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1960-02-24 第34回国会 衆議院 地方行政委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月二十四日(水曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長代理 理事 渡海元三郎君    理事 飯塚 定輔君 理事 纐纈 彌三君    理事 田中 榮一君 理事 吉田 重延君    理事 加賀田 進君 理事 阪上安太郎君    理事 門司  亮君       金子 岩三君    亀山 孝一君       高田 富與君    保岡 武久君       山崎  巖君    太田 一夫君       川村 継義君    佐野 憲治君       野口 忠夫君    安井 吉典君       大矢 省三君  出席国務大臣         国 務 大 臣 石原幹市郎君  出席政府委員         総理府事務官         (自治庁財政局         長)      奧野 誠亮君         総理府事務官         (自治庁税務局         長)      後藤田正晴君  委員外出席者         大蔵事務官   大村 筆雄君         (主計官)         専  門  員 円地与四松君     ――――――――――――― 二月二十二日  公共事業に対する地方負担制度改革に関する請  願(鈴木善幸紹介)(第四八九号)  行政書士法の一部改正に関する請願(天野公義  君紹介)(第六〇四号)  同(高橋禎一紹介)(第六三九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十九日  交付公債制度廃止等に関する陳情書  (第八号)  同(第七五号)  同(第七六号)  同(第七七号)  地方団体間の財源調整反対に関する陳情書  (第九号)  地方税法改正に関する陳情書  (第一〇号)  工場誘致条例等により減税措置をした新設工場  の減税額に対する財政特別措置に関する陳情  書(第二七号)  地方公務員退職金制度に関する陳情書  (第七四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  地方財政に関する件(昭和三十五年度地方財政  計画)      ――――◇―――――
  2. 渡海元三郎

    ○渡海委員長代理 これより会議を開きます。  濱地委員長には都合により本日出席できませんので、その指名によりまして私が委員長の職務を行ないます。  地方財政に関する件につきまして調査を進めます。昭和三十五年度地方財政計画に関する質疑を続行いたします。加賀田進君。
  3. 加賀田進

    加賀田委員 私は、先般説明のありました三十五年度地方財政の全般的な質問に入る前に、先日、十九日だったと記憶しておりますが、当委員会において渡海委員から、いわゆる全国的に波及いたしておりまする地方議員歳費値上げ問題に対して、自治庁としてよき指導をするように善処を要望されたのですが、聞きますると、その後なお東京都等を中心として全国にそういうきざしが濃厚になっておるということを聞くわけです。地方財政計画によりますると、議員の報酬は年間昨年と同じように五十九億ということで計画されておりますが、これが実施されて参りますと、わずかであろうとも、やはり地方財政計画支障を来たして参ります。この点に対して、自治庁はその後指導されたかどうか。もちろんこれは地方自治体自治性自主性というものを極端に侵してはならない非常にむずかしい点もあろうと思いますし、あるいは歳費値上げそのものにおいても、全国で非常に高低が激しいので、一律には全部値上げをしてはならないというような指導をすることが困難な状態もあろうかと思いますが、その点で、現在までにおきまして努力されたか。されたら、そのされた経過について御報告願いたいと思います。
  4. 石原幹市郎

    石原国務大臣 ただいまお話がありましたように、最近地方議会議員歳費の引き上げ問題がだいぶ問題化しておるようでございます。この問題に対しまして、ただいま全国の様子をいろいろ見ましても、現在においても非常に高低があるようでございまして、一部非常に低いところもあるようでございます。こういうところも、一律に引き上げは一切いかぬとかいうような指導もどうかと思っておりまするが、しかしまた高いところへ右へならえというような傾向がずっとできても、これは大へんだと思っておるわけでございます。それぞれの県の財政力といいますか、経済力——公務員給与についても、いわゆる地域給的観念が若干あるのでありますけれども、そういうものがあってもいいと思っておるわけでございます。その後、再建団体などで相談にくるようなところもちょこちょこあるのでありますが、そういうところには極力自粛を要望いたしております。それから災害のひどかったところなどは、自発的に自粛傾向も出ておるようでございます。また最近一、二問題になっておりますようなところに対しましても、善処方を要望するというような措置もとっております。総体的には、今回御検討を願っておりまする地方財政計画に基づいた地方財政の運用、運営等について、いずれ全般的な通牒を出したいと思っております。また、なるべく早い機会に出したいと思っておりますが、その際に、議員歳費等の問題につきましても、私はただいま申し述べましたような意図を盛り込んで善処方を要望するつもりでおります。
  5. 加賀田進

    加賀田委員 目下都会議員歳費値上げが非常に大きな問題となって出ております。東京都下におきましては、約六つの婦人団体等先頭に立って、まだ行政水準住民要求に沿わない現状の中で、こういう値上げということは不当だということで、世論として非常に反対ののろしが上がっております。しかもこの内容を見ますると、値上げ理由としては、都庁の方では、昭和三十一年に一度上がったので、その後二年間で地方公務員は大体一八%の定期昇給値上げがあった。その後昨年の暮れ、ずっと大阪を初めとして大体二府八県にわたって議員歳費値上げがあった。こういう歳費値上げブーム地方公務員のべース・アップ、この二つが私は大きな理由になっていると思うのです。従ってこの歳費性格は、公務員給与ベース値上げと並行して行なわれなくてはならない性格のものであるかどうか。それから今申し上げたように、各議員において、地方においては非常に歳費高低があるわけですが、そういうもので、単なる歳費値上げブームという理由の中で、聞きますと、今度議長が値上げされますと十一万円、総理大臣と同じような歳費になるんだというようなことで非常に問題をかもし出しておりますけれども、こういう歳費値上げ理由としてあげられた二つの問題の中で、特に今申し上げた一般職員給与値上げとスライドして上げるべき性格のものであるかどうか、この点に対して長官としてどう考えておられますか。
  6. 石原幹市郎

    石原国務大臣 議員公務員給与関係の問題でありますが、これは国会議員につきましては、一般職国家公務員の最高を下ってはならないというような一応原則が立てられておるわけであります。地方議会議員にそのままこの考え方をするかどうかということは、これは別ですが、地方議会議員歳費の問題につきましても、何かこういうふうに値上げのいろいろ問題が起きた場合には一応基準的なものを行く行くは考えていかなければならないのではないかということで、今一つ研究材料にはなっておるのであります。しかしスライド的にこれをどうしなければならないとかいうことまで今考えておるわけではございません。国会議員一般職国家公務員、それから地方議会議員地方公務員というようなことも、非常に問題が複雑になってきますと、何らかそういうことも検討してみなければならないのではないかということを今研究材料一つにしております。都議会の問題につきましては、先ほどもちょっと触れたのでございますが、いろいろ当局と話し合いをしまして善処方を希望はしておる状況であります。
  7. 加賀田進

    加賀田委員 それで当面都議会の問題が大きく日程に上がっておりますので、やはり住民納得のいく状態の中で歳費値上げの問題が処理されなければならないと思います。今のように婦人団体の六団体先頭に立って、ほとんどの住民反対しておる。しかも不交付団体として、富裕都市といわれておりますけれども東京都庁行政水準というものは必ずしも近代的な経済状態国民生活向上にマッチした行政向上というものがまだなされていないと思うのです。そういうところからやはり住民不満というものが出てきておるのではないか。だから都政を通じて住民要求に沿って十分なる行政が行なわれておって、なおその上に財政の余裕があるということになりますれば、これは住民といえども、当面歳費値上げに対してしている反対という大衆運動の形としては生まれてこないと思うのです。従って、やはり地方財政のあり方と、そうして議員歳費値上げの問題との関連性の中で問題を考慮していかなければならない。すなわち、こういう問題で議員住民とがだんだんと離間するということは、やはり地方自治体行政の面からも非常に将来問題を投げてくるので、できるだけ住民納得の上に立ってこういう問題を処理するように、長官として都庁の方へ指導を願いたい、これに対して長官の御意見を承りたいと思います。
  8. 石原幹市郎

    石原国務大臣 先ほど申し上げましたように、その気持を持ちまして都庁あたりとも今十分連絡をとりつつあるわけであります。なお、先ほど一言申し落としましたが、公務員との給与関係についてお尋ねがあったのですが、最近公務員給与の問題で改定されておりますのは中だるみ是正であるとか、あるいは初任給是正であるとか、そういう比較的低額者の方の給与改正されたというわけで、一八%公務員給与が上がったから議員歳費をそれに並行して考えなければならぬということは、この場合は私はあまり当たってない。かように考えますので、御意見十分心をいたしまして、自治権の侵害にならない範囲内で指導をしていきたいと考えます。
  9. 加賀田進

    加賀田委員 これは非常にむずかしい点だと思うのですが、各地方議員の中で、再建団体とあるいは自主再建団体交付団体、不交付団体に対して、いろいろなばらばらな点がある。やはり自治庁として将来研究していただいて、歳費の適正な問題に対しては明らかに指導していっていただきたいと思います。  それでは質問に入りたいと思いますが、まず地方財政の全般的な問題を論議する前に、今、今度の国会で最も大きな論議の焦点になっておりまするいわゆる日米安全保障条約改定に基づいて地方財政に及ぼす影響について、あるいはそれらの点に対して自治庁としてどう検討され、それに対処されたかという点について御質問いたしたいと思いますが、御存じのように、昭和二十七年に地方税に対する特例法が制定されたのです。この当時は占領下で、引き続いてサンフランシスコ条約が結ばれて、その結ばれた経過に基づいて安全保障条約ができた。行政協定が続いて行なわれた。いわゆる占領下の継続的な傾向の中でこの地方税に対する特例という問題が、引き続いて駐留軍に対するいわゆる特権として与えられてきたわけですが、ところが今度の改定は、政府も言っている通り、今まで非常に不平等だった、占領下の継続のような印象を国民に与えておった、その不平等な安全保障条約を、独立国家相互間の対等立場に立つ改定にするんだ、こういうことで、全く私は性格が変わってきていると思うのです。平たく言えば、現在行なわれている安全保障条約というのは、アメリカに対する基地貸与協定的な性格を持っておった。今度はやはり双務的な関係だといって政府説明されておる。にもかかわらず、ずっと調べてみますると、それに関連した各省、大体七省にわたっていると思うのですが、全部関連して、新しく結ばれる安全保障条約に基づいて諸般改正案というのが出てきている。総理府関係地方税につきましては、何か異なった改正というものが出てくるんじゃないかとわれわれは期待しておったわけです。ところが見ますると、依然として占領から引き続いていわゆる基地貸与協定という不平等な条約の中に行なわれた特例法と、内容は現在ほとんど変わらない。単に安全保障条約の第三条が六条に変更されるとか、あるいはその内部には相互協力という字句が新たに挿入されるという程度であって、従来の米軍に与えられていた地方税に対する特権というものは少しも変わっていないのです。そこで、この問題は地方財政に対しても大きな影響があるし、従来地方自治体におきましてもいろいろな問題がかもし出され、不満な点もあったわけです。ところが性格対等立場に立ちながらも、こういう特権を依然として与えられてきている。ここに私は、地方財政に対する影響というのは新しい見地から検討しなければならぬときがきているのではないか。これに対してやはり閣僚会議にも出席されている長官としては、この地方財政、引き続いて地方税に及ぼす影響等に対して、行政協定を結ぶような場合、あるいは協定される過程において相談があったかどうか。もし相談があったとするなら、自治庁長官としてどの点を強く主張されたか、この点に対して一応明らかにしていただきたい。
  10. 石原幹市郎

