運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-04-07 第34回国会 衆議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月七日(木曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小山 長規君    理事 坊  秀男君 理事 山下 春江君    理事 山中 貞則君 理事 佐藤觀次郎君    理事 平岡忠次郎君 理事 廣瀬 勝邦君       鴨田 宗一君    黒金 泰美君       西村 英一君    濱田 幸雄君       古川 丈吉君    毛利 松平君       久保田鶴松君    栗林 三郎君       堀  昌雄君    横山 利秋君       松尾トシ子君  出席政府委員         法制局参事官         (第二部長)  野木 新一君         大蔵政務次官  奧村又十郎君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      小熊 孝次君         大蔵事務官         (主税局税関部         長)      木村 秀弘君  委員外出席者         検     事         (刑事局刑事課         長)      河井信太郎君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 四月一日  委員鴨田宗一辞任につき、その補欠として今  松治郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松治郎辞任につき、その補欠として鴨  田宗一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  一般会計歳出財源に充てるための国有林野  事業特別会計からする繰入金に関する法律案(  内閣提出第七号)  特定港湾施設工事特別会計法の一部を改正する  法律案内閣提出第五九号)  国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一〇九号)      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これより会議を開きます。   一般会計歳出財源に充てるための国有林野事業特別会計からする繰入金に関する法律案特定港湾施設工事特別会計法の一部を改正する法律案国家公務員等退職手当法の一部を改正する法律案の三法律案を一括して議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 特定港湾に関する法律案に関連いたしまして二、三質問をいたします。本日は大体三つの点について質問をいたしたいと考えております。  最初に法制局の方にお伺いをいたしたいのですが、前回も委員会でちょっと質問いたしましたけれども、行政行為というものは法律に基づくことは当然でございます。その法律解釈適用については、いろいろ内閣法制局の意見もあろうかと思いますが、もしこれが裁判となって判例が出ておれば、その判例があらゆる解釈適用考え方に優先するものだというふうに私は考えますが、その点についての法制局のお答えを願いたいと思います。
  4. 野木新一

    野木政府委員 判例と申しましても、実はいろいろありまして、一番権威のありますのは最高裁判所の前例となる判決、そういう意味判例であります。これは法律解釈を最終的にきめるものでありまするが、それが確定しましたならば、行政庁としてはその解釈を尊重してそれに従うというのは、今の憲法建前からはそうなるべきものだろうと存じます。
  5. 堀昌雄

    堀委員 最高裁判例はもちろん一番確定したものだと思いますが、上訴審が二審において行なわれて、高等裁判所において行なわれて、そこで判決が下されて、それに対して検察側として上告をしていないという事例がもしあるとすれば、その二審における判決は、当然最終審判決であるという限りにおいては、やはり最高裁判例と同様の効力を持つというように私は考えますが、そこはいかがでございましょうか。
  6. 野木新一

    野木政府委員 純粋に理論的に考えますると、高等裁判所判決のことは、その事件に対しては最終的の判決になるわけであります。しかしながら、他の同種の事件がありまして、他の高等裁判所で何かそれに違った判決をすることができるかといいますと、これは場合によっては必ずしもできないわけではありません。そうすると、そこに高等裁判所同士判決の食い違いというものが生じますが、そういう場合には、それを統一するのが結局最高裁判所、そういうことになるわけであります。そういう意味合いにおきまして、高等裁判所とかその他下級裁判所は、最高裁判所判例というほど最終的の権威というものはないのではないかと存ぜられます。
  7. 堀昌雄

    堀委員 もちろん二つ高裁において類似の事例について二通り判決があったという場合については、あなたのおっしゃるように、そのいずれが最終審判例であるかということをきめるわけにはいかない。しかし、そういう事実がない場合——前提をよく確認をしていただきたい。そういう事実がない場合、第一の場合、第二の場合にその問題について検事側控訴上告をしていないという二つ事例が明らかにされておる場合における第二審の判決は、これは、その次に他の高等裁判所において、あなたのおっしゃるような、それに反する判例が生ずるまでは、少なくとも最高裁判決に準じた権威のあるものとして、法律解釈適用をそこに求めるべきである、こういうふうに考えますが、どうでしょうか。
  8. 野木新一

    野木政府委員 非常にむずかしい問題でありまして、訴訟法上告審のところの規定解釈の問題になると思います。刑事訴訟法四百五条以下に上告規定がありまして、これで見ますと、高等裁判所が第二審の判決をした、そして、憲法違反、あるいは最高裁判所判例と相反する判決をした、あるいは最高裁判所判例のない場合に高等裁判所の今までの判例と相反した判決をした、こういう場合には上告をするということになっております。そうしまして、今度は、最高裁判所判決といたしましては、四百十条におきまして「上告裁判所は、第四百五条各号に規定する事由があるときは、判決で原判決を破棄しなければならない。」すなわち、前に他の高等裁判所でした判決、または最高裁判例に違反する判決をその高等裁判所がしたという場合には、一応四百五条で上告事由になっております。そうして、普通の場合には、普通の判決として破棄しなければならない。ところが、四百十条にただし書きがありまして、「但し、判決影響を及ぼさないことが明らかな場合は、」破棄しない。また、第二項で、四百五条の第二号または第三号によりまして——これがむしろ問題になると思います。今の場合においては、前の高等裁判所判例に相反した判決高等裁判所がしたという場合には、四百五条でありますが、「第四百五条第二号又は第三号に規定する事由のみがある場合において、上告裁判所がその判例を変更して原判決を維持するのを相当とするときは、前項規定は、これを適用しない。」という規定がありまして、Bの高等裁判所がした判決は、さきにAの高等裁判所がした判決に反する判決であるけれども、最高裁判所が審議した結果、どうもさきにした高等裁判所判決が悪くて、あとでしたBの方の高等裁判所判決の方がやっぱり正しいという場合には、今の四百十条第二項の規定がありまして、「上告裁判所がその判例を変更して原判決を維持するのを相当とするときは、前項規定は、これを適用したい。」すなわち原判決を破棄しない。前の高等裁判所判決に反するあとのBの高等裁判所判決を破棄しないで、そのBの方の高等裁判所判決を維持する、そういう場合があるわけであります。
  9. 堀昌雄

