゃったような、それは日本攻撃を受けておるのだから、ほっておくわけにいかぬじゃないか、みな賛成するだろうという考え方は、あまりに甘きに過ぎるのじゃなかろうかということをお尋ねしておるのであります。それは総理が次にまた立って、あなたと私の見解の相違だと言えばそれまでかもしれませんが、ただ単に見解の相違だけで済まされない。ほんとうに大きな被害を受けるのは国民であるということ、その点を私はもう一度総理にただして、率直に言えばもう少し反省をしていただきたい、こう思う次第であります。御答弁を願います。
  129. 岸信介

    ○岸国務大臣 田万委員お話のように、一国の防衛であるとかあるいは外交というような問題については、与党、野党を問わず、大きな方針において考え方を一致させるということは、そういうふうで進みたいということは、私も念願をいたしております。しかし御承知通りこの防衛の問題について、自衛隊そのものの本質につきまして、今なおこれが違憲であるという議論がある。大多数は憲法違反ではないと考えるけれども憲法違反であると主張しておる人々は、これは信念であって、なかなかこれが変えられないということも事実であります。また日本の置かれておる立場から見て、日本がいかなる場合においても戦争に巻き込まれないように、平和を念願しておるということは、どの党派を問わず同じだと私は思いますが、さて平和を求める方法として、われわれが外交の方針として、自由主義の立場をとり、自由主義の国々と手を握っていくのだ、あるいは近隣に大きな共産国もあることであるから、むしろ近い共産国と手を握って日本の平和と安全を考えるべきだという議論、あるいはどっちにもつかない中立の第三の道を歩んでいけという議論、大別するとこの三つになると思います。ところがこれについては、いろいろな場合にいろいろ政府の所信は明らかにいたしておりますが、それぞれの立場なりそれぞれの主張というものはなかなか根強いのでありまして、なかなかこれは一致させることができないことが、現代の日本一つの悩みであると思います。また安保条約に対しても、そういう立場から議論がなかなか統一しないということも事実である。  さてそれでは、今田万君の御指摘になりましたように、事態が起こって武力攻撃があった、それに対して出動を命じた。その場合に、国会は必ず事後承認をしなければならぬというものではないのだから、実際問題は総理が言うようになるかもしれぬが、しかしそれに反対する者が多数である場合も考えなければならぬ、その場合にはどうするのだということは、私は、この手続としては自衛隊法規定に基づいた手続をとるべきであって、撤収しなければならぬと思います。そうしなければならぬことは事実であります。ただその場合に、依然としてそれを決定してやった政府の政治的責任は残ると思います。
  130. 田万廣文

    ○田万委員 政治的責任は残るということは当然のことだと思うのですが、ただ政治的な責任が残るというだけのことで済むべき問題ではないのじゃないか。というのは、先ほどから私が申し上げておる通りに、その際においてはもうすでに大きな被害が起きておる。総理も私もお互いに日本人として、一人の犠牲もないように平和を守っていくというのが変わらない心情だと思うのです。ただ行く道が今右と左になっておる。これは宿命というかもしれませんが、今悲壮な立場において、いずれがほんとうに日本の祖国の平和を守り、独立を守るためにプラスであるかほんとうのものは一つしかない。二つとも間違いないということはない。右と左と分かれてしまっておるわけなんですから、右が誤りであれば左が正しい、左が誤りであれば右が正しい。これは割り切っていかなければならぬ。そういう立場において、この新安保条約というものをまさに強行しようとするときにあたって、それを発案なさったというとなんですけれども考えておられる総理としては、今私が申し上げたような現実の事態が、将来日本の祖国の上に現われないとは保障できない。政府が責任をとられただけで済むというような安易な考え方は、私はまことに危険だと思う。その根本的な問題は、新安保条約を強行してこれを締結する、新安保条約締結自身によってそういう共同防衛義務があり、攻撃を受ける目標になるということもわれわれは考えられるのです。この点については、くどいようでありますが、なお岸さんの御意見を承っておきたいと思います。
  131. 岸信介

    ○岸国務大臣 田万委員のおあげになりました設例の場合に、前提として日本武力攻撃を他から受ける。これに対して自衛隊がそれを排撃するために出動する。損害そのものは他からの武力攻撃ということで起こっておるのであって、その場合にこちらが抵抗すればなお武力攻撃が加わるだろうから、抵抗せずに手をこまぬいて、向こうの不当な武力攻撃に屈しろという御議論には私はならぬと思うのです。しかしそういう議論もあるかもしれません。しかしその場合に、前提は他から本当に武力攻撃を受けた場合に、これに対して自衛権を発動して排除するというのが自衛隊の責務であると思います。しかし実際は、武力攻撃がなかったのに出動して、かえって武力攻撃を招いたということは非常な問題でありましょうけれども、現実の問題は武力攻撃が加えられた、それで損害が発生する、その場合においてこちらが抵抗すればなお犠牲が多くなるだろうから、抵抗せずに手を上げて降参しろということには、私は独立国とし、自衛の体制からいうとあり得ないのではないか。それから全体から申しまして、私は田万委員もとっくり考えていただきたいのは、世界の現実の情勢というものは、各国が防衛費にうんと予算の部分を使って、苦しいながら武装を増強しておりますが、これは今のところ他国を侵略するという意味でやっている国はないと思うのです。お互いが対立している状況のもとにおいて、自分の国の安全を守るためにそういう防衛手段を講じておる。あるいはそのために武力も増加しておるし、軍備も増強している。それだけでは足らぬから、同じ考えを持っている人の間に集団安全保障体制を作って戦争を防止しているというのが世界の現実の情勢であって、そういう中にあって、われわれがこの安保条約を作るということ、また自衛隊を持つということは、あくまでも戦争を未然に防ぐ。裸になっておって手を上げて無防備でおるということは、今の国際情勢からいうと非常に危険であって、そういうことをすると戦争に巻き込まれるおそれが非常に増大するのだ、こういう考えに立って、この自衛隊なりあるいは安保体制なりを作るのでありまして、ねらいはあくまでも平和を望む、また侵略が起こらないように戦争を未然に抑制する、こういうことでございますから、私どもはこういうものを作るということは、先ほど来申し上げているように、われわれが念願している世界の平和、自分自身の安全をはかっていく上に絶対に必要である、こう思っているわけです。
  132. 田万廣文

    ○田万委員 私は民社党ですから、ある程度のことはわかるのですけれども、しかしそれは社会党にしても平和建設隊ということを言っておる。われわれは現在の予算のあるワクの中における最小のものということも考えないではないけれども、私がお尋ねしているのは、ある程度の軍備を持たなければ自衛ができないというような単なる考え方でなくて、この際このときにおいて新安保条約日本の平和と独立を守るためにプラスになるかマイナスになるかということの議論に立って、私はお話を申し上げておる。その点は誤解をなさらぬようにお願いしたいと思うのであります。  なお次に一つ具体的にというか、吉田さんなりあなたに言わせると、仮定的だ、仮定のことには答弁できぬとおっしゃるかもしれないけれども日本にあるアメリカの軍事基地が具体的にある国から攻撃をまさに受けようとする、それを先に攻撃して、いわゆる正当防衛的な立場でやる場合があったときに、日本アメリカ軍事基地が攻撃されることは火を見るよりも明らかだと思うのです。その際にもやはり今度の条約からいうと、共同防衛義務が発生しなければならないとわれわれは考えるのですが、いかがですか。
  133. 岸信介

    ○岸国務大臣 今田万委員の御指摘になったことは、いわゆる日本に基地を持っておるアメリカ軍が攻撃されるおそれありとして、先制攻撃をかけるという事例をおあげになったのではないかと思います。私どもはこの条約を通じて、そういうことはアメリカを信頼していることが間違っているというような御議論は別として、この建前から言うと、国連憲章——至るところにそれを引いておりますが、国連憲章武力攻撃は従来の戦争前とは違って原則としていかぬ、禁止する。ただこれを許せる場合は、例外的にいわゆる五十一条において、他国から武力攻撃が加えられた場合において、各国は個別的もしくは集団的自衛権によってこれを排除することができる。そういう場合にすぐそれを国連に通報して国連措置を待つ、こういう例外的な規定があります。この以外には動かないということを申し合わせておるわけでありまして、今例におあげになりました先制攻撃というようなことは、この条約においてはあり得ないことで、こっちからすることはない、こういう前提に立っております。
  134. 田万廣文

    ○田万委員 事前協議の問題については特別委員会でもいろいろな角度から話があり、総理としてもいろいろな答弁をしておると思うのです。私どもが今までの御答弁を聞き、また本日あなたから聞いた範囲内においても、またあなたから言えばはっきりしているじゃないかとおっしゃるかもしれないが、私は割り切れないものを持っているのです。冒頭にお尋ねをしたように、政府が事後承認を得る際に、それがなかった場合に政府が責任をとったらいいのだと簡単にお話しになっているけれども、そういうような簡単なものの考え方自身に、私は事前協議の内容から非常におそろしさというものを感ずるわけです。この委員会のわずかの時間で反省してくれといったところで、なかなか根がはえている考え方ですから反省もなさらないと思います。なお私は自民党の諸君にしてもわれわれにしても、ほんとうに国を愛する意味で申し上げているのであるから、その立場に立ってやはり心静かに謙虚な気持で話し合いをし、また話を聞いていただくことをお願いしたいと思います。  次にお尋ねいたしたいのは、先ほど石山君からもちょっと聞かれましたが、今度の防衛二法の審議にあたっての印象は、統合幕僚会議の権限が非常に強化されている。従来の文官優位の原則というものは破れてしまって、武官の優位が特に目立ってきておる。これはやはり新安保条約の改定の一環としての統合幕僚会議の権限の強化というように、われわれの立場から考えざるを得ないのですが、石山君と同じような質問をして恐縮でございますが、なおもう一度御答弁を願いたいと思います。
  135. 岸信介