    石原国務大臣 率直に申し上げまして、今回の行政協定改定にあたりましては、事務的には連絡は幾らかやっておったと思いますけれども、私に対して特別の相談はございませんでした。というのは、大体今回の改定にあたりましては、行政協定の名前を今度条約にするにあたりまして名称変更になった、その程度織り込み方でございまするので、特段相談はなかったと思うのであります。従来の行政協定につきましても、財政影響のある問題といえば主として地方税法関係だ、そういう問題だろうと思うのであります。そういう点につきましては、従来からも普通の一般関係については税法の適用のある面ももちろん考えられておったのでありまして、そういう面から特段に今回改定しなければならないという必要を生じておる面がない。こういうことから大体名称を変えたというにすぎない状態でありまして、当局としても特別に深く検討していかなければならぬ問題は今のところはないのではないか、私はかように考えております。
  11. 加賀田進

    加賀田委員 私は冒頭に申し上げた通り、今度の安全保障条約性格は、いわゆる独立国家相互間の対等立場に立つ共同防衛という形が出てきておる。二十七年にこの法律が提出されたときには、これは占領軍大差がないのだ、占領軍が現在持っておる特権大差がないのだ。こういう形で提案されて、しかも委員長報告の中でもその点が明らかになっておるのです。だから私は占領と被占領という国民的な関係の中で占領軍が持っておった特権、このことが地方税においても同じように前の安全保障条約の中には認められてきたのです。ところが、今度は対等立場に立って安全保障条約が結ばれるとするならば、米軍に対する特権は違った立場に立って検討されてこなければならぬと思う。だから占領軍が持っておった特権をそのままずっと今度新安保条約の中に認められるとするならば、占領軍そのもの特権地方財政に同じような影響をしてくると思う。だから、それは安全保障条約改定に基づいて新らしく検討する内容はないというような大臣の答弁でありますが、私は性格が全然異なってきておると思うのです。異なった見地から地方税に対しては免税措置が講ぜられておるのです。対等であるとするならば、少なくとも現在の自衛隊に与えられておる程度の緩和というものはせなければならない。アメリカ軍といえども、やはり特別の権利を、特権財政法上にも与えることがなくて、自衛隊程度の同じような処置を講ずべきが、やはり相互独立国家間における性格ではなかろうかと思う。申し上げますと、これは二つに分かれておる。軍隊そのものに対する免税措置と、それから軍人軍属その家族に対する特権二つに分かれておると思うのですが、もちろん軍隊として所有する自動車とかあるいは固定資産に対して課税対象とすることは、自衛隊関係もあって困難でしょうけれども、しかし、軍人軍属軍隊から離れて軍人個人としての生活、あるいは軍属個人としての生活やその家族に対しては、同じようにやはり現在自衛隊に課しておるような地方税諸般課税をすべきが正当ではなかろうか。当時二十七年には、電気ガス税等においては三億八千七百万円免税になるのだ、現在どれほどになるか知りませんが、相当膨大な免税措置が講ぜられておる。しかもこれは自治体としても迷惑しごくのことなのです。独立国家として双務の関係にあるとするならば、国の施策において地方税特例法をもって免税しておる。しかも、その免税に基づく国の政策から起こる地方財政影響に対しては、国が何らの補償もしてくれない、めんどうも見てくれない、財政的な裏づけもしてくれない、こういう関係になっておる。だから少なくとも私は、地方財政を守る立場に立つ長官としては、この安全保障条約改定される前に、現在の特例に設けられる米軍に与える特権というものを検討して、自衛隊程度にこれを緩和すべき性格を持っておると思うのですが、もちろんその具体的な交渉がないために、なおそういう問題に対してはいろいろ論議をしなかったという説明でありますけれども長官としては、そういう安保条約性格の根本的な変更に基づく地方財政影響を及ぼす地方税特例に対しての再検討をする意思があるかないか、この点に対して一応御説明を願いたいと思う。
  12. 石原幹市郎

    石原国務大臣 私も、この詳細な何は心得ていないのでありますけれども軍隊としての直接の行動に関する面であるとか、あるいは基地に関する範囲内のことについては、相当免税その他されておる点もあると思いますが、軍人軍属といえども個人としての行動につきましては、従来からも課税対象その他にしておることも相当あるのでありまして、そういう意味で、今回安保条約性格は御指摘のように変わってきておるのでありますけれども、こういう行政協定関係の面、ことに地方税その他の面について特別に検討しなければならない面は今のところないのではないか。今回御審議を願いますいろいろの特例法関係についても、大体名称変更せしめたという程度のことでございます。いずれその法案関係を御審議願いますときに、さらに詳細に御検討願いたい、かように考えております。
  13. 加賀田進

    加賀田委員 個人行動に対して免税措置はないと言いますけれども、実際はやはりあります。申し上げれば、まずアメリカ軍が直接管理いたしております食堂とか、社交クラブとか、劇場に対しては、入場税遊興飲食税というものは全面的に免税措置が講ぜられております。これは軍隊として行動される場合じゃなくて、個人生活なんです。個人生活の中にも、こういう米軍が直接管理しておるという建前の中で免税措置が講ぜられております。それから電気ガス税につきましても、現在住民は一割の電気ガス税を課せられて支払っておりますが、米軍生活の中には電気ガス税免税措置を講ぜられております。また住民税も、家族に対しても、もちろん軍属に対しても免税措置が講ぜられております。それからもう一つは、米軍が直接事業をするために請負させる請負業者に対しては事業税も、あるいはこれらの持ち込んで参ります、あるいは日本で購入いたします固定資産償却資産固定資産税免税されております。事業税免税され、住民税免税され、ほとんどの地方税というものは免税措置が講ぜられております。これは私は膨大な金になると思うのですが、私もこれは計算はいたしておりませんけれども自治庁としてこういう問題に対してどれほど免税措置に基づく免税額というものがあるかということを検討されたことがありますか。もしあったとしたら、その点を御発表願いたいと思います。
  14. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 安保関係改定に伴います地方税臨時特例法の件につきましては、先ほど大臣からもお答えがございましたが、私どもといたしましては、西独における米軍扱い、その他米軍が各地に駐留をいたしておりますので、それらの実例をも調べまして、それによって改定すべき点はしてもらいたいということで、外務省を通じて実は折衝をいたしたのでございます。今回の新協定によりまして従来と実質的には変わっておりませんが、二点ばかり変わっておるのでございます。一つ契約者指定の問題でございます。     〔渡海委員長代理退席飯塚委員長代理着席契約者指定は、従来米国側が一方的に指定をした契約者について云々、こういうことになっておりましたのを、われわれとしては改訂をしてもらいたいということで、契約者指定につきましては日本政府と協議をするということに改めていただいたのであります。現在指定になっておるのは十社ばかりであります。アメリカ人であってアメリカ国内にあるもの、こういうことになっておるのであります。いま一つは、米軍が使っております日本人の使用者等について源泉徴収義務が従来なかったのでありますが、私どもとしては源泉徴収義務を持たせてもらいたいということで、これまた認められております。それ以外の具体的の免税措置につきましては、先ほど大臣からお答えがございましたように変わっておりません。ただいま個人生活にまで免税措置が講ぜられておるというお話でございましたが、現在免税措置になっておりますのは、軍隊及び軍隊のPXの機関あるいは軍属、こういうような軍の構成員というような者についてなっておるので、それらの人たちが私生活云々という場合は課税になっておるのであります。たとえて申しますれば、私用の自動車税等についても、これは道路損傷負担金の意味合いにおける自動車税は課しております。あるいはまた先ほどお話がございました事業税云々の点も、これは契約者についてそういうことになっておるわけでございます。契約者といいますのは、先ほど申しましたようにアメリカ合衆国が米本国契約をした人、こういうことになっておるのでございます。その履行のためにこちらに来ておる人ということでございます。そういうように、私どもとしては大体西独等における扱い——もちろん税制が違いますので同じだとは申しませんけれども考え方としてはそう大きな開きのない基礎の上に立って免税措置を講じておるような次第でございます。
  15. 加賀田進

    加賀田委員 今西独その他の軍事同盟関係の中で外務省あたりと交渉したということでございますが、実はこの特例法というものは、今特別委員会等でいろいろ問題になっておりますところの修正権とか、そういうものがあるかないかということの関連になって、今度の安全保障条約に基づく行政協定の中に全部載っております。この行政協定が承認されたら自動的にそうしなければならぬという義務づけが実際問題としてある。だから単なる他国との関係とか、そういうものだけで自治庁外務省だけと交渉されて、この問題が変更されない性格のものである——これはそうでしょう。行政協定が結ばれた場合に、行政協定に基づいて地方税に対する特例措置範囲というものが決定される。現在されておるのです。今申し上げた通り、もちろん行政協定十二条には、国内における商品の供給品に対しては、これは特例法というもので、軍そのものが必要とする場合は、物品税通行税揮発油税あるいは電気ガス税等免税になるということがちゃんと載っております。だからこの特例法そのものを変えるということと行政協定を承認するかしないかということは不可分の関係にある。そうでしょう。そこで問題になるのは、これは地方財政に対していろいろ支障を来たしておる。だからこの特例法改正することは、われわれ立法権を持っておる国会として当然なす権利を持っております。ところが双方国家間における行政協定にはすでにこれが網としてかぶさってくるわけであります。これらの矛盾が今国会論議されておる修正権があるかどうかということの第二義的の問題として現われてきておる。だから今私が申し上げました通り行政協定を結ぶときに、地方財政影響する地方税特例に対して、話をしたかどうかということを言っているわけです。現在なされているこの改正案の中で、個々の問題を特に独断で変えることはできないのです。われわれが自民党と協力して、この特例法を、何とか地方財政を助けるために一応免税の一部を緩和しようということで出しても、もしそれが通過されても、この行政協定が一緒に国会で承認された場合の矛盾というものが起こってくる。そうすると、実質的には、私たちは法に対する修正権とか、あるいは改正する提出権というものはないような形になってきている。ここに私は、国政として行なうこの行政協定に基づく地方財政の問題は、これは自治体の責任じゃないのですよ。自治体は免税にしてもらいたいとか、あるいは米軍日本に来るとその地方は豊かになるから、それくらいの免税点は当然だからけっこうでございますというような、地方自治体の要請と了解に基づいて、その特別の法というものはできたんじゃないのです。国の施策として、外交政策として生まれたところに、私は国としてその財政欠陥を補う義務がある、こう考えているのです。だから長官に、この特例法一つ手心を加えて、一部を免税緩和して地方財政を救ってくれというような、そんなやぼなことを私は言いません。実質的に努力したって、今の自民党の外交政策からいけば困難でしょうから……。だから、地方団体が要望もしなければ了解もしない問題で、この特例に基づいて免税措置を講じて、それが地方における財政的ないというな面でやはり一つの圧力になってきている。その圧力は、国の施策として、外交政策としてなされていることですから、これは国の責任だと思う。従って、それらの免税措置によって、地方財政に当然もらわなければならないような住民税とかそれらの問題に対しては、これは国が財政的裏づけをすべきが、私は正しいやり方じゃなかろうかと思う。現在まですでに七年間になります。けれども、そういう問題が少しもなされていない。特にやかましくわれわれは二、三年来いろいろ折衝いたしまして、国有提供のいわゆる基地交付金というやつが十億、昨年十億、一昨年五億出てきただけなんです。その後そういう問題に対しては、住民税とかあるいは電気ガス税とか事業税に対して、少しもそういう財源的な裏づけをしていないというところに、私はやはり目を向けていただかなくてはならない自治庁としての大きな責任があるのじゃなかろうかと思うのです。その点に対してどうです、長官。従来大蔵省といろいろこれを折衝されたかどうか、あるいは折衝されて、大蔵省がどういう見解を持っておるかどうか、この点に対して明らかにしていただきたい。
  16. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 私ども外務省を通じて折衝いたしましたのは、ただいま加賀田先生がおっしゃいましたような意味合いで、行政協定内容そのものに私どもとしては改正を、こういう点をしてもらいたい、こういうことで折衝いたした結果、先ほど申しましたような二点についての改正があったわけでございます。それで、米軍駐留することによりまして受ける地方団体のいろいろな経費の負担がふえるとか、あるいはただいま御質疑のあったような、何というか、負担を受けるというような面についての配慮の上から、現在基地交付金が設定されているんじゃなかろうか、こういうように考えております。
  17. 加賀田進

