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1960-03-16 第34回国会 衆議院 内閣委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十六日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 福田  一君    理事 淺香 忠雄君 理事 岡崎 英城君    理事 高橋 禎一君 理事 高橋  等君    理事 前田 正男君 理事 石橋 政嗣君    理事 石山 權作君 理事 田万 廣文君       生田 宏一君    内海 安吉君       小金 義照君    始関 伊平君       辻  寛一君    富田 健治君       八田 貞義君    飛鳥田一雄君       久保田 豊君    杉山元治郎君       中原 健次君    受田 新吉君       中村 時雄君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         農 林 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         総理府総務長官 福田 篤泰君         総理府総務副長         官       佐藤 朝生君         内閣審議官         (内閣総理大臣         官房審議室長) 大島 寛一君         農林事務官         (農地局長)  伊東 正義君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 三月十六日  委員柳田秀一君及び受田新吉君辞任につき、そ  の補欠として大西正道君及び中村時雄君が議長  の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農地買収者問題調査会設置法案内閣提出第  一号)      ————◇—————
  2. 福田一

    福田委員長 これより会議を開きます。  農地買収者問題調査会設置法案を議題とし、前会に引き続き質疑を許します。久保田豊君。
  3. 久保田豊

    久保田(豊)委員 きょうは大蔵大臣に、午前中だそうですから、まず最初大蔵大臣関係した分について御質問を申し上げます。  大蔵大臣も、この農地買収者問題調査会設置法案についての大体の背景等も、多分御存じのことと思うのであります。この問題は、農地改革に即応いたしまして、終戦後からずっと旧地主によって起こされ、引き継がれて参った問題でありまして、その要求はいろいろございますけれども、現在のところ、当面では農地改革のときの地主に対します対価が不当に安かったこと、従ってこれに対する国家補償要求することが中心になる。そこで私が第一にお伺いいたしたいと思いますのは、大蔵大臣といたしましては、この調査会結論がどうなるかはわかりません。まだ今のところわかりませんが、この運動を民間で推進して参りました旧地主団体の最も強力な要求が、今申しましたように解放農地に対します国の補償要求、さらにそれを受けてと言うと、語弊がありますけれども、これを支持したというか、そういう形においてこれを自民党の中でも推進して参って今度の提案ということになった、そういう経過になっております。そこで最初にお伺いいたしますが、大蔵大臣としてはこの解放農地に対します補償要求についてどのようにお考えになっておりますか、まず第一にお伺いいたします。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 旧地主にはいろいろあると思います。大きな地主もありますし、あるいはいわゆる非居住者と申しますか、その土地にいない、あるいは外地に抑留されていて、帰ってきてみたらわずかな土地がなくなったとか、あるいは他の都会で勤務をしておったばかりに、老後自分耕地にしたいもの、そういうものが取り上げられたとか、こういうようないろいろな事情があると思います。しかし補償の問題についてはすでに御承知のように、裁判の判決もございますし、政府自身法律に基づいて適正な補償をいたしたということでございますから、補償問題についての要求のあること自身は、そういう事実は私ども承知しておりますが、今さらあらためて補償をし直すとか、そういうすじのものではない。調査会もおそらくそういう結論を出されるとは思いませんが、調査会がよし補償の問題を取り上げられても、政府としては補償の問題としてこれを取り上げるというわけにはいかぬ、またそうする考えはないということをはっきり申し上げておきます。
  5. 久保田豊

    久保田(豊)委員 政府としましては、二十八年の最高裁の判決というのは当然支持される立場にあろうと思います。この二十八年の判決は、御承知の通りあの農地解放のときにおきます補償価格正当性というものをあらゆる面から立証し、判決いたし、さらにそれの前提といたしまして農地改革そのものが合憲的なものであり、正当なものであったということをはっきり判決をいたしておるのでありますから、今さら政府として正面から補償というものを国がするということは考えられておらぬ、これは過日の説明でわかっておる。しかしながらただ非常にあれなのは、第一に、今度の政府提案理由説明のうちにおいてもこう言っております。「言うまでもなく農地改革は、正当な法律に基づいて正当に行なわれたことであって、これを是正する意味における補償考えられないのでありますが、現行の農地法の問題とは別個に、この農地改革の副次的結果ともいうべき被買収者に関する社会的な問題について、」云々、こうなっております。言葉が濁してあるのであります。いわゆる是正する意味においての補償考えられない。つまり農地改革のときに政府が支払った対価ないしはそういったものを是正する意味においての補償考えないが、あるいはその他の意味において、あるいはその他の名目において、何らかの補償をするのかしないのかということが問題でありまして、この点は今まで総務長官にもずいぶん突っ込んでお伺いしたのでありますが、必ずしも現在まで明確でないのであります。そこで大蔵大臣としては、いわゆるあの当時の政府の出しました解放農地に対しまする対価、これを補償するという意味ではこれを出さないが、何らか別の形で、あるいは何らか別の名目で何か出すということ、そういう点についてはどういうふうにお考えになっておるのかということです。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 補償という問題について、これは政府は一貫したはっきりした考え方を申し上げておりますから、調査会ができましても重ねてそのいわゆる補償の問題が再燃するとは思いません。ところで今御指摘になりましたように、補償という形ではないが、何らかの方法個人または団体政府の金でも出すような考えがあるのか、こういうことでございます。ただいま旧地主と申す階層についても先ほど私ちょっと触れましたように、いろいろな事情で必ずしも状況は同一ではないと思います。その結果が各種の社会問題を引き起こしておる。この社会問題ということになれば、一般的な社会保障制度で救済すればいいではないか、旧地主だけ特別に扱わなくてもいいのではないかという議論ももちろんあることだと思いますが、この種の非常な大変革、その大変革犠牲というものがあるかどうか、その犠牲に対して、いわゆる国家補償ということで対策が十分できた、しかし精神の面、その他においてあるいは抜かっておることはないか、そういう意味つまり調査会を設けまして、そういう社会問題の実態について十分検討をしてみようというのが、ただいまの政府考え方であります。この調査会がどういう結論を出して参りますか、調査会を設けまして、学識経験のある方の意見を徴する以上、調査会答申は、政府が尊重して参ることは当然でございますが、その場合に一体どういう考え方が出てくるか。この調査会を設けるのに政府側は何らかの意図を持っておるのかどうかということですが、私どもはただいま実は白紙の状態であります。先ほど補償問題についての御意見がございましたが、それについてははっきりした考え方は持っておりますが、それ以後の問題、いわゆる社会問題として指摘されておる問題についていかなる具体的解決方法を立てるか、これは調査会においてきめていただく以外に方法はない。そうしてその調査会を設ける際に、私どもが何らかの意図を持ってこれに対しての指導を与えるということは、これは調査会本来の機能から申しまして、また政府立場から申してもこれは不適当なことだと思います。従いまして政府自身はその後の処置についてどうするのかという事柄については、これは福田総務長官も明確に言わないと言われるが、これは当然のことだと思う。大蔵大臣自身にいたしましても、この調査会をせっかく設けて、これから調査してかかろうという場合に、ある一つ意図を示したり、あるいは示唆を与えたりということは、私は適当ではないと思います。ただ個人的な考え方で、個人的な意見は一体どうだ、こういうことでございますれば、これは個人的な意見は持っております。持っておりますが、その個人的な意見すらもこういう機会に発表することは、私は適当でない、かように考えますので、せっかくのお尋ねでございますが、その結論調査会審議の結果、その答申、それに待っていただきたい。その場合において、初めて政府はこの調査会答申を尊重するという観点に立ちまして、どういうふうに具体的に処置するか、それをきめていくべきだ、かように私存じます。
  7. 久保田豊

    久保田(豊)委員 政府の御答弁は、大体いつもそういうふうに逃げておられるのであります。しかしながら、この調査会法案が生まれてきました背景、その他これと自民党との結びつき、あるいは自民党政府との結びつき、その間における政府の国会におきまする総理大臣以下のいろいろの答弁の変遷そういう点をずっと考えていきますと、今申しましたようなことでは、なかなかそうでございますかと言って納得できないのであります。そこで私は具体的にお尋ねをいたしますが、佐藤さんも自民党の大幹部であられるのですから、自民党の中のことはよく御承知だろうと思います。自民党の中に農地問題調査会、これができておることはよく御承知のことと思います。この調査会昭和三十三年の九月から二十日間の予定をもって全国で七千三百何戸という地主調査をされました。その調査の結果に基づくと称しまして、いわゆる農地問題に関する答申というものを政調会に出しておられます。これも御存じだろうと思います。その内容は、詳しく読めばいろいろありますけれども、大体要点は三つになっております。その一つは、「昭和三十四年度において、内閣農地解放者の処遇、農地造成等の諸問題を解決するための審議会を設け、なるべく一年以内に結論を出すこと。」これが第一項であります。これが今度のこの調査会法案になって出てきたのであります。この調査会法案の原案なるものもこの特別調査会においてはっきりできております。こういう事実であります。つまり第一項は、すでに自民党の主張がいわゆる政府の施策になってはっきり現われてきておるのであります。第二項はどういうことを書いてあるかといいますと、「農地転用転売により耕地の失われつつある現状にかんがみ、農地造成及び解放農地問題解決のため、財政上の支出を要することあるを考え、これが一般会計よりの過大の支出を防ぐため、農地転用転売に対して相当の課税をすること。」明確にこれが第二項に答申になっております。第三項には、「生活困窮者に対しては、さしあたり救済または融資の道を講ずること。」こういうふうに三項はっきり出ておるのであります。さらにこの調査会答申の付録といたしまして、小委員会報告書というものが同時に政調会に出されておるのであります。この小委員会というのは、農地問題調査会のうち立法及び財源に関する小委員会ということになっておるのであります。この中に、これはあとでまた具体的にお尋ねをいたしますが、いわゆる転用税ないしは転売税、これに関しまする詳細がこれに規定してあるのであります。今までの旧地主団体、そうして自民党との関係、さらに政府との関係、その間において前の吉田総理、あるいは鳩山総理、あるいは現在の岸総理地主団体——私は証拠をあげろと言えば幾らでもあげますけれども、それぞれ地主団体代表者に対しましていろいろ言明をされております。こういうものを見ると、今のように調査会結論待ちだ、その結論によってなんというのんきなことは言っておられない、こういうことになるのであります。そこで佐藤さんに大蔵大臣としてお伺いをいたしますが、この農地問題に関する答申の第二項については、あなたはどういうふうに理解され、あるいは評価をされておるかということを、まず第一にお尋ねをいたしたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 久保田委員は、これはもう農政の通であられるので、農業問題には特別関心を持っておられる方だと思いますので、おそらく自作農創設ということについては、非常な熱意を示しておられると思います。私どももそういう立場から、やはりいわゆる農地改革をした、この問題の起こりました環境というか、原因、それを一応たどってみて——少しお答えが適切でなくて相済みませんが、しばらくその点に触れさせていただきたい。私の理解しておるところでは、この土地制度改革、これは当時まことに時宜を得た処置だと思います。これによりましてわが国の生産も非常に増強され、農民の地位も確保された、かように思いますから、この制度改革時宜を得た適当の処置であると思います。従いましてこの制度改革を遂行するにあたって、農地所有者に対する国家補償等については万全を期した。そこで先ほど来申します補償の問題ということは、判例でも示しておりますように、すでに解決済みでございます。ところがこの土地所有者というものの形態はいろいろあります。先ほどきわめて簡単に触れましたいわゆる旧地主としていわれますものが、非常に広範な土地を所有した人たち、いわゆる小作料でその耕作を継続した人たち、こういうものが一番先に農地問題では大きくクローズ・アップいたしますが、土地改革、これを実施いたしました結果、意外な状態が幾つも出ておると思います。私もいなかの出身でございますが、わずか三反だとか、あるいは五反以内の土地を持っている。そうして若いうちは都会へ出て働き、年をとったらその土地を耕作しながら老後生活を営む、いわゆる恩給生活をやる、こういうような人たちもいる。あるいはまた留守家族がわずかに守っておるが、本人はシベリアに抑留された、そうしてその帰ってくるまでに農地改革が実施された。いろいろな事態で意外な結果を生じておるというか、同情すべき点も相当ある。ここらに十分の調査を遂げてみないと、意外な結果を招来しているのではないか、こういう問題に実は当面したわけであります。旧地主という言葉で表現されますと、いつも大きな地主ばかりが念頭に入って参りますが、いろいろ小土地所有者、それが農地改革によって意外な結果を招来しておるものがある。それかと申しまして、そういう人たち生活に困窮したといって、いわゆる社会保障による生活扶助を受ける。いかにも気持の上で納得のできないものがある。そこらにいわゆる社会問題というものが起こるわけであります。この社会問題については、そういう意味でこれはこれだけ国家のために働いた新しい制度の施行でありますから、十分よく検討いたしまして、大きな目的を達したその裏面において同情をすべきような点もあるのではないか、これが保守党の諸君、われわれの同僚の諸君が、まず一番先に、気のついたことであります。そういう意味で、別に逆行する考え方は毛頭持たないが、この農地改革犠牲者方々に対しては、国といたしましても十分実情調査して、そうして物質の面ももちろんでありますが、精神的な面においても十分この犠牲者方々に報いるものがあってしかるべきではないか、そういうことを考えてみますと、やはり調査会などを設けて、そうして一般生活困窮者とは区別して、これだけはっきりした原因によるものですから、そういう意味十分調査を遂げる、そうして必要なる処置を講ずべきが当然だろうというのがこの調査会を設置したゆえんでもあるし、また党自身がこの問題と取り組んだゆえんでもあると思います。いわゆる社会問題、同時にそれが政治問題に発展しておる、こういうことは言えると思います。  ところで一部におきましては、しばしばこの種の問題はいわゆる旧地主団体圧力団体、それを民主主義の名のもとにおいて政党が取り上げたというような、いかにも実態についてやや趣旨を曲げて解釈されるような向きもある、私どもはそれは非常に遺憾に思っております。まだ結論が出てこない際に、自民党の小委員会が二項、三項というようなものを書いておりますと非常に具体的になりますので、今言われるような点一体どう考えるかということでございますが、今調査会設置法提案するように至りました環境といいますか、基礎的な問題は今簡単に述べましたが、そういうところに実は起因していることは一つ理解をいただきたいと思います。おそらく社会党の方々も、この土地制度改革には非常に御協力願ったと思いますが、大きな目的のために非常な不幸を見ているというか、生活設計を全部変えざるを得ないような人たちのあることは、見のがしてはおられないことだと思います。そういう問題もございますから、私は調査会が十分審議されて、そして相当の期間をかけて実情に合った調査を遂げられ、そして結論を出されることが望ましい、かように考えております。  先ほど第一問で、そういう場合に結論によっては補償という問題が起こるかといわれますが、補償という問題はない、そういうことは政府はもちろん考えておりませんということを申し上げます。第二の問題でこの小委員会では何らかの財政的支出を必要とするのではないか、こういうことを指摘いたしておりますが、これは相当先走った考え方だろうと思います。今財政的支出を必要とするような結論が出るか出ないか、また政府意図はどうかというような先ほどのお尋ねでございましたが、これは調査会審議の結果に待つ以外に方法はない、かように思います。ただ政党といたしましてはあらゆる場合を考えるでございましょうから、もしも財政的支出を必要とするならば、こういうような方法はどうだろうというので、この土地転用税あるいは転売税というようなことを工夫したものだろうと思います。しかしこの土地の問題についての転用税転売税というものは、一部においてこういうことを考えておられる向きがあることは私も承知いたしております。しかし大蔵大臣といたしましては、私はまだそこまで突き進んだ考え方をいたしておりません。これは過日の本会議におきましてもお尋ねがありました際に、私も明確にはっきりとお答えをいたしたつもりでございますが、まだ大蔵当局といたしましてはそこまで進んだ考え方をいたしておりません。  ところで、この調査会にも関連することでありますが、最近一部にいわれておりますことは、都市土地値段が非常に高くなる、あるいは都市近郊耕地値段も非常に高くなる、こういうじっとしていて高くなる所得に対して、何らか土地値上がりを防ぎ、同時に非常な、不当ということは不適当かわかりませんが、多額の収益を得るということを防ぐような方法はないだろうか。あるいはまた鉄道の線路ができるとかあるいは道路を建設するとか、しかも最近はあまり産業も発展していない山間僻地等道路ができたりあるいは鉄道ができたりいたしますが、土地収用制度もなければ——そうしてその土地価格はそういう交通利便が進むにつれまして非常に変動してくる、上がる、そういうようなことを考えますと、もしも非常に不都合な者がいて、予定される土地を安いうちに買い取っておけば非常な利益を受ける、そういう不当所得を防ぐような方法が何かないだろうか、こういうような考え方が一部にあることも私は否定をいたしません。そこでおそらく何らかの財政的支出を必要とするならば、一般国民税負担でなくて、受益者負担においてそれを処置するような方法はないか、そういう考え方から、ただいまの転用税だとか転売税だとかいうようなことを考えておる向きがあるのだろう、かように私は想像いたします。しかし、政府はそれではどういうことに考えるかということでございますが、土地につきましては、御承知のように固定資産税を課しております場合でも、三年ごとに評価がえをしまして、その固定資産税を課する適正価格というものをきめて参っておりますし、あるいはまた土地を所有するだけでも今の固定資産税がだんだん高くなりますが、同時に、これを譲渡したというような場合におきましては、譲渡所得税がかかっておるわけでありまして、税制との関係がございますから、これをただ形式的に見まして、あれは高く売ったから不都合だ、もう少し利益を吐き出したらどうだ、こういうような感じだけではこういう制度は簡単にはいじるわけに参りません。そういう意味転用税転売税という意見が一部にあることはもちろん承知いたしておりますが、大蔵当局といたしましては、こういうような新しい税を考えるということについては十分慎重に検討して参らなければ、結論を出すべき筋のものではないということでございます。ことに今回のこの旧地主方々社会問題解決のために調査会を設ける、そういう場合に何らかの支出を必要としはしないか、そのためにこの税を設けるというだけでは、なかなか納得はいかないことではないか、かように考えます。また一般土地値上がり等について政府はいかに考うべきかという問題として考えた場合におきましても、まだその結論は出ておらないという状況でございます。これは土地の問題が、最近の物価政策等から見ましても、あるいは不労所得というような意味から見ましても、いろいろ各方面から論議されることは私ども承知いたしております。また経済のあり方から見ましても、特に土地値上がりし、その方に資本が投じられるというような事柄については、私どもも必ずしも全面的に賛成しておるわけではございません。しかし自由な経済行為から見まして、こういうような現象の現われていることはやむを得ないと思う。ただいままでの税制自身の建前から見ますと、一応その形の整ったものができておる、かように実は思いますので、そう急に今御指摘になるような点を取り上げるという段階には参っておらない、この点をはっきり申し上げておきます。
  9. 久保田豊

