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1960-05-11 第34回国会 衆議院 社会労働委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十五年五月十一日(水曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 永山 忠則君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 藤本 捨助君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君 理事 堤 ツルヨ君       池田 清志君    臼井 莊一君       河野 孝子君    齋藤 邦吉君       中村三之丞君    中山 マサ君       早川  崇君    古川 丈吉君       柳谷清三郎君    山下 春江君       亘  四郎君    赤松  勇君       伊藤よし子君    大原  亨君       岡本 隆一君    河野  正君       小林  進君    五島 虎雄君       田中織之進君    多賀谷真稔君       中村 英男君    田中幾三郎君       本島百合子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 松野 頼三君         国 務 大 臣 石原幹市郎君  出席政府委員         警察庁長官   柏村 信雄君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君         厚生政務次官  内藤  隆君         厚生事務官         (児童局長)  大山  正君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君         労働事務官         (労働局長)  亀井  光君         労働事務官         (職業安定局         長)      堀  秀夫君  委員外出席者         参議院社会労働         委員長     加藤 武徳君         警  視  長         (警察庁警備局         警備第三課長) 倉井  潔君         検     事         (刑事局公安課         長)      川井 英良君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 五月十一日  委員倉石忠雄君、岡本隆一君、山口シヅエ君及  び木下哲辞任につき、その補欠として臼井莊  一君、多賀谷真稔君、田中織之進君及び田中幾  三郎君が議長の指名委員に選任された。 同日  委員田中織之進君及び田中幾三郎辞任につき、  その補欠として山口シヅエ君及び木下哲君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 五月十一日  引揚者給付金等支給法の一部を改正する法律案  (参議院提出参法第三号) 同月十日  結核療養所、病院の建築費に関する請願原健  三郎紹介)(第三四三一号)  遺族給与金審査裁定促進に関する請願山口  好一君紹介)(第三四三二号)  未帰還問題の早期解決に関する請願荒舩清十  郎君紹介)(第三四五二号)  戦傷病者のための単独法制定に関する請願(大  橋武夫紹介)(第三五二〇号)  同(星島二郎紹介)(第三五一二号)医療施  設不燃化等建築費助成に関する請願賀屋興  宣君紹介)(第三六二二号)は本委員会に付託  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  身体障害者雇用促進法案内閣提出第五五号)  引揚者給付金等支給法の一部を改正する法律案  (参議院提出参法第三号)  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 永山忠則

    永山委員長 これより会議を開きます。  身体障害者雇用促進法案を議題とし審査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木一男委員 政府提出身体障害者雇用促進法案について、労働大臣並びに政府委員に御質問を申し上げたいと思います。  身体障害者雇用促進して、その自立をはかるということでこういうような法案を出されたこと自体は、非常にけっこうなことだと思うわけでございまするが、その内容については非常に乏しいものがあると私ども考えざるを得ないわけでございます。このような身体障害者雇用促進をやるという空気が、政府部内でも各政党でも世の中でも出てきたというときに、ごく微温的なものをなさいますと、それをまた改正するという機運が盛り上がるまでには相当時間がかかりますので、やはり最初のスタートのときに相当しっかりしたものを作っておかないと、そういうことを進めるというお気持であることは確かでございまするけれども、結果的に見て、進める機運のときに少ししか進めないと、その問題を進めることにブレーキをかける、こういうことにもなろうかと思うわけでございます。その点で、このような不十分な法案を出されたことについて非常にもの足りないわけでございまするが、労働大臣はいかがお考えであるか、伺いたいと思います。
  4. 松野頼三

    松野国務大臣 この法案が非常に微温的でなまぬるいという御批判もあることは承知しております。しかしその議論の焦点をどこに置くかというものさしの置き方で、いい法案だあるいは微温的だということが違うのではなかろうかと思います。私たちは、今までの過去の実績、今日の現状から見て、適当だという判断でこれが適当だと思うのであります。逆に言うならば、もっと促進したいという方から見れば、微温的だという御批判もあるかもしれません。それじゃその議論をどこで調整をするかということになりますと、やはり現実に受け入れられる姿の中において最高なものを作るべきだ。現実の姿を無視して理想にのみ走っては——理想ばかりではありませんし、そういうものじゃなしに、現実雇用促進法通りましたら、あすから実施したいという現実をつかさどっておる労働大臣としては、私もいろいろこの審議中に考えましたけれども現実に受け入れられて促進になるという姿を前提にいたしますと、今回の政府提案というのが一番妥当だ、現実に私はそう考えました。その御批判は十分私も承知しておりますが、それじゃ雇用義務的にやれるか、雇用主はこれを実施するか、実施せぬときには罰則をかければいいじゃないか、こう言いましても、雇用というものは罰則をかけて雇用させるようなことは、これは避けなければならないことであります。そうなるとやはりその限度というものは、今回の「努めなければならない。」というと言葉は、これは義務であります。従って同じ義務にしても、今日の立場に合い得るものにすることがいいんじゃなかろうかということで、私はこの案が最適だと信じております。
  5. 八木一男

    八木一男委員 現実を動かすというような立場もあることも、私ども政治考えております者として知っておりますけれども、そこにやはり幅がありまして、引っぱり方の強さあるいはやや強くないという程度の問題で、非常に考えるべきことがあると思うわけであります。そういう点で大体身体障害者というような労働能力がいささか欠けるものが多い、それからまた欠けないにしても、欠けるというふうに思われている人たちが多い。そういう人たち雇用する問題は、むずかしい問題でありまするから、世の中政治であるべき姿に引っぱるという、たとえば道路をよくするとかあるいはまた教育をよくするというような問題は、比較的スムーズにいきやすい問題ですから、ちょっとした吸引力でそういう問題がよくなりますけれども、こういうむずかしい、しかもその国民のことを考えるとぜひともやらなければならないときには、やはり引っぱる力を相当に強くしなければ問題が解決しないのではないかと思うわけであります。そういう意味でこの種のものは、引っぱる索引力を極端に強くすべき部類に属するものだと思います。まず具体的な問題に入りたいと思いまするけれども雇用率の問題であります。率の問題で五島委員の御質問に対する御答弁で、各国の例をあげておられました。たとえばユーゴスラビアは一〇%、西ドイツは八%、イギリスは三%、アルゼンチンは一%、ほかの率はどうか知りませんけれども、ここで御答弁になった率はそういうふうに出ております。ところでアルゼンチンという国は第一次大戦はもちろんでございますが、第二次大戦では全然戦争に介入しなかった国であります。従って戦争というものがなかったから身体障害というようなものが起こる要因が非常に少ないわけであります。また広大なところでございまするし、日本とかアメリカのように自動車で事故が起こるというような要因も、アルゼンチン相当車も多うございますけれども、ああいう広大なところで、道が相当広いというようなことで、一般的に身体障害が起こる要素が少ないわけです。従ってそういうところが一%であっても、これは日本の一・五とか一・三よりは実態に即してはるかに身体障害者雇用度が多いと言えると思います。そういたしますると、やはり日本と比較しなければならないのは、戦争身体障害者が起こる要因が多かったあるいはほかの要因で起こる要因が多い、そういう国と比較をしなければならないと思います。そういう意味で、ユーゴの一〇%、西ドイツの八%あるいはまたイギリスの三%というようなところは、日本の今のこの法案からしてはるかに程度が高いわけです。私どもは即時これをオーバーするようなところまで、少なくともイギリスをオーバーするところまでしなければ、今まで問題がなおざりにされていただけに解決できないと思いまするけれども、まあまあ漸進的というような政府立場を加味して考えましても、それに近いものにしなければ、少なくともイギリスぐらいの程度にしなければ問題が推進できないと思いますけれども、それについて政府側の御見解を伺いたいと思います。
  6. 松野頼三

    松野国務大臣 八木委員御指摘の通りでありまして、私たちイギリスよりも上にしたいと考えております。従って、今回の雇用量設定は、さしあたり初年度において〇・七五—今日の現状が〇・七五ぐらいでありますから、これを倍にして一・五にしたいというのが初年度であります。その次にはやはり一・五が三%になるということを目標にしておりまして、今回特にこの法案に何%と書かなかったのは、基準をだんだん上げていきたいという趣旨のもとに、私の念願は少なくともイギリスの三%より上に持っていきたい、しかしいきなり法律初年度に書くのは現実にむずかしい点もございますので、さしあたり初年度目標は今日〇・七五の比率がございますから、これを倍にして一・五というものを初年度計画をいたし、それから次年度においてこれが三%という目標に進んでいきたいという意味で、私も気持としてはイギリスの三%を下らざる範囲においてこの対策を恒久化して参りたいと考えております。これは趣旨説明の当時からそういうふうな御答弁をしております。なお、比率の高いところはいろいろな国柄がございます。あるいは軍人に対する国民感情というのもおのずからございまして、軍人優先という感じの国では一〇%ぐらいのところもございます。イギリスでは特に軍人という感じは抜きにして、やはり日本と同じように身体障害者というだけで大体三%程度のものをやっておられるようで、これは国柄特殊性も多少ございますが、平均しまして三%というのはやはり常識的に身体障害者の中に吸収できるのじゃなかろうか、実は私もそういうふうな感じを持っております。
  7. 八木一男

    八木一男委員 初め一・五にして、あるいは民間は一・三にして、しかしそれはならしてのことで、現業のところは少し少ないような御計画ですけれども、翌年度では三%あるいはそれ以上にするということであれば、非常に——非常にじゃありませんけれども、けっこうですが、やはり翌年にするとしたら、翌年にそういうふうなことをするということを明らかにしておいていただきたいと思う。そうでないと、使用者側なり、あるいは公的機関使用者側でもそういうことはあるけれども経営者立場からはどうもあまりやりたくないというようなことで、ずるけ、なまけるというようなことが起こる。一・五ぐらいとか、一・三だから一ぐらいでごまかしておこうというふうに考え使用者がないでもないというところが相当出てくる。その次に三にしたときには、その差が一・〇であったときには二・〇と大きいわけです、そこでその間に雇用促進されない身体障害者の不幸はもちろん減少しないわけでございますが、それとともに受け入れ態勢側としても、最初一・五、一・三ぐらいで、これが二、三年続くというような考え方でなまけている。今度は翌年いきなり三になったというときには、受け入れ態勢側もなまけたせいではあるけれども、それをほんとう計画に合わしていくにはやはり苦労が要るわけであります。初めからこのくらい階段を上がらなければいかぬのだぞということを示しておかなければ、どちらにとっても困る。そういう意味で、一年目に一・三、一・五だったら、二年目に三と三・五にする、三年目にはさらに上回るというような御計画があるんでしたら、やはりはっきりしておいていただいた方がいいと思うのです。
  8. 松野頼三

    松野国務大臣 大体第一次計画として〇・七五を一・五にすることは、少なくとも国家機関及び地方機関各省間においては一致をしております。従って、一・五の第一次計画というのは、この法案提案の当時の一つ目標として政府部内で一致しておるわけであります。それが第二次計画として三にする計画を早く出せばいいじゃないか、御趣旨通りであります。たまたま実は雇用経済計画というものをただいまやっております。この中には雇用経済計画というものが十カ年計画でいわゆる倍増計画をやっておりますので、この中の雇用計画策定がきまりませんと、将来の身体障害者吸収計画がきまらないわけであります。従って、それ以上のものは、実は経済成長及び雇用成長というものに合わせて何年かに三%にするという計画を私はきめたいと思っております。しかしながらただいま政府部内では経済成長計画雇用計画というものをまだ発表しておりませんが、計画を立てまして、その雇用量の増大に応じて一・五以上の計画を私は何年計画にいうものできめて参りたい。本年の第一回の一・五までは各省は一致しておりますけれども、それから先の第二次計画は、実は長期経済計画と合わせてやりませませんと、各省とも空論だけではいけませんので、やはり経済雇用成長率に応じて今後やっていかなければなりませんが、それには暫時雇用計画経済計画というものを見た上でないと、それから先は立たない。私は少なくとも第二次計画は三%にするように、それもなるべく延長せず、短かくするようにしていきたいというように考えております。大体基本的な経済計画雇用計画がきまった上でやりたいと思っております。経済計画策定もわれわれは準備しておりますので、今年中には全部でき上がるので、その上でさらに今度は身体障害者吸収率もきめて参りたい、こう考えております。
  9. 八木一男

    八木一男委員 そういうようなお考えもあろうかと思いますが、全体の雇用計画と、その中の身体障害者雇用率の問題はぴたっと直接に結びつく問題ではないわけです。やはりこういうような障害のある人が勤労の場がなくて困っておられるという問題は別個に先に推進されてしかるべき問題だと思うのです。そういう点で、労働大臣はさらに積極的になっていただいて、雇用計画がきまるときに入れていただくのはけっこうですけれども、その前に、雇用計画のときに十分に勘案されるように——政府部内でそれと一緒にやってもいいけれども、それに関連なしにでも、とにかく翌年は三%以上にする、さらにその後はその倍にするのだというような御推進をぜひ願いたいと思うのですが、それについて……。
  10. 松野頼三

    松野国務大臣 八木委員の御趣旨のように、私もこの法案通りましてから——本年の一・五は大体提案の当時各省一致しておりますが、この法案通りましたら、さらにこれに応ずる計画をさっそく推進して参りたいと思います。いかんせんまだ法案審議中でありますので、各省ともいろいろな意見もございます。しかし法案通りますれば、この法律条項に従って各省もそれをもっと積極的にやらざるを得ませんので、願わくは法律通りましたら御趣旨のように早い時期に三%計画を実施して参りたい、こう考えております。
  11. 八木一男

    八木一男委員 これは審議中でありますが、もちろん労働省のこれを出された御趣旨なりはよくわかりますけれども国会審議でこれはもう少し進めた方がいいというようなことになり、率をもう少し高めようということがこの委員会なり、国会全体の意思としてそういうふうな傾向になりました場合には、雇用促進に熱心な労働省とされましては、国会論議一緒になって、各省が理解されるように、たとえばこの率が上がりましたときには、いろいろお立場はありますけれども、実質的にそれがよくなるように、この国会の場でもぜひ御努力願いたいと思いますけれども、それについて御所見を伺いたい。
  12. 松野頼三

    松野国務大臣 私はこの法律が通過しますと、やはり順次そういう問題が進めていけると思います。ここに百人以上の労働者を使用する民間工場あるいは職種を指定します。そうしたときには、いろいろな議論があるようでありますが、雇用率をふやそうと思えば労働大臣の指定する職種をなるべくふやしていけばいいのですから、行政相当今後の推進はできる。今考えております以上にいろいろな職種を指定すれば、それだけふえるのですから、一・五というのは政府機関すべてが一応きめたので、民間の方はこの法律通りませんと、実はまだ強い協力は得られないが、今度はこの法律であくまで義務ですから、これが通りますと民間産業は今度はしようというので、八木委員のおっしゃるような推進行政相当上がると私は自信を持っております。
  13. 八木一男

    八木一男委員 御答弁非常にけっこうですけれども、私の申し上げたこととちょっと違っております。私の申し上げ方が言葉が足りなかったせいですか、実は実質的にと申し上げたのは、国会審議の場で、こういうことについて政府案と反対ではないけれども政府案をさらに推進するような修正運動与党なり野党なりが一致して出ました場合に、往々にして今の法律のところでは、各官庁はただ法律を出したという面子にとらわれて、その精神が前進する場合もブレーキをかけられることがある。ほんとう政治家である松野さんはそういう立場をおとりにならないと思いますけれども、やはり政府与党なりいろいろな御関係があると思いますので、その場合に表に立たれることは無理かもしれませんけれども、実質的に原案通りよくても悪くてもそうしてくれというようなブレーキをかけられないで、この法案自体がこの国会の場で前進することを実質的に御協力を願いたいということなんです。
  14. 松野頼三

    松野国務大臣 まだこの法律がなまぬるいから、もっと修正をして、もっと労働大臣をバックしてやれという御厚情かと存じますが、ただこれは行政をやりますときに、相当強い義務的なものを課せられても、それが実行できないようなことは非常にまたこれも困ってしまうのです。私はいろいろなことを考えて、今回の法律案日本では初めての問題ですから、私もできるだけ前後左右上下を見て、これなら一番最高だと実は思っております。実は私も気持としてはこれ以上強い案も出したい。出した結果、じゃこの法律が実行されないときはどうなるか、といって罰則をかけることはできません。そうすると何のことはない、法律はできた、そうして雇用者はそれをなんのかんのと言って拒否するということになると、結局あぶはちとらずになってしまうと困る。従って実行できる一番強い案を私は出したつもりなんです。どうか一つそういう意味で、修正ということは一回これを通して実行の上で、なおかつ疑義があるならば政府修正案を出しましょうし、皆さん方から修正案が出てもけっこうですが、さしあたりこれは第一回ですから、雇用者の方も非常に不安を持つ方もおられるのだから、そういう不安をなくして円満に運営していきたいという意味で、あまり修正されるということは、私は公平に言ってきついのです。またそれには、自信がないのです。私は何も政府案を固持するわけじゃありません。実際私はいろいろな場面を考えて、幅のある言葉も書いてある。行政でしようということになっている。それをこうしようということになって、それが実行できるかというと、私はこれは最高だと思っております。これは何も政府案を固持するとかどうとか、政策とか、党の面子を私は言うのじゃありません。これは身体障害者ということはどの党においても同じ立場です。ただその感覚——義務づけられることを行政でやることには努めなければならないと思います。その感覚が相違があっても、私はこれがほんとうに一番よい案だと思う。今日はこれ以上やられても、私はこれはなかなか実施がむずかしいと思っております。
  15. 八木一男

    八木一男委員 いろいろお立場があって苦心して御答弁なさっておる状態はわかるわけなんです。これはもしそういうようなことになったときには与党の方も御一緒にしなければ通らないことでございますから、そんなに飛び離れてぽんぽんと離れたことにはならないと思いますけれども身体障害者雇用促進に熱心な方がいろいろと論議をして政府の方で苦心されて原案を作られたけれども、それに加えてこれくらいのところはやった方がいいのじゃないかという御意見にもしなりましたときには、国会でそうなったということは、労働省単独で御交渉になったときよりも、諸官庁にそういう計画を作ることにしようという空気を作る一つプラスになると思います。諸官庁がそうなれば民間にもそういう影響がありますし、そういう意味プラス・アルファをつけるというような運動がありましたときに、御答弁を求めるのは無理かもしれませんけれども、今までに間々ありましたような面子にこだわって前進を阻むというようなことが、ほかの省で昔の大臣にありましたけれども、そういうようなことでなしに、ほんとう労働行政が進むという意味で、熱心な大臣としての松野さんの建設的な善意と好意をぜひ一つお願いしたいと思います。これは御答弁いただければけっこうですけれども、御答弁があれでしたら、御答弁をしていただかなくてもけっこうです。
  16. 松野頼三

    松野国務大臣 私は自分で提案したのだから修正されるといやだ、そんな意味でこの法案は思っておりません。皆さん方のお気持があれば、それを百パーセント了承するのに私はさっぱりしております。ただ逆に文章にこだわって現実を無視されるようなことは困る。文章はりっぱにできておっても、現実を無視されるような文章修正は私はかえって身体障害者の方にも御迷惑をかけるということもお考えの上でこの問題を取り上げていただきたい、こう考えます。
  17. 八木一男

    八木一男委員 さらに、先ほどもう済んだ問題ですけれどもイギリス並みでも少し足りない点があると思うのです。というのはイギリスには社会保障相当完備しておりまして、障害年金その他の問題が完備をしておるわけです。従って雇用政策以外の点で身体障害者の問題が解決する部分がございますけれども日本の場合にはそういう点がほとんどないと言われるくらい不完備状態です。その不完備状態であるというのは、そういう人たち社会保障じゃなしに働いて食え、そういうような今の政治状態になっておるわけですから、特にそういう点では身体障害者雇用促進という問題についてほかの同じ状態にある国以上にやっていただく必要があると思う。その意味で、もしイギリスそのままの同じような実質でもこれはわが国の実態としては少ないと思います。  それからもう一つの観点は、雇用促進とか社会保障というような問題は大きな制度ですから、どこの国でも初めのときにはぱっぱっぱっと直さなければなりませんけれども、どこの国でも二年とか三年とか五年とかそういう区切りで階段的に上がるというような実情かあります。それですから結局前の国で低いように見えても、あとの国でそれよりオーバーしたいい制度を作りましても、三、四年するとほかの国がまた改正して、低くなるわけです。ですから改正のときにはほかの国のバランス以上によくしておかないと、全体的に問題がおくれるということになろうかと思います。そういうような意味で、これは率の問題だけではないかもしれませんけれども、改正のときには——現状に合わせたというお考えがございますけれども、その点と別に相当勇敢にやられても、それでほかの国のベースと同じになるということになろうかと思います。そういう点でぜひこの問題の推進にさらに強力にやっていただきたいと思います。  それから具体的な問題といたしましては、一・五とか一・三にするという場合に、これをまた来年度三にするというような場合に、今までの量はこれだけじゃないわけですから、これから新規採用についてはそれ以上の率を持っていかないと早く全体に対するそういうパーセンテージにならない。そうしますと、新規採用者中の何%を身体障害者を使うかというような考え方を入れていただかないと問題が進まない。その点についての労働大臣のお考え一つ伺いたい。
  18. 堀秀夫

    ○堀政府委員 だいまの問題は先生が御指摘の通りであると考えます。現在において官庁が大体〇・七%、民間が〇・六五%くらいの雇用率でございます。これを一・五%程度にするためには、新規採用者につきましては相当の高率をもってしなければ、全体としてこのような率にならないということになりますので、そのため官公庁の場合におきましては、各官公庁において採用計画というものを作りまして、そうしてそれを政令の定めるところによって労働大臣に協議もしくは通報させるという手続をとらせまして、労働省でこれをチェックしていくということにいたしたいと思います。民間につきましても安定所長は採用計画を作成するということを事業主に命ずることができることになっておるわけでございます。この条文を活用いたしまして、新規採用計画を立てて、それを通報を求めるというような方法で規制いたして参りたい、こういうことによって現在の〇・六五%ないし〇・七%をまず倍増させるということを最初計画にしたいと考えておるわけでございます。
  19. 八木一男

    八木一男委員 そういうふうな新規採用者の率をふやして至急に一・五とか一・三、また来年あたり三ぐらいにするというようなお考えであることを伺って、それは非常にけっこうだと思います。ただその率は相当高くないとそれは達成できないと思いますし、それから今労働大臣が言われましたように、一・五、一・三は出だしだから、それで来年にでも三にする、さらに上にするというようなお考えは当然だと思いますし、正しい考え方だと思います。そういたしますと、やはり今の一・五、一・三を実現するためにも早くしてしまわなければ次の計画がおくれますから、少なくとも身体障害者のことを考えたら、今までにそういう雇用促進の十分な手が打たれておらなかったのですから、一〇%以上とかそういうような新規雇用率考えていかないと問題が進まないと思いますけれども、それについてのお考え一つ承りたいと思います。
  20. 堀秀夫

    ○堀政府委員 この法案が成立いたしましたならば、われわれといたしましては、さっそくこの法案に規定してあります身体障害者雇用促進審議会、これを招集いたしたいと思っております。それからそれと同時に各官公庁、これも今まで事前の予備協議はいたしておりましたけれども、さらに法案がいよいよできたということになりますると、それを実行する段階になるわけでございますから、この法案が成立いたしましたならば、至急にそのような手続をとりまして、関係者の意向を十分聞きまして、われわれの考えておる理想を一歩でもよりよく前進させて参りたい、このように考えております。
  21. 八木一男

    八木一男委員 その雇用計画のときに、一〇%以上になるようにぜひ一つ御配慮を願いたいと思いますけれども、それについての御意見を伺いたいと思います。
  22. 堀秀夫

    ○堀政府委員 これは現在身体障害者雇用しておる状況が、各官庁もしくは専業所によっていろいろの違いがあると思います。いずれにいたしましても目標をただいまのような倍増、総人員に対する身体障害者の率を倍にする、名官庁もしくは事業所ごとに大体倍を目標にするということになりますので、その事業所なり官公庁によりまして新規採用の率というものはそれぞれ違ってくるわけでございますが、われわれといたしましては、先生の御趣旨のような線に沿って、なるべく一歩でもよりよき方向に向かって新規採用計画が立てられまするように推進するつもりでございます。
  23. 八木一男

    八木一男委員 その勢いでぜひやっていただきたいと思うのですけれども、とにかく来年あたりから三%に推進していただくわけですから一・五は一年くらいで完成しないと次の計画が結局おくれますから、そういう点で非常に勇敢にやっていただきたいと思います。勇敢にやっていただきませんと——今までこういう法案が出ておりません時でも身体障害者雇用促進を申し合わせてやっておられましたけれども、非常に少ないものしか採用になっておらないわけです。たしか四%くらいだったと思います。特に推進しなければならない官公庁の方で去年あたりですが七百五十人くらいしか採用になっていないわけです。そういうことでパーセンテージとしてははるかに低いのです。今までも雇用促進の措置はとられておりながらそういうことになっておる。これは五島委員の御質問にもございましたけれども、今の官公庁の〇・六九%という数字は、そこ自体に勤めておられた方が戦傷を受けたり事業場で労災を受けたり何かしてこうなった方、それで〇・六九になっておるわけですから、新規採用者については相当強力にやられませんと、そういうことが推進できないと思います。ぜひそれを強力にやっていただきたいと思います。  次に、この条文上でいろいろと、たとえば十二条の2で「適正な実施に関する事項を勧告することができる。」というような文言がございますし、また十四条では、著しい困難を伴わないと認められたときにはその計画の作成を命ずることができるというような文言になっておるわけです。十二条の二項の方の、特に必要があると認められたときには身体障害者雇用計画の作成を任命権者に対してその適正な勧告を行なうことができるというふうになっておりますけれども、こういうふうな言葉では実際に非常に進まない。弱い文言にすぎると思うわけです。特に必要があると認めなくても、必要があるというときにはそういう勧告を実施しなければならないと思いますし、勧告を行なうことができるという言葉では非常に微温的であって、少なくとも行なわなければならないというような言葉にしていただく必要があると思うわけであります。また第十四条の方でも同じことでございまして、著しい困難というような言葉では、著しくないという判定でそれが実施されないことがございますし、それから「することができる。」ということだと、現状のむずかしさに負けてしないでしまうことがあるわけですから、やはり勧告しなければならないという程度なものになさらないと実効が上がらないと思うわけでございますが、それについての御意見一つ伺いたいと思います。
  24. 堀秀夫

    ○堀政府委員 官公庁及び民間に対するところの採用比率に達するための措置でございますが、十二条及び十四条では事後の問題につきましてこのような規定を、設けておるわけでございます。実は十一条の本文におきまして、官公庁の場合には政令で定めるところにより身体障害者の採用に関する計画を作成しなければならない、こういうふうに義務づけております。そうしてこの政令によりましてこの計画を作成する前に、あらかじめ労働大臣に協議もしくは通報しなければならないというような規定を設けるつもりでございます。ここにおきまして、われわれ労働省といたしまして、適当か適当でないかという点を事前に把握いたしまして、その段階において各省に対して意見を言う。あとその計画ができましたならば、この十一条におきましてこの計画を作成しなければならないとありますが、この計画を作成することは、その職員の数がその身体障害者雇用率を乗得てた数以上となるようにするために計画を作成しなければならない、こういうことになっておるわけでありますから、労働大臣に連絡協議いたしまして、その上でこの計画ができる。これは実行する義務を負うことは当然でございます。われわれといたしましては今のような考え方でやっていけるのではないかというふうに考えております。さらに、それを万一実行しなかったような場合には十二条で勧告できる。これは言わずもがなの規定でございますが、つけ加えたわけでございます。
  25. 八木一男

    八木一男委員 ただいまのような観点で言うと、前のようにされなければならないと書いてあることはけっこうでございますけれども、あとの方により以上強力な規定が必要だと思う作成義務があってそれを実施しないのでは話にならないのであって、こういうことをしますよというような宣伝だけで実施しないのではしり抜けなんです。実施のところは強力に縛らなければならない。そこで「持に必要がある」ということだと、「特に」ということで——松野労働大臣や堀職安局長は御熱心でおられるけれども、これは松野さんが総理大臣になり掘さんが次官になられるというようなことになって、いつほかの方にかわるかもしれない。そういう場合に、今は「特に」と書いてあっても、必要なときはどんどんやるんだ、「できる」と書いてあっても絶対やるのだというお気持はお持ちでしょうけれども、立案した人と違って、人が違えばぼやっとしてしまって、この言葉通り読んで、一応は言ってみるけれども、相手側の抵抗が強ければ、めんどうくさいからこのままにしていこうということになりがちなんです。ですから、法律を作るときには、特に念には念を一入れた方がいいのです。特に実施について強く縛らなければ、計画だけできても身体障害者は何も助からないのですから、この点で十二条の二項あるいは十四条というものをもっと強く縛っておかれる必要があると思う。それについての御意見一つ
  26. 堀秀夫

    ○堀政府委員 この十三条の二項は、他の法律にもこれに似たような例がございます。名官庁問の問題につきましては、たとえば鉱山保安法等で労働大臣の通産大臣に対する勧告規定を設けております。しかしこの法文に基づく勧告という問題は、これはいわば形式的なものでございます。それで、この十二条の二項は、今までのいろいろな法律等にあります例にならいましてこのような規定を設けたわけでございますが、結局問題は、名官庁計画を作成する、その計画が適当であるか適当でないかという点が最も問題になるわけでございます。これは、十一条におきまして、政令で定めるところによって、計画を作成しなければならないと書いてございまして、政令ではわれわれは先生の御趣旨と同じような規定を設けるつもりでございます。その面で規制をいたしまして、この計画を作成しましたならば、その計画は結局一定の雇用比率以上にするために作らなければならないわけでございますから、名官庁としては当然義務があるわけでございます。そういう意味でわれわれは十二条をこのような形式にしたわけでございます。いろいろ形式的な問題について御意見があるとは思いますけれども、われわれとしてはただいまのような気持でこの条文を書いたのであるということを御了承願いたいと思います。なおこの勧告等につきましても、われわれは身体障害者雇用審議会をさっそく招集いたしますから、どういう場合には勧告をしなければならないかというような基準も作りまして、協議会の御意見を伺った上で、それに基づいて十二条等の措置も行なうようにいたしない。決して労働大臣もしくは職業安定局において、相手の出方を見て、非常に強ければやらないのだというような恣意的なものにならないように、その点は政令を定める場合、それから基準事を定める場合におきまして、はっきりと規定いたしたい考えでございます。
  27. 八木一男

    八木一男委員 鉱山保安法の例を言われましたけれども、あの勧告は——私、知識は少ないのですけれども、出されたのはたった一回ぐらいしかない。ですから非常にしり抜けなんです。そんなものは、もっともっと出されていい事態がたくさんあるわけです。ですからこれは松野さんや堀さんの善意と努力と熱意は認めるとしても、やはり法制上はしっかりしておかないと、どんななまけ者が労働大臣や職安局区長にならないとも限らないということになるわけですから、やはり初めにきっちりとやっておく必要がある。前段の十一条で縛っていただくことは最もけっこうです。ですけれども実施のところで縛らなければしり抜けになってしまう。しり抜け法案では、労働省としても、御自分でもあまり御満足にならないことではないかと思う。そういう点ぜひともそういうように変える必要があるとわれわれは思うのですけれども、これは政府側立場ですから、今、雇用審議会会の方でそういう規定を作られるのだったら、厳重に作っていただくよう、それから労働省行政としては「特に」という文句とか、あるいはまた十四条の「著しい」というようなこととか、「できる」ということに縛られないで、ほんとうにそういう問題の促進されるような行政を断じてなさるような基準を雇用審議会で作るようにしていただかないと困ると思うその点についての松野労働大臣の御意見を伺いたいと思います。
  28. 松野頼三

    松野国務大臣 各行政管庁より地方及び国の行政機関に対しましては、実は作成をする義務を負うということが非常に大きな義務であります。これに違反したらどうだ、ごもっともな話でありますが、行政官庁同士の違反ということは、勧告というのは、一番きついというか、各省間にしてみればこれは相当なものであります。一つの役所から一つの役所に勧告を受けるということは、これは非常に大きな制約だ。むろん行政機関ですから、罰則をどうのこうのという以上に、勧告を受けることは非常に大きな義務であります。従ってこれは鉱山保安法の例をとられましたけれども、鉱山保安法の、勧告ができる、というあの勧告は、通産省から見て一番頭の痛いことなんです。従って勧告を受けないように、保安法に沿うように厳重にやる、なおそれでも怠った場合は勧告を受ける。勧告を受ければその結果を必ず労働大臣に報告しなければならない。勧告によってこういたしましたということは、行政官庁同士から見ればずいぶん大きな罰則なんです。従って行政官庁同士ですから、いわゆる罰金とかいろいろな罰はないにしても、これは非常に大きな罰則です。一方から一方に勧告を受けるという法律文章身体障害者においてはその一番きついやつを入れたわけで、各省間には勧告というのは非常に大きな罰です。従って人命及び非常に大きな被害のある鉱山保安法にだけこれが入っているわけです。そう年中あるものじゃない。各省に対して勧告をするということは非常に少ないのです。従って私は、行政機関同士においての勧告は最高罰則だと言ってもいいくらい各機関ともそういう気持でこの勧告というものを考えておるわけでありますから、私はこれ以上に書くということはなかなか無理じゃないだろうか、またむずかしい、ことにこの性質からいってむずかしいと実は思っております。
  29. 八木一男

