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1960-02-17 第34回国会 衆議院 地方行政委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月十七日(水曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 濱地 文平君    理事 飯塚 定輔君 理事 纐纈 彌三君    理事 田中 榮一君 理事 渡海元三郎君    理事 吉田 重延君 理事 阪上安太郎君    理事 門司  亮君       相川 勝六君    亀山 孝一君       高田 富與君    津島 文治君       富田 健治君    中島 茂喜君       山崎  巖君    石村 英雄君       太田 一夫君    川村 継義君       佐野 憲治君    中井徳次郎君       野口 忠夫君    安井 吉典君       大矢 省三君  出席国務大臣         国 務 大 臣 石原幹市郎君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁警務局 坂井 時忠君         長)         総理府事務官         (自治庁財政局 奧野 誠亮君         長)  委員外出席者         専  門  員 圓地與四松君     ————————————— 二月十七日  委員川村継義辞任につき、その補欠として石  村英雄君が議長指名委員に選任された。 同日  委員石村英雄辞任につき、その補欠として川  村継義君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月十六日  駐留軍及び自衛隊所在市町村に対する助成交付  金等に関する請願簡牛凡夫君紹介)(第一九  六号)  同(山本猛夫紹介)(第四二二号)  交付公債制度廃止等に関する請願池田清志君  紹介)(第一九七号)  同(田中彰治紹介)(第一九八号)  同(吉川久衛紹介)(第三〇二号)  北鮮帰還に伴う警備費財源措置に関する請願  (田中彰治紹介)(第二四一号)  自動車に泥除装備に関する請願(川崎末五郎君  紹介)(第二五六号)  同(田中伊三次君紹介)(第三一六号)  同(前尾繁三郎紹介)(第四七三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方財政に関する件(昭和三十五年度地方財政  計画)  警察に関する件      ————◇—————
  2. 纐纈彌三

    纐纈委員長代理 これより会議を開きます。  濱地委員長にはお差しつかえがございますので、指名によりまして私が委員長の職務を行ないます。  地方財政に関する件につきまして調査を進めます。昭和三十五年度地方財政計画について説明を求めます。石原国務大臣
  3. 石原幹市郎

    石原国務大臣 ただいまお手元に配布いたしました昭和三十五年度地方財政計画につきまして、その概要を御説明申し上げます。  地方財政現況は、なお赤字の再建過程にあることにかんがみまして、既存の地方財源はこれを確保するとともに、さらに可及的に歳入充実をはかって、わが国産業経済発展と、国民生活水準向上に対応し得る地方行政水準維持向上をはかることを目途として、次の基本方針のもとに昭和三十五年度地方財政計画を策定いたしたのであります。  基本方針の第一は、地方財政健全化の推進であります。すなわち、昭和三十四年度所得税減税に対応する住民税減税はこれを行ない、住民負担の軽減をはかるとともに、地方財政現況にかんがみ、新たに臨時地方特別交付金制度を創設し、地方財源充実をはかるとともに、一方、国の直轄事業地方負担分にかかる交付公債制度廃止して、これに伴う所要財源確保をはかることとしたのであります。その第二は、いわゆる税外負担解消をはかり、公費支出適正化を期するとともに、地方公共団体の長期的かつ計画的な財政運営確保するために必要な措置を講ずることとしたのであります。その第三は、投資的事業にかかる経費財源充実して、可及的に地方行政水準維持向上を期するとともに、地方債資金拡充を行ない、産業基盤の造成、環境衛生施設及び都市交通整備促進をはかることとしたのであります。その第四は、地方公共団体剛財源帰属適正化をはかるとともに、都道府県及び市町村岡経費負担関係適正化し、財政秩序正常化をはかるため所要措置を講ずることとしたことであります。  以上のような基本方針のもとに、昭和三十五年度地方財政計画を策定いたしますと、その歳出規模は一兆五千三百八十一億円となり、昭和三十四年度地方財政計画に比して、二千八十七億円の増加となる見込みであります。  次に、歳出及び歳入のおもな内容について簡単に御説明申し上げます。  まず第一に歳出について申し上げます。その一は、給与関係経費であります。給与費につきましては、(イ)人事院勧告に基づく給与改訂のための経費(ロ)児童生徒自然増減学級規模適正化等に伴う義務教育職員増加(ハ)交通警察拡充強化暴力団等犯罪取り締まり強化等のための警察官の増加、その他法律制度改正に伴う職員増加に要する経費確保するほか(ニ)昇給及びこれに伴う給与費の増、恩給退院料増等を見込むとともに、昭和三十三年七月一日現在で実施されました地方公務員給与実態調査の結果に基づき、既定財政計画に計上されていた給与費についてその算定方法適正化をはかることとしたのであります。その結果、前年度に比し六百十二億円を増加し、総額は六千三億円と見込まれるのであります。  その二は、給与関係経費を除きました一般行政事務に要する経費、すなわち一般行政経費であります。従来、その他の消費的経費と申していたところのものでありますが、名称が必ずしも適切でなかったと思われますので、今回から改めることとしたのであります。この一般行政経費のうち、国庫補助負担金を伴う経費につきましては、生活保護費中小企業設備近代化費等国庫予算増加に伴いへ前年度に比し百三十三億円を増加し、総額千四百十一億円と見込まれるのであります。また、国庫補助負担金を伴わない経費につきましては、PTA負担金等のいわゆる税外負担相当多額に上り、住民負担適正化を期する上からもその解消が強く要望されていることにもかんがみ、市町村教育関係経費等充実を行なって公費支出適正化を期するとともに、地方財政運営の長期的な健全化を促進するための措置を講ずることに要する経費として百七十億円を見込むことといたしますとともに、その他の行政経費につきましては、明年度国民経済伸張率等事情を勘案して七十億円を増加することとしました結果、総額は千七百六十七億円となったのであります。  その三は、公債費であります。公債費につきましては、普通地方債分で十一億円、国の直轄事業に伴う地方負担分にかかる交付公債分で十六億円の増加となり、前年度に比し二十七億の増、総額は八百四十一億円と見込まれるのであります。  その四は、道路、橋梁、河川その他公共、公用の施設維持補修費であります。これについては各種施設増加等事情を考慮して算定した結果、前年度に比し四十億円を増加し、総額は四百五十九億円と見込まれるのであります。  その五は、投資的経費であります。まず第一に、国の直轄事業に伴う地方公共団体負担金にかかる交付公債制度廃止に伴う所要経費を新たに計上したことであります。すなわち、交付公債制度は、その成立の経緯においても明らかなように、暫定的にとられた措置であり、また、その地方負担分当該年度地方公共団体予算に計上せられずに、後年度負担に繰り延べられることより、地方公共団体財政全般の健全な運営を阻害するという欠点のあることがつとに指摘され、その改善が強く要望されていたことにかんがみ、昭和三十五年度から交付公債制度のうち、その大部分を占める道路港湾及び治山治水にかかる特別会計所属のものを廃止して、地方公共団体がその負担額当該年度予算に計上して、国に支払う現金納付の本来の方式に改めることとしたのであります。これに伴って必要となる経費を新たに直轄事業負担金として二百三億円を計上することとしたのであります。なお、一般会計の国の直轄事業に伴う地方公共団体負担金の額は四十五億円でございますが、これについては従来通り交付公債制度を存置することといたしたのであります。次に、国庫負担金を伴うものにつきましては、治山治水五カ年計画に基づく治山治水事業費道路整備事業費公立文教施設整備事業費等普通建設事業費増加のほか、昭和三十四年発生災害復旧事業費中心とした事業費の大幅な増加によって、前年度に比し五百三十五億円を増加し、総額は三千百五十九億円と見込まれるのであります。また、国庫補助負担金を伴わない地方独自の事業費につきましては、まず、昭和三十四年発生災害が未曽有の大規模なものであったことにかんがみ、地方公共団体が単独百で行う災害復旧事業費が前年度に比し百四十八億円を増加する一方、普通建設事業費においては、わが国産業経済発展団民生活水準向上に対応し得る産業関連施設及び環境衛生施設その他都市施設等整備充実が強く要望せられていることにかんがみ、公立文教施設整備事業費道路整備五カ年計画との関連における道路整備事業費環境衛生施設整備に要する経費中心として、前年度に比し百四十九億円を増加いたすこととし、その結果、総額は千三百七十四億円と見込まれるのであります。なお、さきに申し述べましたPTA寄付金等解消関連して、従来から都道府県負担すべきものとされている各種建設事業費について、市町村にその経費の一部を負担せしめているのでありまするが、この結果、都道府県及び市町村間の経費負担関係を不明確にしているきらいがあることにかんがみ、都道府県及び市町村間の経費負担関係正常化せしめるため、必要な財源振りかえの措置都道府県及び市町村間において行なうことといたしているのであります。  第二は歳入であります。その一は、地方税収入であります。地方税のうち、住民税については、さきに行なわれましたいわゆる七百億円減税施策の一環としての所得税減税に対応する減税は、これを行なうことといたしており、その減収額は百二十二億円と見込まれるのでありますが、これを考慮した地方税全体の収入は、前年度計画に比し八百三十一億円を増加して、総額は六千二百三十億円となるのであります。しかしながら、この増収額のうち、二分の一程度の額は昭和三十四年度中にすでに増収となっているものでありますので、個々の地方公共団体にあっては、八百二十一億円の増収額がそのまま明年度新規財政需要に充てられるべき財源とはなりがたいのであります。なお、地方財政現況にかんがみ、住民税減税による減収額を考慮して、当分の間国税三税の〇・三%に相当する額を臨時地方特別交付金制度こして地方公共団体に交付するものとされているのであります。  その二は、地方譲与税であります。地方譲与税収入については、本年行なわれた入場税減税の平年度化に基づく入場譲与税の減と、地方道路譲与税及び特別とん譲与税自然増収を差引すれば、前年度に比し十七億円の減となり、総額は三百十七億円と見込まれるのであります。  その三は、地方公付税であります。地方交付税総額は二千八百六十五億円と見込みましたが、このうちには、さきに御説明いたしました臨時地方特別交付金三十億円を含めております。従いまして、本来の地方公付税は、前年度に比し三百四十九億円の増加となるわけであります。その四は、国庫支出金であります。国庫支出金は、義務教育費国庫負担金において百三億円の増、その他の普通補助負担金において九十三億円の増、公共事業費補助負担金において、普通建設事業費関係で百九十五億円、災害復旧事業費関係で二百三億円、計三百九十八億旧の増、失業対策事業費補助負担金で十五億円の増でありまして、前年度に比し六百九億円を増加し、総額は四千三十六億円となっております。なお、国有提供施設等所在市町村助成交付金につきましては、前年度と同額の十億円であります。  その五は、地方債であります。地方債につきましては、前年度に比し二百四十五億円を増額し、総額は七百二十億円としたのでありますが、このうちには、さきに述べました道路港湾治山治水にかかる特別会計の国の直轄事業に伴う地方負担金二百三億円に対する措置としての地方債六十億円が含まれているのであります。なお、国の直轄事業に伴う地方負担分については、将来地方一般財源増加状況等を勘案して、漸次地方税等財源でまかなうこととして参りたいと考えているのであります。従いまして、この直轄事業債を除きました普通の地方債は、一般補助業債で十五億円、災害復旧事業債で七十億円をそれぞれ前年度より増額し、総額は五百六十億円であります。なお、さきに申し述べましたように、国の一般会計直轄事業に伴う地方負担分にかかる交付公債制度は存置することとされておりまするが、この交付公債については四十五億円程度見込まれるのであります。  また、明年度における地方債といたしましては、地方財政計画に計上しましたもののほか、公営企業債を前年度に比し八十八億円増額して五百七十五億円、準公営企業債を前年度に比し六十七億円増額して二百五億円を予定しているのであります。従って地方債総額は千五百億円となるわけでありまして、前年度に比し四百億円の増加となっております。その資金別の内訳は、政府資金千百六十億円、公募資金三百四十億円であります。その六は、雑収入であります。雑収入につきましては、使用料及び手数料の自然増によって前年度に比し五十億円増加するものと考え、千二百二十三億円を見込んだのであります。  なお、中小都市公共下水道事業につきましては、これを準公営事業に移しかえることとし、地方財政計画から除外することといたしました。  以上が昭和三十五年度地方財政計画概要であります。これを通観いたしまするに、昭和三十五年度地方財政は、国民経済の好況の持続が見込まれることより、地方税地方交付税において相当額自然増収が期待され、全般的に見て相当弾力性をもたらすものと考えられ、従って昭和三十五年度地方財政計画においても、すでに申し述べましたように、地方財政健全化のための措置を講ずることを得たのであります。しかしながら、特に最後に申し述べたいことは、さきに一言触れところでありますが、昭和三十五年度地方財政計画に見込みました地方税のみならず、地方交付税増加額も、本年度の当初見込額に対するものであるということであります。すなわち、昭和二十四年度地方税及び地方交付税収入額は当初の見込額相当上回り、地方税において約三百八十億円、地方交付税において百五億円の増加がそれぞれ見込まれるのでありますから、結局明年度一般財源増加見込額は、本年度決算見込額に対しては、地方税において約四百四十億円、地方交付税において二百七十四億円の増加にとどまるということであります。  また、国の直轄事業のうち、一般会計に属するものにかかる地方公共団体負担金については、いまだ従来通り交付公債制度を残し、その負担を将来に繰り延べることといたしている一方、特別会計直轄事業に伴う地方公共団体負担金にかかる交付公債制度は、これを廃止することといたしましたが、それに伴う所要財源措置地方税及び地方交付税一般財源でもって十分措置することを得ず、なおその大部分を普通の地方債をもって措置することといたしておるような状態であるということであります。  なお、明年度地方財政につきましては、別途地方交付税法及び地方道路譲与税法等改正により、地方公共団体相互の間における財源帰属適正化をさらに前進させることを予定しており、また地方財政法改正して、地方財政運営健全性確保をはかることといたしたいと考えているのであります。
  4. 纐纈彌三

