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1960-04-04 第34回国会 衆議院 商工委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年四月四日(月曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 中村 幸八君    理事 大島 秀一君 理事 小川 平二君    理事 松平 忠久君 理事 武藤 武雄君       池田 清志君    加藤 精三君       鍛冶 良作君    久野 忠治君       始関 伊平君    島村 一郎君       中井 一夫君    福永 一臣君       藤枝 泉介君    細田 義安君       山口六郎次君    井手 以誠君       多賀谷真稔君    滝井 義高君       北條 秀一君  出席国務大臣         通商産業大臣  池田 勇人君  出席政府委員         通商産業政務次         官       原田  憲君         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君         労働事務官         (職業安定局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         農林事務官         (農地局参事         官)      正井 保之君         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      井上  保君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 四月四日  委員鹿野彦吉君關谷勝利君、田中榮一君、田  中彰治君、西村直己君、野田武夫君、濱田正信  君、渡邊本治君、勝澤芳雄君、堂森芳夫君及び  中嶋英夫辞任につき、その補欠として久野忠  治君、加藤精三君、池田清志君、山口六郎次君、  島村一郎君、鍛冶良作君、福永一臣君、藤枝泉  介君、滝井義高君、多賀谷真稔君及び井手以誠  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員池田清志君、加藤精三君、鍛冶良作君、久  野忠治君、島村一郎君、福永一臣君、藤枝泉介  君及び山口六郎次辞任につき、その補欠とし  て田中榮一君、關谷勝利君、野田武夫君、鹿野  彦吉君西村直己君、濱田正信君、渡邊本治君  及び田中彰治君が議長指名委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第八五号)  石炭鉱業安定法案勝間田清一君外二十二名提  出、衆法第三号)      ————◇—————
  2. 中村幸八

    中村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案勝間田清一君外二十二名提出石炭鉱業安定法案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  前回に引き続き質疑を続行いたします。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 政府にお尋ねいたしますが、この改正案は「昭和三十八年度の石炭販売価格昭和三十三年度に比較して千二百円程度引き下げることにより、競合エネルギーに対し経済性を回復させることを目標とし、」と、こうありますけれども、千二百円程度引き下げるという千二百円の根拠は、どこから出たわけですか。
  4. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 昨年産業合理化審議会エネルギー部会におきまして、今後の石炭並びに石油といったようなものの値段が、どうなるであろうかということについての見通しを立てたのでございますが、その際に、四十二年度におきましてC重油が八千四百円、B重油が九千四百円、これを大体平均いたしますと、四十二年度において八千九百円弱という価格になるわけでございますが、産業合理化審議会エネルギー部会における石油の将来価格見通しにおいて今申し上げましたような価格が想定されたわけでございます。われわれといたしましては、これは四十二年度ということになっておりますが、もう少し早くそういうふうな値下がりがくるのじゃないかというふうにも考えられますので、大体今申し上げました平均して八千九百円ないし九千円程度価格にB、C重油平均がなるというふうに考えまして、メリットその他を勘案いたしました結果、現在三十三年度の石炭価格に比べて千二百円程度引き下げるということにすれば、京浜地区はほぼ競争可能であるだろう、こういうふうに考えまして、千二百円を目標合理化を進めていくということにしたわけでございます。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 原油値下がりというものはどのくらい見ておるのか、あるいはタンカー運賃というものはどのくらい見ておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  6. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 タンカー運賃の方は現在USMC平均で大体十五ないし二十くらいのものが多いと考えておりますが、将来はもう少し下がって二十から三十くらいの間を上下するのではなかろうか、そういうように考えております。  それから原油そのものにつきましては、私ちょっとここに資料を持ってきておりませんが、そういう運賃値下がりということを産業合理化審議会では検討した上で、ただいまの四十二年度C重油八千四百円、B重油九千四百円という数字を出しておりますので、原油そのもの値下がりした場合、それからタンカー運賃値下がりした場合というものが一応織り込まれてこういう価格になる、そういうふうに理解いたしております。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 タンカー運賃値下がりを見ているんですか。
  8. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 現在も、御承知通りスポットものでございますと非常に安いものがございますので、全体のベースといたしましては現在よりもやや高い。現在よりも十五ないし二十程度じゃないかと思いますが、それがもう少し下がるというふうに考えております。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 マイナスですね。
  10. 樋詰誠明

