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1960-05-07 第34回国会 衆議院 大蔵委員会税制並びに税の執行に関する小委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月七日(土曜日)     午前十一時八分開議  出席小委員    小委員長 鴨田 宗一君       黒金 泰美君    田邉 國男君       古川 丈吉君    細田 義安君       毛利 松平君    神近 市子君       平岡忠次郎君    横山 利秋君       春日 一幸君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君  小委員外出席者         大蔵委員長   植木庚子郎君         大 蔵 委 員 小山 長規君         大 蔵 委 員 佐藤觀次郎君         大 蔵 委 員 廣瀬 勝邦君         大蔵事務官         (主税局税制第         二課長)    志場喜徳郎君         大蔵事務官         (国税庁間税部         長)      泉 美之松君         大蔵事務官         (国税庁間税部         消費税課長)  今泉 一郎君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  税制に関する件      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  税制に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。春日一幸君。
  3. 春日一幸

    春日小委員 私は、本日第二種物品課税価格営業所経費控除の点について、政府に対して質問をいたしたいと存じます。  政府は、従来認められておった第二種物品課税価格に関しまして、営業所経費廃止せんとするの通達を出しておるようでございます。これは、物品税理念、それから庫出税の本質、取引実態並びに租税法定主義原則、このいずれの観点から判断いたしましても、これはまさしく収税官吏違法行為というか、あるいはまた越権行為とも称すべきか、いずれにしても、これは不当な措置と断ぜざるを得ないのでございます。私は、このような徴税事務当局独断専行を、断じて本委員会は許すべきではないと存ずるのでございます。そこで、主税局長に伺いまするが、あなたは、本大蔵委員会がかつて徴税行政について行なった決定、すなわち大蔵当局が行なう政令規則通達、こういうものであって、国民に対して税の負担を加え、もしくは税の軽減をするような影響を与えるものについては、これは租税法定主義原則にのっとって、かつはその本旨にのっとりまして、事前に本委員会に付議し、その了解を得た後これを行なうという、こういう申し合わせがあることを御存じか、まずこの一点からお伺いをいたしたいと思うのであります。
  4. 村山達雄

    村山政府委員 本委員会においてさような決議があったことは実際は存じておりませんが、ただいまのお話でございますと、法律あるいは政令によらざる通達で、租税増徴しあるいは軽減してはいかぬ、租税法定主義を順守すべきであるというお話でございますが、その点は全くその通りであろうというふうに同感の意を表する次第でございます。
  5. 春日一幸

    春日小委員 本委員会は、少なくともわが国徴税行政がいかにあるべきか、そのオリジンをここで作定するの場所であるのでございます。そういうわけ譲りまするから、その租税行政実態がその法律条文に恪順しなければならないことはもちろん、その法意にかなった執行というものがなされなければならない。こういう意味合いにおきまして、そういうような通達であるか、あるいは政令であるとか、規則であるとかいうようなものについても、このことが、すなわち徴税行政国民財産権に至大な関係を直結いたしておりますだけに、特にそういうものについては神経質なまでに国会意思というものを十分体して、そうして法意にもとらざるよう、もとより法律条文に違背せざるよう、十分注意しなければならない。しかるところ、たまたま通達政令規則などによりまして、そのような法律意思というものが大きくゆがめられて執行されるの危険はなしとはしない。そういうことから、二年ばかり前の本委員会でございましたが、今後通達を出すについては、事前に本委員会にそのことを諮って、こういうような通達を出すからよく御検討願いたい、そういうような手続を踏むことが至当であろう。そこは理事会の満場一致の議決によってそのことが確認され、主税局国税庁に対しても、厳重にその伝達がなされておると思うのでございます。その点は、もしあなた方が御存じないとするならば、よくその当時の記録に基づいてあるいはそれぞれの機関について十分聴取されて、今後とも厳重にそういうような本委員会意思に基づいての法執行について、格段の御注意を願いたいと存ずるのでございます。  申し上げるまでもなく、このことの基準は、日本国憲法が三十条において租税法定主義原則規定いたしておりまするが、特にこの八十四条では、「あらたに租税を課し、又は現行租税変更する」そういうような場合には、どうしても法律によらなければならぬ、こういうことが絶対要件として憲法によって規定されておることによって明らかであると存ずるのでございます。従って、単なる通達改廃によりまして税負担の著しき増大を来たすような措置は、これは厳に避けなければならぬ。冒頭申し上げましたような、大蔵委員会のそのような決定を、あなた方が知る知らぬは別問題といたしまして、少なくともこの憲法は公務員がこれを守らなければならぬという順守の義務が負わされておるのでございますから、この八十四条の関係を正当にあなた方が理解される限りにおきましては、このようなことは許されないと思うのでございます。現に営業所経費控除制度はすでに八年間にわたって継続しておることは御承知の通りでございます。それから、二つには、業界はその取引形態をこの制度に適応せしめる、そうして現実にはそれを基準としてその安定をいたしておるということの事実でございます。言うならば、この制度は一種の既得権といたしまして、営業基礎条件を維持し、こういうような事柄条件として、その営業が成り立っておるのでございます。しかるに、これを、一片通達をもちまして、事実上十数億になるかあるいはまた数十億になるか、それは結果によって見なければならぬでありましょうが、いずれにしてもこのような増税となるような扱いの変更を行なうというがごときは、税務行政として、はなはだしく不当であるのみならず、これは租税法定主義の大原則に違反するのではないかと存ずるのでございます。このような取り扱い変更立法措置によって明確に規定をする、これでなければ立憲政治の根底がくつがえってしまうと思うのでございます。  こういう問題について、主税局長は、憲法第八十四条の関係において、今申し上げましたような三つ前提、すなわち八年間制度としてこれが継続されたから、業者たちがこういう制度に適合させて事業そのものを安定せしめておるということ、このような制度が容認されて参ったことによって、言うならばこれは一つ財産権として一種の既得権としてすでに国民に付与されておった権限一つである。こういうものが一片通達によって改廃されて差しつかえないと思うか。憲法八十四条の規定に照らして法律によらずしてこのような改廃をしていいと思うか。この点についてあなたの所見を伺いたいと思うのでございます。
  6. 村山達雄