    久保田(豊)委員 ただいまの御説明で、大臣考えはだいぶはっきりわかりました。そこで今のお答えの中で私の方で理解したことを申しますと、旧地主に対しまする補償問題というのは一般としてはやらない。ただし、補償という形ではやらないが、地主の中にはそのときのいろいろな形があって、きわめて気の毒な人も出ておる。それは生活に非常に困難をしておるという人、あるいは生活設計を全然変えなければならぬという人、そういう特殊な者も相当あると思うので一そういう者に対しては、調査会結論が何らかの形で出てくれば、政府としては財政的措置なりあるいはその他の措置をすると、こういうふうに大蔵大臣理解されておる、こういうふうに今御答弁になったように私は第一点として理解をしたわけです。この点はどうなんです。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 なるべく個人的意見は申し上げないと申しましたが、いろいろ長い話をいたしますと、佐藤はどう考えておるかということを一部つかまえたような気がして、直ちに今久保田さんから、こういうように考えるがどうだというお尋ねをいただいたわけでありますが、しかし私がはっきり申し上げたいのは、この結論はどこまでも調査会結論に待ちたい、それで私どもが特にその同情するというものは、調査を待つまでもなく、ただいまのような点があるのではないか。この点は、おそらくだれもそういう事情はあるし、それは気の毒だと言われるに違いないと思うのです。ただそういうことから発端いたしまして、旧地主全般に対してどういうような結論調査会が出してこられるか、そうしてその結論を十分尊重して対策考えるということでございます。そういう場合に、財政的支出を必要といたしますならば、またその財政的支出を歳出と十分にらみ合わせて政府自身考えていかなければならぬと思いますが一ただ今そういうことを必ずやるのだとかということになりましても困るし、やらないということなら調査会は必要ないということでございますが、いずれにしても調査会結論を待つということ、これが基本的問題でございますから、その辺一つ理解をいただきたいと思います。
  11. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これは党の調査会は党の調査会として意見を立てたのだから、それは調査会意見であって、政府は必ずしもこれにとらわれるものでないというような大体の御答弁であります。しかし今申しました党の方の答申は、今あなたのおっしゃった意味を二つ分けて実は扱っておるのであります。一般のつまり旧地主解放農地については、一つ国家補償的な措置をする、その場合に一般財政に大きな負担をかけないようにするために、転売税考えろということを言っておるのであります。そして特に生活に困窮している者については、救済または融資の措置を講じろということを言っておるのであります。しかも財源小委員会といいますか立法小委員会の方は、さらに転用転売税をかなり具体的と言っておるのであります。こういうふうに分けて言っておって、しかもその第一項が、調査会案とほとんど同じようなものがすでに政府案となって出てきておるのであります。しかもそういう過程から見まして、私はこれらの答申が、おそらく自民党政調会において何らかの形で採択されたに違いない。従ってその採択の第一項をとりあえず本案として——しかもこれは三回も出されておる。三回も出されておる以上は、二項、三項はおれは知らない、それは自民党意見で、政府の方はそれにとらわれるものではなくて、本案による調査会結論によって考えるのだと言われても、はい、そうでございますかとはなかなか言えない。これが普通だと思います。常識的に考えてそうなるのが当然だと思うのであります。そこで今の御答弁では、とにかく調査会結論が出なければ何とも言えないということでありました。結論が出ればそれを尊重するから、こういうお話でございます。ところで、その次の問題といたしまして、私は少し数字にわたって、これもある意味においては、そんなことは仮定なんだから、おれはそんなことに対しては答弁する必要はない、こう言われればそれまでですが、しかしながらそうでなくて、そのもとが御承知の通り旧地主団体の非常に強力な運動、それと結びついた自民党の中の強力な動き、それが政府に反映しておることは、何といっても否定のできないことであります。しかもその三項のうち第一項は、すでに実現をしようとして本案に出てきておるというのですから、第二項、第三項も調査会結論相当大きな反映をすることは当然だと思うのであります。今お話がありました、これは法律的にも根拠はない、その当時の最高裁の決定によりましても、これははっきり正しくない、法律的に根拠がないということは明らかであります。にもかかわらず地主団体は、その後におきましても、依然として補償要求というものを引っ込めておらない。あらゆる地主団体要求の中心はこれに置かれております。どのくらいの補償額を要求しておるのかということについては、今までのところ、各団体とも正式に決定をしておるものにございません。私が目を通した範囲においてはございません。が、大体この辺にという腹はほぼきまっておるようであります。当初言われましたところは、大体一反歩について十万円というのが補償要求の基準であった。その後いろいろの変遷がありまして、必ずしも十万円にとらわれぬというふうに変わってきたようであります。たとえば日本週報の二月二十  五日号には、天野さんといいまして農地解放者同盟の総務をされておる方でありますが、この人が旧地主団体の主張をはっきりその中に書いておられる  わけであります。たとえばこういう点がございます。小委員会結論、「右  の答申案」というのは、さっきから話しておりました答申案です。答申案の二項として、「財源問題について調査会内にとくに財源探究小委員会を設け、委員長には衆議院切っての農政の権威者、綱島正興氏を起用した。委員には国会側から小林かなえ、木暮武太夫、周東英雄、小柳牧衞、原健三郎、橋本登美三郎の諸先生、学識経験者からは、佐藤達夫(元法制局長官)、松隈秀雄(日本専売公社総裁で税制問題の権威者)、橋本伝左衛門(農博、滋賀農大学長)、勝本正晃(法博、専修大学法学部長)先生らが参加して半歳にわたって研究した。」その詳細については、私はあまり詳しくなりますからここでは申し上げませんが、しかし結論としてこういうことが書いてある。「その結果、農地転用転売による不当利得者および特に農地を用途変更して転売し、一方的に不当利得をなしたる者に、土地増加税を新設すれば概算年額六百億円を得ることは容易であることを発見し、それを毎年つぶれ行く農地造成解放農地補償に当てることにすれば一挙両得であり、しかも国家財政には何等の影響を与えないという名案を考え出したのである。」というようにはっきり出ておるわけであります。これはしろうとの書いたものではなくて、少なくとも今全国の地主団体の中心団体であります解放者同盟の総務が明らかにした見解であります。しかも農地補償要求の基準としては、さっき言いましたように十万円というのから、これにはいろいろの根拠を示しまして大体八万円ないしは五万六千円というようにはっきり出しておるのであります。もし地主団体要求の十万円ということにいたしますれば、解放農地は大体二百万町歩ですから二兆円であります。それから八万円といたしましても一兆六千億円になるわけであります。五万六千円といたしましても一兆一千二百億という大きな金が全体として要るわけであります。一番つつましやかな要求である一反歩二万円でもいいという声をかりにとるといたしましても、六千億以上の巨額が要るということであります。これを年々一万五千町歩程度の転用転売、これは農林省の調査ですが、一万五千町歩、これにぶっかけていきますと、もちろんこれは解放農地の場合と非解放農地の場合と小委員会は税率を区別いたしておりますが、かりに平均いたしましてやっても、一反歩当たり四十万ということになる。それに利子その他を加えて参りますと、おそらく五十五万ないしその近くの金額になろうかと思います。これが金額転用税から負担をするということはできないことは明らかであろうと思います。ただし三木さんが幹事長時代、国の方の一般の税金でこれを穴埋めすることはできないということを小委員会に断わったという記録かあります。これは雑誌でありますからどの程度正確かわかりませんが、そういうふうにはっきり書いてあります。そういう事実があったかどうかわかりませんが、この文章の中にある答申案の中にも、これは正文でありますが、一般財政負担をかけないようにということが書いてある。しかしこれに対しまするいろいろ民間伝わるところの試案では、大体においてこのうちの二割くらいのものを国家負担して、あとの八割くらいのものを転用税でやるということが適当ではないかというふうな意見相当流れておるようであります。  そこで私が大蔵大臣にお伺いいたしたいのは、調査会結論待ちだから、結論が出ない今日、これに対する意見は言えないというお答えお答えとして言えるかもしれません。しかし現実に、少なくとも政府の政策決定に非常に近接した面で、こういう議論なり計算なりがすでに現に行なわれておるのであります。そこで、そういう事実を反映してぜひ率直にあなたのお答えをいただきたいと思いますが、こういう膨大な——また補償するとすればさっきのお話のように気の毒な連中だけに農地補償をするわけには参るまいと思う。結局それは解放農地全体に補償する以外にない。また補償の金額につきましても、甲の地主土地に対しては二十万円だが、乙の地主に対しては二万円だというわけには、これまたいかない問題だろうと思います。そこでやるとすれば、技術的な面からも公平の面からいっても、どうしても一律にやるというほかにはなかろうと思います。そういう点からいって、どの地主側の補償要求基準をとるにいたしましても、非常に多額なものが要るわけでありまして、こういう点についてもし結論がその方に出るといたしましたならば、現在ないしは今後見通し得る国の財政の見地から、これを全額いわゆる転用転売税にまかせるものか、あるいはそのうちの一部を政府として負担するものか、負担し得るものか。仮定の問題といえばそれまででありますが、これに対する大蔵大臣の所見を一つ伺っておきたい。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 自民党の小委員会答申の一は調査会を設置すること、これはただいま御審議いただいておる。二につきましては今私の考え方を申しました。三の問題は一般自作農創設の問題とあわせて、私はすでに農林当局は実施中だろうと思います。これはおそらく特別の措置でなしに、自作農創設資金の方で必要ならば融資ができることでありますから、その方ですでにやっておることだろうと思います。今後の問題で中心をなすものは、二の問題だと思います。二の問題はただいま御指摘になりましたように、これはもう調査会結論を待つ以外に方法がないことでございます。それだけのことは自分も知っているのだが、きょう話せれば話せるだけ言ってくれというお話でございますので、私も努めて誠意のあるお答えをしたいと思います。この土地改革の問題で、先ほどいろいろな一部犠牲者のあることを申しましたが、同時にこの土地改革実施直後、非常なインフレーションが起こった。それが旧地主に対しましても非常な同情を引いておると思います。現実の問題といたしまして、非常に少額な金額で土地を手放した。その土地が、まだその金自身も全部現金化しないような際に、とにかく目の前で非常に高い値段で工場に変わったり、あるいは学校に変わったり、あるいは住宅に変わったりしている。そういうことを見ますと、よしそれが土地改革として実施されたにいたしましても、感情的な問題といいますか、情愛の問題から見ますと、どうも納得がいかない。もしも実施が少しおくれたなら、自分のところでもその土地はああいう方向で処分されただろう、こういうものがあるのでございます。農地改革にそいう事態が起こることは、これは当然でございますが、ことにインフレがあったり、あるいは戦後の復興が非常に盛んになったりして、土地状況がすっかり変わってきた、そういう際でありますから、いろいろな事態が起きておる。そういう意味から申しますと、政治はやはり情愛というか、気持を無視したところにりっぱな政治などあるわけではございません。そういうことを考えて参りますと、社会問題も引き起こしておるが、やはり国民の各位の方々の気持にぴったり合うような政策をとることが、どうしても必要になってくるわけであります。それかと申しまして、政治自身が、感情に左右されることは困る。ことに土地の問題になって参りますと、基本的に幾つも考えていかなければならぬことがある。ことに在来から施行しております税制の問題であるとか、あるいは特定の受益者利益というものをいかに保護し、またいかに国家利益とこれを調整するか、こういうような問題もあるわけで、これは当然でございます。そういう点を考えてくると、先ほどから御披露のありました転用税とか転売税というようなものが考えられるようになるのだろうと思います。しかしこれは特別な意図をもって考えられる転用税転売税でございますから、それだけの問題のようでございますが、最近は土地値上がりは、ひとり旧地主方々土地改革の際に起きた事態ばかりでなくて、最近の経済情勢から見ますと、土地値上がりは私どもの想像以上のものがある。考え方によりましては経済的に一つ相当真剣に考えなければならない問題ではないかというようにまで実は発展しつつある。あるいはいろいろな国家計画等が遂行されていきます場合に、今のような所有権制度から見ますと、事前に公共事業その他の遂行計画を把握することによって土地に投資することによって、場合によれば、考え方によれば不当に利益を受けることがあり得る。それらのことを考えて参りますと、土地についての税の問題は、調査会とはまた別にも一つの問題が起きておる。そういうような場合に、過去の不動産の譲渡課税だけで処理できるものかどうか、ここらには税制上の根本の問題がある、実はかように思うのであります。先ほど来小委員会答申が問題になり、二についてどういう考え方を持つかということでございますから、土地の課税問題はそう簡単な問題ではないということを申し上げたのはその点であります。同時にまたこういう問題が起こりますのは、先ほど来申しますように、農地改革あるいはインフレーション、しかも自分の目の前でその土地が非常な高額で処分されていく、転売されていく。一方で耕地を確保するという意味の自作農の措置がとられておるにかかわらず、農地以外にそういうものが高い値段で処分されておる、こういうことになって参りますと、ここらに何らか処置すべきものがあるのではないかという気持が出てくるのだろう、かように思います。普通そういう場合に考えますことは、道路法等でもしばしばいわれることでありますが、そしてこれはまた古い法律思想でもございましょうが、受益負担という言葉がございますが、そういうような方法受益者から一定の負担をしてもらってそういう事態に対処していくというのが、従前から取り上げられた問題でございます。そういう意味にこれを考えますと、それは一応問題を処理する方法であるかのような印象を与えられるであろうと思いますが、土地の問題はそう簡単な問題ではないということを何度も繰り返して申し上げますが、そういう意味で、結論を出すことは非常に困難であります。かように実は私思っておるのでございます。もちろんこういう問題が、先ほど来申しますように旧地主に同情する、また非常に気の毒な事態が調査の結果出てきたときに、何か措置しなければならない、こういう場合に、一般財源でそれをまかなうのがいいのか、あるいは特別な工夫をして特別の財源でまかなうのがいいのか、いろいろの方法はそれはあるだろうと思いますが、どうもそういう点について今私がここで個人的な所見を述べることは、調査会に対しましても不当な内示を与えることにもなりましょうし、その点は差し控えさしていただきたいと思いますが、一般的な土地に対する税のあり方といいますか、それをもう一度検討する必要かあるかどうか、そういう意味大蔵当局もこの問題を考えておりますけれども、まだもちろん簡単に容易に結論の出るような問題ではないということ、それから調査会結論いかんによって、これをまかなわなければならぬという場合に、金額の高にももちろんよりましょう。政府は非常に多額なものを引き受けられるかと言われれば、おそらく先ほど来述べられるような金額を、一時的に処理する方法はないだろうと思います。しかしそれは過去においても農地証券その他の方法で旧地主に対しての補償方法をとったことはございますから、それは支払い方法において工夫の余地はあるかもわかりません。またそういう場合において当然の改革であり、当然の補償措置がとられたのだから、何ら見るべき筋はないという議論が出るかもわかりませんが、それはいかにも実情を無視したことになりはしないか、こういうふうにも思えるわけであります。いずれにいたしましてもその点こそは、調査会がほんとうに真剣に検討して結論を出すべきことだ、かように私ども考えております。しかる上でいかに処置をしますか。その結論を見てから考えていきたい。それはその結論の出し方によりまして、全然方法がないわけではないだろう、私はこのように思います。
  13. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私どもは一部気の毒な方があるということ、同時に地主があの当時簡単に、常識的に言って非常に安く放した土地が、目の前で何十倍あるいは何百倍するような価格転用転売をされるということ、これに対して地主が安からぬ思いをしているという事実、これは私ども率直に認めるところであります。しかしこれについてのさらに深い見解については、これは大蔵大臣とやり合ってもしようがないと思いますから、私は農林大臣と主としてやり合うつもりでおりますので、その点については触れません。今のお答えの中で、農地そのもの、土地そのものの価格が非常に上がって参った。これは都会地は御承知の通り非常に上がっている。都会周辺の農地その他も非常に上がっている。あるいはそれとどういう連関があるかは別として、一般土地価格は全国的に上がっておることは事実であります。もっとも最近の農林省の調査によりますと、一般農地価格は大体昭和三十一年ごろを山にいたしまして、奥の方ではむしろ下がってきておるのが、一般の徴候だというふうに統計で出ております。ここらについてはいろいろ意見の相違があろうと思いますが、少なくとも農林省の調査では、そういうふうなことが出ておりますが、少なくとも転用転売にひっかかるような土地については、土地価格が上がっておることは事実であります。従ってこれらに対しまして、何らか税制上も考えるという点は、これはまじめに検討すべき余地のある問題だろうと思います。しかしながらそのことと地主側の補償要求とは、全然別個に扱うべきものだというふうに私どもは確信をいたしております。そこで大臣になお重ねてお伺いをいたしたいのは、今どういう結論が出るか、調査会結論を今から大蔵大臣意見をここではさんで、これを束縛するということは適当でないから言わないというお話でございますけれども、私はこの二つは全然性質の別のものだと思う。一応国庫の収入に入って、全般の会計の中でどう措置するかということは、これは別個の問題であります。しかしながら都会地を含めて土地値上がりによりまする税金を、地主補償、あるいは補償と実質上変わらないものに使う、その場合に特に農地だけ——農地のうちでも特に転用転売農地だけそういう財源に充てるという考え方については、これが影響がなければよろしゅうございます。しかしながら自民党でこうしてすでに——おそらく政調会でもこれをのまれたことと思います。そういうことが今度できます調査会結論に何らかの影響力がないというふうに考えることはできません。必ず何かの形において影響力を持つことは明らかであります。こういうことから見て、そういう考え方については私どもはどうしても納得ができない。従って私が大蔵大臣に重ねてお伺いいたしたいのは、土地全体の値上がりに対する税の扱い方は別個にいたしまして、少なくともこの調査会結論いかんによっては転用ないしは転売に関しまする税をそれだけ切り離して創設するお考えがあるのかないのか、そうしてそれを地主に対しまする補償の財源の一部もしくは全部に充てるということを適当と考えられているのかどうか。この二点をあらためてはっきりお伺いをいたしておきたいと思います。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 農地改革によりまして譲渡されたその土地が、高い値段転用あるいは転売された。そういう場合に転用税転売税を課して、それで旧地主だけの救済の資金を出すのかどうかということでございますが、私ども先ほど来申しておりますように、この土地についての税のあり方というものは、それを小分けをして考えるわけには実はいかぬと思います。ですから、旧地主農地改革土地だけに限ってこの種の税を設けるということは、これは必ずしもまだ結論が出ているわけではございませんが、私自身は今の感じから申しますと、いかがかと思います。それから同時に久保田さんの御意見の中には、もし何らかの財政的支出を必要とするならば、そのために特別な財源を見つけろというような御意見でもあろうかと思うのですが、私どもは税について、いわゆる目的税化した税はなるべく作りたくないというのが、大蔵省の一貫した考え方であります。私はそれは不適当だと思います。従いまして先ほど申し上げるような一般土地値上がりについて不当利得のないように、適正な利潤にとどめるべき名案ができますならば、一般歳入にそれはもちろん入れますが、一般歳入になりましたものは必要なる支出にこれを振り向けるということでありまして、土地から出たものはその土地関係に返すとか、ちょうどガソリン税みたいに道路建設だけに使うというような目的税化することは、私どもは不適当だと思います。これは税の歳入の使い方から申して、そういうことは避けるべきだ。また今回の調査会がどういう結論を出されるにいたしましても、これは一度済んだことだから、国民は二重払いは困るというようなお話だろうと思いますが、しかしながら結論が出てくれば、当然国会において御審議をいただいて、国会の承認を得て歳出をいたすわけでございますので、私はそれはどういう議論があるにいたしましても、調査会結論を待つ。それを政府がいかに取り上げるか、そうして国会においていかに御審議を願うか、それにおまかせをする以外にない。ただ考え方からいたしますと、目的税を作ることについては、大蔵当局は反対だ、かように御了解をいただきたいし、また土地の問題について先ほど受益者負担ということを申しましたので、非常に限られた受益者転用あるいは転売についての課税でも考えているかというような御意見があるとすれば、その点はそういうことを考えているわけではございませんから、誤解のないように願いたいと思います。
  15. 久保田豊

    久保田(豊)委員 大蔵大臣にその点についてもう一つお伺いいたしたいと思います。なるほど転用転売農地が非常な値上がりをしていることは事実であります。どの程度値上がりしておるかという全体の調査がなかなかないわけであります。特に自民党調査をされたもののうちには、三百万円以上のものもあるというふうなこともありますけれども、あるいはそういう実例もあろうかと思います。しかし必ずしもそれが全部ではないと思います。ただここで私は特に大蔵大臣に、農民の立場からの問題としてお考えをいただきたいのは、なるほど都市近郊ないしは特別な工作物あるいは公共用地等ができる場合に、その農地が非常に値上がりをして、取引をされるという事実はありますけれども、しかしそれではそういう値上がりは売った農民がどういう立場にそれによって陥っているかということも、十分お考えをいただかなければならぬと思います。私ども承知をしておりますのは、これはこまかいところは農林大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、大体最近の転用転売の大きなものは何かといいますと、何といっても住宅用地が一番大きい。そのうちでも住宅公団その他のああいう、このごろの団地といいますか、ああいうのがたしか私ども承知しているだけで全国で二十三、四あると思います。そういうところとか、あるいは都市とか農村の町村あるいは県等でやります場合のいわゆる集団的な公営住宅用地とか、そういうものが実際には非常に多いわけであります。さらに多いのは、工場用地でつぶれる場合が多い。それから最近は道路あるいは鉄道、そういうものでつぶれる場合が非常に多い。農民の意思を無視して、純然たる自由意思でもってこれをほかのものに転用するという場合は比較的少ないように思うのであります。そういう場合の実情を二つの面からお考えをいただきたい。一つは、なるほど土地は高く売りましたけれども、そういう場合においてはほとんどあとで農業ができない。あるいは農業だけでは食えないという状況が出まして、何らかの形において転業しなければならぬという場合が非常に多い。しかも転業の場合において、若い者は工場その他に出て行かれます。しかしながら御承知の通り最近ではもう二十七、八から三十以降の者については、ほとんど一流工場への転職は不可能であります。二流、三流の、つまり中小企業以外にはほとんど転職というのは不可能になっております。それは御承知の通りオートメーションやあるいは技術革新というようなものか進んで参りましたので、工場側としますと、学卒の若い者を採って、一年なり二年なり訓練をいたしまして使った方が得だということで、中年者はほとんどだめであります。そういう関係で、彼らのほとんど大部分というものは、何らかの形において転業せざるを得ない、そういう状態です。その場合には、なかなか売った土地だけでは、そしてそれでもって得た金だけでは、たとえば商売をやるにいたしましても小さな製造工業をやるにいたしましても、足りません。私どもの知っている実例で言いましても、かりに一町歩持っているものが、二反歩あるいは三反歩、公共その他の関係でとられた場合に、結局あとの土地まで売ってそれを資金にして何らかのほかの商売に転換する。しかし百姓の商売ですから、うまくいかない。それですってしまうという場合が大部分であります。決して表面から考えた場合の、土地価格が高いことが、そのまま実質上転売者の利益といいますか、生活の増加という面になっておらない場合が多いのであります。特に都市計画が行なわれる、もしくは住宅公団あたりの団地の場合におきましては、表面と実態が非常に違います。私は一番具体的な例を申し上げますと、今でも問願になっておりますように、千葉県松戸の金ケ作団地のごときはその適例であります。あれは御承知の通り三十六万円で買うということになりました。しかしながらその中でもって、いわゆる減歩が平均いたしまして約三割八分であります。三割八分減歩をとられて、しかも今度は交換分合では農民の土地は一番悪いところへ持っていかれる。三十何万円で売りましても、約四割はただでとられるわけであります。そうしてしかも一番悪いところをおっつけられる。こういうことですから、私ども関係いたしましてからすでに五年間、あそこの農民は切りくずされながらも、最後に今抵抗いたしておるのであります。それに似たような例は、いわゆる最近の公共ないしは公営ないしは集団的な住宅転用の場合においては非常に多い。表面から見ますと、非常にプラスになるようでありますけれども、ほとんど実態においてはプラスになっておらない。そしてあとは食えなくなっている。こういう実態であります。こういう実態を抜きにした、ただ土地値上がりしたのだからということで、こういうものに対しまして転用転売税をかけるという考え方、これ自身も大いに批判の余地が私はあると思います。今までの地主団体あるいは自民党の方は、そう言っては失礼でございますけれども、こういう方のお考えのうちには、つまり転用者、転売者の立場に立った考慮がはっきり申し上げて一つもない。八十万円になったじゃないか、三百万円になったじゃないか、それだから地主が文句を言うのは当然だといいますが、それでは公共ないしはそういうところでもって土地をとられ、高い金で買われる人間が抵抗がないかといえば、抵抗があります。現に私のところあたりは、今御承知の通り鉄道の新線が通ることになっておる。ところかこれの沿線の約千四百名ぐらいでございますが、これがほとんど全部転用絶対反対であります。条件闘争じゃありません。こういうふうに深刻な問題が出ておるのであります。表面上の問題だけ取り上げて、値が上がったから、それに税金をかけてやろうなんという考え方は、私は非常に片手落ちであろうと考えます。こういう点については、大蔵大臣としてはどんなふうにお考えになっておりますか。都会におきまする土地値上がりの問題と農地転用転売の場合におきます値上がりの問題とは、そういう点におきまして質的な、あるいはある意味において変化があろうと思います。土地と人間の生活とを切り離して考えられる問題ではないというように、私は現実に理解せざるを得ない。全国のそういう問題を扱って、これに対して大蔵大臣としてはどんなふうにお考えになりますか。
  16. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来転用あるいは転売税というものが困難だということは、私も指摘した通りなんであります。そう簡単に課税を、とにかくもうかったからといって、ただそれだけの理由でどんどん税金を高くするということはそんな早計なことはいたしません。ただいま住宅公団その他のお話が出ておりましたが、これは収用の場合には課税の減免の措置がございますから、所有者の意思に反してというか、強制的な意図といいますか、特別な積極的協力を求めるような場合には、課税についても特別に手かげんしておるということでございます。ただ私先ほど来申し上げましたのは、今のような状態はほうっておけないような問題だ、この結論はどういうようになるか知らないが、とにかく検討するというか、研究に値する問題ではないかということを実は指摘したのでありまして、非常に簡単に——こういう新しい税を創設したり、税率を変更する、こういうようなことが簡単にできるものではないこと、これはよく承知いたしております。問題はこの調査会の問題からだんだん発展して参りまして、問題のあります点に触れたわけでありますが、そういうような問題もずっと含んでおりますので、この調査会結論というものの取り扱い方は、もちろん慎重でなければならない、かように私ども考えております。誤解のないようにお願いいたします。
  17. 福田一

