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1960-03-29 第34回国会 衆議院 商工委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二十九日(火曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 中村 幸八君    理事 大島 秀一君 理事 小川 平二君    理事 小平 久雄君 理事 長谷川四郎君    理事 南  好雄君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君 理事 武藤 武雄君       岡本  茂君    西村 直己君       野田 武夫君    細田 義安君       渡邊 本治君    小林 正美君       櫻井 奎夫君    和田 博雄君       加藤 鐐造君    北條 秀一君       山下 榮二君  出席国務大臣         通商産業大臣  池田 勇人君  出席政府委員         通商産業政務次         官       内田 常雄君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君         中小企業庁長官 小山 雄二君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月二十八日  火薬類取締法の一部を改正する法律案内閣提  出第一一〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業業種別振興臨時措置法案内閣提出第  九一号)      ————◇—————
  2. 中村幸八

    中村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出商工会組織等に関する法律案中小企業業種別振興臨時措置法案小林正美君外十名提出商工会法案の三案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の通告があります。順次これを許します。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、中小企業業種別振興臨時措置法案につきまして、池田通産大臣に若干の質問をいたしたいと思います。  まず最初にお伺いいたしたいことは、政府は今国会中小企業振興法案を出すということを前から言っておられました。ところが、中小企業振興法案提出せられずに、本法案が出てきたのであります。本法案内容は、中小企業業態別調査手続ともいうべき手続法でございます。従って、最初中小企業業態別調査何とか法、こういった名称が考えられていたようでございますが、それがいつとはなしに振興臨時措置法というような名前あとにくっついたわけなんです。思うに、政府は本国会において中小企業振興法、いわゆる具体的な振興方策法律を出そうと言っておって、それが出せなかった。そこで、この業種別実態調査法、これをそのあと振興という名前をつけてごまかしたのであろうという感じが深いのであります。  そこで、まずお伺いいたしたいのは、中小企業振興法、具体的な振興政策制度化するところの振興法をなぜ出されなかったのか、そしてこの調査手続法とも言うべきものを振興法と名をかえた、これは今申したようなところに原因があると思うのですが、そういうようないきさつを一つ御説明願いたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 これは手続法とおっしゃいますが、私としては振興に対する基本的なものであると考えておるのであります。為替貿易自由化がだんだんと進んで参りますと、業種別にいろいろ近代化、あるいは技術振興等業種別に考えていかなければならない、そのときに、政府がこうやったらどうかという勧告規定等を置きまして、そして業種別振興を考えていく、これがそのもとになるものでございます。経過と申しますが、別に大して経過はないので、こういう考え方で進んでいったらどうかというので御審議を願っているわけでございます。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 今大臣はお聞きのような答弁をせられたわけなんですが、最初中小企業振興法を出そう、こういうことだったのでしょう。振興法というならば、私は具体的に中小企業振興についてこういう施策をやるのだ、こういうことだろうと思うのです。これは私は調査手続法だと言ったら、大臣はそうとは思わぬ、こうおっしゃったのですが、この内容を見ますと、中小企業振興審議会を設けてやるという以外はほとんど手続法なんです。私はそう考えるのですが、どうなんです。
  6. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 中小企業振興法とおっしゃいますのは、民間の一部にはそういう法律を制定してくれという要望があったことは事実でございます。その内容といたしまして、特に大企業中小企業分野調整の問題とか、元請、下請関係の規律の問題だとか、あるいは官公需中小企業に優先的に確保するという問題を含めた振興法を出してくれという要望のあったことは事実でありまして、それらの問題について、私どもといたしましては事務的にいろいろ検討を重ねたことは事実でございますが、いろいろ問題がありますし、まず基本的に実態調査をし、業種別対策を立て、あるいは勧告等によってその実施を確保していくという方法でやっていくべきだということになりまして、政府の案といたしましては今回提出いたしました案でまとまっている、こういうことでございます。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 今長官が言ったように、業界においては中小企業者はこの力強い具体的な振興政策ということを期待しているわけなんです。従って中小企案振興法の制定ということを、声を大にして陳情したと思うのです。それにあたって、そういう具体的振興策をとるに先だって、中小企業と一口に言っても多種多様である、そこでこのような調査をまずやるのだ、こういうことであるなら一応わからぬことはないのだが、しかしそれだけをやっておいて具体的な振興政策というものがあと回しになっている、このように考えるのですが、それならなぜ一緒にやらないのか、調査と同時に振興対策がもっと具体的にとれるような方法にしなかったのか、さらに大臣にお伺いいたします。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 具体的振興方策につきましてはいろいろ考えなければならぬ点が多いと思います。しかしそれを考えるだけで、スタートがおくれてもいけませんので、こういうものでまずスタートいたしまして、今後の情勢によってそういうことを考えていきたいと思っております。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 そういたしますと、まずこの調査法ともいうべきもので多種多様の中小企業実態調査し、それを把握し、その上に立って具体的な振興政策を考えていく、このように理解したいのですが、それでいいですか。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう考え方で進んでいきたいと思います。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣は、本法案提案説明の中におきましても、「大企業中小企業との経営格差を早急に改善し、産業の均衝した発展をはかることが最も緊要である」云々と言われておりまして、現在のいわゆる大企業中小企業との間に経営格差がある。このことは認めておられるわけですが、この中小企業と大企業との間のいわゆる格差というのはどういうところからきているのですか。大臣はどのように分析しておられますか。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、資本の点、技術の点等々がそのもとでございます。私は、その資本技術あるいは設備等につきまして、できるだけの助成方策を講じて、その格差を少なくしていきたい、こういうことでございます。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 この大企業中小企業格差は、大臣がおっしゃった資本技術そういうのも一つであろうと思いますが、私は、保守党政府経済政策格差をますます大にせしめた、このように見ておるのであります。たとえば税金の面におきましても、租税特別措置法等で大企業を大きく保護しておる。あるいは財政投融資の面を見ましても、大企業の方へ安い資金が流れておる。また、一般予算関係を見ましても、本年の予算土建屋軍需工場予算だといわれておるように、政府のしておるところの政策が、大企業の擁護を予算面あるいは税金面でなされているだけでなく、その施策におきましても、保護関税とかあるいは独禁法の緩和、こういったような方法によって、大企業をますます擁護し、そして中小企業にはそれほど目をかけなかったことが、格差をだんだん大きくせしめたのだと思うのです。いつもいわれることでありますが、たとえば零細企業に対する、中小企業協同組合法の改正によって入れられました小組合に対する税制金融の特別の措置等につきましても、特に考えられていない、こういったような政府政策、そこから大きな原因がきていると思うのですが、いかがでしょうか。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 日本復興を早くするために、その当初におきましては、どうしても大企業の方に力がいくことは、私は自然の勢いだと思います。しかし、一定のところまで参りますると、今度はやはり中小あるいは零細企業の方に主力を注いでいく、これは経済発展順序ではないかと私は考える。従って、今の日本といたしましては、もう今後は中小零細企業にうんと力を入れていく情勢になった、こう私は考えております。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣は、経済発展順序として、まず大企業独占企業を擁護してこれを大きくせしめる、そしてそのあと中小企業、こういうように今おっしゃったのですか。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 やはり基幹産業の方をまず整えていく。何も中小企業あとにするというわけではございません。どちらかといったら、自然の勢いがそうなりがちだ。そこで、中小企業について意を用いておりますけれども、今後は主力を大部分中小企業に持っていくべきだ、こういう考え方でございます。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 まず戦後の復興に当たって、基幹産業重点的に施策を持っていく。こういうことはわからぬこともないのですが、あまりにも今まではそれが目立っておった。今大臣も言われたのですが、過去はともかくとして、これからは、大企業は一応安定し、ひとり歩きができるようになったのだから、中小企業に対して特別な施策を持っていく、これは理解いたしたいと思いますが、品だけではだめなので、具体的にどのようなことを考えておるのか、こういうことになるわけです。ところが、今も申しましたように、中小企業振興法を出す、こういうように大きく大上段に振りかぶっておられて出てきたのがこのような実態調査法の域を出ないといったところに、われわれは不満があるわけなんです。具体的な中小企業振興政策というものにこれから意を用いていく、またその方に今後はだんだん重点を置く、こういうふうに言われているのですが、もう一ぺん具体的にどういうように考えておられるかお伺いいたしたいと思います。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 過去十年間の状況をごらんいただきましても、相当中小企業の方には、あるいは国民金融公庫、商工中金、中小企業金融公庫、また信用保証制度拡充強化設備近代化等々いろいろ施策を講じてきているのであります。しかし、まだ十分ではございません。従って、財政投融資をごらんいただきましても、過去をずっと振り返ってみると、大企業よりもだんだん中小企業の方面に進んでいると私は見ておるのであります。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 だんだん進んでいっているように思う、こういうことですが、私は、具体的にこうやるのだという強いところを知りたいと思うのです。それはあとにしまして、先日小林委員の若干触れていたようですが、中小企業税金を負担している面と、中小企業が国の予算によって恩恵を受けている面、これを一ぺん比較してみたいと思うのです。先日小林委員もちょっと触れておったのですが、昭和三十二年の中小企業租税負担額はどの程度かということを一ぺん調べてみたのです。資本金一千万円以下、これを一応中小企業といわれているが、それを見ましたら、法人税におきまして、全体の三〇%の九百五十七億四千八百万円納税しております。申告所得者営業所得者所得税額が三百七億四千八百万円、合わして千二百六十四億九千六百万円というのが三十二年度におけるいわゆる中小企業の納めた税金なんです。その年中小企業に対して一般会計から出されたものは全部で十八億四千九百万円、政府関係金融機関への政府出資は、中小企業金融公庫、国民金融公庫合わせまして四百億なんです。こういう状態から三十五年度の推定をいたしますと、資本金一千万円以下の中小企業の負担する法人税は千三百二十億円程度になるではなかろうか。申告所得者中の営業所得者所得税額は三百二十億程度になり、合わせて千六百五十億程度税金中小企業者が負担する、このように思われます。それに対して、本年度の中小企業に対する予算は二十五億八千百万円程度であります。先日大臣は、税金をこれだけ納めたからこれだけ還元しなくてはならぬということは当たらない、そうならば税金を納めないものには一文も出さなくてもよいのか、こういうような趣旨のことを言われた。それはそうだと私は思うのです。しかし、この租税負担能力と還元とを見た場合に、あまりにも差が大きいと思うのです。これは中小企業庁長官の方にお伺いいたしますが、ここ数年間中小企業の納めた税が中小企業施策として返ってきた一般会計あるいはその他の支出、これが全体の予算の何パーセントに当たっておるか。さらに、大企業といわれる企業の納めた税金及びこれに対する一般会計からの支出、これが全体の何パーセントに当たっているかということを、直ちにここで説明できたらけっこうですが、なかったら資料として要求いたします。
  20. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 ただいまお話の中にありましたように、たとえば資本金は一千万円で切る、そのときに従業者の数でいくか——中小企業定義は、御存じのように、従業者の数でいったり資本金額でいったりしております。従って、中小企業のつかみ方と大企業のつかみ方にいろいろな見方がございます。また、税負担を考える場合に、いろいろな税がございますが、直接税はそういう意味の比較はできますけれども、間接的なものになりますと、大企業のもの、中小企業のものとはっきり分ける分け方が非常にむずかしゅうございまして、的確な資料はなかなか出しにくいのでございますが、私どもとしましても、いろいろ研究しておりますので、大ざっぱなところに前提を置いてごらんを願わなければいけないような資料ならございます。いずれ提出いたします。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 それの前提を、たとえば資本金一千万円、従業員三百人以下の場合、これこれこれと、そういう前提はもちろんなければ調べられないのですが、それでけっこうですが、ありますか。
  22. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 いろいろな前提を置きました大ざっぱな資料なら提出いたしたいと思います。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 今説明できますか。
  24. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 あとからです。
  25. 田中武夫