    八木一男委員 そういうふうに、勧告を受けるということは、諸官庁から見れば非常に大きな打撃であるだろうと思います。今この管庁同士のつき合いといいますか、そういうものからいって。それだけに各官庁の局長さんから局長さん、次官さんから次官さん、あるいはまた大臣同士で面子がありますから、そんなことは出さぬでくれよという話し合いが行なわれると思います。そうなったときに、鉄壁の意思を持っている労働大臣とか職業安定局長じゃないと、やはりおつき合いにいって、これは「特に」ということにならないというようなことで勧告をしない。「できる」ということになっていて、しなければならないことになっていないから、しなくても別に法律的にめちゃくちゃに突き上げられないというようなイージー・ゴーイングな考え方、おつき合い的な考え方から問題が推進できない危険性があると思う。それで特にやはり縛る必要があるので、「できる」という言葉法律的に——私は法律のことは知識が少ないのですけれども、できるというのは今この内閣の法制局の慣用語らしい。これは最もけしからぬ慣用、習慣です。できるといっているけれども、心はり役所の方の権威を保つような考え方がここに残っているわけです。できるといって役所の方がしたいときはする、したくないときにはほうっておいてなまけても大丈夫というようなことで、お役所は権威があるものだから、するときは必ずやる、したくないときにはしないという考え方で立てられた条文であって、こんなものは非常に封建的な旧時代的な書き方だ。それを内閣法制局の連中は、こういう前例があるからこういうふうに書きましょうということを必ず言う。松野さんや堀さんは、おそらくしなければならないという考え方でこられたけれども、法制局に回してみたら、どこでもこういう文章を書いていますよということになってしまったのだと思うわれわれは法制局で法制を作るときにいつでも言われる。ところがそれではいけないのだと言えば、国会の法制局はしなければならないと書くのですが、内閣法制局は前例々々というようなことでやってしまうこの前例は、やはり役所は絶対に間違いないが、絶対に怠慢がない、絶対におつき合い的なことでぼんやりしないという建前でやっておるのですけれども、役所も人間のことですから、そんなにすばらしい人ばかりがいつでもいるわけじゃないのですから、そういうことで行政的に停頓する。それを法制局の連中が頭の切りかえが悪いから、前の通りやっておればつつかれたときも前にありますからということで大丈夫だ。新しいことをとやれば、それをやるときには確信を持って答弁しなければならないから、つつかれたときに困るから、そのくらいでやっておけということで、できるならば前例でありますということを必ず言う。それが法制局全体の空気です。法律をしっかり作らなければならぬ機関である法制局が、そんな空気になってしまっては困る。そういうことで、その点はしなければならないということにすべきだと私は思う。これは松野さん、堀さんにそういうふうにしますという御答弁を期持することは——していただけば非常にけっこうですけれども、今の論議ではなかなかそういう御答弁は期待できないと思いますが、少なくともそういうような危険性のあることだから、松野行政やあるいは堀職安行政のもとでは、断じてそういう条文であろうとも特にというようなことでルーズなことはしない、しなければならないという意味ですることができるというのを解釈してどんどんやる、絶対にやる、そういうふうな決意を持っておられると思いますけれども、それについての強力な意思を表明していただきたいと思いますし、それから雇用審議会の方でそういう基準をやはり行政的に作られるというお気持を表明していただいておきませんと——それでも私どもは安心はできませんけれども、そうじゃないとちょっと困るので、その点で松野さんから一つ強力な積極的な御答弁を願いたいと思います。
  30. 松野頼三

    松野国務大臣 これは勧告することができるとこうかりに書いたといたしますと、行政はどうなるのだということですが、要するにこれはそれだけの雇用率を設定して、それを実行させることがねらいでありまして、勧告することの方がねらいじゃないはずです。従って勧告することができる、勧告しなくてもそれを実施してくれれば、勧告よりも実は実施の方がねらいでありますから、やってもらえるのじゃなかろうか、勧告さえすればいいというのじゃなしに、勧告しなくても、もしそれを実施してくれるなら、それに越したことはない、私がかりに行政を預ったときにはそう思います。その場合、大体計画策定するときには、これは守るのだという約束のもとで策定をするわけで、それをどうしても守るのだ、こう言えば、おそらくそれは守らないでいいとか、ごまかすということは役所としてあり得ません。一番役所の弱いところは、法律に関しては絶対で、これはだれがどう言おうと、法律に関しては役所は一番忠実なんです。妙な法律でも忠実過ぎることがあるので、よく官僚的だという言葉が出るくらいです。法律に関しては官僚あるいは役所は絶対です。従って絶対に作成しなければならないということは、これは法律ですから、どうしてもやる。やった以上、守らなければならぬことは当然で、もしも何かのことで守らない場には勧告するぞ。勧告するということになれば天下に周知する。労働大臣が勧告すれば、閣議でお宅の役所はこれる守りませんよと言えば、これはなかなかきついことなんです。そういうことは行政上においては非常に大きなブレーキというか、罰であります。従って勧告することができるから守らなければ勧告するぞ、こう言えば、どの大臣も必ずそれはやるよと言うにきまっていることなんです。守らなければ、閣議で私が大臣法律を何省は守ってくれぬじゃないかと言えば、これは非常な罰です。従って年じゅうそればかりやっていたずらに摩擦を起こすよりも、勧告するぞ、早く守りなさいという方が私は強みがあると思うそれで勧告しなければならないということで勧告する、するとそれに反発するというわけで、そういう文書が往復するだけであっては意味がないじゃないか。私はそう考えて勧告をすることができるということで、そう勧告しないでもいい、その方がベターな行政だと思う。どうしても悪質なものがあったときには勧告するぞ、こういう意味ですから、勧告がねらいではなしに、雇用率をそれだけ守らせることがねらいですから、これで私は行政上十分だと思っております。それをまたあまり年がら年じゅう勧告しなければならぬということで勧告文書を乱発する、それに対してまた反発文が乱発されるということで、往復文書が乱発されるのは行政上円満なことではないだろうということで、行政官庁間においてはこういうものは慣例かどうか知りませんが、私の気持はそれで十分だと思う。ことに鉱山保安法のようなきついものでさえ、やはり勧告することができるという条文で十分やっている。それでもなかなか勧告はやっておりません。やらないのは、勧告しないでも労働省の意向を守るからということで、それで通産省は十分守っていただいております。勧告文書の乱発、それに対する往復文書の乱発ということでは意味がないので、私は勧告しないでも、勧告するぞと言えば、守ってもらえる、行政というものは大体そんなものだと思う。また役所間において法律をたてにとってやれば、どの役所でも、あれほどきつい大蔵省の主計局でも法律というものに対しては絶対ですから、ましてやほかの役所、ことに問題が身体障害者という問題ならば、どの役所でも守ってもらえる。実は雇用率の作成のときに非常な議論が出るわけで、作成したあとはあまりおそろしくない。作成のときに議論の出ることがこの行政上の一番大事なところではないか。しかし作成すれば必ずやれると思います。従ってそのあとの罰則よりも、作成の方に一番義務づけをしておるということがこの行政の一番のポイントではなかろうかと考えております。
  31. 八木一男

    八木一男委員 松野さんは非常に御熱心らしいのですが、何か法律条文を変えてはいけないというようなことで、非常に巧妙な御答弁をなさるので困るのですが、これは作成自体も非常に不十分です。たとえば率をはっきり三%とか五%とかきめて、それを何年間でやるために毎年何パーセント以上を雇用するというものを作らなければいかぬし、作ったものを実施しなければならない。そこまで強力に縛らなければほんとうはしり抜けだと思います。雇用計画の作成のときにそれを労働省に相談するということになっておりますから、労働省が熱心である限りにおいては相当実効が上がるだろうと思いますけれども、そこでもやはり抵抗がある。だから率をぱちっときめてしまって、これ以上の計画を作らなければならぬということで計画をはっきりきめて、その計画の作ったものを必ず実施しなければいけないと法律に書いておけば、法律に非常に弱い役所ですから順守する。そういう点で、一番大事なところでしり抜けがあるわけですから、その点は非常に不十分です。私どもが作るとすれば、その点を作らなければいかぬと思いますが、その点はさておいて、そういう状態ですから、そういうときに今度は勧告することができるということで実際にやってくれるであろうということでは少しぬるいですから、少なくともこの法案がそのままもし通ったとしたならば、これはやはり特にということでなく、必要があるときにはぴしぴしとやる。それから勧告することができるという文言になっているけれども、勧告しなければならないということで、法律に縛られたような気持で積極的にやる。その前にそんな勧告をしないでもやらせるような努力は、これはもちろん労働大臣政治性で、熱心なお気持でやっていただいて、勧告しないでもぴしっとやる方がいいことは間違いありませんが、それでもやはり怠ける官庁もあるだろうと思いますから、官庁ばかりでなく、公共企業体はまた別な立場ですから、そういうものもありますから、強くやるのだ、絶対にやらせるのだという意思表示をしていただかないと、しり抜けがさらにしり抜けになってしまう。労働大臣のおっしゃるように、しないでもやってもらうという努力をしていただくことが一番肝心ですが、しないところにはきびしくやるのだ、そういう意味で特にではなしに、必要のあるときは勧告を絶対にするのだというような意思表示をこの際お願いしたいと思います。
  32. 松野頼三

    松野国務大臣 八木委員、非常に愛情を持ってこの問題を御理解しておられますので、その立場から非常に強い御指示もよくわかります。私ども法律で年じゅう強いことばかりが必要じゃありませんけれども、しかしねらいは、この雇用の精神を生かすことですから、生かすことには最大の熱意を持って、この法律ができましたら、十分順守いたしたいと思います。
  33. 八木一男

    八木一男委員 私の直前に申し上げたようなことと同じ気持でやっていただけると理解してよろしゅうございますね。
  34. 松野頼三

    松野国務大臣 計画を作成しまして、それを守らないときには十分私が話をいたしまして、できないときにはもちろん勧告もできるのですから、びしびしやるつもりでおります。
  35. 八木一男

    八木一男委員 それから十四条の問題ですが、今度これは民間の問題であります。民間の問題は諸官庁とまたニュアンスが違うと思うのです。これは勧告されたら面子があるからという問題ではなしに、今の日本状態では、ほんとうにさせることをきびしく縛りませんと、やはり商売の工合が悪い、工場の工合が悪いということでなまけがちですから実効が上がらないと思う。これはもっときびしくやらないといけないと思う。この勧告とかいろいろなことは公共職業安定所長が関与する、もちろんそれについて労働大臣最高責任者でありますけれども、直接の指導は職業安定所長です。こういう意味で、これが「著しく」という文言であるとそれがしり抜けになってされない、またしなければならないということにならないと、現場の人が民間の人も無理解な正方に屈してしないという場合が多分にあると思う。それをさっき申し上げました官公庁に対するより以上に問題を推進する強力な態度で進めていただかなければならないと思います。これについて安定局長の御答弁を願いたい。
  36. 堀秀夫

    ○堀政府委員 この職業安定所長の勧告が安定所長個人々々によってどうにでもなる、やってもいいしやらぬでもいいのだ、その人の主観にまかされるということがありましては、熱心な所長のいるところはそれでいいわけですが、かりに不熱心な所長のいるところでは、この法律をせっかく作りました実効が上がらないことになるだろうと思います。私どもといたしましては、この法案が成立いたしましたならば、この勧告につきましてどういう場合に勧告するかという基準をなるべくぴったりと作りまして、このような場合には必ずやるというような態度で運用して参りたいと思っております。
  37. 八木一男

    八木一男委員 十四条の場合に、苦しいというのは、計画の作成の方もそうですか、それについても同様の御意見ですか。
  38. 堀秀夫

    ○堀政府委員 さようでございます。
  39. 八木一男

    八木一男委員 職安局長の御答弁になったこと、労働大臣も同じお気持だろうと思いますけれども一つ……。
  40. 松野頼三

    松野国務大臣 その通りでございます。
  41. 八木一男

    八木一男委員 私どもといたしましては、今のことをすべて計画の中にはっきりした実施の率をきめて、それで作成し、実施義務をきちっとして、そのための罰則規定とか奨励規定とか、そういうものを入れなければしり抜けになると思いますけれども、少なくともこの法案の建前においては、しり抜けにできないように労働省関係ほんとうに強力に推進されるというようなお約束をいただいたものとして、一応法案修正の問題は別としまして、ほかの問題に移りたいと思います。  次に、雇用の率の問題のほかに賃金の問題があります。ただ雇用促進という問題は、量の問題だけではなしに質の問題が入っていることは当然である。そこで賃金が不当に安いものであれば、これは雇用されたというのは名のみであって、半雇用者、半失業者ということになるわけです。賃金については身体障害者福祉法で差別をしてはいけないということになっておりますけれども五島委員質問にありましたように、実際上民間その他の状態では、やはり賃金その他が一般の人よりも非常に悪くなるおそれが多分にあるわけです。それをこの法律の中で規制するようなことがきっぱりときまっておらないということは、その意味で重大なしり抜けであると思いますが、それについての政府側からの御答弁を願いたい。
  42. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいまの問題点は、要するに最近の状況を見てみますると、事業主によって非常に理解がある人は、身体障害者なるがゆえをもって賃金についての差別待遇というようなことをしておりません。しておりませんけれども、中には身体障害者であるというだけの理由をもって、能率その他同じであるにもかかわらず、適当な注意をすれば同じような能率を上げられるにもかかわらず、不当な偏見を持って差別待遇をするというところに問題があるとわれわれは思っております。こういう点についてはわれわれは今後強力に啓蒙宣伝していかなければならないと思います。また法律的な問題といたしましては、ただいま御質問の中にありましたように、身体障害者福祉法において、身体障害者なるがゆえをもって差別待遇をしてはいけないということになっております。でございますからこれに反するような措置がありましたときには、身体障害青福祉法の違反となるわけでございますから、われわれ労働関係の機関関といたしましても、これは是非させるという方向で、進みたいと思っております。これにつきましてこの法律の中にさらにはっきりとそういうような措置を書いたらどうかという御議論もあるかと思いますが、御承知のように現在の段階におきましては、賃金は労使間の協議によって、きめるという一般的な原則になっておるわけであります。これに対する法制的な例外といたしましては最低賃金があるわけでございます。その最低賃金等をきめます場合には、やはり身体障害者なるがゆえをもって差別待遇をするような除外例、これを設けることは理由がなければいけないということで、これは最低賃金法の施行に関しまして中央最低賃金審議会ができまして、その関係の基準も御審議になってきめておるわけでありますが、今のような身体障害者なるがゆえをもっての不当な除外ということはさせない、またこれをやる場合には、監督署長あるいは労働基準局長の許可が必要であるというふうに、許可にしぼっております。でございますから最低賃金の関係においては今このようなことで処理できるのではないか。それから一般的には、結局国が賃金について関与するというような法規はないのでございますが、身体障害者なるがゆえをもってする差別待遇というものについては、これは当然違法でございますから是非する、この方向で進みたいと思います。
  43. 八木一男

    八木一男委員 最低賃金で縛られるとおっしゃいましても、現在の最低賃金は残念ながら非常に低いものであります。ですからこれが十八才くらいの人も解決したと言えませんし、さらに十八才というようなことではなしに二十五才、三十才、子供のある人はそういう場合には最低賃金では明らかに解決がつかない。これは労働大臣も職安局長もお認めになるように、この前五島委員に対する御答弁にありましたように、一万円以下の人が半数に近い、高給者はほとんどないというような状態ですから、実際的に不利な賃金になっておることはだれも否定できないと思う。差別してはならないという条文があっても、それが実際に運行されていない以上、やはり法律的な何らかの規定を置いて、不当な賃金にならないようなことをしなければ問題は解決しないわけです。その点についてはこの法案一つも配属がないわけです。やはり賃金問題が解決するような条文を入れる必要が絶対にあると私どもは思うわけでありますが、それについての労働大臣の御意見を伺いたい。
  44. 松野頼三

    松野国務大臣 今までは雇用者に対する特別な法律というものはありませんでしたから、従って一般雇用の中において、いわゆる非常に不利な立場に置かれた。今回は、こういう法律一つの柱ができますと、雇用者というものはある程度雇用義務づけをされます。それだけ今度は勤続年数とか勤務状況というものが安定するのではないか、今後のこの法律後の採用者というものは安定していく。そうすれば年功加算という日本の賃金制度から見ますると、おのずからだんだん高給者になってこられる。今まではこういうものがありませんでしたから、やはり不利な状況に不利な立場で、不利な仕事をさせられておられた方が多数あったのではなかろうか。今回はこういうものができれば、おのずから今日の賃金体系としては高い給料になってこられるということは、私は当然だと思います。  もう一つは、まだ日本には賃金決定というものを法律できめたものはございません。さしあたって一番明らかなものは国家公務員の給与表で、これを適用されますと、これは身体障害者であろうがなかろうが、そういう差別はありませんから、貸金の一つの決定規格というものができる。国家公務員に関しましては、少しの差もなく今後この運営が賃金に及ぶと私は思います。そのほかは最低賃金法というものがある。これも法律できめまして賃金がきまる。これも身体障害者を除外できませんから、平等な立場に立つ。そのほかには実は賃金決定の法律はどこにもないのです。従って、一般にもないところに身体障害者の賃金をきめるということ自身が実はむずかしくなってくるのであります。どこをどうやってきめるかというと、結局最終的には身体障害者を差別してはならないという身体障害者福祉法のその規定が同じように生きる以外はないのであります。従って、お気持はわかりますけれども最賃法とか国家公務員の給与表というものを今日当てはめますと、今回のものは全部人っておるわけであります。少しも除外とか差別はできません。そのほかに基準法及びすべての労働法をごらんになれば、そういうものは大体できないようになっております。従って、法制上今日あるものにはすべて今回のこの法律は適用になるし、その運営もできる、こう思っております。  なお、能率が悪いのじゃないかというので適応訓練というものをやりまして、その訓練期間中は政府が一人月五千円あるいは千円、合わせて六千円を事業者と御本人に補助して、能力の差をなるべくなくしていこうという適応訓練制度をこの法案の中に入れまして、予算を組んでおりますから、そういうことから自然に本人の賃金の上昇というものを期待していかなければ、いきなり法律で賃金をどうのこうのというふうにきめることは、今すべて賃金法というものがないのですから、従ってこれはむずかしいのではなかろうか。そういうような現行の上に私たちは基準を設けて進む以外にはなかろうと考えております。
  45. 五島虎雄

    五島委員 今この賃金の問題に関連して、二点ばかり質問をしておきたいと思います。先日、私質問をしたのですが、やはり身体障害者雇用法律案提案されるということは、身体障害者雇用の機会均等に浴してない、従ってこれに雇用の機会を与えることが第一であり、そして身体障害者雇用の機会を与えて生活を保障するということが第二の目標であろうと思うのです。そうすると、今八木委員質問されたように、賃金の問題が規定されてないというようなことについては、最低賃金などによって差別をされないようにしようということなんです。現在最低賃金法があるのですけれども、最低賃金決は、やはり今言われたように業者間協定である。身体障害者は何といっても身体に障害がある方ですから、労働能力には差がある。そうすると、一般民間あたりでどれだけ雇用しなければならない、あるいはどれだけの事業所についてはどれだけの雇用していくというようにきまっても、やはり民間の業者というのは、この間もちょっと触れたのですけれども、能率のいい人を雇用して能率を上げて、そして利潤を得よう、これが一般の企業者の考え方であるから、身体に障害のある方を雇用するということは、現実の問題としてなかなか促進できないんじゃなかろうか。従って、この間も例に引っぱり出したのですが、社会党の案ではどうしてもやっぱり差があるから、これを民間同業者に同一の賃金で雇用せよということは、少々ばかり矛盾があるのではなかろうかということをおもんばかりましたから、実際身体障害者のポケットに入る賃金は一般の方たちと同じような賃金が入っていくのだ、しかしこれを民間の業者に対して同一に払えということは、また一部矛盾があるだろう。従ってその差額について、一体どうして補償すべきかというような問題を考えましたとき、どうしてもこれは別途の方から身体障害者の方たちの給与は補償すべきじゃなかろうか、そういうところに思いをいたせば、やはりこれはある一定の差額というものは国が補償することによって生活を保障してやらなければならぬ、こういうようなことを考えたわけです。従って、身体障害者は今まで雇用の機会がない。しかしこれはやはり人道上の問題からでも雇用促進する。しかも仕事をするならば、人間として値するところの生活を完全に保障してやらなければならぬ。そういうような差額の問題をどうするかということを考えて、国家補償、国庫補助、こういうような形をとったわけですけれども、そういうような考え方は政府にはないかどうか。  それからもう一点、関連ですから一緒質問してしまいますが、身体障害者の方たちで仕事がない、就職しようと思っても就職できなくて、家庭経済が非常に逼迫する、そうしてたとえば配偶者の方が主人にかわって仕事をするというような場合、その配偶者の方が就職したいと思ってもなかなか就職ができない、こういうような状態である場合、身体障害者の夫の方にかわって奥さんをその会社あるいは官庁に優先的に雇用せしめていくことが、すなわち家庭経済の安定になるのではないか、こういうような私たち考えているわけです。その場合がこれには全然触れられていないわけです。そういうような場合、身体障害者の方たちは気の毒だ、働く意思があっても働けない、そして元気な配偶者の方があっても、雇用の機会がないから、そういうような意思のある方たちに対しては、夫にかわって奥さんを優先的に雇用していく。しかし奥さん方は女性ですから、やはりそこには賃金の格差等々もあるだろう。そういうような場合、一体政府はどういうように考えていかれるかという問題ですけれども、この法律にはそれがないわけです。こういうことについて、どういうように大臣あるいは局長はお考えになっておりますか、あわせて関連して質問しておきます。
  46. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいまの五島委員の御指摘になりました点、非常に問題があるわけでございます。われわれとしても、そのような問題についてさらに今後研究しなければならない問題であるとは考えております。今回の法律提案につきましてわれわれが考えておりますところを申し上げますと、われわれは基本的な考え方といたしまして、身体障害者であれば一般の者に比べて能率が落ちるのだ、このような考え方をむしろ打破していかなければならないと思っております。われわれただいま全国の職業訓練所、それから身体障害者職業訓練所、ここで身体障害者に対する職業訓練を行なって、その就職をお世話しておるわけでございます。私どもが実際に扱っております体験からいたしますならば、身体障害者でありましても適職について、あるいは必要な場合には保護具等を使いまして補って参りますれば、一般の人と区別される理由はないのではないか、能率の点においても一般人同様の能率が上がるというふうに思っております。この点につきましては、要するに使用者側において、こういう点の研究が足りないというふうに考えます。今回の法案におきましては、そういうような問題について、労働省その他関係機関において、そういう点の研究を行なって、使用者に対して指導を行なうということになっております。でございますから、私は考え方としてはあるいは一般人の賃金の八割を支給しなければならないというような制度も考えられるとは思いまするけれども、それはかえって身体障害者立場から言いますると、おかしな問題になっていくのではないか。私はやはり身体障害者というものは、適当な訓練を受け、適当な施設、適職において働かしてもらいますならば、一般人と変わらない能率は上げ得るものである。これはわれわれの体験からしても、そのようなことは言えるわけであります。そういうような基本的な考え方に立って、この法案を作ったわけであります。しかしそれにもかかわらず、雇用主が同じような能率が上がっておるにもかかわらず差別待遇をするということになれば、これは身体障害者福祉法の差別待遇禁止の原則にも反するものでございます。そういうような場合にはどうするかということでございますが、この法案にも職業安定所は、その求人者に対して求人条件について指導をするということを明示しております。この点において、まずわれわれが行ない得る余地はあるわけであります。それから次に労働基準法の面におきましても、就業規則法令に違反するような場合においては、法令違反してはならないということが、御承知のように基準法の九十二条にはっきりと書いてあります。それから法令に違反するような就業規則については監督官庁は変更命令を出すことができるというような根拠規定もあるわけであります。これらを併用して参りますれば、われわれの考えておるところが達成できるのではないか。しかしこの問題は法律だけで参りましても、なかなか解決がつかない。結局私が最初に申し上げましたように、今の経営者の一部に、身体障害者というものは何か一般人に比べましてとにかく能率は上がらぬ、だから低くするのだ、こういうような偏見を除いてもらうための強力な啓蒙運動が並行していかなければならない。この点についてはわれわれ大いに関係者とも御相談申し上げまして、審議会、協議会等を通じまして、この点を強力に啓蒙して参る、これと相待ちまして、われわれの考えておるところを達成したいと考えております。  それから二番目の問題につきまして、たとえば非常に重度な身体障害の方について、自分では働けないという場合に、奥さんが働くという場合には、それで身体障害者を雇ったものと同じに見なして、雇用比率の計算の際に入れるというような立法例も実はあるわけでございます。そういうような点についても、われわれ検討は十分いたしておるのでございます。そのような考え方もあるのでございますけれども、結論としてこれをとらなかった。なぜとらなかったかという考え方は、要するにあまり芸がこまかくなり過いるのではないかという考えであります。特にまた、たとえば産業災害等によりまして、御主人が大きなけがをされるという場合に、奥さんがかわりに働かなければならない。それを認めるということは、それで成り立つわけであります。そうしますと、御主人がたとえば死亡された場合どうなるか、そうすると寡婦の方なんかについても、同じことが言えるのではないかというようなことになりますと、なかなか制度上、重症の方について、奥さんが出た場合にこれを換算するというような考え方を制度上踏み切るのは、少し芸がこまか過ぎるのではないかというふうに考えまして、われわれは入れなかった。ただ運用につきまして、たとえば雇用比率の達成についての指導、変更の勧告、計画作成に対するところのわれわれの指導というような場合におきましては、ただいまのような場合は、これは現実問題といたしまして、十分運用に取り入れていくということも考えられるのではないか、こういうような点は、身体障害者雇用審議会等ともよくお諮りいたしまして、関係者の御意見も聞きました上で法律と並びまして雇用がうまくいきますように、われわれとしては考えて参りたいと思っております。
  47. 本島百合子

    ○本島委員 関連して。今の御答弁を聞いておりますと、芸がこまか過ぎるのではないか、こういうことですけれども現実では重度の障害者の奥さんたちは、内職か何かしかないのです。それですから生活が非常に逼迫してきている。これは現実の姿ですから、運用の面でできるとおっしゃるなら、やはり職安を通してこういう方の奧さんをある程度の適職に向けさせていくというようなことをやってもらわないと、今日の状態ではまずいい職業は得られない、そこで非常な生活困窮に陥っているわけです。ですからそこのところで、この法案にうたうことができなければ、何か職安を通してそういう面の保護を加えてやるということがなければ安心していかれない、こういう点を一つどういうふうに今後されていくか、もう一度お聞かせ願いたい。
  48. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいまの御意見まことにごもっともでございます。われわれはこの法案の施行にあたりまして、重症の方の配偶者あるいは子供さんというような方については適職をぜひ並行してあっせんするようにしたい、これは強力にやらなければならぬと思っております。また運用と申し上げましたのは、たとえば雇用比率等の計算等にあたりましても、重症の方を雇うかわりに奥さんを雇ったのだというような面がありますれば、雇用比率の実際の算定についての指導等にあたりましても、それは現実に即するような親心をもって職業安定所も接してよいのではないか、こういう考え方でございます。機械的に、たとえば重症の方についてその奥さんが働けば、それを一人もしくは二人として勘定するというようなことは、ちょっと芸がこまか過ぎるのではないか、こういう意味で申し上げたのであります。現実の運用にあたりましては、ただいまの御指摘のような線に沿ってわれわれは強力にやっていかなければならないと思っております。
  49. 八木一男

    八木一男委員 実は賃金の問題に入りかけたときに、ほかの委員の関連がありまして、労働大臣の御答弁についてすぐ御質問ができなかったわけですけれども、原則に戻りたいと思います。賃金の問題について立法例がないと言われる、立法例がないと言われるけれども、大体身体障害というものは人間の状態としては異常な状態なんです。異常な状態の人が、片一方に障害年金等が十分になくて食べていかなければならない、暮らしていかなければならない、生きていかなければならないとすれば、これは労働によらなければならない。そうすると、雇ってもらうと同時に、賃金その他の労働条件が十分なものでなければいけないと思います。そういう問題を解決するという気持があれば、立法例がないというようなことでは済ましていけないはずの問題である。そういう点で賃金についての条項が入っていないのは、法律としての重大な欠点だろうと思う。労働大臣が言われたように、あるいは職安局長の言われたように、働いていて、それだけのいろいろの作業につけて、そういうことをやっていけば、十分の労働量があるから十分の賃金がもらえるに違いない、また今低賃金であっても、今まで雇われていなかったから低賃金なのであって、これから雇われてずっといけば年功加算で多くなるという現象はもちろんありましょうけれども、それは物事の一面を見ただけの話で、使用者というものは、残念ながら日本の今の無理解の人の多い使用者は、労働者というものを低賃金で使いたいというような資本主義そのものの性質もありますし、またそれをほんとうにいい意味の労務管理をやっていこうという考え方がなくて、何かの事情にかこつけて、非常に低賃金にして、それだけ搾取をしよう、それだけもうけを多くしようという傾向が今の使用者にあることはこれは否定できない。そうなれば、同じように一生懸命仕事をしても、君は足がどうだから、手がどうだからいろいろなことがうまくいっていないのだという理由のもとに、昇給をはばむとか、最初の採用のときに賃金を低くするということは、現実にはその方が多いぐらいに残念ながら行なわれる。その場合に、やはり賃金についての規制をしなければならぬ。その意味雇用の量の方の面で幾分前進したとしても、質の面では一つも前進しないということになる。そういうふうに、賃金について文句を言うなら、ほかの人を雇おうというような状況にありますから、どうしてもそういうふうになってしまう。そうなれば、やはり賃金についての規制をしなければ、法律としてその面で大きなしり抜けになる。ですから、立法例がないというようなことで、この問題を糊塗されては問題が進まない。これもこの法律に入っておりません。御承知の通り、参考にしていただいた社会党の案には、そういうものは書いてあります。それだけが一つの方法であるかどうかはわかりませんけれども、一生懸命に、わが党のそういう熱心な人が考えた、しかも法制局の手で法律案になったのですから、現行のいろいろな法制の、立法上の体制とそごしないものが一つ例としてあるわけです。労働省自体が本腰に考えられれば、もっといいものが出てくるかもわかりません。そういう点で、この立法に、そういうことをお考えにならなかったのは非常に遺憾でありまするし、お考えになるという考え方で問題を進めていただかなければ困ると思うわけです。その点で一つ労働大臣のお考えを承りたいと思います。
  50. 松野頼三

    松野国務大臣 賃金の問題を一般的にきめることが不適当だと私は申し上げたのじゃありません。今日ある法律には全部入っております。最賃法というのが民間にある。国家公務員の場合には給与法がある。これには全部今回入るので、今日あるので十分だと私は思うという意味を申し上げたのであります。従って、全然不適当だという意味じゃありません。今日ある法制上における賃金決定の問題については、全部今回は入るので、差別はいたしません。従って、私は、これで十分であろうという意味を申し上げたのであります。  なお、先ほどのお話の中の、労働能力が落ちるからという話でありますが、大体身体障害者のうちで、手足の悪い方々が六〇%ぐらいであります。その次が視覚、その次は聴覚ということであって、大体手足の御不自由な方というのは、身体障害者の六割ですから大部分というものである。従って、今回私の方は、能力の差というものをなるべくなくしたい、そして賃金を平等にしたいという方向からやってきた。そのために、足の悪い方たちの中でも、すわって事務をとられるには少しも差しつかえない、かえって有能な方さえあるじゃないか。あるいは手が片一方不自由な方で、歩く方に不自由ないという方は、いろいろなそれに適合する管理人とかあるいはウォッチ・マンとか、いろいろなものがあるので、これは何も足さえ丈夫ならばいいじゃないとかいうふうなことで、職種によって私は能率というものの差をなくするという思想です。従って、職種決定というのは、まあ手足が不自由でも何も能力に差がないじゃないかという職種を指定していけば、賃金なり能力差が出てこないじゃないか。また非常にふなれな方については、職業訓練、適応訓練をして平等な能力を与えようじゃないか。そういうふうな方向から、賃金差というものをなくしていこうというのでありますから、一般的に民間産業政府が補助する必要は毛頭ない。どっちかといえば、かえって有能な方の方があるのじゃないか。また目の悪い方の職事としてよくいわれておりますあんま、はり、きゅう、これは厚生省所管でありますが、この方は、目が悪いから非能率だというのは逆なんであります。むしろ日のあいている方が、どちらかというと非能率かもしれない。従って、賃金差というものは、私は職種の選び方によっては、逆に少しも差がないと思っております。その意味で、賃金差が出てこないというのは、職種を指定する。お前は身体障害者だから雇わぬ、ほかの者を雇うということは、今まではできましたが、今回はできません。この雇用率まではどうしたって身体障害者を雇わなければなりませんから、従って、そういうことは言えなくなった。そういう穴をずっと埋めて、今回のものが出てきているのですから、従って、私どもは、賃金差というものは毛頭ないというのじゃありませんが、この法案趣旨はそういう方向から雇用者をきめて、能率をより以上のものにしようという意味で、賃金差は私は出てくるとは考えておりません。御本人には非常に不自由かもしれませんが、逆に言えば、雇用者から賃金差というものは出てこないというふうな観点から、私たちはお助けをしようというのであります。その方向が実は、先ほどから御議論の焦点になった。私は、重い荷物をかつぐというなら、これは賃金差が出て参ります。しかし、そういうものは、身体障害者の適合職種じゃないのです。かえって事務をとる方は、足の自由な方は方々出歩いて困るというなら、足の不自由な方は出歩かないから、より以上に能率が上る。従って賃金差というものは、そこで私はきめるべきだ。そういうものは私は考えていないというのじゃありませんが、そっちの方向から私たちはこの問題を解決していきたいというのであります。
  51. 八木一男

