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1960-03-28 第34回国会 衆議院 商工委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二十八日(月曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 中村 幸八君    理事 小川 平二君 理事 南  好雄君    理事 武藤 武雄君       池田 清志君    大坪 保雄君       岡本  茂君    鍛冶 良作君       久野 忠治君    關谷 勝利君       田中 榮一君    田中 龍夫君       二階堂 進君    野田 武夫君       藤枝 泉介君    板川 正吾君       多賀谷真稔君    堂森 芳夫君       八木  昇君    北條 秀一君  出席政府委員         通商産業政務次         官       内田 常雄君         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君  委員外出席者         参  考  人         (東京大学教         授)      安芸 皎一君         参  考  人         (経済団体連合         会副会長)   植村甲午郎君         参  考  人         (全国石炭鉱業         労働組合中央執         行委員長)   重枝 琢巳君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合中央執行         委員長)    藤岡 三男君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月二十八日  委員始関伊平君、田中彰治君、西村直己君、濱  田正信君、細田義安君、渡邊本治君及び中嶋英  夫君辞任につき、その補欠として、池田清志君、  藤枝泉介君、大坪保雄君、鍛冶良作君、久野忠  治君、二階堂進君及び多賀谷真稔君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員池田清志君、大坪保雄君、鍛冶良作君、久  野忠治君、二階堂進君、藤枝泉介君及び多賀谷  真稔君辞任につき、その補欠として始関伊平君、  西村直己君、濱田正信君、細田義安君、渡邊本  治君、田中彰治君及び中嶋英夫君が議長の指名  で委員に選任された。     ————————————— 三月二十六日  花火工場等爆発事故防止に関する請願(小川  平二君紹介)(第一六二七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第八五号)  について参考人より意見聴取      ————◇—————
  2. 中村幸八

    中村委員長 これより会議を開きます。  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。本日は特に本案審査のため参考人として東京大学教授工学博士安芸皎一君、経済団体連合会会長植村甲午郎君、全国石炭鉱業労働組合中央執行委員長重枝琢巳君。それに日本炭鉱労働組合中央執行委員長原茂君が御出席予定でありましたが、本日急にやむを得ない急用のため出席できかねる旨連絡があり、その代理として日本炭鉱労働組合から中央執行委員長藤岡三男君、以上四名の方々が御出席になっておりますので、その旨御了承願います。  この際参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。本日はきわめて御多忙中にもかかわらず、本委員会の要望をいれて御出席いただきましたこと  はまことにありがとうございました。本案に対し忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。ただ時間の都合もありますので、御意見をお述べ願います時間はお一人大体十五分程度に願い、後刻委員からの質疑もあることと存じますので、そのとき十分お答え下さるようお願い申し上げます。それでははなはだ勝手ながら発言の順序は委員長に御一任願うことといたします。  まず安芸皎参考人よりお願いいたします。
  3. 安芸皎一

    安芸参考人 私、安芸でございます。ただいお話がございました石炭鉱業合理化臨時措置法改正の件でございますが、これは一般に知れ渡っておりますように、とにかく石炭不況と申しますか、危機に瀕しておるというのが、一般的に強く指摘されておる現状でございます。今日まででもすでにいろいろ問題が起きておりまして、合理化臨時措置が行なわれてきたと思うのでございますが、さらに昨年以来特にひどい状態になり、その対策が  いろいろ考えられているわけでありますが、私は今日考えられております問題は、それ一つ一つとりましても今日の事情においては、早急に解決しなければならない課題であると思っております。とにかく言われておりますように、根本的に石炭鉱業体質改善して、炭価を大幅に下げる、そのために考えられるいろいろな処置、要するに石炭鉱業そのもの合理化といいますか、近代化を進めていく上に必要な処置、さらに採掘から運搬にわたりますいわゆる技術的な新しい問題、合理化を進めていく、近代化を進めていく上にあたりましての技術的な問題の解決、そのために研究費を補助して研究を促進させるということ、さらに非能率炭鉱を整理していくということを促進するということは、それぞれの面におきまして私は今日の緊急な課題であると思っております。  とにかく簡単に申し上げましても、たとえば日本フランスと大体年間同じように石炭生産しておりますが、そのフランスにおきましてはここ十年くらいの間に、およそ三百五十程度あった鉱区が今日ではおそらく百以下になっておると思います。初めの予定では一九六〇年までに八十五に減らすということを言っておりましたが、とにかくそういう程度に集中していると思うのでございます。しかしまだ今日日本では八百以上の鉱区で、ほぼ同量の石炭生産しているというような状態でございます。私、とにかく生産の面におきまして今考えられておりますような手段を講じますことは、最も緊急で必要であると考えておるわけでございます。とにかく問題は石炭価格は高くなってきている。これはほかの物価に比べますと、ほかの物価をはるかに上回って高くなってきておりますので、これがいろいろと問題を引き起こしているのだろうと思いますので、これをどうしたら解決するかという点にしぼって生産面での改善が要求されてきており、またこれにこたえなければならないと思っております。しかし私考えたいのは、今日の状態におきましては、石炭生産の面だけからで今日の不況の問題が解決できるかということになりますと、多少考えなければならない点があるのじゃないかと思うのでございます。それは端的に申し上げましても、今日石炭価格が先ほど申しましたように、他の物価に比べますとより高くなってきておる。これが問題を引き起こしているというのでございますが、これは消費の面におきましてもそれが反映してきているわけでございます。日本におきましてもここ数年の間に石炭消費構造は変わってきております。おそらく石炭消費分野でふえておりますのは、電力用石炭がふえておるのでございまして、そのほかの分野では、おそらく全部といっていいぐらい減少してきております。今日でも石炭消費のうちの二割五分程度、四分の一程度電力用に使われておるわけでございますが、おそらくそう遠くない将来に石炭の半分近くは電力用消費されるのじゃないかということが考えられるわけでございます。そういうふうに消費内容は著しく変わってきております。これはどういうことかと申しますと、要するに石炭が高くなってくると、代替できる分は他の燃料にどんどんと代替が進んできておるわけでございます。それと同時に、石炭価格が高くなって参りますと、代替できない部分がございますが、その部分でどうしたら石炭価格が上がってくるのをより有効に使えるかという努力がなされてきておると思うのであります。その結果が、大体電力転換して使うという方向にいくかと思うのです。簡単に申しますと、電力は、昔は日本におきましても、そういう傾向をとっておるのでございまして、電力は一次エネルギー生産業であると考えられたのが、近いうちに第二次エネルギー生産業エネルギー工業になるとまでいわれておりますように、とにかく水主火従といわれた電力が、火主水従に変わってきておると申しますように、電力自身構造が変わってきております。今日でもとにかく一千三、四百万トン程度の炭を使うわけでございます。そういうふうになって参りましたのはどういうことかと申しますと、私はこう考えるのでございます。石炭が高くなってきたということは、これはどうしても近代化して参りますと、ある分ではやむを得ない分野を持っておると思うのです。とは申しましても地下の採掘運搬でございますから、労働生産性を上げていこうということは、ほかの製造工業に比べますと、どうしてもそのような早さで上げ得ない、そのためにどうしても——賃金の上昇ということ、これが今日均等化していくというのは、これも近代化一つだと思っておりますが、そういうところから、どうしても価格が高くならざるを得なくなってくる。それをどうやったら吸収できるかという手段において、超臨界圧に近いボイラー設備を持っておりまする今日の新鋭火力発電所になってきた。そうするとそれが戦前まで一キロワット・アワーの電気を起こしますのに一・三キロから一・五キロ程度石炭を使っておりましたのが、今日では〇・五キロあるいは〇・三キロ程度まで変わってきた。それが誘因になりまして、火力の方がむしろ水力よりも安くついてくるというような傾向から、電力の質的な転換が行なわれてきたと思うのでございます。そうなって参りますと、石炭火力発電所をどういうところに設置するかというような問題が出て参ります。一カ所で非常に大量に使いますと——一つ発電所で、近いうちにおそらく三百万トンとか四百万トンという石炭年間消費するような発電所ができると思うのでございますが、そういうふうになって参りますと、さらにこれがその上に進むということになる、これはどういうことになるかと申しますと、今日日本電力西欧型になってきておる、なってくるだろうということがよくいわれております。西欧型になってくるというのは、要するに蒸気発電所基礎になりまして、それに水力が補給的な役割をするという形式でございますが、そういうふうに西欧化してくるといたしますれば、私はもう少し、西欧の諸国がエネルギー問題にどういうふうに取り組んでいるか、どういうふうな動向をもって今日の事態に処しているかということを参考にして考えるべきじゃないかと思うのでございます。そう考えて参りますと、たとえば今日の火力発電で何が一番課題かと申しますれば、おそらく原炭をたくのにどうやったらいいのかということでございます。私、三年ほど前のことでございますが、ドイツのベルリンの工業大学燃料研究所という古くからの研究所がございますが、そこを見ましたが、そこでは研究員組成まで変えて新しい事態に処している。研究員組成をどういうふうに変えるかと申しますと、化学工業的な分野から機械工学的な分野に入っていく。要するに品位のまざっているもの、いろいろな変動のあるものをどうしたらたけるかという、むしろこれからの問題は燃焼に中心が置かれてくるのでございます。それは要するに、途中の石炭の経費がどうしても高くなってくるものですから、最も効率的に使うという意味で、原炭をそのままたくということでございます。そうなって参りますと、どうしても発電所が山元に移るということになります。一カ所で大量に使うのでございますから、途中の運搬等を考えますと、やはりそういうふうな経路をとって参ります。今日三十七万とか四十万ボルトという超高圧送電がずいぶん考えられておりますが、これも要するに、大規模発電所が一基一罐でもって三十万とか三十三万あるいは五十五万キロワットというような大きなユニットのものが産炭地に作られてくるというようなことから、どうしても電力の輸送ということが考えられ、そのために三十七万とか四十万ボルトという超高圧送電研究が進められてきて、だんだんと実施に移されているというのが今日だと思うのでございます。将来のエネルギー供給予想を考えて参りますと、やはり何と申しましても、石炭を使うということはわれわれ一番手なれておることであり、しかも量的に申しますと確実に持っているのでございますから、これをどこまで使いこなし得るかということが、将来のエネルギー供給一般的に考えますと、どうしても考えなければならない課題じゃないかと思うのでございます。これがもし価格が高くなり、もし供給量がふえなくなって使えないような状態になると——それを予想して原子力の発電研究とかが進められてきておりますが、最近は油も非常に各地で新しく発見されてきておりますが、しかしやはり今日では石炭に依存している分野が一番大きいのでございますから、これがもし途中で供給に円滑を欠くようなことができたら、エネルギー供給の間にギャップが起きるのではないかということをおそれているわけでございます。そういうふうに、これからは石炭生産から石炭消費にわたる分野におきまして統一的にその対策を考えていくこと、それがやはり今日この改正案のねらっているところで、その意味で到達するのには、もう少し幅を広げて考えることが必要なのではないかと考えておるわけでございます。  一応この程度で……。
  4. 中村幸八

