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1960-04-07 第34回国会 衆議院 内閣委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月七日(木曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 淺香 忠雄君 理事 岡崎 英城君    理事 高橋  等君 理事 高橋 禎一君    理事 前田 正男君 理事 石橋 政嗣君    理事 田万 廣文君       内海 安吉君    小金 義照君       谷川 和穗君    富田 健治君       橋本 正之君    山口 好一君       飛鳥田一雄君    久保田 豊君       杉山元治郎君    中村 時雄君  出席政府委員         通商産業事務官         (公益事業局         長)      小室 恒夫君         建設政務次官  大沢 雄一君         建設事務官         (大臣官房長) 鬼丸 勝之君         建設事務官         (計画局長)  關盛 吉雄君  委員外出席者         農 林 技 官         (農地局建設部         長)      清野  保君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 四月五日  委員中村時雄辞任につき、その補欠として中  崎敏君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員中崎敏辞任につき、その補欠として中村  時雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  建設省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第九二号)      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  建設省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、前会に引き続き質疑を許します。久保田豊君。
  3. 久保田豊

    久保田(豊)委員 まず第一に当局の方にお聞きいたします。この委員会政府側から配られたと思われる「公共用地取得対策について」という文書について見ますると、問題を土地収用法そのもの改正ということにしぼっておられるようでございますが、その前提となるのは、土地収用公共用土地取得が非常に困難になったということが前提になっておるようであります。そこでどの程度困難になったかということについて、私は具体的にお伺いをいたしたいと思うのであります。  第一に、毎年々々公共ないしは公益のための土地取得、もちろんこれには建物その他のいろいろの問題も含まって参りますが、土地取得件数が大体どのくらいあるのか。特に第三条の起業者別公共用あるいは公益用土地取得が年々どのくらいの件数があるのかという点について、お調べになっているものがあるならばまず明らかにしていただきたいと思います。もちろんこのうちには、いろいろの手続をとって——土地収用法事業認定を受けたものとかないしは裁決を受けたものについては、資料をいただいておりますからわかっておりますが、全体として大体どのくらいあるのか。これは少し意地の悪い質問になろうと思いますが、第三条の起業者別についての大体の件数はどのくらいあるのか。これは実はすでに資料をいただいたのでありますが、わからないという話であります。しかし大体の見当等でもわかっておれば、一つお答えを願いたいと思います。
  4. 關盛吉雄

    ○關盛政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、最近の公共事業投資等の増大に対応する事業執行の隘路というものが用地取得であるということは、建設省関係予算の中におきましても、道路河川等事業直轄事業で実施いたしております部分が、毎年々々道路整備関係でありますとかあるいは一般改修工事等において相当増額いたしておりますが、この予算繰り越しを見ておる。その原因の大部分は、いずれもこの用地取得計画をしておりまする当該年度内に困難であるということのために、繰り越しを生じておるというものでございます。またその繰越額におきましても、大体過去二年ほどの経過を見ますと、直轄につきましては十四億程度繰越額を来たしておるのでございますが、二年ほどの間におきましては二億内外の増加を見ておるのでございます。なお道路公団等が行ないます名神高速道路のような場合につきましても、一番大きな原因は、やはりこの用地対策ということが計画年度予定よりおくれておる理由になっております。従ってこの用地取得対策ということをめぐりまして、一方におきましてはいわゆる公共用地取得対策というものを、われわれ現在用地取得の困難を予想せられるところにつきましては、土地収用法事業認定を受けるような方法によって、極力土地収用法の土俵の上で用地取得対策を進めるようにという指導をいたしておるのでございます。土地収用法土地収用法によらざる任意契約によって用地取得する件数の全体の関係は、関係各省全部にまたがっておりますので、この前御質問のありました資料にはちょっと掲げることが困難でございましたが、用地取得件数土地収用法事業認定の昨今の状況に徴しますと相当に増加をいたしておることは、差し上げました資料によって御了承をいただいておる通りでございます。
  5. 久保田豊

    久保田(豊)委員 このいわゆる公共事業土地取得関係については、あとで私はお尋ねをしたいと思います。なかなかわからないでしょうが、全体の公共用地の、公共事業ないしは公益事業のための土地取得件数が、大体どのくらいはあるかということくらい調べてかからぬことには困るだろうと思うのです。そういう中でいわゆる事業認定にかかったものはどのくらいあるのか、あるいは裁定まで持ち込んだものはどのくらいあるのかということを客観的に調べずに、ただ土地取得が困難であるというだけでは話にならぬと思うのですが、このいただいた資料によっても、あるいは農林省のいろいろ発表しておる資料によりましても、農地だけで見まして、都会地宅地等は除きましても、転用、転売の件数というものは相当多い。いただいた資料によりますと、これは公共だけではありませんけれども住宅敷地とか、鉱工業あるいは発電所設備用地とか、学校用地、その他の建物施設用地、公園、運動場用地道路水道等用地、これらの総計を見ましても、大体において十五万件から二十万件の間の件数があるわけです。私はおそらくこれ以上件数としてはあるだろうと思う。これが実際にどうなったかということを、こういう土地収用法の問題を取り上げる以上は、政府としてはもう少し的確に——ほかの官庁のことは知らぬ、おれの方でやっているだけで、土地収用は困難だったから何とかしなければいかぬ、そんなべらぼうなことで土地収用の問題が簡単に扱われては困るわけです。  そこで私は具体的にお尋ねしますが、いわゆる任意契約に基づくものがこの大部分だと私どもは思う。あなたの方からいただいたいろいろな資料を見ましても、そのうちでもってたとえば事業認定に持ち込んだ件数裁定に持ち込んだ件数は、一年間とすれば知れたものだ。十万ないしは二十万というような多くの件数の中で、そういうものに持ち込んだものは、まるでりょうりょう暁の星のごときものだ。その事業認定なりあるいは裁定に持ち込むには大へん経過があるわけです。そこでまずこの土地収用法の中にあります立ち入り調査段階紛争になった件数がどのくらいありますか。さらに第二章の二によります土地収用法事業認定になる前のあっせんによるところの成功件数がどのくらいあるのか、不成功件数が幾らあるのか、あるいは第四十条の協議によって成功した件数がどのくらいあるのか、不成功件数がどのくらいあるのか、これだけの過程を経て初めて事業認定に入ってくるわけであります。そうして事業認定に入りましても、御承知通り収用委員会によりますところの調停という段階があるはずであります。その調停成功した件数がどのくらいあるのか、不成功になった件数がどのくらいあるのか、こういう点、さらにいわゆる緊急使用はどのくらいの件数が全体にあるのか、さらにそれから訴願に持ち込まれたところの件数がどのくらいあるのか、あるいは訴願でとまらずにさらに訴訟にまで持ち込んだ件数がどのくらいあるのか、こういう点をまず第一に明らかにしていただきたいと思う。これはいろいろ御努力を願ったようで、なかなかこの実態はつかまらないというのが今の建設省実情だと思います。しかしながら土地収用法の問題をいじろうという以上は、少なくともこの程度の事実をあらかじめ調査して、明確にしてかからないでやるなんというばかなことはない。この点についてもしお調べができておれば、ある程度その実情を明らかにしていただきたいと思います。
  6. 關盛吉雄