    堀委員 私の伺ったことに直接答えておられませんので、簡単に答えていただいたらよろしい。私はこまかい法律論議をここでやろうと思っていない。原則的な、常識的な判断に基づいた話をここでしているのですから……。  私がお尋ねしたのは——あなたが、二つの違った高裁判決があった場合には、それは確定しないのだ、最高裁によらなければ確定をしないと言われたわけですね。片一方にAという高裁判決があって、今度はBが違った判決を出した場合には、いずれが判例として正しいかということは最高裁判決を待たなければわからないことだとおっしゃった。私もそうだと思う、そういうことがあったとすれば。しかし、事実は、Aという判決が下されて、その他にはそれに反する高裁判決がない。一つしかないのですよ。いいですか。その案件については一つしかない場合に、検事側としては上告をしなかったために、そこでそれが決定されたわけですね。最高裁まで行かなくて決定された。そうすると、その決定を行なわれた裁判があってから、次に何らか他の二審の高裁で同じ問題について違った判決が出るまで、あるいは何か問題が起こって最高裁判例が出るまで、その間に限っては、法律解釈としてはそれに基づかなければならないのではないか、こういうことを私は聞いているのですよ。だから、上告の問題を聞いているのじゃないのです。高裁判決権威と有効な範囲を聞いているのです。
  10. 野木新一

    野木政府委員 私の説明申し上げたのは、結局そこに関連するから申し上げたわけでありまするが、なお端的に申し上げますると、裁判所判決というものは、その事件についてのみの拘束力しか持っていないわけであります。しかしながら、その解釈は、裁判所が事案を非常に慎重審議して、しかも法律解釈もあらゆる点から吟味してきめたのであるから、おそらく他の裁判所下級裁判所高等裁判所最高裁判所もその判決に従うだろう、そういうことが予想されるので、従って、行政官庁も、それに反する解釈をすると、またあとで問題になって、裁判になると負けてしまう、そういうことがありますので、結局それを尊重していくということになるのでありまして、高等裁判所判決に、他の人々とか国家機関とか他の裁判所が、法的に、じかに拘束される、そういう効力はないわけであります。ただ尊重していくと  いう実際の機能はあるわけだろうと思います。
  11. 堀昌雄

    堀委員 憲法の七十六条には、「すべて司法権は、最高裁判所及び法律定めるところにより設置する下級裁判所に属する。」こうありますね。そうすると、司法権に関連のある行政行為解釈について、今あなたのおっしゃるように、憲法に明らかに、司法権裁判所に属すると書かれておるその権限を、行政庁の一方的解釈によって、次にそういうことを起こした場合に、裁判をして負けるかもしれないからやらないなどという、消極的な範囲に理解するのですか。司法権というものはそれほどあいまいなもので、行政権司法権に優越するとでもおっしゃるのですか。今のあなたの発言は私はどうしてもそう受け取れる。
  12. 野木新一

    野木政府委員 私は、純理的に、法律的に申し上げておるのでありまして、司法権最高裁判所その他の法律裁判所に属するというその司法権は、ある事件が起こって、その事件に対する判断をする、法律解釈適用する、そういう場合には、最終的な権限裁判所に属する。その場合に下した判決法律解釈、それはどの程度効力を有するかというと、法律的にはその事件についてその当事者を拘束する、そういう効力しかないわけです。そして、行政官庁がそれと異なる解釈をするといったって、これはもう明らかに、それに反する解釈をすれば、すぐ訴訟になって負けてしまいますから、そんなばかな解釈はしないわけです。他の裁判所だって理由は同じであります。ただ純粋理論的に言いますと、高等裁判所判決だからといって、それに反する解釈をするそのこと自体が法律違反だという問題ではないのじゃないかと存じております。その行政官庁解釈が間違っていたために、そのことが法律違反になるということはまた別問題ですが……。
  13. 堀昌雄

    堀委員 解釈をすることは私は自由だと思います。しかし、そこに法律解釈を明示したある高裁判決が出たとしますと、それはある事件に対する判決ではあるけれども、その事件に関する法律解釈を伴った一つ判例として見るのが私は常識だと思う。そうすると、その判例が出ておるにもかかわらず、そういう判例に反する——解釈をすることはいいですよ。しかし、解釈をして、それを行政運用の上に実施せしめるような指示行為を行なうことになった場合には、それは、なるほど法律論だけから見て違法かどうかは別としても、法治国の法律を運営する常識論から見て許されるべきではないと思います。これはどうですか。
  14. 野木新一

    野木政府委員 純粋の法律論から離れまして、結局妥当論適当論という問題になると思いますが、その場合においては、私は、具体的な事件はちっとも知りませんから、全く抽象的に議論しておりますが、たとえば高裁判決にまつわって法律解釈を示した、それに対して検事上告しなかったというのは、その理由は、検事がその法律解釈を全面的に承認して、全くそれは正しい、自分の方のとった解釈は間違っておったとか、あるいは審理の過程において間違っておったことがわかったという意味で、上告しない場合もあるでしょうし、法律解釈は多少問題点もあるかもしれないが、しかし、事件全体から見まして上告するだけの価値がないと思って、上告しない場合もあるわけであります。問題のあるのは前者の場合で、法律的に全く自分の方の考えは間違っておった、これはどう見ても高等裁判所解釈通りだ、きわめて明白だというので上告しなかった場合には、おそらく高等裁判所解釈が他の異説をいれないほど明白な場合で、そういう場合には、おそらく行政官庁だって当然それを尊重していく。それに異なる通牒とか解釈などをしても結局通らない。通らないということは、事件になって最高裁にいったときに負けてしまう。そういう意味でそういう解釈はとらない。それは当然そうなると思います。高等裁判所は、たくさんあるといっても、非常に権威ある裁判所でありまして、多くの場合、裁判所解釈を出すときには、あらゆる学説などを参照して、練りに練って判決を出すわけでありますから、よし最高裁判所でたまには破れることがあるにしても、普通の場合はそれを尊重するのが当然であります。しかしながら、法律解釈というものはなかなか微妙な点がありまして、ある高等裁判所ではその事件が通っても、他の高等裁判所あるいは最高裁判所判例の傾向と申しますか、他の事件については、そうでもない。場合によっては違う解釈も、誤判ぐらいのところはありそうだ。もし他に事件で同様な解釈をしたならば、堂々と争ってさらにその判例を改めたいという場合もあるわけであります。そういう場合でありまするから、結局、妥当論といたしましては、その判決解釈異説をいれられないような明白なものであるかどうか、まだ何か別の考えも取り得る余地があるかどうか、そういうことになろうかと思います。しかしながら、原則論といたしましては、高等裁判所判決が出た以上は、よほどのことがない限りは、やはりそれを尊重していくというのが、普通の信義であり、行政官庁の普通の態度じゃなかろうかと思います。
  15. 堀昌雄