    中村委員長 次は植村甲午郎参考人にお願いいたします。
  5. 植村甲午郎

    植村参考人 私たまたま石炭鉱業審議会会長をやっておりますし、石炭問題について、大きな問題でございますので、かねがね非常に心配していた一人でございます。一昨年の夏でございましたか、クルップ社長がこちらへ参ったことがございます。そのときちょうど日本石炭界貯炭が相当大きくなっておりました。一千万トンにも達しようかということで、これはどうしたものかということで問題が起きていたときでございますが、たまたまちょうど日本緊縮政策がだんだん響いてきていたときでございまして、景気的にもそういうふうなこともないとはいえない。もう少し経済が直れば、もう少し平常の状態になるのではないかというようなことも考えられていたときなのです。それで貯炭が多くて困っているがドイツはどうだと言ったら、おれの方も大へん貯炭が多いんで困っていると言う。一体どうなのか。将来石炭生産というものを、需要の方からいうと、エネルギーとしては要るんだが、拡張していきたいというふうなことを考えた計画ができているんだけれども、お前の方はどうしているかというふうな質問をしたのです。そのときにクルップ社長いわく自分たち目標というのは、できれば現状を維持したい、それもそう簡単ではないと言う。これは大へんなことを聞いたと私は思ったわけでありますが、そのときにはすでに今回の石炭危機の基本的な問題が、ドイツでは問題になっていたのではないかと思います。そこでこれは容易ならざることでありますが、正直にいってまだ関係業界の人にいたしましても、一般の財界の方にいたしましても、そこまでのことについては考えていなかった。それほど早くそういう問題を検討しなければならぬ時期が来るということは考えていなかった。そこで、たくさんですとなかなか会議体になって議論ができないものですから、少数の、石炭鉱業会社社長二、三人、また石油の関係社長二人ばかり、また需要家の方として電力、鉄というふうな大きな需要家社長さん両、三名というふうにして、合計十名以内くらいで、ほんとうの腹を割った遠慮のない話し合いをしようじゃないかというので、何回かそれをやったのでありますが、もちろん経団連委員会におきましても、これは重要問題でありますので、取り上げる段取りをとっては参りましたが、その前にもう少しざっくばらんな、腹を割った話をしてみぬと、事態の深刻さあるいはどうするかということについても決心がつかないという意味で、そういうことをやったわけであります。だんだんそうやっておりますうちに問題がはっきりして参りまして、それで政府におかれましても、この石炭鉱業審議会という場において徹底的な検討をして、対策を立ててこれが実施に移るという必要を認められたわけでございます。  そこで昨年来何回か熱心な討議が行なわれたのでありますが、そのときに石炭鉱業審議会の従来の組成というものが、石炭生産者、これはいわゆる炭鉱経営者代表、それから労働組合代表の方、それからまた消費者代表というようなところが中心になっておりまして、いわば広い視野と申しますか、総合的な判断をしていきます学識経験者というような委員が少なかった。そこで、それでは今回の石炭問題を審議するには適当でないのではないかというので、ここにおられます安芸先生、それから有澤広巳先生、また朝日新聞の土屋清さん、それから日経の円城寺次郎さん、それから稲葉秀三さん、これらの方々を加えまして、審議をやったわけでございます。そこで審議の結果十二月十九日に一応の答申がなされまして、これが今回の法案改正一つ基礎になっていると、こう思うのでございます。そこでこの審議会答申をやりますときの基本的態度といいますか、これをちょっと申し上げて御参考に供したいと思います。  まず第一に、今回の石炭危機というものは、いわゆる景気変動によって生ずる一時的な波ではない。技術的革新に基づくエネルギー流体化といいますか、これによって生ずる消費構造の変化というふうな一つの永久的な性質を持っている。これを確認をする。それから、従ってこれに対する対策というものは、一時の対策ではいけないのでありまして、抜本的な石炭業体質改善と申しますかをやらなければ、とうてい対処できないだろう。結局ほかのエネルギー源に対しまして、価格の上において、あるいはその他の条件において、対抗できるような状況を作り出さなければ、長い問題として解決にならない。これが第二であります。それからこれを行ないますのに、目標をある一定時期におきまして、そのときには一つ自由企業として、石炭業そのものが制度的な援助なしにと申しますか、特別な制度的なことがなくても、自立できるようなところへ持っていかなければいけない、これは制度的な保護になれまして、石炭鉱業そのもの合理化がおくれてくるということになると、結局国民経済全般の負担になって、結局日本国民にとってよくない。従ってあるところまでは、制度的にも、また資金的にも政府予算等によって援助していくのであるけれども、そのでき上がったときには石炭業そのものは自立できるという態勢を作り上げる。これがやはり基本的になっております審議会審議の大きな一つの柱でございます。それからもう一つは、これはあるいはそのもっと前の前提かもしれませんが、ただいま申し上げたようなことでありますので、容易ならざる事態である。これを体質改善というものをほんとうに仕上げるには、これは石炭業界関係者、つまり経営者も、また労働組合の諸君も、ほんとう一体になってやるのでなければできない。同時にそれだけではとてもいけないのであって、経済界全体をあげて、これの実施に協力するという形が出てこなければならない。また政府ににおいても思い切った、つまり助成措置をとらなければいけない。こういうようなことが基本的な態度と申しますか、基盤となりまして審議が進められたのであります。その内容については、おそらく参考書として、お手元にもこの審議会答申案が回っておると思いますので、詳しくは申し上げませんが、具体的な内容としては、第一に一体目標をどこへ置くか。そう簡単に右から左にできる問題でないのは、石炭産業の本来の性質でございます。少し方向転換をしましても、やはり三カ年やそこらの余裕は置かなければ完成しない。そこで目標年次というものを三十八年度というところへとろう。それから価格の問題が非常に問題になるのでありますが、これについては、販売価格として三十三年度の価格よりも千二百円下げよう、これを目標にしてやろう。私どもの方、と申しますのは、経団連委員会等におきましても、価格の問題をどこまでやれるかということで、大手の業界の人と数次のディスカッスを加えて、責任のある答案を出してくれというような態度で臨んだわけでありますが、そのときには揚げ地八百円というものは自分たち責任をもってやれると思うが、それ以上のことはなかなかむずかしいという話であった。しかしながらこの審議会におきましては、いろいろ審議をいたしました結果、なおそこに政府助成その他あらゆる面における努力を加えていくということになれば、千二百円の引き下げということはできるんじゃないか、またやるべきである。そうしないと、いわばできるできないといっておっても、買い手がないということになれば困るのでありまして、そこまでどうしても下げなければならないというのがきまったわけでございます。  それから出炭規模がそれにすぐ関係してくるのでありますが、これはただ現在の能率の比較的いい山、あるいはある手を加えれば成績が非常によくなるという山だけを拾っていきますと、これは四千万トンくらいの年産ということになれば、山そのものとしては非常に競争力のあるものが拾えるわけであります。しかしながら、これは同時にいろいろな副作用があります。申し上げるまでもなく、この離職問題というふうな問題についても非常に大きな影響を与えますし、それから炭価自体につきましてもなかなか問題があるわけでありますが、そうかといって、また六千万トンの出炭目標というふうなことにしますと、そういうふうな問題はだいぶ解決されますが、今度は、合理化という方からいうと、いわば残るべからざるといいますか、残るに適当しないようなものが残るというようなことにもなります。そこで五千万トンないし五千五百万トンというところを目標にしてやるということに、一応なってきたのであります。  それから、そうやって、実際にどういうことが行なわれるかと申しますと、山の面としますれば、高能率炭鉱の造成ということと非能率炭鉱の整理ということに、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドということになって参ります。結局これを、政府助成も得て、そうして各界協力してやり上げていく。もう一つは、流通部面についても改良すべき面が相当ございます。これについてもすでにある程度研究が進んで参っておりますが、これらの点についても十分な努力をして、今の千二百円揚げ地引き下げ目標達成に努める、こういうようなことが一つの大きな筋になるわけであります。  ただ実施上の問題といたしますと、いろいろな大きな問題があるわけでありまして、第一には離職者対策をどうするか。これにつきましては、御承知のように昨年の十一月に炭鉱離職者に対する臨時措置法ができ、また援護会というようなものができて、現在着々進んでおるわけであります。また産業界全般としましても、この吸収というような面からできるだけの努力をして、ある程度の実績は上がってきている。きょうも実はそういう関係会議が一時からあるわけでありますが、そういうような大きな問題についても、こぞって協力してやっていく。それからボイラー規制法がちょうど期限に来ておりますから、これももうちょっと、つまり三十八年度まで延長しまして、そうして立て直りの過渡的な混乱を防ぐことをやってもらいたいということで、これはこれで御審議を願うというような、実施上の問題としてはいろいろあるわけであります。また政府の立法あるいは予算措置というものは、もちろんこれが一つの大きな柱になるわけであって、今回御審議を願っていることがそれに当たると思うわけであります。  それからもう一つは、需要家と金融というものに対して、十分な理解を持ってもらわないと困るのであります。需要家の方としましても、たとえば大きな電力にいたしましても、もちろんそれはできるだけ石炭は使うけれども、値段は早く下げてくれ、これでは自分の方は経営上非常に困るというわけでありますし、また製鉄業者にしても、非常な開きがあるのだから、早く下げろ。そこをつまり三十八年度までに下げるということで、逐次下げていくだけの寛容を持ってもらわなければならぬ、またできるだけ使ってもらうだけの寛容さを持ってもらわなければならぬ。それには十分な理解が要るわけであります。また石炭業界としましても、これをやりますのに金融的にもいろいろな困難があると思いますが、これも経済界全体あげての十分な理解と寛容がほしい。それからまた政府その他におかれても十分な理解を持って、これらの達成に協力していただく。こういうようなことが実施上大きな問題になって参るわけであります。  時間が参りましたが、結局、先ほど申し上げましたような全体対策の基本として、この石炭合理化法の改正案というものがあるわけであります。その内容石炭鉱業審議会答申に基づいて作られておると存じますが、いわば石炭対策の必要な面で、非常に重大な問題でございますから、慎重に御審議あることはもちろんでございますが、すみやかに成立されまして、早くその対策に移りたいというのが私どもの考えておるところでございます。
  6. 中村幸八

  7. 重枝琢巳

    重枝参考人 私、全炭鉱重枝でございます。石炭鉱業合理化臨時措置法の一部改正法律案に対する私の考えを述べるわけでありますが、その前提としまして、私たちは今日の石炭産業の当面しておる危機といわれるものをどういうふうに考え、どういうふうに対処しようとしておるかということをまず初めに御紹介をいたしまして、その立場に立って本改正案に対する意見を述べたいと考えるわけであります。  私たちは第一に、現在の石炭産業危機は、単なる景気変動などによる影響でなくて、エネルギー消費構造の変革というものに基づいてきたものであるという点については、はっきりした認識をいたしておるわけであります。そういう点から今日の危機が出てきております。しかし、そういう今日の危機が、それではそのまま自然に来たかというと、決してそうではなくて、やはり私たち、従来しばしば政府並びに経営者のこれに対する抜本的な対策を要望して参りましたけれども、こういうことに対する適切な措置政府並びに経営者においてなされなかったという点が、一そう今日の石炭産業危機を深くしておるものだというふうに、まず第一に認識をいたしておるのであります。  それでは、この危機から抜け出す方法は何かと申しますと、石炭需要を確保し、あるいは拡大をしていく、そうしてそういう総合的なエネルギー政策を確立していくということが必要であります。同時に、その中で、石炭産業エネルギーの相当大きな供給源として立っていくためには、石炭の競合エネルギー構造的には流体エネルギーでありますが、日本石炭産業の場合をとってみますと、外国炭の問題も含まれてきます。そういう流体エネルギーあるいは外国炭、そういう競合エネルギーに対抗できるような価格を実現するということが絶対に必要だという考えを持っております。そういうような総合エネルギー政策を確立し、競合エネルギーの競争価格を実現するというためには、政府あるいは経営者責任においてしなければならない点が、多々あるわけであります。そういうような点が十分なされるならば、労働組合としての全炭鉱は、そういう計画の遂行に対して具体的な協議に応じて必要な協力をしていこう、こういう考えを持っておるわけであります。しかしながら、なかなか困難な問題を解決していくわけでありますから、そういう新しい体制、すなわち石炭産業体質改善する過程においていろいろ問題が出て参りますが、そういうような問題を円満に解決するためには、石炭産業の事情に詳しい方々、そういう第三者をまじえた、労、使、第三者という三者構成の機関を設定して、その意見も十分聞いてやっていく、それが  一番いい方法ではないだろうかということを、全炭鉱としては考えておったわけであります。  私たちが政府のなすべきことあるいは経営者のなすべきことと申しました点について簡単に申し上げますと、まず第一に政府のなすべきこととわれわれが考えておる点は、日本経済計画に対応した総合的なエネルギー政策、生産消費、輸送というものを含めた総合エネルギー政策を確立し、それを責任を持って実施していくということであります。そういう計画がそごした場合には、やはりそれに応じた政府責任体制というものがとられなければならない、こういうことが第一であります。第二に、そういう政策をやっていくためには、財政投融資あるいは税制金融措置鉱区の整備統合、いろいろやらなければならないことがありますので、そういうものを適確にやっていく。次に、重油あるいは液化ガスあるいは輸入炭、そういうようなものの消費の規制をある程度続けていく、同時に石炭需要を喚起し、あるいは拡大していくという努力をしていく。さらにそういうような石炭産業体質改善は、とかく大手炭鉱中心にしてなされがちでありますが、こういうようなものはやはり大手炭鉱、中小炭鉱を通してなされなければならない。さらに最後に重要な問題としては、こういうような政策の計画立案あるいは実施にあたって、とかく政府の独断でなされる、あるいは経営者だけの意見を聞いてなされるということが起こりがちでありますが、こういう非常の事態に対処していくわけでありますから、特に労働組合意見を十分尊重してやっていく、こういう産業民主主義の確立ということがどうしても必要である。それと同時にこの過程でいろいろ石炭産業から離職者が出なければならないということが予想されるわけでありますが、そういう離職者に対しては、まず第一に石炭産業の中で吸収し、さらにそれができない場合にはこれを他の成長産業の中で吸収していくというような措置がとられなければならない。こういう点を私は政府のなすべきことと考えております。  さらに経営者のなすべきこととして考えておることは、それぞれの経営者努力によって需要を確保し、拡大をしていくことがもちろん必要であります。経営のむだを省いてほんとうに合理的な経営をしていく。同時にいろいろな機械の導入ということになるわけであります。それを合理的、総合的に機械を導入して、それに対して適正な人員を配置していく。労働強化というようなことでなくて、むしろ労働条件の向上をはかっていく、同時に雇用の維持のために努力をしていく。さらにそういうものをなしていく場合には労働組合意見を尊重して、特に事後でなくて事前にいろいろなものを協議をしてやっていくということでなければならない、こういうことをわれわれとしては要望をしておるわけであります。  こういう基本的な立場に立って、私たちは石炭産業危機に対処して参りましたが、その一つの現われといたしましては、昨年の十一月二十日に経営者代表と全炭鉱との間に、しばし代表折衝を重ねて参りました結果、石炭産業危機突破のための労使首脳会談の確認書というものを取りかわしております。この確認書に基づいて今後の体質改善に関連する諸問題を解決するということになっておるわけであります。この確認書については後ほど御参考になるならば、文書等で差し上げてもけっこうでありますが、先ほど私が初めに紹介をいたしました全炭鉱としての石炭産業危機に対処する基本的な態度政府あるいは経営者に対する要望というものがおおむねいれられた形で、この確認書を確認いたしたわけであります。この確認書によって私たちは労使間の問題も今後解決をしていくように期待し、またこれに基づいて政府等においてなすべきものについては共同で、あるいはそれぞれ個々に要請をして体質改善を円満に進めていく、こういう方法をとっておるわけであります。  さらにそういう意見が総合されたものとして、先ほど植村さんから御説明になりましたような、石炭鉱業審議会答申の形で、石炭産業危機突破に関する対策というものが出ております。これに対してもおおむね私たちの考えが盛られておるというふうに考えております。もちろん幾つかの点に不満な点はありますけれども、今日の石炭産業危機を突破をし、消費者全体、国民全体の支持のもとにやっていくということになれば、こういうことでなければならぬのではないかというふうに基本的には考えます。ただ要はそういう作文だけではなくて、それがいかに実現をされていくかということが、一番問題になることだと考えております。石炭鉱業合理化臨時措置法の  一部を改正する法律案というものは、この審議答申の実現の一部として行なわれるものであると考えられますので、その内容については、大体において私たちは労働組合の立場から賛成をいたしたいと思います。  ただ、次に幾つかの問題点を指摘して、それについての私たちの意見を十分皆さんにこの立法の中で考慮していただき、さらにこの法律が具体的に動く場合に、行政面からそういう点が強く進められるような処置をとっていただければ、大へん仕合わせに存ずるわけであります。  その問題点の一つは、たとえば基本計画が作られ、年次計画が作られるということになっておりますけれども、その実現に対して、政府責任を持ってそれを実現をしていくという努力がどうも従来足りなかったように思います。この基本計画、年次計画というものが絵にかいたもちであっては困るわけです。石炭産業というものは需要変動に対して、そう急速に対応できない形に本質がなっておりますので、たとえば昭和三十三年の場合に、生産計画を五千三百五十万トン、実際は四千八百万トンちょっと、こういうような非常に大きなそごがあるということになると、石炭産業というものはとてもそれについていけない。今度は三十八年というものを目標にして、競合エネルギーとの競争価格を実現するということを漸進的に進めておりまするけれども、これに対しては、ぜひともそれを実現する裏づけある政策を広範にし、しかも強力にしていただくということが必要であろうと思います。たとえば審議会が千二百円の引き下げ答申をする場合には、政府予算措置等においていろいろ要望して、そういうものを条件にして出されておるわけでありますけれども、本年の予算を作る過程あるいは審議の過程を見ましても、それに十分なる予算措置というものがなされていないようであります。こういうことでありますと、せっかく文章上はりっぱなものができておりましても、実行できないわけであります。実行できないということは、石炭産業、ひいては日本経済に非常に大きな影響を与えるということでありますので、そういうことのないように、予算面でも十分考えて、金融財政等について一そう考慮をしていただかなければならないと思います。  それからもう一つは、非能率炭鉱の買い上げというもののワクが拡大をされております。これも従来拡大をされて買い上げが続けられてきておるわけでありますが、この買い上げについて、やはりいろいろ問題が生じております。大筋としてはそういうものはやむを得ないことであるかもしれませんが、買い上げの決定その他について、当該組合の意見を十分に聞いて、尊重をしてやっていくということを、法の制定、出発のときには明確にされておりましたけれども、具体的な運営の面では、むしろ組合にはこっそりと既成事実を作ってしまってやっていくというようなことが、非常に進められておるわけであります。こういう点がやはりいたずらに混乱を招いておる結果になると思います。  さらに、離職金その他労働者に支給さるべき金額がありますが、買い上げの申請、買い上げの決定、金額の支払いというような過程において、非常に時間的な懸隔がございまして、タイムリーに支給されないということで、せっかく支給される金が死んでしまう、あるいは関係労働者に非常に大きな迷惑を与えておる、こういう点はやはり法の趣旨を十分生かすように、あるいはこの法律によって直接影響をこうむる労働者に対して、なるべくあたたかい気持で措置をしてやるということが  一そう必要であると考えております。  さらに、全体的な離職者対策ということでありますが、これは先ほどもどなたか触れられておりましたが、この法律で離職者援護会というものができております。そういうものを中心に産業界もあるいは労働組合側も努力して、やむを得ずそういう構造的な変革に基づいて生ずる、石炭産業からの離職者に対して、これを単にニコヨン的な失業者の中にほうり込むということでなくて、先ほど申しましたような成長産業の中でりっぱな産業人として更生をしてもらう、そこでりっぱな産業人として立っていってもらうということでなければ、こういう異常な産業の構造的な危機というものを突破する対策というものは実現不可能であろうと思います。これに対しては、各産業界努力ということについても、われわ  れは大いにそれを多としております。また私たちの組合では、全国的に石炭産業離職者の転職先についてどういうふうな実情にあるか、それを開拓するにはどういう隘路があるかという点について、調査団を派遣いたしまして、いろいろわれわれの考えも述べ、先方の雇用される側の意見も聞いたのでありますが、石炭産業労働者に対するいろいろな誤解等もあって、なかなか隘路が多かったのでありますけれども、そういう隘路を打開するためにいささか寄与したように思っておりますが、今後もこういうことを続けていかなければならない。しかしそういう産業界あるいは労働組合努力というものは、やはり行政的な措置というものを中心にして、力強く推進されなければならないわけであります。その中心をなすものは、離職者援護会ではないかと思いますけれども、どうもわれわれが期待しておりましたところの援護会も、発足その後の運営を見ますと、なかなかスムーズな運営がなされていないように思います。特に中央地方の機構におきましても、言葉は若干過ぎるかもしれませんが、いわゆる官僚の古手の失業救済であるかのごとき現象を呈しておることも、しばしば見受けられるわけであります。しかもその上に法規に照らして、ほんとうにしゃくし定木な運営をなされており、石炭産業離職者対策を親身になってやっていくという点が、きわめて欠けておるわけであります。こういう点はきわめて遺憾であります。そういう運営についての審議会等もありますが、いまだ開かれておりません。そういう際には、もちろんわれわれとして具体的な事実を申し上げて、運営を是正したいと思いますが、そういう事実があるということは、やはり石炭産業に対する政策あるいは法律の制定という立場からも、十分御留意願いたいと思います。  そういうような幾つかの問題点がございますので、そういう点について十分なる措置をしていただくということであれば、この改正法律案というものは、石炭産業体質改善に対して、寄与し得る面を十分持っておると思いますので、そういう条件のもとに賛成をしたいと思います。
  8. 中村幸八