    ○岸国務大臣 これは安保条約の改定の問題とは全然関係はございません。むしろ防衛庁から御説明願った方が適当だと思いますが、従来からもこの問題は相当長きにわたって議論されていることでございます。しかしながら文官優位ということ、政治的に防衛庁長官の統制力を弱めるようなことは毛頭考えてはおりませんで、法制の建前からいってもそういうことを堅持している。なおその詳しい説明につきましては防衛庁長官から補足させることにいたします。
  136. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 統幕会議の権限強化と言うと非常に言葉が強く聞こえますが、陸幕、海幕、空幕の三者及び統幕議長が参加しておるのが統幕会議でございまして、統幕会議におきまして長官を補佐するわけでありますが、これはこの間も申し上げましたように、集団的補佐というのが適当だと思います。そういう形の集団的補佐をしておったのですか、有事の際において、その三幕僚長のどの一人かが作戦その他の統一指揮命令をすることになっておったのでありますが、しかしこれはそういうことでなくて、統幕自体が、すなわち集団的に統幕会議がその補佐をする。その伝達を統幕議長がする。こういうことで統幕議長の権限がふえたということよりも、伝達その他についての手続を統幕議長がやる、こういうような形でございます。でありますから、これは統幕会議自体の統一連絡をよくするということでありまして、そのために統幕議長が非常な権限を持って、内局等の権限を侵す、こういうことではありませんで、内局は内局といたしまして、防衛庁長官を補佐する、こういう形になって、両者ともども防衛庁長官の補佐に当たる、こういう形でございます。そこでそういう形できておりますことと、もう一つはいわゆる文官優位といいますか、政治優先の原則に傷がつくのではないかということでありますが、今のような事態でありますから、政治優先の原則を侵すというものではない。特に政治優位の原則というのは、これはやはり究極的に言いますならば、従来と違いまして、国会が最終的に相当の強い権限を持っているということだと私は思います。そういう建前から見ますならば、依然としてといいますか、戦前と違いまして、国会が、三幕と申しますか、自衛隊の存在に対しまして監視するといいますか、そういう機構を持っています。それから人事機構におきましても、自衛隊につきましては総理大臣が最高の力を持っております。その下に防衛庁長官がおります。その防衛庁長官も、これは憲法上の解釈もありましょうが、文民をもって充てるというような形になっておる。こういう形でありますので、この今度提案されておるものが、非常に文官優位を害するとか、政治優先に傷がつくものであるというふうには、私どもの方では考えておりません。
  137. 田万廣文

    ○田万委員 時間がないので非常に飛び飛びで失礼でございますが、次に総理大臣にお尋ねいたしたい。それはこの間自治庁設置法の一部改正法案というのがこの委員会で、われわれが反対しましたけれども通りまして、自治省というものが生まれることになった。これに関連して、私現在の情勢からいくと、今の防衛庁が、ただいま防衛庁長官からお話があったが、統合幕僚会議とか、やはり実質的にはだんだんと強化されていくような感じを持つし、また実際その通りだと思うのです。こういうような情勢の中で、国防省といいますか、治安省というのか知りませんが、総理の考えの中に、将来防衛庁を昇格して庁から省にしよう、そしていわゆる軍部一般のことをこの省に担当せしめようというような考え方があるのではないかということをお尋ねしたい。と申しますのは、従来終戦後今までにいわゆる教育委員の選挙が廃止せられて任命制になる。それからまた公安委員の場合も同様なことが言える。だんだん警察なり教育というものが内閣の実際の権力のもとに置かれていく場合において、またこういう新安保条約を構成していこうという総理の考えの中において、防衛省というものを作る考え方が、近いうちに出てくるのじゃないかということを非常に心配しておるのですが、いかがですか、率直にお答え願いたい。
  138. 岸信介

    ○岸国務大臣 実は国防省を作れというような議論が一部にあることは確かにあります。その議論には、まだその議論を裏づけるような理由もつけられておりませんけれども、しかし少なくとも戦後の新憲法のもとにおける防衛というものは、旧憲法のときの軍部、陸海軍とかその他のような立場を絶対にとらしてはならないことは言うを待ちません。従って国防省というような考え方が、ややともすると今田万委員の御懸念になっているようなことも伴うおそれもありますから、そういう問題は軽々にこれをきめるべき問題ではなくして、私自身としては、今のところそういうことを考えておりません。これは率直に申し上げておきます。ただそういう議論が一部にあることは事実であり、また防衛費というものは、全体の予算の一割足らずでありますが、一割前後を占めているということになるというと、委員会についても内閣委員会から防衛委員会独立さしたらいいのではないかというような議論も、従来から行なわれてきたこともこれは事実であります。しかし今お話のような点においてよほどこの問題は慎重に考慮しなければならぬ問題でありますから、私自身は現在のところそういうことは考えておりません。
  139. 田万廣文

    ○田万委員 時間が過ぎましたので最後に一つお尋ねしたい。非常に神経質とおっしゃるかもしれないけれども、新安保条約の問題ですが、総理が新安保条約を強行せられるというのは、平たく言えば祖国の平和と独立を守るためだという言葉に尽きると思うのですが、そういうことはやはり主権在民の新憲法において総理大臣といえども無視できないと思うのです。その立場から言ったならば、今日世論は新安保条約日本の平和と独立のためにプラスになるものだという立場で、またそういう自信の上にあなたが強行されようとしておるのであろうと思うのですが、どこに根拠があるのですか。国民が圧倒的にあなたの言う説を支持しておるという証拠がなければ、いかに一国の総理といえども憲法を侵すことはできないと思う。自民党の諸君なり、岸総理、閣僚の諸君だけがアメリカと話し合って、こういうことがよかろうといってきめるわけにはいかぬと思うのです。どういう根拠があって、あなたはこれを強行されようとするのであるか。要するに国民の総意というか、国民がこれを圧倒的に支持しておるという確信の上に立ってやっておるのかどうかということを承りたいと思うのです。
  140. 岸信介

    ○岸国務大臣 それは私はいろいろな理由があると思います。私自身この案自体がいろいろな論議を通じてみて、日本の平和と安全に適応しておるという信念に立っております。またもう一つは、アメリカ現行安保条約締結しました最初から、国会においてこういう点を攻めなければならぬということが、従来論議されてきておったことを大体取り入れて今度の改正をしておる。それから昨年御承知通り、この問題をはっきり具体的に内容を掲げて、これは中間選挙でありますけれども、参議院の選挙に私どもは臨んでおります。これは野党の方からいえばこれに反対されるし、われわれは今回改正をいたします内容を、条約文としてではありませんけれども、これを内容とする条約改正をやるということを、選挙の重要政策の一つとして掲げて選挙をやっております。この結果にかんがみまして——田万委員お話のように、また各方面からこれだけの問題を掲げて解散、総選挙をして、国民の意思を問うことが必要であるという、いわゆる解散論はそういう理由に立っておる。私ももちろん主権を持っておる国民が最後に判断すべきものだと思いますが、以上のような点から見て、私は今日の状況のもとにおいて解散ということは、先ほど申し上げましたようにいろいろな政治的なそういう大きな事実を決定すると同時に、政治的に申しますと二カ月前後の政治的な空白ができるというようなことから生ずるいろいろな政治的な問題等考えてみますると、今言ったような点から見まして、この際あらためて解散して民意に問わなければならぬという御議論には、私は賛成いたしませんということを申し上げたいと思います。
  141. 田万廣文

    ○田万委員 参議院の選挙という話がありましたが、三十三年五月選挙の際には、新安保条約の改定の力の字も話に出ておらなかった。現にここにたくさん出ておられる同僚議員の諸君は、それを言って当選してきておった人はいないのです。諸君は安保条約の改定ということは言っておりはせぬ。だからしてほんとうに敬虔な気持で日本の国民を思い、祖国を思っておいでになるというならば、この際非常に議論の多いこの新安保条約を、また混乱が予想されるようなこの状態の中において強行していくということの危険の道を歩まれるよりは、むしろ私は謙虚な気持になって、別にアメリカに従属しておる国じゃないのですから、またソビエトに従属した国でもない。われわれの立場からいうならば、われわれはどちらの陣営にもくみしておらないのです。いわゆる不覊独立のきぜんとした態度で日本の外交、防衛というものを考えていかなければいけない。その立場からいうならば、この新安保条約に対して日とともに高まりつつある相当な数の反対世論というものを総理が無視して、ただいまお話があったように、前の安保条約ができたときの状況、参議院選挙において話をしたとか公約が何とかという話があるけれども、この際このときに限って、ほんとうに国家の運命を左右する危険性のあることが予見されるこの条約案に対する問題について、やはり一度国会を解散して、真剣に国民の気持を聞いた上でやってもおそくないのではないか、なぜあわてて、混乱の中に混乱を重ねつつも、議会の威信を失うようなこともあえて起こる危険性まで冒してやる必要があるか、これを私は憂えるのです。どうかもう一度——おそらく私が申し上げただけであなたは翻意なさるほどの人じゃないのです。これは私は国家的に悲しむのです。どうかもう一度、できることならばよく情勢考え、そして祖国のこともなお慎重にお考え願って善処せられんことを希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。また機会がありましたならばお目にかかって、ゆっくりお話をしたいと思います。
  142. 高橋等