    ○關盛政府委員 ただいま非常に数多くの事例についての質問と、資料関係要求があったのでございますが、土地収用法事業認定につきましては、知事認定いたしますものと大臣が行ないますものと二つの建前になっております。従いましてこの認定件数につきましては、われわれのところでわかる部分について、特に新法以来のものを中心資料としてお手元に差し上げたのでございますが、認定を受けると受けないにかかわらず、たとえば当該事業土地収用法の第三条各号に列記する事業に該当しております場合につきましては、立ち入り調査等事柄知事起業者に対して許可をいたしまして、実施することができることになっております。その場合における紛争件数というものは、これは一々建設省の方に報告が参っておらないものが多いのでございますので、はっきりしたことを申し上げることはちょっと困難かと思いますが、非常に問題になるというふうな場合につきましては、これは土地収用法の適用の事案として、あるいはまたその解釈等についてわれわれ相談を受けることが多いのでございます。そういう程度一つ御了解をお願いいたしたいと思います。また土地収用法事業認定を受けましてから土地細目公告を行ないます間におきまして、昭和二十八年の法改正によりましてあっせん委員あっせん制度というものができたのでございます。従ってこのあっせん制度知事起業者から申請を受けまして土地細目公告を実施いたしますので、あっせん委員あっせんは、土地収用委員会知事からそのあっせんに付することを適当と認めて実施するわけでございます。従ってあっせんによって解決された事例というものは、収用委員会あっせん委員によってそれぞれ解決されておりますので、このような関係については、一々建設省報告がくるという建前にはなっておらないので、ただいまのお話のような数字そのものを急速にまとめて御提出するということはちょっと困難かと思っております。  なお訴願訴訟につきましては、これは建設大臣を被告として訴訟が提起されましたり、あるいは訴願裁決申請のあるものにつきましてはわかっておりますので、今手元資料はございませんけれども、後ほど調整いたしまして差し上げることができると思っております。  それから緊急収用事例についてのお尋ねでございますが、これは緊急収用申請件数につきましては、今日まで三十七件ございます。そのうち許可されました件数は二十二件、それから不許可になりましたものあるいは却下になりましたものが十五件でございます。今お答えできる範囲のものは大体そのようなことでございます。
  7. 久保田豊

    久保田(豊)委員 大へんしつこいようですが、各県から報告がないからわかりません、それでどうも土地取得が困難になった、これでは困ると思うのであります。少なくとも土地収用法をいじろうという以上は、そういうことをあらかじめ各県に照会をして、こういう場合の件数はどのくらいあるのか、こういう場合の件数はどのくらいあるのかという報告をまとめて、その上で土地収用法の実施がどういうわけで困難になったかというような原因研究等をしていただいた上で、これは土地収用法を何とかいじるよりほかにはないというなら話はわかる。報告が、普通の場合と同じように何もありませんから私の方はわかりません、けれども中央で見ておりますと土地収用が非常に困難になって、各事業年度繰り越しが相当よけいになるから、すぐ土地収用法に手をつけるのだ、こういうお考えでは困ると思うのであります。  そこでさらに私は今申しましたような資料をここですぐ出していただきたいとは申しませんが、特にその点についてもう一つ伺いをいたします。つまり任意契約取得した場合の期間が、一番長いものはどのくらいかかって、一番短いものはどのくらいかかっておるか、それから平均して大体どのくらい任意取得はまとまっておるのか、これもおそらく御調査はないと思う。それからあっせん委員会あっせんによって成功した場合の期間がどのくらいなのか。あるいは四十条の協議によって成功した場合の期間がどのくらいかかっておるのか、長いものと短いもの。それから土地収用委員会調停による事件があります。大部分のものはここまでいけば片づく。私ども経験では、裁定まで持ち込むことはほとんど少ないので、調停でもって片づく場合が多い。そういう調停の場合の期間がどのくらいかかるのか。それから事業認定から裁定まで持ち込んだものの期間については、ここに資料をいただきましたから大体わかるのであります。こういう点の期間の点もおそらくお調べがないと思う。これらについて私は特にここでお答えをいただこうとは考えません。あるいは資料を出していただこうとは思いませんけれども、こういう事実を明確に、できるだけ詳細にお調べになった上で、土地収用委員会の問題に手をつけるとかつけないとか、この調査会を作るか作らないかという基本的な態度をきめるのはどうか。一年に二十万件近くと推定をされる中で、この資料を見ましても、たとえば三十四年度は全体として事業認定に持ち込んだ件数は二十万件に対して百八十件しかない。さっきのお話ではなるべく土地収用委員会のワク内に追い込んで、問題を合理的に片づけるようにするというけれども、実際には二十万件の大部分が追い込まれておらないじゃないですか。さらにそのうちで裁定になった件数はわずか二十一件じゃないですか。これだけの事実を土台にして、すぐ今の土地収用法では、もう公共事業公益事業やり方がうまくいかない、こういう軽率な態度というものは絶対賛成できない。少なくともこういう人民の権利に大きく関係するような問題については——特にこの委員会期間がたった一年です。この一年の委員会学識経験者も入れるでしょう、何も入れるでしょうけれども、こういう事実の認定さえできず、中央でいいかげんに、官庁でお考えになった、起業者の方でお考えになった立場から問題を取り上げれば——かりにそれがどんな構成員をもって構成されても、ほんとうの的確な客観的な判断はできません。私はこういう軽率な非科学的な、官僚独善的な態度というものは絶対いかぬと思う。今申しましたような二十万件近くのものは、これは県庁なり何なりに照会をすればわかることです。わからないことじゃありません。報告がないからと言っていらっしゃるが、報告がないでは済まない問題であって、これは県なり何なり、それぞれの起業体照会するなり、あるいは資料の提出を依頼するなりすれば、大体においてわかることです。二十万件に対してわずか年に多いときで事業認定が百八十件、それからそのうちで三十四年度だけとってもいわゆる裁定に持ち込んだのはわずかに二十一件、これですぐに公共用土地取得がどうも困難になった、こういう軽率な判断をするところに私は一番悪いところがあると思う。私はこの点について一つ次官お尋ねをいたしますが、こういうあやふやな、いいかげんな基礎の上に調査会を作るということがいいことかどうか。こういう非科学的なやり方そのものについて、私は根本的に反省をする必要がある。この点はどうですか。
  8. 大沢雄一

