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久保田(豊)
委員 私は日本
社会党を代表いたしまして、本案に対して
反対の
意思をはっきりこの機会に表明いたしておきたいと思うのであります。
反対の
理由を以下数点にわたってはっきり申し上げたいと思うのであります。
第一点は、御
承知の
通りこの
法案は、
国会には今度で三回目であります。第一回は三十一
国会において、これは審議未了になっております。第二回は三十三
国会において、
政府は本
法案を撤回するのやむなきに至っております。このことは要するに、
国会がこういうふうな反動的な
法案は必要と認めないということを明確にいたしたことであります。しかるに今回さらにそれにもこりず、
政府は三回もこの
法案を出してきて、そうして今与党の多数をもって押し切ろうといたしておるのであります。こういうやり方で、二回も成立をしなかったということは、少なくとも国民を背景といたしました議会民主主義が、この原則の上に立って、この
法案は不適当であるということを明確に表現をされたものであります。これを多数でもって押し切るということは、
政府ないしは与党みずからが、議会民主主義を踏みにじるこれは政治的暴挙といわざるを得ない。こういうやり方は、
政府、
自民党の反動性を明らかにすると同時に、この
法案の持っておりまする超保守性といいますか、反動性を如実に現わしたものと言って差しつかえないのであります。この観点から、第一に私
どもはこの
法案に賛成はできません。
第二の
理由は、これはすでに今までの
調査過程においても明らかなように、本
調査会そのものは、
調査会としての体をなしておらぬということであります。いわゆる
調査の
目的、本
調査会設置の
目的も、単に旧
地主に関しまする
社会的な諸問題の
実態を明らかにするというふうなことであって、その
社会的諸問題というのは、各
答弁者によって解釈が違っておる。その具体的な
実態は一向に明らかになっておらない。さらにこの
調査対象はといいますと、
政府当局の
答弁はそのつど違っております。きょうは百七十六万全解放
地主であると言い、これももう少し詳しく言いますと、
法案自体によって、百七十六万全
地主は
調査の
対象にはなっておりません。こういう事実も確かめずに、その場限りのでたらめなことを言っておる、こういうやり方であります。さらにどのような
事項を
調査するかということについては、すでにこれが三年越しの問題であるにもかかわらず、全く明らかになっておらない。これは
調査する
事項がわからぬのであります。こういうでたらめであります。さらに
調査の
方法に至っては、これは全く憤飯ものであります。だれも三百八十八万円の予算をもって、五十人の人員を持った
中央調査社に一括
調査依頼をして、かりに
社会的な問題の
実態が明らかになったといたしましても、これに即応するようなまじめな
調査結果は絶対に出てこない。これはどなたがお
考えになっても明らかであります。そういうふうなでたらめな
調査の
方法であります。それから
調査の結果をどのように政策的に生かすかということについても、全く
答弁はなっておりません。こういうふうにあらゆる面から見て、
調査会自体として、この
法案は全く体をなしておりません。これは
政府がこの問題に対して、
地主の立場に立ってみましても、まじめに取り組んでおらぬということの何よりの証拠だと思います。悪く申しますれば、これは二つの
目的を持っておると思う。
一つは何かといいますと、従来
自民党がこの
地主団体をおだてたり、ごまかしたりして、この
地主団体を選挙のために大いに活用してきた、その連中に対しまするごまかしの
法案か、それでなければ縁切りの
法案と申し上げても差しつかえないと思います。またもう少し積極的に言うならば、このでたらめの
調査結果、たとえばこれに似たものは
自民党さんがすでに作っております。そういうでたらめの
調査結果を土台にいたしまして、そうしていわゆる
地主団体の要求でありまするところの
国家補償もしくはそれに
類似する何らかの代償を
地主の団体に与えていこう、
地主階層に与えていこうという、こういういずれかの意図を持った
法案と言わざるを得ない。こういうでたらめのごまかしのいわゆる
調査会を設けてやられると
いうことは、保守の同じ立場をとられておりまする
自民党としましても、あるいはその上に立っておりまする
政府といたしましても、私はこれはとるべき態度ではないと思います。こういう点においても、第二点においてこの
法案に絶対に私
どもは賛成ができないの
であります。願わくば
自民党はほんとうの正しい保守性を貫くならば、もっとこういう問題についてはまじめに取り組んでいただくことをこの機会に要望
いたします。さらにその結果といたしましては、まかり間違えば、
政府は今
日一応口先では否定いたしておりまするけれ
ども、その
財源としての
農地増価税あるいは
農地の
転用、
転売税等を新しく創設して、現在すでに苦しみ抜いておりまするところのいわゆる
