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1960-04-19 第34回国会 衆議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月十九日(火曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 足立 篤郎君 理事 坊  秀男君    理事 山下 春江君 理事 山中 貞則君    理事 佐藤觀次郎君 理事 平岡忠次郎君       荒木萬壽夫君    鴨田 宗一君       黒金 泰美君    竹下  登君       濱田 幸雄君    細田 義安君       毛利 松平君    石野 久男君       石村 英雄君    久保田鶴松君       栗林 三郎君    堀  昌雄君       大貫 大八君    松尾トシ子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         国税庁長官   原  純夫君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         厚生事務官         (保険局長)  太宰 博邦君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    塩崎  潤君         専  門  員 拔井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生保険特別会計法等の一部を改正する法律案  (内閣提出第一〇一号)  厚生保険特別会計法等の一部を改正する法律案  (内閣提出、第三十一回国会閣法第一六七号)  税制に関する件      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    植木委員長 これより会議を開きます。  税制に関する件について調査を進めます。  質疑通告があります。これを許します。佐藤觀次郎君。
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 一度大臣にお伺いしたいと思いましたが、実は私学の問題であります。私立大学経営が非常に困難になっておりまして、財源がないために月謝が非常に高く上がる。そういう観点から、私学国立学校が非常に差が出てきておるわけです。そういう点で、アメリカでもやっておりますが、学校法人に対しての寄付金贈与税あるいは法人税免税にしたらどうかという意見もあるわけなんですが、この問題について大臣はどういう所見を持っておられるのか、まずお尋ねしたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 学校法人に対する寄付金についてどう考えるかということですが、学校経営といいますか、学校法人経営のむずかしいことはよく私ども承知しておりますし、また、その使命の重要性等にかんがみまして、具体的な寄付行為がありました場合に、具体的な問題をいかに取り扱うかということで、ただいま審議をいたしております。そういう意味では学校法人に対する寄付金などは、先例等から見まして、多くの場合に特例を認めて免除するという処置をとって参っております。しかし、これを制度化いたしまして、学校法人に対する寄付だからというだけで全部免税する措置をとるという、そこまでいくことは少し行き過ぎじゃないか。税の問題でございますから、税の問題としては公平の原則というものが大きな柱でありますので、類似の諸団体等もございますから、なかなか一がいにこれを全面的に認めるというわけにはいかないでしょう。具体的問題として私どもが十分それを慎重に内容を検討した上で、学校経営にこれが積極的に役立つ、たとえば校舎の増築であるとか、あるいは所要の財産取得であるとかいうようなものについての場合だと、寄付金に対する免除をする、こういう考え方をいたしておるわけであります。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 きょうは村山君が来ておりませんが、教育に対する税をかける——おそらく膨大なものになると思いますけれども、そういう観点から、何らかの形で、ある限度までは許すというような方法はできないものか。あるいは、こういう点はいけないけれども、これだけは何とか税を免除するような方法がなければ、私学は結局国の助成金をもらわなければならぬ。私学は昨年は台風のために愛知、岐阜、三重の方面の学校相当いたんで因ったのですけれども、今のような状態を続けていけば、非常に不正な学校ができる。現に、名前はあげませんけれども、私の愛知県にも大学が今そういう問題を中心にして非常に乱れておるわけです。こういう観点から、同じ教育を、片方は県立であるということによって非常に月謝が安い、片方私立であるがために非常に高いというような不均衡なことがだんだん出てきて、私学は御承知のように当然月謝をどんどん上げるというような観点から非常に問題が起きておるのですが、こういう点を、一つ税制審議会あるいは大臣考えで、これだけは免税してやろうというような考え方が出ないものであるかどうか。これは大臣政治的観点に立ってやっていただく問題でありまして、これは私学がもう非常に要望しておりますけれども、なかなか実現できないということで、非常に悩んでおる問題です。特に文部省を通じての助成金というようなものは一定の限度がありまして、今各地にある国立大学ですら十分な設備ができていないのに、私学文部省に金を頼むということは、私は片手落ちだと思います関係上、こういう観点から一つ私学助成をしていただく。アメリカでは現に学校経営の三分の一くらいは寄付金でまかなっておるということを聞いておりますが、何らかの形で大蔵大臣がこういうようなことについてもう少し前進していただく考えがないかどうかということをお尋ねしたいと思います。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今言われましたような点を考えて、必要なものは免税措置を講ずるということをいたしておるわけであります。ただ、私が申し上げたいのは、原則として金額幾らまでは免税をするとか、あるいは学校法人に対する寄付であるから全部免除だとか、こういうことを何か考えることはどうも不適当じゃないかというように実は思うのであります。今御指摘になりましたように、学校法人経営はなかなかむずかしい。またいろいろ批判のあることだと思います。ただいま完全に学校経営営利化するというようなものもなきにしもあらずだし、そういうような場合のものに対する寄付金扱い方が全部免税措置になるということは、私は他の法人等に対する課税との間に均衡を失することになるということで、それをおそれておるわけであります。けれども、本来の教育法人として営利ではほとんど考えられないようなもの、これは金額の多寡によらず、むしろ金額の多つい場合に免税措置が必要になってくる、こういうように実は考えますので、この金額の大きいものがやはり免税の対象にならなければならない。そう考えて参りますと、具体的の事例についてよく内容を検討して、しかる上で、今の公益に合致しておる、こういうものは免税措置をとるということが、むしろ実情に合い、その方が望ましいのではないか、かように考えておるということを、先ほど来から申し上げておるわけであります。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私学の中の一部には営利を目的としたかのような経営方針をやっておるところもありますので、私はそれが全部完全だということは申しません。けれども大蔵大臣も、そういう観点でなくて、教育のために金をある点まで国が補助をするとか、当然何らかの形でやっていかれるような、内容充実するような方法を講じられていただくように希望しておきます。それから、去る十六日に大蔵省から発表されました三十四年度の自然増収が九百億あるといわれております。こういうような観点からいきますと、三十五年度はもっと莫大な自然増収があるのではないかと考えられますが、来年度は一体減税を行なわないのかどうか、この点について大臣所見を承っておきたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 経済が順調に成長して参りますならば、当然自然増収があるということであります。そこで、予算を編成いたします場合には歳入見積もり基礎になりますものは企画庁中心にしての三十五年の経済成長率、これを基礎にして実は財政収入を立てるわけであります。しかも、この成長率も、ただ単に租税函数をどういうふうに使うという簡単なものでなしに、成長率、さらに過去の実績、これを加味し、冬業種別に積み重ねをいたしまして、税の収入見積もりを立てるわけであります。ところが、そのときに狂いを生じますの、成長率自身が、企画庁考えて参りました成長率、これは十分慎重には扱ったつもりでございますが、経済発展過程においては、それを上回るというような事態も起こるわけであります。ことに、法人関係収益いかん、あるいは一般の民間の給与状況がよくなれば、公務員その他全般の給与も上がってくる、こういうことで個人所得も非常にふえてくる。これは私ども過去の経験から確信のある数字を基礎にはいたしますものの、やはり相当の違いは時によって生ずるようであります。問題は、ふえる方であればその後の歳出計画を立てる場合に差しつかえございませんが、もしもふえないで、それが経済の伸びなりその他の関係が当初に想定したよりも下回るというような事態が起こると、これは大へん状態が起こるわけだと思います。ところで、過去の税収の見通しに対して決算の状況はどんなになっているか。今までのところを調べてみますと、昨年一年は、補正後の収入見積もり予算に対しては、わずかではありますが、決算したら減収になっておる。赤字である。しかし、過去においてその一回だけでございまして、それまではいつも補正に対比いたしましても相当額増収を見ておる、こういうことになっております。この三十五年度の財政収入については、相当支出等増加もいたしておりますし、収入相当思い切って見積もっておるのでございますから、三十二年、三年時分のような非常な変化があろうとは考えませんが、ぜひとも今日の経済情勢を持続いたしまして、当初予定した成長率以上のものをここへ招来するように、政府としては努力して参るつもりであります。そういうようなことをいたして、それが効果を上げるといたしますれば、歳入の面ではさらにふえることも考えられるという結果になると思います。ところで、減税の問題でありますが、減税の問題は、国民所得に対する国民負担、その適正な率は一体幾らかということが、しばしば大まかに言われるのであります。大体かつては、経済成長から見まして、十年後には一八%に下げるとかいうことを申したこともございます。しかし、最近のところから見まして、まず少なくとも二〇%程度にはすべきじゃないか。三十五年などはこれが二〇・三くらいになっておると思いますが、これを二〇%くらいにとどめる、あるいはできれば二〇%以下に抑える、こういうような気持で見れば、ここに減税という問を取り上げ得るのじゃないか。国民大衆から見ましても、減税については強い要望がございますから、私どもも、政策遂行の面から減税は、何としても取り上げたい、かように実は考えておるわけであります。しかし、一面支出の面についての要望も非常に強いものがあります。だから、減税財源なり支出財源というものをいかにあんばいしていくかということ、これを十分考えまして、そして国民の最も要望しておるもの、また緊急なる歳出、こういうものを勘案して、三十六年度の予算編成に当たりたいという考え方でおりますが、問題はただいま三十五年度に入ったばかりであります。その際に三十五年度の歳入見積もりを予定したり、あるいは歳出計画を予定することは、本来が無理でございます。従いまして、具体的なお話はこの機会に申し上げかねますが、できるだけ強い要望があると考えられる減税の問題、しかも国民所得に対して負担率相当高くなってきておる現状等から見ますと、三十六年度の際には私は減税が第一に取り上げられる政策ではないか。支出増の面の問題も幾つかあると思いますが、まず減税だという感じが私個人としてはいたしております。しかし、いずれにいたしましても、今日与党との間においてもこういう点について十分話し合いをいたしておるわけではございませんから、党の政策なりがそこにあるとはっきり申すわけではございません。私の端的な希望を御披露した次第でございます。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 同僚委員質疑もありますから、これを最後にしておきますが、やはり国民所得に対する比率の一八%、二〇%というのは、これは大蔵省の都合のいい考えでありまして、国民からすれば一五%にしてもらうとかいうような希望があるわけで、税金が楽になったという状態ではないと思うのです。ことに昨年は伊勢湾台風関係減税が見送られたわけでございますが、何といっても中小企業一般サラリーマン等税金は決して楽じゃないので、そういう点は十分一つ検討して、苛斂誅求のないような方法をとっていただきたいということを希望しておきます。もう一点は、かねて所得倍増論ということが問題になりまして、これはいつの間にか雲散霧消したといわれております。今日でも所得倍増論という考え方があるのかないのか、この点を一つ最後にお伺いしたいと思います。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 所得倍増論が雲散霧消したと言われるのは大へんな違いで、今あまり論議がやかましくない、こういう意味でもし雲散霧消と言われるならば、私どもは、所得倍増論国民の間にも徹底し、もうあらためて議論しなくなった、かように実は考えております。そういう抽象論は別として、政府並びに党においては、すでに三十五年度予算編成の際に、この所得倍増計画なり貿易・為替の自由化というものを二つ柱にいたしまして、三十五年度予算を編成したわけでございます。また、政府におきましても、できるだけ早い機会所得倍増計画を樹立する、こういうことで、ただいま企画庁中心にしていろいろ審議しているという段階でございます。御了承をいただきたいと思います。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これは、大臣に、もっと具体的に、所得倍増論の問題について、また最近の国際関係のことにつきましても、いろいろお伺いしたいと思います。きょうは時間が切ってありますので、同僚議員に譲りますが、一つ抽象論でなくて、所得倍増が自然的にくるのではなくて、政府はどういう方針でやるということを、国民に納得のいくような法案を打ち出していただきたいということを希望いたしまして、私の質疑を終わります。
  12. 石村英雄

