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1960-03-11 第34回国会 衆議院 地方行政委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十一日(金曜日)委員会におい て次の通り小委員及び小委員長を選任した。  地方税法の一部を改正する法律案等  審査小委員       金子 岩三君    亀山 孝一君       川崎五郎君    纐纈 彌三君       高田 富與君    津島 文治君       吉田 重延君    太田 一夫君       加賀田 進君    安井 吉典君       大矢 省三君  地方税法の一部を改正する法律案等審査小委員  長              川崎五郎君     ————————————— 昭和三十五年三月十一日(金曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長代理 理事 纐纈 彌三君    理事 飯塚 定輔君 理事 田中 榮一君    理事 渡海元三郎君 理事 吉田 重延君    理事 加賀田 進君 理事 阪上安太郎君    理事 門司  亮君       相川 勝六君    加藤 精三君       亀山 孝一君    津島 文治君       三田村武夫君    山崎  巖君       太田 一夫君    川村 継義君       佐野 憲治君    楯 兼次郎君       中井徳次郎君    安井 吉典君       大矢 省三君  出席国務大臣         国 務 大 臣 石原幹市郎君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁行政局         長)      藤井 貞夫君         総理府事務官         (自治庁財政局         長)      奧野 誠亮君         総理府事務官         (自治庁税務局         長)      後藤田正晴君         大蔵政務次官  奧村又十郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   大村 筆雄君         専  門  員 圓地与四松君     ————————————— 三月十一日  委員野口忠夫君辞任につき、その補欠として楯  兼次郎君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 三月十日  全日制市町村立高等学校教職員退職手当全国  通算に関する請願大矢省三紹介)(第九二  四号)  同(田中正巳紹介)(第九四五号)  同(松浦周太郎紹介)(第一一三四号)  遊興飲食税減免に関する請願纐纈彌三君紹  介)(第九四三号)  炭酸カルシウム肥料製造業者電気ガス税免除  に関する請願笹山茂太郎紹介)(第九四四  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置並びに小委員及び小委員長の選任  に関する件  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三六号)  臨時地方特別交付金に関する法律案内閣提出  第三八号)  地方財政法及び地方財政再建促進特別措置法の  一部を改正する法律案内閣提出第七四号)      ————◇—————
  2. 纐纈彌三

    纐纈委員長代理 これより会議を開きます。  濱地委員長にはお差しつかえがありますので、その指名によりまして私が委員長の職務を行ないます。  地方税法の一部を改正する法律案臨時地方特別交付金に関する法律案並びに地方財政法及び地方財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。安井吉典君。
  3. 安井吉典

    安井委員 今日主として地方税法改正法案に関しまして質問いたしたいと思っているわけでありますが、まだ大臣がお見えになりませんので、その前に、これはもちろん税制にも、広く財政関係のあることでありますが、ことしの地方財政計画概要説明の中に一点、内容についてもっとはっきりお聞きをしたい点がありますので、その点を一つ奧野財政局長がおられますからお尋ねをいたしたいのであります。  財政計画の中の給与費の中に、市町村財政指導強化のための職員の増を百三十八人見込まれており、技能検定職員の増と合わせて約一億円が計上されているようでありますが、これも今まで財政計画の中に見当らなかった項目でありますが、今日の段階において、市町村財政指導強化のために特に職員ワクを設けるというその趣旨内容について一つお尋ねをいたしたいと思います。
  4. 奧野誠亮

    奧野政府委員 府県市町村を通じまして、財政健全化のための諸措置をとろうとしているわけでございます。その場合に、市町村現実財政運営につきまして、いろいろと指導助言の役割を演じていくべき府県地方課の陣容というものが、近来どちらかといいますと、県全体が市町村のことまでかまっておれないというような姿になりがちでありまして、若干力が足りないように感ぜられるわけであります。そこでそういう関係のスタッフを充実しまして、十分研究を遂げながら市町村の親切なる指導ができるように用意をしていきたい。かように考えているわけでありまして、そのための経費というものを地方財政計画に盛り上げ、同時にまた基準財政需要額の中に算入することによって府県にそれを充実するだけの財源を保障していきたい、こういう考え方を持っているわけであります。
  5. 安井吉典

    安井委員 これは都道府県職員を転用する、そのための費用ですか、それとも自治庁から人をやるということですか。
  6. 奧野誠亮

    奧野政府委員 府県地方課職員として三人を充実することを期待しているわけであります。
  7. 安井吉典

    安井委員 この人数、各都道府県三人とありますが、この置き方はどういうふうにお考えですか。
  8. 奧野誠亮

    奧野政府委員 財政計画上は平均三人程度ずつの増員を期待しているわけであります。現実には基準財政需要額に算入して参るわけでありますので、団体が大きくなれば自然職員数を多く置けるし、少ない団体におきましては職員数も少なくて足りる、またそれしか財源を保障しないということになって参るわけであります。
  9. 安井吉典

    安井委員 ただ私、この点で心配なのは、今までも地方自治法によりまして、都道府県知事市町村財政に対する包括的な監督権がたしかあったはずでありますが、その中にことさらに、都道府県が従来でも支出しておったその職員費の中に、これだけは市町村財政指導のための費用なんだとワクをきめて、何か自治庁のひもをつけて、いわば市町村財政への目付役都道府県の中に強力な形ではめ込もうという意図があるのではないかというようなことも心配されるわけでありますが、その点どうでしょうか。
  10. 奧野誠亮

    奧野政府委員 府県なり市町村なりにおいて職員を増加しなければならない場合に、単に国庫補助金の形だけではなしに、地方団体が全部一般財源で設置しなければならない職員数も相当ふえて参るわけであります。そういうものにつきましては、地方財政計画上正確に所要財源の増加を見ておきませんと、地方団体が困ってしまうわけであります。そういう経費は、今お話しになりましたものだけではなしに、あるいは社会教育主事を数百人増員しなければならないというようなものもこの財政計画の中に計上されているわけでございます。要するに、府県一般財源をもって増員を必要とするであろう、また国としてもそういう式の増員を期待するのだというものを取り上げておるわけでございます。その中で、市町村財政についても親切な助言ができるような体制を県においてもっと強化してもらいたいというものをこういう形において取り上げているわけでございます。
  11. 安井吉典

    安井委員 社会教育主事のことも今お話がありましたけれども、そういうのは、法的根拠を新しく得ることによって、そのための増員という姿でこれは了解できるわけです。新しく都道府県なり市町村なりが住民のためのサービスをより強化するという目的のために、法的根拠を与えて人をふやすんですから、これは当然の措置として、地方財政の面でもめんどうを見てやらなければならないわけであろうと思います。しかしながらこの問題は、現在でもすでにやっていることであり、自治法におきまして知事がそういう権限を与えられ、当然の仕事として知事がその職員を督励しながらやっているはずです。そこにもってきてさらに今ワクをはめていこうという考え方は、どうも何か地方自治の本来の考え方に逆行した中央集権化への方向が、こういった端々にも見受けられるような気がするわけであります。その点、社会教育主事という問題と並列して今問題をお出しになりましたけれども、性格は全然違うものだと私は思うのですが、どうでしょう。
  12. 奧野誠亮

    奧野政府委員 市町村財政指導につきまして新しい法律が今作られようとしているわけじゃございません。しかしながら、府県についてはそういう任務を負っていることは地方自治法その他におきまして明確に規定されているわけでございます。しかもその仕事実態が戦後非常に複雑になってきておるわけであります。たとえば市町村税務行政におきましても、地方税法を通じまして独立財源充実されて参っております。また財源調整の問題にいたしましても、戦前の地方配付税制度から地方財政平衡交付金制度あるいは地方交付税制度と非常に精緻なものになって参っておるわけでございます。そういうふうに、質的、分量的に非常に変わって参っておりますにかかわらず、特にそういう関係府県指導職員強化というものを全然取り上げていないわけであります。その結果、きわめて市町村財政についての地方課助言体制が貧弱になってしまっております。それだけが原因じゃございませんが、先般赤字団体につきまして財政再建特別措置法が制定され、財政再建当たりましたにかかわらず、また多くの市町村が赤字困難に陥ってきておるという事態になったわけであります。そこで特にそういう団体につきましては、再建計画を作ってもらって資金のあっせんをする、またその利子負担については援助措置を講ずるようなこともやって参ったわけであります。それがさらにまた赤字困難に陥って参ってはいけませんので、そういう原因をいろいろ求めて参りますと、府県地方課職員が戦後ほとんど強化されていない、むしろ減員されてきているくらいの状態になってしまっておるわけであります。質的、量的に市町村財政実態が非常に変わって参っておるにかかわらず、今申し上げるような状態でありますので、あらためて財政計画所要職員数を計上して、交付税制度のもとに財源を保障して、そうして府県においてその関係職員充実をしてもらうように国として期待していきたい、こういう考え方をとろうとしておるわけであります。
  13. 安井吉典

    安井委員 市町村の行財政の運用の内容がだんだん複雑になり、そのため誤りなきを期すために国なり都道府県なりが親切な助言をしたり、いろいろ資料を提供したり、そういうサービスといいますか、行政指導といいますか、これは非常に大切なことだと思うのです。そういうものがなかったことによって、今日まで非常に困難な財政状態に陥ったという例もあるいはあるかもしれません。そういう意味において大切なことだということだけは私はよくわかるわけであります。しかし、この地方財政計画が組まれてから今まで、もう実に長い年月たってきておるわけであります。今において急にぽっかりこれが顔を出したというところが——今度自治省設置法案をお出しになるそうだし、その他もろもろの地方自治指導強化ということを名目にして、逆に地方自治が実のないものになってしまうような、その実が吸われてしまうような、つまり形を整えることに忙しいあまりに実が失われてしまうようなおそれをわれわれ感ずるわけです。そういう意味におきまして、これはいつまで論議いたしておっても果てしがないようでございますので、この問題についての質問は一応打ち切りますけれども、地方自治の根本的な問題は、もちろん都道府県も大事でありますが、あくまで市町村にあるわけです。そういう意味において、誤りない行政指導の方法を打ち立てていっていただかなければならないわけでございますので、今はその点の要望だけにとどめておきたいと思います。  そこで今日は地方税法を中心にいたしまして、政府の出されております法案、さらにまた日本社会党政府案に対する修正ないし新たな改正法案というふうな形で、この国会に臨むことを考えているわけでございますが、この際地方税法の全体につきまして、時間も十分にとるわけにもいかないと思いますが、概括的なお尋ねをいたしたいと思うわけであります。  初めに大臣お尋ねをいたしたいのでございますが、先般来の質問に対するお答えでも、地方税制の問題については、今税制調査会で作業中であるので、それができるまで待ってもらいたい、そういうふうな御答弁が続いてきているわけであります。しかしながら、税制調査会が結論を出すにいたしましても、その際においての、それが出るまでの段階においての自治庁側態度というものは非常に大切だと思うわけであります。一体今後の地方税制をどういうふうに持っていこうというお考えをお持ちなのか、これを石原自治庁長官に伺いたいと思います。
  14. 石原幹市郎

    石原国務大臣 非常にむずかしい問題でございまするが、この委員会でも私たびたび申し上げておりまするように、やはり地方にもう少し確固たる税源といいますか、税財源が与えられるような措置がとられなければ、毎年予算編成期に大蔵省、自治庁あたりで繰り返しておりまするあの騒ぎが絶えないと思うのでありまして、私、今ここで具体的な意見を言うことはできませんけれども、できるだけ税源を与えまして、そこでその上において地方団体間の——今度はそれでも立っていかない県が相当できると私は思う。その暁において、その団体間の財源調整を行なうべきではないか、筋としてはそういう考え方を持っておるのであります。
  15. 加藤精三

    加藤(精)委員 関連大臣から、税制調査会で決定前の地方税制度をどう持っていくかということにおいて、地方財源充実強化するという方面と、それからその地域で何ぼ税金をとっても間に合わないような地方団体では、交付税の面で調整するというような御趣旨だろうと思うのですが、そういうような御答弁があったのでございます。私、予算編成なんかのときに毎回考えるのでありますが、国税を減税しても、地方交付税交付率が高くならなければ、まあ問題もあるし、そのほか所得税住民移所得割り、それから法人事業税なんかの関係から見て、国税地方税との関連のために、国税の変動が地方税にうんと響いて災いをこうむるようなことがある。そういうのを思い切って、国税に累を及ぼされるという悪因縁を断ち切るというようなこともある程度必要ではないかと思うのでございますが、そうしますと、課税物件を別にしなければならぬようなことになるような気がする。課税物件を別にするような場合、どんな税収が地方税として適当であるかという問題が出てくるかと思うのであります。それからそのほか地方税の中に、どうもその本質から見て高過ぎるものや、ぬる過ぎるものや、徴収手続から見て徴税費がかかり過ぎたり、また徴税がはたしてできるだろうかどうだろうか不明瞭なもの、種々の租税原則から見て欠陥を有するような地方税があるというような気がするのであります。そんなのをあわせてやらなければいかぬ気がする。そういうふうな地方税としての、自治庁側として税制審議会の方へ要望するようなかまえになっている事項がもっとあるような気がするのです。全体的に地方財源が少ないから、地方税充実強化ということが何より大きな命題ではありましょうけれども、そういうふうな考え方。  それからそれは直接の地方税の問題ですけれども、地方財源の問題を離れて地方税のことを論ぜられないわけですから、それで結局、私の住んでおります山形県なんかは、地域国税分やなんかをみんな取っても、とても県財政を処理するだけの財源はありっこないわけです。現在も県の一般予算の一〇数%しか県税がとれない。国税分をみんな取ったって四〇%かそこいらだろうと思う。あるいは四五%くらいしか税源がないわけでありますから、そういうような場合に、国として公共事業とか、そのほか新しい社会保障とか、たくさんにどんどん与えられるから——それで考えるのでありますが、そういう場合には、先ほどお話にあったようでありますが、調整が必要になってくる。調整をどの程度でやるか、雑多な調整をあちこちくっつけると煩瑣にたえないし、理念が明瞭にならないから、地方交付税制度調整をつけるのが一番いいと思いますが、大臣のきのうか、おとといのお話の中に、地方交付税の方で支弁する限度ですね、地方交付税交付率といいますか、三国税に対する率は、だんだんとせり上げられて、今ではほとんど満度に達して、それ以上とりにくいということがあったのです。大体二八・五%ならいい、三〇%では多過ぎる。あるいは三五%ならいいけれども、三八%では多過ぎる。そういうことは、国と地方行政事務配分なんかとも関係するし、時世の要求で財政需要が変わっていくだろうし、場合によっては私は四五%でも四八%でも一向差しつかえないように思うのでありますが、どうもそれが満度にきたような御答弁をしておられるように思うので、その点をお伺いしたい。
  16. 石原幹市郎

    石原国務大臣 今、国の減税や何かで影響をされないように、もっと独立性のものをという御意見があったのであります。私ども方向としてはもちろん望ましいと思うのでありまするが、しかし御案内のように、今一番大きな目標はやはり所得であるとか、法人事業所得、そういう関係のものが一番税源として大きいのでありまするから、一がいに国税と全然別個の税源で体系を立てるということは、これはなかなか困難ではないかと思うのであります。ことに徴税技術の問題もあろうと思います。それから納税者立場もあろうと思いまするから、そういう面から総合的に考えていかなければならぬと思いまするが、方向としては望ましいことと思います。それから欠陥のある地方税、これもたくさんあると思います。こういうものについて、また何らかの機会に、自治庁当局考えておりますようなことを申し上げていいと思うのでありますが、御指摘のように、欠陥のある地方税は、これはもちろん直していかねばならないと思います。  それから最後に言われました、私が一昨日か、ここで満度にきておると言いましたのは、今言われた意味交付税の率の問題じゃないのでありまして、つまり傾斜配分貧弱団体に回す、それが大体満度にきておるのではないか。これは地方税の一人当たり都道府県の様子をとってみますと、たとえば大阪などは五、六千円になるのです。ところが福井であるとか、小さいところは二千円前後です。しかし交付税譲与税、それらを一切くるめて一人当たり出してみますと、逆に小さい府県の方が一人当たりにしてみると多くなっておるようなところがたくさんあるのでありますから、そういう意味で、傾斜配分の方式としてはもう限度に近いものになっているのではないかということを申し上げたのでありまして、二八・五%とか、三〇%とか、それは多々ますます弁ずるわけでありまして、その点は、もし誤解があれば誤解を解いておいていただきたいと思います。
  17. 加藤精三