    田中(武)委員 それではそれに追加して要求いたしますが、まず資本金一千万円以下、従業員三百人以下のところ、これが一応の中小企業定義だと思います。それから今問題になっている商工会法定義からいうと、工業二十名、商業サービス業五名以下ということになっている。そこに一つの線を引いて、この二つについて、今申しましたように納税金額、それが予算面に還元せられるところの金額、さらに大企業といわれるところにおける同じような納税金額と還元せられるもの、これが全予算の何%になるか、これを一つ出していただきたいと思います。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 今の税務統計で参りますと、資本金別はやっておりますが、従業員別はやっておりませんから、出にくいと思います。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 資本金別でけっこうです。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 今の使用人なんぼ商業工業と分けている、こういう税務統計はございませんから、これはできないと思います。
  29. 田中武夫

    田中(武)委員 それではおっしゃるように、従業員でできないのだったら、一千万円というところで引いただけでもけっこうです。でも推定か何かができるんじゃないかと思うのです。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 できません。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 できぬものは言うてもしょうがない。それでは資料は、そういうことでできるということを前提として、無理は申しませんから出していただくことにいたします。  次に、この法案提案説明の中ででも、大臣も、中小企業と大企業との間に「特に技術革新の急速な進展、貿易及び為替自由化等に伴う経済情勢の変化が行なわれつつある現段階においては」云々、こういうように申されておるので、この法案によって業種をきめて、そして法律に定められているような、たとえば設備合理化とか技術及び技能の向上とか、いろいろと三条の一項に一号から七号まで掲げてあるようなことをやろうというわけなんです。すでに御承知のように、為替自由化あるいは技術革新というのはどんどん進んでおる。むしろそういうことは今からではもうおそ過ぎるんじゃないかというような感もするわけなんですが、ここに掲げられておるような、たとえば今申しました三条の一項の一から七に掲げられておるようなことは、もうすでに今日までこの法律がなくても行政指導としてやってこられたと思うのですが、具体的にこの法律の以前にどのようなことをしてこられたか、お伺いいたします。
  32. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 中小企業対策といたしましては、たとえば山小企業庁ができましてからも、ここ十年たっております。その間いろいろ中小企業振興制度その他が各般考え方に立って実行されておるわけであります。たとえばここに書いてあります事項の中で、経営合理化の面につきましては、いわゆる中小企業診断制度中心といたしまして、経営合理化を勧奨していく。それから設備合理化につきましては、設備近代化資金助成制度あるいは中小企業金融公庫による中小企業向け設備資金の融資の制度等があるわけであります。それから技術技能の問題、品質改善問題等につきましては、これも診断制度中心としてやりますとともに、直接中小企業技術指導に当たりますために、各都道府県の試験場を活用いたしまして、試験場に国からも補助をいたしまして、機械設備その他試験設備を更新し、またそれを中心とした一つ技術指導ということをやっております。それから共同施設につきましては、いわゆる協同組合設置を勧奨いたしまして、協同組合中心として共同施設をやり、これに補助金を従来毎年補助をする、こういうことで共同施設等設置を勧奨しております。こういうことで各般事項にわたって従来からもやっております。
  33. 田中武夫

    田中(武)委員 今まで行政指導として各般にわたってやってきたものを、特に法律によってやろうとするのには、どういうところに根拠があるのですか。
  34. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 今回業種別対策を考えました一つの根本的なねらいは、従来今申しましたいろいろな中小企業制度というものが、そういう制度を設けましたが、中小企業を非常に平面的に、十ぱ一からげに見ておる、そういう制度がありまして、それを利用するのは、あらゆる業種また階層の中小企業が、それぞれその必要に応じてそれを利用していくわけでありますが、またそれを利用していければ、それなり効果が上がっていっておるわけでありますが、最近の情勢を見ますと、中小企業の中でも、一つは非常に中と小と零細のものとの格差がひどい、ますますひどくなる傾向があるということで、小規模事業対策を考えます一方、産業別に見ましても、非常にひなたの産業と日の当たらぬ産業があるというようなこと、あるいは輸出関係を見ましても、輸出を大いに伸ばしておる、あるいは伸びそうな産業と、あるいはもっと手を尽くせば伸びていく産業と、あるいはもっと手を尽くさなければなかなか伸びにくい産業と、いろいろ業種別に違うわけでありまして、そこらの実態をもうちょっと把握して、それぞれそれに重点を置いて、それに即応する対策を立てていくというところがねらいでありまして、今度業種別にいろいろ改善事項が見つけられますと、従来の対策をそこに重点的に総合的に当てはめていく、こういう考え方であります。
  35. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、今まではその実態を把握できないままに、手探りでやっておった、そういうことですか。
  36. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 手探りではないわけであります。個別の企業のそれぞれのその制度を利用する必要性というものはよく見きわめて、またそれなり効果は上がっておったわけでありますが、それをもうちょっと業種別重点的に当てはめていきたい、こういう考えであります。
  37. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほどから私が申し上げておるのは、これを悪いと言っておるのではないのです。もっと早くやるべきではなかったか、おそ過ぎるではないか、そういうことなんです。大臣も、この前に私申し上げたと思うのですが、技術刷新もどんどん進んでおる、貿易自由化もどんどんと進められつつある。この中において一番打撃を受けるのは、やはり基礎の弱い中小企業であろうと思うのです。そこで、それらのあらしに耐え得るように、まず中小企業に対する体質改善施策をしておいて、そのような施策あとにやるべきではないか、これは前にも申し上げましたが、一方に弱いものの基礎を直さずして自由化をやるということは、中小企業等に大きな打撃を与える、こういうことを申し上げたと思うのです。私この法律を見まして、葬式済んで医者話、六日のアヤメ十日の菊というような言葉がありますが、どうもそういったような感じを受けるのです。たとえばこの法律における中小企業振興審議会、この同じ名前のものが昭和三十一年の六月に内閣設置せられて、三十一年の末に答申を行なってそのまま解散になっております。そしてまた三十五年、ことしになって同じ名前のものを、この法律によって設置しようとしておられるわけなんです。その間三年間の空白があるわけです。もし言われるように中小企業に対する施策を常に考えておるというならば、三十一年の六月に内閣設置した中小企業振興審議会、これをただ一回切り答申でなぜ解散せしめたのか、空白の三年間何をしておったのか、こう言いたいのでありますが、三十一年六月の中小企業振興審議会を解散し、今日まで空白においておった理由をお伺いいたします。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 三十一年の中小企業振興審議会というのは、中小企業全体につきまして、どういう方策を考えたらいいかという審議会でございます。しこうしてこの法律に基づきまして、随時に各業種によって勧告したり何かしたりするのであります。その性質が違っておるのであります。
  39. 田中武夫

