○
中曽根国務大臣 コールダーホール炉の導入につきましては、間違っていないとわれわれは
考えます。経費の点につきましては、大体一キロワット当たり五円前後ということでございまして、それは最新鋭火力よりは少し高くつくようであります。しかし二十年の耐用年数を見ますと、新鋭火力に匹敵するか、あるいは時間的に見ればそれより少し安くなるくらいです。もちろんああいうものですから、初めのうちは建設費は高いのです。しかし一たん装荷すれば燃料費は要らなくなるわけでありますから、二十年平均でならしますと新鋭火力に匹敵するだけに今なっておるのです。従いまして経済的に見てむだをしたというふうにわれわれは
考えません。
もう
一つ大きな効果は、
日本の技術を訓練するということ、それから新しい
人員をこれで養成していくということです。われわれが原子力に期待しておるのは、火力に匹敵するという程度のものではなくて、いずれは火力の半分とか十分の一程度の電力というものが、必ずやあのものから出てくるというふうにわれわれは
考えておるのでありまして、そこへいくためには、やはりある程度の金をかけた
研究もしておかなければならぬと思うのです。それをある程度やっておきませんと、外国技術にいつもカバーされまして、向こうに搾取されるということになります。そういう意味で、国産技術を生み出すために、ある程度コスト的にも採算がとれるものでしたらなるたけ早期に入れて、
日本の学者の
研究に資すると同時に、
日本でも国産的な技術を発明していくという段取りをするのが正しいと思って、われわれはやったのであります。
最近の様子を見ますと、イギリスにおきましては
計画をそう変えておりません。イギリスの
計画は大体一九六五年までに五百万キロの原子力発電をやるという
計画でありました。それを六六年までに五百万キロやるというふうに最近変えたようであります。しかし、コールダーホール改良型をいろいろなところで建設しておりますが、たとえばブラッドウェルとか、あるいはヒンクレポイントとかハンターストーンとか、そういうところで今七つばかり建設しつつあると記憶しておりますが、その
計画は少しも変えておらないのです。それからその後建設する予定になっておるものも変更しておりません。従いまして、イギリス人は
自分の技術に自信を持って、
自分たちの動力事情を解決するために既定のコースを着々進んでおるものとわれわれは
考えます。ただいわゆるユーラトムというものがありまして、ヨーロッパ
共同体で総合して一九六五年までに約千五百万キロワット作るという
計画がございましたが、これはむしろ
計画というよりも荒っぽい腰だめの構想という程度のものであったと思うのです。それが確かにお話のように、スエズの事件で石油が途絶したのであわてて数を増したということもありましたが、最近は、フランスからはサハラの砂漠で油が発見されるとか、LPGでガスが安くなるという事情でそれが非常に縮減されたようです。しかしこれはヨーロッパ各国が
共同体でやるという荒っぽい
計画でありましたために、個々の国が責任を持ってやるには非常に根拠の浅いものであります。そういうわけでありますから、千五百万キロという数字についてはわれわれは疑問を持っておりましたが、その点は非常に縮減されたようで、その点はお説の
通りであります。しかし全般的に見まして原子力がやや停滞ぎみであるということは、事実であるだろうと思います。しかし原子力が持っておる潜在的な価値というものは依然として下がらない。
世界の学者がねらっておるのは、私らの方の菊池正士博士も言っていることでございますけれども、火力に匹敵できるという程度のものでは原子力をやる意味がないのだ、火力の何分の一というものに仕上げるという意味でわれわれは一生懸命やっておるのだ、こう言っております。そうして現に原子力
研究所におきましても平均質炉という新しい着想の
日本的な発明が完成されようとしております。今までの
原子炉の
中心の燃料というものは、ウラニウムの金属棒をやっただけなんです。そのまわりを石墨で囲むという
考え方だったのですが、
日本人の
考え方は、そのウラニウムと石墨をたどんみたいに
一緒につけて、それを素焼きみたいに焼いて固めてやる、そうすると非常に効率がいいという新しい着想で、その
研究を進めて、今一部の実験設備も
設置してことしからやるということでありまして、こういうことがどんどん進んでいくと、われわれが期待しているような原子力へ進んでいくだろうと思います。こういう発明も
世界が非常に注目している発明でございますが、これもやはりある程度お金をかけて、
人員を養成してやらないとなかなかできないものでありまして、私たちはそういう気持で今後も進めて参るつもりであります。