    大沢(雄)政府委員 ただいまの久保田委員の御質問は、まことにごもっともな点が非常に多いと存ずる次第でございます。私どもといたしましても地方庁、また関係各省の御協力を得まして、できる限りの範囲内で早い期間資料を整えまして、お目にかけたいと存ずる次第でございます。私どもといたしましても、かような事実に全然無知あるいは不認識で、この問題を取り扱おうとするものではございませんが、先ほど計画局長から申し述べましたように、事業繰り越しその他が地方庁におきましてもまた地方官庁におきましても非常に多く、いろいろその間に問題がある。とにかく土地収用法改正する線は調査会の慎重になる御審議の結果に待つとして、この問題を取り上げることだけはどうしても必要ではないか、ただいま仰せのような資料は、当然この調査会におきましても御審議をいただかなければならぬことでありますので、それまでに期間を得まして調査をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  9. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それではその次の質問に移ります。なぜ公共用ないしは公益用土地取得が困難であるかということです。この点についての原因について、客観的な、具体的な御調査なり御検討なりがされておるのですかどうですか。この点を私はその次に聞きたい。このあなたの方からいただいた文書によりますと、この問題の大部分は、土地収用法そのものの規定が要するに現状に合っておらない、だから土地収用法の方を直すのだ、こういう考えに大体立脚しております。しかしその直す方向というのは何かというと、簡単に言えばなるべく簡便に早く楽に取れるように、こういうことであります。そこで私は、そんな簡単なものじゃないと思う。どうして公共用土地取得が困難になってきたかという客観的な原因、これを御調査になり、あるいは御検討になったこともあるのかどうか、少なくともこの文書に関する限り、その面については一つも触れておりません。もっぱら土地収用法の面から見た、いわゆる土地収用法の欠陥なるものだけが出ておる、これはほんの一面しかわかりません。この点についてはどうなんですか。
  10. 關盛吉雄

    ○關盛政府委員 この公共用地取得につきましてのいわゆる用地取得対策ということをめぐる問題点ということで、実は印刷をいたしましてお手元に差し上げたのでございまして、これは土地収用法改正ということだけで解決する問題ではないということを、その中にも浮かび上がらして申し上げておるつもりでございます。ただ現行の土地収用法が一部代替地等補償という道も開かれておりますけれども金銭補償ということが建前になっておりますので、公共用地取得等をめぐる問題点というのは、やはり法律的ないわゆる収用手続の問題とか、そういうことのみによっては解決することは困難であると同時に、その収用手続迅速化という事柄につきましても、土地収用法の大眼目であります公益私権の調整というところのものさしを、現在の実定法をさらにどこまでその手続簡素化をはかることができるかということにつきましては、これもやはりその立場からだけ見ましても、重要な検討事項だとわれわれ思っております。従ってこれは軽々には土地収用法のどこをどういうふうに直すかということについて踏み切りが困難であります。と同時に公共用地取得をめぐる問題点といたしましては、この国作りに関する諸事業計画的に執行されなければならないのでございまして、そのためにはやはりその当該土地等事業のために収用または使用または売却することとなる人たち生活再建ということを、やはり大きく考えなければならない。これは狭い意味補償という考え方で処理すべきものであるかどうか、補償ということとと補償に関連するところのつまり生活環境整備という事柄にまでこれが発展をしないと、昨今の国土の利用の仕方から見て不適切な措置ではないかということも、やはり公共用地の今後の合理的な土地利用計画を進める上においては、検討しなければならない問題として考えられるという考え方でございまして、そういうふうな事柄を含めました意味公共用地取得対策でございます。従ってこの書きました趣旨は、一にこの土地収用法のみが問題の解決を負担する場としては必ずしも十分ではないし、またそれを突破するということ自体が非常に大きな問題であるので、調査会という一つの権威のある機関を持って、御審議検討してもらわなければならぬ、こういう次第でございます。
  11. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その趣旨はよくわかるわけです。ですから、その点についてはなおあと問題点を一応お聞きしたいと思う。しかし公共用土地取得が非常に困難になったという原因の中には、いわゆる土地収用法の規定なり、その運用なりがうまくないから、困難になったという、そう単純なものではないということはよく御承知だろうと思う。この点を十分御承知になり、そして御検討にならなければ、いかに土地収用法をかりに結論としていじってみても、なかなか問題は解決しないということが明らかであります。  そこで私は特にお聞きしておるのは、なぜこの公共用土地取得が困難になっておるかということの客観的な原因なり、その原因検討なりということをやられなければ、これはかりに土地収用法をこの調査会結論としてどういうふうに直そうとも、これはなかなかうまくいくものではないという点を特に申し上げておるのであります。ですから政府の方としてはその点について今まで土地収用法改正なり運用の改善なりと同時に、もっと深い一般的な原因、あるいは特殊的な原因として、何が公共用土地取得を困難にしているかという点の根本的な検討なり、これに対する対策なりというものをお考えにならずにやるという点は、これまたいかにも役人だけの考えになる。こういう考え土台にしてやれば、かりに土地収用法を何らかの形で改正しましても、これが現実に現われてくるところは逆な結果になりますよ。それは明らかだと思う。その点について繰り返し私は次官に、問題をもっと深く取り上げて御検討になったことがあるのかどうか、一つ伺いいたしたい。
  12. 大沢雄一

