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1960-04-27 第34回国会 衆議院 商工委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月二十七日(水曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 中村 幸八君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君    理事 南  好雄君 理事 武藤 武雄君       鹿野 彦吉君    始関 伊平君       關谷 勝利君    田中 榮一君       田中 龍夫君    中井 一夫君       野田 武夫君    細田 義安君       山手 滿男君    渡邊 本治君       板川 正吾君    勝澤 芳雄君       加藤 鐐造君    北條 秀一君       山下 榮二君  出席国務大臣         通商産業大臣  池田 勇人君  出席政府委員         通商産業政務次         官       内田 常雄君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 四月二十六日  委員板川正吾辞任につき、その補欠として三  宅正一君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員三宅正一辞任につき、その補欠として板  川正吾君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月二十六日  体温計の対米、加輸出数量規制反対に関する請  願(椎熊三郎紹介)(第二八五三号)  電気工事技術者国家試験制度創設に伴う特別措  置に関する請願前尾繁三郎紹介)第二八七  八号)  菓子貿易自由化に関する請願足鹿覺君紹  介)第二九四四号)  大島つむぎ業者戦時強制転廃業に対する未交 付資金交付に関する請願保岡武久紹介)第三  〇四八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  割賦販売法案内閣提出第一一八号)      ————◇—————
  2. 中村幸八

    中村委員長 これより会議を開きます。  割賦販売法案を議題とし、審査を進めます。前会に引き続き質疑を続行いたします。北條秀一君。
  3. 北條秀一

    北條委員 私は今回政府が提出してこられました本法案について、終局的には修正案を今出そうと考えておるのでありますが、それは先にいたしまして、きょうはそれに至る道程として、若干の質問をいたしたいと存じます。  第一に割賦販売法案という名前でありますが、何事によらず名前というものは非常にむづかしいのでありますが、この割賦販売の場合に、従来ワップと言ってみたりカップと言ってみたりしておるわけです。そこで私は、日本語は非常にむずかしいと思いますが、私の常識からすれば、割という字を、カッと読む場合と、ワルというふうに訓で読む場合と、せつ然とした区別があると考えておるのであります。すなわち割をワルと読む場合には、大体金銭の計算に関する場合は、いつでもそういうふうになっておると思うのです。たとえば日割り計算であるとか月割り計算であるとか、割引とか割符とか割前とか、こういうふうになっておる。カッと読む場合は、割譲であるとか割腹、割烹、割札であるとか、割愛だとが、こういうようになっているのです。そこで一体政府はこれをどういう考えのもとに、ことさらにむずかしい考え方でカップと読んだのか、それについて一つ見解を伺いたいのであります。
  4. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 今御指摘のございました、これのカップであるのか、ワップであるのかという読み方の問題は、この法律においての読み方といたしましては、私どもの方でも従来若干の経過がございましたけれども内閣法制局ににおきましていろんな角度からの検討を加えた結果、一応カップという読み方でいくべきであろうということに相なったのでありますが、その意味合いは、今お話のございましたような問題も、もちろんその検討の中でいろいろ論議されたはずであります。結論的に申しますと、この文字をカップと読みます意味合いは、割賦の初めの割るという字は、この場合におきましては分割払いの割である。それから割賦の賦は、これは割り当てるという意味である。そういう意味分割賦払いという意味の四字の字句を、割賦と省略をして読んでおるのではなかろうか、そういう意味合いカップと読むのが適当であろうというのが現在の一応の結論であります。沿革的には今御指摘のございましたような意味合いで、割り賦という意味からワップと読むのが正しいのではなかろうかという、沿革的ないろいろな読み方検討されたのでありますが、一応今申し上げたようなことに到達したわけであります。
  5. 北條秀一