    纐纈委員長代理 引き続いて奥野財政局長より補足説明を求めます。
  5. 奧野誠亮

    奧野政府委員 お手元にお配りしておりますプリントに基づいて御説明申し上げます。  今大臣から基本的な考え方を申し上げましたので、第一の地方財政計画策定方針、これは別につけ加えることはございません。  四ページに前年度との増減比較を書いてございますので、それでお話をさせていただきたいと思います。  給与関係費で六百十二億円の増加となっておるわけでございますけれども、この中には義務教育費国庫負担金などもございますので、その特定財源を差し引きました一般財源増加額はカッコ内にあります五百九億円だということでございます。増加いたしましたおもなものは、(イ)の人事院勧告実施に基づく増百八十九億円、一般財源では百五十七億円でございます。これは中級職員給与表改正期末手当の〇・一カ月分の増加、両方を含んでいるわけであります。  (ロ)は義務教育学校学級編成及び職員定数にかかる標準法に基づく増員でございまして、二十六億円で、一般財源十五億円でありますが、その詳細なことは七ページ以下に書いてございます。要するに、小学校児童数が七十万人以上の減、中学校生徒が七十万人以上ふえるというような問題と、小学校学級暫定基準が現在五十八人になっておりますのを五十六人に引き下げて、学級規模適正化をはかり、中学校の方は五十四人をそのまま据え置く、こういうような考え方に基づいてはじてとるわけでありまして、こういう関係だけで小中学校を通じますと、先生数が六千人余り増加になるわけであります。正確に申し上げますと、六千六十六人の増加ということになっておるわけでございます。  (ハ)は法律制度改正等に基づくものでございまして、aは警察職員の増三千人、それからその次は社会教育主事の増でございまして、六百四十二人を見込んでおるわけでございます。昨年社会教育法改正されまして、市町村には社会教育主事を置くものとされて参っておりますので、年次計画にづきまして、大体三年くらいで法律が期待しております通りの充員をはかりたい、こういう考え方でこの金額を見込んでおるわけでございます。cが精神薄弱者福祉法の施行に伴う増でございます。別途精神薄弱者福祉法の提案が予定されておるわけでございまして、身体障害者福祉主事あるいは社会福祉司というように、精神薄弱者についても援護の手を差しのべるために、精神薄弱者福祉司を置きたい、こういう考え方立法になっておるわけであります。初めての立法でございますので、さしあたり府県ごとに四人程度職員充実をはかっていきたいという考えを持っておるわけでございます。dは高等学校産業教育課程充実のための教職員の増でございまして、これは別途文部省の方で産業教育課程充実のための施設補助なども行なっておるわけでございますが、その計画の進行に伴いまして、先生数で四百人くらいの増加が見込まれるということになっておるわけでございます。eは市町村財政指導職員及び技能検定職員の増でございます。今回の財政計画等を通じまして、市町村財政安定化をはかっておるわけでございますが、同町にまた市町村財政につきまして、府県が親切な指導役をさらに一そう強化して参る必要がある、こういうような考え方のもとに、府県当たり三人程度ずつは増員できるように持っていきたい、こういう考え方でございます。なおまた職業訓練法が先年制定されたわけでございますが、技能検定の職種を漸次拡張して参っております。そうしますと、府県当たり二人程度技能検定職員増加をさらに引き続いて考えなければならないというように考えますので、その費用を見ておるわけでございます。  (ニ)は臨時職員定数化でございます。これは昨年国が行ないました一〇%の定数繰り入れで、これを地方についてもとってもらうことを期待いたしまして、地方財政計画にこの数字を立てたわけでございますので、人数としては六千三百九十九人というものをこれで予定をいたしておるわけでございます。  (ホ)は教頭管理職手当の新設でございまして、義務教育学校教頭につきましても、校長さんに準じて本俸の七%に相当する管理職手当を出すということで、別途国の予算に二分の一の国庫負担額が計上されておるわけで、それに伴う増加額でございます。  (ヘ)は僻地手当、多学年学級担当手当改訂、これは昨年この種の改訂が、国の法律あるいは人事院指令を通じて改正されましたので、地方公務員につきましても年度間全体にわたりまして、その所要経費を見込んでおこう、こういう関係のものであります。  それから(ト)は昇給及びこれに伴う給与費の増が百七十八億円、義務教育費国庫負担金もございますので、ネットでは百五十三億円、こういうことになっておるわけでございますが、小中学校先生につきましては三%の昇給率、その他の職員につきましては四・二%の昇給率を、過去の実績から推定をいたしまして使っておるわけでございます。  (チ)は給与実態調査による給与費是正でございまして、金額が九十六億円に上っておるわけでございます。一昨年の七月に給与実態調査を行なったのでございますが、その結果、財政計画で見込んでおります数字と現実の数字との間にはかなりな開きが認められたのでございます。そこで市町村府県を通じまして全体としては一万五千四百八人を財政計画上増員していきたいということと、単価につきましても、あるべき地方公務員給与ということから見ていきました場合に、財政計画上の数字が若干低いというように考えられますので、その是正を行なったのでございまして、府県交付団体では本俸二百七十三円引き上げ、市町村につきましては本俸二百三十五円引き上げるというような修正を行なっておるわけでございます。言いかえれば、財政計画給与費が少な過ぎたので、それだけ結局財源措置を行なってきました部分では足りないので、建設事業費なりその他の経費なりにしわが寄っておった、こういうことになっておったと思います。そこでそれだけの財源財政計画上も正しく算定することにいたしまして、そのしわ是正したいというのがこの約百億円の金額になるわけでございます。  次は、その他の経費が七十四億円、aは義務教育教員指定統計による是正等で五十八億円を見込んでおるわけでございます。これは一応国の予算におきまして、学級なりあるいは教員数なりを予定して、それに幾ら先生数がふえるかという積み上げ方式をとって計算しておるわけでございますが、その基礎になっておる数字がしばしば過小で、結局追加予算において義務教育費国庫負担分を増額するということが行なわれて参ったわけでございます。しかし指定統計がございますので、指定統計で合わせてみますと、その基礎数字が少な過ぎた、だからそれは財政計画上も是正をしていきたいということに基づくものでございまして、そういうような関係が五十八億円に上っておるわけでございます。bは、高等学校教員指定統計による是正が十四億円、これは高等学校につきましても年々定員の増加が行なわれて参ってきておるわけでございます。これは実績をそのまま採用することにいたしまして、指定統計に毎年合わせながら財政計画上の増加をはかっていくという建前をとって参っておるわけでございます。  2が恩給及び退隠料の増加が八億円でございます。従来通りの計算の仕方によっております。  二番目は、一般行政経費が三百七十三億円で、一般財源では二百八十二億円となっておるわけでございます。  国庫補助負担金を伴うものが百三十三億円、一般財源では四十二億円の増加であります。義務教育関係教材費では変わりはありませんが、その他の経費では百三十三億円の増加になっておるわけでございます。そのおもなものは、生活保護費増加が六十四億円、児童保護費増加が十一億円というような内容のものになっております。  2か国庫補助負担金を伴わないものが二百四十億円でございます。そのうち市町村教育費適正化等に要する経費百七十億円といたしております。こ  のうちいわゆる税外負担解消をはかっていきたいということで予定をいたしておるものが九十億円であります結局PTA等に負担させておるものを解消するためには、市町村教育費等の増額をはかって参らなければなりませんので、その程度所要財源を見込んでいきたいということであります。