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1960-02-23 第34回国会 衆議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年二月二十三日(火曜日)     午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 中村 幸八君    理事 大島 秀一君 理事 小川 平二君    理事 小平 久雄君 理事 長谷川四郎君    理事 南  好雄君 理事 松平 忠久君    理事 武藤 武雄君       岡本  茂君    鹿野 彦吉君       始関 伊平君    田中 榮一君       田中 龍夫君    細田 義安君       渡邊 本治君    勝澤 芳雄君       小林 正美君    東海林 稔君       和田 博雄君    北條 秀一君       山下 榮二君  出席政府委員         通商産業政務次         官       原田  憲君         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      小岩井康朔君         中小企業庁長官 小山 雄二君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 二月二十二日  零細企業対策強化に伴う商工会法制定促進に関  する請願外三件(中曽根康弘君紹介)(第六〇  九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 二月十九日  競輪廃止に関する陳情書 (第一一号)  ガス料金値上げ反対に関する陳情書  (第二三号)  同  (第二四号)  石油資源開発への国家投資及び第二次五箇年計  画樹立に関する陳情書  (第四五号)  同(第四六号)  同(第一二六号)  同(第一二七  号)  同(第一二八号)  火薬爆発事故完全防止に関する陳情書  (第四七号)  日朝直接貿易促進に関する陳情書  (第四八号)  競輪等公営競技関係法令廃止に関する陳情書  (第七八号)  諸物価値上げ反対に関する陳情書  (第九二号)  零細企業対策強化に伴う商工会法制定に関する  陳情書  (第一二九号)  同(  第一三〇号)  日本海都市対岸貿易促進に関する陳情書  (第一三二号)  鉱害対策強化に関する陳情書  (第一三三号)  電気料金値上げ反対に関する陳情書  (第一四一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  夕張における炭鉱爆発に関する件  派遣委員より報告聴取      ――――◇―――――
  2. 中村幸八

    中村委員長 これより会議を開きます。  まず、去る十五日より二日間夕張における炭鉱爆発実情調査のため委員を派遣いたしましたが、この際派遣委員より報告を聴取することにいたします。武藤武雄君。
  3. 武藤武雄

    武藤委員 団長が事故でまだ御出席ないようでありますから、かわって御報告いたします。  北海道炭礦汽船株式会社夕張鉱業所第二坑の爆発事故調査に関し、派遣委員代表して御報告申し上げます。  爆発事故発生した夕張鉱業所第二坑は、北海道夕張市にあり、札幌市より東北約六十キロ、石狩炭田の南端に位しております。  同二坑は、現在、わが国で最も必要とされている製鉄用炭を生産しており、炭質は、粘結性の高い良質の原料炭であります。  生産量は月産約六万トン、従業員数は約二千五百人であり、生産能率も高く坑内機械化も進み、切羽から坑口まで、全部ベルト・コンベア・システムをとっておる等、わが国代表的炭・鉱であります。  私ども始関田中及び私の三委員は、商工委員会の決定に基づき、社会労働委員会より派遣された委員とともに、二月十五日午前七時半日航一便に乗って現地に向かいました。午前十時半、千歳空港に到着し、直ちに事故現場である夕張鉱業所に直行し、通産局長労働基準局長鉱山保安監督部長を交えて事務所において、会社側責任者である副社長及び夕張鉱業所長等より、労組、職組委員長同席の上当時の事情災害程度救護作業及びその後の状況等について詳細な説明を聴取いたしました。  説明聴取後、私たち社会労働委員方々別行動をとり、事故現場調査するため坑内に入りました。主たる視察個所は、第二坑の縦坑の下周辺であります。この地区周辺災害発心地があるのではないかといわれている地域であります。現場各所崩落の跡があり、爆発による熱気も相当残っており、当時の大災害をまざまざと物語っておりました。坑内におること約二時間、各所視察しましたが、その間救出作業復旧作業に働いている多くの労働者と会いましたが、みな真剣に困難な作業に励んでおられ、非常に頼もしく思いました。私ども労働者方々に心から感謝の気持を込めて激励いたしました。  その間、社会労働委員は、もっぱら病院や遺族者家庭等を訪問し、衆議院の代表として、心より慰問と激励に回ってくれました。  翌十六日は、午前十時より札幌通産局長室において、関係官庁より災害発生原因及び状況災害程度災害処理状況等について詳細な説明を聴取し、種々質疑を重ねた後、午後一時半降りしきる雪の中を空港に向かい、帰京の遂につきました。  爆発事故発生は、二月一日午前一時五十分でありました。前日は公休日で三番方が入坑しているときでありました。普通ならば七百人ぐらいは入坑しているのですが、公休日のこととて六十二人の主として保安関係修理関係などの人たちが入坑しておりました。人命の損害は六十二人中三十四人が爆発によるあとガス、すなわち一酸化炭素の中毒によって死亡、三人は爆風により死亡されました。これらの死体は逐次収容されておりましたが、いまだ二人の方は行方不明であります。私ども調査の日現在におきましても、これら二人の方の死体はまだ収容されておりませんでした。生存者は二十三人でうち目下入院手当ての者十五人で、全部生命に別条はないようであります。  損害爆発とともに第二坑全域にわたっており、私ども視察した中央ベルト坑道及び縦坑坑底水平坑道付近は最も損害が大きく、随所に崩落坑内火災を起こしたため、会社側は、鉱山保安監督部長の指揮のもとに直ちに約三十班の救護隊を編成し、被災者救出に努める一方、破壊状況等調査に当たりました。その後火災ガス量関係で、たびたび坑内危険状態となったため、五回にわたって全員を坑外に退避させたほかは、連日約千五百名の人員をもって罹災者救出消火及び崩落個所の取りあげの作業に努めておりました。  私ども調査した当日、二月十五日現在においては、火災夫消火個所が三カ所あり、四区の火災個所坑口におけるガス観測状況から、なお燃焼加熱しているものと判断され、再爆発危険防止のため、引き続き注水消火作業を続けておりました。中央ベルト坑道の千トンビン頭部火災は、坑道コンクリート壁パイプを挿入し、ポンプで圧力水を注入して消火に努めておりましたが、なお完全に消火されていない模様であります。また縦坑坑底レべルの火災個所は、手前が崩落しておりますが、ビニール膜通気を遮断し、十四日よりドライアイスの放入により消火に努めておりました。火災のほか、坑内各所崩落しているため、四交代でその取りあげ作業を行なっており、取りあげには鉱務監督官が立会い、調査原因の究明に努めておりますが、今なお、きわめて危険な状況下で行なわれているため、復旧作業は難行をきわめ、復旧はおそらくあと数カ月を要するものと思われます。  爆発原因につきましては、爆発のひどかった区域崩落個所がまだ取りあげ作業中のため今なお不明であります。私ども原因について種々調査をいたしましたが、明らかでありません。しかし私ども関係者の意見を総合して判断した場合、次の数点に問題が残っておるのではないかと考えられます。すなわちその第一点は、事故発生の当日、公休日を利用して約三時間にわたって扇風機をとめて坑内ガス停滞測定を行なったため測定ガスが充分排除されず、どこかに多量にたまったものに引火したのではないかとの疑いであります。この調査は、保安鉱業所が自主的に行なったものでありますが、調査方法及び扇風機運転再開後の保安対策について十分に考慮すべきではないかと思います。第二点は、事故発生の地点が現在のところ、中央ベルト坑道付近ではないかといわれておりますが、この付近ガス発生及び停滞の危険がほとんどないので、鉱山保安法規上、特免区域として認められておるところでありますが、調査の結果、爆源がこの特免区域にあったとするならば、特免区域取り扱いについて検討する必要があると思います。第三点は、現在各炭鉱とも合理化対策を進めておりますが、最近の大炭鉱爆発事故の多いことにかんがみますときは、ややもすると合理化を急ぐあまり、保安対策が少しおろそかにされているのではないかと危惧する人達もおりますので、この点についても十分検討すべきではないかと思います。  以上が主たる問題点と思われるものであり、今後十分調査検討していただきたいと思います。  次に私ども調査団といたしましては、今後かかる災害を未然に防止するためには、次の諸点について特段の配慮を強く要望すべきであると思います。  すなわち第一点は、鉱山保安監督行政重要性にかんがみ、現地鉱山保安監督部拡充強化をはかるべきであり、これがため、機構人員予算等について、すみやかに善処することであります。  第二点は、鉱山保安重要性にかんがみ、保安施設保安機器の整備をはかるため、資金の確保等について金融及び税制上特別の措置を講ずるとともに、それらの改良のための研究促進について国の積極的な助成措置を講ずることであります。  第三点は、救護隊員犠牲にかんがみ、体力の認定、機具の取り扱い、及び訓練等について万全を期することであります。  第四点は、鉱山保安の認識を徹底させるため、鉱業権者及び炭鉱従業員に対し、積極的に保安教育の推進をはかること等であります。  最後に、これらの問題点を解決するため、必要があれば、関係法規の改正、保安行政機構の再検討及び国立研究機関拡充等を行なうとともに、政府鉱山保安対策強化を強く要望いたします。  これをもって調査報告を終わりますが、調査団としましては、一日も早く、いまだ坑底に行方不明となっている二名の救出が行なわれるとともに、たっとい犠牲者となられた方々の冥福を心から祈るものであります。
  4. 中村幸八