    大沢(雄)政府委員 この点につきましては、ただいま計画局長からも申し上げましたが、現在の公共用地取得の困難になっておりますることは、単に土地収用法そのものだけの問題ではない。あるいは生活再建の問題、あるいは社会事情経済事情の変遷、問題がいろいろと非常に複雑になっておりまする結果ということを、私ども考えている次第でございます。従いましてこれが対策といたしましては、単に土地収用法だけをどうこうするというようなことでは、解決はできないということも予測されておるわけでございます。総合的な各般の対策を講じなければ、用地取得を円滑にすることはできないと存じておるわけでございます。用地取得ということは申し上げるまでもなく、私権の保障という最も重大な憲法上の問題でございまするので、これらの点を十分にらみ合わせまして、適正な総合的な対策がないものか、こういう点を調査会におきまして慎重に、各方面から学識経験者に客観的に分析、検討していただきたいというのが私ども趣旨である次第でございます。
  13. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今のお答えは、私はやはりあくまで官庁立場起業者立場からのもののつかみ方だと思うのであります。土地収用あるいは公共事業についての土地取得が非常に困難になっておるという原因としては、これは所によっていろいろ個別的な原因のある場合もありますが、第一の原因は何といっても土地所有者土地値上がりに対する期待が非常に多いということであります。その値上がり期待というのは何に基因しているかというと、これは何といっても都会地並びに都会地の周辺を中心とする土地ブローカーの暗躍ということが、これは端的にいって私は大きな原因だと思います。もちろんその土台にあるのは公共用地のみならず、民間の住宅ないしは特に工場用地、こういうものの需要が非常に高まってきた、こういうことからするいわゆる地価高騰期待地価が高くなるということに対する一般土地所有者期待というものが非常に大きい。これが私は第一の原因だと思うのであります。その点についてはごらんになったと思うのですが、文芸春秋、さらに朝日ジャーナルの四月十日号に非常におもしろい分析があるわけです。これを見ますと、要するにこれは千葉大学助教授の清水馨八郎という人が「都市近郊の宅地と地価の生態」というレポートみたいなものを出されおります。これをつづめて言いますと、土地は今日決して不足じゃないのだ。むしろ都会地の中にもうんと余っているのだ。それをブローカーがどんどんつり上げをやっておるために、そういうふうによけいなるのだ。実際は郊外地とか駅の周辺には、むしろ宅地になったところが空洞になって残っておって、そして宅地はだんだん駅の近くから外にいっているのだというふうなきわめて実際的な分析であります。この人は結論として、ブローカーが無理に引き上げておるので、実際には東京都に例をとってみると、年間にしてほぼ三百万坪ないしは五百万坪の宅地の用地があればいいのだ。それで実際には約三千五百万坪程度の空間地があるのだから、十年間は十分大丈夫なのだということを言っておる。そういう観点から、おそらく近く地価は暴落するだろうという分析をされておる。どれだけ当たっておるかわかりませんけれども、こういう点について政府が適切な手を打つということが、非常に大事なことだと思うのであります。これは地方においてもこの問題があります。市街地の問題です。これについてはきょうの毎日新聞だと思いますが、建設省としましても、地価高騰の抑制についての対策をいろいろ検討を始めておる、こういう記事が出ております。この内容については私は読み上げませんけれども、こういう点についてどのようにお考えになっておるのか。こういう問題を真剣に実態を調査して、これはなまやさしい方策では解決はつきません。こういった問題と真剣に取り組んで解決をするということなくしては、一般的に公共用土地といえども土地取得は困難だと思う。これについて建設省としましてはどのようなお考えと、今後のこういう問題と取り組む腹がまえといいますか、あるいは作業日程というのがおありになるのかどうか、この点をまず次官から聞いておきたいと思います。
  14. 大沢雄一

    大沢(雄)政府委員 ただいまの御意見、まことに傾聴いたした次第でございますが、私どもといたしましても、現在土地の異常な値上がりということが、公共用地取得を困難にしております原因の非常に大きな部分を占めておるだろうということも同感でございます。なおまた現在の宅地の値上がり、これに関連いたします住宅問題の解決の困難、いろいろの土地問題を含めましてのこの問題の解決につきましては、建設省といたしましてはいろいろの点を実は内部におきましては検討して参った次第でございます。しかしただいま御指摘になりました新聞にも報道されております通り、あるいは土地増価税の設定とか、あるいは空間地の課税の問題とか、いろいろ税制面におきましての対策検討してみましても、なかなか所期の目的の達成が困難であるということが想像されますので、当面建設省といたしましては、何はともあれ公団あるいはその他によります宅地の造成に力を入れて、拡充いたしまするとともに、都会地における土地利用の高度化ということをはかりまして、それらの面からこの土地の価格の高騰の抑制という面を真剣に考えなければならない段階にあるということで、真剣にこの問題の検討に取りかかっておりますような状況でございます。
  15. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これは一般的な問題で非常に困難な問題ですが、私はやはりこの点を真剣に、建設省だけでなく——政府全体としてどういう対策になるのか、これはわかりません。この点がまた問題になれば私は私なりの考えを申し上げたいと思いますが、いずれにしましても政府全体としてこの問題に真剣に取っ組んでやらなければ、公共用地取得という問題は、かりに土地収用法そのものを変えても、そんなに簡単にいくものでないという点を、第一に十分に御銘記の上で、問題の扱いに入っていただきたいと思うのであります。それからその次の原因としては、特にわれわれは至るところで見るのでありますが、民間の会社ないしはそういうものと、官庁との地価の差がひど過ぎるということであります。民間の方は採算上からどんどんと高く買ってしまう。一番深刻な例としては、建設省はよく御承知だと思いますが、例の千葉県の松戸の金ヶ作の公団の問題です。あれは御承知通り隣の土地と同じようなところです。これを九州製缶が反当たり九十万円で買っておる。ところが片一方の住宅公団の方は反当たり平均三十六万円。そして反当たり三十六万円がそのまま生きればいいが、どうかというと、都市計画による減歩は平均して三割八分です。多いところは五割四分も減歩をとられている。ですから実際に農家が受け取る金額というものは、ひどいのは十四、五万円しかないのです。しかもその上へ持ってきて、今度は土地の交換分合で、そういう安いもので売った農民は非常に悪いところを押しつけられて、そして公団だけがいいところを取って、なるほど道路もつけたり学校も作ったりいろいろしますけれども、公団は坪一万円ですぐ売っている。こういうやり方では、どんなにばかな百姓でも何でも言うことを聞くはずがありませんよ。それを御承知通り、しまいには警察官まで出して押し切ってしまった。こういうやり方なんです。私はまず第一に民間の大規模な宅地の問題とか、あるいは特に工場関係用地公共用地との土地価格の調整、土地価格を表面だけでなく、三十六万円対九十万円ということではなく、この実態に入って調整をする、この努力がなくしては公共用地取得ということはうまくいくはずがない。取られる人の立場になってごらんなさい。すぐ隣が九十万円で、何ら条件なしに取られている。片一方は三十六万円で、しかも減歩を四割近く取られている。しかも悪いところへ追われている。こういうことでは公共用土地取得というものはうまくいくはずがない。この点、特に民間のこういうものとの調整をどうはかられるおつもりか。これらについてのお考えがなければ、私は軽々に土地収用法に手をつけるべきものではないと思うが、この点についてはどうお考えになりますか。
  16. 大沢雄一

