運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1960-03-18 第34回国会 衆議院 商工委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年三月十八日(金曜日)委員長指名 で、次の通り小委員及び小委員長選任した。  商工会組織等に関する法律案等審査小委員       小川 平二君    岡本  茂君       始関 伊平君    小林 正美君       田中 武夫君    北條 秀一君  商工会組織等に関する法律案等審査小委員長                 小川 平二君 ————————————————————— 昭和三十五年三月十八日(金曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 中村 幸八君    理事 大島 秀一君 理事 小川 平二君    理事 小平 久雄君 理事 長谷川四郎君    理事 南  好雄君 理事 松平 忠久君    理事 武藤 武雄君       江崎 真澄君    岡本  茂君       鹿野 彦吉君    始関 伊平君       田中 榮一君    野田 武夫君       細田 義安君    渡邊 本治君       板川 正吾君    勝澤 芳雄君       小林 正美君    櫻井 奎夫君       八木  昇君    加藤 鐐造君       北條 秀一君    山下 榮二君  出席国務大臣         通商産業大臣  池田 勇人君  出席政府委員         通商産業政務次         官       原田  憲君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月十七日  委員賀谷真稔君及び八木昇辞任につき、そ  の補欠として中嶋英夫君及び八百板正君が議長  の指名委員選任された。 同月十八日  委員八百板正辞任につき、その補欠として八  木昇君が議長指名委員選任された。     ————————————— 三月十六日  中小企業団体組織に関する法律の一部を改正  する法律案大貫大八君外九名提出衆法第一三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第八五号)  石炭鉱業安定法案勝間田清一君外二十二名提  出、衆法第三号)      ————◇—————
  2. 中村幸八

    中村委員長 これより会議を開きます。  この際小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。商工会組織等に関する法律案審査のため、小委員六名よりなる商工会組織等に関する法律案等審査小委員会を設置することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村幸八

    中村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお小委員及び小委員長選任並びに選任後の補欠選任につきましては、すべて委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中村幸八

    中村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。      ————◇—————
  5. 中村幸八

    中村委員長 次に石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案石炭鉱業安定法案の両案を一括して議題とし審査を進めます。  質疑の通告があります。順次これを許します。始関伊平君。
  6. 始関伊平

    始関委員 間もなく大臣がお見えになるようでございますから、順序を変えて最初に事務的な問題を石炭局長質問いたします。  この法律によりまして炭鉱近代化資金というものが貸し付けられることになるわけでありますが、その効果というようなものを伺いたいと思います。政府がいっておりますように、将来炭価現実に千二百円下がったということを一応前提といたしまして、この場合にすべての炭鉱が生産不能になるというわけのものではない。コストがみな違いますから、生産不能になるものもあるし残っていくものもある。現状を基礎にして、かりに千二百円という炭価引き下げ現実に行なわれた場合に、一体どのくらいの炭鉱が生き残り得るものであるのか、その場合の生産量というのは一体何千万トンくらいになるのかということを伺いたい。  なおこの法律によりまして、いわゆる特別貸付金近代化資金というものを貸し付けて参るということでありますと、その効果として炭鉱数がふえるわけだと思うのでありますが、何鉱ふえるのか、言葉をかえて申しますれば、貸付対象となる炭鉱数はどの程度考えておられるのか、それによって増加を見込み得る石炭生産量は一体どのくらいであるのか、最初にその点をお伺いしておきます。
  7. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 石炭特別貸付金効果でございますが、この貸付金をわれわれが国会予算として御審議をお願いし、また法案をここでお願いしております一番大きなねらいは、今までも開銀資金あるいは中小企業金融公庫資金といったような財政資金が、石炭関係にかなり毎年出ておるわけでございますが、しかし何と申しましても、やはり金融機関という立場から、必要な場合に貸し付けるということになりますと、どうしても金融機関としての性格というものを免れがたいわけであります。たまたま昨年の十二月に、石炭鉱業審議会から、昭和三十八年には重油と競争するために売り値を千二百円下げるべきであるという答申をいただきました。そのときに業界で考えておりましたのは、その前に、三十八年には八百円値段を下げるということを言っておったわけでありまして、そのためには大体今後五年間に千二百億円の金を大手十八社に投入する、それによって大体八百円程度値下げができる格好に持っていきたいということで、計画を組んだわけでございます。しかし、エネルギー流体化といったような現象にかんがみまして、五年後の三十八年に八百円ではあまりにも少な過ぎるということから、どうしても千二百円下げなければならないというふうに考えられます。そこで、そのためには片一方におきまして非能率炭鉱を整理する、いわゆるスクラップダウンということをやると同時に、高能率炭鉱を造成する必要があるわけでありまして、そういうことによって石炭界全体の体質改善、平均したコストの低減ということをはかることによって、市場価格千二百円の引き下げを実現する以外にはないのではないか、こういうふうに考えられたわけであります。そこでこの特別貸付金は、これは俗な言葉で申しますと、いろいろ石炭界の将来について、事業自体がはっきりした見通しをどうも持ち得ない、また金融機関の方でもはっきりした見通しを持ち得ないということのために、とかく投資がちゅうちょされがちであると思われます。将来の運命を画するような大規模本格的投資というものにはっきり踏み切らせるため、国家の政策意思というものをはっきりここで打ち出しまして、その政策意思に、財政資金を裏づけてやるということによって、ほかの開発銀行融資なり、あるいは一般市中銀行からの融資のさそい水にしよう、そういうねらいでございます。従いまして、われわれといたしましては、業界の当初考えておりました五年間に千二百億というもののほかに、さらに二百億程度投資をここで促進する、こういうことをやることによりまして、石炭界全体の体質改善を促進していきたいと思っているわけでございまして、これを具体的に申し上げますと、大体昨年の石炭京浜市場におけるシフ価格は、カロリー当たり九十七銭でございます。そのときに、千二百円下げるということになりますと、大体七十八銭のシフにしなければならないということでございます。それを山元の方に引き直しますと、大体平均して五十六銭で山元で売られる石炭であれば、大体京浜で七十八銭で売られるということになるわけでございます。それを一つ一つの山につきまして今までありましたデータからいろいろと計算して参りますと、大体大手関係で二千百万トン程度中小関係で、中小関係というものは非常にコストの安い山とかいろいろあるわけでありますが、約千万トンあるわけであります。約三千百万トン程度は一応五十六銭ということになり得るのではないか、こう考えられたわけであります。御承知のように、石炭というものは開鉱して間もない五年間くらい、あるいは終掘に近い五年間くらいというものは、大体赤字でございます。最盛期の五、六年目からその後十五年ないし二十年という青年時代黒字になるということでございまして、たとえばドイツのルール地帯の炭田の例をとりましても、黒字炭鉱が六五%、赤字炭鉱が三五%、結局黒字炭鉱が六五%でまだ若い山を育成し、あるいは終掘に近い山を円満に終掘させるということをやりながらいくわけでございます。ほぼ六五%程度黒字山というものでルール石炭をやっているわけでございますが、それと同じように、一つ一つの山を計算いたしまして、先ほどの大手二千百万、中小が千万、両方合わせて三千百万トンということになるわけでありますが、そのほかに、御承知のように大手関係一つの会社が五鉱山、十鉱山というふうに持っております。そういう企業全体として持ちこたえる力というものもございますので、大体約七割で還元するという言葉はおかしゅうございますが、三千百万トンの黒字炭鉱があれば、この三千百万トンの黒字でささえられる全体の石炭規模は四千五百万トン程度ある、こういうふうに考えられるわけであります。ところが四千五百万トンでは、日本の将来のエネルギーをまかなう一番大きな国民資源としていかにも不十分でございます。そこで、今回ここでお願いしております法律改正により、新しい予算化によって特別貸付金をやっていただきますと、その効果といたしまして、三十九年度以降にでき上がる石炭の山がだいぶ繰り上げられるわけであります。それと同時に、非常に能率の悪い山というものがスクラップダウンされますので、その結果、われわれの計算によりますと、先ほどの五十六銭で上がると考えられる山が三千七百五十万トン程度にはなり得る、こういうふうに考えるわけであります。それでこの三千七百五十万トン、これは先ほどのようにこれで一体幾らの全体の石炭規模がまかなえるかというふうに逆算して参りますと、ほぼ五千四百万トン程度が、千二百円下げて石油と競争可能と考えられるものが供給される山の規模、そういうふうになろうかと考えられるわけでございます。今回の措置を今後も——そのときの状況々々によって、もちろん金額その他は変わってくると思いますが、われわれの予定通り続けるということになりますれば、現在業界あたりで考えている、自分だけの努力でやるというのに比べまして、今後五年間に石炭規模が九百万トン程度ふやすことができるのではないかと考えております。それからなお、対象になります縦坑につきましては、これは実はこれからさらに厳密に計算しなければならないので、必ずしもはっきりしたことはわかりませんが、現在あります山並びに今後手をつける山というものを全部入れましても、せいぜい二十五、六、三十以下であろうかというふうに考えております。
  8. 始関伊平

