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1960-05-11 第34回国会 衆議院 商工委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十一日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 中村 幸八君    理事 大島 秀一君 理事 小川 平二君    理事 小平 久雄君 理事 南  好雄君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君    理事 武藤 武雄君       始関 伊平君    田中 榮一君       中井 一夫君    野田 武夫君       細田 義安君    渡邊 本治君       板川 正吾君    勝澤 芳雄君       小林 正美君    櫻井 奎夫君       東海林 稔君    八木  昇君       和田 博雄君    加藤 鐐造君       北條 秀一君  出席政府委員         法制局参事官         (第三部長)  吉國 一郎君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (繊維局長)  今井 善衞君         建 設 技 官         (住宅局長)  稗田  治君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 五月十日  日朝直接貿易実施促進に関する請願外二件(稻  葉修紹介)(第三三九三号)  同(北村徳太郎紹介)(第三三九四号)  同外四件(河本敏夫紹介)(第三三九五号)  同外二件(福田一紹介)(第三三九六号)  同外二件(松浦周太郎紹介)(第三三九七  号)  かんがい排水用電気料金値上げ反対に関する請  願(竹山祐太郎紹介)(第三四三七号)  菓子貿易自由化に関する請願池田清志君紹  介)(第三四三九号)  同(床次徳二紹介)(第三五二四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  割賦販売法案内閣提出第一一八号)  繊維工業設備臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第九八号)      ————◇—————
  2. 中村幸八

    中村委員長 これより会議を開きます。  割賦販売法案を議題とし審査を進めます。  前会に引き続き質疑を続行いたします。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 きのうに引き続きまして、あと残りの質問をいたしたいのですが、最初に、きのうの質疑応答の中で、まだ明確になっていなかった点、すなわち第二条第二項の商品の中には不動産を含むのかどうかということです。含まないという政府委員答弁でありますが、それではこの法律の条項の中から、解釈的にどういうところから不動産を含まないのかということを明確にしてもらいたい、こう申し上げておったのでありますので、その後法制局において検討せられた結果をお伺いいたしたいと思います。
  4. 吉國一郎

    吉國政府委員 昨日申し上げましたことを要約して初めに申し上げますと、商品という用語商取引対象になる物品という意味で、法令上はほぼ物品と同様な意味において用いられております。そして不動産を含まない意味において用いるのが通常の例であるということを、昨日申し上げたわけでございますが、その例といたしまして、まず商品という用語用例を申し上げますと、第一は民法の百七十三条におきまして、二年の短期時効を定めておりますが、その中で第一号におきまして、「生産者卸売商人及ヒ小売人カ売却シタル産物及ヒ商品ノ代価」という言葉をあげておりますが、この場合の商品という用語は、その前の方に「生産者卸売商人及ヒ小売商人カ売却シタル」という形容詞が入っておるということからいたしましても、動産であるというふうに考えられるのであります。  第二は、商標法第二条第一項、これは商標定義規定であります。それから同条の第三項は商標使用定義でございますが、ここで用いられております商品用語も同様であろうと存じます。第三の例は、不正競争防止法第一条第一号及び第三号から第五号まで、同法第二条第一項第一号、第三号、第四号並びに同法第四条第一項から第三項までにおきまして、不正競争鎮圧のための種々の規定を設けております。その中で商品という用語を使っております場合も、あるいは商品容器包装などの用語を使っておりますので、これも動産のみを指称するものと考えております。  第四番目には、商工会議所法の第九条でありますが、ここでは商工会議所事業をうたっておるのありますが、その第五号において「商品品質又は数量」云々に関する「証明、鑑定又は検査を行うこと。」というのをあげておりますが、これも従来の考え方では動産たるもののみを考えておるということでございます。  第五番目には、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二十四条の二、これは再販売価格維持契約に関する規定でありますが、及び同法第二十四条の三、これは不況カルテル規定でありますが、これらの規定におきまして商品用語を用いておりますが、これもこの性格よりいたしまして動産たる物品を指称するものと考えております。  第六番目には、計量法第七十二条、これは正確に計量する義務、第七十三条及び第七十四条、これは一定の表示をいたしました容器使用する場合に正確に計量する義務を免除する規定でございますが、同じく第七十五条正味量表記、同じく第七十六条の品質表記、これらの規定におきます商品用語も同様なものであろうと考えております。  第七番目に、これは若干今までの例と違いますが、商品取引所法という商品の字を用いた法律がございますが、その商品取引所法の第二条第二項におきましては、商品というのを特に定義して用いておりますので、特に動産あるいは不動産について問題は生じないわけでございますが、参考までに申し上げますと、商品取引所法におきます商品は綿花、綿糸、綿布等、第一号から第十号までの品目を掲げておりまして、これはすべて動産たるものをあげておるわけでございます。  次に物品用例を申し上げたいと思いますが、物品という用語を使いましたものといたしましては、第一は商法の第五百五十一条、これは問屋規定でございますが、「問屋トハ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為メニ物品販売ハ買入ヲ為スヲ業トスル者謂フ」、この場合の物品動産を指称するということは学者の著書にも明らかでございます。  第二番目には、これは昨日も申し上げましたが、百貨店法第二条において物品販売業という文字を用いております。  第三番目には、小売商業調整特別措置法第二条第一項において、購買会事業を行なうものに関する措置命令を定めておりますが、ここで「物品を供給する」という用語を用いております。  第四番目には、地方税法の第七十二条第五項におきまして、地方税のうち事業税の課せられます事業を列挙いたしておりますが、その第一号に「物品販売業」カッコいたしまして「(動植物その他普通に物品といわないものの販売業を含む。)」という用語をあげております。この物品の中には不動産が入るかどうかということが一応問題になるわけでございますが、同法の第七十二条第五項第三十六号に「前各号に掲げる事業に類する事業政令で定めるもの」という文言を置いておりまして、これに基づいて地方税法施行令第十条の三第二号において不動産売買業というものをあげております。これは物品販売業の中に不動産売買は含まないという考え方に基づいて、不動産売買業を別に規定したものでございます。  第五に、古物営業法第一条第一項におきまして古物定義をいたしておりますが、そこで「「古物」とは、一度使用された物品若しくは使用されない物品使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入をしたものをいう」という文言を用いておりますが、この場合の物品も当然動産と考えております。  第六番目に、同じようなものでございますが、質屋営業法第一条で質屋営業定義をいたしておりますのも、動産として用いております。  同じような例は、倉庫業法第二条第一項あるいは消費生活協同組合法第十二条第四項及び第五項等に見られるわけであります。  今まで例をあげましたように、商品あるいは物品用語は、ほぼ例外なく不動産を含まないように用いるのが例であるということはできると思いますが、ただ、通常社会通念といたしまして、商品という用語不動産は全然除外するものであるかどうかということになりますと、経済学的な意味におきましては、不動産業者、たとえば土地建物売買業者が持っている不動産というものは商品と言えることは当然でございますので、法律学上の商品用語を、特に不動産というものを除外しなければならない、除外することを特に明らかにする必要があるというような場合にどう扱うか、こういうようなことは従来その例がございません。今までの例では、特に不動産を除くということを規定したものはございませんけれども、この第二条第二項あるいは第三項等におきまして特に問題になるという場合につきましては、また国会において御研究いただくことも必要かもしれない、かように考えております。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 今の法制局第三部長検討の結果の御答弁はよくわかりました。しかし、商法以下十数にわたる法律を掲げられましたが、私聞いておりまして、たとえば商法制定当時には今言っておるような家屋の建て売りという商売はなかった。おそらく商法制定当時は、そういうことを予期していなかったから当然動産だ、こういうことだと思うのです。それから計量法とか百貨店法あるいは古物営業法、そういうのをあげられましたが、これはその法律性格上当然動産だということが常識的にわかるものなんです。たとえば計量法土地建物をはかる——これは面積は別です。しかし、重さをはかるというようなことはあり得ない。古物またしかり。ことに質屋法においては、これは質権性質動産に限ることは明らかであります。不動産質権というのは、今では担保物権とかなんとか、いろいろな不動産動産質権と同じような扱いをしようという学説はございます。しかし、不動産原則としては抵当権であって、動産原則として質権であるということは民法上の通念なんです。それをあげられることは当然その法律性格動産であることが明らかなものに対してあげられておるわけです。そういたしますと、今日この割賦販売法案において私が問題にしておりますのは、現にここで予定しているような方法による割賦販売不動産において行なわれておる。そこで、商品というときには疑問が出てくる、こういうことを申し上げておるのです。従いまして、今法制局第三部長のおっしゃったそれ自体から、直ちにこの商品不動産を含まないという解釈は出てこないのではないか。商法制定当時あるいは商工会議所法制定当時には、そういう業務はありましたでしょうか、また古物商等不動産を持っていくというようなことは、社会通念上考えられるでしょうかいかがでしょう。
  6. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいまも例示をあげました際に申し上げましたように、従来の「商品」とか「物品」とかいう用例につきましては、特に不動産を除くということを明らかにした例はございませんけれども、それは特に明らかにする必要がなかったということでございます。従いまして、この法律の第二条第二項あるいは第三項におきまして、特にその趣旨を明らかにしなければならないという格段の必要があるとお認めになります場合には、あるいはそういうことも必要かもしれません。ただこの規定のみに不動産を除くというものを入れますと、これが注意的な規定であるとか、あるいは特に創設的な規定であって、本来は不動産を含むものであるけれども、この法律においては含まないものであるかというような点で、解釈上また問題になりまして、従来の法律で単に「商品」あるいは「物品」と用いてあるものにつきまして、反対解釈といたしまして不動産を含むのではないかというような解釈が出て参りまして、法律上非常な混乱を生ずるというようなこともありますと、これは問題でございますので、その点は研究を要する問題ではないかと思っております。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 今おっしゃったように、従来の法律はその法律の目的、性質上、あるいは対象物それ自体から、特に不動産を含まないのだということを考える必要がなかった、あるいは制定当時そういうことを予想しなかったということは、今おっしゃった通りだと思うのです。ところが、今日のこの割賦販売法二条二項においては、現に行なわれておるから問題なんです。たとえば百貨店法をあげられておるが、きのうも申し上げましたが、現在百貨店不動産を扱っていないから、商品といえば動産だ、こうくるのです。ところが、百貨店がたまたま百貨店商売の仕方として不動産を扱わないだろうと思うが、しかし扱うことになればこれがかかってくると思います。ことに、地方税法で、今あげられたように事業税に関連して、政令でわざわざうたっておるということは——今まで商品としておる。しかし事業税においては、今私の申し上げておると同じように、やはり不動産を含むのではないかということが疑問になる、その点から政令不動産を含む、こうやったと思うのです。それならば、逆に言うならば、この場合不動産を含まないという考え方なら、その点をどこかにする必要があると思う。そこで、私局長に申し上げたいのですが、私の申し上げておるのは、この商品解釈を言っておるのではないのです。もちろん解釈も申し上げておるのですが、その裏は、不動産もやれ、私はこういう考え方なんです。不動産もやるべきではないか。現に建て売り住宅営業というものが行なわれておるわけなんです。しかも、それが今この法律において考えておるような頭金を取り、そして何回かの掛金をして、最後にやはり所有権を移転しよう、こういう形式で行なわれておるし、われわれが通常耳にしておるところの、いわゆる購入者との間に問題を起こしておるのは、こういう住宅月賦会社といいますか、いろいろの会社があります。名前をあげるといけませんから申し上げませんが、きのうも申しましたように、週刊誌等で騒がれた事件が起きておる。そういうものに対して、せっかく割賦に対する基本法を作るのだから、なぜそれを入れないかということなんです。ことに商品について特に不動産をどうするかということについては、国会において考えてもらってもいいという法制局の御答弁であります。同時に、局長は、この際は不動産は入れないのだと考えておるが、私は不動産を入れるべきではないかと申し上げておるので、ここに小平さんもおられますが、本法修正の話し合いのときには十分この点を考えてもらいたい、このように考えまして、この項に対することは、これ以上申し上げても平行線になろうと思いますので、これでやめます。しかし、不動産を入れることについて、局長は他の所管だからこんなうるさいものを騒ぎたくないというお気持なのか、入れなくてもいいのだという考え方の基礎はどうなんですか。もう一ぺん伺います。
  8. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 不動産売買につきまして、割賦販売が行なわれておることは御指摘通りでございますが、ただこの割賦販売実態あるいはその実情がどういうものであるか、私も必ずしもつまびらかにいたしておりませんが、常識的にいわれておりますところから私どもが判断いたしましても、この法案内容として盛っておりますようないわば秩序整理方法が、直ちに不動産割賦販売にはまるかどうか。むしろはまらない点が多いんではないかと思います。今例としてあげられましたのは建て売り販売で、しかも同じような格好の家をたくさん作って、同じような条件で売るという特殊の場合を例としておあげになったようでありますけれども、私どもが聞いております範囲でも、ある程度金を積んでもらって、そうしてあとはその買い主の希望する設計で家を建ててやるというような場合が、むしろ相当多いというふうに聞いております。そういたしますと、この法案内容に盛っておりますようなものには、ほとんどはまらないことになると思います。そういうことを考えますと、この法案立案の際に考えましたような、動産割賦販売について現在行なわれております実態を考えて立案をしましたところを、そのまま不動産割賦販売にはめるわけにはいかない。それは私どもが聞いております限りでも、別途その面の検討がせられておると聞いておりますが、その方で不動産割賦販売によく実態に適合した立法論を考えていただく方が適当であろうというのが、私ども考え方でございます。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 この二条二項の「定型的」というところに若干の疑問がある。従いまして局長の言っておられることもわからぬことはないわけなんですが、一つ理由所管が違うからであろう。現在行なわれておる建物割賦販売実態がわからぬから、こういうことも一つ理由だと思うので、この点は委員会において研究する必要があろうと思います。従いまして先ほど私も申しましたが、政府委員考え方は私の主張とは若干違っておりますが、考え方はわかったから、この点はもう一度委員全体として検討して考え、われわれが修正等のときに考えていくべきものじゃなかろうか、こう思うので、委員長の方にも一言申し上げておきます。  それから、次に二項をやったついでですから三項についてお伺いいたします。ここで割賦購入あっせん業に関する規定があるわけなんですが、現に専門店協同組合とかなんとかいう協同組合自体主体となって割賦販売をやっております。もちろんチケット販売については、そのチケットを出して、その加盟組合のところで買う、こういう一般的なものはこの法律では入らないようになっておると解釈するのです。しかし現にこの法律でいうようなあっせんをやっている協同組合がある。この場合ここでいう三項の者、これはやはり現実に売っている小売屋がその業者になるのか、協同組合自体がここでいうあっせんをやる、割賦販売をやる主体になるのか、その辺をはっきりしてもらいたいと思います。
  10. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 現在協同組合等で行なわれておりますいわゆるチケット販売の場合であろうと思いますが、その場合には、そのチケットを発行しております協同組合が、この第二条第三項にいっております割賦購入あっせん業者ということになるわけであります。そのチケットを持っていけば物を売ってくれる。その場合にはおそらく協同組合組合員であろうと思いますが、それはこの第三項にいっております特定販売業者から云々という販売業者に当たるわけでありまして、この法律の中で定義しておりますものは、この場合には協同組合が第三項の規定定義の中には入っております。ただ実際問題としてあとの方の規定にもございますように、協同組合につきましては登録その他の規定適用は除外されております。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、もう一ぺん確認いたしておきますが、協同組合主体となって現にやっているチケット等で購入する場合、その対象商品がいわゆる指定商品であった場合、ここでいうところの主体協同組合自体である、その小売屋でない、これでいいのですか。
  12. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 第三項の場合には、指定商品云々という限定をしておりませんが、今のお話は、たまたまそのチケット販売されるものの中に第二項でいっているような指定商品があった場合にはというお話だと思いますが、この第三項の場合の、そのチケットを持っていけば売ってくれる、ここでいっている特定販売業者、俗にいう加盟店でございますが、その加盟店はいわば総合割賦販売販売機関ということでありまして、そのものが直接割賦販売をやっているわけではございません。従って第二条第一項、第二項の適用はない、いわゆる個品月賦販売業者ではございません。第二条第二項にいう指定商品を扱っておりましても、それはこの法律にいっておりますいわゆる割賦販売業者ではないということであります。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 たまたまその中に指定商品があった場合…。
  14. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 あっても、その加盟店チケットを発行している団体の販売をする加盟店でありますから、その加盟店はただチケットに対して物を売っているというだけでございまして、その加盟店自身割賦販売をしているわけではございません。従ってここでいう割賦販売店ではない。ただチケットを発行しているその機関協同組合であっても、いわゆるここでいう割賦購入あっせん業者であるというところまでであります。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 わかりました。  次に四条の三号に「賦払金支払の時期及び方法」こういう言葉があるのですが、この方法は、たとえば取り立てとか、持参とか、いわゆる店頭へ持っていって払うとか、あるいは外交員が取りに来るとか、あるいは第二条のカッコの指定の銀行へ入れるとか、何かこういういろいろな方法があると思うのですが、そういうことを意味しているのかどうか。それからその場合五条の「十五日以上の相当な期間」というこの期間進行、計算の進行は、その方法によって履行せられなかった場合ということになるのか、たとえば債務履行ということは定められた方法によって履行することだから、取り立て債務の場合、外交員がお金を取りに来たら本人は払う気であったが、来なかったからおくれたというような場合がある。そのときには、債権者遅滞というような関係になると思うのですが、債務履行されない場合ということと、第三号の方法ということとの関連及び期間進行——要は金さえ、どんな方法でも払ったらそれでいいのだという、こんな簡単な解釈をしていいのか。今申しましたような履行形式までを考えるのかどうか、この方法というものに関連してお伺いいたします。
  16. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 第四条第三号にいっております「時期及び方法」という内容は、今御指摘になった通りであると思います。第五条の「支払義務履行されない場合」という「場合」の解釈でございますが、今例としておあげになりましたところに即して申し上げますと、かりに割賦販売業者の方が集金に参りますというような契約内容になっておりますれば、支払いの時期が来ておっても、その集金人が来ないという場合には債権者の方が集金に行かないという意味で、債権者がその義務を怠っておるわけでありますから、その期間は直ちには債務者債務履行遅滞にはならないという解釈に相なるだろうと思います。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 それでわかりました。じゃたまたま外交員がサボったとかなんとかということで行かなかったときには、ここでいう義務履行せられない場合の期間進行には入らない、こういうことですね。現実にたとえば五日なら五日に取り立て債務だという契約があった、そうして十日になっても取りに来なかった、こういうような場合には、取りに来るまでいつまでもほうっておいていいわけですね。
  18. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 その通りであります。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 わかりました。  次に、きのうの焼き直しのようなことで恐縮ですが、六条の第一号の「契約のために要した費用の額」これですが、昨日の局長答弁では契約書にある印紙代等だ、こういうことなんです。ただ単に印紙代なら十円か二十円くらいなものだ。それが契約に要した費用というのか、それとも契約に至るまで外交員が何回か足を向ける、それの旅費日当あるいは当該商品を運ぶ場合の運賃、あるいは自分のところのリヤカーなりトラックで送ったような場合のそういう費用、こういうものがいわゆる契約のために要した費用の中へ入らないのかどうか。これをはっきりしておかないとその場合に問題があると思う。だから契約に要した費用というのは一体何と何となんだ、こうしておかないと、契約のために足を運んだ旅費日当あるいは運賃までも請求するという結果が生まれると思いますが、どう考えておられますか。
  20. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 その辺の具体的のことになりますと、私も必ずしも明確にお答えする資格がないと思いますけれども、この法案に掲げております内容趣旨から申しますと、契約書類作成費でありますとか、印紙税というものはきわめて明確な部分であります。それ以上に契約のために要した費用というものはどういうものであるかという点は、やや具体的なことになりますと具体的の場合の判断になると思いますけれども考え方としましてはあくまで契約履行、解除等に伴って、そのために特別に要した費用、ということに相なりまするので、今例としておあげになりましたように、その商品の運搬をした費用だとかあるいはその外交員がそのうちに信用調査のために行った費用というような、割賦販売業者が本来の経営の、本来の人件費、経費として当然負担するようなもの、そういうものまでこの契約のために特別の支出した費用とは考えられないであろうと思います。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 私はきのうその点を盛んに言ったのですが、その割賦販売業者が本来の業務として要すべき費用ではないか、この契約に要した費用というのは。だからこんなものは入れなくてもいいのじゃないか、本来の業務のうちに入るのじゃないか、こうきのう繰り返して言っておったわけです。たまたま例としてあげた外交員旅費日当とか運搬とかいうことは本来の業務である、こういうことになると、本来の業務でないというものになれば一体どういうものになりますか。たとえば、考えられることは、こういうことで公正証書にすというようなことは考えられませんが、かりに公正証書にしたら公証人役場へ納める費用とか印紙代、こういうことになろうと思うのですが、この点を明確にしておかぬとあとに紛争の種が残ると思う。たとえば直接費で間接費は含まないのだというようなことをいっておっても、直接費とは何かということになろうと思うのです。しかもおっしゃっておるように、印紙とか書類の作成というのは、おそらく印刷せられたものに記入して判を押す、これが契約書になると思うのです。それなら、そんなものは当然そこの業者が本来の業務として用意しておく書類である。そうすると印紙だけだということになる。印紙の十円や二十円の問題を、何もわざわざここに法律に掲げる必要はないじゃないか、こういう考え方です。契約するときには、お互い笑い顔ですが、契約解除のときにはお互いが怒った顔になると思うのです。そのような場合に、やはり不当な要求をするだろうと思う運賃とか旅費まで要求するだろうという考えがある。だからそういうことは絶対に含まないのだという点を明確にしておく必要があると思うのです。そういうことは法律上何も明確にできないといっても、政令でやるとかあるいは附帯決議で行なうとか、何かそこははっきりしておかぬと、将来紛争の種を残すと思う。その点についてはいかがでしょう。
  22. 吉國一郎

