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1960-05-06 第34回国会 衆議院 商工委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月六日(金曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 中村 幸八君    理事 大島 秀一君 理事 小川 平二君    理事 小平 久雄君 理事 田中 武夫君    理事 武藤 武雄君       鹿野 彦吉君    始関 伊平君       田中 榮一君    田中 龍夫君       野田 武夫君    細田 義安君       板川 正吾君    勝澤 芳雄君       小林 正美君    東海林 稔君       和田 博雄君    加藤 鐐造君       塚本 三郎君    北條 秀一君       山下 榮二君  出席国務大臣         通商産業大臣  池田 勇人君  出席政府委員         通商産業政務次         官       原田  憲君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (繊維局長)  今井 善衞君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 五月六日  委員矢尾喜三郎君及び加藤鐐造君辞任につき、  その補欠として小林正美君及び塚本三郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員塚本三郎辞任につき、その補欠として加  藤鐐造君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  割賦販売法案内閣提出第一一八号)  繊維工業設備臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第九八号)      ————◇—————
  2. 中村幸八

    中村委員長 これより会議を開きます。  割賦販売法案を議題として審査を進めます。前会に引き続き質疑を続行いたします。武藤武雄君。
  3. 武藤武雄

    武藤委員 大臣はまだいないようですが、長官の方でわかれば……。本法は第二条で割賦販売定義し、第九条では割賦販売標準条件公示することになっておるが、標準条件指定商品ごと告示されることになっておるわけですけれども標準条件決定は、本法施行後になるのかどうかということは非常に重要な問題だと思うのです。標準条件決定するまでは、本法は実際には発効しないことになるのか、それとも標準条件がきまらなくても本法は発効することになるのか、その点を一つお聞きします。
  4. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 第九条の標準条件公示は、この法律の中の一条文でありますから、もちろん法律施行後でなければこの条文の動きょうはないわけであります。さらに法律施行後におきましても、この標準条件公示を直ちにあるいは常にやるというような考え方では、私ども予期いたしておりません。この第九条に掲げておりますような事態発生をして、いわゆる過当競争の結果、頭金の割合でありますとか、賦払期間問題等について不健全な事態発生をして、それを是正するために必要があるというようなそういう事態になったときに、初めてこの標準条件等の問題が出てくる、こういう関係に相なるものと考えております。
  5. 武藤武雄

    武藤委員 ただいまのような御説明だと、本法施行されて実際にやってみて、非常に過当競争等が激しくなり、いろいろの問題が起きて混乱をするような場合にきめるということでありますけれども、そういうことですと、やはり公聴会を開いたりいろいろのことをして、実態を見てきめるということになるんじゃないかと思うのです。やはり混乱が起きるまで相当期間がある。いわゆる政治問題としてくるまでに相当期間がある。それから公聴会を開いて標準条件をきめていくということになると、これは大体この間長官大臣もだいぶ楽観をしておられたようですけれども、実際には大企業の方では手ぐすねを引いて待っておる状況だということをわれわれは聞いておるのです。ですから、標準条件も何もきまっていないということになると、これはいろいろの資本の優位を利用して、その間においても圧倒的な商売競争に出るのではないかということをわれわれ心配しておるわけなんです。ですから、そうゆうちょうなことを考えて、本法施行されてから適当な期間を置いて、混乱ができたら、また公聴会を開いてきめるというようなことをやっておると、その間に過当競争にたたきのめされるようなことが現実問題としてできてくるおそれがある。そういうことに対してはどういうように考えておりますか。
  6. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 この法案趣旨取引秩序の整備のための法律であるということは御承知通りでございます。しばしば申し上げておると思いますが、そういう意味で特別にいわゆる政府の介入と申しますか、そういうことでなしに、一応健全な取引が行なわれている限りは、この九条の発動は必要がないという建前でおるわけでございます。しかし、さればといって、そのような事態が予想される際に、あるいは現実的な問題として相当差し迫っておる際に、相当弊害が現実化して収拾できないような状態になるまで、ほうっておくというつもりはもちろんございません。この条文内容で示しておりますように「健全な発達を図るため必要があるときは、」という判断の問題であると思います。そのような判断につきまして、ただいたずらにゆうちょうにかまえておるつもりはございませんけれども条文趣旨としては、法律施行と同時にこの九条が発動するということをあらかじめ予定しておるというような仕組みにはなっていないということを申し上げたつもりでございます。
  7. 武藤武雄

    武藤委員 これは取引秩序法であって、政策は入っていないということで、終始一貫逃げておるわけですけれども、実際に法律ができて、やはり割賦販売の事業が促進されることは間違いないのです。また最近においてはいろいろラジオだとかテレビだとか、最近は特にテレビとかトランジスターとかああいうものが大資本の方は相当有利な条件で、たとえば期間もちょっと中小や何かついていけないような長期期間を定めて、そして割賦販売をやっておるわけですね。いろいろな格好で直接やっています。私の方でも、最近は生協一般業者の間でテレビの問題で、問題が出ておりますけれども、結局最近はメーカーが直接割賦販売をやるということになって、その間の一般の商店は全部オミットを食っておるというようなところも出ております。こういうふうに標準条件について、何らの制限がないということになり、しかもそれが調整するのに相当長期期間を要するということになると、相当の問題が生じてくるのではないだろうか、こう思うのです。ですから、これは政策は考えていないということでなしに、この間の大臣の答弁も、いろいろ起きてくる問題については当然考えなければならぬということも言っておるわけですけれども、これはやはりそうゆうちょうでなしに、必ずそういう弊害が起きてくるということを頭において考えてもらいたいと思います。  それから第十条の割賦販売の健全な発達に支障が生ずるおそれがある、そういうときは業者勧告する。第二項によって「勧告は、告示により行なうことができる。」ということになっております。しかしこの勧告はやはり必ず告示をすべきだと思う。「行なうことができる。」、これはあと修正のことに引っかかってくるのかもわかりませんが、勧告ができるということになると、これはしなくてもよいということになるのであって、実際に告示があれば初めて問題は徹底すると思うのですが、告示がなくてこういう状態がある、こういう状態があるといっても、勧告をしてみても告示がなければ消費者についても一般業者についてもわからないと思う。やはり勧告をした場合に、適切に告示をするという義務は当然に生じなければならぬと思う、でなければ勧告意味が減殺されてしまう。ですから、単にその業者だけに勧告して足れりとする問題ではなくて、他にも勧告趣旨が徹底しなければ勧告意味がないと思う。その点はどうですか。
  8. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 十条の趣旨は、ただいまお話の中にありましたように、九条の公示された標準条件が守られないことによって起こる事態に対する勧告でございますが、その守られないという相手方が非常に広範囲にわたっておる場合には、もちろん告示して行なう以外には方法はないと思います。当然告示でいくと思います。ただある特定のきわめて少数の人あるいはある一、二の業者がこの標準条件公示を著しく乱しておる、しかもその取引高がかなり大きいために十条の勧告を発動せざるを得ないというような事態に相なりました場合、その場合にただ一般的に告示するだけで勧告した方が効果的であるのか、あるいはその特定の一、二の業者指名をして、つまりあなたの方がこういうことを乱しておることが非常に困る事態になっておるからという意味で、特定の人に、いわゆる個別的な勧告を出した方が非常にきき目があるのだ、その辺はそのときの事態判断によることだと思います。そういう意味でこの十条の二項は「告示により行なうことができる。」ということになっておりますけれども、実際には今申し上げましたような事態で、御承知のようにこの勧告には罰則がないものでありますから、その勧告効果がどういう方法によったら一番効果的であるかということを考えてやるべきであろう、そういう意味で第二項は「告示により行なうことができる。」という、やや幅の広い表現になっております。しかしただいま申しましたように、勧告をやる以上は勧告効果のあることが一番の眼目でありますから、個別的に通知をやって、さらに重ねて告示をやった方が効果があるというような判断でありますれば、当然告示を同時にやるというような運用の仕方になると思います。いずれにしましても十条の趣旨勧告効果を確保することがねらいでございますから、法文にはこう書いてございますが、実際には告示を行なうことが大部分の場合であろうというふうに考えます。
  9. 武藤武雄

    武藤委員 法案を提出した事務当局としては、御趣旨の方がよいと思いますというようなことは言えないと思いますから、これは修正の条項で議論をしなければならぬと思いますが、やはりこれがたとい個人であっても告示をされて初めて消費者も他の業者もわかるのですから、単に勧告をして、罰則も何もないわけですから、従ってこれはやはり告示をやり義務づけることが必要ではなかろうか、こう思っておるわけです。  それから本法施行にあたって、さっき言ったように割賦販売業者テレビ、家具、洋服、農機具、いろいろのメーカーが大規模な販売戦を展開しようという空気があることは、先ほど申した通りでありますけれども、こういうふうな宣伝営業のいろいろの割賦の中で、長期割賦販売等のあらゆる点に関して、中小企業より大企業の方が非常にすぐれておるということは、だれもが考えておることでありますから、従いまして先ほど申したような意味で、政策の問題というものも当然やはりこれに加味していくということはどうしても必要だと思います。それから中小企業は地元においても、信用のない客だということがある程度予想されても、販売せざるを得なくなってきておるようなことがあると思うのです。競争上、多少これは危険だ、こう思っても、どうしても販売せざるを得ないというような場合が往々にしてあると思うのです。そういう状態でありますから、販売価格等もみずから値引きをしなければならぬ。そういうふうにいろいろ競争上考えてくると、中小企業なるがゆえに弱いものですから、信用のない客でも、やむを得ず売ってみたり、また競争のためにやむなく金の方も長期にやっている上に値引きまでして競争しなければならぬ、こういういろいろな問題が起きてくると思うのであります。ですからそういう問題についても、政策的な問題というものも、やはりいろいろな点で加味して考えていかないと、単に取引秩序を守ってやるのだということだけで、結果的には中小企業を押しつぶしてしまうような法案になってしまったので、これは何にもならないので、このねらいは決して中小企業をつぶすために作る法律でもなんでもないのですから、やはり政策的な問題も十分考慮してやってもらいたいと思うのです。  それから本法の第一条の目的に、特に消費者利益を擁護し、実質購売力の充実をはかる、そういう実際的な問題が明らかにされていないで、単に国民消費発展に寄与する、こういうふうな意義をいっているわけなんですね、一条の目的の中で。従いまして、やはりこういう法案を作る場合には、特に消費者等利益が、どういうふうにして確保されるかということが重点になっていく。それからその次には、今言ったような中小企業とかそういうものが、こういった法案作成に当たって、競争の圏外に残されることのないようなことが十分考えられていかなければならないと思うのです。ところが第一条の目的には、国民経済発展に寄与するという意義を非常に強調しているわけですが、それはどういう意味でこういう点を特に取り上げたのか、逆になりましたけれども……。
  10. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 この法案趣旨目的とするところは、要約して表現をいたしますと、この第一条のようなことに相なるわけでありますが、前前から申しておりますように、この法律だけによって、直ちに割賦販売を大幅に推進するとか振興するとかいうようなことは、現状では私どもは考えておりません。むしろ現在、おそらく自然発生的にいろいろな形の割賦販売がすでに行なわれ、またこれから非常に伸びようとしておる際に、それが不健全な方向に伸びないように、いわばレールを敷くというような考え方が、基本的なものになっておるわけであります。しかし、そういうふうに割賦販売が健全な方向に伸びていくということは、現在の一般的な日本経済の伸びていく方向から申しまして、国内での消費が健全な方向に拡大され、それを足場にして国内大量生産が行なわれ、またそれを足場にして安いいい商品が海外に輸出できる、そういうことを考えますと、そういう健全な方向割賦販売が伸びていくということが、当然国民経済発展に寄与するということを、最終の目標にしておるわけであります。従いまして、国民経済の健全な発展と申しますからには、当然この間に、日本経済でしばしば言われます中小企業の問題、特にこの法案の実際の運用に当たりまして、いやしくもいささかでもマイナスの効果があるというようなことでは、当然そういうことがあってはならないはずでありますから、今御指摘のございましたように、そのような健全な発達を期するような方向に誘導することだけでは、なお足りないではないかという点につきましては、この法案運用に当たりまして、並行的に中小企業対策一般、またその中でも割賦販売に伴う中小企業対策ということはあわせて実施をしていかなければならないと思いますが、当面これについての税制の問題、金融の問題等があるわけであります。しかしこの法案自体は、ただいま申しましたような趣旨法律でございますので、法案自体には第一条の目的もそういう趣旨で書いてございます。しかし、今申しましたような国民経済発展というからには、中小企業対策等を含めたさらに広い視野からの政策があわせて行なわれなければならないということが私ども考え方でございます。
  11. 武藤武雄