    福田委員長 久保田委員にちょっとお願いをしておきますが、理事会の話し合いで、きょうは大蔵大臣に対する質問は、社会と民社両方にやっていただくということになっておりまして、実は持ち時間はあなたの分は済んでおるのですが、しかし民社の方の中村委員がまだ出ておいでになりませんから、私の方で今から催促をいたします。出てきてもらいましたら、質問順位を中村委員に譲っていただきたいと思いますが、それを御了承の上で質問の続行をお願いいたします。
  18. 久保田豊

    久保田(豊)委員 大蔵大臣時間があられるそうですから、私は大体ぼつぼつ質問を打ち切る時期になったと思うのであります。いずれにいたしましても今までお考えのうちで、これは調査会結論が出なければ何とも言えない。しかし少なくとも旧地主のうちの気の毒な人に対しては、補償という意味ではないが、何らかの措置をする必要があるではないかというふうに個人としては考えておる。一般的には補償ということは考えられない、こういうことですね。その財源といたしましては、目的——転用税転売税というものをこれと直接に結びつけて考えることは、今のところ適当でないというふうに考えておる。しかしこれはやはり今のところであって、調査会結論が出ればこれによってなお慎重に検討をいたして、政府としての最後的な態度をきめる、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  19. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大体大筋はいいように思います。大筋はいいように思いますが、私少し誤解があると困ると思いますのは、とにかく調査会結論を待つということ、これはもう私の考えに変わりございません。特に私は同情の意を表しているというか、問題のないという点は、先ほど申し上げるように特別な気の毒な方もあるだろう。この点では、おそらくこれは社会党だろうが、民社党だろうが、同情されるということにおいては私どもと同じだろうと思いますが、この同情ということが同時にこの旧地主全般にどういう結論になりますか、非常に気の毒な者だけに限るとかいうことを調査会要求するわけのものではない。この点は誤解のないように願って、非常に限定した意味に私の同情論をとられると、その点は違う。これはそういう点をも含めて全般としての結論調査会が出すことだというふうに御理解をいただきたい。それからその後の処置の問題については、その後の処置として考えたらいいだろう。しかしどうも土地の問題は旧地主関係だけに限って処置するということは、いかにも無理ではないかと私今日思っております。調査会でどういう結論を出すかわかりませんが、そういう感じを強くする。やはり一般土地の問題として、今の価格値上がり等から見てもう少し何か検討を要する。これはもう調査会の問題ではないと思いますが、そういう感じがしておるということ、これは大蔵当局として検討の問題でございますということを指摘している。また税としては、いわゆる目的税をだんだんふやしていくような考え方には絶対に反対でございます、かように実は申し上げるわけであります。
  20. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そこで実は今までの私の聞き取り方が間違っておった点がはっきりわかったわけです。それは大蔵大臣といたしましては調査会結論によっては地主のうちの気の毒な人——まあ気の毒の程度が軽い一般の旧地主に対しましても何らかの措置をするということならば、調査会結論が出れば一般的にもやるというわけですね。もし調査会結論がそう出れば、財源の問題は別といたしまして、考えざるを得ない、そういうことですか。
  21. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 結論が出たら必ずやるというわけではございません。答申がありましたら十分答申は尊重して、そして十分検討いたす、かように実は申しておるわけであります。その点は誤解のないようにお願いしたい。どこまでも調査会を設置して学識経験者の御意見を徴します以上、これを頭から反対するとかいうようなことはしないつもりであります。しかしながら調査会結論が出ましても、私ども同時に納得がいかないことでございますれば、その通りやるというわけには参らない。これは当然政府としてそれだけの保留のありますことは、御了承いただきたいと思います。
  22. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それからもう一点確かめておきますが、いわゆる土地全体に対する税金の体制は大いに研究をする、あるいはその研究の結果、土地値上がりその他に対します何らかの新しい税体制というものを、現在の譲渡所得税なりあるいは不動産再評価税でございますか、この二つが今かかっておるわけでございますが、これとの調整をして何らかのあれをするかもしれないが、それをいわゆる旧地主補償というものと結びつけた目的税的なことは、大蔵省としてはかりに調査会結論がどう出ようとも、これに対しては反対だ、こういうことでございますか。
  23. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 目的税は作らないということは申しております。今のガソリン税でもけっこうだろうと実は考えております。税収の歳入は一本のものとして、そうして必要のある支出にこの歳入を使うというこの考え方はくずしたくない。従いまして調査会でどういう結論が出ますか、仮定のことですが、何らかの処置をとれという場合がありますれば、いわゆる税としてこれは一般の歳入からまかなって差しつかえないのではないか、実はかように考えておるということでございます。
  24. 久保田豊

    久保田(豊)委員 もう一点お伺いしておきますが、その場合に転用ないしは転売農地に対します新しい課税のみならず、これを孤立してというか、特別に取り上げて実行するというのではなく、農地全般についてあるいは都会土地についても、統一的なたとえば税制改革の一環として実行するというお考えですか、それともあるいは調査会結論によっては転用ないしは転売のものについてだけ特別に何か措置をしてもいいとお考えになっているのですか、どっちですか。
  25. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは税制全般のあり方として考えて参らなければなりません。従いまして特別な税だけ切り出して考えるというわけにいかないということでございます。ただいま税制調査会のあることは御承知の通りでございますが、その税制調査会でも基本的な問題をいろいろ検討いたしておりますが、最近この土地についての課税問題は簡単ではないのだから、一部で言っておるようなわけにはいかぬから、十分一つ税制調査会意見も徴するようにということは事務的に命じております。全般的の問題として検討するつもりでございます。
  26. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今のお答えの中で、それでは税制調査会ですでに土地値上がりというか、これに対します具体的な諮問なり何なりすでに出されておるのですか、どうですか。
  27. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 まだ出しておりません。おりませんが、事務当局にはそういう意味でこれは検討してみろということは言っておるわけであります。
  28. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これに連関して、最近農村の方で問題になっておりますのは、今の固定資産税評価がえの問題であります。今までは御承知の通りに、賃貸価格を基準にして参りました。大体今までのは三万円から普通のところで三万八、九千円、四万円をこす場合は農地についてはほとんどなかった。ところが最近は実例価格というので、十万円から十一、二万円を大体標準にして、そうしてそれに対して税率をある程度低下してほかを押えるというふうなことが税制調査会ですでに結論を得ておるが、発表すると大きなあれを与えるから発表をまだ差し控えておる。こういう実は情報も飛んでおります。新聞等もそれに似たような記事が出ておりますが、この点は事実はどうなんですか。
  29. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 まだ大臣としては報告を聞いておりません。おりませんが、今のようなお話もございますから、誤解を解いておく必要があるだろうと思いますが、土地評価は三年ごとにする。今日までの評価は比較的実情に合っているというか、あるいは農民の立場理解を持っているといいますか、比較的低い措置をして参ったと実はかように考えております。しかしこれがだんだん今問題になりかけつつあることは、この評価実情等から見まして御指摘の通りであります。しかしただいま事務当局からの差し書きを見ますと、固定資産の評価制度調査会ではもちろんまだ結論を出しておりません。従いましてただいまお話しになりました点については、私どもはどういう実例かちょっと存じません。もし具体的にそういうことがございますれば、具体的な問題として十分相談に私ども応ずるつもりでございます。この土地の問題につきましては、収益還元価格主義というものと売買価格主義と二つの主義がございまして、そのいずれによるべきか結論を出しておらないというのが実情でございます。この点は誤解のないようにはっきり申し上げておきます。
  30. 久保田豊

    久保田(豊)委員 大蔵大臣に対する質問は時間の関係もありますから、この程度で私はやめておきます
  31. 福田一

    福田委員長 中村委員にちょっと申し上げておきますが、先ほど来あなたのおいでになるのを待っておったのですが、久保田さんにはその点も注意してあなたのところへ実は使いを出しておったのですが、おいでにならなかったので、久保田さんに質問を続行していただいておりまして、実は大蔵大臣は非常にお忙しいので、十二時半ころまでにまだ三十分ありますから、一つなるべく……。一時間の予定でおったのですが、あなたのおいでになる時間がちょっとおくれましたので、そのつもりで一つよろしくお願いいたします。中村時雄君。
  32. 中村時雄

    中村(時)委員 その前にちょっと委員長にお願いしておきたいのは、質疑の時間が切れたような場合には、この次に一つやらしていただきたい。
  33. 福田一

    福田委員長 委員長からお答えをいたしますが、御希望は承っておきまして、理事会において決定をいたします。
  34. 中村時雄

    中村(時)委員 まず第一に、大蔵大臣お尋ねする前に、現在出ておるところの調査会法に伴うところのいろいろな観点、たとえば先般私の質疑応答の中で、総務長官の答えの中にこういうことがあるわけです。ということは、総務長官自身もこの地主団体をよく御存じである。同時にまたそういうようなことが、現在自民党の中に特別委員会を設置して、そうしてその中から、この調査会法に伴うところの提案をする理由の一部分になった、こういう御返答があったわけです。そのことを確認する意味において、その前提として、総務長官、今私の言った事柄に対して間違いはないかどうか、一点だけ長官にお伺いをいたします。
  35. 福田篤泰

    福田(篤)政府委員 政府提案いたします以上は、この前にもお答えいたしました通り、独自の政府の判断でいたします。ただそれまでには、いろいろな、今御指摘団体のあれだとか、あるいは党の御意向とか、そういうのも一つの要素になるということを申し上げたわけであります。
  36. 中村時雄

    中村(時)委員 もう一つその前提にお願いしておった田中萬逸会長、それから佐藤貞氏、この二人に対する証人の問題、それから農地証券の問題はここにあります。それでこの資料要求の一部は出ておりますが、もう一つ団体におけるところの役員名簿だけでもせめて要求をしておったのでありますが、この資料は大体いつごろできる御予定でありますか。この資料がないと、きょうの大蔵大臣とは別に、今後におけるいろいろな個々の問題があるので、これをお伺いしておきます。
  37. 福田一

    福田委員長 委員長からお答えをいたします。先ほど実は受田委員がおいでになって理事会を開いて正おりました。そのときに受田先生から、当事者のあなたがおいでにならぬところでその問題等をきめるのはおかしいからというので、あなたのおいでを待っておったのですが、ちょうどおいでにならなかったので、実はきめられなかった、こういう事情であります。質問を続行願います。
  38. 中村時雄

    中村(時)委員 了解。それでは私の方から一、二お話をしておきたいことがある。それはこの団体には田中萬逸氏が常任顧問としていらっしゃる。衆議院議員では、そこにいらっしゃる淺香忠雄さん、原健三郎さん、濱地文平さん、参議院の大谷さん、木暮さん、小柳さん、この六人が就任していらっしゃる。同時に自民党の中で衆参議員の二百六十三名が顧問をしていらっしゃる、こういう団体ができているわけなんです。そこで今までの経過は、質疑応答のいろいろな中で、長官やおそらく大蔵大臣も閣僚の一人として、内容はよく御存じだと、こう思うわけです。そういう立場に立って、現在の地主団体に対してどういうお考え方を持っていらっしゃるか。
  39. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど久保田委員の質問に実はお答えいたしたのでございすが、私自身も、ただいま御指摘になりますような地主団体、同時にまた実際耕作しておられる農民の方々、それぞれからしばしばこの問題についてのお話を聞いております。この問題についてはかって私も党におった時分に、いろいろこの問題等と取り組んだことがございます。これはもう非常に古い問題でございますから、ことしあらためて出たわけではございませんので、経過はよく知っております。そこで先ほどもお答えしたので、重ねて申し上げることは大へん残念でございますが、申し上げてみますと、この土地改革農地改革をいたしました際に、この農地改革は私は非常に時宜を得た処置だと思います。戦後のあのときに、積極的にかような大改革が行なわれたということは、非常に時宜を得た処置であったと思う。同時にその政策遂行にあたりましての犠牲者に対する補償等は、当時考えられる十分の措置をとられたと、かように今日も考えております。従いましてその後判決等がありまして、これは適正にやられたものだということが確認されております。従いましてあらためて補償の問題などが起こる筋のものではない、かように考えますが、この農地改革というような大きな改革をいたしますと、私ども考えただけでなしに、各方面にいろいろな影響を与えておりますし、中には非常に気の毒な方もあるのではないか。しばしば指摘されますものは、いわゆる大きな地主がいつも表面に出されて、地主対策ではないかというような批判を受けますが、土地改革犠牲者は、いわゆる額に汗しないほんとうの地主ばかりが犠牲者ではなくて、わずかな耕地を持っている人たちも、同じように不在地主というような形で同じ処置を受けておる、こういうものも多数あるわけなんであります。中村さんもかつて役人をしておられたのだから御承知だと思いますが、私どものいなかなどでも、とにかく若いうちは役所で働く、あるいは工場へ勤める、しかし老後は祖先の残した田地あるいは畑地、わずかなものを耕して、そうして老後を養うというようなことをしばしばやっております。しかしこれが同じように不在地主ということで、その耕地が取り上げられたというようなものが幾つもあるわけなんでございます。あるいは戦時中の事柄でございましたから、当の主人は外地に行っていたとか、あるいは親戚の者がかわって土地を保管していたとか、こういうような具体的な問題から見ると、自分で耕作をしたくてもなかなか耕作のできなかったものだとか、あるいは当然の一つ生活設計考えたが、土地改革のためにそれが実行することができないとか、いろいろな問題が起きておると思います。しかし大筋から見ますとこの自作農創設、そういう観点に立てば、これは絶対に必要なことだ、かように実は思うわけであります。そこで政府考えておりますように、また一部各種の団体から政党に対してもいろいろ話が持ち込まれたように、いわゆる社会問題を一部で起こしたり、さらにその社会問題が発展して政治問題になってきている、こういうのが今の現状だろうと思います。そういう意味から政府といたしましては実態を十分つかむことが必要ではないだろうか。一部についてはすぐ非常に同情のできるようなものもある。また一部については十分調査しなければ、見当のつかないものがあるとかいうような実情だと思います。そこでできるだけ早く調査会を設けて、実態を把握することが必要だろう。ことにこの土地制度改革いたしました直後において、予想のできないような大きなインフレーションの進行にぶつかった。そこでもう生活環境は全然変わった。あるいはまた戦後の経済復興等から見まして、とにかく食糧第一主義のものが、最近は食糧増産もずいぶんできて、食糧なども国内の米麦でとにかく主食がまかなえるというような立場になってきたが、同時に一方で工場ができるとか、あるいは住宅問題から団地を作るとか、あるいは学校を作るとか、土地転用等の問題も起こる。そういうことになると、わずかの問題に非常な変化を来たしておりますだけに、どうもまざまざと手放した土地、それを相変わらず耕作してくれるならともかく、それはどういう理由か、とにかく転用されている。しかも安く売られたものが高い値で処分されている、そういうことを考えますと、そこらに社会的な公平という点から見て、それでよろしいのかというような議論が一部にあること、これに全面的に私賛成しているというわけで申すわけではございませんが、そういう議論の起こることは、実際問題としてやむを得ないだろう。そういうところから今回政府が意を決して調査会法を提案しておる、こういう実情でございます。
  40. 中村時雄

    中村(時)委員 今いろいろなことをおっしゃいましたが、たとえばそういうふうに一部の特定のところの階層を調査をするということになってくると、いろいろな問題が私はたくさんあると思うのです。全般的に見れば、この前におけるところの預金の封鎖の問題に伴ういろいろな生活の擁護の問題であるとか、そういう関連性のものがたくさん出てくる。そのたびごとに調査会を設けるとか設けぬとか、いろいろなことも起こって参ります。そのほか農林の資料に伴って今の地主方々実態調査をやっておられる、そういう内容の問題に関してどうなるとか、あるいはインフレの問題に関しましても、これはあとで非常に大蔵との関係がありますから、シャウプ勧告以来の問題とか、いろいろな問題が私は数たくさんあると思うのです。また今の最後の点で一つだけ私おかしく思っておりますのは、農地改革の当時におきましては、生産向上を中心にしておりまして、小作民の地位の向上、あるいは現物小作を金納にしていった。今までの小作民の圧迫に伴う問題、小作料の問題が中心であって、その点はすなわち生産向上という、食糧難に伴う問題を取り上げておったのであります。ところがその後におきましては、現在のように生産がある程度の安定に達して参りますと、土地というものが生産財のみでなくして、今度は財産問題となって私有権としての問題が出てくる。そういう関連性の問題がいろいろございますけれども、そのことはそれぞれの所管の方にお聞きするとして、時間が非常に少ないので、次に問題の核心に入っていきたいと思っております。そこで第一にお尋ねしたいのは、この問題は御存じのように、昭和三十五年度予算編成において一千万円の調査会の費用を計上したのでありますが、そのとき私たちの聞いておる範囲内におきましては、当初大蔵大臣、農林大臣はこれに反対をしておった。そこで私たちもあるいは農民の一部の方々からは、そのことに関しての問題を取り上げて喜んでいらっしゃった。ところが実際にはこういうような状態になったわけなんですが、特に賢明な佐藤大蔵大臣といたしましては、一体この予算のときにはこれに賛成をされる意思表示をされておったのか、あるいはそうでなくて、考慮をする意思表示をされておったのか、あるいは絶対賛成の意思表示をされておったのか、その点を一点お聞きをしたい。
  41. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 予算編成の際には、なかなか正直には自分の考え方は言えないものでございます。これは予算の総体の規模を確保するという意味において、いろいろな問題がございます。従いまして新聞等で真意を伝えてない点も多分にある。弁解がましいことを申すわけではありませんが、冒頭に申しますように、私大蔵大臣になる以前からこの問題には深い関心を持っていた。その一事だけを御披露いたしまして、予算編成の際の経緯のことは答弁を保留させていただきます。
  42. 中村時雄

    中村(時)委員 全面的に好意的に解釈をして、それ以上のことは申しますまい。そこで次にお尋ねしたいのは、先ほど言った農地価格の問題でありますが、農地価格の問題といたしまして、御承知の通りに昭和二十五年シャウプ氏の税制改革案敢行の線に沿って、土地台帳法の一部が改正されたのは御存じですか。
  43. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その通りだそうです。
  44. 中村時雄

    中村(時)委員 その通りだそうです、それもそれでいいですけれども、これが非常に原因になっておるのですから、いろいろの関心を持っていらっしゃるなら、しっかりやっておっていただきたい。そこで、その通りだそうですと言われる方に、こういう質問をしてよいかどうかということも疑問ですけれども、一点お尋ねしておきたいことは、御存じのように、そういうような結果が生まれたために、改正されたために、土地貸借の価格の公定制度が同年の七月三十一日以降廃止されてしまったのです。これによって異常の賃貸価格に基礎を置くところの農地価格の統制規定が事実上無効となってしまった。そこで無効となってしまったのでどういうことになったかというと、農林省の方といたしましては地価の統制を織り込んだところの農地改革法の改正案を提出していった、このことに御記憶がありますか、御存じでありますか。
  45. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 事務当局から説明いたさせます。——農林省がよく御存じですが、農林省がいないので、むしろ中村委員の方がその経過を御承知だと思います。
  46. 中村時雄

    中村(時)委員 そこでそういうふうになってしまったために、今言ったように、農林省で今までは段階を分けまして、最高価格の限定をとって押えておったわけです。ところが今言ったように、小作料だけは統制においてぴしっと押えておきながら、農地価格の点においては全部フリーにしてしまったために、価格が暴騰してくればそれに伴って押える方法、手段がなくなってしまった。そこに最も大きな原因が、この土地売買に伴って法律的な内容から言うと出てきておるわけです。これに伴って考えることは、あなたの賢明な頭脳から割り出して何らかのこう考えたいという御意向が出てくると思うのです。今の土地価格が高騰をした場合にそういうような考え方をしましたかどうか、その点を一点お聞きしておきたい。
  47. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 農林省がどういうように変えたかということについては、農林当局の説明に譲らせていただきたいと思いますが、私はおそらく自作農といいますか、耕地転用は非常にやかましく言う。また一たん耕地になりましたものは引き続いて耕地として存続さす、こういうことで土地の売買は非常な制限を受けた。そういうことがありますので、いわゆる賃貸価格主義から売買価格主義の方に変わってきたのだろうか、かように理解したいのですが、現実にはずいぶん耕地が宅地に変わったり、あるいはその他に転用あるいは転売されている。こういう事実が出てきている。そういう場合に価格相当変動しているということは言えるだろうと思います。先ほども久保田委員の御質問にお答えしたのですが、これはひとり耕地ばかりではございません。ことに最近の土地価格の問題は、都市を中心にして非常な値上がりがある。主として住宅でございますが、それに関連して都市付近の耕地の地価の値上がりは非常なものだ、かように思います。これもこのままほうっておいていいかどうか。そういう意味からやはり検討を必要としはしないかという点があるのでおります。経済問題として、土地に対する投資なり、あるいは土地値上がりなり、各不動産売買業なり、それらのものの総体を考えて、何らかの処置を必要とするのではないかというばくとした感じをただいま持っております。
  48. 中村時雄

    中村(時)委員 土地の問題に関しましては、御存じのように現実に規制されているおもなものは土地収用法の問題がある。だからただ単にそれだけでも今度は問題があります。おそらく内閣委員会にまたこれも調査会というような問題で出てくるであろうと思いますが、そのときにはまた十分話し合いをしたいと思っております。そこでもう一つお尋ねしたいのは、そういうばくとしたお考えを持っていらっしゃるというときに、御存じの通りに自民党土地の特別委員会からいろいろな答申案を出されていらっしゃる。これは皆さんも御存じだろうと思います。その答申案の中に、先ほど久保田さんも読上げていらっしゃったようでありますが、「農地転用転売により耕地の失われつつある現状にかんがみ農地造成及び解放農地問題解決のため、財政上の支出を要する事あるを考え、これが一般会計よりの過大の支出を防ぐ為め農地転用転売に対して相当の課税をすること。」こういうふうになっている。言いかえて言葉をやさしくしますと、転用税というか、目的税とでもいいますか、そういうような方向の一つ答申がなされている。ところがこの答申がなされている裏面を考えてみますと、今度はおそらく大蔵大臣御存じでないかもしれませんが、地主の中からこういうことがうたわれておる。その一つの中に補償財源は一般租税の負担によらず、売り渡し未済解放地の処分の方法等によって十分に捻出することができる。これは同じ考え方なんです。要するに補償に対する問題を取り上げているわけです。そこでそれを考えますと、一応わかりやすく言いますと、たとえば現在土地が十万円しておる。ところが農地改革のときには五百円で買ったのだ。そういたしますと、実際に九万九千五百円というものを税金で一度取り上げられてしまう。そのうちの半分を今度は地主に返すのだ、残りの半分は土地改良に使うのだ、こういう考え方になると私は思う。当然の常識論からいくとそうなると思う。そのいい悪いは別として、もしかりにそういうようになった場合に、少なくとも当初五百円で売った場合は所得税が取られている。もしかりにまた再びそういうことになってその半分を地主が受け取ったとすると、これに対しては当然税金がかかってくるものだと思うのですが、これに対してどうですか。
  49. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 中村委員は頭がいいから、いろいろの場合を考えて、こうなるだろうああなるだろうと言われますが、ただいまようやく調査会を設けよう、調査会を設けてどういう結論が出るか、まだ実はわからない。党の小委員会ははっきりした答申を出しておりますが、先ほど来久保田委員に対する私の応答では、目的税を課することは私は反対だという意見を述べてございます。同時にまた何らかの処置をしなければならないとしたら、それは一般財源で必要なら支出していいのではないか、どうして目的税で払わなければならぬか、こういうことを実は私は指摘いたしておるわけであります。問題は、ただ単に仮定の問題についてのお尋ねとは申し上げませんが、これはやはり調査会結論を待つことが第一だと思います。調査会ではどういう結論を出して参りますか、今のうちからその調査会結論を想定してかくあるだろう、そうするとこういうような不都合が起こるとか、こういうことは避けられたらどうか、かように実は思います。
  50. 中村時雄