    石村委員 ごく簡単に関連質疑をしたいと思います。ただいまの大蔵大臣の御答弁を聞いておりますと、三十六年度では減税をしたいというお考えのようですが、もちろんまだはっきりきまったことではない。個人的なお考えのようですが、それでけっこうですが、減税をかりになさるとすれば、どういう点についての減税大蔵大臣としてお考えになっておられるか、これを明らかにしていただきたい。
  13. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 石村委員も御承知だと思いますが、ただいま国会の御審議をいただきまして税制審議会を設置しております。この税制審議会を設置いたしました場合に、特にその論議が行なわれておりますものは、一般的な問題としては、国民負担はこれで適正なりやいなやという問題から出発をいたしまして、特に私どもがこの際に取り上げてほしいと申しましたことは、企業課税あり方というものがこれでよろしいかという問題が一つ。さらに、間接税と直接税との関係が将来の税制あり方としてこれでよろしいかという問題、あるいは国と地方との税源の分配において工夫の余地はないか、大体この三つの柱をお示しいたしておるわけでございます。もちろん、その基礎におきましては、国民負担がこれでいいのかどうかという問題があるわけであります。ところで、今日まで税制審議会でそれぞれ審議を遂げておりまして、ある程度結論めいたものが出かけておるものもございます。そういう意味で、この三十五年度予算編成の際に、少なくとも耐用年数の問題くらい取り上げることはできないだろうかということで、いろいろ工夫をいたしたのでありますが、減税をいたします場合に、第一に耐用年数を取り上げるということ、しかもその減税の額というものが一体いかになるか、逆に歳出の面で非常に強い要望が出ておる際だから、これはもう少し税制審議会結論を得た上で実施するのが適当だろうということで、三十五年は残念ながら取り上げないで、これを延期しておるという状況でございます。問題は、政府考え方もございますが、幸いにしてただいま税制審議会にかけておりますので、この結論を待って、にらみ合わせて取り上げていきたい、かように思っております。また、一般の御要望等も、断片的ではございますが、委員会等を通じて伺っておりますので、そういうものも実施の際には十分検討を加えていく、実はこういう考え方でございます。
  14. 石村英雄

    石村委員 減税一般国民要望でもありますし、また減税は将来の国民生活に非常にいい点もあると思うのです。しかし、これは一般論として申し上げるのですが、今日の日本社会保障というものは全くお話にならぬ程度だと思うのです。このことから、減税するかしないか、どの程度するか、どの点の減税をするかというときに、やはり社会保障充実という面は必ず忘れることができないと思う。社会保障充実ということになると、勢い財政支出を必要とする。二十八年以降でもずいぶん減税いたしました。所得税だけをとってもずいぶんの減税で、二十八年当時の所得税法そのままで現在やったら、どのくらい取れるかわれわれにはわかりませんが、いろいろ聞いてみると、何も責任のある見積もりというものは出てきませんが、人によると、五千億以上は浮くのじゃないかという話もあるわけであります。現在の貧弱な社会保障ということだけ取り上げると、それなら二十八年当時の所得税法そのままにやったら、五千億の金によってすばらしい社会保障が実現するのじゃないかという意見も生まれてくると思う。私は、ただ機械的に、必ずそうなるのだ、それがいいのだと言っているわけではありませんが、やはり政府当局として、経済成長に伴って税収がふえたら、税金というものは使い道さえよければ場合によってはいいわけですから、ただ機械的に減税だ、減税だということにあまりに走り過ぎて、社会保障の拡充が現在のような貧弱なままでいいとは考えられないと思うのです。この点も大蔵省としてはやはり慎重にお考えになるべきじゃないかと思う。それぞれの立場で、事業をしていらっしゃる方は、企業課税なんかうんと減らしてもらうに越したことはない、収入の多い人も、もちろん所得税をうんと減らしてもらうに越したことはないということはあると思うのですが、所得税をかけるほどの所得もない貧弱な所得階層がそのまま放置されておるということは、今日の日本における重大な問題だと思う。だから、自然増収があるからただ減税をしますという機械的な議論でなしに、それをそのままにして、一方社会保障の方に回した方がいいということも、あわせて考えていただきたいということを要望したいと思います。大蔵大臣のお考えはいかがでありますか。
  15. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど必要な歳出ということを申しましたが、歳出についての増加要望も非常に強いのでありまして、そういう点には、ただいま御指摘になりました社会保障充実ということももちろんあると思いますし、あるいはその他の問題、たとえば米の問題にいたしましても、消費者価格生産者価格の間に相当の差がございますが、この差損はどうして補てんしているかといえば、申すまでもなく国民負担においてこれを支出しておるわけであります。あるいは各種産業に対する補助助成の資金というものも、これは必要なものとして税において負担されておる。そういう意味から考えますと、国民が出した税金がどういう形で国民に還元されるか。一部は減税の形においても返ってくるだろう。これは非常にはっきりした形であります。しかし、ただいま御指摘になりますような社会保障充実ということによって、これが国民に返っていく。それが全部の階層に均霑するような政策であるという場合においては、それは最も必要な施策だといわれるに違いない。また、農村等に対するあるいは二重価格の差損なり、あるいは各種産業に対する補助なりも、そういう意味では御理解いただけると思います。だから、この税の負担はいろいろの見方があると思いますが、高額所得の者の減税がまず考えられるということでなしに、税を納めておる人たち課税の  一番基礎をもっと上げること、こういうことがしばしば要望されますが、そういうような問題もあるわけでございますから、具体的に減税をいかにするかという減税方法については、そういう意味でいわゆる高額所得だけが利益を受けるとか、あるいは特殊法人だけが利益を受けるということでなしに、やはり国民全体が受けるような工夫をしなければならない。それは減税やり方の問題だと思います。ところで、私は、その減税やり方の問題の前に、一体国民から見まして必要なる国の支出というものはあるが、やはり自分たちが納めて社会保障が非常にうまくいっている、それなら満足されるということもありますが、それにしても、どうも月給袋を開いたときに、一万円のうちからとにかく二割近いものが控除された、こういうようなことだと、ずいぶん重い感じを持つに違いない。しかし、五万円のうちから二割とられたからといって、一万円はなかなか大きいと思っても、残っている金額相当あれば国民としては一応了承されるとか、こういうようなこともあるのじゃないか。だから率あるいは金額だけではいけないので、残る総所得が一体どうなるのか、しかも出した金がほんとうに自分たち生活に直結するような方法国民に返されておるかどうかというとろに、税金についての感じが生まれてくるのじゃないか。けさも新聞を読んでみると、某文士の家が差し押えを受けたという記事が出ておる。これなどは、自分のところの道がとにかく悪い、おれが幾ら税金を出してもこの道をちっともよくしてくれておらぬじゃないか、こういうような話がその理由に書いてある。私は、税金を納めても、その税金国民に何らかの方法でその生活を潤すような方法で返れば、おそらく国民からも納付されて、税が高いとか安いとか言われないだろう、こういうように実は思うわけでございます。だから、そういう意味で、一番簡単なわかりいい方法は、何といっても減税そのものなんだし、それから支出の面になれば、全体に均霑するような社会保障充実などは、必要なる経費としてまず第一に取り上げられる問題だろう、こういうところに政治の実体があるのじゃないか、実はかように思うわけでございます。だから、私が申し上げておるのも、その自然増収があるから直ちに必要なる支出を押えて減税に回わす、かように申しておるわけではありませんで、やはり減税は必要だと思う。同町にまた、必要なる支出というものがあるから、それと十分にらみ合わせて考えて参りますということを実は申し上げておりますので、石村さんの御指摘と私の考えと違わないだろう、かように私は考えております。      ————◇—————
  16. 植木庚子郎

