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1960-05-12 第34回国会 衆議院 大蔵委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十二日(木曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小山 長規君    理事 坊  秀男君 理事 山下 春江君    理事 山中 貞則君 理事 佐藤觀次郎君    理事 平岡忠次郎君 理事 廣瀬 勝邦君       加藤 高藏君    鴨田 宗一君       黒金 泰美君    進藤 一馬君       田邉 國男君    塚田十一郎君       西村 英一君    細田 義安君       毛利 松平君    石野 久男君       石村 英雄君    加藤 勘十君       神近 市子君    久保田鶴松君       栗林 三郎君    小林  進君       堀  昌雄君    大貫 大八君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         大蔵政務次官  奧村又十郎君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主計局法規課         長       小熊 孝次君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      船後 正道君         大蔵事務官         (為替局長)  賀屋 正雄君         国税庁長官   原  純夫君  委員外出席者         大蔵事務官         (国税庁徴収部         長)      勝原  啓君         農林事務官         (農林経済局金         融課長)    太田 康二君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 五月十二日  委員夏堀源三郎君及び山本幸一辞任につき、  その補欠として進藤一馬君及び小林進君が議長  の指名委員に選任された。 同 日  委員小林進辞任につき、その補欠として山本  幸一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十日  財団法人海洋博物館に対する国有財産の譲与に  関する請願(夏堀源三郎君紹介)第三五一九  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基  金に関する法律の一部を改正する法律案内閣  提出第六〇号)  日本開発銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第五六号)  国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  案(内閣提出第七九号)  公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する  法律案内閣提出第一三五号)(予)  税制に関する件      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これより会議を開きます。  経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律の一部を改正する法律案日本開発銀行法の一部を改正する法律案及び国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律案の三法律案を一括して議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 今委員長から話されました三つの法律案のうち、経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律の件について大臣にお尋ねいたしたい。  先般の委員会のときに、この法律改正の問題に関連して、経済基盤強化資金及び基金の問題の所在点についてのいろいろなお話を承りましたが、その節大体はっきりして参りましたことは、今度一部改正に該当する農林漁業金融公庫に出されておりまする基金六十五億円というものは、今のような農林漁業金融公庫における資金需要状況から見て、利子補給というような形をやっていきますると、大体昭和四十一年くらいになると今の基金利子補給は頭打ちをするだろう、それ以上の新しい需要にこたえることはできないだろうということのお話がありました。それからまた、昭和四十七年くらいになれば、基金もむしろ食いつぶすのじゃないかというような御答弁もあったわけです。そこで、私はそのとき、奥村政務次官に、こういう問題を控えて、今後政府の今やっている施策をどういうふうにうまく整理していく考え方を持っているのかということもお尋ねし、それから、現在の農林漁業金融公庫に対する資金量がどういう状況になっているかということもお尋ねしたわけです。そうしますと、やはり農林漁業金融公庫が開設当時からずっと今年に至るまでの自己資金といいますか、これはだんだん低減してきている傾向にあって、現状では非常に少ないものになっている。おそらく自己資金は、三十五年度においては三九・五%というものが自分のもので、あとはみな借入金だ、こういうようなことも承ったわけです。こういうことになりますると、ただ経済基盤強化基金使い方云々という問題だけでなしに、この法律改正趣旨に沿って、農林漁業金融公庫あり方の問題もここに出てくるわけでございまして、私がここでまずお尋ねいたしたいのは、昭和四十一年には、今の基金が大体資金量として基金運用益からくるところの利子補給という態勢はくずれてくる、伸びない、頭打ちするという情勢がはっきりしているという事態を見て、基金使い方農林漁業金融公庫が果たしておりまする農民に対する資金貸付趣旨と、それからこの基金の働き方についてだんだん出てくる矛盾点をどういうふうに今後うまく政府はやりくりしていくつもりでおるのかという、そういう考え方一つ聞かしてもらいたい。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になりますように、農林漁業金融公庫、ここあたりの問題といたしましては、資金量の問題と金利の問題と二つあることは御指摘の通りであります。ことに農林漁業実態等から見まして、その低利であることが望ましいこと、これはもう申すまでもないことです。そこで、今日までも、採算を割るというわけには参りませんが、採算のとれるといいますか、別に収益を上げるわけでもないですが、その資金に必要な費用の限度でとにかく金利を下げていく特別融資方策というものを考えて参っております。その点から見ますと、ただいま御指摘のようにだんだん窮屈になり、利子の引き下げとかあるいはさらに新しいものを考えていかなければいかぬだろう、こういう問題に当面するわけであります。ところで、一面政府財政投融資財政資金そのものにも限度がございますので、なかなか要望にこたえるわけにいかない。過日政務次官がお答えしたというのもそういう点だろうと思いますが、そういう場合に、系統金融ということを特に強く申し上げるわけでもございませんが、その関係で集まってきた農林金庫あたり資金がやはり農林部面に運用されるということ、これは望ましい姿ではないか、こういうことを実は申し上げ、金利の問題は金利の問題として、資金量確保の面においてそういう工夫ができないだろうか、ことしの予算編成の際にも具体的にそういう問題が出て参りました。場合によったら、そういう方法考えてみようじゃないかと実は申したのです。ところが、この資金をその部門において特別に農林漁業金融公庫あたりで使うといたしますと、金利の問題にすぐ関係してくる。利子補給の問題ということになりますので、結局実現しなかった。しかし、一応その問題も検討したということはあるわけであります。ただいままだ結論は出ておりませんけれども資金量をふやすことと、また貸付対象によりましては現在の低金利というものを維持していく、こういう二つの方法考えるべきだ、かように考えておるわけでございます。
  5. 石野久男

    石野委員 今のお話によりますと、何といっても資金量をどういうようにしてそれにつぎ込むかという問題だ、そこで、資金量をつぎ込むについては、今年度の予算編成の際に、系統金融関係機関から資金量を入れるということも考えてみたけれども、それもなかなかうまくいかなかったというお話のようでございます。私は、やはり、どういう形にもせよ、とにかく農林漁業金融公庫というものが、政府機関として、農民に対する資金調達めんどうを見てやる。それも長期低利ということを趣旨としてやるわけでありますが、その低利長期という形の資金運営資金貸付というものを国家予算の中でとる場合に、今大臣の言われるのは——この前、奥村次官は、農林中金等の金をそこへうまく当て込んだらどうだというお話をされました。第一に、農林中金というような民間で集まった金をここへ持ってくるということについても、郵便貯金とかあるいは簡易保険などというものは、別にそれ自体生産をやっている人々じゃない。消費者の集まった金でありますけれども農林中金というのは、もともと農民がそこへ集める金です。しかも農民自分で使いたいということになってくる金なのでありますから、われわれとして、やはり郵便貯金あるいは簡易保険とだいぶん意味が違うような感じがあります。ですから、郵便貯金とか簡易保険などの金を資金運用部が使うということと、農林中金に集まった金を農林漁業金融公庫に入れて、それをまた農民に持ってくるということになりますと、これは結果的には一つの成果が上がりましても、国家資金産業層としての農民が使う場合には、だいぶん意味が違ってくるのじゃないか。自分資金低利で借りるという形になるのです。ところが、ほかの運用部の金を使う場合には、他の層のところをぐっと集めてきて自分が使うということになって、意味が全然違ってくるわけです。たとえば一般消費大衆が貯金した金を工業資本が使うという場合には、これは自己関係なく使えるわけです。農民の場合は、自分の預けた金を、とにかく政府をずっと回って、政府の形態で低利で借りる、ただ利子補給をもらっただけで、金そのもの自分のものだというようなところに、非常に問題があると私は思う。それにもかかわらず、一応低利で出すという形が出て参りました場合に、その低利で貸したものの利子補給というものはどういうふうにするかという問題がまた出てくるわけです。そういう場合には政府はどういうふうにお考えになり、また農林中金の金を使うということになれば、当然利子補給という形が出てくるわけでございましょうから、それはまたどういうふうにしていこうとするのか。その場合の今やっております基金とのかみ合いの構想はどういうふうにうまくつなぎ合わせていくか。基金とのつかみ合いということは、別にかみ合うわけではありませんけれども基金それ自体利子補給をしているわけです。それ自体とのつながりはどういうふうにお考えになっているか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今の農民が集めた農林中金資金、これはもう農民自身考えればいいことだから、その方まで政府が関与せぬでもいいだろう、こういうことはしごくもっともな話のように聞けます。農林金融に集まった金が、農林漁業以外の方向にもし資金が使われているような実例があれば、これもいいことでしょう。農林中金成績を上げる上において必要なことかもわかりませんが、まず第一に農林漁業部門へその集まった資金は使ってくれる方が、いわゆる系統金融という意味においては十分効果を上げるのじゃないか、これが財政資金の形であろうが、なかろうが、これは望ましいことだ、こういうことを実は申しておるのであります。いわゆる財政資金なら、これは各方面からきたものだ。その財政資金——郵便貯金等に各方面からきたものだ、それを政府財政資金として農林部門に特に出してくれる。こう言えば非常にありがたみがあると仰せられますが、それはそういう感じが出てくるかわかりませんけれども、問題は金には色がついているわけではございませんので、その資金量をふやす方法として、どういうことが一番ふやしやすいか。郵便貯金やらあるいは簡易保険の金が十分あればけっこうですけれども、これが不十分だということになれば、やはり系統関係で集まった金を系統方面に流していく。これは普通常識的に考えられることだろうと思います。ただ問題は財政資金の場合だとコストが非常に——まあコストぎりぎりまでに金利を維持することができますが、農林中金の場合でございますると、政府資金とは違って、中金自身一つの独立した機関でございまするし、順次政府関係から離れて独立すべき立場のものである、こういうように私ども考えておりますので、この農林中金自身政府資金を必要としないようになるということが望ましい。従いまして、その場合には、農林中金農林中金として採算がとれるようでなければならない。ここに農林中金資金コストいかんの問題もさることですが、融資する場合の利子について十分採算のとれるものが必要だということだと思います。  だから、そういう関係農林中金資金系統で使うといたしましても、農林漁業金融公庫のような特殊の機関で、採算を度外視して、資金コスト手一ぱい資金運用をするというところで農林中金資金を回す場合だと、金利の面で必ず農林中金の方で断わる理由も出てくるわけです。だから、それを、総体の資金量をふやす意味において、農林中金から政府財政資金に一応組み入れて流すということを考えなくとも、直接農林漁業金融公庫農林中金から資金を出す場合にしても、これはその資金コストというものを十分考えてやらなければならない。そうすると、これはやはり政府農林中金に対して特別な金利というものを考えて、農林漁業金融公庫へ金を回す場合にはこれこれの金利が望ましい、農林中金はそんな安い金利は困ります、こういうことになるでしょうが、ここに一つの問題があるのじゃないかということで、これはまだ見当がついておらない。第一農林中金のように、最初作る際には政府資金を必要としたが、今日ではもう独立して政府から手を切り得るような形になっておるものに、特別な条件をつけての融資政府が命令すること自身は、これはなかなか無理なことだ、こういうように考えるのであります。場合によれば法律事項になるかもしれないし、ことにまた実損を生ずるような場合があれば、政府補償ということにならざるを得ないだろう。その見当はまだ十分ついておらないということであります。  そこで、ことしなどの農林漁業金融公庫資金は一体どうなのか。財政資金で不十分ながらも一応まかないましたというところで、一応御了承をいただいた。けれども、その資金量をふやすという意味では、政府資金自身が不十分ならば、まず系統から考えるということが必要だということであります。そういう意味で、これは少し検討を要するのじゃないか。農林中金成績が非常によくて、そうして一部の資金を特別に安い金利農林漁業金融公庫に貸し得る、こういう状態であれば、それは一つ協力を求めるのも方法じゃないかと思いますけれども、いろいろ問題が起こるでしょうから、それは明確にしておくべきじゃないかということで、今回予算ではそこまで手をつけることができなかった、こういう事態でございます、ただいま御議論がございましたけれど、これは縁のない金、いわゆる政府財政資金というものを農、林漁業金融公庫へ投入するという建前を本来はくずしたくはありません。しかし、その方に十分な資金がなければ、系統金融考えるということは普通の筋だ。政務次官は個人的な意見だと言われたそうですが、私はそういう意味政務次官と同じような考え方を持っております。これはそういう意味検討をするつもりであります。この点が一点。  それから、金利そのものの問題ですが、今ものによりまして一番低いのは三分五厘になっている。農林漁業金融公庫はこの三分五厘を維持していく。そのための必要なる資金量というものは想定できるじゃないか。そういう意味で、農林漁業金融公庫に対する政府の出資あるいは財政資金の投入というものを、そのつど考えていかざるを得ないということであります。この事業量そのものについても各種の要望は出ておると思います。出ておると思いますが、やはり適当な規模に圧縮し、そうして御相談を得て、歩み寄りで資金計画を立てるということでございます。今日まで積極的な計画資金量というものを持つわけではない。財政資金の量から各産業部門等を勘案して適正な規模にとどめておるというのが現状であります。私は、今日の状況で、一般金利そのものについては、しばしば申し上げますように、国際金利にさや寄せするというか、低金利基本態度を曲げるものではございませんと申しておりますが、金利自身景気調節作用効果のあることを考えると、絶えず一貫して下げる方向ばかりにはなかなか参りませんということを申し上げておりますが、今後の自由化等に備えて一番大事なことは、資金量もさることですが、同時に金利あり方ということが非常な関心事である。これはよほど金利政策で当を得ないと、現在の経済をこういう状況のもとにおいて引っぱっていき、しかも国際競争力を十分持ち得て競争にもひけをとらないようにするには、やはりその金利政策について十分考究せざるを得ないのじゃないか、することは当然じゃないか、実はかように考えております。ただ一つ一つ金利を取り上げまして、それが高いとか安いとか申しますことは、全体の金利体系を乱る危険も多分にございます。そういう意味で、各金融の総合的な金利体系というものを考究すべきじゃないかということで、ただいま検討させておるような次第でございます。  ことに一番問題になりますのは、農林漁業金融公庫において三分五厘というような非常な低金利のものがあるし、あるいはまた輸出入銀行において四分という金利があるし、あるいはまた開発銀行において最低六分五厘というような金利がある。こういうようなことで、中小企業なりその他それぞれの部門でそれぞれの金利があります。あるいはまた公社債等利子等についても、これは一律ではございません。そういうようなことからなかなか問題は複雑であり、これを一つ誤りますと、意外な反響を引き起こすのじゃないか。大蔵当局といたしましても、また政府といたしましても、そういう意味では金利扱い方にはどうも慎重にならざるを得ないのでございます。しばしば伺うことでありますが、農村なら農村、あるいは中小企業なら中小企業、そういう弱体なものに対する金融措置というものが、資金量も足らないし、金利自身も非常に高いのじゃないか、また生産性から見ても、高い金利ではまかなえないのじゃないか、三分五厘でもすでに高いじゃないかという議論も多いのでありますが、金利そのものとすれば、全体の体系から考えないと、各方面に非常な影響を持ち関連を持つものであるということを実は考えております。しかし、現在もうできておりますものについて、これをさらに全面的に改正するという意味ではございませんが、やはり国際金利にさや寄せする、その方向に矛盾しないようにするには、適正化方向考えるべき段階にきているのじゃないか、実はかように考えておる次第であります。でありますから、今申し上げるように、金利体系に新しいものがどんどんできてくる。経済基盤強化資金についてはどういう金利を使うとか、あるいは開拓農民に対してはどうするかとか、こういうのがそれぞれの部門では適当なように考えられますけれども、やはり総合的に考えていくことが望ましいのじゃないか、実はかように考えております。
  7. 石野久男

    石野委員 今大臣答弁の中で、特に金融の問題は、貿易自由化の問題とも関連しまして、景気調節作用もかなり重要であるという話があったわけです。ここで利子政策そのものを論議しておると、また法案との関連もありますので、私はあまりそこへは入りませんが、しかし、この法案との関係から利子の問題を考えますと、やはり貿易自由化の問題に関連しまして、農村自由化による打撃面が非常に大きいということが一般にいわれているわけです。従って、そういう打撃の多い面に対して、貿易為替自由化というものが進んでいきます場合に、政府としてはそれをどういうふうに守るかという問題が出てくるわけです。かつてのような保護政策をそのまま持つべきじゃないという意見もあるやに聞いておりますし、いろんな意見もあるようでございますが、そういう観点からして、利子政策、特に農村金融における利子に対する考え方は、自由化の問題と関連してどういうところに重点を置くかという問題だけは、この際聞いておいた方がいいのじゃないかと思いますので、大臣の御意見を伺いたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 貿易為替自由化農村中小企業に非常な影響がある、こういうことを一般的に申しております。原則的に何ら手をかけないで自由化すれば、そういう事態か起こると思います。思いますが、元来自由化自身は、わが国産業を強化するという意味において採用する政策でありますので、国内産業実態を十分把握いたしまして、それに適合するように自由化を進めていくということでなければならない。これはもう申すまでもないことであります。従いまして、今日まで政府主食並びに酪農製品等については自由化考えておらないということを明確に申し上げておるのは、その点であります。私は、主食酪農製品について自由化考えておらないということ、これは政府並びに与党統一した考え方でございますから、ただいまその点について触れる必要はないと思いますが、問題は、農業部門あるいは中小部門でも同様でありますが、——中小部門の方は違った考慮も入れなければなりませんが、農業部門として、各国共通の問題は、土地に制限があり、天候その他時間の制限もあるこの農業生産というものについて、これは各国それぞれの発達の過程並びに現状というものを十分考えていかなければならないし、今日までの政策にいたしましても、農林漁業部門については特別な国内保護政策を遂行して参っております。そのもとにある生産物について自由化などは考えられない、考えるならば、保護にかわるような十分なめんどうが見られなければならない、十分な考慮が払われなければならないということを実は申し上げておるわけであります。ただ、保護と申しましても、今日までのところが十分でないという議論もあるでしょうし、また、ものによりましてはなかなかよく行き届いた保護ができておる部門もございますが、そういう際には、業界自身においても、みずからの力による経営の合理化なり、あるいは能率的な運営方法に切りかえてもらわなければならないし、また、政府自体といたしましても、その合理化また能率化は、絶えず必要なる方向としてこれを指示していくことが必要じゃないか、私どもがそれを保護しておりますことも、自立さすことが目的なのでありまして、やはり自立の方向にいくためには、合理化能率化、これはもう絶対に必要なことであります。かように思いますので、そういう方向へ進めていくという考えでございます。  ところで、今日まで補助対象になっておりますものも、これはそれぞれのりっぱな理由があってその補助対象となり、保護政策をとられておるものでありますが、やはりときにその補助保護が十分に目的を達しないもの、あるいはすでに達したものもありますから、そういうものは整理していくべきではないか、実はかように考えております。ところで、今の政策自身については、農林漁業部門についての自由化というものは 一部で心配しておられるような非常に重大な影響を与えるようなことがありましては、われわれの自由化は成功したとはいえないのです。だから、私どもはこの自由化方向には踏み切っておりますが、その影響度がその事業自体に悪影響を与えないような方法でこれを実現する、そういう努力をいたしておるのでございます。
  9. 石野久男