    高橋(等)委員長代理 久保田豊君。
  143. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 私はきょうは法律論や条約論とか政治論あるいは外交論、そういうものは一切抜きにしまして、もっぱら軍事上の事実論について、重要な二、三の点をお伺いをいたしたいと思います。いつも大へん親切な御答弁をいただくことはありがたいのですが、時間が非常にありませんから、私の方も簡単明瞭にお尋ねをいたしますが、なるべく簡単明瞭に、時間をかけずに一つ答弁をいただきたいと思う。あらかじめお断わりしておきます。  第一に、第六条に連関いたしましてこの前赤城長官にお尋ねいたしましたところ、第六条に連関する問題で、いわゆる第四条による協議の中に入っておらぬ重要な問題が一つあるわけです。いわゆる第六条の具体的な内容をなすアメリカの極東におきまする戦略、あるいはこの戦略に基づく戦略配置、あるいはこれに基づくいわゆる年々の作戦計画というふうなもの全体として、もちろんそういうものを立てるについては、相手国でありまするところの、まあ簡単に具体的にいえば共産主義諸国の兵力の状態あるいは戦略等が当然前提になりますが、それは別にしまして、そういうものについては、今まではもちろん、新安保条約のもとにおいても第四条の協議においても、そういうことを日本側が正確確実に知らされるということは取りきめてないと私は思う。     〔高橋(等)委員長代理退席、委員   長着席〕 このことは何を意味するかといえば、今度の安保条約の軍事的な運用の実際は何にあるかというと、何といっても第六条が発動になりまして、極東でいろいろなアメリカの軍事行動が起こって、それが基地としての日本に反映してくるというのが通常の場合です、ほかの場合もありましょうけれども。ところがその一番根本の極東におきまするアメリカ軍全体の今申しましたような諸項が全然日本にわからない、政府に知らされないということになれば、日本はつんぼさじき、めくらです。そうしてアメリカ軍の極東におきまする各種の軍事行動の結果だけを、めくらの手探りみたいな格好でやるということにならざるを得ない、こういうことになろうかと思いますが、事実第四条のいわゆる協議、この中にいわゆる米軍の極東戦略の内容、あるいはその戦略配備、あるいはこれに基づく年々の作戦計画というふうなものが知らされてないのかどうか。もし現実に今までそういう約束が取りかわされておらないとすれば、今後この点の改善をどうやるおつもりか、この点を第一にお伺いしたい。
  144. 岸信介

    ○岸国務大臣 四条は条約を施行する上において全面的に随時協議するという問題でございまして、今おあげになったような事項を直接にこの条項で協議するという対象では私はなかろうと思います。しかしいろいろなルートを通じてアメリカの持っている情報とか、アメリカ考え方を連絡するということはあり得ると思います。ただ何か年々アメリカが、私はそうでないと考えるのですが、何か作戦計画を年々きめるというようなことは、問題のなには防衛的な問題でございますから、今ちょっと久保田委員お話でありますけれども、私自身はアメリカがそういうものを年々持っておるというような考え方を持っておりません。
  145. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 戦略とか戦略配備とか作戦計画が、防衛だから要らないなんというばかなことはありませんよ。では日本自衛隊は何を目標にして編成するのですか。何を目標にして配置するのですか。何を基準にしてやるのですか。やはり相手国なり何なり一定の想定があって、それに対する備えというものをやらなければ、戦争の抑止力にも国の防衛にも何にもなるはずはないです。こんなことは子供でもわかっておる。アメリカといえどもはっきり極東の平和と安全を保障しようという以上アメリカの持っているあらゆる戦力というものを中心にして戦略を立て、戦略配備をし、そしてそれを年々の状況によってどう動かしていくかという作戦計画、これが年々立っておらずに何ができるか。これがわからなければ、日本はめくらじゃないですか。その結果だけを背負って、あっちに飛ばされこっちに飛ばされるということになるのでありまして、私はそういうものが必要か必要でないかということの議論をしようとは思わないわけですが、そういうことがあるのは当然です。そういうものを知らされるという約束があるのかないのか、ないという御答弁ですから、それならばこれの改善策を何かしておられるのかないのか、こういうことをお聞きしているわけですから、もう一度御答弁願います。
  146. 岸信介

    ○岸国務大臣 今お話のように、従来といえども極東におけるいろいろな諸種の情勢判断、それの資料になる情報については、安保委員会におきましても話されたことがございます。また米軍の配置等につきましても、これはいろいろな機会において話をするということは私はあり得ると思います。しかし条約そのものの直接の協議事項であるとか事前協議の事項でないことは言うを待ちませんし、条約の第四条にいう予定しておることには私は入らないと思います。しかしそういう事柄があれば、これを連絡することについてはこれは従来も安保委員会等においてやられておりますから、そういう連絡はする道は私はある、かように思います。
  147. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 そうすると結局法律的には、条約の上では日本アメリカの極東における軍事行動については全般としてはめくらだ、こういう立場でこれに対処するということになります。これが日本の国の安全を守ることになるかならないか、こういう点を御判断いただきたい、こういうわけです。そうしてこれがはっきりしませんければ、あなたが主張される事前協議は、極東に対する米軍の要するに作戦行動として、いわゆる戦術の問題を両方でもって大臣や司令官が出て一生懸命相談してみたところで、大きなところでしり抜けになっておるならば、これは実際効果はない、ナンセンスです。こういう点をはっきりお考えいただいて、私は第四条における基本的な協議の内容としては、少なくともアメリカの極東における戦略、戦略配備並びにそれに基づく年々の作戦計画というものは、単なる部分的な情報ではなくて、国と国とのはっきりした約束としてこれをとるのが、独立をするための軍事的な独立を確保する第一歩であるということをはっきり申し上げて、次の質問に移ります。  第二の問題は、これは第五条の日米共同作戦についてです。日米共同作戦については、今申しましたような問題はどうなっておりますか。というのは、日米共同作戦に関するアメリカ日本との共同の戦略なり、あるいは戦略計画なり、配備なり、作戦計画というものは、年々立っておらなければならぬはずであります。この点については、これは、第四条なら第四条のどこで、どういう機関でこれを決定することになっておるのか、この点を明確に御答弁をいただきたい。
  148. 岸信介

    ○岸国務大臣 今の五条の場合に、日本武力攻撃を受けた場合において、日米の問で行動をともにするという場合における連絡については、これはいろいろな場合においてお答え申し上げているように、指揮命令の形は、日本自衛隊日本自衛隊においてやり、米軍については米軍の指揮系統がありますが、その両者の間において緊密な連絡をとるような仕組みを考えていくということを申しております。今お話の現在平時——という言葉は適当かどうか知りませんが、平時において両方でそういう共同のなにをするということは、私は実際行なわれてないのじゃないか、こういうふうに思いますが、なお防衛庁長官からその点お答えを……。
  149. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 従来とも作戦を両者集まってきめていくということは、お話のようにしておりません。現在におきましては、安全保障委員会におきまして、極東の情勢とか配置の状況、こういうものはよく打ち合わせるといいますか、話し合いをいたしております。万一の場合に、作戦等の不一致というようなこと、あるいはめくらでおってはいかぬではないか、こういうことについて、何か取りきめ等があるかということでありますが、作戦そのものについての取りきめのないことは、御承知通りであります。作戦等について協議するという取りきめはありません。ただ安全保障協議委員会というものが往復書簡によって設けられます。その下にといいますか、専門にといいますか、防衛専門の委員会というものが必要であろうということに相なっています。しかしこれはまだきまっておりませんが、安全保障協議委員会等が開かれた場合、その他必要あり、こういうことになりまするならば、これを設けるという方向には行っておりますが、まだ具体案はできておりません。そういう委員会等におきまして、配備の状況とか、あるいは作戦というようなまでに平時において考えられるかどうか、これは問題はあろうと思います。大綱といいますか、大きな面につきましては連絡を緊密にする、こういう建前で進んでいきたい、こう考えております。
  150. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今のお答えですと、大体において共同作戦ということは、今度は第五条によって、はっきりこれは両国の条約上の義務になったわけですね。今までは両国ともに日本のあれというふうなことは条約義務化されていなかったことですから、これは正規にはないのは当然だと思います。しかし今度は第五条で共同作戦ということが条約上の義務にはっきりなった以上は、これに関しまする戦略なり、戦略配置なり、そして作戦計画を両国が対等の立場ではっきり立てる、そしてこれをお互いに責任を持って実施するということでなければ、ほんとうの共同防衛なんということはできるはずがないことは、これまた私は軍事上の常識だろうと思う。ところが今のお話では、これも例の保障委員会の下に専門会議ができて、それでまあ多分やることになるだろうという程度です。ここらに実は統幕会議の問題ともひっかかって、重要な問題がだんだん頭を出してくると思いますが、これらのいろいろの技術上その他の問題については、これは総理ですから、きょうはお聞きをいたしません。  そこで、私は今の第五条の共同防衛の問題についてお聞きをいたしますが、日本として共同防衛の必要上、こういう理由から、たとえば米国に対しまして一定の兵の種類、一定の兵の量、あるいは一定のいわゆる分担任務、あるいは一定の兵器、あるいは軍用物資、こういうものを具体的に要求することができる権限がありますか、ないのですか、こういう点です。またこれらをやるためには何に基づいてそういうものをおきめになっているかという点であります。一つの例をとってみますと、赤城長官お話では、現在日本におる米軍というのは陸軍が大体五千、海軍が二万、それから空軍が三万だ。そのうち実際の実戦部隊というのは空軍の二個師団ぐらいのものだろうと思う。あとはみんな補給部隊か何かです。これでもって、今の日本自衛隊と一緒になって日本の国防が、少なくとも防衛的な意味においても、いざということがあった場合にこれで足りないことは明らかです。従いまして戦争のないことを望むという、そのための条約だということはあなた方が口をすっぱくして言っている。しかしそのための抑止力になるためには、いざ戦争を、第三国から攻めてきた場合に、あるいは武力攻撃があった場合に、これをはっきり排撃できるという実力的な裏づけがなければ、これは抑止力にも何もなりません。山田のかかしではだめです。そんなことでごまかされる国は今ありませんから。やはりそういう実力を持っておるということになれば、はっきり日本としては日本の国防計画なり、自衛隊の増強計画と結びつけて、アメリカに、極東の情勢から推してこれだけの兵種、兵量あるいは任務の分担あるいはそれに必要な兵器ないし物資というものを当然要求するということが条約上保障されておらなければ、共同防衛ということは成り立たぬはずです。この点についてはどうです。ありとすれば、条約のうちどう条文に基づいてそれができるのか。
  151. 岸信介