    加賀田委員 大蔵省は来ているようですが、大蔵省としては、一昨年五億、昨年は十億、本年も十億になっておりますが、これだけで、今申し上げたような地方財政に及ぼす特例法に基づくこういう問題に対しての財源というものは、足りると考えておるか、どうですか、この点をお伺いしておきたい。
  18. 大村筆雄

    ○大村説明員 国有提供施設等の基地交付金は、一昨年五億、昨年十億、今年十億というふうに、十億を計上しておるのでありますけれども駐留軍基地に使われることに伴ういろいろな——いい面悪い面いろいろあると思いますが、そんないろいろの地元の町村の負担等を考慮いたしまして、十億というものが計上されてあるわけであります。おおむねこの程度で間に合うのじゃないか、こう考えております。
  19. 川村継義

    ○川村委員 関連して。今の問題が出ておるので、ちょっと関連して局長に聞いておきたい。今加賀田君が一つ考え方を述べているわけです。これはまた地方税の法案審議のときにお聞きしようかと思っておったのですが、米軍が使っておる電気の消費量は一体どれくらいになっておりますか。まあ日本の電気の相当部分は非常に大工場等の使用が多くて、非課税範囲が大きい。そうして一般民衆の電気料金あるいは電気税等の負担は非常に大きい。そういうことをいろいろ考えていきますと、電気料金あるいは電気税というものは、今非常に重要な課題としてわれわれは検討しなければならぬときにきておる。そういうことを考えあわせてみると、たくさん米軍に対する非課税の問題がありましょうが、その中の一つの電気の消費量、米軍が一体どれくらい電気を使っておるか、そういう点から検討する面があると思うのですが、それをちょっと一つお聞かせいただきたい。
  20. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 米軍の電気の消費量は、実は私今調べておりませんので、調べた上でお答えをいたしたいと思います。御質問の中にございました電気の消費の売り上げの料金でございますね、その料金の中でどの程度現在非課税になっておるかという点は、これは現在売り上げ料金が四千百七十九億円でございまして、そのうち千二百二十四億円が非課税対象になっている、かようになっております。米軍関係につきましては、調べまして次会にお答えいたしたいと思います。  それから、先ほど加賀田先生の御質問の中にございました例の基地交付金の関係でございますが、実は基地交付金は、基地の返還が毎年あるわけでございます。そこで、これは財政当局から見れば、当然毎年減らせるというのが、これは財政当局として私は当然の御主張だろうと思いますが、この点は、加賀田先生からお話がございましたような趣旨を考えまして、私どもとしては減額は困るということで、評価額を訂正してもらうということによって減額の措置をしないということで、大蔵当局に認めていただいておるような次第でございますので、這般の事情も御了解願いたいと思います。
  21. 川村継義

    ○川村委員 今お願いしました米軍基地ですね、あるいはそのほか米軍あるいはその他の軍属等によって経営されているいろいろな施設がある。そういういろいろの面の電気の消費量等を一つできるだけ正確にお調べおき願いたい。  それからついでに、これはどうせ大体わかることでありますけれども、今局長が初めてお話しになった全国の電気の消費量、その中にいわゆる非課税対象になっておるような部面の電気の消費量、それから電気料金、そういうもの等の資料が整いましたら、一つ次の機会にぜひお示し願いたい、こうお願いしておきます。
  22. 加賀田進

    加賀田委員 今局長の説明がありましたが、今市町村の助成交付金というのは、大体固定資産税に見合って支給されているのですが、この十億というのは、適正な固定資産の評価額の上に立って出されたのじゃないのですよ。十億はその当時は——ちょうど一昨年は五億で、昨年は十億に上がったわけですが、その十億というのは、固定資産の評価が正しくやられて、それに見合ってこの十億が適当だということでなされたのじゃないのです。だから、基地が少なくなったからといって、それに付随して同じ率で下げていく性格のものではないと私は思うのです。もし適正な価格が評価されて交付金が算定されたならば、十億や十五億じゃないと私は思うのです。だから大蔵省がそう言うのを、あなた方が大蔵省の肩を持って、前向きで折衝されるときは別として、こちらを向いて、同じ線だというような空気もあるでしょうが、そんな形で出されたのではなくて、私の言っているのは、諸般免税が全部その中に含まれてきつつあるというような、そんなばく然としたことではだれも承知しない。だから私はこの十億自体も、やはり資産評価というものを正しくやって、その上に立って交付金の額を正しく評価された中でこの問題の論議がされるならば、それは私は納得する。大蔵省と自治庁がいろいろ折衝し、われわれも折衝したのですが、当初、五億なんてべらぼうな低い額があるか、それなら来年は十億にしますというようなことで、結局町のバナナ売りのようにして上がってきた。だから、そんなことでだんだん下がってくるのを、加賀田さんの言われるような免税措置を一部含めてというような、そんな論議でわれわれはごまかされない。私はその過程を知っているのです。ただ私が言いますのは、その十億に対して、今さらこれを本年どうしろということは困難でしょうけれども、やはり自治庁としても、大蔵省としても、今申し上げたように、安全保障条約性格が変わってきて、根本的に対等立場に立ったのだ、いわゆる占領軍の延長という性格が根本的に変わったというところに、この免税の全般的なものを再検討すべき性格があるのだ。国としてどうしてもそれはできないのだ、すでに行政協定によって交渉されて変わらないのだというならば、自治体に対する財政的な影響は国の責任ですから、国が補てんすべきだと思うのです。そんなものを全部地方自治体に転嫁さして、自治体は国に対して大きな抵抗力を持っていないから、文句を言ってこないから、この程度にしておこうというような、そんな安易なことでは自治体の財政を守ることはできない。従って、まず川村委員も言ったように、どれだけの金額が総額的に免税されているか。米軍自体に対する自動車税免税や、固定資産税や、あるいは電気ガス税、あるいは地方に課せられた法定外普通税も、これは行政協定に基づいて課税してはならないということになっておる。これらの問題がどれだけになるかということを検討してもらいたい。それから軍人、軍属家族に対してもほとんど免税されています。住民税も全然課してはならないということになっておる。今申し上げた事業税もそうだし、固定資産税もそうです。事業を行なうにしても、ブルドーザーを持ってくると、日本請負業者が持ってきたら固定資産税がつくけれどもアメリカとの契約に基づいてやった場合には固定資産税がつかないということが起こってきている。しかもそれによって上げられた利益に対しても、何ら事業税がつかないということになっておる。こういう免税は、今申し上げたように、政府としては、電気ガス税だけで三億八千七百万円の免税になります。こう言っているのですから、これはやはり調査すれば数字的に明らかになると僕は思うのです。だからそういうものを明らかにしていただいて、これは政府の責任なんだから、本年度は困難であったら、本年から大蔵省あるいは外務省と折衝して、自治体に財政的な影響を及ぼさないようにしなければならぬ。もしそれが国として補償できないなら、行政協定改定してもらうよりほかにない。それができないという立場だったら、これらの財政負担というものは、当然地方自治体に与えるような方法を講ずべきが私は正しいと思うのです。自治庁として、そういう交渉をする意思があるかどうか、大蔵省として、そういう要請にこたえる意思があるかどうか、その点を明らかにしてもらいたい。     〔飯塚委員長代理退席、渡海委員長代理着席〕
  23. 石原幹市郎

    石原国務大臣 先ほど来から、安全保障条約性格がいろいろ変わったのだからということでございますが、免税であるとかどうとかいうものは、やはり駐留軍が公用というか、軍としての活動範囲のものは、これは免税する。大筋はそういう建前で従来からきておると私は思うのでありまして、こういう考え方は、ひとり日米だけの間でなく、NATOの行政協定でも、これは世界的に通じた一つ考え方ではないかと思うのであります。そういう意味で、条約性格が変わりましても、こういう問題について根本的に考え方が変わるということには、私はならないのじゃないかと思います。  ただいまの基地交付金その他の問題につきましては、不十分な点があれば、これは当然われわれの方として大蔵省に研究してもらわなければなりませんし、また地方団体間の問題については、交付税の配分等にあたって、収入の少ないところにはそれだけ交付税の配分がふえるという調整がそこに行なわれておるのでありますから、さらに具体的に、交付金の足りないような問題等がございましたならば、今後とも大蔵省と折衝したい、そういう気持でおります。
  24. 大村筆雄

    ○大村説明員 ただいま長官から御答弁がございました通り、問題がありますれば、私どもの方も十分検討して参りたいと思います。地方財政影響を与えているならば、それは地方交付税を中心といたしまして財源措置をいたしたいというように考えております。
  25. 阪上安太郎

    ○阪上委員 今の加賀田君の質問で、長官は国際条約の慣例として云々というようなことを言っておられますけれども、それはそれでいいと私は思う。ただ地方財政影響を与えている部門についてどうするかということを、今加賀田君は質問したのじゃないか、こう思うのであります。従って、国の施策に基づいて、あるいは外交上の問題に基づいて、地方自治体財政的な減収を大きく与えているという問題について、国としてどう考えるかということでありまして、これは当然補てんされるべきものだとわれわれは考えるわけであります。  そこでこの問題について、こまかくお伺いしておきたいと思いますが、六条に基づく五条の二項の道路使用料その他の課徴金を課さない、その額が一体どのくらいになるか。それから七条の地方公共団体の公益事業については、これまた優先権を米軍に与えて適当な規制をするということになっておりまして、これが徴収条例との関係で自治体ではどういうふうに扱っているか、同時にその額は一体どのくらいになるか。それから十条の一項の運転免許証または運転許可証あるいは運転者試験、これらに伴って当然手数料の問題が出てくるわけでありますけれども、これに対して手数料を課さないということになっておりますが、この額は一体どのくらいになるか。それから十条の二項の公用車両ないし十条の三項の私有車両、これらに対する扱いは一体どうなっているか、その額はどのくらいになっているか。それから十二条の三項の米軍の公用調達、これの租税の免除、そのうち特に先ほど電気ガス税について質問がありましたが、これははっきりしたものをつかんでおりませんが、揮発油税その他国税を含めてどのくらいの額になっているか、それから地方税の減収の分は一体どのくらいになるか、こういった点。十三条の一項の固定資産税の免除、これは先ほど基地所在地で、交付金との関係で補てんしているとかいないとかいろいろ論議になっておりますけれども、これについては先ほど加賀田さんから話がありましたように、十億というようなものは全く何に根拠があるかわからないようなものでありまして、この点については大蔵省が、昨年の国会におきまして、十二分に調査してその根拠を明らかにするということになっておったと思いますが、いまだに回答がありません。一体その点についてはどうなっておるか。これだけは一つこの機会にお答え願いたいと思います。それから十五条の一項の(a)と(b)、それから二項、三項、四項、これはPXその他の諸機関の免税となっておりますけれども、これについての額は一体どのくらいになっておるか。同時に、それらについて財政計画上どういうふうな措置をされておるか、おわかりでしたらこの機会にお伺いいたしたいし、わかりませんでしたら一つ資料で出していただきたいと思います。
  26. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 ただいま御質問のありました詳細な個々の点についての数字による資料は、次会までに調査をいたしまして、その上でお答えいたしたいと思います。なお御質問の中には、国税当局等との関係もある部分も相当あると思いますので、それらも打ち合わせました上でお答えをいたしたいと思います。
  27. 加賀田進

