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1960-04-05 第34回国会 衆議院 商工委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月五日(火曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 中村 幸八君    理事 大島 秀一君 理事 長谷川四郎君    理事 南  好雄君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       鹿野 彦吉君    始関 伊平君       關谷 勝利君    中井 一夫君       細田 義安君    渡邊 本治君       板川 正吾君    井手 以誠君       櫻井 奎夫君    東海林 稔君       多賀谷真稔君    八木  昇君       北條 秀一君    山下 榮二君  出席国務大臣         通商産業大臣  池田 勇人君  出席政府委員         農林政務次官  大野 市郎君         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君  委員外出席者         厚 生 技 官         (公衆衛生局環         境衛生部水道課         長)      石橋 多聞君         農林事務官         (農地局参事         官)      正井 保之君         農林事務官         (振興局参事         官)      橘  武夫君         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      井上  保君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部企画課         長)      住  榮作君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第八五号)  石炭鉱業安定法案勝間田清一君外二十二名提  出、衆法第三号)      ————◇—————
  2. 中村幸八

    中村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案勝間田清一君外二十二名提出石炭鉱業安定法案の両案を一括議題とし、審査を進めます。前会に引き続き質疑を続行いたします。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 石炭局長より昭和三十八年度石炭需要及び供給量調査についてという資料をいただいたわけです更けれども、なるほど地域別需要、そういう面については詳細に載っておるわけですが、そのことが千二百円引き下げなければならぬという、しかも中京地区においてもあるいは阪神地区においてもあるいは京浜地区においても、大体千二百円下げなければならぬという根拠を見出すことがなかなか困難で、資料は一応きわめて明細に出ておりますけれども、それがなぜ千二百円になるかという点がきわめて不明確である、議論が飛躍しているわけです。どうも私たち納得できないような気がする。もう一度御説明願いたいと思うのです。
  4. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 この資料の中には、価格の差が一五%の場合どうなるか、一八%の場合どうなるか、あるいは二〇%の場合あるいは三〇%の場合といろいろなふうに分けて、石炭に対する需要が、一体どのくらいあるかといったようないろいろな面からの検討をしたわけであります。大体千二百円と申しますのは、これは京浜地区における石炭値段石油価格に比べて一五%引き程度というものに相当する数字ということになります。これはきのう申し上げたと思いますが、三十三年度一カロリー当たり炭価というものは九十七銭、それから石油の一カロリー当たり価格も、たまたま九十七銭だったわけでございます。それを将来石油は九十銭程度になるのではないかというふうに考えまして、そしてメリットの差一五%ということにすると、大体七十七銭くらいになるわけでございます。この千二百円、これはカロリーに換算いたしますと十九銭ということになりますので、九十七銭から十九銭引くと七十八銭、大体一銭違うじゃないかというお話がございますが、七十七銭と七十八銭ということであれば、ほぼ均衡し得るのではないか。特に今後メリットの差が一〇%以内にとどまるであろうと思われます大型のボイラーといったようなものがふえて、小型のボイラーがだんだん少なくなるというようなことを考えて参りますと、あるいは一五%と一〇%の範囲内でとどまり得るかもしれないというふうにも考えられます。これらのことをいろいろと勘案いたしまして、大体九十銭の油に対抗できるためには七十八銭程度京浜地区で売られる必要があるということから、石炭価格を千二百円下げろといったような審議会としての結論が出されたというふうに、私は理解いたしております。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、七十七銭というのは中京及び阪神では幾らでありますか。
  6. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これはきのう申し上げたのでございますが、若干値段は下がるということになるかもわかりませんが、大体われわれが考えておりましたときには、京浜阪神、それから中京という三市場それぞれ千二百円下げるということを一つの目標にいたしまして作業を進める、それから業界の方の合理化態勢を整えるということでやってきたわけでございまして、全国の石炭の四割を占めておりますいわゆるリーディング・マーケットと称されるこの三つの市場における価格が千二百円程度下がれば、これは確実に石油と競争できるもの、そういうふうに考えられるわけでございます。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実際京浜地区で七十七銭の場合は阪神地区では違うわけでしょう。普通阪神地区販売価格というのは、現状においては京浜地区とは差があるはずですね。その場合は阪神地区では幾らになるのかと、こう聞いているわけです。
  8. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これはもちろんそのときそのときの阪神並び京浜地区市場における価格というものは違っておりますが、しかし、たとえば値段を上げたりあるいは下げたりということの場合には従来値下げの額そのものについては、それぞれの市場ほとんど同じ額を下げるということをやっておったので、われわれは千二百円下げる際には大体阪神中京京浜とほぼ同じ程度に下がるのじゃないか、そういうふうに考えたわけでございます。今お尋ねの価格につきましては、京浜が九十七銭でございましたときに阪神は八十九銭、それから最近は阪神が八十六銭で京浜が九十四銭、ずっと大体八銭程度の差をほとんど持っているということで、今後京浜で千二百円下がれば、やはり向こうも千二百円下がってカロリー当たりの差というものは、ここにございますように八銭ばかりの差がございますが、その差は同じで、もとそのものが変わっていく。具体的に申し上げますと、九十四銭ということは五千八百十四円というものでございまして、これは京浜、それから阪神が五千三百四十三円ということになりますが、京浜で千二百円下がって、三十三年の基本の価格というもので参りますと、京浜が大体六千五十円程度でございます。それに対して阪神が五千五百五十円程度でございますが、約五百円の差があるわけであります。将来千二円下がる際には、京浜で四千八百円、それから阪神で四千三百円というようなものになると考えるのが一番すなおな考え方じゃなかろうか、こういうふうに考えております。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、京浜で四千八百円になると、阪神で四千三百円ということですから、逆算すると、阪神の方は重油に比べて何%引きくらいになりますか。
  10. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 ちょっと済みませんが、今計算してみます。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それで逆算をすればわかるのですが、重油に比べて石炭京浜地区よりも阪神地区の方が優位になるわけですね。ですから、私はその点、需要の伸びは阪神の方が期待できるのではないか、こういうことを言いたいと思うのですよ。
  12. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 おっしゃる通り、今の京浜で一五%程度割安になる場合に、阪神ではほぼ二三%くらいということになります。ただこれは重油価格東京関西では同じであるということでございますればそういうことになりますが、今差し上げました資料の三十三ページをごらんいただきますと、石炭重油のそれぞれの地域値段価格東京を一〇〇とした場合にどうなっておるかという表がございます。これは過去の四年間の実績から見たものでございます。こういたしますと重油値段というものは、東京一〇〇の場合に関西は九四・六ということで、石炭価格は安くなっておりますが、同時に重油価格も安いということになっておりますので、この傾向は今後とも阪神の方がより大きな製油所に近かったりというような関係等から、立地的に石炭についても重油についても、東京よりも阪神の方が恵まれておるということになりますので、大体千二百円引いて東京で一五%安くなったと申しまして、それをそのまま関西に直すと二三%ということになりますが、しかし関西石油というものと比べると決して二三%までは安くない、一六、七%程度の安さだということになるというふうに考えます。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 重油の場合は北海道は別として、私はかなり政策的なものが入っていると思う。というのは石炭値段関係において、重油値段というものが若干石炭京浜において高いのだからという点が、重油販売価格という面において現われやしないかと思う。石炭の方が阪神よりも京浜の方が非常に高いということで、こういう操作が行なわれておりはしないか、こう考えざるを得ないのです。どう考えましても川崎製油所があって、関西には和歌山にあったり、あるいは四日市にあったりするのですが、阪神の方が安いということはあまり考えられないのじゃないかと思うのです。船賃にしても中近東から持ってきて若干横浜の方が高いといえば高いのですが、あれだけの長距離の間わずかしか違わないのです。あるいは和歌山におろすとかあるいは川崎におろすにしても、そう違わない。こう考えますと、若干重油価格というものには、石炭値段の差が現われている点もあると思う。そういったことは別にしましても、私は、阪神における需要見込みと、京浜における需要見込みを大体同じように考えるということはおかしいのじゃないか、こう思うのです。そういうこまかい議論をしておりましてもなんですが、私は、千二百円というのを、東京の時点において、そうして一五%という値引きをして、しかも五千五百万トンという数字は、どうも需要の面からは納得できない。需要の面では、もう少し政策の努力があれば、私はふえるのではないかと思うのです。こういったことで、ラウンドで千二百円ということは、これだけの大改革をやる場合に、もう少し考慮の必要があるのではないか、こういうふうに私は考えるわけです。  そこで、続いて今度は鉱害について一言だけ質問いたしたいと思います。井手先生質問されるそうですから、私は一言だけ質問しておきたいと思いますが、臨時石炭鉱害復旧措置法は、期間があるのですから、いずれ廃止になるわけですが、今後の措置をどういうように考えておるか、これについてお聞かせ願いたい。
  14. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 三十七年の七月で現行臨鉱法は満期になるわけでございますが、われわれといたしましては、鉱業法の原則というものは鉱業法の方で別途検討いたしておりますが、それと並行いたしまして、やはり国土保全利用といったような面から復旧する方が国民経済的にプラスであると考えられるものにつきましては、現在の臨鉱法と同じように、今後国家もできるだけ相応の負担をするということによって、復旧ができるような体制を確立すべきではないか、こういうふうに考えております。現在の臨鉱法を改正して存続させる、さらに延長するということにいたしますか、あるいはまた全然新しい法律をかわりに出すかといったようなことにつきましては、現在いろいろの面で検討を加えておりますが、しかし、その形式はいかようになりましょうとも、いずれにいたしましても、特別に不合理な費用がかかるというものでない限りは、やはり国土保全利用という見地から復旧できるといったような法制を今後もとるべきではないかということで、できますならばそういうような法制を、もう少し恒久化するということで努力していきたいと考えております。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この臨鉱法ができる際に予定しておりました鉱害量幾らであるのか、それがどの程度現在復旧をされておるのか、要するに進捗率をお尋ねいたしたい。
  16. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 臨鉱法ができましたときに予定しておりました鉱害量は百十億でございます。そのうち、三十四年までに済みましたものが六十二億五千八百万、三十五年に予定いたしておりましたものが十六億五千三百万、あと三十六年と三十七年の両年で三十億八千万工事をする必要があるのでございますが、これにつきましては、三十五年度程度工事を三十六年あるいは三十七年に行なうということにいたしますれば、百十億は三十七年中に予定通り全部完成するというふうに考えております。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、大体予定の百十億程度のものは法律期間中に完成する、こういうわけですが、ところが、その後発生しております鉱害があると思います。それが現在一体どの程度あるか、これをお聞かせ願いたい。
  18. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 毎年発生しておりますものは八億から十億でございます。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 毎年発生しておるものが毎年処理されていれば問題ないわけですが、現実の問題としては、農地等についてはかなり復旧進捗に見るべきものがあると思うのですが、堤防とかあるいは家屋というものはまだ多く放置されている。あるいは実際問題としては、どんどん鉱害が進行するのに復旧の方が追いつかないという形もあると思うのです。こういう状態もあると思うのですが、一体三十七年末でどの程度鉱害量が現存するでしょうか、大体予想つきませんか。
  20. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 百十億というのは、二十七年の臨鉱法発足当時の鉱害だったわけでございますが、三十三年度の当初あらためて推定をやり直してみますと、大体そのころ百六十億程度鉱害があった。そのうち、今申し上げましたようなあれで今年十六億、来年、再来年で三十億やりますと、約四十五、六億というものは処理される、こういうことになるわけでございますが、それと同時に、片方で八億から十億というものが加わるということになりますので、差し引きますと百六十億ばかりのものが、三十七年ごろには百二、三十億程度残るではないか。従って、それを処理いたしますために、臨鉱法がなくなりましたあとも、さらに構想を新たにして、できるだけ早く鉱害を解消するといったような方策を講ずる必要があるではないか、そういうふうに考えております。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 臨鉱法がなくなります昭和三十七年にもまだやはり百五、六十億残るということでございますので、これはぜひ一つ臨鉱法精神をくんで、法律を恒久的にしてもらいたいということを要望するわけです。  次に、整備事業団事務処理の問題でありますが、整備事業団処理が非常に事務的におくれるわけです。はなはだしきは、一昨年の八月ごろ労働者解雇しておるのにもかかわらず、まだ買い上げ決定ができない。そうして離職金すらもらえない、こういう状態になっておるわけです。この合理化法案ができます際には、一応買い上げ申請をして、決定してから解雇をするというのが大体法の精神であったわけです。ところが現実には、解雇をされて満二年になるけれども、まだ買い上げ決定ができなくて、離職金すらもらえないという状態は、非常に遺憾だと考えるわけです。私は鉱害処理の問題が、最も事務的にはかどらない原因をなしておると考えるわけです。これについて今後どういうようにしていかれるつもりであるのか、たとえば買い上げ決定するまでは、労働者解雇してはならぬと、こういうふうに指示されるのか、あるいは労働者の分だけを早く処理する、こういうつもりであるのか、その点を一つお聞かせ願いたいと思います。
