運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-04-01 第34回国会 衆議院 内閣委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月一日(金曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 淺香 忠雄君 理事 岡崎 英城君    理事 高橋 禎一君 理事 高橋  等君    理事 前田 正男君 理事 石橋 政嗣君    理事 石山 權作君 理事 田万 廣文君       池田 清志君    今松 治郎君       内海 安吉君    鍛冶 良作君       鴨田 宗一君    久野 忠治君       小金 義照君    始関 伊平君       谷川 和穗君    富田 健治君       橋本 正之君    八田 貞義君       保科善四郎君    山口 好一君       飛鳥田一雄君    角屋堅次郎君       久保田 豊君    杉山元治郎君       中原 健次君    芳賀  貢君       中村 時雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君  出席政府委員        総理府総務長官  福田 篤泰君        総理府総務副長        官        佐藤 朝生君        内閣審議官        (内閣総理大臣        官房審議室長)  大島 寛一君        農林事務官    伊東 正義君  委員外出席者        専  門  員  安倍 三郎君     ————————————— 四月一日  委員生田宏一君、今松治郎君、辻寛一君、中川  俊思君淺沼稻次郎君及び河上丈太郎辞任  につき、その補欠として鍛冶良作君、鴨田宗  一君、池田清志君、久野忠治君、芳賀貢君及び  角屋堅次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員鍛冶良作君、鴨田宗一君、池田清志君及び  久野忠治辞任につき、その補欠として生田宏  一君、今松治郎君、辻寛一君及び中川俊思君が  議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月三十一日  国家公務員災害補償法等の一部を改正する法律  案(内閣提出第一一三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農地買収者問題調査会設置法案内閣提出第  一号)      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  農地買収者問題調査会設置法案を議題とし、前会に引き続き質疑を許します。久保田豊君。
  3. 久保田豊

    久保田(豊)委員 総理に本案件についての重要な点について、特にこの際確かめておきたいと思いますので、一つはっきりしたお答えをいただきたいと思います。  まず第一にお伺いいたしたいのは、総理も御承知通り、この問題につきましては、昭和二十八年の十二月二十八日に、最高裁ではっきりした判決が出ております。この判決について今まで政府の各責任者からお答えをいただいた範囲においては、これをはっきり支持するということを言い切っておられますが、総理はこの点についてはどういうふうにお考えですか。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 最高裁判決は、政府といたしましてこれを支持いたします。
  5. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうしますと、今この二十八年の最高裁判決を支持されるというのは、総理もしばしば言っておられる通り、この内容農地改革、その基礎になりました自作農維持創設法あるいは農調法、その成果を受け継ぎました今の農地法、こういうものは合憲であって、正当なものである、この点を確認をされること、もう一点は、これらの法律に基づいて当時農地を解放いたしました地主に支払われましたいわゆる農地対価並びに報償金、これも合憲であり正当なものであって、政府としては、これに対して法律上も事実上も補償責任あるいは義務はないということをはっきりお認めになる、こういう意味であろうと思いますが、この点をさらに確かめておきます。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 農地改革に関連する一連の法制は合憲であることはもちろんでありますが、これに基づいて行なわれたところの処分もまた従って合憲であり正しいものであって、これを変更するような意思は持っておりません。
  7. 久保田豊

    久保田(豊)委員 従いまして政府といたしましては、今後といえども、あなたもしばしば今までの国会言明をされておりまする通り農地に対する補償ないしは報償金の追加もしくは修正という意味における国家補償というものは、いかなる名義といえどもやらない、こういう意味に理解してよろしゅうございますか。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 政府といたしましては、この農地改革によって行なわれました、従来支払われたところの報償金その他を、今後いかなる名義をもってしても変更し、修正するという意図は持っておりません。
  9. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その点は今までの政府答弁の中でも明らかであります。ただ明らかでない点は、しからば今までの当時支払われました対価、もしくは報償金を追加するとか、あるいは修正するという意味においての国家補償はしないが、それ以外の名目あるいは形式あるいは理由によって、何らかのいわゆる地主に対する見舞金あるいは給付金、あるいは交付金その他いろいろの名目あるいは理由があろうと思うが、そういうものをもう絶対に支払わない、こういう意味に理解してよろしゅうございますか。どうでしょう。
  10. 岸信介

    岸国務大臣 この農地改革は、先ほどから申し上げておるように合憲的なものであって、従ってこの支払われた土地価格報償金に対して、これをさらに増額するとか、あるいは補償額を修正するというような考えは一切持っておらないことは、先ほど申し上げた通りであります。ただこの問題が、御承知通り一つの日本においての農村における非常な革命ともいうべきことでありまして、急激に農村社会事情というものをこれによって変更して、そういう急激な社会変革から生じておるところの旧地主のいろいろな社会上の問題等に関しまして、調査会を設けてこの実態を正確に調査し、これに対して何らかの措置を講ずる必要ありやいなや、ありとすればどういうことがいいかということを調査会において審議してもらいたい、これがわれわれの意思でございます。
  11. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その点になりますと、政府の御答弁必ずしも明確でないのでありますので、ここで特に総理にお聞きをいたしておきますが、従来の二十六国会以来の総理の各委員の質問に対しまする御答弁を分析をいたしますと、当初は補償ないしはそれに類するものは一切いたさない、地主として気の毒なものがあるならばそれは社会保障的な意味において考えるのが適当であろう、こういうことを言われている。ところがそれに対してさらに追及がありまして、旧地主であるがゆえに特別の社会保障の拡充なりあるいは補てんなりをしてやるつもりかと言うと、それもやる意思はないと最初のうちは言われておった。ところが今のお答えのように、農地改革は非常に大きな変革であるので、地主生活地位等にも相当大きないろいろの変化を来たしておる、これに対して何らかの措置をとる必要があるか、あるいは措置をとるとすればどういう措置をとったらいいかということを、この調査会調査するというふうにお答えがぼけてきておるのであります。ここではっきりいたしておきたいのは、総理は、かりにこの調査会が、今お話しのように、当時の対価もしくは報償金に対しこれを修正するあるいは追加するという意味においての補正はいたさないというならば、この本案の調査会のいわゆるそういう問題は権限の外の問題であるということをここではっきり言明をされることができますかどうか、この点をはっきりしていただきたいと思います。
  12. 岸信介

    岸国務大臣 私はこの調査会の趣旨は、今申し上げましたように、農地改革の場合にとられたところの補償その他の額を修正するとか、これを追加するとかいうようなことを決定するという権限はないと思います。ただ社会的に急激な変革を生じたことが農村生活におきましてもまた個人の地主の場合におきましてもどういうふうな実態であるか、それを正確に把握して、やはり政治としてはこれを放置しておいていいものであるか、あるいは何らかこれに対して措置を講ずる必要があるかということを、この調査会調査してもらうのでありますけれども、かつて行なったところの農地買収価格が適当でないから、これを補正する意味においての何らかの国家的支出をするというようなことをきめることは、私はこの調査会目的外である、こう思います。
  13. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうしますと、今言ったかつての国の支払いました補償ないしは報償金補正するという意味での、いわゆる国家補償ということははっきり調査会権限外である、従って政府としては、この調査会がどのような答申をいたしましても、これは権限外事項として取り上げない、政府がもし取り上げるとすれば、これは社会保障的な意味だ、こういうふうに今のお答えを私どもは理解するのでありますが、それでよろしゅうございますか。
  14. 岸信介

    岸国務大臣 ただ社会保障の観念につきましても、これはいろいろな見方があるだろうと思います。いわゆる社会保障制度審議会でございますか、ここでもって一般社会保障問題を取り扱っております。しかしその審議会の当然取り扱うべき問題として、こういう調査会は必要ないではないかという意味においての社会保障という考え方を私どもは持っておりません。農地改革という特別の戦後における改革によって生じたところの社会的変動社会的の各種の事情、これが旧地主に及ぼしている影響というようなものを正確に把握してそれに対しては一般社会保障制度という考え方でなしに、それに対して何らかの措置をとる必要ありやいなや、またありとすればどうするかという意味において考えておる。たださっきお話がありましたように、前に行なったところの買収というものが正当でなかったから、これを改めるのだというような意味をもってやるべきものではなしに、この社会変革から生じた社会事情の幾多の問題、産業上、生業上その他の問題、特別に旧地主というものが農村における従来の長い歴史を持っておったそれの変革に対して生じておる社会的な問題を扱って、これに対して何らかの措置が必要であるか、必要がありとすればどうするか、こういう意味において扱っていきたい、こういう意味であります。
  15. 久保田豊