    堀委員 そこでちょっと問題を具体的にいたしたいと思いますけれども、事件昭和三十三年六月二十六日に神戸地方裁判所において一審が行なわれた。そこで、これは何か船陸交通違反関税法違反の疑いがあって、税関監視部員がその沖仲仕某なる者を税関審理課というところへ強制連行しようとしたところが、他のそういう沖仲仕の者が出てきまして、その税関吏に対して暴行を加えた。そこで、その暴行を加えた事実は公務執行妨害であるということで、これの第一審は公務執行妨害という判決が行なわれた。二審の高裁においては、これは公務執行妨害とは認められないという判決があった。その後検事側上告をしなかった。現在は少なくとも昭和三十四年五月四日大阪高等裁判所において判決の言い渡しがあって、以後はそれに関する判例はない、こういう事実があるわけです。  そこで、私はこれは次官の方にお伺いをいたしたいのでありますが、ただいまちょっと原則論法制局から伺ったわけですが、最終的に高裁判決があって、その以後において他の判決最高裁判決がないという場合、そうして検察側上告をしないで、それが最終審として一応決定しておる。ただ被告の側が上告をしておるという事実があるんですね。そういうときに、大蔵省の方で蔵税第二三三七号、昭和三十四年九月十日、大蔵省税関部長木村秀弘という名前で下部文書がおろされております。この文書について私はいろいろ疑義があるので伺いたいのでありますが、まず根本原則として、そういう判例があるにもかかわらず、いろいろの判例の中に書かれてあったことをも含めて、しかしわれわれはそうは考えません、公務執行妨害だから、今後はこれに基づいてやれという達を出しておるわけです。これはしばしばここでも問題になりますが、特に私どもが行政官庁に要望いたしたいことは、法律定めというものは、大体においてある局限定められている。その局限を越えてはならないということは、行政官庁建前は、常にその局限ぎりぎり行使してもいいということではないと私は思うのです。私は、その局限というのは、今は高裁判決がその法律解釈についての局限だと思うのですが、その局限すら越えた行政のあり方を行政官下部に対して指導をするという考え方は、常識論からいっても行政官庁としてあるまじき行為じゃないか、こういうふうに考えるのですが、一つ次官の基本的なお考えをお伺いいたします。
  16. 奧村又十郎

    ○奧村(又)政府委員 私としてもまだ問題の具体的な詳細なことを承っておりませんので、はっきり御答弁はいたしかねますが、今の神戸高裁判決に対して上告検事がしなかったということは、法律解釈の上で高裁決定を承認したというのではなしに、法律解釈以外の事実認定ということで問題があったようであります。法律解釈において税関なり行政機関が間違っておったということが明らかであれば、これは、お話の通り高裁解釈通り行政機関の方でも指示を改めていかなければならぬ、かように思います。このようなことは、昨年も、当委員会において、国税庁の所管で税の執行の面における青色申告の取り扱いにおいて、高裁ではっきり判決があったにもかかわらず、国税庁態度を改めなかったということで、委員の諸君が取り上げられて、いろいろ検討した結果、国税庁の方も高裁方針通り理由の付記を正確にやっていく、また当委員会においてもそれを明確ならしめるために法律改正をいたした、こういうような事例もございます。法律解釈については御趣旨の通りにいたすべきである、基本的にはかように私は考えます。
  17. 堀昌雄