    村山政府委員 ただいまの春日委員お話は、営業所経費控除することが物品税規定上当然であって、それを通達によって廃止することは物品税法精神に反するという前提にお立ちになっての、憲法との関係の論議のように思われますが、実は、われわれは、営業所経費控除しないことは物品税法規定解釈として当然のことであるという、違う前提に立っておるわけでございます。  ただ、なぜ八年間にわたってやったかというお話でございますが、これは、春日委員も御案内のように、昭和二十六年に実はこの通達を出したわけでございまして、当時は、その前でございましたが、公定価格制度があったわけでございます。公定価格をきめるときに物品税の税込みでもって公定価格をきめたわけでございますが、その際に織り込む物品税税額を、製造者卸売価格基準にして織り込むことも可能でありますし、それから大卸、小卸、こういう取引価格基準にして物品税の額を織り込むことも可能であったわけでございますが、公定価格をきめる際、どういう手順でございましたか、製造者販売所を通さない場合の売り他、これをもとにして、それに対する物品税額公定価格に織り込んだわけでございます。そういたしますと、もし物品税法をそのまま適用いたすということになりますと、われわれの解釈によりますと、当然営業所経費はしないで、つまり製造者の実際の販売価格、それが大卸であろうとあるいは小卸であろうと、実際の販売価格によるという物品税法解釈をそのままとりますと、公定価格は維持できなくなるという関係がありましたものですから、臨時的に、その公定価格との関連におきまして、物品税法趣旨には反しますけれども、実際の負担関係あるいは公定価格の維持という観点を考慮いたしまして、営業所経費について通達を出したわけでございます。  しかるところ、その後御案内のように公定価格廃止されて参りまして、早く直さなければならないということはかねがね考えておったのでございます。たまたま物品税課税標準の問題がいろいろございまして、製造者販売価格と言っているけれども、実際の取引におきましては値引きその他はあるわけでございまして、従来からこの値引き相当額というものは、当然物品税課税標準から引くべきではないか、こういう議論があったわけでございます。これは当時いろいろ問題になったわけでございますが、理論としては聞くべき節がございまして、その後リベート形態、はたして値引きと認められるリベートというものはどういうものであるか。あるいはいわゆるリベートという中に報奨的なリベートもあるわけでございますが、そういうものをだんだん研究して参りまして、一方引くべきものは引く。その際に、もう理由のなくなった、しかもそれは物品税法規定からははずれておる営業所経費というものは、やはりその際あわせて廃止すべきである。実際はその影響につきましても考えましたが、先ほど春日委員は十数億にも上るというようなお話でございましたが、そんなことにはならないのでございまして、われわれの計算では、その増減額は非常に少なくて、おそらく二、三億にとどまるのではなかろうか、かように見ておるわけでございます。
  7. 春日一幸

    春日小委員 私の質問に対する正当な答弁には相なっていないのでございます。今十数億ではなくて二、三億ということに言われておるのでございまするが、二、三億といえども、厳密な意味においてそれだけ国民に対して税の負担を加うる問題については、憲法八十四条の規定に基づいて明確なる法律規定によらなければならない。これは論を待たないところでございます。ただ問題は、今までの営業所経費控除行政措置なるものが、法律の条項に照らして適当か不適当であったかということによって——今回、不適当であったという判断のもとにおいて、こういう撤廃措置がとられようといたしておるのでございまするが、そうだといたしましても、なおかつ私が論じておりますことは、八年間もこの問題が制度として行なわれてきたこと、それから経済行為実態がこの制度に適合せしめて安定をしておるということ、それから少なくとも八年間にわたって認められてきたことは、法律上に多少の疑惑や何かがあったといたしましても、これは現実立憲法治国において堂々と政府通達によってそれが認められてきた以上は、それは国民に与えられておるところの既得権として、これはもはや論じ尽くされた問題である。法律上の疑義はその通達が発せられたことによって解消しておる問題である。既得権として付与されておる確定的な事柄である。そういう問題を変更しようとするような場合においては、これは当然その法律手続によらなければならぬ、こういうことを主張いたしておるのでございます。従いまして、私は、そういう問題は適当ではないから、営業所経費廃止せなければならぬとするならば、それはそれで法律案として、いやしくもあなたの方がここへ提出されてくるならば、われら委員会はそれをあらゆる角度から論じて、そうして適当な結論を出すことができると思う。にもかかわらず、あなたの方は今申し上げた三つ条件を無視して、単なる一片通達をもって——二億と言われておりまするけれども、そのような増徴をあえて行なおうとされておる。しかし、今あなたは二億と言われておりまするけれども、これはいろいろなリベートの率その他の問題を調整することによって二億に圧縮されたものであって、それが現行の率によって強行されるといたしますれば、これは依然として十数億あるいは数十億になんなんとする膨大な増徴がなされるということは当然なことであります。これはあなたの方が行政的な一つの勘案を加えて、そうして業者との間に話し合いをして、率の方において見るから制度としてこれはあきらめろ、こういうような、いわば権力を持つ者が、権力を持たざる者に対して実際の増税額を圧縮することによって、制度上の問題を相手方に無理じいに納得せしめんとしておる、こういう不当な措置がその中にひめられておるということを、われわれは重視せなければならぬと存ずるのであります。  なお、あなたは、今ここで物品税課税価格というものは実際価格だと言っておられるけれども、これは明らかに違う。物品税課税価格というものは一個の抽象価格である。庫出税における抽象価格である。こういうことは後ほど物品税理念を根本的に論ずる場所において私は明らかにいたしたいと思うが、そういう意味におきまして、いずれにいたしましても、あなたの方が一片通達をもってこのような重要な問題を処理しようというようなことは、ただに本件の今回の場合に限らず、将来ともに多くの問題について関連を持つ問題でありまするから、この点については十分にその憲法の条章を恪順せられて、少なくとも国会権限をあなた方行政当局が侵犯したりじゅうりんしたりすることのないように、租税法定主義原則は断じて守っていただかなければならぬと存ずるのでありまして、この点は一つ十分に御銘記を願っておきたいと存じます。  時間の関係がありますから問題を先に進めまするが、次は、税法中立性について申し述べまして、営業所経費控除制度廃止の不当なる理由をここに明らかにいたして参りたいと存ずるのであります。すなわち、この大量生産の時代におきましては、生産企業売買企業の分野に進出をいたしまして、そうしてこの配給機能を担当する主体を兼ねることが多くなってくることは、現在のこの発達をいたしました経済行為実態であろうと思うのでございます。この場合、配給機能を担当するための販売組織といたしまして別人格特販機関、つまり特殊販売機関を設けるのと、それから別人格でなく、単なる内部組織としての営業所を設ける方法とがあろうと存ずるのでございます。そのいずれを選ぶかは企業の任意の選択事柄に属しまして、いやしくも国家が、かかる私企業営業政策にみだりに干渉したり、または直接的な影響を与えるような行政措置をとってはならない、これは厳に避けなければならぬと存ずるのでございます。すなわち、税法においても、結果的に一つ事柄を干渉し、一つ事柄を抑制するような結果になるような取り扱いはなさるべきではない。この点は局長はどう考えておられまするか。すなわち、税法経済に対するところの中立主義、すなわちその税法を、こういう措置をとることによって、たとえば現実には特販機関を設けて特販機関経費を見てもらった方が一割安くなるから、従って特販機関を設けるべし、設けて販売を行なうべし、こういう形に結果的になってくるようなことを無理じいしていくということは、すなわち、独禁法精神でいうならば、自由にして公正なる競争原則というものがございますが、自由にして公正なる競争形態が、企業自由選択、自主的な選択によってなし得ない形になってくる。自由にして自分企業に適合した形で、たとえば特販機関を設けた方がいいか、あるいは企業内部において販売部を設けた方がいいか、自由経済のもとにおいては、その選択はその企業自体の自主的な決定に属する問題でなければならぬ。わが国経済憲章基本である独禁法は、その精神を明確にうたっていると思うのであります。ところが、こういうような廃止をされれば、結局別人格特販機関を設ければ、当然販売に要するところの経費としての経費控除が認められる。ところが、企業自分内部販売部を設ける場合においては、それが認められなくなる。そうすれば、販売政策上、税法の強制において、当然この特販機関を設けるという形にこれを無理じいしていく。少なくとも税法がその企業形態に対して一方を無理じいし、一方を抑制するというような措置をとるということは、これは独占禁止法精神に照らしてもよろしくないと思う。この点についてどうお考えになっておりますか。
  8. 村山達雄