    久保田(豊)委員 ですから、その点を重ねてお尋ねいたしますが、いわゆる補償ないしはこれに類似したことは絶対にしない、従ってこの調査会権限外だ。ただし農地改革という非常に大きな社会変革があって、地主生活地位等にも相当大きないろいろな問題を起こしておるから、それに対しては広い意味においての社会保障という意味において、何らかの措置を講ずる必要があるかどうか、あるいはどういう措置を講ずるか、こういう今のお答えと思うのでありますが、そういう意味に解してよろしゅうございますか。
  16. 岸信介

    岸国務大臣 この買収価格の是正というような意味、あるいは補償額が足りないから補償額を追加するというような意味を持っておるものではなくして、あるいは社会保障という言葉がどうありますか知りませんが、一種の社会的変革から生じておる社会問題を処理する、こういう意味に私ども考えております。
  17. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうしますと、今のお答えは、さらに私どもの理解するところでは、補償しない、あるいは補償補正ということはしない。しかし社会保障というか何というかわからないが、何らかの意味において措置をとる必要があるかどうかということ、もしそういう措置をとる必要があるという答申が出ればその補償をする、そういう意味での何らかの措置をとる、こういう意味ですか。
  18. 岸信介

    岸国務大臣 これは調査会がどういうふうに、何らの措置もとる必要はないという結論になるか、あるいは措置をとるにしても何らかこういうふうな措置が適当であるということを答申するようになりますか、これは調査の結果に待たなければならぬので、あらかじめ私どもが予定しておるわけにはいきませんが、今も申し上げましたように、政府としてはいかなる意味におきましても、この農地改革によって行なわれた買収というものが正当なものであり、また支払われた価格も正当であるという最高裁判決を支持するものでありますから、それを是正しなければいかぬ、こういう方法において是正しろというようなことをこの調査会答申を求めておるわけではございませんで、そういうようなことになるならば、私は調査会の本来の目的に沿うておるものではない、かように考えております。
  19. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間がありませんからそれくらいにいたしますが、全国の生産農民が一番気にかかっておることは、いわゆる農地の当時の対価に対してあるいは報償金に対する補正という意味での補償はしないが、まあ社会保障といいますか、もっと広い意味におきます何らかの措置をとるのじゃないか、それのためにいわゆる農地増価税ないしは農地転用税あるいは転売税というふうなものが新設されるのではないかということを、非常に心配をいたしておるわけであります。これについては総理自民党総裁として御承知通りだと思いますが、すでに自民党の中に御承知通り農地問題調査会、これは特別調査会が発展をしたものでありますが、これができまして、三十三年の十二月十一日に農地問題に関する答申というものを出しております。今まで確かめましたところによりましては、これは総務会の議は経てない。しかしどうも政策審議会等においては一応の承認を得たような形勢があります。この答申は三項ありますけれども、その二項にはっきり、解放農地問題解決のために、解放農地のみならず一般解放農地転用転売については、転用税ないしは転売税を創設いたしまして、これを財源に充てるということが明確に答申になっております。これは総裁ですからあなたも御承知のないことはなかろうと思う。さらにこれに付属いたしまして、同日付でこの農地問題調査会の中の立法並びに財源に関する小委員会というのができております。これは綱島正興氏が小委員長であります。この小委員会報告書というものがこの答申の付録になって出ております。この中にははっきり転用転売税を取る、その具体策が書いてあります。これについて今まで政府にお尋ねいたしました範囲におきましては、こういうお答えが出ております。大蔵大臣佐藤さんは、この実質上の意味において農地補償目的のためにするいわゆる転用転売税というものについては今のところ反対だ、もし出すようになるとすれば一般財源から出すとはっきり答弁されております。また農林大臣は、どうも今のところ農地その他が一般値上がりしてしょうがないから、これの値上がり防止一つの有力な方法として、いわゆる転用転売に限らず農地増価税というふうなものを考えておる。それは一応先月の当初と日ははっきりいたしませんが、閣議に言ってあとあと研究することになっている、こういうことを言っている。これを補償ないし補償類似するものに使うかどうかという点については明言がありません。明言がありませんが、こういうことを言っております。  私は総理にお聞きいたしたいのは、総理といたしまして、そしてまた自民党総裁といたしまして、この農地問題調査会答申、これを尊重されるのかどうなのか。それから政府責任者といたしまして蔵相は、目的税としての転用税転売税には今のところ反対だが、もし出す必要があるとすれば一般財源から出していきたい。農林大臣は、農地の全体の値上がり防止一環として、方策として、農地増価税ないしは転用転売税というものを作る必要があるのではないかということを考えておる、こう言われておる。まだ閣議決定が行なわれたことではなかろうと思いますけれども、少なくとも自民党の中に設けられた調査会がこういう答申をされて、ここでははっきり言われないが、その第一項がこの調査会法案として出てきておる、同じ構想であります。その次は第二項が出てくるに違いないということは、一般農民が当然考える。また政府のうちでも、今申しましたように意見が食い違っておるけれども類似意見がすでに閣議にも提案がされておるということになりますれば、今総理がおっしゃったようなこととは違って、いわゆる名目やあるいは理由づけ、性格等はいろいろ違ったものになりましょうけれども実質上は地主に対しますところの国庫補償が、やがてはこの調査会を足場として行なわれるだろうというので、大きな疑問と不安を持つのは当然だと思う。ですから今この点についてこういう農地増価税ないし転用転売税というものは絶対設けない。少なくともいわゆる農地補償ないしはそれに類するもの、ないしは地主に対する広い意味社会保障的なものの財源ということにはしないということを、この機会にはっきり総理から言明をいただきたい。
  20. 岸信介

    岸国務大臣 農地転用税の問題につきましては党内におきましてそういう意見があることは、私も承知をいたしております。しかしもちろん党議で決定をいたした問題ではございません。いろいろなそういう意見を持っている人もありますけれども農地に対して転用税というものを設けて、それを財源として旧地主に対するいろいろな意味における補償に充てるというような目的を持って、そういうものを設けるという考え方は適当でないと私は考えます。ただ一般農地価格が非常に上がっていくということが、営農上いろいろな農業政策として望ましくない事態が起こっておるということに対して、農業政策の点からどういうふうにしてこの農地価格の急激に高騰することを抑制する必要があるか、またするにはどうした方法をとるべきかということを、農林省において研究しているということを私聞いております。しかしただ税制の面からそういうことをやることがいいのか、あるいはそれが非常に効果的であるかどうかというようなことにつきましては、これは慎重に検討すべき問題でありまして、私自身まだ農地増価税というようなものについて具体的な検討をいたしておりませんけれども、また内閣自身——そういうものに対して農林大臣が申したということでありますが、まだ検討するという段階にはいっておりませんで、農林省自体がその点についていろいろ検討いたしておる段階であると思います。これは目的は、むしろ農地価格が急激に高騰することは営農上望ましくないとして、これを抑制する必要があるという見地からのなにでありまして、この問題とは関係がない、私はこう思います。
  21. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それではもう一度この点をはっきり確かめておきますが、少なくとも旧地主に対しまする国家補償ないしはそれに類したもののためにする農地増価税、ないし転用転売税というふうなものは、これは実行しないということ、並びに農地政策として、あるいは農業政策一環として農地値上がりを防止する、こういう意味において、かりに将来においてそういうそれに類似した新税をやるといたしましても、これは少なくとも旧地主に対する補償ないしは補償類似の何らかの給付に対する財源にはしないということを、はっきりともう一度御言明をいただきたいと思います。
  22. 岸信介