    中村(時)委員 そういう御答弁になると私も大体考えておったわけなんですが、そこで今言ったように、そういうことは自分としては反対であるという意見さえはっきりすればそれでいいのですが、今のお考え方は非常にそのことが大きな影響を持っている。なぜならば、この前の選挙の際におきましては、こんな小さな紙きれを農村の地主のところへ全部配ってきて、百円ずつ出してくれ、もし出さなかった場合に調査会法が通って政府から金か入った場合に、あなた方の権利はなくなりますよ、こういうことまで言ってやっておる。そこで最近はどういうことをやっているかというと、最近では、一反歩に対して五万円だけはいただけるのですから、もらうものはもらっておこうではないか。五万円を見てみなさい、ばかな話ですけれども、少なくとも一兆からの金になりますが、そういうふうな宣伝までして、いろいろなことをやっておる。そのうらはらを考えてみますと、あなたは笑っていらっしゃるけれども、農民にとっては大へんな問題なんですよ。笑っていらっしゃいますけれども、ほんとうにそれがそういうような結果になってくるのはどこに原因があるか。たとえば五万円もらったらけっこうですよと、もらうようなつもりになっておるのが今の農村なんですよ。今の農村はほんとうにそう思っている。そこで私たちの推察から見ると——私が先般地主団体の経費に伴うところの資料の提供をお願いをしたのはそこにある。ということは、おそらく運動をされた中心になられた方々は、今までにおそらく数千万円の金を使っているだろうと思う。それらに伴って自分たちの一つ目的の、何らか手かがりをしなければならぬという立場に追い込まれておると私は推察している。そういうような立場からいろいろなものがからみ合って、いろいろな問題を起こしている。ほんとうにあなた方が調査会だけを作って調査だけをいたすというなら、私は何ら反対をするわけのものではない。簡単なものです。ただし今言ったような事柄があるから、おそらく大蔵大臣にしろ農林大臣にしろ、こういうことが非常な危険性を持つという内面があるからこそ、こういう問題を起こしてきたのではないかと思っているわけなんです。だからそこのところをよく考えられて、今言ったようなことが現実にないものかあるものか。あるいはもし宣伝をしているならば、この委員会を通じて、全国のそういう地主方々にも誤りがないように、そういう警告をはっきりしておいていただきたい。
  51. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 自民党の小委員会答申を出しておることははっきりいたしております。先ほど来お話のありました転用税とか転売税とか、そういうものを創設したら所要のまかないができるではないか、財源は別に心配せぬでもいい、こういう結論が出ていることは御指摘の通りであります。しかし一面、土地改革によってその土地を失なった旧地主、それに対しては判決にも示しておりますように、はっきり適正な補償はとられたということがあるのでございます。問題はこの大きな土地改革をした、インフレは高進している、そして安い値段で売った土地転用される、しかも目の前で十倍、三十倍で飛んでいって売られている、こういうことを見ますと、お互いに生きている人間だといたしますといろいろな感情を持つだろう。不在地主としてとられた、あるいは真の耕作者でないからとられたことはいい。しかし、それが耕地として依然として使われておるなら何も申し上げないが、耕地にするのだからというので不在地主という意味で取り上げられたものが、耕地ではなくなっている。そうするといかにも割り切れないものがある。しかも一方ではインフレーションは高進した、経済の情勢はすっかり変わった、こういうのが一つの社会問題に発展している。その事実だけは無視できないだろうと思います。しかしこの社会問題の解決方法、社会問題となり、政治問題となったものの解決方法、これは当然慎重に考えていかなければならない。その土地の新しい、旧地主から土地を譲り受けた人たちが、これは転用したといっても、みずから進んで転用する場合もありましょうし、あるいは特別の公共の必要から転用を余儀なくされる場合もあるだろうし、せっかく高い値段で売ったが、その金はみんなすってしまったという事例も幾つもあるだろう。だからそれだけの方が、受益者だからそれに対して転用税その他を課することによって旧地主の補てんをしろということ、これはそういう議論が一部現にあるのですから、そういう議論はないとは申しませんが、そういう議論はある。しかしそういたしますと、真の耕作者というものは非常に困ることになりはしないか。法律でありますからどういう法律ができ上がるか、その答申がどういうようになるかわかりませんが、おそらく遡及的効果はないとかいうことになれば、おそらく過去のもののまかなう方法はまずないでございましょう。しかしその辺までを詰めて今日議論する段階ではないのだ、それを実は申し上げている。というのはともかく調査会をやって、社会問題であり、さらにそれが政治問題に発展している。だから政府といたしましては、また政治を担当しておる者といたしますれば、こういう大きな問題をほうっておくわけにはいかない。これは調査会を設けて、そうして各界のいわゆる公正な意見を聴取するということ、これは当然必要な処置だと思っております。むしろその調査会の設置がもっと早ければよりよかったであろう。今日審議をいただいているということは、だんだんにその時期をおくらしている。従って今さら調査会など要らぬではないかという議論すら今度は逆に出てくる。あの農地改革をやって何年たっている、今までほうっておいたものがどうして今必要なのか、こういうことだと思いますが、そういう意味で、政府としては少なくともこの調査会を作って、各界の意見を聞いて、そうしてその答申を尊重して処置するのが適当な問題だ。だから一部の団体だけの考え方結論を出すというような処置はとるわけではございません。そこで問題になります転用税だとか転売税の問題でございますが、一部の受益者に対して受益者負担処置をとるという、これは在来から考えられる一つの理屈はございます。ございますが、先ほど来申しますように最近の土地値上がりの問題から見ますと、この旧解放土地、それだけの転用転売に新しい税金を作るということ、これは政府としても非常に慎重に考えなければならないことだ、かように思うわけであります。その点を先ほど来申し上げております。それからそういう意味で、何らかの処置をとれという結論調査会において出て参りましたら、そのときに財源はいかにすべきかということを考うべきだ。私は、あえて目的税でこれをまかなうとか、局限して旧地主から買い取った人たちだけが旧地主に対して非常な恩恵を受けたのだから恩返しをするのだ、こういうような意味だけでは話はつくものではない、かように実は考えておるということを申し上げておきます。
  52. 中村時雄

    中村(時)委員 大蔵大臣が非常に政治的な含みを持っていろいろやっているのですけれども、これは政党政治なのです。そこで一つ私は、時間がないので一点々々お尋ねしていきたいと思う。簡潔に一つお答えを願いたいと思っております。まず第一に、今言った全国農地解放者同盟の中に、実は二百名以上の顧問の方々が推薦されておるわけです。読み上げる時間もありませんから、これはまたあとでいずれ長官にいろいろお尋ねしたいと思っておる。長官よりもあなたの方がはるかにすっきりしたものの考え方を打ち出しておられるわけですが、そういう立場から、まずその中でおもな項目を七つあげて全国の地主にいろいろ当たっておるわけです。そのおもだったものを申しますと、まず第一には、農地解放者は占領政策行き過ぎによるところの政治犠牲者である、こう言っておる。ところが今の大蔵大臣のお考えでは、そういうような行き過ぎによったところのものではないということの御確認を一点はっきりしておいていただきたい。
  53. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私は先ほど来申しますように、非常に時宜を得た処置だとかように考えております。
  54. 中村時雄

    中村(時)委員 それから第二点として、土地の強制収用価格は実際買収をした時価とするのが正当である、こういうことを言っておるわけなんです。その点に関してどうです。強制収用価格と違うとこう言っておるのです。
  55. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 そのお尋ね方はどういうことかわかりませんが、その買い取りましたのは、適正な方法で適正な価格を払った、かように考えます。
  56. 中村時雄

    中村(時)委員 そうするとその三点にきたところの、買収単価の算出には正しい計数を使用せなければならぬ。私はその当時においては正しい、こう見ておるのですが、これに伴って大蔵大臣の御所見を……。
  57. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もう判決としてはっきりそれは正しい補償だと言われております。
  58. 中村時雄

    中村(時)委員 その次に最高裁の判決は農村の常識から著しくはずれておる、こういうことを反撃しておるわけなのですが、これに伴って今のお答えでは最高裁の判決は正しいと政府当局は認識されておる、こう見てよいわけですね。
  59. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 政府判決に批判いたしません。個人的な批判は社会党やそれから組合なども勝手にしておられるようですから、個人的に判決を批判することは、これは御自由でございますけれども政府自身は……。
  60. 中村時雄

    中村(時)委員 次にこういうことを書いておる。農地改革は農村平和を乱す禍根となっておる。私は禍根ではない、こう見ておるわけです。
  61. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 改革そのものではない。改革後の処置が誤ってくると、農村にいろいろな問題が起こるということだろうと思います。そういう事態もなきにしもあらず、かように思います。
  62. 中村時雄

    中村(時)委員 改革後ではないのです。それを出すと一々全部読み上げねばならぬことになりますから。私の言っておることは、的確にその点だけをはっきりさしておけば、誤ってそれに誘導される人たちがはっきりすると思う。それでお尋ねしておるわけです。今言ったのは、農地改革はと言っておるのです。あとずっと続いております。しかし中心は、農地改革は農村平和を乱す禍根となった、こういうことを言っておるのです。私は禍根ではないと思っておるのです。問題は農政にあると思うのです。
  63. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま言われるように、その後の処置の問題だ、いわゆる農政でございましょう。
  64. 中村時雄

    中村(時)委員 そういたしますと、今言った二百人以上を顧問にして、自由民主党の過半数の方々がこれに協力するということになると、この団体のものの考え方は非常に不適格であり、不合理な考え方を持っていらっしゃる、こう私は断定せざるを得ない。これが主体になっておる、柱になっておるわけです。ところが先ほど、この前の質問のときに総務長官は、地主団体方々がうしろで聞いていらっしゃったのかもしれませんが、喜んで私はその推薦を受けましたとたんかを切られた。こういうことの団体のあり方を知っていらっしゃるかどうかということを、大蔵大臣並びに総務長官お尋ねしておきます。
  65. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来の個条をあげられて、直ちにただいまのような結論を出されることには私は反対です。やはりそれぞれの立場においてそれぞれの主張をされる。これが今日の民主主義のあり方から見て当然でございます。もちろん政治は正しくなければならない。そういう意味で、各種団体意見をそのまま取り次いで政治するという考えはございません。これはもう同様でございますから、社会党の皆さん方にもお願いしておきますが、組合の主張だけを取り次いで政治をなさるということはこれはやはり十分考えていただかなければならない。
  66. 福田篤泰

    福田(篤)政府委員 大蔵大臣とおおむね同様の意見でございます。
  67. 中村時雄

    中村(時)委員 そのほかに、たとえばこういうプリントがある。こういうプリントがはっきり出ておる。しかもそれが柱になって集約されて出ておる。そうするとそれが全体の骨子になっておる。私はそれがいけないと言っておるのではないですよ。その考え方そのものを、それほどあなた方がよく内容を知っていらっしゃるならば、それはこういうふうに考えるべきであるとか、あるいはその顧問になっていらっしゃる方が二百人からいらっしゃるのだから、当然そのことを統一されて、一つのすっきりしたものの考え方にして、そして出されてくるならば、私たちは何もそういう考え方に相反撃しようとは思っておりません。またその出し方によっても、たとえば社会保障制度審議会というものがあるのだから、そういうところで社会生活の問題を取り上げるならば、何も新しい機構を作らなくても、それを十分に活用する方法もある。あるいは調査会というものは今度初めて長官から中央調査社に依頼をしたいと思うのだ——。中央調査社に対する依頼の問題はいずれいろいろ討議していきたいと思っておりますが、そういうあいまいもこたることでなくして、行政機構を持っていらっしゃる皆さんが、農地の問題に関しては農林省に委託することもできれば、あるいは今言った社会的な問題を取り上げるならば取り上げるでけっこうでありますから、今言ったように厚生省所管にして、その実態をはっきり把握するとか、いろいろ方法があろうと私は思う。こういう模糊とした出し方をしているから、いろいろな揣摩憶測が出てくるし、しかもその基本となっている実体の旧地主方々のこのつどいで、私から言わしたら間違った考えを持っていらっしゃるたくさんの方々が、——ほんとうにやろうとすれば、私たちも御協力しながら、生活に困っている者についてはどうしようということをともに考え、ともに語りながら、はっきりした態度を出すべきであろうと思っている。しかるにこういう出し方をなされるから、あいまいもことして、非常に問題がこんぐらがってしまうというふうに私はとっているのだ。それに伴う大蔵大臣の賢明なる御答弁一つはっきりさしていただきたい。
  68. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この農地改革についての旧地主というのは、先ほど来議論しているのですが、何十町歩持っているとか、十町歩以上とか、こういう耕作をしない大きな地主ばかりを申しているわけではございません。地主の中にはいろいろの階層の地主のあること、これは私が御指摘せぬでも、農政通の中村委員だから百も御承知だと思います。また私ども自民党もそうですが、自民党におきましても、ひとり旧地主立場だけでこういう問題を扱うつもりは毛頭ございません。耕作者である真の地主というか、譲り受けをした農民自身のことも考え、そしてこの問題の社会問題である点を十分究明しよう、そういう意味から、今回設けます調査会自身は、私どもは片寄らないといいますか、いわゆる公正な方々にこの調査会委員になっていただく。ただいま、保守党は旧地主利益ばかり考えておるかのような言葉があり、また社会党さんの方は真の耕作者ばかりのことを考えているというふうにとれるようなお言葉でありますが、私どもはそういう議論があるからこそ調査会の必要がある。もしこれが旧地主方々意見だけを聞くなら、今さら調査会など設ける必要はない。結論は非常にはっきり出ているということでございますが、実はそういう問題だけではないから、この際調査会を設けて、その起こっておる社会問題というものも十分究明してみよう、そうして必要な処置についてはこの調査会答申を得て、しかる上で政府の最終的結論を出そうという考え方であります。  私は、今回このように国会を形成している党においても、それぞれの立場からそれぞれの意見が出てある際でありますから、政府政府意見をきめる場合にはやはり学識経験者の意見を徴して、そして決定するということが最も望ましいことだ、この意味においても調査会は絶対に必要だ、かように実は考えておるのでございます。これは非常な問題を包蔵いたしておりますので、本来から申しますならば、この種の調査会を通じて、せっかく地方農村において問題も鎮静しようとしておるこの際、旧地主なりあるいは現在の耕作農民なりとの間に摩擦など起こさないように心がけることこそ政治の必要な点であります。  また、困っておる人があったら社会保障一般方法で救済すればいいではないか、これも一つのりっぱな御意見だと思います。しかし私は、旧地主方々について、特にこの種の調査会を設けて、そして結論を出すいうことと、今日当面しておる状況のもとにおいて社会保障りの制度を併用するということは、ちっとも差しつかえないことだと思います。ことにこの土地改革というものが非常に時宜を得た処置である、かように確信すればするほど、なおさらこの土地改革に対する犠牲者については、私どももその後に起こっておる問題等について十分の検討を加えて、政治的に社会問題を解決することが、政局を担当する者として当然のことではないか。そういう意味で、先ほど来のお尋ねの点から申せば、当然調査会が必要だという結論になるのではないか。賢明な中村さんが、調査会にいかにも反対であるかのようにいろいろ立論を進められることにどうも私賛成いたしかねます。
  69. 中村時雄

    中村(時)委員 話がだいぶよその方にそれていくわけなんですが、それることはやめまして、そのポイントだけを私は進めていきたいと思っているわけです。先ほど言ったように、耕作者に対する問題を野党の方がとおっしゃいますが、耕作者に対する問題は、御承知のように農業は土地と資本と労働によってできているのですから、その土地の立地条件を現在の状態ではどのような方向へ進めていくか、これがその中心の課題にならなくちゃならぬ。だから、その土地を取り上げるというようないろいろな問題も錯綜してきておる。事実、高松においてもほかの地区においても、地主対小作人の問題で、小作地を取り上げて鉄条網を張ってそれに立ち入り禁止しておるとか、こういうあいまいもこたるものがあるために、これができるのだという可能性の妄想を描いて、ついにそういう実力行使にまで入っている。何も労働組合だとかそういうものばかりでなくて、実力行使をやっているのが方々にある。そういう現実に血なまぐさい方向をとるという状態になっておる。そこに問題がある。その問題は、私は二つに分けて考えるべきだと思う。一つは農業政策としてどのように取り上げていくか、一つは今言ったように経済的な生活面からどのように取り上げるか、こういうふうに考えられると思う。そう考えた場合に、政府としては現在いろいろの機構を持っていらっしゃる。そういう立場から、私たち民主社会党としてはいろいろ考えた末において、調査会をそういうあいまいもこたるものじゃなくして、すっきりしたものにしたらどうかと思うのです。今言ったように、あなた方は旧地主に対して、こういう考え方でこうすべきじゃないかという話し合いもつけられようし、また一方においてはそれぞれの機構を通じて十分な調査ができるという立場を持っているのだから、そういう機構を通じてやっていけばよろしい。たとえば県行政なり町村行政なり、そういう方向はとれるわけです。事実、不在地主と申しますけれども、すでにその地域におらぬところの不在地主はたくさんおるわけです。そういうものこそが最も重大な要件を持っておる。またつかむのに最も困難な状態になっておる。現在の在村地主ということになると、これは農林省においてはっきり調査をしていった結果も出ている。また自由民主党の中でも、おそらく私は抜き取り調査をやったのじゃないかと思うのですが、世論調査もやって、そういう方向を明確に出しておる。だから私たちは、こういうあいまいもこたるようなやり方ではなくして、すっきりした行き方をとったらどうか、そうすればそういう誤解も解けるのじゃないかということを言っておる。だから、そういう点を明確にしてあなた方も考えていただきたいし、今言った農業政策の問題はいずれ農林大臣なり農林委員会においてやっていきたいと思います。同時に、シャウプ勧告の問題でもう少しお話したいと思いますが、私も正確に時間を守って一応これで打ち切ります。  最後に、そういう考え方に基づいて、旧地主団体には、そういう間違った方向に伴うような事柄は十分に話し合いをし、説得していっていただきたい。たとえば先ほど見せましたパンフレットにしても、パンフレットというよりもビラにしても、そういう行為のないように厳に慎んでいただきたいということを、十分話し合いしていただきたいと要望するとともに、そのお考え方をお伺いしておきたいと思います。
  70. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 中村さんのお話、一応私わからないわけではございませんが、今日御審議をいただいておることについて、やや深い認識を持っておられないのではないかという心配が一つあるのであります。と申しますのは、今回この調査会法を出すことが、何らか新しい農地制度土地制度改革を加えるのではないかという心配がある、そういう意味で今のような高松における例その他を引き合いに出されたのではないかと思いますが、政府といたしましては、とにかく過去に行ないました農地改革、また同時にその際に樹立いたしました自作農創設のこの考え方耕地についての考え方、これを変更する考え方は毛頭ない。それは全然別個の問題であります。適正にして時宜を得た整理が遂行された。言いかえれば農地改革が行なわれた。しかしながらそれは適正にして時宜を得たものだから、それでもう全部済んだのではないか、こういうような議論も一部あると思いますが、その際が非常に早々の間であったこと、あるいはその後引き続いてインフレが行なわれたり、あるいは経済情勢が非常に変化していった、こういう意味で、それらの土地耕地でなくて転用されたり何かしてきている。そうするとどうしても旧地主の方、農地改革を受けられた方々が、もう感情的にもちょっと納得しかねる、こういうようなものが残っている。そういう社会的な問題がある。その社会問題を十分実態を究明し、そうしてこの社会問題の程度で済んでおりますればけっこうですが、もうすでに政治問題にまで今日発展して参っておりますので、これを調査会に十分御審議をいただいて、調査会の公正な判断による答申を得て、そうして政府結論を出そうということで、新しい土地制度考えるとか、あるいはこれからどうするとかいうことをこの調査会がやるわけでは毛頭ないのであります。この点は誤解はないことだと思いますが、過去やりました土地改革、それによって生じた社会問題の実態を究明し、そうしてそれに対しての必要な措置調査会において結論を出していただきたい、こういうことでございますから、その点だけは一つ明確にお願いをいたしたいと思います。もちろん現在になれば、旧地主という関係はもうないわけでありまして、現在当面している農政の問題としては、これは耕作者も旧地主も旧小作者も、もうそれらの関係は新しい段階のものとして、今後の農政の発展を考えるべき段階だ、かように思いますが、調査会そのものは、現在の問題についてどうこういうわけではない。過去の整理遂行のその結果を今日チェックし、それも、しかも旧地主に限っていろいろ考えてみよう、そういう場合に土地を譲り受けた農家の方々利益をもちろん考えなければなりませんから、先ほど来お尋ねのあります転用税だとか転売税とかいうものに対して、どう大蔵大臣考えるかと言われるから、そういう方々を引き合いに出すような考え方はすべきではないだろう、私自身は反対だということを実ははっきり申し上げたわけでございます。どうかその点誤解のないようにお願いいたします。また旧地主方々も、今日この調査会が設置され、そうして調査会答申を待つというお気持でいらっしゃるようでございますし、私はこの点は、旧地主団体方々も了承しておられると思います。今日当面している問題は、現実にこれはもう農政の範囲でございますので、これは農林大臣が午後出席するでしょうから、その意味でよくお話を願いたいと思います。
  71. 福田一

    福田委員長 午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ————◇—————     午後二時二十八分開議
  72. 福田一

