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1960-03-25 第34回国会 衆議院 商工委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月二十五日(金曜日)     午前十一時四十四分開議  出席委員    委員長 中村 幸八君    理事 大島 秀一君 理事 小川 平二君    理事 小平 久雄君 理事 長谷川四郎君    理事 南  好雄君 理事 田中 武夫君    理事 武藤 武雄君       江崎 真澄君    岡本  茂君       始関 伊平君    關谷 勝利君       田中 榮一君    田中 龍夫君       細田 義安君    板川 正吾君       勝澤 芳雄君    小林 正美君       加藤 鐐造君    北條 秀一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         通商産業大臣  池田 勇人君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         中小企業庁長官 小山 雄二君  委員外出席者         議     員 小林 正美君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 三月二十二日  商工会法案小林正美君外十名提出衆法第二  〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  商工会法案小林正美君外十名提出衆法第二  〇号)  商工会組織等に関する法律案内閣提出第七  六号)      ――――◇―――――
  2. 中村幸八

    中村委員長 これより会議を開きます。  商工会組織等に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  前会に引き続き質疑を続行いたします。本日は総理が御出席でありますので、まず総理に対する質疑を順次許可いたします。  なお、念のため申し添えておきますが、総理はやむを得ない所用のため、三十分後には退席せねばなりませんので、その旨あらかじめ御了承を願います。小林正美君。
  3. 小林正美

    小林(正)委員 総理にお伺いいたしたいと思うのでありますが、政府方針である貿易為替自由化などが、もしもだんだんと進んで参りますと、ますますそのしわ寄せがいわゆるおくれておる中小企業零細企業に大きくおっかぶさってくるのではないかということを、私どもは大へん心配をいたしております。そういうときに、とにもかくにもこの商工会法案が出されましたということについては、私どももきわめて賛意を表するにやぶさかではありませんけれども、その内容をしさいに点検いたしますと、必ずしも私ども考えておるような、そういう零細企業対策法案ではないというような感じが、至るところに出て参っております。その点でごく簡単にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、私どもとしましては、いわゆる小規模事業というものは、必ずしも町や村だけではない。いわゆる大都会、市にもたくさんの零細企業があるのでありまして、そういうものを、今度の法案でいきますと、全部商工会議所にまかしてしまう、こういうような工合になっておるように私は拝見いたしておりますが、従来の商工会議所のやり方というものをながめてみますと、やはりその目的の中には、全般の産業経済についていろいろと措置を講ずるような工合には相なっておりますけれども、実際上はそうではない。つまりほとんど大企業者がその実態を握っておりまして、零細企業者に対しては冷たい商工会議所実態であるということを申し上げなければならぬのでありまして、われわれ社会党としては、あくまでもやはり階層別商工会法というものを考えなければならぬ。つまり都市におきましても、また町村においても商工会を認めて、そうして大企業、中企業商工会議所、小企業零細企業商工会ということで、両々相待って日本全体の産業の引き上げのために努力していかなければならぬ、こう思うのでありますが、この点について総理の御意見をまず伺いたいと思います。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 中小企業と一口に申しますけれども、特に今御指摘のありましたような零細企業形態にあるところのものを、どういうふうに今後育成していくかということは、日本産業構造の上からいい、社会的のなにからいって、きわめて重要な問題だと思います。今回提案いたしておりますのは、御承知のように、従来地域的な商工業者組織団体のなかった郡部町村にもこれを設けよう、こういうわけであります。都市にもそういう零細業者が非常にたくさんいるじゃないか、これに対してどうするのだという御質問でありますが、その点につきましても、政府としても十分意を用いて研究をいたしたのでございますが、こういう商工業者の地域的な団体を作って、そして指導にあたるということは、商工業者の共通の利害の考え方に立って、そういう地域団体を作ることは望ましいが、都市にはすでに商工会議所というものがあり、これと別に、零細業者、小さい商工業者を別の商工会というような組織にすることがいいのか、あるいは商工会議所の――現在においてはまだ御指摘のように十分でないけれども、しかし特にこの商工会法が制定せられるのと並行して、商工会議所においてそういう小規模の商工業者に対する相談所を置くとかあるいは支部を作るとか、いろいろな方法において、商工会議所のその方面活動を充実していくということが、現在の状況においてどちらが適当であるかという考えに立って、われわれとしてはやはり現在ある商工会議所に――そういう機能を従来商工会議所は持っておったわけでありますが、十分でないところのものをそういうような方法によって充実してやっていくということが、現在の段階においては最も都市におけるところの小規模の業者に対する措置としては適当である、こういうふうな考えのもとに、都市におきましては、商工会議所のそうした機能を充実するに必要な施設をいろいろな方面から強化していく、こういう考えでおります。
  5. 小林正美

    小林(正)委員 きわめて私ども納得できない御答弁でありますが、時間がありませんから、急いで次の質問に入ります。  第二点は、私どもは、この法律がこのまま通りますと、非常に官僚統制においが強くなる、さらには町のいわゆるボス支配が強くなる、こういうおそれを抱いております。それはどういうことかと申しますと、たとえばこの商工会を作る場合にいろいろとむずかしい条件をつけて、さらにその認可申請の中には役員名前までずっと書いて出さなければならぬ。そういう場合に、もしも政府の方でこれはいかぬということであれば、その認可が結局おりないというような、つまり認可の面においていろいろと政府の意図が露骨に出てくるおそれがあるのではないかということ。あるいは立ち入り検査というような言葉をこの条文の中に使っておる。商工会議所の方にはそういう文句は使ってありません。こういうことも非常に大きく心理的な影響を与えておりまして、官僚統制においが強い、こういうことが言えるわけです。  もう一つは、商工会議所の場合には、専務理事一人だけがいわゆる業者以外の役員ということになっておりますが、商工会の場合には、実に三分の一までは業者以外の者、つまり会員でなくても役員になれる、こういうことになっております。このことは、将来非常におそるべき一つボス支配危険性をそこに包蔵しておる、こう私は思うのです。ですからこういうことはぜひとも一つ改めていただいて、業者以外の者は商工会役員になれない、また商工会議所以上の過酷な条件商工会につけて、そして認可をするというようなことは絶対にあってはならない、こう思うのです。特に運営協議会というようなものを設けて、法律にもないようなもう一つ別行政措置でもっていろいろきびしい監督をしてやろうというような気配も見えております。  こういう点について一体総理はどうお考えになるか、お尋ねします。
  6. 岸信介

    岸国務大臣 この立法いたします際におきましては、同種の団体であります、一方の商工業者団体であります商工会議所であるとか、あるいは協同組合等政府監督等につきましても、十分これらを参酌して――過酷になるような考えを、この案の中に特に盛り込まなければならぬというような考えで立案をいたしたわけではございませんで、他の立法例等とも大体同じようななにをやっておるわけであります。特に今おあげになりました二、三点につきましては、あるいは私からお答えするよりも、通産当局なりからそれぞれお答えした方がいいと思いますが、私の承知いたしております限りにおきまして一、二のことをお答え申し上げてみると、監督を厳重にするという意味ではないのでございます。たとえば業者以外の人が三分の一まで入り得るということは、決してこれをたくさん入れようということを条件にしているわけではございませんが、実際小さい業者の多い、主体である商工会郡部における事情から見ますと、その業務をやっておる人は、やはりその業務というものに専念をしていて、商工会の仕事に従事するということが、なかなかむずかしいというような地方もあり得ることだと思います。従って、必ずそれは一人以上は置けないということにすることは、むしろ小さい商工会あたりの発達からいったならば適当でない、ある場合においては、三分の一までは事情によってはふやしてもよろしいというようにすることが、その地方事情なりその地方におけるところの商工会の多数の業者が希望する場合においては、そういうこともでき得るというような道をあけておくことが、むしろいいんじゃないかというような考えでございます。  なお立ち入り検査等につきましては、従来の商工会議所で言っている検査というものの中には、われわれはそういうものが入っているというふうな解釈をいたしておるのでありまして、特に重くしているというような考えは持っておりません。  なお具体的なことにつきましては、事務当局からお答えいたさせます。
  7. 小林正美

    小林(正)委員 時間がありませんから、最後に一つお尋ねいたしたいのでありますが、これまで日本の国にはたくさんの中小企業に対する、零細企業に対する法律ができております。これは世界でもおそらく指折りの、たくさんの法律ができておる国だろうと私は思う。ところが実際はどれもこれも、結局は名前ばかりであって、実の一つだになきぞ悲しいというような実態ではなかろうか、こう思うのです。特にまたいろいろ税金の関係等ながめてみましても――いろいろ数字を持っておりますが、時間がありませんから申し上げません。実際、現在の日本中小企業零細企業に対する対策というものは、私はゼロにひとしいと思う。そこでこれは要望で、御答弁は要りませんが、総理があの大東亜戦争当時の商工大臣であって、企業整備を断行された。長年続いておった業者が、自分ののれんを結局引き下げて、政府の命令であるいは徴用工となり、あるいは北満開拓民となり、あるいは一兵卒となって野戦に狩り出された。そういう非常に苦い経験を持っておりますから、法律を作っていただくのもけっこうです。しかし、これからほんとう気持を改めて、あたたかい気持零細企業中小企業対策をやっていただかないと、せっかく商工会法案をお通しになって、してやったりという気持で、全国の零細企業があなた方の思うように扱えると思ったら、これは大へんな間違いであります。どうか一つその点は、まずあなたが十分反省の上に立って、こういった問題を考えていただきたい。時間がありませんから、バトン・タッチいたします。
  8. 岸信介

    岸国務大臣 ちょっと簡単にお答えいたします。今の御意見はごもっともな御意見だと思います。私は零細企業者に対しては、大きく言ってやはり三つないし四つの施策を総合的に行なっていく必要があると思います。一つは、やはり組織化していって、そうしていろいろな指導をしていくということ、それからもう一つは、企業自体近代性を持たないという弱点、まだ封建性の残ったものは改めていく。あるいは設備の面から、あるいは経営内容等からやっていく必要がある。それには金融の問題と、今税金の問題をお話しになりましたが、そういった点をどうしても考えなければならない。金融の点につきましても、従来中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫等、いろいろな施策をしておりますが、これで私は十分だとは思っておりません。今お話のような心持で、これらの施策を総合的に推進する必要がある。十分一つ力を入れてやる考えであります。
  9. 中村幸八

    中村委員長 次は北條秀一君。
  10. 北條秀一

    北條委員 総理にお尋ねいたしますが、実は私は、政府原案が本会議において上程され説明されました際に、質問に立ちまして、特に商工会役員の問題について、政治論としてこれは総理にお聞きしたいということで、質問をいたしました。そのときも申しましたように――あるいは池田通産大臣お答えになる準備をいたしておるかもしれませんけれども、これは政治論だからということで質問したのでありますが、その後適当な機会に総理の御発言がありませんので、その点についてお聞きしたいと存ずるのであります。  私から重ねて申し上げませんでも、総理の方に、どういう点を北條が言ったかという点についておわかりになっているかと思うのでありますから、蛇足のようでありますが繰り返して言いますと、政府原案では、商工会を作る際にその役員を制約されております。ところが会員外役員が認められておる。それはいいといたしまして、原案によりますと、一つ商工会役員が他の商工会役員を兼ねることができるわけであります。でありますから、ある地方商工会がここに十あったといたしますと、会員外の一人の人が十の商工会役員を兼ねることができる、こういうことになろうかと思うのであります。おそらく今日のように、各級の議員――国会議員からあるいは村会議員、こういう人たちが、自分選挙の地盤を養うために、いずれのところにも顔を出すということは御承知の通りでありまして、今回の商工会法においては、そういうことが全国的に行なわれることと私は考えるのであります。原案には、商工会特定政党利用に供してはならないということがございますが、それならば当然、商工会役員会員外からとってもいいが、その人は他の商工会役員を兼ねることができない、いわば二つ以上の商工会役員を兼ねてはならない、こういうことに結論が落ちてこなければならぬと考えるのであります。そういう点について、政治論として総理の御見解を承りたいのであります。
  11. 岸信介

    岸国務大臣 北條委員の御質問になっているように、この商工会組織、これを法制化すということで、特定政党がこれを利用するとか、政治的に利用するというようなことがあってはならぬと思うのです。この本来の目的、性質からいって、ほんとうに、先ほどお話がありましたように、小林委員からの御質問がありましたように、日本零細商工業者をどういうふうに育成し、その人々の将来に向かって、どういうふうにその業態を維持し発展せしめていくかというために、地域的に商工業者団体を自主的に作って、そうして民主的に運営してその利益を伸長するというのが本旨でありますから、これをいろいろな政党利用するというようなことがあってはならぬと私は思うのです。従ってそういう趣旨のことを、特定政党利用してはならぬということを、法律にも明らかにしておるというのはそこにあると思うのです。ところがさてそれじゃ運営の上において今お話しのような点からどうなるか、法律では兼任もできるという道になっているそうでありますが、お話しのような趣旨でもってたくさんの役員を兼ねるというようなこと、これを無条件に認めるということはもちろん私は運営上よろしくないと思います。ただ絶対にそれじゃ他のものを兼ねていかぬというふうに、二つ以上のものは兼ねられぬというようなことを立法的に禁止した方がいいかどうかという点については、地方事情による――私はなるべくこの団体というものは自主的に、また地方的地域的のものですから、業者ほんとうの希望なり、ほんとうの民主的な希望というものに沿うようにやっていかなければいけないと思うので、あまり画一的なものを法制的に作ってしまって動きのとれないようにすることは、必ずしも私は望ましくないと思うのです。しかし通産省方針におきましても、今御指摘になるような、たくさんのものを兼ねるというようなことは、これを無制限に認めるというような考えじゃございません。政府もそういう運営をしてはならぬと思いますから、その点は十分政治的に利用していかぬという趣旨に沿うようにやっていく、こういうふうに考えます。
  12. 北條秀一