    中村委員長 以上で報告は終わりました。  本問題に関しましては、武藤武雄君より発言を求められておりますので、これを許します。武藤武雄君。
  5. 武藤武雄

    武藤委員 本日は通産大臣が御出席がないのでありますが、次官がおいでになっておりますし、保安責任者等おられますから、政府施策等の問題については、あと一つ大臣と御連絡を願って答弁を願うことにいたしまして、質問をいたしたいと思うのであります。  私どもは今回のこの北海道夕張ガス爆発を実際に視察をいたしますとともに、過去のガス爆発災害と比較いたしまして、何とかしてガス爆発中心とする鉱山保安の今後の行政上の問題について、この辺で根本的に国としての再検討をする必要があるのではなかろうか、こういうふうに考えるのであります。特にガス爆発を見ておりますと、昭和三十四年に起きました各種の主要なるガス爆発の統計が、鉱山保安局石炭課から出ておりますが、これを見ましても、昭和三十四年に爆発の事件として統計されておりますのは、実に十八回に及んでおるのであります。これはまことにゆゆしきことでございまして、私も本会議でも触れましたように、ガス爆発だけは、働いておる労働者の本人の注意だけでは、どうにもならない問題であるのでありまして、しかもガスは御承知のように風には全く無力でありますから、施設上の万全を期し、それからそれらの予防措置等について万全の配慮がなされておるならば、不可抗力というようなことではなしに防止できるのではないか、こういうふうに、私も経験を通じまして痛感をいたしておるのであります。  そこで私は、今回の爆発事故に関連をいたしまして、まず第一は、行政監督の面で一つ質問をいたしてみたいのであります。たとえばこの報告書にもありますように、原因はもちろんこれから調査をしてみなければはっきりとわかりませんが、この爆発の起きました前の日に、三時間ばかり扇風機をとめまして坑内ガス発生状況を一応試験したわけでありますけれども、その検査終了後のいわゆるガス検定等に対しまして、鉱山保安監督局としてどのような行政指導をしておられますか、これは非常に重要な問題でありますから、原因とは別個にお考えでけっこうでございますので、その指導等についての御所見をお伺いしたいのであります。
  6. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 ただいまの御質問は、炭坑扇風機をとめましてガス状況を見る、それらの点について監督官庁でどういう指導をしておるかというようにお聞きしておるのでありますが、この扇風機をとめて坑内ガス状況を調べるということは、実は北海道——これは特免の問題になるのでありますが、夏の間は安全だと思っておった特免区域に逆流してくるというような現象が、割合に最近でありますけれども北海道ではっきりその事実がわかったわけであります。炭坑は御承知のようにときどき扇風機がとまります。停電がございますのでこれはいたし方ございませんが、停電がありますと扇風機が全部とまってしまいますので、坑内通風状態はすっかり変わるわけでございます。そこで、特にガス、炭塵の多い炭坑ですと、停電のあった場合の坑内ガス状況が、どういうふうに変わっていくかという点は、どうしても前もって把握しておくことが必要なのであります。北海道におきましては、特に夏の間は通気関係で逆流という現象が起こりますので、夏季については監督部で、特に必要のある炭坑につきましては扇風機をわざわざとめましてそうして坑内ガス移動状況がどういうふうになるかという点を指導しておるわけであります。しかし、夕張の場合はたまたま冬季でありまして、もちろん冬季にも、坑口の位置によりましては逆流する山があるわけでありますので、夕張は特に自主的に、炭坑みずからがガスカウンター実験をいたしたわけでありまして、この点につきましては、非常に好ましい点ではありますけれども、私の方で指導したわけではないわけであります。この夕張の場合には特に冬季間、やはり坑内ガス状況を調べたいという気ももちろんあったのだろうと思いますが、ちょうど爆発の当日、全部扇風機をとめまして、坑内ガス移動状況をすっかり調べたわけであります。これは私の方で特に指導したわけではございませんけれども監督部並びに私の方といたしましても、決して悪いことではない、むしろ非常にけっこうなことであるというふうに考えております。たまたまそれが爆発原因とどういう関係にあったかという点については詳細にまだ調べが完了しておりません。けれどもガスカウンターをやりまして数時間たっておりますので、当然従来のやり方といたしましては、徐々にガスの改善されている状態をはっきり認めまして、そうして普通の作業状態に入るので、その間に遺漏があったということにつきましては、今のところはもちろん全然考えられないというような状態でございます。しかし一応目下詳細に調べておりますので、その辺につきましても詳しい事情もわかりまして手落ちがありますれば、今後大いに改善をやって参らなければならないと考えております。
  7. 武藤武雄

    武藤委員 そういう測定をすることは当然でありまして、これはしなければならぬことなのでありますが、その測定を終わったあとに、ガス排除が完全に行なわれておるかどうかという監督が、やはり一番大事なことだろうと思います。従いまして、扇風機を止めで、実際のガス測定をやる場合に、従来のあり方として現地鉱山保安監督部連絡の義が一体会社側にあるのかどうか。それからガスのそういう検査をやったあと、完全にガス排除されることを確認するまで、非常に重要なことでありますから、現地監督部鉱監督官責任を持って、そのガス排除の実際を確かめるための努力を一体やっておられるかどうか、この点をお聞きいたしたい。
  8. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 特免の申請がありましたときには、もちろんガス移動状態を調べますので、これは法規上からも必ず監督官現地調査をやって立ち会ってやるということになっております。しかし夕張の場合は私の方に連絡を受けておりませんので、監督部会社側からガスカウンター実験をやるということについて成規連絡がありましたかどうかについては、まだ不明でありますが、おそらく連絡はしておるんじゃないかとは思います。しかしこれは十分炭鉱側で自信を持ってやっておると思いますので、これは成規特免調査でもございませんし、あるいは単独にやったんではないかというふうにも考えております。しかし今のガス状態につきましては、もちろん扇風機を止めますと坑内ガスが充満いたしますから、これは主せんを動かしまして順次係員がガス検定をやって、大丈夫だという個所に限って順々にその部分々々のスイッチを入れていくのでありまして、もちろんその点は保安管理者立ち会いで、保安責任者と十分な連絡をとってやるシステムになっておりますし、またそれをやらなければとうていできないような大きい実験でありますの、そういう点の粗漏はないのじゃないかと私は考えております。
  9. 武藤武雄