    中村委員長 次は藤岡三男参考人にお願いいたします。
  9. 藤岡三男

    藤岡参考人 私は炭労の副委員長藤岡であります。ただいま全炭鉱重枝委員長から、エネルギー消費構造の革命あるいは政府経営者の適切な政策の欠陥、また競合エネルギー対策の実現あるいは競合エネルギー価格の実現、こういう基本的な考え方に立って、全炭鉱としての考え方が述べられました。そこで炭労といたしましても、ある部面においてはやはり全炭鉱と共通した部面があります。しかし全面的に全炭鉱の考え方と一致しておるというふうには残念ながら言えない点があるわけです。そこで私は、ただいまから石炭鉱業合理化臨時措置法の一部改正についての炭労の意見を述べてみたいと思います。  今から五年前、私ども炭労は、この法律の制定について反対をいたしました。その理由は、第一に、この法律に基づく合理化計画は、国家資金を引き出すための資本の要求を反映するのみで、労働者にとっては労働強化と首切りだけを予定したものであるということ、第二には、石炭鉱業整備事業団による中小炭鉱の買い上げは、大手資本の市場の安定を確保するために中小炭鉱をいけにえしようとするものであるということ、さらにこの法律は、買い上げられた中小炭鉱経営者の財産は保護されるが、労働者は首を切られるだけで、何ら生活上の保証はない。これでは法の公正を欠くものである。第三に、この法律による一切の施策は、独占資本の保護政策にすぎず、これでは石炭鉱業の真の近代化は期しがたく、逆に資本の国家への依存と寄生性を増大させるのみであろうということでありました。  その後五年、事態は私どもの予測した通りとなりました。この法律によって、石炭鉱業はどれだけの技術的な進歩を遂げたでしょうか。縦坑開発はどれだけ促進されたでしょうか。たとえば三十三年三月現在で、最も多いのが通気専用、第二位にあるのが人員と材料運搬用で、近代化にとって最も重要な石炭巻き上げ縦坑は全体のわずか一一%にすぎません。これらの事実は、わが国の斜坑方式の欠陥を取り除くのではなく、切羽機械化と同様、労働時間の延長と標準作業量引き上げに役立っているだけであり、これでは労働の生産性は当然低く、災害が増大するのはわかりきったことであります。最近大手炭鉱において続出しているあのガス爆発を見ても、これを如実に物語っていると思います。  次に、この法律は標準炭価を設定して、価格引き下げることになっていましたが、標準炭価そのものが下がらなかったばかりか、実際の炭価は千五百円も上がったのに、政府は何らの措置もとっていないのであります。  またこの法律によって、中小炭鉱は神武景気のただ中においてさえ、次々と買いつぶされ、筑豊地帯は失業地獄と化しているのでありまして、失対事業や緊急就労も全く焼け石に水の状態であることは、委員各位も御承知のことと思います。  以上が、この法律が五年間に果たした総決算でありまして、全く皮肉にも石炭産業合理化したのではなく、一そう破滅に導いたのであります。この法律によってだれが損害をこうむり、だれが利益を受けたかはもはや言う必要もありますまい。  昨今にわかにエネルギー革命論や石炭斜陽論がはなばなしく登場し、石炭産業体質改善が叫ばれています。われわれはこれを全然否定するものではありませんが、石炭産業が今日競争燃料に立ちおくれを示しているのは、エネルギー革命が進行した結果ではなく、実は政府自身が石炭資本のかかる伝統的な寄生性と頽廃性にはメスを入れないで、これらの法律に示されるような弥縫策を弄して真の近代化を怠ってきたからにほかならないのであります。  前おきが長くなりましたが、それでは今回の法律改正案について、私どもの見解を述べてみたいと思います。  まず本法案の根本的性格が、五年前の法律と本質的には大差のないことを遺憾とするものであります。本法案は石炭鉱業合理化審議会答申案基礎に作られておりますけれども、この答申案作成の過程においても、私どもは労働者の立場からの意見を述べ、これを取り入れてもらうために努力して参りましたが、残念ながらこれが受け入れられることができませんでした。石炭鉱業近代化により高炭価を是正し、日本経済の発展に寄与することは、私どものかねてからの主張であり、賛意を表するものであります。  ところで問題なのは、提案理由の第一に、石炭坑の近代化に関する事項を基本計画に定める必要があるといっていますが、その内容についてであります。これは合理化審議会答申が明白に語っている通り、昭和三十八年度までに十一万人の炭鉱労働者の大量解雇をさすものでありましょう。そしてまたこの大量解雇の態勢に基づいて、現在すでに血みどろの闘争が続けられ、三池の部分においては、本日もすさまじい決戦の段階が迎えられております。このように、私どもが最も不満とするところは、石炭危機の原因をもっぱらエネルギー革命に帰し、政府経営者責任や高炭価の歴史的要因については何らメスを入れず、労働者の大量出血によってのみ能率の向上と、コスト引き下げを企図している点であります。  われわれはエネルギー消費技術の変化が進行していることを否定するものではありません。しかしこのことが石炭産業危機をもたらしているのだという主張は、労働者と国民の目から資本主義の矛盾と政府経営者の政策をおおい隠そうとするものだと思います。わが国石炭鉱業の高炭価と低能率は、古い生産機構すなわち石炭産業の発展の全歴史を通して、鉱区の独占による鉱山地代の取得と低賃金労働の搾取に根本的に依存してきたところに原因があります。  こういう方法で利潤追求の目的が達成されるとすれば、資本にとっては生産力をほんとうに高めるような生産的投資に努力するよりも、膨大な休眠鉱区を抱きかえたり、炭鉱で得た利潤を他の産業部門につぎ込む方が有利でありましょう。また機械を入れるよりも、農村その他の潜在的過剰人口を集めて低賃金と圧制的な労務管理で搾取する方が有利になることは指摘するまでもありません。  このような古い生産機構とこれとうらはらの関係にある不合理きわまる流通機構に対して、抜本的な対策は講ぜず、企業利潤はそのままにして、国民経済の美名のもとに労働者の一方的犠牲を強要する合理化は、古い機構を新しい条件のもとで再生産するだけにとどまり、石炭産業を真に進歩の軌道に乗せることはできないと思います。まして職を失った労働者に対して、ほとんど見るべき具体的措置も考えず、三年間に十一万人を首切るなどという暴挙は、社会的にも人道的にも許されることではなく、また世界的に類例のないことであります。このような計画を基本計画として法に定めるという第一の改正点について、私どもとしては反対せざるを得ません。  次に第二の改正点は、石炭鉱業整備事業団を改組して、石炭鉱業合理化事業団とし、二十一億四千万円を政府が出資して、石炭坑の近代化に必要な資金を貸し付けるということですが、その具体的内容は、縦坑開発資金十八億六千万円、流通機構整備費一億四千万円、中小炭鉱の機械化資金一億四千万円と聞いております。縦坑一本掘るのに数十億円を必要とするのに、全部で十八億六千万円で、一体どれほどのことができるでしょうか。これでは何もやらないというにひとしいものであります。  流通機構整備費についても、現在進められている石炭鉱業審議会生産性部会の結論を見ますと、施設の共同化などのこそくな手段しか考えられていません。これでは何ら流通機構の改革にはなりません。  また中小炭鉱の機械化資金についても、金融の道は閉ざされ、そのため技術の近代化が一そうおくれている中小炭鉱を、もし本気になって近代化しようとするなら、これだけでは焼け石に水というほかはありません。  以上、改正点の第二についてまとめて言うならば、これは合理化を進めるかのごとくであって、実は逆であります。合理化の看板を掲げ、労働者の大量首切りを合法化しようということに本質があると断ぜざるを得ません。従って石炭坑を積極的に近代化すべきであるという観点から、本案第二点に反対いたします。  第三は、中小鉱の買いつぶしワクを二百万トン拡大するということでありますが、昨年私どもの反対を押し切って、百万トンの買い上げワクを拡大したばかりであるのに、今回さらに二百万トンの拡大が出されるというのは、いかに政府石炭政策がずさんなものであるかを証明するものであります。これでは石炭産業危機を克服することはできません。問題は冒頭指摘したように、根本的な発展のための計画を樹立することにあります。また炭鉱離職者援護会に交付金を出すことになっていますが、これは買いつぶし促進費であり、十一万人の首切り促進のための援護財源にすぎないと思います。  なおこの問題について特につけ加えたいことは、買上金は失業する労働者の生活費にも回るという趣旨であったのに、事実は全く相違している点であります。現実に買い上げ後一年以上たって、買上金の大部分が鉱害賠償その他に持っていかれ、賃金も退職金ももらっていないという例が少なくないのであります。  ここで触れる必要もないかと思いますが、社会党提出の石炭鉱業安定法案について、若干意見を述べてみたいと思います。社会党案は、まず未開発炭田開発に政府出資の特殊会社を設立することになっていますが、今日金融機関が石炭への投資にちゅうちょしており、また鉱区の独占、鉱区の錯綜が開発を妨害している現状において、低廉な石炭供給するためには、電源開発特殊会社、石油資源株式会社のごとき開発方式が必要であるかと思います。  第二点として、石炭生産に弾力性が乏しく、このことが需給関係の安定を著しく阻害しており、加うるに石炭需要の大きなウェートを占める電力用炭において豊水、渇水が大きな影響を加えているのであり、これらの制度的解決が必要だと思います。この点社会党案は販売公社を設け、流通過程の一元化をはかったことは適当な措置であるかと思います。しかし運営そのものが、過去の配炭公団の末期のごとき粗悪炭のみが残ることがないような生産会社の協力が必要だと思います。同じ資本主義国においても、石炭はイギリス、フランス等においては国有方式をとり、ドイツ鉱区の整理が行なわれ、販売も一元化されている事実は、十分検討に値すると思います。現段階においては、社会党案は一応妥当なものとして賛意を表します。  最後に、この合理化法案の基礎となった審議会答申案は、三年後の出炭規模を五千万トンから五千五百万トンに押さえ、縮小再生産方向を打ち出しております。私どもは、この方向自体が石炭産業合理化し、競争燃料と対抗し得ることにならないと思います。この提案理由は、今の石炭の市場の拡大に対して、生産制限の結果であるといっていますが、絶対的に需要が拡大している事実に目をおおうものであります。私どもは労働者の雇用を安定し、国の資源の開発を促進することこそ、石炭価格引き下げ日本経済に寄与する最善の方向であると信じているものであります。ただ私は、今まで幾たびとなく通産大臣を通じ、あるいは審議会を通じて炭労の見解を発表し、労働者の考え方を入れた石炭政策を打ち出されるよう要請したにもかかわらず、その意見を取り入れず、失業者が続出する、まさに死の宣告に値するようなこの法案は、残念ながら反対せざるを得ません。私どもの政策なり見解は、すでに大臣のもとにありますので、ここでは申し上げませんが、どうか労働者の切なる希望を入れたりっぱな法案を作成されるよう重ねて要請いたし、私の意見を終わります。
  10. 中村幸八