    村山政府委員 課税標準に関する物品税規定の内容ないしその解釈については、後ほどお話があるそうでございますので、ここでは私の方から立ち入って申し上げませんが、ただいまの税法中立性についてどう考えるかというお話でございます。この点につきましては、その中立性の問題の解釈あるいはその意義のとり方の問題とも関連いたしますが、大体かように考えておるわけでございます。お話のように、製造業者がみずから営業所を設けて販売する場合と、それから、別人格特殊販売機関を設けまして、それをして販売せしめる場合、こういう両方の場合を、経済実態に即して経営者が任意に選択することができることはお話通りでございまして、私法をどのように使うか、私法の形をいかように利用するかということにつきましては、それ自身としては自由であるべきものであろうと思うわけでございます。われわれが税法中立性と申しておりますのは、そういう場合に、私法上の形式の利用は一応任意ではあるけれども、税は税として、その間実質負担の公平という点をねらいまして、私法L上認められたものでありましても、税法上の実質課税あるいは実質上の公平をはかるという見地からある種の規定を設けることは、税法基本理念であろうと思うわけでございまして、お話のように、その点に関しまして現在の施行規則の十一条の三に、特殊販売機関が売ります価格は、特殊販売機関に対して製造者の売っております価格が、他の製造者が売っておるものに対して低いと認められる場合には、その実際の販売価格によらないという規定があるのも、その趣旨にほかならないわけであります。なお、御案内のように、直接税の系統におきましても、同族会社行為計算——これは私法上はそれ自身有効ではございますが、やはり税の実質負担の公平という税法観点から否認できる規定を設けられておるのも、この趣旨であろうと思うわけでございます。
  9. 春日一幸

    春日小委員 税法というものは、わが国のさまざまな法律の総合的な観点の中において存在するのであって、憲法だとかあるいは経済憲章としての独禁法であるとか、他の法律、またその精神と相反して存在するものじゃございません。従いまして、わが国資本主義である現段階においては、自由経済でありまする限りは、税法もその基本的な国の方針にマッチしたものでなければ相ならぬのでございます。私は後ほど論じて参りたいと思うのでございますが、そういう意味でこそ、ここにその営業所経費控除というものを見ることによって、その税負担均衡という道が特にはかられておると思うのであります。  局長は、国税庁の直税部長の当時からまことに俊敏で、法にも明るくて、最も尊敬する一人であられたので、私は今ここであなたと法理論をいろいろ展開しようとは思わないけれども、これはいろいろないきさつがある。たとえば、私は、昭和三十三年の七月十一日に、特に岸内閣総理大臣に対しまして、特殊販売機関に対する質問を文書でいたしております。そこの中で、税負担均衡というところは、納税者の側における税負担均衡ウエートを置くべきか、あるいはこの物品税については、消費者税負担権衡ウエートを置くべきか、これは明確にここに断定的に答弁がなされておるのであります。これは「消費者負担すべき税額差異のないことが望ましい。」こういうことになっております。従って、消費者差異ないような税負担という形になっ参ると、どういうことになるか。すなわち、営業所を通じて販売する税負担も、それから特販機関を通じて販売する税負担も、それぞれ税額はひとしかるべきである、こういうことで、これは、今あなたが、第二種物品税課税価格というものは販売の実際価格と言われたけれども、その答弁の中において明確にされておるように、これは後ほど論じますけれども、第二種物品課税価格は上記の規定で明らかにされた、いわゆる抽象価格であるべきである。こういうことは、政府みずからが、物品税法の制定以来の一貫した理念として明確にうたっておるのでございます。でありますから、租税負担権衡原則というものは、第二種物品税税額に関する限りは、これは納税者というものが消費者である、消費者負担する額というものは一緒でなければならぬということを、政府みずからが答弁いたしておるし、答弁のいかんにかかわらず、われわれはこれは十年間この問題をずっと論じてきているのだが、一貫した政府方針であり、またわれわれの理解もそこにあるのである。討論の終結の問題である。  そういうわけでありますから、従いまして税負担権衡、画一的であることが望ましいという、この理念からすれば、これは営業所を通じて販売したときの課税価格と、それから特販機関を通じて販売するところの課税価格というものは同一でなければならぬ。同一でないような場合は、営業に関する、企業に関する中立性税法が侵す形になるので、これは憲法並びに独禁法、その他いろいろのわが国経済活動に対して悪い影響を与えて参る。すなわち、税法経済に対する中立性を侵す形になるのですから、これはいけないということで、必ずしも当時の公定価格価格構成のいろいろな技術上のテクニックからきて、そういうわけで、あの営業所経費の一割というものの控除を認めたのではない。その理念というものは、こういうような広範な経済的な憲章からくるところのいろいろな検討、その他物品税を貫くところの根本的な理念、こういうようなものから、やはりあの営業所経費控除という特別の制度法律でできておるのであります。  でありますから、今回この問題をあなたの方が一方的に廃止しようというようなことは、よって及ぼすところの影響が甚大である。すなわち、消費者たちの納める物品税税額というものは、負担均衡が破れてくる。いいですか。そうしてまた、納税者納税の額も均衡が破れてくる。めちゃめちゃになってくる。あなたの方がこの第二種物品税というものを制定して以来貫いてきておるところの、政府の一貫した理念というもの、また国会もそれに対して了解を与えておるところのこの考え方、政策、こういうことが一方的にゆがめられてくる。そしてわが国経済活動に対して重大な大波乱を生じてくる。お互いに同じようなフェーバーを受けようとすれば、すべからく特販機関を設くべし、こういうことで、特販機関というもの、特殊法人、そういうような特別の法人格を作らなければならぬということを、税法企業に対してしいてくる。こういうようなことは、独禁法でいう不公正な取引——政府がやることでありますから、独禁法には抵触しないと思うのでありますが、自分が有利にある立場を利用して、相手に不利なことをしいるという、こういう不公正な取引政府みずからが行なう、こういう形になる。自分が徴税権を持っておることによって、企業体に対してその変革を要求する。変革をせざるを得ざらしめておる。こういうようなことを政府みずからがやったら、一体わが国経済秩序がいかにして保たれるか。この点はあなたのような明敏をもって十分判断されなければ私はいかぬ問題だと思うのです。  単なる税法だけ、税金がちょっとやそっとよけいにとれることによって、わが国経済憲章の根本義をじゅうりんされて、それでてんとして恥じるところがないというようなことでは、あなたも主税局長どまりで、末の出世の見込みがなくなりますよ。この点十分判断をされて、悪いことは悪い、いいことはいいと——これはしかしあなたが直税部長の当時だと思うのですが、あの池田大蔵大臣のときに、私ども本委員会であのお知らせ制度の問題について深く論じた。かくのごとくに論じて、そうして論じた結果、池田さんが、なるほどお知らせ制度は悪い、これは徴税の民主化、租税法定主義に反するからお知らせ制度はやめましょうと言って、彼の決断をもって翌日やめたこともあるのです。だから、論じて悪いことは——日本の官僚の悪いくせは、反論があればあるほど自説に固執する。まるでサザエのように、ずっとからの中に閉じこもって、相手の意見に胸を開こうとしない。これが日本の官僚の最も悪いくせである。私は、そういう意味において、保守党であるけれども、池田勇人氏なんかは、われわれの論述の中で、いいことはいい、そして悪かったと言って翌日直すのです。そういうような度量を——とにかく村山の達ともいわれる(笑声)男は、これは十分決意を持って問題の処理をしなければならぬと思うのです。ほんとうにあなたはわが国徴税行政をささえておられる、わが国の良識でなければならぬ。この点何と考えられますか。(笑声)
  10. 村山達雄