    武藤委員 これはとにかく全鉱区の扇風機を止めるわけでありますから——これは人手の問題にあとから触れますけれども、とてもそのたびごとにというわけにはいかぬということであれば、また問題は人手の問題に入るわけでありますが、非常にやはり重要なことだと思うのです。全部の扇風機を止めてガス滞留をはかって、しかも作業を再開することは非常に重要な問題でありますから、実際の鉱山保安監督部責任としては、そういうものはやはり当然義務的に連絡をしてもらってそうしてそれに対してはやはりガスが完全に排除されて心配がないというところまで、保安監督部としては会社側にまかせないで責任を持つべきである、こういうふうに私は思うのですけれども、その点に関してはいかがですか。
  10. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 そうたびたびやる実験ではございません。しかも特にガスの多い山に限って、停電のような際に、はたしてどういう状況坑内がなるかという点を前もって把握したいという気持のもとにやる実験でありまして、ほんとうの特殊な炭坑に限られておりますので、今後そのような実験をやるときには監督部連絡をさせるようにいたしたいと思います。
  11. 武藤武雄

    武藤委員 それからもう一つ、今度の災害発生原因がつかめないわけですけれども、実際は、特免区域の中で起きている。これは会社側説明によりますと、毎分千八百立方メートルぐらいの風が通っているところでありまして、そこが一番破壊の跡がひどいのでありまして、どう考えてもこの縦坑坑底付近爆発中心地であろう、こういうふうに見られるわけでありますけれども、そういう場合に考えられることは、今言ったようなガス検査後の滞留ガスあるいは異常なる突出ガス——異常なる突出ガスということになりますと、その付近に古い坑道が存在しているかどうか、それに大きな炭層等連絡しているかどうかということが問題になるわけでありますけれども、その付近はほとんど保安炭地として石炭が残されている地域だ、こういうふうに会社側説明しておりますから、異常なる突出ガスということは、あの状況の判断ではなかなか考えられない。ところがあそこは非常にガスが多い炭坑でありますから、ガス抜きを徹底してやっておりまして、十二日間二本で毎分九十六立方メートルですか、数字は大体そういう説明と記憶いたしておりますが、ガス抜きをやっているようでありますけれども、これの配管が御承知のように爆発現場を通っております。会社側説明によりますと、爆発をしました直後にこのガス排出量が非常に急速に減少してきたために坑口せんを締めた、こう言っておるのでありますが、そうしますと、このガス抜き管破損をしたか、それとも爆発によって坑内ガスが急速になくなったかという問題でありますけれども、前後の事情から考えますと、ガス抜き管破損をした、こういうふうに見られる節もあるのであります。千八百立方メートルの風があれば、その程度ガスができてもそれは風によって大体消化し得る、こういうふうに会右側は言っているようでありますけれども、しかし風も強いとき弱いときがありますから、なかなか一定の尺度ではかることはできないのであります。その場合にかりにそれが爆発後の破損でなくて、落盤等その他の事故によってガス抜きの管が破裂をして一ぺんにガスが放流し始めたことによって、何らかの事故によって引火したということも全然考えられないわけではないのであります。今の鉱山保安監督部行政指導として、ガス抜きに対するパイプ排出保安については、どういうふうに万全を期しておられますか。落盤あるいは急激な盤ぶくれ、こういうものに対してそのガス管の保護といいますか、特別の規則あるいは指導があればお聞かせを願いたい。
  12. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 炭坑ガス抜きにつきましては、過般労働省からも特にガス抜きをやるようにという勧告を通産省としては受けているわけであります。しかし炭坑ガス抜きにつきましては、保安上も非常にけっこうな重要なことでありまして、私どももでき得る限り濃厚なガスはそのまま切羽からパイプ坑外に運んでできるだけほかのものに使ってもらう、そういうふうにいたしますと一挙両得になるわけでありまして、炭坑ガス抜きについては非常に奨励をしなければならない状態に置かれております。また他方保安の面から申しますと、坑内の濃厚なガスパイプを通して坑外に引いているのでありますから、これの措置につきましては非常に苦慮しているわけでありまして、大体現在のところは入気側にはパイプを通しておりません排気側ガスパイプを通しております。しかしこれも全部排気側というわけには参りません。入気側を部分的に通るところが必ずございます。そういうところは部分的には地下に埋設したり適当な方法をとっておりますが、大半の経路は排気側に通っておりますので、もし落盤で破れたようなことがございましても、排気に濃厚なやつが流れるというような結果になるわけであります。それからなお坑外に引いております場合は、大がいの場合ブローアーを使って引き出しておりますので、もし途中でパイプが切れた場合にはブローアー吸い出し変化が参ります。このブローアー吸い出し変化があれば、必ず適当な警報その他でわかるようになっております。夕張の場合は、はたして爆発の前か後かという詳細な点についてはまだわかりませんが、私どもの聞いております点では、爆発後数分でブローアーに異常がきたように報告を受けております。この事実はまだはっきりつかんでおりません。おそらく爆発あとではないかというふうには見ておりますけれども、これも取り分けその他の作業が済みますれば、あるいはガスパイプの切れているようなところが出てくる場合も予想されますので、そういう場合につきましては十分に今後検討したい。  なお、どうしてもガスパイプ坑道に通すという考え方と、また盤下に埋設するというような考え方もございますが、これは坑道に出しておけば必ず落盤の場合こわれるということも予想されます。埋設した場合も盤ぶくれその他でパイプ破損する。都市ガスが至るところでパイプが切れまして、いろいろな事故を多数起こしておるような関係で、必ずしも埋設した方がいいというわけにも参りませんし、また坑道に張っておきますと、落盤でこわされるというケースもある。従って私どももどういう方法がいいかという点については非常に苦慮しておりますが、もうガス抜きを十数年やって現在は二十八炭鉱、一億五千万立米の相当なガス量を抜いております。まだガス抜き自体で事故を起こした実例は私どもは持っておりませんので、こういった実例はまずないものという態勢で進みながら、もし万が一一つの実例が出ますれば、その実例によりまして漸次いい方向へ持って参りたい、かように考えております。
  13. 武藤武雄

