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1960-03-08 第34回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月八日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 足立 篤郎君 理事 小山 長規君    理事 坊  秀男君 理事 山下 春江君    理事 山中 貞則君 理事 佐藤觀次郎君    理事 平岡忠次郎君 理事 廣瀬 勝邦君       荒木萬壽夫君    押谷 富三君       鴨田 宗一君    黒金 泰美君       田邉 國男君    西村 英一君       福井 順一君    毛利 松平君       山本 勝市君    石野 久男君       石村 英雄君    加藤 勘十君       栗林 三郎君    堀  昌雄君       横山 利秋君    大貫 大八君       松尾トシ子君  出席政府委員         法制局参事官         (第三部長)  吉國 一郎君         大蔵政務次官  奧村又十郎君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      小熊 孝次君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         国税庁長官   北島 武雄君         運輸事務官         (海運局次長) 若狭 得治君         運 輸 技 官         (船舶局長)  水品 政雄君  委員外出席者         大蔵事務官         (銀行局特別金         融課長)    磯江 重泰君         大蔵事務官         (国税庁間税部         長)      泉 美之松君         大蔵事務官         (国税庁徴収部         長)      勝原  啓君         農 林 技 官         (食糧庁業務第         一部長)    諌山 忠幸君         通商産業事務官         (通商局次長) 倉八  正君         通商産業事務官         (重工業局鉄鋼         業務課長)   宮沢 鉄蔵君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月三日  委員濱田幸雄辞任につき、その補欠として山  口六郎次君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山口六郎次辞任につき、その補欠として  濱田幸雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月四日  旧陸軍の永年勤続女子共済組合員年金支給の  請願外一件(濱野清吾紹介)(第七二九号)  各種学校を設置する公益法人に対する課税措置  撤回に関する請願橋本龍伍紹介)(第七三  一号)  同(廣瀬正雄紹介)(第九一九号)  旧満州国政府職員期間の通算に関する請願(正  木清紹介)(第七八二号)  同外一件(横路節雄紹介)(第八二六号)  登録税法の一部改正に関する請願關谷勝利君  紹介)(第八七一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  酒税法の一部を改正する法律案内閣提出第二  八号)  昭和二十八年度から昭和三十四年度までの各年  度における国債整理基金に充てるべき資金の繰  入の特例に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第五号)  経済及び技術協力のため必要な物品外国政府  等に対する譲与等に関する法律案内閣提出第  六号)  臨時受託調達特別会計法を廃止する法律案(内  閣提出第九号)  補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第七二号)      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    ○植木委員長 これより会議を開きます。  御報告いたしますが、先日委員長に御一任願いました参考人の件につきましては、東京銀行常務取締役神野正雄君が来たる十日午前十時三十分より出席されることになりました。御了承を願います。      ————◇—————
  3. 植木庚子郎

    ○植木委員長 酒税法の一部を改正する法律案昭和二十八年度から昭和三十四年度までの各年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律案経済及び技術協力のため必要な物品外国政府等に対する譲与等に関する法律案臨時受託調達特別会計法を廃止する法律案及び補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案の五法律案を一括して議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。堀昌雄君。
  4. 堀昌雄

    堀委員 本日は、酒税の問題の中で、いろいろと資料を見ておりますと、どうも納得のいかない問題が少しございますので、この問題はすでに昨年の十二月九日当委員会におきまして横山委員が問題として取り上げておいでになりますけれども、その会議録を拝見いたしますと、政府側答弁に十分に納得ができない点が多々ございますので、きょうあらためて少し法律的な問題を含めて質問をいたしたい。私も実は酒についてはしろうとでございますから、あまり事情が詳しくわからない点で、あるいは見当違いのことがあるかもわかりませんが、それは御了承願うといたしまして、きょう私が伺いたい問題は、委託醸造の問題と中央保有米制度のことであります。  最初に、委託醸造昭和三十一酒造年度から始められておるように思うのでございますが、これは昭和三十一酒造年度から通達か何かをもってこういう取り扱いを認めるというようなことが行なわれておるのかどうか、承りたいと思います。
  5. 泉美之松

    泉説明員 お尋ね委託醸造という問題でございますが、通達で正式に認めましたのはお話のように昭和三十一酒造年度からでございますが、その前、御承知のように、敗戦の際戦災で倉が焼けたのがかなりあったわけでございます。そういった倉が焼けました場合におきまして、原料米配分は受けたけれども自分のところで作ることができないというような場合が起きましたので、そういう場合、自分の倉で作れないので、よその倉へ委託して作るということが行なわれておりました。これは昭和二十酒造年度から二十六、七年ごろまで行なわれておりました。しかし、その間倉の整備が行なわれまして建物ができましたので、一時やまっておったのでございますが、その後需給関係の変動に伴いまして売れる人と売れない人とが出まして、その間の需給の調整をはかるという意味で、昭和三十一年から通達によってそういう取り扱いを認めた次第でございます。
  6. 堀昌雄

    堀委員 そういたしますと、昭和三十一酒造年度までは、業者間の慣行のような形で行なわれておりましたものを国税庁は黙認をしておった、ところが、昭和三十一酒造年度からは、国税庁が正式にこの制度を認めたということになりますと、その行なわれておりますものは、これについて問題があるとすれば、その責任国税庁が負うということに理解してよろしゅうございますか。
  7. 泉美之松

    泉説明員 私の説明が若干足らたかったかもしれませんが、昭和二十年から二十六、七年ごろまで暗黙の間に認めておったというわけではございません。過去の記録が非常に古いものでございますから、はっきりいたさない点がございますけれども昭和二十五年当時ははっきり通達でそういうことを書いてございますので、その当時もう正式に認めておったものと考えられるのでございます。  なお、お尋ね委託醸造の問題は、国税庁通達で認めておるのだから、それによって生ずる責任国税庁にあるということは、お尋ねの通りでございます。ただ、私どもといたしましても、これらについて必ずしも満足いたしておりません。いろいろ改善をいたしたいという気持は持っております。また現にそういう努力をいたしてはおります。
  8. 堀昌雄

    堀委員 法制局の方にお伺いいたします。現在政府が行なっております行政権というものは、憲法の定めるところによって、ある一つルールが定まっておると思うのであります。そこで、行政権の行ない得る範囲というものは憲法の定める範囲、要するに法律または政令に基づく範囲と私は理解をいたしますが、法律または政令に基づかざる行政行為というものはどういう関係権限が生じてくるか、その点をちょっとお伺いいたしたい。
  9. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいまの御質問は非常に憲法の根本に触れたむずかしい問題でございますが、もちろん、行政官庁権限といたしましては、法律または政令に基づくもの以外にはございませんが、ただ、現在各省設置法規定がございまして、その設置法規定の中で、技術上の問題といたしまして、当然法律または政令に基づくことを必要としないような行為がございます。そういう行政上の行為につきましては、設置法だけの権限に基づいて行なっておるようなものもございます。たとえば、農林省について申し上げれば、農山漁家生活改善というような問題につきましては、技術上の行為として種々の指導とかあっせんとかの行為が行なわれるわけでございますが、これにつきましては、特段の法律規定に基づくことなしに、各省——農林省でございますならば、農林省設置法の中の第四条の権限規定の中で、そういう行為ができるように規定しております。現在の酒造米委託醸造の問題につきましては、ただいま手元に具体的な法令を持っておりませんので、はっきりしたことは申し上げかねますが、大蔵省設置法の中の国税庁権限といたしまして、酒の製造に関して種々権限規定しておりますので、その中で事項一つとしてかようなことは十分に読み得るものと考えております。
  10. 堀昌雄

    堀委員 今の、何か資料を持っておらないからわからないけれども、読み得る、こういうお話でございましたが、ちょっとそこをはっきり伺いたいのです。
  11. 吉國一郎

    吉國政府委員 今大蔵省設置法の法文を取り寄せておりますから、それで調査いたしまして申し上げます。
  12. 堀昌雄

    堀委員 私が非常に疑問に思います点は、現在の委託醸造の問題を見ておりますと、何か酒造米割当一つ権利生産権であるとかいうようなことで、これが経済的な行為対象になっている。それで言うなれば一つ財産権が発生しておるような感じがするのでありますが、財産権憲法の定める中にある財産権と、それから無体財産法に定める無体財産というものが、私は法律的な意味での財産権だと思います。それで、政府行政行為の結果として、ある一つ財産権が生まれるというようなことが、私は率直に言いまして理解ができない。憲法法律に定められたものは当然な権利でありますが、それでない行政行為に基づいて起こってきた財産権というようなものが法律的に認められるのかどうか、という点をちょっとお聞きしたいのです。
  13. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいまの御質問は、法律によらない財産権が生じ得るか、せんじ詰めればさようなことに相なると思いますが、財産権という言葉の使い方の問題でございまして、憲法の二十九条で保障しておりますような財産権というものは、民法であるとか商法であるとかにございますような権利というものよりもやや広い観念でございまして、一定法律上の地位として、他人から一定の利益を保障されるという地位を全部含めて、財産権といっておるものと考えております。従いまして、たとえば河川利用許可を受けた場合に、河川利用許可を受けた反射的な結果といたしまして、そこで公水利用ができるという地位に立つことになります。そういうものにつきましても、一定公水利用権——俗に公水利用権と呼びますような財産権が発生しているというのが現在の通説でございます。ところが、その財産権の「権」というところに非常に重点を置きまして、民法であるとか、商法であるとか、あるいはまたその他の公法関係におきます権利というような意味にとりますならば、非常に狭いものになります。現在問題になっております酒造米割当を受けるべき地位というものは、その第一に申し上げました広い意味財産権にも入らない単なる地位にすぎない。と申しますことは、これは食糧管理法に基づきます米穀割当対象にある人が立っているというだけでありまして、その人の地位が、その次の年度あるいは次の次の年度において当然それだけの同一の割当を受けるということは、法律上何ら保障されておらないわけでございますから、その広い意味財産権というものに当たらない、かように考えられると存じます。
  14. 堀昌雄

    堀委員 そういたしますと、その年度に行なわれました行政行為に基づいて、その年度のみに発生する一つ権利というふうに理解をしておられるということになりますか。
  15. 吉國一郎

    吉國政府委員 各年度においても、権利というべきものは発生しておらないのであろうと思います。
  16. 堀昌雄

    堀委員 それから、もう一つ伺いたいのですが、法律用語として「あっせん」という言葉がございますが、「あっせん」という言葉実態行為は、どの範囲をさすのか、教えていただきたい。
  17. 吉國一郎

    吉國政府委員 法律上「あっせん」という言葉は、ほぼ「周旋」という言葉と同様な意味でございまして、ある人と他のもう一人の人との間に立って、その甲という人と乙という人との間に一定行為が行なわれる。その行為と申しますのは、法律上の行為もございますれば、事実上の行為もあると存じます。そのような行為が行なわれ得るようにいろいろと配慮をしていくということを、広く「あっせん」と呼んでおります。
  18. 堀昌雄

    堀委員 実は、私、委託醸造の問題につきまして少し調べておりますと、二つの問題があるように思います。一一つは、酒造米割当に対する慣行上の問題として、大蔵省当局主税側から見る問題が一つあると思います。それから、もう一つの面は、食糧管理法の面から見る面が一つはっきりしておると思う。この二つの問題を含めて食糧庁一つお伺いいたします。現在、米の売り渡しにつきましては、食糧管理法第四条第一項によりまして、「政府ハ其ノ買入レタル米穀ヲ第八条ノ二第二項ノ販売業者ハ政府指定スル者ニ売渡スモノトス」こうあります。そこで、政府の指定する者に売り渡すものとするというのは、その指定する者は書いてございませんが、これは消費者であるという考え方なのか、中間的なものがあって、それがまた再度売り渡すということをも含めておるのかどうか、どういうふうにお考えになっておるか。
  19. 諌山忠幸

    諌山説明員 政府が指定する者と申します中には、今おっしゃいましたような、もう一ぺん売る場合が含まれております。これは、卸に売ります場合は、卸に一定価格で売りまして、それを小売に売らしております。それから、そのほかの配給用以外のものにつきましては、私どもとしては、原則的にはいきなり実需者に売り渡す方針で、やっております。
  20. 堀昌雄

    堀委員 私も、食管法の建前からいたしますと、販売業者の場合は、おっしゃるように卸売業者販売業者は流通のための中間的な存在でありますから、これを経て最終の実需者に行く、そうしてあとの部分につきましては当然政府実需者に売り渡すものである、こういう理解をいたしております。今の食糧庁お答えもさように了解できるわけであります。  それで、今の酒造米割当の状態を国税庁の方にちょっと伺いたいのですが、酒造米割当を上から下までどういうふうにやっておるか。
  21. 泉美之松

    泉説明員 酒造米もいろいろございますが、清酒酒造米について申し上げますと、総量は食糧庁の方の原材料等米穀売却要綱というものに基づきまして、国税庁長官食糧庁長官とが協議してきめることになっております。そうして、製造者が約四千軒ほどございますが、それを各県ごとに取りまとめまして、各県の連合会会長または会長実需者代表者になって、各県の連合会長名義食糧庁売却方を申請いたしまして、食糧庁から売却指令がございました後、実需者にそれぞれ——代表として受け取っておるわけでございますから、各実需者に分ける。その分けるやり方につきましては、国税庁、国税局、税務署の指示に従うということに売却要綱でなっておりますので、そういたしております。
  22. 堀昌雄

    堀委員 そういたしますと、売り渡し対象は、酒造組合連合会会長または会長売り渡し相手方というふうに理解してよろしいですね。
  23. 泉美之松

    泉説明員 売り渡し名義人考えておるのでありまして、相手方実需者でございます。ただ実需者が非常に多うございますので、便宜連合会長名義で一括売却することにいたしておるわけでございます。
  24. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと法制局の方に今の問題について伺いますが、委任状をとらないで、代表者という代表権をこういう法律的事項について行使することができるのですか。
  25. 吉國一郎

    吉國政府委員 委任につきましては、委任状の行使というような形式上の手続は法律上当然には要求されておりませんので、そこに委任が行なわれたということが認められれば、それに対して一定行為をするということは、法律上は可能であろうと思います。  それから、先ほどの大蔵省権限の問題でございますが、今お答えいたしますが、大蔵省設置法昭和二十四年法律第一四四号、そこの第三十四条で国税庁間税部事務規定いたしております。第三十四条では「間税部においては、左の事務をつかさどる。」といたしまして、その第二号で、「酒類等生産及び販売管理すること。」という文言があります。この生産及び販売管理ということによりまして、たとえば生産について、もしも取り締まりを行なうことがあれば取り締まりを行なうとか、生産のために資材の配給あっせん割当等のことがあればそういうものも行なうということは、この規定でできるのではないかと思います。
  26. 堀昌雄

    堀委員 そうしますと、組合長あるいは連合組合長委任を受けてないと思うのですが、それに基づいてそこが売り渡し対象となる。食糧庁の方にお伺いしたいことは、実際の実需者とそれから政府との間にのみ取引が可能なのであって、私はその中間に立っておる者は売り渡し対象者にならないと理解しておるのでありますが、食糧庁の方ではどういうふうにお考えですか。
  27. 諌山忠幸

    諌山説明員 先ほども申し上げましたように、実需者にその他の者は売るのが一番いいんじゃないかと考えておりますけれども、そういうことを別段規則その他で規制はしておりませんので、その方が中門的なもので、はっきりしておるもので売った方がいい場合は、それでやって差しつかえない、こういうふうに考えております。
  28. 堀昌雄

    堀委員 もう一つ食管法の方から伺いたいのですが、そこで酒造米実需者に売り渡されまして、その実需者の所有に帰した米を他の実需者に売り渡す、この他の実需者に売り渡すときに、金がくっついていくということですね。これは、酒の方から見ますと、何かあいまいな権利に伴う金だ、こういうのですが、米の動きの側から見ますと、米の授受に伴って金が動くのですね。そうすると、米の授受に伴って金が動くということになると、定められた価格以外の価格において米が取引されておるという事実が生じておると思う。これは明らかに食管法違反だと思うのですが、食糧庁はどうですか。
  29. 泉美之松

    泉説明員 ちょっとお答えしておきたいのでございますが、ただいまの堀委員お話は、一たん実需者酒造用原料米が売り渡された後、その米が移動するようなお話でございましたが、委託醸造というのはそうではございませんで、政府の方で米を売り渡す前に委託醸造行為が行なわれまして、その結果に基づいて米の配分をいたしますので、実需者に売り渡された後に酒造用米が動くことはないわけでございます。ただ、一たん生産に入りました後倉が焼けたというような事態——非常に緊急やむを得ない事情が起きた場合におきましては、他に委託して作るということも例外としてございますが、これは四年間にたった一件あっただけでございます。この場合におきましては、食管法規定に基づきまして、食糧庁長官の承認を受けてやっておりますので、普通の委託醸造の場合は実需者に売り渡された後米が移動するということはございませんので、誤解のないようにお願いいたしたいと存じます。
  30. 堀昌雄

    堀委員 そういたしますと、私が今米が売り渡されたと申しましたのは、米が売り渡されたときに権利が発生すると私は考えております。米が売り渡されないで、皆さん方の方が基準石数に基づいて何らかの割当をするということはまだ行政範囲内であって、その行政範囲内で酒造家の方はそれについてはまだタッチしてない。皆さんの方は、どういう基準石数でどう割り当てたかは政府の側の範囲である。そうすると、政府の側の範囲にあるものをまだ権利の発生していない者たち架空取引をやる、から相場をやるという事実になるということを認定なさいますか。
  31. 泉美之松

    泉説明員 私どもは、清酒業者原料米割当を受けるのは、先ほど法制局の第三部長からお話がございましたように、権利考えておりません。現に、これは和歌山地方裁判所判決でございますが、地方裁判所判決もそれは財産権でないということを言っております。ただ、長い間の慣行といたしまして、基準指数に基づいて原料米配分を行なうということが行なわれておりますために、ある酒造年度におきましてもその基準指数に基づいて酒造米配分されるだろうということを予測して、その基準指数取引、あるいは基準指数委託というような事実行為が行なわれておるのでございます。その事実行為を無視して米の配分をすることが行政上妥当であるかどうかということから、従来の慣行を尊重いたしまして、行政上そういう事実行為を尊重いたしまして、今日に至っておる次第でございます。
  32. 堀昌雄

    堀委員 今の答弁、私ちょっとよくわからないのですが、ともかくも、そうすると、権利はない。財産権もなければ、権利として地方裁判所も認めないものを、公に皆さんの方が売買の対象と認めて、委託醸造については今甲乙二つルールがあって、甲の場合にははっきり五千円という単価をきめて取引されておる、乙の方については自由取引になっておるということでありますが、今のお話では、それじゃ一体その権利のないものがこういうことで金を取るのだということを、大蔵省は認めておられるのですか。何らの権利もなければ財産権もないものが経済的行為をされて、それに伴って、それはただ上げましょう、いただきましょうなら、まだ問題はない。それについては五千円だとか、自由取引の中では六千五百円から八千円も一石について取引されておるという実情がある。これは、大蔵省が、そういう権利もなければ財産権もないものに対して、架空の何かに対して取引することを認めておる、こういう事実になりますが、そういうふうに考えていいですか。
  33. 泉美之松

    泉説明員 架空というのは少し語弊があると思うのでございますが、事実上米割当基準指数基準といたしまして原料米配分を行なっておりますために、これは、御承知のように、ほかの統制の場合でも、いろいろ割当統制を行ないますと、その反射的効果といたしまして、そこにある経済的価値が生ずる。権利ではございませんけれども、反射的な価値が生ずる。その反射的な価値というものが経済取引対象になるということ、これはひとり酒造用原料米配分だけでなしに、ほかのいろいろな統制行為に伴って起こり得ることでございます。ただ、私どもも、もちろん委託醸造に関連して高い値段でそういう取引が行なわれるということは好ましくないと思っておりますので、できるだけそういう対価が引き下がるような方向におきまして正原料米配分を行ないたい、かように考えていろいろ苦心、努力いたしておる次第でございます。
  34. 堀昌雄

    堀委員 皆さん方には非常に基準石数ということに基準を置いておられる。しかし、この問題は、さっきから法制局も答えられておるように、何らそれについて受配者の側として権利があるものではない。要するに、生産販売管理を行なうための統制行為によって出ておるということになるならば、実際問題として、この前も横山さんが触れておられますけれども権利の上にあぐらをかいて収入が入るということは、それは他にもあるかもしれないが、率直に言って望ましい方向ではない。望ましい方向ではないものを昭和三十一酒造年度から積極的に認めたということは、私はやはり問題があると第一に考えるのでございますが、そこでこの基準石数というものは変更できないものなのですか。まあ慣行上妥当だ——私は妥当だと思わないのですが、皆さんは妥当だ、妥当だと言ってやっておって、片方では妥当でないために起こる問題を調整しなければならぬために、いろいろと法律的に疑義のある取り扱いが行なわれておるということですから、基準石数は変更できないのかどうか、ここのところを一つお伺いしたい。
  35. 泉美之松