    武藤委員 目的重点が非常に国家経済の全体というような中に重点があり過ぎて、肝心な消費者中小企業者に対する配慮が足りないということは避けられないと思います。今後積極的にそういう問題は取り上げていかなければならないと思いますが、本法のいう購入者とは購入する任意の者をいうとなっておりますから、それも購入者でありますけれども指定商品範囲決定割賦販売標準条件次第では、低額所得者は、かりに万一安定した収入があるとしましても、実際の指定商品があまり高いものばかり指定してしまったり、それから標準条件の中で非常に短かい期間が設定されるというようなことになると、今割賦販売を利用して何とか生活の中でやりくりしておる者は、割賦販売法ができたために、逆にそういう人たちが締め出されるというおそれもなきにしもあらずです、指定商品あるいは標準条件決定次第では。だから、やはりそういった安定した中程度の階層の者が割賦販売の恩恵を受ける。これは信用もありますし、業者にとっては一番安全だし、取引秩序から見れば、それが一番安定しておるわけですけれども、そうでなくて、このことによって逆に低額所得者割賦販売の道が閉ざされてくるというようなことでは困るのでありますから、やはり指定商品等をきめる場合は、相当低額のものまで指定商品の中に加えるように十分の配慮が加えられないと、逆に今度はこの法案ができたために、割賦から締め出されるという場合が起きると思うのです。そういう点はどうです。
  12. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 この法案の第二条第二項に、指定商品定義が一応出してございますが、ここに書いております意味合いで「耐久性を有し、」という以上は、一回限りの消費で消耗されてしまう、たとえば飲食料品でありますとか、あるいは燃料でありますとか、こういうものはどうも長期の支払いを前提とした割賦販売には適しないという意味であると思います。また「定型的な条件」といっておりますからには、たとえば極端な場合でいいますと、船舶でありますとか、プラント機械でありますとか、要するに一品々々の注文生産によるようなものを、まさかこの条件に載せるわけには参りませんので、そういう意味の特殊のものをここでは定義のうちで除いておりますけれども、それ以外のもので、おそらく現在割賦販売制度に上っておるようなものは、ほとんど漏れなく指定をしたい、また指定をするのが適当であろうというふうに考えております。従いまして考え方によりましては、指定商品の限定の仕方を、そういうふうに積極的にポジティブな形で指定をしないで、こういうものはここで扱う指定商品ではないというネガティブの定義の仕方も考え得ると思います。しかし、私どもが研究いたしました限りでは、この程度のことを法律定義をしておけば、あとは、まあ商品分類のいろいろな仕方があるようでありますが、中分類程度商品分類指定をして参りますならば、特に指定漏れになるとか、あるいは従来考えられなかったようなものが突如としてここに現われてくるというようなことはないだろう。そういう意味で、若干技術的な問題はございますが、政策的に大きな含みのあるような指定の仕方だと、問題は起こらないというような意味で、このような法律定義を下す、あと分類程度の幅の広い指定の仕方をして、その中には、今申しましたような特殊のものが入っていないということで、実際の運用には差しつかえないのではないだろうかというのが、この第二条の定義の仕方の趣旨でございます。
  13. 武藤武雄

    武藤委員 大体わかりました。最近国民購買力が向上して、耐久消費財耐久生産財の売り上げが伸びておるのは事実でありまして、本法施行は、さらにこの方向を健全に助成すべきものだと思うのであります。従って、この指定商品の品質、それから生産コスト販売価格との差、それから商品規格等については、国はやはりこういう法律を作って秩序を考えるとともに、そういった消費者との関係における問題についても、十分行政的に指導をしていく必要があるのではないだろうか。この間厚生省関係で薬の乱売が問題になったようでありますけれども、やはり今後はこういった関係についても十分国が関心を持って指導していくようにしないと、せっかくこういう法律を作った効果というものが減殺されてくるのじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  14. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 私どもの考えも、全く御意見の通りでございます。この法案自体には、先ほど来申しておりますように、そういうことについて具体的なことはうたっておりませんけれども割賦販売というような形の、いわば消費者のためにも有利な販売制度が円滑に動いていくためには、当然今御指摘のような配慮がなければならないと思います。御承知のように、通産省でも、若干の商品につきましてはJISマークという制度が前から運用されております。あるいは優良なデザインを奨励するというようなこともやっております。しかし、もちろんそれだけで足りるわけではございませんで、私どもの担当しております行政範囲内におきましても、いわゆる生産面からだけの行政ではなくして、いわゆる消費者行政ということを、今後相当深く突っ込んで考えなければならないというのは、私どもが前々から検討して参ったところでありまして、消費者行政を全般的にどう考えるかという点は、われわれ内部ではいろいろ作文したものもあります。いわば、今回の割賦販売法案は、法案としてはその第一号に当たるような性格のものだというふうに私どもは考えておるわけでありまして、今御指摘の点は、私ども全く賛成でございます。
  15. 武藤武雄

    武藤委員 本法の第六条で、この割賦販売契約解除がされた場合に、損害賠償請求ができるようになっておりますけれども、「契約のために要した費用の額」ということをいっておりますけれども、その範囲というものは一体どの程度まで考えられておるか。販売業者購入者宅宣伝や何かを含めて訪問した、そういった交通費あたりまでこの中に入れるということになると、これは問題だと思いますが、その範囲はどの程度ですか。
  16. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 第六条に書いております意味は、この字句解釈から申しましても、当然、たとえば契約の書面の作成費であります——十円程度であると思いますが、それに印紙を張らなければなりませんので、印紙税関係でありますとか、あるいはまた、契約履行解除というようなことについて、具体的にはどいうものがあるか、そのときのケースによって若干差があると思いますが、そのために特別に要した費用ということに、法律字句解釈から当然限定して考えられなければならないものでございますので、これがそう多額の、つまり販売業者が非常に恣意的に、あれもこれも、これに要した費用というわけには、もちろん参らぬというふうに考えております。
  17. 武藤武雄

    武藤委員 交通料等は入りませんか。
  18. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 どういう場合に交通費が入るか、たとえば、契約者というか、購入者契約解除するに至るまで、しばしば購入者のうちに行って契約解除の催促をしなければならぬというようなこと、そのために特別に費用が要ったというようなことになりますと、それはやはり、その際の契約解除のために特別に要した費用という解釈問題が出てくると思いますが、その辺は、ここで具体的な場合を具体的に今申し上げるわけには参りませんが、あくまでそこは契約解除のために特別に要した費用という、この特別にというところの解釈問題になると思います。
  19. 武藤武雄

    武藤委員 これは解釈では相当広範囲にされるおそれがあります。たとえば交通費請求ということになりますと、きびしく催促した結果莫大な請求書になるということもありますから、交通費は私は入れるべきじゃないと思いますが、これは一つよく御検討を願いたいと思います。  それから同じく二号の「当該商品通常使用料の額ことありますけれども、「通常」とは非常にばく然としておるわけですが、どういう内容ですか。
  20. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 現在の取引の形態、実体等が非常にまちまちでございますので、法文で書くということになりますと、こういう表現の仕方しかないのでありますが、実際問題といたしましては、かりにその商品につきまして賃貸借の営業が行なわれておるというような場合がしばしばあると思います。たとえば、テレビ等割賦販売はもちろん行なわれておりますが、賃貸し制度があると思います。その場合には、その賃貸しの普通の営業状態をとらえまして、それが通常使用料であるという推定がつくと思います。しかしそうでない商品もあると思いますが、この辺は、先ほど御指摘のございました交通費云々というような問題もあわせまして、ある程度健全な商慣習ができるということに期待する以外には、法文に書くとなりますとこの程度以上は書けないという実態であると思います。私どもが実際問題として期待いたしますの、そういうやや不明確な部分が若干どうしても残ると思いますので、割賦販売の業界等におきましても、健全な商慣習、商取引の良識によりまして、そういう意味の何らかの健全な商慣習的なものができるだけ早く確立するように、行政指導その他の面で進めて参りたいというふうに考えております。
  21. 武藤武雄