    中村委員長 以上で参考人方々意見の陳述は終わりました。  委員より質疑の通告があります。順次これを許します。参考人各位にはまことに御迷惑でありますが、いましばらくごしんぼうをお願いしたいと存じます。それでは八木昇君。
  11. 八木昇

    ○八木(昇)委員 多賀谷委員が大体質問するようになっておりましたので、突然で非常に恐縮なのでございますが、最初に植村さんにちょっとお伺いをいたしたいと思います。  先ほどの植村さんのお話の中で、現在の石炭鉱業というものは、いろいろな方面から非常に重大な危機がきている、それに対していろいろな対策が考えられるが、何といっても今日のエネルギー状態を考えると、重油やその他油の進出が相当著しい、これはどうしても石炭炭価引き下げないとならぬというところにきている、それがためには昭和三十八年度の石炭炭価を昭和三十三年度当時の石炭炭価よりトン当り千二百円というものは、絶対に下げなくちゃならぬ、それがはたして可能であるかどうかということもさることながら、これは絶対に千二百円を下げなければならぬというのは至上命令だ、こういうふうな意味のお話であったと理解するわけであります。そこで実際にこの千二百円の炭価引き下げられ得るかどうかということについて、具体的にどういう審議がなされ、かくかくしかじか、こういうことをやれば必ず千二百円下がるということになったのか、その辺の審議会における審議内容のポイントの点について、簡明直截に御説明願えれば非常に幸いであります。
  12. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいまの御質問でありますが、先ほどもちょっと申し上げましたが、経営者側として一応責任を持ってここまでやれるというのは、生産面が主になっておりますが、揚げ地において八百円引き下げということは引き受ける。これはもう少しやれそうなものではないかということについて、石炭鉱業審議会の場でありませんが、だいぶやりましたが、責任を持って引き受けるということになると、そう簡単にいかない。今まで炭鉱業者としては、先ほど来だいぶ御非難がありましたが、どうも約束通りいっていないのです。少し信用がないわけで、今度はそういうことではいけないので、やるといった以上はどうしてもやるということになると、今の生産では八百円ということになる、こういうのが大体終始主張された主張であります。これに対しまして今度はほかの競合燃料とのメリットの関係、あるいは油、主として今問題になっているのは油でありますが、一般炭としては油の価格の将来の状況というようなものを考えて参りますと、どうしてもやはり千二百円まで下げないとコンピートできない、こういうような状況であります。それじゃどうするかという問題につきまして私も、これは会議の席上でありませんが、つまり流通部面においてもある程度引き下げはできるはずだ。その点についてどこまで十分な引き下げの方法が検討されているかという点については、まだ研究の余地があるじゃないかという点。それからもう一つは、政府の諸般の助成策が、どの程度かということで、これでやはり炭価の方へ響いてくる面が違ってくる。これについて先ほども予算の面について不十分ではないかというふうな御意見がありましたが、現在の予算では私もできれば、もう少し予算がほしいと思います。しかし一応来年度の予算としてはまずこれでもってスタートして参って、一つ千二百円下げる具体的な努力をしてみたらどうか。現在の進行の状況からいきますと、つまり山の生産についての具体的な計画の写議というものは、事務的な検討は遂げられていますが、まだ結論に達した——つまり審議会において検討するという段階にいっておりません。これを早くしてもらいたいということを考えております。それから流通面においての問題については、一応の部会と申しますかの検討ができましたが、まだ審議会において決定というところまでいっておりません。それをかりに決定いたしましても、一つの方針的な大筋になりますか、具体的な施行ということになれば、それはやはり具体的なことを、もう少し掘り下げなければならぬというようなのが、現段階でございます。私の感じからいきますと、早くやりたい、つまりいろいろな引き下げの効果が生ずるには、どうしても時間がかかるのでありますから、スタートがおくれるとそれだけおくれてくることになる。従ってできるだけ早く実施に移って、そうして効果が早く出てくるようにもっていかなければならぬというのが、今感じていることでございます。とりあえず……。
  13. 八木昇

    ○八木(昇)委員 これは政府当局も、あるいは石炭鉱業経営者方々も、あるいは今の石炭鉱業審議会方々も、いろいろなお話をなされましても、過去が過去だものですから……。そこで五年前に合理化法ができましたときにも、これは炭価をどうしても引き下げるのだ、それがためにはやはりこういう法律の裏づけもつけて、実際効果を上げるのだ、炭価については標準炭価という制度を設定をして、行政措置をもって実際に引き下げの実効を上げるようにしたい、こういうまことにごもっともな説明であったにかかわらず、先ほど藤岡さんも申されましたように、事実は逆に炭価はどんどん上がる。それに対して何ら効果的な措置が打たれなかったという過去の実績があるわけですね。そういう点からからんで考えますると、これは実際に千二百円の炭価引き下げが、石炭鉱業にとっての至上命令だとするならば、これは何か適切な措置を法律上して、そうして千二百円というものの炭価引き下げる、こういう必要があるのではないか。単なる行政指導面で、はたして可能なのであるかどうか、非常に疑わしい、こういう懸念を抱くわけであります。  加えまして、最近貯炭も減少してきた、そうして石炭鉱業界も当面、一ころのどん底からはい上がってきたようである。そこで石炭経営者の方は、合理化をさぼるとまでは言えないかもしれませんが、やや熱心さを欠いてきつつあるような傾向がある。これに対して通産大臣が警告を発した、こういう事態まであるわけです。こういう点を考え合わせまして、実際炭価千二百円を昭和三十八年度までに引き下げるについて、何か効果的な措置、特に法律的にこれを実現せしむる措置、こういうことは考えられなかったかどうか、この点ちょっと重ねて伺っておきます。
  14. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいまの千二百円引き下げということが至上命令であるという点について、法律的な何か措置が講じられないかというお話なのですが、これはちょっと法律的にどうやるのか、私によくわかりませんが、一番の問題は、現在の石炭危機のよってきたる原因というものを、ほんとうに認識するかしないかというところにあるのだと思います。この点については最近に貯炭が減ってきた、それから需要はある、こういうような状況のもとに言われたけれども、もうちょっと様子を見てもいいのではないかというような気分が出てきているのではないか、この点については、私は、少なくとも首脳部としましては、相当事態の深刻さというものを認識しているのではないか、ただ若干の波として少し好況といいますか、工合のいい情勢が出てきているけれども、こういうさざなみに目を曇らされてはいけないという点については、まず相当徹底して考えてきているのではないかと思います。しかしながらやはりこれは人情として決心がゆるむ気持が出がちでありますから、これは私ども経済界全般の仲間の意味においても、政府当局においても炭鉱業者自体においても十分に理解して参らなければいけないというようには思っておりますが、法的措置価格をというふうな問題については、これがはたしていいか悪いか、よほど検討を要するのではないかというように私は考えます。
  15. 八木昇

    ○八木(昇)委員 時間が十二時をすでに回っておりますし、あと同僚議員が三名御質問になるそうでございますから、少し端折りまして、私あと二、三点質問して終わりたいと思うのでございます。これは植村さんと、さらには藤岡さん、重枝さんにもお答えをいただければと思うのでありますが、今度の審議会答申をせられました石炭合理化の方針の根底をなすものの一つに、どうしても石炭労働者の数が多い、これは三十八年度ごろまでに十一万人ぐらいは人員を減らす必要があるというのが、やはり答申の骨子の中の一つの重要な部面をなしておる問題であります。それと同時に、昭和三十八年度あたりの石炭出炭量は、五千万トンから五千三百万トン程度というふうに、数量としては非常に低い数量を予定をしておられる。ところがこれが実際に達成し得るかどうか、特にこの石炭鉱業における人員整理という重大な労働問題、社会問題というものが、はたしてスムーズにやられるものであるかどうか。今日のような時代において、労働者にしてみますと、職場を追われるということは、ほんとうに飯わんをたたき落とされるということであります。ほかの国におけるがごとく、炭鉱をやめても、多少の労働条件が下がることはあっても、他に就職するのに大した不便は感じないというような国柄とは違うわけでありますから、現に三池炭鉱においては、今日あのような惨烈な首切り反対をめぐっての紛争が展開をせられておるし、今後どういうことになっていくか、われわれは非常な心配をしておるわけであります。こうなってきます。はたして十一万の首切りというものを前提としたところのこういう合理化の考え方というものがうまくいくものであるかどうか、またそういうことがどうしても不可避的なものであるかどうか、私はやりようによっては労働者をそういうふうに無理無体に減らすのではなくて、そうしてもっと政府炭鉱近代化のために資金をどんどんつぎ込む、民間金融機関ももっと積極的に石炭鉱業近代化のための金融に協力をする。最近ともすると、金融機関は炭鉱の今の実情から非常に金融を渋るという傾向が出てきておる、そうではなくて、やはり国家的の、全体の社会的な見地から金融をどしどしやっていく、こういうような積極面をもっと取り上げていくならば、今のような無理な、現在働いておる労働者の首を無理無体に切るというようなことでなくて、何とかやっていけるのではないか、またそうしてほしい、こういう願望を持つわけです。そういった点についての御見解を、お三方から簡単に述べていただきたい。
  16. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいまの点につきましては、できるだけ、いわば犠牲者を少なくしたいという気持はだれしも変わらないと思うのであります。ただ、その合理化という問題の半面に、どうしても機械化というふうなことも入って参りまして、結果的に相当の離職者が出てくるというのは、やむを得ないと思います。同時に、その離職した方々をほかに収容するという面については、これは今も対策が講ぜられておりますが、これで十分なのかどうか、これについては、十分な力を入れていかなくちゃならない。しかし大体結果的に炭鉱業自体として考えれば、そういうふうなことに相当の離職者が出るという形になるのは、やむを得ないのじゃないかということを私は考えます。
  17. 重枝琢巳

    重枝参考人 私は、御指摘の、三十八年度の出炭計画というものが五千万トンないし五千五百万トンぐらいである、これはかなり安全率を見ておるのじゃないかと思います。今われわれが、しかし六千万トンできるんだ、こういうふうに直ちに言い切ることはできないと思います。やはり先ほど述べましたような事情にありますから、流体燃料を含めた競合エネルギーとの競争価格を実現して、十分経済的に使用してもらえるようなところまで石炭産業として努力するならば、あるいはまたそのときの日本経済規模の拡張、拡大に応じては、必ずしもこういう線にとどまるかどうかという点については、われわれいろいろ考えております。現に私たちは答申のときにも、五千万トンないし五千五百万トンというのはむしろ、五千五百万トンの方に重点があるというような理解をして、賛成をするということを言っておるわけです。これはしかし、単に需要の面だけを論ずるのじゃなくて、石炭側の態勢というものも相関関係にある問題だと思っております。  それと関連をして、十一万人の問題ですが、これは三十三年度における石炭産業の労働者と、三十八年度における労働者数について単なる算術による減が十一万人とか十二万人とかいわれておる。それだけ減少するということに算術計算上なるわけですが、この減少というのがどういう形で行なわれ、どういう炭鉱中心になって、そういう集計になるのかという点については、これは個々の炭鉱の事情がそれぞれ相違しておりますので、一がいに十一万人首切りだというふうには言えないと私は思います。極端な議論をしますならば、自然減耗によって十一万人程度、それに近い数字を達成される。そうして今日の目標にしておる競合エネルギーとの競争炭価を実現できるという方法も、極端にいえばあるかもしれません。しかしその場合には、残る石炭産業の中の労働者の人員構成、技術構成等もいろいろ関連をしてきますから、それはまたそれで単に算術計算だけではいかない問題だと思います。同時にまた、希望退職等のこともいろいろあるのじゃないかと思います。それで、三井三池の例が引かれましたけれども、同じようなケースについて、三井の他山において、あるいは炭労系のその他の山においても、希望退職その他の形で、すでに解決を見ておる山もたくさんある。この解決方法というのは一律ではないわけです。その炭鉱、そこの条件に従った方法というものが考えられるのじゃないだろうかと思います。  それから、金融等についても十分な措置をしてもらわなければなりませんが、その十分な処置をすれば、今のような問題がなくなるかというと、そういうわけには、どうも問題の本質上いかないのじゃないかと思います。  それから、離職者についてはおっしゃる通りであります。しかし石炭産業の中で、石炭産業自体が絶対的に参ってしまって、全体の労働者が参ってしまうということではたしていいのか、あるいは方法さえ講ずれば、先ほど私が申しましたように、成長産業に新しい職場を求めて、りっぱに産業人として立っていってもらうという方法がいいのかという点については、十分検討をしてかからないと、簡単な結論を出すことは誤りじゃないか、こういうように思います。
  18. 藤岡三男