    武藤委員 あと鉱山保安法の改正とも関連いたしますけれども、やはり今後ガス抜きというものは、ガス自体の利用の問題、坑内ガス排除、二つの面から相当各炭鉱とも積極的になってくるのではないかと思います。従ってガス抜き施設に関する法律等も、特別に整備する必要があると思います。これはあとから鉱山保安法の問題として触れたいと思います。  それから鉱務監督官が非常に少ないということが各地でいわれるのでありますけれども、実際に会社側等からいえば、やかましいからあまりいない方がいいのかもしれませんが、保安を確保して自分の身体生命の安全を期すという保安の立場から見れば、やはり監督というものは万全を期さなければならぬ、こう思うのであります。それで鉱務監督官制度による監督と、それから鉱業権者自体が責任を持つ保安監督、この二つの面があるわけですけれども、御承知のように鉱業権者の方は、生産と保安というものを切り離すわけにはいかないという建前から、結局同一人が両方の責任を持つということが、実際の仕組みになっておるのであります。しかし最近においては、有力な炭鉱になって参りますと相当分けまして、本社機構の中に鉱山保安部長というものを置きまして、山の鉱業所長が直接両面を担当するというのを避けるような仕組みにしておるところもあるようでありますけれども、全体はそこまでいっておりません。従いましてこういった鉱業権者自身が保安の確保に責めを持つ、いわゆる事業主としての保安監督というものを独立強化させるという方向について、何か鉱山保安局長として考えておるところがあれば、この際お伺いをいたします。
  14. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 現在の状態におきましては、私の方の監督官は全国で二百二十五名、数の上におきましては諸外国あたりと比べまして必ずしも少ないものではないという気はいたしますけれども、もちろん私どもも毎年数十人の人員増の要求をいたしておりますが、思うように増員ができません。本年は五名増員ができましたけれども、来年度は増員がほとんど認められてないというような状態であります。予算の点につきましてももちろん十分ではございません。従って現在の私の方の機構、それから会社の保安機構、こういうものを加えまして、もちろん万全の態勢というわけには現状では参らないというように考えておるのですが、この保安機構、特に会社の保安機構につきましては、ただいまお話しのように、現場におきましては生産と保安を両方受け持っております。これが必ずしもいいかどうかという点につきましては、かなりいろいろ苦慮しておるようであります。わが国ばかりではなしに、外国でもやはり両方持っていながら、また別の面で単独な系統も作っておるところもありますし、またベルギーなどのように労務者の組合からも別途な保安の要員を出しておるような国もあります。こういうものにつきましても、それぞれ年限をつけてみたり、いろいろな面で苦心しておるようでありますが、現在の会社の保安機構一としましては、御承知のように保安管理者以下係員に至るまで、成規の非常に厳重な系列がございます。保安管理者がありまして、もちろん代理者もございますし、副保安管理者がありましてそれぞれの代理者も選任さしておる。その下にそれぞれの係員がありまして、いずれも技術職員として国家試験を通って一定の資格を取らなければなれないというようなシステムになっておりますし、この成規の系列の外には保安監督員というものがありまして、全体の保安機構をまた別個の面からながめておるというような二重の監督になっているわけであります。山自体におきましても二重な機構を持っておりますし、その上にわれわれの官庁が三重に監督するというシステムになっておりまして保安機構上、現在の機構はかなり新しい、モダンな機構ではないかというふうに考えております。これは特にアメリカ軍が入りましてからアメリカのシステムを今の保安に取り入れておりまして、監督員の制度などは従来ありません、戦後取り入れました新しい形なんでありますが、現在これが十分に活用されているかどうかという点につきましては、私どももまだ確信を持ってお答えはできません。かなりよくやっておる山もあれば、またこれがあまり十分効果を発揮していないような山もございます。是非につきましては個々それぞれ事情が違っておりますが、大体かなりな役目を果たしているのではないか、必ずしもこのシステムが悪いというふうには考えられない状態ではないかというふうに考えております。  なお今後そういった監督員などの問題につきましても、もちろん法規人員の増加もできるようになっておりますし、係員自体、監督員自体が不適格な場合には保安管理者も監督者も、もちろん解任ができるというふうにもなっておりますので、もう少し実態に即した運用を私どもの方でいたせば、かなり活発にこれらの機構の改善がはかれるのではないか、かように考えております。
  15. 武藤武雄

    武藤委員 もう一点は、現在坑内現場職員、これは国家試験を受けて保安係員の免状を持たなければならぬ、こういうことになっているわけです。その場合に、全国的に見まして大体一割強の保安係員がおるわけですね。たとえば労働者一万人おるところは大体千人以上の保安係員の資格を持った者がおるわけですけれども、私は、保安教育上の一つの資格として、いわゆる災害予防その他に対する当然の資格を持たなければ、やはり現場職員の資格は与えられない、これは当然だと思います。ただそれが保安係員という資格がそのまま当てはまるということになりますと、何かみんな保安に対して確保の責任はあるのだ、これは責任体制が非常に広くなる意味で、その意味ではいいと思うのでありますけれども、その際に何か実際の保安確保に対する責任というものの所在がおろそかになる危険があるのではなかろうか。いわゆる保安上の責任が形式的になるきらいがあるのではなかろうか。しかもそれが現場へ行っているのは、実際に生産に対する直接の責任を持つ、ノルマを押しつけられる職分にあるわけでありますから、その人が形式的な保安責任まで一緒に持っておるというところに、何か保安のあれが形式になるきらいがあるのではなかろうか。それならば、この際思い切って先ほどいい面と悪い面があるという御指摘があったようでありますけれども、たとえば社内における保安監督部、そういうものの中における保安上の監督的な、いわゆる自主的監督の立場にあるものを整備して、補充して、保安上の責任については、この人たちが一切責任を負うというような体制をこの際研究して見た方が、実際の現場保安確保の面においてはプラスの面がでてくるのではなかろうかと思うのですけれども、これも私の体験を通じてみても、実際にまだその方がいいという確信はないのでありますけれども、しかし、これらはやはり保安確保の責任の所在ということになると、どうもあまりにも広範囲に何かあれしておるので、その点が形式的になるきらいがあるのではなかろうか、こういう危惧を持っておるのですけれども、これらに対しての御見解はいかがですか。
  16. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 保安責任はかなり明確になっておりまして、もちろん保安管理者が保安上の全責任を持っております。それから各副保安管理者、係官に至るまで、法規上としましては、分担の区域並びに内容を届け出ることになっておりまして、資格は別でありますけれども、資格をとった係員であって、実際に選任されました係員は、どこの坑口のどういう区域で、どういう仕事をやるということを、はっきり監督部長に届け出が出ております。従いまして、係員ごとの責任の所在というものは、非常に明確になっておるわけでありまして、それ全体を通しまして、保安管理者が全責任を持つというような形になっておりまして、責任の明確化という点においては、規則上非常に明確になっておるというふうに考えております。
  17. 武藤武雄