  22. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 今御指摘のように、昨年の秋以来、特に鉱害関係といったようなものでいろいろ紛争が起こりまして、険悪な状態を呈したというような事情等もございますので、それにかんがみまして、従来鉱害関係人間が当初はたしか五、六名だったと思いますが、三十一年の一月には課長外三名で、合計四名でやっておりました鉱害関係人間を、その後逐次増加いたしまして、現在は四十名の人間で、できるだけすみやかに鉱害関係の問題をはっきりとケリをつけるということによって、買い上げ促進をはかるというような業務態勢を整えてございますので、これからは、この非常に増員された人間というもので能率的に事を運んで参りますれば、従来のように、鉱害関係がなかなからちがあかないために買い上げがおくれるといったようなことは、改善されるのではないか、こう考えまして、事業団を督励して能率的な業務進捗を、今後もはかっていきたいと考えております。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この離職金ですが、離職金支払いまたは問題になりました炭住引き揚げ資金といいますか、あるいは移住資金といいますか、そういった事業団の出す分ですね、これについては、買い上げが大体事業団において決定を見る、予想がつくということで、事業団の判断にまかして、一つ離職金やそれらの資金を先に払うということはできないものでしょうか。
  24. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは労働者の立場から考えますと、確かに非常に気の毒で、今御質問のようなことを、われわれも情においては、してやりたいと思っておるわけでありますが、しかし実際問題として、鉱害を初めその他の債務処理といったようなものが非常に困難をきわめて、結局は話し合いがつかぬで、事業団買い上げてくれと持ち込むこと自体がだめになるといったようなケースも出て参りますので、一応契約予定日をきめて、その予定日におった人は、契約が正式に締結されたならば、離職金を調印のときに払うといったような措置はとっておりますが、はたして契約が締結されるかどうかまだわからないというときに、あらかじめ離職金を払うということは、あるいは買わないといったようなことも起こるかもしれぬというような事態を想像いたしますと、そこまでの踏み切りはよういたしかねるということで、今まで通り契約予定日をきめまして、その契約のときまではいなくてもいい、しかし契約がされたならば、予定日にさかのぼって、そのとき現在おった人に払うという現行制度を続けざるを得ないのではないかと考えております。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実は私の質問が悪かったのか、ちょっと誤解があるようですけれども、実際は労働者はもう全部首を切られておるのです。そうして失業保険ももらった。それももう期間が切れている。そうしてもう結局拾い仕事をしておる、こういう形なんですね。しかし会社関係は、首を切られておるのですけれども、まだ離職金とか退職金とか未払い賃金をもらっていない、こういう状態事業団の方も大体むずかしい、鉱害被害者の方々が判を押していただくのが、二、三名あるけれども、なかなかむずかしい。しかし、もううしろに返して御破算にするようなことは考えられない、こういった場合に、便法的に一つ離職金とかその他の資金を支払う方法はありはしないか、こういうことを質問しておるわけです。
  26. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 確かに大部分の場合は、予定通り、いろいろ難航の末とはいいながら、やがては買い上げになるというケースが多いと思います。しかし、場合によりましては、結局話がどうしてもつかぬで、申し込みは一応したけれども、債務処理が折り合いがつかぬために、事業団への買い上げ申請を断念せざるを得ないといったようなことも、これは考えられますので、そういった場合には、事業団としては、全然自分の手で買い上げなかった人間のめんどうまで見る、これは従来からたびたび労働者に対する援護措置ということはやってあげておりますが、しかし事業団援護を主たる業務とする事業団ではございませんので、買った人間については、離職金なりあるいは退職金の優先的な支払いなりということを通じて、いろいろ援護の手は伸べますが、しかしこの範囲を出て、買わないかもしらぬというところまでやるのは、事業団仕事としては行き過ぎじゃないか。やはり現在の事業団としましては、正式に買い上げたときになって初めて必要な金を支払うというのが精一ぱいのことで、それ以上の、事前に労働者のためにかわって立てかえ払いをするといったようなことは、むしろ適当ではないのではないか。もしやるとすれば、これはほかの機関で、中途までのいろいろなつなぎ資金といったものを別途世話するというのが精一ぱいだ、こう思っております。ただ、政府といたしましても、漫然と業界同士話し合い現地同士話し合いというものにまかしていつまでもらちがあかぬなら仕方がないといったようなことでございませんで、たとえば北海道大和田炭鉱の場合には、現地通産局長も中に入りまして、それで関係者間の話し合いができるだけすみやかにつくようにといったような、側面からの促進ということもやっておりますので、今後も必要があれば、政府はそういったような意味で、できるだけ早く買い上げ締結ができるようにといったような援助の手を伸べていきたい、こう考えております。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実は大臣、この法律ができますときには、一応建前としましては、買い上げ申請して、買収決定したときに解雇をするという建前であったわけです。ところが、現実の問題としましては、すでに解雇をしてから買い上げ申請をし、そしてその申請が二年も決定しないという状態なんです。労働者の方は一応解雇されておりますから、その解雇された労働者というのは、ほとんど未払い賃金を払ってもらってない、あるいは退職金も払ってもらってない、こういうことで生活も困りますから、失業保険受給せざるを得ない、失業保険受給をいたします。その失業保険受給もとっくに期間が切れまして、そして会社にかなりの金銭の債権を持っておるにかかわらず、何らもらえないために、生活の立ち直りもできない、要するに移転もできない、こういう状態なわけです。そこで、法律立て方としては、一応買収をするまでは解雇してはならぬということは書いてありませんけれども、そういう趣旨で作ってあるわけですけれども、今申しましたように、二年も事務が停滞をして、これはなまけたという意味ではありませんけれども、実際問題として鉱害問題の処理ができないという形でおくれておる。そこで離職金とかあるいは事業団が払います移転資金というものを、事業団の方で十分——これは最終的には買収になるし、その事業団の責任において一時離職金あるいはその他の資金立てかえをする、こういうことができるかどうか、これをお聞かせ願いたい、こう言っておるわけです。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 この事業団援護機関ではございませんので、一時立てかえその他のことはなかなか困難じゃないかと思います。そういうことは、事業団ということよりも、労使の間で話し合いをつけるべきだ、政府がその点まで考えるということは、今の建前からいけば少し行き過ぎじゃないか、大体でございますけれども……。そういう例の起こらないことを、まず考えることがほんとうじゃございませんか。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 業者といいましても、支払い能力があるような業者なら問題ないのですが、さか立ちをしても何も出ない、こういう業者なものですから困っておるわけです。現実はもう労使で解決されるような問題ではない。経営者の方も、事業団申請をしましてから後は、労働者に対して交渉するというようなことは、実際問題としてない。それは事業団まかせである、こういう状態であります。そのことは、その使用者の態度というものについては問題があるでしょうけれども、現実の問題としてはそういう実情であります。そこで事業団の方で何らか——実際払う金ですから、早く払ってやれば労働者の方も更生ができるわけです。そして生活にも区切りがつくわけですが、その未払い金やあるいはまた未払い退職金、さらに離職金という、もらえるお金があるものですから、そこにおる。その金をもらわなければ移転ができない、こういう事情なんです。ですから事業団の方で責任を持って——実際は契約はできる、こういう確信のもとにやっておるのですから。それは事業団が確信がなければ、事業団の責任になりますから払えません。確信のある場合において払ったらどうか、こういうことを言っておるわけです。
  30. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 先ほども申し上げましたように、政府としては、できるだけ関係者間の話が早くつくようにということを念願いたしまして、通産局が関係者の間のいろいろなあっせんとかいったようなものについてのめんどうを見るということはできるだけいたしたい、こう思っておりますが、しかしどうしても話がつかぬで、あるいは破談になるかもしらないといったようなものについて、あらかじめ買い上げるということを前提にして離職金といったようなものは、現在の事業団としては払うわけにはいかない、そういうふうに考えております。  それからこれは申し上げるまでもありませんが、解雇しちゃってから事業団に話を持ってきたということがありましても、これは離職金は払わないという建前になっておりますので、一応事業団に申し込んで、大体契約の日現在におった人に離職金を払うというのが本筋でございますが、それではいろいろ時間が大へんだろうということから、便宜契約予定日をきめて、その予定日におった方、申し込みをしてから予定日に在籍していたという方に対して払うことにいたしておりますから、まず首を切っちゃって路頭に迷わしておいてから、事業団に売り込みにくるといった例は、全然ございません。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 申請をしてから解雇して、そして放置されておる状態なんですね。時間的に私が先ほど申しましたのと若干食い違いがあるかもしれませんが、現実の問題としては放置されておる。申請をして直ちに解雇をして、そうして失業保険をもらっているというのが現実です。それも便宜的に予定日というものを作っておるだけで、現実はそのときに解雇されているのですよ。ですから事実問題としては、私は同じ問題だと思う。実はその通りなんです。ただ便宜的にその点を取り扱いとして行なっているだけですから、これは私は法の精神とは異なった実情にある、こういうことを申し上げておるわけです。  そこでその次に、賃金未払いあるいは退職金未払いというのは、この前から話しておるのですが、きわめて膨大なものがあるわけですね。たとえば例を引きますと、ある炭鉱では、大体買い上げ代金が三千五百万円程度あるのに、鉱害が四千万円程度ある。さらに労働者退職金その他いろいろなものを入れて二千万円程度ある、こういった場合に、鉱害優先ですから、労働者の方はほとんどもらえないんですね。これについてはこの前から研究を願っておるわけですが、さっぱり名案がないわけですが、政府は、このたびは政府独自に助成金を出されるのですから、これについても、私は社会政策的な何らかの便法があるんじゃないか、かように考えるのですが、一つ大臣から御答弁願いたいと思うのです。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 労働関係法のあれで、賃金の先払いということは行なわれておると思います。今の買い上げの問題につきまして、鉱害賃金との問題、これは一応きまっておると思いますから、それに従っていくよりほかには、ただいまのところできないんじゃないか。炭鉱の合理化のために政府が補助金を出すのだから、多賀谷さんの言われるように、こういう問題も出したらどうかというのでございましょうけれども、ただいまの財政の立場から言ってなかなかむずかしいのじゃないかと思います。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 十分御理解ないようですからちょっと説明しますと、実は鉱害は一般債権ですから、債権としては順位から言えば後順位にあるわけです。ところが鉱害の場合は、事業団と連帯責任の関係で優先的に扱っておる。これはやむを得ぬと思いますけれども、優先的に扱っておるという形になるわけです。これは債権から言うと後順位にあるけれども、事業団との連帯債務になっておるから、それを優先的に差し引くという形になるわけです。そこで一番困るのは労働者でして、鉱害の方はほとんど全部持っていく、そうすると労働者賃金というものは、ほとんど残らないわけです。現実の問題として、先取特権も何も問題にならない。その前にまだ公租公課がある。そこで私は、鉱害を連帯債務があるというので優先的に取り扱うならば、法律論としてはあるいは必ずしも名案ではないと思いますけれども、むしろ賃金その他の労働者の債権を事業団との連帯債務にすれば支払ってくれますかと、こう言いたいくらい、労働者賃金は、現実は非常に低く扱われておるわけです。二千万円も債権があって、実際は百万円程度しかもらえないのですよ。二千万円未払金があって、百万円程度しかもらえない。こういったことで、一体合理化法案の出るときの精神というものは全く踏みにじられておると思うのです。これは労働者が困っておるからということなのですね。ですから、その趣旨から言うならば——今まではいわば業者だけが出しておった資金、開発銀行の金利を安くしたというのは、必ずしも業者だけとは言いませんけれども、形式的には業者だけが出したという形になっておる。今度は政府からの助成金があるのですから、少し社会政策的な意味を加味して、全部が全部とは言いませんけれども、若干それにゆとりを持たされてはどうか、こういうことを申し上げておるわけです。
  34. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 今お話ございましたように、鉱害は、鉱業権者が連帯責任者として自分自身の債務、こういうことになりますので、一般の破産の場合に債権者債務を相殺できると同じような観念で、まず事業団の方で相殺するといったような形式で、優先的に鉱害処理するということになっておるわけでございますが、賃金の方は、これは前の鉱業権者の債務で、これは事業団からすれば何ら引き継ぐべき筋合いのない債務、そういうふうに考えております。もし今御指摘のような格好で、事業団賃金未払い分についても連帯責任を負わしたらどうだということになりますと、それをいいことにして、とにかく賃金は六カ月分までは事業団で払ってくれるんだから、そういうふうなことでむしろ計画的に賃金を払わぬで、しかしお前たちあとから事業団にいけば救われるのだというような、非常に悪質な人間をはびこらせるような、かえってマイナスの結果を生じはしないか、こう考えられますので、現在の段階におきましては連帯責任を事業団に負わせるということは私は不適当ではないかと考えております。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 レア・ケースを取り上げて反論されるというのはいかぬと思う。そのことは鉱害でも同じですよ。どうせ事業団がやってくれるからというので、鉱害をほとんど処理しておらぬでしょう、現実には。鉱害代金を払ってないでしょう。正常な経営なら鉱害代金を払っておるはずですね。正常な経営より以上に、はるかにオーバーするような鉱害というものは、これは将来事業団買い上げてもらえばいいという気持で鉱害復旧してない。賃金にも同じことが言えるとおっしゃるなら、逆に鉱害にも同じことが言えると思うので、そういうレア・ケースはやはり別の観点から制限し、セーブすべきものであって、私は政策論の立て方としては、それは鉱害と同じじゃないかと思う。そこで、実際何とかして救ってやりたいが救う方法かないものですから、政府かこのたび助成金を出されるならば一つ社会政策的に、全部とは言いませんよ、若干でも未払い賃金あるいは退職金の一部分を何か優先的に考慮のできるように考えられたらどうだろう、こういうことを申し上げている。それは今度政府が助成金というものを出されるから、いわば業者だけの金ではないから、そういったことが考慮をされてもいいんではないか、こういうことを申し上げているわけです。一つ大臣、御答弁を願いたい。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 私はそこまではなかなかむずかしいと思います。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは一つ大臣にもよく事情を話して研究していただきたいと思うのですが、これは実際あわれな話なんですよ。やはり一人当たり二十万円から債権を持っておるのですよ。そしてその炭鉱なんかはかなり長い間作業をしておりました炭鉱で、戦前からやっておった炭鉱で、そこの労働者はその賃金をもらえば、あるいは手当がもらえれば十分更生できるのですね。それが更生できないというのは、結局それがほとんどもらえない。一人当たり五千円程度しかもらえない。こういうことで、ここにいろいろな問題が起こっておるわけなんです。これについてはいずれとくとお話をして研究をしてもらいたいと思います。  次に援護会法の点でありますが、これは合理化法案関係がありますから一言お聞かせ願いたいと思うのですが、この炭鉱労働者、すなわち援護会が対象としております離職者のうち、かつて炭鉱に働いておったというその範囲が、私たちが立法をするとき考えておりましたのと、現実に行なわれておるのは非常に違うわけですがね。この点一つお聞かせ願いたいと思うのです。
  38. 住榮作

