○
久保田(豊)
委員 今の御
答弁は、
自民党の幹部ないしは
政府の重要閣僚としてはともあれ、農林
大臣としてはきわめてわれわれは不満足であります。しかしこれ以上突っ込んでもしようがないと思いますから、その議論はこれでもって一応お預けにいたしておきます。ただ最後に私は、この法案について
政府はまじめにお
考えになっているのかどうかということを、はっきり
一つお伺いしておきたい。それはなぜかといいますと、今のように
実態を
調査して、その
調査の結果によってどういう
措置をするかしないか、これもまだきまっておらない。こんなべらぼうな
調査会法案というものはいまだかつてないと思います。少なくとも
実態を
調査するという以上は、何か
目的があってはっきりこういう
措置をする、その必要のためにこういう
調査をするというのが普通であります。しかしそういう点が
一つも明らかになっていない法案だ。しかも私が特にここで申し上げたいのは、さっき触れた問題でありまして、この原案ではこれは
実態調査はできません。できませんとはっきり私は申し上げております。と申しますのは、
政府の、
福田さんの今までの御
答弁では、この
調査は三百八十八万円の予算をもって中央
調査社に一括
調査委託をしてやる、こういう大体の計画であります。そこで私はお伺いしたい。おそらく何らかの
結論が出るといたしますれば
——結論が出ないような
調査会は
意味はありません。かりに
結論が出て何らかの
措置をするという場合には、これはさっきから、午前中から申し上げているように、特に
生活に困窮している人、あるいは特殊な
事情でもって、何らか
政府が
一般社会保障以外に救済の手ないしは何かをしなければならぬという人もありましょう。しかし
一般的な何かの
措置を講ずるということになれば、これは一部の
地主だけということにはいかないと私は思う。全体の
地主ということになろうと思う。解放
地主ということになろうと思う。ところで私はお伺いしたいが、解放
地主の
解放農地というものは農村でもってはっきりつかめますか。少くともつかめないはずだと思う。それは御
承知の通り
農地解放をやりまして、そうして各
委員会ごとに買収令書なり買上令書というものは一応整理してあります。しかしこれは個々の
地主別には整理はしてありませんよ。これは皆さんもよく
御存じだと思います。私
どもは村長をやったからよくわかっておりますが、整理してありません。これをほんとうに
実態をつかむというならば、まず第一段として全部の名寄せをしなければだめです。名寄せをしなければ
実態は
調査できませんよ。そういうことになれば、大体私
どもの
承知している範囲においては、令書だけの数が全部でもって約四百万あると思います。農業
委員会の数が現在大体一万一千、その中でいろいろ分散なんかをしたことがありますが、私
どもの経験では、この
地主個々の名寄せだけで、大体において一農業
委員会につきまして少なくとも半月はかかると思います。そうしなければ
地主全体の
実態というものはつかめませんよ。そうしてこの名寄せをするについては、今の段階では、もし組織的にやるとするならば農業
委員会に依頼する以外にないと私は思います。御
承知の通り農業
委員会は、全国の大会の名をもちましてこの法案には協力しないということを決議しております。その決議をしている農業
委員会を、
政府としては強権をもって動かせますか。私は今の農業
委員会法では、
政府はこれを強権をもってやるということはできないと思う。農業
委員会が協力しないというと、どうしてこの名寄せ
調査というものが第一段としてできますか。この名寄せ
調査ができなければ、抽出
調査はできませんですよ。
地主団体がおやりになった
自民党のこれは大へん敬意を払いますけれ
ども、そういう点で
調査の基礎そのものがでたらめであります。そのでたらめな基礎の上に立って数字を動かしたって、正確な資料は出て参りません。こういう
意味において、まず本格的に
政府の方が
実態を御
調査なさるというならば、全国の農業
委員会について、全
地主一人々々についてまず名寄せ
調査をいたしまして、そうしてそれを農区別に分けるなり、あるいはその他のいろいろの階層別に分けるなり、いろいろの
調査をした上で、御計画のように一万五千戸の中から正しい抽出
方法でやるならば、一応の推定材料はできましょうが、この一万五千戸の
調査による推定によって現実の問題は片づきません。どうしてもさっきお話のような一人々々の農家について、気の毒なもの、あるいはいろいろの
事情を持っているもの、全
地主について具体的な
調査をしなければだめであります。今までの農林省の
調査といえ
ども、十二万戸の抽出
調査で、これは推測にしかとどまりません。非常に具体的な政策を立てる、
一般的な政策を立てるという基礎にはなりましょうが、今まで
政府の御
説明になったようないわゆる
農地改革に基づく、いわゆる個々に出てくる、あるいは非常に個別性を持っている、何といいますか、社会的な問題の解決の資料には、そういう
一般的な推計資料では
調査の使いものになりません。この点を