    吉國政府委員 これは本来通産省からお答えすべきことかもしれませんが、この契約のために要した費用と申しますのは、単に割賦販売の場合に問題になりますばかりではございませんで、一般の契約解除の場合に、損害賠償の中で契約のために要した費用を、どの程度取れるかということが問題になるわけでございます。これも最終的には契約解除の案件に即しまして裁判所で判断するという問題になると思いますが、原理として抽象的に申し上げますと、その契約ができたためにそれに伴って当然必要になったという意味でありまして、従いまして、その契約ができるかできないかわからない状態において、あるいは宣伝、勧誘のために外交員が出入りするというような費用は、これはもう当然入らないと思います。しかし、その契約ができ上がったために、それに伴って販売業者の方に必要となった費用というものは入るわけでございまして、これは非常に僅少な金額かもしれませんが契約書作成の費用あるいは印紙税を納付しなければならないための費用、あるいは契約履行するために、契約ができなかったならば、そのテレビをそこのうちに運ぶ必要はなかったわけでありますが、契約履行するためにテレビを運搬しなければならない、あるいは契約を解除したために、そこから品物を引き取ってくるために直接要する費用は、これは契約のために要した費用ということになると思います。運搬のための費用、たとえば倉庫から出してくるとか、本店から支店に運ぶというようなものは、当然その販売業者の本来の営業の範囲内において行なわれる行為でございますが、具体的に、ある甲という人のうちへ品物を持っていかなければならぬ、そのためにリヤカーで運搬した、幾らの費用もかからないかもしれませんが、そういうものは契約のために要した費用として算入することになると存じます。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 その解釈として、今法制局部長の言われた契約を締結したために要する費用あるいは解除したために要する費用、従って直接運ぶあるいは返還する、この運賃は入る、こういうことでやや解釈は明確になったと思います。しかし先ほど言われた一般の契約解除に伴う損害賠償とは違った観念でいこうというのが本法の趣旨じゃないですか、そうでしょう。おっしゃるように一般の契約解除において起こるところの損害賠償の理論をもってするならば、たとえば期待可能権に対するいわゆる無形の損失まで含むということも解釈上出てくると思う。そういうことでなく、六条によって一般の契約解除に伴うところの損害賠償を規制しよう、これに限定しよう、こういうことなんです。それならば、契約のために要した費用というのもはっきりと限定すべきじゃないか、法律でそういうことを書けないとしても、何らかの方法を必要とするのではないか、こういうふうに思う。それでなければせっかく割賦販売法という基本法を作っても、紛争の種を残したままに法律が成立するということになる、こういうふうに考えるのですが、いかがでしょう。
  24. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほどお答え申し上げました点で、一般の契約解除の場合と同様であると申し上げましたのは、この第五条につきましての問題でありまして、それ以外の点につきましては、この第六条の趣旨は、一般の契約解除の場合でございますと、「損害賠償額の予定又は違約金の定め」がございますならば、裁判所はこれを変更できないということになるわけでございますが、割賦販売契約の解除に伴う損害賠償につきましては、ここに掲げております一号から三号までのものに限定して、それ以上は請求権がないということで、一般の契約解除の場合と差異をつけてあるわけでございまして、たとえばこの第一号の中の「契約のために要した費用の額」というものにつきましては、一般の契約解除の場合と同様に考えるということを申し上げたわけでございます。
  25. 田中武夫