    ○住説明員 臨時措置法第二条の炭鉱労働者の定義でございますけれども、これは法律にも書いてございますように「石炭の掘採又はこれに附属する選炭その他の作業に従事する労働者」こういうことになっております。この範囲につきましては当然のことでございますが、石炭の掘採の準備、掘採、掘採後の処理というように炭鉱における一連の基本的な工程に属する作業、これは当然含まれるわけです。さらにそういった基本的な工程に付属して補助的に行なわれる作業、そういった作業に従事している労働者が第二条の炭鉱労働者であるというように考えております。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 石炭鉱業合理化臨時措置法には鉱山労働者という言葉が使ってありますね。これと範囲は違うんですか。鉱山労働者という場合と、それから炭鉱労働者、これは名前の違いですけれども、趣旨は同じですが、少なくとも石炭鉱業合理化臨時措置法と炭鉱離職者臨時措置法とは労働者範囲は同じでなくちゃならぬと思うのですがね。この取り扱いが違っておる。政府はなるべく狭く解釈すれば財源が浮くからいいようなものの、これはどうもわれわれとしては納得ができないのです。
  40. 住榮作

    ○住説明員 臨時措置法の労働者の考え方は、御承知のように炭鉱労働者が他の労働者と特殊な環境条件なり身体条件なり労働条件にあって、そういった方々が離職した場合に他の労働者と異なった特別な対策を要する、こういう観点から臨時措置法では炭鉱労働者を考えておるわけでございます。従いまして法の趣旨からそういうような労働者を考えておりますので、合理化臨時措置法とはやや考え方を違えているという点もあるかと存じます。
  41. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 合理化臨時措置法の関係におきましては、これはそこで働いている人間は単に肉体労働者でなくて、ある程度ホワイト・カラーといったような人間でも、掘採の労働者と同じようにやはり賃金未払いといったようなものは受けておるであろうということで、未払い賃金等のある者はかわいそうだから一つ払ってやろう、あるいは炭鉱自体が全部なくなってしまうわけでございますので離職金を払ってやろうということで、一応ここに働いている人間は、全部離職金あるいは未払い賃金の優先支払いの対象にするということで、その意味において今労働省の方から御説明のありました離職者の臨時措置法の場合と若干異なって、こちらの私の方の合理化法の方が労働者範囲が広くなるということになっております。
  42. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この法律によると、「石炭の掘採又はこれに附属する選炭その他の作業に従事する」というのが離職者法ですね。合理化法の方は業務に従事する、語句からいうと「作業」という字と「業務」という字の差だけですがね。しかし私は文句を言うわけではありませんけれども、問題は炭鉱労働者というのが特殊な作業環境にあったというよりも、やはり一定地域に多数発生した失業者の問題を救済するというのが、この法の精神だと思うんですよ、離職者法は。何も炭鉱労働者が特殊な作業環境にあったということだけじゃないですよ。要するに、一定地域に多数発生しておるのを分散政策をとろうというのが、私は主たる法の任務であり、目的であると思うのです。その点においては、直接炭鉱の特有な仕事だけじゃない。坑外雑夫のように、私は、この選炭とかあるいは炭鉱だけでなくて、よその工場にもある労働者という場合も、救うべきじゃないかと思う。今ホワイト・カラーの話をされましたが、ホワイト・カラーだけじゃないのです。それは、炭鉱には炭鉱の、坑外雑夫といって、相当の職種があるのですね。それはほとんど入っていないのです。たとえば寮に従事する者であるとか、守衛であるとか、あるいは番人であるとか、こういうようなものが入っていないでしょう。要するに、そこに労働者を全国から工員募集をして集めてきたのですから、あの小さな地域に、ずいぶんの人がいる。それを、炭鉱がなくなったから、分散しなければならぬでしょう。ですから、それらの人を全部対象としてやらなければ、炭鉱は、坑内やあるいは炭鉱特有の者だけでやっているのじゃないですからね、私はその範囲を増してやるのが至当だと思うのですか……。
  43. 住榮作

    ○住説明員 今申し上げましたように、炭鉱労働者につきましては、何も石炭の基本的な工程に属する作業に従事する労働者ばかりじゃなくて、そういった石炭のそれに関連して行なわれる関連部門の各種の労働者、これは排除をいたしておりません。そういうようなものにつきましては、今御例示なさいましたような職種、作業に従事している労働者は、この炭鉱労働者に該当いたすかと思います。いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたような趣旨から、実態に即応して判定していくつもりで、現地にも指示いたしております。
  44. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ホワイト・カラーの職員層だけのような印象を、石炭局長は持っておられるかもしれませんが、現実はそうでないのですよ。あのやっている認定というものは、やっぱりかなりきびしいですね。炭鉱に特有であるかどうかということが、かなり判定の基準になっておると思う。ですから、職員ならばという感じがあるかもしれませんが、現実には、たとえばここに書いてある作業に従事するというものの中に、われわれとしては、政策的には含まなければならぬけれども、まあ労働省、大蔵省は、それを含むべきでない、これは炭鉱固有じゃないのだ、こういう話をされますと、炭鉱固有のものというのは、あるいは六割程度しかいないかもしれません。当然他の労働者が一緒になって炭鉱を経営していっておったのですから、この点について十分御配慮願いたいと思います。  最後に一つ、職業訓練手当と生活保護法との関係はどうなりましたか、お聞かせ願います。
  45. 住榮作