生産農民を、さらにこれ以上苦しめる挙に出ないという保証は、今までのところどこにもないのであります。こういう点から見ても私
どもはこれに賛成ができません。第三の
反対の
理由は、この
調査会法案が成立いたしますならば、この
調査会を足がかりといたしまして、
農村の現在のいわゆる民主的秩序を破壊いたし、農業の前進を逆行させる危険と可能性を多分にこの
法案は持っておるということであります。御
承知の
通り、すでにこの審議の過程で明らかな
通り、旧
地主団体はこの
調査会を足がかりといたしまして、従来の運動を一そう積極化することは、これは火を見るより明らかであります。つまり従来の運動とは
国家補償の要求の実現ということであり、
土地取り上げと小作料の値上げをおもな
内容といたしておりまする現行の農法地の改正であります。この
調査会を足がかりとしてこういう運動がさらに積極化してくることは、これは火を見るより明らかであります。しかもそのことがすでに指摘をされましたように、今日本の農業は非常に大きな危機に直面しております。それに即応いたしまして、農政も好むと好まざるとにかかわらず前向きの、いわゆる前進をしなければならぬ
段階になっております。従いましてその
基礎となりまするところの
農地政策にいたしましても、これは大きく前進的に、いわゆる進歩的にやって参らなければならぬ
段階になっております。しかるにこり
法案ができて、旧
地主の秩序が
農村において復活し、そうして旧
地主的な
農地制度の復活の動きが強くなりますれば、たとえば現在問題になっておりまするところの保有小作地をいかに合理的に処理していくかというような問題、あるいは山林原野の総合的な利用をいかにして平和的に実現をしていくかというような問題、あるいは
農地の共同化ない上は法人化等の実現と
農地関係とを、いかにして調和的に進めていくかというような問題は、ここに大きな阻害要因というものをこの
地主の運動によってもたらされることは必然であります。こういう点におきまして、
政府の
農地政策そのものに対する多少とも進歩的な企画というものを、ここで息の根をとめるという結果が必ず出てくるであろうと私
どもは
考えます。
さらにもう
一つは、こういうふうにしてすでに軍人に対しまする恩給
制度、あるいは海外引揚者に対しまする
給付金の問題、これから端を発しましてこの問題が進展をいたしてくれば、あるいは動員学徒、あるいは強制疎開、あるいは戦災家屋、あるいは預貯金の封鎖、その他戦中、戦後におきましての、戦争並びに戦争に伴ういろいろの大きな
社会的変革によりましてできたいろいろの大きな問題について、次々に
補償問題が出て参りまして、財政上も、それに即応いたしますところの国民負担の問題につきましても、非常に大きな危機に当面することは明らかであります。こういう点も全然見通しもなく、単に今まで
地主団体と深いつき合いをしてきたからというので、そのごきげんとりにこのような危険を包蔵する
法案というものを通そうということについては、私
どもはどうしても納得がいかないのであります。岸
首相は、この戦後の大きな問題についてはいわゆる
社会保障でやればいいと言う。
社会保障は戦争の対策ではありません。これは本来の資本主義
社会の持っている矛盾に対しまするせめてものいわゆる平和的保障ということが
社会保障の本来であって、戦争の、あるいは戦後におきまする
社会的激変の結果を
社会保障によって穴埋めをしようなどという
考え自体が、大きな反動的な
考え方ではないかと思うのであります。こういう点からも私
どもは賛成ができないのであります。
それから第四の問題は、本
法案の
実質的推進力であります旧
地主団体、
自民党、
政府の三者間におきまする、何といいますか、くされ縁があまりに深過ぎる。しかもそれを貫いておるものは保守というよりは、むしろはっきりとした反動的な性格であり、こういう点から見てこの
法案の持つ危険性は、決してこの
法案の表面に現われたところ、もしくは
政府側において今まで弁明をしたようなところに尽きるものではないということを、はっきりわれわれは国民とともに見てとるのであります。旧
地主団体は、すでに明らかになったように、いわゆる
農地に対しまする
国家補償並びに
農地改革の成果を否定するということを根本の目標とするところの超反動団体であります。しかも
自民党はこれに対しまして会長以下多数の役員を送り、そして選挙のたびにこれと結着してやっておる。そうしてそういうくされ因縁の上に、
自民党内部にはこの旧
地主団体の要求をそのまま実現することを現にやっておりますところの
農地問題調査会等がすでにできて、その
答申に基づいて
政府の政策が
決定をされておるというのが、これは隠れもない現実であります。こういうふうな関係から見て、もしこの
法案が
通りまするならば、この
法案を足がかりとして、
政府、
自民党、旧
地主団体一体となって、日本の
農村を古い形に引き戻そう。日本の農業を前進ではなく、後向きに引っぱって参ることは明らかであります。こういう点は私
ども生産農民の立場に立ちまする
社会党といたしましては、絶対に賛成ができないのであります。
以上をもちまして
反対の
理由を述べたわけであります。(拍手)