    田中(武)委員 それはわかるのだが、ともかく制限しょうという趣旨であるなら、契約のために要した費用というのも紛争になりがちなんです。それが今あなたのおっしゃったように、一般の契約解除の場合と同じように契約のために要した費用は考えるのだ、こういうことであるなら、紛争を避けてできるだけ損害賠償等についての制限をやろうという考え方からはどうなんでしょう。契約のために要した費用ということを、もっとはっきりさせておく必要がある、こう思うのですが、その点どうでしょう。はっきりさせておく必要がないとこういうことなら、ないでけっこうです。
  26. 吉國一郎

    吉國政府委員 この第六条の趣旨は、今申し上げたようなことでございますが、この第一号の「契約のために要した費用の額」とか、第二号の「当該商品通常使用料の額」等々につきまして、これを具体的に明らかにする方がいいではないかというお説は、まことにその通りでございまして、できれば一号、二号、三号等がもっと具体的にはっきり規定できれば通産省としても一番望ましいところであろうと存じますが、ただ非常に具体的な場合によりまして、その費用内容であるとかあるいは費用の額、また第二号の商品通常使用料の額と申しましても、種々な商品がございまして、それによりまして通常使用料の額と考えられるものも、非常に千差万別であるということからいたしまして、ここでは一号、二号、三号というように抽象的に書いておきまして、その一号から三号までの合計額ということで、損害賠償額の予定または違約金の定めがあってもその合計額にとどめるということで、通産省としてはこの損害賠償等の額の制限の規定を、最小限度必要な範囲はこの程度のものだということでとどめざるを得なかったというのが実情でございまして、おっしゃいますように、一号なり二号なり三号なりの内容を、もっと具体的に明らかにする必要は確かにございまして、今後法律を施行する上からも、行政上のいろいろな手段によりまして、個々具体的な場合に適用されるようなこまかい基準をできるだけ作って運用に万全を期するということは、この法律の精神からいたしまして必要なことであろうと思います。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 法律の文句として、そうがたがたと、事実上書けない、こういうこともわかります。だがしかし、私が申し上げておるように、紛争が契約解除に伴って起こるであろうという予測はつくわけなんです。そこで委員長に申し上げておきたいのですが、これは法修正という格好はとれないとしても、附帯決議ということで考えるか、あるいは通産省におきまして通牒とか何かの方法において明確なものを一応基準を設けておく必要がある、そういうのをわれわれに一応示していただいてきめる、こういうことも必要かと思いますが、この点問題を残して次にいきたいと思います。  次に第七条関係でございますが、これは所有権移転に関する推定でございますが、この点を質問するにあたりまして、がたがたといろいろな言葉が輻湊してくると思いますので、その点あらかじめ割賦販売業者を甲、購入者を乙、購入者よりその商品を譲り受けたる第三者丙を、それから甲すなわち割賦販売業者債権者を丁、こういうように一応仮定をして今から質問申し上げます。  まず第七条によりますと、賦払金の全部の支払いが終わるまでは所有権は甲に留保せられたと推定せられておる、そうならその賦払金全部を支払うまでの乙のその商品に対する地位は、どういう関係になりますか。
  28. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 まず最初にお断わりしておかなければならぬと思いますが、これは特約がなかった場合の推定規定でございますから、特約がある場合はもちろん別個のことでございます。そういう前提で申し上げますが、今の御質問の点で申しますと、一般的に申しますと、乙は所有権は持っておりませんけれども、その当該商品の占有権と利用する権利を持っておるということがいえるであろうと思います。
  29. 田中武夫

    田中(武)委員 その通りだと思うのです。そうすると、乙は他人のものの占有者という立場ですか。
  30. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 その通りでございます。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 他人のものの占有者の通常義務は、善良なる管理者の注意をもってやる、こういうことなんです。そうすると、不可抗力等によって、すなわち乙の責めに帰することのできない理由によって、当該商品が消滅した場合のあとのいきさつはどういうことになりますか。もう一度あらためてその商品をもらうことができるか、あるいは自後の残っておる賦払金を払わないで済むのか、いわゆるそこで債権債務は消滅するのか、どういうことになりますか。
  32. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 所有権はこの推定規定によって一応甲にございますので、乙は占有権と利用権といいますか、利用する立場にあります。しかし他人のものを占有しておるというだけではなくて、すでに代金の一部を払って利用する立場にございますから、その買い主の状態は、単に他人のものを善良なる管理者の注意をもって保管するという義務じゃなくて、自己のものに対すると同一の保管義務という程度にとどまると思います。従いまして、自己のものに対すると同一の保管義務ということでありますから、つまり乙はそれを利用する立場にありますから、自己のものに対すると同一の保管義務がある。と同時にそのものに対する危険負担はこの場合は停止条件つきの売買というわけではございませんから、売買そのものはすでに終わっておりますから、そういう意味で、危険負担はやはりこの場合は乙が負担をする。つまり自分のものと同一の注意義務をやっておりながら、なお何らかの事由でそれが滅失するというような場合には、それは乙がその危険負担をしなければならないという解釈になるだろうと思います。
  33. 田中武夫

    田中(武)委員 いやいや、占有権を持っている、しかしそれは所有権は甲にあるわけです。そうすると、やっぱり乙のそのものに対する地位といいますか、これは他人のものの占有者ということになるのじゃないですか。法制局、どうです。
  34. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいまの御説明で、甲という販売業者が乙という購入者に対して、割賦販売によってある物品販売したという場合に、その割賦販売契約が締結せられて、その品物の引き渡しが終わったという以後において、乙がいかなる地位に立つかということでございますが、これはまさに形式的には甲の所有する物品を乙が占有しておるという状態でございますが、ただその場合に通常、たとえば賃貸借におきまして賃借人が賃貸人のものを占有するという形とは本質的に異なっておりまして、乙は代金の支払いによって契約に定める引き渡しの時期が到来することによって、当然に割賦販売の目的物である商品所有権を取得すべき地位にあるものでございますので、全く他人の物品を占有する場合とは、本質的には異なるというふうに従来の学説等では考えておるようでございます。
  35. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、不可抗力によるその当該商品の滅失の場合は、やはり乙にその責めがくるわけですね。
  36. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 その通りでございます。
  37. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、引き続きその代金も、やはり物が滅失後も払う、こういうことですね。
  38. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 その通りでございます。
  39. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、民法百九十二条の即時取得の原則は、その当該商品を甲から乙に渡したときに、適用ありますね。
  40. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 即時取得の民法百九十二条の規定は、甲乙の売買のような場合には当てはまらないではないかと思います。御承知のように善意無過失でものを第三者に移した場合ですから……。甲乙は明らかに売買という譲渡の意思を持ってやっておりますから……。
  41. 吉國一郎

    吉國政府委員 民法百九十二条の善意と申しますのは、これは悪意でないということでございまして、知らないでということでございますから、売買の場合には、当然百九十二条は売買の当事者間には適用ないということです。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 百七十八条の物件の引き渡し、これはどうです。
  43. 吉國一郎

    吉國政府委員 百七十八条は、物件の譲渡その他の変動に関する対抗要件の問題でございまして、百七十八条は、動産に関する物件の移転は、動産の引き渡しがなければ第三者に対抗することはできないということを規定しただけでございまして、たとえば不動産でございますと、AからBに移転した登記をもって対抗いたします。それを動産の場合には引き渡しというものを対抗要件にするという意味でございます。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると乙から、その形式が譲渡であろうが、売買であろうが、何であろうが引き渡しを受けた丙は、もう完全に所有権を取得しますね。どうです。甲と丙との関係はどうなります。
  45. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 その場合に丙が民法百九十二条の規定しておりますような善意無過失ということでありますし、即時取得でそういうことになります。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、七条の規定がなくとも、七条と同じ趣旨の特約をした場合は同じことなんですね。規定があることとないこととは何ら変わりがないということになりますが、どうです。
  47. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 特約がありますれば、結果は同じになります。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 そんならあえて七条を設けておく必要はどこにあるのです。特約があれば同じだということなら、おそらく割賦販売をする場合に、何らか所有権の移転に対して特別の特約をやらないのはなかろうと思います。もしなければ、そのとき、いわゆる引き渡しのときに所有権は移転しておる。また書いてなければ、そのつもりであろうと思うのです。そんなら七条の存在価値というものはなくなる、あなたの答弁なら。そこで私は七条削除を主張したいのですが、どうです。
  49. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 現在の割賦販売の実情におきまして、相当部分といいますか大部分の場合には、契約書がはっきりしております場合には、所有権留保の条項が入っておるものが大部分、相当部分であると思います。従いまして、そういうものは実際上の約款の特約にまかしておけばいいではないかという考え方も、確かに今御指摘のようにあると思います。ただ、しかし実際問題としましては、割賦販売業者、特にその割賦販売業者が、いわゆる零細割賦販売等でありまして、その間の競争が非常に激しいというような場合には、やはり買い主に対する気がねと申しますか、というようなことから、別段判をいただかなくてもけっこうですというようなことで、契約書もなかなか取りにくい、あるいはまた契約書をかわしても、その中に所有権留保の規定を入れておくというようなことは、どうも買い主に対する気がねからまずいというような場合もしばしばあるようであります。そうなりますと、やはりそういう場合にこの所有権留保の規定が、初めて生きて効果を現わすのであろうと思いますので、この所有権留保の規定が必ずしも絶対万能薬ではないと思いますが、今も申しますように、特約があれば一応いいということになっております。そういう意味では万能薬ではないと思いますが、今申しましたような意味で、漏れておる弱い割賦販売業者の場合には、この推定規定が生きて働いてくる、こういうことであります。なおさかのぼって申しますと、今申しました所有権留保の特約があれば、それは法律上の所有権が明確に法律的に保留されておるということとして有効であるというような判決もございますけれども、しかしまた別の判決によりますと、そういう所有権留保の特約というのは、ただ購入者に代金支払いを促す心理的効果をねらった単なる例文にすぎない、ほんとうの意味法律上の所有権留保にはならないという判決もございます。そういう意味から申しますと、今申しました特約で済むと私どもは思いますけれども、判決の例を見ますと、必ずしもそこには明確でない点もある。しかし実体的には、私が前段に申し上げましたことが主たるねらいとして、やはり推定規定を置いてやっていくつことが、比較的弱い割賦販売業者の立場に有効に働くのではないかという趣旨でございます。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたの答弁は間違うておるのと違いますか。あなたの答弁のようなら、七条は要らないのです。置くのはただ割賦販売業者のために考えておるというだけのことで、もちろんその規定であろうが、特約があれば何でも同じということなら、置く必要はないのです。そうでなくて、ほかにあるのでしょうが。たとえば乙から丙に渡ったときに、いわゆる特約だけなら債権関係であるから、甲は丙に対して請求できない。しかしこの規定があれば、甲は丙に対して請求できるんじゃないですか。そこのねらいと違いますか。あるいはまた乙が丙に対して転売するとか、あるいは担保に入れるとか、質屋に持っていくとか、いろいろなことがあると思います。そのような場合にこの規定がなければ、乙はただ債務履行、いわゆる債権関係における義務といいますか、債務履行の関係が出てくるだけである。ところが、これがあれば、乙が丙に渡した場合、乙は横領罪等に該当してくるわけです。七条の意味はそういうことと違うのですか。あなたの言われるようなことなら、七条は要らないのです。ねらいは、あなたそれをごまかしておられるのかどうか知らぬが、七条の効果はそういうことと違うのですか。
  51. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 七条の趣旨は、もちろん売り主の保護の趣旨規定でございますから、今御指摘になりましたような点に、法律上のいろいろの問題があると思いますが、要するに売り主を保護したいという趣旨規定であります。私が先ほど申しましたのは、売り主を保護するこういう推定規定を設けなくても、実際上の特約で済むんじゃないかという御質問でございましたので、私が申し上げましたのは、必ずしもそういう特約を結ばない場合がある。その場合にはこの推定規定が役に立つし、またかりに特約を結んでおっても、判決等の例では、その法律的効果に若干疑義を持っておる判決もあるので、やはりこういう推定規定を置いておいた方が、割賦販売業者の保護規定になる、こういうことを申し上げたのであります。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、七条がなくても、七条と同じような所有権留保の特約があれば、結果は同じだ、こうおっしゃったのでしょう。結果は同じですか。
  53. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 私が一番最初に概括的に申しましたのは、私は大体同じであると思います。ただ最後に申しましたように、従来の判決例を見ますと、やはり単なる例文にすぎない、必ずしも法律的効果は同じでないという判決もあります。しかし私は概括的に申しまして、大体同じであろうということを申したのであります。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 私はこの規定がかりにこのまま通ったとすれば、乙の立場が、いわゆる丙に物を移転した場合、横領罪等に問われてくる危険がある。あるいは甲は直接丙に対して所有権に基づいての返還請求ができる。特約の場合だけだったら、債権ですから、契約ですから、甲乙間だけにしかその効果は発生しない。丙に渡ったら何もできない。そういう点をねらったのと違いますか。そうじゃないのですか。
  55. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 たとい当事者間の特約でありましても、その特約によって甲に所有権が保留されておるということが、先ほど申しました若干の判決例で疑義がありますけれども、そうでない限りは、当然甲に所有権が保留されておることが、私法上認められております。それが特約であっても、その特約は私法上で認められた特約によって、甲に所有権が保留されておりますから、その所有権の保留が認められる限りは、法律的効果は私は同じだと思います。  また今のお話の、乙が第三者にそれを勝手に処分をした場合には、横領罪になるんじゃないかという点は、これは本来この場合代金が十分済んでいないものについて、しかも所有権留保の特約があり、あるいは特約がなくても推定規定がありますれば、原則的にはそうなると思います。ただ、従来私どもが聞いております限りでは、その場合に買い主、この場合は乙であります、乙がたまたまその割賦販売購入の商品が不用になったというような場合で、友人に譲渡をした。しかし、その乙はあくまで残りの代金、債務支払う意思がきわめて明確であるというような場合には、裁判上の問題としては、違法性の認識がないという意味で、横領罪が成立しないという考え方もあるようであります。しかしかりに悪意であれば、この場合には所有権が留保されておる限りは、それが特約であれ、法律規定による推定であれ、いずれにしても横領の規定適用される結果になるだろうと思います。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 特約でこういう規定があった場合も、あるいは七条があった場合も、甲乙間においては、乙の立場は同じことだ、こういうことですね。それじゃ、これは横領罪になるわけですね。特約の場合も第七条をとった場合も、横領罪になりますね。
  57. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 その通りであります。
  58. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、先ほど私が申しました乙のその商品に対する地位、これは自己のものと同様ということですね。他人のものを占有するという場合に横領罪というもののかぎが出てくると思うのです。自己のものと同様な立場において占有している場合に横領罪が出てきますか。
  59. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、法律的には今御指摘のように、他人の所有物について占有しておるということには変わりはございません。ただその場合に……。
  60. 田中武夫