    ○岸国務大臣 向こうからこういう武器なりをほしいとかいうようなことについての話し合いというものは、そういう場合であれば四条の随時協議の対象になると思います。ただ、今お話の五条の武力攻撃日本の施政下にある領土が受けた場合において、日本自衛権の発動によってこれを排除する。アメリカも自分の国の安全を害するものとして自衛権を発動してやる。そうして行動は、ある程度連絡、共同の形になるでしょうから、その間についての連絡については、そういう場合にどういうふうにやるかということは、今後十分打ち合わせをしておく必要はあると思います。しかし日本にある程度常時駐留は必要であると思いますけれども、さらにそういう非常事態ができたときにこれを増強し、これに対して米国が五条の義務に基づいてそれを履行するに必要な兵力を増加するというようなことは、当然起こってくることだと思います。そういう意味におきまして今お話のような、一般的の平時においてこういうふうな兵備が必要であるとか、こういうふうな武器の供与が必要だ、物資が必要だというような事柄について、アメリカ側にこれを求めるということは、四条の協議で私はやっていくべきものである、こう思います。
  152. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 私は今日本共同防衛上必要な、日本としてアメリカに要求すべき兵種、兵量その他のこと全部が、これは常時駐留でなくちゃならぬというようなことを言っているわけではありません。一部は常時駐留でもよかろうし、あるいは全部が有事駐留の形になってもいいでしょう。しかしながら少なくともそういう計画を始終持っておらなければ、何か事があったら、そのときの情勢で協議して、そうして必要な兵力だけ何なりだけ借りようでは、これでは国民は大体におきまして不安でしようがありません。少なくともそういう点が常時、ある程度両国の間において合意がはっきりできて、しかもそれが法律なり条約上、何かの裏づけをはっきり持っておるということでなければ、私は国防の、少なくとも防衛的な意味においての国防の完備なんというものはできるものじゃない。これは世界どこでも大きな国においてはやっておるわけです。それが今まで何らなかったところに、私は日本のいろいろの問題がアメリカに従属だといわれた根本があると思うのであります。これは単なる第四条の協議で整のうものはないと思います。それはアメリカにとりましても、自国の防衛世界の全戦略に対して相当大きな影響を及ぼすことであります。従いましてこういうことが単なる協議でもって、話し合いをしてやったからといって、すぐ承知しました、よろしゅうござんすというふうに、安易にこの問題を考えるところに、私は岸さんの大きな間違いがあると思います。この点、もう少し突っ込んで、今の兵備なり全体の体制からこういう問題に真剣に取っ組んでおらないところに、私はあなたの一つのあれがあると思います。  特にそれに連関して一つお聞きいたしたいのは、その中で国民がこういう問題で一番心配するのは何かというと、大きくいうと三つあります。一つは核兵器の反対攻撃を受けるのではないか、従ってそのためのこっちの核兵器の積極攻撃というものをアメリカがやってくるのではないか。これはあなた方に言わせれば、事前協議でもって入れないという。これもずいぶんあぶないと思います。しかし今はこの問題には触れません。触れませんが、その次に大きく問題になる点は何かというと、日本の国民生活なり何なりを確保するために必要な通商交通路の維持、確保ということであります。もっとはっきり言えば、軍、民がいざという場合において必要とする必需物資の確保ということ。これはあなたが戦争をやられたときの事情と今度の事情とは完全に違うわけであります。これに対しては今の日本の海軍ぐらいで、あれだけ大量の物が、いわゆる有事になった際に簡単に確保できるものとは思われない。もう一つは戦争の様相が変わってきますから、従って民間防衛、国民自体の生命財産を守るという問題が、今までの戦争とは全く変わったものになってくることは明らかです。最低この二つを要件として防衛計画を立てていかなければならぬと思うのです。それがない限り、幾ら政府が偉そうなことをお言いになっても、国民としては不安でたまらないということなんです。こういう点についての計算なり計画なり、アメリカ側との打ち合わせが何もできていない。あるいは今後やるなら協議だけで何とかやっていきましょうというのでは、非常に私は不安だと思いますし、これは手抜かりだと思いますが、この点についてはどうなっておるのかという点が第一点。  もう一つは、逆な立場で、アメリカ側は日本に対しまして、共同防衛という責任を日本が持つ限り、アメリカ立場からする日本に対する一定の兵種、兵量あるいは分担任務、兵器、あるいは軍用物資、こういうものの要求が当然あるはずであります。もしこれをアメリカ側がしないというならば、アメリカ側がまじめに日本を守る気がないということであります。ただ日本の基地を使って極東戦略に日本を利用するというだけであって、もしアメリカがまじめにこの問題を取り上げるというならば、日本側に対するはっきりした要求があるはずであります。そういう場合に、特にそういう再軍備の要求なり、こういう兵種をこういうふうに増強しろとか、あるいはもう一つの問題は、有事の際に、たとえば一定の公共施設、鉄道であるとか通信であるとか、こういうもののアメリカ軍による軍事管理といいますか、専用といいますか、こういうことであるとか、あるいは一定の地域の公共ないしは私的な家であるとか工場であるとか、こういうものを破壊する場合も防衛上、戦術上あり得るわけです。こういう要求、これが出た場合に、日本としてはこれをどうするのか、日本としてはこれを拒否するだけの何らかの条約上の権限があるのかないのか。  特に私はもう一つ強調しておきたいのは、これは岸さんも御承知通りアメリカ軍は、いよいよ戦争にでもなるということになりますと、御都合主義で戦略撤退というのをよくやるのです。御承知通りフィリピンでもマッカーサーがやったのです。同時に戦略破壊というのをやるわけです。これは南朝鮮で大規模にやりました。これはいざというときでなければあり得ないことですが、アメリカ側からこういう点の要求がきた場合に、日本が単なる事前協議や第四条の協議、ああいう弱いものでこれを断わるということはとうてい不可能で、もし可能であるとしても、それをアメリカ側が守らなかった場合には、単に条約違反ですよと文句を言っても始まりません。これをどう阻止する具体的なことをお考えになって、第五条の日米共同防衛ということに対処されるお考えか、こういう先々の問題を、明確に事実問題に対してしっかりお答えになることが私は今一番大事なことだと思いますが、以上あげました諸点についてどうお考えになっておるか。
  153. 岸信介

    ○岸国務大臣 国防会議において国防の基本方針を、さらに今それの具体的ないろいろなことを研究をいたしております。有事の場合において日本が必要な物資をどういうふうにして確保していくか、あるいは輸送路を破壊され、じゃまをされ、攻撃をされて、その場合に最低限の必要数量をどういうふうにして確保するかというようなことは、国防会議の研究題目として研究をいたしております。また四条において、日本の平和と安全が脅威を受ける場合とか、あるいは極東の平和と安全が脅威を受ける場合においては、両方が協議するということになっております。今のお話のように、現実に何か武力攻撃がされる場合においてとるべき各種の措置について、平事からいろいろな話し合いをしておくことについては、まだその運びになっておらぬと思います。私はもちろん突発的なことが皆無だとは申しませんけれども、今の国際情勢において、日本の平和が非常に脅威を受けるというような事態がさらに発展して、武力攻撃ということになることが普通の過程において考えられるわけでありますから、そういう場合において、そういう際の協議においては、それに対して両国がとるべき具体的の措置等についても、いろいろと協議の対象となって、真剣にそれが問題になると思います。今お話のように、日本自体の国防ということから考えてみれば、そういう非常の際における日本の地理的立場から、海上等の交通路をどうして確保するか、あるいは国民生活の必要物資というものをどういうふうに確保していくかというふうなことは、実は国防会議において重要な研究題目として研究をいたしております。
  154. 福田一