    藤岡参考人 ただいまお二方の意見があったのですが、私は十一万人の首切りの問題について次のように考えているわけです。  結局、三十八年までに十一万人を首を切る、こういうことは、すでに経営者の計画の中からも、十万人首切りということは出ております。だから私どもは、審議会の基本部会の中で、私もその一員ですから、この石炭政策を検討するには、単なる生産的なものだけでなくして、労働問題と並行して検討しなければ意味がないのじゃないかということを、私は会議の始まりに申した。そうして、この生産技術的な面とあわせて労働対策をどうするかということが、非常に重大であるから、それを総合的に並行的にやってこそ初めて、石炭政策の根本的な解決ができるのだという主張をいたしました。しかしながら結局、その意見もいれられなかったわけでありますが、私はそのように考えて、十一万人を首を切るということは、私どもはこれは絶対に守らなければならぬ。労働組合の立場から考えますならば、どんなことがあろうとも、自分の意思でやめていかない人に対しては守らなければいかぬ。これが労働組合の本質的なあり方ではないか、このように考えております。だから、そのような観点に立って考えてみるならば、やはり十一万人ということは非常に膨大な数字であります。現在の三十何万人、数えてみますと、三人に一人の首切りになるわけです。もちろんこれは自然消耗とか希望退職とかいろいろ形はあるかもしれませんが、この形が純粋な形で行なわれるということは、およそ皆さんも想像できないと思います。今の三人に一人がやめていかなければならぬということは、これは純粋な気持でやめていったんだ、あるいはやめていくんだということを想像されること自身が、僕はおかしいと思う。だから私どもは、このような非道なあり方というものは、どうあってもやはり労働対策とあわせて考えないと、国自身がこの人間をどこに配置するか、どのように吸収するかという雇用政策とあわせて考えない限りは、おそらく困難でしょうということを言いましたし、また現在も考えているわけです。このように考えて、審議会の中におきましても——さいぜんも植村会長から申されましたように、それでは千二百円の価格を下げるには具体的に、何に幾ら幾ら、これこれでこう下げれば千二百円になるという点はまだ出ておりません。だから僕が言いたいのは、僕らは十一万人やめるということ、決して私どもは炭鉱労働者は三十何万人おらなければならぬということを言っているわけじゃないのです。だから、この人たちが恒久的に安定した職場というものを、どのように具体的に打ち立ててやっていけるかというのが、国の政策であり、経営者の政策でなければならぬ。そうすると、炭鉱労働者の三十万人は十一万人にもなるでしょう。なっても僕はいいと思う。しかしながら、現在の階段で、あるいは五年前のあの法律ができたときのことを考えてみましても、僕らはそのことがないから反対してきたわけです。だから、とにかく合理化そのものに僕らは反対しておりません。しかしその合理化が、資本家の利益になる合理化であり、一方的な労働者の犠牲による合理化をやるから、僕らは反対している。だから、相互の話し合いによって十分これができて、具体的な措置が講じられることが、僕らは先決じゃないか。これができれば僕らはいいのじゃないかというふうに考えております。それがないままに強行しようとする考え方が、僕らはおかしい。そのような政策であってはいけないのじゃないか。だから反対するんだ。だから、たとえば炭鉱に機械を持ってくる。僕らは機械を持ってくることは反対しておりません。機械はけっこうです。しかしながら、機械を持ってくるためには、労働者がどうなるかということを真剣に話し合おうではないか、事前に話し合おうではないか。たとえばホーべルが入ってくる、このホーベルが入ってくるから能率がどのくらい上がる、人員がどのくらい縮小される、その縮小される人員はどこに配置をするのか、あるいはもしその人員が炭鉱に要らないようになったらどのように消化するか、このような考え方がないから僕らは合理化に反対する、こう言っているわけです。だから経営者あるいは政府が具体的に炭鉱労働者はこうする、機械をこうする、そのかわり余剰人員が出てきた場合は、このように恒久的な職を与えるのだという具体的な措置があるならば、私たちは好んで反対しておりません。このことをはっきり申し上げておきたいと思います。  それから五千万トンから五千三百万トンに能率が拡大されるかどうかということでありますが、現在の人員で五千何百万トンできるんだから、また消費拡大の方向あるいは生産拡大の方向がとられている現在の立場に立つならば、五千三百万トン、五千五百万トンを起点として将来石炭をどのように拡大して使うかということを検討すべきである。つまり石炭は電気にも要るでしょう、あるいはガスにも要るでしょう。そのような方向をとって、もちろん総合的な面もありますけれども、政府の施策いかんにおいては、それが拡大されていくということを私どもは知っているわけです。だから私どもの意見としては、無制限の拡大はできないと思います。しかしながら現在の状態において、首切りによって炭を出すことを少なくするというのではなくて、現在の人員をそのままに維持し、あるいは低下させても十一万人というような膨大な数を出さずに、とにかく労使が話し合いによってできるような範囲において合理化を進めていくということが、むしろ妥当な行き方ではないか、そうしてまたそのような話し合いと合わせて政府の施策というものが必要ではないだろうか、このようなことを申し上げたいと思います。
  19. 八木昇

    ○八木(昇)委員 ちょっと時間がなくて非常に残念なのですが、植村さんに最後に一点だけ伺って終わりたいと思います。今度この合理化法の一部改正案が出たんですけれども、今後石炭鉱業をどうやっていくかという基本計画もまだ決定されず、もちろん具体的実施計画も決定されず、そういった資料もこの委員会にはいまだ出されるに至らない状況のもとにおいて、この合理化法の一部改正法だけは通してくれ、こういう状態になっておることに対して、われわれは非常に不満なんです。そこで植村さんは石炭鉱業審議会会長でもございますし、今後一体そういった実施計画策定その他についてはどういう構想でおられますか。時間的にいつごろまでにどういうふうにしてやりたいという、そういう端的なお話を伺いたい。これで終わります。
  20. 植村甲午郎

    植村参考人 私は今おっしゃったように具体的な計画というものが早くきまって、予算が使われて、そうして仕事が進んでいくことが一日も早くありたいということを念願するわけなんです。今しきりに準備を急いでおられますが、この段取りでいきますと、どうも秋ぐらいまでは準備にかかってしまいそうなんです。これも基本計画的なものをほんとうにこしらえていくという方からいえば、ちゃんと段階的に、いつ何をやってというふうなものがあります。それから業者の方の準備にしましても、相当の時間がかかるわけですから、これはやむを得ないかもしらぬが、どうもそれじゃ効果が上がってくるのがだんだんにずれるじゃないかというのが、私の率直な気持でございます。そこでいわば本式な計画、数字というふうなものは相当な時間がかかるとしても、これはどうせ、どっちみち反対のない、やらなければならぬことだというふうなものがもし編み出せるなら、早くそれが実施に移されて、そうして全体をくずすのでは困りますけれども、その一部が実施されても効果が上がるようなことは、できるだけ早く実施に移してもらいたい。その意味からいって予算の方ももうすぐ上がるのではないかと思いますが、この法案もできるだけ早くきまって、確固たる法律の基礎のもとに、役所の方にしましても、業界にしましてもできるだけ早く準備を進めてもらってわれわれの方へ一応の材料が出てくるということが望ましい。その意味において、はなはだ材料が不備ではないかというようなお話がございましたが、できるだけ早くこの法案の上がることを私としては希望しておるわけでございます。
  21. 中村幸八

    中村委員長 委員並びに参考人各位に申し上げます。だいぶ時間も移っておりまするし、あとに質問者が多数控えておりますので、質疑応答はごく簡潔にお願いしたいと存じます。  次に武藤武雄君。
  22. 武藤武雄

    ○武藤委員 冒頭に植村さんに御質問をいたしますが、私は今度合理化審議会答申をいたしました内容の中で、二、三点質問したいと思います。  答申の第十六項目に、非常に強い言葉で答申が出されておるわけですが、それを簡単に読んでみますと、「最后に政府に要請されることは、確乎たる総合エネルギー対策と、これに基く体系的な石炭対策実施である。今次合理化の成否はおそらく石炭にとって最后の機会と考えられるので、」こういうふうに、今度の答申内容に基づく施策が、おそらく石炭の運命を左右する最後の機会だ、これをはずしたら石炭は自滅するのだということを、はっきりこの答申でうたっておると思います。そういう重要な答申をいたしております。それから同時に十八項目に、三十八年十一月以降は重油ボイラー規制法を完全に廃止することを銘記すべきであるということをうたっておるのであります。そうすると三十八年度以降はボイラー規制法は完全に廃止されるまたしなくてはいけないという強い答申をして、しかも十六項目には、石炭にとって最後の機会だといっておるのでありまするが、そうするとこの合理化審議会答申に基づいて、政府がいろいろの施策を考えておるわけでありますけれども、合理化審議会会長として、この三年間に重油と競合し得る石炭合理化の態勢が、はたして今のような政府施策の中において完全に実現できるのかどうか。これができないということになると、これだけ強い表現をされておるわけでありますから、大へんなことになるわけでありますけれども、その見通しについてお聞かせ願いたいと思います。
  23. 植村甲午郎

    植村参考人 今のお話でありますが、三十五年度の予算等に盛られた施策で、完全であるかどうかという問題になりますと、私率直に言って必ずしも百パーセント満足しているということではございません。しかしながら初年度の予算としまして、予算の実際の使用というふうなものも考えて参りますれば、本年度においては、今度の予算としてはまずそれでスタートしても、なお審議会等における検討の結果さらに必要なものは加えていって、三十八年度までには何とかやり上げていこう。これは最後の機会ということを申しておりますが、一般の自由化の傾向日本の置かれている立場等を考えて参りますと、この辺でもってほんとうの抜本的な体質改善が行なわれないと、石炭鉱業というものは非常な小さい規模においてしか残らないことになりはしないかということを考えているわけでございます。それからボイラー規制法の問題にしましても、ボイラー規制法そのものが本来変則的といいますか、一時の便法であったわけであります。従って時限的な性格を本来持っていくべきものであります。三十八年度までには石炭鉱業も先ほど申し上げたように、鉱業自体として自立できるようなところへぜひ持っていく、同時にそういうような日本経済の全般に関連します臨時措置的なものは今回はのがすけれども、これで先へまたずるずる続けるということでないようにしていきたいというのが、この趣旨だと思います。
  24. 武藤武雄

    ○武藤委員 御答弁を聞いていますと、相当不退転の決意をもってこれを推進しなきゃならぬということを強く言っておられると思うのです。そこで答申案の中にいろいろ条件を書いておりますけれども、たとえば高能率炭鉱造成の助成、開銀の金利の引き下げあるいは近代化助成金の問題、税制の改正などという重要なことをうたっておるわけでありますけれども、税制の問題なんかについても、一般産業との関連で考えても相当不合理が多いようであります。こういった点について、合理化審議会としては単に答申のしっぱなしという態度を今後とられるつもりですか。それともなおかつ政府等の施策その他について、積極的に今後とも実施計画等についても意見を述べたり推進をする努力をするお考えでおりますか、どうですか。
  25. 植村甲午郎

    植村参考人 これは努力をしなければならないと考えております。
  26. 武藤武雄

    ○武藤委員 それと、先ほども同僚議員が触れられましたように、この計画でいきますと多数の離職者が出ることが前提になっておるのであります。われわれの側からいえば、これはやはり首切りを出さないで、そしていろいろの新規需要の拡大等あらゆる施策を通じて出さないでやってもらえば一番いいんでありますけれども、現実には困灘でありましょう。従いましてある程度離職者が出るという事態は、直面してくると思います。また現にそれが出ておるわけであります。そこで私は考えるのでありますけれども、この離職者問題を離職者が出てから対策を考えるというのでなく、合理化を進める場合にその離職者を、先ほども意見があったように単なる自由労務者にしてしまわないで、いわゆるそれを受け入れる態勢というものを、あらかじめ合理化審議会の作業と並行して、全産業の分野において政府の施策と相まって、これだけの離職者が出るけれども、これはこの部分に吸収をするといったような合理的な施策が必要なのではなかろうか。そうでないと単に計画は立てる、離職者は出ることはやむを得ない、それは労使関係にまかせておくぞ、それで労使の力関係で出てきた離職者については、援護会の方で救ってやるぞということでは、やはりほんとう意味の、非常な決意をもって石炭合理化に当たられる立場からいって、これは親切な手段ではないのではないかと思うのであります。かりに今、先ほど出ましたが、三井の問題でけさは非常な乱闘等も起きておるようであります。これは大へんわれわれが心配した現象がそのまま出てきたのでありまして、これは非常に不幸なことだと思うのでありますけれども、こういう事態はやはり労使だけにまかせるということになると、どうしても避けられない問題だと思うのです。かりに今度の三井の問題が解決が困難になって相当長期化していく。こういう中で、たとえば非常に貯炭が減少してきた。減少してきたことによってなおかつ戦術的な強化をする。これは労働組合の立場からいえば、戦いをするのでありますから当然でありましょう。従って戦術の強化をして、やはり全国的なストライキという形の中で、貯炭の極端な欠乏という中で圧力をかけていく、これは当然組合としてとる戦術でありましょう。しかしかりにその戦術が普通の状態、普通の経済状態の中であれば、単に石炭が急速に転換されるという情勢ではないという場合においては、そういう戦術も可能でありましょう。しかし今のお話のように、重油との問題をどうするかという重大な段階に至っておるときに、極端に貯炭が減少したときに、また非常に急激な圧力がこれに加わるということになると、これは石炭はだめだ、これはどんどん重油に転換する必要があるという一般的な空気が全産業界に起きてこないとは限らない。こういうことになると、合理化審議会で問題を考えている方向とはまるっきり逆な方向に、ほんとう石炭の最後の機会になる状態が出てこないとは、これは何人も保証できないと思うのです。そういう情勢は十分考えられると思うのです。そうなると、やはりわれわれの考え方としては、そういった不幸な事態を単に労使の関係だけに負わせるというのではなくて、先ほども申し上げましたような計画的な離職者対策というものを考えていく必要がある。そのためには、この石炭離職者の問題も含めた総合的な石炭合理化計画というものをやる必要がある。そのためには、今のような合理化審議会の中だけで問題を考えるのではなくて、もっとワクを広げて、そういった合理化によって出てくる配置転換の者を引き受けられるような施策も十分考えた、計画された機構というものが必要だと、われわれは常から主張しておったのですけれども、そういう点に対して単に植村さんは経営者側という立場でなくて、重大な国内産業である石炭の事業を推進するという公平な立場に立って、一つ意見を聞かしていただきたいと思うのです。
  27. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいまの、影響するところが経済全般でもあり、また労働界全般にも関係する、それから社会的にも影響する、こういう意味からいって、非常に広い場面を持っているわけでありますから、あるいはそれを一緒にして審議するというふうなことが言われますが、これは結局方法論になりますが、今の段階においては、離職者の問題というものについては、厚生省が中心となりまして、通産省と一緒になって一つ対策が立てられています。これはまだスタートしたばかりでございますが、同時にいわゆる再教育といいますか、一つの教育をして、ほかの産業に向けるというのもだんだんに進んできておりますし、それから一般の産業界でこれを受け入れるということについて、今までも内輪の会議をやりますと、なかなかやかましいことを言う人もありますが、だんだん事態というものを認識して参りましたしするので、これもわれわれとしては極力努力をしていくというような、幾らか一緒のところで組織を作って改善をして、これはこうというふうにはなっておりませんけれども関連してやっているというのが現状だと思います。それで、どこか一つのところできまって、命令するというふうな形に必ずしもいかない問題でありますので、現在の状況というものを、先ほども運営面について離職者対策関係が官僚的でいけないというお話もありましたが、そういうことも是正して、現在の形をできるだけ早く成果が上がるように推進していくということが、やはり今としては一番いいんではないかというふうに私は思います。それでその模様で、何かまた必要があれば考えていくといいことでいいんではないかと私は思います。
  28. 武藤武雄