    村山政府委員 ただいまの物品税課税標準につきまして、三十三年の春日委員から内閣総理大臣に対する質問書並びにそれに対する答弁の活に触れられましたので、その点ちょっとお答えしておきます。  物品税の第二種物品課税標準は、その答弁の際に抽象価格ということをはっきり答弁してございます。ただ、その抽象価格という意味ではこのような意味でございまして、法律の第三条に書いてございますように、第二種の物品課税標準は製造場より移出したときの価格によるというように書いてあるわけであります。従いましてその時点は製造場——これは一々政府の承認を要するわけでございますが、その承認を得ました製造場から移出した時期は、そのときの価格——品物は実はそのときには売れていないわけでございます。やがて売れるであろう価格、従いまして、そういう意味ではあくまでも抽象価格でございます。  それから、第二点に、同じように書いてありますが、通常の卸売形態において通常の卸売数量によって販売する価格である。従いまして、特に縁故者にある品物を数量を限定して安く売るとか、そういう価格意味しているわけではない、こういう意味でもやはり抽象価格であるわけでございます。しかし、そこで言っおります価格というものは、やはり売れるであろう価格でありまして、たとえば製造原価だけで計算するとか、あるいはそれに販売原価を加えた計算価格、あるいは勝手にきめたマージンを加えたそういう計算価格、そういう意味ではないわけでありまして、それはあくまでも実際に売られるであろう価格をもとにした抽象価格であるわけでございまして、この趣旨のことはいろいろの判例においても明らかになっているところであります。そういう意味で、先ほど私の言葉は足りませんでしたが、実際の価格と言いましたのは、実際売られる価格をもとにした場合の製造場から移出した時における、そういう意味抽象価格、こういうことであるわけでございます。  なお、先ほどの特販機関とのバランスの問題、特に税はフェアでなければならぬというお話、まことにごもっともでございまして、われわれもその点はバランスをとるべきものであるというふうに考えておるわけでありますが、ただ、春日委員と私の方の見解の違いますところは、営業所経費控除したところでバランスをとるか、あるいは控除しないところでバランスをとるか、これは物品税法課税標準解釈の問題につながるわけでありまして、われわれは控除しないところでバランスをとるべきである、こういうふうに考えるわけでございます。現にその種の精神を盛り込んだ規定——実は特殊販売機関が安い値段で売った場合に、政府が適当の規則に定めるところによって課税標準決定することができる旨を規定しておるのであります。施行規則の十一条ノ三、その第四号を見ますと、そのことがはっきり出ているわけでございまして、読み上げますと、第四号に、「前三号ニ依リ課税価格ヲ算定スルコト能ハザルトキハ当該物品製造者が当該物品ノ製造及販売ニ付要シタル又ハ要スベキ費用ニ其ノ百分ノ五二相当スル金額ト当該特殊販売機関が当該物品販売ニ付要スベキ費用ヲ加ヘタル金額」……。
  11. 春日一幸

    春日小委員 規則みたいなものは問題ではない。われわれが論ずるのは法律だけだ。
  12. 村山達雄

    村山政府委員 これは法律と同じ効力を持つわけでございまして、今法律というお話がありましたので、念のため法律を読み上げますと、第三条にかように書いてございます。「前条ノ価格ハ第一種ノ物品ニ在リテハ小売業者販売価格第二種ノ物品ニ在リテハ製造場ヨリ移出スル時ノ物品価格トス但シ保税地域ヨリ引取ラルル物品ニシテ引取人ヨリ税金ヲ徴収スルモノニ付テハ引取ノ際ニ於ケル価格トス」こう書いてございまして、第三項に「前項ニ定ムルモノノ外第一項ノ価格及燐寸ノ本数ノ計算ニ関シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム」というふうに法律に実は書いてあるわけでございます。従いまして、施行規則第十一条ノ三の第四号は全く法律に書かれているといわざるを得ないわけでございます。これを見ましても、特殊の販売機関販売経費を加算したところによる、こういうわけでございます。
  13. 春日一幸

    春日小委員 そこで、あなたに一つ重大な問題についてお伺いをしたいと思うのだが、抽象価格というものは売らるべかりし抽象価格と、売られるであろうという価格を想定したものが抽象価格だというのですが、抽象価格意味は売られるであろうということを想定した価格という意味においての抽象価格だと言われるのですか。
  14. 村山達雄