    北條委員 お説はまことにごもっとものように聞こえますが、今ある選挙法ですね、これは現在ある選挙法でもそれが適正に行なわれるならば、選挙というものは浄化されるし、従って政治というものも浄化されると思うのですね。ところが今日の世相というものはとかく法律のぎりぎりのところまでいって、悪い言葉ですが法律の裏をかくというのが、今日の日本の悪弊だと思うのですね。従って今申し上げました点は総理としては特に十分認識はされていないのかもしれませんが、御承知のこの商工会議所の方では、会員外役員を兼ねてはならないという法律になっておる。ただし専務理事だけは別だ、こうなっておるのですね。商工会の方は三分の一は会員外からなってよろしいということになっておりますから、両方比較してみますと、こいつはみな今言いましたように法をくぐるというか、必ず選挙ということも関連いたしますから、三つなりあるいは十なりということを兼ねるということが起きると思うのですね。ですから特定政党利用に供してはならないという根本精神根本趣旨をあくまでも生かしていくことが正しいと総理はお考えになるかどうか、お考えになるならば、むしろ法律商工会議所と同じように禁止したらどうか、商工会議所の法というものと同じように、二つ以上を兼ねてはならないというふうに禁止しても一向差しつかえないと思う。この点はどうですか。
  13. 岸信介

    岸国務大臣 先ほど小林委員お答え申し上げましたように、私は業者外のものということは、これは零細商工業者団体では、なかなか業者がみずから会の運営に当たるというようなひまを持つとか、そういう余裕を持つことがむずかしい場合が多いと思います。従ってやはり他の、会員外からも採れる道を開いておく方が、私はその実情に合うのではないかと思います。ただ本来の趣旨から言えばこれは自主的な団体ですから、民主的な団体であるから、業者がなるべくその運営もみずからやるということが望ましいので、私はその方向に指導していかなければならぬと思います。ことに特定政党利用するというようなことは、これは厳にそういうことの弊害の起こらぬように指導し、運営していくようにしていかなければならぬ、こう思います。従って、役員については届出の制度になっておるそうでありますが、もちろん通産省におきまして指導によって、そういう弊害の生じないように十分留意すべきものである、こう思っております。
  14. 北條秀一

    北條委員 商工会法案政府は責任を持ってお出しになったのでありますから、従ってこれ以上申し上げても平行線をたどるかと思います。従ってあとの問題は小委員会あるいは当委員会におい質疑をして、法律案原案政府考えている趣旨に沿うように修正していきたいと考えておりますので、質疑を打ち切ります。
  15. 中村幸八

    中村委員長 次は田中武夫君。
  16. 田中武夫

    田中(武)委員 当委員会総理出席を願うというのはきわめてまれでありまして、特に本日総理出席をしていただいたのは、総理であるとともに自由民主党の総裁であるという立場から御答弁をいただきたいと思います。時間の関係で私、質問をまとめて申し上げます。  まず第一点でありますが、この法律小規模事業者のために作る、こういうようにうたわれており、その趣旨が第一条の目的に掲げてあるのですが、これを見ました場合に小規模事業者のために、はたしてどれほどの役に立つのか、こういうことの疑問を持っております。その理由といたしましては、先ほども問題になっておりましたが、商工会議所のあるところと商工会を作るところが重複してはいけないという、このことであります。最初中小企業庁におきましては商工会議所の現在ある場所においても商工会が作れるように、いわゆる競合するように考えておったのを、商工会議所からの強い反対等があって、政治的に妥協の結果こうなったのだとせられておるのであります。たとえば東京都の商工会議所におきましては、この法律でいうところの小規模事業者すなわち工業二十名、サービス業、商業五名、このワクにはまる者はわずか全会員の七%であります。このような状態であって、特に東京、大阪のような大きな都市にあっては中小企業零細企業の数が多い。そんなところにおいてわずか七%程度会員である商工会議所が行なう事業が、はたして零細企業小規模事業者のための事業であるかどうか、また商工会議所にそういった小規模事業者の意思が反映するかということは疑問であります。そこで最初考えになっておったように、商工会議所のある場所におきましても商工会を作れるように――ことに現在任意組合ではありますが商工会という名もあり、同じ活動をやっているのもあるわけなのです。そういうのも現在しておるのでありますから、作れるようにするのが、ほんとう意味における小規模事業者のために活動する組織であろうと考えますので、商工会議所のある場所においても商工会を作れるように修正といいますか、政府においても考え直していただきたいという点が第一点であります。  第二点は、総理答弁では、おそらく第六条に商工会特定政党のために利用してはならない、こういう規定があるから、そういう心配はありませんとお答えになろうと思いますが、やはりわれわれあるいは一般の中小企業者、大衆の考えは、こういうことによって、わずかの事務補助を出すことによって、自由民主党選挙にあたって、零細企業者組織利用しようとする、いわゆる選挙運動ではなかろうか、こういう危惧であります。聞くところによると、大体三百ないし四百以上と、平均七百名程度商工会には専従者を一名置き、スクーターを一台与えて活動する。これは、なるほど指導員としてやるのでありますから、けっこうなことでありますが、一皮はげば、これが選挙におい自由民主党選挙オルグとして働くのではなかろうかという危惧がある。だからこの法律にそういうように特定政党利用に供してはならぬと書いてあるのだ、こうおっしゃるのですが、どうも総理のおっしゃることは白といえば黒、黒といえば白とおっしゃるというのが、われわれの見方でありまして、特にそういうようにいわれているだけ、なおさらそういう感じがあるので、この際そういうことでないことを、一つはっきりしていただきたい、そう思うのであります。  第三点は、これは古いことを申し上げて恐縮でありますが、総理商工省工務局長をしておられたときに、重要産業統制法という法律を立案して、国会、当時の議会に出しておられます。そのときの総理提案説明等も、議事録によって今から読み上げてもいいのですが、そのときに、一口にいえば、総理は、国家重要の際にあたって、国家目的のために結集してやれ、こういうような趣旨を述べられて、それがもととなって、重要産業統制法が、戦時中の日本帝国主義経済の支柱をなして参ったのであります。この法律によって、中小企業統制せられ、つぶされていったという苦い経験を、中小企業者は身をもって体験し、はだをもって感じて、まだ忘れていないのであります。従いまして、総理が、総理として立案せられ、政府が出された法律におきましては、いかに言われましても、やはり統制ということ、こういうことについて、中小企業者は多くの危惧の念を持っております。先ほど小林委員からも発言がありましたが、商工会法商工会議所法を比べた場合に、その監督の点においては、いろいろの点において違っております。たとえば立ち入り検査の問題については、総理は、趣旨は同じである、こういうように答弁せられたのであります。それならば、商工会議所と同じような文句に、この法律を書き直すべきである。総理の過去の経歴から、今申しましたような――大へん失礼な言い方ですが、中小企業者はそういう見方をまだ持っております。あなたが幾ら民主主義に生まれ変わったとおっしゃっても、そういう考え方を持っておる。従って、あなたが作る法律は、できるだけ統制のない、監督のない方が望ましい。そうでなくともそういう感じを深く持っておる。これはあなたの過去の暗いかげがそうせしめておることは、いなめない事実であります。従いまして、この法律は、監督においては、すべて商工会議所と同じような文句に書き直す必要がある、こういうように考えますが、その点につきまして……。以上三点についてお答え願います。
  17. 岸信介

    岸国務大臣 商工会議所のある地区に商工会を、この商工会法によってできるようにすべきであるという御意見であります。先ほど小林委員にも私はお答え申し上げたのでありますが、政府におきましても、その点につきましては、いろいろと十分に検討をいたしたのであります。現在の状況におきましては、この小規模の商工業者団体商工会議所に加入せしめるとか、あるいは指導所を各地に作るとか、あるいは支部を作るというようなことをいたしまして、従来商工会議所機能として、小規模業者に対する十分な機能が発揮されておらないのを補完していくというか、充実していくことが、現在の状況からいったら、商工業者の全体の利益からその方がいいという考えでもって立案をいたしておるわけでありまして、従来の商工会議所のやっていることが、小規模の業者に十分にいっているという考えではございません。その方の機能を充実するような諸施設を、あわせ行なっていくという考えでおります。  それから特定政党利用するという点に関しましては、これはそういうことがあってはならぬ、業者のあくまでも自主的な団体とし、また事業そのものの目的から申しましても、ある特定政党利用するというようなことでは、決して商工業者のためではないと存じますから、その点をまあ注意的に明らかにしたものが法文に載っておるわけでありまして、私どもといたしましても、そういう意味において十分に指導し、民主的に運営されるように考えていかなければならぬ。同時にいろいろな運営の点につきましても、業者の自主性とその民主的な運営というものを十分に伸ばしていくように、実は、立案するときには意を用いておると思います。特定政党がこれを利用してはならぬ――自民党の総裁といたしましてもこれを利用するというような意味においてこれを立案いたしておるものではありません。  それから最後に私の戦時中における商工大臣としてのいろいろな統制法規が、やはり今回のこの商工会法においても、その思想が現われているんじゃないか、またそういう懸念を中小業者が持っておるから、そういうものを払拭する意味において、特に留意して字句等についても考えるべきじゃなかろうかという御質問であります。私自身が、これは戦時中であり、ああいう時期におきまして、各種の統制に関する法律を立法いたしたことも確かに事実でございますし、また中小企業者等に対しましても、工業組合法や輸出組合法等の何によりまして、中小企業のために統制考えたことも、法制上、ただ重要産業統制法という大きな業者統制だけじゃなしに考えたことも事実であります。しかしそれは今日と経済事情も違っているし、政治情勢も違っておりますから、私ども今回の立案に関しましては、従来の同種の立法例等も十分に参酌いたしまして立案をいたして、決して商工会議所やその他の民主的な団体に比して、この商工会を強く統制していこうとか、監督しようとか、あるいはこれに対していろいろな官の干渉を多くしようというような考えは持っておりません。いろいろの字句なり立法の技術につきましては、さらに専門の方からお答えした方がいいと思いますが、私ども政府方針また党の方針としましても、そういう考えでおります。どうか誤解のないようにお願いをいたします。
  18. 田中武夫

    田中(武)委員 さらに同じ点についてお伺いするわけなんですが、私申しました第一点ですけれども総理の御答弁は相も変わらぬ御答弁であるわけなんだが、私申し上げておるのは、最初は、商工会議所のある場所においても、別に商工会小規模事業者のために作れるようにするというのが方針であったと聞いておる。ところがそれに対して、商工会議所から強い反対が出てきたわけなんです。その妥協の結果、このような法案になったわけなんです。従って政府商工会議所すなわち財界の要望に負けて、こういう妥協をしたというのがこの法案であります。それでは小規模事業者のための組織法とはならない、こう申し上げておるのです。そういった過去の経緯があったのかどうか、その点。  もう一つは、おっしゃるようなことであるならば、現在東京都にも京都にも大阪にも、その他大都市、どこにも、商工会と現に名をつけて、今政府がこの法律でやろうとしておるのと同じようなことを現にやっている任意団体がたくさんあるわけです。これをどのように扱うようなお考えを持っておられるのか。  それから私の質問の三点でありますが、事情も変わっておるしするから、戦時中と違うのだから、もうまかしておけ、こういうような御答弁で、そんなことはありませんと、こういうことなんですが、あなたがありませんと言っても、百パーセント受け取れないのがわれわれ、あるいは国民の考え方なんです。おっしゃるように、特に商工会商工会議所よりか強く拘束し、監督統制する気持がないのならば、先ほど申し上げておるように、この文句を商工会法商工会議所法とを同じにしてはどうか。たとえば立ち入り検査の問題にしましても、総理先ほど商工会議所法検査という言葉商工会法立ち入り検査も同じように解釈しているというならば、立ち入り検査なんて臨検のような言葉ははずして、商工会商工会議所と同じにただ単に検査することができる、こういうふうにしたらどうか、その点だけでなく、これはたくさんあります。従って商工会議所商工会と同じような監督規定にしたい、こう申し上げているのですが、重ねて御答弁をお願いします。
  19. 岸信介

    岸国務大臣 第一の点につきましては、私そういう事情は何ら聞いておりません。しかし政府として、商工会というものを商工会議所の地区に置くがいいだろうか、あるいは先ほど申しましたように商工会議所の現在足りないところの機能を充実するような方向に行った方がいいかという点に関しましては、現在の状況から言えば、やはり商工会議所と同じ地区に、別の商工会というものがあって、地域団体として二つ重ねるということはむしろ望ましくない。現在あるところの任意団体商工会というものは商工会議所に吸収して、そして商工会議所自体のこれらに対する指導力や世話をしていく機能を充実していく方が、実際に適当であろう、こういう考えからこういう立法をいたしたわけであります。  それから第二の点につきましては、私実は各法制における字句を詳細に検討いたしているわけではございませんので、これはむしろ立法技術に属する問題であって、精神は商工会議所よりもより以上の監督や干渉をするという考えは、政府として持っておりません。法律立法技術の問題として、法制局長官からお答えをいたす方が適当だと思います。
  20. 田中武夫

