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堀委員 そこで、ちょっとこれから
大臣に伺いたいのですが、実はこの
法律案として三十五年から六年にだんだんと繰り延べておられるわけで、これはすでに四年前こういうことが行なわれておりますが、これは必ず入れてもらえるのかどうかということです。永久無限にこう延ばされたのでは、何か法律をもてあそんでいるような
感じがして仕方がない。
そこで、私は、これから今の
日本の医療の
状態をちょっと簡単に申し上げて、それを含めて
一つ大臣のお答えをいただきたいわけですが、厚生保険の健康勘定で最近百八十億もの黒字ができてきたというので、
政府管掌健康保険の運営はまことにうまくいっているという評価があるとすれば、私はいささか問題があろうかと思っております。現在、
日本の医療というものは、世界では類のない社会的な進歩をしておりまして、その中で非常に犠牲を受けておりますのは、やはり医療担当者だというふうに私は理解をいたしております。その医療担当者もいろいろな形がございます。
一般の開業医の皆さんもあります。あるいはその他の官公
私立各種の病院に勤務をしておられる医師の方の問題もあります。また、それに伴って、一緒に従事をいたしております看護婦その他の従業員の問題もありますけれ
ども、これは、全般的に見まして、現在の
日本の
経済状態の動きの中で見ると、必ずしもこれでいいんだという
状態にないというふうに私は
感じておるわけであります。それをちょっと具体的に申し上げておきたいのでありますけれ
ども、最近、一年くらい前ですが、ちょっと点数改正ということでわずかばかり診療報酬が上がった時期がございます。しかし、実際に調べてみますと、厚生省が当初予期されたほどには上がっておらないというのが実情でありまして昭和二十六年に診療報酬が改められまして以来今日まで、見るべき診療報酬の単価としての値上がりはないというふうにわれわれは
考えております。しかし、片面、診療報酬のふえ方はだんだんふえておりまして、一診療所当たりで見ますと、資料がいろいろ不十分なんですが、社会保険の診療報酬基金が払っております一診療所当たりの支払額は、約十万円近くに平均値としてはなってきております。あとこれに
国民健康保険その他が加わりますから、もう少し
収入はあろうかと思いますけれ
ども、平均値として見ると十万円くらいの
収入があるわけです。これを、資料がございませんから、ちょっと他の面で調べてみたのですが、昭和三十三年度の厚生省が出しております患者調査というのがございますが、その患者調査で見ますと、大体一日当たりの診療所の患者数というのは三十六人だということになっております。健康保険の方では、診療報酬は一日一件当たりで百四十八円くらいに基金の資料がなっておりますので、それのかけ算をいたしますと、平均値で見るとかなりの額になっておりますが、実情を見ますと、これは私は
日本の統計の欠陥だと思うのでありますが、平均値は常にモードの山よりも上の方に出てくるというのが、大体の統計の姿でございます。
そこでちょっとこまかく調べてみますと、今申し上げた一日当たり三十六人というのは一体どの辺にあるかといいますと、診療所の総数の六〇%はそれ以下です。四〇%がそれから上にあるということで、大部分の診療所は平均値より低い。特に低いのは、一番分布の山がきておりますのは一日に十人から十四人、十五人から十九人というところが一番多くて約二〇%を占めておる。ですから、
日本の診療所のお医者さんたちというものは、一見すると非常にたくさん
収入があるように見えておりますが、分布の中で見ると非常に低い
状態になっておるというふうにわれわれは思っております。特に私
どもが非常に残念に思っておりますのは、皆保険ということになって、単価がきまっておりますから、その診療報酬のふえ方というのは、労働によって、たくさん患者を見ることによってしか
収入をふやす道がないというのが、現状になっておるわけです。そこで、診療報酬の
収入をふやすためにどういうことが行なわれておるかというと、普通ならば、われわれ
大学出身者であれば、朝の九時から午後五時くらいまで働けば、これで用が足りるというのが
日本の現状でありますけれ
ども、社会保険に従事をしております
一般の診療所の諸君は、朝の九時から夜の九時ごろまで現在働いておるというのが、全国的な実情です。昼間は往診その他に出て、夜は必ず六時から九時ぐらいまで診療しておる。これはなぜそういうことが起こるかというと、
収入が少な過ぎるために、どうしても一人でも多くの患者を見なければやっていけないというようなことが、こういう不規則な診療の
状態をもたらしておる。そういうふうに低い単価に押えつけて十分な報酬を払っていないで、百八十何億の黒字が出ておるというふうに私
どもは理解しております。
そこで、だんだんと厚生省の施策が進みまして、昭和三十六年度から皆保険になる、すべての患者は保険の患者になる、こういうことになって参りますと、一体どうなるかというと、現在の医師というものは、もう一方的に単価という形で
経済的な条件をくくられるということになってくるわけでありましてその点国の施策として十分考慮を払っていただかないと、
日本の医療というものが今後どうなるかという点については、私はいささか心配があるわけでございます、もう
一つ観点を変えて、それでは官公立病院の万はどうかといいますと、
国立の問題は別でありますけれ
ども、やはり多くのところでは、現在の収支が償われないために報酬が上げられない、さらに定員もふやせないというのが実情になっております。そこで、昨年出ましたように、勤務しております看護婦で結婚しております者について、要するに子供を生むについては、何年間は生んではならないというようなことで、人道上まことに遺憾な問題が一方では出てくるわけであります。あるいは
国立病院等に調査に行ってみますと、この
人たちが当然とらなければならない産前産後の休暇であるとか、生理休暇すらもとっていない。なぜとらないのかと聞いてみると、厚生省の方はとるべきであるとおっしゃるけれ
ども、休暇をとれば、定員不足のためにほかの人が迷惑するから、どうにもとれないというようなことで、みんなが無理をしてやっておる。その問題をずっとたどってみると、結局診療報酬の単価が異常に低いということにすべてが帰結してくる、こういうふうに
考えられるわけであります。
そこで、まず第一点として
大臣に伺いたいことは、皆保険になった場合における
日本の診療報酬の
あり方、これは厚生省が要求を出されることでございますが、要求を出されても、もとは
大蔵省の問題でありますので、
大蔵大臣としては、皆保険の時点における
日本の医療の診療報酬の
あり方が現在のままでいいのかどうか。もう少し適正な額に高められる必要があると私は
考えますが、その点について
一つお答えをいただきたいと思います。