    村山政府委員 さようでございます。     〔小委員長退席、黒金小委員長代理着席〕
  15. 春日一幸

    春日小委員 その問題は後ほど論じたいと思いますが、物品税法の七条でありましたか、みなし課税がある。それから未納税移出、こういうような問題と関連してくる。一番明快なことは、たとえば用途免税あるいはまた輸出免税、こういうようなものについては未納税移出の手続が許されているでありましょう。未納税移出の承認を得ますね。そのときには未納税移出承認書にやはりそれだけの価格が評価されておりますね。そうでしょう、泉さん。それがもし承認を受けた用途に供せられなかった場合、たとえば用途免税が家庭必需品であるとか、教育品であるとか、あるいは輸出の場合に輸出が行なわれなかった、事実上積み出されなかった、そういうような場合には、やはりその段階において買った人が納税をしなければならぬ。その物品というものは税は別にして、納税の義務をそこに課せられながら、物品の代金はすでに支払い済みでありまするから、税金を納めることを義務づけられながら、所有権は移動しておる。これは第三条にある。その場合に、その男が承認を受けたる用途に供せずしてこれを転売する場合、内地販売、一般販売にする場合、これを納税しなければならぬ。そのときの納税価格は幾らになりますか。それは明らかにその評価されたる価格に対する従価になってくるわけだ。その未納税移出承認書に評価されたる価格に対する法律に基づく従価の税が課せられる、そういうことになるのじゃないですか。
  16. 村山達雄

    村山政府委員 それは、普通の場合と同様に、製造場から移出したときに一般に納税義務は発生するわけでございますので、法律の第三条の規定に基づきましてそのときの価格、従ってそのときその時点において売られるであろう価格ということに法律上はなるわけでございます。
  17. 春日一幸

    春日小委員 法律上なるといっても、実際上もそうなっておるのでありますが、その抽象価格というものは売られるであろうところの想定価格ではない。現実抽象価格というものはどういうものであるかというと、すなわち製造現場から出るときの課税であって、そのときには製造のコスト、プラス製造マージン、そういうものをさすところの抽象価格であって主税局長が今言われたような、その物品そのものが、卸売業者に、あるいは小売業者に、あるいは需要者に販売されるであろうところの想定価格ではない。その抽象価格というものの意味は、今申し上げたように、未納税移出によってこれが工場を出たときには百円のものが、ずっと転々していってこれを二百円で売ったとしても、納めるところはその販売価格ではなくして、すなわち製造場から移出されるときのその抽象価格なんです。抽象価格とは、すなわち製造のオリジン、プラス製造のマージン、そういうものをさすところの抽象価格であって、抽象価格とはそれをささなければならぬというその理由は、これはちゃんとあなたの方から私に対して昭和三十三年に回答されておるように、「物品税は消費税としての性格上、種類、品質、構造、効用等の同一物品については、その取引形態又は取引事情のいかんにかかわらず、」——特販機関を置こうと置くまいと、自分企業体の営業所を通じて売ろうと売るまいと、これは取引事情のいかんにかかわらず、「消費者負担すべき税額差異のないことが望ましい。」こういうふうに書いてある。だから抽象価格でございます、こういうふうにうたっておる。こういうようなときにはこういうことを言っておいて、これに反して不利なような場合においては、抽象価格というものは現実販売された価格であって、現実販売されるであろうことを想定しての抽象価格だというような、でたらめなことを言ってもらってはいかぬですね。やはりこれは経過があるのだから結果がある。すべて経過なくして結果はないのだから、従って、物品税法制定の当時から、それでは企業中立性税法が犯す心配があるから、その均衡をはかるために営業所経費というものを制定したのだから、そういう経過があることを忘れてしまって、そうして去年は税法がちっとも直らなかったから何も仕事がないので、何か仕事をやろうかというようなことで、まるっきり自分たちで退屈しのぎに法律をいじっていたら、おう、そうだということで、こういうむちゃくちゃな、乱暴ろうぜき、こういうことをやってもらっては国民が迷惑するのみならず、少なくともこの税法を審議いたしております本委員会としては、国民の前に権威を失墜し、不信のそしりを招く結果になってくる。この点は十分判断してもらわなければならぬ。この問題についてはあなたの負けであります。従いまして、これは負けであるか勝ちであるかということは、ずっと物品税の本質を論じていけば、私はおのずから明確になって参ると思うのです。  そこで、この際庫出税というものの本質をお互いに論じてみなければ、この問題は明確になってこないと思うのであります。それで、庫出税は製造税や販売税とは異なる別個の課税方法でありますから、この庫出税というもののアクセントを強くあなたが聞いて、そうしていかにあるべきかという、すなわち販売税と庫出税と製造税というものを区別して考えなければならぬと思うのであります。物品税は消費税の一種でありますから、消費という行為の担税力を見て、そうして課税されておるものであります。消費という行為の担税力に応じて、そしてそこに税率が定められて、こういう法律ができておる。しかしながら、どういう段階で課税するかは、物品の種類によりまして徴税の便宜等もあっていろいろ変わるから、そこで、物品税の課税方法としては、原料課税、半製品課税、製品課税と三つに分かれて、この製品課税の中で、さらにこれが三つに細分化されて、今申し上げたような製造課税、庫出し課税、販売課税、こういう工合に三つに分類されておる。ところが、第二種物品に対する課税方法は、今あなたが読まれた物品税法第三条をそのまま読めば、「製造場ヨリ移出スル時ノ物品価格」とすると定められておりますから、これは庫出し課税であることは申すまでもございません。すなわち、第二種物品税の課税は、製造税であるか、販売税であるか、庫出し課税であるか、そのいずれでありますか、局長の理解を伺いたいと思います。
  18. 村山達雄

    村山政府委員 お話のように、物品税は消費税の一種でありますので、その消費税の本質からいいますと、やはりその担税力に即応するという点が望ましいわけでございます。それが税率は、従価税の場合には、価格に従ってその担税力は現われてくる、こういう性質を持っておるかと思います。ただいま春日委員のおっしゃいましたように、消費税の本来の理想からいいますと、従価税の場合には小売価格をとるということがあるいは理想ではないかと思うわけでございますが、先ほども春日委員の御指摘がありましたように、実際上の徴税の便宜、あるいは納税者側の便宜をも含めまして、執行上の便宜から、あるものについては製造課税、庫出し課税をとっておるわけでございます。お話物品税は庫出し課税ではないかという点でございますが、それはわれわれもさように考えております。その意味は、この間接税の取り締まりの関係からいたしまして、製造場から移出したときに納税義務は発生する、かように考えておるわけでございます。従って、時点はいつ納税義務が発生するかということになりますと、庫出ししたときに発生する。従いまして、たとえば繰り上げ徴収の問題があります場合には、そこまではいけるわけでございます。従いまして、時点としてはそのときの価格だ。ただその価格をいかなるものを具体的にとるかという点で、どうも春日委員と意見が違うようでございますが、われわれはやはり抽象価格だという点には間違いございません。そのものはまだ売れてない価格で、やがてこれは売られるわけであります。従いまして、消費税の本質から申しましても、先ほどちょっと触れましたように、従価税につきましては、その売られる値段の高によってきめるべき性質のものであろうと思います。従いまして、それが今先生がおっしゃるような計算価格ではなくて、実際に売られた価格をもとにすることは、消費税の従価税の本質からいたしましてきわめて当然のことであろう、かように考えておるわけであります。
  19. 春日一幸