    ○住説明員 訓練手当と生活保護の関係でございますが、一つは、訓練手当がいわゆる実費弁償的なものではなくて、一つの収入と見るかどうかということで、いろいろ関係各方面とも検討したのでございますが、訓練手当の趣旨から考えまして、生活保護との調整につきましては、実質的に影響がないというように、解決いたしておりまするそして、そのように現地に指示いたしております。
  46. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、生活保護法の手当をもらっておる人も、職業訓練手当をもらえる、こういうわけですか。
  47. 住榮作

    ○住説明員 その通りでございます。
  48. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣に最後にお尋ねいたしたいと思いますが、今度の政府石炭政策を見てみますると、千二百円の引き下げをやり、算術計算ではありますが十万人程度の従業員の減少を考えられておるようであります。しかしこれだけの雨期的な石炭政策をやられるについて、私は経営者の側の規制というものは何らなされていない。経営者の方は今の状態のままで、これだけの大改革をやろうとしておるところに、すでにこの石炭政策の合理化計画というものは破綻を来たす芽を持っておる、私はこう断言してもはばからないと思うのです。先日来私は質問をしておりましたけれども、もう出発においてそれが達成できないような点が幾つも指摘できると思うのです。  それから懸案になりました問題が依然として解決してないという点です。第一には、鉱区の調整の問題、これだって法律的には一歩も前進してない。あるいはまた鉱区の合併の問題であり、さらにまた休眠鉱区の開放の問題もそうです。これらの問題は政策的に何ら手を打たれていない。現行のままでいくということになっておる。ここにも問題があるのじゃないかと思うのです。  それからその次の問題は、流通機構の問題でありますが、審議会等でいろいろ御審議になっておるようでありますけれども、これも私は、もう少し画期的な流通機構の政策を打ち出されないと、今のままの販売網をもってして、ただそれに何らかの調整をしても意味がないではないか、かように考えるわけです。この点どうなっておるのか、現在の機構のままで合理化しようといってもなかなか困難ではないか、私はこういうように考えるわけですが、これだけ画期的な石炭政策を打ち出そうとなさるならば、今まで懸案になった諸問題を総合的に解決する必要があるのではないか、それができなければ、私は、幾ら政府が説明をされ、作文を作られても、実際は困難ではないか、かように考えるのですが、その点お聞かせ願いたい。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 今回の石炭鉱業合理化臨時措置につきまして、経営者側には何ら施策をしてない、こういう御質問でございますが、金利あるいは貸付その他、経営者側に対しましていろいろ手は尽くしておるわけでございます。お話の鉱区の問題、租鉱権の問題、あるいは合併指示、こういう問題につきましては、御承知の通りただいま鉱業法の審議をいたしており、その結果を待ちたいと考えております。  また流通面につきましては、これまたお話の通り、なかなかやっかいな問題でございます。これは先ほど来申し上げましたように、早く手のつけられる混炭、港湾施設その他につきましては今年度からやりますが、今後も実態を調査いたしまして、徐々に流通面における合理化もはかっていきたいと考えております。
  50. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 鉱業法の基本的なあり方についての問題は、研究されていることは知っておりますけれども、私はそれでも間に合わないと思うのです。少なくとも昭和三十八年度に千二百円も下げようというならば、この際石炭だけでもそういった今まで懸案になっておりまする諸条件を整える必要があるのではないか、こういうことを言っておるわけです。今縦坑一つ開発しようといたしましても、鉱区を合併しなければ一つ分の縦坑の鉱量がないというところも私は知っております。あるいはまた、開発をするにいたしましても、鉱区が入り組んで非常に困難である、ある鉱業権者がどうしても聞かない、こういう場合にはどうにもならないのですから、これも私は早く解決する必要があると思うのです。あるいは現在千七百万トン出炭している既存の炭鉱で三千万トン増産をしようという計画がなされておりますけれども、これはやはり鉱区の調整をやらなければ困難ではないか。もう隣のところまで来ておりましても、自分の鉱区でないものですから掘れないで、その坑道はつぶしていくという炭鉱が幾らもあるのです。隣のところまで来ておるのですから、そのまま掘進をして、掘れば掘れるという状態です。私はこれらについても当然考慮してしかるべきではないかと思うのです。坑道をわざわざ捨てていくんですから。こういった諸条件の整備が可及的すみやかに行なわれる必要があると思うのですが、最後にその点を御答弁願いたい。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 私はただいまのところ現制度で一応スタートして、計画は進めていけると思います。お話のような点につきましては、今の法制でも通産局長の勧告ができるのでございます。全然手のつかないことはない。実情に沿いまして適当な措置を講じていきたいと思います。
  52. 中村幸八

    中村委員長 次は井手以誠君。
  53. 井手以誠

    井手委員 私は昨年秋の臨時国会で石炭対策については一通り申し上げておりましたので、本日は提案された改正案についての二、三点についてお伺いをいたしたいのであります。  大臣にまずお伺いしたいのは、この通常国会で恒久対策は必ず提案すると言明になっておりましたが、大体ただいままでお示しになったこの改正案を中心とした対策で、恒久対策は一応間に合うとお考えでございますか。
  54. 池田勇人

    池田国務大臣 この合理化対策あるいはまたボイラー規制法、関税政策等によりまして、大体これでやっていけると考えております。
  55. 井手以誠

    井手委員 それでは重ねてお伺いをいたしますが、今日まで質疑応答のありました炭価千二百円の引き下げ、これは昨日の委員会でもおおむねという言葉がよく使われておりましたが、おおむねでけっこうですから、ただいままでお示しになった対策で、大体達成できるという確信がおありでございますか。
  56. 池田勇人

    池田国務大臣 大体達成できると考えております。
  57. 井手以誠

    井手委員 達成できるという確信がおありであるならば、それでは三十八年度には流通面でどのくらい引き下げが可能であるか。これははっきりした数字はお示しにならぬでもけっこうですが、流通面でどのくらい、生産面でどのくらい可能であるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  58. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま御答弁申し上げましたように、流通面につきましてはなかなかいろいろな問題がございまするが、ただいまのところ千二百円は、三十三年を基準にいたしまして、生産、流通両面でこれだけ下げよう。生産面の方は一応の各山についての計画は立っております。流通面につきましてはまだ三十五年度の対策だけでございます。今後流通の面につきましても十分検討を加えていって千二百円に達するようにいたしたいと考えております。
  59. 井手以誠

    井手委員 千二百円の引き下げに確信ありとおっしゃいますならば、大体見当はおつきになっておるはずだと信じますが、局長でけっこうです、流通面でどのくらい、生産面でどのくらい、その他の方策でどのくらいお見込みになっておるか、この点をお伺いいたします。
  60. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 昨年石炭業界の方で八百円CIF平均の価格を下げるという計画を発表したわけでございます。これはそれぞれの山のコストから積み上げて参りまして、流通経費は大体現状ということで出発して八百円下げるということをやったわけでございます。それに対しましてわれわれといたしましては、三十九年あるいは四十年に完成を予定されているいろいろな合理化工事を繰り上げて、三十八年中に完成させるということを実現することによりまして、それと並行する不況炭鉱の整理、プラスの面、マイナスの面をひっくるめますと、石炭全体のコストにおいてさらに二百円程度は下げ得る、従いまして、山元において大体千円程度は三十三年よりも下げ得るという各山ごとの計算から、一通りの見通しを立てたわけでございます。それで残りの二百円でございますが、特に北海道から東京に持ってくる場合が一番高いのでございます。今生産性部会というところでいろいろ検討しておりますが、大体の今までの過程で申しますと、北海道から東京に持ってくる場合に二百円は流通面で下げ得るであろうという一応の検討の結果が出ておりまして、これは明日生産性部会を開いて、会議の上でまた御討議願うということになっておりますが、一応業界の専門家等のいろいろ考えましたところでは、北海道から東京に持ってくる場合には二百円は下げ得るということでございます。そういうことでございますので、山元で千円近いものを下げることができますならば、大体CIF平均の千二百円ということは可能であろうと考えております。
  61. 井手以誠

    井手委員 審議会の方の案も私は承知をいたしておるのでございます。流通面における値下げ可能の金額としては、今お話しのように北海道の方は二百十円、九州炭は百円、そうなりますと千二百円のうち、順調にいって流通面において二百円と百円、残る千円以上のものは生産面における合理化でなくてはならぬという結果になってくるのであります。それではその千円内外の炭鉱における近代化、合理化による値下げの内容はどんなものでありますか。能率の向上という労働強化の面ですか、その点を詳しく御説明いただきたいと思います。
  62. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 御承知のように、今の石炭の能率は一人一月十四トン程度ということになっております。これを三十八年には大体二十四トン程度にしたい、そういうふうに考えております。それによりまして、大体先ほど申し上げた程度のプライスの引き下げが可能だろうと思います。
  63. 井手以誠

    井手委員 ただいまの十四トンを二十四トンに引き上げるには、どういう措置が必要になって参りますか。
  64. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは各方面の合理化をやらなければならないわけでございますが、工数にいたしまして、現在の工数の約六割程度になるような——これは御承知のように切羽面、運搬、掘進、選炭その他いろいろな付帯業務があるわけでございますが、この各面に能率的な設備等を増強いたしますことによりまして、現在百トンの精炭を出しますのに百五十七工数かかっているわけでございます。これは三十三年の実績でございますが、それを三十八年には大体八十八工数まで、各段階を積み上げる結果、減らすという見込みが立ったわけでございます。これでやりますと、先ほど申しましたように一人でほぼ二十四トン程度の出炭が可能かと存じます。
  65. 井手以誠

    井手委員 労働時間などの労働条件は現行のままで、あとは近代化資金によって、資金の面、設備改良の面で、それだけ能率が向上できるわけですか。
  66. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 労働条件を特に今よりも悪くしようといったようなことは考えておりません。
  67. 井手以誠

    井手委員 十四トンを二十四トンに引き上げる、それにはただいままでの御答弁によりますと、設備の改善が中心になって参りますが、その費用は幾らでありますか。その費用のうちの政府から出さねばならぬ、いわゆる一般会計から今度の二十一億みたいに出さなければならぬ資金は、どのくらい予定されておりますか。
  68. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 大手十八社、これで大体五年間に約千四百億というものを考えております。それから今回の特別貸付金の対象になるであろうと思われる最も骨格的な工事というものは、そのうちの二百億程度ではなかろうかと思っております。
  69. 井手以誠

    井手委員 千四百億円の所要資金、これは内容については昨日もいろいろ質疑応答がございましたが、そのうちに政府資金といわれるものは、一般会計あるいは財政投融資によるもの、別個に一つお示し願いたい。
  70. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 大体この法律によります近代化資金として七十五億程度、それから開発銀行、そういう財政資金それで約二百三十億程度のものを期待いたしております。
  71. 井手以誠

    井手委員 私はその程度資金では、とても十四トンを二十四トンに引き上げることは困難であると考えておりますが、そういう意見については省略をいたしまして、今御答弁になりましたものは大手でございますが、中小鉱はどうですか。
  72. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 大体中小鉱の方は、一年間に五十億から六十億ということを予定いたしておりますので、五年間で大体三百億程度のものが、大手以外に今後石炭鉱業としては投入されるということになるだろうと考えております。
  73. 井手以誠