    福田委員長 久保田委員に申し上げますが、どうぞ質問を整理してお願いします。
  155. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 なぜ私がそういう質問をするかといいますと、本条の中には日米共同防衛、つまり第五条に当たるべき米軍の範囲というふうなものも、兵種も一つもきまっておりません。それからまたこれが分担すべき任務も明らかでありません。またこれがとり得る行動も事前協議である程度のものは押えられることになっておりますけれども、それだけで何もないのです。しかも行政協定その他を見ても、これに連関する問題についてはほとんどないのです。しかもこれは単に協議で両国の当事者だけが、政府だけが話し合って済む問題ではありません。全部これが国民の生命財産なり権利関係する問題であります。そういうものをそのときになってから両国の協議できめて実施いたしますなんということは、およそ無責任きわまることだと私は思うのであります。そういう点を突っ込んで話し合いになる、これをやるような条約上の何らかの基礎がなければ、これは私は困ると思う。また同時にそのことについては日本自衛隊法の中にも、大体においてはっきりした規定はないのであります。少しばかりあります。少しばかりありますけれども、あれではこれからの戦争に対処するようなことにはなりません。特に米軍という外国の軍隊が日本国内において軍事行動をとるということに関しましては、今まですでに平時であっても、いわゆる平時の軍事行動というか、それによってさえ国民が非常に大きな影響、損害なり、あれをこうむっておる。これが有事の際あるいは共同防衛一つあれになってやった場合におきましては、私はますますこういう点がよけいになると思うのであります。従って今までのところでは、そういう点については政府として、岸内閣としては何らかお考えになっておらぬという、全く無責任な態度以外にはないということがはっきりしたわけです。これでは困ると思う。この点について、私は総理がもしこの条約を本気に考え、国民の立場、国の防衛立場から本気に考えるというならば、私が申し上げたような諸点については少なくとも真剣にやらなければだめであって、それでなければ、こういう点を野放図にしておいてやったのでは、やはり現行条約のようにアメリカ日本の基地を使って極東で勝手な行動をする、そのしりぬぐいを日本がかふって、日本の国民が苦労するという以外にはなくなるわけです。この点を私は一つ総理に御注意申し上げて——まだたくさん私は質問条項がありますれども、与えられた時間はきわめてわずかでありますので、きょうはこれでもって一応質問を保留いたしておきます。
  156. 岸信介

    ○岸国務大臣 実は現行安保条約の場合におきましても、同様なことが問題になると思います。私が三年前にアメリカへ参りまして、アイゼンハワー大統領と話をして共同声明を出しまして、安全保障委員会というものを作りました。そのなには、一定の事項を協議するほか、安保条約から生ずる諸問題を両国の国民の利益と願望に沿うように、一つ運営しようという申し合わせをして委員会ができております。今度の交換公文でもそれを存続することにいたしておりまして、そういう趣旨で、今お話しになりましたような具体的の問題は、十分一つ安全保障委員会において論議して、きちっとした方向づけをするように努力いたします。
  157. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ただいま総理が申し上げた通りだと思いますが、私は久保田委員の前提において——きのうもやったのですが、そういう考え方だとすると、日本アメリカ共同になって戦争するためにはいかにするか、そういうことであり、そういう事態が生ずるということは全面戦争というか、世界戦争の場合が大体予想されることが多いと思います。私ども安保条約締結しようというのは、やはり繰り返して申しますように、そういう事態が生じないように、日本の平和と安全を守るための抑制力として考えておりますので、実は世界戦争に対処して日本アメリカがいかなる作戦行動をとるかというところまでは、協議といいますか、そういうことまで話し合うということは、この条約建前を越しておるといいますか、少し先に行っておると思います。しかし日本を中心としてどういうふうに考えるか、日本の平和と安全のためにどんなことに協議をし、作戦等についてもアメリカと打ち合わせをしておくかということについても今お話通りでありますし、また総理の御答弁のようなことだと思います。非常に広い範囲お話のように承りましたので、私もちょっと申し上げておきます。
  158. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 一言だけ、今のことで。もう時間がありませんから議論をするつもりはありませんが、きのうも申し上げた通り、何といっても今度の安保条約というのは二つの性格を持っているのです。片一方においては第六条における極東条項というアメリカ側の立場がはっきりある。片一方においては第五条の共同防衛という日本側の立場がある。この二つが、軍事の兵理からいってどちらがこの条約全体の運営を貫くかという基本の問題です。この点をあなたはやはり五条の日本立場だけから言う。私は兵理の中心をなす力関係から見て、どうしても六条のいわゆる極東条項というものがこの条約全体を貫く。従ってこの条約全体を規定する根本の性格をなしておる。従ってその内容をなすアメリカの極東戦略というか、これがはっきりつかまらない限り、きのうもいろいろ申し上げた通り、ほんとうに平和的なものでない限り、この安保条約だけに幾ら国連でござれの、平和でござれの、憲法でござれのと言ったってだめだ。一番基本であるものはアメリカの政策の問題、戦略の問題であって、この点を明確につかまないようなこの条約の理解というものは、全くの空に浮いた空想である。希望にしかすぎない。そういうひん曲がった認識下に立っているところに、国民が一番大きなこの条約に対して不安を感ずるのだということを、きのうからあなたに口をすくして申し上げているわけです。この事実も現実も申し上げているわけであります。ですが、これはもうきょうは議論いたしません。
  159. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私もその建前は何も日本ばかりということではなくて、日本の平和と安全と極東の平和と安全、この二つがあると思います。そこで日本から見たならば、どっちにウェートがあるかといったら、これは当然日本の平和と安全であり、それに関連した極東の平和と安全、アメリカ側から見れば、日本の平和と安全とともに極東の平和と安全の方に相当ウェートがあると思います。そこでこのウェートを調節するものが、この事前協議というものによって日本の平和と安全を害さないように、また極東の平和と安全を守るための橋渡しといいますか、やっているのが事前協議の制度だと思います。それで極東の戦略、極東の戦略といってアメリカが戦争をして攻撃する、そういう立場だということからいけばこれはもっと深く考えなければなりませんが、建前がそういう関係からいっても、日本安保条約関係からいってもそういうものではない、こういうふうな立場に立って私どもは言っているわけであります。
  160. 福田一

    福田委員長 時間がありませんから簡単に柏委員質問を許します。総理に対する質問は実は終わっているです。特に交渉してお願いしましたからどうぞ簡単に。柏正男君。
  161. 柏正男

    柏委員 私はもう持ち時間がございませんので、総理に一言だけ質問いたしたいと思います。といいますのは、国家緊急事態に対する最終の決定権の問題について、たとえば新安保条約にしましても現行安保条約の問題にしましても、侵略の事実、武力攻撃が起こったという事実の判定、こういうことは非常に重大な問題だと思います。それに対して実際問題とすれば、国家緊急の事態である警察法による警察の緊急事態宣言の場合は、総理大臣が緊急事態の布告をされる。あるいは防衛出動については、待機命令は防衛庁長官が出すが、出動命令は総理大臣が出す、治安出動についてもそうでございます。しかしながらこの三つの緊急事態におきまして、これはいずれも国会の承認を得なければならない。そういうことになりますと、国会が承認しなかった場合、総理大臣がたとい出動の命令を出されてもそれを撤回しなければならない。そうしますとこの緊急事態の最終の決定権はどこにあるのか、そういう点について、総理大臣の権限と国会との関係という点について御答弁を願いたいと思います。
  162. 岸信介

    ○岸国務大臣 これは私は自衛隊法の法律の解釈の問題だと思いますが、法律の建前から申しますと、そういう緊急の場合における出動、従ってそういう命令する権利というものは時の政府にあり、その政府の首班である内閣総理大臣の認定ということになると思います。ただそれは認定し、そういう出動を命じてもよろしいけれども、あとでもって国会の承認を得なければならないという規定、もし承認を得なかった場合においては出動を取り消さなければならぬ、撤収しなければならぬという義務が生ずるわけであります。そうだからといって、前の命令すること自体は時の政府がそういう認定をして命令をする、事後において承認を求めることができなかったら法律の定めるところの手続方法によってその効が生ずる。しかしそれ以外に、そういう場合における政治責任の問題は、先ほどから議論をしたように、これはまた法律論を離れて、政治責任の問題は別に残る、こう解釈いたすべきだと思います。
  163. 柏正男

    柏委員 緊急事態のまた認定の問題でございますが、この認定は一体どこで緊急事態の認定をしていくか。たとえば侵略があった場合、侵略があったという事実上の認定をするのは、事実戦闘行為をしていく担当者としての統幕会議議長あるいは第一線部隊の指揮官である。そういうやはり侵略の事実の認定、これは相当重要な問題だと思いますが、この認定権者については何か考えられるところがあるのですか。
  164. 岸信介