    始関委員 項目を分けてお尋ねしますから、なるべく直接お尋ねした問題だけをお答えいただきたいと思います。  大体今度のこの貸付金開発銀行融資なんかと抱き合わせになる、こういうふうに存じておりますが、そうでありますれば、開銀融資とその特別貸付金割合はどんなことになるのかということをお尋ねします。それからこの貸付金対象となるもの、縦坑だとか、対象となる合理化工事というものはどんなものか、その点をお尋ねしたいのであります。なおただいまのお話で、総額二百億を予定しておるということでありますから、この予算は来年度以降も引き続いてお出しになるものと、こう了解いたしますが、いかがでありますか。その三点。
  9. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 まず特別貸付金割合でございますが、大体これは対象工事の四割程度をこの特別貸付金から出したい、そういうふうに考えております。それから対象工事といたしましては、縦坑あるいは坑口坑道と申しましたような、直接外とつながるメインの坑道並びにそれに直結します坑内の主要坑道、これは最後まで稼行し続ける関係、そかれら現在その坑道に設備されます巻上機関係、そういうふうなものに、大型の工事は一応限定いたしたい、そういうふうに考えております。それからなお縦坑のほかに、御承知のように中小炭鉱関係につきましては、採炭機とか運搬機あるいは選炭機といったような機械関係というものも本貸付金対象にいたしたい、そういうふうに考えておりまして、大体その場合にも貸付割合は四〇%、そういうふうに思っております。  それからもう一つ、先ほど私、この金の計画として、民間が当初に考えておりました五年間に千二百億では、とても体質改善に間に合わぬだろうから、千四百億までふやすためのさそい水にしたい、こういうことを申し上げたわけでございますが、もちろん本年は国会審議をお願いしております二十億というものが体質改善山元に、一億四千万が流通関係に使われることになったということになって、はっきりいたしておりますが、実は来年度以降どれだけやるのだということにつきましては、通産省としては、できるだけこういう制度を今後も活用していきたい、こう思っておりますが、政府全体といたしましては、今後の石炭企業努力実態を十分に把握しながら、そのときの金融情勢あるいは財政状態というようなものを考慮いたしまして、そのときどきに必要なものを組みたい、こう考えておりますので、今後五カ年間たとえば継続費といったような形で、必ずこういうものを出すのだというふうにきまっておりません。この点私が先ほど申し上げましたのを、あたかも来年度以降も出すことにきまったというふうにお受け取りでございますならば、この点については、来年度以降につきましては、そのときどきの財政状態金融の事情、あるいは石炭鉱業自体企業合理化努力といったようなものの実態を十分把握した上で、必要な措置を講じていきたいということになっておりますので、御了承いただきたいと思います。
  10. 始関伊平

    始関委員 大臣がお見えになりましたので、最初に返りまして、順序を追うて御質問申し上げます。最初石炭価格引き下げ目標についてお尋ねを申し上げますが、日本石炭協会では、石炭価格引き下げ目標トン当たり八百円である、これを昭和三十八年度までに実現すべきものであるといたしております。一方政府では、ただいま局長からもお話がありましたように、千二百円の引き下げをする必要がある、こういうのでありますが、この両者の間に食い違いがあるというのは一体どういうことであるのか。政府はそう言っておるけれども、業界がついてこないということであるのか、行く先どういうふうに調整されるのか、この点を大臣に伺いたい。  なお、先日この委員会参考人として石炭協会石松会長が出て参りましたが、石松さんのお話によりますと、八百円の炭価引き下げは、協会大手石炭業者を代表いたしまして、需要者なりあるいは世間一般に対しまして、そういう引き下げをするということを公約をしたのだということでありますが、政府の方の千二百円引き下げというのは一体どういう性質を持っておるのか。単なる希望の表明であるのか、また必ずそこまで下げるという一種公約であるのか、千二百円引き下げるということについて政府はどういう責任を持つのか。千二百円引き下げなければいかぬと言っております意味を伺いたいのであります。従いまして、従来しばしば同様のことを申しておったのでありますが、この前と今度とは違うのか、あるいは同じなのか、そういう点を大臣から伺いたいと思います。
  11. 池田勇人

    池田国務大臣 大手石炭業者の集まりでは、お話通り一応八百円ときめたようでございます。しかし、それとは関係なしに、われわれは石炭鉱業審議会にかけまして、しかもこれは御承知通り業者消費者労働者、そうして学識経験者、これが入りまして審議の結果、他の競合エネルギー等のことを考え、ぜひとも千二百円下げるべきだ、こういうことを決議されたのであります。その千二百円下げる場合におきましては、政府もこれについて適当な措置をとるべしということに相なっております。従って、三十八年までに千二百円下げるということは、これは一つの大きい法的のなにはございませんけれども、一応各関係業者がそれを認めた一つの事実と私は考えておるのであります。今回の石炭合理化法につきましての政府の処置と相待って、千二百円下げるものと私は考えております。
  12. 始関伊平

    始関委員 石炭鉱業コストダウンなり、あるいは炭価引き下げの必要が叫ばれましてから今日までずいぶん年久しいものがあるわけであります。ところが実際問題としては、炭価はそう下がっているわけではございませんで、この改正前の合理化臨時措置法というものが施行になりましても、実はある程度上がっておる。少なくとも競合エネルギーと言われております重油に比べて、現在なお相当な割高になっておることは事実であると思うのであります。なお石炭協会では八百円の炭価引き下げ公約したというのでありますが、年次別にどの程度ずつ下げていくかということはきまっていないということでありますし、私といたしましては、その言明、公約通りに今後下がっていくものかどうか、はなはだ疑問であります。むしろ石炭需給関係のいかんによっては、逆に一時的に高騰するということもないとは言えないと考えておるのであります。しかしながら、考えてみますと、これはある意味ではむしろ当然でありまして、炭価引き下げなくてもよろしい、そういう条件政府みずからの政策によって作り出しておる、私はこのように考えるものであります。たとえば重油ボイラー規制法延長をしよう、それから原重油輸入規制を続けていこう、こういったようなことによりまして、エネルギー源の国際的な需給市場から日本エネルギー市場というものが一応遮断されており、特別に高いエネルギー価格水準というものの維持を可能ならしめておると、私はかように考えております。そうでなければ、重油に比べて二割も三割も高い価格水準石炭が維持しておるということは、とうていこれは説明できないのであります。  そこで、私は大臣に三点をお尋ねしたいと思うのでありますが、第一点は、私の申します前提条件輸入管理制度、それからボイラー規制法延長、こういったようなものをそのままにしておきまして、重油と競争できる程度炭価引き下げよう、あるいはそれを目標にしてだんだん下げていこうと言ってみましたところで、これは経済原則を無視するものであって、いわば矛盾ではないか、私はこのように考えるのであります。炭価が上がったり下がったりすると思うのでありますが、これは一応国際的なエネルギー源需給市場と隔離された国内エネルギー需給関係によってきまってくるのであります。コストというものももちろん問題になりますが、そのままではきまってこない。でありますから私は、今の状態のままで炭価引き下げるというようなことを、政府が申すのは一つ矛盾ではなかろうかと思うのでありますが、これについて大臣所見をお伺いしたい。  第二点は、従いましてこの際重要なのは、炭価現実引き下げるということではなくて、むしろ将来に備えてコストダウンをする、そっちの方が重要ではないか、当分の間はコストダウンさえやれば、それに伴って多少炭価が下がってくるということもあり得ると思いますけれども、そこに重点があると思う。そうすればよろしいんだと言った方がむしろ率直だし、私は事実に合っている正直な言い方ではないかと思うのでありますが、この点の大臣所見を伺いたいのであります。  それから第三点は、ただいま大臣の御説明では、政府が千二百円引き下げるということは公的な公約ではないけれども、そういう事実があったんだ、こういうお話でありますが、これは私は必ずしも納得できないのでありまして、千二百円炭価引き下げなければならないというのは、言葉をかえて申しますと、その時期までにボイラー規制法というものははっきりと廃止いたしまして、コストが下がろうが下がるまいがその再延長は絶対にやらないんだ、こういう意味一つ持っている。もう一つは原重油輸入自由化も、その時期までに断行せざるを得ない。炭価を下げる必要があるとか下げなければならないとかいう議論を、いつまでもしておるのは私はおかしいと思うのでありまして、炭価が下がらざるを得ないような、そういう条件と申しますか、環境を整える、そこに今回政府が千二百円引き下げるということを、一つの事実として御発表になった大きな意味がある。もしそうでないとするならば、政府炭価引き下げ方針というものは今までと同様、全く迫力のない無意味なものになってしまうのではなかろうかと思うのであります。従いましてこれは、きょうの私の質問のポイントなのでございますが、第三点として千二百円炭価を下げなければいかぬという意味は、政府政策としてコストが下がろうが下がるまいがボイラー規制法延長は絶対やらないんだ。おそらくその時期までに多少は前後はあるかもしれませんが、それまでに原重油輸入自由化ということを断行するんだ、こういうふうに裏返せば見られると思うのであります。その点大臣から明確に御答弁いただければけっこうと思います。
  13. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点が、私の頭にはっきり入らぬ点がありますので、もしピントはずれの答弁でございましたらまた御指示願います。  第一の原油、重油輸入管理をし、そしてボイラー規制法を三年間延長しておる、こういう状態のときに石炭値段を下げるということは矛盾ではないか、私は矛盾していないと思います。石炭の単価を下げて、そしてボイラー規制法を行なわなくて、また輸入制限を行なわなくても済むような事態を作ろうというので、この法律を出しておるのであります。  第二の炭価引き下げでなくてコストダウンじゃないか、これは同じことでございます。コストダウンをしなければ、一時はコストを割っても炭価を下げるということもあるかもしれませんが、コストダウンすなわち炭価引き下げでございます。  それから将来ボイラー規制あるいは輸入制限を撤廃するという条件を作るための今回の措置、ただできるかできませんか、また時期的には三年間でできるかどうかわかりませんが、とにかくそういういろいろな規制をやめて、自然の姿に持っていくための素地を作る、こういう方法でございます。
  14. 始関伊平