    福田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。久保田豊君。
  73. 久保田豊

    久保田(豊)委員 農林大臣に特に一つ農政の関係を中心にいたしまして、本法案に関する問題について、要点をお聞きいたしたいと思います。  まず第一に農林大臣にお聞きいたしたいのは、午前中大蔵大臣にも御質問をいたしたわけでありますが、政府の今までの答弁では、本法案に対しましての基本的な態度といたしまして、いわゆる農地改革は憲法に違反するものではなくて、憲法に合ったものであり、従って農地価格も正当な合憲なものである、従って補償するということは考えておらない、こういう基本的な態度でありました。そのことはまた別の角度から言えば、御承知のように、二十八年におきまする最高裁の判決を全面的に支持する、こういうことになろうかと思いますが、これがやはり本案に対しまする政府の基本的な態度だと思いますが、本法案は、この委員会結論いかんによりましては農政全般に非常に大きな影響を及ぼしますので、この点について農林大臣のお考えを特に最初にお伺いをいたしたいと思うわけであります。
  74. 福田赳夫

    福田国務大臣 全くこれは御所見の通りであります。
  75. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうしますと、今のお答えは、二十八年の最高裁の判決は今後いかなることがあっても、これに対する支持は動かさない。従って農地改革はあくまで合憲のものであり、正当なものである。従って当時支払われましたいわゆる解放農地に対します政府の支払いの価格あるいは報償金、こういうものは絶対に正しいものである。従って今後いかなる名目によってもいわゆる農地補償は行なわない。同時にもう一点はいわゆる農地改革の成功を受け継いで保障しております農地法は、少なくともいかなる結論がこの委員会から出て参っても変えないという、一つのはっきりした態度を農林大臣としてはお持ちになっておる、こう理解してよろしゅうございますか。
  76. 福田赳夫

    福田国務大臣 補償はいたさないということにつきましてはその通りでございます。また農地法の精神につきましても、これをあくまでも維持していくということ、また御意見の通りでございます。
  77. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その点をさらにくどくお尋ねするようでありますが、御承知かと思いますが、本年の三月三日に同僚の石田委員が質問をされた中に、この地主補償要求問題についての農林省の見解というものが、農地局見解という形においてすでに発表といいますか、述べられております。これは速記録にはっきり出ておるのです。私どもその原文を承知しておりますが、少し文章を端折っておりますけれども、ほとんどそのままの格好で出ております。これが私どもが今まで繰り返して参りました農林当局の本問題に対します基本的な考えである、こう見ておりますが、この点についても変わりはないということに当然なろうと私は思うのですが、この点はどうですか。
  78. 福田赳夫

    福田国務大臣 私、その書面をまだ拝見しておりませんが、ただいま申し上げましたような考えで、農地に対するあらためての補償はいたしません。また農地法に対しまして、その精神を変更するようなことはありません。こういうことは政府の一貫した方針でございます。その事務当局の書いた云々という文書は、よく見てみないと所見が申し上げられないわけであります。
  79. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これは今日あらためて農林省当局が作った文書でありません。すでに前から問題になっておる通り、農林省の態度として事務当局がまとめて、これは公表されたかどうかわかりませんけれども、おそらく農林省の見解になっておるわけであります。ですから、これは農林大臣もぜひお読みいただいた上で、はっきり御確認をいただきたい。今のお答えで、私どもはこれを御確認いただいたものと解釈いたしたいと思いますが、この点はどうですか。
  80. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだ中身を見ておりませんから、読んだ上お答え申し上げます。
  81. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それでは少しまた別の視角から農林大臣に御質問をいたしますが、特に農林大臣は御承知の通り、本案が三十一回国会に提案された当時の自民党の幹事長であり、従って旧地主団体自民党、さらに政府との間のこの提案される過程のいきさつを十分に御承知のことと思うのであります。そこでこの点は自民党の中でいろいろ意見があったことは承知しておりますが、政府政府独自の見解で党の意見等を参照しつつ、要するに独自の立場において本法案を提案したのだ、こういうふうに今までの政府答弁では説明をされておるわけでおります。公式の態度としては、私は多分そういう説明以外にはこういう席ではなかなか言えないだろうと思います。言えないだろうと思いますが、きょうは一つ農林大臣ということでなしに、この一点については、当時の自民党の幹事長として、要するにこれはどういういきさつで政府提案になって参ったかということを、私は特に御説明をいただきたいと思うのであります。と申しますのは、私は今さらここでどうこう言うのはいやでありますけれども、今までの経過の中で、地主団体か今日まで運動を続けて参ったという過程では、ほとんど自民党とあらゆる段階におつきまして、ある意味において表裏一体とも言えるような、密接な関係が結ばれてきて参っておるのであります。従ってあなたが幹事長時代、これが政府提案になる過程において、その経過にタッチされなかったということはないと思う。  具体的に少し申し上げてみますと、御承知の通り二十九年の一月には自民党の農林大臣の廣川弘禪氏があっせんをいたしまして、それまで分散をしておりました全国の旧地主団体を統一いたしまして、全国農業再建協同組合というものを全国的に結成された。その際のあっせん役は廣川弘禪氏である。さらに三十年の一月になって自民党の下條康麿氏を会長といたしまして、御承知のように全国解放農地国家補償連合会というものが、さらに発展的な新しい組織として全国的な旧地主団体を統合してできたのであります。さらに三十一年の七月には自民党の参議院の小柳さんと木暮さん、それから衆議院の原さん、このお三方を三代行委員として全国農地犠牲者連盟というのが、また新しく組織のし直しとしてできたのであります。これは御承知の通り、下条氏が選挙に立候補する際に、地主団体の皆さんの公言しているところによりますと、全国の会員から百円のうち二十円の選挙資金を集めた、そしてその使い道に対して自民党の中でいろいろごたごたが起こって、結局下條氏がやめまして、そして三人の方が代行委員になられて新しいこういう組織に発展をされた、そして自民党とのよりがいわば正規にもどった、こういうことをあらゆる機会に公言されておる。その資料が農林省の——私は読めと言われれば読みますが、農林省の「農地年報」の昭和二十九年度の文書にも相当詳しく載っておるのであります。こういう経過であります。それから御承知の通り、さらに三十二年の十二月になって自民党の田子一民氏があっせんをされて、全国農地解放者同盟というものが——これは現在の全国組織でありますが、これが結成された。そして山崎猛さんが初代の会長として自民党から指名をされて——地主団体の方ではこれを推載した、こういう表現をしております。これが正しいかどうかは知りません。それからさらに山崎さんがなくなられてから、三十三年三月になって現在の田中萬逸さんを、やはり自民党の中から指名をされて、これを会長に推戴した、こういう表現をとっております。  こういうふうに自民党との関係は中央、地方ともに非常に深いわけであります。そうして前に同僚中村委員指摘されましたように、自民党のいわゆる民情部の中にこの団体の事務所が設けられておった。つい最近問題になりまして、看板ははずしたようでありますけれども、こういうふうに問題になっております。さらに御承知の通り三十三年の選挙には、自民党の候補者百六十四名を推薦をして運動をやった。しかもこの全国同盟には二百名以上の自民党の方が相談役ないしは顧問という形になって、就任をされておる、こういう事実であります。しかも自民党内部の動きを見ますと、三十二年の九月の十二日に、自民党の内部に農地問題の特別調査会というものが発足しております。これは田子一民氏が委員長になりまして、私の調査したところでは全部で七十二名の方が委員となりまして、いろいろのことをやられた。それからさらに三十三年の三月には、自民党農地問題調査会というものがさらに新しく発足をして、これは発展的に内容を充実しておるのであります。これは会長は小林かなえさんであります。その中にさらにいわゆる立法並びに財源に関する小委員会というのが、綱島正興氏を委員長としまして小委員会ができた。そうして三十三年の九月に、自民党がよりどころにされておりまする例の解放農地、解放者実態調査というものを、全国七十三カ所にわたりまして、七千三百四十六名の地主につきまして二十日間の日程をもって実行いたしました。そしてその概要を十二月の初旬に発表されております。ここに持っておりますが、これが自民党のこの問題に対する基礎データになっておるわけであります。これに基づいて、三十三年の十二月十一日に、午前中に大蔵大臣にも申し上げました自民党農地問題に関する答申というのが、政調会に出されておるわけです。その付録といたしまして、自民党の同小委員会の報告書というものがくっついて出されて、これは転用並びに転売税に関する問題を取り扱った文書がこれにくっついて出されている。そうしてこの農地問題に対する答申のうちの第一項に基づく、いわゆる調査会原案というものが、すでに自民党の中にできております。これも持っております。多少表現を変えておりますが、それから現われてきたことは、内容的には今度の政府の原案とほとんど変わりがございません。これが政府原案として国会に出て参った、こういう経過を実はとっておるわけであります。そこでこういう事実から見て参りますと、本法案の将来のいろいろ報告、審議結論等に対しましても、地主団体のいろいろの御意向あるいは自民党の御意向こういうものが反映をしないということを、私ども外部から見ても、そうでございますかと言って、すなおに受けるということはなかなか困難であります。これは常識的にお考えになって、こういう密接な経過を持ってきているものを見れば、だれでもわれわれの不安といいますか、また全国の生産農民の不安を解消することはできないと思う。そこであなたは当時の自民党幹事長としまして、これが政府原案として、答申やこれらのものがどういうふうに生かされてきたかということを、発表のできるだけこの機会に率直に一つ説明をいただきたい、こう思うわけであります。
  82. 福田赳夫

    福田国務大臣 お話によりますると地主団体が、端的に言うとどうも非常な圧力でも加えて、自民党を通じ政府にかかる法案を出さしめたというようなことでございますが、本質はこういうことなんですね。戦後土地解放が行なわれまして、日本の農業総生産に対する動員体制というものが機構的にできたわけです。これが今日まで食糧安定という大きな問題に対しまして非常に大きな影響を持っておったことは、これはだれでもそういうふうに考えると思うのです。しかしその反面におきまして、当時の地主は父祖伝来の、あるいは自分が営々として獲得した農地を失うということになる。たとい正当な対価が払われたということを考えたといたしましても、これは非常に大きな精神的並びに経済的の犠牲というか、御負担を願っておる、こういうふうに考えているわけです。とにかく食糧が安定し、またそれが大きな原動力となって、今日の日本の、世界でもまれに見るような安定状態を作り出してきておるその裏に、さような犠牲というか、不利な状態を甘んじて受けられた地主の各位に対しましては、国民全体としてこれは御同情申し上ぐるべき筋合いではあるまいか、私はこういうふうに考えるわけであります。これは私というよりは、自民党全体といたしましても、さように考えているわけであります。ところがそういうような私どもが気持を持っておりますのに対しまして、お話のように昭和二十九年か三十年、ちょうど民主党ができるころですね。あのころから補償せいという要求が出てきたわけです。それは一面におきまして引揚者に対する補償問題、それに刺激されたということもあるいはあるかもしれません。私ども当時考えまして、これは引揚者の問題と並んで起こってきておるが、問題は違うのではないか、こういうような感じを持って、これは慎重に検討する必要があるという態度をとってきたわけです。それに対していわゆる補償団体というか、農地解放犠牲者団体、これがただいまあなたのお話のようないろいろな経過を経まして、今日のような変遷を経ておりますが、当初は補償ということを申されておったわけでございますが、その後だんだんと物事の正当な理解というものも一面において浸透してきておった、かように考えるわけです。そういうふうな状態になりましたので、昭和三十三年度の予算を編成するにあたりまして、政府におきましては、一つ調査会を作ってこの問題、すなわち農地解放から惹起された社会的諸問題について検討してもらおうということを考えまして、予算の最終段階まで一千万円の予算を掲げるということにいたしておったのです。ところが結局これは最後のどたんばに一萬田さんでしたか、大蔵大臣は、これには絶対に賛成しないということがありまして、これが取りやめになったわけです。そういうような政府の動きを見ながら、おそらく私は旧地主団体におきましても、それに見合うような考え方意見がまとまりつつあったと思うのです。さらに自由民主党におきましても、それを取り上げて検討いたしました結果、どうもあの措置から起こるところの諸問題について検討するということがよかろう、こういうことに相なりまして、ただいま読み上げられたような小委員会結論というものが党の方からも出て、そういう行き方はもっともだというので、今回政府においてみずから調査会ということで法案の御審議をお願いする、かようなことになったわけです。本質的には私どもはこれを補償するとか、そういう立場はとり得ません。けれども当時のことを考えますと、まことに御同情すべき事情にあったのであって、それから起こるところの諸問題を調べてみよう、特に私は党におりまして地主の皆さんにお目にかかり、あなた方は一体幹事長とし、政調会長として地主のあの後の状態というものをよくつかんでおるか、こういうことを聞かれるわけです。党におきましても何がしかの金を出して調査してみた。しかしこれは完全なものではありません。そういう問いに対しまして、私どもはこうなっておるのだと言って正確にこれにお答えする材料もないような状況なんです。よく調べてみましょう、こういうことになったわけです。これが卒直に言いまして今回の調査会法案というような形をとるという機縁なんです。そういうふうに御理解を願いたいと思います。
  83. 久保田豊

    久保田(豊)委員 だんだんの御説明がありましたけれども、どうも今の御説明も、あるところはわかります。しかしあるところは必ずしもわれわれにはまだ納得はいきません。確かに農地解放によりまして地主のうちには非常にお気の毒な方の出たことも、私どももよく承知をしております。しかしそれは必ずしも全部の地主に対する同情ということには参らない。それ以前の小作人の立場というものはどうかということを考えましたら、必ずしも地主ばかり全体として同情するわけにも参りません。今申しましたように、中には非常にお気の毒な方があることもよく知っております。私自身地主ですから、それはよく承知をしております。私も解放したのです。満州におって、帰ってきてみたら、みんな土地はとられておったのです。私もすってんてんになったわけです。ですからわれわれと同じような立場にある者のあることはよく承知をしております。しかし今大臣のお言葉のようにだけは、一面にとれません。同時に地主団体の方が国家補償要求を引き下げた、緩和してきたというようなお話がありましたが、これはそうではございません。その後におきましても今の同盟の一番の仕事の要点といいますか、事業の第一は、解放農地におきます国家補償の実現ということを規約の第三条の第一項ではっきりうたっておるのでありまして、決して地主団体自体が補償要求というものを引き下げたとか、緩和したとか——ただし補償要求の金額については多少譲歩しつつあるようであります。けれども、これを引き下げたとは私どもは見ておりません。また自民党の方のあれにいたしましても、あなたが政調会長ないしは幹事長時代にこれが出たものだと思いますが、この中にも午前中に申し上げました通り第二項においてはっきり、「農地転用転売により耕地の失われつつある現状にかんがみ農地造成及び解放農地問題解決のため、財政上の支出を要する事あるを考え、これが一般会計よりの過大の支出を防ぐ為め農地転用転売に対して相当の課税をすること。」とはっきり言っております。これはなるほどここには表面に現われて、補償という言葉を使っておりません。しかし内容とするところが、いわゆる解放農地に対する一般的な補償をする、これはだれが見ても明らかであります。さらにこれが小委員会の方の答申になりますと、なおはっきりして参ってきておるわけであります。こういうわけですから、今の農林大臣お答えの中で、まだほかにもありますけれども、この二点だけははっきり農林大臣と見解は違います。どうかこの点ははっきり事態をお認めをいただきたいと思うわけであります。同時に私がお聞きいたしましたのは、あなたが幹事長時代にこの調査会法が政府原案になったわけであります。党と政府の方との間のその経過というものはどうなったかということであります。この農地問題調査会答申は、政調会に出されたものと思います。そしてこれが全体としておそらく私は自民党の党議決定になっておると思うのであります。さらにその第一項といたしまして——このうちの第一項が今度のあれになった、こう見るよりほかにないのであります。この提出の経過はどうかと言って実はお聞きしているわけであります。
  84. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま問題の小委員会答申というか、結論は、党議というか、党のさようなものの審議に当たる最終機関である総務会には付議しておりません。かりに付議してこれは党議だというようなことになりましても、党議は党議、政府の方は政府で、いろいろその間に調整というものはあるので、そのまま必ず党議の通りやるのだというふうには、自由民主党の方の家風はなっておらないのであります。そこでその法律案を提案するいきさつは、ただいまも申し上げましたが、要するに調査会ということで農地買収から起こってくる社会的諸問題、それから派生する諸問題を調査するということは、どうしても必要ではあるまいかというふうに政府の方でも考えたのです。政府の方でもそれに至る、結論を得るまでにはいろいろ意見の交換はあったわけでございます。それは省略いたしますが、ともかく党といたしましても小委員会の一部であるところの調査会を作るという考え方政府の方でもそういう同じ考え方で、これは意見が全く一致いたしまして、政府提案でやりましょう、こういうことになり、同時に予算も三十四年度には一千万円を計上するということになったわけなんです。それで小委員会の方の第二項についてのお話でございますが、これは小委員会結論としてまだ党議には付されておりませんが、これについてはいろいろ党内におきましても異論というか、いろいろな意見があるわけでございます。もちろん政府の方においても、この考え方において根本的な意見がいろいろと出されておるようなわけでございまして、これはまだ小委員会結論であるというにとどまっておる、かように御了承願いたいのであります。
  85. 久保田豊

    久保田(豊)委員 くどいようですが、この点をもう一度確かめておきます。ただ農地問題に関する答申というのは、長くなりますから全文を全部読みません。けれどもその趣旨とするところは、表現は違っておりますけれども農地に対します補償問題の解決、その補償問題の財源としての農地転用転売、これを基本の考えといたしておるのであります。その実現の方法、実施の方法の第一として三十四年度中に調査会を正規に発足させるということ、第二に今の転用転売税をやるということ、第三に生活困窮者に対しては、この転用転売税を財源とするところの何らかの形における補償措置の行なわれるまでの間におけるさしあたりの措置として、救済または融資の道を講ずること、全体がこういう構成になっております。ですから、今のお話では転用転売というようなことについてはまだいろいろな意見がある、あるいは補償ということについては政府は絶対にしない、こういう前提で第一項の調査会の設置だけを認めるということは、私はちょっとおかしいと思う。これはばらばらに言ったわけではないと思います。そこでお聞きしたいのは、こういう含みを持ったいわゆる調査会でありますから、これを今のお話では、総務会ではまだ承認をしておらないということでありますが、政調会としてはこれを認められたのですか、どうなんですか。
  86. 福田赳夫

    福田国務大臣 私、これははっきり申し上げるわけにいかぬですが、小委員会の決定というものがありますれば、これは党の政策審議会に付議されるのです。政策審議会の決定がありますると、それが総務会に報告をされる、こういう順序になるのです。小委員会報告となっておって審議会決定となっていないところを見ると、審議会にもまだ承認を得ておらないのではないかというような気持がいたします。これはまた例外的に、どんな措置をとったか、これは私は存じませんが……。それで一、二、三の内容というものが一連の措置であるというようなお話をされますが、これはそうではないのです。とにかく最終的に結論されたものは、党におきましても政府におきましても、とにかく調査をしてみよう。旧地主の人から、おれたちの生活困窮はこうなんだ、政府はよく知っているかと言われると、政府の方ではお答えができない。そこで、まあとにかく調査をしてみようということなんですね。そういう意味合いのものでございますので、調査というものは独立したものです。金が要る場合のその財源をどうするかなんということは、まだまだなかなか先の問題でもあり、現に私なんかの考え方を申し上げますれば、かりに農地買収者に対して何がしかの金を出すという際におきまして、その財源を調達するために、特別の何か財源あさりをするというような必要はありません。そういう必要があるというならば、これは一般の会計から堂々と出して、国民の租税においてこれを解決していって一向差しつかえない問題ではないか、かように考えるわけなんです。先ほど午前中大蔵大臣が言われましたように、農地ということではなくて、土地全体として値上がり傾向が非常に強い。それに対して何か政府において、課税をするとか、そういうような方法において、この増価問題ということを解決するということは、ただいま検討いたしておりますが、しかし農地だけ取り上げて、これの措置の財源にするということにつきましては、これは相当いろいろな人にも意見があろうと思うし、現に私もさような考え方はとるべきものではない、かような感じを持っております。
  87. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうも今のお答えでは満足できないのであります。というのは、この小委員会結論というのは、これは転用転売税の具体的な構想を書いたものでありまして、調査会農地問題に対する答申というのは全体のものである。二つあるのです。そのうちの第一項にはっきり書いてある。「昭和三十四年度に於て、内閣農地解放者の処遇、農地造成等の諸問題を解決する為めの審議会を設け、なるべく一年以内に結論を出す事。」こういうことになっておりまして、農地一般の問題がどうこうというふうにはこれはなっておらぬのであります。特に農地造成の問題がつけたりであることは、これはもうだれも承知のことでありまして、いわゆる農地解放者の処遇、つまり処遇というのは、今申しましたような補償要求であり、この問題を解決するための調査会だということがはっきりこれに出て、もう文意を読めば、そう読むよりほかはないのであります。しかもこの調査会法案の原形をなしましたのは、これはその前に、自民党農地問題特別調査会、現在の調査会の前身であります。その前身が作ったものには、農地改革善後処理調査会設置法関係というのが、これははっきり設置法案というのは原案として出ておる。それと今の案とほとんど違いはないのであります、多少の技術的な違いはありますけれども。これははっきりと第二条に、農地補償の問題を解決するのだということが書いてあるのであります。従ってこのことは、答申の第一条とこの善後処理調査会設置法案というものとは、内容的に一つであります。小さな点は違っておりますけれども、内容的に一つである。これが今度のいわゆる政府提案の原案に変わって参った、表現を変えて変わって参った、こう見ざるを得ない。それを今の大臣の御説明では、これは何も補償問題を解決するためのものではないのだ、いわゆる社会的な問題を解決するものだ、こう言われましても、これらの一連の連関がはっきりわかりませんと、どうしてもわれわれ外部から見た者は、従来の旧地主団体自民党関係政府との関係、その間におきまして、各年代の総理大臣の国会におきまする公式の答弁の変化、あるいは農林大臣の公式の答弁の変化、その裏におきまして地主団体が発表しておりまする内容、こういうようなものをずっとやっていきますと、私どもはこの委員会結論が、どうしても補償問題に落ちつかざるを得ない、こうとらざるを得ないのであります。それはあるいは私の邪推だと言われればそれまででありますけれども……。ですから私は、今特に念を押してお聞きしておるのは、あなたが幹事長時代、本法案が政府案として出た過程なんだから、この過程についてはっきり、もう少しわれわれの納得のいくような御答弁をいただきたいということを申し上げているわけです。くどいようでありますが、一つ重ねてこの点明快な御説明をいただきたいと思います。
  88. 福田赳夫