    田中(武)委員 技術的な面につきましては、後ほどまたゆっくり相談することにいたします。商工会商工会議所より強い統制、強い監督はしないということだけをはっきりしていただけばそれでけっこうです。  それからもう一点、現存する大都市における任意の商工会、こういうのは先ほど申しましたように、この法律ができますれば商工会議所へ吸収するのだ、こういう御答弁です。そのまま商工会としておろうと思っても、この法律が通れば、この法律による商工会以外のものは商工会という言葉は使えないわけです。そういたしますと、現在東京都等にある何々商工会というものは名前を変えるか、あなたのおっしゃるように商工会議所に吸収されなければならないわけです。いみじくもあなたは商工会議所へ吸収するということをおっしゃった、このこと自体、あなたの考え方にまだ過去のものが残っておるということを物語っておると思う。同時に、現在任意的に作っている商工会を解散して、商工会議所に入らなければならない、あるいは名前を変えなければならないということは、憲法における結社の自由との関係も出てくると思うのですが、そういう点はいかがでしょう。
  21. 岸信介

    岸国務大臣 私は先ほど申し上げましたように、吸収という言葉がえらい問題になっているようでございますが、そういう意味ではなしに、商工業者地域団体として、同じ地域に二つのものが重なるということ、あるいはそれから生ずるいろいろな弊害や問題というものを考えてみると、むしろ商工会議所というものが、そういう大きな目的をもって設けられている。そしてそれは零細企業者は除くというような建前ではないのです。従って、今までの商工会議所機能そのものが、小規模業者に対して実際上便益を与えていないとか、あるいは実際上活動していないというために、そういうことができておるのでありますから、商工会議所のそういう機能を充実するならば、この商工会の人々は、そういう別の団体を作る必要がなくなるから、当然商工会議所に加入して、そして商工会議所のそういう機能を受けていくという便益を受ける、こういうように指導していくことが望ましいのじゃないか、現在の状態からいうと、その方が実際に即して望ましいのじゃないか、こういう考えで申し上げたわけでございます。
  22. 田中武夫

    田中(武)委員 時間がないから私もまとめて簡単にやろうと思ったが、そういう答弁なら言わざるを得ない、こういうことになるわけなんです。現在ある商工会を解散しなければならない、おっしゃるように商工会議所目的がそうであるとしても、自分たちが作っている商工会を解散し、あるいは改組しなければならないということを法律で押しつけるということは、憲法の保障する団結結社の自由との関係はどうなりますか。そういうこと自体をおっしゃるところに、あなたの過去の考えがまだ消えていないということを申し上げねばならないと思うのです。
  23. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、任意団体として団体を作られること、そのものを解散しなければならぬということじゃございません。私の申し上げたのは、商工会議所そのもので自分たちの目的が達せられるような機能が充実しておれば、そういうものを作っていく必要もないのだから、商工会議所に入ってもらうことが適当ではないか、しかし任意団体としてあくまでも残すということであるならば、それはもちろん結社の自由でありますから、私は何でもかんでも解散しなければならぬということでなく、ただその場合において、この商工会法で設けているところの商工会という名前は使ってはいかぬ、名前は変えなければならぬでしょうけれども、任意団体として実態上それをやめなければならぬという問題ではない、こういうことでございます。
  24. 田中武夫

    田中(武)委員 名前を変えなくてはいかぬ、こういう点に一つ問題があると思うのです。今まで自分たちが任意で作っている商工会、これがこの法律が通るとその商工会という名前を変えなければいけない、そういうところに一つ問題があると思う。もう一つは任意に今までやっているものを続けていこうとするならば、それはかまわない、それはその通りであります。しかしその場合、何らか補助なり、あるいは育成の行政指導、これは当然ですが、補助等をお考えになりますかどうですか。
  25. 岸信介

    岸国務大臣 いろいろな育成、補助等のことは、一応私どもとしては、商工会法に基づいて作られた商工会に対してのみやる考えでありまして、そういう任意団体に対しては現在のところ考えておりません。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 ここではっきりしたと思うのです。わずかな補助金をやるからそのかわりにおれの言うことを聞け、こういう行き方なんです。勝手に自分たちで作っている、これも小規模事業者団体なんです。同じことをやろうとしている。自主的にやるならそんなものはやらぬのだ、この法律による補助はなくてもいいが、何らか補助を出してくれ、同じにしてやるのがほんとうじゃないですか。しかしあなたのおっしゃっているのは、金を若干やる、だからおれたちの言うことを聞け、語るに落ちたと思うのです。これ以上は申しません。
  27. 岸信介

    岸国務大臣 私ども補助金を出して言うことを聞けというようなつもりはございません。零細企業者のこういう団体運営また事業というものに対して、本来いえば、自分たちのことですから、すべて自分たちでやるということが一番望ましいことは言うを待ちません。そういうものに政府が、国が補助するということは、本来いえば私はすべきものではないと思います。しかしながら、現在の小規模業者実態からいうと、やはりそういう何に対して政府が、あるいは国家からできるだけの助成をしていくということが、実際の実情からいうと必要なんであって、そういうつもりで私ども考えておるのであります。出すからおれの言うことを聞けというような考え方は、毛頭ほんとうに持っておるわけではございませんで、これだけは申し上げておきます。
  28. 中村幸八

    中村委員長 次は勝澤芳雄君。
  29. 勝澤芳雄

    勝澤委員 委員長に申し上げたいのですが、商工委員会に私が出て参りましてから、総理が来たのは今回が初めてなんです。かつて高碕通産大臣、池田通産大臣、みな内閣の中の実力者でありますから、別にどうとは思いませんが、たまには少し十分御答弁を賜わりたいと思います。  まず第一番に、最近よく言われている言葉の中で、経済の二重構造ということが言われておるわけであります。特に日本中小企業というのは、欧米の先進資本主義諸国と違って、著しい特質を持っていることは御承知の通りであります。それは中小企業の占める事業所が圧倒的に多いということと、そしてまたそれが零細であるということと、そして過当競争が激しい、従って、そこに従事している従業員というのは数が多く、なおかつ賃金というものは大企業と比べて、欧米においては二〇%と言われておるけれども日本においては五〇%、六〇%だ、こう言われておるわけであります。この経済の二重構造を是正するために、やはり根本的な総合的な施策が必要だと思います。失業者のたまり場といわれている零細企業あるいは農村、こういう問題を考えたときに、総合的な対策というものは、先ほど総理組織化、近代化、こういうことを少し言われましたけれども、やはりもっと大きな視野に立った全体の対策というものが考えらるべきであると思いますけれども、その点についての総理のお考えを賜わりたいと思います。
  30. 岸信介

    岸国務大臣 お話の通り、この小規模商工業者に対する施策というものは、従来もいろいろなことが行なわれておりますけれども先ほどもありましたように、なかなかそれが効果を十分に発揮しておらないといった点もあることは確かに私どもそう思います。従って、これに対する施策というものを総合的にいろいろな方面からやっていかなければならない。たとえば中小企業者に対する直接の法律じゃございませんけれども、あるいはデパートに対するある程度の制限はしていくというようなことも、他の方面からこの小規模の商業者の利益をやはり擁護するということになるのであります。その他、金融なり、あるいは税制の面というようなものも、非常にこの中小企業者の小規模の企業者に対してはあると思います。なおまた、昨年来実施されております最低賃金法というようなものも、これはどうしても中小企業者の方の労働しておるところの勤労者の待遇をよくしていく上の一つの施設であるし、あるいはまた退職手当の法律によるところの退職手当の問題であるとか、いろいろな問題をやはり総合的に行なう必要があるのと、それから一口に小規模業者と、こういいますけれども、その業態というものは業種によってなかなか違っておる状況もありますし、また地域的に見ましても、非常にまた利害関係の状態が違っておるというようなことを、各種の点から十分に検討して、お話の通り、総合的に施策しなければならない。今回の商工会法というものもそういう意味におきまして、従来にない都市以外の郡部の市町村における商工業者が、自主的な団体としてこういう地域団体を作って、政府もそれに対して適当な指導を与えていくということも、そういう見地から出てきているわけでありますから、各方面からの施策を総合してやっていかなければ、なかなか一つの政策でもって小規模の商工業者がよくなっていくというわけにはいかぬと思います。
  31. 勝澤芳雄

    勝澤委員 そこで最近特に貿易の自由化ということが言われ始めました。そこで政府もこれに対する対策をいろいろとやられておるようでありますが、その対策というものはあくまでも大企業、独占企業中心の対策であって、中小零細企業に対する対策というものは、なおざりになっておるように見受けられるのであります。言うならばたとえば独占禁止法なりあるいは輸出入取引法の改正等の問題につきましても、これらの独占禁止法なりあるいは輸出入取引法によって、国内における力ルテルの強化というものはますます大企業の圧迫の中で整理や倒産あるいは系列化ということが強化されていくわけでありますが、まさに政府の今やろうとしておる貿易の自由化というものは中小企業倒産の自由化であって、もっとあたたかいこの零細企業者に対する対策というものが必要であるわけでありますけれども、この自由化に対する中小企業対策については、どのように考えておられるか、お答えを願います。
  32. 岸信介

    岸国務大臣 お話の通り自由化の影響を最も強く受けるところは、言うまでもなく経済力の弱い、また国際競争力のない仕事に一番強く当たるわけでありますから、これらに対して政府が十分な、そして慎重にその影響を検討して、これに対する対策考えていかなければならぬことはもちろんであります。ことに農業であるとか、あるいは中小小規模業者というものに対する自由化の影響というようなものにつきましては、特に政府としては十分な、慎重な態度でもってこれに処していくつもりでありまして、決して大企業だけの影響を頭に置いて自由化を進めていくというようなことはいたしてもおりませんし、またすべきではない、こう思います。しからばこの小規模業者に対してそういう荒波が来るのであるが、それではこれに対して政府としては、どういう政策を考えておるのだという御質問でありますが、私はこの中小小規模業者が要するにそういう国際の自由化の波に影響をよけい持つということは、小規模企業自体が弱いということが一番大きな原因であると思う。従ってそれをどうして強くするかということが基礎にならなければならない。この点は従来私どもが行なってきておる中小業者あるいは小規模業者に対する施策というものを、一そう強化していく必要がある。これは抽象的に申しますと、先ほど申したように組織化の問題であるとか、あるいは近代化の問題であるとか、あるいは金融面における金融を十分に、かつ低利で何していくように考える、あるいは税制の面においてこれに対する考え方を十分に現わしていくというような各方面から施策をしていく必要があると思う。  今回設けました商工会法にいたしましても、また別に提案をいたしております中小企業の業種別の臨時措置法であるとか、あるいは繊維についての特別措置法であるとかいうようなものは、やはりそれぞれの業態に応じた特殊の臨時措置考えておりますが、一般的には今申しましたように小規模事業に共通の弱点というものを強化する政策をとっていくつもりでございます。
  33. 勝澤芳雄

    勝澤委員 それで総理に申し上げたいのですが、確かに最低賃金法あるいは退職金共済法あるいは組織化、近代化いろいろやられておると思う。そこでどこの立場で、どこから見てものをきめていくかというのが一番大事なことだと私は思う。小規模事業者の立場でものを考えていくか、あるいはまた大企業や独占企業の立場から小規模企業対策考えていくか、そこに大きな違いがあると思う。そこで今やられておる政府方針というものは何となく大企業、独占企業の方から見てそうして小規模企業対策というものをやられておる、零細企業対策をやられておる、こういうようにどうしても見えてくるわけであります。今回の商工会法の問題にいたしましてもまず四億円です。ロッキード戦闘機の一機分にも足りない金なんです。それで何をやるかといえば、全国の三百万の小規模企業者に生活相談所を与えただけなんです。生活相談所を与えた。生活相談をして、そうしていろいろその相談にあずかったけれども、さあそれを実施に移すにはどうだといえば、今度は金融の問題においてもあるいは税制の問題についてもいろいろとそれはそれで別なんだ、こういうことになっているわけなんです。今まで何もなかった商工会に、ほんのわずかですけれども四億出すことは、大へんな前進だと私は思う。しかし、それに対する裏づけというものが必要だと思う。その裏づけを何もせずにおいて、先ほどからも言われておるように、今まで自主的な組織であったのを、今度はあまりにも官僚統制的なものにしてしまった。こういうものは、組織上の原則から言えば、私は、やはりできるだけ自主的な組織にさしておくべきだと思う。そして、なおかつ、大は大、中は中、小は小、こういう形の企業階層別というものを考えるべきだと思うのです。それと同時に、具体的に金融、税制の問題というものも推し進めるべきだと思うのです。それと同時に、やはり総理も四億では少ないと思っておられると思うのです。ですから、この商工会に対する補助金は、ことしは四億だけれども、来年度予算では必ず増額するということを約束できるかどうか、金融や税制やそれらの問題について、具体的な政策を今より前進させるようにすべきだと思うけれども、その点についてのお考えをお伺いいたします。
  34. 岸信介