    加藤(精)委員 時間の関係で非常に簡単にやれということですから、簡単にやります。それに関連して、財政局長は一体どう思っておられるのか。今の地方交付税交付率が大体満度に達しておるとお思いなさるか。それとも最近のように、国民年金とか、河川改修などの公共事業とか、何もかもどんどん地方負担にしておる。私長年、大体三〇%より上になるのはおかしいというような話を聞いていたのですけれども、交付税率について考えてみますと、どうもおかしい。しかも地方交付税というのは、私たちの理解するところでは、自主財源と同じように、自主性をそこなわない程度に何に使ってもいい。その地方交付税交付率の引き上げの限度は、大体ないといっていいくらいに思っているのですが、それが一つ。  それから国税地方税との関係の断ち切りについて、もしそれがうまくいかなかったら、国税税率が下がれば機械的に交付率を上げるということを、法律に規定できないものかどうかということなんです。それができれば、自民党も社会党もだれも反対しないにきまっていますから、地方財政の安定ということから、そういうように修正したらどうかと思っておりますが、大臣が今おっしゃったように、お前らそういう理想を掲げたってなかなかできるものじゃないということですが、できるものならば、安定性を与えるために、そういうふうな自動的な仕組みを作る方がいいのではないか、こう思うのです。  それから第三番目には、よくこのごろ府県知事会とかあっちこっちで、たばこ消費税とか酒の消費税のような間接税地方財源にして、主体的な税金である所得税系統国税にした方がいいというような議論が相当あるのです。しかしながら、長年来私などが考えて、どうも間接税というのは、どんなに金持ちでも酒を一斗も二斗も飲めないし、たばこも十箱も一日に飲めない。そういうことからいうと、結局エンゲル係数なんかから考えて、間接税は非常に反社会的な税のように思うのです。そういう当面の便宜のために地方税間接税という考え方は、非常に安易についたヒューマニズムをわきまえない考え方のように感ずるが、その点についての考え方はどうか。
  18. 奧野誠亮

    奧野政府委員 簡単にお答えいたします。第一点は、地方交付税率の問題でございます。率直に申し上げまして、経済発展地域的にきわめて不均衡になって参っております。またこれは簡単にすぐ均衡化できるものでもなかろうかと思います。そういう際でありますので、地方財源としては独立税収入のふえることは望ましいわけでありますけれども、こういう現実から見ますと、地方交付税の分量が多くなることに、私はあまりこだわる必要はないじゃないか、こういう考え方を持っております。ただ、それでは地方交付税税率が幾ら高くなってきても差しつかえないかといいますと、やはり私は国庫財政運営が非常に窮屈になってしまうじゃないか、国家財政運営弾力性を阻害する、そこを考えなければいけないじゃないだろうか、こういう気持を持っております。  第二点の、国税を減税したときに、地方交付税率を自動的にはね返すというような法律立法化すべきじゃないかという御意見であります。これにつきましては、現在の地方交付税法の中に、引き続いて財源が余ったり、あるいは足りなくなったりする場合に、税率を増減したり、あるいは制度そのものを改正するようなことをしなければならない、こう書いてあります。この考え方を、国庫財政当局者も、地方財政当局者も、もっとすなおに考えて、合理的な財源分配を工夫すればよろしいじゃないか、こう思うわけであります。機械的にどうこうするということじゃなしに、もっと両財政を一体的に考えて、合理的な調整を行なうならば、あえて機械的な規定を必要としないじゃないか。ただ、現在そういうような配慮が欠けておるものですから、何かそういう片寄った考え方を是正する意味において、機械的に交付税率をはね返す立法化をすべきじゃないか、こういう意見が出てくるのじゃないか、かように考えております。  第三の消費税の問題でございますが、現在はたしか地方税収入の中でも、消費税収入が二〇%前後を占めておると思います。地方自治立場からいいますと、できれば直接税を主体にして運営していくべきであるという考え方は、従来とられてきた考え方でありますし、将来とも基本的な態度としてはそうあるべきだと思っております。ただ一つ税金に、あちらからもこちらからもというような税制はなるべく避けた方がいいので、国が酒税をとっておるなら、地方財源としては二八・五%がくるのだから、それでよろしいのじゃないだろうか、こういうように思っております。ただ地方財源として考えた場合には、むしろ事業税のようなものは、所得課税でなしに、売り上げ税的なものとして流通税を増していくべきじゃないか、それによって年度間の調整の問題とか、あるいは国と地方との財源の分離の問題とかいうようなことの解決ができればしあわせじゃなかろうか、こういうような考え方を持っております。
  19. 加藤精三

    加藤(精)委員 私の質問に答えていない。というのは、ある税金税率が下がったときに、それによって生ずる減収を補うために、機械的に交付税率を変える。それは私たちも地方財政法の規定だって知っておりますよ。だけれども、そんなことは自然増収や何かの関係からみなごまかされてしまう。われわれは自治庁がやりよいようにと思って言っているのだから、もう少し親切に答えてもらいたい。そのものずばりで、ある税率を下げるときには、交付税率を上げるようにしてもらいたい。植木さんが主計局長のときには、さすがにああいう優秀な局長は、地方税の減収があったときに、その都度具体的に税率を動かしたという話を聞いておりますが、いつもそういう優秀な主計局長や理財局長がいるわけじゃないのですから、そういうふうにそのものずばりで動かすということです。財政状況の上に急激な変動があったような場合にはということは、地方財政法にありますけれども、私の言うのは、一つの税と交付税率関連を、自動的に、機械的につけた方がいいじゃないかということです。だから、予算を編成する地方団体の首長の立場も、自治庁はもう少し知っておっていただきたい。予算編成のとき、いつでも財源がふえるか減るかでびくびくしているでしょう。そういうようなことの安心がいくようにすることは、市町村長なり予算編成者にも親切じゃないか、そういう考え方なんですよ。  それからもう一つぜひ聞きたいことがあるのです。地方税を物税主義で構成するというのなら、大体住民税を一種の所得税付加税的な考え方で今援用しているのは理論的に間違いじゃないか、その点を一つ……。
  20. 奧野誠亮

    奧野政府委員 お答えしたつもりだったのでありますが、少し婉曲に申し上げたからかえって誤解を招いておるかと思います。私は、もっぱら国の財政の都合だけで所得税法人税について増減税を行ないました場合には、機械的に交付税率をはね返すべきだと思います。しかしその減税の場合に、地方にも減税の片棒をかついでもらうのだ、あるいは地方にも増収財源を与えるのだという意味で増減税が行なわれまする場合には、ただそれだけで機械的にあらゆる場合に税率をはね返さなければならない、こういう考え方は言えないのじゃないか、こういうふうに思っているわけでございます。だからこそ、また地方財政法のような現状の規定があるのだと思うのであります。国税三税についての増減税を行ないませんでも、地方交付税率を引き上げるという問題も起こってくるわけでありますが、ただ地方財政の現状は減税できる余裕はない。だから現状を基礎にして考えるならば当然にはね返すべきだ、これは私はそうだと思います。  それから第二番目の住民税の問題につきましては、私は個人的な意見としては、地方所得税的なものに完全に切りかえた方がよろしいという考え方を持っておるわけであります。
  21. 安井吉典

    安井委員 関連の方が多くなりまして、私一時間くらいでやめようと思いましたけれども、二時間くらいやるかもしれません。  質問もまだ序の口で、石原国務大臣地方税制度改革の基本的な考え方についてお尋ねをいたしましたことに対してのお答えがございましたけれども、まだいささか心細いような気がするわけであります。そこできょうは大蔵省からも主計官がお見えでございますので、同じこの質問に対しましてどういうふうにお答えをいただけるか一つ……。
  22. 大村筆雄

    ○大村説明員 同じ質問とおっしゃいますと、先ほどの御質問の続きでございますから、地方税につきまして、現在国税地方税を通じまして税制調査会で基本的な問題につきまして検討をお願いいたしておるわけでございますが、その際に、一体政府としては地方税のあり方というものをどう考えるかという御質問であったかと存じますが、この点につきましては、ただいま自治庁長官から御答弁ございましたように、地方税としての適格性という点から種々検討を願わなければいかぬかと思いますけれども、おのずからその場合に税収額というものが片一方に問題にならなければいけません。ですから地方税のことばかりは言い切れない。御承知のようにやはりある程度国税との関係ということも考えてやらざるを得ないという点もあろうかと存じます。
  23. 安井吉典

    安井委員 今、自治庁側と大蔵省側との御答弁があったわけでありますが、広く税制というものを考えますと、これは二面性があると思うわけです。つまり第一は国民の負担という立場から問題を考えることと、それからもう一つ財政上の必要ということと、この二面からの見方があると思います。国民の負担という考え方は、これはもう負担はできるだけ少なければよろしいし、と同時に大事なことは納税者間における均衡の問題だと思います。そういうことから、いわゆる非課税でありますとか、課税の各種の特例措置というようなものが問題になってくるのではないかと思います。それからもう一つ財政の必要ということからいいますと、これは今の御答弁の中にもありましたように、国の財政地方財政と、その間の財源配分というような問題もこの中に加わってくるのではないかと思います。従いまして、これらの要請が今度の税制調査会の中に生かされてこなければいけないというふうに考えるわけです。  初めの部分の国民負担の問題の中で一番問題になりますのは、いわゆる非課税あるいは各種の特例という問題でありますけれども、これは税目に入ります際にその場で申し上げることにいたしまして、ここで取り上げはいたさないことにいたしますが、第二番目の税源配分といったようなことになりますと、これは非常に問題が大きいのではないかと思います。つまりこれは行政事務の再配分というところまで問題を持っていかなければ、根本的な解決はできないのではないかということが言えるわけであります。この税制調査会においては、そこまで問題を突き詰めていくためのシステムになっているかどうか、これはわかりませんけれども、この税制調査会の結論の出方によって地方財政の将来というものが、ひいて地方自治の将来というものまでが決せられる重大な問題だと思うわけでありますが、自治庁長官はそこまで突き詰めた考え方をお持ちになっておられるかどうか、この点一つ伺います。
  24. 石原幹市郎

    石原国務大臣 御指摘のように税財源配分というものが、突き詰めていけば国と地方行政事務の再検討ということをやらねばならぬことは、これは当然であろうと思います。そこで今の税制調査会においてもそれらの問題にやはり当然触れて検討はするようでありますが、それを答申の主体にすることにはいかない。そこで私は申し上げておきまするが、御承知のように地方制度調査会、これはやはり随時会合を開きまして検討をずっとやっておるわけでございまするが、この地方制度調査会あたりでは、主として国と地方行政事務の分配とか、あるいは府県の区域の問題とか、いろいろやっておるわけであります。そこで地方制度調査会の意見なり、あるいはこの税制調査会の答申と相待って、今後の税財源の再配分ということを考えていかねばならぬ、かように私は考えております。
  25. 安井吉典

    安井委員 私はその場合に一番大事なことは、この問題に対する自治庁態度だと思うのですよ。自治庁側地方自治なり地方財政なりをあくまで確立しなければいけないという、意欲的な態度を終始お持ちをいただかなければいけないと思うわけです。ですからこの調査会の中に積極的に資料をお持ち込みになる、基本的には行政事務の再配分までいかなければいけない。そのためにはこうなければいけないというふうな迫力のある資料を準備されて、その中に地方財政立場というものを強くはめ込んでいくということ、これが一番大切なことではないかと思います。今まで税の問題の質問のときには、必ず、いや、ちょっと待ってくれ、これは税制調査会に諮っているのだから、これが終わってからというような逃げ方をされますし、一方大蔵大臣も、税金といいますと、もうすぐ税制調査会でということで、これはもうただ一つ政府の逃げ込み場所に今なっているわけです。こういうことからいいますと、まるでこの税制調査会というものの結論は、第三次シャウプ勧告でも行なわれるような、そういう画期的なものではないかというふうなことも、われわれは期待したいし、国民もそう思うのじゃないかと思うのです。そういうふうな際におきまして、自治庁長官は、一つがっちりした態度で結論をお出しになるという方向にお進めをいただかなければならぬと思うわけでありますが、一つ御決意を伺いたい。
  26. 石原幹市郎

    石原国務大臣 財政、税務両当局もそういうつもりでやっておるようでありますし、私もなお今後一そうそういう面を督励いたしまして、御期待に沿いたいと思います。
  27. 安井吉典

    安井委員 次に市町村民税の問題につきまして若干お尋ねいたしたいと思います。今回の税法の改正点の主要なものは、所得税の減税に伴う住民税対策とでもいうべきものでありまして、第一課税方式の場合におきましては問題がないといたしましても、第二、第三課税方式の場合におきましては、各市町村の課税方式がまちまちであるわけで、一応準拠税率というものがあるから、これだけを法律の改正の中で直しておこう、こういったようなことだと思うわけでありますが、一番問題になりますのは、第二、あるいは第三課税方式の場合における現実市町村の課税方法がどうなるかというところに、問題の最後のところはしぼられてくるのではないかと思うわけであります。そこでまずこの準拠税率が現在どれくらい採用されているか。どうもあまり芳しくないようでありますけれども、一体自治庁側は今日までどういうふうな御指導をされてきたか、その点から一つ伺いたいと思います。
  28. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 御承知の通りに、この準拠税率は、昭和三十二年に、従来あまりにも課税方式が違っていることによって負担の不均衡を来たしておるという意味合いから、この準拠税率制度が設けられたのでありますが、その後の採用状況を見ますと、準拠税率をそのまま採用している市町村が二七%、それからこの準拠税率設定後に、住民税の軽減の措置をこの準拠税率に従って——そのままではございませんけれども、実施いたした市町村が四五%、従いまして全体の七二%は準拠税率設定の線に沿ってこれに対応する措置をとっております。
  29. 加藤精三

    加藤(精)委員 それは三十二年度ですね。
  30. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 現在です。三十四年度です。
  31. 安井吉典

    安井委員 大体におきまして、一口に言ってしまえば超過課税が行なわれている。超過課税という言葉は、準拠税率ですから当たらないかもしれませんが、準拠税率をオーバーした課税がきわめて多いというわけで、準拠税率というものができたことによって、幾らかは改善された、そういうようなことに結論的に今のお答えがなるのではないかと思いますが、それでは現実に今度の場合に、各市町村所得税の減税に伴ってこれだけ税金を下げるのだというふうに、各市町村の条例を改正をしなければいけないわけでありますが、それをどういうふうにして実現されるおつもりをお持ちなのか、それを一つ伺います。
  32. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 今回のこの地方税法改正法案が成立をいたしますれば、私どもといたしましては、従来準拠税率をそのまま採用いたしております市町村については、新しい準拠税率をそのまま採用していただく。それから準拠税率をこえて課税をいたしておる市町村につきましては、まず準拠税率に置き直して、それで所得割額を新旧の準拠税率ではじき直しまして、その差額分だけを新しい改正法に応じて減税をしていただく。そういう指導をいたしたい。なお第二課税方式、第三課税方式のただし書きの場合には、いわゆる扶養親族の数に応ずる税額控除分が条例できめられることになっておりまするので、その税額控除の額の引き上げにつきましては、所得税の減税、いわゆる扶養控除額の引き上げ分が相当ございますが、この引き上げの割合に応じて税額控除の割合を引き上げることによって減税をしていただく、かような指導をするつもりでおります。
  33. 安井吉典

