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重枝参考人 私、全
炭鉱の
重枝でございます。
石炭鉱業合理化臨時措置法の一部
改正法律案に対する私の考えを述べるわけでありますが、その前提としまして、私たちは今日の
石炭産業の当面しておる
危機といわれるものをどういうふうに考え、どういうふうに対処しようとしておるかということをまず初めに御紹介をいたしまして、その立場に立って本
改正案に対する
意見を述べたいと考えるわけであります。
私たちは第一に、現在の
石炭産業の
危機は、単なる
景気変動などによる影響でなくて、
エネルギーの
消費構造の変革というものに基づいてきたものであるという点については、はっきりした認識をいたしておるわけであります。そういう点から今日の
危機が出てきております。しかし、そういう今日の
危機が、それではそのまま自然に来たかというと、決してそうではなくて、やはり私たち、従来しばしば
政府並びに
経営者のこれに対する抜本的な
対策を要望して参りましたけれども、こういうことに対する適切な
措置が
政府並びに
経営者においてなされなかったという点が、一そう今日の
石炭産業の
危機を深くしておるものだというふうに、まず第一に認識をいたしておるのであります。
それでは、この
危機から抜け出す方法は何かと申しますと、
石炭の
需要を確保し、あるいは拡大をしていく、そうしてそういう総合的な
エネルギー政策を確立していくということが必要であります。同時に、その中で、
石炭産業が
エネルギーの相当大きな
供給源として立っていくためには、
石炭の競合
エネルギー、
構造的には流体
エネルギーでありますが、
日本の
石炭産業の場合をとってみますと、外国炭の問題も含まれてきます。そういう流体
エネルギーあるいは外国炭、そういう競合
エネルギーに対抗できるような
価格を実現するということが絶対に必要だという考えを持っております。そういうような総合
エネルギー政策を確立し、競合
エネルギーの競争
価格を実現するというためには、
政府あるいは
経営者の
責任においてしなければならない点が、多々あるわけであります。そういうような点が十分なされるならば、
労働組合としての全
炭鉱は、そういう計画の遂行に対して具体的な協議に応じて必要な協力をしていこう、こういう考えを持っておるわけであります。しかしながら、なかなか困難な問題を
解決していくわけでありますから、そういう新しい体制、すなわち
石炭産業の
体質を
改善する過程においていろいろ問題が出て参りますが、そういうような問題を円満に
解決するためには、
石炭産業の事情に詳しい
方々、そういう第三者をまじえた、労、使、第三者という三者構成の機関を設定して、その
意見も十分聞いてやっていく、それが
一番いい方法ではないだろうかということを、全
炭鉱としては考えておったわけであります。
私たちが
政府のなすべきことあるいは
経営者のなすべきことと申しました点について簡単に申し上げますと、まず第一に
政府のなすべきこととわれわれが考えておる点は、
日本の
経済計画に対応した総合的な
エネルギー政策、
生産、
消費、輸送というものを含めた総合
エネルギー政策を確立し、それを
責任を持って
実施していくということであります。そういう計画がそごした場合には、やはりそれに応じた
政府の
責任体制というものがとられなければならない、こういうことが第一であります。第二に、そういう政策をやっていくためには、財政投融資あるいは税制金融
措置、
鉱区の整備統合、いろいろやらなければならないことがありますので、そういうものを適確にやっていく。次に、重油あるいは液化ガスあるいは輸入炭、そういうようなものの
消費の規制をある
程度続けていく、同時に
石炭の
需要を喚起し、あるいは拡大していくという
努力をしていく。さらにそういうような
石炭産業の
体質改善は、とかく大手
炭鉱を
中心にしてなされがちでありますが、こういうようなものはやはり大手
炭鉱、中小
炭鉱を通してなされなければならない。さらに最後に重要な問題としては、こういうような政策の計画立案あるいは
実施にあたって、とかく
政府の独断でなされる、あるいは
経営者だけの
意見を聞いてなされるということが起こりがちでありますが、こういう非常の
事態に対処していくわけでありますから、特に
労働組合の
意見を十分尊重してやっていく、こういう産業民主主義の確立ということがどうしても必要である。それと同時にこの過程でいろいろ
石炭産業から
離職者が出なければならないということが予想されるわけでありますが、そういう