    石野委員 私は、今自由化論争をここでやろうとは思っていないのですが、先ほど金利政策に触れまして、特に自由化の非常に進んでいく場合における金利政策が非常に重要であるというお話がございました。そういう意味から、特に農村がこの自由化の進んでいく場合に打撃が多いと一般にもいわれておるし、また、われわれも、今日の日本の国民経済の構造の中で、農村の受ける面が非常に幅広くあるというふうに見ております。政府も今そういうような面をある程度肯定されておられるわけであります。そういう場合に、農民に対して合理化能率化を非常に大きく希望しておられる政府、また補助保護の形から漸次それを自立態勢に切りかえさせようという場合に、政府はどういうような——保護政策補助政策ではないけれども、しかしたとえば金利政策の中でどういうふうにやるのか。特に自由化に直面している打撃の多い農村に対する金利政策を特別に何か用意されるかどうか。それはたとえば今のような農林漁業金融公庫の貸出金やその他いろいろなことで、特別その層に政府が力を入れて融資される面で、利子政策などを考える構想を持っておられるのかどうかというようなこともあるのでございましょうし、とにかく、大蔵大臣として、自由化に直面した農村に対する金利面におけるところの構想が何かあられるかどうかということを私はお聞きしたわけです。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来御質疑のございました経済基盤強化資金あるいは補助対象にならないような土地改良に対する資金、これなども低利であるべきだ、あるいはまた開拓農民等、自立について相当の期間を要するようなものについて、特別に低金利融資をするというようなことが実は考えられるわけであります。これはやはりその事態自身考え補助事業の対象になるものもございますが、それから漏れるもの等が金融において救われていくということにならざるを得ないのじゃないか、こういうふうに実は私ども考えております。それで、補助の方が非常にはっきりしていて、そうして金利はときに動く心配があるのじゃないかというような御疑念があろうかと思いますが、そういう不安を与えないように、いわゆる低金利融資対象になる事業というものについては、これは永続性を考えざるを得ない、こういうように私は思っております。
  11. 石野久男

    石野委員 この農林漁業金融公庫の金は、先ほども申しましたように、昭和三十六年の開設当時から見ますると、その当時は七五%が自己資金であったわけです。その後だんだん減ってきて、昭和三十五年度の予算によりますると、三九・五%が出資金で、借入金が六一%に及ぶというような状態にまで、資金構成がずっと変わってきているわけです。このことは、政府農林漁業金融公庫に対する一つ考え方が、なるべく自己資金を持たずに、借入金でやっていけというような考え方に基づいて行なわれているものなのかどうか。これが漸次この比率でいきますと、三十六年度はおそらく三五%くらいになってしまうのだろうと思います。そうすると、だんだんしまいには、国家機関ではあるけれども、実はみんな借入金でやっていく、そういう意味でこの農林漁業金融公庫を運営していこうという構想でおられるのかどうか。この点を一つ大臣お聞かせ願いたいと思います。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 別に全部借入金でというような考え方でもございません。この率も一つの見方だと思いますが、資金量というものが大事なことでございまして、率だけで見ることは必ずしも適当じゃない、かように考えるわけでありまして、必要な資金等を投入し、そうして全体のコストを下げて参りませんことには、低利融資の金額が順次減ることになりますから、そういう意味政府資金というものも考えざるを得ないのじゃないか。パーセンテージも必要なことでございましょうが、やはり資金量の面から御観察を願いたい、かように思います。
  13. 石野久男

    石野委員 現在の国民経済の構造の中で、昭和二十六年度の予算と、それから昭和三十五年度におけるところの予算は非常に違ってきております。だから、量がふえても、全体としての予算がふえていって、そのふえる率は、むしろ逆に、農民に対する政府財政資金というものが同率でふえている場合は、量がふえても率の上では同じことになる。国民経済がそれだけ構造が大きくなってきているのだから、飛躍的に全体としての国民経済の中で量が比率的に多くなっている場合には、今大臣が言われることはそのまま受け取りますけれども、決してそうはなっていない。そうなると、率が減ったと同じように、量も相対的には需要に対しては減っていると同じことになる。そういう考え方大臣だってお持ちになると思いますが、そうなって参りますと、今の大臣の御意見のように、量がふえたからその面だけ考えてくれということはちょっとおかしいと思うのですが、どうなんですか。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 あるいは説明が不十分だったかわかりません。と申しますのは、財政資金は一カ所だけ投入しておるのでしたら、ただいま石野さんの言われる通りでございますが、財政資金使い方は、それぞれの部門において必要なものを財政資金あるいは政府資金として使って参るものですから、出資面とのかね合いの面で資金量なりあるいは実績等から見まして、今回はこの程度でしばらくごしんぼう願いたい、そうして必要な出資は他の方に回したい、こういうようなことを政府としてはやるわけでございまして、一カ所だけで申せば、これは石野さんの御説の通りでありますけれども、やはり総体として、そのつど必要な方に、緊急な方に政府の出資等は使わざるを得ない。そういう場合に、農村の特殊性を殺すような事態が起きるか起きないか、それは十分考えてみる、一応率は下がったけれども資金量としては一応要望にこたえたい、こういうことを実は申し上げているのでございまして、量だけでしんぼうしろと言っているわけではないのでございますから、その点は御懸念のないように願いたいと思います。
  15. 石野久男

    石野委員 これは、実は、政府の持っているところの農民に対する一つ考え方が、資金量なり全体としての中身の比率の問題を決定するのだと思いますので、政府は、比率は減ったけれども農民は十分それでこなしていけるという見方でやられているならば、それはやむを得ません。しかし事実はそうではない。むしろ農民はだんだんと国民経済の中におくれていくという傾向のあることは、大臣だってわかっていると思う。もし、大臣が、ほんとうに国民の全人口の四割三分なり六分を占めているところの農民実態というものが相対的には窮迫化していくという事情があるということがわかると、むしろそこに重点を置かなければいけないのではないかという考え方を持つわけです。しかし、政府考え方はそうではなく、全体としてにらみ合わせて減るのだからがまんしてくれという、こういうお話のようでありますが、このことの中に岸政府並びに佐藤大蔵大臣農村に対する一つの施策が出ているのだと見れば、それは仕方がありません。これは農民はどういうふうに反対するかということでございますから、それは必要ではございません。それは国民なりあるいは農民がそういうふうに見るのですから、そういうことは見方は勝手だから、そうしろ、お前らはそう思っても、農民よりこちらの工業陣営の方が重要だと思うから、そこへ出しているのだ。そういう意味であれば、その通り納得いたします。しかし私は不満があるわけです。
  16. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私も、ただいまの石野さんの御理解のようだと、非常に不満なのです。私は、各産業部門その他等を見て、そうして資金出資等を適当に分けるということを申しました。たとえば農村振興の方法に、直接農村だけに限っての融資対象というものもございますが、同時に間接的に最も農村が潤うような問題もあるわけでございます。そういう点を考えてみると、農林漁業金融公庫の出資が減ったというだけで、農村を軽んじたということにはならないと私は思う。ここに政治の十分の考え方があるのだ。面接影響を受けるものと、間接に影響を受けるものというのがあるわけであります。これは出資とは関係は別でございますが、たとえば河川改修なりあるいは治山治水なりということをいたしますと、農林省の予算自身には直接関係なくとも、潤っていくのは必ず農村だ、私はかようにも考えます。都市も同様に影響を受ける、あるいは電電、鉄道等について相当出資等が出ていくとかいうことになれば、おそらく農村あたりも非常に影響を受けるだろう。あるいは道路の整備自身も、出資と直接関係はないにしても、やはり道路整備をされるということは農村にも関係していく、こういうように実は考えます。非常に限られた直接投資の面だけから見ると、いかにも農村に対しての比重は軽いのだ、こういうふうな非難が当たるかもわかりませんか、私はそれは政治としては非常に片寄った見方じゃないか、かように思います。その点は大へん議論がましいことを申して恐縮でございますが、もし私が先ほど来申していることで農村を軽んじているというような認識を与えたとしたら、決してそういうものじゃないということを一言抗弁せざるを得ない。この点は御了承願いたい。
  17. 石野久男

    石野委員 大臣は、とにかく間接的影響もあることだから、量の方あるいは比率の面では減っておっても、別に間接効果が出ているのだ、こうおっしゃるけれども、事実はそうじゃない。むしろ経済というのは相対的な関係にありますから、農村と都市との関係、あるいは工業部門との関係というような形で農村が潤うかどうかというような見方をしなければいけないだろう。相対的な関係で見なければいけない。そうなって参りますと、投下資本が減ってくれば、比率的にもその率がだんだん違ってくると、それだけ間接面の影響は若干出るでしょうが、相対的な関係の中ではむしろおくれをとっていくということになってくるわけです。ですから、その考え方政府とわれわれは違うので、やはり政府の今の考え方は非常に農民を軽視しているというふうに見ざるを得ないと思っておる。そこで、農林漁業金融公庫に出資しておるところの政府の金は漸次低減して、昭和二十六年から見ると約半分になってきている。あとの半分は全部借入金というような形でやっている。しかし、農林漁業金融公庫自体を見ますと、借入金が多くなればなるほど、資金繰りにしてもつらくなってくるし、また貸し出し金利なんかも低減しようとしてもなかなか低減できない事情が出てくるわけだから、実に矛盾が多いと思うのです。  ここで、お聞きしたいと思うのは、こういうふうに漸減しているところの出資金というものは、これからもこの比率の通り持っていくかどうか。むしろ、政府としては、農林漁業金融公庫は、これから出資金を多くして運営をもう少し楽にやらすような方向をとっていこうとしておるのか、それともやはり借入金政策でやっていこうという形にするのかという、基本的な考え方一つここで聞かしていただきたい。
  18. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 必ずしも率を下げるというような考え方をしておるわけじゃございません。ところで、ただいま有能な事務当局が数字を示してくれましたが、農林公庫の貸付金額決定額のベースで見ますと、こういうような数字が出ております。この数字もいろいろな議論があるだろうと思いますが、三十年の貸付総額は二百八十八億、当時の国民所得は六兆六千億というような概数でございます。三十五年になりますと、貸付決定の額として考えられますものは五百十七億、そうして国民所得の方は十兆四千億、大体この間に国民所得は一・六倍の伸びを示している、貸付ベースの方では一・八倍の伸びを示している、こういうことでございます。従いまして、農林公庫の貸付ベースをごらんになると、大体国民所得の増加割合以上の増加の貸付決定ができるということでございます。私は農村に対しては先ほど来もいろいろのお話をいたしましたが、直接の農林公庫自身もすでに貸付決定額は所得の比率増以上の増を示しているということでありまして、私ども農村について特に意を払っていることは、数字的にはこれでできると思います。ただ先ほど来御指摘になっておりますように、その内容が、借入金が非常にふえて、政府の出資金がどんどん減るじゃないか。そのことは結局運用の面において非常に工夫を要するわけでございますから、そういう点は今後私どもは十分気をつけて参りたい、かように思うわけでございまして、今の比率が非常に適正だとか、この比率はもっと下げてもいいということを、ただいま結論づけておるものではございません。問題は、やはり資金構成並びに資金運営、それから運営率というようなものを十分考えて、必要なものを出していく。そういう場合には農村だけというわけにもいかない、各部門をにらみ合わせて決定していく、こういうことをいたして参りたいと思います。先ほど来いろいろ御議論はございましたが、要は農村についてさらに力を入れろということであろうと思いますが、私どもも、農村についてさらに意を用いることについては、皆様に劣るものではございません。次の予算編成に際しては十分考えて参るつもりであります。
  19. 石野久男

    石野委員 これは別に論争するわけではございませんが、昭和三十年度において二百八十八億の貸付実績を持っておる、三十五年度においてはそれが五百十七億になるので、国民所得の一・六倍に対して伸びは一・八倍だから、むしろ意を用いておるではないかというお話でございます。しかし、実は当時貸し付けた二百八十八億というものが、国民経済の中において農民に対する貸付で妥当であったかどうかという問題が一つあると思う。この分については、まだまだ資金活用の面において農民は十分練達でなかったということもございましょうし、非常に相対的な国民経済の中におけるところの農民層のこの問題に対する意欲といいますか、また手続であるとか何かの関係で十分な活用もできなかったことと、もう一つは、その当時における資金量関係もあって、需要はあったがなかなか貸し付けられなかったという、きわめて不安定な中で出てきておる数字だと私は思っております。だから、国民の中において四十何パーセントを占めておる農民の面から見れば、その比較の基準になっております三十年度における貸付額というものは、農民需要に対して十分意を満たせるものでなかったというふうに私どもは見ておる。そういうような見方からすれば、国民所得の一・六倍に対する一・八倍、コンマ二だけ伸びておるではないかということは当たらないと私は思っておる。もっともっと農民の中にはおくれた面があるのだから、それを充足すれば、比較的には国民所得の増加よりも農民層の需要にこたえる率は低いということが言えるのではないかと私は思っております。これはやはり政府として正しく実績を分析した上で判定されるべきであって非常に不安定な基礎の上におけるベースをとられることはよくないのではないか、こういうふうに思っております。  問題は、農林漁業金融公庫の運営にあたって、自己資金をどの程度に持つかというような、平準化された見通しの問題だと思います。資金量の三分の一程度を自己資金で持っておるということは、通常の銀行業務等からいきましても、これは決して十分なものでないし、また銀行が貸付する場合も、自己資金が非常に弱体であるというような場合には、なかなかそう簡単には貸してくれないという実情でありますから、銀行業務をやるものも、貸付を受けるものも、今日の経済のもとにおいて自己資金を充実させるということは自主的に考えておることであり、また政府自身も資本蓄積の面でそれを奨励してきておることである。ところが、国家機関であるところの農林漁業金融公庫だけは漸次自己資金が低下してきておる。それに対して少しも改めようとする傾向が見えない。その低下する比率というものが毎年同じような比率でどんどん下がっていっておるのは、何か計画的にそういうふうに持っていっておるのではないかという気がする。そうではなくて、今大臣が言われるように、決して軽視しておるのではないから、来年度の予算においてこれをもう少し是正しようという考え方があるとするならば、大体大臣は、農林漁業金融公庫におけるところの資金構成の面で、自己資金をどの程度持たすことが、むしろ農民に奉仕する安定的な運営をし得る基礎になるのかという問題について、どういうお考えを持っておられるか、この際一つ聞かせていただきたい。
  20. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、資金構成がいかにあるべきかという一つのものをきめてかかることも、これは一つの行き方だと思います。しかし、私ども予算編成は、その年々によりまして、それぞれ一年限りの予算編成であるという考え方でございます。そこで、政府出資の問題等にいたしましても、運営上支障を来たすようなことのないようにはするという、ばくとしたお答えをする以外にはないと思います。ことに金庫あるいは公庫というような場合でございますと、コストが一体どうなるのか、そしてそのコストから見ると運用金利はいかにすべきであるか、こういうことをいつも念頭に置くわけでございますので、資金量の配分いかんがやはり資金コスト形成上必要なことになってくるわけでございますし、また運用利率も、そういう意味で、資金分配いかんできまってくるわけでございますから、そういう点を十分考えて、まず支障のないようにいたしたい、かように思います。ただいまのところで見ますと、三十五年度は資金コストが五分三厘八毛、それから利回りが五分五厘一毛、差し引き差は一厘五毛というようなことになっております。こういうことを十分考えて、そうして出資を幾らにするとか、あるいは政府財政資金でどうするとか、あるいは自己資金でどうするとかいうようなことを実は考えていくわけであります。ただいままでのところ、この公庫あたり成績は比較的優良でございますので、自己資金の軍用量というものは相当増加し得るというような状況でございます。だから、そういう点から資金コストを下げることにやはり注意していくということが必要なのじゃないかと思います。今一がいに出資ばかりだけでも論じかねると申しますか、公庫のあるべき姿としては、ただいま申し上げるように、順次資金コストを下げていく努力をすべきではないか、かように実は思っておるわけであります。
  21. 石野久男

    石野委員 資金コストが現在五分三厘八毛、利回りが五分五厘三毛で、その差一厘五毛の一応の利が出ているわけです。今その一厘五毛の差で運営するのが非常に妥当であるというふうにお考えになったとすれば、比率はこういう状態で進んでいくわけだと思うのです。しかし、これから資金需要が非常に多くなってくる、しかも資金構成は、だんだん自己資金というものは少なくなって、借入金の量が多くなればなるほど、資金コストは多くなると私は思います。資金コストを是正しようということの意味は、一面から見れば、自己資金を豊富にしなかったら増加する需要に対してこたえることはできないし、また、それにこたえていけばいくほど、資金コストが悪化していくということになるわけです。当然のこととして、やはり自己資金をふやさなければならないという結論が出てくると思うのです。これは、おっしゃるように、需要量を現在のままでとめておけば何とか均衡はとれていくということになると思うんですよ。今見ておるところでは、需要がどんどんふえていくという形なんです。先ほども話がありましたように、経済基盤強化基金から出ている六十五億に対する運用益は、利子補給に満たしていく場合には、現在の需要の伸びとにらみ合わせていきますと、昭和四十一年度ではもうすでに頭を打ってしまうのじゃないかという見通しが立っているわけです。しかも、このままでいくならば、昭和四十七年ごろになると、その基金自体も食うだろうというような見通しが立っている。こういうようなことなのでございますから、そういうことであればあるほど、やはり資金構成というものは非常に重要な検討すべき資料になるだろう。その結果として、自己資金をふやすということに着眼しない場合には、この農林漁業金融公庫の今後の運営を正常化していくということは非常に困難だと私たちは見ているわけです。そういう意味で、私はこの比率がどうだとか、あるいは貸付金の実績が量的にこれだけ伸びているから、それで見てくれよというようなことでは済まされない経済の動きというものが、この運営の動き方というものが出てくるわけでございます。従って、私は、自己資金の比率を、少なくとも半分くらいは自己資金でまかなうところまで持っていかないと、これから伸びる需要に対してこたえられない。言いかえれば、農民に対して打った政府の施策が行き届かないことになってくるのではないかというふうに考えるので、いわずもがな政府としては十分構想をお持ちになるべきだと思いますが、この点についてのはっきりした見通しは大臣は持てないわけなんですか。
  22. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの段階はまだはっきりした見通しを持っておりません。ただ言い得ることは、先ほど来の議論で大体総合的にお考え願うとおわかりだと思いますのは、一般金利そのものも安くするという基本方針をとっておりますし、また特殊な事業については特殊な公庫等を作って特別な金利政策のもとの金融政策を持続していく。これは一人前になれば一般金融の方へ順次移行していくように指導すべきではないかと思います。さらにまた、先ほど来御議論のあります基金の問題もございます。基金の問題なども、特別な財源があったから基金を作ったということであります。今後一般需要はさらにふえるんだということを申されますが、これも公庫にどうしてもたよらなければならないのか、一般金融でもいいのかというような問題もありましょうし、あるいはまた補助、非補助を通じての土地改良事業の今後のあり方等に関連して、あるいは基金そのものもさらに考え方を前進しなければならぬかというような問題があろうかと思います。実はそこまでは結論が出ておらないわけであります。  ただいまのところは、作りました公庫自身——基金は別といたしまして、公庫は一体どうなのか。総合的に金利政策の面から見て非常な特殊金融をしている機関でございますが、ただいまは、先ほど来申すような資金コストのもとにおいて、適正な利回りを考えてきておるということであります。これらのものも、農業の実態等から見まして、ただ単にこのままならば需要が非常に伸びるんだというだけでも実はいかないのではないか、やはり一般金融機関との調整ということも基本的には考えておく必要があるのではないか、かように実は思っております。しかし、農業の実態等から見まして、公庫自身を拡大することはありましても、これを縮小するようなことはなかなか考えられませんし、むしろ一般金融国際金利にさや寄せするような方向に順次指導していく方が必要なことなのでありまして、そういう意味で公庫も十分機能を発揮するように私ども考えて参りたい、かように思っております。
  23. 石野久男