    ○岸国務大臣 これは五条の問題に関連して、武力攻撃があったということはだれが認定するのだということになれば、私は政府であると思います。もちろん政府がそういう認定をするのについて、現実に武力攻撃があった地域における関係者からいろいろな報告をとったり、事実のなにの資料を出すことは、これは当然だと思います。しかしそれの判断をする、武力攻撃があったということは、これは政府がやるべきことである、こう思っております。
  165. 柏正男

    柏委員 しかし実際の場合、今からの戦争の進み工合から見たら、敵の飛行機が入ってきた、レーダーがキャッチした。総理大臣の認定を待つまでもなく、第一部隊はもうミサイルを撃たなければならないという状態が起こると思います。そういう場合には一体だれがそういう責任をとらなければならぬのか。
  166. 岸信介

    ○岸国務大臣 そういう場合におきましても、この防衛出動というものは、自衛隊の法律によりまして、総理大臣の命令がなければ勝手にはできないと思います。
  167. 柏正男

    柏委員 実際問題としては総理大臣の出動の命令が出なくても、第一戦部隊は撃つのではないかという感じがいたします。それはほんとうにそういうことが私はあり得るだろうと思う。たとえばソ連の場合だって、U2が飛んできた。まさかフルシチョフの許可を得なくても、第一線部隊は撃っただろうと思う。そこが非常に問題だと思うのです。実際問題として認定権者が一体どの程度までそれを拡大できるものかというのは、私はこの前の十一月二十七日のデモ事件のときに議長室におりましたが、もう非常事態——これは警察の非常事態の布告宣言でしょうが、これをぜひするべきだという意見の議員の人もたくさんおられた。そういう中で、私はほんとうにこういう混乱の起こったときに、一体だれがこういうことをきめていくのだろうか。ちょうどそのときは総理大臣もたしか参議院の会議に出ておられたはずです。そういう状態であったときに、きっと総理大臣はあの事態を見られても、まあ大丈夫だとお考えになったから郷里の方にお帰りになったのだと思いますが、一体あんな場合に、総理大臣がおられたからいいけれども、もしもっと事態が変わっておりましたら、ほんとうに一体だれがこの事態というものをきめていくだろうか、非常に私はそういう場合に心配を持ったのです。そういう意味で私はやはり最終の決定権は国会にあって、国会がこの場合の事態の最終の決定権を持つ。しかし第一の認定権は、これは実際の第一線にも相当に私はあるのではないかという感じがする。その点について……。
  168. 岸信介

    ○岸国務大臣 たとえば飛行機であるとか船舶が他から不当に攻撃された、そうしてそれについて、いわゆる正当防衛意味においてこれに対して何か行動するということは、私はある程度許されていると思いますが、しかし防衛出動について自衛隊そのものが、ある国からの攻撃に対して、こっちも組織的にあくまでもこれに抵抗して、これを排除するというような形におきましては、これは時の政府が認定して防衛出動を命じない限りは、私はあくまでできないと思う。それからこの安保条約における武力攻撃があった場合という事実は、これは事実問題でありますが、今言ったような、何か飛行機なりあるいは船なりが敵の飛行機なり何なりで攻撃を受けたということでもって、直ちに武力攻撃とはわれわれ考えておりません。一国が日本に対して組織的に計画的に一つ武力攻撃を加えてくる。従ってそれに対しては自衛隊防衛出勤を命じて、日本としても組織的に計画的にこれを排除するところの対抗措置をとらなければならないというような場合であろうと思うのです。そういう意味におきまして、その認定はあくまでも行政府の長であるところの内閣総理大臣を首班にしておる政府がきめる。しかしそれをきめるについては、原則として事前に国会の承認を得ろ。しかし緊急でできなかった場合においては、事後において承認を得ろ。承認を得なかった場合には、こうこうこういう措置をとれ、こういうことはきめてありまして、やはり建前からいうと、それの認定は、政府という行政権にまかされておる。しかし事前、事後において国会はそれに対して、承認を与えもしくは不承認を与えるというような立場においてこれを審議して、そうして最後的の結論が出る、こういうことであろうと思うのです。しかしそれは承認を得るという手続を経なければならないということに法制上なっておるということは、私はやはりその本質はまかされておるが、しかしそれには条件があって、こうしなければならぬ、こういうふうに解釈すべきものではないか、こういうふうに思います。
  169. 柏正男

    柏委員 実際問題として、最終の決定権は国会にあるというのを私は主張したい。というのは、たといどんなに行政権の長としての総理大臣が認定をしても、その認定というものが無効になるという意味においては、私は国会が最高の権限を持っていると思う。自衛隊の出動に関しても、国家緊急事態の宣言についても、治安出動についても、最高の権限を持っておるのは国会であるということを総理大臣において確認してもらいたい、そういう私は意見を持っておるのです。
  170. 岸信介

    ○岸国務大臣 これは憲法建前から申しまして、三権分立の建前からいうと、こういうことの認定については、私は原則は行政に属するものだという解釈から、先ほどのようなお答えを申し上げました。しかし同時に国会はいわゆる国権の最高の機関でありますから、とにかくあらゆる問題についての一番最高の判断なり最高の決議をする力を持っておるという意味から申しますと、もちろん国会が不承認の決議をした場合において、これを尊重しなければならぬことは言うを待ちません。そういう建前において法律にもその場合のことが規定してありますけれども、私は先ほど言った三権分立の建前から言うと、行政府に一応その判断はまがされておるというふう解釈すべきものではないかと思っております。
  171. 福田一

    福田委員長 次に兒玉末男君。
  172. 兒玉末男

    兒玉委員 私は防衛庁長官にお伺いしたいと思うのですが、これは二月の二十三日の内閣委員会で私が防衛庁当局の見解をただした宮崎県の西諸県郡の真幸町と加久藤町に発生いたしました自衛隊の実弾射撃によって生じました林野を含めて約一千町歩の火災が発生をした問題について、防衛庁長官並びに当時の教育局長あるいは経理局長は、すみやかに事態を調査して、そうして賠償の点についても早急な補償を行なうということを言明をいたしておるわけであります。ところが事件発生以来すでに三カ月を経過した今日、いまだにその賠償額についての最終的な結論、あるいはその措置ができていないということである。実は去る五月二日に現地の市町村長の見解を聞いておるわけでありますが、一体どういうところにその問題があるのか、あるいはその後の措置はどうなっておるのか、この点についての見解一つ承りたいと思っております。
  173. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ただいまお話通りの経過をたどりまして、私どもの方といたしましても早急に補償をきめたいということで話を進めておるわけでございます。ただ補償の金額の基礎額算出といいますか、そういうことにつきまして私どもの方と、現地でいえば町長の方との最終的な意見のまとまりというものを、まだ得るに至っておりませんので延びております。その詳細につきましては事務当局から申し上げます。
  174. 兒玉末男

    兒玉委員 話がまとまっておらないという御意見でございますけれども、私はおそらく防衛庁の方がその金額の面なりあるいはこの事件の発生の原因というものが、重大なる過失もしくは国家の公的な権力行使にあたっての法的な違反というものがない、こういうような見解でもって、その損害額についてきわめて零細な金額を押しつけようとしておる、こういうような動きがあるということも私は聞いておるわけでありますけれども、一体防衛庁としては、この事件について法的であろうがなかろうが、とにかく防衛庁の重大なる過失であるということは、万人のひとしく認めるところでありまして、防衛庁のこの責任に対する態度というものがきわめて冷淡ではないか、あるいはその責任の感じ方というものがきわめて軽薄ではないか、このように判断するわけであります。こういうことが今日この賠償額決定をおくらせている最大の理由ではなかろうか、このように感ずるわけでありますが、この辺の見解についていかがでしょうか。
  175. 山下武利