離職者に対しては、まず第一に
石炭産業の中で吸収し、さらにそれができない場合にはこれを他の成長産業の中で吸収していくというような
措置がとられなければならない。こういう点を私は
政府のなすべきことと考えております。
さらに
経営者のなすべきこととして考えておることは、それぞれの
経営者の
努力によって
需要を確保し、拡大をしていくことがもちろん必要であります。経営のむだを省いて
ほんとうに合理的な経営をしていく。同時にいろいろな機械の導入ということになるわけであります。それを合理的、総合的に機械を導入して、それに対して適正な人員を配置していく。労働強化というようなことでなくて、むしろ労働条件の向上をはかっていく、同時に雇用の維持のために
努力をしていく。さらにそういうものをなしていく場合には
労働組合の
意見を尊重して、特に事後でなくて事前にいろいろなものを協議をしてやっていくということでなければならない、こういうことをわれわれとしては要望をしておるわけであります。
こういう基本的な立場に立って、私たちは
石炭産業の
危機に対処して参りましたが、その
一つの現われといたしましては、昨年の十一月二十日に
経営者の
代表と全
炭鉱との間に、しばし
代表折衝を重ねて参りました結果、
石炭産業の
危機突破のための労使首脳会談の確認書というものを取りかわしております。この確認書に基づいて今後の
体質改善に関連する諸問題を
解決するということになっておるわけであります。この確認書については後ほど御
参考になるならば、文書等で差し上げてもけっこうでありますが、先ほど私が初めに紹介をいたしました全
炭鉱としての
石炭産業の
危機に対処する基本的な
態度、
政府あるいは
経営者に対する要望というものがおおむねいれられた形で、この確認書を確認いたしたわけであります。この確認書によって私たちは労使間の問題も今後
解決をしていくように期待し、またこれに基づいて
政府等においてなすべきものについては共同で、あるいはそれぞれ個々に要請をして
体質改善を円満に進めていく、こういう方法をとっておるわけであります。
さらにそういう
意見が総合されたものとして、先ほど植村さんから御説明になりましたような、
石炭鉱業審議会の
答申の形で、
石炭産業の
危機突破に関する
対策というものが出ております。これに対してもおおむね私たちの考えが盛られておるというふうに考えております。もちろん幾つかの点に不満な点はありますけれども、今日の
石炭産業の
危機を突破をし、
消費者全体、
国民全体の支持のもとにやっていくということになれば、こういうことでなければならぬのではないかというふうに基本的には考えます。ただ要はそういう作文だけではなくて、それがいかに実現をされていくかということが、一番問題になることだと考えております。
石炭鉱業合理化臨時措置法の
一部を
改正する
法律案というものは、この
審議の
答申の実現の一部として行なわれるものであると考えられますので、その
内容については、大体において私たちは
労働組合の立場から賛成をいたしたいと思います。
ただ、次に幾つかの問題点を指摘して、それについての私たちの
意見を十分皆さんにこの立法の中で考慮していただき、さらにこの法律が具体的に動く場合に、行政面からそういう点が強く進められるような
処置をとっていただければ、大
へん仕合わせに存ずるわけであります。
その問題点の
一つは、たとえば基本計画が作られ、年次計画が作られるということになっておりますけれども、その実現に対して、
政府が
責任を持ってそれを実現をしていくという
努力がどうも従来足りなかったように思います。この基本計画、年次計画というものが絵にかいたもちであっては困るわけです。
石炭産業というものは
需要の
変動に対して、そう急速に対応できない形に本質がなっておりますので、たとえば昭和三十三年の場合に、
生産計画を五千三百五十万トン、実際は四千八百万トンちょっと、こういうような非常に大きなそごがあるということになると、
石炭産業というものはとてもそれについていけない。今度は三十八年というものを
目標にして、競合
エネルギーとの競争
価格を実現するということを漸進的に進めておりまするけれども、これに対しては、ぜひともそれを実現する裏づけある政策を広範にし、しかも強力にしていただくということが必要であろうと思います。たとえば
審議会が千二百円の
引き下げを
答申をする場合には、
政府の
予算措置等においていろいろ要望して、そういうものを条件にして出されておるわけでありますけれども、本年の予算を作る過程あるいは
審議の過程を見ましても、それに十分なる