    田中(武)委員 もちろんこの前は任意に内閣に置いたのであって今度は法律によって置く、しかもこの法律に定められていることをやろうということで、制度が違うことはわかります。しかし大臣がおっしゃっておるように、中小企業に対して常に意を用いられておるなら、せっかく作った中小企業振興審議会を一回切り答申を出したからそれでほっておく、解散せしめたということでなく、存置してずっと続けて、そういった施策についての諮問等をなぜ行なってやってこなかったのか、三年間空白にしておったというところに、今申しましたように、今ではおそ過ぎる、六日のアヤメ十日の菊という感じがすると申し上げているのです。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 こういう場合は行政的にいろいろあると思うのでございます。たとえば税制調査会を設けまして、答申があったらそれは一応そこでやめる、こういうことでございまして、こういう中央の審議会案件を研究させて、そしてそれが済めばやめるのが普通でございます。ただ通産省といたしましては、中小企業振興というものは最も大きい仕事でございますので、審議会があるなしにかかわらず常に振興対策は練っておるわけでございます。
  41. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは三十一年六月、臨時設置して答申をして解散した、そのときの答申に基づいてどのような施策を行なったのか。
  42. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 三十一年六月にできました審議会は、閣議決定によって存続期間六カ月、それで今大臣が申されましたように、一定答申を行ないましてそのまま解散したわけでございます。その答申において答申されました事項のその後の実施状況を申し上げますと、一つ財政投融資関係でございます。これは従来財政投融資が大企業偏重のきらいがあるので中小企業にも大いにやれ、こういう意味答申でございます。これはその後いろいろ財政投融資中小企業向けに増強されておりますとともに、特に著しい特筆すべき事柄といたしましては、中小企業信用保険制度を改革いたしまして、これの拡充をはかったということであります。  それから中小企業の組織化の問題について答申がなされております。これにつきましては、この答申に基づきまして団体組織法が制定され、実施されておるわけであります。  それから中小企業合理化対策についていろいろ答申がなされております。これは従来からの診断制度技術指導制度、それから設備近代化及び共同施設補助制度、それから特別償還の制度等を含めまして、所要の事柄は中小企業振興助成法となって実現しているわけであります。  それから小売業の振興のための答申がいろいろあります。これが小売商業調整特別措置法となって実現されておわけであります。その他いろいろ答申がございまして、たとえば大企業中小企業の生産分野調整の問題、それから官公需中小企業向け確保を含めました販路開拓の問題等について答申がなされております。今申しましたような事柄については、具体的にはその後立法その他で措置されておりませんが、これらの点につきましては答申そのものも非常に抽象的で、簡単に、そういう点も少し目をつけて大いに努力しろというようなことでありまして、大企業中小企業の生産分野の問題、あるいは中小企業の販路確保の問題につきましては、私どもといたしましては、今回の業種別対策のいろいろの改善事項実施という面におきまして、これらの問題を当時の答申に応ずるような方向に改善して持って参りたい、こう考えておるわけであります。
  43. 田中武夫

    田中(武)委員 おっしゃるように、その答申に基づいて若干の法案も出たことは承知いたしております。しかし、そのできた法律が制定当時の目的に従って運営せられていないという面等もたくさんあります。たとえば小売商業調整特別措置法等につきまして、あとで具体的な例を申し上げたいと思います。今言われた中に、たとえば中小企業産業の分野の問題、販路の確保の問題等答申せられたまま具体的立法の段階に至っていない、ところがわれわれといたしましては、社会党の議員提出といたしまして、すでに過去三回以上にわたっておると思いますが、中小企業産業分野の確立につきましては中小企業分野確保に関する法律中小企業の販路等につきましては官公需中小企業需要確保に関する法律、こういった法律を出してきたわけでありますが、残念ながら成立に至っておりません。今国会におきましても、民社の方からですが、国会提出し当委員会に付託になっております。内容につきましては、まだ一緒におった当時に作ったものですから同じようなものですが、これは議員提出であり、委員会において審議せられるべき問題であろうと思いますが、こういう種の法案あるいは百貨店法の改正等も出ておる、こういうものについて大臣はどのような御所見を持っておられるか、ちょっとお伺いいたします。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 まだ内容を見ておりませんので、意見は差し控えたいと思います。
  45. 田中武夫

    田中(武)委員 お忙しいからそうかと思うのですが、当委員会に付託になっておる議員提出法案ぐらいは、たばこをのみながら、お茶を飲みながらでけっこうですから、見ておいていただきたいと思うのです。  それでは具体的な面に入っていきたいと思うのですが、本法案三条業種の指定、これはどのような基準で、どのようなものから指定をしていく御予定にあるのか、そしてその指定の数は、本年度は十五と聞いておりますが、これは五年間でしたかの臨時措置法ですが、前年どの程度を指定していくおつもりなのか、そういう点をお伺いいたしたいと思います。たとえばこの業種の指定の基準には、私どもの考えるところでは、中小企業によるのが適当な業種、あるいは輸出振興等について重要な部門、あるいは雇用の拡大に果たす役割の大きな業種、いろいろそういう基準があろうと思います。どういう基準、どのようなもの、そしてどのくらいお考えになっておるのか、これをお伺いいたします。
  46. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 この業種の選び方は相当むずかしい問題でもありますし、また大事な問題でもありますので、業種を具体的に選ぶ際には審議会にかけて選びたいと考えております。一般的に申しますと、業種別あるいは規模別にいろいろな面の格差が非常に大きい。今後の経済成長を考える場合、その業種を取り上げることが経済成長をスムーズに大きく伸ばす意味で大事だというような種類の業種をまず考えております。それは、具体的にはその業種輸出をもっと伸ばす、あるいはその業種を伸ばすことが産業構造の高度化に資するもの、それから中小企業対策上大事だ、たとえば貿易自由化に対処し、あるいは最低賃金制の実施拡大に対処し、あるいは技術の進展に対処し、そういうことにからんで中小企業業種を取り上げることが必要だという業種、それから中小企業の数が非常に多い、従業員の数が多い、雇用の問題にも関連しますが、そういう業種を選ぶ、一般的にはその三つの度合いを検討いたしまして、総合的に判断して参りたいと思います。業種の取り上げ方は、大体産業標準の分類の再分類、たとえば綿糸布織物業、スフ人絹織物業、そういう種類の選び方に大体したいと思います。ただそれにこだわるわけではありませんけれども、あるいはもっと再々分類でいく場合もあろうかと思いますし、もっと大きな分類で済む場合もあろうかと思いますが、大体はそういう分類で選んでいきたいと思います。数は予算的には大体実態調査に関する費用、その他の積算上本年度は十五業種ということになっております。五年間で七十五業種ということになります。これは全部の業種について五年間でやるわけにも参らないと思います。またある業種についてそういう対策をやって参りますと、行政庁の方でも、あるいは業界自体でも、そういうやり方になれて見習っていく。中小企業の体質改善とかあるいは振興というような一つの方向がわかってくるわけですから、全部の業種はやる必要はないと思いますけれども、ただ一年間十五業種では、われわれとしては少し少ないのじゃないかということで、来年度三十六年度以降は、もっと予算的にも業種をふやしていくような努力をいたしたい、こう考えております。
  47. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、大体一年十五種、それから十五種ずつ五年やるとなると七十五種。そこで中小企業振興審議会での答申の仕方は、今おっしゃったような抽象的な出し方をするのですか、具体的に今おっしゃったような範疇に入る業種を言って諮問するのか、どういうような格好になるのですか。それから先ほどもちょっと触れられたが、私はやはりこの段階においては、自由化の影響を大きく受ける面と、あるいは技術の後進性の強いところといろいろ出てくると思うのですが、これは実際の場合はどういうようにやる御予定なんですか。
  48. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 具体的な業種、何々業についてやるという諮問の仕方をしたいと思います。その理由づけをいろいろ説明した上で業種をきめて、これはいかがでございますかという諮問をいたします。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、一応本年度の十五種目は、具体的な種目として考えておられるわけですか。
  50. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 私どもといたしましては、その倍くらいの業種を選んで検討しております。十五の倍くらいを具体的に諮問したいと思います。
  51. 田中武夫