    岸国務大臣 旧地主に対する何らかの措置をとる必要ありとしましても、その財源に充てるために、農地増価税転用転売税を創設するということは、私は適当でない、こう考えます。また将来、先ほど申しましたような営農上、農業政策上の見地から、農地価格の高騰を抑制するという措置を講ずる意味において、もし税制増価税というような制度が適当であるという結論になりましても、それをもってこの旧地主に対する広い意味における補償財源に充てるというような考えは持っておりません。
  23. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それでかなりはっきりいたして参りましたが、それでもなおいろいろ法案には疑問が残るのであります。  その次に私はぜひお伺いしたいのは、この調査会くらいぼうっとしたものは、何だかわからないようなものはないのであります。第一に調査会目的でありますが、これは旧地主に関する社会的な問題をいろいろ調査審議してやる、こういうことであります。この社会的な問題というのはどういう問題かといいますと、政府の御答弁は今までのところ、社会的な問題というのは農地改革に連関する地主の経済的な問題、あるいは生活上の問題、生業上の問題、その他各般の問題というのは、福田長官の御答弁では、その内容はどうかといって聞いてもわからない。それから福田農林大臣は、実は人から聞かれてもちっとも内容がわからない、実態がわからないから、農地改革の結果と、その地主の今日の実情というものを明らかにして、答弁のできるようにするのだというようなばくたるお答えであります。それから蔵相お答えはとうかといいますと、農地改革は非常に大きな変革である、全部の地主ではないが、特に小地主のうちには、戦争に行って帰ってきたら土地がなくなっていたとか、あるいは老後にそれに依存してやっていこうと思っていたところが、土地をなくしてしまったというような非常に気の毒な例があるから、そういう実態をはっきりつかむということが社会的な問題だ、こう言っておる。私も小地主の端くれでありまして、農地改革土地を取られた一人でありますからよくわかります。わかりますけれども、そういうことがこの調査会目的としてはあまりにばく然としておると思う。  それからもう一点は、地主調査をする対象でありますが、いわゆる不在地主を三十六万と言ってみたり、あるいはその不在地主プラス——農村農林省が三十年の臨時センサスでまだ調査漏れになっておるものがあるから、それを加えた約百万と言ってみたり、ほとんど対象さえ明確でないのであります。  さらに第三番目といたしましてはではどういう事項調査するのかといいますと、この調査事項というのは一つもまだ決定していない、こういう実情であります。もうすでに三年近くもこの問題を政府としては暖めてきたはずです。調査計画調査事項くらい決定していなければならないはずですが、これもわからない。突っ込んで聞きますと、調査会ができましてからその人たちに御相談をしてきめていただきます、こういう御返答であります。  さらに、調査方法計画が立っておるかというと、これも立っておらない。今のところ政府としては一千万円の予算のうち三百八十八万円を支出いたしまして、中央調査社、これは人員がわずか五十人であります。その五十人の中央調査社調査一括依頼をいたしまして、約一万五千人の旧地主抽出調査いたす、こういうような御答弁で、それ以上の答弁はできない。少なくとも地主に対して、首相が言われるように、何らかの措置をとる必要があるかないか、また答申いかんによりましては、措置をとるというならば、全地主に対して少なくともこれは調査をしなければなりません。ところでその調査は、この程度の経費や、今のような政府のお考えでできるかというと、できない。なぜかといいますと、第一にかりに一万五千戸の抽出調査をやるにしましても、抽出調査の結果出てくるものは、御承知通り一つ統計であります。統計ではほんとうに生きた実情はつかめません。しかもその払出の調査から出てくる統計が正確であるためには、その基礎というものがはっきりいたしておらなければできないはずであります。これは頭のいい首相はよく御存じだと思う。ところが現在の実情はどかうというと、どの地主がどれだけの土地をだれに解放したかということは、農地委員会段階では整理がついておりません。いわゆる買収令書なり、あるいは売渡令書農業委員会の末端ではありますが、しかしこれは名寄せはされておりません。どの地主に対してどの地主が幾らの面積をだれに対してやったというふうに整理はされておらないのであります。これが実情であります。従って少なくともまじめな調査をしようとするならば、この名寄せ調査予備調査として第一にやらなければならない。これには私どもの経験、また調査専門家からいえば、少なくとも二万人の人間が一カ月、経費は約五億かかります。その結果を今度はさらに分類をいたしまして、その分類の中から一万五千戸を抽出してこなければ、正しい一万五千戸の抽出調査にはなりません。かりにそういたしましても、次に問題の出てくるのは何かというと、生活実態調査、特に転用転売調査するということになりましたら、それ以上に手をかけなければできません。この委員会の存続期間はおおむね二年であります。これだけの調査をまじめにおやりになろうとするには、おそらく一年はかかる。少なくともこれに対して七、八億の金をつぎ込んでやらなければ、まじめな調査はできません。自民党がおやりになりましたようないいかげんな調査しかできません。それを土台にして何らかの対策を立てようといっても、これは立たぬと思う。  こういうあらゆる面から見ましてこの調査会法案というものは、何らかの調査、あるいはこれから立てる政策そのものよりは、別途の意図を持って考えられておるように、少なくとも私どもまじめに考えれば、そうなる。私もっと失礼な言い分をいたしますと、これはあとで質問いたしたいと思いますが、自民党総裁として御承知通り、旧地主団体とは非常に深い関係を持っております。これは選挙にも非常に利用されております。そういう選挙対策上の調査会ではないかとも考えられる。そう言われても仕方のないような今までの実績があり、そうしてこの調査会内容であります。まじめに地主対策を何らかお立てになるというならば、こんないいかげんな、でたらめな、ごまかしの調査会法案というようなものは、この際いさぎよく撤回されて、もう一度まじめに取り上げられる必要があるのではないかというふうに思うが、この点については、総理調査会内容まで詳しく御存じないかとも思いますが、少なくとも優秀な官僚として長い経験をお持ちになっておる総理は、この程度のことで二百万人近くの地主の問題の調査ができるかできないかぐらいの見当は、およそおつきになると思いますから、この点はおやめになったらどうかというふうに考えるが、どうですか。
  24. 岸信介

    岸国務大臣 お話の通り、私もこの調査会調査内容、やり方その他について専門的な見解を持っておるわけではございませんが、土地解放という大変革が行なわれて、それが農村にいろいろな形において大きな影響を持っておることは言うを待たないのであります。今小地主のお話もありましたが、地主として私どもは決して大地主だけを対象にして考えておるわけではないことは言うを待たないのであります。各種の複雑な問題が出てくる。従って、これに対しましてもいろいろ農村等において議論があり、また運動が行なわれておるという事態も御承知通りであります。私は先ほど申したように、ただ単にこれは法律的に合憲であり、正当であるから、一切そういう問題について耳をおおうていくということでは政治ではないと思う。やはりそういう問題が起こっており、議論が起こっておるということであるならば、その実態を明らかにして、これに対する処置は政府として一切とらないのだというならばとらないということを、ある程度調査、論議の末において決定すべきであり、また何らかの方法をとるといたしましても、先ほど来申しておるように、補償価額を修正するとか、補償価額が足りなかったからこれを追加するというようなことは、われわれは一切考えておらないのであります。調査会においてそれに対する何らかの措置として基本的な、妥当なものが出るならば、政府としてそれを採用して、そうして問題を解決していくということが、やはり私は政治の大きな目的からいうて必要だろうと思います。今お話の通り調査内容や、調査の技術的の困難なり、あるいはこの調査会においてその目的が十分達せられるかどうかというような御意見につきましては、調査会が成立した上において、調査会におきまして各方面の有識者を入れて、十分検討していただいて、もしも予算が足りないということであるならば、あるいは必要があれば予備金で支出するという道もあるし、さらに二年間ですから、一年間の実績を見て、来年においてこれをなにするということも考えていきたいと思いますが、一応政府としては——私は専門的な答弁はいたしかねますけれども、これでもって一応の調査を進め得るという確信のもとに、これを提出いたしておるわけでございますから、われわれとしてはこれを撤回したらどうだというようなお話でありますが、そういう意向は実は持っておらないのであります。
  25. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今の点、もう少し突っ込んでお聞きしたいのですが、時間がありませんから、次に譲ります。  その次の問題は、特に総理にお尋ねしておきたいのは、旧地主団体に対する総理の態度自体を、この機会に明確にしていただきたいということであります。と申しますのは、総理は、民主政治の時代だから、それぞれ同じ立場にある者が寄り集まって、そうしてそれぞれの自分の目的を達するために運動することは当然だというようなことを、国会答弁で述べられておるのであります。しかしながら旧地主団体というのは現在では連合会であります。全国解放農地の連合会ができておりまして、これが全国団体になっております。これの内容を見ますと、性格ははっきり、農地改革というものは占領軍の占領政策の行き過ぎである。これの遺物をなくしてしまって、旧地主によって農村の旧秩序を復活することが根本目的であるということを、明確に文書その他でもって打ち出しておるのであります。さらにその主張はどうかといいますと、ただいまのところ表面に出しておるのは、いわゆる解放農地に対する国家補償ということを第一の目的にしております。それだけではなくて、小作地の取り上げの自由ないしは小作料の引き上げを内容としまする農地法改革ということを目的にしておることは明らかであります。しかも今までやったことは何かといいますと、御承知通り二十九年以来至るところの県において、地主の集団的土地取り上げというものをやりまして、非常に農村の平和を乱しておるという実績を持っておるのであります。しかもその言うことはどうかというと、この前もちょっと申しましたけれども、この農地改革をやったのは当時の農林大臣和田博雄で、これは共産主義者であった。そして三十年前にスタリーンから日本共産党に出された指令二一〇七号というものによって農地改革をやったのだとか、あるいは農林省の連中は衆議院の農林水産委員会に対して六千万円のわいろを使って、この法案をぶっつぶしにかかっておるとか、農林省の役人は公務員として資格がない、赤だから、これを全部首切ってしまう必要がある、こういうでたらめなことを言いふらして全国の静ひつを害しております。いかに民主時代といえども、こういう政府の政策、今お話しになったような二十八年の最高裁判決とは全く違った、これをぶちこわしていこう、農地改革の成果を根本から破壊していこうという考え、そして行動をとっているものに対して、総理大臣が、そういう運動をやるのは当然のことであるというような態度をとるのは、私はけしからぬと思う。歴代の総理大臣はどう言っておられるかといいますと、吉田さんは、今のところ占領軍がおるから、もうしばらく待っておれ、そのうちに何とかしてやると御返答になった。それから鳩山さんは、よくわかった。党の方によく言いつけておくから大いにやれと言って激励をされた。あなたも、よく事情がわかっておるから、党と今進めておるから、安心しておれ、こういうことを言ったということを、地主団体は堂々とその新聞に発表しておるのであります。農地改革の成果を守ろうという、今御言明のあったような態度を基本的にとられている岸内閣の態度とは私は受け取れない。こういう地主団体にこそ、政府は、弾圧するかいなかは別といたしまして、少なくともこれと関係を断つべきだと思う。これに対していいかげんなことを言ってごきげんをとるようなことは、総理としてはすべきものじゃないと思いますが、この点はどうですか。
  26. 岸信介