    堀委員 そこで、「達」の中に関連して少し具体的なことを伺いたいのですが、全部読み上げるのもなかなか大へんなので、要点だけを申し上げますと、   税関職員関税法違反現行犯人検挙に伴う職務執行に対する妨害暴行事件について、昭和三四年五月四日大阪高等裁判所において、公務執行妨害罪の成立を否定する判決言渡があった。   なお本件は同月七日弁護人側から上告の申立がなされている。   この問題については、税関職員の行う関税法違反事件調査に重大な影響を及ぼすものであり、これが上告について、法務省最高検察庁において慎重に検討されたが、次の様な理由から、本件については上告がなされなかったものの様である。  (理由)  (1)上告審においては、事実関係は、原則として控訴審の事実認定に拘束されるのであるが、  (イ)現行犯逮捕であるか否かの点についての控訴審認定は消極的と解される。(第一審判決では「関税法違反現行犯人逮捕する為の身柄連行妨害しようと企て」となっている)。  (ロ)任意同行であるか否かについても、控訴審任意性に疑があると認定されている。(控訴審判決中で「本件任意同行範囲を逸脱し、半ば強制的に連行した場合に該るから関税法第一一九条に規定する職務執行に当らない事明白である」と述べている。)従って、本件については、現行犯逮捕又は、任意同行のいずれを前提としても上告が困難である。  (2)判例違反がない。しかしながら、税関職員関税法違反事件現行犯人検挙に伴う職務執行解釈については法務省最高検察庁とも協議した結果、ここからが重要です。税関部としては、一応下記の様な結論を得たので、御了知の上今後この種の妨害があれば、公務執行妨害として、取り上げる事とし犯則調査に従事する職員にも、充分、説明周知方取り計らうと共に、当面の問題として、現行犯人検挙した場合の逮捕又は逮捕しない場合の身の処置等運用に当っては法律解釈を明確にし、且つ、その執行には、確固たる態度と意識をもって、臨む様、手続法の習熟、職務執行上の技術的教育訓練について充分留意ありたい。こういうふうにありますけれども、税関部長、これに間違いありませんね。  そこで、次に、「記」として「税関職員関税法違反現行犯人を発見し、これを現行犯人として逮捕連行する事は、公務執行妨害罪における「公務員職務執行」に該当する。」という断定をここで一つ下しておる。「この点について、税関職員職務犯則事件現行犯人逮捕し、これを連行する権限を認めた規定がないから、税関職員が行う現行犯人逮捕私人資格で行う逮捕であり、私人資格において、逮捕する者がたまたま、公務員の身分を有するからといって、これを「公務員職務執行」と認める事は出来ないとする消極説があるが、税関部においては、次の様な理由から積極説を採る。」そこで、今のような消極説があるからという、これは単なる「説」なんというものではないと思うのです。高裁判決がある一つ解釈を下して公務執行と認めることはできないとする消極説があるが、「税関部においては、次の様な理由から積極説を採る。」これは、高裁判決というものを一つの「説」として、そういう議論があるのだ。——学者が何か発表したという程度の「説」としてなら私はわかる。しかし、少なくとも現在の法治国家の中で、第二審である高裁における判決が単なる消極説などということで片づけられるような考え方の中に、私は、行政官としての、何というか、自分たちなら何でもできるという考え方、その片鱗が現われておると私は思うのです。  そこで、「イ、税関職員関税法により同法違反犯則事件については、調査権を有するから、現行犯人逮捕しこれを連行する行為は一面においては、私人資格においてなされる私人逮捕であると共に、」「一面においては調査権行使に伴う職務行為である。従ってこの面から該行為は「公務員職務執行」に該当するものと考える。」これは一方的な考えにすぎない。これは一面においては私人資格における逮捕である、こういうことを言っておるのですが、片面からはそれが調査権行使に伴う職務行為である。ここに私は問題があると思う。調査権行使という職務行為の内容は、こういう形で法律規定がされていない。何ら規定されていないにもかかわらず、勝手に該当するものと考えるということは、法律定めておる範囲を逸脱して、定めがなければ何でもやれる。この前からしょっちゅうここで議論になったのですが、定めがないからやれるのだということに私は通じておると思う。  次に、「なお、上記イ説の外、税関職員調査権行使する為に行う現行犯人逮捕及び、これに伴う連行刑事訴訟手続上は、私人逮捕に譲るとしても、かかる行為は、税関職員の当然の職務行為であるから、単なる、一私人逮捕行為と評価すべきものではなく、公務執行妨害罪規定によって刑法上保護されるべき「公務員職務執行」に該当するという積極説もある。」積極説もあるではなくて、積極説自分の方で利用しておるわけです。そこでずっと問題があるのですが、なるほど、法律的に見ると、現行犯逮捕ということは明らかに法律として認められる。しかし、これは、この達の中でも明らかにしておるように、「現行犯逮捕の場合は、刑事訴訟法第二一四条の規定により直ちに、これを検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない事になっているので、」こういうふうにはっきり自分の方で認めておる。「この場合、審理課本部に連行するという事はあり得ない。従って、もし、この様な取扱を規定した内規等があれば改める事。」というふうに書いておるところを見ると、税関考え方も、現行犯逮捕というのは、刑事訴訟法第二百十四条の規定により、直ちにこれは司法警察職員または検察官に引き渡さなければならないことになっているので、という解釈をとっている以上は、これは私人逮捕であるということをこの達の中ではっきり認めておるわけです。認めておるから、これによって検察官または司法警察職員に引き渡さなければならないのだということをみずからここに書いておることは、私人逮捕であるということをはっきり認めておって、しかしまたこういう面もあるのだからということを前段で書いておる。ここに私は非常に問題があると思う。  さらに、「現行犯逮捕の手続によらない身柄の拘束、強制連行はあり得ない。」こういうふうにその次に書いてある。「従って、被疑者が任意同行に応じない場合又は、逃走のおそれがある場合等においては、逮捕の必要性の有無を適確に判断し、必要があると認めた場合には、」逮捕をしろ。これは明らかに現行犯逮捕という刑事訴訟法二百十四条の規定を頭の中に考えて書いておる。こういう事実だと思う。だから、ここでは、こういうふうなことで、「税関職員関税法違反現行犯人を発見し、質問等の調査を行う為現場より審理課事務室まで任意に、同行を求め、これと同道する事は、公務執行妨害罪における「公務員職務執行」に該当する。」というふうに言っておるけれども、これについては、判例は明らかにそういうことは認められないのだということも、これは明らかだ。そこで、この文書はうしろに判例もくっつけておろされておるから、判例との関連において、この判例を無視して、公務執行考えでどしどしやれという指示をしたということに、われわれはこれは理解せざるを得ない文書なんです。だから、こういうふうに具体的に判例のいろいろな文章を引用して、なおかつしかしこの判例にはわれわれは従わないのだというこの考え方というものは、私は現在の行政官庁のあり方としてはいささか行き過ぎではないかというふうに考えるのですが、これについて、今申し上げた点、急なので御理解いただけない点もあるかもしれませんが、次官はどのようにお考えになっておりますか。
  18. 奧村又十郎

    ○奧村(又)政府委員 この文書はここにおります税関部長大村君が出した文書でありますので、私も実は今読み上げていただきましたが、十分頭に入りませんし、一つ出した張本人から御答弁を申し上げることにさしていただきたいと思います。
  19. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 先ほど法制局の方からお話がございましたように、高裁判決に対して検事上告をするかどうかという判断の基準として、二通り考えられると思うのでございます。一つは、その判決の内容が法律的に見て明白である。明らかに検察側法律解釈が間違っておった。従って、これは上訴して最高裁法律問題を争ってもとうてい勝ち目がない。勝ち目がないというとおかしい言い方になりますが、法律的に完全に破れたという場合に上告をしない場合と、それから、もう一つは、法律的には疑いがある。しかし、その事実認定が、最高裁は御承知のように法律審でございまして、事実認定は下級審にゆだねられておりますので、その基礎になる事実認定について高裁解釈に対して争う気持はないというために、法律的には疑いがあっても上告をしない場合、こういう二つの場合があるかと思います。それで、今御質問の場合は後者の場合でございまして、判決理由を読みますと問題点二つあるかと思います。一つは、この事件現行犯逮捕であるかどうかという点でございますが、これは、税関官吏が逮捕をいたしまして、しかもそれを税関審理課連行いたしております。現行犯逮捕でございますと、刑事訴訟法二百十四条以下によって、司法警察職員に引き渡さなければなりません。ところが、この場合は税関審理課連行いたしておりますので、これは現行犯逮捕ではない。法律上言う現行犯逮捕ではないのだという面が一点ございます。それから、もう一つは、しからば任意同行であるかという点になりますけれども、この場合にはその被疑者が逃走を企てております。それを実力でもって連行しておりますので、これは任意同行でもないということで、現行犯逮捕でもなく、かつまた任意同行でもないという点について高裁判断を下しております。これに対して、もし逆に考えまして、現行犯逮捕をしたにもかかわらず、その職務執行行為妨害をされた、あるいは被疑者が任意同行に応じたけれども、第三者が現われてその被疑者を拉致したとか、あるいは税関職員暴行を加えたとかいうような場合でございますと、これはまさしく法律解釈の問題でございまして、おそらく上告をいたしたに違いない。われわれ法務省、検察庁、最高検と御相談をいたしました際にも、そういう議論が出たのでございますが、もしそういう場合になおかつその税関職員行為が公務でないという判決でございますと、これは上告をいたさなければならぬ。しかし、今申し上げましたように、これは現行犯逮捕でもなければ任意同行でもないという前提に立っての判決でございますので、上告はしなかったと、こういう経過になっております。  それで、ただいまの、この通達の中に、調査権行使に伴う職務行為である、一面では私人現行犯逮捕であるが、一面では職務行為であるというふうに断定しておりますのは、関税法百十九条以下に、税関職員が犯財事件についてはいろいろな調査権を持ち、あるいは犯則を防止、検挙するための法律的な手段が認められておりましてこれは一私人が認められている以上の法律的ないろいろな行為権限を認められておるわけでございます。これは明らかに私人行為とは違うのだという点を強調いたしたわけでございます。それから、先ほどお話しになりました刑事訴訟法二百十四条の規定によって、もし現行犯逮捕ならば引き渡さなければならぬじゃないかというお話でございますが、これは明らかに法律上はその通りでございまして、従来のようにこの判決の基礎になった事実にございますように、現行犯逮捕をしながら税関審理課連行するというのは、明らかに手続上間違いである、従って、現行犯逮捕をしたからには、現行犯逮捕として刑事訴訟法規定に従って司法警察員に引き渡すべきであるという点を、間違いのないように指導したつもりでございます。そういうことでございまして、今の上告しなかった理由が、法律的に一点の疑いもないという理由上告をあきらめたのではございませんので、その点を一つ誤解のないように御理解をいただきたいと思います。
  20. 堀昌雄