    安井委員 今扶養控除の問題についてもお話が出たわけでありますが、オプション・スリーのただし書きの場合は、むしろこれは黙っておくと税金が上がるのです。つまり課税総所得金額から所得税額を引くのですから、所得税が当然引き下げになっているとすれば、市町村民税の方はむしろ引き上げになるというふうな状態に陥るわけであります。従いましてこの税額からの扶養控除の問題というものは非常に重要だと思います。ことに所得税の減収の方向は、扶養親族の引き上げによる減収の方がたしか大きかったはずです。ですから扶養親族の税控除というものはオプション二、三のただし書きに際しては、ぜひともこれは各市町村が実施してもらわなければならないと思いますが、現在は扶養控除は一体どういうふうな状態で実施されておりますか、その状況をお知らせいただきたいと思います。
  34. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 現在の扶養の税額控除は、標準団体で三百円見当になっております。
  35. 安井吉典

    安井委員 そこで今度の所得税の扶養控除引き上げが住民税にどういうふうな姿で現われるかということを具体的に金額で、これを一つひな形としてお示しになる必要があるのではないか、そういうふうな中から市町村が完全に実施できる態勢というものが整ってくるのではないかと思いますが、それについての御配慮はどうでしょうか。
  36. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 私どもといたしましては、この第三課税方式はもとよりでございますが、市町村での今度の減税措置に伴う細部の計算方式まで示した通達を出すつもりでおります。御質問の点は、要するに第三課税方式の場合には、いわゆる可処分所得を課税標準にしておりますから、所得税が減税になったので課税標準が高くなる。従って税金がかえって重くなりはせぬかというところから出しておるようでございますが、理論的には確かにおっしゃる通りでございます。しかし、そこでまず第三課税方式の場合にも、本文とただし書きは区別して考えなければなるまいと思います。本文の場合には、税率そのものでそれらを含めて調整考えておりますし、また同時に、根っこで大きく扶養控除額が引き上げられておりますので、課税標準額そのものも大きく減っておりますので、御心配のような点は本文に関する限りは全然ございません。問題はただし書きの場合でございます。ただし書きの場合は、総所得金額から基礎控除を引き、それから所得税額を引いた額を課税標準額にしておりますので、所得税減税の際の扶養控除額が課税標準額に影響をいたしてこない。そこで税金額が高くなりはせぬか、こういうことになろうかと思いますが、この場合にも、まず私どもとしては準拠税率を引き下げておるということ、さらにもう一つは、ただし書き採用市町村は、第二にしろ第三にしろ、いずれも扶養親族の数に応ずる税額控除によって調整をとっておるわけでございますので、その税額控除分について、先ほど申しましたように所得税における扶養控除の引き上げの率に応じた税額の引き上げを指導することにいたしておりますので、減税額は確かに高額所得者になればなるほど減じてくることは事実でございますけれども、御心配になるようなことは私どもとしてはないというように考えております。
  37. 安井吉典

    安井委員 標準団体の場合の扶養控除額三百円とさっきおっしゃったのですが、それは今度の場合は幾らにふえたらよろしいのでしょう。計算はできておりましょうか。
  38. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 先ほど私三百円と申しましたが誤りのようでございます。三百五十円でございます。従って減税後は私どもとしては五百円の計算にいたしております。
  39. 安井吉典

    安井委員 いずれにいたしましても、今回はこの法律の改正だけでは、各市町村税金が下がるという保証は何らないわけですね、つまり準拠率なるものの強制力は全然ないのですから。また第一課税方式の場合は法律の改正も何もなくて当然下がるのですから。従って、この法律の改正というものは、住民税の減税には全く、極端なことを言えば無関係だとさえ極言してもいいわけです。従って一番大事なのは、これを一つのてことして自治庁が十分の御指導をされるということに詰まるわけです。だから今回の場合には、政府の方針として、所得税の減税が必ず住民税にそのまま現われるような措置を積極的に講ずることを期待するということを強く御指導いただかなければならないと思います。そこでそれの補てんという形で交付税で若干穴埋めになったり、あるいはまた例の三十億円があるわけでありますが、これに対応措置を講じなかった市町村に対して、何か特別な配慮をされるとかいうふうなお考えはありませんか。
  40. 石原幹市郎

    石原国務大臣 今いろいろ考えておるのでありますが、一応考えられる措置としては、特別交付税配分の際とか、あるいは今度の臨時地方特別交付金等は、減税しない団体がかりにあるとすれば、そういうところに配分する必要はないと思います。極力勧奨をいたしますとともに、今のような方法でまた物質的にも調整をはかっていきたい、かように考えます。
  41. 安井吉典

    安井委員 その点十分御配慮を願いたいと思います。  次に、今回の減税は、この前の委員会のときにも私申し上げたのですが、昭和三十四年度の所得税の減税の姿において百二十二億という金額も出たし、今回の法改正の基礎も現われてきたのだと思うわけでありますが、昭和三十五年度におきましては、所得税は十二カ月分の徴収で十二カ月分の減税の姿が現われるわけであります。そういうことになりますと、来年度もまた少し法律をいじくらなければならないというようなことにもなるわけでありますが、その点どういうふうにお考えがいっておるでしょう。
  42. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 私どもの今回の減税の税率のきめ方その他は平年度の率のきめ方をいたしております。従って来年度また改正をしなければならぬということはないのでございます。
  43. 安井吉典

    安井委員 額も少ないですからそういう問題はないにいたしましても、話はこまかくなりますけれども、オプション一の場合は当然現われてくるわけですね。ですからオプシヨン二、三の場合とはバランスが幾らかくずれてくると思いますので、その点も御検討願いたいと思うわけであります。  そこで市町村民税についての、今の政府案では全然触れておらないところの残された大きな問題は、所得割における課税方式の統一の問題だと思います。第一課税方式でやる場合と第二課税方式のただし書きの場合でやります場合とでは、住民負担に非常に大きな差が出てくるわけです。たとえば全国の農家、平均六人家族で生計費が三十二万円くらいだというふうに統計が示しておりますけれども、課税最低限度は九万円くらいまでに下がっている実情のようであります。そういうふうに下層の人に相当過酷に税がいくという現実の姿もありますとともに、各市町村間における住民税がきわめて大きく差ができているわけであります。第二課税方式、第三課税方式の場合には、極端なことをいえば、幾ら課税してもかまわない、どういう方法で課税してもかまわないというようなことにすら法の上からは見取れるわけであります。この問題につきまして、税制調査会の方でも、自治庁はお出しになっていろいろ御検討されているそうでありますが、それらの考え方は、第一課税方式の方向に行くという見方が強いのか、一番税金がたくさん出るところの第二課税方式ただし書きの方向に行くというのか、それらの大まかな考え方あるいは傾向といいますか、そういうことについてお伺いしたいと思います。
  44. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 御指摘の通りに、住民税の課税方式の差によって住民負担が非常に不均衡になっております。これは極端な例をいえば無限大——と申しますのは、第一課税方式であれば所得税額が課税標準ですから、所得税の欠格者は住民税を納めなくていい。ところが第二課税のただし書きなり第三課税のただし書きになれば、現在第二課税の場合のただし書きでいいますと五二・二%、第三課税ただし書きの場合であれば五六・八%というものは所得税の控除欠格者が住民税を納めておるというような実情でございます。また所得税を納めておる者についても負担の不均衡が相当ある。従いまして、負担の均衡という面から、課税方式を統一したらどうだという議論が当然あるわけでございます。またもう一つは、この課税方式の統一の問題については、国税の影響を直接受けるという現在の住民税の課税方式について何らかの考え方はないのかという、この二つの面から住民税の課税方式の統一問題が論議せられております。  そこで、しからばどういう方向でこれを合理化するかという問題でございますが、御承知の通りに、昨年でしたかの地方制度調査会の結論は、第二課税方式ただし書きの方向で検討したらどうだ、こういう御意見、臨時税制懇談会は合理化をしたらどうだということで、どちらも、どういうやり方でやれということはたしか書いてないように思います。現在の総理府に置かれております税制調査会の御意見はまだそこまで至っておりません。私どもとしては、第一課税方式にするのがいいか、第二課税ただし書きにするのがいいのか、それとも別個の観点から課税標準を作っていくというのがいいのか、まだ結論を実は出しておりません。ただこの問題は、要するに先回の当委員会でも私がお答えいたしましたように、要は貧弱団体に対する財源をどうして埋めてやるかというこの問題を解決せぬ限りは、単に形式的に統一いたしましても、住民負担の不均衡というものは依然として残る。従って私どもとしては、国と地方税源配分の過程の中においてこの問題をぜひ解決していきたい、かように考えておるのでございます。
  45. 安井吉典

    安井委員 今の御意見の中で、きわめて慎重にこの問題に取り組もうとしておりますその御意図はよくわかるわけでありまして、第一課税方式に統一してしまえば、それこそ貧弱な市町村は全然税金がなくなってしまうし、第二課税ただし書きの方へいってしまえば、採用市町村の数こそ少ないが、非常に多くの人たちの市町村民税がぐんと上がってしまう。そういうふうな結果になるわけでありましょうし、一つこの点十分に御検討を今後とも願いたいと思うわけであります。  そこで今のお話の中にも前年度の所得税との関連についてちょっとお触れになっておりますが、所得税法の適用の中におきまして、いろいろ小さな矛盾が出て参りましても、これが住民税の段階にきますと、非常に拡大されて現われてくるわけです。その矛盾の拡大という問題がずいぶんたくさんあるわけで、たとえば青色申告と白色申告とが所得税の中での異なった取り扱いをする。特に専従者控除といったような問題が住民税の中に非常に大きく矛盾の姿になって現われてくるわけでありますが、何かこれも住民税という立場から簡単に訂正ができるとか、その他便宜的な方法というものを御検討になったことがないかどうか、これはどうでしょう。
  46. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 御承知の通りに、現在の住民税が所得税に乗っかっております関係上、御質問の青色申告の問題であるとかあるいは専従者控除の問題であるとかいったような制度所得税法上とられますと、直ちにそれが住民税にはね返ってくるというような問題は、私どもとしては十分検討しております。ただそれでは全然影響のないように直ちにこれをやるかという問題になりますと、ただいま申しました住民税の課税方式そのものをどうするかという問題になるわけでございますので、住民税課税方式の合理化あるいは統一という問題は、やはり御指摘のような点をも含めて私どもとしては検討をして参りたい、また現に検討はいたしておるわけでございます。
  47. 安井吉典

    安井委員 地方税法の規定の中に、たしかそういったようないろいろな——これは今法律による矛盾ですけれども、しかしこれ以外にも、税務署側においての査定の見違いというようなことも当然あり得るわけです。そういうものの訂正を市町村民税を賦課する場合に市町村長がいたそうといたしましても、その場合においては、たしか法律はその結果を税務署長に報告をするとか了解を求めるとかなんとかいう規定があったと思うのです。これは調べればわかりますけれども、その規定だけでも除けば、割合気楽にその矛盾の補正——今の青申と白申との関係の問題になると問題は別かもしれませんが、税務署における若干の誤差を直すというくらい簡単にやれるような方向が出てきてもいいと思うのですが、その点いかがでしょう。
  48. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 現在税法の三百十五条で、そういう関係の規定がございます。ただ御指摘のような場合に、現在の住民税が所得税に乗っかっておりますので、税務署の方の計算が間違っておれば、これは当然直してもらわなければなりませんけれども、納税者立場に立てば、同じ所得の計算なんかについて、国と地方で違うというようなことではこれまた納税者立場では納得できないというようなこともあろうかと思いますので、そういう点については国税当局と市町村との間の連絡によって、納税者の納得のいくやり方でやる必要があろう、かように考えております。
  49. 安井吉典

    安井委員 税務署よりも市町村役場の人が実は市町村住民のふところ工合はよくわかるわけです。ですから税務署の方の見違いということはわかるわけです。ところが、それが見違いだということがわかりましても、それを住民税の場合に訂正するとすれば、これまた税務署に話を持っていって大へんな手続になる。そういうことになると、所得税までが毎年のやつが間違ったというので追加がくる。そういうことになりますと、やはり市町村長の立場とすれば、なかなか手がかけにくいというふうなことではないかと思います。その点これは税務署と変わっていかなるでたらめをやってもかまわないということでは決してないわけでありますけれども、何かそういったところに便宜的な措置ができないものかということを考えるわけでありますけれども、市町村民税ばかりやっておりますと時間がかかりますので、これは一つ十分御検討願っておきたいと思います。  そこでもう一つ問題になりますのは、この住民税の所得割りは、前年度の所得が基準になって課税をされるわけでありますけれども、たしかシャウプの第二次勧告の中にも、当年度所得でやってはどうかというような言い方があったようにも記憶いたしておりますが、技術的な問題点はあるかと思いますが、当年度所得を課税標準として賦課するという方向が合理的でないかと私は思うわけです。たとえば農業の場合でも、豊凶の差がきわめて明らかに現われております。あるいはまた今度は貿易自由化の問題も出て参りますけれども、中小企業も大へん苦しい立場に追い込まれるということで、所得の変動が大きく現われるということも考えられると思います。国会議員でも、落選した前年度の所得が中心になってごっそり住民税がきて手をあげたという話も聞くわけでありますが、当年度の所得を中心としての課税方式というものをお考えになったことはないでしょうか、その点について一つ伺います。
  50. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 確かに理論的には、現在所得税がとっておりますような予算課税方式といいますか、当年課税の方式が考えられます。ただ私どもとして、一体なぜ住民税について確定課税の方式をとっておるかと申しますと、まず当年課税の方式にしますと、いわゆる予定申告納税制度の採用が必要になってくるわけですが、これが徴税事務の上で非常に複雑になりはしないかという、徴税技術上の問題が一つであります。もう一つは、所得税と同様の所得を課税の基礎としておりますので、所得税の計算による所得と同一でなければならない。そうなりますと、所得税の計算における所得の確定が、御承知の通りたしか三月十五日です。そうしますと、それを基礎にして住民税の方も確定していくということになると、これまた徴税事務上非常に支障を来たすのではなかろうかということ、さらにまた、それじゃ所得市町村当局で国税当局と別にはじくということになると、それも一つの方法ではございますが、その場合に、今度は納税者立場に立てば、課税権者が違うことによって同一所得についての金額が違うということでは、これまた納税者の理解と納得を得がたい、こういう面があるわけでございます。さらにもう一つは、地方税の場合は国税と違いまして、しばしば移動した場合に、課税権の帰属の問題をめぐって徴税上非常に複雑な問題が出てくる。こういうようないろいろな面を考えて、現在は確定課税の方式をとっておるのでございます。ただ御指摘のように、私はやはり理論的には当年課税の方式が当然考えられるという点も、気持の上では持っておりますので、これらの点についても、私は、住民税の課税の方式を考える場合にあわせて検討を加えていきたい、かように考えております。
  51. 安井吉典