    泉説明員 基準指数というものは、法律上の性格から言いますれば、お話のように一切変更できないというものではないと思います。ただ、従来の行政慣行を尊重いたしまして、基準指数というものに基づいて配分を行なっておるのでございますから、変更できないことはございませんが、それが行政上はたして妥当かという問題になりますと、やはりいろいろの問題がございます。そこで、私どもといたしましては、基準指数によらないで原料米配分を行なう中央保有制度というものを一昨年から実施いたしておるような次第でございます。
  36. 堀昌雄

    堀委員 中央保有米についてはあとで私は触れますが、基準指数を動かすことにはいろいろと問題があるとおっしゃるのですね。そのいろいろということをちょっと教えて下さい。
  37. 泉美之松

    泉説明員 これは当初こういう基準指数がなぜ生じたがということを申し上げなければならないのでございますが、昭和十三年に、酒造組合中央会におきまして、生産統制を組合が行なうことになったわけでございます。その後昭和十五年に、臨時米穀統制規則に基づきまして、食糧統制が行なわれるようになったのでございますが、その最初に行なわれたのが、組合の自主統制に基づいて——これは当時は旧基本石数と申しておるのでございますが、そういう旧基本石数が組合の自主統制で生じておった。それがずっと引き続きまして、役所の方で配分を行なうようになった後におきましても、自主統制から生じたものであるということからいたしまして、業界の慣行というものを尊重する建前で今日まできております。従って、役所の方でこれを変更するということにつきましては、その発生上の原因からいたしまして、いろいろ問題があるわけでございます。そういうことのほかに、昭和十三年以降今日までの間におきまして、企業整備が行なわれ、また復活、復元が行なわれ、それらの問題につきましていろいろ複雑な事情がからみ合っておるのでございます。これらの点からいたしまして、これを勝手に役所の方で変更するということにつきましては、行政上妥当でないのではないかという疑義があるわけでございます。
  38. 堀昌雄

    堀委員 今おっしゃった点で、私はこの問題が非常にすりかえられてきておる点に問題があると思う。実は、この問題の発生の経過を見ると、さっきおっしゃったように、昭和十三酒造年度昭和十一酒造年度における実績をもとにして問題が出てきた。その問題は生産統制だった。生産統制ならば私は話がわかると思う。生産統制ならば、ある酒造家がこれだけ作ってよろしいということに基づいてくるのだから、その作る権利というものが動くという場合にはこの問題は比較的すなおに理解できると思うのですが、その次の臨時米穀統制法ですか、昭和十五年かなんかに出て、本来は生産統制であったものが割当統制に変わってきた。その割当統制に変わってきて今日に発展した中に、私は非常に問題が生じておると思う。ということは、生産統制ならば生産能力に見合うということでなければならぬですね。今の場合生産能力に見合っていないのですから、生産能力に見合わないで、片一方でどんどん割当の方が勝手に動いていくという事実が起きてきた。この沿革を見ると、そういう米穀の数量を制限しなければならぬということから発生してきて、ねじ曲げられたということが、今日の非常な需給のアンバランスを生じておる根本の原因じゃないかと思うのです。しかし、実際を見ると、あなたの方はそういうことで修正しにくいと言われますが、それでは企業整備後の新免許者とか第一次復活者に対する認定販売、復活者に対する原料米の増加、あるいは第二次復活措置による特別加配米の問題、それから海外から引き揚げの醸造者に対する新免、これはいずも新基本石数もなければ旧基本石数もない。何もないところにあなた方はやはり新たに基準指数を設定をしたということになると、実際問題としては、必要なところに配るというのが妥当であって、必要でないところに物を配って必要なものには配らないというのが妥当だなどということは、これは常識論として通用しないのですよ。一切さわらなかったのだ、もう旧基本石数、新基本石数、基準石数と、ずっと一本に連ねてきて一切さわりませんでしたというのなら、私は言いませんよ。あなた方これだけさわっているのだ。四つの種類にわたって、基準石数も新基本石数も旧基本石数もないところに割当をして、それでさわらぬというのなら、当然私の言う方が妥当だと思いますが、いかがですか。
  39. 泉美之松

    泉説明員 お話のように、復活、復元者、それから海外からの引揚者に対しまして私ども基準指数の変更をいたしておりますが、復活、復元者にいたしましても、これは、企業整備の際に、ある者に旧基本石数を譲渡した。その譲渡した旧基本石数を買い戻すことによって復活が行なわれております。その際に、話し合いがつかない場合に、一定率で認定いたしまして復活を認めた例はございますが、何らの旧基本石数的な実績も何もないところに認めたわけではございません。それからまた、復活、復元の特別措置にいたしましても、復活者が話し合いの過程において十分な石数の譲り戻しを受けておらない場合におきまして、それではあまりにも気の毒だということから、政府の方で復活率を高めるように措置いたしたのでございます。その本来は企業整備のときの操業者が返すべきものを返しておらないという実態かあるので、認めておるわけでございます。それからまた、外地引揚者の場合におきましては、かつて日本の領土また日本の経済力が及んでおった地域におって醸造を行なったという実績がございますので、その過去の実績というものを尊重いたして、漸次復元率を高めるということでやっておるのでございます。何らの実績もなくして動かしておるわけではございません。ただ、これらの私どもが措置いたしましたのは、社会的に見ましてもどうしても気の毒であるし、これだけの措置はとらなければならないと考えていたしたのでございますが、さらにそれ以上今日売れる業者と売れない業者との間にだんだん懸隔ができております。この間の調節をとるべきでないかということはお話のようにございますが、これを基準指数の変更をもって行なうことが適当かどうかということにつきましては、私どももいろいろ考えたのでございますが、行政上相当の変更になりまして困難であろうと思いまして、一応中央保有制度方向で収拾いたしたいと考えた次第でございます。
  40. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと私理解ができないことは、私は筋道の話を申し上げておりまして、気の毒だとか海外に実績があるとかということは、筋道の問題としては別個の問題なんですね。もちろんそれは行政行為ですから、そういう感情的な問題を含めないでいいというのじゃないのです。いいというのじゃないですが、少なくとも今は資本主義の世の中で——われわれは社会主義を、望んでいますが、残念ながら資本主義の世の中です。そうすると、資本主義の世の中で、ともかくある自由なる競争がある程度行なわれて——ただ自由なる競争によって中小の方がつぶれたりすることは、これは絶対反対です。だから、その中小の人たちのあれを守ってあげなければならぬが、守り方が守り過ぎて、自分のところでは作らないものが余力にきて、ともかく過当利得が生ずるようなことが行なわれておる。片一方がもっと作りたいというのに、ここには作らせないでこっちへ行く。私はそれは社会通念上妥当だと思わない。あなた方は基本石数を動かさない、基本指数を動かさないと言われるが、実際は、これは新免をしたり海外から出てきたりした者が入ってきますと、総体的には基本指数というものが変わってきていると思う。いいですか。外ワクが一緒ですから、ふえてきた分だけ過去の既得権か下がってくる。あなた方は過去に動かしているのです。だから動かし得るということは私もさっき出し上げた。四つのなににしたって、新たなる基準指数を作ったのです。これはもとの統制で一緒になったときに入っておったものを分けたといっても、分けたら残りの方の基準指数を受けているかというと、受けてないと私は思うのだ。受けてないでしょう。受けているのなら——あなた方が言ったんだけれども、受けてなくてこれは前の通り認めて新設したのだから、それは何もあなたの言うような旧基本石数や新基本石数に基づいているわけじゃなくて、基準指数全体の中では他のものが格下げになっている。動かしているということがあるならば私は動かせると思うのですが、どうですか。あなた方は過去に動かしているのだから、動かせないものじゃない。動かせるのだということで一つ答えていただきたい。
  41. 泉美之松

    泉説明員 これは、先ほどもお答えいたしましたように、法律上動かし得ないものではございません。それはよく存じておりますが、そういうことをどの程度まで動かすことが行政上妥当かという問題だろうと考えております。私どもが現在までに行ないましたものは、行政上まあまあ妥当ではないが。さらにこれ以上変更することについては、まだそこまで考えておらないわけでございます。
  42. 堀昌雄

    堀委員 委託醸造という言葉が大体おかしい。この前奥村さんがお答えになっているのですが、どこかへものを出して共同でやって、そこで利益をもらうのだとおっしゃるのですけれども、これはちょっと私理解できないわけです。委託醸造ということでないのでしょう。言葉の面から見て、常識的な概念なら、こっちでお願いして製品を引き取らなければいけないのですね、製造委託したのだから。返してもらってその人が売るのでなければ委託にならない。現実はそうじゃなくて委託しっぱなしなんです。委託醸造という言葉をつけるのか大体間違っている。(「そんな制度は廃止してしまえばいい」と呼ぶ者あり)そうです。  その次に伺いたいのは中央保有米制度です。この中央保有米制度という「保有」というのは、一体どこにだれが保有しているのか、ちょっとこれを伺いたい。
  43. 泉美之松

    泉説明員 これは、先ほどもお話がございましたように、政府の方におきまして酒造用原料米実需者別の割当を行なうことになっておりますので、政府の方に保有するという意味でございます。
  44. 堀昌雄

    堀委員 政府の方に保有したものは、その保有ということの必要はないのじゃないのですか。伺っておきたいのですがね、政府が売り渡すのでしょう。政府が売り渡すものを政府か持っているのはあたりまえで、なぜ保有するのですか。
  45. 泉美之松

    泉説明員 それは、お話のように、中央保有米と申しますのは基準指数通りに配分しない米でございますから、中央保有米という表現は必ずしもその実態に合っておりませんので、いわば基準指数によらないで配分する米ということでございます。それをつづめて、適当な言葉がございませんでしたので、中央保有米と言っているだけでございます。必ずしも適当な言葉とは存じておりません。
  46. 堀昌雄

    堀委員 実は私が申し上げたいことは、言葉が適当であるとか適当でないとかいうことは、委託醸造でも適当でない。みんな適当でない言葉がついているということは、率直にいえば、いかに適当でないことをやっているかという現われなんです。両方とも適当でない言葉がついている。そこで、それは適当でない言葉だけれども、この言葉がなぜできているかというと、中央保有米というのは、あなたは政府が保有しているとおっしゃるか、現実には酒造組合中央会が保有した格好になっている。そこで、中央会が中央に保有したということで中央保有米、しかし、まさか中央会が保有しているという答弁はできないから、あなたは政府だと言う。政府だと言うなら、そういう保有米というものは成り立たぬ、こういう論理が出てくる。今中央会にこれが保有をされている、こう思うのですか、それは中央会がどうするのですか、そこから先をちょっと聞かせて下さい。
  47. 泉美之松

    泉説明員 これはもちろん中央会が配分するものではございませんで、政府の方から中央保有分につきましてどういう割当をするか、三十三酒造年度、三十四酒造年度では若干違っておりますが、全体の数量の約四割というのは基本割ということでやっております。これは基準指数の一〇%プラス五石ということで、その五石分が平等割でございますので、小業者に比較的割のいいやり方でやる。残りの六割程度は、基準指数数量割といたしまして、最近の売れ行きがいいことに基づきまして、輸出数量の多い方に割り当てるということで行なっております。さらに、三十四酒造年度におきましては、そのほかに企業合理化割といたしまして、企業合同または共同びん詰を行ないます場合に、それを、奨励助長する意味におきまして特別加配を行なっております。
  48. 堀昌雄

    堀委員 昭和三十四酒造年度でそういう形で動いたのはそれだけですか。
  49. 泉美之松

    泉説明員 中央保有米の分はそれだけでございます。ただ、もう一つ、北海道におきまして、昭和二十年と二十一年当時、北海道は非常に食糧不足でございまして、酒造米に割り当てましたものが、酒造業者と北海道庁との要請によりまして、酒を作らないで食糧用に回してしまったのでございます。その米の数量が両年度合わせまして二万六千石余に上っております。それは酒造用に使わなかったのだから、昭和二十五年度以降酒造用に補てんするということで、今日まで措置番をとってきております。その分が五千六百石ございます。
  50. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、今の北海道へ行ったのは中央保有米じゃないということですか。
  51. 泉美之松

    泉説明員 性格からいえば、本来中央保有米から出すべきかもしれませんが、計算上は一般米の分から出しております。
  52. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、あなたはさっき基準指数に基づかなければ出せないと言っていますね。基準指数に基づかなければ出せないのだから、北海道へ行った、五千六百石は中央保有米で出したのかと私は思ったのです。ところが、今のお話を聞くと、中央保有米ではなくて、一般割当で出したということになると、五千六百石という基準指数はどうなったのですか。
  53. 泉美之松

    泉説明員 北海道の方は、先ほど申し上げましたように、昭和二十五年以降やっておりますので、その当時はもちろん中央保有米の制度はございませんでしたので、一般米のうちから先取りしまして、過去において酒造用に使うべきものを食糧用に使ってしまったのだから、その分を補てんするというのでやっておるわけです。ただその配分基準指数を尊重してやっておるわけであります。
  54. 堀昌雄

    堀委員 どうも基準指数というものは必ずしも絶対でないということは、いろいろの中で出ていますから、この問題は御検討願いたいと思うのですが、この中央保有米が末端に行くと、今度は特別賦課金がこれに伴って徴収されていますね。これは一体どういうことでこういうものが取れるのですか。
  55. 泉美之松

    泉説明員 これは、酒造組合中央会は、その会費の徴収方法として、普通徴収の方法と特別徴収の方法と両方持っております。その特別徴収の方法といたしまして、特別賦課金といたしまして、この中央保有米によって作れるであろう酒につきまして、特別賦課金を取るということを行なっているようであります。
  56. 堀昌雄

    堀委員 その特別賦課金は、やはり中央保有米が行くことによって生じておるところの一種の対価だと私は考えざるを得ない。基本割は百八十リットルに対して二百円、実勢割は千円、企業割は二百円と、いろいろ格差がついておりますが、少なくとも実勢割の千円というものは、これは私は一つの対価だと考えるのですか、こういう割り方で見ておりますと、そこのところはどういうふうに考えておりますか。
  57. 泉美之松

    泉説明員 私ども法律的性格は中央会の特別賦課金と思っております。ただその間基本割とそれから基準指数量割との間に特に差がございます。その差はどういうところから生じてきておるかということから申しますと、その基準指数量割につきましては、売れ行きのいいものに行くものであるから、その分について高く取るということは、やはりそこに何らか経済的にそういうふうな米の割当を受ける場合の対価的な色彩が出ていることはいなめないと思いますが、法律的性格はあくまでも特別賦課金と思っております。
  58. 堀昌雄

    堀委員 そこで、この中央保有米は委託醸造をやっている人のところへも行くのですが、私はここに非常に重要な問題があると思います。委託醸造をやっている方たちというのは大体私はきまっていると思うのですか、全部出さないで、三〇%から六〇%くらい委託醸造をやっている。それならば、毎年委託醸造をやっておっても、酒造権は免許を停止されないから、毎年固定してやっておると思うのですが、そういう固定してやっておる人は米が余っておるという事実があるのですが、そういうところにも中央保有米は希望があればいくのですか。
  59. 泉美之松

    泉説明員 委託醸造しておる者に対しては割当がないことになっております。
  60. 堀昌雄

    堀委員 割当はしておりませんね。  次に、この中央保有米の分配は実勢をもとにしてやっておるということのようですが、その中でちょっとおもしろいことかあると思うことは、おけ売りをやっておることは、それだけほかがおけ買いしたところが実勢はふえておりますね。ところが、おけ買いしたところのふえた実勢と、売ったんだから実際実勢がないと思うのだが、売ってしまって何もないところに、また実勢を認めて中央保有米を分配しておるというのはどうですか。
  61. 泉美之松

    泉説明員 この問題は、おけ取引がなぜ起こっておるかということから申し上げないと、御理解いただけないかもしれないと思いますが、長くなりますので、簡単に申し上げますと、なるほどおけ売りをする者は、課税移出するわけにいきませんから、それを実績と見るかどうかという点につきましては、お話のように疑問になさる方もおありだと思います。私どももその点いろいろ検討いたしたのでございますが、おけ売り業者は四千軒の製造業者のうち約二千五百おるわけでありまして、これは徳川時代以来そういうおけ取引という慣行がとられておりまして、決して課税移出しないからといってそれを軽べつ視すべきものでない、やはり一つの実勢として見るべきものであるということから申しまして、おけ売り業者につきましても、そのおけ売りした数量を普通に市販した場合の酒の数量に換算いたしまして、基準数量割にいたしております。おけ売りの数量をそういたしますと同時に、おけ買いいたした人の課税指数量をそれに加えておりますから、分母がそれによって水増しされ、分子の方がそれだけ減少するということにはなっております。
  62. 堀昌雄

    堀委員 そこで、最後にあなたがお触れになった、分母が大きくなっておりますから、おけ買いをしない人は相対的にこの制度によっては不利な状況に立たされるということになりますね。架空の二千軒のある者がおけ売りをして、それを全部実勢と見て配分するということになれば、これは不公平な面がある。おけ買いをしないのがいけないので、おけ売りをし、おけ買いをするのがルールだということになると思いますね。こういう形で認めたということは、あなた方はそういうことがルールだということですか。私ちょっとここに疑問がありますのは、今度おけ売りの問題にくると、ちゃんと値段がついて売りますよといって、パンフレットが動くという事態が起こっておる。その価格規定しているものは何かというと、正常な配分が行なわれないために、片方はおけ買いをしてでも作りたいという、需要が大きくなって供給が少ないということで、私はおけ売り価格も相当に高騰しておると思う。だから、大体見ておると、酒造米割当に関連して、さっきの委託醸造自由取引も、おけ売り価格も、いずれも非常に高騰しつつあるというのが現状ではないかと思うのです。そういうことになるならば、やはり制度としておけ売りがあるということを私は今どうということは言いませんが、正常な経済状態の中に置くのが当然なのではないか。不当な統制を加えておるから、それによっておけ売り価格委託醸造価格は上がっていくということを、今のこういう経済状態の中で黙って見ていていいのかどうか。私はこれはやはり非常に問題があると思うのです。そういうことを調整するために中央保有米を作っておきながら、さらにそれの傾斜を強くするような方向にこの制度がなっておるということは、そういう意味で私は中央保有米制度についても大きな疑義がある。だから、今私はそういう問題をすぐここでどうこう言いませんが、一つ私は提案があるのです。  この問題について希望したいのですが、その希望したいというのはどういうことかと言いますと、なるほどこれまで一種の既得権だと思っている人がありましょうから、その既得権を全部取りくずすというのは、なかなか不可能だと思う。そこで、ここで一ぺんとめてもらいたいということです。この基準指数についての問題を——これは一年々々の問題だから、昭和三十五米穀年度において、過去の基準指数をとる。ここに固定をして、それから皆さんの方では大体、最近米は豊作ですから、酒税をとりたいということで、酒造米割当はだんだんふえてくる。このふえてくる分は、基準指数を断ち切って、これからはもうあなた方のそういう権利はありませんよ、このふえた分は、全部これからの問題として、新たな分配方式を考えるべきで、中央保有米はこれの中間をいこうと考えておるが、昭和三十四酒造年度については、半分は分けて、あとの半分だということを今伺ったのですが、そういうことをやっている中に、また問題がこういうふうに蓄積をして、そうして、中央保有米はほんとうに要らない人も、実はもらえるものはもらっておけということで、みんなもらっておるわけだ。こういうことでは、この問題の根本的な解決の方向に進んでおらない。そこで、こうやって一ぺん断ち切って、ここまではあなたの米の量は減りません、しかしここからはふやしません、委託醸造をやっておる人、特におけ売りばかりでやっておる人には、これからはあまりふやしませんということにして、逆に必要な方向へどんどん米を流していけば、自然な経済現象の中で、もう要りませんというて断わってくるようになりますよ。もう買う方は買わなくなりますから、ある程度伸びる方へどんどん要るものを渡しておけば、もう買いませんということになって、自動的に私はおけ売り価格は自由経済の原則の中の適正なところへいく。委託醸造というものは、なくなってしまう。委託しようにも、いやもうそんなものは要りませんということになれば、なくなるから、権力を用いずして、自然の形の中で、経済現象としてこの問題は解決できる見通しがあると思う。どうしても私が大蔵当局に望みたいことは、そういうあなた方みんなが妥当だと言っても、だれも妥当だと思わないようなことをいつまでもやらなければならぬほど、何か問題があるのですか。私はどうもそれが不思議でしょうかないので、この問題についてはここまでにしますが、そういう提案を一つ真剣に考えてみていただきたい。そうして、経済行為が自由な形で、しかし中小の方のそういう既得権は侵さないということの前提には立たなければいけませんから、委託醸造してまでいいということを私は言わないのですから、企業の実態の中で考えていただきたいということを希望いたしまして、次に移ります。
  63. 坊秀男