    北條委員 従来の御説明があったようでありますが、結局ごく最近のことでありますが、月賦といい、年賦というからカップというふうに、容易に考えたと思うのであります。しかしそういった安易なやり方は、特に日本語の場合には、日本語そのものが非常に不正確な読み方をしたり、表現をしておりますから、私は特にくどいようでありますが、きょうまたこの問題を持ち出したわけであります。はっきり言えば、私は結論的にはワリフと言うべきだと考えております。そうすれば一番さらりとわかりやすいわけであります。この法律通りますと今までワップといったり、カップといったのが、今度は堂々とカップということになる、でありますから相当慎重に考えなければならぬ。従って法制局法律上のあれはあるかもしれませんが、こういう問題についてはやはり言葉責任官庁で十分検討してもらって、この法律が上がるまでに、もう一度考え直してもらいたい。こういうふうに私は要望いたします。それから第二の点でありますが、これはものの考えようでありますが、私ども社会主義社会を標榜いたしておりますが、現在の世の中は遺憾ながら資本主義社会制度のもとにあるわけです。資本主義社会制度というのは、自由主義自由経済ということが根本であろうと思う。そうなってくると、この自由主義経済の中にあって、現に割賦販売がどんどん今まで行なわれてきたということでありますが、それでは一体、今までも御説明があったと思いますが、現在行なわれておる割賦販売法律のないままに行なわれておるわけですね。そこでいわば野放しの割賦販売があって、社会的にどういう弊害が顕著に現われておるか、この点について御意見を徴したいと思います。
  6. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 お説のように日本における現在の割賦販売は、比較的最近非常に伸びて参っております。またその状態は、いわば自然発生的にいろいろな形の割賦販売が行なわれておると思います。従いまして、現状におきましては、一応民法なり一般法法律のもとで行なわれておるという程度でありまして、割賦販売に特別の問題が起こった場合には、現在の一般法のみの処理では不十分であるという問題がすでにあったと思います。現在までに割賦販売につきましてどのようなトラブルが起こったかという点は、まず第一には、いわゆる貸し倒れの問題があるのでありますが、それ以外に、たとえば割賦販売そのものが比較的長期にわたる契約である関係もございまして、当初割賦販売契約をしたときの状態と、その後の状況がいろいろな意味で変わってきた。たとえば割賦販売契約した当時は、購入者はもちろん割賦で代金を払うつもりであったけれども、その間にいろいろな経済事情の変化がきたとか、あるいは買い主の方で一家の主人に急に不幸な事故が起こったとかいうようなことで、とかくトラブルが起こりがちであった。しかも、そのトラブルが起こったときには、一応現状では一般民法の原則で処理されるということになっておりますので、そういう場合に、はたしてそれが悪質の買い主行為であるのか、あるいは買い主の詐欺的な行為であるのか、またかりに詐欺的な行為であるとしても、その場合にどういう法律的処理ができるのかというような点には問題があったと思います。また逆に、販売業者の方の悪質の例というのも、私ども承知しております限りでも、従来、幾つかの新聞投書あるいは一、二の例におきましては裁判所の裁判にまでなって問題が処理された例もあるようであります。いずれにいたしましても、先ほど申しました長期にわたる契約である関係から、一般の短期の売買とは違う性質のものである、従ってトラブルが起こりやすいということで今回特別の秩序法を立案する経過に立ち至ったわけであります。
  7. 北條秀一

    北條委員 貸し倒れ一体何%くらいあるか、これもお調べになっておると思いますが、どの程度あるのかということについて承りたいのであります。大体、従来、割賦販売では比較的貸し倒れが少なかったと思うのです。それは、要するところ、今日、何といいましても緩慢なインフレ状態にありますし、インフレが徐々ながら進行してきておりますから、従って安い金であと払うわけでありますから、過去において契約した金額の支払いが比較的容易にできるということで貸し倒れが少なくなってくるのだと思うのです。もし、将来、これがインフレから転じてデフレになれば、貸し倒れが一ぺんに大きくなるであろう、こういうふうに考えるのですが、今の二つの点についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  8. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 私どもの方で、前に、商工会議所に依頼をいたしまして、割賦販売実態調査をしたのであります。その当時の状況も必ずしも全部をとらえておるというわけには参らないかもしれませんが、客観的に申しますと、昨日参考人からもそういう意味の陳述があったと思いますが、まず二、三%程度貸し倒れというのが多いようであります。しかし、これもいわゆる割賦販売の形態によるのでありまして、たとえば自動車の月賦販売というような場合になりますと、相当程度信用調査その他も行なわれる結果であると思いますが、この場合にはその貸し倒れ比率は〇・一、二%くらいというふうにかなり少ないようであります。またそういう個品割賦販売でなくて、チケット販売の場合も、発行団体種類によっていろいろ違うのでありますが、この場合にはまず一%程度貸し倒れ比率が従来の傾向であるようであります。要するに〇・一、二%から二、三%というくらいの幅がございますが、これは割賦販売の業態によって差があるということであろうと思います。  それからもう一つ、いわゆるデフレ不況状態になると貸し倒れがますます大きくなるのではないかという点は、私実証的に申し上げるわけではありませんが、一般的にそういう想定ができると思います。ただ私どもが聞いておりますところでは、一般不況経済状況のときには、逆に割賦販売が伸びるという傾向があるようであります。一般消費者の手先が苦しくなって、しかし片方に商品がほしいということになりますと、勢い割賦の方に従来よりもやや希望が大きくなるということも想像されるのであります。そうなると勢い貸し倒れ比率が高くなるということも想像できるのでありますが、この辺は、まだ私のところで、ある実態調査でそういう数字をつかんでおるものではありませんので、これ以上御説明申し上げることはできません。
  9. 北條秀一