    石野委員 今お話のありましたように、なるべく資金コストを下げるようにして、しかも一般利子国際金利にさや寄せしていく傾向だから、当然貸し出しの金に対する金利もそれにさや寄せしていくようにしていくということになりますると、必然のことながら、資金コストを下げる内容として資金構成が問題になってき、資金構成の中で自己資金を幅広く持たない限りにおいては、資金コストを下げることができないということは、どんなにいい頭を大臣がめぐらされても、その域を抜けないわけです。しかも需要は多くなってくる。ただいまも法案改正はいわゆる非補助の問題に対する利子補給をしようとしているわけでございまするから、それだけまた今度は農民はその金を使うことに有利な線を見込みまするから、当然需要が多くなってくるのです。だから、公庫を詰めようとは考えていない、むしろ拡大しようという考え方と、資金コストを下げようという考え方と、利回りをうまく持っていこうという考え方は、もうどんなに弁解されても、資金構成の中では自己資金をふやさなければならぬのだという結論が出てくるわけです。ですから、今の大臣お話を聞いておりますと、当然、来年度の予算編成においては、この自己資金になるべき政府資金というものを考えなければならぬという結果になるだろうというふうに私は思います。それでないと、ほかで自己資金というものを入れる方法はないわけですから、そうなってくるのですよ。これはどんなに言ったってそうなりますから、私は大臣が今言われたようなお話であることを了承するとするならば、当然資金調達の面における出資金というものを多くしなければならぬのだという結論になる、こういうように理解するわけです。そういうように理解してよろしいわけですね。
  24. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、自己資金は、積極的に資金を出資するというか、出資によってふやす方法もございまするが、過去の出資金といいますか、貸付金と申しますか、その返還、運用というものがやはり大きな部分を占めるわけでございますから、どういうように、元来の資金が運用されているか、それがどういうように返ってきているか、そして今度新しくまたそれが融資方向へ回るかということも十分考えていくべきなんで、ただ単に資金だけ当然ふやすという一本の結論ではないわけでございます。その点は誤解のないように願いたいと思います。
  25. 石野久男

    石野委員 大臣はそうおっしゃるけれども、たとえば昭和三十四年度におけるところのいわゆる資金調達は、全部で四百十二億だったわけです。三十五年度は四百八十九億になります。三十四年度において自己資金の増加額が七十七億円、それで回収金は百二十億円ですね。三十五年度においてもまた同じく七十七億円です。自己資金の増加をして、それで回収金というのは百五十三億です。これで見ますと、自己資金の増加額七十七億に対して、回収金の増加というものは大体三十四億くらいしかない。半分くらいしか回収は伸びていかないわけです。これは三十六年度においてもおそらくこういうような比率で伸びるんだろうと思います。ところが、需要はもっともっと伸びて参りまするから、三十五年度の予算でもわかるように、たとえば資金運用部資金は、三十四年度で八十五億というものを、三十五年度で百二十八億というふうに四十三億くらいを増加させなければ、こういう実績は出てこないわけなんです。で、必然的に借入金で回収金が伸びてき、それから自己資金でももちろん伸びておるのですけれども自己資金で伸びておるものに比較すれば、その半分くらいしか回収金がふえてこないわけですから、増加をする需要に対しては、どうしてもやはり借入金にたよるか、あるいは自己資金を増加するということに多くを待たなければいけない。その回収金の増加というものは、率直に申しまして微々たるものです。ですから、大臣がそういうところで逃げられても、これは説明にはならないんですから、どうしても自己資金なら自己資金を来年度予算において増加するということをはっきりここで言っておいて下さるならば、私どもよく納得しますよ。
  26. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 そう簡単なものじゃないということを先ほどから申し上げておるわけでございまして、やはり回収の実情も見なければなりませんし……。(石野委員「回収の実情は今言った通りですよ。」と呼ぶ)またそれはだんだんふえていっても、その年々の計画もありますから、手数料を下げるとか、資金コストを下げる方法もやはり工夫していかなければならない。そういうものもいろいろありますから、そう簡単に出資だけふやせばいいじゃないかという簡単なものでございませんということを申し上げているのでありまして、出資を絶対にふやせないとか、一切しないんだとか、こういうことを申し上げているわけでありませんから、誤解のないように願いたい。その点で幾らの出資をするとか、あるいは増加の方向で出資金をことしよりもよけい出すか、こういう点になれば、ただいま申し上げるように、いろいろ工夫する点がございますから、それらを勘案して適当な資金構成を考えて参りますということを抽象的に申し上げているのでありまして、私あまり食い違っているとは思いませんが、結論を非常に端的に御指摘になりますものですから、私も立たざるを得なくなった、こういうことでございます。
  27. 石野久男

    石野委員 今委員会で審議しておりまするこの法案は、主として牧野の問題に対する利子補給関連する法律改正なんです、基金の中で。この問題は当然農林漁業金融公庫が扱う内容になってきているわけでございます。大臣はいろいろおっしゃられるけれども資金コストを下げる下げると言いますが、資金コストを下げるということは、何といってもその大宗をなすものは、自己資金がふえないで借入金がふえていけばいくほど資金コストは高くなっていくのですから、これはどんなに釈明されてもそういうことになる。ですから、やはり大臣としては苦労が多かろうけれども、そういう方向へいく。とにかくこの三九%の率を三五%なんかにはしないのだ、むしろ率を上げていく方向には努力するけれども、下げる方向にはいかない、もうこれは最低でございますということぐらいははっきり言いませんと、農民は十分理解しませんし、またそれでなければ、政府農民に対する考え方は非常に形式的な立場でやっているのだということを言わざるを得ないと思うので、これは私は大臣農民に対する政策をむしろ誤解のないようにさせようとして一生懸命言っているのですから、そこらのところは一つ淡々と御意見を承りたいと思う。
  28. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大筋はもう私も申し上げている通りだし、その私の申し上げたところから、それならお前資金をふやすのだろう、こう詰め寄っているわけであります。その大筋はよくわかります。わかりますが、ただいま申し上げますように、この資金が、幾らがその年に必要かということについては、なかなかこまかな事柄も考えて工夫して参りますということでございまして、私は、農民自身から見ますれば、やはり資金の量もほしいし、また資金金利もより安いものが多くなることを望んでおるに違いない、その政策に変更のないということを申し上げれば、農村の方は一応御信頼がつなげる、かように思いますし、また、当委員会の皆さん方の御指摘になりますように、その基本的なものの考え方に相違はございません。事柄は非常にこまかいことを申し上げて大へん恐縮で、何か逃げを打っているのではないかというように誤解しておられるようでありますから、非常に端的な結論のものでないということを申し上げているわけであります。その点は誤解のないように願いたいと思います。
  29. 石野久男

    石野委員 とにかくいずれにしても、資金コストを下げるということになれば、資金構成の問題をもう少し考えないと、それはとてもどんなに弁解されてもますます悪化していく傾向になることだけは間違いありませんから、この二十六年度以降三十五年までの間、約十年間にわたっての傾向を見ますと、自己資金の率はどんどん下がってきているということではよくないということだけは、大臣もはっきり認識をしていただいて、それを是正する方向に動いてもらわなければいけないだろうと思います。  それから、もう一つ、先ほど大臣からお話があり、また先般大蔵次官からもお話がありました、いわゆる資金量をどういうふうにしてふやすかという問題に関連して、系統機関からの金をなるべく使いたいということでございます。その系統機関からの金を使うという場合に、私は、農林中金の金を農林漁業金融公庫の方へ持ってきて、それに対する利子の差額というものを補給していくという形で資金量をふやしていくという形も一つあると思うのですが、私の感じでは、そういうことをやるくらいなら、農林中金の貸付金利というものを低くしてもペイしていくように、むしろ農林中金にそれ自体補助してやるような形をとる方がもっとすっきりするだろう、またそういう形が出れば、農林中金も、資金農民層に活用しないで、ほかへ活用するというようなことをしないでやっていける形が出てくるのであって、より農民に対しては好意のある、あたたかい政策になるんじゃないかと思うわけです。そういう点、私は、大臣の今の考え方——とにかく予算編成のときに出た構想というものは、農林中金の金はほかへどんどん動いていって農民のところにいかないのだから、むしろ財政投融資の金を一応持ってきて、それをまた今度農林漁業金融公庫へ使うというのか、あるいは、直接農林中金の金を、系統的なものだからというので、農林漁業金融公庫へ入れて、そこでその利子差額の補給政府が見るというような形でいく、そういうようなお考え方だとすると、どうもやはりむしろ逆になっているのじゃないかというふうに思うわけです。むしろ、私は、農林中金の金を使うくらいならば、農林中金の貸し出しの利子というものを下げる。その下げた部分におけるところの資金コストとの差額というものは、やはりそこで端的に利子補給するとかなんとかやることの方が、よほど農民に対してははっきりした線が出るのじゃないかというふうに思う。従って、そういうような方向へ行くのが順当じゃないだろうか。そうなってくると、当然今度は農林漁業金融公庫資金量をどういうふうにしてふやすかということが、おのずから国家資金の問題になってくると思うので、それを安易な形で、系統機関だからここへ集中するのだというようなことは、これは実を言うと一つのごまかしだと思うのです。ごまかしであって、かえって逆に農民には御迷惑をかけることになるのじゃないか。この考え方は私は非常に重大だと思っているし、そのこと自体は、農林漁業金融公庫に対する国家の考え方というものに対しても、非常にあいまいな線が出てくるのじゃないかというふうに思っておりますので、その点について、もう一ぺん大臣に御意見を承っておきたいと思います。
  30. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今御指摘になった通りなんです。そういう議論があるから、予算編成の際に踏み切ることができなかったということで、ただいま研究の問題として預かっているということであります。同じ系統だからそこへ先にやれというだけでなかなか片づく問題ではないものですから、この問題を扱うについては、いろいろ検討を要する問題があるということで、今回実現しなかったということであります。従いまして、ただいま御意見も十分拝聴いたしましたが、こういう問題については、さらに検討をいたしました上で結論を出すことにしたい。これはただ単に思いつきの程度で処理すべきものではない、かように考えておるわけです。
  31. 石野久男

    石野委員 先ほど私がお尋ねしました中に、四十一年度になりますと、六十五億の資金運用益から出るところの利子補給というものは頭打ちをしてくるということが現実に出ております、今までの需要高の傾向で計算していきますと。その場合に基金というものをどういうように考えるかということ。それから、四十七年度のころになりますと、その基金までも食いつぶすであろうというような見通しが立っているというような問題に関連して、この経済基盤強化基金というものの農林漁業金融公庫における位置づけと、それから今後の考え方政府はどういうように持っておられるかということを、この際一つ聞かせていただきたい。
  32. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 基金そのものは特別な、御承知のような事情でできたわけでございますから、今後この基金扱い方については、今後の非補助土地改良と申しますか、そういう土地改良事業のあり方というものと非常に関係を持つものでありますから、今後、補助、非補助を通じての土地改良事業がどういうようにあるべきかということを十分慎重に検討して、しかる上でただいまのような点についての構想を固めていくということにいたしたいと思います。まだただいま結論が出ておらないということであります。
  33. 石野久男

    石野委員 そうしますると、私の聞いているのは、非補助のものについてどうする、こうするというような問題もさることながら、基金そのもののことについて聞いているわけです。だから、四十一年度では、運用益の操作はもう大体頭打ちをするのだ、四十七年度になりますと、食いつぶすという見通しが立っているのですが、大体その基金を食いつぶすというような考え方で行かれるのかどうかという点を私は聞いているわけです。
  34. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま基金がああいう事情でと申したのは、基金の成立を見ました当時の事情は、御承知のように、異常な剰余金処理方法として考えたというものでございますから、その基金そのものは特殊な情勢のもとで生まれた。一面に土地改良事業というものも非常に促進を要するということで、この剰余金とこれとを結びつけて、この基金を作ったのでございますから、先ほど来申しますように、今後の土地改良事業、ことに補助事業と非補助事業というもののあり方等と必ず関連していくことでございますから、そういう意味で、この基金の今後の扱い方については考慮していくということでございます。
  35. 石野久男

    石野委員 この基金をこういうふうに強化のための資金及び特別法人基金に使うということは、当時余剰金を使ったときにもいろいろ論争があったところであります。特にこの基金設定の問題については、当時を言いますと、この基金が設定されたときには一千億をこえるところの農民予算ができたということで、非常に農民を喜ばしたわけでありますが、事実は六十五億というのは運用金二億か三億を使うだけであったのであります。しかし、農民は一千億をこえるといって非常に喜んだが、実を言いますと空手形を受けたようなものだったのです。そういう非常に狡智にたけた政策をやった。しかし、それは事実上、だんだん年次を追うに従って、基金操作がいいか悪いかという判定が徐々に出てきていると思っているのです。むしろ、私は、こういうような基金資金としてそのままつぎ込んでしまうのがいいのじゃなかろうかというような考え方も持っておりますし、むしろそういう資金に入れるということの方向へどんどん力を入れていくことの方がよろしいのじゃないかと思っているわけです。しかし、すでに基金は設定されており、法律もできて、そういうように運用されてきたことでありますので、今はどうにも仕方がありませんけれども、この数年間に及ぶところの経過にかんがみて、見せかけの効用というものよりも、実質的にはもっとこの金の使い方があったのじゃなかろうかと考えるわけですが、政府としてはどういうようにお考えになっておりますか。
  36. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来申しますように、これは特殊の事情のもとに設けたもので、一面土地改良事業促進のために融資対象を限定したということでございます。従って、必ずしも永続的に現在のような運用を続けていくということを予想したものではないと私は考えております。従いまして、先ほど来申し上げますように、今後の補助、非補助の土地改良事業の遂行状況等とも関連し、全体として十分検討した上で、その今後のあり方をきめるべきだろう、かように実は思っております。ただいま結論を出すのも早いと思いますし、ただいま御意見も拝聴いたしておりますので、将来この基金についての構想をきめます場合に、さらにもっと私らも十分練って参りたい、かように思っております。当時の事情は皆様御承知の通りの状況のもとにできたものだと私も理解いたしておりますので、その点は重ねて申し上げません。
  37. 石野久男

    石野委員 農林漁業金融公庫は、運用益が出て、そして利子補給をした差額を基金に繰り入れをいたしております。ところが、他の特別法人のところでは、ほとんど繰り入れというのはなく、特に貿易振興会とかあるいは労働協会などは、出たものは全部使い切っているように資料が出ているようでございます。農林漁業金融公庫の場合では、運用益を利用してなお残額が出るのですが、ほかのところでは残額が出ない形になっております。それらの利用の内容などについて十分監査し、あるいはまた、政府としては、それは適切に運用されているというふうな調査結果が出ているのでございますが、内容は私はわかりませんけれども、労働協会とか貿易振興会は運用益をみな食いつぶしているわけですね。そういう点をお聞かせ願いたいことが一つと、労働協会あるいは貿易振興会などが使っているところの金は、大体どういうところに運用しているのか。そういう点もこの際聞かせていただきたい。
  38. 石原周夫

    ○石原政府委員 事務的な問題でございますので、私からお答え申し上げます。  石野委員の御質問は、お配りをいたしました「経済法盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律に基づく出資法人基金状況調」というものでのお尋ねであろうと思いますが、それでごらんになりますように、農林漁業金融公庫におきましては基金額がふえておるわけであります。中小企業信用保険公庫におきましては、これは基金の運用収入をもちまして保険の方の金に引き当てておるものでありまするから、とんとんの形で、基金額がまるまる残っておる、こういうことであります。これは当初からそういうことを予定いたしまして、毎年々々大体経費が出て参るということを考えております。輸出入銀行は、御承知のようにこれが海外経済協力基金に相なりまして、二億七千四百万円というものがふえて、五十二億七千万円というものに相なっております。貿易振興会におきましては、三十三年度におきまして千二百万円ほどの余剰が出ておる。三十四年は現在のところ収支の差額が出ない見込みでありまするが、これも同様に事務費に充てますることを最初から考えまして、特に余剰が年々積まれることを考えておるものでございません。ただ三十三年度のごとくに、表でごらんのような差額が出ますると、これが基金に積立金になりまして、実質上基金がそれだけ増加をする。ただし将来損失が出まするとその分は取りくずすということになっておりますが、そういう形になっております。労働協会は、三十三年度、三十四年度いずれも余剰を生じておりまして、三十三年度は千四百万円の余剰が出まして、積立金が千四百万円ということに相なっております。これも将来経費に損失を生じました場合には、その損失を埋めることになるのでございますが、基金のほかに積立金として積んでおる、こういうことであります。これの状況につきまして、おのおの主管の官庁がございまして、収入、支出につきましての監督をいたしておるわけでありまして、大体の建前は今申し上げましたような経費に充てる、あるいは事務費に充てるというようなことでございます。残りを積んで参りましたのは、農林漁業金融公庫の御承知のような経緯でありまして、ある程度までは積んでいって、それがだんだん減っていく、こういうことを最初から考えて出ておりまするから、それ以外のものとは形が違ったものであります。
  39. 石野久男