    春日小委員 委員長も国税局長を昔やっておったから、この点は幾らかわかるだろうと思います。しかし、主税局長は、直税のことは黒いようだけれども、間税のことはあまり黒くないように思われる。抽象価格というものの認識が実際問題として明確でない。これを一ぺん読んでくれましたか。これをちょっと読んでもらうといい。そこで庫出税の本質、すなわちこの第二種物品の課税方法が庫出税であるということについては、共通の理解が得られたと思うのでありますが、しかしニュアンスが違う。そのニュアンスを明らかにして参らなければならぬと思いますが、庫出税の本質は、製造場から移出するときに課税原因が発生し、物品税が徴収される。これが庫出税の本質であります。しかしながら、庫出税は製造税と販売税の中間に位するものであって今あなたの言われる考え方であれば、これはまさしく販売税である。販売価格に対して的確に捕捉されるということであるならば、これは販売税である。そういうものでありますから、特にこの販売税と混同してものを処理し尽くしてしまっては、これは危険です。でありますから、この点について、製造税と販売税との中間に位するものが庫出税であるというこの認識をもって、今局長答弁されたように、販売された実際価格を課税対象とするということになれば、これは販売税である。この点を混同しないようにして、しかし、これは非常にデリケートな問題であって、税法を相当深く熱心に誠実に扱った者でないと、この点はなかなかわからないのですね。しかしこれはあなたが静かに判断されればよくわかることである。  従って、庫出税課税価格を単純に製造業者の他の販売業者に対する卸売価格であると断定することは、これは庫出税の本質をあいまいにします。間違っているとは言わないが、これは庫出税の本質をあいまいにする。それは結果的に販売税と同じような形になってきて、そのことは本質をあいまいにする。何となれば、製造業者販売業者によって販売されるときに課税されるものは、今申し上げたようにそれは庫出税であるとは絶対言わない。的確に従価そのもののプリンシプルによって課税されるものは、これは販売税である。庫出税ではない。かくのごとくにして、庫出税とは、製造場から移出するときに課税原因が発生し、物品税が徴収されるところのものであるから、その課税価格は、その小売価格から小売マージン及び卸マージンを控除した価格にひとしかるべきものであり、これを逆に製造場の方から見るときは、これは直接製造場から庫出しする場合における製造原価プラス製造マージン、これに相当する価格たるべきものであって、これをいうならば、客観的に適正な市場価格としての抽象価格、これが庫出税でなければならぬと存ずるのであります。このことは、本員が昭和三十三年六月二十五日に内閣に発した質問書に対する答弁によって明らかになっておる。答弁書によりますと、第二種物品課税価格がいわゆる抽象価格であることは、物品税法制定以来一貫した解釈である、こういう工合に述べられておることに完全に一致するわけであります。この点はいかがでありますか。
  20. 村山達雄

    村山政府委員 先ほど春日委員のおっしゃられた適正な市場価格という言葉をこちらが答弁に使っているわけでございますが、市場価格というときには、これはやはり販売価格意味しておるわけでございます。従いまして、今春日委員のおっしゃるように、製造原価に製造マージンを加えた計算価格ではないわけでございます。これは販売価格であるわけでございます。その趣旨のことは各種の判例にも出ておりまして、昭和二十六年三月一日の高松高裁におきましても、市場価格という言葉を使っております。なお、その実質論から言いましても、先ほどの従価税の本質から言いましても、売り値の高によって二割なら二割という税率をきめる。その価格はそれぞれの製造者、それぞれの企業者が任意に選択するわけでございますが、その実際の価格に即応する方が消費税の本質にも合うということのほかに、さらにつけ加えて申しますと、たとえば同じ物品でありましても、メーカーによりましてそれぞれマージンが違うわけであります。その場合に、もし先生のおっしゃるように製造原価プラス製造マージンということになりますと、あらゆる同一物品を扱っておるものを全部集めまして、その加重平均したような種の計算上のマージンをはじかざるを得ない、こういうことになるわけでございまして、これは消費税の本質から見まして適当でないのみならず、執行上からもそれらのことは非常に困難になるわけでございます。従いまして、従来から庫出し課税という意味は、そのときに納税義務が発生するという意味におきまして、われわれは庫出し課税と呼んでおりますが、価格そのものにつきましては、実際に売られるであろう価格、適正な市場価格を中心に考えておるわけでございます。
  21. 春日一幸