    加賀田委員 この問題については特別委員会等論議されておりますが、もし政府がこの問題に対して緩慢な態度で、政府自体が地方財政に対する影響に対して何らの措置も講じないということになりますと、われわれはこの特例法改正する権利はあると思うのです。ところが、その特例法改正されても、行政協定関係でどうなるか。いわゆる修正権というものがあるかどうかというような関連が起こってきますから、これは最後に長官としてどう考えておるか、一つ説明していただきたいと思います。
  28. 石原幹市郎

    石原国務大臣 総体論といたしましては、先ほどからたびたび申し上げましたように、一般外国人に対する課税の問題あるいは外交官等の特権を持っておる者に対する課税の問題とか、それから駐留軍といいますか、外国軍隊に対する課税の問題とか、そういういろいろのことがあると思いますが、従来の安保条約に基づく行政協定、それから今回の改正されたいわゆる新条約等も、この大筋の原則に沿うて組み立てられておるものと私は理解しておるのでございます。そこでいろいろ御指摘になりましたような、そのために所在市町村において非常に不都合を生じておるとかどうとかいう問題につきましては、ただいままでお話がありました基地交付金に関係する問題であるとかが中心になると思いますが、これは足らざればさらに大蔵当局とも折衝しなければなりませんし、交付税の配分等にあたってもいろいろ考えられておる問題であると思いますので、原則といたしまして、新しい条約に基づいて特例法範囲内でいろいろ措置されていく問題ではないか、かように私は存じております。
  29. 加賀田進

    加賀田委員 お尋ねしたいのは、実は昭和二十七年の四月十七日ごろだったと思うのですが、当時の岡野国務大臣の提出によって地方税に対する特例法案として出してきたわけです。当委員会においてこれが論議されて、当時社会党は両派に分かれておりましたが、社会党両派と共産党とが反対して、一般の法律と同じように審議してこれを通過したわけです。だから、特例法行政協定との関係があろうとも、一般法と同じ取り扱いがされてきたわけですから、われわれはその特例法が不当であるとするならば、やはり修正等を出すだけの権利をわれわれは持っているわけです。ところが、安保条約修正権であるかないかと同じような性格の中で行政協定にすでにこういう詳細な問題が、十条から十三条にかけてずっと免税措置というもので講ぜられておる。こういう関係の中で、特例法の修正というものは実質的に国会にはあるけれども、それが可能な条件であるかどうかということが問題になってくる。だから実際問題として、これは修正する権限があるのかないのかということをわれわれは議論しなければならない。それはわれわれはやらなければならないと思っております。だからそういう問題に対して、長官の見解をお尋ねしたいわけです。
  30. 石原幹市郎

    石原国務大臣 特例法が絶対に修正できないかどうか、その特例法の方からの問題でありまするが、これは条約の基本に触れない範囲内においては当然できると思います。条約においては大筋のことをきめてあるのでありまするから、それに基づく特例法については、さらに内容を詳細に規定していくという意味で特例法がいろいろできておるわけでありますから、そういう範囲内では特例法の修正はもちろんできると思います。しかし、新条約の根本に触れるような特例法の修正ということになりますると、これは条約と法律が非常に矛盾した、一致しないものができるということで、われわれは考えられないことと思います。ただいま条約修正権があるかどうかということが、国会においていろいろ検討されておるのでありまするが、今日まで考えておりまする私の考え方から申しましたならば、やはり条約全体については承認するかしないかという建前をとるべきであって、個々の条項について修正するということは、私はそういう考え方はとるべきではない、こういう考え方でただいまおります。
  31. 加賀田進

    加賀田委員 私は条約のことを言っておるのではないのです。条約に基づいて結ばれる行政協定の問題なんです。行政協定には、基本的な問題じゃなくして、非常に詳細に載っておるのですよ。いわゆるアメリカの軍人、軍属あるいは家族に対する自動車の免許証についても、今、阪上委員から質問になったように、手数料も取らないというようなことがちゃんと載っておる。ですから特例法にこまかくずっと規定されておる問題は、行政協定の十条から十三条の間において全部載っておるのです。従ってこれは基本的な問題ではなくして、具体的な問題なんです。そういう具体的な問題にこれは全部抵触されてくるわけですから、そこにわれわれとしては疑義を持つ。将来の党としての態度を決定するためにも、長官の意思を伺っておく必要があるのではないかと思ってお伺いしているわけです。
  32. 石原幹市郎

    石原国務大臣 加賀田委員が用いられております行政協定という言葉はちょっとはっきりしないのでありますが、従来行政協定と称せられておったものが、今回は日本においては条約としての取り扱いということになっておるのであります。従いまして、先ほども申し上げましたように、その条章に触れるような意味のことになりましたならば、これは私はやはりできないという考え方をとっております。しかし、その基本に触れない範囲内で、いわゆる条約に基づく特例法改正ということは、これはその範囲内において問題があれば当然あり得る、私はただいまそういう見解をとっております。
  33. 加賀田進

    加賀田委員 長官は、自民党の中でも、関連する法律案が改定あるいは修正できるとかできないとかいう論議が続けられて、まだ閣議でもあるいは与党としても意見の統一がなされていないのですが、そういうわれわれが従来言っている行政協定に基づいた特例法改正できないということになると、立法権との関係はどうなるのでしょう。二十七年の過程を見ますと、特例法として法律が出されたのですよ。そうして論議が重ねられ、賛否が問われて、多数をもって決定された。一般の法律と同じ手続をとってきているのですね。そういう法律をわれわれが修正できないということになると、これは大へん国会立法権を侵害することになるのですが、これはどうでしょう。長官としてこの点はできないと言明されるのですか。
  34. 石原幹市郎

    石原国務大臣 私の考えは先ほどから申し上げておりまするように、ただいまの段階においては、条約を修正することはできないという考え方をとっております。そこで今あなたが言われました従来のいわゆる行政協定も、今度は条約という形になっておるのでありまするから、その条約を修正しなければならないような意味の特例法の修正は、そういう意味で法律と条約が相反するようなものができたならばこれはおかしなものだ、そういう意味において私はできないと思います。しかし、条約は基本をきめてあるのであって、それに基づいて詳細な規定が特例法にいろいろされておるのでありますから、基本に触れない範囲内での特例法の修正ということはあり得る、先ほど来申し上げておる答弁に私のただいまの見解は変わりございません。それで御了承願いたいと思います。
  35. 加賀田進

    加賀田委員 われわれが従来行政協定と言っているのは、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の締結について承認を求めるの件という形で出てきているわけです。だからこれは安保条約の六条の精神に基づいて、こういう詳細な、地方財政影響を持つ地方税特例という形でこういう措置が講じられてきている。だからそれはいわゆる行政協定やあるいは安保条約そのものではなくして、それに基づいての国内法なんですよ。そうすると国内法のわれわれの立法権行政権との関係は一体どうなるのか。行政権として外交的に外国といろいろな条約を結んできた、それに基づいて国内法をどうするかということは、立法権に対する侵害的な性格を帯びてくると思うのですが、それができないと言明されると、どうなるのですか。
  36. 亀山孝一

    ○亀山委員 関連質問。ただいま加賀田委員の御質問、まことにごもっともだと思います。ただし、これは御承知のようにいろいろ問題のある点ですから、どうか政府において統一して御答弁を願いたい。これをお願い申し上げて、加賀田君これ以上の質問は留保していただきたい。
  37. 石原幹市郎

    石原国務大臣 私は、ここで答えておりまする本筋においては何ら変わったものはないのでありますが、いろいろ法律論で議論を進められておりますから、純法律論から申しましたならば、それは法律でありまするから、議会で修正ということはあり得るだろう。しかし一方条約が批准されました際には条約と相反した法律がここにでき上っているということになれば、これは今の原則ではやはり条約が優先することになっておると思います。その範囲内においては条約に相反する法律の部分は私は効力がないのじゃないかと思いますが、こういう問題については、法制局その他でもあるいは憲法論からもいろいろ議論があると思います。きょうは一応この程度の見解を表明いたしまして、亀山委員からもお話がございましたが、政府においてもいろいろ検討いたしまして、もし間違っておればまた別の機会にあらためて御答弁したいと思います。
  38. 加賀田進

    加賀田委員 私は長官がそういう答弁であれば了解しますが、最初からそれは修正できないのだというきめつけ方に対しては、われわれとしてはなお多くの疑義を持っておるので、しつこく質問したわけです。  それから財政に戻りますが、地方財政の根本的な精神について長官としてどういう考え方を持っておるか。もちろんこの地方財政というのは国の予算と違って法律ではございませんから、これこそわれわれが勝手に修正したりするということは実質的にはできないのです。結局表面的には、自治体の行政量に基づいて積み上げ方式のような姿をして地方財政計画というものが出されて参りますけれども、実際にはそういう形にはなっていないのじゃないか。実際には国の施策に基づいて、地方自治体がいわゆる服従的な立場に立ってのこういう地方財政計画が出されてきておる。いわゆる地方財政といっても、一年間の地方行政のあり方や水準というものを決定するのですから、ただ財政面だけをわれわれは考慮して論議することはできない。従って地方行政の水準は地方自治体みずからが考慮して作るものであって、それが積算されてきて、地方財政という形になって生まれてこなければならぬ。ところが御存じのように、今度の国家予算は相当おくれましたから、地方財政計画を発表されるのも例年より非常におくれて参ります。地方財政問題が国の財政政策、行政政策にほとんど左右されてきているというところに、今日の地方行政あるいは地方財政に対する自主性、自立性というものが侵されている大きな原因があるのではないかと私は思います。もちろん私は、地方と中央とを行政的にも財政的にも明確に区分しろというようなやぼなことは申しません。もちろん国自体の責任もあるし、地方自体の責任もある。責任分野を明確にし、財政負担というものを明確にしなければならないと思います。それに対して長官として、将来地方財政のあり方、地方行政のあり方、ひいては地方自治体のあり方というものを、この財政からくる圧迫に対してどうしようとしているか、このままでいいのか。     〔渡海委員長代理退席、纐纈委員長代理着席〕  現在地方の自治体というのは、前にも大蔵省が明確に言ったように、日本の政治状態というものは非常に中央集権化している。これは大蔵省自体も認めているわけです。だから機構の上に立っては、地方自治体自主性や自立性があるようになっておりますけれども財政面からは、補助金とか負担金とかいうものを仰いで地方自治体財政行政の運用をしなければならない。しかもそのウエートというのは九割から九割五分まで中央の財政行政に支配されなければならぬという実態が出てきておる。こういうところに地方財政行政の危険が非常に生まれてくる。逆にいえば、日本の民主政治の土台となる地方自治体自主性が失われてきているから、日本の民主政治の危険というものがこの際生まれてきているのじゃなかろうかと思う。だから根本的に地方財政行政のあり方に対して中央と地方との現在の関連性をどう考えているか。あるいはこのままでいいのか、将来自治庁長官としてどういう方向に努力されるのか、この点に対して明快な答弁を願いたいと思います。
  39. 石原幹市郎