残りの八十億円程度のものは、繰り越し赤字を持っておりますものにつきまして、その解消をはかることを期待いたしましたり、あるいはまた地方財政法改正いたしまして、余裕のある場合には積み立てをして、長期的な健全化をはかることを期待いたしましたりしておりますので、そういう意味において積み立てなりあるいは繰り上げ償還なりを積極的にやってもらいたいというような考え方のもとに期待をいたしておる金額であります。  その他の一般行政経費七十億円といいますのは、長期財政計画で見込まれておりますこの種の経費の伸び率四・八%を使って算定をいたした金額でございます。いろいろな研究施設充実して参りましたり、あるいは行政事務の近代化をはかって参りましたり、あるいは一般的な旅費、人件費の増加などがこの中に含まれておるわけでございます。  公債費は二十七億円の増加でありまして、普通地方債分と、直轄交付公債分とを振り分けてそこに書いてあるわけでございます。  その次が維持補修費の増四十億円でございまして、これは維持補修要の現状から見ますと、算入が十分でないというようなものを拾い上げまして、この金額を算出したわけでございます。  五番目は投資的経費が千三十五億円の増加ということになっております。直轄事業負担金が二百三億円でございますが、その内訳は治水で九十四億円、治山で三億円、道路で八十四億円、港湾で二十二億円ということになっておるわけでございます。このほかに一般会計の分といたしまして、災害復旧の関係でありますとか、あるいは特定港湾以外の港湾関係するものでありますとか、漁港に関係するものでありますとかいうものが四十五億円程度残されているということになっておるわけでございます。  国庫補助負担金を伴うものが五百三十五億円ございまして、(イ)が普通建設事業費で三百二億円の増加でございます。いわゆる国庫負担事業でございますが、治山治水の分で百八十億円、地方一般財源で六十二億円の増加ということになります。道路整備で四十六億円、文教施設で十三億円、その他いろいろこまかいものがございますが、合わせまして六十三億円ということになるわけでございます。  災害復旧事業費では、二百十八億円の経費増加になるわけでありますが、地方の純負担は十五億円の増加にとどまっております。災害復旧事業につきまして、国庫負担の特例法が制定されましたおかげで復旧事業費相当ふえるわけでありますが、地方の純負担はそれほど大きな金額にはならないという結果がこの数字に現われておるわけでございます。過年度災害復旧事業分が二百十八億円、現年災害復旧事業分は従来通りにいたしておるわけでございます。一応従来から公共災害復旧の規模を三百億円と置いて算定をして参っておりますので、その通りに国の予算と数を合わせておるわけでございます。  失業対策事業費が十五億円の増になっておりますが、炭鉱離職者対策につきまして高率の国庫負担制度がとられます結果、地方負担としては増減ございません。普通失業対策事業費では四億円の減、特別失業対策事業費では二億円の減、炭鉱離職者緊急就労対策事業費では二十一億円の増ということになるわけでございます。  国庫補助負担金を伴わないものにつきましては、普通建設事業費で百四十九億円の増加を予定しておるわけでございます。国の公共事業費の伸びに合わせまして、地方の単独建設事業費の伸びを予定いたしたわけでございます。災害復旧事業費では百四十八億円の増でございまして、三十四年災分で百四十六億円を見ておるわけでございます。現年災分は今申し上げましたような意味で同じにいたしまして、火災復旧で、さらに従来の経験から不足額を補てんする意味で二億円の増を予定しておるわけでございます。  その次の歳入の方でございますが、地方税全体で八百二十一億円、普通税で七百九十六億円、目的税で二十五億円ということになっておるわけでございます。国民所得に対しまして約六%ということでございます。  地方譲与税では十七億円の減でありまして、入場譲与税が大幅に四十二億円の減を見ることになるわけでございます。これは昨年入場税減税が行なわれました結果と、最近のテレビ攻勢からくる映画館の観客の減というようなことから、このような結果になって一参っておるわけでございます。地方道路譲与税につきましては、自動車の増加等に伴いまして二十五億の増加を見込めるのでございます。  それから地方交付税は三百七十九億円の増加を考えておるわけでございますが、脇町地方特別交付金約三十億円をこの中に含んでおるわけでございます。同じ性格の財源と、かように考えておるわけでございます。  国庫支出金は六百九億円と、かなり大幅な増加を示すわけでございまして、一八%以上の増加率に当たっておるわけでございます。財政規模全体としては一五・六%くらいの増加になるわけでございますが、そのうち地方税地方譲与税を合わせました伸びが一四%くらい、地方交付税臨時地方特別交付金を含めまして一五%くらいの増加、それに対しまして国庫支出金が一八%をこえる増加率になっておるわけでございます。そのおもなものは、やはり災害復旧の関係治山治水を強力に進めていくというような考え方から起こってきている、こう思っております。義務教育関係国庫負担金百三億円、その他の普通補助負担金九十三億円、公共事業補助負担金三百九十八億円、そのうち普通建設事業費が百九十五億円、災害復旧事業費二百三億円の国庫の補助になっておるわけであります。それから失業対策事業費補助負担金十五億円でございます。  それから地方債では二百四十五億円の増加でございますが、これは先ほど大臣が申し上げましたように、一般会計分の地方債について二百四十五億円でございまして、準公営企業、公営企業を合わせますと、全体としては四百億円というかなり思い切った充実措置を講じているわけでございます。二百四十五億円の増加額の振り分けは、一般補助事業債で十五億円、災害復旧事業債で七十億円、直轄事業債で百六十億円、こういうことになっておるわけでございます。直轄事業地方負担金現金納付を円滑にいたしますために、かなり思い切って地方債のワクを多くいたしておるわけでございます。しかしながら一般会計につきましては、地方税地方交付税増加がかなりございますので、なるべくそれら一般会計の仕事は一般財源でやってもらうことを建前にいたしまして、地方債はあまりふやしたくないという考え方を持っておるわけでございます。この一般補助事業債が十五億円ふえておりますけれども、地方負担額がもっと大幅にふえておりますので、起債の充当率としては昨年は四五%といたしており、さらにその後いわゆる臨特法の廃止に伴いまして、二一%程度増加いたしておりますので、充当率六六%くらいになっております。しかし三十五年は四〇%程度の充当率を考えておるわけでありまして、できる限り一般財源でまかなってもらう、将来への負担を残さないという運営の仕方をして参りたい、かように考えておるわけでございます。前年より十五億円一般補助事業債がふえておるわけでございますが、むしろ充当事としてはかなり低くなっておるというような姿でございます。また低くできるように一般財源が逆に相当額増額されている、こうお考えいただいてけっこうだと思います。  雑収入の増は、従来と同じように五十億円程度を見込んだわけでございます。  その次に、こういうような結果、歳入歳出の構成がどういうふうに変わってきているだろうかということを六ページのところに書いておるわけでございます。三十四年度、三十五年度歳入構成におきましては大同小異でございまして、どちらかといいますと国庫支出金がちょっとその比率を増しておる。しかしながら地方税地方交付税の比率は、大体同じというような姿でございます。同時に二番目に書いてあります歳出構成でちょっと見ていただきますと、給与関係費のウェートは、給与改訂が行なわれるけれども一%程度下がっている。公債費も一%程度下がっております。それに対しまして投資的経費のウエートは二九%から三一%と二%引き上がっておる。そういうことから、やはり地方財政が質的にも健全化の方向をたどっておるということを御了解いただけるのじゃないだろうか、かように考えておるわけでございます。  なお七ページ以下に歳出歳入につきましてのこまかい説明をつけておりますので、必要に応じましてごらんいただきたいと存じます。  さらに地方税の側々の税目別の収入見込額は、十六ページ、十七ページに書いてございます。  以上でございます。
  6. 纐纈彌三