    岸国務大臣 お話の通り、この金融の点につきましても、特に小規模業者のために国民金融公庫のワクを広げるとか、あるいは信用保険の制度について、特別にこのワクを広げていくというようなこともわれわれ十分考慮しております。また、税制につきましては今税制調査会におきまして、中小企業、ことに小規模の業者に対する負担を軽減するという趣旨において、検討をいたしておりますから、他の税制とにらみ合わせて、政府としては、必ずその方向に持っていくつもりでございます。また、この補助金の四億の問題につきまして、これは非常に少ないのじゃないかというお話であります。私も決して多いとは思いません。しかしながら、問題は、今度初めて商工会法ができて、この法律によるところの活動をしていくわけでありますから、それについての仕事が伸びていき、商工会が伸びていくというのに従って、補助金の額等につきましても、政府としては十分考慮しなければならぬ。来年度何億ふやすんだということを、今日申し上げることはできませんけれども、私は、必ずこの商工会というものは伸びていくものであり、また、事業のと面におきましても、これは小規模業者のためになるような仕事を、どんどんしていくように指導していくべきものであると思いますから、従ってそれに必要な予算の点につきましては十分一つ考えて参りたい、こう思います。
  35. 勝澤芳雄

    勝澤委員 時間も制限があるようですから、最後に、商工会議所と今回作られようとしている商工会とどう違うのかという点と、もう一つは、農業団体に対する農業改良普及員制度は、地方公務員ですか、こういう形になっておるようですが、今度考えられている商工会法の中における経営改良普及員は任意のものになっている。この相違は一体どういうことで起きたのかという二つの問題についてお尋ねいたします。
  36. 岸信介

    岸国務大臣 この指導員等を農業団体と違って公務員たる地位を持たせないということは、むしろこの商工会というものをほんとうに業界の自主的な団体とし、また、そういう性格を持って発達せしめていき、指導に当たるものがその中に入り込んで、中小規模業者の立場に立って仕事をやっていくという意味からいうならば、公務員にするよりもこうした制度の方が適当であるというのが政府考えであります。  商工会議所商工会の関係につきましては、本来の目的からいえば、地域団体としてその地区内における商工業者の共同の利益を増進していき、また、その意見を十分述べていくというような目的から申しましても、その性質、本質から申しましても私は同様のものだ、かように考えております。
  37. 板川正吾

    ○板川委員 関連して。総理にただ一点だけお伺いしたいと思うのです。  中小企業対策の重要法案として、今回商工会法案を出されたのでありますが、予算の面を見ますと、先ほど勝澤委員が申し上げたように四億円である。これは三百万中小零細企業の頭割りにいたしますと一軒平均百三十五円、まことに微細な金額であります。こうした金額で零細企業者の根本的な対策はできるはずはないのであります。こうした彌縫的な対策が必要な点もあろうと思いますが、根本的には日本産業をどういうふうに発展させるかということによって、中小零細企業の発展もあり得ると思うのです。日本産業の規模なり発展なりを考えてみますと、たとえば電力にいたしましても、石炭のエネルギー消費量にいたしましても、あるいは鉄鋼生産にいたしましても、日本のそういう産業の規模は世界的に非常な高位、六位ないし七、八位、こういうところにあります。しかし、貿易の規模は国民一人当たりにしますと非常に低いのであります。本年の三十七億ドルという輸出を国民一人当たりにいたしますと一万三千五百円。しかし、人口密度が日本より高いベルギー、オランダ、スイス、こういう国でも九万円ないし十万円程度の輸出をいたしておる。国民一人当たりにいたしまして日本の輸出規模というものは少ないのであります。これは御承知の通りと思いますが、ドイツにいたしましても、イギリスにいたしましても、日本よりはるかに人口が少ないのに九十億ドルないし百億ドルの輸出をしている。でありますから、日本産業を発展さして零細企業の近代化をもっと促進さしたり対策を根本的に考えるのには、日本の貿易を伸ばす工夫をしなくちゃいかぬと思うのです。ところが、日本の貿易は三分の一がアメリカでありますが、アジア貿易が中心にならなくちゃならぬ。岸総理は東南アジアを二回も訪問されて、東南アジア貿易をやれば、たとえば中共貿易がなくても、東南アジア貿易で日本はいくのだという趣旨のことをずっと前言われておりますが、東南アジア貿易はそれほど伸びておりません。中共貿易は依然として傍観、これでは一軒当たり百三十五円の補助金を出しても、零細企業の根本的な改善ということはあり得ないと思うのです。そこで、こういう機会でありますからお伺いしたいのでありますが、日中貿易に対して、岸総理は一体いつまで静観をされようとするのですか。またどうしてこれを改善されようとしないのか。一軒平均百三十五円を出すよりも、こういう根本的な対策考えることが、ほんとう零細企業対策になるだろうと私は思うのでありますが、これに対する見解を一つお伺いしたいのであります。
  38. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん、中小企業対策として、私ども四億円の補助金を商工会に出したから、これでもって能事終われりなんということを毛頭考えておるわけではございません。これは先ほど申し上げましたように、商工会の健全な発達をとにかく政府としても促進するという意味で、初年度として計画したものであります。日本は貿易に依存しているところが非常に多い。そうしてまた日本の貿易額というものを将来大いに各方面に伸ばしていかなければならぬというお考えにつきましては、私も同感であります。  ただ、中共貿易をどうするんだというお話でございますが、これについては、しばしば申し上げておる通り、私どものは中共との間に貿易をするということについては、これは進めていくという考えのもとに、従来もずっと一貫してやってきておるわけであります。ただ今日のところ、中共側の言っているように、政治問題と合わせてでなければ解決できないという態度を中共側がとっておることは、御承知の通りであります。私どもは今日の日本の置かれておる情勢からいうと、そういうことは事実上実現できないので、そうじゃなしに、まず経済の点あるいは文化の点の交流をして、そうしてこの国際問題にも関係のある政治問題というものを、将来においては解決するようにしていくことが、日中間の望ましい状態である、こういうふうな考え方を持っておるわけであります。そういうことのために、事実上この貿易がとまっておるということは、私も非常に遺憾に考えております。
  39. 板川正吾

    ○板川委員 総理がしばしば新聞等でも言われておるのですが、たとえば経済と政治を分離するならけっこうだ、西ドイツに対して中国は経済と政治というものを分離して、そうしてやっておるじゃないか、それを西ドイツにはやっておって、日本には同じことを言わないで、政治と経済を結びつけて要求するのは、中国側の一方的な内政干渉じゃないか、こういう趣旨のことを言われておるのでありますが、西ドイツの場合は中国と戦争しなかった、陣営はそれは共産圏あるいは全体主義圏あるいは自由主義圏という形に分かれたかもしれませんけれども、直接戦闘しなかった。日本の場合は中国大陸において、御承知のように戦争をしたのであります。だから、その西ドイツの場合を例にとって、ドイツには政経可分であって、日本に不可分を唱えるのは中国はけしからぬ、内政干渉だということは、私は、そういう点で総理に戦争の御反省がないじゃないかと思う。だから日本の場合は、西ドイツと違って、やはり向こうで政治的な何かを要求するのも、ある程度向こうの立場で考えればやむを得ないのでありまして、そういう実情の上から、反省の上から日中貿易の打開ということを真剣に考えられることが、私は総理の今後の任務だ、こう思うのですが、かつて戦争に国民を導いた総理としては、そういう点を考えて、日中貿易を打開するような努力を、反省の上に立って真剣にすることが当然ではないか、またそうすることがこの中小零細企業対策の最大の改善に通ずるものだ、こう思うのであります。これに対して一つ御所見を伺いたい。
  40. 岸信介

    岸国務大臣 中共との関係につきまして、私は日本と西ドイツとが全然同一の立場にあるとも考えておりません。しかし日本の置かれておる情勢、また中共問題というこの政治的な問題は国際的の意義を持っておる反面も、われわれは十分頭に置いて日中関係というものを調整していくということが、実際の問題からいえば、責任のある政府の立場としては、当然そうしなければならぬと考えております。  中小企業との――もちろん貿易はすべてのものに関係がありますが、最近の共産国との関係は、御承知の通り、戦前と非常に貿易内容が変わっておりまして、従来のように、中小企業の製品であるとか、中小企業が扱っておるところのものに対しても、共産国における輸入ということは戦争前とは非常に変わった状況にある。そうしてむしろ建設資材であるとか建設の機械であるとかというものが、日中貿易におきましても、おそらく主体をなすもので、これが直ちに中小企業に非常な影響があるというふうには、実は私実情はそうじゃなかろう、そう思っております。
  41. 中村幸八

    中村委員長 この際午後二時まで暫時休憩いたします。     午後零時五十五分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十一分開議
  42. 中村幸八

    中村委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  小林正美君外十名提出商工会法案を議題とし、審査に入ります。     ―――――――――――――
  43. 中村幸八

    中村委員長 まず提出者より趣旨の説明を聴取いたします。小林正美君。
  44. 小林正美

    小林(正)議員 日本社会党を代表し、ただいま提案されました商工会法案につきまして、提案理由の御説明をいたします。  日本中小企業は、いわゆる経済の二重構造の中で深刻な問題を内包しておりますが、さらに最近の貿易自由化の大勢は、中小企業の存立そのものに重大な影響を与えようといたしております。こうした情勢の中で、政府は輸出入取引法の改正等を通じて独占の強化を企図いたしておりますが、中小企業に対しては、抜本的な施策を何ら考慮いたしておりません。さらに中小企業の中でも小規模事業者は、従来、金融、税制、社会保障等すべてにわたって、政府の政策のらち外に放置されたままでありました。社会党は、この独占資本に奉仕する政府の無責任な態度を常に追及し、小規模事業者に対する総合施策を強く要求して参ったのであります。  最近政府もようやく小規模事業者に対する施策の必要を認識し、本国会商工会組織等に関する法律案提出するに至ったのでございます。  しかしながら、政府提案の商工会組織法案をしさいに検討いたしますと、名は小規模事業者商工会を主張しながらも、その実は小規模事業者だけでなく、大企業をも含む小型商工会議所の設置を内容とするものであり、さらに官僚統制復活の危険をもはらんでいるのであります。法案の裏づけとなる取るに足らない予算措置考え合わせるならば、政府が真剣に小規模事業者のことを考えているのかどうかはなはだ疑問なきを得ません。  社会党は、このような政府提案の商工会組織法案に反対し、ここに独自の商工会法案提出し、真に小規模事業者自身の手による、小規模事業者のための組織として商工会の育成発展を考えて参りたいと存ずる次第であります。  このような立場から、今回政府提出商工会組織法案の代案として、本商工会法案提出いたした次第であります。  次に本法律案の概要を御説明申し上げます。本法律案の骨子は、小規模事業者の自主的な組織を定めるとともに、商工会の行なう小規模事業者のための事業について国の助成措置を規定するものであります。  まず第一に商工会組織はあくまで小規模事業者だけに限定した階層別、規模別組織とし、小規模事業者以外の会員並びに役員を認めず、小規模事業者の自主的組織考えておるのであります。  従って第二に、商工会の地区につきましては、従来商工会議所のある都市、さらに町、村の区域として、地区的な制限を設けず、小規模事業者のあるところすべての区域に商工会の設立を認めているのであります。もっとも、商工業の状況により必要な場合は、隣接する二以上の市、町、村の区域を合わせて一つ商工会を設立することもできるように考慮されております。商工会議所の地区は原則として市の区域としておりますから、市の区域では、商工会議所が大中企業組織商工会小規模事業者組織として、両者の組織が重複することになるわけであります。  第三に商工会事業といたしまして、商工業に関する相談、指導、情報資料の収集、提供、講習会、展示会等のほか、今日小規模事業者にとってその必要が痛感されまする事業主並びにその従業員を包含した社会保険の事務代行や福祉厚生事業をも行なわしめることといたしたのであります。  第四に、商工会は地区内の有資格者二分の一以上の申請があれば、当然認可するものとし、認可にあたって行政庁による不当な統制を排除しているのであります。また自主的な組織としての建前から、加入、脱退は自由とし、小規模事業者自身からなる総会、総代会、役員にその民主的な運営をゆだね、小規模事業者以外のものの参加する運営協議会の設置等は一切これを認めない方針であります。従いまして、行政庁の監督権も必要やむを得ざる場合に限定し、役職員の任免や立入検査の権限はこれを認めず、商工会議所に準じて規定することといたしたのであります。  最後に商工会の行なう小規模事業者のための事業を促進すべく、商工会の人件費を含む事務費の全額について、国がこれを補助するものとし、その他必要経費についても国がその半額を補助するように定めておるのであります。この国の助成に必要な経費として、特に二十億円の予算措置考えているのであります。  かくして社会党の商工会法案は、名実ともに小規模事業者組織の強化、拡充と、その経営の安定、発展を期している次第でございます。  以下、本商工会法案の提案理由の概略を申し上げましたが、何とぞ慎重御審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。
  45. 中村幸八

    中村委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  この際、お諮りいたします。  本案を去る十八日設置いたしました商工会組織等に関する法律案の審査小委員会においても審査することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 中村幸八

    中村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。      ――――◇―――――
  47. 中村幸八

    中村委員長 それでは、本案並びに商工会組織等に関する法律案中小企業業種別振興臨時措置法案の三案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の通告があります。順次これを許します。小林正美君。
  48. 小林正美