    田中(武)委員 そこをはっきりして下さい。他人の占有物ですね。
  61. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 他人の所有物を乙が占有しておることは明確であります。ただこの場合には、先ほど法制局の第三部長からも御説明いたしましたように、代金の一部をすでに支払っておりまするから、従いまして、これについては、当然乙は利用し得る立場にございます。従いまして、その場合の買い主の保管義務は、自分のものに対すると同一の保管義務であるというふうに解釈されるであろうと思いますが、その自己のものに対する云々というのは、保管義務の場合にそういうことを申し上げましただけで、それが自分のものであっても横領罪になる観念とはまた別の問題ではないかと思います。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、この乙の立場は、不可抗力による物の消滅等の場合は、自己の所有物と同じように扱われる。そしてそれが転売その他した場合は、刑法上では他人のものを横領したというふうに扱われる、そういうことですね。
  63. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 その通りであります。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 法律上そういうことが成り立ちますか。刑法と民法との関係において、他人のものという観念、それと横領罪との構成要件、それからその物に対する乙の保管義務、責任、消滅したときのその危険の負担者等が、これで一貫してきますか。
  65. 吉國一郎

    吉國政府委員 現在割賦販売につきましては、何ら立法上の措置が講ぜられておりませんので、実際問題として、割賦販売をいたしました場合に、所有権留保の規定を置いておるものが、何割かを占めておるわけでありますが、その所有権留保の規定契約に置きました場合に、それが法律的にいかなる結果を生ずるかということにつきまして、最近月賦販売が非常に盛んになって参りましたのに伴いまして、多数の学者がいろいろ学説上の見解を発表しておられるのでございます。その説とするところを先ほど通産省の企業局長から申し上げたわけでございまして、刑法上と民法上の取り扱いが違うではないかというお話でございますが、これは売買形式といたしまして、売買契約そのものはすでに成立をして、完全に契約として存立をいたしておる。ただ所有権の移転が代金完済、あるいは完済まで到らないでも移転する場合がございますかもしれませんが、大体の場合におきましては、代金完済を停止条件として、所有権が移転するのだという実質を持っておるわけでございます。その関係において、単なる物の賃貸借とも違うし、また単なる売買とも違うという性格を持っておるわけであろうと存じます。  まず、刑法上の問題から申し上げますと、横領罪になるという点につきましては、すでに古く昭和九年の七月十九日の大審院の判決にございまして、この場合は、あらゆる場合が横領罪になるということではございませんで、その判決の内容をまた詳細に申し上げなければいけないかとも存じますけれども、刑法上は原則としてそのものを第三者に不当に処分することは横領罪になるということが、刑法上の問題として生じて参ります。  それから民法上の問題としては、これを第三者に販売した場合におきましては、民法の百九十二条の適用がある限りは、第三者たる丁は、当然甲に対して自己の所有権を主張することができるわけでございまして、甲は丁に対して所有権に基づく返還請求ができないというのが考え方でございます。  それから次に、私法上の関係として保管義務がどういうふうになるかということでございますが、売り主に所有権を留保するというのは、第三者に対しまする関係で、未払い代金の債権を担保しようというのがこの所有権留保の主なる目的であるから、実際的には買い主の所有と同様に考えて、保管費用は買い主たる乙が負担するし、買い主たる乙は自己のものに対すると同一の保管義務を負うにとどまる、さらに進んでは自分のものとして保険をつけることも妨げないと解すべきであるというのが学者の通説でございます。このようなことは、第七条がなくとも、所有権留保の規定契約に設けることによりまして、全く同じ効果が生ずる。従いまして、初めに企業局長から申し上げましたように、かりに第七条がなくとも、契約ではっきり規定しさえすれば、その通りになるというのが大体の考え方でございますが、ただ先ほども申し上げましたように、多数の学者の議論の中では、これは一片の例文にすぎないというような議論もないではないし、またやや古い判決でございますが、そのような学説と同様な判決もございますので、この際法律で、この点をはっきりいたしまして、何割かの所有権留保の規定を設けていないような場合、これは特にあまり大きな金額でもないとか、あるいは売り主の方がやや経済的に弱い立場にあるというような場合には、所有権留保のような規定が設けられない場合もあるように聞いておりますので、そういうような場合も考え合わせて、法律で第七条の規定を設けるという方が適当ではないかというのが、立法政策的な考え方として帰結した結論であります。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 私は七条のねらいは、いわゆる特約で同様のことをきめたときには債権的な関係である、ところが七条によって物権としての所有権に基づく追求をやろう、こういうところにねらいがあると思ったのですが、そうでないということがはっきりすれば、それでよろしい。ないのですね。
  67. 吉國一郎

    吉國政府委員 その通りであります。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、先ほど言われたように、停止条件付販売契約は、すでに成立しておる、停止条件付の販売契約だ、こう解釈していいですね。
  69. 吉國一郎

    吉國政府委員 その言葉づかいの問題でございますが、停止条件付販売契約ということになりますと、販売契約そのものが停止条件にかかっているということでございますが、この場合は売買そのものはもうすでに成立しておりまして、ただ所有権の移転の時期が一定の条件にかかっておるという意味で、停止条件付移転というような言葉で呼ぶべきものではないかと思っております。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、同じことの循環になってくるのですが、横領罪の適用があるというのはちょっと疑問が出てくる。しかし、それはあとに研究課題として置いておきたいと思いますが、たとえば自動車の販売の場合、所有権は甲にある。使用は乙がやっておる。検査証は所有者と使用者と書いてあるから、所有者のところは甲、使用者のところは乙となるが、自動車税はどっちが納めるのですか。
  71. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 地方税法によりまして、自動車税の規定の場合に、割賦販売の場合には、所有権を留保されておりますと、売り主と買い主との共有物とみなすということになりまして、税法上だけの形は共有物とみなして、事実は買い主が自動車税を負担しておる実態であると思います。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 地方税にそんな規定がありますか。地方税法第百四十五条ですか、自動車はその所有者が自動車税を払うことになっていますね。
  73. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 地方税法第百四十五条の第二項におきまして、「自動車の売買があった場合において売主が当該自動車の所有権を留保しているときは、自動車税の賦課徴収については、当該自動車は、売主及び買主の共有物とみなす。」という第二項が入っております。この共有物とみなすという規定を踏まえまして、地方の条例によりまして、第一次的には使用者が払う、しかしその使用者が第二次的のときには売り主、この場合では甲が負担しなければならないという条例があるのが実情でございます。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 これは税法において特別にそういう扱いをしておる、こういうことですか、共有物とみなすという規定ですね、こっちは推定ですよ。そうすると、所有権は甲に留保されておる、甲が持っておるという方が強いのではないですか。そっちはみなす、こっちは推定です。
  75. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 地方税法百四十五条第二項におきましては、自動車税の賦課徴収についてはこういうふうにみなすということで、あくまでも徴税上技術的にこういうふうにしておると解釈するのだと思います。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 それでも現実にそういうようにやっておるわけですね。
  77. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 私どもはそう承知いたしております。
  78. 田中武夫

    田中(武)委員 その規定は最近改正になったんですね。
  79. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 ちょっと改正の時期はよく存じませんが、現行法はこの通りであるから間違いないと思います。
  80. 田中武夫

    田中(武)委員 私の見たのはそんな規定がなかった。  それでは、先ほどの答弁からずっといくと、甲の債権者丁は、いわゆる甲の債権の取り立てをやるために、乙から丙に渡ったやつに対して強制執行できますか。先ほどの百九十二条が適用になるとかなんとかいうことではできないという解釈が出てくると思うのですが、できますかどうですか。
  81. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 善意無過失で百九十二条の規定で第三者にいっておる場合は、もちろんできないわけであります。
  82. 田中武夫

    田中(武)委員 わかりました。  私はまだ条を追って質問を続けるわけなんですが、今、二条第二項の関係につきまして先ほど要求しておりました建設省の住宅局長が見えておるので、その点についてちょっとお伺いいたします。  この割賦販売法というものは御存じですね。——そこでお伺いしたいのですが、現在建物の建売業といいますか、建物を建ててそれを割賦販売しておる業者がたくさんあると思う。頭金をとって、何回かの賦払金で完済して、そして終わったときに所有権を移転する、こういう方法が多いと思うのですが、その方法でやっておるなら、ここでいう割賦販売業と同じことをやっておる。ところが、この割賦販売法を今審議しておるわけですが、通産省の考え方では、建物等の月賦販売については実情はよくわからない、この法律適用外に置きたい、こういうことなんです。そこで建設省にお伺いしたいのですが、現在の建物の月賦販売ですか、割賦販売の実情を一つお伺いいたします。
  83. 稗田治

    ○稗田政府委員 建物割賦販売につきまして現状を御説明申し上げますと、大体二通り割賦販売方法がございまして、一つは積立方式をとっておりまして、大体現在行なわれておりますのは、総額の約三分の一程度まで積み立てをいたしまして、積み立てが三分の一に達したときに建物の給付行為が行なわれるという、そういう一つのやり方でございます。もう一つは、ただいまお述べになりましたような、最初に建物を作りまして、三分の一程度の額を即金で頭金として取りまして、自余の残額につきましては割賦弁済していくというような方法と、二通りございます。  この建て売り式で、頭金を即金で取ってやっておりますのは、全国に相当の数がございまして、その数につきましては、小さなものでございますと、大工の棟梁などがやっておるものもございますので、数について把握はできないわけでございます。積立方式をとっておりますのは、現在稼働しておるそういう業者は、全国で六十くらいの会社があるように存じております。
  84. 田中武夫

    田中(武)委員 この家屋の月賦販売業者が六十あるということですが、中にはおかしなものもたくさんあると思う。いつか週刊誌等にも出ておりましたが、そのために、所有者というか購入者に相当迷惑をかけるとか、いろいろな問題を起こしておるという事実がございましたが、それは御承知でしょうか。
  85. 稗田治

    ○稗田政府委員 昨年週刊誌等に記事がいろいろ載った点でございますが、これは契約約款の中に、解約した場合に、今まで積み立てました金を返済する時期またはその手数料を差し引くといったような点につきまして、解約者側が非常に不利であるというようなことから、解約者側から、いろいろな割賦販売の制度につきまして種々の声が上がっておるわけでございます。  なお昨年の十月ごろかと思いましたけれども、埼玉県下におきまして、大谷場荘という割賦販売業者のことにつきましていろいろ事件がございまして、ただいま刑事上の問題になっておるのがございますが、この方は、頭金を即金で納めて、あと割賦分譲していくということの方でございます。
  86. 田中武夫