    石野委員 貿易振興会や労働協会の方では、まあ労働協会の場合は現在二千五百八十七万というものが余剰として積み立てられているわけですね。こういうものは、やはり今の局長の説明によりますると、今後不足が出たときにそれを埋め合わせるべき金だ、こういうことでございまするが、こういうところは生産機関でも何でもありませんから、むしろこれを基金に繰り入れるとか、あるいはまた政府へ上納させるとか、そういうような考え方を持ってはいないのでございましょうか。
  40. 石原周夫

    ○石原政府委員 先ほど申し上げましたように、この農林漁業金融公庫のような特殊の操作をいたしますもの以外におきましては、経費に充てる、あるいは保険料の低下の財源に充てるというようなことに相なっておりますので、原則は年々大体とんとんにまかなって参れる筋合いであります。ただ、そう申しましても、年々必ずしもきちんととんとんには参りかねるものでございますから、従いまして、収支の余剰はこれを積み立てておきまして、将来の損失の補てんに充てるということで、ある期間を通じましての平準化を考えておるわけでございまして、制度の最初の建前からいたしましても、この際積立金をもって基金の増加に充てるということは考えておりませんので、基金そのものは手を触れないということでやってきておりますから、その間に一線を引きまして、基金に組み入れないで積立金にするという考え方でやっております。
  41. 石野久男

    石野委員 それでは、私は一応この経済基盤強化に関する質問をこれで終わります。あとの質問はまた保留いたしまして、一応終わります。
  42. 植木庚子郎

    ○植木委員長 ただいま議題となっております三法律案中、経済基準強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律の一部を改正する法律案に対する質疑はこれにて終了いたします。     —————————————
  43. 植木庚子郎

    ○植木委員長 なお、本法律案に対しましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。  採決いたします。本法律案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 植木庚子郎

    ○植木委員長 御異議なしと認めます。よって、本法律案は原案の通り可決いたしました。  ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 植木庚子郎

    ○植木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  46. 植木庚子郎

    ○植木委員長 公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。神近市子君。
  47. 神近市子

    ○神近委員 ただいまの問題の法案につきまして、それ自身ではないのでございますが、それに関連したことで二、三大臣——これは御質問というよりもいささか陳情的な形になりますが、ちょっとお伺いしたいのです。  これは旧令によります陸軍被服廠の共済組合の組合員たちの、婦人の組合員の問題でございまして、これはもう昭和二十五年、六年あたりから運動が行なわれております。私も問題の内容はよくわからなかったのでございますが、このごろどうやらぼんやりこういうものじゃないかということがわかってきたのです。で、広島、大阪、東京、この三つの地区に被服廠の婦人たちが長い間骨の折れる運動をしておりまして、何とか老齢の人たちの問題について話ができないかというので、私も大蔵省に陳情に行き、また共済組合連合会に実は決算委員会の方で一度お願いして、何か変な不明朗なことがあるので、大蔵省からも来ていただいて、あすこで懇談会を開いたことがあります。今になって考えてみますと、私は大蔵省にあまり手落ちはないのだろうということがわかってきた。それではどこに問題があるかと言いますと、終戦時の二十年から二十四、五年にかけての軍関係者の方に何かあったに違いない。決算委員会でちょっとこれを持ち出したときに私が感じたのもそれだったのですけれど、今日となると、どうもそれが大きくなって、婦人たちがなかなかあきらめない。  問題は退職一時金と年金者一時金に関することでございます。それで、共済組合法の改正案が出ましたので、いい機会だと思って御考慮を願いたいというので、陳情を申し上げたわけですけれど、大蔵省はおそらくその当時支出をしておいでになると思うのですが、それが本人たちに渡らない。渡らないのはどういうわけかと言いますと、二十四年の四月に今の共済組合連合会に呼ばれまして——その当時は市ケ谷にありました事後処理の機関であったのであります。その機関であった間に何かがあった。名前を出すのはお気の毒ですから私は申し上げませんが、与党の代議士が相当御調査下さったはずです。そして婦人たちにこういうことを言ってなさる。お前たちは幾ら運動してもだめだ、お金ももう出ておるのだよ、お前たち委任状を書いておるだろうと言われた。二十四年四月に市ケ谷事後処理事務所に呼ばれて署名と捺印、それからお金を送ってやるから郵便局を書いておけと言われて、そうして判を押してきた。あまりいろいろな文章や何かになれない人たちだものですから、そのお金が出ると言われただけで喜んでしまって、その内容も何もよく記憶していないのです。お金を送ってやるからここで署名捺印して郵便局を書いておけ、こう言われた。そうして二十四年の四月にそれを書いて待っていたら、男の人には年金が出るようになったけれども、女には一向音さたがない。それでわっさわっさ歩き始めたんですが、私も何が問題かわからなかったのです。それで一度決算委員会で調査をお願いしてみたけれども、大蔵省のおっしゃることも手落ちがなさそうだし、また共済組合連合会のおっしゃることも手落ちがない。ただどうしてお出しにならないのか。それはさっき申し上げた二十四年の四月に署名捺印して郵便局の名前を書き込んだ帳簿なんです。それを一度は女の人たちに見せてくれたらしいのです。われわれ代議士が何人かついて大蔵省の穂刈さん、給与課長に来ていただいたのですが、その問題は知らない。そういうものはないということで、田中何がしという人がそこに来て、そうしてどうしてもそれを見せない。私も、悪く勘ぐれば、穂刈さんくらいまでは何か知っていらっしゃるのではないかと考えるのです。うすうすですよ。船後さんも、聞いてはいる、こうおっしゃったのですけれども、どうもそこのところが不明朗で、納得できない点があるのです。私は、もう十一年も前のことを、ここでほじくり出して、軍の関係者に——何か十三億円なんという金高も出ておりますけれども、そういうものをほじくり出すということはしたくないのです。  そこで、ここで大臣に伺いたいのは、この退職一時金あるいは年金者一時金というものの旧令の規定を見ますと、十年、二十年、二十五年と勤めていた人たちには、この別表第四号というところに倍率がちゃんと書いてあって、長期勤務者には一倍半とか、大体その近くまで給与するということが書いてある。それで、この新令によりますと、私は法律にこういう文句があるかと思って驚いているのですけれども、「主務大臣措置により消滅したものを消滅しなかったものとみなして、」これを給与するというふうな文句があるのですが、消滅したものを消滅しなかったものにして給与するという考え方法律を作成なさる場合にできるものであるならば、この問題も少し考えていただけないでしょうか。これは大蔵省では穂刈さんだったと思うのですが、あれは一時金を渡してあるとおっしゃる。だけれども、それは二十年の解散のときに、甲種も乙種も丙種も一律に六百八十円渡っている。それは退職一時金とは言えないと思うのです。解散一時金みたいなもので、戦争のどさくさの跡始末で、とにかくあるものを人間に合わせて、男も女も、甲種も乙種も丙種もみな六百八十円渡した。それで木炭が二俵、お米が二十キロ買えたそうです、そういう程度で追っ払ってある。それで、二十四年の四月、あるいは、この新法が出ましたのが二十五年でございますから、そこらでこの跡処理について何か考えられていたことがあったのではないかと私は思うのです。それで、私は、自分はあまり得手でないものですから、立法者にお願いしてこれを調査していただいたのです。大蔵省が相手では、議員なんてばかなものですから、自分ではとても手に負えないと思って学者にお願いして、婦人たちにお金を渡せるかどうかということを二度ばかり調べてもらったのです。そうして法制局にもその意見書をつけて出したのですけれども、この法律のワク内では、もう時効にかかっておりますし、どうにもならない。だけれども、婦人たちがもらった一時金も——年金者一時金もやると言われたものをもらっていないということがあるのと、それから中間の人たちがそれをネコババをきめたのじゃないかという疑いがどう考えても出てくるのです。受け取りは委任状を書いてちゃんと判が押してあるのですから……。しかし、これは過去の、時効にかかった人たちの名前もちゃんとわかっておりますけれども、時効にかかった人たちに傷をつけるということは私あまり望ましくないと思うのです。ですから、一つここは大臣が政治的意識をはっきりお持ちいただいて、何とかこの改正案なりあるいは特別立法なり、消滅したものを消滅しなかったものとして考えて、一つ考慮いただけないかというのが私のお願いでございます。これは問題としては非常におもしろいのです。渡したという人と、もらっていないという人たちが十年も対立して、そして今でもわっさわっさ国会あるいは政府に陳情に来ているのです。  もう一つ考えていただきたいことは、私にかぎつけられないようにということを非常に警戒される。それは社会党という言葉を使っておりますけれども、私は女ですから、女のところには話がしやすいと見えていろいろ相談に来るのですが、このところ私のところに来るのを禁じられて、できるものも社会党に頼んだらできないぞ——これは手紙がここにありますけれども、非常に善良で、この人なら間違いないというような軍関係者の人が、社会党には行くな、行くなら与党にお願いしなければできないぞということを、もうるる子供に聞かせるように聞かせてある。これはいい人なんですよ。それで、私の考えでは、やはりくさいところを仲間にかかえているということが、こういう態度に出させたのではないかというように考えます。これはもうあとにも先にも大臣がお見えになることはなかなかないので、お見えになるのを待っていたので、ぜひ一つ、過去の人たち、軍の人たちに、いろいろ悪質な人がいますが、そういう人たちにも傷をつけないで——女の人たちはほうっておけばいつまででもやりますよ。私はものを書く商売なものですから、これはちょっとおもしろいなと思うくらい食欲が出る問題ですから、一つぜひ御考慮いただけないか。それだけなんです。
  48. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 なかなか深刻な問題であるようでございますので、神近先生もいろいろお困りだろうかと思います。さようにただいまのお話を伺いましたが、これはだいぶいろいろ誤解もあるのじゃないかと思います。旧陸軍の職員の共済組合の関係のものとしては、男の方は掛金も千分の四十八ですから、相当高い掛金をしている。それから、女子組合員の場合は千分の二十一ということで、掛金がまず違っておる。これはなぜ違えたかというと、男子組合員は年金制度があるということで、掛金率を高くしておる。それから、女子職員には一時金だけを支給するという建前で、年金という制度はないわけです。これはもう旧陸軍の共済組合の建前自身が根本で違っておる。そこで、戦争に敗れた後に、男も女も同じようにして一時金を支給した。ところが、これは年金制度があろうがなかろうが全部したわけであります。これはポツダム勅令でやったということでありまして、この一時金支給で一応片がついた、かように政府考えておるわけなんですが、このポ勅については年金制度に関する部分だけがその後復活したということでありますので、男子職員に対しては今度年金支給ということになったということであります。ところが、女子職員は最初から年金支給でないものですから、この一時金支給でもう問題は結末をつけたということになっておるわけであります。この点がいろいろ議論があることだろうと思います。一応敗戦直後にもらった金は男子職員も女子職員も同じなんだ、だから男子職員についてポツダム勅令がその後廃止されて年金が出るようになれば、あらためて一時金が支給さるべきじゃないかというような議論があるのじゃないかと思いますが、政府としては、この点は一時金支給は当時処理したということになるわけでありまして、これを男子と女子と区別し、特に女子を冷遇するというような考え方は毛頭ございません。ただいま申し上げますように、旧陸軍の共済組合法自身が、最初から一時金と年金との二つの建前で、平素の掛金から違っておるということでスタートいたしておりますから、ポツダム勅令が入ったことだけで事情が変わってきたのではなく、その間に基本的な相違があるわけです。その後の折衝その他の問題があるように伺いますが、私も事情はつまびらかにいたしておりませんが、そういう関係でございますから、これを佐藤お前は金持ちだから引き受けろと言われても、なかなかそういうわけには参りません。これはやはり建前が建前じなゃいか、かように私は思っております。ことに、こういう問題について、与党だとか野党だとかいうようなお話がただいまございましたが、そういう事柄はもうもちろんどなたがお話しになりましても、筋のあることは私ども引き受けますし、筋のないことはだれが申しましてもどうも処理するわけにはいかない、かように実は思うわけでございます。  なお、詳細の点につきましては、関係の事務当局から詳細に私の足らない点は申し上げて差しつかえないことでございますが、ただいま申し上げますように、旧陸軍の共済組合法自身が、男子組合員と女子組合員とは、掛金を別にし、給付金を別にしていた、こういう建前でスタートしておる。従って、ポツダム勅令が廃止されて男子組合員に対しての年金が復活したからと申しましても、女子職員に対する関係はもうすでに終了済みだということに実はならざるを得ないのでありまして、この点御了承願いたいと思います。
  49. 神近市子

    ○神近委員 大体大臣がおっしゃることはその程度のことだろうということはわかっておりました。旧令時代、戦争以前に女の給与が非常に低いということは、この前四月十四日にもここで申し上げましたが、月額十六円五十銭くらいもらっている人がある。多い人は五十六円というのもありましたけれども、その零細な給料で積み立てをしてきている。そして、今おっしゃったように、新憲法の今日となってはかれば、そのときの女の人たちの労働が、たとえば物を縫うとか、物を織るとか、あるいは包装をするとか、被服廠の仕事ではたして労働の価値が非常に低かったかどうかということはよくわかるでしょう。ただ女だから給与が低かっただけで、今日労働させてみれば、すべてのものがそうということは言えないけれども、少なくとも女の現場における労働はそんなに安価なものであるはずがない。それならば今だって繊維工場でも被服工場でも使いやしませんよ。それはもう戦前ですから、しようがないから認めます。だから、その点で、この陳情書ではそれをしきりに言ってきているのです。せっかく新憲法下にあって同一労働同一賃金になったのですから、何とか恩情のあるお取り扱いをという陳情がきているわけなんです。だけれども、それはそれといたしまして、旧令の七十条というものがありますけれども、そこに脱退一時金の給与についての規定があるわけです。そして一番おしまいに表があります。この別表によりますと、第四号に今までかけた金に対する倍率がきめてあるわけなんです。そうすると、六百八十円が、たとえば五十円とか三十円とかもらった人たちが二十年、二十五年と積み立ててきたものの倍率に相当するかどうか。これは私は足りないと思うのです。この間もその点申し上げたのですけれども、ともかく大正何年かの一円と今日の一円というものはどれだけの倍率を考えたらばいいか。今日でなくとも、少なくとも解散時の昭和二十年ではもう貨幣価値が非常に変動していた。物価も変動していた。その倍率がどういうことになるか。六百八十円均一にもらったということを脱退一時金とお考えになっていれば、これは私大へん不親切な考え方だと思う。私は解散一時金と脱退一時金とは別途に考えていらっしゃると思って、大蔵省にはおそらく手落ちはおありでないだろうと申し上げているのです。この女の人たちは、旧令によって規定されている脱退一時金、年金者一時金というものをいただきたいので、何も年金をくれと言っているわけじゃない。法律につかまっている方々は、女には期待権がございませんから、期待権のある男にだけ、甲組合員だけ上げたのだというふうなことをおっしゃるのですけれども、期待権というものの解釈だって、年金なら期待がある、一時金なら期待がないということは言えないでしょう。だから、六百八十円で脱退一時金か何かを大蔵省あたりですりかえていらっしゃるのか、あるいはさっき私が伺っているように、六百八十円はすべて均一にもらっている、そのあとで女の人たちの脱退一時金、年金者一時金が渡ったということになって、大蔵省は手をふいていらっしゃるのか。そして、その金が——これは名前を出した方がいいでしょう。中村梅吉さんのところで伺ったと書いてあるのです。この金はもう大蔵省は出ているのだよ、どっかでネコババした人があるのだよ、だからお前たちが幾ら騒いでも、というようなことを——これはもう私は中村さんとも何度も折衝したのです。非常に御親切に、どうも法律の面からどうにもならないということで、これはもう歎願あるいは大臣に陳情するよりほかはないと思って、私が頼まれもしないのに、社会党は手を引けと言われているのに、大した金じゃないのですから、御考慮願えないかということを、きょうは一応お願いしているわけなんです。これも意地悪く出て、軍閥の人たちがどういうことをしたかと言って、大蔵省に行って書類を見せていただいたり何かすれば、おもしろいことにはなるのですけれども、そういうことは私したくないから、こうやってお願いしているわけです。
  50. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 それは、私よりも、たびたび大蔵当局とも折衝していらっしゃるようですから、神近さんよく事情を御存じだと思いますが、この六百八十円というのは、一律に六百八十円差し上げたのじゃないようでございます。当時、ただいまお読みになりました七十条ですか、それによる脱退一時金の計算をして、個人的に違うはずでございます。そしてその金額が出ているということであります。従いまして、当時の金として支給する——今日まで支給しないでいて、そうして今日出すとなれば、もちろん、今も御指摘になりますように、換算をどういうようにするかという問題もあろうかと思いますが、当時支給したのでございますから、そういう換算の問題は今日はないわけでございまして、その支給したのがただいまのお話と私どもが伺っている点で違いがあるのは、全部一律に六百八十円と言われておりますが、六百八十円一律じゃない。七十条の規定による各個人ごとに計算をした退職一時金というものを支給しているということでございますので、これは当時の書類が残っておるのだと思いますが、そういうことだと問題はすでに解決したものだ、かように申さざるを得ない。年金に関するものだけは、ポツダム勅令でそういう年金はないということで一応押えた。しかし、共済組合法の建前から見て、それだけたくさん掛金しておる男子組合員に対しては、ポツダム勅令自身が行き過ぎだということで、今度は年金支給ということに切りかえたということでございますから、この方には今度は換算の問題が出て参りますが、敗戦直後に支給したものが、ただいま申すように共済組合規則に基づいて個人別に計算をされたものだと、ちょっとお話趣旨とは違うのじゃないか。先ほどのお話で、私どもの立場の相違は——一律に六百八十円とにかくやった、こういうことでなしに、これは組合の規定に基づいて個人別に計算して金額は出したということでございますので、そういう事実だと、神近さんのお話もちょっと変わるのじゃないか、かように私は思います。当時の事柄でございますから、私どもも、当時日給者の給与などは、半年とか一年、長ければ一年半というか、そのくらいの間に一体どれくらいの日給者の賃金を上げたかと申せば、二銭とか三銭とか、あるいは一年半で五銭とかいう、非常に少額の昇給しか取り扱ったことはございません。そういうところから見ますと、おそらく当時の掛金としての千分の二十一というものは、非常に低いものに違いないと思います。そういうところから計算してくると、ただいまのような金額になるのじゃないか、かように私は思います。
  51. 神近市子