    堀委員 実は、これは上告をされておりますから、おそらく最高裁においてもこの問題については何らかの判例が出ると思いますから、私は、その最高裁判例を待って、またあらためて問題にすればいいと思います。ちょっと念のために申し上げておきますが、その判決文の中には「関税法第一一九条乃至第一三六条の諸規定によれば税関職員関税法上の犯則事件のため必要があるときは、犯則嫌疑者もしくは参考人に対し、出頭を求め、その他質問、検査、領置、一定の制限下における臨検、捜索若しくは差押等の処分をなす権限を有していることは認められるけれども、税関職員職務犯則事件の現行犯を逮捕する権限を認められた規定はこれを発見できないのである、しかし現行犯人は何人でもこれを逮捕することができるのであるから税関職員といえども現行犯人を発見したときは、私人資格においてこれを逮捕できることは論をまたないところである。けれどもこの私人資格において逮捕する者がたまたま公務員の身分を有するからとて、これを目して公務員職務執行に該るものとは到底認められないし、又神戸税関監視部長の命により内部的に実施せられている職務分掌規程中に税関職員犯則事件の現行犯を認めたときは、犯人に対し同行を求め得る定めがありとするも、これはとって以て公務員の法令上の職務の根拠とも解し得られないのである。」こういうふうに明らかに判決文に明示をされておるのであって、これだけの法律解釈が明示されておるその判決を、今あなたのおっしゃったようなことで上告しなかったかどうかという点については、私はいささか疑義がある。しかし、これは今ここで見解の相違を争ったところでしようがありませんから、問題は最高裁判決が下ってからあらためて私は論究しようと思うけれども、ただ、問題は、こういう事件を通じて流れておるあなた方のものの考え方を、私は少し反省をしてもらわなくては困るのではないかということであります。私がもし税関部長であるならば、私はこういうことは出さない。こういう判例があった、そこでこの問題は目下上告をされておるから、いずれ最高裁において判例が出た際には、あらためてそれに基づいて正しい指示をする、しかし、その間においては、少なくともこういう問題の判決例もあるから、過誤のないような取り扱いをすべしと言うことがしかるべきであって、その判決を乗り越えて、最終審判決がまだないから、それはなるほど決定的なものではないといえるにしても、もし最終審判決でやはりこれと同じ解釈がた出としますれば、あなたの責任はどうしますか。そこを一ペン聞きたい。
  21. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 これは税関職員関税法上の犯則事件に対するこういう行為職務行為でないということになりますと、非常な問題でございまして、通常の、法律を離れた常識論としましても問題でございますが、法律論としましても、たとえばかりにこの現行犯の犯人を逮捕したところが傷害を受けたというような場合に、これが公務上の傷害でないというような結論になりますと、これは税関職員の士気に非常に影響するばかりでなく、おそらく最近の凶悪な犯則事件、密輸等の検挙に対しては致命的な打撃があるものと考えるわけでございまして万が一最高裁判所においてこれと同一の内容を有するような判決、たとえば現行犯逮捕の場合でも、これは一私人行為であって、職務上の行為ではないというような判決が出たとしましたならば、申し上げたように実際上の影響も非常に大きいものがございますので、あらためて法律案を提出いたしまして、警察官職務執行法におけると同じような、これが確実に職務行為であるという法律を作っていただく必要が起きるのじゃないかというふうに考えております。
  22. 堀昌雄

    堀委員 実は、私はここで今のお話を聞いて非常に問題が起こると思うことは、税関職員の行なうべき権限範囲と司法警察官の行なうべき権限範囲を、あなた方は少し混同してはおらないかということであります。なるほど、その現場において起こるいろいろな問題については、一番先に税関職員がその衝に当たるのは当然であるけれども、しかし、現在の日本の憲法建前からすれば、基本的には、司法権というものは、その末端は司法警察官の範囲に属するものであり、あるいは巡査とか、そういう系列の範囲に属するものであって、あなたの今の考え方からするならば、税関の監視職員なるものは、ともかくも司法警察官と同様の権限を持たない限りは何もできないという意見に通じてくると私は思う。今の警職法と同様なものを持たなければならないのだということになれば、これは現行法の建前といささか違う観点に立たなければ、そういう議論は出てこないのではないか。だから、私は、何も密輸犯人を見のがしていいとかなんとか、そういうことを言っておるわけではないけれども、少なくともその観点において税関の監視職員の行なうべき権限範囲と、司法警察官の行なうべき権限範囲というものは、そこで連なってはおっても、やはり明らかにしておかなければならない問題ではないか。もしあなた方の言うようなことをやるならば、今度は、なるほどそれが事件になるような場合ならばいいけれども、税関構内においては、監視職員というものは絶対的な権限を持って、何かあれば片っ端からすぐ逮捕だとかなんとかいうことが行なわれる道を開くもとになる危険があると私は思う。だから、問題は、そういう人権を不当に制限することのないように法律定められておると私は考えるので、そういう考え方については、やはり税関職員職務範囲と、司法警察官の職務範囲というものを明確にして、そうして問題を処理するという考え方の上に立つべきではないか。今の考え方で行って、もし最高裁でこういうことが出たら、今度は警察官と同様の権限税関職員に与えてもらうような法律改正をするのだというような方向の考え方が正しいかどうか、私ははなはだ疑問がある。そういう点で、ものの考え方として次官はどういうふうにお考えになるか。私は、やはり現行の法律範囲で行ない得ることを、それ以上にわたって行なおうとするところに無理があるのだから、現行の法律範囲の中で行ない、そうして問題がある場合には、司法警察官の協力を求めればいいのであって、それを、司法警察官の協力によらないで、自分の方で何でもかんでも相当程度やろうとするところに、この問題の非常に危険な要素を含んでいる、こういうふうに思いますが、そのところはいかがでございましょうか。
  23. 奧村又十郎