  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実は私は千二百円の算定の基礎を出していただきたいと思うのです。と申しますのは、どの経済計画を出しましても、しょっちゅう狂っておる。われわれが政策を立てて、法案を作って、そうしてその実施の状態を見ると、非常に反省をしなければならないし、検討をしなければならない部面が出ておる。ですから、その場合には一体どこからそごが来ておるのか、一体どうした理由でその計画そごを来たしておるのか、こういうことを反省しなければならぬと思う。ですから、今度の場合でも、千二百円引き下げなければならぬという根拠を、やはり明確にしておく必要があるのではないか、こういう点から私は質問をしておるわけであります。そこで、単に四十二年度の八千九百円、すなわちB、C重油平均価格をそこに置いて、それが少し早まるだろう、こういうことで四十二年度の原油値段を三十八年度に引き直したということでは、どうもわれわれは納得ができないのです。というのは、四十二年度といいますと、ちょうど三十八年度はまん中になるわけですから、一体そういうように早く来るものであるかどうか。そうすると、むしろ四十二年度という基礎を置かないで、三十八年度をお出しになったらいいと思うのです。私はそういうあやふやな根拠ではいけないと思うのですが、その点さらにお聞かせ願いたい。
  12. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 おっしゃる通りでございまして、もう少し時間がございますれば、三十八年度自体の計画作業の結果一応出てくるかと思いますが、従来からやっておりました産業合理化審議会エネルギー部会のいろいろな方面からの検討の結果、一応四十二年度幾らになるかというようなことで検討いたしておりましたために、われわれよるべき最も権威のある数字というものはこれしかない、そういうふうに考えたわけでございまして、御承知のように、京浜市場におきまして、三十三年度重油石炭ともに一キロカロリー当たり大体九十七銭程度しておったわけでございますし、それを七十八銭程度石炭が売られるようになれば、大体石油メリットに対する石炭メリットを一五%程度くらい見れば、ほぼ拮抗するのではないかということで、大体三十八年には七十八銭程度石炭が売れるということを一つ目標として千二百円ということをきめたわけでございます。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いやしくも千二百円というものが至上命令のように言われる場合には、もう少しはっきりした根拠というものを示す必要があるのではないか。四十二年度の数字を持ってきて三十八年度に直す、こういう不見識なことはないと思うのです。これだけの大きな問題をかかえておるならば、やはり三十八年度を積算すべきでしょう。近いのはできないけれども、遠いのはできる、こういう方法はないのでありまして、やはり三十八年度という数字で私はお示し願いたいと思うのです。これは一つ早急に示していただきたいと思う。それからメリットですか、メリット幾らに見ているのですか。八五%ですか。
  14. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 メリットの見方はいろいろございますけれども、たとえば最近の最新鋭火力発電所、あるいはセメントというものは九割をこえております。それからそれ以外の一般大型ボイラーであれば八五%程度、小型のボイラーになると八割程度ということで、ボイラーの方は、今後火力発電所等の大きなものがだんだんふえていくだろうということを考えますと、大体八五%、すなわちメリットの差は一五%程度というふうに見ていいのじゃないか、そういうふうに考えております。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これも実際はむずかしい問題ですけれども、私はもう少し綿密に出す必要があると思うのです。一体京浜地区では火力発電所を主として考えるのか、あるいは一般ボイラーまで考えての話なのか。そういう点も、これだけ大きな運賃のかかる状態においては、京浜地区なら京浜地区では、将来もっと効率の高い火力発電所に集中するという政策を立てているのだ、こういうのか。あるいは常磐地区の場合は、北海道から送る場合とは異なりますけれども、そういう重点的なものの考え方をされないと、今度重油専焼火力発電所を作るにいたしましても、あやふやな数字では私はいけないと思うのです。ことに三十八年後は重油ボイラー規制法もなくなるのだし、一体京浜地区では、一般ボイラーについては石炭よりも重油がいいという判断をするのか、そういう点もいいかげんなことでは済まないと思うのです。一つはっきりした見解をお示し願いたい。
  16. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 おっしゃる通りに、各設備によりまして非常に大きなメリットの差がございまして、平炉等は大体四九%、それから一般金属溶解炉といったようなもの、加熱炉といったようなものは六五%というふうに非常に劣っておりますので、こういう用途は、現在のボイラー法規制外でございますが、これからも逐次石炭から石油の方に転換されていくのではないだろうか、そういうふうに考えておりますが、ボイラー部門につきましては、これは今後火力発電所が伸びるというのがプラスになります唯一の部門、このほかに若干セメントが微増を続けていくと思うのでありまして、それ以外の部門は、だんだん将来にわたりましてむしろ消費が減っていく、そういうふうに考えております。ある程度数字で申し上げますと、一番問題になりますのは一般炭ではございますが、一般炭は三十四年度の消費が三千八百六十四万トン程度でございます。それをわれわれは三十八年度には三千八百七十三万トン、ほぼ横ばい。約九万トンばかり一般炭が全体でふえると見ておりますが、この一般炭がほぼ横ばいであります際に火力発電所に使います一般炭は、大体四百五十万トンないし五百五十万トンふえるのではないか。と申しますことは、三十四年度におきまして千三百四十万トンの電力用一般炭を使っておりましたが、三十八年度は、この前のボイラー法のときの参考人の松根さんも言っておられましたように千八百万トンから二千万トンというふうに電力を見ておりますが、われわれも大体千八百万トン、言いかえますと三十四年度に比べまして四百五十万トンないし五百五十万トン、電力がふえて、その分だけほかの産業がへっこむという格好で、逐次重点火力発電所、特にこれは今後低品位炭というものがだんだん多くなるにつれまして、山元の発電所ウェート等もふえて参りますが、全体的に見まして火力発電依存度一般炭に比べて非常に大きな割合になる、こういうふうに考えております。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 抽象的な話をされても私は納得いかないのですが、京浜地区で問題を起こしているのです。京浜地区で高いと言っているのです。政府一体京浜地区で何に合わそうとしているのか。たとえば京浜地区火力発電といいましても、今までの既成の火力発電なのか、新鋭火力発電なのか、一体どこに重点を置いて千二百円の根拠が出たのか、こういうことを聞きたいのです。一般的な抽象的な話はわかっているのですが、一体京浜地区にはどういう状態になるのか。これはむしろもう少し具体的に地域別消費構造と、地域別状態というのが知りたいのです。いやしくも政府はそのくらいのものは出すべきだと思うのです。ソフレミンの勧告を見てごらんなさい。一つ一つ地域別に、京浜地区ではどう、中京地区ではどう、阪神地区ではこういう状態運賃はどのくらいかかるのだ、こういう綿密な調査が出ている。それを足したものが正確に出るかどうかということは必ずしも言えないと思いますけれども、しかしそういった形で出していかないと、将来、法律は通過してみたがどうもうまくいかなかった、どこにうまくいかなかった原因があるか、さっぱりわからないということになるのです。ことに重油ボイラー規制現行法があるのですから、そういう場合に石炭をどういうふうな工合に下げるか、どこに目標を置いて下げるかということは重大だと思うのです。
  18. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 石炭鉱業審議会基本問題部会が千二百円を出します場合に、当然今おっしゃいましたような点については各地域別に各産業設備別に、それぞれの地域需要がどうなるかということを積み上げて計算いたしまして、大体地域札幌、仙台、東京以下福岡と八つの通産局管内に分けまして、重油部門電力ガス、運輸、食料品、繊維以下十六の部門に分けまして、それぞれの地域において産業消費数石炭重油とのこみの需要がどうなるかということを検討したわけでございます。まずトータルで申しますと三十八年度におきまして七千カロリーの石炭に換算いたしまして八千三百五万八千トン、これを実数で換算いたしますと九千四百二十一万四千トンということになるわけでございます。これをずっと地域別に割ってみますと、今御指摘になりました東京におきましては七千カロリー換算で二千二百三十八万トン、大阪が千六百八十一万八千トン、名古屋が七百四十六万八千トン、福岡は千四百七十四万トン、札幌は八百三十万九千トン、しかもそれぞれの地域電力幾らガス幾らというふうに分けたわけでございます。今の東京で申しますと二千二百三十八万トンのうち、電力部門は五百七十七万一千トンの重油石炭両方のこみの需要があるであろうということを想定したわけでございます。そういたしまして、これはもっぱら値段との関係で、石炭を使った方がむしろ重油を使うよりも割安だということになれば、これは当然石炭にいくだろう。むしろ割高だということになれば当然重油に走らざるを得ないだろうといったことを考えまして、そして重油に対する石炭値段がかりに八割ならどうだ、九割ならどうだ、八二%ならどうだといったようなことをずっと数字をやってみたわけでございます。そういたしまして結局いろいろな面から検討いたしました結果、一応主要消費市場で千二百円下げる、主要消費市場と申しますのは大体東京中京それから阪神三つ地区でございますが、大体その三つのいわゆるリーディングマーケットと申しますか、石炭消費にとって一番大きな地区における価格を千二百円下げるということにすれば、ほぼ石炭生産規模としても五千五百万トン程度のものを出して、大体それでマッチし得るのじゃないかという結論に達しまして、千二百円引き下げるべきであるといった勧告が出されたわけであります。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも局長は、私は具体的に聞いているのに、最初は具体的なようでしたけれども、抽象的にお逃げになりますが、中京京浜阪神ではこれは非常に違いますよ。石炭に関する限り立地条件京浜阪神とは非常に違うのですよ。ですから私が聞いておるのは、関東すなわち京浜ではもう新鋭火力の、この程度しか石炭重油には対抗できない、あるいは阪神では運賃関係一般ボイラーまでもできるのだ、こういうことを聞いているのですよ。そういうものかはっきりしてこないと、第一ボイラー規制法ができておっても、この運用だってほんとうはできないですよ。ですからそれがすぐ答弁できなければ、私は資料を見せてもらいたいと思うのです。私はその資料についてもかなり問題点を含んでおると思う。ですからそういったことを私たちは厳密に調査をしないと、簡単に法案を上げていくということはできないわけです。これは委員会でなくて小委員会でも私はけっこうですから、そういう資料一つ出していただきたいと思うのです。そうしないと、簡単に中京阪神京浜と言われますが、これは大違いですよ。三者とも条件が非常に違うのですから……。ですから私が聞いておるのは、京浜では一体八五%と見ておるのか、八五%ならどの程度消費量があり、ボイラーはどの程度ボイラー重油と対抗できるのか、こういうことを聞いているのです。
  20. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 あとから審議会検討した資料は差し上げますが、一言だけここで御説明させていただきますと、たとえば東京の場合には設備関係その他からどうしても石炭でなければならないという需要昭和三十八年度において六・九%、重油でなければならないと思われる需要が一五%、残りの七八・一%というものが重油石炭との価格関係でいろいろと動いてくるわけでございます。たとえば石炭価格重油に比べて七割以下になるというふうに非常に安くなったという場合には、この一五%を除きまして残りの八五%全部が石炭にいき得る、ところがかりに九割——一割ちょっと安いというところで、一割五分までは安くないということになりますと、結局それは東京地区におきましては三四%程度石炭に、あとの六六%程度重油にいく、従って京浜地区ではこれを八〇%くらいにまでさらに五%下げることができるならば、価格差を二割まで勉強するということなら、約六割まで石炭がお客さんを確保できる。六割、正確に計算値で申しますと、五九・八九%は石炭で、四〇・一一%は重油に持っていかれるはずだ、といったようなことを各設備ごとに、各地区ごとに全部積み上げたわけでございますが、それを全部達観した、一番最後審議会としての結論が、大体リーディングマーケット千二百円というような格好になって、実は御承知のように必ずしもはっきり東京市場でとも何ともいっていないわけでございますが、一応主要市場において千二百円程度下げるべきであるということで、勧告がなされたというふうに私どもは受け取っております。私どもが差し上げました資料は、今申し上げましたように、各市場ごとに……(多賀谷委員「あなたらの資料は何も出ておらぬじゃないか」と呼ぶ)審議会のときの資料を至急差し上げます。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、将来運賃プール制とかなんとかを考えておるなら、その平均で、阪神中京関東平均で千二百円ということが考えられるのだけれども、そういう構想はどこにも出ていない。ですから私はあえて聞いておるのですよ。千二百円というのは、どこの点を中心にポイントに置いて千二百円というのが出ておるのか。ついでに阪神をちょっとお聞かせ願いたい。
  22. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 阪神石炭固有依存度というものが四・六%でございます。それから重油固有依存度が二二・九八%、ほぼ二三%でございまして、競合部門が七二・七四%ございます。そして大体八割まで値を下げることができましたならば、これは四九・九八%、すなわち重油石炭との競合割合は大体フィフティー・フィフティーということになります。これは申し上げるまでもございませんが、各市場産業構造の振り合いによってすっかり変わってくるのでございまして、たとえば同じ産炭地でも北海道石炭固有部門が非常に高うございまして、大体四九・九%ございます。ところが同じ産炭地でありながら、福岡管内、九州は七・五九%しかない。これはわれわれといたしましては各市場別に、各設備ごとに一応検討した結果、この程度価格であれば、大体石炭の五千万トンないし五千五百万トンと審議会でいわれたものは十分に確保できると、こういうふうに判断したわけでございます。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 阪神の方は八割、すなわち石炭でも重油でもいいというものの場合に値段が八割に下がると、こういう仮定で、京浜の場合も同じように八割と考えるのですか、これもおかしいね。
  24. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは結局油に対する価格でございます。油の価格も各市場全部違うわけでございますが、油に対する比価がかりに八割であるならばどうなるか。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうするとメリットは八〇%……。
  26. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 結局その差を全部メリットの差だというふうにごらんになれば、メリットが二割だということにすればどうなるかということでございますが、これはその市場々々の産業構造等によりまして、あるいは一割五分程度メリットの差であっても、相当大きな需要を確保できるという産業部門もございますれば、あるいは二割の差があってもとてもいかぬという炉の関係が多いというようなこともあるというようなことで、大体ボイラー関係で申しますと、二十トン以上の大きなボイラーといったようなものは大体二割の差があれば、ほとんど全部が石炭で確保し得るのではないか。メリットの差を二割、二割まで価格差を勉強することができるならば、各地とも一応石炭需要を確保し得る、こういうふうになるものと、これは非常に大ざっぱな考えでございますが、大体計算しております。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私はその石炭のみのボイラーとか、あるいは重油のみのボイラーとか、こういう構成を出された点については敬意を表しますけれども作業の過程はかなり綿密だけれども最後のところが、非常に大ざっぱなつかみでぽんときめておるという感じがします。たとえば、同じように関東の場合も八〇%、阪神の場合も八〇%ということはないですよ。メリットはそうでも、今度は逆に値段の方からいうと、コストの下げ方というものは相当違う。ですから、そういった点が一律に中京関東阪神が出されているところに問題があるのではないかと私は思う。それを私はむしろ聞きたかったわけですが、これは資料を出していただきまして、さらに質問を続けていきたいと思いますから、一応保留しておきます。  次に、五千五百万トンという数字、これは一体どこから出た数字ですか。
  28. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 大体重油に対する比価が一五%程度引き、八五%程度供給されるという限度において、掘られるものが一体どのくらいあるかという掘られる方の力、結局それ以上の炭を掘り出しましても、値段が高ければ、この前の貯炭のように、使ってもらえないということになるのではないかということで、需要のついてくる生産力というのは幾らあるかということで五千五百万トン、それ以上は、もし掘ろうとすると高くなるだろうから、残念ながら輸入エネルギーで調達せざるを得ないということであります。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、需要面から見た五千五百万トンでなくて、むしろ昭和三十八年度において千二百円程度引き下げられることの可能性のある供給力から見たわけですか。
  30. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは需要供給両方の面からそれぞれ作業していきまして、ちょうど需要供給が合理的に吻合する点というのを、われわれとしては五千五百万トンというところに見つけたわけであります。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 言葉では、確かに需給が合った地点ですけれども、しかしやはりものの考え方として、むしろそれだけ引き下げることができる炭鉱の生産能力というのは五千五百万トンだ、こう踏まれたのが実態でしょう。
  32. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 ですから、先ほどのリーディングマーケットにつきましては、千二百円引きで供給されるということを中心にして、それじゃそれで掘れる山が幾らかということで、今度山につきましては大体一つ一つ当たってみたわけでございます。御承知のように、石炭は上がりに近くになった終掘前の四、五年くらい、それから正常操業に入るまでの最初の五年間くらいは、赤字を免れないというような格好になっておりますので、黒字で完全にその中に入るというものは、大体七割程度であろうかと考えられますが、一つ一つの山を当たっていきまして、そしてその積み上げというものを、石炭鉱業の特有である七割程度で還元いたしますと、供給能力としても五千五百万トン程度になる、こういうことでございます。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今のこの五千五百万トンという数字か出た場合に、炭鉱の状態はどうなるのですか。もう少し詳しくお聞かせ願いたい。たとえば、五千五百万トンのうち新鉱でやる場合はどのくらい、既設の炭鉱で増産をする分がどのくらい、廃鉱するのがどのくらい、これを一つ出していただきたい。
  34. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 大体、現在一トンも出しておりません新鉱でやるのが、たしか二百五十万トン程度でございます。これは若干数字が変わるかもしれませんが、二百五十万から三百万の間程度、こういうふうに考えております。それから、現在あります山で、これからだんだん能率を増強し、合理化する山から約三千万トン。この三千万トンに相当する山は、現在千七百万トンの生産能力を持っている山でございますが、その千七百万トンの能力を持っている山を大いに合理化することによりまして、三千万トンに持っていきたい。それから、現在あります山のうち、二千万トン程度というものは、ほぼ現状維持であろうというふうに考えております。それから、現在あります五百四十万トンばかりの山のうち、能率の悪いものは、将来に向かってだんだん店じまいの準備をするということで、五百四十万トンの山を百三十万トンくらいに縮めていく。それからさらに、非常に能率の悪い山につきましては、千四十万トンばかりございますが、それは三十八年度までに閉山するということで、大体昨年この法律を作りましたころの山の全体の生産能力を五千三百万トン程度と考えたわけでありますが、今申し上げましたような率でいきますと、五千匹百万ないし五千五百万トン程度の間に入るわけでございます。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、二千万トン程度の分については、やはり二千万トン程度になるわけですか。
  36. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 その通りでございます。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、労働者の人数はどうなりますか。
  38. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これはお断わり申し上げるまでもないわけでございますが、計算上の人数でございますけれども、一応審議会で出しましたように、そのときの能率を二三・四トンというふうにいたしますと、五千五百万トン掘るのに十九万五千八百人、そういうことになっております。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、現在の労働者から幾ら減るわけですか。
  40. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 先月の中旬末の実労働者が、二十五万七千五百十五人でございます。それから逆算いたしますと、約六万ばかりの人間が、これから三十八年度の合理化が一段落するまでに計算上は減るわけであります。しかし、これは実際にはどうなるかということは、それぞれの会社の中の、今後の交渉その他で当然違った数字が出てくるだろうと思っております。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 トン数はわかりましたが、おそれ入りますが、新鉱と、それから既設の分で増産をする分と、既設の分で横ばいと、既設の分で現存するものと、それから廃鉱になる山の数をちょっとお知らせ願いたい。
  42. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 手元に持って参りましたのは、全部トータルの数でございますので、今の数はあとから至急調べて申し上げます。若干時間の御猶予をいただきたいと思います。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 千四十万トンの廃鉱になる山は、これはほとんど買い上げの対象になるのですか。そして、予算がついているのですか。
  44. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 御承知のように、現在事業団で買い上げるということでワクがきまっておりますのは四百三十万トン。われわれといたしましては、今御審議いただいております法案を通過させていただきましたならば、さらに二百万トン程度増して、六百万トン程度まで買っていきたい、こう思っておるのでございますから、これから閉山になるという千万トン、これは完全に山は一応なくなるわけでございますが、これにつきましては全部をなにするということになっておりません。これは御承知のように炭量がなくなった山といったようなものは買っておりません。少なくとも現在買い上げのあれでございますが、これはいろいろ政策自体としては御批判があるかと思いますが、この法案を立てましたとき、合理化を立てましたときからずっと運用しておりますのは、炭量が少なくとも五年以上はあるという山で、しかもカロリー、あるいは能率といったものが、将来の目標平均の六割に達しないものだけを買っておりますので、全部の山というわけではございません。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 局長は十分承知しておられて答弁されておるのですが、実際買うということがきまった場合に、あるいはきまる申請をする場合に、炭量が十分あるような山は申請しませんよ。ほとんど炭量がない。しかし私たちもそのことについては買い上げ方式を立てておるのですから、あえて申しません。しかしこの買い上げというのは、本来鉱区を買い上げるという性格よりも、やはり炭鉱が閉鎖することによってのいわば事後処理の補償金とも申すべき性質のものである。本来法律の立て方もそうです。ですから採算のとれない鉱区を金を出して買うということ自体、ものの考え方としておかしいですよ。しかしそのことはあえて私は申しませんが、とにかく千四十万トン廃鉱になるというのに、二百万トンしか予算がつけられない、こういうことは非常に不合理だと思う。少なくとも九百万トン程度は三十八年度まで買うという政策が出なければ、この千二百円というものをわれわれは承服することができないのですよ。そういうことをしてはいけない。政策が出た以上、将来三十八年度までにはその二百万トンじゃなくて、さらに九百万トン程度買うのだという政策を打ち出すべきだと思うのです。
  46. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 今までは御承知のように、買って参りましたものは、四つばかりの山を除いて全部中小炭鉱の山でございます。しかしこれからの分ということを考えますと、中にはかなり大きな大手筋の山が閉山のやむなきに至るというものがあろうと考えます。これは石炭業界がまず相互扶助という格好で、自分らがお互いに金を出して、そして閉山のやむなきに至ったということを、しかもその方は元来まだ掘ろうと思えば掘れぬことはないけれども、苦しまぎれにいろいろな掘り方をやって、かえって鉱害を起こしたり、あるいは使っている労務者の方に未払い賃金をふやしたり、あるいはダンピングをやることによって石炭界全体に害毒を流したりといったようなことがあっては、これは石炭業界全体にとってもマイナスであるからということで、一つにはそこに働いておる方々のことを考え、また鉱害の処理ということを考え、また石炭業がこうやって非常に苦しい際に、市場混乱させることのないようにといったような意味から発足させておりますので、その意味で先ほど申しましたごとく、いよいよ炭がなくなったというものは、大体買わないという格好になっておりますのと、それからそういうように非常に苦しい石炭業界がやっておることでありますので、大手であちこちに山を持っておるところは、できればその中で配置転換なり何なりをやってもらって、必ずしも全部を石炭業界全体の上にひっかけるということをしなくとも、ある程度自力救済ということもできるのではないかということで、今のところはとりあえず二百万トン追加ということを考えておりますが、じゃそれだけで十分かということになりますと、さらに事態の推移をもう少し検討した上で、必要があればそのときに所要の措置を講ぜざるを得ないと思っておりますが、さしあたりのことは、この法案の改正にからみまして、さらに二百万トン買い増しができるというような態勢を整えていきたいと考えております。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は大手といえどもやはり閉山をするときには買い上げの申請をするのじゃないかと思うんですね。しない場合には中小企業に今度は鉱業権の譲渡をやるんです。ですから廃鉱にならないんですね。その株式会社の名前の山はなくなるけれども、多くの炭鉱が鉱業権の譲渡を受けるんです。大手の場合は、やめるときに五年くらいの鉱区の鉱量というのは比較的あるんです。中小の場合は全くないということがあるが、大手の場合は実際あるわけですね。ですから一千四十万トンの場合には、これは全部とは言いませんけれども、少なくとも政府としては当然買い上げの申請がくるものだという腹がまえをしておいていただかないと、二百万トンでいいということになりますと、また法律の一部改正をして納付金の期限を延ばしたり何かしなければならない、こういう形であると思う。ですから私は、この際率直に、大改革をやろうというならば、そのくらいの腹がまえを持って国会で答弁なさった方が至当ではないかと思うのですが、どうですか。
  48. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これはことしから、御承知のように、政府の方でも鉱業権の評価二分の一を補助するということで、初めて政府資金がこういう非能率の山の整理ということにも動員されることになりましたので、今後われわれといたしましては、必要があればさらにそういう面につきましても、もう少し掘り下げて検討していきたいと考えておりますが、今まで過去四年半の経験等から考えますと、大体一年間に百万トンくらいずつ山の処理ということをしてきたのであります。そのためには一つにはおくれて御迷惑をかけておるといった面もありました点は、われわれも重々申しわけないと思っておりますが、今日ただいまの石炭業界から出し得る負担能力、それから政府の財政全体の状況というものから見て、昭和三十五年度以降しばらくの間というものはまだ四百三十万トンのうち八十万トン残っておりますので二百八十万トン。とにかく残っておる分をできるだけ早く処理するということにしていきたいと考えております。
  49. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし申請の方はもうすでにオーバーへきておるでしょう。
  50. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 二百万トン増ワクいたしますと六百三十万トンになるわけでありますが、大体今五百九十万くらいの申請がきております。われわれの予定のワクから見るとまだ三、四十万トンは余裕があるという格好になっております。
  51. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今法律を改正して出発しようとしているのに、もう買い上げのワクをこそうとしている。こういう法律の出し方はないと思うんですね。あとあととおくれている。それから事務処理の問題は、私はあとから質問をいたしますが、確かに処理能力の問題はあります。しかしこれはもう少し機構の拡充が必要じゃないかと思う。そこで今法案がスタートしようというのに、もう買い上げのワクが一ぱいくらいだ、こういうことで石炭政策をほんとうに推進していく気持があるのかどうか、どうも疑わしいと思う。今度の合理化法案なんかも柱になっている構想はいいんですよ。しかし実体が伴っていないという点がある。これも私は大臣があとで見えましたならばさらに質問をしてみたい。もう出発当初においてこれだけのそごを来たして出発しておるのでありますから、当然昭和三十八年になれば大きな開きが出ることははっきりしている。この点非常に残念に思うわけです。  さらに続いて質問いたしますが、コスト千二百円引き下げるというけれども一般物価の水準はどう考えられておるのか。材料費その他ですね。
  52. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 大体物価水準は現状の横ばいということを前提といたしております。
  53. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 おそらく電力は値上がり必至だという。炭鉱における坑内水を上げる、あるいはまたその他の動力に使うという場合に、かなり大きな電力量が要るわけです。坑木だって決して横ばい状態ではない。だんだん原木がなくなって坑木も上がるという情勢にある。ことに電力は、御存じのように常時坑内水を上げておかなければなりませんから、保安電力は出炭と関係なく上げていかなければならぬという面もあるわけです。ですから、物価の水準がはたして横ばいであるのかどうかというのは、石炭のコストに非常な影響があるわけです。これを横ばいであると見られた根拠をお聞かせ願いたい。
  54. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 たしかに今までの実績は、これは平均いたしますと若干上がっております。しかし中を見ますと、たとえば火薬類といったようなものは下がった。中には上がるものもあるが、下るものもある。全体の物価水準は御承知のように、ここ二、三年ほぼ横ばいということで推移しておるわけでございます。坑木といったような特殊の物件が上がっているのは事実でございますが、われわれといたしましては、できるだけこれから鉄化率をふやすということも行なわれてくると思います。それではどれだけ上がるか、五%上がるのだとかいうことを言っても、これはむしろそっちの方がより困難なのです。われわれといたしましては、いろいろな前提で作業する際には、大体現状に大きな変化はないということで、物価は考えざるを得ないということから、特に根拠は何かとおっしゃられますと、人間の見通しで、どのくらい上がるといったはっきりした想定を立て得なかったからだということでございます。
  55. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 経済の成長率を六・五%と見ると、さらに消費水準も上がっていくわけですが、炭鉱労働者の賃金だけはそのままというわけにはいかないと思うのです。そこで一体上昇率を幾らと見られているのか。
  56. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 賃金の上昇率は大体年率三・八%ということで計算いたしております。
  57. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それはどういう根拠ですか、三・八%というのは。
  58. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは全体の第二次長期経済計画でございますか、今後の産業全体の伸びの際の第二次産業部門における平均率は三・八ですが、一応石炭鉱業も第二次産業部門平均率と同じペースで上がるというふうに見て、三・八をとったわけであります。
  59. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 第二次産業に従事する労働者の平均賃金のアップが三・八ですか。
  60. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 第二次産業部門に働く全従業員の賃金の上昇率が大体年率三・八というふうに、私は理解いたしております。
  61. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは一人当たりの消費水準もかなり上がるわけです。一人当たりの消費水準よりも、少なくとも第二次産業に従事しておる従業員の賃金がより上がらなければ、平均消費水準というのは出てこないのですね。ですから私も三・八%という数字は非常におかしいと思うのです。第一次産業に従事する従業員の所得というのはあまり上がりませんよ。経済計画ではあまり上がるということを予想していない。そうするとどこで上がるかというと、結局第二次でよけい上げなければならぬ。第三次もありますけれども、第二次がやはり中心です。そうすると、第二次に従事する労働者の賃金上昇率は、少なくとも消費水準よりも上がっていかなければやっていけないのです。私はここに非常におかしな状態が出ておると思うのです。
  62. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これはもし違っておりましたら、もう一回私も勉強し直しますが、私の理解する範囲では、第二次産業部門平均の上昇率は年率三・八%ということで、石炭もこれと同率というふうに考えております。
  63. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これも一つ検討して御答弁を願いたいと思います。  次に、千二百円引き下げるという場合における設備投資、さらにその借入金、その金利、あるいは償還期間、こういったものがどういうように考えられておるか、どういうように想定されておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  64. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 大体中小の方の設備投資は今後もほぼ平均して五、六十億円ずつのものが毎年投下されるというふうに考えておりますが、大手につきましては一応今後五カ年に千四百億くらいの金が投入される。その調達の内訳で申しますと、大体減価償却で約七百億、財政資金で二百四十億くらい、増資、社債がおのおの三十億くらいずつで合計六十億。それから先ほどの財政資金というのは開銀の方でございますが、近代化資金としてこの法律で御検討を願っております特別貸付金が大体七十五億、興長銀その他一般の市中から三百二十億ばかり借りてほぼ千四百億を調達したい、こういうふうに考えております。金利は、政府が今回特別貸付金として貸し出すことを考え、過般予算で御承認いただいたものにつきましては、無利子でございます。それから開発銀行の金は六分五厘であります。その期間は、開発銀行のものも政府の特別貸付金も十五年以内で、これはその投資の規模その他によって変わってくるわけでございますが、大体十五年以内に返す。それから一般の市中の金利はそれぞれ違いますが、大体九分から一割くらいで、これは設備資金と申しましても、一応短期で借りてころがしていくというような格好で、純粋の意味の長期の何年というものは興長銀を除きましては非常に少ない。三百二十億ばかり借りますうち、約百億くらいが一般の市中から短期で借りてくるということで、残りの二百二、三十億は興長銀から五年あるいは七年といったような期間で借りてくるものが多かろうかと考えております。(「一番先の減価償却の七百億のところをちょっと」と呼ぶ者あり)大体三十二年の減価償却が百三十三億、三十三年が百十億、三十四年が百十一億ということで、大体今までの設備投資につきましても、好況不況といったようなものがございますので、いろいろ違ってきますが、一年間に百二十億くらいは、これは毎年々々平均いたしますと、減価償却の中で維持投資その他に充てるわけでございます。でございますから、今後五年間ということを考えますと、平均でいっても七百億というものが減価償却として内部留保されることは確実な数字だろうと考えております。
  65. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 あなたの方で出されました資料に基づきますと、昭和三十二年が三百四十億、三十三年が三百六十億、三十四年度の計画が三百三十億、こうなっているのですが、大体これで間違いありませんか。
  66. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 大体過去のものは実績でございますし、三十四年度もきちっとまだ実績が確実に出ておりませんが、ほぼこの程度であろうかと考えます。
  67. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、千四百億というのは五カ年ですから、結局今まで通りということになるのですね。三十二年、三十三年に投資した程度のものを永年投資する、こういうことになる。はたしてこのくらいで所期の目的が達せられるかどうか、私は非常に疑問だと思うのです。むしろ三十二年、三十三年、三十四年度の平均指数をとれば、むしろ下がっておるでしょう。そうすると今までよりも年間下がったくらいの低い投資をして、はたしてこれだけの大改革ができるかどうか、私はここにも非常に問題があると思うのですよ。
  68. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 今おあげになりました数字は、これは実績でございますから間違いがないわけでございますが、同時にそれは調達した総数でありまして、一方においていろいろ返済したり何かしたりということがございますので、今の資料の一番上に載っておると思いますが、いわゆる企業費投資、現実にどれだけ投資されたかという企業費で見ますと、三十年の九十一億から三十一年が百五十一億、三十二年が二百四十一億、三十三年が二百八十億、それから三十四年が二百五十五億、こういうふうになっておりますが、この二百五十五億は、昨年非常に不況でありますために、若干二十億ばかりへこんだ姿で出てきやせぬか、こう考えておりますが、これに対しまして、われわれは今後は少なくとも年平均二百八十億円程度の新しい企業費を投入していきたいということを考えて、千四百億という数字を申し上げたわけでございます。
  69. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それにしましても、大体三十三年程度に投資をされた数字でしょう。ですから私は実際政府石炭政策をやるのだ、投資をするのだといっているけれども、三十二年、三十三年、三十四年とやった程度くらいのものだ、こう言って間違いがないという数字が私は出ておると思うのですね。これで一体これだけの新鉱開発で二百五十万トンから三百万トン、しかも既設の千七百万トンの炭鉱を三千万トンにする、こういうことができるかどうかですね。
  70. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これはこれから投入される金で初めて出てくるのではございませんで、新鉱あるいは能率増強炭鉱千七百万から三千万になると申し上げましたけれども、いずれもその中の大規模なものは、すでに三十一年あるいは三十二年以来、今御指摘になりました巨額の金を投資して、目下開発の途上にあるといったようなものもあるわけでございます。そうしてそれらが三十五年度以降逐次戦列に加わってくる、こういうことになるわけでございまして、特に今後平均して二百八十億、これは三十三年は神武景気のあとを受けました非常に異常な石炭のブームをうたわれたその年の勢いに乗じて投資されたわけでございますが、その程度の投資が今後も続くということであれば、大体私は先ほど申し上げましたような新鉱開発あるいは能率増強、炭鉱の整備ということは、今までに投入されましたこれらの金と投資を合わせて確保されるもの、そういうふうに考えております。
  71. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 昭和二十六年度以来、昭和三十年度の不景気を除きましては、昭和二十六年度が百二十九億、二十七年度か行七十三億、二十八年度が百六十二億ですから、物価指数から言いましてもこれはかなりの数字になるわけですね。ですから大体物価指数その他を見ると、特殊の昭和三十年度なんかは別として、大体同じくらい投資してきておるのですよ。ですから石炭政策をやるといっても、五年間で千四百億くらいではどうにもならない。一体鉄鋼、電力は今後五年間でどのくらい投資するのですか。
  72. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 その前に、毎年百億以上投資しておるじゃないかというお話でございますが、これは釈迦に説法で、多賀谷先生には申し上げるまでもございませんが、石炭に関しましてはその半分くらいの維持投資があるわけであります。とにかく毎年々々、ほかのものと違って、油をさしておくだけではいけませんので、現在の生産規模を維持するためにも、しょっちゅう補強その他を行なわなければいかぬ。たしか過去の五年間の平均で五百七十億くらいの維持投資があるはずであります。従いまして、それは景気の好不況にかかわらず、とにかく石炭山が生きていくつもりであれば毎年々々平均に投資せざるを得ないという格好でございますので、それを超過する分が初めて将来の新しい能力増強なり、あるいは体質改善なりということのために向けられていくものでございます。それから私はここにはっきりした数字を持っておりませんが、最後に御指摘になりました鉄鋼部分は大体一年間くらいでこの五年分くらいの投資をいたしております。
  73. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 山が老朽になればなるほど、山を維持する費用がだんだん要るわけであります。昭和二十六年よりも三十五年の方が維持するためにはよけい要るのです。ですから局長の言われるその言葉をちょうど局長に返すと、逆に本来だんだん高くなっても、その純然たる新たなる投資というものは同じである。高くなっても同じだとこういうことが言えるのです。大体追加投資がだんだん多く要るのですから、生産力増強にならないで、維持するだけの固定費がだんだんふえていくのです。ですから逆にあなたの答弁をあなたに返しますか、あなたのような論法をするならば、ますますこの程度設備投資ではできないとこういうのです。金の面から言っても計画通りいかないですよ。
  74. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 昭和三十年、この前の不況の直後のときでございますが、そのときには大体合計して九十二億ばかりの投資がされました中で維持投資が五十四億、三十一年が百五十一億のうち九十億か維持投資、三十二年は二百四十三億のうち百十七億が維持投資、三十二年は百千億が維持投資、今年度は大体九十億程度が維持投資ではなかろうかと考えております。これはおっしゃる通りだんだん山が古くなり、深くなる、キロ数がふえればふえるほどこれは悪くなるのは御指摘の通りでありますが、そういうことが一方においてはコスト・アップという原因にもなっておるということから、いろいろ若返りというようなこと等がいわれる。古い遠いところの切羽の整理というようなことも行なわれておりますので、今後維持投資の額が今までに比べて激増するというふうには考えておりません。
  75. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 漸増は。
  76. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 漸増は、われわれの考えでは三十五年が大体九十億、それから二十六年が百十億、三十七年、三十八年は百二十億で、三十四年から三十八年までの五年間で五百二十九億というものを一応維持投資の総額と考えております。合計が千三百九十九億、約千四百億でありますので、残り八百七十億余りのものが能率増強なりあるいは合理化なりというものに使われる、こういうふうに考えております。
  77. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 とにかく今年間一万トンの出炭規模の炭鉱を作ろうと思えば——もちろん一万トン単位ではできませんけれども、それが五十万トンとかあるいは百万トンにする場合には、大体一億二千万円くらい要る。そういう点を見ましても、この投資がいかに少ないかということがいえると思うのですよ。局長は維持投資が今まで平均それほどでなかった、こうおっしゃいますけれども、金かないから維持投資しないのです。むしろ金があればするんだけれども、金がないから維持投資ができない、こういう面もある。ですから私はどうも投資の面からいっても、画期的な改革というものができるかどうか非常に疑わしいと思うのです。今までのような投資をそのまま維持しておって、局長が発表されましたように千七百万トンの山が三千万トンになる、こういうことは期待できないと思う。それは長い間の今までの投資効果が現われてくるんだ、こうおっしゃればそれまでですけれども、私はこれは非常に無理じゃないか、こういうように考えるわけです。  そこでさらに質問をいたしますが、昭和三十年に石炭合理化法かできて以来、一体その実施状態はどういうようになっておるか。これをお聞かせ願いたいと思うのです。そこでまず私は、昭和三十年に石炭合理化法案が出されましたときの政府の説明と現状とがどうなっておるかという点を指摘いたしたいと思います。まず生産計画ですが、当時合理化法案が出されましたときの生産計画は、昭和三十年度には四千三百万トン、三十一年度が四千五百五十万トン、三十二年度が四千七百万トン、昭和三十三年度が四千八百万トン、昭和三十四年度が四千九百五十万トン、こういう数字が出たわけです。ところが神武景気によってその数字が、合理化法案が出されたとたん狂ってしまったわけですね。そうして昭和三十年度が実施計画において四千二百五十三万トンでしたが、三十一年度には四千八百万トンになる、三十二年度には五千三百七十万トンになる、三十三年度には五千三百五十万トンになる、こういう状態ですね。これはやはり私は、政府政策がきちっと立っておれば、こういう事態にはならなかったんではないかと思うのです。これは実情はわかりますけれども政府としては一体どういう心がまえでやられたか、これをお聞かせ願いたい。
  78. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 確かに合理化法を通していただきました直後から、石炭計画と実績との間に相当狂いを来たしたという点は、われわれ関係者といたしまして、ことに当面の石炭関係の仕事を受け持っております者として、はなはだ申しわけないと思っておりますが、これは結局当時二割程度コストを下げ得るということを前提にいろいろな計画が組まれたが、結果的に逆にコストが上がったということから、競争エネルギーに対する競争力において非常に劣って、需要者の選択によったということがございます。従いまして今後新しく計画を立てていく際には前車の轍を踏まぬように、あくまでも経済ベースに立脚した生産計画を立て、またそれが実行できるように政府としても側面からバックアップするということをやっていきたい考えでおります。
  79. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 人員計画につきましても、私は非常に狂ってきていると思う。今日首切りの問題が起こっておりますが、この問題の深刻さを一そう激烈にしたものは、要するに昭和三十一年、三十二年に人を雇ったからなんです。ここに問題がある。  それから能率の問題でも、率直に言ってなぜ能率を計画通りできなかったのか。これはわれわれの方でも一つ十分検討してみる必要があると思うのですが、一体どこに原因があったのか、政府はどう見ているか、これをお聞かせ願いたい。
  80. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 確かに少し景気がよくなると、すぐ人を雇ってとにかく人海戦術で増産をするというきらいがあったことは、われわれもはなはだ遺憾に存じております。たとえば昨年の臨時国会できめていただきました離職者臨時措置法、あの立法の審議過程におきましても、そういうことのないようにということで、むしろいわゆる雇用制限というようなことをやるべきじゃないかといった議論もいろいろ出たわけでございますが、しかし雇用制限ということはもっと基本的な問題に触れるのではないかといったようなことから、できるだけ一つ炭鉱離職者を優先して雇うのだということに落ちついたような経過もございまして、われわれといたしましては、炭鉱業者ことに中小の炭鉱業者に対しまして短期的な景気の好転によって労務者をふやし、将来悪くなればすぐ首を切るというようなことのないように、厳重な警告を再々発しているわけでありまして、現在の態勢のもとにおきましては、今以上これを法律的に強制することができませんので、今後とも行政指導ということで、こういう不都合な事態にならないようにと考えております。  なお能率がどうなったかということでございますが、能率は合理化法施行当時に比べまして、大体最近は一五%程度は上がっております。ただそれと並行いたしまして物品費が一割程度上がったということと、労務費が二割四分程度上がっているということのために、能率が上がったにもかかわらず、コストは一五%程度上がらざるを得ないという格好になっているのが、実情でございます。
  81. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、問題はそれだけ増産をしたのにコストが上がっておるという点、これが非常に問題だと思うのです。とにかく昭和三十一年度にしても、四千五百万トン計画で四千八百万トンという出炭実績がある。昭和三十二年度も四千七百万トンの基本計画であるにかかわらず五千二百万トンも石炭が出ておるのに、コストの状態はどうかというと、実施計画昭和三十年度は三千九百五十八円、これに対して実績が三千九百三円ですから、これは下がっておるわけです。昭和三十一年度になりますと、実施計画が三千八百六十一円であるのにかかわらず四千六百五十八円。これも販売価格じゃないのですよ。生産コストであるというんですから、どうも私たちは納得できない。昭和三十二年度になりますと、実施計画で四千百二十円に対して四千六百五十五円、昭和三十三年度は四千九十七円に対して実績が四千七百二十五円。これは単に販売価格であるならば、あるいは需給関係においで若干石炭側か強気に出て、価格をつり上げたという点もあるのですが、コストが高くなっておる。しかもかなりの増産をしておるというのに、コストそのものが高くなるという発表をしているのは、私はどうも承服できない。なぜ高くなったのか、これをお聞かせ願いたい。
  82. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 やはりこれは現実がこうなっておるので、はなはだわれわれも残念でございますが、大体三十年は、先ほどもお話しのようにむしろコストは下がっておる、あるいはほぼ同じだということで、三十一年度以降の問題でございますが、結局、最も俗な言葉で申し上げますと、背伸びして増産した、コストの高いところに手をつけた、ことに三十二年あたりの五千二百二十五万トンというに至りましては、合理的な規格で掘ることを許される以上のところまで、とにかくたまたま神武景気で非常に旺盛な需要か片一方にあるということを見込んで、人間を増員するということで掘らした結果、非常に非能率な、コストの高いところまで手をつけたということが、三十二年度までは計画よりも実績が上がったという格好になっております。それから三十二年度以降は逆に、そうやって一度ふくれ上がってしまったものが、今度は経済かやや沈滞するということのために需要者選択になって、とてもそんなものを出しても使ってもらえないということで、生産制限をせざるを得なくなった。御承知のように固定費が七割もするような特殊の産業でありますから、一度ふくれ上がったものを同じ規模で維持していけば、ふくれ上がっても大体そうコストは上がらぬで済むわけでございますが、生産制限という一番いやなことをやらざるを得なかったということになりますと、これはもうほかの何ものにも増して生産制限をやるということ自体でコストが上がらざるを得ない。三十二年度までは少し背伸びをしたということと、三十三年度以降は背伸びをしてふくれ上がった能力を持ちながら、一方で需要との関係で生産制限をせざるを得なくなったために、固定費の割り掛けか多くなったという結果ではないかと思います。
  83. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 能率も、やはり増産をしておりますから、昭和三十年度に比べて二十二年度等は高くなっておるのですね。もちろん労賃も高くなっておるでしょうけれども、それにしても私は、本来採算のとれないところをどんどん掘ったからコストが高くなったとは考えられない。この昭和三十二年度の四千六百五十五円という数字は、あれだけ増産をしてコストが、固定費から何から考えても、安くなるはずなのに、高くなるという数字はどうしても承服できないのですが、政府はどういうふうにお考えですか。あなたは、おかしいと思われぬですか。
  84. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 先ほど申し上げましたように、三十二年度までは急激に四百万トンもふえたわけであります。この四百万トンもふえたということは、結局約二万三千人ばかりの人間をほうり込んで、そうしてその人海戦術的なことで上げたということでございまして、結局お客さんがつきそうだということから人間をふやして、割高なところまで掘ったというのが、五千二百万トンという戦後最大の数字を上げながらコストが上がらざるを得なくなった最大の原因じゃなかろうかと考えております。
  85. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし昭和三十二年度には、合理化法が通過をした後ですから、坑口開設の許可があったわけでしょう。ですから、あなたの方は、坑口開設の許可でそういううたかたのような炭坑は制限できたはずですね。一体そういう状態はどうなっておるのか。増産をするけれどもコストがだんだん高くなるといったようなことは、しかも能率が上がってコストが高くなるということは、普通の常識人であるならやはりおかしいと見なければならぬですね。あるいは今までずっと赤字が続いて償却もしてなかったから償却したというなら、また話は別ですけれども、どうもただ採算のとれないところを掘ったからふえたのだということだけでは、私は説明にはならぬと思うのです。
  86. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 私の説明が足らなかった点等かございますが、一番大きな要因としては人間の問題と思いますが、今仰せになりました、たとえば償却の点あるいは修繕の点というのはこれは不景気のときにはほとんどなおざりにしてやっておらなかった、それを景気がよくなりまして、今までのものをひっくるめてある程度大修理を行なうといったような点で経費が上がっているというものも、もちろんコスト増の一因となっていることはおっしゃる通りでございます。  それから坑口開設は、三十二年度に二百四十万トンばかりの生産能力のあるものの開設を許可したわけでございますが、しかし一挙に四百万トンふえたと申しますのは、この新坑開設というよりも、むしろ、すでにそれまでに坑口が開かれておったが、景気かよくないときにはしばらく掘るのをやめておった山、あるいは小規模に最も手近なところだけをぼつぼつ掘っておったというようなものが、景気がよくなったために大規模に掘るようになったということで四百万トンの増産をした、そういうふうに考えております。
  87. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実際はそういうやめておったような炭坑が再開した場合には、こういう炭坑は資料なんか出せといっても出しっこないし、局長のおっしゃるようなのはコストの中に入ってこないのでしょう。統計の中に入ってこないのです。そういう性格の山は本来そうでしょう。これ以上言いませんが、非常に苦心をしてそのときどきの答弁をされていますけれども、実情を知っておる者は必ずしも正確なことをおっしゃっていない、こういうように考えざるを得ないのです。私はこういう実績があるから千二百円というのかはたしてできるかどうか危惧があるのです。  そこで通産大臣、実は今いろいろ質問をして参りましたが、千二百円の根拠が、第一、重油に比べてどこの地点で千二百円低くならなければならぬかということがはっきりしない。ただラウンドで千二百円、こういうことをおっしゃっておりますけれども、それがどうもはっきりしないのです。それから政府石炭政策というものが、一方においては重油ボイラー規制法を持ちながら、京浜地区ではどうだ、中京地区ではどうだ、あるいは阪神地区ではどうだということもはっきりされてない。はっきりされていないということは、ボイラーの規制の場合の、いわゆる許可基準をする場合であって、今は実際には御存じのように小規模のボイラーをはずし、そうして公益事業しか今後許可しないということですから問題はないにしても、政策上きわめてはっきりしたものをつかんでおらない、こういうように考えるのです。ことに運賃をプールするというならば、私は中京地区でも阪神地区でも京浜地区でも大体ラウンドでいけると思う。ところが運賃プール制というものは全然考慮にないのですから、これだけ阪神地区京浜地区との運賃の差がある現状において、どの地点でどういうようになるかということがはっきりしないと、われわれとしては単に千二百円下げるのだ、そうですが、こういうことに承服できない、こういうように思うのですが、その点を一つ大臣から御答弁願いたい。
  88. 池田勇人