    ○坊委員 関連して。  同僚堀委員によりまして、酒米の配給等につきましては、相当核心をついた質問が行なわれたように私は思いまして、私は堀委員に敬意を表します。  それで、一つお聞きしておきたいことは、酒米の配給につきましては、いろいろな矛盾等が現われておることは、堀委員質問された通りでありますけれども、要するにこの問題がかようなことに相なってくることは、堀委員も言われた通り、二十年前の割当石数というものを基準にとって、その基準石数をベースとしてここに割当をしている。こういうことをやりまして、そこで生じてきた矛盾を、あるいは中央保有米の制度、あるいは委託醸造とかいったようなことによって、大蔵省はこれを補正しよう、こうなさっておりますが、委託醸造制度につきましては、これは、委託する方は権利の上にあぐらをかき、委託を受ける方は、これは大へんコストの高い酒を作る、こういうようなことになってくるのでありますし、それからまた、中央保有米制度というものは、これはネコもしゃくしもこれに手を出してしまうというので、補正の効力がきわめて稀薄になってしまう。こういうようなことでは、これはとうていいけない。そこで、大蔵省は、百尺竿頭一歩を進めて、抜本的に基準石数というものを、これは来年改訂するとかなんとかいうわけにいかぬと私も思いますけれども、これをできるだけすみやかに抜本的に手をつけよう、そして税状に即するような酒米の配給をやらなければならない、かように考えるのでございますが、国税庁長官及び主税局長の御意見を承りたい。もし私の意見に反対ということならば、これは私も考えがあります。
  64. 北島武雄

    ○北島政府委員 酒造米割当につきましては、いろいろ問題があることは、私どもも、もちろん当事者でありますからよく存じております。そしてまた、その解決が昭和十一年にさかのぼるということで実にむずかしい問題であるということを痛感いたします。実は、このような委託醸造を生じました原因は、おそらく私のいないときに間税部長から説明があったと思いますが、昭和三十年度におきまして、前年度に比較して三十万石も増殖されました際、従来は実は酒を作ればどんどん売れるような状況であったのが、この増産により需給の状況のバランスがとれて、むしろ軟化して参りまして、それと同時に、昔からの基準指数による配給の弱点が出てきたわけであります。これは地域的にもまた個人的にもいろいろ差が出て参ります。たとえば九州、四国、中国あたりは、昔は朝鮮、台湾の領土がございましたので、昭和十一年当時には相当作っておったわけであります。そういうものが基準になっておりまから、あちらの西部方面は基準指数が比較的大きくなっています。また個人的にもいろいろ差異がありまして、それをそのまま昔の基準で参りましたために、昭和三十年度に大幅に増産されたときに矛盾が出てきた。そこで、その基準による配給では少ない業者と、それではさばけない業者と出てきたわけでありまして、昭和三十一年度に、清酒の一種の需給の調整の作用として、委託醸造というものが出てきたわけであります。これが翌年になりまして値段が相当高くなる、委託醸造の数量も多くなりましたので、国税庁では、これではならないというわけで、昭和三十三酒造年度から、委託醸造につきまして、むしろ抑制を加えるという方針、何といってもすなおな姿でありませんから、抑制を加えるという方針をもちまして、委託の甲乙というようなことをやりました。さらに委託醸造をする者に対しては、中央保有米をやらないとか、あるいは委託をしたら翌年において委託した基準指数の一〇%を実績影響として削減させる、こういう制度をとりまして、だんだん減らして参りました。  一方また、中央保有米という制度昭和三十三酒造年度に設けたわけであります。実は、昭和三十三酒造年度に、従来の基準石数一点張りの米の配給をやめまして、ある一定限度まではこれは従来の基準指数配給するが、それ以上は、酒をみずから作り、かつ売る能力がある者に配給するという方針を打ち立てたわけであります。これを、言葉が適当かどうかわかりませんが、中央保有米と申しております。この制度を実は昭和三十三酒造年度において実施しますときにも、非常に業界の抵抗を受けたわけであります。四千軒の清酒業者の方々、これは二十年来一応財産的利益——権利じゃなくても財産的利益として売買譲渡されておったものですから、それをこわされることは、それはやはり業界に対して相当なショックだったわけです。しかし、私は、これではいかぬ、こういう状態を進めていったら、必ずあとでより大きな矛盾が出てくるということで、昭和三十三酒造年度には、実は業界の反対を押し切って、中央保有制度実施に踏み切りました。ただ、その際は、最後に業界もいわば若干条件闘争的に出て参りましたので、三十三酒造年度におきましては、国税庁としても当初の方針を緩和しましたため、実はすっきりした中央保有制度にはならなかったのであります。三十四酒造年度におきましては、業界もだいぶ国税庁案に歩み寄って参りまして、これは中央保有制度やむなしということで委員会も作りまして、そうして国税庁種々協議いたしました結果、現在のような制度になっております。これも、私案を申しますと、まだ完全なものとはもちろん思っておりません。現われて参りました実績を見ますと、必ずしも私どもの庶幾しておったところにいっておりません。これは何とかし三十五年度においてはよりよきものにしなければならぬのじゃないかと思っております。ただ、何と申しましても、長い間の財産的利益、これを一挙に取っ払うということは、業界にとってやはり大きなショックであります。業界に対して大きなショックを与えることは、やがて大きな酒税を負わしておるところの企業の安定を欠くことになり、租税収入にも支障を生ずるということになりますので、そういう点も行政上十分頭に入れてやらなければなりません。それと同時に、業界の協力を求める、業界に対しまして趣旨を十分説明して、できるだけ納得ずくでもって正しい方向に一歩々々持っていく、こういう方向へいきたいと思っております。  それで、三十四酒造年度の中央保市制度は前年度に比べて一段と進歩であったのでありますが、なお三十五年度におきましてはもう一歩進めて参りたい。それによって当然委託醸造は減って参ると思っております。現に昭和三十二年度から委託醸造の数量は漸減いたしております。昭和三十二酒造年度においては、全体の一・七%程度かたしか委託醸造されたと思います。それが、三十三酒造年度においては一・五%程度、それから三十四酒造年度においては一・一%、全体の作る量の一・一%程度が委託醸造、こういうふうに漸減いたしております。私は、こういう方へだんだん持っていって、こういうものかなくなることが望ましいんじゃないかと思っております。ただ、一挙にしてこの委託醸造をなくする場合においては、いろいろ問題があります。受託して、自分販売能力に応じて生計を立てておる人たちに対してどうするかという問題があります。これはなかなかむずかしい問題で、簡単にはいきません。ただ、十分時日もあるごとでありますので、三十五年度におきましては、より一歩進んだ配給制度をやって参りたいと考えております。
  65. 原純夫

    ○原政府委員 私は、堀、坊両委員の言われました方向には賛成であります。ただし、それではその賛成な方向に非常に突き進んでやれということになりますと、極限は、自由になった場合に、どういう配給といいますか、米の消費になるかということを想定して、それに合う通りの配給をしろということになりますが、それは神様でなければできないということになります。かたがた、既存の業界の利益というものもありますので、それらを考えて、慎重に、しかし相当勇気を持ってやるというかまえでいくべきだと思います。なお理想の状態としては、いわゆる権利というような関係が全然ないのがいいかどうかという点は、私は留保したいと思っております。ある程度はあった方がよろしい。堀委員も坊委員もそうだと思うのでありますが、中小企業が倒れるのは困るといっても、全然こういう関係がない場合は、そういうものはどんどん倒れて参ります。私はそれは望まない。これはいろいろ批判もあるかもしれませんが、私は、その点は、ある程度のこういう関係は残ってほしいという気持を持っておるということをつけ加えて、留保さしていただきます。
  66. 坊秀男

    ○坊委員 もうやめようと思っていたんですが、私の質問申し上げたことに対しての答弁がなかったようです。  まず第一点は、基準石数というものについて、大蔵省はこれを今後もそのままやっていくのか、一ぺんに改訂するということを私は要求しているのではありませんが、漸次、この基準石数というものについて、抜本的にこれを現状に即するような——いろいろな補正手段ではなかなか効果も上げられませんから、結局ベースになっている基準石数というものについて考えていくかどうか、これを改訂していく意志がないのか、あるのかということをお尋ねしておる。これが私のお聞きしたい一点、それからもう一つ、これは派生的の問題でございますが、委託醸造というのはよろしくない。しかしながら、委託醸造をやめてしまうと、今まで委託を受けて、その受託によって設備も販売もやっておった人たちは困るにきまっております。さようなコストの高い米を今まで受けて酒を作っておった。しかし、それでも、それを今まであなた方は認めておったんです。それを認めておったんですから、それに応じたような設備、販売をやっておる。こういうような人たちに対しては、さような受託をするというようなことでなしに、正規な配給米をやってもらいたい、こういうことを私は言っておるのであって、この二点について、国税庁長官でよろしいから御答弁願いたい。
  67. 北島武雄

    ○北島政府委員 まず第一点の、基準指数を全然取っ払ってしまえ、こういう御趣旨でありますが……。
  68. 坊秀男

    ○坊委員 全然ではありません。今の現状に即したようにやっていけということです。
  69. 北島武雄

    ○北島政府委員 私は、もちろん現状に即したように運用するつもりであります。基準石数制度を一挙にして全廃するということは、業界にとって大きなショックを与えることでありますので、私は行政上妥当とは思いません。ただ、これについて行政上補正を加えるとか、それから、三十三酒造年度から実施されてきた中央保有米のワクを広げることによって、自然的に基準石数というものの価値を減少さしていくということが、やはり行政上としてはすなおなやり方ではないだろうか、こう思っております。もちろん、その間におきまして、基準石数そのものについて全然手を触れないのかいいかどうかということについては、いろいろ問題もありましょう。たとえば三十三酒造年度に実施いたしました復活業者の復元問題についても、実をいうと基準石数の是正には違いない。そういう是正は必要であります。それから、北海道につきましては、基準石数は動かしませんでしたが、特別加配米、これもやはり見方によっては基準を動かしたのだと言えないこともありません。このように、実情に即した妥当な是正はやっていく必要がある。ただ、一挙にしてこの基準石数を取り払うということは、妥当な措置とは考えておりません。  それから、第二点の委託醸造につきまして、これを取り払えば、受託したものに対して何らかの措置をする必要かあるじゃないか、これも私は同感でございますが、ただ、どういうふうに措置するかについては、技術的に非常に問題がございます。十分一つ検討して参りたい。方向としては、坊先生のおっしゃるような方向に進んで参りたい、かように思っております。
  70. 山中貞則

    ○山中(貞)委員 委託醸造の問題については、国税庁長官主税局長も基本的に反対でないと言っておられるのですが、これはどっかで勇気を持って正道に乗せなければだめです。去年社会党と与党から注意のあった輸入映画の割当権、これは権利の上にあぐらをかいておるものをやめさせろということが基本的の町問題で、これについては、だれも異議はなかった。しかし、それを行なうについては、今まで権利だけ持ってその配給販売をやっていたものとか、そういう人たちの即得権益といった問題をどうするか、こういうような、群小業者の死活の問題まで伴ってきて、これがどうあるべきかということに基本を置いて、非常な大手術をやった。従って、社会党の方の提唱された方も、そんなひどい手術までして処置しろと言った覚えはないという議論が起こったわけであります。それでも、やっておる方向が正しければ、ある場合にはこれはやむを得ないと思いますので、そういう意味で、非常にむずかしい問題があることは質問者も指摘しておりますが、どうあるべきかということについては、勇気を持っておやりになったらどうかと思う。あなた方が勇気を持って基本的な方針でおやりになれば、衆議院の委員会だって、方向が正しい限り、ある程度の犠牲があったからといって、それを取り上げてぎゃあぎやあ言うようなひもつき議員はいないと思う。あなた方は勇気を持っておやりなさい。  それから、せっかく立ちましたから、政務次官の御心境を私はお聞きしたい。政務次官は、大蔵委員会における酒類関係のベテランとして、ずいぶん御活躍なさっておられる。しかも、酒団法の一部改正のとき、政務次官は大蔵委員として在任中に孤軍奮闘され、そうしてたった一つだけ国会の会期中に可決をされなかった前例もありますが、御就任されて酒団法の一部改正法と内容ひとしきもの、あるいはまた今回の準一級酒を設ける問題等について、種々酒類業界の基本的問題について意見が展開されておりますが、政務次官の別荘の酒類業界に対する、今指摘されたような問題に対する御心境いかん。そしてまた、もちろんお変わりになっていると思いますが、その心境のお変わりになった過程の御説明を願いたいと思います。
  71. 奧村又十郎

    ○奥村(又)政府委員 特に御指名になりましての御質問でありますので、お答え申し上げます。  酒の原料米割当の現在の制度、いわゆる基準石数制度というものは、行く行くこれは、取っ払うべきものだ、従って、中央保有米制度というものも思い切って再検討しなければいかぬ、こういう御趣旨でございます。私といたしましては、お三方の御意見の通り、方向といたしましては、当然基準石数によるところの割当制度、特に政府が割り当てるという制度はなるべく早くやめるべきだ、こう考えております。と申しますのは、先ほどからの御質問にもありますように、清酒原料米割当が、食糧管理法に基づく割当です。ところが、米穀需給が逼迫しておった戦前あるいは戦後の二、三年前までなら、それはその法律に基づいての割当ということは、法的な根拠もあろうし、また理由もあろうと思う。しかし、もうこれほど米穀需給が緩和された時代において、米が足りないからという米穀事情から酒の石数を割り当てるということは、法律上根拠が薄くなってきている、かように思います。しかも、一方においてもし基準石数制度を取っ払えばどうなるかということになると、いろいろな御議論がありましたように、銘柄で販路が確実なところ、つまり競争強力の強い比較的大メーカーというのが競争に打ち勝って、小メーカーや競争力の弱いものは圧迫されるということをお互い心配するわけです。しかし、これに対しては、御承知の通り、酒類業団体法に基づいて自主的な出荷制限、生産制限、あるいは価格協定というものを自主的に行ないまして、これに対して大蔵大臣が認可する、このような酒類業団体法というものがすでにあり、またそれを強化するために昨年通過成立した。でありますから、なるべく早くこの酒団法に基づいての業界の安定をやればいいんだということであれば、基準石数をはずして、この業界みずからの、と申しますのは、酒造組合でいえば酒造組合中央会みずからの自主的な協定によって、出荷制限なり、生産制限なり、あるいは価格協定によって業界を守っていくという、いわば受け入れ態勢が一方にできたのだから、なるべく政府としては早くそのように指導すべきである、かように存ずるのでありまして、この点につきましては、私の前任者であられる山中委員からの特に御発言でありますので、たしか政務次官の事務引き継ぎのときはあまりお話がなかったが、きょうは事務引き継ぎのつもりでよく拝聴いたしました。私としてはそのように善処いたしたいと思います。
  72. 山中貞則

    ○山中(貞)委員 今承りますと、酒団法がせっかくできたのだから、これに基づいてやれば問題ないと言われるのですが、あなたがえんえん半日にわたって酒団法に対して申し立てられた異議を、ここで速記録を読んでもよい。あなたは酒団法に対して異議を申し立てられておったただ一人の人であって、その酒団法をそのままやれば問題は解決するというお話ですが、それじゃ就任して新しい酒団法を先国会で通すにあたって、あるいはそれが通ったことによって、どういうふうな指導をすべきだということを考えておられるか、お聞かせ願いたいと思う。
  73. 奧村又十郎

    ○奥村(又)政府委員 昨年の暮れ通過いたしました酒団法改正案につきましては、私は、改正案の趣旨そのものに反対じゃなく、業界の安定などについての問題であるから、なるべく関係業界にこの改正の趣旨を徹底せしめて、業界の意向をこの改正案に十分反映させるべきだ、こういう趣旨の意見でありましたから、法律案そのものにはそんなに反対の意向がなかったのであります。とりわけ独禁法に対する排除規定である再販売維持価格契約の規定につきまして、酒類の中にたとえばビールなりあるいは特級酒なりという一部の酒類だけにこの独禁法排除規定を認めるということは、これは片手落ちであって、酒類全体に認めるということであれば、これは私はあえて反対しない、こういう趣旨で言ったのです。昨年の暮れの議決の際においては、これは酒類全体に適用するものであるという政府の方針がはっきりいたしましたから通した。私といたしましては、かような意味合いから、この酒団法というものは、業界がこの法律に基づいて自主的に安定してやっていくべきだということでありますので、酒類業界の八団体などの会合には実は私みずから乗り込んで、どうか早く業界がみずから見定めていただきたい、今までのように一から十まで政府に依存する態度は、今日の時代において業界を安定させる道でないということを強く主張し、そのように指導しておるつもりでございます。
  74. 山中貞則

    ○山中(貞)委員 あなたの反対せられましたときの酒団法と通過しました酒団法と、あなたの反対の趣旨がその法律の中にどのように具体的に盛り込まれて変化しておりますか。
  75. 奧村又十郎

    ○奥村(又)政府委員 先ほど申し上げたように、私は反対ということは言うておりません。酒団法をわずかな時間の間に急いで通過させる事情がないじゃないか、継続審議してでも慎重審議して、その間に関係業界にこの改正案の中身をよく周知徹底せしめて、もし改正せるところがあれば改正して、業界みずからがよく理解納得した上の通過を望む、こういうことでありますから、決して政府原案に対してもあえて反対ということは、速記録をごらんになればおわかりになりますが、主張しておりません。
  76. 山中貞則

    ○山中(貞)委員 だから、あなたの改正すべき点があれば改正しというのは、どういう点を改正されたのか。私の知っておる範囲では、そのときだって業界は徹底的に反対だという者はなくなったので、大体において了解しておったのですが、国会がああいうふうになったので、結局反対の態度を持続せざるを得ないというようなことも、内面反応としてあったのであって、具体的にそういうことを説明してもらわなければ、私は速記録をもう一ぺん調べて、酒税法を通すことには反対します。具体的に一つどこが改正になったか示して下さい。
  77. 植木庚子郎

    ○植木委員長 答弁がございません。  堀昌雄君。
  78. 堀昌雄

    堀委員 国税庁長官がおっしゃったことで、私また疑問が出てきたので、ちょっと伺いたいのですが、委託醸造が減ってきたとおっしゃいますが、パーセンテージが減っても酒造米割当がふえておりますね。だから絶対量はあまり減ってないのじゃないかと私は思うのですが、その事実はどうですか。
  79. 北島武雄

    ○北島政府委員 間税部長からお答えいたさせます。
  80. 泉美之松

    泉説明員 先ほど長官がお答えいたしましたように、米の数量はふえておりますけれども基準指数配分するものはそうふえておらないわけでございます。全体はふえておりますけれども、中央保有分がふえたわけでございますますので、従って、三十二酒造年度を最高といたしまして、原料米の方も減っております。具体的に申し上げますと、三十二酒造年度は、委託醸造に基づきまして配分された原料米が二万二千七百九十九石でございます。三十三酒造年度は一万八千九百三十一石、三十四年度は一万九千九百六十石というふうに減って参っております。
  81. 堀昌雄

    堀委員 次に、これは今酒造家の問題をちょっと取り上げたわけですが、今次官は酒団法に基づいて業界がうまくいくようになるだろうとおっしゃるのですが、小売業者の力の実情を調べてみますと、なかなか大へんな実情にある。これはこの前やはり横山さんが小売マージンの問題でお話しのなっておりますが、この十日には全国の小売の方が東京にお集まりになって、何とかマージンをふやしてくれという御要望がある。私はマージンをふやさなければならぬと思いますが、マージンをふやす前にだいぶ問題がある。というのは、農村の方はよくわかりませんが、都市の地帯においては、今の価格は公定価格でございますか、あの価格通りに実は卸売業者、小売業者の間での流通がいってないようです。特に都会地、競争の激しい地域では大へんな値引き競争が実は行なわれている。生産者か卸へ出すところからすでに値引きが行なわれる。生産価格というものは三十円内外割られておる。さらに、卸が小売へ持っていくときに、またこれも割っていく。小売は小売で割って売っておる。割って売っておるところはどこかというと、料飲店にいっておるのである。最終需要家であるところの一般の消費者はあたりまえの値段で買わされておる。私は相当問題があると思う。この問題は、今度の酒団法ができて、協定価格というものができるのか、多少はコントロールされるか知りませんが、その原因の中に、小売業の方に伺ってみると、メーカーの直売というものが相当にこれを誘発する原因を起こしておるというふうに、実は小売商の方からお話を承っておるわけです。メーカーの直売は、都市において大手がやるだけではなくて、今度は地方のメーカーが都市に出てきて、そうして料飲店に直売をやるという問題すらも出てきておるということが、流通過程の中を混乱させておる。これは当自然だと思う。卸、小売が当然とるべきマージンを、メーカーがやれば製造原価で売れるのだ。ところが法律で見るとみんな売れることになっておるようですね。各団体がみな売れることになっておって、法律での規制は私はやはり困難だろうと思うのです。そういうふうにして、売る問題と酒造米割当の問題とは、私はやはり関連をして考えてもいいのじゃないか。ということは、直売をしなければならないということは、多少問題はあるのでありますが、しかし、こういうふうに乱せば、いずれにしたって各業者ともにいいわけはない。ある流通の中で適当なマージンのとれる状態が望ましいのであって、一部のメーカーが直売をやって、卸と小売を飛ばして問題を解決さしていこうということでは、これは問題がある。そこで、今のような状態が続いておる限り、マージンを上げてもなかなか問題は解決しない。それで、マージンの問題を取り上げる前に、私はやはりメーカーの直売という問題をもう少し規制をして、そうして、配給の——配給と申しますか、売り渡されていく経過がルートに乗った形で行なわれるような行政指導を、もう少し強化してもらう必要があるのではないか。これかマージンの問題に優先してある程度成り立たない限りは、マージンを上げたって、結局それは料飲店がみんなまるまるふところに入れるわけで、最終消費者は料飲店で飲んでも安い酒は飲めない。一般の小売で売るのは、みんなあたりまえの高いもので、他で捨てたマージンを一般消費者の分で埋め合わせておるというような現実が起こるということは、まことに遺憾なんです。この点について政務次官の方からお答えいただきたい。
  82. 奧村又十郎