    福田国務大臣 旧地主側のいろいろな御要請、まあ一番端的にいえば、始まりは補償ということにあったわけでございまするが、そういう要請があったからといって、自由民主党におきましてもあるいは政府におきましても、そのままそれをうのみにするというようなことは、まあめったにはないわけですね。しかし自由民主党におきましては、先ほども申し上げましたように、あの戦後の農地解放によりまして土地を買収された各位は、非常にお気の毒な状態にあった。しかもその農地解放の結果、農業生産も大いに進み、日本の食生活の安定の今日あらしめた大きな要因の一つをなしておる。かようなことを考えますると、何かお気の毒であるということに対しましてその意思表示というものを考えるということは、これは自由民主党といたしましても、ずっと前から一貫した考え方でございます。しかし政府がこれを国会で御審議を願うというようなことになりますると、これはまた自由民主党内部だけのことではございませんから、いろいろな広い角度から考えて事を処置しなければならぬ、そういうふうになるわけでございます。でありますから、地主側の希望、また自由民主党のいろいろな論議、それから政府結論としての法律案、これにはまあ差異もあり、ことに自由民主党と政府提案、この二つを比べてみますると、そこに文言上も違ったものが出てきております。そういうニュアンスの違いが出てくるというのは一そういうことなんですね。しかし政府が最終的にきめました考え方というものは、今日あらかじめこういうことということの予定は一切いたしておらないのでございます。それで、とにかく地主のその後の状態はどうなっているだろうか。それから派生するいろいろな問題はどうなっているだろうかということを徹底的に一つ調べてみよう、こういうことで他意はないわけでございます。
  89. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今の農林大臣の御答弁を私どもは善意にとります。そうしますと今までの御答弁の中でも、あの補償法律的にも、あらゆる角度から見て正しいものであって、それ以上補償というものはする気持はない。それから今度作りました調査会は、地主補償問題を解決するための調査会ではない。これは調査会の権限外だ。従ってかりに名目はいずれによらず、実質上の補償にひとしいような補償措置を何らかの形においてやれという調査会結論が出ても、農林大臣としてはそれは取り上げないというはっきりした言明かできますか。今までのお話を大体つづめてみると、私はこの二点になると思う。とにかく最高裁の判決をはっきり支持する、つまりこれは当時の解放農地に対する対価が正当なものであったということであります。従って政府としても何らこれに対して追払い、あるいは補償をすべき法律上その他の責任はないのだということであります。それからもう一つ、今のお話では、これは自民党の中ではともあれ、政府としてはこの補償問題を解決するための調査会ではない。従って補償問題あるいは補償問題に類する事項は、この調査会の権限外だということではっきり言えますか。従ってそれに似たようなどういう結論が出ても、これは政府としては取り上げないということをはっきり言われますか。この点をはっきり一つ御明答いただきたいと思う。
  90. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは本法律案の提案理由にもはっきりと申し上げておるところでございまするが、「旧自作農創設特別措置法等の規定により農地を買収された者に関する社会的な問題を調査審議するため、総理府に、農地買収者問題調査会を設置する必要がある。」こういうことなんですね。なおその提案理由説明には「以上申し上げましたような見地から、この際総理府にその付属機関として農地買収者問題調査会を設置し、広く各界の学識経験者の意見を聞き、農地改革により農地を買収された者に関する社会的な問題を調査し、何らかの措置を講ずる要があるかいなかを審議することといたしたいのであります」。こういうふうに言っておるわけであります。私どもといたしましては、社会的な諸問題を調査するということが主でございます。しかし社会的な問題を調査して、しっぱなしということはないので、それに関連いたしまして何らかの措置をとる必要があるのかどうかということも、おそらくその議論の中に出てくる、かように考えておる次第でございます。ただし政府は先ほどから申し上げておる通り、農地の正当なる買収は完了した。従いましていかなる答申が出ましょうとも、これに対して補償はいたさない、これだけはもうはっきりいたしておるわけであります。
  91. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そこが非常に大事なところであります。補償はしない。しないが、これも提案理由の中にはっきり書いてある。「これを是正する意味における補償考えられない」とありますが、これはしないということでしょう。しかしそれからあとの「現行の農地法の問題とは別個に、この農地改革の副次的結果ともいうべき被買収者に関する社会的な問題について、その実状を明らかにするとともに、要すれば所要の措置を講じて参りたい」こういうことです。その所要の措置というのは補償そのものではない。補償を是正するものではないが、必要があれば何らかの措置をとるということであります。午前中の大蔵大臣のあれでは補償ということはしない、しかし何か必要があるならこれは一般財源において、もし結論が出れば、それをさらに政府としては慎重に再検討いたしてやりたい、そうして転用ないしは転売税目的税としてはこれは今のところ大蔵大臣としては反対だ、こういうことでどうもその点がまだはっきりいたさないのであります。ですから私がお聞きしたのは、この調査会補償ないしは補償に類する問題はこの調査会が扱う権限外として、政府はこれはどういう結論が出ても取り上げないか、こういうことを聞いておるのであります。その点はどうなんですか。
  92. 福田赳夫

    福田国務大臣 補償結論のいかんにかかわらずいたしません。
  93. 田万廣文

    ○田万委員 関連してちょっと大臣お尋ねしますが、いわゆる補償をしないということは農林大臣だけでなく、大蔵大臣、それから福田長官もずっと言われてきておるわけです。売買価格といいますか、解放当時における対価としては適正価格であった、そういう意味における補償はしない。補償という意味は、広い意味もある、狭い意味もあるのですが、売買当時の価格以外の補償はやらぬ、そういうことをおっしゃっておるのじゃないですか。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 適正な対価が支払われて買収が行なわれた、かように考えます。
  95. 田万廣文

    ○田万委員 私が今申し上げたように、価格としても適正であるという点についての補償考えられないことであって、広範な意味における補償あるいは救済というか、あるいは生活補償というか、そういうものの補償という意味は含んでおらぬという意味に解釈していいのじゃないですか。言葉じりの問題ですね。
  96. 福田赳夫

    福田国務大臣 補償考えておりません。買収は適正に行なわれました。ということは、金が適正な対価として支払われておる、こういう見解を言っておるものであり、その他のことには言及をいたしておりません。
  97. 田万廣文

    ○田万委員 だから今おっしゃったように、その他のことには言及しておらぬということは、言及しておることに私はなろうと思う。売買価格は適正であった、その売買価格についての補償をするということは考えておらぬが、その他の意味における——先ほど大蔵大臣も話があったが、非常に気の毒な一部の農地解放地主がある。それらの生活救済ということに対する言葉として、補償という言葉はぼくはかまわぬと思うのですけれども、あえて補償ということは言葉じり——まぎらわしいから、補償ということを言わぬだけのことであって、あるいは見舞金というか救済金というか、そういうものは調査会結論として出てくる可能性がある。結論として出てきた場合には、そういう意味の救済あるいは補償というか、そういうものを考えておるのじゃないですか。はっきり言わなければ一つも質問が展開せぬじゃないですか。どうですか。いいとこ言うたらどうですか。率直に答えなさい。
  98. 福田赳夫

    福田国務大臣 率直に申しまして、この調査会は社会的諸問題を主として調査審議するのです。その調査会審議に対しまして私どもが予定しているものは何もありません。この審議会に出てきた何か措置というものについて——結論ですね。これにつきましては調査会答申として出すものでありまするから、その御意見を十分尊重しながら検討する、こういうことでございます。
  99. 田万廣文

    ○田万委員 関連質問ですからあまり長い間私もしようと思いませんが、今大臣からお話がございましたが、社会的な問題ということは、これはもう読んで字のごとしです。少なくとも、大臣ならずとも、国会議員ならずとも、一般の常識からいって、社会的な問題は社会的な問題だということで、それで答弁が済んでしまうということであれば、もうわれわれは何も審議する必要はないのです。しかし社会的な問題ということの内容は予定しておそらくこういうものもあるのじゃなかろうか、ああいうものも社会的な問題として派生して出てくるのじゃないかということを考えてこの法案を出したということでなければ、常識的にこの設置法案を出した趣旨が徹底しないのじゃないか。だからどういうような社会的な問題が、農林省なら農林省、大蔵省なら大蔵省において考えられる範囲内のものであるがということを御答弁願いたい。
  100. 福田赳夫

    福田国務大臣 一体農地買収を受けた地主は今日どういう状態になっているかということを、まことに怠慢のそしりがあるかもしれませんが、私どもつぶさには承知いたしておらないのです。しかしいろいろな状況で、たとえば長期の旅行中、農夫としての十分な働きがあるにかかわらず、土地が買収されてしまった、帰ってきてみたら土地がないのだというような人もあるかもしれない。そういう者に対しましては農地を新たに造成して、お世話するというような必要があるいはあるかもしれぬというような問題もありましょう。いろいろあると思うのです。しかしどんなケースがあるのか、そのケースもどうも遺憾ながら私どもも十分承知してないのです。ただそういうケース、ケースを具体的に一つ調査してみよう、こういうことがこの法律案の主たる眼目でございます。
  101. 久保田豊

    久保田(豊)委員 なお今の点ではっきりさしておきたいことは、この調査会は、農地に対する国家補償はしない、権限外だということですね。従ってどんな結論が出てもやらない。あるいは補償に類することもやらない。社会問題その他に対する同情ないしは見舞、こういうふうな問題については調査会結論が出た場合においては政府として考える、こういう意味ですか。
  102. 福田赳夫

    福田国務大臣 農地買収はその対価か適正に支払われておる、こういうことで一貫しておるわけなんです。それでいろいろのことがこの調査会から結論として出てくる場合にどうするかということでございますが、それは結論を見なければわからない。結論をよく検討し、できる限りこれを尊重していくというほか、ただいま私としては答弁のしようがないのです。
  103. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それでは、それ以上突っ込んでもしようがないでしょうから、次の問題に移ります。農林大臣は、旧地主団体というものをどういうようにごらんになっているか、この点私はお伺いをしておきたいと思う。と申しますのは、旧地主団体には今政府側としても私どもとしても同情しているところはたくさんあります。しかし今までの発表したもの等を見ますと、この地主団体は、自民党の皆さんがお力を入れるにふさわしいような性格を、はたして持っているかどうかということが相当疑問になるわけです。と申しますのは、まず第一に地主団体の思想の根幹であります。これは農地解放はいわゆる占領政策の行き過ぎである。従ってこの行き過ぎた占領政策の遺物を払拭することが、根本目的であるということをはっきり文書の中に書いてある。これは要するに農地改革そのものを根本からぶっこわそうということであります。農地改革そのものは占領政策の行き過ぎだ。その遺物というものが現在の農地法、あるいはその農地法を主体としましたいわゆる今日の農地政床である。これを払拭することが根本の目標であるということを明確に公言をしております。こういうものであります。またこの同盟の第二条の同盟の目的の中にも、言葉は別でありますけれども、旧地主によるいわゆる農村の古い秩序の復活ということが、日本の農村をいわゆる平和にし、発展させる根本だということを言っております。こういう基本の二つの考えに立っておる団体であります。今まであなたがいろいろ言われてきました、また佐藤さんも言われてきたが、こういう基本の考えを持っておる団体を、私は自民党の皆さんが非常に力を入れて援助してやるという趣旨がわからない。そうすると、農地改革というものを頭から否定することになる。現在の生産農民全体を敵に回そうというお考えと見て差しつかえないと思う。しかもどういう構造をしておるかといいますと、これは皆さんも御承知の通りでありますが、たとえば三十三年の八月の二十七日に、これは北海道で地主団体の大会が持たれている。そのときに、北海道の地主団体の会長であります大和田さんという方があいさつをされています。また連合会長である田中さんもあいさつされております。さらに全国農地解放者同盟の江口という調査局長か中央情勢の報告をされております。中央ではなかなか口を慎むものですが、地方に行きますと本音を出すのが、私ども長い間の経験からよくわかるわけです。ここらに現われております思想は、こういうことさえ言っておる。農地改革当時の農相和田博雄は共産主義者だ。何千人か集めた中ではっきり言っておる。今から三十年前、スターリンから日本共産党に出した指令二千百七号、これによって農地改革をやったのだ、こう言っております。これは大和田さんがはっきり公言をされておる。和田さんはスターリンの弟子だ、スターリンの指令二千百七号によって農地改革をやったのだ、こう言うのです。それから農林省の役人についてはずいぶんひどいことを言っております。農林省の役人は正しい公務員ではない。われわれはこんな農林省の役人を罷免しなければならぬということを、堂々と言っておるのであります。こういう矯激なでたらめな考えを持っておる。さらに同僚中村委員指摘しました山形の大会ではどうかというと、農林省は自民党——あるいは社会党を含んでおるのかもしれません。とにかく農林水産委員会に六千万のわいろを使って、そして法案のぶっつぶしをやっておるということを、公衆の面前ではっきり言っておるのであります。これはだれがお考えになってもでたらめととらざるを得ないと思う。しかもこういう矯激な基礎的な考え方を持っておる団体であります。この団体の今までの主張は何かというと、農地に対しまする国家補償要求、これが一番根本であります。そして今まで戦術的に隠しておりますけれども小作料の引き上げをおもな内容とする農地法の改悪といいますか、改正ということを二つの柱としておることは天下周知の事実であります。そして今までこの地主団体がどういうことをやってきたか。これは御承知の通り二十八年から三十一年ごろまで香川、石川を初めとして、集団的な土地取り上げということをやっておるのであります。これは農林大臣御存じないことはないと思う。大問題になって、農村のいわゆる平和を乱したのはこの団体であります。やっておることはこういうことです。そしてその後におきましては全国的な旧地主団体の結成統合運動——分裂もありますが、こういう運動と、中央、地方における自民党との結びつきも強化をし、そして自民党を通じて選挙運動ないしは今申しました目的の実現ということに狂奔しておるといって差しつかえない団体であります。つまり基本的な考えからいいましても、戦後の農地改革というものを頭から否定をし、そうして地主補償国家補償というものを獲得いたしまして、さらに進んではこれを足がかりにいたしまして、いわゆる農地法の改悪をして、土地取り上げやあるいはその他のものをやろうということを、これは農林省の農地年報を見ましても、そういう傾向ははっきりいたしておるのであります。こういう団体背景とした、その圧力ではないかもしれぬけれども、この団体意見政府が参酌をされまして、そうして今度の法案になったということは、どうしてもわれわれとして解せない。非常に同情的なお言葉があったわけです。私どももその同情的なお言葉の一部には十分了解いたします。確かに地主のうちには気の毒な人が相当あったことは事実であります。また現在もあることは事実であります。しかしながら団体としても、この地主団体というものは私に言わせれば不届きしごくな性格を持ち、思想を持ってそういう行動をしている。そしてそういう要求を出しておる。その要求自民党と密着してやるということに対して、政府当局として、特に農林当局としてどういうお考えを持っておるか。どういう態度をもってこの団体に今後対処するつもりか、この点をはっきり御答弁をいただきたいと思います。
  104. 福田赳夫

    福田国務大臣 団体側の一々の動きにつきましては、私も承知しませんが、しかし団体の首脳の方なんかが見えることが時たまあります。その方々に対しましては、私は常々言っているのですが、これは補償できません。これはもう一つはっきり承知してもらわなければならぬ。それからもう一つ農地法を変えるということはできないのだ。これは修正というか、たとえば農業法人とか、いろいろあります。そういうものに関しての修正ということは考えられますが、この精神をゆさぶるような修正ということは、これに関連して考え得られないということは常々私は申し上げておることで、農林省のさような意思であるということは、団体の皆さんにもよく徹底せられておると思うのです。ただ伺いますと、いろいろ演説なんか出るようですが、演説会というものはたくさん集まれば威勢のいいことを言わなければ拍手も何も出はしないのですから、これは久保田委員におかれましても、大体そういう情勢がありそうだというくらいのことは御了承願えるのではないかと思います。
  105. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これは演説会だからいいかげんなことを言ってしようがないわ、そういうふうなものではないと思うのです。私は例をあげろといえば、ここに材料を持っておりますから、どこでどういう文書で——演説会だけでなく、文書ではっきり言う通り、綱領や規約や宣言でも、明らかになる文書ではっきりそういうことが出ておるから申し上げるわけです。かかることは少なくとも今日の農村の、あるいは日本の農業のよって立つ基本に対して頭から否定するような団体、そうして今の農村の秩序を根本から否定することを目的とした地主団体政府はそういうものの意見を聞くのも民主的な、いわゆる民主政治のあれでもってそういうものも自由だ、そういうふうなことになりますから、私は今の農業政策なんというものは基本から変わってくると思う。私はこの点については、今の御答弁では地主団体に対して補償はしないぞ、農地法を変えることはしないぞ、基本精神を変えることはしないぞ、これはその事項についてのあれでありますか、そういう要求を出してくる基本の性格というのを、政府自民党諸君は、私ははっきり見ていただきたいと思います。特に政府としては政党とは違いますから、特に農林大臣としてはこういう基本の問題に対しましていいかげんな態度をとって、いわゆる政治的な操作をされておるのでは困るわけであります。この点についてあらためてこの地主団体に対しましての、農村の基本的な性格についての御見解を、私はこの際はっきり聞いておきたいと思います。
  106. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も農地解放によって日本の農業生産に、動員体制というか、全部の農民がその能率を上げて働くという体制ができたと思うのです。これは大きく言いまして、この結果というものはどこまでも尊重していきたい、こういう考え方を常々持っておるわけなんです。今度この調査会法案ができておりまするが、この調査会法案が出たということで、いろいろ農民大衆の間に不安を与えておるというようなお話を、この間日農の代表の方が来て申しておられましたが、私はさようなことは毛頭考えてないのだということをはっきり申し上げ、これはとにかく旧地主の社会環境というものが、どういうふうに今日なっておるかということを真剣に調査してみよう。私どもとしては、おれたちがどういうふうになっておるか知っておるかと言われた場合に、答弁できないのだというようなことをよく申し上げましたところ、まあ御了解というか、御納得を願ってお帰りになられました。いずれにいたしましても補償はいたさない、また同時に農地法の精神を変えるようなことは毛頭考えておりません。この法律案の裏にはさような何らの意図もないわけでございますから、御了承願いたいと思います。
  107. 久保田豊

    久保田(豊)委員 補償はしない、そういうことはもちろんですが、こういう反動というか、保守といいますか——保守じゃなくて、私は正しい保守はいいと思うのです。しかし保守以前の反動であります。こういう団体をはっきり育成するがごとき態度をとるということも問題ですし、そういうものから出たそれらの要求に基づいて一応のこういう調査会を作るということも、そこにほかから見まして一生産農民から見まして、いろいろの不安を持ってくる土台があるわけであります。しかもこの団体ははっきり土地取り上げその他の実績を持っておるのであります。実績がなければそう大して問題はありません。しかし全国に少なくとも一万件以上の集団的な土地取り上げの行動に出たというはっきりした実績を持っておる。そういう実績を持っておる団体要求というものを一つの社会的な出発点として、この法案が生まれてきたという経過の中に問題があるということを一つ十分御注意をいただきまして、できれば政府といたしましては——口で言ったくらいで団体のこういう超反動的な、超保守的な性格というものは直らぬと思いますが、少なくとももっと近代的な考え方になれというお説教くらいのことはしてもよいと思う。とりわけ自民党としておせっかいして、それでお説教ができないということはおかしいと思う。この点はこれ以上突っ込んでもしようがないと思いますから、私は突っ込みませんで、その次の問題に移って参りたいと思います。そこで政府お尋ねをします。農地解放に関連をする農地買収者、つまり旧地主にまつわるところの社会的な問題の実態調査するというのが今までのこの法案の目的だ、こういうことになっております。どうも社会的な問題というのは聞いてもなかなか実態がはっきりしない。だいぶはっきりして参りましたけれども福田長官の今までの説明では今までどういうことを言っておられるかというと、社会的な問題というのは、経済上の問題、生活上の問題、生業上の問題、その他各般の問題と、こういうことになっておる。これは田万さんの質問に対しまするお答えはこういうことになっております。そのほかきょう午前中に大蔵大臣からもいろいろ説明がありました。今農林大臣からも一部の説明がありました。一体こういう表現で何が問題かということは、実はこれでははっきりわかりません。あまりに調査会目的とするところ、社会的な問題というものは具体的な実態が明らかでない。そこでこれはどういうことか、これを全部を網羅できなければ、この中の重点はこれとこれだということをはっきり政府側から御説明をいただきたい。これは長官と農林大臣と両方からはっきりお答えをいただきたいと思います。
  108. 福田篤泰

    福田(篤)政府委員 その点は前会でもお答えした通りでございまして、農地改革というものがたとい合法的であり、かつりっぱな成果を上げているにしましても、何としましても大きな社会的変革である。従ってそれからいろいろな社会的な激変が起こったわけであります。それらの点をとらえて実態考えようというのがいわゆる社会的問題であります。
  109. 福田赳夫

    福田国務大臣 総務長官お答えになった通りでございます。
  110. 久保田豊

    久保田(豊)委員 こういうぼうっとした目的を言われても、調査する方も何を調査していいかわからぬ。ですから、この前事務当局にどういう項目を調査するかと言ってもわかっておらない。これは三回目の法案ですよ。ことし初めて出た法案ではありません。何を調査するかわからぬではないですか。そういう調査項目さえわからぬような、具体的なことはほとんど内容がないようなことをどうして調査するのですか。ただ今まで私は善意に解していた。私の方で問題を具体的に出してみましょう。私ども今までの説明を聞きますと、この社会的問題の要点は二つある。一つは何かというと、いわゆる旧地主生活に困っている人がある、これの救済の問題が一点。もう一点は、解放を受けた農地が非常に高く転用転売をされておる。それと結びつけて、対照して、解放のときの農地価格は非常に安かった。非常に安い価格で手放したものが今日非常に高く売られている。しかもそれは農地としてではなくて、ほかの目的のためにやっておる。これを見て、いわる旧地主としましては心穏やかならぬものがある。今までの説明その他から見ますと、私の方で推測しますと、その二つになると思いますが、どうなるのですか。
  111. 福田篤泰

    福田(篤)政府委員 あげられました二点の問題は、当然調査の対象になろうと思います。
  112. 久保田豊

    久保田(豊)委員 調査の対象ではなくて、私は調査の重点だと思うのです。この調査会設置のおもなる目的がそこにあると思いますが、どうなのですか。対象になるというだけでは話になりまんよ。あとで対象の問題はずっと並べますが、これにうんとあるが、その調査項目の一番要点は今申しました二点になる、こういうふうに思うのですが、農林大臣はどう考えますか。
  113. 福田赳夫

    福田国務大臣 社会的問題というのですから、いろいろあると思うのです。今あなたからもお話があり、総務長官からもお答えがあったのですが、経済上の諸問題ですね。それから生活が一体どんなふうになっているのだろうかというような調査、それから生業調査、そういういろいろな問題があると思うのです。これも一つ一つ具体的にこういう点というまで、まだ調査方針をきめておらないわけであります。
  114. 久保田豊

    久保田(豊)委員 具体的な調査項目、調査の方針についてはあとでお伺いいたしますが、どうも今までの説明や今までのこの問題の経過から見て、私はこの二点がこの調査会設置の基本目標だというふうに考えざるを得ない。そのための実態調査考えざるを得ない。そこで旧地主生活困窮という問題を政府としてはどのようにごらんになっておるかという点を私はお伺いしたい。
  115. 福田赳夫