    武藤委員 これは三号の問題とも関連するのですけれども、三号は「当該商品の利用又は損傷による価値の減損額が通常使用料の額をこえるときは、そのこえる額」とありますけれども、減損額を認定するのは一体だれが認定するか。一号、二号の場合も、「費用の額」「通常使用料の額」とありますけれども、こういった認定は一体だれがやるのか、非常にあいまいなのですけれども……。
  22. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 今御指摘のございました点も、損傷による減損額というのは一体どういうものだという点は、事実問題としてやはりむずかしい問題であると思います。一応考えられますのは、たとえば衣料というようなものになりますと、あまり大きなきず、よごれがなくとも、ある程度それを着用いたしますと、いわゆる中古品価格に落ちてしまうわけであります。そういう場合を予想し、あるいはまた特別の損傷があるというような場合には、ある程度常識的な、あるいは合理的な、経済的な価値判断はできると思いますけれども、ここでいっております意味はそれ以外に、たとえば値段が下がったからとかいったような理由のものは含まないということを、消極的には消費者を擁護しておる意味になっておると思います。それ以上は具体的な場合につきまして、契約当事者相互間で納得のいくまで話し合って、きめていただくという以外には申し上げようがないのでありますが、非常に形式論的に申しますれば、最終的には裁判所の判断になるということになりますが、事実問題としては、双方の納得ずくで、こういう一つの目安が与えられておりますと、何もない状態よりは、はるかに消費者のために有利な話し合いがつくのではなかろうかというのが、この条文のねらいとするところであります。
  23. 武藤武雄

    武藤委員 これはいろいろむずかしい問題でして、最後に裁判に訴えて認定してもらうということは、事実上やれないことだし、またないケースだと思うのです。そうすると、何らかの、かりに高過ぎるというような意思表示ができて、なるほどこれは法律の建前からいっても、ちょっと行き過ぎておるぞということを何か判定を下せるような、仲介をとれるようなことがあると都合がいいのですが、そういう点は全然考えておりませんか。
  24. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 この第六条の内容といたしますところは、現状は御承知のように、約款等によりまして、従来払った代金は全額没収だとか、あるいは商品を返せば、その商品割賦販売価格の一二〇%代金を払えとか、約款で非常に苛酷な状態になっておることに対して、こういう六条のような内容の目安があれば、それで話し合いは少なくも消費者のためには相当有利にいくだろうという点がねらいでありまして、決して裁判所に持ち出す云々のつもりが本旨ではございません。しかしさればといって、こういう個々のケースの問題を、何か特別の調停をするような場所を考え得るかと申しますと、これは実際問題として非常にむずかしいだろうと思いますし、従来の例で申しますと、そのように消費者に極端に不利な約款がありましても、実際は双方の話し合いで進んでおった場合が大部分であります。まして今回のように、消費者のために有利な目安が法文でうたわれておりますれば、特に第三者の介入がなくとも、消費者のために少なくも現在よりは有利な話し合いがつくだろうということで、現在では特別の調停機関と申しますか、第三者的な機関のようなものは考えておりません。
  25. 武藤武雄

    武藤委員 これから運用の経験の中で考えても、この問題はそう大きな問題ではないと思いますけれども、たとえば、行政指導的な中で、業者の任意組合みたいなものを作って、その中でこういう部門を取り扱う、苦情の言えるところを作るというようなことも一つ方法でありましょう。これはいろいろ検討してもらいたいと思います。いろいろあるのですけれども、時間を自分の方で制限しましたからあまり多く申しませんが、最後に税金の問題、これは大蔵省の実際のあれが来ないとむずかしいのですが、本法の作成に際して、当然大蔵省と緊密な連絡をとられてやっておると思いますが、割賦販売の所得税もしくは法人税の課税は回収期日主義をとるのか、それとも契約高によるのか、大蔵省は従来所得税法については二十九年一月一日付通達、法人税については三十年六月二十六日付通達で回収期日主義をとることを明示しておるようでありますが、これは回収期日主義をとりますか。
  26. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 御承知のように現在の税法上の原則は、損益の発生については権利発生主義で、権利が発生したら直ちに課税対象になる、こういうことになっておりますが、今お話の回収主義という意味が私ちょっと十分のみ込めませんが、それが代金を支払わなければならない期限が到来したときに、つまり回収できる状態になったときに損益計算の分岐点ができて課税の時期がくるという意味でありますれば、お説の通りでございます。俗にいいますれば、期限到来主義とでもいうことに、現在の扱いはなっておるようであります。
  27. 武藤武雄

    武藤委員 質問の趣旨はそういう趣旨であります。わかりました。  それから物品税は、これは実際には大蔵当局に言わなければならぬ問題ですけれども割賦払いの月払期間ずっと払っていくわけですけれども、そういう割賦の販売期間に従って、物品税については分納させるという処置を、この際考えた方がいいのではなかろうかと思うのであります。物品税法の第三条の三によれば、物品税は消費者が負担すべき建前のものとすると規定しておるわけでありますから、物品税は当然分納によることが正しいのではなかろうか、そう思うのですが、どうですか。非常に技術的な問題ですから、あまりこまかくなりますけれども……。
  28. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 その点は割賦販売業界の要望としては、そういう希望があることを承知いたしております。物品税には物品税の理論があるようでありますけれども、私どももそういう要望の線に沿って、流通部会等でさらに検討を続けて参りたいと思っております。
  29. 武藤武雄

    武藤委員 一つ十分業界の主張を入れるように努力してもらいたい。  それから、指定商品指定された商品の物品税は減免処置をとってもらいたいという、この間業界からのだいぶ強い要望もあったようですけれども指定商品に対して優遇するというようなこともなかなかむずかしいかもしれませんけれども割賦販売法の精神からいって、そういう点も一つ考慮してもいいのではなかろうかと思うのですが、そういう点について何かお考えになっておりますか。
  30. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 お話のような要望があることも私ども承知いたしております。ただこの問題は、前に御指摘のございました点と比べまして、かなりむずかしい問題であろうと思いますので、現在のところは個々の商品について、そこまでの議論はまだ十分いたしておりませんが、要望としては承知いたしております。
  31. 武藤武雄

    武藤委員 割賦販売においては、割賦販売業者が貸し倒れのため損失負担が大きくなると思うのです。本法のあれによって、なるたけ貸し倒れ等がないように、いろいろあると思うのですけれども、貸し倒れ準備金等についても、この間業者の方からも最低一〇%ぐらいは見てもらいたいというような要望もあったようであります。やはり貸し倒れ準備金等に対して何らかの助成措置というものが、割賦販売法の建前からいっても必要になるのではなかろうかと思うのですが、そういう点はどうお考えになりますか。
  32. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 貸し倒れ準備金の問題は、割賦販売については特に問題が多いと思います。現在御承知のように、法人の場合と個人の場合に、それぞれある程度の積み立てと、それから最高繰り入れ限度が設けられておりますが、それを割賦販売の場合につきましては、最初の繰入額等につきまして特別な配慮をしてほしいということで、これも先ほど申しました流通部会で、割賦販売に関する税制の中で、特に問題であるという意味で現在検討しております。何らかの結論を得て、業界の要望に沿えるように努力をいたしたいと思います。
  33. 武藤武雄

    武藤委員 この間の参考人の意見の中でも、チケットに対する印紙税ですか、これを一つ何とか考慮してくれ、できれば減免してもらいたい、減免ができない場合でも、一つ引き下げを考えてくれないかという、額は小さいようだけれども、ぜひ頼むという、非常に強い要望があったようですけれども、これらの意見に対して何かお考えになっておりますか。
  34. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 御承知のように、現状では三千円以上ということで印紙税がかかっておるようでありますが、当面この免税点の引き上げということを中心にしまして、今流通部会等で検討をしておるところであります。もうしばらく税制の問題全般の中の一つとして、内容を検討して参りたいと思います。
  35. 武藤武雄

    武藤委員 これで終わります。
  36. 中村幸八

    中村委員長 次は田中武夫君。
  37. 田中武夫

    田中(武)委員 割賦販売法案につきまして、実はきょうは時間の都合で、ほんのわずかしかできませんが、せっかく大臣が見えておりますから、大臣にお伺いいたしたいと思います。  大体、提案説明なり、企業局長からはいろいろと説明を聞きましたけれども大臣から一つ基本的な点でお答えを願いたいのですが、この割賦販売法案というのは、一体どういう目的でお出しになったのですか。
  38. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国民生活の引き上げということを主題に考えますと、やはり生産を伸ばさなければなりません。生産を伸ばしたときには、健全な消費もこれに見合って伸びていくことが必要だ。そこで、健全な消費のためには、サラリーマン等に対しましてこういう制度が必要である。この制度をだんだん伸ばしていけば、これが金融の調整にも役立つ。先進国はそういうことをやっておる。だから、私は、生産の増強により国民生活の向上をはかるということから出発して、将来は、英米独仏のように、これを金融調整の手段になるように育てていきたいという考えでございます。
  39. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、ただいまそういう答弁ですが、私はちょっとこれを見て逆じゃないかという感じを受けたのです。と申しますのは、健全な消費発達せしめて生産を増強するのでなくて、すでにマス・プロとして大量生産せられておる、それをこのままほうっておくと、どうにも消費が伴わない。そこで、マス・プロの救済法ということで、こういう法案をお考えになったのではなかろうか、このように考えるのですが、どうですか。
  40. 池田勇人

    ○池田国務大臣 どっちが原因か結果かという問題になって参りますが、現状では必ずしもマス・プロというわけにも参りません。そうして消費がこれに追っつかぬというわけのものでもない。私は、先ほど申し上げましたように、健全な消費政策を立てていくことが経済発展のもとであり、それをつかまえて伸ばしていって、金融の調整にも使っていこうという考えであります。
  41. 田中武夫

    田中(武)委員 健全な消費発展といいますか、そうなればいいのですが、下手をやると、割賦販売、買う方からいえば月賦で物を買う、こういうのがつい自分の実力を越えて買いがちである。現実に金を払わなくとも、給料日に給料から引くとか、そういういろいろな将来への債務が起きるのですが、現実に払わなくて済むということから、つい実力を越えて買いがちになる。従って、健全な消費発展助長でなくして、むしろ浪費助長を促進せしめないか、こういうことを心配するのですが、この法律立案にあたりまして、そういうような点についてどのようにお考えになったか。それからまた、そういうことに対する規制といいますか、一カ月の収入に対してどういう程度までが月賦で物を買うところの限度か、こういうようなことについて何か検討なされましたか。この法案を見てみますと、そのような消費者の面に立っての浪費といったような点に対する配慮がなされていないように思うのですが、その点いかがですか。
  42. 池田勇人

    ○池田国務大臣 それは個人の考え方の問題でございまして、法律でどうこうというわけのものではないと思います。
  43. 田中武夫

    田中(武)委員 もちろん個人の考え方ですが、しかし、こういうのが出ると、つい買いやすく、出やすくなるわけです。そうなればやはり自分の生活を越えて物を買いたがる、その結果生活を破壊する、そういうことが考えられる。従ってそういう点を何らか考えておく必要があろうと思いますが、あくまでも個人の責任だ、こういうふうに大臣はおっしゃるわけでありますか。
  44. 池田勇人