    春日小委員 徴税が困難であるからといって、自分の楽なように法律を曲げてもらっては困るですよ。実際上その法律をそのまま正当に執行すれば徴税が困難であるならば、その税法は直すか廃止するかしなければならぬ。徴税が困難だから、とれるものならばどんな苦労してでもとるけれども、その通りにはとれないので、法律を曲げてとる、こういうようなとり方は、国会はあなた方に授権いたしてはおらぬ。法律の範囲内においてのみ徴税しなければならない。これは基本的なことで、論ずるまでもないと思う。従いまして、製造業者が直接製造場から販売しないで、営業所を通じて販売する場合には、その販売価格から営業所経費控除する。営業所には、営業経費、宣伝費だとか、いろいろな交際費だとか、そういう実在する経費というものがあるものだから、やっぱり販売税というものと庫出税というものには差異がある。あなたのおっしゃるがごとくんば、製造税も庫出税も、それからまた販売税も、制度としてみんな同一のものになっちゃうですね。やっぱり庫出税というものが販売税ではないということ、わけてこれが抽象価格であるということ、それから消費者負担する税額が単一のものであることが望ましいというこの法理、そういうことから考えてくると、これはやっぱり特販機関を設けて売る場合においては、その価格が適正な市場価格として容認されるものはそれを認める。そして、機会均等に、製造企業がその内部販売機構を持って販売する場合においては、特販機関に見合うところの実際の経費がかかるのであるから、従ってこれに経費控除を認むるにあらざれば、消費者の行なう税負担均衡が破れてくるから、物品税法の本旨に照らして、これは法意に反する。これは消費者の担税力を対象としたものであって、製造者の担税力を対象としてできた制度ではない。でありますから、消費者が買うものが担税力が同じでなければならぬという原則ならば、営業所経費というものを認めなければならぬ。認めなければならぬからこそ認めたんです。認めていけないものを認めておるならば、国会がこんなことを承認するわけがない。税法が不実に実行されておるとか、曲げて減税されておるというようなことで、法律によらずして彼らが免税を受けておるということは許されるべきことではない。八年間の長きにわたってこれが容認されてきたことは、このような法理に基づくものであり、かつはまた経済憲章の本旨に照らしてこの特別の制度が容認されてきた。今あなた方は唐突にこれをやめようとしておるけれども、だとすれば、八年間にわたって何十億という国損を来たしたところの行政責任、これは歴代の大蔵大臣を首にしなければならないし、あなた方その衝に携わってきた者は割腹し相果てなければならぬ。大へんな結果になってくる。これはただ大蔵省がむちゃくちゃにやってきたのではありません。渡辺喜久造がむちゃくちゃにやってきたのではないのです。やっぱり論理の上に立って法意に徹してこういう特別の措置がなされてきたのだから、前任者のやってきたことをみな間違っておるといって御破算にしてしまうということは、これはむちゃくちゃですよ。だから、それは謙虚な気持で、やはり法律精神というものと経済活動実態というものを公正にそしゃくして、そこであなたの方がいろいろと対策を立てなければいかぬと思う。  さらに、この問題の認識を深めるために、私は、ここで、この際みなし移出と未納税移出の規定の根拠を明らかにして、営業所経費控除というものが適法であるゆえんをさらに明確にいたしたいと思います。すなわち、この物品税法には、七条にはみなし移出、十一条には未納税移出の規定がありまするが、これらの規定は、これまた、その反面において、この営業所経費控除の合理性を証明する以外の何ものでもない。  まず、このみなし移出について申しまするならば、第二種の物品が製造場内で使用されたり消費されたり、こうしたときには、これは製造場から移出したものとみなして、物品税がその場で徴収されるという規定であります。そして、物品税は、原則として製造場から移出するときに課税原因が発生して物品税が徴収されるのでありまするから、従って、製造場内で使用または消費される場合には、物品税としての性格上、通常の流通過程、これを経て消費されると同じように、この消費に対して課税することが課税の権衡上適切なものとして、このような制度が設けられておる。第二種の物品については、みなし移出の制度が、かかる見地から特別の規定が設けられておるのです。これは庫出税の本質から当然のことであって、こうしなければならぬのであって、販売税のような場合においては、販売というものの実態が行なわれていないのであるから、このようなみなし移出の制度というものは、これは現実法律としてとられてはいない。法律としてここに「みなし」というものがあるということは、販売税と庫出税というものが根本的に相違うから、従って消費者というものの負担権衡をはかることのためには、この際こういうような特別の措置をとらなければならぬ、こういうことになっておって、これは庫出税というものと販売税というものの相違点をこの七条の条文が救済しておる。明確に規定しておる。  次は、未納税移出の制度についてでありまするが、これは、ただいま論じましたように、用途免税、移出免税も同様であるが、この場合、未納税物品が一般の消費に向けられる場合は、その時点においてその課税の義務が生ずる。こういうことは今あなたの方の御答弁にありました。そのときの課税価格は庫出し当初の庫出し価格であって、その段階における販売価格ではない。従って、これは販売税ではないのであって、明らかに庫出税である。このことは全面的によくそしゃくをして判断を願わなければ、問題が狂ってくるのです。非常にデリケートでニュアンスがあるけれども、抽象価格という「抽象」という言葉自体が抽象的なものでありますから、これを判断して明確に区分するということはなかなか困難である。困難ではあるけれども、これはやはり区分しなければならぬのです。区分しなければならぬからこそ、こういうような未納税移出の制度がある。すなわち、今回大蔵省が考えついたような、物品税課税価格製造者が他の販売者に対して卸売する卸売価格である、こういう工合に言い切るようなことは、これは何と言ったところで明らかに、今申し上げたような、各未納税の段階においてその移出を認めて、そしてその段階で販売しても、その販売したときにおける課税価格というものは販売段階において課税されるものではない。販売税ならそういう形になるであろうが、庫出税であるから、これはそのもとのスタートにおいて仕切られたところの価格課税価格としておることによって、販売課税とは違っておる。この点は明確であると思うがいかがでございますか。
  22. 村山達雄

    村山政府委員 先ほども申し上げておりますように、庫出し課税と申しますのは、これは課税標準が直接の市場価格によるのか、あるいはそれとは違う計算価格によるのかという問題と、噴出し課税であるか、法律販売課税であるかということは、直接は関係がないとわれわれは考えておるわけでありまして、われわれが庫出し課税と言っておりますのは、庫出しの際に納税義務が発生する、小売課税と申しておりますのは、小売した際に納税義務が発生する、そういう種類の税金をとらえてあるいは庫出し課税、あるいは小売課税ということを申しておるわけであります。  おっしゃる点のその価格につきましては、先ほどから申し上げておるところでございますが、なお、物品税の本旨に照らしてというお話がございますので、これを条文について申し上げてみたいと思います。法律の第三条で、課税標準に関しましては命令でこれを定めることに規定しておりますが、その法律によりまして施行規則の十一条の二がその通りずばりと書いてあるわけでございます。「物品税法第三条第一項本文二規定スル第二種ノ物品価格物品製造者が当該物品ヲ通常ノ卸取引数量ニ依リ且通常ノ卸取引形態二依リ凡ユル購入者ニ対シ自由ニ販売ノ為提供シタル場合ニ於テ当該物品ノ対価トシテ当該物品ニ附スベキ価格ニ当該物品ノ容器及包装ノ費用ヲ加ヘタル価格トス」こうございまして、その提供される場所は、製造場であるか、あるいは特に販売所を設けた販売場であるかという点は何も問うていないわけであります。ということの意味は、これはやはり実際の販売価格基準にするという趣旨にほかならないわけでありまして、それを受けまして、それとバランスをとりまして、先ほどの施行規則第十一条ノ三におきまして、特殊販売機関に対する価格をきめる際におきましても、その第四号では特殊販売機関販売経費を加えると特に書いておるわけであります。この両方の趣旨からいたしましても、営業所経費というものは、やはり課税価格計算にあたっては控除すべきものとしては考えられていないということは明らかだと思うわけでございます。
  23. 春日一幸