    八木一男委員 非常に巧妙な御答弁で、そのまま開いておると、もうとにかく完全にこの法律でいけるように聞こえるのですけれども、それは一つの面です。指定職種の問題、次に御質問申し上げるのですけれども、指定職種が完全に、もうそういうような重度の障害者が完全に収容できるような広範なものをきちっときめていただくというのであれば、一たんは解決するでしょう。しかしそれについて私は、今の政府の決心は、それほど百パーセント完全ではないと思う。そういうようなことは完全であれば完全であると言っていただいてもけっこうですけれども、そういうことがやはり政府の今の漸進的、微温的な態度で、完全日でははないのじゃないかと思う。そうなれば結局、賃金は——そういうふうにちゃんと労働能力が、完全に補助の方ができているから大丈夫だ、また指定職種でそうなるから同じだというふうになるのは望ましいでしょう。それは労働大臣のおっしゃる通り、それでけっこうです。ところが、このむずかしい問題を政府の片面だけで完全であるというお考え方は、これは自信のほどが過ぎると思う。そういう問題だけでは解決ができません。あらゆる問題に——そういう問題で解決する面も、進めていただくのはけっこうだけれども、やはり実際に低賃金で人をこき使おうというような使用者がはびこっている時代においては、因縁をつけて、それでやはり下げるということがある。因縁をつけて昇給をさせないということがある。極端に言えば、そういうことで因縁をつけて、首を切る。一回計画に従って煙ったけれども、首を切る。また次に身体障害者を雇う。そうすると、定期昇給をしなくてもいいのです。臨時工みたいな扱いをする使用者が出ないとは断言できない。この問題については、解雇していけないということにしなければならないと思いまするけれども、そういうことだって考えられるわけです。ですから、今労働大臣のおっしゃったような意味で、賃金が上がるように考えていただく、そうしてそれを推進されることは、もちろんけっこうですけれども、それ以外に、世の中がそうではない状態にあるということを考えて、あらゆる面から賃金の問題をささえるという考えをしていただかないと、このほんとうに不幸な人が生活をしていく点において十分ではないと思う。ですから、それがいいという御確信があることはいいけれども、それ以外の方法も、あらゆる面から水が漏らないようにしていただくという意味で、賃金の問題も、法律規制の問題を積極的にお考えを願いたい。今の差額がいいかどうか議論がありましょうけれども、それは使用者が全部かぶらなければいけないということでもけっこうです。しかしそういう実態があるから、社会党の今の案では、差額というものを考えておる。それがよろしくないということになれば使用者に全部同じものを、無理やりにでも、どんなことをやっても、刑罰に処してでもさせるということでもけっこうです。そのどちらがいいか議論がありますでしょうが、それは御検討になっていいですが、とにかく賃金の面を法律的に規制するということを、やはり進んで、質的な面で漏れないように考えていただくという気持をぜひ持っていただきたいと思う。ただいま現在、どの方法がいいかということは、その問題について今まで完全に御検討になったわけではありませんでしょうから、どういう方針をとるかということは、労働大臣あるいは職安局長の方面からの御答弁は無理かと思いまするけれども、賃金問題について、ただいまお考えになった以外の面で、低賃金にならないように御配慮をするような研究を至急にされて、そういうことを推進せられるというようなお気持を表明していただければ、非常にしあわせだと思います。
  52. 松野頼三

    松野国務大臣 今回の雇用率の設定及び職種の決定の際に、やはり賃金というものも、行政指導としてはいたすわけであります。常識的に、いわゆる一つの職業をきめたときに、身体障害者たるがゆえに非常に低いのだという民間産業の決定というものは、これは職安及び基準局を通じて、それは不適当じゃないかということは、これは当然作戦的にしていきます。もしも差額補給ということになりますと、非常に悪例が出てくる。どうせ差額は補給してくれるのだから、一万円のものは五千円で雇えばいい。あるいは三千円にしようそうすれば、七千円補給してくれるのだということになれば、いたずらに低賃金を促進するのじゃなかろうか。そういうふうになれば、これは非常に財政上、国家的に考えても無理な話。民間産業というものは、なるべく自分の負担を軽くせんがために、ややともすれば、一万円払うべきものを、どうせ補給してくれるのだから、三千円でもいいでしょう、御本人に差がなければいいじゃないかということになれば、低賃金を押しつけることになる。今度は、退職金は、表面賃金によって退職金の基準がきまるのでありますから、そのときは非常に無理な賃金決定をするのじゃなかろうか。やはり民間の今日やっておられる常識的なあるいは妥当な賃金に当てはめるということを、私たちはやるべきだ。また今日一応最賃法にも書いてあります、あるいは先ほどの身体障害者福祉法にも書いてあります。差をつけてはいけないと書いてあります。それを運営していけば、おそらく今度雇用計画が立ったときに、身体障害者たるがゆえに賃金差というものは私は認めることはないと思います。特に事情があるという場合は別ですが、一般的には私はあり得ないことだと思います。また、そういうような職種を指定すべきだと私は思います。身体障害者たるがゆえにどうしても賃金決定の場合に差があるのだ。重い荷役をする、沖仲仕をするということは、これは差がありましょうが、そういう職種は不適当だと思います。従ってそれを特に指定する気はありません。差のない職種を指定する。賃金の差は出ていないはずです。もしも出てくるならば、基準法あるいは今回の職業安定所を通じまして、その差を十分監視して保護しなければならないということ、これは法の精神であります。そういうふうなことからいうと、特にここに賃金問題を書くということは、書いたところで、はたしてその実効効果というものを考えると、これで十分やれると私は思っております。
  53. 八木一男

    八木一男委員 今差額の問題をおっしゃいましたけれども、これは五島君の質問でございます。私は差額の問題に固執して申し上げているわけではない。これはいろいろな観点があるでしょう。われわれも研究しますけれども政府も御研究願いたい。  結局、たとえば基準法があるからというけれども、基準法違反が各所に頻発しておることは労働大臣十分御承知の通りです。基準法があるから安心できるということはありません。最低賃金法というものは業者間協定で、これはほんとう意味の最低賃金法じゃない、これは世の中議論に多分にあることも御承知でありましょうそのような基準法と最低賃金法があるからいいのだ、行政指導があるからいいのだ、そういうふうな形式的な御答弁では困る。ですから、今はっきり賃金について法律にどう書くかということの御意見を求めているわけではないので、法律に賃金についてどう書くかということをあらゆる面で御検討願って、今政府の御答弁になった面以外で、しり抜けにならないように問題を検討して進めていただきたいということを総括的に申し上げているわけです。そういう点で熱意を示して、賃金問題について実際はそういうことがあり得べきことがないと言われるけれども使用者というものは何らかの意味で低賃金にしようとする。ほんとうの同じ仕事をしていても、あいつはなまいきだから給料を上げないということがあるわけです。そういうことすらあるわけです。従って一番弱い立場にある、文句をいえば首を切るぞというようなことを言われる立場にある人が、低賃金でも泣き寝入りをしなければならないし、それにつけ込んで昇給を少なくするとか、最初の採用条件を悪くするということは、いかに行政指導をしてもそういうことは起こり得るわけです。そういうことを法律的に規制することを至急検討をして、いい案があったらお示し願いたいということです。ですから社会党の案に固執しているわけではない。法律の面で賃金の面を規制することを当然考えて積極的に検討していただきたい。そういうことを伺っているのですから、そうこの点について積極的な御答弁を願いたい。
  54. 松野頼三

    松野国務大臣 なお現実に賃金問題はよく調査をいたしまして、今日までの賃金の大体一万円以下と一万円以上を今までの九万人の方の一つの統計をとりますと、一万円以下の方が大体四割くらい、一万円以上の方が六割くらいです。一万円以下の方の四割というのは非常に多いのですから、その実情をさらに調査して、今回この法律ができましてこれが是正できると私は思いますけれども、なお審議会及びすべての統計をあわせて、もちろん賃金の問題は私ども重要関心でありますから、よく一つ研究をし監督をして、なおこれに不足な場合には、私たちも何らかの処置をとらなければならないと思いますけれども、今日の場合は一応これで私たちがやって参りまして、なお研究を続けて参りたい、こう考えております。
  55. 八木一男

    八木一男委員 この審議会でございますね、この問題でもやはり初刻に御検討を始めていただきたいと思いますが、それについて……。
  56. 松野頼三

    松野国務大臣 なお審議会ができますので、審議会でももちろんこれは重要な議題になりましょうから、私の方もこれに進んで御協力をし、また御研究願って、政府もまた研究するつもりでおります。
  57. 八木一男

    八木一男委員 それでは今度はちょっとこれに関連のある問題ですが、賃金が今一万円以下の人が四二%というような御答弁がこの前ありましたが、そういうような状況にありますけれども、そのようなことで質的に見て雇用が完全に達成されていることにはならないわけです。そういうふうになりますと、所得がそれだけ十分になっておらないわけですから、賃金は一部もらっておっても、所得保障というものが当然必要である状態にあるわけです。ところがこれは労働省所管ではありませんけれども障害者に対する所得保障が非常に不十分である。今障害福祉年金というものは月に千五百円だ。そういう問題は非常に不十分でありますし、またそれの所得制限というものがあります。十三万円以下、年十三万以上の収入があるとそれがもらえないということになるわけです。そういうことでは身体障害者は賃金の方では非常に少ない。それで片方の所得保障の方では非常に不十分である。しかもそれは一級だけですよ。一級の外科障害だけしかないわけです。そういうように障害福祉年金には非常な不十分さがあるわけです。それと賃金と両面を十分にしていただかないと生活がなり立たないわけです。その点でこういう人たちに関連の深い労働省が、厚生省の非常に怠慢、不十分な点を、しりをたたいてよくされる。少なくとも十三万円以上になっても福祉年金が適用されるように、内科障害にも適用されるように、あるいはまた一級だけでなくて、二級、三級にも程度に応じたものが支給されるように、あるいはまたその金額がふえるように御努力願わないと非常に困ると思うのです。それについての労働大臣の御所見を承りたい。
  58. 松野頼三

    松野国務大臣 今まで一万円以下の人が約四割近くを占めておりましたのを、あるいは今までこういう雇用率設定とか強力な保護政策がなかったために、そんな文句を言うなら身体健全な人を雇うぞという反面があったやに存じますが、今回のこの法律ができますとそう簡単にいきません。雇用率まではあくまで身体障害者を雇わなければいけないというのが一つブレーキになるのではなかろうか。なお厚生省所管のことでございますから、今回この法律の実施前には当然審議会あるいは行政庁同士で相談をいたしまして、賃金問題にあわせて厚生省ともよく私は相談をいたしたいと考えております。
  59. 八木一男

    八木一男委員 特に今申し上げた十三万円以上がもらえないという点、これはやはりそうならないようにお考をいただきたいと思いますし、内科障害がもらえないという点をもらえるようにする。それから一級だけでなくて二級にも三級にもできたらもらえるようにする。それから金額の少ないものをふやす、そういう点で一つぜひ労働大臣、国務大臣として厚生省並びに内閣全体に推進をお願いをいたしたいと思います。  それでは時間がだいぶたって臼井さんが待っておられるので、非常に恐縮でございますがあと大急ぎで参ります。今度は重度障害の問題でございますが、先ほど指定職種ということをよく言われた。それがあるから解決すると言われたわけでございますが、それでは指定職種を非常に広範にして、指定職種における雇用率を高めなければ、労働大臣がこの問題解決に一番自信を持っていられる点が全然実現できないということになるわけです。一体指定職種についてはどのくらい現実考えておられるか。そこについての雇用率をどのように考えておられるか、一つ労働省側の御意見を承りたい。
  60. 堀秀夫

    ○堀政府委員 重度障害につきましては、御指摘のように今回の法案によりまして、適用を指定いたしまして、それに対して別途高い雇用率を設けることになっております。そこでこれにつきましては、身体障害者雇用審議会にお諮りをいたしまして、よく御議論を願いました上で、これには専門家の方にもぜひ入っていただきたいと思いますが、その上でこれを漸次拡大して参りたい。さしあたりわれわれが第一に指定したいと思っておりますのは、とにかく重度の視覚障害者、これに対しまして、マッサージ、あんま関係の仕事を行なうものにつきまして、それを指定職種に指定したいと考えております。そこでその率はどのくらいになるだろうかというお尋ねでございますが、これは現在都道府県別に病院それから診療所等におきますところのマッサージ、あんま関係職種雇用状況を調べております。これはまだ全面的な調べが出ておりませんが、一般の場合に比べまして率そのものは相当に高い状況です。大体東京、大阪その他大府県におきますところの雇用状況を見てみますと、四〇%、五〇%、六〇%程度が見受けられるわけでございます。これにつきましては、われわれは現状をさらに越えますような高度の雇用比率を設定して参りたいと考えております。その率につきましては、審議会において専門家に御参加願いまして、御意見を伺った上で最終的にきめたいと思っております。現状よりもさらに上回るような高い雇用率を設定したいと思います。それからそれ以外の職種につきましても、専門家の御参加を得まして、審議会で御検討の上、必要に応じて漸次拡大していく方向に進みたいと考えております。
  61. 八木一男

    八木一男委員 指定職種を今視覚を例にしてとられましたけれども、視覚以外に聴覚とか、それから手足の損傷とか、そういうものに適切な指定職種をできる限りたくさん選んで、その雇用率を高めていただきたいと思います。そうでなければ、労働大臣のおっしゃった一面による解決方法もできないということになるので、これは非常に強力にやっていただきたいと思いますが、それについて総括的に労働大臣から承りたい。
  62. 松野頼三

    松野国務大臣 指定職種の内容その他は審議会でおきめいただきますが、今私たち考えておりますのは、諸外国にもよくありますけれども、エレベーター、それから監視人、あるいは案内人、受付、それから職業としては足の悪い方には手を使う手工業的なものをずっと洗って参りたい、そうすると、相当職種が出てくるだろうと思います。しかし、その内容及び設定比率等は審議会で各界の方にお願いをいたしまして、提案までにはそういうふうなことが相当あると私は思っておりますが、まだ私ども詳細にどことどこと言えませんので、審議会で職種及び率をきめていただきたいというふうに考えております。
  63. 八木一男

    八木一男委員 私は社会保障制度議審会の委員をやっておりますが、審議会の運営というものはやはり関係の管庁の熱意でずいぶん違うわけです。それができても、おざなりでいいかげんにやっておきたいと思うと、審議会の方でいいかげんなことに——おもに公益と称する人がいいかげんになってしまう。大体学識経験者と公益と称する人がリードする例が多いわけです。そこで非常に熱心な方もあるけれども、幾分役所の考え方にずるずる引っぱられてきておる人もある。そうでない人、一部には熱心にやっておる人もいるけれども、一般的にはそうじゃないというようなことで、ごちゃごちゃにされてしまって、公益委員にリードされることが多いわけであります。この審議会は公益委員がリードする審議会であってはならない、身体障害者の代表がリードするものでなければならぬのですけれども、公益委員というものが相当の力を発揮する。そこで、労働省側の決意が強いか強くないかということで、どこの審議会も結論は表通り言葉の上では筋の通っておるようなことを書きます。そんな作文を書く人はたくさんおります。しかし、それはほんとうにその中に骨が入っておるか、血が通っておるかということは労働省側の決意いかんによって違うわけです。ですから、審議会をほんとうに熱の入ったものにする、ほんとうに実行のできるようなものにする決意を労働大臣自体が示されないとだめになると思うのです。その点についての理解ある御答弁をいただきましたけれども、指定職種をあらん限り広範に、その率をできる限り高率にするという決意、率直に推進しようという労働大臣自体のお考え、またそういう意味審議をしてもらうという審議会に対する意思表示、そういうことをなさるという労働大臣の御所信を強く御発表になっておいていただきたいと思います。
  64. 松野頼三

    松野国務大臣 最近産業の発展を見ますると、相当な数が私は出ると思います。もちろん全部が身体障害者じゃありませんが、最近計器を非常に使う。化学工場あたりに参りましても器をずっと見ている、これが一つの産業の基準になってくるというならば、目さえ丈夫であれば手足の問題はなくなる。しかし、ここに十人なら十人の者が身体障害者という意味じゃありません。十人のうち一人おっても作業能率は少しも落ちない。逆に言うならば、それが全部じゃないと思われる部分があるから、何も産業は重工業でなければだめだという観念は持っていません。重工業の中でも計器を見るとか、そういう方の方がより以上能率が上がることもある。ついせんだって鉄工場を見に行きましたけれども、鉄工場でも大体計器によってやられる。化学工場も大体メーターを見ることが非常に重要な仕事になっておる。そういうことですから、私は相当広範囲の職種が出てくると思います。これは一がいには言えませんけれども、私はそういう感じを持って審議会にも諮って参りたいと思います。あるいは私の予想以上に多種多様の職種が出てくるんじゃないかというふうに感じておりますので、この法律の運営は相当明るくやれるんじゃないか、こういう考えで、これに対して産業人の方も反対はおそらくなかろうと思うこの問題は、研究すれば、技術革新が進むにつれてかえってもっともっと進むんじゃなかろうかとさえ実は考えておりますので、そういう熱意で私はやって参りたいと思っております。
  65. 八木一男

    八木一男委員 非常に明るいことを言われましてけっこうですけれども、その中で、ほかの方が明るいからうまくいくだろうということは、邪推で伺えるようなことであっては困ると思う。ですから、ほかがよければいいのですから、ほかはどうあろうとも、労働大臣としては、指定職種はできる限り広げて、できる限りその率を高めるという決意を持っておられるに違いないと思うのですが、端的の言葉で、そういうふうに労働省としてはやっていく、それから雇用審議会の方でもそういう点で計画を作るように労働省の方の意向を述べられるということをはっきりと一つお述べ願いたいと思います。
  66. 松野頼三

    松野国務大臣 端的に申しまして、先ほどの答弁は、産業が伸びるからという意味じゃございません。産業技術が進むにつれてこういう方の雇用の道は多くなるという意味であります。雇用が伸びるからそれにつれてという意味じゃないわけです。しかし身体障害者の方々も最近どんどん雇用が伸びる職種が出てきた。従って、雇用の数量のいかんにかかわらずこの問題は促進できる、私はこういう趣旨で申し上げたので、八木委員趣旨と同じであります。
  67. 八木一男

    八木一男委員 どうも少し回りくどい邪推をして済みませんけれども、そういうことです。  それから、具体的に主管局長にお伺いしたいのです。たとえばマッサージ、あんまというものを視覚の方で考えていますが、そのほかに思いついたことですけれども、たとえば盲人のいろいろな機関、盲学校であるとか、そういうようなところはやはり目の悪い人を相手ですから、視覚の悪い人でもいろいろな教育なり、事務連絡ができるわけです。それは全部が重度の人ばかりじゃ困ることもあるかもしれませんけれども、そういうようなこととか、また結核の予後の人もこの中に入れるということをこの問労働大臣から明言していただきました。その場合に、結核の予後の人が結核の関係の療養所であるとか、アフター・ケアとか、そういうところで使うということも、一つの指定職種を広げる道だと思うそういう点についてはそのほかに一ぱいいろいろなものがあると思う。そういうものを広く考えまして実施、実現していただきたいと思いますが、これは松野さんでも、堀さんでも、どちらからでもけっこうです。
  68. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいま労働大臣から答弁されましたこととわれわれは同じ気持でおります。従いまして、審議会に対して、われわれは問題になりそうな職種をできるだけ広範囲に探ってみまして、これをまず資料として提供して、そうしてなるべくこれを拡大していくという方向で御審議願いたいと考えております。
  69. 八木一男

    八木一男委員 今申し上げましたようなこと思いつきですけれども一つ参考にしてぜひ実現していただきたいと思う。  それから時間がありませんから先に進みますが、重度の障害者をその指定職種でやっていただくのはいいですけれども、それだけではやはり大ぜいの重度障害者の全部の解決がつかないと思うのです。一般の身体障害者雇用の中では、やはり重度の障害者の方でも、いすを工夫するとか、いろいろ工夫するというようなことをすれば、どんどんほんとうは入っていけると思う。ただ入っていかせない無理解な状態があるわけです。それを解決するために、やはり社会党で考え抜いたことですけれども、重度の障害者を一人雇用なさったならば、軽度の障害者を二人雇用なさったと同じようなことで、計画においても義務においても、考える。そういうようなことは具体的に非常にいいのじゃないかというふうに思う。もう一つ障害者の奥さんの場合に半人分に勘定するというような法律案もありますけれども、そういう点で、一般の職種の中に重度の障害者が入っていけるように、今のようなことを考えていただきたい。それについて一つ政府の方の答弁を伺いたい。
  70. 堀秀夫

    ○堀政府委員 そういうような御意見が出ておりますこと、われわれ重々承知しております。そのような面を考慮してこの法律の運用をはかっていかなければならないと思います。われわれ、この法律の運用におきまして、ただいまのような御意見、十分取り入れて運用して参りたい考えでございます。
  71. 八木一男

    八木一男委員 そういうふうにいたしますときに、重度の障害者が、からだが不自由なところがありますから、いろいろな作業をしているとき、危険なことがある。危険防止を考えなければならない。それから足が悪い、手が悪い、耳が悪い、目が悪いということのために、補助具とか、いろいろなことで補えば、十分その仕事はできるということがあるわけですけれども、危険防止や、能力補給のための作業設備とか作業補助具、そういうものをどんどんやっていくということをすれば、問題が進むと思う。そういうことをやるときに、雇用される方がそういう施設、いすだとか補助具だとかしなければならない。そういう施設をされる場合に、そういう問題についてやはり国家的に補助を出すということが、問題を具体的に進める道ではないか、そういう点について一つ積極的にお考え願いたいと思いますが、どうですか。
  72. 堀秀夫

    ○堀政府委員 この法案の中にも、政府はこの身体障害者雇用促進のため作業補助具、その他いろいろな問題について研究を行ないまして、これを周知、徹底、普及さしていくということが入っておるわけでございます。われわれといたしましては、これが根本的な問題であろうと考えまするので、今回、不十分でございまするが、補助具の予算もとりまして、委託研究というような道も設けております。それによりまして、労働省関係、その他関係の機関の適当な方に御依頼をいたしまして、われわれの方でもやりますが、今のような研究を促進いたしまして、そうして適当な結論を得ましたならば、これを普及徹底さしていく。これはまたさらに来年度以降において、この関係の施策を充実さしていく。これは根本の問題としてぜひ拡大していきたいと思っております。
  73. 八木一男

    八木一男委員 このような研究や何かをどんどん推進されることはけっこうでありますけれども、実際にそれが使用されて、雇用された人がどんどん労働していくということにならなければならない。ですから、その補助作業設備とか補助具、それをやる民間の業者の方に、やはりそれだけのものが要るわけですから、政府が補助をするという道を開いていただかないと、問題は具体的に進まないと思う。補助具の研究をされることはいいけれども、こういう補助具があったら、こういう労働が、できるというものも、すでにわかっているものもあるわけです。そういう問題、研究だけでなしに、すでにわかっているものは実施できるようにしていただきたい。そういうような意味で、民間の人がそういう設備をするときに補助をするという道を急速に開いていただく必要があると思う。それについて一つ……。
  74. 堀秀夫

    ○堀政府委員 この法案の中に適応訓練の章を設けました。適応訓練は、要するに適当な事業主に対しまして委託をして、身体障害者を使うための環境を整備してもらう。そしてそこに定着できるように、能率を上げられるような適当な施設、装置等につきまして改善を加えて指導してもらいたい、こういう考え方でございます。これにつきまして国と都道府県が半分ずつ負担して補助を行なうということも制度を設けております。そうしてまず現場において身体障害者を雇う際にどのような施設、どのような装備をどう改善したらいいかという事例が出ておると思いますので、初年度においてこれを活用して参り、この関係の予算を中心にいたしまして、来年度以降においてさらに充実して参りたいと考えております。
  75. 八木一男

    八木一男委員 適応訓練についてのお話でございましたが、それは訓練だけであって、実際に雇用されて作業に入る、そのときに補助具やそういうものが要ります。それがないと使えないということになれば、そんな設備が要って金がかかるような人ではごめんだということになっては困るし、またそれがなくては十分な労働ができなくて賃金も上がらないし、使用も困る。だからそういうものが訓練だけでなくて、実際の作業上に必要なわけですが、作業上そういうことをする者に対して口が補助することを考えていただかないと、前段だけは進んでも実際は進まない。それをこの法律ではまだ考えておらない。それを考えて実施するように進めていただかなければ問題は進まないと思いますので、それについて政府側の積極的な考えを伺いたい。
  76. 堀秀夫

    ○堀政府委員 まず第一に適応訓練の問題でありますが、名前は訓練という文句を使っておりますが、これはわれわれは一般の職業訓練とは異質のものであると考えております。一般の職業訓練につきましては、御承知の職業訓練法に基づきまして、各地の職業訓練所及び民間の職業訓練というものに対して施設を拡充し、あるいはこれに補助を行なうという方法で進めて参りたい。それと並行して、要するに現場において働かせる場合に、うまく働かすような施設と環境、装備の改善をしてもらいつつ定着させてもらうという問題を、この適応訓練の一つの大きなねらいにしておるわけでございます。従いまして、名前は訓練となっておりますが、目的とするところは普通の訓練とだいぶ違っております。これを一つの柱としと進めて参りたい。それからそれと同時に、今八木委員御指摘のような問題についてさらにこれを広げる、さらに新しい方法を考えるということにつきましては、これは審議会等にも御検討願いまして、先生の御趣旨が実現できますようにわれわれは全力をあげて努力したいと思います。
  77. 八木一男

    八木一男委員 今の御答弁、大体けっこうですけれども、適応訓練というのは標準作業です。標準作業以外にやはりそういう作業具をつけてやる仕事があるわけです。ですから適応訓練だけでは、そこで実際の仕事をし訓練をするということだけでは、解決つかない。そういう点で一般的に作業設備、作業補助具に対する補助の道を急速に開いていただきたいと思う。その点について松野さん、積極的に進めていただくという御答弁をぜひお願いしたいと思います。
  78. 松野頼三

    松野国務大臣 身体障害者のことでございますから、適応訓練及び補助具については、政府も積極的にその労働能力に応ずるように、不自由のないように研究、勉励をいたします。
  79. 八木一男

    八木一男委員 言葉じりを捕えられないように非常に上手な御答弁をなさいますが、大した金じゃないです。補正予算と言いたいけれども、来年度予算ではそんなことは完全にやってみせる、松野労働大臣の発言は閣議で通るのだという確信を持って、来年は絶対にやるのだというような御答弁を願いたいと思う。
  80. 松野頼三

    松野国務大臣 なお御質問が明確になりましたから、私の方もなお明確に御趣旨のように努力いたします。
  81. 八木一男

    八木一男委員 次に、身体障害者のいろいろな問題についてやるというように法律の条文で書いてある。それからいろいろなことを行政的にやると言われる。ところがやるための人が非常に少ないと思うのです。身体障害者職業補導官というものを置いていく必要があると思う。それについてどのようにお考えになっておりますか。
  82. 堀秀夫

    ○堀政府委員 現在身体障害者相当存在するような管轄の大きな安定所におきましては、身体障害者の指導、それから相談に応ずるための特別の係を設けまして、専門の職員を常置しております。それから身体障害者につきましては、一般の求職者と違いまして、特にこれはまず求人の開拓をする、それから雇用された場合にそのあとも就職後の指導を行なわなければならぬ。それから万一不幸にしてその職場から離れたような場合にも、今度はまた新しいところにお世話するようにしなければならぬという意味で、一般の求職者と違いまして特別な登録制度を設けまして、カードも永久保存するという考え方で指導しております。今度の法律が成立いたしましたならば、さらにこのような考え方を拡大して参りたい。さしあたり今年度の予算におきましては、職業紹介官の制度が認められておりますので、適当なる身体障害者専門の信頼できるような人をこれに充てて参りたい。  それから民間関係、役人でありませんでも、この問題について専門的な知識と体験と熱情を持っておられますような方々を、実はこれも本年度の予算において職業安定協力費という制度を設けまして——全体で二千人でございますが、この二千人のうち相当部分は農村の二、三男対策のための指導、それから非常に環境の悪い、たとえば同和関係なんかの方についての職業相談の指導というようなものに向けるつもりでございますが、このうちの相当部分の方もやはり身体障者関係の今のような専門的な体験と知識を持っておられます方を御委嘱申し上げまして、官庁民間の経験者が共同しまして、相談、指導に応ずるという態勢を整備して参りたいと考えております。
  83. 八木一男

    八木一男委員 たとえば職業安定の協力員を置いても、身体障害者の特別な事情、障害者の雇用されるべき人自体に対する指導、またそれに対する向こう側の、雇う側の人には、一般的には違う知識、違う技術が必要だと思う。それで身体障害者職業指導官というようなものがぜひとも必要だと思うのです。現に昨年度労働省の案ではそういうものを考えておられたわけです。ですから、そういうことが必要であると認めておられると思う。ただ、これが予算か何かの関係だと思う。ですから、そういうことを積極的に進める指導官を置く方向で強力に進めるということにしていただきたいと思いますので、それについて一つ……。
  84. 堀秀夫

    ○堀政府委員 本年度におきましては、ただいまのような考え方でとりあえずやりますけれども、さらにこれを充実、発展させるため、われわれは全力をあげて努力したいと思います。
  85. 八木一男

    八木一男委員 労働大臣も同じお考えでおられると思われますが、来年度予算で一つ実現をしてもらいたいと思います。
  86. 松野頼三

    松野国務大臣 全く同じでございます。
  87. 八木一男

    八木一男委員 もとへ戻りますが、来年度で、たとえば諸官庁や何かで一・五、それから民間の一・三、そういうことを実現する自信がおありであるかどうか、お伺いしてみたいと思います。
  88. 堀秀夫

    ○堀政府委員 第一次の計画におきましては、これはいろいろ関係者と今までも相談しておりまして、非常に困難はありますが一つやりましょうという機運に大体関係者の方がなりつつあります。しかしわれわれこれは大いに努力しなければ到達できないのであります。そこで、しかし、関係者もいろいろこれについて、積極的な方もあり、消極的な方も率直に申してあるわけでございますが、われわれは第一次計画として今のような率を考えたわけでございますから、この程度なら大いに努力しようという関係者の機運が盛り上がりつつあります。われわれは第一次計画としてこの目標を達成して、それの模様を見まして、さらに率を引き上げようという方向で努力しております。
  89. 八木一男

    八木一男委員 現在の身体障害者の数は官庁〇・六九というのは、身体障害者雇用手帳をもって身体障害者として勘定されているのだろうと思いますがどうでございますか。
  90. 堀秀夫

    ○堀政府委員 さようでございます。
  91. 八木一男

    八木一男委員 そうしますと、今度の法律では対象者が約三〇%ふえるわけですね。ですから、そのように私どもは推定をいたしておりますけれども、とにかく〇・六九だから倍にしてもいいというようなことをしておると、ほんとうにその倍にならぬと思う。今度は対象者がそれだけふえるわけですから、ただ形式的に〇・六九になったといっても、そういうものがふえていないで、次の年に今度新しくふえた部分の数がふえて、雇用ほんとうにふえていないのに、それがふえたから、それを勘定すれば率が倍になったというようなことであっては、これは問題が進みませんけれども、そういうことは断じてないように、ほんとうに問題が進むようになさる御決意があると思いますが……。
  92. 堀秀夫

    ○堀政府委員 計画の作成と実施に当たりまして、われわれそのようなことを十分計算に入れまして、具体的に指導して参りたいと思います。
  93. 八木一男

    八木一男委員 結核とか、胸腔部疾患について積極的に入れるというような御答弁労働大臣から伺いました。これは非常にけっこうだと思います。もう一つ、精神薄弱者の問題があります。精神薄弱者は、薄弱の程度が非常にきついときにはなかなかむずかしいと思いますけれども、その中でやはり労働能力についていろいろの訓練をし、またそういう状況を勘案すれば、労働能力がある人が相当にあると思います。精神薄弱者に関しては、特に福祉関係でも法律ではそういう点に非常に手が打たれておらない。従ってやはり雇用の方で相当考えていただかないと、そういう大ぜいの精神薄弱者が助かりませんし、関係者のほんとうに深刻な悩みもこれでどうにもなりません。その点で相当訓練をし、いろいろのことを考えれば、労働能力のある精神薄弱者をやはり雇用促進法の方で対象にして、その人たちの家族の生活がなり立つように、積極的にお考えを願いたいと思いますが、それについて労働大臣のお考えを伺いたいと思います。
  94. 松野頼三

    松野国務大臣 精薄の方も今回はその対象に入れまして、そうして精薄というものは、当委員会でもいろいろ議論がございますが、そういう議論は別として、一般的に精薄というものもこの保護の中に入れるという考えを持っております。精薄の内容については、また審議会等に諮りまして、その度合いとか、これは当委員会でもおそらくいろいろ議論が多かったことと思います。私の方は一応そういう議論はあるにいたしましても、精薄の方も一応保護を加えるべきだという考えでやっております。
  95. 八木一男