    植木委員長 次に、厚生保険特別会計法等の一部を改正する法律案(第三十一回国会閣法第一六七号)、厚生保険特別会計法等の一部を改正する法律案内閣提出第一〇一号)の両法律案を一括して議題といたします。     —————————————
  17. 植木庚子郎

    植木委員長 ただいま議題といたしました両法律案中、第三十一回国会より継続審査いたしております厚生保険特別会計法等の一部を改正する法律案につきましては、第三十一回国会におきまして提案理由の説明を聴取いたしておりますので、今回は省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 植木庚子郎

    植木委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。質疑通告があります。これを許します。堀昌雄君。この際堀委員にちょっと申し上げますが、大臣は十二時から参議院の委員会への出席の要求があるようでございます。つきましては、なるべくその時間中に質問を御終結になるようにお願いします。
  19. 堀昌雄

    堀委員 ただいま提案をされております厚生保険特別会計法等の一部を改正する法律案でありますが、過去の会議録をずっと調べてみますと、数年にわたりまして提案をされておりますけれども、衆議院におきましては、かつて井堀議員がこれについて御質問になった以外には、ほとんど質問をされないままに今日に至っておるようであります。そこで、私実はこれを拝見して、どうも合点のいかないところが少しございますので、本日はこの点について少しお伺いをいたしたいと思います。まず、この提案の問題が一つございますが、これはちょっとこれだけでは問題が理解しにくいと思いますので、少しその前に、現在一般会計から厚生保険特別会計に繰り入れておられるものがこれ以外にもあると思います。形はどういうことになっておりますかわかりませんが、本年度予算では健康勘定に五億円、それから船員保険勘定に幾らか出ておるようでありますが、そういう出方をしております側の問題と、それからこの延期になる問題との関連なり、その経過を少し大蔵省の当局の方で御説明をいただきたいと思います。
  20. 石原周夫

    ○石原政府委員 ただいまお尋ねの、一般会計から厚生保険の特別会計に入れておりまする関係は、健康勘定におきまして五億円、それから船員勘定におきまして一億円あるわけでございますが、ただいまお尋ねのございました、現在提案をせられておりまする健康勘定の歳入及び船員保険の給付費の財源に充てまするための繰入金を一年ずつ延ばすという、この点の関係でございまするが、これは、御承知のように、昭和二十九年、三十年、両年度にわたりまして、健康保険の勘定が悪化をいたしました当時におきまして、大体七十億円程度の赤字が出たということであったのであります。従いまして、そのときに、この収支をどういうふうにするかという問題と関連いたしまして、赤字をどう補てんいたすかという問題があったのであります。従いまして、昭和三十年におきまして、十億円の一般会計からの繰入金をいたしますとともに、六十億円という借入金をいたしました。それを以後毎年十億円ずつ繰り入れまして償還をいたす、こういうような処置をいたしたのであります。同様の処置が船員勘定についてもとられたのでございます。ところが、その翌年の三十一年に相なりまして、健康保険全体の収支を建て直す必要があるというようなところから、他の措置とも関連をさせまして、一般会計から三十億円の金を繰り入れまして、これによりまして、収支の改善をはかるという措置をとったわけでございます。従いまして、三十億という金を入れまして、全面的に収支改善対策をとったものでありますから、前年度に六十億の借入金をいたしました。それの初年度分と申しますか、六年間十億円ずつ返しますがその十億円の返還の方はしばらく延ばしまして、当面三十億円の繰り入れをいたす、こういうことにいたしたわけであります。その後三十二年、三十三年と繰り入れを続けて参りまして、三十三年十億円、三十四年十億円という金を繰り入れて参ったわけでございますが、今この十億円の金は、先ほど来申し上げておりますように、六十億円の借入金を償還いたしまするための十億ではございません。収支を改善いたしまするための健保会計建て直しのための繰り入れということに相なっております。従いまして、毎年度国会に御提案を申し上げまして、三十四年度までその繰り入れを延ばす、赤字補てんのための十億円の繰り入れを延ばすという措置をお願いして参ったのであります。その後におきまする健康保険勘定の収支は、御承知のように好転をいたしまして、三十三年度末におきまして百八十三億円という積立金を生ずるような状況でございます。それからまた、健康保険の保険料におきましても、千分の六十五から六十三に引き下げるというような措置をとることに相なりました状況でございますので、現在におきましては、三十五年度、一つは今申し上げました健保会計の実情、またもう一つは国の財政全体と申しまするか、あるいは社会保障全体の立場からいいますと、雇用主のありまする社会保険に比べまして、雇用主のない保険の系統、たとえて申しますと、国民健康保険であるとか、あるいは日雇労働者健康保険であるとか、あるいは広く申すと国民年金であるとかいうような点に、相当大きな財政需要を生じます関係もありまして、保険の実情とにらみ合わせて、五億円という繰り入れを一般会計にいたしたわけであります。今申し上げましたような状況でございますので、この際三十四年度、またさらに三十五年度も借入金の償還を延ばしまして、三十六年度以降に十億円ずつということで、法案を御提出申し上げておる次第であります。
  21. 堀昌雄