    田中(武)委員 松尾局長にお伺いしますが、この二条二項にいう定型的ということについて若干の疑問が残るといたしまして、今の建設省の住宅局長の話では、一般動産割賦販売と何ら変わらぬ方法で行なわれておるということは、お認めになると思う。それから、頭金を取る、あるいは前払金を取るということは、本法十一条の前払式割賦販売方法をとっておると思う。しかも、そのことにおいて購入者との間にトラブルを起こし、問題化しておることは、一般動産にまさるとも劣らない実情である。その場合、二条二項の定型化という言葉があるから云々だけれども、これを修正することによって、あるいは何らか別個の規定を置くことによって、この際割賦販売に対する基本法を作るならば、現に行なわれておる、しかも同じ方法において行なわれており、むしろ問題の多い家屋等の不動産割賦販売もこの際入れるべきじゃないか、こう思いますが、あなたは入れたくないような気持だし、建設省の方は何ら変わっておらぬと言っておるのですが、二人でよく相談して御答弁願いたい。
  87. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 先ほど来の私の答えを繰り返すことになるかもしれませんが、確かに今御指摘のように、不動産割賦販売の一部には、この動産割賦販売に形の似たものもあると、私もわかって参りました。しかし、特に不動産割賦販売のその部分だけをとらえて、そちらにはまるから動産割賦販売に一緒にするという考え方がいいのか、それよりは、やはり不動産割賦販売には、おのずから動産割賦販売と違った特殊な事情もあるでありましょうし、私が聞いておる限りでも、建設省におきましては、不動産の取引については——割賦販売そのものについての直接の法規は現在ないかもしれませんが、不動産取引については、現在すでにある程度の法令があるようでありますから、そちらの角度で、不動産割賦販売について特殊事情をよく勘案して、別途の法体系でとらえていただくのが適当じゃなかろうかというのが、私が先ほどから申しておる意味を敷衍して申し上げることになると思います。
  88. 田中武夫

    田中(武)委員 建設省関係で、今通産省の局長が言ったような法律があるわけですか。そういう割賦販売について、何か規制できたりする……。
  89. 稗田治

    ○稗田政府委員 現在の宅地建物割賦販売につきまして、建設省で所管しております法律といたしましては、宅地建物取引業法というのが一つございます。それともう一つ販売という形式をとらずに、請負という形で建物を給付しておるものもあるわけでございます。これは建設業法の適用を受けるわけでございます。いずれにいたしましても、割賦で代金を支払っていくというところに、いろいろの問題が発生いたしますので、建設省におきましては、これらにつきまして何らかの規制を加えるべきであるという見解のもとに、ただいまその実施方法等につきまして検討中でございます。
  90. 田中武夫

    田中(武)委員 この建物販売業が通産省の管轄になるのか、あるいは建設省の管轄になるのか、いずれになるのか別といたしましても、その所管の省において、現在行なわれ、問題を起こしておるこの割賦販売について、よりどころとなる法律、規制といいますか、監督の法律を考えておる、こういうことですか。すぐにそういうことに考えるというなら、この二条二項はこのままで考えてもいいんですが、まだそういうことを考えてないということなら、こっちから考え直さなければいかぬ、こう思うのです。
  91. 稗田治

    ○稗田政府委員 ただいまそういう方向で検討しておるところでございます。
  92. 田中武夫

    田中(武)委員 この法律では十一条には前払金を取ってやるやつには登録をさすとか、いろいろな方法による規制を考えておるわけなんです。同じようなことが行なわれておるので、同じような、あるいはまた不動産特有の監督法も必要だろうと思うのですが、そういうことについて考えておられるわけですね。
  93. 稗田治

    ○稗田政府委員 さようでございます。
  94. 小平久雄

    小平(久)委員 関連して。大体田中君の質問で建設省の意向もわかったんですが、ちょっと念のためお聞きしておきたいんですが、この割賦販売法案ですね、これについては、通産省から建設省の方へ御相談あったんですか、これを提案するのに。
  95. 稗田治

    ○稗田政府委員 相談はございました。
  96. 小平久雄

    小平(久)委員 そうすると、要するにこの法案によると第二条の第二項をどう解釈し、どう運用するかということによって、先ほど来お話しになっておる住宅の割賦販売、これがこの法律適用を受けることになるのかならないのか、結局はその指定商品と称するものが政令指定することになっておりますから、指定しなければもちろん当然これは適用にならないわけですが、しかしその点を除いて第二項の前段の方にある「「指定商品」とは、耐久性を有し、かつ、定型的な条件で販売するのに適する商品」だ、ここだけ見ると商品のうちに一体不動産が入るのか入らないのか、今までの例では入らないのが通例だという法制局の御説明があったのですが、しかし現在の、近時の経済取引の状況等からすれば、不動産も、もちろん売らんがための土地、家屋というものは商品と解すべきではないか、社会通念上そういう見方もあるわけです。従って建設省はこの法案について相談を受けたときに、頭からこれは自分の方の建て売り等には関係ない法案なんだ、そう解釈したのか、あるいは何らかの理由でこれは自分の方とは関係ないんだというお立場をとっておったのか、あるいは関係というか、関係もあるし、適用しようと思えばできる法案なんだが、しかしこの指定商品として通産省が指定しない意向だから、自分の方はそのままでいいんだというような考えだったのか、どういう立場でおられたのか、そこを一つ承っておきたい。
  97. 稗田治

    ○稗田政府委員 通産省から建設省に相談がございましたときに、不動産につきましては適用しないというような御説明もあったわけでございます。なお先ほど申し上げましたように、売買という形でなしに請負という形で、実際は割賦販売でございますけれども、請負形式をとっておる業者も非常に多いわけでございます。従いましてこれらの規制の措置につきましては、別途建設省の方でいろいろ考えたいというように思っているわけでございます。
  98. 小平久雄

    小平(久)委員 そうすると建設省としては、主たる理由は、通産省の方でこれは適用等については指定しないということが主たる理由で、この法律というものは自分の方には関係ないんだ、こういう見解をとったわけですね。そこで、それはそれでよろしゅうございますが、それも通産省の言うことをそのままに聞いていればそれまでということなんだが、しいて指定しようと思えば、これは指定し得るものだという解釈をとりますか、建設省が指定しようと思えばできるものだという解釈をとられますか。
  99. 稗田治

    ○稗田政府委員 宅地、建物につきましては普通の一般の商品と違いまして、発注者のいろいろの要望が入っているわけでございます。そういうようなこともございますし、請負形式で、請負契約で施行されておるものもございますので、これは通産省で提案されたこの法律対象には入らない方がよろしいのではないか、実情に合うのではないかというふうに考えます。
  100. 小平久雄

    小平(久)委員 この建物は発注者の意向というものが入っておるから、こういう話ですが、この法律の第二条の第二項から言うと、指定商品というもの自体性格というものは耐久性だけを有すればいいんですね。ただその販売形式というものが定型的な条件で販売する、こういうことなので、建物そのもの、物件そのもの、商品そのものが何も定型的でなくたっていいのだと僕は解釈しているのです。ですからそこに建て売りしても、建物をほしい人の意思が反映して、若干の設計の違ったものができても販売の仕方というものが定型的でいけば、もちろん家というものは耐久性を持っているのだから、ここに言う指定商品には、指定さえすれば入り得るのだ、こういうふうにとれるのですが、いかがですか。
  101. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 この法案の第二条の読み方とも関連いたしますので、私からお答えさせていただきたいと思いますが、今建設省からお答えがありましたように、建設省との間では法案検討をいたします際には一応相談をしてございます。しかしその相談の途中におきまして、ここでいう指定商品、この商品というものの中には不動産は入らないという解釈を、通産省はとっておるということを建設省の方に表明をいたしました。その商品の中に不動産が入るかどうかの解釈論にも若干問題がございましたが、私どもはそういうふうに解釈をいたしました。それに対して建設省の方で、そういうことで間違いないでしょうねという念押しの質問がございましたので、間違いございませんというやりとりをいたしておりますから、この商品の中に不動産は入らないという解釈で両者の意見が一致しております。そういう意味で、定型条件云々という問題以前に、ここでは不動産を扱う意思は初めから全然なかったということが、両者の間で明確になっておるような経緯でございます。
  102. 中井一夫

    ○中井(一)委員 住宅局長にこの機会にお尋ねしたいのですが、最近いわゆる住宅の割賦販売、また月賦建設というような名のもとに行なわれるところの取引におきまして、ずいぶん弊害がある。そこで、これを取り締まる法令を作ってもらいたいということが各方面から出ておる。今建設省では、それについて何らかの法令を作ることをお考えになっておるのですか。
  103. 稗田治

    ○稗田政府委員 何らかの規制措置を講じたいというので、検討しておる段階でございます。
  104. 中井一夫

    ○中井(一)委員 それは検討だけですか、ほんとうに作るつもりなんですか。
  105. 稗田治

    ○稗田政府委員 いろいろむずかしい問題がございますので、時間が相当かかるということでございまして、ただ検討するというのじゃなしに、何らかそういった措置を具体的に講じたいというつもりで、検討しておるわけでございます。
  106. 中井一夫

    ○中井(一)委員 実は今、本委員会で問題になっておる物品割賦販売法に関連して思い出されるのは、今の住宅の問題なんです。私どもはこの委員会の審議の経過を聞いておりまして、現に弊害があるとせられるところの住宅の月賦販売の問題が、非常に審議の進行の上に影響している。それゆえ、この機会にあなたにはっきりお聞きしたいことが二点ある。一点は、大体住宅の月賦販売と称せられるものにはいろいろな形があるのであるが、今現に研究しておられるというあなたは、それをどういうふうに大別して見ておられるか、そのあなたの考え方というものが、将来できるであろうという法令の基礎になるので、まずそのお考え方を承りたい。
  107. 稗田治

    ○稗田政府委員 われわれが現在考えておる段階で申し上げますと、先ほど申し上げましたように、積み立て方式のものと建て売り形式のものと、さらに給付契約を結ぶのでなしに、請負契約を結ぶもの、大体そういった組み合わせになっておるわけでございます。問題は、昨年くらいからいろいろ週刊誌等に記事をにぎわしております点は、積み立て方式をとっておる事業会社についての非難等でございます。これが解約された場合の契約約款の問題でございますが、現在そういった積み立て方式をとるものにつきましては、やはり登録制度にいたすのが適当ではないか、なお、建て売り割賦販売につきましては、いろいろと不始末の起きないように、その法案の中に具体的な規定を入れるということで、規制をいたしていきたい、かように考えておるわけであります。
  108. 中井一夫

    ○中井(一)委員 そこで私が尋ねんとするところに入って参りました。あなたの言われるその積み立て方式と建て売り方式、この点を明らかにしないというと、ほんとうの規制はできない。そのことを今日この委員会の審議の上で私は痛感をしたから、これをあなたに尋ねておる。建て売り方式だと頭金を取って、そうして建てたものを住居者に先に渡してしまう。頭金を除いた残額のものを何年かの間に、また何月かの間に、これを割賦で払わしめる。この契約の場合におきましては、できたものをまずもって住居者に渡してしまうのだから、建て売り者と住居者との間においては、これは格段の強弱の差がある。要するに、その家に住んでしまった者は強い。住んでしまった以上は、あとの残金を払おうが払うまいが、これを立ちのかせるということは、事実上困難だ。こういうような場合において、その両者の法をなすべきものありとするならば、一体いずれをまず法の対象とすべきかということが起こるのでありますが、あなたのお考えは、この点についてどうお考えですか。
  109. 稗田治

    ○稗田政府委員 規制のいたし方といたしましては、全部、建て売り式でありましても積み立て方式でありましても、規制の対象になるわけでございますが、最近非常な声が起きておりますのは、積み立て方式が主でございますので、積み立て方式の制度につきましては、登録制を採用したいというように考えておるわけでございます。
  110. 中井一夫

    ○中井(一)委員 そこで、積み立て方式という言葉をお使いになるのですが、その内容をどういうふうに理解しているのでありましょうか。私どもの理解するところによりますと、法律的な言葉になるのですけれども、無尽業法というものがあります。無尽業法の第一条には、「本法ニ於テ無尽ト称スルハ一定ノ口数ト給付金額トヲ定メ定期ニ掛金ヲ払込マシメ一口毎ニ抽籤、入札其ノ他類似ノ方法ニ依リ掛金者ニ対シ金銭以外ノ財産ノ給付ヲ為スヲ謂フ」こういうことがきめられておるのでありますが、積み立て方式は、すなわちこの方法によっておるものだと思うのでありますが、大体御意見は違うのでありましょうか。
  111. 稗田治

