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中林参考人 私は
日本生活協同組合連合会の
中林であります。私たちは、
生活協同組合の運動は、
消費者の
生活を守るという
立場でいろいろやっておりますので、
消費者の
立場からこの
割賦販売法についての私たちの考え方を、簡単に述べさしていただきたいと思います。
私たちは、
生活協同組合の
立場から、根本的には
月賦売り、
割賦販売というものは、
消費者の
生活を破壊するおそれがあるということで、従来現金主義ということで、ずっと
日本ばかりではなく各国やって参ったわけでございます。しかしながら、最近のいろいろな
経済の
発達、
国民経済の
向上というような点から考えまして、原則的にはいろいろあっても
割賦販売に反対だ反対だというようなことを言っている段階ではない、やはり私たちのお互いの
生活を高めていくという
立場から、この問題と真剣に取り組まなくちゃいけない。現に
生活協同組合でも
割賦販売をやっているという事情でございます。しかしながら私たちは、そういうような現実の
経済の事情がそうであるといっても、やはりそれらのことはあくまで
消費者の
生活がよくなるという
立場で考えていかなくちゃいけないのではないだろうか。ところが今度のこの
割賦販売法案の
提案理由並びにこの
法案を読まさせていただきますと、
消費者の
保護とかあるいは
割賦販売の健全な育成ということになっておりますけれ
ども、流れているところの思想は
割賦販売を助長するということが一貫して流れているんじゃないか、私はそういう考え方が基本になっているのではないだろうかというふうに考えるわけでございます。ところがやはり
割賦販売のような問題をイギリスなりアメリカなり、各国でこれが大いに
発達しているというようなことが言われておりますけれ
ども、その背景として
国民経済全体の問題、社会保障がどういうふうに
発達しているか、賃金がどうであるかというような問題と総合的判断の上に、
割賦販売というものが考えられなくちゃいけないのではないだろうか。ところが
日本の現在の姿のままで
割賦販売を助長していくということはどういう結果を招くかということになりますと、現在の時点において、オートメーション化ということと関連して、大
企業におけるところの
大量生産をしたものは大量
販売をしなくちゃならない。そしてマスコミがその中に立って、そのできた
商品を
宣伝する、そうして次々と新種のものができたできたという形でマスコミがそれを
宣伝していくということになりますと、人間は本来的にいいものを買いたい、うまいものを食べたい、いい家に住みたいという本能的な欲望をだれもが持っているわけでございますが、その本能的な欲望をマスコミがあおって、そうして
大量生産したものを大量
販売しなくちゃならないというようなことになって参りますと、結局
消費者の
購買力というものが大量
販売のために
利用される。そうして
消費者の
購買力というものがどうして出てくるかといえば、やはりお互いの
所得が高まって、具体的には給与がよくなるということと相伴って、そうして
購買力が作られていくということであれば、そしてその背景に社会保障
制度というようなこととの関連において考えられるならば、
購買力というものは私はふえてくるだろうと考えるわけでございますけれ
ども、
現状において賃金はむしろ抑制するという
政策のもとにおいて
割賦販売を助長する
購買力を新しく作るということになりますと、結局
割賦販売によらなくちゃならない。そのことがやはり人間の本能的な欲望というものをあおって借金をしてでも買いたいという気持を助長していくということになるのではないだろうか。そうしてきますと、結果的には人間か
商品の奴隷になっていってしまう危険性が多分に出てくるんじゃないだろうかということを私たちは一番心配するわけでございます。従って
割賦販売という問題を取り上げる際においては、そういう点を十分考えていかなければ、
日本人の
国民生活というものがどういう姿になっていくかということを考えた場合に、私たちは非常に憂えざるを得ない。現に私は労働金庫にも
関係しているのですが、せんだって労働金庫の役員会で問題になりましたのは、京浜地区のある大きな工場の社宅でございます。ある大きな会社の社宅街で
月賦販売するのに関連して高利貸しがたくさん入り込んでおった。そうして奥さんたちが電気洗たく機だとか、
電気冷蔵庫だとか、電気掃除機だとか、いろんなものを買いたいということで、
月賦で買えるからということでそれを買った。そしてそれが非常に社宅街に広まって、高利貸しがそこに介在をしてきた。そうして御主
人たちはどうして女房たちがやりくりしているのかということを十分御存じないうちに、極端な奥さんは二十数万円の借金を作ってしまった。そうしてそのことがわかりまして社宅で調べてみたところが、
方々で女房たちが
割賦販売と高利貸しとの間にはさまって、そうしてたくさんの借金を持っているということが御主
人たちにわかって、これを公にするということになると、いろいろ会社の
立場上も困る。しかしこの
金利だけでも大へんなことになっておって、毎月の形ではなかなか返していくことができない。そうしてそこの