    始関委員 要するに私の申し上げたいのは、今のような輸入管理その他によりまして国内需給市場国際市場と遮断されておると私は思うのでございますが、その点大臣はどういうふうに御認識なさいますか。もう一つとにかくコストが下がれば当然炭価が下がるという理論も、私は経済理論からいってちょっとおかしいと思うのでありまして、それも一つの要素であることはもちろんでありますけれども、国内だけの需給関係からいって必ずしもそれは下がらない。場合によっては上がる場合もあるのでありまして、私は準備をしておくということまで無意味だとは申すのではありませんが、見ようによれば下がらぬでもよろしい、下がらぬでもよろしいという条件を一方に置いておきながら、下げろ、下げろと言ってみても下がらない。これは何よりも今日まで下がらなかったという事実関係によって、私は証明されると思うのであります。従いまして結論的に申せば、とにかくこの時期においては、必ず国際市場に直結したようなエネルギー市場にするのだということを、はっきり政府方針として打ち出すということを、私は炭価引き下げ一種公約、約束をするというようなことの裏返した意味になる、こう思うのでありますが、もう一ぺん御答弁願います。
  15. 池田勇人

    池田国務大臣 わが国の物価その他がある程度統制によって、いろいろな法律によって遮断をせられておるということは言い得ると思います。ただその遮断の程度、原料炭の輸入は割当制にしておりまするが、外国と原料炭の差があるということは、これは遮断されておる結果でございまするが、しかしやはり非常にそこに差がありますということになりますと、鉄鋼業者も原料炭が非常に高いから安くしろ、こういうことになりますと、やはりある程度の影響はあり、遮断されたとも言えないわけでございます。しかし割当制その他で一応は遮断されておると言い得ると思うのであります。それからお話の点ぴんとこないのですが、どういうことを聞かれているのか、もう一度おっしゃっていただきたい。
  16. 始関伊平

    始関委員 千二百円引き下げろということは、重油の価格が今よりもっと下がればまた話は別になりますが、一応原油の現在価格というものを前提といたしまして、国際水準に持っていこう、こういう意味だと思うのであります。そうすると、そこまで下げろ、下げる必要があるということを言っておりますことは、つまり逆にと申しますか、言葉をかえて言えば、多少の時期のズレはあるけれども、やはり原重油輸入自由化というようなことが、もう一つの必然と申しますか、一つの至上命令的なものなんだ、こういう認識に立つのではなかろうか、こういうことをお伺いしておるのであります。もし今のままにずっと遮断されておるという状態が続けば、いい悪いの批判は別としまして、やはり炭価国内だけの高い水準というものが将来になって維持できないわけではない。下げる必要があるということを、私は言葉をかえて言うと、今国際市場国内市場とを遮断している、こういうことでなければ筋道は一貫しないと思うのでございますが、いかがでございますか。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 これは千二百円下げたならば、もう国際水準に合って、そうして重油とか、石炭を自由に持っていくということになるかという御質問のようでございます。なかなか私はそうはならぬと思う。たとえば原料炭にいたしましても今大体メリット関係では、二千円ないし二千五百円違っておるといったような状態で、千二百円下げましたからといって、必ずしも直ちに外国の原料炭と匹敵できるというところまでいかないのであります。もちろん運賃が今の二倍、三倍になれば別でございますが、今のように、テキサスから持ってきますのに十二ドルくらいの運賃であったならば、千二百円下げても、原料炭が直ちに自由になるということはむずかしいのではないかと私は思います。それからまた、重油あるいは原油が非常に下がってきた場合に、千二百円下げたら、もう至上命令といわれる自由化にすぐ持っていかれるかといったら、これは三年たってなかなかそこまでいけるかどうか、あるいは原重油が今の値段では、千二百円下げれば、大体いけるという状態になるかもしれません。そういう点で、自由化が至上命令だから、それにマッチするために千二百円下げたらいいか、こういう質問だとするならば、それは今のところなかなか申し上げられない、こういうお答えしかないと思います。
  18. 始関伊平

    始関委員 私は大臣のお考えもわかりますけれども、そういう指導方針では、やはり炭価引き下げということが現実に行なわれるかどうかは、今日までの経緯に徴して、はなはだ疑問である。大臣のおっしゃるような前提では、必ずしも千二百円下げる必要はないと私は思います。現に石炭業者は八百円下げるということを公約いたしましたが、ボイラー規制法の期限延長のためにそういうことを公約したのであって、年次別に、初年度幾ら下げるかというようなことになりますと、非常にしみったれたことを言っておるということによってもわかると思うのでございまして、私の考えの根底は、やはり需給関係による現実の圧力がなければ、炭価というものは下がらぬのだ、遮断されており、いろんな条件を見合って、輸入管理制度を運用するということであれば、炭価引き下げというようなことは、そんなに一生懸命、真剣に考えぬでもよろしい、こういう結論に業界は受け取ると思うのでございます。これはあまり押し問答をするのも、なにでございますが、その点、もう一ぺんお伺いいたします。
  19. 池田勇人

    池田国務大臣 私は炭価は下がると思います。ただいまも新聞記者諸君に話したのでございますが、御承知通り、昨年の七、八月ごろ、千一、二百万トンの貯炭がございましたが、この三月では、もう七百万トンそこそこに相なりました。従って、昭和三十一、二年ごろの状況から見ますと、炭価が上がってくる筋合いである。そして業者がまた増産に入って、ほんとうの合理化の逆行をやるのが昭和三十一、二年のときであったのであります。私は各業者、生産者の方にこの際やはり既定の方針通り石炭鉱業の合理化に反するような措置をとってはいけませんぞという通牒を出しますと同時に、片一方消費者側におきましても、この際買いあせりをして、三年間千二百円下げるという、あの計画に反するような買い集め等の措置をとられないように、こういう通牒を出したのでございまするが、前の経験にかんがみまして、私は千二百円は、好むと好まざるにかかわらず、下げていかなければならぬということを、業界の方でも覚悟していると考えておるのであります。それでこそ、こういう今までにない特別の措置をとったのでございます。
  20. 始関伊平

    始関委員 下げなければいかぬとか、下げる必要があるとかいうことによって下がるものじゃなくて、下げざるを得ないような条件が整うことによって下がるのだ、こう私は思うのでありますが、その点はこれ以上の御質問はやめにいたします。  そこで大臣石炭なり原重油なりの自由化については、やや消極的なお考えのようでございますが、これはたとえば農産物は海外市況に比べて二、三割高い。しかし逆に高いから自由化はやらないのだ、こういうことを政府方針として申しておるようであります。石炭なりいろいろの鉱産物資源、これは農業に近いような性格がある、こういうことも申されておるのでありますが、大臣のお考えの裏には、そういうようなお考えがおありかどうか、これをちょっと伺いたい。
  21. 池田勇人

    池田国務大臣 自由化というものは理想でございまして、これに向かっては進まなければなりませんが、国内産業に非常な影響を与えるという場合につきましては、自由化に対しての受け入れ態勢ができるまでは、無理に急いでやるべきでないという考えでございます。ことに農業につきましては始関君も御承知通り、各国とも、自由化した国におきましても、IMFの方に申し出まして、相当の制限をしております。だから米麦その他酪農品等につきましては、日本が全体を自由化しても、こういうような除外例は残して各国並みに持っていかなければならぬ。石炭重油自由化したいのでございますが、何と申しましても重要な産業であり、外貨の面からいっても、雇用の点からいっても、日本経済に非常な影響のあるものは、大体自由化してもそれが立っていけるというところまで、対策を講じてからやるべきだという考えでおるのであります。
  22. 始関伊平