    岸国務大臣 私自身はごきげんをとっているとは思っておりません。この調査会を設けて、公正な見地からこの問題を調査して、政府として何らかの措置をとるべきかいなか。とるとすればどうとるか。またとる場合においても、先ほど来申しておりますように、農地改革を変更するというような考え方は間違っており、それをこの調査会でやるという意思は持っておらぬということを明確に申しておるのであります。今日の憲法のもとにおきまして、いわゆる団体を結成する自由から申しますと、もしくは言論の自由から申しますと、いろいろな意図を持っての行動もあります。ただその行動自身が、もしも実力でもって農地改革のことを変更するということであるならば、これは私はもちろん法秩序を守る意味から申しまして、その行き過ぎを是正することは当然であります。しかし思想の問題とし、意見の問題として、いろいろなことを陳情するとか、あるいは要請するとかいう場合におきまして、政府としては要請に何でもかんでも応ずるということではなしに、こういうふうな問題について社会問題の一つとして調査するという調査会を作って、その公正な意見に従ってこの問題を処理することが適当であるという考えでございまして、決していわゆる解放農地連盟、団体の主張をわれわれはそのまま支持するとか、それに対して甘いことを言っておるということではございません。
  27. 久保田豊

    久保田(豊)委員 もう一問、私はもう持ち時間がありませんから、総理にお尋ねいたしますが、この地主団体の国家補償運動に対しまする自民党の態度というものにも、大いに反省を要するものがあろうと思う。この点について自民党総裁として御意見を承りたい。御承知通りこの団体が全国的な結成をする過程は、ほとんどすべて自民党の当時の幹部のごあっせんによってできております。そして現在も自民党から推薦をされました会長をいただいている。そうしてこれには自民党の衆参両院の現議員が約二百名、それぞれ役員に就任しております。岸さんは役員には名前が載っておりませんけれども、ほとんど大部分の名前が載っております。そうしてこの前の選挙には百六十四人が推薦を受けております。そうしてこの団体が選挙運動を相当活発にやったものと思われます。財政の問題についてはいろいろごたごたがあったようですが、詳細なデータを持っておりませんからこの点については申し上げません。しかしいずれにしても、さっき申しましたようなこの性格といい、実際の行動といい、主張といい、今まで御言明をいただきました政府のお考えとは全く逆な主張なり行動をとっているこの地主団体に、自民党の、しかも国会議員の方が多数役員に就任をされ、選挙で推薦を受けている。そうしてその自民党の中に、そうした人を中心にしてできました調査会答申の第一項が、この本案として結実をしてきている。こういうことは私は公党としては適当でないと思う。少なくとも私はこれらに対してははっきりした自民党としての態度をすべきだ。もちろんこれらにつきまして、適当な指導なり援助をされるということはあり得ると思いますけれども、こういうまるで自民党と一体のような……。     〔私語する者あり〕
  28. 福田一

    福田委員長 静粛に願います。
  29. 久保田豊

    久保田(豊)委員 しかもこの事務所は自民党の民情部の中にある、こういう実情であります。こういうことは私は総裁として御承知のことと思いますが、この点については総裁として自民党に対して、もう少し良識ある態度を当然指導さるべき責任があると思いますが、この点はどうですか。
  30. 岸信介

    岸国務大臣 私は先ほど申したように、この民主政治のもとにおきまして、いろいろな考えを持って団体を作って、これが実現のためにいろいろ運動することは、それが合法的である限りにおきましては、これは私はなさるべきことであると思います。しかしその意見なり要望というものをわれわれがそのまま支持するか、あるいは支持しないか、あるいはさらにそれを公正な機関によってこれを十分調査して結論を出すかということにつきましては、各種の問題について、それぞれ政府として十分な考慮をしてきめるべき問題だと思います。旧地主団体と党との関係についていろいろのお話がありましたが、私の承知いたしておる点もありますし、承知いたしておらない点もございますが、要はこの調査会を作って、そうして公正な立場から十分この問題を検討して、そうして結論を出してこの問題の解決をするということが政治的に必要であると私は考えて本案の提案をいたしておるわけでございます。党と団体との関係についてのいろいろの御批判もありましたが、私も実情をよく承知いたしておりませんから、それらの点につきましては、十分公党として本来のあり方から行き過ぎていることがあるならば、これを是正するというふうに考えていきたいと思います。
  31. 久保田豊

    久保田(豊)委員 もう一点最後に簡単に…。私どもが一番心配いたしますのは、この法案通りますと、これを足がかりにいたしましてまず地主団体が国家補償運動ないしは農地改革の破壊運動、こういうものが大きく前進をしてくると思います。その結果一反歩について十万円といい、あるいは八万円といい、あるいは五万六千円といういろいろな多額な補償要求というものが、さっき申しましたような自民党との深い強い結びつき、こういうものを通じてだんだん要求されてくる。そういうことになってきますると、結局はたとえば学徒動員であるとか、あるいは強制疎開であるとか、あるいは戦災家屋であるとか、あるいは預金の封鎖だとか、こういう戦中ないしは戦後のいろいろの国の施策によって大きな損害を受けた人たち生活に大きな影響を受けた人たちの問題が次々に出てくる。すでに政府といたしましても、旧軍人恩給の問題あるいは引揚者の問題、これだけをかかえても財政的にも大へんなところに、こういう問題がさらに次々に発展する可能性があります。こういう運動が火をふいてくるということは明らかであります。その結果としては、少なくともこの地主の問題については、さっきから総理ははっきりそういうことはしないと言っておられますけれども、たとえば農地増価税あるいは転用転売税等によってこの財源措置をやっていくというような問題も出てきましょうし、さらに農村においては、かつて地主がやったようないわゆる土地取り上げ運動というものが盛んになる。そうして農村の進歩的な前進というものをはばみ、逆行して農村が混乱に陥ってくるというふうな危険も非常にあろうと思います。この法案自体は何が何だかわからぬ法案でありまして、大した影響はないように思いますけれども、これを足がかりにして、次の段階に出てくる問題というものは決して軽視できないものだと私は思う。こういう点について総理としては、これは今まで総理自体は、そういうことはよく知らぬと言っておられますけれども、私どもから言えば、自民党はこの問題に深く足を突っ込み過ぎております。そういう点から見て、この問題についてこの法案が出た性質というものがどういうことになっているかということ、そういう悪影響が広がるのに対して、総理のはっきりした御見解を聞いておきたい。なぜかといいますと、総理は今までの答弁のうちで、そういういろいろな問題があれば、これらについても適当にやっていくのが政治の課題であるというふうなことを答えられておるからであります。その点をはっきり一つ答弁いただきたいと思います。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 戦争中及び戦後にいろいろな社会的、経済的な変革が行なわれまして、それから生ずる社会的ないろいろな問題が起こっておることは事実であります。あるいはその問題を一般社会保障の問題としてこれを解決していくとか、あるいは特殊の問題については特殊の施策をしてこれを解決するとかいうようにして、戦時中及び戦後におけるところの社会改革から起こった一つ社会的不安に対し、また不均衡に対して、日本の国力が回復するとともにこれを処置してきたことは、今おあげになりましたような問題がございます。また戦後急激に社会保障制度そのものを拡充していって、そうして生活の保障についての一般的法制なり予算の制度を完備するというふうに進んでおります。私は理想としてはやはり一般社会保障制度を拡充することによって、社会上の不安や生活上の不安というものを除いていくということが、近代国家のあり方だと思います。ただわれわれが戦争中及び戦後に経験したことは、あまりにも日本としてかつてない変革を遂げておるわけでございますから、その各種の問題について、一般原則に主眼を置きますけれども、特に取り上げて解決をしなければならぬ問題というようなものが、今おあげになりました引揚者の問題であるとか、あるいは過去においてある程度解決をしました恩給の問題であるとかいうような問題でありまして、これは一般社会保障制度でもって解決するというわけにはいかぬと考えてやったわけであります。御指摘のようにそれが日本の財政の上に大きな負担になっておることも事実であります。従ってそういうことを次々に拡大していくべきものでないことは言うを待ちません。また本件に関しましても、先ほど来申し上げているように、私はこの土地買収というものの価格補正するとかあるいは追加するとかいうような意味において、これをやるというような考え方は持っておらないのでありまして、従ってこの調査会がどういう結論を出しますか、これに対して特別の措置でなしに、一般社会保障制度の拡充でやるべきだとか、あるいは特別にこういう補償制度考えるべきだとか、いろいろな問題がありましょうが、大蔵大臣が言っておるように、もしそれをやらなければならぬとすれば一般財政からやるべきであって、特別の目的税をこれのために起こすというようなことは考えておらぬわけであります。いずれにいたしましても、今久保田君の御指摘になっておるように、次から次へと無限に連鎖反応を起こすようなことは、これは国家財政の上から見ても、また国の秩序の上から見ても私は望ましくない、かように思います。
  33. 福田一