    ○山下政府委員 防衛庁といたしましては、事件発生以来地元の方にも御協力を申し上げまして、災害地の取り片づけとか、あるいは新しい苗の植付等につきまして、部隊の力をできるだけ動員しまして御協力申し上げてきたわけでございます。一方損害額の算定につきましても、できるだけ各方面の調査を急いで参っておるわけでございます。まず第一に被害面積を確定しなければならないわけでございます。自衛隊といたしましては、一応の結論というものを今のところ持っております。ただ御承知のように被害地は真幸町というところと加久藤町というところと二つにまたがっておるわけでございます。加久藤町の方につつきましては、地元の御主張になるところの被害面積と、自衛隊側の調査の結果とが全く一致しております。真幸町の方につきましては、地元の方の御主張になっておりますところの被害面積が、自衛隊の方の調査を相当上回っておるという、要するに両方の不一致がございますので、その間をもう一度調査しなければならないという段階にございます。もう一つは、地元の山林は、林野庁の所管いたします国営保険の対象になっておるのでございます。この保険金を支払います関係から、林野庁当局においても当然被害面積の査定をしておられるわけでございまして、林野庁の方の報告によりますと、やはり加久藤町の方は全く防衛庁側の意見あるいは地元の意見と、林野庁の意見とは合っておるのでございます。真幸町の方につきましては、林野庁の方の御調査によりますと、自衛隊側の調査よりもなお若干下回るような結論が出ておる。ここに三者まだ意見の合わない点がございますので、それを目下調整をするというふうな段階で、事態が若干おくれておるということでございます。林野庁の方の御意見を伺いますと、大体国営保険の額の決定は、七月の上旬ぐらいであろうかということでございますので、防衛庁といたしましても、できるだけそれまでの間に各方面の資料等もそろえまして、損害額の算定あるいはこれに対する防衛庁の態度というものを、早急にきめたいと考えておるわけでございます。  それからお尋ねのこれに対する防衛庁側の責任の問題ということで、いろいろ当時の実情等をその後調べて参ったのでございます。防衛庁が損害賠償の責めに任ずるためには、やはり何らかの法的な根拠、裏づけが必要なわけでございます。これについていろいろと今まで調査いたしておるのでございますが、例の民法によります失火の責任に関する法律、これによりますと、重過失の場合にのみ民法上の責任を負うということになっておりまして、当時の実情からは、どうもこの法律には該当しないのではないかというふうに考えております。当時の実情は、この前も御説明申し上げましたように、全く火の出ることが予想されないところの榴弾砲が、偶然の事故でたまたま岩に当たったのがもとになりまして、その火花が散って大きくなったということでありまして、防衛庁の演習に因果関係があるということはこれは確かでございます。しかし防衛庁側に法律上の責任があるかどうかという問題になりますと、なかなかむずかしい問題になって参りまして、民法上の失火に関するところの責任というものには該当しないのではないか。それから第二に、国家賠償法によりますところの責任でございますが、第一条の公権力の行使に伴い云々というところは、実際の演習場の中におきますところの演習行為というものは、公権力の行使という概念には当たらないということが、一般の解釈として言われております。第二条におきますところの施設に瑕疵があったかどうかという問題でございます。これも現在のところは今申し上げましたような事態で起こった火災でございますので、演習場の施設に瑕疵があったということには該当いたさない。こういうふうに見て参りますと、どうもはなはだ冷淡なようなお感じを受けられるかもしれませんけれども、少なくとも法律上当然防衛庁が賠償の責任を負うというところの根拠を探すのに困難だという状態でございまして、片一方国営保険によって一応損害は補てんされるという国の建前になっておるわけでございますから、それで一応は地元の損害補てんということはできるのではなかろうかという解釈も成り立つわけでございます。ただ保険金額というものは、実際の算定にあたりまして、やや低く評価されておるといったような事態もあろうかと思いますので、自衛隊におきましても、林野庁の算定されますところの損害算定の方式によりまして、独自の見解で一応の損害額というものを——被害面積が確定いたしましたならば、早急に算出いたしまして、その差額の一部につきまして、何らか見舞金というふうな意味におきまして、地元の損害を補てんさせていただきたいというふうな気持は持っておるわけでございます。現在のところの進行状況はそういうふうなわけでございます。
  176. 兒玉末男

    兒玉委員 私は局長の見解はきわめて一方的な見解だと思うわけです。あなたは現地の調査をどの程度お聞きになっているかわかりませんけれども、少なくとも当時の客観的な情勢というものは、風速十三ないし十五メートルという異常な状態にあったということ、それから付近一帯はほとんどカヤ場であって、ちょっとの火熱状態でも火災を発生する状態にあった。また当時の気象状態から見ましても、異常乾燥の状態であって、火災警報も出されておったように私たちは聞いておるわけです。当時私は宮崎県に帰っておりまして、非常に天気のよかったということもよく記憶をいたしております。そういうふうに客観的に非常に火災が発生する情勢にあったということ。二月二十三日の内閣委員会における防衛庁長官なりあるいは教育局長の回答におきましても、これは事前の措置が十分であったとは思われない、こういうような意味の回答もされておりますし、さらにまたそういうふうな場合には、火災発生のおそれのある場所では実弾射撃は行なわない、たとえば曳光弾等は使わないし、十分に注意する必要もはっきり認めておるわけであります。ただ経理局長は金を払う立場から、あるいはその賠償の支払いが重大なる過失でないと言われるけれども、客観的に非常に火災が発生しやすい状態の中において行なわれた演習であったということ、もう一つは、その当日午前中二回ほど火災を起こしているわけです。そういうことがわかっていながら、あえてこれを強引に続行したというところにも、私は重大な過失があったと認めないわけけにいかないわけです。同時にまた、その火災が発生した場合に、十二分な消火に対応するだけの措置ができておるならば、一千町歩という広大な林野と町有林に対する類焼は完全に免れたにもかかわらず、自衛隊の諸君は自分の着ている外套でこれを消すという実にぶざまな格好で消火に努めている。しかもこれに対して現地は一千人以上の一般の町民あるいは消防団等が協力して、これを最小限度にとどめたということは、現実から判断いたしましても単に金の支払いということではなくて、明らかに自衛隊の実弾射撃演習がもたらしたところの失火というのが最大の原因であるということは、これは現地の指揮隊長も認めておるわけです。それに対して失火に関する法律がどうだとか、あるいは国家賠償がどうだとかいうのは、私は単なる言いわけにすぎないと思うわけです。その辺についての見解はどうですか。
  177. 山下武利

    ○山下政府委員 ただいま申し上げましたのは、法律上の解釈として当時の実情を勘案してこれに当てはめてみますと、そういうことになるということを申し上げたわけでございます。自衛隊の演習が因果関係で火災を起こしたということはこれは事実なのでありまして、そのために地元にも非常に大きな被害を与えたということにつきましては、防衛庁としても非常に恐縮いたしておりますし、また地元の総監等もいろいろ地元に対して遺憾の意を表し、またこの復興についてもできるだけの御協力をするということを申し出ておるのでございまして、地元の方も納得をしておられる点があるというふうに聞いております。ただこれを国家賠償法あるいは失火に関する法律というものに適用して考えますと、全面的に防衛庁がこの損害賠償の責めに任ずるということができないということを、法律上の見解として申し上げたわけでございます。今申し上げましたようなことでもって、地元のお気持も十分そんたくした上で今後処置をしたいということで、過去三カ月にわたっていろいろ調査もし、また地元の意見等も伺っておるわけでありまして、決してこれをなおざりにしていこうというようなことではないのであります。
  178. 兒玉末男

    兒玉委員 私は防衛庁長官にお伺いしたいと思うのですが、私たちが今まで知り得たいろいろな情報によりますと、大体二百万円程度の見舞金でこれを済ませよう、こういうふうなこともある筋から話を聞いておるわけでありますが、これではとても百町歩近くの公有林を焼かれた町当局、あるいは町民が納得できないと思うのです。また当時の状態で私は特に御指摘したいのは、真幸町、加久藤町並びに宮崎、鹿児島両県知事、それに防衛庁側の三者でもって、この演習場の使用協定というものを三十年五月十一日に作っておるわけです。これに対しまして、そのような実弾射撃等なり、あるいは危険を伴う訓練を行なう際においては一週間前に通告をして、そうして演習等によるところの災害の発生を未然に防止する、こういう協定ができておるわけです。にもかかわらず、当日はそういう異常な状態にあったにもかかわらず、その日の二時間か三時間前にしか通告をしておりません。こういうふうな実情もあるわけです。その点は長官の方に連絡があったかどうか、協定に対してそれを事前に通告してないということです。その点はどうですか。
  179. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 協定について事前に通告したかどうかということを私はその当時聞いておりません。ただ従来曳光弾とが黄燐弾等の発火しやすいものについては、この演習場では使用を禁止しているわけであります。これは協定の中にあるのであります。対戦車榴弾の飛散弾は通常の銃弾程度でありますので、この協定では正確にはしておらなかった、こういうことではないかと思います。しかし事実上といたしまして、演習全体につきまして一週間前に通告をするということになっておるといたしまするならば、その点について通告があったかどうか、実は私のところまではそれは聞いておらなかった次第でございます。
  180. 兒玉末男

    兒玉委員 私は参考に正式な正本による協定の写しを作成させて持ってきているわけです。こういうふうに書いてあるわけです。協定に調印をしているのは吉松町長、真幸町長、加久藤町長、それから陸上自衛隊第四管区総監松谷誠、鹿児島県知事、宮崎県知事、以上三者による正式な協定書が交換されております。そうしてこの協定の三項の六号にこういうふうに書いてあります。「総監は実弾射撃並びに特殊の演習等に際しては、危険防止上必要なる施設をなし、」これは明らかに防衛庁側の責任を明確にさしておるわけです。「且つ少くとも一週間前に所要の事項を関係機関に連絡し、相互に火災防止に関し万全を期すること。」こういうことを明確に協定にうたっているわけです。これを完全に怠っているわけです。この点一つからとりましても、完全にこれは重大なる防衛庁側が、ミスを犯しているということを私は指摘せざるを得ないわけですが、この点について長官並びに関係局長、どうですか。
  181. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 その点につきましては、経理局長も申し上げましたように、自衛隊の演習が因果関係として原因をなしておる、こういうことにつきましては自衛隊としても申しわけない、こういう考えを持って対処しているということを申し上げたつもりでございまして、私もそういうように考えております。
  182. 兒玉末男