    北條委員 ここで内田政務次官に御意見をお聞きしたいのであります。一つは、現在の政府所得倍増計画を盛んに鼓吹されて、計画を進めておられるわけでありますが、所得倍増と今の割賦販売について相当にお考えになっておると存じます。非常にばく然とした質問でありますが、この点についてあなたの見解を伺いたい。  第二は割賦販売によりますと結局アメリカ言葉でイージー・ペイメントというように物が非常に買いやすくなってくる。つまり固定収入のある俸給生活者は、非常に物が買いやすくなるわけであります。一面、今会社では自己資本を蓄積しなければならぬ、各個人はそれぞれ貯金をしなければならぬというような貯蓄推進運動を、政府はまたやっておるわけでありますが、そういうふうになると割賦販売貯蓄推進ということは、二律背反になりはしないかというように考える。その結果消費がふえることは別に悪いとは言いませんが、消費大衆消費を不必要に刺激するために、結局インフレ助長ずるという結果になってくるのではないかと考えるが、あなたのお考えはどうですか。
  10. 内田常雄

    内田(常)政府委員 北條委員からお尋ねのように、政府貿易為替自由化とか、あるいはまた所得倍増計画を推進しようといたしまして、いろいろな施策を立てておることは御承知通りであります。最近わが国経済成長度が非常に大きい。昭和三十四年度におきましては、一三%ないし一五%くらいの成長を遂げておりまして、過去の神武景気昭和三十一年、あるいは昭和二十五年の朝鮮動乱当時の景気の上昇をはるかに越えた経済成長を示しておるとともに、またドイツその他諸外国における経済成長よりも非常にすぐれた状況を示しておることは御承知通りであります。  でありますけれども日本経済の大きさというもの、従ってまた国民所得、ことに一人当たりの国民所得は、アメリカに対しましてはむろんのこと、英国、西ドイツ、フランス、あるいはベルギー、オランダのような国と比べましても、八分の一ないし三分の一というような状態にありまして、これから一億人の人口をかかえました日本が、われわれの所得を二倍にも三倍にもふやして参りますためには、生産をふやさなければならぬ、経済成長をより大きくしなければならなぬ、輸出貿易もやらなければならぬというような状況にあります。ところで一方毎年の経済成長の実数あるいは設備投資などの状況を見ますと、おおむね一年間に一兆円以上の国民総生産がふえていると思います。現在の国民総生産はおそらく十二兆未満くらいだと思いますが、それが一兆円くらいふえておる。この一兆円ふえる国民総生産は、だれかそこに有効な需要者がなければ、生産だけはふえましても、今度はオーバー・プロダクションになってしまう。もちろん輸出は第一義的に大切でありますが、しかし輸出ふえ方というものは、御承知のように幾らふやしてみましても相手のあることでありますので、一年にせいぜい三億ドルないし五億ドル等の数億ドルを出ないと思います。そうしますと、これを円に直しますと、三億ドルにしても千億円、五億ドルにいたしましても千数百億円でありまして、一兆の生産がふえる場合には、その相当一部分、八割ないし九割に近いものは、やはり国内においてそれだけの需要を開拓しなければならないことがわかると思います。さような際に、国民所得ふえ方とのかね合いになりますが、相当耐久消費財などにつきましてはこれから伸びる。購買力を見越して割賦のような制度がある程度発達して参ることが、生産が伸びることに即応して、有効需要がこれにマッチする仕組みでもありますし、従ってまた生産増強所得倍増の方法だろうと思います。しかしこの法律の所期いたしますところは、だからと申して、ここで消費者購買力をにわかにふやそうとか、あるいは消費者金融をつけようという法律ではございません。割賦制度によりまして消費者有効需要を伸ばすにいたしましても、あるいはまた必要に応じて消費者金融というような制度アメリカ並みにやるにいたしましても、割賦販売制度というものがしつかりできていないことには、制度としては、その政策として割賦制度利用の仕方がないと私は考えます。従来、先ほども政府委員から答弁のありましたように、また北條委員も御承知のように、割賦相当行なわれてきておりますが、国のよるべき法律上の根拠は、契約自由に基づく民法上の契約だけでありまして、民法においては割賦販売有名契約ではございません。これは無名契約であり、私の考えによりますと売買契約賃貸借契約ないしは消費貸借契約との混合契約でありまして、従っていろいろな種類割賦販売契約というのが存立をいたしております。これでは将来政府景気変動等に応じまして、あるいは生産増強等に応じまして、所得倍増計画を実施して参る過程におきまして、消費者有効需要の振起に関連して割賦制度というようなものを有効に利用いたそうといたしましても、よってもって利用すべきもとが立っておりませんので、この法律におきましては割賦販売というものに、民法にない私法上の一つの型を与え、それにさらに行政的に消費者を守り、あるいはまた生産者販売者も守っていく、こういうことをとりあえず取りきめていこう、その上に乗っかる政策というものは、これができてからこの制度政策的に、場合によっては消費者金融制度というようなものも運用し、あるいはその消費者金融制度を伸ばしたり縮めたりということができるようになると私は考えまして、この際ぜひ割賦販売制度につきまして一つ秩序、形というようなものを与えておくことが、いずれにいたしましても政府政策をこれからやって参る上に必要だ、かように考えておるのであります。
  11. 北條秀一