    ○奥村(又)政府委員 御心配のことがどうも近ごろ、だんだんひどくなってきたように思いますので、私どもは実は非常に心配しております。しかし、今の御指摘のように、たとえば清酒で申しますと、清酒生産者は卸も小売もできる、こういう免許に大体なっておりますので、従いまして直売は頭からいけないということは言えません。また、それをどのように押えるかということになりますと、法的な規制は政府としては直接できかねますので、これはどうしても酒団法に基づく組合の自主的な協定ということでいかなければならぬ、かように私は存じます。しかし、それに至りますには、酒類業団体がまず酒団法の規定をよく理解してもらう。どうしたら、今の御趣旨と沿うように、生産者の直売が適当にセーブされて、小売業者、卸、生産者がほどほどにやっていけるかということを、業者みずから各団体ごとに御研究になる。そうして、協定価格なり出荷制限なりの協定案を持って、自発的に大蔵省の方へ相談をしてもらう。これ以外に私は手のないものである。このように指導しなければならぬと思っております。これはまだ具体的には部内の方々と相談しておりませんが、私としてはさように考えております。
  83. 堀昌雄

    堀委員 それはおっしゃる通り法律的な権利でありますから、それを他の力で押えることはできないと思いますが、しかし、今酒造米割当については政府が完全に権限を握っておるわけです。そうすると、酒というものは、メーカーさえ成り立てばいいというのではなくて、やはり各経路にある方のバランスのとれたものでいかなければ、酒税の保全に影響すると思う。マージンなんかなくて、はだしていけというわけに参らないと思いますが、それについて、やはり、今次官もおっしゃったように、ある程度の方向がきまるのなら、使い得る手段は利用してやるべきじゃないか。酒造米の割については、もう少し直売を減らしなさい、それでないと、従前通りの割合でふやすわけにいきませんということくらいは、私は行政指導の中で妥当な——先ほどおっしゃった妥当な行政指導に該当すると思う。それについて、その関係国税庁の方から……。
  84. 泉美之松

    泉説明員 お話の点でございますが、直売することが直ちにいけないと言うことは、なかなかむずかしいのではないか。ただ、直売すると、卸の段階あるいは小売の段階を飛ばすことによって、生産者の方のマージンがふえますので、どうしても値を引いて売ることになるわけであります。それがやはりいけないと思うのでありまして、現在の中央保有米の配分に当たりましては、そういうふうにして生産者が値を引いて売る場合のことは考慮するようにいたしておりますが、なお、御趣旨、御要望に沿って、さらに一そうそういう措置を強化する方向考えたいと思っております。
  85. 堀昌雄

    堀委員 最後にちょっと一つ、これは国税庁長官に要望いたしておきますが、復活された方たちが、実は内部の話し合いで問題を処理しろということになっておるために、なかなか困難な状態に立たされて起る。おまけに復活した時期が非常におくれておりますから、すでにいろいろな販売経路や何かが非常にかっちりとしておる中に、非常におくれた悪い条件の中で復活して、なおかつ必要な保有米の割当もなかなか割り当てられないというので、さっき間税部長も気の毒な立場だとおっしゃった。私もまことに気の毒な方たちがあると思う。そこで、そういう人たちに対しては、中央米で見るか、あるいは基準石数の中で見るかは別としても、もう少し何らかの配慮をする方法はないのかどうか、最後にそれを伺いたい。
  86. 泉美之松

    泉説明員 復活復元業者とそれから外地引揚業者につきましては、いろいろ是正措置は講じておりますけれども、なおまだ必ずしも十分でないように、考えております。特に復活元業者に対しましては昨年から三年がかりで是正する措置をとりまして、本年十月で一応最終処理をはかるつもりでおるわけでございますが、その際におきまして、私どもがとりました措置に対しまして、いろいろまだ不完全な点があるということを御指摘されておりますので、本年十月までの間にさらに検討いたしまして、最終処理をはかりたい、かように考えておるわけでございます。
  87. 植木庚子郎

    ○植木委員長 この際暫時休憩することとし、午後一時三十分より再開いたします。     午後零時二十三分休憩      ————◇—————     午後一時四十九分開議
  88. 植木庚子郎

    ○植木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平岡忠次郎君。
  89. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 国税庁長官に、税の徴収の問題につきまして一点質問いたしたいと存じます。  質問は滞納者の納税義務を第三者に転嫁強制する債権差押通知書にかかわる長岡税務署所管の事件についてであります。この通知書は、二月十二日付で長岡税務署長の二戸憙一郎君より小林進なる人に向かって発せられました。滞納者は長岡市の日興建設株式会社、滞納額は源泉所得税と法人税の利子税と延滞加算税でありまして、その合計は一万三千九百七十円。金額はわずかでございますが、問題は、債権の肩がわり差し押えをなしている事実であるのであります。この通知書の記載内容の概要を申し述べますと、日興建設株式会社が小林進君に対して有すると称する建築請負金百六十万円のうち、未済金の三十万七千円に対する支払請求権の差し押えであります。問題点の所在を解明するために、小林君から税務署長にあてた回答書、抗議文をここに披露いたしまして、それに対する長官の御判断と、長岡税務署長への長官のとるべき措置について承りたいのであります。  小林進君から長岡税務署長大蔵事務官二戸憙一郎君にあてました回答書、抗議文を朗読いたします。   冠省、貴署発行昭和三十五年二月一二日付債権差押通知書を三月三日受取りました。   それに関し左記回答いたします。     記  (一) この債権差押通知は如何なる法規に基いて請求されたものか、その根拠をお示し願いたいと存じます。  (二) 貴署に於いては、滞納者の一方的な申告に基いて、相手方の債務の存在をも確認せず斯様な督促をされるのを普通の行為とされているや否やを承りたいと存じます。    小林進は貴署より未だ一度も日興建設に対する債務の存在を確認する照会に接したことはありません。突如として一方的に金銭の支払を期日と場所を指定して、これが納入を強制するが如きは、国家権力の乱用極まれりと思考しますが、いかがでしょう。  (三)もし斯様な暴挙が法治国の名の下に公然と行う事が許されるなら、悪徳の滞納者は、税金の督促をのがれる為に、架空の債権を設定し、次から次へと善良な第三者に迷惑をかけることになりましょう。    貴署のこの行為は、国家権力を背景にして、全く縁もゆかりもない善良なる市民の生活と家庭に思いがけざる精神的暴力の、なぐり込みをかけ、筆舌につきざる苦痛を与えていることを、いささかでも反省された事が、ありますや否や承りたいと存じます。  (四) 小林進は幸にして国民より選ばれ、立法府の末席をけがしておりますので、今迄黙って泣き寝入りをしてきた善良な被害者に代って直ちにこれが調査にかかることにいたします。その結果はいづれ正式の機関を通じて貴署に対し意思表示をいたしたいと存じます。  (五) 最後に、小林進は日興建設に対しては、債権、債務の関係は全く存在せず、其他精神的負担をもこうむるべき何等の因果関係もないことを中添えます。    貴署の御発展と貴殿の御建勝を祈って、右回答に代えておきます。               以上
  90. 北島武雄

    ○北島政府委員 詳細には徴収部長からお答え申し上げるかと思いますが、ただいまの先生の御質問、ことに抗議文を拝聴いたしましての感想を申し上げます。  今お話を承りますと、日興建設なる会社に滞納税金がある。そうして日興建設の財産を税務署が差し押えたわけであります。その財産なるものは、日興建設が小林進さんという方に対して有する債権を差し押えた。債権を差し押えますと、第三債務者たる小林進さんへ債権差し押えの通知かいくわけです。何も小林さんの財産を差し押えたというわけではございません。日興建設の財産を差し押えたわけであります。日興建設の小林さんに対して有する債権を差し押えた。それを、小林さんは、一つは御自分の財産が差し押えられたようにお感じ取りになっておるのではないかと思います。債権を差し押えました場合には、必ず第三債務者たる者に通知しないと効力がないわけでありますので、小林さんへ通知したわけであります。その場合に、小林さんといたしましては、もし日興建設に対して債務を有するならば、その履行期日までに滞納額を限度として税務署の力にその金を納めるという建前になっております。もちろん、なるほど百何十万円の、三十何万とおっしゃいましたか、債務がありましても、その全部を納めるというのではありません。そのうちの滞納税額を限度として納めるということになっております。あるいはそういう点多少お勘違いがありまして、御自分が差し押えられた、こういうふうなお気持にとられたのではないかと思いますが、それは誤解じゃなかろうかという感じがいたします。ただ問題は、そういうような債権を日興建設が持っておるかどうか、そういう財産があったかどうかという問題です。その点につきましては、税務署といたしましては十分調査してなすべきことであります。実は卒然としてただいま承りましたので、その債権があったことについて、私ももちろんあったものと思いますが、さらに念査はいたしておりません。あるいは徴収部長が急遽参りましてその事情を調べておるかもわかりませんから、さらに事情を御説明申し上げさせます。
  91. 勝原啓

    ○勝原説明員 ただいま長官からお答えいたしました点でございますが、債権の確認行為をどれだけやったか、この点につきましては、実はまだ詳細はわかっておりません。実は昨日こういう問題があるということを伺ったばかりでございまして、詳細はわかっておりませんが、一般的に申し上げますと、先ほどの質問にありましたが、滞納者がこういう債権を持っておるということを一方的に言うと、税務署というものはすぐそれに応じて動くものか、あるかないかわからぬままに、いきなり国家権力を使うのではないかという点があったのでございますが、その点につきましては、税務署としましては、ほんとうにあるかということを債務者に十分確かめた上で活動するということにはなっていないのであります。なっていないというのは、法律的になっていないのではございませんで、実際問題といたしまして、そういうことは、あまりつついておりますと、悪質な人には逃げられる可能性かあるものでございますから、一応滞納者の方を調べまして、大体その債権に相当確実性があると認められるものについては、迅速に行動をとるというふうに動いておる点があるわけでございます。
  92. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 先ほどの抗議文の通り、債権債務はないのです、小林君にとりまして。ですから問題なんです、全然確かめずに、いきなり法律上は発動することができるのだということ自身が問題で、検討されなければならぬじゃないですか、あなたのおっしゃるような慣行になっているとするならば。そこで、きょうは小林君がかぜを引いて休んでおる。もしそうでなければ、ここにきてもらって、ピンチ・ヒッターとして、自分のことですから一番よくわかりますから、なお委曲を尽くして質疑をしたい、こういう念願であったわけですが、きょうは不幸にしましてかぜで伏せっております。しかし、問題点はここで明確になっておるわけですから、なお国税庁におかれまして長岡署等をよく調査されまして、その上で明確な御処置についての御回答をいただきたい、かように考えております。また追って小林君自身からこれを質問するという権利を保留しておきます。
  93. 北島武雄

    ○北島政府委員 日興建設なるものが小林さんに対して債権がなかったのに抑えたという場合、実は怒ってくるのは日興建設のはずであります。それを債務者の方が怒られたというのはどうも私は解せない。御自分の財産でも抑えられたなら……。
  94. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 小林はそう言ってない。
  95. 北島武雄

    ○北島政府委員 どうもそういう感じがしますよ。日興建設は私はそんな債権はありませんと言うのが筋合いでございますので、何かそこに誤解の要素があるのじゃなかろうかと思います。なお、自分はそういうような債務を日興に負ってない、こういうお話でございますので、十分その点日興建設の内容を調査させまして、はたしてそういう債権がないものなら、もちろん、それは架空のものに差し押えられておりますから、無効の差し押えということになりますので、十分検討いたしまして処置させます。
  96. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私の見通しではもちろん無効だと思っている。事実誤認があるわけだ。それを、この程度の誤認なら税務署の権力行政としてかまわないのだという行き方はあまりいいとは思っておらぬから、この点を問題といたすのですけれども、いずれにいたしましても事実の精査が前提になろうと思うから、あなたの方でもよく調べて下さい。この問題はこれで一応おきます。  次に、酒税法の一部改正案に関連しまして、前会の質疑を続行いたしたいと思っております。三月三日の当委員会において、いわゆる社会党の百円ビール実施の可能性につきまして計数上の政府の見解を求めたのに対し、政府はこれを留保されましたが、その後御検討あったことと存じますので、この際御回答書を承りたい。ただし、念のため申し添えますが、酒類間の均衡論とか生産能力上の間近などはしばらく考慮外に置いて、もっぱら価格と需要量の関係における実現性について御回答をお願いしたい。
  97. 原純夫

    ○原政府委員 そういうふうに価格と数量だけについてお答えするというのは、問題が社会党のおっしゃっています税制改正案でありますから、なかなかむずかしいのであります。あらたまってお答えするとなりますならば、ビールの問題はビールだけのワクの中で価格数量を判断し切れるものでないわけで、代替物品とほかの酒類への影響まで読まなければいかぬわけであります。非常にむずかしいということで、とうてい先般から今までのなにではできません。また、非常にむずかしい問題を詰めて、その角度だけでお聞きになるというのも、いささか私どもとしては大へんでありますので、全般として考えますれば、酒税問題については、先般の会議で、その全般の高さの問題について、またそのレベルにおける酒類相互円のバランスの問題について、私ども考えを申し上げたところでありますので、どうかそれでお考えを願いたいというふうに思う次第でございます。
  98. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 念押しをしたにかかわりませず、念押しと逆な御回答をいただいて大へん不満であります。そこで、一応私どもの立場だけもう一度確認しておきたいと思います。私の聞かんとしたことは計数上のことでありまして、消費資金におきまして一二%くらいの伸びがあるであろうし、自然増におきましても一二、三%の伸びがこれまたあるであろう。合計いたしまして二五%の伸びが期待できるのだ、このことを申したわけであります。そこで、消費資金上の伸びの計算根拠といたしましては、現行百二十五円の小売価格が百十円に下がった場合、百十円分の百二十五円が新たな消費倍率となります。すなわち約一一三・五%となりまして、一三・五%の伸びを見込み得るのですが、内輪に見積もり、九掛として見ても一二%増が当然期待ができる。これが私どもが消費資金上の伸びが一二%となるという根拠であります。  次に、自然増を一三%とした理由は、増税のあった昭和二十九年度以降の自然増加率の足どりを見てみますと、三十年度は前年度比較一五%増、三十一年度は同じく前年度比較一四%増、以下三十二年度一八%増、三十三年度一四%増、三十四年度概数二四%増で、この五カ年間の算術平均は一七%増となっておるのであります。従いまして、三十五年度において増加傾向が著しく鈍化し、従来の平均一七%の八割にとどまったといたしましても、なお一三%の伸びは必至の数字であります。両者合計し三十五年度の伸び率を二五%といたした計算は、客観的にも一つの無理もない数字と考えております。  ところで、前回は主税局長はこの点につきましては非常に悲観的で、消費資金等については六%くらいのものであろうというふうな答弁をいただいたと思います。少なくとも主税局長の政治的御答弁よりも私どもの主張の方が、格段に客観性がある、かように考えております。あえて私の方の側から政治的に申し上げますれば、三十五年度の伸び率は、二十五%どころか、三〇%と申してもさしつかえないことと考えております。増加率については勝負あったと考えますので、この点はこの程度にとどめておきます。  次に、私どもが特に強く主張する酒税全般の問題でありまするが、私どもの判断では、政府は、業種別の競合を悪用いたしまして、高率酒程の温存のため、分割統治の方式を用い過ぎているきらいがあると思う。今回の社会党の主張は、所得税における課税最低限の引き上げによる減税に均霑し得ざる階層の救済は、税制上からは、消費税を見直して、これを減額することでなければならないとする立場からの主張であります。それにしても、私どもといたしましても、歳入の急激な減少をおかまいなしとしているわけではございません。消費税を引き下げるべしとの命題と、歳入の急激な減少を回避すべしとの命題を、酒税において調和させるためには、税収額に関する限り薄利多売主義に転向すべしということが、われわれの主張であります。そして、その方法といたしましては、減税されることによって伸び率が大きく将来増収が期待される酒類、たとえばビール、雑酒等の弾力性ある酒類の税率を、まずもって思い切って引き下げることであります。その翌年度におきまして、これらの増収分を他の酒類の減税の原資に充てることにすれば、現行のごとき明らかに大衆収奪の高率酒税一般を軽減し得て、税源の拡大をすらはかることができると考えております。かかる方法と経過をもってするならば、あなた方がよってもって減税論圧殺のよりどころとしているところの酒類間のアンバランスの問題も発展的に解消することができるのではないか、私どもはかように考えております。政府の御所見、主税局長の御所見はいかかですか、お伺いいたします。
  99. 原純夫

    ○原政府委員 第一点のビールの消費増の問題でありますが、おっしゃる通り私が参りました点が二つのうち一つあります。減税による消費増は一二%くらいとおっしゃったのは——私は六%くらいだろうと申しておるのは、実は私はそう申したかもしれませんが、私の頭の中は税収がバックする額はどのくらいかということで考えておったわけです。どうも税収が一二%リカバーされるという御質問のように思ったものですから、その点ならば私の誤解で答弁いたしました。消費量自体は、おっしゃる通り、減税になれば一三・五、六%増になりましょう。もちろん他の酒類とのなにがありますが、それを無視して計算すればおっしゃる通りになります。その点は、もしそういうお尋ねであったら、私は間違えました。  それから、もう一つの、毎年の伸びは、私が手元に持っているものと若干違うなにがありますが、二十九年という年に、ビールの消費が対前年六%ばかり減っている年があるわけです。あなたは二十九年をもとにして三十年からやっておられますが、二十九年は天候のかげんなどでだいぶ減った年なんです。これを入れるかどうかという御議論はあるかもしれないけれども、私どもはこれも含めて長期の趨勢線を見ているということで、おっしゃるような趨勢線としての数字は、私どもはもっと低い数字を見ております。  それから、二番目の問題でありますが、消費税の引き下げによって大衆の税負担を軽減するという考え方、これはもちろんあると思います。ただ、先般も申し上げましたように、税法を改正しないでおきますと、消費税は概して国民所得の伸びとかなり並行した伸びをする。それから直接税はそれよりもっと大きい伸びをする。従って、税負担の中におけるウェートは面接税の方が多くなるということになります。ということは、所得税を納めない人よりも、納める人の所得に対する負担割合の方が重くなるということです。そういうことがありますから、一がいに消費税の引き下げによって所得税を納めない人の税負担を軽減することがバランスとしていいかどうかというのは、検討問題であろうと思います。  それから、ビールについて減税をする、あるいは、今のお話ですと、一般的に間接税で減税をやれば、次年度以降消費の増があって増収があるというお話のように伺いましたが、それは、私どもの経験に徴するに、どうもそうはならない、やっぱりネット減は出るというふうに、今までの経験は語っておると思います。従いまして、この消費税の減税は長い期間では減収を来たさぬということは、どうもそう考えかねるというふうに思います。
  100. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 所得税と消費税の権衡問題等につきましては、今は議論の場でないと思いますので一応やめておきます。  次に、先ほどは除外しておいたわけでありますが、ビールの伸び率に対する三十五年度における生産能力の制約について、政府はどのようにお考えですか。
  101. 原純夫

    ○原政府委員 ビールを発酵させてタンクにしまっておく日数をどうするかということで、いろいろ大幅に変わってきますが、やはり五十日くらいは置いておかねばなるまいということで見ますと、四百四十二万石というのが、ただいま私どもの持っておりますビール会会社の生産能力の数字でございます。
  102. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それなら各社別の能力をちょっと出して下さいませんか。えらく少ないように思いますが……。
  103. 泉美之松