    堀委員 大体健康勘定についてのお話はわかりました。今のお話で、この十億円というものは六十億円の借り入れに対するものではなくて、要するに健康保険財政の建て直しのためだ。さっきお話にありました三十億も、当時の大蔵大臣でございました池田さんが、これは赤字補てんではないのだから、ともかく黒字になっても出すのだということを、社会労働委員会予算委員会ではっきり確言をなさっておるように私承っておりますが、実情を見ますと、健康勘定が黒字になってきたということのために、三十億がついに五億になり、やはり依然としてこの十億は繰り入れられないままで、法律だけが自動的に繰り延べをされておるというのが実情でございます。しかし、これは一括して船員保険のものも並べてずっと取り上げられております。厚生省からお見えになっておりますから、厚生省の方に伺いたいのですが、健康勘定が黒字になっておることは、私どもはこれがあたりまえだと思っておりませんけれども、船員保険についてはどうもまだ現実に赤字が残っておる。保険経済としては必ずしもうまくいってない。まだ非常に困難な状態がある。健康勘定と船員保険勘定とは実情として相当性格が違うのじゃないかと思うのですが、船員保険の方はその収支はどうでしょうか。
  22. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 お尋ねのように、船員保険の疾病給付部門につきましてはまだ赤字が若干残ってございます。これは、前に相当な赤字がございましたために、保険料の方も一時担当部門を変えまして、その赤字を解消するために、千分の二というものを特にそれに振り向けて今日に至っておるわけでございます。それで、国庫の方におきましては、先ほど主計局長からお話し申し上げましたように、過去の借金返しの分に対する国庫補助とは別に、保険財政の健全化を招来するために、健康保険において三十億を昭和三十一年度から入れました。そのときに相見合いまして、船員保険については一億を入れたわけでございます。その後健康保険の方につきましては、いろいろな事情がありまして、御指摘のように三十億のものが三十五年度予算では五億に減っておりますが、船員保険の方につきましては、やはり財政も好転してきているとはいいながら、若干の赤字が残っておるということを彼此勘案いたしまして、引き続き一億の国からのてこ入れを今日まで実現しておるわけでございます。そして、片一方そういう国旗のてこ入れもございまして、船員保険の疾病給付部門の赤字は漸次好転いたして参っておりまして、ここ遠からずの間にその赤字は解消できるという十分な見通しを持っておる状況でございます。
  23. 堀昌雄

    堀委員 実はそこに少し問題があろうかと私は思うのですが、船員保険の一億円は、赤字解消ということではなくて、要するに保険経済の建て直しということで一億円出していただいた。もちろん、今度ここで延期をいたします二千五百万円も、赤字解消ではないけれども、その動機は、赤字が出てきたということが一番大きな動機になっておったと思うのです。そこで、被保険者なり事業主の方に対しては、昭和三十二年四月から、赤字償還財源として千分の二の保険料率をきめて負担をふやしている。そして、ずっと私これを調べてみますと、これは一種のどんぶり勘定のようなことになっておりますが、内部的に見ると、疾病給付分におけるところの赤字の穴を、業務取り扱い分ということでとっておりますところの黒字で埋めていながら、なおかつ昭和三十三年度の——これは四年度までの資料をいただいておりませんからわかりませんが、三十三年度の終わりで一億六千万円程度の赤字の残が出ておる。その業務取り扱い分というものは一体何のためにあるのか伺ってみると、ここでは労災関係が一緒に含まっておるので、その部分に見合うところの事務費だというふうに伺っておるのです。しかし、全体の中での割合を見ると、その部分の事務費というものよりも残りの部分が出ておるようで、それが実際は疾病給付分を埋めておるというような実情になっておるように、この資料を見ると感じるわけです。そういう内部的な無理をし、被保険者や事業主にも負担をさせておる中で、私は健康勘定の方はこういうことが一応出て、そういうこともすらっと理解できますが、船員保険も健康勘定と同じように二千五百万円を延ばしていって、こう並べてあるという点は、私少し納得がいたしかねる。同じ状態で、同じような黒字になり、経過がいいのならば、同じように延ばすということはわかるのですが、健康勘定、船員保険勘定というのがたまたま二列に並んでいて、こっちを延ばすならこれも延ばすのだというような、機械的な取り扱いがされておるのではないかという点に、少し私疑義があるのですが、その点は大蔵省いかがですか。
  24. 石原周夫

    ○石原政府委員 先ほど厚生省の方から申し上げましたように、最近におきます船員保険勘定の方の関係は好転をいたしておりまして、赤字は毎年減少というより、毎年の収支といたしましては黒字になりまして、三十二年に単年度といたしまして二億四千五百万円、三十三年度も一億八千七百万円、三十四年度におきましても相当額の黒字が出るという見込みが立っておるようであります。従いまして、現在の累積赤字残は、御指摘のように三十三年度末に一億六千五百万円ほどに相なっておりますが、今申し上げますような状況からいたしますと、非常に近い時期に赤字が解消し得るのじゃないかというふうに考えられるのであります。それと、御指摘のような点がございまして、これも厚生省の方から御答弁申し上げましたように、一般会計の全体の社会保障関係から見まして、あるいは健康勘定の収支から見まして、三十一、三十二と二年間三十億繰り入れましたのを十億にいたし、さらに今年度五億にいたしたのでありますが、これに対しまして船員勘定の方は今申し上げますように一億円という金を繰り入れる。従いまして、そこら辺の両勘定の収支の実情につきまして若干相違がある点は、御指摘の通りであります。この点を考えまして、繰り入れの額の調整をいたしておるわけであります。私どもといたしましては、現在の状況をもって推移をいたします限り、近い将来に、私どもの見込んでおりますようなやり方で、赤字が解消いたし得るというふうに考えておるわけであります。
  25. 堀昌雄