    ○稗田政府委員 無尽業法の適用を受けますのは、加入者がある一定の数になりまして、グループごとに契約をするわけでございます。現在その無尽業法の適用を受けていない積み立て方式をとっております月賦住宅会社等は、これは随時加入してくるわけでございます。従って不特定の加入者が次次と入ってくるわけでございます。その点が違うわけでございます。
  112. 中井一夫

    ○中井(一)委員 あなたはやはり、あまり実情をよく御承知になりませんね。今の積み立て方式では、今あなたのおっしゃるような方式ももとよりあるが、これは月々もしくは何年かにわたって一定金額の掛金をかけていく、それが終わった場合に初めて家を建てる、こういうのも一つなんです。今あなたのおっしゃったのは、その趣旨のように聞こえました。それ以外に、初めに申し上げました無尽方式でもってやっているやり方もある。問題は、いずれにしましても、金を先に取って品物をあとから渡すというところに問題がある。その建築会社が誠意があり、かつ資産のあるものであるならば、その契約通り渡して参りますから、差しつかえはない。金をとっただけでこれを建てるべき時期になって建てないというところに、一般の非常な混乱を来たす、迷惑を来たすというわけである。のみならず、先ほど申した無尽方式にしても、あなたのおっしゃる積み立て方式にしても、途中で解約をする原因は主として掛金者の手元が不如意になる、そういうようなために初めの契約通りの掛金がかけていけないというような場合に、直ちにその金を返さない。五年間の契約であったならば五年先にまで、その期限の切れるまで、その金は積み立てたまま置いておいて返さない。のみならず、返すときには契約のために必要としたと称するいろいろな費用を差し引いて、本来ならば利息をつけて返さなければならないものを、逆に残金から何がしかの金を引いて返す。そこに建築会社は非常な利益があり、掛金者は非常な損害が起こるわけなんです。これを押えるのでなければ、今、国民が困っておる、けんけんごうごうとして、このまま捨てておいていいのかという問題が解決されないわけですが、今御検討中だというあなたには、そういう事実を何とごらんになるか、承りたい。
  113. 稗田治

    ○稗田政府委員 最初に無尽業法の関係を申し上げますと、現在無尽業法の適用を受けておりますのは、日本住宅無尽会社というのが一つあるだけでございまして、それは大蔵省の厳重な監督を受けて営業されております。そのほかのものは無尽業法の対象外になっておるわけでございます。御指摘のように契約約款におきまして、やむを得ない解約者にとってもかなり不利益な条項が入っておるわけでございます。そういう点につきましては、今後規制をする場合に、契約約款等につきましても相当具体的に解約者に不利益にならないという条項を入れて、法律上も規制しようというように考えておるわけでございます。
  114. 中井一夫

    ○中井(一)委員 最後に結論として、国家行政の立場から、こういう問題を規制せられるにあたって、当然建築業者を保護する建前でいくか、掛金者、住居者を保護する建前でいくかということは考えられなければならぬ根本問題だと思うのです。その点について最後にお尋ねをしたいのですが、私どもの実際上、また法律上の現実の状態から見るところによりますと、もとより住宅の問題にしましても、給付のというか、引き渡しの対象は建築物だ、それに対する代償は掛金、代金である。これが相両々対立して、そこに引き渡しと支払いという関係が起こってくる。元来ならば一種の双務契約ですから同時に支払うのが当然なんです。それを同時に引き渡し同時に支払うのが当然なんだが、そこが割賦だから、先に支払うかまた先に建物を給付するかということが起こっている。私どもの経験によると、要するに先に出した者が弱くなる。金を先に出して建物あとから建ててもらうという場合においては、先に出した住居者が非常に弱い地位に立つ。金をとられてしまって建築してくれない。事実上談判しても、法律上談判しても、なかなか解決できない。結局泣き寝入りというので、そこに非常に弱い立場が起こる。従って、こういう場合にその取引を規制し、国家社会の安寧秩序の上からこれを押えていこうとするのならば、まずもって弱い立場にあるものを保護するというのが、その立法の本旨でなければならぬと思う。このことは、建物会社からいうと、建物を先に渡してしまって、相手はそこに住んでいる、居住権も占有権もそこにある、そういうような事態を来たした後に、何年かにわたって割賦金をもらっていくということになる場合は、建物会社は明らかに非常に弱い地位に立つ。言いかえれば、金を払う者は非常に強い地位になる。金を払わないでも、直ちに立ちのかすわけにはいかない。要するに居すわり得です。金を払わぬでも知らぬ顔という場合が多々ある。そういうような場合においては、これを立法規制しようとするならば、弱き立場にある建築会社を保護し、強き立場にある掛金者、居住者というものを押える、こういうように持っていくのが国家として当然なすべき方法だと思うのであるが、この問題についての御意見はどうであるか。これから後住宅の割賦問題について、何らかの法令を作られようとするならば、ここにその立法の本旨、精神がなければならぬ。あらかじめ承っておきたいと思います。
  115. 稗田治

    ○稗田政府委員 われわれといたしましては、業者並びにこれの利用者相互の関係が健全に今後発達していくように、つまり加入して月賦分譲を受ける方の側にも不利益にならないように、なお業者といたしましても、民間資金の活用によってできるだけ多くの建物が建設されるように、そういう両者の立場を考えて規制していきたい、かように考えております。
  116. 中井一夫

    ○中井(一)委員 これをもって私の質問は終わりますが、これから規制の法令をお作りになろうというならば、単に両者の立場を公平にするという観念的な議論ではだめなんです。その両者の立場が、場合によっては一方が強くなる場合もあり、他方がまた強くなる場合もある。この強弱の立場というものはその事態において違ってくるのです。これは現にこの委員会で論じられているところの物品割賦販売においても同じことです。金を先に渡して品物をあとからもらうか、品物を先に渡してしまって、金をぼつぼつ払ってもらうかということによって、その立場は全然強弱相反する。そういう場合に両者を同じように見るということは、そもそも不公平です、立場が初めから違うのです、差異があるのですから。それに対する国家の保護というものは、弱きを保護し、強きを押えるという形でなければ、その法律はりっぱな法律と言えないと思う。願わくば、あなたの立場におきましても、住宅の問題についての割賦法律を作られようとするならば、この現実の問題をよく考え、その上で法令を作られるように切望してやみません。
  117. 田中武夫

    田中(武)委員 もうだいぶ時間も過ぎましたが、質問の切りまで終えておいて休憩といいますか、していただきたい、こう思います。  七条に関連してでございますが、先日当委員会にこの法案に関連して参考人に来てもらって意見を聞きました。そのときに割賦販売業の立場からの人の意見の陳述には七条の権利移転の留保、所有権留保の条項、これと関連して自力救済の問題が出まして、この規定があるから自力救済はやめることにいたしました、こういうことなんです。実際の契約を見てみますと、自力救済のいろいろな規定があるようです。たとえば入っていって持って帰ってもかまわない、これを告発しないとかいうようなあれがあるようですが、参考人の意見を聞いておると、自力救済の規定についてここへ入れなかった、このことがいかにも自分たちの譲歩のような意見を述べておりました。私考えてみますのに、自力救済ということには厳格な制限がなくてはならぬと思う。たとえば約款等で家の中へ入って持って帰っても告発しないといったような約款があります。ところが、そういうこと自体契約にあったとしても、そのもの自体は私は民法九十条による公の秩序、善良の風俗に反する契約として当然無効だ、こういうように思いますが、そういったような特約についてはいかがでしょうか。
  118. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 自力救済の特約の効力の問題は、この法案検討の過程においていろいろ論議があります。おそらく今御指摘のございましたような法解釈が支配的であろうと思います。事実上先ほど申しました流通部会等でこの自力救済禁止の規定を置くかどうかについて議論がなされたのでありますが、今お話のようなことから申しまして、自力救済禁止の規定を特に法律で設けなくても、今お話のような趣旨でおそらくそういうことになるだろう、逆にこの法案等で自力救済を特にこの場合だけ禁止をするというような規定を設けることは、かえって反対解釈を生むおそれがあるというような観点から流通部会でそのような意見、禁止規定を設けたらどうかという意見があったにもかかわらず、法文化する際にこの法文に盛らなかったのは、大体において今御指摘のような線に沿うものであると思います。
  119. 田中武夫

    田中(武)委員 私の言わんとするところは、販売業者の立場から自力救済の禁止の規定を入れなかったかわりに七条の規定を入れるというような交換のような雰囲気があったと思う。私は先ほどから言っているように、これに関する同様の特約があれば、七条はあってもなくてもいいことになる、私は七条は必要ないじゃないかという立場をとっている。そこで自力救済の禁止の規定を入れなかったということが、いかにも販売業者の譲歩したかのごとき発言があった。だから七条が必要だ、こういうような参考人の意見があった。それで申し上げたわけですが、自力救済について行き過ぎたといいますか、そういった通常行なわれておるような約款は民法九十条で無効である、そういうことではっきりすればけっこうです。七条は私は先ほど来の質疑で明らかなように、あってもなくてもその特約があれば同じことだ、こういうことなら七条は考えるべきじゃないか、このように考えておるわけです。  逆に今度は乙といいますか、購入者の方で占有しておる、それを持って帰ろうとしたときに、今度乙の立場からの自力救済、いわゆる占有妨害に対する自力救済という立場が出てくると思いますが、そういう点についてはどうでしょうか。
  120. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 私その辺の法律解釈について権威があるお答えはできないと思いますけれども、そもそも自力救済をやる場合に問題になりますのは、特に割賦販売業者がその購入者の住居に立ち入って自力救済をやる場合が大部分であると思いますが、そういう場合には、従来やはり住居に立ち入るということについてすでに問題がある。また本人の意思に反して、あるいは本人に相当威迫を加えてそれを取り返すというところに法律上問題があると思いますが、それに対して今の御質問の購入者の方がどの程度まで抵抗といいますか、防衛できるかという意味の御質問であろうと思いますが、もともと相手が違法性のある行為をしてくる際に、購入者は当然自分の権利の主張はできると思います。むろんその際にその購入者がさらにそれに暴力をもって云々というようなことで、いわゆる過剰防衛というような問題は法律的に残るかと思いますが、その辺は私これ以上権威のある答弁はできませんので、御了承を願いたいと思います。
  121. 田中武夫

    田中(武)委員 法制局も大体そういう……。
  122. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいまの御説例は、かりに契約が解除になりまして、甲が乙のところにその品物をとりに行ったという場合でございましょうか。
  123. 田中武夫

    田中(武)委員 契約が解除になってとりに行ったときには、解除自体が有効に成立しておるときには問題はないと思う。そうでなくて払わなければ持っていくという王手飛車というやり方が現実には行なわれておると思うその場合占有者として占有妨害に対する自力救済が出てくると思う。流通部会で問題にした自力救済は、販売業者からの自力救済だけを問題にしておったと思う。私の言っておるのは、乙の側からの占有に基づく自力救済、こういうこともあり得るじゃないか、こう申し上げておる。
  124. 吉國一郎

    吉國政府委員 甲が法律上の力に基づいて乙のところからその品物を持っていったというのに対して自力救済をするということは、今の場合には考えられませんので、甲がまず乙のところからその品物を持っていくということ自体に違法の問題が生じて参りますので、乙がさらにそれを自力救済するということは、その前の段階において甲の方が違法の状態でございますから、ちょっと考えられないというふうに考えます。
  125. 田中武夫

    田中(武)委員 契約が合意の上で解除すれば問題はないと思うそうでなく実際やっているのは契約解除じゃなくて、ちょっと金がおくれたら——この法律ができればどうか知りませんが、おくれたら持って帰る、じゃ払え、こういう工合で持って帰るという問題が起きると思う。そういうような場合に、今度乙の側からの占有妨害の自力救済といいますか、そういうものがあり得るのではないか、こう申し上げておるのです。
  126. 吉國一郎

    吉國政府委員 いずれにいたしましても乙が法律上の手段に訴えないで自力救済するということは、法律上はやはりできない問題であると言わざるを得ないと思います。
  127. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると自力救済という限りにおいては甲、乙とも相殺といいますか、同じことだ、だから自力救済の禁止の規定を入れなかったこと自体販売業者の譲歩であり、われわれが控え目にしたのだというような考え方は間違いであるということを申し上げております。それでいいんでしょう。
  128. 吉國一郎

    吉國政府委員 その通りであろうと存じます。
  129. 田中武夫

    田中(武)委員 それではきょうはこの程度でやめておきます。
  130. 中村幸八

    中村委員長 この際午後一時三十分まで暫時休憩いたします。     午後零時五十分休憩      ————◇—————     午後一時四十七分開議
  131. 中村幸八