    井手委員 中小鉱に対する政府資金はどういう計画でありますか。
  74. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 中小鉱に対します全体のものは、御承知のように個々の機械、採炭機あるいは運搬機といったような機械設備を備える場合に補助しますので、大手のような骨格工事と違いますから非常に予測は困難でございますが、われわれといたしましては三十四年度は大体三億五千万円程度の能率のいい機械を入れたい、こう思っておりますが、それができましたならば、来年度以降はさらにもっともっとふやしていきたい、こう思っておりますので、全体の工事量といたしましては、やはり三十億程度の機械化ということを政府の援助のもとにやらせることができれば、非常に中小炭鉱の能率化に資するのではないかと考えております。
  75. 井手以誠

    井手委員 御存じのように、中小鉱における生産面の合理化ということはなかなか困難であります。実際問題として、骨格工事がないとおっしゃいましたが、その通り困難であります。その程度資金で十四トンを二十四トン、これはもちろん大手のようには参りませんけれども、それに近い能率を上げるということがその点可能ですか。
  76. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは大手に比べまして比較的浅いところを掘っているといった関係から、本格的な工事をしませんでも、ある程度能率のいい機械を入れてやるということをやれば、中小は中小なりに能率の増強ということは、大手よりもむしろ場合によっては非常に早くできるのではないか、大体全体といたしまして二十四トン程度の能率向上ということは可能であろうかと思っております。
  77. 井手以誠

    井手委員 大臣にお伺いをいたしますが、お聞きのように生産面だけで千円前後の引き下げをしなくてはならぬという結果になって参りましたが、それでも大丈夫三十八年度にはそれに近い、おおむね千二百円前後の値下げが可能であると、今でも御確信をお持ちでございますか。
  78. 池田勇人

    池田国務大臣 私はそういう目標で進んでおります。また可能と考えております。
  79. 井手以誠

    井手委員 一応承っておきましょう。  そこで、次にお伺いしたいのは、改正案の第三十六条の三の「(貸付けの相手方等)」の第二項にあります「石炭の鉱量並びにその石炭坑の近代化が完了した後にその石炭坑において掘採する石炭の生産能率及び生産費が通商産業省令で定める基準に適合する場合に限り、行なうものとする。」この条文であります。この貸付をしようとする、そのいわゆる条件であります一定の基準はどういうものでありますか。いわゆる鉱量、生産能率、生産費、これをお示しいただきたいと思います。
  80. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 まず鉱量につきましては、本格的な縦坑あるいは高能率ベルト、斜坑といったものを整備いたします大手といいますか、大規模の工事につきましては、少なくとも二十年程度の鉱量は最低基準として作りたい、こう思っております。それから中小炭鉱の機械化ということになりますと、これはまだはっきりしておりませんが、大体六、七年程度の鉱量のものでも一応認めていっていいのじゃないかということから、さらに検討したいと考えております。  それから生産能率につきましては、現在新しい坑口を開きますときの基準というものが、これは各地によっても違うわけでございますが、一応平均いたしますと、全国平均で約二十七トン程度の能率の上がる見込みのあるものだけを許可するということでやっておりますが、これは新しい近代化の計画を立てる前の基準でありましたので、これはもう一度新しい目で見直してみたい、こう思っております。その新しい坑口を開く基準と、ここに申します基準というものは合致させるといったようなことでやっていきたいと思っております。  それから生産費の方につきましては、これは今のところどの程度のものからどうするかということにつきましていろいろ検討いたしておるわけでございまして、たとえば三千五百円ほどでなければいかぬとかといったようなことは、まだきめておりません。
  81. 井手以誠

    井手委員 その生産費ということが私は一番大事だろうと思います。はっきり何十何円という端数までお伺いしようとは思いませんが、大体その基準はどの程度でありますか、炭価を引き下げるという、そういう非常に重大な内容を含んだものでありますからお伺いをいたします。
  82. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 まだこの基準としての数字というものはないわけでございますが、たとえば現在なくて三十八年度以降といいますか、三十八年度に二千二百五十万トン程度になるであろうと思われます新坑の三十八年度におけるコストは、一応今三千六百二十円、さらにそういうことで四十二年度までずっと合理化を進めていきますと、新坑の出炭力が七百万トンになって、大体そのときの新坑のコストは三千四百円というような一応の試算をいたしておりますので、これらの数字をさらに再検討いたしまして、新しく政府資金を投ずる場合には、どの程度のコストであがるものでなければいけないかということをきめたいと思っておりますが、まだ具体的にはきまっておりません。
  83. 井手以誠

    井手委員 貸付の条件にかなう三十八年度の生産費は、大体どのくらいであるかというその数字は、三千四百円から三千六百円程度ということですか。
  84. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 現在工事をやりつつあり、あるいはこれからやらんとしているものをひっくるめてのコストが大体そういうことになりますので、今の三千四百円ないし三千六百円というようなことは、一つの目安というものにはなり得ると考えております。
  85. 井手以誠

    井手委員 目安として三千四百円から三千六百円、それは三十三年度の炭価からどのくらい下がっているわけですか。
  86. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 三十四年度のコストは、大手、中小平均いたしまして四千六百二十八円でございます。
  87. 井手以誠

    井手委員 それでは一定の基準が大体判明いたしましたので次に進みますが、改正案の先の方にあります事業団の発行することのできる合理化債券、これはどの程度のものでありますか。どういう方面にこれを使用するのですか。
  88. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは事業団の金繰り等から特に必要がある場合には、債券が発行できるという道を開いただけでございまして、今のところ大体資金運用部からの借り入れというようなことでやっていけると思っておりますので、さしあたりは、この規定はございますが、発行するという計画は持っておりません。
  89. 井手以誠

    井手委員 それでは財政資金の都合を予想して、もし財政資金が窮屈であるならば、債券発行の道を開いておこう、この程度のものでありますか。言葉をかえて申しますならば、ことし程度の財政資金が都合できるものであれば、発行はしない、こういうことでありますか。
  90. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 大体そういうことでございます。
  91. 井手以誠

    井手委員 そこで、ちょっとあと戻りいたしますが、三十八年度までに一千四十万トンの非能率の炭鉱を買い上げるという問題、これは十四トンを二十四トンに引き上げる、単価は三千四百円から三千六百円程度にする、それに引き合わない炭鉱は買い上げるということになりますが、千四十万トンが出て参りました根拠です。その予想される炭鉱の数、これははっきりわかりませんでしょうけれども、大体どのくらいの炭鉱の数を予想されておるのか、あるいは千四十万トンを買い上げるという場合には、それによる失業者はどのくらい見込まれておるのか、この点をお伺いいたします。
  92. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 一千四十万トンと昨日申し上げましたのは、これは買い上げというのではございませんで、それまでに閉山するであろうという山でございます。大体この閉山する山のコストが、現在平均いたしまして五千六百二十円でございます。とてもこういう高い山では今後生存する見込みがなかろうということで、まず大手につきましては、大体閉山するものと減産するものと合わせまして、二十二を予定いたしております。中小炭鉱の方につきましては、現在約千七百万トンの出炭をいたしておりますが、三十八年には若干減って千六百万トンくらいになるのではないか、こう思っておりますが、この中小炭鉱が五百五十四、大体年度末にございましたが、これがどれがつぶれてどれがなにするかということについてははっきりわかりません。ただこれははっきりわかりませんけれども、一応コストとして五千六百円といったような非常に高いものになっておりますので、将来どんなに努力してもやはり五千円を割ることは、とてもむずかしかろうと思うようなものを一応拾ってみましたので、炭鉱の数自体は調べればわからぬことはないわけでございますが、まだ大手が現在八十のうち二十二が大体閉山あるいは非常に規模を縮小せざるを得ないということになるという以上に、中小の方は全体で百万トン程度減るのではないかという以上に、ちょっと炭鉱の数までは申し上げかねます。
  93. 井手以誠

    井手委員 一千四十万トンという四十万トンまで出ておりますから、大体の見当はついておると思いますので、五百五十四鉱あるうちに、数は要りませんから、大体なんぼくらい閉山しけなればならぬであろうとお考えになっておりますか、その点が第一、それからいま一つは、それによる失業者はどのくらい予想されておるのですか、その点を第二としてお伺いいたします。
  94. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 まず一番最後の御質問について先に申し上げますが、これはきのう申し上げましたように、大体五千五百万トン生産を三十八年にするというときの労働者の数を十九万五千八百人程度というふうに考えております。年度末現在の労働者の数が二十五万七千五百人でございます。従いまして、きのう申し上げましたが、大体六万弱、五万八千程度人間がこれから減るという一応の計算となるわけでございます。  それから、初めの方の御質問は、これはおっしゃる通り、非常にこまかな数字をこう出しておりますので、これは一つ一つの山を当たったはずでございますから、帰って調べれば、山の数はどれくらいあるということは出るはずでございますので、これは帰りまして、資料を調べましてお答え申し上げます。
  95. 井手以誠

    井手委員 二十五万七千五百人から十九万五千八百人を引きますと、六万二千人ばかりとなるわけであります。閉山する中小鉱の労働者が、ほかの炭鉱に全部行けるとは予想されないのでございまして、総計から総計を引くというわけには参りません。そういたしますと、企業別に簡単に移動ができない、地理的に移動ができないということになりますれば、新規採用などを考えますと、一方の閉山に伴う失業者は、大体どのくらい予想されておりますか。一般には十一万人といわれておりますが、その点の予想は立てておられると思いますが、いかがでありますか。
  96. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 よく十万、十一万、こういわれておりますのは、大体一年半くらい前までは三十万近い人間がおったわけでございます。こういうことを基準にして、十万あるいは十一万ということがいわれておったわけでございまして、これからの数は、差引いたしました結論としては、先ほど申し上げましたのは、私若干算術が違って、六万弱と申したのは六万をこえるということになっておりますが、これからは、計算上は、六万ないし六万二千程度人間が過剰という計算ができるということになるわけでございます。これははっきりわからないのでございますが、毎年々々これはある程度新陳代謝と申しますか、炭鉱が移っておると申しますか、毎年、一応の通産省の方の調べによりますと、五万名採用して七万名解雇したとか、あるいは六万名採用して四万名解雇したとかいったような差が、結局毎年の増員あるいは減員という格好で出ておりますので、今後も毎年々々片一方減ると同時に、当然新規採用というようなこともあろうか、こう思います。特に中小炭鉱につきましては、一人の人が一年の間に二つも三つも山を変えるという例も少なくございませんので、そういう延べ数だけでは、あまり統計的な意味を持たないというふうに考えられまして、その何人採用された、何人解雇されたといったような数字につきましては、今のところ政府全体としても十分な資料を持っておらず、結局差引して何人が炭鉱離職者として、炭鉱以外のところに職を求めなければならないのかという数を推計いたしまして、この方々に対する新しい職場の準備、教育といったようなことを十分にやれるようにという方面に重点を置いてやっておりますので、ことし二万七千人というものが新たに出るであろうというようなことで、労働省の方でいろいろの措置が講ぜられておるわけであります。もしこういう計算通りになるとすれば、六万名程度の方をこれから考えなくてはならないということになりますので、それらの方に対する十分な措置をとっていきたい、そういうふうに思っております。
  97. 井手以誠