    福田委員長 次に中村時雄君。
  34. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私は質疑に入る前に、総理に一言言っておきたいことは、せっかく三選でもされようとおっしゃられるような総理が、ただこういうようなことでいろいろ社会的に疑義を持たれ、あるいはいろいろな、今連鎖反応とおっしゃいましたが、そのような状態の中に、こういうような問題を持っておる調査会を三たび提案されていった、そこに社会的に非常な、私自身としても大きな疑問を持っておる問題が出てきておるわけでございまして、そういうためにおきましても、あなたのいろいろな考え方をこの際簡明率直に知らしていただきたい、こう思っておるわけであります。  そういう立場から、まず第一点といたしましてお尋ねしたいのは、農地改革に伴うお考え方、少なくとも農地改革というものは、以前地主階級が小作人に対して高率な小作料をかけ、そうしてそれを利用いたしまして自分たちが肥え太っていったことは御存じの通りでありまして、そのために小作人自身の地位が非常に低下しておった。そういう立場から小作人の地位の向上、さらには物納を金納に切りかえた。しかしもう一点大事なことは、あの食糧難の時期におきまして、自作農という立場からその生産向上という立場をもって、食糧供給の使命を果たしていったという点に、この農地改革というものを作り出していった最も大きな重点があったと私は思うのであります。そういう立場に立って農地改革に対して、あなたは正当な立場を持っているものかどうかというお考え方をはっきり打ち出しておいていただきたい。  第二点は、昭和三十一年の六月三日、衆議院の農林水産委員会においては、本案提出の動きや旧地主の運動が表面化したとき、与党野党を問わず委員により全会一致でもって農地改革の成果の保持に関する件で、国家補償はすべきでない、従って旧地主の運動は遺憾であるという内容の決議を行なっておるのでありますが、これに対してどのようなお考え方を持っていらっしゃるか。  続いて、御存じの通り、先ほど久保田委員からも御質問がありましたが、これらの最高裁判決に対しまして、妥当なものであるかどうか。この三点を明確に御答弁願いたい。
  35. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、私は農地改革というものは、日本の農村改革からいって望ましい改革が行なわれたものである、こういうふうに考えております。今お話のような生産性の問題もございましょうし、新しい民主的な農村における秩序を作るという問題もございましょうし、そういうことからいってこの農地改革そのものを変更するというような考えは毛頭持っておりません。次に最高裁判決につきましては、先ほども申し上げましたように私はこれを支持するものであります。それから次に、私は先ほども申し上げましたように、地主団体等の運動の目標として農地改革を変えようとか、先ほど久保田君が御指摘になったような点については、これは支持すべきものではないという意味のことを農林委員会の決議でおきめになったことだと思いますが、そういうことは、私は第一点についてお答えしたことで、私の趣旨はもちろんそういう決議は尊重すべきものであることは当然であります。
  36. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そういたしますと、今言ったように農地改革に伴って農地を中心にしていろいろな問題を考えるのじゃなくて、たとえば補償の問題、調査の問題にいたしましても、その結果からくるものでなくて、切り離して現在の旧地主の方々の生活なり、あるいは社会的条件なり、そういうものを考えている、こうおっしゃるわけなんでありますか。
  37. 岸信介

    岸国務大臣 切り離してお話しになりますけれども、今農村に残っておる地主生活上の問題とか経済上の問題とか旧地主の問題は、やはり農地改革ということに関連して起こっておるのであります。そのことが正当であり、そのことがいいことであるとしましても、それによって社会的な影響が起こっておるということ自体を、私は政治的にこれを看過することはできない。しかし今お話のように切り離してお話しになりますけれども、その起こっておる原因と結びついて考えないと、農村におけるこの問題は、私は実態を把握することはできまい、かように思います。
  38. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私はそういうことになりますと、戦争犠牲者と称する方々の事柄に対しても、いろいろな問題が出てくると思うのであります。戦争というものの原因によっていろいろ派生的な問題が起こっております。それと同じ事柄がたくさん出てくると思うのです。だから農地改革なり、今言った地価の問題が妥当であるということの判決を支持するということになれば、そのことはそのこととして農業政策の部面として取り上げ、また別に生活保障が必要だ、社会的ないろいろな環境が問題になるというならば、それは別個の問題として取り上げるということなれば、私どもは是認されるわけでありますが、しかしその原因が云々というということになれば、やはり私どもはあなた方とは対決する立場になってくる。それでは旧地主の大きな一つの団体的な圧力としての立ち上がり方に助長さすという路線を引くものであると私は思うのでありますが、今言ったように、私は基本的な問題として、別個の問題として取り上げるべき筋合いのものであると思うのでありますが、いかがなものでありましょうか。
  39. 岸信介

    岸国務大臣 一つの御意見でございますが、私自身考えでは、やはりこういう農村に起こっておる一つの問題というものは、農地改革はいかに正しいものであっても、またしなければならぬものであったといしましても、この一つ変革から生じていろいろな経済的あるいは社会的問題を生じておるとするならば、やはりその原因と切り離して、どういう原因で起こったか知らぬが、ただ生活が困窮しておるという事実だけを見て判断するということは、今の農村における問題を解決する上からいったら適当でないのではないか。しかしそのために農地改革を変更するとか、農地改革というものは間違っておったものだというような考えは毛頭持っておるわけではございません。
  40. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私はどうしても矛盾すると思うのです。たとえばそういうような御意思であれば、戦災にあった方々でも、少なくともこれは戦争に原因しておるのだから、その戦争の犠牲というものに対して何らかの方法をとるという結果が生まれてきはしないか。そうなってくると、これだけに限らず、あらゆる面をそういう問題として取り上げざるを得ない立場になってくると思います。そういうように考えた場合に、全体の政治を取り上げる場合には、今言った一つ一つを救済するなら救済するという方向に進んだ方が、賢明なやり方ではないかと考えますが、いかがですか。
  41. 岸信介

    岸国務大臣 それは御意見でございますが、たとえば戦争によって生じた一つの犠牲だということになりますと、それは程度が違うかもしれませんが、これは国民全体が戦争の影響というものは一様に受けておりますから、国民全体としていわゆる一般社会保障制度の問題として解決するということ、先ほど私が原則としてということを申し上げたゆえんもそこにあるわけであります。しかしたとえば引揚者によって起こっている経済的、社会的ないろいろな問題というものを解決するために、過去におきましても特別な——この問題はただ戦争の犠牲だから、戦争の犠牲として一般に広く考えろという問題とは切り離して考えなければならぬ。それは問題々々によるのであって、一がいに私は言うわけにいかないのではないか、かように考えております。
  42. 中村時雄

    ○中村(時)委員 総理、引揚者の問題とこの問題とを混同されたら困る。引揚者の場合には財産権をそのまま放棄してしまっておる。片一方は、あなたがおっしゃったように、判決でも正しく価値評価をされて農地を購入しておる。だから引揚者とそれを同一視するということは、私は解せない。だからそういう点では別個のものとして考える。たとえばこういうものを認めていくならば、旧軍人の恩給のために——おそらく皆さんは選挙やいろいろな関係から、一応仕方がないと思っていらっしゃるでしょうが、腰の底ではこういう格好をそのまま進めていったら大へんだという気持がおありだろうと思う。そういう圧力団体に屈するというのではなしに——あなた方はよくいわゆる社会党に対して総評が圧力団体になっていてけしからぬと言っておるが、あなた方自身が今政党としての矜恃を打ち出すのに最もいい時期だろうと思う。そういうことをあなた方がきぜんとしてやっていかれることを要望しておきます。同時に、今言ったただ単に引揚者団体とこの問題は混同をしないようにお考え願いたいと思います。
  43. 岸信介