    ○奧村(又)政府委員 私は、委員諸君とともに今の御質問の内容を承りまして、税関職員の責任と権限において、法律規定に少し不備があるんじゃないかという感じがいたすのであります。というのは、現行犯をつかまえたが、それは私人行為であるという裁判所解釈であるとするならば、それじゃ第三者が現われてそれをまた妨害されて、現行犯を逃がされた場合に、税関職員公務執行妨害を受けたのではないということになる。お聞きの通り密輸業者の中などにはずいぶん悪らつな者もありますので、おそらく税関職員は完全な職務執行することができないんじゃないか。これは犯則取り締まりの税務職員にも同じようなことが言えるが、税務職員にはある程度司法権も委任されておると思いますので、こういうことを考え合わせまして、法律に不備があれば改正しなければいかぬ。私も実は神戸税関に四、五年前に視察に参りまして、その問題だけではなしに、関税法等について、取り締まり上非常に不備があるということを痛感していますので、今ぴたっと御答弁を申し上げることはできませんが、よく御趣旨の点を検討いたしまして、もう少しはっきりした御答弁を次会にお答え申し上げたいと思います。
  24. 堀昌雄

    堀委員 今の問題は御検討いただくようですが、ただ私が触れたいことは、今の逮捕することの問題とかいろいろな問題よりも、高裁判決が出たら、それにかぶせて、すぐ通達として、それは消極的な意見もあるけれどもなどという態度に問題があるという点を特に私は問題にしておるのであって、執行妨害だとかなんとかいう事実問題よりも、そういう通達のあり方を問題にしておるという点は御理解をいただいておきたいと思います。  次に、非常におかしな事件がありましたのは、これはまた神戸税関なんですが、昨年年末に——私話を聞いてみますと、税関職員というのは、昨年から少し早く休めるようになったようですが、なかなか休みがもらえない。三十一日ぐらいまで働かされる。公務員ですから、普通みな二十九日から三日まで一般的な慣行として休んでいるということになっておるのにかかわらず、税関職員だけは年末ぎりぎりまで仕事があるということで、その組合の方が少し早く休めるようにしてくれという話し合いが一昨年から行なわれて、一昨年のときには、来年からは非常に早くちゃんと休めるようにしたいという何か官側の回答があったにもかかわらず、昨年も十一月中旬になって、依然としてそういうふうな問題が進捗をしない。そこで、神戸税関の組合の組合長か何かが、文書で、業者に対して一つ二十六日ぐらいまで手続を終わってもらいたいという文書を出した。ところが、その文書を出したことが不当であるということで、この委員長は何か文書による訓告という処分を受けて、昇給が停止をされたという事実が実はあるのです。これは、聞いてみますと、今度は全税関委員長である人がやはりそういう文書を出しておるということで、この四月一日かには昇給停止処分を受けた、こういう事案があるようです。それについて私よくわからないのは、問題は二つあると思います。  その二つということは、現在の税関業務というものが、私ちょっと調べてみましたら、最近非常にふえて参りました。これは輸出、輸入がふえておるということで、国の政策としてはまことに望ましい方向だと私は思いますけれども、人間の方は一向にふえておらないというのが実情である。私これは数で調べてみたのですが、神戸税関について見ますと、業務、鑑査というところが特に税関における通関事務及び仕事の実際を担当しておる。その一人当たりの件数の伸びを調べてみたのですが、昭和三十三年から三十四年に対して一人当たりの件数の伸びというものは、神戸税関で約二二%、正確には二一・八%、名古屋税関でも一五%の伸びを示しておる。おそらく今後貿易の伸長に伴ってますますこの問題は輻湊をきわめてくるだろう、こういうふうに第一に考えるのです。ところが、さらに調べてみると、この通関のいろいろな処理というものは、月間を平均して行なわれておるのじゃなくて、月末に集中するという傾向がある。これはいろいろな積み荷の関係やあるいは為替の関係その他の関連で、いろいろと行政指導もされておるようだが、月末に集中する。その月末も特に十二月の年末に集中するという傾向が特に強いという一つの事実があるわけです。この事実をどうするかという問題も一つあろうと思いますが、ただそういう実情の中で、年末ぐらいは一つ休みたいというのが、日本の一般の慣行上から見て、当然なことじゃないかと私は思うのです。にもかかわらず、これまでは、管理部門は別として、その他の業務のものは年末といえども休めなかったという実情にあったので、これを休ませてくれという要求は、私は必ずしも不当な要求ではないと思う。それについていろいろと交渉をしておったけれども、官側としては十分な交渉に応じていない。いよいよこの問題になったら、とたんに、何か執行委員は六名で、面会時間は一時間を限ってなら会うけれども、それでなければ会わぬと言う。神戸税関の方では、この年末年始の休暇の問題を始めたら、そういう問題は別個に持ち出されたということで交渉がおくれておるので、やむを得ずそういう文書を出した、出したところが、処分をされて昇給が停止した、こういうことなんです。そこで、調べてみると、別に業務を阻害したわけでもないし、何にも実害というものはどこにも与えていない。にもかかわらず、何か文書による訓告処分というものが行なわれた。税関部長、これは一体何に基づいてそういう訓告処分が行なわれるのか、そしてその昇給停止ということは、どういう法律的根拠に基づいて行なわれておるのか、それをちょっとお伺いしたい。
  25. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 事実はただいまお話しの通りでございます。ただ問題は、委員長が外部の業界、各商社に出しました手紙の内容でございましてこの手紙の内容を読みますと、自分たちの希望、年末年始は休みたい、協力を願うというような単なる希望の表示ならば、さほど問題はないと思いますけれども、その内容を見ますと、十二月二十九日でございましたか、以降から正月の三日までの間は一切の税関業務を行なわないことに決定いたしました、こういう内容になっておるわけでございます。ということは、結局、外部の人から言わせますと、税関でもって一切の業務を行なわないことにきめた、窓口へ行っても仕事を受け付けてもらえないのだという誤認を与えるというふうになりかねないのでございまして、われわれ税関部の方、あるいは税関の方にも、業界の方からひんぴんとして暮れに問い合わせがございまして、こういうふうな文書が回ってきたが一体それはほんとうか、税関はもう十二月の二十九日以後は仕事を受け付けないというのかどうか、これは事実かどうかというような問い合わせがひんぴんとして参っておりまして、その結果、われわれも、そういう文書が出されておるということがわかったわけであります。そうしますと、御承知のように、関税法建前としましては、休日あるいは日曜あるいは執務時間外であっても、臨時に開庁を申請する者があるときには受け付けなければいかぬというふうに、税関は、特別に船の出入り、航空機の出入り等の関係がございまして、執務時間外の執務ということが法律上義務づけられておりますので、ましてや年末年始に仕事をやらないことがきまったという誤認を外部に与えたということは、税関職員としての仕事のしぶりから見て非常にまずいということで、何らかの処置をとらなければいかぬ、しからば公務員法上の戒告、減給あるいは懲戒、免職というような重い処分をすべきかどうかということになりますと、必ずしも、今仰せになったように、すでに実害を与えておるというところまではいっておりません。これがほんとうに罷業行為であって、実際に仕事をしなかったということになりますと、公務員法上の問題が起きて参りますけれども、未然にそういうことを防止しまして、業界に対しても、これは組合の希望を言ったものであって、多少表現において行き過ぎておった、実際はそういう仕事を年末年始にやらないということではないのだということを説明いたしまして、結局実害が届きなかった関係上、公務員法上の処分をするにも至るまいということで、一応文書によって厳重に注意をする、いわゆる従来の行政官庁の慣例にあります訓告処分をするということにしたわけでございます。  それで、第二百一段の問題としまして、文書による訓告をした場合に昇給を延伸するかどうか、これはどういう根拠があるのかという御質問でございますが、これは、大蔵省の官房できめております昇給の基準としましては、成績優秀なものを昇給させる。いわゆる昇給は期限がくれば自動的になるというものではございませんので、期限がきたものの中から成績の優秀なるものを昇給させるという規定がございまして、従来の慣例としましては、そういう訓告を受けたものにつきましては昇給を延伸するという取り扱いになっておりますので、今の場合もそれと同一の取り扱いをしたわけであります。
  26. 堀昌雄

