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井手委員 これについてはいろいろ意見なり要望もありますが、時間の
関係がありますので、その
程度にしておきたいと思います。労働省、けっこうですから……。
次に、
鉱害の問題で若干お伺いをいたしたいのであります。
鉱害の問題でお伺いするにあたりまして、
一つ見本を見ていただきたいのであります。これは酒じゃありません。それは佐賀県の多久市の中通川の川の水であります。これは三月三十日、一週間ほど前正午ごろ私が立ち会いでくみ取った炭鉱の汚濁水であります。下は炭塵です。上は油がぎらぎら光っております。一升びんを川に突っ込んだところがこれだけ炭塵がたまった。きょうは
一つとっくり見てもらいます。
一つ見て下さい。
——これは三菱古賀山炭鉱、明治佐賀炭鉱、明治系立山炭鉱あるいは洗炭による放流、汚濁水であります。おそらくその水は汚濁度は三万前後ではないかと思っておるのであります。その川の水がたんぼに入って灌漑水として
利用されました結果はここにごらんの
通り、これは下は全部炭塵です。この水が入ってせっかく植え付けましてもこの株が張りませんので、こういう小さな株になる。減収をしておる。これは私目の前でとってきたんですから、これもとくとごらんを願います。これは農林省にも特に見ていただきたい。三寸か四寸全部炭塵です。大へんな品物です。皆さんも
一つ見て下さい。
——炭鉱の被害はどんなにひどいものであるか、それは見本ですから必要があれば
幾らでも持って参ります。
一つ見本を呈示いたしましてお伺いをいたしたいのであります。
佐賀県の
鉱害は最近の統計によりますと四十億円と言われておるのであります。先刻
多賀谷委員に全国では百六十億とおっしゃいましたが、佐賀県だけでも四十億と言われておるのであります。特にその中央にあります多久市、これは第二の筑豊と言われる新興の炭田地帯でありまして、年産百万トンに上がっておるのであります。そういう急速な開発から
鉱害が最近非常に著しくなって参りました。
鉱害の
一つといたしまして私はそこに見本を持って参りましたように、炭鉱の洗炭などによる汚水、福岡の通産局には何回も実地に見てもらいました。その汚濁水、佐賀県の評定によりますと千度以上はこれを放流してはならぬという規定がありますけれども、実際には励行されておりません。しかし灌漑水として
利用できるものは大体三千度から四千度であろうと言われておるのであります。ところがここに私は通産省の福岡通産局の文書を持って参っておりますが、各炭鉱に厳重な指令を鉱山保安局その他から出しましても、完全な設備をやっても、古賀山炭鉱だけでも一万二千度に上がるであろうと言われておるのであります。これは文書にもここにちゃんと書いてある。これは福岡通産局の
鉱害部長から来た公式の文書であります。そういった被害についていわゆる年々賠償がうまくいっていないのであります。陥没、脱水、陥落いたしますと、
鉱害ということが認定されれば
復旧工事ということもこれは可能でありますけれども、現在の
鉱業法によりまする年々賠償においては、ほとんどこれだけの被害を炭鉱は補償してくれないのであります。この汚濁水による被害面積は大体多久市、多久町、北多久町など七カ部落の十五町歩に及んでおるのでありますが、通産局のこの公文書によりましてもこの被害は年々増大するであろうといわれておるのであります。このことを炭鉱にかけ合いましても、なかなか
らちがあかない。いろいろな理由をつけて補償してくれない。いや、補償よりも汚濁水が水田に入らないようにしてもらいたい、そういう施設をしてもらいたい、たとえば井戸を掘ってもらいたいという要求をいたしましても、なかなか実行してくれないのであります。この毎年拡大して参りまする汚濁水の被害、これが第一点であります。特に農林省、お聞き願いたいと思います。
第二点は井水、灌漑水の枯渇でありまして、最近明治佐賀炭鉱、西杵炭鉱、杵島炭鉱、古賀山炭鉱、これは幸か不幸か多久市の多久町は鉱区の境目になっておるのでありまして、その各炭鉱からどんどん掘進して参りますると、次々に谷川の水、河川水が枯渇して参りまして、私は昨年の暮れから今日まで二、三回ずっと各部落の井戸の水を見て回りましたが、井戸の水が枯渇して全然使用できないものが十三部落、二百戸に及んでおるのであります。しかも谷川の水は枯れて、使用水になるものはございません。おそらくことしの夏は灌漑水に大へん困るであろうといわれておるのであります。私の秘書もその土地から参っておりますが、この間雨が降りましたら非常に喜んで、これでやっとふろに入ることができますと申しておりました。ほとんどその十三部落の人々はふろの水が使えないのであります。ないのであります。こういう悲惨な
鉱害に対して、炭鉱に持ち込みましても、
鉱害であろうとは思うけれども、おれの方の炭鉱という証拠がないから、簡単に払うわけにはいかぬというて、今日までもう何年も前からずっと被害は重なっておりますが、なかなか井戸の水あるいは灌漑水についての補償をしてくれないのであります。いたし方ないのでありますから、二、三カ部落は、わずか二十戸、三十戸の部落でありましても、二百万円前後の費用を投じて機械揚水の施設をいたしております。しかしそれも炭鉱は補償してくれない。二、三回すでに調査をいただいたのであります。通産局の調査もいただいた。あるいは九大の教授の実地調査もしてもらった。ほとんどの人は、これは
鉱害であろう、しかし全部がどの炭鉱の
鉱害であるかということについてはわからないという返事でありますので、これを口実にして、炭鉱はおれの方じゃないというので、なかなか受け合ってくれません。こういう実情にある。何の罪とがもない農民がこれほどの被害を受ける。その水田、水稲については、おそらくこれは半作でしょう、それだけの被害を受けておるこの年々賠償に類する被害に対して、現在の
法律ではなかなかこれを救える方法がないのであります。
被害者と加害者の直接交渉になっておる。こういう実態に対して通産省並びに農林省あるいは厚生省はこれを放置されるということは、私はとても許されぬと思いますけれども、これに対するお考えをまずお伺いしたいのであります。現在の法規ではどこまでできるということと、今後の対策について
一つ各省からの責任あるお答えを願いたいのであります。