    小林(正)委員 通産大臣にお伺いいたしたいと思うのでありますが、実は先般参考人を国会に招きましていろいろ業者の方々の声を聞きましたが、その中で一、二非常に重要な発言があったと思いますので、ここで私からそれを申し上げまして通産大臣の御所見を承りたいと思うのであります。  その第一点は、現在自分みずからが商工会の仕事をしておる人の率直な表現でございますが、町、村に商工会を作る場合に、大企業の入会を許すときは、かりにその会員が全部一票ずつの権限しか持っておらないということになっておりましても、大会社、大工場等は巨大な発言権を持っておる。たとえば自分商工会の会長になろうと、その大会社の社長なり工場長が考えたならば、出入りする御用商人に一言命令をすれば、それが直ちにその通りに実現できるというような、実際は大きな発言権を持つことになりまして、そういうところから現在の商工会というものが民主的な運営を非常に阻害されるおそれがある。だからやはり大会社とか大工場は除外した方がいいではないかというような意見の陳述がこの間ございました。この点について通産大臣はどのようにお考えになるか、お願いいたします。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 私は大、中、小まぜてその地区内で渾然一体をなしてやることがいいと思います。
  50. 小林正美

    小林(正)委員 なかなかそううまい工合に渾然一体とはならぬのでありまして、そういった大きな力のものによって非民主的な運営がされるというおそれが非常にありますので、われわれとしては参考人の方の意見と同じような危惧の念を抱いておるということを申し上げておきたいのであります。  それからこれに関連してでありますが、これも同じく参考人の方の御意見でありましたが、通産大臣なり先ほど総理大臣の答弁でも、いつも言われておりますが、三分の一くらいはやはり業者以外の人を役員にすることが望ましいのではないか、そういう人たちを入れておく方がかえって運営がうまくいく、何となれば、町や村の商工会においては小さな経営者の方が多いのだから、そういう人が役員になって仕事をするということは、実際問題として非常に困難であろうから、業者以外の人を役員に入れた方がよい、こういうことを申されておるのでありますが、参考人の意見ではそうではなくて、現にこれまで商工会運営してきており、しかも全部業者役員になっておって今日まで何年か経験をしてきたが、少しも痛痒を感じておらない。つまり商工業者以外の役員が入ってもらわなければ、会の運営ができないという心配は少しもないのだ。むしろそういう人たち役員として会に入ってくることこそ、会の民主的な運営を阻害するから、そういうことは望ましくないという声が、現に長年商工会役員をしておった人たちから出ております。そういう声は通産大臣としても率直に聞いてもらいたいと思うのですが、その点いかがでありましょう。
  51. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう場合には、私は役員を全然入れなくてもいいと思います。ただ三分の一というのは、全体的に考えまして、おおむねその程度の者を入れ得る、一人でもけっこうでございます。二人でもけっこうでございます。だから入れ得るという規定でございます。ただ商工会議所とのにらみ合わせで一人くらいは必要じゃないか、法の建前は入れ得るということでございます。
  52. 小林正美

    小林(正)委員 それからもう一点だけ伺っておきたいと思うのでありますが、中小企業者の租税負担額と、中小企業保護助成金の関係を一つながめてみましても、いかに中小企業者が多くのものを国に対して負担しながら、国からのお返しが非常に少ないか、こういうことが私は一目瞭然としておるのじゃないかと思うのです。三十三年度の詳しい資料はまだ出ておりませんので、三十二年度の国税庁の集計でわれわれが数字を拾ってみますと、たとえば法人税額の場合に、一千万円以下のいわゆる中小企業者が納めるところの法人税額の総額は、ちょうど九百五十七億四千八百万円、こういう工合になっておりまして、これは全体の法人が納める法人税額三千二百七億三千一百万円の実に三〇%に当たっておる、こういう数字が出ております。そこでもしこの比率からわれわれが類推するならば、昭和三十五年度に法人税額の収入予算額は四千三百八十八億五千七百万円、このように説明されております。これをその三〇%とわれわれが押えた場合において、実に千三百二十億円を中小企業者が法人税として国に納める、こういうことに相なるわけです。これに対して、また個人営業所得者の所得税予定額は大体三百二十二億四千三百万円、かように相なっておりますから、これを合計いたしますと、業者が納める国への税金の総額は千六百四十二億四千三百万円、こういう工合に相なっております。しかるに一方国からこうした中小企業に対して、一体どれだけのお返しが来るかというならば、実に二十五億八千一百万円、きわめて微々たるものであります。これをかりに農林関係予算と比較してみるならば、一千一百億円という数字になっておりまして、実に中小企業対策に出される金はわずかに農林関係予算の二・三%にも当たらない、こういうきわめて微々たる状態であるということを私は指摘しなければならぬと思うのです。かてて加えて、大企業に対しては租税特別措置法によるところの特別な措置がとられておる、こういう工合考えて参りますと、これは租税応益の原則から考えましても、まことに不合理である、不均衡きわまるものである、こういうふうにいわなければなりませんが、特に今回小規模事業対策というものを政府が打ち出されたからには、今後一体どのように通産大臣は小規模事業に対して税制の面において、金融の面において、あるいは中小企業対策の面においてお考えになっていらっしゃるか、その方向について一つ承っておきたいと思います。
  53. 池田勇人

    池田国務大臣 私は今のお話にはあまり賛成できないのです。ただ問題が、中小企業対策が重要であるのだから、もっと政府の資金を中小企業対策に出したらどうか、こういう結論であるならば大賛成で、その方針で参ります。しかし、租税の負担がこうだから、それを中小企業はこれだけ納めておるから、中小企業にそれだけ還元しなければならぬということは、これは業種の状態によって、なかなか言いにくいことじゃないか。それならば、貧困であって、租税を一つも納めてないから、君は税金を出さないから、あまり施策を講じなくてもいいということに、極端に言えばなるのではないか。だからそういうことはなかなか計算できぬのではないか。また農業と商工業の関係は、おのずからその企業実態が違いまして、風土保全その他と関係して出る金も相当あるのでございます。これを一律に比較するわけにいかぬと思いますが、問題の点が、中小企業にもっと政府は力を入れろ、こういうお話であるならば、全く同感でございます。私は通産大臣になりましてから、そういう考えのもとに、今回の予算もとったのでございまするが、今後におきましてもそういう方針で進んでいきたいと考えます。
  54. 中村幸八

    中村委員長 次は北條秀一君。
  55. 北條秀一

    北條委員 商工会法につきましては、すでに小委員会が設けられましたので、小委員会の席上において十分に論議を尽したいと考えておるのでありますが、将来国の屋台骨を背負っていかれようとする気魄を持っておられます池田さんに、こういうふうな点について御質問することは、あるいは当を得ないと思うのであります。従って万事主たることについては小委員会におきまして論議したいと思うのであります。しかし幸いに通産大臣がお見えになっておりますので、今の小林さんの御質問に引き続きまして二、三池田さんの御意見を聞いておきたいと思うのであります。きょうはまた幸いに東商の高城専務理事も傍聴されておりますので、こういう際にお聞きした方が、有効かと思うのでお聞きするのであります。  第一は、先日参考人の意見を徴しましたところが、通産大臣の権限委譲の問題につきまして、ある参考人は知事にまかした方がよろしいということでございましたが、通産大臣としては通産局長におまかせになるというお考えか、あるいは都道府県知事におまかせになるというお考えか、どちらに重点を置かれるか、この点についてまず御意見を伺いたいのであります。
  56. 池田勇人

    池田国務大臣 中小企業の現在の状況から申しまして、私はこれは、知事ばかりがやるとか、あるいは通産局長ばかりがやるというのはよくない、やはりもちはもち屋で、仕事を分け合っていくことがほんとうだと思います。具体的な問題につきましては局長から答弁させます。
  57. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 本法案におきます通産大臣の権限について、大部分は府県知事の方に委任していく、こう考えております。ただ商工会監督といいますか、そういうような規定の面は通産局長にも委任する、両方に委任するという形をとっております。
  58. 北條秀一

    北條委員 私は、そういった中小企業庁長官のここでのお答えは、時間が、大臣についてはもったいないから、小委員会にまかしてもらって、この席上でお答えいただくととは必要としませんから、御了解いただきたいと思います。  その次に申し上げますのは、大臣に、特に基本的な問題でございますから御質問いたしますが、商工会議所の表決権――よく民主的、民主的とばかの一つ覚えのように言われるのでありますが、民主的ということは、すなわち人間を大事にするということであります。従って、会費の負担額いかんというふうなことによって表決権を差別するというのは、株式会社の理論であり、資本主義の組み立てのやり方であります。ところが、現在の商工会議所というものは、そういった会員は、自然人は一人でありますけれども、自然人の持つ表決権というものは、彼の負担する会費によって区別があるのが現状であろうと思うのであります。そこに根本的な私どもの反対する意見が出てくるわけであります。商工会議所が、協同組合のようにあるいは消費組合のように、その出資額のいかんを問わず、発言権は一つである、表決権が一つであるというならば、私どもはまた何をかいわぬやでありますが、現在の商工会議所というものは、そういう組み立てになっておりません。従って、東商の例をとりましても、一人の会員が三票ないし最高においては四十五票の表決権を持っておるわけです。これを平均いたしますと七・八票ということになって、平均以下の票しか持たない会員は二千五百人程度にしかなっていないということになるわけです。先日大臣は、全国の商工会議所の加入会員のうちの七割は中小企業者だと言われました。全国平均でそうだということでありますが、しかし、今言いましたように、なるほど七割は中小企業者であるかもしれませんが、その表決権となりますと、わずかに二割しかないという現状でございます。これに対して、池田さんはどういうふうにお考えになるか。なるほど七割は加入しておる。しかし発言権は二割しかないというのが現状でありますから、私は今言いましたことを繰り返して申し上げませんが、どういうふうにお考えになるか、この点についてお伺いいたします。
  59. 池田勇人

    池田国務大臣 表決権は一人一票ということに相なっておると思う。ただ、常議員選挙権につきましては差等を設けております。これは普通の選挙とは違いまして、経済団体役員選挙その他につきましては、おおむねこういうふうになっているのが普通じゃございますまいか。他方面に相当の広範囲でやっておられる人と、ちっぽけな人とが、常議員という役員を選びますときに、同じようにやっていくのはいかがなものか。しかし、なるべくたくさんの人の総意が現われるようにするのが選挙の本質でございます。それが、全部が何が何でも一人一票だということも経済の実態にそぐわぬ場合もありますので、私はこういうことは一般の組合その他でも、ある程度行なわれていると承知しております。実際そういうものじゃないかというふうに考えております。
  60. 北條秀一

    北條委員 時間を取って恐縮でありますが、協同組合におきましては、一人一票ですね。ですから、協同組合理論に基づく一人一票であって初めて、先日来繰り返して申し上げておりますように、中小企業者に対して、かゆいところに手の届く、いわば親切な政策を打ち立てることができると思うのです。商工会議所の場合はそうでないというところに、非常に大きな問題があるのだということを私は申し上げておるわけであります。でありますから、今回商工会をお作りになるときに、その一部分が商工会議所とダブることは困るのだということで、それを排除されておるということについては、私としてははなはだこれを納得しがたい。一例を申し上げますならば、東京都の大田区に東京商工会議所は今度支部をお作りになるという御方針を決定されました。大田区では、人口は一体どれだけかといいますと、六十八万もある。ところが熊本市ではわずかに二十万。熊本市の商工会議所が二十万で、これから大いに努力して、十分かゆいところに手が届くような親切な政策をとっていこうというふうに言われるのでありますが、これは結局人間の能力の問題だと思うのです。大田区の場合は、六十八万も人間を擁して、はたしてできるかできないか。私はできないというふうに考えるのでありますが、通産大臣としては、東商に対して、大田区に支部を今度作ると言われますが、二十三区全部支部を作らせるような指導方針を持っておられるかどうか、この点についてお伺いします。
  61. 池田勇人

    池田国務大臣 協同組合の例と、一般の商工会議所の時分の選挙その他につきましては、おのずから実態が違いますが、私は、協同組合のようなものは一人一票で通し得ると思います。大体の事柄が平均しておりますから。しかし、大きい都市商工会議所につきましては、できるだけ一人一票の原則を頭に置きながら実情に沿うようにやっていきたいと考えております。  第二の大田区の六十八万という人口、これは人口でありますが、業者がどのくらいおりますか。もちろん熊本市とは大へんな違いになると思います。しかし、今回大都市商工会を設けないゆえんのものは、先ほど申し上げましたように一体となってやっていくという考え方でございますから、各区には支部を設けるよう勧奨するつもりでございます。そうしてまた支部におきましても、相談所の置きどころ等々につきまして、皆さん方が大都市にも商工会を置いたと同じような効果が現われるように努力してみたいと考えております。
  62. 北條秀一

    北條委員 もう一つ大臣にお聞きしたいと思います。  日本中小企業対策といいますか、商工行政というものは、ほんとうの総合性あるいは一貫性というものが欠けていると私は思うのであります。別に池田さんの古傷にさわるわけではございませんが、あるときは、中小企業者が右を向こうと左向こうと、そう大した問題はないというようなことを世の中で言われたりする。過去を顧みてみますと、どうも一貫していないと思います。先日の大臣のお答えでは、中小企業の問題が十年来非常に問題になっていたというふうにおっしゃいまして、まことにけっこうであります。しかし、できるならば、日本の経済構造からいきまして、中小企業の問題は、何と申しましても富士山のすそ野に当たるものでありますから、これについて真剣に施策を遂行していく重大な責任が政府にあると考えているのであります。ところが、いろいろな法律をお作りになりますけれども、作った法律がはたして実行されているかどうかということになりますと、非常に疑問があると思います。結局、せっかく作った仏の法律も政令でもって魂が抜かれているのが、遺憾ながら現実ではないかというふうに考えるわけでございます。従って、質問というよりは、むしろこの際、日本の商工行政を担当されます池田通産大臣に対して、総合的に、しかも一貫性のある政策を打ち立っていただくことを強く要求いたします。
  63. 池田勇人