予算措置というものがなされていないようであります。こういうことでありますと、せっかく文章上はりっぱなものができておりましても、実行できないわけであります。実行できないということは、
石炭産業、ひいては
日本経済に非常に大きな影響を与えるということでありますので、そういうことのないように、予算面でも十分考えて、金融財政等について一そう考慮をしていただかなければならないと思います。
それからもう
一つは、非
能率炭鉱の買い上げというもののワクが拡大をされております。これも従来拡大をされて買い上げが続けられてきておるわけでありますが、この買い上げについて、やはりいろいろ問題が生じております。大筋としてはそういうものはやむを得ないことであるかもしれませんが、買い上げの決定その他について、当該組合の
意見を十分に聞いて、尊重をしてやっていくということを、法の制定、出発のときには明確にされておりましたけれども、具体的な運営の面では、むしろ組合にはこっそりと既成事実を作ってしまってやっていくというようなことが、非常に進められておるわけであります。こういう点がやはりいたずらに混乱を招いておる結果になると思います。
さらに、離職金その他労働者に支給さるべき金額がありますが、買い上げの申請、買い上げの決定、金額の支払いというような過程において、非常に時間的な懸隔がございまして、タイムリーに支給されないということで、せっかく支給される金が死んでしまう、あるいは
関係労働者に非常に大きな迷惑を与えておる、こういう点はやはり法の趣旨を十分生かすように、あるいはこの法律によって直接影響をこうむる労働者に対して、なるべくあたたかい気持で
措置をしてやるということが
一そう必要であると考えております。
さらに、全体的な
離職者対策ということでありますが、これは先ほどもどなたか触れられておりましたが、この法律で
離職者援護会というものができております。そういうものを
中心に産
業界もあるいは
労働組合側も
努力して、やむを得ずそういう
構造的な変革に基づいて生ずる、
石炭産業からの
離職者に対して、これを単にニコヨン的な失業者の中にほうり込むということでなくて、先ほど申しましたような成長産業の中でりっぱな産業人として更生をしてもらう、そこでりっぱな産業人として立っていってもらうということでなければ、こういう異常な産業の
構造的な
危機というものを突破する
対策というものは実現不可能であろうと思います。これに対しては、各産
業界の
努力ということについても、われわ
れは大いにそれを多としております。また私たちの組合では、全国的に
石炭産業の
離職者の転職先についてどういうふうな実情にあるか、それを開拓するにはどういう隘路があるかという点について、調査団を派遣いたしまして、いろいろわれわれの考えも述べ、先方の雇用される側の
意見も聞いたのでありますが、
石炭産業労働者に対するいろいろな誤解等もあって、なかなか隘路が多かったのでありますけれども、そういう隘路を打開するためにいささか寄与したように思っておりますが、今後もこういうことを続けていかなければならない。しかしそういう産
業界あるいは
労働組合の
努力というものは、やはり行政的な
措置というものを
中心にして、力強く推進されなければならないわけであります。その
中心をなすものは、
離職者援護会ではないかと思いますけれども、どうもわれわれが期待しておりましたところの
援護会も、発足その後の運営を見ますと、なかなかスムーズな運営がなされていないように思います。特に
中央地方の機構におきましても、言葉は若干過ぎるかもしれませんが、いわゆる官僚の古手の失業救済であるかのごとき現象を呈しておることも、しばしば見受けられるわけであります。しかもその上に法規に照らして、
ほんとうにしゃくし定木な運営をなされており、
石炭産業の
離職者対策を親身になってやっていくという点が、きわめて欠けておるわけであります。こういう点はきわめて遺憾であります。そういう運営についての
審議会等もありますが、いまだ開かれておりません。そういう際には、もちろんわれわれとして具体的な事実を申し上げて、運営を是正したいと思いますが、そういう事実があるということは、やはり
石炭産業に対する政策あるいは法律の制定という立場からも、十分御留意願いたいと思います。
そういうような幾つかの問題点がございますので、そういう点について十分なる
措置をしていただくということであれば、この
改正法律案というものは、
石炭産業の
体質改善に対して、寄与し得る面を十分持っておると思いますので、そういう条件のもとに賛成をしたいと思います。