    始関委員 ただいまの問題をもう一つ、今度は方面を変えてお尋ねしたいのでございますが、本年の四月一日以降、原重油関税かある程度上がり、原油につきましては二%から六%に引き上げられることになったのでありますが、合理化計画の進行の過程におきまして、海上運賃市況の低落、その他の原因によりまして、原重油の価格が予定の水準より著しく下落するという場合が予想されるのでございますが、そういう場合にはただいま大臣のおっしゃったような石炭鉱業の重要性にかんがみて、所要の調整措置を講ずる必要がある、その点は私も同感でございます。と申しますのはエネルギー源価格水準を国際水準まで引き下げるということは非常に望ましいのでありますが、と申しましてどこまでも下げるというわけには参りません。私はそう思うのでありますが、こういう場合の措置といたしまして、大臣はやはり為替管理制度を残しておきたい、こういう御意見のようでございますが、その際におきましてもう一つ考えられる方法といたしましては、関税制度を活用するということでございまして、自由化というものがだんだん進めば、むしろ関税制度の活用によるほかにないのではないかというふうにも考えられると思うのでありますが、御所見を伺いたいのであります。最近通産省の方面では弾力関税というような構想が伝えられておるのでございますが、その内容と、もしそういうことが実現可能ならば、石炭については、むしろそういう方法によるという方が、自由化の方向にもマッチいたしまして、すっきりする政策ではなかろうかと思うのでありますが、その点一つ大臣に御所見を伺いたい。
  23. 池田勇人

    池田国務大臣 国外からきまする輸入品に対しまして、国内産業の保護の上から、いわゆる保護関税政策というものは前からとっておるわけであります。今回の原油を二%から六%にいたしましたのも、重油を六%から一〇%にしたのもそういう意味であります。こういう問題は自由化の問題とうらはらになる問題でありまして、常に考えなければなりません。海上運賃がどうなるかわかりませんが、去年くらいが最低でないかと考えております。それから関税政策でも今従価税にしておりますが、従量税という強い意見があります。私も従量税に必ずしも反対するものではありません。将来のことを考えればこれも従量税の方がよいのではないかという考えを持っております。何分にも今の関税制度は明治時代のものでございます。また品目にいたしましても、品目の分け方にいたしましても、非常に旧式なもので、根本的に改正しなければならぬと思います。また税率にいたしましても、イギリスその他の税率と比べますと、よほど日本の関税税率というものは低くできております。これは、占領下でやむを得ないと思いますが、やはり再検討しなければならぬ問題と思います。しこうして、お話の弾力関税あるいは緊急避難的の関税制度、これは今の制度にもございます。ございますけれども、今後経済事情の変化につきまして、こういう規定の活用も考慮しなければならぬ。ドイツなどにつきましては、コスト引き下げということよりも関税の引き上げで対処しようとしておることは御承知通りでございます。関税制度というものを考えなければなりませんが、しかし何分にもエネルギーというものは産業のもとでございますから、やはり関税制度を使うという場合においても、国内の産業を合理化して、経済のもとを強くするということが必要なので、いたずらに関税を引き上げてエネルギーの原価を上げるということよりも、まず下げる方に頭を使って、しかる後にまた関税ということに相なると思います。
  24. 始関伊平

    始関委員 それでは、今度のこの法律改正によりまするいわゆる特別貸付金制度でございますが、石炭産業に対しては、従来とも開発銀行等を通じまして、財政資金が合理化あるいは近代化のために相当多量に投入されておったのであります。開銀資金等は今後も引き続いて貸し出されるというわけであります。そこで、今回の事業団による貸付金という制度を、新たに創設なさるその理由を伺いたいのであります。第一点といたしまして、開銀が六分五厘でこっちは金利なし、そして六、四の割合で抱き合わせになるとおっしゃるのでありますが、かりに今度の措置が金利の引き下げが主要な目的であるといたしますならば、開銀資金のままでもおのずから適当の方法があろうかと思うのであります。第二点といたしまして、炭鉱近代化のための所要資金量が問題であるという場合におきましても、今までの方法、資金ルートのままで全く同様に考えられる別途措置をする方法があろうと考えるのであります。従いまして一、二を理由といたしましては、特別の制度を新たに設けるという理由に乏しいと思うのであります。第三点といたしまして、政府の説明を伺いますと、石炭利用者の非常に膨大な合理化投資に対する意欲というものを高めていきたい、合理化工事を促進いたしまして、石炭鉱業体質改善というものを早めていこう、こういうことが今度の法律改正また特別貸付金制度の創設されまする理由であるようでございますが、この問題につきまして、当初、通産当局と申しますか、特に池田大臣の構想として伝えられましたいわゆる炭鉱助成、こういう制度でありますと、これについてはいろいろな批判があるかもしれませんが、投資意欲を高めようという目的に対しては、きわめて合目的的でありまして、効果は明白だと考えるのであります。また、その後、党の方にございましたような資産表には一応計上するけれども、収益があった場合だけに返還するという特別な性格を持った貸付金、これも投資意欲を高めようという問題についてはきわめて効果的な方法であると思うのでありますが、今度は、そのどちらでもない、後退をし、変質をいたしまして特別貸付金という制度になったわけであります。この制度投資意欲を高めようという目的に対して、はたしてどんなものであろうか、非常に投資意欲が高まって、合理化工事をどんどんやろうということになるものかどうか、その辺の見通しと申しますか、お考えを伺いたいのであります。  なおこの点に関連いたしまして、これは局長に伺いますが、第三十六条の七に、「災害その他政令で定めるやむを得ない理由」とあります。この場合は金を返さぬでもいいということになっておりますが、「やむを得ない理由」というのはどういうものであるか、きわめて簡単にお答え願います。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 今回の措置は、今お話しの通り無利子で貸す、それからこれをやることによりまして他の金融機関の貸し出しの気持も変わってくる、またこれによって合理化が促進される、こういう点から来ておるのであります。私は業界の意見を聞きまして、また経験者に聞きまして、この程度ならば相当効果があるということを申し出ておりますから、うまくいくと思っております。ただ金利の点なんかが、これだけではやはり一トン当たり二十円くらいしか影響がないのでありますから、それでも合理化に対して非常に効果があると考えております。  私がこの案以外に前に案を持っておったというお話でありますが、そういう案を持っておりません。あくまで白紙で臨みまして、石炭鉱業合理化審議会の意見を取り入れてやったのであります。それまでは石炭対策としては、私は全然白紙で臨んだ次第であります。
  26. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 災害以外のやむを得ない理由というのは、たとえば非常に著しい経済界の変動といったものがありまして、石炭業としては最大限の努力をしたけれども、とてもそんなことでは追っかぬといった程度の非常に大きな変化でもあれば、そういうものを入れたいと思っておりますが、実は今のところ具体的にどういうことということは必ずしも予定しておりません。いかにもここで待ってやるということが、だれから見ても至当であると考えられるような大きな変動があれば、そのときにあらためて決定したいというふうに考えております。しいて申し上げれば非常に著しい経済界の変動で、石炭あたりを使っていくということ自体が、日本のような自然条件のもとにおいては、とても非経済的であるということでもあれば別でありますが、今のところ特にこれという具体的なことは考えておりません。
  27. 始関伊平

    始関委員 法律の内容でございますが、三十六条の三の二項にいう貸付の相手方となり得るための条件の中の、石炭の鉱量と当該石炭坑の近代化が完了した後における石炭の生産能率及び生産費というものがございます。これはどの程度のことを考えておるのか、簡単に具体的に御説明願いたい。  それからもう一つ、本法による資金貸付対象となる石炭坑の将来の生産能率、生産費の基準と、坑口開設許可基準の生産能率、これは一致すべきものと考えますが、これも簡単に御説明願いたいと思います。
  28. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 まず鉱量でありますが、これはたとえばいわゆる近代化ということで対象にいたします際には、少なくとも二十年程度は鉱量がなければならぬという考えであります。ただこれが中小炭鉱関係で機械化の対象ということになりますれば、大体十年程度以上ということで考えてもいいのではないかというふうに、大規模な骨格工事対象の場合と、簡単な機械化という場合とは期間を分けて考えたい、こういうふうに考えております。  それから生産能率及び生産費の最低基準でありますが、これはただいま始関委員から御指摘になりましたように、現在考えております坑口開設の許可基準を最近の新しい情勢にかんがみて改正すべく、目下検討いたしております。従いまして一応本資金対象といたしましても、最低限といたしましては、坑口開設許可基準と大体同一のものというようなものを取り上げて、この中で特に国民経済的に規模からいい、あるいは場所柄といったようなものからいって、緊急度の高いものを逐次作り上げていく、そういうことにいたしたいと思います。
  29. 始関伊平