    石原国務大臣 大体今お話しになりました点はごもっともな点が多いと思うのです。私も、地方自治体のあり方、あるいは地方財政のあり方が今日のこのままではいかないと考えておるものでありまして、新しい自治法ができまして、自治体のいわゆる自治というような形式的な形のものはもう相当拡大されて広くなったような感じでありますが、一方地方財政の面から見ますと、私は、御指摘のように非常に中央集権的になってきておると思うのであります。そこでこのままのあり方であっては真の自治の発展ということは期待されないと思っておるのであります。そういう意味で、ただいま税制調査会におきまして、税の配分あるいは財源の配分等についていろいろの検討をされておるわけでありますが、私は、あの調査会の結論に非常な期待を持っておるものであります。何と申しましても、地方に独自のいろいろの税財源を確保しなければ、この問題は何回論議を重ねましても結論は生まれてこないと思います。私どもがたばこ消費税の譲与税化に反対いたしましたのも、やはり独立財源としての税を手放すべきではないということも一つの大きな目標であったのであります。何と申しましても、まず財源を確保していくということでございます。それからその後の問題につきましては、交付税制度でただいまいろいろ運用されておるわけでありますが、今後もこの制度はもちろん存置していかなければならないと思うのでありますけれども、この税財源の配分が適正に行なわれた暁におきましては、これは地方団体の間においても相互にいろいろ考え合っていかなければならないという、いわゆる財源調整と申しますか、そういう問題もここに生じてくる。あるいはさらに市町村の合併等が相当行なわれましたけれども、さらに府県の統合であるとか、地方団体同の統合によりまして地方自治体の基礎を強固にしていく、こういういろいろの問題が生じてくると思うのであります。ただいま提示いたしてあります地方財政計画というのは、総体的に地方財政状況をまとめてみたという表でございまして、国の財政の予算というようなものとは全く性質の違うものであるということを申し上げておきます。
  40. 加賀田進

    加賀田委員 長官として努力されておるということですが、その結果が今度の地方財政計画の中に出ておるわけであります。しかし自主財源によりますけれども地方自治体住民要求に基づいて、その生活状況や社会条件の向上にスピードを合わしながら行政水準というものを向上さしていくだけの財源措置というものが現在なされておるかどうか。今見ますると、地方の単独事業においても、全般の財源の一割にも満たないような状態である。あとは全部政府の道路計画とかその他の計画に基づいて、地方自治体が自動的にその行政を負担しなければならない、あるいは行政を行なわなければならない、こういうことになっておる。しかもその負担金、補助金というものは適正ではない。地方がその事業を行なうという場合には、予算外の実質的な負担というものをなおしなければならない。こういう立場の中で地方財政というものはだんだん圧迫されてきておる。従って私は、やはり地方自治体というものは自主財源というよりも、その自治体の独自の考え方の上に立って、自主的に行政を行なう範囲というものをもっと多くしなければならぬのじゃないか。国がもし国の施策に基づいて地方自治体に仕事をさせるというような場合には、もちろんそれは財政的な裏づけも十分やらなければならない。こういう問題が、逆にいえば、よく問題になっております住民の税外負担という形になって住民にしわ寄せになって現われてきておる。だから、私はもっと補助金を出すにしても、交付金を出すについても、いわゆる実質単価を基礎として——机上のプランに基づいて実際仕事をさせようとすれば、その単価では仕事ができない。これは自治体の問題だけでなく、建設省とか、厚生省とか、各省の問題になりますけれども、そういう仕事を全部引き受けるのは自治体なんですから、その自治体の総括的な責任者というのは自治庁長官ですから、その点で各省とどういう経過に基づいて交渉されておるのか。私は、もっと具体的な問題に対して説明申し上げて、それらの問題を指摘したいのですが、長官として、それらの各省に対してどういう心構えで従来折衝されてきたのですか、あるいは折衝されてきて困難な問題がどこにあるのか。これはわれわれとしても、たとい野党であろうと、自治行政というものを守るためには、やはり自治庁にも支援しなければならない立場が起こってくるでありましょう。だからその点に対しては、長官として懸命な従来の努力の経過か一応御説明願いたいと思います。
  41. 石原幹市郎

    石原国務大臣 ただいまの地方自治体に独自の行政範囲が非常に少ない、いわゆる単独事業が非常に少ないということは、御指摘の通りでありまして、私どももこの点は何とかこれをふやしたいといろいろ考えておるわけであります。ただいままでいろいろまだ実効をあげておりませんけれども考え方といたしましては、国の直轄事業のようなものは、これは全部国が自分でやりまして、地方には負担を負わさしめない、そのかわりに地方的の事業は、補助金であるとかなんとかいうことでなしに、これは地方が独自にやっていくべきじゃないか、こういうような大筋を考えて、三十五年度の予算編成に当たりましても、一時そういう考え方を出して進んでみたことがあるのでありますが、これも結局今のところまだ実っておりません。しかし、考え方の大筋としては間違っているものではないと思っております。  それからいま一つは、やはりかりにそれが一挙に実現できないといたしましても、少なくともいわゆる後進地域のそういう事業は、できるだけ国の負担を多くして、国がこれをでき得る限りまかなうという建前をとる。そうして後進地域に幾らかでも余裕を与えて、独自の事業を伸ばし得るように、こういうような根本的な基本の考え方は、そういう考え方を持っていろいろやっておるわけでありますが、今回の三十五年度の予算編成にあたりましては、いずれもこの考え方はまだ実っていないのでありますけれども、これは今後とも努力を続けまして、今のような考え方で進み、さらに地方の自主財源、税財政の根本的調整を検討してもらいまして、いま少しく自主財源を持ち得るような建前をとって、将来地方自治体の発展をはかっていきたい、こう、いうつもりでおります。
  42. 加賀田進

    加賀田委員 よく財政問題を論議するときに、健全財政か赤字財政かということが言われております。本年度はいわゆる健全財政という形で努力したという説明がなされておりますが、健全財政の反面結局赤字財政という言葉だけで問題を処理するということは適当でないのじゃないか。健全財政というのは、もちろん単年度の歳入歳出が均衡を保たなければならぬということは当然でありますが、それに基づいて前年度の行政水準と本年度の行政水準が、その当時の社会やあるいは経済環境にマッチして行政水準が上がっておるかどうか、こういうところに健全財政の裏づけというものをやはり考えなければならぬ。前年度の行政水準を維持して、本年度は国民がやかましく言うから、あまりやかましく言ったものには少し財政的な援助をしていこうというようなことで日本行政が行なわれていくとすれば、いつまでたっても全地域が後進地域的な行政しかできない。だから本年度の予算を見ますと、行政水準の維持と向上ということで相当うたっておりますけれども向上の面としては、ほとんど私は期待できないような状態が出てきたのではないかと思う。特にこれはいろいろ論議されておりますけれども日本はだんだん生活水準がよくなる、政府の言うように十年後には国民所得が倍になるというのですから、国民生活は私は倍になるのではないかと思います。そうしますと、その国民生活向上に基づいて、いろいろな行政面で努力しなければならぬ点がたくさん起こっくると思う。都会においては、下水道の施設の要求というものは各所に現在起こっております。私が調べて参りますと、現在都市における下水、排水溝の整備は、都市人口に対しては一〇・八%から一一%しか完備していない。しかも水洗便所等は、都市人口におけるこの使用者は四・五%から五%程度の人口しか水洗便所を利用していないということであります。あとは全部旧態依然とした下水処置の中で公衆衛生というものが放置されているという状態です。だから都市の中にでも香水をばらまきながら動かなければならぬという車が現在あちらこちらに散在している。こういうことを考えてみますと、行政水準というものは、一体政府としてどのように考えておるのか。前年度の行政水準を維持するということが行政水準という形で問題を見ているのか。適切な行政水準というのは、一体国民生活経済の上にどの程度政府としては考えているのか。私は、現在の標準の国民生活に合った行政水準というものは、財政的な面も相当あると思うのですが、農村におきましても、都市においても、あらゆる面で思い切った行政水準を高めなければならない要素がたくさんあると思う。政府は、道路で五カ年計画を立てて、一兆円金を使うといっている。ところが、全国の市町村を除いた道路の中で、拡張され、舗装されるのは、全国の道路延長の三割二五分程度だといわれている。あとの六割五分程度は、依然として道路予定地のような形で、しかも道路計画で一兆円使うというのである。もちろん敗戦による崩壊に基づいていろいろ困難な点があろうと思いますけれども、その行政水準というものの考え方に対して、自治庁としてどう考えているのか。ただ行政水準というと、国民要求やその他についてある程度達成されているような印象をみんなに与えている。ところが地方自治体へいきますと、住民要求は千差万別、あらゆる要求をされておる。その一つ一つが全部財政的に困難だからしんぼうしてもらいたい、金がないから、その要求はよくわかるけれどもできないという形が、あちらこちらにも起こっている。それが近代国家として誇りを持った日本行政水準です。これでは私は、産業におきましても、公衆衛生におきでましても、あらゆる面で発展さすことはできないと思う。一体自治庁としては、行政水準というものをどう考えておられるのか、その点を長官として明確にしていただきたい。
  43. 石原幹市郎

    石原国務大臣 今回の地方財政計画の策定にあたりましては、大体今加賀田委員が申し述べられましたような線に沿いまして、ささやかでありますが、できる限りの努力を払っておるつもりでございまして、従来地方が財源で非常に苦労をいたしておりました給与費、給与改訂等がいろいろ行なわれた場合のそういう措置等につきましても、今回はそれを一応財政計画に見込みまして、また税外負担の解消をはかるというようなことについても、一歩前進した計画を立てておるのであります。その反面、今道路の問題等のお話がございましたが、国の公共事業の伸び率に比例をいたしまして単独建設事業の伸びも計上いたしております。それから水道、下水道、こういう公営企業等につきましては、起債のワクもほとんど倍になるような大幅な増額をしておる。また各種の補助事業に対する地方負担分も増加をいたしまして、総体としての財源手当をはかっておる。こういうことで地方行政水準向上を期したいということを考えておるのであります。この行政水準の問題は、ひとりいなかばかりでなしに、昨日予算委員会において門司委員等からも御指摘がございましたが、私もたびたび言うておるのでありますが、東京などの例を考えましても、例のすし詰め学級の問題にしても、あるいはまた下水道、屎尿処理の施設、こういう問題についても、この首都である東京が、ただいまのような現状であります。最も裕福団体といわれている東京ですらこういう状態なんでありまして、そういう意味で、私どもは、さらに地方財政の確立をはかって、全体的の行政水準向上を期していかなければならない、かように考えている次第であります。
  44. 加賀田進