    堀委員 そこで、ちょっとこれから大臣に伺いたいのですが、実はこの法律案として三十五年から六年にだんだんと繰り延べておられるわけで、これはすでに四年前こういうことが行なわれておりますが、これは必ず入れてもらえるのかどうかということです。永久無限にこう延ばされたのでは、何か法律をもてあそんでいるような感じがして仕方がない。  そこで、私は、これから今の日本の医療の状態をちょっと簡単に申し上げて、それを含めて一つ大臣のお答えをいただきたいわけですが、厚生保険の健康勘定で最近百八十億もの黒字ができてきたというので、政府管掌健康保険の運営はまことにうまくいっているという評価があるとすれば、私はいささか問題があろうかと思っております。現在、日本の医療というものは、世界では類のない社会的な進歩をしておりまして、その中で非常に犠牲を受けておりますのは、やはり医療担当者だというふうに私は理解をいたしております。その医療担当者もいろいろな形がございます。一般の開業医の皆さんもあります。あるいはその他の官公私立各種の病院に勤務をしておられる医師の方の問題もあります。また、それに伴って、一緒に従事をいたしております看護婦その他の従業員の問題もありますけれども、これは、全般的に見まして、現在の日本経済状態の動きの中で見ると、必ずしもこれでいいんだという状態にないというふうに私は感じておるわけであります。それをちょっと具体的に申し上げておきたいのでありますけれども、最近、一年くらい前ですが、ちょっと点数改正ということでわずかばかり診療報酬が上がった時期がございます。しかし、実際に調べてみますと、厚生省が当初予期されたほどには上がっておらないというのが実情でありまして昭和二十六年に診療報酬が改められまして以来今日まで、見るべき診療報酬の単価としての値上がりはないというふうにわれわれは考えております。しかし、片面、診療報酬のふえ方はだんだんふえておりまして、一診療所当たりで見ますと、資料がいろいろ不十分なんですが、社会保険の診療報酬基金が払っております一診療所当たりの支払額は、約十万円近くに平均値としてはなってきております。あとこれに国民健康保険その他が加わりますから、もう少し収入はあろうかと思いますけれども、平均値として見ると十万円くらいの収入があるわけです。これを、資料がございませんから、ちょっと他の面で調べてみたのですが、昭和三十三年度の厚生省が出しております患者調査というのがございますが、その患者調査で見ますと、大体一日当たりの診療所の患者数というのは三十六人だということになっております。健康保険の方では、診療報酬は一日一件当たりで百四十八円くらいに基金の資料がなっておりますので、それのかけ算をいたしますと、平均値で見るとかなりの額になっておりますが、実情を見ますと、これは私は日本の統計の欠陥だと思うのでありますが、平均値は常にモードの山よりも上の方に出てくるというのが、大体の統計の姿でございます。  そこでちょっとこまかく調べてみますと、今申し上げた一日当たり三十六人というのは一体どの辺にあるかといいますと、診療所の総数の六〇%はそれ以下です。四〇%がそれから上にあるということで、大部分の診療所は平均値より低い。特に低いのは、一番分布の山がきておりますのは一日に十人から十四人、十五人から十九人というところが一番多くて約二〇%を占めておる。ですから、日本の診療所のお医者さんたちというものは、一見すると非常にたくさん収入があるように見えておりますが、分布の中で見ると非常に低い状態になっておるというふうにわれわれは思っております。特に私どもが非常に残念に思っておりますのは、皆保険ということになって、単価がきまっておりますから、その診療報酬のふえ方というのは、労働によって、たくさん患者を見ることによってしか収入をふやす道がないというのが、現状になっておるわけです。そこで、診療報酬の収入をふやすためにどういうことが行なわれておるかというと、普通ならば、われわれ大学出身者であれば、朝の九時から午後五時くらいまで働けば、これで用が足りるというのが日本の現状でありますけれども、社会保険に従事をしております一般の診療所の諸君は、朝の九時から夜の九時ごろまで現在働いておるというのが、全国的な実情です。昼間は往診その他に出て、夜は必ず六時から九時ぐらいまで診療しておる。これはなぜそういうことが起こるかというと、収入が少な過ぎるために、どうしても一人でも多くの患者を見なければやっていけないというようなことが、こういう不規則な診療の状態をもたらしておる。そういうふうに低い単価に押えつけて十分な報酬を払っていないで、百八十何億の黒字が出ておるというふうに私どもは理解しております。  そこで、だんだんと厚生省の施策が進みまして、昭和三十六年度から皆保険になる、すべての患者は保険の患者になる、こういうことになって参りますと、一体どうなるかというと、現在の医師というものは、もう一方的に単価という形で経済的な条件をくくられるということになってくるわけでありましてその点国の施策として十分考慮を払っていただかないと、日本の医療というものが今後どうなるかという点については、私はいささか心配があるわけでございます、もう一つ観点を変えて、それでは官公立病院の万はどうかといいますと、国立の問題は別でありますけれども、やはり多くのところでは、現在の収支が償われないために報酬が上げられない、さらに定員もふやせないというのが実情になっております。そこで、昨年出ましたように、勤務しております看護婦で結婚しております者について、要するに子供を生むについては、何年間は生んではならないというようなことで、人道上まことに遺憾な問題が一方では出てくるわけであります。あるいは国立病院等に調査に行ってみますと、この人たちが当然とらなければならない産前産後の休暇であるとか、生理休暇すらもとっていない。なぜとらないのかと聞いてみると、厚生省の方はとるべきであるとおっしゃるけれども、休暇をとれば、定員不足のためにほかの人が迷惑するから、どうにもとれないというようなことで、みんなが無理をしてやっておる。その問題をずっとたどってみると、結局診療報酬の単価が異常に低いということにすべてが帰結してくる、こういうふうに考えられるわけであります。  そこで、まず第一点として大臣に伺いたいことは、皆保険になった場合における日本の診療報酬のあり方、これは厚生省が要求を出されることでございますが、要求を出されても、もとは大蔵省の問題でありますので、大蔵大臣としては、皆保険の時点における日本の医療の診療報酬のあり方が現在のままでいいのかどうか。もう少し適正な額に高められる必要があると私は考えますが、その点について一つお答えをいただきたいと思います。
  26. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 厚生省からお答えする方が適当かと思いますが、ただいま実情についていろいろのお話がございました。私どもも、この給与なり収入が適正なりやいなやということをきめることは、非常にむずかしい問題だと思います。一般日本は低賃金だということをいわれておりますが、これはお医者さんについても同様のようです。私の身内にも医者がずいぶんおりますが、よく考えてみますと、最近の医者に対する考え方というものは、私どもの小さいときとよほど変わってきております。そういう意味から考えると、これは何らか社会問題めいたものがあるような印象を強く持つわけでございます。ところで、皆保険の必要なこともわかるし、診療担当の者の労苦というか労働というか、そういうものについてももっと深い理解を持てと言われますが、これは、御指摘の通り、私どもも、特別に国民利益だけを考えて、診療担当者の方のことは全然考えないというわけのものでもございません。ただいま、病院だとか診療所だとかということで、区別していろいろ実情をお話しになりましたが、一般の診療所というものと、官公立の病院というようなものが、今後どういうふうに併存していくか。ここらには基本的な問題があるだろうと思います。それで、公務員であるお医者さんの場合だと、最近ようやく技術員についての特別な考慮が払われるようになりまして、公務員の給与ベースを上げた場合に、一般は三・九、まあ四%程度上がる。公務員であるお医者さんの場合はこれを六・六%上げた。もとが低かったから、そんなものは当然だと言われるが、少なくともこれは、数字の面から見ると、その特殊性を認めたことになっています。  ところで、おそらく一番問題になりますことは、今御指摘になりました十九人未満の患者を引き受けている診養所、こういうところの方々の収入は一体どうなる。お医者さんだから、患者さんが少なかろうが、一定の資格は十分備えなければならぬ、こういうことだと思いますが、そういう意味で、そういう方々が非常に多いということならば、ここに非常な問題が起こる。これはもう御指摘になった点で私が理解のできることだと思います。しかし、いずれにいたしましても、この国民皆保険というような一般的制度の中に特殊事情を特に考慮し得るかどうか、これは非常に困難なことだろうと思います。そこで厚生省の方で在来からとっておりますものが、甲乙二表をとっておるようですが、これを一本化しろという議論が今非常に強くなっております。おそらく今後の問題としてこれをどういうように一本化いたして参りますか、この具体的案として、今堀委員要望されるような点にどういう解決案を立てるかという問題が一つあると思います。あると思いますが、これも今簡単にどうこうということを私は申し上げかねるわけですが、この実情については深い認識を持って対処することが必要でしょう。診断を受ける側から申しますと、この患者の数が多いとか少ないとかいうよりも、お医者さんのいない無医村というものがまず問題になる。そういう無医村部落ということになれば、おそらく、今言われるように、患者が診療を受けに出かけていく受診範囲は一体どのくらいになるのか。そんなところも厚生省ではいろいろ考えられるに違いない。そういうものについて特例な措置を講じなければ、民間では医者としてやれないというような事態も起こるというようなことも、将来の事態としては工夫していかなければならぬのではないかと思います。いろいろ私にお話しになりますことは、なるほどそういう事実があるというふうに納得ができますが、私ども一番問題になりますのは、官公立の病院、また民間においても、いわゆる病院というものと、いわゆる診療所というものをいかに調整していくか、さらにもっと不便な僻地における医療制度というものは、皆保険になった暁に、国はどういうような責任を持ってこれを遂行していくか、というような問題があるのではないかと思います。これらの問題は厚生省において十分考えるでしょうが、私ども厚生省だけにまかすつもりはございませんし、大蔵省大蔵省としまして十分考えていきたい、かように思います。その意味では、専門であられる堀委員などの御意見は、私どもよく伺って参りたいと思います。
  27. 堀昌雄