    泉説明員 四百四十二万石の各社別の内訳は、麒麟が百五十一万石、朝日が百四十三万石、日本麦酒が百二十四万石、宝が二十四万石、こういうふうに相なっております。
  104. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 これは今年末くらいからの増設等による生産力の増高、こうした要素は考慮されておらないのかどうか。現時点であなた方はおっしゃっているのか。それとも本年度中の増高も含めての数字ですか。
  105. 泉美之松

    泉説明員 各工場でいろいろ増設の計画はございますが、本年の最盛期でありまする七、八月ごろには間に合わないので、現在の時点で考えております。
  106. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 先ほどの計数論争で、私は私の説の方が正しいと今でも確信している。そこで、ただ制約があるとするならば、生産能力上のことだろうと思ったのでお聞きした。ところが、政治的御回答であるかどうか知らぬのだけれども、あまりにも低い数字をあげられました。私はこのようなことはないと思っております。ですから、もし生産能力ということで伸び率に限界ありと論争されるとした場合、この四百四十二万石はまことに過小な見方であると考えるものであります。経験的に見ましても、三十四年度政府予算におきましては三百七十万石を見込んでおったのが、実際には四百二十万石以上を移出することができているはずです。おそらく生産会社としても年度当初においては三百八十万石程度の生産計画ではなかったかと思います。しかるに、下期の売れ行きの増高によって、予算をこえること実に五十万石の増加に対応し得たわけでありますから、こうした過去の実績に徴してみましても、ビールの生産能力は弾力性もあり、あなた方のおっしゃる四百四十二万石の消極的な回答は当たらないと考えますが、いかがでございましょう。
  107. 泉美之松

    泉説明員 ビールの製造技術も漸次改善されておりまして、従来は貯蔵期間が六十日でなくてはいけないということであったのでございますが、最近はそれが非常に早くなりつつあります。従って、製造能力ということは、一応先ほど主税局長が申し上げましたように、五十日ぐらい貯蔵するものとして計算した場合でございますので、もっと早く回転させれば、もちろん多少能力がふえることは申し上げるまでもないわけでございます。ただ、そういたしますと、どうしても熟し切らないビールが出る可能性もあります。もちろん、最盛期のようにどんどん売れている過程におきましては、それでも消化されるのでありますが、消化し切らない場合も予想いたしますので、今申しましたような能力と考えております。それから、この能力は、従業員が八時間労働をするという前提で計算しておりますが、これを超過勤務をやりますれば、やはりある程度能力がふえるというようなこともあります。それから、あらかじめ、あまり需要期でないときに作っておきまして、それを貯蔵しておくというようなことによっても、ある程度ふえる余地はあるわけであります。従って、なかなか製造能力というようなことは厳密に申し上げかねる。また、減る要素といたしましては、昨年はなかったのでありますが、昨年のように従業員がストライキを行いますと減るというようなこともございますので、なかなか的確に製造能力が幾らだということを言い切ることはむずかしい問題でございます。会社の営業政策等とも関係いたしますので、私どもは、現在の、今申し上げましたような、八時間労働で五十日間貯蔵するというような前提のもとにはじいておることを、御了承いただきたいのでございます。
  108. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私がこの問題にかなりしつこく食い下がる理由は、私どもの計算では、ことしの四百二十万石を基礎といたしまして、三十五年度には五百二十五万石までいけるだろう、かように伸びが見られるという確信に立っておるからであります。それをカバーし得る生産の態勢ができておるかどうか、このことが問題でありますから、お聞きしておるわけなんです。今、泉さんの御回答には、具体的な数字がありませんが、もう少し突っ込んで、四百四十二万石に依然としてとどまるのか、伸びがあるにもかかわらず、これを圧殺して、四百四十二万石という政府の予算石数に一応どうしても限定してしまうのかどうか、この点が問題でありますから、御明答をいただきたい。
  109. 泉美之松

    泉説明員 平田委員お話の前提となっております昭和三十四年度が四百二十万石に達するだろうというのは、ビールの課税年度からいたしますと、三月から二月までになっておりますので、それで見ますと四百二十万石にはまだ達しないと思っております。それから、三十五会計年度、つまり本年の三月から来年の二月末日までに幾らになるかという点につきましては、ビールの消費というものは天候に左右される点が非常に多いこと、それから先ほど申し上げましたような従業員のストがあるかないかといったようなこと等からいたしまして、四百四十二万石というのは、お説のように多少かた目とは思いますが、かた目に見ておる次第でございます。今、的確に四百四十二万石をどの程度こえる可能性があるかということにつきましては、はっきり申し上げかねるのでございますが、しかし、ふえましても多少のところでありましょうし、五百二十五万石というところには到達し得ない。来年に工場の増設工事が、本年計画いたしておりますものが早くできますれば、四百四十二万石によりかなり上がるとは思いますけれども、しかしそれも大した数字にはならないものと考えております。
  110. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 かなりとかなんとかいうのではわかりませんよ。数字で言って下さい。
  111. 泉美之松

    泉説明員 いろいろな客観的な天候その他の条件が加わりますので、神様でもない限り、正確に言い切れないと思うのであります。
  112. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 生産能力だけについて言っていただきたい。あとの伸びがどうであろうかということは、今論議の外におきます。生産能力としてどのくらいまで可能であるか。このことだけについておっしゃていただきたい。
  113. 泉美之松

    泉説明員 各社によって超勤をどの程度行なうかもわかりませんが、能力といたしましては、各会社におきます計画の総計は、約五十万石程度を増設する計画であるわけでございます。それが最盛期の七、八月までにできませんために、今申し上げましたように、はなはだばく然としたことを申し上げて恐縮でございますけれども、能力としては五十万石ふやす計画で進んでおりますけれども、いっその増設工事が完了するかということ、それが最盛期に間に合わないということのために、能力として低目に見ておるわけであります。
  114. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それでは、私どもの推定するように五百万石をこえるような事態がきた場合に、製造能力自身に限界があるとするならば、たとえばチェコあたりから麦芽を買ってくるということでカバーもできます。いずれにいたしましても、そういうことを考慮し得るのですから、この論争をこれ以上続ける必要はないと思いますから、一応打ち切ります。  次に、ただいま上程されております酒税法の一部改正案に関連した準一級清酒価格構成を、この際お伺いいたします。一升びんについてお答え願います。
  115. 原純夫

    ○原政府委員 一升当たりと言われますので、まず小売価格から申しますと、六百五十円であります。そのうちで税金が三百三十三円九十銭、それ以外のところはなお検討中であります。大体マル公計算において特級、一級、二級というものの製造原価、卸マージン、小売マージンというものに計算の秩序というものがございます。それに合わせて形づくっていくつもりであります。大体案は持っておりますが、まだ公表いたす段階になっておりませんので、ただいま申しました通り、現にある特、一、二各級の価格構成の秩序に乗ってこれを算定すれば、六百五十円から今申しました三百三十三円九十銭を引いた残りが、バランスを取って製造原価と卸、小売のマージンに分配されて、ちょうどよくなる見込みであるというふうに、たいへん全体ひっくるめて恐縮でありますが、そういうふうに申し上げておきます。
  116. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私の質問する理由は、大体卸と小売のマージンがどのくらいになる、だろうかということに関心を持っての質問です。そこで、まだ未定稿でありましょうけれども、一応数字がありましたら、パーセンテージをお聞かせ願いたいのです。
  117. 原純夫

    ○原政府委員 この委員会の席で速記をとる形においては私は申し上げたくないと思います。別の形で申し上げたいと思います。
  118. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 酒税局長の御発言から類推いたしますと、結局、今回の酒税法の一部改正に関連しまして、小売準一級の清酒の設定を見ましたけれども、この内容の価格構成については新味は出ないということと了承いたします。  ところで、現在特に小売業者が直面している問題といたしましては、先ほど堀さんの方から別の角度から質問がありましたが、私は労働芸準法に準拠する就労時間並びに休日制の実施、最低賃金制の不可避的な実施の趨勢、退職金共済制度の発足とその加入等がありまして、これらに伴う経費増高等を勘案しますれば、さらに機会を求めまして、全酒類にわたりこれが適正化をはかるべきだと考えておりまするが、この際国税庁の御見解をお伺いしたいと存じます。
  119. 北島武雄

    ○北島政府委員 これは非常にむずかしい問題でございます。製造業者卸売業者、小売業者だけのことを考えてももちろんいけません。最後に消費者のことも考えなければいけません。しかも、その中におきまして、バランスのとれた割合が望ましいわけであります。各業態におきましてももちろんマージンの多からんことを希望しておるのは無理がらぬことであります。私どもでは、その間の彼此権衡をとりまして、消費者の最終価格ももちろん重要な要素と考えまして、きめなければならぬ問題でございます。ただ、従来の差益率を申しますと、一応清酒につきましては、卸売のマージンが仕入れに対しまして特級が四・六%、一級酒が四・八%、二級酒が七・八%、それから小売の差益率は特級酒が一〇・一%、一級酒が一〇・五%、二級酒が一一・七%となっております。これを根本的に変えられるかどうかということにつきましては、最終価格の問題は十分頭に入れておかなければならない問題で、簡単には申し上げかねる次第でございます。十分その間の彼此権衡をとりまして、将来基準価格というものが設定さるべきものであると思います。
  120. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 大体質問を終わります。しかし、本日の論議を通じてみましても、酒税法には問題が多いのです。転換期の酒税法は抜本塞源的に見直さなければならぬ、こういう問題も含んでおると思うのであります。そこで、順調にいきますれば、本日この法案は通過するはずになっておりまするが、酒類全般の問題についてはまだ問題が多いのですから、法案の通過は通過といたしまして、当委員会において酒税関係の質疑の権利はなおこれを留保いたしたいと思います。従いまして、委員長並びに同僚各委員におかれましても、法案通過のゆえをもってこれに制約を加えないということを御了承願いたい。これをもちまして私の質問を終わります。
  121. 植木庚子郎

    ○植木委員長 ただいまの御希望に対して委員長も了承いたします。  松尾トシ子君。
  122. 松尾トシ子

    ○松尾委員 本日この法案が通過する予定になっておりますので、もう大体質問は終わったやに思われますが、一言御質問を申し上げます。  この法案の払出の理由を見てみますと、準一級酒を置いたということは、形を変えた清酒への減税というふうにとれるわけなのです。ところが、今平岡さんも言われましたように、酒税に対しては全般にわたって非常に税金が高過ぎる、従って小売値段が高い、こういうことになるのですけれども、減税するのでしたら、なぜもっともっと高いビールなんかに手をつけておやりにならないか。それから、この提案理由の説明には、どうも税金が高くて一級、特級が売れなくなったので、一級と二級の間に準一級を設けて、しかも市場混乱を安定化するのだと書いてございますが、他にもっと税率の高いビールなどをよそにして、準一級というものを置いて、清酒への減税ということをはかったのは、何かはかにわけかあるかどうか。それを一つ。私は、品物か比較的よくて安く手に入るのですから、反対するものではないのですが、何かはかに理由があったかどうか、それをお聞かせ願えればけっこうでございます。
  123. 原純夫

    ○原政府委員 私どもが準一級を作ることを考えましたのは、一昨々年以来酒類別の税率のバランスにいろいろ検討を進めております間に、あまりにも税率のバランスが顕著に問題だというのが、この清酒における特級、一級、二級のバランスであったわけであります。それはどういうことかと申しますと、清酒全体としては大体年率で七%前後堅実にずっと伸びてきておりますが、その中でほんとうに伸びているのは二級だけであって、一級酒は三十万ちょっとのところで毎年横ばいである。特級酒はだんだん量は減って参るというような状態であります。税率の差も非常に大きくて、しかもその結果小売価格が特級千七十五円、一級が八百三十九州、二級が四百九十円。そうなりますと、特級と一級の間は三百四十円でありますか、一級と二級の間は実に三百四十五円あるということで、こういう値段の構成自体にも、ちょっと常識的に考えますと、特級は特別高いか、一級と二級との幅は特級と一級の幅よりもむしろ小さいというのが、今の情勢では妥当ではないかというような感じがされる。今申したように、その結果でもありますが、特級、一級というものの伸びが割合—特級のごときは、今はちょっと違いますが、減って参っておるというようなことを見ますと、やはりこの辺に何か手を加える必要があると思ったわけです。翻って見ますと、こういう級別のきわめて顕著な差を置いた税率を盛りましたのは、戦争の終わりあたりからもう酒が足らなくて、幾らでも売れると言っては極端でありますが、財政需要も多いからというので、特価酒というような制度も作って、かなり高い値段を出したわけです。そういう時代の情性が残っておって、現在の事態にはどうもそぐわないということがきわめて顕著に認められるというのが、ここ一両年米の検討の結果であります。  そこで、今回の準一級というものを入れまして、税率の公正、小売価格の公正及び常識に合ったものにする。そして、現在では一級と二級の差があまり大きいものですから、二級酒を作っておる酒屋さんで少しはいい一級を出したいといっても、三百四十五円飛び上がるのには力がない。やはりいなかの酒屋さんで相当の銘柄だというのが準一級を作りますと、二級を減らして準一級を作るというのがあるわけです。清酒の業界がそういう意味で先年来言うてきておられるところは、むしろその方が一級、特級から落ちてくるよりも多いから、ぜひやってくれというお話で、私どもは、多いというのはなかなかむずかしかろう、それでは一つ努力してとんとんにしてもらいたいということで今回はやっておりますので、お話のような、これは実質上減税的ななにがあるという御意見も一応ごもっともなところがありますけれども、今般は減税はやらないという建前から、業界に協力していただいて、減税でなく増減収率ゼロということで、先ほど申しましたような気持でやっておるというわけであります。なお、ビールについては、アルコールの度数が低い、度数割にしますと非常に高い税率である、おっしゃる通りであります。そういう意味で今後検討を続けたいと思いまするが、今でもたしか、売れ行きという点でいきますと、御案内の通りビールは酒類の中で一番トップを切って売れ行きが毎年飛躍的に続いて伸びておるというところであります。私は何も伸びておる酒は税率は高くていいという結論を申しておるわけではありませんが、そういう酒類についてはなおそういう点も考え、他の伸びの悪い酒とのバランスというようなことも十分考えた上で措置したい、措置するときにはやはり相当の財源が要るだろう、それはまた財源をもって減税をやるわけでなければできますまいということで、今回問題とは思いながら見送ったわけであります。
  124. 松尾トシ子

    ○松尾委員 ただいまの御説明はしはしば聞いておりますので、私もわからないことはないのです。ところが、急にというわけでもありませんが、三年ほど前からこういうふうな実情に照らして考えておったとおっしゃるのですけれども、何かちょっと不明別な点がある。聞くところによると、この前三十三回国会のときに、昨年の暮れですか、酒団法が出ましたときに、いわゆる陳情八団体があまり快く思ってなかった。中でも中央酒造のごときは相当反対しておった。そのために見合いでこれが急に出てきたなんて言っている人もあるくらいなんです。そういうことは思い思いの考えで自由ですけれども、一体ビールが売れているからほうっておくというのではないと言いながら、事実はビールの需要が非常に高いから今の間はとおっしゃるのですけれども、実際は中身はほんの少しで、一本当たり百十五円ですが、その中の七十円三十銭が税金に該当するというのでは、酒飲みでも酒の酔いがさめてしまうというほと税金をとられているので、売れているからということで、このまま将来かなり長い期間ほうっておくわけにはいかないだろうと思うのです。  もう一つは、どなた様かの質問に対して、酒税全般にわたって考えてみるという御答弁があったように記憶しておりますが、その酒税全体にわたっての検討と同時に、税を公平にしていくという建前からいたしますと、今取っております税金というのは、戦前と比較して、いわゆる物価構成の推移といったようなものも加味しながら、どういうふうになっておるのか。高いか安いかのパーセンテージをお知らせ願えると、再検討のおりに大へん参考になるのじゃないかと思います。
  125. 原純夫

    ○原政府委員 戦前の通常の基準年次を昭和九、十、十一年ごろをもとにいたしまして、酒の税率が何倍になっているかということを調べてみますと、一審倍数が高くなっていますのが、特級ウイスキーの二千百二十七倍であります。一番割合が低いのが甘味ブドウ酒の三百十一倍、その中にありまして代表的なものを言いますと、ビールが八百倍、二級酒が六百二十九倍、合成酒が五百七十倍、しょうちゅうは三百八十倍、これは甲類のしょうちゅうであります。ウイスキーも二級ウイスキーは五百二十七倍、大体物価が三百五十倍といわれますから、すべて——すべてと言ってはなんでございますが、ほとんど大部分が物価の倍率以上に上がっておるということになっております。租税負担全体が戦前国税、地方税合わせて一二・三%のものが現在約二〇%、五判増しくらいになっておりますので、それらもあわせて考えていただかなければならないであろうと思っております。
  126. 松尾トシ子

    ○松尾委員 今伺った数字によれば、全く非常に大きなものに変化して、租税全体に対してもなかなかこれは高いというふうに思われるのです。将来酒税を再検討する場合に、今のような全体的に見た要素でもって公平にならしていく、あるいは実態に適応したものにならしていくということで、その率を変えるお考えはないかどうか。
  127. 原純夫

    ○原政府委員 間接税を増徴しても、むしろ直接税を減税しろという声が強くて、最近まではどうもそういう声の方が強かったと思います。事実減税は大部分直接税、特に所得税の分野で減税を行なってきました。しかしながら、直接税の方もまだまだ重いと思いますが、かなり合理化されたというところから、間接税の方でも減税といいますか、それをはかれというような声も相当出て参って、今は直接税、関接税のバランスの問題は、そういう意味では、いろいろな角度からの意見がかなりある時期になってきております。ということは、酒についても減税ということはとうてい問題にならぬということではないと思っております。従いまして、将来そういう直接税とのバランスを見ながら、国民の税負担はなるべく軽く、そして合理的である方がいいわけでありますから、酒についてもできるだけはばかっていきたいと思いますが、優先第一位ということでないというあたりの点は、かなり慎重にお考え願わなければならぬだろう。なお酒のレベルの問題はそのくらいにいたしまして、その中で各酒類のバランスという問題になりますと、相当問題があると私ども思っております。今御指摘のビールの問題もありますし、特級、一級という問題もありますし、その他にもいろいろ問題が多うございます。これは、戦中、戦後、アルコールさえ入っておれば飛ぶように売れたという時代には、あまりそのバランスを精細に検討して議論いたしませんでも、業界自体も、どんどんそれで全部売れてしまうわけですから、文句はない、消費者もあまりそういうなにを言わないということでありましたのが、需給がゆるんで参りまして、そういう点をより精細に調べなければならぬということにだんだんなりましたので、そういう点には特に力を置いて検討しなければならぬというふうに考えておる次第であります。
  128. 松尾トシ子

    ○松尾委員 大体そういう御説明を聞きますと、もっと突き詰めて各酒類にわたってのというのはむずかしそうですから、別な角度から税収をはかって、国産品を少しでも税を軽くという方法をとることはできないかという意味から、貿易・為替の自由化から、将来に洋酒が相当輸入されるだろうといわれておりますけれども、現在の洋酒の輸入量並びに将来貿易自由化になった場合の推定は、どのくらいに抑えていらっしゃいますかということが一点。それから、イタリアの酒税法を見ますと、輸入酒に対しましては、関税のみでなく、国産ものに課しているように酒税をとっているという話も聞いておりますけれども、こういったことは、日本の現状におきまして、やったら、何か支障があるかということです。
  129. 原純夫

    ○原政府委員 酒の輸入高は、最近の状況では、金額にいたしまして約百四十万ドル程度が年回の輸入額であります。自由化いたしました場合にどうなるかというのはなかなかむずかしい問題でありますが、完全に自由化いたしますれば、相当入ってくるだろうと私どもは心配いたします。御案内の通り、輸入洋酒、特にウイスキーあたりでは、税を払いましても、相当利潤があるといいますか、相当高く売れているわけで、よけいになりますと、下がってはくるでしょうけれども、やはりそれで相当な影響があると思っております。そういう意味から、よほど、自由化については、金額は小さい項目でありますが、慎重にしてもらいたいというつもりを持っております。なお、輸入酒について、関税のほか酒税もとるかどうかという点は、これはもう日本でも、関税をとりました上に、酒税をとるということになっております。それでもまだ国内の価格が非常に高いために、相当利潤があるという状態になっております。
  130. 松尾トシ子

    ○松尾委員 以上で終わります。
  131. 植木庚子郎

    ○植木委員長 石村英雄君。
  132. 石村英雄

    ○石村委員 まず、原主税局長に税収見通しのことでお尋ねしますが、三十四年度の当初予算のときの雑酒の税収見通しは九万六千キロリットル、百六十億という見通しだったわけですが、それが今回三十五年度は七万二千四百キロリットルで百十九億、約百二十億で見通した。この雑酒はほとんどウイスキーだと思いますが、その見積もりが少なくなっておるのは、何か特殊な理由があるのですか。
  133. 原純夫