    田中(武)委員 それを先ほどおっしゃった三つの分類にして一項目に入るものが何種目、二項目に入るものが何種目、そういうことは出ておりますか。
  52. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 それまではまだ理由づけの分類はいたしておりません。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、この法案もそう急ぐ必要はないわけですね。商業部門については本法では適用を考えていないわけですね。
  54. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 建前としては、商業はもちろん入るわけであります。商業対策というのは製造業と違って、業種別に製造業とからんで問題になるものはもちろんございますが、ことに小売業等になりますと、小売業一般の取り扱い——そういう種類の取り扱い、対策を要する面が非常に多いわけであります。業種別に見でいく場合には大体製造業が主になると思います。今のところわれわれの考えておりますのは製造業であります。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、法律の建前からは商業部門ももちろん入るが、具体的に今考えておるのはいわゆる工業部門ということですね。そうしますと、先ほど三十一年六月の中小企業振興審議会答申によっていろいろの法案を出した、そういうふうにおっしゃったところで、商業部門についての問題ですが、小売商業調整特別措置法、これも三十一年六月の中小企業振興審議会答申によってできた法律一つなんです。これはできたがあまり効果を現わしていない、私そのときにこういうことを申し上げたのです。その一例として申し上げたいのですが、昨年のちょうど今ごろすったもんだででき上がった小売商業調整特別措置法の第十四条に基づく政令の指定、これは一体どういうものを指定しておられますか。ちょっと法文を読みますと、小売商業調整特別措置法の第十四条「政令で指定する物品の製造業者又は卸売業者であって、政令で指定する地域内において当該物品の小売業を営む者は、主務省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。その小売業を廃止したときも、同様とする。」このインデックスは「(製造業者等の小売業兼業の届出)」というのです。これによる地域及び業種の指定、これはどのようなものがなされておるのかということです。
  56. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 どうも失礼いたしました。小売商業調整特別措置法の十四条の政令の指定はまだいたしておりません。これは各都道府県を通じまして、いろいろ各地の実情に応ずる要望を出せということをいっておるわけなんでありますが、あるものについてはその必要を認めている面もあるようでございますが、なかなか選び方がむずかしいというようなことで、要望が出て参らないのでありまして、まだ指定いたしておりません。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣お聞きになりましたか。去年の今ごろは大臣は通産大臣でなかったのですが、ちょうど今国会における商工会法案と同じように、審査小委員会まで設けて作りました小売商業調整特別措置法であります。それが施行せられまして一年近くになりますが、政令の指定は行なわれていないということであります。中小企業に対していろいろと法律は出されるが、法律が十分に効果を現わしていない。そういうことはしばしば申し上げたいと思います。組織にいたしましても、屋上屋を重ねるような組織法もたくさん出ております。だが作ってしまってそのあと実施状況を見ておると、今言ったような状況であります。十四条の業種及び地域の指定がなされなかったのは、そのような状況がないからしなかったのか。する必要がないのでやらなかったのかといえば、そうではないのです。あるのです。もう一度なぜしなかったかという理由をお伺いいたします。
  58. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 個別にいろいろ話を聞いてみますと、ある程度そういう必要があると考えられる話も聞くのでありますけれども、先ほど申し上げましたように、各府県にそういう要望を出せという話を前からしているわけでありますが、具体的に出てこないわけであります。これはなかなか業種の取り上げ方もむずかしいし、ある業種だけ取り上げることもできない、取り上げるとすれば全部の業種を取り上げなければいかぬという関係もあるのだと思います。それからもう一つは、罰則がついておりません。従ってかりにやってみましても、実効が確保できるかどうかという危惧もあるかと思います。そういうわけで出てきませんので、今までまだ政令を出していない、こういう状況になっております。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 希望がなかったのではない。私はたくさん出ていると思います。なんならここで一例を申し上げたいと思いますが、それに対してこれはどなたか知らぬが、多分担当官だと思うのですが、この十四条はやってみてもあまり効果がない、そこで指定をする熱意がないというようなことを言ったそうです。そんならなぜ効果がない法律を作ったのか、こう申し上げたいし、あのときわれわれは違った考え方の修正案を出したはずです。そのときにこの十四条じゃもの足らぬということを言っておったが、つかないよりましだというのでこれを入れた。ところが使われていないというところに問題があると思います。  委員長、参議院の予算委員会大臣をということですが、私の質問はこれから大臣にだいぶ入るのですが、どうしましょうか。
  60. 中村幸八

    中村委員長 それでは午後一時まで暫時休憩いたします。     午前十一時三十八分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  61. 中村幸八