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  繊維工業設備臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  前会に引き続き質疑を続行いたします。東海林稔君。
  132. 東海林稔

    ○東海林委員 この前私は専門的なことについてある程度質問したのでありますが、本日はそこで主として今回の改正条文を中心として、こまかい点についてお伺いをしてみたいと思います。  第一に、目標年度の変更でございますが、御承知のようにこれは当初は三十六年度であり、それが三十七年度になり、今回さらに四十年度に変更するというふうに時限法の目標年度を変えるということは、本来の趣旨からいっても問題があるのじゃないかと思うそこでまずお伺いいたしたいことは、この目標年度の考え方、目標年度を設定する場合にどういう事項を一体基礎として設定するという考え方になっておるか、その点が一つ、それから今回四十年度とした具体的な根拠、この二点をまずお伺いしたいと思います。
  133. 今井善衞

    ○今井政府委員 目標年度がしばしば変わったじゃないかという御質問でございますが、目標年度という観念は、御承知のように繊維工業は現在非常にたくさんの過剰設備をかかえておりまして、現状におきましてはもちろん過剰でございますけれども、国民生活の向上によりまして需要もふえてきておる。その間設備の増設を押さえておきますれば、需要がふえて供給の方は停滞ということでもって、設備の過剰度というものがなくなるわけでございます。そこで現在の設備と将来の繊維製品の需給関係、この二つをにらみまして、どの時限にいったら大体設備の過不足はなくなるかということを、目標年度の大きな観念としているわけでございます。ところでこの法律立案当時はこの目標年度を三十五年度といたしておりまして、昨年の改正におきましてそれを二十七年度、今回改正をお願いしておりますのが四十年度ということになっておりますが、この三十年当時、法律立案いたしました場合におきまして、三十五年の繊維製品の需要は二十四億五千万ポンドではないかというふうに考えていたのでございます。ところで需要につきましてはことしはちょうど三十五年度になりますけれども、それよりもう少しふえるのではないか、二十六億ポンド近くなるのじゃないかというふうに考えておるのでございますが、この動かない分子として考えておりました設備の供給力がむしろ逆にふえて参りまして、その意味から三十五年になりましても、御承知のように依然として設備の過剰状態が続いておるということになったのでございます。  設備がふえました理由といたしましては、一つはこの法律施行の際のかけ込み増設の問題もあるのでございますけれども、一番大きなのはその後におきまして一台当たりの生産能率というものが非常に向上いたしまして、その結果全体の設備台数はふえませんでも供給力がふえた、それからさらに合繊が非常に伸びて参りまして、そのためにそれに所要する合繊紡機というものを一部増設したというふうな関係で、三十五年におきましてはもちろんのこと、現在の三十七年度におきましても設備は依然として過剰である。紡績の設備台数で申しますと、現在約千六百万錘ございますが、三十五年度におきましては三百万錘過剰でございます。それが三十七年度におきましては二百万錘の過剰ということになりまして、四十年度ということになりますと、数字的には大体過不足がないという状態になります。従いましてそういう意味から目標年度を四十年度に変更いたしまして、四十年を目標にいたして合理化を行なうことが適切じゃないか、かように考えた次第でございます。
  134. 東海林稔

    ○東海林委員 この条文の形からいいますと、目標年度の需給に合わせて機械の処理をやっていくという形になっておるわけだが、ただいまの御説明によりますと、実はそうではなしに、目標年度というのは一応需要と機械設備、いわゆる供給のもととなる機械台数というものがマッチするに至る年を目標年度にしているのだ、こういうような説明のようでありますが、そのように理解していいわけでありますか。
  135. 今井善衞

    ○今井政府委員 条文を解釈いたしますと、そういうことになるわけでございまして、この条文によりますと、目標年度における繊維製品の需給状況、つまり目標年度におきまする繊維製品の需要がどれくらいあるか、そに対してその需要をまかなうための設備能力はどれくらい要るかということを意味しておるわけでございます。それが一つと、それからもう一つは、現在ございますところの登録された設備台数つまり目標年度における所要設備能力と現有設備能力とを比べまして、そこで過不足を考えていく、過不足のない状態が望ましい、こういうことでございます。
  136. 東海林稔

    ○東海林委員 現在の状況はこの前も御答弁がありましたように、紡績関係では二百万錘の過剰があるということになっておるわけですが、そうなりますと、過去の経験のように需要の伸びが現在の見込みとある程度違ってきたというような場合、また機械の新式化といいますか、改良が現在の見込みとある程度違ってきたというような場合には、これはまた目標年度をずらさなければならぬという問題が起きてくると思うのです。それではこの法律は時限法といいながら、いつになってもめどがつかないというような妙な形になってくると私は思うのです。ほんとうはそうでなしに、一応目標年度における需給というものがあったならば、現在の機械台数もそれに合うように共同施設で適切に処理していくというのが本筋でなければいけないと思うのですが、どうも御説明を聞いておりますと私が前に申したように逆なような気がするのですが、その点どうなんですか。
  137. 今井善衞

    ○今井政府委員 確かに御説ごもっともの点があるのでございまして、たとえば機械の問題になりますと、織機につきましては確かに今まで非常に陳腐化されました非能率の設備がございましたので、目標年度になりましても稼働する見込みのないというものにつきましては、国が予算で補助金をつけまして廃棄してもらった、その結果過剰度というものが非常になくなった、こういう問題がございますが、ただいま申しましたのは、紡機の段階につきましては実は古い紡機というものは比較的少ないわけでございまして、昭和二十五年以降にできました紡機が非常に多いわけであります。さような意味から申しますと、もちろんこの古い紡機については廃棄してもらうことが望ましいわけでございますけれども、目標年度に至りましても、まだ使用価値があるというものにつきましては、廃棄してもらうということは国としていかにももったいないという問題もございますので、従って廃棄のかわりに使用不能の状態で織機をたな上げ、格納してもらうという形でもって現在処理しておるわけでございます。そこでこの法律は、目標年度における設備の過不足を見まして、過剰であればとにかく処理してすっきりした形にしようということでございまして、もちろんそういう意味で、この目標年度というものを固定いたしまして、その間非常に過剰のものがあって、それを廃棄できれば一番すっきりした形になると思いますけれども、ただいま申しましたような関係で、紡績につきましては設備が新しい、処理をするにはいかにももったいない、さりとてそのまま廃棄しないで、ほうっておくわけにもいかぬということで、処理の別途の方法といたしまして格納、たな上げという形でやっておる次第でございます。
  138. 東海林稔

    ○東海林委員 そういたしますと、今後においても織機については廃棄することがあり得るが、紡機については格納か他に転用かということで、廃棄ということは考えてない、こういうことでございますか。
  139. 今井善衞

    ○今井政府委員 考えていないと申しますか、自発的に廃棄されるものはけっこうでございますけれども、国の指示としてはただいまのところ考えておりません。
  140. 東海林稔

    ○東海林委員 そうすると、これから四カ年延ばして五年あるわけですが、その間に今の計算では、ちょうど二百万錘は活用できる時期になるというふうに、はっきりしたお見通しを持っておるのかどうか。と同時に、今回四年延ばすのですが、政府としてはその後においては、もう延ばすというようなことは考えておらないのか、そのときの状況によっては、また延ばすこともあり得るというように考えておるのか、その点を一つ
  141. 今井善衞

    ○今井政府委員 四年延ばしていただきまして、その後におきましては多少事情が変更になりましても延ばすことを考えておりません。と申しますのは、おそらくその状態におきましては、もちろん原料割当制というようなものはなくなりまして、ほんとうの意味の自由経済で、そこに新しい秩序が生まれて参りまして、今までのようにやたらに設備を増設したいというふうな意欲はなくて、むしろ増設をする場合には良識を持ってするというふうな新しい秩序に移行するという考え方でございますので、その状態におきましては延ばすことは考えておりません。
  142. 東海林稔

    ○東海林委員 それでは次の問題に移りたいと思います。共同行為の指示をする場合に、従来条文においては長期の見通しということだけであったわけですが、さらに今度は当該年度の需給の状態とか輸出の状態ということが参考事項といいますか、考慮すべき事項として入ったわけです。これはやはり従来と同じように、主として考えられるのは、長期の見通し、こういうことでなければならぬと思うのです。実際に長期の見通しと短期の事情をかみ合わせる場合にいろいろと私は問題があるのじゃないかと思います。というのは、たとえば長期の見通しからいえば相当格納ということが考えられなければならないのに、短期的には好況によりまして、相当波があると思うわけです。そうしてある程度好況だというような場合には、長期の見通しと相当違うような傾向のことが出てくると思うわけですが、そういう場合に長期の見通しということを中心として、短期の見通しというものはごく参考的なものにするのか、そういう場合は短期の事情というものを相当重く考慮するのか、そこらの調整の問題をどういうふうにお考えですか。
  143. 今井善衞

    ○今井政府委員 現在紡績につきまして設備処理をやっております方法といたしまして、一つはこの法律に基づきまして目標年度における過不足を見まして、その目標年度においてすら、なお過剰であるという部分につきましては、格納しております。それからその格納のほかに、業種によりましてはその格納だけでは非常に需給関係上生産ができ過ぎるというものにつきましては、御承知のように今までは行政措置といたしまして勧告操短をいたしております。たとえば毛紡で申しますと格納一五%それから勧告操短一五%ということでやっておるわけでございます。三十七年度に至りましても毛紡につきましては一五%なおかつ動かない。それは目標年度までにたとえば合繊紡というふうな需要のございますところに転換させたいというふうに考えて、長期的な格納をやっておるわけでございます。  ところでこの法律が改正されるとどうなるかと申しますと、これはもちろん法律の建前からいたしまして目標年度における設備の過不足というものを中心的な考え方でやっていくわけでございますが、目標年度ということになりますと、その間現在と数年のギャップがございますし、従って現状における繊維製品の需給関係は相当違う、特に輸出につきましては世界の景況によりまして相当波動があるということで、長期的な観点に基づく格納と、それから短期的な需給関係をも織り込みました、何と言いますか第二格納とでも申しますか、そういうふうな二つの格納を併用して参りたい。一つは非常に長期的な、おそらく数年間転換しない限りにおきましては格納するという建前の格納と、それからあと数カ月間の格納というものを併用して参りたい。しかしながらその運用にあたりましては、これはあくまでも不況対策じゃございませんで、その設備の過剰というものをいかにうまく処理していくかという問題でございます。従いましてこの短期的なものといえどもやたらに動かすということではなくて、できるだけ現在、たとえば毛紡におきましては短期的なものは一五%というふうなことになりますが、それを漸次解消していくように、あまりこまかくいじらないような、不況対策に堕しないような方法をもって、慎重に運用して参りたいと思います。
  144. 東海林稔

    ○東海林委員 ただいまお話がありました従来毛紡について行政措置としての操短というものをやっておったということなんですが、それと今度の短期の需給状況を参酌しという本改正法によってやるという場合に、どういう点が違うのか、はっきりわからないのですが、そこを御説明願いたい。
  145. 今井善衞

    ○今井政府委員 行政措置によります操短は、当初の考え方は生産数量の調整ということに主眼がございまして、初めは幾ら以上個々の企業は作っちゃいかぬというふうな形で運用していたのでございます。現在はそれを改めまして、やはり設備を押えるという形でやっております。従いまして短期の操短といえども設備規制の力をかりながら現在やっておるのでございます。ところで行政措置に基づきますところのそういう短期的な需給調整措置というのは、御承知のように今まで政府の手に原綿、原毛の割当権という行政権がございまして、これが陰に陽ににらみとなりまして業界として協力していただいていた。ところが割当制度というものがなくなりますと、どうしてもそれを法律上すっきりした制度に直す必要がある。法律上のすっきりした制度に直します場合におきまして、こういういわゆる操短と申しますか、あるいは生産数量の調整と申しますか、そういう観念というものを一応やめまして、この法律の本来の設備規制という一本の方法によりまして、この長期的な観点はもちろんのこと、短期的な観点というものもある程度織り込みまして、設備規制という形でもって繊維工業自体をすっきりしていきたい。これは目標年度に向かいまして需要は一方ふえて参りますし、それから供給の方はこれは原則として押えておるわけでございまして、その間合繊紡あたりが不足して参ると、綿紡あるいは毛紡、スフ紡あたり余った部門から足りない部門に転換していく、それによりまして紡績の過剰度というものはだんだん解消する、そして間接的に市況が安定し、輸出の振興にも寄与するのではないかという考え方でございます。
  146. 東海林稔