    井手委員 大臣にお伺いをいたします。生産面で大臣が確信を持っておられるように、千円前後の引き下げをやろうとするならば、総計の差引だけでも、六万二千人内外の労働者の減少になって参るのであります。それに職員は一万名前後の者が同じく閉山に伴って失業するでありましょう。また企業別の炭鉱でございますから、ほかの炭鉱に、お前は向こうに行けというような簡単なものではないのであります。膨大なこの予想される失業者に対して、大臣は国務大臣としてこれだけの多くの予想される失業者、合理化に伴う失業者をどういうふうに救っていこうとお考えになっておるのか。今日まで昨年から実施せられております炭鉱離職者のあの援護措置だけで足りるとお考えになっておるのか、あるいは一般で提唱されておる建設労務公団と申しますか、私ども党でも計画いたしておりますが、こういう多数の者をかりに災害復旧その他に利用するといたしましても、活用するといたしましても、その工事が済めば半年、一年で失業してしまうというおそれもあるのであります。さらに中年以上の労働者がかなり多いと見なくてはなりません。そういう人々の職業転換というのは非常にむずかしいのでありますから、こういう多数の者を政府の施策によって失業させる場合には思い切った失業救済の対策が必要であると私は存じております。何かそれに対する労務公団みたいな建設事業をずっとやって回るような労務公団の構想なり、あるいは従来昨年からとりましたあの構想をさらに拡大するようなお考えはないのか、その点を池田通産大臣にお伺いいたします。
  98. 池田勇人

    池田国務大臣 昨年の臨時国会で御審議願いましたあの労働対策を強力に進めていきますと同時に、なおこれを進めていきます上におきまして、いろいろ改善し、拡大すべきものは拡大していく考えでございます。また、政府が自分でそういう措置をとるのみならず、民間の関係会社はもちろん、関係のない会社につきましても、こういう急激にふえる炭鉱労務者につきまして、できるだけの措置をとっていただくよう勧奨いたしたいと思います。先般もある特殊な会社につきましては、お話の通りに建設会社を作るという計画もございます。また、まだ計画をいたしておりませんが、民間におきまして石炭労務者の雇用対策のための中央審議会も先般できたような状況でございまして、政府といたしましては、政府でやるべきこと、また民間でしていただくこと一体として失業対策にできるだけの措置を講じていきたいと考えます。
  99. 井手以誠

    井手委員 これについてはいろいろ意見なり要望もありますが、時間の関係がありますので、その程度にしておきたいと思います。労働省、けっこうですから……。  次に、鉱害の問題で若干お伺いをいたしたいのであります。鉱害の問題でお伺いするにあたりまして、一つ見本を見ていただきたいのであります。これは酒じゃありません。それは佐賀県の多久市の中通川の川の水であります。これは三月三十日、一週間ほど前正午ごろ私が立ち会いでくみ取った炭鉱の汚濁水であります。下は炭塵です。上は油がぎらぎら光っております。一升びんを川に突っ込んだところがこれだけ炭塵がたまった。きょうは一つとっくり見てもらいます。一つ見て下さい。——これは三菱古賀山炭鉱、明治佐賀炭鉱、明治系立山炭鉱あるいは洗炭による放流、汚濁水であります。おそらくその水は汚濁度は三万前後ではないかと思っておるのであります。その川の水がたんぼに入って灌漑水として利用されました結果はここにごらんの通り、これは下は全部炭塵です。この水が入ってせっかく植え付けましてもこの株が張りませんので、こういう小さな株になる。減収をしておる。これは私目の前でとってきたんですから、これもとくとごらんを願います。これは農林省にも特に見ていただきたい。三寸か四寸全部炭塵です。大へんな品物です。皆さんも一つ見て下さい。——炭鉱の被害はどんなにひどいものであるか、それは見本ですから必要があれば幾らでも持って参ります。一つ見本を呈示いたしましてお伺いをいたしたいのであります。  佐賀県の鉱害は最近の統計によりますと四十億円と言われておるのであります。先刻多賀谷委員に全国では百六十億とおっしゃいましたが、佐賀県だけでも四十億と言われておるのであります。特にその中央にあります多久市、これは第二の筑豊と言われる新興の炭田地帯でありまして、年産百万トンに上がっておるのであります。そういう急速な開発から鉱害が最近非常に著しくなって参りました。鉱害一つといたしまして私はそこに見本を持って参りましたように、炭鉱の洗炭などによる汚水、福岡の通産局には何回も実地に見てもらいました。その汚濁水、佐賀県の評定によりますと千度以上はこれを放流してはならぬという規定がありますけれども、実際には励行されておりません。しかし灌漑水として利用できるものは大体三千度から四千度であろうと言われておるのであります。ところがここに私は通産省の福岡通産局の文書を持って参っておりますが、各炭鉱に厳重な指令を鉱山保安局その他から出しましても、完全な設備をやっても、古賀山炭鉱だけでも一万二千度に上がるであろうと言われておるのであります。これは文書にもここにちゃんと書いてある。これは福岡通産局の鉱害部長から来た公式の文書であります。そういった被害についていわゆる年々賠償がうまくいっていないのであります。陥没、脱水、陥落いたしますと、鉱害ということが認定されれば復旧工事ということもこれは可能でありますけれども、現在の鉱業法によりまする年々賠償においては、ほとんどこれだけの被害を炭鉱は補償してくれないのであります。この汚濁水による被害面積は大体多久市、多久町、北多久町など七カ部落の十五町歩に及んでおるのでありますが、通産局のこの公文書によりましてもこの被害は年々増大するであろうといわれておるのであります。このことを炭鉱にかけ合いましても、なかなからちがあかない。いろいろな理由をつけて補償してくれない。いや、補償よりも汚濁水が水田に入らないようにしてもらいたい、そういう施設をしてもらいたい、たとえば井戸を掘ってもらいたいという要求をいたしましても、なかなか実行してくれないのであります。この毎年拡大して参りまする汚濁水の被害、これが第一点であります。特に農林省、お聞き願いたいと思います。  第二点は井水、灌漑水の枯渇でありまして、最近明治佐賀炭鉱、西杵炭鉱、杵島炭鉱、古賀山炭鉱、これは幸か不幸か多久市の多久町は鉱区の境目になっておるのでありまして、その各炭鉱からどんどん掘進して参りますると、次々に谷川の水、河川水が枯渇して参りまして、私は昨年の暮れから今日まで二、三回ずっと各部落の井戸の水を見て回りましたが、井戸の水が枯渇して全然使用できないものが十三部落、二百戸に及んでおるのであります。しかも谷川の水は枯れて、使用水になるものはございません。おそらくことしの夏は灌漑水に大へん困るであろうといわれておるのであります。私の秘書もその土地から参っておりますが、この間雨が降りましたら非常に喜んで、これでやっとふろに入ることができますと申しておりました。ほとんどその十三部落の人々はふろの水が使えないのであります。ないのであります。こういう悲惨な鉱害に対して、炭鉱に持ち込みましても、鉱害であろうとは思うけれども、おれの方の炭鉱という証拠がないから、簡単に払うわけにはいかぬというて、今日までもう何年も前からずっと被害は重なっておりますが、なかなか井戸の水あるいは灌漑水についての補償をしてくれないのであります。いたし方ないのでありますから、二、三カ部落は、わずか二十戸、三十戸の部落でありましても、二百万円前後の費用を投じて機械揚水の施設をいたしております。しかしそれも炭鉱は補償してくれない。二、三回すでに調査をいただいたのであります。通産局の調査もいただいた。あるいは九大の教授の実地調査もしてもらった。ほとんどの人は、これは鉱害であろう、しかし全部がどの炭鉱の鉱害であるかということについてはわからないという返事でありますので、これを口実にして、炭鉱はおれの方じゃないというので、なかなか受け合ってくれません。こういう実情にある。何の罪とがもない農民がこれほどの被害を受ける。その水田、水稲については、おそらくこれは半作でしょう、それだけの被害を受けておるこの年々賠償に類する被害に対して、現在の法律ではなかなかこれを救える方法がないのであります。被害者と加害者の直接交渉になっておる。こういう実態に対して通産省並びに農林省あるいは厚生省はこれを放置されるということは、私はとても許されぬと思いますけれども、これに対するお考えをまずお伺いしたいのであります。現在の法規ではどこまでできるということと、今後の対策について一つ各省からの責任あるお答えを願いたいのであります。
  100. 池田勇人

    池田国務大臣 最近の産業の発達の結果、いろいろ汚水問題の点が出ておるのであります。石炭鉱業は最近のこれではございませんが、実情を十分調査いたしまして、適当な措置を考えたいと思います。
  101. 大野市郎

    ○大野政府委員 ただいまも現状を承りまして、耕地の被害状況をよく了承いたして驚いておる次第でございますが、あるいは鉱業法の改正の問題に触れるようなことになるのじゃないかと思いますが、災害の、今のようにだれの責任かわからぬというふうな原因の究明などでも、問題点がまだあるようでございますので、そういう問題もいわゆる公正な機関でそれらの査定をなしたものが決定できるような、そういう制度にするとか、制度的な問題でもてこ入れが要るように考えられます。農業の立場でいきましては、天災の場合には、御承知のように手厚い方法がそれぞれ考えられておりますが、人災に関することになりますと、その原因の究明ということが解決しないとその次の話が進まないようなことがほかにも多々例がございます。現実に被害がこのような状況であることはよく了承いたしておりますので、なお相談をいたしまして、法の改正をどのような点でなすべきものかというようなことも、われわれの側からも究明をいたしまして、改善をいたしたいと存じます。
  102. 石橋多聞

    ○石橋説明員 井戸水の枯渇が鉱害によるというふうに認定せられました場合には、臨時石炭鉱害復旧法に基づきまして、代替施設として水道の敷設によってこれを救うことができます。ただし鉱害の認定につきましては通産大臣が行なうことになっております。
  103. 井手以誠

    井手委員 問題は鉱害の認定なんです。認定ができないんです。たとえばここに一例を申し上げますが、これは福岡通産局鉱害部長から地元にあてた文書であります。藤川内の灌漑水不足については、明治佐賀炭鉱の採掘もその一因を占めていると推定されるが、山地の開墾伐採による雨水の滞水能力減退が藤川内川の流水の調整を悪くしていることも全く否定できない。どこに参りましても、鉱害とは思うけれども、全部が鉱害とは思われない、こういう回答です。何回相談してもこういう回答、そうなりますと毎日ふろにも入れない。飲料水も何町も半道も遠いところにくみに行って、相談をして、もらい水をしなくちゃならぬ。そういう不便を三百六十五日繰り返さなくちゃならぬのであります。鉱害の認定ができないものをどうして救うのか、これが問題です。通産大臣は調査して何とかしますということですが、それじゃいつまでたっても解決はできないのであります。これはあなたの方の出先の福岡通産局へも、私は毎月一回くらいは出向いて相談をいたしておりますが、なかなか解決ができない。こういう困った問題をどう処理されるのか。認定できないからやむを得ないということでは、これは政治家としては済まないと私は思う。この点を私はお伺いいたしております。
  104. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の鉱害の点につきましては、通産局も中に入りまして、いろいろ話をいたしまして、五月中には結論を出すことにいたしております。このことについては、被害者の方々も一応御了承なすって、結論を待っておられる状況でございます。
  105. 井手以誠