    始関委員 第三十六条の三の三項で流通の合理化ということを今度考えておりますのは、今は適切だと思いますが、具体的には一体どんなことを考えておるのか。この場合貸付対象になるのは、どんなものかということを簡単に御説明願いたい。それから石炭専用船は流通合理化の貸付対象になるのか、これも簡単に御説明願いたい。
  30. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 流通の合理化でございますが、御承知のように流通関係におきましては、まず石炭の山から港に運び出し、港から積み地まで船で送る。それから積み地であげる。それからあげてから工場に持っていくといういろいろな段階があるわけでございます。この中でたとえば港の設備そのものにつきましては、すでに昨年来特定港湾工事施設特別会計で、石炭関係でも七十五億の総予算をもちまして港湾の施設の整備をやっております。われわれが今回の予算あるいは法律でお願いいたしたいと思っております第一の点は、現在三千からの銘柄に分かれて取引をいたしておりますために、輸送港にしても貯炭港にしても非常に小口に分かれて手数がかかっております。これを使う方からいえば、せいぜい数十の規格のものがあれば十分なわけでございますので、できるだけ銘柄取引から単純な規格で売買ができるような方向に持っていくということで、貯炭の面あるいは輸送の面、双方非常にむだが省ける、こういうふうに考えております。そこでそういうような規格化するという方向に進むことを前提にいたしますと、まず積み地におきまして、あらゆる炭鉱から出てくるいろいろな炭というものをまぜて、大体灰分が幾ら、硫黄分が幾ら、カロリーが幾らといったような幾つかの種類の規格に分けるということをすれば、船に積むのも簡単にできますし、貯炭する場所も一カ所の山に積めるというような有利なところがございますので、さしあたっては、共同貯炭場に共同混炭場を設けることを、流通合理化の第一次の施策として取り上げたい、かように考えております。  それから石炭専用船でございますが、これも非常に大口にしかも定期的に運ばれるというようなところにおきましては非常に効果的でございます。従いましてわれわれといたしましても、石炭の専用船というようなものについて、今後積極的に検討を進めていくべきであろうかと考えておりますが、御承知のようにわが国の内国航路の貨物の四五%は石炭ということになっております。しかもその石炭を運んでおります汽船の大部分は、戦標船というような非常に旧式の能率の悪い船ということになっておるわけでございますが、こういう際にかりに石炭の生産業者並びに販売業者というようなところで、みずから石炭流通合理化ということに乗り出して、専用船を作るということになりました場合の海運業界との間の調整といったようないろいろむずかしい問題もございますので、この法律では御承知のように、一応石炭業者あるいは販売業者が、自分で専用船を持ってやるといった場合に、一応対象になり得るような格好になっておりますが、実際に運用いたします際には海運界とも十分連絡をとらなければならないのじゃないか、こう思っておりますので、さしあたり本年度の予算でお願いしております予算の中では専用船のことは考えておりません。もう少し検討した上でやっていきたいと思っておりますが、場合によりましてはこの特別貸付金制度ではなしに、むしろ別途国内の航路につきましても外国航路と同じように、開発銀行融資をお願いすることができるようになれば、それだけでももっと石炭の輸送費は安くなるのではないかと思っております。その辺につきましてはこの法律と別の方向で関係官庁ともいろいろ検討していきたいと考えております。
  31. 始関伊平

    始関委員 ただいま大臣お話のように、最近になりまして石炭の需給状態が緩和いたしまして貯炭もだいぶ減って参った、これはけっこうなことでございますが、この情勢で炭価引き下げるというふうに大臣はおっしゃっておりますが、その点は別といたしまして、炭鉱につきまして今日までスクラップ・アンド・ビルドの政策をずっと推進して参った、一時的な石炭市況のいかんによって、今日までやって参ったスクラップ・アンド・ビルドの政策効果がなくなるようなことになったのでは非常に困ると思うのです。この炭鉱の育成に伴う増産は別といたしまして、変な増産対策というものは私は望ましくないと思うのでございますが、この点についての指導方針一つ大臣からお伺いしたい。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通り石炭の需給に左右せられまして、長期の石炭政策が阻害されるというようなことは避けなければなりません。従いまして過去の経験にかんがみまして先ほど申し上げたような措置をとっているのであります。大体私といたしましては、昭和三十五年度は五千二百万トンの生産、五千三百万トンの消費を予定いたしております。しかして今回の合理化措置によりまして大体通常年度、ただいまのところは五千五百万トン程度を維持していこうという考えで進んでおります。
  33. 始関伊平

    始関委員 大臣にもう一点お願い方方御質問を申し上げますが、臨時石炭鉱害復旧法が三十七年の七月一ぱいで有効期限が切れることになっております。石炭鉱害の現状から見まして、この法律をやめてそのままにしておくことは、私はできないと思うのでございます。そこでこの法律の期限の切れました日以降の鉱害行政を円滑に推進して参りますために、早急に審議会を作るとか、あるいはいろいろ石炭関係審議会もあるようでございますが、そこへあわせて付託されるとか、そういう方法を講じていただきまして、この法律改正なり延長なり、その他の対策を検討していただきたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。御注意を喚起いたしましてお願いを申し上げますが、特に御意見をちょっと伺いたいと思います。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の点まことにごもっともでございます。こういう点につきましては、やはり外国の事情も十分調査いたしまして決定いたしたいと思います。従って最近通産省の炭政課長、専門家を海外にやりまして調査をし、そうしてこれが結論を出したいと考えております。
  35. 小平久雄

    ○小平(久)委員 私は始関委員質問に関連して、ごく簡単にお伺いしたいと思うのです。今度の合理化資金貸付の相手方、これは法案上も通産省で定める基準等によってやるということになっております。これは御答弁あったかと存じますが、大体どんなことを基準になさるのですか。
  36. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 たとえば三十六条の三で人的の基準がございますが、これは合理化のために設備を作るわけでございますので、その設備を設置して運営するという場合には、その設置運営を遂行するに足るだけの技術的あるいは経理的な能力を有すると認められる——これは当然のことでございますが、それから適格な事業計画を持っているかどうかということ、そういうことからその所期の目的を達成するのに確実な見込みがあるといったようなことを、まず人的条件と考えておりますが、特に中小関係の機械化ということもございますので、機械化につきましては、たとえば大炭鉱がちょっと自分のところで採炭機一つ入れるから貸してくれという場合に、入れることが効果が上がることはわかっていても、そういうことは適当ではないのではないか。機械化につきましては、むしろ従業員の数なり資本金なりで最高限度をきめ、それ以上のところはだめだといったようなことを、一つの人的基準というふうにいたしたいと考えております。
  37. 小平久雄

    ○小平(久)委員 今局長から御説明のような、技術的あるいは経済的というか経営的というか、そういった能力ということは、もちろん重要な基準だろうと思うのですが、私は最近私の耳に入っておるところからちょっと考えておるのです。まずもって業界、経営者その人の心がまえが一番重要じゃないかと思うのです。聞くところによると炭鉱会社のうちには、観光会社に出資をしたり、遊戯場というか、われわれもスポーツは好きだが、スポーツをやる場所を作るために相当金を出したり、そういうことをやっている者もあるやに聞いておる。それだけの能力がある会社、余裕のある会社ならば、開銀融資を仰ぎ、さらには今度のこの合理化資金を無利息で貸し付けるというような対象からは、われわれの感情からすればはずしてしかるべきじゃないかというくらいに感ずるのです。こういう点について、今後業界をどのような御方針で御指導なさるのか、この点を大臣からお答え願いたい。
  38. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 確かに小平先生御指摘のように、石炭会社の若干のものが観光関係にえらい進出して、ブームを巻き起こしているといったようなことが新聞記事にあったのでありますが、しかしこれは一応調べてみますと、大体新聞に書かれたような、観光事業で、じゃんじゃんもうけてやれと、石炭につぎ込む金を回しているといったようなことではありません。石炭会社が今まで持っておりましたいろいろな不動産をこの際、中には二、三年前、数年前から、分離して、不動産だけ別に管理さしているというような子会社がございます。ある会社では、今まで自分の山元と、それから消費地にあります不動産を全部一つの会社で持っておったけれども、むしろ定年退職でやめた人だとかいうような人の行く先を考えて、それぞれ部門を分けまして、不動産管理会社というようなものを作って、社宅等はそっくりそっちにまかして、その管理運営をやるといったようなものが数社あるわけでございます。これは資本は親会社が持っておるのが大部分でございますが、すでに人格が分かれているということで、このごろの実情を申し上げますと、石炭会社に貸すなら貸さぬけれども、子会社が借りに来るというなら貸してやる、金融機関にはむしろそういう傾向さえあって、われわれは困っておるのです。親会社でなしに子会社が借りに行ったときに、これを借りてまさか親会社の石炭に投入するんじゃないでしょうねというような、変なことまで言われるといって、こぼしておるところもあるくらいでございます。石炭に投入すべき金をほかのもっと有利な運用先があるからといって回しておるといったようなものは決してございません。大体石炭会社は、常磐の共同ガスでありますとか、北炭の北星海運といったような、自分のところの製品の輸送を低廉ならしめるために、あるいはまた自分の商品の需要を安定せしめるために、ガス会社あるいは船会社に投資しているもののほか、若干今申し上げましたような不動産管理会社といったようなものをやっているわけでございます。実は石炭鉱業審議会の基本問題部会におきましても、そういうふうに、つまらぬ、全然別のことをやっているところには、政府の金は出すべきじゃないのじゃないか。そのときにたまたま、極端な話をすると、今銀座あたりで大資本でキャバレーでもやればもうかるだろが、そんな会社に出すべきじゃないといったような議論も出まして、われわれも確かに貴重な金をつぎ込んで、それがそういう非生産的な方面に使われるということは、非常にけしからぬと思っておりますが、私の今まで調べましたところでは、たまたま数年前に分離さした会社あるいは今回の不況が始まりましてから、従業員をどこかに何とか処理しなければいかぬというので、従業員のはけ口のために、別会社にしておいた方が何かにつけて便利だということで分けた会社が一、二あるようであります。決して、新聞に伝えられましたように石炭会社が観光ブームということで、生産に振り向ける金を観光の方に投資しているということは、私の調査した範囲ではございません。
  39. 小平久雄