    八木一男委員 さらに民間の方の規制は非常に実効をあげていただければけっこうですけれども、なかなかあがらない場合もあると思いますので、やはり相当強制をすることを考えなければならないと思う社会党の案では、御承知の通り一つも雇わない場合には、そういう身体障害者を役所側で指名して、これを雇わなければならなぬというようなことで問題を進めようという考え方がございます。また、さっき申し上げましたように、身体障害者を形式的には労働省政策に従って雇うけれどもほんとうはいやなんだ、難くせをつけてぽかんと首を切る。あるいは言を切って交代して低賃金でこき使うというようなことをやらないとも限りません。そういうような意味で、指名した者に対する強制的な雇用とか、あるいは解雇制限、解雇禁止というようなことを積極的に考えていただく必要があろうと思います。この条文には入っておりませんけれども、そういうことを大いに検討されて、雇用審議会においても、おそらく来年度には改正案を出されると思いますけれども、そういうときにそういう具体的なものを入れていただくように一つ考えをいただきたいと思います。それについてのお考えを伺いたいと思います。
  96. 堀秀夫

    ○堀政府委員 ただいまお話しの例は西ドイツその他におきましてはあるわけであります。一つの非常に進んだ考え方ではあると思います。しかし現実問題としていろいろ問題点がございますので、われわれこの法案の実施とにらみ合わせまして、審議会におきましても、これらの問題につきまして十分に御検討をいただいた上で、われわれとしても十分検討して参りたいと思います。
  97. 八木一男

    八木一男委員 まだまだ御質問申し上げたいことがあるのですが、だいぶ時間もたっておりますので、一応これで質問は打ち切りますけれども、なお後の機会にさせていただきたいと思います。ただ雇用審議会の方で、社会党案を十分に御参考になり、ここで与党の方、あるいは野党の社会党や民社党から出たいろいろな意見をどんどん御考究になって、これはほんとうの芽を出したという労働大臣の御説明でございますから、重ねて改正案をどんどんと出されるようなことで問題を急速に進めていただきたいということを中段でございますけれども御要望申し上げまして、一応質問を打ち切ります。
  98. 永山忠則

    永山委員長 午後二時十五分まで休憩いたします。     午後一時十二分休憩      ————◇—————    午後二時三十六分会議
  99. 永山忠則

    永山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  本日付託になりました参議院提出引揚者給付金等支給法の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。     —————————————
  100. 永山忠則

    永山委員長 まずその趣旨の説明を求めます。参議院社会労働委員長加藤武徳君。
  101. 加藤武徳

    ○加藤参議院議員 ただいま議題となりました引揚者給付金等支給法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由を説明申し上げます。  引揚者及びその遺族に対する給付金の支給につきましては、昭和三十二年に引揚者給付金等支給法が制定され、ほぼ三カ年を経過いたしました今日、大部分の者が手続を終了いたしてはおりますものの、いまだ一部には手続の済んでおらないものもあるのであります。  引揚者給付金及び遺族給付金を受ける権利は、三年間行使されないときは時効によって消滅するように規定されてありますので、この法律に基づいて給付金を受ける権利を有している人たちは、その権利が本年の五月十六日で時効期間が満了して、権利を行使し得なくなるわけであります。しかるに給付金を請求するための在外期間の立証等の書類や資料の収集、その他の理由により時効の期間満了までに請求手続をなし得ない者が若干あると認められるのであります。従いまして、この際時効消滅の期間を一カ年延長することによって権利の行使に遺漏なからしめ、引揚者またはその遺族に給付金を支給して、その生活の再建に資してもらいたいと存ずるのであります。  これがこの法律案を提出いたしました理由でございます。  何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  102. 永山忠則

    永山委員長 これより質疑に入りますが、通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  103. 滝井義高

    ○滝井委員 三十二年にこの法律が制定をされましてから現在まで、一体どの程度人たちが給付金の支給の対象者となって支給をされたのか。そうしてその金額は一体どういうものなのか。与党からいろいろ文句が出ておりますが、われわれ野党は全然今までその実態を知らされてないわけです。そうして突如として、昨日でしたか、この法案が出て参ったのです。私はきょう参議院のわれわれの同志の諸君にも聞いてみたのですが、実はまだわれわれの政調にもこういう報告がなかったわけです。これは与党の方だけは知っておったかもしれませんが、野党は全然こういう大事なことは知らないのですね。一体政府は三カ年間、こういう大事な法律——おそらく当時五百億くらいの金を出すことになっておったと思うのです。私はこの法律審議に、先頭に立って参与いたしたものですが、われわれも一体その失態がどういうように施行せられ、どういう状態でこの対象者に周知をされて、そして金がいっておったかということがよくわからないわけです。ますその給付金が現在までに何人に支給されておるか、その金額はどの程度で、当初の見積もりに対してどの程度の金が余っておるか、こういうところを一つ御説明願いたいと思います。
  104. 河野鎭雄

    河野政府委員 本年の二月末現在で、認定人員二百七十八万七千四百八十八人、約二百八十万ばかりであります。これに支給されることになります金額は四百四億六千三百万余りでございまして、約四百五億でございます。法律ができました当時予想しておりました対象人員が約三百三十万でございます。実はまだ審査の途中でございまして、今後どの程度に出てくるかというふうな見通しにつきましては、現在正確な数字を申し上げにくい実情にございますので、御了承を得たいと思うのでございますが、御参考までにつけ加えて御説明申し上げますと、昨年遺族援護法の時効が参ったのでございます。その後現在に至るまで、まだ相当申請があるような現状でございまして、ただいま申し上げました数字は、府県で認定した数字であります。市町村を通じて府県に出てくる、こういうふうなことになりますので、今後どの程度に出てくるかということは、遺族援護法の例等を勘案してみますと、まだかなりの数字が出てくるのではないかというふうに予想されるだけでありまして、正確にお答えいたしかねますので、この点は一つ御了承いただきたいと思います。
  105. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、当初の予定が三百三十万、厚生白書によると三百三十七万八千人になっているわけですね。二百八十万認定をいたしておるのですから、なお五、六十万残っているわけです。お金はあと九十五億円ですか、それで足りますか。一年延ばした場合に、なおあとからどんどん出てくる。三百三十七万というのは予定者だったのですから、あるいはこれよりふえるかもしれないといった場合に、三百三十七万でいいと思うのですが、その場合にあとの百億ばかりで足りますか。
  106. 河野鎭雄

    河野政府委員 大体今お話しいただきました数字で五百億でまかなえるということでございます。今後どの程度出てくるかということについては、正確な数字はお答えいたしかねるわけでございますが、大体の見当といたしましては、五百億の内輪でおさまるというふうに考えております。
  107. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、現在三カ年経過をして、なお五、六十万の人が認定の申請をしないということは、この提案理由にも書いておりますように、在外期間の立証等の書類、資料の収集ができないということでやらないのですか。それとも五、六十万の人がこういう法律が出たことを全く知らないということでやらないのですか。それとも何か事務的な欠陥があってやらないのですか。そのやらない根本的な原因は一体どこにあるのですか。どういうことを排除したならば、五、六十万の人がすみやかに今後半年くらいの間にやってしまうという形になるのですか。
  108. 河野鎭雄

    河野政府委員 二百八十万と三百三十万何がしとの差でございますが、その人たちが現在申請していないのではございません。二百八十万というのはもうすでに裁定が済んだ数字でございまして、現在手続中のものがかなりあるわけでございます。それから、きょうはもう五月中ごろになってきたわけでございますが、まだ私どもに全然数字のつかめていない申請の数もかなり残っておると考えております。最近の状況を検討いたしておりはしても、今までよりも相当ふえた申請が出ておるというふうな実情でござまいして、五百億までいくかどうか、あるいは内輪でとまるのではないかというふうな考え方をいたしておりますが、そうべらぼうな食い違いが起こるというふうには考えておらないのでございます。私ども昨年から時効がくるということを前提といたしまして、府県を通じまして極力PRを続けて参っておるわけでございます。その現われは、最近特に申請がふえておるというふうな状況で現われておるわけであります。時効にかかる人の数というものは、私どもはそう多くはないだろう、皆無だというふうには申し上げられませんけれども、そう非常に多数の人たちが時効の関係を持ってくるというふうなことは考えておらないのであります。手続の点につきましても、なるほどただいま御指摘がございましたように、いろいろ立証資料を収集するということで時間をとっている方もおありかと思います。しかし私どもといたしましては、当時混乱の時期に帰ってこられた方が多いわけでございますから、できるだけ認定し得るものは認定をするというふうな方針で指導して参ってきておるわけであります。従来の方針によって処理をしていくということで、そう大過はないのではないか、これから特別の手を打ってどうこうというふうなことは必要はないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  109. 滝井義高

    ○滝井委員 いろいろ御説明を願いましたが、今こまで五、六十万の人が時効期限がくるまで申請をせずにこの法律をを延ばさなければならぬという事態になった、その一番の隘路となっておるものは、すでにその五、六十万の人も相当の部分は申請をしておるが、書類その他の不備のために認定ができないというものが一つある、それからまた、全然申請も何もしていないというものと、大ざっぱに言ったら二つあると思うのです。そうすると、いわゆる全然申請も何もしていないという人たちは、一体どうしているか。隘路になっているのはPRだけですか。法律の存在を知らなかった、こういうことだけですか。それをお開きしたいのです。
  110. 河野鎭雄

    河野政府委員 PRが足りないから云々ということではなしに、PRは漏れる人がないようにという趣旨でしておるわけです。大多数の方々は、あれだけ大きな問題を起こした問題でございますので、大体御存じではないかと思うのです。手続にいたしましても、時効との関係もございまして、かりに不備な場合でも受付だけは受け付けて、時効にかかるということのないように処置をするように、府県を通じて指導いたしておるわけであります。立証資料が足りないからということで時効にかかるということのないように、私どもは指導いたしておるわけでございますが、そういった指導があるいは末端まで十分いかないで、やはり正確な資料がないと申請ができないのじゃないかというふうに思って申請しておらない者もあろうかと思うのであります。それからほかの法律でも、やはり時効まぎわになってからずっと出るというのが例でございます。まだ期間があるということで、またこれが多額の給付金でございますと、あるいはもっと急いで出すというふうなこともございますかもしれませんが、金額もそう大きな金額でございませんし、そうあわてて申請をしないというふうな実情にあるのではなかろうか、かように想像いたしておるわけでございます。
  111. 滝井義高

    ○滝井委員 非常に詳しく説明していただくけれども、どうもぴんとこないのですが、一体五、六十万の者が三年の期間の中でなぜ認定を受けられなかったかという、この一番の隘路はどこにありますかということです。これをここにあるということを教えてもらえば、すぐそれを直していけばいいわけです。ところが一年延ばしても、その隘路というものがそのまま放置されておったのでは、一年たったときにまた一年延ばさなければならないということになる。これは延ばすことが一番いいのです。ところが、今参議院から一年くらい延ばしたらどうだというのだが、われわれは何も一年でなく、どうせあげなければならない金だから、三年くらい延ばしたらいいと思う。それは一年で五、六十万の者が確実に来ますという——隘路がここにあるから、この隘路を克服すればできますという事態ができればいいですよ。そうでなければ三年くらいにした方がいいです。一年でいいですかということを言いたいために私はそれを言っておるわけです。だからその隘路が一体どこにあったとういことを明示してもらわないと、一年でいいかどうかわからないです。
  112. 河野鎭雄

    河野政府委員 立証の問題につきましては、極力実情に即するようにいたしておるわけでございまして、そういうふうなことから非常に多数の者が申請できないというふうな実情にはないと思っておるわけであります。先ほども申し上げたことでございますが、多額な金額でもないので、そうあわてて申請しなかったという人が非常に多いということではないか、かように考えておるわけであります。
  113. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、引揚者給付金等の支給の法律ができたけれども、終戦以後、昭和二十年八月十五日以降になって内地に引き揚げた、しかし今生活も楽だし、わずかな金をもらわなくてもいいのだ、こういう人が今の御説明では相当あるわけなんですね。そうしますと、やはり一年延びても二年延びてもそういう人は来ないということになる可能性ができてくるわけですね。そこらは、本人がもらいに来ぬものを、親切に延ばしてやっても、やはりなかなか問題があると思います。そうしますと、この場合は時効にかかるのですか、そこらあたりの御答弁ははっきりしなかったのですが、現在申請の認定の書類を出した、ところがこの提案理理由にもある通り、在外期間の立証その他について疑問がある、従ってまだ認定がおりないのだ、こういうものは時効にかかりませんか。
  114. 河野鎭雄

    河野政府委員 申請を受け付けたものにつきましては、その後書類が不備だということでいろいろ書類の往復がございますが、そういう場合には一切時効とは関係ないように処理をいたしております。
  115. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、結局ほとんどの者が申請をしておる。あとは金額その他が少額のためにというものが大部分だという御答弁になるわけですね。そうすると、これは大問題が出てきますが、そういう人でもなおPRその他で申請する人があるだろうと思いますから、これは一年延ばしていいと思います。そうしますと、その場合に昭和三十三年、三十四年度の引き揚げの状況は、集団でもソ連から二百二十九名と中共から二千百五十三名くらい引き揚げてきていますけれども、こういう人たちは引き揚げの給付金の対象になるわけでしょう。
  116. 河野鎭雄

    河野政府委員 全員が対象になるわけではないと思います。要件がある、たとえば終戦時に生活の本拠が向こうにあったという場合にはもちろん対象になるわけでございます。  それから先ほど私お答えが不十分な点があったかと思いますが、時効によって今後非常に申請者ふえるのだという前提に立っての御質疑かとも思いますが、そういうことはないのではないだろうかというように考えております。
  117. 滝井義高

    ○滝井委員 だから私はふえるとは言っていないわけです。というのは、今あなたの説明でわかったのですが、額がわずかだから申し出てくる人は大してないのじゃないかというあなたのそういうニュアンスの答弁があったので、わざわざ二つに分けて、現実に申請しておる人で書類が不備のために五月の十六日ですかに片づかないものは時効になりますかという質問をしたのは、そこを確認しておきたいからなんです。そうしますと、今後も新しく——今個別引き揚げなんかは三十四年八月までやはり一人、二人と来ておるわけですね。こういう個別引き揚げと、集団引き揚げがずっとなお今後幾分かずっあると思うのです。そういう人たちは、法律の期限に関係なくやることになりますか。一年延ばしたら一年きりでだめになるわけなんですか、新しく引き揚げてくる人は。
  118. 河野鎭雄

    河野政府委員 三年間権利を行なわなかった場合でございます。権利を行なえる状態になったときを考えるということで、帰ってきて初めて引揚者になるということでございますので、帰ってきてから現在の法律に基づきます三年の期間は進行するという解釈でございます。
  119. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、新しく引き揚げてきた人は、三年間の時効の権利を獲得するわけですね。わかりました。  それからこの法律ができてから、引揚者の団体に国債を担保にして貸付が行なわれておりますね。この状況をちょっと御説明願いたいと思うのです。どういう状況でどの程度の生業資金の貸付が行なわれておるか。
  120. 河野鎭雄

    河野政府委員 的確な数字を手元に持っておりませんので、数字は必要でございますればまたあとでお届けすることにいたしたいと思いますが、大体五年間に百億ということで、年々二十億ずつの貸付をいたしておるわけであります。大体円滑に運営が進行しておとるものと考えておるわけであります。そのほかに三十四年度におきまして、それとは別に大蔵省と折衝いたしまして、二十一億ばかりのワクをとりまして、買い上げを実施しておる次第でございます。
  121. 滝井義高

    ○滝井委員 生活保護者なり台風その他の災害によって買い上げのワクが三十四年から二十一億だという御説明がありましたが、その実績はどういうことになっておるのですか。
  122. 河野鎭雄

    河野政府委員 これは各府県に割り当てまして、貸付なり買い上げをやっておるわけでございますが、大体消化をいたしておるというように考えております。
  123. 滝井義高

    ○滝井委員 大体わかりました。政府はできるだけすみやかに、この法律ができておるということを各市町村にPRしてもらって、そうして帳面づらでは五、六十万認定を受けていないということになっておる、それらの人たちにすみやかに認定を受けるように、ある程度の経費でも市町村に差し上げてPRをやる必要があると思うのです。実は各自治体の状態を見ても、金は一人分くらいの金しかこない。しかし当初は二百七、八十万の人が殺到してきたわけですから、そのときには各市町村では、金の割当、いわゆる人件費は一人分しかなかったが、使っておる人件費は、四人分も五人分もの経費を使ってやっておるという市町村はざらです。そういうことで市町村にはこれの実施について不満がある。最後の追い込みですから、一年延期されたならば、厚生省としては相当の金を、この際最後だからということでやはり自治体に事務費をあげて、そしてやってもらう必要があると思うのです。来年になってからなお二、三十万も残っておるのだということでは、やはり問題だと思うのです。これは政務次官にお願いしたいのですが、現実はそうです。これは私は調べておるのです。私の市なんかでもこの事務のために五人か六人置いておる。ところが経費は多分五万円ぐらいしかきていないのです。らょうど年金の事務と同じです。だから市町村はあごを出しているのです。だから、そういう点もう少し事務費をやって、そして事務の円滑化をはかりなおPRをして未申請者はすみやかに申請させる措置をとる、この方法をこの時効期間一年延期を契機としてやるべきだと思うのですが、その所見を承って私の質問を終わりたいと思います。
  124. 内藤隆

    ○内藤(隆)政府委員 滝井委員のおっしゃるような点があるだろうとは想像されますけれども、今ここで直ちに事務費を云々というわけには、予算的な立場からいかないかもしれません。しかしPRをうんとやりまして万遺漏なきを期したい、かように考えております。
  125. 永山忠則

  126. 本島百合子

    ○本島委員 ただいま提案されましたことにつきまして、滝井委員の御質問にダブらないようにしてお尋ねいたしますが、最後に申されました一年間の期限でいいのか悪いのか、こういう点については、私ども実際調べてみますと、政府のPR活動が非常に足りなかったということが言えるんじゃないか。しかも、現在申請をしていないというような人々を聞いてみますと、申請するまでの手続が非常にめんどうであるということです。そして納税証明だとか在外証明だとか引き揚げの当時の証明というようなものもとらなければならないというようなことで、現在生活に困窮しておる人であるとか、あるいは未亡人のような方々、こういうような人々はなかなかそれをやることができないというようなことで申請がされていないということを聞いておるのです。この中で一番私気になりますことは、この引き揚げ証明を得ることがむずかしいということが言われるのです。なぜかというと、引き揚げましてから五カ年間は大体どこでもわかるようになっておるけれども、紛失したり、あるいはまた自分自身でなくて、夫の場合であったとかあるいは妻の場合であったとか、こういうような場合にその証明書をなかなかもらえないというのです。ですから、おかしな現象で、東京都内のある区におきましては手数料料金の収入が非常にふえておるので、何のためにこの丁数料料金がふえたのかと議員さんが質問したところが、今申し上げた引揚者の人たちの証明手続のための増である、こういう答弁があったというくらいです。そうしますと、いかにこれが複雑であるかということがわかるわけなんです。こういう点の是正がされないと、ほんとうに救ってあげなければならない、保障してあげなければならぬという人たちがなかなか受けられないのではないか、こういうことが言われておりますが、この点はいかがでございましょうか。
  127. 河野鎭雄

    河野政府委員 法律ができました当初は、立証につきましても相当慎重を期しまして、いろいろ書類等を要求したこともございますが、その後できるだけ実情に合わせるような意味で、立証資料等につきましてもできるだけ緩和をしていくというような指導方針をとって現在に至っております。ただいまお話しのございました、たとえば引き揚げ証明書でも、必ずしも引き揚げ証明書がなければいかぬということではなしに、引き揚げ証明言があれば引き揚者であるということがはっきりいたしますが、引き揚げ証明書がなくても、いろいろほかの方の資料で、たとえばお子さんがおれば学校に転校されるというふうなこともございますし、あるいは戸籍の面でだれはどこで産まれたというふうなことが、なるほどこの人は外地で産まれたのだということがはっきりすれば、それによって、この人は確かに引揚者であるというふうなことも推定がつきますので、そういうふうなことでできるだけ手続を、引き揚げ証明書がなくても済むようにいろいろ工夫をいたしておるわけであります。あるいはそういった工夫でなお足らない点がありますれば、今後ともそういった趣旨でできるだけ実情に沿うように善処して参りたい、かように考えております。
  128. 本島百合子

    ○本島委員 その問題ですが、私もだいぶ御相談を受けて、原籍地あたりに照会いたしまして何とか証明書を出してくれ、こう言ってやりましても、大体五回ぐらいやらないと証明を書いてくれないのです。そうしますと、今日申請しようとする人はこのケースにひかかっている人が多いと思うのです。ですかな、そういう点で、たとえば証明者があれば便法をはかるとかなんとかしていただかないと、この引き揚げ証明はなかなか出してくれないのです。そういう点はどういうふうにお考えになりましょうか。
  129. 河野鎭雄

    河野政府委員 今お答え申し上げましたことと同じことをお答えすることになるわけでありますが、必ずしも、引き揚げ証明書がなければならないというふうには扱っておらないわけであります。そういった点の趣旨が十分徹底しない向きがありますれば、いろいろの機会を通じまして、府県市町村にもその趣旨を徹底するように指導して参りたい。できるだけ実情に沿うようにいたしまして、受給資格がありながら受けられないということがないように考えて参りたいと思います。
  130. 本島百合子

    ○本島委員 ただいまの点については特段の御注意を払っていただいて、あまり不自由をかけさせないように——田舎の役場なんかに五回も問い合わせをして、それが冷たい言葉でそういうものはわかりません、出しませんといふううな返事がくるようで、非常に長くかかっておるのです。この点でずいぶん時間をつぶしたという方があるわけであります。そういう点、今後関係機関に対して一つ御注意願いたいと思います。  それから、ここに提案されたこととは別にお尋ねしたいことは、この法律が出ましたときに在外六カ月という条件があるのですが、この六カ月ということになると、五カ月までというのは認められないわけですね。そうすると、五カ月でも一カ月でも産まれていたということはわかっているわけですが、こういう条件がどうしてついているのか、六カ月という条件がついておられることについてはどうでしょうか。
  131. 河野鎭雄

    河野政府委員 この給付金の法律を作るに至りました経過はすでに御承知かと思うのでありますが、大体の考え方といたしまして、営々として外地に生活の基盤を築いておったという人たちが無一物で内地に引き揚げた、こういった人たちをほおっておくわけにはいかぬじゃないか、そういうようなことでこの法律ができたわけでございます。従いまして、外地に相当期間おった、生活の基盤を相当期間持っておったというようなことが、この法律を作ります際の出発点であったと考えるのであります。そういうふうな考え方が、だんだんできるだけ広い人たちに給付ができるようにということで、当初考えられた期間をできるだけ縮めるということで、ぎりぎり六カ月というふうなことに落ちついたように私は記憶をいたしておるわけでございます。この六カ月の問題につきましてはいろいろ御議論もございますので、さらに検討いたしてみたいと思いますが、法律趣旨はそういうところにあったわけでございます。相当期間外地で生活基盤を築いておった人、この人たちを救うというふうな出発点からできた法律でございますので、そういった期間が設けられておる次第でございます。
  132. 本島百合子

    ○本島委員 これは六カ月以上ということになっておるのですが、それより一日足りなくてもこれにひっかからないわけですね。こういう矛盾というものは、私は、今回の提案のような場合には、やはりある程度改正してもらいたかった、こう思います。  いま一つは、二十五才未満で死亡した場合、これには遺族給付はしないということになっておりますが、これはどういう根拠でなされておるのでありましようか。
  133. 河野鎭雄

    河野政府委員 こちらに帰ってきまして、法律ができる前になくなった場合に、遺族給付金を出すわけでございますが、その場合死亡当時の年令を二十五才で切っておるわけであります。こちらに帰って参りました者に出します遺族給付金にいたしましても、引揚者給付金にいたしましても、趣旨はやはり生活の再建の資金というふうな趣旨でございまして、そういう趣旨からいたしますると、やはり一家の中心をなすような人がなくなった場合に出すということが筋だろうということで、二十五才がいいかどうかということについては御議論があると思いますが、一応一家の中心をなす者ということであればそのくらいの年令であろうということで、法律案ができたわけでございます。これらの問題につきましても、今の六カ月の問題その他いろいろ御議論のあるところでございますが、さらに今後の問題としては検討してみたい、かように考えております。
  134. 本島百合子

    ○本島委員 もう一点、終戦前の引き揚げがこの対象になっていないわけですね。これはもちろん日本軍の命令によって引き揚げをさせられた、こういうような形になっておるのですが、こういう点の不合理ということもお考えになったことはないでしょうか。生活の根拠を失ったということには変わりないわけなんです。そうしますと、終戦直前に引き揚げてきた人たち、こういう人たちがこの恩恵に浴さない、こういうことになっておるようですが、そういう点はどうでございましょうか。
  135. 河野鎭雄

    河野政府委員 引揚者をどこで定義づけるかということ、これもいろいろ議論があるところだと思いますが、法律考え方といたしましては、やはり終戦という一つの事態をとらえまして、終戦によって内地に帰ってこなければならないような事態になった者というふうな立て方を、実はいたしておるわけであります。従いまして終戦前の引物者につきましては、原則として法律を適用しないという立て方になっておるわけであります。終戦前の引湯者でも、だんだんニュアンスの差はあるわけでございまして、終戦後の引揚者と似通った事情にある者もあるかと思いますが、どこかで線を引かなければならぬということになりますと、終戦ということで線を引くのが一つ考え方であろう、かように考えるわけでございます。終戦前の引揚者と終戦後の引揚者と比べてみました場合に、内地へ来てからの生活の建て直しというふうなことを考えますと、やはり終戦後の引揚者の方に相当のハンディキャップがある。これが非常に多額な金額でございますれば、また考え方が変わって参ると思うのでありますが、平均いたしまして一人一万四、五千円程度の金でございます。その程度の金でございますれば、終戦前の引揚者と終戦後の引揚者というのはその程度のハンディキャップがあるんではなかろうかというふうな考え方もできるわけでございます。一応終戦というところ下線を引いておるわけでございますが、御趣旨でもございますので、さらに検討をしてみたい、かように存ずるわけでございます。
  136. 本島百合子

    ○本島委員 提出者の加藤先生の方にお尋ねいたしますが、ただいま申し上げました在外六カ月の条件撤廃、あるいはまた引き揚げ後二十五才未満で死亡した場合の給付について、あるいは終戦直前の引揚者、こういうような問題については、引き揚げ団体の方々からも相当要求されてこられたことと思います。今答弁にありましたように、非常にむずかしいということが言われておりますけれども、こういう点はちょっとの違いで恩恵を受けるとか受けないとか、こういう形になるわけなんです。そういたしますと、この法の精神からいっても、外地にあって苦労されて、そして負けて日本に帰ってこられての御苦労、終戦直前に帰ってきた者と戦後に帰ってきた者とは、社会情勢が違うからという御答弁がありましたけれども、その実情においてはそんなに変わらない面もあると思います。こういう点について、今回一年延期ということでなしに、もう少し延ばしていただくということと、同時にこういう人たちの面について改正を多少でもしようかという御意思があるかどうか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  137. 加藤武徳

    ○加藤参議院議員 ただいま本島委員の御質問の点でございますが、在外期間の六カ月以上、また二十五才以上という年令制限の撤廃、この両点につきましても、参議院の社会が労働委員会において相当論議がございまして、改正したらどうか、かような意見もあったのでございます。また三番目に御指摘の終戦前に引き揚げた方、この方につきましては昭和三十二年五月十七日、参議院がこの法律案を通しましたその日に、附帯決議がなされておるのでありまして、その附帯決議の内容は、その実情が終戦後の引き揚げと同様である者については十分な考慮を払え、特に閣議の決定等で引き揚げた者については、さらに十分な処置が要るんだ、かような附帯決議が当時あったのでございます。従いまして今回の時効期間の一年延長の際にも、このことが論議せられたのでございますが、何せこの五月の十六日で時効期間が満了、従って非常に急を要しましたために、これらの諸点は今後の検討に待つ、かような結論になったわけでございまして、よろしく御了承賜わりたい、かように考えます。
  138. 本島百合子

    ○本島委員 ただいまの御答弁によりましても、今後の検討に待つということでございますので、政府の方におきましては、こういう点についてもう一度検討されて、非常に不幸な立場に置かれておる人をできるだけ多くこの対象にさしていただきたいということを要望いたします。  同時に、予算の面で先ほども質問があったわけでありますが、どう考えてみても九十五億円くらいの程度で、あと相当のPRがなされた場合、もっと出てくるんじゃないかという不安があるわけであります。そういう場合には、もちろん追加予算をおとりになると思いますが、そのお腹がおありになるかどうか。
  139. 河野鎭雄

    河野政府委員 まずまずこの目標額でおさまるものと考えておるわけであります。法律で権利を設定するわけでございます。万一足らないことがあれば、当然これは善処しなければならぬ、かように考えております。
  140. 本島百合子

    ○本島委員 こういうものは、これこれで打ち切るものだという線のものではないと思うのです。すなわち該当する人たちがあれば、当然出さなければならない性質のものですから、そういう意味では、今日期限が切れるというようなことがあるせいかもしれませんが、この法律が出まして、施行されたときと同じくらいの申し込みが殺到しておる、各県ともそういう状況だといわれるのです。そういたしますと、かなりの者が出てくるということが予想されるわけですから、私はこの五百億円という金にこだわることなく、そういう場合がありましたならば、どんどんと出される腹を持って善処してもらいたい、こういうことを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  141. 永山忠則

    永山委員長 これにて質疑は終局いたしました。     —————————————
  142. 永山忠則

    永山委員長 引き続き討論に付するのでございますが、申し出がございませんので、直ちに採決することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、さように決しました。  参議院提出引揚者給付金等支給法の一部を改正する法律案について、採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  144. 永山忠則

    永山委員長 起立総員。よって本案は原案通り可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ————◇—————
  146. 永山忠則

    永山委員長 この際、参考人の出頭要求に関する件についてお諮りいたします。林野庁における労使関係に関する件及び社会保険関係職員の身分に関する件について、それぞれ参考人より意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、さように決しました。  なお時日及び参考人の選定につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  148. 永山忠則

    永山委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。      ————◇—————
  149. 永山忠則

    永山委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。  なお、質疑は、四十分ずっと各党申し合わせがございますので、御了承を願いたいと存じます。赤松勇君。
  150. 赤松勇

    ○赤松委員 前回三池の争議に関しまして政府当局に質問をいたしましたが、その際、労働大臣及び国家公安委員長が欠席のため、質問を留保しておいたわけでありますけれども、ちょうどきょう出席を願いましたので、前回保留になっておりました部分につきましてのみ、御質問を申し上げたい。それは、主として、私は、質問の焦点をしぼりまして、四月十八日に行なわれました三川の事件につきまして、質問してみたいと思うのであります。  その前に、柏村長官から、憲法二十八条の解釈及び二十八条が保障する団結権、団体行動権、それと、労使関係の際における紛争との調和の問題、そういう点については、前回その見解を聞きましたが、しかしやはり国務大臣でありまする国家公安委員長の御見解を、この際明らかにしておいていただきたいと思うのであります。くどいことを言いませんが、憲法二十八条は、一般市民法に優先して、労働法規の上に労働者の保護を与えております。従いまして、労使の紛争の中に暴力団を介入したり、あるいは国家機関の介入警察官の介入等は、厳に排除をしておるのであります。しかるに、最近三池におきましては、当初は暴力団が出た。暴力団が引きますと、今度は暴力団にかわって警察側が、ほとんど会社の手先のような形で出てきておる。非常にゆゆしい問題であると思うのであります。そこで、この憲法二十八条にいうところの団結権及び団体行動権、これの発動であるピケッティングに対する国家公安委員長の御見解というものを、一つ明らかにしておいてもらいたいと思うのであります。そのことがはっきりしていないと、おそらく労働争議というような重要な労使関係に警察官を出動するという際の範囲、基準というものが、明確にならぬと思います。
  151. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 警察その他が今回三池の労働争議等に介入しているとかいうことは全然ないのでございまして、ただ警察が出動しておりまするのは、仮処分の執行の保全とかそういうことにつきまして要請のありました場合、あるいはまた、いろいろの諸般の情勢から考えまして、そのままに放置すれば非常な事態が起き得る、こういう場合に警察が出動しておるわけでございます。私どもも、この憲法二十八条に言いまする勤労者の団結権、これらのことはもちろんよく承知しております。その限界は十分心得ておるつもりでありまするが、いわゆるピケ等の問題につきましては、ただただ本会議等で論議されておりますように、平和的説得の範囲でのいわゆるピケ、こういうことになると考えておるのでございます。警察官が出動いたしました限界につきましては、先ほど申し上げましたような次第でございます。
  152. 赤松勇

    ○赤松委員 今現地には、動員されておる警察官の数字はどれくらいに上っておりますか。
  153. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 時々によって変わりまするが、最高が約五千、少ない場合には四千とかあるいは三千七、八百、こういう状況でございます。
  154. 赤松勇