    池田国務大臣 全くその通りでございまして、中小企業対策の必要性と緊急性に基づきましてどんどん法律ができて参りました。各国に比べましても法律の数の点においては遜色がない、いろいろな施策の点におきましても遜色がない。この量の問題、質の問題につきましてまだ改善していかなければいかぬ。私は就任以来いろいろ中小企業のことにつきましての外国の事情とか、あるいは国内の専門的の意見を聞きますと、結局商工会にあります普及員の指導、育成ということが、やはりもとになるようでございます。フランスとかドイツの状況を見ましても、問題は経営指導が主になっておるようでございます。こういう意味におきましても、今回商工会法を設けまして普及員の質をよくし、高くして、そうして今までのいろいろの法律を総合的に、また一貫して進めていきたい。もちろん法律ができても、政令が十分でなかったというふうな場合におきましては、皆様方の御意見――法律がこうなっておるけれども政令がこれでは趣旨が徹底しないのじゃないか、こういうふうなことにつきましては、御意見を伺いまして万全を期したいと考えております。
  64. 北條秀一

    北條委員 こういうふうに時間のあるときには、十分に大臣の御意見を伺うことが、私はきわめて適切だと思うのであります。従って下手に油断をして答弁をされますと、ヒョウタンからこまが出るというたとえの通りに、こまが出ないとも限りませんので、この点は一つ真剣に私も質問いたしますし、大臣もお答え願いたいと考える次第でございます。  そこで、これは大臣にお聞きするのはちょっと気の毒なのでありますが、先ほどお話のありました東京商工会議所が大田支部を作るということに決定をして、四月の一日から発足するということでありますが、一体その支部の規則といいますか、それを拝見いたしますと、私は決していわゆる民主的な内容ではないと考えておるのであります。結局大田支部は、東京商工会議所において、議員総会においてきめて、どの地区に支部を作るかということをきめて、その方針に基づいて大田に作る、あるいは将来どこかに作るということで、この支部の規則、支部の設置は、先日の高城専務理事お話では、定款に基づいてやっております、しかもその定款は昭和二十八年に作った定款でございますと言っておりますが、さて今言いましたようにやってみますと、結局天下りの支部になるということになるわけでございますが、どうも私は天下りの支部ということは賛成しかねるのでありますが、これに対して通産当局としてはどういうふうにお考えになっておるか、あるいはどういうふうな指導方針をとっておられるか、この点についてお伺いいたします。
  65. 松尾金藏

    ○松尾(金)政府委員 商工会議所の支部を作ることにつきましては、これからだんだんと具体化して参るわけでございますが、今までのところでも、それぞれの、何々区に支部を作るということになりますれば、当該区の――たとえて申しますと、おもな商店街でございますとか、そういうところと十分実態的な問題は相談をして――実際の手続は、今お話のございましたように、商工会議所組織の一部でございますから、定款の定めるところの手続をとりますけれども実態的には、当該地区の会員なり、あるいは小規模事業者の集まり等に十分御相談して、支部の設置を進めていく、そういうふうに指導しております。
  66. 北條秀一

    北條委員 ことわざに大男総身に知恵が回りかねということがあります。私もその大男の一人でございますが、松尾企業局長にお伺いいたします。先ほど大臣に質問したのでありますが、不十分でありますからあなたの方に質問いたしますが、六十八万という大田区――東京の二十三区というのは相当大きな人口を擁しておるのでありますが、先ほどのことわざの通りに、はたして手が回るかどうかということでございます。  それから、先般小山長官のお話によりますと、東京に経営普及員を九十人程度回すということでございますが、その九十人でもってこの三十万近い中小企業者あるいは中小商工業者をめんどう見るということは実際にできるかどうか、それについてあなたはどういうふうにお考えになっているかということです。
  67. 松尾金藏

    ○松尾(金)政府委員 御承知のように、従来も商工会議所におきまして、中小企業相談所という形で個々の相談を受けると同時に、あるいは巡回をして相談を受けるとか、あるいは各地でいわゆる講習会を開くというような形で、小規模事業者の合理化なり経営の指導をして参ったと思います。しかし、従来は何分にも経費その他のいろいろな都合から十分でなかった点も多かったと思いますが、来年度以降各地の商工会商工会議所が相並んで小規模事業者指導に、さらに力を尽くすという段階になって参りますと、またそのためには、従来に比較しまして相当大きな補助金の用意もしてございますから、その意味で、東京商工会議所の例をとりますと、従来わずか二人分の補助金しか出ていませんで、それに対して十倍くらいの経費を追加をして、それで従来やっていたと思います。しかし来年度以降商工会法の施行とともに、商工会議所にも相当程度補助金の増額が期待されますし、それと合わせまして、従来における小規模事業者指導よりもはるかに大きな規模で、できるだけ手広く小規模事業者指導をして参りたいということに相なると思いますので、従来の例だけで今後を卜するわけには参りませんし、また商工会議所もそれだけの決意を持ってこの指導に当たって参ると思います。今御指摘のございましたように、この人数の割合に指導員活動が十分にいくだろうかという点は、商工会議所自身も、今後その点については十分従来以上に努力をしなければならない点と思いますが、ただ大きな都市におきましては、やはり小規模事業者は比較的密集しておるはずであります。従いまして、小規模事業者の頭数に比例して、つまり地方都市における場合と比較いたしますと、比較的小規模事業者が密集しておるはずでございますから、それだけ経営指導その他についても活動しやすいことになると思います。そういう意味で、今後とも巡回指導なり、あるいは講習会その他の開催で、できるだけ小規模事業者の数をまとめて経営の指導をやって参りたいということで、これは実際にやってみなければわからないことでございますけれども、少なくも従来に何倍かの能率を上げた経営指導ができるというふうに私は考えております。
  68. 北條秀一

    北條委員 先ほど私の質問の要点がぼやけたのでお答えなかったのでありますが、大田区に四月一日から支部を作るという商工会議所の自主的なやり方であります。しかしそれにはやはり通産省当局としては指導方針を持っていなければいかない。大田区のあと二十二区にそういった支部を作った方が好ましいというふうな指導方針を持っておられるかどうか。
  69. 松尾金藏

    ○松尾(金)政府委員 これは経費その他の都合が許しますれば、できるだけ支部の数もふやして進んでいくことが当然だと思います。ただ現在までの状況では、同じ東京都内におきましても、それぞれの地区において、そういう支部を自分のところに作ってほしいという、その地区の要望なり、お話し合い等もあるように聞いております。そういう意味で、ただいま例におあげになりました大田区その他は、特にその支部を設けてほしいという地元の要望も非常に強く、また地元との話し合いも非常に円満にいって、そういう意味から比較的早く支部が設置されるような機運が熟してきた状態にあると思います。今後とも、もちろん経費の許します限り、できるだけ支部の数もふやして、経営指導その他に遺漏ないように期することは当然のことであると思います。
  70. 北條秀一

    北條委員 これは昨年来、通産当局商工会議所のある地区にも商工会を作らせようというような、当初はそういう考えがあったわけであります。もちろんそれは全部ではありませんが、一部にそういう意見があった。だから東京都内におけるところの商工業者あるいは商工会を作っておる諸君は、当然自分の方でも商工会を作れるというふうに考えておったから、東商の支部を各区に作ってくれという要望が今日までは出ていないのです。ところが今度とたんに、政府がこういうような法律案を出されますと、商工会をどうしても自分たちのところに作らしてくれ、法律を改正してくれという要求が、私どものところにうんと出てきておるわけです。でありますから、今あなたが、各二十三区のうちから支部を作ってくれという要望が出ていないと言われましたけれども、これは当然のことなんです。それは支部を作るより、商工会を作らせろという意見が、どんどん私どもの方に出てきておるわけでございます。そういうことは、あなたの方にもおわかりになっていると思います。従って、東商の支部を各二十三区に作ってくれという要望が出ないのは当然だ。そうでなしに、商工会を作ってくれという要望が、あなたの方にも出ておるはずだと思いますが、その点については、あなたの方はどうですか。あなたの方にそういう要望が出ておるか出ていないか。
  71. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 具体的にはそういう要望は聞いておりません。個人的にはいろいろそういう意見を持っておられる中小企業関係の人もあると思います。
  72. 北條秀一

    北條委員 それから大臣に最後にお伺いしたいのでありますが、大臣は、先般都道府県の連合会を作ることについて、あるいは全国の連合会を作ることについては、十分検討していこう、こういうふうに本会議においお答えになったと私は記憶しておりますが、その点はそういうふうにお考えになっておるかどうか、まず一つ
  73. 池田勇人

    池田国務大臣 商工会の全国連合会は、私は作っていくべきだと思います。今でもそういうものがございます。ただ今回これをしなかったというのは、商工会の状況を見まして、府県にはまだ府県連合会もできておりません。府県連合会ができる機運が出てくれば、これをまとめて、私は将来府県連合会、全国商工会連合会、こういう方向に進んでいきたいと思っております。
  74. 北條秀一

    北條委員 それで、大臣にもう一つ二つ質問いたしますが、単位商工会、単位商工会議所、それからその上に今度は商工会の県連合会、商工会議所の県連合会、上には日本商工会議所、こっちには全国商工会連合会、こういうものができる。そうすると、相互に常に連携を保たしめることが必要だと思いますが、そういうことで連携を保てといっても、連携を保たなければ、それまでということになりますが、少なくとも私は、商工会法を成立させるにあたって、商工会の方にも、商工会議所と常に連絡しなさい、従ってまた商工会議所の方にも、あなたの方は商工会と絶えず連絡を密にしなさいというような、いわば訓示規定といいますか、道徳規定といいますか、そういうものを私はこの際作ったらどうか、こういうふうに考えておるのですが、その点について。
  75. 池田勇人

    池田国務大臣 これは商工会連合会、全国商工会連合会、こういうものができましてからの問題で、今は、予定いたしておりますが、状況を見てからということになっておりますから、規定を置かない。そういうことを実施する場合には、もちろん商工会組織に関する法律を改正いたしまして、置かなければならない。置く場合におきましては、御意見は、私は参考になると思っております。
  76. 北條秀一

    北條委員 もう一つ大臣に御質問いたしますが、現在自信を持ってお出しになりました商工会組織に関する法律案、この法律案の中で、結局最後の問題になるのは、商工会議所の地域と商工会の地域とダブつた地域に商工会を作らせないということが、一番問題になるわけであります。これはもうすでに釈迦に説法でありまして、言う必要はないのでありますが、その重複した地域に将来商工会を作らせる、作ってもいいんだ、こういうふうに法律をそこまで譲歩をしていただく。実情がそうなっておりますから、その実情に合わしてこの法律を将来改正するというようなお気持がございましょうかどうか。
  77. 池田勇人

    池田国務大臣 その気持はただいまのところございません。私はやはり一地区一会議所、一商工会、これでいって、こういう方向で育成していくべきだという考え方に立っております。
  78. 北條秀一

    北條委員 長官にお伺いいたしますが、先日あなたは商工会連合会という名前は使っていいということでございましたが、そうなりますと、今大臣のお答えがございましたが、商工会議所のある地域内におい商工会がたくさんあると思います。それらはすべて商工会という名前を、今後法律の規定しておる年限内に撤回しなくてはならぬ、また撤回せしめようという指導方針を確然と持っておられると私は考えるのでありますが、そうなんでしょうか。
  79. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 大都市におきます商工会名前を使ったものを、これは私どもの調査で見ますと、同じ商工会という名前を使っておりますもののうちで、商店街団体、いろいろな名前を使っておるうちに商工会という名前を使ったというのが多いわけであります。これは商工会というものと実態が違いまして、むしろ協同組合というようなものであります。それからもう一種類のものは、通称民主商工会といわれておりますが、同志的といいますか、ほんの何々区なら何々区のうちでせいぜい百人くらいの人が集まって、いろいろ税関係その他で動いておる団体がございます。この二種類の団体がございますが、この法律が施行になりました際は、いわゆる名称禁止の規定によりまして、その名前は変えていただかなければならぬ、こういう指導をして参りたいと思います。
  80. 北條秀一

    北條委員 具体的に申し上げますれば、先日参考人として出て参りました長野県の鼎町ですが、鼎町は飯田市の商工会議所の区域の中に包含されておる。しかもその鼎町には昭和十年から商工会というものがあって、今日まで二十五年間の歴史を持っておる。ところが、鼎町からは飯田市の商工会議所にはたった二人の会員しかない。これはあなた終始それを聞いておられた。そうすると、鼎町の場合には、あそこの商工会を、光輝ある歴史を持つこの商工会というものを、お前やめろ、こういうことになるのですか。
  81. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 この法案の附則の規定によりまして、要するに今回法制化しようとしておる商工会実態が同じのようなものは、従来のその経緯に基づきまして、実質的にも同じような活動をしていたというものは附則で救っていこうという規定がございまして、鼎町の商工会等も附則で救っていくという形になろうかと思います。そうすると、この法律に基づく商工会として残って存立していけることになるわけであります。
  82. 北條秀一