    ○小平(久)委員 われわれは過去のことをかれこれ言おうと思うのじゃないのですが、われわれが新聞記事なり人の言うことなりで聞くところによると、必ずしも従来ばかりではなく、これからもいろいろ計画なさっておる向きもあるやに聞くのです。ですから、単に資金を流す、これは融通の形もありましょうし、あるいは株で持つというような場合もありましょうが、その辺も大いに注意をしていただきたい。それから、単に資金的な面ばかりではなく、とにかく国をあげてこれだけ石炭業界のために騒いでおる際なんですから、経営者の力も、あまり直接関係のないようなところに注がれることのないように、これは当局として十分監視して、今後本法成立のいわんとするところを特にやっていただきたい、こういう希望を申し上げておきます。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 お話の点まことにごもっともでありまして、これは国民の税金でございますから、その使途につきましては、この法案の目的達成のために万全の措置をとっていきたいと思います。
  41. 中村幸八

    中村委員長 次は八木昇君。
  42. 八木昇

    八木(昇)委員 本会議関係であまり時間がないそうでありますので、ちょっと質問に困っているのですが、二、三の点を御質問いたしまして、時間があれば例の三井三池炭鉱の件について、あとで若干質問したいと思っております。  今度の合理化法の一部改正案を見まして私ども感じます点は、先ほど始関さんからも御指摘がありましたように、千二百円炭価を下げるという前提の上に立って、それを実際に実現をするために、この石炭鉱業の合理化法の改正案を出す、こういう提案の趣旨のようでございます。そこでいろいろ伺いたいのですが、きょうのところはこの中身は省きまして、千二百円炭価を下げるという考えだが、それについて通産当局としては、具体的な石炭鉱業合理化のための基本計画というものについて、相当確定した構想があるのかどうか。さらにそれに基づいての合理化の実施計画案というものが当然あるべきはずだと思うが、一体それはどうなっておるのか。端的にいいますと、これから昭和三十八年までの間に、昭和三十五年には一体石炭を何トン掘る、三十六年には一体何トン掘るつもりだ、三十七年ではどれだけ掘るか、そういう場合の能率は一体どういうふうに推移をさしていこうという計画なのか、その間全国的に炭鉱労働者は、一体どういう推移をたどらしめるのか、その結果どうなるのか、もちろんこれはこの法律ができ上がってから、審議会がさらに具体的に十分検討するでありましょうけれども、法案を出す以上は、通産当局として一つの案があるはずでございます。それを本日直ちに御説明がいただけないとするならば、少なくとも、早急にその通産省案について資料を御提出願いたい、こう思いますが、最初にちょっと局長に承りたい。
  43. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 ただいまの御指摘の点につきましては、実は現在石炭鉱業審議会の基本問題部会と、それから生産性部会と、この二つにおいて検討をしている最中でございます。御承知のように、千二百円下げるべきであるという答申を昨年の十二月にいただいたわけでございますが、それからすぐ、それではこの千二百円というものは山元で幾ら下げ、流通部門で一体幾らくらい下げることが一番適当であるか、また可能性が多いかということにつきまして、毎週生産性部会の検討をいろいろしてきたわけでございます。  まずさしあたりは、流通面における問題というものをいろいろ拾いまして、そして流通面でどういうことをやれば、どれだけ下がるだろうかということを検討してきたわけであります。大体流通面関係の問題の検討だけは一通り終わりまして、一応生産性部会といたしまして、来週中くらいには、生産性部会としての流通面の合理化についての考え方をまとめるというくらいのところまで、今作業はだんだん煮詰まりつつございます。われわれといたしましては、できれば今月中に、もし悪くとも四月早々くらいに、生産性部会から石炭鉱業審議会自体に対して報告がなされ、それに基づいて通産大臣に対する答申が出てくるもの、こう思っておりますが、まず生産性部会の方の活動は、生産性部会にお願いいたしまして、今御指摘のございました年次別の長期計画というものを立てるのでなければ、結局今までと同じように絵にかいたもちになるのではないかというようなおそれもございます。従いまして、せっかくここで新しく心機一転して、制度並びに予算も第一歩を踏み出したわけでございますので、三十五年度の実施計画から三十八年度の一応中間的な中間駅まで、さらにその後の四十二年度の最終的な合理化目標の年次に至るまでの橋渡しがスムーズになるようにということで、現在各社に対して、まずどういう生産計画を立てているのかどうかということについての資料の作成方を依頼しております。  たとえば、三十五年度自体の生産につきましても、実は最近の需給状況等を反映いたしまして、石炭業界の方では、相当大きな数字を考えている向きもあるようでございますが、われわれの方ではとてもそんなプランでは、とにかくこれから新しく山を作るか、あるいはやめておる山を再開するとかいうことをしなければ、なかなかできないのじゃないかと思われる向きもございますので、大体今のあれでは、四月から五月の半ばくらいまでの間に、各社から一応全部計画を出していただきまして、それを役所の目で検討するということをまずやる。それから、それと同時に、この前基本問題部会のときには、大体三十八年のエネルギーの需要量は、石炭重油をひっくるめまして、七千カロリーの石炭に換算して八千三百万トンくらいあるであろうということを前提に、いろいろ計算したわけでございますが、大体われわれといたしましては、八千三百万トン、これは七千カロリーでございますから、実数にいたしますと九千万トンくらいになる。九千万トンくらいに相当するエネルギーが、重油かあるいは石炭に需要されるはずだという供給の見通しというものに基づいて、毎年々々それでは一体どういうふうな格好で需要がふえていき、あるいはそれに対応する石炭の供給構造がどう考えられるかということについて、これはほぼ五月の末までいただきますと、六月か七月くらいまでに政府としてのはっきりした方針をきめて、そうして、それに基づきまして三十八年までの長期計画、それからさらに四十二年度の最終計画というものを告示し、それからその第一年度としての実施計画というものを出したい、こう思っておりますので、実はこの法律案を御審議いただいて通過させていただきまして、予算が正式にきまりましたならば、われわれの今申し上げたような本格的検討と並行して、この二十一億四千万の金をどこにどう使うかというようなことについては、それと並行してやる、こういうことになっておりますが、全体的な考えは、大体夏の終わりごろまでに年次別の、そして最終的な結論を出したいということで、今審議会と役所と両方共同いたしまして、せっかく検討いたしておる最中でございます。
  44. 八木昇

    八木(昇)委員 これはもちろん非常に重要な問題ですから、拙速主義のような形で、ずさんな計画を立てても、それはしようがないと思います。従って、国会というのも会期がきまっておるわけでありますから、法案がある程度先行するということも、その事情がもちろんわからないわけではありませんけれども、しかし手探りでさっぱり、こうやみくものような形で、一体今後どういうふうに石炭をやっていくかという基本計画についての、通産当局の一つの具体的な内容をも示さないで、法案だけをわれわれが審議するというような感じを受けるわけであります。そういうことではやはり非常に困るのではないか。そこで、最終的にはそれらの計画は夏の終わりごろまでに作り上げたいということではございまするが、現在の段階において、大体判断し得る範囲内のものでも、ある程度資料を提出をしてもらいたい、こう考えるわけであります。  そこで、これまた始関さんが質問をしておられましたが、はたして今までのようなやり方で、炭価千二百円というものがほんとうに三年後に現実に下がるかということについては、もうだれしも疑いを持っている。それはたとえば標準炭価をきめる、それから各種行政指導を行なうというふうな、従来とられたような考え方で、予定通り炭価引き下げというものが一体可能なのかどうなのか、何かもっと当局としては考え方がそこにないのか、この点をできれば大臣からお答えいただきたいと思うのです。
  45. 池田勇人

    池田国務大臣 通産省といたしましては、各石炭会社の各山につきまして現状を調べ、これをどういうふうにしていったならば、どのくらいのコストダウンになるかというふうなことを、つぶさに一応の検討はしておるのであります。もちろんそういうものがなければ、やみくもにこれだけの金を出して千二百円下がるだろうというような、大ざっぱな考え方ではございません。事務当局といたしましては、一応の検討をいたしまして見通しはつけておる次第でございます。ただ問題は、これを資料としてお出ししますと、各会社の経理状況、いろいろな点がございますので、今通産省で検討いたしました資料をお出しするということは、一つお許しを願いたいという考えでございます。
  46. 八木昇