    北條委員 最後に聞きました俸給生活者貯蓄増強ということと、それから今の消費の拡大ということとは矛盾するのじゃないかと思うのだが、その点についてあなたは今お話しにならなかったので繰り返してお伺いいたします。
  12. 内田常雄

    内田(常)政府委員 その点を申し忘れましたが、これはなかなかむずかしいことだと思います。もちろん今日の貯蓄というものは、個人貯蓄民間企業内部における貯蓄を含めた社会的貯蓄というものが、これから日本の国の設備投資なり、あるいは生産増強の基盤を作る上に必要だと考えます。そういたしますならばいろいろな企業、ことに日本経済構造というものがだんだん変わって参りまして、国民消費などの対象につきましても耐久性消費財というようなものが、その場限りの消費財よりもふえて参る。そのためには企業内部におきましても貯蓄が必要で、そのためには生産品がやはり輸出なり内需なりに販売されて、企業の償却もでき、社内留保もできるという仕組みになっておらなければならないと考えます。同時にまたお説のように、給与所得者などが先の給与をも予約するような割賦販売制度利用によって、貯蓄のいとまがないということになりますと、個人貯蓄もできないことになるわけでありまして、そこのところが具体的には大へんむずかしいと思います。しかし先ほど触れましたように、この割賦販売法律は、今ここで直ちに割賦販売を奨励していこう、貯蓄するいとまがなくてもよろしいから、先の所得分までも食ってしまうような政策政府が奨励していこうということではないのでありまして、この法律がない場合におきましても、かえって非常に無理な形で、消費者が先の所得を食ってしまったり、ある場合におきましては割賦契約内容によっては、消費者が非常に苦しみを受けなければならない。過去の貯蓄さえも割賦販売解除等に関連して払い出さなければならないというような非常に無理な形のものもありますので、ここではその形を整えていこう、むしろ一方においては銀行預金なりあるいは生命保険なり、組合保険なりをもやりながら、将来の所得の伸びを想定して合理的な割賦制度をやることによって、貯蓄もでき、また生活内容の充実もでき、一方また生産企業における社内留保どもできるというような基礎を打ち立てていけるのではないか、かようにも考えますが、ここははなはだむずかしい問題だと思いますが、この法律がない場合にはもっと北條委員が御心配されるような場合も出てくるのではなかろうか、かように考えまして、ごくすなおな意味でこの法律を出しております。
  13. 北條秀一

    北條委員 今の問題ですが、私の立つイデオロギーの立場から離れて、今日の社会状態、今日の自由主義経済のもとにおいて、この問題を論じているというふうに御了解願いたいのです。結局個人消費割賦販売に伸びてくる。伸びた消費というものは縮めるのは非常にむずかしい。ところがこれから先三年間に貿易自由化される、炭鉱が合理化されて十一万の失業者が出てくる、駐留軍の労務者もどんどん計画的に切られるということになると、一方大資本生産性の向上、オートメーション化で、雇用の問題が将来非常に問題になってくると思うのです。そうすると今割賦販売を力を入れて助長するといたしましても、混乱が起きはしないかということを心配するわけです。従って法律を通すこと、この法律を成立させることはいいけれども、これに応じたいろいろな施策を講じなければ、これは結局絵にかいたもちになってしまいはしないかと思うのです。  最後に申し上げたいのですが、たまたま内田政務次官お話が出たから言うのですが、今度出た産業合理化審議会答申には税制上の問題だとか、あるいは信用調査の問題だとか、信用保険の問題だとか、そういういろいろな措置をやらなければならないと書いてあるのに、それを全然抜きにして政府がいきなり割賦販売法律だけを出してきたところに問題があると思う。今ついでですから内田さんに聞くのですが、この答申の前文に書いてある金融措置であるとか、税法上の優遇措置であるとか、あるいはまたいろいろなことが書いてありますが、これについて政府はどういうふうに考えておりますか。
  14. 内田常雄