    ○原政府委員 三十四年度当初予算の雑酒の課税見込み数量は九万六千キロリットルで、補正でだいぶ落としました。それから三十五年度の予算見込みにおいては七万二千四百。なお、補正で落としたことが大事な数字でありますので、申し上げますと、補正で七万八百五十キロリットルに落としております。これは実行いたしましての実績を見て、非常に雑酒の伸びが悪いので、それに合わしたわけであります。御記憶の通り、雑酒は二、三年の間相当顕著に伸びておったのです。その趨勢に乗って三十四年度当初予算を見ておりましたところが、実際にはそれが伸びなかったというために、補正で修正いたしたわけであります。
  134. 石村英雄

    ○石村委員 それは三十四年度の当初見通しが間違いであったということで、それを是正した。補正で確かにそのように減ってはおります。ただ、常識から考えると、ウイスキーなんて大へん近ごろたくさん飲み出した。それが三十四年度当初より少なくなったので変に思ったのですが、実績上そうだとおっしゃれば、別にこっちではその実績は間違いでありますなんという根拠もあるわけでありませんから、何も申しません。雑酒にはいろいろ問題があるそうですが、これはいずれ勉強してお尋ねします。  そこで、今度の法律の方へ移りますが、まず酒税をかけるかけ方の問題です。酒は特級酒、一級酒、いろいろありますが、これは醸造家が醸造いたしますと、この酒は特級だ、この酒は一級だ、一級だ、こういうように鑑定できめられる。そして、それを出すときに、特級を出せばこれほどの税金だというので、庫出課税ということで、そういうやり方になっているわけですか。
  135. 泉美之松

    泉説明員 お話の通りでございますが、ただ特級酒あるいは一級酒に出品することは製造業者の任意でございますので、できたものをすべて鑑定官が鑑定いたしまして、これは特級、これは一級、これは二級というふうにきめるわけではございません。出品がありましたもののうちから、特級として売ってさしつかえないもの、一級として売ってさしつかえないものを認定することになっております。
  136. 石村英雄

    ○石村委員 そうすると、二級の規格に当たるものはアルコール十何度とかエキス分が幾らとかという規定が法令の何条かにありましたが、あの規格以上のものでさえあれば、二級として出して売ってもいい、こういうことになるわけなんですね。
  137. 泉美之松

    泉説明員 二級につきましては、酒税法には別に規格をきめておらないのでございますが、物価統制令によりまする統制価格におきまして、二級として販売するものはアルコール度が十五度以上、十六度未満、原エキスが二六・五以上ということになっておるわけでございます。従って、そういう規格のものとして売っておるわけであります。
  138. 石村英雄

    ○石村委員 アルコール度が十六度末満という上の制限がありますが、十七度だったら二級で売ってはいかぬということになるのですか。
  139. 泉美之松

    泉説明員 御承知のように、清酒につきましては級別課税を行なっておりまして、特級は十六度以上、一級も十六度以上というふうにいたしてございますので、清酒二級で十七度のものを出すということになりますと、級別保税が混乱いたしますので、現在のところ十六度を越える清酒二級は出荷させないことにいたしております。
  140. 石村英雄

    ○石村委員 それは法律的にいけないということになるのですか。ただ税金をとる上で都合が悪いから認めない、こういう意味ですか。十七度のものを二級で売ることは、絶対に法律違反だ、あるいは脱税だと言ってやられるわけですか。
  141. 泉美之松

    泉説明員 法律上は、十七度をこえまずと、酒税法規定に基づきまして、加重税率が課せられることになっておりますが、別段それを出してはいかぬという規定にはなっておりません。加重税率をきめております趣旨は、そういう級別課税の混乱を起こさせないという建前でできておるわけでございます。従って、現在のところ、十六度をこえる二級の出荷を認めておらないのは、国税庁の方の通達で、級別課税に弊害があるからということでやっておるわけでございますが、将来規定を整備してもらいたいというふうに考えております。
  142. 石村英雄

    ○石村委員 しろうとがこの税率を見ますと、たとえば二十二条に、二級酒は十一万三千六百円、アルコール分が十七度をこえるときは、アルコール分十五度をこえる一度ごとに九千九十円を加えた金額、こういうように、アルコール分一度についてさらに幾らという税金をとるように、先ほどもお話にありましたが、あるわけです。そうすると、アルコール分によって、一度ごとに九千九十円、これをかけたものを納めさえすれば、税法上は何ら差しつかえない。ただあなた方のやり方からおもしろくない。法律的な義務はないのだが、大蔵省が文句を言うから、しようなしに言うことになるのですか。どうなんです。一度ごとの税金をよけい納めさえすれば、法律違反ではないなら、いいものをなるべく安く売るというのが商売人の本旨なんです。だから、本人が赤字になればそんなこともしないでしょうが、かりに十分利益があると考えて二級酒で売っても、それは法律違反にはならぬ、こう考えられるが、どうですか。そこをもう一度明確に、あなた方の通達だとか、そんなものはよけいなものですから、法律だけで一つ答弁願いたい。
  143. 泉美之松

    泉説明員 現在の法律並びにこれに基づく政令、省令におきましては、お話のように制限がございませんので、やろうと思えばできないことではないのでございますが、先ほども申し上げましたように、級別課税の混乱を来たしますので、そういうことの割り水承認はしないようにということで税務署長に通達を出して、出荷いたします際に、割り水承認にあたってそういうふうにしておるわけでございます。しかし、この点につきましては、お話のように、通達を出すことはよくないではないかというような点がございますので、近く規定を整備していただくつもりでございます。
  144. 石村英雄

    ○石村委員 税金をとる方は、その方がいいかもしれない。飲む方は、いい酒を安く飲ましてもらうに越したことはないのです。よけいな質問をして、法律的にそういう税金を加えられたら何もならぬと思いますが、それはそれとして、そこでお尋ねしたいのは、私は業界のこの新聞を見てびっくりしたのです。これは、泉さん、あなたの警告らしいのですが、こういうことを記者会見で言っておる。「灘、伏見の主産地メーカーに対しては税収確保のため、前年度の特、一級出荷実績数量を守るよう役所から希望しているが、もしこれに協力してもらえない場合は何等かの特別措置をとらざるを得ないだろう」。今度準一級酒を作ったのは、結局一級と二級との間の格差があまり大き過ぎる。せっかくいいものを安く売ろうと思っても、なかなかそこはうまくいかぬ。そこで準一級酒を設けてやろう。われわれのような二級酒しか飲まぬ者からいえば、こんなものはどっちでもいい。準一級酒など作ってもらわなくてもいい。それよりも、準一級酒程度のものを二級と同様に売ってもらう方がはるかにいいのですが、準一級酒をお作りになることは、大へん親心があるように思います。ところが、酒造家の方に対して、従来通り特級や一級酒の実績を確保しなければ、特別措置をとらざるを得ないと言われたのは、どういう特別措置をおとりになるつもりですか。このやり方からいうと、国民は酒を飲むから税金を納めるのではなくて、先に税金を飲んで、それからお酒を飲む、こういうやり方だということなんです。従来の特級あるいは一級の実績を確保する、それだけの税金をよけい出せ、よけい出したら準一級酒を飲ませてやる、こういうお考えのようにとれる。まず第一に、特別措置とはいかなる特別措置をおとりになるつもりですか。
  145. 泉美之松

    泉説明員 この準一級酒につきましては、しばしば主税局長から申し上げておりますように、特級、一級からあまり格下げが起きないようにという考えにいたしておるわけでございます。多少は一級から落ちてくることが考えられますが、それよりも、従来二級で売られておったもので、地方の名醸家などではかなりいい酒ができるのですか、マーク・バリューがないために、一級、特級で売るのが困難であるというように、酒の品質そのものとしては非常にいい酒ができておっても、マーク・バリューのために売れなかったというのが、今度準一級を出しますと売れていく、その数量が相当多いということから、準一級の制度を設けるわけでございます。そこで、従来特級、一級を相当多量に売って、しかもその特級、一級を売るのにあまり困難を感じておらないような、灘、伏見の、いわゆる特、一級業者につきましては、今回の準一級の創設が減税でないという建前からいたしまして、そういう特、一級業者は、できるだけ特、一級を売っていただきまして、もし一級から減るといたしましても、それは従来売るのに相当困難を来たしながら売っておったような、地方のマーク・バリューの比較的少ないメーカーが一級から準一級に落ちる、あるいは二級で今まで売っておったのが準一級に上がる、こういうふうにしていただきたいということで、そういうお願いをしておるわけでございます。あくまでこれは行政指導でございまして、特別措置をとると申しましたのは、ぜひそれを聞いていただきたいという意味でございまして、特段の措置をとるには、やはり行政措置ではできないわけでありまして、何らかの法的措置がとられない限り、そういうことができるわけはないのでありますから、御了承いただきたいと思います。
  146. 石村英雄

    ○石村委員 どうもあなた方のお考えかはっきりしないのです。そうすると、今度準一級酒を作ったのは、今まで地方で二級酒で売ったものを、今度は一級酒で、つまり今まで税金を二百四円四十八銭とって国民に飲ませた分を、今度は三百三十三円九十銭とって国民に飲ませてやろう、それから従来特級、一級を飲んでいる者は相変わらずその通りに飲みなさい、税金をとることが目的でございます、酒を飲むなんてよけいなことで、税金さえ納めてくれればそれでいいのだ、こういうお考えなんですか。これでは結局国民から税金をよけいにとるのがねらいで今度の準一級酒ができた、こういうことになる。そんなものは、簡単に準一級酒ができて安くなるのだろうなどというのは、とんでもない甘い見方だということに話はなってくるわけです。これはちょっと問題だと思います。
  147. 泉美之松

    泉説明員 もちろん二級から準一級になってもらうものもあるわけでございますが、現在まで一級といたしまして四百八十八円八十八銭の税金を払ったものが、三百三十三円九十銭の税金で済む面もあるわけです。両面でございますので、一面だけお考えになるのは誤解のもとになろうかと思います。品質、それから従来二級として出ておったと申しますが、これも割り水をして規格を落としておりますので、今度の準一級になりますと、割り水の量が減りますし、品質が、規格がアルコール度が十五度五分以上、それから原エキスが二十八以上ということになりますので、二級酒としての規格よりも品質はよくなるような規格になっております。従って、従来二級で飲まされておったものが準一級として飲まされるというわけではないのでございます。品質は従来の二級よりもよくなるわけでございます。その点誤解のないようにお願いいたします。
  148. 石村英雄

    ○石村委員 それはまあわかったことにしておきますが、例のさっきの特別措置ですね。これは絶対に特別措置はとらないというのですか。それなら、なぜ新聞記者会見で特別措置をとるだろうなどと、おどすようなことをなさったか。しかし多分協力してくれるものと思っておる、おどしておいて多分協力するだろう——あまりひどいじゃないですか。これは長官の御意見を伺いたい。
  149. 北島武雄

    ○北島政府委員 これは間税部長がそう言ったかどうかでありますが、私は間税部長はそういうふうに言ったのじゃないと思います。これは速記をとったわけではございませんが、業界紙としてはそのように書いておったのかもしれません。これは間税部長に聞かなければわかりません。国税庁といたしましては、協力しない場合に強権措置などというものをとることは考えておりません。ただ、もちろん酒造組合中央会におきましても、できるだけ今度の準一級酒設定の方針に沿って協力するということは申しておるわけでございます。
  150. 石村英雄

    ○石村委員 強権措置をとる考えはないということですが、そうすると、強権措置をとる考えはないか、そういうことがとれる強権措置があるのですか。
  151. 北島武雄

    ○北島政府委員 現在の酒税法等ではそういう強権措置はとり得ないと私は思います。従って、間税部長がそのような措置をとると言ったとは私はどうも思えないのであります。
  152. 石村英雄

    ○石村委員 それは、あなた方の一番大将の岸さんが、再々、あれは新聞がうそを書いたのだろう、こうおっしゃるのですが、私は、この点、別にその記事通りにおっしゃっただろうとかなんとか言って追及する考えはありませんが、とにかく、そうすると、灘や伏見でも今度準一級酒を出す。従来よりは特級や一級は減る、減っても準一級酒をたくさん出して大いに売って安く酒を飲ませたい、こう灘や伏見の人が考えて、従来の特級、一級という庫出量が減ったって一向かまわない、これは、新聞が何か夢を見て、間違えて書いた記事であろう、強権措置なんて特別措置は夢にも思っていない、誤りもはなはだしいという趣旨に理解してよろしいわけですね。
  153. 原純夫

    ○原政府委員 政府と酒屋さんとの間、強権とか何かということはあまりやっておりませんので、そういうことは気分としても言うなにはないのですし、法律問題としてどうという角度では、今までいろいろお話がありましたが、本件にはこういう経過がございます。三十五年度は財源がない、減税はしたくてもできないということで、思いとどまったわけです。しかしながら、清酒における級別の税率、価格構成はいかにもおかしい、無理があるという感じがいたしておりましたし、そこに、業界では、準一級を作って下さい、作れば二級から準一級に上がる方が一級から準一級に下がるよりも相当多くて増収ができるから、ぜひやってくれと言ってきたのです。私どもは、それは気持はわかるが、実際できるかどうか、なかなかむずかしいぞ、普通に考えればマイナスが立つのではないかというように初め思ったのですが、何せこの矛盾がはなはだしいので、それでは業界が一体として引き受けるならば、つまり減収かないという最低線は守るということを言ってくれるならば、この減税できないという時期でも、この税率の矛盾を直すことはあえてやりましょうというふうに出たわけです。これに対して、業界は、やりましょうということを言ってくれたわけです。それですから、やりましょうとなれば、やはり灘、伏見の人たちは特級、一級を出す地位においても一番力のある地位の人たちである。一級を出して一番ふうふう言っておるのは、いなかの方の——いなかと言っては語弊かありますが、他の酒屋さんのわけです。灘、伏見が先頭を切って、じゃ準一級ができたの、だから、これで安く売るのだということをやられたのでは、酒税の確保はできない。今申したように減収しないで矛盾を直すということはできないし、これはまた業界と私どもとのそういう意味でのいわば紳士的な約束にも反するということになりますので、それは私どもはやはり話があったような筋合いでやってもらいたいと考えておりますので、その辺の点を御了承いただきたいと思います。
  154. 石村英雄

    ○石村委員 主税局長は、酒屋さんとばかり話をして、税金のことを考えておる。酒を飲むのは酒屋さんではなく国民なんです。飲む人の立場のことは全然考えないで、税収確保、税収確保と言っておる。お前の方が約束したから必ず守ってくれるだろう。——不合理があるからやるのでしょう。国民が特級をよけい飲まないようになる。一級を飲まなくなる。準一級酒ができて、準一級酒へ従来特級や一級を飲んでおった人が集中するかもしれない。しかし、それはあまり今までの税金その他に矛盾があったからそんなことになった。その矛盾を是正するという立場に立っておやりになったことを、税収だ、税収だと税金をとることばかり先に置いて考えていらっしゃる。だから、この新聞記事はうそかもしれないが、特別措置をとるようになるだろうというようなことを言われたのではないかというふうに、新聞社の人があるいは早合点して書いたのかもしれません。すなわち、皆さんの腹の中には、とにかく税金をとってやれ、国民がどんな酒を飲みたかっておるか、そんなことはおかまいなしだ、とにかく税金だ、このように税金第一主義になり過ぎておるのではないか。そこでこんな問題が起こってくると考えるのです。もしもその不合理を是正した結果、税収について問題があれば、それは全般の租税の問題としておやりになればいい。灘や伏見の酒屋さんは、従来通り特級や一級を前よりも実績を減らしてはいかんぞ、こういうことを約束したのだから守れ、守らなければ、それではどうするぞ、ということに論議が発展しそうに思えるわけです。これはやはり約束したから、灘や伏見の人はどうしても特級や一級は従来通り倉出しせにゃいかぬわけですか。
  155. 原純夫

    ○原政府委員 私は、はっきり灘、伏見が全然特級、一級を減らさぬという約束をしたとまでは申しておりません。だが、大体の議論として、酒屋さん全体で、一級から下がってくるのを二級から上がるので埋めましょうということは、お約束というとなんですが、紳士的な約束は受けておると思います。そうなれば、灘、伏見は一瞬強いところだから、下がるのはほとんど少なかろう、上がる方をできるだけ出していこう、こういうわけであります。何か取る取るというふうなことを言われまするが、準一級を作りますのは、二級から一級にできれば上がりたいけれども、そこまで伸び上がる力がない酒屋さんがやはりあるのです。普通の一番下の級である二級でなくて、少しは上の級を作りたいという酒屋さんがあるので、そういうようなところも考えていきますと、今度のは下がる分もあれば上がる分もあり、ネットとんとんだということも、これはいけないことではないというふうに思っておるわけです。それで、私どもが減税に対して非常に反対的であるかどうかということ、石村さんも、ここ数年相当大幅な減税を政府が提案してきておりますので、まさかそういうことをおっしゃっているのではないと思いますけれども、今度災害対策その他の関係で減税ができないという条件で、しかも清酒の税率統制の問題が相当ありそうなところを画そうというので、業界との打ち合わせもしてやったのだということを一つ御了承いただいて、どうか取る取るという気持ということはお忘れいただきたいと思います。
  156. 石村英雄

    ○石村委員 私も忘れたいのですが、しかしそういうことをかえってしておられる。なるほど特別措置をとらざるを得ないだろうというふうなことは間違いかもしれませんが、先の方では大へんものわかりのいいことを言っていらっしゃる。秋田県や広島県の有力メーカーにも灘、伏見と同じことを要望したが、この方面にはあまり無理は言えない、この方面には無理は言わぬ、こうおっしゃっておる。大へんものわかりかいいわけです。この方面にはあまり無理は言わないということは、裏を返せば灘、伏見には無理を言う、こういうことに話がなってくるわけです。特別措置をとるとおっしゃらなかったかもしれないが、片方には無理を言わぬ、こう言われることは、片方には無理を言う、こういうことになる。そこで、もしこの灘、伏見が従来通りのものを出さないとすると、どのくらいの減収になるわけですか。
  157. 原純夫

    ○原政府委員 大体準一級酒が、石で言った方かわかりやすいので石で申し上げますが、十万石出るだろうという予算見込みをしておりますが、その十万石のうち、一級から下がってくるのが四万五千石だ、二級から上がっていくのが五万五千石だ、こういうふうに見ております。そこで、今のお話は、四万五千石の下がってくるのはどこの  一級が下がってくるかということです。灘、伏見が全部下げたらということになりますと、極端にいえば灘、伏見の作っている一級酒、これは四万五千石どころじゃない。もっと多いわけです。それをずっと下げていけば、猛烈な減収になってくる理屈です。しかし、先ほど来申し上げているのは、やはり減税をしないという前提で矛盾を直そう、業界もその前から上がる分があるからやってくれと言っていたのだから、とんとんにしようということで手をつないでやるとすれば、やはり今までほんとうにあえぎあえぎ来ておった一級酒のメーカーが準一級に下がるというのをまずやらして、力の強いものはあとからいくということではないでしょうか。今お話しのことは、数字をしいて出せば出せますけれども、どうか一つそういうことでごかんべん願いたいと思います。
  158. 石村英雄

    ○石村委員 いや、減税になっては困る、こういうお話ですから、それなら、灘、伏見に自然のままに準一級を出させて、自然のままでおいたら、どのくらいの減税になって困るか、こう聞いておるわけです。
  159. 原純夫

    ○原政府委員 非常に概数ですが、灘、伏見で一級酒は二十万石くらいだろうということでありますが、今の二十万石が全部準一級に下がって参りますと、級別の清酒の格差が一万五千円ばかりでありますから、約三十億円下かってくることになります。先ほど来お尋ねのなには、そういう趨勢を非常にきつくいたしますと、けさほどやっておりました自由競争の一番強いインパクトが中小業者に当たってくるということになりますので、酒を飲む消費者のために安くということはいいですけれども、そういう行き方をやりますと、酒の業界全般に非常に大きな混乱が起きて、そうして酒税の確保も非常に心配になる、全体に混乱を来たす、またその中でも中小業者が一番苦しんで倒れていくというような事態が起きますので、やはりその辺のところも一つ、まあ余分なことを申して恐縮ですが、お考えいただきたいと思います。
  160. 石村英雄

    ○石村委員 私は酒のことは全然知らないのです。だから中小企業がどうなるか知りません。そうすると、灘、伏見が自然に、準一級が売れるというので売れるにまかせて準一級を売ると、地方の中小企業の酒屋さんが酒が売れなくなって困る、こういうことなんですか。私は、そんなことがあるのかないのか、それでいいのか悪いのか、全然何も知らないのですが、話がそういう意味かと聞いておるのです。
  161. 原純夫