    纐纈委員長代理 以上をもちまして昭和三十五年度地方財政計画に関します説明は終わりましたが、質疑につきましては後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  7. 纐纈彌三

    纐纈委員長代理 次に警察に関する件につきまして調査を進めます。  宇部市に発生した警察官による自動車事故及びその補償の問題につきまして質疑の通告があります。この際これを許します。石村委員
  8. 石村英雄

    石村委員 この問題につきましては、昨年の臨時国会で少しお尋ねしておいたわけですが、その後あの事件の経過はどうなっておりますか、御報告を願います。
  9. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 山口県の宇部警察署の署員が事故を起こしまして、交通事故によって二人の者にけがをさせた遺憾な事態があったのでございますが、その後被害者の方も全治されまして、十一月の二十九日及び十二月の二十一日にそれぞれ退院をされております。さらにこの治療費その他につきまして加害者の方から高橋悟君に対しまして治療費として九万円、石井軍次君に対しまして治療費として七万円、それから自転車の損害に対する補てんとしまして二万円、それ以外に慰謝料というものでありましょうか、石井、高橋両君に対しましておのおの十万円の支払いをいたしまして、円満に解決を見た、こういうふうに聞いております。
  10. 石村英雄

    石村委員 一応その事件としては円満に解決したということで大へんけっこうですが、その経費はだれが出したのですか。
  11. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 加害者の吉岡利幸元巡査、これは懲戒免官になっておりますが、この吉岡利幸の方で支払った、こういうことになっております。
  12. 石村英雄

    石村委員 その加害者自身には実は金がないので、おそらくお父さんから金を出したのだろうと思いますが、これは健康保険に入っておりますから、病院の治療費は健康保険の方で一応負担しているように思うのですが、その内容はどうなっているのですか。
  13. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 組合の方にかかった費用を支払っておる、こういうふうに聞いております。
  14. 石村英雄

    石村委員 その程度でやむを得ず満足したかどうか知りませんが、いずれにしてもたまたまお父さんが金があったということでそういうことができたと思うのですが、これがもしそういうお父さんのない、親戚のない警察官でこういう事故が起こったら、ちょっと処置なしじゃないか、こう考えるのですが、この前の臨時国会でお尋ねしたときにも、また山口県の県議会での本部長の答弁にても——本部長の答弁は、大体あなた方の方で相談した上でのことのように考えておりますが、つまるところ国家賠償法による補償はできない、というのは、職務執行でないのだということが理由になっておるようでございます。そこでお尋ねしますが、一体警察のジープが市中を走るときには、原則として職務執行で走るのではないかと思うのです。一体警察の職務執行でない形で市中を動くというようなことがありますか。
  15. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 確かに警察の車は、普通の場合職務執行に用いる車でございますので、職務執行の場合が多いと思います。ただこれは、ほかの官庁で申しますと、いかなる官庁も大体車を持っており、運転手も持っておる。農林省にしろ、国会にしろ、それぞれ車をお持ちであるし、専用の運転手も持っておるわけでございますが、それらの者が、たとえて申しますと、農林省の車を農林省の運転手でない農林省の職員が勝手に持ち出してたばこを買いに行った、その際に交通事故を起こしてけがをさせた、そういう場合と同じような場合が警察にもあり得るわけでございます。そういう場合に、国家賠償法の適用があるかどうかという問題でございますが、これは従来の判例あるいは学説等からしまして、消極意見のようになっておるわけでございます。
  16. 石村英雄

    石村委員 もちろん自動車を勝手に運転するということは事実としてはあると思うのです。あると思いますが、しかし一般的には、警察の自動車が歩くというときには、これは職務執行で歩くものというのが一般常識でないかと思うのです。この県議会での質疑応答の中に、そういう考えによると、それなら警察の車が来たら、あれは職務執行中だろうか職務執行中であるまいかということを通行人は判断して、職務執行でないらしいというのでかけて逃げなければならぬという、そういう質疑が行なわれているわけであります。これは常識としては警察の車にしろ、あるいは国会の車にしろ、これは職務執行で動くものと、こう判断するのが常識ではないかと思う。あなた方は、もちろんそうでない場合もあるからといって、これは一般的にどっちやらわかりませんというようなことはないのじゃないか。やはり世間でも、また当事者のそれぞれ管理しておる人の立場からいっても、警察の車が歩くときは職務執行中だと、こう一般的には考える方が妥当ではないか。それを具体的に、乗っている人を通行人が調べて、お前はたばこを勝手に買いに行くのじゃあるまいか、どっちかと聞いた上で、その自動車から傷害されるのをよけるなんて、そんなばかなことはありませんから、これは職務執行中と一応外形的には判断される方がむしろ当然じゃないかと思うのですが、いかがですか。
  17. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 従来の解釈では、火災現場におもむいておる消防署の赤い自動車、それから警察で申しますと、白い色に塗っておりまする緊急指定のパトロール・カー、そういうものはいわゆる国家賠償法の一条にいいます公権力に基づく国家公務員の職務執行中の車、こういうふうに解釈しておるようでございます。おっしゃる点はよくわかるのでございますが、従来の解釈はそのようになっておるのでございます。
  18. 石村英雄