    内田(常)政府委員 産業合理化審議会答申をいただきました点は一々もっともな点でありまして、これは個別に解決をしていかなければならない問題であると思います。特に割賦制度が確立されてこそ初めて割賦に対する金融の問題も取り上げようがある。今までのような非常にいろいろな形の、全く当事者間の自由契約のような形の割賦が勝手に行なわれている状態におきましては、消費者金融の面あるいは製造者金融の面におきましても金融つけ方がない、かように考えますし、税法などにおきましても、今までは権利発生主義立場に立ちまして、先にしか金が入ってこないものでも、その期の総収入と見るというような行き方でありますが、これらもこの法律によりまして割賦というものの形がきちんとできて参りますと、これは税務会計の方におきましても、一つの型に沿った税務会計の方式が立つと考えますので、この割賦販売法政策そのものを盛り込んだ野心的なものではございませんが、一つのかような型を与えられることによりまして、この型に即応して税制上あるいは金融上等措置が少なくとも講ぜられやすくなる、かように考えております。私どもも当初は、ことに私個人といたしましては、通産省におりまして、ただこういう型を与えるような法律ではあまり意味がないじゃないか、半分は行政法であるけれども半分は民法補完法として私法性質を持っているのじゃないか、それだけでは意味がないので、少なくとも割賦制度をやる以上は、おっしゃるように割賦信用に関する政策とか、あるいは税制上の問題も取り入れたいというような個人的野心意見を述べたこともございますが、せんじ詰めて参りますと、まず型を作らなければ政策問題は取り上げられないじゃないか、こういうことになりまして、今回の法律におきましては割賦販売契約というものの形を私法的に整え、その上に弊害除去のためにある種の制約とか、強行規定勧告規定を置いたということでございます。この法律が制定された以後におきましては、北條委員お話のような点につきましても、産業合理化審議会意見なりその他社会経済事情に応じまして、いろいろと適正な政策を打ち出して参りたい、かように考えております。
  15. 北條秀一

    北條委員 これをくどく政府に聞いておかなければならぬと思いますのは、前に中小企業団一体組織法のときに小組合の問題がございまして、この委員会において先般池田通産大臣に——この小組合に対する税制上の特別措置を講ずる、講じなければならないということに法律上はなっておりますね。しかもそれを政府は受けて立っておるわけです。ところが三年間ほうってある。池田通産大臣は幸いにして今回の税制調査会におきまして十分働きかけて、実現できるように何とかしますというふうにおっしゃった。あとで速記録を見ればおわかりになりますが、今内田さんがおっしゃられるように、割賦販売業者あっせん業者消費者から一つになってこの法律で着実に取引秩序を確立するという、考えれば考え可能性が出てくるとおっしゃったのですが、可能性じゃだめで、そういうことを政府はやりますということなら話はわかる。しかしやったら政府考え可能性が出てくるでは、いかにも心もとないと思う。しかも法律で作ったものが三年間ほってある。中小企業団体組織法の小組合税制上の問題なんです。だからくどく聞くのですが、法律ができて秩序が確立されたら政府としては即座に、今言った金融上の措置税制上の特別措置優遇措置信用調査の問題、信用保険の問題、こういう問題を、お約束できますか。やるという約束ができましょうか。
  16. 内田常雄