    ○武藤委員 この問題は、相当これから重要な問題だと思うのです。それで結局何か一つのそういうまとまった合理化対策の中の労働部面の会議で結論が出て、たとえば石炭界がこういう状態でこれだけの、たとえば五万なら五万という離職者が出る、その離職者に対してはここの産業部門とここの産業部門で、こういうふうにこれを吸収する計画を立てた、従ってその対策に基づいて労使双方がだれを転換をするかということは一つ協議してもらいたい、こういうふうに出ていけば、やはり末端の労使においても、それもだめだという議論にはならないと思う。その場合にはやはり労使は、その産業で転換でき得る人員については、真剣な討議が行なわれると思うのです。ただどこへいくかわからないという状態の中で、ただ首を切り飛ばすということですから、今の三井のような不幸な状態が出てくるわけなんでありますから、この点はやはり十分に考えていただく必要がある。そういった結論が答申なりで出れば、われわれが前から考えているように石炭産業雇用安定法といっていいかこういう危機産業雇用安定法といっていいか、そういった法律をも政府に作らして、いわゆるそういう計画された中で出てきた結論とその雇用安定法が十分マッチできるような政府の施策というものが重なっていけば、私はこういった問題も相当除かれていくのではなかろうか、こう思っておるのです。そういう点は特にあなたたちの方でも十分御審議を願っていただきたいと思います。  それからもう一つは、最近発表されました合理化の中で、非常に大きな部門を占めておりまする融通機構の対策の問題ですね。ここで当面北海道、九州等の輸送賃の問題が非常に大きな問題になって、大体今度八百円から千二百円もコスト・ダウンをする中のいわゆる四百円の計画変更の約半分は、この流通機構の改善によってコスト・ダウンをやろうというお考えがあるようでありますが、その中の一つとして石炭専用船の問題を取り上げておるようであります。これは炭鉱合理化だけから見れば非常に効果が上がる問題だろうと思います。しかしこれは一般産業との関連があって、たくさんの機帆船や何かがこれに携わっている、相当多数の関係者をかかえておると思うのです。ですから、そういった問題との調節をやはりある程度考えないと、何かこの前海員組合ではそういう石炭専用船が出た場合には、一切の乗船を拒否する、これは国際的な関連でこれを阻止するというようなことも発表されておったようであります。やはりこういった流通機構の改善も必要でありますけれども、そういった一般的な関連において、どういうふうにこういった問題を考えておられるか。特に経団連という全体的な経営者の側に立っておられる植村さんの御意見をお聞きしたい。
  29. 植村甲午郎

    植村参考人 今石炭専用船の問題が出ましたが、流通機構についてどの程度のことがやれるか、結局発表になりました通りに、自由競争の態勢はやはりとっていきたい。しかし今のままではいけないので、もう少し簡素化するといいますか、もう少し人員も少なくて済み、経費も節減ができるような形にならぬものかということが一つあるわけであります。  それからもう一つは、現在の実情から見て機能上必ずしも必要でないという不合理な点がある、そういうふうなものをやめて中間経費を節減しようとか、あるいは受け渡しの場所を、つまり炭と利用者と生産者との結びつきの関係ですが、こういうようなものについても、もう少し合理化ができないかというようなことが骨子になって、そこに輸送の問題は、——輸送というのは大きな問題ですから、たまたま九州と北海道という両方の端に生産地の主たるものがあって、まん中までどうしても持ってこなければならぬ。そこで専用船の問題が出ましたが、今の御指摘の点については、これは私はまだ具体的に私の方のあれで取り上げてやっておりませんけれども、今の関連産業との関連というものについては十分に検討し、そして筋を通していくことに努力しなければならないということを考えております。ただこっちの石炭だけの面から、専用船を作れば一トンについて北海道の炭が幾らになるから、それをすぐ作れというふうにそう簡単には言い切れないのじゃないか。作らなくとも、また片一方を勉強させる方法もかなり考えられるかもしれませんし、その辺のところはまだ私の方で具体的にちっとも議論しておりませんけれども、具体化の前にはもちろん議論しなければならぬ問題だと思います。
  30. 武藤武雄

    ○武藤委員 簡単にあと二点だけお伺いしますが、答申の十九項目の合理化を進めていく過程において海上運賃の問題その他で重油の価格が相当大幅に下落してきて、合理化の推進が現状では困難になってきたというような事態が生じた場合には、「石炭とその競合エネルギーとの間に、所要の価格調整措置をとることを認めてもよい。」こういったような答申が出ておられるわけですけれども、これはどういうことをやるつもりですか。単に、消費の規制は一切考えないで、価格調整だけで、たとえば重油の関税でも引き上げるようなことを考んておられるのですか。
  31. 植村甲午郎

    植村参考人 そういうときにどういう方法をとるかという問題は、必ずしもそう深くこのときには検討しておりません。この趣旨はむしろ、三十八年度の終わったときには、石炭鉱業というものは制度的な援助がなくとも自立できる態勢に持っていく必要がある。その途中の問題として、合理化を阻害するような市場状況が世界経済関係で出てくるというような問題になると、これは過渡的な問題として、そのときには臨機の措置を講じなければならぬかもしれない。しかし、これはそういうような保護的な措置というものを永久に続ける意味ではないのだ、ここに書いてありますのはこういう意味だと思います。ただその手段方法となりますと、これを今ここでとっさにはございませんが、その影響の程度等を見て、規制というのは一番強い方法ですが、もうちょっと手前の方でやれるならばそれでおそらくやっていくだろう、こういうことだろうと思います。いずれにしても過渡的な問題としてこれを取り扱っていきたい、こういうふうに私は承知しております。
  32. 武藤武雄

    ○武藤委員 最後に一言だけ御質問いたします。合理化審議会の中で実際に討議されてきて——私どもは従来から単にコスト引き下げという石炭合理化法の中だけの問題ではなく、やはりもっと全体的ないろいろな問題を論議する総合的な会議の構成というものを考えたらどうか、こういうふうに主張してきたけれども、やはり先ほども申し述べましたような離職者に対する総合計画というものを考え、その他のことも考えると、どうしてもやはりもっと規模を大きくした総合的な産業会議的なものが現実に必要なのではないか、そういうことを考えるのですが、その点に関して会長さん、それから労働側の重枝さん、藤岡さんあたりの御意見としては、やはり今の合理化審議会の中でそういった問題をやるといわれるのか。重枝さんの御意見では、先ほど何か別途に総合的なものを考えた方がいいという御意見があったようですけれども、そういう点に関して実際運営に参画されていらっしゃるあなた方の御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  33. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいまの点は、つまり制度として大きなものにするということでなく、内容的に考えていきますと、今回の審議をしますについても、今までの構成ではいけないというので、有沢先生、安芸先生その他五人の方に加わっていただいて、いろいろな角度からの検討をしていただいておる、こういうわけであります。ただ先ほど来、つまり労働界の意見についても小委員会等では述べていただいておりますが、今の運営面からいって、小委員会というふうなものを相当活用して参りますと、ある程度今の要求が満足される面はあると思います。これを、全体をもっと大きな機構にする必要があるかないかということになりますれば、これは運用面でいわれるところの要望は相当かなえられるのじゃないかというようにも私は思っておりますが、すぐ大きなものにしないとこれは困りはしないかとまでは、私としては考えておりません。
  34. 重枝琢巳

    重枝参考人 御質問の点については、審議会委員の増員はありますが、この審議会はやはり石炭鉱業合理化についての突っ込んだ問題を審議するところでありますから、これを今おっしゃるような形に拡大するということは、かえって焦点をぼかすことになってくるのではないかと思います。そこで別な観点からそのことは考えなければならないのじゃないかと思います。たとえば今日の石炭危機の真相が、エネルギー消費構造の変革に根ざしているのだ、あるいは景気変動によって石炭業者が右顧左眄、一喜一憂すべきではないのだ、あるいは電力業界等においては、もう重油を使った重油専焼ボイラーの方がいいのだということで、直ちにボイラー規制法を廃止せよというような意見もある。そういう石炭産業の今日の危機の実情を、今後どうするか、あるいは石炭をもっと合理的にたくさん使ってもらうというような販路の拡大というような面、あるいは合理化をやっていく場合において離職者が出る、それを先ほどおっしゃるように、もっと広範な意味でこれを受け入れていく、私が先ほど申しましたように、成長産業における産業人として、これを受け入れていくというようなことをもっと大きな経済政策、あるいは国民運動というような立場で運動を展開する必要は確かにあろうかと思いますが、それは独自の立場に立って、たとえば石炭問題についての国民的な会議を常設して研究をすることが、あるいは政策の基礎固めといいますか、世論を作るという意味からも非常にいいんじゃないかと思いますので、その点は一つ皆さんの手で大いに検討していただければ幸いだと思います。
  35. 藤岡三男

    藤岡参考人 私も大体重技参考人と同じような意見なんです。審議会の中に全体的に雇用対策とかそういうものも持ち込んでやるのもどうかと考えて、当初反討意見を申し上げたのですが、やはり石炭問題というものを一つ大きく取り上げる。そしてその中に、今言った審議会の中で合理化研究研究、それから全体的な小委員会、産業との関係、全体的なのを二つか三つ持って、総合的に雇用問題とあわせて石炭問題をどうするかというセンターにしてやっていった方がいいのではないかと思います。それで私が反対しましたのは、今言ったように、石炭産業あるいはほかの産業面から見て、ただこう合理化しなければ競合できないんだという形だけではだめではないか。つまりそのためには競合し、競合の中から石炭産業を生かしていく、その中にはもちろん人員整理も入ると思います。それを絶対人を減らしてはいかぬと言うことは、言うこと自身僕はどうかと思います。やはり合理化していく中には、人員も減るだろうと思います。しかし、減るだろうと思いますけれども、今まで過去五年間やってきて、減ったやつは減りっぱなしです。もちろんそれは援護策とかいろいろ考えられておりますけれども、実際にやられてくるのはものの数しかない。そのためには、特に筑豊炭田には五万という人間が、まさにどうしようというような瀕死の状態なんです。死を待つばかりだという状態です。最近は国民的な運動の中からある程度一時しのぎで、ここ正月を越したとはいうものの、やはり本質的には改善されていない。そういう面から見ると、やはり石炭労働者をどのように雇用していくかというその対策と並行的に進めていく。その進めていく小委員会といいますか、そのものが進められて、総合的な対策本部というか、対策委員会の中で全体的な政策として生かしていく。それをやらぬ限りは今の状態で、この法律が通過すれば労働者は何を言ってもどうなってもいいということになるよりほかない、これはおくれていますから……。だからそういう計画を労働者の雇用政策、労働対策というものと並行的に進めていくことによって、この法案が僕は生きてくると思う。それがない限り、抵抗というか、労働者の抵抗が非常に出てくるわけです。そのことはやはり不安だからです。だから不安のないような政策というものを並行的にやっていって合理化政策を進めないと、非常に無理がいく。そのことがやはり労働問題から社会問題に発展していく、こういうふうに僕は考えておりますから、結論的に申し上げますと重枝さんの言われたように、やはり大きな対策本部というかそういうものを持つ、そして合理化審議会合理化審議会でやる、あるいは雇用対策は雇用、あるいは産業会議、こういう二つか三つの小委員会を総合的にまとめる組織そのものが必要だ、その中から政策というものが生きていき、この法案というものが生きていくんじゃないか、こういうふうに考えております。
  36. 中村幸八

    中村委員長 次は多賀谷真稔君。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 植村参考人にお尋ねいたしたいと思います。千二百円引き下げというのが他の産業界の絶対的要請である、こういうようにおっしゃったわけであり、また答申にも千二百円引き下げるべきである、こう書かれてあるわけですが、この千二百円というのは、一体他の競合エネルギーとの関係において、どの地区で千二百円の必要があるのか。たとえば北海道とか九州では、重油に比べて石炭は必ずしも高くないと言われておる。そうすると阪神とか、あるいは京浜地区では非常に高い、こう言われておりますが、その千二百円というのはどの地区で必要なのか、全国的に千二百円というものが引き下げられなければならぬ、こういう考えであるのか、これをお聞かせ願いたい。
  38. 植村甲午郎