    石村委員 従来の解釈というのは、いつごろの最高裁の判決があるんですか。
  19. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 最高裁の判決というのはございません。いろいろの学者の学説としてそのように承っておるのでございます。
  20. 石村英雄

    石村委員 従来そういう解釈が一般にとられておったとは思うのですが、実は最高裁の判決があるわけなんですね。その事件は、自動車でひき殺したというのではなしに、警察官が強盗を働いたという事件で、それに対する最高裁の判決の終わりごろに、従来そういう考えがあったが、しかし憲法十七条ができ、また国家賠償法ができてから、従来の考えは変わってきたのだ、一擲しなければならぬということを最高裁の判決では言い、その内容が事実職務執行でないにしても、外形的に職務執行と見られるときには、国家賠償法でいう職務執行に当たるという判決を最高裁は下しておるわけなんですね、この点についてはどうお考えですか。
  21. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 おっしゃる通り、これは警視庁の大森署の警察官の事故についての最高裁の判決だと思いますが、確かに外形上警察官の職務執行行為と全く同じであるというようなものにつきましては、国家賠償法の適用があるというふうに考えなければならぬと思うのであります。     〔纐纈委員長代理退席、委員長着席〕 そこで先生お詳しいと思いますが、国家賠償理論というのが最近非常に進んで参りまして、端的に申しますと、無過失の国家賠償責任論というのがだんだん強くいわれてきているのであります。従いまして、外形上職務執行行為と見られるその範囲が漸次拡張されつつあるような傾向にあるようには思うのでございますが、はたしてこれがどの程度までのものかということは、私たちだけの判断ではきめかねる問題じゃないか。気持としましては、だんだんそういうことになるのがほんとうでありますし、そうしたいという気持は持っておりますけれども、それではどこまでそれを認めていくかということは、困難な問題のように思うのでございます。
  22. 石村英雄

    石村委員 もちろんこれは裁判でも起こさねばしょうがないかもしれません。しょうがないかもしれないが、警察として責任をお考えになれば、警察としての処置がとられてしかるべきだ。ただ、加害者の警察官のおやじさんを説得して金を出させますとかなんとかというようなことで済むことでないと思います。この最高裁の判決の中にも、やはりそういうような不都合な公務員を雇った者の責任もあるというような文句もあったかと思うのであります。従って、国家賠償法というものはそういうことの責任もカバーする意味で国家賠償が行なわれているんだ、こういうようなその責任についての理論が、最高裁でしたか高裁でしたかの判決に載っておったと思うのですが、そういう点を考えますと、これは外形上パトロールと同一にみなす。警察の自動車が歩くんだから、これは外形的には職務執行と区別はつかないわけです。従って外形的にはこれは職務執行だ、こういう最高裁の判決のように理解するならば、やはりお前の方で裁判しろ、その結果負ければ払いますというような態度でなしに、警察として、これは県警ですから、県がやることかもしれませんが、処置するのが当然ではないかと思うのです。どうお考えですか。やはり裁判でも起こしてくれ、そうでなければわれわれの方では処置なしだというようなお考えですか。
  23. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 非常にむずかしい問題だと思いますが、警察の職務執行中の車であるということを被害者が知って、それで交通事故を起こした場合と、あとでこれは警察の車であったという場合とでは、やや異なるのではないかというふうに私は思うのでございます。端的に申しますと、こういう事態は最終的な裁判所の判例によって固めていく以外にないようにも思うのでございますが、この山口県の場合は、結果において警察の車が非常な不祥事態を起こしたのでございますが、被害者の方は、何もこの場合は、警察の車であるということを知って、警察の車が職務執行中の車である、それによって被害が生じたという場合でもないように思いますので、どうだろうか、こういうふうに考えられるのであります。
  24. 石村英雄

    石村委員 そんなおかしなことはないでしょう。けがをする人が、これは警察の車でけがしましょうと思ってけがするわけじゃないのです。たまたまぶつかって、はね飛ばされてけがをするわけで、そのときけがする際に、職務執行中と判断するかどうかというようなことが、賠償責任の問題になってくるのじゃないと思う。警察の自動車が歩くということが、外形的に職務執行であるかないかということが問題なんで、けがをした本人が、はね飛ばされる瞬間に、警察の自動車だということを知っておったら、それはそうかもしれぬなんという、そんなばかな理屈はないでしょう。そんなことがありますか。あなたでも、はね飛ばされるときに、先に、これは警察の車だ、職務執行中だなんということを判断した上ではね飛ばされるなんて、それを判断していなければ、職務執行中の不法行為あるいは過失に基づく行為だということにはならないなんて、それはまことにおかしな理屈だと思う。やはりそういう考え方で今度の問題でも処理なさるのですか。たまたまこれは家族がまあ金を少し持っておった。おそらくあんなことでは満足じゃないと思うのですが、とにかくしょうがないというようなことで、それで承知した。やむを得ず、まあ金の出場がないということで承知したのじゃないかと思うのです。大体自動車損害賠償保障法ですか、あれにも国なんかの車を入れていないのは、結局個人の関係でなしに、国とか県とかいうものの車なら、賠償能力が国や県にあるからというので、あの十条では強制保険の対象にしていない。そうして、自動車損害賠償保障の方では、約三十万円くらいを考えておるということですから、あの方からもらえば、三十万円くらいもらえるかもしれない。もしこれが親にも何も金がないときは、こういう事態には、あなたの解釈だというと、けがをするときに、まず職務執行中かどうか判断した上でけがをしなければ、てんで話にならぬということになる。まことにこれは、どう考えても自動車保険という保障法を考えた趣旨からいっても、不合理きわまる答弁だと私は思う。
  25. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 多少誤解をいただいたようでございますが、被害者の方を中心にして考えれば、交通事故があった、その加害者がたまたま警察の車であったから国家賠償の対象となる。それから、農林省や国会の車であれば国家賠償の対象にならぬ。あるいは民間の車であればもちろんのことでありますが、それはまた別の観点からおかしいことになりはせぬか、こういうふうに考えるわけでございます。ただ、御指摘の交通事故につきましては、自動車損害賠償保障法というのがございまして、これに警察の車も、将来の問題としては、やはり保険にかけていきたいというようなことも研究をしておるわけでございます。自動車の事故が非常に多いものでございますから、われわれとしましても、そういう方法をとった方がいいんではないかといって、研究はしておるのでございますが、まだ結論を得るには至っておらないのでございます。
  26. 石村英雄

    石村委員 まあこれは法律的には、あるいは職務執行と外形的に見られるか見られぬかということで、最高裁の判決を引用して考えれば、そこが問題点になると思うのです。警察の自動車を巡査が運転する、その行為が外形的に職務執行と見られるということになれば、最高裁のこの判決で、どんぴしゃりですぐやれることになると思う。しかし私が最初聞いたときにも、一般的に職務執行だという御説明もあって、まあたまたま勝手にたばこを買いに行くというようなこともないわけじゃないという、事実関連でお話しになったわけですが、私は、やはり職務執行と少なくとも外形には言われると思う。本人の意思がたばこを買いに行くということにあったにしても、その車が、警察の車が運行されるということは、一般国民の立場から見れば、職務執行中と判断するのがむしろ当然である、こう考えるのですが、それならまあその点はあとにして、門司君の関連質問もあるそうですが、さらに一つ聞きますが、この警察の自動車を管理する責任はどこにあるのですか。
  27. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 これは山口県の警察内部の問題でございますから、最終的には山口県の公安委員会、こういうことになろうかと思います。
  28. 石村英雄

    石村委員 そうすると、警察の自動車の管理の責任はもちろん、公安委員会かなんか知りませんがあるでしょうが、酔っぱらった警察官が警察の自動車を引き出して乗っていくということに対して、管理上の瑕疵があるんじゃないですか。そんなことをしたって、管理者は何ら責任ありませんというものじゃ私はないと思う。管理者としては、そんなことをさせるべきものじゃない。管理上の責任は免れぬと思うのです。どうですか。
  29. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 確かにこの場合は勝手にかぎを持ち出しまして、上司の許可なく車を運転いたしておるのでございますが、そういう状態に置いたということにつきましては、直接の責任者である署長なり次席なり、あるいは係長でありましたか、責任があると思うのであります。そういうことにつきまして本部長は、それぞれ行政処分をいたしておることは、この前にも御報告申した通りでございます。
  30. 石村英雄