    池田国務大臣 通産省といたしましてできるだけの資料とできるだけの考慮をめぐらしまして、一応各地区別には先ほど局長が説明したように出したのであります。しかし御承知通り、複雑な経済界のことでございますから、統制によるにあらざれば、またお話のように運賃プール制をしくにあらざれば、なかなかそれは困難でございます。われわれはできるだけ炭価を下げて、競合エネルギー対抗し得るように、合理的な、また考え得る程度は千二百円程度、こういうことで出しておるのであります。千二百円下げたとき京浜がどうなるか、中京がどうなるかということは、なかなかその場合にならぬとわからないのであります。千二百円をそれでは三十三年から三十八年までだが、年度別にどうするかということも今研究をいたしておりますが、なかなか困難な問題であります。困難だからといって目標を置かないというわけにもいきません。そこで、先ほど申し上げましたように、できるだけの資料をできるだけ活用して、大体千三百円程度下げるべきだ、こういたしておるのであります。合理化が進みまして、あるいは千二百円以上下がればよろしゅうございます。また千二百円も下がらぬというときの対策は、これはまた政治として考えなければならぬ問題でございます。
  89. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は千二百円を下げる方法についてはあとから質問したいと思いますが、千二百円を下げなければならぬという根拠すら私はきわめて不明確だと思う。その点質問をしておったわけです。続いて、実は局長から聞きましたが、廃鉱になる山は石炭に直して年間千四十万トン、こういう。ところが三十八年度までに考えられておるのは二百万トンの買い上げしか考えられていない。あと一体八百万トンはどうするのか、これを一つお聞かせ願いたい。この法律の改正の当初にあたって、もうすでに二百万トンのワク程度は申請が出ておるという。そうすると、八百万トンも、今後当然山が閉山をしなければ、この千二百円あるいは五千五百万トンという数字が出ないのですが、一体どういうおつもりでやるのかお聞かせ願いたい。
  90. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 先ほど申し上げたのでございますが、石炭業界の負担能力といったものを考えまして、石炭業界が相互扶助ということで非能率炭鉱の整備を自分らの金でやるということをやって参りましたので、そこで三十五年度から鉱業権の二分の一だけは政府でやる、そういうことをやっておりましたが、大体今まで四年半の実績が、年間平均いたしまして百万トン程度の買い上げの実績を示しております。われわれといたしましては、今後二百万トン、今までの残りの八十万トンもありますので、大体三十七年度くらいまで今までの調子ではかかるのじゃないか、そうも考えております。そこで業界全体の負担能力、それから国の財政事情、そういったものから、さしあたりは先ほど申し上げましたように五百五十万トン程度の申し込みが来ておりますが、そのうちから特に緊急を要する、先に申し込んだというものを順次買い上げていくということで、その後どうするかということにつきましては、合理化の全体の進展の状況等ともにらみ合わした上で、さらに必要な措置があれば政府としても別途考えるということをいたしたい。ですから、今のところ八百万トン全部について政府がそっくり買い上げて、あときれいにしてやるということまでは、まだ考えておりません。特に大手の関係等の山がいろいろございまして、それらの山につきましては、ほかの山に移るというようないろいろ新しい会社自体の配置転換その他の問題等もございますし、鉱害の処理等の問題につきましても、大手自体でいろいろ処理するというような面もございますので、さしあたりは中小炭鉱の早急に処理を要するといったものを中心にその具体的な施策を考えて、あとは現実の進展と相待って所要の措置をとっていきたいと思っております。
  91. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 年間百万トンというのは、これは事務処理の能力から百万トンという数字が出たのです。それから大手といえども買い上げの申請をしたところが現実にあるし、三菱鉱業というような大会社が買い上げの申請をしておる。あるいはまた日本炭鉱も買い上げの申請をしている。ですから大手といえども、経営状態のいい山でもしているのですから、今後御遠慮下さいということは言えないと思います。日本で最もいいような山でも買い上げの申請をしておるし、最も大きな山に位するものでも買い上げの申請をして、もう買い上げられているのですから、今後出てくるものは、一つ大手は遠慮して下さいというわけにはいかない、私はかように考える。それが一つと、そういたしますと、現在すでに申請をしてまだ二百万トンのワクがきまらないから受理されていないものが、もう二百万トンくらいあるわけですから、私は両方とも答弁になっていないと思います。少なくとも法律を今改正されるのですから、しかも八百万トンというものが全然考えられていないということならば、もうすでに計画を立てらるべきですよ。毎年々々この法律を出すわけにもいかぬでしょう。しかも昭和三十八年度という目標をあなたの方ではきめられているのですから、昭和三十八年度までに買い上げられる炭鉱はどのくらい——昭和三十八年度に二百万トンでいい、絶対出さぬというならば別ですよ。当然政府においては昭和三十八年度まではこのくらい買い上げなければならぬ、こういうことをはっきりさすべきが至当ではないか、私はこう大臣に聞いているわけです。これは大臣に答弁してもらわなければ、局長では無理だ。
  92. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 先ほど申し上げましたように、現在の事業団が買っておりますのは、いよいよ炭がなくなってにっちもさっちもいかなくなったというものは考えておらないのでございます。現在買い上げの対象も、大体産炭量が五年以上あるというものについて、そして生産性と価格両方が基準に対して六割未満という、やろうと思えばまだ操業ができるのだけれども、しかしそれか非常に鉱害その他を残し、あるいは未払い賃金等を残して、地元あるいは従業員に迷惑をかける度合いが大きいし、それから石炭業界全体に対しても苦しまぎれのダンピング等をやることによって、市況を乱すおそれのあるといったものは、一つ業界全体のために静かに消えていっていただいた方がいいのじゃないか、そのかわり鉱害のお世話はしましょう、それから未払い賃金等についても六カ月分でございますが、優先的にお払いをするということにして、御迷惑はかけないようにしましょうということでやっているわけでございますので、そのいよいよ炭のなくなった、実は先ほどの千四十万トンの中に産炭量の五年以内のものがどれだけあるかということにもなりますが、確かに大手のものも相当ございます。大手を遠慮せよと言って決して頭からのけるというわけではありませんが、今申し上げましたような格好で参りますと、それは買いたくても現在の基準からいったら買えない、石炭業界が共同してお金を出しているという現在の態勢では、買うのにあまり適さぬというものも相当ございます。従来からの事務処理スピード、これは今後上げていくつもりでございますが、そういうものともにらみ合わせまして、さしあたりはまだ二百八十万トン残りがあるわけでございますので、それをできるだけ迅速にやるという努力をする一方情勢の進展等を見て必要な措置を講ずるということでやっていきたいと思います。
  93. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 局長が大臣に平素からそうお答えになっておるかどうか知りませんが、もう少しすなおにおっしゃらぬと、私は非常なそごを来たすと思うのです。これは今おっしゃいましたが、現実に今まで買った炭鉱で五年以上の炭量があったのが、どのくらいあめるのかといえば、おそらく五年以下の炭量のものでも相当買っておるはずです。というのは鉱区の買い上げというけれども、炭量を買うのじゃなくて、これは本来補償的な性格を持っているのだから、私はあえてそのことを言いませんけれども、そうおっしゃるなら私もあえて言いたい。実際問題としては五年以上の炭量があるかどうかということを中心に議論をしていない。そのことは審査の対象になっていない。現実にはほとんど目をつぶって買っているのです。これは事実です。炭量がないからそれはだめです、こう言われる山はほとんどないでしょう。実際には炭鉱はにっちもさっちもいかなくなっているのです。ですから買い上げの申請をしておる。事実はこういう状態なんです。ですから千四十万トンももう廃山にするのだという計画ができておるならば、少なくとも八割程度は買い上げの対象になるべきだ。当然こういうことをおっしゃってしかるべきじゃないかと思うのです。しかし今は予算がつかないからこの程度にしておくんだというならばまた話は別ですが、あなたのように理屈をつけてこられますと、その理屈は合っていないと言わざるを得ないのです。実際大臣、千四十万トンも買い上げるということが計画の爼上に上っておるのなら、買い上げのワクはかなり大きな数字でないと、現時点においては当然買い上げのワクが足らないということが言われるでしょう。大臣、どういうようにお考えですか。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 廃鉱の申し出を全部買い上げるという建前にはなっておりません。石炭界の状況を見ましてやっていくのでございます。それから今お話のありましたごとく、予算の関係もありましょう。しかもこれは炭鉱業者、いわゆる相互扶助の関係から立っておるのでございますから、統計上で出たものを全部買わなければならぬ、その準備を今すぐしておかなければならぬというわけのものでもない、やはり実情に沿ってみんなの気持に合うような計画でいくことが妥当だと考えております。
  95. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし大体千四十万トンくらい廃鉱にするというのは、石炭局だけでなくて、石炭協会でもそう考えておるわけでしょう。ですから私はそんなに湖塗しないで、やはりそういった政策が立てられるべきだと思うのです。二百万トンでいいという理論は成り立ちませんよ。それから今買い上げる炭鉱は少なくとも今まで買い上げられた炭鉱よりも、炭鉱としてはよりベターです。むしろ今から申請してくる方が条件に合っていますよ。私は今まで残り得た炭鉱というのは、ほとんど条件に合っていると思うのです。千二百円下げなければならぬという絶対要請のもとに買い上げ申請をせざるを得ないという状態です。しかもこの法案を審議しているときに、もう二百万トンのワクが越えるくらい申請者が殺到しておるのですから、私は十分考慮なさってしかるべきじゃないかと思うのです。いかに相互扶助といいましても、そういう制度があるのですから、制度がある以上は千四十万トンのうち二百万トンでいいのだという議論は成り立たぬと思うのですね。大臣どうですか。
  96. 池田勇人

    池田国務大臣 千四十万トンのものを買い上げなければならぬときまっているわけじゃございません。
  97. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それはわかっている。
  98. 池田勇人

    池田国務大臣 そうでございましょう。そしてまたその千四十万トンのうちで、残炭量五年という既定方針の分は、やはり今後も堅持していかなければならぬ。従って買い上げの条件に合うのが千四十万トンのうちどれだけあるか、しかもそのうちで大手その他はやはり自分のところで配置転換その他のことを考えるというふうな筋をきめてから計画を立てるべきだ。ただいまのところは、今大体八十万トン残っているのを二百万トン加えて二百八十万トンで、一応計画を立てていこうというのであります。しかしこの計画は将来こんりんざい変えないというわけのものでもございません。やはり業者が自分のところから積み立てているものでございます。また政府の予算というものもこれにつくものでございますから、この石炭業界の状況を見てやっていくべきだと考えております。
  99. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この点これ以上質問いたしませんけれども、私はこれだけ見ても明らかにそごを来たすと言わざるを得ないのです。来年また局長が来て、一つ法律を直して下さいと言うことは必至ですよ。ですからまた速記録を持ってきて、この前君こう言ったじゃないかと言いたくないから私はあえて言っておるのですけれども、とにかくことしは、ことしの半ばに二百万トンの申請は超過をするということは事実ですから、そういった強弁をされないで率直に答えていただかなければ、私は千二百円のコストダウンどころか、あらゆる点にそごを来たすということは必至であろうと思うのです。能率なんかもその通りだと思います。  次に、大臣にお聞かせ願いたいのですが、それは五カ年間で千四百億の設備投資をするということなのですけれども、今まで局長にわれわれ聞きましたが、千四百億の設備投資というのは、年間平均を見ますと、昭和三十一年、三十二年、三十三年の大体平均くらいなのですね。これではこれだけの大きな石炭政策の抜本的対策をやろうとするにはどうも金額が少ないではないか、これは今まで通り政策横ばい的に遂行するにすぎない、かように考えるわけですが、大臣はどういうようにお考えですか。
  100. 池田勇人

    池田国務大臣 大体事務当局並びに業者相談の上、石炭鉱業審議会にかけまして、これならやっていけるだろう、しこうして御審議願っておりますように、予算におきましても、ああいう金額を見積もりまして、やっていけるという計画になっております。
  101. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大臣は業者の方でも大体やっていけるというわけですが、業者はやっていけぬと言っている。八百円ならできるけれども、千二百円というのはとてもできません、こう言っているのです。このことはやはり将来、能率が悪いじゃないか、労働者は働けということに、議論はなってくる、そのうちに首を切れということになる。ですから私はこれだけの抜本的な対策をするのに、過去三カ年間の実績のような設備投資で、はたしてそれができるか。これはできないということを証明しておるのです。この法律は第一歩において計画がくずれているのです。政府の強力なるバック・アップがない、こう考えざるを得ないのですが、どうですか。
  102. 池田勇人

    池田国務大臣 私の聞いているのとは違います。業者は当初八百円といっておりましたが、いろいろ相談の結果、今の政府の考えておる資金計画で大体いい、こう承諾しておると思います。
  103. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この前の重油ボイラー規制法のときに、石松石炭協会会長に来ていただいて聞きましたところが、政府の強力な援助を待たなければ千二百円というのは不可能だということを再三再四にわたって述べられた。しかし私はこの資金計画を見ましても、政府の強力な援助があるとは考えられない。過去三カ年のなしくずしのようなものが今後五年間続いていくだけです。これではたしてできるかどうかというと、できませんよ。一体どういうようにして政府の強力な援助が行なわれたとお考えになるのですか。
  104. 池田勇人

    池田国務大臣 今までの石炭対策で御審議願っているような根本的な対策は、今まではございませんでしたが、政府といたしましても強力な援助をするつもりでやっておるのであります。
  105. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 鉄鋼一つとりましても、御存じのように千四百億というのは、大体五年間が鉄鋼の一年間です。電力の投資は一兆以上になりますから、これは申すに及ばないのですけれども、これではどうも強力なバック・アップがあるとは考えられない、私はこう言わざるを得ないのです。私が指摘したことが杞憂であればけっこうですが、これは単に杞憂でなくて、現実にそういう事態が起こってきて、政府が言ったことは全部計画通りとならない、またそごを来たした、こういうことにならないとは言うことができないということを、私は非常に残念に考えるわけです。そこで、大臣もああいう答弁をされますから、これ以上質問をしてもむだですので、私は残念ながらこの点についてはやめますけれども、必ずそごを来たしてきますよ。私は、この程度では抜本的な石炭政策とは言えないと考える。一方においては十一万人も首を切られるのでしょう。政府としても十一万人も首を切るのですから、もう少し抜本的な対策があってしかるべきです。経営者においてもそうですよ。このことを私は申し上げておきたいと思うのです。  そこで、さらに私は先年問題になっておりました地元に火力発電所を興して、四十万ボルト程度の送電線で需要地に電気を送るという問題、これは一体どういうことになっているのかお聞かせ願いたい。これは事務当局でけっこうです。
  106. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 九電の新小倉においては、すでに工事に着工いたしております。それから電発の脇田発電所も、土地の選定を終わりまして現在実施をいたしております。この電気の送り方につきましては公益事業局の系統になるわけでございますが、超高圧送電の試験を御承知のように特殊の機関を設けてやってもおりますし、われわれといたしましては、できるだけすみやかに四十万ボルトといったような超高圧で、阪神方面に電気の形で石炭のエネルギーが運ばれるという日が来るようにということを期待して、そちらの方の具体的な研究の成果を今待っておるわけでございます。発電所そのものの方は、御承知のように一ぺんに数基もできるわけではございませんので、とりあえずは——かりに送電線の方がおくれましても、大体現在までの二十七万五千ボルト程度の送電線で処理できる限度の発電しか、さしあたりはできませんので、予定通り電発あたりが九十万キロというようなことにでもなるというようなころまでには、四十万ボルトというものができるということを確信して、早くそちらの方の技術を確立していただきたいということで、石炭局からもお願いしておるわけでございます。
  107. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 三十八年度までの計画には乗らないのですか。
  108. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 私はここではっきりお答えできませんが、私の知っているところでは、三十八年の中には入ってないのではないか、こう考えるわけであります。
  109. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 高圧送電線の問題はかなり前から言われたのですから、それは三十五年、三十六年は無理にしても、最終年度くらいにはやはり完成をさして、諸掛り、運賃が非常に高くつくという点を少しでもカバーしてやるのが至当ではないかと思うのです。これは技術的にできないというのですか、それともはっきりしないから、一応計画の中から除いておるというのですか。
  110. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは日本ではたしてこれが今すぐできるかどうかということにつきましては、現在の段階においてはまだ若干技術的にも問題があるのではないか、こう考えておりますが、具体的な話になりますと、たとえば電発の脇田、これは十五万キロの第一号基が稼働いたしますのが三十七年の十一月でございます。大体これは六基ばかりできるならば九十万キロにまで持っていきたい、そういうふうにも考えております。第一号基は三十七年の暮れにできて、三十八年からは一応正常運転に入ると思いますが、あとこれに引き続きまして二号基、三号基、四号基というものが出てくることになって、初めて超高圧送電という具体的な話にも結びついてくる。そういうことになりますので、大体今のテンポというので間に合わないということはないのじゃないだろうか。この電発が大体本格的に動き出すというころまでには、十分に四十万ボルトといったようなものの送電線も、技術的にももちろん完成し、それから具体的な工事の方も大体それに間に合うように進められ、完成しているのじゃないかと考えます。
  111. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その問題は九州の電力事情じゃないですね。問題は関西の電力事情でしょう。ですから、関西の電力事情によって、たとえば低品位炭の若松の脇田なら脇田というところに作ってそれを送ろう、こういう計画ですから、ただ十五万キロ・ワットのが一基できて、その次ぐらいには四十万ボルトの送電線のことが考えられるじゃないかというような話は納得できないと思うのですよ。今運賃が高い、こういうことが問題になっているのですね。日本の石炭が高いといいますけれども、フランスなんかに比べて、山元の石炭値段というものは高くないのですよ。これは距離が離れておるというところに問題がある。ですから、この流通過程をいかに合理化するかということが非常に大きな問題なんです。その一つは、やはり私は超高圧の送電線の問題を考えてしかるべきじゃないかと思うのです。これについてもう少し詳しくお聞かせ願いたいと思う。
  112. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 はなはだ申しわけありませんが、私はどこまでその計画が具体化しているか。大体その電発が完成するまでにはこれは当然できる、こう思ったわけでございますが、今お話しのように、一号基が動き出したときにすでにやっていくのか、これはいろいろ説がございまして、あんまり遠くまで送らぬでも押せ押せにして持っていくということでもいいじゃないかとか、いろいろなことを今までもいわれてきております。それをさらに押して、四十万ボルトということが完成されれば、これは確かに船で運ぶよりもはるかに安くなるであろう。こういうことが理論的にも推論されますので、われわれといたしましては、今後石炭の生きる道が火力発電、しかもできるだけ山元に近いところで発電して、流体エネルギーの格好にして、ロスの少なくなるような送り方をするよりほかないと思いますので、これは電発の全体の計画ができる前におきましても、できたものからだんだん乗せていくといったようなことができるように希望いたすわけでございますが、至急公益事業局と連絡いたしまして、現在のこの計画がどこまで進んでおるかということを後刻、昼からでもお答えしたいと思っております。
  113. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は流通過程の合理化の一番大きな問題は、この送電線の問題だと思う。ですから、これには非常に重点を置いて考えていただきたいと思うのです。まあ電気で送るという方法が一番楽ですし、将来の展望をもって見ましても、これはもう諸掛りを節約するとか運賃の問題といいましても、とにかく電気で送るということが最もいいことじゃないかと私は思うのです。これはかなりあなたの方のいろいろな政策の発表にも書いてありましたし、また本委員会でもお話しになったことがあるのですから、やはりこの法案を改正されるにあたっては、その程度の具体的なお話をなさってしかるべきではないか、かように思うのです。これはあとから御答弁願いたい。  次に例の一般炭の完全ガス化の問題なんですが、これはルルギー方式で一つ工場を作るというお話もありましたが、これはどういう状態になっているのか、お聞かせを願いたい。
  114. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 ガス業界の協力を得て、とりあえず常盤に一般炭の完全ガス化の工場を作って、京浜地区に持ってきたいという計画を立てまして、いろいろと推進してきたことは、ただいま御指摘の通りでございます。ただその後ガス業界の方で、いろいろLPGその他の新しいエネルギーといったようなものの将来に対して、まだ十分な見通しを持ち得ないといったようなことから、この一般炭の完全ガス化に片棒かついで乗るというところまでの決心がつきかねるということで、これはなかなか進まなかったわけでございます。たまたま昨年の夏の終わりごろになりまして、それまで石炭業界は、これはむしろガス会社に半分かついでもらうのだというようなつもりでいろいろ進めておったのでございますが、いよいよそれではいかぬということで、石炭協会自体で、完全ガス化についてはやはり石炭の問題だから、協会全体が一つ共同テーマとして取り上げて、できるだけ具体化するように乗り出そうじゃないかといったような話し合いになったわけでございます。そのためには、はなはだこれも業界としてはだらしない話で、われわれも監督不十分ということでございますが、今まで完全ガス化ということが言われて久しいのでございますが、石炭業界自体の人間が本気になってこれを専門に調べに行くといったようなこともまだやってないというような格好で、それをやる以上は、やはりまず各国の状況を全部しさいに見た上で一つやりたいということで、たまたま石炭業界にそう機運があるということになりましたために、三十五年度の予算にも、実は大臣から一般炭の完全ガス化についても補助金を計上したらどうだというお話をいただいたわけでございます。それを石炭協会の方にも伝えたのでございますが、三十五年度にいただいてもすぐ具体化するという自信がないので、三十五年度は内外のデータについて、要すれば現地に行っていろいろ調べてくるというようなことをやって、そうしてこういう方法でならやれるというときに政府の方でも必要な援助をお願いしたいというようなことがございましたために、わざわざこちらから、五千万でも一億でも、初年度だからとにかく研究費の半分なりあるいは設備費の一定額なりといったようなものについて、通産省としては予算を要求する用意があるがというような話もしたのでございますが、むしろ向こうの方から、せっかくいただいてあと泣かしたのではというので、もう一年待って下さいということから、三十五年度に石炭業界がまず自分でやれるかどうかという検討をした上で、できれば三十六年度あたりから予算化するということで努力していきたいと考えております。
  115. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは一つぜひ実現をしていただきたい、かように思うのです。  次に、私は流通過程の合理化についてお聞かせ願いたいと思うのです。流通過程の合理化については、政府はどういうように考えておられるのか、これをお聞かせ願いたいと思うのです。
  116. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 御承知のように、大体中央の三市場について平均してみますと、大体売り値の二二%程度だと思いますが、これが運賃並びに輸送諸経費ということになっております。特に北海道から東京まで持ってくるという場合には、千七百円からの運賃諸掛りが現在かかっているわけでございます。先ほど御指摘になりましたように、産炭地から主要消費地が離れているということが、日本の石炭企業の一番つらいところでございますので、運賃の占める割合が高いというものについては、できるだけ運賃を切り下げるということに努力していきたい。それと同時に、現在三千からございます銘柄によって取引がなされておって、そうして貯炭をする場合にもあるいは輸送をする場合にも、非常にこまかい区分けをしなければならないといったような関係になっております実情を是正して、需要家の方で希望するのはせいぜい数十種類の規格であればそれで十分なわけでございますから、これから逐次取り扱いのロットを大口化するということを進めて参りたい。これは需要者ともちろんタイアップしなければならぬわけでございますが、いわゆるロットの大口化によりだんだん規格売炭的なものに全体の進み方を移行していく。それに並行いたしまして、現在それぞれの会社がそれぞれの人間を、それぞれの積み地に出して、そして石炭の発送あるいは受け取りというようなことをやっているというようなことにつきましても、もう少し流通機構の簡素化、あるいは場合によりましては、現在の石炭の受け渡し場所というようなものにつきましても、若干の変更を加えた方がいいものもあるいは出てくるかとも思いますので、そういうものにつきましても、今後どういうふうにすれば一番需要者と生産者双方のプラスになるかということについて、この前一月から七回ばかりにわたりまして生産性部会というものを開いて検討をしてきたわけでございますが、一応の結論が出まして、実はあした大体中間的な報告というものがなされるというところまでの段階にきたわけでございます。従いまして、まだ流通機構を簡素化することによって、どれだけのコスト・ダウンになるかということにつきましては、あした正式にきまるということでございますが、われわれといたしましては、昨年以来横浜以下揚げ地五港、それから九州の苅田あるいは唐津港以下積み地五港というものにつきまして、石炭の港湾施設特別会計で七十五億の事業費をもって、三十七年度までに港湾の阜頭その他の設備の近代化、機械化ということをやっておりまして、まず積み地におきましてはそういう港湾施設を近代化していく。それから今後は、そういう港湾施設そのものの近代化と並行いたしまして、たとえば今度の特別貸付金の一部等を活用いたしまして、積み地における共同混炭場というようなものを設けることによって、多数の生産業者あるいは販売業者の各地に送り出す炭というものを、ある程度大口にまとめて一定の規格炭にして送り出す、そしてそれを能率のいい船でできるだけ運賃を安く運ぶといったような、海上輸送面との結びつきというようなことも、運輸省その他と連絡をとりながら進めていきたい。さらに陸上輸送等につきましても、日本の石炭の貨車輸送の一列車分がまだ非常に小さいのでございますので、これを大きくするということによって相当コストを下げ得るのではないかという点につきましては、貨車輸送の大口化あるいは石炭専用の貨車といったようなものを、国鉄で整備していただくといったようなこと等について一国鉄当局と努力を続けていきたい、こう思っております。それから船の関係につきましては、まだいつからどうということでございませんが、たとえば石炭専用船といったようなものを作った場合にどれだけのコスト・ダウンになるか、またそれが現在の海運市場にどういうようなプラスあるいはマイナスの影響を与えるかといったようなことにつきましても、今後具体的に検討して一つずつ問題を解決するということをしていきたいと思いまして、とりあえず三十五年度といたしましては、まず九州か北海道かどっちか一カ所に共同混炭場というようなものを作ることによって、石炭輸送の大口化、取り扱いの簡易化というようなことを実現していきたいというふうに考えております。
  117. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一億四千万円の費用は、具体的にどういうように使うのですか。
  118. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 大体まだ北海道になるか九州になるか、場所ははっきりわかっておりませんが、共同の混炭場を作る補助金にしたいと考えております。
  119. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 交錯輸送をする石炭はどのくらいあるわけですか。
  120. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 御承知のように一般炭と原料炭と両方あるわけでございますが、一般炭の方は若干の交錯輸送はございますが、これはあまりひどいものにはなっておりません。たとえば私の方で調べましたところでは、北海道の炭というものが原料炭では九州に一・三%くらい行っているものがございますが、一般炭では北海道の炭は札幌の地元が主で、次は東京に二八%、仙台に一六%、大阪に一一%、関西に三・五%、これくらいで大阪までが一番西の端。九州の方からは仙台まで〇・二%という若干の炭が行っておりまして、しいて交錯輸送の弊というものを考えますと、一般炭福岡のものか東北地方にいっているものが今一番ひどい交錯輸送の例ではないかと考えております。  原料炭の方は、炭の性質もございますので、たとえば石狩炭は地元の札幌はもちろん、主力は東京でございますが、東京札幌、大阪、仙台、名古屋といったような順序で、中国地方を除きまして、四国の〇・一%、福岡の一・三%というものまで一応全国的に輸送されております。  それから九州の一般炭あたりをとってみました場合には、これは東京まで来て、それから北の方には行っておりません。大体原料炭はその品質によりまして若干の交錯輸送はございますが、それ以外のものにつきましては、ひどい交錯輸送ということで、ぜひ改めなければいかぬというものは、先ほどの福岡一般炭が若干九州から東北まで行っているという以外には、そう数量的には目立っておりません。
  121. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 東京中京それから阪神地区を交錯輸送の対象にしないということになれば、これは私は確かに御説の通りだと思う。しかし問題は、北海道石炭阪神まで持っていくというのはやはりむだですね。九州の石炭東京まで持ってくるというのはやはりむだです。それは原料炭で特殊な用途に使うとか、その石炭でなければならないというなら別として、私は大体それ以外のものは交錯輸送をすべきでないと考えるのです。  そこで、この前もちょっと私公述に見えた方に質問をしたわけですけれども、流通過程の問題もやはり私企業ではありますけれども、何か調整機関を設けて、そうして九州の石炭東京に、あるいは北海道石炭阪神に行くことのないように、契約は契約にしておいて、それで実際石炭は、北海道から本来大阪に持っていくものを九州から送ってやる、あるいは九州から東京に送ることを契約した分を北海道から東京に送ってやる、こういって相互に融通をし合って代金についての調整をするならば、そこに金が浮くと思うのです。私は、このことをやらないで流通機構の合理化といっても始まらないと思うのです。契約は契約でとってよろしいけれども、そこに交錯輸送をする両方の輸送費のむだがあるのですから、これを政府としてほうっておく手はないと思う。これはどのようにお考えであるかお聞かせ願いたい。
  122. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 確かに九州の炭が東京に一割来ているというあたりは、これはおっしゃる通りだと思います。これの原因を考えてみますと、結局先ほど申し上げました三千の銘柄で、あそこの炭といったような取引をやっているというところに相当大きな原因があるのじゃないかと考えておりますが、われわれといたしましては、これを今後規格買炭というようなことに持っていくなら、お客さんから注文があった場合に、わざわざ遠方から運ばぬでも、現在北海道から東京に来ている炭で、すぐに間に合うというものも当然出てくるわけでございますので、そういうむだをなくするためにも規格買炭をやって、そうして、とにかくこれは大体カロリーが幾らでアッシュが幾らで、硫黄分が幾らでというようなふうに、別々に数十種類に分けておけば、大体あらゆる用途に応じ得るということになりますので、今御指摘のような点をなくするため、銘柄買炭を規格買炭に持っていくことが、あらゆる面においてプラスではないかと考えております。御趣旨のような線に行けるように流通面の改革を考えていきたいと思います。
  123. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は銘柄買炭を規格買炭にすれば、そういう弊害が少なくなるという点はわかりますけれども、しかし、それでなくなるかといえばなくならぬと思う。問題は販売網の問題です。ですから、私は自己の会社の販売網を確保しようという方が合理化の害になっておると思う。  そこで、私は一案を提案したいのは、販売網は販売網で確保してやればいいと思う。しかし、石炭は現実には九州の石炭東京に送らないで、北海道から送ってやる。しかし、北海道石炭が大阪に販路を持っておった場合には、それを逆に切りかえてやる、こういうような調整機関が設けられると、この弊害はなくなると思う。ですから、このことは、すでに御承知のように水力電気と火力電気の関係で、関西と北陸がやっておるわけです。北陸の水力電気を関西に持っていっておる。それから北陸地方で火力発電をやると高くつくから、関西電力で作ってもらう。そうして、料金はどうかというと、実際は関西電力火力発電を使用しておるけれども、しかし、それは水力発電の料金で払っておる。北陸は水力電気を受けておるけれども、それは火力分を払っておる、こういうことをしておるわけです。それで送電線のロスの費用を両方とも節約することができておる。こういった抜本的な政策をやらなければ、単に銘柄買炭にしただけではできないのですが、どうですか、これは事務当局から聞きましても無理じゃないかと思いますが、大臣、こういう構想をお入れになったらどうかと思います。
  124. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の点はわかりますが、電力会社のように数の少ないものと、今のように品数か非常に多くて、業者が非常に競っておる場合において、考え方としてはわかりますけれども、実際問題としては——これは努力しますけれども電力会社の火力、水力云々というようにうまく調整することは困難だと思います。しかし一方向としてはけっこうな方向だと思います。
  125. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は大手だけでもそういうシステムを作っておやりになったらどうか、こういうように考えるわけです。  まだ私の質問もかなりありますが、どうしますか、休憩でもして……。
  126. 中村幸八