    植村参考人 これの審議の過程におきまして、揚げ地千二百円ということになっておりますが、東京並びに阪神、それから名古屋、そういうような主要なる需要地の値段というのが、やはり一つの大きな基準になってきたことはたしかであります。現在においても、現在の状況でいきますれば、九州の地元あるいは北海道においては、つまりもっと格差が少なくて済んでいるわけであります。しかしながら、それじゃそのままで入れるかというと、そうではないだろうと思います。それからもう一つは、今度は原料炭の面からいきまして、今申し上げたのは、これは一つの大きな基準でありますが、一般炭といいますか、主として油と競合するもの——一般炭の基準を申し上げているわけでありますが、原料炭についても非常に大きな要請があるわけであります。これはもしオーストラリアの炭を入れるということになると、それが自由に入ってくるということになれば非常に安いわけなんですね。そうすると鉄鋼業者の立場から言えば、世界市場において競争している。それから造船がいつもやかましい問題になるわけでありますが、日本の造船を含めた機械工業に対して、鋼材を供給する値段が幾らであるかということが、今度はそれらの産業の世界市場における競争力に影響してくる。だからもっと下げてくれということをよく言われるわけであります。そういうことを考えて国の方としては、一方では鉄鉱石の確保ということと、またこれが廉価に入手できるように、安定したソースをつかむということと、それから石炭の面としては今のままではとうてい困る。あるいはオーストラリアの炭を入れるということになれば、つまり二千円くらいの差があるのだ、こうなってきますと、これまた北海道、九州における製鉄所というようなものを考えても、外国炭の場合はどこへ入れても地区的にはあんまり影響ないんですね。これはやはり安閑としていられないわけです。原料炭は大丈夫かというと、これも決してそうはいかない。そういうふうなものを勘案していきますと、つまりこれは一般炭の基準のようなものですが、千二百円の引き下げというふうなことは、どうしても要請されるんじゃないか。これについては油と石炭との使用上のメリットの計算をしたり、それから各市場におけるデマンドの関係を調べたり、また生産費を調べたりしまして、つまり改良を加えて、どのくらいほんとうに山が残し得るか、極力残してどうなるかというような計算をいろいろやって、大体五千万トンないし五千五百万トンというふうなものが、そのほかのファクターを入れて出てきておる。それで純粋にただ計算だけやりますと、つまりコンピート的にほんとうに大丈夫だというところだけをとっていこうということになると、四千万トンくらいになるというのが、作業の中の経過でございます。
  39. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 では次に、需給の安定ということも石炭の場合は非常に要請されているわけです。ことに生産に弾力性が乏しい産業でありますから、需給の安定ということがより言われている。単に景気変動だけでなくて、豊渇水によっても、御存じのように非常に違うわけです。ところが今度合理化審議会の方で答申をされておりまするものは、その需給の安定対策について何ら答申がなされていないように思うのですが、その点どういうようにお考えですか。
  40. 植村甲午郎

    植村参考人 その点につきましては、前から問題のある問題でありまして、この法案の中には出ておりませんが、問題はやはり検討問題として残っているのじゃないかと思います。つまり大きな需要家石炭業者との関連を主にしまして、一つの需給プール式な考え方というものが一つ考えられるわけです。これはどういう角度から参りますか、今の豊水時あるいは渇水時の問題にしましても、現在の計算基準が最近の状況と合わなくなったとか、いろいろな問題があるわけなんです。いずれにしても一つの問題として確かにあるわけですが、そこへもってきて、そういう場合に油なら油、輸入炭なら輸入炭でこれを調節していくという道が一つ考えられます。これは外貨関係等からいうと、いいか悪いかということについては十分に検討する必要がありますが、一つの直接手段としてはそういうことが考えられる。ちょっと足りないときには少し入れるというふうなことも考えられる。ここは石炭業界の方と需要産業の方と数字的にはなかなかそのすり合わせが議論のあるところであります。なるだけ少なく押えておいて油を入れろという議論が一方にありますし、そうはいかないという、つまりできるだけ大きな数字で押えておいて、そしてそれだけはとってくれという意見と、これは具体問題として調整をとっていくというよりしょうがないと思いますが、今お話の問題はなお具体問題としてはある。しかし必ずしも法律を制定してそれによってというところは必要でないのじゃないか、こう思っております。
  41. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 このたびの不況は必ずしも需給のアンバランスということだけでなくて、先ほどからお話しになるように、消費構造の変化という点、あるいは燃料革命ともいわれておるわけですが、しかし二十七年、二十八年ごろの不況というのは、私は確かに需給のアンバランスからきた不況であったという点の方がむしろ多かったと思うのです。ですから需給安定というものは、新鋭火力ができて、比較的新鋭火力はコンスタントに動きましても、これは御存じのようにまだ流れ込み式の水力発電がかなりある以上は、相当のウェートで考えなければならない問題ではないか、私はこういうように考えるわけです。それがたとい六千万トン・ベースにしなくたって、五千万トンとかあるいは五千五百万トンに押えましても、私は必ずしもそれで危惧がなくなったというわけにはいかないと思う。たとえば重油の場合は火力発電所におきましても、現実の問題は重油の割当がある場合には割当分は全部使うわけですね。石炭だけが減らされておる。こういうことで豊渇水が非常に二重にきておるという状態——重油と石炭とが同じような比率で、軽減をされる場合には軽減されるという状態にないわけですね。ですから、ましてや昭和三十八年以後には重油専焼のボイラーが動く、実際に動くのだということですから、そういう事情になれば、なおさら重油専焼の方は動いておるけれども石炭の方は使われないというので、かえって逆にその使用量の減退が大きくなりはしないか、こういうことも私は心配をしておる。この規制というものがない。単に法律的な問題だけでなくて、実際問題としての行政処置でも何ら考えられていないようですが、この点私はこの答申として大きな部面が抜けておるのでおはないだろうか、こういうように考えるわけです。
  42. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいまの点は、いわゆる長期契約というものが一つあるわけなんですが、これは現にまだ具体的にまとまりませんけれども、そういうふうな動きがあるわけなんです。数量的にラウンド・ナンバーとしての電力が使う石炭の分量というふうなものは契約してよろしい。ただ値段の問題に関連するものですから、そこのところはまだまとまっておりませんが、何らか長期的な契約等によって、そういう点はできるだけ確保していく。それから同時にやはり何かときどきに当面する需給のアンバランスに応じて、ただ外国からそのときには入れるとかなんとかいうことでなく、方法が考えられていいかもしれぬ。それらの点については、今までも何度か議に上ったことがあると思うのですが、業界間の問題としても、なお研究する余地があるのではないかと私は思っております。
  43. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 この点は私は単に企業間だけの話し合いでなくして、制度的に解決をしてやる親切さがほしいと考えるわけです。今までこの問題は長くいろいろいわれましたけれども、結局まだ解決を見ていないという点は、制度的解決が必要ではないか、かように考えるわけです。  次に安芸先生にお尋ねしたいのですが、これは石炭鉱業審議会生産部会から流通合理化についての答申ですか、中間報告ですか、なされておるわけですが、それを見ますと、交錯輸送の調整ということがありますね。要するにこのことは北海道の石炭を阪神に持っていったり、九州の石炭を東京に持ってくるような愚はやめたらいい、むだは省いたらいい、こういう意味だろうと思うのです。ところがこれは文章に書くのは簡単ですが、実際できるかどうかという点です。私企業間の契約でできるかどうかという点は、私は率直に言って疑問を持っているのです。たとえばこういうことならできると思うのです。A社がたまたま販売ルートを阪神に持っておった、阪神に送らなければならぬ、こういう場合に、そのA社は石炭を阪神まで持ってくる、B社は東京まで持っていかなければならぬ、こういうことになって、その契約ができておった。そのA社が九州の石炭を送り先の阪神まで持っていく。そうして値段はA社が阪神に送ったあるいはB社が東京に送った値段で相互にやるのだ、こういうことになれば国家的には私はできると思うのです。その余った金をだれがどうするかということは別として、私はできると思う。これは御存じのように、今関西電力と北陸電力がやっておるわけです。水力火力の調整でやっているわけです。しかし一体私企業間でそういうことができるかどうか。これなくしては、私はこの交錯輸送の調整という、言葉はりっぱですけれども、実際上はできないのじゃないかと思うのです。その点について答申あるいは中間報告ですかが出ておるのですから、その点はどういうようにお考えであるのか、お聞かせ願いたいと思う。
  44. 安芸皎一

    安芸参考人 ただいまのお尋ねでございますが、確かに非常にむずかしいと思うのでございますけれども、現在の流通機構の様子を見ていますと、いろいろ非常に複雑でございまして、個個の企業者が直接やっているような場合もございますし、中に中間みたいなものもございますが、要するにただいまそういう繁雑なことがいろいろあるために、何か流通の途中で適正なものは適正なところにいくように一つの販売の機構を考えたわけなんでございますが、これは必ずしも現在のそれぞれの企業の自主性をこわさない範囲で何か仲介的な役、ただいまお話の電力の場合もそうでございますが、そういう流通のできるような機構をほしいということをつけ加えたわけなんでございます。
  45. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は率直に石炭鉱業審議会の最初の答申といい、流通合理化に対する中間報告といい、結局これだけの大きな仕事をするのに非常になまぬるいやり方ではないかと思う。いやしくも十一万名の労働者を減らすというが、実際首を切られる人は十一万じゃないのです。これは私は十三万であり、十五万であるかもしれないと思う。新たに雇用される者があるかもしれない。ことに若い労働力を必要とする場合においては、そういうことがあるかもしれない。ですからこれだけの労働力を減らし、首切りが行なわれるという現状において答申がなされるにしては、あまりにも企業家に犠牲がないじゃないか、企業の方は全然自由にして、その上に立っていろいろなことが糊塗されんとしておる、ここに私は非常に問題があると思うのです。これはイデオロギーを抜きにしまして、私は非常に問題があると思う。それだけ労働者の側に犠牲を負わすなら、企業の方ももう少し裸になって、この問題を考えるべきではないか。たとえば鉱区の問題にしてもしかりですね。鉱区の調整ということがいわれておりますけれども、実際鉱区の調整がなされるかどうか、今度の政府の案でも鉱区の調整については何ら新しい規制の方法もないのです。あるいは政府が乗り出していこうという気配もない。ただ文章だけがある。これをとりましても鉱区の調整の問題は、これはもう長い間いわれてきた懸案が、何ら解決を見ていない。この点がそうです。それから今、私が最初質問をいたしました輸送費の問題にいたしましても、これは全面的にプールせいということは戦争統制経済でありませんから申しませんが、何らかやはり若干考えるべきものがあるのではないか、こういうように思うわけです。一方におきましては一般炭においては千二百円ほど安く逆に使うということにもなるのですから、これは当然考えてしかるべきではないか。これも自由に置かれておる。それから今申しました流通部門につきましても、これは結局いろいろおっしゃいますけれども、今の企業の自由化を阻害しない範囲でやろうとすれば、幾ら文章を書いて、幾ら努力されようとしても限界があるのですね。これもやはり抜本的な対策が必要ではないか。ですから私はもう少しあらゆる面から検討をされた答申が出されてしかるべきではないか、企業家の方は触れることは一切ならぬ、タブーであるという式で組み立てられておる答申案というものは、なかなか思うように実行できないのではないか、こういう感じを持つのですが、それに対して植村会長から答弁をお願いしたいと思います。
  46. 植村甲午郎

    植村参考人 まあ答申といいますか、現在考えられておりまする合理化案の施行というものについては、もちろん自由主義経済といいますか、それの基盤に立っております。それでその基盤の上でもって一番合理的にやっていくのにどうするかというところに、若干のつまり法的なあれが出てくる、こういうことになるかと思います。今の犠牲の問題になりますと、これは私、ちょっと炭鉱の代弁者じゃないのだからわかりませんが、会社としても、株主としては非常な犠牲を払うというか、時勢の変化でやむを得ない結果になると思います。問題はつまりどれだけ生き残れるかという状況でありまして、これについては会社の社長は別途できるだけ犠牲を少なくする方法を考えるでしょうが、これは別問題として、犠牲という点になれば関係者は全部相当の犠牲を払っていると思っていいじゃないかと思います。  それから法律的な規制をするという問題、これは問題が、値段が安ければ需要があり得るであろう、高かったらいよいよだめになる、こういうような問題であります。つまり需要の選択のようなものも十分に尊重していかないと買ってくれない。石炭作ってもしようがないという形になるわけであります。そこでそれじゃ国家的にこれをどうするかという問題からいって、やはりこれは国民経済全体の立場というものを一つ考えて、そしてあまりに負担にならぬ程度において自立態勢まで持っていってやる、こういう形が考えられておるわけであります。これについてのほかの社会的な影響その他というようなものとの勘案になりますれば、これは政府としては十分考えていかなくちゃならぬかと思います。そこでどうするかという問題ですが、石炭合理化案施行という関係からいきますと、販売機構にしましても今のままでよくはありませんが、何か法的な一元化とかあるいは二元化とか、専売局の分割についても何か二つにしたらどうだとか、三つにしたらどうだとかありますが、そういうふうなことがはたして実効を上げるか、いい結果になるかどうかも、疑問だと思うのです。しかしながらあるいはドイツ——私はよく知りませんので、小島炭政課長が帰ってみえたら聞いてみたいと思うのですが、これが何かスリー・グループぐらいに分けて、配給の関係といいますか、流通過程についてのある合理化が行なわれつつあるらしい。そういうふうなのは、やはり自由企業の話し合いでできているわけです。それができればこれが一番動きとしてはスムーズなんですね。円滑にいきますから、そこで具体的に配給の流通面の合理化という点についてどういうことがなされていますか、これはやはり関係のものとして与えられた状況のもとに将来生き抜くためにどうするのが一番いいかということを考えて、できるだけの協力態勢をお互いにとってやっていくというのが、現在考えられている基盤になる考えだと思います。それで一つやってみたらどうかということを、私は考えておるわけであります。
  47. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ドイツのように割合にカルテル思想が強いところは、比較的自主的にできるでしょうけれども、日本は御存じのような状態ですから、自主的に協力態勢ができるということはなかなか期待できないのではないか。まあ、ある時期には当然政府としても踏み切らざるを得ないのではないかと、こういうふうに考えるわけですが、それは一応おくといたしまして、最後に就労対策については、当然政府かやる責任はあるわけですけれども少し石炭企業家自体が、いわば政府責任のみを転嫁して、もう少しやるべき仕事をやっていないのじゃないかという気持もするわけです。というものは、鉱員募集をしておりましたあの努力ですね。労務の仕事の大半はあの鉱員募集ということで、相当な経費を使い努力を払って集めたわけです。そして今の炭田地帯に全国から集めたわけですが、あの努力をそのまま今の疲弊をしております炭鉱がせよというわけではありませんけれども、私は少なくともその十分の一でもそういう気がまえを示すべきではないかと思うのです。そうすると、今日のような激烈な労使間の紛争というものは、私は避けられるのではないかと思うのです。そしてあらかじめ経営者はその計画をして労使と話し合って、その対策をずっと前からやはりやっておかなければ、急に幾ら首を切るといいましても、みな困るのはあたりまえなんです。その努力というものが、私は産業界自体にできていないのじゃないかと思うのです。それは政府がやるのが当然で、われわれも政府を鞭撻するわけですけれども、産業界自体にもその態勢が必要ではないか、こういうように考えるわけですが、その点お聞かせ願いたい。
  48. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいまの点は、これは産業界の諸君にもよく御意見のあるところを伝えたいと思いますが、現在の状況から見ますと、ほかの産業の連中としては、まず一体石炭業界はどうするのだというふうな立場、その離職者対策についてどれだけの努力を払うか、そこで炭鉱の各部面で吸収されるものはしよう、これは第一段階で、その次には今の政府対策を除けばそれぞれ大きな昔の旧財閥的なグループだってあるじゃないか、そういうところで少し援助したらどうだ、こういう問題が起きるわけです。これについても、すでにそれぞれ炭鉱のグリープに属する炭鉱社長から話をしまして、ある程度のものは現に吸収しつつある。その次には今度は一般業界で、そういうふうな特別な関係はないが、これを全体的に考えてどうするか、こういう問題が出てくるわけです。これも一方では炭鉱の労務者、コール・マイナーというものはやや特殊な存在でもあるし、従来、先ほどもお話がありましたが、私も誤解もずいぶんあろうと思いますが、うっかりきてもらっちゃ困るというふうな空気だってなきにしもあらずなんですから、そういう状況はだんだんによくなってきている。中には一はだ脱いでくれる人もだんだん出てきている。それをわれわれとしては別の面において仲間うちとして努力していくというのが現在の状況であるわけです。そこで、あらかじめという問題が先ほどお話にあったのですが、これはやはり会社当局の方針として、あらかじめ話し合いをできるだけして、そして身の振り方その他についても十分な考慮を払って、だんだんに実施に移っていくという手順が望ましいことはもちろんだと思います。これは私炭鉱の経営をやっていないものですから、ここで方針を申し上げられませんけれども、また何かの機会にそういうふうな御要望があったことは皆さんに伝えていい、こう考えております。
  49. 中村幸八