    石村委員 そうすると、管理者としての管理上の瑕疵があった、こう判断をしておられるわけなんですね。
  31. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 そういうことになろうかと思います。
  32. 石村英雄

    石村委員 そうしますと、国家賠償法の二条との関係はどうなりますか。二条は、「公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」こういうことが二条にありますね。そうしてこの最高裁の判決を見ましても、公の営造物というのは、単に建物とかなんとかというものじゃない。自動車なんかもおそらく入るという趣旨だろうと思います。そういう最高裁の判決があるのですね。何も建物の管理上というようなものじゃないというわけです。この自動車も公の営造物ということになると思うのです。この管理に瑕疵があったということ、その瑕疵があったということをあなた方も認めておられる。これは認められるのが当然だと思いますが、認めておられる。そうすると、国家賠償法の一条の職務執行については、問題があるかもしれない。まああなた方の方からいえば問題があるということになりますが、第二条の方からいくと、問題なしに第二条が適用される。管理者の管理上の瑕疵としての責任上、第二条によって国家賠償をしなければならぬということに当然なってくると思う。いかがです。
  33. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 管理上の責任は今申した通りあると思うのでありますが、無断で車を持ち出したということについての責任でございまして、無断で持ち出した車が、交通事故を起こす場合もありましようし、あるいは幸いにして交通事故がなかったかもしれないのであります。この場合は、不幸にして交通事故があったわけでありますが、そこまで因果関係と申しますか、責任があるとは考えられないように思うのでございます。
  34. 石村英雄

    石村委員 第二条は、「管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、」、瑕疵があったのでしょう。そうしてその結果、そんなことをさせなかったら、酔っぱらって自動車を運行することはあり得ませんね。瑕疵があったから酔っぱらった巡査がやった。そして事故を起こしたのです。これは因果関係といったって、そう十日も二十日も先の因果関係ではない。その場のすぐの因果関係です。法律上の因果関係というのは、この程度なら認められると思うのです。回り回った因果関係ではありません。直接の管理上の瑕疵があったために損害を与えたわけです。それを因果関係だ——因果関係でないものはない。すべてが因果関係です。どこでその因果関係を切るか切らぬかというだけのものです。これほど直接の因果関係を認めないというなら、もう何も言うことはないということになる。私は、この第一条によらぬとしたところで、第二条による分の国家賠償の責任はとうてい免れ得ないものだ、こう判断するものです。いかがですか。
  35. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 お言葉を返すようで申しわけありませんが、私が管理上の責任と申しましたのは、無断でかぎを持ち出して車を運転した、そういうことについて責任がないとは言えないということを申したのでありまして、それについて、けがをさしたということについてまでの管理責任を、今あると申したわけではないのでございます。先生のようなお説もあるかもしれませんが、それまでは私申し上げることはできないと思います。
  36. 石村英雄

    石村委員 それはわれわれも、その因果関係を少し希薄にするという考えをかりに認めるにしても、これは酔っぱらってない正常な逆転免許を持つあたりまえの警察官が出ていって、正常な状態でそれが事故を起こしたというなら、幾らか管理上の瑕疵の因果関係は薄いかもしれません。しかし、その警察官というのは酔っぱらいなんですよ。運転免許を持ってない。そんな者に勝手に使用さしてしまったということの責任は、これはことに事故は外で起こしたのだから管理上の瑕疵のうちには入りませんということにはならないと思う。私は、酔っぱらってなくたって、やはり管理上の瑕疵に当たるとは思うのですが、そんな職務執行でないのに勝手にやらせるということで起こった事件ですから、もってのほかのことだと思います。まして酔っばらいにそういうことをやらせたという管理上の瑕疵は実に重大なる瑕疵です。  こんな議論をしたって、最高裁判所へ行って弁論でもしなければしょうがないかもしれませんが、しかしこういう警察、しかも現在何らほかには何がないということから考えて、国家賠償法が作られ、自動車損害保険にも入れていない、こういう状態から考えると、へ理屈をつけて賠償しないという態度でなしに、率先して賠償すべきがむしろ警察としての当然の処置ではないかと思う。何も裁判してみてくれなければわかりません、あるいはやりません。ちっとも遺憾なことがなければそれはまあそれでいいかもしれません。いろいろ議論のあることならそうかもしれませんが、だれが考えてもこれは警察として不都合なことをしたということには間違いないわけです。しかも、そういうあなた方の解釈でいくならば、もし本人または家族にその賠償をする能力がないときに全く処置なしだということになるわけです。そういうことはいけないというので、憲法十七条が生まれ、それに基づいて国家賠償法ができた。そうして従来の観念を一擲しなければならぬと最高裁判所が言っておるにもかかわらず、何だかんだへ理屈をつけて、一条にも当たりません、二条にも当たりませんてなことで知らぬ顔をするというのは、まことに警察の方としては自己の責任を感じない、国民に迷惑を与えて何ら反省のない態度だ、こう言わざるを得ないと思うのです、一つ、ところですぐそれはやりましょうというわけにもいかぬでしょうけれども、長官と相談して、もっとはっきりした、国民が納得する形の処置を考えていただきたい。ただいまのような処置、あなた方の考えは、国民は絶対にこれは納得しませんよ。ただいま言いましたように、一体個人の会社の車でそこの運転手か何か事故を起こしても、会社の社長は、それに対して見舞金なり何なりするのが世間の常識なんです。実際やっておる。それをあなた方の理屈からいうと、運転手ののやった人の責任で、会社の知ったことじゃないというようなことで、理屈をつければ言えるかもしれません。世間の常識というものはそんなものを許さない。従って、法律的にはどういうことがあろうとも、その市を所持しておる会社は、それに対する損害賠償なり慰謝料なりを従来から払っておるわけです。今までこういうことに対して、国家の何についてやらなかったということについての法律的な説明は、最高裁の判決の中にあります。最高裁は、従来はこれこれこういう理由で公務員個人の責任に帰属せしめておった。そうしなければ、従来の考えからいうと首尾一貫しないからそうさせておったが、憲法十七条ができ、国家賠償法ができた今日においては、従来のそういう観念は一樹しなければならぬ。こう最高裁さえ断定しておるわけです。それに対してまだ四の五の言って世間の常識にも反してそういうことをやっておられる。それでは公務員として国民に奉仕する立場から、とうてい済み得ないことだと思う。一つ、もっと正直な腹を割った御答弁を願いたい。形式論なんかあなたとやってもしようがありません。
  37. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 御質問の趣旨は私もよくわかるのでございますが、お話しの無免許で酒に酔って、私用のたばこを買いに行って事故を起こした。職務執行行為と離れれば離れるほど——警察の道義的な責任というのはこれはもちろんあると思います。しかし、それだけに国家賠償法の適用とは離れていくのではなかろうか。たとえば民間の会社でタクシー業をやっておりましても、そのタクシーの運転手でなくて、無免許の従業員がおったとして、無免許の従業員が、そのタクシー会社の仕事とは何ら関係なく、酒に酔っぱらってたばこを買いに行ったという場合、自動車損害賠償補償法の適用があるかと申しますと、これはやはりないことになっておるわけです。私用については、その私用に使った者自身に責任があるのだという解釈をとっておるわけでございます。ただお話しの見舞金とかなんとかいう法的なものでないものは、これは別でございますが、法律上の損害賠償責任としましては、その職務執行あるいは事実執行と離れれば離れるほど、その個人の責任になっておる、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  38. 門司亮