    北條委員 企業局長に御質問いたしますが、兵庫県氷上郡柏原という町があります。この柏原町にも昔商工会というものがございまして、それが二十八年の商工会議所法の施行以来商工会議所になったのです。ところが、三年か四年やって、商工会議所はだめだといって、もとの商工会に戻った。それではなぜ戻ったか、これについてあなたの方はどういうふうにお考えになっておるか知りませんが、私は御参考に申し上げますと、商工会を一応は商工会議所にした、格式を持つ会議所にしたのでありますが、会議所にしてみると、会議所はいわゆるだんな衆の集まりであって、われわれ一般中小企業者、小規模企業者団体ではないということで、ついにそれが経営困難になって、再びもとのもくあみに戻った。この実情はあなたの方ではおわかりになっておると思うのでありますが、それについてまずあなたの方はどういうふうにお考えになっておるかということをお聞きしたいということと、それから二十八年の商工会議所法施行以来、一ぺんは商工会議所になったけれども、柏原の商工会議所のように、もとのもくあみに戻ったというものが幾つくらいあるか、この点について一つ質問したいと思います。  それからもう一つは、奈良県の商工会議所は従来全県一区の区域だったのですが、それが最近は、全県を商工会議所の区域とするということで、定款を改正したとかしないとかということなんですが、それは事実なのかどうかということと、あなたの方では奈良県の商工会議所に対して、どういうふうな指導方針を持っておられるか。もし奈良県の場合は商工会議所が全県一つだとしますと、あそこには一つ商工会というものを作れない。現存するものも全部だめだということになるのですか。この二つの点についてあなたの見解を伺いたいのであります。
  83. 松尾金藏

    ○松尾(金)政府委員 ただいま具体的に御指摘がございました柏原町の商工会議所の経緯は、私実は存じておりませんので、具体的にお答え申し上げかねるのでありますが、一般的に申しまして従来商工会議所法という制度しかなかったときには人格もない、従って事実上の団体である商工会というよりは、商工会議所になりたいという希望が各地にあったことは事実でございます。しかし商工会議所ということになりますと、やはり商工会議所の制度として、それ相当な事業活動ができる見込みがなければなりませんし、それだけ財政的な基礎もなければならないというようなことで、商工会議所の設立の認可につきましては、やはりある一定の基準で審査をして参っております。そして一たんその審査に一応合格をして商工会議所が設立された後におきましても、やはりその後いろいろな事情から、たとえば財政的な基礎が十分確立しないとかいろいろな事情で、結局商工会議所という制度が維持できないというような状態になって、やむを得ず商工会議所が事実上一度解散をしたという例が、ちょっとその件数はここに調査したものを持っておりませんけれども、従来も幾つかあったと思います。従いましてそういう意味商工会議所というからには、しかも従来は商工会議所に対して国の援助というものがほとんどなかったわけでありますから、自分の力である程度の財政的基礎ということになる関係から、そういうある程度の制約があったと思います。これはそういう事情から、やむを得ずまたもとに戻ったという例はあるように聞いております。  それから奈良県の場合でございますが、現在全県一区という形の商工会議所は、御承知のように今奈良県の商工会議所ただ一つでございます。これはかつて商工会議所の制度が幾たびか変遷がありまして、ある時期には御承知のように全県一区の商工経済会というような時期があったのは御承知の通りでございますが、そういうときからの、いわば惰性で、せっかく全県一区になった地区の制度が、またもとに小さくなるということは何となしに戻りにくかったというような、いわば惰性的な事情もあったんではないかと私は想像するのでありますが、しかし商工会議所の本来の制度、それから商工会議所機能を十分果たすという意味から申しますと、いろいろな経済的なあるいは地理的な、社会的な事情、いろいろ状況で判断しなければならぬと思いますが、大体論から言いまして全県一区というような広い地区は、やはり商工会議所活動からいうと、必ずしも十分行き届かないのではなかろうか、まして今度商工会の制度が立てられようとしておる際に、たまたま全県一区で商工会議所があったということのために、そこの地区には商工会が設立できないというようなことでは、やはり二つの制度を運用していく上からいって適当ではないのではなかろうかというのが、私どもの現在の考えでございます。おそらく地元におきましてもそういう点をいろいろ相談があっておるだろうと思いますが、商工会議所はやはり自分の本来の活動し得る地区というものは、おのずからあるということで、奈良県の場合は御承知のように相当広い山間地帯を含めまして全県一区というようなことになっております。それから市や町も全県を一区にしてしまうにはあまりに飛び過ぎておる。相当離れた距離に市があり、町がある。それを全部包括していくということは、商工会議所活動としては必ずしもうまくいかないのじゃないかというのが、私どもの現在の考え方であります。
  84. 北條秀一

    北條委員 奈良県にこだわるわけではありませんが、おそらく現在において全県一区のやつは奈良県だけだと思います。そこで奈良県の商工会議所は将来商工会法の実施に伴って地区を狭めるという際に、選挙区ではございませんが、選挙区特有のゲリマンダー、自分のいい地区だけを残しておくということはしないように、一つ厳重に、あなたの方でほんとう中小企業を育成するという立場から指導していただきたいということを、私は要望するのでありますが、あなたにそういうお考えはございましょうか。そういう要望にこたえて十分指導いたしますということを、今言明できましょうか。
  85. 松尾金藏

    ○松尾(金)政府委員 私どもの立場からは御指摘の中にございました選挙区云々ということは全く関係はございません。商工会議所本来の使命に従いまして、経済的な実態に合うような地区にするのは当然だと考えております。
  86. 北條秀一

    北條委員 それでは最後に大臣に御意見を伺いたいのでありますが、その前に私は資料を要求したいのです。委員長の善処を要望いたします。  一つ商工会議所に一ぺんなったけれども、再びもとの木阿彌に返ったのは幾つぐらいあるか、具体的にそれを一つ資料を出していただきたい。  それからもう一つは現在ある商工会議所に対して、東京商工会議所には二十四万円の補助金を出しておられるというが、他の府県のことは私は知らないのですが、全国の五百幾つかの商工会議所に対して、どのくらいの補助金を出しておられるか、これを一つこの次までに出していただきたい。これをお願いいたします。  そこで池田大臣に最後にお伺いいたしますが、この商工会組織等に関する法律案が、今まで数回やっておりますように非常に困難でございます。本ちろん政府中小企業を振興、育成し、その体質を改善してやろうという御熱意には、私は深く敬意を表するのでありますが、しかしそこに敬意を表すれば表するほど実際のみんなの要望するように、要望にこたえてやるというのが、政府のとらるべき政治的な態度であると私は確信するのであります。そこでこの法律案は先日来参議院の方からは予算を伴う法律案なんで、三月三十一日までにぜひ参議院の方に回してくれというふうなたっての要望があるのでございますけれども、これは私は参議院の方に十分な了解を求めて、そうしてこういう重要な法律案だから、三月三十一日が過ぎても衆議院において審議をしていくのだ、こういうことをお願いしておるわけでありますが、この際一つ大臣もそこは度量を発揮されまして、十分にこれは審議していこう、そうして有効な意見ならば、どんどん修正していこうではないか、こういうふうに大臣にも大度量を発揮していただきたいと思うのでありますが、大臣いかがでしょうか。
  87. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは案を作っただけでございます。これをいかようにもなさるのは国会の御自由でございます。どうぞりっぱな案がありまするならば、御訂正を願ってもよろしい。われわれはこれを最良の案として御審議願っておるのであります。
  88. 中村幸八

    中村委員長 それでは暫時休憩いたします。     午後三時十九分休憩      ――――◇―――――     午後三時二十九分開議
  89. 中村幸八

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続行いたします。小平久雄君。
  90. 小平久雄

    ○小平(久)委員 商工会法案につきまして、きわめて簡単に一、二点伺いたいと思います。他の委員からもるる申されておる通り、今回政府商工会法案というものを出されて、特に郡部の小企業者を中心とした中小企業者の育成をはかろうという趣旨は、われわれも大賛成でありますし、もちろん本法案の成立を望むものであります。ただ率直に申しますならば、政府が当初申されておった点は、小規模事業者の育成ということを非常に強く打ち出されておりましたがために、今委員会で問題になっております通り、小規模事業者が一番多く集まっておる都会、つまり商工会議所の存する地域の小規模事業者指導あるいは育成ということを、従来通り会議所にまかしておくということは、はなはだ不徹底じゃないかといろ感を与えておると認めざるを得ないと思います。ただ現われた案を見ますと、小規模事業者指導ということはむしろ、「あわせて」の方にあるのであって、「町村における商工業の総合的な改善発達を図る」ことが主であって、小規模事業者の育成という方はむしろ「あわせて」やる方、つまり従の方のような感じを与えておる。この点が当初の意図とは若干違っておるのではないかという感じを、私は受けておるのであります。またそこに商工会法案というものが、何となくすっきりしないという点があるし、また商工会議所との関係においても何となくすっきりしない点が、そこに根本的に根ざしておると私は見ておるわけであります。しかしそれはしばらくおくといたしまして、特に地域をダブらぬといろ方針を貫いておりますために、商工会議所がどうも従来通りのやり方をしておったのでは、本法がねらいとしておる小規模事業者指導ということは十全を期し得ないのではないか、こういう論が非常に強いわけでございますが、政府の方では、それは商工会議所の方も、特に大都市商工会議所等については、逐次支部を設けておるとか、また会員にも、必ずしも個々の業者という方でなくとも、現在できておる商工会あるいはそれに類似のもの等を、この会員として、いくことによって、大都市における小規模事業者指導というものを全うしていくものである、こういう御説明をなさっておるわけであります。そこで伺いますが現在法人あるいは個人としての会員以外に、そういった何々会というか、つまり任意の団体ですな、そういうものを会員として認めておるという会議所は、全国にどのくらいあるのですか。またそういう会員ほどのくらいおるのですか。
  91. 松尾金藏

    ○松尾(金)政府委員 御承知のようにそういう意味小規模事業者の小さな団体というのは、比較的大きな都市に多いと思いますが、現在たとえば東京商工会議所あたりにおきましては、御承知のようにそういう小規模事業者団体の、いわば団体加入をすでに認めております。従いまして小規模事業者を加入数で頭を数えますと、その率は七%くらいだ、こういう計算になりますけれども団体加入しておるその団体のメンバーの頭数で計算をして参りますと、いわゆる東京商工会議所に入っております小規模事業者の数は、非常にたくさんに、率もぐっと上がってくるわけであります。同じようなことは大阪その他にもありますし、特に京都におきましては、そのメンバーの相当部分がいわゆる団体加入であるというふうに伺っております。現在手元に、どこどこの商工会議所団体加入を認めておるという的確な資料はございませんが、私ども承知しておる限りでは、いわゆる団体加入ということを、特にこばんでおる商工会議所は、あまり多くはないのであるというふうに承知いたしております。
  92. 小平久雄

    ○小平(久)委員 私がその点をお尋ねするのは、先ほど申します通り、今度は会議所の支部というものを、たとえば区ごとに設けて指導していくのだ、こういう説明ですが、言うまでもなく会議所、あるいは商工会でも同じだと思いますが、やはり根本は要するに業者の会なんだ、自分たちの会なんだ、こういう考え方を植え付けるように組織そのものをしなければ、私は本来の姿じゃないと思うのですよ。今までの会議所のやり方が、零細企業に手がいっていないから、それを改善するために今度は支部を作るのだ、こういうことをいっても、支部というのはあくまでも中央に、あるいは上の方にそういう組織があって、そこから手を差し伸べてくる、こういったいわば天降り的というと語弊があるかもしらぬが、そういう支部を作っても、自分たち業者の自発的なものだということにはならぬと思う。だから根本は大都市商工会議所であっても、いかに多くの業者会員として獲得するか、そのことによって会員会議所というものはみずから選んだものなのだ――先ほど総理答弁ではないが、本来ならば会議所なり商工会というものの経営は、会員自身の負担においてやるのが理想だと思う。しかし一挙にそこにいかぬにしても、どうしても会員というものをより多く獲得することが必要だし、そのためには、そうしやすいような組織に、どうしてもしなければならぬと思うのです。たとい支部ができても、それは中央からここに支部ができただけのことだ、自分たちは別に知ったことじゃないんだといったような工合にそっぽを向いておるようでは、いうところの指導も何もできないし、自分のものだという気にもならぬだろうと思う。そういう点から見まして、一体企業局長は、かりに今言われておるごとく、各区に支部等をこの会議所が作るならば、会議所というものは少なくとも従前以上にこの中小の業者のものとなり、またいうところの指導などの目的を達成し得るようになるという、あなた方の会議所法の運営責任者の立場からして、そういう確信がおありですか。
  93. 松尾金藏

    ○松尾(金)政府委員 従来商工会議所におきまして、今問題になっております小規模事業者指導とか、そういう任務につきましては、十分事足りておったとは私ももちろん考えておりません。商工会議所はそれぞれ各地によって事情は違うと思いますが、たとえば大都市商工会議所の例をとってみますと、国からの補助金は、御承知のように指導員二人分くらいの補助金しか出ていなかったと思います。それに対しまして、東京の例で申しますと、二人分の補助金をもらって、実際には二十人ばかりの指導員を置いて、当然それだけの自己負担をやって小規模事業者指導に、いわゆる中小企業相談所という形で従来やってきたと思いますが、しかしその程度小規模事業者指導に十分であったわけでは決してなかったと思います。今度は御承知のように商工会制度の新たな発足と相伴いまして、そういう小規模事業者指導に対する国の援助、補助金も、御承知のように非常に大幅に増加いたしております。その意図は、当然商工会議所に対しましても従来の何倍かの国の援助を与え、同時に、それにさらに何倍かの商工会議所の努力によりまして、従来における小規模事業者に対する対策を、ここで飛躍的に強化するということが、今回の対策の大きなねらいであると思います。現在すでに商工会議所においても、十分そのための準備を進めておるわけであります。私の立場から申しましても、商工会議所が、そういろ意味小規模事業者指導に従来不熱心であった、あるいは今後熱心になれないだろうというようなことは決して考えられないことでありまして、必ず御期待に沿うだけの仕事はやり得るというふうに私は確信いたしております。
  94. 小平久雄