    加賀田委員 今、長官から職員のことが出ましたから、ちょっと質問しておきます。よく地方財政計画の中で、職員の給与が占める率が非常に多い、従って今までは消費的経費といっておりましたが、職員の給与地方財政を圧迫している大きな原因だと言っております。しかもそのことが地方自治体の責任のような印象を全部に与えている。ところが実際問題として、職員の中で七割から八割を占めているのは、いわゆる教育職員と警察の職員なんです。しかもこのことは、自治体が独自の立場に立ってこの問題を増減したりすることはできないことなんです。国の基準に基づいて、教育職員の定数がきまる、あるいは警官の定数がきまる。それで教員の方は、半分を地方自治体が負担する、警官は、警視以下はほとんど全額地方自治体が負担するという形で、教育職員の給与問題あるいは費用の問題等が論議されたときに、全部地方自治体の責任で、これを始末しないからそういう形が起こってくるのだというような印象を与えております。これも国の事業に基づいて地方影響されると同じように、職員も同じ形で国の施策に基づく地方の負担分は非常に大きいわけです。だからこれはやはりそれだけではなくて、国から委譲されてくる事務に対しても、地方公務員が担当しなければならぬ。地方公務員給与に対しては自治体が負担しなければならぬという形で、実際に自治体の独自の行政に基づいて職員が動いているというのは、三割か——三割にならないでしょう。ここに私は、まず職員の問題として、長官自体としても考え直してもらわなければならぬし、世論の印象をもっと的確な方向で把握していただくようにしてもらわなければ、自治体こそ大きな迷惑だと思います。  もう一つ、それに付随いたしまして職員の問題が出ましたから申しますが、昨年非常に大きな災害が起こりましたが、実はこの災害に対する特殊な職員の増員が必要になって参りました。特に一つの例としては、二十八災害で福岡県で大きな災害が起こって、百六十九名か百七十名の職員を増員した。ところが、災害復旧が一応終わったということになりますと、臨時工でもございませんから、お前終わったから首切るというわけには、実際問題としていきません。だから実際には、行政量からいけば百六十九名はもう不必要になったわけです。にもかかわらず、自治体としてはそれを首切るわけにはいかないから、百六十九名という人を雇って行政を行なっていかなければならぬという矛盾が起こってくるわけです。これは昨年の災害に基づいて、各地方自治体にことしも起こってくる。もちろんことしで全部災害は復興するわけではありませんから、ここ二、三年の問題となると思うのですが、そこで私は、自治体の個々のそういう災害対策における職員の増減を自治体だけにまかすのではなくて、何か国家機関でこれをプールして、災害復旧に必要な職員の増員等を地方自治体要求された場合には、そこへ派遣するというような形で、福岡県等で起こったそういう問題を処理するというような考え方を持っておられるかどうか。これは今後地方自治体として将来——現在もなお起こりつつある問題だと思いますが、その点に対して、長官として、自治庁として何か考慮する余地はないでしょうか。二、三年災害復興で使った技術者も相当いるでしょうが、それが完備されたから、お前たち雇ったけれども要らない、首切ってやる、こんな酷なことはできないだろうと思うし、またかようなことを前提とするならば、やはり自治体に協力する職員もなくなるだろうと思う。それを国家的な政策の中でそういう問題を処理するという方法は考えられないか、この点に対して一つ長官の発言を求めたいと思います。
  45. 石原幹市郎

    石原国務大臣 御指摘されましたような問題は、福岡の例をあげられたようでありますが、確かに福岡以外にも和歌山でありますか、そういう問題があったようであります。この災害後の臨時職員につきましては、これは私は多分そうだと思うのでありますが、比較的技術職員が多いのではないかと思います。応急対策の設計をしたりいろいろする。そういう面は、これは建設省あたりで世話をし、あっせんもして行っておるような人も多々おると思うのでありまして、そういう部門は建設省などと今後ともよく話し合いをいたしまして、一そうの努力をいたしたいと思います。事務職員等については、これはなかなか困難な問題がそこに伴うておると思うのでありまして、ただいまこれをすぐどうするということもできませんが、新規採用はあとしばらく何して穴埋めをするとか、いろいろな問題があると思いますが、なおこれは建設省その他ともよく話し合いをいたしまして、具体的なそういう点については、われわれの方としてもできる限りの努力をいたしたい、かように思います。
  46. 加賀田進

    加賀田委員 ぜひこれは各省とも、特に建設省ですが、検討してもらいたいと思います。実際問題として今申し上げたように、二、三年使って首切るというわけには、人情もわいて参りますし、実際労働者の生活権を脅かしますからいきません。といって早く事業を完了したい、職員も増員したい。ところが将来を考えて、この職員の増員に対しては手控えるという形で事業が進行していないという点もあるし、今申し上げた通り途中で首切るわけにはいかない。だからこれは建設省あたりで何かプールして、全般的な問題を処理するような方法で、ぜひ一ぺん御相談を願いたいと思うのです。  それからこれは小さな問題になりますが、実は今度厚生省の方で同和対策事業というもので、モデル地区等を作っていろいろ政策をやるわけですが、いわゆる共同浴場とか隣保館等の建設に対して力を入れるわけであります。聞きますと、この共同浴場等は厚生省の所管になっております。そして二分の一の負担ということになっておりますけれどもも、土地に対する価格の負担がないわけです。地方財政計画の中では、土地の上の建設だけの二分の一の計画を立てている。土地の買収経費まで財政計画の中に含めているのかどうか。地方自治体としてもいろいろ問題を現在出しておりますが、建設省に聞きますと、これは上だけだと言う。まさか月から鎖をぶら下げて浴場を作るわけにはいきませんから、やはり土地というものは必要になって参ります。その土地の購入費はつい自治体の負担になってくる。自治体が財政的に困難だったら、逆に住民の負担として土地を提供してくれという形になる。けしからぬじゃないかと厚生省に言っても、これは前からそういうことになっておる。自治庁も大体了解しておる、こういうことを言う。これは一つの例ですけれども、こういう問題が各所に起こっている。その他いろいろな問題で実質単価に合わないという点も起こる。こういう自治体の予算外の負担というものが起こっておりますが、これに対して自治庁としては、厚生省や建設省にそういう実態を訴えて交渉されたことがあるのか。実質単価と実際に要る費用の条例等できまっている二分の一なら二分の一、三分の一なら三分の一の財源というものを負担すべきが財政上正しいやり万であり、自治体の財政問題を親切に見る方法だと思うのです。この点に対して各省はどう考えているのか、あるいは自治庁としてはそれらの具体的な問題に対して折衝されたかどうか、一つ説明を願いたいと思います。
  47. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 国庫補助負担金に伴います地方負担分につきましては、一応形式的な地方負担額を地方財政計画に計上しているわけであります。従いまして、国の予算の建前と地方財政計画と合っているわけであります。しかし御指摘になりましたように、その補助負担金が二分の一なり三分の二なりの割合で算定されているといたしましても、それだけでは実際仕事ができないというような問題が相当あるわけでございます。こういう問題につきましては、実は年来大蔵省とも話し合いをしておるわけでございまして、大蔵省としても逐次是正していただいている、こう考えているわけでございます。各省といたしましても、やはり大蔵省にそういうことにつきましていろいろ意見を述べておるわけでございまして、そういう点からも若干ずつ是正はされて参っております。そういう意味のしわが地方財政についてはかなりあろうかと思います。同時にまた、そういう意味のしわが府県に寄り、市町村に寄り、さらに住民の税外負担に寄っていっているということも事実だと思うのであります。今回はそういう意味のしわを、住民負担に寄っている部分について思い切ってこれを是正したいということで、地方財政計画上に大きく取り上げた問題でございまして、さらにこの問題につきましては地方交付税制度の改正地方財政法の改正というようなところまで及んで国会で御審議をわずらわしたい、かような考え方をいたしておるわけでございます。ただいま御指摘になりました点につきましては、今後ともさらに一そう全体的に是正されまするように努力を払って参りたい、かように考えております。
  48. 加賀田進

    加賀田委員 大蔵省にお尋ねしますが、今申し上げた問題が各所に起こっておるわけです。大蔵省としては、そういう実態があるということを了解されておるのかどうか。了解されながらも財政的に困難だから当分しんぼうしろということなのか、あるいは地方の、計画以外の実質的な負担というものが各所にあるが、それはあたりまえだと考えておられるのか、そういうものはないと思っておられるのか、この点一つ明確に答弁してもらいたいと思います。
  49. 大村筆雄

    ○大村説明員 お答えいたします。ただいま御質問のような事例は、各省の補助金の中には事例としてはあるようでございます。その場合に大蔵省といたしましては、補助事業性格によりまして、——各省といたしましても、できるなら地方自治体の自前でやってほしいのだけれども、やっぱり補助金を出してやってくれないか、補助金を出してやりたい。それについては全部が全部見る必要はあるまい。たとえば県有地に作る場合もあるだろう。建物の補助金だけ見てやれば、それで地方でもやると言ってくれておるから、ぜひ建物の補助金だけ見てくれという場合もあるわけでございます。そこで建物の補助金だけで地方がおやりになるならそれでもけっこうじゃないかということで補助金が組まれておる、そういう実情でございます。
  50. 加賀田進

    加賀田委員 それはただ形式的な表面的だけの理由なんですよ。自治体としては、住民要求に基づいて公衆浴場も作らなければならぬ、隣保館も建てねばならぬ。長年にわたって住民から自治体に陳情された問題であるから、建物を建てなければいかぬと思っていながらも、財政的な関係から建てられないということです。一方補助金は二分の一だとか三分の一だという政策がある。これを持ってきて、何とか住民要求に基づいて建てようということで努力されているのであって、財政的な裏づけさえしてくれたら、勝手に建てますよ。実質的な財政的裏づけをしてくれないから、その制度の中の二分の一も仰いで、完全に実質単価の二分の一ほしいけれども、それだったら大蔵省はやめておけと、こう言う。住民からはしりをたたかれる。何とかして住民に負担をしてもらいたいという相談もし、住民もある程度やむを得ぬといって、やるか断わるか別として、そういう形で現在仕事がなされておる。だから自治体が、建物の二分の一だけでけっこうですから、どうぞ出して下さいというのは、財政的な現状の中で国庫補助、二分の一補助するということにきまっておるのだから、そういう意味での財政の裏づけしかしてくれないということから、頭を下げて、大蔵省にそういう了解を与えておるのであって、自治体が住民要求に基づいて公衆浴場を建てるのであったら、自治体が建てるのが当然だ、それが最も好ましい、それはあたりまえですよ。ただそういう形態を作るのだったらもっと財政的な裏づけを大蔵省はしなければいかぬ。今度の交付税の税額が上がったといって、減税による百二十二億の財源裏づけだって、交付税が上がったからお前たちいいじゃないかというようなことで、大蔵省が抑えたんでしょう。もっと財政的な裏づけをしてくれて、自主財源というものを地方自治体に与えるなら、何も大蔵省や厚生省や建設省に頭を下げて補助金をもらわなくてもいいんですよ。そういう機構になっているからいっているのであって、しかも今申し上げた通り、実質的な支出の二分の一というのが法の建前じゃないですか。土地だけはやらないというような法の建前じゃないでしょう。単価というものは、建設する費用の全部の二分の一じゃないですか。それは当初から土地の買収費だけは省いた上だけの二分の一という法律の建前なんですか。そういう法律の建前であったとするならば、地方財政計画に土地の買収の費用というものも当然明確に組まなければならぬ性格を持っていると思う。その点、大蔵省ではどう考えておりますか。
  51. 大村筆雄

    ○大村説明員 ただいま同和隣保館のことを例にあげられたわけですが、補助金はその中身によっていろいろ違うわけです。実質のまさに二分の一というような補助金もございますし、あるいは奨励的補助金と申しまして、地方で自主的におやり願うために、多少それに余裕として出すという補助金もございますし、形態はまちまちでございます。これは画一的に律し得ないような状況でございます。そこでその場合に補助対象以外のものがあるがそれはどうするかということでございますが、これは結局単独事業の方からお回し願うことになる、かように考えております。
  52. 加賀田進

