○古藤
参考人 経団連の方に、
参考人として出てこいという
お話がございましたのは、おそらく経団連としての
意見をお聞きになりたいということだろうと思いますが、実はこの問題につきましては、ごく最近に特別
委員会を作りまして検討を始めておりまして、ただいま検討の過程でございますので、経団連の
意見を公式に申し上げるという時期にはまだきていないわけでございます。しかしながら若干検討は進めておりますので、その過程に出て参りました皆さん方の
意見というふうなものをまとめまして、二、三申し上げてみたい、こういうふうに存じます。
大体
自由化の問題につきましては、対外的な要請が非常に強いから、
日本の
産業界もやむなくそういうふうな気持になったんじゃないかというような御
議論もございますが、われわれの方の
考えからいきますと決してそうじゃなくて、やはりIMF八条というようなことで、どうしても自用化しなければならぬというような、最後通牒を突きつけられた
段階ではございませんので、われわれとしては十分に自主的に判断して、この問題に対処する余裕を持っておるわけでございます。
産業界としましては、先ほ
ども稲葉さんがお触れになりましたように、この数年の間に非常な成長率を示しておりますし、しかもなお物価は安定してインフレ的な傾向は示していない、
世界一の成長率をほとんど毎年繰り返しておる。そして投資は非常に拡大して、
産業の近代化というものが相当強く推進されてきた、こういう認識に立ちますと、特にヨーロッパの共同
市場がああいうふうな、最初の予定から見ますと、三年も五年も早く完成の時期が近づいてくるというふうな状況でもありますし、
世界的にも
自由化体制というものが非常に強く推進されておりますので、やはりこの
機会に、
日本の
産業界としても、この問題と正面から取り組んで、そして推進していかなければ、次の飛躍、
発展はできないのだという
考えに立っているわけでございます。従ってこの
自由化の問題についてはあくまでも
日本の
産業界が自主的に
考えて対抗していけばいいので、あらかじめ何かのスケジュールを強制されて
考えるという必要は少しもないのだ、こういう
考え方で進んでおるわけでございます。この問題について一番問題になりますのは、やはり
日本の
産業の体質といいますか、それは非常に過当競争の態勢を持っておる。これは潜在的な
中小企業が非常に多いというふうなこととか、人口の問題とかいろいろございますが、要するに
産業の方の過当競争態勢というものが、現在まで温存されてきておるわけでございます。そこで、この問題と取り組む上において一番大きな問題は、やはり
産業界自身の自主調整という機能を十分に働かせるということが特に必要ではないか。この問題がもし十分にやれないならば、
自由化を推進していっても、非常にそこに困難な問題にぶつかりやしないかという
考え方になっております。
自由化の問題についての、
自由化していきますテンポの問題でございますが、概一括的に
考えますと、やはり工業原料の
自由化というのをまず最初に
考えていく。それと同時、にだんだん製品の方の
自由化に及ぼしていくというふうな形になっているわけでございます。そこで、大体
産業界の
影響というような問題について、今いろいろな方面から実情を伺っておりますが、大体今まででほぼ検討が終わっておるのは繊維
産業だけでございまして、ほかの
産業はむしろこれから問題に取り組んでいく、または今真剣にその問題に取り組んでいるという時期でございまして、実際問題として、この
自由化がどういうふうな
影響を及ぼすかということについては、ほんとうの検討がまだ十分尽くされていないというのが現状だろうと思うのです。新聞や雑誌にいろいろなことが書いてございますが、これはむしろ実体認識というよりは、少し先に走ったような
議論が非常に多いのではないか。この点につきましては、十分にこの
自由化の与える
影響、功罰というふうなものを各業種別に検討いたしまして、プラス・マイナスを十分に
考えた上で、総合的に判断して順位をきめていくということが、特に必要じゃないかというふうに
考えております。大きく見ますと、やはり一番困難な問題は、資源
産業とか
農業の
関係の問題が一番むずかしい問題ではないか。次にむずかしいのは重化学工業、機械工業というふうなところがむずかしい問題一になりまして、今一番準備が進でおります繊維
産業あたりが、比較的対応しやすい態勢にある、こういうのが大体の今の状況でございます。