労働組合でも内々にそれをどう処理するかということで、結局その問題は労働金庫から正しい借り入れをして、高利貸しの金を返済をして、そうしてやらざるを得ないだろうということで、労働金庫へその借り入れが持ち込まれた。調べてみましたら今のようなことで、
方々で夫婦げんかが起きたり、いろいろなことをしているという、われわれは笑っては済まされない、そういう深刻な事態がせんだって京浜地区のある大きな会社の社宅街であったということを、先々月の役員会で私らは具体的に伺ったのでございます。従ってそういう点は十分私らは考えて、この
割賦販売の問題をとらえていかなければいけないのではないだろうかという工合に考えるわけでございます。
従って諸先生方がこの
法案を審議なさいます際に、やはり現在のような事態において
耐久消費財、家庭の電化というものを、私たちはやはり進めていかなくちゃならないが、それを健全な
生活をどのように維持して、どうしてやっていくのだということを十分お考えをいただかなければ、私はただ
大量生産したものを大量
販売するためのえじきとして、われわれの
消費者の
購買力が
利用されるというような考え方に、これが
発展していくというようなことについては絶対に反対をせざるを得ない。従ってこの
法案の審議にあたられましては、そういう点を十分お考えをいただきたいと思いますことが第一点でございます。
それから、それに関連しまして、この
法案を読ませていただきますと、この点は先ほどからの
参考人の方も言っておいでになりましたが、私たちは結局大
企業の系列化が促進されていって、
中小企業というものがどうなっていくのだろうか、商工
委員会で常々
中小企業対策ということをお取り上げになっておりますけれ
ども、私はこの
法案をずっと読ませていただきまして、その点は先ほどからの
参考人がおっしゃいますように、大
企業の系列化が促進して、そうして結局
小売商人というものが系列外に取り残されていくのじゃないかということを私たちは憂えるわけでございます。そういうような点は
生活協同組合の
立場に立ちましても、私たちは現在の流通秩序というものをどのように民主的に、合理的に作り上げていくかということが、やはり
日本の
中小企業対策として重要な問題ではないだろうか。その点に立ちまして私たちはこの
法案の
内容についていろいろな点に疑問を持つわけでございます。その点については先ほどからの
参考人の方がおっしゃいましたような点を、私は十分にお考えをいただかなくちゃいけないのではないだろうか。従って原則的に先ほど申し上げましたような
消費者の
購買力をえじきにするような
政策につながるというようなことは、われわれとしては絶対に反対である。しかしながら現在の時点において
割賦販売というものが必要である。そうしてまたそのためのいろいろな弊害も起きている。従ってそこで交通整理をして
一つの秩序を立てるということは、その意義は私たちも十分認めるわけでございますけれ
ども、そういう
立場に立って
一つこの
法案の御検討をいただき、そうしてそういう
立場からこの
法案の組みかえなり、そういうことを私はお考えをいただきたい。むしろ
割賦販売の助長ということよりも、その調整なり規制という
立場から、
割賦販売というものが考えられなくちゃいけないのではないだろうか。自然の勢いとしては、ほっておいても
割賦販売というものは、どんどん伸びていくという
一つの
経済的な現在の姿にあるわけでございますから、その点は、
消費者の
立場からそれを調整ないしは規制するという
立場で私はお考えをいただきたい。そのことがまた
中小企業の問題にも関連してくるというふうに私は考えるわけでございます。
以上の点に立ちまして、少しく具体的に
法案の
内容につきまして申し上げてみたいと思うのでございます。
法案の第五条で、「
割賦販売業者は、
指定商品に係る
割賦販売の契約について
賦払金の
支払の義務が履行されない場合において、十五日以上の相当な
期間を定めて」とありますが、この十五日ということは、ぜひ三十日以上と
——そのことは、現在のサラリーマンの
生活は大体
月給制度になっておりますから、一カ月こういうような事故で払えなかった場合の
一つの
対策として考える場合に、やはり今日の
日本の給与の姿というものが
月給という形になっておりますから、この点は三十日以上というふうに御修正をお願いいたしたいというふうに考えるわけでございます。
第六条の第一号でございますが、「契約のために要した費用の額」これが
損害賠償として請求できるということでございますが、契約のために要した費用というものを、契約者、つまり
消費者の方に一方的に請求ができるという点については問題がある。そしてこのことは、たとえば契約した
消費者の側ではなくて、売った方の側において、テレビなり電気洗たく機において粗悪品を売ったというような場合もあり得るわけでございます。そうして
消費者の側から契約を破棄するというようなことではなくて、売った方の側からの問題において、こういうことが起きてくるということが十分あり得るわけでございますし、それを
消費者の側に一方的に請求するというような点には、非常に問題があるというふうに私は考えるわけでございます。