    武藤委員 規則上はそうなんですけれども、今言ったような責任の分担というのはあまりにも広範囲なために、ややもすると現場の中での保安上の監督責任というものが平等に流れがちになる、こういうふうに私は経験上思うのですけれども、これは今の部長さんの説明ですと、見解の相違になるようでありますが、これは一つお互いに慎重に検討してみる必要があると思うのであります。  それから実際にこの前本会議でも触れましたように、最近は中小炭鉱災害が非常に激減をして、逆に大手炭鉱災害が非常に急増しておるのであります。これは合理化のしわ寄せはない、こういうことを現地の会社の幹部等も言っておりまするけれども、しかし、実際には大幅な増加と減少が如実に現われておるのであります。中小炭鉱の場合には、昭和三十四年度と三十三年度を比較いたしますと、この間も指摘したように、百名死亡者が減少しております。これは大へんな減少であります。ところが、大手炭鉱の方は、これは逆に四十名の増加になっておるのであります。それは中小炭鉱の方は最近の不況で、休廃山が相次いで炭鉱の数が少なくなったからという御議論があるかもしれませんけれども、大手の労務者の減少と中小の労務者の減少とを比較してみたら、労務者の減少の方は大手の方が多いのでありますから、人数が減ったからという理由にはならないのであります。でありますから、この間の相違というものを監督行政の立場にあるものとして、一体どういうふうに判断をされて監督をされておるのか、原因その他について統計がありましたら、御指摘を願いたいと思います。
  18. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 中小炭鉱災害が漸次減少して、大手がふえておるということは統計上からもちろん事実でございます。しかし中をよく解析してみますと、中小炭鉱は昨年あたり見ますと前年度を比べますと、かなり減少しておりますが、大手も詳細に見ますと、必ずしもずっとふえてきておるというわけではございませんで、月別に少し中身を分けて、三十三年度と三十四年を比べてみますと、一月は一人プラスになっております。二月は少しふえまして十五名のプラスになっておる。三月が同じく十五名プラス、四月が二十名、五月が十六名減って六月が十名、七月が十三名、八月が二名、十月でマイナス一名で、九月になりますと、前年と比べますと大手が減っておるわけです。十月でもマイナス五名、十一月がマイナス二名、従いまして十一月まではずっとこまかく統計を見ますと、前年と比べても減っておるわけです。ところが、御承知のように十二月に山野、新入と三十名どっとやってしまいましたので、年計してみますともちろんふえておるわけでありまして、統計上はもちろんふえておるということになるのでありますが、月別に分けますと、十一月までは少し少な目に移り変わってきておるということが言い得るわけであります。しかしこれは中小が大きく減っておりますのと比べまして、従来は大手がだんだん減って、中小は少しふえるという傾向にあったのでありますから、これらの傾向と比べますと、もちろん中小が減って大手も減り方が少なくなって、鈍ってきて、最後の十二月には逆にふえたという点は、私ども非常に重要視しております。しかしながら現段階まででは、大手が非常にふえてきておるという断定は、統計上からは少し酷じゃないか、昨年の十一月までは前年並みあるいは少し減少の姿できたけれども十二月にどっと大きなものをやってふえてきた。今年に入りましてからは二月にああいう大きい変災をやっておりますから、よほど今年はがんばりませんと大手が減らずにふえるのではないかという懸念は当然持っております。  そこで最近大手はふえてきたが、中小がなぜ大きく減ったかという点につきましては、現地監督部長にもそれぞれ強い意見も聞いておりますが、なかなか私どもの十分に納得いくような説明現地からも得られないのであります。中小が大きく減った理由としましては、現地で見ております要点は人間がかなり減ってきておる、だから従来の災害率を減った人間で数字を計算してみますと、現在減りました百名ばかりのうちの五十名は人員減からきておる。あとの五十名減ったのは、現地監督部の努力ばかりではなしに、山とか監督関係者保安に対する努力で減ったんではないかというふうにかなりこれは安易な考え方かもしれませんが、約半分くらいは人員減あるいは操業減といいますか、作業が縮小されたために起きてきておるのではないか、残りの半分くらいは関係者保安に対する努力の成果が出てきているのではないかというような見方をいたしております。私どもはこの見方では必ずしもはっきり納得がいかないのでありますが、中小はもちろん操業がかなり縮小されてきておりますので、そういった面の影響がかなり出てきているのではないかということはわかりますけれどもあとの半分前後の減り方が、はたしてどういう面からきておるかという点については、はっきりまだつかんでおりません。大手が最近ふえ出してきたという事実は、これはもう事実でありまして、今年は二月早々大きいのをやっておりますし、今後もこの傾向はあまり下がらないのじゃないか、むしろ、やはり昨年の十二月から今年にかけて漸次ふえ出してくるのではないかというような懸念がいたしておるわけであります。ごく最近のこの山野、新入、夕張の三大災害検討してみますと、新入、山野はまだはっきりはわかりませんけれども、いずれも旧坑内の自然発火に伴う災害だというふうに一応見ております。従って、これも特に合理化その他と直接の関連を持っているというふうには思えませんし、夕張もまだはっきりはいたしませんが、かなり奇妙な原因事故が起こっているんじゃないかというような点から見まして、現段階で、少なくともこの三つの大きい災害合理化と直接関係を持っておるというふうには見られないのではないかというふうに私ども考えております。しかし、これらの大手の災害増の傾向というものは一体どこからきているものかという点については、今後十分に検討いたしまして、対処したいというふうに考えております。
  19. 武藤武雄

    武藤委員 現地会社側説明の際に労働組合の委員長、それから職組委員長が同席したわけですけれども、労組の委員長の方は、これはやはり監督行政の中で生産と保安との双方を兼するということについては、これは今度の例から考え、われわれとしては非常に間違いである。これはもう生産と保安というものを同一の中においてやっていくということは監督官庁として問題がある、こういうことをはっきり言っております。  それから職組委員長の方は、今回の災害については、私ども非常な責任がある。それは前からこの保安上の人手不足については非常に痛感をしておった。しかし、それを痛感をしただけで、実際にはっきりした形に出さなかったということに対しては責任を感じておるというようなことを職組委員長さん——これは保安上の現場係員を代表する職組委員長さんの言葉でありますから、これは私ども非常に重要なものとして聞いたのでありますけれども会社側の方は、合理化については私の方は全然保安上の人減らしも何もやっていない、この点については何も問題はない、こう言っておりましたけれども、私はやはり今のように急速な合理化が炭界で要求されてくるということになりますと、これは保安の問題について意識して削減をするというんではないけれども、やはり知らない間に保安に対する施設、教育、人的配置、そういう問題について意識しないしわ寄せが、かかる場合が非常に多くなってくるのではなかろうかと思うのであります。それは、たとえば保安教育の場合に従来よりも積極性がなくなってくる。あるいは人を減らすのではないけれども、配置転換等の関係からたまたまそこに自然発生的に空間ができてしまうとかいろんな問題が発生してくるのではなかろうかと思います。たとえば今度の災害を見ましても、現地報告によりますと、大体炭代収入を除いても二十億程度損害だ、こういうわけでありまするから、大へんな災害であります。もちろん保安に対して事業主が冷淡なことは、経営がよくなるというわけではないのでありますから、それは何も意識的に追及するつもりはないのでありますけれども、ただそういった合理化のしわ寄せが急なるのあまり、どうしても意識しない格好で保安面にしわ寄せをされる危険があるということは、これは相当重視をしなければならぬと思うのであります。ですから、こういう点に対して特に鉱山保安監督行政にあずかる人としては、私は今後相当重視をしてもらわなければならぬと思うのでありますが、御所見を承りたい。
  20. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 今後の極端な合理化に伴いまして保安強化の必要であるという点については十分痛感しております。現在炭界に要請されておりますのは、三十八年にトン当たり千二百円もコストを下げなければならぬ、あるいはそれ以上実際的に下げなければ重油その他に対抗ができないというような実態に置かれておるようであります。従ってこれらが実際の現場にどう反映してくるかという点については、私ども非常に大きい関心を持っておるわけであります。賃金はなかなか下げるわけにはもちろんいきませんし、馘首を簡単にやることももちろんできません。従って、ややともすれば、一番コストの大きい部面を占めております資材費などに冗費を省くという形で、実際には中身に入り過ぎて省き過ぎるというような傾向は明らかにございます。従いまして極端な合理化に伴う保安強化という点につきましては今後重大な関心を持って、この合理化の推移に伴って保安がおろそかにならないように、従来よりも増して入念に保安監督をやって参りたい、かように考えております。
  21. 武藤武雄