    ○赤松委員 その点をもう少し詳しく御説明を願いたいと思うのであります。今動員されておるのは熊本県警察部及び福岡県警察部であると思うのでありますけれども、これらの九州一円にわたる警察官が二つの警察部の下に編成をされまして、それぞれ行動をしております。従ってその動員の警察官の数字を詳しく申し述べてもらいたいと思います。
  155. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 日によって違いますことは先ほど大臣からお述べになった通りでございますが、五月十一日本日の警備体制でございますが、総数四千五十三名、福岡県側か二千九百五十九名、熊本県側が千九十四名でございます。それからこの数の中には福岡県並びに熊本県以外に九州名県、いわゆる長崎、佐賀、鹿児島、宮崎、大分等からそれぞれ応援をとって参加いたしておるわけであります。
  156. 赤松勇

    ○赤松委員 私の資料によりますと、福岡県警本部でこれを統括しておる人員が四千人、それから熊本県警が千五十人、熊本から八百人、鹿児島から二百五十人、福岡から三千二百人、大分から百五十人、佐賀から二百人、長崎が二百五十人、宮崎が二百人、こういう多数の警察官が動員をされておるのであります。そこでこの五千をこす警察官が現在三池のそれぞれの鉱区に配置をされておるわけでありますけれども、この警察官が一体どこで宿泊しておるか、その宿泊の個所をこの際明らかにしてもらいたいと思います。
  157. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 宿泊の場所はいろいろになっておりますが、大きな施設としては大牟田市の体育館でありますとか、あるいはまた今休校しております保育所などもいろいろ利用しております。それから一部旅館もあるようであります。あるいは会社の事務所の一部、こういうようなところ、これだけ多数の警察官でありますので、いろいろの施設を利用いたしまして宿営をしておる次第であります。
  158. 赤松勇

    ○赤松委員 私の資料によれば、宮浦炭鉱内、四山炭鉱内、四山保育園、友愛クラブ、宮原保育園、臼井保育園、その他緑ケ丘、いろいろあるのでありますけれども、これらの施設は会社の施設と保育園等の施設とに分かれておりまして、警察が駐在する以上は、おそらく会社及び保育園との間には何らかの契約があると思うのでありますけれども、その点はどういうふうになっておりますか。
  159. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 警察と会社との間にはいろいろ賃貸契約を結びまして、利用料等もきめておるようであります。すでに福岡県ではその利用料等を支払ったりいたしておりまして、熊本県も私は先般参りましたときは近く支払いたい、こう言うておりました。賃貸契約で利用料をきめてやっておるようであります。
  160. 赤松勇

    ○赤松委員 その契約の内容を明らかにしてもらいたいと思います。これは労使の当事者である一方の、ことに今紛争の一番大きな根源をなしておる会社の施設の中に警察官がたむろしておる。これは非常に重要な問題だと私は思うのでありますけれども、その前に契約の内容を明らかにしてもらいたい。
  161. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいま大臣からお述べになりましたように、会社との間に契約を結び、福岡県警におきましては四月二十八日までに会社施設二十九件に対しまして十三万九千百円を支払っております。熊本県警におきましては五月一日までに会社施設十五件に対しまして六万六千九百円を払っておる状況であります。
  162. 赤松勇

    ○赤松委員 厚生省は来ておりますか——来ておらなければ、あとから田中織之進君が詳しくこの点については追及すると思うのでありますけれども、現地においてはこの保育園の子供が保育園に通えない、そのために父兄たちは非常に困っておるわけなんです。こういう点については後ほど私は厚生省に聞きたいと思うのでありますけれども、その前に労働大臣に対してお尋ねしたいが、現に紛争中の労使の間で一方の当事者である経営者の施設の中に、本来中立であるべき警察官を駐在さして、そして絶えず会社側の立場に立つような行動を繰り返しておる。このことについては私は明らかにこれは国家権力の介入であると同時に、不当な労働争議に対する介入である、こういうように思う。労働大臣はこの事態に対してどうお考えになりますか。
  163. 松野頼三

    松野国務大臣 警察官が争議に介入することは厳に慎まなければなりません。ただ警察官が駐在する場所によって介入を一方的にきめるという解釈は、これは私は別個な問題だと存じます。警察官というのは常に公平の立場であるのですから、たまたま駐在の場所が会社の施設だったらどうだ、組合の施設の中におったらどうだということではなしに、その行動において介入というものをきめるべぎものであって、たまたま施設がどうだということは、これは労働問題には関連ないことであります。その行動がたまたま一方的だったというときに、これはやはり公平の立場からいうならば好ましいことではございません。しかし施設の問題と争議の問題と——必ずしも施設の中におったからという、それは状況の判断によって違うのではなかろうか、私はこう考えております。
  164. 赤松勇

    ○赤松委員 現に労使の間で紛争が起きておる。しかもその労使の間の紛争にはしばしば警察官が介入をして、そのことについては衆議院においても参議員においても問題になっておる。従って一方の当事者である会社の施設の中に警察官が寝泊まりをする、そうして常時会社の方を抑制するのでなしに、労働者の団体行動権に対していろいろな抑制を加えておる。そういう事実があるとすれば、これは全く労働者を保護しなければならぬところの労働大臣としては今の答弁はおかしいとう。これは明らかに警察の中立性を失っておるものだと言わなければならぬと思いますが、もう一度労働大臣答弁を伺いたい。
  165. 松野頼三

    松野国務大臣 先ほども答弁いたしましたように、警察官のおる場所がどうだということは、私はこの争議の問題とは別個だと思うのです。それではたまたま工場内において紛争が起きる、あるいは起きた、またそういうことがあったというときには、当然工場内において警察官がその現場を監視するという必要があれば、工場内におることは当然なことであります。紛争の起こる場所、その状況によってきまるべきであって、あるいは警察行動の発動によってきまるべきであって、どこにおる、どこにおらないということは、これはその起こる場所にも影響することじゃなかろうか。私はそういう意味で、警察官が争議そのものに関与する方法と、その関与の仕方が問題であって、どこにおる、おらぬというのは、警察官が実証するために必要な場所、あるいはそういう危険を未然に防止するために必要な場所におることが、警察官としてはあるいは妥当かもしれない、私はそういう意味で、どこにおったからどうだとか、一方的に不利益な立場をとるというのは、その現実問題であって、私はその紛争の場所におったからどうだということは、これはまた問題が別な問題じゃないかと考えます。
  166. 赤松勇

    ○赤松委員 現に闘争中の労勘者の側からすれば、会社の施設、つまり闘争中の相手である会社の施設の中に警察官が駐在しておるということは、少なくとも労働者に異常な刺激を与えることになる。それから今労働大臣は、危険な状態が発生する場所に駐在しておるのだ、こういうことをおっしゃいましたけれども、私はここに現地の地図を持っております。全然衝突の危険のない会社の施設に、たくさん分散駐在しておる事実がある。こういう点についてはさらに田中織之進君から追及すると思います。  そこで公安委員長にお尋ねしたいのは、前に柏村長官は、この四月十八日の第二組合の強行就労の際に、執行吏の要請によって警察官が出動した、その際に私は三千人と言ったら、長官は千五百人だ。それから第一組合のピケ隊は十三人、十三人のピケ隊に対してなぜ千五百人の警察官を必要としたか、こういう質問に対して、それは十三人のピケ隊を抑えるために千五百人を動員したのではない、十三人のピケ隊を支援するために第一組合の組合員が多数動員されるということを想定して、千五百人の警官を動員したのである、こういう答弁です。そこで私どもは、これは多賀谷君の質問にもありましたけれども、その十三人の組合員に対して説得の機会も時間も与えないで、いきなり数百人の警察官がそれを取り巻いて、そして第二組合を強行就労さした、明らかにこれは警察官の不当介入です。私はそのときにあなたに聞いたのだが、どうしてその十三人の人を数百人の警察で押える必要があるか。あなたは衝突の危険がある、こういうふうに判断をしてそうしたのだという。私どもの方は、これは妨害排除でなしに封殺だ、封殺行為だ。ところがあなたは、そうでなしに、危険の発生が予測できたので、警職法五十条によってこれをやったのだ、こういう答弁だったわけであります。ところが本月四日に至りまして、四月十八日の三川事件、ことに十三人のピケ隊、この十三人のピケ隊が五十人の第二組合に立ち向かえるものでもないし、あるいはそれによって何か第一組合が第二組合に集団的な暴行事件を起こすというようなことは、常識から考えてそんなことは考えられない。そのわずか十三人の人間を数百人の警察官が包囲をして、そうしてピケの合法性を奪ったばかりでなしに、第二組合の強行就労を助けていくというような不当介入をやったわけであります。この間のあなたの答弁は速記録にございますけれども、きょうは公安委員長にお尋ねするが、あの四月十八日の十三名のピケ隊に正当な説得の時間、機会を与えないで、警察官が千五百人動員されて、それを封殺しながら第二組合の強行就労を助けた、この事件に関する公安委員長のお考えを聞きたいと思います。
  167. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 私は過般の委員会には故障で出られなかったのでありまするが、大体今赤松委員が言われましたように、警察庁長が出まして、例の答弁を申し上げておるのであります。私の考えも大体警察庁長官の言ったことと同じでございまして、四月十八日のあの事態に処しましては、ちょうどその前に三月二十八日あるいは二十九日にあれだけの事態を起こしておるのでございますから、あの就労に当たりましては、これが接触するなりいろいろなことがあれば、非常な事態が起こり得る可能性がある、そういうわけで執達吏の要請もございましたが、執達吏の要請ということだけでなく、あの事態を総合判断いたしまして、警察官を待機させ、あれだけの措置をとったのでございまして、四月十八日のあの事態に処しては、私も警察のとりました処置について何ら間違いはなかった、むしろあれだけでおさめたということは非常によかったことである、かように考えております。
  168. 赤松勇

    ○赤松委員 十三名のピケ隊を数百人の警察が包囲して、説得の機会も時間も与えないで、第二組合の強行就労を助けたということに対して、あなたはそれは正しいのだ、こうおっしゃいますか。
  169. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 たしか十三名は通用門にいたピケ隊であろうと思いまするが、正門には相当のピケ隊がおったのでありまして、正門、通用門、これはずっと並んであるのでありまして、十三名だけのピケ隊にあれだけの警察官を向けたということではないのであります。全体のピケ隊の全部の情勢から判断して、これだけの警察官で警察権を発効した、こういうように私どもは思います。
  170. 赤松勇

    ○赤松委員 その門のところに十三人おって、そのほかにはその付近にはピケ隊はいないのですよ。これは長官も当時認めておった。その後になって、第一組合品の諸君が現物に来たのであって、当時は現場にいなかったのです。十三人よりピケ隊はいない。それを数百人の警察官が包囲し、さらに第一組合の諸君がかけつけて来るのをば防止するために残余の警察官、つまり総勢千五百人の警察官をあそこに配置して、そうして説得の妨害をやった、こういうことなんです。この点についてはどうですか。国家公安委員長としてはっきり言って下さい。
  171. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 私も先般大牟田なり荒尾の地区をずっと見ましたが、これは相当のピケ隊がいろいろの要所にずっとおるのでありまして、ことに四月十八日は三月二十八日のあの事件からそう隔たってない、まだ若干興奮のさめないときでありまするから、諸般の状況を総合判断して警察官があれだけの措置をとったということは、これは私は何ら間違いではない、かように思っております。
  172. 赤松勇

    ○赤松委員 この間長官は「本月十八日三川鉱におきまする新労組の就労は、これは執行史からの要請に基づいて警察が出たわけでございます。」今委員長は、執行史の要請があろうとなかろうと、あの場合に警察は出るのだ、また出たことが正しかった、こういうことを言っておりますけれども、柏村長官は執行吏からの要請に基づいて出たと言っている。「もちろん会社といたしましては、四時ごろに入構させる予定をしたようでございまして、三時ごろ警察側も、四時ごろ入構させるつもりであるという通報を受けたわけでございます。」そのときの状況を申し上げますと、「両者の衝突ということによって、また不測の事態が生ずることを警察としては十分警戒すべきであるという判断に立ったものと思うわけでございます。ただいま三千人というお話でございますが、大体あのとき警備に当たった者が千五百名、実際に新労組についていきましたのはたしか一個中隊程度でございます。そうして十三名の組合のピケに対して、これを排除するために行ったというのではなくて、途中あるいは現場においてどういう事態が起こらないとも限らないというようなことから、そういう事態に対処するために警察が出動したということでございます。実際の問題としては、通用門から何らの抵抗なしに新労組が入ったわけでございまして、これについて警察としては特別にどうこうということでなしに、その入るまでの間における不測の事態の発生を防止し得るだけの警備力を持っておったということにすぎないのでございます。」こ、ういうふうに答弁をされておる。従って、ここでは十三名のピケ隊を抑えるというのが目的でなしに、あとからいろんな形で応援に来るとか、あるいは説得に来るとか、そういうような第一組合の組合委員の行動を抑制するために千五百名の警察官を使ったのである、こう長官ははっきりこの間述べておる。そうだとすれば、十三名のピケ隊に対してこれを封殺したという事実は、長官自身も認めておるわけです。で、国家公安委員長は、この十三名のピケ隊を封殺したことはあくまで正しかったんだ、そうお思いになるならば、ここではっきり言ってもらおう。いかがです。
  173. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 当時正門前に約百名の者がおったようであります。裏門に約百名、その他計約三百六十名のピケ隊がおったようでございまして、当時の諸般の状況から総合判断いたしまして、三月二十八日なりあるいはその前後ごろのああいう事態が再び起こってはいけないという判断のもとにやったのでございまして、私は、あの措置はあのときとしては正しかった、とかように思っております。
  174. 赤松勇

    ○赤松委員 当時の新聞報道を読んでも、柏村長官が答弁されておるのと同じことなんだ。ピケ隊は十三名、はっきり新聞も書いている。今公安委員長の話を聞くと、何百名なんということを言っておる。それはいつの日ですか。私の言っておるのは四月の十八日の三川事件ですよ。公安委員長と長官の答弁が違うじゃないですか。
  175. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 先ほどから申しておりますように、通用門は十三名でありますが、正門あるいは裏門その地合計して約三百六十名の者がおった。正門なり通用門なりはたしか続いておるように私は見てきました。
  176. 赤松勇

    ○赤松委員 その当時は正門にも何にもいなかった。十三名で、よもやあの朝強行就労させるということは予想しなかった。そのすきを突いて行ったのです。あなた、よくそれを調べてみなさい。  それから、この間亀井労政局長は「ピケの限界が平和的な説得を越えるものでないことは先ほど来申し上げた通りでございまして、説得の機会というのが、現実にその事態においてどういう限度までが機会であるかどうかということは、現実に私その場の事情を承知いたしませんので、警察庁長官の御説明が説得を聞かなかったのか、あるいは聞く余裕がなかったのか、そういう点につきまして判断はつかないのでございますが、一般論としましては、そのピケが合法的なピケであれば、そういう合法的な行動について一応耳をかすということは、これは一般論としては当然なことだと思います。」これはあたりまえのことである。ピケの限界については、もちろん学説がいろいろあります。これの判決についてもいろいろあります。その先に労働省が三十二年一月に出した団結権、団体交渉その他の団体行動権について、というそれを見ても、ピケの限界については説得の権利と自由を認めておる。これは一般論として、現に亀井労政局長も答弁しておる通りである。そうだとすればだ、十三人のピケ隊になぜ説得の機会を与えなかったか。この間長官は巧みに私の質問をすりかえて、こう言っている。そのピケ隊の説得を聞く自由もあるし、聞かない自由もある、そういう答弁をあなたはしたでしょう。私はそんなことを質問しているのではない。聞く自由あるいは聞かない自由、それを言っているのではなしに、なぜ説得をさせる自由を与えなかったか。警察がなぜそれを封殺したか、これを私は言っているのです。この点について労働大臣はどうお考えになりますか。
  177. 松野頼三

    松野国務大臣 ピケの限界については明確になっております。四月十八日の問題については、その現地の報告を現状について私は詳細に伺がっておりません。従って、十八日の裏門ですか正門ですかのお話は、私は現にまだ伺がっておりません。あるいは労政局長から答弁させるのが適当だと存じますから、局長になお詳細に答弁いたさせます。
  178. 赤松勇

    ○赤松委員 それでは、あなたが現地を見ない、また十分な報告を受けていないから判断ができない、こうおっしゃるならば、一番権威のある、おそらくあなたといえどもこの決定には服さなければならぬ、つまり裁判所の決定を読み上げまして、あなたや国家公安委員長の見解をお聞きしたいと思うのでありますけれども、本月の四日に福岡地方裁判所で決定が出ておる。申立人は三池炭鉱労働組合、相手方は三井鉱山株式会社、その意義申し立ての理由は、「中村、吉次両執行吏は、同年四月十八日午前三時三〇分頃申立人組合員および応援者計一〇数人」「一〇数人」というのは十三人のことです。「一〇数人が相手方の三池鉱業所三川鉱の三井病院通用門附近において、申立人組合のストライキ中に同所から三川鉱へ就労のため入構しようとする者を監視し、説得する目的でピケッティングを行っているのを現認するや、右ピケッティングは、前記仮処分決定第二項により許されないものと認定して、直ちに警察官の援助をえて、右ピケ隊員を排除して、三池炭鉱新労働組合品貝約一五三人を右通用門から三川鉱内へ入構させた。」以下四月二十日の午前九時の問題も取り上げておりますけれども、これに対して福岡地方裁判所の判断はどうかといえば、「中立人組合主張のごとき仮処分決定」というような書き出しで、「仮処分決定第二項は中立人組合品が平和的な説得もしくは団結による示威の方法によって、就労希聖者に心理的な影響を加えながら、しかもなお就労希望者が自由意思によって出入を為しうる余地を残して、これらの者に働きかけ、その就労を思い止まらせることは、許容されている趣旨であるから、中立人組合の行うピケッティングであっても右限度内のものは、実力による妨害行為に当らない事は多言を要しない。従って執行吏は当ピケッティングが前示ピケッティングの正当性の限界を越えているか否かを判断し、右逸脱が認定された場合に、はじめて右ピケッティングの排除の可能性が生ずる。ところで、中村、吉次両執行吏の同年四月一八日付作成にかかる執行調書(甲第四号証)には「大牟田市三池鉱業所三川鉱正門及病院裏門等を看るに、被申立人組合に於て、ピケを張り、右ピケは、警察上の援助を求むるにあらざれば、之を解くこと不可能と認めたるにより云々」なる旨の記載がなされていること、吉次、半田両執行吏の同月二〇日付作成にかかる執行調書(甲第五考証)には、「大牟田市三池鉱業所宮浦鉱正門附近に臨み、申請人主張の如き妨害行為の有無につき観察したるに、被申請人組合員等において、正門前所附近にピケを張り実力をもって妨件行為をなしあることを認めたるをもって、云々」なる旨の記載がなされている。  しかして、右各記載は、その趣旨明確を欠くが、右執行史等は中立人組合の行っていたピケッティングが前示ピケッティングの正当性の限界を越えているか否かを判断するまでに至らず、前記仮処分決定第二項が申立人組合の行う団結による示威もしくは平和的説得をも禁じていると解釈して、前記各執行々為をなしたものと一応解せざるをえないように思われる。したがって、申立人組合が団結による示威もしくは平和的説得を行うことは、前叙の通り許されているのであるから、右執行史等が、これをも許されないと解釈したことは、前仮処分決定第二項の解釈を誤っていたものというべきである。しかして、初手方の指定する職員又は新組今員の就労に際しては将来においても申立人組合のピケッティングが行われることが予想されるので、右のごとき誤った解釈にもとずく執行々為が将来においても繰返えされる可能性が充分に考えられる。よって本件異議申立は、理由があるので、これを認容することとし、主文のとおり決定する。昭和三五年五月四日、福岡地方裁判所裁判長裁判官中池利男、裁判官中野栄一郎、裁判行阿部明男」こういう決定が出ている。すなわち、執行吏のピケを——その場合、十三人のピケを排除する、あるいはこれを封殺する、そういう行為及び警察官の出勤を要請した行為は、これは中立人組合が団結による示威もしくは平和的説得を行なうことは当然許されているものであるから、右執行吏がこれを許されないものと解釈したことは誤りである、こういうように明確に判決が出ている。あなたはこの判決に同意されますか。どうですか。あなたの先ほど来の答弁によれば、十三名のピケ隊を封殺したということは決して誤りでなかった、こういう答弁なんです。福岡地裁は明らかに執行吏のこれは行き過ぎであると同時に、そういう解釈をしたことは誤りだ、こういう判決を出している。これに対してどう考えられますか。まず国家公宏委員長答弁、その次に労働大臣答弁を伺いたい。
  179. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 先般出されました判決といいまするか、あるいは決定といいまするか、それはまさしく裁判所の判決、決定でありまして、一応正しいものと思いまするが、しかし会社は抗告もしておるようでございまして、問題はまだあると思います。しかし、警察の行動は、先ほどから申し上げましたように、執達吏の要請もありましたが、しかし警察の判断としては、たびたび申し上げましたように、三月二十八日、二十九日、ああいう事件の直後でもありまするし、あのあたりの地帯の全体の情勢から総合判断すれば、まさにいろいろの事態が起るんじゃないかというので、警察官職務執行法に基づいてあれだけの措置をとったのであります。私はこれは間違っておるものとは考えておりません。
  180. 赤松勇

    ○赤松委員 この決定は、さらに深く読んでみますると、いわば執行吏の解釈の誤りもさることながら、その誤った解釈に導かれて出勤した警察官自身に対する批判意味も含まれております。客観的にいえば。ここの判決でいっていることは、十三名のピケ隊に説得の機会を与えなくともよいものだ、こういうように解釈したことは誤りである。言葉をかえていえば、十三名のピケ隊に当然説得の機会を与えるべきであった、こういうことなんです。あなたは権力をもって十三名の正当な、憲法によって保障されておるところの説得権を封殺して、それでもって正しいとおっしゃいますか。労働大臣はいかがですか。
  181. 松野頼三

    松野国務大臣 正当な労働者の権利を圧迫するようなことは私はいけないと思います。ただ、ただいまお読みになられましたのは、執行吏の執行に関する判例だと私は存じますので、これは労働大臣の関与するところじゃございません。しかし私は一般的の話しかできませんが、この判例文は労働大臣に対する問題じゃないと思います。これは執行吏のその執行の問題でありますから、これはまた別の意味でよく研究すべき問題だと私は考えています。
  182. 赤松勇

    ○赤松委員 執行吏の問題であるが、その拠行吏の誤った行為と解釈は、すなわち憲法二十八条によって保障されておるところの労働者の説得権というものをじゅうりんした。つまり説得をすることが河か違法だというように解釈したことは誤りであった。当然説得の自由があるのであるから、この十三名の者に説得の時間を、機会を与えなければならなかったんだ、こういっておるのですよ。労働省が出した団結権、団体交渉その他の団体行動権についてそれだって同じ文句を使ってあるじゃありませんか。私は何も一般論を言っておるんじゃない。具体的に今、三川で起きた。十三名のピケ隊、これを警察官が封殺して、そうして説得の機会を与えなかった。それに対して、裁判所は誤りである、こういう判決を出しているが、労働大臣はどう考えるかといえば、労働大臣は、当然その判決の通りでございますと、こう言うのがほんとうじゃありませんか。これは、亀井労政局長がこの間の委員会ではっきり言っておる、一般論としてはその通りであります。ただ十三名であったかないのか、今公安委員長か言うように数百名であったのかどうか、そういう事実認定について自分は今手元に資料を持っていない。正確な資料を持っていないから……。こうおっしゃるなら話はわかる。それならばまた日をあらためて、あなたがその資料を入手して本委員会において責任ある答弁をしてもらえばいい。ただ私はこの判決に対して労働大臣としての見解を伺っておる。再度御答弁願いたい。
  183. 松野頼三

    松野国務大臣 ピケに対する解釈は、すでに労働省としても、私としてもたびたび申し上げておりますように、当然ピケの限界における権利というものはあるはずであります。従って、この判例がそのような判例であることは、私はこの判例文においては異議はございません。ただこれがその執行史に対しての問題であるということだけを私は申し上げておるので、私は何も責任を回避しているんじゃない。もし労働大臣がピケの解釈をしろというならば、すでに労働省令ではっきりしております。大体この判例のような平和説得ということに対しては認められておることは明白なことであります。それを私はあやふやに言っておるわけじゃなしに、この判例文の内容については、その事実認定は私に権限がない、私も知らないというだけであって、この判例文がその通り現実にあるならば、労働省のピケに対する解釈に相違を私はみじんも感じてはおりません。
  184. 赤松勇

    ○赤松委員 そこで国家公安委員長にお尋ねしたいのは、あなたは、執行吏の解釈が誤っておった、その誤った解釈の中から、警察官出動の要請が行なわれた。そこでこれは全く執行吏の誤りだ。その誤れる彼らの解釈に従って警察を動員したことは全く遺憾であったと言うならば、話はわかるのです。それならばわれわれも一応納得します。率直にあなたの方が非を改めて、そうして執行吏の解釈の誤りからこういう結果が出たんだと正直におっしゃるならば、それならそれで、われわれの方も一応納得する。ところがあなたの答弁はそうじゃないんだ。実にふてぶてしい。執行吏が何と判断しようと、どのように解釈しようと、あの場合私ども警察権力を発動することが妥当であったと思う、正しかったと思う、こうあなた言っている。これは私は国家公安委員長答弁としては許しがたいと思う。十三人のピケ隊の、当然憲法によって保障されておるところの説得権を封殺して、あまつさえ今言った予想もできない、何人来るかわからない、しかし来るであろうという想定の上に立って、千五百人も動員する。そうしてその警察官の行動が正しかったということでは、これでは何のために憲法の二十八条があるのですか。何のために労働組合法があるのですか。あなたはもちろん両家公安委員長でありますから、労働法規は労働大臣のようなわけにはいかぬけれども、その点については僕はあまりにずうずうし過ぎると思う。ふてぶてし過ぎると思う。参議院議員ならば参議院議員らしくもっと良識を持って答弁しなさい。それではまるで参議院議院の良識はどこにあるかと疑わざるを得ない。あなたに似合わぬじゃないか。笑いごとじゃないですよ。はっきり言いなさいよ。どうです。
  185. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 たびたび申し上げておりまするように、この通用門だけの場所、あるいは時点をとれば、十三名とか十四名とかいうことが出ますれども、先ほども申し上げましたように、正門、裏門その他相当数の者がおり、それから三月二十八日事件のあとであるという諸般の状況からの総合判断をしてあのときやったおのであって、これは私は間違っていないと今日でも思っております。しかし警察としてああいう場合にいろいろ判断するには、もちろん慎重の上にも慎重を期さなければならぬと思いますが、四月十八月のことにつきましては、私は間違っていない、とかように思っております。
  186. 赤松勇

    ○赤松委員 さらに質問したいのでありますけれども、先ほど自民党と民社党との間で協約を結びました。大体四十分ということになっておりますので、私は良識を持っておりますから、これをもってなお質問を留保しながら終わりたいと思います。
  187. 永山忠則

  188. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 私は、この労働争議の問題に関して警察権の介入の問題、干渉の問題が起こるというのは、労働者の権利を非常に縮小して考えるからじゃないかと思うのです。御承知のように、労働者というのは弱いのですから、この弱い立場の者を保護するという私の趣旨から労働者の権利を認めたのでありますから、私はやはり取り扱いにあたっては、労働者の権利を縮小するよりも拡大する意味において、これは取りをしなければならぬ。今の赤松君の質問によっても、警察の発動が行き過ぎではないかという議論が焦点になっております。私はこの点は労働大臣も異議はなかろうと思うのですが、労働者の権利を擁護する立場から、これはなるべく広く取り扱うベきではいなか、こういうふうに考えておりますが、労働大臣いかがですか。
  189. 松野頼三

    松野国務大臣 労働争議に関して警察権の介入ということは好ましくない、私は心からそう思っております。同時にやはり、労働争議でありますから、労働者の権利というものを守ることも大事、同時に対等な立場経営者の権利というものも無視するわけにはいきません。従って両方ともにその限界を越えない範囲において——警察権の介入は就任以来私は断じてお断わりをしております。しかし大部分のものは良識ある争議になっておりますが、ややもすると過激のあまり、両者ともその限界を越えるのがたまたま目立つのであります。昨年以来の中小企業においてもございました。今回の三池の問題においても、各部署々々においては過激なものが出て参ります。これは非常に困ったことだと考えておるので、いわゆる労働法の中においては、警察権の介入は断じてお断わりするのが私の本心でございます。
  190. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 その公平な立場はもろんですけれども、警察権というものは非常に強いわけです。逮捕もすれば検察庁へ送ることもできるという強力な権利を持っているのですから、私は心づかいとしては、やはり労働者の権利を広く尊重するという心づかいで為政者というものは扱っていかなければならぬ、こういう建前から申しておるわけで、公平なことはけっこうですけれども、今のような問題が起こると、これにすぐに、警察の権力というものが大きく発動しますから、やはり周囲から見ていると、いかにも労働者を弾圧するのではないかというふうに見えるわけですから、私は心づかいとしては、やはり労働者の権利を尊重する、従って憲法を尊重するという建前から、そういう扱いをすべきではないかと伺っておるのであります。
  191. 松野頼三

    松野国務大臣 ただいまの御趣旨のように、基本的にはやはり労働者の権利をまず守るということについて最大の注意を払うべきであると私も考えます。しかしその限界というものもまた考えなければならないという意味——立場から申せば、ただいまの田中委員の御趣旨のように、警察権というものはやはりそういう行動というものを常に心がけるべきだと、私は労働争議については考えております。
  192. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 本日の段階における執行といいますか、仮処分といいますか、それについて何か公安委員会もしくは労働省の方に報告はありませんか。その後の仮処分もしくは執行の段階について……。
  193. 松野頼三