    八木(昇)委員 今の資料の点は、そう詳細はもちろん欲しませんけれども、可能な範囲内において、できればわれわれの希望に沿ってほしいと一応申し上げておきたいと思います。  そこで、実際にこの石炭鉱業が合理化されて、そして炭価が下がっていくというためには、今後やはり相当の資金を必要とする。まあ日本石炭鉱業に対するいろんな考え方はございましょうが、日本のような条件のもとにおいては、結局、日本石炭鉱業は、どうしてもある程度の保護政策というものは、今後も相当長期にわたって不可避ではないか、私はそういう認識を持つわけです。そこでこの合理化がほんとうに達成されなければ、結局は炭価も下がらないということになるわけですし、その合理化達成に必要な対策が非常に貧困ではないか、税制面においてもいろいろ検討を要すると思いますが、それと同時に、本年度の予算面から見ましても、たとえば今度の近代化資金の二十一億四千万円というがごときは、あまりにも少な過ぎますし、ほとんど問題にならない、こう考えます。そこで一体、今後どういうふうにこの額をふやしていきたいという、ある構想を持っておられるのか。それからこれがだんだんふくれ上がっていくということになれば、この石炭鉱業の合理化事業団の性格というものについて、やはり相当検討を要することになってくるのではないか。そこで単に何がしかの金の貸付機関ということにとどまっておっていいのであるかどうか、こういう問題が出てくると思うのですが、これらについての大臣の御構想を承っておきたい。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 保護政策に使いまするお金の量は、やはり財政的にいろいろ制約がございますので、私といたしましては、当初は一つ縦坑と輸送機だけでなしに、いろいろなものも貸付対象といたしたいと考えておったのでございますが、財政上の理由からして一応二十一億と相なったのでございます。しこうして、また石炭対策といたしましては、増産というばかりでなしに、離職者等の問題もございます。大体今度の関税の引き上げによる国庫の収入五十億余りのものと見合っていっておるような状況でございます。将来の問題につきましては、先ほど局長が申し上げましたように、今後この貸付をなす山につきましての計画ができまして、その計画によってまた来年度は考えたいと思っておるのであります。
  48. 八木昇

    八木(昇)委員 これは新聞にも載っておりましたが、最近非常に石炭鉱業についての資金難というのが、ようやく問題になってきておるわけです。石炭鉱業の合理化をできるだけ早い機会に達成せしめて、そうして重油等と十分に競合せしめ得るようにするためには、相当思い切った資金をこの際一挙につぎ込まなければならぬということは、当然考えられるわけであります。ところが銀行筋は非常に貸し出しを渋っておるということが、すでに世間の相当大きな問題になっておるわけです。当面石炭鉱業界が必要とする資金が、人員整理に必要な退職金やその他の金、あるいは運転資金やそういったものである。まあ金融機関の立場からすると、そういった非常に不安定な石炭鉱業に、資金をあまり貸し出したくないのはやむを得ないことでございましょうが、そうなってきますると、石炭鉱業の合理化については、今後いろいろな隘路にぶち当たるということが、私どもとしては予測されるわけであります。こういった民間の銀行が石炭業界に金を貸し出すことを渋るという傾向についてどうお考えであるか、これに対して何らかの対策をお持ちであるか。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 現状ではかなり金融は窮屈でございます。御承知通りコールも、申し合わせの二銭三厘を相当こえて、三銭五厘くらいのコール、こういう状況で、各事業とも相当金詰まりのようであります。しかし私は、開発銀行を初め各金融機関も、石炭鉱業のわが国産業における地位というものは、十分認識してくれておると思いますので、金融梗塞のためにこの合理化政策が遂行できぬというふうな事態は起こらないと確信いたします。
  50. 八木昇

    八木(昇)委員 私あたりは九州の佐賀県でございまして、中小炭鉱も相当多いところなんですが、銀行方面の炭鉱に対する金の貸し出しの渋り方というのは、それは今大臣が言われたようなことではないのでありまして、私どもはいろいろな場合に非常にけしからぬことにぶち当たっております。でありまするから、そういった点はやはり単に通産当局のみならず、あるいは大蔵当局も関連があろうと思いまするが、そういったことによって国家的な要請であるところの石炭鉱業合理化の推進が壁にぶち当たらないように、この点は積極的な努力をしてほしいと思うのであります。  そこで前の方に戻りまして、これは局長にお伺いいたしますが、本年度の予算案では、今度の合理化事業団に出しまする金の二十一億四千万円の内訳がきまっておりまして、中小炭鉱機械化促進関係に一億四千万円、石炭流通対策関係に一億四千万円、炭鉱近代化助成費に十八億六千万円、合わせて二十一億四千万円、こういうふうになっておるのでありますが、この金額はやはりこういうふうに分けて運用されるわけでしょうか、実際合理化事業団が運用する場合に。
  51. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 一応われわれは、予定ではそういうふうに分けてございますが、しかし必ずしも最後までそれでやるということではございませんで、結局二十一億四千万円というもの全体を生産、技術両関係で最も合理的に使うということで運用したいと考えております。
  52. 八木昇

    八木(昇)委員 そこで実際に融資をする場合にも、実際にはいろいろと運営の仕方について困ったむずかしい問題が現われてくるのではないか。たとえば二十一億四千万円の金を総花的に貸し付けるというふうにすれば、効果が期待できない、あるいは中小企業の方へ重点的にやろうとした場合、特定の優良鉱といいますか、そういうふうなものだけが特典を受けるというようなことになったり、いろいろな問題があろうかと思いますが、それらの点についてのお考え方をちょっと伺いたい。
  53. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 この金の活用につきましては、開発銀行あるいは興長銀その他中小企業金融公庫といったようなところからも、有能な方々に事業団に行っていただきまして、そして一般金融機関との関係といったようなことも十分見ながら、効果の早く上がる、いわゆる効果の大きいというところを選んで貸し付けていただくようにしたい、こう考えております。従いまして、特に大手だけを優遇するとかいうようなあれでなく、とにかく日本石炭業界から見て、そこに金をつぎ込むことによって、コストの安い山を早く作るということが、国民経済的に非常に大きなプラスになると思われるようなところに、大小の区別とか、あるいは近代化、機械化の区別といったようなものをつけずに、総合効果としてもっと多く上がる、またこういう金をつけなければなかなか効果が上がりにくいといったようなものに対してやっていこう、こういうふうに考えております。
  54. 八木昇

    八木(昇)委員 実際やり出しますと、必ずいろいろ問題が出てくると思いますから、具体的に出てきたときに、また私どももこの是正について意見は述べることにいたしますが、あらかじめ事態を予測することはできませんが、大体通産省のお考えとしては、本年度は二十一億四千万円であるが、だんだんにふやして二百億くらいの資金は持つようにしたいというお考えらしいのでございますが、そういうふうにだんだんなっていった場合の、この合理化事業団というものの性格は、どういうふうになっていくわけでございますか、どういうふうにお考えになっておりますか。
  55. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 まず二百億というお話でございますが、私先ほど申し上げましたのは大手が千二百億、大体設備資金として計画しているというのでは不十分で、千四百億くらいの金を設備に投ずるというのでないと、なかなかわれわれの企図するような合理化の効果が上がらないのじゃないか。その千四百億を投資するための初年度のてこというような意味で、この金を組んだわけでございますので、先ほど大臣からも御説明がございましたように、来年度以降幾ら組むんだということが、まだはっきりきまったわけではございません。全体としてとにかく千四百億の金を、政府資金と自分の自己調達、それから開銀その他興長銀といった政府金融関係、民間市中銀行からかき集めなければならない、そういうことでございますから、われわれといたしましては、できるだけ円滑に金が集まるようにということを通産省として努力したい、こう思っておりますが、政府資金を幾ら出すかということは、毎年々々の予算の際に御審議いただく、そういうふうに考えております。
  56. 八木昇

    八木(昇)委員 そういう答弁では——たださしあたって二十何億かの非常にちゃちなものをこさえただけだ、あとは政府の財政能力の問題があるからどうなるかわからぬ、こういうようなことではよもやないと思いますが、私のちょっと聞いたところでは三十五年、三十六年、三十七年、三十八年、この四カ年間で百六十五億と聞いたが、二百億前後であったか、そういった程度くらいの予算をほしいと通産省当局としては考えておるかのごとく聞いたように、私思いますが、どうでしょうか。
  57. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 いろいろ予算がきまります過程におきましては、これは多多ますます弁ずということでございますから、いろいろ大きな数字が出たことは事実でございます。しかしわれわれといたしましては、一応三十五年度にきまりましたのを現実の基礎として今後進めていきたい、こう思っておりますので、来年度以降のことにつきましては同じような答弁を繰り返して恐縮でございますが、できるだけわれわれとしては必要資金の確保に努力したい、こう思っておりますが、これだけをとるということは今からはっきり申し上げかねるわけでございます。
  58. 八木昇

    八木(昇)委員 時間が参りましたので、ちょっと三池炭鉱の問題を伺って参りたいと思いますが、御承知のように三井三池炭鉱の問題が、非常に重大な事態に入ってきておるわけであります。私も正確に数字は知りませんが、一万四千名の従業員がおるというのでありますから、一人当たりの能率が十数トンとかりに仮定しまして、相当莫大な石炭を掘り出してきた、そういった炭鉱であります。これが今どうしても労使激突の必然的な結果として、大へんな事態になっておるわけであります。組合も一部分裂したようであります。そうなりますと、ちょうど長崎県で、かつて松浦炭鉱やその他炭鉱の人員整理にからんでの紛争が長期化して、泥沼に入ったその姿のように、最後は実に惨烈むざんな状態に入っていくのであります。そうなりますというと、一体三池炭鉱それ自体が存立し得るかどうかというような重大事態にまで、これは入っていくおそれなきにしもあらず、こういうふうに私ども見ておるわけであります。そこで通産当局としても、今日のこのような三池炭鉱の事態に対して、何らかのお考えがあるのではないか、この際大臣のお考えを承っておきたいと思います。それは現在でも大牟田市内の関連産業に三井染料であるとか、あるいは大牟田にある港その他の大きな火力発電所であるとか、そういう大牟田市内の関連産業用の石炭だけでも、一日に四千五百トンを必要とする。今日までは国鉄の貨車送りでもって持ってくる。あるいは船積みでもって持ってくるということで、ほかの地域から何とか大牟田へ送り込んできたのでございますけれども、それもいよいよ枯渇してきておる。私も電力関係関係がありますので、現地の大きな火力発電所なんかの状態を聞いてみますと、火力発電所においてすでに貯炭が七日分くらいしか残っておらない、やはりこういう状態になっておる。こういった事態に対して通産当局としては、いかなるお考えをお持ちであるか、これは大臣の御見解をちょっと伺いたい。
  59. 池田勇人