    ○神近委員 それでは、事務局にちょっとお伺いしますけれども、甲組合員と乙組合員と丙組合員との給与の差額は、大蔵省でその記録が残っておりますか。それとも、婦人たちが一律に大体高低なしにもらったというのは一体どういうことなんですか。
  52. 船後正道

    ○船後説明員 解散当時の旧陸海軍の共済組合が支払いました一時金の記録は大蔵省には残っておりませんが、連合会の旧令の方に保存されておるはずであります。
  53. 神近市子

    ○神近委員 それなら、甲組合員、乙組合員、丙組合員は差額をつけて、そしてこの規定によって渡しましたと、あなた方がここで断定的に言えるはずはないじゃありませんか。
  54. 船後正道

    ○船後説明員 御承知の通り旧令特別措置法による支給事務は連合会でやっております。従って、そういうものの記録はすべて連合会の方で持っております。もちろん私どもはその記録は承知しております。そうして、当時陸軍共済組合が解散の際に支払いました一時金は、それぞれ当時の陸軍の共済組合規則の七十条の規定に基づきまして個人別に計算いたしまして、それぞれ支払っておる、こういうことになっております。
  55. 神近市子

    ○神近委員 ここに共済組合の退職給付のなされたもの、これは大蔵省でお出しになったものが何かございますけれども、陸海軍だけが取り残されて、これが解散させられた。ほかの専売とか国鉄とか、そういう共済組合は復活しておる。それで陸軍と海軍だけが復活されていない。ほかの共済組合が非常に待遇されている。それでこの陳情書には年金がほしいということは書いてありますけれども、何も必ずしも年金がほしいというわけではなしに、ともかく二十四年四月にもらえるといって委任状を取ったのだから、もらえるはずだというような考え方がある。そうして、大臣にも聞いておいていただきたいのは、その零細な八十三人という人たちが、月に百円ずつお金を積み立てて、そうしてそのお金を使って、旧共済組合関係の人たちへ、そっちに進物を持っていけ、ここにも進物を持っていけということをちゃんと書いてあるのです。だれが親切に書いたかわかりませんが、そういう運動をもう七、八年もやってきている。ほかの共済組合が再建されて、前の旧権利が認められているのに、自分たちだけは解散させられた。今日自衛隊というものはできたが、海軍、陸軍というものの機構を引き継いでいない。そういうところから落ちこぼれた人たちです。ですから、私の考えでは、たくさんの金は要らないと思います。たかだか三千万か四千万あれば片がつくのではないかという程度のことです。そうなると、ほかの組合がとおっしゃるに違いないけれども、ともかく二十四年四月のことを考えれば、何とかこの人たちの気持に区切りをつけてあげたいと思うのです。どうしても大蔵省は知らぬとおっしゃるならば、もうあきらめなさいというのならば別ですけれども、何か変な人たちがいて、いやこれはできるかもしれない、いやでかしてあげるというようなことをおっしゃるから、自分たちの身銭を切って七年も八年も運動している。大臣がきょうここへおいでになったのは幸いです。何とかこれを右か左かということをはっきりおっしゃっていただけないものか。もう絶対にだめだ、六百八十円渡したのが手切金だというふうにおっしゃるのか。あの御婦人方は私と同じような老齢な人たちばかりです。若いときからみな二十年以上、二十五年、三十年、青春の一番いいところを薄給で働いてきて、そうして終戦で木炭二俵くらいでおっぽり出されて、そうして今ようやく子供が大きくなって、子供が働いてくれるというところにきている。今までの苦労というものは、ほんとうに聞いたら涙が出るほどです。それで、そのときの貯金というものは、今おっしゃったように千分の二十一というのは零細なものでしょう。だけれども、それがやはり国庫に入って何かのお役をしたということもやはり考えていいと思うのです。それなら、ここで涙金でも何とか……法制局に御相談しても、この立法がむずかしいということだったのですが、何とか大蔵省で考えていただけないか。零細な話で、大へんみみっちいことですが、何とか御考慮願いたいというのが私のきょうのお願いでございます。
  56. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほどのお話で誤解はないと思いますけれども、神近さんもその点ははっきりしておるようですが、年金に関する限り、これは絶対に問題が最初からないことであります。二十五年だろうが、三十五年勤続しようが、年金はない。これだけは非常にはっきりしておる。それから、八十三人の方々にしろ、月々百円お集めになるということになると大へんな出費ですから、誤解のないようにはっきり申し上げなければならぬことですが、ただいま申し上げますように、共済組合の女子組合員としては、最初から年金を受ける権利はないのだ。だから、今運動を続けられても、年金をつけてくれという運動だと、これはどこにもひっかかりのない問題だ。これだけは一つはっきりしている。  それから、第二の問題として、先ほど来申し上げております六百八十円というものが、組合規約の第七十条に基づいて個人的に計算された金額であるならば、これまたすでに処理済みだということだと思います。ただ、その後非常に金が変わっている、だから六百八十円じゃいかにも少額だ、こういう気持が残っておるだろうと思いますが、終戦直後の状況のもとについては、その当時の通貨で支払われるということでございますから、先ほど来申し上げておりますように、旧連合会の方で処理して、そこに書類もあり、そして六百八十円の金が支給された、こういう事態がはっきりいたしておれば、これまたいかんともすることのできない問題じゃないか、かように実は思います。  問題は、六百八十円をもらわなかった、こういう人が出た場合に、新しい権利関係としてそういうものを政府考えるかどうか。おそらくもう時期といたしましても非常に過ぎている問題でございますから、政府としても非常に取り扱い方に因る、かように私は思います。ことに通貨価値が非常な変動をした今日でございますし、そういう事態があるのかないのか、そういうものだけがおそらく議論対象になって、この際何か処理する方法はないかどうかというようなお話だろうと思います。その六百八十円もらわれた方が、七十条の規定に基づいて計算されて支給された金額なら、この組合と組合員との関係は清算済みと考えざるを得ない。どういう理由で月百円を提出し、なお運動を続けておられるか、先ほど来のお話では私どもも十分理解しかねるのでございますが、ただいまのお話自身を伺ってみますと、一応問題としては処理された問題でないか。しかし、最近は次々に土地制度改良についても調査会ができる、こういうようなことがあって、何らか運動を続けることによって別な解決策でもあるかのような印象を一部持っておられれば、そういう意味で運動をやめることはできない、こういうことがあるかもわからぬ。また金額としてもきわめて少額じゃないか、だからそれを出せ、それで問題が片づくじゃないか、こういうことで、これは純政治的な御発言だと思いますが、私ども事務当局としては、もちろん国民から預かっておる税金でございますから、国の金というものは、幾ら金額が小さかろうが、筋のないことにはなかなか出しにくいだろう、かように思います。また、大臣は事務当局じゃない、政治家だから、そこらを考えろと言われましても、大臣としてもやはり筋のないことはなかなか踏み切れない、かように実は考えるわけであります。  なお、私自身でもう少し十分検討を要する点があるかなと思いますのは、この六百八十円というものが七十条の規定に基づいて支給されたと言われておるが、その点に間違いがあるのかないのか、これをはっきりすることだと思いますが、その一事だけのように思いますので、私は、月々掛金までして運動を継続されることは、あまり好ましいことじゃないのじゃないかと思います。私ども、こうして国会の委員会でお尋ねを受け、お答えをいたしております以上、大蔵当局もこの問題については十分検討はして参りますし、その結果、次の機会に、これは七十条の規定に基づいて計算した支給でございます、こういうことをはっきり申し上げることができれば、それで終止符じゃないか、かように思いますが、その点だけが一事残っておる。神近委員もこの席で御発言でございますから、事柄は多分に陳情的な性格は持っておりますけれども、政治が十分行き届くという意味から申せば、もちろんこういう事柄を軽率に扱うべきではないと思いますので、そういう意味で、私その点だけさらにもう一度給与課長にも話をして、はっきり確かめさせてお答えさせていただきたいと思います。ただいまのところでは、給与課長は非常に確信を持って申しておりますけれども、私自身が確認したわけじゃございませんから、その点、もう一度私帰りまして……。その点だけお預かりをさせていただきたいと思います。
  57. 神近市子

    ○神近委員 大臣の御返答で、御親切におっしゃって下さっていることだけで、みな満足するだろうと思うのです。これは、市ケ谷会館というものが——市ケ谷の土地が国有財産として今決算委員会で問題になっておりますけれども、ああいうグループの運動じゃないのです。女の人たちが、ほんとうに気の毒な人たちが——今もう百円も出せなくなっているのです。初めは八十三人とかが百円ずつ出してこの運動をやろうということになっていたそうですけれども、とにかく効果がないものですから、もうやめた人もあるし、まだ出している人もあるかもしれない。今度は、これも私の選挙区ですけれども、北区の人たちが多いものですから、いただけるものがいただけないのはお気の毒だというので、区役所から三万円補助をもらった。それが運動資金になっているようです。また、いろいろなことがわからないで、内閣委員会にしきりに働きかけて、大蔵委員会は知らないものですから、していない。それで、内閣委員のところに行っていろいろ伺ってきたわけでございます。  もう一つ、私がちょっとひっかかりを持っておりますのは、七十条のほかに、六百八十円というものをお渡しになったときに——六百八十円だけでなかったかもしれません。千円もらった人もあるかもしれません、今の船後さんのお話によりますと。だけれども、そのときは、もうこれは解散するというので打ち切って、額は違っても公平に渡された額ですね。それで、年金の規定があって退職一時金の規定があるのに、解散するのだから、命令でもう継続できないのだから、といって、公平に一時金をみな渡して、これで終末、こう考えておった。それなのに、その一部だけを取り上げて、年金であるから年金の期待権があると言う。よく期待権という言葉をお使いになるのですよ。あなた方は法律のワク内でお聞きになるのだから、それはしようがないと思うけれども、法務委員会だってどこだって期待権と言うし、これは私非常に大きな問題だと思う。それなら一体退職一時金の期待権はなかったのですか。年金には期待権があるけれども、退職一時金には期待権がない、あるいは、年金者一時金というか、そういう者にはともかく退職させるときに一部はこの六百八十円やったから、それでもうおさまってしまったということですか。それならそれでいいですよ。女の組合員は騒がないと思うのですよ。男も女もそれで騒がないと思う。男の方には、じゃ年金の期待権がありましょうから上げます、こっちの一時金の期待権の方は知りません、これは解散一時金を代用して下さい、こういうような不公平な扱い方を私は感じるのです。それはどうなんですか。
  58. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今のお話は、とにかく年金はポツダム勅令で支給しなかった。だから、年金の権利者も、それからそうでない者も、同じような一時退職金で処理されただろう。そして、年金の権利を持っておる者は、その後ポツダム勅令が廃止になったから、年金を給付される。そうすると、一時金ももらい、年金ももらうことになった。片方は年金だけだ。そこで均衡がとれてないではないか。こういうお話でございます。この点ももう一度よく調べて、先ほど来の返事をいたします際に、あわせて十分処置を明確にしてお答えすることにいたします。
  59. 神近市子

    ○神近委員 もう一点。  旧令による共済組合法には、年金をもらう人に一時金をつけるという規定はないようですよ。その点も御研究願いたい。  それで、解散一時金は上げてある。その上に年金を上げました。こっちには、解散一時金はやったから、これを退職一時金と思え。こういうわけですね。そこのところを一つ……。
  60. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 おそらく何か差引計算か何かしておることだと思いますが、一応よく取り調べた上で、全体を先ほど申した点とあわせてお答えすることにいたします。
  61. 植木庚子郎

    ○植木委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。     午後一時一分休憩      ————◇—————     午後二時三十四分開議
  62. 植木庚子郎

    ○植木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  税制に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。小林進君。
  63. 小林進

    小林(進)委員 第三債務者に対する国税の不当取り立てに関する問題でございます。この問題については、すでに三月の八日わが党の平岡忠次郎委員が第一回目の質問をいたしまして、第三回目には私が三月の十七日にその質問を繰り返しているのでございまして、同じ問題について本日また第三回目の質問をするに至ったのでございます。よって来たるところは大蔵省国税当局の不当なる税の取り立て、これに対するわれわれの質問に対しては、どうも肯綮に当たるような御答弁がありません。残念ながら、国会の貴重なる時間を拝借いたしまして、なおかつ当委員会の優秀なる委員諸君がそれぞれ質問をお持ちになっているにかかわらず、そういう方々の時間をさいていだだいて、こういうことを繰り返すに至ったことは、私まことに不本意ではありますが、これは一つお許しをいただきたいと思うのであります。  質問を繰り返していく順序から申し上げまして、一応這般の経緯をかいつまんで申し上げておいた方が問題の焦点をつかむによろしいと思いまするから、概略を申し上げますが、この不当なる税の取り立てを強要せられたというその第三債務者は、この私、小林進であります。それから国税の取り立てを行ないました国家の側が新潟県の長岡の税務署であります。税金の滞納者は二人ございまして、一人は長岡市に在住いたします日興建設株式会社、他の一人は鈴木建友であります。日興建設は長岡の税務署に対して六千七百七十円の税金の滞納を持っておる。鈴木建友の滞納額は一万八千六百六十円である。この二人の滞納者はそれぞれ小林進に対し債権を持っている。日興建設は小林進に対しまして三十万七千円の債権を持っている。鈴木建友は小林進に対して七万円の債権を持っている。だから、長岡の税務署は、小林進に対し、日興建設の分は三月十六日まで渋谷の税務署にその金額の支払いをせい、こういういわゆる債権差し押え通知書なるものをよこした。鈴木建友の分に対しては、同じ三月の五日まで長岡の税務署に対して一万八千六百六十円を支払えという債権差し押えの通知書をよこした。問題はこの事案であります。これに対して第三債務者の支払いを命ぜられた私は、この日興建設に対しては一銭の債務も有しておりません。かつては債権債務を負担したことがございましたけれども昭和三十三年四月に至る間において全部支払っておる。この証拠書類はくまなくそろってありまして、本人の受け取りその他も全部取ってあります。私の方は二万何ぼの過超の支払いになっております。ともかく債権債務の関係は、昭和三十三年四月において全部完了いたしておるものであります。それを、昭和三十五年三月三日に長岡の税務署が私に対し税金の支払いを命じてきたという問題が一つ。それから、いま一つは、鈴木建友に対しましては——私とこの鈴木建友は、目下、長岡の裁判所において、七万円の債権債務の問題について訴訟継続中であります。この問題をもっと詳しく言えば、一週間か二週間前にこの問題が起こり、鈴木の方では自分の訴訟の取り下げを願っておりまして、これは一つ調停の方にお回しいただきたいということで、私の方に申し込んできておりますが、訴訟係属中であることは間違いない。それで、三月三日長岡の税務署が私に対して第三債務者の差し押え通知書をよこすときは、訴訟係属中の事件であるということは、ちょっと裁判所に行ってもらえば明らかであります。それにもかかわらず、私に対して第三債務者の差し押え通知書をよこした。これが問題の概略です。  事件の説明はこれで終わりますが、こういう問題について、今申し上げましたように、三月八日平岡忠次郎君がそういう第三債務者に差し押え通知書を出したことに対して質問をした。けれども、それは質問じゃない。質問の形式をとりながらも、大蔵省、国税局に対して忠告を与えた。注意を与えた。この速記録の内容は注意を与えているのです。その注意を与えたことに対して、当時の国税庁長官北島君はやめましたけれども、国税庁の徴収部長の勝原何がしとかいう者が、そういう平岡君の好意ある忠告の言葉に対して、傲慢無礼なる答弁をしておる。傲慢無礼であるかどうか、この速記録を見てみたらよろしい。傲慢無礼なる答弁をしている。あまりにもその答弁の仕方が傲慢無礼である。人権を無視しておるやり方であります。当事者は私でありますので、私は、私自身に関する問題でありまするから、努めてこの問題にはさわらない。冷静なる第三者をして国税庁に警告を与えておったのでありますけれども、平岡君の質問に対して無礼きわまる答弁をしておりますから、やむを得ずして、私は、第二回目の三月の十七日に、当事者である私自身がこの委員会に立って質問をいたしました。国税当局のものの考え方を私は質問をいたしました。ところが、それに対しては満足なる回答は一つも与えられていない。本質的にみずからの行動を反省する言葉は一つもない。こういうことであります。だから、私は、やむを得ずして、また今回第三回目の質問をすることを余儀なくされたのであります。特に第二回目におきましては、政党は異にいたしておりますけれども、国税庁が第三債務者——縁もゆかりもない善良なる第三者に対して債権差し押えの通知書をよこして、精神的に自殺を強要するがごとき暴力をあえてしながらも、精神的な暴力をあえてしながらも、それを反省せざるところの国税当局のあり方に対して、政党を異にするけれども、同じく大蔵委員であられる、今そこにおられる細田さんが、聞きかね見かねて、やはり当局に質問をせられた。質問をしながら反省を促された。けれども、それに対する答弁それ自体も何ら反省の色が出ていない。何ら反省の意向が出ていない。なおかつ自分たちの行動がやはり正しいものという観点に立って、思い上がった答弁をしておる。だから、私は、やむを得ずして、また本日第三回目の質問をするわけであります。この第二回目の政府当局の答弁を根拠にして、私は第三回目の質問を繰り返していきたいと思います。  第一に、第二回目の答弁について私がお伺いをしておかなければならぬことは、第二回目の質問のときに、私は、国税当局に対して、大蔵当局に対して、資料の提出を要求いたしておりまするが、今日に至るまでまだその資料の提出がない。もはや二十日有余の時日を経過しておるにもかかわらず、ない。第一番目には、第三債務者に対して国税庁または各税務署が一年間に発行した債権差し押えの通知が一体何件あるか、全国の最近の数字を資料として出してもらいたいということを、私は要求をいたしました。私自身が要求いたしました。これは三月十七日の速記録にある。速記録の第十一ページの四段目の中に私は要求をしておる。すなわち、十一ページに明らかに記載もされておるにもかかわらず、今日に至ってもナシのつぶてである。何らの返答がない。そういうようなことでは、国会議員なんかの質問などというものは、そのときだけいいかげんに答弁をして、あとはほおかむりをしておれば、じんぜん日を過ごすことによって忘れちまうだろう、こういう無礼な気持が一つのその資料要求の提出の中に現われているじゃないか。それからいま一つの資料の要求は、これはわが党の平岡委員がこういうことを言っておる。午前中の質疑に関連する必要資料といたしまして、政府は、長岡税務署による滞納者の差し押えに関し、第三債務者に対する債権差し押えの令書を出した事例を、その内容に触れて、三十四年度のものを月別に提出をされたい、こういう明確な要求をしておるにもかかわらず、これに対しては何も明確じゃない。こういうずさんなる通知書を一つ平岡君のところへ出してきた。でありまするから、平岡忠次郎委員——こういうずさんな——なるほど月別ではあるけれども、何が何やらわからない。こういう月別の、だれが見てもわからないようなごまかしの資料を出しておる。これが一体国会議員に第三債務者の差し押えの内容を懇切丁寧に理解せしめるための資料ですか。これが、人民の代表として行政のあり方を正しく監督していこうという国会議員に事実の真相を知らしめて、そして自分たちのあり方を正しくやっていこうという公平なる資料の出し方ですか。こういうようなインチキな出し方だから、平岡君を通じて、これはだめだ、一体第三債務者の名前はだれだ、債権者の名前はだれだ、もっと具体的に数字と名前をここにあげて一つ説明しなさいと、平岡君は、正式な委員会ではありませんけれども、ちゃんと要求をしておる。その要求に対してナシのつぶてではありませんか。これらの数字もあげない。名前もあげない。あげないばかりではありません。これも一案だろう。じんぜん日を費やしていたら、そのうちにごまかせるだろう。小林さんというやつはおっちょこちょいだから、大きな声を出して演説しておるけれども、黙っていたらそのうちに忘れてしまうだろう。こういうような考え方で、資料をごまかす気であったに違いない。私はそうとらざるを得ない。  最も不当なることは、きょうの朝なんだ。朝この理事会を開いて、本日の午後から、小林進委員が、この大蔵委員会において、例の長岡の税務署のいわゆる第三債務者差し押えの問題に対して質問をすると言っておいたら——勝原君、いるか。勝原というのは君かい。君は一体平岡君に何と言った。きょうの小林の質問は後日に延ばしてもらいたいと、君言ったそうだな。国会の大蔵委員会理事会できめたことを、君は偉いのだから、国税庁の徴収部長の権利をもってすれば、大蔵委員会理事会の決定くらいは自由にひっくり返すことができる。君はそういう思い上がった気持があるから言ったのだろう。それが大蔵官僚の本質だろう。言わないか。そういうことを言っておる大蔵官僚ともなれば、天下の秀才の人が集まるという。大蔵官僚ともなれば、大蔵委員会の決定や大蔵委員会理事会の決定くらいは、君の一存によってどうにもなると、こう考えたのだろう。こう考えだから、その理事会の決定をやめにして、後日に延ばしてもらいたいと、こう言ったのだろう。こういうような思い上がったことで、こういう思い上がった心境で、われわれの要求した資料の提出もしなければ、ごまかしもしておる。なぜ一体その二つの資料を出さないのか。なぜ一体大蔵委員会理事会を延期せしめるような思い上がった行動に出たのか。まず一つそこら辺から所見を承っていきたい。
  64. 奧村又十郎