    安井委員 いろいろ問題はあると思います。ことにこの場合、私は徴税技術の面における問題点が一番大きいのではないかと思います。しかしながら、税金を払う金は、ことしもうけた金で払うのですから、去年の所得をことしもうけた金で払うということ自体、どう考えましても筋が通らないわけです。去年はりっぱにやっていたのだけれども、急に火事にあってみんな焼けちゃったとか、そういう場合は、特例はあるにいたしましても、所得の変動というものは、高度に進んだ資本主義社会の中においては予想されることであります。だから、若干の徴税技術の問題はあっても、それによって得られる実益というものが大きければ、これはやはり踏み切らざるを得ないのではないか。所得税においても、年末調整というような方法があるわけであります。一応前年度の所得を中心にして、擬制的な課税総所得金額をきめて、それでの賦課徴収が行なわれて、年度の末に調整をする。そういうようなことも、手間はかかるかもしれませんけれども、それによっての実益というものをお考えになれば、これは踏み切ってもいいことではないかと思うわけであります。その点一そう御検討を願っておきたいと思います。  次に事業税についてお尋ねしたいと思いますけれども、今度の改正法案では、被災たなおろし資産の損失の問題だけお触れになっておりまして、根本的な問題はそのままになっておるのであります。今日の段階におきましても、零細業者から、個人事業税をやめてもらいたいといったような、そういう期待がきわめて強いのは御承知の通りだと思います。何といいましても、所得税が基礎になって、住民税個人割りなりもしくは個人事業税になってくるというふうな、二重の課税になるという点において疑問が感ぜられるのだと思うのでありますが、今日までこれの基礎控除が年々引き上げられまして、現在二十万円くらいまできておるわけでありますが、私どもとしましては、これをさらに三十万円くらいまで引き上げるべきではないか。またこれとの関連において、法人事業税についても、最低税率の引き下げといったような方向をとるべきではないか、このように考えておるわけでございますが、政府のお考えを伺いたいと思います。
  52. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 事業税につきましては、御承知の通り三十四年度に、個人事業税は基礎控除を十二万円から二十万円に引き上げて、これによる平年度の減税額は七十億であります。また法人事業税については、従来三段階の区分であったのを四段階にする、そして最低税率の適用区分を引き上げることによって減税をする、税率も引き下げたということで、たしかこれの減税額が三十億であったと思います。  そこで、これ以上個人事業税なり法人事業税を軽減したらどうか、こういう御意見でございますが、私どもとしては、検討することは十分検討しなければならぬと思っておりますけれども、御指摘の個人事業税について、三十万円に基礎控除を引き上げた場合の減収額は五十数億円になります。そういたしますと、現在の個人事業税収入の過半はなくなってしまうという問題が出てくるわけでございます。またこの個人事業税国税における所得税等との戦前、戦後の比較を見ましても、個人事業税は、平均所得者について見ますれば、大体戦前の三分の一程度に軽減になっておるわけでございます。そういうようなことを考え、またこの事業税というものが、さなきだに非常に税源の乏しい府県の税収入の実は五〇%近くをこの税で占めておるわけでございます。そういうような意味合いから、この個人事業税なり法人事業税の減税については、中小の企業者、事業者等の税負担を軽減するという趣旨で、十分検討しなければならぬと思いますけれども、一方府県の現在の財源の状況から見て、私どもとしては慎重な態度で臨まなければならぬと思います。従いまして、十分御意見の御趣旨考えて検討はいたしますけれども、今直ちにこれを減税するということに、私どもとしては踏み切るだけの覚悟がないのでございます。その点ぜひ御了承を願いたいと思います。
  53. 安井吉典

    安井委員 基礎控除は、個人事業税の場合に三十万円まで引き上げようということは、将来個人事業税はやめるんだといったくらいの前提に立っての言い方でありますけれども、現在企業課税という問題についての検討が、政府部内でも進んでいるそうでありますけれども、今後に残されたきわめて重大な問題だと思います。都道府県の収入財源を確保するということと、特に零細な業者の利益をはかるということは、これは非常に大事なことだと思います。ことに貿易自由化がどんな形で現われてくるかわかりませんけれども、おそらく零細な業者は置き去りになるというような姿で、非常に困難な状態に追い込まれるのではないかということが予想される際でありますので、特にこの点の御検討を願っておきたいと思います。  次に遊興飲食税についてでありますが、この遊興飲食税を、ことに普通飲食の場合免税点の三百円を五百円に引き上げる、宿泊料について八百円を千円以下に引き上げる。この問題は、この委員会に提起されましてもう実に久しいわけであります。参議院の地方行政委員会もそうでありますし、歩調をそろえて附帯決議をつけられましたり、ことに参議院におきましては、青木前国務大臣が、来年度はやるというふうにはっきり言明もされておるわけです。これは、自治庁長官はおわかりになっても、おれは知らぬということにはならぬのではないかと思います。ところが、今度の税法の改正案の中には、一言もこの問題についてお触れになっていないわけであります。この金額がどうのこうのという問題もありますけれども、やはり一たんお約束になったことは確実におやりになるように、政府側のこれについてのはっきりした態度をお伺いいたしたいと思うわけです。
  54. 石原幹市郎

    石原国務大臣 遊興飲食税の問題について御質疑があったのでありまするが、これは今お話しになりましたように、当委員会においても、あるいは参議院の委員会においても、だいぶ長く論議されてきている問題でありまして、普通の状態でありましたならば、三十五年度においてある程度考えねばならない問題であったかと思うのでありますが、御承知のように昨年突如として伊勢湾台風が起こりまして、結果は考えておりました以上に非常な被害甚大なものであったわけです。この対策——国土保全対策あるいは災害対策のために、三十五年度予算は、国税におきましても一切の減税を見送って、根本的な対策を立てるということに国の方針も決定し、さような方向で進んでおるのであります。そこで地方税の問題につきましても、地方負担というものは、これは相当莫大なものになるのであります。公約に基づく住民税の減税についても、あれだけの論議をし、約三十億の補てんをしてもらって、初めて住民税の問題も爼上に上せ得たという状態でございまするので、この問題はさらに各党の機関等においてもいろいろ検討しておるようでありますけれども、ただいまのところでは、地方税についても、公約に基づく住民税以外は一応見送らなければならないのではないか、そういう考え方で進んでおる次第であります。事情の変化ということで、前長官の意向を無視するというわけじゃございません。個人はかわっても長官というものは同じでありますが、どうか事情の変化ということで一応御了承を得たい、かように思います。
  55. 安井吉典

    安井委員 事情が激変したということ、伊勢湾台風ということが、税金の問題の一つの逃げ口上になっておるのは、私どもも耳にタコができるほど実は聞いているわけであります。しかし、今のお話の中でどうも私、ふに落ちないのは、公約に基づく住民税の減税はやったと言われる。しかしながら国務大臣である長官が、権威のある国会の委員会において来年やりますと言った、これは公約じゃないのですか。
  56. 石原幹市郎

    石原国務大臣 住民税の減税は所得税の減税に伴うものでありまして、所得税その他七百億減税というのは、政権を担当しておりました自由民主党が、党の最大公約の一つとしてやったものでありまして、すでに所得税の方は三十四年度でも減税しておるのであります。そういう関係で、その一環として当然やらなければならぬ問題と私ども考えておるのであります。その他のものにつきましては、今遊興飲食税を御指摘になりましたけれども、遊興飲食税一つじゃないのでありまして、電気ガス税であるとか、あるいは鉱産税であるとか、固定資産税であるとか、数個のものがあるのであります。これは当委員会あるいは参議院の委員会等でいろいろ検討されておる問題ではありますけれども、所得税住民税の七百億減税の問題とはこれはちょっと筋が違うのじゃないか、かように私は考えております。
  57. 加賀田進

    加賀田委員 関連して。今遊興飲食税の問題で、大臣は、伊勢湾台風等で必要財源がふえたので云々ということを言っておりましたが、実はこの遊興飲食税の問題は、昨年突如として起こった問題ではなくして、長年にわたってこの問題は論議されているわけであります。従って昨年なぜ減税をしなかったかといいますと、公給領収書の問題が付随的に出てくるので、自民党内では調整が困難だから一年待ってもらいたい、一年間でその問題については何とか党内の意見調整をはかって来年度はぜひやりたいということで、社会党も一年間しんぼうしようということできたわけであります。従ってその減税をしようとするときには、衆参の地方行政委員会においても附帯決議が出されて、満場一致でこれが決定されておるし、大臣もその趣旨によって来年度ぜひやる、こういうことだったので、ことしから行なうという意味ではなくて、昨年すでに行なおうという意思があったわけですが、昨年はそういう与党の党内事情ということが中心になってこれは見送られたわけです。従って、これは単なる財源が必要だからということだけではなくて、もっと他に根本的な理由があるのではないかと私は思うのです。従ってそういうことで、もっと明確に、この遊興飲食税を担当される方々の了解のいくような御答弁を願いたいと思うのです。もし今年度そういう災害でできなかったというなら、来年度やるとか、やはり納得のいく答弁をしていただかなければ、これを担当されている方々は実際は困ると思うのです。  それからもう一点、関連ですからついでに申し上げますが、実は府県税であります。二、三年来温泉地帯を中心として遊興飲食税の一部を市町税というか、財源の中に回してもらいたいという運動がなされております。たとえば熱海等におきましては、道路その他公衆衛生に対して市は相当財源出しておる。しかしその中で遊興飲食税というものは全部県に取られてしまっている。こういうことで遊興飲食税の一部で、市のいわゆる他から参りますお客さんへのサービス行政を強化するという意味においても、財源措置をしてもらいたいという要求があったわけです。この点に対して長官としてはどういう工合にお考えになるか、一つ御説明願いたいと思います。
  58. 石原幹市郎

    石原国務大臣 減税の問題でありまするが、先ほど、住民税は国で所得税の減税が行なわれたから当然のことであると申し上げたのでありますが、もう一点補足しますると、先ほど来御議論になりました課税方式が幾つもあるのでありまして、第一課税方式によりますると、これは当然減ってきておるのであります。そこで第二あるいは第三課税方式をとっておるものとの間では非常な開きができるので、そういう不均衡を直さなければならぬという意味でも、この住民税の減税の方はどうしても行なわなければならないと思います。  それから遊興飲食税その他の問題につきましては、ここまで申し上げるのはどうかと思うのでありまするけれども、御納得のいく意味において申し上げますが、委員会においていろいろ論議され、ことに参議院の委員会においては数回にわたって決議までされておりまするものが約五、六種目ある。これを全部行なうということになりましたならば六、七十億くらいになるのじゃないかと私は思うのであります。そこでこれは一連の決議の問題になっておりまして、これを一つ減税し、これは見送るとかいうようなことはなかなかむずかしいと思います。全体が納得いくことになりましたならばそういうことも行なわれると思いますけれども、取捨選択が非常にむずかしいということで、この際六、七十億の減税を行なうということは容易なことではない。地方財政の現状を十分御認識いただいておりまする皆様方にとってはまず御理解が願えると思いますが、そういう意味でわれわれも非常に心苦しいところはあるのでありまするけれども、逃げ言葉ではございませんが、伊勢湾台風その他によって国、地方をあげての集中的な予算が編成されておりまするので、一応がまんをしていただきたい、かように思う次第であります。
  59. 加賀田進

    加賀田委員 これは所得税の問題でなくて、遊興飲食税を、熱海市等温泉地帯において一部市税の方に財源として回してもらいたいという要求があるわけです。これを自治庁としてどうお考えになって、どう対処されるかということをお伺いしておるわけです。党としてはそういうことは明らかな意思表示をしていないわけですが、しかし年々そういう要求が増加しておるのは明らかでありますから、この際自治庁としてお考えを伺いたい。
  60. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 御質問のように、確かに観光都市等から、遊興飲食税を市町村税にもらいたいという御要望があることは承知をいたしておりますが、御承知の通りにそういった温泉地帯等には、市町村税としては例の入湯税を目的税として市町村に賦与しておるわけです。そういうようなことも考え、またこの問題は何分にも地方団体相互の問の税源配分の問題でございまするので、おしかりを受けるかもしれませんが税制調査会等の審議の状況ともにらみ合わせて十分検討はいたしたいと思いますが、何分にも府県市町村間の税源配分の場合には、現在府県は非常に独立税源が少ない。御承知の通り三〇%程度なんです。そういうような意味合いから、遊興飲食税を市町村にもらいたいという御意見に対しては、よく御趣旨はわかりますけれども、今直ちに賛成はいたしかねる、こういうのが私の考えでございます。
  61. 安井吉典

    安井委員 今の遊興飲食税の問題については、特に私どもは問題にしなければいけないのは、やはり公の場での御発言だということです。私記憶力が悪い方ですが、この間のILOの問題についての加賀田委員大臣とのやりとりも、今変にそれだけ覚えておるのですけれども、あのときは、新聞記者には言ったかもしれないけれども、この公の場所ではっきりしたことは申し上げかねますと、大臣はたしかそういう御答弁をされているはずです。やはり石原国務大臣もここを公の場所とお考えになっていると思うのですが、そういう場合においての御発言が、これは石原さんがそう申されたわけじゃないにいたしましても、そのまま無視されたというところに私は問題があると思う。ほかのいろんな附帯決議がたくさんついているのがあるかと思います。しかしながら、はっきり明言されたのはたしかこの税だというふうに私承っているわけでありますが、一体今後においてどうなんでしょうか。来年はやるとか、あるいはことしは何か都合がつけばやるとか、そういうようなお考え方はどうでしょう、一つ公言をして下さい。
  62. 石原幹市郎

    石原国務大臣 私は、遊興飲食税というものは、ここまで言うのもどうかと思いますけれども、名前も確かに悪いと思うのです。遊興というような字がついている。しかし実態を検討してみますと、必ずしも遊興税ではなしに、むしろ大衆の零細な飲食等にも課税されておるという実態に対する認識は私は十分持っておるつもりであります。でありますから、いわゆる飲食の免税点を三百円を四百円なり五百円なりに上げるということは悪い方向じゃない。しかし、世間に与える影響というものは必ずしもいい感じを与えていないというようなこともありまして、そこで国土保全、災害対策を中心としているようなこういう予算編成にあたって、またあれだけ地方財政の苦衷を訴えて、予算編成がおくれるまでの騒ぎをして三十五年度予算が編成されたあとにおきまして、六十億も七十億もの大きな穴があくことを平然として行なうということになれば、地方財政について今まで論議されておったことは一体何だということになるのじゃないか、そういう懸念を私は持っておるのであります。しかし本質においては、私はやはり大衆課税の軽減であるという実態の認識は十分持っておるつもりでありますから、また前長官の食い逃げ放言みたいになってはいかぬと思いますけれども、これはやはりでき得る限りそういう方向に努力をしていかなければならぬものであるということは私も思っております。
  63. 安井吉典

    安井委員 さらにこれは小委員会の場合でもいろいろお話が出ると思うわけでありますが、これは飲食税のほんとうの食い逃げであるわけで、そういう意味でこれは確かにだれも納得ができないと思います。ことに私、この遊興飲食税の徴収の問題においてもまだまだ方法があるのじゃないか。その徴収の問題がうまく解決できれば、遊興でないところの純粋に大衆的な飲食や宿泊の減税の財源くらいは浮いてくるのではないか、そういうことも思うわけであります。この問題ばかり長くなりますので、これでこの問題については打ち切りますけれども、一つその財源については徴税の問題も十分にお考えをいただきたい。そういうところから、長い間の宿題でございますので、何とかできればことしじゅうに解決できるような方向で御検討をお願いしたいと思うのであります。  次に娯楽施設利用税の問題でありますが、特に私どもゴルフ場の問題についてこれをもっと検討すべきではないかというふうに言っているわけであります。最近におきましてゴルフ場が増加をいたして参りましたし、利用人員がずいぶんふえてきているように思うわけでありますが、そういう実態自治庁でおつかみになっておられましょうか、その点一つ伺いたい。
  64. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 ゴルフ場の利用人員の調べでございますが、三十四年度が三百二十二万一千人、これに対しまして三十五年度の見込み人員が四百十八万七千人というように、相当な増加を私の方として見込んでおります。
  65. 安井吉典