    堀委員 実は私が伺ったのは——そういうのは、私は大体厚生省の方の問題だと思うのですが、やはり財政全般の問題として皆保険ということになったときには、診療報酬が過去のままでいいかどうか。私は、これを少し高めない限り、日本の医療というものは非常に困難な状態になるという判断をしておるから、それに対するお答えを一つ伺ったのです。  これをちょっと端的に申しますと、こういうことなのです。皆さんが病気になって、相当病気が悪いのだというときに、どこかの病院へ行っても、いや、現在保険財政がありますから、これだけのことしかやれませんよ、もしこう言われたとき、大蔵大臣、どうですか。保険はいいから、ともかくいい薬を使って早くなおしてくれと、おそらく大蔵大臣でもおっしゃるだろうと思うのですよ。しかし、日本の保険はどういうことになっているかと申しますと、大体保険というものは、ある給付を対象にして掛金をとらなければならぬ。要するに給付と掛金というものは相見合うものでなければならない。これは火災保険であろうと生命保険であろうと、保険というものはそういう性格のものだ。ところが、医療について、日本の制度は私ども非常に問題があると思うのは、今のは現物を給付するということになっている。要するに給付というのは、お金ではなくて治療を給付するということなんです。そうすると、今の保険制度の建前は、被保険者から取っている金は、どういう治療をするかということで取っているわけではなくて、ある大体のめどをつけて保険収入というものを取っているわけですね。ところが、医療というものは、だんだん日進月歩で進みますし、医療の本質というものは、やはり  一日でも早く病気をなおしてあげたい、こういうことなんですね。そうなってくると、私ども考えとしては、いい治療をしなければならぬというのは、やはり医者としての責務だ。そうすると、いい治療をするということと、こっちの掛金とは、必ずしも見合わない。要するに、治療の面からだけ見ると、社会保障の治療とわれわれは言うのですが、制限をすべき性格のものではない。ところが、金がないものですから、取った掛金のワクの中で何とかやらせようというので、実はいろいろな制限があるのです。それは厚生省の方にはないとおっしゃるかもしれないが、あるのです。そうして、皆さん方も、おそらく、いよいよというときになって、これは保険では使えないと言われたら、保険というものは実際情けないものだ。命にかかわることで、皆さん方はそう思っていらっしゃるが、やむを得ないという実情なんです。ところが、これは皆保険ということになって、日本の医療は、みなもう一つ不十分な経済の条件のために不十分なことしかできないのだということになれば、これは非常に問題がある。  そこで、いろいろな保険財政のワクをふやしていくためには、皆保険という地点では、これは社会保障の医療ということで、国が相当な責任を持たなければならないのではないか。保険財政の収支の建て直しというものではなくて、日本の医療をどうしていくかという、今度は非常に大きな問題の点からこれを見ていただかないと、単なる財政収支だけでいけば、さっき申したように、さあ、こういう治療をしてもらいたい、こんないい治療があるけれども保険ではだめですよなどと言われて、国民全部が保険でしか治療が受けられないという段階になっているとき、そのためにずいぶん金は取っているけれども、十分なことができないような保険というものは、さっきの税金の問題ではないけれども、問題が出てくると思うのですよ。税金を払っているけれども、うちの前の道をちゃんとしてくれない。こんなのは、どっちかといえば大したことではないのですよ。命の方になったらそうはいかないから、もっと緊要度が高いと思うのですよ。そういうような意味で、私は、診療報酬は、全体の問題として、皆保険になった地点では、国として、財政上の問題として、少し真剣に考えていただかなければならぬと思うのですが、いかがでございますか。
  28. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この完全皆保険という問題を一体どういうように考えるか。これは非常な問題だと思います。ただいま言われるように、一番いい技術、一番いい薬、一番費用のかかるような手術を全部受けるとか、あるいは病院の施設そのものにしても、一体今の程度ではまことに不都合ではないかとか、どうもあんなきたない病院よりも甲の方がもっと設備がいい、あの方へおれは入りたいが、一体どういうことだ、こういうような問題が最後には残ってくるだろうと思います。そこで、今やっております皆保険というものは、おそらく程度は低い。これは非常にきめにくいことで、今言われるように事柄は生命に関することなんで、生命というものはみんな同じじゃないか。それならば、その生命というものを基準にして、どれだけの費用がかかってもやるべきじゃないだろうかという議論もあるだろうと思いますが、今の保険では、そこまではなかなか手が回らない。それは御指摘の通り財政上の限度がある。そこで、一体今保険でどういうことを考えておるかと言いますと、少なくとも金持ちは医療のチャンスが与えられるが、貧乏人は医療のチャンスすらない、こういうことはまことに気の毒じゃないか。しかし金持ちが使う薬はだれもみんなほしい、生命に関することだから。金持ちならばいい薬が飲めるが、貧乏人は飲めない、それはけしからぬ、そこまでは政府がめんどうを見ろ、こういう要望が私どもの耳に入らないわけではございません。しかし、国でまかなうとすると、それまではなかなか困難じゃないか。そこで、それでは生命に全然役立たないような薬だけを厚生省が指定する、そういうわけのものじゃありません。これは安いが、しかも十分効果の上がるような薬を指定しておる。ただ時間的に、あるいはそう短期の間に効果は出てこないかもわからない。こういうような意味で、もっと高級なものをほしいということが言われるだろうと思いますが、その辺も一つの適当なバルク・ラインを引かざるを得ないのじゃないか、こういうように実は思います。患者の方からは薬や施設についてのそういう要望もあるが、同時に、お医者さんに対しましても、自分のところは不幸にしてこういう状態だが、一番自分たちが信頼するお医者さんの診療がどうして受けられないのか、こういうような希望も必ず出てくる。事柄は生命に関することだ、おれたちの生命を国はそう簡単に見ているのか、こういうことであります。しかし、国として見ますものは、金持だろうが、貧乏人だろうが、同じ見方をしておる。ただ金持ちは、自分の責任において、それより以上のことをしているということで納得をしてもらう。しかし、貧乏人が絶対に自分たちではもう何もできないのだ、そういう場合に、国として最小限度その程度を一体どの程度に上げてまでめんどうを見るか、これが財政負担の問題だろうと思います。そういうように考えてくると、今の国民皆保険というものは一応普及してき、今後の問題としては、堀委員指摘されるように、内容充実の方向にいかに工夫されていかれるかという問題があるだろうと思います。今ようやく最小限度の門戸を開いただけなんです。今後はさらにその内容充実していく。そうして患者自身の負担においてやられることまでは、政府自身はそこまでには干渉するわけにいかない。おそらく、人によりましては、金持ちとはいわないが、特別な因縁があって、お医者さんは枕頭につききりという場合もあるでしょう。おそらく親戚の者が病気になれば、まくらもとにつききりで看護に医者が当たる場合もある。貧乏人はにそういうチャンスがないじゃないか、こう言われますと、それは言われる方が少し無理じゃないか。だから、国でやりますものが、貧乏なるがゆえに医療の機会を失うとか、あるいは最もポピュラーに考えられる薬も入手ができない、こういうようなことはほうっておいてはいけない。それこそ国が皆保険という制度で進めていく、こういうことだと思います。そうかと申しましても、自分負担においてやるという事柄まで、その程度にまで全部を同一に扱え、事は生命に関することだと言われても、それは少し無理じゃないか、かように実は思うのです。医者の場合に、おそらく国内の医者だけではだめだ、アメリカに行けばもっとうまく手術してくれる、こういうような話までに飛躍する危険もあるものだから、ただいまのようなことを実は申し上げるわけです。これは御了承いただきたいと思います。
  29. 堀昌雄

    堀委員 どうもさっきから肝心のところに大臣はちっともお触れにならない。その肝心なところは、皆保険になったら今までの考え方でなくて、財政面でももう少しめんどうを見なければならないのじゃないかと私は伺っているのです。めんどうを一つ見ましょうと言うていただけば、この問題は非常に簡単なんですが、どうもそこにはさわらないで遠回りしておる。お話のことは私もわかりますが、簡単でいいですから、ちょっと肝心なところを一つお答えをいただきたい。
  30. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま申し上げるような考え方で今まずスタートした、今後は内容充実の問題だということを御披露いたしまして、そういう場合に、生産者米価と消費者米価があるように、そこに国が何かほかに負担するような方法があるかということになりますと、やはり保険制度というものから見ますと、国の負担率というものは一応きまっておる。それを簡単に変えるわけにいかぬ、かように実は思います。これはやはり保険制度という特質を十分認めていただきたい、かように思います。しかし、今後の問題としてさらにいろいろの工夫をするでしょう。工夫をするというのは、たとえば医療行政の面では施設を整備するとか、いろいろな方法があるだろう。医療金融公庫ができて、設備改善のために資金を提供するとか、あるいは医薬製造の分野において特別な工夫をして安くするとか、あるいは手術の器械等についても、そういう意味で必ずだんだん安くなるとか、できるだけ金のかからないような工夫もしていただく、そういうようなことで、今後は内容充実の方向へ向かっていく。そういう場合に、とくと、先ほど来のお話最後の財政的な負担増加する必要ありやいなやということは、その際になりまして、全般の問題として十分研究していかなければならない、かように思います。
  31. 石野久男

    ○石野委員 ちょっと関連して。  堀委員から今厚生保険の問題について一つ財政的な大臣所見を聞きたいという話があって、どうも勘どころにはさわらないようなお話です。私、この機会に、大臣一つ財政的な見地から医療の問題についての考え方をちょっとお聞きしておきたいのですが、最近自民党の岩本さんが朝鮮へ行ってこられた。朝鮮ではとにかく医者はただだ、薬もたただ、入院もただだ、こういうことを見てこられたのです。これは社会制度もいろいろ違いますから、一がいには言えませんけれども、しかし、朝鮮は長いこと日本の属国的な立場におって、建国してからほんのわずかの時間しかたってない。そういう時期にこういう問題ができているということになれば、もっと長い文明的な政治制度のもとにきた日本は、敗戦があったといえども、この際、大臣としては、財政的に、医療関係の問題を、医者も薬も入院もみなただだというふうに早急に持っていくような考え方がないのか、またそれはやれる可能性はないか、やれればいつごろやれる見通しがあるか、一つそういう大きいとこかろら構想を聞かしてもらいたい。
  32. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大体社会制度なり政治形態なりあるいは税制なり、いろいろな問題に関連しております。アロケーションもありましょうし、なかなか一がいにはいかぬだろうと思います。今言われるような状態は、日本ではちょっと近い間には考えられない。これだけは言い得ると思う。私申し上げ得ることは、堀委員は大事な勘どころをはずしていると言われますが、私も勘どころには十分触れたつもりであります。それは今後の問題として、内容充実の問題を申し上げたつもりでございます。この点内容充実が財政的な処置なしに可能なりや、保険率だけ上げてそれで済むというような考え方になるのか、その辺の問題が今後の研究課題じゃないかと思います。だから、医療保険という制度を発足すれば、それはやはりできるだけ患者やまた診療担当者の要望にこたえるようなものに制度の内容充実していかなければならない。そういう場合に、保険であるからというので、保険制度だけでまかなっていくのか、それからさっきの財政的に要望されるような点が可能なのかどうか、これは将来の問題として一つ考えさせていただく。私は、大体財政的な問題としてこれを処理するということは、今の段階ではそう簡単にできるとは思いません。石野さんの言われるように、特殊なものについて——あるいは特殊でないと言われるかもしれないが、そういう状態はちょっとむずかしい、かように私は思います。
  33. 石野久男