    ○小平(久)委員 多くの人からは、会議所というものは大企業、大産業というか、その方にばかり重点を置いて、中小企業、特に零細企業のためにはやってなかった、こういう非難が非常に多い。私は、事実としては、そういった非難も全然否定はできないと思うのです。しかしながら一面からいえば、何と申しましてもこの会議所の会員というものはきわめて限られておる。特に中小以下の会員というものは非常に限られておる。にもかかわらず、会議所はこの会員ならざる業者のためにまでも仕事をやる、こういう立場にある。しかも今お話しの通り、従来政府が格段の援助をしたわけでもないというのですから、一がいに従来の会議所の実績というものをとらえて非難だけするのは決して当たらぬ、私はそういう考えなんです。しかしながら十分でないことも、これまた事実なんです。そこでさきにも申しました通り、この会議所というもののあり方からして、まず第一にやらなければならぬことは会員を獲得することであり、望むらくは業者全部が会員になって、みずからの会として、お互いの力でこれを盛り立てていくという立場に立つことが、当然期待されなければならぬ点だ、こういう見地からして、どうしても会議所というものは、特に中小企業のためにだんだん仕事をしていくというためには、中小あるいは零細企業者会議所に入りよくする、そういう仕組みにまず持っていくことが一番大事だと思うのです。今、会議所がやらぬ、やらぬといろいろ非難する業界というか中小企業者の人も、事実は、率直に言えば会員じゃないものだから、そう非難する権利もない。割り切って言えばそうも言えると思う。しかし、いつまでもそういう姿であることは、決して好ましい姿ではない。だから、繰り返して申しますが、中小の業者会議所に入りいいようにすることがどうしても必要です。そのためには、これも率直に申しますが、現在は大都会の会議所というものは、あまりに膨大過ぎるじゃないかと思うのです。現在の会議所法は議員立法で、私は代表として当時両院の説明に当たったのですが、東京なりあるいは大阪なりといったところでさえ、全体で一つ会議所ということになっておる。そんな大きな地域で、これほど業者のおるところで一つで作ってみてからが、実際問題として、一般の中小あるいは零細業者が、これは自分たちの会なんだという肌ざわりは感じないだろうと思いますが、その点はどう思いますか。
  95. 松尾金藏

    ○松尾(金)政府委員 商工会議所は、御承知のように会員制度でできてはおりますけれども、もちろん、従来会員に対してだけの零細企業対策中小企業対策をやっておるわけじゃございませんで、御承知のように地区内の商工業の発達という使命にかんがみまして、会員外にもできるだけ従来やってきたはずであります。もちろんそれが十分であったかどうかという批判はあると思いますが、決して会員だけにサービスをしてきたわけではなくして、商工会議所の支援団体としての使命は、それだけの努力はして参ったわけであります。しかし、今御指摘がございましたように、やはり商工会議所が自主的な団体として、その使命を盛り上がる力で進めていくという意味から申しますと、当然その組織をできるだけ大きくし、会員もふやす。また現在は、御承知のような特定商工業者という制度で、若干その点を補っておりますけれども、それだけではなくして、できるだけ会員のメンバーを広くして、商工会議所はみんなの商工会議所である、そうして同時に小規模事業者対策も進めていくということが、当然望ましいことであると思います。ただ実際には、商工会議所会員となるにつきましては、六カ月以上地区内に営業所その他持っておればいいという程度の資格以上に、あまりむずかしい資格制限はございませんが、やはり会費の負担その他の関係から、一人々々で会員として組織の中に入るよりは、むしろ小規模事業者のある集団があれば、その集団が団体加入という形で商工会議所組織の中に入るといった方が、入りやすいというような点もあると思います。現在そういう考え方による運用も、各商工会議所で行なわれておりますし、私どもの方で、いわゆる模範定款というもので、商工会議所組織一つの基準が示されておると思いますが、その中にもこの団体加入を予想して模範定款が作られております。そういう制度をあわせまして、商工会議所組織ができるだけ広く徹底するように努めまして、その上で小規模事業者対策をさらに浸透するように進めていくことが重要だろうというふうに考えております。
  96. 南好雄

    ○南委員 関連して一点だけお聞きしたいのですが、商工会議所は、たとえば東京商工会議所会員であるべき会費などは、企業においては調べてあると思いますが、聞きますと、一万円とか二万円とかという高額の会員費用だそうであります。商工会法の中の一番の盲点は、商工会議所の区域と商工会の区域とをダブらしているかどうかという問題なんですが、法律では商工会議所商工会をダブらせないように割り切っている。しかし、割り切ったところに、従来のような商工会議所指導方針では非常に困る点ができてくる。今小平委員からも御質問があったように、今までの商工会議所のような考え方――一人の会員が一万円、二万円というような高額のそれを出さなければ商工会議所に入っていけない。なるほど団体加入の制度もあるし、模範定款の指導方針もあるでしょう。あるでしょうが、みずからが会費を納めて、自分商工会議所であるというような意識のもとにおいて行動するのと、入りたければ入れというような指導方針でいくのと、そこに会員であるべき人の考え方に非常に大きな違いがある。東京商工会議所には四月一日から大田支部というものができるそうです。この支部につきましても、従来のような一万円、二万円という会費のもとで商工会議所の支部を作ろうといたしましても、これは要するに、ただ区域を限定した今の商工会議所の足であり、手であるという程度の差しか出たいと思う。昔、一種会員、二種会員というふうに区別して、議員もそれぞれ出ておりましたような制度がだんだん変わっていっておるのですが、もう一ぺん深く掘り下げて、零細中小企業者自分商工会議所の中に吸収して、ほんとう零細中小企業者の全体の利益の調整と増進ということに、商工会議所が真剣になって取り組まなければ、いたずらに人はやらない、自分はやらないというようなことでは、この目的は達成しないと思いますので、今後、通産当局の、商工会議所の役割における中小企業監督ということについては、従来と違った特段の留意と再審査を要求すること、すこぶる大きいものがあると思う。商工会法が制定公布され、これが施行されれば、私は当然その問題が大きな問題になってくると思いますので、これから零細中小企業に対して商工会議所としてどうあるべきかということを、会費の点、代表の点も含めてお考えを願いたい。東京商工会議所においては、いわゆる中小企業等協同組合法に基づく中小企業者である人は七人くらいしか役職員におらぬそうです。ざらに進んで、もうちょっと高度の役職員になりますと、大塚肇君を初めわずか三名だそうです。そういうような程度零細中小企業者のめんどうを商工会議所が見るのだなどといっても、これは与野党ともどもに納得できぬと思うのです。従って商工会議所については、企業局長としてこの点を十分考えられて、きょうでなくてもけっこうですから、商工会議所の従来の運用方針はこういうふうにやって、商工会法と決して摩擦させないようにして、両々相待って中小企業の発展育成に留意するのだということを、ぜひ最近の機会においてはっきりさせておいていただかないと、この問題は今後もしょっちゅう問題になってきますので、希望的意見を述べまして、通産省に特に要望をお願い申し上げておきます。
  97. 小平久雄

    ○小平(久)委員 その点に関して、私は先ほどから申しておるように、要するに会議所に中小の業者も入りやすくするということが、どうしても必要ではないかという気がするのです。団体加入ということを申されますが、団体加入も確かに一つ方法でしょう。しかしながら、それではやはり直接の加入ではなくて、業者個々からいえば間接の会員です。個人として会員ということにはならぬでしょうから。そういうところにもどうも不徹底なのがあると思う。しからば、いかにしたら入りよくなるかといえば、東京のような大きなところならば、ほんの思いつきといえば思いつきですが、一試案とすれば、会議所というものはむしろ区単位くらいに作らせて――今の法律ではそれはできないことになっておりますが、東京会議所というようなものは連合会くらいにする。もちろん現在連合会というのは法的には認められておりませんが、各県などにも連合会というものがとにかく現存しております。そういう方法にでもよって、この会議所というものを業者からより身近な存在にしていくということが、むしろ本法がねらっておる小規模業者指導などのためには適切なんじゃないか。今まで会議所があるのだから、そとへ商工会を作ることは混乱するから、会議所が従来以上にやるのだからこっちのなわ張りに入ってくるな、ただそういうだけではどうも不十分だという気がするのです。私の言ったのは、さればといって地区をダブらせたのでは、これまた混乱の種となりましょうから、要するに零細企業者も入り得るような会議所に逐次持っていったらどうか、こういう考え方なんです。これはまた御研究もないと思うが、もし御所見があれば承っておきたい。
  98. 松尾金藏

    ○松尾(金)政府委員 ただいま両委員から御指摘のありましたような、今後の商工会議所全体の運営として、特に十分注意しなければならない点だと存じます。今ここで具体的なお答えをする余裕はございませんが、その点は今後十分検討させていただきたいと思います。
  99. 小平久雄

    ○小平(久)委員 それではその点はそれくらいにしまして、商工会の関係で一番重点になるものとして、今後の商工会の死命を制するものは、経営改善普及員にその人を得るかどうかということにあると思う。ところが私の見落としかもしらぬが、さっと見たところでは、法律上では別に経営改善普及員というものは何もうたってないようです。ただ単に運営費の補助をする、こういうことだけうたってある。実質的にこういう普及員を置いて給料の半分を国、半分を県がやるということなんです。この普及員についても先般来いろいろ御質問がありましたが、要するに普及員というものは小規模業者ほんとうの身近な相談相手というくらいな軽い意味での指導をやるのだ、こういう御趣旨のようですが、ただ二千四、五百人にも及ぶこういう普及員を置こうという以上は、千差万別の人があるだろうと思う。そこで実際問題としてどういうふうになさるのですか。各商工会あるいは会議所で、この人ならと思う人を任意にでも採用し――もちろん大体の学歴とか経験とかそういうものは示すのでしょうが、その採用等は各商工会あるいは会議所におまかせしてしまうのですか。
  100. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 法案には改善普及員のことは何もありません。これは法律の関係からの結びつきを申し上げますと、五十六条に助成規定がございまして、政令でいろいろなことをきめることになっております。その政令できめることの一つの要件といたしまして、仕事に関する要件に普及事業に関する要件をきめてあります。その中で小規模事業者に対する巡回指導といいますか、回って相談に応じ、指導に当たるという仕事を中心としてもらわなければ困るわけであります。それからその仕事がうまくやれますためには、今お話のございましたように、よい人、よい普及員を得るということでございます。従ってその方法として、ある程度一定の資格を設けた普及員を採用させたい、これは個々に基準を設けまして、採用その他は個々の商工会議所なり商工会でやってもらうことになりますが、一定の基準による普及員というものを置きたい。ただ普及員は一定の基準と申しますか、当たります事業はそう専門的に一々むずかしいことというよりは、概括的に間口の広い、程度のそれほどでない仕事だと思いますので、従来の相談指導員よりは、少し程度を下げてもいいんではないか、あるいはその土地々々の事情がありましょうから、ある程度弾力的に採用していけるというような余地も残したいと思いますが、一定の基準を設けまして……。
  101. 小平久雄

    ○小平(久)委員 普及員のことをあと一点伺いますが、こまかいことのようですが、この資料によると普及員の給料を補助するんだ、給料は月二万円とはっきり書いてありますが、二千数百人もの人間を雇い入れるときに、これはみんな二万円で雇うわけにはいかぬだろうと思うのだが、これは実際問題としては画一的に一人二万円として、国で半分県で半分、一万円ずつやる、二万円上の人があれば、それは各会で勝手に持つ。また二万円で余るものがあれば、これはどうするのか知らぬが、やはり二万円以下の人でも二万円補助する、こういうことになるのか、さらには一たん採用して、最初は二万円かもしらぬが、やはり昇給もしなければならぬだろうし、その他いろいろな給与も要るでしょう。そういう点は一体どういうふうに今後扱っていくのですか。
  102. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 補助をいたしますときの基準が一人二万円ということで、現実に採用するときにはそれぴったりのことにはいきません。足りないところは商工会で持ってもらわなければなりませんし、余れば、その補助の要件としてその金を他に使っていっていい、こういう仕事なら使っていいというようにいたしますが、個々の採用者のペイは、それぞれ違ってくると思います。
  103. 小平久雄

    ○小平(久)委員 今後基準を上げていくのですか。
  104. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 将来財源が足りませんような格好になるかと思いますが、これはわれわれはいろいろ考え方があるのですが、なるべく若い人を採って、それを研修してうんと教育していこうという行き方がいいのではないか、あまり年寄りをかかえるよりは、そういうふうな考え方でおります。金が高くなって予算が足りなくなれば、将来これは考えて参りたいと思っております。
  105. 中村幸八

    中村委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる二十八日月曜日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後四時三分散会