    ○原政府委員 話は、石村さんが、要するに特級、一級というような高い税金を払う酒を出さぬでも、なるべく二級で出して、いい酒を安く売るのが何で悪い、こういうお話なものですから、そういうことでやられますと、これは中小の酒屋さんは一ぺんにつぶれてしまう、灘、伏見が全国を風靡するということになるわけです。それがありますので、やはり酒の行政といいますか、そういう級別のなにはそう急には変えられない。方向としておっしゃるならば、私どもその方向を忘れてはいかぬということはわかるのですが、もう百品の前ですぐ、準一級ができたからどんどん準一級に下げろという思想は、いや特級も一級も認定に出すな、二級でやれやれ、こういうことになるように私は思ったものだから、そういうふうになっては大へんだということを申し上げているわけです。今度のも級別のなにをだんだん下げることによって減税するというようなことでなくて、税率構成の矛盾を直すという立場でやっておりますので、どうか一つ御了承願いたいと思います。
  162. 石村英雄

    ○石村委員 私は何も、灘や伏見に特級や一級を売らしてはいかぬ、あそこで作る酒は全部二級で売ってしまえ、こんなことを言っているわけではない。今度準一級酒という規格ができた、そうすると準一級酒も灘や伏見で作るだろう、そうしてそれは売るにまかせて売っていく、その結果は、あるいはあなた方がおそれていらっしゃるように、灘、伏見の特級や一級の醸造量は減るかもしれぬ。そのかわり準一級酒はふえる。そのことを言っているわけです。何も灘、伏見に特級や一級酒を作らせるなと言っているのではない。あそこで作るものはみんな二級酒で売らせろ、そんな無理なことを言っているわけじゃない。  それから、先ほどの、どのくらいの減税になるかと言ったら、三十億ですか、それは特級、一級が全額準一級酒になったときの三十億ですか。そうすると大問題だといわれるのです。三十四年度の、冒頭に聞きました雑酒の税収見込みと今度の三十四年度の実収見込みとを見ましても、四十億以上当初の見込みとは違うのです。少ないのですよ。初めは百六十億から見ておる。今度は百二十億ですか何ぼか見ておられる。だから三十億程度の増減は、それも全部が準一級酒にかわったので初めて三十億になるのです。そんなことはありはしない。やはり特級酒を飲む人はたくさんありますよ。同じ酒でも特級というレッテルを張ってある方を飲みたくなる人間もいる。それが全部かわったとしても三十億程度の減収だ。あなた方の見通し違いが雑酒で四十億、三十四年度の当初と三十四年度の今ごろとで開きがあるのに、三十億を問題にせられる必要はないのではないか、こう私は考える。どうでしょう。
  163. 原純夫

    ○原政府委員 三十億は灘、伏見の一級酒が全部準一級酒になるとした場合の減収ですけれども、私はそういうことはとうていあってはいかぬことだと思って言っているわけです。そういうときには、灘、伏見が一級をやめたら、全国ですぐ一級をやめます。そうすると、今申した企業格差というものがたくさんありますし、そういう場合を前提にしては申し上げたくないというので、今の数字も申し上げないでおきたいと思ったところが、しいておっしゃるから申したので、私はそもそもそういう話はしたくなかったわけであります。
  164. 石村英雄

    ○石村委員 これでやめますが、特別措置をとるなんということは、新聞記者が間違っても書くようなことのないように、心がけを持っておっていただきたい。日ごろから税金々々という頭でおるから、新聞記者はあなたが言わないことでも言ったように耳に聞こえてくることになるのです。そういったことのないように気をつけていただいて、なるべく安い酒を国民に飲ませるようにしてもらいたいと思います。
  165. 植木庚子郎

    ○植木委員長 ただいま議題となっております五法律案中、酒税法の一部を改正する法律案につきましては、これにて質疑を終了いたします。     —————————————
  166. 植木庚子郎

    ○植木委員長 なお、本案に対しましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。  酒税法の一部を改正する法律案を採決いたします。  本案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  167. 植木庚子郎

    ○植木委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案の通り可決いたしました。  なお、ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 植木庚子郎

    ○植木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  169. 植木庚子郎

    ○植木委員長 さらに続いて、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案について質疑を続けます。足立篤郎君。
  170. 足立篤郎

    ○足立委員 私はいわゆる臨特法に関しまして質問をいたしたいと思います。  まず大蔵省に伺いますが、先日この法案の提案理由の説明をお聞きしまして、私は非常に驚いたわけです。と申しますのは、この法律をさらに一年間延長するという提案が出ておるわけでありますが、提案理由の説明の中に、この法案はこのまま出しておいて一年間寿命を延ばしておいて、その内容については、漁船損害補償だとか、あるいはいわゆる造船利子補給の問題、こういう点は別に法律案を出して、このいわゆる臨特法の中から削除をする、こういう趣旨の提案理由の説明を聞いたわけでありますが、非常に奇異の感に打たれたわけであります。これはこのまま延ばしておいて、別の法律案でこれを削除する、こういう前例があったかどうか私は記憶しませんが、少なくとも、一部改正をするのであれば、この法律案そのものでまず改正をしておいて、そうして実体法について今度は問題があるならば、その面の改正法を別の委員会に出すのが筋道のように思いますが、大蔵省はどのようにお考えになっていらっしゃるか。
  171. 小熊孝次

    ○小熊政府委員 この補助金の臨時特例法は、実は毎年一年ずつ延長して、いただいておるわけでありますが、普通ならば、確かに今先生のおっしゃいますように、この補助金の臨時特例法の中におきまして、造船利子補給とか、あるいは漁船損害補償法の一部改正をやりまして、この補助金臨時特例の中から落とす、こういう方法が考えられるわけでございます。たまたま今回造船利子補給法あるいは漁船損害補償法の一部改正が行なわれる、こういうことになっておりましたので、その実体法の方でも、本来のこちらの補助金臨特によって停止しておるというような実体法をいじるチャンスかあるわけであります。従いまして、その際に実体法で直しますと同時に、その附則におきましてこちらの補助金臨特の方の停止いたしますところの規定を落とすという方が、向こうの方が実体法でございますので、そちらの方でやる方か、非常に、法の運命と申しますか、その処理上円滑にいくのではないか、このように考えたのであります。ただ提案理由で申し上げましたのは、補助金の臨特を単に一年間延はすという意味でなしに、政府といたしましては、別途漁船損害補償法あるいは造船利子補給法におきまして、補助金臨特の趣旨とするところを実体法の方で取り入れておるということをはっきりいたすことが適当であろう、また補助金臨特を大蔵委員会で審議いただいたわけでございますが、その運命がこういうことになりますということを御説明するのが適当であろう、こういう理由で、提案理由の説明の中で触れてあるわけであります。そういう趣旨でございます。
  172. 足立篤郎

    ○足立委員 私がおかしく思ったのは、実体法の息の根を一時とめてきたのがこの臨特法でしょう。しかも、便宜上十ぱ一からげで、いろんな問題をここで扱って息の根をとめてきた。今度はそれを解除して、息の根を吹き返させるのを実体法の方に移す、それはちょうど実体法の改正案が出るから、便宜上そうやられたと言われるが、別に法律に優先順位も何もないわけだが、どうも、われわれの感覚からいうと、こういう特別な臨時措置をとるために、特段の措置をとってこういう臨時法というものを作ったわけです。ときの財政事情に応じてやったわけだが、それを解除する以上は、臨特法そのものをまず改正してかからないと、たまたま実体法の改正があったから便宜上そうやったということは、ふに落ちかねるわけなんです。今後大蔵省がいろいろ検討されて、だんだんはずれてくるものも出てくるでしょう。そういう場合はどうするか。たまたま実体法の改正案がなければ、臨時法の改正をおやりになるかと思うんだが、そういう点をいろいろ考えると、臨特法の持っている政治的な性格といいますか、重要性というものから考えると、やはり臨特法の方を一応改めておいて、実体法の改正をする点は自由におやりになったらいい、かように思うのですが、どうでしょうか。
  173. 小熊孝次

    ○小熊政府委員 ただいま申し上げました御説明をさらに敷衍して申し上げますと、補助金等の臨時特例に関する法相日の方で、海運外航船舶利子補給あるいは漁船損害補償法の、ストップしておる、働かしてない規定を削除する、同時に、実体法の方で本体に入っておる規定をさらに削除するなら削除する、という方法も一応は考えられるわけでございます。従いまして、それが並行して進むということが考えられるわけでございますが、その法案はおのおの独自の法案でございます。それか審議のいろいろな関係上別個に進行して参るわけでございます。そういたしますと、かりに一方の方が——これは法技術的な問題でございますが、一方の方の運命によりまして、たとえば補助金臨特の方が削除しっぱなしになって実体法が通らないということになった際をかりに想定いたしますと、当初の趣旨とするところは、何も実体法のその規定をストップするのを解除して復活させるのではなくして、むしろ補助金臨特の趣旨をそのまま実体法の方に取り入れるというその趣旨が実現しないことが考えられる。あるいは施行昨朝の点について食い違いがあるというような点を考慮いたしますと、たまたま今度は実体法が出るわけでございますので、実体法の改正におきまして、その他の改正部分とあわせまして、一緒に補助金臨特の趣旨を取り入れた改正をいたしまして、その附則で補助金臨時のそのストップの規定を落とすという方が事務的に非常にスムーズにいくのではないか、こういうような趣旨で、ただいま提案申し上げておりますような趣旨の改正方法にいたしたわけでございます。
  174. 足立篤郎

    ○足立委員 法規課長のお話は私もわかるのです。この点にこだわる必要もないと思いますが、ただ私の感じを申し上げると、委員会が違うという点もあるわけなんです。それで、大蔵委員会でこの臨特法というものを取り上げて、これだけの幅の広い特別な臨時措置をあえて行なってきたというのは、非常に高度な立場から国の財政事情考えて、そのときにマッチした高度な政策をやるということでやってきているわけですから、別に法律にさっき申し上げたように順位はないわけだけれども、この臨特法をいじらずに実体法だけでやってしまうというのは、どうも私は割り切れない感じがする、かように思っております。   これに関連して、運輸省の方からもおいでをいただいておりますので、若干質問してみたいと思うのですが、今回臨特法も解除して、いわゆる造船利子補給を行なおう、こういう政策を政府は打ち出しているわけなんです。私はこの政策は方向としては時宜に適したものだと思っておりますが、最近海運界にいろいろ難問題が起こっておるということを聞いております。私はしろうとですから、答弁はどうか御親切に、しろうとわかりのするようにお願いしたいと思うのでありますが、たまたま数自前の朝日新聞に、「今日の問題」という欄で論説が掲げられております、「海運界の難問」という題で。私の質問の趣旨をわかっていただくために要点だけ読んでみます。「いまだに不況を脱却できない海運界に、新しい困難な問題が生じて、テンヤワンヤを演じている。それは、八幡製鉄が、ギリシャ系外国船会社と、アメリカ大西洋岸から日本までの石炭輸送契約を安価で結んだことから飛び出してきた。運賃はトンあたり七ドル、現在の市況の八ドル四十セントに比べて、はるかに安い。これでは日本の船会社はとうてい太刀打ちが出来っこない。」「なぜ外船がこんなに安くてやれるかというと、日本の輸出入銀行は、輸出船に対して年四分の金利でカネを貸す仕組みに、なっているからだ。邦船だと年六分五厘の開銀融資と、さらに高い市中融資で造られ、今度利子補給が復活してもはるかに及ばない。外国会社は輸銀の安いカネで船を造り、税金が安くて、船員法がやかましくないパナマやリベリアの船籍にして、日本の鉄鋼会社と専用船契約を結べば、トン七ドルで楽に石炭が運べるのだ。だからこの手を用いられると、石炭ばかりでなく、鉱石の輸送まで外船に独占されるという恐れも出て来る。」なお、この論説の結びとして「こうしたもめ事が起こる根本は、輸銀の金利が国内金利よりも安いところにある。「外国船を安い金利で造るのは、敵に塩を送るようなものだ」という議論が前からあった。」「この矛盾をなくすためには、計画造船の金利を輸銀並みに引き下げるか、あるいは輸銀の金利を国内金利並みに引き上げるか、いずれかが必要だが、造船だけに超特別の安い金利を認めることは、他産業との関係で問題であろうし、そうかといって輸出船の金利を上げれば、外貨獲得にひびくという難点がある。しかしどちらかの途を選はないかぎり、日本の船会社が続々外国に移籍するような結果になりかねない。この辺でもう根本的に検討しなければならぬときが来ている。」かように朝日新聞は取り上げておるわけであります。  そこで、まず実態を明らかにするためにお伺いしたいと思いますが、今回行なわれようとしておりますいわゆる造船利子補給によって、計画造船の場合平均金利は幾らになるのかということと、この記事にもあります通り、輸出船の場合は、四分という低利で、しかも延べ払いを認めて貸し付けておるようでありますが、その具体的な内容といいますか、条件といいますか、これはどうなっているかということにつきましてお伺いしたいと思います。
  175. 若狭得治

    ○若狭政府委員 今足立先生から計画造船の場合の金利負担はどの程度になるかという御質問でございましたが、現在問題になっておりますような不定期船につきましては、計画造船におきましては、財政資金を五〇%、それから自己資金を五〇%ということでやっておるわけであります。従いまして、財政資金の金利負担は六分五厘でございまして、自己資金につきましては、これはもう全額市中の金融機関から借り入れておりますけれども、現在の金利では日歩二銭六厘でございまして、結局九分四厘九毛になっておるわけであります。それに対して、今度利子補給によりまして、それを七分五厘までにするわけでございます。つまり一分九厘九毛の利子補給を行なうわけであります。従いまして、半額は財政資金で六分五厘、残りの半額は市中資金に対して利子補給をいたしまして七分九厘でありますから、その平均金利は七分ということになるわけでございます。  それから、なお現在問題になっておりますような輸出船につきましての金利を申しますと、現在輸出船の金利条件は、七〇%の延べ払い分といたしまして、この分につきまして輸出入銀行から四分の金利で造船事業者に貸すわけであります。造船事業者は、その会社の具体的をな、たとえば償却等を見まして、結局大体におきまして五分程度で外国の船主に延べ払いの条件をつけて輸出をやっているというような状況でございます。
  176. 足立篤郎

    ○足立委員 それで、この記事にもあります通り、当面問題となっておりますのは、大手製鉄会社の手によって石炭専用船の川船が行なわれておる。アメリカのハンプトンから日本の間の石炭輸送が問題になっているようですが、これに該当するものが、どれくらい船が輸出されるのか、その概要について御説明を願いたいと思います。また、これに類して、タンカー等ですでに輸出船として出ているものがあるかどうか、それが特に日本の荷主によってチャーターされているというようなものがあるかどうか、またこれは今後ますます増加するものであるかどうかという見通し等について、運輸省の見解を伺いたい。
  177. 若狭得治

    ○若狭政府委員 現在のところ、問題になっておるようなものが今後どの程度出てくるかという点につきましては、はっきりした見通しを持っておりません。また、現在計画されているものにつきましても、まだわれわれの方で申請を受けておりませんし、この点につきましても明確な決定がなされていないようでございます。  それから、もう一つ、現在までにこういうような船で日本の船会社が用船しているものがあるかという問題でございますが、これにつきましては現在はそういうものはございません。
  178. 足立篤郎

    ○足立委員 タンカーなどでこれに類似したものはありませんか。
  179. 若狭得治

    ○若狭政府委員 現在はそういう船舶はございません。
  180. 足立篤郎

    ○足立委員 今問題になっているこのままの姿であるかどうか、私もしろうとでよくわからないのですが、私の調べたところでは、タンカーなどで、たとえば東亜燃料とか丸善石油とか出光興産とかいうもので、中には未完成のものもあるようですが、こういった形式で輸出船という形で出て、実際は日本の油輸入業者がこれを長期にチャーターするというものがあると聞いておるのですが、間違いですか。
  181. 若狭得治

    ○若狭政府委員 現在そういう点についての調査をまだやっておりませんので、正確に申し上げることができないのであります。
  182. 足立篤郎

    ○足立委員 輸出船が非常に有利な条件のもとに作られて長期にわたって用船される、これが日本海運を混乱に陥れる、だろうと心配されておるわけです。こうなると、せっかく今政府も思い切って造船利子補給をやる、こう言っておるのですが、その影が薄くなってくると私は思うのです。せっかくここまでやりましても、輸出船の方がはるかに有利だということが言えるわけじゃないかと思うのです。かりにハンプトンと日本の間の運賃で比較した場合に、資金コストの相違から運賃レートが当然違ってくると思う。今朗読しました朝日新聞の記事にも出ておりますが、この記事では七ドルと出ていますが、最近の調査では六ドル七十セントくらいでオファーがきているというような話も聞くわけだ。相当の差額が出るのが当然だと思うわけでありますが、輸出船の場合と国内船で造船利子補給を受けたものと受けないもの、これをかりにハンプトンと日本との運賃で比較した場合に、トン当たりのレートはこの三者がどういう開きになるのがあたりまえであるか、という点につきまして伺ってみたいと思います。
  183. 若狭得治

    ○若狭政府委員 具体的にたとえば今考えられております四万五千トン・デッド・ウェート程度の船舶をとりまして、ハンプトンローズ—日本間の石炭輸送のコストを計算いたしてみましたところ、利子補給のない場合、この四万五千トンの船によりまして五カ年間の平均の運賃のコストは七ドル八十九、それから利子補給がある場合には七ドル七十一という数字が一応出ております。それから、これを輸出船で——現在考えられておりますように、輸出入銀行の資金利用して作った場合のコストでございますけれども、これにつきましては、たとえば輸出船の頭金というものは現在三割必要なんです。それを一体どういうようなコストの資金を使うかというような問題については、日本の国内の造船のように全都市中の借り入れでやるのか、あるいは自己資金でやるのか、またこの金利のコストがどの程度になるかという見通しがつきませんけれども、一応外国の金利の水準と申しますか、われわれの方へたとえば外資として船を作る場合にその許可を申請してきているものなどを参考にいたしまして、その金利を考えてみますと、大体五分五厘程度というふうに考えられるわけでございます。それによって一応計算してみますと、五年間の平均の運賃コストは七ドル二十二ということになるわけでございます。これは伝えられている運賃コストより非常に高いわけでございますけれども、一応この計算は、船員費あるいは保険料あるいは固定資産税等の、そういう税金関係その他を全部日本船と同一条件といたした場合でございます。これになお便宜置籍船として税金の負担を免れるというような措置を講じた場合には、これよりさらに安くなるという条件でございます。
  184. 足立篤郎

    ○足立委員 便宜置籍船というような措置をとった場合、たとえば、新聞にも出ているように、パナマとかリベリアというようなところに宿借りをすれば、やはり六ドル七十セントくらいになるのですか。
  185. 若狭得治

    ○若狭政府委員 先ほど申し上げましたように、その頭金の資金コストがどの程度になるかということによって変わってくると思いますけれども、これをもし全額自己資金で作るというような場合には、当然その程度のコストになってくるであろうということが考えられます。
  186. 足立篤郎

    ○足立委員 私が海運局にお伺いしたい要点は、今までに申し上げた通り、輸出船と国内船との金利面におけるアンバランスをこのまま放置しますと、これはいろいろな形でいろいろな手を使って、やはり一応形は輸出船という形をとりながら、実際は日本の事業者なり荷主なりがチャーターしてやるということでいきますと、結局日本船は全面的に国際市場から敗退のうき目を見るというような心配さえもあると思うのです。これは決して大げさな言い過ぎではないわけです。私の邪推かもしれませんが、考えられることは、先ほど申し上げたような大手筋の製鉄業者が運賃コストを下げたい。これは貿易自由化等とも関係しますが、一応名目は非常にけっこうなことなんですが、コストを下げるということで、体質改善のためにやることではありますが、国外の取引先と結託しまして、輸出船に対する特別な優遇措置をいわば隠れみのとして使って、専用船を持とうというような動きの現われではないだろうかというような推側もされる。ちょっと極端にいえば、本来日本船として作らるべきものか、輸銀の低利融資を受けんがために、形だけ輸出船という形式をとっているのじゃないだろうか。このまま放置すれば、ますます競争が激化されて参りまして、ひいては今申し上げた特殊な荷主筋だけではなくて、しまいには船会社までこれと同じような手を使っていかないと自分は滅びてしまう、というようなことになりはせぬだろうか。この状態が発展していけば、新聞にも出ております通り、税金が安くて船員法がやかましくないパナマとかリベリアというような国に船籍まで移していかないと、国際競争ができないというよなうことになりかねないと思うのであります。それこそてんやわんやの状態になると思うのでありますが、この私の権側は思い過ごしでしょうか。その点を海運局から伺っておきたいと思う。
  187. 若狭得治

    ○若狭政府委員 実は、日本の海運界が以前にもパナマ国籍の船を作りまして、運航したというような事実があったわけであります。しかし、現実の問題としては、為替管理の面等におきましていろいろな支障が出て参りまして、それがそう発展していないというような状況でありますけれども、今後貿易自由化がどの程度進むか、そういう面ともにらみ合わせて、またこの問題を掘り下げて考えていかなければならないのじゃないかというふうに考えます。
  188. 足立篤郎