    加賀田委員 大蔵省に質問したついでに、もう一つ関連して質問いたしますが、今度不良住宅に対する改良住宅が本年度約二千戸計画されています。同和地区には千百戸、全般的に合わせて二千戸というふうになっております。これは建設費は三分の二が国の補助になっているわけです。それから、清掃費は三分の一が補助になっているわけです。ところが、聞きますると、不交付団体にはこの清掃費を出さないということを大蔵省が言っているので、困っているというようなことでありますし、法の建前上、交付団体、不交付団体の差別なく、法で決定されたこの清掃費の三分の一というものを、大蔵省の裁断に基づいて、これを出さなくてもいいという見解が成り立つかどうか。これは交付団体であろうと不交付団体であろうとも、政令や法律できまった補助金というものは、たとい建設事業であろうと清掃費であろうと、私は同じように出さなくてはならないと思うのです。そういう問題で不交付団体には清掃費を出さないという大蔵省の態度、そういうようなことはあるのですか。あってはならないと思うのですが、もしなかったらない、必ず出すなら出すということで、明確にしてもらいたいと思います。
  53. 大村筆雄

    ○大村説明員 ただいま御指摘になりました点につきましては、私も詳細をつまびらかにいたしません。しかし先ほど申し上げましたように、補助金の性格内容、これは何種もございまして非常にバラエティに富んでおります。従いまして、補助金の中には特に不交付団体には補助金を制限すると法律ではっきりといっておるものもございます。また補助金の性格によりましては、地方財政力を見て出しておる補助金があるといたしますと、特に不交付団体については、それほど出さなくてもいいのじゃないかというものもあるいは中には一、二あるかもしれないと思います。数多くあるのでありますから、ここで具体的に御指摘申し上げるわけにはいきませんが、抽象的に申しましてもそういうことになっております。
  54. 加賀田進

    加賀田委員 そうすると、私が今具体的に指摘した問題について、まだ承知してないわけですね。
  55. 大村筆雄

    ○大村説明員 そうでございます。
  56. 加賀田進

    加賀田委員 これは希望ですが、不交付団体の方でも、これは私どもの選挙区じゃないのですが、そういうことが要請されておりますから、交付団体、不交付団体の別なく、法にきめられたものはきめられたものとして、適切な処置を講じていただきたいと思う。  それから歳入問題ですが、大蔵省と自治庁といつもけんかするようなことになるのですが、実は聞きますると、地方財政計画で、歳入で最も大きな伸びを期待しているのは地方税だというのですが、当初自治庁は大体本年度の財政状態経済状態を見て地方税では六百五十億程度の伸びがあるのではないかといっていろいろ財政当局に折衝をされた。大蔵省は、いや、そうじゃないのだ、むしろもっと伸びるのだといって具体的に出されたのは九百三十五億と聞いております。結局出てきたものは、大野さんじゃないが、二つ合わせてまん中で切ったのかどうか知りませんが、八百二十一億というのが出ておる。これは大蔵省と自治庁がどういう折衝をされた過程の中でこういう二つの相違点があったのか、その相違点の終着駅が、この二つを足して二で割った、足し算と割り算で計算されたのか、この点を一つ説明していただきたいと思います。
  57. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 御指摘のように、予算の折衝過程ではそういう経緯がありましたが、その相違点、争点となりましたのは、要するにそれぞれの課税の容体についての伸びの見込みが一つと、もう一つは徴収率でございます。この二つの点からの争点があったわけでございますが、双方それぞれ資料をつき合わせましてお互いに検討をいたしました結果、八百二十一億という結論が一番正しいということで、こういう見込みになったわけでございます。
  58. 加賀田進

    加賀田委員 交付税の算定基準となる地方税に対して、市町村が七〇%を八〇%にしようとか、府県の八〇を九〇にしようとか、いろいろ論議されたその差ですか、これはそういう計算方式の基礎に基づいた相違なんですか。
  59. 後藤田正晴

    後藤田政府委員 全然別のことでございます。
  60. 加賀田進

    加賀田委員 そうすると、今度の地方財政に大きな影響のある交付税の基準財政収入額の算定基準となるのは、やはり市町村は七〇、府県は八〇ということにたっていますね。そうするとこれは七〇、八〇で出ているわけですか。
  61. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 地方財政計画に上がっております地方税収入は、標準税率に基づいて算定した税収入であります。地方交付税制度については、別に基準財政収入額の算定方法を変える考えは持ち合わせておりません。
  62. 加賀田進

    加賀田委員 これは従来の実績に基づいた計画ですね。そうするとこれは地方財政法の第四条の三ですか、結局年間の調整をする場合、年間の税収入は、基準財政収入額とそれから交付税の総額をこえた場合、これは災害等があった場合は別として、起債の償還に充てる、この金額と同一なんですか。基準財政収入額の算定基準となるのは、税収の七〇%、八〇%となっているでしょう。それに交付税金額を合わせたら基準財政収入額ということになるわけですが、それをこえた場合との関係はどうなっておりますか。
  63. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 地方交付税上の基準財政収入額をはじきます場合には、過去の実積のありますものは過去の実績を使いますし、また実績によりがたいものにつきましては、この計画上の数字を使用して算定をいたして参りました。従いまして、御指摘になりましたような基準財政収入額という言葉は、この財政計画上の収入額を基礎として算定されるものが多いわけでございます。
  64. 加賀田進

    加賀田委員 いや私の質問しているのは、地方財政計画には、いわゆる実績に基づく百パーセントの財政収入額が計画されておる。そして一つ計画がなされる。ところが財政法の第四条では、七〇%、八〇%を基礎にして、その上に交付税を重ねてそして歳入の総額をきめる。歳入の総額というのは、結局基準財政の基礎になって行政水準がきまるわけですね。そうするとこの計画と第四条の三に基づく財政調整の金額とは異なる点があるんじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  65. 奧野誠亮

    ○奧野政府委員 この地方財政計画上の地方税収入は、言うまでもなく地方団体全体のものであります。必ずしも個々の団体で、全体が増収になっているから、基準財政収入額も増収になるというわけには参らないと思います。なお御指摘になりました法律の考え方は、これは地方交付税が財源不足額をこえて交付されるというような場合があり得るわけであります。地方財政平衡交付金制度から地方交付税制度に変わりました際に、従来でありますと、財源不足額を積み上げて地方財政平衡交付金の額にしたわけであります。地方交付税に変わりましたときには、国税三税の何%、こういうことになりましたわけでありますので、理論的には財源不足額をこえて地方交付税額が交付されるというような事態もあり得るわけであります。そういう場合には個々の団体で財源調整を考えなさい、こういう規定の趣旨でございます。
  66. 加賀田進

    加賀田委員 わかりました。それで総括的になりますが、大蔵省と自治庁との地方財政に対する折衝の中で、最後的に残ったのは今もちょっと触れましたように、昨年の七百十億の減税に基づく地方財政影響だ。百二十二億というものを完全に補てんしてもらいたいという要求と、大蔵省はいや十七億程度でいいということで、結局出て参りましたものを見ますと、〇・三%の二十九億八千五百万円という金が出てきたわけです。その算定基準というのは、結局双方とも了解されたと思うのですが、不満な点は別として、結局算定基準——それで地方財政のいわゆる行政の推進と向上がなり得るということについての結論を一つ明らかにしてもらいたい。
  67. 石原幹市郎

    石原国務大臣 これは御指摘になりましたように、所得税減税のはね返りを計算すれば、一応百二十二億になるのであります。しかし、この百二十二億で不交付団体までめんどう見る必要もないのではないかという考え方から計算いたしますると、たしか六十七億くらいだったと思います。交付団体だけのめんどうを見るということになれば六十七億です。そこで六十七億ほしいところでございますが、やはり国の財政の都合等いろいろなことからいたしまして、地方地方税収入の伸びも非常にあり、交付税も大幅な増額になるということから、地方団体の方もある程度しんぼうしてもらうということで、両方見合ってやろうということで、国税三税の〇・三、本年度で約三十億、こういうことで妥結いたしたわけでありまして、三十億の正確な理論的根拠というものは、率直に申し上げてございません。
  68. 加賀田進

    加賀田委員 何だかこれも政治的な考慮で、足して二で割ったような感じがいたします。しかし私は、地方財政の面からも、もちろんそれは完全補てんしてもらわなければならない性格だと思うし、冒頭に申し上げたような、国の施策に基づく地方自治体影響の中からも、論理的に完全補てんをしてもらはなければならない性格を持っておると私は思うのです。結局七百十億の減税というものは、自治体が何ら減税してくれと言ったものではないのです。二年前の選挙で、それだけ減らすといって自民党が公約したのです。そしてそれを政府の責任でやったのです。政府の権限に基づいて国税を減税して、自治体が何ら意思表示もしてない。自治体自体もそれを了解してないものが、自動的に地方自治体に財源的な影響をもたらした。だから、国の施策としてやった減税政策が地方自治体影響をもたらしてくるときには、国が責任を持つべきだと思うのです。それを大蔵省が、交付税がふえたから、昨年よりも地方財政が少し豊かになったから、お前たちはしんぼうしろというようなものの考え方では困る。大蔵省の政務次官自体が、現在日本はいわゆる中央集権なのだ、また中央集権化しつつあるのだ、こういう思想の中で問題が処理されているところに、大きな問題があると思うのです。だから大蔵省としてはどうなんです。国税をみずからの権限に基づいて減税しながら、それが地方自治体財政影響したからといって、おれは知らないのだ、お前たち交付税が自動的に上がるのだから、それでしんぼうしろというような、中央の政治の責任を地方財政に転嫁するようなことで、日本の民主政治が守れるかどうか。今日財政の基盤は地方自治体だということは憲法でちゃんと保障しているのです。その点大蔵省としてはどう与えていますか。これは、今長官の言うように交付団体、不交付団体、そういうものを離れて当然やるべき問題なんです。現在の不交付団体においても、満足な行政水準はやっておりません。全般的に行政水準が低いから、今の交付税そのものも完全に補てんされていないですよ。だから不交付団体だからといって、財政的に豊かで、住民要求に基づいた十分な行政をやっていないのが現状だと思うのです。だから交付団体、不交付団体というものを離れて、国の責任で減税をやった地方へのはね返りというものは、国が責任を持つべきだ。こういう国と地方との財政行政も明確に区分したところに、自治体の本質があると思うのです。一体自治体の行く方向を大蔵省はどういう方向に持っていこうとしておるのか。なお中央集権の方向に財政的にも行政的にも縛りつけようという考えを持っておるのかどうか。大蔵省として、折衝の過程では、自治庁との間において、前向きの場合も、両方とも同じ線に進む場合もあるでしょうが、われわれは野党なんだから、やはり筋を通した論議の中で日本の政治の行く方向を考えなければならぬ。この百二十二億の完全補てんというものは、重大な政治的方向を決定する性格を内包しておるものだと思うのです。大蔵省としてこの点に対してどう考えておりますか。
  69. 大村筆雄

    ○大村説明員 お答え申し上げます。国、地方を通ずる行財政をどうするか、国の責任と地方の責任をどう考えるかということは、いろいろ御意見のあるところで、非常にむずかしいと思います。ただいま御質問のありました減収補てんの問題でございますが、所得税のように累進的に課税されるような租税でございますと、国の所得が毎年向上して参りますと、ほっておいても実質的には増税になっております。これを減税という格好で是正していくということが、毎年とられてきております所得税の減税であろうと思います。従いまして、そういう意味での減税というものは、地方としても自主的におやりになる筋合いのものであるし、また自主的にやっていい減税じゃないか、かように考えております。
  70. 加賀田進