第七条の「所有権に関する推定」、「
割賦販売の
方法により
販売された
指定商品の所有権は、
賦払金の全部の
支払の義務が履行される時までは、
割賦販売業者に留保されたものと推定する。」たとえば五万円のテレビを
月賦で買った、そして三万五千円は払った、ところが一万五千円は払ってない。そういう際において、五万円のテレビが全額払ってしまわなければ
消費者に所有権が移転しないという形は、私は債権債務というような
法律的な点から考えましても、非常に問題がある。従って
割賦販売の場合においては、その点を明示すべきである。債権債務の
関係を明らかにして、所有権というものをその観点に立って考えていく。従って五万円のところを三万五千円払っても、まだ
消費者の所有権がなくて、
販売者の方にだけ所有権が留保されているという点については、これは問題があるので、その点をもっとはっきりと債権債務の観点に立って明示するように御検討をいただきたいというふうに考えるわけでございます。
第九条、第十条、「
標準条件の公示」並びに「勧告」、ここで主務大臣云々ということがあるのでございますが、この点は、従来のいろいろな
中小企業関係の
法律の立法のときにも、われわれは問題にした点でございますが、行政カルテルというような形のものが生まれてくる危険性がある。こういう点は、もっと自主的にこういうことが行なわれるようなふうに
措置することがいいのではないだろうかという工合に、私らは考えるわけでございます。
それから第三節の前払式
割賦販売。この点につきまして、前払式
割賦販売の中において、
金融機関ということが
一つの、間にクッションとして入るということであれは、このことは確実に行なわれると思いますけれ
ども、そうではなくて、
販売業者の方が直接そのことをやるというようなことになって参りました場合に、この
法律の中にも、登録だとか、十五条、二十条、二十三条、三十六条、三十七条でいろいろな規定があるわけでございますが、契約者
保護ということを考えてみました場合に、
金融機関においては、
預金者
保護については、
預金者を
保護しなくちゃならないというような処置が、業務の上において常時行なわれているわけでございます。ところが前払式の
割賦販売の場合に、登録を申請するときとか、その時点々々についてだけ問題を取り上げているわけでございまして、そうなって参りました場合に、いろいろな紛飾が行なわれるというようなことをどうして防止するか。そうしてそのことは、これが長期の二年なりというような形でいろいろ行なわれてくる、また高額のものが行なわれてくるというようなことになって参りました場合には、契約者
保護ということを、
預金者
保護と同じような
立場で、もっと考えてみる必要があるのではないだろうか。従って、そういうような点につきまして、諸先生方にもう一度御検討をいただきたいというふうに私は考えるわけでございます。
それから三十六条、三十七条の報告の徴収、立入検査というような点につきましても、私たちは、諸先生方に
生活協同組合などの
立場から十分御検討をいただきたいと考えるわけでございます。
条文的にはそういうふうに考えるのでございますが、この
法律の中では、やはりこのままではメーカー信販というものがさらに助長されてくる。メーカー信販ということが助長されてくるというようになれば、そのことは結局、
小売商人、
小売商業界というものを巨大な資本によって荒されてくるということになりますので、そのメーカー信販は、私らは
中小企業対策という
立場に立っても、それを規制することをむしろはっきり考える必要があるのではないだろうかというふうに考えるわけでございます。
それから、まだこの
法律案に載っておりませんけれ
ども、
産業合理化審議会その他で、
信用調査機関を設けるというようなことがいろいろと論議されているわけでございますが、
割賦販売の場合に、ある
程度の
信用調査ということももちろん必要かと思います。銀行で金を貸します際には
信用調査をやっているわけでございますけれ
ども、しかし
消費者の
信用調査を一人々々に
ついてやるというようなことが、
制度化されてきました場合に、下手すると、家庭の主婦の財布までもその対象になってくるというようなおそれが、今日の情勢においてはわれわれは多分に考えられる。そういう点については、
信用調査というようなことを今後お考えになります際に、
消費者の
立場から十分お考えをいただきたいというふうに考えるわけでございます。
大体以上でございますが、以上の点を諸先生方に十分お考えをいただきますとともに、私たちはこの
割賦販売というものは、現在の時点においてはやむを得ないことではあるけれ
ども、これが下手に助長されましたならば
国民経済を破壊する。そうして、そういうような見地から、
生活協同組合の運動にとっても重大な問題が起きてくるのではないだろうか。従って、商工
委員会の諸先生方には、
消費者の
生活を守る
生活協同組合のやっている事業、並びに
中小企業の
立場というものを十分お考えいただき、
流通機構の中において、
生活協同組合なり
中小企業のようなまじめにやっている仕事が十分伸びるような形において、いろいろな問題をお考えをいただきたいということを申し上げまして、私の
意見を終えたいと思います。