    ○足立委員 いろいろな制約がありますから、野放図に伸びるということもないと思いますが、これはあとからお伺いしたいと思っているのですが、今騒がれているのは決して火のないところに煙が立っているわけじゃない。しかし、私が今申し上げたようなことは、大げさであって、それほどの心配はありませんという確信を海運局は持っていらっしゃるのですか。
  189. 若狭得治

    ○若狭政府委員 現在の石炭専用船の問題につきましては、具体的に各鉄鋼会社においてこの計画を検討し、また実現の方向に向かって努力しているということは事実のようでございます。また、そういう例が現実に出ました場合に、それを利用するものも出てくるのではないかということを、われわれとしては非常におそれておるわけであります。
  190. 足立篤郎

    ○足立委員 私がこれをだめ押しします理由は、もうおわかりの通り、単に日本海運にとってはこの問題だけじゃない。もともと国際市場において安い金利で作られた船と戦っていかなければならぬし、また最近はフィリピンに対する賠償船も相当数出ておる、賠償物資もほとんどフィリピン船に取られてしまっておるというような事情がありますから、これはますます苦境に立っておる際に、さらに加えてこういう問題が起こってきたということで、私は決して小さな問題ではないと思うわけであります。  さらに続けて船舶局長にお伺いしたいのでありますが、船舶局としては、造船会社も非常に苦しい立場に立ちつつある際でありますから、あなたは輸出船はできるだけ作りたいというお考えだろうと私も想像するのであります。そのお気持は一応わかるのでありますが、この臨時船舶建造調整法第三条を見ますと、その造船許可条件として、第一に「当該船舶の建造によってわが国の国際海運の健全な発展に支障を及ぼすおそれのないこと。」という規定がございます。問題になっています輸出船の造船許可の場合に、この規定との関係をどのようにお考えになって許可をされるのか、これをお伺いしておきたいと思います。
  191. 水品政雄

    ○水品政府委員 この事業につきましても、御指摘のように臨時船舶建造調整法の適用を受けるわけでございます。そして、本船の場合を具体的に考えてみますと、わが国の商船隊の公正な海外活動に著しく不利な影響を与えるおそれがあるかどうかという点が問題になるのでございまして、実は、この問題については、まだ具体的な申請等がございませんので、慎重に検討して、許可、不許可を決定すべきだと考えておるのでございます。ただいまわが国の商船隊の公正なる海外活動に著しく不利な影響を与えるおそれがあるかどうかということを申し上げましたが、実はその法律の三条のただし書きだったと思いますが、それでその基準の制定については海運造船合理化審議会にお諮りをして決定する、こういうことになっておりまして、それにお諮りして決定した基準の一項目に、今申し上げたような項目があるのでございます。
  192. 足立篤郎

    ○足立委員 私がきょう質問を思い立った動機は、朝日新聞の記事にあるのですが、これを見ると、アメリカ大西洋岸から日本までの石炭輸送契約を安値で結んだことから、問題が起こったのだといわれておりますが、ただこれは仮契約を結んだだけであって、まだ輸出船は作っていないのですか。
  193. 水品政雄

    ○水品政府委員 私どもの聞いている範囲では、まだ具体的にそれほど進んだ計画ではないようでございます。
  194. 足立篤郎

    ○足立委員 今問題になっているようなケースではなしに、輸出船と称するもの、特に今七〇%、四分の低利の融資の仮払いを認めるという特殊な船は何ばい作られておりますか。
  195. 水品政雄

    ○水品政府委員 現在まで作られた輸出船の概要について御報合申し上げたいと思いますが、一般輸出船といたしましては、三十四年度、これは現在多少ふえておりますけれども、十一月までの合計で二十三隻、二十五万七千トンでございます。それから三十三年度は三十八隻、七十六万三千トン、三十二年度は四十六隻、九十九万七千トン、三十一年度は九十六隻、百八十五万五千トン、こんなふうになっております。
  196. 足立篤郎

    ○足立委員 今お話しの輸出船は、いずれも特別な融資を受けたものですか。
  197. 水品政雄

    ○水品政府委員 特別な融資を受けたものと心得ております。
  198. 足立篤郎

    ○足立委員 それでは、今この朝日新聞には、そのうちのどれかが事実上日本にチャーターされて、そうして特別な運賃でアメリカからの石炭を運ぼう、こういう長期契約を結んだということが出ているのですが、あなた方は御存じないのかどうか知りませんけれども、そういうものがあるのじゃないですか。
  199. 若狭得治

    ○若狭政府委員 現在は、長期の用船につきましては、運輸省において許可制度をとっております。そういう長期用船については、許可を得なければ用船できないということになっております。先ほど御質問がございましたけれども、すでに輸出船として建造したものであって、外国の船主が持っているものを、たとえば石油会社が用船しておるというものがあるのではないかというお話でございますが、一航海ごとの用船というものはあるかと存じますけれども、長期のものは現在ないわけでございます。  それから、今の石炭専用船の問題でございますけれども、これにつきましては、われわれまだ報告を受けておりませんけれども、仮契約をやっているというふうに聞いておりますが、具体的な契約につきましては、先ほど申しましたように正式な許可が必要でございますので、そういう段階にはまだ至っておらないわけでございます。
  200. 足立篤郎

    ○足立委員 それでは、四万五千トン級の石炭専用船というのは、従来特別な融資を受けて輸出されたものは何ばいくらいあるのですか。
  201. 水品政雄

    ○水品政府委員 正確には後ほど調査してお答えしたいと思いますが、私の記憶する範囲では、そういう特殊の船はないように思っております。
  202. 足立篤郎

    ○足立委員 この石炭専用船というようなものも輸出されたものはないのですか。
  203. 水品政雄

    ○水品政府委員 石炭専用船というものはなかったように記憶しております。
  204. 足立篤郎

    ○足立委員 先ほどの海運局からの御答弁によりますと、長期契約のものは許可を要するから、ない、しかしその航海ごとの契約で輸送しているものはあるかもしれないという御答弁ですね。今新聞で騒がれているのは、長期契約を結ぶということが一つの前提になっておりますが、かりに航海ごとであっても、著しく安い運賃で運ぼうというオファーは現にあるのじゃないですか。この日本から輸出した船は非常に有利な条件で作られておって、日本の船会社が持っておる日本船とは楽に太刀打ちできるので、その間隙を縫って日本の荷主筋にオファーしてきているものがあるのじゃないですか。
  205. 若狭得治

    ○若狭政府委員 そういうものはもちろんあると思われますけれども、航海用船につきまして一々こちらの方で許可しておるとか、あるいは何らかの具体的な審査をやるというような制度になっておりませんし、また事実問題としてできませんので、そういう資料は持っておりません。
  206. 足立篤郎

    ○足立委員 先ほど来申し上げている通り、これは実は重大な問題だと私も思うのです。今までの船舶局長の御答弁でも、ずいぶん作ったけれども、これが敵に塩を送るような結果になっておるかどうかということは、今の海運局の御答弁を聞いても正確には判定できない。——責任のがれのような感じを私は受けるわけです。実際はこれは日本の海運を相当脅かしているといえると私は思う。そこで今造船利子補給をやりましても追っつかないようなことになるのじゃないかということをおそれるわけです。船舶局としては、今後こういった輸出船をお作りになる場合、その許可には、さっき申し上げた建造の調整法ですが、この規定にもあります通り、その船の建造によってわが国の国際海運——国際海運という点が問題だと私は思う。国際海運の健全な発展に支障を及ぼすおそれのないことを厳格に条件とすべきではないかと思うのです。船舶局長の御方針としては今後、どのように扱っていかれるお考えであるか。こういった特殊な問題も騒がれておる際でありますが、こういう手を使えば確かに有利に立ち回れるわけですから、これは需要がふえてくると見ていいと私は思うのですが、これをどうさばかれる御方針であるか、伺っておきたい。
  207. 水品政雄

    ○水品政府委員 その御説明の前に、輸出船の現状の概要を申し上げたいと存ずるのでございますが、輸出船は、わが国の造船業の合理化が非常に早く進んだこと等によりまして、昭和三十二年度ごろをピークとして、相当な受注ができたわけでございます。しかし、その後ヨーロッパの各国におきましても造船の合理化が非常に進み、また各国の輸出船に対する競争が激甚になるにつれまして、輸出保護政策のようなことが各国でいろいろと進められまして、現状におきましては輸出船受注ということは非常に困難な状態になっております。これを数字で見ますと、輸出船の受注高は三十二年度では百万トンでございましたが、三十三年度は七十六万トン、三十四年度は四十二万トン、三十五年度は三十万トン程度、今後は格別ななにがありませんと、非常に輸出船の受注量は減るという憂慮すべき状態になっておりまして、これはわが国の造船業にとりましてまことに大きな問題なわけでございます。それで、各国におきましては、なかなか実態がつかみにくいものもございますけれども、たとえば延べ払い等で割合にはっきりいたしますのは、日本では総括的な許可基準を七〇%、六年というふうに現在きめておりますけれども、これを西独等では十二、三年あるいはそのほかの国ではまだ長い延べ払いを認めるというように、だんだん輸出船振興策は進められておる状態でございます。こういう状態を前提といたしまして、私ども質問の問題を考えてみるのでございますが、この問題は単に建造許可をしなかったというだけで解決できる問題ではないのではないか。つまり、他国で発注し建造するということが容易な状況でございます。これもまた、最近の入札で見ましても、わが国におきましては鋼材の価格が高いとかいろいろなことで、最近は実は国際入札で常に相当割高をしいられておるような状況でございます。そういう点も考えますと、ただ不許可にするということだけでは解決できない問題だろう。そういう点もございますので、これは具体的な問題について十分慎重三に審議した上で、結論を出すべき問題ではないかと考えております。
  208. 足立篤郎

    ○足立委員 船舶局長の今のお話は私も一応はわかります。しかし、私の申し上げている点も御理解いただきたいと思う。輸出を熱心にお考えになるということも非常にけっこうなことなんです。しかし、これが日本商船隊と競合しない航路であるならば問題ないわけです。しかし、単に競合しただけでとやかく言うことも言い過ぎかもしれませんが、先ほど来申している通り、今問題にしている輸出船というのは、日本政府が特別な低金利で長期の延べ払いを認めて、日本の国内でやってない制度をやって出した船が、実態は日本の船と同じように使われる。もっと極端に申し上げれば、日本の事業者が専用船を持つのと事実上は同じことじゃないか。また、実際内部的にはふところ勘定がつながっているかもしれないのです、うっかりすると。こういう隠れみのを着て、運賃コストを下げることはけっこうなことなんですけれども、日本の海軍は少なくともこれによっててんやわんやになってしまうということなんですから、海軍政策というものをお考えになれば、そういう面をよほど突っ込んで審査をされて——一応名目は輸出船ということであっても、輸出船だから、どれでも飛びつくということでなしに、よほどしっかり日本の海軍政策というものを腹に置いてやっていただかないと、大へんなことになるのじゃないかと思っているわけです。この私の言い分は御了解をいただけますね。——それならばいいのです。  それと似た問題で通産省にお伺いしたいのですが、通産省の立場では、輸出することによって外貨を獲得するということですから、今の船舶局と大体似たような考え方じゃないかと私は想像するわけなんですけれども、通産省としては、どしどし注文を受けて多々ますます弁ずというふうにお考えになっていらっしゃるのですか。
  209. 宮沢鉄蔵

    ○宮沢説明員 今の御質問の要旨は、船舶輸出についてどう考えたらいいかということなんでございますけれども、通商局の次長がほかの委員会に入っておりまして、私は重工業局の鉄鋼部門担当でございますので、ちょっとその質問にお答えする立場にないのでございますが、鉄鋼行政の面から今の石炭専用船の問題をどう考えるかということであれば、私でお答えできると思いますが、そういうことで御了承いただきます。
  210. 足立篤郎

    ○足立委員 私は、特に通産省に一つ理解してもらいたいと思うのは、なるほど船を輸出したときは外貨獲得になることは間違いないのです。ところが、今問題になっている、今私が新聞で朗読したような輸出船を日本の鉄鋼会社等かチャーターするということでありますと、こういう低利で延べ払いという特別な恩恵を日本政府としてやっておきながら、日本の荷主がこれをチャーターする。それならば、もともと日本船としてできるだけ安い船を作るべきだと私は思うのです。それで外貨をもうけたように見えましても、計算をしてみると実は大へんな損をする。かりに十年なら十年の長期契約でチャーターした場合に、ドルで用船料を払う。考えてみますと、これはおそらく輸出によって得た外貨の三倍くらいのものを失うという結果になりはしないか。国内船であれば当然円で払えるものを、わざわざ貴重な外貨を使って用船料を払わなければならない、かように思うのです。しかし、これは通商局が来ていませんから、この点は答弁は私の方で保留すると言うとおかしいのですが、また追って機会を得て見解を聞きます。  さらに大蔵省にお伺いしたいのですが、今まで申し上げたような趨勢によって、今申し上げたような特殊な輸出船というものが増加してくるということが予想されるのですが、輸銀の資金需要はこの面においてどんどん増加してくる、だろうと思うのです。輸銀に対する資金手当あるいは特殊な四分というような長期の融資を行なう金利コストの面から、一体輸銀の採算がとれるのか、大蔵省の言見解を聞いておきたいと思います。
  211. 磯江重泰

    ○磯江説明員 お答え申し上げます。  船舶輸出のために輸銀が金融をつけておるわけでございますが、そういった特殊なものがふえることによって輸銀の資金面はどうかという第一の点でございますが、三十五年度の財政投融資におきましては、船舶の輸出に対する輸銀の金融におおむね前年度と同程度を見ておるわけでございます。金額的に申し上げますと、明年度三十五年度の輸銀の融資は七百二十億円を計画いたしておるのでございますが、そのうちいわゆる一般の輸出金融として約四百億円の計画になっております。そのうち大部分のものが船舶と予定されておるわけでございます。従来輸出入銀行の輸出金融の主体をなしておりますものは船舶輸出に対する金融でございまして、これは、先ほど運輸省の方から御説明がございましたように、三十一年度前後におきまして日本の船舶の輸出が非常に伸びた。その当時輸銀の金融は相当ついたわけであります。その後、海運市況の悪化等によりまして、船舶輸出の方も下がりぎみになっておりますが、ただいま申し上げたような程度の数字を、来年度といたしましても輸銀の資金計画上見ておるわけであります。船舶輸出の最近の趨勢から申しますれば、これで船舶輸出につきましては特に輸銀の資金繰り上心配があるという事態にはならないと考えております。  それから、金利の面、輸銀の資金コストの面でございますが、これは、御承知のように、ただいま輸銀の金融の主体をなしまする輸出金融につきましては、金利は四分という非常に低い金利になっております。輸銀の資金は、政府からの出資金と、それから資金運用部からの借入金によって構成されておるわけでありますが、運用部からの借入金は現在年に六分五厘となっております。従いまして、六分五厘の貸し出しが四分ということで、逆ざやになるわけでありますから、これをカバーするためには、相当の政府出資が必要になってくるわけでありまして、今後輸銀の資金需要が強くなって、輸銀に相当政府資金をつけなければならなくなってくるという事態におきましては、その中の相当かなりの部分を無利子の政府資金で追加しなければならない、こういうことになる可能性が相当強いわけであります。三十五年度につきましては、財政投融資計画におきまして、一応十億円の出資を計上しておるわけでありますか、これは本年度におきまして担当出資を追加いたしました余裕がまた来年度においても見込まれますので、その程度をもって輸銀としては資金コスト上の問題はないわけでありますが、三十六年度以降におきまして、さらに資金需要がふえて輸銀に資金を追加しなければならなくなるという場合には、相当の政府出資を必要とするのではないかと考えておるわけであります。もちろんそのときの財政事情によって検討しなければならないわけでありますが、そういった資金コストの問題は、将来の問題としては必ずしも楽観を許さない、かように考えております。
  212. 足立篤郎

    ○足立委員 先ほど読み上げました朝日新聞の記事を見ても、この際解決する道は二つ一つしかないというふうに書いてある。計画造船の金利を輸銀並みに引き下げるか、あるいは輸銀の金利を国内金利並みに引き上げるか、こういうことだ。大蔵省は、そういうことを言えば、すぐ、じゃ輸銀の金利を引き上げようと言うだろうと思うのですが、これは必ずしもそういうことを主張する意思はない。やはり国際競争にたえられなければ何もならないわけです。ただ、先ほど来申し上げておる通り、せっかく輸出船だからといって特別な処置をとりながら、それが実は日本の海軍を混乱に陥れる、敵に塩を与えるという結果になる。しかも運賃はドルで払わなければならないという、ばかばかしいことになる。こういう点を考えると、新聞にはこういう示唆が与えられておるが、やはり政府内部として総会言的に御検討をいただいて、とにかくこういうふらちな——ふらちと言うとしかられるかもしれませんが、やり方を是正してもらわないといかぬと思う。  通産当局が見えたようですから、もう一ぺん前に戻って伺っておきたいと思うのですが、外貨獲得の見地からいえば、こういった輸出船がどんどん出ることはけっこうだと思うのですが、しかし、今ここで私が問題にしておるような輸出は一応するが、実は日本の事業者とひもつきであって、実際は内部ではふところかつながっておるかもしれないと疑いが持たれるくらいにツーツーでやっておる仕事、そしてもっぱら日本に来る石炭等を運ぶということになりますと、実はこれを長期にわたってチャーターするわけなんです。そうなると、輸出するときにはなるほどドルを受け取って、いかにも外貨獲得でもうけたように見えるけれども、これが今いわれておる十年長期契約ということになると、私の計算では、船を輸出することによって獲得する外貨の三倍くらいのドルを失うことになる。これが国内船であれば円で支払いができる。ずいぶんばかばかしい結果になると思うのですが、通産省の方はどういうふうにお考えですか。
  213. 倉八正

    ○倉八説明員 お答えいたします。  最近船の輸出というのはだんだん減って参りまして、何とかして輸出をしたいと思いますが、今先生がお尋ねになりましたのは、いわゆる便宜置籍船の問題だろうと思います。日本から輸出しまして、それを今度は裸チャーターという形で借りて、それを日本の輸入物資の輸送に充てる、こういうことだろうと思います。この問題につきましては、私たちの方としましても最終的な結論は今のところ出ておりませんので、われわれとしましては、二つのことが考えられるのではないか。一つは、現在の日本の輸入物資の積み取り比率というのがまだ五〇%いっていないのでありまして、残りは全部外国船に依存しておる、その運賃の支払いは年両三億九千万ドル払っておる、こういうことであります。従いまして、その輸出に関連した便宜置籍船を使うということは、一面から見ますと、日本の造船業を盛んにし、雇用を増すという特典があろうかと思います。また、他方には、日本の船舶が海運の不況にあえいでおる場合に、こういうのを自由に認めるということは、さらに追い打ちをかける結果にもなろうかと思いまして、その点は、われわれの方としましても、十二分に運輸省と今検討しておりまして、そういうチャーターの申請がありましたならば、運輸省と連絡をとりまして、きわめてシビアな基準をもって許可しております。しかし、いずれにしましても、今先生から御指摘のありましたように、五分一厘二毛の輸銀の金利、開銀の方はたしか七分一厘二毛だったと思いますが、そういう根本的な問題が解決しなければいけないというふうにわれわれ事務当局は思っておりますが、結局日本の海運にも影響を与えないというのがわれわれの主眼でございます。
  214. 足立篤郎

    ○足立委員 締めくくりとして私は申し上げておきたいと思いますが、自己資金の不足している日本の船会社としては、金利負担に今あえいでいると申し上げても決して言い過ぎではないと思う。私の調べでも、船会社の場合は借り入れ資本の率が七八%と最近ではいわれている。また、営業面から見ても、営業費用に対する金利負担の率は実に一一・二%、日本の全産業の平均金利負担が三・八%という数手と比べますと、船会社が戦後立ち上がるためにいかに苦労をしてきたかということが言えると思うわけであります。今回法律改正によって造船利子補給が行なわれようとしているのであります。この政策は時宜を得たものだと私は思うわけでありますが、国際海運界における競争はますます激化の一途をたどるもと思われるわけでありまして、日本の海運の体質改善はいよいよ必要に迫られておると思うわけであります。今申し上げたような一つの問題をつかまえてみても、なかなか厄介なかつ重大な問題だと思う。また利害相反する面もあります。従って、運輸省とされても、これはよほど真剣に、今後の海運政策について基本方針を確立されて、いやしくもこれに相背馳することのないように万全を期していただきたいと思う。また、大蔵、通産、運輸、政府部内、総合的に——将来四面海に囲まれた海国日本の伸びていく道は海運しかないと思う。この点に思い切った政策といいますか、考え方を確立されて、いろいろこまかな点までメスを入れて不合理を是正されんことを祈ります。私の意見として最後につけ加えて、質問を終わりたいと思います。
  215. 植木庚子郎

    ○植木委員長 次会は来たる十日午前十時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。     午後四時三十五分散会