    中村委員長 北條秀一君。
  50. 北條秀一

    ○北條委員 参考人の方をせっかくお招きしておいて皆さんの人権を無視して時間をとるのは恐縮でありますから、四人の方に一つずつ私は簡単に申し上げまして御意見を伺いたいのであります。最初に安芸教授にお伺いをするのでありますが、石炭鉱業を斜陽産業というふうに言いふらされて、この言葉はわたしは不必要にいろいろの点において刺激をしていると思います。私は石炭産業を別に斜陽産業だとは思いません。それはやり方が悪いからそういう放言をさせるのであるというふうに思うのでありますが、その点について安芸教授はどういうふうにお考えになるかということと、もう一つは、私は中国の大同炭鉱の一千万トンの開発をやったのでありますが、何といいましても、地下資源でございますから、その賦存状態を正確に把握することが非常に大事なのでありますが、もちろんボーリングをやって資源開発の計画を立てましたが、やってみるとやはり相当の誤差ができてしまってむだが生じたわけです。私は日本石炭産業も過去一世紀やっておるわけでありますが、そのいろいろな開発を見ておりますと、かなりむだがあり、不合理な点があると思う。従ってこれから先石炭産業を、ほんとうに堅実な産業として育成していこうというためには、相当大規模に地下資源の賦存状態を調査して、その実態を正確に把握する必要があると考えておるのでありますが、この点について安芸教授の御意見を伺いたいのであります。
  51. 安芸皎一

    安芸参考人 ただいまお尋ねでございますが、私は斜陽という意味につきましては少し疑問を持つわけであります。と申しますのは、今日の技術革新がエネルギー革命を引き起こしておる。エネルギー革命として結局流体エネルギーにかわるんだということでございますが、私はむしろ今日一番エネルギーの利用におきまして技術革新といわれている要素は何かといいますと、石炭の使い方がうまくなったということの方が実質的に大きいんじゃないかと思う。と申しますのは、ここ二、三年、特にヨーロッパの実情を見ておりますと、鉱工業の生産の伸びよりも、エネルギーの投入量の方がずっと減っておるのであります。それで伸びが少ないのになぜ生産が伸びたのかという疑問を私はときどきするのでありますが、それは、要するに、石炭の使い方がうまくなってきたということだと思います。ところが、石炭の使い方がうまくなってきたということは、やはり産業の近代化と申しますか、そういうこと自身が石炭を高くせざるを得なかった。これは先ほどもちょっとお話がございましたが、完全雇用——特に西欧のような状態のところでは、炭鉱夫になり手がないから石炭がふえないのだということをちょうど一九五五年から一九五九年ごろ言っておりましたことは御存じだと思います。そういたしまして、近代化が進むに従いまして——その近代化ということは、要するに、技術的な問題、経済的な問題、社会的な問題も含めてでございますが、とにかく炭鉱の賃金が比較的高くなってきておる。確かに炭鉱の従業者の賃金の上昇率というものは、ほかの分野よりも高くなっております。これはこういう環境ではやむを得なかったことと思うのでありますが、そのために石炭価格が在来よりも高いものになってきておるということなのでありまして、それをどこまで使いこなせるかということにかかっておると思うのでありますが、私は今日の段階では使いこなしてきておると思います。使いこなすためにはずいぶんいろいろ考えられておるわけでありまして、率直に申しまして、今日本でも炭価は高いが、しかし使う方は在来の標準の使い方をやっておる。たとえば東京付近で一つのところで三百万トンも四百万トンもたこうというのに、石炭供給が今の形でいっていいのかというところに私は疑問を持つわけであります。そのために、最近のヨーロッパの事情を見ておりますと、これは石炭国であり、先進国でありますから、日本もだんだんそれに似てきておるということを言われておるようでありますが、その歴史は私は考えなくてはならぬと思います。たとえば石炭を非常に有効に使うというか、原炭をそのままたく、最近のように、ユニットをより大きくしてやりますと、原炭のままでたきますと、むしろ油よりも安くつきます。超高圧の三十万ボルト、四十万ボルトの送電というのは、その出発は、私どもの知っています限りでは、その石炭を使うのに陸送するか、あるいはどうするか、その需要地との間をどういうふうにするかの問題になるのでありまして、要するに、電気にして四十万ボルトくらいの送電が可能になりますれば、電気にして送電する方が安いのだ。現在は八百キロ、九百キロくらい送電しております。そういうふうに、やはり石炭は今までのような役割を確かに果たしておりません。かわり得るものはほとんどかわっております。たとえば家庭用にうちで使うというのは、ほとんどなくなっておりますし、小さいところのボイラーでたきますとか、あるいは蒸気機関車のようなものはなくなってきております。しかし電気として使うのが、当分の間は、それが使いよいならば、主流になるのではないか。そのためには、生産から消費の間に——たとえば日本石炭をどの程度に、どこまでたき得るか、それが値段に関係してくると思うのでありますが、そういう点が今日のところでは、生産の面と消費の面との間に、まだ旧態的な考えが残っておるというのが問題じゃなかろうか。一がいに斜陽だからというよりも、絶対量から申しますれば、確かに石炭が一番確実にわれわれが知っているエネルギー源でございますから、私は、その代替になるものの事情を考えて参りますと、かなり不安定な面が多うございますから、やはり石炭をどこまで使えるかという点に対して、もう少し関心を持たなければならない。その意味で、生産面で一応こういう問題が考えられますが、それと関連して消費面とのかね合い、日本石炭はどこまで使えるかというような立場で、消費者の側でも考える必要があるのではないかと思っておる次第であります。  それから炭鉱の問題でございますが、確かに私はそういう問題もあると思います。とにかく石炭というのは一番古いエネルギー源であり、われわれが手なれておる一番よく知っているエネルギー源でございますから、そういう点は確かにもう少し検討を加えなければならぬと思っております。特にこれから非常に集中的な生産をやらなければならなくなるだろうと思います。とにかく一カ所で使う、しかも量も、消費の条件が変わってきておりますから、生産もそれに合うような措置をとらなければならぬと思いますが、そういう際に十分比較できるだけの資料は、さらに炭鉱とかそういう点の強化は必要だと思っております。
  52. 北條秀一

    ○北條委員 植村さんにお伺いをいたしますが、この答申の中に、千二百円程度引き下げをするために、政府は強力なる助成措置を講じろ、こういうことになっておるのであります。今私は安芸教授にボーリングの話をいたしましたが、やはり全体的に炭鉱の開発を合理化するためには、石炭資本家がその生産高のうちから何%かを出してそれをプールして、それでもってボーリングをやっていく、それだけやれば政府もまたそれに対して強力な助成措置を講ずることができるのではないか。それによって私は、石炭開発、資源開発のむだを省けば、価格引き下げにもいい影響をするのではないかと考えますが、こういうことはやっておられるかどうかあるいは今後やられるかどうか、この点について御意見を伺いたいのであります。
  53. 植村甲午郎

    植村参考人 ただいまの点はちょっと私、はっきりしませんでしたが、地域開発みたいな意味においては若干の例があるかもしれません。つまり北海道なら北海道ということで地下資源の開発会社がありますね、あれとか——石炭は大体大きな会社が自分でやるものですから、あまり触れておりませんが、今のようなことも考えられるかと思います。どの程度やっているかということは私よく承知しておりません。今のは、炭鉱では助成のような問題になりますから、あるいは予算でもつけばそういうことはやれぬことはないのではないかと思います。特別な重要なことに関連の多い炭田の確認というような意味からいってやるということになれば、これも考えられる一つの行き方ではないかと私は思いますが、あまり詳しいことわかりません。
  54. 北條秀一

    ○北條委員 重枝さんに一つ。経営上のむだというのが非常に多いと思いますが、ことに炭鉱資本家の皆さんはかなり常識的に見てもむだをしておるのですね。炭鉱資本家だけではありませんが、日本経営者というのはまだかなりみえを張るといいますか、そういうような点から、経営上に響くようなむだが多いと思うのです。先年九州の、今問題になっている三井の炭鉱では、全国的な参議院の選挙で莫大な出血をし、昨年もまた、参議院選挙で醜態を天下にさらしたことは御承知の通りでありますが、こういうようなことは、経営者側の時代感覚のズレといいますか、そういう点からかなり私はむだが多いと思うのであります。あなたは先ほどそういう点に触れられたのですが、こういうふうな経営上のむだがある、あるいはこういうふうな技術的なむだがあるというようなことを、もしあなたがここで簡単にお話し願えますなら、この際あなたの御意見を伺いたいと存じます。
  55. 重枝琢巳

    重枝参考人 それは一般的には言えることですが、ここで個々の場合の事例をあげるというのはなかなか適当ではないのじゃないかと思いますが、炭鉱の会社は従来十年に一回景気がくればいい、その十年に一回の景気でもうけて、あとは過ごすというようなことがあるわけです。そういうような風潮が一つあろうと思います。もう一つは、それとある意味では逆のあれですが、大きな会社になると、ほとんど官僚機構のような形に経営の面がなってきて、真剣に石炭危機に対応して経営を刷新して立て直していこうという決意が、はたしてどこまであるかということが非常に問題だと思うのです。というのは、ある人は非常に努力をする、官僚機構的になっていますと、うまくいってもともとだ、もし失敗すればその人自身元も子もなくなる。そういうことでどうも事なかれ主義に終わる危険性がまだ非常に多いのじゃないか。それから経営機構の中で屋上屋という点が非常に多いのじゃないか。もっとあかを落としてすっきりする方法はあらゆる面にあるのじゃないか、そういう点をまっ先にやってもらわなければ、われわれとしてはその他の問題についてはなかなかまじめに応待するわけにはいかない、こういうようなことを申し上げております。
  56. 北條秀一

    ○北條委員 藤岡さんにお伺いいたします。先ほどあなたは縦坑の話をされましたが、石炭産業は私企業でございますから、鉱区の独占ということは今の鉱業法に照らして当然出てくることと思います。たとえば鉱区が独占されておっても、一例を申し上げますと、先年来問題になりました国鉄の志免炭鉱は、二十二年に縦坑を掘った。ところが志免の国鉄の鉱区の下に別な鉱区があって、どうせやるなら縦坑を下まで掘っていけばよかったわけです。そうすれば合理的に石炭の開発ができたと思うのです。ところがいかんせん私企業だし鉱区が別ですからやらなかった。こういうことは、事情をよく知りませんからわかりませんが、全国にかなり多いのじゃないかというように考えられますが、あなたはその道の専門家として、縦坑の問題について、先ほど一一%しか政府の計画の実施がされていないという話でございましたが、その縦坑につきまして、あなたの見解をこの際お知らせ願えれば非常に幸いだと思います。
  57. 藤岡三男

    藤岡参考人 全国的にいって何本掘ればどうなるという具体的な数字は、今ここに持ち合わせておりませんが、とにかく隣接した鉱区があるわけです。たとえば佐賀県を見ますと、三菱の古賀山ですが、それに杵島炭鉱があるわけですね。ほんとうをいうなら、二つあれして一本掘れば二つの鉱区の炭がとれるわけです。そうしますと、かりに両方を掘れば二本掘らなければならないのが一本で済む、そうなって参りますと、縦坑一本で済む。その出てきた炭はどうなるかというと、双方の鉱区から流れてきますから、その炭の出方によって利潤の配分を考えていけばいいのじゃないか。だからそういうふうにすれば、今掘られておる縦坑あるいは将来掘る縦坑が少なくて済むのじゃないか。それが何本でいいということは、今ちょっとここには数字を持っておりませんが、そういうものは、今佐賀県の一角を申し上げましたが、筑豊でもたくさんあると思います。だから総合的に鉱区独占の形態を一ぺんに解放することは困難であるとしても、政府の政策なりあるいは経営者の考え方で、そういう方が経費も安く済むし、うまくいくのではないかという考え方に立って、僕らは本質的には鉱区の独占解放ということを叫びますけれども、できないとすれば暫定的にでもそのような方法をとってもらったら経費ももっと安く済むのではないか、こういう意味で申し上げております。
  58. 中村幸八

    中村委員長 他に御質疑はございませんか。——参考人に対する質疑は終了したようでありますので、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会代表して厚くお礼を申し上げます。  本日はこの程度にとどめ、次会は明日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後一時四十分散会