    大沢(雄)政府委員 ただいまの御意見の点も、私はまことにごもっともに拝聴いたしておる次第でございます。確かに現在までの公共用地取得におきまして、旧憲法時代におけるような、公共の必要というものが私権の上にあったという時代の考え方が残っておりましては、この適正な補償基準というものがきめられない。そのために、先ほどお話ございました土地所有者の、土地値上がりに対するもっともな期待と相まって、非常に困難にしているということも、私はいなめない事実であると考えておる次第でございます。ただ民間会社との間の調整ということになりますと、民間の会社もいろいろ事情があるようでございまして、これらにつきましては客観的に公正な基準を考えまして、公共用地取得補償の基準を適正に今後とも改めていくということをぜひはからなければならない。そうすることによりまして、土地所有者に犠牲を忍ばせるということのないように、当然していかなければならぬと考えておる次第でございます。
  17. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そういう点はここで、国会だけで適当な答弁をしておけはそれでよろしいのだというような態度をおとりになる限り、私は公共用地の合理的取得ということはなかなか困難だと思う。どう収用法を変えてみてもできるものじゃないという点を十分お考えの上——これはなるほど民間のそういう会社あたりといろいろ事情の違うこともあり、土地取得をすぐ全面的に統制するとか調整することが困難であることはわかりますが、しかしながらこの点については何らかの手を打たない限り、問題の解決にはならないということをはっきり銘記していただきたいと思うのであります。その次の原因としては何かといいますと、これは第三条の各公共起業体そのものの土地取得の基準というものが、一つも合理的に統轄というか、統一されていないということであります。ここに私は建設省から「補償基準参考資料」というのをいただきました。このこまかいことには時間の関係もありますから触れませんけれども、これを十分お読みいただいて、しかもこれの実施面ということをお考えいただいて、さらにこれと地方の県あるいは市町村、こういうものとの関係を十分比較してごらんになれば、いかにこの公共用地取得の基準というものが、その場限りのでたらめになっているかということは明らかであります。現実に出てくる点は非常にはっきりいたしております。私どもの方でも今現に鉄道関係用地取得の問題が出ている。ところが一カ所は市の方が要求をして、市の方の要請に基づいて線路のつけかえをやる、一カ所は今度の弾丸列車のための用地取得、この二つでありますが、同じ国鉄がやっておりながらこの値段の出し方が違っている。ましてそのほかのいろいろの官庁の出し方はみな違ってきている。こういうことではこれはうまくいくはずがありません。ですから、これは非常に困難な仕事でありますが、少なくとも第三条に指定をする起業者の間には——これは統一的な基準というものはやってみると非常に困難で、ケースが非常によけいありますから困難であるには違いないが、やはりここに、文書に書いただけでなく、実際に使える統一的な基準というものを作り、そうしてこれをはずさないということがなければ、公共用土地取得というものは決してうまく参らないと思いますが、この点についてはどうですか、そういうことをやるお考えがあるのかないのか、あるいは現在そういう作業を進めておるのかどうか、この点を一つ伺いいたします。
  18. 大沢雄一

    大沢(雄)政府委員 ただいま御質問の点まことにごもっともと拝聴いたした次第でございます。第三条の起業者間に統一的な基準を作ることができるならば、これはまことにけっこうであると思いますが、かような点につきましても、御承認を得まして調査会ができましたときには、十分これらの点を調査検討していただきまして、その結果によりましては、一つ政府に建議してもらうというような方法によりまして、できるだけ御意見の趣旨に沿うて参るようにいたしたいものと念じておる次第でございます。
  19. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その次に困難にしている一つ原因としては、やはり公共事業やり方土地取得があまりに性急になっておる。民間のたとえば観光会社を見てごらんなさい。大体この辺にこの事業をやろうという場合には、早いところは十年、おそいところでも四、五年前にはちゃんと土地取得をしておいて、事業計画をされるのが一般であります。ところが官庁の方は、その年に予算がきまると、その年にその実行をやろうという。これはいろいろ政府の方でも言っておられるように、民間の土地を取られる方の人からいいますと、単に土地が高い安いの問題ではなくて、自分の生業からあらゆる問題にひっかかってくる問題であって、それが簡単に一カ月か二カ月か三カ月で、しかも大ぜいの人を全部片をつけようということは無理です。ですから私は、公共事業事業計画というものと土地取得との関係そのものをもっと時期的なり何なり、あらゆる面において調整をすることが必要であると思う。それなしに予算がきまった。予算がきまるのは大体において四月でしょう。四月にきまって、それから実際に末端におりてくるのは六月、七月でしょう。それからさあ土地だというわけでわあわあやり出す。さっきお話のように、建設省で大体公共事業でやっておるのは、次年度繰り越しがわずかに十四億、あるいは年々二億くらいふえておるというのは、実にスムーズにいっている方だと思います。それを困難なという認識自体がどうかしているので、むしろこの点は事業執行そのものを、これもまた非常にいろいろな技術上の困難がありましょうけれども、調整をしてやることの方がほんとうであると思う。現実に私の方なんかも、たとえば放水路の問題で相当大きな土地取得しました。しかしながらその場合でも、最初の間は主として用地取得問題の解決という点で補償問題に重点を置いて、補償が片づいてから実際の事業に着手するというようなことをやって、比較的うまくいったというようなこともあるわけであります。私はこの点の調整をむしろ起業者の方がはかるべきであって、そのしわ寄せを収用法そのものに持ってきて、これを簡便に実行されるようにして、予算がきまったらすぐ土地が取れて事業がやれて、あとの勘定は事業をやってからあとでやるというような緊急使用考えをここへ出してくることは、本末転倒だと思う。国民の一人々々の生活というものはそんな簡単なものじゃない。この点を十分に考えずにやられるところに、私は全く官庁の方の認識がさか立ちしておるのじゃないかというふうに思うのですが、この点については政務次官はどういうお考えですか。
  20. 大沢雄一