    堀委員 第二段の昇給のことをちょっと伺いたいのですが、大蔵省の官房で昇給をさせる基準は、今あなたの方では成績優秀なものを昇給させるという一つの規則を出しておる。それはあとでその規則を見せていただきたいのですが、しかし、昇給については、やはり皆さん方は国家公務員を扱っておるのだから、少なくとも人事院規則の範囲を逸脱してはならないと私は思います。そうなると、人事院規則で、昇給の運用についての通達というのが昭和二十三年十月四日結実甲一四四号で出ておりますが、この中で、昇給させないものは、勤務成績判定期間において停職、減給あるいは戒告処分を受けた職員ということが明記をされておって、それ以外についてはルールとしては昇給を差しとめる理由はないというふうに人事院は通達を出しておるにもかかわらず、大蔵省が単独でそういうことをきめたという法律的根拠はどこにありますか。
  27. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいまの人事院規則の問題でございますが、人事院規則には、昇給を停止する、いわゆる無条件に停止することのできるものを列挙してあるわけでございまして、しからばその列挙された以外のものは必ず昇給させなければならないかどうかという点になりますと、これは必ずしもわれわれそう解釈いたしておりません。昇給することができるという規定になっておりまして、たとえば昇給原資の問題から有資格者であっても昇給ができない場合もありましょうし、あるいは各省の認定によりまして成績がよくない、あるいはそのほか重過失があったというような場合に、必ずしもそういうものを昇給させなくてはならないということにはなっていないかと思います。いわゆる昇給させることができるということでございまして、もちろん非常識な基準でもって昇給基準を作るということは問題でありますが、一般的に常識的な範囲の基準は各省にゆだねられておるものと思います。
  28. 堀昌雄