    春日小委員 それでは、物品税基本的な理念というものを、今の局長答弁に対して、明らかにしていかなければならぬと存ずるのであります。  私は、今までずっと、いろいろな法律関係において、よく条理を尽くしてあなたに述べておっても、あなたの心の中には何もしみていないようです。これは、私は適当でないと思う。やはりあなたが聞くのでなければ、実際の話がわが国において聞く人はいないのです。大蔵大臣にはわかりゃせぬ。そうして、また、こういう大きな問題は堀君たちでは何ともしようがない。それだから、私の言うたことの中で一つでも道理にかなったりあるいは法律法意に適切な意見があるならば、やはりあなたがこれを聞いて、なるほどなあと思って胸をたたかなければいかぬと思う。堀君や泉君の言ったことをあなたは棒のみにしてしまって、何でもかんでもそういうふうに言わなければならぬようでは、これは国会政府とのこういう議案審査、国政調査の意味を持たない。効果を持たない。カワズの頭に小便みたいなもので、何を言っても頭をぐるぐるっと振って知らぬ顔をしておったのでは何にもならない。そういうことでは、私どもの苦心の勉強というものは意味をなさぬ。国会の権威というものは保てない。これでは大蔵官僚独善という形になってくる。だから、ここで申し上げておくが、物品税理念というものは、私への答弁にはっきりと政府が示しておるように、これは同一物品同一税負担原則なんです。だから、取引形態販売方法等の差異によって税負担が異なってくるということがあってはならない。この鉄則をあなたがまず腹に入れて、そうしていかに対処すべきかということを判断されてくれば、問題というものはずっと解決されてくる。そういうふうに判断してくれば、第二種物品物品税は、今あなたが答弁されたように庫出税であるから、その課税価格は製造場から移出する、その時点における価格、すなわちその時点における価格というものは何ぞや。製造原価プラス製造マージン、これ以外の何ものでもない。さればこそ、未納税移出とか、特に未納税移出の場合ですね。用途免税をされたりあるいは輸出免税をされておるが、後日その所有したる物件を卸売マージンやいろいろなマージンを加えて他に転売したるときに納税の義務を発するのであるが、その場合における課税価格というものは今申し上げたような価格であって、販売された実際の価格ではないというようなことも、的確な解明にはならぬけれども、そこから抽出するところのニュアンスは、これが一つ抽象価格であって、その抽象価格とはいついかなる場合においても製造卸プラス製造マージンということであって、一律であるべきだ。そうして、この物品税というものは、製造者に課せられる課税ではなくして、消費者の消費行為に課せられる課税であるから、その行為に対しては、国民負担の平等の原則の上に立って、これは同一であることが望ましい。法律の前に国民は喜平等であるという一つの法理か、またそこに重なってくるんですね。あなたの方は税法だけしか知らぬかもしれぬけれども、私の方は武芸百般に通じておる。(笑声)すべての法律関係させて判断してくると、こういうことになってくる。いいですか。Aの店から買ったものは五万円払って、Bの店から買ったものは十万円、これに対する消費税を払うということは、第二種物品税法法意に反するものである。そういう行政執行はなすべきではない。そういう意味であるからこそ、これは抽象価格であるが、販売形態取引形態企業体のいかんを問わず、そこから発生するところの抽象価格というものは同一である、こういうことになっているんです。  従いまして、この課税価格というものは、直接卸売業者販売する場合、それから営業所を設けて販売する場合、特販機関を通じて販売する場合、また直接小売業者に対して販売する場合においてすら、これは同一でなければならぬ。それは物品税法法意なんですよ。そうでなければ、課税上不均衡が生じてくるし、今申し上げたようにほんとうに公平の原則を欠いてきて、あなたの方の答弁と正面相対立する結果になってくる。従いまして、営業所を設けて販売する場合には、営業所を設けないで直ちに販売する場合に比べて、営業所としての経費が実在するのであるから、やはりそういうものを見てやらなければ、営業形態というものがそこでマイナスを生じてくる。同じ価格販売しようと思えば、それだけの費用というものが圧縮されてくる。製造マージンの中に食い込んでくる。あるいは製造コストの中に食い込んでくる。それは自由にして公正なる経済活動というものを侵犯する形になる。さればこそこういう制度を八年前にわれわれは作った。まだあなた方は子供だったかもしらぬが、そういうふうでわれわれの苦心の存するところを皆さん方がよく認めなければならぬ。  先般来堀君たちが、この同一物件について、たとえば小売価格百円の物品を東京本社で五十円、同じく大阪営業所で五十円、こういう価格販売しておる場合には、これは製造業者が大阪と東京とでそれぞれ割安、割高、こういうことで販売しておるのであって、これは要するに販売業者営業政策上のものであって、取引計算上一本価格としてプール計算をしておるまでのことであって、その点はあなた方が関与すべき性質のものではない。すなわち、大阪営業所経費控除することによって、不当に物品税を軽減するような結果には決してならぬ。割高、割安に売っておる。しかし、本社の経理において、これはプール計算をしておるのであるから、営業所経費控除することによって、物品税が軽減されるとかなんとかいうことには絶対に立ち至らぬ。この点は明確な問題であろうと思うのであります。だから、そういうような考え方からいうと、私は今までまず税法企業に対する中立性庫出税の本質、物品税理念、こういうようなものから経済憲章規定に対するいろいろな問題、こういうものをずっと論じてきてこれはよく判断をしてもらうならば、私が断じて不当な論述をなしておるのではない。今あなた方が、行政当局、事務当局を通じて、業者に、こういう制度をやめるから、しかし片一方においてこういうフェーバーを与えるから、これで納得しろというようなことをされておりますけれども、これは越権行為である。そういうような徴税の権限を持っておるところの者が、課税されるところの弱い者に向かって、こういう特権は剥奪をするが、そのかわりこういう特別のことを考えてやるからこうしておけと言うようなことは、少なくとも立憲法治国において許されることではない。これは専制君主国、封建時代のやり方である。こんなことが許されると思いますか。  そういう意味において、私は、営業所経費控除というものを断じて撤廃すべからず、もしもあなた方がこれをやるならば、今までそういうような法律違反の執行をしておった者は行政上の責任をとるべきである、そういうわけです。少なくとも租税法定主義のもとにおいては、そこに疑義があるとするならば——私は疑義が絶無ではないと思う。疑義があるとするならば、法律を出しなさい。そうして、こういう疑義を解消するために、法律規定によって問題の解決をはかるべきである。行政措置一片通達をもってかくのごときことを断ずべきではない。この点を強く強調いたしまして、きょうの質問は終わります。
  24. 黒金泰美

    ○黒金小委員長代理 次会は追って公報をもって御通知することとし、これにて散会いたします。     午後零時三十分散会