    大沢(雄)政府委員 土地取得の時期と事業着手との関係でございますが、確かに実際におきましてはこれが非常に密着しておる。こういうふうな関係にありますために、非常に問題を困難にしておりますことが多いということを、実際の事例の上から私どもも認めるにやぶさかでないのであります。こういう点につきましての解決の方法でございますが、これまた公共事業関係から申しますと、非常に後年度に使用すべきものをあらかじめこれを取得しておくということは、また予算関係その他いろいろの関係から困難な問題がありますわけで、これらの点につきましていかに調整いたしましたならば、私権の保護とそしてまた公共の利益との調整ができるかという点を、私どもも非常に問題にいたしておるわけでございます。こういう点につきましては、運営の方法なりあるいはまた収用手続なり、これらをどう調整いたしたならば、私権の保護を全うしつつ公共事業の執行を円滑にできるかという問題につきましても、この調査会の重要な調査事項の一つとして御検討願いたい、かように考えておるような次第でございます。
  21. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その点について繰り返し強調しておきたいのは、私権の保護ということを相当重要視される以上は、予算執行なり事業執行の順序をこれに適応させるようにするというのが、根本の考えでなくてはならぬと思うのであります。ところが政府から出されました「公共用地取得対策について」というこの文書を見ますと、これに流れておるものは、言葉ではなるほどそう言ってはおりますけれども、逆であります。この点の考え一つ根本から改めて、予算ないしは公共事業執行上の技術面の調整をやってもらいたい。現実にはどこにおきましても技術面の調整をやっておるのであります。やらざるを得ないのであります。今のように予算執行が六月ごろになって、あと半年しか大体において事業期間がないというのに、非常に複雑な、しかも相当の土地を簡単に取れるわけがない。それをやられたのでは、これは取られる私権の方が非常に圧迫をこうむることになるのでありますから、ものの考え方をはっきり変えられないと、幾ら口の上で国家の事業公共事業私権の尊重ということを調整するなどとうまいことを言ってもだめであります。現実に多くの公共事業はこの点をやっておるのであります。やっておることを技術的に調整することができないはずはない。私はこう思うのですが、この点についての考え方をもう一度あらためて政務次官にお伺いしておきたい。
  22. 大沢雄一

    大沢(雄)政府委員 御意見の点は、もし調査会を御承認いただきました上におきましては、十分それらの点につきましても御審議、御検討いただきたいものと考えておる次第であります。
  23. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間がないものですから、だいぶいろいろ資料は用意してきたのですが、こまかいところまで突っ込めないのが残念であります。問題点だけにとどめておきます。  次にもう一点、土地取得を困難にしておる事情について、私ども経験の中から感じておることを申し上げたいと思う。その一つ公共事業の場合の土地取得やり方が、一般的には二つの意味において非常に圧制的であります。前にも同僚委員から指摘をされましたように、国民の間にも取られる側にも、土地収用法を適用するということになると、それが非常なおどしになるのであります。そういうおどしが、非情な形においてかかってくるという点が一つであります。たとえば私のところあたり、今鉄道の弾丸用地の買収の問題が出ておる。そしてある部落のごときは、五軒の家が引っかかる。ところがその五軒に対してどういうことを言っおるかというと、なかなか条件が折れ合いません。そこにもってきて、折れ合わない者に対しては、もしぐずぐず言っているのなら土地収用法で引っかけるぞ、こういって協力員というのが来ておとしておる。その上に、もし土地収用法で聞かないならば、屋根の上に高架線で通してしまうがいいか、こういうやり方であります。私はこういうやり方が、非常に無用なトラブルを起こす原因一つになっておると思う。これは今までそういうようにしないように、いろいろ注意をしておるというお話でしたが、現実はそうなっておる。この点をやはり根本的に改めることです。  もう少しこれに関連をして指摘をしなければならぬことは、公共事業そのものが、住民の納得されない事情によって次々に変更されるということであります。たとえば道路なら道路。鉄道なら鉄道を、最初ここに通すといって予定線をきめておいて、それがいつの間にか変わってきて、やれやれおれのところははずれたと思って安心しておったところが引っかかる。その変わった事情をいろいろ調べてみますと、やれ国会議員が文句を言ったとか、あるいは知事がこう言ったとか、あるいはそれに関連する工場主連中がこう言っておるとか、それに対しては起業体の方はきわめて弱い。ところが住民の方についてはきわめて強い。こういうことは、今では土地収用される方の連中もばかではありませんから、いろいろの情報からそういうことが入ってくるわけであります。こういうことが無用のトラブルを起こす根本であります。私は少なくとも公共事業をやるという以上は、こういう点については、もちろんたとえば道路にしても、最後に路線が決定するとかということでいろいろ技術的な検討があるでしょう。その結果は相当変わることもあろうけれども、少なくともこれに関係した利害関係人なり住民が納得のいかないような事情で事業変更するというようなことは、絶対にやめてもらいたい。これなくしてはできません。私ども経験しておるところでは、これが多くの場合において感情的な一つのトラブルになる根本であります。この二点をはっきりしないことにはだめだ。  従ってその結論として言うことは、少なくとも公共事業としてやる場合には、もっと事前の調査をしっかりやって、一たん計画を立てたら動かないというくらいのことでなければならない。住民の方から言うと、なかなか言うことを聞かない、しかしどこかの偉い連中が横からちょっと口を出せば、じきに道路があやふやになってしまって、おれのところは引っかからぬと思っていたらいつの間にか引っかかる、こういうことで納得するはずがありません。これはたくさんあるが、これでは困ると思う。この点については、これは建設省だけに言ってもしようがないことで、起業体全体について言えることですが、こういう公共事業やり方そのものを根本から改めることなくしては、土地収用の問題はなかなかうまくいかないと思いますが、この点についてはどうですか。
  24. 大沢雄一