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続行いたします。田中武夫委員の質問に対しまして、池田通産大臣がお答えする予定になっておりましたが、先ほど参議院の予算委員会におきまして、不快の趣をもって病院に入られたそうであります。はなはだ遺憾でありますが御了承願います。それでは田中武夫君。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 今委員長が言われたように、大臣の出席を待って質問を継続する予定でありましたが、そのような事情で大臣が出てこられないので、政務次官その他の政府委員にかわって質問したいと思うのですが、その前に一言申し上げておきたいと思うのですが、特に委員長からの要請もあって、予算関連法案は早く審議を進めてもらいたい、こういうことであったので、われわれとしても委員会の運営に協力する意味で、午後一時からの再開に定刻の一時に参りました。ところが政府委員がそろわずに、今二時四分です。定刻におくれること一時間四分、そんなことなら政府委員として法案を成立せしめるに一体どれだけの熱意を持っておるかということを疑わざるを得ないのでありますが、どのくらいの熱意を持っておるか、ちょっと先に聞いてみましょう。
  63. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 田中委員からおしかりを受けまして、まことに恐縮に存じております。ちょうど法案の成立を希望いたしますもの、四月一日を控えまして、参議院の方の審議もございましたし、また先般田中委員も御参加の商工会に関する小委員の打ち合わせなどもございまして、ことに午前中の計画では、でき得べくんば大臣が当委員会に入られまして、私は参議院の商工委員会に行くという心づもりでおりましたが、にわかに大臣予算委員会の方に参らなければならぬことになりまして、さような手違いから本日は定刻に出席できませんで、まことに申しわけがございませんでした。私どもは、ひとり政府の立場ばかりでなしに、ただいま御審議中の法律案中小企業者多くに関係のある問題でございまして、予算はすでに通っておるのでありますから、予算関係などを伴うものにつきましては、できる限り早く予算の有効なる使用を期したい、かように考えまして、十分の熱意を持っておりまして、自今御期待に沿いたいと考えますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいま内田政務次官から弁明があったわけですが、このようにわれわれが定刻に来ておるのに、政府委員がそろっていないということであるならば、ことにわれわれ野党側としては今後審議に協力できないことを前もって申し上げておきます。  午前に引き続いて質問に入りたいと思うのですが、ちょうど切れたところが、小売商業調整特別措置法の十四条による地域及び業種の指定が行なわれていないという問題について、その理由をただしておるところであったと思うのです。あらためてもう一度、なぜ施行せられてから一年近くになるのに、地域及び業種の指定が今日まで行なわれなかったかということについてお伺いいたします。
  65. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 小売商業調整特別措置法は私も議員当時関係いたして参りまして、社会党方面からの修正意見をも入れまして、今御指摘の条文につきましては、たしか政府案を修正いたしてまでも入れた条文であると思います。従いまして、私はこの条章の施行について非常に大きな関心を持っておるのでございますが、この規定は、製造業者と卸売業者が小売業を兼営することの弊害が著しい場合に小売業者の領域を守ってやろう、こういう趣旨からでございますけれども、これを全国一円に施行することはもちろんできません。従いましてどのような業種をどのような地域について指定するかということに大きな問題があるわけでございます。この点につきましては、法律施行後一応政府がこれらの地域について問題が存するであろうというような地域を想定しまして、地方庁と打ち合わせを進めて参ってきておるのでありますけれども、何分にも製造業者あるいは卸売業者と小売業との兼営の問題はなかなか微妙な問題がありまして、地方庁でも思い切ってこれらの業種、これらの地域については兼営禁止を政令で指定してもらいたいという結論に到達していないようでございまして、従いましてこの指定の準備が十分整っておらないようでございます。私はそれに関して政務次官就任当時からこのことは気にいたしておるのでございまして、法律の規定にあります以上は、その適正な運営ができますように、でき得る限り早くその必要性の個所をつかまえまして、必要のあるものにつきましては今後指定をする等の方法を急いで参りたい、かように考えております。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 現にメーカーあるいは問屋の小売行為が行なわれて、著しく小売商を圧迫しておるという事態があることは御承知でしょうか。
  67. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 そういう部面のあることも感じております。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 現にあることを御承知ならば、なぜそこに対して行なわなかったのか、その理由はどういうことですか。
  69. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 経済は一貫性といいますか、製造、元売り、小売の段階が引き続いておりまして、なかなか一部面だけを切り離しまして、そして製造業者はそこだけでとまる、あるいは卸売業者はそこだけでとまるというようなことが従来長い間の商売のしきたり、また環境等の関係もありまして断ち切りがたいところに——理論上はおっしゃる通りでありますけれども、地方庁といたしましても、思い切って地方の状況から、この法律に書いてある通り指定をしてほしいという結論が出ない向きがあるのではないか、かように考えます。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 この十四条の趣旨は、特定の地域に対して特定の業種を指定するんですね。従って、たとえば東京都の、あるいは東京都のどこにおけるこういうものと、こういうことじゃないんですか。どういう指定の仕方をするんですか。
  71. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 その通りでございます。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 それなら、一例をここに申し上げたい。それは繊維の卸商の小売行為の実情であります。御承知と思いますが、東京では日本橋の横山町、馬喰町、堀留町等の繊維問屋街、あるいは大阪では丼池の繊維問屋街、こういうところでは、いわゆる問屋が卸小売行為をどんどんやっておる。そのためにその付近の小売商は大きな被害と圧迫を受けておる、こういう実情は御承知と思いますが、こういうのこそ、いわゆるこの十四条に言う指定地域並びに業種に該当するのではなかろうかと思うんですが、いかがでしょうか。
  73. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 ただいま田中委員は横山町の繊維問屋の小売兼営の問題をお取り上げになりましたが、その問題は、私は十分存じませんが、通産省の中小企業当局におきまして、ここで踏み切り得ない事情をも含んだ若干の中間調査的なものがあるようでございますから、今の横山町の問題に答えられればけっこうでありますが、その他の問題も合わせまして、これこれの地域にこれこれの——これは理論的には分離したらいいものもあるけれども、こういう事情の調査があるために踏み切れなかったというような調査の一端を説明をさしてみたいと思います。
  74. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 三十四年七月七日に小売商業調整特別措置法が施行になりまして、その際通牒で、一つこの政令で指定を必要とする向きは報告してくれということを依頼してあるわけであります。また三十四年の十月になりまして、これは今もいろいろお話のありますように、その実態をつかんでみなければならないということで、製造業者、卸売業者の小売行為の実態調査を各都道府県に依頼いたしました。この報告が全部はまだまとまっておりませんが、ある程度の報告は参っております。その際、ある府県からは若干の商品について問題がありはしないかというような報告がありますが、それを直ちに政令で指定してやっていくということには、そういう問題を報告している県も踏み切っていないというか、消極的な態度でありました。今お話の繊維の問屋が小売行為をして圧迫しているというお話でありますが、いろいろ業界によって違いますけれども、卸売業者は大体小売行為といっても、このくらいの数量がまとまらなければ売らないんだ、これ以下のものは売らないんだというような、それぞれ業界におきます何といいますか、取引慣習的なものがあるのが普通でございます。それがいろいろ景気変動その他の関係で、そういう慣習とかルールを破って、どんどん小売業をやっていくという形が出てきますと、おそらくこの政令指定をやって、報告をとって、それを監視していくということになろうかと思いますが、そこまでの実態が、たまたまそういう行為をするような者があっても、一般的にそこまでいっているという実態が割に少ない。そのために府県の方も、その必要を認めるというところまで踏み切れないというのではないか、こう考えております。
  75. 田中武夫

    田中(武)委員 この十四条は、府県がきめるんですか。政令で通産省がきめるんでしょう。
  76. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 政令で政府がきめるわけであります。ただ小売商業の事柄でありますので、地方別にいろいろ実態がそれぞれ変わり、いろいろ複雑だと考えられますので、都道府県に実態をつかむことと、なおそれについての意見を聞いて、それをもとにして指定するものだ、こう考えております。
  77. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、今具体的にあげました、東京では横山町とか大阪の丼池、こういうようなのは、ここでいう十四条には当たらないんですか。私は当然そういうのを頭に置きながら、この第十四条はできたんだと考えるのですが、こういうのが当たらないとするならば、一体どういう場合が当たるのです。それでなければ、十四条は空文だということになるのですが、どうです。
  78. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 先ほども申しましたように、一般的に問屋が従来の商慣習的なものを乗り越えて、どんどん小売をやっていくという形のものほどの実態はないということで、まだ指定しておらないわけでありまして、今の横山町、丼池等におきましても、そういう事態が出てきますと、おそらく指定をしなければいかぬということになろうかと思います。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 従来の商慣習を乗り越えてと、そういうことであるなら、今までやっておったことはそのままに置いておいていい、こういう考え方ですか。小売商業調整特別措置法は、従来においても、そういうことによって小売商が圧迫を受ける、そこでこういう法律を作って流通秩序を維持し、中小小売商の利益を守ってやろうというのが、この小売商業調整特別措置法の目的ではないんですか。従来やっておったことだから、そのままのことはそれでいいんだ、それよりもっとひどいことにならなければ、本法は発動しない、こういうような趣旨ですか。
  80. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 製造業者等の小売兼業の問題につきましては、十四条で届出制を規定しております。またそういうことでいろいろな紛争がありました場合には、十五条で都道府県知事等があっせん、調停するというような仕組みになっております。これらの規定が設けられました趣旨は、やはり従来の流通秩序というものが、そういうことによって乱されるというようなことを防ぎまして、小売は一切小売業にやらすべきだというような仕切りをここで作る、担当分野を法律で作ってしまう、こういう趣旨ではないと思います。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 この法律のあれを私ここに持ってきていませんが、第一条に目的があると思うのですが、流通秩序を維持して、中小小売商の利益を守る、こういうのが目的じゃなかったですか。従ってこの法律の施行のときにあたって、すでにそういう状態があれば、この十四条でいうところの指定の地域及び業種になるんじゃないですか。今の長官の答弁であると、その自後にもっとひどいことになったときに、初めて発動する、従来の商慣習、今までのようなやり方であるなら、そうでないというような答弁に聞こえるのですが、本法の趣旨はそういう趣旨ですか。
  82. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 第一条の目的は、小売商の事業活動の機会を確保する、それで小売商業の正常な秩序を維持する、阻害するような要因を除く、こういうことであります。しかしこの言葉から小売商業のなわ張りを確保するというよりは、流通秩序が安定して行なわれるということをねらいにしておるものと考えまして、私どもの解釈では、正常な秩序がそういう新しい製造業者、卸売業者の進出から乱されるということを阻止するのがこの法律の目的だろう、こう考えます。先ほど申しました都道府県に対する通牒につきましても、そういう兼業をやることによって小売業者との間に紛争が起きる、またはそういうおそれがあるというような場合には、その業種、地域の指定を法律から見てもやるべきであるから、そういうときには絶えず実情を握って至急申し出ろ、こういう趣旨の通牒を出しております。
  83. 田中武夫