    ○石野委員 私が今言っておるのは、特殊ではないんで、税金を納めたけれども道路ができないから文句を言うのとは、命にかかわる問題は非常に違うのだとのだということも言われておるし、先ほど大臣は、医療の問題では貧乏人も金持ちも国の立場からすれば変わりなくやっていきたいのだ、こういう話があったわけです。この問題は、厚生保険特別会計の一部をどういうように改正するかという問題よりも、もっと基本的に重大な問題であると私は思うのです。政治制度、社会制度がどういうように違っておりましょうとも、人間に対する医療の基本的な問題は同じことなんだから、それを一つ大臣の立場から、財政的な面でなぜ日本ではできないのかという、一番大きな基本的な問題をどういうふうに考えておられますか。財政担当の大蔵大臣はどういうところに欠点があると考えておられるか。そういう点を一つこの際聞かしていただくと、非常にわれわれとしても考えやすい。
  34. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 まあ政治の形態からいえば、ただいまのような民主主義の形態、同時にまた個人の人権尊重、自由はとにかく非常に尊重していく、また同時に生命の尊重というか、そういう事柄との調和をはかっていくという考え方でございます。だから、特殊な政治形態の場所においてどういうことがやられておるか。生命に関することだけはそういうことをやった。しかし、国民生活そのものとして、あるいは非常に自由闊達で、わがままとは申しませんが、みずからの責任において処理する範囲がどれだけ拡大されているか、そういうこともやはり考えていかないと——まあ私どもの社会制度としてはそういうものを考える、そこらに基本的な相違があるのではないかと思います。だから、そういう点から見れば、今の自由主義の考え方から見てのいわゆる社会保障制度というものは、まずスタートが始まった程度で、本質的に全体を変えるというような状況のものでないこと、それだけは御了承願いたい、かように実は思っております。
  35. 石野久男

    ○石野委員 この際ちょっと聞いておきたいのですが、大臣は、今のところ厚生施設とか医療関係の問題も大事だけれども、ほかに産業部門や何かのこともあるし、それからみんなの生活が自由にいけるかどうかということも、自由主義の社会では考える。そういうことで、この際やはりわが国のなにからいえば、それはできないのだ。私は、しかし、こういうことだけは言えるのではないかと思います。人間は、生きるということになれば、生命が一番大事だし、健康でなければならぬ。健康でなければ、財政活動も生活の問題も何も意味がないのだ。そういう意味で、制度は変わっているかもしらぬけれども、他のところではそういうものができておることを、自由主義の諸国特に日本の場合は、それはやろうとしても大臣はできないのだ、こういうわけです。そこで、できないのだということは、やはりおくれているということだと僕は思うのです。やはり政治制度の中の欠点がそういうところに出てきている、私はこういうふうに思う。他面において財政活動の中で、それでは自由主義の諸国の方が他の違った制度のところより進んでいるかどうかも、実を言いますとなかなか判定はむずかしい。しかし、少なくとも、今度岩本さんは、岸さんと藤山さんに報告するにあたって、驚きなさんなと言ってそういう報告をしたはずです。そういう問題はとにかくとして、今大臣が財政的に医療制度の問題なり厚生、保険の問題をもっと真剣に考えないと、やはり国の将来というものがうまくいかない。体位の向上とか、あるいはそれを中心とする文化の発展が出てこないのではないか。国民皆保険なんというのは、声ばかり大きくて中身は何もないのです。そんなことに対して大臣が責任を感じないというのは佐藤さんらしくないと思う。先ほどの答弁で、少しもそれに触れていないことはおかしいと思う。あなたは大蔵大臣としてそういう財政的なものをはっきりつかんでいるのかどうか、もうちょっとその辺ははっきりしてほしいと思います。
  36. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま申し上げるように、だいぶ基本的な考え方が違っております。大蔵委員会で申し上げるよりも、また適当なときに懇談の機会を与えていただくことが必要だろうと思います。まあ財政については、しろうと大臣であることはもう通り相場でありますから、そういう意味でこれは御了承願いたいと思います。とにかく、政治形態その他が違っておるところに基本的な相違がございますので、これは、私は、岩本君が行って驚いてくるのが非常に不思議なので、実物を見なくても、文献その他を見ればみなわかっていることだし、またしばしば聞かれることであります。ただ、私生活そのものまで国家が管理をするような考え方に発達、発展できるのかどうか。私どもは、やはり適当に個人の責任において処理するものが大部分じゃないか。国として監視をし、国として指導をし、責任を持つ範囲は、そういう意味では団体としての考え方に限るというような気持で、今スタートしておりますので、その範囲はあるいは相当突き進んだものもありますけれども、そうでないものはできるだけ個人の責任においてということを、モットーというか、基礎的な考え方にしておりますから、そこらに相違のあることを一つ御了承いただきたいと思うのであります。
  37. 堀昌雄

    堀委員 そこで、これから充実していくとおっしゃるから、それは財政の面でもめんどうを見ようということだというふうに私は理解をいたしますが、ちょっとその前に、今の医療担当者の問題の中で非常に大きな問題が一つございますのは、診療報酬が甲地と乙地ということで二本立になっている。甲地というのは六大都市とその周辺だけが甲地ということで、その他は約一割低いのが現状なんですが、これを、乙地という地域のほとんど日本全国のお医者さんたちが何とか一つ一律なものにしてもらいたいという長年の要望が厚生省にいっておるわけです。ところが、厚生省の方では、なかなか簡単に甲地と乙地というものが一本にはできないという実情にあるのです。そこで、厚生省に伺いたいのは、もし今の乙地と甲地を同じような単価にしたとすれば、概算のことでけっこうですが、どのくらいの費用が要るでしょうか、
  38. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 御指摘のように、ただいま診療報酬の支払いをいたします場合に、甲地と乙地との二つに区別して、その間に地域差がございます。これは、今日の段階から見ますと、私どもといたしましては、もう撤廃の方向に進むべきだというふうに考えます。ただ、こういう地域差は公務員の給与面にもございますので、そういうものとかね合いもございまして、一ぺんに切るというわけには参らぬ、段階的にこれを減らして参りたいということで、先年改正の際にも、甲表の方については地域差を約半分ほどに減らしたわけでございます。そういうことで私ども、今日以後においてもそういうふうに持って参りたいと考えております。ただいまの、もしかりにその乙地と甲地とをならす——といっても、おそらく引き上げるのでございましょうが、その場合どれくらいかという概算でございますが、昨年の十二月分を基礎にしてちょっと推計してみますと、約三十億ぐらいのものが要るであろう。これは政府管掌分だけでございますが、かような一応の推計をいたしております。
  39. 堀昌雄