    ○門司委員 関連してちょっと聞きたいのですが、その辺が一向わからぬのだ。問題は憲法の十七条には、公務員の不法行為によって損害を与えた場合は国家が補償する。そうしてそれから国家賠償法ができておる。二条には今石村君から話したようなことが書いてある。この問題で問題になりますのは、警察官の身分の問題だと思うのですけれもど、あなた方私用だといって車を使っていても、警察察官というのは一体どういうことになっているのです。これはいつでも警察官としての身分に基づく職務の権限を持っているということは、あなた方知っているでしょう。そうすれば、これは私用であったから、たばこを買いに行っておったから、警察官の身分はそのときなかったとは言えないのだな。もしもその途中ででも犯罪があれば、警察官としての職務を当然執行する権限がある。その区別は一体どうするのです。私用だから知らない、知らないと言うけれども、一般の会社や工場の仕事とは違うのですよ。警察官は職務を執行する権限は四六町中ずっと持っているのです。従って、職務の執行中でなかったという言いわけは通らぬと私は思うのです。たまたま上司の命令でなかったかもしれないけれども、警察官が職務の執行中でなかったという言いわけは、警察官を取り扱う場合に少しおかしいと思う。その辺はどうですか。
  39. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 その点でございますが、職務質問とかあるいは現行犯があるという場合には、職務執行をしなければならないのは当然のことでございまして、その際に第三者に身体的な傷害を与えたというような場合には当然国家賠償法の適用があると思います。ただ先生が今お話しになりましたことと似ておりますが、署長を官舎に車で送りまして、私用を足して回り道をして帰る途中に交通事故を起こして不始末をした事例がございます。これは裁判所の事件になりまして、判決としましては、職務執行中の行為ではないという否定的な判決が出ておる。そういうところに私どもの限界をどこに求めていくかという非常な困難があるわけでございますが、いかなる場合でも、やはり外形上職務執行の権限があって、その職務執行をしておるという場合に限らざるを得ないわけだろう、こういうふうに考えるわけです。
  40. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、警察官の職務執行というのは、上司の命令を受けた範囲以外にできないというわけですか。警察官自身の持っている身分というものがあるでしょう。職務権限というのがあるでしょう。この場合にそういうことは考えられるのじゃないですか。あなた方は警察官がたばこを買いに行っていると言うが、途中で犯罪があれば当然警察官の身分を発揮しただろうと思う。そうすると、外から考えれば、どう考えたって、警察の車に警察官が乗っていれば、あるいは途中でたばこを買いに行っても、警察官でないということは言えぬでしょう。職務をいつでも執行することができる人が乗っているのですから、これは一般の会社の者とは違いますよ。民法の七百十五条には無過失賠償責任、いわゆる事業主の責任という規定がありますが、私はこれとは違うと思うのですよ。私は、この間の子女の爆発事件のときにかなり突っ込んで法制局の意見を問いたが、あの場合には、監督の権限がどこにあるかということが問題になった。ところが、監督の権限がたとい通産省にあっても、法制局の総合した意見としては、衝突による事故ということで責任の所在が中断されている。だから国家賠償法には当たらないという答弁なのです。これは交通事故というもので中断されているので、どんなに監督をしておっても責任がないのです。しかし、この場合には中断がない。たとえば警察官としての身分ということになると、どこにも横に線を引くべき場所はないと考える。そうすると、法制局の意見と少し違うような気がするのです。警察官の身分というものはどこで切れますか。
  41. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 警察官の身分はもちろんあると思います。従って、警察官が警察官としての職務権限を行使しておる、職務権限の行使に関して事故が起こったならば、これは当然国家賠償法の適用があると思いますが、自動車を運転しておること自体が全部が全部職務執行であるかということにつきましては、今の判例もありますし、私たちは全部が全部職務執行の行為であると言い切れない場合がある。こういうふうに考えておるわけでございます。
  42. 門司亮

    ○門司委員 どうも私はその辺がどう考えてもおかしい。警察の内部の規定としてはいいかもしれないと思う。これは言いつけてないよけいなことをやって、よけいな事故を起こしたのだから、首を切るとかいう行政処置、それはよろしいと思う。内部の処置はそれでいいが、外の問題が問題じゃない。すか。ことに二条の問題ですね。営造物の関係です。従来営造物と言っておったのは、道路だとか橋梁だとかいうものがインチキであった、そのために事故を起こしたというような場合が大体さされていたわけだ。それから公共の建物が古くなって倒壊して人に迷惑をかけたというようなものが大体観念上考えられておった。しかし、その考え方はだんだん違ってきておる。同時に無過失賠償責任が全然ないわけじゃないのです。現行の行政協定の十八条から来る例の連合軍あるいは米駐留軍が日本国民に及ぼした損害については国が補償しているのですね。これは総理府令にあるのです。だからこの場合は、警察自身としては当然無過失だから知らないのだという理屈は私は成り立たぬように思う。これはことに聞いてみれば無免許だというのだが、それが勝手に警察の車を引き出して他人にけがさしておいて、そうして警察は知りませんという理屈はどこに成り立つのか。警察官についてはそれでいいのか。警察の車を盗まれても警察の責任じゃないというのですか。国民は主人公ですから、何も昔の天皇陛下の警察官じゃないのですからね。こういう問題に今のような答弁ではやはり承服できない。その辺の事情はどうなんですか。警察官の身分を持っている者が警察の車を黙って使って、しかもそれは無免許である。そのときの監督上の責任は一体だれが負うべきか。あなたの解釈のように、警察は責任を負わなくてもよろしい、あげてやったやつが悪いのだということになれば、警察の規律などというものはあったものじゃない。そんなことでは国民は警察が信頼できぬ。非番の巡査は何をやってもいいのだということになると、どうにもならない。その辺の事情はどうなんですか。
  43. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 警察の規律の問題は、もちろん内部の行政処置の問題として、懲戒免官なりあるいは減俸なり、その面でやるべきだと思うのであります。ただざっくばらんに申しまして、たまたま警察の車によって交通事故が起きたから国家賠償法が適用になるということになりますと、ほかとの権衡を失するという場合があるのじゃ  なかろうか。言葉にそむいて極端な例を示すようで工合が悪いのでありますが、かりにだれかほかの人が警察の車を持ち出して事故を起こしたという場合、これはもうそういう状態に置いた警察の管理上の責任というのはもちろんあると思いますが、その場合にも、やはり国家賠償法の適用で損害賠償をしなければならぬのかと申しますと、やはりそこらに限界があるのだろうと思います。これは法律問題としては非常にむずかしい問題でございますが、私どもとしましては、従来の学説あるいは判例による以外にはないように思うのであります。
  44. 門司亮

    ○門司委員 あなた少しものの考え方が違やしないか。車が事故を起こしたのじゃないのです。警察官が事故を起こした。車がひとりでに出て行って事故を起こしたら、車の責任だということが言えるかもしれないが、少なくとも車が事故を起こしたのじゃない。この場合は警察官が事故を起こしておる。しかもその事故の起こし方が、無免許で黙ってかぎを持っていって警察の車でやっている。従って警察が全然責任を負わないという理屈はどこにもないと思う。これはどう考えても上司の監督する人の瑕疵に間違いがないと思う。それがもし警察の責任でないというなら、これはもう警察なんていうのは全然信頼ができはしない。あなた方の道路交通の取り締まりだって、車を罰するわけじゃないでしょう。運転手を罰しているでしょう。車がひいたわけじゃない。運転手がひいた。それを車がひいた、車がひいたというのでは、どう考えてもおかしいと思うのだが、これはどう考えても、やはり監督の責任というものはあるはずです。内部的に、警官に対する行政処置は行政処置でとらるべきだ、外についてはあくまでも警察が責任をとるべき筋合いのものだ、こう解釈する方が正しいのじゃないですか。現行の国家賠償法ではどうしてもうまくいかないというようなら、警察は、誠意をもってこの問題は警察が解決をすることが望ましい。責任を負って運転手を処罰したらよろしいのだ、罰則は成り立たない——これは警察がとった判例の事実を見てごらんなさい。これはだいぶ前の問題で、全然別の問題ですが、犯人をつかまえて逮捕に協力した人間と一緒に警察官が車に乗って、そして警察へ送る途中で、犯人逮捕に協力した人間が殺された事実があるでしょう。そのときも、警察官が頼まないで警察に協力した者については賠償をしないという、いわゆる弔慰金を出さないという規定になっておった。その後法律を改めましたが、その当時はそうだった。警察官が頼んだのじゃないのだ。あの男が勝手に警察官に協力して、どろぼうを警察まで送ってこようとしたのだから補償できないという事実があったのです。これには警察も困って、あの場合の処置としては、警察官全部から——私は県の名前をはっきり言ってもいい。神奈川県の警察です。警察官全部から弔慰金を集めて、さらに防犯協会その他から集めて、大体国の補償する額より以上のものを集めて、ちゃんと警察は誠意をもってこれに報いているのです。これは法律がなくても、警察処置でやれるはずだと思うのです。あなた方は、国家賠償の責任がないからやれないのだという理屈は、私はどこにも成り立たないと思うのです。この場合は、法がなければないで、警察は自分たちの責任を背負って誠意を示すべきだと思うのです。法は法廷でなければ争えませんが、これは最後になってくれば、問題は物質の関係ですから、誠意を示してしかるべきだ。ただ遺憾ながら今法がないからできませんとあやまることはできるかもしれない。これは警察官は少し考えてくれなければならぬ。今のように国家賠償法でできないのだからおれたちは知らないのだ、警察官がやって、そのおやじが金を出して解決したからそれでよろしいんだということでは、日本の警察はたよれません。そんな不都合な警察がどこにある。それから道義上の責任をあなたはお考えになるかどうか、警察が考えてしかるべきかどうかということを最後に私は聞いておきたいと思います。
  45. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 そういう不祥事件を起こしました警察の道義的な責任、これはもう繰り返しておわび申し上げておるように十分感じておる次第でございます。ただ国家賠償法というものがくどいようでございますが、いろいろ要件がございますので、それに直ちに当てはめ得るかということにつきましては、従来の学説あるいは判例からして消極に解せざるを得ないのじゃないか、こういうように考えておるわけであります。
  46. 門司亮