    ○池田国務大臣 さようでございます。
  45. 田中武夫

    田中(武)委員 それではこういう法案を出して割賦販売についての秩序を作る、これはけっこうであります。だが、一面、その対象になる消費者の面については、それはお前たちの勝手だ、何ら考えていない、こういうように大臣はおっしゃるのですか。
  46. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは先ほど申し上げましたような考え方でこしらえたのでございます。従ってこれによって買い過ぎるとかなんとかいうことの起こらないように法律で縛ることはできません。やはり私は個人の計画による購買を正常化していきたいという考え方でございます。
  47. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、やはり私が最初申しましたように、マス・プロでどんどんと生産を増してきた、このままにしておくと消費が伴わない、そこで、売らんかなの商法、これに対して、法をもって政府が応援する、こういう法律だと考えざるを得ないのですが、消費者の面について何ら考えていない。そういうことになれば、そういうことを言わざるを得ないのでありますが、どうですか。
  48. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは売らんかなのものではない、買わんかなの問題も入っておるのであります。従ってそこはやはり経済原則によりまして運用されていくべきものと思います。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえばこの法律で買わんかなというか、消費者の面について特に配慮をなされたのはどういう点ですか。
  50. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 技術的な問題になりますので、私からお答え申し上げます。  この法案内容は、御承知のように、秩序法と一口に申しておりますが、その中で消費者の保護のためのという条文は、条文で申しますと、三条以下六条までが直接の消費者保護の規定であると思います。九条、十条等は、双方のために健全な割賦販売の規制ができるようにというので、双方に関係があると思います。全体的に申しまして、今大臣から御答弁がありましたように、消費者がこの法案足場にして、割賦販売を利用し過ぎはしないだろうかという点は、実はこの法案の論議の前提になりました流通部会等でもいろいろな論議がございました。ごく一、二の点だけ御紹介申し上げますと、要するに、現在は、このような法律を作ると作らないとにかかわらず、割賦販売そのものが経済的に非常に伸びる態勢にある。従ってこの法案によりまして特別に割賦販売を振興するとか推進するとかいうような意味合いはありませんで、むしろ伸びようとする割賦販売のそういう経済の実勢に対して、それが健全に伸びるようにということがねらいでありますと同時に、健全という意味の反面には、購入者が自分の能力以上にあまり利用し過ぎるということになると、過度の信用供与にもなりますので、それはやはり望ましくない。当然割賦販売をやる営業者の方でも、信用供与が過度に陥らないように警戒もするでありましょうし、当然経済的な調整がそこに行なわれるであろうというような点が期待されておるということであると思います。
  51. 田中武夫

    田中(武)委員 私はきのう休みだったものですから映画を見ました。東映ニュースの三十七号でしたか、今やっていますが、月賦と人生とか、月賦の中の人生とか何かそういうので、割賦というか月賦の、いろいろな場面を特集したニュースであります。一応局長あたり、大臣も暇があれば見られたらいいと思いますが、その中で、月賦販売法という法律が今出ておる。そういうような説明で出ておりました。ところがなかなか月賦販売業者は鼻息が荒い。この法律ができるならば、月賦はもっとどんどん進むだろうというようなことで、赤ちゃんが生まれた出産の病院から墓を作るところまで、いわゆる揺籃から墓場まで月賦だ、こういうニュースをやっていました。それを見ておると、どうもこの法案は月賦販売業者のために作られておる、こういうような感じで、月賦販売業者は盛んに吹聴しておるところが出ております。それを見たから言っておるわけではないのですが、反面あまり買い過ぎて、家計に赤字が出過ぎて困っておるというような給料日風景のところもとっておりました。それを見た場合に、やはり消費に対して若干の——大臣のおっしゃるように、個人の消費に対して月給の何ぼ以上はいかぬとかいうことは法律ではできないと思う。できないけれども、たとえば二条に割賦販売定義がありますね、何回以上とか何カ月以上とかいうような。こういうところで金額等を、つまり何ぼ以上のものでどうとかいうような金額を、定義の中に入れるということは考えられませんか。
  52. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 この法案趣旨は、先ほど申しましたように別に割賦販売を特別に推進するわけではございませんけれども、現在取引の実情なり、あるいは経済の実情に沿って行なわれております割賦販売を、逆に特別に制限をするという気持も実はないわけでありまして、実際問題として、非常に安い商品がいわゆる個品割賦販売という形で行なわれているという例は少ないとは思いますけれども、それを一体どの辺の金額で、ということになりますと、立法的には非常にむずかしいと思います。そういう意味で、ここでは割賦販売の形式だけをとらえて、実態的に幾ら以上幾ら以下というような限定をすることは、立法技術的に非常にむずかしいと思いますので、そういうことは特別に考えておりません。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 そもそもこの法案を作る基本になったのは、百貨店の月賦販売が問題になって、流通部会で論議をせられて、その結果こういうのが出てきたと思うのです。そのときには、百貨店の月賦に関する限度ですか、ミニマムが千円とか三千円とかで、もめたと思うのです。そういうような点から考えて、そういう金額という点については全然無関心にはおれないのじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。
  54. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 経過的に申しますと、百貨店のチケット販売の問題から、この割賦販売法の問題になったのではございませんで、むしろ事実は逆に、割賦販売の問題をかねがね私どもの内部で検討いたしておりました。その問題を流通部会等におきまして検討をしていただいたのでありますが、そのさなかにおきまして百貨店のチケット販売の問題が起こったのであります。御承知のように百貨店とチケット販売の場合には、百貨店と小売商が競争する関係になりますので、その際に、同じ条件で同じ方法競争する場合に、百貨店の方にやや不利な制約をつけておくことが必要であろうという政策的な配慮で、あのような自粛策をとったのでありますが、あれは別段割賦販売の本質の問題ではないわけでありまして、この割賦販売法案そのものは、百貨店のチケット販売問題とは直接には関係なしに、それ以前から検討して参った問題でございます。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 その点は、割賦販売を論議しているときにたまたま問題が起きた、どっちが先か私も内部のことはよくわかりませんが、とにもかくにも百貨店の日信販と提携しての月賦の販売が、当委員会でも問題になった、それからこういう論議が急速に進んだ、私はそういうふうに理解しております。  それはそれとして、私は時間がないので一応これでやめて、あとあらためて申したいと思いますが、お伺いしたいと思うのは、これは前に局長に聞いたことはあるのですが、大臣のお考えを聞いておきたいと思います。と申しますのは、割賦販売法も要は流通秩序に関する法律だと思います。そうしますと、昨年本国会で論議いたしまして通過いたしました小売商業調整特別措置法、これも結局は流通秩序に関する法律だと思います。また先年通りました百貨店法、これも言うならば流通秩序といいますか、百貨店は大体小売ですから、そうすると流通経済に関する一つ法律だと思う。そうなってきますと、これらの関係法律との間の関連を考えていかなければならぬと思うのですが、立案に当たりましてそういう点等は十分お考えになりましたか。
  56. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これはやはりそういう一連の流通関係法案でございますので、もちろん考えております。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 そういたしますと、登録する場合、前払式割賦販売業者は、この場合やはりこの法案でいくと別に制限がないから、百貨店それ自体がやるということには、一応百貨店の業務としては疑問があるとしても、百貨店でもあるいは直接生産メーカーでも、登録さえすれば小売の前払式割賦販売業者になり得るわけです。あのとき論議になったのは、百貨店と小売との関係あるいはメーカーの直売の問題、そういうものが問題になったと思います。先日の参考人の意見によりましても、この法案通りますならば、メーカーの直接信用販売と申しますか、そういうのが盛んになって、いよいよメーカーとの間に系列化を作り、あるいはメーカーが第二会社を作り、そういうところでやらす、こういうことになりかねない。私はこの法律はますます小売商を圧迫してくると考えるのですが、たとえば小売商業調整特別措置法との関連においてどうなりますか。
  58. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この法案では十五条の規定に違反しない限りは一応許すことにいたしているのでございます。これをやりました場合に小売商にどういう影響があるかという問題は、これは別個の問題というわけではございませんが、私は経済全体が伸びていく場合において、必ずしも、小売商はいろいろな点で得るところがあるので、全体の政策としてよければ小売商にさしむき弊害はない、もしそういう弊害が出てくるような事態になれば、それはそのときにまた考えればいい、こういう考えでおるのであります。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 弊害が出ればそのときにということなんですが、この法案を見ただけで、はっきり言い得ることは、メーカーが登録を受けて直売をする、いわゆるメーカー信販という方向をたどることは明らかです。そういう点から、なるほど昨年の国会で小売商業調整特別措置法を論議いたしましたときに、われわれの主張が一〇〇%法案には盛れなかった。しかし少なくもあれは流通秩序の上においてメーカー、問屋、小売、これの間の範囲をはっきりしていこう、こういうことが一つのねらいであったと考えております。そういう点から見た場合、この法律との関係がもっと吟味せられることが必要であろう、このように考えるわけなんです。
  60. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 今御指摘のございましたこの法律とこの法案は流通秩序という意味で、もちろん関係はあるわけでありますが、ただ同じく流通秩序の中でも、この法案のいっております流通秩序と申しますのは、購入者販売業者との間の縦の関係の流通秩序をねらいとしておるわけでございます。つまり割賦販売業者割賦で物を買う方の人、縦の関係の流通秩序でございます。それに対しまして、今御指摘の百貨店法でありますとか、小売商業の調整法等は、小売商業者相互間の流通秩序の調整でありますので、今御指摘メーカーが直売するかどうかという問題は、ほかの小売業者に迷惑を与えないかという、横の利害の調整の問題であります。従いまして、この法案で横の調整、小売商業者相互間の調整をやるということは非常にむずかしい。それは小売商業調整法等、別途の横の調整法の方で運用せざるを得ないのではなかろうか、この法案趣旨としてはそういわざるを得ないという内容じゃないかと思います。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 流通秩序というか、その流れに対して、昨年の小売商業調整特別措置法の際にも、あなた方はわれわれとは若干見解が違っておる。しかしものごとを流通という上から見るなら、作られて中間業者を経て消費者へ行く流れです。要は生産から消費への道を流通というと思うのです。この場合、この割賦販売法案も対象は消費者なんです。そうすると、小売商業調整特別措置法は、なるほど小売と市場とか、いろんな関係があったと思うのです。しかしあのときに問題になったのは、メーカー、卸、小売、消費といく、この段階におけるいろいろの面が問題になったと思います。この点から考えて、流通秩序法の一つとしては、やはりその流通過程というものを考えずに論議はできないと思う。私はきょう十二時でなにしたいので、この程度にしまして、あとでまた続けて論議いたしたいと思います。
  62. 中村幸八