    松野国務大臣 労働省にはまだ正文が正式には来ておりません。まだ正式に正文というものが届いておりません。
  194. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 赤松委員質問の要点は、結局警察権の発動が当を得ておったかどうか、もしくは不正ではないかという論議であったようであります。私は今聞いておりまして、やはりこれが十三人のピケ隊であったかどうかということはもっと調査を願わなければならぬと思いますけれども、少なくともこのピケを張っておった人数に比較して多くの警察官がこれに当たったということははっきりしておるのです。そこで今長官からもお話がありましたが、これは執行吏の要請によってやったのなら、赤松委員のおっしゃった通りこれはそう警察の責任を追及することはできないかと思います。執行吏の誤った要請であっても、その要請に基づいてやったということならば……。しかし長官のお話では、警察側から見て、要請があるなしにかかわらず、警察を派遣しなければ事態がおさまらぬというふうに判断したということになりますと、これは発動のよしあしでなしに、発動をしたということに対する政治的責任が生じてくるのではないかと私は思うのです。ですからこの場合においては、やはり払も警察官の発動があまり早過ぎたのではないかというふうに考えます。その点はいかがですか。
  195. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 三月二十八日の事件のときには、警察官の発動が非常におそかったということで、非常な論議があったわけでございます。そこで先ほども申し上げましたように、こういう場合の判断は慎重の上にも慎重を期さなければなりませんけれども、やはりあの場合、あの全体の零囲気、あるいはひとり道用門だけでなく、正門なり裏門なり、全体の情勢から考えまして、再びああいう事態が起きたならば大へんであると当局は考えまして、あれだけの措置をとったということは、私はこれは今日考えても間違っていなかったと、かように思います。
  196. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 私はここであらためて仮処分の、裁判所の命令に基づく執行吏の執行、すなわち裁判の執行、これと争議権との限界を明らかにしておかなければならぬと思うのです。先ほどの場合における赤松君の読み上げたあれはおそらく執行吏の執行方法に対する疑義があるのであって、裁判所の下した仮処分そのものに対する異義の判決でないと私は理解いたしました。執行吏の執行、その方法がつまりますいというのであの異議があったので、その通りです。ピケの権利を認めておるのですから、その範囲でやっておることに対して、執達吏がそれを認めなかったのですから、明らかにこれは執行方法を誤ったということです。  しかし執行吏が裁判の仮処分あるいは仮執行の宣言に基づいてやる執行の場合には、あの限度においては、執行吏にまかしておけばいいのです。執行吏は裁判所の命令によって執行するのです。執行吏も裁判所の執行機関ですから、その執行機関がやることについて、ある程度まかせればいいと思う、私も弁護士ですから、強制執行はしばしばやっております。たとえば家屋の明け渡しの執行命令をもらったときに執行しますけれども、その執行は、いっときに第一回の執行によって明け渡しはいたしません。必ず二回、三回という段階を踏んで執行吏は執行していくのです。ですから、この場合でも、執行吏がよく心得ておるならば、一挙にあれを執行する必要はないのです。情勢を見て、そのときは引き下がって、次に第二回目をやる、第二回目も工合が悪いと思えば、第三回目にやる。こういうのですから、そういう決行吏の職務の執行の際には、警察官はまずこれを保護するつもりで見ておればいいわけなんです。それをあわてて第一回の執行に飛び出していったというところにこの問題があるわけなんです。反対に、執行史が執行をして、そして手を尽くして一回も二回もやって、なおかつこれが妨害を受ける、ピケの権利の限界を越えた実力妨害という段階に来たときに、初めて執達吏は警察官の応援を求めるのです。ですから、私はその段階でいいと思うのです。私は決して警察権の発動ということそのものも悪いとは申しません。この場合においては、この警察権の発動をした時期と申しますか、警察権の発動の取り扱いと申しますか、そこにその問題があったので、警察官が活動するのに、別に何も悪いことはしない。時期を誤ったのがこの問題の焦点だと私は思う。執行吏の責任がこの問題のだいぶ大きい焦点ですから、これはここで申し上げても何ですし、これはこの間も法務委員会でだいぶん最高裁判所の事務総長を呼んで聞いておりますから、執行吏の執行の当、不当については、私はここでは責任者が来ておりませんから伺いませんけれども、どう見てもこの警察権の発動については、どうも長官の黒星のように考えられてならない。長官はやはりもうそれを言い張らずに、時期については多少の責任を感じていいんじゃないですか。
  197. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 私も先般三池の状況をつぶさに見まして、しかも四月十八日のころのことであります。あのとき警察官がああいう出動の態勢をとりましたことは間違っていない、かように思います。
  198. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 もうこれ以上申しませんが、これはたくさん聞いておりますから、その判断は各位におまかせをいたすことにいたしますが、ここでもう一度私はこの裁判所の仮処分に基づく執行吏の行為と、それからスト権の限界を明らかにしておかないと、ここで、刑事局長は来ていませんから、警察庁長にちょっとお考えを伺っておきますが、執行吏が仮処分を受けて執行をする段階、ただいまの第一回にはピケで説得の機会を与える、それもやった、あるいは二度目にやったら、なおそれもあったら、それもやった。しかし人数がだんだん多くなってきて、もはや説得の段階ではないというところへきたときには、これはすでに労働者の方もスト権の限界を越えていくのじゃないか、こう私は考える。これは労働大臣でもあなたでもよろしいが……。
  199. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 執行吏が仮処分の併行に当たりまして、平和的説得の限界において、ピケに説得をする機会を与え、しかしながらどうしてもこの執行をしなければならないということで、これが実力によって妨げられるということに相なりますれば、これは当然スト権の限界を越えたことになると私は考えております。
  200. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 私はこの三池の争議は、すでに争議の形態をはずれて、これは二つの段階に入っておると思います。  一つは、今の正道を争議の形を離れていって、そうして実力と実力の衝突、それに第二組合が介入して、非常に複雑な少し型の違った労働争議の態勢になってきておると思うのです。それからもう一つの段階は、争議の余波といいますか、あふりを受けて、家族ないし住宅街におけるところの治安もしくは人権というものが非常に危殆に瀕しておるという、この二つの状態であります。  前の争議の状態については、これは警察権の介入はたやすく発動すべきではないと思いますけれども、あとの力の段階につきましては、これはよほど重大な段階であると私は思う。この間、石原長官も御視察になったと思いますが、私もあの直後に参りましたが、実はあなたのようなえらい人が行くと、そういう背後のすみずみまではごらんにならなかったのじゃないかと思うのですけれども、そのときのあなたの視察の状況もしくは感想を、大ざっぱでよろしいから、一つお聞かせ願いたい。
  201. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 田中委員も現地を見られたのでありますから、くどくどは申し上げませんが、非常な広範囲にわたって住宅街が点在しておるわけでございます。しかも各集団住宅街の入口のところには警察の方でも検間所のようなものを設けておりますが、第一組合の方においても見張所といいますか、そういうものを設けております。かりにそういうものがなくても、いわゆるはち巻をした多数の男、女がその辺にたむろしておる、こういうふうな状況であります。大体私は福岡県側、熊本県側、両方の住宅街を見て回りました。私がおりましたときに、別にあれこれという事態は起こっておりませんでしたけれども、一、二カ所、やはりデモ隊のようなものは動いておりました。これはやはりなかなかの事態であるな、普通の人は容易なことではないなという感じを持ちまして、前々からやはり今田中委員の言われましたように、住宅街の治安確保ということについては、これはもう一般治安維持の問題でありますから、警察としては全力をあげて治安の確保に当たり、あるいは暴行、不法行為等がありましたものは、即時これを摘発してやっていかなければならぬ。ことにまだ相当の疎開者が帰っておりません。それから四月十八日の事件以後はまた若干再疎開をしておるというような事態がありましたので、両県の警察当局にも指示をいたしまして、住宅街の治安確保については特別の、むしろ特科班組織くらいを作って、もっと警備力を増して、しかもただ集団パトロールというようなことだけでなしに、常時各住宅街に目の届くような態勢にしておかなければいけない、こういうふうに指示したのでありまして、大体私の感想はそういうところであります。
  202. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 私も見て参りましたが、もうこの住宅街においては、労働争議でない、もうそれを越えて人間と人間との闘争のようなものができ土がっておる。たとえて申しまするならば、炭住街へ参りますると、いわゆる新組合、第二組合というものの人数が少ないですから、あそこの住宅街は共同浴場です。そこへ行くと、新組合の主婦がふろへ入っているところへきて水をぶっかけたり、あるいは着物を隠したりというようなことで、もうこれは個人的な人権のじゅうりんです。それからあそこはどぶ掃除に主婦が毎朝出動しておりますけれども、それもただ掃除の仕方が悪いからというので、住宅街の連中がみんなで主婦一人をつるし上げる。それから山にこもった主人公が仕事を終えて帰ってくるけれども、住宅街に帰れない。百人からの組合員が寮に閉じ込もってたき出しをしておる。それからその住宅街に居住するに耐えない連中は、いわゆる疎開と称しまして家財道具を持ち出して料亭のような広いところを借りて、そこで共同生活をしておる、こういう状態でありますから、私はこの委員会にも人権擁護局からおいで願うように頼んでおいたのですけれども、こういう点は、これはもう争議を離れて人権じゅうりんの問題だ、あわせて治安の問題もありますから、これは法務省の方からどなたか行って、実際に御調査でもなさったのですか。それをちょっと。公安課長かだれか見えておりますか。
  203. 川井英良

    川井説明員 三月二十九日の四山鉱の事件が起きた直後に、私とそれから最高検察庁の公安部長検事が直ちに現場へ参りまして、状況をつぶさに視察をしまして、かつ現地の検察庁に対してその後の処置について連絡をいたして参りました。
  204. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 そんなただ通り一ぺんの調査でなしに、もう少ししばらくあそこに滞在でもしてもらって、よく調査していただきたい。これは大きな人権の問題であります。これは私第二組合の方だけを言うのじゃない。これはあるいは旧組合に対して新組合の方でもあるかもしれません。これは争議を離れている問題ですから、これは人間的な問題ですから……。私はなぜそう言うかと申しますと、やはり労働争議はルールがなくてはならぬですよ。ルールをはずれた争議というものは私はどうもいけないと思う。ですからこれは新組合といわず旧組合といわず、やはり警察も会社も一つのルールの上に立って争っていかないといけない。もう一つ、これに関連して私の申し上げておきたいことは、これは第一組合の方ですけれども、道路を占拠して世路に、あるいはピケの延長かもしれませんけれども、このごろでは公道にバラックのようなものを建てて、それがだんだん広がってきたようです。これは交通上の問題があるし、町の治安の上からいっても、私はよくないと思うのですが、公安委員長これをごらんになってきましたか。
  205. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 公道の中に小屋があったというような、ちょっと私はっきり記憶にはございませんが、公道にいろいろのピケッティングのさくが出ておるとか、いろいろのことがございました。そういう点については、警察としても警告をいたしまして、問題によっては、あるいは道路交通取締法に関係して措置をとる、こういうことをやっておりますが、広い範囲にわたっていろいろ数多いことでございまするから、違反をそれぞれ全部摘発するということまではできませんけれども、不当な行為に対しましては警告をし、それぞれの措置をとるように、これまた強く注意を与えて参りました。
  206. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 これはやはり先ほども申し上げましたように、一方に偏することなく、やる方もルールを守らなければならないが、取り締まる方も公平にやってもらわなければ、やはりそこから不平なり不満が爆発するのですから、これは十分御注意を願いたいと思います。  それから最後にもう一つ申し上げておきたいことは、今の疎開の問題ですけれども、これは長くこの問題が続きますと、衛生の問題が必ず起こって参ります。私どもが行ったところでは、疎開者は一つの都屋にみんなごろ寝しておる。ですからこれは雨期に入って、入梅の時期に入りますと、衛生上重大な問題が起こってくると思います。その点も一つ公安委員長の方から十分御注意願いたい思います。
  207. 永山忠則

    永山委員長 大坪保雄君。
  208. 大坪保雄

    ○大坪委員 私も二、三両当局に伺いたいと思います。労働争議に関連して警察権行使の限界というものはなかなかむずかしいと思います。なかなか警察御当局にも御苦心の存するものがあろうと考えます。もちろん労働大臣のお話のごとく、争議自体に警察が介入するということはこれは厳に慎しまなければならない。特に一方に偏して警察が関与するというごときは許すべからざることでございます。しかしながらその本来労働者の権利として認められておると了解すべき線を逸脱していく行為に対しては、やはり警察は本来の立場から自主的に厳としてその立場を明らかにしなければならない。そうでなければ一般国民大衆の生活は場合によっては守られないこともあるし、そういう点からして国民が警察に対する不信を持つ。警察に対して国民が不信を持つようになりますと、それこそいわゆるあばれ者が勝つということになって、社会の治安が保てないことになるわけでございます。よく憲法二十八条に規定しております労働者の基本権というものについて論議がございますが、往々にして憲法二十八条が勤労者の団結権、団体交渉権、団体行動権を保障しておるということは、もう絶対優位の唯我独尊的な権利であるがごとき主張をする者があります。しかしこれはもちろん間違いであって、労働者のために許され認められておる労働基本権というようなものも、これはもちろん憲法の他の条項が明らかに示しておりますように、公共の福祉を害するということであってはならない、これはもう今日あらためてかれこれ、言うべきことではございません。労働者がその許されたとしておる権利を行使するとして、他人の持っておる正当な権利を害する、他人の生活上の権利、仕事をする権利というようなものを害してはならないことはもちろん申すまでもございません。そこには社会公平の原理に基づく制約というものがなければならない、そういうふうに私ども考える。これはどなたにも私は異論のないところであろう、とかように考えるのであります。ところが従来しばしばあっちこっちの争議でもそういうことが起こったのでありますけれども、今度の三池の争議の実情を見ておりますと、労働組合員及び第一組合を支援するために来ておるオルグ団というようなものの行動の中に、非常に法律を逸脱したものが少なくない。その結果今日第二組合員は約五千三百人に達したといわれておりますが、この組合員並びにその家族数万さらには大牟田市民数万の当然の権利というものが侵害されておる実情にあるんではなかろうか、かように考えられる。実は私一昨日、昨日と大牟田の現地におりまして、多くの人々から実情の話も聞きましたし、また市内の各地をかけ回りましてこの目でつぶさに実情を見てきた、その実情を見てきた印象を一言にしていえば、大牟田市は今日はもはや無警察、無法の地になっていると言ってよろしいと思います。私どもは三池争議というものについてある程度の認識を持って参りましたから、申さばある程度の覚悟はあったのでありますけれども、全然関係のない、事情の知らない一般の市民、善良なる国民があの大牟田市内に入れば、戒厳令がしかれておるのではないかと思わそるほどの実情である。これは石原大臣もおいでになってみずからごらんになったと思うのです。ただいま道路の占拠の活もございましたけれども、道路上に、それは国道もあり、県道もあり市道もあるようである。その上にピケや検問所のためのテントをたくさん張ったり、いわゆる納屋をこしらえて、たくさんの人がはち巻をしてたむろしておる、また中には立っておる、いわゆる検問所というものがある。これは民間の検問所です。そしてあそこに、たとえば構内に入るとか社宅街に入るとかいう者を推尾しておる。中には追尾しておる。こういうことがいわゆる民衆の警察みたいなものでやられていいものであるかどうか。それに対抗するために、現地の治安を守るためとして警察官がまた警棒を持って立ち並んでいるという状態です。警察官が立ってやっているということは民衆、市民に対する安心感をある程度与えておりましょうけれども、それは少し雨でも降ったとき、夕方の薄暗がりのときには実に陰惨なる感じがするんですよ。これは私は無警察、無法状態だと思うのです。これはいつまでも放置すべきことではないと私は思う。ただそれがどうして行なえないか、どうしてその治安が確保されないかという点なんです。ただいま田中委員の御質問に対して石原大臣答弁になりましたが、現地のものに注意をしておいたという程度の御答弁のようでありますが、道路上にああいう小屋がけをして、そして白はち巻をして、ときには棒を持って、水筒と称する青竹の棒を持ってたむろしておる。人が通行すると推問する、そういうことをあのまま放置しておいていいものですか。何ら警察法規に触れるということにはならないのですか。道路交通取締法にももちろん違反するでございましょうが、その他にもあるんじゃないかと思うがどうなんでしょう。そこの点いかなる御見解を警察御当局はお待ちになるか、長官でも大臣でもよろしゅうございますが……。
  209. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 大牟田の実情はただいま大坪委員のお話のように非常に治安が乱れているということについては、私もそう感じます。特に田中委員からのお話にもありましたように、争議に直接関連いたすような民事上争われているような問題についての警備措置というようなものと違って、住宅街における治安確保ということは、警察本来の当然の常時の任務として確保して参らなければならない問題だと思います。ただいまお話のような点につきましても、ある場合におきましては道路交通収縮法違反の問題も起こりましょうし、またはなはだしき場合におきましては脅迫罪というようなものに該当するような事態も起こって参るかと思います。現在まで住宅街において諸種の刑事事案が起こっておりますが、今までは主として三月二十八日、二十九日の事件の捜査というものに重点が置かれておったわけでございますが、これも相当に進捗を見ておりますので、最近は炭住街において起こりました事案、これは全体の半分以上が炭住街で起こっておるわけでございますが、これについての捜査検挙に乗り出し、できるだけ現行犯検挙、かりに現行犯検挙ができない場合におきましても、十分な採証行為を行なってできるだけすみやかに検挙をするというような方向で、無法は許すべからずということで警察をあげて努めさせておるような状況でございます。事態というものが非常に深刻な要因を持ってああした事態に相なっておりますので、なかなか一朝一夕に炭住街の治安の確保ということも行なうことは非常に困難であろうと思うのでありますけれども、先ほど来申し上げましたように、これは警察本来のぜひとも遂行して参らなければならぬ責任でございますので、警察をあげて治安確保に努力をいたさしておる次第でございます。
  210. 大坪保雄

    ○大坪委員 私はとりあえず道路上の工作物等にたむろする、及び検問所を設けてやっているという点についてお伺いしたい。炭住街の治安の問題については続いてお伺いいたしたいと思いますが、道路の問題はどうなんです。私も今まで放置されて、三月二十七、八日以後今日まで放置されておったものを、この五月十一日の現段階において違法があれば直ちに全部撤去しろとは申しません。それはなかなか客観情勢によって警察もやりにくいことがあろうと思うから、しかしこれは説得するのには説得するというようなことを明らかにして、違法なものは正さなければいかぬじゃありませんか。それで道路の問題はどうなんです。いかなる法律に違反し、どういう措置を講ずべきものであるか、現状が正しいものであるか、正しくないものであるか。違法であるものならば、これはどういう法条に照らしてどう措置すべきであるか、まず第一にこの道路上の——どもはこれはむちゃくちゃだと思っている。それを、どういうようにするかということについて警察の御見解をまずお尋ねいたします。
  211. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 現実に道路交通の妨害となるようなものについては当然道交法によって排除をさせることができるわけでございます。警察といたしましても、先ほど申し上げましたように厳重に警告を続け、説得をいたしておるわけでございますが、遺憾ながらいまだ成果を十分にあげていないという状況でございますが、これは引き続いて組合員の良識によって自発的にこういうことのないようにしてもらうように警察でも強力に警告をして参りたい、こう思っております。
  212. 大坪保雄

    ○大坪委員 あれは違法であるということはお認めになっているのですね。しかしそれはそういう違法状態をやっている者をなるべく説得をして、良識をもって自発的に撤去するようにしたい、こう言う。自発的にするというについても限度があろうと思うのだが、たとえば十日以内にやるとか、二十四時間以内にやるとか、いろいろあると思うのです。そういう措置を講じてでも、違法状態は正常なものに返しておかなければ、違法状態はあらゆるところに積み重ねられていくのですよ。大牟田では許されたのだ、しからば東京だって許せということに必ずなってくる。だからこれは違法なものならばやはり正常な状態にする。そのためには説得を聞かなければ実力を行使してでもやる、その決意を持っているということであるかどうか。これはなかなかうまく参りませんということであるから、それは警察が苦心されているであろうことは想像いたしますが、決意、覚悟のほどを伺いたい。
  213. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警察としても引き続き強力に警告をいたして、そういう不当な、違法なことのないような事態の実現に努めたいと考えております。
  214. 大坪保雄

    ○大坪委員 それでは先刻長官の御答弁になりましたところの、住宅街の治安の問題でありますが、住宅街の治安を維持することに極力努力している、こう仰せられた。私はある程度何かやっておいでになるだろうということは想像いたしますが、住宅街に違法状態がずいぶん繰り返されて続いているんです。それを正そうと警察が本気になってやっておられるようには感じられない。なぜかといえば疎開者があるのです。住めないからたくさんの疎開者が出ているのです。この疎開者がまだ帰れない状態じゃありませんか。私は疎開者に現実に面接して、その気持を聞いてみた。不安で帰れないと言う。これは非常に多いんですよ。この問題は先刻田中委員もいろいろお話になりましたから、私もくどいことは申しませんが、たとえばこの間——これは最近の事例だが、犬をつないでなかったといって、犬をつなげというデモをしかけてくる。ある人は、ちょっと家の中で子供とふざけて手をたたいたら、たまたまそこを第一組合のだれかが通りかかっていて、手をたたくとは何事だ、侮辱したと言ってデモをかける。こういった事態が今日なお行なわれておる。そういうことであの住宅街には、平等な神経の持主では住めないのです。たとえばある炭住街では、新組合員が六十五人おるそうですが、そのうち六十四人まで疎開している。ただ一人残っている。これはどうしたわけかと聞いたら、彼は剣道の先生だそうです。これでは何ぼ何でもやりはしないだろうということで残っておる。家族はどういう心理状態か知りませんがね。こういう状態が現にある。疎開者があって、それが帰れないという実情です。なお新しく疎開もしなければならないじゃないかと言っておる者もある。これは先刻石原大臣も言っておられた。これではとうてい治安が確保されている状態だとは言えないじゃありませんか。こういう状態を治安が確保されている状態とお考えになって、努力いたしておりますと出言うならば、私どもは警察にはたよれないという気がいたしますよ。だから私は警察の力が足らぬのじゃないかと思う。ほんとうに炭住街の治安を維持するためには、少なくとも疎開者がもとの炭住街に帰ってくるという気持になるまでは治安を確保しなければいかぬと思います。  社会党の諸君が非常にヤジっておりますけれども、私は第二組合員がどうこうしたとかいうことを言っておるのではない。その家族がやられておるということを言っておる。いかに社会党の諸君といえども、こういう状態が正常な平安なる国民生活の状態とはお考えにならぬと私は思う。この点に一つ御決意を伺いたい。
  215. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 確かにお述べになりましたように、現有において治安が非常に乱れておるという実情は私もよく承知いたしております。また警察のやり力というものが十分でなかったということも、私は確かに考えられる状態だと思います。しかし先ほど申し上げましたように、この大牟田におきます事態というものは、そのよってきたるところは非常に深刻なものがあるわけでございまして、なかなか計画通りに秩序が保たれるということは困難な事情もあるのであろうと思うのであります。私どもといたしましては、従いまして、機動警らと申しますか、部隊警らというようなことをできるだけ強化いたしますと同時に、さらにやり方についても検討を加えて、治安の確保のために、先ほど申し上げましたように、まず犯罪の即時摘発ということに重点を指向する。ただ、疎開者が帰ってこない、これも帰ってくるような状況にならなければならぬと思いますが、住宅街のところによって、治安の乱れ方についても非常に甲乙があるようでございます。従いまして、個々に、具体的にそういう状況を把握しまして、先ほど来申し上げておりますように、警察として炭住街の治安確保のために十分に力を注いでいくように、これは去る二十八、二十九の事件のあと、いろいろこん棒を持ったりして非常に物騒な状況であったものに対して、まずそうしたこん棒等を、警告によって提出させるということから始めまして、警察としても努力いたしておるわけでございますが、確かに御指摘のように、決して治安が十分によくなっていると申せないのみならず、場所によってはかえって悪化しているというようなところもあるように考えておるわけでございまして、この点につきましては、名地域々々具体的に警察として方策を講じて参りたい、こう考えております。
  216. 大坪保雄

    ○大坪委員 先ほど同僚の社会党議員の議席から不正常な発言がありまして、疎開をしている者は故意にやった、謀略的疎開だという発言が私の耳に入った。平素労働者の味方はわれらなりと言っている社会党の議員の諸君が——この第二組合員といえども労働者ですよ、その家族ですよ。それが、第一組合と対抗するために謀略的に疎開をやったなどということをおくびにも出すということは、労働者の味方だなどということを今日この際言うことは不適当だと思うくらいさえ私は義憤を感じます。この声をほんとうに第二組合員及びその家族並びに日本全体の労働者が聞いたら、何と受けるか。私は実に心外にたえない。しかし今柏村長官から、今後違法者の検挙等もよくやるという決意のほどをお示しになりましたから、私どももともと日本の警察を信頼し、少なくとも柏村長官を非常に信頼しておるから、一つほんとうに間違いのない警察になるように、今後とも御健闘願わなければならぬと思う。  この際あまり多くのことを申し上げる気はございません。もう一、二伺いたいと思いますが、今度の三池の争議に対しては、多数のオルグ団が入ってきておる。このオルグ団の行動が、私どもから見ると、非常に日に余るものがございます。最近は、ほんとうは労働争議をしている争議団員よりもオルグ団が、あそこの治安を乱しているのではないか——私は想像でありますが、想像されるような状態である。それが完全に、様子を見、話を聞いてみますと、警察と同じような組織を作っているそうです。軍隊組織です。中隊組織です。そしてなかなか軍隊式行動をやっている。休め、足をふけなんという号令をかけるそうです。これは驚き入ったるオルグ団の状況です。これらが、この間一時立ち入り禁止の仮処分のできました四山鉱のホッパーあたりで、水筒と称して、水入れだと称する青竹の大きなものを持ってきている。水の入っている水筒だというから、おそらく警察も持ちなさんなというわけにいかぬでしょう。こういうものが非常に治安を乱す状況になっておりますが、このオルグ団が裁判所の出した命令を阻害するいろいろの行動をやっている。これを警察の力をもって阻止するということになると、おそらく流血の惨を見るようになるであろうと思うから、なるべくその事態を避けようとされている気持は私どもよくわかるのでありまして、これはなるべく衝突しないで、流血の惨は避けて、警察も取り締まりをするということがいいと思うけれども、ああいうことも、違法状態をいつまでも放置しておくと、正常状態のごとく誤認されるおそれがある。だから方法等はいろいろございましょうが、ある時期にはああいうものを強力に排除しなければならぬ。正常状態に直す、国全体の治安維持のために法の秩序を維持するということは、私はやはりやらなければいかぬと思うのですが、あのホッパー地区等のいわゆる立ち入り禁止の命令の出ているのをあえてこれを侵犯して、裁判所の命令を無視している、法律を無視しているという行動に対しては、どういうお考えなのですか。
  217. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 確かに仮処分におきまして、立ち入り禁止、妨害禁止ということはいわれておるわけでございます。しかしこれにつきまして、立ち入り禁止に対して執行史がこれを排除するということは、直ちにはできないわけでございます。たしか、きのうだったと思いますが、さらに会社例で妨害を排除するということについての仮処分の決定を申請して、それが——私もまだ主文を見ておりませんので正確には申し上げかねますが、その決定が出たようでございます。そういうことに相なりますれば、執行吏の執行として次の段階があるいは起こるかもしれません。しかしこれも先ほど田中委員のお話のように、直ちに警察力をもってその違法状態を排除するということが適当であるか、あるいは何回か執行吏の執行ということを繰り返して、平和的説得によってほんとうに執行吏の執行ができればこれに越したことはございませんし、またそういうことがたびたび重なってもなおかつ実力をもって妨害が行なわれるということになりますれば、法秩序維持のために場合によっては警察官の出動ということも起こる場合があり得るということを考えます。そうした場合におきましては、警察は、いろいろ方法等についても検討はいたしますが、断固として違法事態を排除する場合が当然起こり得るということを申し上げておきたいと思います。
  218. 大坪保雄

    ○大坪委員 もう多くを申しません。ただどうか——どもが言うまでもないことで、心持のうちには十分御了得のことだと思いますけれども、やはり秩序が維持されないと、国民の平和な生活はできないし、もちろん産業の発展もあり得ないし、生活の向上もあり得ないわけなんです。それでその根幹をなすものは社会の秩序の維持なのです。法律を無視するという悪風がびまんするということになっては、これは私は一大事だと思う。現在の三池の炭鉱争議をめぐっての実情は法律無視の横溢、です。これはやはり一つ一つ警察は不退転の決意をもって御措置願わなければならぬと思います。  そこで、ついでに申しますが、先刻田中委員もお話しになっていましたが、やはり現地にいる警察官の生活状態だとか、先刻赤松委員は保育所を使うのはいかぬと盛んに言っておられましたが、なるべくそういうものは使わぬ方がよろしいけれども、警察はやはり現場の秩序を維持するためには、そのとき、その土地に適当な施設があれば、これを使うことはやむを得ぬと私は思うわけです。やはり保健衛生の環境というものはよほど考えていって、非常に思いやりのある御措置を願わなければいかぬじゃないかと思います。最近は毛布なんかも一枚か二枚ふえたそうですけれども、もう蚊が出ておるそうです。蚊が非常に多い。これがもうしばらくたって暑くなれば、非常なる蚊軍の襲来に夜は応戦しなければならないだろう。そのかやの準備に非常な苦慮を警察官はあげてしておる。こういう点もどうか現地の治安維持にあたって——警察官の苦労を石原大臣は現地へ行ってこられたからよく御了得と思う。そういう思いやりのある措置は勇敢に、勇気を持っておやり願いたいと思うのです。そうでないと警察官は働けません。これは御希望です。  そこで、私は立ったついでに労働大臣に一言だけお伺いしておきたいと思いますが、今度の三池の争議が、先刻田中委員のお話しになりましたように、争議の段階をきわめて逸脱しておると思う。その原因にはいろいろございましょうが、あの何事と称するオルグ団というものが私はあそこの治安を乱しておる非常に大きな原因じゃないかと思う。一体労働争議、ある会社とその会社の従業員の労働条件に関しての争いの中に、応援団が何千人も来るということはどういうものでしょう。こういうことは日本だけの特色じゃないかと思う。非常にいい状況じゃないと思うのです。その人たちがピケの中核をなし、あるいはデモの先頭に立ってやっておる。そうして炭住街にあき屋ができれば、直ちに行って炭住街を占拠して生活しておるという状態です。労働争議に多数のオルグ団が入るということは、私は正常状態じゃないと思う。こういうことをもって労働争議と心得ておる者がおるとすれば、とんでもない心得違いだと思うのです。その点について、そう何百人も何千人もオルグ団が全国から来てやるということは——上部団体が三人、五人、十人のオルグ団を出して争議の指導をする、あるいは資金の援助をすることはけっこうだと思う。何百、何千のオルグ団が争議ごとに出張っていって、地方の治安を乱すということは、正常の状態じゃないと思う。何とかこれは改めなければならぬと思いますが、労働大臣はこの点についてどういうようにお考えになりますか。
  219. 松野頼三

    松野国務大臣 すでに先般来、昭和二十九年に労働次官通達をもって出しましたごとく、一般的に、ややもいたしますと、友好団体という名前で、その他相当多数のものがその争議に参画されるということがございます。もちろん争議の当事者じゃございません。従って、おのずからそれに与える保護の差はあるはずであります。従って、オルグ団が従業員と同様な資格だというわけには全般的に参りません。しかし、今日の場合、組合の友好団体という限度の解釈と、あるいはその行動はおのずから限界があることで、オルグ団は何をやってもいいんだというような労働法の解釈は断じてできません。従って、やはり労働争議におきましてはその応援団体がしばしば見られるのですが、これは必ずしも当事者でないのですから、あまり好ましいことじゃありませんし、おのずから争議の保護が起きましても、当事者と部外者は限界があるのです。私たちはあくまでその限界を越えない範囲においてやって参りたいと思います。
  220. 大坪保雄

    ○大坪委員 これで終わりますが、ただいまの労働大臣の御答弁は、いささか事務的御答弁に過ぎておられますが、私はそういう法律解釈を伺おうというわけじゃ実はなかった。日本の数千と称する大オルグ団が争議ごとに出てくるという状態は正常なる労働争議の状態じゃない、世界の文明諸国に対しても恥ずかしい事態じゃないかと私は思う。これは労働争議の正常化をはかるためにも、真に労働者経済的生活の向上、あるいは社会生活上の向上を期する上によろしくないことだと思うのであります。そういう労働運動、労働争議の正常化について、政治家松野頼三先生の御意見を承りたいと思ったのであります。
  221. 松野頼三

    松野国務大臣 ややもいたしますと、応援団体というのが過激な場合には、争議そのものの解決がかえって混乱する場合がございます。従って、やはり労使当事者が争議の主体でありますので、その方向で争議行為は行なわれるのが順当な立場であると考えております。
  222. 永山忠則

    永山委員長 田中織之進君。
  223. 田中織之進

    田中(織)委員 本委員会で今問題になっておりまする三池の争議の問題につきましては、久保浩君が会社側と気脈を通じた暴力団によって、警察数十名のおる面前で刺殺された事件直後に、二日間参りました。それから去る四月七日に、第二組合が日本の歴史始まって以来ないきわめて悪質な部落差別の文書をこの争議に関連して数万枚配布したという不祥事件の関係で、現地へ参りました。たまたまただいま質問をせられました自民党の大坪委員と大牟田駅で降車するときに顔を合わせたようなわけで、昨夜私も帰ったものでございます。その立場から、いろいろこれに関与いたしておる警察の争議に対する介入の問題、あるいは今私どもが取り上げておる第二組合品及び会社側の悪質なる部落差別問題、国民を二分させるようなこの悪質な差別問題等に対する警察当局の見解、並びにこの争議がただいま名委員から指摘されましたように、きわめて重要な段階に達しておるので、この争議の早期解決のために、労働行政の責任者としての松野労働大臣政府としてとり得る最大限の措置が考えられないかどうか、こういうような諸点についてお伺いをいたしたいと思うのであります。  まずただいまの大坪委員質問を伺っておりまして、私非常に奇異に感じます点は、大牟田は今日無警察の町だと言われておる。ところが数日前の朝日新聞には、田中寿美子さんという女流評論家が、警察都市という題目の投書をされておって、まさに大牟田をさしておるように私は読んだのであります。また先ほど赤松委員の質疑に対しまして、公安委員長並びに柏村長官からお答えになりましたように、大牟田には現在九州七県のみならず、山口県からも動員したところの五千名を上回る警察官がおる。こういう状態になっておるにもかかわらず、あなたも大牟田の治安が乱れて無警察状態にあるということを警察庁長官自認せられるようなことは、これは私は警察の権威にかけても、あなたたちの言えた義理ではないと思うのでありますが、あなた方が、現実に大牟田は無秩序であり、無警察状態であると言うならば、それでは何のために五千名を上回る警察官を大牟田に配置しておるのか、その理由を明確にしていただきたいと思うのであります。
  224. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 大坪委員からはまさに無警察状態であるという御発言がありましたが、私は無警察状態ということは申しておりません。しかしながら特に炭住街を中心として、あの一帯に不法事犯が紀こり、治安が十分に確立していないという実情は確かに看取し得るわけでございますので、できるだけすみやかにそういうことの確保されるように警察官を配置いたしておるわけでございます。ただいま山口県からというお話がございましたが、現在では山口からは応援に参っておりません。
  225. 田中織之進

    田中(織)委員 当初山口県からも応援の警官が参ったことを私承知いたしておるので、現在おられなければそれでけっこうだと思います。しかし先ほど私は大坪委員との質疑応答を聞いておりましたけれども、大牟田は全く治安が乱れているという大坪君の発言を柏村長官がほとんど無条件に肯定するような態度は、私は大牟田におる多数の警察官——われわれは一日も早く大牟田署の常時治安に当たっておる諸君以外の警察官は大牟田から引き揚げるべきだ、今日の状態においては私はそういう考えを持っておるのでありまするけれども、大牟田に出動しておる多数の警察官の名誉のためにも、あなたはそういうことは言うべきじゃない。もし単に大坪君の言われるような誇張した大市田の無警察状態をなにするならば、あなたは現地へ行って大牟田の指揮をとりなさい。これは警察官の諸君の名誉のためにも私は訂正してもらいたいと思う。  そこで、私は今度の争議を二回現地へ参りまして、警察は、明らかにその中立性を越えて、今や完全に三井鉱山会社並びにその会社側との間に今生産再開を強行しようとする第二組合の御用機関的な機能を果たしておるということをいろいろの事実をもって私は見てきた。この点は非常に私は遺憾と思うのであります。  そこで、私が一群最初にあなたにお伺いをいたしたい問題は、大牟田に今日のように——あるいは現在は三月の末あるいは四月の初旬から見て多少減っておるかもしれませんけれども、多数の警察官が大牟田に導入せられることになったのは、一体どういう理由からですか、この際私は明らかにしていただきたいと思う。
  226. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほど来申し上げておりますように、大牟田、特に炭住街を中心としました大牟田地帯の治安が十分に確保されるために、近県に対して応援を要請して、それが動員されたわけであります。
  227. 田中織之進