    ○奧村(又)政府委員 お答えいたします。  当委員会において、ただいま小林委員から御指摘の通り、数回にわたりまして、第三者に対する滞納の差し押え徴収のやり方について厳重な注意をいただいたことについては、まことに遺憾なことでありまして、これについては、その後国税庁部内でいろいろ内部的に検討いたしまして、まずかった点は今後改めて参りたいと考えまして、いろいろそのための方策は現にとっております。先般のお尋ねにもありましたように、単に小林委員だけがこういうことにあったんじゃない。全国的にこういうことにあわれた方が相当たくさんあるかもわからぬ。大ていの人は泣き寝入りしておられる。それを小林委員として取り上げて御注意を与えられたということについては、税務当局として今後はよほど注意をしなければならぬ、かように思います。そこで検討してみましたところ、国税徴収法の規定においては、当局としては遺憾な点はないと思います。第三者に対する差し押えというのは、一応は通知を出さなければ効果がありませんので、この規定はやむを得ぬと思うのであります。ただ、そのやり方については、差し押え通知書を、小林委員に差し上げましたようなあの通知書一片をぽっと突きつけるというようなやり方では、非常に誤解を招く。特に女や子供の全然税法のわからぬようなお方でありますと、あすにも家財道具が押えられるというような印象を持たれますと、これは非常に弊害がございますので、その具体的なやり方については、当局におきましてもまことに不行き届きな点があったと存じますので、これはこの前にも当委員会で陳謝申し上げた次第であります。  そこで、今後どうするかということにつきましては、差し押えの通知書を出すときに、税務官吏がその通知書を持っていく前後に、じきじき第三者のところにお伺いして、こういう事情でありますから、一応法律の建前上お知らせをいたしますが、もしこれに対して債務がない、あるいは異議があるという場合には、どうぞ税務署の方に申し出ていただきたい、こういうふうに行き届いたことをやっておけば誤解がなかったのだということで、今後この差し押え通知書につきましては追って書きを入れまして、一応法律の建前から通知書を差し上げますが、異議があればどうぞ税務署に申し出ていただきたい、こういうように必ず書き添えて誤解のないようにいたす、こういうようにいたすつもりであります。  なお、小林委員に対する差し押え通知書の日興建設の関係の分につきましては、これは小林委員から異議の申し出もありますし、また実際調べてみましていろいろ問題が多いので、債権として国がちょうだいするということについては、これは差し控えなければいかぬということで、これは取り消しておる次第でございます。鈴木建友に対する件につきましては、訴訟係属中でありますので、これは問題ではありますが、これにつきましても、今申し上げたように、これはこういうわけで困る、取り消せということであれば、異議の申し立てを出していただいて、そして実際を調べて取り消すべきであれば取り消す、こういうようにいたしたいと思うのであります。さようなことでありますので、以上申し上げたようなことで今後善処いたしたいと思いますから、あしからず御了承を賜わりたいと思います。  なお、この資料につきましては、お手元に差し上げましたような資料を差し上げたので、小林委員といたしましては、なおこの上にもっと具体的に滞納者の名前及び債務者の名前を全部書き出せというような御趣旨の御要求かと思いますが、それは相手方の御事情もあるので、全部委員会に出すというのもいかがなものかと思いますので、一応差し上げた資料によって、国のやったことが不当であるかどうかというふうな御検討については十分な資料ではなかろうか、かように思って提出した次第でありますので、御了承願いたいと思う次第でございます。
  65. 小林進

    小林(進)委員 私は質問をいたしておるのでありまするから、政務次官一つ願わくば私の質問の要旨だけお答え願いたいと思います。私もこういうこんがらかった問題は、順序を追うて質問を進めていきますから、そう何もかも一気にしゃべっては質問に対する回答になりませんから、それはどうもちょうだいいたしかねる。  第一番目に言われたように、これは私小林進一人だけじゃないだろう。全国に多くの連中が泣いておるだろう。今政府当局、政務次官がみずから言われる通りなんです。多くの人が泣いている。だから、その多くの泣いている人を私は代弁して話しているのであって、私個人だけに限られた特定の問題ならば、私は何もこんなことで御質問は申し上げない。その点だけはあなたの御答弁の中で一番生きている。それはその通りだ。あとはだめです。現実に私のところを見て下さい。私が国会で質問しただけでこの通りだ。知らない者から、こうやって私は泣かされているという投書が、具体的に弁護士の名前までつけて私のところに何通となくきている。みんな一つやってくれ、やってくれと言ってきている。それくらい国税当局というものは国家権力をかさにしていじめている。その問題だから、私は今順序を追うて御質問をしておるのでありまして、私になぜ一体資料を出せないかという問題をさえお答え願えばよろしい。何で一体具体的に債権者の名前が言えない。債務者の名前が言えない。出たのはわずか差し押えの物件が三十七件、差し押え債権の口数が五十件、何でこれだけのものが出ないのです。何万件、何千万件とあるならば出せないという事情があるけれども、三十七件や五十件の口数がなぜ出せない。顧みてやましいところがあるから出せないとわれわれは考えざるを得ない。あるいは、国民の代表たる国会議員なんか信用できない、だから出せないというのか。国家の秘密や重要な仕事で、信頼できるのは役人だけなんだ、国会議員なんというものは信用ができないから、そういう資料は出せないというのか。今の資料では私はちょうだいいたしかねる。出せないなら出せないで、何らかの意思表示があってよろしい。われわれが督促するまでほおかむりしておいて、そうして今日になれば政務次官をしてそういう答弁をせしめる。いんぎん無礼なる答弁をせしめる。了承できません。出しなさい。こんなものが出せない理由がありますか。  それから、私はもっと言うけれども、一体朝の理事会で、きょう午後からこの国税徴収の問題について質問するということに対して、延期してくれと言った理由は何だい。その理由を述べたまえ。
  66. 勝原啓

    ○勝原説明員 ただいま理事会の決定したものを延期してくれということを要求してきたのは大へんけしからぬというおしかりでございますが、実は国税庁の方に、きょうの午後委員会が開かれる、長岡税務署の件を議題としまして委員会が開かれるという話が出ておるという段階で連絡が参りました。それで、長官にその話をしましたところ、長官はきょう午前中も午後も別な会がございまして非常に出にくいから、できれば延期してもらいたいのだということを、未決の段階において申された。従いまして、政務次官、長官、それから徴収部長、三人そろって必ず出るようにという御連絡でございましたので、先ほど申し上げましたような長官の御事情もございまして、でき得ればお延ばしいただけないかということを申しに参ったわけでございますが、すでにそのときには決定しておる。長官が時間がやむを得なければ少しおくれてもかまわない、そういうことで了承するから、きょうやるとおっしゃいましたので、そのまま引き下がってきたわけでございまして、決して今仰せられましたような大それた考えで申しに参ったわけではございませんので、御了承願います。
  67. 小林進

    小林(進)委員 大体そういう答弁はこうであろうということは、聞かない先からわかっていた。予想通りです。理事会の決定をひっくり返しにきたのじゃない、まだ理事会が固まっていないと思ったからというのは、どの役人も言う答弁ですよ。責任をとらず、うまく逃げようとする小細工のきいた官僚のだれもが言う答弁です。あなたがそう答弁されることを私は想像をしておりました。しかし、そんなことで、あなたたちが責任ある行動、正しい税金の徴収方法をとっていると思う者はだれもいない。そういう小手先の言葉で人をごまかしておるその陰に、権力を行使して弱い者をいじめている。その本質はちっとも変わりがないのです。それより、申しわけなかったとあやまったらどうです。国会の決定をいんぎん無礼に自由に変更できるなどという思い上がった行動はやめて、申しわけございませんとあやまる方が何ぼ利口かわからない。そういう答弁はいただきかねるから、私は了承いたしません。  次に、まだ国税庁長官はおいでにならぬようだから、政務次官や何やら部長なりに言ってもらいたいのだけれども、この前、差し押え通知書はどういう性格のものかということの弁明として、こういうことを言っている。「あくまでも御了解いただきたいのは、債権の存在を前提としまして、そうしてその債務がある場合に、第三債務者は債権者に払わない、こういう通知でございますので、それによって直ちに第三債務者の他の財産に対して国が押えるというふうなことではございません」。いいですか。後段はいいが、国税庁の判こを押して、こうやって出した通知書が、滞納者たる債権者に支払って下さいますなというだけの通知でございますという答弁をしているが、それで一体間違いないかどうか。
  68. 勝原啓

    ○勝原説明員 債権差し押えの通知書の性格としては、今おっしゃった通りでございます。
  69. 小林進

    小林(進)委員 おっしゃる通りと言うならば、「下記のとおり滞納金を徴収するため、債権を差し押えますから、履行期限までに渋谷税務署あて支払って下さい。」とは何だ。履行期限が昭和三十五年三月十五日になっている。これは一体何だ。ただ滞納者たる債権者に第三債務者が債権を払ってくれるなというだけの通知と、何月何日まで支払えという通知とは、天と地の違いじゃないですか。
  70. 勝原啓

    ○勝原説明員 言葉が足りず大へん失礼いたしました。後段との意味関係におきまして申し上げたわけでございますが、差し押えたのであるから、本来の債権者に払わないで税務署に払ってもらいたいという、いわば税務署としての履行の請求の意思を表示しておるものでございます。ただ申し上げたかった点は、一応履行の請求はいたしますが、それによって直ちに履行がない場合には、強権力を発動して強権的にその内容を実施することにつながるものではないという意味で、性格としてそういうものであると申し上げたわけでございます。
  71. 小林進

    小林(進)委員 一々こっちをしろうと扱いにして、小学生の子供を扱うような答弁を人から問われるまでしておいて、税金を滞納している債権者にだけ金を払わぬでくれればよろしいんだというようなぬけぬけした答弁をしておるが、それじゃ何月何日まで払えと書いてあるじゃないかと言えば、言い落としました。言葉が足りなかった。何回言葉が足りないという答弁をしたか。何回申しわけありませんという答弁をしている。そういう失敬なものの言い方をしてはいけないと私は言うのだ。「下記のとおり滞納金を徴収するため、債権を差し押えますから、履行期限までに渋谷税務署あて支払って下さい。この通知を受けた後、債権者に対して支払っても、その支払は無効です。」そして履行期限は三月十五日。この通知は一体何です。債権がなければ執行力も強制力もありませんから、なければどうでもよろしゅうございますという、そういう感覚がどこに出ています。この通知のどこに出ています。そういうことを言っておきながら、この通知書には、こういう通知をもらったら、一片の抗弁も理由も言いわけも許さぬという、官公署の絶対的な圧力がこの紙の中にあるじゃないか。それ以外に何がある。あなた方は何を言おうとしているのだ。これを受けて善良なる第三者が、これは単なる税務署の親切な通知書だ、いやなら払わぬでもよろしいのだ、債権がなければ返事せぬでもよろしいのだ、抗弁してもよろしいのだ、理由があれば理由を言ってもよろしいのだという感じがどこにある。しかも、先ほどの話によれば、国税の徴収法等の法律に慣熟をしない婦女子の方々は、なるほど税務署の真意を誤ってふるえ上がるでございましょうという、いみじくもずうずうしい答弁をした。国税法だとか税の徴収法なんというものを知らない者は婦女子だけではありませんよ。婦女子とは何事です。徴収法を知らないのは婦女子であるとは何事です。婦女子ばかりではないですよ。皆さん知っていますか。ここで知っている人いますか。私も知りませんよ。婦女子に籍口して、一片の常識のある者ならばこういう通知をもらっても驚かぬ、こういうような通知をもらって驚くのは無知無能な婦女子だけだという、そういう答弁がどこにありますか。それを一つ答えなさい。
  72. 奧村又十郎

    ○奧村(又)政府委員 この差し押え通知書の趣旨としては、先ほど勝原部長からお答えいたしましたように、一応通知書のあて先の方に、滞納の方へ払わずにその債務は一つ国の方へお支払いがいただきたい、もし債務がない、あるいはその他異議があれば、どうぞどしどし申し出ていただきたいという趣旨のものでありますが、その従来出しておった書類は、そういう非常に誤解を招きやすい書類でありますから、これは国の方の非常な不親切な手落ちでありますから、今後それに追って書きをつけ加えまして、どうぞ異議があったらどしどし申し出ていただきたいというふうに親切な処置をいたします。その点についてはまことにまずかったので、再三陳謝を申し上げておるのです。まあ一つここらでごかんべんいただいて……。
  73. 小林進

    小林(進)委員 こういう差し押え通知書の性格論争というのは重要な問題ですから、それは私は奥村さんとは昭和二十四年私が初めて当選してきて以来、あなたはその前には社会党におられた。その後自民党へいかれた関係で、もとをただせば同門でありますから、何もあなたに対して私は恨みを持っているわけではないし、しゃにむに言うわけではないが、私情を捨ててそう簡単に妥協するわけにはいかない。ともかく令書については、この前は、細田委員はこういう質問をされている。民事では執行力のある正本と同じような効力を持っている。裁判手続を経ずして国家権力を発動せしめる、そういうふうな効力のあるものであるから、これに対しては最も取り扱いを慎重にかまえなければならないという質問に対して、勝原君は何と答えている。日興建設株式会社にその債務をお払いになってはいけません、その中で税金に当たる部分は税務署の方に納めてもらいたい、こういうことを御通知申し上げただけにとどまるのでございます、こういう答弁をしている。これが御通知申し上げただけにとどまりますという感じを一体人民大衆に与える通知ですか。こういうような答弁をしていることは、実に人を食っている。人をだましている。婦女子のみならず、この国会議員の小林進、この小林進なんというのも、こういう人たちと同じように無知無能だとおっしゃるかもしれないが、人民の中にはわれわれ程度の能力しか持たない方が九割九分を占めておる。こういうものを含めて、これをおどかして心胆を寒からしめておる。あれを考え、これを考え、日夜安らかに眠ることもできない問題に対して、ただ御親切に御通知申し上げただけでございますと言うのです。こういう一ぺんの答弁で事を片づけられて、それでたまりますか。これは、この通知書のように納めていただきたい、私と第三債務者と国家のあなた方とが対等の立場に立って、国民の自由意思を尊重しながら、払うのもよし、払わざるもよし、一体そういうようななまはんかの強制力のない、執行力のない、一ぺんのラブレターみたいな手紙や通知にすぎないのか。私はこの通知についてもう少し御説明を願いたいと思います。
  74. 勝原啓

    ○勝原説明員 通知したにすぎないというのですが、法律的に持っております効力を説明する言葉として、そういうことを申し上げたわけでありますが、それと実際に第三者のところに参ります通知の文言とが、そのように受け取れない、すぐ押えなければ滞納処分が執行されるというふうに受け取られる危険のある文書である、こういうことを前回におきましてもるる承ったわけでございまして、その点につきましては、われわれの考えがきわめて一方的であって、実際に受け取られる方の真情を十分推しはかっていないということを重々反省いたしまして、そういうことのないように、これは必要以上に大へんな書類だということで、法律に暗い人がおるとすれば、それはわれわれの法律の解釈が一方的であるというような考えが起こらないように、この通知書の性質の説明を、文言をつけることによって、そういう事態が起こらないようにしましょうということで、われわれ十分考えまして、すでに具体的な文案も考えておるわけでございます。  それでは、そういう法律的な効力がなければ、ただ一ぺんの、何というかラブレターという表現でございましたが、そういう性質のものかとおっしゃいますが、それはただ単に何らの効力のないものを申し上げているわけではもちろんないわけでございまして、税務署としては、本来の債権者でなく、税務署の方に払ってもらいたいという気持は表明しておるわけであります。それに、この前から申し上げておりますことは、そういうものを差し上げて、それに対して、第三者が、おれはそういう債務を払う必要がないという場合においても、税務署は、一たん言った以上は、次々に強制的な効力が出て、次の段階にいけるかといったら、そこまではいかないということをこの前は申し上げておるわけであります。
  75. 小林進