    中村委員長 この際、一時まで休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時二十五分開議
  63. 中村幸八

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  繊維工業設備臨時措置法の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。  前会に引き続き質疑を続行いたします。塚本三郎君。
  64. 塚本三郎

    塚本委員 大臣がお見えにならぬようでありますから、途中からの質問になると思いますから、ちょっと局長にはお答えにくいかと思いますけれども、できるだけそれに沿ったように御質問を申し上げてみたいと思っております。  御承知のように、業界におきましては為替・貿易の自由化ということを中心として真剣に取り組んでおります。おおよそ繊維業界はこれに対してはあまり賛成の機運ではなかったと思っております。しかし国際的趨勢の中では押え切ることができないという政府の意向にやむなく折れたという形ではないかと思っております。そういう形の中で、いかに業界が立ち上がっていこうかという場合におきまして、この設備の制限の問題が調整されてこなければならぬことは当然だと思っております。しかしもともとこの設備制限なるものの根本は、私どもが考えてみまするに、かつてのあの自由化ということに対して全然予想もしなかった当時におけるところの業界の不況克服のために、設けられたのではなかろうか、かように考えております。そうだといたしまするならば、一律にこの設備の制限をすべての繊維産業に——もちろん内容としては、数の問題では現状に合うようないろいろな操作を加えておるではございましょうが、一律に規制をするという段階は、もはや過ぎ去ったような感じがするわけです。たとえば綿の関係と羊毛の関係とは、一律にこれをそのまま規制を延期していくという形をとるべきが妥当であるかどうかということは、これは非常に大きな問題ではなかろうか。特にこれが日本の産業の発展ということとともに、もう一つ大きな柱は、やはり業界の育成にあったと思うわけであります。そうだといたしまするならば、綿と同じような形で羊毛がそのまま規制せられていることは困る、こういう意見が羊毛の業界には非常に強い空気として、国会の中にも反映されてきておると思っておりますが、その点は局長はどういうふうにお感じになっておられますか。
  65. 今井善衞

    ○今井政府委員 今お話のように、たとえば法律はAA施行ということを前提としないときのものでありますから、従って、紡績の中で、一律に規制するのはおかしいじゃないかというお言葉でありますが、実は紡績ということになりますと、これは御承知のように、糸をつむぐ段階でございまして、糸は綿糸あるいはスフ糸あるいは毛糸、それぞれ代替関係がございます。従いまして、あるものは規制し、あるものは規制しないということはなかなか困難かと思います。ただ、現実問題としましては、設備が若干異なるわけでございます。従って、たとえば綿については若干規制率が緩和されて、羊毛については規制率が強いというふうな状態は、現状に照らしましてやむを得ないかというふうに考えております。ただ、ただいま、羊毛につきまして綿と違うんだから、従って、規制率を緩和してもいいんじゃないかということになりますと、これは事実と逆でございます。現在綿糸紡績につきましては大体一割五分の格納をやっておりますけれども、毛糸紡績については、現状でも設備が非常に余っておりまして、一割五分の格納と、さらに一割五分の封緘、合わせまして三割の設備規制をやっておるような状態でございます。従って、今後やはり各業界の実情に応じまして規制を継続せざるを得ないというふうに考えております。
  66. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、業界の実情をいいますと、局長のところへ出てきております業界の意思というものは、規制してほしいという方が強く出てきておりまして、はずしてくれという意見は局長のところにはあまりきておりませんか。
  67. 今井善衞

    ○今井政府委員 これはもう少し具体的に申し上げますと、毛糸紡績の中に御承知のように一つの業界がございまして、梳毛紡績と紡毛紡績と二つございます。ただいま三割設備規制をしておるというのは、これは梳毛紡績でございます。ところで、実は繊維産業全般は世界のレベルに比べまして非常に競争力があるのでございますが、遺憾ながら紡毛紡績だけにつきましては、たとえばイタリアだとかイギリス等に比べまして、決して競争力が強くない。もしこの繊維製品の自由化という段階まで将来進むというようなことになりますと、紡毛紡績につきましてはやはり相当の問題があるということで、何とかほかの紡績に転換したいという要望がございまして、私どももそれはもっともだということで、紡毛紡績につきましては合繊紡へ一部転換の機会を与えまして、話を進めている最中でございます。
  68. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、自由化のこの際だからはずしてくれという意見は、局長のところへはほとんど出てないのですね。
  69. 今井善衞

    ○今井政府委員 本法を改正するに際しまして、一部毛糸紡績の方から、本法の改正に反対であるという意見が、数カ月前にございました。これは梳毛紡績ではございませんで、紡毛紡績が自分の将来に不安を感じまして、何とか局面を打開したいという意味合いで、そういう話が参ったのでございまして、いろいろ懇談いたしまして、この際やはりそれ相当の理由があるから、従って将来性のある合繊紡に転換の機会を与えたいということで、今業界と話し合いもし、そういう方策をとっているわけでございまして、その後におきましてさような声は一切解消したというふうに私どもは考えております。
  70. 塚本三郎

    塚本委員 局長のもとに届いているかどうかは知りませんが、「羊毛自由化の場合には設備規制を廃止されたき理由」あるいは「羊毛輸入の自由化の場合には設備規制を撤廃されたき理由詳述書」こういうものが、国会にはたくさん参っておるわけです。その問題についてはすでに解消したというふうに局長は理解しているわけですか。
  71. 今井善衞

    ○今井政府委員 それが出されましたのはたしか二月でございまして、その後いろいろ話し合いました結果、その問題は解消したというふうに私は了承しております。
  72. 塚本三郎

    塚本委員 それではお尋ねしますけれども、実はこの設備制限という問題と自由化の問題であります。これは局長ではどうかと思いますけれども、根本的に今日何か設備制限そのものに弱肉強食を非常に強く感ずるわけでございます。といいまするのは、制限の内容が——もちろんこれは当局者としては非常にむずかしいことだろうとは想像いたしますが、御承知のように設備に対する能力が非常に違うわけでございます。それを一律に台数あるいは錘数で、これを規制するということになりますと、生産量が一割や二割の違いならいざ知らず、ひどいのになると、織布のごときになりますと、一対三ぐらいの割合になっていると聞いておるわけです。こういう問題を今後どのようにしていかれるか、この点はどうでしょうか。
  73. 今井善衞

    ○今井政府委員 ただいま織布の話が出ましたけれども、織布につきましては中小企業団体法の方でもって設備制限をやっておるのでございます。この法律で織布と関係がございますのは、織機を廃棄する段階だけでございまして、この法律でいわゆる格納等の設備制限をいたしますのは、主として紡績段階ということになっておるわけでございます。ただいま設備を制限することによって弱肉強食になっていはしないかというお話がございましたが、私どもは決してさような現象がこの法律効果として主として出てきているというふうには考えておりません。と申しますのは、この法律目的は、設備規制を行ないますことによって、目標年度たる数年後におきましては設備の過剰がない状態にしたいということで、その経過的な期間設備規制を行なって、繊維工業全体の合理化、さらに安定化を果たそうということでございまして、従いましてもしこの法律がなかりせば、この産業自体の安定化というものは保てない。おそらくその際に倒産というふうな現象を通じまして、新陳代謝が行なわれていくというふうな格好になるわけでございまして、従いまして私どもはこの法律によって合理化なり安定化をはかる。その安定化ということは、業界全体が受けるわけである。たとえばもしかりに大きな企業だけの立場から言いますれば、AAに臨んでは、むしろ設備規制なんというのは、あればかえって自分のじゃまになるというふうな意見もあるのでございますが、しかしもしさように全くの自由競争にゆだねるということになりますれば、かえって弱肉強食というふうなことになりまして、業界の混乱は激しくなるんじゃないか。従いましてこの法律を改正し持続することによりまして、業界の合理化、安定化をはかることによって、むしろその業界の比較的中小のものが安定した経営ができる、かように考えておるわけでございまして、業界の大勢と申しますか、たとえば綿糸紡績でも、いわゆる新々紡という比較的小さな規模の業界がございますが、これはまあ一致して、この法律の改正を望んでおるわけでございますし、それから羊毛業界におきましても、一部さような意見は、先生のおっしゃるようにございましたけれども、今では一致しましてこの法律の継続を望んでおるわけでございます。
  74. 塚本三郎

    塚本委員 先ほどの羊毛の件は、業界がそういうことで了承しておるということなら、私もそれはもちろん了承いたしますが、今私が御質問申し上げたのは、この規制によって弱肉強食の姿が現われておりはしないか。と申すのは、もちろんすべてをオープンにしてしまったらもっとひどい弱肉強食があったであろう、このことも想像はできると思います。しかし今日の中小企業の保護育成という段階から考えてみまするときに、今局長が説明しておりまするように、全くオープンな立場と、現在のいわゆる制限の立場とだけを比較するということではなくして、現在の設備制限、この問題はもっと内容を検討する段階にきておりはしないか。と言いまするのは、今日私たちの地方におきましてもそうでございますが、機械の台数ということで制限をしておりますると、やはり能率の悪い機屋さんと能率の非常に高い紡績を同じ一台として換算されまする場合、能率の点からいきますると、一対三くらいになっておると聞いております。そういたしますと、もはや紡績には太刀打ちすることはできないということで、日本産業全体としては、確かに局長の立場からいえば、これは混乱を防ぐということや、あるいはまた産業を伸ばしていくという意味から、総生産量としてはいいかもしれません。しかしながら業者の立場から考えてみますると、これも一台ならこれも一台ということで、いわゆる織るヤール数は千三百メートルと四千メートルというような違いのあるものが、同じ一対一で許されておるという形になりますると、しかもこの機械自身に譲渡が認められておるということになりまするならば、もしかりにこの機械を買い受けて、新しい機械に紡績がかえたといたしますと、これの一台ということが、実際には三台を認めたということと同じ結果になりゃしないか。こういうことは現実に業界の中にすでに波紋を描いておって、そういうことから小さな機屋さんが、大紡績の下請という形で系列化せられてきつつある、こういう現状を局長はお認めになるかどうか、この点どうでしょうか。
  75. 今井善衞