    田中(武)委員 今読まれたこの法律の第一条の目的の表現は、若干文章は、私はそらで言ったから違っておるけれども、趣旨は同じだと思う。要は今言っておるのは、従来の商慣習のままであるならば、この法律の適用にはならないのだ、十四条の適用にはならないのだというような御答弁だったと思うのですが、そうなんですか。すでに起こっておる事態について、これではいけないからということが、小売商業調整特別措置法の制定の理由じゃなかったのですか。それなら過去のやり方がそのまま続いたとしても、そういう状態であるならば、いわゆる問屋が小売行為を行ない、その結果として小売商に著しい圧迫と影響を与えておるということで、指定をし、届けさす業種になると私は思うのですが、どうですか。
  84. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 私の申し上げ方が少し不正確かもしれません。従来のままでならそのままでいいというわけではないのであります。正確にはそういうことではないのでありますが、要するに、そういう卸売業者の小売行為によって、何か紛争が起きるとか秩序が乱れるという事態を防ごうというのが目的でありまして、従来の商慣習というもので秩序が保たれておれば、従来の商慣習のままでやっておればいいわけであります。その従来の商慣習が内容的、具体的にいいものか悪いものかということは別問題でございます。要するに、紛争が起き、秩序が乱されるということを防ぐのが目的である、こういう趣旨で申し上げたのであります。
  85. 田中武夫

    田中(武)委員 紛争が現に起こった場合は、十五条によってあっせん調停をやるのでしょう。そうでしょう。私の言っておるのは十四条ですよ。十四条は、紛争が起こらなかったら、そのままほうっておいていいという趣旨なんですか。
  86. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 十五条は、紛争が起こって、当事者から申し出があったときに調停あっせんをやる。十四条は、紛争が起こればもちろん政令指定するわけでありますが、そういったおそれのあるような場合ももちろん含むと思います。
  87. 田中武夫

    田中(武)委員 もちろん含むと思います、じゃないのですよ。十四条には紛争は関係ないのですよ。紛争のあることを前提とするのじゃないですよ。十四条はそんな法律とは違いますよ。
  88. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 長官からいろいろ説明がありましたが、私は従来こう解して参りました。十四条そのものは製造業者、卸売業者の小売兼営をしておる場合に、必要がある場合には政府が政令でその業種、地域を指定する。それはどういう心準備のために指定するかというと、卸売業者、製造業者が小売を兼営しておる場合、全部を指定する意味ではもちろんないので、その状況が小売業者の単独小売行為を非常に圧迫して、何らかの交通整理が予想されるような業種と地域を選んで指定をする。従って十五条のような事態が起こりますことを予想して指定するわけでありますから、こういう法律の条章は、法律の制定当時指定した方がいいものがあることを抽象的に想定して作ったことを認めるのでありますが、実は正直に申しまして、実際指定を発動しようと思いますと、その影響の程度がなかなか複雑であって、製造業者、卸売業の小売行為がはたして小売業者を圧迫しておるような事態に来ておるかどうかという踏み切りが、地方庁の報告においてもわかりかねる状況が見られる。田中委員のお尋ねがありましたように、地方庁が告示するわけではございませんが、告示をしました後の行政行為は、主として地方庁の知事が当たりますために、知事の、こういう地方庁からの報告を無視しまして、中央で一方的に指定することもなかなかむずかしいというようなことでございます。いずれにいたしましてもこの法律施行以来一年間もいまだかつて一の地域も一の業種も指定されていないということは、委員の皆様方から政府の怠慢ではないかと言われる一つ状況を作っておるものと考えますので、先般述べましたように、田中委員からの御激励の趣旨も受けまして、この条章を生かすようにさらに引き続いて一つ弊害の予想せられる地域につきまして指定の方向に持っていくような措置を講じて参りたい、かように考えております。  なお、私の方から申しますと、小売商業調整特別措置法がせっかくできましたけれども、いわゆるざる法といわれ、処罰等の規定もまだほかにありますが、必ずしも百パーセント運営できておりません。私の感想では五〇%くらい運営できておらない点がほかにもあるのでありまして、私どもとしましても行政運営上頭の痛い法律になっておることをここで告白と申しますか、申し上げざるを得ないわけであります。
  89. 田中武夫

    田中(武)委員 次官の言われる解釈で、私もそう解釈しておったのです。こういう条項ができるには、そういうことを想定しというか、現にあるからこそ作ったと思うのですが、しかも私申し上げておるところの東京の横山町とか馬喰町、あるいは大阪の丼池地区における繊維卸商の小売行為、これなんかはまさに十四条で考えるべき問題だと私は思うのです。今次官は、この指定をやった場合には及ぼすところ大なり、こういうことですが、別にこの指定をやったからといって届出するだけのことでしょう。そんなに経済的な影響を及ぼすところ大なりと言い得ますか、十四条の指定くらいが。こんなのは届出するだけじゃないですか、届出くらいがそんなに大きな影響を与えるのですか。
  90. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 私はここで条文をつまびらかにいたしませんが、十四条で業種の指定をいたしますと、その指定を受けた業種に属する小売商はいつでも卸売業者あるいは製造業者の小売兼営の問題について、それでは行き過ぎであるというような趣旨から、都道府県知事に調停あっせんの申し出ができることになります。従いまして、不用意に十四条の指定をいたすことは、当然十五条が出ておることを予想しないでやるわけに参りませんので、行政庁あるいは通産省といたしましては、これまで慎重にならざるを得なかった、かように思います。しかし法律があるのでございますから、多少そこに新しい問題を起こしましても、それをやった方がいい、踏み切らなければならない場合があると考えますので、さらにこの両条の運営については、検討を進めてやるべきことはやるというふうに持っていきたい、かようなことを申し上げた次第でございます。
  91. 田中武夫

    田中(武)委員 十四条の指定がなければ十五条のあっせんは申請できないのですか、そうじゃないでしょう。十四条、十五条は互いに独立した条文ですよ。従って、十五条のあっせん調停は十四条を前提としないわけなんです。ただ問題は、十四条の場合は業種と地域を指定した、それに該当するものは届出をするというだけです。そのことによってあなた方が実際の状態を把握することに便ならしめる、そういうことが十四条の規定なんですよ。十四条と十五条は関連しておりません。
  92. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 条文だけはまさに田中委員のおっしゃる通りですが、ただ届出をして政府の統計の種にするというだけではなしに、もちろん十五条は十四条の指定がなくても、紛争があった場合にはあっせん調停の申し出ができますけれども、十四条の精神というものは卸売業者、製造業者の小売兼営の行き過ぎをたしなめるために指定する、そういう趣旨に、従来も私は解しておりましたために、十四条を指定するということは、これは政府が指定するだけで終わるのではなしに、何らかその間に、兼営業者と小売業者との交通整理をしなければならぬという覚悟のもとに指定をすべきものだ、かように私は解釈いたしておりましたが、条文そのものはおっしゃる通りでございます。
  93. 田中武夫

    田中(武)委員 私が今あえて小売商業調整特別措置法の十四条を申し上げておるのは、最初申しましたように、政府はいろいろと中小企業法律をお作りになる。ところが作ったやつが十分に効果を現わしていない。それにまた法律を持ってくる。少し中小企業関係法律は中身がなくて食傷ぎみである、そういう意味から申し上げているわけです。そこで十四条の問題についても、まさに一年間空白でおかれたということは明らかであります。通産次官言われるように、十四条で指定すべきものは今後どんどん指定していきたい、このような答弁でありますから、一応了承いたしまして、今申しました繊維問屋の小売の問題につきまして、指定するのか指定しないのか、指定しないのならばどういう理由によって指定しないかということを、近いうちに一つ結論を出して当委員会において明らかにしていただきたい。よろしいですか。
  94. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 その点了承いたしました。
  95. 田中武夫

    田中(武)委員 小売商業調整特別措置法十四条の問題につきましてはこの程度にして、あとに保留いたしておきます。  同じく法律ができてもあまり使われていないという例にもう一つ百貨店法の九条について申し上げたいと思います。  百貨店の割賦販売の問題につきましては、一昨年九月ですか、すったもんだ当委員会でやった結果、勧告のようなものも出た。しかし企業局長御承知かとも思いますが、今日百貨店が出張販売をあちこちでやっておる。ことに学生服といいますか、そういうのに対して、直接学校へ出かけていって出張販売をやる。そのような結果、学生服を作っておるところが大きな打撃を受けておる。こういう事実を聞いておりますが、企業局長はそういうような状態について、どの程度の実情を把握しておられますか。
  96. 松尾金藏