    田中(織)委員 それは柏村長官、少しあなたは、三月末のことでありますけれども、事実を忘れておられると思うのです。幸い法務省の公安課長も見えておられるということでありまするから、私は伺いたいと思うのでありますが、たしか第二組合ができたのが三月の十八日でありました。十五日の中央委員会からあとで、十七日か十八日であったと思う。それから第二組合ができたということをしおに、会社側が第二組合による生産再開をやろうということで仮処分の申請をいたしました。それに対して、福岡の地裁が、いわゆる対立しておる側の労働組合側の意見をも何らしんゃくすることなく、あの仮処分の決定を出したことは、公平なるべき裁判所当局としてはなはだ不公正なことで、あの仮処分の決定は、後日その執行の過程においても問題が起こって、先ほど赤松委員から指摘したような仮処分の執行についての総評弁護団からの異議申し立てを取り上げた決定が出るということになって参ったと思う。また四日に三川のホッパーに対する仮処分が出ましたけれども、その仮処分においても、おそらく会社側の意図するようなものを裁判所が受け付けなかったという点は、当初の仮処分の決定というものがあまりにも申請者側である会社側の主張を認めた不公平な取り扱いであったということの裁判所側の反省であると私は見ておるのであります。そういう過程のもとに、三月の二十八日、会社側が暴力団を先頭にいたしまして、その背後に第二組合関係の諸君を入れて強制就労しようとしたときに、第一次の紛争が起こったことはその通りであります。そうして第二組合の諸君の若干名が暴力団の手引きでピケを破って構内へ入ったということから、いわゆるこの間の国会で民社党の武藤君から盛んに指摘をした問題が起こったことは、これは事実であります。しかしその当時の警察官の出動というものは私はきわめて少数であったと思うのです。ところが、越えて翌二十九日に、御承知のようにこの日は会社側も強制就労を敢行しようというあまり強い気配も出なかった。ところが当日いわゆる山代組を先頭といたしまする大牟田、荒尾あるいは全九州から集めたという何千名かのいわゆる町の暴力団がパレードを行なった。そうしてそのパレードの一隊が、主力部隊が四山鉱の正門前において、前日の強制就労に基づく紛争の関係から、大牟田、荒尾の両警察が中に入りまして、第二組合もそれから第一組合もともに鉱山の作業に使うような関係の、しかしそれは使い方によれば凶器に類するような棒ちぎれというようなものは全部放棄しようということで協定ができました。警察の目の前において、特に四山鉱の関係者におきましては一カ所に集めてこれを焼却したという事実があるのであります。それにもかかわらず、翌二十九日に、当時朝日新にも出ましたように、山代組の山代興業のトラックに、四山鉱の正門前から労働組合員がとった写真に明らかなように、トラック一ぱい凶器を満載した暴力団が、乗用車によって三台、四台で乗りつけた。しかもその前後には大牟田署それから荒尾署の関係から警察がパトロールの意味で、数十名の者が前後に警備するような形のもとにおいて、久保君の刺殺事件が行なわれたということは、これはあなたもその後暴力団の検挙はほぼできているということを先ほど言われたから、事情がはっきりしていると思うのですが、そういう事実があって、いわば五十名からの警察官の目の前において、無防備の労働組合員である久保清君が刺殺された。それを食いとめるために身を挺してこの暴力団に武器を捨てしめたのが、この同間大坪委員から本会議であたかも暴力団の扱いをされ、今度はまた第二組合から、あたかも暴徒の集団のような確実な差別をされておるわれわれ部落解放同盟の福岡県連のオルグで、この暴力団に身を挺して武器を放棄せしめたという事実があるのです。こういう警察監視の中で労働組合員に暴力が加えられるというような事態の中に、第一組合からもこういうような事態を警察が見ていていいかどうかというところに、多数の警察官を派遣しなければならぬという事態が出てきたのではございませんか。あなたがおっしゃるように、炭住街における紛争がどうであるとかこうであるとかいうような問題で動員されていた警察官は、福岡県下で動員可能なごく数行名の諸君で当日まではあったのです。この二十九日の暴力団による労働争議へのいまだかつてない刺殺事件というものを契機にして、これは与野党あげて、この警察の態度はなまぬるいじゃないか、こういうことであなたたちが警察官を多数に派遣することになった経過をたどっておると私は思うのです。そうではございませんか。
  228. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警察をあそこに近県から応援要請に基づいて動員をいたしましたのは、確かにお話のような事案も一つの契機ではあろうと思いますが、その当時におきまする大牟田、荒尾全体の治安の問題を考えて、福岡県並びに熊本県において近県に応援妥請をいたした次第でございます。
  229. 田中織之進

    田中(織)委員 粕村長官、私が申し上げたように、二十九日の、第一組合員である久保君の暴力団によって警察監視の中での刺殺半作が起こったということから、警察の責任からも大牟田に多数の警官を動員しなければならない事態になった。私は逆にその意味から見て、福岡空港にも常時三名の警察官がおりますけれども、一名しか残っていない。二名の人たちが大牟田へ動員されておりました。急なために、動員されてからまだ三日目になるけれども、三十一日、ふろへも入りません。ちょうど十二時ごろでしたけれども、まだ朝飯も食っておりません。そういう状態で緊急に警察を動員したので、この争歳の最初の段階においては、多数の警官は動員されるような情勢ではなかったのです。ところが警察が——私はそれでは伺いますけれども、この久保君刺殺事件の暴力団の捜査は一応めどがついたようでございまするが、どういう状況になっておるのですか。またこれには四山鉱の通用門の前で会社側からトラックの中へ向いてトビの柄であるとか青竹であるとかいうような凶器を供給したという事実が明白になっておるのでありまするが、そういうような捜査当局の調べた状況をこの際明らかにしていただきたいと思う。
  230. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 四山事件につきましては逮捕令状を発行した者七十三名でございます。そのうち逮捕いたしました者が六十九名、未逮捕四名ということに相なっておるわけでございます。捜査も相当進んでおりまするが、まだ捜査を完結したという段階ではございません。
  231. 田中織之進

    田中(織)委員 この暴力団が明らかに会社側と気脈を通じておったということの証左といたしまして、刺殺事件が起こるやいなや、大牟田の市民も知らない間に会社側が声明を出しておるのです。この暴力団の刺殺事件には会社側は関係がない。これは当時会社側が暴力団と明らかに関係があるということをみずから証明したものだと朝日新聞も読売新聞も、大新聞はどうもその点について会社が語るに落ちたという論評を加えたことを私は見ておるのでありまするが、その背後関係はどういうように捜査をされておるのでありますか、明らかな範囲でお答えを願いたいと思う。
  232. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 もちろんあらゆる角度から捜査を続行いたしておるわけでございますが、今までの捜査におきまして私の報告を受けております範囲においては、会社側とはっきりした関係があったということにはなっておりません。
  233. 田中織之進

    田中(織)委員 この事件は大牟田で起こった問題でありまするが、日本全国で関心を打たれておる問題でありますので、捜査については早急に今私が質問を申し上げたような点について明らかにしなければ——この捜査の段階でも、当日現場にいた者を一応荒尾署に全部連行しておるのですね。任意同行であるか知りません。それから一応全部釈放したのです。そうしてその晩になってあわてふためいて逮捕状を出しておるから、暴力団が全部逃げてしまって、六十九名の者をあなたたちは逮捕するためには多くの日時がかかっておるのです。これは新聞にはっきり見えておるのです。荒尾署に一たん現行犯として——あなた方は今炭住街で起こるちょっとしたいざこざの問題でも現行犯で即時逮捕する、こういうことを言っております。現に住宅街で感情的な対立もございましょう。首切りという問題は深刻な問題です。だから主婦の人たちが、家族の間にいざこざがあったということで、あなたたちは何人かの主婦を逮捕したでしょう。しかも一週間拘禁をして、そうして処分保留のまま一昨日あなたたちは釈放しておるではありませんか。第一組合の関係の主婦、家庭を守る人としてこの人たちは住所をくらましませんよ、暴力団の人と違って。それにもかかわらず荒尾署なり大牟田署は、この四山事件の関係について現場におった者を六十何名というものを一たん荒尾署へ全員連行して取り調べをしているという写真が翌日の新聞には出ておるのにもかかわらず、あなた方は晩に釈放しているじゃないですか。この事件は少なくとも捜査の段階において私は責任を明らかにしなければならぬと思うのでありまするが、警察庁の本部といたしまして、この捜査の間が延びた、その意味において警察が手ぬるいという非難が出たことに対して、どういう処置をとられたのですか。
  234. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 確かに四山事件におきまして、五十数名の者を任意同行いたしましたが、確かにあそこで暴行傷害、殺傷というものが起こっておることは事実でございますけれども、個々についてこれが容疑者であるということの確認をすることがもちろん必要になるわけでございます。従って令状を得て初めて逮捕する、身柄を拘束するということに相なるわけでございまして、あのときとった措置というものは、私は万全の方法であったというふうには申しませんが、それからまた非常に遺憾な事態でございまするけれども、あのときとった警察の態度というものについては相当な措置であったというふうに考えております。
  235. 田中織之進

    田中(織)委員 これは柏村さん、あなたは部下を愛する気持は、かばう気持は僕はわからぬではないです。わからぬではないけれども、あのときにとった荒尾署の態度というものは全くなっていませんよ。現にあのときの荒尾署長は、事件当日転勤によって異動するということであった。荒尾署には責任者がいなかったのです。現地の情勢について——警察というものは労働争議であるから介入しないという警察本来の立場であってほしい、ところがその裏をかかれたように、会社側と気脈を通じた暴力団によってああいう事件が起こされたから、あなたたちとしても世論にこたえる意味においても、大牟田に多数の警察官を動員しなくてはならなくなった事情はわかります。われわれとしてもまた動員しろということを要請しました。しかしその要請されたままの警察が数千名現在大牟田にそのままおるということは——それは与党の大坪君なんかに言わせますと、総評のオルグ団や友誼団体、すべてが暴力団だというのです。会社側の、人を殺した町の暴力団には何ら触れなくて、われわれ部落解放同盟までが暴力団体だというふうに本会議で発言しているから、われわれ部落解放同盟といたしましては重大なる人権侵害問題として彼を究明しようとしている。現に大坪君にもその意味の抗議は申し上げております。しかし問題は今与党の諸君が言うようなそういう状態ではないのです。警察官が現に多数おって、あたかも挑発するように、あなたは先ほど戒厳令下云々というようなことをだれかから言われたのを肯定されておりましたが、そんな情勢ではないのです。現在、四日に裁判所から出したような、これは執達吏のあやまちでありまするけれども、あやまったことに基づいて警察が行動した結果が第一組合に不当なる不利益を及ぼしておるということを考えまするならば、これは警察が明らかに争議に関与したことになるのです。そういう立場から警察が中立的な立場に一日も早く戻ることが、この争議を、いわゆる民社党の田中幾三郎君からも指摘されたように、当事者によるところの話し合いへの道を開くことになるのです。国家権力を背景にして中労委の藤林会長が出したあっせん案が何ですか。会社側の言い分をそのまま出してそれが公正なるいわゆる仲裁としてのあっせんだと言えますか。こういう情勢の中で今や会社側にこそ政府を初めとして権力をあげて支援しているけれども、三池の労働組合の諸君は実に気の毒な状態にあると思う。大坪君は第二組合の家族が疎開をしておる問題であるとか、あるいは警官の問題についても触れておりますけれども、第一組合の諸君が仲間の千二百名の首を切られて、ロック・アウトのために、仲間から集められる一万円の切り詰めた生活の中に、子供たちは保育所へ行きたくても警官の宿泊所として取り上げられているために保育所へも行かれないような状態にあることに対して、与党の大坪君は一言だって触れたですか。私はこういう状態のもとに警察が法の維持だという美名のもとに多数国民の血税——われわれから納めた税金を、特定の資本家のために大牟田に五千名からの警官を配置するということは、これは国の政治として断じて許せることではない。労働大臣、あなたの所管の労働争議に関連してこれだけへんぱな行政が行なわれている現実に対して、あなたは国務大臣の一人として、また石原国家公安委員長は国務大臣立場から、この争議の現状に思いをいたして、政府としてこの争議の解決のために何らか英知をしぼるべき段階にきているのじゃないかということについてのお考えを、いまだ待つに至りませんかどうか、国務大臣としてのあなたたちの所見を伺いたいと思うのです。
  236. 松野頼三

    松野国務大臣 三池の毎歳の解決には政府は非常に関心を払い、実はあらゆる努力を払っております。ただこの努力の現実の表現としていかなることをすることが一番妥当かという方法は、これはおのずから争議の内容と性質によるものであります。御承知のごとくこの争議は、昨年の秋から続きまして百数十日の長期のものでございます。その間に中山さんが職権のあっせんをもって入られ、これは会社及び組合の当事者から拒否をされた。従って自主解決をするのだという争議がことしの一月からなお非常に激しくなりまして、ことに先般炭労からこのあっせん申請が出ましたために、藤林中労委会長が再びこのあっせんに努力いたしました。あっせん案が出まして会社側は受諾しましたが、組合側はこのあっせん案を不満として拒否をいたしました。そういう経歴を見ますると、いたずらに政府機関がここに関与すべき方法と時期というものはおのずから限界があるわけであります。またそういうことが可能かどうかという現実の姿も考えなければなりません。従って政府としては、やはりその円満解決を念じながら、今日は政府が立ち入るべき限界では断じてないと私は判断をしているわけであります。  ただその間における治安の問題は、警察当局として非常に御苦労ではございましょうが、やはりこれは争議であろうがなかろうが、国家の中に一部的に治安が乱れるところがあるならば、それに対処するだけの施策をするということは、当然のことだと考えます。しかし基本的にそれが争議に関与するならば争議の早期解決を念願するに私は何人にも劣るものではありません。しかしその方法がほんとうに解決するという目安と状況であると判断をしなければ、そういう問題というものは解決いたしません。それには両当事者間の歩み寄りという精神的あるいは現実の姿がまず第一。みずから解決するというのが労働争議なんですから、両者がきらうものにいきなり権力をもってやるということは、争議の本質を曲げることであります。私はそういう気持の上に、今日は政府は静観することが両当事者間における解決の道を早めることだと判断して、政府は今後とも静観をするつもりであります。
  237. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 今回の争議に対しましては、ただいま基本的態度について労働大臣からはいろいろお話がございましたが、しかし私も国務大臣の一人といたしまして、やはりこの争議に対しましては、ただいまの現状では、まあ静観の方法でないかもしれませんが、しかしやはり解決の方向への施策というものは何か今後考えておいていかなければならぬと思っております。しかし当面の治安の問題につきましては、先ほど田中委員からいろいろお話がございましたが、しかし私も先般現地の状況をつぶさに見て帰りまして、現に約六百戸ばかりのものが疎開をいたしまして、帰っておるのは百戸ばかり、五百戸以上のものがまだ帰っておりません。しかも四月十八日の事件以後は再び疎開をするものが出ておるという状況であります。それからまたちょうど私が参っておりましたときでございましたが、四山鉱の大島住宅地帯に、第二組合の長く就労しておった人が、先ほどどなたかのお話もありましたように、なかなか家へ帰れない。自分の着がえその他をとるために自分のうちへ帰ろうとしたところが、それがなかなか帰れない状態でありまして、相当の乱闘まで起こっております。そういう事態でありますから、むしろ住宅街の治山確保については、私はまだ警備力を増さなければならぬくらいに思っております。それから山全体の問題につきましては、やはり数千のピケが場合によってはおるのであります。しかも一方仮処分まで就労しようという場合に、その事態で非常事態が起こるということになりますならば、これはひとり勤労者であるとか会社ということばかりじゃなく、一般大牟田地域の治安確保ということに、やはり警察は当たらねばならぬのでありましょう。そういう意味から申しまして、私はまだある程度警備力を大牟田と荒尾周辺に置いておくことは必要である、かように考えて廃った次第でございます。
  238. 田中織之進

    田中(織)委員 時間の関係もあるので——しかし私は松野労働大臣並びに石原国務大臣答弁、きわめて不満です。先ほど田中幾三郎委員並びに大坪君から、警察官あるいは疎開者の集団的な生活、その意味から見ますならば、第一組合の関係の諸君も集団的な生活をやっております。ちょうど梅雨の前兆のような時期が参りました。われわれ現地で、第一組合の諸君には、伝染病等の発生のないように、十分保健上注意することを、特に社会党の立場から組合側にも注意を喚起して参ったのでありますが、現地に、家を離れて不自由な生活をしておる警察生活をしておる警察官の中に、われわれの聞くところによると、多数の下痢者を出しておるというようなことを聞くと、——上部の指導者につきましては、私これから具体的な例をもって申し上げますように、実に警察官の風上に置けないようなファッシヨ的な不遜な指導者がいますから、そういうものは私はかばいたくはありませんけれども、第一線の警察官諸君が実に気の毒な状態にあります。ここで雨季にでも入れば、きわめて健康上も重要な問題が発生ずるのではないかと思うのでありますが、そういう観点から見て、会社側が第一組合をのめすだけのめすんだ、そういうことを見るのが政府の静観の方針ではないはすだと私は思うのです。第一、最初に中山あっせん案にあったように、会社が、整理しなければ山の経営が立っていかないということになりましたならば、まず希望退職者を募るというようなことが常套手段ではありませんか。それにもかかわらず、会社から特定の者を名ざして千二百人、お前らやめろということは、労働大臣、あなたは労働者のサービス省の責任者として、明らかな不当労働行為であるという観点に立って、この事態の拾収をなぜ考えないのですか。この会社側の指名解雇の問題は、明らかに不当労働行為じゃありませんか。この点に関する労働大臣の所見を伺いたい。
  239. 松野頼三

    松野国務大臣 会社側の不当労働行為であるかどうかということは、ただいま現地の労働委員会に提訴されている事件もございます。従って労働委員会においてこれは判断することで、これが不当労働行為であるかないかという現実のことは、労働委員会の判決がなければ、私は軽々に言うわけには参りません。従って、そういう道もあるのですから、不当労働行為なら正々堂々と、不当労働行為の保養の方法があるのですから、その道をおとりになることがいいのであって、私がいたずらにそれをもって不当労働行為だなんと言うことは、まだ軽々に過ぎる言葉じゃなかろうか。従って、私はこれを絶対是認はしておりませんけれども、しかし少なくともそういう方法が与えられ、今日そういう方法をとっておられる事件もこの中にはあるのですから、その判決が出なければ、私が不当労働行為であるかないかと言うわけには参りません。従って私はあくまで、先ほどのお話の中にもありましたように、この解決というものに対して、私は非常な熱意を示しております。またその方法がないわけじゃございません。しかしそれには、それ相当に、私の気持と同じような時期と方法が組合、会社側に醸成されなければ、労働大臣がどうしろ、こうしろと言うわけには参らないことであります。それこそ、権力をもって争議の解決をはかるということは、本質をゆがめることであります。私はまだいろいろな案がないわけじゃない。ありますけれども、またその時期と、組合と会社がその方向になってこなければ、どんな名案を出したところで、一方が拒否、一方は受諾じゃ、解決はできません。従って、争議というものの本質から考えて、私は静観せんがための静観じゃありません。両方の情勢を見ると、今日政府が関与すべき、解決の時期にあらずと判断して静観しておるのでありますから、その裏表は田中委員も御承知のごとく、今日の状況というものを御判断いただけば、私の言う言葉が一番妥当だと考えております。
  240. 田中織之進

    田中(織)委員 その点は、中労委の藤林会長のあっせん案の中にも、会社側の主張する指名解雇というものはオブラードで包んでいるのです。これは、少なくとも中労委の会長等の脳裡には、会社側の不当労働行為であるということは明らかなんです。あなたは労働行政最高責任者という立場に立って、もっと英知を働かせる道はあると思う。あなたの先ほどからの御答弁を伺っておると、静観のために、ただ第一組合がたたきのめされるまであなたが見守るという、この岸内閣の無慈悲な、ファッショ的な労働行政の現われであると私は断ぜざるを得ないと思う。しかしこの点は、いずれあらためて私は議論をするといたしまして……。
  241. 赤松勇

    ○赤松委員 関連して。労働大臣にお尋ねします。あなたは、労働委員会があるから——今度の三池の争議のいわゆる争点になっておる、組合活動家を排除するんだ、いや、そうじゃなしに、生産阻害者を排除するんだというこの両者の主張に対して、あなたは労働大臣として、議員の質問に対してその見解を明らかにする義務があるし、またそれを明らかにしても少しもおかしくはないと思う。明らかにしたからといって、あなたの中立性が侵されるわけでも何でもないのであって、たとえば警察などの行き過ぎに対して、労働大臣労働者を保護するという立場に立って——労働省設置法をござんなさい。あそこに何と書いてあるか。あの目的の中に、労働省経営者の利益を守るなんということは一つも書いてない。明らかに、労働者の利益を守れ、弱い労働者立場を保護しろ、こういうことがちゃんと書かれてある。従って、あなたは中立ぐらいじゃだめなんだ。むしろはっきり労働者立場に立って、そうして今度のロックアウトの問題等についても、そのロックアウトは不当労働行為であるかないか、あるいは生産阻害者ということで向こうが指名解雇をしたことに対して、これは不当労働行為であるかないか、その見解を明らかにする義務があると思う。いわんや、立法府の議員が行政府の国務大臣に対してそれを質問しておるのですから、あなたが明確にここで答弁をしても、ちっともおかしくない。それを中央労働委員会の責任に転嫁して、中央労働委員会なり地方労働委員会がそれを明らかにしない以上は、自分が言うことは軽率だというような言い方は、自分の責任を他に転嫁するものだと思う。だからこの際あなたの見解を明らかにして下さい。
  242. 松野頼三

    松野国務大臣 業務阻害者ということで今回の問題が出ておりますが、それがいわゆる労組法の保護における組合活動家を問題にしたときには、これは当然不当労働行為であります。しかし、今日、会社側は業務阻害者ということでこれを解雇しておる。そこに相違があります。従って、この相違点をどこで判断するかということは、その後本人から、手続に応じて労働委員会に提訴されておるのですから、従っその提訴に応ずる公平な判断があることが一番正しいのであって、私がどちらとここで言うのはまだ軽々だと言うのであります。従って、そういう道に応じてこの問題は解決すべきであって、労働大臣が、それは不当労働行為だとか、いやどうだとかというのは、個々の事犯、個人々々の問題であります。また個人々々の問題について提訴されておるのですから、その方法によっておやりいただく以外になかろうと思います。私は責任を回避しておりません。私に判断すべきということは、まだ私の段階じゃございません。そういう手続を経てこの問題は解決すべだ。これが明らかに労組法における組合活動保護の阻害をしたという場合には、これは当然労働委員会において不当労働行為の判決が出てくるでしょう。しかし今日はまだ審査中であるし、その道——が私がここで言うにはまだ早い、こういうことで申し上げているので、私は責任を回避しているとか、逃げているという意味でなしに、当然手続と保護の方法でこれは判決しなければ、私がここで一々判決するということではございません、こういうことを申し上げておるのであります。
  243. 赤松勇

    ○赤松委員 あなたがここで発言することが、第三者の機関であり、しかも三者構成で構成されておる地方もしくは中央労働委員会考え方を拘束したり、その決定に影響を与えたりはしない。あなたは行政府なんです。あなたは労働省の長官ですよ。従って、行政府をあずかるあなたが、行政府立場から、自分はこう考えるということを言うことは、私は当然の義務だと思うのです。同時にまた、第三者の機関である地労委なり中労委なりがどのような決定を出そうとも、あなた自身はそれに干渉することはできないでしょう。しかし、それとは別個に、たとえば地労委なり中労委なりに提訴されておっても、その地労委なり中労委なりが態度をきめなければ、その判定を出さなければ自分は何も言えないのだ、何もそんな関係じゃありませんよ。労働大臣と中労委と地労委という関係はそんな関係ではない。全然別個の問題です。従って、三者構成の地労委なり中労委なりの第三者の機関でどのような判定が出ようとも、あなたはあなたの立場から、現実に起きておるストライキ、しかもこれは大きな社会問題になっている、その社会問題になっている労働争議に対して介入しろと私は言っているのじゃない。少くとも今問題になっておる指名解雇に対して、これが会社側の言うところの生産阻害者であるか、あるいは組合側の言うところの組合活動家の排除であるか、そういう点についてあなた自身は考えを持っているはずです。もし持っていないとすれば、あなたは全く無能力な労働大臣といわなくてはならぬ。考え方はちゃんとあるはずです。ただ、あなたは、あるのだけれども、おのずからその時期がある、あるいは手続があるということをさっきおっしゃったけれども、手続は何も関係はありません。また時期も関係はありません。しかも、今や重大な段階にこの争議が差しかかっておるのでありますから、この機会に、田中委員質問したことに対して、あなたははっきり、私はこう考えるという見解を表明しなさい。何もそれは影響ありません。またそれが当然のことだと私は思う。
  244. 松野頼三

    松野国務大臣 それは赤松委員の言われる力が無理じゃないかと思うのです。と申しますのは、不当労働行為というのは、個々の問題個々の事案について、その行為について判定をすべきであって、従って、総合的なものの判断というわけには参りません。不当労働行為というのは、だれだれの不当労働行為というわけであります。私は千二百名の方を個々に存じ上げているわけではないし、あるいは何百名の方を個々に存じ上げているわけでもないのです。おそらくそういう手続と方法のときには、個々にその審査というものが厳重に認証されなければできないのですから、私がここで何百人の方をどうだこうだということはとても言えることじゃない。同時に、私は、そういう立場で、保護の道があるのですから、その保護の経過によって、この問題が不当労働行為であるかどうかを判断する以外にない。それ個々の問題ははできません。これはそういうものなんです。従って、一がいに、この千二百名に対して、不当労働行為だとか、生産阻害者だとかいう判決を私にしろというのは無理なことなんです。それは私がどう言おうとできることじゃありません。これは赤松委員御承知の通りだと思います。
  245. 赤松勇

    ○赤松委員 今まで倉石、小坂君は、労働大臣をやっておるときに、裁判所で係争中の問題についても、われわれが質問した場合に、これは労働組合の方が悪いのだ、経営者の方が正しいのだ、こういうことを平気でこの委員会で自分の見解を明らかにしておる。前に小坂、倉石の諸君がその見解を明らかにしておるのに、三池の問題についてあなたが言えないというわけはない、また次官通牒などを出された当時、ロック・アウトの問題、あるいは不当労働行為の問題、あの問題についてもわれわれはここでいろいろ議論をした。その場合に、ここまでが不当労働行為ですよ、ここまでがロック・アウトの正当あるいは不当ですよ、そういう限界についてこれを明らかにするために通牒を出すのだ、こういうことでもって労働省は一貫してそういう答弁でやってきた。従ってロック・アウトの正当性、不当性、あるいは不当労働行為に対する自分の見解というものを明らかにできないというわけは、私は絶対にないと思う。
  246. 松野頼三

    松野国務大臣 一般論としてこういうものが不当労働行為だ、こういうものがロック・アウトだ、これがピケの限界だということは明白に申し上げておる。ただ三池の千二百名について言えということはできるものではありませんということを明確にしたわけであります。不当労働行為というものは、労組法に関係がございますように、労働組合活動をしたがゆえにこれを解雇するという場合には、不当労働行為の疑いが濃厚である。従って、その例をどういう例をおとりになるかわかりませんが、今回三池の千二百名を具体的にどうだということは、個々に審査される所管の委員会でなければできるものではない。また両者の意見を聞かなければできるものではありませんので、一がいにどうこうということは、かりに前大臣であろうが、おそらくできないのではなかろうかと私は思います。
  247. 田中織之進

    田中(織)委員 この問題については、松野君もあなたの選挙区に近いところで、労使ともに非常に多数の人が一日も早い解決を願っておるのです。私は私らが希望する解決をあなたに押しつけようという考えはございません。あなたはあなたの立場日本の産業労働が平静な状態に戻るという念願の上からあなたは動くべき時期がきておる、また動くべき道があるのではないかということを、同僚議員として私はあなたに勧告を申し上げておるのです。  労働省立場においても、たとえば第二人工島のバケットから第二組合の諸君が就労に入ることは、労働基準法を認めないということですか。平時であれば人が乗ることをいわゆる労働安全の建前から禁じておるじゃありませんか。争議になると会社側がこれをもって入っておるということについて労働省が見のがしておるということは、会社側の言う方をあなた方は放任しておるとわれわれが断定したっていたし方がありません。あるいは第二人工島に繰り込んでいく者に対して、海上保安庁の警備艇が手元になったということは、人間が入ってならないところから入るのに対して、どんな人命救助の事故が起こるかもわからないから警備をしたということを、楢橋運輸大臣が本会議で答えたが、あまりにも権力機関が勝手な解釈をし過ぎませんか。もし第二組合の諸君が、バケットの事故のために何名か死亡者が出たという場合には、責任はだれが負うのでありますか。そのために労働基準法というものがあるじやありませんか。どうですか。
  248. 松野頼三

    松野国務大臣 第二組合の人工島の問題は、鉱山保安法の規定でございまして、鉱山保安法の所管の方からお聞きしませんと、私の方では現実にはその問題はございません。従いましてその問題は所管省でないと、私の方では明確に答えるわけには参りません。
  249. 田中織之進

    田中(織)委員 石原国務大臣、今労働大臣と応答しておるような状況で、やはり争議の解決は一日も早く急がれなければならない。あなた方はあなたたちの警察情報に基づいて、山なりあるいは炭住街なりの治安を維持するためにさらに警官を動員しなければならない、もしあなた方の下部からきておるような事態があるとするならば、何万人の警察官を動員しても山の状態、大牟田の状態は平静には戻りません。あなたたちがこの際大牟田の常時警備の警察官だけにするという英断を示しますならば、私ども社会党が責任をもって大牟田の治安を維持しましょう。私ははっきり申し上げます。先ほど赤松委員質問をいたしましたけれども、あなた方はそういう立場で現に三井の施設を、それは賃料を払っておるということを先ほど答弁になりましたけれども、苫小牧のあの苛烈な争議のときにも多数の警官が出ましたけれども、会社の施設は一つとして使ったことはございません。ことに親たちが争議というような形で、お母さんもお父さんも争議問題で家事を見てやれないために、いたいけない子供たちのためにせめて半日でも保育園の先生方によって子供たちが楽しい時間を過ごす保育所が、何カ所にもわたってすでに五十日以上も占拠されておるという。警察がオール・マイテイの権力を持っておるから、会社側に賃料を払っておるということで、いたいけない子供たちの保育所を警察の宿所や詰所に使うことが許されるのですか。またこれは厚生省の所管ではありますけれども、保育所がこういう状態に放置されておるということに対して、厚生省当局としてはどうするのですか。この点については人権擁護局立場から、小さい子供たち、ものを言えない子供たちのために私は特に発言するのですけれども人権擁護局立場から、この問題に対しては警察当局とあなた方は話し合って早急にこれはあけるべきだと思う。文部省は今度の争議に関連して、学校教育の問題について一片の通達が出ておりますけれども、これこそ、保育園へ行く子供は国会ではものを言えないのですよ。だから私は言うんですけれども、これは早急にあけるべきです。同時に、会社の施設まで使って警察が大牟田に滞留しなければならないような事態ではありません。引き上げることを私は強く要求するのでありまするが、その点についての長官の御答弁をわずらわしたいと思う。
  250. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警察といたしましても、多数の者をああいうところに集結して、そのために各県もそれぞれやはり相当の不便を忍んでおることでございまするし、事態によりましてはできるだけ帰すということが好ましいことは申すまでもございません。ただ先ほど来申し上げておりますように、あの地区の治安をもっと確保して、そうして平静な状態をもたらして、責任を果たした上で警察を適当に戻すということにいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  251. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、柏村さん、今まだ警察は保育所と体育館に置いておるのですか。一体、この前何という約束をしたのですか、できるだけ早くやるということが政府児童局長答弁だったじゃないですか。営利会社の施設を、中立であるべき警察が使っておったならば、警察の中立性は保てませんぞということを、私はあれだけここで忠告をしたのです。そしてあなた方は契約書をすぐ出しますと言ったのだが、出しやしません。契約書をこの委員会に出しましたか、二十七日出しましたか、二十八日出しましたか。石原さん、あなたは警察の中立性を重んじますね——警察の中立性を重んずるあなたが三井鉱山という営利会社の施設を使っておって警察の中立が保てますか。
  252. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 ただいま会社の施設を使っておりますのは、先ほど申し上げましたように、保育所であるとかあるいは会社の事務所の一部であるとか、そういうところを使っておりますが、これはやむを得ず使ったのでございまして、相当の警察官が入って、宿営の施設をしなければならぬ。たまたま保育所が、三池がああいう事態になっておりますので、すっと休校をしておったんです。使用していない。それで会社に会いまして、承諾を得て使っておる。しかしその後もまだあの事態で、保育園を開くという状態になっていないようでありまして、引き続き、おそらくまだ使っておるのじゃないかと考えます。しかしこれは保育所を開園したい、開所したいという希望が出れば、これはさっそく適当なところへ移したい、かように考えます。
  253. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、警察の中立性はなくなったと認めて差しつかえありませんか。営利会社の施設を警察が使うというなら暴力団と同じじゃないですか。
  254. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 適当な賃貸料で契約をして、やむを得ざる場合に使うということは、それだけで警察の中立性が害され、失われたということにはならないと思います。
  255. 滝井義高