    内田(常)政府委員 北條さんのお話の中小企業協同小組合の問題と、この割賦制度に伴う金融税制上の問題とは少し趣を異にすると考えます。中小企業協同小組合の方は、これは政府政策として法律に書いてあるようなことを取り上げるかどうかという問題でありますが、この割賦販売の方はこういう割賦販売につきましての法律上の内容が明らかになった形ができますと、消費者金融制度にいたしましても、あるいはまた割賦販売を業とする生産者金融にいたしましても、非常に今日の自由金融制度のもとにおいて金融がつきやすくなる、少なくともそういう状態になる。今までのように、割賦の賦払期間も、長いのもあれば短いのもある、また中途で当事者同士の特約によっていろいろ内容が変わっておるということでは、一般金融機関としても消費者金融もつけにくい。またもちろん一方におきまして、大蔵省はおりませんが、今日消費者金融制度というものを、この割賦販売法と関連して直ちに導入するということにつきましては、いろいろ議論はあるようでありますが、少なくともそういう方向に持っていきやすくなるのじゃないか、そうしてこそ初めて景気、不景気の調整ができる。不景気の場合に割賦販売法の形ができておれば、それに基づいて消費者金融をゆるめることによって生産需要がマッチしていって、オーバー・プロダクションの問題も解決できるし、またインフレ傾向の場合には、消費者金融をある意味で引き締めるというような政策をとりやすくもなる。かようなことで政府政策のとりやすくなる手段を供給するということで、この法律が制定されたならば、北條さんのおっしゃるように、今すぐ政府金融措置について約束するかといわれましても、もちろんおっしゃるように自由主義経済でありまして、金融につきましては非常にいろいろありますので、私は今直ちに確約できませんが、ただいま中小企業金融公庫でありますとか、商工中金など、政府政策的に動かせる部門につきましては、私はいろいろ考える余地があるのではなかろうかと思います。先般大臣はこの席上、中小企業金融公庫なり商工中金なりも含む意味において、金融の問題については別に考慮をすべきものであるというお答えをいたしておりましたが、私はいろいろな政策がやりやすくなる、かように思います。  税制の問題につきましては、御承知のようにただいま政府におきまして税制調査会を設けまして、企業者課税の問題につきまして第一次的に取り上げて参ろう、三カ年の研究による期間の満了を待たずして、むしろ中間報告にいたしましても、もう三十六年度あたりには企業者課税につきまして、何らかの業制改革ができるような案を用意いたしておりますので、小組合の問題にいたしましても、あるいは割賦販売に伴う課税の法律と申しますか、税務会計などの取り扱いの問題につきましても、あわせて検討を進めて参りたいと思います。
  17. 北條秀一

    北條委員 次に局長にお伺いしたいと思いますが、第八条による適用除外の問題でございます。事業者がその従業者に対してする割賦販売は適用を除外するということなんですが、最近大産業が自己の製品を販売するために、たくさんのセールスマンを使っていることは、自動車の例をとらずとも、その他にもたくさんの例があると思うのであります。このセールスマンと、ここにいう適用除外の従業者とは、一体どういうふうな関係考えておられるのか、その点についてお伺いしたいのであります。
  18. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 第八条第五号にうたっておりますものは、事業者がその事業に使っておる従業員に対して割賦販売を行なう場合で、たとえば購買会のような場合が一つ適例であると思います。セールスマンもその事業者の従業員であります場合、その事業者が従業員であるセールスマンに割賦販売を購買会という形で行なう場合には、この第五号がきいてくると思いますが、セールスマンの販売活動とは関係のない形になると思います。
  19. 北條秀一

    北條委員 私がお聞きしましたのは、最近御承知のように大企業がどんどん割賦販売をやっている。どんどん中小企業者の分野を侵しておるわけであります。その例については一々あげる必要はございませんが、それを何とかして食いとめようと、今まで私の方は主張して参りまして、それとまた別に法律案を出しておるわけであります。でありますから、今言いましたセールスマンの問題については、これから先どんどんセールスマンによる販売というものがふえて参りまして、そうするとまたセールスマンと消費者との間に新しい取引条件といいますか、取引というものが成り立つのではないかという危険を私は感ずるのであります。でありますから、この点についてはよほど政府はセールスマンによるそういった直売による中小企業者の分野の食い荒らしを食いとめていかなければならぬというふうに思うから、今聞いたのですが、その点は十分に今後行政指導の面においても、一つやっていただきたいと考えるわけであります。  その次にお伺いいたしますが、第九条に「標準条件の公示」ということがございます。それから、もう一つ第三十八条に公開の「聴聞」というようなことが書いてあります。これは第九条の「標準条件の公示」に「公聴会」というものがございますが、この公聴会はぽつんと公聴会というのが出てくる、片方には公開の聴聞というのが出てくるのですが、これは一体どういうふうな形で、どういうふうな人間を集めておやりになるつもりなのか、これについて一つお伺いしたい。
  20. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 公聴会の制度は、御承知のようにほかの立法例にも幾多ございますが、それと同じような意味合いで、第九条に、公聴会を開きまして一般意見を、その公聴会の席上で伺うということになっております。三十八条の聴聞は、これは第九条に書いております公聴会とは、一応制度としては別個のものでありまして、聴聞を開く場合は、三十八条に掲げておりますような各条項の処分をする場合に、当該処分を受ける者に対して、ある予告期間を置いて、公開による聴聞を行なうというので、まあ二つの制度は一応別個の制度であります。いずれもほかの立法例にある制度でございまして、非常に大ざっぱに申しまして、公聴会の方が聞く範囲が非常に広い、聴聞の場合は処分の相手方に対して公開による聴聞を行なうというので、制度としては別個の制度で、またそれを使う場合も別の場合に使うというので、双方は直接には関係ありません。
  21. 北條秀一