    池田国務大臣 三井炭鉱の三池鉱業所の問題は、私もいろいろ聞き及んでおります。ロック・アウトという最悪の事態にいきましてから、相当時間もたっておりますが、円満に解決することを通産大臣としては心から望んでおる次第でございます。労働大臣もかなり苦心しておられるようでございますが、通産省といたしまして、直接に労働問題に関係することは、私は避けたいと思っております。ただ争議の結果、大牟田市における石炭需要家が非常にお困りのようなことも聞き及んでおります。しかし産業がこのためにどうこういうことになっては困るので、石炭の手配は事務当局の方に一応命じておるのでございますので、事務当局から答えさせます。
  60. 八木昇

    八木(昇)委員 これは局長に伺いますが、こういうような状態でいった場合に、これは三池炭鉱が今後相当長期かかって労使の紛争がかりに円満に解決をしたとしても、これは三池という山の今後の再建については、相当の困難性があるのだろう、こう思いますが、それによってやはり合理化のテンポは著しくおくれ、しかも日本の代表的な山の一つでありまするだけに及ぼす影響は相当甚大ではないか、こういうふうに思うのですが、そこいら辺のお考えをちょっと承っておきたい。
  61. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 これはおっしゃる通りでございまして、たとえば三井につきましては、ほかの会社に出ております開発銀行融資ということも、大体いつまで今のようながたがたが続くのか、それからどうなるのかということについて、金融機関としての心配といったようなことからも、ちょっと融資がストップしておるといったような面で、これは日本最大の、また一番優秀な炭鉱でございまするから、われわれといたしましては、できるだけ早く争議が解決して、そうして正常な出炭態勢に戻り、そうして将来の炭界の横綱として今後——今、年間二百五十万トンくらいの出炭の規模になっておりますが、やり方によっては四百万、五百万出るのはわけはないのじゃないかと思われる炭鉱でございますから、できるだけ早く争議が解決して、正常に戻ることを期待いたしておりますが、先ほど大臣お話にございましたように、われわれ自体がその中へ入るという筋合いはないと思っております。たとえば先ほどの港発電所といったようなものにつきましては、九州電力の中でできるだけやりくりして、炭をとにかく確保するということ、あるいは九電自体で非常にむずかしいということになれば、それ以外の電力会社等も炭をある程度回すといったようなことを、これはお互いに電気がとめられるということになりますと、非常に一般市民等も迷惑をこうむるわけでありますので、そういう不祥事のないようにということにつきましては、石炭の確保につきましてわれわれとしてもできるだけの措置をとっていきたい、こう思っておりますが、労使間の紛争そのものにつきましては、われわれとしては介入すべきでないと思っております。
  62. 八木昇

    八木(昇)委員 労使間の紛争そのものに通産当局が入るということは、私ももちろんそういった点を要望しておるわけではないのでありますけれども、もし政府当局がかりに入るという場合があっても、それは主たるところは当然労働省であろうと思います。ただ通産当局として、こういった事態になったことについて相当の責任はあると私は思う。それはなぜかというと、最近数カ年間の石炭行政というものは、私をして言わしむれば全くなっておらぬのであります。あっちへ突き当たり、こっちへ突き当たり、全く首尾一貫しておらない。そこで当初の合理化の基本計画というものが立てられて、最初の合理化法が出され、それが途中で、神武以来の景気という一時の景気にあおられて、跡形もなくその精神がぬぐわれてしまった。そうして逆に石炭鉱業界が、不況に入ろうとする時期、昭和三十三年から、通産行政としては石炭増産態勢であるかのごとき方向をとった、こういうようなことであります。従って人員の面からいきましても、昭和三十年度から昭和三十四年度までをずっと見ますと、石炭労働者の数は逆に幾らかずつふえておる。そうしてがたんと不況が来て、石炭が行き詰まったというわけで、今度は一挙に人員整理をやる。そうすると、雇い入れられたかと思うと首を切られるというようなことで、やはり石炭行政の非常な不十分さと経営者の見通しの誤り、いろんなやり方の誤り、これらのしわ寄せを全部労働者がかぶらなければならない。そうして今度の大量首切り、こういうようなことでは、労働者の方はたまったものじゃない、こう思う。そういう点からいきますと、今度の問題についてもやはり通産当局としての責任も相当ある。そういう意味合いからも、いろんな面におきましてこの事態に十分関心を持っていただいて、当面は拱手傍観、ただ早く労使問題が解決することを願っておるというような立場でなくて、もっと責任ある通産当局としてのあり方を、今後続けてもらいたいということをお願いするわけであります。  最後に一つ。実は新昭和石炭の問題について若干聞きたいと思っておったのでありますが、ただ一点だけ聞きまして質問を終わりたいと思います。今、新昭和石炭会社というのが、すでに設立をされたわけであります。これにはやはり今後いろいろと問題が出てくるのではないかと私は思います。昔のものと違いまして、今度の新しい新昭和石炭会社というのは、性格はずいぶんと変わってきておるわけでありますが、しかしその扱っておりますのが、大手十八社の貯炭のみを対象として、大手十八社がやっておる。ところが実際にはこういった石炭鉱業界の不安定によって、ゆり上げゆり下げられされて、いつも苦しい目を見ておるのは主として中小炭鉱に多い、こういうことを考えますと、この点いろいろ問題があるのじゃないかというふうに考えます。その点のみならず、今後この会社が一体どういうふうに進んでいくかということにつきましても、いろいろの問題点が出てくると思います。通産当局としては、この会社についてどういうお考えを持っておられるか伺いたい。
  63. 樋詰誠明

    樋詰政府委員 今の新昭和は御承知のように、今回の貯炭による圧迫を避けるために、大手十八社が百万トン程度凍結しようということで作ったわけでございますが、各社それぞれ大いに努力して、できるだけ自分で持てる限りは持つということにいたしましたために、最高二十八万トン、現在は二十六万トン程度の貯炭だと思いますが、先ほど大臣からお話がございましたように、だんだん正常貯炭に近づきつつあるという格好で、一応設立の一番の目的というものは、ほぼ達せられたというような格好になっております。今の大手だけはこういう機関を作って、中小の方はさっぱりこういう買い上げ機関がないのは不備じゃないかというお話でございますが、実は中小の方に対しましても、通産大臣から生産制限のために、一つお互いに協力するということをやったらどうだということで、勧告したわけでありますが、御承知のように六百からありまして、いろいろ条件が違っておるということのために、どうしても足並みがそろわず、結局今回の不況を克服するための生産制限を、大手ははっきり独禁法に基づく生産制限の申し合わせという格好で出て参った次第でありますが、中小の方はできるだけ政府の意図を尊重して、あまり掘らないように各人それぞれ努力しましょうということで、きたわけであります。そういったような、生産関係においても十分な協力態勢というところまで、まだいっておらないというときに、掘った炭は買ってやるということをやりますと、これだけ苦しいときにも、おれのところだけ掘ってもいいだろうというような気分の方もおられますので、いたずらに増産を助長して貯炭を過剰にするだけであるといったような点もございます。われわれ今回の不況は、どうにか正常貯炭に戻りつつあるということで、峠を越したと思いますが、今後とも中小炭鉱に対しましては共同化といったようなことで、お互い業界全体のために、日本の国民経済をささえるエネルギー基盤の確立のためにということで、おれがおれがという気持じゃなしに、もっと共同的な歩調がとれるようにということにつきまして、できるだけ行政指導を続けるということでやっていきたいと考えます。
  64. 八木昇

    八木(昇)委員 これで終わりますが、いわゆる純然たる貯炭会社というふうなものだと思いますけれども、これはやはり今度のような深刻な石炭不況というようなものが出てきた場合に、業界の人も困るでしょうが、それによってやはり労働者は、ほんとうに飯わんをたたき落とされるわけですから、そういう深刻な事態のことを考えますというと、純然たる民間の大手十八社あたりが、みずからやる民間会社の扱う仕事というようなことでよいのかどうか、もっとやはり政治をやっていく者の立場からすれば、そこに政府自体が乗り出して、もう少し積極的なこれらの対策を打つべき必要があるのではないか、こういう点をやはり私ども考えますので伺ったわけであります。今後それらは十分御研究を願いたいということを申し上げて、一応これで終わります。
  65. 中村幸八

    中村委員長 本日は、この程度にとどめ、次会は来たる二十二日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後零時三十九分散会