    中村委員長 それでは この際午後一時半まで休憩いたします。     午後一時休憩      ————◇—————     午後二時三十六分開議
  127. 中村幸八

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます  休憩前の質疑を続行いたします。武藤武雄君。
  128. 武藤武雄

    ○武藤委員 労働省の安定局長さんおりませんか——それではあとからお見えになると思いますから、ちょっと前会に引き続いて通産大臣に御質問をいたしたいと思います。  ただいま三池の実態等もお聞きいたしまして、この合理化の前途というものがいかに困難であり、非常な暗雲をはらんでおるかということはよく御認識できると思うのでありますけれども、もちろんこれは労働運動の行き方その他等にも問題があるのでありましょうから、単に合理化だけがこういう問題だというきめつけ方は間違いであるかもしれません。しかし少なくとも十万以上の人たちが今後職場を離れていくということになると、やはり社会情勢というのは、避けようとしても、お互いに良識を持っておっても、場合によっては困難な、険悪な状態になる場合があり得るわけであります。そういう意味で、この際、私はこの前も石炭産業会議の問題で質問したのでありますけれども、これは法案として提出をいたしますから、ぜひとも各位の御協力を得なければならぬと思うのでありますけれども、かりにそのわれわれの構想する石炭産業会議の中でこういう問題を取り上げるか、あるいはそれが場合によって皆さん方の主張でだめだということであれば、現在のどういう機関でこういう問題を論議するかは別といたしまして、やはりこの大きなエネルギー転換に対する労働問題については特に重要であります。従いまして、これらの問題を含めまして、たとえばどういう機関でやりますか、その中で一社々々の労働問題を取り上げるのではなくて、全体の労働雇用関係というものを、合理化の進展に伴ってどういうふうに展開し、どういうふうにこれを合理的に解決していくかという意味で、たとえば労働問題対策審議会というようなものを一つ設けて、全体の構想の中でそういう労働問題を審議していく、こういうことは合理化推進のためにぜひ必要ではなかろうか、こういうふうに考えるのであります。同時にまた、合理化のためにはいろいろ金がかかることでありまして、資金の問題も重要な問題になって参ります。業界の方では千三百億程度の資金の確保が必要だということでありますけれども、残念ながら本年度の予算における資金対策を見ては、少なくとも三カ年に期間を縮めて炭鉱の近代化をはかり自由競争とするということはほとんど不可能に近い予算の体系であると私どもは思うのであります。従いまして、こういう近代化の資金をいかにして確保するかというような意味におけるいわゆる資金計画委員会なら資金計画委員会というようなものを設けて、広く衆知を集めてそこで協力態勢をとっていく。あるいは税制の問題がこの間から問題になっておりますが、これは大蔵省との関連あるいは地方自治体との関連、いろいろ関連があるでありましょうから、こういった税制対策についても、税制対策審議会なら審議会というものを、この合理化に伴う強力な推進機関として設けて、とにかく合理的に計画的に問題を進めていくということは、私はこの際必要だと思う。従来のような単なる合理化計画だけをきめて、首は勝手に切れ、切ったあとの問題はいわゆる援護協会で失業対策として考えていこうというような消極的な問題でなくて、こういう具体的な問題を取り上げて、今後やっていく以外に方法がないのではなかろうかと思いますが、重ねて通産大臣の御答弁をお伺いいたします。
  129. 池田勇人

    池田国務大臣 お考えの点はまことにごもっともでございまして、われわれもそういう方向で進んでいきたいと思っております。何分にも既存の機関もございます。また行政上の各省の分野もございまするが、私はそういうものを土台にしながら、石炭問題につきましては通産省、また関連する労働問題につきましては労働省、密接な関係を持ちまして、しかもまた民間の方々の協力を得まして、石炭鉱業合理化のために万全の措置をとっていきたいと考えております。
  130. 武藤武雄

    ○武藤委員 労働省の関係者の方がまだ来ていないようでありますけれども、これは一つ通産大臣も重要な問題として、あと労働省あたりとよく連絡をとっていただきたい。今後いろいろな形における炭鉱の離職者がまだふえていくと思うのであります。  そこで、この前離職者の援護法を通過させまして、各地方、中央において店開きをやってようやく活動を始めた、こういう格好だと思うのでありますけれども、どうも最近、全国のいろいろの事情を聞いてみると——離職者援護協会というものを発足させたのは、従来のいわゆる労働省における官僚機構では、こういった問題がなかなか解決できない、従って民間の有識者あるいは協力者等を集めて、こういう中で、官僚機構によらない格好で問題を解決する以外に方法がないというのが、最大の趣旨であったろうと思います。ところがその後の実際の運営を聞いてみると、どうも何か炭鉱離職者協会というのは、やはり労働省の官僚機構でやるべき性質のものなんだという解釈のもとに、大体労働省の定年退職者であるとか、あるいは前にやめた者であるとか、そういった労働官僚の救済機関みたいな格好に形が変わってきておる、こういうことを聞くのでありまするけれども、かりにそうであるとすれば、これはまことに援護協会を作った趣旨から、はずれておることでありまして、それならば何も援護協会なんか作らずに、これは労働省の職業安定局なり何なりでやれば済む問題でありますから、そんな必要はなかったと思います。それではいかぬというので、結局民間の協力態勢としての離職者援護協会を作ったのでありますけれども、現実はそういった格好で運営されておるということを聞くのでありますが、そういった実態について、通産当局としてこれを見ておる点がございましたならば御報告を願いたい。
  131. 池田勇人

    池田国務大臣 昨年暮れ御審議を得てスタートしたばかりでございますか、今お話しのような点があってはいけないと思いまして、石炭鉱業界において十指の指さすところ、この人ならという方をお願いいたしましてやっておる次第でございます。こういうものが新発足する場合におきましては、一応は役所の方でスケジュールを作りますが、運営は、伊藤さんを初めその道の方々にやっていただくように心がけておる次第でございます。
  132. 武藤武雄

    ○武藤委員 一つ労働省の方と連絡をとって、全国の援護協会の職員の前歴なり何なりをずっと一覧表を作って、資料提出を願いたいと思うのでありますが、どうですか。
  133. 池田勇人

    池田国務大臣 労働省へ申しまして作らせてみましょう。  ただ問題はやはり上に立つ人の心がまえで、役人上がりの人か手足として働くことはまたやむを得ないかもしれません。俸給の関係その他で十分なりっぱな人を入れるわけにいかぬかもしれませんが、心がまえとしては私は伊藤さんならば最適任者であって、その運営に誤りはないと信じておるのであります。しかし、いずれにいたしましても、労働省あるいはわれわれ、十分相談し合って、民主的にうまく運営のできるよう努力いたしたいと思います。
  134. 武藤武雄

    ○武藤委員 私は、根拠がなくて言っているのでなくて、ある地方においては、業界が一致して出した支部長に対して、労働省の前の有力な官僚上がりの人が、どうしてもそれではだめだ、労働省の官僚でなければ絶対認めない、こういうことで強力にがんばって、結果においてはその人の主張が通ったような格好になっておるのでありますけれども、その後の運営を見ると非常に不明朗な運営が行なわれたようであります。しかし、これは今のところでは一応問題が解決しているようでありますから、ここでは触れません。しかし、全国的に今後離職者援護協会の運営が行なわれる場合に、そういった考え方で運用されることになりますと、離職者援護協会を作った意味がなくなるわけでありますから、その点は特に、運営は労働省にまかせるのだというだけでなしに——直接生産に励んだ者の離職後の問題でありますから、通産当局においても非常な責任があると思うのであります。ですから、離職者援護協会の運営について、われわれも労働省を督励いたしますけれども、通産省としても十分その点は今後考慮して関心を持ってもらいたいと思います。  資料の方は一つあとで出していただきたいと思います。  だいぶ私どもの要請で時間がおくれましたので、これで私の質問を打ち切ります。
  135. 中村幸八

    中村委員長 次は滝井義高君。
  136. 滝井義高

    滝井委員 午前中多賀谷君が相当基本的な石炭鉱業合理化臨時措置法に関するいろいろの計画の点についてはお聞きをいたしましたので、重複を避けてお尋ねいたしたいと思います。  まず第一に、最近における石炭需要が、当初政府が考えておったとは相当情勢が違ってきたのではないかと思うのです。と申しますのは、山元貯炭等も三百万トンを割るという状態になって参りました。そして、閉山する動きのあった中小の炭鉱が再び活況を呈してきつつあるということです。しかも、筑豊炭田ではその影をひそめておりました洗炭等も幾分動き始めるという状態が出ております。石炭は一応買手市場から売手市場みたいな状態が出てき始める傾向さえ出ておる。私の知っておる二、三の中小の山には、現金を持って、すでにブローカーと申しますか、石炭の仲買いの人たちが殺到するという状態が幾分出てきているのです。一体こういう情勢を政府はどう見ておるのか。こういう情勢は、アサガオの花が日中になったらしぼむようにやがてしぼんでいって、再び基本計画通り合理化というものをぐっと進めていくことになるのか、ここらあたりの見通しを、まず池田通産大臣にお聞きしたい。
  137. 池田勇人

    池田国務大臣 昨年の八月ごろでございましたか、私は当委員会で、年度末は大体八百万トンくらいになるだろうと申しておったのでございますが、それ以上に減りまして七百万トンということに相なりました。従いまして、滝井さんのお話のような点も聞き及んでおります。従って私は、通産当局として、この際やはり従来の合理化計画でいくんだ、この線をはっきりするようにということを業者に警告をいたしたのでございます。私は一時の好況に浮かれて根本的な合理化対策がおじゃんになるというふうなことは、絶対に避くべきであると考えております。
  138. 滝井義高

    滝井委員 政府が基本方針通り貫いていく、こういうお説でございますが、昭和三十五年度の出炭目標を五千二百万トンにするというのが、一応池田さんなり樋詰さんの予算委員会における私の質疑に対する御答弁でございました。最近の新聞その他を見てみますと、業者の側は五千二百五十万ドンだというような、通産省との間に幾分意見の一致を見ていない報道が伝えられておるのです。これはわずかに五十万トンですが、今の日本の石炭事情で五十万トンよけいに出るか出ないかということは、合理化途上においては大きな影響を及ぼすわけです。この点については、一体業界と通産省当局との調整の問題はどういう工合になっておるのか。依然として池田通産大臣としては五千二百万トンの通産省の基本線というものを貫いて、業界というものを説得していくのか、それともここへストの減粍その他も入れて五千二百五十万トンというような線でいくのか、ここらあたりを一つ明白にしていただきたい。
  139. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 御承知のように、三十四年は四千八百三十万トンに生産をとどめてもらいたいということで、通産大臣の告示で業界の方に共同行為を指示したわけでございます。三十五年度はその指示をやめまして、一応業界はそれぞれの経済的判断、自主的な判断で炭を掘る、そういうことになっておりますために、政府の方がたとえば法的に幾ら掘れというようなことは三十五年度はいたさないつもりでおります。業界とわれわれとの見方には、お説の通りに若干の食い違いがございます。われわれといたしましては五千二百万トンというものは、現在ある程度合理的な価格で掘り得るマキシマムじゃなかろうか、そういうふうに考えておりますが、業界の方がそれよりも若干大きな生産をやりたい、——もちろんこれはストその他があれば当然いろいろ変わってくることだと思います。しかしいずれにいたしましても、もし現在言っております五千二百万トンあるいは五千二百五十万トンというようなところの差が、国内の貯炭を圧迫するというようなおそれがある場合は、これは下期の輸入エネルギーというものを外貨予算で組みます際に十分考慮いたします。また上期自体につきましても、御承知のように国内で五千二百万トンの炭が出るという前提で、輸入炭並びに輸入の油を組んでおります。しかし、それも上期も二回に分けて発券するということになっておりますから、実際の状況を見ながら所要の調整は加えていきたい。ただわれわれといたしましては、五千二百万トンというのが一番妥当な数字ではなかろうかと考えております。
  140. 滝井義高

    滝井委員 政府が無利子の合理化資金を出して、石炭鉱業の近代化を推進しようということを政策として打ち出したからには、ある程度業者と政府の方の専門家とが討議をして、その線が出たならば、業界、政府一体の形で進んでいかないと、政府は五千二百万トン、業界は五千二百五十万トン、わずかに五十万トンでございますけれども、これは、今のようなときには非常に大きな影響を及ぼすわけです。私はこういう点は、やはり池田通産大臣が政治力を発揮されて一体の形をとってもらわなければならぬのではないかという感じがするのですが、この点どうですか。どうも局長の答弁では私満足いかないのです。
  141. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知通り石炭の生産の数字は年度初めになかなかきめられないのが実情でございます。お話しの通りに、業界と政府とが意見一致した格好をとることが石炭合理化に必要なんでございます。秋ごろまでには私はこれをきめていきたい。私の聞いているところでは、昭和三十四年、四千八百三十万トンと申しましたが、実際は四千七百八十万トンしか掘れなかったということを聞いておるわけでございます。いろいろ三十四年度の実績また三十五年度の見通し等々、生産目標をきめる場合におきましてのいろんなファクターがございますので、そういうものを検討しながらお話しの通り最後の決定は業界と政府の方で一致した点で進めたいと思っております。
  142. 滝井義高

    滝井委員 ぜひそうしていただきたいと思うのです。私はどうしてそういうことを申し上げるかと言いますと、やはり五千二百万トン掘る場合と五千二百五十万トン掘る場合とでは、そこに働く労働力の問題に重要な影響を及ぼしてくるわけです。従って合理化その他の問題が出た場合に、労働省の雇用計画等についても影響が非常に大きく及んでくるのではないかと思いますので、ぜひ一つ業界と話して適時適切な措置をとっていただくことを要望しておきたいのです。  次は、多賀谷君も触れておりましたが、三十八年までに千二百円の価格の引き下げをやる場合に、その千二百円というのは山元の価格で千二百円なのか、積み出し港で千二百円なのか、消費地に着いて千二百円なのか、いろいろのところにおける千二百円があると思うのです。政府としては一体引き下げの時点はどの時点で千二百円というのか。
  143. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 先ほど午前中にも申し上げましたが、大体主要な市場における価格、特に京浜地区についてはぜひ千二百円下げなければならない。もし今すぐ千二百円下がるということになりますれば、当然阪神というものはこれよりも一そう安くなるということになり得るわけでございますが、実際問題といたしましては、できるだけ有利なところに流れていくということになりますと、毎年三百円とか二百円とかいうような幅で下がっていくということになりますと、大体阪神阪神なりに今よりはある程度下がる、東京東京で千二百円下がるということに実際問題としてはならざるを得ない。われわれが千二百円と言っておりますのは、午前にも申し上げましたように、一応三市場価格で千二百円程度、もっと具体的に言えば東京だけが千二百円下がるということになれば、一応計算上は競争できることになるわけでございますが、従来の炭価の動きを見ましても、やはり東京で下がる場合には山元の方もそれとほぼ並行して下がるといったような格好で、今まで動いてきておりますので、東京が千二百円下がったというときに、はたしてほかの地域では五百円しか下がらぬでいいのかどうかということについては、若干問題もあろうかと思います。少なくとも三市場あたりはやはりほぼ同じようなぐらい下がることを目標に、合理化を進めていけば間違いないようだと考えて、われわれといたしましては三市場で千二百円ぐらい下がるということを、当面の合理化目標と考えております。
  144. 滝井義高

    滝井委員 過去の実績で、三十三年から三十四年等に二百五十円とか二百円の炭価の引き下げが現実にあった場合の二百円とか二百円の炭価の引き下げというのは、三つの重要な市場における値下がりを言っておったのですか、それともこれは全国の平均だったのですか。
  145. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 そのときどきによって違いますが、大体全国ほとんど一本でやっております。場合によっては少し不況のときに山元で下げ過ぎたから、今度は山元の下げ方を少なくするとか、あるいは逆に山元の方を少し率を多くして下げるとかいったことは若干ございますが、原則としては九州も東京もということでほとんど一本、二百円あるいは三百円というもので上げ下げいたしております。
  146. 滝井義高

    滝井委員 そういたしますと、今度だけは三つの重要な市場で千二百円下げるということになりますと、他の関係一体どうなりますか、三つの重要な市場以外の場所における値段というものは一体どういうことになるのでしょうか。
  147. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 一応われわれが特別貸付金というものを考えましたときには、山元に還元して、たとえば千二百円引くという場合には、カロリー当り九十七銭から七十八銭ということになるわけでございますが、この七十八銭を山元におろした場合には五十六銭、五十六銭ででき上がる山といったようなことで、約三千七百五十万トンばかりの山は合格ラインになるといったようないろいろな試算もしてみたわけでございます。ですから、その通りいけばどこの市場でも一応千二百円下がり得るということになるわけでございますが、何と申しましても千二百円というのは相当大きな数字でございます。ことに運賃が、先ほど申し上げましたように、東京——北海道間で千七百円、阪神——東京間で千三百円、阪神——九州間で約八百円、東京——九州間で千三百円というふうに、非常に大きな部門運賃が占めておりますために、場合によれば、東京市場に比べると、広島とかあるいは四国とかいったようなところは、九州の炭鉱地帯に近いから、そんなに下がらぬでも太刀打ちできるということも考えられます。あるいは東北あたりは、これは場所にもよりますが、北海道あたりからもう少し安いものが入るということも考えられる。御承知通り千二百円と申しますのは、業界が一応考えておりました八百円プラスいろいろな面の流通のむだの排除、あるいは三十九年度以降に完成を予定しておりました山を繰り上げて促進、造成するといったようなことを積み上げて、大体千二百円でできるであろうという一応の試算をいたしたのでございますので、大体ほかの市場は千二百円まで下げなくて済むということであれば、それだけ石炭会社といたしましては、さらに将来のために思い切った合理化その他が容易にできるというような態勢になる。もし全部の市場が千二百円下げなければならないというのであれば、苦しいけれども、大体今の計画をやっていけば一応つじつまは合うというような計算だというようなことで、われわれといたしましては今後実際に各山の合理化が具体的にどう進むかということを勘案しながら、ただ一応権威のある方々にお願いして作っていただいた数字ではありますか、今後とも基本部会等で絶えず諸エネルギーとの関係を注視しながら、所要の研究あるいは所要の措置の検討というものを進めていきたいと考えております。
  148. 滝井義高

    滝井委員 御説明のように千二百円という炭価の引き下げを三十八年までにやるという強い決意というものは、業界が初め八百円程度だと言っておったのを四百円こえるということになったわけです。その四百円は行政的な政府のてこ入れで四百円と言っておったのですが、実際に当初考えておった政府のてこ入れというものが二十一億四千万円程度になって、必ずしも業界が期待しておったほど大きくはなかったわけです。従って、そうだとすると三十八年までに合理化をやるというようなことでは、とても千二百円の値下げというものはできない。それは合理化をやはり早めなければいけないという空気が、業界に非常に濃厚になってきております。特に大牟田におけるいわゆる第二組合の出現、そして中労委のあっせん、その他の状態から見て、経営者の首切りの意欲というものは非常に積極的になってきたわけです。  そこで私はお尋ねをいたしたいのは、通産省としては一体人員整理の三十四年の実績というものをどう見ておるかということ、そして当面三十五年度の見通し——私は当初の見通しとは三十五年の見通しは違ってきていると思うのです。と申しますのは、私の知っておる限りでも、たとえば明治鉱業にしても、三菱の筑豊五山にしても、三十六年、三十七年に閉山するといっておった山が繰り上げて、今年中に閉山するという状態が出てき始めたわけです。これは明らかにその価格の引き下げが当初期待しておったよりか大幅に引き下げをやらなければならぬという情勢が出てきた。そうしてしかも労働情勢というものが、経営者側に有利に展開してきたという客観的な情勢を背景にして非常に強く出てきているのです。そこで三十四年の実績は一体どういう実績なのか、それから三十五年の大手、中小の人員整理の見通しですね、一体どういう情勢にあなた方は見ておるのか、これを一つお示しを願いたい。
  149. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 まだ三月末までの年度の関係は統計ができておらないのでございますが、大体三十四年度の整理人員というものを、二万七千人程度というふうにこの前の国会でも申し上げたと思っております。大体歴年で申しますと、三十四歴年で二万七千八百名ばかりやめております。これは大体われわれが年度として考えた数字とほぼ同じでございます。ただその後一、二、三という月を見てみますと、中小関係の減り方が、われわれが考えておりましたよりも、だいぶ少ない減り方を示しておりますので、多分年度といたしましては二万六千人程度の減少ということになろうかと考えております。  それから三十五年度につきましては、この前労働省と連絡して、三十五年度の対策を講ずる数字としては、三十四年度当初に考えておりましたものと同じく横ばいということで、大体二万七千人が新たに石炭業界から職を失って、他の方面に職を求めるということを前提といたしまして、所要の予算措置を講じております。
  150. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三十四年に三十五年の見通しを立てた二万七千人程度というものは大体狂いはないだろう、こういうことなんですが、実は私が気になるのは、今あなたがちょっとお触れになった一、二、三月に、中小のいわゆる閉山というものが足踏みをし始めているというところなんです。これは冒頭に私がお尋ねしました、幾分石炭事情が変わってきた。それは通産大臣も八百万トンくらいの貯炭があると言っておったのが、七百万トンくらいに貯炭さえも減るという情勢は、これは中小が足踏みをするという情勢の理由にもなるわけです。ところが実際に人員整理が進行しておるのは大手なんですね。大手はむしろ逆に非常にスピードを早めてきつつある。それは何といっても八百円から千二百円と合理化の水準を引き上げなければならぬから、ぐずくずして長くかかえておったのでは企業の赤字が増加してくるわけです。だから早くやらなければいかぬという形が出てきておると思います。そういう形か出ても、依然として二十五年度の二万七千人という数字は大体狂いがないだろう、こういう御答弁と了解して差しつかえございませんか。
  151. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 確かに今中小の一部にまた人間を集めて、そうしてとにかく人力で掘ろうといったような傾向があることは御指摘の通りだと存じます。しかし一月の末から三月の中旬までの実質的に一カ月半の間、大手、中小を合わせて二千五百人程度というものが減っております。われわれは中小の団体であります連合会に対しましても、石炭のおかれている客観情勢というものは、たまたま貯炭の数量が減ったといって決して好転しておるわけではないので、ここでいい気になって人間をふやして増産態勢をとるということになると、今後ますます苦しくなるからということで、しばしば警告をしてきたわけでございまして、失業者の数がたくさん出てくるということをもちろん望む者ではございませんが、少なくとも政府の受け入れ対策といたしましては、やはり三十四年度と同程度の人間が失業しても、政府としては受け入れるという心がまえで、あらゆる対策を進めて参りたい、こう考えておりますので、今のところ二万七千人を景気がよくなったからといって減らすといった考えは持っておりません。
  152. 滝井義高

    滝井委員 二万七千人、大体政府はある程度確信のあるお見通しのようでございますので、一応そういう御説明を胸におさめておきます。  次は近代化に必要な設備資金の貸付の基準ですね、法律でいえば三十六条に書いてありますが、この基準は一体どういう基準でおやりになるのか、それを少し御説明願いたいと思います。
  153. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは三十六条の三に四項に分けて書いてございますが、まずわれわれといたしましては人的条件と申しますか、三十六条の三の第一項にございますように、工事をしたいからといって特別貸付金の借り入れを申し込む方が、合理化のための設備の設置あるいは運営を遂行するだけの技術的なあるいは経理的な基礎を有するということ、これが当然第一の条件になろうかと思いますし、またそれらのための適切な工事計画あるいは事業計画というものをはっきりさして申請をしているかどうかということを審査しなければならない。そういう技術的、経理的な能力、計画というものを全部総合いたしまして、まず金を貸す目的が十分に達成されるというふうに確信するものでなければ、貴重な国民の金でございますので貸し付けるわけにいかない、こう考えております。  こういう一般的な基準のほかに、たとえば中小炭鉱の機械化というものにつきましては、中小炭鉱でございますので、中小炭鉱に限るということにして、大炭鉱は除外例で別になる、貸さないといったような運用の基準を通産省令その他ではっきりさせたいと考えております。  それから物理的には、今のは人的な条件でございますが、第二項にありますように、石炭坑の近代化に必要な設備であって通産省令で定めるということで、大体が通産省令になっておりますが、これでまず縦坑とか高能率のベルト斜坑、それにつながる主要坑道あるいは主要の巻き上げ機械、いわゆる大型の近代化工事につきましてはそういったようなものを対象として、選炭機械あるいは坑内の一般の運搬機械といったようなものは、わざわざ政府の金を借りなくても一般的な借入金、あるいは自己調達資金で、自己の内部留保の金でやるようにということを考えております。  それから近く新坑口の開設の基準につきましても、現在の基準で妥当かどうかということを再検討の上で、必要があれば新しい基準を作りたいと思っておりますが、そういう場合には当然新しい坑口開設の申請が出た場合に、そこできめられている一定の基準に達するものに限るということは申し上げるまでもない基準であろうかと考えております。
  154. 滝井義高