    北條委員 それで公聴会は重要な標準条件をきめるわけですし、内容相当しっかりしたものでなければならぬと思うのです。ここにぽつんと公聴会と三字あるだけですが、他の法律に立法例があるからということでございますが、これだけで私ははたして安心できるかどうか、満足できるかどうかという点に疑点があるわけであります。もう少し、現在あなたの方で考えておられる公聴会はどういうふうな形で、どういうふうな方法でやろうと考えておるのか、その点を一つ明らかにしていただきたいと思います。
  22. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 公聴会の制度は、この法文に書いてありますように、広く一般意見を聞くことが目的でございますから、その公聴会で意見を述べる人の制限はございません。従いまして、関心のある方がこの公聴会に出ていろいろ意見を述べていただくことになると思いますが、まあ私どもの一応考えておりますことは、この制度の運用について、まず第一には一般消費者、さらに販売業者双方が、この問題に関するいわば直接の利害関係者でございますから、当然こういう方たちは公聴会に出席していただけるものと思います。同時にまた、こういう問題に関する学識経験者、こういう方も公聴会に当然参加していただきまして、その意見をお伺いするということに相なると思います。
  23. 北條秀一

    北條委員 あなたに聞きたいことは、公聴会々々々と言われますが、公聴会を開くとすれば、たとえば、他の、国会におきます公聴会もありますし、いろいろな公聴会があるのですが、そういうときに、広く意見を聞くというなら、それだけではあまりにもばく然としていやしませんかということを聞くのです。こういうような公告をして、そこで、利害関係者の随意の意思によってお集まり願って意見を聞くのか、あるいは役所がそれぞれ関係者に頼んで、その人に集まってもらって意見を聞くというのか、その具体的な内容についてはどういうことになっておるのかということを伺っておるのです。
  24. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 これはほかの立法例でもそうやっておると思いますが、公聴会を開く手続でありますとか、そういう点は、特にいわば国民の権利その他に対する制限とか、なんとかいう問題ではございませんので、特にここで委任立法の形はとっておりません。しかし実際問題としましては、通産省令なり何なりの省令という形で、これに対しまして手続をきめることに相なると思います。この法律の趣旨にありますように、広く一般意見を聞くというような趣旨に合うような手続を当然とることに相なっております。
  25. 北條秀一

    北條委員 そうなると、公聴会については省令で定める、こういうふうになぜこの法律に書かないのですか。
  26. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 ただいま申しましたように、別段いわば国民の権利を制限するとかなんとかいうような立法事項と関係がございませんので、事実上この趣旨が動き得るような手続を省令できめればいいということに相なっております。
  27. 北條秀一

    北條委員 要するに、標準条件の公示についての公聴会でございますから、このイージー・ペイメントの基本的な条件をきめるわけですから、公聴会については相当慎重な態度をとっていただきたいということを結論的に申し上げるわけです。  そこで、もう一つわからぬ点がその前の第七条にあるわけです。「所有権に関する推定」でございますが、この割賦販売業者、要するに現にある業者の諸君からは、その所有権を最後の支払いが完了するまで留保してもらいたいという強い要望があるやに聞いておるわけでありますが、ここには「留保されたものを推定する。」というような民法にある規定と同じような規定が書いてありますが、これは、端的に留保されたものとするというふうにするのと、推定するというのとどういうふうに違うのか、その点どうですか。
  28. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 ほかの立法例に、留保されたものとするというような立法例があるかどうか、ちょっと私つまびらかにいたしませんが、ここに書いております意味は、あくまで推定をするという意味でありますから、当事者間に特別の約款、約束がなかった場合は、この推定規定が初めて働いてくるということになると思います。しかしこれを推定するでなくて、留保されたものとするというような表現の仕方で、これをかりに強行規定といたしますと、たとい当事者間に約款があってもなくても、あるいは反対の約款があっても、あくまで所有権留保が、そういう表現の条文によって強行されるということになると思いますので、双方の差は、別途の当事者間の約款を認めるかどうかというところに差があるというふうに解釈できると思います。
  29. 北條秀一