    ○今井政府委員 ただいま御質問の点は、中小企業団体法によりますところの織機の制限でございますが、実はお言葉を返すようで恐縮でございますが、事実は必ずしもそうではないのでございまして、機屋さんと紡績が兼営しております織機につきましては確かに能率は違うのであります。ところがいい悪いは別といたしまして、労働条件その他が違いますので、むしろ紡績はいかにして自分自体織布というものをやめまして、そして今お話のございます織布専業者に自分の糸を供給しまして、織布をしたいという傾向があるわけでございまして、これは先般の、昨年行ないました織機の供出におきましても、そういう事実が認められるのでありまして、紡績は自分の能率のいい機械を自分の系列下にあります織布専業者に渡しまして、そしてその設備の入れかえをやってもらうということが、現に行なわれておるのでございます。従いまして今紡績兼営の織機とそれから織布専業者とどちらが採算がいいかということになりますと、さような機械設備の能率の問題があるにもかかわらず織布専業者の方がいいのであります。紡績は何とかして自分の織機をとめまして、優秀な織布業者と連携を保ちたいということでやっきになっておるわけでございまして、それが一つ方向として場合によって系列というふうな面も出てきておるのであります。この系列の問題につきまして、系列が抽象的に悪いんだとか、中小企業の地位というものを非常に悪くするんだというふうな見方もあるかと思いますが、現実問題は御承知のように、機屋さんは紡績の系列にいかに入るかということに夢中になっておるような状態でございます。と申しますのは、結局御承知のように、繊維製品は非常に輸出に依存するわけでございまして、その場合に大きな紡績のチョップというものは外国に対して銘柄が通っておるわけでございます。従って紡績のチョップということで輸出しました場合には、値段が相当有利になるという問題のほかに、一たん不況が来ました場合にやはり紡績との系列にあった方が企業経営が安定するという関係で、善悪の問題は別といたしまして、むしろ系列化を織布専業者が望んでおるというふうな現象でございます。私どもは、いい悪いは別といたしまして、そういうことが行なわれておることはやむを得ないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  76. 塚本三郎

    塚本委員 そういたしますと、その系列化ということは、確かに業者も現在の場合としてはそういう形はやむを得ない形で、むしろ望んでいることは事実認めざるを得ないと思っております。しかしそうなりますと、中小企業がやはり中小企業としての独自性を生かすということよりも、それは単位としては独立性を生かしておりまするが、製品としての独自性とか、あるいは企業としての独自性を生かすということよりも、現在中小企業が非常に苦しい立場にあるから大企業の袖の下に行こう、これは繊維業ばかりでなくて、一般のすべての中小企業が、今そういう形をねらって系列の中に何とか入りたいという形になっていると思いますが、これは今の局長のお話ですと、どちらともとれるような御答弁がありましたが、将来やはりそういう形でいくことはやむを得ないのだという立場で指導しておられるのか、あるいは織布の業者はこういうふうにあらねばならないのだという基本的な態度を持った上で、現在としてはいたし方ないという形なのか、その点はどうでしょうか。
  77. 今井善衞

    ○今井政府委員 これは私の私見でございますが、現状におきましては、織布団体におきましては縦の系列化、それから横の団体法による組織化、二つが織りなされていくことが妥当ではないか。と申しますのは、系列化ということになりますと、どうしても比較的優秀な機屋さんが系列に入ることになりまして、その系列の選に漏れましたものがどうするかという問題になるわけでございまして、現実の問題としましては、いい悪いは別にいたしまして、縦の系列化、それから横の組織化というものが織りなされていかなければならないと考えております。ただずっと長い将来の問題になりますれば、おそらく中小企業独自の判断でもって経営ができることが望ましい状態になるわけでございます。これはおそらく完全雇用の問題にからみまして、完全雇用が進むにつれまして中小企業の経営は自主性と申しますか、独自性を回復するのではないか、かように考えている次第でございます。
  78. 塚本三郎

    塚本委員 現在の企業の姿と、特にマスコミの力によりまして紡績がシャツの宣伝まで今しております。こういう子供の口にまで、紡績の宣伝によって、シャツの宣伝がなされるという状態の、このあふりの中で生きられないから、いたし方なくほんとうに優秀なものこそ独自性を発揮した企業にいくべきであるというふうに私たちしろうとは考えるのですが、その優秀なものでさえも生きることができないから、同じ仲間をけ落して系列の中に入っていこう、こういう中小企業者の苦しみを味わっているのではなかろうか、こんなふうに地元で見ていて私どもは想像するわけです。彼ら自身では一企業のおやじであるという自負心のもとにやっていきたいけれども、十大紡の名前をしかたなしに口に出して、そして下請のような形になっておる。こういう形が中小企業の中の姿として正しいとは私たちは思われないわけです。だからこの際そういう点、もう少し分野を明確にするために、この規制法と直接には関係ないかもしれませんけれども、しかし現在の姿としてはそういう形にでもしていかないといけないというふうなことを、私たちは考えるわけです。その点どうでしょうか。
  79. 今井善衞

    ○今井政府委員 ただいまのお話は綿関係の機屋さんの問題だと思います。綿関係の機屋さんにつきましては、御承知のように二十年ぐらい前から、戦前からある程度の系列が行なわれておったのでございます。最近それがまたひんぱんになって参っておりますけれども、系列は前からあったのでございます。  ところで福井、石川、これは絹、人絹の産地でございますが、そこは数年前にはほとんど系列はなかったのでございまして、機屋さん独自の考え方で織物を織っておったのでございますが、それが非常に不況の際に大きな打撃を受けまして、むしろ系列化した方が企業として安定するのではないかという声が、機屋さんの方から起きまして、現在はほとんど綿と同じ程度に系列化が進みまして、それがむしろ産地の安定をもたらしているということになっておるのでございます。従いまして、先生のおっしゃるように、もちろん系列化ということは、一面においてそれだけ中小企業の自主性が発揮できないという点があって残念なことだとは思いますけれども、しかし経営の安定という面から申しますと、やはり今のような非常に設備が過剰である、ほうっておきますとお互いに非常に競争が激しい場合におきましては、ある程度系列化によりまして金融のめんどうだとか、あるいは設備改善のめんどうだとかいうことを、親企業から見てもらうことによってその製品も向上し、販路も拡大していくという傾向はやはり否定できないのじゃないか。それによりましてかえってその産地全体の経営が安定すればこれはやむを得ないのじゃないかというふうに考える次第でございます。
  80. 塚本三郎

    塚本委員 不況のときは確かにそれでいいと思うのですけれども、今度好況になった場合において独自のそれを発揮しようと思っても、逆にまた糸という立場からそういうものが制限を食ってしまって、中小企業としての特質を伸ばすことができない。今はやはり局長がいわれたようにやむを得ないということですから、もっとはっきりとこの際、不況のときにはそれが非常に助かるということで——これは繊維の産業ばかりでないと思うのですが、しかしながら好況のときに、それではどうするんだというふうなことを考えてみたときに、もう抜き差しのならない、すべてぴしゃっと整ってしまっておるというふうな形で、何か独占的な事業にそれが陥ってしまうということで、せっかく原料の自由化とか、こういうことが外にうたわれておりましても、国民には一向にぴったりこない。それは国際貿易の中における外国との二重価格制を糊塗するための一つの手段であったにすぎないというふうな形にさえも感じてしまうようなことになりはしないか。その点はどうですか。
  81. 今井善衞

    ○今井政府委員 これは確かに系列化の状態におきましては、不況のときにはそれだけ系列にある機屋さんとしてたえ得る抵抗力が出るのでございますが、好況のときになりますと、やたらにはもうけられないと申しますか、不況のときよりはもちろん織り賃はずっと上がりますけれども、それほどとっぴな値上がりはしない。むしろ利潤が好況、不況を通じまして下請企業でも平準化されるということになっておるように思います。これはもちろん好況のときには青天井でもってもうけが得られるけれども、不況のときにはどうなるかわからぬという状態より、やはりその企業として安全度が高いために、系列化をむしろ欲しておるのじゃないかというふうにわれわれは考えておるわけでございます。  ところで原料が自由化されました場合に、今のような状態のままにほうっておくと、かえって中小企業が困るのじゃないかというふうなお話でございますが、私ども実はその点については違った意見を持っておるわけでございまして、これは原料自由化に踏み切ります際におきましても、先ほどお話がございましたように、機屋さんとして非常に影響を懸念しまして、むしろおっかなびっくりであったというふうに考えるのでございます。ところが踏み切りました後におきましては、私は機屋さんで自由化に反対するという声を、いまだかつて聞いたことがないのでございます。と申しますのは、今までの原料の割当が紡績にいわば特権的地位を付与しておった。ところが自由化になりますと、それによりまして、紡績としてはそういう特権的地位はなくなりまして、いかにして買手にサービスするかというサービス競争ということになりまして、その結果過剰設備があるということも手伝いまして、糸の値段が非常に下がっておるという状態に現在なっておるわけでありまして、約半年前に比べますと、現在の糸はおしなべて三割くらい下がっております。ところで織物の値段はどうかと申しますと、織物はやはり非常に広い輸出市場を持っておるわけでございまして、主として織物の形で輸出されるわけでございますので、海外がむしろ織物の相場をきめるというふうな形になっておりまして、糸はさように三割も下がりましても、織物の値段は一向下がらないという状態になっておりまして、それだけ機屋さんの加工賃が非常に上がった。現在御承知のように綿機屋につきましては、むしろ非常な好況を謳歌しておるというような状態になっておるわけでございます。これは過渡的な極端な現象かと思いますけれども、しかしやはり本質的にはそういう状態がある。つまり今までの紡績の特権に裏づけせられた中小企業の方からいいますと、糸高の製品安ということが、今度はむしろ糸安の製品高という現象が潜在的にあるのではないか、さようなことからいたしまして、原料の自由化に関する限り、機屋さんの地位というものは、むしろ総体的に以前よりは向上しておる。従いまして、それによりましてある程度系列化というものが従来よりかりに促進いたしましても、加工賃は従来よりも相当大幅に上がるのではなかろうか、従って中小企業である機屋さんの地位というものは、今までよりはよくなる、かように考えておる次第でございます。
  82. 塚本三郎