    安井委員 施設はどうなっておりますか。
  66. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 後刻調べましてお答えいたしたいと思います。
  67. 安井吉典

    安井委員 雨後のタケノコのようにというと大げさでありますけれども、最近ぐんぐんふえてきているように私ども見るわけであります。ところで、これはその地域市町村なり県なりにおきましては、農地の壊廃がどんどん進むし、しかもそれほどまでに税収は上がってこない、こういうふうなことでいろいろ問題が出ているように聞いているわけであります。だから現在は一回の利用税が二百円でありますけれども、これは五百円くらいまでに引き上げたところで十分に担税能力はあるものだというように私どもは考えるわけでございます。飲食税の場合に、私どもは大衆課税というような言い方をいたしましたけれども、ゴルフはまだ大衆化というところまではこれはいってないと思います。担税能力は十分あると思いますので、やはりこういったところまでの御配慮があってよいのではないか、そういうように思うわけでありますが、いろいろ御検討はされておられましょうか。
  68. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 ゴルフ場の娯楽施設利用税の税率の引き上げについては、御指摘のような御意見が非常に多いわけでございます。私どもとしても税率の引き上げについては十分検討をいたしております。でき得るならば、われわれとしてもこういう増税はいいのではなかろうかというように実は考えております。問題は現在の二百円がどうかということですが、これは御承知のように、娯楽施設利用税の税率が、そういうものは百分の五十になっておったのですが、御承知の通り、三十二年にビジター・フィーとメンバー・フィーの関係で、一体どこまでが利用の料金だというような点が、ビジターの方とのかね合いで非常に厄介な問題があったわけでございます。そこで定額課税ということで、当時全国の状況を調べた結果、大体四百円くらいであろうということで、それの五〇%の二百円、こうきまっておるわけでございます。三十二年の調査でございますが、その後の状況の変化等も加味して、私どもとしては、かりにこれを引き上げる場合には、三十二年以後の実態の変化を見た上で金額をきめていきたい、かように考えております。
  69. 安井吉典

    安井委員 なお、ゴルフ場の問題は、この利用税だけではなしに、固定資産税の問題にもからんでくるわけでございますので、その面からもあわせて一つ伺ってみたいと思うわけでありますが、このゴルフ場に対する土地の評価はどうなっていますか。
  70. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 ゴルフ場の固定資産の問題かと思いますが、固定資産の土地の評価は、これは雑種地になるわけでございますが、ゴルフ場ができて、ああいうりっぱな施設ができますと、当然付近の土地の価格も上がってくるわけであります。周辺の土地の値段の基準によって現在きめております。固定資産については、ゴルフ場の芝が大体五年に一回ぐらいかわるわけですが、そこでこの芝は償却資産の対象にしたらどうかという意見があるわけでございます。これらについても先ほどのゴルフの娯楽施設利用税とあわせて検討を十分遂げていきたいと考えております。  なお先ほど私、答弁を保留さしていただきましたゴルフ施設の数でございますが、三十二年度の調査しか今のところわかりませんが、百十七でございます。これは昨年、一昨年あたりふえておりますので、おそらくこれの数割はふえていると思います。
  71. 安井吉典

    安井委員 施設数百十七は、私は数制どころではなしに、倍も、それ以上にもなっていやしないかというふうな気がするわけでありますが、農地から雑種地になった場合、現在評価はどれぐらい上がっておりましょうか、一例で一つお話し願いたいわけです。
  72. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 現在農地のゴルフ場への転用は許可になってないはずでございますが、現在の固定資産税の課税評準になっております単価を申しますると、たんぼは反が三万六千六百十六円でございます。それから畑の場合が一万三千五百二十七円、雑種地が四万五千三百二十円、雑種地はいろんなものが入っておりますので、雑種地については一律には考えられないと思います。
  73. 安井吉典

    安井委員 今大まかな平均数字でありますので、実情はよくわからないのでありますけれども、三万六千円のたんぼが雑種地平均四万五千というぐらいでありますれば、ゴルフ場の芝に対する評価は少し少な過ぎるのではないか。これは平均数字でありますから、この数字だけを基礎にして議論するのはいささかおかしいかもしれませんけれども、結論的には、ゴルフ場の問題について税の面からも、一方において大衆課税がどんどん強化されている際でありますので、もう少し特別な御配慮が必要ではないかと思うものですからお尋ねをしておるわけでありますが、休閑地や芝などに対する償却資産として考えられないかという御検討も進んでいるそうでありますが、これはぜひ真剣になってお進めをいただかなければいけないと思います。関係市町村などへ行きますと、いつもゴルフ場についてのこぼし話ばかり私ども聞いているわけであります。だから利用税の一部を市町村税にもくれないかといったような意見も出ております。それというのも、ゴルフ場に対する固定資産税の評価というものが、そこに住んでおります住民の目から見てきわめてふつり合いなものになっているという現実からきているものだと思うわけです。そういう意味で、もし固定的な評価がどうしてもできないならば、ゴルフ場だけの税率を、今の制限税率二・一を七%ぐらいまでぐんと引き上げたらどうか、そういうふうな考え方も私どもいたしているわけです。これは評価そのものが動かすことができないならばという前提に立って言っておるわけでありますけれども、特にこの点、今日の段階において十分に御検討を願いたいと思います。  これは、さらにまた小委員会でもお話が出ると思いますが、ゴルフ場のことはそれくらいにいたしまして、固定資産税の本来の問題として、今私どもどうしても注目をしていかなければなりませんのは、評価制度調査会の作業であると思います。この前これの中間的な御報告もいただいているわけでありますが、今後の新しい評価の方式を打ち出すためにいろいろと努力が続けられている。その中におきまして、田畑の評価の方式につきまして新しい考え方が出ているということに、私ども注目しないではいられないのであります。その中で、田畑からとれる農産物を資本に還元するという現在までの評価の方式を、時価主義に改めるというふうな考え方が強く出ているということに気がつくわけでありますが、こうなりますと、現在の田畑の評価は猛烈な幅で引き上げになるのではないかということを懸念するわけです。問題点はたくさんあると思いますが、この点にしぼりまして、現在までの段階においての論議の模様を一つ伺いたいと思います。
  74. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 固定資産評価制度調査会におきまして、現在固定資産の評価についてどうすべきかという点が真剣に論議をせられております。その際、まず現在の固定資産税の課税標準は適正時価によるということになっておりますが、この場合に、適正時価とは一体何ぞやという問題が当初非常に熱心に論議があったわけでございますが、結論といたしましては、適正時価というのは、あるべき正常な姿の市場価格である、こう一応の中間的な考え方の結論が出たわけでございます。そこで、あるべき正常な姿の市場価格ということであるが、それをしからばいかにして求めていくかという点について、次の議論が展開されたのであります。そこで御質問の田畑につきましては、現在のやり方は、御承知の通り正確な意味ではありませんけれども、一応大観的な見方をすれば、収益還元の方式によって評価をいたしておるのでございます。そこで、あるべき市場価格を求める場合に、農地について収益還元の方式がいいのか、それとも売買実例の価格によるのがいいのかという問題が議論になったわけでございます。その際二つに議論が分かれて、一つは、あるべき正常な姿の市場価格というのは売買実例価格によるべきである。しかしながら、農地の売買実例価格といっても、いろいろ不正常な要素が入って、また必ずしも売買実例も多くはないというような面から、やはりその場合にも収益還元の方式を加味するという考え方、これが一つでございます。もう一つは、これと正反対に、収益還元価格で農地のあるべき市場価格を求めるべきだ。しかしその場合にも、この収益還元の際に自家労賃を一体どのように見るかとか、あるいは企業家利潤を入れるか入れぬかとか、あるいは資本還元率をどうするかというようなやっかいな問題があるわけでございますが、そこでその場合にも、やはり売買実例価格を収益還元方式の場合にも加味するという考え方とがあって、ちょうど正反対の二つの議論が現在展開されておりまして、この点につきましては、調査会としてもまだ結論が出ていないのが現状でございます。
  75. 安井吉典

    安井委員 この問題は今日経過的な段階にあるわけでございますので、いずれ私どもも勉強いたしまして、さらにこの委員会ででも取り上げて、考え方を申し上げる機会もあろうと思うわけでありますが、時価主義というお考えの基礎は、やはり都市周辺の農地が非常な高値で売り買いされていくことが、そういう議論を出される委員の人の頭にひょいと浮かんで、そればかりとは言いませんけれども、そういうふうな方向から出てきた議論ではないかという気がするわけです。しかしながら農地法ができましてから、農地というものはそういうふうに簡単に売り買いされるような性格のもので現実にはなくなってきておると思います。ですから、時価主義というようなことでいくその標準をどこに求めるかということの方がむしろむずかしいので、収益還元の方式につきましては、これは米価の算定等で十分に経験があることでありますので、やはりそれらの経験を生かす方向で問題の解決点を見出していくべきではないか。まあ今日の段階においての私どもの考え方を申し上げておくと以上の通りでございますが、非常に大事な問題だと思いますので、一つ真剣に御討議を願いたいと思います。  ところで、固定資産税につきましては、非課税範囲、非課税対象あるいはまた課税標準の特例が実に多いという点でありますが、こういうところまで数が多くては、税の体系そのものがこわされるのではないか、私どもそのことまで心配するわけであります。この問題については特例があるんだから、新しく出たこの問題とのつり合いからいって、これも入れなければいけない。そういうことになると、何もかにも全部特例にしなければいけないのではないか、そういう気さえするのであります。今日自治庁は、この特例の問題についてどうお考えになっておるか。さらにまた税制調査会は、この問題についても検討の方向を進めつつあるのか、これを一つ伺います。
  76. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 いわゆる租税特別措置につきましては、御意図の通りの考え方を私自身は実は持っておるのでございます。ただ、通常国の経済政策なりあるいは社会政策上のいろいろな要請を実施する場合は、普通は歳出を通じてやるわけですが、歳入面を通じて実施する、つまり税法の運営においてもやるということは差しつかえなかろうと思う。ただ問題は、それが一たん特別措置に取り入れられますと、その必要のなくなったものが依然としていつまでも残っていく。そして次第にそういうものの範囲が広がっていく。その結果、税負担の不均衡を招来する。こういう点にこの租税特別措置の非常に大きな欠点があると思います。従いましてそういう意味合いにおいて、私は租税特別措置はとる必要はあるけれども、必要のなくなったものと、必要を生じたものとのいわゆる差しかえ、これを的確にやっていく。同時にでき得る限り租税特別措置というものは整理をしていくべき筋合いのものであろう、かように考えておるのでございます。そこで税制調査会におきましては、現在一般部会において、租税特別措置の取り扱いが論議の対象になっております。まだ細部の検討に入っておりませんけれども、およその方向としては、やはりこれは整理をしていく方向で検討が加えられるものというふうに現在までの状況では私は伺っておるのであります。  なおこの機会に、もし誤解があるといけませんので申し上げますが、固定資産の評価制度調査会では、評価の額が変わることによって税負担が非常に重くなりはせぬかという心配がやはりあるわけでございますが、この点につきましては、中間報告にございますように、そういう場合には税率なりその他の方法によって調整を加えて、税負担の増大を求めることがこの調査会の目的ではないということをうたっておりますので、その点念のためにお答えを申し上げておきたいと思います。
  77. 安井吉典

    安井委員 今のような課税の特例措置がたくさんある場合には、たとえば発電所や変電所は税金は三分の一でいいのだ、あるいは三分の二でいいのだ、地方軌道や企業合理化の重要産業でありますとか、そういうものにそのような特例がたくさんあるという面においては、これはその産業を振興するためにどうしても必要だからそのような特例が必要なんだということが理由だといたしますならば、農家の人たちの田畑も、やはり評価額の三分の二くらいの課税標準で税金をかけてくれという要求も決して私は間違いではないと思います。あるいはまた寒冷地畑作農業振興のための特別措置法ができまして、もうにっちもさっちもいかなくなった農家に対しまして、国は五分五厘くらいの安い金利で、サイロでありますとか、畜舎でありますとか、そういうものを建てる金を貸してやって、それでその農家の再建をはかろうという法律が去年できております。そういったふうな農家の立ち上がりのためのただ一つのよりどころとなっている施設でありますから、そういうものの税はむしろただにするとか、そういうものこそ三分の一に減らすとか、それがほんとうの正しい方向ではないかと思うのです。単にそれが重要産業だから、大企業だからということで課税の特例があるということは、これはあくまでおかしい問題だ、そういうふうに思うものですから、この点について特に今後の段階での御検討を一つお願いをしておきたいわけであります。  時間がだいぶ過ぎて参りましたので、次に電気ガス税のことについてお尋ねをしたいと思うわけでございます。自由民主党の中でも、いろいろ電気ガス税の減税についての話が出ているそうでありますが、政府は今度の場合において減税をやろうというお考えをお持ちになっていないわけですか。
  78. 石原幹市郎

    石原国務大臣 これは先ほど遊興飲食税の問題のときに申し上げましたように、ただいまの段階においては一応困難なのではないか、かように考えております。
  79. 安井吉典

    安井委員 この電気ガス税についても問題になりますのは、重要産業とでもいうべきおよそ三十余種目に及ぶ企業については、電気ガス税は一銭もかからないという規定になっていることです。自治庁からお配りいただいた資料で見ましても、現在支払われております電気ガス代金の約四分の一は税金がかかっていないわけです。そういたしますと、結局小さな木工場や何かの電力料金と大衆の電気代やガス代にだけ税金がかかっている、そういうふうな税金の姿に現実にはなってきているわけです。しかもこの非課税の品目の中には、これも入れてくれ、あれも入れてくれというふうなことであります。ですから重要産業を生かすために、大衆の負担だけが重い姿でがまんをしなければいけない、こういうような現在の状態ではないかと思います。だから私どもは、これはぜひ現在の一〇%程度から、当面の段階として七%くらいなところまで一応引き下げなければいけないし、さらにまた今まで非課税になっております分にも課税を強行するという方向で、とりあえず百分の二くらいの賦課をすべきだというふうに主張をいたしておるわけです。そこで本年の場合は、全国的なガスや電気の値上げの傾向があるわけでありますけれども、その実態自治庁はおつかみになっておられるかどうか。
  80. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 電気ガス税につきましても、御指摘の通り多くの非課税措置がとられておるわけでございますが、これらの点については、私は、基本的な考え方は、先ほどお答えいたしたように逐次整理をしていって、真の意味の税負担の均衡をはかるべきであるという点は御同様の意見を持っておるのでございます。そこで消費課税面の税率を引き下げたらどうかという御意見でございますが、私は、現在新聞等に出ておりますように、そういう意見があることは承知いたしておりますけれども、電気ガスについては、やはり国の料金政策の面とあわせて考えるべきものであろう。大口消費者に比して小口の需用者の方の料金が高くて、しかもそれの一律の値上げがあった。その結果を税で軽減しろというのは、私どもとしては、地方財政を守るという意味の面もございますが、税の建前上そういうやり方は無理だ、こういうように考えております。  値上げの点でございますが、値上げは東京、大阪のガスが御承知の通り値上げになったわけでございますが、その他の地域は本年度は影響がございません。また電気については、まだそういう問題が表面化いたしておりませんけれども、それらの面についても、聞くところによりますと、本年から来年にかけて問題が表面化してくるのではないかというような推定を私どもはいたしております。
  81. 安井吉典