    岸国務大臣 私引揚団体のことを申し上げましたが、それは決して旧地主の場合と同じであるというようなことを申し上げたつもりではなかったのであります。ただそういうふうに特殊な問題によって生じておる社会的な変革について、それだけを取り上げて、それに対する対策というものを考える場合もあるし、また国民一般の問題として考えた方が適当であるという問題もある。あるいは旧地主の問題でありましても、あるいは一部には一般の問題として考えるべきだ。今の中村君のお話も原因と切り離して、一般の問題としてやれという御意見であろうと思いますが、そういう御意見もあると思います。しかしわれわれのなにとしては、今申したような正しい、またいいことであったとしても、それが長年の歴史的な関係から、そういう新しい秩序が生まれる際に生じておる社会変革に対する処置が必要であるか必要でないか。必要とすればどうだというようなことは、やはりこの問題に関しては取り上げて研究調査することが政治的に必要である、かように考えます。
  44. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私の言うのは、そういう実例がたくさんある。片一方の判決ではっきりそうきめておる。農地改革は正しいと言っておる。従って農地そのものに対する処置というものは、結果においては正しかったということになる。そこであなた方は、それを関連させる必要はないじゃないかと言う。私はそこでやっていくならば、救済という意味においてやっていかれるじゃないか、こういう考え方を持っておるが、あなた方はそうではなしに、やはり農地改革も原因を持っておる、それでこういう結果が生まれてきた、こうおっしゃるから、私はその問題とは別に、農地改革が正しいなら正しいとはっきりしておいて、救済するなら救済する、このように打ち出していけば、すっきりした線が出てくるのではないか、こういうことを私は言っておるのです。
  45. 岸信介

    岸国務大臣 中村君の御意見もよくわかりますけれども、私ども考えは、要するに何も農地改革を変更しようとか、あるいは農地買収価格を修正しようというような考えはございませんけれども、かりに社会的な救済を要するような事態が何ゆえに生まれてきたかということの原因を全然考えずに、それと切り離して、現に起こっている結果だけを見て調査すべきだ、施策を考えるべきではないかということをお話しになりますけれども、この農村実態を正確に把握するためには、やはり原因と関連して考えなければならないのではないかというのが私の考えでございます。それがために農地改革の問題を変更しようとか、あるいはそれに対する観念をあいまいにしようという考えは毛頭持っておらないのであります。
  46. 中村時雄

    ○中村(時)委員 私の言うのは、今言ったように救済を中心にして農地改革を——もちろんそれが原因の一部であれば、その一部に考えていいのですが、あくまでも救済なら救済を主体的条件にしておいて、農地改革のものを一部分だけ取り上げるというなら話はわかる。ところがあなたの考え方農地改革を主体にして取り上げると言うから、問題が起こってくるのじゃないか。そこのところのけじめははっきりつけられた方がいいのじゃないか、私はこう言っているのです。
  47. 岸信介

    岸国務大臣 あるいは議論の相違になるかとも思いますが、今中村君のお話のように、私は農地改革がどういう影響を与えたかという、農地改革を主体にして調査しようという考え方では決してございません。農地改革から生じておる社会的な旧地主の経済的な関係を調査して、それに対する対策が必要であるならば、どういう対策がいいかということを考えておるわけであります。決して原因を主体として私は考えるつもりはないのですから、その点においては中村君と同じでございます。そうかといって中村君の今のお話では、その原因を全然切り離してという最初の御意見でありましたが、主体でなければそういうものを考えてもいいけれども、救済に主眼を置いて、その原因として土地改革を取り上げるならこれはちっとも差しつかえないと言われるような議論になりますと、私はむしろ議論の問題であって、実際は調査会自身土地改革を取り上げて、それがいいか悪いかというようなことを調査するものでないことは言うを待たないのであります。
  48. 中村時雄

    ○中村(時)委員 時間を制限されているので、あなたの考え方に対して私はいろいろ反論すべきたくさんのものを持つわけなんですけれども、たとえば一点だけ申し上げましてもそうなんですが、部分的なものとして重点を置かないというなれば、それに対するところのいろいろな副次的な政策なり方針というものを打ち出せるわけであります。そういう意味で私は言っているわけです。しかしそのことばかり追及したのでは次ができませんので、その点では主体的なものは救済の方向に置く。そうして農地改革の問題から派生してきた一部分も考慮に入れる、こういうふうに了解して一応おさめたいと思いますが、そう了解してようございますか。
  49. 岸信介

    岸国務大臣 これも言葉の問題でありますが、もちろん救済の問題と申しますけれども、私はそういう救済を要するようなことは農地改革ということから、そういう事態ができておるのだという意味において、農地改革という問題を全然切り離して考えるというわけにはいかないということを申しておるわけでございます。決して農地改革そのものを取り上げて、それを主体として検討するという考えではございません。
  50. 中村時雄

    ○中村(時)委員 どうもあなたの主体は、だんだん突っ込んでいくと、やはり農地改革が主体になってくる。私の言うのは逆なんです。そこらの観点をはっきりさせておきたいと思うのですが、次にいきたいと思います。  次に、私がなぜそういうことを言うかといいますと、たとえば自民党の中においても、御存じの通り民情部の中に一つの連盟の看板を掲げて、その部屋を貸し付けておる。あるいはまたこの委員会で私からの質問によって、ついにそのことが暴露されてくる。あるいはそれらの団体、たとえばそこにいらっしゃる長官にいたしましても、その団体の役員になり、そうしてその役員になるときに、選挙のときには喜んでその推薦を受けました。こういうことになり、ついには役員をやめました。こういうような結果になっておる。すなわちこれらと関連性がたくさんある。しかもそれらから出しておるパンフレットの中に、現在あなた方の自民党の中に作っていらっしゃる特別委員会の中において集約された三項目は、それらの方々が出しておるものを集約しているにすきないようなものになっている。このこともはっきり打ち出されてきた。さらにはまた岸総理自身が実は「最近の中央情勢について」というので佐藤貞氏なる者と面会をされている内容が書いてある。「渋谷の岸……。」当時幹事長をしておったころです。(「時間だ、時間だ」と呼ぶ者あり)私は心臓が弱いので、はたの方でわいわい言われますと心臓が鼓動しますから、静かにしてもらいたい。「渋谷の岸幹事長邸を訪れたのは去る五月三十日の午前八時のことでした。すると御親切にも「佐藤さん、必ず御期待に添うよう努力しますから、足並みだけは崩さないようにしていて下さい」と励まされました。」こういうことを言っている。これは全国の地主団体に対しての講演をパンフレットにして出しているわけです。そういたしますと、あなたは当初からその方の言っておられたような事柄——その方の言っておられたのは、農地改革に伴ってわれわれ地主が非常に苦しいから、何とかしてもらいたいということの陳情ですが、それに対してあなたはこういう答弁をしている。そうすると以前の幹事長時代からあなたの頭の中には、これを何とかせなければならぬという思想がはっきりと出ていると思う。しかもはっきり出ているということは、選挙の中において下条さんが各地区から十円ないし十五円集めて、その中の三千万円を選挙に使った使わないというような問題から、団体が分裂するような状況まで起こし、現在に至ってこれらの団体の方が、もしもこの調査会法案が通らなかったならば、いよいよ解散せざるを得ないような状態になってきているから、何とかここらで一つやってもらいたいということを、あなたの党内のそれぞれの幹部の方を通じて必死の努力をしておられる。その名前をずらっと二百何十人を読んでもよろしいけれども、そういうような状態になっておる。そういうことから、あなた方は地主団体の圧力によって押されてないとは言っても、実際にはそういうふうに押されているのじゃないかという危惧を持たれるようなことをたくさん持っていらっしゃる。そういうことを言っておりますから、あなたが今言ったような地主の問題にしても、以前のあなたの言動からしても、あるいは現在の自民党内部の情勢からしても、そういうような状況から判断いたしまして、これらの地主団体と大きな連携をとりながら進められているのじゃないかという危惧を持つ。そこで私の言いたいことは、先ほど言ったように大きな団体があることはけっこうであります。民主主義ですから、そのことを否定するわけではありません。しかしそのことによって国政を誤るような方向をたどらないようにしていただきたいということです。  そのために、私はもう一点言っておきたいことは、先ほど久保田委員も言っておられましたが、農地転用転売に関しましても、それに対する税金を取り立てて、一般会計からこれを支給するのでなくて、今度は転用税ない転売税によって行なおうとすることが、あなた方の党内から出てきている。現に昨日も私は皆さんの党内の話をしたときに、どうしてもこれをやりたいという意思を発表しておられる。そういうような状態でありますから、この際もう一度、しつこいようですけれども、そういうようなことは絶対行なわないという言明をされるなら、この際はっきりとしておいた方がよかろうと思う。
  51. 岸信介