これについての対策の問題に入りますと、結局一番われわれが心配いたしますのは、
自由化の政策を推進するについて、総合的な政策の用意があるかどうかという問題でございます。これは新しい問題でございますから、いろいろ
政府の内部においても御
意見があることは当然だと思いますが、一例をあげますと、大蔵省と通産省が、去年ずっと一年間かかって検討されました
為替貿易の専門
委員会というものがございますが、これはある
程度結論が出ているのでございますが、その結論の最後の
段階で、やはり両省の
意見が一致しないというふうな点もございまして、なかなか一本の
考え方が出てこない、こういう問題もございますし、また今度
所得倍増計画というような問題が一方では論議されておる。これは当然
国民所得を倍増するということはけっこうなことでございますが、同時にまた所得の不均衡を是正するのだということもうたわれておる。しかしこれと今これから進めようという
自由化政策とでは、一体どういう
関係になるのかという問題になりますと、必ずしもはっきりした解明がなされていない、そういうふうな状況でございまして、何かどうも
自由化は必要である、そしてプログラムは提起されている、しかしそれに伴う総合的な政策というものは必ずしもはっきりした形で浮かんできていない、この辺に
一つ問題がありゃしないかというような感じがしておるわけでございます。
自由化を推進していく場合には、もちろん財政
金融政策というものが基本になりまして、その基本の上に進めていかなければならぬわけでございますが、物と金との面の
自由化という問題が、平灰を合わして、タイミングを合わしてやっていかないということになりますと、非常にその間に支障が起こってくるということも
考えなければならぬ。それは今
経済企画庁が中心になって総合的にやられる態勢にはなっておりますが、この政策の総合化という問題については、特に御
注意を願いたいというふうに
経済界の者は
考えておるわけでございます。
それから、この政策を進めていきます場合の重要な問題点を簡単に指摘いたしますと、やはりさっき申しましたような過当競争態勢のもとにありますので、どうしても
組織化対策ということが必要じゃないか。これは今の国会に提出されております
輸出入取引法というようなものもその
一つの対策でございますが、取引法の中には
輸出振興カルテルというものが抜けております。これはいろいろの御
意見がございますけれ
ども、われわれの
考えからいたしますと、
自由化する以上は、独禁法もこんな国際的に見てもきびしい独禁法は改正することは当然でありますし、また
輸出入取引法も改正せねばいけないのだ。というのは
自由化する以上は、自由に競争すると同時に、協調すべき点は協調し得るという態勢が必要でございまして、これは少しも
自由化とは矛盾しないのだ。特に御
注意を願いたい問題は、
自由化した場合に海外の競争にさらされるという開放態勢にわれわれはなる。その場合に
世界の各国の国際競争の力にぶつかるわけでございますから、幾ら
日本の内部の
産業がカルテルを作ろうが、何しようが、そんなものは、それがもし非生産的であれば、直ちに食われてしまうという問題が背後にあるわけでございます。これは非常に厳重な
為替管理をやっておるそのワクの中で、独禁法を改正するということは、これはあるいは問題があるかもしれません。しかし全面的に開放態勢に向かおうというのでありますから、高いものはどんどん国際的に
輸入するというふうな傾向も出てくるのです。それを何も心配する必要はないのじゃないか。むしろ三百人や五百人の公取の職員が監視しておりますより、国際マーケットが監視しておるのですから、非常に
日本のある
産業のものが高いということになれば、すくその
輸入の需要が起ってくるということで、大きな調整の手が打たれるということを確信していいじゃないか、そういうふうに
考えますと、
日本の独禁法というものは、アメリカの占領下に作られた法律でございますから、おそらくアメリカ以外の各国の独禁法に比べたら一番きびしいのじゃないか。そういう独禁法のもとにおいて、しかも過当競争の態勢の上にそういう法律を置いたまま、この
自由化に進むということは、やはり非常に大きな問題を残しておるじゃないかということを
考えるわけでございます。独禁法の問題は、今この国会に出ておりませんから、あまりやかましく申しませんけれ
ども、特に
輸出入取引法の面においては、少くともこの
輸出の面における過当競争、