    大沢(雄)政府委員 御指摘の点、まことに一々ごもっともに存ずる次第でございます。私どもが実際にかつて当たりました具体的な事例におきましても、確かに末端の機関の者が、これは単に官庁の仕事というばかりでなく、その他の事業におきましても、たとえば電灯会社の高圧線等を引くような場合等においては往々にありますが、末端のこれに従事する者の不用意な態度によりまして、問題を非常に硬化させて困難にするというような事例が確かにありましたことを、私も幾つか経験しておる次第であります。なおまたこの計画が、住民の納得を得ざるうちに変更されるというようなことも、これは確かにお話通りにこの取得を困難にしている、問題をいたずらに紛糾させるという大きな原因一つになっていると思う次第でございます。これらの点につきましては、単に官庁といわず、この公共用地取得関係いたしまする者の心がまえといたしまして、十分これは改めなければならぬことかと考えておる次第でございます。
  25. 久保田豊

    久保田(豊)委員 もう一つ私は申し上げておきたいと思うのでありますが、それは今度の取得対策ということで、取得をされる利害関係人の生活問題を取り上げた点は、考え方として建設省としては一歩前進だと思うのです。しかしこれが実行できますかということをお聞きしたい。第一にこの問題の実行を危ぶむのは、いろいろこの土地を取られた人の生活再建問題は非常に複雑多岐にわたると思います。今までのやり方では、建設省でそう考えても、たとえば農林省その他がこれに協力しなければできない問題。農林省へ持ち込めば、なかなか今度は農林省がこれを聞かないという関係が非常に多いのであります。各官庁なり何なりが、少なくとも総合的にそういったものをやらなければ解決のつかない問題です。特に農村においては多いのであります。私の方の実例を一、二申しますと、たとえば狩野川台風がありまして一番問題になりました熊坂、あそこを河川の拡幅を御承知通りいたしました。それはいいですが、あそこは全体の耕地が四十二町歩であります。その今度の河川の拡幅によりましてつぶれたのがどのくらいあるかといいますと、約十八町歩であります。半分に減っておるのであります。そのこっちの瓜生野という部落は約十二町歩のうち、これも約七町歩ぐらい、六割近くの耕地がつぶれておるのであります。そうしますと、あとの連中はどうしても百姓では食えない。それもいろいろ問題がありましたのを、私どもは何とかしてあの川の問題を片づけなければならぬからというので、どうやらこうやら納得をさせてやったのですが、これではあとが食えない。そこで県を通じあるいは農林省等に対しましても、これのかえ地なり——かえ地といってもなかなかありませんけれども、何らか適当なところへ新しい耕地なりあるいは新しい農業経営の形態なりというものを真剣に考えてくれないと、この二部落というものはえらく災害を食った上にもってきて、あとあと百姓として食えない、こういう問題が出るからというので、知事にもやかましく言い、あるいは農林省等にも私は出向いていろいろやったのですが、結局取り上げない。建設省は川さえやればおれの方の責任はないのだ、こういうことになる。ですから、今この部落では何をやっておるかというと、土方をやっております。土方をやらなければ食えない。たとえば都会地道路の拡幅の場合は、それに対してその沿線へさらに土地取得して商店街をこしらえて入れる。非常にけっこうな構想でありますが、これには予算なりあるいは資金なりというものの裏づけがなければだめであります。もう一つは、私は各官庁が少なくともこういう問題については、総合的な一つ対策本部というものでも作ってやらない限り、問題の解決はつかない。苦い例を私どもはたくさん持っておるのであります。この問題の解決に、なるほど(2)にはいろいろかえ地の問題等が出ておりますけれども、もう一つ大事な点は、これは都道府県ないしは市町村、これにある程度積極的に、いい意味において関与させるということをしなければ、この生活問題というものは片づきません。私どもはいろいろ自分で身をもってやってみまして——私は狩野川の問題を主に言いますけれども、江間村というのは四十年もこの問題でもって承認しません。この四十年間も承認しなかった連中を承認させるためには、幾ら建設省や何かがやってもだめであります。私ども水の行く方の町村をようやく納得させまして、かえ地を出すとかあるいは土地改良を推進するとか、その他いろいろ農民としての生活の立つような道をやりましたので、実際につぶれた土地を持っている人たちも現実につぶれておらない、むしろよくなっておる。こういうことですから、ようやく何十年ぶりで納得を得たというのが実情であります。私はこういう点から見て、下手に市町村や府県を関与させますと、これがブローカー的な役割をして変なことになってしまうが、しかし正しい意味でこれに関与させるということをやらなければ、少なくとも生活問題の完全な解決というものはできない、こう思うのです。こういう点についてはもう少し政府としては真劒に実情を分析された上で手をつけるべきものだと思うのですが、この点についてはどんなふうにお考えになっておりますか。
  26. 大沢雄一

    大沢(雄)政府委員 生活再建対策の問題でございますが、いかにして生活再建対策を実効あらしむるかという点につきましての御意見の次第、傾聴いたした次第でございます。私どもといたしましても、現在の土地収用関係におきまして、最も不足いたしております点の一つが、この生活再建対策の問題であろうということを考えておる次第でございます。これにつきましては、御説の通り単に建設省だけでいかに努力いたしましても、効果を上げることのできない問題でありますことは、申し上げるまでもない次第でございます。つきまして私どもといたしましては、これらの点につきまして調査会におきまして十分御審議をいただきまして、その結果現在の社会事情、国民生活、経済状態に適応いたしまする適切な案を調査会から政府に建議することを期待いたしまして、これによりまして大蔵省におきましては予算、資金の裏づけを十分にする、また関係各省におきましては、関係各省の総合対策委員会等の設置をして協力をしてこれに当たる。なお現在におきましても、お話通り地方庁におきましてこの問題につきましては、実際上の必要から非常に骨を折っていただいておりますところも多いのでありますが、さらに政府の方針として、地方庁のこれに対する積極的な正しい関与をしてもらう、かようなことにぜひこれを持って参りたいということを念願いたしておるような次第でございます。
  27. 清野保