    武藤委員 もう一つは、今度の事故救護隊員が一人死亡しておるわけでありますけれども、これはやはり、ああいう災害の場合にほんとうに生死を度外視して飛び込む、そういう気持がないと救護隊員は入って行けないわけであります。しかしそれだからといってこれは死んでもいいということにはならないのでありまするから、やはり万全の対策を立ててそうして絶対生命に心配はないんだという自信と確信を救護隊を担当する責任者は持って入るような態勢にしていかなければならないのではないかと思うのです。そういうことを考えますと、救護隊員が一名死亡したということは、救護活動に対する士気に大きく影響するのではなかろうかと思うのです。ですから、あの場合にどこに一体欠陥があったのか、たとえば入坑する前に定められた身体検査が確実に行なわれたのかどうか、それから本人の前日からの疲労度その他等に対する調査がなされなかったのではないか、あるいは器具の面において何らかの欠陥があったのではないかというようなことで私は質問したのでありますけれども、器具については、その死亡した本人の救護器具をすぐ別の者が交代をしてかぶっておって、その後何ともないから心配ないと言っておりますけれども、私これは手抜かりだと思ったのであります。そういう重要なことでありますから、当然装具等は厳重に保管して、今後に備えて厳重に調査が必要ではなかったのではなかろうかと思うのであります。あとの者に引き継がれてやっておるから心配ないということでありますけれども、これは単に心配がないということでなしに、これは相当重要に考えて、鉱山保安監督部としても、今後は救護活動の装備なり、あるいは事前訓練なり、あるいは体力の変動に対する適切なる指導なり、規則なりを、やはり今度の原因を突き詰めるとともに慎重に一つ検討をしてもらいたい、こう思うのであります。  それから、あとは主として政務次官、石炭局長等に関連すると思うのでありますけれども施設の問題が大きく問題になってくると思うのであります。私今度の事件を見まして、まず第一に感じられることは、どうも予測し得ないところに爆発の事件が起きておる。これは特免区域の中で爆発発生地になったということになりますと、これは特免区域の指定の仕方について今後重大な検討を加えなきゃならぬと思うのでありますけれども、それと同時に、予想せざるところにこういう大きな事件が起きるのでありますが、それに対して私は特免区域の指定その他等に対して、きょうは通産大臣はおりませんが、通産大臣に本会議質問したのでありますけれども、御趣旨ごもっともでありますから積極的に努力したい、こういうことでありましたが、この際全国の重要な個所に相当思い切った一切の坑内爆発に対する実地試験といいますか、実験といいますか、そういう研究をするための相当規模のしっかりした爆発試験場を、日本でも作る必要があるのではないか。まあ九州に通産省の資源技術試験所もあって爆発試験をやっておるというのでありますが、予算を聞いてみますと何か七十五万円、これじゃ事をやるのにも足りないくらいな費用でありますから問題にもなりません。今ちょうどいい幸いと言っては失礼かもしれませんけれども、御承知のように事業団は買い上げ炭鉱をたくさん持っておるわけでありますから、こういう買い上げ炭鉱を利用して、実際の坑内爆発実験、そういったものを総合的にあらゆる状態から判断をして行なう、爆発というものに対する予防措置を徹底的に国として研究してみる必要があると思うのです。これに対して今後の方針について一つ御意見を承りたいと思います。
  22. 原田憲

    ○原田(憲)政府委員 武藤さんの今日の報告あるいはただいまの質問、また本会議場におきます武藤委員質問等常に伺っておったのでございますが、ただいまの御意見私は傾聴に値するものがあると思っておるのであります。石炭の企業を合理化するということは、ともすると出炭能率を上げることだけが合理化であるというふうな誤解もされておるようでありますが、先ほど言われましたように一たび災害が起きますと、今度の北炭の場合でもたくさんな人命を失って非常に不幸でございますけれども、もう一つそれが大きかったら北炭という会社が全部つぶれてしまうというようなことになるのでありますから、この石炭の企業の合理化というものは、私の考えでは近代化していく、近代化していくということはそういう事故をなくしていく、事故のない企業でなければ近代産業と言えない、こういうふうに解しておるのであります。先般鉱山保安局の所管でありますところの毎年行なっております石炭保安に功労のあった方々の表彰式に私は臨んだのでありますが、ことしは幸いに非常に災害が減ってきたということで喜んでおりましたところが、たまたま年末からいわゆる大炭鉱におきまして相次いで三つも災害が起きた、非常に遺憾なことでございます。こういうことをなくしていくことが、石炭産業の近代化であります。このために政府が力を入れて実験をやることはぜひ必要であるという今のお説に対して私は同感でございまして、今後ともお説を実現するために善処していきたいと思います。
  23. 武藤武雄

    武藤委員 それからもう一つは、これは夕張事故の結果から私特に強く考えさせられたのでありますけれども、結局三十九名の死亡者のうちに実際に爆風によって死んだのは三名、こういうように現在まで出て参りました。おそらくあとの二名も窒息だと思います。そうすると結局一酸化炭素による窒息なんであります。ですからこれは施設上の万全を期せば、こういう犠牲者は最小限度に私は食いとめられるんじゃないかと思います。そこで炭塵爆発が今回の場合は内容を調べたところによりますと、ほとんど誘発をされていないんではないか。ただ縦坑坑底付近では多少炭塵爆発の気配がある、こう言われておりますけれどもガスに対して一番問題なのはガス排除と炭塵の予防でありますから、炭塵の予防についてはもちろん今後万全を期さなければならぬと思います。同時に万全の予防措置というものがとられ、しかも鉱員個人々々に対する予防措置がとられておれば、今度の災害の例なんかから見て、多くの人が最小の犠牲で救われたのではなかろうか、こう思うのであります。従いましてこの際一つ北海道の資源技術試験所の支所でも研究されておるそうでありますけれども、今後思い切ってオートメーション化によるガスの探知機と警報機、これを一つ少なくとも甲種炭鉱炭鉱側に義づけるというくらいにまで真剣な御研究を願いたいと思うのです。そうして本格的な探知機と警報機ができれば、ガス滞留すると、直ちにこれを探知機が自動警報する、自動警報は直ちに全山に対してこれが警報されるということになると、私は相当このガス排除には大威力を発揮するのではなかろうかと思います。ですから今のところ坑内の湿度、温度等が上下することによって、どうも現在できておる探知機では狂いを生ずるということで、まだ完成の域に達していないようでありますけれども、これを直ちに民間会社の研究にまかせるのでなくて、一つ国が科学陣を動員して、この坑内の生命の安全を期すというところで、この研究に、一つ大がかりな研究をしてもらうと同時に、少なくとも完成の暁にはもう甲種炭鉱についてはこれを義務づける。それに対してはある程度国が施設に対する助成の処置もとる、こういうことに一つ進んでもらいたいと思うのであります。同時にまた鉱員に対して救命隊みたいな大がかりな救命道具をつけることは困難でありますけれども、これも一つごく短時間の間に、安全地帯に逃げ出せばいいと思いますけれども、その短時間の間一酸化炭素を吸わないで逃げ出せるような、できるだけ簡単な防毒装備というものを研究してもらって、これはなかなか困難だと言わないで、一つ全力をあげて研究してもらって、そうして甲種炭鉱の危険だと思われるガス警報機の範囲内における鉱員には、全部これを常時からだにつけておいてもらう。そのくらいの保安に対する万全の対策が必要なのではなかろうか。アメリカあたりを見ると一人の生命を救うために、何千万ドルもかけて飛行場まで作って救出したという話もありますけれども、やはり人命というものは私はそれだけ慎重に考えてもらわなければならぬのじゃないかと思います。これに対して一つ政府の御所見を承ります。
  24. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 夕張炭鉱災害におきまして死亡者の大多数が爆発後のあとガスで、なくなっておるという点につきましては、私どもも非常に大きく打たれておる点であります。こういうケースを救いますためには、私どもも数年前から事故救命器というものの完成を、かなり積極的に急いでおったのであります。しかしわが国のメーカーではまだ現段階では十分に満足するものができておりません。これはもちろん積極的に早急に完成品を作ってもらうように、最善の努力をいたしたいと考えております。もうすでに諸外国でも労務者全部にこれを携帯さしておる国もございます。しかしフランスのごとくあまりこれを歓迎していないような国もございます。私どももう数年前から、いろいろな実例から、わが国でも全部というのは現段階では無理であろう。従いまして特殊の炭鉱につきましては、これを労者の一人々々にできるだけ早い機会に持たせるように、今のお話のように、むしろ規則ででもこれをきめて携帯さしたいという考えを持っております。ただいま申し上げましたように製品自体が、もうわずかというところででき上がるような段階に来ております。一応製品としてはできておるのでありますが、再三の実験の結果少し不備な点が出ておりますので、そう長い期間かかるようには考えておりませんが、もしこれがあまり長くなるようでしたら、私はアメリカから輸入してでも、特定の者には使うことが必要ではないかというふうにすら考えております。  それからなお各所に使用御希望の警報装置でありますが、これもかなりりっぱなものができておりますので、これらの使用につきましては、十分それぞれの機関に諮りまして、早急に実現方に最善の努力をいたしたい、かように考えております。
  25. 武藤武雄