    岸国務大臣 農地転売転用税というものを、この問題の一つ財源として目的税的に作るという考えは、私は適当でない、こう考えております。それはさっき久保田委員お答えした通りであります。
  52. 福田一

    福田委員長 時間でありますから、簡単に願います。
  53. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうしますと、こういうことになってくるのです。たとえばあなたは先ほど農業政策農村実態ということをおっしゃった。御存じのように、農村というものは農地と労働と資本とこの三つによって経営ができ上がっておる。その中の農地を中心にして考えた場合に、農業政策というものは、この現在の農地をどのように発展さすかというところに重点を置くべきである。だからそういうような農地改革以来において、自作農というものがきめられて、農地を中心にしてその中に労働投下をやりながら資本を援助しているという状態でありますから、そこに重点を置いて拡大されるということを希望するとともに、今申し上げましたように、現在の旧地主の問題は、農林省なり自民党の中での調査においても数はわずかであります。そのわずかの数をもってあなた方はこれだけの大きい拡大をはからんとするような考え方はやめて、今言ったように、補助するのでなしに、救済なら救済という線に打ち込んで、はっきりとした線を打ち出す方が、私は今後いいのではないかと思っておるわけであります。私の質問時間がないので、その点、皆様方はお答えができないけれども、今言った点から考慮いたしましても、もう一回もとへ返りますが、一番大事なところでありますから、今の救済という問題をはっきりとこの際打ち出して、安心感を与えていかれることを望むわけでありますが、それに対してどうお考えになっていらっしゃいますか。
  54. 岸信介

    岸国務大臣 私が過去においてこの問題についていろいろ団体の方と会ったこともございます。私自身が先ほど来申し上げておるように、政治的にこれを何らか解決しなければいけないということを考えたことも、そういうことに一つの原因があったことも、確かにあったと思います。それは私は決して圧力団体に屈したとかいうことではなしに、しかしそれを旧地主の団体の諸君が考えているように、国家補償の増額というような形においてこれを要求するとかいうようなことについては、私はやはりそうすべきではなく、実態をよく調査して、これに対して政府として何らかの措置をとる必要があるかないか、あるいはありとすれば、どういうふうな措置が適当であるかということを公正な立場から調査して、その結論によって——その結論はおそらく旧地主の団体の諸君が百パーセント満足されるような結論は出ないと私は思います。というのは、その主張は違っておる主張をされておるのです。しかしそういうことをして正しい解決をすることが、この問題を解決する道として最も正しい、こういう考え方からいたしておりまして、そういう意味において私は決して、先ほど来申し上げているように、農地法改革しようとか、あるいはその結果を修正しようとかいうような考えは、毛頭持っておらないことを重ねて申し上げておきます。
  55. 福田一

    福田委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時二十二分休憩      ————◇—————     午後一時十四分開議
  56. 福田一

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農地買収者問題調査会設置法案を議題とし、質疑を継続いたします。
  57. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 議事進行について。本案についてはこの際質疑を打ち切られんことを望みます。右質疑打ち切り動議を提出いたします。
  58. 福田一

    福田委員長 高橋禎一君提出の動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  59. 福田一

    福田委員長 起立多数。よって本動議は可決されました。     —————————————
  60. 福田一

    福田委員長 これより本案について討論に入ります。討論の通告がありますので、順次これを許します。久保田豊君。
  61. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、本案に対して反対意思をはっきりこの機会に表明いたしておきたいと思うのであります。反対理由を以下数点にわたってはっきり申し上げたいと思うのであります。  第一点は、御承知通りこの法案は、国会には今度で三回目であります。第一回は三十一国会において、これは審議未了になっております。第二回は三十三国会において、政府は本法案を撤回するのやむなきに至っております。このことは要するに、国会がこういうふうな反動的な法案は必要と認めないということを明確にいたしたことであります。しかるに今回さらにそれにもこりず、政府は三回もこの法案を出してきて、そうして今与党の多数をもって押し切ろうといたしておるのであります。こういうやり方で、二回も成立をしなかったということは、少なくとも国民を背景といたしました議会民主主義が、この原則の上に立って、この法案は不適当であるということを明確に表現をされたものであります。これを多数でもって押し切るということは、政府ないしは与党みずからが、議会民主主義を踏みにじるこれは政治的暴挙といわざるを得ない。こういうやり方は、政府自民党の反動性を明らかにすると同時に、この法案の持っておりまする超保守性といいますか、反動性を如実に現わしたものと言って差しつかえないのであります。この観点から、第一に私どもはこの法案に賛成はできません。  第二の理由は、これはすでに今までの調査過程においても明らかなように、本調査会そのものは、調査会としての体をなしておらぬということであります。いわゆる調査目的、本調査会設置の目的も、単に旧地主に関しまする社会的な諸問題の実態を明らかにするというふうなことであって、その社会的諸問題というのは、各答弁者によって解釈が違っておる。その具体的な実態は一向に明らかになっておらない。さらにこの調査対象はといいますと、政府当局の答弁はそのつど違っております。きょうは百七十六万全解放地主であると言い、これももう少し詳しく言いますと、法案自体によって、百七十六万全地主調査対象にはなっておりません。こういう事実も確かめずに、その場限りのでたらめなことを言っておる、こういうやり方であります。さらにどのような事項調査するかということについては、すでにこれが三年越しの問題であるにもかかわらず、全く明らかになっておらない。これは調査する事項がわからぬのであります。こういうでたらめであります。さらに調査方法に至っては、これは全く憤飯ものであります。だれも三百八十八万円の予算をもって、五十人の人員を持った中央調査社に一括調査依頼をして、かりに社会的な問題の実態が明らかになったといたしましても、これに即応するようなまじめな調査結果は絶対に出てこない。これはどなたがお考えになっても明らかであります。そういうふうなでたらめな調査方法であります。それから調査の結果をどのように政策的に生かすかということについても、全く答弁はなっておりません。こういうふうにあらゆる面から見て、調査会自体として、この法案は全く体をなしておりません。これは政府がこの問題に対して、地主の立場に立ってみましても、まじめに取り組んでおらぬということの何よりの証拠だと思います。悪く申しますれば、これは二つの目的を持っておると思う。一つは何かといいますと、従来自民党がこの地主団体をおだてたり、ごまかしたりして、この地主団体を選挙のために大いに活用してきた、その連中に対しまするごまかしの法案か、それでなければ縁切りの法案と申し上げても差しつかえないと思います。またもう少し積極的に言うならば、このでたらめの調査結果、たとえばこれに似たものは自民党さんがすでに作っております。そういうでたらめの調査結果を土台にいたしまして、そうしていわゆる地主団体の要求でありまするところの国家補償もしくはそれに類似する何らかの代償を地主の団体に与えていこう、地主階層に与えていこうという、こういういずれかの意図を持った法案と言わざるを得ない。こういうでたらめのごまかしのいわゆる調査会を設けてやられると  いうことは、保守の同じ立場をとられておりまする自民党としましても、あるいはその上に立っておりまする政府といたしましても、私はこれはとるべき態度ではないと思います。こういう点においても、第二点においてこの法案に絶対に私どもは賛成ができないの  であります。願わくば自民党はほんとうの正しい保守性を貫くならば、もっとこういう問題についてはまじめに取り組んでいただくことをこの機会に要望  いたします。さらにその結果といたしましては、まかり間違えば、政府は今  日一応口先では否定いたしておりまするけれども、その財源としての農地増価税あるいは農地転用転売税等を新しく創設して、現在すでに苦しみ抜いておりまするところのいわゆる生産農民を、さらにこれ以上苦しめる挙に出ないという保証は、今までのところどこにもないのであります。こういう点から見ても私どもはこれに賛成ができません。第三の反対理由は、この調査会法案が成立いたしますならば、この調査会を足がかりといたしまして、農村の現在のいわゆる民主的秩序を破壊いたし、農業の前進を逆行させる危険と可能性を多分にこの法案は持っておるということであります。御承知通り、すでにこの審議の過程で明らかな通り、旧地主団体はこの調査会を足がかりといたしまして、従来の運動を一そう積極化することは、これは火を見るより明らかであります。つまり従来の運動とは国家補償の要求の実現ということであり、土地取り上げと小作料の値上げをおもな内容といたしておりまする現行の農法地の改正であります。この調査会を足がかりとしてこういう運動がさらに積極化してくることは、これは火を見るより明らかであります。しかもそのことがすでに指摘をされましたように、今日本の農業は非常に大きな危機に直面しております。それに即応いたしまして、農政も好むと好まざるとにかかわらず前向きの、いわゆる前進をしなければならぬ段階になっております。従いましてその基礎となりまするところの農地政策にいたしましても、これは大きく前進的に、いわゆる進歩的にやって参らなければならぬ段階になっております。しかるにこり法案ができて、旧地主の秩序が農村において復活し、そうして旧地主的な農地制度の復活の動きが強くなりますれば、たとえば現在問題になっておりまするところの保有小作地をいかに合理的に処理していくかというような問題、あるいは山林原野の総合的な利用をいかにして平和的に実現をしていくかというような問題、あるいは農地の共同化ない上は法人化等の実現と農地関係とを、いかにして調和的に進めていくかというような問題は、ここに大きな阻害要因というものをこの地主の運動によってもたらされることは必然であります。こういう点におきまして、政府農地政策そのものに対する多少とも進歩的な企画というものを、ここで息の根をとめるという結果が必ず出てくるであろうと私ども考えます。  さらにもう一つは、こういうふうにしてすでに軍人に対しまする恩給制度、あるいは海外引揚者に対しまする給付金の問題、これから端を発しましてこの問題が進展をいたしてくれば、あるいは動員学徒、あるいは強制疎開、あるいは戦災家屋、あるいは預貯金の封鎖、その他戦中、戦後におきましての、戦争並びに戦争に伴ういろいろの大きな社会的変革によりましてできたいろいろの大きな問題について、次々に補償問題が出て参りまして、財政上も、それに即応いたしますところの国民負担の問題につきましても、非常に大きな危機に当面することは明らかであります。こういう点も全然見通しもなく、単に今まで地主団体と深いつき合いをしてきたからというので、そのごきげんとりにこのような危険を包蔵する法案というものを通そうということについては、私どもはどうしても納得がいかないのであります。岸首相は、この戦後の大きな問題についてはいわゆる社会保障でやればいいと言う。社会保障は戦争の対策ではありません。これは本来の資本主義社会の持っている矛盾に対しまするせめてものいわゆる平和的保障ということが社会保障の本来であって、戦争の、あるいは戦後におきまする社会的激変の結果を社会保障によって穴埋めをしようなどという考え自体が、大きな反動的な考え方ではないかと思うのであります。こういう点からも私どもは賛成ができないのであります。  それから第四の問題は、本法案実質的推進力であります旧地主団体、自民党政府の三者間におきまする、何といいますか、くされ縁があまりに深過ぎる。しかもそれを貫いておるものは保守というよりは、むしろはっきりとした反動的な性格であり、こういう点から見てこの法案の持つ危険性は、決してこの法案の表面に現われたところ、もしくは政府側において今まで弁明をしたようなところに尽きるものではないということを、はっきりわれわれは国民とともに見てとるのであります。旧地主団体は、すでに明らかになったように、いわゆる農地に対しまする国家補償並びに農地改革の成果を否定するということを根本の目標とするところの超反動団体であります。しかも自民党はこれに対しまして会長以下多数の役員を送り、そして選挙のたびにこれと結着してやっておる。そうしてそういうくされ因縁の上に、自民党内部にはこの旧地主団体の要求をそのまま実現することを現にやっておりますところの農地問題調査会等がすでにできて、その答申に基づいて政府の政策が決定をされておるというのが、これは隠れもない現実であります。こういうふうな関係から見て、もしこの法案通りまするならば、この法案を足がかりとして、政府自民党、旧地主団体一体となって、日本の農村を古い形に引き戻そう。日本の農業を前進ではなく、後向きに引っぱって参ることは明らかであります。こういう点は私ども生産農民の立場に立ちまする社会党といたしましては、絶対に賛成ができないのであります。  以上をもちまして反対理由を述べたわけであります。(拍手)
  62. 福田一