    塚本委員 私が申し上げたのは、自由化によって機屋さんが困るということを申し上げたわけではないのであって、確かに局長が言われる通り、自由化せられたことによって機屋さんはいいわけです。しかし今申し上げたような系列化が進んでいくということについて、せっかくいいにもかかわらず——確かに収入という意味では安定しておるかもしれませんが、自由化というものの特質を考えてみますと、自由化であるにかかわらず、系列化が進んでいくということ自身は、これは何のために自由化したかわからないような形で、だからせっかく自由化によっていいものも、系列化によって頭を押えられていくということ、さらに自由化せられることによって系列化が進むということになると、逆に中小企業の特質がだんだんなくなる。大体自由化自身が中小企業の特質を出すということに大きな意義というものを認めていくべきではなかろうか。ところが、一方それを押えるために系列化させていくという形になると、一時はぱっとよかったけれども、ずっとまたこういう言いわけ的な形で、申しわけ的に、外に向かっては自由化の形を整えてきたけれども、中においてはきちっと抜き差しならない形に追い込んでいくということで、そういう形は、過渡的段階としては、現在の実情からやむを得ないかとも考える。やはりこの点系列化ということに対する考え方というものは、もっと慎重に考えていかないと、自然とそういうような業者が喜んでそちらになっていくということになってくると、自由化ということに対する機屋さんたちの特質が出てこなくなってしまう。その点は不安を感じられませんか。
  83. 今井善衞

    ○今井政府委員 自由化というのは、これは申すまでもなく国の制度として今まで原料割当という形がありましたのを、今度それをやめまして、一切経済関係国内の流れをまかせる、この設備が非常に過剰でございますので、設備規制だけはいたしますけれども国内取引関係経済関係にまかせる。その結果何と申しますか、先ほどちょっと触れましたように、もし自由化ということになりますれば、経済の動きの変動の幅というものが大きくなる。それに対して不安を感じますところの機屋さんはもっと安定した地位を望みたい、従って自由化による混乱がどういうことになりますか、とにかく混乱、わが身に振りかかる火の粉というものを防ぎますために、むしろ大きな親企業と連携をしたいという、むしろ親企業中小企業の自由なる意思に基づきます結合と申しますか、あるいは協力関係と申しますか、そういうことでございまして、政府がそれによって系列化を意識的に進めるというふうなことではなく、経済関係によりまして自然にさような状態が現出するということであろうと思います。ただいま御質問のように、そうなりますと、せっかく中小企業として独自性、特質があるにもかかわらず、それが薄れるのじゃないかというお話でございますけれども、これは系列化によりまして、たとえば品質はもっとよくなるということが言えるのじゃないか、染色関係につきましても、新しい染色方法あるいは新しい染色設備等を取り入れる場合に、中小企業独自の力でやるよりも、やはり大企業の指導なり援助を受けながらやった方がいいという面もございますので、従ってそういう面で中小企業が不利に立つということはないのじゃないか。ただ何と申しましても、自分の自由意思でもって経営ができなくなる、親企業の意思によりまして、場合によっては、自分はこうやりたいという場合に別のことをせざるを得ないというふうな、自由企業のいい特徴というものは一部失われるわけでございますが、これは私は決していい状態じゃないと思います。しかしそれによりまして、自由化による混乱を自分の企業の立場から最小限度に取り除くためにその系列化を望むのであれば、その際は国としてもやむを得ないのじゃないかというふうに考える次第でございます。
  84. 塚本三郎

    塚本委員 局長の話を聞いていると、悪い言い方をすると何か植民地根性のような感じがする。そういうことをひしひしと私は感ずるわけであります。というのは、局長の先ほどのお話ですと、大企業でも織布というものはあまり得じゃないということで、中小企業のその特質を認めて、そうして中小企業にまかせておるという現状の中でありながら、国際的な自由化によるところの荒波の中で、彼らが大企業の中に身をひそめなければいけない、こういう形で行なっておる。しかもその内容は何だといえば、仕事の部面と、そしてまた資金の部面でなかろうかというふうに思うわけです。こうなるとこれは企業の問題というよりも、やはり業界に対する政治的な施策の問題、これが決定的な力を持ってくるのではなかろうか。もちろんこの業者にこれだけの仕事をやれということは政府の力ではできませんけれども、やはり根本的に中小企業が能率を上げるなり、あるいはいい品物ができて、その特徴と個性が現われてくる、ここに日本中小企業の強さというものがあるとともに、それが性質じゃなかろうか。だからこそ一律主義の紡績の中で織布が戦い抜くことはなかなかむずかしいということで渡しておきながら、逆に資金の面と仕事の面で上からしぼり上げてきて、そうして自然と大木のもとに雨宿りするというような形が中小企業の中に現われてくる、こういう姿を繊維局長の立場から見ておられて、私は、悪い言い方で恐縮ですけれども、こういう場合にやはり中小企業の持つ独自の生産の力と技術、こういうものを中小企業としても、連携を保つことはいいですけれども、そのことによって中小企業の生命を奪ってしまうような形に、系列という名前のごとく、独自性というものを発揮できない形にするよりも、やはり今からそういうことに対して資金の面であるとか、仕事の面であるとかいうことに対して、はっきりと中小企業の産業というものの分野を確保する、そういう法律的なことを考える必要があるのじゃなかろうか。あるいは資金の面でも、従来にもましてこれらの問題に対して実際は実力があるのだから、資金面そしてまた仕事の面でもって、生産ということよりもつながりという面で生きていかなければならないというところに、中小企業の今日の悩みがあるのではなかろうか、これを伸ばすということのお考えがあってしかるべきではなかろうかというように私は考えるのですが、どうですか。
  85. 今井善衞

    ○今井政府委員 ただいまお話しの点は、紡績と中小企業である専業者の仕事の分野を分けたらどうかというお話もあったと思います。紡績はたとえば自分の兼営織布をやめて、そうしてはた関係中小企業の方にまかせるというふうな線を、国として産業政策的に打ち出したらどうかというふうな御意見もあったと思うのでありますが、実は専業者には前からそういうことを望む声もあるわけでございます。ただ実際問題といたしまして、現在織布の三分の一は紡績がやっておるわけでございまして、あとの三分の二をこの専業者たる中小企業の機屋さんがやっておるということであります。紡績の織布というのは非常に大量生産で無地ものをやっておるのでありまして、海外にそういうものを出しておった、今まではそういう存在理由がございましてやっておったのでございますが、だんだん大量生産じゃなくて、変わり織りと申しますか、それぞれの品物について非常に特質のあるものが、国内におきましても輸出につきましても要求されるということになりまして、先ほど私が申しましたように、むしろ紡績自体も機会があれば、何とかして自分の方の織機というものは縮小して、専業の機屋さんに頼みたい。その専業の機屋さんに頼みたいという形が、一部は糸でもって自由な形で売るというようなことになると思いますが、一部はお互いに協力関係と申しますか、系列化を深めまして、そういう品物を作っていきたいという動きになっておるのでございます。ところで自然の流れというのは、今申しましたように、紡績の方は漸次そういう織物を織ることは中小企業である機屋さんにまかせまして、自分たちの事業はできれば縮小していきたいという気持にあるわけでございますが、国が法律でもって一挙に、たとえば紡績は紡績だけにしろ、あと織布は中小企業に適する仕事であるから全部機屋さんにまかせろということは、あまりにも大きな変動になりますし、またはたして結果が妥当であるかどうかということになりますと非常に疑問でございまして、しばらく情勢の推移をながめながら、さような事態に落ちつく方がわれわれとしてはむしろ望ましい姿であるというふうに考えておる次第でございます。
  86. 塚本三郎

    塚本委員 それでは局長としても、やはりそういう形に落ちつくことは望ましい。それからまたできるなら、一挙ではないけれども徐々にそういう形で、中小企業産業の分野を確保する方向に指導していくということについて確信を持っておいでになるわけですね。
  87. 今井善衞

    ○今井政府委員 先ほど申しましたように事態はさような方向に動いておりますが、さような方向というのは望ましい方向であり、これは時間がどれだけかかるかわかりませんけれども、望ましい方向ができるものと期待しておる次第でございます。
  88. 塚本三郎

    塚本委員 それではその問題はけっこうです。  もう一つだけお伺いしておきたいと思いますが、それはこの設備の制限をすることによっていろいろな問題が出てくることでしょうが、先ほどの、三分の一は紡績が織布を持っておるということですが、現実には三分の一であっても、これが能力の点でいくと三倍ですから、同じくらいの生産量を上げておる、こういうふうに私たちは見ておるのでございますけれども、そうなりますと、大体そういうことを予定して、その設備に対する制限台数というものを見ておられたかどうか、この点どうですか。
  89. 今井善衞

    ○今井政府委員 能率的に申しますと、たとえば紡績の最優秀な機械というものは、機屋さんの一番悪い機械に比べて三分の一というふうなものもあると思いますが、紡績の持っておる設備は全部いいんだ、機屋さんの持っている設備は全部悪いんだということではございませんで、平均的に見ますと能率の差というものはそれほどじゃない。従いまして生産の多寡から申しましても、三分の一がもう少しよけいできておるという程度でございまして、決してさようにおっしゃるほど大きな開きはないわけでございまして、生産量もほとんど設備に比例している程度でございます。特に紡績は自分の持っておる織機のうちで相当部分を現に持ちながら動かしていないという紡績が非常に多いのでございまして、むしろ機屋さんに仕事を頼みまして自分の方の工員、労務者は紡績に使って、自分の方の機場の方から人を浮かしておるというのが非常に多いわけでございます。従いまして決して紡績が能率がいいから全部動くということじゃなくて、むしろかえって紡績の方がいかにして専業の機屋さんの方に仕事を渡すかということにきゅうきゅうたるような状態でございます。
  90. 塚本三郎

    塚本委員 何か局長の話を聞いておると、ばかにうまいような話ですけれども、現実には、私たちの地方で見てみると、あの終戦の大混乱のときに生まれた子が中卒であるということから、ことしは特に工員が激減しておる。特に私たちの町では鹿児島まで探しにいくんですけれども、それでも予定の半分ぐらいしか見つからないというようなところです。二、三年たつとまた戦後のベビー・ブームの子がたくさん卒業してきますから、この事態を待つためにとめておるという状態で、人がないから、紡績と織布を比べてみると、もうけが大きい紡績の方に持っていって、もうけの少ない織布のものを今機屋さんの方に渡しておる。こういう人的な問題に中心があって、局長が申されるように、中小企業をわざわざ育てるという気持は紡績にあるとは思わぬし、そこまで望むのは無理だと思いますけれども、今局長があげておるようなそういうような形で、何とか中小企業に渡そうという立場でなくして、現実には工員が、ことしの中卒というのはないというところから、やむを得ず織布の人たちまで紡績の方に持っていく。能率からいってもそれは損です。それを持ってきて織布をストップさせて、仕事を機屋さんの方に渡す、これが実情のように私たちは見ておるのですが、どうでしょうか。
  91. 今井善衞