    武藤委員 これは一つ、そういったことは義務制にしないと、保安の熱心な炭鉱だけつけるということですとなかなかできないのであります。しかし義務制にする場合に、そういった保安施設に対して、国が助成をするということは決して差しつかえないことだと思います。だからそういう面も含めて義務制というものを考えていかないと、なかなか万全の実施は困難ではないかと思います。そういう点は一つ特に御検討願いたいと思います。  あまり長くなるとあれですから、次は教育の面でちょっと政府の対策をお聞きいたしまして、最後に炭鉱の離職者問題と関連しての中小企業の問題について御質問いたします。  この鉱山保安の教育というものは、今の段階においてはできるだけ炭鉱の自主教育ということにまかされておる面が大半のようであります。この間札幌鉱山保安監督部でわれわれが調査いたしました範囲内でも、いろいろスライドとかで、ある程度保安指導はやられておるようでありますけれども、やはり災害というものは、もちろんガス爆発だけではなしに、落盤、ハッパ、炭車とあらゆるところに災害発生しておるわけでありますから、保安教育という点は重要に考えてやっていかなければならぬのではなかろうかと思います。日本の悪い傾向として保安というのはどうも——保安ばかりではありませんけれども、どうも法律万能主義になってしまって会社の方も、まあ保安法で指摘をされなければいいではないかという考え方、それから監督をする方でも、これは法律に合っとるかどうかということで、法万能の保安確保になりやすいのであります。ですからそうでなくて、炭鉱災害というものは思わぬところから、いつどういうふうに発生するかわからぬのが炭鉱の実態でありますから、そういう意味で、生きた保安教育というものが非常に重要になってくると思うのであります。今度政府が何か保安指導員制度というものを作りまして、民間の優秀な、保安業に長い間携わってきたベテランを登録をして、各炭鉱指導に当たらせるということでありますが、これは私は今までの保安監督の立場から見れば、大きな飛躍であり進歩だろうと思います。その点は、そういうことに踏み切られたことに対して私は敬意を表しますけれども、しかし本年度の規模くらいではこれはどうにもならぬのでありまして、どうせやるなら一つ思い切ってやっていただきたい。特に先ほど申しましたように、保安教育の面からくる保安確保というものは、炭鉱にとっては非常に重要なのであります。ですから今後は、監督部としても会社側に自主的な保安確保をさせるとともに、やはり保安教育の面について、相当計画的な保安教育というものを、職員、坑員あるいは保安管理者というものに対して、系統的に計画的になされるように、しかもこの指導員制度というようなものを十分活用して保安教育がなされるように、保安運動が行なわれるように、一つ配慮を願いたいと思います。何かアメリカ等では産業安全委員会というものを作って、大統領がみずから主宰をして各産業の安全に対する自主的予防活動、教育活動をやるそうでありますけれども一つこの保安教育という面一については、今後は積極的に保安監督関係方面においても取り上げられるようにしていただきたいと思うのですが、その点に関する御所見をお伺いいたしたい。
  26. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 鉱山の保安教育につきましては、保安上最も大切な項目の一つだというふうに私どもは考えております。鉱山保安法が施行されましてから、御承知のように十年余りになっておりますので、当初は保安法、保安規則の徹底、教育、こういうような面に重点を置いて参りました関係上、大体各炭鉱現場におきましても、保安教育というものはかなり充実してきておるように見ておるわけであります。従いまして新しく入りました労働者、それから一般の労働者、あるいは指定鉱山労働者、有資格者、こういった特定の危険の度合いに応じましてそれぞれの教育内容を、もちろん規則でもきめておりますし、これらは鉱業権者が全責任を持って教育をやることになっております。しかし前々御承知のように、ただ法規上そうなっておるというだけではもちろんいけませんので、私どもも建前としましては鉱業権者保安教育の義を負わせ、全面的にそれぞれの危険度に応じました職制の教育をやらせておるのでありますが、一番私どもの方で困っておりますのは、中小炭鉱保安教育であります。大手の炭鉱におきましては、御承知のようにある程度の形が確立できるのでありますけれども、中小炭鉱におきましてはほとんど教育制度の確立が見られない、そういった関係でいろいろ苦慮しておりまして、数年前からもTWI式の科学的な教育方式もとっておりますし、また三十二年ごろからは実例教育、ケーススタディーというものも大きく取り上げまして、その炭鉱で起こりました災害それ自体を、それぞれこまかく分析してどういうところに悪い点があったかという点を究明いたしまして、同じような災害を絶対に二度と繰り返さないという方向をとっておるのであります。特に最近は、昨年十周年の記念を祝しまして、石炭、金属、石灰石、それぞれの過去十カ年くらいの間の主要な災害を編纂いたしまして、災害事例集というものを作っております。これらの実際起こりました災害の事例集に基づきまして、これをそれぞれ解析して悪い点を直していくという、実例教育を今後ぜひやって参りたい。この実例教育と救急法の訓練、こういったものに主体を置きまして、保安教育の地固めをやっていきたいというふうに考えております。特に来年度は、私どもこの変災のあります前から、少し古い表現でありますけれども保安教育徹底運動というものを、三十五年度、年間を通じまして、一大運動を起こそうという計画を、今進めておりまして、炭鉱保安教育につきましては一番重要に考えております。ただいまお話のように、指導員制度もようやく大蔵省の承認を得まして、国会で予算がきまりさえすれば、これがすぐ発足できるわけであります。しかし予算も二百万円余りでありまして、非常にわずかな予算であります。しかし特に最初は中小に中心を置きまして、各民間のそれぞれの専門の方々を自由にお選びしてお願いをしてそうして炭鉱のそれぞれの分野の指導に当たっていただくという考え方であります。今先生からおほめをいただきましたが、ぜひこの制度はもう少し予算をいただきまして単に中小ばかりでなしに、大手でも総合的に判断する大きい分野があるのであります。私ども監督官は相当な人数はおりますけれども、現在ある姿の坑内保安状況を見ているというのが実情であります。御承知のように炭鉱はなかなか現在の状況だけで判断つかない非常にむずかしい、あるものがあるのであります。そういうわずかなあるもののために、大きい変災が起こるということが非常に多いわけであります。私どももいつも言っておるのでありますが、施設の面、教育の面いろいろな面で全部でき上がっておっても、私は炭鉱には九十五点しか与えてないのであります。あとの五点というものは何からくるかわかりませんけれども、何かサムスイングがあるのだというふうに説明しておりましてこの五点の万全をはかるために、いわゆる上級の指導員がほしいわけであります。従いまして、来年度は  一応重点を中小炭鉱指導に置いておりますけれども、漸次予算の拡大をはかりまして大手の方にも、そのわずか残されました重要部面の指導という名目で、ぜひこの制度を拡大して参りたいというふうに考えております。
  27. 武藤武雄