    ○滝井委員 児童局長、あなたはこの前、事情を調べまして保育に欠けるところがあればすみやかにどいていただきます。——これは明らかに保育に欠けておるわけです。もう警察が入ってから何日になりますか。厚生当局は権力を持たないけれども、ほんとにあなたが児童行政をおやりになろうとするならば、断固として警察はどいてもらわなければならぬ。もし警察権力のためにあなたの方がひしがれておるというなら暴力団です。警察は暴力団だ。会社と一体のものですよ。中立のものではない。だから従って、いかにこれは執達吏が警察に来いといったって、暴力団来いというのと同じです。買収されているんです。会社の施設を使って何で中立と言えますか、営利会社ですよ。しかも契約書も今言ったように出さない。警察がこういう工合に、国会には契約を出しますというものも出さない。しかも児童当局は保育に欠けるところがあったら、すみやかにこれは出てもらわなければならぬ。たとい児童福祉法にいうものでなくても、これは広義にいう児童福祉に関係する問題だから出てもらわなければならぬ、こう言っている。これではもうまるっきり国家権力の中立性というものはない。バスケットを使うことは好ましくないというバスケットを平気で使っている。海上保安庁の船というものは、人工島に上陸する援護をする。警察は絶えず会社の施設を使って会社とは連絡をする。これではまるきり警察の中立性はないのですよ。だから大牟田に行ってごらんなさい。もう警察を信頼しておりませんよ。どうですか石原さん、これはすみやかにどいたらいい。どいて、どこでもあき地があるのですから——大牟田は幾らでもあき地がありますよ。バラックを建てて——労働組合でさえもバラックを建てておるじゃないですか。そのバラックを建てて住んでおる労働組合には道路交通違反だなんと言って大坪さんに答弁する。その警察が営利会社の施設を使っておって中立でございますということは、私はこの前から三歳の章子でさえもこれは信じないと言った。当然あなたは改めなければならぬ。あれから十五日たっていますよ。われわれの税金でバラックを建てて、公平な中立の立場をとりなさい。石原さん、それができますか。
  256. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 保育所が、ああいう状態でありますので休所しておりますので、もし保育所を開くということでありましたならば、これはどんな犠牲を払っても移したいと思います。たまたまあいておりまして、会社もよかろうということで、治安確保のためにやむを得ずああいうところへ入っておるのでありまして、必要があればこれは返還しなければならぬ、かように思います。
  257. 滝井義高

    ○滝井委員 問題は保育所を使っておるということにあるのではない。それは第二の問題として出てくる。第一の問題は、中立であるべき警察が営利会社の施設を使っておるということが、これが問題なんですよ。これがあなたにはわからない。ここに汚職があった。そうして汚職の疑いをかけられておるその人間のうちにあなたが行って泊まって酒食の供応を受けてごらんなさい。一体それであなたは中立の警察と言えますか。それは汚職のあった人間とぐるになって、指揮権の発動ではないけれども、吉田総理が指揮権を発動するときに犬養さんが憤死しなければならなかったと同じ形になると思うんです。ところが、あなたはこれは当然治安上必要だから会社の施設を使うと言うならば、用心棒と同じだ。だから私は、そういうことで施設が足らないならば、第一組合の組合員のうちにもお泊まりなさいと言うのです。会社にも泊まってよろしいから、第一組合の組合員のうちにも泊めて下さいと言えば泊めますと言うのです。金は実費さえ払えば泊めます。そういうことで石原さん、警察行政ができますか。そうしてその上に犯しておる罪は児童福祉法の罪を犯しておる。児童福祉を妨げる罪を犯しておるというのが二次的に出てくるんですよ。どうですか、厚生省の政務次官、あなた一つ言って下さい。厚生省は一体これで厚生行政がうまく行なえますか。国家権力の警察が児童福祉の施設にがんと居すわってしまって、明らかに児童の福祉に欠けるところがあるということを児童局長が言っておる。しかもそれを二週間も前に言って、どけたいと言っておるのに、警察は依然としてどかずに平然としてすわっておる。こういう事態ですから厚生省としては断固としてやって下さい。もしそういう厚生行政なら、われわれは協力できません。あすから協力できない。
  258. 内藤隆

    ○内藤(隆)政府委員 児童福祉行政の上から、厚生省といたしましては警察庁へすみやかに退去するように交渉を開始しております。
  259. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、すみやかに要求をしておるのにどうして退去できませんか。バラックでも建ててすぐ退去できますか。
  260. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 会社の施設を借用しておることにつきましては、この前御質問にお答えした通り、それ自体によって中立性が破壊されるものとは私は考えておりません。しかしながら誤解をするおそれがあるということはあり得るわけでございますから、できるだけ早くそういう事態でないようにした方がよろしいということで、指導をいたしておるわけでございますが、まだそれを移す段階には至っていないという状態であります。
  261. 滝井義高

    ○滝井委員 その段階に至っていないというのですが、石原さん、いつになったら全部のけますか。これはきょう私ははっきり言質をいただきます。厚生省は退去してくれと言っておるのですから、いつになったらのけますか、はっきり日にちを明示して下さい。
  262. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 これはやはり現地でいろいろ折衝することと思いますから、私がここで何日までということは申し上げることはできないと思います。また先ほど厚生省からそういう折衝をしておるというお話でございましたが、私が先般現地に参りましたときには、まだそういう話は聞いていなかったのでございまして、厚生省の方から児童福祉法に基づいてそういう舌があるということであれば、これは適切なる措置を講じなければならないと考えております。
  263. 田中織之進

    田中(織)委員 その問題は、厚生政務次官の方で警察庁に早急にのけてもらいたいということのお話もすでに開始されておるということでありますから、私はできるだけすみやかにこれはのけるということをお答えになるのが石原国務大臣なり柏村長官の当然のお答えだと思うのです。まだ保育所はこういう関係で使っておらないから、こういう子供たちの中から山の融和を作り出すためにもこれをのけてもらいたいというのは、第一組合も第二組合も、主婦たちの切なる願いだから、私は特にこの問題を強調しておったわけです。少なくとも、この保育所の問題については、警察庁の長官はもちろん、現地との折衝なり、かわりのものを見つけるなり、若干の日時を考えなければならないというようなことも常識的にわかります。しかし、誠意のほどというものはあなたたちは示さなければ私はいけないと思うのです。
  264. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 先ほども適切なる措置をとらしめるということを申し上げましたので、警察庁を通じましてそのようにいたします。
  265. 田中織之進

    田中(織)委員 そこで、だいぶ時間を経過しまして恐縮でございますが、もう一つの問題をぜひこの機会に伺っておきたいのであります。先ほど私はちょっと冒頭に申し上げたのでありますが、四月七日付で、ちょうど炭労の大会で藤林あっせん案をのむかのまないかという重要な時期に、三池の新労組から「友山労組の皆さんに訴える」、こういうことできわめて悪質なる差別ビラが配布されたのであります。それの問題のところを読んで見ますと、「皆さん!!いままで、三鉱労組(旧労)は、三鉱連—のでも特殊部落と、よくいわれておりました。」こういうことです。それから「「向坂教室」の狂信徒達は向坂イズムに合わないものは、組合員といえども全て敵視し、向坂イズムに奉仕することが、ホントの組合運動であるかの如く宣伝し、統制、団結の名のもとに、一切の批判と発言を封殺し、シュン烈なる暴圧を加え組合員を引きづって来たのです。三鉱労組(旧労)の特殊部落たるユエンは、まさにここにあります。」それから一番最後のところに、新組合は「特殊部落にならないで、友山労組の皆さんと共に信義と友愛のもとに団結して行く日の近いことを確信しております。」ということで、このビラの中に三カ所「特殊部落」という用語が使われておる。しかもそれは圧制と暴力の集団が特殊部落であるというきわめて特殊な先入観念を持ってこの文章が書かれておるわけです。実は皆さんも御存じだろうと思いますけれども、炭鉱の労働者というものは、あすではない今日の生命も保障されない。だから九州の、特に田川地区等におきましては、炭鉱に働く労働者の、多い場合には五割、六割までが未解放部落の人なんです。これはその日の生命も保障されないところでなければ仕事を与えられなかったという長い差別の結果きているわけなんです。従いまして、三池労組の中には、私どもが明確には調べておりませんけれども、少なくともその三分の一近い人たちは米解放部落出身の労働者がいるわけです。しかも今度のように、先ほどから労働大臣にも伺ったのでありますけれども、千二百名からのいわゆる組合活動家を業務阻害者だということで首を切っている。常識的に考えても、会社の業務阻害者が千二百人もあったならば、三池の炭鉱の経営が維持されるはずはございません。こんな無慈悲な首切りを行なってきました。首切者の中には未解放部落関係人たちもおります。そういう関係から私ども部落解放同盟の福岡県連は、二月二十四日の県連大会の決議をもって、三池の闘争組織に対する支援と共闘組織を組んでおります。ことに二十九日久保君の刺殺事件が起こりまして、全く組合の諸君も暴力団の前に、それこそ当時は無警察状態でおののいておりましたのに対しまして、福岡県下から約七百名の緊急動員をかけまして、大牟田の各炭住街なりあるいは市民諸君に対して、大牟田から暴力を追放するために、また第一組合にも第二組合の中にも解放同盟の関係の会員もおりますので、指導者の考え方は別として、労働者は一体となってもらいたいということで、松本委員長並びに書記長の私どもが陣頭に立ちまして行動をしたことも事実でございます。そういう背景の中に、第二組合が四月の七日に三井の田川、山野の鉱山を中心にいたしまして数万枚のこの悪質な差別ビラを配布したのであります。私ども部落解放同盟が共闘組織に立っている三池の中には、未解放部落の出身者がいる。これは第一組合をそういう差別文書によって分裂させようという明らかなる卑劣なる、今日残っている封建的な身分制の残滓によるところの差別を利用して、組合の分裂をはかろうとする、きわめて悪質なる差別事件だとわれわれは考えている。この事件が四月七日に起こりまして、それから解放同盟の県連からの声明君あるいは一昨九日三池におきましてこの差別文書に対しまして、第二組合を中心にして抗議集令をわれわれは持ったのであります。この問題については、警察当局なりあるいはこれらの人権侵害の問題について日ごろ国の機関として関心を持っておる法務省の人権擁護局は、どういうような報告を持ち見解を持っておるか、まずこの際明らかにしていただきたいと思う。
  266. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいま田中委員がお述べになりましたような文書が相当広範囲に配布されたという事実は、私も聞いておるわけで、国民の平和団結と申しますか、融和という問題に対してこういうふうな文書が配布されたということについて、私どももそういうことはまことに遺憾なことであったというふうに考えるわけでございます。ただいま田中さんのお話のように、それでいろいろ抗議がなされ、また聞くところによれば、第二組合側としてもそれに対して陳謝をすると体として私どももこういう事態があったということは聞き、また遺憾に存じておりますけれども、警察としてこの問題に深く関与していく筋のものではなかろうというふうに考えております。
  267. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 今御指摘の点は、まだ福岡の法務局から報告がなかったのでありまして、私、今伺いまして、今もって特殊部落という言葉田中委員のおっしゃったような意味において公然とビラに書かれておることは非常に遺憾に存じます。これは私としてできるだけ早く処置をとりたいと思います。
  268. 田中織之進

    田中(織)委員 この問題について、柏村長官はビラが配布され、部落解放同盟を中心にいたしまして、この問題に対する限りない憤りのもとに抗議が行なわれておることは御存じだということを今お述べになったわけです。ところが法務省の人権擁護局は、まだ福岡の法務局からこの種のことについての報告がないという点は、私きわめて遺憾に思います。その点については、いずれこれから二、三伺ってみたいと思うのでありますが、ただいま長官はそういうようにお答えになったのでありますが、実は去る九日の日に、先ほど申し上げましたように、私ども部落解放同盟は、全国から中央委員以上のものが集まりました。動員の主体はもちろん福岡県連でありますが、私ども解放同盟の関係から二千五百名の者が集まりまして、三池の労働組合その他の関係から約五千名と、おそらく七、八千名の抗議集会になったと思うのでありますが、開いて、第二組合に対して重大な反省を求めるとともに、実はこうした問題で第一組合と第二組合との間の差別された、また第一組合を引き合いに出された未解放部落のものといたしましても、死に価する侮辱として憤激を持っておるわけでありますが、実は大会をやったのであります。そういうことについて、先ほどから三池争議に関する警察の中立性の問題についても、いろいろ質疑をいたしたわけでありますが、こういう文書が福岡県内に多数まかれるというような事態は、私は治安上もあるいは人権擁護の場からもゆゆしい問題として、やはり警察は関心を払われるべきが当然だと思うのです。それにもかかわらず、どうも現地の警察としては、そういう形跡を払われた関心が見られないものですから、実は警察にこの問題についての考え方を伺うと同時に、本件について、これは犯罪行為であるかどうかは別としても、非常に違法な行為でありますから、われわれは警察の公正なる調査活動を期待する意味において、抗議集会が終わりました後に、抗議大会の代表者が、大牟田署におる県警の警備本部あるいは大牟田署の幹部に会見をしたいということの連絡を前日の八日にしておったのであります。そこで第二組合に私は主として行ったのでありますが、第二組合は風をくらってだれも責任者がおりませんでした。私は引き続いて大牟田署に参ったのでありますが、私らが市内をバスで行進をしているときから、大牟田署の警備が異常な状態にあるわけです。ジープあるいはトラックというようなものを大牟田署の玄関わきに十台ばかり並べまして、一種のバリケードを築いて、それから警棒を携えた警官が玄関に立っておるので、私は非常に異様な感じを持っていたのでありますが、私どもは第二組合の事務所から警察までデモを行ないました。そのデモ隊が到着するまでの間に、埼玉県代表の野本君を初めといたしまして、警察に前日に通知をしておった代表七、八名の者が、会見をいたしたいということで、デモ隊よりも三十分も前に警察へ参りましたところ、前日の約束にもかかわらず、その代表を入れないのであります。押し問答の末、吉田法晴参議院議員を交えて四名の者を入れたのでありますけれども、それを中に入れると、署長は当日おられなかったのでありますけれども、次席なりあるいは後にわかったのでありますが、県警の本部から公安部長も出ておったのでありますけれども、それに取り次ごうとはせずに、約二百名の警棒を持った警官によってわれわれの代表者四人が取り囲まれて、約三十分以上も待たされた。そうこうするうちにデモ隊が来る、こういう事態の中で私は代表者が責任者に会っているかということを聞いたところが、まだだ、こう言いますから、私も中に入ったわけでありますが、そうしていると、それも私が入ってから二十分くらいたちまして、ようやく釘原という次席が出て参りまして、会見をするから、あとに二、三名残っているから代表だけは入れなさい、代表だけが中に入って話をしておるということによってデモ隊が逐次流れ解散をすることになっておるのだから、ということを申し上げたにもかかわらず、どうしてもその代表を入れない。不可解なのは、釘原次席は代表者三、四名は入れて下さいと言っているにもかかわらず、第一線の警備隊長はどうしても入れないというような形で実は会見がおくれました。しかもようやく中に入りましたところが、私らが通されましたのは少年補導室であります。国会議員二名、県会議員三名、それから地方代表三名と八名の代表を入れるのに、こともあろうに少年補導室に入れるのは一体何という非礼なことをするのか。しかも釘原次席と私が話を始めようとして、ようやく話に入ろうとすると、後に公安部長であるということがわかりましたが、電話がかかったとかなんだとかいう形で釘原君を引っ張り出しました。そうするとドアが開いたのを見ると、表に警棒を持った警官が七、八名警備だと称して立っている。これは明らかにわれわれ正当な手続を通して警察に会見を申し込みに行った代表に対して、私は監禁も同様の状態にわれわれを閉じ込だものと言わざるを得ないと思うのです。第一にそういう事実があったということ、しかも私は釘原次席に、県警の警察本部長あての抗議文もあるから、県警からどなたか来ているか、和田君は来ておられないが、私が三月に行ったときにはお会いしておりますが、どなたか課長なり本部長にかわる代表者に会いたいということで、どなたかが来ておらなければならないのでありますが、おらないとこう言う。やむを得ないということで、私が釘原次席にようやくわれわれが参りました趣旨をお話しいたしまして、実は今柏村長官にお伺いしたように、このビラのことについて聞いたのです。ところが驚くなかれ、大牟田署の署長がおられないで、次席が、それは知りませんでした、けさになって抗議集会が開かれるということで初めて知ったようなことです、こう言う。柏村長官は、先ほどそういうビラのことを報告を受けておると言われましたが、一体それはいつ聞かれたのですか。私はこれだけ全国から三千名近い人を集めて、自分たちに対して今日民主主義の世の中において、同じ日本人でありながら古い封建遺制に基づく部落差別を浴びせられたことに対して憤激をして、抗議集会を持っておる大事件の中で、先ほどから治安のために御苦労なさっておるという所轄警察が、その日の朝でなければ全然知らないというような形は、私は第二組合と同様に、今日この部落差別と同じ考え方を現地の警察官諸君が持っておるのではないか、こういう点を非常に心配をしましたから、実は釘原次席にこの点をまずただしたのでありますが、伺った答弁は、実は田中さん、率直に申し上げますけれども、私はけさ初めて知った、こう言う。そんなことは現地の警察として許されていいことでありますか。また私たち部落解放同盟の者が押しかけてくるからということになると、警察の表には警察のトラック、ジープ等でバリケードを築いて、警察官が警棒を持って警備する、現地の警察にそういうようにやれという指令をあなたたちは出されたのかどうか、この際はっきりしてもらいたい。
  269. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 まずこういうふうな事件が起こりましたことは、田中委員のお話のように、警察では深い関心を持ってこの動向を十分に見守るべき筋のものであろうと私は考えております。  いつごろ用いたかというお話でございますが、私もはっきり覚えておりませんが、相当前にそういうものが配布されたということを私は聞いておるわけであります。  また代議士の方などがおいでになるにつきまして、警察のとりました態度というものが今お話のようでありますならば、やはり敬意を持った取り扱いをしなければならぬと思いまするとともに、いわんや私の方からそういう措置をとるようにというような逆な指導をしておることは全然ございません。
  270. 田中織之進

    田中(織)委員 ただいま柏村長官は率直に、かなり前にこのビラが配布されたと言われた。従って、差別問題として関係団体でこの問題を取り上げているということについても、私は報告があったから承知されたのだと思う。それが実情だと思うのでありまするけれども、私が先ほど申し上げましたのは、私自身体験したことでございまするから、誇張も何もございません。誇張も何もございませんが、この部落問題というようなことなり、また大牟田の問題で第一組合側の関係の者がそういう意味一緒に参るということになると、あたかも暴徒か暴力団に対決するような形で、一種の過剰恐怖というか、こういう考え方で警察がわれわれ人民に対処している姿というものは、私は非常に重大な問題だと思うのです。こういう考え方があるから、私は先ほど口はばったいことではありまするけれども、大牟田の常備警察の諸君にまかして大牟田から引き揚げていただいても、私ども社会党は党の全生命と党の名誉にかけても大牟田の治安を守りますと言った。しかし現実にはそういう姿があるということ、しかもようやく現地の松岡県議が仲へ入りまして——われわれがやかましく言っても、入り口に七、八名の警官が警棒を持って立つのをついに最後までやめなかった。これはわれわれ身分を明らかにしている者に対して不都合だと思うのです。しかもそういう状況の中で、六時ごろから押し問答いたして、かれこれ二時間半くらいたったころに、公安部長というのが出てきた。こちらは、釘原次席と出てくるから君はどなたですかと聞いたら、なかなか言わない。しかし釘原次席と一緒に抗議団の代表に会おうという以上は官姓名を名乗れ、こういうことを言ったら、公安部長だという。それで、君はさっきからここにおったのじゃないか、先ほど釘原次席を引っぱり出しに来たのは君じゃないか、こういうことで、前日から連絡をとって来ているのに対して、県警の警察本部長がいなければ、それの代理者と会いたいということも、われわれは順序を通してものを言っているのに来ないということはないんだ。しかも立ったままで、用件を話して下さいと言う。不都合千万ですよ。私は、こういう形で警察庁長官が現地の第一線の諸君を教育し指導されているとは思わない。それから私が釘原次席に伺ったと同じような形で、憲法十四条を棒読みしたような形で聞いたのだけれども、ふんぞり返っている。それですから私は、そういう態度、経過について話をしました。きょうの警察の態度は常軌を逸しているし、君らが興奮しているからというのは僕らもわからないことはないが、われわれを数時間待たしたということは無礼なことだから一通りのことわりは言いなさいと言っても何も述べません。だからこれは、部落解放同盟の連中——田中などの部落の人間が来たら、あいつらは人間じゃないのだから、こういう蔑視観念のもとに警察が応待しておったものとわれわれは見ざるを得ない。本部長への抗議文を伝達してもらいたいと思って来たけれども、会見はこれで打ち切るということで、私どもは、これは新たなる警察の差別事件として徹底的に究明するという立場で、すでにそれに先だってデモ隊は静かに解散をさせまして、私らは引き揚げたのであります。ところが、越えて翌日福岡市で、県警の本部長に、抗議大会の決議文、それから前日の大牟田署における問題が私はどうしても納得ができませんので、私がしたためました具体的な事実をあげました抗議文、これを作成して代表が面会に行ったのでありますが、大牟田へ今指令を流している、指令室へ入っているということで会わない。そういうことで、福岡県警本部長もわれわれの代表に現在の時間までにまだ会っておらない。この問題は、それでなくても深刻な感情的な対立問題をはらんできておるのであります。政治に関する問題だとして、首を切られた組合側の諸君は今や精神的には全くエキサイトした状態のもとにあるが、そこにこの不幸な差別事件が起き、それに対して輪をかけるような警察の態度というもの、これは新聞、ラジオで報道せられております。それが大牟田の市民にどういう影響を及ぼすかということを考えますと——きょうはたまたま社労委員会が開かれて、三池争議の問題についての警察の処置等についての質問が行なわれるということでございましたので、同僚に交代していただきまして実は質問に立ったわけでありまするが、これは実に許すべからざる問題だと私は思うのであります。私が申し上げている事実は、何らの誇張なくありのままに申し上げておるのでありますが、警察庁長官として、これを調査されてどういうような処置をとるか。責任がある処置をとるか。私どもはやはり国民の一人として納税の負担もしておりますし、警察に対する民警協力立場でいろいろ行動している者もございます。警察が今度大牟田でとった態度が全警察官の考え方の中にあるものだとは思いませんけれども、しかしもしそういうものが全国的に何しますと、これは警察官とわれわれの同盟委員のみならず、国民との間を分離する重大な問題だと思うのでありまして、責任ある処置をとっていただかなければならぬと思うのでありますが、この点に対する警察庁長官並びに主管の石原国務大臣の御見解を伺いたいとともに、法務省の鈴本人権擁護局長にも伺いたいのだが、こういう重大問題が起こっているのに対して、部落問題だということになれば、何か特殊な問題であるかのような考え方で現地の法務局が動いているということになれば、それこそ法務省人権擁護局自身がこの問題について今日なお誤まった考えを持っているものと断ぜざるを得ない。  国会では御承知のように一両日中に与野党一致いたしまして同和対策問題の審議会を設置することに社労の委員長永山代議士等にも非常な協力をいただいて、これが会国会で成立する段階にまで進んできているのです。この部落問題について政府が重大な関心を払う時期に、第一線一の警察官がこの問題に対して、こんな今度起こったような無理解な態度では、私は先が思いやられると思います。この点についての政府側の責任ある答弁をわずらわしたいと思うのであります。
  271. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 会大牟田におきまして、非常に新労、旧労ともに相当気分が興奮状態にあるという状況の中にありまして、警察としては、そういう事態に対して特に冷静に、紳士的に事を運ぶべきであることは申すまでもないと思います。また、ただいまお話しのような問題について、先ほど来私申し上げておりますように、非常に重大な関心を持って対処しなければならないことであることは申すまでもありませんし、全国の警察はそういうつもりで動くように、われわれとしても十分に配慮をして参りたいと思うのであります。今回、田中さんのお話のように、そういう事例のことがございますれば、まことに私指導監督に当たる者として心から遺憾の意を表しまするし、事態についてもよく調査をいたしてみたいと考えております。
  272. 石原幹市郎

    ○石原国務大臣 ただいま直接指揮監督いたしております柏村長官から、いろいろ所信の表明がございましたが、私も先般福岡へ参りましたときに、この話を承りました。組合側もさっそく陳謝したというような報告を承っております。いずれにしろまことに遺憾なことであったと思いますし、警察の所内における行動等につきましても、現地におります者はいろいろ興奮等もしておったかと思うのであるますが、お話を承れば、いろいろ足らざるところもあったようであります。所管を通じて調査もせしめ、善処させたい、かように思います。
  273. 田中織之進

    田中(織)委員 直接差別事件そのものにつきましては、差別文書を出しました第二組合の方でも、われわれ折衝した範囲では、まだ実は本質的な部落問題に対する理解も欠けており、何か誤解をされておる、こういうような考え方でおるわけでありますけれども、これはかつて封建時代に、時の支配者がとったように、分裂支配のためにこの忌むべき差別問題を持ち出しているということは、これは明らかです。これは断じて私は許すことはできないと思う。そういう意味で、九日には第二組合へ参りましたが、菊川組合長以下幹部が大牟田へ出かけたということで、三十台のバスで第二組合員は——解放同盟から抗議に来る、何か差別問題で憤激をして解放同盟が暴力的な糾弾にでも出たら、あたかもそれが暴力団であるかのごとく、また暴力団によって三池第一組合がささえられている、こういう形であるいは組合員の中にでも分裂政策を持ち込もうというところに私はこの差別ビラの本質があると思う。その意味において、これは争議にも直接関連して、実は許すべからざることなんです。そういう意味で、警察が公正な立場に立って、この問題についても第二組合をたしなめるなり、あるいはそういうようなものを会社の機関を通じて配布させるというような——ヘリコプターで三池、山野にはまいたということであります。ヘリコプターは会社のものです。こういうようなことを、われわれは正当に究明しておる。ちょうど全国水平社以来四十年になりますけれども、われわれは長い、痛ましい経験の結果、決して暴力をもって差別者そのものを糾弾しようという考えはございません。差別者が問題の本質を理解して、正しく、差別のない時代を作るために協力することこそ、ほんとうの問題の解決だという考え方の上に立っておりますから、抗議集合そのものも、われわれはきわめて秩序正しくやっておるわけです。それにもかかわらず、実は代表の会見の問題について前日の連絡にもかかわらず私はやられた。しかも本部長までが、現地の誤った態度を裏書きするがごとく、代表者の会見にも、ごく数名の者の代表に県庁の本部長室で会おうというのに会わないというような態度は、私は警察そのものがやはり第二組合と同じような差別観念を持っておるものと断ぜざるを得ないと思います。これは争議をより暗くすることになると思いますので、もちろん私どもの現地の組織を通じて関係方面との折衝が続けられておりますけれども、この問題については一つ実情を明らかにして、また委員会に報告をしていただきたいと私は思うのであります。  それから、この点については先ほどから各委員も触れておられますが、いよいよ雨季に入りまして、ちょうど梅雨の前兆のような天候が大牟田でも続いております。私どもは、第一組合のみならず、警察官あるいは第二組合の実族の人たちが、いろいろな面で睡眠も十分でないところに、もし悪い病気でも出れば、それこそ大牟田は死の町と化するのではないかということを心配するのであります。私はそういう高い観点からも、特に法務省の中に人権擁護のために設けておるセクションは、この際最大限度の活動をしなければならぬと思う。内藤厚生政務次官もおられますが、厚生省としては特にそういう観点からも、先ほどの児童福祉の問題だけではなくて、この争議の解決のために、原生行政立場からも英知をしぼるべき段階にきておるのではないかと思うのでありますが、厚生当局並びに法務省の人権擁護局としての御見解を最後に伺っておきたいと思います。
  274. 鈴木才藏

    ○鈴木(才)政府委員 御指摘の雨季に入りまして後の衛生の問題、これはもちろん直接には厚生省の問題でありましょうが、広い立場におきましては、そういう状態に多数の者が陥るということは、ほんとうに深刻な人権問題であると私は考えます。ただどの程度われわれ人権擁護局として福岡の法務局に力が及びますか、これは人権擁護委員、の動員も考えられるのでありますが、われわれもでき得る範囲の力をもって、また賢明なる方法について考慮いたしまして善処していきたい、またいくべきである、こう考えております。
  275. 内藤隆

    ○内藤(隆)政府委員 仰せのごとく雨季を前にして、さらに集団生活をしておられる場合に、そこに伝染病等が発生する憂えは十分に考えられるのでございます。厚生省といたしましては、現地の保健所等と連絡をとって、どういうような対策を講じておるかということの情報をとっております。その情報を係官から御報告させたいと思います。
  276. 田中織之進

    田中(織)委員 最後に労働大臣に、先ほど労働大臣に、先ほど労働行政立場から、特にこの三池の争議について英知をしぼっていただきたいということを要請いたしたわけでありますが、ただいま後段に私が指摘したような問題もからんで参りまして、現地の空気はそれだけに重苦しいものがあると私は思うのであります。これは一にかかって労働大臣が各閣僚諸君を動かして、また会社側の全く自分たちの利益以外に考えないという態度に対して、大きな国の政治立場から反省と譲歩を求めるべき時期にきておると私は思うのであります。そういう高い政治的な判断の上に立って——ども政府が争議に権力的に介入することを決して要望するわけではございません。私はそういう問題を抜きにした形で、同じ国民の中でこれだけ深刻な争いを続けておることを、当事者が解決するだろうという形で、政治の衝に当たる者が傍観者的な立場に立つことを一日も早くやめてもらいたいということを最後に強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  277. 大原亨

    ○大原委員 関連してちょっと労働大臣にお尋ねしますが、労働大臣は熊本県で、お隣の県であります。政治家でありますから関連して御答弁いただきたいと思いますが、この第二組合員がたくさんのビラをまいて、その中には、特殊部落から出てこいとか、そういうふうな、分裂というか、基本的な人権を侵害して団結を乱すような行動が行なわれておる。これは謝罪をされたということ、でありますけれども、私はこの問題はやっぱり基本的な人権の問題、差別の問題としては非常に大きな問題であって、労働運動の中においてこういう見方をして、そして分裂支配をする、団結権を精神的にも侵害をしておる、そういうことはいげないと思うのであります。労働大臣は非常に近い所で起きた問題ですけれども、そういう差別される立場に立って考えた場合においては、炭労の実情から考えてみて許しがたいことだと思うんですが、時間も迫っておりますし、私は労働大臣の見解を記録にとどめておきたいので、御答弁いただきたい。
  278. 松野頼三

    松野国務大臣 私は熊本ですが、荒尾は熊本県でありまして、同じ私の県で関係が深いのであります。私も炭労の実情というものも常によく存じておりますが、今回の問題は組合と組合の問題でありますので、組合問題については特に労働法の規制というものはございません。  ただ今回の問題はやはり人権の問題、差別の問題で、これは労働争議以外にしても容易ならぬことだと私も考えております。ましてこれが争議行為にやられるということは、ちょうど激化したときの問題でありますが、そういうことはやはり国民すべてが注意しなければならない、私はこう考えております。組合の問題とか争議の問題よりも、基本的な差別待遇という問題は、断じて今日憲法上あるべからざる問題と考えます。人権の問題としては、私も同じようにこういうことは争議の中に使われるとなおその響きが大きいのじゃなかろうかと考えまして、労働大臣というよりも国務大臣として、国民立場からこういうものは考うべきだ、こう考えております。
  279. 滝井義高

    ○滝井委員 私は実は質問がたくさんあるのですが、おそくなりましたからやめます。ただ、厚生省が児童福祉施設についてはすみやかに撤去を要求するという決意を固めたようでございますから、三井鉱山と警察との間に取りかわした契約書は出していただけるということでございましたから、一つ今日委員長の手元に出していただきたいと思います。今日はお持ちでしょう、契約書を。この前私要求しておったのです。
  280. 倉井潔

    ○倉井説明員 契約書といいますか使用承諾井がきております。写しはあります。
  281. 滝井義高

    ○滝井委員 写しでけっこうです。
  282. 倉井潔

    ○倉井説明員 ただ、少し詳細に調査いたしたいと思いまして、まだ提出はしておりません。
  283. 滝井義高

    ○滝井委員 柏村さん、今お聞きの通り、私はこの前相当大きい声でお願いしたわけです。まるきり警察は誠意がないじゃないですか、こういう問題についても。国会でいいかげんの、そのときそのときの答弁をしておればいいということなんですか。そういうことならそういうことで、われわれもそういう腹がまえをします。今日は、私ちょうどそのときは安保の委員会におりましたから聞きませんでしたが、赤松さんには、福岡県に十三万九千百円、熊本県には六万六千九百円払った、こういうことなんですね。私はこの前、契約書と、そして一体警察のいかなる予算の費目からどういう形で幾らお金をお出しになったかそれをお示し下さい、こういうこと要請をしたわけです。特にそれは委員長に、一つ明日出して下さい、と、この前は二十七日でしたから、二十八日も委員会があったわけですから、お願いしたわけです。それをまた今日詳細に調べなければならぬなんて、それじゃお金は払っておるけれども、契約書はないということなんですか。あれば今日お出しいただきたいというのです。
  284. 倉井潔

    ○倉井説明員 一部でよろしければお出しいたします。
  285. 永山忠則

    永山委員長 これにて散会いたします。    午後六時五十六分散会      ————◇—————