    ○松尾(金)政府委員 ただいまお話のございました百貨店の、特に洋服の出張販売、その実情はある程度話を小売業界の方からも伺いまして、その伺いました翌日、直ちに全国の通産局長あてに調査をすでに依頼をいたしております。現在までに中間的に報告の来ておりますものを大略して申上げますと、必ずしも全国至るところにあるということではないようでありますけれども、特に大都市、その中でも東京に非常にそういうことが行なわれておるというふうに聞いております。私も現場を一々見たわけではございませんが、特に新学期等におきまして、あるいは卒業ですか、そういう学校を中心にいたしまして出張販売をやっておる百貨店が、かなり多いということは私ども聞いております。現在のところは一応中間的な調査報告しか来ておりませんけれども、詳細なアンケート調査といいますか、一定調査様式をきめて、各通産局からの報告をとっておりますから、その実態を見た上で、内容をよく分析して善処していきたいと思っております。
  97. 田中武夫

    田中(武)委員 今企業局の方で調査中であるというので、その調査をすみやかにしていただく。その上に立って善処していただく。こういうことで、あまり深く追及することをこの際はおいておきたいと思うのですが、私の手元にも相当の資料を持っております。たとえば某百貨店が某学校においてやりましたところの実際の写真等も持っておりますので、こういうことについても逐次実例をあげて尋ねていきたい、このように考えておりましたが、すでに企業局の方でそういうようなことを調査をしておられるというならば、すみやかに調査をするということで、この点についてはあまり深く追及しないことにしますけれども、私の聞いております——これはこの際ですから一応百貨店名もそれから学校名も伏せておきますが、実際は学校の名前も百貨店の名前もわかっております。某百貨店は某学園に対しまして、卒業生を採用してやる、こういう条件で出張販売で服を作る、あるいは卒業生のせびろを作らす、こういうことが現に行なわれております。名前を明らかにせいというならば、それぞれここにこういうようなものがありますから申し上げてもいいのですが、こういうことはまさに独禁法の上からいっても違友ではなかろうかと思うのです。こういう状態でありますので、すみやかに調査をしていただきたい。そうして先ほど来言っておるように、いろいろと法律をお作りになるが、それが空文化しておるという問題、従って調査の結果すみやかに第九条の勧告を必要とするかごうかを検討してみたい。一体いつごろに結論が出ますか。
  98. 松尾金藏

    ○松尾(金)政府委員 先ほど申しましたように中間報告の程度までは来ておりますけれども、やはり問題の点を、こういう点に問題があるだろうという点を、項目を列記をいたしまして、調査様式をきめて現在中間報告に基づいての再調査をしておる段階でございますから、ここで何月何日というところまでは私申し上げかねますが、できるだけ急いで実態を把握して分析をいたしたい、こういうふうに考えております。
  99. 田中武夫

    田中(武)委員 それではできるだけ早く適切な措置を望むということでおきたいと思います。  さらにもう一つ、何回か当委員会で問題になりましたが、スーパー・マーケットの問題もあります。これもいわゆる百貨店法の脱法行為として、百貨店が資本的にあるいは人的につながりを持ってやらしておるというのが、私やはり百貨店法から見て問題があろうと思います。百貨店法の改正についても議員立法として当委員会提出をせられております。このことについては大臣が一番いいのですが、大臣がいないから、百貨店法の改正についても考えておられるのかどうか、一ぺん通産次官にお伺いいたします。
  100. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 百貨店法の改正の議員提出法案は、今回ばかりでなしにすでに両三回提案をされております。またこれを一連のつながりを持ちます中小企業関係法律案も御提出になっておることも承知をいたしておりますので、私どもの方におきましても十分検討をさせていただきまして、ある場合にはそれを手本として政府案を改正をすることもございましょうし、十分実情と対照をいたしまして検討を進めて参るつもりでございます。
  101. 田中武夫

    田中(武)委員 この際私、これは政府委員にもあるいは与党の議院諸君にも申し上げておきたいことは、午前中来申し上げているように、中小企業のための法案という名を持ったものはたくさん出てくるのです。ところが実際それが通ってみたら、ほとんど所期の目的通り動いていない。百貨店法しかり、小売商業調整特別措置法しかりであります。そこで一、二の例を取り上げて今申し上げたわけであります。そういう点を十分一つ考えていただきまして、できた以上は十分効果を表わすように運用していただきたい。このことを強く要望いたしておきます。  そこで元の問題に戻ります。中小企業業種別振興臨時措置法案三条の指定でございますが、これは本年は十五種ということで、五年間で七十五種、こういうことであったのですが、これは毎年十五種くらいずつを考えて七十五種、そうすると七十五種あれば大体この法律における所期の目的が達せられる、このようなお考えでございますか。
  102. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 業種の指定でありますが、十五種というのは、三十五年度に盛られました調査予算から実は十五種くらいになるだろうということでありまして、必ずしも十五種と限定いたしておりません。経理の関係とにらみ合わせまして、また緊急度とにらみ合わせまして、十五種が十六種になる場合も十七種になる場合もあってよいと考えております。さらにまたこれは五年間の時限立法でありますが、これを五倍にいたしまして七十五業種に限るという意味でもございません。もちろん中小企業者業種業態は非常に多様でございまして、これは全体を見ますと、数百、数千に及ぶでございましょうから、全部を取り上げるわけには参りませんが、その間私どもといたしましては、私どもの方の作業能率とも見合いまして、また予算とも見合いまして、七十五種に限らず、できるだけこの五年間におもなる問題を片づけたい、かように考えております。
  103. 田中武夫

    田中(武)委員 初年度は大体十五が目標で、次年度、その次というふうに大体平均化していこうというのか。しり上がりに持っていこうという考え方なんですか。
  104. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 これはありていに申し上げますと、先ほど午前中田中君の質問に対して、政府側の答弁がもたもたしておったようでありますが、これも通産省ばかりではございませんので、農林省、運輸省、建設省、その他の各省から、初年度において指定をしてもらいたいという第一次要望といいますか、これが非常にたくさん出ております。私はこれを手元に持っておりますが、おそらく全体を合わせますと五年分と想定される七十五とか百をこえるような状況にございまして、そのうちどれを取り上げるか、どれをこの法律が通りました後にできる中小企業振興審議会に持ち込むかということの査定と申しますか、調整をやっておるような状態でありまして、まだ実は自信がございません。でありますから、明年度あるいは三、四年度の進むに従いまして、私の気持では、十五以上のものが取り上げられる、今おっしゃるようにしり上がりにいけるものだと考え、そうしたいと考えております。
  105. 田中武夫

    田中(武)委員 この指定業種実態調査関係はどういうことになるのですか。十五を指定すれば、実態調査は十五種全部に対してやるのですか。そういう関係はどうなりますか。
  106. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 指定しました業種について実態調査したいと存じております。
  107. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、指定業種全部に対して実態調査をやる、そういうことですね。
  108. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 さようでございます。ただ従来中小企業、特に製造業につきましては、中小企業基本調査というものをやりまして、相当こまかいところまでわかっております。そういうことと比較しまして、業種によって調査の仕方の厚薄、そういうことはあろうかと思いますが、十五種なら十五種全部について調査をいたしたいと思います。
  109. 田中武夫

    田中(武)委員 業種の指定と実態調査は全部だ、こういうことに理解いたします。そういたしますと、調査費は本年たしか七百万円でしたか。
  110. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 調査費が七百数十万円、合わせて千百何十万円でございます。
  111. 田中武夫

    田中(武)委員 合わせてとは何ですか。
  112. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 実態調査費七百三十二万二千円、これは前年度の約七倍ぐらいになります。それから審議会費が百万円余り、それから改善事項実施指導費が三百三十万円弱、合計一千百六十数万円、こういうことであります。
  113. 田中武夫

    田中(武)委員 その七百数十万円が調査費ですね。七百数十万円を十五で割ると幾らになりますか。これは平均して使うわけではなくて、ある業種に多く使い、ある業種は少なくて済むということになると思うのですが、一つ業種を所期の目的を達するのに徹底的に実態調査をしていくということになると、この七百数十万円で一件当たり幾らになり、それで十分であるかどうか、いかがです。
  114. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 実態調査費は、中身は調査員の謝金、旅費、職員の旅費、あと庁費といたしまして、用紙の印刷費とか資料費とか報告書費とか、こういうものからなっております。十五業種で割りますと五十数万円平均になりまして少ないじゃないかという御疑問を持たれるかと思いますが、先ほど申しましたように、製造業につきましては中小企業基本調査というのをやりまして、三十一年度、三十二年度にわたりまして約七千万円の金をかけまして相当、いわば各業種別にもあるいは階層別にも中小企業の静的な調査基礎はできているわけであります。今度はむしろ、たとえば貿易自由化の悪影響を受けそうな業種とか、あるいは輸出振興をしなければいかぬ業種というようなものにつきまして、それぞれの最近の経済情勢における動的の調査をやる。それで大体足りるのではないかという見当で、前の基本調査をもとにいたしまして、業種別の診断等でも相当わかっているところもありますので、それを基礎にいたしましてその後の変化あるいは将来の見通し、そういうことについての調査をやっていきたい、こういうことでありますので、これで大体やれると思っております。
  115. 田中武夫