    ○東海林委員 今の点はなかなかむずかしいような点があるのですが、この前、この独禁法との関連の点とあわせてお伺いしたわけなんですが、今までのようなやり方でいきますと、どうも生産の調整というような形が相当強く出ておった。しかし今度の改正でいくと、そういう点ではなくて、これは設備の規制ということで、最終的には同じような目的を達成しようとしているのだ、こういうふうに理解していいわけですか。
  147. 今井善衞

    ○今井政府委員 その通りでございます。
  148. 東海林稔

    ○東海林委員 次の問題ですが、アウトサイダー規則の問題について伺いたいと思います。従来織機につきましては組合で規程を作って共同処理した場合に、きわめて一部のものがそれに従わなかった場合にはアウトサイダーの規制をするという規定があったようですが、今度紡績部面について三分の二以上のものが共同行為をやって、それ以外のものがそれに従わなかった場合には規制をするというような規定のようでございます。私は同じ一つ法律の中に、片一方には指示に従わないものは三分の一以下ということになるのですが、片一方は「極めて少い」というような、同じアウトサイダー規制に、こういう非常に違った規定の仕方があるのは形式的にもどうかと思うのですが、この点はどういうようなお考えでこういうことになっておるのか。それから「極めて少い」というような表現ですが、これは数字的にいうと一体どの程度以下を指しておるのか、そういうような点についてお伺いしたいと思います。
  149. 今井善衞

    ○今井政府委員 今の御質問は形式的にはもっともなんでありますが、この書き方を、織機の場合はきわめて少ない、それから紡機の場合は三分の一ということにいたしました理由といたしましては、二つ考えられるのでございまして、一つは織機の場合におきましては、処理の方法といたしまして廃棄ということを考えているわけでございます。従いまして、廃棄というのは、個々の企業にとりましては非常に重要なことでございますし、かたや紡機の場合は格納、たな上げ、つまり財産としては残っているのだけれども、それを一時たな上げしておくという形を考えておるわけでございます。従いまして、廃棄ということにつきましては、実質的にアウト・サイダーが少ないことが望ましいという点が一つでございます。  それからもう一つは、織機の場合におきましては、これは中小企業団体法の改正されます以前の中小企業安定法のいわゆる二項方式というのがございまして、これは国全体が自主的に調整規定を作りまして、その調整規定の認可を受けまして、そしてその組合に入っていない他の人にその組合の調整規定に従ってもらうという形になっておりまして、あくまでもイニシアチブは組合自体が自主的にとっておる。従いまして、そういう場合にはアウト・サイダーはきわめて少ないことが望ましい。ところで紡機の場合、今度挿入されますところのアウト・サイダー命令は、これは業界の自発的な意思というよりも、国が産業政策上必要なりということで、二十四条に従いまして指示するわけでございまして、そうしてそれに基づきまして、この指示内容としましては相当こまかいことまで国がきめまして、それを業界で受けて立っていただいて共同行為をしていただく、つまり重要事項はほとんど全部国の意思によりましてきめるわけでございます。従いまして、その場合にアウト・サイダーがきわめて少ないということじゃなくて、三分の一程度、大多数のものが中へ入っておればそれでいいんじゃないか、つまり業界が勝手なと申しては何でございますが、イニシアチブをとる場合は、業界自体が大多数まとまっておることが必要でございますし、国自体が責任を持つ場合におきましては、国の産業政策として行なうのであるから、従ってアウト・サイダーが若干それよりも割合が多くてもいいんじゃないかというふうに考えて、こういう形式になっておるわけでございます。  それから三十一条の「極めて少い」、これは法律上の実はそれが二割とかあるいは一割五分とかいうふうな定義はないのでございまして、従来織機の段階の組合は、アウト・サイダーが幸いにいたしまして非常に少ない関係で、そういう問題が起こっておりません。
  150. 東海林稔

    ○東海林委員 そうすると、ただいまの説明ですと、織機については業界の組合員による自発的な共同使用というような響きを受けたのですが、これもやはり目標年度における需給関係ということを見て、国が指示する方針に従ってやるのですから、手続的には確かに組合が先にやるというのですが、国の意思に従ってやるという点は、私は紡機の場合と変わりがないと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  151. 今井善衞

    ○今井政府委員 先ほど申しましたように織機の場合につきましては、国が指示するのでありますけれども、あくまでもそれは中小企業団体法の調整規定を尊重しながらやるわけでございまして、中小企業団体法は御承知のように業界の自発的な総意というものを非常に尊重しておるわけでございます。  特に安定法当時におきましては、二項命令というものがございまして、国の意思は第二としまして、業界の自発的な意思を支持する。その場合におきましては、業界自体としてほとんど大部分がまとまっていなければならぬという観念で運用しておりましたので、こういう規定になっておるわけでございます。
  152. 東海林稔

    ○東海林委員 そうなりますと、この目標年度における需給関係を見て国が期待するような共同行為と、業界が自主的な立場で考えた処理の共同行為の関係が常に一致するとは考えられないのですが、その辺は実際的にはどうなっておりますか。そこがうまく一致するようになっておるのかどうか、そこをお伺いしたい。
  153. 今井善衞

    ○今井政府委員 この織機の処理の方につきましては、これは織機をお持ちの方が機屋さんという大部分中小企業でございます。従いまして、自分で処理することができないということで国が補助金を出しまして、約三年間にわたりまして処理をしておったわけでございます。その際に業界と相談いたしまして、たとえばこの処理台数というものが非常に過剰になりますれば、業界としてはそれに応じられない、国の予算の範囲ということになりますので、どうしてもある程度慎重にやるというふうな形になって運用して参ったのでございます。  それから紡機の関係につきましては、先ほど申しましたように、廃棄という形でなしに、格納という形でやっておりますので、別に財産権の侵害にはならぬ、使用は一時停止されますけけれども、たな上げというふうな形でやっておりますので、従いまして、業界の安定という立場からいいますと、業界自体支障のない限り協力してもらうことが適当であり、またそれが必要な場合には国家意思を積極的に業界に示すということで差しつかえないのではないか、かように考えておる次第でございます。
  154. 東海林稔

    ○東海林委員 そうすると織機の場合は、実際はこうじゃないですか。国は大体処理したいという台数を考えて、それに必要な予算というものを一応きめる、そうしてそれを業界に示して希望者を募ってやる、こういう形になるのじゃないですか。従って業界の自主的な立場とかなんとかいうのではなしに、国の予算措置との関連において、そこらがきまってくるというふうに理解する方が正直な理解の仕方じゃないですか。
  155. 今井善衞

    ○今井政府委員 実質的にはその通りでございますが、法律に表わします場合には、あくまでもやはり中小企業団体法の建前、あるいはこれの母法になっております中小企業安定法の二項命令、それに平仄を合わせるということになりますと、こういう表現にならざるを得ないということでございます。
  156. 東海林稔

    ○東海林委員 その点はわかりました。そこで織機について従来廃棄するものについて予算措置があったのですが、ことしの予算関係並びに今後においてはどういうことになっておりますか。予算関係を一つ伺いたい。
  157. 今井善衞

    ○今井政府委員 一昨年、昨年の中小企業の不況に対応しまして、三十三年度、三十四年度におきましては、国会の御協力を得まして合計十四億円の予算を織機処理として計上いたしまして、それをもちましてたしか約六万台だと思いましたが、織機の廃棄をいたしておりますが現在におきましては、その効果といたしまして、織機の方は総体の台数というものは非常に少なくなりまして、その結果、そういう問題も手伝いまして、業界も安定しております。従いまして三十五年度におきましては予算を組んではおりませんし、また今後機屋さんの段階におきましては、ある程度すっきりした状態になっておりますので、今のところ組む必要はないと考えております。
  158. 東海林稔

    ○東海林委員 そうすると、その織機についての予算はあまり要らないというお話でありますが、本法の施行関係において通産省でどの程度の予算をとっておるか、この点お伺いいたします。
  159. 今井善衞

    ○今井政府委員 今年度の予算といたしましては、主として無登録紡機の取り締まりの費用といたしまして、六百万円計上してございます。
  160. 東海林稔

    ○東海林委員 それからさっき目標年度のことは聞いたのですが、法律の有効期間の問題です。これは目標年度とこの法律の有効期間というものは必ず一致しなければならぬのかどうかという点ですが、たしか、あれは当初は同じだったのですか。一年ずれておったような気がするのですが、いかがですか。
  161. 今井善衞

    ○今井政府委員 当初は法律の有効期間が五年でございまして、そして三十六年六月をもちまして、法律が終期になる。その際の目標年度というのは三十五年度ということになっておったわけでございますが、昨年の改正におきまして、新たに化学繊維並びに合成繊維が入りました。化学繊維並びに合成繊維ということになりますと、相当建設に期間が要るということで、目標年度を、終期が三十六年六月であるにもかかわらず、三十七年ということにいたしたのでございます。今回の改正におきましては、四年間延長していただきますと、終期は四十年六月ということになりますが、その年度が一番適当じゃないか。必ずしも理論的につながっておりませんが、大体切れる期間というふうに考えた方が妥当じゃないかと考えております。
  162. 東海林稔

    ○東海林委員 そこでその法律の切れたときの状態の問題なのですが、先ほど四年延長して、その後は延長ということは考えていないのだ、その時期になれば紡機についても需要と大体マッチする程度にいくのだから、大した混乱は起きないだろう、こういうふうな御答弁だったように理解しておるわけですが、今度の法律でも長期の見通しと短期の見通しということがあるわけです。たしかに長期の見通しから言えば、一応そういう観点は言えると思うのです。しかしこの短期の見通しからいった場合に、終期において必ずしもそういうふうな状態であるかどうかということは、これはちょっと予測できないと思うのですが、そういうような場合に、特に法律が終わったという場合には、やはり相当な混乱が生ずる場合があり得るというふうに私は考えるわけですが、そういうようなことについて、何らか考えておられるかどうか、その点を伺いたい。
  163. 今井善衞

    ○今井政府委員 ただいまのところ何も考えていないのでございます。もちろん短期的には設備が余るというふうな問題もあるかと思いますが、それは業界で、業界と申しますか、個々の企業の判断によりまして運営してもらうより仕方がなないというふうに考えております。
  164. 東海林稔

    ○東海林委員 今の答弁に私はむしろ賛成なのです。結局原料の自由化をやって、公正な競争によって業界の体質改善をはかり、健全な発展をやっていくというような場合に、いつまでもこういうような、悪い言落で言えば官僚統制的なことでもってやっていくというようなことは、自由化趣旨から見てもおもしろくない。こういうような措置はできるだけ短期間でもう終わるべきじゃないか、こういうような感じがするわけです。従って今の答弁で私はむしろ満足です。  そこでもう一つお伺いしたいのは、この審議会の問題でございますが、あるいはこれは本委員会でも質問が出たかもしれませんが、この間いただきました資料によりますと、この審議会のメンバーの中にいわゆる従業員の代表と目せられる委員が非常に少ないという点でございます。先般もちょっと触れましたように、従来外国で日本の繊維製品について非難があったのは、要するに日本の低賃金から来る廉売、投げ売り、そういうような点について非常な非難があった。従って今後日本の繊維製品の海外における信用を獲得する意味におきましては、どうしてもこの繊維関係における労働者の問題というものを十分近代的なものにして、そうして外国からのそういうような非難をなくする、同時に繊維業の健全な発展をしなければならないというふうに考えるわけです。そういうような意味から言いますと、従来のような審議会の委員の構成では、非常に不十分じゃないかというような感じがいたすわけでありますが、そういう点について考えておられるかどうか、お伺いしたいと思います。
  165. 今井善衞

    ○今井政府委員 ただいまの審議会と申しますのは、この法律の繊維工業設備審業会のことだと思いますが、設備審議会のメンバーといたしましては、全体の委員の方が五十名おられまして、そのうち労働関係の代表としては五名でございます。それからさらに専門委員としてほかに二名お願いしておりまして、合計七名であります。従来の運用では、ただいまのところこれで特に不足というふうなことはなかったのでございますが、今後労働問題がますます重要になりますので、必要に応じまして私の方は専門委員等の増員というふうな形で考えてしかるべきじゃないかというふうに考えております。
  166. 東海林稔

    ○東海林委員 それでは私の質問は大体以上で終わりたいと思うのですが、私はこの前一番初めに申し上げましたように、この原料の自由化に対処する国の政策として、さしあたっての過渡的な措置としてこの法案を出したというわけでありますが、さらにいろいろとこの繊維業の発展のためには、今後の自由化進行の程度に伴って適切な対策をやっていくという政府の御答弁をこの前いただいたわけですが、そういう点、特に遺憾のないように、積極的な部面の国の政策ということをお願いしまして終わりたいと思います。
  167. 中村幸八

    中村委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十三日金曜日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後二時二十九分散会