    福田国務大臣 実は生活環境が非常に激変したということから、転落者が多いわけです。そういう事情政府の方はよく知っいるか、そういう質問にわれわれはあうわけでございますが、私どもそういうことをつぶさに承知しておらないわけです。でありますから、お尋ねの点は、そのためにこそ今度調査をするのだ、調査会法案を御審議願うのは、そういう実態をどうであるかと聞かれてお答えができないから、お答えもちゃんとできるように調査をしよう、こういうのが主たる眼目であります。
  116. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうもその御答弁では不十分であります。農林大臣は自分の役所で何をやったか御存じない、それでは困る。地主のうちの生活困窮者が第一どのくらいあるかということも一つも見当がついていない。しかもこれはどうも一般の予想よりもそうよけいに現在ではないと私は見ざるを得ない。それは石田委員がすでに指摘されておりますから、特に私は指摘いたしませんが、農林省は三十年の臨時センサスで、約十二万戸の地主の経営調査をしております。それによりますと、この前はっきり出ておりますが、大体におきまして一般の農民に比べて農地を解放した地主、しかもこの人たちは解放を一部受けております。それを差し引いて、大体において多く解放したという、そういう地主をとっての調査であります。それによりますと、いろいろありますが、第一、一般の者より経営の規模が大きい、それから生活程度を示す商品化率がはるかに一般の農家より高い、さらに専業の率が非常に高いということもはっきりしております。兼業の内容がはるかにいい、従って収入も多いし、社会的な地位も上だということもはっきりしております。さらに他からの雇用労力もよけい使っておるということがはっきりしておる。それから耕地、農業地、山林原野を一般の農家よりはるかによけい持っておるということも明らかである。そうして現在の貸付の農地が、一般の農民よりもはるかによけいあるということが明らかになっておる。ただこの調査では、これは実質上調査ができなかったことだと思いますが、生活程度や所得調査ははっきり出ておりません。これは私あとにまた触れようと思いますけれども、そう簡単にできるものではございません。こういういろいろの要素から見て、少なくとも現在百四十七万戸が、たしか保有小作地の地主として農村におるわけであります。その地主たちは在村地主であろうと、あるいは不在地主であろうと、あるいはかつての不耕作地主であろうと、その多くの者は現在ある程度の保有地を持った農民に転化しておることは明らかである。大体百七十六万戸のうち、百四十何万戸は現在の農村における保有小作地の地主であります。その大部分はおそらくかっての農地解放の被買収者でありましょう。こういうものから見て、一般的に見てこの人たちはそんなに生活に困難をしておるとは考えられません。しかも、自民党の三十三年度の御調査があります。この調査の内容を見ますと、転用転売については、都市の近郊地を主体にして調べられておる。しかし地主生活程度については、奥の方を中心にして調べられておるということがはっきり書いてある。そして約七千三百五十戸のうちで、生活扶助を受けた者は全体の〇・一%であります。かつて生活保護を受けたことのある者が〇・四%、こういうわけで非常に数が少ないのであります。こういう点から見て、なるほどこの百四十七万戸を除きました、いわゆる都市に住んでいる不在地主といいますか、そういうところに転化したところの地主が、農林省の正確な数字ではありませんが、三十六万戸くらいおる、こう言っておりますけれども、私は少なくとも農村に住んでおる地主は中には相当に困っておる者もあると思いますけれども、こういう一応の正確ではない調査によりましても、そんなに困っておる者があるとは考えられない。もちろん自民党調査の中では年の所得が十五万以下のものが、調査農家の約一割ございます。しかしこれはいわゆる聞き取り調査であります。しかも調査された方が補償要求をする地主団体の役員その他がされておるわけです。これは御承知の通り、こういう目的で今度調査するのだが、お前のところは所得が多いか少ないかといえば、多いと言う人はありません。普通の場合でも二割とか三割少なく言う。特にこういう目的に結びついていく場合には、三割、四割少なく言っているのは当然である。こういう点から見て、農村に住んでおる者についてはそんなに——困っておる者は比較的あることはあるが、そうよけいはないというふうに判断をせざるを得ない。これを裏づけるものはほかにもあります。たとえば昨年の厚生省の生活扶助を浮けておる者の調査を見ますと、どういうことになっておるかというと、第三級地、第四級地、これは都市といわゆる準農村であります。それの生活扶助を受けておる者の総数は大体において約四十万であります。四級地が二十下六千世帯、三級地は十九万六千世帯であります。しかもこの全体が生活扶助を受けておる者の約七〇%であります。こういう事実から見ても、いわゆる生活扶助という程度に困っておるという者が、そうよけいあると私考えられない。そしてかりに三十六万戸都会に出た者があるとしますと、そういう人のかつての農地改革以前においての生活状態はどうでしょう。これは御承知の通り大体において大地主が農村から居住を町へ移して、小作料だけに寄食をしておったという者もあります。あるいは商人その他においていわゆる高利貸し的なあれをいたしまして、いわゆる土地に対する高利貸し的な投資をして小作料を得ておった者もおります。それ以外の者は多くの場合、大体において都会に住んでおって、自分の飯米確保のために割合に小さな土地を農村に持っておって、それから小作料をあげておったというのが、これが戦前の実態であります。そういうものがいわゆる農地解放によって、そういう基礎を失ったということでありまして、これは全くのいわゆる不耕作の都市居住の寄生地主というものは、相当大きな影響を受けたかもしれない。しかしながら、ほかの者がそう大きな生活扶助を受けるような程度のひどい生活の困難に陥っているものとは私は考えられないが、こんなことは調査しなくても少なくとも大体の推定はつくことであります。この程度の推定をつけるならば、あえて新しい調査を要しない事項であります。この点は、なぜこういうふうな判断ができるにもかかわらず、その判断をするデータをすでに政府なり自民党はお持ちになっておるにもかかわらず、あらためてそういうものの実態を調べなければならぬというのはどこに根本の理由があるのか、私どもには理解ができない。この点を一つ、これは長官と大臣から簡単に御説明をいただきたい。
  117. 福田篤泰

    福田(篤)政府委員 例をもってあげられました農林省の調査は、御承知の通り約百七十万戸のうちの七十万、いわば解放されたあとで農業を離れた、あとの約百万戸については調査ができてないわけです。どうしてもこの調査をしまして実態を明らかにしなければならないというのが、このたびの私ども政府考え方であります
  118. 福田赳夫

    福田国務大臣 総務長官からお答えした通りであります。
  119. 久保田豊

    久保田(豊)委員 総務長官、そんなことを言ったってだめですよ。七十万戸の調査も農林省はしておりませんよ。十二万戸して、あと推定しただけですよ。七十万月なんて調査一つもしておりませんよ。そんなでたらめを言ったってだめです。実際に十二万戸だけしかしてないのですから。あとはみんな推定しただけです。実態調査じゃありませんよ。
  120. 福田篤泰

    福田(篤)政府委員 農林省の対象は七十万戸で抽出調査でありますから、これは七十万戸一戸ずつ当たることは不可能であると思います。
  121. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私はその調査の問題にはまたあとで一括して触れます。あとでやりますが、もう一つの問題は、かりに在村地主もしくは不在村地主で、特に都市に流れた地主が現在大体において相当生活に困っておるといたしましても、これがはたして農地改革の結果であるかどうかということについては、私はもう一度政府としては反省し直す必要がある。なぜかといいますと、第一に私が申し上げたいのは、解放をした農地の解放地主の在村、不在を合わせて約九二・三%は、一町以下の小解放者であります。全体の中の九二・三%は、少なくとも農林省の調査によりますと実績調査、これは二十五年にやったものですか、二十八年ですか、年次はちょっとどっちかはっきりしませんが、それによりますと、解放面積一町以下の地主が大部分であります。しかも小作料は、今の地主諸君は、戦前の非常に高率な現物小作料がそのまま戦後において復活するもの、こういう想定といいますか、希望の上に立って、それと結びつけて見ると、非常に困っておる、こういうのが主張の根本であります。さっき農林大臣も各大臣も言われましたが、当時の農地補償は正当なものであるということを言われておる。その通りでありまして、昭和十六年小作料の統制が行なわれて以来というものは、現物による高率小作料というものはなくなったのであります。そうして戦後の経過を経て、現在の農地法による、いわゆる公定の低率小作料一般化したのであります。これを地主諸君は間違ってとっておる。もしこのことがそうでないならば、私は戦後のあの民主化のあらしの中で、農村には大きなほんとうの革命が起こっております。今地主諸君はざっくばらんに言って完全にふっ飛ばされております。そのことは、私がそう言うだけではない。御承知の通り司令部の農地改革のねらいもそういうことであることは、当時の関係者がその後述懐をしております。特に注意すべきことは吉田元首相の、当時農地改革を推進された吉田さんの回顧録の第二巻を見てごらんなさい。第二巻にはっきり書いてある。どういうことかというと、もし農地改革をやらなければ、農村においてはほんとうの革命が起こったろう。ですからやむを得なかったのだということを明確にしております。つまりこのことはどういうことかといいますと、今地主諸君がいろいろの補償要求あるいは生活が困ると言っておりまする基礎は、主観的希望ないしは願望というものを土台にして現在の問題が立てられておる。しかもその願望、希望というものを、そのまま主観的なものをとられるということになれば、この点で一歩を譲れば、はっきり申しまして農地改革の効果というものはここからくずれてくると見ざるを得ない。この点で大体において今までの調査の結果を見ても、地主さんで困っておられる方は比較的少ないということ、もう一つは、農地改革の場合におきましても、解放地主の大多数はいわゆる一町以下の小地主であって、それだけに依存しては飯も食えなくて、みんなほかのことで飯を食っていた人が大部分であります。しかも生活が楽だ、楽でないということの基本になっておるのは、いわゆる戦前の高率小作料がそのまま復活するという主観的な前提、願望の上に立っての判断であり、希望でありまして、私は客観的な事実の上に立ったものではないと思う。また国の大きな当時の社会政策といいますか、大きな政治動向からいいましても、そういうことをそのまま今日気の毒だというふうな言葉で表現することは不適当ではないか、こういういろいろな点から見て、この生活困窮者に対する対策というものを——私は困っておる人がないと言うわけじゃありません。困っている人があるということは承知しております。しかしそれは特に調査会を設けて大がかりにやるような対象ではなかろう。そうしてまたこういう内容を検討するなら、特別に調査会を設けて今度のように実態調査されるというほどのことでもなかろう。それにもかかわらず、この調査会を設けるというのは、何か別の意図があると考えざるを得ない。この点については政府当局として、特に農林大臣からお答えをいただきたいと思います。
  122. 福田赳夫

    福田国務大臣 この法律案が出るに至りました経過は、先ほど申し上げたわけであります。旧地主団体の方で、最初補償というようなことを考えられておったようです。それから農地制度の復元というようなものを考えた人があるかもしれませんが、この点は私ははっきりしておりません。おりませんが、しかし私どもが現在御審議をお願いしておるこの調査会法案というのは、それとは全く別なんです。一面においてそういうような動きもありましたが、政府におきましては問題を整理しまして、とにかくあれだけの大改革が行なわれ、その後の被買収者生活環境はどうなっているのだという点について聞かれた場合に、お答えもできないような事情だったのでは申しわけない、かように考えておる次第でございます。今数字をあげられて、旧地主生活状態が他の農家よりはいいというようなお話がるるあったわけでございますが、あるいはそういうことがあるかもしれません。しかし旧地主の皆さん方におかれましては、非常に困っておる者も中にはあるわけでございます。また困ってないならばないで、それでいいと思いますが、とにかく私どもは、実情がすみずみまではっきりいたしておりませんから、これを調査いたしたい、こういうふうなことでありまして、裏に何も政府といたしましては持っておりません。
  123. 久保田豊

    久保田(豊)委員 裏に何もないと言いましても、こういう今までの既存の資料で、旧地主農地解放によって特に生活困難に陥っている者がないという、少なくとも少ないという推定のつくものに、特別にまたこういう法案を作ってやる必要がありますか。私はないと思います。その程度のことならば、こういうものを作らなくてもほかの方法で、たとえば厚生省を通じて——私はせんだって厚生省から聞いてみました。旧地主として生活保護なり、それに近いものの調査はいたしておりません。できるかと言って聞きましたら、事務当局としては、これは方法をもってすればできますと言っております。ところが、これはあとで私は総務長官と詳しく具体的にやろうと思いますが、はっきり申しましてこの法案では、少なくとも政府の現在の構想では、そういう困った人の実態調査はできません。できないものを調査して何になりますか。それよりも、今まですでに推定のつくもので対策を立てられても、特別に困った人の調査なら、私はそれで差しつかえないと思う。にもかかわらず、成果の得られない調査をもてあそぼうとするのはどういうわけなのかということか私にはわからない。この点をもう一度御説明をいただきたいと思う。
  124. 福田赳夫

    福田国務大臣 調査の対象は、旧地主経済事情、さらに生計、生活というような諸問題でありますが、これは調査ができないと頭からきめつけられる必要はないのではないかと思うのですが、とにかく旧地主団体からもいろいろと話を聞くわけです。どうなっているのか、承知しているのかということに対して、お答えのできるだけの調査をいたしたい、こういうふうに考えております。
  125. 久保田豊

    久保田(豊)委員 調査ができるかできないかは、あとでまた具体的に私は御質問をいたしたいと思うから譲りますが、いずれにいたしましても、今まで私が申しましたように、すでに政府調査その他によってある程度一般的な推定のできる程度のものを、特別にこの調査会を設けるということについては、何らか別の意図ありと考えざるを得ないということをはっきり申し上げておきます。次に農地転用転売について私は少しお聞きをしたいと思います。さっきから大蔵大臣答弁の中でも出ておりますが、確かに農地一般的に値上がりをしておる。その中で特に都市近郊農地転用転売の場合に非常に値上がりをいたしておるということは、これは事実であります。否定はできないと思います。そこで農林大臣にお伺いいたしますが、こういうふうな農地転用転売の場合におきます値上がりというものが、なぜひどくなったかという点です。これについて農林省あるいは農林大臣としてはどのようにこれを把握されておるのか、この点をまず第一にお聞きしたい。
  126. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは国土は限られておるわけですね。開拓とか干拓とかいろいろ努力はいたしますが、大きくいえば限られておるわけです。そこへ持っていって人口はふえる、国民の所得がふえる、土地に対する需要というか要望というものが非常にふえてくるわけです。従いまして国全体の使用可能土地につきまして値上がりの傾向が出てくる、こういうことは、今日このまま放置すれば当然に起こってくる問題だろう、かように私は考えるわけです。そこで農地につきましてはこれは都市と農村地帯と分けて考える必要があると思うのです。都市は住宅用地、工場用地というようなものがただいま申し上げましたような事情から強く要請されるというようなことで、べらぼうな値上がりをしてくる。すなわち転用の可能性をそういう方面に持っておる土地につきましては、非常な勢いでこれが値上りをする。それからそういう転用の先のないような農地については、人口の増加とか一般の需要の増加という程度で値上がりをする。しかもそれは農地の収益性というか、それに相当制約されながら上がっていく傾向を持つ。こういう観測です。
  127. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これは農地転用税あるいは転売税をかけるかかけないかということがありますけれども、それは別といたしまして、今お話のように、これは基本的には日本の土地が狭いということが、一つの大きな原因であると思うのです。それからもう一つの基本的な原因としては、都市土地が今非常に急激な値上がりをしている。それの反映が都市近郊に現われてきているというふうに見て差しつかえない。その基本は何かと申しますと、今お話のあったように住宅、工場、あるいは公共施設、そういうものの需要が、非常に経済の伸びとともに大きくなって、しかも昔のように二年、三年たって土地買収を完了するというようなことを考えておりません。今手をつければ三カ月、三カ月で無理にでもだれからでも買い上げてしまうということを、どこでもやっております。これはやはり産業建設のテンポが早くなった結果だろうと思います。ですから、どうしてもそういう場合においては、それらの原因が集まって非常な土地の暴騰を来たしておるということは事実だろうと思います。そこでただ問題はこういうふうな野放図な土地値上がりというものをほうっておいては、農業というものは成り立たない。はっきり申しますと、それは二つの点で成り立たない。それは農業専用地帯といいますか、転用転売等が比較的少ない地帯においては、農業の収益というものは非常に低いのですから、今のように土地が高くなりましては、これから政府がおやりになろうとしておる、またわれわれもぜひ進めたいと思っております、たとえば土地の共同化なり、その前提としての交換分合なり、そういうことは今のような収益を全然無視したような価格では、これはうまくいかないということは当然わかると思います。同時に都市近郊の地帯においても、私は大蔵大臣に申し上げましたが、百万だ、二百万だという農地転用転売しても、それではあと農業ができるかというと、できない場合が多い。従って他の職業に転換しなければならない。その職業というのは、大部分は小売商とか小生産者が多いわけです。なかなか農村では工場への新しい転職というものは困難でありまして、そういう場合には実際われわれが見ているのは、新しくそういう商売ができるような土地を買い、建物を作り、資本を投ずるということをしなければだめである。そういう観点からしますと、農地価格転用転売の場合にべらぼうに上がっても、そういう人たちは、売った人も実はそれによって楽になったということにはなりません。ただ所によりましては、ダムやその他によって一村移るという場合には、相当いい場合もありますけれども、これとてもあとで見ると、その人たちが必ずしも楽になってはいない。没落してすってんてんになっているのが多い。こういう点から見ても、農業全体についてはこれは大きなマイナスだと思う。これについての抑制ということはぜひ必要なことだと思う。農林大臣はこの抑制策について何か具体的に考えられておりますか。今まで農林省がやられた、いわゆる転用規制のあれでは価格の押えにはなりません。私どもはならぬと思う。別途の徹底した転用策というものをやる御計画なり御意思がありますかどうですか。
  128. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまのところは転用基準というのでやっておりますが、今日本全体として見まして、ただいまお話のように住宅だとか、工場あるいは公共施設、特に公共施設について問題があると思うのですが、たとえば国土縦貫道路ができる。そうするとそこの土地は一曹にべらぼうな値上がりをする。国の投資の結果、反射的に財産価値が増加するというようなことが、これがまたいろいろの複雑な問題を起こしてくるわけです。あるいはあそこへ道ができるから、今度はあそこの山の買い占めだというようなことになって、そうしてそれが山の効用をちっとも発揮しない。これはただ時を待って売るための取得でありますから、植林だとかはちっともしないということも起こってくるわけです。と同時にそういうふうな国家的投資によって不労所得を得るということも、これは相当問題であろうと考えるわけです。従いまして都市といわず、また農村といわず、林野といわず、土地の増価に対しては、今や根本的な——増価というのは値段がふえる意味の増価ですが、今や根本的な対策を講ずべき時である、かように私は考えるわけです。それで昨日の閣議でも、私はそういう発言をしまして、大蔵大臣が中心になって検討するということになっておるわけでございまするが、結局税金の問題が主になってくると思うのです。転用することが経済上そう利益にならぬという事態が出てくると、この傾向に対しましては、一番ブレーキになってくるのではあるまいか、こういうふうな考えを一応持っているわけです。いずれにいたしましても非常に重要な問題でありまするので、すみやかに根本的な検討をして成案を得たい、こういうことになっております。
  129. 久保田豊

    久保田(豊)委員 大蔵大臣も午前中の御答弁の中で、少なくとも転用農地あるいは転売農地だけを、一般土地に対する税制というものを新しく考える以前に取り出して、これに対して転用税とかいうような目的税で、これをいわゆる農地補償と結びつけてやるということはしない、好ましくないということを言明されておったのですが、この点は農林大臣としてはどうですか。
  130. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほども申し上げましたが、大蔵大臣考え方と全く同じです。
  131. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これは大蔵大臣としてはそうでしょうが、農林大臣としてこの点について特にはっきり——あなたは政党の幹部という立場もありましょうけれども、少なくとも農林大臣でおられる間は、大蔵大臣以上にはっきりした考えを持っていただきませんと困るわけであります。この点をはっきりしていただきたいということです。  それから今のお話の税金を土地にかけることによって土地価格を押え得るという考え方、私はそれだけで押え得るかどうかということは非常に疑問であります。なぜかといいますと、日本の経済の伸びが政府の言うように、今後十年間に二倍になるというならば、生産施設や公共施設の需要がますますよけいになってくるのは当然であります。従ってそういう需要がある限り、都市ないしは都市の中におきまする土地そのものに対する、もっと徹底をした国の管理なり何なりが行なわれない限り、ただ税金だけを上乗せして、それによって土地価格の暴騰を押え得るというようなことを考えることは、私は現在の段階では、むしろ土地価格の押えにはならないというふうに考えます。  もう一点、午前中も申しましたように、地主側の一応の補償要求をかりに受けるとして、年間六百億というものを転用からあげていくということになれば、約一万五千町歩ですか、一万五千町歩というと、一反歩から少くとも元本だけで四十万円をとらなければならぬ。これに全体の利子その他をやるならば五十万円以上にもなりましょう。そういう高率の税金がはたして取れるかどうか、これも私は検討を要することだろうと思います。さらにそういう税金をかりにかけたといたしまして、その場合において農地価格が抑えられるかということは疑問であります。私は税金だけでは押えられないと思う。そういう税金をかけた場合におきましては、おそらく農地転用転売ということは非常に困難になることは明らかです、売り手はありませんよ。そういったばかばかしいことが行なわれるようになれば、売るばかはいません。そうなればすべてのこういう問題についての施策というのは非常に困難になると思いますが、こういう点については農林大臣はどうお考えになっておりますか。
  132. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは非常にむずかしい問題でございますので、政府としては大蔵大臣を中心にして、一つ根本的に土地の増価対策を検討しよう、こういうことなんです。増価対策といってもなかなかいろいろな御意見を持っておる人があるようでございますが、結局税ですね。転用というか売買価格ですね。それに対する課税という以外にうまい方法は現実問題としてはどうも考えられないわけなんです。ただいま不動産取得税に三%ですか、かかっておる、こういうような状況では税はほとんどかかっていないと言ってもいいくらいなものです。これに相当高率の課税をするというようなことになりますると、どういう効果がありましょうか。まあその率いかんによりましては、転売目的をもって土地を買おうというような人は少なくなるでしょう。土地を買うというような人が少なくなりますれば、自然にそこに需要が減少いたしまして、土地価格の値下がりというようなことにもなりまするし、また同時に土地の効率が発揮される状態が出てくるかと思うわけでございますが、しかしこれは非常に重大問題でありますので、政府としては慎重に検討いたしまして——しかし土地の増価に対して何らか根本的な対策を立てなければならぬということにつきましては、意見が一致しておるわけでございます。
  133. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今の御答弁の中で、転用税なりあるいは転売税なりあるいは売買税なり、こういうものを何か買う人にかけるような御答弁のようだったですが、買う人にかけるつもりですか、それとも売る方にかけるつもりですか。
  134. 福田赳夫