    兒玉委員 そういうことでありますと——それからそれに関して私はお伺いしたいのでありますが、昭和三十一年五日一日の陸上自衛隊達第五十五の一号によって、陸上自衛隊の賠償規則というものが定められておりますが、この陸上自衛隊達五十五の一号というのは、現在も有効であるかどうか、まずこの点からお伺いしたいと思います。
  183. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 事務当局から……。
  184. 山下武利

    ○山下政府委員 今手元にその賠償規則を持ち合わせておりませんので、日付その他がそれに該当しておるかどうかということは存じませんが、現在陸上幕僚監部といたしましては、賠償規則を持っておるということは事実でございます。
  185. 兒玉末男

    兒玉委員 この賠償規則を読んでみますと、そういうふうな行為に対する賠償をこの規則によって行なうということが明確に規定づけられております。そういたしますと、私が今まで申し上げた通り、この演習による災害の発生というものが、明らかに自衛隊側の重大なる過失である。しかもそういうふうな地元との協力体制をとり、しかも支障がないためにわざわざ事前のこういうふうな協定等を結んで、しかも公文書として取りかわし、そうしてちゃんと一週間前に通達をし、あるいは災害発生に対する万全の施設を講じて、演習なりあるいは射撃を実施する、こういう事前の協定を全く無視したこのこと自体でも、十二分に自衛隊側の重大なる責任であるということを私は明確にしたいわけであります。そういう点から申し上げますならば、先ほどの経理局長答弁によりますと、林野庁関係のこともあり、そちらの損害額がきまってから云々と、きわめて消極的な態度をとっていることは遺憾であると思います。むしろ面積の問題等につきましても、私も現地を四月の三日でございましたか、約三時間ほど全部回ったわけでありますが、決して焼いたところの面積の測定が困難であるとか、あるいはまた大幅な面積の食い違いだとか、あるいは立木の状態にいたしましても、当時までは全然焼いたそのままの状態でありまして、御承知のようになま木でありますから、枯木でありませんので、ちゃんと焼け跡そのまま残っているわけです。そういう点等から判断いたしましても、決して地元側の要求する焼け跡の面積と防衛庁側の主張と、そんなに格段の食い違いが生ずる理由は全くないと思います。しかも焼いたそのままの状態で、焼け跡の根なんかもはっきりと残っておりますし、私なんかも多くの写真も証拠物件として持っているわけでありますが、そういうふうに具体的に物事が解決できる筋合いのものを、やはり一番問題のネックになっているのは、賠償額の問題が非常に防衛庁として問題になっている。こういうことで、これだけの莫大な損害を与えながら、しかもそれに対してじんぜん日をむなしゅうして、いまだに積極的な解決をなさないというのは、何はともあれ、きわめて遺憾なことであると私は思いますが、今後のこれに対する賠償支払いの進め方なり、今後の見通しなり、または大体どの程度の目安をもって賠償を支払う気持があるのかどうか、この点についての御見解を伺いたいと思います。
  186. 山下武利

    ○山下政府委員 一部は先ほど申し上げましたことの繰り返しになって恐縮と存じますが、防衛庁といたしましては、焼け跡の整理並びに苗の植付等によります地元の実際の復興ということにつきまして、とりあえず十分の御協力を申し上げて参ったところでございまして、また損害額の算定につきましては、先ほどから申しておりますように、まず被害面積の彼我双方の主張を合わせるということが大事なわけでございます。ただいま真幸町の方につきましてどうしても見解の相違があるということは、私もどういうことが根本の原因であるか、若干理解しがたい点はございますが、防衛庁並びに林野庁で主張しておりますところの被害面積よりも、地元の御主張の方が若干上回っておるということは、まずどういう点に原因があるかということを突きとめました上で、適正な損害額の算定をいたしたい、そうして国営保険によるところの損害の保険ということの措置と相待ちまして、防衛庁としてどれだけのことをいたさなければならないかということをあわせて考えたいと思うのであります。その時期は大体あと一月ないし一月半ぐらいを要するものと考えております。
  187. 兒玉末男

    兒玉委員 私は今の経理局長答弁ではどうしても納得できない点が二、三点あるわけです。というのは、面積とかあるいは金額の面の多寡ということは、これはいわゆる現象面であって、この支払いの根拠であるところのいわゆる法的な問題について、私が今までの答弁ではどうしても納得できないことは、先ほど局長が申されたように、いわゆる失火の責任に関する法律なり、あるいは国家賠償法等の法的な支払いの責任がないというふうな法理論上の見解を述べられているわけでありますが、この地元と取りかわしている協定なり、またそのときの客観的な情勢、同時にまたこれを指揮した指揮隊長も非常に責任の重大さを痛感している、そういういろいろな客観的な諸情勢を総合いたしますならば、法律の文句の内容というものは私はよくわかりませんけれども、少なくともこのような災害を発生した重大な責任があるという前提に立つとするならば、単に法律をいじり回していることでなくて、率直に防衛庁はその責任を認めていただきたい。法律的にはこれは全然責任がないのだ、もしそうなるとするならば、いわゆる民事上の訴訟とか、そういう形によって裁判にまで持っていかなければ解決ができないというようなことになりますと、今後やはり自衛隊に対するところの一般民衆の不満というものはますます増大して、霧島の演習場においては、そういう不正な態度をとるとするならば、おそらく今後地域住民と自衛隊の演習開催についても、重大な政治問題に発展してくるおそれがあるということを特に憂えますので、今度の事件の発端というものが、明らかに法律上の字句の表現ではなくて、具体的な問題として防衛庁に重大な責任がある、こういうふうな判断に立つとするならば、あまり法理論だけをたてにとり、あるいは今後会計検査院等の検査がやかましいとかなんとか、そういうこと等も一部言われている筋があると聞いているのですが、これは全く本筋をはき違えた言い方ではないかと考えるわけです。そういう法的な関係と、それから今後の自衛隊の演習場に対する地域住民の協力体制、またはこういう第三者間において協定されているところの協定書の完全な履行、こういうことを完全に行なって初めて自衛隊の責任が免れるわけであって、こういう事前の対策を講じなかったところにこの問題の原因があるということを、はっきりと防衛庁長官並びに局長は御理解いただきたい、このように私は感ずるわけですが、このことに対する長官並びに担当局長の明確なる御答弁をいただきたいと思うわけです。
  188. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お考え方に別に異議を申し上げるわけではございません。ただ先ほど局長が、法律を当てはめるとすればこうこうで、法律に当てはまらないということを申し上げただけで、そのために防衛庁として責任を免れようとか、あるいは解決をおくらしている、こういうことではなくて、やはりそういうことであっても、防衛庁といたしましては、法律上の的確な当てはめがないとしても、今お話のようないろいろな点から考えましても、これに対して賠償といいますか、補償といいますか、それをやろうということで、せっかく地元とも折衝いたしておることでございます。でありますので、局長が申し上げましたように、なるべく早急に地元と一致しない点を調整いたしまして、この解決に当たりたい、こういうふうに考えております。
  189. 山下武利

    ○山下政府委員 今長官が申されました通りでございまして、法律上の見解のいかんによってどうしようということはわれわれ考えておらないのでございます。ああいう演習場で円満に演習を続けていくためには、どうしても地元の十分の御協力を願わなければならないというのは当然なことでございまして、そういう意味におきましても、今回とにかく自衛隊の演習というものが動機になりましてこういう災害を起こしたということについては、防衛庁も非常に遺憾の意を表しておりますし、また西部方面総監もさっそく地元に陳謝の意を表しに出向きましたし、また部隊の力をあげまして損害の復旧、地元の復興等にもできるだけのお力添えをするということにしておるわけであります。損害の査定並びにこれに対します今後の措置につきましても、十分に誠意を持って処置いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  190. 兒玉末男

    兒玉委員 最後に申し上げたいのは、この演習場の使用協定の二項に、「3者は将来予想される問題の処理機関として、下記構成の協議会を設置し、事務所を真幸町役場内に置く。」そして防衛庁が三名、地元が三名、県が各一名、計八名でもっていろいろな問題の協議会を設置することができる、とうたってあるわけです。この協議会が持たれたかどうか、そういうことが持たれたとするならば、地元側とそれから防衛庁側との極端な見解の相違というものも、やはり三者がこの構成に加わっておりますから、第三者の公平なる判断によってそういう極端な見解の対立というものはあり得ないのじゃないか、またこの火災の発生の際に、この三者構成の協議会等のメンバーによって、そういう話し合いなりあるいは損害賠償に対するところの協議がなされているかどうか、もしなされておらないとするならば、こういう協定の趣旨に沿って、すみやかにこの問題の解決に当たっていただきたい。私は地元の代議士といたしまして、何もこの損害額について地元民を扇動したり、あるいはことさら非常な難問題を吹っかけてやっているのではないのであって、やはり地域住民、特に宮崎県、鹿児島県は地方自治体も貧弱でありますので、こういうような町有林というものは貴重な財産になっている。そういう地域住民の感情というものも十分考慮に入れた上で、問題の処理に当たらなければなかなか解決はむずかしい。そういう点から申しまして、わざわざこの協定書で三者による協議会の構成も明らかにされていることでございますから、こういう機関も十分活用されて、早期の円満な解決を重ねてお願い申し上げまして、私の意見と質問にかえたいと思います。
  191. 福田一

    福田委員長 次会は明十七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十三分散会