    ○今井政府委員 ことしの中学の新卒、これは機屋さんも紡績も非常に求人難に陥っておるのでございますが、ただいま私が、紡績の方としては何とかして機屋さんの方に仕事を回したいと言うのは、これは労務問題が起きる前からの話でございまして、二、三年前からそういう傾向が非常に顕著なのでございます。と申しますのは、結局自分のところでもって織物を作るよりも、優秀な機屋さんにやってもらった方が安上がりになるという、主として採算関係からそういうような傾向が非常に顕著なのでございまして、ただいまむしろ機屋さんの仕事が少ないので、紡績としては困っておるという状態でございまして、むしろやはり何とかして機屋さんの方に仕事をしてもらいたいというのが、これはどの紡績でもそういうことを申しておるのでございます。それが実情だろうと思うのございます。
  92. 塚本三郎

    塚本委員 もう一つだけお尋ねしておきますが、そういたしますと、地方の機屋さんたちが言っておるように、紡績の能率というものと、機屋さんの持っておる織布の能率の差というものは、そんなに大きいことは——実質的にいって設備の台数に比例した生産であって、三倍も上げているということは、これは実際大きい言い方であって、現実の実情にはそぐわない状態だ。従ってその機屋さんの意見というものや、あるいはもしこれが譲渡性があるということでもって機屋さんの機を買って、紡績がこれは優秀な機械であるからといって、その優秀な機械にかえて生産能率を上げて、そうして既成のぺースをくずすということは、これは全然あり得ないことで、心配するに足りないというふうに見て差しつかえないと断定できますか。
  93. 今井善衞

    ○今井政府委員 結論を申しますと、そういうふうに断定して差しつかえないと思います。現実に紡績の方の機械台数というものは減っておるわけでございまして、むしろ系列の機屋さんの方に紡績が機械を譲渡しておるというのが現状でございまして、機屋さんの方から設備を買って、そうしてそれを入れかえて合理化しておるということは、まずまずないというふうに断定して差しつかえないと考えております。
  94. 塚本三郎

    塚本委員 その点がどうも怪しいので、確かにそういうことだけならいいけれども、実際労働組合等の労働攻勢を防ぐために、自分のところの紡績の中で織布をやっておるよりも、新しい機械でいい設備のもとに機屋さんに貸し与えておいて、そうしてここでは低賃金でもって能率を上げようという形の労働問題の悪い意味からするところの系列化というところに逃げておりはしないか、こういう心配があるのですが、局長はその点いいふうにばかり解釈しておるように、われわれが考えて申しわけないのですけれども、私たちが見ると、何か低賃金で機屋さんのところは非常に無理して、しかもおそくまでやって、いろいろな悪い条件の中でも、近所の子供を雇っておるとかおばさんを雇っておるとかいうことによって、その悪い条件を克服しながら機屋さんはやっております。こういう状態の中でいわゆる紡績の賃金等が、いわゆる労働運動で比較的正しいレベルに上がってきておるという中でやるよりもいいということで、逃げる手段として機械を貸し与える、こういう形で逃げておるというように想像されるんですけれども、そういう悪い意味じゃなくて、ほんとうに中小企業と大企業との正しい関係において、それが大企業中小企業との企業の得失とその能率、こういうことだけを中心にして考えたということよりも、何かそこに暗い逃げ道のために、資金関係を系列化の方向に持っていく力に使っておりゃしないか、こういうふうな想像は杞憂だというふうに断定できますか。
  95. 今井善衞

    ○今井政府委員 機屋さんの方が紡績より低賃金でありますので、逃げる手段に使っておるのじゃないかというお話でありますが、現状におきましては確かにそういう面もあると思います。ただ最も大きな理由といたしましては、先ほど申しましたように国内市場におきましても、あるいは海外市場におきましても、繊維品の嗜好が変わって参りまして、今までたとえば紡績の作っておりますものは、大量生産のきく白生地でございましたが、御承知のように現在は変わり織りと称しまして、非常に複雑な織り方のものが中心になっております。従いましてそういう複雑な織り方という場合に、紡績は大量生産がなかなかききませんで、むしろ適当な経済規模の中小の機屋さんに、そういう変わり織り、変わった織物の高級品を織ってもらう傾向が非常に顕著になっておるわけでございます。従いましてむしろその後者の方が中心になって、さような状態が進みつつあるというふうに考えております。
  96. 北條秀一

    ○北條委員 関連して。今井さんの話を聞いていますと、万事いいことずくめで——ただそういうふうにいい面ばかりを見る考え方もいいと思うのですけれども政策の面になるとそうはいかないと思うのです。あなたが言われるように、貿易自由化に関連して、国内でも全部自由競争でやっていくんだ、その中で大資本の紡績と中小企業の機屋とが系列化してくるということなんでありますが、それも確かに今はいいかもしらぬ、当面はいいかもしらぬが、一たびそういう関係ができ上がりますと、今度は大資本の方でその次にくることは中小企業に対する支配だと思うのです。そうなってくると、糸の値を上げようと下げようと、これは自由自在になってくる、こういうふうに考えられるのです。そこで、大体この法律は、繊維業界の不況を克服するために設備の規制をしようとしたものだと思うのですが、今のように今度は景気が上昇してきたという際には、元来立法の精神からいえば、この法律は全部解消すべきが本質だと思うのです。それを政府は逆に立法の趣旨をいわば換骨奪胎して、今度は別な方でこの法律を生かしていこうというところに、私は非常に危険を感ずるのです。そういうことを言っていますと長くなりますから、また別の機会に言いたいと思うのですが、今お話を聞いておりますと、不況対策として作った法律を、今度は別な目的に転換しようとされておるのですが、それならば、中小企業の問題ですが、小さな機屋さんに商工組合を作らしたらどうか。そこで、一つはそういった機屋さんの方で、商工組合は今までできておるところがあるのか、あったらそれをお知らせ願いたいということと、そういった中小企業が今後生きていくために、体質を改善するという点から、商工組合を大いに奨励すべきじゃないかと私は考えるのです。また、商工組合を作ることによって、大企業と十分に対抗していけるように指導していくべきじゃないかと考えるのですが、その二点について御答弁願いたい。
  97. 今井善衞

    ○今井政府委員 まずこの法律が不況対策ということで、できたんじゃないかというお話でございますが、この法律目的にもございますように、必ずしも不況対策ということでできた法律じゃございませんで、実は紡績段階といわず、あるいは織布段階といわず非常に設備が過剰である、従いまして、設備が過剰のままほっぽっておきますと、過剰生産の結果、たとえば輸出につきましてダンピングというふうな非常に悪い現象が起こる、そこで設備が一定期間ふえることを押えまして、その過剰度がなくなった場合に法律をやめたいという、いわば業界の合理化、安定化のために作られた法律でございまして、一時的な不況対策という意味合いでできたものではなくて、むしろ長い目で見ました繊維産業の構造的な矛盾というものを、いかに合理化していくかということでできました法律でございます。従って、私どもこの法律運用するにあたりましても、そういう単なる不況対策に堕することなく、慎重にやりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから機屋さんの段階で、商工組合はどういうふうになっておるかというお話でございますが、商工組合は非常にたくさんできておりまして、おそらく繊維関係中小企業の段階の大部分というものは、何らかの商工組合に加入しておるという状態になっておるわけでございます。私どもといたしまして、もちろん中小企業の体質改善ということは非常に力を入れて、従来もやっておりますし、たとえば、いわゆる中小企業の設備近代化補助金というようなものは繊維関係に非常にたくさん——絶対額はそうたくさんじゃございませんけれども、全体の割合から申しますと、繊維関係に非常にたくさんちょうだいしておりまして、あの制度として繊維ばかりあまりかわいがり過ぎるんじゃないかというふうな非難すら受けておる次第でございます。それは別といたしまして、いずれにいたしましても、商工組合を中心としまして組織化を進め、団結を強めて、そうして中小企業全体の地位というものを向上させなければならぬというふうに考えておる次第でございます。しかしながら、商工組合でもってやりますのは、たとえばその業界の設備を合理的に押えていくというふうな問題とか、あるいは中小企業の段階の商工組合では、生産制限を行なって、そうして自分たちのところで非常にコスト割れのような、そういう悪い状態がこないようにという予防的な措置もやっておるわけでございます。ただ、いずれにいたしましても、それはあくまでも横の関係でございまして、先ほど来問題になりました縦の系列化というものと矛盾なくできるんじゃないか。たとえば輸出なんかにつきまして、非常に銘柄の通ったりっぱなものにつきましては、むしろ今系列の形で、親企業中小企業が協力しまして輸出をやっておるような状態でございまして、そういう輸出の面とか、あるいは品質の向上というような形になりますと、むしろ縦の系列化ということが、ある程度効果を持っておりまして、横の団体化と申しますか、団結ということについて、業界全体の不況が起こらないように、その団結の力によりまして下をささえておるとか、あるいは体質改善等につきまして、合理化補助金等を利用して体質改善に役立たせるというふうな関係になるわけでございまして、その間矛盾はないんじゃないか。われわれとして商工組合の組織化は、一段と力を入れていきたい、かように考えております。
  98. 北條秀一

    ○北條委員 現在相当に商工組合があるというお話でございましたが、それは過当競争を自主的に規制しようという理由で、今まで商工組合の設立をあなたの方は許可されておると思うのですが、今までそれについての資料を出しておられればいいんですが、もしまだ未提出でしたら、その資料を見せていただきたいと思うのです。  それからもう一つ、私最後に先ほど言いました問題で、中小企業全体としての体質を改善するために商工組合を作らすべきではないか。過当競争の状況は今日もなお続いておると思う。従って、自由化のテンポに中小企業者がよく合っていくように、彼らみずからが自主的な規制をするために商工組合を奨励する、作らせることがいいと考えるが、あなたの方はこれから商工組合の設立の申請があったときにはそれをどんどん許可する方針でございましょうか。
  99. 今井善衞

    ○今井政府委員 まだ資料は提出してございませんので、至急提出いたします。  それから、商工組合はもちろん私どもとして育成する方針でございまして、さような申請がありますれば、認可する方針でやっております。
  100. 北條秀一

    ○北條委員 それは団体法にあります第九条のあの要件の範囲内において許可するというお考えなのか、それとも先ほど私言いましたように、過当競争、体質改善というふうなところから団体法の第九条云々にかかわらず、そういう商工組合の設立を指導していきたいというお考えなのか、どっちなのですか。
  101. 今井善衞

    ○今井政府委員 これは団体法の第九条でやはり要件がございますので、従って、あれに明らかに反するというような状態においての認可はむずかしいじゃないかと思いますけれども、私どもの気持としまして、あの法律で読み得る限りにおいて、商工組合を認可していきたいというふうに好意的に指導したい考えでございます。
  102. 中村幸八

    中村委員長 それでは本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十日、火曜日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後二時二十九分散会