    滝井委員 あとでけっこうですが、通産省令で定める基準に該当するものということが三十六条の三の冒頭にありますね。こういうのをもう少し具体的に資料で出してくれませんか。と申しますのは、たとえばこの山は有望な山だというのでボーリングをやって、さて坑口を開いてやってみたところが、中の方で石炭が焼けてしまっておって、てんで問題にならないということがざらでしょう。それで業者側から出た資料だけでお宅の方でよろしかろうということでは、これは問題があると思うのです。それでは通産省の方に何かボーリングを持ってそれぞれ調査する機関があるかというとこれはなかなかないわけです。公平に政策を行なう上からいっても、何かやはりそこらあたりにわれわれの納得のいくような通産省令で定める基準というようなものをお示しいただきたいと思うのです。三十六条の三だけを読んでみてもちょっとわかりかねるのです。今の御説明だけでは、われわれもしろうとでございますからちとわかりかねるところがあるのです。ですから貸すのはこういうものだ。それから石炭の鉱量、こういうものはさいぜん多賀谷君との間に、買い上げの場合の五年間採炭量がなくてはならぬとかいうお話もありました。これは実際あるかないかということは、ボーリングをしておるわけではないし、福岡なんというところは通産局か焼けまして地図がないわけです。ある人がここは大手の山の新床だ、掘ったことがないんだということで租鉱権をもらったわけです。掘ってみたところが全部空洞で石炭がないというところがあるのです。大手から払い下げてもらった鉱区の中にもそんなのがある。昔掘っておる。ところが地図が焼けてしまっておるからわからないのです。そういう場合があるわけですから、莫大な何十億という金をつぎ込んで縦坑を掘って、そして政府の金を貸したけれども、どうも炭はだめだったということでは困ると思うのです。貸すについては何かきちんとした基準をきめて、その基準というものは通産省が十分監督ができて実施できるというような姿のものでなくてはならぬと思うのです。時間の関係がありますから、何かそういう基準を一つ出していただけますか。
  155. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 第一項の方は人的基準でございますから、先ほど申し上げましたような本人に経理的、技術的な能力があるか、あるいは具体的な計画があるかどうかといったようなことになります。第二項の方は、今の鉱量は、近代化については少なくとも二十年の鉱量ということを予定いたしております。それから中小炭鉱の機械化というのは簡単な機械でございます。これは大体今の腹案では六、七年の鉱量があるなら一応いいのじゃないかというふうにも考えております。それから生産能率、生産費というものはこれは一応最低の基準をきめるわけでございますので、これは坑口開設の基準と一致させたい、そういうふうに思っております。いずれにいたしましても、具体的な貸付申請が出て参りました際に、一件々々審査してきめるわけでございますので、省令には今申し上げた程度のことを書くにとどめることになるのではないかと思いますが、まだ省令につきましてはお目にかけるといったようなところまで案を進めておりませんので、これはできるだけ早くわれわれとしても原案を作りたい、こう思っておるわけですが、おもな内容は今申し上げたようなことを省令に書き、それを運用する場合には一件々々具体的な一番能率的なものから貸し付けるということで運用して参りたいと思います。
  156. 滝井義高

    滝井委員 こういう場合は考えられませんか。たとえば中小の山で先進ボーリングや機械を持たない。これを十台なら十台通産省の方で保有をしておって、これを中小の山に共同利用で貸してやる。現在中小の山で多く保安上の問題で、あなたの方からおきゅうをすえられるというのは、先進ボーリングをやってちょっと掘りなさいよと言われておっても、機械がなかったりなんかしてそれをやらない。だから古洞に突き当たってだっと水が出てくるという場合がある。これは島廻り共同石炭株式会社と申しますか、あそこの社長か所長あたりが、われわれがかつて炭鉱の調査に行ったら、それを言っておった。政府はやはりこれをやるべきだ。これはわずかしか金がかからない。先進ボーリングのポータブルは五百万か千万あったらできると思う。これは福岡の通産局なら通産局の所管下に分散をして二、三台ずつ置いておいて使用料を取ったらいいと思う。そうすると中小の山がこれを使えば非常に災害が起こらないのじゃないかという感じがするのです。炭鉱の専門家もこれを必要だということを言っておる。われわれはこの前帰ってきて、社会労働委員会でそういう質問を私もしましたし、同僚の五島君、自民党の大坪君もこれをやるべきだという主張をしておった。自分の方から政策審議会なり政調にそれを申し出て、ぜひそうさせたいと言っておったが、それがまた実現をしないのです。こういう共同利用的な、どうせ輸送部門あと質問をしますが、共同利用的なものをやるのですから、生産部面も共同利用的なものをこの際やっていいのじゃないかという感じが私はするのですが、こういう点、通産大臣はどうお考えになっているか。
  157. 池田勇人

    池田国務大臣 今ボーリングの機械をやっていることがいいか悪いか、これはまだ研究を要しますが、石炭鉱業自体の開発につきましては、何も流通面ばかりでなく、できましたら総合的にやることがけっこうだと思います。しかし今、それではどんな問題があるかということになりますと、ただいまのところは考えておりません。
  158. 滝井義高

    滝井委員 九州で災害が起こってわれわれが調査に参ったときも、そういう意見を業者の専門家の側から言っておりました。そして中小の方は今なお島回りあたりに借りに来るらしいのです。そうしますと、他人のものを借るというのはなかなかやりにくいものですから、通産局の方にそういうものを置いて適当なところに配置しておけば、これは私は非常に有効じゃないかと思うのです。そういう点、何か一つ考えていただきたいと思います。  次には石炭流通の合理化のための貸付で設備が多数の石炭業者に利用されるものであって、合理化の効果の大きなものを対象とするということを、提案理由の説明の中に書いておるのですね。これはさいぜんお話しになっておりました石炭の混炭施設ですか。
  159. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 たとえば具体的には三十五年度われわれが計画の対象に考えておりますのは、お説の通り混炭施設でございます。
  160. 滝井義高

    滝井委員 それ以外に、運搬流通の過程で、多数の石炭業者が共同で利用するというようなものに、政府の方で今後お金をつぎ込むというようなものは何か考えておりませんか。
  161. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 たとえば石炭の専用船といったようなものも一応対象になり得るわけでございますが、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、海運業界との関連といったようなもの等もございますので、さしあたりの対象からははずしております。ただいろいろ共同の選炭設備でありますとか、あるいは混炭までいかないまでも、共同で貯炭場を持つとかいったようなことで、できるだけお互いのむだを省いて、まとまった面積なりあるいはまとまった数量を、合理的に取り扱うということをやることによって、コストそのものを下げ得ると考えられるものは、逐次取り上げてその対象に研究していきたいと考えておりますが、何分にも、ことしはまだ金が一億四千万円程度で試験的に発足したばかりでございますので、手固く一カ所から効果を上げるように、重点的にやっていきたいというふうに、目下のところは考えております。
  162. 滝井義高

    滝井委員 別にまだ新しい共同利用施設はないようでございますから次に移りますが、非能率炭鉱の買い上げを四百三十万トンにしておるわけですね。そうしますと今度納付金を三十六年八月末まで納めることになっておったのを四十二年まで延ばすことになるわけです。その場合における納付金の総額、つまり四十二年末までに総額は一体幾らになる見積もりにしておるのか。
  163. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 たしか九十一億の収入を見込んでいるはずでございます。正確には、今ちょっと資料を見ております。——納付金といたしましては、今申し上げましたように九十一億というものを、三十四年度から四十二年度までに考えております。
  164. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは出炭ベースとも関連してくるわけですが、その場合、その出炭ベースはどういう工合に見て九十一億円になるのですか。
  165. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これはちょっとここで、算出の根拠を持ってきておりませんでしたが、逆算すればこれは出るわけでございます。大体五千万から五千五百万トンというところで、毎年の数字をはじきましたが、今ここで、資料を持って参りませんので、一つ逆算いたしますから、ちょっと待っていただきたいと思います。
  166. 滝井義高

    滝井委員 逆算するまで別の質問をしますが、炭鉱離職者の援護会の経費の分担の関係は、ことしは多分六億円事業団の方から援護会に出したわけですね。六億円出して、国が六億円出して十二億円、これが将来は一体どういうことになるのかという点です。
  167. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 大体援護会でやります援護事業を昨年の秋から三年半というふうに一応考えまして、総額二十一億円を事業団から援護会に交付するということで資金計画を立てております。
  168. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと毎年六億ずつ出す、こういうことですね。
  169. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 そうです。
  170. 滝井義高

    滝井委員 実は一体なぜ政府、事業団が援護会に金を出さなければならないかということですが、これは団体も違いますし、その使命も違っていると思うのです。この前、通産大臣は、私には、できるだけこれは一般会計の方から出して事業団の方からはやめたいという御主張をされたわけですが、これはなかなか大蔵当局その他の意向が強くて、その実現もできなかったのではないかと思うのですけれども、どうも私は、炭鉱離職者の援護の問題を、事業団、石炭鉱業合理化臨時措置法の第一条の目的からいっても、国民経済の健全な発展に寄与するということはあるけれども、他の通産省関係法律のように民生安定ということは、この法律には書いてないのですよ。他の通産省関係法律は、一人々々のものにやるときは民生安定ということが必ず入っていますよ。そこでこの法律の目的からいっても、この合理化で集めた金を援護会に持っていくというのは、どうも筋違いのような感じがする。筋違いでも、多数であれば何でもやれる。男を女にし、女を男にし、東から上がる太陽を西から上げるということはできないかもしれませんが、あとはできるでしょうが、ちょっと無理なような気がするのです。その点が一つと、それから二十一億の金を事業団の方から援護会の方に回したあとにおける買い上げの問題ですね。さいぜんから多賀谷君もついておりましたが、私も実はここを少し質問したいところだったのです。千四十万トンの買い上げを将来やっていく、千四十万トンを廃山にしていく、当面は四百三十万プラス二百万トンだとおっしゃるけれども、先になったらやはり相当買い上げも出てくると思うのです。大手からも出てくると思うのです。大手の意向も私聞いてみたのですが、大手もうまく閉山がいけば買い上げてもらいたいという意向は相当強いのです。そうしますと、この四十二年までのものですから、三十八年までに千四十万トンが閉山をするという形になると・四十年はずっと先までとるわけですから、だからこの資金繰りと閉山の問題との関連もやはり出てくるわけです。この資金の関係と、それから事業団から援護会に金を出す法律上の根拠、この二点について御説明願いたい。
  171. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 まず資金の関係でございますが、われわれは今後二百八十八万トン買うということで、五十八億円の買収費と、それから先ほど申し上げました援護会に二十一億の交付金、それから離職金を御承知のように労務者に払っておりますが、それを約四億円、そして金は四十三年の三月までぼつぼつ入ってくる、払う方は三十七年の半ばまでに払うという関係になりますために、その間いろいろ借入金でつないだりしなければなりませんので、資金繰りとしては借入金の返済六十五億、その他いろいろな管理経費その他で二十九億ということで、一応支出の合計は三十四年から四十二年までの九年間で百七十七億ということになります。これに対しまして収入の方は三十三年度から四年度に繰り越しました繰越金が七億円、それに先ほど申し上げました納付金が九十一億円、それから国庫補助金、これはことしは四億円でございますが、これが大体十一億円それから借入金を六十億いたします。これは資金運用部から借りる。その他いろいろな資材を売り払ったりする雑収入が十億ございまして、収入は百七十九億、差し引き大体二億円程度が、事業団が解散してすっかり清算したときに残るという計算で経理を進めております。  それからなぜ石炭業界は金を出すんだということにつきましては、これはこの前の離職者臨時措置法を御審議願います際にもいろいろ御質問の出た点だと思いますが、これは結局同じ業界の連帯思想というようなことで、石炭業界で今まで一緒に仕事をしてきたという人間が、まだ掘れば掘れるにもかかわらず、石炭業界全体のためにやめるといったようなことをもにらみ合わせまして、同業界が相互扶助をして、ここで働いておった人々の跡始末をできるだけ円満につけてやろうといった業界の連帯思想を考慮いたしまして、石炭業界の方にも金を出していただきたいということを要請しましたら、これは結局石炭業界大小を問わず、きん然としてこれに応じていただいたということであります。政府の方の補助金、これは昨年、今年と二分の一ずつになっておりますが、われわれといたしましては、できるならこれはもっと出していただきたいと思っていますが、今のところの資金繰りから申しますと、大体先ほど申し上げたようなところで、うまくいけば二億円程度の金が、予定を相当済まして残る、大体円滑に遂行し得るのではないかと思っております。
  172. 滝井義高

    滝井委員 よく収支はわかりました。それならば、この目的ですね、こういう法律の一部を改正する法律案をお出しになるときですから、そういうようにはっきりと書くべきだと思うのです。援護会の仕事をやるのに、金を出せるようにこれをやるべきだと思うのです。他の民衆に一つ一つ金を出す方は、みんな民生安定という字が入っております。私ちょっと調べてみたのですが、たとえば臨時石炭鉱害復旧法でも、「この法律は、国土の有効な利用及び保全並びに民生の安定を図り、」こういうように入っておるのです。この法律は民生安定が入らずに、国民経済という非常に大きな観点からしておるからいいのかもしれないけれども法律を改正するときですから、むしろそういうことを入れてお出しになるならば堂々とお出しになる方がいいという感じがするのです。  次は現在の援護会の業務開始後の情勢というものは、一体どういうような情勢になっておるのか。このごろまで職業訓練をやる訓練手当がまだ来ないんじゃ、一体これはどうしたことだろうかということを聞いてみたところが、何でも通産省と労働省が、人間の配分の問題でなかなかうまくいかぬものだから、事務の開始がおくれておるんじゃというようなうわさが九州にあったのです。まさかそんなうわさはほんとうだとは思いませんでしたが、業務の開始後の情勢、今武藤君から、職員の出身別に何か出せと言ったが、私はそういうことより、現在の業務開始後の情勢というものはどうなっておるのか、それだけを聞きたい。これは労働省の方が詳しいと思いますけれども、大体これは共管ですから……。
  173. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 あるいはあとから職安局長が見えれば、私の答えの補足説明があると思いますが、役所間でごたごたがあったというようなことは、私の知っておる限りはほとんどございません。業界出身の理事のうち二人は石炭業界の出身の方、一人は官界出身、労働省の地方の局長をされたという方が一人入っておられますが、大体業界出身の理事長のもとで、こういう業界のことを非常に詳しい理事の方が、現地並びに東京に一人ずつおられて、采配を振っておられますので、この機関ができますと、本来役所だけでは不十分な点はこれから追い追い実力を発揮されるものと思っております。今まで援護会に移住をしたいといって来た方が、三月二十六日の速報では三千四十四人、それから訓練について申し入れをなさった方が三百十二人、その他生業資金やいろいろなことで相談にお見えになった方、あわせて相談を受けた件数か三千九百七十七人、そういうふうに承っております。  これに対しまして、現実に移住資金が出ましたのは三千四十四人のうち、これは発足早々でまだ十分手が回らなかったということから非常におくれておりまして、その日までにまだ二百六十名しか現実に金を出すというところまでの決定に至っておりませんが、これは最近になって、ようやく軌道に乗ってきたというふうに労働省からも連絡を受けております。今後は円滑に進むものと考えております。
  174. 滝井義高

    滝井委員 陣容はどのくらいの陣容に今なっておるのですか。
  175. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 理事長以下九十八名が定員で、そのほかに二百名の協力員というものを置くということになっておりまして、職員の方の九十八名はこれはそっくり埋まっておるはずでございます。
  176. 滝井義高

    滝井委員 その協力員というのは……。
  177. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 協力員の方は、たとえば地方の民生保護をやっておられる民生委員の方とか、その他労務者の生活の相談あるいはいろいろな転職についての相談というものに一番適したという方々を約半分、それから一般の職員の補助といったような方々で約半分というようなことで、それぞれ百名くらいずつの方をお願いしたいということで、まだこちらの方は必ずしも全部人間は埋まっておらない。目下いろいろなあれで機構整備中だというふうに承っております。
  178. 滝井義高

    滝井委員 次は、この事業団の貸付業務の執行に必要な費用に充てるために、近代化の金を借りようとする人から手数料を取りますね。これは今御説明になった支出百七十七億と収入の百七十九億の中にどの程度に入っているのですか。そうして手数料というのはどういう割合でおとりになるのですか。
  179. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは先ほどの百七十九億の収入の中には一銭も入っておりません。大体これは全業界から徴収する金でございます。貸付金の方は一部の者だけが貸付を受けるということになりますので、全体から集めた金でその事務費を見るということは、やや当を失するのではないかと考えられますので、借りる人間が、ちょうど若いろいろな切符というものがありました時代に、割当を受けるために申請手数料あるいは割当手数料というような制度があったわけでございますが、一部の方だけがこの恩典に浴するわけでございますので、大体そういったような申請手数料と割当手数料とこの二つでいったらいいのじゃないか、そう考えております。しかし永久にそのままでいくかどうかということにつきましては、まだはっきりきまったわけではございませんで、場合によりましては別途予算で見るということの方がより合理的じゃないかということになれば、そういうことも検討してみたいと思っておりますが、少なくとも初年度は申請手数料、割当手数料、この両方で必要な経費をまかなっていきたい。大体二千五百万円くらいの事務経費が一応要るのじゃなかろうか、こう考えておりますが、できるだけ陣容を簡素化いたしまして、それでやりくりしていきたいというふうに考えております。
  180. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、私が冒頭に御質問を申し上げました省令で定める基準がありますね。その基準によって近代化の貸付をやっていく。そうするとその場合に、その事務的な諸経費というものが二千五百万円要る。その二千五百万円に見合う分を貸付の手数料として一年にとるということですか。
  181. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 三十五年についてはそういうことでございます。
  182. 滝井義高

    滝井委員 二千五百万円程度の手数料をとることがわかりましたので、それでけっこうです。  次は、第一条の目的で、「未開発炭田の急速かつ計画的な開発を促進する」ということがあるわけです。「この未開発炭田の急速かつ計画的な開発を促進する」ということは、予算的に十八億四千万円の近代化の金を大手に貸す、中小には一億四千万円の機械設備の金を貸そうということをさしているのですか。
  183. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 今御審議をお願いしております特別貸付金等の新しい構想は、未開発地域というものではございませんで、むしろ主力は既開発で、大体炭量その他もはっきりわかっておる。そこを早急に開発すれば石炭全体として非常に能率的な採炭ができてコストが安くなるというものを主として考えております。未開発の方は大体一年間に四千万円程度の予算を今までもいただき、三十五年度も大体四千万円ということになっておりまして、今までに有明の北部とそれから釧路地区のボーリング等を進めたわけでございますが、三十五年度は新たに石狩北部も未開発炭田地域のボーリングの対象にしたい、こう思っております。それで一応ボーリングして、ある程度の結果かわかりましたならば、そこで通産大臣が未開発炭田地域として指定するということになっておりまして、それからその地域の最も合理的な開発は、どういうような総合的な計画のもとにやったらいいかという計画が立てられるということになりますので、場合によっては、早いものは、現在はまだ未開発だけれども、たとえばもうすでにちょうどボーリングが打ち終わったということで計画が早く立つというものについては、今後特別貸付金の対象にならぬとも限りませんけれども、しかし主力は現在までにすでにわかっている既開発地域を早急に開発する方向に充てられるということになろうかと考えます。
  184. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この一条は前からあるわけですが、「未開発炭田の急速かつ計画的な開発」ということになると、財政的には四千万円以外には、今までは結局何もやらなかったのですね。
  185. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 毎年四千万円ずつでボーリングをやりまして、はたしてどの程度計画を立てて開発するのが一番いいかというデータの収集をやってきたわけございまして、四千万円は政府が出した金でございまして、実は政府がまずそこに誘導的にボーリングをやるということになりますと、その付近の鉱業権者がそれでは自分らも一緒になにしましょうということで、政府の投資する金の十倍くらいの金を現実には出しまして、政府と協力してボーリング等をやるということでございますので、この二年ばかり前に項目を追加していただきまして以来、未開発炭田の開発ということにつきましては相当の金が出され、また今までのところは十分それに相応する調査結果というものが着々集められている、そういうふうに考えられます。
  186. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと五千五百万トンベースでいった場合に、三十八年くらいになりますと、新鉱が二百五十万トンないし三百万トン出てくる。これは今言った四千万円程度つぎ込んでボーリングその他をやっている有明海とか釧路の北部、それから三十五年度に出てくる石狩、こういうようなものとの関連はどういうことになるのですか。
  187. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 この末開発炭田の中で確実にと申しますか、一番可能性の多いと思われるのは有明関係でございますが、有明関係も大体三十八年までに着手をし、ことに出炭というような格好にこぎつけられるというものは、これは政府が未開発炭田地域としてボーリングした地域よりも、もう少し南のすでにわかっておった地域がおもでございますが、未開発炭田地域それ自体につきましては、この特別貸付金というものはわれわれといたしましては、一応三十八年に間に合わせるようにということでやってきましたが、しかし石炭は三十八年で合理化すればそれでいいというわけではございませんで、その後さらにいろいろ合理化も進め、新しい炭田の総合開発もやっていかなければならないと思われますので、その際に未開発炭田地域としていろいろ調査しておりますデータというものを十二分に活用したいと思っております。
  188. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、直接二百五十万ないし三百万トンは関係がないわけですね。
  189. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 関係ございません。
  190. 滝井義高

    滝井委員 次に、事業団の資本金は二十一億四千万円全額政府出資である。そうすると政府が必要ありと認めたときは、追加出資をすることがあるかどうかということです。一体このような追加出資をする場合というのはどういう場合かという点です。これをお答え願いたいと思う。
  191. 池田勇人

    池田国務大臣 二十一億というものは三十五年度だけでございます。来年度これを続けてやれば、その出資がふえていくわけでございます。
  192. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、年度の途中で追加出資をするというようなことはないわけですね。
  193. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまのところ補正予算でこれをやらなければならぬという問題は起こらないと思います。
  194. 滝井義高

    滝井委員 これは保守党の方ではなかなかやりにくい問題じゃないかと思いますけれども一つ考え方としては、現在整備事業団というものか非常に莫大な鉱区を持ったわけです。これが樋詰さんの言う通り、なお今後五年掘っても大丈夫だという鉱区である。ところによっては深部開発をやれば石炭が相当新床で残っているところがある。今度事業団がお金を貸す、鉱区の買い上げもやる、こういう形になったわけです。従って整備事業団はお金も持っておれば鉱区も持っておる、こういう形が出てきたわけです。そして、石狩、有明、その他において新鉱の開発をどんどんやるということになりますと、むしろ事業団として、貸付だけでなくて、自分から新鉱の開発をやるというようなことが考えられないかどうかということです。モデル開発とでも申しますか、と申しますのは、事業団には各炭鉱からみんなヴェテランが入ってきておるわけです。今度は貸付をやるとなると、炭鉱の技術的な専門家が事業団にこないと、貸付がなかなかできないわけです。変な貸付をやるわけにいかぬですから。そうしますと、これはいわゆる炭鉱を経営する能力を同時に備えることになるわけです。で、政府は鉱区は持ったは、お金を貸す権限を整備事業団に与えたわけですから、鉱区を持たせ、金を貸す権限を与えたのですか、ここらあたりで新しい開発という一つのモデル的な形で、今後の炭鉱の賃金を決定する上からいっても、いろいろやはり私は役立つのじゃないかと思うのです。今までは志免というのがありましたが、非常に老朽になってきましたので、なかなか問題があると思いますが、この新しい事業団の形態で新鉱を開発をするというような、もう一歩進んだ考え方というものはなし得ないものかどうかということです。これは通産大臣に一つ……。
  195. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまのところ、そういうことは考えておりません。
  196. 滝井義高

    滝井委員 これから少し事業団の内部的ないろいろの仕事の問題になりますので、少しこまかくなりますが、詳しく御説明願いたいと思うのです。  現在整備事業団は相当の炭鉱を買い上げたわけです。四百三十万トンのうち八十万トンをまだ残して、三百五、六十万トンの買い上げが終わっておるわけです。そうしますと、現在買い上げた施設、建物、鉱区等の管理状況というものはどうなっておるかということです。
  197. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 どういう御質問か、私よく意味がわからなかったのでございますが、一応買い上げました鉱区内にありますいろいろな施設というものにつきましては、管理人を置いて管理さしているということでございます。
  198. 滝井義高

    滝井委員 その管理がうまくいっておるかどうか。たとえば、買い上げた鉱区が盗掘をされるというようなことはないのかどうか、買い上げた機械その他が盗難にかかって紛失をするというようなことはないのかどうかということなんです。  それから炭住その他は、現実に一般的なお話し合いでしばらく労働者を置いておこう、むちゃに追い出すことはしないというようなこともあっておるわけですね。ところが、労務者の住んでいないところもあるはずなんですね。そうすると、これは大事な財産が風雨にさらされている。人の住まない家なんというのは実に荒れ方が早いですね。そういう状態はないのかどうかという質問なんです。具体的な御質問をすれば。
  199. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは絶無とは私ども、あるいは申し上げられないかと思いますが、しかし、たとえば、一番最後に御指摘になりました建物の件につきましても、これは事業団の方ではできるだけ早く処理したい、特に借地等に建っているものは早く取り払って、そうして地上借地権者に土地を返すということをやりたいし、また自分の持っておる土地にいたしましても、大体買手があれば売りますが、なかなか買ってもらえないようなものになれば、取りこわしてさら地にして処分するというようなことで、できるだけマイナスのかからないようにということで管理いたしておるはずでございますので、最近のように、やや炭況がよくなったというようなことから、若干ボタ山に炭をとりにくるというような人間が現われたりするというようなことは、今後は少し起ころうかと思いますが、少なくとも今まで管理しておる財産を非常に荒らされて困っておるといったような報告は、私はまだ受けておりません。
  200. 滝井義高

    滝井委員 次には少し具体的に入っていきますが、整備事業団が買収をした鉱区の主として鉱害の処理の問題についてお聞きをしたいと思うのです。買収をした鉱区で安定した鉱害だと思って買収をしてしまった。ところがあとから鉱害が出てきたときの処理は、一体具体的にどう行なわれておるかということです。
  201. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これはそのときまでに安定したというものであれば、前の権利者と事業団とか連帯責任という格好で負わざるを得ませんが、買収のときははっきりわからなかった、しかしそのあとでだんだん出てきたというようなものがあれば、実際問題として石炭鉱業整備事業団は、被害者に対しましては、やはり鉱業法上の賠償責任を負わざるを得ない、そういうふうに考えております。
  202. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、買収した鉱区の中で安定鉱害と思っておったが、そこに鉱害がでてきたときには、事業団が最終的に責任を負うていくということがはっきりしました。そうしますと、今度は整備事業団が炭鉱を買い上げる前に、その鉱業権者が打ち切り補償をしてしまった。そうして整備事業団が今度は買い上げたわけです。その打ち切り補償した分について再び鉱害がある。打ち切り補償しておったが見落としておった場合もあるだろうし、それから新しく買い上げた後に発生してくる場合もあるでしょうが、それも整備事業団が見ることになりますね。今の御説明では。
  203. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは打ち切った場合の打ち切りというものが、どういう形式で行なわれたかということにもよると思うのでございますが、少なくともそこにおる被害者が全部納得して、そうして全員判こをついて、これで私の方は文句は言いませんというような格好のときには、大体それで鉱害はなくなったものということで考えております。ただ一部にございますように、大部分の人はそれで手を打ったけれども、一部の方々は、初めからいろいろ問題があって反対しておったというようなものについては、これははたして打ち切り補償というものが完全に瑕疵なく行なわれたかどうかということについて、若干問題があるんじゃないかと思っておりますので、これにつきましても、一応そこの代表者が出てきて、そうして手を打った限りにおいては解決と見てもいいじゃないかとも考えられますが、実際問題としては、そのあたりに百パーセント総意が反映されたとも思われないというような点等も考えて、筋からいえばあまり出すべきものじゃないんじゃないか、こういうふうに考えられますけれども、その実際の具体的な事例によりまして若干の考慮すべき余地は残しておるというような運営をやっております。
  204. 滝井義高