    安井委員 池田通産大臣が、電気料金あるいはガス料金の引き上げの問題に関連いたしまして、料金は上がるけれども、そのかわり電気ガス税は引き下げるべきだというふうな主張をしたという報道を私も実は新聞で見まして、大へん妙なことを言われるものだというふうに感じました。といいますのは、料金を高くするからそれだけ税金を安くしろということになりますと、税金が安くなる方は、それだけ市町村の税収入が減るのですから、市町村が自分の税収入を減らして料金の引き上げをするというふうなことに話が聞こえるような気がするわけであります。ですからそれこそ料金の問題は通産省で、税金の問題は自治庁というふうな、役人同士のセクショナリズムとでもいいますか、そういうものもそこに見ることができますし、さらにまた岸内閣の料金値上げ政策、物価値上げ政策を、一方において税金を安くするというようなにおわせ方をして、問題をすりかえようとしておる意図さえ私はここに見受けることができると思うのです。ですから、こういう考え方はあくまで筋が通らない。今のお話によると、賢明な自民党も取り消しておるそうであります。しかしながら、私どもはあくまで大衆課税を軽減すべきだ、そういうような立場から、完全な消費税的な性格を持っておりますこの税の軽減の問題に、政府は今後一そう御努力を願わなければならぬ、こういうように思うわけです。  そこでこの電気料金に関連をいたしますが、街灯に対する電気料金についても税がかけられていると思うわけでありますが、あれはもうほんとうに公共的な性格を持っているわけで、重要産業の非課税の方よりも私はむしろこちらの方が大事な問題だと思うのですが、これについて自治庁は御検討されたことはありませんでしたか。
  82. 後藤田正晴

    ○後藤田政府委員 電気ガス税は、消費税の性格上広く一般に負担を求めるわけでございますが、御指摘の街灯について非課税にしろという要望は、私どもも聞いておりますし検討もいたしておりますけれども、街灯はほんとうに公共的な、通行人の便宜とか防犯的なものとかいろいろな面で作られておるものもあるし、また同時に自分の商売上の広告なりいろいろな便宜の上で設けられておるものもあり、その態様は種々雑多なものが実はあるわけでございます。かりにそれがすべて公共的な観点からできておるものだといたしましても、現在の電気ガスの消費税立場からは非課税にはならぬのではないかという一応の結論を私は持っておるのでございます。と申しますのは、現在公用なり公共用で使っておる、たとえば役所等のものもすべてこれは実は課税の対象になっておるわけで、何らの特例の措置を認めておらないのでございます。そういうような意味合いにおいて、公共用であっても、やはり現在の建前では電気ガス税の対象になる、こういうような考え方を一応とっておるのでございます。
  83. 安井吉典

    安井委員 奧野財政局長一つお伺いしたいのですが、街灯の料金を市町村負担をしたり、特にあちこちの町内会で負担をしたり、そういう負担区分でもてあましておるというような話を聞くのですが、私どもは、むしろこの街灯の料金は電灯会社が相当部分負担をするという形で解決するのが望ましいと思っているわけでありますが、現在の状態はどうなっておりましょうか、お知りになっておりましたら一つお話し願いたいと思います。
  84. 奧野誠亮

    奧野政府委員 市町村の治安の見地から見まして必要な街灯になりますと、市町村負担をして設けているところが相当ございます。しかしまた、顕著な例で申し上げますと、このごろ商店街でアーケードまでつける、そのアーケードの上には非常に明るい螢光灯を一面につけている、そういうのは商店の繁栄上共同で負担をしてつけているようであります。ものによりまして負担はいろいろ変わっております。
  85. 安井吉典

    安井委員 私どもは、そういうアーケードのような広告灯的な性格のものまでここで言うわけじゃないので、だいぶ前に荒川事件なんかありましたね。暗い道で子供が刺されたり、そういったような事件の性格から見ても、比較的豊かな町筋とでもいいますか、商店街では、あかあかと照らされておりますけれども、ごく生活程度の低い人たちの住んでいるところは、街灯一つつかずに暗いままで放置されている。都会においてもそういう状態がありますし、いなかに行ってもそういうことがあろうと思います。そのようなことからいっても、私はやはり街灯という問題は、ごく公共的なものという性格に考えてもいいんじゃないかと思うのです。市町村がこの街灯の料金を負担するということの方向は正しい方向なのかどうなのか、あるいは住民負担させた方がいいのか、その点自治庁はどういうふうな御指導をされておるわけですか。
  86. 奧野誠亮

    奧野政府委員 特別な指導というようなことはいたしておりませんけれども、やはりその街灯などの種類によって料金の負担者が変わってきてしかるべきではなかろうか、かように考えておるわけであります。
  87. 田中榮一

    田中(榮)委員 関連して。ただいまの街灯の問題でございますが、なるほど商店街等におきまして、小売商店の振興のためにアーケードを作ったり、あるいは街灯を作ることは、これは私はその商店街自身の繁栄のためにやっておるのだと考えておりますが、最近におきましては、農村といわず、都市の郊外におきまして、街灯がないために、町内会等においてこれを負担をしたり、あるいはまた町村役場あるいは区役所等からある程度の料金の補助を受けまして、そうして町内会がこれを支弁している。あるいはまた防犯団体等が負担をいたしまして、それぞれ街灯の料金を払っておるわけでありますが、おのずからそこには、やはり防犯的の立場における公共的の街灯と、商店繁栄のための街灯というものは、大体において私は常識においてそれが識別できるのではないかと考えております。ことに農村方面におきましても、最近は農村を明るくするために街灯を作りたいという気持が非常に多いのでありますが、悲しいかな、料金を負担する資力がないために、これがそのまま放置されておるという現状でありますので、いわゆる公共的の施設と認められるような街灯につきましては、何らか一つ恩典を与えるような措置を講ずる必要があるのではないか。これはいろいろ防犯的措置とかそういう点はもちろんでございますが、町を明るくするという意味からいいましても、交通の事故をなくするという意味におきましても、あらゆる事故防止の点からも、また一般の住民が安心をして夜でも通行ができるというような点から見ましても、またその土地に不案内な者が夜たずねてきて道を探し当てる場合におきましても、いろいろの点から、公共的の街灯につきましては、相当な料金等につきまして、あるいは課税上の特別措置を講ずることを特に私は希望いたしておく次第であります。
  88. 石原幹市郎

    石原国務大臣 先ほど安井委員並びに田中委員からも今お話があったのでありますが、私も電気ガス税に対する考え方は、安井委員と大体同じ考えなんです。消費税だからとかどうとかいって、いろいろ税の理論から議論しておるようでありますけれども、電気ガス税というものに対しましては、相当私も課税方法その他で疑問も持ち、何らかの考えを持って対処していかなければならぬのではないかと思っておるのであります。また先ほどお話のありましたゴルフ税につきましても、実は私はこれはある程度増徴したいという気持でおったのでありますが、遺憾ながら、ことしは税の問題については、減税も考えはあってもなかなかできにくい、増税だけやるのもどうかというようなことで、一応見送っておるわけでございますが、地方税制全体に通じまして、相当再検討しなければならない問題がたくさんあるということは、私も率直に認めておりますので、三十五年度に間に合いかねておるということは非常に遺憾でありますけれども、今後とも事務当局によく話しまして、そういう方向一つ研究を進めてもらいたいということをここで申し上げておきたいと思います。
  89. 安井吉典

    安井委員 私どもも、この電気ガス税特に街灯の問題につきまして、いろいろ別な対策も準備をいたしつつあるわけでございますが、自治庁側においても、これは大事な問題だと思いますので、十分に一つ御検討を願いたいと思います。  最後に消防施設税のことでありますが、これも社会党側から話が出まして、もう実に長い間たなざらしにされている税で、地方制度調査会も取り上げておられるわけでありますし、自治庁の資料の中でも、いつも予算を組む前の段階までは資料に載っかってきております。ところが、予算が始まりましたら、いつの間にか姿を消すし、今日の段階では、もう影も形もないというふうなことであります。また来年の予算を組むときにぼつぼつ出てくるのかもしれませんが、飲食税等はまた別な見地からこれはこんなことでは困ると思うわけです。一体真剣になってこの問題についてお考えになっているのかどうか、その点を一つ最後に伺っておきたいと思います。
  90. 石原幹市郎

    石原国務大臣 これはずっと従来から引き継がれて検討されておって、私もたびたび消防施設税はやりたいというようなことをいろいろ言うて参った一人でありますが、実際問題になりますると、いわゆる税で取るのも一つの方法でありまするが、それらの会社から資金の融通を得て、いろいろな施設をやっていくということも方法ではないかということで、最後の段階になりまして、同じ効果を上げるなら簡単な方法でやろうというようなことで、いつもしり切れトンボになっておるのが率直に申し上げて実情であろうと思うのであります。それともう一つ、やはり消防施設税自体について、やはり税制の上あるいは課税方法その他において、若干割り切れないものがいつも残っておるということで、日の目を見ないで今日に至っておるのが今までの実情であろうと思います。今度は自治省がもしできますれば、一体になるわけでありますから、さらにこういう問題については一そう検討がしやすくなるのではないか、かように考えております。
  91. 安井吉典

    安井委員 自治省と別に消防施設税とは相互関係があるようにも思われないのでありますが、自治省ができなければ消防施設税ができないという、そういう因果関係があるものでは決してないと私は思うのです。それまでに一つ問題をからませてこないで、それはそれで別なお考えのもとに、今までのたなざらしの結論をやはり早急にお出しをいただかなければいけないと思います。特に市町村の消防財源はきわめて不足で、それが実のところは消防後援会費だとか、何かそういうようなことで目に見えない住民の税外負担となって現われているというのが実際の姿だと思います。そういうような意味からも、目的税としてのこの税が創設されて、地方財源充実という方向がとられるということは、これによりまして全国の市町村の建物が守られ、住民の安寧がはかられるということになれば、これは自治省を作るよりももっと重大な効果がこれにおいて出てくるのじゃないか、そういうことも思われるわけでございます。そういう意味一つ十分御検討を願いたいと思います。  その他、なおいろいろお聞きいたしたいこともございますけれども、またの機会にいたしまして、きょうは、私の質問はこれで終わります。
  92. 纐纈彌三

  93. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 大へんどうもおそくなりまして、皆さん腹を減らしておられるのじゃないかと思いますので、恐縮だと思いますが、ちょっと二、三点だけお尋ねをこの際いたしておきたいと思います。  それは昭和三十五年度の地方財政計画についてでございますが、同僚各位から十分な御質問があったと思いますが、私は一、二伺っておきたいことは、いつも議論になりますが、この地方財政計画は決算と比べてみると、だいぶん差額がある、一千億程度ある。これをもっと縮めるように努力したらどうか、努力をいたしましょうということでずっと参ってきておるわけでありますが、昭和三十三年はどんなことでございましたか、それをちょっとお伺いをいたしたい。と申しますのは、ことしの財政計画を拝見をいたしますと、だいぶ改善の跡は見られますけれども、やはりあとから追っかけておるのではないかというふうな感じが非常にいたします。特に人件費についてでございますが、そういう点について将来のこともありますから、私はこの際伺っておきたい、かように思うのであります。
  94. 奧野誠亮

    奧野政府委員 地方財政計画地方団体現実の決算とは建前が違っておりますので、食い違いのあることは当然だと思います。ただ問題は、食い違いはあるが、その食い違いの事情はよくわからない。よくわからないままに食い違っておるので、これはやはり逐次是正していかなければならぬ、かように考えております。数字上三十三年度の財政計画と決算との食い違いは約二千億円でございます。二千億円でございますが、たとえば歳入で申し上げますと、標準税率、超過課税の分などは計画には入っていないわけでございます。決算にはもとより出ていないわけでございます。それからまた補正予算等が組まれたわけでございますので、国庫支出金におきましてもその関係で相当額食い違いが出てきて参っております。同じことが地方税の自然増収についても言えるのでございます。最も大きく数字が開いて参りますのは、収入面では雑収入の問題でございます。その雑収入の問題で一番大きいのは、ひもつきの預託をいたします場合、たとえば中小企業に貸し付けてもらいたいという意味で銀行に預託をいたします場合には、貸付金として計上するように指導して参ったわけであります。従いまして、歳入においては貸付金の回収金として上がってくるわけであります。そういう分だけでも三百億円をこえておるわけでございます。これは将来地方財政計画を作ります場合に、そういう意味の歳入歳出も地方財政計画に計上した方がいいか悪いか、これは議論としてあろうかと思います。しかしそういうように食い違いの明確なものはそれでよろしいと思うのでありますが、食い違いの明確でないものは漸次是正していかなければならない。そういう意味で今回の財政計画上特に取り上げておりますのは、御指摘になりました給与費でございまして、三十三年の七月一日現在で実態調査を行なったわけでございます。それに基づきまして、給与面については約百億円の是正を行なっておるわけでございます。
  95. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 私は一千億程度考えておりましたところが、今のお話ではもっとたくさんあって二千億程度であるということであります。このことは建前はもちろん違います。これは予算じゃないのですから違いますけれども、戦後十五年、私どもは地方財政計画を立てておるのでありますが、これはいくら何でも少し近づきますようにぜひ私はお願いをいたしたい。一兆五千億、一兆六千億となりますと、少なくとも千五百億ということでわからないわけではありませんが、この点は一段の努力を私は希望いたしたい。つきましては、他の委員からもいろいろ意見があったと思うが、今回大臣のお考えか、自民党の皆さんのお考えかは存じませんが、非常にけっこうなことでありまして、いわゆる税外負担を軽減する。その第一歩としてPTAの経費その他についてこれを軽減する。そのための支出的なものを計上されておるわけでありますが、これはしかしそういう観点からいえば全然意味がない。まだほかにたくさん回さなければならぬところがあるから、二千億収入と支出の間に相違があるのですから、その辺のところを特にあれだけお出しになったということはどういうことであるのか。これは命令権があるわけではありませんし、ただ期待するということでありましょうけれども、その期待通り地方自治体がやらなければどうなるのであるか。また実際やれるものであるかどうか。この辺のことについての——私は攻撃したいわけではないのでありますが、このことだけでも私は相当議論があります。ありますがきょうは触れません。そういうものを計上される意欲には敬意を表するが、その通りなるものであるかどうか、そういうことについての見通しとか一般の感じ方ですね。そこへ計上して新聞に発表する、われわれに説明すれば、それができるように思っておるところに私は問題はまだまだ伏在しているように思うのであります。もっと根本的な問題が自治体の運営においてはたくさんある。そこでそういうことを言われれば、PTAの会費が月百円のものを九十円にしておるのだということはあり得ても、ゼロになるなんということは現実の問題としてほとんど考えられません。と申しますのは、義務教育の面においてそういうことがある、ないというふうなことの議論、あるいは富裕府県においてはPTAの経費はとっておらぬ、そうして貧弱府県でとっておるということであれば、わかるのでありますが、今のPTAの会費なんかは、富裕府県ほど逆に多いくらいであります。経費が要るのだからたくさんもらえということで、富裕府県の方が多いくらいでありますから、そういうところで、これを計上したからといって、それが一挙になくなるというふうなことはなかなかもって甘い考えではなかろうか、かように思いまするので、その辺の見通し等についてちょっと伺っておきたいのでございます。
  96. 奧野誠亮