    小林(進)委員 ともかく国家が法律行為をする場合には、私のいわゆる浅い能力をもってしても、一つはやはり法律に基づいて権力をまともに出して命令の形で出てくるか、あるいは国家が一法人、一私人、一個人の形に立って、契約自由の原則に立って、いわゆる国民である個人の契約の形で出てくるか、この二つしかないのです。私はそう考えておる。ところで、今あなた方が言われたことは、個人に対して契約自由の原則に立って、一つお前の方の債権を国の方に払ってくれませんか、御賛成願えませんか、そういう立場の通知ではないと思う。やはり国家権力の上に立っていわゆる支払いを強制しておる、権力服従の関係にある通知じゃないかと思う。だから、国家の気持、税務署の気持を単に表わしたにすぎないとか、そういう俗語をあなたが巧みに言おうと、法律解釈からいえばその二つの解釈のどちらに属しているか、それを言ってもらえばいい。権力、命令の形ではないか。法律行為として論じた場合に一体ほかに何がありますか。
  76. 勝原啓

    ○勝原説明員 広い税務署のやる行為の中で滞納処分の一環として行なわれる行為であるということを言えば、きわめて広い意味の権力の発動だ。これは言えると思います。しかし、さっきから繰り返して申し上げておりますように、この通知を出したことによって、その出した通知の内容をすぐさま強制的に行なわせる、こういう意味でのいわゆる強制力は持っていない、こういうことでございます。
  77. 小林進

    小林(進)委員 狭い意味でも権力の発動であることは間違いない。しかし、この問題は後日に論ずることにしますが、とにかく三月の五日、三月の十六日に何々税務署に税金を納めなさいと言っておきながら、そういうあいまいな言葉で人がごまかせるかどうか。その答弁は了承できない。権力の発動であることは間違いない。契約書ではない。そういうようなことを言うから、私どはなおさら了承できなくなってしまう。  第三番目にいきましょう。次に、私は、この問題は特に重点を置いて一つ答弁を願わなければならぬと思うが、第三債務者の存在をいかに確認したかという問題です。これは細田委員もこの前に特に言葉を強くして追及せられたけれども、あなたの方はそんなことは決して重要な要素ではないというふうな答弁をせられておる。これは私にはどうしても了承できない。この第三債務者の問題に対してこういうことを言っておる。第三債務者に対して滞納者が持っておる財産を差し押えるためには法律に基づいてやったのだ、それは徴収法第四十七条以下である、また、債権の差し押えについては、特にまた別な一款が設けられており、第六十二条に、債権の差し押えは第三債務者に通知する、債権差し押え通知書の送達によって行なうとこう書いてあるから、それに基づいて行なった、こういう答弁をされた。それから、これは行が改まるんだが、それに続いてこういうことを言っている。これについては「第三債務者について、その債権が真正に存在しておるかどうかを確かめた後にこれを行なうというふうに、法律上明瞭に要求してはございません。」いいですか。しかし、一方的に滞納者の言うことを聞いて行動したのではない云々、こういう程度の答弁をされている。だから、この前半の答弁を聞いてみると、第三債務者の債権が存在しているかどうかなどというようなことを確かめる必要は法律は要求していないのだから、これは、国税庁が、あるいは事務の担当者が、どうも滞納者の一方的な言葉を聞きながら、これはどうも真実性があるらしい、こう思えば、また第三債務者をいかようにも差し押さえ通知書を出してそれを押さえることができるという答弁なんだ。いま一回これは間違いないかどうか答弁して下さい。
  78. 勝原啓

    ○勝原説明員 第三債務者の負っておる債務、逆に言いますれば、この場合滞納者でありますが、滞納者が持っておる第三債務者に対する債権を差し押さえるのに、その第三債務者のところについて、その第三債務者にそういう債務を負っておるかどうかということを聞いた上でなければ、その債権は差し押さえてはいけない、こういうことを要求していないということを申し上げたわけでございます。その限りにおきましては、前会の御答弁趣旨と今日においても特に変わったことはございません。
  79. 小林進

    小林(進)委員 いま一回言って下さい。
  80. 勝原啓

    ○勝原説明員 問題は、第三債務者に対する差し押さえの通知を出す前に、その第三債務者がその債務を負っておるかどうかということをその人について確かめた上でなければ、そういう通知は出せない、こういうふうにはなっておりませんということを申し上げたわけでございます。
  81. 小林進

    小林(進)委員 そういうあなたの答弁の速記録はどこにありますか。どこにそんなことが書いてありますか。ごまかしちゃいけません。私は、ここへ来てあなたに質問をするからには、この前のあなたの速記録を五回も六回も読み直している。そういう答弁が三月十七日の速記録のどこにあるか。一つ見て下さい。
  82. 奧村又十郎

    ○奧村(又)政府委員 今徴収部長の方で速記録を検討しておりますが、私もそのときずっとその席におりまして聞いておりましたが、今お話しのように、第三者そのものに対して債務があるかどうかということを確かめてからでなければ差し押さえ通知書が出せないというふうにはなっておりませんということは、はっきり言っております。しかし、それでは不親切な仕事になるんじゃないかということで、議論の焦点になったのです。きょうも、小林委員からきょう午後ここで御質問があるというので、実は政府部内でその点をまた確かめていろいろ検討したのです。ところが、公務員のする仕事ですから、何か文書を持っていって話をすべきもので、お宅の方にこういう債務があるように滞納者の方の帳簿に載っておるんだから、一応法律に基づいて通知を出すから、もしあなたの方にそういう債務があったら、滞納者へ払うかわりに国の方へ払って下さい、そういう意味の文書でありますから、それは出さねばなるまい、出してもいいだろう、ただ出し方に追って書きをつけて、すぐ差し押さえされる、競売されるというような、誤まった、過度の誤解をされないように追って書きをつけて、異議があれば申し出てもらいたい、こういう親切な処置をいたします、こういうことで御了承を得たい、かようなことでありますから、一つ重めて御了承願いたいと思います。
  83. 小林進

    小林(進)委員 速記録のどこにありますか。読んで下さい。
  84. 勝原啓

    ○勝原説明員 先ほどお読みになりました点でありますが、「債権を差し押える場合に、第三債務者についてその債権が真正に存在しておるかどうかを確かめた後にこれを行なうというふうに、法律上明瞭に要求してはございません。」このことは、先ほど私が申し上げた意味で、第三債務者について確かめなければいかぬということにはなっていない、こういうことを申し上げたつもりでございます。
  85. 小林進

    小林(進)委員 君の答弁、同じ日本語だって日本語がいかようにも解釈の仕方があるということだ。第三債務者に確かめなければいけないということがどこに書いてあるか。書いてないじゃないか。君の言うことはどこだと言うのです。そんなことどこにある。
  86. 勝原啓

    ○勝原説明員 ここにございます。「第三債務者について」……。
  87. 小林進

    小林(進)委員 「第三債務者について、その債権が真正に存在しておるかどうかを確かめた後にこれを行なうというふうに、法律上明瞭に要求してはございません。」おれがさっき読んだのと同じじゃないか。第三債務者のところまで行って事前にこれの存在を調べるというふうに、どうしてこの文章は解釈できるのだ。君は、さっきの答弁に、第三債務者のうちまで行って債権が存在しているかどうかを調べた後にそういう通知書を出すというようなことは要求していないという答弁をしましたと言うけれども、この文章はそうじゃないじゃないか。事前に第三債務者のところへ行ってと、そうこの意味がとれますか。先ほどの答弁とこの文章と全然意味が違うよ。君、答弁したまえ。
  88. 勝原啓

    ○勝原説明員 私としては同じことを申し上げておるつもりでございますが、第三債務者が、私はそういう債務は負っておらぬと言うかどうかを、第三債務者のところに行って、つまり第三債務者について調べなければいけないということは法律上要求してない、こういうことを申し上げておるわけであります。
  89. 小林進

    小林(進)委員 この文章はそうじゃないよ。「その債権が真正に存在しておるかどうかを確かめた後にこれを行なうというふうに、法律上明瞭に要求してはございません。」ということは、第三債務者に直接確かめなくって、その確かめるということは、あるかないかということを確かめるということは、あらゆる方法でやれということをこの法律は要求してはいないと、われわれは解釈せざるを得ない。この文章は、第三債務者に対して直接確かめるという言葉がない以上は、その確かめるということは、何も直接ではなしに、あらゆる方法で正確にその債務があるかどうかを調べるということを法律は要求してはいないと解釈するのが、この文章に対するすなおな解釈の仕方です。いま一度読んでみたまえ。第三債務者について直接その債権を確かめることを法律は要求していると書いてないじゃないか。ただ第三債務者に債権があるかないかを確かめることを要求してないというだけの話で、債権が確かにあるかどうかを確かめる方法は、何も第三債務者に直接聞くだけじゃない。あらゆる方法があるのです。そのあらゆる方法をみな言っているものとわれわれは解釈する以外にない。
  90. 勝原啓

    ○勝原説明員 第三債務者にいきなり断わりなしに差し押え通知書をよこすことは、ひどくはないかということが前から問題になっていたと思います。そこで、それに対する説明といたしまして、そこに書いてありますことでつまりこの前私が申し上げたことは、第三債務者について調査をしなければ、あるいは本人の承諾なり、確かにそういう債務を負っているということがなければ、次の段階にかかってはいけない、そういうことは要求していない。従いまして、その文章にありますポイントは「第三債務者について」というところにあるわけでございます。
  91. 小林進

    小林(進)委員 そういうような言葉は、われわれの方のすなおな小学校からの文章の読み方では出てこない。君がそう言うなら、そんなことで議論したってしようがない。しかし了承するわけにいかぬ。また役人一流の小手先の答弁で私をごまかそうとしているとしか説明できない。了承できませんよ。  ただ、しかし、この問題について当時呼んだ人権擁護局は見えていますか。——まだ来てなければあとでいいが、あのとき来た法制局第三部長はこういうことを言っている。この中には、純法律解釈の立場から、「民事訴訟法の五百九十七条では「差押命令ハ予メ第三債務者及ヒ債務者ノ審訊ヲ経スシテ之ヲ発ス」で、審訊を経ないで発しまして、第六百九条に至りまして第三債務者の陳述の規定がございまして、そこに至って初めて債務の存否について陳述するようになっております。国税徴収法の場合はそのような規定がございませんから、いかに判断するかということになりますが、その場合は、国という租税権者は、今の設例でございますと、Bというものに対して、国民に対する租税債権を確保するために、Bの有するあらゆる財産を調査するわけでございますが、その場合に、BがCに対する債権を持っておるということは、あらゆる資料から慎重に判断しなければならぬ。単にBを調べて、それによってCに対する債権があるということを聞いただけで取り立てるということは、もちろん行政の執行として不当だと思います。」こういうことを言っている。ところが、私の場合に対しては、一方的な、しかも全然存在をしない。しかも悪質の滞納者、その一方的なことだけを聞いて、何らの調査もしないで、いわゆる差し押え通知書をよこした。そういう行為は、純解釈によれば不当行為でございます。君たちは不当行為でないと言うけれども、ここに証拠をあげてもらわなくちゃいけない。その証拠は一体どこであげるか。第三債務者に対する通知を発することが国税徴収法の趣旨にかなうものであると考えますか。国税徴収法の差し押えの通則にも、必要な財産以外は差し押えてはならないとか、第三者の権利を侵害するようなことのないように注意しなければならないと書いてある。あなた方が一体第三者の私の権利を侵害をしているかどうか、私に対して不当な行為をしたかどうか、問題はこれなんです。この具体的な事例を示してもらいたい。その日興建設あるいは鈴木何がしが私に債権を持っているというこの事実を、第三者の権利を侵害してはいけない、不当な行為をしてはいけないという、この徴収法の立法趣旨に従って、どれだけ懇切丁寧に調査した上で、この通知をお出しになったか。その具体的な事例、どういう方法で調べたか、お示しを願いたい。
  92. 勝原啓

    ○勝原説明員 やはり債権を差し押えることでございますから、その債権を持っておるという者、この者について調べたと思います。従いまして、この場合で言えば、日興建設の帳簿なり、それまで税の滞税の期間も相当あるわけでございますから、その間の滞納を片づける意味でいろいろ督促をした結果の滞納者の発言なり、それからそれの裏づけになる帳簿上の金の出し入れ、そういうものを調べた上で、これはそういう受け入れをしておる、そしてその代金もまだ入ってないということを考えまして、通知を差し上げた、こういうふうに考えております。
  93. 小林進

    小林(進)委員 ばか者。そういう問題がけしからぬ。国家の強制力のある、執行吏にもひとしいような通知を出すような場合に、一方的な滞納者の帳簿や資料だけを調べて、それに基づいてそういう無辜の善良なる第三者に対してそういう差し押え通知書を出すことが、権利の乱用であり、それが不当であるということ、これこそこの前の委員会においても細田委員があれくらい口をきわめて君たちに忠告した問題だ。この問題に対して、今日ーカ月有余の歳月を経過しておる間に、これを反省しながら、自分らの方で長岡の税務署に行って、これだけの通知書を出すならばどれだけ慎重にかまえたかという実績だけでも資料を持ってこの委員会に臨んだものと判断しておるにもかかわらず、何にも調査もしていなければ、実績も調べていない。前書と同じように、やはり滞納者の一方的な帳簿や何かを調べただけで、善良なる第三者である私に対して差し押え通知書を出したのはあたりまえだという答弁の仕方、問題はそれなんだ。国税庁長官、あなたはおくれて来られたけれども、今の部長の答弁はそれでいいと思いますか。第三債務者の債権を差し押えるときに、滞納者の帳簿やそういうものだけを調べることによって第三債務者に差し押え通知書を出すことが正しい行為であるとあなたは判断されるかどうか。答弁しなさい。
  94. 原純夫

    ○原政府委員 私はそれはそれでやらしていただきたいと思います。というのは、第三債務者はその債権を差し押えられた場合どういう立場に立つかといいますと、あなたはこの滞納者に対して借りがあるということでありまするが、そのお金を滞納者に払うのはちょっと待って下さい、借りがおありになるのだったら、滞納者は国の租税を納めておりませんから、その分は国の方にお回し願いたいという通知であります。ですから、その通知をする前に、あなたは借金がありますかということは必須の要件とは私は思いません。かつ、民事訴訟法の条文にもありますように、その場合の滞納者と第三債務者との間のいろいろな作為というようなことを考えましたり、また実際にこれは租税債権によって差し押える場合だけでなく、民事上の差し押えの場合においても、第三債務者について調べるということが相当な手数にもなるというようなこともあるかと思います。主としては、冒頭に申しましたように、差し押えの通知を差し上げるのは、第三債務者に対して、あなたは滞納者にこれだけの借金があるというふうなことを言っておりますが、その分を滞納者に払わずに国に払っていただきたい、こういうことを言っているわけですから、あらかじめ第三債務者について調べるということはしないでやらしていただいてよろしいのではないかというふうに思うわけであります。もちろんできる限りの調べはするというのは当然のことでありましょうけれども、第三債務者について調べなさいというまでのところはしないでやらしていただきたいと考えます。
  95. 小林進

    小林(進)委員 政務次官答弁一つお願いしたい。
  96. 奧村又十郎

    ○奧村(又)政府委員 ただいまの国税庁長官の御答弁の通りでありますが、ただ差し押え通知書の文章、これには誤解を招く点がある。つまり、もしあなたが滞納者に債務をお持ちでしたら、お払いになる場合は今度は国の方へ払って下さい、もし異議があれば申し出て下さい、そういう趣旨の通知書でありますから、そういうことは御了解いただかなければ税務としてはやっていけませんので、その点御理解願いたい。
  97. 小林進

    小林(進)委員 三月八日から三月十七日、今日の大蔵委員会における問題の焦点はこれ一つです。この問題に対して、国税庁当局は、あくまでもいわゆる悪質なる滞納者の第三債務を抑えるためには迅速をとうとばねばならぬから、確信がついたらやっぱりそれの了解なしにやるのが正当な行為であるということを固執せられておるわけでしょう。それを途中で是正をしたような、改めたような、ごまかしたような答弁をするから、また問題が振り出しに返る。これは了承できない。もしこんなことが許されるならば、悪質な債務の滞納者は、だれでもが、おれはあいつに債権を持っている、おれはあいつに金を貸してある、あいつにおれは物を貸してあるということで、常に架空の善良なる第三者、そういう者の債権を仕立てて、自分の滞納を押しつけることができるじゃないか。そうすれば、私自身税務署にきちんと税金を払っておりながら、はからざりきわけのわからぬやつに第三債務があるということで、架空のものを押しつけられて、いついかなる場合でも、こういう冷酷なA書を押しつけられて、家族、親戚がふるえ上がらなければならぬ。これは何月何日までに税金を納めろという命令書だ。長官は、異議があるならやらないでもよろしい、意見があれば言いなさいと言うが、そういうことがどこに書いてあるか。そういうやさしい感情を持つ者が国民の中に何人いるか。税法を知らない婦女子は驚くと言ったけれども、税法を知らない婦女女とは一体何事か。おれも税法は知らないよ。国民の九割九分が——この紙をもらって平気でいられる者が何人いるかということです。しかし、国民が苦しもうとも私どもはこの通知をやる行為が正しいのだ、その一点だけは了承できない。君は、やるからにはあらん限りの調査——調査というか慎重にかまえて事をやると言っている。今、私はその内容の点を論争しているにもかかわらず、君は振り出しに戻って、一方的に滞納者の帳簿や何か調べて、もはや切り捨てごめんだ、勝手に通知できるということを回答した。いま一ぺんそれを言えるか。滞納者の帳簿や何かを調べてこれは債権があるのだと思ったら、自由自在に善良なる第三者の債務を差し押えることが依然として可能である、正当な行為であるということが言えるか。いま一回それを繰り返してみたまえ。
  98. 原純夫