    滝井委員 あとでもう少し具体的にそこに入りますが、不安定鉱害の高地の鉱害復旧です。これは全部臨鉱法にかからないために打ち切りになってくるわけです。そうしますと、この評価を一体どうするかということが、非常にこれはむずかしい問題があるわけです。結論的に言うと、不安定分を結局打ち切るという形になってくるわけです。それで私がさいぜん申したように、こういうところにあとから問題が出てくるわけです。従って、打ち切って救済をしたと思っておったんだが、あとになって問題が出た。これは買い上げは相互の話し合いのうちに行なわれるのですが、なかなか最終的にうまくいかない。とりあえず打ち切っていこうじゃないかということで、高いところの土地の家屋は打ち切る。そうすると、これは必ずあとで問題が出てくる、こういう場合があるわけです。こういう場合の指導は一体どうやられておるかということですがね。
  205. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 昨年の秋の末ごろから、あちこちで事業団の買い上げ鉱区の鉱害についてだいぶ紛争が起こっておるようであります。それを参考といたしまして、それ以後は、事業団が実際に買い上げ契約を締結する前に、できるだけ十分に調べて、そしてあとから問題が起こらぬようにということを確認した上で買うようにということで指導もいたしておりますし、事業団自体それでやっている、そう考えております。今までにすでに買ってしまったものというものにつきましては、先ほど申し上げましたように、完全に打ち切っているということであれば、これは必ずしも、年々補償といったようなものをあとから要求されたり、あるいは打ち切ったけれども、年々補償を打ち切っておきながら、またあとから復旧を要求されたりといった筋のものではないと考えられますけれども、現実に鉱業権者になったということを前提といたしまして、非常に不当と思われない限りは、事業団の方でも、ある程度被害者の立場を考えて、救済的な善後措置を講ずるということについて、これはケース・バイ・ケースで、そのときそのときの一つ一つの具体的な事情を勘案した上で処理するということをいたしております。
  206. 滝井義高

    滝井委員 この家屋の建て直しですね、現在鉱害地というのは、非常に問題が多いわけですが、特鉱のときは比較的家屋の建て直しというような点についても、割にできたわけです。ところが、臨鉱ではなかなか家屋の建て直しができない。効用回復程度でなかなかできないわけです。私は、この際この整備事業団ができて、これで炭鉱とお別れになるのですから、そこに炭鉱が閉鎖してしまうわけです。従って、当然この際政府は臨鉱法なりを改正をして、やはり今からやりかえようとする家屋の評価をきちっとやったならば、建てかえをやはり認めるべきじゃないかと思うのです。これは家屋を衛生的に改造をするという衛生上の見地からも、あるいはより合理的な家屋を建てるという国民経済の観点から考えても、民生安定の立場から考えても、そこらあたりはあまりしゃくし定木にいっちゃいかぬのじゃないかと思うのです。これを認めないところに、今鉱害地では非常にいろいろと問題が起こってくるわけです。たとえば自分の今の家を、下に泥を持ってさておいて上げるよりか、今の家というものをくずして、この高台に建てた方が自分の農業経営にもいいし、あるいは自分が住む上にもいいんだという場合が、幾らもあると思うのです。ところがそれを動かすことができないんですね。こんなしゃくし定木な法律はないと思うのですよ。現場を見て、このくらいの金が要るということをきちっと見積もったら、それ以上の金は出す必要はないんですから、これは動かさせるべきだと思うのですがね。こういう点は、こういう炭鉱の店じまいの時期なんですから、政府はやはり英断を持って、そういう方向に進むべきだと思うのですがね。一体あなた方はどうお考えになっておるのか。
  207. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 御承知のように、臨鉱法は時限立法でございまして、もうそろそろ終わりに近づいて、今からかわりの法律をどうするか、通産省としては考えなければならない時期にきているわけでございます。たまたま今私どもの炭政課長も、鉱害問題を今後どういうふうに処理するのが国民経済的に一番プラスになるかということを研究するために、ヨーロッパ出張中でございます。英、独、仏あるいはオランダ、ベルギーといった各国の事情等も勘案し、それからまた、われわれはわれわれで、一応事務的にいろいろな方法を考えておりますから、いずれにいたしましても、臨鉱法にかわる何らかの法律ということは、これは当然作らなければならない、こう考えておりますので、今どの方向で作るかという具体的な結論は、目下いろいろな面の検討中でございますから、まだ申し上げかねますが、今風指摘になりましたような点等につきましても、十二分に参考にさしていただきまして、そして一番合理的な解決方法というものを新立法に織り込んでいきたい、もうしばらく研究の時間をかしていただきたいと思います。
  208. 滝井義高

    滝井委員 これは時間をかせという問題でなくて、現実に四百三十万トンお買い上げになり、さらに二百万トンお買い上げになる現実の問題として起こっておるわけです。これは三十七年七月末で臨鉱法の期限が切れる。そうすると、その三十七年七月以降になってからやるのだということでは、やはり問題があるのではないかと思うのです。それまでの間にずいぶんお気の毒な人が出てくるわけです。これは何も法律でなくても、行政的に少し手をゆるめればできるわけです。それはもとのままの、原形の形で持ってきてもいいのです。原形の形で持ってきてもいいのですが、これは動かすこともできないのですからね。従って、農家は破れ家を不本意のままの姿で上げて、そして突っぱりをしていく、こんなばかなことはない。政府の方からなり鉱業権者の方から金が出て、それに自分が五万か十万足したら家がもっとよくなるという状態なのに、五万か十万足すことができずに、もとの間取りの悪い、いろいろ便利の悪いところでやらなければならない。こういうことは、国の税金を有効に使うという面からもむだなんですよ。ここらあたりで何か弾力のある行政措置というものはできないものですか。私はこれはできないことはないと思うのです。
  209. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 行政措置だけでどこまでいき得るかという点は、これは相当問題だと思いますが、今のお話も、必ずしも三十七年の夏に現行の臨鉱法が切れて、それからかわりの法律の中に、その際にほうり込むということにとらわれて申し上げておるわけではありませんで、現実にその必要性というものが非常に大きく、また、そういうような新しい、今やっておらないようなやり方を認めるということの方が、むしろ国民経済的にも非常に合理的であるといったようなものがありますならば、これは三十七年を待たなくても、所要の改正ということについて研究することに努力することを惜しまないつもりであります。
  210. 滝井義高

    滝井委員 家屋の問題は、それをやってもらいたいというのは大衆の声です。一つぜひすみやかに御検討になっていただいて、われわれはこの国会でもけっこうですよ、お出しになればすぐ通しますよ。自民党さんだって反対はないと思うのです。何も財政支出を必要とするものでないのですから、今の臨鉱法のワクの中でただ家を建てかえるということを許すだけなんですから。だからこれは速急に御研究になっていただいて、何らかの措置を講じていただけますね。
  211. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 検討は至急いたします。
  212. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つ至急検討していただきたいと思います。次には、安定鉱害と不安定鉱害について非常に不均衡か出てき始めているという点です。まず第一に、安定鉱害を見てみますと、安定鉱害で臨鉱にいった分と打ち切りの分が出てくるわけです。そうすると、今度は安定分で打ち切りについてみますと、打ち切りのものが今度同一の炭鉱の中で非常にアン、バランスが出るのです。ある人は金がほしいために、早く打ち切ってもらいたいというので、非常に安く打ち切ります。ある人はがんばっておって、高い打ち切りの金をとるわけですり。こういうふうに同じ炭鉱の中で打ち切りにアンバランスが出てくる。今度は他の炭鉱の状態と比べてこれがまたアンバランスです。こういうように同じ鉱害を救済するのに、その鉱業権者の打ち切りというものが非常にアンバランスであるということです。これが第一点です。  それから今度は不安定、いわゆる未発生分を見てみますと、これは今度はその炭鉱全部を整備事業団が買い上げたとしますと、買い上げた炭鉱の未発生分が、いわゆる不安定分が安定をすると、これはある場合は打ち切りでいくわけです。ある場合は臨鉱法でいくわけです。そうすると整備事業団がどういうことになるかというと、適正賠償で打ち切っていくわけです。安定をして前の鉱業権者で打ち切られた者と整備事業団で打ち切る者とにうんとアンバランスが出てくるのです。そうすると二重のアンバランスになるのです。こういう状態がもう今至るところに出ております。すなわち打ち切りの分についても、鉱業権者か打ち切ったときにアンバランスが出る。そうしてさらに今度整備事業団がその炭鉱を買い上げて打ち切ったときには適正の打ち切りになりますから、これまたアンバランスが出てきます。こういう状態の不均衡を一体どう是正していくかということです。これも今非常に大きな問題です。炭鉱の買い上げが進捗をすればするほど、大衆の中に不満が起こってきているのです。こういう点については何らかの積極的な指導というものが通産当局によって鉱業権者に行なわれなければならぬのですよ。これが行なわれていない。だから現地の力関係で決定をせられていくという、こういう不合理が現実に横行をしておるわけです。そこでこの不均衡の是正について何かお考えになったことがありますか。
  213. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 確かに未発生分と既発生分のアンバランス、あるいは既発生分の間につきましても先に判をついた者とあとに判をついた者の間にいろいろアンバランスがあるであろうことは、私もいろいろとお話も伺っておりますが、しかし、と言って、これは絶対にみんな平等にやれということは現在の法制の上で非常に無理ではないか。やっぱり若干のアンバランスというものが——これは好ましいことではございませんが、これを絶無ということに持っていくことは非常にむずかしいことではないか、こういうふうに考えております。むしろ根本的にはただいま問題を御指摘になったことだと思いますが、現在の鉱業法の建前が先願主義というようなことで、とにかくだれでも早く出願しさえすればよろしい。それから鉱業権の譲渡自体については、別に何ら制限を加えられないといったようなところに、鉱業の付帯的なやむを得ざる必要悪である鉱害というものを十二分に処理する力もない人間が石炭を掘るといったようなことを許しているという現在の制度そのものに、むしろ問題があるんじゃないかという点で御指摘になったんじゃないかと考えますが、御承知のように昨年の春から鉱業法の改正審議会が十何回か開かれました。そのときの一番大きな問題の一つが、現在の先願主義というものを能力主義に改める必要はないか、また鉱業権の譲渡あるいは租鉱権の設定といったような際にも、能力主義的な規制を加える必要がないかどうかということが問題になりまして、そしていろいろ検討されておる最中でございますので、われわれといたしましては鉱業法が改正をされますときには、現在の不合理といったようなものも、まず基本的な点で改善されるのではないか。それからあとは、できるだけ行政指導その他によって被害者間の不公平というようなものがないように、これは鉱業の直接所管庁でございます通産省としても最大の努力をしていきたいと考えております。
  214. 滝井義高

    滝井委員 鉱業法を根本的に改正するときに先願主義を能力主義に変えていくということは大賛成でございますが、現在非常に不幸な目にあいつつある人がたくさんおるわけです。そこで私はこの打ち切り分について一つの欠陥があるのはなぜかというと、同じ鉱害であっても臨鉱法にかけますと、土盛りという形で国の補助金がついてくるわけです。ところが打ち切りになりますと、ついてこないのですね。問題はここにあると思うのです。そこで力関係によってある者は坪当たり一万円の金を取る、ある者は二千円なんですね。はなはだしきに至ってはある有名な人の炭鉱業者のところに村じゅうが押しかけて陳情に行った。ところがそのうちにある親分が入って片づけてもらった。配分をしてもらったところが二千五百円しかこなかった。ちょうどその有名な炭鉱屋のところに三回、四回と集団的に陳情したが、その旅費と昼飯代しかなかったというのがある。それで鉱害打ち切りだと言って泣いておる人がおりますよ。泣いておる。こういうのが公然と行なわれておるのですからね。ところがこういう人はこれはもし今度はそそのかす人がおって、整備事業団が買い上げたから今度は整備事業団に行きなさい、そんな二千五百円くらいの打ち切りではだめだということになれば、整備事業団に行くことになるのです。そうすると臨鉱法ですか、鉱業法ですか、これは賠償が適切でなかったら増減することができるのです。また増加要求ができるわけですね。今福岡の事業団はそれをやられていますよ。そこで、私はここで考えなければならぬものは、打ち切りでいくという、たとえば傾斜程度で高いところが鉱害があるのは現実なんですから……。ところが鉱害があってもへまにいじってもらうと、かえってうちが悪くなるので打ち切りをもらいましょうということになる。そこで一体国の金でなぜそれをやらないかというと、土盛りをしないところで、落ちている壁は直すし、落ちているかわらは直すわけですから民生の安定にはなっているわけですが、国土保全にはなっていないかもしれない。これは土を置かないということなんですね。そういうしゃくし定木的な法律解釈になってはいかぬのですよ、この段階では…。政府が炭鉱の合理化をやって、そうして炭鉱を買い上げていこうとするならば、跡始末だけはやはり立つ鳥はあとを濁さずで、きちんとやらなければいかぬと思うのです。ところが打ち切りになるものについては金を出さないというところにガンがあるのです。これをお出しになれば、これは臨鉱法でいこうと、打ち切りでいこうと自由になるのです。自由に選択をしてくれ、こういう気持で、非常にフランクなおうような気持でみんなができるのですね。ところが打ち切りは国の補助ができないところに、あとで私は農地のことも言いますが、問題があるわけです。そこでこの国土保全というしゃくし定木のことを、もう少しくこれは国庫補助というものを、こういう方面に出すということが、私は考えられてしかるべきではないかと思うのです。どうですか、この点は。
  215. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは先生よく御承知のように、現在の法律が、国土の有効利用と保全と民生の安定、あわせて石炭鉱業の健全な発達に資するためということで、それらを通じて結局鉱害を計画的に復旧するという復旧の法律、復旧ということを前提にして国土の有効利用、保全ということから作られておりますので、今お話のようなおよそ鉱害が起これば、政府がこのうちのある部分を負担すべきであるということになりますと、これは臨鉱法といったような臨時立法でなしに鉱業の本質に触れる問題で、これこそ鉱業法自体で掘れば必ず家に穴があく、家が傾くということが起こってくる。これはそれを許した政府自体も、ある程度負担せよといったようなことで、新しい見地から鉱業法自体の鉱害責任を規定するということをしなければならないような基本的な問題であろうかと考えられますので、先ほど申し上げましたように目下検討いたしております鉱業法の審議会の本格的な審議にゆだねまして、合理的な解決をいたしたいと考えております。
  216. 滝井義高

    滝井委員 その場合に、もとの炭鉱業者というものが莫大な金を持って払える能力があれば、これはがんばることによって割合話し合いがついてくるのです。判を押さなければ買い上げにならぬのですからね。ところが現実にどうにもこうにもならぬ業者というのは相当あるわけです。そこで私はこういう場合に臨鉱法の六十六条を適用してみたらどうかと思うわけなんです。そうしてそういう者から買い上げたものは、無資力なら無資力ということでやるか何かしないと、これはもう非常にアンバランスがあって、そうして善意の第三者である被害者に非常な損害を与えておるのです。しかもその監督不行き届きな役所の責任というものも、私はのがれることができないと思うのです、そういうことをやってくれない限りにおいては……。そうすると、役所はこれはどうも知りませんというようなことで逃げてしまう。だからこういう点はとにかく施業案を見て、そうして許したからには許しただけの責任が役所にもあるわけなのですから、何かそこらあたりをやはり考えてもらう必要があると私は思うのです。  そこらあたりあとでもう少し触れてみますが、次は、今回の石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案が国会を通過しますと、四百三十万トンの買い上げの中の八十万トンばかり残っている分の買い上げが進捗しますね。その場合に、今度は国の金が四億円入ってくるわけです。そうすると、今までならば整備事業団が、いわば自前の金でやるわけです。自前の金といっても、納付金と開発銀行の利ざやですよ。これを一応自前と言っておきましょう。自前の金でやるわけです。今までのこの予算の執行の状態を見ますと、政府が金を出して予算の執行をする場合は、多くは大体七月か八月になるのです。ところが自前の金の場合は、四月なら四月でさっさとやれていくわけです。納付金が順繰りに入ってきますから、あるいはなければ県を通して資金運用部から借入金をやっておりますから、やっていけるわけです。そうすると今度この法律が通っても、今まで通り八十万トンは自前でやっていくのか、それとももうしばらく、この法律が通ったらいろいろと内部的に政令その他省令を作らなければならぬわけですが、それまでは買い上げの業務というものはストップすることになるのが、その点は一体どうお考えになっておりますか。
  217. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは御承知のように、今までも入る金はずっと先に、前年の売り上げ高について二十円あるいは六分五厘というものは毎四半期ということでぼつほつ入っていく、とてもさしあたりの資金需要に追いつけませんので、県を通じて資金運用部の金を借りるということをやってきたわけでありますが、今後も必要な場合には当然資金運用部の金を借りて処理していくということになりますので、これをやりましたために、特に政府の金が出ないから非常におくれるということにはならない。現実にこの金が出てくるというのは、あるいはあとになるかもわかりませんが、これははっきりした、今までよりはもう少し新しい政府の金を受けるわけでございますから、補助金を交付するためのいろいろな規則といったものも制定しなければならないと思いますが、しかしこれは、この山を買った、その間二分の一で幾らになるかということをきめて、あとから出していただくということもできるわけでございますし、買い上げそのものがこのためにおくれることのないように、政府の金が出ないから買い上げられないということにはならないように、従来通り円滑な事務処理ができるような格好で、運用していきたいと考えております。
  218. 滝井義高

    滝井委員 今までは、大体買い上げの話がついて調印が終わると、二週間くらいで金が出るのです。そうすると、今度も二週間くらいで——今ずっとやっている契約の進行中のものがありますね、契約ができるとすぐ二週間で出るかどうかということです。今までの普通の助成事業は、政府の金が入ってきますと、六月の終わりから七月になってくる。年度始めは全部おくれるのです。これが通例ですよ。ところが私が言わんとするのは、今回の炭鉱の買い上げの仕事というものは、普通の助成事業と違うのだということを強調したいのです。そうすると、そういう形で、普通の助成事業のような形で、政府の金が四億入ったのだから六月か七月でなければ出してはいけないのだということになると大へんだというのです。それはあなたの方で、そうではない、今までの契約の進行通り、調印したらすぐ二週間くらいで渡しなさい、こういうことが言えるかどうかということなんです。
  219. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 私としましては従来通りのテンポで金が払えるようにということで今後もやり得る、そういうように考えております。政府の金が入ったために何カ月かストップして、買い上げ業務が停滞したというようなことのないように、できるだけ努力していきたいと考えております。
  220. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つそうしてもらいたいと思うのです。  次は、事業団の三十四年三日末までの収入と支出の状態ですが、私は福岡に関する限り、相当鉱害の赤字が出ておるのではないかという感じがするのです。それから納付金が相当未納かあるはずです。だからその収支の状態、納付金の未納の状態をちょっと御説明願いたいと思うのです。
  221. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 三十四年度までの収支の実績でございますが、これは確かにお話のように、最近いろいろ鉱害が新しい問題として非常に困難な事態を呈しているという面はございますが、しかし一応の資金計画の面でいきますと、三十年度から三十三年度までの実績では、納付金が四十六億、借入金が十八億、資材の売却代金が五億ということで、合計六十九億の収入に対して、支出が、買収代金が三十九億、離職金が二億、借入金の返済十三億、その他八億ということで計六十二億。差し引きまして、一応七億の資金計画から申しますと黒ということになって、三十四年度に引き継がれたわけでございます。それが先ほど申し上げましたように、今後四十二年度までになりますと、大体百七十九億の収入に対して百七十七億で、二億くらいの黒ということで店じまいということになるのではないか、こう考えておるわけでございます。  それから未納金はどのくらいあるかということでございますが、大体全体を平均いたしまして九三・一%、これは大手が九九・六%、中小が七七・六%、平均いたしまして九三・一%というのが、事業団ができましたからことしの一月末までの納付金の収入状況でございます。
  222. 滝井義高

    滝井委員 金額にして幾らですか。
  223. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 金額にいたしまして、調停額約六十二億円に対しまして九三・一%でございます。
  224. 滝井義高

    滝井委員 三、四億の未納があるようでございます。そうしますと、その未納があっても、今三十三年までの御説明をいただいたんだが、三十四年の三月末ではどういうことになるのですか。四百三十万トンの買い上げ計画が、予定通りに財政的に達成ができる見通しですか。四億円というと、買い上げ計画に相当の狂いが生じてくるわけですね。だからその計画の減を来たすことになりはせぬか。今三十三年までを御説明願って、三十四年というのは何も言わなかったのですが……。
  225. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 先ほどの資金計画では、今後の収納率を三十四年度から四十二年までは九二・八%ということで、七%あまりのものは取り得ないのではないかということを一応前提にして資金を組んでおるということでございますので、大体先ほど申し上げました通りの収入というものは確保し得るのじゃないかと考えております。
  226. 滝井義高

    滝井委員 六億円程度取れなくなるわけですね。いわゆる一年に事業団が援護会に納める一カ年分だけが取れなくなるわけですよ。そうすると、そのくらい取れなくても、買い上げの計画の変更その他を必要としない、こういうことですね。
  227. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 その通りでございます。
  228. 滝井義高

    滝井委員 鉱害のための赤字がないと、未納金が少々あっても大丈夫だということを聞いて安心をしました。  そこで次は、無資力の炭鉱の買収です。買い入れの問題です。これは個人的に樋詰さんといろいろ議論をしたときに、無資力のものを、無資力の認定をすると、その鉱害復旧を今度は国がやる。そうするとそこがきれいになってしまう。鉱害がきれいになって鉱区の価値が出てくる。だからこれは大へんなことだということがこの法律の盲点になっておるわけですね。そこで今度の改正の機会に、そういう無資力のものについて鉱害の復旧をやったならば、その鉱区というものは買い上げるか封鎖するという立法をどうしてやらないかということなんです。その炭鉱というものは整備事業団に売り渡さなければならぬとか、あるいは封鎖することかできるのだ、何かこういうことをおやりになったらいいのじゃないかと思うのですが、どうしてこれを今度の立法でおやりにならないのですか。
  229. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 確かにそれは一つの盲点かとも思いますが、事業団が買ってしまうということになれば、これば事業団のものになりますから、今のようなお話もございませんし、それから無資力認定というようなことをやって、政府が肩がわりしてきれいにしてやるといったような場合は、今度は法律で鉱区を取り消すというようなことはないまでも、とにかくそこに新しい鉱業権の出願をしてきても許さないというようなことにして、現在の鉱業権者には、政府でかわって鉱害を復旧してやるかわりに、もうお前は鉱業権を放棄しろというような指導をし、同時にそこについては、かわりの者がすぐ出てきて自分がやるといったような場合にも、新しい観点からの規制を加えていくというような何らかの行政上の措置ということで、不公平が起こらないといったようなことをやっていきたいと考えております。  それからなお先ほど事業団は金があるので、鉱害が幾ら起こっても心配がない、安心したというようなお話でございますが、それは大体今までのような、買い上げたときに予想した程度の鉱害というもので円満に話がつくという限りにおいては、現在程度の未納があっても一応収支が合うということでございまして、もしこれが寝た子がみな起きてきて、われもわれもと鉱害のしりを持ち込んでくるということになれば、これはとうてい事業団としては財政的に皆さんの復旧の御要望に沿いかねることになるのではないか、そう思いますので、できるだけそういうことのないように、円満に現地で話がつくということを希望いたしております。
  230. 滝井義高

    滝井委員 無資力の炭鉱の認定をした場合に、その鉱区というものがきれいなものになるというときには、現在はどうにもならぬわけです。だからせっかくあなたの方でこの合理化法の改正をやるのですから、現在の法の盲点ということがはっきりわかっておるわけです。だからそういう場合は、業務方法書で何とかすることができるように当然この法律で書けるわけです。それをおやりになっておらぬので、これは不思議なことだと私は思うのです。これはわかっておるわけですから、当然臨鉱法でもやれるだろうし、買い上げの炭鉱にそういう対象が出てくるわけです。だから合理化法の法律の末尾の方に、臨鉱法でこういう改正をやるのだということをお書きになれば、別に金が伴うわけでもないし、それが必要じゃないかという感じがするのですがね。
  231. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 先生の御質問の意味を私あるいは取り違えておるのかもわかりませんが、事業団が買い上げてやって、結局無資力認定というようなことになれば、これは一応事業団の鉱区となりますから、事業団が買い上げるものについてはきれいにしたから云々という問題はあまり起こらない。その事業団が買い上げてきれいにしたあとをどうするかということは、将来別途法律をもってこの鉱区をどういうふうに処理するかということで立法を要しますので、その際にまた御審議を願うということにすればいいのじゃないか、こう思っております。もしそうでなしに、事業団に関係なしに無資力認定をやった場合にどうするか、こういうことになれば、合理化法の問題ではなくて、むしろ先ほど申し上げましたいわゆる鉱害賠償全体の問題という格好で、能力主義かあるいは先願主義かということを合わせて、番号からいうと七番目か八番目になっておりますが、非常に大きな柱として鉱害賠償をどうするかということが一応あるわけであります。鉱区の制度とかいろいろな問題を七つか八つ柱を立てて、鉱業法の改正を検討しておるわけであります。鉱業法の改正審議会の中でも、鉱害を大きな柱の一本として取り上げておりますので、そのときに、今の鉱業法自体に触れる問題について十分各方面の英知を集めて、一番合理的な結論を出したい。この臨時立法の中で、いきなり鉱業法の本質にすぐ触れるようなところまで踏み込むだけの自信と申しますか、実はわれわれこれがいいのじゃないかというだけの結論に、残念ながら到達しておらない状況でございますので、鉱業法の審議の方に譲っていただきたいと思います。
  232. 滝井義高