輸入の面における過当競争、これを防止することは、むしろ原材料を安く買い、そうして
日本で作った製品を適正な価格で売るということでございますから、これはほかの
産業界にも悪
影響を与えるような問題ではないと思います。しかもそれをやるためには、単に今までの
輸出入取引法のように買い得る規模だけでやろうといったって、これは無理でございまして、それにつながるところの国内
市場というものもあり、国内生産というものもあるわけでございますから、やはり
輸出のために必要な協定であるとか、あるいは共同行為というものが、
輸出に直結していなければできないというふうな、非常にぎくしゃくした法律でなくて、やはりそれにつながるところの
輸出のための生産、国内取引というふうな一連の共同行為ができるということにしまして、そうして原料を買いあさって、非常に高く買ったり、あるいはやっと作った国内の製品を過当競争で安く売る、そういうばかなことのないような態勢を作る。これは
自由化をやる場合に根本的に必要な問題じゃないか、こういうふうに
考えておるわけでございます。
それから、第二の問題は、先ほ
どもいろいろ御
意見がございましたが、体質
改善の問題でございまして、これは企業の自己
資本の充実という問題に焦点が置かれるだろうと思うのでありますが、この点につきましては、たとえば大蔵省の主税局あたりは、どちらかといいますと、ここまで
経済が回復してきた以上は、税の理論を通しまして、いわゆる臨時
措置というふうなものは、全部この際修正すべきた、きれいさっぱり税制を
合理化すべきだという
考え方が一方にはございます。しかし問題はそういうところにはございませんで、この
自由化を進めていく場合には、やはりそれ相当の
資本の充実、特に自己
資本の充実を短期にやらなければならぬ問題があるわけでございますから、そういう観点から、やはり税制につきましても、
自由化を推進するに必要な特別
措置というものも
考えるというふうに、政策的には総合性を持たしていただきたい。たとえば、この価格
変動準備金というような問題がありますが、この制度あたりももう要らないのじゃないかという
議論もありますが、これは
貿易が
自由化して参りますと、当然国際商品の
変動ということは、絶えずあるわけですから、それの原料の買付の面、それに伴って、それが非常に不当な値下がりをするというふうな問題もございますので、やはり
自由化に関連して真剣に
考えるべきは税制対策じゃないか。それからまた、
資本の充実に対する特別
措置というふうなことも、今税制
調査会で御
議論になっていると思いますが、これもやはり推進していただきたい。
第三番目には、外資の問題でございますが、これはこの前、秋ですか、ビジネス・インターナショナルが参りましたときに、
日本の財界といろいろ懇談いたしましたが、
外国の
資本家には、
日本ほど投資するに適当な
条件のところはないのだというような気持がございまして、合弁
事業に対する持ち株比率を、
日本は五割で規制しているじゃないか、あるいは三割以上は認めないではないかというようなことを盛んに言っております。しかし、この持ち株比率の問題は、個々の企業がそれぞれ相手方の企業といろいろ検討して、そうして
経営の自主性という観点から見て大丈夫だというところで、ケース・バイ・ケースで話をきめればいい問題でございますから、何も別に法律で規制する必要はないのじゃないか。ただ問題は、
中小企業やなにかの場合に、そういうふうな相手方との公正な商談といいますか、公正な交渉ができるかどうかという問題が若干ございますので、それについては特別な相談機関のようなものでも設けて、適正な指導をしていくというふうにすれば、必ずしも心配はないのじゃないか。
市場を通じての株式の問題は、先ほど北裏さんがお触れになりましたので省略いたします。
次の問題は関税政策の問題でございます。これも
自由化をやる以上は、あらためて取り上げなければならぬ非常に大きな問題点でございますが、残念ながら占領下にガットへ加入するときに関税を一応きめてしまった
関係がございますので、新しく関税を改定するという場合には、各国との関税交渉という問題が起こってくるのじゃないか。そうしますと、こちらが関税をふやす場合には、ほかの品目で譲許しなければならぬというような問題も伴ってきておりますので、関税政策を自由に駆使できるというふうに
考えて、その
考え方のもとに
自由化を促進したのでは少し行き過ぎになるのじゃないか。従って、これは製品の
輸入の問題とも関連するわけでございますが、製品