    井手委員 私も立ち会ったり相談をしたりしておりますから、大体ひにちは伺っておりますが、五月中では困るのであります。苗代の時期の問題もありますので、四月中、おそくとも五月の初めまでには結論を出してもらいたいのでありますから、その点は石炭局長から福岡の方に指令を願いたいと思っております。今日まで先祖代々水に心配なかったところが、炭鉱の掘進によって渇水した。しかし一方においては、それは証拠がない、おれの方じゃないという。スイカを二つに割ったように中を見るわけには参りませんので、それを口実にどんどんどんどん引き延ばされる。こういう場合にどうしたらいいのか、その点を私は大臣に聞いておるのであります。特に忙しいところを大臣のおいでを願っておるのは、そういう意味であります。法規の解釈とか、あるいは調査とかいうような問題ではなくして、だれが見ても鉱害と思われるもの、しかしそれが公式には断定できないという悲惨な居住民のこの苦しい立場に対して、どういう手を打つべきものであるか、この点を私はお伺いしておるのであります。
  106. 池田勇人

    池田国務大臣 鉱害の発生が特定の一人くらいなら話が非常に早いのです。問題は、数多いものでございますから、お話のように、責任転嫁が行なわれる。そして結論がおそくなるということであろうと思います。従いまして、こういうことにつきましては、担当の通産局が中に入りまして、この間の調整をすることが必要であろうと思います。また、それと同様に、地下水をとるのでございますから、井戸水も減るでございましょう。しかし、とった水を流す場合におきまして、こういうふうなひどいものが流れぬように、規定によりまして、よごれた水を流さないように努力さすことも一つの道だと考えております。お話の点十分われわれといたしまして考慮いたしまして、こういう一般の民心が非常に動揺し、御迷惑をかけるようなことのないように進めていきたいと思います。
  107. 井手以誠

    井手委員 炭鉱の沈澱バッグがどういう状態であるかは、写真を持ってきておりますから、あとでごらんを願いたいと思っております。大臣がおっしゃるように、地元との間に中に入って調整をするということでありますけれども、そんなに簡単に炭鉱が引くようなことであるならば、問題は起きないのであります。幾ら通産局から指令を出しても、相談をしても、なかなか言うことを聞かないのです。炭鉱が金を払うのですが、払わないのです。そういう場合にどうしたらいいのか、これは多久ばかりではございません。全国鉱害地は至るところです。これはひどいと思っても、出す方の炭鉱が出さないならばいたし方ないじゃありませんか。そういう場合に、法の改正も必要でありましょうけれども、何とか打つ方法はないのか、その点について何かお考えはござませんか。調整しようとしても、それが長引いて解決しない場合はどうするのか。これは鉱業法にもございますが、完全に復旧しなくてはならぬということが書いてある。補償しなくてはならぬということが書いてある。ところが、それは空文に終わって、なかなか実行できないのであります。
  108. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 確かに現行法制のもとにおきましては、鉱害は賠償しなければならない。それから沈澱池を設けて、きたない水は流さないようにしなければならない、といろいろ規定は設けられておりますが、実際問題として、責任を立証することが非常にむずかしいといったようなことのために、あちこちでトラブルが起こっていることは御承知の通りでございます。これを解決する一つの方法といたしましては、今の法制に新しい構想を入れると申しますか、鉱害金庫といったようなものでも作って、そこが立てかえてどんどん工事を進めるといったようなことにでもなれば、今お話のあったような点は解決するのじゃないかと思いますが、それをやりますと、立てかえ払いをするということのためには、それ和応の資金の準備というようなこともしなければならないし、いろんな問題等もございますので、実はこの臨鉱法が二年後に切れるという時期とも関連いたしますが、そういう時期にも備えて、何らかここで新しい構想を取り入れる必要があるのではないかということもひっくるめて、現在通産、農林両省に、関係業界からも参りまして、各国の実例等の検討もしているわけでございます。従って、われわれといたしましては、その調査団が帰ってきましたならば、その意見等も聞き、同時に、国内で今まで検討しておりました案というようなものも、いろいろと各方面に御批判願うということにして、できるだけ円満な事態の解決ができるような方途を見い出す努力をいたしたいと考えております。
  109. 井手以誠

    井手委員 現行法律でも、どうしても炭鉱が鉱害の責任をとらないときには事業を停止させることができるという最後のきめ手がありますけれども、そういう事例は一回もないそうでありまして、事業者に対してはきわめて温情豊かなものがあると私は思っているのであります。あまりそうなりますと困ったものであります。  そこで、鉱業法改正の審議会、これは時間がかかりますから一言だけ触れておきますけれども、かつて、この前の高碕通産大臣から、鉱害の問題は非常に重要であるから、鉱害関係の代表者あるいは市町村長の代表者あたりも審議会の委員に加えたい、必ず加えます。都合では労働者の代表も入れたいという言明がございましたが、実は入っていないのでありまして、私は鉱業法の改正の今後に必ずしも期待をかけていないのであります。しかし、せっかくただいまの御答弁でありますから、鉱害賠償公団に類するような構想は、ぜひ実現をさしてもらいたい、これを強く要望いたしておきたいのであります。この問題について申し上げたいことはいっぱいございますけれども、今直ちに回答できるものでもないでありましょう。私は、ここで特に農林省に相談いたしておきたい。渇水による被害は十三カ部落二百町歩に今及んでおります。大へんなことになろうと思います。それではため池を作ったらいいではないかという説もございましょうけれども、ため池を新設しても水がたまらないのであります。従来あるため池に年三回満水しておったところが、最近は年一回、四割程度しか水がたまらないのであります。そういう事態で、水源池を求めようとしてもない現在の状態、この悲惨な鉱害に対して、農林省は、地方にまかせずに、鉱害というものに対してもっと積極的に取り組む機構上の構想、それと、この問題に対して調査団を派遣していただくお考えはないか、この点をお伺いいたします。
  110. 大野市郎

    ○大野政府委員 熊本農地事務局その他地方に事務局もございますので、そちらでも現状に対してはそれぞれ調査をいたしておることと私は信じておるのでございますが、一応事務局のそれらの事情の詳細その他も知りたいと存じます。なお、必要に応じまして中央の担当官を、それらの極端にひどい地域に対しまして調査する必要があれば、その手続をとりたいと存じます。とりあえず出先の事務局の調査の結果をさらに検討させてみたいと存じております。
  111. 井手以誠

    井手委員 なお、この点については別個に御相談をいたしましょう。これは全国的な問題ではございません。朝鮮に近いところですから中央ではあまり関心がないかもしれませんけれども、地方によってはきわめて重大で、今までの美田がなくなってしまう。そういう土地改良などよりもっと重要性を持っておる鉱害でございますので、今後の構想を練られる上においても、農林省から直接調査されることが必要であると存じております。この点もあらためて直接御相談をいたしましょう。また、厚生省にもその点一応お含みおきを願いたいと思っております。通産省も、こういう問題がどんどん各地に広がっております。従って、従来のような構想ではなく、話がさばけないときには本省から直接対策を講ずるという熱意を示してもらうことを、特に要望いたしておく次第であります。この問題については別個に御相談をいたします。大臣はけっこうです。  ついで、この機会に承りたいことは、炭鉱の買い上げに伴う鉱害復旧、この鉱害復旧の単価が従来十九万一千円であります。その単価をもってしては、ため池のようになった鉱害地を原状回復するということは困難だと存じます。ところによっては、六割程度しか復旧できないところもあるのであります。この点については、ちょうど一年ほど前、石炭局長から、それは非常に無理な最高限度であるから引き上げよう、三十四年度から実行いたしましょうというお約束をいただいておりましたが、残念ながら農村を守る農林省の方の話がさばけないために今日に至っております。しかし、新年度からはこれを引き上げようということに、農林省も大体腹をきめられたようでありますが、いつから、どのくらい引き上げになる御意思でありますか。これは農林省にお伺いいたします。
  112. 正井保之

    ○正井説明員 復旧事業費の最高限度の引き上げでございますが、ただいま御質問にもございましたように、通産省とも打ち合わせをいたしまして、できるだけ早く結論を得たいということで検討いたしております。ただいままでの経過は御承知のようなことでございまして、職種別の賃金の改定等の際に、それを契機にいたしまして——聞くところによりますと、近くそちらの方の改定もあるようでございまして、そういった点も参考にいたしまして、ほかの事業——私どもいろいろ干拓でありますとか災害復旧事業とかをやっておりますが、そういった事業との連関等も考慮いたしまして、できるだけ実情に合うように、まだいつということをただいま申し上げられませんが、本年度の事業には間に合うようにということできめたいと思っております。
  113. 井手以誠

    井手委員 災害復旧の場合には、これは零細農に対しては二十八万円だと私は記憶をいたします。平均耕作反別で限度がきまっておるようであります。開拓、ことに干拓などにおいては三十万をこえておるものもあるのであります。御存じのように、鉱害地は災害を受けるような三等田などと違って、一等田、二等田といういい田が多いのであります。こういう場合、最高限度をきめるのは、耕作反別も、もちろん農家を救う意味において、所得を守る意味において必要でありまするけれども、やはり経済効果ということを考えますると、その水田の等級ということも、いわゆる反収ということも私は十分考えなくてはならぬと思うのであります。そういうことをいろいろ考えて参りますと、少なくともほかの災害復旧などの例からいたしましても、二十七、八万円には引き上げるべきである、かように私は考えておりまするし、関係地方からの要望もそのような数字になっておるのであります。大体どのくらいお考えになっておりますか。
  114. 正井保之

    ○正井説明員 ただいま具体的な数字について御質問ございましたが、私どもも、いろいろその土地の復旧によりまして回復される生産量、そういったものを勘案しまして、経済効果等から妥当度を試算いたしております。その数字は、ただいま先生のおっしゃったような数字は実は出ておりませんが、現在の数字はもちろん上回っておりまして、どの辺が妥当かということは、災害復旧の場合は、経営規模、耕作面積等の要素も加味いたしておりますが、そういった要素の扱いをどうするかというふうなこととも関連いたしますので、ただいまどの程度ということにつきましてはお答えいたしかねますが、あしからず……。
  115. 井手以誠

    井手委員 それでは今の問題で締めくくりに政務次官と石炭局長にお伺いいたしますけれども、引き上げの金額は、あるいは二十七、八万じゃなくて二十四、五万になるかもしれません。それは試算、いろいろの検討をされてけっこうだと思いますが、三十五年度の事業費からは必ずこれを引き上げるという、そのお約束だけは間違いございませんね。ずっと私はだまされ続けてきましたから、念を押しておきたい。これは政務次官から一つ責任ある答弁を、石炭局長から、大臣にかわって答弁を願います。
  116. 大野市郎

    ○大野政府委員 ただいまの限度の引き上げにつきましては、参事官が御説明申し上げました通りに、諸般の要素を取り入れまして検討をいたしておりますので、農林省といたしましても、三十五年度の事業としてこれが間に合いますように鋭意作業を続けております。
  117. 井手以誠