    滝井委員 私の言っておるのは、六十六条で無資力認定をします。無資力認定をすると、その認定をした炭鉱は、これは当然政府が鉱業権者にかわって鉱害復旧をやるわけですが、その鉱害復旧をやった無資力の炭鉱というものは整備事業団に売らなければならぬという形にしたらどうだ、こういうわけです。簡単に言うと、それを言っておるわけです。そうしないと、無資力の認定をやってやったら価値が出ますから、価値が出たものを無資力の本人に国は財産としてやる責任はなくなる、そうまでしてやる必要はないのだから。しかしそれではそこに住んでおる被害民を救うことができないから、それは当然整備事業団に売らなければならぬという規定を、今度の合理化法にお書きになったらどうだ。そういうものは売るのだ、これは合理化法の問題です。六十六条でやるのは臨鉱法ですが、今度六十六条で救うものについては売らなければならぬということにすれば、これは合理化法の問題になってくるわけです。だからそこを言っておるわけです。
  233. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 今までの合理化法の建前というのが、生きておる山をとにかく買うということで、死んであと鉱害だけ残しておる山は、一応対象にしておらないということでございまして、申し込んできて、それでほかに債権者とのいろいろな関係等から、政府の方で無資力ということで六十六条にすぐ乗り得るというものであれば、これは事業団で買ってきれいにして差し上げるということもできますが、しかしいろいろ買掛金を持っておったり、未払い賃金を持っておったりというような、いろいろな他の債務と鉱害の債務がごちゃごちゃになって、なかなかほかの債権者も納得しないといったものにつきましては、現在の臨鉱法そのままで適用するというのは少し法的に無理ではないか。もしほかの債権者等が全部債権等をおりて下さるということになるのであれば、これは大体評価額をこえる分については無資力認定ということで事業団が買い取って、事業団の責任でいろいろ鉱害を直す。それで政府も今の無資力という分について、所要の負担をするということもできるということになろうと思います。とにかく今の点につきましては、これは非常にいろいろな、あちこちひっかかりがあるのではないかと思いますので、もう一度いろいろな場合を整理いたしまして、少し思想の整理、検討ということでやってみたいと思っておりますが、今すぐここで臨鉱法に乗せて無資力のものは全部買ってしまえということは、何かちょっと合理化法の範囲からは逸脱しているのではないかというふうに考えられますが、若干この点ば自信がございませんので、帰りましてすぐでも、関係者たちと集まって検討してみたいと思っております。
  234. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 問題は二つあると思うのです。一つ滝井さんがお話しになるように、臨鉱法の六十六条の適用を受けさして、それは無資力認定をして復旧をする。復旧したものがその鉱害がなくなって価値が増大をするということは、不合理であるから、いわば鉱業権の取り消しをやったらどうか。その取り消しの方法として、今度の石炭合理化事業団が買い上げたらどうか、こういう問題だと思うのです。しかしその場合、合理化事業団に買い上げる前に、鉱業権の取り消しをおやりになったらどうか。これは取り消しの規定が現在でも公共の福祉と関係はありますけれども、必ずしも条件は一致いたしませんけれども、まあ取り消しの規定があるわけですから、取り消しをするということも考えられないことはない。これは一方法でありますから御研究を願いたいと思いますが、そういう方法もあると思います。  それからもう一つ、先ほどからおそらく問題になっておるのは、鉱害が膨大で買い上げ金額よりもオーバーする鉱害分だと思うのです。それがまた滝井さんが赤字があるのかないのかということを聞かれておると思うのですが、滝井さんはどうも無資力認定をして六十六条の適用を受けさしたらどうかという御意見のようですけれども、私は今度のやはり四億円という政府資金が出たゆえんは、当然行き方を変えるべきだと思うのです。従来のものの考え方と変わった行き方ができるのではないか、それは今度は政府資金が出たということは、一つは社会政策的な意味もあるわけです。ですから鉱害が買い上げ料以上にオーバーするという分については、私はこの分については事業団が持ったらどうか。事業団の責任においてやったらどうか。その金額は、私は政府資金が出ておるのですから、政府資金を出した分をお使いになったらいいと思う。ここに私はやはり政府資金が出たというゆえんがあると思うのです。単に今までの業者の肩がわりというのではなくて、あるいはまた開発銀行の金利を負けさした分の肩がわりというのではなくて、政府が金を出すという点については、これはやはり先ほどから申します、単に買い上げといっても商取引ではないのですから、これは当然炭鉱を閉山するについての補償的な意味がある、そこに政府が金を出す。オーバーの分については当然その政府資金が出ておるという点から、事業団が支払ってやる。しかしこれは四億円では足りません。四億円では足りませんから、適正な分については、政府の資金をそこに投入する、六十六条とは別個に切り離してやる、こういった方が妥当ではないかと私は思うのですが、どうですか。これは滝井さんと意見が違うかもしれぬけれども……。
  235. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは通産省といたしましては、国産資金をできるだけたくさん出して、そしてあっちこっちの鉱害を救い、あるいはそこに働いておる方々についても、ある程度の未払い賃金といったようなものをきれいに整理されるということになるのが望ましいことではございます。しかし今四億円では足らぬというお話でございましたが、従来の事業団の考え方というものは、石炭業界が相互に、できるだけ業界の共同責任と申しますか、連帯思想といったようなものから金を出し合って、そしてお互いのめんどうを見ていこうというのに対して、政府の方で、今回若干の政府からもこれらに対する授助はやろうということになったもので、あくまでも業界の連帯による相互扶助といったようなものを中心に、現在の事業団というものが考えられておりますので、そういう面から申しまして、いきなり、これは事業団にもっと金を出してやれといっても、われわれとしても出していただければ、それにこしたことはございませんが、実際の問題として、鉱害理論その他についても十分な理論上の確立というものもない現在におきまして、鉱害復旧についての臨鉱法施行上の予算措置ということだけで、いろいろ毎年々々問題がありまして、悪戦苦闘して所要経費を確保しているという段階におきまして、それをもう一歩越えて六十六条で無資力認定をせざるを得ないといったようなものは、各事業団で金を出してめんどうを見てやるというところまでの、なかなか理論的な、相手方を説得させるという自信を実は持っておらないのでございます。いろいろ鉱害関係について非常にめんどうな問題が山積しておりますので、これは今後石炭関係の一番大きな問題ということで検討を進めて参りたいと思いますが、今これが非常にいいからこういう方向にいきたいと思うということまで、ここで申し上げるというだけの自信を持ち得ないという点は、はなはだ残念に思うわけであります。
  236. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 鉱害が買い上げ料金よりオーバーして、しかも無資力の鉱業権者の場合はどうしますか。普通の場合ですと、事業団に買い上げの申請をしない場合なら、オーバーしておれば、当然ある程度まで無資力になると分離して、資産のある限度においては資力がありますけれども、資産のない分については無資力になるわけですね。たまたま事業団に売ったために、事業団は無資力とはいえませんから連帯責任を持つのですが、実際行政上は事業団はオーバーした分については払いませんから、結局泣き寝入りということになりはしませんか。事業団に売ったために泣き寝入りというばかな話はないでしょう。連帯責任がなければ、売らなければ、ある限度において政府から補助がもらえて、そして政府の責任においてこれが復旧できる。売ったためにその分については復旧ができないという理論も成り立ちませんか、どうですか。
  237. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 事業団の方の財源についても限度がございますので、もし事業団に持ってこなくても、むしろ持ってこなければ六十六条で無資力でいけるのだということであれば、これは今まで新床その他若干の例もあるわけでございますので、これは地元の鉱害を救うといったような意味で、事業団に持ち込まれて無資力認定を一つやっていただく。結局この方が事業団といたしましても、非常に業界全体から集め、また政府のなけなしの金をもらってきていろいろ消極、積極の仕事をやるという際に、今でさえ手を上げているところに、またむずかしい問題をかかえるというのは、これは正直なところあまり歓迎しないというようなことにもなりますので、今先生御指摘のように、ほったらかしておけば、無資力でやっていただけるのだというのは、どなたかでも破産の申請か何かして、裁判所でもって破産の宣告をしていただけば、政府の方で六十六条の発動ということにもなり得ますので、全体にできるだけ広く、せっかく事業団が買い上げるという制度であるなら、これはプラスの方向で使っていただく方がいいんじゃないかという点から考えますと、そういう無資力になるような山は、われわれのところでも、六十六条を活用していただけるなら、そっちの方でやっていただくということで問題が済むのではないか、こう考えます。事業団が買ったから、とてもだめになったとおっしゃる方は、事業団に申し込まぬで一つやっていただきたい。たとえば事業団に持っていって、事業団で一つやってもらう、それで大体いいということで、地元の方々ともいろいろ話がつくといったような方は、事業団の方に申し出ていただくということで、これは当事者間の労働組合、あるいは債権者、あるいは地元の方々、いろいろな方々とも話し合いして、円満に一応話がついたものが持ち込まれてくる、こう思われますので、現地でいろいろな方面の方々かお話し合いになって、事業団に申し込んだ方がいいとお考えになる人は事業団に申し込む。事業団に申し込んだらかえって損だとお考えになる方は、事業団に申し込むこと自体がいやだということで反対をしていただいて、無資力認定に追い込むような格好で、ほかの救済措置を考えていただくということにした方がいい、というとはなはだ語弊があると思いますが、そうせざるを得ないのではないかというふうに考えます。
  238. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私が言いましたのは、分離をして話をしておるわけなんです。事業団に売る山は、さっきは必ずあるというお話がありましたが、これは売れませんよ。価値としてはもうないんですよ。しかし、事業団が買ってくれればそれだけの代金が入るんです。ところが、その代金が入るということを前提とするならば、オーバーした分については何ともいたし方がないんですね。事業団が連帯責任を負ってやってくれるんならいいのですが、実際は事業団は払わないでしょう。連帯責任を持っておるけれども、安定した鉱害については払わないでしょう。これは訴訟したらどうなんですかね。訴訟したら負けるでしょう。
  239. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 不安定の分で、被害者との間にはっきり話がついているといったものは、これはもう大体それでわれわれの方は話がついているんじゃないか、こう思いますから、原則としては、また寝た子が起きてきて文句を言うという問題はあり得ないんじゃないか、こう思っております。ただ、たまたま不幸にして、あっちこっちで、寝た子がぼこぼこ起きつつあるといったことのために、地元の方に必要以上の負担をできるだけかけないようにということで、現在の体制のもとで許し得る限りの最大の最良の措置というものをとり得るように努力いたしておりますけれども、これがもし未発生鉱害あるいは未安定ではっきりわからなかったというものは、連帯責任で何とか片づけなければならぬということになれば、当然新しい鉱業権者としては、前の鉱業権者の分までそっくりかぶらなければなりませんから、これは事業団の方で責任を持って、復旧するということはもちろん一〇〇%やる。ただ既発生の分、未安定の分でも話がついたというもの——むしろ、大体今あっちこっちで起き上がっておるのは話がついたと思っておるのが多いのじゃないかと思うのでありますが、話がついていないというものであれば、これはやはりその鉱害発生当時の鉱業権者並びにその後の鉱業権者というものが連帯で責任を負わなければならぬわけでございますから、これは当然に、賠償の責任が事業団にかぶってくるということは否定できないだろうと思います。
  240. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 法律とその運営の仕方に食い違いがあるわけです。その運営の仕方に食い違いがあるのを、私は、現在の事業団のあり方としてやむを得ない点があるだろうと思うのです。しかし、それは政治で解決してやらなければならぬ問題ではないか。せっかく、鉱害が発生した場合当時の鉱業権者とその後鉱業権の譲渡があった場合の譲り受けた側とが連滞責任を負うという規定があるのですから、やはりその規定を守ってやらなければならぬと思う、法律があってもそれが実施できないということでは、どうにもならぬのじゃないかと思う。そこで、私は、この六十六条に無資力の場合には政府がかわってやるという制度があるのだから、せっかくその制度があるならば、その財源を事業団の方に回して、事業団をしてやらせればいいじゃないか、こう言っているのですよ。しかも、この四億出るというのは、性格は違いますけれども、国が補助金を出すという中には、国として単に業者の肩がわりというだけではなくて、どうしても社会政策的な面が入っておる、こう考えてもいいのじゃないか。自前ならば、私は、そういうことは言いません。しかし、今度は政府が金を出すのですから、そういう要素を入れてもいいのじゃないか、こう言っているわけです。
  241. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 おっしゃっている意味はよくわかるのでございますが、それじゃ今すぐ実行に移しますということを言うだけでは、先ほど申し上げたように、私自身ももう少し現在の法律と実際に運用しておるものとの間のギャップ、実態等についても検討いたしたいと思いますので、今の御質問の御趣旨というものを至急、中で検討いたしまして、特に役所の方の行政的な運営その他で、現行の法律がもっともっと地元民に有效に活用できるといったような方向があれば、その方向にできるだけ早く移すということで、法律と運用両面のギャップその他についでの検討をいたしたいと思います。
  242. 滝井義高

    滝井委員 この六十六条で無資力の認定をした場合に、一体国が鉱業権者に肩がわりをして出し得る限界、これはどの程度出し得るかということです。これは法律を読んでもわからないのです。
  243. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これは一応比率で申しますと、農地及び農業用の施設は八三%までは国が見る。残りの一七%は県で見る、そういうことで、国と県との比率か上水道が六二・五対三七・五、それから下水道が二対一、それから学校、鉄道、公共、公用の建物は大体七対三、それから地盤等の復旧費家屋なんかの関係は六五対三五という割合で、大体国が三分の二ないし四分の三以上のものを持つということになっております。
  244. 滝井義高

    滝井委員 いや、それは復旧費だけですね。そのほかに何か出し得るものがあるかどうか。
  245. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 国が出し得るのは今申し上げましただけでございまして、それ以上については、国としては何も出さないという建前になっております。
  246. 滝井義高

    滝井委員 たとえば、農地の復旧をやった場合に、年々の補償その他が要るわけです。また、その復旧後における減産があるわけですから、そういうものも出しませんか。
  247. 井上保

    ○井上説明員 そういうものは六十六条の場合、今の法律では出さないということになっております。さっき申しましたほかに、家屋の場合に復旧費の一割程度を国以外に事業団から出すというものはございますが、営業補償その他一切出さないということになっております。
  248. 滝井義高

    滝井委員 農地局の正井さんがいらっしゃっておりますが、今あなたがお聞きの通り、無資力になりますと農地の復旧をやるという場合に、農家は復旧してもらうだけで、全然補償がもらえないわけです。こういう場合に一体農林省はどう考えておるのかという点です。筑豊炭田についてはあとで私もう少し質問をしますが、だんだんこういう事例が多くなってきているわけです。
  249. 正井保之

    ○正井説明員 鉱害復旧に関連しましてただいまの制度は、御承知のように復旧されましてもなお従前の生産力を回復するに至らない場合には、従前との差額について暫定補償ということで処理いたしておりますが、そのほかに農林省として特別の措置はただいまのところ考えておりません。農林省で私ども現在いろいろと農業を営む者の損害等に対しまして制度を持っておりますが、原則としましてそれが天然現象等による災害あるいは被害というふうなものがあります場合に、国としてもこれについて特に必要な措置をとるということでございまして、むしろそれは鉱業を営んだその鉱業の経営に関連しての事態でございますので、特に農林省として災害等と同様の措置としてはとっておりません。
  250. 滝井義高

    滝井委員 私が農林省にお願いをしたいのは、鉱害を復旧してくれて、もとのたんぼにしてくれたんだが、たんぼにするまでには裏作を休まなければならぬという場合もございます。休耕が当然出てくるわけです。それからりっぱに復旧してもらったが、今あなたのおっしゃるように、暫定的な補償は減産分についてはやはりしてもらわなければならぬ。それは鉱業権者が国にかわってから、何もしないんだというんでは、日本の農家は食っていけぬですよ。なるほどもとのたんぼにはなるが、なるまでは、生活保護というわけにはいかないと思うんです。農林省としてはこういうところは鉱業法改正のときに強く要請をして、無資力の鉱害復旧については暫定補償なり休耕補償というものを出すべきだという主張を当然してもらわなければならぬのじゃないか。今までこういう六十六条という法律があったにもかかわらず、それがあまり適用されていない。こういう点農林省として将来はどうお考えになるか。
  251. 正井保之

    ○正井説明員 ただいま通産省におかれまして、鉱業法の関係で根本的な制度の改正等につきまして御検討しておられますが、これには私どもの方の関係の者も参加いたしておりまして、そういった点につきまして、制度の改正等の際には、農業経営の継続のために支障のないような十分な制度になるように、ともどもに研究して参りたいというふうに考えております。
  252. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと家屋復旧の場合の迷惑料も出さぬわけですか。
  253. 井上保

    ○井上説明員 今の建前では出さないことになっております。
  254. 滝井義高

    滝井委員 この六十六条でやる場合には、全く国土保全という立場で簡単に言えば土盛りの経費以外には出ないのだ、こういう読み方ができるのですか。
  255. 井上保

    ○井上説明員 臨鉱法の根本の考え方が、御承知通りに、復旧のために金銭賠償よりも余分に経費がかかるというものをカバーするという建前でできておりまして、家屋の場合ですと、土盛りと土盛りに伴う、土盛りをするために家がいたんだという場合の復旧は出しますけれども、それ以外のものについては出さないというような建前になっております。
  256. 滝井義高

    滝井委員 この六十六条というものは、無資力の鉱業権者を国が肩がわりをして大衆を救ってやろう、こういう法律なんですけれども、どうもどこか抜けておるわけです。あとにもう少し出てきますが、現在の農地の復旧で大きな抜け穴があるわけです。たとえば軒並みに炭鉱が買い上げられていく場合に、農地のある区画は全部打ち切りでいき、ある区画は農地復旧でいくわけです。こういう事例が出始めておるわけです。そうしますと、今度は灌漑というものは、上流から下流に向かって灌漑水が流れてくるわけです。そうすると打ち切りのところはぼこんと引っ込んだままで置いておるわけです。一方、今度は復旧するところは高くなる、こういう状態か出てきておるわけですが、一体農地の復旧について買い上げられた炭鉱の指導というものは、具体的にどう通産局なり農林省の農地局でなされておるか。
  257. 井上保

    ○井上説明員 臨鉱法の考え方は、復旧のための基本計画を事前に作成して、それに従って復旧工事を行なうということになっておりまして、そういう点がないような広範な計画を年度前に作って、それに従って復旧をしていくという建前になっておりますが、御指摘の通り部分的にそういう問題が最近起こりかかっておりますので、通産省といたしましては、そういう場合に打ち切りをもらったものが受益者負担という格好で打ち切り金を出すというふうな措置をとって、その場合に復旧とあわせて、その地点も復旧したいというようなことも考えております。問題は基本計画のときに十分にチェックして、復旧計画がスムーズに行くというようなことが必要なわけでございますが、それについてはよく指導いたしたいと思っております。
  258. 滝井義高

    滝井委員 実は買い上げの時期か違うわけです。三つ炭鉱が買い上げになるとすると、上流から下流に並んでいる三つの炭鉱が買い上げられるという場合に、買い上げの時期がまず違います。それから一つの炭鉱の中で、さいぜん申し上げたように、あるものは打ち切りでいくし、あるものは復旧でいくわけです。従って炭鉱と炭鉱との間の連絡は全くないわけです。第一年度にAという炭鉱が買い上げられ、第二年度にBが買い上げられ、そうして二、三年おくれてCが買い上げられたということになると、これは全くアンバランスです。こういう場合に、どういうようにやっておるのかということがさっぱりわからないのです。はなはだしいところは上流はそのままになっておって、下流がどんどん復旧されておるのです。一番下が復旧されている。そうして上の方の状態を聞いてみると、上は打ち切っておる。そうしますと下の方の復旧の計画を立てても、水は来ないのです。従ってどういうことになるかというと、復旧計画というものはきわめて少ない泥をばらばらっと置くだけです。ばらばらっと土を置いて、これで復旧計画をやったということを言われておるわけです。こういう場合にあなたのおっしゃるように復旧計画を立てるというならば、農林省なりあなたの方が十分相談をして、上流から一貫してずっとやらなければならぬと私は思うのです。そうしてどうせ買い上げというものは、みんな申請をしておるのです。そこらの炭鉱というものは一連で二、三年前から申請しておる。ところが借金その他の関係で、なかなか片づかないのだが、一番下から片づいた場合に、やはり復旧計画その他というものは待たさなければいかぬわけです。そうすると待たせるということになると、どういう問題が起こってくるかというと、上流を先にやって下流をやることが、復旧計画としては当然ですよ。ところが下流の方を待たせるためには、休耕補償をやらなきゃならぬわけです。あるいは休耕補償でなくても、炭鉱は年々賠償を払わなきゃならぬ、ところが年々賠償を炭鉱が払うのは大へんなんです。だから早く片づけて、君らがやるなら復旧やるぞといって、上の計画とは無関係に復旧をやってしまう。こういうことが今横行しているんですよ。だから復旧してもらっても、上が復旧したら下には水かこないか、きてもたくさん水がき過ぎるという形になってしまうんです。そうすると、下の方のちゃちな復旧の仕方を上にならしていくと、上の方は大へんなことになる。水が当たり過ぎたり当たらな過ぎたりすることになる、こういう状態が今至るところにあるわけです。一体こういう点をどうやってるのかという点ですね。結局炭鉱業者は金がないんですから、炭鉱を売りに出して買ってもらうときには急ぐわけですよ。こういう点の隘路を打開しないと、農民はあとになって泣かなきゃならぬ。こういう点農地局なり樋詰さんの方の石炭局というものは、一体打ち合わせてやってるのかどうかということですね。
  259. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 基本計画を認可いたします際には、われわれといたしましては、当然ことにそういう水利関係というものは、その部分だけを扱ったのでは意味ございませんので、できる限りその上下あるいは近接のいろいろな地方の水利といったようなものも考慮いたしました上で、復旧の基本計画を認可するということに努めておるつもりでございます。今御指摘のような点で、具体的にあっちこっちに支障があるというようなことでございますれば、われわれはそれを参考にいたしまして、今後はできるだけそういうことのないように総合的な水利計画というものが達成されるというようなことを基本にして、農地の復旧には努めていきたいと考えております。
  260. 滝井義高

    滝井委員 農地局はそういうことをどういう工合に指導しておりますか。
  261. 正井保之

    ○正井説明員 ただいま石炭局長から御答弁がございましたが、私どもも農地の復旧は従前の機能を回復するというところに主眼点がございますので、特に水利につきましては、用水、排水ともただ当該問題になっておる地区だけではなくて、関連した耕地あるいは鉱害復旧を要する水田等との連関において考えなければなりませんので、そういったことを当然留意して計画を立てる建前になっております。ただいまお話しのように、打ち切り補償のところと、あるいは施設等についての復旧をするところとが無関係に入りまじりましては、非常にむだが生じましたり、あるいは機能の回復という点でまずい点が出て参りますので、そういったことにつきましては当然配慮をいたしておると思いますけれども、一そうただいま御指摘のような点につきましては不都合のないように、やや広い範囲にわたって計画等を立てて参りたい、十分現地の機関にも指導いたしたいというふうに考えております。
  262. 滝井義高

    滝井委員 農地の復旧については、ことに水田の復旧については、一貫した指導を一つやってもらいたいと思うのです。  次にもう一ぺん六十六条のところにちょっと返りますが、これは無資力になった場合に農地は復旧をするわけですね。無資力でも国が肩がわりをしてやってくれるわけです。ところが問題は畑です。畑のうちでも特に果樹、たとえばナシ畑あるいはブドウ畑ですね、こういう果樹のある畑というものは救済のしょうがないんですよ。六十六条を適用した場合に、農地は復旧するが、畑については復旧の方法がないのです。畑は、別に少し凹凸があったって作れるわけです。ナシ畑に凹凸があったって作れるわけです。ところが同じ農産物を作る農地というものはきれいにやってくれるけれども、炭坑か下を掘って鉱害を与えたために、たとえば最盛期のナシがぐっと老齢になってしまうわけですね。従ってナシがならなくなる、ブドウがならなくなる、下から水分を吸い上げてしまうんですよ。こういう畑特に果樹に対する救済の方法というものは、全くないのです。一体こういう場合にどうするかということですよ。国土保全とおっしゃるけれども、農地の場合、稲の場合はなるほど稲を作れるようにしてくれるんですよ。ところがそこに樹木が植わっておる、ナシの木やブドウの木が植わっておる、これは国土保全の面からいっても、下を掘られてしまってうまくできないことになっておるんですよ。これについては六十六条は何もやらなくてもいいのかどうかという点ですね。
  263. 井上保

    ○井上説明員 御指摘の通り今の臨鉱法では、さっきも御説明いたしましたように、地盤の復旧ということで、農地の場合には復旧しないと機能が回復しない、ところが果樹園の場合には農地とその辺が違うというような考え方で、果樹園は今の臨鉱法の対象には入っておりません。非常にあれですが、そういうことになっております。
  264. 滝井義高

    滝井委員 農林省はこの法律を作るときに、そういう点までお考えになったのですか。農地でも水田は救済されていく、しかし畑で水のつかないところは救済の方法がないんですね。特にナシ畑、ブドウ畑、イチジク畑というようなものは、全く方法がないのです。そうして、しかも稲を作る水田と同じように、莫大な被害を受けておるんですよ。ところが今これについては何ら救済の方法がないんです。その法律を討議したり何かするときに、農林省としては一体これをどうするおつもりだったのか。これはただ立木が立って、そして自然に、ちょうどわれわれがけい肺になったりベンゾールの中毒になるのと同じような状態ですよ。これは自然に、地下を掘られて水がとられていく、脱水現象が起こっていく。ナシは太らない。そういうところのナシはごつごつした形で、味も何もない、幾ら肥料を入れたってこれはどうにもならぬという状態です。稲は毎年刈り取るものでしょう。片一方は毎年刈り取らないで、そこに長年木が立っておるということのためにどうして違えなきゃならぬか。私にはこれがわからないのです。
  265. 正井保之

    ○正井説明員 ただいま果樹園につきまして御指摘がございましたが、実は私果樹園につきましてまことに不勉強で、特に扱いからはずれておるということを承知いたしておりませんで、もっぱら今まで担当の方々と御相談をしたりする場合にも、水田のことがいつも頭にありましたから、そのことにつきましていろいろ試験をいたしましたり、予算措置をとって参りましたが、果樹園につきましては実は十分な認識を持っておりませんでしたので、ただいま通産省の方からお答えがございましたけれども、建前としまして、従前の耕地等がその生産力の減退を来たして生産に支障があったとすれば、これは何らか措置を必要とするのじゃないかというふうに考えますが、ただいま申し上げましたように、私自身この点につきまして十分勉強いたしておりませんので、なお実態をも調べまして、通産省の方とも連絡して検討してみたいと思います。
  266. 滝井義高

    滝井委員 私寡聞にして、ナシ畑やら普通の畑は国土でなくて、水田だけが国土なんという理論は聞いたことがないんですよ。だから国土保全というからには、ナシ畑はそこに二十年、三十年と植えておるものなんですから、これが減収を来たすというものなら、毎年植えて耕作をしていく稲なり麦が減収を来たしていくのと理論的には同じだと思うんですよ。ただそれが国土で、土を置くか置かぬかの違いなのです。その土を置くか置かぬかの違いだけでこんな差別待遇というものは、同じ国土でも私は何か大きな矛盾があると思うのです。迷惑料なんかは割合わかってきますけれども、具体的に農地の田と畑と、あるいは果樹園と比べてみたときに、この六十六条で救済する場合に一非常な矛盾が出てきておるということは、私の今の主張でおわかりになったと思うのです。これは早急に一つ検討になって、畑地にその分の補償を毎年出さなくても、たとえばたんぼに出す補償分を、一回畑に出してでも、私は理論的に合うのじゃないかと思うのですよ。それを全然同じ国土である畑なり果樹園が、稲、麦を作らないからといって差別待遇するのは、どうも私は納得がいかない。これはまあ、一つ通産省の方でもう少し御検討を願いたいと思うのです。  次は、前にも私は主張したことがあるのですが、今後二百八十万トンをお買い上げになる、さらに情勢によってはもっと買い上げなければならぬ状態が出てくると思うのです。その場合に合理化ということの趣旨でおやりになるならば、鉱区の分割買収、これはやはりおやめにならなければいかぬと思うのです。この前私がその質問をしたときに、あなたの方ではできるだけ御期待に沿うように行政措置でやると言ったのですが、一向にそれが行なわれないわけです。従って分割の買収が行なわれるとき、百万坪の鉱区を持っておると五万坪以上は分割をして適法な申請をすることができるわけですから、その鉱区を分割することができますね。そうしますと、百万坪の鉱区を今度はこま切れにしていくわけです。そうしてある部分は事業団に売る。ある部分は残しておく。そしてある部分は今度は新しく新坑をあけて掘っていくわけです。そうすると、買い上げの対象になったところの鉱区というものは安定をしたというので、みんなが打ち切りをもらい、あるいは臨鉱法にかけて復旧するわけです。ところが今度十万坪ある鉱区のまん中に鉱区を残して新坑を掘っていくわけです。そうしますと、今度は脱水陥落が買い上げになったところの鉱区に及んでくるわけです。これではまるきりさいの河原ですよ。せっかく打ち切りはしたわ、復旧はしたが、すぐお隣で新しく坑口を掘ってやるのですから、これでは坑口の開口の制限も何もあったものじゃないのです。売りに出した鉱区のすぐ隣を分割をして坑口を掘っていくのです。そうすると、こういう場合に、整備事業団の買い上げたところに脱水陥落が起こった場合には、一体だれが責任を持つか、これが大問題です。脱水陥落くらいになると、その付近に炭鉱が三つ四つあると——筑豊炭田のように古い鉱内は、どこもみな通じておるというようなところでは、話にならぬです。もう動いておる鉱業権者は、だれも責任持たぬですよ。そうすると、脱水陥落も整備事業団に行かざるを得ないという問題が起こってくるわけです。整備事業団に、あなたが買い上げたのだから、整備事業団が鉱業権者なんだから、あなたやって下さい、こういう言い方になるのですよ。こういう問題がもうすでに起こってきております。そればかりじゃなくて、今買い上げの申請をして、買い上げをして、君の家の鉱害は五十万円だ、君の家は二十万円だ、こういうようにずっともうその金額が決定をされた家が、最近になったら井戸水が出ないようになった、こういうのが出てきたわけです。脱水陥落のために、あなたが鉱業権者だろうと言っても、わしのところはそこは掘っておりません、こう言われたらそれまでです。そうかといって通産局に、一体どこの鉱害で起こったのだといっても、さあ通産局はその認定はなかなかわかりませんという。こういう状態が筑豊炭田の、すでに買い上げられた炭鉱のところに、あるいは今買い上げの申請中の炭鉱のところに至るところに、もう起こっておるわけです。こういう場合に対する鉱害の認定というものを、一体だれがどういう工合にしてくれるかということなんです。そこでわからなければ、さいぜん私が申しますように、全部整備事業団に行ってしまう。新しく鉱害が発生しました、だから一つ追加賠償してくれという工合になってしまう。そうすると、整備事業団は鉱業権者ですから何ともしようがない。全部をかぶらなければならないことになる。そこで私がさいぜん整備事業団は金が余っておるかどうかということを聞いたのは、そこなんです。それはあなたの石炭局の方で分割をして坑口を掘ることを許しておるのだから、その坑口にいったってやってくれなければ、買い上げた整備事業団に行かざるを得ないということになる。こういうものの指導方針は一体どういうふうにしておるかということです。
  267. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 昨年から若干取り扱いを変えまして、それまでは売山の申し込みをやったあと五条審査で適格かどうか審査が済むまでの間に鉱区を分割したりいろいろなことをすることを認めてきたのでございますが、昨年の四月から売山の申し込みをしたあとは、鉱区の分割といったようなことは認めない。とにかく初め売りに出しますと言ったものはそっくりまとめて売って、いいところだけを残すとか、あるいはいかにも被害の多いところだけを残して、被害の少ないところだけを売りに出すといったような勝手なことは許さないというふうな業務の運営方法をやることによって、今お話しのような弊害はできるだけ少なくするようにということをやっております。私、たしか昨年、できるなら申し込む前の一年くらいの間に、分割したようなものは買わないのだということにしたいということも申し上げたいと思ったのでございますが、実際問題としてそれもその点で一つやれないかということを中で検討したわけでございますが、鉱区の分割といったものは、事業団に売るときに最も有利な売り方をしてやれといったような意味で分割されることは、むしろ非常にたちの悪い人間が行なう例外的なことであって、鉱区の分割という鉱業法上認められた基本的な問題を、事業団の買収ということ自体にひっかけて、一年前から規制するということは非常に無理ではないかということから、せめて申し込んで以後はそういう勝手を許さないということにして、今取り締まっておるわけでございます。今お話しのような脱水陥落といったものが起こりました場合、これはわれわれといたしましては因果関係をはっきりさして、これは事業団のあれじゃなくて、とにかく隣で掘ったやつのために脱水陥落が起こったのだといったような因果関係をはっきりさせ得るものは、できるだけはっきりさせることによって、その行為者に損害賠償をさせるという方法でいきたいと思っておりますが、実際問題として非常にそれがむずかしいということになりますれば、大体事業団に売却を申し込むといった面は、何だかんだということで、煮ても焼いても食えないような人間も中には相当おるというのが実情じゃないかと考えられます。最終的にはやはり自分の責任じゃない、向こうの責任だということが積極的に証明されぬ限りは、これははなはだわれわれとしては不本意でございますが、一応その鉱区を買った鉱業権者として整備事業団の方で責任を負わざるを得ないのじゃないか、そういうふうに考えます。
  268. 滝井義高