輸入の
自由化を
考える場合には、一体どこまで適正な関税がかけられるかという問題をにらみ合わして、十分検討した上で製品
輸入の
自由化の時期、方法等を
考えるべきじゃないかというふうに感じておるわけでございます
最後に、
輸出振興の問題でございますが、
自由化をした場合に、
工業国に対する
輸出は、大体有利になるというふうに
考えていいと思うのでございます。たとえば、アメリカに対してこちらは自由にいたしますから、同時に、アメリカの
日本からの
輸出についてのいろいろな制限に対しては十分に抗議もできますし、また、三十五条援用国に対しては、こちらの
自由化体制でもって向こうもそれを撤廃しろということも要求するという強い
立場があるわけでありますから、
工業国に対する
貿易は概して順調に進むではないかというふうに
考えられますが、
後進国に対する
貿易については特別な
考え方をしなければいけないではないか。その問題につきましては、第一は、やはり
経済協力という問題をもっと大きく取り上げまして、
自由化と
経済協力という問題は結びつけて
考えなければいかぬ問題ではないか。特に五十億の基金ができましたが、五十億くらいでは問題になりませんので、やはり東南アジアその他の
後進国の開発について
日本が協力するということをもっと具体的に、そしてもっと弾力的にやり得るようにこの機構をますます生かしていくということが必要ではないか。これをやりませんと、やはり東南アジアとの
貿易というふうな問題が円滑にいかないで、むしろ
日本は買うものがなくて売るものばかりだということで、向こうが買ってくれないという問題に追い込まれる。そういう問題かございますから、
経済協力という問題をぜひ
一つ推進していただきたい。同時に、多角的な取引によって決済するというのが
自由化の大勢でございますが、やはり
後進国に対しては、国によっては
輸出入組合というふうなものを作って調整勘定的なやり方をやるとか、あるいはまた円クレジットというような形でいくとかいろいろな形が
考えられますが、こういうような
工業国に対するとは、別の
貿易の政策を
考えて推進していかなければならないではないか、こんな
考え方を持っておるわけでございます。
次に、これはちょっと余談になりますが、
農業の
関係とか
中小企業の
関係が非常に問題になってくるわけでございますが、
中小企業につきましては、やはり
産業界としましては、これを系列化するとかあるいは専門化するとかいう形において、
中小企業の近代化を促進するという政策が、
自由化とともに行なわれなければならないというふうに
考えております。もし
中小企業全般を振興するというふうなばく然とした振興策を続けておったのでは、この目的は達成できないのではないか。ある種の
産業ではむしろ大企業と
中小企業の協力
関係を新しく推進するということも必要でしょうし、また、ある
中小企業においては、独立の専門生産というふうに生産分野をはっきりして担当し、それを大いに推進するという態勢をとるように、
中小企業政策については、そういう
自由化に伴ったはっきりした線を貫く必要があるではないかというようなことも
考えているわけでございます。
最後に、
農業との
関係でございます。
農業自身は
自由化に対してどこの国でもいろいろな制限を置いているのは当然でございますが、
日本においても簡単に
自由化に踏み切れる問題ではないと思いますが、ただ、
農業政策でどうしても補助金を出さなければならぬという問題については、
農業に補助金を出すというふうな体制をはっきりとる必要があるではないか。
農業政策とからんで
産業政策をやるというふうな、
産業政策と
農業政策の混乱したような状態は、やはり
自由化に踏み切る以上は、はっきりその点一線を画する必要があるではないか。必要な補助金はもちろん出すべきでありましょうし、また、これはあるいは国際
会議において、やはり
農業の補助金をだんだん逓減するようなことが、ガットの
委員会でも問題になっているそうでございますから、いつまでもこれが続くとは思いませんが、しかし、当分は
農業に対してそう
自由化を直接やらなければならぬという問題にはならないのではないかというふうに、われわれは感じておるわけでございます。
先ほ
ども申し上げましたように、まだ結論が出ておりません問題でございまして、
議論の過程のことだけを申し上げまして、どういうことが問題になっているかということだけをちょっと御紹介した
程度でございますが、これで終わります。