    堀委員 そこで、私は、問題があると思うのは、あなたの方は成績優秀とかあるいは過失があるとかいうことを今例証されたのですが、それは公務員としての勤務の範囲内に関するものであって、組合の委員長として行なった行為と、その本人が公務員として行なっておる問題とは、おのずから区分をして考えるべき問題である、私はまずこう考えるのです。特に問題が、さっきお話しのように明らかに職務上の問題として、人事院通達にあるように、停職、減給または戒告処分を受けるというような職務上の問題に関連をしておるならば、これは私も何をか言わんやです。しかし、そうではなくて、明らかに認められておるところの職員団体であるところの組合に属して、たまたまその組合の決定に従ってある行為がされて、なるほどそれは委員長名で行なったかもしれないけれども、それは、委員長が、個人としてあるいは公務員そのものとして、自分がやっておる仕事そのものとしてということではなくて、他の立場に立って行なった行為を、あなた方の方は、行政上の処分ではないのだという格好をとりながら、何か内規によるところの問題で処理をするということは、私はいささか行き過ぎではないかと思う。ちょっとここで文書を読み上げますが、あなたのおっしゃったこととこの文書の内容はいささか違うのです。あなたは、今、二十九日から三日までは業務をしません、だから受付はできないのだというふうなことをきめたと書いてあると言ったが、そうではなくて、「私達は、本年は全税関統一して他の公務員並みに、二十九日より三日までの休暇は完全に休むことを決定致しました。」要するに、これらの人間が、組合の中でこの間は休みたい、休むということを決定した。「どうか皆様方におかれましては、種々の困難もあろうかと思いますが、私達のこの決定に御協力下さいまして、混乱を避けるため本年中に輸出入の許可を必要とする申告書類については十二月二十六日の執務時間中までに窓口へ提出されるよう関係業者各位に周知されるようお願い致します。」この程度文書であって、税関は業務を取りやめますとか、取り扱いませんということではなくて、組合員の立場としては休みますということをきめたのは、これは何ら税関行政を問題にしておるのではなくて、組合員が、二十九日から三日までみんなが休んでおることで、われわれも休みたいのだから休みますという通知を出したにすぎない。それを、あなたが今おっしゃるところでは、そうではなくて、業務をしないのだというふうな格好の通知をしたように言っておられるが、事実と相違をしておる。この程度のことを出したら、そういう文書による訓告をして、昇給はすぐストップさせるということは——私は、労働組合というものがあるのは、やはりいろいろな行政をうまく運営をしていくために、それらの個々の者と官側が話し合いをするわけにはいかないから、組合というものが法律によって認められて、そこでそれらの代表と皆さんの方で交渉することによって、行政事務を円滑ならしめる目的で、労働組合というものは置かれておると私は思う。その円滑ならしめるために置かれておる組合の諸君が、この問題について話し合いをして申し入れをしておると、これまでは十五人の執行委員みんなに会っていたにかかわらず、突然として、この年末の休暇の問題が出てきたら、それからは六人を限ってでなければ会わない、時間は一時間以上は会わないというような制限をつけたのです。なぜ制限をつけなければならないのか。こういうふうなことは公務員にとって私は当然だと思う。日本の慣習として二十九日から三日までみんな休みたい、管理部門は休んでおるという実情の中で、税関だけは忙しいのだから、何とかこれは配慮してくれといって前々から話が出ておって、その話し合いをしたいと言ったら、そういう制限を片方でつける。そしていつまで時間がたってもなかなか話し合いが再開できないので、やむにやまれずこういう文書を出して協力を要請をしたら、税関行政を何か混乱に陥れたとして処分をして——訓告の注意を与えることは、その範囲はやむを得ないと思います。やむを得ないが、実質的な被害も何も起こっていないのに、みせしめのために昇給停止をしてやるという態度では、やはり民生的な行政を阻害する方向にいくのではないか。  最近ずっと話を聞いてみると、最近、特に税関行政においても、強権をもって労働組合を圧迫しようというような空気が各所に見えておる。たとえば、この間参議院で問題になったようでありますが、ある執行委員を目ざして、密輸の関連事件ではないかということで、非常にきびしい追及をした。事実はどうもそうでないということがわかって、今はそのままになっておるが、特にそういう組合役員に対して、何か意図のある行為がいろいろと散見されるということは、私は、やはり民主的な行政を運営する点においては、少し反省してもらわないと困るのではないかと思う。あなた方が力で押えればそれで済むというものじゃない。力で抑えれば、下もやはりそれに対して力で対抗しようということになるのが世の中の筋道であって、やはり官側も被用者の立場に立っていろいろ考慮を払っておけば、当然また組合の方でも協力すべきことは協力するというのが、人間関係としては望ましい姿ではないかと思うのに、一方的に上から圧力を加え、それによって何らか自分たちの意図をやっていこう、あるいはさっきちょっと触れましたように、非常に仕事も忙しくなっておる。その中では、やはり仕事も忙しいが、それに伴っては、われわれの方では、こういうふうにして、皆さんの努力に報いたいという考え方があるならば、私はある部分のそういう労働の過重に対しても、必ずしも税関職員が反対をするとは思わないけれども、労働は過重にし、休暇をこういう格好で人並みにしてくれといえば、それはなかなか応じないし、たまたまやむにやまれず文書を出したら、これは訓告で昇給停止にする。何か言えば上からたたいていけばそれで済むという考え方では、円満な行政は運営できないのではないか。特に現在の地点に立って、貿易の伸張が叫ばれておるときですから、やはり定員の問題を含めて、大蔵省はこれらの職員が不当な状態で労働に従事することのないように留意してもらいたいと思いますが、まずその前に行なうべきことがあるのではないか。行政上のいろいろの指導にしても、その他現在の地点でも行なえることがあるのではないかと思いますが、それを行なわずして、要するに力によってこれを何とか切り抜けていこうという考え方は、この際改めてもらわないと困るのではないか、こういうふうに思うのです。そこで、そういう問題について、次官のお考えを承りたい。
  29. 奧村又十郎

    ○奧村(又)政府委員 ただいまの堀委員の御意見につきましては、全く理路整然として、私どもも非常に参考になり、また考慮すべき点が多々あると思います。私も、政務次官として大蔵省部内に入りまして、今お話しのような点を実は痛切に感じております。税関部の労働組合に対するやり力はまだ詳しく調べておりませんが、国税庁における全国税などに対するやり方に徴しましても、どうも労働組合が勤務条件について話し合いをするという組合の目的に対して、もう少し役所と申しますか、政府側も勤務条件のことをお互いに話し合って、できるだけよくして、そのかわりにしっかり行政をやっていってもらうという、もう一つ何といいますか、熱意と申しますか、態度が足りないのではないか。特に、私は、個人として株式会社その他を経営しておりまして、個人的な会社あるいは事業会社と比べると、政府の公務員を使っていくという、ちょっと言葉は悪いが、公務員を働かしていく政府の態度は非常にまずい点が多いと思うのです。もっと待遇を考え、あるいは公務員宿舎をふやす、あるいは徴税費その他の経費も必要なものは見る、そのかわりにもっとしっかり働かせるということをしなければならぬのですが、その点が欠けておる。ただいま具体的にお示しになりました神戸税関のことにつきましても、お説の通り組合として年末の休みは休みたい。しかし、これは詳しい事情はわかりませんが、まず税関部内で上司に話をして、外部に対するのはあとにしていただくべきだと思います。上に話をすることも、いや六人に限るというふうなことで、話しにくいということで、上が力で押えるなら、下も力で向かうというふうなことで、どちらもどちらになるので困ったものと思いますが、全くお説の通りの事情があろうかと思いますので、これは一つ部長その他とよく相談して善処いたしたい。ただいまのお話しのように、組合長のやったことを公務員行政上の処罰と同じようなことをやったのでは、これは組合を育成することには全くならぬので、そういったあり方が間々あったように見受けますので、それじゃ組合を健全に育てていく道じゃない。これは全く私は同感であります。一ぺんよく部内と相談してみたいと思います。
  30. 堀昌雄

    堀委員 私どもが考えておることと一致した次官の御答弁をいただいて、大へん私満足いたしておりますが、今後とも今の御答弁の趣旨に沿って、一つ国税、税関その他大蔵省の各職員組合が、やはり官側と対等の立場で交渉ができ、ざっくばらんにお互いの話し合いができるような条件を官の側ではとるような——これは税関に限りません。大蔵省職員全般に通じて、そういう態度で官側は接するように御指導を特にお願いしておきたいと思います。  以上で終わります。
  31. 植木庚子郎

    ○植木委員長 ただいま議題となっております三法律案中、一般会計歳出財源に充てるための国有林野事業特別会計からする繰入金に関する法律案についての質疑はこれにて終了いたします。     —————————————
  32. 植木庚子郎

    ○植木委員長 なお、本法律案に対しましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。  採決いたします。本法律案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 植木庚子郎

    ○植木委員長 御異議なしと認めます。よって、本法案は原案の通り可決いたしました。  ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 植木庚子郎

    ○植木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、明八日午前十時四十分より皇居及び大宮御所を視察に参ることになっておりますから、多数委員諸君の御参加をお願いいたします。  次会は来たる十二日午前十時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。     午後零時十六分散会