    奧野政府委員 決算と財政計画との間に二千億の食い違いがある、そのことが特に地方財政の貧困を示しておるというわけのものではないと思うのであります。むしろ地方財政が苦しいものだから寄付金をとっておる。そういうものは計画に上がっていないからそこに食い違いが出てくるということはございましょうが、雑収入などの計上の仕方が違っておるところに基本的な食い違いがあるのだということを御了解いただきたいと思うのであります。なお税外負担を解消したいという考え方のもとに、特に地方財政計画上にも九十億を計上しておるわけでございます。この九十億を計上するについては、本来増額すべき一般単独事業を抑圧したり、あるいは一般行政費を抑圧したりして計上しているわけじゃございません。一般単独事業費につきましては、一五%の伸びを見、また給与費以外の一般行政費につきましては四・八%の伸びを見まして、さらに九十億円の税外負担の解消に要する財源を計画しているという点は御了解いただきたいと思うのであります。零細な負担が、きわめて住民にとりましても不均衡な負担をしいる結果となっておるわけでございますが、それをやめますと、やはりそれだけのものを市町村の予算に計上しなければならないことになるわけでございますので、そういう意味地方財政計画上の歳出に立てるという方針をとったわけでございます。同時にそれだけのものは基準財政需要額を計算いたします場合、小学校費、中学校費、消防費というようなものの中に算入をいたして参ることにいたしております。たとえて申し上げますと、学校の印刷製本費が少ない、あるいは光熱費が少ないので、そういうものまでPTA等におぶさっているという姿になっているのが現状でございます。従いまして小学校費や中学校費の、印刷製本費でありますとか光熱水料でありますとかいうものについての見方を従来より多くいたしました。従いましてそれだけのものを単位費用の引き上げによって各市町村財源を与えていきたい、かような考え方でおるわけでございます。さらに御承知のように地方財政法の中に規定を設けまして、特別な経費については市町村負担を転嫁するようなことをしてはいけないという規定まで設けようとしているわけでございます。要するに、地方財政計画地方交付税制度の改正と地方財政法の改正という三つのかまえをもって、税外負担の解消に努力をしていきたい、こう考えておるわけでございます。もとよりこの税外負担が私たちは皆無になればよろしい、ただそれだけを考えているわけじゃございませんで、当然だれが考えても市町村の予算に計上して支出していかなければならない性格のものであるにもかかわらず、一般的に住民に押しつけているというようなものを排除したい、かような考え方でおるわけでございます。従いまして地方財政法で特にこういう税外負担の排除という意味で強く取り上げますのは、さしあたりは市町村職員給与費負担転嫁、さらに小学校や中学校の維持修繕費の負担転嫁、これを厳に戒めてもらいたいという精神を強く出すことにしているわけでございます。あるいは学校の改築の費用、あるいは学校の設備の費用についてまで直ちにそういう措置をとるべきだという考え方があるかもしれませんけれども、地方財政の現状からいいますと、そこまでいいますことは地方財政を行き詰まらせることにもなるのじゃなかろうか、こういうように考えておるわけでございます。やはり国民の経済力の進展あるいは地方財源充実状況とにらみ合いながら、税外負担の解消の計画を進めていくべきものである、こういうふうに存じておるわけでございます。
  97. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 奧野君の長講をお聞きしたわけでありますが、二千億違っておっても筋が合っておればいいというのはちょっとおかしい。やはりどっちがいいか悪いか研究して合わしなさい。私は筋が通っておればいいというのは、きょうの答弁にはよろしいですが、今のPTAの問題でも、それならば特に項目を上げて計上しないでも、いわゆる経営費ですから経営費の不足を償えばいい。その点について私は申し上げたのであります。ただしかし、きょうお尋ねしようと思いましたのはそのことではございませんので、もうこの問題は申しませんが、こういう財政計画で毎年問題になりますところの地方自治体の経済力の相違の問題、格差の問題——資料によりますと、これは昭和三十一年度の実績でございますが、国税におきましては、東京では一人当たり負担が三万円、鹿児島では二千三百七十八円、道府県税におきましては、大阪では四千二百三十円が鹿児島では六百二十九円、市町村税におきましては、東京では四千七百六十八円が鹿児島では四百円、こういうふうに十二分の一だとか七分の一だとか三分の一だとかいうことが出ておるわけでありますが、これを調節する方法といたしまして、大蔵省の皆さんなどは譲与税を盛んに設けて調節をする。基本的にはもとより地方交付税でありますけれども、そういう考え方でことしの予算編成に際しましても、皆さんは地方団体の代表として大いにがんばられたということも伺うわけでありますが、これとの関連においてそういうふうな譲与税を設けたり、東京で吸い上げた税金を鳥取県へ持っていったりすることは憲法違反であるというふうなこととの関連におきまして、また税源という面から見ましても、最近滋賀県と京都府あたりが一本になりたいとか、あるいは大阪府と奈良県と和歌山県が一つになったらどうであろうかとか、あるいは東海地方におきまして愛知県、岐阜県、三重県というふうなものを一本にしてはどうか、こういうふうな話が出ておるわけであります。この話はもとより今の理由づけだけからではもちろんありません。他に交通通信の関係、経済圏の関係その他ございましょう。町村合併も一段落したので、この辺で府県段階でも少し地域を広げてもいいじゃないか。さらにはまた道州制の問題がございまして、道州制の問題は一応私ども社会党系の者は、現実におきましては、今政府考えておる道州制というものは中央集権への道であるし、地方自治を大いに縮小せしめようという魂胆であろうというようなことから牽制をいたしまして、その前にやることがたくさんあるということで、私ども社会党といたしましては反対をいたしておるようなわけであります。しかしながら、そういう前提条件のいろいろなものが解消されるといいますか、きれいになりますと、何も広域に府県がなるということについて、反対か賛成かということを、実はまだ私どもきめておるわけでもないわけであります。従いまして、最近こういう府県の統合の問題が各地の新聞をにぎわしており、また週刊誌等においても取り上げておるというふうな次第でありますので、私はこの際、政府がこういう問題について今どう考えておられるのであるか、しばらくは静観であるのか、あるいは研究をされておるのか、実施するとすれば、どういう手続を必要とするのであるか、そういう点について、大臣並びに行政局長の意見も聞かせてもらいたいと思います。
  98. 石原幹市郎

    石原国務大臣 ただいまお話が出たのでありますが、府県の規模をどうするかという問題につきましては、先年地方制度調査会におきまして、一応道州制の意見と、それから数府県統合という少数意見と、二つの答申が出ておることは御案内の通りだろうと思います。それで、その後市町村の合併も大体一段落をいたしまして、さらに今御指摘のように、府県の統合の世論がちょこちょこ出てきたわけでございます。私は、当然そういう段階にもう入っていかなければならないと思っておるのでございますが、しばらくは世論の動向を見きわめつつ、同時に府県合併のときには一体どういうことを考えていったらいいかという行政的のいろいろの準備等も、自治庁において検討さしておるのでございます。それで私といたしましても、でき得る限り機会あるごとに、もうそろそろそういう時期ではないかというようなことを、私の談話なり、会合の席等でいろいろ申して、世論の盛り上がりを待っておる、こういうことでございます。  地方財政の問題についても、たびたび申しておるのでありますが、将来中央地方を通ずる税財源の適正な、あるいは行政事務の適正な配分をやって、しかもその後においてもなおやっていけない小府県が相当あると思うのであります。そのときに、いわゆる地方団体間の財源調整をやるなり、あるいはそういう府県財政力豊かな府県と統合することによって、初めて地方自治体としての面目を保っていけるのではないか、こういうような考えでいろいろ話しておる次第でございます。御指摘のように、滋賀、京都あたりにそういう意見が出、あるいは近畿地方は、大体近畿一帯というような意見がだいぶ前から論議されておるのでありますが、最近非常に強いのは、大阪、和歌山、奈良、それから昨年の伊勢湾台風のあとを受けて、東海三県というところが盛り上がってきておるのであります。盛り上がりの模様を見つつ、自治庁といたしましては適正な、しかも強力な指導と援助をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  99. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 自主的な府県合併を行なう場合の手続について、補足的に御説明をいたしておきたいと思います。地方自治法の第六条がその根拠規定でございます。すわなち、「都道府県の廃置分合又は境界変更をしようとするときは、法律でこれを定める。」ということに相なっておるわけでございますので、たとえば今機運が盛り上がりつつありますようなところについて、自主的に合併を行なうということに決定いたします場合におきましては、法律をそれぞれ単行で出しまして、これでもって国会の御審議をいただくということが第一の段階でございます。その後に、国会で法律が成立いたした段階におきまして、いわゆる憲法の規定に基づく、一の地方公共団体に適用される特別法の規定の適用がございますので、その成立いたしました法律を、関係府県住民住民投票に付するということに相なります。その住民投票によって過半数の賛成を得るということになりました場合に、初めて法律として効果を発生するということに相なるわけでございます。
  100. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 大臣意見なり手続の大綱を伺ったわけでありますが、そういたしますと、地方制度調査会の答申に基づく道州制という問題については、政府としては一応これをたな上げをして、今話が出ておりますような府県の統合といいますか、そういうものからできたら出発したい、こういうふうな気持でありますか、その辺のところをちょっと確かめておきたいと思います。
  101. 石原幹市郎

    石原国務大臣 政府部内の中にも、いろいろ意見を持っている人はあるのでありまして、最近東北開発促進法であるとか、このごろはまた九州開発促進法、あるいは四国開発、中国開発と、いろいろ出てきておりますが、こういう考え方をもとにして、これを発展せしめて、一つの道州制のようなものに持っていったらどうかという考えを持っておる人もあるようであります。しかし私は、自分の体験その他からいたしまして、自治体的性格を持たせる道州制というものは、これはなかなか容易なことではないのじゃないか。いわゆる政府の出先機関、中間機関の単位としての道州制ということならば、これはあるいは考えられると思いますが、自治体的性格を持たす道州制というものは、なかなか容易じゃないだろうか。そこで私は、むしろその必要性から生まれてくる数府県の統合ということの方が望ましい、それを指導していきたい。そういう考えを持って、今後もそういう方向で努力したいし、現に努力しつつあるわけであります。
  102. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 今の大臣答弁の中で、道州制ということになれば、自治体では少し無理だというその気持は、私もよくわかります。そこで自治体的なものとしていくのならば、今うわさされておるような府県の統合ということについてはわかりますが、さてそれをやるという場合には、私どもは町村合併に際しても非常な決意でやりましたが、全国各地で大問題が起こったわけであります。ようやく下火にはなっておりますが、まだ全然消え去ったところまではいっておりません。従いまして、府県の合併といいますか、統合といいますか、そういう話が出た場合におきましても、たとえばある一地区の住民は、それに反対するというふうなことも十分あり得るのであります。従いまして、法律を作るときには、そういう調整を十分しないことには、口では言いやすいが、実行はなかなかむずかしいようにも思うわけであります。話はできておるかできておらぬか、全然知りませんけれども、たとえば山梨県と静岡県とか、神奈川県と静岡県等でありますと、一体伊豆半島がどうなるか、あるいは北陸の三県の、富山、石川、福井というふうなことになると、若狭地方はどうするかというような、いろいろな問題が出てきはせぬかと思うのでありますが、そういうことは十分熟してから政府としては取り上げるべきだと私は思うのですけれども、具体的のそういうことについての話は出ておりませんか。ただ単に、二つの県が一本になろう、寄り合って話し合いをしよう、両方の知事、県会議長、あるいは商工会議所の会頭その他に集まっていただこうという程度でありまして、まだそれ以上には進んでないようにも思うのでありますが、自治庁としては、私はそこまで考えてもらいたいような気がいたしますので、その辺のことについての研究をされておるのならば、その程度を大体伺っておきたいと思います。
  103. 石原幹市郎

    石原国務大臣 これはもちろん中井委員のおっしゃった通りの私どもの考えでありまして、市町村については合併促進法というようなものを作ってやったから、府県にも合併促進法のようものを考えたらどうかという意見もありますが、そういうことは私は全然思っておりません。そこで先ほど申し上げましたように、世論の盛り上がりを待って、それを強力に指導、援助していきたいという気持を申し上げたのでありますが、もちろん一律にやれるものでもなし、やるべき性格のものでもない。十分盛り上がったところで考えていきたい。でありますから、先ほど行政局長が申し上げましたように、その場合に初めて、たとえば滋賀と京都が話し合いができれば、滋賀県、京都府の合併に関する件というような、法律もそういう形になっていくのじゃないかと思います。しかしながら、あれだけむずかしと思いました市町村合併も、数年の間に一万幾つのものが三分の一近くにもなるというわけで、あの難事業もできたのでありますから、非常にむずかしいと思いますけれども、一つ壁が破れてくれば、だんだんこの問題も軌道に乗ってくるのじゃないか、だいぶそういう空気が言わず語らずの間に譲成されつつあるのではないか、かように私は考えておるわけであります。
  104. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 それではこれでやめますが、大体その気持はわかりましたが、そういう次第ならば、さらに一歩を進めて、自治庁の内部において、そのようなことを推進する機関なり委員会なり、そのようなものを設けて積極的にいくという気持はございませんか。その点を一つ伺っておきたい。実は町村合併のときには、変なことでありますけれども、今から七、八年前にこの委員会で話が出たように思うのです。そういうことから正式な質問もありましたし、それ以外の委員会の会合、理事会の席上その他で雑談で出たようなこともございます。私はそういう意味で、当時の自民党、社会党を問わず、各委員皆さんの中からそういう話がだんだん出てきて、それがうんできたというようないささかの自負心を持っておる。従いましてあの法案が出ましたときには、あれは参議院の館委員が表面に出されました。町村合併ということで参議院から法案が回ってきたようでありますけれども、実際は私どももその間に意思の疎通もあり、従いまして衆議院に回付されましたときも、私どもは町村合併をむしろ市町村合併に振りかえて、いわゆる地方自治体の市町村単位の幅を広げたような記憶もあるわけであります。従いまして、そういう意味も含めて今こういうお尋ねをいたしておるわけでございますが、政府並びに石原長官がそこまで考えておられるならば、これはもう少し前進の形でものを運んでいただいたらどんなものであるか。わが社会党はまだ結論を出しておりません。しかし道州制につきましては反対です。あの当時、府県の統合は少数意見でありまして、東大教授の田中一郎君の意見であったように私は記憶いたしております。そういうことでありまして、だいぶん機も熟しておる。しかし国会議員は選挙区の関係だとか、あるいは一番困るのは、いわゆる県庁の所在地が所在地でなくなることによってどうなるかという問題がある。これについては他の産業なり何なりを持っていくというような具体的な問題も起こるでありましょうし、そういうことは政府がはたから応援するなり何なりという形でやる。この四つの島で少しそういうものが多過ぎる。四十五もある明治の初めからの形をそのままにしておくということについては、何とか積極的にやれという気持でございまして、その点は私は大臣と同感でございます。しかし東北あたりは未開発というようなことからおくれる場合もあるいはあるかもしれませんし、北海道の方はもう片づいておるわけでありますが、そういうことにあまりこだわらずに、できるところからやっていくというふうなことでどんなものであろうか、こういう見解も持っておるのであります。以上申し上げまして私の質問を終わります。
  105. 石原幹市郎

    石原国務大臣 私も全く中井委員と同じような考えであります。そこで地方制度調査会の答申とは私は若干見解を異にしておるものであります。今言われましたように、自治庁の中に委員会なり会議でも設けてというところには急には行き得ないのではないかと思うのでありますが、しかし部局でそれぞれの準備なり研究は十分やらせておりまするし、やってもらいたいと思います。でき得れば将来議会等におきましてもこういう問題の検討の小委員会でも作って御研究願えればしあわせだと思っております。決して一律にやろうなどということは毛頭思いません。できるところから一つの事例でもできたならば非常にしあわせであるという気持で今後対処していきたい、かように思っております。
  106. 纐纈彌三