    加賀田委員 現在の地方税は、自主的にと言うけれども地方税法によって一つのワクがはめられている。しかもその地方税というものは、国税との関係で伸びたり縮んだりするような性格を現在持っております。そういう事態が実際存在している。そういうような地方税というものは一つのワクをきめられていながら、地方税をふやしたり減らしたりするのは、自治体が勝手にやりなさい、地方税の国税による影響というものは、地方団体が勝手に増減していいのだ、それが完全なる自治体の性格だということを、今私が指摘した行政面においても財政面においても、中央の支配が非常に強い状態の中であなたが論議されておるのだったら、もっと自主財源というものを与えて、地方が自由に、その地域の住民要求に基づく行政ができるような形に作り上げていってこそ、大蔵省としてはそういう反駁ができると思う。そういう形は現在なされていないでしょう。この財政計画を見てみますと、九割か九割五分というものは、国の施策に基づいて地方が当然やらなくちゃならないという仕組みになっている。財政的な裏づけも、単独事業では一割もないという状態です。全然自主的にできない。税制体系におきましても、やはり国税に対する影響がある。こういうように、がんじがらめにされておりながら、税の影響に基づくことは自治体が勝手に上げたり下げたりしなさい、それは政府としては知らないのだ、そういうような言い方は成り立たないと私は思う。それだったら、もっと自治体のあり方を、行政面においても財政面においても、自主性を与えるような姿を作ってから、大蔵省としてはそういう答弁をすべきが正しいと思う。単にその面だけは、えらく地方自治体自主性を認めたようなことを言っても、実際の機構は、自治体の自主性というものをほとんど認めない形です。だから今言ったように、政府がそれほど行財政面で地方を支配しようとする姿の中では、国税の減税に基づく影響は、当然国が負担すべき性格を持っておるのであります。だから、今ある姿の中での問題を考えてもらわなくちゃならぬと思いますが、どうでしょう。
  71. 大村筆雄

    ○大村説明員 国、地方を通ずる制度の問題、これは非常にむずかしい問題だと思います。それから財源配分の問題、これもそういう行財政法ができて初めて確立されるものだと思いますが、現状で御説明申し上げますと、ただいま正確な数字を持ち合わせておりませんが、国税、地方税を通ずる租税収入のうち、国税がどのくらいとっておるかと申しますと、約七割が国税であります。この国税及び地方税を通じてあげられました租税収入というものが、どういうふうに使われておるかと申しますと、その国税、地方税を通ずる税収入の中の約七割程度のものが地方で使われておるわけであります。従いまして、国を通じてあげた租税収入の大半のものが、地方における施策に充てるために使われている、こういう現状であるということを御了解願いたいと思います。
  72. 加賀田進

    加賀田委員 そこで中央と地方との関連性に対しては、大蔵省の考え違いがある。なるほど税収入を区分すると、七割が国税であり、三割が地方税であって、地方が自主的にとっておるでしょう。ところが仕事の面は、中央の施策に基づいて地方でやらなければならぬ、こういう形態になっておるでしょう。補助金とか負担金とか、あるいは国の直轄工事においても地方の負担というものをやはり課せられておる。だから七割近くを使っておるというけれども、そのあり方というものは、自主的に使っているのではないのですよ。地方の要請を積み上げてきて、それに基づいて中央が計画をやるというのだったら、これは地方自主性というものが実際問題としてあるでしょう。今の形態はそうじゃないのです。建設省とか、労働省とか、各省が大蔵省と折衝して、勝手に計画を立てて、それを地方に実質的におろしていく。地方はそれに基づいてやはり事業をしなければならない。そして負担金、補助金というものをもらって、その一部を地方財政から出してやっておる。この三割でも、全部が地方自治体独自の考え方でもって財源を動かせるのだったら、三割の地方自治は認められる。三割の中においても、政府の政策に基づいて財源の裏づけをしなければならぬものがたくさんある。ほとんどそうです。だから今申し上げたように、自治体の行政でできるのは一割以下だとということです。そういう形態になっているので、なるほど三割と七割で、自治体は国の財政の七割を使っているのだから、多く仕事をしておるから何でも買いなさいという。形態はそうだが、実質的にはそうなっていないでしょう。住民要求に基づいて、要求通りよしよしといってそれを引き受けますか。そんなのは財政計画とは別なんだというて、勝手に五カ年計画を立てて、地方の負担も入れてこれを自治体に押しつけていくでしょう。だから今言ったような独裁的な傾向とか中央集権といわれておる。今の政治というのは、これは中央集権なんです。これではいけないと大蔵省の政務次官は言っておる。税体系とか、財政問題だけで、それは住民自主性にまかしておるというが、実際はそうじゃないのだから、そんな論議は成り立たないと思う。大蔵省、あなた方はただ法の前だけ見てものを言っているが、実質的にそういう形になっていないでしょう。地方自主性はそう高く認められていますか。国自体が干渉せずして地方の条件に基づいて自主的に使える財源は一体どれくらいあると思っていますか。大蔵省はどうですか。
  73. 大村筆雄

    ○大村説明員 地方自主性の尊重という問題でございますが、これは逐次先ほど長官が御説明申し上げましたように改善されてきておるのだと思います。それから国からの一方的な押しつけと実はおっしゃるのでございますけれども、これは各省の施策はいろいろございまして、地方との関連においての施策というものは、相当数というものはやはり地方から盛り上がって、ぜひこういう施策を進めてもらいたいというのが中央各省に反映されて、それがまた地方へはね返ってくるという場合が相当ある。この施策を遂行するために補助金等を配分していく、そういう格好になるということを一つ御理解願いたいと思います。
  74. 加賀田進

    加賀田委員 今の政治は、地方自治体が仕事をしようと思えば、工事をしてもよろしいという連絡だけでは工事ができないから、中央に行って頭を下げて陳情して、補助金とかそういうものを交付してもらいたいと、来て要求するのですよ。地方から自動的に上がってきた仕事の量に基づいて大蔵省が予算を組んで、自治体の自主性というのを大幅に見ておるという形態であれば、それは財政的にも行政的にも好ましいことだと思うのです。実際はそうじゃないのでしょう。だから今陳情政治だといわれておる。なるほど住民からうしろを押されて中央へ陳情して参りますけれども、その地方要求に基づいて全部予算が組まれているか。全部選択されて、しかも零細な補助金まで出して、全部中央が干渉したり、認可がなければ仕事をさせないという態度をとっているでしょう。いわゆる地方の積み上げ方式に基づく予算編成じゃないのです。そう思いませんか。今言ったような地方要求に基づいて各省がちゃんとやっているのですという答弁だが、われわれは政治の実態を知っているのですよ。そういう形になっていないでしょう、どうですか。
  75. 大村筆雄

    ○大村説明員 各省のおやりになっておる施策、これも中央地方を通じてやはり国民の福祉の向上ということが主眼になるかと思いますけれども、その場合には、どういう行政のあり方がいいかということが根本的な問題になるかと思います。それはさておきまして、ただいま各省でやっておる施策について、地方住民の意思を反映してやっておるかというお話でございますが、私どもは、中央各省それぞれ施策を進められることにつきましては、各地方のそれぞれの御要望あるいは御要求等を反映させて、その要求に基づいて施策が進められておる、かように考えております。
  76. 加賀田進

    加賀田委員 大蔵省は、独断でそういう判断をされておるのですよ。しかし、地方自治体事業要求を消化されるのは自治庁だと思うのです。自治庁の方はどうですか。大蔵省の考えのように、地方自治体要求が積み上げられた形で財政計画あるいは国の予算というものが作られておるかどうか。大蔵省はそういうことで大体組まれておる、こう述べられておる。もしそういうことが政治の形態としてなされておるとするならば、住民の自治体に対する不満とか政府に対する不満は現在のようにあがってきていないと思うのです。各自治体に住民が公衆衛生の問題とか環境衛生の問題を要求されても、全部それは金がないということで実際はけられておるのですよ。その一部が選択されて自治庁の方に持ってくる。それでさえやはり削られておる。だから、地方から上がってくる要求が各省によって予算に組まれたという、そういう甘い状態でないと思うのです。自治庁としてはどう考えておりますか。
  77. 石原幹市郎

    石原国務大臣 先ほども申し上げたのでありますが、やはり現在のこのままの形では、地方の単独事業というものは非常に狭められて伸びないのであります。三十五年度の財政計画の策定にあたりましては、できる限りの努力をあらゆる方から講じましても、この程度のものなのかもしれません。今後の問題は、やはり地方にもう少し自主財源を与える。これはやはり中央地方を通ずる税制の根本的改革において考えていかなければならぬ問題でありますが、やはり国が直接やるべきような直轄事業のようなものは、国が全部責任を負うてやる、そういうような根本原則を立てていかなければこの問題の根本的解決をはかれないと思うのであります。今、加賀田委員が問題として入ってこられました今回の住民税の減税に伴う財源措置につきましても、私どもも同じような考え方から最後まで非常な努力をし折衝をしたのでありますが、予算というものは、一応最後はある程度のところで妥結といいますか、結論を見出していかなければならない。先ほども申し上げましたように、明確な理論的根拠はございませんが、地方団体と国と両方で相見ていくということで約三十億という結論が出たようなわけでありまして、今後とも、私が最初に申し上げましたような考え方で、地方の自主財源の拡充、行政水準向上ということに努力していきたい、かように思う次第であります。
  78. 加賀田進

    加賀田委員 約束の一時が過ぎましたので、私の質問はまた後日に譲りたいと思います。現在の財政運営については根本的に再検討する時期がきておるのじゃないかと思います。国と地方との責任分野も実際は明確になっていないですよ。一体地方自治体がこの事業に対して責任があるのか、国が責任があるのか、実際こんとんとした状態です。だから、いわば双方とも責任を回避して、迷惑するのは住民だというふうな形です。財政のあり方、行政のあり方、税制のあり方に対しては、まず住民と国と地方との責任分野を明確にするような体制を将来作っていかなければならないと思います。なお、詳細な交付税の問題、その他の問題については後日に譲って、今日の質問はこれで終わりたいと思います。
  79. 阪上安太郎

    ○阪上委員 大蔵省が見えておりますので、資料を要求しておきたいと思います。  三十二国会で大蔵省に対して税外負担の資料を出すようにということを要求しておったのですが、まだ出ておりません。次会までに大蔵省から——大蔵省が調べたものは、自治庁との間に非常な開きがあって、問題があったのでありますが、大蔵省が調べた税外負担の詳細な報告を出してもらいたい。国が当然やるべきことを地方自治体におっかぶせておるという分、それから都道府県が当然やるべきことを市町村におっかぶせておるという分、市町村が当然やるべきことを地方住民にPTAその他の問題で大きくおっかぶせておるという問題、これをあなたの方で独自に調べるということになっておりますが、いまだに出ないのです。財政計画検討するためには非常に重要な資料と思いますので、ぜひ一つ出すようにお願いいたします。
  80. 大村筆雄

    ○大村説明員 三十二国会で何かそういう約束をしたということですが、大蔵省でそういうものを調べておりません。特に地方団体を通じてそういうようなものはとりにくいので、別途自治庁へお願いいたしまして調べたものはありますので、自治庁から御提出願った方がいいと思います。
  81. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それはおかしいのです。この前この問題を取り上げたときに、自治庁の出した資料に対して、大蔵省は信任しなかった。質問の過程においてもそういうことがはっきり出ておる。それならば大蔵省として独自の調査をして、われわれの数字が正しいんだ、自治庁の数字が間違っておるんだということを指摘するものを出せとわれわれは要求したのです。だから今ごろそんなことを言ったってだめだ。お出しなさい。
  82. 纐纈彌三

    ○纐纈委員長代理 じゃ、一つ心得ておいて下さい。  次会は二十六日に開会いたすことにいたしまして、本日は、これにて散会いたします。     午後一時三分散会