    滝井委員 こういう場合が出てくるわけです。たとえば申請です。ことしの一月に申請をした。その申請をしたときには、私の家には井戸の水がありますから大丈夫です。井戸の打ち切りその他はもうわずかな迷惑料でよろしい。こういうことで話がついた。ところが四カ月たちましたら、井戸の水がなくなってしまった。さあこれは一体どこの原因で起こったのだ、動いておる炭鉱というのは二つ三つありますから、どれかわからない。おそらくあれだろう、Aという炭鉱だろうというので、そのAに行っても、いやわしのところはそこは掘っておりません、こうなるわけです。そうしますと、その井戸の打ち切りも何もみんな終わって、話がついたものを、今度は寝た子が起きなければならぬことになるわけです。これはまだ整備事業団には買い上げになっていない、鉱業権者と話がついたが、途中なくなってしまった、そのものの所属する鉱業権者はやめてしまっておるのですから持っていきようがない、こういう場合が出てきておるわけです。こういうように、鉱区が分割をされて、その附近の一連の申請者の中におるということ自体が問題です。そこで、今あなたが言われるように、一年前からそれを制限することは無理だ、こうおっしゃるならば、その鉱害のしりをぬぐってくれるものは一体だれなのか、こういうことをはっきりしなければならないわけです。そうすると、結局井戸の水のかれた本人はそこの鉱業権者に行かざるを得ないことにたってしまう、ところが、鉱業権者との話し合いがなかなかつかなくなるわけです。話し合いをしたときには、君、一万なら一万の井戸の打ち切り迷惑料を取ったじゃないか、そして鉱害の登録までしたじゃないか、ところが今になってと、こういう問題が至るところに出てきておるわけです。だから、これは分割をせずに、そこらに全部炭鉱をやっていないというなら話はわかるわけです。どこから来たかわからぬ、だから、鉱業権者はあなたのところの問題だから見なさいということも言えるのですが、実際動いている炭鉱が近くにあるということから問題になってくるということです。この原因は一にかかってもとの鉱業権者というあのが分割をして新しく炭鉱をそこに始めるということから起こってくる、これが一番大きな原因です。それが一つならいいけれども、二つも三つも近傍にできてくる、しかも、ちゃちな小山ができてくるということになると非常な問題なんです。こういうものに対する指導というものは、今後やはり厳正にやってもらわなければいかぬと思うのです。石炭合理化という高い見地から考えても当然だと思うのです。ぜひ一つやってもらいたいと思う。  そこで、水の問題が出たので、ついでに水道の問題に移りたいと思うのですが、被害者が買い上げられた炭鉱の水の問題を処理するときには、一体どういう方法で処理したらいいかということなんです。炭鉱をやめますと水というものは大体復活してくるのが常識です。ところが、復活をしてくる水というものはいわゆる金け水ですね。それからその土地に亀裂が入っておりますから、雨が降るとすぐ井戸の水が濁ってしまうのです。被害者の側は、こんな濁り水、金けくさい水はわれわれは飲めませんと、こう言うのです。鉱業権者の方は、いや、おれは炭鉱をやめたのだ、水は復活したのだから、そんなものはやる必要はない、こうなる。そこで対立が出てくるわけです。その場合のあなた方の指導の仕方というものはどういうことになるのですか。御存じの通り、最近水道法が新しくできましたために、ちゃちな水道ではだめなんです。二、三千人の給水をやる水道ということになると、千万ぐらいすぐかかるのです。そうすると、千万の現金を、買い上げられた炭鉱業者というものが身銭を切るか、あるいは買い上げられた鉱区の代金から払うかという問題になってくるのですが、なかなかこれは出さないわけです。こういう場合の指導の仕方というものは、一体どういう工合におやりになっておるのかということです。これは黙っておって買い上げになる、そうしてあとから水が金け水だ、あるいは雨が降ると水が濁って飲めません、整備事業団やって下さい、こういうことで言うことも一つの方法だと思います。しかし、そういうけちなことはわれわれとしても指導したくない。とすると、ここで水の問題に対する指導方針というものを出さなければいかぬと思う。今までは炭鉱の水道があった。ところが、売山になってやめてしまえば炭鉱の水道はなくなるわけです。井戸水になる。こういう基本的な指導方針というものは、一体あなた方はどうやっておるのかということです。
  269. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 水道にも種類がございまして、鉱害水道と、一般の水道とあるわけでございますが、鉱害水道の方は、これは鉱業権者が自分が石炭を掘ったために水がかれて、それでは住民の生活にも困るということで、鉱害賠償の一つの方法として水道を作って水を供給するということになるわけでございますので、そういうものにつきましては、従来からこの種の水道を維持管理するに要する費用といったようなものを、被害者あるいは市町村に対して払わせる、あるいは事業団で買い上げるという場合には、その買上代金からそれだけ引いて市町村の方に渡して、そうして鉱業権者としての責任を十二分に果たせるように、維持管理の費用を先に差し引いて渡すということを、現在やっておるはずでございます。ただ、鉱害水道でない一般の炭住水道といったような場合に、炭鉱をやめるということによる問題が出てきておると思うのでございますが、これにつきましては、一般の市民に鉱害水道として賠償の意味で引いておるものと違いまして、そこの炭鉱住宅だけのために引いておる水道ということになりますと、これはその炭鉱が自分が採炭をやめたあとは、むしろ山としてその炭住も処理するということを本則とするという格好になりますので、それらの炭鉱に引かれておる専用水道について従来通りの管理が必ずしもうまくいかないといったようなおそれが出てくるわけでございますが、われわれといたしましては、できるだけ地元の市町村にその水道を譲渡するということで、地元の公共団体が今後は管理の責任を持っていただくということを希望して、できるだけ地元の市町村と話し合いをするようにということで、事業団の買い上げましたものについては指導いたしております。
  270. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、事業団としては、鉱害水道なりがその地区にあるという場合には、有無を言わさず鉱業権者から水道の料金を差し引いてやるという方針なんですか。水道の料金というか、水道の建設の費用です。これを差し引くという方針で大体指導されておるのですか。
  271. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 鉱害水道につきましては、とにかく鉱業権者として当然責任を負って、石炭を掘ったために、その付近一般の人々の水に御迷惑をかけたということでございますので、買収代金から先にその必要な管理費を差し引いてでも渡さなければならないと考えますが、炭住水道ということで、炭鉱を掘るために炭鉱の従業員だけに給水するという目的で使われておるものは、炭鉱が石炭の採掘をやめれば、それで大体給水するという義務はなくなるはずでございます。あとの方の場合につきましては、強制的に差し引いて云々ということはできかねると思いますが、結局、今までは炭鉱の社員だった。今後は、炭鉱はつぶれた。しかしそこの町の住民であり、村の住民であることは変わらないわけでございますし、これはわれわれとしましては、地元の市町村が、自分のところの住民であり、あるいは町民であるという者に対する給水施設の万全を期するという意味で、管理していただくようにということを希望しておるわけでございまして、そのためには、必ずしも十分とはいえないと思いますが、ある程度の必要な資金というものは買上代金の中から差し引いて、当該市町村等に交付するといったような手続をとりたいというふうに考えております。
  272. 滝井義高

    滝井委員 大体水道は専用水道オンリーではないわけです。大体鉱害水道と専用水道というものが一つの水源地から行っているのが、われわれが筑豊炭田を見ると多いのです。従ってその場合に、整備事業団が水道を買い上げるというときは、いつかもお話したことがありますが、その当該市町村が引き受けるか、あるいは水道の鉄管とかモーター等の機械類が引き上げられて、いつでも検収できる、こういう形になったときに水道を買い上げるというのが整備事業団の方針にあるのです。そうすると前者の市町村か引き受けるという場合に、整備事業団の買い上げる水道というものは、どういうものかというと、炭鉱の住宅に行っておる水道は買い上げないのですね。そこの部分は買い上げないのです。そして鉱害部分だけを買い上げるわけです。これは炭住の買収の問題とも関連してくるのですが、炭住が買い上げられないときにはますますそういう傾向が出てくるのです。そうしますと、これは世にも不思議なことになってくるのですよ。水源地というものは一つです。ああいう大きな鉄管を通してずっと出てきて、途中からブランチが出て、炭住と鉱害地と分かれているわけでしょう。そうすると、一つのブランチから炭住に行っている部分は買い上げません、そして水源地からこっちの方に行っている部分は買い上げます、こういう形になるのです。ところが市にしてみれば、炭住の住民だって被害地の住民だって、市民であること、町村民であることには変わりはないわけです。こういう形が出るわけです。ここらの指導をあまりしゃくし定木的なやり方で買い上げの仕事をやっておると、なかなかむずかしい問題が出てくるのです。こういう場合に一体どういう工合に御指導されるのかということです。そういう場合が一つです。それからもう一つは、地下水というものの流れは非常に不思議です。だから一つの鉱害の水道の行っているブロック、一地帯でも、その南の端は、掘ってみたところが、昔と同じような清らかな水が出てくる。雨が降ろうと風が吹こうと、水がちっとも変わらぬ。ところが他の地区は、雨が降ったらすぐ濁る。天気のときは水が澄んでおるけれども、雨が降ったら濁ごる。あるいは非常に激しい金け水が出てくる。これは石炭の間を通って出てくる水ですから、金けくさいわけです。というように地域によって違ってくるわけです。そうすると、百戸あるうちに十軒については非常にいい水が出るから水道は要りません。現金をもらった方がいい。将来水道が引けたときに水道料を払わなければならないから、現金をくれたら打ち切ってよろしい。あとの九十軒というものは絶対水道がなければならない。こういうことになるのです。その地域の住民の意向がまっ二つに分かれるという場合も出てくるわけです。こういう場合の水道というものは一体どうするかというのが、われわれの当面している一番大きな悩みです。住民が二つに分かれてしまうのです。一つは三万円くれたら打ち切ってよろしい、わしのうちの井戸はりっぱな水が出る。片一方は井戸を掘ってもだめだ、水道にしてくれ、こういうことになりますと、炭鉱も困るのです。と言って、水の出ない住民はますます困るわけです。そうして最近のように、途中で鉱区を分割して、新しく動く炭鉱ができてきまして、脱水陥落が起こるから、水の問題というものはますます不安定になってくるわけです。こういうものに対する具体的な、きちっと割り切った指導をしてもらわないと、現地の整備事業団では話がつかないのです。こういう場合にあなたの方では割り切って、鉱業権者から水道のお金を差し引きます。そして市町村にその金をやって、水道法に基づく市町村のりっぱな水道を作るのだということになっていくのかどうか。そしてその炭鉱住宅に住んでいる労務者については、これは別個に考えてもらったらいいと思うのです。その労務者が受益者として金を幾分出すか、あるいは市がそのかわりを見てやるか、何か割り切った問題の解決をしないと、この水道の問題が隘路になって買い上げの問題が進まぬということがわれわれのところにあるわけです。
  273. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 事業団が炭鉱を買い上げます際に、必ずしも水道まで全部買い上げることは義務ではございません。ただ鉱業権者の方が買ってくれといって申請してきた場合に買っているわけでございますが、その場合もわれわれといたしましては先ほど申しましたように、鉱害水道は鉱業権者にあくまでも責任があって、鉱害被害民に対する補償としてやったわけでございます。従ってそれにつきましては、今後も御迷惑をかけないようにという十分な運営の費用をつけて、市町村にお渡しするということで、今までも指導してきたつもりでございます。一般の炭住水道は、中には今お話のように鉱害水道と並用されているというものも多々あるようでございますが、それらのものにつきましてもわれわれは基本的には、水というものはそこに住んでいる方の生活に一番大切な、本元につながるものでございますので、これは衛生上非常に害があるといったような格好にならないように、必要最小限度の管理が行なわれるということを期待して、必要な措置ができるようにということで関係者の間をあっせんし、あるいはある程度の金をつけるということによって、地元の市町村に引き継いでいただくということを従来やってきましたし、また今後もそういうことで、ある程度不十分な点があれば、それは若干でも修理していただくというようなことについて——もちろん事業団が炭住を買ったから、あるいは施設を買ったから、そこの住民のめんどうを全部見なければならぬという全面的な義務を負わされるわけでございませんが、しかしほかにだれが行って責任を持ってやるのだといったときに、そういう責任の人がいないという限りにおきましては、これはやはり事業団でできるだけの親切な気持でめんどうを見ざるを得ないのではないかということから、買い上げ代金の中から、そういう水道等につきましては必要な経費を差し引いて、市の方に差し上げて措置するといったようなことで、できるだけ被害者と申しますか、水道を使っている方々が衛生上害のないような格好で水を飲むことができるように持っていきたいと考えております。
  274. 滝井義高

    滝井委員 水道の問題については一つぜひ十分な指導のいくようにしてもらいたいと思います。  これで終わりますが、今の水道の問題に関連して、炭住の買い上げが行なわれると、その炭住にいっている水道も一緒に買い上げやすいわけです。ところが炭住が買い上げられないと水道も買い上げられないという理論にもなってくるわけです。ところがその場合に関連して、炭住が買い上げられないと移住資金も出さないのです。山は買い上げられたけれども炭住だけは、たとえば土地がその炭鉱業者のものでないとか、いろいろな条件で炭住が買い上げられないと、移住資金をやらないのです。これは私は矛盾していると思うのです。炭鉱が閉山をしたら、炭住が買い上げられようと買い上げられまいと、労働者は仕事をする場所がなくなったのだから、どこかに移住しなければならない。だから移住資金は当然出さなければならぬと思いますが、ところが出さないのです。炭住が買い上げられないと出さぬのですが、この矛盾を直してもらいたいと思うのです。どうですか。
  275. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 昨年の五月から、炭住を明け渡して出ていただくという方には明け渡し料、並びに新しいところに行かれるわけでございますので、立ち上がり資金というものも要るだろうということで、二つをひっくるめまして、明け渡して下さった方には一万五千円の金を支給するという制度を採用したわけであります。その後昨年の臨時国会で援護会の発足を見、ことしの一月半ばからいよいよそれが動き出したわけでございまして、その援護会の方で移動資金というもののほかに、移住資金という制度も設けておりますので、移動資金と移住資金とをどういうふうにからませるかということで整理しました結果、大体炭住の明け渡しの際に出した一万五千円というものは、五千円が炭住の明け渡し資金であり、一万円が立ち上がり資金、あるいはいわゆる移住資金的な性質のものである、そういうふうに解釈いたしまして、そして移住資金と移動資金との一万円はダブらせないという格好に制度を改めて、今運用いたしております。従いまして炭住から、炭住を明け渡してすぐ東京なり大阪なりに出ていかれるという方には、明け渡し資金の五千円というものと援護会の方で支給いたします標準世帯だと十万円程度だと思いますが、移住資金を差し上げる、それからとりあえずは、移住資金の対象になるそういう産炭地以外でなくして、とりあえずすぐ近くに出て、とにかく炭住だけを明け渡したという方には、炭住を明け渡したときに五千円のほかに一万円の立ち上がり資金的なものも差し上げてございますが、それらの方々が一月以内、二、三週間はすぐ近くの百姓家かなんかにおったけれども、それからあらためて町の方に出ていったということになれば、そのときには原則的にはそこの移住資金が出るわけでございますので、前に差し上げた一万円は返していただくという建前を一応今とっております。ただこれは決して新しい移住資金から差し引くということはいたさない。これは差し押えの対象にもならないというふうに法律ははっきり書いてございますので、差し引くわけにはいきませんが、ちょっと家をあけて、そこからすぐ東京に行けば五千円しかもらえなかったけれども、何日かたってそれから東京に行ったために、ほかの人よりも一万円よけいもらったというのでは不公平でございますので、そういう方々に対しましては一応一万円は返していただきたいという経理上の整理事務はやっていきたいと考えております。
  276. 滝井義高

    滝井委員 私が言ったのは、少し局長さん混乱しておるのですが、私が今まで労働省その他に尋ねたところでは、援護会が出すところの移住資金と、それから事業団が炭住を買い上げられた労働者に対して出すものと、二本建てがあるわけです。この二本は併用するというのが労働省の見解だったのです。今のあなたのお説では援護会のものに一本に統一してしまうという意味ですか。
  277. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 私の説明が若干足らなかったと思いますが、労働省の方で申し上げました新しい法律による移住資金というのは、産炭地からそれ以外の地域に行くということであり、またその規定の適用を受けるいろいろな資格といったようなものもあるわけでございます。私が申し上げました移動資金の方は、どこに行こうがとにかく炭住を明け渡して下されば、五千円は立ち退き料として差し上げます。たとえば援護会の方の移住資金でございますと、産炭地以外のところに行くというときでないと金を払わぬというのですが、とにかく炭住を明け渡して出て行かれたという方には、たとい産炭地内であっても一万円だけ立ち上がり資金という意味で別途差し上げますということでございまして、もしまっすぐ移住資金がもらえる地域に出られた、産炭地以外に出られたというのであれば、援護会の方から標準世帯として十万円というような移住資金が出るわけでございますから、それとダブらせる必要はなかろう、そういうことで産炭地に行く方は五千円だけしか差し上げない、産炭地内に出る方には一万円だけ差し上げますということを申し上げたのです。
  278. 滝井義高

    滝井委員 その場合に、私の質問は、今まではそれは事業団から出すわけですから、事業団の方では炭住が買い上げられた場合にしか出さなかったのです。炭住が買い上げられなくても、山さえ買い上げられた場合には出すかどうかということです。炭鉱が買い上げられたら炭住も買い上げられなければだめなんです。だから炭鉱が買い上げられて炭住が買い上げられなくても出しますかということです。
  279. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 その意味の炭住明け渡し資金、立ち上がり資金というものは、炭住を買わぬ場合には出しません。その場合にはただ離職金として一カ月相当分の金を支払うということはいたしますが、買わない炭住でございますので、それに住んでおるといったような方については、そこの炭住を引き払って新たに出ていくときに、援護会の方でめんどうを見ていただくということにしまして、事業団の方は離職金だけで、その他の支給はしないという建前をとっております。
  280. 滝井義高

    滝井委員 それが理論的におかしいというのですよ、私は。炭住を買い上げられようと、買いあげられまいと、買い上げられた炭住だからすぐ出なければならぬということはないですよ。買い上げられた炭住でもおってもよろしいとなっておるのですから…。むしろ買い上げられない炭住の方が早く追い出されるのです。山はやめちゃった、お前たちの炭住はおれのものだから、おれは別に炭鉱を始めたのだから、新しい労働者を入れなければならぬから、君ら出ろといって、追い出されてしまう。いわゆる親方日の丸で、整備事業団に買い上げられた炭住からは追い出されやしないのです。逆になっておる。むしろ買い上げられた炭住の方には金を出さなくても、買い上げられない炭住の方に金を出してやることが必要なんです。必要性からいっても。私はその差別をつけよというのではないが、むしろ買い上げられない炭住にも出すべきだ。それは移動するときに出したらいい。移動しなければ出す必要はないが、移動するときには出したらいい。移動するのは同じですから……。同じ炭鉱に働いている労働者でしょう。これに出さない。私は初めは、買い上げられなくても出すんだと思っておったんですよ。ところが現地に行ってだんだん話しておると、私のところには金くれぬという。どうしてかというと、私は移動したいと思っても金をくれぬ。なぜか、うちの炭住は買い上げられておらぬと、こういうのですよ。これはどうも理論的に筋が通らぬと思うのです。そういうことになっておるから、これは少し御検討になっていただいて、私は、山が買い上げられてしまって、炭住が買い上げられようと買い上げられまいと、そこに労働者がおらずに出ていくということになったら一同じ待遇をしてやっても、ちっともさしつかえないじゃないかと思うのです。政府が金を出すのは労働者の分散政策として出すのだという御説明があったのですが、分散せしめるのだから、買い上げられた炭住から出ていこうと、買い上げられない炭住から出ていこうと、同じじゃないかと思うのです。どうですか、御検討いただきたいと思うのです。
  281. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 検討はいたしますが、しかし今の炭住の明け渡し資金というのは、金額にすると五千円——万五千円と申しましても、これはいきなり産炭地以外に出るというときには、事業団が買った財産の処理を促進するという意味で、できるだけ早く出て下さいとお願いする場合でございますので、明けていただいた方に五千円は差し上げようということをいっておるわけでございまして、それを全然買わない、もとの鉱業権者の財産で残っておるものを、その炭住にいつまでも置いてやれといって、前の鉱業権者に政府の方で指示するわけにもいきませんし、とにかくできるだけあたたかい気持で置いておいてやりたいと、こうは思いますが、しかし山だけ買って、全然自分の財産でないところに入っておるという人間にまで、事業団がめんどうを見るのがいいのか、あるいはそうでなしに、援護会と事業団と両方の、交付金と申しますか、支給する金を、できるだけダブらせないで、しかもできるだけ広い範囲の方に御満足いくようにという、両者が車の両輪のように活用されていくという建前から考えますと、これは事業団が買わない炭鉱にまで、炭住の明け渡し資金というのはちょっと筋が通らないのじゃないか。これは検討してみますが、もし出すにいたしましても……。(滝井委員「炭鉱は買うのですよ」と呼ぶ)援護会の方の系統で出した方がいいのか、事業団の方で出した方がいいのかということから、少し検討を進めてみたいと思います。
  282. 滝井義高

    滝井委員 どうも少し誤解しておられるようです。炭鉱は買うのです。その労働者の働いておる炭鉱は買い上げてしまうのですよ。ところが炭住は買わない場合があるのです。どうしてかというと、炭住を買うためには、そこの炭住に住んでおる労働者というものが全部AならAというその山に働いておる労働者であってほしい、できればその土地も鉱業権者のものであってほしいと、こういうことなんです。ところが炭住がありまして、長らく山を閉出して申請をしておる間に、その炭住にあきが出てくるのです。あきが出てきますと、その炭住には、住宅がありませんからいろいろな人が入っておるのです。たとえば私なら私が炭鉱をやっております。私が三つの炭鉱をやっておるとします。そして、私が一つの山だけを売りに出すわけです。そうしますと、今度は売りに出した山の労働者はだんだん移動していくから、そこに少し炭住に歯がこぼれたようにあきができてくる。そこで私は、今度もう二つの炭鉱の労働者をこの中に入れてしまう。そうすると、この炭住は買わない。なぜならば、買い上げの対象になったAという私の山の労働者が、全部入っていないから買わないわけです。そうすると、Aという山に勤めておる私の使っておった労働者は、たまたまその炭住にほかの者が住んでおったために、これは買い上げの対象にならない、こういう悲劇が起こってくるわけです。そこで、移動資金はもらえないわけです。働く場所は買い上げられたのだけれども、たまたま炭住がそういう事情のために買い上げにならない。これは労働者の罪じゃないでしょう。事業主の罪なんです。ところが、その隣の並びのやつはうまく買い上げられた、この並びは買い上げられないのだ同じ炭鉱の労働者でも、こういう場合が起こる。だからそういう不公平なことでなくて、その働いておった山が買い上げられたならば、その炭住が買い上げられなくてもお出しなさいということです。炭住の移動資金なんですから……。私は通勤者まで出せとは言いません。分散させるというならば、そこに労働者がいなくなるようにさしたらいいじゃないか、そういう意味です。山が買い上げられないのに移動資金を出せとは言いません。
  283. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 この問題は、先ほど申し上げましたように、検討いたしますが、一応明け渡し資金ということでやっておりますので、その本体である山が買われた者と買われない者とで差がついて非常にかわいそうだ、しかも、それは政府が、できるだけ産炭地から出ていくべきじゃないかといったようなことと矛盾するのではないかという点は、これは、検討するのであれば、援護会の方で、そういう政府の分散政策というものと矛盾する点をどういうふうにするかということで、むしろ検討すべきじゃないか。事業団が、自分の買い上げていない炭住の住人にまで、炭住の明け渡し資金というものを出すのは、何か筋が少し違うと思います。五千円よけいもらう方と、五千円少なくもらう方の差をどうするかというような点については、今のお話に基づきまして、どちらの団体でそういうことをやるのがいいのかといったようなことは、両省の間で至急相談してみたいと考えます。
  284. 滝井義高

    滝井委員 実はそういう措置をとったのは、今度援護会ができたからです。援護会の方は、炭住が買い上げられようと買い上げられまいと、金は出すことになったわけです。産炭地から産炭地以外に出ていけば、たとえば福岡から大阪なりへ出ていけば、十万円はくれるわけです。ところが、この制度が確立されたのは、今年の二月になってからです。この二月以前の状態を、私は今主として問題にしているのです。二月以前に炭鉱は買い上げられてしまったが、炭住だけはだめだというときに、離職金だけで、ほかは何ももらえない、こういうことです。だからその場合併用される、こういう意見も両省からあったのですから検討してくれ、こういうことです。  これできょうは終わります。
  285. 中村幸八

    中村委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明日午前十時理事会、午前十時十五分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後六時四分散会