    福田国務大臣 まだこれは固まった意見ではありませけれども、当然売る方にかかるわけです。
  135. 久保田豊

    久保田(豊)委員 売る方にかけるということになりますと、これはやはり相当問題が深刻になってくる、こう思うわけであります。ですからこういう点については、私どももまだ土地の増価に対して、どういう措置によって——農業全体を発展させていくにはどうしても今のような野放図な土地の増価ということをそのままにしていくことはいけない。しかし増税といいますか、新しい税金をかけることによってこれを押えるという程度で、私はうまくいくかということに対しては非常な疑問を持っております。しかももう一つ考えいただきたいのは、日本のこれからの農業の発展についてどういう現実の影響を及ぼすかという点についても、私は一つ深い御考察をいただきたいということを特にお願いをいたしておくわけであります。  さらに、時間がもうだいぶ過ぎて参りましたので、要点だけにいたしますが、もう一点は、この法案が通りまして、政府の御意図がその通りいくかどうかは別といたしまして、いわゆる旧地主に関しまする社会的な問題の、とにかくまず実態調査するのだ、その結論が出るのか出ないのか、その結論が出てもこれを実施するのかしないのか、ここらはまだわからない、こういうふうな御答弁です。とにかく実態だけを調査するのだ、こういうことですが、私どもの心配するのは、さっき御質問申しましたように、今の地主団体のいわゆる基本的な性格、過去におきまする行動の実績、そういうものその他から見まして、この法案が一つ地主団体の足がかりになりまして、私は二つの大きな地主団体としての運動をさらに発展させる方向にいきはしないかということを心配するわけです。その一つは、従来以上に自民党——自民党と申しましてはかえって失礼になるかと思いますけれども政府に対しまする補償要求あるいは農地法改革に対する要求が、一段と強くなってくるということであります。これは当然そううなります。今までそれでつってきたのですから、ざっくばらんに言いまして、政府はどうお考えになるか知らぬが、少なくとも今までの政党との関係においては、そういう方向でいくということに努力するということでつってきておりまするから、これは一面において補償要求なりあるいは農地法の改正という方向への運動に一段と私は希望を与え、勇気を与えることに必ずなると思う。そういう意味において、政府はますます農地補償に対して抜き差しならぬ立場に追い込まれるのではないかということを心配する。  もう一つは、過去の実績によっても明らかな通り、この法案が通ることによって——この実施期間は大体二年間です。その間に、この法案をよりどころにいたしまして、かつて二十八年から二十九年、三十年、三十一年、三十二年ごろまで全国各地に起こりましたような小作地の集団取り上げ、もしくはそれに類するような訴訟事件、その他のいろいろの問題がなお激発をされまして、これは地主側も積極的な攻勢に出るでしょうね。おそらくこの法案が通ることによって、生産農民、解放を受けた農民——特に自民党の中では、解放を受けた農地転用転売だけではなくて、解放を受けないものの転用転売税まで考えられておる。こういう実態から見て、結局生産農民側におきましても黙ってはいないと思うのです。当然運動を起こして、これに対する対策をとって参ると思う。こういう場合においては、かつて二十年ごろを境にいたしまして、香川、石川その他全国的に起こったあの騒動を、また再び農村に盛り返させる危険が私は多分にあると思う。こういう点に対して、国会におきましての、政府の単なる一片のそういう目的の法案ではないのだという弁明だけでは、過去の実績が実績ですから、経過が経過ですから、なかなかこれによっておさまるものとは思いません。これはとりもなおさず農村における平和を乱し、あるいは民主的な秩序というものを破壊することになります。そして生産に対しても、私は小さな影響ではないと思う。こういう点に対して、特に農林大臣としては、もしこの法案が通った場合に、どのようなお考え措置をおとりになるつもりか、これをはっきりお伺いしておきたいと思います。
  136. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど来しばし申し上げておる通り、かりにこの法案が通りましても、これは調査をするのであります。その調査結論といたしましていろいろなことがあると思いまするが、政府といたしましては農地補償は一切いたさないわけであります。それから農地解放後でき上がりました新しい秩序と申しますか、農地法を根幹としてでき上がった事態に対して変革を加えるのだということは、毛頭考えておらないわけなんです。さようなことにつきまして、ある一部の地方で訴訟事件とかなんとかが起きておるということも伺っております。しかしそれはいろいろ誤った観測等か基本になっておることかとも思いますので、政府はそういう趣旨であるということにつきましては、今後一そう徹底させて、いささかも農家の人に不安のないように浸透をはかるということに努めたいと思います。
  137. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今の御答弁は、表面だけはきわめてきれいであります。しかしなぜ疑問を持つかというと、地主団体の主張は、前から私がるる御説明しておるように、国家補償の獲得ということが当面の基本目標であります。しかもその裏には、農地法改革ということを第二段として考えておる。それらの目的を達するための第一段として、まず本案のような調査会政府に設置させようということが、今日の地主団体の運動の目標になっております。しかも前々から申し上げましたように、これを受けた自民党のこの答申案も——しかも自民党地主団体との関係については、すでにもう各方面から言われておりますから、くどくは言いません。しかしその自民党のいわゆる答申案も、はっきり第一段としては調査会を作る、その調査会は少なくともいわゆる国家補償問題を解決するための第一歩としてこれを作るのだ、こう言っておる。そう書いてあるのですからしようがない。そして第二段としては、これを足がかりとして第二項のいわゆる国家補償問題を転用転売によって解決するのだ、第三項においては、それまでに至るとりあえずの期間、困った人に対しては融資ないしは救済の措置を講ずるのだ、こういう一連の計画といいますか、一つの段階、結ぼれを持った決定をしている。少なくとも自民党調査会答申はこういう決定をしておるのであります。この自民党の決定——自民党の決定というと語弊があるかもしれませんが、調査会の決定と、旧地主団体の運動の経過から見て、私どもはそういう不安を持たざるを得ません。政府が一片の、そうじゃないのだということを言ったって、地主の主張、そうしてこの自民党の中の調査会答申の、最初の第一段階としての調査会法案というものは政府提案としてここへ出ている。しかもこれが一回ならまだしも、ことしで三回目ですよ。その三回まで出ているというところに、これを足がかりとして第二段、第三段にいくとというこは、だれが考えたってそう考えざるを得ない。もしそういうことになりましたら、日本の農地行政、少なくとも農業政策の根幹というものは大きく逆転をしてくる。これに対しては少なくとも福田さん、農林大臣をされているときは、党内においても閣内においてもきぜんとした態度をもって、反対してもらわなければ困ると私は思うのです。そういう段階から見て、最後に私はあなたにお尋ねします。この法案が、前に聞いたときははっきりした御答弁がなかったのですが、今度のこの国会に提案されるなら当然閣議にかかったことと思います。閣議の内容は話ができないといえばそれまでであります。それまででありますが、あなたはその場合にこれに反対されたのですか、それとも賛成されたのですか。あるいは反対、賛成を表明される前にこういう反動法案の出る以前に、農民に対してどういう措置のための御努力をなされたか。私はこれを参考のためにお伺いしておきたい。
  138. 福田赳夫

    福田国務大臣 これは無条件で賛成をいたしております。それは私ばかりでない。閣僚何人も質問もなければ議論もありません。全部が賛成をしております。と申しますのは、これは調査の法案なんでありまして、政府全体としてすでに意見統一はできておる。それは農地補償というか、これはいたさない、買収は正当な対価が支払われて行なわれておる、また農地法の精神をこれによってごうも動かすものではない、こういうことであります。そういう点でみんな異議なく了解しておるさように御了承を願います。
  139. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今の御答弁は、自民党の幹部ないしは政府の重要閣僚としてはともあれ、農林大臣としてはきわめてわれわれは不満足であります。しかしこれ以上突っ込んでもしようがないと思いますから、その議論はこれでもって一応お預けにいたしておきます。ただ最後に私は、この法案について政府はまじめにお考えになっているのかどうかということを、はっきり一つお伺いしておきたい。それはなぜかといいますと、今のように実態調査して、その調査の結果によってどういう措置をするかしないか、これもまだきまっておらない。こんなべらぼうな調査会法案というものはいまだかつてないと思います。少なくとも実態調査するという以上は、何か目的があってはっきりこういう措置をする、その必要のためにこういう調査をするというのが普通であります。しかしそういう点が一つも明らかになっていない法案だ。しかも私が特にここで申し上げたいのは、さっき触れた問題でありまして、この原案ではこれは実態調査はできません。できませんとはっきり私は申し上げております。と申しますのは、政府の、福田さんの今までの御答弁では、この調査は三百八十八万円の予算をもって中央調査社に一括調査委託をしてやる、こういう大体の計画であります。そこで私はお伺いしたい。おそらく何らかの結論が出るといたしますれば——結論が出ないような調査会意味はありません。かりに結論が出て何らかの措置をするという場合には、これはさっきから、午前中から申し上げているように、特に生活に困窮している人、あるいは特殊な事情でもって、何らか政府一般社会保障以外に救済の手ないしは何かをしなければならぬという人もありましょう。しかし一般的な何かの措置を講ずるということになれば、これは一部の地主だけということにはいかないと私は思う。全体の地主ということになろうと思う。解放地主ということになろうと思う。ところで私はお伺いしたいが、解放地主解放農地というものは農村でもってはっきりつかめますか。少くともつかめないはずだと思う。それは御承知の通り農地解放をやりまして、そうして各委員会ごとに買収令書なり買上令書というものは一応整理してあります。しかしこれは個々の地主別には整理はしてありませんよ。これは皆さんもよく御存じだと思います。私どもは村長をやったからよくわかっておりますが、整理してありません。これをほんとうに実態をつかむというならば、まず第一段として全部の名寄せをしなければだめです。名寄せをしなければ実態調査できませんよ。そういうことになれば、大体私ども承知している範囲においては、令書だけの数が全部でもって約四百万あると思います。農業委員会の数が現在大体一万一千、その中でいろいろ分散なんかをしたことがありますが、私どもの経験では、この地主個々の名寄せだけで、大体において一農業委員会につきまして少なくとも半月はかかると思います。そうしなければ地主全体の実態というものはつかめませんよ。そうしてこの名寄せをするについては、今の段階では、もし組織的にやるとするならば農業委員会に依頼する以外にないと私は思います。御承知の通り農業委員会は、全国の大会の名をもちましてこの法案には協力しないということを決議しております。その決議をしている農業委員会を、政府としては強権をもって動かせますか。私は今の農業委員会法では、政府はこれを強権をもってやるということはできないと思う。農業委員会が協力しないというと、どうしてこの名寄せ調査というものが第一段としてできますか。この名寄せ調査ができなければ、抽出調査はできませんですよ。地主団体がおやりになった自民党のこれは大へん敬意を払いますけれども、そういう点で調査の基礎そのものがでたらめであります。そのでたらめな基礎の上に立って数字を動かしたって、正確な資料は出て参りません。こういう意味において、まず本格的に政府の方が実態を御調査なさるというならば、全国の農業委員会について、全地主一人々々についてまず名寄せ調査をいたしまして、そうしてそれを農区別に分けるなり、あるいはその他のいろいろの階層別に分けるなり、いろいろの調査をした上で、御計画のように一万五千戸の中から正しい抽出方法でやるならば、一応の推定材料はできましょうが、この一万五千戸の調査による推定によって現実の問題は片づきません。どうしてもさっきお話のような一人々々の農家について、気の毒なもの、あるいはいろいろの事情を持っているもの、全地主について具体的な調査をしなければだめであります。今までの農林省の調査といえども、十二万戸の抽出調査で、これは推測にしかとどまりません。非常に具体的な政策を立てる、一般的な政策を立てるという基礎にはなりましょうが、今まで政府の御説明になったようないわゆる農地改革に基づく、いわゆる個々に出てくる、あるいは非常に個別性を持っている、何といいますか、社会的な問題の解決の資料には、そういう一般的な推計資料では調査の使いものになりません。この点を政府はまじめに考えられたかどうか、少なくとも最低それだけはやる必要がある。さらに政府のおっしゃるように、町に出て転業しておりまする不在地主調査ということになりますと、それの追及ということはなおさらに困難であります。これは今日正確には私はできかねると思う。こういう点もあります。さらにさっき言いましたように生活程度の調査ということになりますれば、これは農林省のまじめな経済担当調査官なら、そういう生活程度の調査というものが、単なる聞き取り調査と抽出でできるものかできないものかということは、これは否定的に答えるにきまっております。これは世界の統計と調査の原則であります。少なくとも生活程度を正確に調べるというなら、一年間経済簿記をつけるなり何なりしなければできないのは、きまった話です。それを自民党でおやりになったような一回の聞き取り調査でもって、私は正確なデータが出るものとは考えられない。もしそういうものでやるとするならば、それはインチキな調査です。こういうことにならざるを得ない。そうしてさらにそういうことにしてみると、三百八十八万で何の調査ができるか。おそらくこれだけの調査をまじめにおやりになろうとするならば、調査費は少なくとも五億近くは要る。調査の年月は少なくとも二年は要ります。そうして出たデータによって旧地主対策をおとりになるというならば、私どもはある程度納得をいたします。三百八十八万円で、しかも世論調査の経験しかない中央調査社に頼んで何ができますか。そこで作った調査なんというものはインチキものですよ。結局これに地主団体をごまかすか、あるいは一般の世間をごまかすか、どっちにしてもごまかしの材料以外には、科学的な政策の基礎としての調査には私はなれないと思う。この点私は詳しく言えば幾らでも申します。農林省でも来年のセンサスには少なくとも一戸当たりについて二百円以上の予算を置いておるでしょう。そうしてもう一つ申し上げたいのは、第一調査をする対象がはっきりしてないじゃないですか。調査をする対象は、ときによっては百七十七万戸のうちの百万戸はすでに農林省で調査したから、あとのものだけ調査をすると言ってみたり……。ところがその百万戸といえども十二万戸の抽出調査であります。しかもこの社会問題を解決する調査としては不適当なものであり、結論は出ておりません。そうして今度は町へ出た者がかりに三十六万あったにいたしましても、これの追及をどうするかということについてはわからない。そういう点の関係調査対象さえはっきりしておらない。さらにその上に、この法案の第二条によりますれば、たとえばいわゆる農地を物納した連中はどうするのか、あるいは牧野その他解放農地はどうするのか、こういう地主の扱いも全然抜かしてあります。同じように農地犠牲者であり、現在困っておるとか、あるいは転業、転売ということになれば、そういうものは調査をせざるを得ません。この転職、転売の問題を取り上げるとすれば、これは自民党調査は取り上げておりますが、しかしこの取り上げた調査はほとんど聞き込み調査であります。聞き込み調査で正確なことがわかりますか。転職、転売をした者についてはっきりした追及調査を一件々々しなければ実体はわかりませんよ。こういう点を考えれば、三百八十八万円で、この資料によりますと中央調査社の人員は五十名であります。しかも農業委員会はこれに協力しないという態度をはっきり打ち出しておる今日、どういうふうにしてその調査をするつもりか。一万五千戸を抽出調査するにいたしましても、これは調査ができるはずがない。私はそう断ぜざるを得ないと思う。大体において農林省の方の今度のセンサスでも、二十二万人ぐらいいるでしょう。現在の農林省の調査関係の役人を除いて、二十二万人ぐらい人員が要るはずであります。それを五十人のところに委託をして、そうして一万五千戸を抽出してそれで調査いたしました、それによって対策を立てるのなら、これはその対策がかなりいわゆる政治的な、でたらめな基礎の上に立った政治的なものか、それでなければ、まじめにやる場合は対策を講じない。もっと言葉をはっきり言えば、地主要求をごまかすための調査会としか言わざるを得ない。一応今まで深入りをし過ぎたので、何とか逃げなければならぬから、この際調査会というものを作って一千万円、そのうちで調査費に使うのは三百八十八万円、これでもって一つ逃げようじゃないか。今までずいぶん選挙にも利用してきたが、この辺でぼつぼつ逃げようじゃないかという逃げ賃というか、逃げるための調査としか私どもには考えられない。私どもは旧地主のほんとうに困っておる人々に対しては同情します。やるならば本気になってやって下さい。こういうでたらめな調査のやり方で実態がほんとうにつかめるはずがない。またこういうでたらめな調査でつかみ得る実態の上に立った政策というものは、ほんとうに血が通ったものになるはずがない。この点について農林大臣はどうお考えになるか。お二人に一つはっきりお聞きしたいと思います。
  140. 福田赳夫

    福田国務大臣 調査方法論につきましてはただいま検討中でございますが、とにかく権威のある調査機関に公平にやってもらおう、こういうことでございます。政治的などうのこうのという配慮は一切いたさないために、特にそういうことをいたそう、こういうわけでございまして、とにかく先ほど来申し上げましたような旧地主の声もあるわけでございます。政府実情を把握しておかなければいかぬ、こういう観点からできる限りの調査をする、こういうために一千万円の予算を組んでおる、こういう次第でございます。
  141. 久保田豊

    久保田(豊)委員 くどいようですが、一千万円のうち、実際の調査費は三百八十八万円、中央調査社に委託をして、大体において調査対象も明確になっておらない。人員も、調査項目もはっきりしておらない。調査方法もはっきりしておらない。こういう前提の中で一万五千戸の抽出調査をおやりになろうというのですが、かりに抽出調査によって一般的な傾向、問題というものはとらえられるにしても、これは統計上の問題であります。統計上の正確を期そうとするには、たとえば地域別の区分をするとか、あるいは解放農地の階層別の区分をするとか、あるいは不在、在村の区別をはっきりするとか、あるいは不耕作地主と耕作地主と区別をするとかという前提が要るわけであります。それでなければ正しい抽出調査はできないはずであります。しかもそれはさっき言いましたように、農村の現実は、この農地改革の結果は、名寄せができておりませんと、こう言っておるのです。これは農地局長がよく御存じだと思う。現実に各農業委員会地主ごとの解放農地の名寄せができておりますか。できておりません。現実にその名寄せができなければ、今いった階層区分なり職業区分なりそういう区分さえできないじゃありませんか。その区分さえできないのに、何を抽出するのですか。抽出の基礎がないじゃないですか。少なくともまじめな調査ならば、ある程度の名寄せをして、そうしていろいろの区分をして、その区分に基づいて、それを基礎にして、いわゆる一万五千戸なり何なりを抽出調査をするということでなければ、少なくとも一般的な傾向もつかまえられません。しかも今までの御説明の中では、非常に地主の困った人や気の毒な人、あるいは生活環境が違った者に対しては、必要があれば委員会で何らかの結論を出すというのでしょう。ところがそういうデータは今まで何もないと言っておるでしょう。何もないものが、そういうでたらめなデータをもとにして何を審議できるのですか。私はこの点政府の今度出されたこの法案というものは、ふまじめだと思う。私は本気で旧地主のことを考えてやるのなら、もっと真剣に政府はこの問題に取り組むべきである。どうも最後になるとこういうインチキな調査方法で逃げようとする。これは言葉が過ぎるかもしれませんが、ふまじめであって、まじめに対策を講ずる気はないのではないか。あるいはもうそんな正確なものは要らないから、とにかくいいかげんな調査でごまかしてしまおうというのか、あるいは地主との今までのつき合いから逃げるための口実調査という以外にはこれはとれない。今農林大臣のおっしゃったような、調査はできるだけ公平にと言うが、公平の基礎がないじゃないですか。公平というような言葉の問題ではありません。少なくとも現在の地主別の名寄せをいたして一そうして階層別なりその他のいろいろの区分をして、その中から一万五千戸を抽出するというのなら、統計上一般的な結論が出てくると私は思う。それさえやらないで、いきなりと世論調査式にあっちへ行って聞き、こっちへ行って聞き、聞いたところだけ書いて何になる。この点についてもう一度はっきり御答弁をいただきたいと思う。
  142. 福田赳夫

    福田国務大臣 どうも久保田さんはある調査方式を予定して、それには金がこのくらいかかるというようなお考えを持っておられるのではないかと思いますが、これはとにかく予算が一千万円しかないのですから、一千万円の範囲内でできるだけの調査しかできないわけです。大体その一千万円の調査費がありますればただいま私ども考えておるような社会諸問題、これは調査できる、こういうので今細目を検討中だ、こういうふうに御了承願います。
  143. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これ以上追及してもしようがないから私はやめますけれども、少なくとも今の一千万円、そのうち実際の実態調査に使用されるのは三百八十八万円、そうして中央調査社に一括の調査委託をして一万五千戸の抽出調査をするという、こういう調査の基本計画がもうすでに政府の方ではおできになっている。ところが、それではそういう調査では地主のほんとうの生きた実態調査というものはつかめないということ、これは農林大臣でもおわかりだと思います。今の農地改革の現在の結果が農村でどういうようになっているのか、それを基礎にしなければ、はっきりしたことはわからぬでしょう。そうしてかりに今の転用転売の問題を取り上げるにいたしましても、転用転売をした地主側の考えだけでなく、転用転売を現実にいたしたいわゆる転用転売者の経済的な状況その他も、当然私は調査しなければならぬと思う。そういうことになればこの経費で、この陣容でやれるわけがありません。できるだけ公平にやる、できるだけそういうなれたところをやるというだけでは、調査の基礎ができておりませんから、基礎条件というものは整っておりませんがら、その基礎条件の整わない上に今の程度の計画を乗せても、いかにやってもほんとうの調査というものはできないということを私ははっきり申し上げておきます。従ってそういう基礎のない、条件の整わない上に立った調査、これはそう言っては失礼ですが、経費は払いますけれども自民党さんのやった御調査程度の域を出ないと思う。私は自民党さんのやった調査もずっと全部拝見をいたしました。そうして調査報告もちゃんと見ております。全部検討いたしてみました。そうして調査をやった人たち調査報告、そういうものを全部検討いたしてみました。この詳しいことは時間がありませんから申し上げません。しかしこれは自民党さんとしては大へん御苦労を願ったにもかかわらず、この調査をもって今日の地主に対する社会的な諸問題が正確にとらえられたものとはこれは断じてそういうふうに評価することはできません。あげろといえば、その中の矛盾を幾つもあげます。私は時間がありませんから申し上げませんけれども結論として、これと大同小異の調査をされる。ただ数が倍になるだけ、そういうものでこれは旧地主の問題を解決しようというのは、あまりに政府としては——私はもしそういう点にお気づきにならずに、農林大臣なり、閣議で御決定になったというなら、あまりに軽率な行為と私は断ぜられるわけであります。これ以上申し上げてもしようがありませんから、一応きょうはこのくらいで質問をやめますけれども、残余はまた次の機会に譲ります。
  144. 福田一

    福田委員長 次会は明後十八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時五十九分散会