    北條委員 私は最後松尾さんにお聞きするのですが、この法律をずっとくって見ますと、指定商品は政令できめるとか、標準条件の公示は公聴会できめるとか、勧告するとか、いろいろな問題がございますが、結局私は、割賦販売法を作るということは、これによって中小企業者はもとより、割賦販売業者というものに対して、通産省の権限が非常に大きくなってくる。結局俗な言葉でいえば、官僚の統制が強化されることに、結果はなるのじゃないかと思うのですが、あなたのお考えはどうですか。
  30. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 この法案の中で、今御指摘のございましたような意味の取り締まり、いわゆる役人の取り締まりというような角度から見ますと、この中でおそらく登録に関する部分、従いまして、登録業者に対しての関係条文がそれに当たると思いますが、これは現在全体の割賦販売を行なっておる業者が、おそらく十何万あると思います。しかし、この法案内容の登録ということで予定しておりますものは、その中のおそらく数百程度のものであると思います。従いまして、特にここにございまする消費者に迷惑をかけるおそれのあるもの、あるいは加盟店である小売販売店に迷惑をかけるおそれのあるもの、そういう特殊のものだけ、ここで登録という制度で、いわば一般の公益のために調整をいたしますけれども、それ以外のものは、ただ売買当事者間の秩序維持ということでありますから、これでそこまでのところを私ども考えるつもりは毛頭ございません。
  31. 北條秀一

    北條委員 ただいま池田通産大臣がお見えになりましたので、最後一つお聞きしたいのですが、先ほど来内田政務次官にお聞きするのでありますが、政務次官は大臣に御遠慮なさってか、なかなかいつもの通りに活発な御意見が出ないのであります。そこで池田大臣に聞かなければならない。ここにあなたが飛び込んでこられたからお聞きするのでありますが、割賦販売法をお出しになったのは、これは産業合理化審議会答申に基づいたわけです。ところが、先ほど来の意見では、この割賦販売法によって取引秩序を打ち立てれば、あとはいろいろな問題は政府考えてくれる、こういうことなんです。ところが答申によりますと、割賦販売に関する取引市場の育成について、金融措置であるとか、税法上の優遇措置であるとか、信用調査あるいは信用保険制度、こういうふうなものが先行しなければならないというふうに私は印象的には受ける。そういう重要な問題が先にありながら、この割賦販売法を先に作るというと、仏を作って魂はあとに残っておるという結果になってくるのじゃないか。そこで私は先ほど来、内田政務次官に、仏を作るならば魂をすぐに作りなさいよと言うのだけれども、作る可能性は出てくるけれどもというわけで、なかなかはっきりしないのでありますが、その点大臣どうお考えになりましょうか。仏を作ったら必ず魂を入れていただきたい、こういうことを私は要望するわけでありますが、それについての御意見を、この際承っておきたいのであります。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 お話のように、仏を作って魂を入れるという言葉がございますが、りっぱな仏を作れば、そこに魂が自然に出てくる場合もあるのであります。左甚五郎の猫のごとく、私は、この割賦販売が皆様の御審議によって日の目を見ましたならば、これがみんなで民主的にりっぱなものに育てられると考えておるのであります。ただ、施行の結果から申しまして、こうもありたい、ああもありたい、いわゆる色もよくしようとか、いろいろな点が出てくる場合におきましては、そのつど政府は善処いたしたいと考えております。
  33. 北條秀一

    北條委員 最後と言いながら、もう一つだけ最後に大臣に、これは質問というより要望ですが、結局、今日大資本がどんどん割賦販売を始めて、そして中小企業者の分野にどんどん進出していることは御承知通りであります。従って今回の割賦販売法を成立させるならば、主眼は中小企業者の分野をあくまでも保護育成してやろうという考えでなければならぬと考えるのでありますが、そういうふうに池田通産大臣はお考えになっておるかどうか。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 御意見通りでございます。まずこれは、消費者に対して健全な消費を育成する、その場合に大企業と中小企業との問題が起こって参ります。従いまして、多数である中小企業に対しましては、やはりいろいろな方面から考えていかなければならぬと思います。デパートのいなかへの進出等々、これは商工会を設けるとか、いろいろな方法で、私は中小企業の育成につきましては万全の措置をとっていきたいという考えでおります。
  35. 北條秀一

    北條委員 終ります。
  36. 中村幸八

    中村委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午前十一時四十六分散会