    井手委員 やりますか。
  118. 大野市郎

    ○大野政府委員 やる意思で作業をいたしております。
  119. 井手以誠

    井手委員 意思だということだが、そんなあいまいなことではだめです。将来大政治家になる人がだめですよ。やりますね。
  120. 大野市郎

    ○大野政府委員 諸般の事情を承りましても、実際に取り残された仕事がたくさん出ておるのは存じておりますので、先ほど述べました通りに作業を急がせまして間に合うように努力をいたします。
  121. 井手以誠

    井手委員 石炭局長、昨年もお約束がございましたが、これは石炭局の方は大丈夫だと思いますが、三十五年度から実行していただけますか。
  122. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 ただいまの農林省でやっておられます検討は、私は比較的近い機会に結論が出るんじゃないかと思っておりますので、その結論が出次第、三十五年度からぜひやりたいと通産省は考えております。
  123. 井手以誠

    井手委員 通産省は三十五年度からぜひやりたいとおっしゃっておる。実は三十四年度からやるとおっしゃったのを、あなたの都合で三十五年度に延びた。農家を守るのはあなたの方です。もっと色よい返事ができないはずはないと思います。政務次官どうですか、おやりになりますか。
  124. 大野市郎

    ○大野政府委員 ただいま石炭局長の方からもお話がありました通りで、農林省としては農民の立場を守るべきでありますので、そのことは間違いございませんが、ただいま申し上げますように、作業が完了いたしておりませんので、いついつからどうということをここで申し上げるわけにいかぬのでありますが、やらねばならぬこととは存じております。
  125. 井手以誠

    井手委員 大体その辺で信頼しておきましょう。  最後にお伺いしたいのは、これも合理化法案に伴う炭鉱の買い上げによる鉱害復旧問題でありますが、私が関係しておりまする鉱害復旧事業、地名は申し上げませんが、八十名程度の部落の全面的な鉱害復旧にあたって、炭鉱と関係のあるごく一部、二名程度がどうしても鉱害復旧の事業に署名をしないという最後の難関に、今日ぶち当たっておるのでありますが、そのために八十名のうちの七十八名は一日も早くと起工を望んでおるのに、それができないということは非常に情けない話であります。もちろん説得をして調印を求めなくてはなりませんけれども、そういう事情の場合には、これは会社とつうつうしているかどうか知りませんけれども、自分の意地を通すために判を押さない、そのために鉱害復旧ができないというような事態の場合には、この二人を除外して早急に復旧させる、何かそういう方法がおありでありますか、その点をお伺いいたします。
  126. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 現在の復旧事業団業務方法書では、今のお話のような際に、その二人の反対を押し切って基本計画を立てるということはできかねると思いますが、私の方では、ただいまのようなお話——ほとんど大部分というものは望んでおるのだ、ほんの一部だけだ。これがかりに、大体半数以上は欲したけれども、半分近い者がだめだという場合に強行するのは非常に無理だと思いますが、今のお話のような場合には、これは事業団業務方法書を改定して、とにかく二人の反対はあるけれども、全体的な鉱害復旧というものができるように、一つ基本計画の認可を通産大臣申請することができるような業務方法書の改訂ということをやらせたい、そういうことによりまして大部分の方々の復旧の希望をかなえさせてあげたいと思います。
  127. 井手以誠

    井手委員 鉱業法にもあるいは合理化法にもあるいは業務方法書にも全員でなくてはならぬとは、どこのすみにも書いてないのであります。点一つ書いてないのであります。そうでありますならばたとい慣例はそうであっても、業務方法書を改訂しなくても私はできると思っております。そういう緊急な、もう苗しろどきに近づいておりますから、もういずれかにきめなくちゃならぬ時期に際会いたしておりますので、こういう場合には方法書を改訂しなくても私はできると思うのですが、どうですか。
  128. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 現在の業務方法書には全員とは書いてはございませんが、被害者鉱害復旧することについて確認のあるものということで、被害者というのはその際には一応全員と読んで今までやってきたわけでございます。ただ今お話のような場合は非常にレア・ケースじゃないかと思いますので、お話のような事態につきましては、これはかりに一部に同意しないという者がおってもかまわないから、とにかく出してこいというような行政指導をいたしたいと考えております。
  129. 井手以誠

    井手委員 それでけっこうです。それでは最後にもう一つ、今申しました関係の炭鉱の買い上げ、これは佐賀県の杵島郡であります。これははっきり申しましょう。杵島炭鉱北方鉱業所の西坑の買い上げ、これは何回もこの委員会で申し上げたところでありますが、その安定鉱害あるいは不安定鉱害買い上げの対象になる地区は、杵島郡に限定されて売り渡しが行なわれておるのであります。ところが実は隣の武雄市の国鉄長崎線高橋駅周辺まで坑道を掘っておる事実があるのでありまして、その近くの武雄市朝日町接待並びに武雄市橘町二又、この二つの部落に脱水、陥落、家屋傾斜、こういう被害が出ておるのでありますけれども、そういう場合にはその鉱害補償の責任はどこにございます。
  130. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは抽象的に申し上げれば、とにかく石炭を掘ったことによって相当離れたところに脱水、陥落が生じたといったような場合には、当然加害炭鉱に当該賠償の責任があると考えております。
  131. 井手以誠

    井手委員 加害炭鉱がすでに二年四カ月前ですか、売り渡したものはどうですか。
  132. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これはそのときに加害をいたしました古い鉱業権者と、それを事業団が買っておるということでございますれば、現在の鉱業権者である事業団と連帯で賠償責任をとらなければならないと思っております。
  133. 井手以誠

    井手委員 そこで非常に困った問題は、これはどこの場合でも該当するのでありますが、炭鉱はやはり不安定鉱害などの鉱害補償のために、それに該当する金銭を供託しておると思うのであります。そういたしますると、生産についたあとであらためて炭鉱側から賠償金を整備事業団に出すということは実際問題として非常に困難であります。また整備事業団としても自分の方では当てにならない金を支払わなくちゃならぬということになりますと、これはまた出し渋りまして、その問題は各地で起こっております打ち切り補償に文句を言う、最近福岡県で問題になっております打ち切り補償の問題とは違うのですよ。そういう新たにわかった鉱害については、もちろん整備事業団と炭鉱が連帯して補償の責任に当たることは申すまでもありませんけれども、実際それが励行されていない。炭鉱は金は出したくない、整備事業団もおれの方は金は出したくない。そういった場合にはいかに地元が相談してもなかなか話がさばけない。そういった場合にはどうしたらいいのか。農民は泣き寝入りで済まされるわけには参りません。その点はどうですか。
  134. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 理論といたしましては、これは先ほど申し上げた通り、つまり連帯責任があるわけでございます。古い権利者と現在の権利者である事業団と、これがとにかくどちらかが直してやるということでなければいかぬ。ただ一番問題は、はたしてそれが鉱害かどうかということについての、またいろいろな点であれがあるのじゃないか、こう思いますので、具体的なケース一つ一つについてやはり鉱害といわゆる採炭との因果関係というようなことをできるだけ調査いたしまして、その結果炭鉱を掘ったから起こったのだということが明らかになれば、これは当然、もし鉱業権者が出し渋るということであれば、これは事業団に責任があるわけでございますから、事業団からも金を出して復旧させるということをせざるを得ない。またそういうふうに非常に因果関係がはっきりした場合には通産省といたしましても現地の通産局をよく督励いたしまして、両者が連帯してその責任を完遂するように指導していきたいと考えております。
  135. 井手以誠

    井手委員 その指導の筋はわかっておりますけれども、それが実際には実行できないのであります。そこで重ねて農林省にお伺いをいたしますが、こういうふうに鉱害がはっきりわからない。片一方は一生懸命法の盲点をついて逃げ回る。この鉱害に対して片一方の農民はどうにもならぬ。家は傾く、水田は陥没して減収になっておる。ところが鉱害という認定をなかなかしてくれない。だれだって金を出し渋るのは人情かもしれませんけれども、もちろんこれには所有権本位の今の日本の法律がそれはしからしむるところではありましょうけれども、そのためにこうむる農民の被害、これを守る農林省としてもっと積極的に農林省が被害者にかわってでも世話してやるという、そういう態勢はとれないものですか。今のところこういうものに対してはよりどころがないのであります。だれにたよってよいかわからない。一応仲裁その他の制度はあるにいたしましても、なかなかこれは農民が忙しい仕事の合間に汽車賃を費して一日も二日もかかって、それが陳情の相手に会えるかどうかわからないという、そういう困難な事情を考えますときに、これはやはり農林省が世話をすべきではないかと考えますが、そういう熱意を持った構想はございませんか。
  136. 大野市郎

    ○大野政府委員 気持の上では当然そうあるべきものと思いますが、制度がやはり一応ございまして、ただいまも鉱業権の賠償すべきものかどうかという原因の判定でひっかかっておる現状でございますので、その言葉通りでは農林省がその解決を急ぐように関係当局に口添えをいたしたり、さらに催促をいたしたりすることはいたしても参るのでございますが、ただ考えられますのはほかの地盤沈下などの問題が他の地区にもありまして、これは地盤沈下はいろいろ原因があろうと言われておるのでありますが、現実に御承知の新潟方面の亀田郷などの農地の被害に対しましては、やはり手を打って灌漑用水の掘さくをいたさせたりしている事実もありますので、そういう形で具体的な実例によりましてその原因が究明できないままでも、掘さく泉を掘らせましたり、そういう形で行政措置で水利の問題を救ったりしておる実例もございますので、ただいま申し上げられます方法としては、具体的な問題でそういう解釈も主張次第で成り立つという問題に対しましては、今までも手を打った実例がございます。先ほども述べましたような形で具体例をさらに検討いたしまして、そういう形で非常に原因が片寄って、鉱害にあると一般的に結論断定はできないまでも、そうだということになっておる地区には、大蔵当局その他の関係もありまして、国の予算を注ぎ込むことに制約がございます。大へん固い言葉になって、その原因がはっきりせざる限りなかなか方法はなかろうと申しておるのでございますが、現実には、他の実例では、それらの原因のさだかでない場合にも、救済策をした実例はあるのでございます。今回の例も検討させていただきます。
  137. 井手以誠

    井手委員 最後に、鉱害の問題は重大であり、申し上げれば数限りない実例もありまして、非常に困っておるのであります。端的に困っておるのです。幾ら炭鉱に相談したって、言葉をあいまいにして受けつけてはくれない。それじゃ法的根拠はどうかと言えば、鉱害の認定という問題で、これはなかなか困難です。その点については、今直ちに、これにどんぴしゃり合うような御答弁ができないことも承知いたしておりますけれども、このままでは、もう断じて放置できない重大な問題でございますので、石炭局でも農林省でも、格段の御配慮をいただきたい、これを強く要望いたしまして、私の質問を終わる次第であります。
  138. 中村幸八

    中村委員長 他に御質疑はございませんか。——他に御質疑はないようでありますから、両案に対する質疑は終局したものと認めるに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 中村幸八

    中村委員長 御異議なしと認め、両案に対する質疑は終局いたしました。  本日はこの程度にとどめ、次会は明日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後一時十二分散会