    ○門司委員 まだそういうことを言うなら、もう一ぺん言っておきたい。それならこの事故は、さっき石村さんの方から言ったように、車庫から無断で引き出している。そして無免許の運転手が事故を起こしている。その事故を起こしたときと、どこで中断されますか。いわゆる国家公務員の行為でないということは、どこで言えますか。さっきの自動車の事故は、監督の不行き届きはあったかもしれない。しかし、自動車事故は衝突事故という相手方のある事故であって、ここで監督の責任が中断されている形になっているので非常にむずかしいという法制局の答弁でした。この場合は、どこで責任が中断されていますか。私はどこにも中断されていないと思うのです。
  47. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 無免許で、しかも酒を飲んでやったという非常に申しわけない事態であればあるほど、この国家賠償法の適用としてはむずかしくなってきておる。さきにも申しましたように署長を送って帰り道に私用で回り道をした、その際に交通事故を越こした場合が、判例によって国家賠償法の適用を否定しておりますので、そういうことも考え合わせまして、私どもは今申しましたような解釈をとっておるわけでございます。道義的な責任とはまた別個な国家賠償法の適用ということになっておるように思うのであります。
  48. 門司亮

    ○門司委員 そんな答弁を私は聞いているのじゃない。警察官の職務の執行、警察官という身分がどこまで中断されているかということなんです。警察官はいつでも職務を執行する権限を持っています。あなた方、たばこ買いは私用と言うけれども、それは警察の職務規程の中にたばこを買うというのはないのですから、私用かもしれない。しかし警察官の職責というものは四六時中持っているのですね。そしていつでも逮捕もできれば、尋問もできるのです。そうすると、身分は切れていないと思う。どこかで切れていれば別です。さっき言いましたように監督の権限はあるのだ。しかし監督の権限は幾ら発動しても、片方から衝突されたのだから、この衝突は監督の権限で避け得られないのだ——私はそうも言えない、あの場合も、もう少し監督が行き届いておれば衝突は避けられたと思う——ここで事故というもので責任を中断されている。これは他人の及ぼした事故によって中断されているという理屈を一応法制局は言うのです。私は、そういう理屈もあるかと思う。今度の場合は、中断された場所はどこにもないのです。中断されているということをあなたのところで御答弁ができるならば、あるいはわれわれは考えなければならないかもしれない。しかし、どこにも中断されないということになれば、やはり警察官の身分として事故を起こしたということにならざるを得ない。事故を起こさしたのは警察官の管理が不行き届だったということになる。管理が不行き届きだったということは、いわゆる憲法の十七条からくる、あるいは国家賠償法の二条でいう大きない瑕疵であったということが言えないわけではない。だからどこで中断しているかということ、それを教えてもらいたいと思っているのです。
  49. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 これは非常にむずかしい問題だと思いますが、警察官の身分は常にあると思います。ただ職務執行中の警察官であるかどうかということになりますと、やはり無断で持ち出したとたんに職務執行中ではないというふうな解釈にならざるを得ないだろう。ただその後も、あるいは現行犯を逮捕しなければならぬ、あいは職務質問しなければならぬ事態が起こったときには、やはり職務執行というのが出てくるというふうに考えておるわけでございます。
  50. 門司亮

    ○門司委員 そんな理屈はない。それなら私ははっきり聞いておきますが、警察官はたばこを買いに行くことも私用でしょう、生理的現象まで私用とは言えないかもしれないけれども、人間ですからこういうことはたくさんあるのです。たばこだけでなくもっとほかのものを買いに行く場合もあるでしょうし、そういう場合は全部警察官の身分が切れるのですか、そういうふうに解釈してよろしいのですか。
  51. 坂井時忠

    ○坂井政府委員 警察官の身分はあると思うのです。たばこを買いに行ったときでも、そこにどろぼうがおればやはりとっつかまえるという権限行使があると思うのです。ただ、その身分があるということと、職務執行中であるということは概念が別ではないかというふうに考えます。
  52. 濱地文平

    濱地委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  53. 濱地文平

    濱地委員長 速記を始めて。
  54. 石村英雄

    石村委員 私は警察が責任をほんとうに感じて、それによる処置というものがあれば、法律論は別として、一応問題は次に延ばしてもいいと思うのですが、あなた方が責任を感じておるということは、相済まぬことだからおやじさんに金を払わせますというのが、責任を感じておる具体的な内容なんですね。おやじさんに金がなかったら処置なしですよ。それでは責任を感じたことにならぬ。それでまた懲戒免職した。懲戒免職するというのは当然でしょうが、それで責任を感じたことには、損害を受けた国民の立場からいえば何らならない。それで職務執行中でないというのがあなた方の議論なんですね。それに対して私は、最高裁の判決では外形上という問題をあげた、それと管理上の瑕疵の問題、この二つからこれは国家賠償法の適用を受けるのじゃないかという質問をしたわけですが、あなた方はどうもそうじゃないという解釈で、結論として私は、もっと長官と相談をして、ほんとうに警察がどのように責任を感じて、今後こういう事態が起こっても、どんな処置をとられるかということをはっきりさせてもらいたいと思います。これはあなたから今すぐその答弁を求めることは無理だと思いますから、長官とよく相談せられて、こういうことが起こったときには、警察は具体的にどのような処置を責任を感じておとりになるか。家族から金を出させるということが責任を感じたことには絶対にならないという前提で御相談していただきたいと思いますが、参考までにもう一度最高裁の判決の終わりごろを読んでおきます。最高裁の判決はこう言っておるのです。「公務員が、主観的に権限行使の意志をもってする場合に限らず、自己の利をはかる意図をもってする場合でも、客観的に職務執行の外形を備える行為をして、これによって他人に損害を加えた場合には、国または公共団体に損害賠償の責を負はしめて、ひろく国民の権益を擁護することをもってその立法の趣旨とするものと解すべきである。」こう最高裁は言っておる。そうして控訴審の理由には、国家賠償法の第一条の「職務を行うについて、」は、民法第四十四条と民法七百十五条との関連の趣旨についての判示をしておりますが、それには「大審院は大正十五年十月十三日民刑連合部判決以来今日まで『行為の外形上使用者の事業に属するものはたとへ被用者が自己の利益をはかる目的でなされた場合でも事業の執行についてなされたものと解する。』と判示しておる。」こう控訴審ではやはり言っておる。これは外形上警察がパトロールするのは、自動車で回るのは職務執行のうちだと思うのです。それで外形上だれか客観的に見れば、これは職務執行と判断すべきものだと思うのです。あなたはけがした人がけがした瞬間にどうとかこうとかというようなことを言ったのですが、とにかく警察の自助車が歩くというのは職務執行だと、こう世間的に判断されるのが当然である。これは大審院の判決においても、そういう場合には本人の意思がどこにあろうとも、外形上そういうものは民法関係の事業の執行と同じだという趣旨の判示をしておるといって、高裁も判決しておるわけです。その高裁の判決を支持して最高裁は、憲法十七条やあるいは国家賠償法ができた今日においては、いろいろ公務員のそういう責任について公共団体に責任がないという従来の観念は一擲しなければならぬということまで親切に判決を下しておるわけです。一つもっと長官と御相談なさって、国民が納得する形の答弁をこの次にしていただくことを期待しまして、私はきょうは終わりたいと思います。
  55. 濱地文平

    濱地委員長 それでは本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十六分散会