    田中(武)委員 一件当たり五十数万円で大体やれる、こういう自信なんですね。やってみなければ何ぼかかるか私にもわかりませんが、どうも見たところ七百数十万で十五業種じゃ大したこともできないのではないかという感じを受けたので申し上げたのです。  次に中小企業振興審議会。この法律によると、法運営の中心中小企業振興審議会だと思うのです。その運営費が百万円。四十人の委員でしょう。それからほかに専門員等を置くということになれば、百万円で一体何ができるのです。
  116. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 法律に書いてございますように、これは関係官庁の関係職員がかなりの数入ることになっております。これらの者に対しましては、公務員法の規定上別段手当等を出すこともございませんので、私の感じでは、四十人とありますけれども、半分ぐらいの人数で百万円余りを動かせる、かように考えていいのではないかと思ます。
  117. 田中武夫

    田中(武)委員 四十人のうち半数は関係官庁の職員だ、こういうことですか。
  118. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 積算の基礎で申しますと、四十人のうち役人は十一人という計算をしております。二十九人が手当を要する、こういう計算をいたしております。  なお審議会の経費百万円ばかりと言われますが、実は通産省に委員会もたくさんございますが、百万円台の委員会というのは、安定審議会産業合理化審議会ぐらいで、これは大物委員会のつもりでございます。
  119. 田中武夫

    田中(武)委員 百万円の運営費で大物委員会だ、そういうことであるなら何をかいわんやであります。  それではこの中小企業振興審議会のメンバーのうち十一名、これは役人である。あとの二十九名が一般民間からだ、こういうことですが、大体学識経験者とかなんとかいう言葉を使ってあるのは、二十九名はどのような観点からお選びになるか。たとえば当該中小企業の代表者、あるいはそこの従業員の代表者、こういう人は入るのですか、いかがですか。
  120. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 役人は、具体的には通産省、農林省、厚生省、運輸省、建設省、大蔵省、労働省あたりを考えたいと思っております。学識経験者というのは、これは中小企業振興の、たとえば安定審議会の方ですと、その事柄自体でございますが、これは中小企業のあり方というものから考えていかなければなりませんので、相当広い視野から、関連する大企業の人も入ってもらう必要もありましょうし、もちろん従業員の代表者的な面からも入ってもらう必要がありましょうし、あるいは学者等も必要かと思います。相当広い範囲で公正な判断をし得るという立場の人を選んで参るつもりであります。
  121. 田中武夫

    田中(武)委員 まあ広い範囲だけれども、私の申し上げているのは、中小企業の、ことにその諮問を受けておる当該中小企業の代表者あるいはその従業員の代表者、こういうのは入れるつもりかどうかを聞いている。  なお続けて聞きます。第四条の大臣勧告ですが、これがどの程度の力を持つものか疑問ですが、大体中小企業に対して、あるいはその団体に対しての大臣勧告といえば、文字通りよりか強い意味を持つのじゃなかろうかと思うのです。そうするとこの三条の第一項第一号の経営合理化、なるほど経営合理化中小企業はやらなければいかぬと思うのですが、往々にして経営合理化には人員整理その他が伴う。労働問題がつきものなんです。ことに経営合理化という美名のもとに、今まで多くの労働者が解雇せられてきた。こういう日本の労働事情といいますか、過去の経験といいますか、こういうところから経営合理化というすぐ首切りを思い出す。こういうことも関連いたしまして、中小企業従業員の代表、並びにこれには労働問題をも含むのかどうか、その点をお伺いいたします。
  122. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 午前中申し上げましたが、業種をきめます際には審議会に諮問することにしております。従って当該指定業種中小企業者の代表あるいはその従業員の代表というのは委員会に——あと業種はきめるわけですから、委員はもっと一般的に選んで参りたいと思います。ただ業種がきまりました場合には専門委員等を選んで、個別に具体的な検討をやっていただくことになっておりますので、その中には当該指定業種中小企業の代表とか従業員の代表とかいうものを考えて参りたいと思っております。  それから経営合理化が、たとえば人員整理の問題等に及ぶ場合があるいはあるかもしれません。しれませんが、勧告等法律四条の一項にありますように、勧告は競争の正常化、取引関係の改善ということに関して勧告をするわけでありまして、経営合理化等その中小企業者自身がやるべきことについては、勧告制度はついておりません。一般的な指導はいたしますが、勧告はそういう事柄だけでありまして、そういう経営内部の問題につきましては、通常の指導でやって参りたいと考えております。
  123. 田中武夫

    田中(武)委員 失礼しました。一号から各号でなく、五号、六号が勧告事項です。しかしその指導の中でも、経営合理化ということがある。そうするとやっぱり労働問題も出てくると思うのです。こういう点については十分に配慮を願いたいと思います。  それからもう一つは、一般的に審議会のメンバーを選ぶとおっしゃっていられるが、一般的に中小企業の代表者あるいは中小企業の労働者の代表者、こういうものを考えておられますか。
  124. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 一般的に中小企業並びに従業員の代表的な人に入ってもらいたいと考えております。
  125. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃこの三条の五号、六号の勧告、すなわち競争の正常化に関する事項、取引関係の改善に関する事項、こういうものに対して勧告をなさる。それじゃ五号の競争の正常化に関する事項ということになると、おそらく過当競争をなくするとかなんとかいうことになってきて、ここにカルテルとかなんとかいうような問題、協定とかいう問題が出てくるんじゃないかと思うのです。そうすると独禁法との関係はどうなります。大臣勧告と独禁法とが競合した場合、どういうことになります。
  126. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 競争の正常化という場合に、やはり中小企業といえども、カルテル的な動きについては、独禁法の精神その他に基づきましで、当然、やるべきだとはわれわれ考えておりません。ただ暫定的にあるいはそれ以上の非常な過当競争を避けるというような意味で、そういうことの必要な場合が多かろうと思います。それで、中小企業関係につきましては、すでに現在でも団体組織法におきまして、不況著しいおそれがあるという場合には、カルテル的な行為を許されておるわけでありまして、その範囲内で、改善事項の中で、そういう必要のある面が出てきました場合にはそういう条項——既存の制度を利用いたしましてこれをやって参りたい、かように考えております。
  127. 田中武夫

    田中(武)委員 おっしゃるように、中小企業団体組織法あるいは中小企業安定法の二十九条ですかの指定、こういうことによってカルテル行為は許されるわけなんです。そうすると、大臣勧告としてそういうことを必要とするときの勧告は、中小企業団体法に基づく商工組合を作って、そこで調整行為をやれ、あるいは中小企業安定法の二十九条でしたかの調整行為をやれ、調整組合を作れ、こういうような格好の勧告になるのですか。
  128. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 そういうことであります。
  129. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、今までこういうことをやれということで、独禁法と正面から衝突したというようなことはないわけですね。
  130. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 そういうことはございません。
  131. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょうど三時ですから、本会議も始まるそうですから、大体これで私、本日の質問はおきたいと思うのですが、何回も申し上げておりますが、希望として申し上げておきますのは、法律を作っても空文にひとしいような法律であったり、あるいは作ってもあまり効果をなさないという法律、こういうようなのは作っても意味がないと思うのです。先ほど一、二の例をあげましたが、ことに中小企業関係法律では、そういう点が多いと思うのです。今委員長から、中小企業業種別振興臨時措置法、この法案を、予算関連法案だから早く審議をして、参議院に送ってもらいたいという希望が出ております。すったもんだでやりましても、成立してから一カ年、ほとんどその実効を表わしていないというような法律なら、作りたくないのですよ。そういうような点について、十分、できた法律は運用よろしきを得て、所期の目的を達成するように運用していただくということを強く要望いたしておきます。
  132. 中村幸八

    中村委員長 本日はこの程度にとどめ、明日は午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後二時五十九分散会