    ○清野説明員 ただいま久保田委員から公共事業に伴う農業者の生活再建に対する御意見がございましたが、農林省といたしましては、すでにこれらの点につきましてはいろいろと考慮いたしております。たとえば昭和三十二年の三月三十一日付でもって農林事務次官通達によるところの、公共の利益となる事業の実施により農地等を失う耕作者の就農促進に関する措置要綱というのを作成いたしまして、それぞれ関係各省並びに関係の都道府県知事にこの要綱を流しております。この要綱の趣旨は、要するに土地改良事業とかあるいは発電事業その他の公共の利益となる事業を行なう者、たとえば治山治水、そういうような事業によりまして農地を失いまして経営を困難ならしめる、こういう場合の代替土地に対する措置といたしまして、事業者から申し入れのあった場合には、農林省は積極的にこれらの土地の拡張、たとえば改革によるところの土地面積の拡大あるいは土地改良事業によるところの経営の安定をはかる、こういう措置を現在はかっております。もうすでに佐久間ダムとか建設省の田瀬ダムにおきます水没者の入植措置、あるいは三峯川におきます水没者の生産力拡大措置をとっておりますので、今後ともかような方法によりまして各省間の連係を密にしまして、農業者の生活再建に努力して参りたい、かようなつもりでございます。
  28. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今農林省の言ったことは私も大体承知しています。大規模のものについてはほぼそういうことが行なわれるが、もっと小さなものについてもそれが行なわれなければならぬということであります。大規模なものはそうしなければ実行できないのですから当然やりますよ。やらなければ絶対にできないのですから。最後に私が一つ御当局にはっきり申し上げておきたいのは、今まで私が質問をしたところでおわかりのように、私はこの問題に対する建設省態度はきわめてうわついていると思う。まず第一に今までの公共的な土地利用の実態、それが困難であるというならば、どこに困難があるかということをあらゆる面から検討されて、あるいは少なくとも思量をされた上で、こういう問題を取り上げるというならば、私どもは必ずしも納得しないわけではありませんが、今お聞きしたように、全体でどのくらい年々土地利用件数があるのか、それもわからない。そうしてその中で土地収用関係件数で入ってきたもので現段階までに解決したものがどのくらいあるか、それもわからない。さらにそういったものはどのくらい期間的に公共事業の実施を阻害しているか、それも正確にはわからない。その原因についても分析が十分されておらない。さらに生活再建という問題も取り上げられておりますけれども、多くの点についてはほとんどただうたっただけであって、これに対する具体的な検討等も行なわれておらない。ただ起業者が口の先なり上っつらだけで見て、どうもこういうやり方では事業がおくれて困る、だから何とか簡単に公共的な土地の獲得ができるようにしようじゃないか、こういう意図に貫かれておるように思うのであります。私はここで一つ次官にお伺いいたしたい。はっきり言って、こういうあやふやな基礎の上に立った調査会をおやめになる意思はありませんか。そうして出直したらどうですか。もっとデータを正確に集めて、何が公共的な土地獲得を困難にしているかを突きとめ、この問題を全面的に解決する、こういう正しい意図に立った、目的を持った調査会を別個に作られたらどうです。その方が筋が通りますよ。この調査会をおやりになるのはたった一年でしょう。一年で、今まで私がずっと質問してきたように委員会でお調べ下さいでは、わかりっこありませんよ。二十人の委員がどうやってみたところでわかるはずがない。結局こういう資料を出せ、ああいう資料を出せというのに、あなたたちが都合のいいような資料を出し、都合の悪い資料は出さぬということから、結論土地収用法改正ということにいくにきまっていますよ。しかもこの考え方の中で一番の中心と思われる生活再建についても、私はこの次の機会にもっと突っ込んでお聞きしたいと思いますが、ほとんど具体的なコース、方向というものが出ておらない。こういうあやふやなもので、私はこの土地収用法改正の問題と少なくとも連関のあるような調査会を作ることは、政府として、今までお聞きした範囲におきましてはあまりに軽率に過ぎると言って差しつかえないと思うので、私はこれをやめたらどうか、出直してやったらどうかということを端的に申し上げたいのでありますが、この点についてはどういうお考えを持っておりますか。またかりにこれを推されるというならば、この一年間に——今私はごく大ざっぱな点だけ、実際上の問題点を指摘したわけです。何ら調査ができていないじゃないですか。こういう資料なり何なりをどうして整えるつもりか、この点についてもはっきり一つお答えをいただきたいと思う。
  29. 大沢雄一

    大沢(雄)政府委員 私どもは必要な資料につきましては、できるだけ早い期間に至急に整えまして、そして公正な学識経験者によりまして、この種の現在問題となっておる点を検討してもらいまして、そしてこの公共用地取得制度の改変の必要ありやなしや、またありとすれば、どういう方向においてこれを改正することが私権の保護であり、そしてまた公共用地取得を円滑ならしめるか、この重要な二つの問題の調整ができるかという点につきまして検討いたしたいということを念願いたしております。一日も早くこの調査会設置法案の御了承をぜひお願いいたしたいと念願いたしております次第であります。この点についても御了承をいただきたいと思います。
  30. 久保田豊

    久保田(豊)委員 非常にくどく申すようでありますが、こういう法案を出すならば、もう少し基礎をはっきりして出すようにということを特に申し添えまして、私はあといろいろ質問の条項を書いてきておりますが、内容にわたっての問題はこの次の機会にして質問を保留いたします。      ————◇—————
  31. 福田一

    福田委員長 お諮りいたします。本案につきまして参考人より意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。  なお参考人の人選等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  次会は明八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十三分散会