    武藤委員 ただいまもちょっとお話が出ましたが、鉱山保安法が制定されてもう十年を経過したわけでありましてその間にいろいろな災害の実例なり不備欠陥というものも、相当山積をしておるのではなかろうかと思います。特に今回の事故とも関連をいたしまして、行政機関の問題についてもい出ろいろ異なった意見が出ておるわけでありますから、この際一つ学識経験者を含めて鉱山保安法を全面的に再検討してみる審議会か何かを作ってはどうかと思うのでありますけれども、これに対する御所見をお伺いいたします。
  28. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 御承知のように、従来少し災害が頻発いたしました関係で、特に鉱業法との関連におきまして、鉱山保安法の一部改正を前国会で可決いたしてもらったわけであります。従いまして一部修正したのでありますが、これはごく暫定的なものであります。鉱業法も、目下、根本的な改正が必要であるという点から、ことしと来年の二カ年の予算をとりましてもうすでに半分はまさに終わらんとしておるわけであります。来年と合わせまして二カ年で鉱業法の根本的改正を現在審議会でやっております。鉱業法と鉱山保安法は姉妹法の関係にありますので、鉱業法が根本的に改正を見ますと、当然鉱山保安法も根本的に改正しなければならないのじゃないかというふうに私は考えております。しかし、それまで待てない問題がございますれば、私は部分的な法の改正は決していとわないつもりでおります。しかしながら、せっかく親の鉱業法の根本的な改正をねらいまして、かなり大きい分野で改革を考えておりますので、これらの鉱業法の改正と相待ちまして鉱山保安法の根本改正をいたしたい、これにはかなり時日がございますから、仰せのように一つ十二分に今後の保安の重要問題点と取り組みまして、鉱業法の根本改正を機会に鉱山保安法の根本改正をやりたい、かように考えております。
  29. 武藤武雄

    武藤委員 次に、保安問題とはちょっと別でありますけれども石炭離職者の問題が昨年から非常に大きな政治問題になりまして、本年度は石炭離職者援護会法案が成立をいたしまして、援護事業が行なわれるわけでありますけれども、これと関連をして、石炭に依存をして、石炭とともに生活をしておりました炭鉱地帯の中小零細商店の人たちが、今非常な苦境に陥っておるわけであります。これは、私どもの方でちょっと考えてみましても、極端な例として、好間村などというところは、昭和二十七、八年当時は大体炭鉱従業員が四千五百人くらいおったわけでありますけれども、それが今は千九百名程度であります。しかも、この千九百名も、今度は、某炭鉱のごときは、大幅な配置転換を他県に行なうということで組合側と交渉中でありまして、これもまた大幅に減るということになるのではなかろうかと思います。従いまして、急速な炭鉱労務者の激減によって甚大な致命的な影響を受けております中小企業、零細商店の方々がたくさんあるわけであります。これは九州の炭田地帯に行ったらなおひどいのではなかろうかと思うのであります。こういった炭田地帯に依存して参りました、ほんとうに資本の蓄積も何にもない零細商店、こういう人が炭鉱離職者が増大するとともにだんだん生計上の維持ができなくなってくる、それは当然でありましょう。対象人員が激減をしておるわけでありますから当然であります。しかも、ことしからここ三カ年くらいの間に、なお十万人程度炭鉱労働者が減少する必要があるということまで宣伝をされておる今日の情勢において、この状態はなお深刻であるわけであります。従いまして、これらの零細企業の人たちで、そういった炭鉱の休廃山あるいは大幅な人員整理、配置転換等によって生計の道を失って、他に転出せざるを得ない者が続出をしてきておるのが今日の現状であります。これらの問題は石炭界の急速な変動によって起きて参ります現象でありまして、炭鉱労働者も、またそれによって生計をしておりましたこういう人たちも変わりはないわけであります。そういう状態でお困りになっておる炭鉱離職者を国家が援助するという考え方とこれは全く同じであると思います。これらの中小零細商店の人たちが、たとえば移転をする場合、その所有財産等が二束三文になってしまいます。そういうところにだれも入ってくる者はありませんから、引取手のない二束三文の財産として残るわけでありますけれども、こういった問題に対する援助、あるいはほかに移転をして営業を開始する場合の移転に対する資金の融資、営業開始に対する資金の融資、それから先ほど申しましたように、固定資産をできれば政府資金によって買い上げてやるとか、そういった炭鉱離職者に対する措置と大体似通ったような格好において、これらの問題の救済を考えてやる必要があるのではなかろうかと思います。もちろん所得税等の問題につきましても、大蔵省と折衝をして、そういった特別の処置も考えてもらわなければならぬと思うのであります。これは全国に相当深刻な影響を与えておると思うのでありますが、これに対する中小企業庁長官の御所見を承りたいのであります。
  30. 小山雄二

    ○小山(雄)政府委員 一つの産業が根本的に形を変えていくといいますか、今御指摘のように炭鉱関係の休廃山とか配置転換を必要とするというような状況、これに伴いまして、その周辺で従業者の人たちを相手にしていろいろ生計を立てておる零細企業、小売商等の方々が本質的な影響を受けるという問題が最近あちらこちらで起こっておりまして、これらの対策について頭を悩ませておるわけであります。これらの人が方向を転換していく、生計を立てるために仕事を変えていくというような点につきましては、現在までのところは、既存のあらゆる制度を利用して、これの援助を考えていかなければならぬと思いますが、何分にもこれらの人がどういう方向にどういう面で立ち直っていくかということの本質が非常にむずかしい。まずもって個々の企業者、あるいはまとまったその土地の小売商の集団といいますか、そういう人たちがどういう方向に行くべきかということを具体的に相談に乗りまして、各地に中小企業の相談所等がございますから、そういうところでまず方向をきめましてから、それに応ずる援護の手を差し伸べるというやり方をすべきではないかと考えておるわけであります。立ち上がり等に関する資金の融通その他につきましては、従来中小企業関係の、ことに零細企業に対する特別の機関がありますので、これらを活用いたすことといたしまして、その前提としてどういう方向にどういう形で道を開いていくかということの根本をきめることは、土地によっても事情が違いますし、状態によっても事情が違います。そこに非常に頭を悩ましておるわけであります。たとえば今御指摘がありましたが、炭鉱離職者に対する固定資産の買い上げとかあるいは立ち上がり資金、立ち上がりの援助というような一般的なことでなしに、その前にどうつないでいくかというようなことにつきましても、炭鉱離職者に対する措置に似たような措置を考えるということも、現在までのところはそういう措置は特別とられておりませんが、そういうことに関する特別の方法も、あるいは必要に応じては特別に考えなければいかぬと思いますが、今申します通り、まず立ち上がりの方法、行くべき方向を見定めて、これに援助の手を差し伸べるという形でこの問題を解決していきたい、かように考えております。
  31. 武藤武雄

    武藤委員 たとえばそういった人の中には、職業訓練を受けて、今度は勤労者として働きたいという希望の人も出てくるでありましょう。それから他に商売をしたいという人もあるでありましょうから、いろいろ人によって希望は違うと思います。しかしやはり一般的な既存の中で救済しようとしても、こういう変動の場合には救済できないから、御承知のように離職者法案のようなものも出てくるわけでありますから、従って特別な救護対策というものが必要になってくると思うのです。ですからそういう面で中小企業庁の方でも、これらの実態を早急に全国的に把握をする努力をしてもらいたいと思います。われわれの方としてもまとまった成案を持ってこの問題の対策に当たりたいと考えておりますけれども一つとりあえずそういう面でやはり何か別途の救済対策が必要である。既存の問題だけでは救済できない問題で、大体今全国的に騒ぎ出してきているようでありますから、どうか一つそういう面で政府部内においても調査検討を願うことにいたしまして、具体的な問題につきましては、一応ここにありますけれども、あらためてあとから提案をいたすことにいたしまして、とりあえず原則は炭鉱離職者に対する救援対策と同じような趣旨で、これらに対する救護の具体的な問題について、一つ対策を進めてもらいたいということを強く要求をいたしておきます。  だいぶ長くなりましたから、あと石炭の企業の対策その他等につきましては、きょうは通産大臣もおられないようでありますから、わざわざ局長さんに来ていただいておりますけれども、次会に回したいと思います。
  32. 中村幸八

    中村委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は来たる二十六日金曜日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。     午後零時三分散会