    ○原政府委員 滞納者の債権を差し押えるということは、先ほど申しましたように、その第三債務者に対して、あなたはこれこれの債務を滞納者に対して負っておられることでもありますので、従って、その債務も弁済期にきておりますから、一つ滞納者が滞納しておって困るから、滞納者には払わずに国に払っていただきたいということでありますから、私は第三債務者に対して権利の侵害になるということではないと思います。もちろん、その場合に債務がなかったというような場合には、失礼をいたしましたという気持はありますけれども、そのゆえに、あらかじめ第三債務者について調べんならぬというまでのことをおっしゃられると、非常に私どもとしてはつらいわけです。それ以上に、そういうことにいたしますと、第三債務者は必ずしも滞納者の近くにおるというわけではございませんから、たとえば東京の滞納者について滞納者の持っている債権を差し押えをしようというときに、その債務者はおそらく全国に散らばっておるでございましょう。それについて一々調べるということになりますと、手数も非常にたくさんかかります。もちろん手数は本質的な問題ではありませんが、この第三債務者の権利が侵害されるというようなことになりまするならば、それを防ぐ手段はあらゆる手だてを講じてやらなければいけませんけれども、先ほど申したように、あなたは滞納者にこれだけの債務があるそうであるが、あるならば、それは債権者に払うかわりに国に払ってくれという趣旨のものであるのです。それが、表現が十分そこまでいっておらぬという点については、御指摘について十分われわれも反省せねばならぬと思います。従いまして、その反省に基づいて善処したいという気持でこのところ努力いたしておりまするが、第三債務者について調べろという点は、今申しましたような理由で、どうかお考え直しをいただきたいというふうに考えるわけでございます。
  99. 小林進

    小林(進)委員 もう一回長官に聞くが、こういう通知を受けて、君が言うように第三債務があったらどうか。本人の債権者に支払わないで国家の方に一つお支払い下さい、これを見てだれが一体そういう感じを受けますか。この中にいる連中は、聞いていて、あなたのような答弁をこの通知から受けた者は一人もいない。与党である諸君がみな驚いている。三月十七日の速記録を見たか。細田義安委員の質問を聞きましたか。与党の議員にしてなおかつおそれおののいている。私の家内はこれを見てふるえ上がりました。私もふるえ上がった。数日間、私はこの証書のために全精力を傾けて狂奔した。みな速記録に書いてある。しかし、そういうことはやはり一向差しつかえないというのか。これほど、あなた方は一銭の貸し借りもない善良な者をミミズのようにおどかしても、税の行政上仕方がないというのか。もっと言ってやろうか。ことに私のいるところの日興建設は悪徳の滞納をしておる滞納者だ。同時に私の選挙区である。今、私の選挙区の長岡市において、他の政党の政治運動を強力にやっている。そして、次期候補者を擁立して、利自身の落選に狂奔しておる。こういう者が、第三債務者を活用して、私に架空の債権債務を作って、小林進代議士というやつは私に対してこういう債権がある人だ、これはいかぬから差し押えてくれと、税務署と結託して——あえて結託とまでも言わぬけれども、君たちは、この悪徳滞納者の帳面を見て、これはやれるということで私を差し押えにきた。そうしたら、これは日興建設のおやじの思うつぼだ。ほら見ろ、小林進というやつは国会議員でありながらああやって債権を差し押えられた。家は税務署に差し押えられた、税金を滞納しておるような者は国民の代表として風上にも置けないやつだ、こういう宣伝をやられたらどうなりますか。あなた方は、そういうことも税務行政の建前上やむを得ないから、ともかくこれでいくよりほかないと言っておる。大蔵政務次官、わかりますか。私は架空の例を言っておるのじゃない。私の今当面しておる問題を言っておる。そういう問題を打ち消すために、私は一体どういう努力をしなければならぬか。急拠国会を捨てて、選挙区に帰って、弁護士を集めて、あらゆる私の貧しい財布をはたきながらも、この差し押え通知書のデマゴーグと敵の謀略を粉砕するために心魂を傾けて苦労しなければならぬということを、三月十七日の国会の速記録の中に載せておる。にもかかわらず、あなた方は、お前が政治生命を失おうと、しかも、私がそいつに一文でも貸し借りがあれば別だが、一銭の貸借関係もない、つき合いもない、縁もゆかりもない人たちから、そういうような架空の債権を設定されて苦しんでいるものを、あなた方はそれを救済しようということは一つ考えない。それはあたりまえだ、悪徳滞納者であろうとどうあろうと、やはりその滞納者の言い分に従って第三債務者の債務を差し押えるということはいいというのか。そういうことは人の基本人権にからまる重大問題ではないか。あなた方の答弁の中には、善良な第三者の権利というものを、なたや凶器をもって人殺しはしないけれども、そういう凶器をもって、そういうような税務署のはからざりき権力の乱用によって、一人の人間の政治生命や命を奪うほどの権利の侵害をやっているじゃないか。不当行為をやっているじゃないか。それを私は言っておる。それを正当な行為だという理屈が了承できない。いま一回、政務次官、御答弁を願いたい。
  100. 奧村又十郎

    ○奧村(又)政府委員 御指摘の通り、債権差し押え通知書の書類の文章には不備な点があって、誤解を生ずる場合が多いから、特に、また、小林委員に対しましての差し押え通知書につきましては、日興建設における債権の確認においても不十分であったと思いますので、そういうことで非常に御迷惑をかけたことは申しわけないということで、当委員会で再三陳謝申し上げております。また関信越の国税局の徴収部長をしてお宅の方へ陳謝に上がらせたのであります。どうぞその点は御了承願いたい。  なお、今後かようなことのないように、債権差し押え通知書の書式を変えまして、今後全国のあらゆる関係者の方に第三者の債権差し押えにこういう誤解を生じて御迷惑をかけないように書類を一つ改めまして、今後かようなことにいたしません。これが小林委員の御注意に対する当局の心からなる反省の態度でありますから、どうぞ一つ御了承願いたいと思います。
  101. 小林進

    小林(進)委員 政務次官のお気持はよくわかりまするけれども、私はまだまだそういう言葉だけで了承するわけには参りません。こういうのは国民全般の基本人権に関する重大問題でありますから、どうしてもいま二、三点質問さしていただきまして、具体的にやはり一つ責任をとっていただかなければ、また私ども徹底するまで調査もやらしてもらわなければ、私は了承できない。ですから、もう少し質問させていただきます。  長官が参りましたために、また振り出しに戻るようになりましたけれども、私は前の速記に基づいていま一つ質問いたします。この前のときにはこういうことを言っているんです。これは勝原君が言っているのです。「われわれの方が第三債務者に対して通知を出すということは、税務署としてもある程度確信があって、実質があるということがわからなければできないわけであります。全然誤りがない、絶無とは申し上げかねますけれども、実際問題としまして、ただ何でもかんでもやたらに強権を発動してのうのうとしておるということではないことを、御了承願いたいと思います。」こういうことを言っている。これに近い答弁は今も国税庁長官が言われたんだから、具体的な問題について、私と日興建設との関係において、でたらめをやったのじゃない、何か調査をされて、やはり日興建設が小林進に対する債権はあるという何らかの調査をされて、実証をつかまえたからおやりになったのだろうが、その調査の方法と、具体的にどういうことで私にこういう通知を出すまでの調査をやられたか、その具体的なことを一つここでお話し願いたいと思います。
  102. 勝原啓

    ○勝原説明員 大体税務署段階で具体的にどれだけ調査をしたかを説明しろ、こういうお言葉だと思いますが、この具体的の場合に、調査の詳細というものを事こまかに明らかにしておりませんけれども、全体といたしまして私の方が知り得たことは、要するに日興建設の帳簿と、それまでのいろいろの折衝によりまして、請負代金が何回にもわたって入ってきておる数字というものによりまして、なお残金がこれだけある。従いまして、入ってきているものに対する受取書というようなものも調べております。従って、これだけ残っておるということについて税務署としての一応の確信を持った、そういうことでございます。
  103. 小林進

    小林(進)委員 今帳簿を調べた、あるいは受取書を調べた——だんだん話が具体化して参りました。これは現実から「やはりいろいろな帳簿を調べ、債権の証書があれば、その証書について確かめ、いろいろな点を調べました上で、確実性があるというところから判断いたしまして行動を起こすわけでございまして、」こういうことを答弁しておられるので、その答弁によってやられたのだろうと思う。その後一体債権を調べられたり、帳簿を調べられたりして証書がありましたか。三十万円の債権がありましたか。ごらんなさい。ここに日興建設の受け取りがみんなある。この手紙は日興建設からもらった昭和三十二年の十月一日にきたものだ。日興建設株式会社と書いてある。その中には精算書というものも入っておる。この昭和三十二年の精算書の中でも、差引残高が十四万七千七百十五円ありました。私は三十三年の二月に全部納めて、まだ私の方が二万円ばかり過超支払いであるということを申し上げた。これはその前の三十二年の通知書。ところが、この私のもらっている中で証書が二、三枚抜けておる。こういうような証書を私が持っておるのにもかかわらず、あなた方は、三十五年で債権もあった、受け取りもあったと言うのだから、そういうのは一体どういう調査をしたのでありますか。一体どういう帳簿の調べをしておられるのか。私は擬装するわけにはいかない。これは手紙も入っておる。何もかも入っておる。私の方であらゆる資料を集めて作り上げた私どもの支払いの調書です。合計いたしまして私の方が作り出した証書です。これは日興建設。証拠です。全部調べてみてくれ。幸いにして私どもの方ではそれがあった。三年も四年も前の支払いではあるけれども、幸いにして私どもは支払書を持っておった。持っていなかったら私はついに皆さん方の謀略——私はあえて謀略と言いたい。謀略があるならば、私は政治生命を奪われたかもしれない。あなた方にやられたかもしれない。日興建設にやられたかもしれない。そういうようなことはへっちゃらで、あなた方は税金を取るためにやっているのだ。なおかつ反省せず、あくまでもこういうような不当な行為をやらせてくれなどというような言語道断なことを言っておる。それは私は、先ほど政務次官が言われたように、こういうことは訂正する、こういうような残酷非道な通知の仕方は直しましょう。——それは私はちょうだいしましょう。それは将来とも直してもらわなければならぬ。これは一つの是正の方法として直してもらわなければならないけれども、こういう善良な第三者が痛めつけられるというようなことは、法律の上においてもどこかで修正をするか、いわゆる税務当局の運営の上において改めてもらわなければ、私はどうしても了承できない。みんなが泣いておる。刑罰の中においても——われわれの一番おそろしい刑法の中においても、われわれは、一人の無辜の善人を無実の罪に泣かせぬためには、九十九人の犯人を逃がしてもよろしい、九十九人を逃がしても一人の善良な無辜の人を罪に陥れてはいけないというのが、これは刑法の立法の趣旨なんです。そんなことは言わなくても、あなた方は秀才なんだからわかっておるだろう。民主主義政治というものはそういうものです。どんな悪人であろうと、どんな罪深い人であろうと、無実の人ならば殺してはいけないというのが民主主義政治の原則じゃないですか。あなた方は、その債権取り立てのためには、善良な第三者をどんなに痛めつけてでもやはり債権取り立ては実行する。そうでしょう。間違いないでしょう。債権の存在がどうであろうとも、債権取り立てのために、善良な第三者にはどんなに迷惑をかけても、その行為をやらなければならないということを繰り返しておる。民主主義の原則からいってどうですか。いま一度答弁してごらんなさい。
  104. 原純夫

    ○原政府委員 先ほど来申し上げましたように、第三債務者に対して、あなたはこの人に対して幾ら幾ら債務がおありになるそうでありますが、そうだったらば、その分は滞納者に払わずに国にお払い下さいという通知を差し上げるんだったらば、私は決してそれは権利の侵害というようなことではないと思うのであります。そこはぜひ御了承いただきたいと思います。
  105. 小林進

    小林(進)委員 ばかなことを言うなと言うのだ。そういうような俗語をもって人をごまかしてはいけないのです。先ほどから繰り返しているように、国家の法律行為には二種類しかない。権力を背景にして、国家権力を背景にして権力を強制するか、そういう権力服従の関係に出る法律行為か、いま一つは、やはり擬法人あるいは擬人の立場に立っての個人と対等の立場で契約、いわゆる契約自由の原則に基づいて、本人の意思による諾否のゆえをもってするところの契約の形でいくか、二つしかない。それ以外に、債権があるなら納めて下さいという契約でもなければ、権力服従の関係でもない、そういうような第三者の行為というものは、国家の法律行為にならないと言うのだ。さっき私は言ったばかりだ。そういった契約か、納めてくれるもよし、納めぬでもよろしい、国との話し合いの上で承諾してくれるかという、そういう契約関係に出ている書類じゃないと私は言うのです。いわゆる権力を背景にした命令書じゃありませんか。言葉はどうあろうとも、令書じゃないかと言うのです。あなたは何を言うのです。そういうようなことではだめだ。  時間になりましたから、きょうはこれで終わりますけれども、きょうの答弁の中で、政務次官がこういうような文書を訂正して、第三債務者が自由に判断できる、異議の申し立てもできる、いやなら税務署へ行かぬでもいい、支払い期日に支払わぬでもよろしいという余裕のある式に切りかえるならばよろしい。第三債務者——一銭の債務も存在していないのです。縁もゆかりもないそういうものに対してこういう令書を出して、何月何日までにこの税金を納めろという行為は、どうしても第三者に対する権利の侵害である。不当行為である。私はどうしても了承できない。私はそう解釈する。しかも、第三者に対して、債務の存在に対して、税務署というものが一体どう慎重にかまえたか。あなたは、やはり火のないところに煙は立たないのであるから、調べるとおっしゃったけれども、長岡の税務署が一体具体的にどういうふうに調べたかということに対しての答弁一つもなかったのでありますから、その点も私はお伺いしなければならぬのでありますけれども、この際私は第三者の権利の侵害であるというこの点は、あらためてやはり人権擁護局、あるいは法制局等に質問申し上げたい。今の国税庁の行為はどうしても第三者への権利の侵害であると、私は解釈せざるを得ない。不当なる行動である、不当なる行為である、私はそう解釈しております。この問題をもう一回私はやらしてもらわなければならぬ。  それから、委員長に対して特に私はお願いするのでありますけれども委員長は、この前、三月十七日の私の演説の途中において、私が前の北島国税庁長官に対して了承できないと言ったときに、速記を中止いたしまして、そこに呼ばれて、自後の措置一つ委員長にまかしてもらいたい、こういうことを要求されて、私はおまかせいたしました。自後どういうふうな御処置をおとりになりましたか、私はそれを伺っておきたいのでありますけれども、その前に私は一つ希望を述べておきたい。第一番には、何といってもこういうことは——私に対して、一枚じゃないのです。二枚も出している。書類はさっぱりよこさないのでありますから、これは、大蔵委員会において、火急の時間に、地方税務署のこういう不当な残酷な税務行政を調査する、こういう意味において、大蔵委員会が長岡の税務署を調査するということを一つ御決定願えないものか。これは委員長一存でできないでしょうから、理事会を開いてきめなければならぬと思いますけれども委員長のところにおいて、どうしても今国会開会中に早期に現地において長岡の税務署を調査する。一体ほんとうにこの日興建設なるものと長岡の税務署に、そういう政治的な陰謀とか結託があったかなかったか。この事実を明らかにしなければならぬ。私に対する第三債務の存在をどこまで慎重に考えたかということです。まだまだこの陰には、地元に行きますと、いろいろな風評が飛んでおります。そんなことをここで言うと、だんだん私自身の人物が小さくなりますから言いませんけれども、そういうことを一切明らかにして、国家の税務官吏というものが税務行政を行なう場合に、国民の信頼にこたえるような正しい行動でやっているか。あるいは地方ボスと結託して不正なる税務行政をやっているのかどうか。この場合の論争の中では、真実をつかむわけには参りません。またこの問題は私だけの問題でない。先ほどから政務次官が言われているように、私の陰には何万、何十万の無辜の善良なる者が、こういう不当な税務行政のために泣かされているかわからぬのでありますから、私どもはこの際これを明らかにえぐり出して、後顧の憂いをなくさなければなりませんので、どうしてもこの点、現地調査をやっていただかなければならぬということ。  それから、第二の希望といたしましては、人権擁護局長と法政局長がお見えになりませんので残念でありますが、幸いにして第三者の権利侵害という結論が出るか出ないか知りませんけれども、これは重大な問題であります。ようやく日本も民主政治化しまして、警察も民主化しました。しかし、この前冒頭に申し上げましたように、税務署が今一番人民に対して不当な圧力を加えております。一方の、税金をのがれたいという人民の側にも悪いところがありましょうけれども、しかし、民主政治下において一番封建的であり、一番思い上がって、しかもまだ天皇の官吏たる風習を残して、いやな空気のあるのが大蔵官僚です。特に国税官僚です。これは、奥村さん、あなたも政務次官としてお考え願いたい。あなたなんか、悪いけれども、役人に動かされておりますよ。大蔵官僚ほどいんぎん無礼にして、しかも心中封建的であり、これほど人民の権利を侵害しているものはない。あなたはこれを大蔵大臣お話しになっていないでしょう。そのこと自体が第一けしからぬ。こういう問題を行政庁の長官たる大蔵大臣にまだ話をしないで、まずまずでごまかしてやろうと思っても、そうはいかない。それからして間違っている。そういうことでありまして、私は、この問題に対しては、あくまでも不当行為として、民法七百九条で損害賠償です。えらい金を使いました。今でもやっている。そういう損害賠償の訴訟を起こしたいけれども、私個人にはその資力がない。能力もないので、これは国会と政府関係でありますけれども、将来の禍根を断つ意味において、大蔵委員長は訴訟の責任者になって不当行為であるかどうか、訴訟を一つ提起してもらいたい。これを大蔵委員長にお願いしたい。長岡税務署を早急に現地調査をするということ、その結果によって証人を呼んでやりましょう。大体資力のない者はこれで泣いていくのです。さっきの答弁、どうですか。この前国税庁長官は、民法には不当行為、不法行為に対して救済の方法があります、損害賠償の訴訟をやる方法がありますから、法律に基づいて国税庁がいやなことをやったらやればよろしい、こういう答弁をしております。答弁はそうですが、しかし実際に人民にその力がありますか。日本の資本主義国家において、弁護士を雇って三年も五年も政府と争うという資力のある者は一万人に一人か二万人に一人しかない。それでみな泣いておる。泣いておることをいいことにして、人をいじめておる。たまたま小林進がひっかかったから、ここでいんぎん無礼な慎重な顔をしているが、出ていったらああっとあくびをして、きょうは悪日だった、今晩一杯飲もうかで終わってしまう。そういうことでは将来の禍根を断つわけにいきません。私の敬愛する委員長でございますから、どうか、委員長の手において、この問題を不当行為として、同僚議員になりかわって不当行為の訴訟を起こすという、この二点を希望として申し上げます。  本日の質問は終わります。まだやります。執拗に私はやりますが、本日はこれで終わります。
  106. 植木庚子郎

    ○植木委員長 ただいまの小林委員の希望、申し出につきましては理事会に諮りまして、いずれ何分のお答えを申し上げます。  次会は来たる十七日午前十時三十分より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時九分散会