政府はまじめに
考えられたかどうか、少なくとも最低それだけはやる必要がある。さらに
政府のおっしゃるように、町に出て転業しておりまする不在
地主の
調査ということになりますと、それの追及ということはなおさらに困難であります。これは今日正確には私はできかねると思う。こういう点もあります。さらにさっき言いましたように
生活程度の
調査ということになりますれば、これは農林省のまじめな
経済担当
調査官なら、そういう
生活程度の
調査というものが、単なる聞き取り
調査と抽出でできるものかできないものかということは、これは否定的に答えるにきまっております。これは世界の統計と
調査の原則であります。少なくとも
生活程度を正確に調べるというなら、一年間
経済簿記をつけるなり何なりしなければできないのは、きまった話です。それを
自民党でおやりになったような一回の聞き取り
調査でもって、私は正確なデータが出るものとは
考えられない。もしそういうものでやるとするならば、それはインチキな
調査です。こういうことにならざるを得ない。そうしてさらにそういうことにしてみると、三百八十八万で何の
調査ができるか。おそらくこれだけの
調査をまじめにおやりになろうとするならば、
調査費は少なくとも五億近くは要る。
調査の年月は少なくとも二年は要ります。そうして出たデータによって旧
地主対策をおとりになるというならば、私
どもはある程度
納得をいたします。三百八十八万円で、しかも世論
調査の経験しかない中央
調査社に頼んで何ができますか。そこで作った
調査なんというものはインチキものですよ。結局これに
地主団体をごまかすか、あるいは
一般の世間をごまかすか、どっちにしてもごまかしの材料以外には、科学的な政策の基礎としての
調査には私はなれないと思う。この点私は詳しく言えば幾らでも申します。農林省でも来年のセンサスには少なくとも一戸当たりについて二百円以上の予算を置いておるでしょう。そうしてもう
一つ申し上げたいのは、第一
調査をする対象がはっきりしてないじゃないですか。
調査をする対象は、ときによっては百七十七万戸のうちの百万戸はすでに農林省で
調査したから、あとのものだけ
調査をすると言ってみたり……。ところがその百万戸といえ
ども十二万戸の抽出
調査であります。しかもこの社会問題を解決する
調査としては不適当なものであり、
結論は出ておりません。そうして今度は町へ出た者がかりに三十六万あったにいたしましても、これの追及をどうするかということについてはわからない。そういう点の
関係、
調査対象さえはっきりしておらない。さらにその上に、この法案の第二条によりますれば、たとえばいわゆる
農地を物納した連中はどうするのか、あるいは牧野その他
解放農地はどうするのか、こういう
地主の扱いも全然抜かしてあります。同じように
農地の
犠牲者であり、現在困っておるとか、あるいは転業、
転売ということになれば、そういうものは
調査をせざるを得ません。この転職、
転売の問題を取り上げるとすれば、これは
自民党の
調査は取り上げておりますが、しかしこの取り上げた
調査はほとんど聞き込み
調査であります。聞き込み
調査で正確なことがわかりますか。転職、
転売をした者についてはっきりした追及
調査を一件々々しなければ実体はわかりませんよ。こういう点を
考えれば、三百八十八万円で、この資料によりますと中央
調査社の人員は五十名であります。しかも農業
委員会はこれに協力しないという態度をはっきり打ち出しておる今日、どういうふうにしてその
調査をするつもりか。一万五千戸を抽出
調査するにいたしましても、これは
調査ができるはずがない。私はそう断ぜざるを得ないと思う。大体において農林省の方の今度のセンサスでも、二十二万人ぐらいいるでしょう。現在の農林省の
調査部
関係の役人を除いて、二十二万人ぐらい人員が要るはずであります。それを五十人のところに委託をして、そうして一万五千戸を抽出してそれで
調査いたしました、それによって
対策を立てるのなら、これはその
対策がかなりいわゆる政治的な、でたらめな基礎の上に立った政治的なものか、それでなければ、まじめにやる場合は
対策を講じない。もっと
言葉をはっきり言えば、
地主の
要求をごまかすための
調査会としか言わざるを得ない。一応今まで深入りをし過ぎたので、何とか逃げなければならぬから、この際
調査会というものを作って一千万円、そのうちで
調査費に使うのは三百八十八万円、これでもって
一つ逃げようじゃないか。今までずいぶん選挙にも利用してきたが、この辺でぼつぼつ逃げようじゃないかという逃げ賃というか、逃げるための
調査としか私
どもには
考えられない。私
どもは旧
地主のほんとうに困っておる人々に対しては同情します。やるならば本気になってやって下さい。こういうでたらめな
調査のやり方で
実態がほんとうにつかめるはずがない。またこういうでたらめな
調査でつかみ得る
実態の上に立った政策というものは、ほんとうに血が通ったものになるはずがない。この点について農林
大臣はどうお
考えになるか。お二人に
一つはっきりお聞きしたいと思います。