    福田委員長 次に淺香忠雄君。
  63. 淺香忠雄

    ○淺香委員 私は自民党を代表しまして、賛成の意見を申し述べます。詳細につきましては本案がいずれ本会議に上程いたされます際に申し述べることといたしまして、この法案農地改革によってほとんど無償同様に取り上げられた旧農地所有者が、その生活基盤を失い、日々の生活にも困窮し、これに伴い憂慮にたえない幾多の社会問題をかもし出していることは周知の事実であります。政府はこれに思いをいたし、これが実態を的確に把握しようとの趣旨に基づきまして、この法案を提出されたものでありまして、まことに適切な法案であると考え、わが党は全面的に賛意を表するものでありまして、いずれ詳細は本会議に譲ることといたしまして、一応賛成の討論を終わりといたします。 (拍手)
  64. 福田一

    福田委員長 次に田万廣文君。
  65. 田万廣文

    ○田万委員 私は民主社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする農地買収者問題調査会設置法案に対して、強く反対の意を表明するものでございます。  従来委員会におきまして、政府関係の閣僚並びにその他の政府委員から答弁がいろいろございました。私どもは耳を傾けて一語も聞き漏らさないという態度で、まじめにそのお話を承ったのでございまするが、われわれの納得のいく答弁というものは遺憾ながら聞くことができなかったのでございます。ただ要約しますと御答弁は、この調査会設置の目的は、地主階層の諸君の社会的な問題、もっと具体的に答弁の言葉をそのまま用いますると、生活状態、環境、そういうものを調査したいという御意見だったと私どもは受け取るのでございます。しかしその半面において、補償は何らやらない、最高裁判所の判決においていわゆる農地改革合憲であったということと、適正な価格であったという、この最高裁判決はあくまでも尊重するということをおっしゃっておるのでございますが、しからばそれから一歩進んで、調査の結果において、一部の地主諸君が、あるいは多数の地主諸君が、生活に困窮しておるというような場合があったならば、それを補償という名義は使わなくても、あるいは交付金あるいは見舞金、こういうような名義でその人たち生活を保障するというか、守るというか、そういう意味における調査をするのではないかということを端的に質問しております。しかしながら政府答弁は、われわれの率直な、終局的な答えを求めておる質問に対しまして、いわゆる社会的な問題である、ただ調査目的であるということで逃げておられるのであります。私どもは、議会の政治というものはごまかしのない、いわゆる民主主義の原則というのは、白か黒かということを国民の前に明らかにすることによってその結論が出される。それがよかれあしかれ、国民の納得のいく政治というものが期待されるのであります。しかしながら幾たびかこの委員会で質疑応答をかわされましたが、われわれのみならず、おそらくこういうことは、皆さんの中にはそうでないとおっしゃる自民党の諸君もおるかもしれないが、ほんとうに自分たちの満足のいくようなものでなく、心の中では地主階層の救済策にほかならないということを皆さん知っておられる。それを率直に救済ということを言わない、ただ農地改革が適法であった、従って補償はやらないという、その売買価格補償という言葉にごまかしがあって、そうして補償はやらないと言っておる。ほんとうはこの調査の結果、これは私は今から予言しておきますが、おそらく自民党各位の希望するような、地主階層が喜ぶような、しかもその地主階層が喜ぶというのは今日の時代において逆行するような喜び方をするような結果を出してくると思うのです。われわれはそういうようなことは絶対賛成することはできません。私が委員会において申し上げました言葉を、中には委員会に来ていらっしゃらない方もおられると思うので申し上げますと、一部階層の地主さんたちだけを対象にするのではなくて、今日全農民、小作人がどれだけ困っておるか、そういうような実態調査、いわゆる全農民における今日の零細農家、転業農家を対象にして調べる調査会ならば、われわれは双手をあげて賛成するにやぶさかではない、そういうことを言ったのであります。しかしそれをあえて一部の地主階層だけに調査目的、ピントを合わせようというやり方ですから、これはわれわれのみならず、全国農民の納得しないところだと私は考えるのであります。この無理をしておる内容を多分に含んでおるこの調査会法案は、どうか良識ある自民党各位の心からの反対の投票をいただいて、これが撤回されるように私は念願してやまないものでございます。一千万円の国費を使って調査会を設置する。今日一千万と一口に言いますけれども、これは国民の血税でございます。政府は、口を開けば、国民の血税は一銭でもむだにしてはいけないと言っておるにかかわらず、こういう意味のない、時代錯誤的な法案を多数をもって強行するというようなことは、私どもは断じて承服することができないのでございます。  私はいろいろ申し上げたいことはございますが、追ってまた本会議における反対討論に譲ることにいたしまして、これをもって本案に対する強い反対意思表示といたしたいと存じます。
  66. 福田一

    福田委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  67. 福田一

    福田委員長 これより採決に入ります。  農地買収者問題調査会設置法案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  68. 福田一

    福田委員長 起立多数。よって、本案は可決されました。  なお、本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 福田一

    福田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後一時三十七分散会      ————◇—————