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樋詰政府委員 石炭の
特別貸付金の
効果でございますが、この
貸付金をわれわれが
国会に
予算として御
審議をお願いし、また
法案をここでお願いしております一番大きなねらいは、今までも
開銀の
資金あるいは
中小企業金融公庫の
資金といったような
財政資金が、
石炭関係にかなり毎年出ておるわけでございますが、しかし何と申しましても、やはり
金融機関という立場から、必要な場合に貸し付けるということになりますと、どうしても
金融機関としての性格というものを免れがたいわけであります。たまたま昨年の十二月に、
石炭鉱業審議会から、
昭和三十八年には
重油と競争するために売り値を千二百円下げるべきであるという答申をいただきました。そのときに
業界で考えておりましたのは、その前に、三十八年には八百円
値段を下げるということを言っておったわけでありまして、そのためには大体今後五年間に千二百億円の金を
大手十八社に投入する、それによって大体八百円
程度値下げができる格好に持っていきたいということで、
計画を組んだわけでございます。しかし、
エネルギーの
流体化といったような現象にかんがみまして、五年後の三十八年に八百円ではあまりにも少な過ぎるということから、どうしても千二百円下げなければならないというふうに考えられます。そこで、そのためには片一方におきまして非
能率炭鉱を整理する、いわゆる
スクラップ・
ダウンということをやると同時に、高
能率炭鉱を造成する必要があるわけでありまして、そういうことによって
石炭界全体の
体質改善、平均した
コストの低減ということをはかることによって、
市場価格千二百円の
引き下げを実現する以外にはないのではないか、こういうふうに考えられたわけであります。そこでこの
特別貸付金は、これは俗な
言葉で申しますと、いろいろ
石炭界の将来について、
事業自体がはっきりした
見通しをどうも持ち得ない、また
金融機関の方でもはっきりした
見通しを持ち得ないということのために、とかく
投資がちゅうちょされがちであると思われます。将来の運命を画するような大
規模な
本格的投資というものにはっきり踏み切らせるため、国家の
政策意思というものをはっきりここで打ち出しまして、その
政策意思に、
財政資金を裏づけてやるということによって、ほかの
開発銀行融資なり、あるいは
一般市中銀行からの
融資のさそい水にしよう、そういうねらいでございます。従いまして、われわれといたしましては、
業界の当初考えておりました五年間に千二百億というもののほかに、さらに二百億
程度投資をここで促進する、こういうことをやることによりまして、
石炭界全体の
体質改善を促進していきたいと思っているわけでございまして、これを具体的に申し上げますと、大体昨年の
石炭の
京浜市場における
シフ価格は、
カロリー当たり九十七銭でございます。そのときに、千二百円下げるということになりますと、大体七十八銭の
シフにしなければならないということでございます。それを
山元の方に引き直しますと、大体平均して五十六銭で
山元で売られる
石炭であれば、大体
京浜で七十八銭で売られるということになるわけでございます。それを
一つ一つの山につきまして今までありましたデータからいろいろと計算して参りますと、大体
大手関係で二千百万トン
程度、
中小関係で、
中小関係というものは非常に
コストの安い山とかいろいろあるわけでありますが、約千万トンあるわけであります。約三千百万トン
程度は一応五十六銭ということになり得るのではないか、こう考えられたわけであります。御
承知のように、
石炭というものは開鉱して間もない五年間くらい、あるいは終掘に近い五年間くらいというものは、大体
赤字でございます。
最盛期の五、六年目からその後十五年ないし二十年という
青年時代が
黒字になるということでございまして、たとえばドイツの
ルール地帯の炭田の例をとりましても、
黒字の
炭鉱が六五%、
赤字の
炭鉱が三五%、結局
黒字の
炭鉱が六五%でまだ若い山を育成し、あるいは終掘に近い山を円満に終掘させるということをやりながらいくわけでございます。ほぼ六五%
程度の
黒字山というもので
ルールの
石炭をやっているわけでございますが、それと同じように、
一つ一つの山を計算いたしまして、先ほどの
大手二千百万、
中小が千万、両方合わせて三千百万トンということになるわけでありますが、そのほかに、御
承知のように
大手関係は
一つの会社が五
鉱山、十
鉱山というふうに持っております。そういう
企業全体として持ちこたえる力というものもございますので、大体約七割で還元するという
言葉はおかしゅうございますが、三千百万トンの
黒字炭鉱があれば、この三千百万トンの
黒字でささえられる全体の
石炭の
規模は四千五百万トン
程度ある、こういうふうに考えられるわけであります。ところが四千五百万トンでは、
日本の将来の
エネルギーをまかなう一番大きな
国民資源としていかにも不十分でございます。そこで、今回ここでお願いしております
法律の
改正により、新しい
予算化によって
特別貸付金をやっていただきますと、その
効果といたしまして、三十九年度以降にでき上がる
石炭の山がだいぶ繰り上げられるわけであります。それと同時に、非常に
能率の悪い山というものが
スクラップ・
ダウンされますので、その結果、われわれの計算によりますと、先ほどの五十六銭で上がると考えられる山が三千七百五十万トン
程度にはなり得る、こういうふうに考えるわけであります。それでこの三千七百五十万トン、これは先ほどのようにこれで一体幾らの全体の
石炭規模がまかなえるかというふうに逆算して参りますと、ほぼ五千四百万トン
程度が、千二百円下げて石油と競争可能と考えられるものが供給される山の
規模、そういうふうになろうかと考えられるわけでございます。今回の
措置を今後も——そのときの状況々々によって、もちろん金額その他は変わってくると思いますが、われわれの予定
通り続けるということになりますれば、現在
業界あたりで考えている、自分だけの
努力でやるというのに比べまして、今後五年間に
石炭の
規模が九百万トン
程度ふやすことができるのではないかと考えております。それからなお、
対象になります
縦坑につきましては、これは実はこれからさらに厳密に計算しなければならないので、必ずしもはっきりしたことはわかりませんが、現在あります山並びに今後手をつける山というものを全部入れましても、せいぜい二十五、六、三十以下であろうかというふうに考えております。