    堀委員 実は、今大臣もお聞きになったように、政府管掌だけですが、乙地と甲地とを一本にすれば三十億ぐらいで大体できるということです。これは、健康保険組合はすごい黒字で、お金のやり場に困っているという実情です。国民健康保険はいささか財政上必ずしも十分でないので、私は全部を一ぺんにやるということはなかなか困難かと思うのですが、少なくとも、政府管掌及び健康保険組合を含めての健康保険、それが今の日本の社会保険の大宗を占めておるかと思いますので、この部分については、今のお話を伺えば、甲地全部にならしてやれないことはない。というのは、今ここに出ておりますところの繰り延べの十億円、これを一つ来年度から入れていただいて、さっきから三十億出ていた分から五億に減ったのを二十億にしていただけば、政府管掌はまず一本にできる。組合の方は、財源がきわめて豊富なので、政府管掌が一本になれれば、これもできる。国民健康保険なり日雇い保険については、これは必ずしもそうはいかないと思うのですが、前に池田大蔵大臣が、三十億は赤字、黒字にかかわらず一般会計から繰り入れましょうというように明らかにおっしゃっており、さらにここでも、法律としては出し得る条件がはっきりあるということがわかっておりますから、一つここは、大蔵大臣、皆保険になる昭和三十六年から、日本の医療担当者は大へん御苦労さんです、これは国の財政面におきましても、まずあなたの段階的な充実方法一つとして、甲地、乙地の一本化をいたしましょう、その程度の財政負担大蔵大臣としてこれは当然見るべきものだと思いますという御返答がいただけるならば、日本の診療担当者はこぞって大蔵大臣に非常な敬意を表するであろう、こういうふうに思うのですが、一ついかがでございましょうか。まず段階的にこれを三十六年度からということで……。
  40. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これができれば堀さんも自民党へ入党するということならなんでございますが、(笑声)三十億という金は国といたしましては非常な大金でございます。今言われますように簡単な金額ではございません。ことに政府管掌の機関だけだということでございますが、これが持つパーセンテージは、全体から見れば四分の一あるいは五分の一ということではないか、大体全体から見れば百五十億ないし百二十億というようなことになるんじゃないかと思います。そのことを考えると、これは簡単には引き受けたとは言えない。ことにこの問題の扱い方いかんが生活保護にも関係して参りますし、あるいは特別会計の国立病院にも関係して参りますし、これは影響も非常に広いのであります。そういう意味で、この制度は扱い方をよく考えていかなきゃならぬ。地域によって給与が違ったり、たとえば今のように保険でも違っているということ、これはどうも私は理屈には合わないと思う。しかし、現状は、戦後の混乱状態から見、全体が低い場合にはやはり甲乙に分けざるを得なかった。従って、給与についての地域差のあることもやむを得ない。また報奨についても地域差を認めざるを得なかった。しかし、これは、おそらく将来の問題として地域差というものはなくなるようになるだろう。総体が財政的に余裕がない場合だと、これをできるだけ低目にいくように分配しようとすると、地域差を設けざるを得なかった。だが、これが相当余裕ができてくれば、地域差などは作るべきではない。これは理論的に私も賛成します。しかし、三十六年度からこれを実施するとか、あるいは三十七年度からやりますとか、ことしはともかくとしてと言われましても、そう簡単には結論は出てこない。一人、二人の入党程度では話にならないということでございます。(笑声)これは実は冗談でございますが、しかし、ただいま御指摘になります問題は、基本的な問題として、冗談は抜きにして、やはり私ども考えていく。今は甲地、乙地の問題ばかりでなく、甲表、乙表の問題自身も一本化ができないような今の診療の内容でございますから、まあ漸を追うて始終工夫していくべき問題じゃないか、かように私は思います。
  41. 堀昌雄

    堀委員 漸を追うてやるとおっしゃっていただくので、やらないとおっしゃるよりはだいぶん進歩だと私思いますが、実は非常に不満がございます。点は、公務員の暫定手当で横に四級地というものがある。ところが、それが乙地になっているところが実は都会周辺にたくさんあるんです。それがその地域の小さな部分の方の不満なんですが、しかし、今大臣もおっしゃるように、そういう地域的な問題じゃなくてこれは全体としてものを見ていかなきゃならない問題だと私は思っておるのです。そこで甲表、乙表というのは、ちょっとその問題と性格が違いましてこれは非常に、医療担当者の中に問題があるのですが、乙地を田地にしてくれということは、これは病院であろうと診療所であろうと全国的に一致しておる問題で、皆さん方の施策として上保険という地点に立って施策をお考えになるについては、一つ財政負担考えていこうとおっしゃることは非常にいい方向ではないか、私はこういうふうに思っておるのです。  そこで、まず診療報酬を上げるときに、上げようということになりますと、差があるところでは同じように上げてくれという議論が出てきますから、診療報酬を上げる前に、先にならして一つ全部一律にして、そうしてまた上げるときにみんなが上がるようにするということが、私は公平な取り扱いじゃないかと思うので、実はこの厚生保険を調べておったところが、たまたまどうも三十億は五億に減り、片一方は十億ずつ入るというのも入れてない。そうして主計局長お話では、幸いにして百八十億も黒字ができましたからと、こういう御認識だから、百八十億の黒字の下には非常に苦しい暮らしをしておる全国の医療担当者がたくさんある、そういう苦しみの上に黒字が積み立てられておるという認識を一つしていただいて、その地点に立って、皆保険をやるためにはやはり医療担当者の協力を得なければ、私は国民は不幸だと思うのです。だから、国民の福祉ということを考えるならば、やはり医療担当者が衣食足るような状態にしていただかなければならない。そのためには、大臣としては、段階的に財政的にも考えていこうとおっしゃるならば、まず当面一つ甲地、乙地問題を最初に考えていただいて、今後御検討を一つ大蔵省当局としても考えていただきたい。これは厚生省はもちろんわれわれが大いにゼンマイを巻いてやって参りますが、何を言ってもやはり主計局でだめだということになると、これは問題になりません。そうして、その甲地、乙地の問題を、被保険者の負担を上げるということだけで解決をしようということには私は参らない問題だと思いますので、皆保険という地点に立った一つの国の、要するに医療というもののあり方に対して、財政当局として、漸進的にそういう問題を含めて考えていただきたい。これは特に主十局長も、こういう問題について、一つ厚生省とよく御相談をいただいて、予算編成のときには、五億になったのを今度ゼロに減らすということでなくて、これをさらにふやす方向にやっていただくことが非常に国民の喜びを増すことだと私は思っておりますから、事務当局も含めて一つ真剣にこの問題を考えていただきたい、こういうふうに思います。      ————◇—————
  42. 植木庚子郎

    植木委員長 各位御承知の通り、政府委員たる国税目長官、主税局長の更迭が先般ございました。  新国税庁長官原純夫君、新主税局長村山達雄君より発言を求められておりますので、この際これを許します。原純夫君。
  43. 原純夫

    ○原政府委員 ごあいさつさせていただきます機会を与えられまして大へんありがとうございます。  十二日に国税庁長官を拝命いたしました。主税局長四年弱でございましたが、その間皆様方から大へんな好意ある御指導をいただきましてありがとうございました。力が足りませんのと、また生来武骨でありますために、いろいろ御不満が多かったことと思いまするし、また何かと失礼の段が多かったことと思いますが、この機会に深くおわびを申し上げたいと思います。  後任には村山君が参りました。三年を任期とする税制調査会の仕事も、ちょうどこれから峠にかかるというところでありますので、大へん大事な時期になるのでありますが、村山君は御案内の通り税界では自他ともに許すと申すとなんでありますが、そういう男でありますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。  私、今度拝命いたしましたポストは、この制度に乗りましてこれを実施に移す執行面の仕事をいたすわけでありますが、制度が実際に生きて動くというために、行政面におきまして改善せんならぬ点、やらなくやならぬ点というのは非常にたくさん言われ、言い古されておりますので、方向自体はもうはっきりきまっておると思っております。これを長い間歴代の長官あるいは庁の管下にある五万の職員が相次いで年年改善し、努力を続けるということでおりますので、その一つの環として、りっぱないしずえを築きたいという気持でおりまするが、何分非常にむずかしい仕事でありますので、一生懸命やるつもりでありますが、従来に増しましていろいろと御注意、御鞭撻をいただきたいと思います。  大へん恐縮でありますが、そういう意味で今後どうか何分よろしくお願いいたしたいと思います。ありがとうございました。 (拍手)
  44. 植木庚子郎

    植木委員長 村山達雄君。
  45. 村山達雄

    村山政府委員 原先輩のあとを受けまして、先般主税局長を拝命いたしました村山でございます。  税金の仕事はやっておりましたが、何分第一線の業務だけを長くやっておりまして、立法その他にははなはだふなれでございます。特に国会方面につきましても至ってふなれでございますので、何かと御迷惑をおかけすることが多いかと思いますが、この上とも一つ御注意、御鞭達をいただきたいと思っております。はなはだ不敏なものでございますが、せっかく勉強して参りたい、かように思っております。どうもありがとうございました。(拍手)
  46. 植木庚子郎

    植木委員長 次会は明後二十一日午前十時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。     午後零時三十二分散会