  107. 楯兼次郎

    ○楯委員 今、中井委員から合併問題の御質問が出ましたので、これに関連をして質問いたしたいと思います。時間の制約もありますし、おそくなっておりまするから、簡単にお伺いしたいと思います。  町村合併促進法で円満にいっておるところは、先ほど長官が言われましたように、まことにけっこうだと思う。ところが私の聞く範囲では、まだ相当町村合併が尾を引いて円満に解決をしないというところがあるように聞いております。そこで時間の節約上、私は単刀直入に長野県と岐阜県の越県合併で問題になっておりました神坂村の例を一つ引いて、一体自治庁はどうするのかという点をお伺いをしたいのであります。当時この裁定といいますか、総理大臣の結論が出るまでわれわれは自治庁を信用しておったわけです。中央審議会も、神坂村は全村中津川市に合併するのが当然である、こういう結論を出しておりますし、そもそも神坂村が越県合併の運動を始めましたときに自治庁へお伺いを立てておる。自治庁の方では、それはけっこうであるから一つ合併を推進せよ、こういうことで、公文書ではないと思いまするけれども、促進の示唆を与えておる。だから条件からいってまず間違いないと思って神坂村は合併運動に乗り出した。ところが結論はすったもんだの末、一部の政治家に——公平なるべき自治庁が全く自主性をなくして、少数のために多数が犠牲になるような結論を出したとしか思えないのです。私は、あの裁定が出ましたあとにも当委員会においてこの問題を追及したいと思いましたが、われわれは全くあぜんとしてものを言うことができなかったというのが当時の状況です。しかも今日あの無理押しをした神坂の合併がどういう状態になっておるか、私はこれから簡単に具体的に申し上げたいと思います。  まずお伺いをしたいのは、今簡単に申し上げましたから、石原長官も概略つかんでいただけたと思うのですが、一体あのようなばかげた取り扱いをして正当であったかどうか。それから行政局長には、あの当時を振り返って、今まだ紛糾に紛糾を続けておるのだが、一体どうするのか、あのときあなたは公正な取り扱いをされたのかどうか、まず最初にこの点をお伺いしたい。
  108. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 神坂村の中津川への編入の問題につきましては、当時から楯委員にもいろいろ御心労をわずらわしておりましたが、その間の事情等はよく御承知の通りでございます。その当時いろんな機会に申し上げたところでございますが、これを今繰り返していろいろ申し上げることの煩を避けたいという気持がいたすのでありますが、率直に申しまして、私たちといたしましては、あの案件の処理というものが非常に完璧な、また理想的な処理であったというふうには考えておりません。諸般の情勢上いろんな角度から見まして、ああいう解決もやむを得ないことではないかということで、最終的には踏み切ったのであります。その後におきましても、われわれといたしましては、地元の円満な解決ということを常に気にかけておりまして、地元なりあるいは関係県の方とも連絡をとっていろいろ注目をいたしておりまするが、なお地元の関係部落におきまして、その後紛争の状況というものは根本的に解決をされないままで存続をいたしておる。そういう現状があることは、私どもこれを率直に認めざるを得ないと思っておりまして、そういう点については非常に遺憾である。従いまして、これについては何らかの方策を講じまして、一歩前進円滑なる行政の運営、市政の運営という方向へ持っていくように努力をしなければならぬという決意は実は持っておるのであります。
  109. 楯兼次郎

    ○楯委員 局長は円満なる解決を期待をしたと言いますが、これは自治庁自体が紛糾の種を植えつけておるのです。長野県側の方が、自分の町村が他県へ行くということは立場上賛成しないと思う。これもわかる。それから受け入れる側がおいでなさいといって、ある程度の積極的行動をするということもわかる。しかしそれは立場上そういう態度をとるのであって、紛糾した場合には、その間に立って公正なる結論を出すのが自治庁である。こういうふうに、私も当時あの結論が出る前は、あまりここでやかましくは申し上げなかったのです。一村を合併するか、全村そのまま残すかということならまだまだこれは解決の方法としては次善の策だったと私は思うのです。ところがそれを、これは自民党の方は、よく寄せて二で割るということを新聞でいわれておりますが、一部の方の、一部の政治家の腹づもりによって、二で割ったあのような結論を唯々諾々として聞いて、あと円満なる解決を期待するなどということは、全く自治庁の権威というものはゼロである、こういうふうに考えておるわけです。この点について、くどいようでありますが、あなた今もやむを得なかったというようなことを言われますが、全く神坂村の残存の住民はほんとうにもう毎日毎日いろいろな紛糾で苦しんでおるわけです。どう思いますか。
  110. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 この点につきましては、いわゆる一政治家の云々という問題とは私たちは思っておりません。これは最後はやはり内閣総理大臣の最終決定ということでもって結論が出た問題でございます。その間におきましての種々の経緯等は今さら申し上げませんが、残存をいたしました部落につきまして、かなりな反対があったことはこれは事実でございます。そういうようなことも総合的に判断をいたしまして、あのような結論を出したのであります。ただそれはそれといたしまして、現在なお落ちついた状況になっておらないということは事実でございます。これらの点につきましては、やはりもう少し地元の形勢、全体の村政の円滑ということのために、もう少し何とか処置しなければならないという部面は今たくさん出ておるわけであります。その点についてはさらに努力はいたしたいという決意は持っておるわけであります。
  111. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは、あなた方が真二つに割った。しかも残った方が賛成派が少なければわれわれは話はわかるのです。これは民主主義の原則に従って多数に従うということも筋が通る。ところが当時われわれは口をすっぱくして申しておったように、岐阜県へ合併をするという方が多いのである。現実に小学校の児童を見てごらんなさい。二百六十二名残されております三部落の生徒が、委託という形で岐阜県へ百六十六名通学しておるではありませんか。これはフリーにやったらもっと入ると思うのです。長野県に籍がありながら、岐阜県の中津川市に行きたいというのでその三分の二は現在まだ通っておるのです。そういう比率からいって、これは当然今あなたがおっしゃいましたような決定といいますか、取り扱いをすべきではなかったと思う。今残っておる三部落でなお長野県に残留をしたいという数が過半数以上であれば、私もこの委員会で文句は言いません。ところが初めから岐阜県へ合併をしたいというのが三分の二あるのですよ。それをあなた方はほおかぶりをして、少数のために多数を犠牲にしておるというような不公平な行政をなぜしくのか、こういうことを私は言っておるのです。あなたはその点についてうしろめたい点はないのですか。
  112. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 これはやはり総合判定の問題でありまして、当時それらの住民の動向を探るために住民投票をやったらどうかというような話もあったのですが、あれほど事態が紛糾しておる際に住民投票等をやりますことは、さらに事態を悪化させることになるのではないかという反対もございまして住民投票のことは実は行なわなかったのであります。当時中津川市の方からの資料も出ております。地元の資料もいろいろ出ております。それを総合判定をいたしました際におきまして、全体の三分の二というものは明らかに中津川市であるというような判定は実はわれわれは下さなかったのであります。いろいろの資料を総合的に判定をいたしまして、やはりかなり反対派も多いというところから最後的な判定を下したわけであります。
  113. 楯兼次郎

    ○楯委員 間違っておったと思えば改めればいいではないですか。いまだに間違った取り扱いについて固執しておることはないと思う。だからなるほど長野県側の残存の方の運動、合併受け入れの方の運動、賛成、反対と、数が違っておったということはわれわれも認めます。しかし常識的に考えて、それも五対五と四対五というような数字なら、これはなかなか当時判定がむずかしかったということもいえるのですが、今現われておる数字というものは当時わかっておったはずなんです。あなた方がそれがわからぬといえば、あなた方実際どうかしておったと私は思う。だから少数のために多数を犠牲にしておいて、そうしていまだに当時実情がわからなかったなんということは、ほんとうにこれは三百代言ですよ。しかし過去のことを言っても今さら仕方ありませんから、将来のことをお伺いしたいのですが、長官も聞いておっていただきたいと思います。中央審議会は、全員異議なくこれは中津川市に合併すべきであるといっております。ここにありますからちょっと読んでみます。「関係地域の今後の発展と住民福祉の増進のために中津川市と合併することが必要であると認められる」と中央審議会は答申しております。しかも現地へ行けば、中津川市にしかもう出口はないのです。何かバスでもほしいというときには中津川から雇って、岐阜県側から雇って神坂村に出るのです。それから学校も、高等学校あたりは、たとい長野県の高等学校へ行っておる生徒でも、中津川市まで出てきて、汽車に乗って、そうして長野県に行く。また中津川市の高等学校へ入学する人の方が多いのです。こんなことは、よほどどうかした人でない限り現地へ行けば当然なんですよ。それを一部の政争の具といいますか、政治家のためにこんな判決を出して、今日苦境に陥れておる。しかも残留をいたしました峠、馬籠、荒町の三部落は、農協は——農村でありますから農協がありますが、それは両県にまたがる組合として申請を出して許可をされておるわけです。だから岐阜県側の中津川市農協として全部やっておるわけです。最近長野県の方で六十四名であったかと思いますが、無理に脱退をさせて支所というものを作った。ところがこれは看板だけで、いわゆる卵の集配とか、いろいろな農協の仕事は、全部両県にまたがる申請を出して許可を得た中津川市の農協がやっておるのです。それから消防団、婦人会、それから青年団、とにかく村にあるありとあらゆる団体が、長野県にありながら中津川市に所属しておるのですよ。そういう実情なんです。  それから学校教育問題を取り上げると一番よくわかるのですが、三十五年度に入学する児童は新しい学校——これも私は全くばかげたことだと思うのですが、学校が一つある。その学校は、中津川市の方に編入された地域にあるわけです。そこでさっそく約四千万円の金をかけて学校を新築したわけです。残存した方たちのために作ったわけです。ところがその学校に行っておられる人は、旧中津川市の学校には五百二十四名の生徒が現在おるわけです。ところが新しく約四千万円かけた学校には九十六名しかおらぬのです。五百二十四対九十六ですよ。だから児童数から申し上げれば、九十六名のために自治庁が判定を誤まって五百二十四名が犠牲になっておる、こういうことが言える。昭和三十五年度の入学児童数を見ますると、合併をした中津川市の学校に入学する児童は五十四名です。ところが四千万円ばかりかけた学校に入学する児童は六名ですよ。この事態を見て、長官が笑って今後措置しないということならば、もうここで幾ら高遠な議論をしたり答弁をしていたってほんとうにしませんよ。自治庁というものは何をやっておるのですか。今私は二、三の具体的な例を申し上げましたが、この点についての大臣の所見を一つ承っておきたい。
  114. 石原幹市郎

    石原国務大臣 町村合併はなかなかむずかしい問題を各地にまだ残しており、ことに県を異にするいわゆる越県合併の問題は非常にむずかしい問題を残しておるところが若干ございます。中津川の問題も、私も就任しましてからいろいろ聞いたのでございまするが、政治家のためにとかいろいろ言われましたが、岐阜県の方にも非常に有力な大政治家がおって、しかるにそういう結論になったということは、やはり何かいろいろ深い事情があったと私は思うのであります。その当時のことを私はよく承知しませんのではっきりしたことは言えませんが、結果の事実から見まして非常に地域住民のためには不便なことが残っておるのじゃないかという感じがいたします。ただその地域は何か史跡の関係とか、そういうことで住民感情、県民感情の非常に強い問題があったやにも聞いておったのであります。しかしそういう問題だけでも割り切れない問題であろうと思いますので、今後の事態の成り行きいかんによりましては十分研究していかなければならない問題ではないか。まあこれ以上のことは、私ここではちょっと言えないのであります。
  115. 楯兼次郎

    ○楯委員 私が岐阜県側だから、ここでこういうことを主張すると、いかにもなわ張りのようにとられますが、そうじゃないのです。私の住んでおる恵那郡で愛知県に合併する村があったのです。これは反対、賛成を一年前にやったのですが、何も文句を言わない。これはもう地域的条件からいって当然いくべきで、反対も賛成も何も起きておらないのです。そのまますと何の支障もなくいっておるのです。われわれはそんなけちななわ張り根性に立って主張しておるのじゃないのです。これは現地へわれわれが行ってみると全くかわいそうだと思う。何をやるにも争っておる。こういう状態でありますから、ただこの委員会で通り一ぺんの、何とか善処しますということではいけないと思う。ほんとうに解決する方途を一つ見つけていただきたい。  それからその問題に関連をして、いまだに境界線が引けない。これを局長、一体どうするのですか。だから選挙になると両方から投票用紙がくるのです。一人で二枚行使できる。税金は両方からきて両方で取られるのです。これはどうするのですか。
  116. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 それに付随する事態というものが起こっておることも承知いたしております。ただこの点につきましても、実は両県等のいろいろないきさつがございまして、長野県の方からも独自で線を引いて告示をしてしまう、中津川は中津川で独自で線を引いて告示をしてしまうというようなことがございましたために、そういう非常に不都合な結果が現実になお残存していたしておるのであります。ただこの問題につきましては、私といたしましては、やはり境界線の問題ということだけで解決すべき筋合いではございません。やはりこの問題はもう少し根本的に、背後関係があるものですから、そういう問題と合わせて、その一環として取り扱って参りませんと、またぞろああいう紛争というものを大々的に巻き起こすということにもなって参りますので、実は気になりながらもうしばらくこれを静観するということで放置いたしておるわけであります。けしからぬと言われればけしからぬかもしれませんけれども、私といたしましては、やはり境界線の問題として取り上げてもなかなか解決のつく問題ではない、根本的な問題と合わせて解決すべきである、かように考えております。
  117. 楯兼次郎

    ○楯委員 それで私は局長に聞いていただきたいことがあるのですが、中津川市に合併した湯舟沢という部落、ここにも当時反対者があったのです。ところが合併をした湯舟沢部落についての反対者は、その後喜んでおるならば格別、反対のはの字も言わぬのです。ところが残された三つの部落については、今なお三分の二の人たちは、あくまでも中津川市にいくのだといって反対をしておる。こういう事態をよく一つ考えていただきたい。湯舟沢部落については反対派の人々も何の反対もしない。喜んでおれば格別ですよ。現地に行けば当然なんです。だから政治家の我田引水に巻き込まれないように一つ自治庁は骨のあるところを見せて下さい。その方が喜ばれますし、このままほっておいたって一年や二年では解決しないだろう。そんななまやさしいものではない。これはほかにも例があると思う。だからこの際そういうものを一括して、自治庁は公平な住民の福祉を考えるのだという審議会の意見通りに緊褌一番腹をきめて措置していただきたい。その後の趨勢を見てまたここでやりましょう。      ————◇—————
  118. 纐纈彌三

    纐纈委員長代理 この際お諮りいたします。すなわち、理事会の申し合わせによりまして、地方税法の一部を改正する法律案臨時地方特別交付金に関する法律案及び地方財政法及び地方財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案を審査するため、本委員会に小委員十一名よりなる地方税法の一部を改正する法律案等審査小委員会を設置することとし、その小委員及び小委員長の選任につきましては、先例により委員長指名に御一任を願いたいと存じますが、これに御異議がありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 纐纈彌三

    纐纈委員長代理 御異議がないように認めまするので、そのように決しました。  それでは小委員に       金子 岩三君    亀山 孝一君       川崎五郎君    纐纈 彌三君       高田 富與君    津島 文治君       吉田 重延君    太田 一夫君       加賀田 進君    安井 吉典君       大矢 省三君を指名いたします。  なお小委員長には川崎五郎君を指名いたします。  なお本小委員会の小委員及び小委員長から辞任の申し出がありました場合には、そのつど委員会に諮ることなく、委員長においてこれを決定することとし、またその補欠選任につきましては、委員長指名に御一任願っておきたいと存じますが、これに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  120. 纐纈彌三

    纐纈委員長代理 御異議なしと認めます。よってそのように決します。  本日は、これにて散会いたします。     午後二時十三分散会